モバP「キャスター和久井留美の仕事」 (52)
※このSSは以前書いた、モバP「キャスター和久井留美」と同じ設定のものです
※以前の話と直接のつながりはありません
※前回のSSを読まれてなくても、和久井さんがニュースキャスターという設定を覚えてくだされば楽しんでいただけるかと思います
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398522056
P(和久井さんがニュースキャスターになって数ヶ月が過ぎた)
P(関東ローカルの小さなテレビ局。その深夜の報道番組とはいえ関係者の評価は上々だ)
P(おかげでCMやドラマ出演のオファーもいくつか舞い込んできている)
P(だが、彼女自身の希望もあり、今はお断りをさせてもらっている状況だ)
P(報道は打ち合わせやロケで拘束時間が長いからな)
P(そして今も……)
――――――――――――事務所
P「ただいま戻りました」
留美「おかえり」
http://i.imgur.com/fdV2onX.jpg
和久井留美(26)
P「留美さん、例のチケット、局のスタッフさんからもらってきましたよ」
留美「ありがとう」
楓「チケット?」
http://i.imgur.com/LBQkhA7.jpg
高垣楓(25)
P「留美さん、今度海外ロケに行くんです。そのための航空券ですよ」
楓「わあ、いいですね。どこに行かれるんです?」
留美「ワシントンよ。世界外相会議の様子を、現地リポートをすることになってるの」
楓「外相会議……そこには外相が、いしょうですね……ふふっ」
留美「ええ、たくさんいるわよ」
楓「……」
P(和久井さんが楓さんのダジャレを封殺するときは、集中している証拠だ)
礼子「あら? 留美、海外ロケなの?」
http://i.imgur.com/q0G3X3g.jpg
高橋礼子(31)
留美「お遣いなら行きませんよ」
礼子「まだ、何も言ってないじゃない」
留美「違うんですか?」
礼子「そうだけどさ……ケチねえ」
留美「なんとでも言ってください。小さい子たちにはお土産買ってきますけど」
礼子「わたし、たかはしれいこ、17歳♪ うふっ」
留美「Pさん、この資料を局にファックスお願いします」
P「あ、はい」
礼子「無視は堪えるわね……」
P(さすが和久井さん。場が凍る発言も華麗にスルー)
P(しかし、集中している和久井さんは本当にすごい)
P(生半可なことでは自分を乱さないからな)
――――――――――――数日後、事務所
P「さて、そろそろだな……」
ぴっ
ちひろ「何がそろそろなんです?」
http://i.imgur.com/N04vR3p.jpg
千川ちひろ(??)
P「ああ、これから和久井さんの中継リポートが始まるんですよ」
ちひろ「あ、例の海外レポですよね?」
P「そうです……あ、始まったみたいですよ」
――――――――――――同時刻、ワシントン
スタッフ「まもなく中継はいりまーす」
留美「はい。よろしくお願いします」
留美(原稿も準備したし、あとは正確なリポートするだけね。ここが正念場よ、留美)
留美(あら?……あれって……)
留美(まさか、子猫?……かーわいい!!)
男性アナ「それではここで、ワシントンの和久井さんを呼んでみましょう。和久井さん?」
留美『……』
男性アナ「和久井さん?」
留美『……』
男性アナ「ちょっと回線の調子が悪いようですね……もう一度呼んでみましょう。和久井さん?」
留美『は、はい! 失礼しました』
男性アナ「それでは今日の外相会議の様子についてリポートしてください」
留美『それではお伝えします』
留美(あぶないあぶない。子猫ちゃんに心を奪われる所だったわ)
男性アナ「会談の様子はどうでしょう?」
留美『先月末のR国による武力侵攻が話題の中心になっている模様です』
留美(あ、猫ちゃんがカメラマンさんの足に懐いてる)
留美(ゴロゴロしちゃってかわいい~♪ 私のところにも来てくれたら……)
留美(ダメダメ! アレルギーが出ちゃうじゃない!)
留美(でも、カワイイ)
留美『R国への非難の空気が高まっているのか、会場にはピリピリとした張り詰めた空気が漂っています』
男性アナ「……」
留美『経済制裁などの話には及びませんでしたが、主要関係国の間では水面下での交渉が行われているようです』
男性アナ「和久井さん」
留美『はい』
男性アナ「あの……わりと、こう……緊迫した雰囲気なんですよね?」
留美『そうですね』
男性アナ「心なしか……和久井さんの表情が……和んでいるような気が……」
留美『!!……気のせいです』
男性アナ「き、気のせいですかね?」
留美『はい』
男性アナ「わ、わかりました。それでは続けてください」
留美(危ない。表情に出ちゃってたわ)
留美(しっかりしなさい、留美! あなたはプロなのよ! 自分の職務を全うしなさい!)
カメラマン『なんかさっきから邪魔だな、この猫……おい、どっかつれていけ』
AD『あっ……はい』
留美(ああ、猫ちゃん!! いなくなっちゃう!!)
留美(ちょっとADさん!! そんな持ち方しないでよ!! かわいそうじゃない!!)
留美(なんて人なの、まったく!!)
男性アナ「ちなみに和久井さん」
留美『……はい』
男性アナ「今回の会議ではアメリカ在住の日本人の方がランチを担当されたそうですね?」
留美『……そうですね。私は食べることはできなかったのですが、広く関係者にも振る舞われたそうです』
男性アナ「あの……和久井さん」
留美『はい』
男性アナ「そんなに食べたかったんですか?」
留美『なぜですか?』
男性アナ「いえ……その……表情がかなり、怒っておられるようなので……」
留美『怒っていません』
男性アナ「……え、でも」
留美『以上、ワシントンより和久井留美がお伝えしました』
男性アナ「あっ」
P「これは……」
ちひろ「留美さん、あきらかに動揺してましたね……」
P「ですね」
ちひろ「普段クールでミスのない留美さんがこんな風になるなんて」
P「理由はなんとなくわかりますが……」
P(うーむ……)
――――――――――――数日後、事務所
留美「……はぁ」
ちひろ「Pさん」ヒソヒソ
P「はい」
ちひろ「留美さん、まだ落ち込んでますね……そんなに局で怒られたのですか」
P「いえ、怒られるどころか、むしろ逆ですね」
ちひろ「??」
P「特に大きなクレームなどなく、視聴率はむしろ良かったそうなんです」
ちひろ「そうなんですか? じゃあ、なぜ?」
P「怒った和久井さんの顔にそのテの人達が反応したらしく、大勢出待ちのファンが増えたそうです」
P「出待ちなら問題ないんですが、『罵ってください!』とか『踏んでください!』とかいう困ったファンが増えまして」
ちひろ「……おおぅ」
P「そんなつもりじゃないのに、と落ち込んでる模様です」
ちひろ「クライアントに喜んでもらってるのに、落ち込むってのも複雑ですよね」
P(何か考えないとな……)
――――――――――――数日後、事務所
P「おっと、そろそろ始まる頃だな」
ぴっ
涼「あれ? Pサン、テレビ見るの?」
http://i.imgur.com/WhvyjBS.jpg
松永涼(18)
P「ん? ああ、今日からな和久井さんの冠番組が始まるんだ」
拓海「和久井の姐さんの番組か。あたしも見てえな、そりゃ」
http://i.imgur.com/NXoB13S.jpg
向井拓海(18)
P「まあ、冠番組といってもBSの30分枠だけどな」
涼「それでもすごいじゃん。留美さん、頑張ってたもんな」
P「その頑張りに答えるために、僕の方で企画作ってプレゼンしたらすんなり通ってな」
拓海「どんな番組なんだ?」
P「まあ、見てろ。もうすぐ始まるぞ」
♪チャラララ~
留美『みなさん、こんばんわ』
留美『本日より始まりました「和久井留美の猫的生活のすすめ」。司会の和久井留美です』
P「あっ! ひどい!!」
涼「なんだよ、急に大声あげて?」
P「僕が考えた番組名と違う!」
涼「どんなタイトルだったんだ?」
P「『るーみんのにゃんにゃん☆天国』」
涼「あんた、ひでーな。そんなタイトル、留美さんがOK出すわけないだろ?」
P「言っとくけど天国と書いて『ぱらだいす』って読むんだぞ」
涼「どうでもいいよ! 余計に悪いだろ!」
拓海「お前ら、うるせーよ! 始まっちまうだろ」
P「す、すまん……」
涼(あいつ、本当に留美さん好きだなー)
留美『有史以来、猫はいつも我々人類のそばにいました』
留美『鼠など害獣を駆逐したり、人を癒やす愛玩動物であったり、時の権力者の権威の象徴であったりもしました』
留美『この番組ではそんな猫の生態を学術的な側面から検証していく番組です』
涼「随分、おカタイ番組なんだな」
P「僕は留美さんがただ、猫と戯れる番組って企画したのに」
涼「多分、留美さんが直前に変更したんだろうな」
拓海「でも、冠番組とは羨ましいぜ。和久井の姐さんが認められてる証拠だよな」
P「まあ、海外ロケや選挙特番では頑張ってくれたし、そのご褒美という面もある」
涼「他にもあんの?」
P「この番組は和久井さんにとっての試練でもあるんだよ」
涼「??」
留美『今回私はとある県でブリーダーを営む方の元へお邪魔して参りました』
留美『まずはそちらのVTRを御覧ください。どうぞ』
P「あっ。V振りも違う!」
涼「そこまで決めてたのか……」
拓海「どんなV振りだったんだ?」
P「まずは両拳を頭の上に乗せて」
拓海「……」
P「『るーみん、にゃんにゃん、ぱ↑ら↓だいすっ♪』と腰を突き出す感じだ」
拓海「できるわけねえだろっ!」
P「徹夜で考えたのに…」
涼「アンタ、そのうち刺されるぞ」
――――――――――――ブリーダーの家の前
留美『今、私はブリーダーの方の家の前に来ています』
留美『それでは早速、行ってみましょう』
スタッフ『あっ、和久井さん。ちょっと』
留美『なんでしょうか?』
スタッフ『これを頭につけてください』
留美『え? CCD? どうしてですか? バラエティではないのですよ?』
スタッフ『実は和久井さんのプロデューサーさんに言われてまして』
留美『プロデューサーが?』
スタッフ『猫を見た和久井さんの表情をとらえるようにと……』
留美(まったく……なんて人なの?)
留美『付けるだけ無駄ですよ。それくらいで私の表情が大きく崩れたりしません』
スタッフ『……い、一応、つけてください。何もなければ編集でカットしますので』
留美『……わかりました』
スタッフ『あと、もう一つありまして』
留美『まだあるんですか?』
スタッフ『万が一、和久井さんの表情が崩れそうな場合はこのブザーでお知らせします』
ブーッ
留美『勝手にしてください。それでは行きますよ』
――――――――――――ブリーダーの家
留美「こんにちは。本日はよろしくお願いします」
ブリーダー「よろしくお願いします」
留美「猫は現在何匹ほど買ってらっしゃるのですか?」
ブリーダー「オスが15匹とメスが20匹ですね」
留美「そんなに……そ、それで、猫はどちらに?」
ブリーダー「ははは、落ち着いてください。今は庭にいますよ。こちらへどうぞ」
がらっ
留美「わああ……猫ちゃんがたくさんいますね」
ブリーダー「先ほど餌を食べたばかりなので少し眠たそうですが」
留美「うんうん♪ かわいいなぁ……」
ブリーダー「どうぞ。庭に降りて触ってあげてください」
留美「いえ、ここで……」
スタッフ「和久井さん、降りて触らないとロケになりませんよ」
留美「わ、わかってます!」
留美(冠番組なんだから……こんなところで失敗はできないわ)
――――――――――――庭
留美「わあ、たくさんいますね!」
留美(はあぁぁぁ……猫ちゃんいっぱい! なんという極楽なの!!)
スタッフ「……」ジー
留美「はっ……おほん。みんなのんびりしてますね。これは……シャム猫ですか?」
ブリーダー「そうですね。比較的おとなしい子です」
http://i.imgur.com/5IfMLS9.jpg
※参考画像
留美「ふふふ。そうみたいですね……あら? この子は?」
ブリーダー「それはペルシャ猫です。好奇心の強い子ですよ」
http://i.imgur.com/3HnaeYB.jpg
※参考画像
猫「にゃー」
留美(はわわわ……私の足にすりすりと……)
ブリーダー「和久井さんのこと気に入ったみたいですね」
留美「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!!」
だだだだだだだだだだ
スタッフ「あっ! 和久井さん!! どこに行くんですか!」
<ハックショ ハックション ハックッショ
だだだだだだだだだ
留美「おまたせしました……本当にかわいいですね」
スタッフ「困りますよ。勝手に持ち場を離れては」
留美「ごめんなさい。もう大丈夫です」
ブリーダー「どうです? 抱っこしてみます?」
留美「えっ……」
スタッフ「あ、いいですね。いい画が撮れそうですよ」
ブリーダー「どうぞ」
猫「にゃー」
留美「うぅ……わかりました」
ひょい
留美(あああ……おとなしい、この子……)
ブリーダー「懐いてますね」
スタッフ「ちょっと頭をなでてもらえますか」
留美「は、はい……」ナデナデ
猫「にゃーん」
留美(あああああ………)
だだだだだだだだだだだ
スタッフ「あっ! またっ!!」
<ハックショ ハックション ハックッショ
だだだだだだだだだだだ
留美「ほ、本当に……ゼエゼエ……かわ……ゼエゼエいいですね」
スタッフ「ダメですよ。勝手にいなくなると」
留美「ね、猫ちゃん……クシュッ……お、お返しします…グスッ」
ブリーダー「は、はい」
留美「こ、これで……レポートはできましたか?」
スタッフ「うーん……できればもう少し猫と和久井さんのツーショットがほしいですね」
留美「ま、まだ? これ以上は……もう…」
スタッフ「大丈夫です。実はとっておきを用意しておきました」
留美「いや、そうじゃなくて」
留美(そろそろ……限界が……)
留美(でも、ここを耐えることができたら、Pくんを見返せるわね)
留美「わ、わかりました……」
留美「それで、次の猫ちゃんは……」
ブリーダー「この部屋にいますよ。開けてみてください」
留美「この部屋に……」
留美(大丈夫。多少のことではもう動じないわ。覚悟を決めるのよ、留美)
がらっ
留美「!!!」
ブリーダー「先週生まれたばかりのアメリカンショートヘアーの子猫です」
http://i.imgur.com/Wc8SoWy.jpg
※参考画像
留美「あ、あら……かわいい………ですね」
留美(きゃあああああああ!! ちっちゃいちっちゃい!!! きゃわいいい!!)
ブリーダー「全部で五匹生まれました」
留美「ま、まあ……お母さん猫ちゃんは……が、がんばったんですね……」
(はああああん!!! 寄り添ってぷるぷるしてるううううう!! おめめあいてないのっ!!!)
スタッフ「……」ジー
ブ……
留美(はっ! スタッフがブザーに手をかけてる……顔が……顔を戻さないと)
ブリーダー「和久井さん、両手を出してもらえますか?」
留美「?? こうですか?」
ひょい
ブリーダー「どうぞ。抱っこしてみてください。ちっちゃいでしょ?」
留美「はあああああああ…………!!」
ぷつん
留美「きゃああああっ! きゃあああっ!! ちっちゃいちっちゃい、アメショーちっちゃい!!」
留美(かわいいアメショーですね)
スタッフ「和久井さん!! 顔やばいです!!」
ブーッ
留美「私の指、ちゅーちゅー吸ってる!! ああん!! もうもうもうかわいいぃ!!」
留美(まだおとなしいんですね)
スタッフ「和久井さん! しっかりしてください!!」
ブーッ ブーッ
留美「あめしょー! ハラショーー!! どっこいしょーーー!!!」
留美(大きくなるのが楽しみですね)
スタッフ「やばい! 和久井さん、目も鼻も真っ赤です!! おい! カメラ止めろ!!」
ブーッブーッブーッ……
<<しばらくおまちください>>
留美『…………』
留美『大変お見苦しい物を見せて申し訳ありません……』
留美『それでは、今夜はこのあたりで失礼します……』
♪チャラララ~
涼「……」
P「……」
涼「……どうすんだよ、これ?」
P「おそらく抑圧された猫への愛情が、何かのはずみで堰を切ったように溢れたんだな」
P「思ってることと台詞が真逆になるくらいテンパったんだろう」
涼「冷静に言ってる場合かよ! 留美さんのタレント生命に関わるぞ!」
P「さすがにやりすぎたな……」
拓海「…………おい、P」
P「あ、はいっ」
涼「うわっ、拓海キレてるよ。アタシ知らねーからな」
拓海「これ………」
P「う、うん……」
拓海「DVD出たら教えてくれ……すぐに買うから!!」
涼「どんだけ留美さん好きなんだよ? アンタ」
――――――――――――後日、事務所
留美「はあ……」
ちひろ「留美さん、すごく落ち込んでますね」ヒソヒソ
P「そうですね」
ちひろ「番組はどうなるんです?」
P「打ち切りになりました……まあ、もともと時間帯不定期のミニ番組みたいなものなんで、テレビ局は被害がないんですが」
ちひろ「さすがに怒られました?」
P「それも逆です」
ちひろ「逆?」
P「あの放送自体は視聴率はさほどなかったんですが、Youtubeにアップされて120万回再生されたそうです」
ちひろ「すごっ!」
P「局にも再放送しろとか、一時間の特番にしろとかの要望も多くて」
ちひろ「インパクトありましたからね……」
P「地上波でもゴールデンに流さないかと提案があったくらいなんですが……さすがに……」
ちひろ「留美さんの傷を大きくえぐっちゃいますね」
P(なんとか留美さんの傷を癒やすことはできないだろうか……)
P(よしっ)
P「和久井さん」
留美「……なにかしら」
P「また、番組やりましょう。僕、企画しましたんで」
留美「嫌よ。お願いだからほっといて」
P「大丈夫です。次は旅番組です」
留美「旅番組……そうね……この傷心を癒やすにはいいかもね」
P「でしょう?」
留美「どこに行くのかしら? ヨーロッパ? アメリカ?」
P「いえ、ほら、よくあるじゃないですか? タレントが犬や猿と日本縦断するやつ」
留美「……まさか」
P「番組名は『るーみんとにゃんにゃん大紀行』とかどうです?」
留美「いいかげんにしなさいっ!」
おわり
※これで終わりです。
本当は、前回のキャスター和久井留美で使うネタを大きくして書きました
あまりにやりすぎて和久井Pに刺されるかもしれませんがどうか勘弁して下さい
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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