ほむら「喫茶こねくと」 (107)

―――ちりん


    「いらっしゃいませー」

    「ようこそ、『喫茶こねくと』へ」

    「御一人さまですか?」


ほむら「ええ」

    「その、こういう所に来るのは初めてなのだけれど」


    「ではこちらに御掛けになってください」

    「ご注文が決まり次第、マスターにお申し付けくださいね」

    「それでは、ごゆっくり」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398496480



ほむら(……一体どういう事なの)

    (気分を変えようと、隣町までグリーフシード集めに来たつもりだったのに)

    (なぜか誘われるがままに喫茶店に入ってしまったわ)


     「いらっしゃい、見かけない顔だね」


ほむら「! ……ええ。ここに立ち寄ったのは、初めてよ」


     「不思議に思ってるんだろ? ここに来た事を」

     「そう思うのは当然の事だよ、魔法の力が働いてるからね」

     「ここは少女たちの憩いの場」

     「心身ともに疲れた魔法少女らが、自然と立ち寄ってしまう魔法の喫茶店なのさ」


ほむら「……ここは結界の中で、私はいつの間にか誘い込まれていたのね」

    「なら貴女は、この街の魔法少女?」


     「そうとも言える。が、ある意味違うな」

     「あたしはこの店のマスターで、人々への癒しを祈って契約した魔法少女」

マスター「疲れてるコが居たら放っておけないタチでね」

     「この店の入り口は何処へでも繋がって、疲れた魔法少女を気まぐれに導く」

     「ゆえに『喫茶こねくと』なんて名前な訳さね」

     「――さてと。それでは注文を訊こうか」

―――


ほむら「……美味しいわ、このカフェラテ」


マスター「気に入って貰えたかな」


ほむら「私はあまりコーヒーには詳しくないけど、一体どこのコーヒー豆を使っているのかしら」


マスター「それはあたしにもよく分からない。あくまで魔法で作ったものだからね」

     「素人のあたしが勝手にイメージして出来た"旨いコーヒー"が具現したものに過ぎない」

     「だから銘柄とか関係なく、そいつは美味しく出来上がる……と、あたしは思う。自分でも魔法の仕組みは分からなんだ」


ほむら「道理で馴染み深い味だと思った」

    「上品って感じではなくて、親しみの湧く味わいというか」

    「とにかく、とっても美味しい」


マスター「はは、それはどうも」


ほむら「ご馳走さま」

    「それじゃ、私はそろそろ」


マスター「お代はいらないよ」

     「またいつでも来ておくれ」

     「きみが望めば、いつでも入り口は繋がるハズだよ」


ほむら「ありがとう」

    「これで私は、また頑張れる気がする」


―――ちりん

今日はここまで

オリキャラあり 外伝作品の要素あり まったり進行です

―――ちりん


    「いらっしゃいませー」

    「ようこそ、『喫茶こねくと』へ」

    「御一人さまですか?」


マミ「ええ、そうよ」

  (ふふっ、休日はすっかり此処に寄る習慣が出来ちゃってるわね)


    「……ではこちらにどうぞ」

    「ご注文はマスターに言ってね」

    「では、ごゆっくりー」


マミ(……)

  (あの受付の子、なんだか私への対応がゆるい気がするわ)


マスター「よく来たね、マミさん」

     「きみのようなベテラン魔法少女が来てくれて、あたしも嬉しいよ」


マミ「ベテランだなんて、それほどでもないわ」

  「それに貴女のほうがよっぽど凄い人じゃない」

  「皆に安らぎを与えてくれる、迷える魔法少女へのアドバイザー」

  「私なんかより、魔法少女としてのキャリアはずっと上でしょう?」


マスター「よせやい、そんな煽てたってコーヒーくらいしか出せないよ」

     「あたしは元から戦う事が不得手だったから、こうして喫茶を営んでるだけさね」

     「疲れた少女をここに導いて、ちょっとした相談に乗ってやる事しか出来ない」

     「もはや、そういう"概念"でしかないんだよ。あたしは」


マミ「それでも、素晴らしい事じゃない。貴女がしている事は立派だわ」

  「私はそうして癒してあげる事が出来なかった」

  「チームを組んでいた子と仲違いしちゃってね」

  「どうすれば。何をしてあげるのが……正解だったのかなって、いつも考えちゃう」


マスター「ふうん、そういう事がねえ。 ベテランといえど、悩みや苦労は尽きないって事かね」

     「まあ、なんだ。あんまり気持ちを沈めなさんな」

     「とりあえず甘いものでも食べれば少しは気分が晴れるだろうよ」

     「てな訳で、だ。そろそろ注文を訊かせておくれ」


マミ「ああ、そうよね。何か注文しないといけないわよね」

  「それじゃ、今日は何にしようかしら――」

―――


マミ「相変わらず美味しいコーヒーよね……甘いクレープとよく合う」


マスター「コーヒーは魔法で用意した物だけど」

     「菓子やケーキなんかは、ウチの手伝いが作るものでね」


マミ「貴女と受付の子以外の人を見かけたことなんて無かったけど、他にも居るの?」


マスター「なかなか恥ずかしがり屋な奴でな、滅多に人前へ出てこないのさ」

     「ま、それはそれとしてだ。 自分も以前、一からコーヒーを作ってみたんだが」

     「市販のコーヒー豆じゃあ、魔法で作ったものと大差が無くてね」

     「それだけ味のイメージが忠実に再現できてるからなんだろうが……魔法とはつくづく不思議なモノよな」


マミ「そうね。私も魔法で紅茶を出したりする事があるんだけど」

  「魔法で作り出した紅茶は、きちんと茶葉から淹れる紅茶よりも風味が欠けている物なの」

  「貴女はそういうイメージがより正確に出来ているからこそ、美味しいコーヒーを作れるんじゃないかしら?」


マスター「はは。いやあ、まさかウチのコーヒーでそんなに褒めて貰えるなんてね」

     「ここのマスターをやってて良かったって思えるよ」


マミ「ふふ、お互い頑張っていきましょう?」


マスター「……こりゃ参ったな。癒す側のあたしが逆に癒されるとは」


マミ「ご馳走さまでした」

  「さてと。そろそろ御暇しましょうか」


マスター「これから魔女退治かい?頑張りなよ」


マミ「ええ。 そういえば貴女、グリーフシードを集めなくても平気なの?」

  「普通に生活してるだけでもソウルジェムは濁っていくはずなのに、こんな結界をいつでも張っているなんて……」


マスター「その点は心配に及ばないよ。こっちにも色々と事情があるのさ」

     「この喫茶はあたし一人のモノじゃない。いろんな協力者が居るからこそ成せる所業さね」


マミ「羨ましいわね。皆で営む喫茶店」

  「私も、貴女みたいになれるよう頑張らなきゃ」


マスター「魔法少女なんてのは、正義の味方に憧れてる連中のほうが多いモノだろう」

     「あとはきみ次第だ。仲良くやってける相手が見つけられるよう願っておくよ」

     「それと、きみと仲違いしたって子とも仲直りできるようにね」


マミ「ふふ、ありがとう。また来るわ」

  (……いつか、佐倉さんと一緒に来たいものね)


―――ちりん

今日はここまで

マスター以外のオリキャラも数人ほど出てきますが
そういう事も気にしない方はどうぞお付き合いして下さると喜びます

―――ちりん


   「いらっしゃいませー」

   「ようこそ、『喫茶こねくと』へ」

   「御一人さまですか?」


織莉子「ええ、そうですが」

     「マスターはどちらに?」


   「準備が済んだらマスターは出てきますので、御掛けになってお待ちください」


   「こちらメニューになっております、ご注文が決まったらマスターに申し付けてください」

   「それでは……」


織莉子「待って頂戴」

     「貴女の名前を伺ってもいいかしら」


   「わたしですか?」

   「えっと……【沫木ひろみ】といいます。この喫茶の受付をさせて頂いてます」

受付「といっても、お客様の人数確認とお席への案内くらいしかお仕事が無いんですけど」

   「あっ、こんなこと言っても余計でしたよね。申し訳ございません」


織莉子「……いえ、こちらも引き止めてしまってごめんなさい」

     「お仕事、頑張って」


受付「あ、ありがとうございます」

   「それでは、ごゆっくりどうぞ」


マスター「やあ、いらっしゃい。初めて見る顔だね」


織莉子「ええ、こんばんは」

     「貴女がこの結界の主ですね?」


マスター「その通りだが……ふむ」

     「今日初めてこの喫茶に来た、にしては随分と落ち着いているね」

     「自分の意志でここまで来たと見受けられるが。如何かな」


織莉子「流石、多くの魔法少女を見てきた御人ですね。御明察です」

     「この結界の存在はあらかじめ知ることが出来ていました」

     「私は貴女に頼みたい事があって、ここまで来たのですが」


マスター「はて。どういったご用件かな」

     「――と、まずはその前に何か注文をしておくれ。話はそれから聞いてあげよう」


織莉子「そうですね。 ……では、ホットコーヒーを一杯」


マスター「砂糖とミルクは?」


織莉子「……いえ、結構です」

―――


織莉子「……」


マスター「えーと、差し出がましい事だとは思うが」

     「無理はしないでいいからね?」


織莉子「いえ、無理だなんて……そんな事は、ありません」


マスター「明らかに"すっごく苦い"って言いたげな顔してるじゃないの」

     「ブラックコーヒーなんて、あたしでもそんな好んで飲むモンじゃないんだから」


織莉子「そうなの、ですか?」


マスター「そうそう」

     「"砂糖やミルクを入れるのはお子様のやること"だなんて決め付けるのは良くない考え方だ」

     「甘かろうと苦かろうと、人の好き嫌いなんてのは分かれるモノよな」

     「ゆえに異なる意見を受け入れる姿勢、そして自分の意見を貫き通す姿勢もまた大事なコトさね」

     「まぁあたしからすると、自分の感情に素直な子のほうが愛らしいと思うが。どうかな?」


織莉子「……それでは、お砂糖とミルクをお願いします」


マスター「はは、そうでなくちゃ」

     「背伸びしたって何もいい事はないからね」


織莉子「背伸びだなんて、していません」


マスター「いや、きみの身長の話ではなくてだな」


織莉子「身長の話もしてません!」


マスター「はは、ジョークだよジョーク。冗談だってば」

     「それで、頼みたい事とは何だい?」


織莉子「その事なのですが」

     「私は今、協力者を求めているのです」

     「私と共に戦ってくれる魔法少女を」


マスター「ふーむ。何かと思えばそういう話かい」

     「要するに、きみは戦闘慣れしてない新人さんだから」

     「誰かしら気の合う子とチームを組んで、魔女退治を安全に行いたいと?」


織莉子「……まあ、そういった所でしょうか」


マスター「んー。そういう相談はあたしの専門外なんだけどねえ」

     「まあ、いいだろう。 客の頼みを引き受けてやるのもマスターというものよ」

     「ここには色んな魔法少女が立ち寄るからな、お仲間を求めてる魔法少女も居ないことは無い」

     「まぁ、あくまでこの喫茶は"きまぐれ"なモノなのでね。あまり期待はしないでおくれ」


織莉子「承知の上です」

     (これでいい。近いうち私に協力してくれる存在がここを訪ねてくると、予知で見えたもの)


織莉子「では。私はこれで失礼します」

     「コーヒー、御馳走さまでした」


マスター「お仲間の件はまぁ、なんとかやってみるとするよ」

     「ああ、そうだ。新人のきみに一つアドバイスをしとこう」

     「どんな事があろうと、魔法少女と敵対するような真似はしないほうがいい」

     「何事も穏便に、だよ。 さもなくば痛い目を見るハメになるからね」


織莉子「……ええ。御助言、痛み入ります」


マスター「あぁそれと、今度ここへ来た時にはもっと甘い飲み物を用意してあげよう」

     「カフェオレなんてどうかな? きっと気に入ると思うんだが」


織莉子「では、次の機会に」

     「楽しみにしておきましょう」


―――ちりん

今日はここまで

おりりんに喋らすの大変すぎるぷるぎす
受付ちゃんの苗字は「あわき」です。特に深い意味はないです(白目)


なぎさ「ぐっ、ああああ!!」


魔女「■■■■」


なぎさ「はぁ、はぁ……うぐ、う」

    (うぅ、なぎさはもう死ぬしかないのです)

    (どうやってもチーズが食べられないのに、頑張ったって仕方がないのです)

    「……せめて死ぬ前に、もう一口だけでもチーズが食べたかったのです」


魔女「■■■■■■」


      「そんな事で絶望してたら世話ないわ」


魔女「■■■■」

   「■■―――」

   「」


      「死んでしまったら何も残りはしない」

      「生きてさえいればどうとでもなる、と思うけど」


なぎさ「結界が、消えた」

    「あなたは……魔法少女、なのですか」


      「ただの"通りすがり"よ」

      「ほら、立って。貴女は亡くすには惜しい人だもの」

      「こんな所で絶望させる訳にはいかない」

      「一緒に来なさい。アナタもきっと、救われるから」

―――


ほむら「初めてカフェモカを飲んだのだけど」

    「甘くて優しい口当たりで美味しいわね」

    「日頃の疲れが取れる、といっても過言じゃないわ」


マスター「マスター冥利に尽きるお言葉をどうも」

     「カフェモカってのは、言うなればコーヒーとココアの合いの子」

     「魔法少女らの間でも人気あるドリンクな訳よ」


ほむら「ここに来るのは今日で二度目だけど」

    「他に客は居ないのかしら?」


マスター「基本的にはあたしと客一人、もしくは数人のお仲間で話し合うのがうちのスタイルさ」

     「後から来た客と揉めごとでも起こされちゃあ面倒だからな」

     「まあ魔法少女で相席なんてのは、よっぽどの事でもないと――」


―――ちりん


ほむら「!」


      「急患よ。見てやって」


マスター「……ふむ、随分とタイミングのよろしい事で」


      「先客が居たのね」


ほむら「貴女は?」


マスター「彼女はこの喫茶の……んー、何というべきか」

     「すまんよ"オーナー"、説明してやってくれ」


      「……アタシは"オーナー"という名で通っている。けど、そんなのは別段どうでもいい事だわ」

オーナー「アタシはそこの引き篭もりに代わって魔女を狩り、グリーフシードを提供している者」

      「そしてこの『喫茶こねくと』の、一番の常連客よ」


マスター「まあ、そういう事だ」

     「彼女はあたしの協力者。つまりは彼女の助力なくしてこの結界を維持する事は出来ない」

     「と、今はそんな話は置いといてだ。 急患と言ったな?」


オーナー「そうだったわね」

      「魔女退治のついでに、魔法少女を回収したから」


なぎさ「あう」


オーナー「あとはアナタがなんとかなさい。任せたわ」


―――ちりん


ほむら「魔法少女、のようだけど」

    「何の為に運んできたの?」


マスター「前にも言ったろう」

     「ここは心身ともに疲れた魔法少女らを癒してやるための結界」

     「しかし結界の入り口に辿り着くことも出来ないほど、疲れきった魔法少女も居たりする」

     「そういった場合には、こうして彼女に連れてきて貰っているという訳だ」


なぎさ「……」


マスター「ソウルジェムの状態がよろしくないな。まずは浄化してやらないと」

     「――――よし。一先ずはコレで大丈夫だろう」

     「きみ、何か食べたいモノとかはあるかい?」


なぎさ「……チーズ」

    「チーズケーキが、食べたいのです」


マスター「あい分かった、チーズケーキだな?」


なぎさ「でもダメなのです」

    「なぎさはどう頑張ってもチーズを食べることができないのです」


マスター「……それは一体どういう?」


なぎさ「一度でいいからチーズケーキを食べたいと願ったせいで、二度とチーズが手に入らない体になってしまったのです」

    「目の前にチーズケーキを出されても、なぎさには触れる事すら叶わないのです。余計につらいのです」


ほむら「貴女も、キュゥべえに騙されたのね」


マスター「ひとつきりのチーズケーキ、食べたら二度と味わえない……か」

     「こんな子供の屁理屈みたいな事をしてでも絶望させたいらしい」

     「だがアイツらも己の目的の為だ、あたしからは災難だったとしか言えん」


ほむら「! 貴女、そこまで知っているの?」


マスター「何十人もの魔法少女を相手にしてるんだぞ? それくらいの事は耳に入るさ」

     「いやしかし参ったな。それじゃケーキを作っても食べさせようがないぞ」


なぎさ「チーズを食べられないまま生きていても嬉しい事なんて何もないのです」

    「だからもう、なぎさは死ぬしかないのです……」


ほむら「魔法少女って、大抵の場合は二つ返事で契約してしまうと聞いてはいたけど」

    「こんな簡単なことで絶望してしまう物なの……?」


マスター「まあ、そんな悲観しなさんなって」

     「さて、どうしたものか……いや。方法はなくもないか」

     「ちょいと待ってな。 あたし――の手伝いなら、なんとかしてくれるだろうよ」

―――


なぎさ「す……すっっっごくおいしいのです!!」

    「このケーキ、クリームチーズの味がするのです!」

    「マスター! これは一体どうやって作ったのですか!?」


マスター「そいつはウチのシェフが作ったモノなんだが」

     「"塩豆腐とヨーグルト"を使ってクリームチーズ風のケーキに仕上げたそうだ」

     「名付けてベイクド・トーフケーキだとか言ってたっけな?」


ほむら「チーズを食べられないから、チーズっぽい味を塩豆腐とヨーグルトで再現するなんて……」

    「その発想は無かったわ」


マスター「"チーズに近い味のケーキにする"ってのはあたしの思いつきなんだけどね」

     「それよりお嬢さん、なにか飲み物は如何かな?」


なぎさ「はい!あったかい牛乳が欲しいのです!」


マスター「ホットミルクだね、すぐに用意しよう」


なぎさ「チーズケーキじゃないけど、なぎさはとっても満足なのです!」

    「今日まで頑張って生きててよかったのです!」


ほむら(笑顔が眩しいわ)

    (……カフェモカがすっかり温くなってしまったけど)

    「でも、美味しいわね」


なぎさ「本当に助かったのです!お世話になったのです!」


マスター「またいつでも来て頂戴な」

     「いくらでも御馳走してあげるからさ」


ほむら「もうチーズが食べられないからといって、落ち込んではダメよ」


なぎさ「はい!なのです!」


―――ちりん


マスター「ふう、あたしも大分濁らせてしまったな」

     「――――っと。これでよし」


ほむら「……やっぱり、結界の維持にも魔力を使っているようね」


マスター「結界を張ること自体はべつに大したことじゃないんだが」

     「この結界には"ソウルジェムの濁りを停滞させる"って効果もあるのさ」

     「まあ、その分だけこっちのジェムは濁ってしまうんだがね」


ほむら「大層な魔法ね」

    「……オーナー、と言っていたけど」

    「グリーフシードを提供して貰う事でこの結界を維持しているのね」

    「彼女、相当な経験を積んでいるって感じがしたわ」


マスター「その通り。ベテラン中の大ベテランさね」

     「あたしの知りうる限りでは最強の魔法少女だろうな」

     「街から街へと駆け巡り、そこを縄張りにしてる魔法少女に見つかる事なく魔女を狩っているらしい」

     「ゆえにグリーフシードのストックは相当なモノだろう。これはあたしの推理でしかないがね」


ほむら「まるで卵泥棒ね」


マスター「はは。巧い事おっしゃる」


ほむら「だけど、どうしてそんな凄腕の魔法少女が」

    「貴女のような戦えない魔法少女にタダでグリーフシードを渡しているの?」

    「そんな事をしても、彼女にはメリットなんて無いはずよ」


マスター「ふむ。普通はソコに疑問を抱くわな」

     「本人は"ボランティア"と言っていたが、なにか他にも事情があるとは思うよ」

     「しかし本人が話したがらない以上、あたしも深く気にしない事にしてるのさ」


ほむら「そんな事でいいの?」


マスター「いいさ」

     「何よりあの子は、ここ一番の常連ってのを自慢したいくらいにこの喫茶を気に入ってくれてるんだ」

     「そんな子が何か企んでるとは思えん。あの子はいいヤツだよ」

     「とりあえず今は、それでいいじゃないか」


ほむら「好い加減なのね。流石は気まぐれ喫茶のマスターってとこかしら」

    「それと……気になったのだけど、マスターとオーナーって何かとややこしいわ」

    「そもそも今の話からすると、オーナーというより"スポンサー"って感じでしょう」


マスター「なるほど、スポンサーね。 まあ確かに、そういう方がしっくりくるかもしれん」

     「だけども気にしなさんな。それも彼女なりのコダワリというヤツだろう」

     「ああしてクールぶっているけど、中身は意外と子供っぽくて面白いぞ?」


ほむら「クールぶってる、ね……」

    (とても他人事とは思えないわ)


ほむら「ちょっと長居しすぎたわね、そんなつもりは無かったのだけど」

    「ごちそうさま。 また来てもいいかしら」


マスター「もちろんだとも。歓迎するよ」

     「他の客がどうとかはあまり気にしなさんな。この喫茶はヒマな時のほうが多いんだ」

     「どうしてもって時は、今日みたいな事にもなるがね」


ほむら「よく分かったわ」

    (……オーナーを自称する魔法少女、その腕は本物のようだけど、協力関係を結ぶのは難しそうね)

    (街を転々とする魔法少女に、ワルプルギスの夜を相手にするメリットなんて無いもの)


マスター「? どうした、悩み事ならあたしに……」


ほむら「いえ、大丈夫よ。」

    「じゃあ、私はこれで」


マスター「ふむ、そうかね」

     「では。またの御来店、心待ちにしてるよ」


―――ちりん

―――ちりん


受付「いらっしゃいませー」

   「ようこそ、『喫茶こねくと』へ……」


ユウリ「――、」


受付「わわっ、大丈夫ですか!?」

   「……大変。ソウルジェムが限界に近い」

   「マスタぁ、マスター! グリーフシードを!急いで!」


マスター「よし、これで大丈夫だろう」


ユウリ「……世話掛けたね。助かったよ」


マスター「いやなんの。こういうのがあたしの務めだからさ」

     「……ふむ。ジェムが再び濁る気配もないな」

     「その様子からして、魔力の使いすぎが原因でジェムが黒ずんでいたようだね」


ユウリ「魔法の使いすぎ、か」


マスター「まあ、ただ単に疲れを溜め過ぎては良くないってコトさ」

     「意識的かどうかはさておき、この結界へ通ずるゲートを開けたのは幸運だったと言える」


ユウリ「幸運、ね」

    (お守りが効いた、ってことかな)


マスター「何にせよ無事でなによりだ」

     「もう少し処置が遅れていたら死んでただろうからな」

     「魔法は無暗やたらに使うものじゃないよ。自らの寿命を縮めるハメになるぞ」


ユウリ「……以後気を付けるよ」


マスター「まあ、なんだ」

     「魔女退治にせよ何にしろ、たまにはリラックスするのも必要ってモノよな」

     「ってな訳で、ここは何かデザートでも一つ。どうかな?」

―――


ユウリ「……うまい」

    「このミルクコーヒーゼリー、程よく甘くて中々うまい」

    「変に凝ったものより、これくらいシンプルなほうが好感を持てるな……」


マスター「なにやら一言余計な気もするけど、褒めて貰えて嬉しいよ」

     「ま、ゼリーはあたしが唯一作れるデザートだからな」

     「普段ならデザート含め、料理は全てシェフに任せてるんだけど」

     「今はあいにくソイツが外出中でね、作り置きしてるのはゼリーくらいしか無いんだ」


ユウリ「へえ、シェフなんて居るのか。出掛けてるなんて残念だ」

    「……さっきメニューを見てて目に入ったんだけど」

    「『バケツコーヒーゼリー』なんて物まで作ってるんだね」


マスター「今も冷蔵庫で冷やしてあるけど……食べてみたい?」


ユウリ「いや、それはさすがに止めとく」

    「パフェならまだしも、バケツゼリーなんて絶対に途中で飽きるだろうしな……」


マスター(あたしにとってはド甘いパフェのほうがよっぽど早く飽きがくると思うがね)


ユウリ「それじゃ、アタシはそろそろ行くよ」


マスター「早いな。もっと話していけばいいのに」

     「何か急ぎの用でも?」


ユウリ「そういう訳じゃないけど、学生の身だからさ」

    「あんまり周りには心配を掛けられない」


マスター「それもそうだな」

     「だけど、今日みたいな事になれば余計に悪い結果を引き起こす」

     「魔女退治以外で魔法を使うのは極力控えておくれ。魔法の使いすぎは"死"に直結するからな」

     「"そういう事"をするなら、グリーフシードのストックに余裕がある時だけにして欲しいね」


ユウリ「そう何度も言わなくたって分かってるよ」

    「アタシはまだ死ぬ訳にはいかない」

    「"約束"は果たさないと、な」


マスター「それが分かってるなら、もう大丈夫だ」

     「今度ここへ来る時は、いきなり倒れ込んだりしないでくれよ」


ユウリ「当然。次はデザートの為だけに寄らせてもらうからね」

    「……その時は友達も連れて来たいんだけど、いいかな?」


マスター「もちろん大歓迎だ。魔法少女でも、そうでなくても構いやしないよ」

     「あ、その時はバケツゼリーの上にパフェとか添えてみようか。そしたら食べてくれる?」


ユウリ「それは……いいアイデアだと思う。 アタシは食べようとは思わないけど」


マスター「はは、それは残念」


ユウリ「……っと、話が長くなったな」

    「それじゃあね、マスター」

    「また来るよ。"約束"する」


マスター「約束と言ったからには、ちゃんと守るように」

     「では。楽しみにして待ってるよ」


―――ちりん

今日はここまで

ユウリ死亡回避、やったぜ。

俺も似たような感想かな。

例えば『年季物の壁掛け時計が落ち着いた雰囲気の店にあってる』だとか、具体例がないから店内が分かりにくい。

味にしても現実的のコーヒーなら『豆がこげてエグ味を出さないために、熱いお湯を一度にいれるんじゃなくてゆっくり入れる』
紅茶なら『香りを出すために熱いお湯を一気に入れて風味を引き立てる』『長く香りを楽しむためにコップも暖める』
みたいに専門用語のない分かりやすいテクニックを描写や発言させると分かりやすいと思う。

読者の想像に任せるにしても、ここの住民に馴染みの喫茶店やコーヒー紅茶にこだわりがある人は余りいないと思う。

―――ファーストフード店


    (ごちそーさま、っと)

    (新作のヒレカツバーガー、美味しかったけどちょっと高いわなー)

    (さーてと、マスターには悪いけどもうちょっとブラついて……ん)

    (財布?)


キリカ「うあぁ、無い、ないっ、私のサイフぅ……」

    「最近モノを落としてばかりだよ、これじゃあ何の為に自分を変えたのか分からないよ……」


    (……どう見てもあの子のだよなぁ)


    「あのー」

    「この財布がイスの下に落ちてたんだけど」

    「あなたの、だよね?」


キリカ「! 私のサイフ!」

    「ああ良かった、えっと……ありがとう!お陰で救われたよ!」


    「いえいえ」

    「このくらい大したぁコトじゃーないですし」


キリカ「何かお礼を……そうだっ、何か奢らせてくれないかな!」


    「やーそんなのいいですって、さっき色々食べたばっかりだし」

    「えーっと、アレだよ。とりあえず場所を変えないかな?」

―――公園


キリカ「――へえ、料理人とはね」

    「全然そんな風には見えないけど」


    「あーうん、ソレはよく言われる」


キリカ「えーと確か……伴さん?でいいのかな」


    「セリナでいいよ。変に敬語を使われると照れくさいし」

    「それに私は――って、こっちも敬語は止したほうがいいよな」

    「俺はシェフとして雇われててさ。というより、誘いを掛けられたから手伝わせて貰ってるだけで」

シェフ「まあ、ちゃんとした資格があるわけでも無しなシロートってことよ」


キリカ「けど、その店から誘いを受けるほどの腕前なんだろう?」

    「私には取り柄なんて何もないから……正直に凄いと思えるよ」


シェフ「そう言って貰えるのは嬉しいけどさ」

    「取り柄が何もないってのはどうもネガティブで頂けないな」


キリカ「まあ、うん、あれだ。時折思ってしまうんだよ」

    「自分は本当に"変われた"のかな、なんて」

    「昔はかなり卑屈で根暗だった自分も、だいぶ明るい性格に変わったと思う」

    「……けど、それでもまだ踏み止まってしまう。私はその勇気を振り出せないでいるんだ」


シェフ「えーと……ともかく、色々悩みがあるって事はよく分かった」

    「差支えが無ければその話、詳しく聞かせてくれないか?」


シェフ「……ふーむ」

    「自分を助けてくれた女の子に声を掛けたいのに、その一歩……もとい一声が出せないと」

    「その気持ちは分からなくもないけど、大したアドバイスは俺には出来ないぞ?」


キリカ「でも、セリナは私に迷わず声を掛けてくれただろう」

    「私もそんな勇気が欲しいんだ。一体どうすればそんな風になれる?」


シェフ(さすがに財布の落とし主の前で知らないフリするほうが勇気がいると思うけど)

    「んー、まあ要は心の持ちようだよ。俺だったら、当たって砕けるくらいの気持ちでぶつかると思う」

    「結局その結果は、その女の子がキリカちゃんの事をどう思ってるかに依るんだ」

    「個人が悩んでどうにかなる問題でもないよ。困った事にね」


キリカ「うう、やっぱりそういうモノなのかな……」

    「もし拒絶なんてされたら、それこそ本当に私は散り果ててしまうよ」


シェフ「その不安を引きずってたら、いつまで経っても声なんて掛けられないぞ」

    「そうやってキリカちゃん自身が躊躇ってたら、何も始まらない。むしろ始まった時から終わってるぜ」

    「傷付く事を恐れてたら何にも触れられないってモンよ。なら最初から全霊をもって行くしかない」

    「それでダメなら――残念だけど、どう足掻いてもダメだったって事だろな」


キリカ「そんなっ!」


シェフ「……そうやって悩んだまま声を掛けたって、それこそ後悔しか残らないぞ」

    「"もっと素直に声を掛けられたら上手くいったかもしれない"なんて、思いたくないだろ?」


キリカ「そ、それはそうだけど……いや、確かにその通りだ」

    「嫌われる覚悟がなければ、人を好きになる資格なんて無いって事だろう?」

    「まさしく乗り越えるべき試練ってワケか。なんて事だ、辛すぎる」

    「けど、それでもだ。後悔だけはしたくない」

    「だから――私はやるよ。覚悟はもう出来たよ」


シェフ「気持ちに整理が付いたようで何より……俺は頑張れとしか言えないけど。うん、頑張れ」

    「さてと、他にもう悩んでる事とかは無いか?」


キリカ「強いて言うなら……もしも私が玉砕したら」

    「きみの喫茶店で、飛びっきり甘いケーキを1ホールまるごと食べるって事にしよう」

    「心配なのは、その後の胸ヤケくらいだよ」


シェフ「そういう冗談は大好きだぜ」

    「あーそうだ、財布を拾ったお礼がしたいって言ってたよな?」

    「じゃあヒマな時でいいからさ、うちの喫茶に寄ってってくれよ」

    「場所は……んー、まぁ分かり辛いトコにあるから、今度案内するさ」


キリカ「それが礼になると言うなら喜んで行くよ」

    「その時の為に、またサイフを落とさないよう気を付けないとね!」


シェフ「……そ、そうだなー。うん」

今日はここまで

ノイジーシトリンでのキリカちゃんを元にした話
えりかちゃんは多分オーナーさん辺りが魔女をブッ倒してると思うので平気だと思う

【伴セリナ】、通称シェフさん。苗字は「ともり」と読みます
どこかで似たような名前を見たとしてもそれは気のせいです
セヴァなんとかさんと似た喋り方だなーとか思ってもそれは気のせいです

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