シュガーハート「もー☆ 今日も仕事がなーい♪ ぷんぷーん☆」 (24)

シュガーハァト「プロデューサー、お仕事ちょうだい! ていうかよこせ☆」
P「あー……、今んとこないです」
「くるみちゃんに回したこの前の案件、よこせ☆」
P「あれはアイツのための案件なんで」
「うー……。レッスンだけじゃ意味ないんだって」
P「まぁそらなぁ。分かってはいるんだがウチでデビューさせる順番ってものもあるしな」
「その順番って、いつ回ってくんの」
P「もうちょっと先になると思います」
「…………。あのさ。んー……」
「はぁと、来週までに13000円ぐらい入るお仕事ほしいなー☆」
P「急に具体的になったな。何か買い物でもするのか?」
「や、月額料金の支払いがあって」
P「ケータイ料金とか? まぁ今月はキツい戦いの連続だったしな」
「まぁ、そんなとこ」

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P「13000円つーと、5000円ぐらいの課金か? パケット定額で8000円ぐらいだろうし」
P「んんー……。ちょっと今すぐにっていう案件はやっぱりないなぁ。すまない。まぁもしなんだったらそれぐらい貸そうか?」
「かり……! 借りるのは、止めとこうかな。アイドルっぽくないし」
P「それもそうだな。芸能人が借金してるってのは見る人の夢をさましちゃうし」
「あはは……。そだね。はぁともっとお金稼げるようになりたい♪」
P「夢は億万長者って感じ?」
「んー……☆ 月、20万円ぐらいでいいや」
P「微妙に少なくないスか、それ」
「……今の収入の
1.5倍だよ。十分高いよ」
P「…………」
「あなたに連れられて上京して、こっちでアイドルの営業しながらアルバイトして、それで月13、4万円稼ぐのがやっとなの、あたし」
「もう、こんな年齢なのに一月13万。年収160万円。笑える」
「長野の実家に居た頃はアルバイトしながらアイドルの真似っこしてるだけで十分だったけど、あなたがトップアイドルにしてくれるって言ってくれたから、あたし、こっちに出てきたんだよ」

「もう遊びじゃないの。トップアイドルにしてくれないと、困るの」

「今は事務所が住む場所斡旋してくれてるから何とか生きていけるけど、レッスンしなくちゃいけないからバイトもたくさん入れられない」

「……ね。せめてレッスンのとき、アルバイト代ぐらいのお給料出してくれるようにはならない?」

P「契約のときに説明したと思うけど……」

「アイドル200人近く抱えてるから難しい、んだよね」

P「あ、ああ……。でも、おまえの言いたいことも分かる。だから一度ちひろさんに掛け合ってm

?「プロデューサーさんっ。なんのお話を進めてるんですかー?」

P「ちひろさん、ちょうどいいところに。あのですね、レッスンのときの給りょ

ち「はい?」

P「レッスンについてなんですけどね」

ち「なんの話ですか? あっ! 契約のお話ですね!」

ち「もうダメじゃないですかプロデューサーさん。勝手に契約書と異なる話をアイドルの子にしちゃあ」

ち「しかもお金に関わる話ですよ? そういうのを口約束で交わしちゃいけないんです」

P「え、ええ。なので一応ちひろさん通してから決めようと思っていたんですが。アイドルの子たちにレッスン料として少しぐらいギャラ出るようにって考えているんですが」

ち「は?」

P(ビクッ)

ち「…………」

ち「わぁ、いい考えですね、それ! で、そのお金はどこから出るんです? プロデューサーさんのお財布からですか?」

P「……はい?」

ち「アイドル200人も抱えてる事務所の頭のいいプロデューサーさんなら理解してくれていると思いますけど、来年のアニメ事業もありますし、今の事務所に過剰な蓄えなんてありませんよ?」

ち「心さんひとりを特別扱いするってわけにはいきませんよね? もしもレッスンにお給金発生させるなら全員にしないといけませんよね? 200人、全員!」

ち「打ちでの小槌じゃないんですから、今まで予算組みしてこなかった支出がドカンと上乗せされるってことはこの先のロードマップも縮小方向へ見直さないといけなくなりますよ?」

ち「ああ、それとも成人組だけにレッスン料出します? それで学生組にはレッスン料発生しないっていう不平等を作りますか? 全員に出すか、全員に出さないかの二択しかありませんよ?」

ち「財源確保のためにプロデューサーさんのお給料を減らすわけにもいきませんから……今ウチを支えてくれてるCDデビュー組のお給料減らします?」

ち「今までひたむきに努力を積み重ねてきて、ようやく苦労が実った彼女たちですけど、まだレッスンが必要な心さんの生活のために手取り減らしてもうらしかありませんよね?」

ち「それに今のこのとっても忙しいときに全員分の契約書作りなおして書類まとめるような時間がありますか? 予算組み替え、女子寮撤去、今までとこれからのレッスン料についての調整するような時間、ありますか?」

ち「そーいう諸々考えてからの発言ですよね?」

P「いや、その……それは……」

ち「ふふ。……なんて、冗談ですよ。プロデューサーさん」

P「え」

ち「ちゃんと現実的な方法も考えてあります。安心してください」

P「さ……さすがちひろさん!」

ち「じゃあ女子寮、売り払いましょうか!」

P「はい?」

ち「そうすれば女子寮維持費の予算をレッスンのお給料に回せます。ただ事務所で抱えていられる人数は当然パンクしますから、一部の子を除いてよそへ移籍してもらわなきゃいけなくなるでしょうけど」

ち「プロデュースする人数を絞る形になっちゃいますけど、そうすればきっとアイドルの子たちも納得できるだけのレッスン料支払うことができるようになりますし、きめ細やかなプロデュースもできるようになって一石二鳥ですよ!」

ち「事務所に残す子はせっかくですし総選挙で決めちゃいましょうか? 人気上位30人、50人ぐらいならなんとかできると思いますよ?」

ち「今デビューできてない子たちには過酷な条件かもしれませんけど、アイドル界はサバイバルですし、きっと受け入れてくれますよね!」

P「え、あ……う……」

ち「…………」

ち「もし、それがイヤだって言うなら現状維持でいいですよね?」

P「は……はい……」

ち「納得してくれてよかった! それじゃあ私、ちょっと次のイベントの準備してきますね!」(ガタン、パタパタパタ)

P「…………と、いうことで」

「…………」

P「レッスン料は出せそうにないです」

「うん……あたしも女子寮なくなっちゃったら本格的に生きていけないし……ワガママだった」

P「なぁ、来週までに必要なお金っての、もしよかったら立て替えようか? 仕事が回せないのは俺の責任でもあるし、出世払いってことでいいし」

「出世払いって、利子なしってコト……?」

P「そ。トップアイドルになったときに思い出したら返してくれればいいし」

「いやでもそれじゃ意味ないっていうか、悪いって言うか……」

P「いいよ。どんと頼ってくれい」

「……そ、それならさ。50万円、貸して」

P「はい?」

「ごじゅう……」

P「いやいやいやいや。さっき聞いた額は確か一万円とちょっとじゃなかったか?」

「えっと、あの。そうなんだけど……。利子なしなら……」

P「貯金崩すレベルですよ、それ。無茶言わんでください」

「あ、あはは……だよね……」

P「ケータイ料金の支払いってだけだろ? 重課金者とかならともかくさ。50万なんて今月ピンチとかいうレベルの話じゃ」

「…………ん」

「分かってる。そうに決まってる……」

P「心?」

「……多重債務者って言葉の意味、知ってる?」

P「何を、急に」

「……知るわけないよね」

P「いやいや、さすがに知らないことはないぞ。たくさんのところからお金を借りると首が回らなくなって大変になるから自重しろってことだよな」

「違う」

「ぜんぜん、ちがう」

「あの言葉に込められた悪意はそんなものじゃない」

「この一社からは借りても大丈夫なんだ、と思わせる悪魔の言葉だよ」

「申し込みのジャマになるような言葉、無人受付にデカデカとポスターで貼るわけないじゃん」

「サラ金に頼らなくちゃいけない時点でどん底のはずなのに、これは多重じゃないから大丈夫。一重だからまだ大丈夫。セーフなんだって自分を納得させるための背中押しでしかない」

「最底辺のはずなのに、その下がまだあるように錯覚させて、安心感を与えるための言葉なんだよ、アレ」

「そうやってタガが外れた後は結局限度額めいっぱいまで借りちゃうようになる。あんなの、一万円を一万二千円とかそれ以上の価格で買ってるだけなのに」

「わかってるはずなのに、返さなきゃなくならないのに。無理して返した翌月にまた借りちゃって残債だけ膨らんでいって……」

P「……おまえ、借りてるのか? その、50万円を」

「…………」

「……大丈夫だよ。返していける」

「今はちょっと生活がキビシーけど、それでもゼータクをガマンしてひとつきに2万円ずつぐらい返していけば3年ちょっとで返せるから」

「これから3年間、ゼータクしないようにして……」

「洋服もメイクも最低限にして、外食も控えて、趣味も程々にして、アルバイト増やして……」

「三年間、お金返すことだけ考えて……」

「トップアイドルになるためにレッスンの時間とかとらなきゃいけないのに……」

(涙ぼろぼろ)

「無理に決まってんじゃんか……」

「3年したらあたし、29だよ……。それでやっと借金返せたとして、貯金ゼロで……どーやって生きていくのさ……」

「今の事務所だけで200人もライバルいるのに、まだロクに活躍できてないのにっ」

「ね、ねぇ……、プロデューサー……! 50万円、貸して……」

「絶対返すからっ。絶対トップアイドルになって必ず返すからっ!」

「アルバイト増やさなくても大丈夫になれば時間とれるからたくさんレッスン出れるし、それでCDとかライブとかたくさん成功させるからっ」

「今のままのペースだとどうしても70万円ぐらい払わないと返しきれないの。50万円でも無理なのに70万円とか無理すぎる!」

「お願い……お願いします……」

P「…………」





ち「ええ? またこれ以上女子寮増やすんですか?」

P「お仕事たくさん進めてるとどうしても枠が足りなくて」

ち「うーん、まぁ、お仕事頑張ってくれた結果ならしょうがないですけど。メダルは用意できてます?」

P「今晩にも貯まります」

ち「はい、じゃあ諸々そろったら申請しておきますね。……ただショージキなところ、女子寮建てるの、私は反対ですよ?」

P「事務所の予算使うからですか?」

ち「ありていに言えばそうなりますけど、具体的にはですね」

ち「ウチは道場やってるわけでもないですし、寮組は基本的にレッスンパートナーにしかなりません。枠圧迫する前に食わせちゃえばいいんですよ」

ち「せいぜい特技持ち組を確保しておく場所って程度でしょうし、この前あらかたありすちゃんに食わせたじゃないですか」

ち「結局寮組は陽の目を見ないわけですし、どうしても無駄な予算って気がして……って」

P(黙って50万円分の特製モバコインカードを見せる)

ち「なるほど! 投票券ガチャのための下準備ですね! そういうことならはりきって建設しますよ!」

ち「第三回総選挙の投票期間は4/18までですよ、忘れないでくださいね! プロデューサーさん!」

終わりだよ~



かろうしぴー

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