Pが真のスパッツを口に入れる事案と修羅場が発生 (61)

夕方 765プロ

真「じゃ、おつかれさまでしたー!」

雪歩「お疲れ様でしたー」

P「おう、お疲れ。レッスンで疲れただろうからゆっくり休んでくれよ」


P(……二人がいなくなっただけで急に静かになったな)

P(そういえば今の時間は音無さんも律子も、他のみんなも外に出てるから誰もいないのか)

P(……留守番しながら仕事でもするか。……ん?)


P(机の上に紙袋? さっきまでは無かったよな……もしかして二人のどちらかの忘れものか?)

P(一応確認してメール送っておくか……えっと、中身は)

P(……ッ!? こ、これは……スパッツ!? しかもこれは確か―-)

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回想 レッスン場

響「ふふーん、どうだ真? 自分のステップ完璧でしょ?」

真「さすが響……。でも、ボクだって……ほら!」

響「おおっ! 自分も負けないぞ!」

真美「まこちん、ひびきん……もう今日は終わりにしようよー」

真「ええっ? まだまだ動けるのに……」

P「いや、それなりに時間も経ったし今日は真美の言う通りこの辺で終わりにしとくか」

雪歩「よ、よかったぁ……もうヘトヘトですぅ……」

響「うーん、仕方ないなー。真、また明日決着付けるぞ!」

真「望むところだよ! しかし暑いなぁ……スパッツも汗でスゴイことになってるや」

P(スゴイこと? スゴイことってどうなって……い、いかんいかん!)

真美「兄ちゃん? どうかしたの?」

P「いや、何でもない……じゃあ着替えて事務所に戻るか」

 「はーい」


――――――――――――――――――――

P(間違いない、これは真のスパッツだ。しかも汗付き……)

P(…………)

P(誰も……いないよな……?)

P(…………)

P(か、確認だ! これは確認するための正当な行為であるからやましくもなんとも……)

ジンワリコンガリパンズヲー

P(ひいっ!? って自分の携帯か……というか俺は今何をしようと……)

P(律子からメール? おっと、音無さんからも来てる)

律子『事務所に戻るつもりでしたが収録が押して遅くなりそうです。
    竜宮小町を送ってそのまま私も直帰します。何かあれば明日の朝言ってくださいね』

音無『社長とお知り合いの方とお食事に行くことになってしまったので事務所には戻りません。
    ごめんなさい、プロデューサーさん。戸締りお願いします!』

P(二人とも帰ってこないのか……返信しておくか。了解です、と)

P(……そうか、二人とも帰ってこない。つまり、今日はもう俺しかいない)


P(…………)

プロデューサーはアイドルに手をだしてはいけない、それも未成年なら尚更のことだ。
この765プロのプロデューサーはアイドル達をそういう対象には見ていない。いや、見ないように努力している。

それでも彼女たちは可愛いし魅力的なのは間違いない。
そして彼は多くのアイドルを育成し頂点に導くためにも日々努力している。
休日もあまりなく、誠心誠意彼女たちに時間を費やした。結果、彼女はいない。

彼女もいなく、そういう淡いなにかもない日々、知らずの内に色々と溜まっていたのかもしれない。
そしてアイドル達は可愛い、ものすごく可愛いというのも要因の一つであった。

加えてこの男は女性のスパッツというものに惹かれる男であった。
大っぴらに言えないようなものを選ぶときもその趣向は確実に反映される程だ。

結果的に、可愛いアイドル+自分の趣味という究極の組み合わせが目の前にあることとなった。
しかも汗付き。それにときめく男がいないことがあろうか。

だがしかし、男は「プロデューサー」であった。
アイドルを導くために自分は真っ当な人間であるべきだとも考えていた。
男は考えた、自分の本能に従っていいのかどうか。

そして男は紙袋を見つめ葛藤を――。





P「よっしゃ真のスパッツだああああ! foooooooooooo!!!」

特に葛藤も無く迷わず真のスパッツを口に入れた。

P「ふぁーふっげえええいおいふふはー……(わーすっげえええ匂いするわー)」

P(真のスパッツすげえ……予想以上だ……これはSランクもIA受賞も確定だわー……)

P(あー……夢みたい……)

P(腰、もも、臀部、そしてここ、全て完璧ですわー……)

P(何で俺は真のスパッツに生まれなかったのだろう……真のスパッツになったら幸せだったのに)

P(あ、それだとプロデューサーになれねえか。スパッツ兼プロデューサーになる方法とかねえかな)

P(……それは後で考えるとして、今はこの幸福に身をうずめよう)

P(ああ、生きてて良かった……)


――――――――――――

十五分後

P「……ふぅ、ごちそうさまでした」

P(真のスパッツ……これを知っちゃうともう後には戻れないな)

P(さすが現役アイドル、プロデューサーとしての背徳感も相まって最高に――)

P(アイドル、プロデューサー……はっ……!)

P「お、俺は……何てことをしてしまったんだ……」


P(一時の感情に任せてとんでもないことをしてしまった……冷静に考えるとこれは……)

P(ああ、すまない真……俺はプロデューサー失格だ……)

P(明日からどんな顔してあいつの前に立てばいいんだ……)

P(ごめん、ごめんよ真……でもとりあえず写メだけは撮っておこう)パシャ

P(……さて、とりあえず真のスパッツは戻したがこれからどうしよう)

P(さすがにこのままだとばれるよなぁ……うっかり飲み物こぼしたってことにしてクリーニングしちまうか)

P(よし、そうと決まれば仕事をさっさと終わりにして準備を――)

カガヤイター

P(電話? 東都テレビのディレクターから?)

P「もしもし、765プロのプロデューサー、――――です」

東都D『ああ、どうもです。実は今765プロさんの近くにいましてよかったらご飯でもどうかと』

P「私とですか? ええ、ぜひご一緒させてください」

東都D『おお、ありがとうございます。ではまた』ピッ

P(お世話になってるし765プロにも好意的だからな……大事にしないと)

P「さて、急いで仕度するか」

五分後

P「お先に失礼しまーす、って誰もいないか……」バタン


施錠され電気も消え静寂に包まれる765プロ、沈む夕陽が事務所内をオレンジ色に染めるだけだった。
その中、一つの影がゆっくりと動いた。その影の正体とは――。




春香「…………」

春香「プロデューサーさん……どうして」

春香(なんでプロデューサーさんは真のスパッツを口に……)

春香(もしかして、真のことが……そ、そんなことはない!)

春香(だって、プロデューサーさんはプロデューサーで、真はアイドルだから)

春香(……私もアイドル、だけど)

春香(でも、真のスパッツを口に入れたプロデューサーさん、なんだかとっても)

春香「幸せそうだったなぁ……」

春香は自分でも認めている想いからか少し、いやかなり落ち込んだ。
自分の憧れの人物の行動が信じられなかったし、そしてそれが何を意味するかを考えるのが怖かった。

春香(でも、やっぱりプロデューサーさんは真のことが……)

そう思いながら春香は真のスパッツ(真の汗付きPの唾液付き)を手に取った。
そして複雑な感情を抱いたままそれを見つめた。

春香「……これが、真のスパッツ」

春香「真のスパッツ、プロデューサーさんが口に入れた……」

春香「プロデューサーさんが……口に?」

その時、春香は今までの自分ではありえないことを考えていた。
どうしてこんなことを考えているのか、そんな自分に戸惑っていた。

(プロデューサーさんの……口の中に……入った――えっ!?)

(わ、私、なに考えてるんだろ!? そんなことしても……で、でも……)

なぜ彼女がそう考えたのか。それは、理解したかったからである。
正直に言うと、大好きな人が取った行動にショックを受けた。
ただ、それを理解してみたい、と少しずつ思うようになっていた。

(真のスパッツ、だけどこれは今……プロデューサーさんが口に入れたもの)

(……ごめん、真――)


春香「……あむっ」

春香(……なんだろう、甘い匂いがする。多分真の匂いかな……)

春香(それに不思議な味……これは、プロデューサーさんのかなぁ……)

春香(私、なにしてるんだろう……でも、なんだろう、なんでだろう……)

春香「……ほっほ、いああえあおいえあい(ちょっと、幸せかもしれない)」

自分が好きな男性、その人が好意を抱いているかもしれない女性の衣服を口に含む。
そんな信じられない行動を今では春香は少し理解しようとしていた。

春香(なんだか、プロデューサーさんに包まれているみたい……)


それから数分後

春香「……はぁ、私……おかしくなっちゃったのかな」

春香(これ、どうしよう……とりあえず今から洗濯しておけば)

春香(でも、その前に写メだけは撮っておこう)パシャ

春香(……よし、キレイに撮れた)

春香(急いで洗濯しないと……でも、もう一度だけ)

春香「あむっ……うおうーあーあん……」

ガチャ

雪歩「だ、誰もいないよね……? 電気電気……」カチッ

春香「もがっ!?」

雪歩「ええっ!? だ、誰かいるぅ!?」

春香「ふ、ふひほ!?」

雪歩「え……? は、春香ちゃん? なんでこんな暗い中事務所に……っ!?」

春香「あっ……」

雪歩「……春香ちゃん、どうして――真ちゃんのスパッツを口の中に入れてるの?」

春香「い、いあうお! お、おえあ!」

雪歩「スパッツ口に入れたままじゃなに言ってるか分からないよ!」

春香「あっ……んぐっ……ぷはぁ」

雪歩「……春香ちゃん」

春香「え、えーっと、どうかした、雪歩?」

雪歩「とぼけないで! なんで真ちゃんのスパッツを口に入れてたのか聞いてるの!」

春香「ううっ……あの、それは……そ、そもそもどうして雪歩は事務所に入れたの?」

雪歩「えっ? それは――」

回想 午後 765プロ

小鳥「あら、明日は竜宮小町も朝から事務所にいるんですね」

律子「ええ、765プロ全員のライブの打ち合わせですからね」

P「事務所に全員揃うのは久しぶりだなー。みんな最近それぞれ忙しくなったし」

小鳥「嬉しいことですけど、ちょっと寂しい気もしますね」

やよい「じゃあ、私明日は早くきて事務所のお掃除しますっ!」

律子「どうしたのやよい、急に張り切って」

やよい「えっと、みんなが揃うならキレイな事務所にしておきたいかなーって」

小鳥「やよいちゃんはいい子ねえ……」

雪歩「あの、私もみんなのためにお茶を準備したいから早めに来てもいいですか?」

P「おお、いいぞ。みんなで雪歩のお茶を飲むのも久しぶりだな」

雪歩「はいっ! だから私、ちょっと頑張って準備します」

春香「じゃあ私もお菓子作ってきますね、プロデューサーさんっ!」

律子「急に賑やかになったわね……ま、たまにはこういうのも必要か」

雪歩「――だから、一番早く来れそうな私も鍵を預かったんだよ」

春香「そっか、そうだったね。あっ! じゃあ私も急いでお菓子の準備しなきゃいけないからこの辺で」ダッ

雪歩「春香ちゃん? なに逃げようとしてるの?」

春香「べ、別に逃げようとなんてしてないよっ!」

雪歩「じゃあ、さっきなにしてたかキチンと答えられるよね?」

春香「な、なんのことかなー?」

雪歩「顔がのヮのになってるよ。ごまかそうとしてもバレバレだからね」

春香「はっ!?」

雪歩「……ねぇ、春香ちゃん」

春香「は、はい……」

雪歩「春香ちゃん、もしかして――真ちゃんのことが、好きなの?」

春香「……はい?」

春香「えっ? なに言ってるの雪歩? そんな訳が」

雪歩「嘘だよっ! 真ちゃんが好きだから真ちゃんのスパッツを口に入れたんでしょ!?」

春香「お、落ち着いて! 私は別に真のことなんて」

雪歩「ごまかしても無駄だよ! だって……好きじゃないとそんな気持ち悪いことしないよ!」

春香「うっ……た、確かにその通りだけど……」

雪歩「春香ちゃん、酷い……見損なったよ」

春香「あの、これは、実は……」

雪歩「私だって……私だって!」

春香「雪歩……?」

雪歩「――私だって真ちゃんのスパッツを口に入れてみたかったのに! 酷いよ!」

春香「えええっ……」

雪歩「頑張る真ちゃんを包むスパッツ、いつかは口に入れたいと思っていたのに……」

春香(雪歩ってそんなこと考えてたんだ……)

雪歩「それなのに……私よりも先に真ちゃんのスパッツを……! 酷いよ!」

春香「いや、酷いのは雪歩の考えじゃ」

雪歩「う、ううっ……で、でも春香ちゃんも同じこと考えたからあんなことしたんでしょ!?」

春香「うっ……確かに真のスパッツを口に入れたのは事実だけど」

雪歩「……春香ちゃん、答えて。真ちゃんのことが好きなの?」

春香「だから、別に真のことが好きな訳っていうことでは……」

雪歩「真ちゃんはカッコいいし立派なんだよ? 春香ちゃんもそう思うでしょ?」

春香「うーん、確かに真はカッコいいしみんなから好かれてるよね」

雪歩「だったら春香ちゃんも好きだからスパッツ口に入れたに決まってる!」

春香「いや、あの、人の話を……」

春香(雪歩が話を聞いてくれない……あれ? じゃあ、もしかして)

雪歩「黙ってたらなにもわからないよ!」

春香「あの雪歩、一つ聞きたいんだけど。雪歩って、真のことが好きなの?」

雪歩「…………えっ?」

春香「いや、さっきから雪歩の話を聞いてるとそうとしか思えないんだけど」

雪歩「あ、あの、えっと……その……」

春香(あ、反応アリ……かな?)

雪歩「あ、あのね……えっと、真ちゃんはカッコいいし、私と違って立派で……」

春香「だから好き、ってこと?」

雪歩「その……私、真ちゃんみたいになれたらいいなぁって思うの。だから真ちゃんの側にいたいとも思って……」

春香「そっか、真は雪歩にとって仲間で友達で……憧れな人でもあるんだね」

雪歩「……うん」

雪歩「でも、私はダメダメだから、何もできないから……きっと足手まといかもしれない」

春香「そ、そんなことない! 雪歩だって765プロの大切な仲間なんだよ!?」

雪歩「春香ちゃん……でも、まだまだ私ダンスも歌も……」

春香「……そんな風に言ったら、真も悲しむと思うよ」

雪歩「えっ……?」

春香「雪歩に助けられたことだってある、雪歩がいないとできないこともある。だから……そんなこと言わないで」

雪歩「……私にしか、できないことがあるの?」

春香「うん、たくさんあるよ。明日、みんなに聞いてみようか?」

雪歩「ううっ……そ、そんなの恥ずかしいよぉ」

春香「みんなきっと答えてくれるのになー。あっ、打ち合わせの前に雪歩のことをみんなに」

雪歩「も、もう……あの、春香ちゃん。……ありがとう」

春香「うんっ!」


雪歩「で、なんで真ちゃんのスパッツ口に入れてたの?」

春香「……やっぱりそこに戻るんだね」

雪歩「はっきりして、春香ちゃん。好きだからスパッツ口に入れたとしか思えないよ」

春香「だから、それは誤解で……あれ? ねえ、雪歩……確認したいんだけど」

雪歩「なに?」

春香「やっぱりそういうことするってことは……その人が好きだからしちゃうと思う?」

雪歩「う、うん、そうだと思う。だから春香ちゃんも」

春香「……そっか、そうだよね」

春香(そうだよね、プロデューサーさんはやっぱり真のことを……)

雪歩「は、春香ちゃん?」

春香「……ううっ、ゆきほ……私……私」

雪歩「ええっ!? は、春香ちゃん……急に泣いて、あの、その……」

春香「ううっ……だって、だってぇ……」

雪歩「わ、私、泣かせるつもりなんて……」

春香「ちがうよぉ……ゆきほはなんにもわるくないよぉ……」

雪歩「だ、だって、私が春香ちゃんを追い詰めたから……」

春香「ううっ……ぐすっ……どうして」

雪歩「ご、ごめんなさい春香ちゃん……私、春香ちゃんを泣かせちゃうなんて……」

春香「ぐすっ……っ……なんで……」

雪歩「やっぱり私……ダメで、ダメダメで……ぐすっ……」


ガチャ

P「あれ、誰かいるのかー?」

二人「うわあああああああああん!!」

P「えっ、ええっ……?」

P「えっと……なんで二人とも泣いてるんだ?」

雪歩「私が……私が酷いことを……ぐすっ……」

P「ええっ!? 雪歩が春香を泣かせたのか!?」

春香「ちがうんです……わたしがわるいんです……」

P「じゃ、じゃあ、春香が雪歩を泣かせたのか!?」

雪歩「違います……私が、春香ちゃんは真ちゃんのことが好きなのに……あんなことを」

P「おおっ!? 春香は真のことが好きだったのか!?」

春香「ちがうんです……まことのことがすきなのはゆきほで……」

P「あ、やっぱりそうなんだ」

雪歩「す、好きは好きですけど……真ちゃんは憧れみたいなもので……」

P「へー、そうだったんだ」

春香「ううっ……いちばんわるいのは……ぐすっ……プロデューサーさんです……」

P「お、俺!?」

P「えっと、とりあえず落ち着こうか……」

春香「は、はい……」

雪歩「……はい」

P「よし、なにがあったか説明してくれるか?」

雪歩「あの、実は……春香ちゃんが真ちゃんのスパッツを口の中に入れてたんです」

春香「ゆ、雪歩!? それだと誤解されちゃうよ!」

雪歩「だ、だって、事実だから……あれ? プロデューサー?」

P「…………」

雪歩「どうしたんですか、プロデューサー?」

P「い、いや……えっと、春香? ……本当なのか?」

春香「……はい」

P(春香が真のスパッツを? ……いったいどうして)

雪歩「私がそれを見てしまったんです……だから、春香ちゃんは」

春香「ち、違うんですプロデューサーさん! 私は……」

P(春香がスパッツを……まさか、いやそれしかないか……)

雪歩「春香ちゃん、はっきり答えて。春香ちゃんは――」

P「あのもしかして、春香って――」

「スパッツが好きなのか?」 「真ちゃんが好きなんでしょ?」

春香「だからちが……えっ?」

春香「プロデューサーさん、今なんて言いました?」

P「いや、別に真のことが好きだからスパッツを口に入れたって訳ではないんだろ?」

春香「は、はい。何度も言ってますけどその通りです」

雪歩「春香ちゃん、素直になりなよ」

春香「えっと、雪歩はちょっと黙ってて」

雪歩「ううっ、酷い……」

P「じゃあ、やっぱりスパッツが好きだからとしか考えられないじゃないか」

春香「ち、違います! そういう訳じゃありません!」

雪歩「プロデューサー、スパッツが好きだからってそんなことをする理由には……」

P「いや、俺はそう思わないぞ」

二人「えっ?」

P「考えてもみてくれ、スパッツって物凄くぴっちりしていて厳しく締め付けるようにも見える」

春香「は、はぁ」

P「でも実は優しさも持ち合わせていて包容力、そしてどんな激しい動きをしてもついていく従順さもある」

雪歩「えっ?」

P「それを愛するが故に口に含む……何もおかしくはないと思わないか? むしろそれはスパッツへの尊敬だ」

春香「……はい?」

P「汗を吸った衣服、それは汚いイメージがある。でもそれを口に含むことによって君は汚くないよ? と意思表示をする訳だ」

雪歩「あ、あの」

P「スパッツは従順であり、こちらはそれに対し敬意を払う。その行為は人間と衣服という主従関係を打ち崩し、さらなるステージへと昇っていくだろう」

春香「えっと」

P「スパッツは人間にとって不可欠なもの。汗、生地、デザインが織りなす芸術だ。それは音楽に通じるかもしれない。スパッツはメロディ」
 
雪歩「め、メロディ?」

P「だから春香、俺はお前を支持する。誇るんだ、恥ずかしがるな、もっと堂々と口に含め! そうだろ春香!? 答えろ春香ぁぁぁ!!」

春香「…………」

雪歩「…………」

P「どうした二人とも?」

春香「あの、プロデューサーさん」

雪歩「正直に言うと」

二人「ドン引きです」

P「ええっ!?」

春香「プロデューサーさん……正気ですか?」

P「えっと……ちょっと気持ちが昂っておかしかったかもしれないな」

雪歩「……プロデューサー、そんな人だったんですね」

P(き、聞こえる……デレデレデーン↓って好感度の下がる音が……)

春香「……雪歩、私達なにやってたんだろうね」

雪歩「うん……」

P「ま、待てよ雪歩! さっきの言葉、雪歩の好きなもの……そうだ、スパッツをお茶に置き換えてみてくれ!」

雪歩「えっ? お茶にですか? ……えっと」

春香「雪歩、別にそんなことしなくて 雪歩「――はうっ!?」

春香「ゆ、雪歩? まさか……」

雪歩「包容力、従順さ……お茶はいつでもわたしの側にいて……愛しているから口に含む……」

春香「雪歩! ストップ! 正気にもど」

雪歩「春香ちゃんは黙ってて!」

春香「ええっ……」

雪歩「不可欠なもの……水、やかん、急須、お茶の葉……それが織りなす芸術……」

P「雪歩、お茶は……メロディか?」

雪歩「……はい! メロディですぅ!」

P「じゃあ俺のスパッツへの思いも不純なものではないって分かってくれるよな!?」

雪歩「えっと、それはさすがに無理です。お茶とスパッツを一緒にしないでください」

P「ええー……」

春香「当たり前ですよ……」

雪歩「……とりあえず、プロデューサーがどれだけスパッツを好きかは分かりました」

P「そうか、理解ってくれたか!」

春香「多分、字が違いますよー」

雪歩「で、話を戻すと、じゃあなんで春香ちゃんはあんなことをしたの?」

春香「うっ……そこに戻すんだね」

P「そうだな。スパッツが好きって訳でも無い、真を好きな訳でも無いんだろ?」

春香「……はい」

雪歩「別に責めないし、気持ち悪いとも思わないから……教えてくれない?」

春香「あの、実は……」

二人「実は?」

春香「その……プロデューサーさんが、真のスパッツを口に入れてたから」

P「……ッ!?」 雪歩「ええっ!?」

P「は、春香!? お前……見てたのか!?」

春香「……はい」

P(ま、まずい……プロデューサーの俺がこんなことしてるなんて全員に知られたら……)

雪歩「……プロデューサー?」

P「ゆ、雪歩……違うんだ。俺はその……」

雪歩「本当、なんですか?」

P「あ、あの、雪歩さん? 目が怖いというかなんというか」

雪歩「春香ちゃん、本当なんだよね?」

春香「う、うん」

雪歩「……じゃあ、プロデューサーは真ちゃんのことが好きなんですか?」

P「えっ?」

雪歩「答えてください! どうなんですか!?」

春香「そ、そうです! どうなんですか!?」

P「それは……真のことが好きだからというか、さっきも言ったように俺はスパッツが好きだから」

春香「そ、そうなんですか」

春香(よかったぁ……別に真のことが好きって訳じゃないんだ)

P「えっと、分かってくれたか? 俺は真のことなんて別に」

雪歩「……それ、本当ですか?」

P「あ、ああ、本当だ」

春香「ほら、プロデューサーさんもこう言ってるし、もういいんじゃない?」

雪歩「だって、プロデューサーと真ちゃんはそういうのが許されない関係でしょ?」

P「そうだな。アイドルとプロデューサーだから恋愛関係とかはさすがに」

春香(うっ……そんなはっきり言われると……)

雪歩「だから、私達には嘘をついて、隠し通そうとしてるんじゃないんですか?」

P「……は?」

雪歩「本当は真ちゃんが好きなのに、それを素直に言えないんじゃないですか?」

P「いや、別にそういう訳では」

雪歩「……そうですよね、それを口にしてしまうと、もう戻れないですよね」

春香「…………」

P「あの、だから俺はスパッツが好きなだけで」

雪歩「……正直に言ってください。真ちゃんを、どう思ってるんですか?」

P「真は一人のアイドルとして、そして大切な仲間とかそんな感じで」

雪歩「ごまかさないでください! 真ちゃんはカッコよくて素敵で……好きにならない訳ないですぅ!」

P「人の話を……は、春香、助けてくれ」

春香「……真が好きかどうかはっきりしてください!」

P「お前もかよぉ……」

雪歩「はっきりしてください! ……そうしたら、私だって」

春香「お願いです……本当の思いを、聞かせてください」

P「だから、何度も言うけど……俺はスパッツが好きなだけで」

ガチャ

P「真のことが好きな訳じゃないんだって」

ドサッ

二人「あっ……」

P「どうだ、これで信じてくれたか?」

雪歩「…………」

P「どうした二人とも、まだ疑ってるのか?」

春香「……真」

P「えっ? 真……?」


真「…………」

雪歩「真ちゃん……もしかして、今の」

真「え、えっと、忘れ物しちゃったんだ! なんか、その、ジャマしちゃってごめんね」

P「そ、そうか。忘れ物ってどれだ?」

真「あの……その紙袋の、あれ? なんで春香がボクのスパッツを」

春香「えっ!? こ、これは、誰のかなーってみんなで話してて」

真「そっか、じゃあそれ返して。……ボク、急いで帰りたいから」

P「あ、ああ、そうだな。もう遅いしみんなそろそろ家に」

春香「そ、そうですね。真、これ……スパッツ」

真「……ありがと」グイッ

春香「……っ!? ま、真?」

真「……さようなら」

雪歩「待って、真ちゃん。……本当にそのまま帰っていいの?」

真「…………」

真「……だって、明日は早いしもう帰った方がいいじゃないか」

雪歩「そういうことじゃないよ真ちゃん。……こんな形で、終わらせていいの?」

真「そ、それは……」

春香(もしかして、真も……)

P「あの、俺にも分かるように説明を」

雪歩「プロデューサー、真ちゃんは……」

真「ま、待ってよ雪歩! ……どうせなら、自分で言うよ」

春香「真……」

真「プロデューサー、こんな時に、こんな流れで言うなんて……ボクの憧れと違うんですけど」

P「…………」

真「でも、いいですよね! どうせダメだって分かってるんだし……ガツーン! ってやっちゃいます!」

春香「あ、あの……」

真「プロデューサー、ボクは……その、プロデューサーのことが……」

雪歩「真ちゃん……」

真「……男の人として……す、すき……なんだと思います」

P「…………」

真「……へへっ、ボクらしくないですよね! ……ごめんなさい」

P「……俺の方こそすまん。こんなことになっちまうなんて……」

真「な、なんで謝るんですか! それだとなんだかボクが……めいわく……かけた……」

雪歩「……プロデューサー、答えてあげてください」

P「ああ――聞いてくれ、真! 俺は実は……」


春香「ちょ、ちょっと待ってください!!」

三人「春香(ちゃん)……?」

雪歩「きゅ、急にどうしたの春香ちゃん?」

春香「だって、真ばかりずるいよ! 私だって、私だって……」

真「春香……そっか、春香もそうだったんだね」

春香「……うん。私だって、プロデューサーさんのこと……前から、……ずっと」

P「春香……」

春香「私は真が好きな訳でも、スパッツが好きな訳でもありません。……あなたです」

真(……スパッツ?)

春香「真のスパッツを口に入れたのも……プロデューサーさんが口に入れたからです」

真「!?」

雪歩「えっ? それって……スパッツで間接キスをしたかったってこと?」

春香「ううっ……はっきり言わないでよ、雪歩……」

P「……春香、お前にまでこんな思いさせて……すまない、俺が真のスパッツを口に入れたばかりに」

真「…………」

雪歩「真ちゃん?」

真「……なんだろう、急に頭が痛くなってきたんだけど」

真「あれ? うん? なんだこれ? ちょ、ちょーっと待ってもらえる?」

雪歩「う、うん」

真「えっと、一から説明して欲しいんだけど。……このスパッツを、二人は口に入れたの?」

P・春香「……はい」

真「……なんで?」

P「スパッツだから」 春香「プロデューサーさんが口に入れたから」

真「……ええっ!? だ、だって、これボクがレッスンで汗びっしょりにしたのだよ!?」

P「いや、それがまたいいんですよ」

真「うそだぁ!? 頭おかしいんじゃないですか!?」

P「……返す言葉もございません」

真「そ、それを春香は知ってて口に入れたの……? ボクの汗とプロデューサーのつばとかついてるんだよ?」

春香「……気の迷いが」

真「いやいや! ちょ、ちょっとぉ!? じゃあ、これには二人分の唾液とかが……」

雪歩「うん、それはもうべっとりと 真「うっひゃあ!?」ポイッ

P「ああ! 貴重なスパッツが……」

真「プロデューサーは黙っててください! そ、それがなんでボクのことが好きとかどうとか」

春香「それは雪歩が、真のことが好きだからスパッツを口に入れたんだよって」

真「……どういうこと?」

雪歩「だ、だって、真ちゃんはカッコよくてステキだからスパッツを口に入れても仕方ないって思って……」

真「うん、ありがとう。でもカワイイってのも付けてくれてもいいからね」

P「で、そうじゃなくて俺がただスパッツが好きだから誘惑に負けて口に入れたって話したら」

春香「雪歩が、プロデューサーがアイドルを好きになっちゃいけないから正直に言ってないだけだ-って」

真「なるほど。それでボクのことが好きじゃないとかそういう話になったと」

雪歩「う、うん」

真「……これ、二人も悪いけどボクがこうなったのはほとんど雪歩のせいじゃないか!」

春香「……確かに。って、私ももう告白しちゃったし……どうしてくれるの雪歩!」

雪歩「ええっ!? わ、私はただ真ちゃんのためを思って……」

春香・真「雪歩は黙ってて!」

雪歩「やっぱり酷いぃ……」

真「っていうか春香もなに口にスパッツ入れてるんだよ! 反省してよ!」

春香「は、はい……」

P「そうだそうだ。反省するんだぞ、はる 真「プロデューサーもですけど分かってます?」

P「……穴掘って埋まってます」

P「……あの、そろそろ足が痺れてきたんですが」

真「反省ですよ、反省!」

春香(それ私の……)

雪歩「あ、あの、お茶が入りましたー……」

真「ありがと雪歩。んっ……はぁ、少し落ち着いた」

P「……えっと、さすがに日も暮れたしみんな家に帰った方がいいんじゃないか?」

春香「でも……このまま帰るわけにもいきませんよ」

真「そうですよ。色々あったけど、ボクはその……プロデューサーに……」

P「あー……答えなきゃダメか?」

春香「……お願いします」

P「……分かったよ」

P「……改めて言うけど、俺はプロデューサーで二人はアイドルなんだ」

二人「……はい」

P「だから、恋人とかそう言う関係にはなれないし、ならない。それが正直な気持ちだ」

雪歩「で、でも、そんなの酷いです! 二人とも勇気出して、頑張って……」

P「まあ聞いてくれ……俺さ、彼女いないし、作る気も無いんだ」

春香「作る気も、ない?」

P「ああ。今は忙しいってのもあるけど、なかなかこの765プロの女の子より可愛い人、それに好きになれそうな人もいないんだよ」

真「か、カワイイって、ボク達がですか?」

P「真も春香も、雪歩も、みんな魅力的だ。そこら辺、いや……世界中探してもそれ以上の人なんていないと思う」

雪歩(……私も、かぁ)

P「今、俺が好きな人は春香、真、雪歩、そしてみんなだ。……だから、二人のどちらとも付き合えない」

春香「プロデューサーさん……」

P「変な答えになってごめんな。それに、こんな変態って分かったんだ。……別に考えが変わっても」

真「……そういうこと、言っちゃいます?」

春香「そういうのはダメ、ですよ?」

P「……はい、すいませんでした」

真「へへっ、謝ってばかりですねプロデューサー」

春香「とりあえず、スパッツを口に入れるのは禁止ですよ、禁止!」

P「肝に銘じておきます……」

真「でも、そんなにスパッツが好きなら……」

雪歩「どうしたの、真ちゃん?」

真「な、なんでもないよ。じゃあ、ボク、帰ります! みんな、また明日っ!」

雪歩「あっ、待ってよ真ちゃん!」

春香「私達、先に帰りますね。お疲れ様でしたー!」

P「ああ。また明日、よろしくな」

翌朝 765プロ

真「おっはよーございまーすっ!」

律子「おはよう。って真、もう着替えてどうしたの? 打ち合わせはスパッツじゃなくてもいいのよ?」

真「うん、ちょっとね」チラッ

P「……こっちを見てどうしたんだよ」

真「なんでもないですよーっだ」


春香・雪歩「…………」

真「おはよう二人とも。あれ、どうかしたの?」

春香「えっ? べ、別に、何もないよ?」

雪歩「う、うん、いつも通りだよ」

真「そうかなぁ? まぁいいや、さーて……今日も一日ガツーンっといくぞー!」

プロデューサーと真はこの時まだ知らなかった。

春香(昨日今日だから色々思われちゃうかな……でも、私だって!)

雪歩(……ううっ、なんだか変な感じ)

春香が少し長めのスカートの中にスパッツをはいていることを。
そして雪歩もまた白いワンピースの中にスパッツをはいている事実、その理由を。
それにより数時間後、合同レッスンで少し異様な雰囲気になることもおそらくまだ誰も知らなかった。


ついでにその後、

P「これは……真美のキャミソール……!?」

新たな事案が発生したとかしないとか。


終わり

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