由暉子「ねじれた祈り」 (83)

【閲覧注意】
・咲-Saki-有珠山高校SS
・かなり捏造してます
・けっこう百合です
・基本は会話文ですが、地の文が所々入ってます。苦手な人は注意
・暗めの内容です
・なるべく長くならないように善処します




誓子「気分次第でせめないで」

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↑の続きのようなそんなもの。
前作を読まなくてもまったく問題ありません


以上がOKな方だけ読んでみてください



ーーーー♪



なんとなく暇をもて余して点けたテレビから、懐かしの歌謡曲特集…のような番組がしていた。

私が生まれるよりずっと昔の歌らしい。
その歌を聴くわけではなく、ただ流していた。

由暉子「・・・」ストン

爽「んーむにゃむにゃ・・・それは聖書じゃなくてぇ・・・だいこん・・・・・・」

由暉子「・・・・・・」クスッ

私の隣にこの人がいる。
それだけがいまの私の全てだ。
私はこの人を愛していて、この人は私を愛している。
それだけが

由暉子「」ナデナデ

爽「・・・ふがー・・・・・・」スピー



それなのに



最初の出逢いはあまりよくなかった、私は今でも鮮明に覚えている。


爽『新入部員は!!?』バターン!!


なんて人なんだろうって思った。



爽『礼拝なんて寝るためにあるもんだよ』ハハハ


『聖書の言葉って笑えるのもあるよなー』


『こないだシスターにどやされちゃったよ』アッハッハ



不真面目で





爽『やっぱりさ、アイドル雀士っていいと思うんだよね。オッパイでかくて可愛くて』ニヤニヤ


いつもふざけた言動ばかりで、


誓子『爽、ネクタイ逆さまよ』

爽『私が結ぶと・・・いつもこうなっちゃうんです』キリ

揺杏『誰のモノマネだよ』ハハハ




だらしなくて


爽『十字架に張り付けられたイエスの真似!』ウボァー

揺杏『似てねェー』ゲラゲラ

成香『ば、ばちが当たっちゃいますよ!』アワワ

誓子『いっぺん当たったらいいのよ』クスクス



不謹慎で変な人で。




爽『ユキは可愛いしさ』


そのくせ、


爽『好きだよ』


まっすぐで。


だから惹かれたのかもしれない。



爽『私のそばにいてくれないかな』



いや、魅かれていた。その飾らない姿に


『おっしゃー!全員トビだねー』フフフ

そしてその強さにも。



あなたは明け透けなようでいて、決して本音は誰にも見せない。

誰に対してもスキンシップ豊富なようでいて、必ず手を出さない人がいる。




それが





────────
──────
────










爽「ユキの部屋に来るのも久しぶりだね」

由暉子「そうですか?」

爽「そうですよ。インハイ前はよく行ったけどさ。なぁ、そうですかって口ぐせ?」

由暉子「そうですか? ・・・あっ」

爽「口ぐせだねえ」ケラケラ

由暉子「もう」

爽「笑うともっとかわいーね」

由暉子・爽「「そうですか?」」


爽「ぷっ・・・くくっ」

由暉子「・・・ふふふっ」

爽「ほんとユキといると楽しいよ」

由暉子「私も楽しいですよ」

爽「あと落ち着く」

由暉子「・・・」

爽「あり?」

由暉子「冗談ですよ。どちらかと言えばヒヤヒヤさせられる、なんてことは口が裂けても」

爽「言っちゃった!」アチャー

由暉子「ふふっ」


爽「ユキ、最近よく笑うようになったね」

由暉子「自分では分かりませんけど」

爽「うんにゃ、入部当時はなんつー鉄仮面女だ、って思ったもん」

由暉子「先輩は鉄面皮ですけどね」

爽「上手い!!」パチパチ

由暉子「普通は怒るなりなんなりしませんか」

爽「それだけ遠慮がないってのはそれはそれで嬉しいんだよね」

由暉子「そんなものですか」

爽「そんなものだよ」ニコ

由暉子「マゾヒストなんですか?」

爽「ドSって言われたことはあるけどなぁ」


由暉子「・・・誰にですか」

爽「なんだい? 焼きもちかい?えへへ」

由暉子「違います」キッパリ


爽「素直になれよお嬢ちゃん」ニヤニヤ

由暉子「なんですかそれ・・・」




由暉子「(・・・はぐらかされた?)」

由暉子「・・・私がよく笑うようになったのは」

爽「ん?」

由暉子「皆さんと出会ってからでしょうね」

爽「ほほう」

由暉子「別に、中学時代はいじめられてたとか、そういうのではないんですけど」

爽「うん」

由暉子「部活に入らずにいたので・・・こう、皆で一つの目標に向かって頑張るとかが高校で初めてだったんで・・・」

爽「少し遅れてやってきた青春ってやつかな?」

由暉子「まぁ、そういう感じですね」

爽「聖書片手にお祈りばっかしてたわけだ?」

由暉子「・・・似たような感じではありましたね。でもそれが当たり前の毎日だったので」

爽「今でもお祈りは欠かしてないもんなあ。ほんと敬虔なこって」

由暉子「日課になってるんですよ。毎日やらないと落ち着かなくて」

爽「分かる分かる。私も毎朝トイレで、「そこまで!」

爽「話がズレちゃったけど」

由暉子「誰のせいだと」

爽「まあまあ。それで?」


由暉子「・・・高校で初めて部活に入って、インターハイという目標があって、皆で頑張って・・・」

由暉子「絆・・・というのも知ることが出来ました。って話ですよ」

爽「それはそれは」ニコニコ


爽「この夏は楽しかった?」

由暉子「ええ、とても」ニコ

爽「それだけ分かれば充分なんじゃないかな。入賞は無理だったけど、私達は確かにあの夏に活きていた」

爽「その事実はいつまでも残るよ。 それが今のユキの笑顔を作ってるなら私はそれ以上に嬉しいことはないな」

由暉子「・・・そういうこと・・・よく真顔で言えますよね」フイ

爽「俯くほどイタい発言だった!?」ガーン



この人は卑怯者だ。
平気でこんなことが言えるなんて本当に変な人だ。
だから好きでいたくなる。



由暉子「コーヒーでも入れましょうか?」カチャ

爽「ああ、私がやるよ」

由暉子「いえ、そんな悪いです」

爽「いーっていーって」

ピト

由暉子「あ」

爽「おっと、ゴメンゴメン」パッ

由暉子「あっ」

爽「んん?手が触れてドキッとしちゃった?」ニヤニヤ

由暉子「なに下らないこと言ってるんですか…」プイ

爽「下らなくないぞー。思春期の乙女にはありがちなことだよ」ニシシ

由暉子「なんですかそれ…」



かすかに香る、違和感


由暉子「やっぱり先輩の入れたコーヒーが飲みたいです」

爽「おお!まっかせなさい!」



由暉子「・・・・・・・・・」

言ってはいけない。なにかが変わる。


爽「ふんふふーーん♪」


聞いてはいけない。望んではいけない。


由暉子「獅子原先輩」

いけない。祈っては



爽「んー?」カチャカチャ



でも












由暉子「なぜ、私に触れないんです?」



(まだ、桧森先輩を忘れられませんか?)






心臓が止まると思った。

君は鋭いようで、どこか天然でほんわかした部分を持つ人だと思っていたから。

いついかなる時も、触れないように気をつけていた。

触れてしまえば、ユキを壊してしまうと思っていたから。



あの子には簡単に触れられるのに




爽「・・・・・・どうしてそう思った?」

獅子原先輩は用意していたコップをシンクに置き直し、私の方をゆっくりと振り返り、尋ねた。

その顔は無表情とまではいかないけど、どこか感情をすみに追いやったような…そんな掴めない表情だった。


普段見せない表情に多少戸惑ったけど、



由暉子「どうして・・・とは、そのままですよ」

由暉子「今だって手が触れあっただけなのに、慌てて引っ込めたり」


思春期の乙女にはありがちなんて・・・それこそまさか彼女がそんな理由を盾にするわけないと思った。


由暉子「私たち、付き合ってますよね」

爽「うん」


獅子原先輩は、私の座る小さなテーブルではなく、その横に据え付けられたベッドに静かに腰を下ろした。


由暉子「先輩が夏前に告白してくれて、付き合うようになりました」

爽「そうだね。あのときは正直驚いた」

由暉子「なぜです?」

爽「私のこと嫌ってるかと思ったから」

由暉子「確かに・・・最初はなんて人だろうって思わされることばかりでした」

爽「面目ない」ヘヘヘ

由暉子「けど、だんだんあなたの言動が気になりだして、目が離せなくなって・・・」



由暉子「気付いたら、あなたのことばかり考えていました」


爽「・・・そっか」


由暉子「私には恋愛経験が無いから、一般的な恋人たちがどのようなことをするのかは詳しくありません」

爽「うん」

由暉子「ですが、普通の恋人?・・・という方々は手を繋いだり、・・・キ、キスをしたり。・・・・・・えっと・・・とにかく、そういうものだと思います」

爽「そうだね」


獅子原先輩は相づちを打ったり頷いて、私の言葉をしっかりと噛み締めようとしていた。


由暉子「・・・なのに。なぜあなたは私に触れないんですか?手を繋ごうともしない。今も隣に座ってくれない」

爽「・・・・・・・・・」


由暉子「私のことが好きで告白してくれたんじゃないんですか?なぜ・・・なぜ私に触れてくれないんですか?」



先輩は相変わらず感情を読みにくい表情でしばらく私を見つめていたが、やがて小さく口を開いた。




爽「・・・こういう言い方はあれだけど、『側に置いておかなきゃ』って思ったんだよ。ユキを、一目見たときから」


由暉子「独占欲・・・ですか?」

爽「そうなのかもしれないね」

由暉子「恋ではなく?」

爽「少なくとも、初めて会った時はそんな気持ちさえ吹っ飛んでた」



爽「とにかく、どう思われてもいいから私の一番近くに置いておかないとって。あの時はそればっかりでね」

由暉子「・・・・・・?」



らしくない表情を見せている先輩は、少しだけ俯き、それが更にらしくないと思った。


由暉子「はぁ・・・腑に落ちませんが、一応分かりました・・・。けれど、それがなぜ私に触れない理由になるんですか」


爽「別に・・・触れたくないわけじゃないんだ。もちろんユキのこと、ちゃんと好きだよ。そこは勘違いしないでほしい」

由暉子「私に気を使っているんですか?・・・もしそうなら」



いつでも受け入れるという覚悟は出来ていた。

少しだけ・・・ほんの少しだけ、恐いという、気持ちもあったけれど、『そういうこと』が恋人同士には付き物だということが理解できないほど、私は子供ではなかったから。




爽「ユキは私とセックスしたいのかい?」

あまりにも歯に衣着せぬ言い方に少し目眩がし、注意しようかと思ったけど、先輩の目がそれをはばからせた。



あまりにも真っ直ぐに、私を見るから。


由暉子「そ・・・『そういうこと』には、順番があるのでは?」


爽「答えてくれ」



私の言葉を無視してまで聞きたいことなのか。
彼女の目には有無を言わせない不思議な力があった。


そして私はその目に逆らえなかった。

けど、先輩は私の返答を待たずにある言葉を投げ掛けた。


爽「誓子とセックスした」


爽「いや、していた。もうそういう関係はやめたけど、」


爽「ユキと付き合ってるけど、誓子を抱いてたんだ」


気付いていた。

彼女が私と付き合っていながらも、別のひとと関係を持っていたことを。


女には浮気を見抜く不思議な「勘」が具わっているときいたことがあるが、まさか自分にもそれが与えられているとは思わなかった。

その恩恵を与えてくれたことに感謝するべきなのかは悩むところだけれど・・・・・・

気付いていながらも、やっぱり本人から真実を告げられたことは私にとって少なからず衝撃だったようで


由暉子「・・・帰ってくれませんか」

爽「ユキ・・・」

由暉子「少し、混乱してるみたいです。・・・お願いだから」

爽「あのさ、」


謝ろうとしてるのか、言い訳しようとしてるのか。
はたまた別れを告げようとしているのか。

自分が思った以上に動揺してしまっていることに私自身が驚いてしまい、そのどれかも聞き入れる余裕が今の私には失われていた。


由暉子「お願いします」


爽「・・・分かった」


先輩は引き下がることはせず素直に従ってくれた。

爽「鍵、ちゃんとかけといてな」


そして何も言わず静かに出ていった。


夜。ユキからメールが一通届いていた。
ただ一言【少しの間、距離を置かせてください】とだけ。絵文字もないシンプルな文面は無駄を好まないユキらしくて妙に納得してしまった。


わかった。とだけ返信し私は携帯をベッドの上に放り投げた。


どうしよう。おしまいだ。
彼女が離れていってしまう。

最低なことをした私には当然の報いだ。
それなのに私を責めようとせず、大声をあげることもないユキの恐ろしいほどに冷静な姿勢が、尚更私を責めている気がした。


爽「ビンタの一発くらいくれてもよかったんじゃないか?」


揺杏「それで満足すんのはユキじゃなくて爽でしょ」

あのあと私の部屋をたまたま訪ねてきた揺杏が、放り投げた携帯の文面を勝手に読んでいた。

揺杏「結局さ、爽は何がしたかったわけ?」

爽「何って」

こいつとは付き合いが長い。
携帯を見られようがどうってことない。
むしろ私の許されざるべき悪行も全て知っていた。


揺杏「ユキになんで話しちゃったのさ。浮気してたのなんか黙ってればそのままラブラブコースだったってのに」

爽「ユキは気付いてたよ、きっと。だって結構淡々としてたし」

揺杏「まじで?ヘマやらかすなんて珍しーね」ケケケ

爽「笑うなよ・・・こう見えて落ち込んでんだからさ」

揺杏「あんたに落ち込む資格ねーっつの」

爽「・・・確かに」


揺杏「知ってて知らないフリしてくれてたんだね。ユキちゃんはほんと健気だよ」

爽「ほんとにな」



爽「それに比べて・・・私は大馬鹿だ」


揺杏「やっと事の重大さに気付いた、って感じだね」

爽「遅いよな。ユキに告白する前に誓子との関係を清算しておくべきだった」

揺杏「それでも関係をやめなかった理由ってなによ?」




爽「誓子が、離れていくと思ったから」


揺杏「はァ?」

爽「ユキと付き合うことになったら、誓子が今までみたいに私の近くにいてくれなくなるって思ったんだ。だから、」

揺杏「それでユキにも桧森先輩にも距離置かれてんじゃ世話ねーっての!」

爽「うぅ・・・」

揺杏「二兎を追う者は一兎をも得ず、を地でいくやつ初めて見たよ」


爽「だから大馬鹿なんだよな」


揺杏「なんでも好きなものは側に置いときたいってところ、ほんと昔と変わんないよな」

揺杏「子供の頃ならいざ知らず、いい年してそれは通らないっしょ。爽」

爽「でも揺杏は私が何もしなくても側にいてくれてる」

揺杏「私はあんたの意思じゃなくて好きでツルんでんだよ。私の意思で」


爽「・・・いっそ揺杏と付き合えばよかったかなぁ」

揺杏「こっちから願い下げだし」


バカみたいな話だけど、爽には不思議な魅力がある。人を惹き付ける、何かが。

チビだしアホなことばっかり仕出かすくせに、ここ一番で爽ほど頼りになる人間を私は知らない。

そんなところを感じ取ったから、ユキも桧森先輩も、成香も

そして私も。


揺杏「『憎みきれないろくでなし』って奴だよね」

爽「古い歌知ってるね」

揺杏「テレビでやってた。懐かしの歌謡曲ショーってやつ?」


爽「私、ろくでなしだよな」

揺杏「本当それ」

憎みきれない不思議で変なやつだよ。





揺杏「でさ。なんでわざわざゲロっちゃったの?ユキにはなんで触れてくれないか聞かれただけだったのに」

爽「女の子がゲロなんて言っちゃいけません」

揺杏「下ネタ連発する代表格に言われたかないし」

爽「あれは空気を和ませるための苦肉の策だよ」

揺杏「嘘つけ。で、なんで?」

ちょっとだけ書き直し部分投下します。
書き直したのに訳わかんないと感じたらごめんなさいね。

爽「苦しくなったんだ」

揺杏「はァ」

爽「ユキに、なんで触れないのかって問い詰められて・・・誓子のことが浮かんで、それでなんかごちゃごちゃになって」

揺杏「耐えられなくなった?」

爽「うん・・・」

揺杏「マジか・・・爽にも人並みに罪悪感とかあったんだ」

爽「私にもってなんだよ」

揺杏「だってさ。聞いてる限りクズな行いしかしてないじゃん」

爽「それはそうかもしれな・・・」

そんなしょんぼりすんなって。知っててこいつに手ェ貸してた私も同罪だから。

揺杏「(言ってやんねーけどね)」


揺杏「(それより何なのかね。さっきから感じるモヤっとしたものは)」

それは私が部屋に来て、爽の顔を見たときからなんとなく感じとっていたものだった。

例えば、靴下を裏表間違えて履いてしまった時のような、お弁当のオカズの汁がご飯に染み付いてしまっているような。


つまり違和感


ガッツリ俗世の人間である私からはこんな陳腐な例えしか出てこないけれど。

揺杏「(なんだろ・・・気持ち悪ぃ)」


揺杏「なぁ、そもそもなんでユキには手ェ出さなかったの?桧森先輩とはヤッちゃってたくせに」


爽「触れられなかったんだ」


揺杏「はァ!?」

爽「揺杏にも分かるだろ?ユキの雰囲気・・・神々しさというか、神聖な雰囲気というかさ」

揺杏「桧森先輩も最初見たときそんな感じだったけどね」


今じゃ成香にご執心の親バカの母親みたいなもんだけどね、それはそれで親近感わくけどさ。



爽「もちろん誓子だって素敵な女性さ。唯一の同級生だし、なにより一年間二人で麻雀部を守ってきたんだ。特別な情も沸くよ」

揺杏「それで体の関係とか・・・一体どーしたらそうなれるわけ?」

爽「お互い思春期特有の情動・・・ってやつなのかも。誓子は成香と離れて少し心が参ってたみたいだったから」

揺杏「それに漬け込んでヤッちゃったら病みつきになったわけだ」


爽「漬け込んでって・・・まぁそう言われたらそうなんだけどさ」


揺杏「下世話だねえ。快楽には逆らえなかったと。聖母様だった桧森先輩も人間だったんだね」

爽「誓子のこと嫌わないでやってな。全部私の責任だから」

揺杏「逆だよ。正直最初は完璧マリア様みたいで取っつきにくかったし。それより人の心配より自分のこと気にしなよ」


つーか相手を神聖化しすぎて手ェ出せないとか、こんなヘタレな奴だったっけ。


揺杏「ユキとヤリたくないの?」


爽「お前な・・・ヤるとかそんなこと露骨なこと言う子に育てた覚えはないぞ」

揺杏「育ててもらった覚えねーし。爽みてーな親なんて最悪だよ」ケラケラ


爽「生意気なやつめ」

揺杏「で、どうなん?クズ原先輩」フフン

爽「容赦ないねー」ハハ

爽「したいかしたくないかで言えば、そりゃあ触れたいよ」


揺杏「だったら「ヤラせてくれ」って言えばよかったじゃん?付き合ってんだから簡単だよ。ユキは自己犠牲的なとこあるし、抵抗しないよ」


爽「言っただろ?ユキに触れることは、なんだか崇高なものを汚す行為になるんじゃないかというか」


爽「触れたらそのまま壊してしまいそうだったんだ」

揺杏「・・・・・・」

なんだそりゃ。冒涜者のくせになにいっちょ前なこと言ってんだよ。ただヘタレなだけでしょ。


相反する感情。
庇護したい気持ちと、愛しさ故に食べてしまいたいってやつか?


揺杏「爽。あんたは間違ってるよ」

ああやっと分かった。違和感の正体。

「いつもの」爽じゃないんだ。

いま私の目の前にいるこいつは、私の知ってる獅子原爽じゃないんだ。

それを理解した私から出たのは深いため息だった。


爽「間違ってるか。ああそうだね。私は間違っていた」

揺杏「違うよ。そうじゃない」


確かにあんたのしたことはユキへの裏切りだ。それは否定できない真実だよ。あんたの罪だ。

でも、私が言及したいのはそこじゃない。


揺杏「爽が付き合ってんのはマリア様じゃない。ましてや天使でもね」


揺杏「人間なんだよ。私らと同じ、普通の女の子」

爽「私らは普通の女の子でいいのかな?」

揺杏「屁理屈こねんなよ。あーユキが可哀想だ」ガックリ

爽「なんで揺杏が落ち込むんだよ」


揺杏「これは口止めされてたけど、あまりにもユキが哀れな子羊なんで仕方ない・・・」

爽「なんだよ?」

揺杏「こないだの話だよ・・・」


───先日のお泊まり勉強会


成香『お泊まりなんて少しワクワクしますね!勉強道具もちゃんと持って来ましたよ』

揺杏『ふふふ。成香は素直だねぇ』


成香『ほえ?』

由暉子『あの、私も一緒でよかったんですか?』

揺杏『もっちろん!さァ今日は3年生がいない。日頃の不満をぶっちゃけてしまおう!』

由暉子『勉強はどうしたんですか』


成香『わ、私は別に不満なんて・・・』



揺杏『ほんとか成香?いーんだよ心配しなくてもオフレコだからさァ、どんなグチも聞いちゃうよー!?』ツンツン

成香『ふぇえ!』

揺杏『ユキもさ、爽と付き合ってんなら文句の1つや2つ、当然あるっしょ?あの爽だし』

成香『揺杏ちゃん、そんなことあるわけ・・・』

由暉子『・・・そうですね。内緒にしていただけるなら』

揺杏『おっ』

成香『へっ?』

由暉子『文句、という訳ではありませんが・・・・・・』


──────


成香『・・・』ドキドキドキ

由暉子『───という訳ですね。すみません、こんな話』


揺杏『なるほどねぇ。・・・いやァ、てっきりとっくの昔にヤっちゃってたと思ってたよ』

成香『ゆゆゆゆ揺杏ちゃん!!!////』カァァァァァ

揺杏『成香はウブだねー。ゆでダコみたいになっちゃって』ケラケラ


由暉子『私・・・魅力がないでしょうか?』

揺杏『どうして?』

由暉子『一応、お付き合いしているのに、その・・・』

揺杏『あぁ。なんもしてこないから?』

由暉子『はい』

成香『高校生なんだから普通なのでは?』

揺杏『甘いよ成香。今時は中学生だってバンバンヤッてるよ?』

成香『揺杏ちゃん!!!/////』プシュー!


成香『ゆっ、ユキちゃんはとっても素敵な女の子ですよ!』

揺杏『うんうん。爽なんかにはもったいなさすぎるよマジで』

由暉子『あ、ありがとうございます』

揺杏『あと何か疑問に思うことある?』

由暉子『そうですね。先輩が、その・・・時々辛そうな、何かを我慢しているような。そんな風に見える時があって』

揺杏(確かに、あいつならとっくに手ェ出してるはずだわ)

成香『そうなんですか?』

由暉子『はい・・・それで、何とかしてあげたいなって』

揺杏『そっか。・・・肝心のユキの気持ちは?』




由暉子『本当は触れてほしい・・・です』





揺杏「・・・ってことがあった・・・・・・」

爽「・・・・・・・・・」ポカン

揺杏「・・・ってわけ。私が言ったって絶対内緒だからな?」

爽「・・・・・・・・・」ポカン

揺杏「爽?」

爽「・・・・・・・・・」ポカン

揺杏「」ベシン!!

爽「いだっ!?何をする!」

揺杏「こっちのセリフだっての!なにアホ面に磨きかけてんのさ」

爽「んん!?」


揺杏「まーつまりさァ」

爽「ん・・・」

揺杏「ユキはいつでもオッケー☆だったってことだよ」

爽「そんなノリだった?」

揺杏「ニュアンスだよ。感じとるんだよ。ついでに感じさせてやりなよ」

爽「お前も結構下ネタひどいぞ」

揺杏「誰かさんのおかげでね」

揺杏「で、どーするよ?」

かわいい後輩にここまで言わせといてまだウジったこと言うつもりなら、

爽「どうもこうも、それ以前にユキの隣に立つことさえも・・・」



決定。ゲンコツ一発入りまーす



揺杏「」ゴツン!!

爽「あ"だーーーーーー!!!」

揺杏「ふん」

爽「何をする!高所からの打撃は通常より効くんだぞホント」

揺杏「いい加減にしろってのマジで」グイッ

爽「わわっ」グラッ

揺杏「あんたは誰だ」

爽「誰って・・・強いて言うなら二股かけたクズ原・フラレ・爽です・・・」


つまんねー自虐ネタやめい。事実だけど。

けどね


揺杏「そうだよ。あんたはクズだ」


揺杏「けど、その前に『獅子原爽』だ」

爽「揺杏?」


揺杏「・・・はー・・・・・・」

爽「揺杏・・・」

揺杏「っつーことだから。私が言いたいのはさ、しょんぼりネガティブな爽が似合わなすぎてマジきめぇって話。そんだけ」

爽「揺杏ちゃん・・・」

揺杏「ちゃんではなく。きめぇっての」

ごめんミスです。
>>66>>67の間にこの文挟んでおくれやす




揺杏「私の知ってる獅子原爽ってのは、チビでバカでさ、」


揺杏「最上級生のくせに率先して遊ぼうとするし、下らない思い付きにすぐ強引に皆を巻き込もうとするし・・・」


揺杏「だけどいつだってその圧倒的な存在感と自信で皆を引っ張ってきた頼れるエースなんだよ」


揺杏「いま私の目の前にいるのはその『獅子原爽』じゃない」


そんな情けない奴は私の憧れた獅子原爽じゃない。





爽「揺杏にひとつ答えてほしいことがあるんだけどさ」

揺杏「なに」


爽「私にユキに触れる資格はあるか?」

揺杏「愛してる人に触れるのに資格なんていんの?」

爽「それは・・・いや、いらないな」


揺杏「分かってんじゃん」

壊してしまうとか資格がいるとか、考える必要も余裕もないだろ?


揺杏「じゃあ後は分かるっしょ」

揺杏「『爽』はこれからどうしたいの?あ、決めるのはユキだからとかウザいこと言うのはナシね」

爽「う、先手取られたか」

揺杏「爽から先手取るとか私も成長してるねー」フフン

爽「麻雀もその調子で頼むな」

揺杏「それとこれとは別」


揺杏「・・・で、質問の答えは?」


爽「どうしたいか、なんて決まってるよ」

爽「手離したくない」






揺杏「なら簡単だよ」


本当に簡単。
バカでも冒涜者でも出来る、けれど効果てき面な必殺技だ。




揺杏「抱き締めてやんなよ」


あのあと私に物理的にも心理的にも背中を叩かれた爽は、弾かれたみたいに部屋を飛び出した。

私はまず桧森先輩に一発殴られて来いってアドバイスした。いきなりユキの所に突撃しても彼女だってまだ距離をおきたいって言ったすぐ後だ。少なからず動揺してるかもしんないし、よけい混乱させるだろう。恐らくノープランで飛び出した爽に気の利いた言葉が出るとも思えないし。
だからまず桧森先輩のキッツい一発をもらってワンクッションおかせる為だ。


これは後から聞いた話なんだけど、まず私のアドバイス通り桧森先輩の元を訪れた爽は、今までのことを謝って、そして決して遊びで関係を続けてたわけではなく、不器用なやり方で彼女に離れてほしくなかっただのを爽なりに下手くそに説明したらしい。

それを理解したのかどうかは知らないけど、桧森先輩はお願い通りほっぺたにキツいのを一発くれたみたいだ。

けどその後すぐに「私も同罪だ」って爽に一発お見舞いしてほしいと頼んだらしい。


本当はユキから一発もらいたかったみたいだけど、慈愛に満ちた彼女は絶対そんなことしないだろって爽で妥協したみたい。

爽はたいそう戸惑ったみたいだけど、桧森先輩の眼力と纏うオーラに逆らえずに嫌々ながらも一発与えたとのことで。


まったくいつからウチはそんな武闘派になったんだっつーの。まァこれも夏の高校生らしくていーんじゃないかな?夏じゃねーけど。




とりあえず後は爽にまかせて私は疲れたので寝ることにした。


──終──


いったん終わりです。
スレがもったいないのでこのままここに続きを投下します。
書き直したのに結局グダグダで読みにくくなってしまって申し訳なかですorz
あと短めで終わらせる言うたのにグダってほんますまん

次回からは爽視点とユキちゃん視点が入れ替わり立ち替わりで更に読みにくくなると思われるので、所詮素人の駄文だと思って読んでくれてる方々の天才的脳内保管にまかせるから!

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