杉下右京「これが、学園都市……! (67)
―――とある日の深夜、花の里
美和子「……そう言えば、右京さん。超能力って信じます?」
右京「はい?」
亀山「どうした?んな、藪から棒に?」
美和子「いやそれがね、今取材してる人が怪しいカルト宗教団体の人でさ。『人間には生まれ持った特別な力が遺伝子に刻まれている。それを目覚めさせた者だけが新たな世界に行けるのだ!』とか言ってるの」
亀山「……怪しさ抜群だなそりゃ」
美和子「まぁ、そこまでなら怪しいだけ済むんだけど……。その後、実際にやったのよ……」
たまき「やった……って、まさか……」
亀山「どーせ、コップを浮かせたとかだろ?」
美和子「違うの!取材した部屋に火の点いていない蝋燭が20本くらい並んでたんだけど、―――それに一斉に火を点けたのよ!」
亀山「はあ!?全部一斉って、時間差なしって事か!?」
美和子「そうなのよ!で、右京さんはどう思いますか?」
右京「そうですねぇ……」
ガラッ
???「超能力はあるさ」
美和子「え?」
???「もっとも、そんな『生まれ持った遺伝子』とやらとは違うがね」
右京「失礼ですが、貴方は?」
木山「ああ、済まない。私は木山春生という者だ。しばらくぶりに『外』に出たので、酒の一つでも飲んでみようと思い彷徨っていたら偶然ここの話が聞こえてね。相席しても良いですか」
たまき「あ、どうぞ」
木山:美和子の隣に座る
スルッ……
亀山「ぶっ!?」
美和子「き、木山さん!?何で服脱いでるんですか!?」
木山「いや、長時間歩いていたら熱くてね」
美和子「だ、だからって脱がないでください!」
木山「問題ない。起伏の乏しい私の身体に欲情する者など……」
美和子「だからって駄目です!男は皆狼なんですから!」
たまき「れ、冷房いれます!」
亀山「……狼って俺逹の事っスかね?」
右京「さて、どうでしょう?」
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右京「それで木山さん。超能力が存在するというのは……?」
木山「学園都市の事はご存知ですか?」
亀山「学園都市?」
美和子「薫ちゃん知らないの!?東京西部にある独立都市で、その『中』と『外』じゃ科学技術に2、30年の差があるの」
亀山「に、2、30年!?そりゃ凄ぇな!」
右京「そう言えば、学園都市は学生の超能力開発を行っているという噂がありましたねぇ……。という事は、まさか……!」
木山「ええ、その噂は真実です」
右京「それで木山さん。超能力が存在するというのは……?」
木山「学園都市の事はご存知ですか?」
亀山「学園都市?」
美和子「薫ちゃん知らないの!?東京西部にある独立都市で、その『中』と『外』じゃ科学技術に2、30年の差があるの」
亀山「に、2、30年!?そりゃ凄ぇな!」
右京「そう言えば、学園都市は学生の超能力開発を行っているという噂がありましたねぇ……。という事は、まさか……!」
木山「ええ、その噂は真実です」
教えてくれてありがとうございます。
こういう事が初めてなので、何かとこういう事が多いでしょうがよろしくお願いします<(_ _)>
美和子「き、木山さん!?ぜひその事について取材を……!」
木山「済まないが、あそこの情報を早々に外部に漏らす訳にはいかないな」
亀山「まー、そうだろうな。そんな技術を簡単に広められる訳ねえよ」
右京「ところで、木山さんは学園都市の人間なのでしょうか?」
美和子「いやまさか。だって薫ちゃんの言う通り、学園都市は『中』の技術を『外』に持ち出す事に厳重に目を光らせてるんですよ。学園都市から『外』に出された技術だって、かなりグレードを落とした上で『外』に出してるそうですし……」
「なのに、よりによって『中』の人が『外』にいる訳が……」
木山「確かに、私は学園都市に住んでいたよ」
亀&美「「マジで!?」」
木山「しかし、よく分かりましたね」
右京「貴方がこの店に入ってきた時、『しばらくぶりに「外」に出た』と言っていました。引きこもりや監禁でもない限り外には自由に出れるでしょう」
「次に美和子さんが言った『学園都市の「中」と「外」』という言葉から、貴方の言葉は『しばらくぶりに学園都市の「外」に出た』という捉えましてね」
木山「なるほど。中々鋭い観察眼をお持ちのようだ」
木山「『外』に出たのは昨日の事です。いやはや、『中』の携帯は出る時に没収されたので、『外』の旧型携帯の使用には苦労します」
木山:携帯を取り出して溜め息を吐く。
亀山「(右京さん、あれってついこの間売られ始めた最新機種じゃあ……)」
右京「(学園都市では既に型遅れなんでしょうねぇ)」
美和子「じゃあ、どうして態々苦労する『外』にいらっしゃたんですか?」
木山「お恥ずかしい話……大きな問題を起こしてしまいましてね。上層部の協議の結果、私は『外』に追放されたという訳です」
右京「追放、ですか……」
亀山「大丈夫っしょ!そんあ2、30年もかけ離れた技術を手土産にすれば、どこの企業からも引っ張りだこですよ!」
木山「いえ、『中』の技術を『外』に広めるつもりはありません。……表に出して良い訳がないんです」
美和子「え……?」
木山「何でもない。私はこれから教職に就こうと思っています。向こうでは少しの間ですが、そういう関係の仕事をやっていたので」
右京「それは素晴らしい。ぜひ、多くの子供達を育ててください」
木山「ありがとうございます。あ……」
ガシャン!(とっくりを落とす)
たまき「大丈夫ですか、木山さん!?ああ、スカートに……」
木山「問題ない。脱いでしまえば……」
美和子「だから駄目ですって!?」
翌日、警視庁特命係
亀山「いやー、しかし昨日はとんでもない人と会いましたね。
あの後、5回も脱ぎ出すし……」
右京「そうですねぇ。出来ればもう少し学園都市の話を聞きたかった。
特に、今まで眉唾物だった超能力が実際にあるというのですから!」
亀山「そうっスね。超能力かぁ……。一度行ってみてぇなぁ、学園都市」
ピッ!(TVの電源を入れる)
キャスター『――――で爆発が起き、女性一人が重傷を負い病院に搬送されました。被害者は木山春生さん。彼女は現在、意識不明の重傷です。――――』
亀山「う、右京さん!?こ、この人……!」
右京「これは……!」
TVならここでOP。
鑑識課
右京「米沢さん」
米沢「これは杉下警部、お待ちしておりました」
右京「こちらにあるのが……?」
米沢「ええ。例の爆発事件の遺留品です」
亀山「くそっ!昨日会った時はあんなに元気だったのに!」
米沢「おや、お知り合いでしたか?」
右京「偶然出会ったんですがね。学園都市からいらしたという事でお話を聞き、楽しい時間を過ごさせてもらいました」
米沢「ほう、学園都市……。確かにグレードが落とされてるとはいえ、『外』に出ている技術だけでも目を見張るものがありますからなぁ」
亀山「急に服を脱ぎ出した時は驚きましたけどね。ったく、何処のどいつがこんな事を……!」
右京「『どいつ』かは分かりませんが、『何処の』は分かりますよ」
亀山「え?」
右京「いいですか、亀山君。
態々爆発物を使用している事から分かる通り物取り目的ではなく、明らかに木山さんを狙った犯行。
しかも、木山さんは一昨日学園都市から出てきたばかり。恐らく『外』の人間との交流はないでしょう」
亀山「って事は……!犯人は学園都市の人間って事っスか!?」
右京「そうなるでしょうねぇ」
米沢「しかし、不味いですなぁ。学園都市は治外法権ですから、簡単には捜査できませんよ?」
右京「何とかして行きますよ。我々は、真実を暴く必要があるんです!」
三日の時が過ぎ、亀山の運転する車
亀山「何とか小野田官房長の口添えで入れてもらえる事になって助かりましたね」
右京「ええ。ですが元々治外法権の適用されている学園都市なので、大分無理をさせてしまったようですよ。
滞在期間も一週間と決められていますし」
亀山「一週間か……。人の命が掛かってんのに、期限なんて決めんなっつーの!」
右京「だから大分無理なお願いだったと言ってるでしょう」
亀山「っつーか、何かやけに落ち着いてません?右京さん」
右京「ええ。こう言ってはなんですが、僕には気になっている事があるんです」
亀山「ひょっとして、米沢さんの言ってた爆破方法ですか?」
三日前、鑑識課
亀山『え!?火薬が使われてない!?』
米沢『はい。現場に残った微細な残留物質までくまなく調べたのですが、火薬などの爆発物の痕跡は一切ありませんでした』
亀山『んな馬鹿な……』
右京『興味深いですねぇ』
回想終了
右京「火薬の使われていない爆発事件……。まさか、超能力ですかねぇ」
亀山「右京さん……、その部分だけ楽しんでません?」
右京「まさか!……どうやら着いたようですよ」
亀山「ちょっと待ってくださいね。確か学園都市のゲート前に案内人がいるって……」
???「うにゃー?それは俺の事かにゃー?」
亀山「うおぁッ!!?」
学園都市内の公園
右京「まさか案内人が君のような若者とは思いませんでした」
亀山「若者ってレベルっスか?高校生だよな君?」
土御門「もちろん、この土御門元春さんはれっきとした義妹ラヴの高校生だぜい」
亀山「(……ラヴの発音がやけに良かったのは気のせいっスかね?)」
右京「(今回は触れないでおきましょう)
ところで土御門君。君は木山さんがあのような被害に遭った事について、心当たりはありませんか?」
土御門「うにゃー……あるっちゃあるな。
少し前になるが、かなり大きな事件を起こしちまったんだぜい」
亀山「木山さんも言ってたな。それで学園都市から追放された、って」
右京「その大きな事件とは、一体何でしょう?」
土御門「悪いけど当事者って訳じゃないんで、詳しくは知らないにゃー」
右京「そうですか……。では、まず木山さんの起こした事件について調べましょう。
木山さんを狙った犯行である以上、今のところ怨恨の線が高いのですから」
土御門「そんなら警備員(アンチスキル)の詰所にご案内するぜい」
亀山「アンチスキル?」
土御門「簡単に言っちまえば学園都市内の警察だにゃー。
ちなみに、ここには学生が治安維持を行う風紀委員(ジャッジメント)って組織もあるから、覚えといた方が良いぜい」
亀山「え!?子供が警察みたいな事してんのかよ!?」
土御門「風紀委員っ名前通りに校内の治安維持だけどにゃー。
まぁ、中にはそんな事無視して始末書覚悟で校外でも活動する奴もいるらしいがにゃー」
亀山「へぇ、何かそいつとは馬が合いそうだな」
土御門「うにゃー……。そんな事で親近感持たれても嬉しくないと思うにゃー……」
右京「同感です」
亀山「じょ、冗談っスよ……」
注意だけで済ませそうだがな
右京「おっといけませんねー。いくらこの方がケロっとしていても下手をすれば殺人事件に発展しますよ?」
右京「次からは気をつけて下さいね。私も君みたいな子を逮捕したくはありませんので」
こんな感じで
コラ、ショウブシナサーイ!!(ビリビリビリビリィィィ!!)
ゴカンベンヲー!!(パキィィィン!!)
右京「おや?あれは……」
土御門「うにゃー……、カミやんめ。またフラグ建てたのかにゃー!!」
亀山「うおッ!?な、何だよ、知り合いかぁ?」
土御門「ああ、上条当麻って言う至る所でフラグを建てる……男の敵だにゃー」ギリ……!
亀山「よ、よっぽどのプレイボーイなんだな」
亀山「うっわぁ、女の子すっげぇビリビリしてる……。それを消してる男の方も凄いけど。あれが超能力かぁ」
右京「それより彼女を止めますよ。あれは立派な殺人未遂です」
お久し振りです!
右京「失礼、お嬢さん。もうその辺にした方がよろしいと思いますよ?」
御坂「うっさい!!って、誰よ貴方?」
右京「これは失礼。僕は学園都市の『外』から来ました、警視庁特命係の杉下右京と申します」
亀山「同じく特命係の亀山薫です」
上条「『外』の人が来るなんて珍しいな」
上条(いや、魔術師は結構来てるから珍しくはないか……)
上条「って、何で土御門までいるんだ?あれか?ついに舞夏に手を出した事で……」
土御門「んな訳ないにゃー!俺はこの二人の案内役を任されただけぜよ」
亀山(舞夏って多分さっきの義妹の事だよな?ツッコミてぇ……)
右京「それよりもお嬢さん。先程の電撃。あれは止めた方が良い」
御坂「え、ちょ!?何でそんな事言われなくちゃ……!?」
右京「無粋な真似かもしれませんが、あれはでは立派な傷害ですよ?」
御坂「う……!?で、でもコイツは能力を打ち消せるし……」
右京「中々面白い能力をお持ちのようですが、仮にその能力が発動せずに電撃の直撃を受ければどうなります?
確実に死に至るでしょう」
御坂「………………」
右京「いいですか?そうなれば彼だけでなく、貴方の人生まで狂ってしまうのです。
僕はそうなって欲しくないから言うのです」
御坂「す、すいません……」
右京「分かったのなら、僕より先に頭を下げる人物がいるのでは?」
御坂「う……。そ、その、ごめんなさい……」
上条「い、いいって御坂。この人はああ言ってるけど、結果的に怪我も無いんだしさ」
上条「それに俺も御坂がこんな事で人生を終わって欲しくないな」
御坂「う……/////」
右京(どうやら、筋金入りのプレイボーイのようですね)
亀山(ですね。俺の隣のグラサンもすっげぇ歯軋りしてますよ)
土御門「ギリギリギリギリ……!!!!」
上条「ところで、杉下さん達は何で学園都市に来たんですか?」
右京「ある事件の捜査です」
亀山「こっちでもニュースでやってるんじゃないかな?元ここの科学者で木山春生って人が意識不明になったっていう事件」
御坂「!?……木山春生が!?」
右京「おや?こちらのお嬢さんは木山春生さんの事をご存知のようですね」
御坂「え、ええ。それより、いい加減に『お嬢さん』は止めてください。私には御坂美琴っていう名前があるので」
右京「これは失礼。で、木山さんとはどういうお知り合いで?」
御坂「まぁ……、ある事件の事件では敵対したり、ある事件では協力した仲……ってところかしら」
右京「ある事件、ですか……。それはどういう……?」
御坂「話してもいいですけど、事件の事を詳しく知りたいならまずは警備員の所に行った方が早いと思いますよ」
土御門「それなら今から行くところにゃー。ってな訳で早く行こうぜい、お二人さん」
右京「分かりました。では、機会があればまた後ほど」
作者(こちらも忙しくて……)
警備員、詰所
黄泉川「態々ご苦労様じゃん。今回捜査協力する黄泉川愛穂じゃん」
右京「杉下です。早速で申し訳ありませんが黄泉川さん。木山春生さんの起こした事件についてお聞かせ願いたい」
黄泉川「もうその話を知ってるなんて、耳が早いじゃん」
亀山「木山さん本人に聞きました。それとここに来る前に会った御坂美琴って子にも」
黄泉川「御坂か……。つぐつぐ木山と縁がある奴じゃん」
黄泉川「……事件が始まりだしたのは今年の夏、学園都市のネット上で幻想御手(レベルアッパー)って代物が囁かれた事からじゃん」
亀山「れべる、あっぱー?」
黄泉川「文字通り、能力者のレベルを上げる事が出来る優れ物じゃん。どこかの学者が残した論文だとか、料理のレシピだとか言われる噂話だった。ところが……」
右京「噂話ではなく、実在したのですね?」
黄泉川「その通り。あの時は学生の事件が多発しててんてこ舞いだったじゃん」
亀山「もしかしてその幻想御手を作って、学生達に事件を起こさせたのが、木山春生の起こした事件っスか?」
黄泉川「合ってるちゃ合ってるし、違うっちゃ違うじゃん」
亀山「え?」
黄泉川「木山の本当の狙いは子供達の脳を共感覚性を利用して『一つの巨大な脳』状のネットワークを作り、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の代らりとなる演算装置を作る事にあったじゃん」
亀山「つりー、だいあぐらむ?」
右京「確か、学園都市が誇る世界最高の並列コンピュータでしたね。正しいデータさえ入力すれば、完全な未来予測(シミュレーション)が可能だと聞いています」
黄泉川「そう。だから学園都市の天気予測は『予報』じゃなくて『予言』なんて言われてるじゃん」
亀山「よ、預言っスか!?凄いなそれ……」
右京「ですが、当然そんな代物を容易に使えるはずはない。恐らく木山さんは何かのシュミレートを行いたかったが、それを却下された。そこで幻想御手を使い代理の演算装置を作ろうとした……といったところでしょうか?」
黄泉川「正解じゃん。ちなみに能力が上がったのは、同じ脳波のネットワークに取り込まれた事で能力の処理速度が向上、その演算能力が一時的に上がり、更に同系統の能力者の思考パターンが共有されて、より効率的に能力を扱えるようになるから、結果的に能力が上がるって仕組みじゃん」
右京「ですが、個人差を無視した脳波を強要されるのですから、使用者には多大な不可が掛かるはずです」
黄泉川「その通り。現に徐々に脳は疲弊し、使用者は次々と意識不明になったじゃん」
亀山「まるっきり子供の命を無視してるじゃないっスか!?あの人がそんな事件を起こしてたなんて……」
右京「そこまでして、木山さんは一体何をシュミレートする気だったのでしょう?」
黄泉川「……ある子供達を救うためじゃん」
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杉下