魔法使い「僕を仲間にしてくれないかい?」(128)

関連SS

奴隷少女「……ちょうきょう、し?」

……

勇者「……魔族、ですか?」

町長「はい。この町のはずれにある廃屋に住み着いたようでして」

町長「奴が来てから、町に悪いことがよく起こるようになってしまったのです」

僧侶「……具体的に、どのような被害がありましたか?」

町長「……いつも物資を売りに来てくださる商人の馬車が襲われることもありましたが」

町長「そのほかにも、病が流行ったり、暴力沙汰が増えたり、とにかく悪いことが起こりすぎているのです」

町長「奴の仕業に違いありません。どうか勇者様、我々をお助けください……」

勇者「分かりました。任せてください」

勇者「必ず、俺がその魔族を倒します!」

町長「おお、なんと頼もしい! それでは地図を……」ごそごそ

僧侶「……」

……

勇者「……とは言ったけど、勝てるかな」

僧侶「心配要りませんよ。勇者は女神様に選ばれた英雄なのですから」

僧侶「悪しき力に負けるはずはありません」にっこり

勇者「そう、なのかな」

僧侶「ええ。そして私も、微力ながらサポートさせていただきますし」

勇者「そうだよな。僧侶が居てくれれば、俺も安心して戦えるよ」

僧侶「あ、でも、無理はなさらないで下さい。……私はまだ半人前ですから」

勇者「そんなことないよ。僧侶が居てくれたおかげで何度も助かってるし」

勇者「半人前は俺のほうさ」ははっ

僧侶「い、いえ、そんな」

勇者「……あれかな。魔族が住んでるのって」


僧侶「……町長さんから頂いた地図によれば、あの廃屋のようですが」

勇者「……廃屋っていうより、ええと」

ボロッ

勇者「ボロ屋?」

僧侶「……いえ、しかし油断なさらないで下さい」

僧侶「我々を欺くために、わざとあのような環境に住んでいるのかもしれません」

僧侶「あるいは、ただそういったことに無頓着なだけなのかもしれませんよ」

勇者「……分かってる。気を引き締めなきゃな」ぐっ

勇者「行こう。近づかないことには始まらないし」

僧侶「……はい」

……

ギィッ……

勇者「中、暗いな……」

僧侶「お待ちください、今松明を……」

勇者「いや、なんか燃え移りそうで怖いから止めておこう」

勇者「真っ暗って訳でも無いし、気をつけて進めば大丈夫だよ」

勇者「……離れず、しっかりついてきてくれ」きゅっ

僧侶「っ! ゆ、勇者さま、その、手まで繋いでいただかなくても」

勇者「はぐれたら困るからさ」

僧侶「……はい」かぁっ


勇者「目が慣れてきたな。これなら明かりもいらなそうだ」

僧侶「……ええと、見えないんですが」

僧侶「きっと、女神様のご加護があってこそでしょうね」

勇者「そうかもな。神託の後から身体の調子がかなりいいし」

勇者「……、あれ、何だろう」

僧侶「勇者、何か見えたのですか?」

勇者「うん。真っ黒な鎧、なんだけど」

勇者「階段の真正面に立ってるし、飾ってあるだけにしては不自然かなって」

僧侶「……例の魔族、の使い魔でしょうか」

僧侶「恐らく、その先に居る主を守っているのでしょう」

僧侶「接触を避けるのは難しそうですか?」

勇者「だろうね。仮に気づかれずに先に進めても、後ろから襲ってきそうだし」

勇者「なら先に倒してしまったほうが――」

鎧「……」ガシャン

勇者「!」


鎧「……」ジャキン

勇者「気づかれた!」ばっ

勇者「仕方ない、ならこっちから先に――」だだっ

僧侶「お待ちください! まだ相手の戦力が――」

?「そうそう、戦力がはっきりしないうちに突っ込むのは愚作だよね」

僧侶「!?」

勇者(……! 僧侶の後ろ、誰か居る!)ピタッ

?「黒騎士、ちょっと待って」

?「来客は久しぶりだから、お話したいんだ」

黒騎士「……」ガシャン

勇者(……使い魔が、構えを解いた)

?「ええと、明かりも必要か。『光源』『追尾』」パッ

勇者(光が一つずつ、俺と、僧侶と、こいつの傍に)

勇者「……何者なんだ、お前」

魔法使い「僕は魔法使い。こんなところに住んでいるけど、怪しい者じゃない」


魔法使い「それで、君達はどうしてこんなところに」

勇者「あ、ええと、俺は勇者」

僧侶「……ここに住む魔族を討伐せよ、という町長さんからの依頼で来ました」

勇者「……こっちは、僧侶」

魔法使い「――へぇ、勇者様ご一行か」

魔法使い「噂は聞いていたよ。……でも魔族って、酷いな」

僧侶「先程魔法を行使したこと、さらに使い魔の存在を晒しておいて、人間のふりをしようというのですか」

魔法使い「人間にだって魔法は使えるし、使い魔の使役もできる」

魔法使い「教義にもあるんだろう? 『魔の力を使ってはならない』って」

魔法使い「それ、要するに『人間にも魔法は使えるけど使わないでね』ってことだ」

僧侶「……っ!」


勇者「……そう言えば、そうなのか」

僧侶「この者の言葉に耳を貸さないで下さい、勇者」

僧侶「狡猾な魔族のことです、我々を混乱させるために出鱈目をいっているのです」

魔法使い「そう判断する基準は? 僕が魔族だって町長から聞いたからってだけだろう」

僧侶「それは……っ」

魔法使い「逆に、町長が嘘をついている可能性は?」

魔法使い「魔族でもなんでもない、人間を殺した罪を勇者一行に負わせるための嘘だとしたら?」

勇者「……どういうことだ」

魔法使い「そりゃあ、人類の救世主っていっても」

魔法使い「魔物による被害が少ない地域なら、あまり実感がわかないものだし」

魔法使い「そんなわけの分からない二人組みに無償で支援をしなきゃならないのが面白くない、とかあるかもしれないからね」


僧侶「――、そうですよ」

僧侶「貴方が来てから、あの町に悪いことが多く起きるようになったそうです」

僧侶「貴方という魔族による被害が出ている」

僧侶「ですから、貴方の理屈は通らない」

魔法使い「……それは初耳」

魔法使い「事実かどうか、自分達で確認した?」

魔法使い「悪いことが良く起こるようになったことと、僕の存在の因果関係は?」

僧侶「……」ぎりっ

魔法使い「そもそも、僕がいつから居たかなんて、町長は知っているのかな」

魔法使い「こんな外れに、皆が忘れ去ってしまうような廃屋に」

魔法使い「人が一人住み着いたことなんて、そう直ぐに気づくものじゃないと思うけど」


勇者「……でも、町長さんが嘘をついているっていうのも、証拠は無いじゃないか」

魔法使い「そうだね。実際、嘘じゃなくて勘違いかもしれない」

魔法使い「僕のことを魔族だと勘違いして」

魔法使い「それからたまに起こる悪いことを、僕の仕業だと勘違いした」

魔法使い「っていうのがオチだろうね」

魔法使い「ただ一つ確実にいえるのは、僕は魔族じゃない」

魔法使い「君達と何も変わらない、ただ魔法が使えるだけの人間だ」

僧侶「――魔法を使った時点で、人は穢れます」

魔法使い「それは君の宗教の考えだ」

魔法使い「使ったことも無いのに、使える人を見るのも初めてなのに、何を言っているんだ」


勇者「……じゃあ、魔法使い」

勇者「君はここで、何をしていたんだ」

魔法使い「何って、普通に暮らしてたけど」

勇者「こんなところで?」

魔法使い「街中で暮らせるような立場じゃない、ってことは、さっきそこの僧侶が言ってたけど」

僧侶「……」ふいっ

勇者「……じゃあ、本当に何もしていなくて」

勇者「町で起こっている悪いこととも、関係ないんだな」

魔法使い「もちろん。町に嫌がらせする理由も無いし」

魔法使い「案外不自由してないからね。迫害されたことに対する恨みもない」

僧侶「……」むすっ


魔法使い「……いや、不自由しないってのは嘘かな」

魔法使い「ここに篭ってるだけじゃ、得られる知識にも限度がある」

魔法使い「という訳で、僕を仲間にしてくれないかい?」

僧侶「何を、ふざけたことを!」

魔法使い「割と真面目なんだけどな。ほら、結構魔法には自信があるし」

魔法使い「複数の敵を相手にするときのためにも、ある程度人数は必要だと思うよ」

勇者「……それは、あるな」

僧侶「勇者まで……!」

勇者「ほら、森の中を超えるときにさ」

勇者「魔物がどこから来るかわからなくて、僧侶に怪我をさせちゃったときがあっただろ?」

勇者「もう一人居れば、もっと安心して戦えるって思ったんだ」


魔法使い「僕は旅の中でいろんなものを見ることができるし」

魔法使い「勇者達の手伝いもできる」

魔法使い「持ちつ持たれつ、お互いに得すると思うんだけど」

僧侶「……勇者様は、女神様の使いでもあります」

僧侶「貴方のような人と一緒に行動するわけにはいきません」

魔法使い「そうかな。むしろ、女神様の懐の深さを体現できると思うよ」

魔法使い「シナリオが必要なら、……ふむ」

魔法使い「『悪しき邪教徒が勇者一行のおかげで改心し、共に悪を滅ぼすため勇者と共に戦う』ってのはどうかな」

僧侶「……女神様の使いに、嘘をつけと?」

魔法使い「騙すわけじゃないからね。確かに僕は邪教徒でも悪人でもないけど」


勇者「……分かった、僧侶」

勇者「じゃあ次の町までだ。とりあえず様子を見よう」

勇者「ほら、魔法使いがどれくらい強いかとか見なきゃいけないし」

魔法使い「ん、それもそうだね」

魔法使い「その後も一緒に旅を続けられるように頑張るよ」

僧侶「……」

魔法使い「……君とも仲良くしたいものだけど」

僧侶「結構です」

……

勇者「……で、結局魔族を退治したことにして、町長さんに報告したわけだけど」

僧侶「……お礼、断りきれませんでしたね」

勇者「俺たち、何も出来てなかったのにな」

魔法使い「そんなことはないさ、勇者」

魔法使い「退治の目的というのは、有害な他からの被害を受けないようにすることにある」

魔法使い「君が町長にそう報告することで、あの町のひとびとはもう架空の魔族におびえることはなくなるだろう」

魔法使い「――ほら! 君は魔族を退治しているじゃないか」

勇者「そう考えられれば気が楽なんだけど」

勇者「……でもなんか、騙してしまった気がして」

魔法使い「んー、それなら」

魔法使い「お礼でもらった物資を有効活用して、世界を救おう」

魔法使い「そうすれば、あの町は永遠に魔族を恐れずに済むようになる」

勇者「……今更返すわけにもいかないし、な」

僧侶「……」

……

勇者「にしても、本当に凄かったな、魔法」もぐもぐ

勇者「早いし、弱い魔物なら一撃で倒せてた」

僧侶「……確かに、戦力としては有能ですが、別に私達二人だけでも」

魔法使い「そうだね、できればあまり乱発したくないし」がぶっ

魔法使い「安全に休める状況がないから、魔力は温存しなきゃいけないんだ」もっしゃもっしゃ

勇者「へえ。……ところで、補給品にあったっけ、そんな食べ物」

魔法使い「いや。さっき殺した魔物の肉」

僧侶「ひっ!?」

魔法使い「二人の食事はちゃんと補給品を調理したやつだから安心してくれ」

勇者「……お前は大丈夫なのか?」

魔法使い「うん。いや、魔物って言うけど身体構造も食べてるものも獣と変わらないし」

魔法使い「特にこだわりがなければ食べれると思うけど」むしゃむしゃ


勇者「瘴気で汚染されてる、って聞いたんだけど」

魔法使い「それだったら同じ環境に住んでる人間達も汚染されて魔物になってるね」

魔法使い「まあ野生だから、寄生虫対策でしっかり火を通さないといけないけど」

勇者「……なんか、毎度俺が知ってたことが覆されるな」

僧侶「当然です。既に瘴気に蝕まれているのでしょう、魔法使いさんは」

魔法使い「自分の知識にない事象を理解し、自分の常識を更新していくことを学習というのだけど」

僧侶「……」ふいっ

勇者「……あとは二人が仲良くしてくれれば完璧なんだけど」

魔法使い「……ふむ」

……

魔法使い「……ふむ」ぺらっ

魔法使い「僧侶、ここの解釈ってどういう風になってる?」

僧侶「何ですかいきなり……、聖典?」

魔法使い「勇者は女神様の使いだし、僧侶は女神様に仕える身だし」

魔法使い「なら、僕も読んでおかなきゃなと思ったんだけど、なかなか面白くてね」

僧侶「……」

僧侶「そんな媚が通じると?」

魔法使い「おや、ばれた」

魔法使い「でも、確かに動機はそうだけど、興味あるのは本当だよ」

魔法使い「世界を新しい目線で捉えられそうだ」

魔法使い「でも最初から違う目線で話が進むから良く分からなくて、本職に頼ろうと」

僧侶「……」はぁ

僧侶「……教会の見解としては、ここは第6章2節の女神様の言葉と対比させ――」

魔法使い「……」じっ

……

魔法使い「僧侶、聖典のここって暗号かな」

僧侶「よく気づきましたね。異教徒の癖に」

魔法使い「そもそも僕無宗教なんだけども。……それはともかくとして」

魔法使い「暗号だとして解読してみたんだけど、どうもこれ、秘術みたいだ」

僧侶「……」ぴくっ

魔法使い「神秘性を増すために暗号っぽくしてあるだけかと思ったんだけど」

魔法使い「なんとなく僧侶がいつも使ってる祈祷と近いものを感じてね」

僧侶「……その辺、詳しく解説していただけますか」

僧侶「いえ、貴方の解読があっているはずはありませんが」

僧侶「……なんというか、その、新たな観点から、……ではなくて」

魔法使い「いいよ。僧侶から見ても自然か、僕も確かめたかったし」



勇者(……一緒の聖典を、額をつき合わせて)

勇者(案外あっさり仲良くなれたな)ふふっ

……

勇者「戦力としても優秀だし、頭いいし」

勇者「何より悪い奴じゃないってことが分かったから」

勇者「魔法使い。正式に、仲間になってくれ」

魔法使い「ありがとう。ちょっと上手くいってないかなって思うこともあったからひやひやしたよ」

僧侶「……認めたわけではありませんけどね」

魔法使い「でも嫌わないでくれるのは嬉しいよ、僧侶。ありがとう」

僧侶「まだ気を許したわけではありませんから」

魔法使い「……厳しいなあ」

勇者「っはは、じゃあこれからも頑張っていこうか」

勇者「それじゃあひとまずここの長に挨拶して、それから教会で補給を――」

……

勇者「はぁぁ……ああああっ!」ズバァッ

僧侶「いつもながら見事です、勇者」

魔法使い「本当、前衛一人だと頼りないかもしれないかと思ってたけど」

魔法使い「全くそんなことはないみたいだ。頼もしい」

勇者「止せよ二人とも。俺が安心して前に出れるのは二人のおかげなんだから」

勇者「……ところで、神聖王国まではどのくらいかかるだろう」

僧侶「この調子で進むことができれば、三日後には」

僧侶「――そこで、勇者様は聖剣を手にするのですね」うっとり

魔法使い「ああ、大神殿があるところだっけ」


僧侶「はい。女神様に最も近い国です」

魔法使い「……それで前の町からテンション高かったんだ」

僧侶「もちろんです。女神様に仕える身として、一度は訪れるべき場所ですから」

僧侶「……まあ、貴方は入国できないかもしれませんけど」くすっ

勇者「こら、僧侶」

魔法使い「そりゃあ、女神様に一番近い国ってことは、魔を最も嫌う国だからね」

魔法使い「仮に入国を許可されても街中で石を投げられそうだし、遠慮しておくよ」

勇者「……なんか、ごめんな、魔法使い。でも魔王を倒すためにも、どうしてもよらなきゃいけないんだ」

魔法使い「気にしなくていいよ。それより、聖剣を受け取ったらよく見せて欲しい。どうなってるか気になる」

勇者「っはは、約束するよ」

「――いやいやいやいや残念、その約束は叶わないんだよ」

ボゴボゴボゴボゴボゴッ

魔法使い「っ、土の中から、魔物……ッ!」ばっ

勇者「全員戦闘態勢! 魔法使い、一点でいいから包囲に穴を開けろ!」

勇者「一旦体制を立てなお――っ、ぐっ!?」ドスッ

?「悪いんだけどさ、それも叶わないんだよねー。『T?dliches Gift』!」どくん

勇者「っ、この」ぶんっ

?「おっとぉ! 動けるのか! 女神の加護は伊達じゃない!」ばっ

勇者「……ぐっ」がくん

?「ああよかった。流石にちょっとは効くよね。心が折れちゃうところだったぜ」

勇者「……何者だ」

死者の王「死者の王。――いや、聖剣もらう前にやっちゃおうと思ってねー」


魔法使い「ッ! 僧侶! 解毒を!」

僧侶「はい! 『女神様、彼の者の穢れをお祓いください』」フワァッ

勇者「ぐ、ぅ」

僧侶「――そんな、効いて、ない」

死者の王「女神の使者たる勇者にも聞く猛毒だぁ! 祈祷で治せるわけねーだろうが!」

死者の王「そんでお前らも逃がさない。魔物たちに殺されて俺の下僕になれぇ!」

ォァァァァァァ

魔法使い「――『炎』『障壁』」ゴォッ

魔法使い「『爆破』『広域殲滅』!」ズドドドドド

死者の王「炎の壁で足止めしつつ爆破魔法で惨殺かあ、酷いなあ」

魔法使い「『氷弾』『十三連』『一斉射撃』」ギュンッ


死者の王「おおう、積極的」

死者の王「死者ども、壁になれ」バッ ドスドスドスッ

魔法使い「……魔物の、破片をあつめて、壁に」

死者の王「死者の死者は死者。死者は死んでも死者。みんな永遠に下僕だ!」

死者の王「魔法使いくんの攻撃はこちらに届かないし下僕を潰しても意味が無い」

死者の王「死体相手に持久戦で勝てるわけもなし! 勇者は動けないし動けてもまた毒をくれてやるだけ!」

死者の王「やっぱり手は抜くもんじゃないね! ここで! 終われ!」

勇者(くそ、何で、こんな、ところで)

勇者(何かないか。何か、できることは)

死者の王「あ、ついでにほいっと。『T?dliches Gift』」ドスッ

勇者「げぁっ!?」

勇者(また、意識、遠のいて)

勇者(だめだ、目を閉じるな、たちあが、れ、ない)


魔法使い「……」

魔法使い(えー、っと)

魔法使い(勇者一行頼りねぇー)

魔法使い(勇者が魔王を倒すため旅立った、って話を聞いてから)

魔法使い(あの町に住み着いて、色々こっそり嫌がらせをして)

魔法使い(勇者が町に寄ったときに僕に合いに来るように仕向けたのに)

魔法使い(折角仲間として加わっても、志半ばで倒れたら意味が無い)

魔法使い(魔王を倒さなきゃ、意味が無いのに)

魔法使い(仲間として名声を得て、認められて)

魔法使い(そうしなきゃ迫害される一方だ)

魔法使い(いや嫌われるのはいい。問題は研究を進めにくくなることだ)

魔法使い(研究に必要な道具を全部自作するわけにもいかないから、外部に依頼したいけど)

魔法使い(誰も請け負ってくれないからね)


魔法使い(しかしどうしたものかな、この状況)

魔法使い(転移魔法でさっさと逃げるか、あるいは)

魔法使い(寝返って魔王に下るか)

魔法使い(僕って魔族と勘違いされるくらいだったし、なんとかなるんじゃないかな)

魔法使い(うん、そっちのほうが早いかもしれない)

魔法使い(僧侶にとっての神聖王国みたいなもんだし。魔法の本場だからね、魔族サイドって)

魔法使い(人間に責められても魔王といっしょに滅ぼせばいいだけだし。人間を実験材料にできるかもしれないし)

魔法使い(……なんだ、よっぽど好条件じゃないか。どうやってこの死者の王を口説き落とそう)


ガガッ ガガッ ガガッ

魔法使い(……、蹄の音。かなり、多い)

ダンッ

?「せぇぇぇぇいっ!」ズバァッ

魔法使い(……フルプレートの騎士が、空から降ってきた)

魔法使い(馬上からの跳躍で? ……なにその人外)

?「大丈夫か! 君達!」

?「もう安心していいぞ――ふんっ」ズバッ

?「神聖王国騎士団第一部隊が、君達を救う!」

魔法使い(斬った死体が、浄化されていく)

魔法使い(もしかして、全装備祝福済みか、大神殿で)

死者の王「――はぁん?」

……

?「大丈夫だったか、君達」

魔法使い「ああ、助かったよ」

魔法使い(僕が降伏する前で本当に良かった)

?「親玉は逃がしてしまったが……それでも、君達を救えただけで私は嬉しい」ガシャッ

女騎士「私は神聖王国騎士団副団長、兼第一部隊隊長の女騎士だ」

魔法使い(……しかしさっきの戦いぶり。勇者とか放って置いてこいつらで魔王城に戦争仕掛ければいいんじゃないかな)

女騎士「君は大丈夫そうだが……そちらの二人は大丈夫か」

僧侶「……わたしは、だいじょうぶです」

僧侶「それより、ゆうしゃさまが」

女騎士「……勇者!?」

女騎士「……思った以上に一大事だったようだ。皆、彼らを連れて帰還する!」

女騎士「勇者は馬車へ! 医療班、可能な限りの処置を続けろ!」

魔法使い「……」

……

魔法使い(勇者は神殿で解毒中、僧侶はその手伝い)

魔法使い(そして僕は城壁の外で野営)

魔法使い(……まあ、いつものことだ。気にすることはない)

女騎士「すまないな。私としては、君にも宿を用意したかったのだが」

魔法使い(唯一違うのはなんか余計なのがいること)

魔法使い「いつものことだからね。僕が無害ですよーって言ったところで、信じてくれる人は少ないし」

女騎士「私は信じるぞ」

女騎士「勇者と僧侶を守っていたのだろう? 我々が間に合ったのも、君が戦ってくれていたおかげだ」

女騎士「そんな君が善人であることは疑いようがないし、君が自分のことを悪人だといっても信じられない」

魔法使い(……ふーん)

魔法使い「そう言われたの、生まれて初めてかもしれないね。嬉しいよ」

魔法使い(全ての人間がこいつみたいだったらどれだけ平和な世界になることやら)


魔法使い「で、何で副団長兼部隊長様が僕みたいなののところに?」

女騎士「一人でいるのは危険だろう。よって僭越ながら、警護させてもらおうと思ったのだが」

女騎士「部下も数人連れてきたかったのだが、団長が私一人で十分だといってくださったのでな」ふんす

魔法使い(それは君以外僕を警護しようってお人よしが居なかったからじゃないかな)

女騎士「……ところで、その、君がやっている魔法というのは、どんなものなのだ」

魔法使い「……神聖王国の副騎士団長が異教に興味を持つ、って結構問題なんじゃないかな」

女騎士「そういうわけではない。ただ、女神様に背き、迫害を受けてまで君が使っている魔法というのは一体どんなものなのか」

女騎士「そう考えると、頭から否定するのは失礼だと思ってな」

魔法使い(……へえ。僧侶よりずっと話の分かる奴だ)

魔法使い(勇者と仲良くなれそうだね。お人よし同士)

魔法使い(僕とは全く気が合いそうにないけど)


魔法使い「……異教徒とは言われるけど、僕は別に邪心を崇拝しているわけじゃない」

魔法使い「魔法っていうのは、どちらかといえば学問に近いんだ」

女騎士「……しかし、何もないところから火を産みだす様を見ると、まるでそうは思えん」

魔法使い「何もないわけじゃないよ。そこには力がある」

魔法使い「魔力だとか魔素だとか瘴気とか呼ばれている力がね」

魔法使い「その存在を理解し、力に方向性を持たせてやるのが魔法だ」

女騎士「……すまない、全く理解できん」

魔法使い「あっはっは。とにかく理論とか理屈とかそういうものを使うから」

魔法使い「それを元に練習していけば誰にでも使えるものだよ」

魔法使い「最も、取り扱いには結構神経使うけど」

女騎士「やはり、危険なのか」

魔法使い「うん。手から火を打ち出そうとしたら手の中に火を作って内側からやけどした話が本にあった」

女騎士「……っ」ぞわっ

……

女騎士「……ふーむ」

女騎士「さっぱりわからんが、少なくとも今まで思っていたものとは違うことは分かったぞ」

魔法使い「それだけ分かってくれればいいよ。わかって欲しかったのもそれだけだから」

女騎士「しかしそうすると、余計に申し訳なくなってくるぞ」

女騎士「……なんとかして、街に入れてやりたいのだが」ううむ

魔法使い「いいって。慣れてるし――」

――ドドォン!

女騎士「――っ、何だ、今の音は!」がばっ

魔法使い「中のほうから聞こえたね」

魔法使い「早めに戻ったほうがいいと思うよ」

女騎士「ああ。君はどうする?」

魔法使い「遠慮しとく。何かあったら僕のせいにされそうだし」

女騎士「……すまない。気をつけてな」だっ


魔法使い(さて)

魔法使い(まあ十中八九、さっきの死者の王だろうね)

魔法使い(長距離の転移魔法か、また地面の下から出てきたか)

魔法使い(配下を一緒に連れて行きやすいから、多分後者かな)

魔法使い(いや、王だとかいうくらだし、軍勢まるごと転移もできたら凄いなあ)わくわく

魔法使い(そして祝福済みの装備の恐ろしさは目にしているから、対策もしてるだろう。何かは知らないけど)

魔法使い(……これで神聖王国滅んだら本気で寝返り考えようか)

魔法使い(教会の権威失墜にも繋がるから、女神に失望する人も多くなる)

魔法使い(信者も減るし、勇者への支援も少なくなるし)

魔法使い(そうすると本気で人間側が絶望的なんだよねー)

ボゴボゴボゴボゴ

魔法使い「――、おや」

死者の王「やーやー人間。ちょいと交渉に来たよ」

魔法使い(これはこれは)

魔法使い(僕の未来は希望でいっぱいだ)

……

女騎士「――状況は!」

騎士団員「はっ! 市街地中心に魔物が突然現れました!」

騎士団員「一部の市民は逃げ切ったようですが、逃げ遅れた多くの市民が……」

女騎士「……分かった。すぐさま前線に加わろう」ばっ

騎士団員「お待ちください! それだけではないのです!」

女騎士「待たん! 少しでも多く民を救うために、時間が惜しい!」だだっ

騎士団員「だからあんた何で鎧姿でそんなに速く走れるんだよぉぉっ」がしゃがしゃ


市民「ぅ、ぅう」よろよろ

女騎士「……! まだ生存者が居たか!」ばっ

女騎士「大丈夫か! いまそちらに向かう!」

市民「騎士、さま。助かったぁ……」

女騎士「よし。歩けるか」がしっ

女騎士「この先に同僚が居る。そいつに案内してもらってくれ」

女騎士「私は、出現したという魔物を打倒せねばならん」

市民「そんな、無茶です」

女騎士「無茶はない。私は市民の盾となり、戦う義務も、力もある」

市民「いや、そうではなく」

市民「……ここで死んで、どうしてこの先で戦えるというのですか」ドスッ

女騎士「――、な」

女騎士「に?」


女騎士「なに、を」

市民「ナイフの刃を回しています。ぐりぐりと。ぐりぐりと」

市民「鎧の隙間に差し込んだナイフの刃を回しています。隙間が狭いので回しづらいです」

市民「ナイフをとてもまわしていますまわせませんまわしません」

騎士団員「――っせい!」ズバァッ

市民「――」どさっ

女騎士「ぐ、ぅ」ふらっ

騎士団員「だから、待てって、いったのに」ぜー ぜー

騎士団員「――襲われた市民は、皆魔物と化しています」

騎士団員「理性を持ったまま、外見を維持したまま、です」

女騎士「そん、な」

女騎士「それでは」

女騎士「私に、どう戦えと、言うのだ」

……

死者の王「ってな訳だからさー、ぶっちゃけ神聖王国終わっちゃうのよね」

魔法使い「……」

魔法使い(現在、神聖王国は死者の王の魔力で満たされている)

魔法使い(最初に出現した魔族は、獣の王の軍勢)

魔法使い(結構最近、僕らが殲滅した軍勢の死体)

魔法使い(それだけだと祝福された装備で一撃、だけど)

魔法使い(死者の王の魔力が、祝福の効果を阻害する)

魔法使い(そして当然、敵味方問わず死者が出れば)

魔法使い(死者の王の下僕として動き出す)

魔法使い(神聖王国の兵力が削られることはあっても増えることはなく)

魔法使い(死者の王はどんどん勢力を増していく)

魔法使い(つまり、まあ、国の中は地獄絵図だ)

死者の王「絶望して声も出ない感じ?」


魔法使い(聞く限りでは、隙のない完璧な作戦だ)

魔法使い(仮に勇者が聖剣を振るえば、その状況下でも死体を黙らせることはできよう)

魔法使い(ただ、勇者は毒にやられて、まともに動けない)

魔法使い(祝福された装備が弱体化されるというなら、神官達の祈祷も無駄だろう)

死者の王「あれ、聞いてる?」

魔法使い(これらが全てペテンであるという可能性も、まあ無くはないけど)

死者の王「これでも女の子だから、無視されると泣いちゃうんだよ?」

魔法使い(女神の加護を受けた勇者にさえ効く毒の魔法を使えるんだから――って)

魔法使い「君、女だったのか」

死者の王「そそ。仮面をつけて俺とか言ってるのは照れ隠しだぜ」

死者の王「何ならおっぱいでも見るかい? 死体と違って活き活きしてるよ」

魔法使い「……死者の王なのに生きてるのか」

死者の王「市民達にとっての王だって市民じゃないだろう」


魔法使い「それで、交渉って、何の?」

死者の王「いやさっきさ、君と戦ったじゃん」

死者の王「人間なのに魔法使うなんて珍しいなーとも思ったと同時」

死者の王「その上かなりの使い手だからさ」

死者の王「一緒に魔王様のところで働かない? って話」

魔法使い「……君の配下になれ、じゃなくて?」

死者の王「それならわざわざ交渉しなくても、殺しちゃえば済む話だし」

魔法使い(まあ、そうか)

死者の王「それに君、なんとなーく俺らと気が合いそうなんだよね」

死者の王「いやほんと、なんとなくだけど」

魔法使い「対して交流もないのに人格を決めるのは早計だと思うよ」

死者の王「そうだった。俺らしくもねーや」えへへ


魔法使い(……ふーむ)

魔法使い(もともとの僕の目的を考えると、この誘いは本当に魅力的)

魔法使い(ただ目先の欲だけ考えるのは早急だな)

死者の王「どーよどーよー。一緒に研究しようぜ」

死者の王「一緒に、永遠に、魔法研究しようぜ」

魔法使い「永遠に、って、僕には寿命があるんだけど」

死者の王「その辺は大丈夫。ちゃんとやり方があるんだぜ」

魔法使い「……やり方?」

死者の王「ふふん、人間だから寿命がある」

死者の王「――なら、人間やめればいいじゃーん」

……

女騎士「……ぐ、ぅ」

騎士団員「副団長、大丈夫ですか」

女騎士「ああ。祈祷で傷は塞いだ」

女騎士「少々痛むが、仕方があるまい」

騎士団員「……いつもなら、あのくらいの傷ぱっと治るのに」

女騎士「……先程から、国内に妙な気が漂っている」

女騎士「恐らく魔族の仕業だろう。その気が我々の祈祷を阻害し、死者を魔物にするのかもしれん」

騎士団員「……何にせよ、こんな民家にいつまでも立て篭もっていられません」

女騎士「……ああ。時間が経つほど、守れる市民が減っていく」

女騎士「だからといって、魔物を倒すわけにも」

騎士団員「……」


騎士団員「俺たち、これからどうすればいいんでしょう」

騎士団員「市民と同じ姿のものを殺すのも、いや、ですし」

騎士団員「仮に殺せたとしても、また蘇りますし」

女騎士「――諦めるな。機を待て」

女騎士「我々にできることは、今はそれくらいしかない」

女騎士「今は、耐えるしか――」

――ゴォォォォン

騎士団員「!?」びくっ

女騎士「何だ、何事だ!」ダッ ガチャッ

騎士団員「ふ、副団長! 急に外に出ては――」

女騎士「――、見ろ」


ガラガラガラガラ

騎士団員「――城壁に、穴が」

騎士団員「ああ、もう、おしまい、だ」

女騎士「……いや」

女騎士「あれが、希望だ」

ゴォッ

騎士団員「っ、いきなり、突風?」

女騎士「漂っていた妙な気が、飛ばされていく」

女騎士「――想定以上、いや、でたらめすぎるぞ、魔法使い!」ばっ


女騎士「一度城へ向かい、生き残った騎士達と合流する」

女騎士「私が道を切り拓く! 貴様は続け!」

騎士団員「ま、待ってください! 市民と見分けのつかない魔物は――」

市民?「き、きしさま、たすけ」

女騎士「――篭手で、叩け!」ばしぃっ

市民?「うげぁあぁああああ!」ドジュウゥゥゥ

女騎士「女神様の祝福の力が存分に発揮されれば、打撃以上のダメージが出る!」

女騎士「出たものは、叩き斬る!」ズバァッ ドシャッ

騎士団員「……あ、あ」

女騎士「――こうするしか、無いんだ」

女騎士「奴が作ってくれた反撃の機会を、無駄にしてはならない」

……

魔法使い「よし、風通しが良くなった」

死者の王「……何で」

死者の王「君に損は無い、話なのに」

魔法使い「――僕は勇者の仲間だ」

魔法使い「人間を救う、勇者の仲間だ」

魔法使い「仲間を、人間の希望を、見捨てるわけが無い」

死者の王「――!」

死者の王「見込み違い、かぁ」

死者の王「じゃあ俺の下僕になれよ、クソがぁ!」カッ

死者の王「死者共! 這い上がって、殺せ!」

魔法使い「いいや、それは無理だ」

死者の王「……あ、れ?」シーン

死者の王「何をした!」

魔法使い「敵に手の内を晒せるほど余裕は無いものでね」


魔法使い(いや冷静に考えたらさ)

魔法使い(裏切って魔族側についたところで、それはそれで迫害されそう)

魔法使い(裏切り者で、しかも異種族だよ)

魔法使い(僕ならそんな奴、信頼できないね)

魔法使い(だからあくまで僕は、人間として、人間に、魔法を認めさせたい)

死者の王「っは、いい気になるな!」

死者の王「なら直接俺が戦えばいいだろ! 『T?dliches――」

ドスッ

死者の王「――、へぁ?」

黒騎士「……」

魔法使い「べらべらべらべら」

魔法使い「よくもまあそんなに余裕綽々で話していられるもんだ」ギュンッ

死者の王「――ひ、あがぁっ!」ドスドスドスッ

死者の王「詠唱、無しで、そんな」


魔法使い「ああいや、別に僕が強いとかそんな話じゃなくて」

魔法使い「油断した君が悪い」ヒュンッ

死者の王「……拘束、なんかして、どうするんだ」

魔法使い「尋問。そう簡単に死なないだろうから、じっくりやらせてもらうよ」

死者の王「……っ」ギリッ

魔法使い(……うん。やっぱり僕はこういう戦い方のほうが向いている)

魔法使い(油断を誘って、不意打ちしてこそだ)

魔法使い(勇者一行としてだとさー、こういうのできないからね)

魔法使い「とりあえずどこからとも無く取り出したる聖水をかけてしまおうかと思うんだけど」ごそっ

死者の王「ま、待て、それはちょっと、痛いから、やめて」

……

魔法使い(……うーん)

死者の王「あ、が、ぎぅ」びくっ びくっ

魔法使い(聖水漬けにしてみたり、火あぶりにしてみたり、文字通り手も足も出せないようにしてみたりはしたけれど)

魔法使い「いい加減、お話してくれないかな。魔王軍の構成とか、今後待ち構えているものとか」

死者の王「い、いやだ」

魔法使い(この通り、口を割ってくれない)

死者の王「まおうさまの、じょうほうは、くちがさけてもいわん」

魔法使い「……うーん」

魔法使い「よし、話してくれなければ、抉る」

死者の王「……やりたければ、やれ」

魔法使い「よっと」ごりっ

死者の王「――!!!!」

魔法使い(……ふむ)


魔法使い「どうしてこう、頑固なのかね」

魔法使い「もう君から取るものなくなりそうなんだけど」

死者の王「……ぐ、が」

魔法使い(……五体満足で殺しても、なんか復活しそうだし)

魔法使い(だからこうやって色々潰すことで脅してるわけだけど)

魔法使い「……今なら」

魔法使い「一つ質問に答えるたびに、一つ返してあげてもいいよ」

死者の王「……」

死者の王「そんなこと、で」

死者の王「俺が魔王様を裏切るかよ」

死者の王「――『Freitod』『Freitod』『Freitod』!」

魔法使い「何をしようとしてるか知らないけど、無駄だろうに」

魔法使い(魔力やら精気やら生気やら、吸い尽くしてるし)


死者の王「……あああああああっ!」

死者の王「殺せよ! どうせこんなんじゃ蘇生しても意味が無いし蘇生も出来ない!」

魔法使い「魔王にそこまで義理立てする必要、あるの?」

死者の王「当たり前だ! あの方を裏切るくらいなら死ぬ!」

魔法使い「……仕方ない、か」ピッ

黒騎士「……」ガシャ

ズドン

魔法使い(ああ、とんだ時間の無駄だ)

魔法使い(けどまあ、これで死体も動かなくなるだろうし)

魔法使い(っと、いかんいかん。証拠隠滅しておかないと)ボォッ

……

ォォォォォォォォ

女騎士「……、死者たちが、崩れていく」

女騎士「――今が好機だ! 残った魔物を掃討する!」

女騎士「私に、続け!」

騎士団員達「う、おおおおおっ!」

女騎士(魔法使いが、何かしてくれたのだろうか)

女騎士(やはり、いい奴で、凄い奴じゃないか)

……

勇者「……ぐ」むくっ

僧侶「っ、勇者、大丈夫ですか」

勇者「もう、動ける」

勇者「……けど、もう遅い」

勇者「肝心なときに、俺は」

勇者「何も、出来なくて」

僧侶「勇者……」

女騎士「――ならば、これから成せばいい」ガシャン

女騎士「今日繋いだ命を未来に使えばいい」

女騎士「……私も、協力しよう」

勇者「……っえ」

女騎士「今回の襲撃で思い知ったよ。守るだけではこちらの不利は覆らない」

女騎士「だから、こちらから打って出る必要がある」


女騎士「協力させてくれ、勇者」

勇者「……こんな、俺なんかと一緒に行くより――」

女騎士「いいや、君は希望だ。我々の希望なのだ」

女騎士「不意打ちにより、今回は一度敗北したとはいえ」

女騎士「それでも君の持つ力は、世界を救う」

女騎士「……魔王を打ち滅ぼすことのできる唯一の武器、聖剣を使えるのも君だけだ」

女騎士「戦うぞ、勇者!」

勇者「――、ありがとう」

勇者「ありがとう、ありがとう」ぼろぼろ

僧侶「……」

……

勇者「おおおおおおっ!」ズバァッ

女騎士「せええええいっ!」ドシュッ

僧侶「……」

魔法使い「女騎士はそう簡単に傷つかないし、攻撃力もある」

魔法使い「勇者の身のこなしも旅を続けるごとに良くなっていくし、聖剣による攻撃は圧倒的」

魔法使い「いやはや、楽になったものだね」

僧侶「……何なら、貴方は抜けてもいいのではありませんか?」

魔法使い「冗談がきついなあ」

魔法使い(……さて、余裕があるうちに考えておこうか)

魔法使い(死者の王が、何故あそこまで魔王に忠誠を誓っていたか)


魔法使い(例えば、獣の王が支配していた地域)

魔法使い(逆らえば殺すと脅し、人間を奴隷化して、働かせていた)

魔法使い(しかし僕達がこっそり潜入し、彼らと接触した後は)

魔法使い(地形を教えてくれたり、警備状況を教えてくれたりとこちらの味方についてくれた)

魔法使い(――つまり、力による支配では、死者の王のような忠誠心は生まれない)

魔法使い(主に対する勢力が出たら、それに鞍替えしてすぐさま裏切るようなことになり、かえって危険だ)

魔法使い(では何だ。何によって忠誠心を高めている)

勇者「――ぐっ、しまった!」ザクッ

僧侶「勇者! 『女神様、彼の者の傷を癒したまえ』」パァァァァァ

魔法使い(……信仰心?)

魔法使い(神格化によって、崇めさせている?)


魔法使い(いや、それじゃあ足りない)

魔法使い(死者の王は魔法を研究していた)

魔法使い(であれば、女神の加護、というより神という存在がどんなものか分かっている)

魔法使い(魔王を神として、無条件に崇めることはない)

魔法使い(恩とか義理とか、そういうのも無いだろう)

魔法使い(それで死んだら元も子も無い。あいつも研究者なのだから、騎士道精神とは違う)

魔法使い「っと。『氷弾』『三連』『射撃』」ズドドドッ

勇者「助かった! 引き続き後ろを頼む!」バッ

魔法使い「了解。前は任せるよ」

魔法使い(――ん?)

魔法使い(これか?)


魔法使い(信頼、安心感)

魔法使い(……思えば、これ何なのだろう)

魔法使い(お互いの目的達成のためだから、裏切られることはない)

魔法使い(とか、そういうのとは違うよね)

魔法使い(例えば、僧侶)

魔法使い(僧侶は結構頭がいい。人には裏があることを知っている。人を疑うことを知っている)

魔法使い(けれど、恐らく勇者の事を疑うことはないだろう)

魔法使い(仮に勇者が人間達を裏切っても、勇者についていくだろう)

魔法使い(勇者に嫌われても、何か深い意図があるとして勇者を信じ続けるだろう)

魔法使い(……でも僕と似たような状況になったら絶対に切り捨てる)

魔法使い(勇者とか女騎士だったら僕のこと連れ戻そうとするのかな。馬鹿だし)

……

女騎士「やあ、魔法使い。今日もお疲れ様」

魔法使い「ああ、女騎士。そちらこそ前線お疲れ様」

魔法使い「それと、この外套貸してくれてありがとう」

女騎士「ふふん、神聖王国と女神様の紋章つき、しかも祝福済みだからな」

女騎士「それを着ていれば、君も問題なく街に入れると踏んだのだ」

魔法使い「おかげで久々のベッドだよ。食事も出るしゆっくり休める」

女騎士「……やはり、以前はずっと野営を?」

魔法使い「うん。でもまあ、それを承知で着いてきたからね」

女騎士「そうか……」


魔法使い(……色々落ち着いて考えたかったのに何で部屋まで押しかけてくるんだ)

魔法使い(街に入れるようにしてもらった手前無下にはできないし)

女騎士「しかし共に戦ってみて改めて思うが、君を迫害するなどどうかしている」

女騎士「知的で冷静で、博識で正義感のある君だ。むしろ積極的に街に招くべきともいえよう」

魔法使い(正義感……は無いな)

魔法使い(……そういえば、こいつはやけに俺を良く評価してるけど)

魔法使い(さらに好感度を上げたら、どうなるだろう)

魔法使い(勇者を必要以上に信頼する僧侶のように、僕を必要以上に信頼するだろうか)

魔法使い(それはもしかしたら、魔王に異常なまでの忠誠を示した死者の王に通じるのだろうか)

魔法使い(試してみる価値は、ある)じっ

女騎士「? 何だ、じろじろと」

……

勇者「それじゃあ、今日は自由行動」

勇者「薬とか食料とか、共用のものは俺と僧侶で補充しておくけど」

勇者「装備とか私物とかはさっき配ったお金で各自補充してくれ」

魔法使い「了解」

女騎士「了解した」

僧侶「では、行きましょうか、勇者」

魔法使い(……ふむ)

魔法使い「女騎士。一緒にいてもいいかな」

魔法使い「正直、僕はあんまり補充するものもないし暇なんだよ」

女騎士「む。……まあ、私は構わんが」

魔法使い(さて、仲良くしましょうか)

……

魔法使い「とりあえずどこを見る?」

女騎士「一応、武具を見ておこう。今使っているもので十分だとは思うが」

魔法使い「そういえば神聖王国の騎士団支給品だったね。そこらの売り物よりよっぽどいいのは確かだ」

女騎士「ああ。だから私も正直暇で――」

魔法使い(……ん?)

魔法使い(女騎士の目線の先。……装飾品店、かな)

女騎士「――いや、うむ」

女騎士「軍資金節約のためにも、歩き回って時間を潰すことにする」

魔法使い(なるほど、ねえ)

魔法使い「それもいいね。結構賑やかな街だから、見ていて楽しいし」

……

女騎士「……ふむ、美味い」

魔法使い「良かった。そんなに高価な菓子じゃないから口に合うか不安だったし」

女騎士「確かに食事会の警備時に一つ二つ頂くことはあるが」

女騎士「私としては、こういった街中で売っているものも悪くない」

魔法使い「それぞれ良さがあるもの、なのかな」

女騎士「しかし良かったのか、払ってもらって」

魔法使い「まあ、元は共用の資金だからね。気にすることじゃないさ」

女騎士「そう考えれば、まあ、そうだが」

魔法使い「さて、さっきちょっと気になる店があったから見てくるよ」

女騎士「ああ。ではまた」

魔法使い(……よし、さっきの店はどこにあったかな)

……

勇者「今日は川辺で野営が出来てよかったな」

魔法使い「次の町まで思った以上にかかるみたいだからね。補給が出来てよかった」

勇者「……」

女騎士「……」

魔法使い「……まあ、釣果があったのは僕と僧侶だけだけど」

勇者「面目ない……」

僧侶「気になさる必要はありませんよ、勇者。その場の運もありますから」

魔法使い(僕は幻惑の魔法で魚の警戒心を下げたからだけどね)

女騎士「やはりこれではいけない。私は今すぐ狩りに」

魔法使い「十分足りてるから心配しなくていいよ」

女騎士「……むう」


魔法使い「そうだ女騎士、ちょっとこっちへ。見せたいものがあるんだ」

女騎士「? 分かった」



女騎士「……これは」

魔法使い「川の流れが穏やかになってるところを使って、簡単だけど風呂を作ってみた」

女騎士「……本当に、君は何でもできるな」

魔法使い「あっはっは。それでまあ、ここ最近宿に泊まれて無いし」

魔法使い「簡易だけど、湯浴みでもどうかな」

女騎士「いい、のか?」

魔法使い「僕と勇者は男だからそんなに気にしないけどね。後で僧侶も誘うといい」

女騎士「……私は、女である以上に騎士であるが、しかし、う、む」

女騎士「有難く、使わせていただくよ」


魔法使い「ああそうだ、その前にこれを渡しておくよ」

魔法使い(こっちが本命だけどね)

女騎士「……これ、は、首飾りか?」

魔法使い「この前寄った町で買った奴に、ちょっと魔法を込めてみたんだ」

魔法使い「攻撃を受けたら自動で発動して、装着者の身体能力を一時的に上げるんだけど」

魔法使い「……ほら、鎧のままって訳にも行かないからね」

女騎士「成る程。……君は凄いな、本当に」

魔法使い「あと女騎士に似合うと思って」

女騎士「っな!」カァッ

魔法使い(やっぱりね。キャラを崩してまで可愛らしいのを買った甲斐があった)

魔法使い(全く、これでもうちょっと筋肉が少なければもっとやる気が出るのだけれど)

魔法使い(僧侶には嫌われてるし、こっちのほうが楽そうだからね)


魔法使い(女騎士の口調。あれは硬すぎる)

魔法使い(ぎこちなさは無いが、それは慣れによるものだろう)

魔法使い(つまりまあ、騎士としての彼女の姿であって)

魔法使い(女性としてのものは、押さえ込んでいると見た)

魔法使い(前の町で凝視してたからな、装飾品店)

魔法使い(分かりやすくて助かるよ、全く)

女騎士「……その、だな」

魔法使い「ん?」

女騎士「……見張りを頼めるか。入浴中の」カァッ

魔法使い(……、ん?)

魔法使い「ああ、いいよ」

魔法使い(いいけど、あれ? 何か違くないか?)

……

魔法使い「……」

魔法使い(仕切りは無し。準備したほうが良かった)

魔法使い(背後には風呂。……と、その中に女騎士)

魔法使い(当然裸に俺が渡した首飾りをつけているだけの姿だろう)

女騎士「……ふう、やはりいいな」

女騎士「疲れがほぐれていく気がするよ」

魔法使い「それはよかった」

魔法使い(……加えて、やたら話しかけてくる)

魔法使い(さっきの赤面といい、……多分、その)

魔法使い(好感度は上がっているが、僕が求めているものと違う)

魔法使い(要するに、恋愛感情だ)


女騎士「……」ちゃぷ

魔法使い(ああそうだ、思えば)

魔法使い(神聖王国から旅立つことで、彼女は騎士という立場から解放されつつある)

魔法使い(恋路を邪魔するものが減ったのだ)

魔法使い(……魔王討伐の旅路だから恋愛などしている余裕は無いと思うが)

魔法使い(僕からアプローチを受けたと思ってしまえば、許されると勘違いするのも無理は無い)

魔法使い(そういえば、勇者を見る僧侶もさっきの女騎士と同じ顔をしている)

魔法使い(総合して考えると、僧侶は勇者の事が好きで、だから信頼しているのか)

魔法使い(……それは主従関係に向かないな。対等な関係でこそ作れるものだ)

魔法使い(それに一対一じゃないと維持するのは難しいだろう)

女騎士「……あ、あの、だな、魔法使い」

女騎士「何かお礼がしたいのだが、私にできることは無いだろうか」

魔法使い(君にできることはだいたい僕にもできるから安心してくれ)

魔法使い(しかしどうしようかなー)

魔法使い「そうだね、これからも仲良くしてくれればそれでいいよ」

女騎士「む、……しかしそういうわけにも」

魔法使い(ええい鬱陶しい。身体にも興味ないぞ)

魔法使い「僕としては、一生懸命頑張っている女騎士を応援したかっただけだから」

魔法使い「喜んでくれただけで嬉しいんだけどね」あはは

女騎士「むう……」

魔法使い(頼むから納得してくれ)


僧侶「……そんなところで何をしているのですか、魔法使い」

魔法使い(僧侶……! 今ほど君を待ったときは無いぞ!)

魔法使い(というのは大げさだけど、助かった)

魔法使い「ああ、簡単な風呂を作ったんだけど」

魔法使い「今女騎士が入っているから、それの見張り」

女騎士「うむ、いい湯加減だぞ、僧侶」

僧侶「……! なんて、はしたない」

僧侶「このけだものに何かされたらどうする気ですか!」

魔法使い「僕はそんなに血気盛んな性格じゃないと自負してるよ」

女騎士「そうだぞ。彼がこちらを覗き見ることはない」

女騎士「……私としては、その、見てくれても」ぼそっ

魔法使い(止めろ僧侶に聞こえず僕に聞こえるくらいの声でそんなこと言うな)


僧侶「私は遠慮しておきます。どうぞごゆっくり」ふいっ

魔法使い「そっか。じゃあ後で勇者に見張りをやってもらうといい」

僧侶「っ、な、何で勇者が出てくるのですか!」かあっ

魔法使い「ん? 僕と勇者だったら、僧侶としては勇者のほうが信頼できるだろう?」

魔法使い「ほら、勇者が旅を始めて直ぐ仲間になったって聞いてるし」

僧侶「……っ!」だっ

魔法使い(逃げた。……やっぱりか。やっぱり恋する乙女か。緊張感が足りてないな)

女騎士「……彼女は勇者の事が好きなのだろうか」

魔法使い「本人の口からそう聞いたわけじゃないけど、たぶんそうだろうね」

魔法使い(……しまった。恋愛が許される根拠を与えてしまった)

魔法使い「そろそろ上がったほうがいいんじゃないかな。浸かりすぎも体に悪いよ」

女騎士「む、それもそうだな。気遣い感謝する」ざばぁ

魔法使い(……この実験で分かったのは、思いついたことを軽はずみに試すべきじゃないってこと)

魔法使い(どうしようかな、これから)

……

魔法使い(連日の野営。食料はまあ、僕が魔物食べてた甲斐もあって足りている)

魔法使い(次の街にもそろそろ着くだろうし、問題は無い)

勇者「……な、なあ、魔法使い」

魔法使い(で、こいつは)

勇者「女騎士のこと、どう思う」

魔法使い(色恋に目覚めた)

魔法使い「……そうだね、頼もしい仲間だと思うよ」

勇者「そういうのじゃなくて、その」

魔法使い(まあ、そういえばまだ子供だからな。女神に選ばれたってだけで旅に出されたわけだし)

魔法使い(仲間が増えて余裕が出てくればこうなるのも分からないことはない)

勇者「……最初は俺もさ、滅茶苦茶強いし頼りになると思ってただけなんだけど」

勇者「何か最近、その、可愛く見えて」

魔法使い(ごめんそれ僕のせい)


魔法使い(……勇者が上手く動いてくれれば、あの面倒なのが離れてくれる)

魔法使い(そりゃあ万歳だ。だから勇者を炊きつけて恋を応援してやろう)

魔法使い(と、したいところだけれど)

魔法使い「……勇者。僕が勇者に言うのも何だけど」

魔法使い「この旅は、何のためだ?」

勇者「……っ」

魔法使い(僕が応援していることがばれると好感度が下がりそうだ)

魔法使い(折角だし、何かに使ってみたい)

魔法使い(神聖王国でこの上なく活躍してたみたいだし、魔王を倒して帰ってくればそれなりの地位は約束される)

魔法使い(逆玉の輿ってやつだな。うん)


勇者「そうだよな。……悪かった」

魔法使い「気持ちは分からないでもないけどね。君もそんな年頃だろうし」

勇者「う、うるさいな、忘れてくれ」

魔法使い「いやいや、恥じるものじゃあないよ」

魔法使い「僕だって恋はしたことあるし」

勇者「……なんか、意外だ」

魔法使い(そりゃそうだ。嘘だし)

魔法使い「最も、その頃から魔法は研究してたからね。それがばれてふられたよ」

魔法使い(ただ、仲間意識を高めておくに越したことは無い)

魔法使い(嫌われるより好かれたほうが、使いやすそうだからね)

……

勇者「やっと街に着いた、けど」

奴隷商人「いらっしゃいいらっしゃい、今日もいいのそろってますよー!」

奴隷「……」

僧侶「……何ですか、この国は」

女騎士「……」

魔法使い(……ふーむ。奴隷制がある国は珍しくないが)

魔法使い(ここまで堂々と売っているとは)

奴隷商人「そこの旅の方々、どーですかぁ!」

奴隷商人「旅の途中の性処理に! ちょっと無茶なプレイも構わずどうぞ!」

奴隷商人「今なら一晩限りのお試し貸し出しも――」

女騎士「……貴様、今すぐその口を切り刻んで――むぐぅっ!?」

魔法使い(おおっと。下らないところで騒ぎを起こすのも面倒だからね)


魔法使い「あー、食糧不足が加速するんで結構です」

奴隷商人「大丈夫大丈夫、こんなん草食わせとけばいいから!」

魔法使い(どうりで細い)

魔法使い「……結構危険な旅ですし」

奴隷商人「いざってときにゃ囮にもできますぜ?」

魔法使い(なるほどそれは便利。……じゃなくて、ああ面倒だ)

魔法使い「女騎士、ごめん」ぼそっ ぱっ

女騎士「ぷは! 魔法使い、何を――」

魔法使い(よっと)ぎゅっ

女騎士「ひぁっ!?」

魔法使い「間に合ってますから」にこっ

女騎士「……!?」かぁっ

奴隷商人「……ああ、失敬」にやにや

……

女騎士「――ま、全く、いきなり何を言い出すんだ!」

魔法使い「ごめんごめん、あれくらいしないと諦めてくれなさそうだったから」

女騎士「ならば、最初に私を止めなければよかっただろう!」

魔法使い「それをするとこの町に長居できなくるからね」

僧侶「……こんな町、長居は無用です。補給を済ませて早急に出ましょう」

勇者「……、いや」

勇者「奴隷達を助けたい。僧侶、魔法使い、何か案はあるだろうか」

魔法使い(女騎士を当てにしないのは正解だけど)

僧侶「……」ちらっ

魔法使い(僧侶のほうが賢い)

魔法使い(特に、僕に汚れ役を押し付けるあたりが)


魔法使い「最良の手としては、手を出さないことだね」

勇者「……どういう意味だ」

魔法使い「いいかい勇者、これがこの国にとっての秩序なんだ」

勇者「そんな訳無いだろ。こんな、誰かが虐げられて、誰かが一方的に得するようなことが」

魔法使い「奴隷制を悪としているのは、この国においては僕らだけだ」

魔法使い(僕は別にいいけどね。むしろ便利そうだし積極的に導入したい)

魔法使い「この国の住民にとっては、これは日常なんだよ」

魔法使い「それとも君は、気に食わないからといって彼らの日常を壊すつもりかい?」

勇者「……っぐ」

勇者「それでも、奴隷達が、かわいそうだろ」

魔法使い「そうだね。けれど」

魔法使い「ここで騒ぎを起こせば、食料の調達も出来なくなる」

魔法使い「旅路で飢え死にしたら、ここの奴隷達よりも多くの人々を犠牲にすることになるんだよ」

勇者「……」


勇者「……諦めるしか、ないのか」

魔法使い「気にすることは無いよ、勇者」

魔法使い「今君がするべきことは、魔王を倒すこと」

魔法使い「他の事は、その後」

魔法使い「いいかい勇者。君は魔王を倒すのが役目だ」

勇者「……魔王を、倒す」

勇者「とにかく、魔王を」

魔法使い「そう。倒す」

魔法使い(君にして欲しいことはそれだけだ。そうすりゃ僕の目的は――)

魔法使い(……当初の目的。迫害を抑制し、研究を進めやすくすること)

魔法使い(……じゃあ、足りないよね)


女騎士「ま、魔法使い?」

魔法使い「ん?」

魔法使い「ああ、ごめん。少し怖かったかな」

魔法使い(顔に出した、つもりは無かったんだけど)

僧侶「やっと化けの皮がはがれたのかと思いましたよ」

魔法使い「あっはっは。まだ疑ってたのか、僧侶」

魔法使い「というか魔族だったらこの外套も着れないだろう」

僧侶「冗談ですよ。……では、勇者。補給に向かいましょうか」

勇者「ああ、うん」ふらっ

……

魔法使い(……、さて)

魔法使い(紆余曲折経て、魔王の城にたどり着き)

魔法使い(魔王が居るであろう部屋の前まで進んできたわけだけど)

勇者「……」

僧侶「……」

女騎士「……」

魔法使い(皆、消耗している)

魔法使い(体力よりも、精神力を)

魔法使い(無理も無い。城周辺で戦った全ての魔物、魔族が)

魔法使い(魔王のために命を捨てるとでも言うような勢いで襲ってきたのだから)

魔法使い(戦闘要員と見られる屈強な者はもちろん、華奢な上魔法も使えない者も、全て)

魔法使い(捨て身の覚悟で、襲い掛かってきた)

魔法使い(それに苦戦する僕らではないが、こうなることを望んでいたとすれば大した作戦だ)

魔法使い(勇者、僧侶、女騎士……正義のために戦ってきた彼らにとって、確かにこれは致命傷)


勇者「……」ぐっ

勇者「準備はいいか、皆」

僧侶「……ええ、勇者。貴方についていきます」

女騎士「ああ。……もう、引き下がれまい」

魔法使い「そうだね。さあ、人類のために戦おうじゃないか」

勇者「……よし、行くぞ」

ギィッ 

?「いらっしゃい、勇者一行」

ゾゾゾゾゾゾゾゾ ビキィッ

勇者「――!?」

魔法使い(――! トラップ、いや、詠唱無しの魔法)

魔法使い(僕も皆も硬直している。拘束系か。早急に解除しなければ不味い)

?「大丈夫。これを使うと、こちらも動けなくなるから」

魔王「はじめまして。君達の宿敵、魔王です」


勇者「……っ!」ぐぐぐ

魔王「うんうん、女神の使者を縛れてるなら十分」

魔王「さて、何のお話をしようかな」

魔法使い(……術者と対象、両方を縛る魔法?)

魔法使い(それはおかしい。魔王と名乗るくらいならば、自身を対象から外すことくらい可能なはずだ)

魔法使い(あえてする意味も分からない。拘束して一方的に叩けばいいだけなのに)

魔王「だから、話をしたいだけなんだって」

魔王「物騒なことを考えるなあ、魔法使い君」

魔法使い(――!)

魔王「そ。君達が考えていることは、全て筒抜け」

魔王「ついでに言うと、勇者君が旅に出てからずっと見ていたよ」

魔法使い(そんな、長距離で、魔法の制御)

魔法使い(伊達じゃないな、魔王は)


魔王「そうだな、ちょっと詳しく自己紹介しておこうか」

魔王「私は魔王。君達人間の宿敵である、魔族の長」

魔王「かつて人間によって滅ぼされかけていた魔族を救った者でもある」

勇者「……?」

魔王「うん。つまり、大昔は今と状況が逆だったんだよ」

魔王「君が人間にとっての英雄であるように、私も魔族にとっての英雄だったんだ」

僧侶「……」

魔王「嘘じゃないよ。僧侶ちゃんは分かっているでしょ」

魔王「神話でも魔王は幾度か滅ぼされている」

魔王「魔族が劣勢だった時期もあるんだ」


魔王「だから私は立ち上がり、皆の期待を背負ってここまで来た」

魔王「魔族が平和に暮らせる世界のために、ここまで来た」

魔王「――ところで、勇者君」

勇者「……」

魔王「君は、神託を受けて、行けといわれたから私を倒す旅に出たんだよね」

勇者「……」

魔法使い(……不味い。精神を折りに来ている)

魔王「そして旅を続けても、それ以上の意味を見出せない」

魔王「どころか、私のために散っていった者達を見て、それさえも揺らぎつつある」

魔王「――私はそんな奴に滅ぼされるの?」

勇者「……」

魔法使い(……仮に拘束が解けたとしても、その後戦えるのか、これ)


魔王「次に僧侶ちゃん」

僧侶「……」

魔王「あー……うん、大変だったね」

僧侶「……?」

魔王「その、何と言うか、君の恋を応援しているよ」

僧侶「……っ!」ぼっ

魔王「女騎士ちゃん、は……」

女騎士「……」かぁっ

魔王「……えーっと」

魔王「応援していいのかわかんないなあ、これ」ちらっ

魔法使い(こっち見んな。何がしたいんだお前)


魔法使い「……」

魔法使い(しかし、この流れは不味い)

魔法使い(ここで僕の本性を全て話されれば)

魔法使い(仮にこの後拘束を解き、戦闘し、勝利したとして)

魔法使い(――その後の僕の立場が危うい)

魔王「――そして、魔法使い君」

魔法使い(……!)

魔王「……」にまぁ

魔法使い(……?)

魔王「君くらいじゃないか! 明確な志の元に戦っているのは!」

魔王「人のために戦い、世界を救おうとしているのは!」

魔法使い(……、は?)

魔法使い(……何故だ)

魔王「勇者君には無い正義の元に!」

魔王「僧侶ちゃんには無い理想の元に!」

魔法使い(何故魔王は――)

魔王「女騎士ちゃんには無い知性の元に!」

魔王「――魔法使い君、君となら! 戦ってあげていい!」

魔法使い(何故、こいつは僕を持ち上げる)

魔王「けれど私を倒せるのは勇者だけ」

魔王「魔法使い君と戦っても意味が無いし、仕方ないから解放してあげよう」バシュン

魔法使い(……、拘束を、解いた?)


勇者「……」

魔王「どうした、かかって来なよ、英雄」

勇者「……っぐ」ジャキッ

魔王「――かかって来いよ、正義の味方」

僧侶「……勇者」

僧侶「行きましょう、私達の、正義のために」

勇者「う、ぁ」

勇者「ああああああっ!」だっ

魔王「そう、それでいい」

魔王「最も、私も抵抗するけどね」ギュォッ

……

勇者「……」はーっ はーっ

魔法使い(戦いこそ、したけれど)

女騎士「……」ぜぇ ぜぇ

魔法使い(思った以上に)

僧侶「……」ふーっ

魔法使い(――呆気なかった)

魔王「……ふふ、凄いなあ、聖剣」

魔王「そして、それを使いこなす勇者君」

魔王「率先して前に出て、私の攻撃を受け止める女騎士ちゃん」

魔王「状況を把握し、二人の補佐をする僧侶ちゃん」

魔王「いやあ、凄いよ。完敗だ」

魔王「――凄い、だけだけど」

勇者「――!」ぐっ


魔王「残念、君には倒されてあげない」

魔王「魔法使い君に倒されることは出来ない」

魔王「じゃあね、また」カッ

魔法使い(――!)

魔法使い「『障壁』『全面包囲』『無制限展開』!」ガガガガガガッ

僧侶「っ! 『女神様、私達をお守りください』」フワァッ

女騎士「『我が身は盾』!」ガッ

勇者「聖剣よ! 皆を守れ!」キィィッ

――ズドォォォォォン

……

魔法使い「……大丈夫か、皆」

女騎士「……ああ、君の防御魔法のおかげだ」

僧侶「魔王は……、消えました、ね」

女騎士「自爆して、跡形も無く吹き飛んだのだろう」

勇者「……」

勇者(本当に、そうなのか)

勇者(俺に倒されたくないから、自爆して、自殺?)

勇者(魔物や魔族のために戦ってきた奴が、諦めて道連れ狙い?)


勇者(あそこまで堂々と、自分の正当性を主張しておきながら……)

魔法使い「……勇者」

魔法使い「今、考えても仕方ない」

魔法使い「魔王の消息が不明でも、魔王軍に致命的な打撃を与えたのは確かだ」

魔法使い「たとえ魔王が生き残っていたとしても、魔王軍を再興させることは不可能だろう」

魔法使い「だから、今僕らにできることは」

魔法使い「生きて帰って、皆を安心させることだよ」

勇者「……今、考えても仕方ない、のか」

勇者「……よし、帰ろう、皆」

……

神聖国王「それでは、英雄の帰還を祝して」

神聖国王「――乾杯!」

ォォォォォォォォ

勇者「……」

勇者(英、雄?)

勇者(俺は何も出来ていない。魔王に止めを刺したかも不確かだ)

勇者(……けれど)

勇者(今は、英雄として皆を安心させなければいけない)

勇者(魔法使いの、ときのように)

僧侶「……」


貴族「女騎士様、我が神聖王国での活躍ぶり、伺っていますよ」

貴族「次々現れる魔物共を勇猛果敢に殲滅なさったとか」

女騎士「……ああ、いや」

女騎士(……褒められたことではない)

女騎士(魔物と化してしまっていたとはいえ、元は市民だ)

女騎士(私はそれを、切り殺したのだ)

女騎士「……私は、できることをしたまでで」

貴族「そんなご謙遜なさらずに!」

貴族「貴女様が居なければ、この国は滅んでいたのですから」

貴族「女騎士様こそが、救国の英雄と言えましょうぞ」

女騎士「それを言うのであれば、魔法使いにお願いできるか」

女騎士「彼の協力がなければ、私もあの場で力尽きていただろう」


貴族「……え、ええと、魔法使い様」

魔法使い「はい、何ですか?」にっこり

貴族「お、お話は女騎士様から伺っておりますよ」

魔法使い「ああ、お疲れ様です。彼女、話長いでしょう」

貴族「……はは」

魔法使い「いいですよ。僕に気を使わなくても」

魔法使い「今まで踏みにじってきたものに頭下げるの、嫌でしょう」

貴族「いえ、そんなことは」

魔法使い「そうだ、勇者に話を聞いたらどうですか?」

魔法使い「僕を連れ出してくれたのも、彼ですから」

貴族「お、おお、そうですね。それでは」


僧侶「……」きょろきょろ

貴族「いかがなさいましたかな、僧侶様」

僧侶「……勇者を見ませんでしたでしょうか。先程まで、会場にいらっしゃったはずなのですが」

貴族「私もそう思って探していたのですが、見当たりませんな」

貴族「長旅でお疲れでしょうし、部屋に戻られたのでしょうか」

僧侶「……」

……

勇者「……」

勇者(魔王の城、跡。自爆のせいもあって、一部が吹き飛んでいる)

勇者(俺がしたことは、本当に正しかったのか)

勇者(……体の調子が悪い、というか、元に戻ったみたいだし)

勇者(女神の加護が失われているってことだから、魔王は死んだんだろうけど)

勇者「よかったのか、それで」

勇者「魔王が言うとおり、言われたままに動いていただけの俺が」

勇者「魔王を倒して、魔物たちを殺して、よかったのか」

勇者(今そんな事を言っても、仕方ないけど)

勇者「本当に、僕は、正しいことを――」

ドッ


勇者「……あ、」

勇者「れ?」

勇者(腹から、剣。黒い、剣が、生えて)

勇者(――いたい、いたい)ドシャッ

勇者「が、ぼぉ」

スッ

勇者(あ、首に、つめたいのが)

勇者「――ひっ」

―――

……

女騎士「やあ、魔法使い。お疲れ様」

魔法使い(……うーん)

魔法使い「そっちこそ。さっきからモテモテだし、疲れたろう」

魔法使い(僕の使い魔ながら凄い殺し方。いいぞもっとやれ)

女騎士「む、君のほうには人は来なかったのか?」

魔法使い(そうそう、何が起こっても再生できないようにしてね)

魔法使い「勇者と一緒に世界を救ったといっても、向こうも立場上話しかけづらいだろうさ」

魔法使い(魔王みたいに、死んだことを確認できない殺し方は不安だから、徹底的に)

女騎士「……やはり、難しいものだな」

魔法使い(加護もない少年一人殺すのよりは難しいだろうねえ)

魔法使い「そう簡単にはいかないよ。分かってはいたけど」ははっ

……

魔法使い(さてと、勇者は始末した)

魔法使い(かといって、直ぐに僧侶を篭絡できるわけがない)

魔法使い(……というか、やったとしても女騎士にしたのと似たような結果になったら困る)

魔法使い(あくまで上と下、主従関係が望ましい)

魔法使い(……主従、といえば、奴隷制度をオープンに認めてる国があったな)

魔法使い(よし、あそこにしよう。そこで奴隷相手に実験しよう)

魔法使い(魔族が弱まって、神聖王国がこれから力を増すだろうから直ぐ滅ぼされるだろうけど)

魔法使い(女騎士や僧侶は神聖王国に行くだろう。それなりの重役になることは期待できる)

魔法使い(であれば、適当なこと言って女騎士を誑かせば僕は無事だ)

魔法使い(奴隷制が廃止された後、上手くいっていればその後も僕の元に元奴隷が集まってくる)


魔法使い(いろんなパターンを見るためにも、サンプルは多いほうがいい)

魔法使い(……調教師、とかどうかな)

魔法使い(収入源にもなる、実験もできるでいいことづくめだ)

魔法使い(帰ってきた奴隷達は使用人として使えるし、無駄も無い)

魔法使い(その後時間をかけて僧侶を堕とす)

魔法使い(勇者と共に世界を救ったんだから、教会での地位も上がるだろうから)

魔法使い(上手くやれば、教会も掌握できるはず)

魔法使い(そうすれば僕は自由に魔法の研究を――って、あれ)

魔法使い(大国の重役を支配して、そこの宗教の重役を支配して、ついでに国民を支配することもできるようになっている)

魔法使い(……魔法研究どころの話じゃ、ないなぁ)にまぁ


女騎士「魔法使い、君はこれからどうする?」

魔法使い「女騎士は?」

女騎士「……実は、先程国王様とお話をしてな」

女騎士「その、跡を継がないかといわれている」

魔法使い(こっちも重役どころじゃなくなってるよ)

魔法使い「へえ。凄いじゃないか」

魔法使い(あの国王、確か子供居なかったからな。血縁から引っ張ってくるより救国の英雄立てたほうがよさそうだし)

魔法使い「僕はちょっとやりたいことができたからね。そっちに力を注ぐよ」

女騎士「っ、いや、その」

女騎士「……そうか、応援しているぞ」しゅん

魔法使い(……? まさかついて来いとか言うつもりだったのか)

魔法使い(冗談きついよ。宗教国の重役にいきなり異教徒放り込むとか貴族も流石に黙ってない)

魔法使い「ありがとう、女騎士」にこっ

魔法使い(君があの国に侵攻するときまで、さよならだ)

魔法使い「じゃあ僕はもう行くよ」

魔法使い(――やりたいことがあると、やる気が出てきてたまらないから)

とりあえず終わり。
雑になった感は否めない。
質問あれば受け付けます

調教師、こないだ見たような気してたけどもう保管庫にはいってんのか
パソコンでもっかい見直してくる。乙

他作品はー?

>>118
他には
男「思い出消し屋……?」
から始まるやつと

弟「家には姉と、妹と」
幼馴染「なんか、私はクラスの男子に人気があるらしい」
の胸糞系

あとは単発で
男「最近、夢に女の子がよく出てくる」
娘「はっはっは、自分の娘を犯すなんてとんでもない鬼畜だな」

艦これ二次
那智「提督、『初めて』とは何のことだろうか」

で全部。

ああもう魔法使い大好きです。ぶっちゃけ、なんらかの影響受けてます。
応援してます。そしてほんと魔法使いさんが好きです。
もっとやってください。調教師とか好物でした!←混乱

調教師の前話を書いたってことは調教師の続きも書いてくれるんだよな?
楽しみにして待ってるぞ

>>120
>>121
オチまで纏まったら続き書くけどそんときは新しく立て直します


調教師スレの時点ですでにこの話完成してたんじゃないかと思うほどの伏線逆回収だった

たぶん俺の深読みだと思うけど差し支えなければ聞きたい
奴隷調教完了の証の首飾りと、女騎士にプレゼントした首飾りは同じ(デザインの)もの?
装飾品店のあった街と奴隷の街が割と近いみたいだったので少し気になった

>>124
……その手があったか
奴隷に渡していた首飾りとは別物です。

奴隷首飾りは幾何学模様と所謂十字架みたいなものが書いてあって、
幾何学模様は「学がある者が調教しました」っていう証明と
学問好きな貴族が分かってるアピールしたくなるのも購買意欲に繋がるんじゃないかという思惑のため。
十字架のような(っていうか女神の宗教のシンボル的なもの)は神聖王国の侵攻に備えた言い訳づくりのため。

みたいな設定も当時考えてましたが面倒でカットしました

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