雪乃「ちょくしの、まがん・・・?」
↑これの続き
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1397129082
相模「クソっ・・・」
すべてが変わってしまったのだ。あの忌々しい文化祭以来
相模「どいつもこいつも、ウチをバカにして・・・」
文化祭の一件以降、みんなのウチを見る目が冷たくなっていった
毎日毎日、ヒソヒソを陰口を叩かれ、今日まで凄惨なイジメを受けてきた
唯一の頼りだった友人たちも、ウチから離れて行ってしまった
何もかも、あいつらのせいだ
相模「比企谷・・・雪ノ下・・・」
声に出すだけでも胸糞悪くなる。こいつらのせいで、ウチは大恥をかいた
こいつらさえ居なければ、楽しい文化祭になっていたはずだった
いつもの充実した毎日が戻ってくるはずだった
葉山君が、私に振り向いてくれるはずだった
相模「絶対に、許さない・・・」
_______________________
??「なるほど・・・。これは重傷だな」
不意に話しかけられた少女は、邪悪な表情を浮かべながら、こちらを向いた
相模「誰・・・!?」
??「相当な恨みを持っているみたいだ。その鬱憤を晴らしたくはないか?」
相模「は・・・?」
まるで意味が分からない、といった表情だ
??「いいものをやろう。これを使えば、もう苦しむ必要は無くなるぜ」
そう言うと、相模の表情がみるみると嗜虐的な笑みに変化していく
??「いい笑顔だ・・・フフフ」
これからが楽しみで堪らないじゃないか・・・。
お前直死の魔眼をよくわかってないだろ
あれは血筋云々で出るもんじゃねえよ
大体陽乃を橙子ポジにしたのも直死の設定が捻じ曲がっているせいもあって色々おかしい
理解したら1からやり直せこの傷んだ赤色が
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『昨晩、千葉市郊外で男性(40)の死体が発見されました。死体は刃物によってバラバラに切断されており、
今月になってから同じような事件は、これが六度目です。しかし被害者たちの間には接点が無く、捜査は難攻しています――」
小町「最近物騒だよねぇ」
朝食の時間、俺はテレビを見ながら机の反対側に座ってパンを齧る小町が言った
八幡「そうだな・・・」
俺も同じようにテレビに視線を向けながら朝食を摂っていた
無差別殺人で、しかも女子供見境なく殺しているらしい
ここ数日間、街や学校周辺には常に一人か二人の警察官が張り付いているという状態らしい
幸いなことに、事件現場が俺たちが住む住宅地や総武高からは遠いところにある
俺たちのほうにまで飛び火してくる確率は低い
だが万が一のことも考えて、俺は呑気に飯を食う小町に警告した
八幡「お前も気を付けろよ。絶対に一人で登下校するなよ」
小町「じゃあ、これから毎日自転車で送ってね!」
何も言えない俺はうっと唸るぐらいしかできなかった
>>4
雪ノ下家伝承の淨眼が臨死体験で直死の魔眼に変化したって設定だから大丈夫じゃね
まあそれでもいろいろ矛盾があるけど許してくれ。SSだし
ちなみにこのSSも一応続編だけど、いろいろ矛盾してるからそこらへん理解したうえで読んでくれると嬉しい
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八幡「うっす」
雪乃「こんにちわ、比企谷くん」
八幡「あれ、由比ヶ浜は?」
雪乃「追試らしいわよ」
八幡「なに、あいつ赤点でも取ったの?」
勉強会って言って俺と雪ノ下を引っ張りまわしたのはどこのどいつだよ・・・
肯定するように雪ノ下が困ったような笑顔を俺に向けてきた
八幡「そういや、お前は試験どうだったの?」
試験から一週間経過しているので、恐らく全校生徒全員に試験結果が通知されたはずだ
雪ノ下のことだ、全教科満点という可能性もあり得る
雪乃「・・・全教科満点だったわ」
まさか本当に全教科満点とは・・・
八幡「お前、とんでもねえのな。どうやったらそんなに勉強ができるようになるんだよ」
雪乃「すべきことをしていれば、高得点なんてそう難しくないわ」
八幡「当たり前でしょ?みたいに言うけどな、皆が皆そうして勉強出来たら俺もお前も苦労してない」
雪乃「確かにそうね」
八幡「そういえば、リボン変えたんだな」
いつもは赤色のリボンを付けている雪ノ下が、今日は青色の少し大きなリボンを付けていた
雪乃「あら、腐った目のニブガヤくんにしてはよく気が付いたわね」
八幡「俺は決して鈍感ではない。女子は嫌いだが女子力は高いつもりだ」
雪乃「よくもそんな気持ち悪いことを胸を張って言えるわね。気持ち悪いわ」
雪ノ下が俺がが凍えるぐらい冷たい目をしていた
ガチでドン引きされたので少し黙ることにする
雪乃「それで、どうかしら?」
雪ノ下は少し歯切れ悪く言う。ここは男として褒めるべきところだな
実際似合っているので、褒めて損はないはずだ
八幡「おう、可愛いと思うぞ」
しまった、似合うというつもりが可愛いとストレートに言ってしまった
この場合は雪ノ下の罵倒を覚悟するほかない。ガラスのハートを守るために俺は身構えた
雪乃「ひ、比企谷くん!突然女性に向かってか、可愛いだなんて、そんな・・・
相手が私だったら良かったものの、もしほかの女性なら可愛いと比企谷くんに言われた時点で勘違いを
してしまう可能性があったのよ。いえ、まさか比企谷くんに好意を寄せている女性がいるとは思えないけれど、
万が一あなたに好意を寄せている女性がいたらそういう事態が起こりえたのよ
でもあの比企谷くんが素直に褒めてくれたのだから、今回は素直に私も受け取っておくわ。感謝しなさいクズ谷君」
雪ノ下が息を切らしながら意味不明なことを言い始めた
これがこいつなりの照れ隠しなんだろうか
雪乃「はぁ・・・はぁ・・・ゴホッゴホッ」
顔を上気させて不機嫌な表情をしていた雪ノ下がむせてしまった
八幡「お、おい大丈夫か?」
雪ノ下のもとへ駆け寄って背中をスリスリしてやる。これって正しい治療法なのだろうか
雪乃「大丈夫よ!」
何故か逆ギレした雪ノ下が暴れ出した
そのせいで雪ノ下の脚と俺の脚が絡み合って、バランスを崩してしまう
八幡「うおっ・・・!」
雪乃「きゃっ」
バランスを崩した俺たちは二人して倒れてしまった
だから、矛盾してるとこがほかにもあるけど許してくれって言ったじゃん
それからというもの、部室に変な雰囲気が漂い続けていた
さっきから雪ノ下が、本を盾にしながらこちらをチラチラと見てくる
非常にやりづらいし、俺もつい雪ノ下を意識してしまう
そのままお互いに会話もなく、気が付けば下校時刻になっていた
外を見ると、分厚くて黒い雲が夕日を隠していた
八幡「じゃ、じゃあ俺帰るわ」
雪乃「え、ええ。私も今から帰るわ」
ぎこちなく会話して、無言のまま昇降口へ来た
外は既に真っ暗だった。なにやら唐突に既視感が湧いた
八幡「傘は持ってるか?」
雪乃「今日はちゃんと持ってるわ」
八幡「そうか、それならいいんだ。また月曜日な」
雪乃「え、ええ。また、月曜日に」
俺は雪ノ下から逃げるようにして駐輪場に向かった
すまん、飛ばした部分があるから>>13はナシな
八幡「うおっ・・・!」
雪乃「きゃっ」
バランスを崩した俺たちは二人して倒れてしまった
八幡「いてて・・・。ああ、すまんゆきのs・・・え」
気が付くと俺は押し倒すような形で雪ノ下に覆いかぶさっていた
雪乃「~~~っ!」
冷めかけていた雪ノ下の表情が再び沸騰して、一瞬で真っ赤になった
雪ノ下のその様子が可愛かったことと雪ノ下が抵抗しなかったのを良いことに
俺は十秒間ぐらい雪ノ下を押し倒したまま雪ノ下に見とれていた
時が止まり、たかだか十秒間が何分にも思えた
雪乃「あ、あの・・・比企谷くん・・・」
潤んだ眼で、小動物のように怯える雪ノ下の様子にびっくりして
俺は咄嗟に雪ノ下から離れた
八幡「す、すまん!別にそういうつもりじゃなかったんだ!」
雪乃「いえ、今のは私も悪いのだから・・・」
立ち上がり、俺に背を向けて雪ノ下は言った
それからというもの、部室に変な雰囲気が漂い続けていた
さっきから雪ノ下が、本を盾にしながらこちらをチラチラと見てくる
非常にやりづらいし、俺もつい雪ノ下を意識してしまう
そのままお互いに会話もなく、気が付けば下校時刻になっていた
外を見ると、分厚くて黒い雲が夕日を隠していた
八幡「じゃ、じゃあ俺帰るわ」
雪乃「え、ええ。私も今から帰るわ」
ぎこちなく会話して、無言のまま昇降口へ来た
外は既に真っ暗だった。なにやら唐突に既視感が湧いた
八幡「傘は持ってるか?」
雪乃「今日はちゃんと持ってるわ」
八幡「そうか、それならいいんだ。また月曜日な」
雪乃「え、ええ。また、月曜日に」
俺は雪ノ下から逃げるようにして駐輪場に向かった
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八幡「くっそぉ~、本格的に降りだしてきやがった」
さっきまで小さかった雨が、学校を出たあたりから急に強くなった
運悪く俺はレインコートを持ってきていなかった。濡れて帰るしかない
こりゃ帰ったら小町に怒られるかな・・・。
学校を出て五分走ると、人気のない住宅地に差し掛った
元から人気が少ないこの道、生憎の雨と時間帯のせいで人が通るはずもなかった
こんな場所は早く走り抜けてしまおうとペダルを漕ぐ足に力を入れたのだが・・・
八幡「ん?あれは・・・」
数十メートル先、道の端に人の姿があった
それは雨の中、傘もささずに突っ立っていた
俺の中のほんの僅かな良心が、無視してはならないと言った
だが同時に、何か嫌な予感が脳裏を横切っていた
そんな一抹の不安を取り払い、ブレーキをかけて自転車から降り、その人の元へ向かった
見たところ総武高の女子生徒に見える
一体こんなところで何をやっているのだろう
八幡「あの、大丈夫ですか?風邪をひいてしまいますよ?」
先輩か後輩か分からないので、とりあえず敬語で話しかけてみた
すると、死んだ弁慶の様に硬直していた少女が顔を上げた
八幡「・・・相模か!?」
顔色は悪く、目の下に大きな隈ができていたが、はっきりと相模だと分かった
相模と言えばあの文化祭のことを想起させるが、今はそんなことはどうでもいい
俺はこいつのことが大嫌いだったが、放置して帰るのも気分が悪い
八幡「おい相模、こんなとこで何やってる」
相模はまるで自分が呼ばれていることに気が付いていないかのようだった
相模「だれ・・・?」
八幡「比企谷だ。分からないのか?」
まさか覚えて貰えていないとは・・・。コイツにとって俺ってそんなにどうでもいいやつだったのか
相模「ひき・・・がや・・・?」
俺の名前を復唱した相模の表情が突然豹変した
相模「ひき、がや・・・っ!」
化け物じみた表情を浮かべる相模に俺はびっくりして、数歩後ずさりした
八幡「おい、一体・・・」
相模「お前か・・・お前だなぁ!?」
相模が突然声を荒げて、俺に向かって走ってきた
明らかに様子がおかしい。本当に相模なのか?
俺はそのまま相模に掴みかかられてしまった
八幡「っ!・・・おい、相模、一体どうしたんだ!?おい!」
呼びかけても反応しない
俺は地面に倒れ、そのまま地面で相模と取っ組み合いをする
到底女子とは思えない力で相模が俺を抑えつけようとしてくる
相模が俺を片手で抑えつけたまま背後から包丁を取り出した
八幡「くそっ!」
呼びかけても返事がない。もう手遅れのようだ
俺に命の危険が迫っている気がしたので、仕方なく相模の顔を殴って制止した
相模が地面の上で悶絶している間に、俺はフラフラと立ち上がり、走り出した
雨で服が濡れたせいか、体がとてつもなく重く感じる
重い体に無理やり言うことを聞かせて、俺は全力で走り続けた
___________________________
比企谷くんが去ってから、何か嫌な胸騒ぎが続いている
こんなこと、前にもあった。私が半年前に事故に遇って入院していたころにも、こんな寒気を感じたことがある
雪乃「まさか・・・ね」
私は急に不安になって、比企谷くんが去って行った方向へと駆け出した
走って十分。体力のない私は十分走っただけでヘタヘタになってしまう
途中、邪魔だったので、走りながら差していた傘を折りたたんで鞄の中へ仕舞った
暗くて、人気のない住宅街へ着いた。以前に比企谷くんの家に行く際にここを通ったことがあるのだが
その時とは全く印象が違っている。野外なのに、隔離された閉鎖空間のような息苦しさを感じる
恐怖と不安で押しつぶされそうだった。逃げてしまいたい気持ちを抑えて、私は先へ進んだ
すると、前方の道端に倒れた自転車を見つけた
比企谷くん・・・・。何もなければいいのだけれど
_____________________________
八幡「はぁ、はぁ、クソッ!」
一体あれからどれくらい走り続けたのだろうか
明らかにおかしい。絶対におかしい
さっきからずっと走っているのに、一向に家に着く様子はない
寧ろさっきから同じところをずっと走っている気がする
走れども走れども同じ景色が続くばかり。空は暗いまま、俺は雨に打たれ続けている
相模「まてぇ”!!」
雨が地面を打つ音の中からはっきりと聞こえる声
もうその声は相模のものとはかけ離れすぎていた
その恐ろしい声を聴くだけで、俺の不安と恐怖は大きくなっていく
一体あいつの身に何が起こったというのだ
どれだけ走っても、俺の遠く後ろを付いてくる。そしてだんだんその声は近くなってくる
さっきの怪力と言い、明らかにおかしい。人間じゃないのか・・・?
雨はだんだん強くなり、痛いほどに俺の体を強く打ち付けて来る
身体はだんだん重くなり、走力もなくなってゆく。単純な持久走よりもはるかに辛かった
それでも、走るのを諦める訳にはいかない。止まったら殺されるかもしれない
その時の俺は必死に考えながら走ったせいか、足元が疎かになってしまっていた
足に何を引っかけて盛大に転び、その場に倒れこんでしまった
八幡「クソッ、クソォ!」
八幡「動け!動けよ俺の脚!畜生が!」
自棄になって自分の脚を殴っても立ち上がれる気配はなく、鈍い痛みだけが残ってしまった
相模「ヒヒヒヒヒィィ!!!」
暗闇で後はよく見えないが、相模の酷く不愉快な金切声はすぐそこまで迫っていた
やがて暗闇から現れた相模を見て、俺は絶句した
相模「追いついた・・・」
俺の前に現れた相模は、もはや生きている人間なのかと疑う姿になっていた
身体のところどころは皮膚が腐り堕ち、皮膚の下の肉がむき出しの状態になっていた
恐怖のあまり声が出ない。今の俺は自分でもびっくりするほどのヘタレだった
相模が包丁を握りしめ、ゆっくりこちらへと歩いてくる
ついに相模が俺のすぐ目の前に歩み寄ってきた。金縛りにあったかのように体が動かない
相模は笑っていた
相模「やっと・・・これで」
もう終わりだと思ったその瞬間――
世界が、崩れる音がした。バリン、という音を立てて俺の視界が割れた
最初は発狂して俺の精神が崩壊したのかと思った
だが、視界が暗転する直前に見た相模は、驚愕していた
_____________________________
まるでパズルのピースをはめていくように、世界は元通りに繋がった
それでも、さっきまでと変わらぬ風景がはるか遠くまで続いていた
俺の目の前には、さっきと同じように相模がいた
ただ、さっきとは明らかに相模の様子は違っていた
相模は包丁を振りかざしながらも、驚いた表情をしたまま硬直している
そして、もう一つ違うことがあった
相模のかなり後方に、僅かに蒼い光が見える
そして暗闇から、雨音の中でもはっきり聞こえる美麗な足音が聞こえる
乱れた濡れ髪を整えながら、雪ノ下雪乃が暗闇から姿を現した
今日は眠いから終わり
明日後半書くよ
後半は戦闘シーンとイチャイチャがメインだよ
今から書いていくよ
雪乃「また、この力を使うことになるなんてね」
雪ノ下の瞳は、遠目でもはっきりと分かるほどに蒼く輝いていた
前にも同じ眼した雪ノ下を見たことがある。直死の魔眼と言われるものだ
よく見ると、雪ノ下は右手に刃渡りの長いナイフと思しきものを持っていた
雪ノ下が歩くたびに濡れたナイフが揺れ、ギラギラと不自然に雪ノ下の発光する瞳の色を僅かに反射していた
雪乃「大丈夫なの、比企谷くん?」
その震えた声には若干心配の色が見える
雪乃「そこの化け物、比企谷くんから離れなさい」
雪ノ下の声は震えていたが、今度は心配ではなく怒りを滾らせているように聞こえた
その声に反応した相模が硬直を解除し、俺から目を離して背後を振り向く
化け物と呼んだそれの正体を理解した雪ノ下が、驚愕の表情になる
雪乃「・・・相模さんなの?」
全身ボロボロな上に顔にも火傷のような跡や皮膚の腐敗が見られるが、はっきりと相模の面影が伺えたようだ
雪ノ下が困惑していると――――
相模「ゆきの、ゆきのしたぁぁぁあああぁぁぁ!!!!!」
相模が物凄い大音声で絶叫しながら、変化した
全身の至る所を破り、相模の体から恐ろしい生物が現れた
絶句する俺と雪ノ下の真ん中で、巨大なカマドウマにしか見えないグロテスクな生き物が生まれた
もはや相模の面影は微塵もない。ただの怪物だ
高さが2mはあるだろう。図体にしては小さめの本体から8本の鋭くて長い脚と長い二本の触覚が伸びている
雪乃「なんてこと・・・」
八幡「逃げろっ!雪ノ下!」
危険を感じて、雪ノ下に逃げるように叫んだ
奴は素早くカマのような長い前足を構える
しかし恐怖を前に雪ノ下は動けなくなっていた
奴の狙いは完全に雪ノ下のほうに向いている。このままでは・・・
俺は傷む足と重い体に鞭を打って、半分本能的に動き出した
八幡「うおおおお!!!!」
カマドウマの後ろ脚を両手で掴み、思い切り膝を節足に打ち付けた
今の攻撃が少し効いたようで、カマドウマは文字で表現できない唸り声をあげた
しかしすぐさまに俺が掴んでいた後ろ脚を跳ね上げ、俺を宙に投げ飛ばした
俺は10メートルほど後に飛んで、硬いアスファルトに背中を打ち付けた
八幡「うぐっ!?・・・ゴホッゴホゥ!」
激しい痛みに悶絶しながら、咳き込んでしまった。今ので骨を折っていてもおかしくない
奴は直ぐに振り向き、足先をアスファルトに突き刺しながらこちらに凄い勢いで走ってきた
カマドウマのカマの様な前足を空高く構え、それが振り下ろされようとしている
もう、終わりか、と思い目を瞑った瞬間だった
相模?「ンギェエエエエエェエェアァファガ!!!」
それが叫び声を上げた。何が起こったのか
そう思って目を開けると、俺のすぐ目の前で血の滴るナイフを握りしめた雪ノ下が仁王立ちしていた
何が起こったのか、すぐに理解できなかった
雪乃「比企谷くん大丈夫!?」
カマドウマがさっきまで空高く構えていた前足が、雪ノ下の足元に転がっていた
カマドウマの脚の付け根から血がだぷだぷと流れ、地面を赤く染めていた
叫びを上げて暴れまわるカマドウマをよそに、雪ノ下が返り血を浴びた顔だけこちらに向けて言った
雪乃「絶対に比企谷くんを助けるから、少しだけ待ってて」
優しい声音、優しくて悲しい表情で雪ノ下が言った
それを聞いた俺が納得する暇もなく雪ノ下が化け物に向かって言った
雪乃「覚悟しなさい。私を怒らせると、怖いわよ」
そして雪ノ下は化け物を一旦スルーして向こう側に走っていく
恐らく俺を危険から遠ざけるためだったのだろう
すると狙い通りに化け物が雪ノ下のほうへ誘導されていく
雪ノ下の数メートル前で化け物が残った前足を構えて急ダッシュして襲い掛かる
その攻撃をなんとか横に避けた雪ノ下がすぐさま戦闘態勢に入る
地面に突き刺さったカマドウマの足を、雪ノ下が手持ちのナイフで斬った
音もなく、硬い殻に覆われた足が真ん中のあたりで折れた
間髪入れずに雪ノ下が怯んだカマドウマの体の下に潜り込んむ
そして雪ノ下はまず、二本の後ろ足を流れるような動きで根本あたりから斬り落とし、
カマドウマがバランスを崩して倒れる前に、やつの体の下を走り抜けながら右側の二本の足を落とした
カマドウマは咆哮しながらガスッという音を立てて地面の上に倒れこんだ
その隙に雪ノ下は、倒れたカマドウマの、金属のような光沢をもつ硬くてトゲトゲしい背中に飛び乗った
その背中の上で片膝を立てた体制で雪ノ下はナイフを両手で逆手持ちし、頭上に振りかざした
そして雪ノ下は、血濡れた嗜虐と怒りが混じった残忍冷酷な表情で言った
雪乃「教えてあげるわ。これが、モノを殺すということよ」
雪ノ下は眼がより一層輝きを増すのと同時に、ナイフをカマドウマの堅牢な背に刺し込んだ
そして化け物は叫び声も上げず、動かなくなった
八幡「死んだ、のか・・・?」
状況の理解になんとか追いついた俺が呆けた声で言った
_________________________
気が付くと、私は自室のベッドの上で寝ていた
いやに身体が重くて、喉と頭が痛い
怠い体を起こして、周囲を見渡すと、私のベッドの横で椅子に座ったまま寝息を立てる少年がいた
雪乃「比企谷くん・・・?」
私の小さな枯れた声に反応して、比企谷くんが起きた
八幡「んあ・・・?」
八幡「気が付いたのか、雪ノ下!?」
八幡「身体は痛くないか!?苦しくないか!?寒くないか!?」
雪乃「え、えぇ」
彼の血気迫る様子におじけてしまいながら、私は生返事をする
八幡「よかった・・・・」
雪乃「今何時なの?」
重い口を開いて、安堵した比企谷くんに訊いた
八幡「朝の9時だ。お前は昨日の夜からずっと寝込んでたんだ」
昨日の夜、と聞いて走馬灯のように昨晩の記憶がよみがえる
雪乃「あ・・・、私、昨日倒れて・・・」
それから、私が倒れてからのことを比企谷くんは懇切丁寧に教えてくれた
比企谷くんが熱で倒れた私を助けてくれたのだ
近くに病院が無かったので、仕方なく比企谷くんが近くにあった私のマンションに、
大雨の中私をおんぶして運んできてくれたのだ
雪乃「ごめんなさい、迷惑をかけて・・・」
八幡「いや、いいんだ。雪ノ下は俺を救ってくれた命の恩人だからな」
恩人、という言葉に重みを感じて複雑な気分になった
雪乃「あなたのほうこそ、体は大丈夫なの?」
比企谷くんは昨日、化け物に変化した相模さんに吹き飛ばされいた
本来なら大けがをしていてもおかしくない
八幡「まあ、お前を運んでるときは大変だったけどよ。だけど一晩経ったら軽くなった」
そう言いながら比企谷くんが両手でマッチョポーズして平気をアピールする
雪乃「それでも、どこか骨を折っているかもしれないわ。病院に行ったほうがいいわ」
八幡「なら、お前も一緒にな」
雪乃「そうね・・・。それよりも、」
私は比企谷くんの顔をを、くいくいと手ですぐ傍に引き寄せた
息と息がぶつかる距離だ
八幡「ん、なんだ?」
雪乃「えい」
私は横を向いて油断していた比企谷くんの頬にちゅっとキスをした
八幡「え?」
比企谷くん状況を理解して私から離れるまで、私は唇を離さなかった
八幡「え、あ?ええええ!?」
顔を真っ赤にして困惑する比企谷くんを見て、自分のしたことを思い出して
私も恥ずかしくなってしまった
雪乃「その、感謝の気持ちだから・・・。ありがとう」
多分私は顔を火照らせて、はにかみながら、それでも笑顔で言ったに違いなかった
__________________________
俺たちはその後、二人でふらふらしながらタクシーで病院まで言った
雪ノ下は重い風邪で、日曜日もそのまま寝込むことになった
俺のほうは、背中に打撲があっただけで、特に重いけがはなかった
本当はその日に帰るつもりだったのだが、雪ノ下が寂しそうな様子だったので
月曜日の朝まで雪ノ下の家に泊まり込んで看病することになった
看病している間、雪ノ下はやけに素直でおとなしくて、とても俺に優しかった
時たまに俺を勘違いさせるようなことをしてくるので、一日中ドキドキが止まらなかった
月曜日の朝には雪ノ下の体調もだいぶ回復して、学校には行けるようになった
俺は教室に入ってすぐに相模を探したが、やっぱりいなかった
それどころか、俺と雪ノ下以外誰も相模のことを覚えていなかった
名簿からも名前が消えており、相模が座っていたはずの場所には机も椅子も無かった
まるで、この世界には初めから相模南という人間はいなかったかのように、彼女の痕跡はこの世から跡形もなく消えていた
彼女がなぜああなったのかも、彼女がなぜ俺たちに襲い掛かったのかも、なぜ彼女がこの世から跡形もなく消えたのかも
俺たちは知ることができなかった
八幡「謎は闇に消えたまま、か」
雪乃「そうね・・・」
雪乃「考えても分からないことで悩んでいても仕方ないわ」
八幡「・・・そうだな」
雪乃「・・・比企谷くん。今から私に付き合いなさい」
八幡「え、えぇ!?付き合うだって?」
雪乃「ち、違うわよ!私はあなたに買い物に付き合ってほしいと言っただけだから・・・。
決して男女の交際とかそういう意味で言ったわけではないわ」
こうしてまた、俺たちの間違った青春が続いていくのだ
これにて終わり
このSSまとめへのコメント
やだ・・・かっこいい・・・