ギンコ「この文は……差出人は真白か」カサ(62)

小紅「……」トントントン

小紅(なんだか最近腕が……何処かにぶつけただろうか?)グッグッ

真白「小紅? どうしたんですか?」

小紅「いや、何だか腕が動かし辛いような気がしたんだ。多分何処かにぶつけたんだと思う」

白夜「小紅、大丈夫か?」

小紅「ああ、大した事無いから気にしないでくれ」

真白「こんな事、紅緒に聞かれでもしたら大騒ぎしますよ?」

小紅「あはは、そうだな。気をつけるよ」

真白「小紅?」

小紅「なんだ?」

真白「肘の所、痣ですか?」

小紅「え? 本当か? うーん、私には見えないなぁ。後で鏡で見てくるよ」

真白白夜「え?」

小紅「ど、どうしたんだ二人して。私、何か変な事を言ったか?」

真白「いえ……ですがこれは」

白夜「……」コクリ

小紅「え? え? 本当にどうしたんだ?!」

真白「いえ、小紅は気にしないで下さい。腕の事も平気ですので」

小紅「何か重大な病気とかか?!」

白夜「大丈夫……大した事無い」

小紅「さっき二人で目配せしていたよな! 本当に大した事無いのか?!」

真白「勿論です。大船に乗ったつもりでいて下さい!」フンス

一ヵ月後
小紅(うーん、二人は大した事無いって言っていたけど……最近余計に腕が動かない時がある)

小紅(病院行くべきかなぁ……姉様に知られたら大事になるし……)ピンポーン

小紅「あ、はーい」ガチャ

ギンコ「どうも」

小紅「? どちら様ですか?」

ギンコ「旅の蟲師をしているギンコってもんだ。三峰真白に呼ばれたんだが在宅しているだろうか?」

小紅(真白の客人か)

小紅「今呼んできますね」

ギンコ「ああ、すまんね」

小紅「真白、お客さんが来てるぞ」

真白「え? 私にですか?」

紅緒「珍しいわね……はっ! まさか真白たんの可愛さにあてられた変質者!!」

真白「なに馬鹿な事を言っているんですか。玄関まで聞こえますよ」

小紅「ギンコ、って言う人だぞ」

白夜「え……」

真白「はああああ!? ギンコですってえぇぇ?!」

真白「なんでいるんですかぁ!! ギンコぉ!!」

ギンコ「よう、久しぶりだな」

真白「来る前に連絡して下さいって書いたじゃないですかぁ!」

ギンコ「文は送ったんだがな。俺のが先に着ちまったか」

真白「おまけにもう一ヶ月も経っているじゃないですかぁ!」

ギンコ「なんだ? 急ぎの用じゃないって書いたのはお前だろ」

白夜「ご無沙汰してます」

ギンコ「よう、白夜も元気そうだな」

紅緒「どういう知り合いなのかしら?」

真白「蟲を生業にしている人です。私自身もお世話になった事がありますよ」

白夜「村もお世話になっている」

小紅「虫、え? なんだって?」

紅緒「昆虫に関する学者とかじゃないのかしら?」

ギンコ「俺達の範疇の蟲ってのは昆虫じゃあない。そして、俺達とは異なる命の在り方をしているものだ」

ギンコ「見える者と見えない者がいるからな。お前さん達には見えていないのだろうな」

ギンコ「で、どんな蟲患いだ?」

真白「紅緒がいますが……まあこれで解決するしいいですか」

紅緒「なになに? 真白たんがあたしの心配をしてくれるの?」

白夜「小紅の腕を見て下さい」

小紅「え? 私?!」

真白「この間の腕の事、蟲が原因ですよ。まあ私もそれが膝になった事がありますし」

ギンコ「腕にか。少し見せてもらってもいいか?」

小紅「あの、どうでしょうか?」

ギンコ「確かに蟲が原因だな。とは言え大したもんじゃないしすぐ治る」

ギンコ「薬を用意するから待っていてくれ」ガサゴソ

真白「ほら、大丈夫でしょう?」

小紅「いやまだ治った訳じゃないし」

紅緒「小紅、腕の調子が悪かったの?」

小紅「あ、はい。でも全然大した事無いですよ?」

紅緒「小紅~そんな大事な事を黙っていたの~?」モモモ

小紅「ギ、ギンコさん! その虫の話って聞かせてくれませんか?!」

ギンコ「蟲の話っつてもなあ」ゴリゴリ

真白「そもそも小紅達は蟲について知らないですからね」

真白「その辺りの説明でもいいんじゃないですか?」

小紅「見えない人もいるって言ってましたけど、幽霊みたいなものなんですか?」

ギンコ「俺達のように存在しているとも、幻とも言えない」ゴリ

ギンコ「だが影響を及ぼしてくる。今の小紅のようにな」カササ

ギンコ「まあなんだ、世を構成しているものの一部だ。それ以上でもそれ以下でもない」サラサラ

ギンコ「そら、できたぞ」

小紅「粉薬ですか?」

ギンコ「いや、灸のようなものだ。そのままの体勢でいてくれ」

小紅「お、お灸ですか……」

紅緒「お灸?! 火傷したりしないのよね!?」クワッ

真白「私もやりましたけど、そんなに熱くないですよ?」

小紅「そういえば真白も昔これになったんだっけ?」

ギンコ「ああ、1,2年くらい前かね」

ギンコ「それ以前の蟲患いで訪れて以来、白夜達の村には時折寄らせてもらっている」

ギンコ「あそこの山は光脈筋で、質の良い薬草が採れるから分けてもらっているんだ」

小紅「こうみゃく、すじ?」

紅緒「なんだか次から次へと色んな話が出てくるわねぇ……」

ギンコ「まあお前さん達の与り知らない世界だ。気にする事も無い」

ギンコ「ところで真白も白夜もなんでこんな所で暮らしているんだ?」

真白「小紅と白夜は許婚同士なんですよー」

紅緒「」ギリッ

ギンコ「ほーそりゃ目出度いな」

小紅「そんなあっさり?!」

ギンコ「? なんか問題でもあったのか?」

小紅「あ、いえ、その許婚って珍しいのに普通そうだったので」

真白「私達の住む所だと珍しくないんですけどねー」

ギンコ「まあ俺もそうした僻地に行く事のが多いからな」

紅緒「その虫っていうのは山の方が多いの?」

ギンコ「一概には言えんが大方はそうなるな」

小紅「ヘー……じゃあ白夜達のところは凄いんだな」

真白「それに光脈筋という事もありますからね」

小紅「?? そういうものなのか?」

真白「ええ。光脈筋というのは命の素が集まっている場所、みたいなものだと思って下さい」

小紅「あ、あれ……?」

紅緒「? 今何か小紅の肘から出てきたような」

白夜「小紅、腕は動くか?」

小紅「あ、本当だ。問題なく動く」

ギンコ「これで大丈夫だな」ガタゴソ

真白「あれ? もう行くんですか?」

小紅「え? あ! 今、お茶を用意しますね!」ワタワタ

ギンコ「お構いなく。用があってな、少々急がにゃならん」

真白「珍しいですね。ギンコが急がないといけないだなんて」

ギンコ「近々と言ってだいぶ待たせちまっているからな」

真白「ギンコは人を待たせる才能がありますからね。相手もあまり当てにしてないんじゃないんですか?」

ギンコ「かもしれんなぁ」ガシャ

小紅「あのお代の方は……」

ギンコ「なに、白夜達の村で薬草を分けてもらうさ」

ギンコ「それじゃあ達者でな」

小紅「……」ポカーン

真白「どうしました?」

小紅「いや……何ていうか色々と凄い事を体験したはずなのに、風のように過ぎ去って行ったなぁと思って」

紅緒「ギンコっていう人、いつもああなの?」

真白「そうですねー……まあ、マイペースではありますね」

白夜「のんびりしている時もある」

真白「山でゆっくり薬草集めていたりしてましたね」

真白「あ、そうだ。お母さんからまた山菜を取りに来ないかと言われているんです」

真白「来週の土曜日に帰ろうかと思うのですが小紅はどうしますか?」

小紅「行ってもいいのか?」

真白「ええ、お母さんも喜ぶと思いますし」

紅緒「!」キラン

紅緒「とぉぜん! あたしもついていくわよっ!」

真白「えー……紅緒は来なくていいですよ」

真白「何か予定とか入っていないんですか!?」

紅緒「ふふ、次の休日は何も無いのよ。否! 真白たんと一緒に居る予定があるのよ!」クワッ

真白「そんな予定入ってねーですよ!」

小紅「何か必要な物とかあるだろうか?」

白夜「動きやすい服装?」

小紅「ほかに荷物とか……あ、何かお土産持って行った方がいいよな! 何がいいだろうか」

真白「お母さんの事ですから洋菓子を持っていけば喜ぶと思いますよ」

紅緒「折角なんだし小紅が何か作って持っていくのもいいんじゃないかしら?」

……
真白「さあ、張り切って集めましょうか」

小紅「おー」

紅緒(張り切る幼女……良いっ!)ギラン

真白「紅緒はあっちのほ~~うで一人で集めて下さい」

紅緒「それじゃあ頑張らないとねぇ。あ、勢いあまって可愛い真白たんを採っておかずにしちゃうかもしれないわ!」

真白「何を言っているのかさっぱりわからねーです」

小紅「それじゃあ私はあっちの方に行ってみるよ」

真白「見晴らしがいいから大丈夫だと思いますが、あまり遠くには行かないで下さいね」

小紅「分かった、気をつけるよ」

白夜「小紅、大丈夫か?」

小紅「こ、この間のような事がないよう気をつけるよ」

紅緒「何かあったらすぐ叫ぶのよ! 全速力で小紅を助けに行くわ!」

白夜「いや、俺が助けに行く」

紅緒「……」バヂバヂ

白夜「……」バヂバヂ

小紅「ふ、二人とも……」

一時間後
小紅「ふう……結構取れたな」

小紅「そろそろ一旦戻るか」

蟲「」フヨヨ

小紅「なんだ? 今何かが……」ズッ

小紅「きゃああ!」


白夜「! 小紅」


紅緒「今のは小紅の声!」

白夜「……」タタタ

真白「あれ? どうしたんですか白夜」

白夜「小紅を見ていないか?」

真白「いえ。この先を行ったとは思いますけど。どうかしましたか?」

白夜「小紅の声が聞こえた」

真白「……この間の事もありますし、念の為に探しておきましょうか」

真白「っは!」バッガザザ

白夜「真白?」

紅緒「小紅ーー! 何処ーーーーー!!」ズドドドド

白夜「……」

真白「い、行きましたか……紅緒があれだけ反応しているって事は、白夜の聞き間違いという事もなさそうですね」

真白「急いで探しましょう」

白夜「ああ」

真白「で、出切れば今の状態の紅緒に遭遇しないように」カタカタカタ

白夜「……」タタタタ


紅緒「小紅ーーー!」ダダダダ


真白「小紅ーー。いたら返事して下さいーーー」タタタ

真白「あの籠は小紅に渡した……この辺りですか? 小紅ーーー」

真白「? この窪みは……」モソ

真白「穴の周りに草が生えていて隠れているのですか……小紅ーー! いますかーー?」

真白「何処かからこの穴の中に通じる道でもないでしょうかね」ヒラリ

真白「あ」タンッ

真白「こちらから入れ……」

蟲の群れ「」ヒヨヨ フヨヨヨ

小紅「」

真白「小紅! 大丈夫ですか?! 小紅!」

小紅「」

真白「あわわわわ……これはとんでもない事に」

白夜「真白」ザッ

真白「白夜! どうしましょう! 小紅がこの先にいるのですが……」

白夜「蟲が……」

真白「どうしましょう……急がないと小紅が。でも、私達、ま……」パクパク

白夜「!」

白夜(音が消えた……?)

?「」カササ カサササ

白夜「!」バッ

真白「――!」パクパク

白夜「真白」ザッ

真白「白夜! どうしましょう! 小紅がこの先にいるのですが……」

白夜「蟲が……」

真白「どうしましょう……急がないと小紅が。でも、私達、ま……」パクパク

白夜「!」

白夜(音が消えた……?)

口云「」カササ カサササ

白夜「!」バッ

真白「――!」パクパク

真白「い、一体何が起こって、あれ、声が出ます」

白夜「何の蟲か分からないが、俺たちだけではどうにもできない」

真白「で、ですがぁ……」

白夜「大人を呼んでくる。もしかしたら蟲を散らす道具が残っているかもしれない」

白夜「真白はここにいて小紅を見ていてくれ」

真白「わ、分かりました。この前の事のようにはならないようにします!」

白夜「……」ザッザッザッ

白夜「……」バッ


紅緒「小紅ーーー!! あ、真白たん! 小紅を見なかったかしら!」

真白「う……べ、紅緒……小紅ならこの奥にいるのですが」

紅緒「え? そんな洞穴に……?」

真白「は、入っちゃ駄目ですよ! この中は蟲の巣窟となっているんです!」

紅緒「……真白たん、本当に小紅がいるの?」

真白「え?」

紅緒「そのね、真白たんを疑うつもりなんてないのだけれども、この洞穴……」

紅緒「そんなに奥行きも無いし、ここからでも奥の壁が見えるのだけれども」

紅緒「何処にも小紅の姿は見えないじゃない?」

真白「……」

真白「え……じゃあ小紅は……え……そんな」ジワ

真白「うわぁぁぁん! 小紅がー! 小紅がーーーー!」

紅緒「え? ええ?! 真白たん!? なに?!」

白雪「あら、お久しぶりね」

ギンコ「そちらも変わりないようで」

白雪「そうでもないわよ。今はあの子達も出て行ってしまってるし」

ギンコ「夜ノ森家、でしたか。少し前に真白から文を貰いましてね、先日寄ってきた所ですよ」

白雪「あの子、何か患っていたんですか?」

ギンコ「問題があったのは小紅の方でしたよ。まあなに、幸い大したものではなかったのですがね」

白雪「それなら良かったわぁ」

白雪「丁度あの子達もこっちに来ているんですよ」

ギンコ「ほーそりゃまた。やはり交通機関を利用すると早いものですな」

白雪「いまだ徒歩なの? 楽しいのに」

ギンコ「薬と交換で乗せてもらえたら楽なんですがね。こちとら羽振りが良い訳じゃ……」

白夜「……」ガラッ

白雪「あら、白夜。随分早いわね」

ギンコ「よう、邪魔してるぞ」

白夜「ギン、コ……さん」

白雪「どうしたの? そんな血相を変えて……」

白夜「小紅を、助けて下さい」

ギンコ「なるほどな。とにかくそこへ案内してくれ」

白雪「念の為に人を集めておくわね」

ギンコ「ええ、お願いします。行くぞ」

白夜「はい」


真白「びええぇぇぇん!」

紅緒「本当に一体どうしたの?! 私がいけないの?!」

白夜「真白」ザザッ

真白「は、白夜ぁ」

真白「小紅がぁ、紅緒には見えないって」グスグス

白夜「!」

ギンコ「ここか」ザッ

真白「ギンコ? ギンコぉ! 小紅を助けて下さいぃ!」

紅緒「え? どうしてここに?!」

ギンコ「丁度薬草を貰いに来ていたところだ。どれ、少し見させてもらうかね。小紅」ガザ

小紅「」

蟲の群れ「」ヒヨヨヨヨ フヨ

ギンコ(こりゃまた随分と大量に集まっていやがる……)

口云「」カサササ

ギンコ(……口云が音を食っちまって小紅にまで声が届かないのか)

真白「ギンコ、どうにかならないんですか……」

ギンコ「兎にも角にも、まずはあいつらを散らせにゃならん」

ギンコ「が、流石に蟲煙草だけで散らすのも無理がある」

ギンコ「白夜、真白。この紙にこの薬剤を乗せて洞穴の周りに置いてくれ」

白夜「……」コク

真白「分かりましたっ」

紅緒「私に何かできる事はありませんか?」

ギンコ「小紅が心配なのは分かるがお前さんも蟲が見えていないからな、少し穴から離れていてくれ」

ギンコ「小紅は今、蟲の気を帯びて見え辛くなっているだけだが、あんたまでなられちゃ薬が足りんしな」

ギンコ「……」ガチッガチッ ヂチ

紅緒「……ライターじゃないのね」

ギンコ「補給できん時もあるし、こうした物の方が使い勝手がいいんだよ」ボ ボゥッ

真白「ギンコー終わりましたー!」

白夜「準備できました」

ギンコ「良し、お前達は離れていてくれ」

モァ
蟲「」ワァ

ギンコ「どれ、こんなもんか。小紅、聞こえるか」

小紅「……」ピク

ギンコ「一先ず三峰の家に戻るぞ。こっちまで来れるか?」

小紅「……」コクリ

小紅「……」ヨタヨタ

真白「ああっ! 小紅の運動音痴が更に!」ワァ

白夜「……それは違うんじゃないか」

紅緒「……本当にそこに小紅はいるの?」

ギンコ「ああ、お前さんの目には見えんだろうが、間違いなくここにいる」

小紅「……」

紅緒「なんで! なんで私には見えないのよぉ!!」

ギンコ「まあなんだ、ちゃんと治してやるからそう取り乱さんな」

紅緒「てゆーか君は何?! 小紅がこんな事になっちゃっててなんで冷静なの?! 見えるから余裕ですーって?!」

白夜「俺もショックだ。でもギンコさんもいるし、必ず治してくれる」

ギンコ「まあ、ここらでは蟲の気を帯びた者というのは珍しいが、稀では無いという事だ」

紅緒「……」ズンズン

真白「紅緒、もう少し歩くペースを落として下さい。小紅を置いていくつもりですか?」

紅緒「えぇ?! いくらなんでも小紅でもそこまで運動音痴じゃないでしょ!」

ギンコ「蟲の気を帯びちまうとそう活発ではなくなるからな」

ギンコ「早く落ち着ける所に行きたい気持ちは分かるが、もう少しこちらの歩調に合わせてくれ」

ギンコ「なんだったら先に行って、小紅の無事を伝えてきちゃくれんか?」

紅緒「私には見えないのよ! 何が無事なのよー!」キーー

ギンコ「……」

真白「ギンコ、あまり取り合わないで下さい。疲れるだけですよ?」

ギンコ「お前ら、凄いところで暮らしてんだな」

小紅「……」ヨタヨタ

真白「あ、小……」

紅緒「! 小紅、そっちじゃないわよ」

小紅「……」コクリ

真白「……? え? あれ? 紅緒?」

紅緒「あら、何かしら真白たん」

真白「え? いえ、小紅が見えるんですか?」

紅緒「見えないわよ! 全く見えないわよ! 悔しいくらい見えないわよー!」キー

真白「ちょっと待って下さい。じゃあなんで今、小紅が道を外れそうになったのに気付いたんですか!」

紅緒「見えなくても妹の香りは分かるわっ!」クワッ

紅緒「そう……気を落ち着ければ小紅が傍にいるのも感じ取れ」ブツブツブt

真白「ちょっとギンコ、あれは何かに憑かれているんじゃないでしょうか。いえきっとそうですよ」

ギンコ「どうだかねぇ、あまりああいう様子の話は聞かんし何とも言えんね」

白夜「小紅、大丈夫か?」

小紅「……」コクリ

ギンコ「もうじき三峰の家だ。あとしばらく辛抱してくれ」

白雪「あらあら、それは大変だったわね」

紅緒「ほ、本当にそれだけの事なんですかお母さん!」

白雪「消えてしまう人もいるぐらいだし、小紅ちゃんならすぐに良くなるわ」

ギンコ「こっちは薬を用意してくる。小紅の傍にいてやってくれ」

真白「分かりました!」

白夜「……」コクリ

紅緒「私に何かできる事無いのかしら?」

真白「小紅ならここにいますので話しかけて上げて下さい」

白雪「接してあげる事で元に戻るのも早くなるのよ」

紅緒「私に任せて!」キラン

真白「一先ず小紅の事は任せても大丈夫そうですね」

白夜「心配だから俺は残っている」

真白「分かりました。私とお母さんの手伝いをしていますね」

ギンコ「薬の方はできたが……何かあったのか?」

白夜「? 何がですか?」

小紅「……」

ギンコ(随分と血色が良くなっている……一体何が)

ギンコ「薬が出来た。早速飲ませたいから湯を沸かしてきちゃくれんか」

白夜「……」コクリ

紅緒「あら、ギンコさん」

ギンコ「なんだ、今気付いたのか」ゴソ

紅緒「なんだか小紅が近くにいるのが凄く分かるようになったんだけれども、これって回復に向かっているって事でいいのよね?」

ギンコ「ああ、血色も良くなりつつある。直、お前さんの目にも映るようになるだろう」

真白「お待たせしましたー」タプ

白夜「持ってきました」

ギンコ「じゃあ早速……」

……
小紅「あれ……私は……」

真白「小紅! 大丈夫ですか? 自分の事が分かりますか?」

小紅「何だったっけ……お前、誰だ……」

真白「……小紅」

ギンコ「……」

小紅「学校、行かなきゃ」ノソ

真白「そ、そこは相変わらずですね」

白夜「でも学校は本当にどうしたら……」

ギンコ「これだけ回復が早けりゃ明日、ギリギリまでここに残っていた方がいいやもしれん」

ギンコ「何が起因しているかは分からんが、異様な速度で回復している」

ギンコ「もしや三峰の力の影響かもしれんしな」

真白「けれども村の人達は一週間とかかかる人とかいたじゃないですか」

ギンコ「小紅にはその力が無いから。そういったところで作用しているのか……まあ、調べてみない事には何も言えんがね」

白雪「どの道、今から帰るのは無理でしょうし、不都合が無ければギンコさんの言う通りにした方がいいかもしれないわね」

ギンコ「……」シュルル

白雪「あらギンコさん? まだ起きてらしたんですね」

ギンコ「ええ、どうにも小紅の様子は気になる所がありましてね。調べている所ですよ」

白雪「少し、話しておこうかしら」

白雪「以前話した白夜が助けた子の事なんだけども」

ギンコ「もしやその子が小紅か……」

白雪「ええ。それ以降、時折熱を出したりしてしまうみたいなの」

ギンコ「……」

翌朝
小紅「あ、おはようございます、ギンコさん」

ギンコ「……」

紅緒「小紅ーー!! 良かったわぁ! ほんっと~~~にっ良かったわあああ!」

小紅「もう姉様。放して下さいよ」

ギンコ「本当に大丈夫なのか……?」

真白「そうみたいなんです……」

ギンコ「……」

紅緒「それで……話って何かしら」

小紅「……」ドキドキ

ギンコ「言うに及ばず、小紅の事だ」

ギンコ「小紅、昨日の事は覚えているな」

小紅「……はい」

ギンコ「その時に見たことのない何かは見えなかったか?」

小紅「小さく光る微生物のようなものとか……色んなものが見えました」

ギンコ「それが蟲だ。お前さんはそれらに当てられ、一時的に周りから見えにくい存在になっていた」

ギンコ「問題はこの短時間に蟲の気を帯び、またここまで回復したかだ」

白夜「何か分かったんですか?」

ギンコ「確かな事は何も言えんがね。恐らく、三峰の力が関わっている可能性が高い」

ギンコ「三峰の者の多く、白雪や白夜達がそうであるように蟲が見える者が多い」

ギンコ「三峰の力そのものなのか、蟲が見える要素である妖質を多く持つ血筋か……」

ギンコ「そこまでは分からんが蟲に関わっていることには変わらん」

ギンコ「そして小紅には白夜の力が流れているわけだ」

小紅「……はい」

ギンコ「半端にある所為か蟲の影響を受けやすいのかもしれん。三峰の者達が影響を受け易い訳ではないからな」

ギンコ「それ故に回復も早いのだろう、と考えられる」

紅緒「それって治す事はできないのよね」

ギンコ「残念ながらこうした話自体聞かんからな。ただ今までの生活で特別な蟲患いが無いのであれば」

ギンコ「そう問題は無いだろう。ただ念の為にこちらの薬を数日飲んでおいてくれ」

小紅「ありがとうございます」

紅緒「この調子なら明日からの生活も大丈夫そうね」

真白「一時はどうなるかと思いましたよー」

小紅「ご、ごめん……」

ギンコ「何かあったらまた文を出してくれ」

真白「それですぐ来てくれるんでしたらいんですけどねー」

ギンコ「最悪、知人に様子を見てもらうように掛け合うさ」

紅緒「では私達はこれで」

白雪「また何時でも遊びに来て頂戴ね」

真白「ギンコはどうするんですか?」

ギンコ「俺はもうしばらくここらで薬草を集めてから向かうかね」

白夜「お世話になりました」

ギンコ「なに、気にするな。それよりお前達、達者でな」

紅緒「本当にお世話になりました。改めて御礼もしたいので、また寄れる時がありましたら寄って下さい」

真白「そうそう来ませんよ? 一年に一度会えるかどうかといったところですよね」

白夜「この前も一年前だった」

ギンコ「まあそういう訳だ。あまり顔を出してはやれんし、あまり気にしないでくれ」

小紅「で、ですが!」

白雪「じゃあこうしましょ。その分、今日の料理は豪華にします。でいいんじゃないかしら?」

小紅「それでは私達はただ……」

白雪「そこは普段、二人を小紅ちゃんに任せっきりな訳だし、美味しい料理も作ってもらっているようだし」

白雪「そのお返し、て事でね」

小紅「うう」

ギンコ「何にせよ、そうした事は体調を整えてからじっくり考えればいいだろう」

紅緒「ほら、小紅」

小紅「……はい。あの、本当にありがとうございました」

白雪「気にしなくていいのよー」

ギンコ「ああ、そうだ。もしかしたらこれを機に、蟲が見える事があるやもしれん」

ギンコ「お前さんには物珍しいだろうが、影響を受け易い以上安易に近づいたりはせんようにな」

小紅「分かりました、気をつけます」

……
真白「今日はカレーライスですかぁ!」ランラン

小紅「うんと甘くしてあるからな」

蟲「」フヨ

小紅「!」ピクッ

白夜「……」ハタハタ

蟲「」フヨー

紅緒「小紅? どうかしたの?」

蟲「」スゥ

「」

白夜「小紅」

小紅「うん、大丈夫。すぐに晩御飯の支度をしますね」


   ギンコ「この文は……差出人は真白か」カサ   終

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