女子高生「いや、もっと深刻な反応してよ。こっちは真面目なんだよ。それでも友達っ」
友達「じゃぁ聞くけどさ、私が友達だってことは覚えてんでしょ?」
女子高生「ううん」
友達「じゃ何で友達なのさ」
女子高生「人は、みんな友達だよっ」
友達「あほくさ」
女子高生「臭くないよ!」
友達「何それボケてるつもり?」
女子高生「とにかく、私は何にも覚えてないの! 自分の名前もすっからかんなの!」
友達「おーい、ここに変な奴がいるぞー」
女子高生「やめてよ恥ずかしいじゃん!」
友達「で? あんたは何がしたいわけ?」
女子高生「自分の記憶を取り戻したい!」
友達「必要ない必要ない。あんたはそのままで十分きまってるよ」
女子高生「嫌だよこんな宙ぶらりんなの!」
友達「探したってしょうがないって。元々そんなものは無いの。あんたの妄想」
女子高生「友達なのに意地悪!」
友達「はいはい、私は意地悪ですよっと……。あ、先生じゃん。おはよー」
女子高生「」ブツッ
友達「……お、おい、大丈夫か?」
女子高生「せ、せせせ先生、おはよー!」パッ
先生「ありゃありゃ。よく落ちるね、君は。重すぎるのかなもしかして」
女子高生「し、失礼な! そのコメントはひどすぎます!」
友達「先生ー。こいつ、自分の記憶がないんだってさ」
女子高生「やっ、やだ、言わないでよっ」
先生「えー、また? メモリーって、そんなにすぐに飛ぶようなものじゃないんだけどなぁ」
友達「元々入ってなかったんじゃないのか? 入れ忘れたとか」
先生「あー、そうかもしれないねぇ」
女子高生「そんな筆箱の消しゴムみたいな言い方しないでよぉ」
友達「消しゴム貸してくれる友達作れば、持ってくる必要なんてないだろ」
女子高生「友達は便利使いじゃないよ!?」
友達「便利使いは私さ。いっつも貸してた」
女子高生「え、マジで!?」
先生「えーっと、女子高生くんは、どこまで覚えてるのかな?」
女子高生「先生が、先生だってこと」
先生「他には?」
女子高生「ん~と」
先生「トイレの使い方とか覚えてる?」
友達「いきなり何て質問しやがる!?」
女子高生「ちょっと待ってください! 行って確かめてきますっ」
友達「せんでいいそんなこと!!」
先生「まいったねぇ。もうすぐ発表会なのに、記憶喪失とか言われてもねぇ。どやされるの僕なんだよねぇ」
友達「別に、記憶が無くたって大丈夫だろ。歌って喋ってりゃ良いんだ」
先生「いや、だって、これじゃグダグダじゃない。先生お給料カットされちゃうよ」
友達「会話できればOKだよ。ごまかせるって。せいぜい、がんば」
先生「がんば。とか他人事みたいに言ってるけど困るの君もだからね。わかってるよね、ちゃんと?」
友達「別に。こいつなんか居ても居なくても変わんないし」
女子高生「ひどいよっ! 親友なのにぃ」
友達「いつのまにか友達からグレードアップしてる」
先生「先生から見たら、明るくなったと思うけどなぁ、君は」
女子高生「そうだよ! ほらほら、私に感謝してもいいんだよ!」
友達「はぁ?」
先生「あんなに人と話すの苦手だったのに、女子高生のおかげでツッコミまでマスターしたじゃないの」
友達「人、ねぇ。今だって苦手だよ、同級生と話すのはさ」
女子高生「私も同級生だよ! 設定上は!」
友達「設定とか言うな。うるさい」
女子高生「うるさい。はひどいよー! もっとオブラートに包ん」プチンッ――
先生「……んー。何が不満なんだい?」
友達「これじゃ前と変わらない。結局は、画面の中の友達だ。嘘っぱちだ。すぐ記憶喪失になるし」
先生「――確かに、しょっちゅうメモリーが飛んでしまうことは問題だ。それは改善しよう。だが、友達作りの苦手な子が、友達を作る第一歩を踏み出すためにプログラムされた人工知能、それがこの子だ。この子は今の社会に必要だよ。最初から人を相手にコミュニケーション能力を鍛えるのはキツイだろう?」
友達「でも、実際と違う。普通はこんな風に優しくない」
先生「僕は?」
友達「あんたは給料もらって患者治療してんだろ。いや、研究者でもあるから、私はモルモットか。どっちにしろ論外」
先生「別にご機嫌取ってるつもりはないけどねぇ」
友達「……嘘つきだ。みんな」
先生「この子はね、相手の年齢に合わせて、その子たちの会話やルール、流行り、表情をインプットして、できるだけ相性のいい人格を登場させるように作られている。話が噛み合わないこともあるかもしれないけど、優しさとか、思いやりとかいった点では実際の人間と大差ないはずだ。この子とあれだけ話せるのなら、人とも話せる」
友達「…………」
先生「君はね、悪くないよ。悪いのは、確かに周りのみんなだった。でもね、世界中の人がみんなそうって訳じゃないんだ。女子高生みたいな優しい子の方が、むしろ多いんだよ」
友達「んなこと言われたって……」
先生「そんなに、怖がらなくていいし、疑わなくていいんだよ」
友達「…………」
先生「じゃ、先生メモリー入れてくるから」
友達「あ、先生」
先生「なに?」
友達「……間に合いそう? 研究発表会」
先生「間に合わせるさ」
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友達「……女子高生の人格は、誰か、モデルが居たのかな……」
友達「……ってことは、いつか会えるのかな、似た奴に」
おわり
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