花陽『夏休みの思い出』 (48)

あれはそう



花陽が小学3年生になった頃



夏休みを利用して田舎のおじいちゃんの家に遊びに行ったの



もちろん凛ちゃんと一緒にね




花陽ひとりだったら………多分バスにも乗れてなかったと思う



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本当そうでした




なんとかバスに乗ったのはいいけれど


どこで降りていいのか分からなくなっちゃって



焦っちゃって、どうしていいかわからなくなっちゃって



泣いてしまいました




凛ちゃんが一生懸命花陽を励ましてくれたんだけど



凛ちゃんも不安になったみたいで一緒に泣いちゃって



バスの運転手さん、困らせちゃいました

お母さんが花陽に持たせてくれた携帯電話を、バスの運転手さんが使って



お母さんと連絡とってくれて



降りるバス停を聞いてくれたました





あの時の運転手さん、迷惑かけて本当にごめんなさい

バスの中で泣いてる時は




もう絶対バスになんか乗らない。お出かけなんてしない。


って決めたのに



バスを降りて外の風景を見たらそんな事パァーって忘れちゃいました

右から左まですべて田園風景





一面緑の絨毯で


上を見上げれば綺麗な青空と入道雲




今まで泣いていたのに泣くことを忘れちゃったのか、なんだか楽しくなってきちゃって



凛ちゃんと手をつないで歌を歌いながらおじいちゃんちまで歩いて行きました

お母さんがおじいちゃんに電話したらしくて



途中でおじいちゃんが軽トラックに乗って迎えに来てくれました




怖かったかい?飴食べるかい?って



とっても嬉しかったです



軽トラックの荷台に乗って、凛ちゃんとリンゴ味の飴玉舐めておじいちゃんちに行きました

おじいちゃんちに着いた時にはお昼を過ぎていて



おばあちゃんがそうめんを作って出迎えてくれました



おじいちゃんは、飴玉食べたのは内緒だよ?ばれたらおばあちゃんに怒られてしまうって



言ったので、花陽と凛は元気に


「はーい」って



結局、飴玉食べたのおばあちゃんにばれちゃったけど

だっておばあちゃん、いちご味の飴は美味しかったかい?って聞くし



食べたのはリンゴ味だったから、花陽と凛ちゃんは


「ううん、リンゴ味だよ」って応えちゃうよ



さすが、おばあちゃん。おじいちゃんの事は一番分かってるみたいです

午前中に色々あったからお腹がすいちゃってたみたいで



おばあちゃんの用意してくれたそうめんを凛ちゃんと一緒にお腹一杯食べました




うーん。お腹一杯



満足にお腹をさすってると


「スイカ切ったからからお食べ」って


うわーん。スイカあるって分かってたらお腹一杯食べなかったのにぃー

意外とやることがなくて


このままお昼寝してもいいかな、って思ってたんだけど


凛ちゃんがお外で遊ぼうって、花陽を引っ張ってね




おじいちゃんもあまり遠くに行かないように、って言うだけで止めてくれないし


本当はもうちょっとゆっくりしていたかったかな





凛ちゃんはその辺に落ちてた木の棒を片手に持って


凛「凛は冒険隊の隊長!かよちんついてきて!」


って、言って走って行っちゃった



ま、待って―。凛ちゃん走っちゃうと、花陽追いつけないよー

でも、やっぱり凛ちゃん


花陽が見失わないように、視界から消えないようにと時々止まってくれるんです





凛ちゃんが、石段を元気に駆け上がって



花陽も必死に追いかけたんだけど


当時から体力がなかったから、何回も何回も立ち止まって休憩を入れてしまいました



凛「かよちんおそーい!置いて行っちゃうよー」




そんな事言ってても、なんだかんだで絶対凛ちゃんは待っててくれるんです

花陽「ひゃぁ…………凛ちゃん……待ってぇ…」



息を切らしながらようやく石段を登り切って凛ちゃんに追いつきました


そこは神社のようで、凛ちゃんはお社をじーって見てました



凛ちゃんがずーっとお社を見てて



花陽が話しかけても、「うん」とか「そう」とか、とにかく反応が弱くて



まるで何かに魅入られたみたいで

なんだか怖くなっちゃって



花陽「帰ろうよぉ……」


って、凛ちゃん引っ張っても花陽を無視




凛ちゃんが花陽を無視することなんて今までなかったから



これは本当におかしいって、でもどうすることもできなくて



また泣いちゃいました

すると、誰かに肩をポンと叩かれてね


振り向くと、花陽より少し年上だと思う



白いワンピースの女の子がいて、その子が「安心して」って




女の子はお社の方をみると


「この子は迷い込んだだけ」とか「危害は与えない」とか「連れて行かないで」


って、ぶつぶつ言ってて

するとね


風も吹いてないのに草木がかさかさって揺れてね



凛ちゃんが倒れちゃったの




た、たいへ~ん!


花陽が駆け寄ってゆさゆさと揺さぶると


凛「う、う~ん………」


どうやら凛ちゃんは大丈夫みたい

「もう安心して。ここの神様、その子が突然来たから驚いちゃっただけみたいだから」



女の子が優しい口調で花陽に声をかけてきました




その時は、よくわからなかったけど


とにかく凛ちゃんが無事って事だけはわかったから


何度も何度も、ありがとう。って言っていた気がします

少しの間


石段に腰掛けて、凛ちゃんが目覚めるまで待ちました


その間、その女の子はどこにも行かず、花陽たちを見てるだけでした




話しかけるのも恥ずかしかったけど、凛ちゃんを助けてくれたのだから


花陽「あ、あの………お名前…おし、教えてくだ、さい……」


直接見ることはできず、俯いて細い声を絞り出す



そんな花陽にも、その子は嫌そうなそぶりもせず「いいよ」って教えてくれました



だけど、なんでか名前がぜんぜん思い出せなくて


それでも、のーちゃんって呼んでいたのだけは覚えています

凛ちゃんが目覚めた後、のーちゃんは


「その子は、この神社に来ない方がいいよ」って忠告して去っていきました





凛ちゃんに何があったのか聞いてみると


石段を上り切ったら、お社に狐がいたらしいです



そのあとの事はよく覚えていないらしいけど、狐なんていたかなぁ?

その日は、真っ直ぐおじいちゃんちに帰って晩ごはんを食べました



おばあちゃんの作ってくれた肉じゃががとても美味しいくて


白いごはん3杯もおかわりしちゃった




ごはん食べた後は、夏休みの宿題をやって


凛ちゃんやおじいちゃんと一緒にお風呂入って


おばあちゃんと一緒に寝ました




ああ、そうでした。おじいちゃんちには1週間泊まったんです

次の日も朝から凛ちゃんに引っ張られて、お外で遊びました



走りつかれた凛ちゃんと一緒に田んぼに浮かんでいるカエルさんをボーっと眺めていると




「こんにちは」



のーちゃんでした




凛ちゃんは昨日のお礼を言った後


凛「一緒に遊ぼうよ!」って


花陽とのーちゃんを引っ張って走り出しました

のーちゃんは最近引っ越してきたみたいで



夏休みに入ってからここに引っ越してきたから、お友達もいなくて


花陽や凛と同じで一日中暇みたいです



だから暇なときは、神社とか巡っていたらしいです



珍しい趣味ですよね

そこから一週間


ずっと花陽と凛ちゃんは、のーちゃんと遊びました




でも、ちょっと気になることがあって


のーちゃんはいつも一人きりで


花陽たち以外の人と一緒にいるのを見たことがありませんでした





凛ちゃんが「地元の子とは遊ばないのー?」って何気なく聞いたら



「なに話したらいいかわからない」って

花陽たちは、凛ちゃんがきっかけで仲良くなれたけど



あんなこと、滅多にないから……って



もじもじしているのーちゃんに、凛ちゃんがにっこりと


凛「自分の好きな事話したらいいんだよ」


凛「のーちゃんは、何か好きな事あるの?」


って



さ、さすが、凛ちゃん。花陽だったらきっとここで話が終わってちゃってたよ

「占いなら………少し、できるけど」


控えめに言うのーちゃんの両手を凛ちゃんがぎゅっと握って



凛「すごいすごーい!のーちゃん占いできるんだー!」


凛「占い嫌いな女の子いないから大丈夫!かよちんも嫌いじゃないよね?」


え、うん

こくこくと頷く

凛「それと、インパクトも大事だよ!口調とかも変えたらいいんじゃないかな」


凛「にゃー。とか、やねん。とか……」


むっ、凛ちゃんなんだかのーちゃんで遊んでいる気がする



でも、意外とのーちゃんは真剣に話を聞いていました



これでのーちゃんがおかしなキャラになっちゃったら凛ちゃんのせいなんだからねーっ!

楽しかったおじいちゃんちの毎日は



本当にあっという間で



明日の朝には帰らなければいけません





花陽「明日で帰っちゃうんだね…」


おじいちゃんの畑が見える縁側でスイカを食べながら花陽がそう言うと


凛ちゃんが、スイカの種をぺぺぺって飛ばして


凛「だったら今日はうんと楽しまなくちゃね!」



うん。そうだね。


最後の日は、のーちゃんと3人でうんと楽しまなくちゃ

のーちゃんには何も言っていません


だから明日帰らなければいけないことを伝えないといけません



のーちゃんと遊ぶ最後の日


でも、その日に限って



いつも待ち合わせにしている電柱で待っていても



なかなか来ません

今回もいいね
あなたの書いたのぞねこ最高だった

凛「のーちゃん遅いねー」



うん



いつも花陽たちが来るころには待っていたのに


花陽「もうちょっと……待ってようか?」


凛「………うん」

結局


のーちゃんは来ませんでした




日が沈む頃、おじいちゃんが迎えに来てくれて


でも、のーちゃんに言ってないからって。もうちょっとここにいるって我儘言っちゃって



おじいちゃんを困らせちゃいました

>>29
ありがとうございます。

のぞねこという新ジャンル

おじいちゃんが、のーちゃんを見かけたら言っておくから


だから今日はもう帰ろうか?って


おじいちゃん、のーちゃん会ったことないのに



でも、小さな花陽や凜はそれを信じて、それなら………って

夏休みが終わっても……ううん


今日になっても、おじいちゃんから連絡がありません


きっと、のーちゃんとはもう会えないと思います




今はどこで何をしているのか


そもそも、のーちゃんが本当にいたのかもハッキリとはわかりません


花陽と凛ちゃんだけが見た幻だったのかもしれません




今思えば、のーちゃんは凛ちゃんを助けてくれた神様なのかも

だって、あの時のーちゃんがいてくれなかったら



もしかしたら、凛ちゃんは『連れていかれた』のかも



そう考えると、のーちゃんには感謝しています






本当にありがとう




そして、これをもし見てくれていたら


直接会ってお礼を言いたいです―――――――――



ふぅ………


カチリと、マウスとキーボードを操作して


ディスプレイに表示されている『投稿』をクリックする





にこちゃんにμ'sのブログの日記を書けって言われた時はどうしようかと思ったけど



こういう風に昔の話を思い出しながら書くと意外に楽しいな

さて、花陽の担当終わったし次は真姫ちゃんの番



真姫ちゃんはどんな事書いてくれるんだろう




そう考えていると携帯がブーブーって震えて



メールが来ました


さっそく皆がブログを読んでくれたみたいです

from:穂乃果ちゃん

本文:神様に会ってたなんて花陽ちゃんすごーい!
でもでも、神様と友達の花陽ちゃんと友達ってことは、
もしかしたら穂乃果もすごいのかも!?



from:凛ちゃん

本文:凛、のーちゃんのこと忘れてたよ。
てへへ、ごめんなさい……
でも、かよちんのおかげで思い出したにゃ
またのーちゃんと会いたいにゃー



from:海未ちゃん

本文:思い出というのはとても大切な物になります。
花陽もその子との思い出をずっと忘れないでくださいね。
もちろん、私達μ'sの事も。

皆から感想のメールがどんどん届きます


わあぁ


なんだか嬉しいような恥ずかしいような



くすぐったいような



そんな不思議な気持ちが溢れてきます




ブーブー


またメールが来たみたいです

from:希ちゃん

本文:ブログ読んだよ。
もしかしたらな、そののーちゃんって子
ウチの事かもしれん……










えっ?



ええーーーーっ!?






おしまい

最後まで読んでいただきありがとうございました。
オチが読みやすくてごめんなさい。
お風呂に浸かっている時に思いついて、5分でまとめたものなので許してください。

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