兄「お前、本当に可愛いな」 妹「え?」(123)
妹「なにそれ、頭沸いた?」
兄「いやいや。素直に可愛いなって思ったんだよ」
妹「うっそくさ~」
兄「本当だって」
妹「はいはい。じゃ、可愛い妹になんか奢ってくれない?」
兄「いいよ、アイスで良い?」
妹「え?」
妹「ちょっとちょっと!」
兄「どうした?アイス嫌だった?」
妹「そうじゃなくて!」
兄「?」
妹「なんで奢ってくれんのよ!」
兄「なんでって、そりゃお前が可愛いからに決まってんだろ?」
妹「はあ?」
兄「可愛妹の為に尽くす兄。それってすごく素敵やん?」
妹「……」
兄「素敵やん?」
妹「うざ」
兄「ちょ!それは酷くね?」
妹「酷くない!」
妹「はぁ……あたし自分の部屋戻るから」
兄「アイスは?」
妹「いらないわよ!」
兄「あらら…」
妹「ふん!」
兄「…………ふむ」
~数日前~
兄「うぜえ」
友「ひどっ!?友達が目の前にいるのにうぜえってお前!」
兄「ん?あぁごめんごめん。うざいのはお前じゃねえよ」
友「なんだ。俺じゃなかったのか~」ホッ
兄「まあ、お前もたまにうざいけどな」
友「死ね!」
兄「それより聞いてくれよ」
友「なんじゃらほい?」
兄「さいきん妹がうぜえ」
友「あぁ~~~」
兄「なに?思春期って奴?態度でかいし、ちょっとした事ですぐ
つっかかってくるし」
友「あるある」
兄「こないだなんかドラクエのデータ消えた腹いせに俺のPCのエロゲ
全部消しやがったし」
友「うわぁ…」
兄「あれ、どうにかなんねえかな」
友「お前の妹って中一だっけ?」
兄「おう」
友「だったらもうちょっと成長すんの待つしかないだろーな」
友「うちの姉貴もそんくらいのとき、むっちゃ酷かったから」
兄「そうなんだ。あの優しそうな姉ちゃんがなぁ」
友「それ外面だけだって。家の中じゃ結構酷いのよ…」
兄「なんだ、どこも一緒か」
友「そうそう!この微妙な時期は大人しく時が過ぎるのを待つのが一番!」
兄「けどなぁ…」
友「なんだよ?」
兄「腹立つから無理矢理大人しくさせたい」
友「気持ちは分からんでもないけどな」
兄「なんかないか?こう…我儘娘を調教!みたいな画期的なアイディアは?」
友「そ~だな~……」
友「お!」ピコーン
兄「閃いた?」
友「これで上手くいくかどうかは分かんねえけどさ」
兄「うんうん」
友「褒めちぎってみるってのはどうよ?」
兄「褒めちぎるぅ!?おいおい、余計態度でかくならねえか、それ」
友「いやいやいや、物は考えようだって!」
兄「?」
友「いいか?あの年頃の女はいろんなモノに反抗的だ」
兄「まあな」
友「でも逆に言いかえれば、自分を認めてくれる人に対してはべた惚れに
なるんじゃないか?」
兄「え~~~?」
兄「そっかなぁ?」
友「そうだって!こないだしたエロゲでも似た感じの展開あったし!」
兄「エロゲと現実をごっちゃにするなよ…」
友「ままままま!ものは試しって言うじゃない!やってみる価値あるって!」
兄「う~~~ん…」
友「それともこのままひたすら耐えるか?」
兄「それはやだ」
友「だろ?だったらさ!」
で。
兄(う~~~ん、確かに今までと反応はちょっと変わったけど…)
兄(これはあいつの言う通り、効いているのか?)
兄「…………分かんねえ」
兄「ま、もうしばらくやってみるか」
兄(効果でなかったらやめよ…)
妹(…………なによあいつ、なによあいつ、なによあいつ!)
妹(お前が可愛いからに決まってんだろ?だって!)
妹(バッカじゃないの!?)
妹(あんなお世辞みたいな台詞ならべちゃって!)
妹「……ふん!」
翌日。
兄「う~~~~っす」
妹「……」プイ
兄「おっ、早いじゃん」
妹「……」モグモグ
兄「おいおい無視?」
妹「うるさい!」
兄「ありゃりゃ、朝からそんなに怒っちゃ折角の可愛い顔が台無しだぞ?」
妹「~~~~~~!」
兄「あっ、おい」
妹「なによ?」
兄「ほっぺ。ご飯粒ついてる」
妹「……」サワッ
兄「違う違う、こっち」スッ
妹「触んな!」ドカッ
兄「いたたたた…」
母「ちょっとあんた達!」
妹「ちがっ、こいつが!」
母「お兄ちゃんをこいつって呼んだりしちゃ…」
兄「ああ、良いんだよ母さん。俺が悪かったから」
母「あらそう?」
兄「うん。ごめんな?」
妹「……!!!」
妹「ごちそうさまっ!」バン
兄「あっ、おい」
妹「じゃ、学校行ってくるから!」タタタ
母「あらあら、困った子ねぇ」
兄「じゃ、俺も行くよ」
母「あらそう?」
兄「ん。じゃ行って来る」
母「行ってらっしゃい」
そして。
兄「う~~~っす」
友「はよ~~~っす」
兄「はぁ~疲れた~」
友「随分お疲れのようでんな」
兄「ああ、あのガキャ朝っぱらから腹立つわ~」
友「ま、まだやり始めたばっかなんだろ?そんなに焦るなって」
兄「でもなぁ~、ああいう持ち上げたりすんの俺のキャラじゃねーし、
むっちゃ疲れんだよな~」
友「だろうな」
兄「んだよ。おまえがあんなに言うからやってんだぞ?」
友「そもそもお前がなんとかしたいつったからじゃん」
兄「そりゃそーだけどさ」
友「別にそんなに無理する必要もないと思うぜ?」
友「嫌ならやめろよ」
兄「うんにゃ、やり始めたからにはもうちょい頑張る」
友「おぉ~青春だね~」
兄「どこがだよ」
友「青春だって!妹の性格直すために普通はここまでしねーだろ」
兄「まあなwww」
友「ま、がんばれ。陰ながら応援してる」
兄「お前も日の当たる場所に出てきても良いのよ?」
友「それは遠慮しとくわwww」
兄「そうかよwww」
兄「ああ、後さ」
友「おう」
兄「なんか良いイベントとかねーかな」
友「イベントwwwエロゲのしすぎだろwww」
兄「うっせーよ、お前ほどじゃねーよ」
友「うっせ」
兄「良いからなんか思いつけよ。エロゲならお手のもんだろ?」
友「おま……まあ良いけどさ」
友「それよりなんでイベントが必要なの?さっきも言ったけどまだ始めた
ばっかじゃん。ゆっくり行けよ」
兄「あ~、それ無理」
友「即答かよ」
兄「昨日、今日やってて思ったんだけどさ。多分俺、このままだと
妹が大人しくなる前にブチぎれると思うんだよね」
友「どんだけ気が短いんだよwww」
兄「だってあいつ、やっぱムカつくんだわ」
兄「だからさ、頼むよ。ワトソン君」
友「そこはホームズじゃないんだwwwワトソンなんだwww」
兄「お前なんかワトソンで充分だろ」
友「ひでえwww別に良いけどさwww」
友「…………う~~~~~ん、そうだな~~~」
兄「ワクワク」
友「むむ!」ピコーン!
兄「閃いた?」
友「確かお前の家、お袋さん昼からパートだったよな?」
兄「おう。夕方には帰って来るけどな」
友「だったらさ」ゴニョゴニョ
兄「ふむふむ……」
そして。
妹「ただいま~」
兄「おう、お帰り」
妹「げっ」
兄「げっとはなんだよ、げっとは」
妹「別に……それよりお母さんは?」
兄「今日は遅くなるって」
妹「ふ~~~ん?」
兄「だから今日の晩飯は俺とお前で作ることになりました~♪」
妹「はあ?なにそれ?」
兄「なにそれって、晩飯作ることになったよって」
妹「なんで!?」
兄「母さんの帰りが遅いから」
妹「えぇぇぇ~~~~…」
兄「仕方ないだろ、母さんも忙しいんだよ」
妹「でもだからって……」ジー
兄「なんだよ、料理好きだろ、おまえ?」
妹「あんたと一緒に作るのがいや」
兄(このガキャァ……)ピクピク
兄「そ、そう言うなって!こう見えても皿洗いは得意だぜ?」ビシッ
妹「……はぁ」
妹「分かったわよ、作れば良いんでしょ!作れば!」
兄「やる気になったか」
妹「言っとくけど、仕方なくだからね?母さんがいないから仕方なくよ」
兄「それでも良いさ!」
兄「いや~、手伝ってもらえると思ってなかったから感激!」
妹「……ふん!」
で。
兄「おぉ~~~!上手そう!さすがだな!」
妹「褒めたって何も出ないからね」
兄「出てるって!こんな上手そうな料理初めてだ!」
妹「お、お母さんの方が美味しそうじゃん…」
兄「そっか?お前が作ってくれた料理だって全然負けてないと思うぞ?」
妹「それ言いすぎ…」
兄「言い過ぎじゃないって!」
妹「そ、それより早く食べましょ。冷めちゃうし」
兄「ん、そうだな」
兄「じゃ、いっただっきま~す!」
妹「いただきます…」
モグモグモグモグ
兄「うん!」
妹「どう?」
兄「上手いよ、これ!」
妹「本当?」
兄「料理の味にウソはつかねーって」
妹「……」
兄「これなら毎日食べても飽きないな」モグモグ
妹「……」
兄「? どうした、さっきから黙って」
妹「別に…」
兄「ふーん」ガツガツガツ
妹「……」
兄「うめえ、うめえ!」ガツガツガツ
妹「……ねえ」
兄「あん?」
妹「おいしい?」
兄「美味しいよ?」
妹「…そう」
兄(う~~~ん、イマイチ良く分からんが、多少は効いてるのか?)
兄(今までだったら、飯食ってる間に話しかけてきたりなんかしなかったもんな…)
兄(…………だよな)
兄(じゃあやっぱり……あいつの言った通りにしてみるもんだな)
妹(……なんで話しかけたんだろ、あたし)
妹(兄貴なんて嫌いなのに…)
妹(…………でも)
妹(でも、料理褒めてくれた)
妹(美味しいって……ちょっと嬉しいかも……言ってくれたのが兄貴でも)
兄「あのさ」
妹「!」ビクッ
兄「どうした?」
妹「な、なんでもない!ちょっと考え事してただけ!」
妹「それより何!?」
兄「あ、あぁ。あのさ、また作ってくれる?」
妹「え?」
兄「だから料理。また作ってくれないかな?」
妹「はあ?なんであたしがあんたなんかに!」
兄「だってすごく上手かったから」
妹「え…」
兄「俺、やっぱりお前の料理好きだわ。昔はよく作ってくれたじゃん。
料理の練習って言って」
妹「あ、あれは…」
兄「もちろん毎日作ってくれって言ってるわけじゃないぞ?」
兄「母さんが用事あったり、いなかったりした時で良いからさ」
兄「また、な?」
妹「……」
兄「ダメ?」
妹「お、お母さんが料理作れないときなら…」
兄「マジ!?」
妹「うん…」
兄「やった!よっしゃぁぁぁぁ~~~~~!」グッ
妹「ちょ!?なにやってんの?」
兄「ん?ガッツポーズ」
妹「だからなんで!?」
兄「そりゃ嬉しかったからに決まってんだろ!」
妹「ちょ……やめてよ、恥ずかしい」
兄「はいはい、分かった分かった」
妹「もう…」
それから。
兄「ふぅ、食った食った」ゲプ
妹「食べすぎ」
兄「仕方ねーだろ、残すのもったいなかったし」
妹「なんでよ。ラップして明日の朝にまわせば良いだけでしょ」
兄「でも作り立てがやっぱ一番うまいじゃん?」
妹「それはそうかもしれないけど…」
兄「まあまあ、食っちまったもんはしょうがねえよ」
兄「ごちそうさま、上手かったよ」
妹「あ、ありがと…」
兄「おう、んじゃ俺自分の部屋戻ってるから!」
妹「あ、うん…」
兄「んじゃ!」
タタタタタ
妹「……」
妹「……料理、か」
妹「久し振りに作ってみたけど、やっぱ楽しかったな」
妹「……あと、美味しいって言ってくれたし。兄貴だけど」
妹「…………兄貴って何が好きだったけ?」
妹「…………カレーだったかな?」
妹「……今度聞いてみよっかな、うん」
兄「ちょっと調子に乗って食べ過ぎたか…」ウプ
兄「けど、これはかなりの手応えなんじゃないか?」
兄「まさかこんなに上手く行くとは…」
兄「エロゲ展開すげーな…」
ジャジャーン♪
兄「っと」ピッ
兄「はーい。もしもーし」
友『ういーっす』
兄「おう、どうした?」
友『いや、どうなったのか気になって』
兄「ふふーん!上手くいったぜ、相棒!」
友『マジで!?』
兄「おうよ、大マジ!お前すげーわ」
友『そっか、そいつは良かった』
兄「いや~、それにしてもまさかあんなに大人しくなるとはなぁ!」
友『え?もしかしてもう調教完了?』
兄「流石にそこまでは行ってないな。でももうかなりラストまで来てる予感」
友『早いな、おいwww』
兄「それも全部お前のおかげだよ、サンキュな」
友『そっかそっかwww』
兄「ああ、そうだ」
友『どした?』
兄「明日学校休みじゃん?ついでに明日のイベントもなんか考えてくんない?」
友『今?ここで?』
兄「お前なら楽勝だろ」
友『簡単に言ってくれんな、おい』
兄「頼りにしてるよwww」
友『そうだな……じゃあさ、こういうのはどうだ?』
兄「ふむふむ…」
翌日。
兄「ういーっす」
妹「おはよ…」
兄「おう、おはよっ」
妹「……」ジー
兄「ん?」
妹「その格好、どっか行くの?」
兄「ちょっとね」
妹「ふーん……あっそ」
兄「気になる?」
妹「別に…」
兄「んじゃ、待ち合わせに遅れるから俺もう行くから」
妹「どうぞご勝手に~」ヒラヒラ
兄「いってきまーす」バタン
妹「……」
兄「さてと…」
友「おう、こっちこっち~!」
兄「いたいた」
友「早かったじゃん」
兄「まあな。思ったより妹起きて来るの早かったし」
友「そっかそっか」
兄「それはそうと、なんで妹を大人しくさせるためのイベントのはずが
俺が一日家を出にゃならんのかそろそろ説明が欲しいんだけど」
友「いやいや、妹攻略の大事なイベントですよ。これは?」
兄「エロゲの展開だったらだろ?」
友「エロゲの展開だったらね」
兄「良いから説明よこせ」
友「まあ、軽く説明しちゃうとヤキモチ焼いて貰おうかなぁと」
兄「ヤキモチ?」
友「うん、ヤキモチ」
兄「話が見えてこねー」
友「そうだな……例えばさ、そこまで仲のよくない男女がいるとするだろ?」
兄「おう」
友「で、その二人の距離を縮めるためには主に3パターン
あるじゃん」
兄「そうなの?」
友「ごめん、適当に言ってみただけ」
兄「……」
友「そんな残念そうな顔すんなよ、興奮するだろ?」ゾクゾク
兄(うわぁ…)
友「ま、俺が言ってるのはあれだよ」
友「仲良くさせるためには、まずお互いを意識させるところから
始めるってことね」
兄「?」
友「えーとさ、昨日までお前は妹を持ち上げまくってただろ?」
兄「おう、お前に言われたからな」
友「そして家にいる時は妹にべったりだった!」
兄「ふだん会話しないから持ち上げるためには仕方ねーよな」
友「と、そんな具合に四六時中ずっと一緒だった相手が突然自分の
前からいなくなったら何処か落ち着かない気分にならないか?」
兄「なるのか?」
友「なるだろ、ふつう」
友「つまり、いつも傍にいたお兄ちゃんがいなくなって妹ちゃんは
おまえの事を意識しちゃうのさ!大作戦!」
兄「上手くいくのか、これ?」
友「あんだよ、俺の建てた作戦だぞ?」
兄「う~~~ん、確かに今まではすごい助かったけど、これはなぁ」
友「おやおや、もしかして妹とべったり出来ないのがご不満か?」
兄「ちげーよ」
友「隠さなくても良いんだぜ、シスコン?」
兄「シスコンじゃねーから」
友「はっはっは!口ではそう言ってもお前はもう立派なシスコンだよ!」
兄「はぁ…」
友「それよりせっかく家来たんだから遊ぼうぜ!なにする?」
兄「ん~、じゃあぷよぷよで」
友「あいよっ」
そのころ。
妹「…………ひまだ~」
妹「うぅ~~~」
母「あらあら、どうしたの?そんなに唸って」
妹「ともちゃん、遊ぶ約束してたのに用事できたから無理だって…」
母「あらあら、それは残念」
妹「ひまだ~~~」ゴロゴロゴロ
母「それなら何処か出かけて来たら?今日は天気も良いし、ショッピング
とかどう?」
妹「え~一人で買い物ぉ?やだ~」
母「そう?良いと思うんだけどなぁ、母さん」
妹「……それはそうとさ、お母さん」
母「なにかしら?」
妹「昨日の夜……ううん、なんでもない」
母「あら、そう?」
妹「うん」
妹「それより今日もパートあるの?」
母「ええ、今日も遅くなるかもしれないから、もし帰れなかったら
晩ご飯、お兄ちゃんと外食してくれる?」
妹「え~~~……お父さんは?」
母「お父さんは今日大学の同窓会だからいらないって」
妹「ふ~~~ん…」
母「お金渡しとくから、ね?」
妹「分かった…」
母「ふふっ、じゃヨロシクね?」
妹「うん…」
妹「外食ねぇ…」
兄「俺、やっぱりお前の料理好きだわ。昔はよく作ってくれたじゃん。
料理の練習って言って」
妹「……」
妹「べ、別に兄貴が褒めてくれたから作るわけじゃないもん!」
妹「お母さんが作れないかもしれないから、作るだけなんだから!」
妹「それだけなんだからっ!」
妹「……それだけだもん」
妹「こんなに早く作る機会が来るなら好きな料理聞いとけばよかった…」
妹「カ、カレーで良いよね?うん」
妹「よ~~~し、そうと決まれば!」ガチャ
妹「え~っと冷蔵庫の中には…」
妹「じゃがいも、玉ねぎ……ニンジン、はないか…)
妹「あと牛肉なくて…」
そのころ。
兄「昇龍拳!昇龍拳!昇龍拳!!!」
友「波動拳波動拳波動拳!」
兄「竜巻旋風脚!」
友「うぅわ!」
兄「ふふん!」フンス
友「くっそ、また負けた!」
兄「へへん、俺に勝とうなんざ100年早い!」
友「なら次はテトリスで勝負だぁ!」
兄「望むところよ!」
兄「ところでさ」
友「おう」
兄「お前んとこの姉ちゃんは?」
友「出かけてる」
兄「ふ~ん」
友「どしたの?」
兄「いや~久し振りにお前んち来たから挨拶でもしようかなと」
友「おろ?もしかして家の姉ちゃんみたいなのがタイプ?」
兄「違うと言えばウソになるなwww」
友「はははははは!やめとけやめとけ!」
友「お前の目にアレがどう映ってんのかしんねーけど、酷いぞぉ?」
兄「そりゃ姉弟だからだって」
友「そうでもないって!あの人こないだなんかさ…」
友姉「こないだ、なんだって?」
友「!?」ビクッ
友姉「ねえ、聞きたいなぁ?」
友「ね、姉ちゃん?出かけたんじゃ…」ヒクヒク
友姉「思ったより早く用事が終わったからね。で、あたしがどうしたって?」
友「い、いやぁ~」
友姉「あとであたしの部屋に来なさい、良いわね?」
友「……」
友姉「返事!」
友「は、はい…」
友姉「よろしい」
友姉「邪魔して悪かったわね。楽しんでってね?」
兄「は、はい…」
友「うぅぅぅぅ…」ガタガタガタ
兄「……お、おい」
友「なにも聞かないでくれ…」
兄「……う、うん」
友「でもこれで分かったろ?姉という存在の恐ろしさが…」ブルブルブル
友姉「聞こえてるわよ?」ガラッ
友「ひいっ!?」
友姉「ふんっ」ピシャン
兄「……」
友「うわぁぁぁぁぁぁ…」ブルブルブル
兄(確かにこれは認識を改めざるを得ないかもな…)
兄(姉って怖いんだな。うちはまだ妹で良かったのかも…)
一方。
妹「よし!ご飯も炊けたし、サラダもバッチシ!そして本命のカレーも…」
グツグツ コトコト
妹「良い感じに煮込めたみたいだし。あとは兄貴が帰ってくるの待つだけ!」
妹「ふふん♪」
妹「早く帰って来ないかな~…なんて」ワクワク
妹「……」ワクワク
妹「って、なんで兄貴の帰りを嬉しそうに待ってんのよ、あたしは!」
妹「バカじゃないの?」
妹「……そういえば、あたしどうして兄貴のこと嫌いなんだろ?」
妹「昔はこんなんじゃなかった気がするのに…」
妹「…………」
妹「昔、かぁ」
妹「どんなんだったかな、兄貴とあたしって」
~~~以下、回想~~~
妹「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
妹「おかぁぁぁさぁぁぁん、おとうさぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
妹「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
妹「おにいちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
妹「ドコ行ったのぉぉぉぉぉぉ!?」
妹「ねぇぇぇ!!!みんな~~~~、ドコ~~~~!?」
妹「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
妹「ヒック……ウック……」
妹「うぅぅぅぅぅぅ…」
妹「お母さん…お父さん…お兄ちゃん……」
妹「ウック…みんなぁ……」
兄「なんだ、また泣いてるのか?」
妹「!?」
妹「お兄ちゃん?」
兄「よっ、あんまり遅いから迎えに来てやったぞ」
妹「お兄ちゃん、お兄ちゃ~ん!!!!」タタタタタ
兄「あっ、おい、そんな走ったら…」
コテッ
妹「あたっ」
兄「言わんこっちゃない」
妹「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
兄「大丈夫か?」タタタ
妹「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
兄「…ほら、痛いの痛いのとんでけー!」
妹「グス…グス…」
兄「どうだ?」
妹「……痛い」
兄「そっか」
兄「歩ける?」
妹「ムリ…」
兄「仕方ないな、ホラ」スッ
妹「?」
兄「おんぶだよ、おんぶ」
兄「乗りな」
妹「うん♪」パァァァ
妹「わぁい♪」
兄「やっと泣きやんだ。もう痛くないか?」
妹「うん♪」
兄「そっか」
妹「♪」
兄「それより、なんでまたこんなトコまで来たんだ?」
兄「母さんの誕生日プレゼント買いに花屋さんに行ったと思ったのに」
妹「あ…」
兄「?」
妹「……」
兄「どうした?」
妹「お財布、落としちゃった。探したけど無かったの…」
妹「だから…」
兄「だから、お花畑でお花探してたの?」
妹「うん…」
兄「そっか」
兄「いいお花見つかった?」
妹「うん♪」
兄「そりゃ良かった」
兄「でも今度からは財布落としたらまず家に帰って来いよ」
妹「……」
兄「兄ちゃんも一緒に財布探すの手伝うからさ、な?」
妹「…うん」
兄「良い子だ、ほら」スッ
妹「あっ、これ…」
兄「道に落ちてたから拾っといた。もう失くすなよ?」
妹「お兄ちゃん…」
兄「みんな心配してるだろうから、帰ったらちゃんと謝るんだぞ?」
妹「うん♪」
~~~回想終了~~~
妹「そういえば、こんな事もあったけ」
妹「あたしが花屋にいると思ったのにいなくて、街中探しまわって
くれてたんだっけ」
妹「懐かしいな」
妹「お兄ちゃん、か…」
妹「ふぁ…」
妹「張り切ってカレー作ったらなんだか眠くなってきた…」
妹「ちょっとだけ、休憩…しよ…」ウトウト
…………
……
…
妹「……ん」
妹「ふぁ…あ」ノソッ
妹「あれ……毛布?」モソモソ
兄「おっ、起きたか?」
妹「あっ、お兄ちゃん…」
兄「疲れてたみたいだから掛けといたんだ」
妹「あ、ありがと…」
兄「うん」
妹「あ!」
兄「どした?」
妹「今何時?」
兄「8時。よく眠ってたみたいだな」
妹「そっか……そういえば、ご飯どうしたの?もう食べた?」
兄「いや、まだ。お前が起きてから一緒に食べようと思ってたから」
妹「そ、そう…」
兄「うん」
妹「…………」
兄「どうしたんだよ、さっきから黙って」
兄「もしかして体調悪いのか?」
妹「そ、そんなことない!」
兄「本当に?ムリはすんなよ?」
妹「だ、大丈夫だってば!」
妹(なんか昔のこと思いだしたら急に恥ずかしくなってきた…)
兄「?」
兄「とりあえず飯にしようぜ。なんか母さんもどっか出かけたのか
いないし」
妹「あ、うん…」
兄「おっ、今日はカレーかぁ、上手そうだな!」
妹「……」
兄「ほい、おまえの分も」ヨソイ
妹「あ、ありがと…」
兄「そんじゃいっただっきまーす!」
妹「いただきます…」
兄「うん!うめえ!」ガツガツガツ
妹「ホント?」
兄「おう!やっぱカレーは最高だよな!」
妹(お兄ちゃんの好きなのってやっぱカレーだったんだ、良かった…)
兄「けど母さんはドコ行ったんだ?」
兄「飯はあるからパートからは戻ってるみたいだけど、お前なんか知んない?」
妹「あっ……あのさ、お母さん多分まだ帰ってないと思う」
兄「え、でもコレ…」
妹「こ、これ。あたしが作ったから…」
兄「え?」
妹「だからあたしが作ったの!も、文句あある?」
兄「……い、いやないけど」
妹「そ、そう……だったら良いわよ」
兄「……」
妹「……なに?」
兄「いや別に……」
妹「ふん!」
そして。
兄「ごちそうさま~」
妹「はい、お粗末さまでした」
兄「上手かったよ、カレー」
妹「そ、そう」ツン
兄「じゃ、じゃあ俺自分の部屋戻ってるから…」
妹「う、うん…」
兄「……」トタタタタタ
ガチャン
兄「……ふう」
ジャジャーン♪
兄「っと」ピッ
兄「もしもーし」
友『うーっす』
兄「おう」
友『どうでしたかな、塩梅は?』
兄「うぅん…」
友『もしもし?』
兄「あ、あぁ、ごめんごめん」
友『どしたんだよ。まさか妹ちゃんヤキモチ焼き過ぎて怒って
たりとか?』
兄「いや、そういうんじゃないんだ」
友『?』
兄「なんかさ」
友『おう』
兄「家帰ったらカレーがあった」
友『良かったじゃん。お前好きだろ、カレー?』
兄「それはそうなんだけどさ……そのカレー作ったの妹みたいなんだわ」
友『マジッすか?』
兄「大マジ」
友『やったじゃん!ついに妹ちゃんを大人しくさせるのに成功したな!』
兄「だとは思うんだけど…」
友『まだなんかあんのか?』
兄「なんか、妹がちょっとよそよそしくなってんだよなぁ…」
友『え…』
兄「しかも俺の思い違いじゃなかったら、あいつ俺の事お兄ちゃん
って呼んだし」
友『いつもはなんて呼ばれてんの?』
兄「兄貴」
友『……お前、まさかとは思うが妹に変なことしてねぇよな?』
兄「するかバカ」
友『だよな…』
兄「うわぁ…なんかちょっとなんだろ、これ…上手く言葉にできないけど
俺が思ってたのとなんかちょっと違う…」
友『同感だな』
兄「あっ、やっぱり?」
友『うん』
兄「俺はなんつーかさ、こう…妹が昔みたいにお兄ちゃんお兄ちゃんって
後ろをトテトテついてくるの想像してたんだよな」
友『分かる』
兄「それがなにコレ?なんか胸の奥がキュンキュンする」
友『おまえ、それって…』
兄「やめろ、それ以上は言うな」
友『やだ、言いたい』
兄「言ったら切る」
友『それ、妹のことおん…』
プチッ ツーツーツー
ジャジャーン♪
兄「言ったら切るっつたろ?」
母『え、えぇ?』
兄「!?」
兄「あっ、か、母さん?」
母『そうだけど、なにかあったの?』
兄「ご、ごめん。コッチの話」
母『そう。それはそうと、ちゃんとご飯食べた?』
兄「う、うん」
母『そ、良かった。お母さん今日ちょっと帰れないかもしれない
んだけど留守番頼めるかしら?』
兄「え…」
母『ごめんねぇ、ちょっとパート先で事故が起きちゃって帰れないのよ』
兄「あ、そういうこと……うん。分かった。母さんも気をつけて…」
母『ゴメンなさいね。明日には帰れると思うから』
兄「うん、分かった…じゃ…」プツッ
兄「……」
つ鏡
妹「……」
妹「……」
妹「……」
妹「……」
妹「…………なによ」
妹「兄貴があたしのカレーおいしいって言ってくれただけじゃん」
妹「なのになんでこんなに嬉しそうな顔してんのよ、あたし」
妹「気持ち悪い…」
ドンドン
妹「!?」ビクッ
兄「お~い、いるかぁ?」
妹「な、なに!?」
兄「なんか母さん今日帰ってこれないみたいだから、遅くまで起きて
ないでそれなりの時間には寝ろよ?」
妹「……」
兄「んじゃ、それだけ」
妹「……お母さん、帰ってこないんだ」
ドキドキドキ
妹「!?」
妹「ちょ!?なにドキドキしてんのあたし?」
妹「あ、兄貴と二人っきりなだけでしょ!?」
妹「なんでドキドキしてんのよ、気持ち悪い。バッカじゃないの?」
兄「よっ、あんまり遅いから迎えに来てやったぞ」
妹「!?」
妹「む、昔のこと思いだしすぎ!兄貴なんか、別に…」
妹「……そ、そんなことよりドラマ始まるし見なくちゃ!」
妹「ドラマでも見てたら忘れられるもん!」
3時間後。
兄「……なぁ」
妹「な、なに?」
兄「なんで俺の部屋のベッドで寝てんの?」
妹「い、良いでしょ。別に!?」
兄「狭いんですけど…」
妹「仕方ないじゃん!ドラマ怖かったんだもん…」
兄「怖がりなくせにホラーもん見るってどうよ」
妹「だって、いつもはお母さんやお父さんいるもん…」
兄「録画して明日見りゃよかったのに…」
妹「う、うっさい!可愛い妹が隣で寝てあげてるんだから感謝しなさい」
兄「……」ジー
妹「う……こ、こっち見んな、ばかぁ…」
兄「やれやれ…」
妹「ば、バカにしてるでしょ?」
兄「誰もバカにしてなんかないだろ」
妹「し、してるもん!目がバカにしてる!」
兄「言いがかりだ…」
妹「じゃあ、顔こっち向けなさいよ!」
兄「はいはい…」クルッ
妹「///」ボッ
兄「?」
兄「おい、どうし…」
妹「う、うっさい!向こう向いて!」
兄「り、理不尽な…」
妹「良いから!」
兄「へいへい…」クルッ
妹「うぅ…」ドッドッドッ
兄「それよりさ」
妹「なに?」
兄「そのドラマってそんなに怖いの?」
妹「見てないの?」
兄「見てたらこんなこと聞かねえよ」
妹「それもそっか」
兄「お前が怖がりなのは知ってたけど他人の布団に潜り込むほどなのか?」
妹「怖いってもんじゃないってあれ!」
兄「ふ~~~ん」
妹「ふ~んって聞いたわりには興味薄いわね」
兄「ホラーってあんまり見ないもん、俺」
妹「む!……身代わり人形と身体が交換された姉を持つ弟が、夜な夜な女子高生
の首を狙う殺人鬼と相対する画期的なドラマなのに!」
兄「なんかよく分からんストーリーだな…」
妹「怖いんだって!一回見てみてよ!」
兄「まぁ、興味が向いたら今度な」
妹「約束だからね?」
兄「おう」
兄「……」
妹「……」
兄「……」
妹「ねえ…」
兄「なに?」
妹「なんか喋ってよ」
兄「はあ?」
妹「い、いいでしょ?怖いんだからあたしが寝るまでなんか喋ってて!」
兄「え~…」
妹「可愛い妹の頼みが聞けないの?」
兄「……わぁったよ」
妹「分かれば良いのよ、分かれば!」
兄「でも急に喋れっつわれてもなぁ…お前、どんな話が好きなの?」
妹「それあたしに聞く?」
兄「急に喋れって言われた俺の身にもなれ」
妹「わ、分かったわよ……そうね、昔の話とか?」
兄「昔の話ねえ……そうだなぁ、昔のお前は可愛かったなぁ。いつも
お兄ちゃんお兄ちゃんって俺の後ろついてきて」
妹「む……今は可愛くないっての?」
兄「誰もそこまで言ってないだろ。でも昔は本当に可愛かったんだよ」
兄「よたよたついて来て、俺が近くにいるとすごく嬉しそうにしてたし」
妹「な……嬉しいわけないでしょ」
兄「いや、嬉しそうにしてたって」
妹「してない!」
兄「意地っ張りだなぁ…」
妹「だってしてないもん」
兄「まぁ、小さかったしな。覚えてないかもしんないけどお前が母さん
の誕生日プレゼント買いに行ったときとかさ」
妹「!?」
兄「俺が探しに行ったら泣きまくってるし、俺を見つけたら走ってこけるし」
兄「こけてまた泣くし、でも俺がおんぶしてやったら凄く嬉しそうに
はしゃいだりしちゃって」
妹「……」
兄「あのときは本当に可愛かったんだよ」
妹「……」
兄「?」
兄「おい、寝たのか?」
妹「……」ギュ
兄「?」
妹「な、なんでもない……」
兄「そうか?」
妹「あ、あたし、なんだかもう大丈夫みたいだから自分の部屋戻るよ」ムクッ
兄「そっか?」
妹「うん…」
兄「まぁ怖くなったらまた来いよ」
妹「ん、ありがと…」バタン
兄「……」
妹「……」
妹「覚えてたんだ、お兄ちゃんも……」
妹「あ……」
妹「今あたし、お兄ちゃんって…」
妹「お兄ちゃん、か…」
妹「お兄ちゃん……ん…」
翌朝。
兄「ういーっす」
妹「あ……お、おはよ」
兄「ん?おはよ。早いな」
妹「う、うん…」
兄「夕べはちゃんと寝れたか?」
妹「だ、大丈夫だったよ!」
兄「そか」
妹「うぅ…」
兄「どした?」
妹「な、なんでもない!それよりお兄ちゃん!早く顔洗って来なよ。
学校遅れるよ?」
兄「あ、あぁ」
妹「急いで急いで!」
兄「ん?」
兄(今、お兄ちゃんって…)
妹「なに?」
兄「いや、なんでも…」
妹「ふん!」
兄「…………」
妹「ほら、ボーっとしないで!シャキッとしなさい、シャキッと!」
妹「遅刻なんかして可愛い妹に恥かかさないでよ?」
妹「分かった?お兄ちゃん!」
おわり
このSSまとめへのコメント
すばらしい
マジ神やわ。本当は兄が好きで本性をハッキリ出せない妹がこれまた良い感じ。感動しました
終わり方がベスト!
最高だね(人*´∀`)