姉「死にたい……」妹「おねぇちゃーん?」 (20)
「もうやだ死にたい……」
「だからお姉ちゃんなにがあったの?」
「妹ちゃん。もう死にたいよ……」
「あぁ……またかぁ」
「死にたい……」
「ハイハイ今殺してあげるからね」
私はナイフを手に取り、お姉ちゃんを殺した。お姉ちゃんを[ピーーー]のにももう慣れたもので、もはや何の抵抗も感じない。
「3月19日07:53分。活動時間86時間53分。約3日かぁ。
421号のお姉ちゃんは147時間53分持ったのになぁ」
私は、何の為にお姉ちゃんを生み出し続けているのだろうか。そんな事も、もう思い出せない。ただ、私にはお姉ちゃんが必要だ。それはあの時からも、ずっと変わらない。
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オリジナルのSSです。ショートショートだから短いんだよ!
うわっ伏字
私にはお姉ちゃんが居た。そして8年前、お姉ちゃんは死んだ。トラックにひかれて、即死だった。
この件に関して言えば、私が買い物を頼んだばかりに……みたいな創作によくあるような罪悪感は全くない。最後の言葉があんなに酷い言葉だったなんて……というような後悔も全く無い。最期まで私達は仲が良かった。
ただ、私は緩やかに壊れた。
最初は些細な綻びだった。私はふとした瞬間に、お姉ちゃんが死んだ事を忘れた。
それは例えば、朝お姉ちゃんを起こそうと部屋まで行ってしまったり、夜いつも受験勉強で寝るのが遅かったお姉ちゃんの夜食を作ってしまったりだった。
次第にこんな間違いは増えた。そう、私は確かに間違いである事は認識していたのだ。それでも、私はお姉ちゃんが死んだ事を忘れた。
2ヶ月もたった頃には、毎朝お姉ちゃんを起こしに行き、毎晩お姉ちゃんの夜食を作っていた。そしてその頃から、とうとうお姉ちゃんの幻覚が見え始めた。
正確な始まりは忘れてしまった。でもそれは、誰も浴びていないはずのシャワーを浴びていたり、私が起こすのに抵抗して二度寝をしていたりした。
私は流石にまずいと思った。でも私は異常は認識出来ても、それを解消する手段は思い浮かばなかった。
そして私はなんの因果か、尋常じゃない天才だった。
私はその自慢の頭脳を、異常の解消ではなく、全く逆のベクトルで、つまり異常を推し進めるように使用し始めた。
私はお姉ちゃんのクローンを製造し始めた。
この頃になると、もう両親は私に何も言わなくなった。私の異常は、外から見ても、両親から見てもどうしようも無いと思うレベルに達していた。ちょっと前は両親も私を病院に連れて行ったけど、その頃は完全に放置だ。
研究からたった半年で、私はクローンであるお姉ちゃん1号を作り上げた。だけどお姉ちゃん1号は、すぐに自我が保てなくなって、自殺した。約半日だった。
その1ヶ月後、私はお姉ちゃん2号を開発した。今度は前回の失敗を踏まえて、自分をクローンだと認識させないようにした。
今度は結構上手くいった。というか前回がアホすぎた。クローンに自分がクローンで有る事を、認識させて良いはずが無い。色んなSFで分かりきった事だろう。
でも結局ダメだった。本物のお姉ちゃんの記憶を受け継いだせいで、その内記憶の辻褄が会わなくなったのだ。そして結局お姉ちゃん2号は自殺した。これは1ヶ月だった。
そんな調子で、お姉ちゃん19号まで失敗を繰り返し続けた。やはりクローンは難しい。
お姉ちゃん20号の頃には、1日あればお姉ちゃんクローンを作れる用になっていた。私にはお姉ちゃんクローンだろうが何だろうが、お姉ちゃんのような何かがいさえすれば良いのだ。
私は、お姉ちゃんクローンを長く生きさせる事をやめた。
20号から現在のお姉ちゃんクローンは、一週間が寿命だ。そしてお姉ちゃんクローンが死んでから約2時間程度で、次のお姉ちゃんクローンを作れる。私は、この2時間だけ、お姉ちゃんが居ない事を耐えれば良いのだ。
お姉ちゃん47号から、おかしな事が起こりだした。それまではきっかり一週間で死んでいたお姉ちゃんクローンが、一週間たたずに、7時53分。つまりお姉ちゃんが死んだ時間に自我を崩壊させだしたのだ。
「死にたい」とお姉ちゃんクローンが言い出し、それを私が殺す。こんな事がもうずっと続いて居る。
「3月9日12:00お姉ちゃん422号活動開始」
お姉ちゃんクローンが動きだした。それまでの記憶が無いが、これはもういつもの事。明日はお姉ちゃんの命日だ。
「お姉ちゃん。産まれてきてくれてありがとう」
「ん?どしたの急に?」
「ううん。何でも無いよ。お昼ご飯作るね」
「いつもありがとうね。妹ちゃん」
……今日もお姉ちゃんクローンは正常だ。
3月20日。今日はお姉ちゃんが死んだ日だ。だからといって何もない。……はずだった。それはお姉ちゃんが死んだ時間ーー7時53分に起こった。
「死にたい……」
「あれ?今回は早いなぁ……どしたんだろう」
「妹ちゃん………………もう、やめよう?」
「……え?」
お姉ちゃんクローンがおかしな事を言い出した。
「ふぅ……やっぱり命日ともなると、ちゃんと動くはね」
「……お姉ちゃん?」
「妹ちゃん。落ち着いて聞いて。私は、自分が死んだ時間だけ、クローンに介入出来る用になっていたの。
1回や2回の挑戦じゃそのクローンに乗り移れ無いわ。でも、何回かやると、私はそのクローンに乗り移れた」
「……お姉ちゃん?」
一体このお姉ちゃんは何を言っているのだろうか。クローンだとかなんだとか。
「でも、きちんと介入出来なかったわ。精々がクローンの自我を崩壊させるだけ。
でも命日は力が少し強まった。でも1回目の命日じゃまだあまり何も出来なかった。2回目3回目も駄目。でも4回目の命日で、私は漸くきちんとクローンに介入出来た」
今日のお姉ちゃんは何かがおかしい。
「ねぇ妹ちゃん。現実を見て?私はもう死んだの。妹ちゃんはもう1人で生きられるわ」
「うるさい」
今日のお姉ちゃんはおかしい。
「もうこんな事は止めて」
「うるさい」
また失敗?あれ?失敗ってなにがだ。分かんないや。目の前で何かが喋ってる。でもこんなのお姉ちゃんじゃない。
「妹ちゃん!!」
お姉ちゃんは私を否定しない。だってお姉ちゃんは優しいもん。お姉ちゃんらしきものが崩れる。私はナイフをもつ。あれ。もう持ってるや。死ね!!死ね!!死んじゃえ!!お前はお姉ちゃんなんかじゃない。
「妹…………ちゃん…………現実………………」
あ、死んだ?止まった。止まったよ?あー死んだ死んだ?死んだ?なんで?誰が?お姉ちゃん?お姉ちゃんが死んだ?なんで?いや嘘だ?嘘だ?嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
お姉ちゃんが私を置いてくはずがない。お姉ちゃんは酷くない。お姉ちゃんは…………………………………………
「3月20日13時。お姉ちゃん424号活動開始」
私のお姉ちゃんはやっぱりこうでないと。
はいありがとうございました。終わりです。……いや、ショートねショート
くっさいあとがき書くのも面白そうですが、初完走のSSでそれやって叩かれたらもう立ち直れないのでやめます。
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