男「この異能戦争を勝ち抜いて、願いを叶えてみせる」(145)


このスレは以前dat落ちした 男「俺はこの力で異能戦争に勝ち、願いを叶える」 というスレの再挑戦です。

加筆修正しつつこんどこそ完結させてみせる、と意気込んではいますが

遅筆、不定期更新なので落ちないぐらいにゆっくり書いていきます。

地の文ありですので苦手な人はご注意下さい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1371217840

バトルロイヤル一日目

 始まりの日



妹「」

医者「残念ながら妹さんには回復の見込みがありません」

妹「」

医者「これ以上はもう入院していてもあまり意味がないかと……。……では」スタスタ

男「おい! ちょっと待ってくれ! おい! 待てって! おい!」

妹「」

男「何だよこれ……。何なんだよ! ふざけるな!」



そんなとき俺は神に出会った。この町で起きる異能力者たちとの戦争に勝ち、そして最後まで勝ち進めば、何でも一つ願いを叶えてくれるらしい。

……当然やるさ。俺は植物状態になってしまった妹を救うためなら……、何でもしてやるとも。


たとえ俺は地獄に落ちたとしても。

妹だけは救ってみせる。

だがそうは言っても、異能戦争はいつから始まるのか、そもそもこの戦争には一体何人参加しているのか等、まだまだ分からないことだらけだ。

とりあえずは、神に貰ったルールが記されている紙を熟読しよう。そしてルールを頭に叩き込むんだ。少しでも戦争を有利にするために。

男「よし、読んでみるか」ペラッ

まずは諸君らに挨拶をしておこう。私が神だ。今後ともよろしく。

さて、君達はこの世界の中でも、特に欲が強い者たちだ。それは良くも悪くもな。……今の欲と良くはわざと掛けたんだけどね。まあいい。

私は欲深い人間が好きだ。タダで願いを叶えてやりたいと思うほどな。だがそうはいかない。私にとって諸君らが思い付くような願い事は、叶えるのなど朝飯前だ。しかし、願いをただ叶えてやるだけでは意味がない。

正確に言うなれば、私は欲深く、自分の欲のために努力や犠牲を惜しまない人間が好きなのだ。

だから私は諸君らにチャンスを与える!

諸君の願いが叶う大チャンスだ!



え? どうすればいいかって? 簡単さ。命を懸けた、バトルロワイヤルで勝てばいい。

もちろん、ただ戦うだけではつまらない。人間が素手や凶器を持ってワーキャーやってんの見てたって、こっちはなんも面白くないからな。


だから! もうほんと出血大サービスで! 諸君らに力を与える。

まさに異能と呼ぶべきような力だ。


その力で、諸君らの欲から生まれた願いを叶えるために戦うのだ。

では、そろそろ口上はこの辺で仕舞いとして、ルールを説明しよう。


バトルロワイヤルで、諸君らはそれぞれに与えた力を使い、敵を倒していく。最終的に勝ち残った一名の願いのみが、私に叶えてもらえるのさ。

どんなものでも構わないぞ。億万長者になりたいでもいい、不老不死でもいい。

……現代医学では治せない怪我人だって、生きてさえいれば傷痕ひとつ、後遺症ひとつ残さず、治してやれる。

まあさすがに、死人を生き返らせるのだけは無理なんだがな。あいにく私は全知全能じゃないんだ。神だけどね。

まずは戦争の場所を説明しよう。

舞台は都市Aの全域。……広いな。だけど大丈夫さ。能力者たちはスタンド使いのように引かれ会う。

ちなみにこの範囲内でしか能力は使えないからな。気をつけて。


続いて相手をこの戦争から脱落させる方法だ。

それは、相手がリタイアを認めるか、相手を殺害するか、指輪の宝石が割れて能力が使えなくなるか(下記参照)の3つのみ。

リタイアを認めたときや能力が使えくなったときは、その時点で戦争への参加資格を失う。

さっきもいったけど、死んだら復活させられないからね。もし戦争で死んでもそれは自己責任だ。そのぐらいは了承してくれよな。

さーて、ついに能力の説明だ。

諸君らには一人にひとつの能力が与えられる。

……ちょっと同封してある箱を開けてみてくれ。そうそうそれそれ。

中には少し大きめの宝石がついた指輪が入っていると思う。人差し指にはめてみてくれ。サイズはピッタリの筈だ。

その指輪は、とても大切なものだ。四六時中常にはめておいてくれたまえ。


うん、勘のいい諸君らならわかっているかもしれないが……。それは戦争の参加者だということを示す他に、諸君らの能力を発動するときに媒介となるものであり、さらに言うならば能力そのもののような物だ。

指輪を人差し指にはめたら、そのままその手を頭の辺りまで持っていけ。


男「……うっ!?」ビクッ


いきなり頭のなかに情報が入ってきてビックリしたか? その情報を頭のなかで閲覧してみるといい。



男「指輪についた宝石は能力そのもの……。これが割れてしまうと能力が使えなくなるのですなわち強制的にリタイアとなる」

男「能力発動時には、自分の能力名を発声しなくてはならない」

男「俺の宝石は……、なんだこれ。紫水晶……、アメジストか」


ここからが一番大切な所だ。心して聴くように。

男「能力を使うたびに、D値が溜まる。これの量は宝石に穢れと言う形で諸君らにも見えるようになっている」

男「これが百パーセントまで溜まりきってしまうと……、宝石は割れてしまう。則ちデットエンドだ。死にゃしないけど、普通にリタイアするより穢れのせいで宝石が割れたときのほうがちょっと辛い目に遭うから気をつけて……か」

男「穢れは他の誰かの宝石を割ることで取れるけど、一回で完全回復するから、穢れをとるタイミングはよく考えておくといい」

男「なるほど。……で、俺の能力は何なんだ?」


もう頭のなかの情報はこれで全部だし。と思っていたら、貰った紙にまだ続きがあった。

君の能力は…………。これだ。

男「これか。……あれ? ……かなりいい能力じゃないか」

ちなみに諸君らの能力は、諸君らの生きざまもしくは業または祈り等から生まれた物だ。

男「……まあ確かに……」

今ならお試しで一回だけ能力が穢れなしで使える。試してみるといい。

男「なかなかに緊張するな……。……よし」

男「『嘘八百万(カウントレスライ)っ! 今日はなんてひどい雨なんだ』」

瞬間、さっきまで雲ひとつない晴天だった空に黒い雲が生まれる。その雲は空一杯に広がり、すぐにどしゃ降りとなった。

男「は、ハハ……。凄い、凄いぞこの能力! 辺り一面大雨だ!」

男「いける。この能力なら戦争に勝てるぞ!」

自分で言うのもアレだが、俺は体を動かすより頭を使うほうが得意だからな。相性のよさそうな能力で助かった。

男「待ってろよ妹……。お兄ちゃんが必ず救ってやるからな」



今この時から戦争は始まった! 諸君らの健闘を祈る。

 始まりの日 完


『嘘八百万 カウントレス・ライ』レベル1


男の能力。直訳は「数えきれないほどの嘘」。ついた嘘が本当のことになる。継続する嘘の場合、効果継続時間は最長で5分。本当にした嘘の、周りを巻き込む規模が大きければ大きいほど、または効果時間を長くすれば長くするほど、穢れはより溜まる。能力で嘘をついてから、次に嘘がつけるようになるまでのリキャストタイムは一分間。
今男は周囲一帯に雨を5分間降らせたが、その場合宝石は約70%の穢れを溜め込むことになる。

ちょっと燃費が悪いことと、相手にどんな能力かバレやすい能力だということ以外は、かなりの高スペック。

能力のランクは中の上だが応用が効き、成長性も高い。


 始まりの日 2


同時刻

女「ふふ、ふふふ……。待っててね男君、君は私だけの物だから……」

女「『悲哀機能(アライブマシーン)』。私の愛しの、私だけの男君に危害が加えられないようにちゃんと見張ってて? 去年みたいにならないように」

悲哀機能「―――――」コクッ

女「それじゃあ行ってらっしゃい」

悲哀機能「―――――!!」ビューン

以上です。明日また更新します。

投下します

男「もう戦争は始まってるんだよな……。くそ、気が張っちまってどうにもこうにも……」

男「あとこの指輪。ずっとつけてなきゃいけないらしいけど、こんなのはめてたら能力者だって言いながら歩いてるようなもんだよな……」

男「何か視線を感じる気もするし……」

男「ふーむ……」

男「駄目だ駄目だ。初日からこんなんじゃ身が持たない。……家帰って風呂にでも浸かりながらこの能力で出来そうなことでも考えるか」

そう思い、俺は家に帰ろうと今いる路地を抜けて大通りに出て、友と出会った。

友「よう男! 出不精のお前がこんな日曜の真っ昼間からどうしたんだ?」

男「あー、いや、ちょっと用事があってさ」

まずい。よりによって友に出会うとは。

友「へー。珍しいな……。ってかさ、さっきいきなり雨が降りだしたんだよ。直ぐに止んだけど」

男「ふーん。俺はあそこの本屋に居たから気付かなかったわ。……そうだ、本屋と言えばさ、今さっきそこの本屋でお前が大好きなマドンナちゃんっぽい人を見かけたぞ」

勿論嘘だ。俺は本屋になど居なかったのだから、マドンナちゃんなど見ていない。しかし今は一刻も早くこいつの前から消えたい。……この指輪を見られたくないから。

そして友の性格なら……

友「マジで? じゃあまだ居るかもしんねえ。ちょっと話しかけてくるぜ。情報提供サンキューな、じゃあまた明日学校で」

やはりこうなった。

男「おう、じゃーな」

俺は手を振って、友が向こうの路地へ消えていくのを見送った。

……ふう、友はいいやつなんだがちょっと気が利きすぎるし勘も鋭すぎる。あのままでは直ぐに指輪のことがバレただろう。

バレたから何だってこともないんだが、まあ少しでも不利になりそうな情報は出さないのが吉だと思う。

……自分でもこんな損得勘定を第一に優先して動くような性格は嫌だと思っているんだが、な。

常にこんな考え方だから、能力も嘘を本当にするとかいうやつなんだろう。


俺は帰路を急いだ。

――バトルロワイヤル、初日目終了。




いにしえのしんでん最上階

神「さてさて、一年ぶりの異能戦争ですがー」

神「うん、もうそろそろ進展して欲しいよね。色々とさ」

神「まあ? そのために駒も二年かけて増やしたし、いっぱい準備もしたし」

神「後は……、探偵くんに連絡しておくのはもうやったから」

神「人事を尽くしたんで天命を待ちますか」

神「天命を待つって。神なのにねえ、できないこと多すぎんよ」



―――リタイア0名、戦死0名。

 始まりの日 2 完

以上です。今日中にまた投下できるといいなあ、という願望。

バトルロイヤル二日目

 初陣

朝だ。けっこうぐっすり眠れた自分に驚いて、

男「両親なんかとっくに死んでるし、やっぱ妹が居ないと寂しいな……」

もそもそとパンを二枚焼いて食べた。



男「行ってきます」

俺の台詞に返事は帰ってこない。誰も居ないから当然だが。


さて、学校に行きながら、ちまちまと昨日考えたことを頭のなかでまとめてみるか。

まず『嘘八百万(カウントレス・ライ)』について。この能力を持ったときに真っ先に思い付いたのは、「妹が植物状態ではなくなった」という嘘を本当にする事なのだが、出来なかった。どうやら万能って訳でもないらしい。この分では、敵の前で「お前は俺に絶対に勝てない」という嘘を本当にしたりも出来ないんだろう。あくまで神様は、俺たちにまともに戦争をしてもらいたいようだ。

それと指輪のことだが、右手の中指ごと人差し指と指輪を包帯でくるんだ。昨日一日考えてでた結論は、「怪我をしたことにして指輪を隠そう」だったからだ。

友には多少なり怪しまれるかもしれない(昨日会ったときには俺は包帯を巻いていなかったから)が、まあそれこそだから何だってこともない。まさか包帯をとったりはしないだろう。


……何だかんだでもう校門の前だ。一応俺の通っている高校は進学校だから、まともに授業を受けていないと直ぐに置いてかれる。勉強脳に切り替えよう。……ってそうだ、月曜日だから朝は集会だった。


 …………。


特に何事もなく放課後になった。俺は帰宅部なので全力で家に帰ろうと思う。……思っていたが、二階から一階への階段の踊り場で誰かに声をかけられた。

?「やあ、君は1-Cの男君だね」

男「……失礼ですが、どちら様でしょうか」

うーん、背格好とかから見るに先輩か? でもこんな人知らないぞ。

?「ああ、すまない。まずは自分の紹介をしなくてはいけないな。それが礼儀だ」

……いや、結構です……。ああ、早く家に帰りたい。今日はやらなきゃいけないことが色々あるんだ。

生徒会長「私は生徒会長だ。こう言えばわかるかな?」

男「ああ、あの……」

頭脳明晰、容姿端麗、運動神経は抜群、素行は完璧と噂の生徒会長か。しかし、何故そんな人が俺に声をかけるんだ?

……やな予感がする。

そして次の瞬間、俺は自分の勘が当たったことを知る。

生徒会長「君の右手」

男「…………」

生徒会長「怪我をしているらしいね」

……何故そんなことを知っている? どう対応するべきなんだ……?

生徒会長「君は次に、「それがどうかしましたか、悪いんですが急いでいるので……」と言う」

男「それがどうかしましたか、悪いんですが急いでいるので……」

男「……はっ!?」

ヤバい。洞察力に優れているとか、そういったレベルじゃない。これはまさか……。

男「まさか……」

生徒会長「ご明察。私は能力者だ」

声をかけられたときは、生徒会長は確かに二階にいた。だから一階と二階の踊り場にいた俺とは階段十二段分の距離があったはず。だが、そのあったはずの俺との距離はいつの間にか詰められていて、生徒会長は俺の目の前に立っていた。

……違う、これは能力じゃない。緊張していた俺が、一瞬で距離を詰められたと錯覚しただけだ。

生徒会長「悪いが、私の野望のために死んでくれ」

生徒会長の右手に握られているのは……ナイフ!?

……逃げろっ!

男「『嘘八百万(カウントレス・ライ)! 俺は屋上にいる!』」


まずは緊急避難しなくてはいけない。

俺は屋上にいるという嘘を本当にして、ナイフを手に襲いかかってくる生徒会長から逃げ出した。




生徒会長「…………」

生徒会長「やはり、死ねと言われれば逃げるだろう。私の能力である『世界演算(ジーニアスマスター)』で予測した通り、男君は能力で屋上に逃げた……。屋上は普段封鎖されているせいで誰も見ていないし逃げ場もない、戦うには……、いや。狩りをするにはちょうどいい」

生徒会長「さて、追いかけるか」

……やられた。

俺は屋上でそう思った。

恐らく生徒会長は俺を殺す気なんかない。宝石を割るだけでもリタイアはさせられるのだから、わざわざ殺す事なんて無い。色々と面倒な事になるだけだ。だがあえてそう言うことで、俺をわざと逃げさせた。

……落ち着いて考えれば、まず生徒会長が俺に話しかけてきた時点でもっと怪しむべきだったんだ。面識もないのに話しかける理由がない。

てんぱってたせいでこんな逃げ場のない場所に跳んでしまった……。こういうので上に逃げるのは下の下の更に下策だってのに。

しかも『嘘八百万(カウントレス・ライ)』は一度使うと再使用まで一分間のインターバルが必要になる。直ぐには逃げられない。多分生徒会長の能力は予測……それも未来予知とかその辺だろう。

くそっ、想定が甘すぎた。学校では襲われないなんて誰が決めたんだよ。油断しすぎだ、俺。

屋上のドアが開いた。生徒会長が入ってくる。……鍵がかかっているはずだがな。おおかた生徒会長はマスターキーか何かを持っているんだろう。

生徒会長「ドアが開いたことには驚かないのか。なかなか聡明なようだね。まあそれはともかく……。やはり君の能力は、連発が出来ないようだ。そうでなければ逃げられるはずだからな」

男「…………」

生徒会長「私の能力もそうなんだ。連発出来ない。使い勝手が悪くて困るよ」

何か逆転できる方法はないのか? 何か、何か……。畜生、いきなり過ぎて何の策も考えつかない。

生徒会長「じゃあ無駄話はこの辺にしておいて、さっさと君の宝石を壊すとするか……」

生徒会長はいつの間にかナイフをトンカチに持ち変えていた。

生徒会長「指も折れてしまうかもしれないが、死ぬよりはマシだろう?」

では、更新します。

どうしようもないのか……? せめて嘘八百の再使用までの時間ぐらい稼ぎたい! そうすれば勝機はあるはずだ。

行くぞっ!

生徒会長「ふむ、丸腰で真っ直ぐ突っ込んでくるか……。しかしそれは勇気ではない。ただの蛮勇というんだ。そして君と私の間の距離はおよそ5メートル、接近までには時間がかかる」

生徒会長「その時間は、私が君の行動を予測するために能力を使うまでの時間には充分すぎる……『世界演算(ジーニアスマスター)』!」

万事休すか!?

生徒会長「君は私の直前で向かって左にフェイントをかける。私はそれに対応しようとして首を食いちぎられるっ!」

……は?

生徒会長「え? ――――」

生徒会長がデュラハンになった。

男「…………、は?」

徒会長「」

首から上がきれいになくなった生徒会長は、そのまま糸がきれた操り人形のように前に膝から崩れ落ちた。


……理解が追い付かない。

男「『嘘八百万(カウントレス・ライ)……。俺は落ち着いている』」

……一分経っていた。能力で強制的に心を落ち着かせることで、冷静に思考をしようとする。

なんだ? 何かがいきなり屋上のフェンスを飛び越えて出現し、生徒会長の首に食らいついて殺したって事で合ってるのかな。ちゃんと見てなかったからよくわからない。

現れたのは……、黒い蛇、か?


 契約の始まりと初戦の終わり

男「誰だ? って君は……」

同じクラスの女さんだ。あまり目立つ方ではないが、ルックスは素晴らしいので隠れファンも多い。しかし何故ここに? ……ああ、そういうことか。少し考えればわかることだな。

男「この化物は、君の能力か」

女「ええ。『悲哀機能(アライブマシーン)』って言うの。可愛いでしょ」

可愛いくは無いけど。

女「それよりも、ずいぶんと落ち着いているようね」

男「ああ、まあね……。それよりも、えーっと、女さん? 君は、俺とは敵対するつもりはないってことでいいのかな」

もし本当に俺を殺そうとしていたならば、スキだらけだったさっきの間にいくらでも殺せるはずだ。しかしそれをしなかったということは……。

どういうことだろう。

でもそれにしては生徒会長は殺しているし。

もしかして、助けてくれた……のか?

と、俺の考えを読んだかのように女さんの声が響く。

女「勿論よ。敵対するつもりなんてあるはずない。むしろ仲良くなりたいと思っているわ。一緒にこの戦争を勝ち抜きましょう」

……これは色々と予想外だ。慎重に確認を取って行かないと。

男「うーん……、でも君の願いが何であれ、叶えるためなら結局は俺とは戦わなくちゃいけないし……」

俺の言葉に、女は俺のほうにゆっくりと近づきながら……、

女「いいえ、それは大丈夫。だって私の願いは……」




女「君と結ばれたい、だから」



聞きたいことは山ほどあるが……、まずはその蛇をしまってほしい。超恐い。

女「君と結ばれたい」

二回言ったぞ。

男「うん、それは解らないけど判った。でもこの状態を何とかしよう」

女「この状態?」

生徒会長が首なしになって倒れてる状態だよ。

女「それなら大丈夫」

いやどー考えても大丈夫じゃ……、……あれ? ……生徒会長の首の断面から血が一滴も流れてないぞ? 

女「またくっ付けられるから」

……、なんですと。

女「私の『悲哀機能(アライブマシーン)』は人を殺せないの」

女「契約に基づき、私が敵と見なしたものを全て食い契る」

女「男君、君のためにね」

おうふ。今までの発言でわかってきたことがいくつかある。生徒会長は死んでいない。女さんの能力は多分かなり強い。そして……、何故かは理解出来ないが、女さんは俺の事が好きだ。

……困った。こんな状態で何を言ってんだって感じだが、素直に嬉しい。

いやだって。生まれてから今まで、同年代の異性に好意を持たれたことなんて多分一度も無かったし。

……問題は、女さんはおそらく、軽く病んでるってところかな。俺なんかのためにこの戦争に参加するなんて、普通の人の思考回路じゃない。


俗にいうヤンデレってやつか?

まあとにかく、死んでいないと言うのなら早く助けてあげてほしい。

女「何故? 私はこのままでいいと思うのだけど」

……いやいや。どう考えてもこれをこのまま放置はマズいだろ。

女「だって私の男君に手を出したのよ? 本来なら極刑でも足りないわ」

おうふ。照れるぜ。……じゃ無くて。

男「いやこの光景はさ、俺の精神的にちょっとクるものがあるし」

首なし死体(死んでないけど)は見ていて気持ちが良いものじゃあない。

男「助けてあげてくれるかな?」

女「それなら仕方がないわね」

……女さんは従順だー。なにかに目覚めそうな気がする。

女「えっと、敵を倒したから宝石を奪えば……」

そう言いながら、生徒会長がはめていた指輪を外す女さん。
あ、そうだ。能力を使ったから穢れを確認しなくては。……包帯をほどいて見てみると、俺の宝石はちょっとしか穢れが溜まっていなかった。たぶん10%位。

と、ちょうど女さんは生徒会長から指輪をはずし終わった所だった。

女「……よし、あとは……。『悲哀機能(アライブマシーン)』、首をくっつけるから顔を出して」

悲哀機能『――――』オエッ

蛇の口の中から出てくる女性の生首。…………。あ、ちなみにうちの生徒会長、女性ね。

女「このクソ女……本当なら殺してやるのに……。男君の寛大な心に感謝しなさい」

……………………。まあいいか。

そのあと俺と女さんは、手に入れた宝石を生徒会長の足元に転がっていたトンカチで割って(トンカチの柄のところにきちんと「生徒会長」と名前が書いてあって少し和んだ)、二人分の穢れを取った。女さんはあんなでかい化物を召喚し使役しているのだから、それはもう沢山溜まっているのかと思いきや、穢れは全然溜まっていなかった。
そして生徒会長の顔を首にくっつけて、生き返らせた(死んでないけど)。生徒会長は目を覚ましたあとすぐに事態を把握したようで、願いが叶えられず残念そうな顔をしながらも「君たちの武運を願うよ」と言ってくれた。良い人だ。

そして……、


男「じゃあ、契約しようか」

こういうセリフ一度言ってみたかったんだよなあ。

女「契約?」

男「共闘するっていう契り、だよ」

女「……、なるほど。言葉にすることによって契約の重みを増そうとしている訳ね? 大丈夫よ。私は絶対に裏切らないから」

ふふっと笑って言う女さん。……さらっと考えを読まないでほしい。いやだってさ? 助けてもらったとはいえ流石に今すぐ信用するって訳にはいかないじゃんか。

気を取り直して、と。


男「ご、ゴホン。……俺は自らの願いを叶えるために」

女「私はこの戦いで貴方を守り、貴方と添い遂げるために」

男女「「必ず二人で最後までこの戦争を勝ち残ることを誓う」」

ふう。まあこんなもんかな。あれ? 女さんがなにやら含み笑いをしてらっしゃる。

男「……どうしたの?」

女「あのね? なんだかこの指輪が二人の結婚指輪のような気がして」


いやそのりくつはおかしい。

とりあえず今回の投下は終わりです。


……こうして俺と女さんは共同戦線を組むことになった。俺としては戦力の大幅アップはとても助かるし、……ぶっちゃけ今のままじゃ『悲哀機能』に勝てる気がしない。女さんも俺と一緒に戦う事で親密度を上げたいとのことなので、とりあえずは両者共に得をするWINWINの関係を築くことが出来たと言えよう。



今日は疲れた。家に帰ったらゆっくりしよう……。

いや、ゆっくりなんてできないか。 やることが色々あるからな。



色々、な。

 契約の始まりと初戦の終わり 完
   

……キリの良い所で投下終了と書き込むべきだった。これで本当に今日は終わりです。すいません。


 男と女の関わらない戦闘 その一

同日 夜中 とある駅前の商店街


体中がグジュグジュに溶けた数人の死体の中心に、二人の男が立っている。

青年「てめえのせいで大勢の罪のない人が死んだ! 死んだ人は決して生き返らないんだぞ!」

それを行った少年は、冷めた目で激情して突っかかってくる青年を見て、

小学生男子「へー。で? だから何?」

と言った。

その言葉にブチ切れた青年は、怒りのままに言葉を発する。

青年「……てめえは屑だ、生きていちゃあいけない人間だっ!」

小学生男子「だったら何だってのさ」

青年「この場で俺が殺すっ!」

小学生男子「えっ。ちょっ、自分が人殺しするのはいいのかよ」

青年「悪人に人権はないっ!」

小学生男子「そんな某ドラまたみたいな」

小学生男子「てかさ、ぼく君みたいなヤツ一番嫌いだわ」

青年「ああ?」

小学生男子「自分の生き方に自信を持っててなんにも迷わないみたいな」

青年「…………」

小学生男子「暑苦しいしうざいしさあ」

小学生男子「だから殺すわ」

青年「もとよりこちらもそのつもりだ……。行くぞっ」

少年「……君もさ」

青年「燃えろオレの魂! 熱くなれオレの血潮!」

少年「……そこに転がってる奴等みたいに」

青年「ヒートヒートヒートッ!」

少年「……腐らせてやるよ!」

青年「焼き尽くせ『正義憤概(バーニングハート)』っ!」

少年「腐敗しちゃえ『昇天劇薬(グッドラック)』っ!」


 …………。

小学生男子「な、何でぼくの毒が効かないの!?」

 …………。 

小学生男子「熱い熱いっ! ご、ごめん降参だよ」

 …………。

小学生男子「ま、参ったってば! ほら、宝石も渡すから、ね?」

 …………。

小学生男子「あ゛づいっでば、やめ゛でまじで殺す気かよぎぃや゛ぁっ!!」

 …………。

小学生男子「ぉ……、お母さん……」

 男と女の関わらない戦闘 その一 完

――バトルロワイヤル、二日目終了。



いにしえのしんでん最上階

神「ふわああああ。眠い」

神「しかしまあ、こうまであっさりと『世界演算』がリタイアになるとはなあ……。流石は女ちゃんって所っすかね」

神「おっ……。こっちも決着がついたか」

神「あーこいつ死んじまったか……。自分の能力に過度に期待しすぎだったなこいつは」

神「まあこいつはどうせ天国には来ねえし、能力を回収して……と」

神「地獄で頑張れや。グットラック、『昇天劇薬(グッドラック)』」


―――リタイア一名、戦死一名。


『世界演算 ジーニアスマスター』レベル1

生徒会長の能力。自分の周囲に起きる事象すべてを予測し演算する事で、99%以上の精度の未来予知を可能とする。
発動した時間から10秒までの間なら、その予知は確実なもので決して覆らない。
最大で100秒先までを視ることができる。
対能力者の戦闘においては、相手の能力のおおまかな予測ができるだけでもかなり有利となる。そのため予知の出来る『世界演算』は、本来ならば(世界演算の能力者である生徒会長自体も高性能なため)戦闘面ではハイエンドの性能を誇る能力であった。

能力のランクは上の中。

敗北の原因は、生徒会長の油断と慢心。あと相手が悪かった事。


『昇天劇薬 グッドラック』レベル1

小学生男子の能力。様々な物を腐らせることの出来る粉を口から噴霧する。人の体にかかると肉どころか骨までグズグズになって融解してしまう。
息で噴き出すため飛距離は短いが音やモーションがないため不意討ちには最適。

その辺歩いてた一般人に能力を試していたところを、同じ能力者である青年に目撃され戦闘になり殺された。
能力のランクは下の上らへん。

久しぶりの更新でした。また明日。

バトルロイヤル三日目

 アピール


男「……おかしいな」

……何で目が覚めたら隣に女さんが寝ているんだろう。

昨日は女さんと帰り道の途中で別れて、そのまま家に直帰。飯食って風呂入って『色々』して寝たはずなのだが。

女「スウ……ムニャ……」

可愛い。……いや違う。そうじゃなくて。

まずは起こすか。

男「……おはようございまーす……」ユサユサ

遠慮がちに女さんの体を揺する。ゆさゆさ。

女「……ムニャ。……おはよ、う男君」

起きてくれたようだ。……って当然のようにおはようと返事された。

男「……何で俺のベッドに?」

女「何でって? 付き合っている人の家にいくのはいけないことかしら」

男「…………」

……ううむ……。これは困った。女さんとは話し合う必要がありそうだ。

男「目、覚めました?」

女「一応」

男「ちょっとお訊ねしたいことが」

女「いいわよ」

男「女さんは何故一緒に俺とベッドで寝ているんですか?」

女「寝たかったからよ」

俺の質問が悪かったかな……。質問を変えよう。

男「えっと……何で俺の家がわかったのでしょうか?」

女「好きな人の住所ぐらい知っていて当然じゃないかしら?」

いやいやいやいや。その理屈はおかしい。うちの高校の連絡網には住所は載ってないぞ。

男「つまり昨日別れたあと……」

女「ええ。引き返して追いかけたわ」

男「俺が飯とか食っている間は?」

女「外のマックで待機してたのよ。電気が消えたのを見計らって家に入ったわ」

男「……ドアの鍵は?」

女「? 空いてたわよ。開けっ放しじゃ不用心過ぎね。いつ泥棒が入るかわからないのだから気を付けなくちゃ」

男「……………………」

……俺の中の女さんのイメージはもっと落ち着いている人って感じだったんだけどなあ……。

男「ずいぶんアグレッシブ、だね?」

女「えへへ」

照れて髪を弄くる女さん。可愛い。……じゃなくて。

ていうか、女さんの頭のなかで、いつの間に俺と女さんは付き合ってることになったんだろう。俺はそんなつもりないんだけど。……まさか昨日結んだ、共に戦うっていう約束が女さんの中では付き合うに変換されてるとか?

ああそういえば結婚指輪がどうとか言ってたなぁ……。


男「……まあ」

いいか。付き合おう。付き合うって言っても具体的に何すりゃいいのかわからんが。なんてったって彼女いない歴イコール年齢だからな。

男「……それより朝食を食べなくちゃ。学校に遅れるし」

さて、何を作るか。……ってそうだ、女さんはどうするんだろう。朝ごはん。俺が二人前作るか?

男「女さんも朝食食べる?」

女「それなら昨日の夜に作っておいたわ。男君のぶんも一緒に作ったから、食べてほしいんだけど……」

何てこった。

……、あ、そうだ。1つだけ大切なことを言っておかないと。

男「女さん」

女「?」

男「俺が居ないときに部屋に入ってもいいけど」

俺はクローゼットの上のほうを指さし、

男「あそこの段ボール箱の中身だけは絶対に見ちゃだめだよ」

男「もし見たら……」

女「見たら?」

男「契約は破棄ね」

女「分かったわ見ない見ません絶対に見ないと約束する」

驚くほどの即答だった。しかも超早口。

うん、でも見られちゃ本当に困るんだ。

その中身だけはね。

釘を刺しておくのは良いことだろう。たとえその結果として、女さんが段ボール箱に興味を持ってしまったとしても、何かの拍子にうっかり見られるよりは百倍マシだ。

じゃあご飯食べるか。作ってくれた朝食の出来栄えがとても楽しみだ。

以上で今日の更新終わりです。

続きを投下します。

さて。


目の前にあるのは二人分の食事。女さんが作った朝食。
味噌汁とご飯、焼き鮭に卵焼き。ホウレン草のお浸し。

…………。

女「お口に召したかしら?」

もぐもぐ。
……………………。

男「うまい」

女「それは何よりだわ」

いや何これ超うまい。俺も親いないし自炊してるから料理にはちょいとばかし自信があるけど、女さんのほうが数倍上手だ。

男「そういえば調理実習でも活躍してたね女さん」

女「そうかしら」

そうです。

顔は良い、器量は良い、体も出るとこ出てる……。よく考えると女さんって素晴らしい女性じゃないだろうか。

……あれ? となると。

男「……女さん」

女「何かしら」

男「どうして女さんって、俺のことを好きになったの?」

ここが気になった。別に俺は、自分を客観的に見てもそんなに良いとこないと思うんだけど。

女「――それは」

女さんが答えようとした瞬間、テレビがニュースを知らせた。

テレビ『大事件です! 昨日の深夜に、駅前商店街を通りがかったたくさんの人間が忽然と消失してしまいました!』

男「……え? 女さんちょっとテレビの音量大きくしてくれる?」

女「……ええ」

テレビ『――消えてしまったのは、モブいさん、モブろさん、モブはさん、小学生男子さん、以下8名です――』

男「…………」

もぐもぐ。

女「…………」

ぱくぱく。

テレビ『辺りには腐臭が立ち込めており――』

テレビ『――また、警察はこの件に関して』

テレビ『さらに現場には謎の指輪が――あ、これ駄目? 箝口令……?』

テレビ『……失礼しました。それでは一旦スタジオにお返しします』

男「……これ、どう思う?」

女「普通に考えればただの失踪事件ね、けれどもこれはもしかしたら……」

男「もしかするかも知れない……ってことか」

腐臭、……指輪。能力者の仕業……か?

テレビ『とても痛ましい事件云々』

テレビ『最近の社会事情の観点から云々』

テレビ『……また、残された家族はかの有名な探偵さんに既に捜索依頼を出しているということです』

女「あ、探偵さんね」

男「あー……二年前からいきなり有名になったあの人」

女「知ってるの?」

男「いやまあニュースみてればだれでも名前ぐらいは知ってるよ。それぐらい知名度が高いから」

女「そうね、彼が捜査に加わるとたちどころに事件が解決するとか。でも受ける依頼にかなりバラつきがあるみたいだし、本当に優秀な人なのかしら」

男「……優秀な」

人じゃないと困るんだよね。なんてったって俺が依頼を出したんだから。

だけどなかなかに噂通りの腕を持っているみたいだ。昨日学校から帰宅した時点で既に第一次の報告書が郵送されてたしな。

あいつらの居場所、あとどれ位で割り出してくれるんだろう。

出来れば数日中がいいなあ。

投下終了です。

時間ができたので続きを投下します

女「どうかした?」

男「いいや、なんでもない……。ご馳走様でした」

女「お粗末さまでした。じゃあ私もご馳走様」

二人でほぼ同時に箸をおいた。


男「じゃあ学校行こうか」

女「ええ」

家から学校まではそう遠くない。具体的に言うと自転車で登校できるぐらいには。
交通費を掛けたくないので俺は自転車で通ってるけど、女さんは……。

女「大丈夫。私も自転車で男君の家まで来たから」

問題ないか。

 アピール 完


 警察の時間

ほぼ同時刻 とある駅前の商店街


部下「困るんすよ、あーゆーことされると。きちんとこちらから渡した情報のみを流してくれないと……」

アナウンサー「す、すみません。情報が錯綜してまして」

刑事「まあそんなに言ってやるなよ、部下。たまにはそんなこともあるさ」

部下「あっ刑事さんお疲れ様っす。……そんなことより向こうの仏さん、見ましたっすか?」

刑事「ああ。……ありゃひでえな。全身腐りきってやがる。身元の判別を急がせたいところだが……」

部下「あれじゃあ難しいっすね……。あれ? これって……何すかね」

刑事「ああ? ……大量の灰だな……」

部下「はい……灰っすね……」

刑事「それ何にも面白くないぞ」

部下「いえ洒落で言ったんじゃないっすけどね」

部下「それにしても多いっすね。何なんでしょうかこの灰は」

刑事「……人一人を骨すら残さず焼き尽くしたらこんぐらいの灰が生まれたりしてな」

部下「ぶふっ……何言ってんすか。そもそも例えそうだとしてもじゃあ何故そうしたのかだったりとか炎の火力が異常だとか幾らでも否定の言葉は出てくるっすよ」

刑事「いやまあ超適当に言ってみただけだ。でも突拍子もない事が真実だったりするんだぜ? それに俺の勘は当たるんだ」

部下「はいはい。鑑識さん、これも持ってって下さいっす」

鑑識「ういっす」

刑事「……あとよ、部下。……こっち来い、耳貸せ」

部下「……今度は何っすか?」

刑事「……ほら、あれだよ。あの指輪。落ちてた奴。ちょっと貸せ」

部下「……怒られんの俺っすよ……っつかばれたらヤバいんですからね!」

刑事「大丈夫大丈夫。すぐ返すから。見せろ」

部下「……わかりましたっす。はい」

刑事「サンキュな」


刑事「ふーん。この事件、やっぱ能力者がらみか……。宝石は取られてる。一人脱落したってことか」

刑事「さて、どうすっかねえ……。まあ、何とかなるか、な」

刑事「俺としちゃあ潰し合ってもらって、最後の生き残りをひょいっと倒して願いを叶えるってのが一番良いんだがなあ。そう上手くは行かないかねえ……」

刑事「一昨年も去年も惜しいとこまで行ってたけど最後の最後で毎回敗北してるからなぁ」

刑事「しかし今年からのルーキー達に比べりゃあアレだ、経験の差とか知識の差とかあるし」

刑事「よっし! 今回も頑張るか!」

警察の時間 完

投下お終いです。


 探偵の時間

探偵「やれやれ。やらなきゃいけない仕事が多すぎだぜ」

探偵「先ずは男君の依頼、内容は人探し」

探偵「これはもうあらかた終わっているから良しとしよう。2日も経たずに全て調べあげることができる」

探偵「次に消失事件の解決……。依頼は小学生男子君のご両親から」

探偵「全部『観てた』から一部始終知ってるけどね」

探偵「あの子がどうやって殺されたか、とか。誰に殺されたか、とか」

探偵「でもだからといってねえ。アレを説明してもしょうがないし」

探偵「そもそも説明できないし。『立場的』に」

探偵「……おお、いい事思いついた。小学生男子君の死体を作っちゃえばいい」

探偵「どうせ神に頼めばヒトガタぐらい貰えるだろ。『実験』の副産物で幾らでも余ってるはずだし」

探偵「それにしても父親には虐待され、母親には消極的ネグレクトを受け。本当にかわいそうな子だな、小学生男子君は」

探偵「それでも死に際に母親を求めるとはね」

探偵「何で知ってるのかって? 俺はなんでも知ってるんだよ」

探偵「最後に」

探偵「神からの依頼。まあこれは今すぐなんだって事でもないし」

探偵「のんびり『観て』ればいいか」


探偵「……、男君の監視、並びに女ちゃんの動向監査をね」


人一人しか居ないにしてはあまりに広すぎる、とある探偵事務所。
一人でブツブツとつぶやく彼の、握りこまれた右手の中には。

鈍い輝きを放つ宝石があった。

 探偵の時間 完

PCが使えないのでスマホから投下します。


長い一日の始まり


うちのクラスの担任が、朝学活で開口一番こんなことを言い出した。

教師「お前ら、転校生だ」

珍しいこともあるもんだ。こんな時期に転校生か。

友「おい男、転校生だってよ。美少女だといいな」

男「友、お前はマドンナさん一筋じゃなかったのかよ」

友「まあそうだけどよ、美人さんが増えるのは嬉しいじゃん? まあすでにマドンナさんとか女さんとか綺麗な娘や可愛い娘は居るけどさ」

男「あ。俺と女さん付き合うことになったから」

友「ふーん……、ん? は!?」

隣の席の友と喋っていると、教室の前のドアがあまり音を立てずに開いた。

教師「はい全員注目。転校生さんです」

転校生「隣町から引っ越してきた転校生です。……宜しくです」

そう言って転校生さんはぺこりと頭を下げた。自然と皆は拍手。

友「自己紹介そんだけかよ」

友、同感だけど口に出すんじゃねえよ……。

しかし、転校生さん。整った顔つきをしていてけっこう可愛いけど(俺の好みでは無いが)。


影が薄い。

目を離すと何処かに消えてしまいそうな程にだ。泡沫って人に使う表現じゃないことぐらいわかってるけど、まさに『うたかた』って感じ。

こんなに影が薄い、存在感がない娘は初めて見る。

教師「転校生さんは父親の仕事の関係でこんな時期に転校してきたんだ、お前ら仲良くしてやれよ」

転校生「……どうもです」

教師「じゃああのアホそうな顔してるアイツのとなりの席が空いてるから、転校生さんはそこに座って下さい」

と言って教師は、友のとなりの席を指差した。


友「……アホそうな顔してるアイツって俺の事かよ!?」

おい教師、同感だけど口に出すんじゃねえよ……。つーか友はあれだからな、こんなファニーフェイス(あれ? 男性に対しては使わない言葉だったっけ)だけど頭は学年トップレベルの良さだからな。

転校生「こんにちは」

友「こんにちは。君可愛いね、今度お茶でもどうよ。まあ俺はお茶にはこだわりがあるから静岡までお茶っ葉を摘みに行くところから始まるけどね」

出たよ友の「可愛い子にはテンパって意味わかんないギャグを飛ばす」悪い癖が。だからマドンナさんにも想いが一方通行のままなんだって。それがなきゃ面倒見もいいしそれなりにモテると思うんだけどな。

転校生「…………」

……そりゃ引かれるわ。しかし意外にも、

転校生「…………ふふっ。面白い人ですね、友君は」

ウケたみたいだ。笑いの沸点が低いのか? ああ。ちなみに俺は嘘をついてるかどうかは(能力とか関係なく)大抵見破れる。これはややウケとはいえ心から笑っている。そういう顔だ。

友「あっ、うえっ、そうかな」

テンパりすぎだ。まさか笑ってもらえるとは思ってなかったらしい。
……じゃあやんなきゃいいのに……。

転校生「今後とも宜しく、です」

友「よ、よよ」

転校生「……よよ?」

いやマジでテンパりすぎだって。全くもう……。見てらんないよ。助け船を出してやるか。

男「よろしく……って言いたいみたいだよ、友は」

転校生「あ、そうですか。成る程です。……えっと?」

男「俺は男って言うんだ、よろしく」

転校生「男君ですね、よろしくです」


教師「おーい、後は休み時間とかにしろー。じゃあこれで朝学活は終わりだ。起立」

日直「きをつけ、礼」


しかし。転校生さん、いい人そうだけど……。

やっぱり影が薄い。

女「……………………」

……怖い怖い女さん怖いよ。
何でそんなに転校生さんの事睨んでるんだよ……。

それから放課後まで、女さんは俺と転校生さんが会話をするたびに背中にゴゴゴとか出てもおかしくないレベルで転校生さんを睨みつけ続けていた。

長い一日の始まり 完

投下終了です。

宿題まだ終わってないけど更新します

男「あっという間に放課後だ」

転校生さんはどうやらクラスの皆とは上手く打ち解けられたようだ。

女「それは何よりね」

…………。
いつの間に隣に。そしてナチュラルに思考を読まれてるし……。

男「女さん、家来るの?」

女「ええ」

男「まあ良いか。作戦会議もしたかった所だし」

でも女さん、家族は外泊とか何も言わないのかなあ……。


歩道にしては広い道を俺と女さんで並走しないように気を付けながら家に帰る。

十五分とかからずに家につく。

つくはずだったが。

少女「『天星引力(フォールスカイ)』」

ズン……!
衝撃。と共に円形に巻き上げられる道路のコンクリート。


突然空から墜ちてきた少女によって、そうもいかなくなってしまった。


少女との戦闘 1

ん?

ナンダコレ? 新手のパフォーマーか?

少女「…………」

少女が俺の目の前に墜落してきて

男「…………」

頭から地面に突き刺さった。

少女「…………」

クレーター出来てるぞ。地面に。

男「…………」

少女「……着陸失敗しちゃった」

そう言って頭を引っこ抜き、逆立ち状態から脱却する少女。

男「う、うん」


場に流れる異様で微妙な空気。

いや待て。おかしい絶対におかしい。何もかもがおかしすぎて具体的に何がおかしいかパッとわからない。


その少女は、まだ状況を把握できていない俺に向かって親指を下に向けて立てて、

少女「先手必勝。……潰れちゃえ」

と言った。

……うん?

男「……っ!?」

体が、……動かない。
上からまるで巨大な手に圧迫されているかのように、体が自力では立てないほど重くなっている。自転車から降りられない。

鯖の調子が悪いのでここまでです。すみません。

宿題は諦めました。
更新します。

しまった……。能力者か!

少女「一昨日、あなた能力で雨を降らせてたでしょ」

ヤバい、完全に先手をとられた。身動きがとれない……!

少女「天候操作系だとすると、雷とか落とされたらどうしようもないもの。だから、先にあなたの動きを封じさせてもらったわ」

男「…………」

口を開けない。嘘がつけない。つまり、能力が使えない!

男「…………っ」

馬鹿っぽい登場の仕方は気を引くためわざとか?

少女「指輪はぐぅ……っ!」

あ、舌噛んだ。どうやらわざとじゃないっぽい。

少女「…………。……指輪は貰う。私はあなたを[ピーーー]気はないわ。……この戦争は宝石が無かったらどうしようもないの。早めにリタイアした方が身のため」

そう言って少女は、俺の包帯を巻いた方の指に手を伸ばした。

…………馬鹿だな。迂闊だよ。

女「『悲哀機能(アライブマシーン)』!! 私の男君に、何してんのよこの糞アマ!!」


こっちにはもう一人、能力者がいるんだ。

女「喰い契れ『悲哀機能』!」

女「……大丈夫男君っ!?」


俺のもとに駆け寄ってくる女さん。

男「ああ、大丈夫。動けるようになったよ、助かった……ありがとう女さん」

女「……えへへぇ」

女さんは可愛いなあ本当に! ……ってそうじゃない。


……売られた喧嘩は買わなきゃな。戦闘開始だ。

じゃあまずは敵の能力の考察をしなきゃな。と、その前に……。

男「『嘘八百万(カウントレス・ライ)、周囲三十メートルには当事者以外誰もいない!』」

これでオッケーだ。現在進行形で暴れている悲哀機能に、他人を巻き込まなくてすむ。
……というよりは、さっきの少女の台詞。天候云々、あれは一番最初のお試しの時の話だろう。つまりはあの時能力を使うのを見られていたということで。戦闘を見られる事でこれ以上他の能力者への能力バレを防ぐためって方が比重としては重いんだけどもまあどうでもいいか。

男「よし、存分に戦える。でも俺の能力は五分しか持たないから……」

女「わかったわ。それまでにケリをつけましょう」

嘘八百万の再使用までの規制時間は一分間、つまりその間は俺はまるっきり戦力外だ。女さんに任せつつ、相手の能力の解析をしよう。

女「もう一度突撃よ悲哀機能!」

再び少女へと突進する悲哀機能。

少女「さっきはびっくりしたけど……もう見切れるわ!」

それに対して少女は、大きくジャンプをしてかわした。……というよりは。

女「飛び越えた!?」

悲哀機能『???……!?』

少女「……成功!」


タイミングを合わせてジャンプすることで、悲哀機能を飛び越えた少女は、そのまま加速しつつこちらに駆けてくる。
って今の動きは人間に出来る事なのか!? 明らかに跳躍力や加速力が人の限界を越えている。

少女「今度は手加減しない……」

瞬時に距離を詰めた少女は、悲哀機能が遠くにいて無防備な女さんの体を、

少女「吹っ飛べ!」


両手で思いっきり突き飛ばした!

女「きゃああぁあっ」

ドンッ……と勢いよく押された女さんの体は、まさに文字通り地面と水平に「吹き飛んだ」。
な、何だそりゃ! ……ヤバい、このままじゃ女さんがコンクリの壁に激突する……!

男「危ないっ!」

俺はとっさに女さんと壁の間に体を割り込ませた。
女さんを抱き止める。
畜生、止まらない……!


女さんもろとも壁に衝突した。なんとか女さんは庇う事が出来たが、そのかわり二人分のダメージをもろに受ける。衝撃が身体中を駆け巡り、脳が揺れた。


……俺は意識を手放した。

少女との戦闘 1 完

眠気が天元突破ですのでここまで。
おやすみなさい。

では更新します。


神の部屋にて 1

……ん? どこだここ。何にもない。真っ白だ……。

神『おーい』

ってうおっ!? 神様……!?

神『そうそう神様だよ』

何の用ですか?

神『伝え忘れた事があってね』

伝え忘れた事……?

神『昨日の戦闘で、生徒会長ちゃんの宝石を割ったのは君だよね』

はい。そうですが。

神『えーと、能力者を撃破した者にボーナスを与えます。石を割った人には、穢れの回復だけじゃなくて、特典として「能力のレベルアップ」が自動で行われるのです』

神『これは一人撃破するごとに一段階アップするので、君の能力は今レベル2だね』

……レベルが上がると何が起きるんですか?

神『出力がアップしたり、効果範囲が広くなったり、能力使用時の穢れの溜まる量が減ったりと、まあ色々。戦争が有利になるように、能力が進化してゆくって事かな?』

……なるほど。

神『君には期待してるから、「嘘八百万(カウントレス・ライ)レベル2」はレベル1と何が違うのかを特別に教えてあげよう』

神『レベル2は、「君の嘘が敵の能力への干渉力を持つようになる」だ』

干渉力……? それってどういう意味ですか?

神『それを教えちゃつまらないよ。ちなみにレベルを上げていくと能力がへ……。あ、これも言っちゃ駄目だった』

え? へ……?

神『忘れなさい。時が来たらいずれわかるから、後のお楽しみという事で。じゃあそろそろ体に戻ろうか』

神『はい、3、2、1。どーん』



……俺はそんな神様のやる気のなさげな掛け声とともに、意識を取り戻した。

神の部屋にて 1 完



男「…………ぐっ、痛ってえ」

目を覚ますと、目の前に女さんの顔があった。

女「良かった! 目が覚めたのね」

身体中が痛てえ……。てか吐きそうだ。脳が揺れたせいで目も回っている。……いや、そんな事よりもっと先に確認することがあるか。

男「俺はどのぐらい気を失ってたの……?」

女「ほんの十秒ぐらい……。大丈夫? 私のせいで……」

十秒か……。そんなもんなのかな。

寝落ちしてしまった……。
とりあえずここまでです。

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