八幡「兄妹揃って765プロ…そういえば奉仕部も」小町「いぇいっ!」 (176)

八幡「…」

P「すまん八幡、この日はレッスン場まで予約入れに行ってくれ!頼む!」

小鳥「コピー機が紙詰まり…!?……えーっと、比企谷さんいまいいですか…?」

律子「比企谷殿、資料の整理終わってないのに優雅にコーヒーとはいい根性ですねぇ…?」


伊織「オレンジジュース、100%のやつね」

俺が腐れ親どもに身を売られて早3週間。
学生の身でありながら、俺は765プロダクションにプロデューサー候補生として日々こき使われている。

専業主夫を目指している俺としては情けなくて仕方が無い。

っておい!最後のは完全にパシリだろ!!

伊織「うるさいわね、さっさと買ってきなさいよ下僕」

八幡「俺はいつからこんなでこっぱちの下僕になったんだ…」

やめろよ睨むなよ、八幡怖い。

P「ダメだぞ伊織、八幡はこう見えて忙しいんだから」

こう見えてってどういうことだ。ちょっと体育館裏に来いや。

伊織「どっかの駄目プロデューサーがオレンジジュースを冷蔵庫にちゃんと準備してないからよ!」

P「はいどーぞ」

伊織「なんだ、あるなら出しなさいよ。まったくもう…」

八幡「……今、どこから出したんだ?」

俺の目が腐って無ければ、このプロデューサーは何も無い空間からオレンジジュースを取り出した気がするんだが。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398918261

P「プロデューサーとしての必須スキルだ、覚えとけよ?候補生」

どうやらプロデューサーと書いて人外と読むこともできるらしい。
なんなのこの業界。

八幡「……なんでこうなったんだ…」

社長「私がティン、ときたからだよキミィ」

八幡「うぇっ、社長…いつの間に…」

社長「街中で八幡君を見かけた時にティン、とねぇ!そう…その腐り切った目!客観的に物事を見過ぎて色あせたその目に才能を感じたんだよキミィ!!」

どいつもこいつも人の目を腐ってるだの死んだ魚の目だの言いやがって…!俺の瞳は自分の未来を見据えて輝いてるだろ!!

小鳥「…いやそれはちょっと……」

八幡「Hum?」

小鳥「な、なんでもないですピヨッ!」

そそくさと段ボール箱を持ち上げて走り去るミニスカ事務員さん。あの人今俺の心を読まなかったか。

社長「そして八幡君が帰宅するよりも前に自宅を突き止め、親御さんに資料を渡し、契約印を押してもらった訳だよキミィ」

八幡「おい」

サラッと犯罪だぞそこのストーカー社長。
そして怪しいおっさんの契約書に判を押すうちの親もそうだが、バカじゃないの?
息子、過労で死ぬよ?せめて小町に多額の保険金だけは残してやるけどな。

「うっうー!おはようございますー!!」

乱暴…いや、元気良く扉を開けて入って来たのはこの比企谷八幡がこの765プロで唯一認める天使…その可愛さは最上位個体の戸塚、小町とも並ぶクラス。
もうやよいマジ天使。

P「おう、おはよう。やよい」

やよい「プロデューサー!はいっ」

P・やよい「「ターッチ!」」

来た来た来た…!深呼吸深呼吸。
落ち着け俺、今日も爽やかクールに行こう。

やよい「八幡さん!はいっ」

八幡・やよい「「ターッチ!」」

練習した甲斐があったってもんだ。
1日3時間、真夜中にやよいの「はいタッチ」のシーンだけを某動画サイトから拾ったものを見続け、タイミングやタッチの瞬間の力の強さを研究。

小町には(ドン)引かれたが、プロデューサーにも負けない理想のはいタッチを俺は完成させたのだ。

やよい「うっうー!八幡さんはいタッチが上手ですー!もいっかい!はいっ」

八幡・やよい「「ターッチ!!」」

初めての時にはニヤニヤし過ぎて心配されたが、今ややよいの為に練習した自然な笑顔でかっこ良く返す事ができている。
成長したなぁ、俺。

やよい「えへへっ、今日も頑張りますー!」

あ、ダメだこれは頬が緩むわ。

八幡「おう、頑張ろうな。フヒ」

油断してつい変な笑い声がゲフンゲフン。

律子「うわぁ…」

おっとそこの元アイドル。
そんな程度の引いた目なんかじゃ俺の心は傷つかないぜ?
伊達に孤高の一匹狼をやってないからな!

社長「…はいタッチ……」

やよい「??」

そこのオッさんが何か言ってるけど気にしない。気にしなくていいよやよい。


「「「おはようございまーーす」」」

団体さんがご到着。
6人増えただけで随分と狭く感じるオフィスである。

春香「もう夏かなぁ…外暑かったよう…」

八幡「まぁもう6月の終わりだし」

春香「げっ…比企谷君…」

八幡「おいその『げっ』てなんだ表に出ろこのリボン怪獣」

何もしてないのに随分嫌われたなぁオイ。
そんなに比企谷君が嫌いか?オタガヤとか言い出したら泣くぞ。このオフィスで咽び泣いてやるぞ。

真「八幡!今日こそ勝負!」

八幡「うおっ!?」

不意打ちの回し蹴りが俺の顔があった場所を凪いだ。

真「惜しいっ!また避けられた…」

八幡「おぉう…お、俺とやややろうなんて100年は早いぜ真」

そんな声が震えている俺は、真の声にビビって一歩後ろに下がっていた。

こうした、”ただの偶然”に何度も命を救われているのだが、このバトル系アイドルさんはそれを実力だと勘違いしてらっしゃる。

これはいつの日か死ぬフラグ。

八幡「小町、お兄ちゃんはお前にお金だけは残して行くからな…!それで戸塚ややよいに飯でも奢ってやってくれ…!!」

やよい「私がどうしたんですかー?」

八幡「なんでもない。いつの日か召される時には俺を連れて行ってくれ…」

やよい「うー?」

響「はいさーい!」

その後も続々と765プロのアイドル達が現れ、全員揃った辺りで社長がミーティングを始めた。

社長「で、あるからして…」

「「「「「……」」」」」

社長「ディアルガして…」

「「「「「………」」」」」

社長「パルキア」

「「「「「」」」」」

ただひたすら長い。お前は始業式の校長先生か何かかとツッコミを入れたい程に。
プロデューサーにおぶさっている金髪のアイドルについては眠ってしまっている。
誰だっけアイツ。

社長「……というわけだ。これからもよろしく頼むよ君達」

「「「「「はーい…」」」」」

疲労感と倦怠感を肩に担いだ俺たちは、1時間先の未来にタイムスリップした。

社長「そうだ、言い忘れてたよキミィ。最後に一言だけ」

P「長い…」

八幡「まだあるのかよ…」

社長「新しくアイドルの卵を見つけて来たから紹介しておく。入りたまえ」

小町「比企谷小町でぇーす!よろしくお願いしまーす!!」

八幡「」


ん?

P「比企谷…?どこかで…」

八幡「」

外の世界に通じる扉から降臨したのは、我が愛しの妹。比企谷小町に良く似た女の子だった。

小町「あ、お兄ちゃん。やっはろー」

音声データと画像データを認識中…照合。
比企谷小町さんですありがとうございます。

八幡「こンの腐れ社長ゴルァぁァ‼︎‼︎」

社長「ブベルァ⁉︎」

「「「「「ちょっ!?」」」」」

小町「お兄ちゃん!?」

P・律子・小鳥「「「」」」

ドヤ顔の横っ面を思い切りブン殴った。
全身黒いので顔かどうかはわからないが、とにかく湧き上がる怒りを力に変えて、上司中の上司にぶつけた。

八幡「コホァァァァァ……」

小鳥「だ、ダースベーダー…!?」

社長「い、一体…何をするんだねキミィ…」

ビクンビクンと痙攣を起こしながら床にキスしている社長の胸倉を掴みあげて、俺は劇的に、ドラマティックに叫んだ。



八幡「何で小町を1時間も外に待たせてんだよ外クソ暑いだろうが!熱中症にでもなったらどうしてくれんだよ!!」



俺、今凄くカッコいい。

P「シスコンだな。シスコン軍曹」

春香「うわぁ…」

八幡「おい誰がシスコン軍曹だ。俺は常に小町の為になる事だけを考えて行動してるだけだ」

脳内真っピンクリボンついては何でこんなに俺を敵対視するの?雪ノ下さんなの?

小町「だ、大丈夫ですか社長さん!?兄に、兄に悪気は無いんです!ちょっと小町の事を考え過ぎてるだけでっ…!!」

八幡「そもそも俺の妹をそんじょそこらの男共のいやらしい目に晒す訳にはいかん。お兄ちゃんは反対だぞ小町!」

小町「でもーもう契約書みたいなのにお母さん達も小町もサインしちゃったしー」

八幡「オイ、その書類どこだ破り捨ててやる」

社長室か?社長室の金庫の中か?

小町「でも日曜まで出勤してるお兄ちゃんと一緒にいれる時間増えるよー?」

八幡「む…それはそうか…いやしかし…」

小町「それに小町もやってみたいし!」




小町「という事で皆さんよろしくお願いしまーす!」

八幡「くっ…おい、お前にブロデュースはさせねぇからな?絶対させねぇからな!」

P「なんでだよ!?」

お前にプロデュースされるともれなくフラグをブっ立てられるだろうが。
そんなことはさせん。させるものかさせるもんですかの三段活用。

亜美「へちま→」

真美「はちま→」

「「遊ぼー」」

八幡「…重いから乗るならあっち(P)に乗れよ亜美真美。そして亜美、俺は瓜科じゃなくてヒト科だ」

ヘチマの方が使い道があるって?
やかましいわ。

亜美「兄ちゃんこれから仕事→」

真美「遊んで→」

八幡「俺も仕事→残念でした→」

亜美「ぶー」

真美「ちぇー」

亜美「真美ゲームしよー」

真美「おっけー」

毎度毎度の事ながら台風のような双子だ。
たしか出会い頭に頭からバケツの水を被らされたような気もした。
イジメじゃなかったことを祈る。

真「でやっ!!」

八幡「ふっ」

その場に屈む。そうして俺は頭部に迫った回し蹴りを回避することができた。

真「さっきのパンチは凄かったよ八幡!今もアッサリ避けたし…やっぱり実力者だね!」

鏡に蹴る瞬間が映ってただけですけどねー。
こいつにはどこからか由比ヶ浜と同じような匂いを感じる。

P「真、美希、雪歩に伊織。あと千早と春香。お前達はレッスンだぞー急げよー」

「「「「「はーい」」」」」

高音「お腹が空いてしまいました」

唐突に神秘系アイドルさんが呟かれた。

八幡「そういえばもう昼過ぎだな。ちょっと飯でも食ってくるわ」

そこら辺のマックでも買ってくることにしますかねー。カップルで入ってくるリア充共爆ぜろ。

小町「あっ小町も小町もー!」

八幡「ついてくんなし。あーし独りで食べるし」

小町「なんで!?さっきはあんなに優しかったのに…っ!あと喋り方がものすごく気持ち悪いよお兄ちゃん。全国のその喋り方をする人に対してなんか殺意を感じた」

すまんなあーしさん。勝手に俺の妹がお前を目の敵にしてしまった。だが孤高の一匹狼の俺には反省はしている余裕は無いのだ。

八幡「そりゃアレだ、右手にチートを備えた主人公レベルでフラグ建築能力を持ったアイドル殺しが居たからな。もしそんな事が現実になったら俺は堀の中に入るのを覚悟せにゃならん」

小町「うーんちょっと意味が分かんないかなー」

いかにウザい妹でも俺という兄貴が心から愛して心から守らねばならんのがお前なんだ。余計な心配はしなくていい。


八幡「あれ?俺ってシスコンじゃね?」

響「今頃!?」

八幡「うぉっ、びっくりした…」

響「あ、ごめんだぞ…」

八幡「いやまぁ大丈夫だ……えーっと、誰だっけ?」

響「ひどいぞ…八幡には1番最初に自己紹介したのに…」

えぇー。なんかすいません。
だからそんな部屋の隅でどこからともなく現れた動物達と縮こまるんじゃない。

小町「ごめんね響ちゃん、ウチのゴミぃちゃんはボッチだから女の子付き合いが得意な方じゃないんだよ…」

八幡「おい、ボッチじゃねぇ一匹狼だ。そもそもボッチでなにが悪い。あとゴミぃちゃんはやめろ死ぬぞ自主的に」

お前にちゃんとまとまった金額を残してから死んでやるからな!

響「ぼっち?八幡はダイダラボッチなのか!?」

八幡「誰が巨人だ誰が土地神だ。ボッチについて改めて説明させようとすんな」

小町「ひとりぼっちって事だよ響ちゃん」

おいマイシスター何サラッと説明してんの。

響「ひとりぼっち?友達いないのか?」

…そんな素直で純粋な目をしてそんな事聞くなよ誤魔化しにくいだろうが。
『沈黙は是なり』って知らんのか。

小町「大丈夫だよお兄ちゃーん。友達がいなくてもお嫁さんがいなくても小町がずっといるからー」

八幡「当たり前だ。お前は生涯誰にもやらん」

響「歪みかけた兄妹愛を感じるさー…」

歪んでねぇむしろド直球に兄妹愛だわ。


小町「出たシスコン…まぁー小町的にはそれもありかなーなんて。あ、今の小町的にポイント高いかも!」

響「社会的にはポイント引くいさー!?……や、やっぱりこの2人は兄妹だぞ…」

やらかしたスマソ誤変換

八幡「おぉ、いまのツッコミは良かったぞ。我那覇響さんあなたにも『由比ヶ浜』の称号を授けましょう」

ちなみに第一次受賞者は言わずもがな真だ。あの天然バトルロイヤルの頭の中は由比ヶ浜に近いものがあると確信している。

響「え?あ、うんありがとうだぞ…ってちゃんと名前覚えてるじゃないかー!!!」

どかーん。と響の背後から擬音が聞こえた気がした。

八幡「しまった、つい口がスリップしたんだ許してくれ」

響「…なんか腑に落ちないぞ…とりあえずお腹減ったぞ八幡」

八幡「俺にどうしろと」

響「皆でご飯食べにいくさー!みーんなー!一緒にご飯行くぞー!八幡の奢りでー!!!」

「「「「「おーっ!!!」」」」」

八幡「」

響「これで許してやるぞ」

とんだ小悪魔ちゃんだぜこいつ。
誰か魔除けのシーサー買って来てくれ。

貴音「らぁめん屋でお願いします」

八幡「この人数でラーメン屋なんか入ったら店長ビビるだろうが。ファミレスで勘弁しろ」

『ショック』

八幡「なんだその紙…って何これお前のぬいぐるみか?動いてるけど」

貴音「たかにゃですが?」

八幡「たかにゃって何だ…しかも何か増えてる?増えてるよなどうしたんだお前等」

各々が手を引いたり頭に乗せたり抱きかかえたりしているのは……人形ぽい何か。自立行動(スタンドアローン)してるのは気のせいだろう。すごいね、現代のオモチャ。

『だぞっ!だぞっ!!』

八幡「うるさいぞ響」

響「それはちびきだぞ八幡」

八幡「…これもぬいぐるみか?」

響「ぬいぐるみじゃないさー。ぷちどるだぞー」

ちびき『だぞっ!』

八幡「……その、ぷちどる…ってのは…生きてるのか?なんか人並みの温もりを感じるけど」

ビシビシと”へぇへぇ鳴るボタン”が如く、頭部を叩いたりつついたりしてみるとキチンと反応がある。生物と同じように体温もある。

ちびき『あがー!あがー!!』

八幡「っはっはっは、おもしれー」

響「あ、それ以上やると泣」

ちびき『びぇぇぇぇえぇん!!』

八幡「うぉ!?やべぇ泣いちまった…ごめんなーやりすぎたなーよしよし」

響「手遅れだったぞ…八幡、死にたくなければ逃げた方がいいさー…」

八幡「?」

そんな俺を背後から包み混んだのは巨大な影。なんだこのシルエット。イソギンチャクみたいですけどなんですかねこれ。

──────────
──────

八幡「…あれ?」

あずさ「あらあらー目を覚ましましたかー」

八幡「え、あれ、あずささん……何故に俺はあずささんに膝枕なんてされてるんですかね役得過ぎるけど」

ふんわり、それでいてむちっと。
後頭部を包み込む柔らかな感覚と、眼前に広がる2つの豊丘が全身を癒してくれる…

…そうか、俺の理想郷はここだったんだ…。

八幡「ありがとう…女神よ…」

あずさ「?」


亜美「へちま起きた→」

真美「おは→」

八幡「ところで俺は何でファミレスまで歩いて来た記憶が無いのか知らないか?なんかブラックアウトした後全身をにゅるにゅるされたような気がするんだけど」

そう、それは突起のついた細い管にローション流し込んだものに通されてシェイクされた感覚だ。そこまでは覚えている。

響「ヤマタノオロチさんだぞ」

八幡「意味分からん。…とりあえず水か何かとってくるわ…何か飲みたい気分なんで…」

『ぽー』

八幡「雪歩か、相変わらず気が利くな。あれお前レッスンじゃなかったっけ」

いつの間に合流したんだ?

真美「はちまーん、それゆきぽだよ」

八幡「雪歩だろ?」

真美「いやいや、ゆきぽ。雪歩はレッスン中だって多分」

八幡「あー…コレ雪歩のぬいぐるみかー」

ゆきぽ『ぽー?』

貴音「ぷちどるという存在を真っ向否定したいようでございますね」

八幡「いやいや普通あり得ないだろ。ぷちどるとかいう生物は人なのかまずそこから検証したい」

貴音「そんな事してはなりませんよ。気絶した八幡を空を飛んで運んでくれたのも、偶然通りかかったぷちどるのぴよぴよですよ」

ぴよぴよ『ぴっ』

ひょっこりテーブルの下から頭を出したのは、小鳥さん似のぷちどる。
つか飛べるって何だ。

八幡「お前…空飛べるのか」

ぴよぴよ『ぴー!』

何の機械も無しにふわふわと空中浮翌遊し出す…その、ぴよぴよ?
これはもしかして夢なんだろうか。

貴音「これが現実ですよ八幡。さぁ、注文を決めましょう」

亜美「亜美はハンバーグ!」

真美「真美もハンバーグ!」

貴音「私はもちろんらぁめんで」

響「自分はチャンプルー!」

あずさ「迷うわね~」

八幡「遠慮が無ぇなお前等…俺はナポリタンな」

奢りってことになってんなら少しは遠慮してパーティとかで出るみたいなポテトぐらいにして欲しかったぜ。

やよい「八幡さん…私もいいですかー…?」

八幡「やよいはいっぱい食べろ。むしろ腹いっぱい食べてもいいんだ」

ええ子や。ウチのアイドル全員(あずささん等を除く)に爪の垢煎じて飲ましてやりたいもんだ。
バカかお前やよいに爪の垢なんてあるわけないだろ!

貴音「ぷちどる達も何か食べますか?」

八幡「もう好きにしてくれよ、どうせ全部俺持ちなんだろ…今更人数が少し増える位なんとも」


『あらー』

『かっか!』

『うー』

『もっ!』

貴音「以上で決まりですね、では店員を喚」

八幡「おい」

貴音「なんでしょう?」

八幡「まずそこの2人はいい。恐らくあずささんとやよいのぷちどるだろう」

みうらさん『あらー』

やよ『うっうー!』

素直にかわいい。

八幡「だがな、サラッと2人増えてるよなそこの伊織もどきと春香もどき!」

『もっ!』

『ヴァ~イ!』

やよい「うっうー!はるかさんといおですー!」

こっちは普通にはるかさんなのかよ!
一々ネーミングセンスに難ありだなこのプロダクションは!

八幡「お前等は水でも飲んでろ!」

いお『キー!』

八幡「ハハハ、悔しいか!お前等の主人には痛い目合わされ続けてるからなぁ!!」

小町「うわぁ、お兄ちゃん最低」

八幡「……冗談に決まってんだろ、俺にでもこいつらは悪くないこと位分かるわ。例え伊織と同じ位でこっぱちでもな」

いお『もっ!?』

八幡「……何でお前のでこ光ってんの?」

いお『キー!!!!』

八幡「え、ちょま」

──────────
──────

八幡「はっ!?」

あずさ「あらあらー目を覚ましましたかー」

八幡「え、あれ、あずささん……何故に俺はあずささんに膝枕なんてされてるんですかね役得過ぎるけど」

ふんわり、それでいてむちっと。
後頭部を包み込む柔らかな感覚と、眼前に広がる2つの豊丘が全身を癒してくれる…

八幡「…そうか、俺の理想郷はここだったんだ…」

ここまでデジャヴ。

小町「おはよーお兄ちゃん。全身黒焦げになった気分はどうだった?」

八幡「やべぇよあの伊織もどき。何ででこに光学兵器なんてつけてるんだよ…しかも『くらえ!』って言うし…」

生物か?本当にぷちどるってのは生物なんだよな?信じるぞ貴音。

いお『キー!』

八幡「ひぃ素直に怖い!」

俺は脅しには屈指ねぇ!!

小町「お兄ちゃん、本音と建前が逆だよ」


『くっ?』

八幡「」

え、なんでまた増えてんの。
てか何で俺のナポリタン頬張ってんの?

貴音「ちひゃー、それは八幡のですよ」

ちひゃー『くっ!?くっ、くっ!』

八幡「いやいや大丈夫、そんなお詫びとかいいから。また頼めばいい話だからな」

ちひゃー『くっ…くぅぅぅぅ』

八幡「気にすんな、元々こういう性分だ」

亜美「さっきからぷちどるとお話ししてるー?」

真美「はちますげ→」

こら、座って食べなさい亜美真美。
行儀悪いぞ。

貴音「八幡もぷちどると意思疎通ができるのですか?」

八幡「え?普通じゃないのか?」

はるかさん『ヴぁーい』

八幡「おなかすきましたってお前、今ピザ頬張ってただろ」

こいつは主人に似てないな。主に性格が。天然ぽいし、何より毒なんて吐きそうにない。

はるかさん『かっか!』

八幡「おうおう、お前等もう好きに食え。こうなったら経費で落としてくれる」

『だぞっ』

『ぽー』

『ぴー』

『うっうー』

『かっか!』

『くっ!』

『いただきます』

八幡「あいよ」

幼稚園の保育士とかはこんな心境なんだろうかねぇ。……俺は目が腐ってるらしいから無理だな。多分怖がられる。

いお『もっ…』

八幡「お前も食えよ、オレンジジュースなら取ってきてやるから」

いお『もっ、キー!』

八幡「分かってるっての、100%だろ」

いお『キー…!』

あずさ「あらあら~」

みうらさん『あらー』





八幡「ということがあってだな」

P「それでそんなにくっつかれてんのか」

八幡「正直キツい。身体が重い」

樹液にたかる虫たちみたいに俺の身体はぷちどるに占領されている。

椅子に座る俺の肩やら膝やら腕やらに見渡す限りのぷちどる達。
ちひゃーはさっきから頭に登ってべしべし叩くし、はるかさんについては手を丸ごと甘噛みされてらっしゃる。


八幡「何がしたいんだこいつら」

P「懐いてるんだろう。……しかしお前がぷちどると話ができるってのは驚きだ」

ゆきぽ『ぽー』

八幡「ゆきぽか、お前達は本当に気が利くなぁ」

お盆に乗った茶を受け取る。
しかしお盆を頭に乗せて運ぶのは少々危ないからやめていただきたい。いろんな意味で不安になるから。

ゆきぽ『ぽえー?』

八幡「あー…ちょうど良い湯加減と濁り具合だ」

ゆきぽ『ぷぃぃぃ』

八幡「お代わりはまだいいから。大丈夫だから」



小町「見事に会話が成立してますねぇ…初めて兄を尊敬しましたよ…」

貴音「最初から意思疎通ができるとは…もしかして八幡は物の怪の類ですか?」

小町「…あぁー、目も腐ってますし?」


八幡「何か言ったかおいコラ」

小町「……地獄耳ですし」

一旦離席デストロイ

すいません夜来ます

八幡「…しかし」

ゆきぽ『ぽえー』

やよ『うー』

はるかさん『ヴぁーい』

八幡「ふふ、癒されんこともないな」

小町(お兄ちゃんの目に生気が戻って来かけてる⁉︎)

小町から謎の視線を感じるんだが気のせいだろう。そうだろう。

ちひゃー『くっ!』

いお『キー!』

八幡「おぉぉぉお!?熱っっっつ!!」

小町「あっ、元に戻った。折角お兄ちゃんがマトモになる手前まで来てたのに…」

八幡「………熱々のお茶が俺の股にかかった事案。で、何か用か」

超熱かった。美味しい反面で超熱かった。

俺の一張羅のジーパンがびしょびしょになった事よりも、ちひゃーといおに突然揺らされた事が不思議で仕方ない。

ちひゃー『くっ!』

いお『もっ!』

八幡「おい何でそっぽ向いてんの」

俺が何をしたって言うんだ。
むしろこっちは被害者なんですけど。

雪歩「比企谷さん、新しいお茶ですぅ。雑巾も持って来ました」

八幡「お、おっう、thank you」

いきなり話しかけんでくれ。声が裏返った挙句に発音良く言っちまっただろうが。

八幡「お前達は本当に気が利くよな、こんな事しか言えん俺の語彙力を恨まんでくれ」

雪歩「い、いえいえー、大丈夫です」

やよい以外にもちゃんとええ子ええ人は居るんだがな、ゆきほの場合怒らせると尋常じゃなく怖い。

八幡「おい、雑巾で床とか服から一旦降りてくれ」

はるかさん『ヴぁーい』

やよ『うー』

ちひゃー『くっ』

以下略。

小町「そういえばお兄ちゃん。ここではボッチじゃないんだねー」

は?何言ってんのお前。馬鹿なの?

八幡「俺はいつでもどこでも基本的にボッチだ。むしろそこに誇りを持ってすらいる」

小町「うわぁゴミぃちゃん再来」

うっせ。泣くぞ。

P「おい八幡、そろそろ事務の仕事変わってくれ。俺もちょっと休む」

八幡「あいよ。どこまで進めたんだ?」

P「スケジュールは一通り調整しといた。後は小町ちゃんのだけなんだけど…」

八幡「オイ誰に許可とって小町ちゃんなんて呼んでやがる。比企谷さんと言え」

小町「小町でいいですよプロデューサーさん」

八幡「こっ、小町ぃ…」

小町「でも小町はお兄ちゃん以外の男性には心全開は無いと思うのでフラグは諦めといてくださいねー」

八幡「こっ、小町ぃぃ…!」

結論。
俺の妹もマジ天使。

P「わかってるよ、そんな野暮ったい真似はしないさ。だからそんな警戒すんな八幡とっとと仕事しろ」

八幡「うーっす」






八幡「えーっと…?」

あれ、俺真面目に仕事できてね?
専業主夫を目指してるのに?あれー?

八幡「まぁいいか。……俺のUSBどこだ?」

ぴよぴよ『ぴー』

八幡「お、ありがとよ…ってお前は事務向きなのか」

ぴよぴよ『ぴっ!』

…なんか小鳥さんよりも仕事のスピード早くないか。ッターン!とかキーボード叩いてるけど。
その辺は事務員としてどうなの小鳥さん。

小鳥「今失礼な事考えてませんでしたかー?」

八幡「いえ別に」

さっきからカタカタ、ぴよぴよに負けず劣らず…むしろぴよぴよよりも速くキーボードを叩く音が向かい側から聞こえる。

『めっ』

八幡「もう驚かねーよ、律子さんのぷちだろお前」

慣れたもんだなー。数時間前まで存在を知らなかったのになー。

『めっ!』

ところで何でプチドルとかいうのは一々765プロの誰かに似てるんだろうか。もしかして俺とかPとか小町のとかいたりするんだろうか。

八幡(小町のぷちか…)



イイな。フヒ…




小町「何か今ゾワッとした」

八幡「気のせいだ。…さしずめお前の名前はりっちゃんってとこだろ?」

小鳥「その子はちっちゃんですよ、比企谷さん」

どこをどうとったら『ちっちゃん』になるんだよ!……小さい律子さんだからか?

八幡「なら本物はりっちゃんであってるんだろう」

律子「誰がりっちゃんですか誰が」

八幡「せめて首を締めるのは勘弁してくだ…ゲホッ…」

P「いいじゃないかりっちゃん。可愛いぞ」

命知らずだなこいつ。お前も俺と同様以上に首を締められるがいい。

律子「そ、そうですか?……プロデューサーなら別にそう呼んでくれなくてもよくなくないですからね?」

P「…つまりどゆこと?」

ちっちゃん『めっ!めっ!!』

律子「ちょっと!なにするのよ!!」

ちっちゃん『めっ!!!』

明らかに俺の時と反応が違いすぎるそこの事務員。
うすうす感じてはいたが、このプロデューサーはおそらく葉山体質。よく分かりましたよまったく。

八幡「はいはい仕事仕事…」




だから何でこんなに仕事頑張ろうとしてんの?
このままじゃ専業主夫になるどころかバリバリの働くって素敵男子になっちまうぞそれでもいいのか俺!

八幡「やる気無くした…帰ろ…いや、もう辞めますって社長に言っといてください」

P「おい」

小鳥「ちょっ」

そう、これでいいのだ10本アニメ。
俺にはこんなこと…ていうか労働は向いてない。最初から分かっている事じゃないか。

やよい「うっうー…八幡さん、辞めちゃうんですかぁ…?」

八幡「ぐぼぁっ!?や、やよい…」

なんてこった、最強の天使が俺の行くべき道を阻みやがった。
だがッッ!俺は自分の志を曲げるわけにはいかんのだやよい!俺はテレビの向こう側からお前の事をいつまでも応援してい

やよい「もしかしてっ、私がっ、鈍臭いせいですか?うっうー、それなら私がちゃんと直しますからぁ…ひっく、辞めないで欲しいなーって…ぅえっ…」

やよ『びゃー!』

八幡「や、辞めるわけないだろ?ジョークだよぉアメリカンジョーク!だから泣くんじゃない!アイドルはいつも笑顔。そうだろ?」

志?なにそれおいしいの?

やよい「うっうー!元気出しますー!」

小町「わぁ引きつったような笑顔が最高に気持ち悪いよお兄ちゃん」

八幡「わざわざ親指を立ててくれてありがとよ気持ち悪いお兄ちゃんの妹」

こちらも親指を立てて返してやることにしたけども俺しか傷ついて無い事にすぐ気付いてやめた。

こんな雑な文について来てくださって有難うございます。

夜にやって参ります。

八幡「…働くか」

不本意ながらな。

八幡「まずは小町のレッスン…と、あとは営業か。プロデューサー、頼むわ」

P「俺これから春香達の収録に付き合わないと…」

使えねぇ。

八幡「じゃあ律子さん…」

律子「私は忙しいので無理です」

八幡「小と」

小鳥「すいません私も…」

八幡「…」

じゃあ誰が行くんだよこれ。
しかもやよいと雪歩を売り込むやつじゃん、1番大事じゃん。

P「お前が行ってくれ。練習だと思ってさ」

八幡「は?俺はいいけどやよいと雪歩に歩いて行けと?」

P「アイドルを大事にするその心意気は評価に値するな。……こうなったらみうらさんにお願いしよう」

八幡「?」

みうらさん『あらー?』

P「八幡達をここまで運んでくれ」

地図を広げて説明するプロデューサーがアホにしか見えん。運んでくれとか馬鹿じゃねぇの?どーやって運ばせるつもりなの?

みうらさん『あらー』

八幡「え?できるの?マジで?」

みうらさん曰く、余裕で可能らしい。
空でも飛ぶのだろうか。

小町「小町には何て言ってるのかわからない…」

八幡「あ、小町。お前も来い。デビューしたんだから色んな所に挨拶して回るぞ」

小町「ほーい」

やよい「うっうー!小町さん改めてよろしくお願いしますー!」

雪歩「よろしくお願いしますね」

小町「やよいちゃんに雪歩さん、これからよろしくお願いしまーす!」

あ、なんかもう友情チックなのが生まれ始めてる。小町は上手くやってけるだろうか。
心配だ、あぁ心配だ心配だ。
八幡心の一句。

八幡「で、どうやって行くんだみうらさん」

当人はなぜか俺の頭によじ登り、そして最後に決めゼリフ。
ぷちは人の頭の上が好きらしい。

みうらさん『あらー!』





八幡「」

流石にこれはないだろう。
目の前の景色がガラッと変わって、自分達の立っている場所が目的地だった。なんて、まるで…

八幡「みうらさんは頭上設置型空間移動装置疑惑。我ながら厨二じみてるが事実だ」

今までで1番現実味がない。

やよ『うー』

ゆきぽ『ぽー』

八幡「なんだ、お前等も着いて来たのか」

ゆきぽ『ぽえー』

八幡「おっと、もう時間が無いな。さっさと行ってさっさと帰るぞ」

みうらさん『あらー』

やよい「うっうー!わかりましたー!」

雪歩「き、緊張しますぅ…!」

八幡「穴を掘るな穴を掘るな!ほら行くぞ!」

雪歩「あっ…」

八幡「お、あ、す、すすまん…」

雪歩「い、いえだ、大丈夫ですぅ」

急かそうとして異性の手を引くのはよろしくない。何故ならこんな結果を招いてしまうからである。
ちらちら見てくるくせに目が合うと逸らされる。そんなに嫌だったか…

小町「ほほぅ、この展開は…!」




八幡「こんにちは、765プロです。本日は…」

小町「お、お兄ちゃんがちゃんと仕事してる…!?嘘嘘、信じられない!」

雪歩「ダメだよ小町ちゃん、大きな声出しちゃ」

小町「えへへ、ごめんなさい」

八幡「はい、はい。………はい?え、いや、今日…はぁぁ!?す、すいません!ですが…いやいや、あ、あれ?!………はい、お騒がせして申し訳ありませんでした…」

やよい「八幡さんがもどって来ましたよー」

八幡「緊急事態発生。ちょっとそこのファミレスに全員集合」

八幡「………とんでもない事が起きた…まさか俺が非日常の扉を開けるなんて…いや、ぷち達の段階でもう開けてたか……」

そういえば空を飛べたりしてる辺りでおかしいだろ…
俺としたことが不覚だった…油断してた…

小町「お、お兄ちゃん?早く飲まないとそれ冷めちゃうよ…?」

八幡「水は……元から冷たいだろ」

小町「てへっ」

八幡「……」


雪歩「な、何かあったんですかぁ…?」

八幡「………今日は、何月何日だ?」

やよい「えと、6月の28日で土曜日ですー!」

やよいは賢いなぁ。

八幡「そう、28日だ」

小町「それがどうかしたのん?」

八幡「ゆきのん!ってなに言わせんだ」

小町「お兄ちゃんが勝手に言ったんでしょー」

それどころじゃ無いんだ我が妹よ。
今、[たぬき]もびっくりな現象が起こってるんだぜ妹よ。あぁ妹よ。

八幡「……そこのTVを見てみろ」


TV『本日6月27日金曜日、午後3時のニュースをお届けします』


みうらさん『あらー』

八幡「みうらさんの空間移動は時空軸を無視している事が判明」

「「「」」」

やよい「うっうー?」

やよ『うー?』

八幡「やよいは今日も可愛いなぁ」

やよい「ふぇっ⁉︎」

やよ『うー!』

八幡「にゃー!おっとなんでもない気にしないでくれ。つまり、俺達は今、昨日にいる事になる。信じられないし信じたくも無いがな」

小町「た、タイムスリップ…?!」

そゆことだ。

雪歩「ど、どどどうしましょう!比企谷さんどうしたらいいでしょうかぁ!」

八幡「帰って寝る」

小町「は…?」

おいおい何も驚くことはないだろう。
よく考えれば普通の事じゃないか?

八幡「またみうらさんに頼んで現在過去未来を運に任せて放浪するよりも、明日が来るのを待てばいいだけだろ?」

こんな時でも俺冷静。
お兄ちゃんは輝いてるぞ小町!

小町「それは違うよ!」

バキューン。

八幡「なん、だと…!説明しろ小町!」

小町「いやさ、もし今小町達がいるのが昨日だとするならさー。家帰ったらお父さん、お母さん。お兄ちゃんと小町も帰って来ちゃうよね?パニックにならない?」

八幡「」

ぐう正論すぎてぐうの音も出なかった。ぐぅ。

八幡「お、ぉぉ…」

雪歩「あぅあぅ…とりあえずお水のお代わり取って来ますぅ…」

八幡(…あの奉仕部(アホ)共にも見習って欲しいもんだ。雪歩はこんなにいい子なのにな…」

雪歩「!?」

八幡「やべぇちょっとラノベ主人公みたいな事になってる気がする。つ事でトイレ行ってくるわ」

これも時間跳躍()のせいだろうな。
そうだと信じたい。



八幡「まさか店の外に便所があるとはな…危うくちびるとこだったわクソが」

「あれ?ヒッキー?」

八幡「」

アホの子の声が聞こえたような気がする。
そんな馬鹿な。今日は学校で奉仕部の活動があるんだからな。俺はバックれたけど。

結衣「ヒッキー!無視しないで!」

八幡「……なんだよゆいゆい」

結衣「ゆ、ゆいゆい!?」

八幡「何でゆいゆいがここにいんだよ」

結衣「ゆいゆいとか呼ぶのやめろし!ヒッキーマジキモい!」

いつも通り。
どうやら別の世界に飛んだとかではないらしい。
そして俺はキモくない。

八幡「じゃあ結衣」

結衣「それなら、いい、かな?えへへ」

八幡「冗談に決まってんだろ、なんで由比ヶ浜がこんなとこにいるんだよ」

結衣「…今日は奉仕部休みだからゆきのんと買い物に来てるんだよ。ヒッキーのバカ」

八幡「へー雪ノ下とねぇ。……雪ノ下と?」


「私がどうかしたのかしら」


最悪のタイミングで悪魔が降臨した。

八幡「」

雪乃「ヒキコモリ君に名前を呼ばれた事がひどく不快だわ。セクハラよ」

相変わらずの辛辣な毒舌をいただきました。しかし八幡の心に0ダメージ!この程度で傷つく俺のハートじゃねぇ!

八幡「引きこもってねーよむしろ最近働き詰めだわ。そして俺の名前は比企谷だ」

雪乃「ごめんなさい、噛みまみた」

八幡「何も言わんぞ。それ以上はネタ的にアウトだからな」




結衣「ところでヒッキー。今、働き詰めーって言ったけど…奉仕部を休んで何してるの?」


八幡「…べ、別にぃ?」

そういえば奉仕部の連中には(面倒だから)話していなかったのだ。そしてまた面倒なタイミングで面倒な事を聞かれたんだが…どうやって誤魔化そうか。

ただの散歩って事でいいか。いいよな、こいつバカだし。

雪歩「ひ、比企谷さーん?何かあったんですかぁー…?」

ただの散歩…。

雪歩「比企谷さ…ひぅ」

結衣「……ヒッキー?誰?」

八幡「おい威嚇すんな。ウチの雪歩が怖がってるだろうが」

もっと丁寧に接しろ。泣きだしちまったらどう責任とってくれんだあぁん?

雪乃「言いたい事は沢山あるわね、あなたが何で似合わないスーツなんて着ているのか。でもとりあえず、その後ろに隠れてる子が誰なのかを聞いておきたいのだけれど」

はい無視無視。さっさとお会計してこの場を離れないとな。

八幡「雪歩、財布渡すからお会計し」

雪歩「やよいちゃんが『お腹減りましたー』って言うので様子を見に来たんですぅ…」

八幡「雪歩、お前何食べる?」

やよいが珍しく「お腹減りました」なんて言うんだ、食わせてやらない理由がない。そうだろ?

雪歩「え、えと…焼肉定食って…」


結衣「ヒッキー!!!!!」


雪歩「ひぅぅっ!」

八幡「おい、雪歩が怖がってんだろうが。大きな声を出すんじゃない」

俺の背中に隠れるように身を縮める雪歩の手が、俺の上着を掴む。
やめるんだ雪歩、俺勘違いしちゃうから。

結衣「だから、その子は、誰なの!」

八幡「何でもいいだろ別に。お前達に迷惑をかけてるわけでもあるまいに」

何でお前がそんなに熱くなるのか分からんのだが。

雪乃「奉仕部に来ないだけでも迷惑なのだけれど」

八幡「どの口が、んな事言いやがる。お前にとっては俺来ない方がいいじゃん、扉開けて俺が居ると『うっ』って顔するじゃん」

ていうか俺も行かない方が罵倒されずに済むからいいのだけれど。

雪乃「それは」

八幡「俺忙しいからまた学校でな。行くぞ雪歩」

雪歩「は、はい…」


雪乃「…」

結衣「…」




八幡「…」

結衣「ここのパフェ美味しいねゆきのん!」

雪乃「そうね、なかなか美味しいわ」

八幡「何で俺等と相席になってんのお前等。他行けよ席空いてんだろ」

案内したさっきのお姉さんめちゃくちゃ困ってただろ。どんだけ俺に恨みがあるんだよ。

小町「雪乃さんに結衣さん!やっはろー!です!」

結衣「やっはろー!」

雪乃「や、やっはろー…?」

八幡「店の中でバカな事やってんな。注目浴びたらヤバいんだから控えろ」

いつまでやっはろーとかやってるの?子供なの?八幡恥ずかしいよ?

やよい「うっうー?やっはろーって面白いですー!八幡さん、皆にも教えたいなーって」

八幡「そうだな、面白いから皆にも教えてやろうな」

やっはろー、なにそれいいじゃん流行らせようぜ。

やよ『うー!』

ゆきぽ『ぽー』

八幡「お前達も気に入ったか。よかったよかった」

雪乃「どうでもいいのだけれど、随分私達と扱いに差があると思うのは気のせいなのかしら」

八幡「ハハハ気のせいだろ、やよい?お代わり頼むか?」

やよい「はむっ、いいんですかー?」

八幡「おうよ、雪歩もたんと食べろよ」

雪歩「ありがとうございますぅ、あっお茶のお代わりとってきますね」


八幡「さて、1日暇になったしスケジュールの整理でもするか。お前達は食べてていいぞー」

パソコンのカメラでやよいと雪歩の食べる姿を撮影した上でな。もちろん隠しフォルダに永久保存だが。

八幡「トキラメキラリ~♪ぐっとギュッとー私は私が大好きー…っとぉ!あっぶねぇ…ここダブルブッキングしてんじゃねぇかあのアホP…」

結衣「ひ、ヒッキーが仕事してる…⁉︎」

雪乃「明日は槍でも降るのかしら…」

小町「ですよねー、小町も最初そう思ってましたー…」

うっせ、うっせーし。なんなんだし。あーしだってやる時はやる男だし。

八幡「あーマジ人生充実してるー」

小町(お兄ちゃんの目にハイライトが…!)

雪乃「…」

結衣「…あっ、あーーーっ!!やよいと雪歩って765プロぬぉ」

八幡「おいぃぃぃぃっ!そうそう765プロのな!テレビでよく見るけど可愛よな!!!マジ俺好みなんだよあはははーー!!!!!」

やよい「え」

雪歩「っ」

八幡「おい由比ヶ浜結衣…お前、脳みそ湧いてんのか…?こんなとこでそんな事言ったらスキャンダルどころじゃねぇだろうが…!」

俺がいるなら尚更だ。P候補生とはいえ、変装してるとはいえ男子高校生と一緒に飯食ってるとこ写真に撮られたりしたら即死。
こいつらの未来がお釈迦になる。

結衣「ごごめん、ごめんって、痛いよヒッキー…くふぃふぁいふぁい」

八幡「…すまん。だけど、分かってるよな?」

結衣「はい…」


雪乃「話の流れを察するに、その子達は本物のアイドルなのかしら」


八幡「……あえて言っておくけどこんな事になった経緯なんて話さねぇからな」

雪乃「……そう」

遅れてしもてすいません

八幡「じゃ、俺達帰るから」

一刻も早くこの場から離れなければならない。こいつらと居ると毎度毎度ロクなことがないからだ。

小町「えぇーっ!小町まだ手をつけてないのにーっ!!」

雪乃「待ちなさいゴミガヤ君」

八幡「とうとうゴミにまで成り下がっちまったか。残念だ」

雪乃「ごめんなさい、かみまみた」

八幡「突っ込まないつってんだろ。大御所のネタパクリは重罪だぞ…そもそもお前そんなキャラじゃねぇだろうが」

俺が言うのを危機もせずに雪ノ下は続ける。どうしてどいつもこいつも俺に風当たり強いんだよ……。気にしねぇけど。

やよい「ごちそうさまでしたーっ」

雪歩「ごちそうさまですぅ」

やよ『うー!』

ゆきぽ『ぽー』

みうらさん『あらー』

雪乃「…その、さっきからその小さな小動物達は何かしら…、?」

結衣「わっ!本当だー!可愛いーっっ!」

店の中で叫ぶなっつの。確かに可愛いのは認めるが、そんな急に抱き上げたりしたら…

やよ『びゃー!』

結衣「あわわわっ⁉︎」

八幡「……ったく…やよ、こっちおいで」

やよ『ッグ…ヒグッ…』

よーしよし、怖かったな。
うちの由比ヶ浜がアホの子でごめんなぁ。

結衣「あぁ~…ご、ごめんねぇ…」

八幡「犬とぷち達は次元が違うんだから気をつけろよまったく……」

雪乃「ぷち、というの?聞いたことが無い生き物ね」

八幡「それ以上は言うな。知らぬが仏、知ってキリストだ」

そこら辺の危険度はおそらくUMAレベルだ。俺達平凡な一般人が関わっていい問題では無いような気がする。

ゆきぽ『ぽー』

雪乃「…ごくっ」

八幡「ゆきぽ。危険な匂いがするからお前もこっちに来とけ」

ゆきぽ『ぷいー』

何故か俺のショルダーバックの中に体をすっぽり入れて、頭だけ出す形に落ち着いた。
そういえば貴音が「ゆきぽは寝相が悪い故、段ボールの中などでお昼寝をするのが好きなのですよ」とか言ってた気がする。

ゆきぽ『zzZ…』

八幡「寝ちまったか…」

結衣「目が、ヒッキーの目が!」

八幡「なんだようるせぇな。ゆきぽ寝てんだろ静かにしろよ」

小町「腐るか綺麗になるかどっちかにしてよお兄ちゃん!」

八幡「静かにし、ろ」

小町「あだっ⁉︎」

八幡必殺、愛のデコピンで小町を黙らせた後はひたすらゆきぽを撫でる。
そして反対側の手で膝の上のやよいも撫でる。

やよ『うー』

ゆきぽ『ぷぇ…ぇ…zzZ』

嗚呼、この上なく癒される。
今まで生きてきた中でこれ程までに癒される事があっただろうか。

……どうだろ。

煮詰まってきてるんです見逃してやってください

すいません

後ほど席につきますおやすみなさいませ

八幡「ウチの猫にもこんくらいの愛嬌がありゃいいんだけどな」

まぁ無理だろう。

やよい「八幡さん猫さん飼ってるんですかー?」

やよ『うー?』

八幡「あぁ、こんくらいのを一匹な」

やよい「ほわぁぁ、羨ましいですー」

八幡「やよいが望む可愛さなんて欠片も無いぞ。ふてぶてしいし、名前呼ぶと尻尾で床ダンゥって叩くし。夜中に水飲んでる姿なんてマジで妖怪っぽい。あと、帰って来たら足の匂いクンカクンカスーハースーハーするし」

やよい「でも猫さんは可愛いですよー!今度見に行ってみたいなーって!」

八幡「っお、おぅ。そのうち両親がいない時にな」

ちゃんとそれなりに準備をしておかないとな。ご両親への挨拶とかはその後でも…

結衣「何でそこに限定したし…」



雪乃「あの、比企谷くん?その…私も…」

八幡「」

雪乃「その露骨に引いている顔はなにかしら」

八幡「いや…お前が俺の名前をちゃんと呼ぶ時に限ってろくなことが無いからな。警戒した」

雪乃「……なんでもないわ。……はぁ、猫」

「あれっ?八幡?」

八幡「こっ、この声は…!」

席を立って後ろを振り返る俺を迎えたのは、やよい達と同じくこの荒んだ世界に舞い降りた天使の1柱だった。

彩加「やっぱり八幡だ!由比ヶ浜さん達も一緒なんだねっ」

結衣「やっはろー」

八幡「とととっ、戸塚!!なんだ、どうした、部活帰りか?水でも飲めホラ!」

飯でも食え!食っていいぞ戸塚!
すいませんお姉さん!ドリンクバー追加で!!

彩加「ありがと、八幡。じゃあ…少しだけ相席させてね?」

雪乃「どうでもいいのだけど。私達とは随分扱いに差があるような気がするのだけれど」





やよい「わーっ、綺麗なお姉さんですねー、八幡さんの知り合いですかー?」

雪歩「はふぅ…私なんかじゃ足元にも及ばないくらい綺麗ですぅ…」

八幡「そんな事は無い。俺の世界じゃ戸塚含めてお前達こそナンバーワンだ、そもそも1番上なもの同士を比べようが無い。異論は認めない」

戸塚もアイドルデビューさせて新たにユニット作りたい。早速社長にメールを送信しそうな勢いだ。

雪歩「ぁう、あ、ありがとうございますぅっ」

やよい「えへへ、て、照れちゃいますよー」

八幡「あ、すスマン。なんか、スマン」

一気に息苦しい雰囲気になってしまった。
最近やらかす率高い。働き始めてからかなぁ…ってわけでもないな。

彩加「えっと…その、僕男の子なんだけどなぁ…」

八幡「ハッ、そうだった…クソッ!神は死んだかッッッ!!」

やよい「えーっ!男の子なんですかーっ!!?」

雪歩「驚きですぅ…」

涼「むっ、どこからか僕と同じような匂いが…」

彩加「八幡のクラスメートで、友達の戸塚彩加です。よろしくお願いします」

うむ、礼儀正しい。100点満点だぞ戸塚。
……戸塚と友達だってさ!やっほぅ!

やよい「うっうー!765プロ所属の高槻やよいですー!」

八幡「やよい、声抑えて」

雪歩「同じく萩原雪歩ですぅ」

彩加「わぁっ本当だ!本物のアイドルだよ八幡!あの、765プロのファンです!ここにサインお願いできませんか?」

やよい「はーいっ」

雪歩「うう上手くかけるか不安ですぅ」

戸塚の差し出す手帳にスラスラとサインを書いていくやよいと雪歩がペンを離したタイミングに合わせて、俺はキメ顔で告げる。

八幡「おう、ウチの天使達だ。これからもよろしくな」

彩加「どういうことなの八幡?」

八幡「ちょっとプロデューサー候補生やっててな。今日は営業に来たつもりだった」

うわ俺今なんかカッコ良くね?

小町「小町もアイドルになったんですよーえっへん!」

結衣「!?」

雪乃「」

彩加「小町ちゃんまでアイドルになるの!?」

ここまで来たら小町、雪歩にやよい、その他諸々をトップアイドルにするまで専業主夫の夢はお預けだ。

八幡「まだまだ誰も知らない無名の新人だけどな」

まぁ小町のスペックなら大丈夫だ。
先は長いけど、もっともっと高い場所に行ける筈だからな。俺が保証する。

結衣「ひ、ヒッキー兄妹が遠い所に行きそうだなぁ…」

八幡「サインとか貰うんなら今のうちだぞ~」

結衣「そうだよね!小町ちゃん、サイン頂戴!!」

小町「や、やめてください、恥ずかしいですよ~」

雪歩「小町ちゃんならすぐにトップアイドルになれるよ、絶対!」

やよい「私達も負けないですーっ」

小町「おぉぉ~っ、な、なぬなんか気合入って来たよお兄ちゃん!小町頑張るよ!」

八幡「おう!頑張ってくれよな」


雪乃「ここコネ入れなんて最低の行為ね、ひ比企谷くん。人の風上にもおけないわ」

八幡「………あ?」

結衣「ゆ、ゆきのん!小町ちゃんはそんなんじゃ」

雪乃「あら、由比ヶ浜さんは事情を知っているのかしら」

結衣「そんなんじゃないけど…」

やよい「…765プロはそんなのある筈がないですー。小町さんの中の光るものを偶然、社長が見つけてスカウトしただけですー!」

雪乃「本当にそうなのかしら。765プロダクションには水瀬財閥のご令嬢もいるんでしょう?お父様が765プロダクションの社長とお友達…なんて事も」

雪歩「伊織ちゃんをそんな風に言わないでください!そんなの偶然ですぅ!!」

雪乃「比企谷くんの勤めて…こき使われているプロダクションに、”偶然に”小町さんが入るのは聊か都合が良過ぎない。と、私はそう考えるのだけれど」


小町「………あ、あはは、確かにそうですね」

八幡「…」

こいつは本当に全部を見透かした様な目でいつも俺を見てきやがるよな。
ユキペディアさんの名は伊達じゃねぇよ。

小町「お兄ちゃん、もしかして、本当にっ推してくれた…?」

そんな目を持ってんなら大抵の人間の底や言葉の裏が見えるんだろうな。葉山とかマジでそれ。

小町「小町って、それで舞い上がってたりとかしちゃ、った?」

素直に感服するよ。俺なんか目が腐ってるらしいからな。

小町「あはははー…なぁんだ、も~。先に、言ってよお兄ちゃ」

だけどな。

八幡「手が」

そんなお前の勘違いで、そんな目で小町を見て、なおかつ小町が傷付いて。
そんで俺の妹の小町が涙を流すのは。

八幡「滑った」




雪乃「……何のつもりかしら。飲食店の飲み物は他人の顔にかけるものではないのだけれど」


八幡「…………気にいらねぇんだよ」

結衣「ひ、ヒッキー…」

小町「お兄ちゃんやめて。周りのお客さんこっち見てるよ」

八幡「…」

雪歩「やよいちゃん顔隠してっ」

やよい「わわっ」


八幡「お前今、小町だけじゃなくて伊織の事も言ってくれたな」

雪乃「あら下の名前呼びなのね、親しくして貰ってるのかしら」

八幡「……あいつはあいつなりに頑張ってる。家の事が嫌だからって1人で頑張って今までやってきてんだよ」

そう。あいつは親から何もかも与えられる境遇に、兄妹や親からのプレッシャーに真っ向から立ち向かって『アイドル』という博打みたいな道に身を投じたんだ。

八幡「性格悪くて意地っ張りでぶっちゃけ人使い荒過ぎ…それでもな、そんなでも一生懸命なんだよ。人に甘えるって事が苦手なだけだ」

雪乃「…」

八幡「だから俺は、そんなあいつが嫌いじゃない」

雪歩「八幡さん…」

八幡「小町の事を”コネ入れ”とか言いやがったな。小町を良く見ろ!この顔、この性格、この声!どれをとっても一級品だろうが!!俺の妹とは思えない程だ!!!」

小町「本当に待ってお兄ちゃん、嬉しいけど大声はやめて本当に。周りのお客さん皆こっち見てるから」

八幡「むしろ今までスカウトされなかった事が不思議なくらいにな!」

小町「うぅ…恥ずかしいってば…」

八幡「もちろんお前らもスペックは相当なモンだ。アイドルになりゃバカ可愛いキャラと清楚キャラで売れるかもしれん」

雪乃「…」

結衣「可愛いって今…ってバカって言った…⁉︎」

八幡「でもお前はどう足掻いても小町の足下にも及ばない。3週間しか見てない俺でも分かる。コネなんかじゃやってけない、アイドルの世界の過酷さを舐めてやがる今のままじゃ絶対に無理だ」

雪乃「……」

八幡「そして何より、兄として妹を泣かせる輩は何がなんでも許しちゃおけない」








結衣「…ゆきのん、ヒッキー達帰っちゃったよ」

雪乃「………つい、カッとなってしまったのよ。小町さんをあんな風に言うつもりなんて本当は無かったのに」

彩加「……そっか」

雪乃「…奉仕部には、その3週間ずっと、顔を出さなかったくせに……、何故か、悔じがっだの…っ」

結衣「ゆきのん……、うん。悔しいね、私も悔しいかも」

鶏忘れスマソ

ゆきのん達が悠然とアイドルデヴューして目の前に現れる書き為の寿命が吹き飛んだ

八幡「…」

小町「お兄ちゃ…」

八幡「心配しなくてもお前の魅力は俺が1番良く知ってる。そこに惹かれたから社長はスカウトした、そんだけの話だ」

小町「……うんっ!」

やよい「八幡さん」

八幡「ん?」

やよい「八幡さん、さっき素敵だったですー!ドラマみたいでだったなーって!」

八幡「そ、そうか?そうか?」

これは、高感度UPがktkr展開か!?

雪歩「でも女の子にドリンクをかけるのはやり過ぎかも…って思いましたぁ」

ですよねー。

八幡「やっぱりそう思う、よな。……本心じゃ無い台詞とはいえなんか努力してるお前等の事をバカにされてるみたいでムカッ腹が立ってな」

小町「本心じゃ無い?」

八幡「どう見たってムキになってただけだろアレ。初っ端同様して『ひ比企谷くん』とか言うしグラスがカタカタ震えてたし。そんなに奉仕部で俺を罵りたかったのかと思うと怖くて仕方ない」

これはもう辞めてしまってもいいのでは無かろうか。平塚先生に土下座する練習とブン殴られても耐えられる位の腹筋をつけてからが大前提。

小町(お兄ちゃんの方が人の心を見透かしてる様な気がするなぁ…)

八幡「なんか言ったか?」

小町「え?うーんと、なんでも無いでおじゃるよー!」

八幡「さいですか」

さようでございますか妹様。

小町「あ、でもね?」

八幡「はいはい」

小町「さっき怒ってくれたのは~…小町的にものすっごくポイント高かったよっ」

不意に頬に柔らかな感触。

八幡「はいはい。ん………ん?」

やよい「き、兄妹でもそれはダメかなーって!」

雪歩「あわわわわ妹って、妹ってぇぇ」

小町「えっへっへ、ファースト頬キスはお兄ちゃんだからね~。責任とってね~。からの逃走!!」

八幡「」

やよい「うっうー!止まらないと撃つですー!!」

雪歩「待ちなさいですぅ!」

小町「ふぉっふぉっふぉっ、小町は簡単には捕まりませんよ~」

人差し指を立てて両手を銃にみたてるやよいとスコップを双剣風に持って走る雪歩の後ろ姿を、呆然と見送る俺は、多分こう呟いたんだと思う。

八幡「………俺の妹がこんなに可愛い筈が……ある」


「そこにいるのは八幡ではないかッ!」

八幡「空気を読めこのゴミカスラノベ作家が」

俺の青春ラブコメの幕開けを台無しにしやがっ……妹って、ラブコメ対象にしていいんですかね総理大臣さん。

義輝「ぅぐはぁぬっ!……ふ、ふふふ八幡ッ!この新作設定原稿を読めば今の我の代名詞の中のその余計な言葉は取れるであろう!!」

八幡「成る程、ゴミカスになるのか」

義輝「ぅぐはぁぬっ!!そっちで無いのだが…ッ」

八幡「じゃ、俺これから予定あるから。次からは完成原稿持って来いな…なぁに、所詮ラノベなんて内容よりは絵だ。設定痛いとかぶっちゃけゴミとか言いたいわけじゃないから」

義輝「八幡!八幡!?」


やよい「八幡刑事!はんにんを捕まえて来ましたーっ!」

雪歩「あはは…」

小町「捕まっちゃいましたー」

今日はなんてツいて無いんだろうな。
昨日の俺は放課後何やってたんだよ!!雪ノ下とか材木座とかの面倒みとけよ!!!

…仕事してたな。

材木座「は、八幡?そこな美しいおなご達は誰なのかね?我に紹介してくれてもよかろう」

八幡「話しかけるな触るな見るな。俺の天使達には指一本触れさせない」

それ以上手をワキワキさせて近づこうものなら、身体で憶えた撃墜のセカンドブリットで迎撃するぞ?あぁん?

材木座「むぅ……むぅぅぅっ!?八幡の妹君と…765プロの高槻やよいたんと萩原雪歩たんではないかッ!!!何故こんな所で八幡と一緒におるのだッッッ!!!」

チッ、気づきやがったか。
言っちゃアレだがやよいも雪歩もまだまだそれ程有名じゃないはずなんだが…この前某番組にも出てたしさすがに分かるか。

雪歩「ふぇぅ!?」

やよい「うー?」

八幡「お前等、先に逃げろこいつは変質者だ。俺が抑えて置くからこの先の公園で合流するぞ」

雪歩「は、はいですぅ!」

やよい「小町ちゃん早く逃げなきゃー!」

小町「えぇー……あー、うん。面倒だし先に行くよお兄ちゃーん」

八幡「おう」



義輝「何故…何故だ八幡…我が765ファンと言うことは知っているであろう…」

八幡「お前の目が危なかったのと面倒臭かったからだ。それ以外に理由は無い」

義輝「ぬ、ぐ……そもそもなにゆえ貴様と行動しているのだ!プロデューサーでもあるまい!!」

八幡「いや俺プロデューサーだし。見習いだけど」

義輝「なん、だと…」

アッサリと斬り捨ててやった。



やよい「うっうー!八幡さん来ましたー!」

雪歩「おかえりなさ…変質者さんも一緒ですぅ!?」

八幡「いやースマンスマン、こいつお前達のファンらしくてな。普通はプライベートだから御法度なんだが…口封じとNoタッチを条件にサインだけしてやってくれねーか」

本当はその他にも条件は付けたんだがここでは言うまい。

雪歩「そういうことでしたら…」

やよい「今度こそ上手に書きますーっ!」

義輝「か、家宝にしますっありっありがとうございます!」

八幡「おい素が出てるぞ材木座」

やよい「内緒ですよー?約束ですーっ」

義輝「はいぃ!」



八幡「さてもう夕方な訳だがこれからどうするよ。家には確実に俺達が居るよな」

会っちまったらどうなるか分からん。
特にもう1人の俺自身と会ったりしたら尚更厄介だ。

雪歩「丁度この近くに私達アイドルや芸能人が御用達のホテルがありますぅ」

小町「おぉー!ついに小町も本格的にアイドルっぽくなって来たーっ!!」

八幡「じゃあそこにしとくか。パパラッチとか居たらマズイからお前達が入って10分位したら俺も入るようにする。ロビーで待っててくれ」

やよい「こっちですよーっ」

──────────
───────

八幡「そろそろ10分か」



小町「お兄ちゃんこっちー」

八幡「おう、チェックインしてくるから待っとけな」

小町「はーい」



八幡「すいません、部屋をお願いしたいのですが」

「失礼ですが名刺等お持ちでしょうか。当ホテルでは芸能人や著名人御用達となっておりまして、登録の無い方に身分証明となるものをご提示頂いております」

おっと俺が一見さんだと思って怪しんでるな受付のお姉さん。
持っているんだなこれが。コレがッ俺のッ身分証明だッッッ!!!

八幡「こういう者です」

「765プロダクション所属プロデューサー 比企谷八幡様…ですね、問い合わせ致しますが大丈夫でしょうか」

八幡(大丈夫か?…いや、小鳥さんが出れば大丈夫じゃね?あの人そこんとこ抜けてるし……)

八幡「はい、大丈夫です」

「暫くそちらのソファでお待ちください」

ここからは賭けだ。

A「おー?やよいちゃんに雪歩ちゃんじゃない?久しぶりじゃーん」

B「何、今日泊まり?」

やよい「お、お久しぶりですー…」

雪歩「こ、こんばんわですぅ…」

八幡「…」

やよい達の目の前に現れたおちゃらけた2人の男。何処かで見たような見なかったような…。
そういえば今のブレイク芸人だったような気がする。トリオだったんじゃなかったか?

それにしては2人の様子がおかしい。

小町「わーわーお兄ちゃん!この人達知ってるよー!(小声」

八幡「ちょっと様子がおかしい。お前はトイレにでも行ってろ、終わったら電話するから(小声」

小町「えー…わかった…」


A「この前の番組楽しかったねーまた共演しようねーよしよし」

やよい「あはは…よろしくお願いしますー」

B「よっこらしょっと、隣失礼するねー?」

雪歩「ふぁ、はぃぃ」

B「緊張しちゃってかーわいい。ほれほれー頬っぺた柔らかいね」

雪歩「やややめてくださいぃぃ」

A「それよりどうよ?これから俺達と飯でも」

やよい「えっと…あはははー」

雪歩「よ、予約してあるんですぅ…ひゃぁっ⁉︎」

B「つれないなぁ雪歩ちゃーん、予約なんていいじゃん俺達と行」


八幡「オイ、そこで何やってる」


B「あ?何だお前」

雪歩「ひき、比企谷さぁん…」

A「なんだよオトコ連れか?ガキの分際でアイドル2人も連れ込んで良いご身分ですねぇ」

八幡「馬鹿じゃねぇの?プロデューサーだプロデューサー(見習いだけど)」

っていうか素顔の芸人ってこんなもんなのかよ。知りたくもなかったし軽く引くぞ。

B「んだよプロデューサーごときが芸能人の事に口出してんじゃねー」

A「つーか歳上には敬語使えよ。分かったらさっさとどっか行けや」

八幡「……そうはいきやがらないんですよねコレが。ウチの2人共嫌がってんでしょうが。……しかもそこの細いの、お前さっき雪歩の尻触りやがりましたよな。セクハラで訴えんぞ糞が」

A「……どっちが立場が上か分かってねぇみたいだな。えぇオイ!」

やよい「八幡さん!?」

天使のキッスを食らった反対側の頬を衝撃が撃ち抜いた。多分殴られたんだろう。

八幡「…ぃってぇ……」

そして過程がどうであれこの問題、俺の勝ちに決まりだ。
後は程々に殴られたら気絶するか…。

B「おっとお前が手を出したら問題だぜ?どこぞのプロダクションのプロデューサーが芸能人に手を挙げたって明日の朝刊にドーンだ」

雪歩「酷いですぅ!こんな、こんなの!」

やよい「やめてくださいー!」

ゆきぽ『ぽー!!』

やよ『うー!!』

B「はいはい可愛いお人形と雪歩ちゃん達はこっちで座ってようねー」

オイそれ以上はマジで触んな…ってかホテルマンとか居ないわけ?こいつ等止めろよ…。

A「俺学生時代ボクシングやっててよ、プロ目指そうと思ったくらいなんだよ…なっ!」

八幡「ふっぐ……、なんだよ落ちこぼれたのかよ。そのエピTVで言えば売れるんじゃねーの?(笑)」

A「[ピーーー]!」

あ、あー無理無理。次は無理だわ。
多分次で意識ぶっ飛ぶ。
マジで今日はついてねーな本当。


「そこまでよ」

八幡「…?」

扉を開けて入って来たのはでこっぱち。
あのでこっぱちが何でこんなとこにいるわけよ?

伊織「やるじゃないの、見直したわよ」

八幡「そりゃどーも……あと頼むわ」

これでなんとかなんだろ、とか言った直後辺りで俺は意識を手放した。





むしゃくしゃしてやった。
後悔はしていない。

それではまた夜にでも。

八幡「おかしい」

目が覚めて第一声がそれだったようだ。

小町「あ、目が覚めた。何が?」

八幡「俺の人生はこんなドラマ主人公チックじゃない。町人Cくらいがちょうどいいんだよ俺としては。そしたらこんな痛い思いをしなくてもいいのに…」

バイオレンスでドラマティックな日常よりも程よくナチュラルな日常を送りたいのが心情。
顔も身体もどこもかしこも痛みを伴う日常なんてアニメ主人公に任せとけばいいんだよ。

小町「また変な感性を…確かに2時間前のアレはちょっとアレだったね」

八幡「2時間も寝てたのか……アレだろ?」

小町「うん、アレだね」

アレだ。

八幡「ところであの腐れ芸人共はどうなった?後、フロントのお姉さんに持って貰ってた俺のスマホは?」

小町「あの人達は警備員さんに摘み出された後に真っ黒な車に連れて行かれたよ。ケータイは……はいどうぞ」

八幡「真っ黒な車…?まぁいいや、どうせ俺の勝ちだ」

小町「?」

ペンは剣より強し曰く、スマホは拳より強し。俺が再生をタップすると俺がひたすらボコボコにされている映像が流れた。

小町「撮ってもらってたの…?」

八幡「おうよ、これが俺の戦い方だ。汚かろうがなんだろうが勝てばいい。ハナから真っ向勝負なんてしない。そんな力も無いしな」

これぞ智将・比企谷八幡の策。
策士は策を泳いでこそ輝く。溺れちまったら何の意味もないからな。

小町「………お兄ちゃんってバカだよね?負けたのはお兄ちゃんだよ?」

八幡「え」

小町「ヒント、理由が知りたければ隣のベットを良く見てください」

八幡「?…やよいと雪歩が仲良く寝てんな。ちょっとカメラ取って、寝顔天使……」

ソレは確かに俺の敗北を示すものだった。
俺は負けたのか。
そんな馬鹿な。

八幡「まさかあいつらが乱暴したんじゃ…!」

小町「こンの……バカ!!」

八幡「ぶべらッ!?」

なんで俺はビンタされたんですか。俺頑張ったよ?柄にもなく、膝ガクガクするのを抑えてお前達守ろうとしたんだぜ?

小町「気づけよ鈍感!」

八幡「どぅふッ!?ちょ手加減し」

小町「小町達がお兄ちゃんをボコボコにされてて心配しない訳ないじゃんか!じゃないと泣かないよ!!」

八幡「……ごめん」

小町「ふえぇぇぇぇぇぇぇん」



伊織「あーあ、また泣かせたわね」

八幡「伊織か」

泣き疲れて寝息を立て始めた小町に毛布をかけていると、両手一杯にジュースを持った伊織が部屋に入って来た。

伊織「にひひっ、伊織ちゃんの奢りよ。感謝しなさい」

八幡「お、サンキュ…わたたっ」

伊織「それくらい簡単にキャッチしなさいよね……」

八幡「ところでどうして伊織がこんなとこに居るんだ?」

伊織「私、アンタ達と同じファミレスでしかも食事してたのよ」

八幡「それで?」

伊織「それでって……アンタ達がお店の中で騒ぐわ走り回るわ挙句の果てにアイドル3人とアンタがホテルに入るわで心配になったのよ。それで外から様子を伺ってたら殴り合いを始めるわ………なんなのかしら」

伊織(お店で大声であんな事言うなんて信じられないわ!この変態!!…って罵ってやろうかと思ったけど今は無理ね)

八幡「……とりあえずやよいと雪歩が目を覚ましたら土下座して飯買ってくるわ。それまでゆきぽとやよと遊ん」

ゆきぽ『ぷぅいぃぃぃぃ!』

やよ『う゛っうー!』

八幡「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!?待ってくれ!違うんだ、悪気は…」

ゆきぽ『ぷえー!!』

やよ『うー!!』

八幡「ふぇぇ…」

伊織「……2人共出て行っちゃったわよ」

八幡「超絶怒られた…ゆきぽとやよ、めちゃくちゃ怖いんだけど本当に…」

ちょくちょくIdが変わるおかしい

伊織「あんな無茶するから、自業自得よ」

八幡「だって普通の殴り合いじゃ立場的にも物理的にも勝てないもーん」

伊織「最高にカッコ悪いわね…」

八幡「うっせ。勝てばいいんだよ勝てば……」

まぁ負けましたけど。

伊織「…ところで」

八幡「あん?」

伊織「その、ファミレスで……私の事言ってたじゃ…ない?」

八幡「あー?」

『────だから俺は、そんなあいつが嫌いじゃない』

八幡「あーーいやそのア、アレだからな?さ俺は仮にもプロデューサーとしてだな」

何で思い出したんだよ俺!そういうのはラノベ主人公の役目だっつってんだろ!!

伊織「そ、そそうよね!あは。あはははは!」

八幡「あはははは!」


「……」

「……」

真横から2人分の視線を感じた。
押し殺してしまいそうな重さの視線ではあるものの、何を言いたいのかは分からないこともなかった。

だけどハズレてたら俺はまたただの勘違い野郎の烙印を押されることになるので。

八幡「お、おぉ。おはよう」

あえて触れないことにした。
流石は俺。マジKY(空気読める)系男子。

雪歩「…」

やよい「…」

おや?

八幡「……お、おはようございます…?」

雪歩「…やよいちゃん、お腹減らない?」

やよい「…そういえばこのホテルのレストランのハンバーグは美味しかったなーって」

八幡「えっ、あ、あれ?」

雪歩「じゃあ食べに行こっか」

やよい「楽しみですー」

やよいと雪歩はおて手を繋ぎ、2人仲良くそのまま出て行ってしまった。

八幡「なん、だと…」

俺の声は届いていなかったのか無視されてしまったのか。信じたくはないが恐らく後者だったのだろう。死にたくなってきた。

伊織「あちゃー。相当怒ってるわ」

八幡「困った奴等だなぁまったく」

もう俺にできることなんて一つしかないじゃないか。ははは。

伊織「……なによそれ」

八幡「え?……縄?」

伊織「……なにしてるの?」

八幡「ちょっと首を吊りたい気分になってな」

伊織「バカじゃないの!やめなさい!!」

八幡「うおぉぉおぉ離せぇぇえぇぇ!!俺はもうだめだ、いつまでもお前達を見守ってるから離してくれぇぇぇぇ!!!!」

願わくば俺の墓にお前達のCDを備えてくれ!!

伊織「この……、ッうさちゃんパンチ!!」

八幡「このまま頬ずりしたくなるくらい、驚きの、柔らかさ…!だがそんな癒し程度じゃ俺は止められ」

カチリ、と。
何かのスイッチのような機械音が、最後に聞こえた気がした。

八幡「なあばばbbbbbbbbbb‼︎⁉︎」

伊織「……スタンガン内蔵型よ。もちろん自衛の為のね」

八幡「そ…んな、バカな……」

伊織「……やっと気絶したわね」

伊織(このまま2人で居るのもいいけどやよいと雪歩のことも気になるし…)

伊織「2人で居るのがいいわけないでしょうがこの変態!!」

八幡「」

伊織「つ、ついつい蹴っちゃったわ……はしたない。とりあえず2人を探しに…だから2人とか言わない!!!」

八幡「」

伊織「やよいと雪歩と…ぷちを探してくるわ。気絶してるのに何度も蹴ってしまってごめんあそばせ、にひひっ」



八幡「」



八幡「」






やよい「うー……」

雪歩「……はぁ」

やよ『うー』

ゆきぽ『ぽえー』

雪歩「……やよいちゃん、ハンバーグ来てるよ」

やよい「いただきますー…」

やよ『うー?』

ゆきぽ『ぷいー…』



伊織「……」

雪歩「い、伊織ちゃん!いつからそこに座ってたの⁉︎」

伊織「……さっきから居たわよ。少なくともハンバーグが届くよりも前からね」

やよい「お、おかしいなー…全然気づかなかったよ!」

伊織「そんなに落ち込むくらいなら最初からあんな態度を取らなければいいじゃない」

雪歩「だって…心配したんだもん」

伊織「あんた達の為に身体張っただけでしょ。今更言うのもなんだけど、少しくらいは優しくしてあげなさいな」

やよい「そ、それは分かってるよ……」

伊織「……はぁ、言いたかったのはそれだけ。私はあいつのところに戻るわ」

伊織(錯乱したとはいえ蹴っちゃったし…あぁぁぁなんであんな事したのよ私のバカ!)

雪歩「!」

やよい「!」

「「伊織ちゃん!」」

伊織「……なに?」

雪歩「私、負けないから」

やよい「私も負けないもん!」

伊織「…にひひっ、上等よ」



伊織(とは言ったものの…床に放置して来たんだったわ……風邪なんて引いてないでしょうね)

雪歩「伊織ちゃん?入らないの?」

伊織「え?あ、あぁ開けるわよ」

やよい「な、なんでか緊張するなーって」

伊織「今更緊張……するわね。………えぇいもう開けるわよ!」


小町「お兄ちゃん…あんな事言ってごめんね…でも本当は大好きだか」

伊織「…」

小町「あっ」

伊織「……」


雪歩「伊織ちゃん?どうして閉めたの?」

伊織「…私疲れてるのかしら。気絶してる兄に妹が口づけしようとしてる甘美で危険な香りのする光景を目の当たりにした気がするのよ」

やよい「?」

雪歩「?」

伊織「……なんでもないわ。多分ちゃんと開ければ元の世界に繋がる筈よね、よいしょっと」


八幡「」

小町「ぐ、zzZ」

伊織「……うん。こっちが本当の世界ね」

雪歩「比企谷さん、まだ寝てるんですかぁ?」

やよい「そうみたいですー」

伊織「仕方ないわね。ほら、起きなさい」

八幡「あbbbbbbbbb!?」

雪歩「!?」

やよい「ビリビリですー!」



八幡「……ハッ!ここは一体…?」

雪歩「い、伊織ちゃん、流石にそれは…」

伊織「いいのよ。これは標準装備だから」

八幡「標準でビリビリさせんじゃねぇよ。死んじゃったらどうすんだよ」

死因が年下女子中学生のスタンガンによる感電死とか嫌だっつーの。
小町に看取られて死んでみせる。

伊織「やっと目を覚ましたわね」

八幡「それもお前がビリビリさせて気絶したんだろうが」

伊織「首吊ろうとしてたじゃない」

やよい「首を!?…八幡さん、死んじゃうんですかー…?」

雪歩「ふぇ…私のせいですぅ…ふぇぇ」

やよ『びゃー!』

ゆきぽ『ぷえー!』

八幡「お、お前達のせいじゃないさー!HAHAHaジョークだよジョーク!メキシカンジョーク!」

小町「あーあ。また泣かせたー」

八幡「起きてたんならこの状況をどうにかしてくれ!」

この際お前に頼る他無い!期待してるぞマイスイートシスター!!

小町「うーん…小町、遊園地行きたいんだけど」

八幡「えぇ…だるっ…まぁいいや。それでいこうか」

商談成立。

小町「はいはーい!女子諸君は廊下に集合ですよ~!」

八幡「えっ、俺は?」

小町「お兄ちゃんはちょっとそこに座ってなさい。反論は無し」

八幡「あ、はい」

威圧する勢いで俺を指指した後、小町はその場全員(俺除く)を廊下に連れ出した。井戸端会議でも始めるのだろうか。
…ていうかハブられた。実の妹に。

八幡「縄…」


小町「ただいまー」

八幡「戦線はどんな感じだ」

小町「皆許してくれるそーです大佐!」

雪歩「仕方ないですねぇ」

やよい「えっへん!許してあげますー!」

やよ『うっうー!』

ゆきぽ『ぽえー!』

八幡「さすがは俺の妹だわ。最高」

だけどなんで皆こっちを”草食動物を見るライオンみたいな目”で見てんの?

…八幡怖いよ?

小町「そうと決まればお兄ちゃん!」

八幡「は、はい!」

小町「5500円×の5人はおいくら!」

突然どうしたんだ妹よ。俺は文系だぞ?
…だがしかし、ここ3週間で身についた経理能力を舐めるなよッッ!!

八幡「27500円だな」

小町「お兄ちゃんのお財布の中身は!」

八幡「……5千円?」

小町「ATMの中には!」

八幡「社長にせしめた迷惑料契約金諸々で200万。お年玉とか小遣いが残り2万?」

小町「よ、予想以上に貰ってる……」

八幡「社長泣いてた」

小町「ん~まぁ結果オーライ!明日は遊ぶよっ!」

雪歩「楽しみですぅ」

やよい「今度は長介達も連れて行きたいですー!」

ゆきぽ『ぽえー!』

やよ『うっうー!』


八幡「………ん?お前等どっか行くの?」

小町「どっかって…ディズ●ーランドに決まってるじゃん。お兄ちゃんの奢りで」

八幡「へー」

あーあのディズニーラン●ねー。そいつは楽しそうだ。しかも奢ってくれるんだろ?お兄ちゃんが。

…俺が?

八幡「……はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

小町「お兄ちゃん、うるさい。もう夜中だよ」

伊織「明日の朝8時から入園できるみたいだから7時30分には入り口前に居ないといけないわね」

八幡「えっ待って、この人数分の入園料だの遊ぶ金だのを俺が持つの小町?」

小町「お兄ちゃんが皆に許してもらう一つ目の条件がそれだったんだもん」

八幡「一つ目…だと…⁉︎」

小町「後は追い追い説明するから今日はもう寝ようよ。もう9時だよ」

八幡「なんて理不尽な……」

ちょっとまてよ小町。
今、「寝ようよ」って言ったのか…?
まさかアイドル達と同じ部屋で寝るフラグをサラッと立ててくれたのかマイシスターGJ部!!

雪歩「隣に部屋をもうひとつ借りましたのでお先に失礼しますぅ」

やよい「おやすみなさいですー」

ですよねー。
やるじゃん、ラブコメの神様。

小町「みんなおやすみなさーい、また明日~」

伊織「小町?」

小町「いや~、お隣は3人部屋みたいだし私はこっちでお兄ちゃんと寝ることにしとこうかなーって」

やよい「!」

雪歩「!」

八幡「ここって2人部屋なんだな」

まぁ兄妹だし間違いはなかろう。妥当な判断だな。

伊織「……小町?ちょっと部屋の外に来なさい?」

小町「?」





小町「…ただいま……」

八幡「どうした小町。お前に似合わず絶望しきった顔なんてしやがって」

まるで俺みたいだぞ?

小町「お、おに、お兄ちゃん?私隣の部屋でやよいちゃん達とゆきほさんと寝るよー……あはは」

八幡「ふーん。でもベット足りないんじゃね?」

伊織「そこは大丈夫よ。私がこっちで寝るから」

八幡「」

雪歩「伊織ちゃん!?」

やよい「うー!どういうことかなーって!!」

伊織「そういうことよ。ねぇ、小町?」

小町「ふぇぇぇ」

八幡「あの、だな。それはどうかと八幡は思います」

伊織「Hum?」

八幡(怖っ)

八幡「いや…流石に何か間違いとかあったらアレだろアイドル的に」

伊織「……何かするつもりでもあるの?ロリコンは病気よ」

八幡「絶対しねぇわ」

年頃の女の子ならむしろ気にして欲しかったんですが!ロリコンじゃないんですが!!

本当に可愛げのねぇやつ。

──────────

────

八幡「……」

伊織「こんな夜遅くにどこにいくのよ」

八幡「うひゃおっ!?お、起きてたのかよ…ちょっと自販機だっつの」

年下の女子中学生と同じ部屋で寝るとか無理。SAN値ピンチ。

伊織「オレ」

八幡「はいはいオレンジジュース果汁100%ね、わかってるわかってますよ」

伊織「…ふーん、アンタ変わったわね」

八幡「どこら辺が変わったか30文字以内で説明してみ」

伊織「目は腐ってるし性根も同様に腐ってるし性癖もド変態で変態高校生だしシスコンでロリコンで頭が悪い」

八幡「それ以上現実を直視させられると孤独死したくなるからやめてくんない」

俺って周囲からはそんな目で見られてるのかよ。あ、てことは中学の時に告った中村さんにもそんな風に……助けて戸塚エモン!死にそう!

伊織「でもまぁ……イイやつ、かな」

八幡「へっ…?そ、それはどういう意」

伊織「深い意味は無いわよ!このロリコン!変態!ド変態!der変態!!!」

べっ、べべべ別に期待とかしてねぇし。は?ナニイッテンノ俺。そんな事考えてねーしマジで。やっはろー!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月08日 (木) 16:27:44   ID: 9IOW_8PT

期待

2 :  SS好きの774さん   2014年05月21日 (水) 02:29:55   ID: nBQShQog

面白い、続き期待

3 :  SS好きの774さん   2014年05月29日 (木) 23:07:17   ID: n7eWypD4

ノリがすっげーウザイ!!八幡ちゃうわこんなん

4 :  SS好きの774さん   2015年02月24日 (火) 15:45:18   ID: hzM5K2tF

クロス物でよく見るんだけど
安易な奉仕部sageやめて欲しい
見ててマジ腹立つ

5 :  SS好きの774さん   2016年03月01日 (火) 01:33:24   ID: GUJZAebY

作品をアンチするヤツほど作品を読み込んでいる

6 :  SS好きの774さん   2018年06月09日 (土) 02:17:27   ID: HH-u8j9k

奉仕部sage、というか奉仕部平常運転じゃね?

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