一夏「祈るがいい」(241)

一夏が劇場版カウボーイビバップのヴィンセントみたいになってしまったという話です
一夏をベースにヴィンセントっぽくするので一夏が1、ヴィンセントが9ぐらいの割合かと思います
書き溜めとかはなくてかなりゆっくりと書きます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367819942





それは柔らかく、しかし重い砂だった
一歩歩くごとに足へとまとわりつき、その足はじわじわと沈み込んでいく
そのままじっとしていると、体ごとどこまでも沈んでいくように感じられる
沈んでしまう前に後ろの足を砂から引きずり上げ、前へと踏み出す
その足もじきに砂にめり込んでいき、また次の足を踏み出す

ただその果てしない繰り返しだった







舌にはざらざらとした砂の感触がする
だが、それを吐き出す唾液すらもう残っていない
後頭部には鈍い痛みが続いていて、意識を麻痺させていく
いや、もしかしたら元より朦朧としていた意識を、その痛みがどうにか覚醒させていたのかもしれない







ここはこの世の果て




この世界の何処でもない何処か







砂漠以外のものはほとんど視界に入らない
そこでは、大洋の中の船のように自分が移動している感覚が消えていく
自分は本当に進んでいるのか、それとも同じ場所で繰り返し足踏みしているのか







しかし、時折、砂以外のものが視界に入る事がある
それは、砂漠迷彩を施された軍服らしきものと、それに包まれた、少し前までは人間だったものの塊だった
砂に埋れつつある兵士たちの骸は、敵か、味方か、それすらあったのかも分からない
どちらがどちらなのか区別がつかない
等しくこの大自然に埋葬されていくかのようだ







さっきからずっと、耳鳴りのような遠い砂嵐の音が聞こえている
彼は時折、どうして自分がここを歩いているのか思い出せない事があった
それでも、体は何処かへと向かい、規則的な繰り返しを止めようとしない




それが何処かは彼にも分からない







彼、織斑一夏は、この果てしなく続く砂漠をたった一人で、もう何時間も歩き続けていた







さっきから聞こえていた砂嵐の音が、徐々に、何かもっと別の、高いトーンの音に変わっていくように感じる
それとも、やはりただの耳鳴りか、幻聴だったのかもしれない
だがそれは、何か人の声、女性の声ようにすら感じられるようになってきた







一夏はふと、その声に呼ばれたかのように、ゆっくりと振り向く




そして、そこには信じられないような風景が広がっていた







数え切れないほどの、輝くチョウが空を埋め尽くし、絡み合うように舞っている




もちろん、この砂漠にチョウなどいるはずがない







だが不思議な事に、一夏はこれを幻覚だとは感じなかった
むしろ、今まで歩いてきたこの砂漠よりも、このチョウの方がずっと現実のように感じられ、それを見ている自分の意識も、ずっと覚醒しているようだった




そして、何か懐かしいような、安らぐような、奇妙な感覚に囚われた







このチョウたちは、自分を迎えに来たのだ




さっきの声は、自分を呼んでいたのだ




そんな風に感じられた







もはや、自分がここにいる理由は全く思い出せなかった







このチョウたちは、自分を何処へ連れてゆくんだろう



天国なのか

地獄なのか

あるいはもっと別の世界か………







「一夏!」







声がする

俺を呼ぶ声が




誰だ

俺を呼ぶのは




思い出せない




分からない







チョウが、消えた



俺が見たものは、何だったんだ







夢、だったのか




それとも、これが夢なのか







分からない







この世界は




ーー




Dear Mr. Fantasy




ーー





山田「あ、あのぉ……織斑くん………」

山田「……自己紹介を………」

一夏「…………………………………」スクッ

一夏「織斑一夏だ」

山田「え……あ、以上ですか……?」

一夏「…………………………………」スッ

山田「以上みたいですね………アハハハ」

一夏「…………………………………」ペラッ



ヒソヒソ

「男子よ、男子」
「クールで格好いいじゃない」
「背高ーい」



一夏「…………………………………」パタン

「勉強熱心なのは関心するが、自己紹介ぐらいまともに出来んのか」

一夏「…………………………………」スウッ

一夏「千冬か」

千冬「ここでは織斑先生だ、馬鹿者」

一夏「そうだったな」

千冬「先が危ぶまれるな、全く……」







山田「先生、もう会議は終わられたんですか?」

千冬「ああ、山田くん」カッカッカッ


カツン


千冬「諸君、私が担任の織斑千冬だ。君達、ヒヨッコ共を一年で使い物にするのが仕事だ」



キャーッ

「千冬様、本物の千冬様よー!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんですー!」
「お姉様の為なら[ピーーー]ますー!」



千冬「毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ」ハァー

千冬「私のクラスだけに集中させてるのか?」ヤレヤレ



「お姉様ー!もっと叱って、罵ってー!」
「でも、時には優しくしてー!」
「そして、つけあがらないように躾してー!」



千冬「織斑、問題ないな?」

一夏「ああ」



「やっぱり兄弟なんだ」
「なんかよそよそしいけどねー」
「それじゃあ、世界で唯一男でISを動かせるってのも……」
「関係あるみたいだねー」
「でも、感じが全然違うくない?」







(一夏…………………)







「あの人よ、世界で唯一男でISを使える男性って」
「どうして起動させたんだっけ?」
「そりゃあ入学式の時でしょ」
「世界的な大ニュースだったよねー」
「やっぱり入学してきたんだー」
「アンタ、話しかけなさいよ」
「いっいや、でも………」
「何かこう………話しかけにくいってゆうかその…………」
「別次元………だよね」
「ただ身長が高いだけでしょー?」
「千冬様の弟だって」
「え?それ本当?」




一夏「…………………………………」カツンカツンカツン









「待て!一夏!」


一夏「…………………………」ピタッ


「一夏………だよな?」


一夏「…………………………」スウッ


「久しぶり……だな。私だ、箒だよ」


一夏「…………………………」

箒「どうした?まさか、忘れてはいないよな?」

一夏「…………………………」

箒「何とか言ったらどうだ?」

一夏「誰だ。お前は」

箒「なっ、何を言ってるんだ?一夏」

一夏「…………………………………」スウッ

箒「お、おい!」

一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

箒「話はまだ終わってないぞ!」



カツン…カツン…カツン……



箒「一夏………」







箒には一夏を追いかける事が出来なかった。歩いていった一夏が自分の知っている人物ではないのではないか、そう思えたからだ







あの眼………まるで見た事もない人間を見るような眼だった




私は……アイツの中にはいないのか…………







山田「では、ここまでで質問のある人はいますかー?」



シーン



山田「織斑くん、何か分からない事はありますか?」

一夏「…………………………………」

山田「なさそうですねぇ………もし、質問があったら聞いて下さいね、何せ私は先生ですから」

一夏「ああ」

千冬「山田先生、張り切っているところ申し訳ないが、コイツには質問するような事がない」

山田「そ、そうなんですか………」

千冬「授業はサクサク進めてもらって結構だ」

山田「はい………分かりました」

山田「何か分からない事がある人はいますかー?」

山田「えーいないのなら授業を続けます」

山田「では、テキストの12ページを開いて下さい」

一夏「…………………………………」ペラッ




セシリア(何者ですの……あの人)


箒(私と会わなくなった間に何があったんだ……)







「ちょっとよろしくて?」



一夏「…………………………………」スウッ

セシリア「まぁ何ですの?!まともにお返事も出来ませんの?私に話しかけられるだけでも光栄なのに」

セシリア「レディーにはそれ相応の態度でお答えするのが紳士ではなくて?」

一夏「…………………………………」

セシリア「挨拶が遅れましたわ。私、イギリスの“代表候補生”のセシリア・オルコットですわ」

セシリア「もちろん知っていますわよね?知らないなんて言わせませんわ、何てったって和宅は入試首席でしたもの」

一夏「…………………………………」

セシリア「って聞いてますの?!」バンッ

一夏「ああ」

セシリア「アナタ………自覚が足りなくってよ」ビシッ

セシリア「私のような選ばれた人間とクラスを同じくするだけでも奇跡!幸運なのよ!」

一夏「現実か………」

セシリア「何です?何かおかしなところでもありまして?」

セシリア「織斑先生はああ言ってましたがアナタは何も知らないようですわね」

セシリア「この様子だとアナタは私の期待から大外れですわね」カツッカツッカツッ

セシリア「んーまぁでも、私は“優秀”ですから、アナタのような人間にも優しくしてあげますわよ」

セシリア「分からない事があれば………そうですわね、頭を垂れて私に泣いて頼めば教えて差し上げてもよくってよ?」

セシリア「どうです?悪くない条件だとは思いません?」



>>32

セリフが抜けました



セシリア「その現実をもう少し理解して頂ける?」

一夏「現実か………」





セシリア「何故なら、私は入試で“唯一”教官を倒した“エリート中のエリート”ですから」

一夏「祈った事はあるか」

セシリア「あら?私は頭を垂れて泣いてーー」

一夏「此岸と彼岸の扉を司る、生命の番人にな」

セシリア「えっ?」



キーンコーンカーンコーン



セシリア「とっとにかく!話の続きはまた改めて、よろしいですわね!」

一夏「…………………………………」



「セシリアさん、早速探りにいったよー」「何か最後どしたの」「織斑くんがなんか言ったみたいだけど」「全然聞こえなかったわよ」「気になるー」








一夏は悠然とした佇まいで、IS学園寮の廊下を進んでいる。そして、ある部屋の前で足を止め、ドアを開けて中へと入った 
 







バタン



一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

一夏「…………………………………」スッ



キュッ



「誰かいるのか?」


一夏「…………………………………」


「同室になった者か、これから一年、よろしく頼むぞ」



ガチャ



「こんな格好ですまない、シャワーを使っていた。私の名前は篠ノ之箒だ」


一夏「…………………………………」

箒「い……ち………か?」

一夏「…………………………………」スウッ

箒「みっ……見るな!何でお前がここにいる?!」

一夏「ここが、俺の部屋だからだ」

箒「ぬッ!」ダッ



バシッ



箒「てやあッ!」ブンッ

一夏「…………………………………」



ガシッ



箒「素手で!?」ググググッ

一夏「…………………………………」バキンッ

箒「なっ……!」







シュッ カランカラン



箒「木刀を………折った…………」

一夏「…………………………………」パラパラパラ

箒「一夏……お前、どうゆうつもりだ」

一夏「…………………………………」

箒「あんな態度をとっておいて、私と一緒の部屋になるとはな!」

一夏「…………………………………」

箒「どうなんだ?」

一夏「…………………………………」スウッ

箒「……………お前から……希望したのか?」

一夏「そんな事、俺がすると思うのか」

箒「そ、そう……だな」

一夏「…………………………………」

箒「おい!窓側は私が狙っていたんだそ!」

一夏「…………………………………」

箒「まっまぁ、お前がそこがいいと言うのなら譲ってやらんでもないが………」

一夏「…………………………………」

箒(外を見ているのか……?)








箒「…………なあ、一夏」

一夏「…………………………………」

箒「私の事……忘れてしまったのか」

一夏「…………………………………」

箒「私が剣道でお前に勝てなかった事は?」

一夏「…………………………………」

箒「いじめっ子達から守ってくれた事は?」

一夏「…………………………………」

箒「髪型だって……ほら、昔のまんま…………なんだぞ?」

一夏「覚えていない。知っていたかすら分からない」

箒「どうしたんだ…………一夏」

一夏「全て失ったのさ。記憶さえもな」

箒「そんな………」

一夏「俺は、お前が知っている人間ではない」

一夏「別世界の住人だ」







そう言った一夏はゆっくりと立ち上がった。箒は何事かと気になったが、そのまま窓の方へと歩いていった

一夏は窓辺で足を止め、窓外に視線をやった



外に広がるのはほとんどが海だ。だが一夏は本当に海を見ているのか、それは分からない

もしかするともっと遠くの、この世界の何処かを見ているのかもしれない



箒には分からなかった。今の一夏が、過去に何があったのか、どうしてこんな風になってしまったのかが







箒には自分が悲しいのか、虚しいのか、それとも混乱しているのか分からないような気持ちになっていた。それが何なのか、どんなものなのかが分からなくて、ただ胸が苦しい。そんな気持ちだった




そうして、何処かを見つめている一夏の背中を見て思った。その訳を考えても分かりはしない。今はそう割り切るしかなかった








何であんなに寂しそうなんだ



何もかもを忘れてしまったからだろうか



今の一夏は記憶を無くしている



なら、私は一夏が記憶を取り戻す為の手助けがしたい



あの背中を支えて、隣で笑っていよう。それが私に出来る精一杯だ



アイツには誰かが必要なんだ



これは、同情か哀れみかもしれない



分からない



もしかすると、私は………







それからしばらくして、箒は眠った



一夏はそれでもまだ、窓辺に立っている。先程まで何処かを見ていたが今は、窓ガラスに映った箒をじっと見つめている



何も感じないはずの自分が、何かを感じた



そんな気がしたからだ







一夏「…………………………………」カチャカチャ

箒「はむっ」

一夏「何故だ」

箒「ん? 」モグモグ

一夏「何故、俺の隣で食事をしている」

箒「誰の隣で食べようが私の勝手だろ」

一夏「…………………………………」

箒「私は、お前の隣で食べているだけだ」

一夏「…………………………………」スクッ

箒「もう食べ終わったのか」

一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

箒「また後でな」



「あー食べ終えちゃったー」
「迷ってた私の負けね」
「大丈夫、まだ焦る段階じゃないわ」
「遅れたー」
「次があるって、次々」







千冬「これより、再来週のクラス対抗戦に出るクラス代表を決める」

千冬「クラス代表とは対抗戦だけでなく、生徒会の会議や委員会への出席など…………まあ、クラス長と考えてもらっていい」

千冬「自薦他薦は問わない。誰かいないか?」



「はい、織斑くんを推薦します」
「私もそれがいいと思います」
「私も同じです」



一夏「…………………………………」ペラッ

千冬「他にはいないのか?いないのなら無投票当選だぞー」



バンッ



セシリア「納得いきませんわ!そのような選出は認められません!」

セシリア「男がクラス代表だなんていい恥曝しですわ!」

セシリア「このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと仰るのですか!」

セシリア「大体!文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけない事自体が私にとっては耐え難い苦痛で………!」

千冬「全く、やかましい小娘だな」ハァー

千冬「だとさ」

一夏「お前がやれ」

セシリア「は?」

一夏「俺は辞退する」

セシリア「何ですか!情けでもかけたつもりですの?!」

一夏「…………………………………」

セシリア「くうぅ……どこまで私を侮辱する気ですの………!」ギリギリ

セシリア「決闘ですわ!」








セシリア「ワザと負けたりしたら、私の小間使い………いえ、奴隷にしますわよ!」

一夏「…………………………………」

セシリア「どうました、怖じ気づきましたの?もしそうなら、ハンデをつけて差し上げてもよくってよ?」

一夏「必要ない」



「織斑くんやめときなよ」
「絶対無理だって」
「ハンデぐらいつけてもらいなよー」
「勝てるわけないよ、代表候補制に」



千冬「フッ……話はまとまったな?それでは、勝負は次の月曜、第三アリーナで行う」

千冬「織斑とオルコットはそれぞれ準備をしておくように」



はい、今日はここまでです
若干小説の要素も取り入れてみましたが、無口主人公みたいになってますね
劇場版と小説版のヴィンセントは似ているようで違うのでなるべく劇場版の方にしてみます
これは死人が出るかもしれませんね

冒頭のはほとんど小説をそのまま書いたので地の文が長くなりました。ちょくちょく地の文挟むので読みにくいかもしれません。戦闘はどうするか検討します





「ようやく見つけたぞ」




「織斑一夏」







「教えてくれ」




「お前のその眼は何を見ている?」




「お前のその心は何を感じている?」



「あの時お前は何を失い、何を得た?」







「お前は、何故生きる」







「お前がそうなったのは、私のせいだ」




「だから、知りたい」




「お前の為にも、私の為にも」







「私は、知らねばならない」




「お前の行く末を」




「お前の最期を」




「その義務が、私にはある」







「私には、打つ手がないんだ」




「お前に対して、どうする事も出来ない」




「罪滅ぼしにすらなりはしない」




「何と愚かで滑稽なのだろう」




「だが、私は見届ける」




「お前という存在を」







「いつの日か下る罰も、甘んじて受けよう」




「例え憎まれ、軽蔑され、哀れまれようとも」




「見届ける」







「お前の結末は、どんなものなのだろう」




「いずれ分かる事だ」




「その時は、必ず訪れる」








「その時、私に何が出来る」




「もし、そうでなかった時には」




「私は、お前を止める」




「この身投げ打ってでも」




「止める、止めねばならない」




「私は、そうせねばならない」





ーーーーー



Session#1
 END OF DAWN



ーーーーー





山田「ISには、意識に似たようなものがあり、互いに対話のようなものをします」

山田「つまりは、一緒に過ごした時間で分かり合うというか………」

山田「ええっと………操縦時間に比例して、ISも操縦者の特性を理解しようとします」

山田「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せることになる訳です。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識してください」


「先生ーそれって彼氏彼女のような感じですかー?」


山田「それは、そのぉ……どうでしょう………私には経験がありませんので分かりませんが…………」モジモジ


「先生赤くなってるー」
「先生可愛いー」
「彼氏欲しいよね」
「超大物ならそこにッ……!」
「あんた、そんなキャラだっけ?」
「みんな楽しそうだねー」


キャッキャキャッキャワイワイガヤガヤ







キャッキャキャッキャワイワイガヤガヤウフフ


箒(………これはアレか)

箒(いわゆる女子校特有の雰囲気か)

箒(馬鹿馬鹿しいというか何というか…………)チラッ

一夏「…………………………………」

箒(こんな中であいつは参考書を読んでいるのか)

箒(いや、待て。読んでいるのか?ただ眺めているだけにも見えない事もないが………)

箒(まるで、読む事に意味はないみたいに)

箒(…………私の深読みだったな。授業に集中しよう)

箒(武士たる者、文武両道でなくては)カリカリカリカリ







キーンコーンカーンコーン



山田「あ、授業終わっちゃいましたね………」

千冬「そうだ織斑、お前のISだが準備に時間がかかる」

一夏「…………………………………」

千冬「学校に予備がなくてな、少し待ってもらう代わりに、お前に専用機を用意するそうだ」



ザワッ


「専用機!?しっしかも、一年生のこの時期に!?」
「つまるところは政府から支援が出てるってことだよね……」
「そりゃあ、有名人の織斑くんだものね」
「でも単純にスゴいよ!入学早々に専用機持てるなんて!」







ザワザワザワザワ



千冬「理由は分かるな」

一夏「教科書6ページだ」

千冬「なら分かるな。本来は国家あるいは企業の人間にしか与えられないIS専用機………だがな」

千冬「お前の場合は特殊も特殊、今まで類を見ないケースだ。貴重なサンプルのデータ収集の為の専用機が用意される事になった、という訳だ」

一夏「…………………………………」

千冬「気に食わんか?」

一夏「問題ない」







「あの………先生」


千冬「何だ、言ってみろ」


「篠ノ之さんって………もしかして篠ノ之博士の関係者か何かなんでしょうか………?」


箒「…………」

千冬「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ」



エエエエエェェェェェエエエエーーー!!


「すっ、すごい!このクラスに有名人の身内が二人もいる!」
「でも篠ノ之博士って今行方不明で、世界中の企業や技術者達が探してる人だよ!?」
「どこにいるとかわからないのー?」
「篠ノ之博士ってどんな人!?やっぱり天才!?」
「どんなお姉さんだったの?」







ガヤガヤガヤ



箒「…………」


「ねえねえ篠ノ之さん!」
「教えてよー!」


箒「関係ない」

箒「…………私は何も知らない。教えられるような事はない」

箒「こんな事しか言えなくて、すまない」



シーン







キーンコーンカーンコーン



千冬「チャイムが鳴ったぞー席に着けーヒヨッコ共ーほうーそうかそうか、そんなに私からグランド20週のプレゼントが欲しいか」



ササササッガタタタン



千冬「素直でよろしい。山田先生、授業を」

山田「分かりました」

山田「さっきの続きからやりまーす」







箒(…………姉さんか)

箒(あの人は、今何処で何をやっているんだろう)

箒(日本中探して、見つけ出してどうこうしようなんて思わない)

箒(いや、今の私にはあの人の事を気にしていられる程の余裕はない)

箒(…………私自身の事もある)

箒(それに、一夏の事だってあるんだ)

箒(一つ一つが大き過ぎる)

箒(その重さで私が潰れてしまいそうになる)

箒(……………………そんな中なのに)

箒(あいつのあの眼が、私の頭の中から離れない)

箒(まるで何もないようなあの眼が…………)

箒(理由も、何があったのかも私は知りたい)

箒(潰れている場合じゃない)



………

……

………

……




箒(………あいつも必死だな)



カツカツカツカツッ



セシリア「良かったですわね、専用機を用意してもらえて」ビシッ

セシリア「私が専用機、あなたが訓練機じゃあ全く持ってフェアではありませんし、何の面白みもありませんかものね」

セシリア「フフン……まあ専用機もらったところで、私の勝ちは揺るぎないものですけど」

一夏「…………………………………」

セシリア「どうなさいます?勝ち目のない勝負はしないのが得策かと思いますわよ?」

セシリア「何故なら私は、限られた467機のISの中のさらに限られた専用機を持つ、全人類六十億の中でもエリート中のエリートなのですわ!」

セシリア「残念ながらあなたはーー」

一夏「…………………………………」スクッ

セシリア「ッ」ビクッ

一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

セシリア「ちょっ………ちょっと!話はまだ終わってませんのよ!逃げる気ですの?!」



カツンカツンカツン







セシリア「お待ちなさい!」



カツン……カツン…………



セシリア「……………屈辱ですわッ!」バンッ



ポン


「ドンマイ、セシリアさん」
「分かるよーソレ。気になるからって素直になれないのって分かるよー思春期真っ盛りだねー」
「諦めないで!」
「めげずに一緒に頑張ろ」
「チャンスはまだあるって」



セシリア「違いますの!そうゆう事ではありませんの!」

箒(必死で食ってかかってるが、あまりの結果に三周回って同情すら覚えるよ)







普通に見れば一夏は極度に無口な男に見えるのだろう。そうではないと気付くような人間は極めて少ないと言ってもいい。ただ者ではないという事なら一夏の様子から誰でも分かるようだ



現に今も、一夏に接触したセシリアは自分は全く相手にされなかったのだと、彼はただの礼儀知らずで寡黙な男、彼から少し感じた違和感も自分の気の所為だったのだと、自分の思い違い程度にしか思っていない







ーーーー本当にそうなのか?ーーーー



そう疑問に思ったのは箒だった。さっきの接触でセシリアは無視されたのではなく、一夏にとってどうでもいい存在だっただけ。それどころか、自分も含めた他の人間にも、それが当てはまるように思えた。あまりに荒唐無稽な話なのだが、箒には何故か確信があった。『女の勘』とでも言うべきものが







ここで箒は、今が昼休みだった事と自分はまだ昼食をとっていない事を思い出した。頭を切り替えて机の上のノートや教科書を引き出しの中へと放り込み、立ち上がってそそくさと教室を後にした。途中セシリアがさっきの事で女子達からあれやこれやとあらぬことを言われて、その訂正に非常に難儀してたようだったが気にせず通り過ぎた。箒はそんな事を気にするよりも、何かサッパリしたものを食べながら考え事がしたかった



廊下に出て一夏の行方を追おうとは思ったものの、腹の虫の声には勝てず。そのまま食堂まで一直線に歩いていった


……

………




ピリリッ ピッ



千冬「よおクラリッサ、収穫があったのか?」

クラリッサ『日本の少女マンガはやはりいい………』

千冬「そうか」

クラリッサ『待て待て待て、切るんじゃないぞ』

千冬「文句なら腹の虫に言ってくれ」

クラリッサ『その腹の虫も黙るような事が分かったんだ。知っておいて損はないぞ』

千冬「黙るかどうかは知らんが聞こう」

クラリッサ『そうこなくては』







クラリッサ『お前の、弟に関する事だ』

千冬「…………聞こうか」

クラリッサ『あの事件の元凶と呼ぶべき奴がいた。そいつの名前はメンデロ・アル・ヘディア』

クラリッサ『年齢不詳で出身不明、さらには性別までも何もかもが不明だ。まるで元から存在しなかったみたいにな』

クラリッサ『そもそもこいつはあんな所で一体何を目的とした実験をしていたのか、どのくらいの規模で何をしたのかも不明』

クラリッサ『現在、潜伏場所、生死確認、その実験内容に至るまで全て調査中だ』

クラリッサ『恐らくこいつはあの時、私達が実験施設に辿り着くよりもさらに先に、実験施設を完全に粉砕し、全ての研究データ及びバックアップなど、自分の痕跡にまで至る一切を消去したんだと思われる』

クラリッサ『何故そうしたのかはーー』

千冬「不明………か」

クラリッサ『そうだ。我々シュヴァルツェ・ハーゼの力を持ってしても、藁の一本も何も掴めやしない』

千冬「お前達が調べて調査中、不明ばっかりとは、奴さんは余程の奴なんだな」

クラリッサ『ああその通りだ。全くもってお手上げだ』







千冬「じゃあ何でお前達は、そんな奴がいたと分かったんだ?」

クラリッサ『残っていたんだよ、あの場所に』

千冬「あそこにか?…………馬鹿な」

クラリッサ『何もかもが破壊され、燃やし尽くされていたあの現場、お前は地獄だと言ったな』

千冬「あの光景を目の当たりにして、そうとしか言いようがなかっただろ」

クラリッサ『そうだったな、全く持ってその通りだった。その地獄の後に見つけたんだ。奇跡的に焼け残った一枚の紙をな』

千冬「まるでパンドラの箱だな」

クラリッサ『そんな御大層なものじゃない。その紙は半分程燃えてしまっていた。だが焼け残った部分には、メンデロの名前ともう一つ、恐らく本人の直筆でこう書かれていたんだ』

クラリッサ『リセットしたい事がある。今までの事はみんななかったことにして、掌から滑り落ちてしまったものをもう一度、この手に握りしめたい…………とな』

千冬「奴には、希望すら残されていなかったんだな」

クラリッサ『そうだろうな。奴は何か取り返しのつかない事をやってしまったんだろう。それを無かった事にしたいが為に、何かにすがるように、あそこまで暴れ廻ったんだろうな』

千冬「私には分からん…………分かりたくもない」

クラリッサ『奇遇だな、私もそうだ』

千冬「お前とはつくづく気が合うな」

クラリッサ『ハッハッハッ、嬉しいな』







千冬「それはいいが、さっきの話をまとめると」


二人「『ほとんど分かってない』」


千冬「って事だよな」

クラリッサ『ああ、分かったのは名前と関係者だったって事だけだ。すまない』

千冬「いや、それでも少なからず価値はある」

クラリッサ『腐っても鯛、ってやつだな』

千冬「そうだな、それは私のセリフだな」







クラリッサ『それと、ISってのは本当にスゴいな』

千冬「急に改まってどうした?」

クラリッサ『最近の出来事なんだが、一夏が使ってた訓練機がこの前まで動かなかったんだよ』

千冬「故障でもしたか」

クラリッサ『それが調べる前に、気が付いた時にはもう直ってたよ』

千冬「へえ、珍しい事もあるものだ」

クラリッサ『勝手に直ったから良かったものの、あのままだと懲罰ものだったぞ』

千冬「原因不明のISの故障か………誰かさんが聞いたら喜ぶな」

クラリッサ『何の話だ?』

千冬「こっちの話だよ」







クラリッサ『原因は何だったんだろうか………』

千冬「そんなに乱暴に扱ってなかったと思うが………」

クラリッサ『何はともあれ、上からお叱りを受けなくて良かったよ』

千冬「それは良かったな」

クラリッサ『お偉さんは本っ当話が長いんだ、眠くなる。それにやっと書き上げた新しいISの手続きと壊れたISの報告書も全部パアになってしまったよ』

千冬「職場の愚痴ならまた今度飲みに行った時にしてくれ、こっちは腹が減ってるんだ」

クラリッサ『そうだったそうだった。時差を忘れてたよ』

千冬「そっちはまだ四時だろ?」

クラリッサ『ああ、スゴく眠い』

千冬「寝てたのか」

クラリッサ『部下からの連絡で起きたんだ。それを聞いて、一刻も早くお前の耳にいれておいた方がいいと思ってな』

千冬「わざわざすまない」

クラリッサ『どういたしまして』







千冬「…………………」

クラリッサ『…………………』

千冬「なあ」

クラリッサ『何だ』

千冬「私にいい考えがある」

クラリッサ『聞こうか』

千冬「これはお互いの為になる」

クラリッサ『ほう………それは?』

千冬「電話を切る」

クラリッサ『成程、そうしようか』

千冬「腹が減った」

クラリッサ『私も限界だ』

千冬「じゃあな」

クラリッサ『おう』



ピッ



千冬(メンデロ・アル・ヘディア……一体何者だ………)



グゥー



千冬(こっちでも調べてみるか、まずは腹ごしらえだ)

千冬(腹が減っては戦は出来ぬからな)



カツッカツッカツッカツッ



………

……





カチャカチャカチン



箒(…………駄目だ。サッパリ分からん)

箒(雲を掴むような話だ。私が知らない六年間の内に何があったのかなんて)

箒(そういえば千冬さん、第二回モンド・グロッソ大会途中で突然消えたそうだな)



カツン………カツン…



箒(そこに何かありそうだな)

箒(思い切って直接聞いてみるか?いや、答えてくれないだろうな。良くて上手く言いくるめられて、帰らされるのがオチだ)

箒(最悪の場合は…………あの鉄拳だけは貰いたくない。絶対に。絶対に、だ。すごい痛そうだからな)







カツン



箒「!」ビクッ

一夏「…………………………………」

箒「何だお前か………驚かすな、幽霊かと思ったぞ」

一夏「お前に、頼みがある」

一夏「簡単な事だ。それでお前は手に入れる」







「ねえ。君って噂の人?」


一夏「…………………………………」


「聞かなくても分かるよね、男子って君だけだし」

「代表候補生と勝負するんでしょ?」


一夏「…………………………………」



ヒョコッ



「そこで、素人の君が代表候補生のコにも負けないように、私がISについて色々と教えてあげようと思うんだけど………」

「って聞いてる?」


一夏「…………………………………」スウッ


「それで、ISについてどこまで………知って……………」


一夏「…………………………………」


「え、あ……その、やっぱり……何でも、ない…………です」



サササッ



箒(何も言ってないのに、多分三年生の人が黙って逃げ出した)

箒(初めの勢いは何だったんだ。名も知らぬ三年生の先輩、こいつの威圧感のようなものにでも当てられたのか?)

箒(セシリアはこれに気付かなくて、ある意味幸せなのかもな)







一夏「お前は、どうする」

箒「……………聞くよ、その頼みとやら」

一夏「俺は剣道場にいる」スッ

箒「おい、何をするかをーーー」



カツンカツンカツン



箒「待て!」



カツン……カツン…………



箒「行ってしまった……」

箒(“頼み”?私に何をさせる気なんだ。一夏)



………

……

……

………




箒(まさか、本当に剣道場にいるとはな)

箒(私が剣道部なのをどうやって調べたんだ?)

箒(思い出した……………訳ではなさそうだな。そもそもこいつならその辺の生徒に聞けばすぐ答えてもらえるか)

箒(それに……)チラッ



ヒソヒソヒソ


「あの二人ってどうゆう関係?」
「幼馴染みだってさ」
「あれが織斑くんね」
「しかも千冬様の弟よ」



箒(剣道部貸し切り状態じゃないか)

箒(やることが滅茶苦茶だ)

一夏「…………………………………」

箒「おい、一夏」

一夏「…………………………………」

箒「防具は着けないのか?」

一夏「必要ない」

箒「入るやつがなかったのだろ?」

一夏「始めるぞ」

箒「………ああ、そうしよう」スクッ

一夏「…………………………………」

箒「行くぞ、手加減はなしだ」

一夏「それでいい」



………

……

……

………




箒「でやぁっ!」ブンッ

一夏「………………………………」スッ

箒「はっ!」ブンッ

一夏「………………………………」スッ

箒「面っ!」ブンッ

一夏「………………………………」



ガッ



箒「くっ……!」ググググッ

一夏「………………………………」 バッ

箒「しまっーー」

一夏「………………………………」ヒュッ



ピタッ



箒「ッ……」



カランカタカタカタタン



一夏「…………………………………」スッ

箒「…………一本取るまでが剣道だぞ」

一夏「…………………………………」

箒「剣道で竹刀を避ける奴なんてお前だけだぞ、おまけに弾き上げるのもな」ヒョイ

箒「これで私の連戦連敗か、昔よりもさらに強くなったな」

一夏「…………………………………」







箒「さあ、もう一回やろうか」

一夏「…………いや」



カツンカツンカツン



一夏「今日はここまでだ」

箒「え、あ……そうか………」ゴソゴソ スポッ

一夏「何かあれば、こちらから連絡する」シュッ

箒「おっと」パシッ

一夏「……………………………………」

箒「竹刀を投げるな、馬鹿者」

一夏「……………………………………」カツンカツンカツン

箒「またな」



カツン……カツン…………



箒「気分屋だな…………全く」

箒「こちらの気も知らないで………」







箒(あいつ……IS学園七不思議入りとかしそうだな。神出鬼没で学園唯一の男子生徒、出没スポットとか探されたりしてな)


「織斑くんってすごいね、篠ノ之さん」
「まさか防具なしの片手で熟練者の篠ノ之さんに勝っちゃうんだもんね」


箒「ルール覚えたら完璧ですよ、あいつ」


「そうだね、いっそのことスカウトしちゃう?」
「いやいやいや、入ってくれないでしょ」
「是非ともウチに欲しい」
「主将もですか」


箒「ハハハハハ………頑張ってくださいね」



………

……





ワイワイガヤガヤ



一夏「…………………………………」カチャカチャ

箒「やっと見つけた。一緒に食おう一夏」ガタッ

一夏「…………………………………」

箒「いただきます」

一夏「…………………………………」

箒「おっ、この鮭おいしい」

一夏「…………………………………」

箒「…………聞いてもいいか?」

一夏「…………………………………」

箒「このままで勝てるのか、セシリアに」

一夏「ああ」

箒「竹刀の打ち合いだけで勝てる程、代表候補生は甘い相手ではないと思うがな」

一夏「お前は、全力で打つだけでいい」

箒「それだけか?」

一夏「それで充分だ」

箒「それ以外の協力も、私は惜しまんぞ」

一夏「………………………………」







「やっほーおりむー隣いい~?」


一夏「…………………………………」

箒「!?」

箒(おりむー!?)


「かなりんも一緒でいいかな~?」

「おーい、こっちこっち」


一夏「…………………………………」

箒(………どう出るんだ?一夏)


「ねえねえ、ほーちゃんもさーみんなで一緒に夕飯しようよ~」


箒「ほーちゃん!?わっ、私か!?」


「そうだよ~篠ノ野箒だから、ほーちゃん♪」


箒「え……ああ、私はいいぞ」


「やったー♪早く早く~」


箒(何故か親近感を覚える……姉さんと気が合いそうだな……………いや、それはないな)







「失礼しまーす」
「やっぱりーみんなで食べた方が楽しいよねー」


一夏「…………………………………」

箒「そうだな、その通りだ」


「自己紹介するねーおりむー。私は布仏本音、それでこっちは友達のかおりんだよー」
「よろしくね、織斑くん」


本音「よろしくねー」

一夏「………………………………」

箒「私は篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

本音「おーそういやほーちゃんってこの前の剣道の大会で優勝してたねーおめでとさん」

箒「ありがとう、よく知ってたな」

本音「えへへ、すごいでしょー…………むっ」

箒「む?」


「む?」


本音「むー」ジィー


「どうしたの?本音」


本音「むむむっ」ジィー

一夏「………………………………」


「織斑くんがどうかしたの?」


本音「………………」ジィッ

箒「顔に何か付いてるのか?」

本音「違うのだよー」ジィー

箒「?」


「?」







一夏「…………………………………」スクッ

本音「おおー」

箒「相変わらず食うのが速いな、もう少しゆっくり食べてもバチは当たらんと思うぞ?」

一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

箒「じゃあな」

本音「おりむーバイバーイ」フリフリ


「さようならー」



カツン……カツン…………



箒「………えっと……その………すまない。あいつはなかなかの気分屋でな、せっかく一緒に食べようと言ってくれたのにすぐ食べ終えてしまって…………でもな、あいつは悪い奴じゃーー」

本音「うん、おりむーは悪い人じゃないと思う」

箒「えっ?」

本音「いい人だと思う」


「本音、それは勘?それとも思い付き?」


本音「どっちでもないよ。ただ、そう思っただけ」


「フフフッ……なら、織斑くんはいい人ね」


本音「でもね、何だろう?おりむーって不思議」

箒「そうだな、不思議な奴だよ……………本当に」







「意外だね、織斑くんって気分屋だったんだね」


本音「意外だね~」

箒「あいつってどう思われてるんだ……?」


「見た通りのクールな二枚目男子」


箒「そうなのか………」


「違うの?」


箒「間違ってないとは思う」

本音「そういえばほーちゃんとおりむーって仲いいねー何で~?」

箒「あいつと私は幼馴染みでな、ここに来て六年ぶりに再会したんだ」

本音「へー幼馴染みね~」

箒「一応な」


「一応?」


本音「?」

箒「記憶喪失らしく、昔の事はほとんど覚えてないみたいなんだ」

本音「そうなんだ~」


「箒さんの事も?」


箒「そうらしい。現に私の事は何一つ覚えてなかった」






ポンッ



本音「元気出して、ほーちゃん」ナデナデ

箒「ありがとう……」


「でもでも、記憶なんてふとした拍子で戻るって聞いたよ」


箒「そうだったらいいんだが……」


「記憶ってのは木みたいなもので、記憶喪失になると枝の揺れが止まった状態になるんだって。だから周りが、記憶の枝を揺さぶれば、他の枝も一緒に揺れ始めて記憶が戻るかもしれないんだってさ」


本音「うーむ。よく分からニャイ!」

箒「…………………」


「そんなに難しく考えなくても、箒さんが一緒にいてればそのうち戻ると思うよ」


箒「そんなものなのか?」


「人間って頭で忘れてしまっても、心の方はちゃんと覚えていて忘れないものなんだって」


本音「わー人間って不っ思議ーかなりんよく知ってるねー」


「全部お医者さんの受け売りだけどね」







箒「諦めなければ…………何とかなるか」

本音「ファイトーおー」


「その調子」


箒「…………本当になんとかなる気がしてきた」

本音「おおー」


「やっぱり愛って素晴らしいものね」


本音「ねー」

箒「愛!?いっ、いや、そうゆうのじゃあないんだ………これはだな…………私とあいつの仲だからなんだ。決してそうゆうのではないんだ…………」

本音「その嘘本当ー?」

箒「え、えーっと…………本当だ」


「へーそうなんだ」ニヤニヤ


箒「何でにやついてるんだ」


「別にー何でもないよ」


箒「怪しいな」

本音「ここで問題!かなりんは今、何を考えているでしょーか、正解者には豪華プレゼントが待ってるよー早い者勝ちだよっ」

箒「えー最近ダイエットがうまくいってない事」


「うっ」


本音「あれー?図星みたいだねー」

箒「豪華プレゼントは?」

本音「うーんとね、決めてなかった!」

箒「そんな自信満々に言うか………」ガクッ

本音「えへへ」



………

……





その日の夜。箒は布団に入り、一夏は昨日と同じように窓辺にいた。部屋の照明を全て消したこの部屋は、月明かりだけが差し込み薄暗い。深夜十二時、ここIS学園の消灯時間も過ぎた今は聞こえてくる音や、それらしきものは全くといってもいい程ない。その中で一夏は何処かを、箒は窓辺に立つ一夏の背中をじっと見つめていた。沈黙、その二文字がこの空間に延々と続く







『お前に、頼みがある』



ふと、箒の頭に昼食中に現れた一夏が言った、抑揚のない調子で言われたその言葉が蘇った。そのまま聞けば、ただの依頼にしか聞こえない。実際あの時も、単純に依頼だと思った。だが、今はそうでない。依頼というよりは一種の強制、抗う事が自分には許されていない命令、あるいは自分を試す為の問い掛けのようにも感じられた







『簡単な事だ。それでお前は手に入れる』



私は何を手に入れるんだろう、と箒は一夏の背中を見つめながら思った。お前が記憶を失った理由か、何故そうなった訳か、自分の中の弱さを断つ力か………



だが、それを声に出して聞く事は出来なかった。それを聞いて答えてもらえる保証などない、かと言って答えないとは限らない。そんな事は分かり切ってはいたのだが、どうしてもそれが聞けなかった。そんなもどかしさに布団のシーツを握りしめて、そっと目を伏せた







箒からすれば、一夏が何を考えているのか全く見当もつかない。むしろ逆に自分の心の中や考えなどは、すでに一夏に全て見透かされていたような気がした。もしかして一夏は人の心の中を見透かして、少なからず自分にとって何かしらの価値がある人物に対して接触をしているのかもしれない、そう思った







そして箒は、一人ベッドの上で言いようのない虚脱感と悲愴感を感じた。それは、自分の考えに問いに見えない事や、唯一希望のような存在だった幼馴染みが変わり果てた事、今自分が置かれている状況の事、行方知れずな姉の事、そんなこの世の無情さなどが原因ではなかった







昨日の再会から、一夏が自分を見た、その眼………。その全く無感情で別人を見るような表情が、まるでその眼の奥には何もなく、すでに死んでいるような虚ろな瞳が、ずっと頭から離れなかったからだ。それは頭の片隅にずっとこびりついて、取り除こうとしてもずっと離れなかった







それを取り除こうとしていると、段々と、少しずつ、哀しいような、当惑に似た感情を箒は感じた。自分でも何故こんな気持ちになっているのか分からない。けどそれが、自分の胸いっぱいに広がって、不安になってしまう

「………なあ、聞いてもいいか……?」

その不安を掻き消す為に一夏に話しかける。その声はいつものようなハキハキとした声ではなく、全くの別物だった。自分からすれば、情けないと思う程に弱々しいものだった

「そのな……たいした事ではないんだ。嫌なら答えてくれなくてもいいんだ。ただ、少し聞きたくなったんだ」

一夏はこちらをゆっくりと振り向いた。窓辺に差し込む月明かりが逆光となって一夏の表情はよく見えなかったが、次の言葉を待っているように見えた

「どうして私を選んだ?私でなくてもよかったんじゃないか………特訓するなら他にもいたと思うんだ。千冬さんとか………それとも、私が篠ノ野束の妹だからか?」

外では月に薄い雲がかかり、部屋に差し込む光が弱くなった。それにより一夏の表情がうっすら読み取れた。月明かりの中の一夏は、全く表情を変えないまま答えた

「俺は、お前に頼んでいるだけだ」

そう言った一夏はまた、窓外へ視線をやった







一夏の言った言葉は、今朝自分が箒に尋ねた時に言われた言葉の言い回しと同じだ。一夏は特にそれを意識して言った訳ではなかった

「そうか……」

そう言った箒は少し昔を思い出した。幼少の頃に自分の言った言葉を上手く使われて、呆気にとられているとお返しだと言われた事がよくあった。人の驚いた顔を見て笑う、その時の一夏の無邪気な笑顔を思い出した

『人間って頭で忘れてしまっても、心の方はちゃんと覚えていて忘れないものなんだって』

これは今日聞いたある医者の受け売りだ。本当にそんな事があるのか、と半信半疑だったが、今はそれを信じられる







嬉しかった。自分の見ている人物が、自分の知っている一夏だった事が。記憶を失っても心がちゃんと覚えていてくれた事が、このままいけば全てを思い出すかもしれない事、それが嬉しかった。それに安心したのか箒は、ゆっくりと瞼を閉じて、眠った







今の一夏は何処も見ていない。何処か遠くでもなく、窓ガラスに映った箒でもない。外に広がる、月と星達が光る空を見上げてただ、考えていた



懐かしさを感じた訳を………



……

………




箒「今日は逃がさんぞ、一夏」

一夏「…………………………………」カチャカチャ

箒「さあ、一緒に食べるぞ」

本音「食べるぞー」


「いいかな?」


一夏「…………………………………」

箒「無言って事はいいって事だな」

一夏「…………………………………」



………

……

……

………




箒「行くぞ一夏、特訓するぞ」グイッ

一夏「ああ」

箒「ほら早くしろ」

一夏「………………………………」



………

……

……

………




本音「やーおりむー」トテトテトテ

箒「やあ本音さん、何かーーー」

本音「とうっ」ピョン



ガシッ



箒「!?」


「ちょっと本音!?」


本音「わー高い高ーい」ブラーン

一夏「………………………………」

箒「…………いいのか?一夏」

一夏「………………………………」

箒「…………」

箒(どっ、どうすればいいんだ………これ…………何で普通に歩いてるんだ…………頼むから何かリアクションとかとってくれ…………)

本音「ほーちゃんほーちゃん、私を呼ぶときは本音でいいよー」ブラーンブラーン


「とりあえず降りて!ほら早く!」グイッ


本音「やーだー」グググッ

一夏「………………………………」

箒「おいッ待て!一夏の首が締まってるぞ!」



………

……

……

………




セシリア「調子はどうでして?私にーーー」



スクッ



一夏「………………………………」カツンカツンカツン

セシリア「お待ちなさい!人の話はーーー」



スッ カツン……カツン…………



セシリア「…………またしても!してやられましたわ!」バンッ


「めげないね、セシリアも」
「鋼のハートってね」
「アイアンウーマン……なんちゃって」
「あの姿勢は見習わなくっちゃ」


箒(お約束だな、試合の日まで待てばいいものを………)

箒「…………しまった」ガタッ

箒(追いかけねば!)ダッ



………

……

……

………




箒「はあッ!」ブンッ

一夏「…………………………………」スッ

箒「でやあ!」ブンッ

一夏「…………………………………」ヂッ

箒「だあッ!」ブンッ

一夏「…………………………………」ヒュッ



バシンッ



箒「なっ!?」グラァッ

一夏「…………………………………」スッ



ピタッ



箒「ッ…………一本………だな」

一夏「…………………………………」



………

……

……

………




箒(特訓四日目にしてようやく掠った)

箒(まだ当たらない。もう少しなんだ……)

「………………の」

箒(いや、掠ったという事はもう少しで当たる、というところまで来ているという事だ)

箒(そう見れば私はしっかりと成果は挙げているな)

「……………ノ之」

箒(そうだ。このままいけば一太刀浴びせるのも…………んん?)

箒(…………本来の目的が変わってないか?そもそもあいつの特訓のはずがーーー)

千冬「篠ノ之」

箒「はっ、はい!」

千冬「さっき読んだところの続きを読んでみろ」

箒「え………聞いてません…………でした」



スパァンッ!



箒「うぐっ」

千冬「授業中は集中しろ」

箒「………………はい」







一夏「…………………………………」



シュッ



一夏「…………………………………」スッ



スカッ



千冬「ふむ、一応は聞いてるな」

山田「あのぉ……織斑先生、進めてもいいですか……?」

千冬「ああ、進めてくれ」

箒(……痛い………)ジーン



………

……

……

………




「聞いた?あの話」
「何の話?」
「織斑くんの話」
「どんなの?」
「昼休みと放課後の時は居場所が分からないんだって」
「へー………そういえばそうね」
「見つけたらラッキーよ」
「見つけ出す気満々ね」
「そりゃあ男子ですからねぇ」
「神懸かり的って聞いたけど?」
「そうそこ、そこなのよ問題は」



箒(…………嘘だろ…………)



………

……

……

………




箒「私に出来る事は、これでなくなった」

箒「これでいいのか?」

一夏「充分だ」

箒「その口振りは必ず勝てるものだな」

一夏「…………………………………」

箒「私の協力、無駄にはしないでくれよ?」

一夏「ああ」

箒「ふふっ………お休み」



………

……





試合当日、戦いの幕は今にも上がらんとしている。一夏専用のISもすでに到着している。それなのに試合が一向に始まらない理由は、至ってシンプルなものだった







千冬「遅い」

千冬「あまりに遅すぎる。開始五分前だぞ」

山田「どうしたんでしょう織斑くん、何かあったんでしょうか…………」

千冬「それはない。私が保証する」

山田「ええ………じゃあ何で………?」

千冬「案外その辺をほっつき歩いとるのかもな」

山田「時間にルーズなんですねぇ……」

千冬「残念ながら、そうゆうのではないな」

山田「?」

千冬「分からんか、そうだな……何というか………あえて言うならば………………」

千冬「恐ろしく気まぐれなんだ、私の愚弟は」

千冬「そうだろ?」







千冬「篠ノ之箒」

箒「確かにそうですね。織斑先生」

千冬「織斑は見つけれたか?」

箒「無理でした」

千冬「そうだろうな、あいつはかくれんぼが得意だからな」

千冬「…………それにしても、相手を放っておいて自分はせっせと正装しているとはな、相も変わらずご苦労な奴だ」

山田「正装………ですか」

千冬「多分そうだろうと思ってな」

箒「いいですか……」

千冬「何だ」

箒「あいつっていつ寝て、いつ起きてるんですか?」

箒「私が寝るときはいつも起きていて、それなのに私より早く起きているんですよ」

千冬「さあな、私もよく知らん」

山田「少しの睡眠時間でいいなんて羨ましいです」

千冬「睡眠はしっかりとれよ、山田くん」ポン

山田「え、あ……はい!」







千冬「授業中のうたた寝は程々にな」

山田「すっ、すみませーん………」

箒「………………(千冬さん、今ものすごく悪い顔してるな、後すごい大人気ない。本当に教師かどうか怪しい)」

千冬「どうした篠ノ之、何か言いたい事があるのか?」

箒「いっ……いえ、ありません」

千冬「そう遠慮するな、ハッキリと言ってみろ」ズイッ

箒「本当にありません。(本当はあるんですけど言えません)」

千冬「ふむ、そうか」

山田「織斑くん、もしかして迷子でしょうか……」

千冬「あの見た目でそれはないだろ……」

山田「ですよねぇ………」

箒(……………いかん、想像してしまった。思いのほかシュールな光景だ)







バシュッ



一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

千冬「やっと来たか………遅いぞ、織斑」

箒「今までーーー」

山田「時間ギーーー」


山田&箒「「えええぇぇっ!?」」



千冬「どうした」

山田「スーツですか!?」

箒「制服は!?」

一夏「…………………………………」

千冬「まあ、私はこうなるとは思ってたが……ここまでとはな」







千冬「一夏、もういけ……おっと、これは聞かなくてもいいな」

一夏「…………………………………」

千冬「アリーナの使用時間は限られていてな、専用機の方は戦ってる間に何とかしろ」

一夏「了解」

千冬「相手は本場英国のお嬢様だ。エスコートはあくまでも、お淑やかにな」

一夏「ああ」

山田(スーツ姿の二人………素敵です…………)ウットリ

箒(スーツが決まりすぎてて、あそこだけ特務組織みたいだ)

千冬「さて、山田先生、ISを」

山田「へ……あ、はい」







千冬の指示に従い、真耶がコンソールを操作し、Aピットの搬入口が鈍い音を立てロックが外れる。斜めに噛み合わせになっていた防御壁が、それを動かす重い駆動音を鳴らしながら、ゆっくりとその向こうに待つものを迎え入れた







それは、黒だった



黒。ただ黒だった。他の一切の色を受け付けないような漆黒のISが、装甲を解放して、扱うべき者を待っていた







「これが………?」

千冬は、意表を突かれて言った。世界で唯一ISを扱える男に用意された専用機という肩書きから、もっと特殊なISをイメージしていたのだ

「みたい……です………」

それにおずおずと答えた真耶、それは彼女も同じだったからだ







四人の目の前にある黒いISは、ただのISだ。どこの国のISとも言えない事はない、ごく普通の、あまりに標準的な形態をしている。目立った部分といえば、背面の腰部分に装着されている、恐らくコンテナか何かの類いの筒状の物だ。だがそれ以外には何の特徴もない、普遍的なただのISだ。それゆえに三人は、何か不自然さのようなものを感じた







真っ黒のそれ。無機質なそれは、誰かを待っているというよりも選んでいるように見えた。今のこの間は、まるでこの機体が、自分を扱うに相応しいとする誰かを選んでいる間のようだった



そして、見つけた。




選ぶべき誰かを







一夏は、それに呼ばれたようにゆっくりと歩み寄り、黒いISに触れた



割れ響く歌声ような音が頭の中に響いた



それはまるで、あなたを待っていた。と言っているかのようだった



皮膜装甲(スキンバリアー)展開
推進機(スラスター)正常作動
ハイパーセンサー最適化

開始







このISは選んだ




織斑一夏を







一夏はそうするのが当たり前のように、しごく自然にこの黒いISに乗り込んだ。すぐさま一夏の体に合わせて装甲が閉じて、空気の抜ける音が連続的に響く




初めてISに触れた時とは違う感覚がした




そして、包み込むように装甲が装着されていき。まるで元から自分の身体の一部だったかのような一体感。溶け込むように、適合するように、このISは同化していく。そしてそれは、自分と何かを繋ぎとめる重要な鎖、絶対に逃がさまいとする拘束具の鍵が掛かったようにも感じられた







だが、理解出来た
これは自分に合ったもので
このISはこうなる為のもの
必ず自分に合うものだったと分かった
そう感じた







全ての感覚が、視界を中心にクリアになっていき、全身に行き渡る。この機体に関する情報が頭の中と、目の前に表示される。性能、特性、現在の装備、センサー精度、レーダーレベル、アーマー残量、出力限界………etc。その情報の数々を全て把握出来る。



そして、目の前にこのISの名前が表示される



「ヴィンセント」



一夏は、静かに名前を呟いた







「ヴィンセント……それがこの機体の名前か」

千冬は疑問に満ちた声で言った

「ああ」

訝しむ千冬とは真逆に、一夏はあっさりと答えた



『戦闘待機状態のISを感知』

『操縦者セシリア・オルコット』

『ISネーム ブルーティアーズ』

『戦闘タイプ 中距離射撃型』

『特殊装備有り』



ハイパーセンサーが機体射出ゲートの先で、もう二十分以上もアリーナ・ステージの空中で待ちぼうけを堪能しているセシリアの情報を全て映し出した

「ハイパーセンサーは問題ないな」

千冬は横からモニターを覗き込みながら言った

「気分は悪くないか?」

「ああ」

「そうか」

ほっと安心したように息を吐き出しながら、千冬は真耶のいるコンソールへと向かった






「何か分かったか」

千冬が真耶の隣に立ち、低い声で聞いた

「えーっとですね……」

千冬の質問に真耶は、少しずれた眼鏡を直して、モニターに表示された念入りに調べられたデータを凝視した

「機体内部に通信機及び発信機反応、バイオケミカル反応、爆発物反応などはありません」

「……そうか、他は」

「不明です」

「………なんだと?」

このヴィンセントはあまりにイレギュラーな機体だ。コア周辺や製造に関する情報、コアナンバーや所持武器すら不明となっている。普通のISならこんな事はまずあり得ない、だがこのヴィンセントは普通のISではなかった







その間にもヴィンセントは膨大な情報量を処理していた。一夏の身体に合わせて最適化処理(フィッティング)を行う、その前段階の初期化(フォーマット)を行っているのだ。今黙ってモニターを眺めている一秒間の間にも、ヴィンセントは表面装甲を変化・成形させている。ソフトウェアとハードウェアの両方の書き換えを一斉に行っているために、扱っている数値はそう簡単には見ることは出来ない桁を示していた







一夏はフィッティングとフォーマットの進行状況を示す数々の情報の中、自分の視界の右端にメールのようなものが表示されているのを見つけた

「何故こんなものが入っている」

「設計者からのメッセージでしょうか?」

「見てみないことには分からんな」

ヴィンセントの機体詳細は今、千冬と真耶が見ているモニターに表示されている。性能、特性、センサー精度、出力限界などのスペックはその辺のISを裏回る数値を叩き出す中、一つだけ異様なプログラムを発見した

「織斑、出してみろ」

言われた通りに一夏は、そのメッセージの内容を確認する為に表示した。その設計者と思われる人物からのメッセージは真耶の予想とは大きく違ったものだった







いいものに選ばれたな
ハンプティー・ダンプティー
このISはお前にピッタリの代物だ



こいつであれば、お前はそこから動き出せる
そこに居ては、見えるものも見えやしない



その第一歩を踏み出せ
躊躇していては、お前は永遠に行かれない



お前がいるべき世界に







千冬と真耶は言葉を失った。意味が分からなかった。ハンプティー・ダンプティー、その場所、見えるもの、永遠に行かれない、お前のいるべき世界。まるで一夏の全てを知っているようなメッセージ。これが何故ヴィンセントに入っていて、何故一夏に宛てられたメッセージなのか、その意図の見当もつかなかった



そのメッセージに一夏は、ゆっくりと笑みを見せた。彼が感情的な表情を見せたのは、これが初めてと言ってよかった







千冬は困惑した。目の前のヴィンセントをこのまま一夏に使わせていいのか、それとも試合を中断してこの機体を徹底的に調べ上げるか悩んだ。一通り爆発物反応などは調べられたので、そこかしらの危険性が低い事は重々承知だ。気になるのはあのメッセージの送り主の考え。この機体を製造した者なのか、それともまた別の人間が関与しているのか、もしそうならば、この機体で一夏に何をするつもりなのか。考えがまとまらない千冬に真耶が恐る恐る話しかけた

「織斑先生、どうします?」



しばしの沈黙が訪れる







「俺は行く」

一夏はそう言って千冬の方を見た

「問題ないんだな」

再びの沈黙。それはごく僅かな、ほんの数秒だけの時間だった。その中で、千冬と一夏が言葉ではなく、合図ようなもので自分の意思を伝え合った

「はあ………なら、行ってこい」

自分の考えの杞憂さに落胆し溜め息を吐き、一夏の答えに納得したように言った。千冬は、コンソールを操作してピット・ゲートを開けた







ヴィンセントがふわりと浮かび上がり、カタパルトレールに脚部を掛けた

「一夏」

箒の声に一夏は、ゆっくりと振り向いた

「勝てよ」

「ああ」

返事の後、一夏はゲートの方を向いた。そこから少し重心を落とし、射出体勢をとった

「鳥になってこい」

そう言った千冬が、拳をコンソールに叩きつけた



カタパルトが火花を散らしながら、ヴィンセントが射出された







新しいゲームが始まる















始まりの刻は、とっくに過ぎていた




その始まりには欠けているものがあった







今、その最後のパーツが揃った




歯車は静かに廻り出した




駒は既に散りばめられている




運命が其れ等を弄び始め




全てが動き出す







与えれるものは与えられ




奪えるものは奪われる




勝利も敗北もない




手元に残るのは一体何だ







時間はゆっくりと、その時に近付いていく




その時は必ず訪れる




逃れる事は出来ない




ならば




祈るしかない











To Be Continued……





千冬「という事で始まった。このSSだが」

クラリッサ「おお、これは次回予告とゆうやつだな」

千冬「次回は青春ラブコメディーでいこうと思う」

クラリッサ「ラブコメか」

千冬「ラブコメだ」

クラリッサ「ラブよりも先にシリアスが問題じゃないか」

千冬「そうだな、特に箒が考え過ぎだな」

クラリッサ「考え過ぎて倒れるぞ」

千冬「私も結構考えてるんだぞ?」

クラリッサ「張り合わなくていい」








クラリッサ「とにかく予告だ。予告」

千冬「分かった分かった。そうせかすな」

千冬「次回」



ーーーーー



Session#2
 ワルツ・フォー・スケアクロー



ーーーーー



千冬「SSを見るときは部屋を明るくして、離れて見てくれ」

クラリッサ「このSS、結構地の文が多いからな」

千冬「そうだな、成層圏ぐらい」

クラリッサ「おいおい…………」




お久しぶりです。一回目の投稿から1ヶ月もかかってしまいました。
本当に時間が出来たときに作ってるので投稿速度は遅いです。
次回は今回入らなかった戦闘パートとその後を“地の文”で長々と書きます。ですので、かなり読みにくくなると思います。

すでに読みにくかったらすいません







I would dance and be merry♪







If I only had a Brain




If I only……



had a……… Brain………






ーーーーー




Session#2
 ワルツ・フォー・スケアクロー




ーーーーー






カタパルトから勢いよく射出されたヴィンセントが舞い上がる。
空高く上がり、最高点に達して自由落下を始める。重力に従って頭から落下していき、加速する。そして、地表に激突するほんの少し手前で体をひらりと反転させ、スラスターを吹かして見事に着地した。

「なかなかの登場の仕方ですわね、曲芸でも習っていらしたの?」

一夏は、視線をゆっくりと地面から、その先で待ちくたびれているであろうセシリアへと向けた。

「あら、そのスーツ。とてもお似合いですわよ」

セシリアはアリーナの地表より少し上で滞空しながら大袈裟な拍手をして言った。
彼女はまだ武器を手に持っていない。それは、この先武器を展開する時間はいくらでもあるという余裕の表れである。







セシリアの専用機
それは鮮やかな蒼をしている
白と黒が織り交ぜられた機体
ブルーティアーズ
英国の第三世代兵装実装試験型IS
背に従えた四枚の特徴的なフィン・アーマー
その姿は、まるで王国騎士のような気高さを感じさせる







「にしても、淑女(レディー)をこんなにも待たせるなんて余程の礼儀知らずですわね」

セシリアは腰に左手を当てて、右手を相手の方へ突き出す。これは彼女のお決まりのポーズであり、自らの威厳や尊厳をわざとらしく見せつけているようだった。







「お手並み拝見といこう」

イスに深々と座り込んだ千冬は、この状況を楽しんでいるかのように言った。その右手にはさっき淹れた熱々のコーヒーを持って、足を交差させて頬杖をついている。
その姿は、いかにも高みの見物と言えるものだった。
彼女の視線の先、モニターを眺めるその表情に、不安の色らしきものは一切伺えない。むしろ逆に、分かりやすい程に余裕が見える







「織斑先生、本当によかったんですか?」

千冬の予想外の態度に、真耶は何かしらの不安を覚えた。
御世辞にも今の千冬の態度は、イギリスを代表する専用機を持っている候補生と、ISに関してほぼ素人の弟が一戦交えるのを見守るものとは到底言えないものだった

「問題ないさ」

「理由は何ですか」

真耶が次の言葉を発するよりも速く、箒が真剣な顔で、千冬に質問を投げかけた

「理由か。そうだな、あえて言うなら………」

その質問に千冬は、頬杖をついていた左手を顎に当てて、上を見上げてしばらく考え込んだ。そして、思いついたように箒の方を振り向き言った

「野生の勘、だろうな」

「「野生の勘?」」

千冬の突拍子もない答えに二人は、思わず、全く同時に、オウム返しに聞き返した。勘とだけなら分からなくもないが、野生の勘とあえて言った意味が分からなかった

「あいつの感覚はかなり鋭敏でな。そう、まるで手負いの獣のようにな」

「手負いの、獣……」

「と言っても、私にもよく分かってないんだがな」

その言葉には、裏も表もなかった。そうとしか言いようがなかった。
千冬は、少し溜め息を吐きながら、開きなおったように言った

「これはいわゆる女の第六感、というやつでな」

「それって……」

「そうだ。これも勘だ」

何か言おうにもその気も起きない程、あっさりと千冬は言った







本当は、彼女は一夏を信じてみたかったのだ




あの日から、変わってしまった弟を







「でも、逃げずに来たことは褒めて差し上げますわ」

鼻を鳴らし、踏ん反り返るセシリア

「最後のチャンスを上げますわ。もちろん、降参するチャンスを」

「まあ、このままいけば私が一方的な勝利を得るのは自明の理」

「ですから、このオーディエンス達の前で惨めな姿を晒すよりも」

「今、ここで。私に対する数々の非礼を謝るというのなら、許してあげてもよくってよ」

それは、目の前の相手に話し掛けている、というりよりも、ただ一方的に喋っているだけだった。相手からの応答はなかった。
一夏はセシリアの方を向いてはいたが、もはや見ていないのと変わりはなかった。それ程までに一夏にとって、セシリアのプライドの問題云々の話はどうでもいいものだった。彼は、ここにそんな事を聞きに来たのではない

「あくまで答えないつもりですのね……よろしいですわ」







セシリアは左手を肩の高さまで上げ、真横に腕を突き出した。そこから一瞬爆発的に光った左手には、二メートルを超える長大な狙撃銃、六七口径特殊レーザーライフル『スターライトmk?』が現れた。

「ならば、その体に存分に御教えして差し上げますわ」

展開されたスターライトmk?にはすでにマガジンが接続されていて、セーフティーも解除されている。一秒と掛からずに展開し、射撃可能まで完了していた。
セシリアはその長い砲身をゆっくりと一夏へと突き出し、目を笑みに細める。


ー警戒
敵IS操縦者の左目が射撃モードに移行ー


Iハイパーセンサーが捉えた情報が一夏の目の前に表示される。
アリーナ・ステージの直径は二百メートル。発射から到達までの予測時間は1秒とかからない。

「用意はよろしくて?」


ー警告
敵ISが射撃体勢に移行
トリガー確認 初弾エネルギー装填ー







スターライトmk?の銃口が光を発した。
発射されたレーザーが閃光となって、一瞬の内に一夏の顔のすぐそばを通り過ぎた。それが後ろに着弾して、砂ぼこりが上がる。それは、威嚇であると同時に、自分の敵意と戦意を誇示するための行動だった。
ただ、それだけだった。

「あら、外してしまいましたわ」

セシリアはスコープを覗くのを止め、ニッコリと笑った。
状況は、彼女の方が完全に有利だった。こちらは銃を手に持っていて、いつでも撃てるように構えている。それに対して一夏は銃を握ってもおらず、両手は自然に降ろしたままである。




>>171. 172
?の部分は
スターライトmk?です


>>171
>>172
スターライトmk?





一夏は、全く何の反応も見せていなかった。先程、自分の真横をレーザーが通り過ぎた時も微動だにせず、表情を変えず、眉の一つでさえ動かさなかった。それは、今自分が銃を突き付けられている事など、まるで実感がないようだった。
それがセシリアには、こちらのする事は全て見通されていたように思えた。
侮られている、代表候補生まで登り詰めた自分が。その事が腹立たしく、軽く舌打ちをした。そして、今度は狙いを相手へと向け、しっかりと銃口を構え、スコープを覗き込み、ゆっくりとトリガーに指を掛けた

「そう、でしたら…………お別れですわっ!」

その言葉が終わるのとほぼ同時に、セシリアはそのトリガーを引いた。







ライフルの銃口からレーザーが発射され、目標の体を目掛けて一秒と掛からずに飛んでいった。そのレーザーを、一夏は左肩を少し傾けただけの、最小限の動きでかわした。その時彼は、かわした動作の間に右手をセシリアへと突き出し、右手に武器を呼び出した。
現れたのは四十五口径IS用ハンドガン。セーフティーはすでに外れている。そして間髪いれずに、次々にその銃を発砲した。

「ッ!?」

それは一瞬の出来事だった。スコープを覗き込んだセシリアが、自分の攻撃をよけられた事を認識出来るよりも速かった。
ブルーティアーズに弾丸が次々に叩き込まれる。着弾により、ブルーティアーズのシールドエネルギーが削られる。だが、この銃はISの使う武器の中でもさほど威力は高くない。なので、シールドエネルギーは100も減っていなかった。







三発の銃弾を食らったセシリアは、すぐさまに回避行動をとった。
いくら一発一発の威力が低いとはいえ、素直に食らい続けてやる程彼女はお人好しではない。
それに対し一夏は、攻撃の手を休めず、撃ちまくる。セシリアは、その弾丸を踊るように、紙一重で次々とかわしていく。
ライフルを構える隙もない銃撃が続く。その中で、彼女は待っていた。この状況を一転させ、自らが優勢に踊り出るチャンスを。

「お行きなさい、ブルーティアーズ!」

セシリアが右腕を振り下ろした。その命令とともに、背中に装備されていた四枚のフィンアーマーが稼働し始めた。
彼女の機体、イギリス製殊装備搭載型実戦投入第一号の名前の由来となった自立機動兵器『ブルーティアーズ』が分離し、それぞれが目標の四方へと動き出す。そのタイミングは、一夏が発砲していた銃が、弾切れを起こしたのとほぼ同時だった







形勢は完全に逆転した。命令を受けた四機のビットたちが、多角的な直線機動を描いて一夏の四方を取り囲む。
この時一夏は、まだマガジンを交換し終えていなかった。
一夏のリロード動作やマガジンの呼び出しは決して遅いものではなかった。むしろ速すぎると言ってもいい程のものだった。だがそれよりも、ブルーティアーズが展開するのが速かったのは、銃を使っている限り必ず訪れるリロード。そのほんの僅かなタイムラグを、セシリアが完璧なタイミングで狙ったからだった。




やはり代表候補生の名は伊達ではなく、かなりの場数は踏んできてはいる。だが、まだ足りないものがあった。







一夏がリロードを終え、銃を構えた瞬間、目の前にはすでに射撃可能な状態のビットがあった。
ビットの先端が光を発した。銃口から放たれた光が、一夏の肩を撃ち抜き、成形途中だった右肩の装甲を歪ませる。その直後、着弾により発生した衝撃に、僅かに体全体が後ろへと持っていかれる。そこから体勢を整える隙もなく、今度は背中にレーザーが着弾した。

「もらいましたわ!」

セシリアは、僅かにつんのめりそうになった無防備な状態の一夏に、ライフルの銃口を向けてトリガーを引く。
かわしようのないレーザーが、一夏の胴体に着弾した。そこは装甲のない開けた部分だったので、絶対防御が自動で展開し、操縦者を守るべくエネルギーを大幅に消費する。そして一夏は、後ろへと大きく吹き飛ばされ、そのまま地面に倒れた。







セシリアは、先程の攻撃により倒れている相手の状態を確認するために高度を落とした。そして、ライフルを構えながら、少しずつ、相手の様子を注視ながら接近する。
今倒れている一夏の右手に銃はない、さっきの攻撃の衝撃で右手を離れていた。それでも、警戒は怠らない。もしもの時の為に、ビットをいつでも撃てるように展開している。
そうまでしても、相手が戦闘不能に陥ったか否かを確認しなければならない。
張り詰めた緊張感の中、セシリアはトリガーに指を掛け直し、小さく深呼吸をした。そして、一夏の眼前に銃口を突き付けた。
相手からの反応はない。前髪が目にかかっていて覚醒しているのか、気絶しているかどうか分からない。
次はハイパーセンサーを使い様子を伺う。そして、知覚された普段なら分からないような僅かな呼吸音、そこにブレはなくただの呼吸をしているだけ。その事から、一夏が不意打ちを狙って倒れているのではなく、本当に倒れている事が分かった。

「閉幕(フィナーレ)は、意外とあっけないものでしたわね………」

セシリアは、倒れたまま全く動かない一夏を見つめながら言った。それには落胆のようなものが含まれていた。そして、構えたライフルを拡張領域(バスロット)へとしまい、名残り惜しそうにBピットへと進んでいった







ゴトン、と何か重い塊が落ちた音がした。




それはセシリアがBピットへと戻る途中、一夏の周りに展開させていたビットを戻している時だった。
彼女は、その音源を確認するべく後ろを見た







そこには一夏がいた。
前に見た時との違いといえば、さっきの攻撃が何の事は無かったかのように、そこに立っている、という事だろう。

「フフッ………アハハッ………」

その光景に、セシリアの口から笑みがこぼれる。もちろんそれは、一夏が立ち上がった事に対する驚愕ではなく、立ち上がってくれた事を喜ぶ、歓喜に近いものだった

「そうですわよね、あのようなラストでは締まりがありませんものね」

セシリアの言うあのようなラストとは、ビットによるレーザー攻撃によって体勢を崩した隙に手元のライフルで的確に仕留められる、といった呆気ない戦いの事だった。
自分を散々侮辱しておいて、たったそれだけで終わらせようなどと、彼女は考えていない








「何よりちっとも面白くありませんわ。あの程度では」

セシリアは、もう一度ライフルを左手に呼び出した。

「用意は………聞くまでもありませんわね」

一夏は、何も反応せず、悠然とした佇まいで歩き始めた。

「なら、始めましょう」

セシリアが右腕を横にかざし、元へ戻ろうとしていた四機のビットが方向を一夏へと変えた。

「さあ、踊りなさい。私、セシリア・オルコットと、ブルーティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

右腕を一夏へと突き出す。その命令にビットが一斉に動き始めた。







その時だった、一夏の後方に落ちていた物が突然火を噴いた。それは一瞬光ったかと思った直後、何かに引火したように炎上、爆発した。
地響きのような振動がアリーナを震わせ、爆風はビットを押し返した。黒く重い煙が上昇していき、アリーナの遮断シールドの天井の高さまで達していく。
セシリアは爆風に押されてバランスを崩したが、どうにか体勢を戻していた。だが再び一夏のいた方向を見た時、彼の姿はすでになかった。あの距離にいて、あの爆発に巻き込まれたのだから無事なはずはない、と誰もが思った。だが彼女はそう思っていられなかった。
こうゆう事態を誰が想定出来ただろう、誰もが思いもしなかった事態が今、目の前で起きている。
何が起きたのかをほとんど認識できず、セシリアは唯々困惑した







「一夏っ!」

モニターを見つめていた箒が思わず叫んだ。先程一夏が動かなくなった時はまだ、平静を保っていられた彼女だが、今回は違う。
ISによる攻撃ではなく、ヴィンセントに装備されていた物による爆発、それも見て分かる程の大爆発が起きたからだ。

「織斑、先生……」

真耶はあまりの非常事態に身を竦ませていた。
もしかしてこの爆発は自分が招いたのかもしれない、自分がもっとヴィンセントをしっかり調べていればこんな事にはならなかった、そう思えたからだ。そして真耶は指示を求めるというよりも、懺悔するように恐る恐る千冬の方を向いた







千冬は、ただモニターを見ていた。その表情は誰もが知っている。
ブリュンヒルデと恐れられたあの織斑千冬が、戦いの時に見せる、敵を狙う時の眼だった。もはや彼女に真耶の言葉は聞こえていなかった、弟の無事を祈る事などしない。
そんな事よりも、彼女には一つの確信が自分の中にあったからだ。
馬鹿を言え、私の弟は無事だ。今に何事もなかったかのように現れるはずだ、千冬にはそう感じられた。
その理由は、自分には全く分からなかったが、その確信は正しいものだった。
千冬の様子を見た箒は、再びモニターを注視する。
一夏の無事をもう一度この目で確認する為に。







爆発の熱気と渦巻く黒煙の向こうに、それらしき人影があった。それは、先程とは全く違った姿で、そこに悠然と立っていた




それは、黒かった
既存のISとは全く異なった細身の機体
その薄くなった装甲を補うように、周りに展開というよりも、コートのように羽織ったかのような追加装甲
右手に持った長銃身のカスタマイズされた巨大な拳銃
その全てが黒だった







アリーナを覆った黒煙がゆっくりと晴れていく。
一夏は、セシリアの方をゆっくりと見上げた。彼女は、その男から眼が離せなかった。
一夏とセシリアの距離はかなり開いている。普通に見れば、一夏がただセシリアの方を見ているだけ。だが、それがセシリアには、こちらを見ているのではなく、見られている今も、自分の中を全て見透かされているように思えた。
セシリアは、そのまま眼をそらす事も出来ず、まるで魅入られたように、じっと一夏を見つめていた。
Aピットでその光景を見ている千冬、真耶、箒の三人もモニターに映った一夏の姿を見つめていた。







その、長く伸びた黒髪に全身黒づくめの姿の男は、なにか通常の人間とは別の存在感を持っているように思えた。四人は、その男には風貌とは裏腹な、何か神聖なものを見る時のような感覚を覚えた。







「オズの魔法使いの、かかしを知っているか」

一夏は、全く表情を変えないまま言葉を口にした。

「かかしの頭は、藁でできていた。かかしは、脳が欲しい、それさえあれば、自分はもっと上手く踊れる、とそれを嘆いた」

「そして、自分が脳を貰えるように、祈りを捧げた」

セシリアには、何を言っているのか分からなかった。だが次の瞬間、彼女には一夏が、ほんのわずかに笑んだようにも見えた。




「祈るがいい」







言葉が終わってからの一瞬、そのほんのわずか一瞬の間に一夏は、右手の銃をセシリアへと構えて、トリガーを引いていた。
容赦無い銃撃が、次々にブルーティアーズを撃ち抜く。セシリアはそれをよける事が出来ずに、展開された装甲を削られていく事しか出来なかった。
肩の装甲が弾け飛び、絶対防御によりシールドエネルギーが減少していき、ブルーティアーズからのダメージ報告とアラートが絶え間なく鳴り響き、左手に持ったライフルが破壊された。
セシリアは、その銃撃の中で回避行動をとろうとしたが、回避先まで読まれているかのような銃撃に回避行動にすらなりはしなかった。
威力も弾速も狙いも、その何もかもが先程の攻撃とは違っている。そして、装填されていた弾丸の一発が、セシリアの頭部へと命中した。そして、一夏の持った銃が、同時にその残弾の底をついた。
絶対防御によるバリアのおかげで、何とか流血するには至らなかった。だが、被弾の衝撃で少し意識が朦朧とする。

「くっ………行きなさい!ブルーティアーズ!」

気絶などしていられない。このままでは一方的に撃たれるだけになってしまう。セシリアは、薄れそうになる意識を無理矢理覚醒させる。そして、再び訪れた好機を逃さまいと反撃に出る。だが、それは少し遅かった。







命令を受けたビット四機が、さっきとは全く別の多角的直線機動で目標へと動き出す。だが、それはすぐに終わった。
瞬く間に一機、二機、とセシリアを離れたビットが、激しい銃撃を食らい、なす術なく破壊されていく。そして、最後の四機目も間も無く破壊された。

「ブルーティアーズが……!」

それは、セシリアが意識を覚醒させようとした事が災いした。それにより生まれた隙が、唯一の好機であるリロードの一瞬を逃す結果となり、一夏の攻撃を許したのだ。
破壊されたビットの破片が、煙を上げてアリーナの地面に堕ちてゆく。
セシリアは、その光景を息を呑んで、ただ見ていた。そして、目の前の男を倒す方法を見出す為に、新たな作戦に打って出る。







「インターセプター!」

手の中で光を発する粒子が、セシリアの言葉により徐々に集束され、光が武器として構成された。
呼び出したのは近接戦用のショートブレード、インターセプター。それは、主に射撃戦を主体とするセシリアが、滅多に呼び出して使う事のない武器。
ライフルに続き四機のブルーティアーズまでも破壊されたセシリアは、近接戦闘をしなければならなかった。

「はあああっ!」

ブレードの切っ先を一夏へと向け、スラスターによる急加速で、一気に突貫する。
それに対し一夏は、冷静にセシリアへ発砲する。
二十メートル以上開いた間合いを一気に詰める程の急加速。そして、無理矢理機動を変えて行う回避のGに耐えながら。
セシリアは、一夏の懐へ深く潜り込んだ







セシリアは、勢いを殺さぬまま突きを放つ。それを一夏は、真横へと飛び退きかわす。そしてセシリアへ、零距離で銃を突き付け、トリガーに指を掛ける。

「まだッ……まだあぁ!」

セシリアは、かわされた瞬間にスラスターによる強引な方向転換で、もう一度突きを繰り出した。それによる身体への負担は大きい。だがその分、一夏の意表を突くには十分過ぎた。
セシリアの肩を弾丸が掠めて通り過ぎ、ブレードの切っ先が一夏の胴体を捉えた。斬撃によるダメージで、一夏のシールドバリアーが絶対防御を使い、エネルギーが大幅に消費される。そこからセシリアは、二撃、三撃とブレードを振り、一気に畳み掛ける







今のセシリアは、何かが違う、どうかしてしまったようだ、自分でもそれがはっきりと分かった。自分の勝利を確信している中で戦い続けてきた彼女の、その一挙一動が、純粋に、目の前の相手を倒す事を目的としている。
不思議と胸が、高鳴りを始めていた。それは、彼女が長い間忘れていた感覚だった。



もはや相手が男であろうが、女であろうが関係ない。



自分はただ、この勝負に勝利(かち)たい



それだけを、心から願う







セシリアは、右、左、突きと斬撃を繰り出す。一夏は、それをするりするりとかわしていく。そして、三発目に突き出されたブレードを受け流し、無防備になったセシリアの背中にまわし蹴りを叩き込んだ。セシリアは立っている事が出来ず、そのまま吹き飛ばされた。

「もらい……ましたわ……ッ!」

その勢いを利用して、大きく吹き飛ばされたセシリアが、宙を舞いながらニヤリと笑う。そして、彼女の腰部から広がるスカート状のアーマー。その突起の二つが外れて動いた。
一夏は、ひとまず距離をおこうと後ろへと飛び退こうとする。だがそれは間に合わない。
しかも、外れて動いたのは残された二つのビット、さっき堕とされたレーザー射撃を行うビットではなく、レーザー兵装ばかりのブルーティアーズに唯一搭載された実弾兵装、弾道型(ミサイル)だった。







発射されたミサイルが着弾して、赤を超えた白い爆発と光に一夏は包まれた。そして、さっきの爆発までとはいかない程の黒煙が上がる

「お生憎様……ブルーティアーズは、六機ありましてよ」

セシリアは、その光景を見ながら、ゆっくりと立ち上がり言った。その表情は、どこか嬉しそうだった。
これが彼女の狙い、この時の為に温存しておいた隠し弾。彼女は、半ばヤケクソに突貫しただけではなかった。唯一残されたこの射撃武器を無駄にはできない。だからこそ、確実に相手に命中させる為に、相手の懐へと潜り込み、相手の隙を誘い、必ず命中する零距離で使う必要があった。
我ながら大胆かつ繊細な作戦。それにより、まわし蹴りをもらった事はとても痛かったが、これで勝利にまた一歩近づいた。
だが、セシリアと一夏の決闘は、まだ終わってはいない。勝利を確信するにはまだ速く、決着を告げるブザーがアリーナに鳴り響いていない以上、最後まで油断してはいけない。それは彼女が痛すぎる程、この決闘で思い知らされた。
セシリアは、二機のビットに弾頭を再装填し、インターセプターを握り直した。そして、立ち込める黒煙へと切っ先を向けて構える







爆発による黒煙が晴れた時、そこに一夏の姿はなかった。
セシリアは急いで辺りを確認したが、ヴィンセント自体の影も形も見当たらなかった。まるで煙と一緒に風に吹かれ、何処かへ消えてしまったかのようだった。
呆然としそうになったセシリアは、まだ見ていない方向がある事を思い出した。左右を見ていないのなら、残された場所は二つしかない。自分の後ろと、もう一つ、それはーーー







セシリアが見上げた先に、立ち昇る黒煙に紛れていた一夏が姿を現わした。セシリアがそれに気付いたのと同時に、一夏はすでに狙いを定めていた銃を発砲した。
一発がインターセプターを弾き飛ばし、残りはスカート状のアーマーに次々に叩き込まれた。残った二機のビットが破壊され、片方の弾頭に弾頭が命中し、爆発した。そして、無力化されたセシリアの眼前に、少なくとも五十口径はある銃口が突き付けられていた。







その時、決着を告げるブザーが鳴り響いた



『制限時間終了』



『シールドエネルギー残量により』



『勝者』



『セシリア・オルコット』







「……………へ?」

セシリアの口から、思いもしない声が漏れ出した。そして、そのままぽかんと口を開けたままで「なぜ?」といった表情をしていた。
アリーナアナウンスの言った通り、シールドエネルギー残量はセシリアの方が一夏より多く残っていた。それにより勝敗が決した訳だが、あまりに呆気のない決着を、セシリアが理解するのには少し時間が必要だった




それは、始めて実感のなかった勝利だった。







一夏は、おもむろに方向を変え、Aピットに向かって歩き始めた。
歩いている途中に銃をバスロットへと仕舞い、落ちていたもう一つの銃も拾って仕舞った。そして、そのまま何事もなかったかのように、Aピットへと進んでいった。
セシリアは、それをただ呆然と見ていた。







一夏の乗るヴィンセントが、千冬や真耶、箒が待つAピットへと戻ってきた。
展開されていたヴィンセントが、一瞬光った。そして、その光が一夏の掌の中に集まって小さくなり、ドックタグとなって姿を変えた。その小さくなったISを、一夏は見つめていた。

「惜しかったな、もう少しのところまで追い詰めたのにな」

腰かけたイスをくるりと回して千冬が立ち上がる。

「見たところ、こいつはモノに出来たようだな」

掌のドックタグを取り上げて、まじまじと眺める。

「…………悪いが、こいつはしばらく預からせてもらう」

一夏の方を振り向いた千冬は、さっきまでとは打って変わり、真剣な顔付きをしていた。そして、その言葉は極めて冷静としていた。

「安心しろ、しばらくと言っても今日一日程度だ」

「好きにしろ」

そう言った一夏は、Aピットの出口へと歩いていった







Aピットから出ていく一夏を、三人は無言で見送った。

「さて山田先生、少し手伝って貰えるかな?」

「あ……はい」

「まあ、正確に言えば“少し”ではなく“かなり”だがな」

「いえ、全然大丈夫です。はい」

惚けていたような真耶が、いつも以上にせわしなくゼスチャーをとる。
せわしないはずなのだが、何故か妙に大人しくも見える。

「…………明日になるかもな」

そんな真耶を尻目に、千冬はボソリと呟いた。







そんな二人を全く気にも留めずに、箒はAピットから出ていった。その表情は、堅い。
箒は、さっきの試合を見ていた時から眼つきを変えていた。そう、一夏が爆炎の中から現れた時からずっと。戦いが再開され、終わるまでの攻防も全てを黙々と、眈々と見ていた。
そして、出ていく時のその眼は、揺るぎないものを固めた眼だった

「いい面構えだ」

その表情を見た千冬が、静かに笑った。
隣の真耶は、いつもらしくなく大人しかった。







「はぁ」

セシリアは、自室に備え付けられたバスルームでシャワーを浴びながら、小さな吐息をこぼした。
今日の試合の結果に納得がいかない。全武装を破壊され、無力化された自分に、あの後勝ち目があったとは思えない。だがあの時、自分はまだ諦めていなかった。
それは意地のようなものだった。
いつだって勝利への確信と、向上への欲求を抱き続けていたセシリアにとってそれは、今までなかったもの。







あの時の、胸の高鳴りが、今でも収まらない。
こんな事は本当に久しぶりだった。まるで、自分が幼い頃に戻ったかのように。
無邪気に庭を駆け巡っていたあの頃に。




ふと、自分の過去を思い出した







セシリアには両親がいた。彼女の父親は、イギリスの名門貴族、オルコット家に婿養子という立場で婿入りした人物だった。その事が大きな引け目になっていたのだろか彼は、何かにつけて自分を卑しめて諂い、頼りなくおどおどとしていじけていて、嫁である母親に対していつも薄笑いを浮かべていた。それは何処か怯えているようだった。
そんな情けない醜態を晒す父親を見たセシリアは、幼いながら心の奥底に怒りを覚えずにはいられなかった。そして、ISが発表されれば父親の態度はますます弱くなった。
母親は、それを鬱陶しがった。もはや夫と話すのすら拒絶していた。彼女は男尊女卑の時代だった頃から、実家の名を守る為、実家の更なる発展の為にいくつもの会社を経営し、数々の成功を収めて力を尽くしていた。常に厳しく、時に優しいその姿に、セシリアは強い憧れを抱いていた。







そんな両親も、もうこの世にはいない。
三年前に起きた越境鉄道の横転事故、死傷者は百人超える大規模な事故だった。一度は遺産を狙う関係者による暗殺、陰謀説が囁かれたが、事故の状況はそれを簡単に否定していた。
あまりにあっさりと、両親二人は悉くこの世からいない人間となってしまった。あの日、いつも別々に過ごしていた両親が、どうしてその日に限って一緒に過ごしていたのか、それは未だに分からない。







そこから、彼女の戦いが始まった。周りの大人達は狡猾にも、両親を亡くした哀しみに付け入るように、彼女の手元に残された莫大な遺産を狙った。哀れみをもって口先だけの言葉を並べ、擦り寄るように諂い、浅ましく卑怯な手を使ってきた。
彼女には、両親の死を嘆き、哀しむ暇などなかった。ただ、母の遺した遺産を、母が守ってきたオルコット家の名前を守らねばならなかった。その為にあらゆる勉強をして、どんな事にも屈せずに戦ってきた。
無情にも、一息つく間もない程に時間は過ぎていった。そして彼女は、自分の特殊な才能に気付いた。勉強の一環として受けたIS適性テストでA+が出た。その才能に着目した政府が、優秀な人材を自分達の国に捕まえておこうと様々な好条件を出してきた。
政府からの援助があれば、まとわり付く金の亡者共から母の遺産を守れる、そう考えた彼女はそれを承諾した。そうして、第三世代装備ブルーティアーズの第一次運用試験者に選抜され、稼働データと戦闘経験値を得る為に日本にやってきた。







オズと魔法使いのかかし。脳がないから自分で上手く踊れない。だから風に吹かれながら、揺られながらも必死に、単調な踊りを踊る。そして、上手く踊れるように脳が欲しいと嘆く。そんな愚かに見えるかかしがまさに自分にそのものだった。
今思えば、自分はオルコット家という広大な土地を守りながら、常に周りの大人達という風に哀れにも踊らされていただけで、自らで踊ろうとした事などなかったのではないかと思う。
誰も彼もが自分を、セシリア・オルコットとして見ていた。それはオルコット家の後継ぎであるセシリアであって、ただのセシリアである彼女自身ではなかった。







だが、あの男は違った。
織斑一夏は、あの時自分をセシリアとして見ていたように思えた。







セシリアは、今日の試合で、ほとんど会話らしい会話を交わした事のない彼、織斑一夏がどうゆう人物なのか、その核心部分に触れてしまっていたと言える。
そして、彼女の胸には一夏に対して惹かれるような思いがあった。
人は誰しもが、強さにひかれる。例えそれがいい意味でも、悪い意味でも。
彼女はまだ分かっていないが、彼女は織斑一夏が持っている強さに惹かれていた。それは今日の試合が証明した実力ではなく、彼の奥底に静かに眠っているもの。
彼女自身が感じとったもの。







不思議だった。何故、自分はこんな気持ちになっているのだろうと自分自身に問い掛ける。

「はぁ………」

ノズルから出る熱めのシャワーを全身に浴びながら、長く伸びた金色の髪を掻き上げて、小さな吐息をこぼす。
胸の高鳴りは、まだ収ってはいない。

「織斑、一夏……」







水の流れる音以外は、何も聞こえない。
それだけが、唯々響いていた







まだ少し肌寒い春の夜空、春から冬へと季節が変わったとはいえ、冬の面影がまだまだ残っている。
深夜二時、誰も彼もが寝静まった真夜中、辺りは静寂に包まれていた。
空には星はなく、月すらも出ていない。暗闇が広がる夜空の下、都会の灯りだけが地上を照らす。その薄明かりの中に、一つの人影。
IS学園で最も高い建物の屋上に
その男は、ただそこに立って、視線の先に広がる街を見ていた。そして、おもむろに着ていたスーツの内ポケットから何かを取り出して、深い暗闇が広がる夜空へとかざした。
それは、淡い青色をしたビー球のような物。
その男は、それを唯々見つめている。まるで、そこから何かを見出そうとするかのように。その物が何なのかを知ろうとする。







彼の視界にある、ビー球のような物越しに映る夜空




その漆黒の夜空を今、一つの流星が過ぎていった











To Be Continued………





?「ついにあたしの出番ね!」

クラリッサ「おお、元気な奴だな」

?「ここは一丁あたしがバシッと締めてあげないね」

千冬「…………」

クラリッサ「何で黙ってるんだ。予告だぞ、これ」

?「やっぱり、華はいるわよね」

クラリッサ「黙るのは本編だけにしてくれ、息苦しくてたまらん」

千冬「すまん。一瞬本気で考えていた」

?「何を?」

千冬「お前誰だ」

?「えっ…?」







?「え……えええぇぇぇぇ!??」

千冬「ということで、次回」



ーーーーー




Session#3
 チャイナ・ブルース




ーーーーー



千冬「嘘だよ」

?「良かった……」

クラリッサ「女……だよな?」

?「どうゆう意味よ!それ!」

クラリッサ「……元気な奴だな」




文字化けしてすいません。投稿遅くてすいません
まさかセシリアにあんな過去があるなんて知らなかった………それと、原作読んで驚きました。二つの意味で
地の文は小説っぽくしてみました。読みにくかったらすいません
文字化けを二度としないように次の投稿も頑張ります

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