上条「全力でバードウェイと付き合う」(177)
・純愛系エロ無し
・上条×レイヴィニア、需要ないかも
・ご都合設定があるかも……
・一端覧祭後
書きます。
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上条「……意識し始めたらダメだ……」
上条当麻は同居人、インデックスとフロイラインが風呂に入っている間、腕を組み頭を傾げながら想いの人の攻略法を探していた。
まずぶち当たるのは価値観の違いと『魔術』と『科学』という大きな壁。
彼女……レイヴィニア=バードウェイは『明け色の日差し』という英国屈指の魔術組織を束ねる若きリーダーであり、上条は特殊な右手を持っているだけの普通の高校生だ。
そして魔術組織……『魔術』という事は学園都市に身を置いている上条とは敵対関係にあるはず。
実際、一端覧祭ではフロイライン=クロイトゥーネの件で衝突したし、あれから会っていないから会っても気まずいだろう。
そして何より、上条は世間体を気にしていた。
レイヴィニア=バードウェイは12歳くらいだ。つまり小学六年生、あるいは中学一年生だ。
高校一年生の上条はロリコン、という不名誉な勲章が授けられるかもしれない。
風呂場からは騒がしい二人の声がきこえてくるが、上条がいる部屋はとても静かだ。
カチカチ、と時計の針の音がきこえてくるぐらいに。
上条「くそ……でも実際、『ロリコン』とか関係ないよなぁ」
上条「ウチにも女の子はいるけど『ロリコン』なんて呼ばれた事ないし、大丈夫か!」
上条「でも不安だ……誰かに相談すっかなぁ」
上条「でも俺の周りに恋愛経験豊富な奴居るか?」
上条はまず、自分の両親を思い浮かべたがこんな事を訊くのは恥ずかしすぎる、という事でパス。
次に思い浮かべるのはインデックスと御坂美琴だが、どう妄想で補完しようと彼女らが恋愛をしている姿があまりにも酷いのでパス。
土御門元春や、青髪ピアス、吹寄制理、姫神秋沙などの級友も思い浮かべるが何を言われたモノかたまったものじゃないのでパス。
最後に、恋愛経験が無さそうな大人の女性、自分の担任教師である月詠小萌を思い浮かべる。
一番良いアドバイスしてくれそうな人だし、という事で上条は小萌で妥協する事にした。
時刻はまだ九時を回ったくらい。
流石に、この時間帯で寝ている事はあるまい。という事で小萌の携帯に電話をかける。
すぐに小萌は電話に出たが、「もしもし?」という事が若干だが力が無いように感じられた。
上条(酒か……明日も学校あるんだぞ?二日酔いとか大丈夫なのか?)
小萌『上条ちゃん?どうしたのですー?』
上条「ちょっと相談したい事が……」
小萌『おっ、どんな反社会的行為だって家庭の事情だって恋愛相談だってどんとこーい!なのです』シャキーン!
上条「……その恋愛相談なんですけど…」
小萌『はい?上条ちゃんが、恋愛相談?』
上条「……はい」
小萌『お、おう……で?どうかしたんですか?』
上条「ちょっと外国で知り合ったんですけどね、年下なんです。四つくらい。でね、一端覧祭の時に大喧嘩しちゃってそれから会ってないんです……。
喧嘩って言っても殺し合いのレベルなんですけどね。あっちは嫌ってる風なんですけど、俺はちょっと意識しちゃって……」
小萌『殺し合いの喧嘩!?ていうか、上条ちゃん一端覧祭の時にサボって女の子といちゃいちゃしてたんですかー!?明日はたっぷりと補修ですよー!
……それで上条ちゃんはどうしたいんですか?』
上条「取り敢えず、仲直りがしたいんですけど……」
小萌『厄介なのは外国って所ですねー。殺し合い?の喧嘩となると相当だと思いますし、先生から言える事はたった一つしか無いんですけど。
『当たって砕ける覚悟で当たれ』ってことしか言えません』
上条「当たって砕ける覚悟で当たれ……」
小萌『ありきたりの言葉ですけどねー。先生は応援してるのです!』
上条「……夜分にありがとうございました」
上条は携帯電話を耳から離して、通話を切った。
あんまり役に立たないアドバイスだったが、励ましにはなった。
上条はベッドに腰掛けて、大きく溜息をついた。
その溜息と同時にインデックスとフロイラインが風呂場から出てきた。
インデックス「さっぱりしたんだよー」
フロイライン「ふぅ」
上条「さて、俺も入るかな?」
インデックス「いってらっしゃーい」
フロイライン「インデックス、プリン食べよう」
インデックス「おお、忘れてたかも」
今日も平和な一日が終わり、上条は何事も無く一日を終えたことを幸運と思いながら風呂に浸かる。
バードウェイの事はどうしようか、と悩んでしまうが取り敢えずは会ってみなければ話にならない。
しかし、学園都市に居る以上、海外に出るのは非常に面倒臭く、学園都市を出るだけでも幾つもの審査や申請を繰り返さないといけないのだ(正規ルートの場合)。
普段、魔術絡みで海外に出る時は不正規ルートを使っているらしく、申請も審査も必要ないとか。
審査には一ヶ月以上もかかり、しかも何日かかるか分からないためホテルも借りれない。
という困った事になるのだが、こんな事の為に不正規ルートを使ってまで海外に出る気はない。
上条は再び、大きく溜息をついて湯気に覆われた天井を見上げた。
上条「まいったなぁ、不幸だ」
…………………
場所は変わり、イギリス首都ロンドン。
雨が振り続け、やっと数時間前に止んだ所なのでまだジメジメと湿気があった。
しかし、そんな湿気を気にせずにレイヴィニア=バードウェイは『杖』を振り回していた。杖を持っている反対側の手には袋があった。
その袋には科学情報雑誌とコーラが一本入ってあった。
帰って、コタツの中でミカンを頬張りながら雑誌を見る。この幸せを早く味わいたいという欲求にかられ、彼女の足はどんどん早くなる。
『明け色の陽射し』の拠点の一つに帰ると既に温まっているコタツに足を突っ込んで、袋の中から雑誌とコーラを取り出した。
コーラを一口煽ると、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべた。
バードウェイ「げっ、やはりジュース類は日本製に限る……」
炭酸が抜けていて、甘すぎる。
バードウェイは心底がっかりしたような顔をすると、もう姿も見たくないと言わんばかりにコタツの端っこのほうへ置いた。
日本から取り寄せた枕を折りたたんで、横になった。
別に親日、という訳でもないが日本の文化は素晴らしいものが多いとは思っている。
そんな事を考えていると、不意に上条当麻のことを思い出した。
バードウェイ「そういえば、フロイライン=クロイトゥーネの一件から顔を合わせていないな」
マーク「寂しいですか?」
バードウェイ「ま、マーク、いつからそこに!?」ビクッ!
執事のような雰囲気を醸し出しているのは、『明け色の陽射し』のメンバーであるマーク=スペース。
バードウェイは驚いて体を起こすが、すぐに落ち着いて再び横になった。
マークは冷蔵庫から冷やした紅茶を取り出して、コップに注ぎながらバードウェイを横目で見た。
バードウェイ「寂しくはないな。元々、私と上条当麻は仲間、という訳ではないはずだ」
マーク「それはそうですがね……」
バードウェイ「…………」
再び、雑誌を読み始めるバードウェイ。
バードウェイの背中を見ながらマークは紅茶を啜って、部屋を出た。
外の町並みは夕焼けに染まっていて、もう夕方か、と確認させられる。
学園都市の行事……一端覧祭とやらが終わって帰ってきたバードウェイの頬にはバンドエイドが貼ってあった。
上条当麻と戦闘し、そして敗北したと。彼女自身は敗北したつもりは無い、とは言っていたがそれは強がり以外の何物でもなかった。
それからだ、露骨の上条当麻の話題を避けだしたのは。
レイヴィニア=バードウェイの妹、パトリシア=バードウェイは昔から学園都市に興味を持っていた。
それが故に、上条当麻の事にも純粋な興味を持ち何度か『会いたい』と言っていたのだ。
その際も、レイヴィニア=バードウェイは止めなかった。
それどころか、聴こえないフリをしている様に。
マーク「厄介、なんですかね」
煙草なんて吸った事はないが、この夕焼けに染まった街を見ながら風に吹かれて煙草を吸ったら格好良いだろうな、と思うマークだった。
そんな時だ、プルルルと携帯の電話が鳴ったのは。
ディスプレイには『上条』と書かれていて、メールアドレスと電話番号を交換したのをすっかり忘れていたマークは「電話番号教えましたかね?」と疑問に思いながら電話に出た。
上条『マークか?』
マーク「上条か、どうかしたんですか?そちらは夜中ぐらいでは?」
上条『一時半くらいだな。それでな、少し相談があるんだが』
マーク「相談……というとボスに関わる事ですか?」
上条『ああ』
マーク「何ですか?」
上条『俺さ、バードウェイの事が好きなんだがどうすればいい?』
マークは次の言葉が出て来なかった。日本語、間違ったか?と思うがどうやら『好き』と言ったらしい。
『Like』ではなく『Love』だと。
しかしそれはそれで、良かったと思う事もあった。
バードウェイ程の人間に釣り合う人間はそうそう居ないだろうが、英国王室や、イギリス清教、アメリカの大統領などにもパイプを持つ上条なら、と思ったのだ。
まぁバードウェイがそれを良い、というのかどうかなのか。
さっきの反応からして、好感度は相当低いだろう。
マーク「苦労しますよ?」
上条『そんなのわかってるよ』
マーク「……私に相談して来たという事は『手伝ってほしい』という事ですか?」
上条『ああ、来月にイギリスに行くからその時にちょっとな』
マーク「分かりました」
上条『ふぁぁあ、協力を得られるとわかると途端に眠くなっちまった。切るぞ、ありがとうな。おやすみー』プツッ
マーク「はい、分かりました。おやすみなさい」プツッ
マークは少しだけ嬉しかった。何故なのかは分からないが。
メロン味のキャンディを袋から出して、口に放り投げる。
携帯電話をポケットに突っ込み、部屋の中に入っていく。
プロローグ終わりです。
投下します
一ヶ月と一週間後、上条とマークはロンドンのヒースロー空港で待ち合わせをしていた。
上条は旅行では初めてロンドンに来たのだ。
最後に来たのは『ブリテン・ザ・ハロウィン』の時だ。
あの時は反乱だ、右方のフィアンマだ、とゆっくりしている時間も無かった。
今回も、レイヴィニア=バードウェイと会いに来たという目的はあるがゆっくりしている時間はある。
学校は、というと統括理事会からの『上条当麻を登校扱いとしろ』という圧力でどうにかなっている。
土御門曰く、『上手く行けばレイヴィニア=バードウェイを含む『明け色の陽射し』を科学サイドへ引き込めるから』という理由らしい。
そんな事は上条にとってはどうでもいい話しなのだが。
上条「やっぱ、イギリスはじめじめしてるな」
マーク「そうでしょうか?」
上条「まぁ日本も一年中じめじめしてる気がするけど」
マーク「雨が多いですからね、それより今からどうします?」
上条「バードウェイに会いに行くよ。どこなんだ?」
マーク「バーキング・アンド・ダゲナムというロンドンの行政区に構えています。ここからだと少し時間がかかりますが……?」
上条「ああ、大丈夫だ」
マーク「じゃあ乗って下さい」
マークは日本企業の黒い車に乗っている。学園都市じゃ普通の自動車はあまり見ないが流石にその企業の名前くらいは知っている。
10年物らしく、当時では五百万円程したらしいが今売っても十万するかどうか、だと言っていた。
社内は香水の匂いがして、ドリンクホルダーにはコーヒーらしき物がある。
上条は車内を見回しながら助手席に座り、それと同時にマークが車のエンジンをかけた。
何故か、ブリテン・ザ・ハロウィンの騒乱でオリアナ=トムソンに乗せて貰ったことを思い出す。
マークは慣れた手つきで、ハンドルを動かし、ヒースロー空港の駐車場から出て行く。
車はそれ程多くないが、やはりヒースロー空港行きの車が多いように感じられた。
マーク「久しぶりの運転です」
上条「そうなのか?随分と手馴れてるような……」
マーク「自転車に何年も乗らなくて、次の乗るときに乗り方を忘れていますか?」
上条「忘れ……ないんじゃないか?」
マーク「そういうことです」
上条は大きな欠伸をした。マークはそれに気付くと「寝ててもいいですよ」と言った。
約12時間くらいでロンドンに着くのだが。そこで一睡もしていない上条。
何故か、というと超音速旅客機がトラウマになっており、睡眠が出来なくなってしまった。
それに、インデックスとロンドンへ行った時の『テロ』や『ビーフアンドフィッシュ』を思い出してしまう。
マークの静かで繊細な運転でうとうと、と眠くなってしまった上条は瞼を閉じるとすぐに寝息をたてた。
マーク「……ボスを恋愛対象と見る男の人はあなたが初めてですよ。上条当麻」
マーク「ボスは小さな頃から、あの組織のボスです。だから『青春』なんていう物を知らないし、嫌いです。
あの事件……『ドナーティのホロスコープ』の件でボスはあなたに『下僕(ツレ)にしてやってもいいぞ』と言いましたね。
あの時は好意を持っていたんです。別け隔てなく接する貴方に」
マーク=スペースの独り言は続く。
誰に聴かせたいという訳でもない、ただの独り言が。
マーク「いつしか、ボスと貴方は敵対していた。グレムリンの騒乱で。
しかし、ボスはまだ貴方を嫌ってはいないんですよ。
貴方とボスが恋仲になるように、私は見守っていますよ」
マークの独り言は終わった。ラジオからはイギリス語で談笑している声がきこえてくる。
上条は起きる気配もなく、すーすーと寝息をたてている。
マーク「ん?」
電話、ポケットの携帯電話が振動しているに気付くと、ポケットから携帯電話を取り出した。
ディスプレイには『ボス』と表示されていて、少し嫌な予感がした。
バードウェイが『携帯電話』でかけてくる事は少ない。何か、魔術関連で問題があった可能性が高いのだ。
固唾を呑みながら電話に出ると、若干焦ったような声色で「マァァァクゥゥ!」とバードウェイが言った。
マーク「は、はい!」
バードウェイ『お前、上条当麻をウチに招待する予定ってのはどういう事だ!』
マーク「だ、誰情報ですか!?それ!」
バードウェイ『『新たなる光』のレッサーだが』
マーク(レッサァァ!あの雌狐やはりお喋りでしたかぁああ!)
マークがレッサーに情報をリークした理由は、レッサーにも手伝って貰うからだ。
レッサーはロシアに行くときも上条当麻に色仕掛けをしてイギリスに引きこもうとしていた。
しかし全て失敗し、まさに無駄骨だった訳だが。
バードウェイはイギリス最大の魔術結社『明け色の陽射し』のボスだ。上条がバードウェイと恋仲になればイギリス側に引き込めると思ったのだ。
しかし当本人のバードウェイに話すのは誤算だった。
バードウェイ『で、もう上条当麻とは合流しているのか?』
マーク「は、はい」
バードウェイ『……くくっ、学園都市での事……仕返ししてくれる』ニヤニヤ
マーク「そ、そうですか」
バードウェイ『後どれぐらいで着きそうだ?』
マーク「小一時間程度かと」
バードウェイ『そうか』ブチッ
マーク「……はぁ」ツーツー
マークは大きく溜息をついた。何か嫌な予感がする。
魔術関連での問題というのは杞憂で終わったのだが、『仕返し』という所に何かこうある様な気がする。
それにバードウェイの声色が、朝拠点を出る時よりも上ずっているような気がしたのだ。
なんだかんだで嬉しんじゃないですか、と心のなかで笑いながらアクセルを踏む足に力を入れた。
………
上条「ついたか?」
マーク「はい、見えて来ましたよ」
マークが指さしたのは、どこにでもあるような雑居ビルだった。
どうやら賃貸住宅のようだが、住民募集はしていない事から全員は埋まっているらしい。
雑居ビルの小さな駐車場には様々な車が駐車しており、マークは一番手前の駐車スペースへ止めた。
上条とマークは外に出ると、体を大きく伸ばした。
二人は、中に入りエレベーターのボタンを押した。
拠点は三階にある。『3』と書かれたボタンを押すと、がたがたと揺れながら上に上がっていく。
宇宙エレベーターなるものを作った学園都市との技術の差を感じた上条だった。
エレベータから出ると、見えたのは三部屋だけだった。表札には殆どイギリス語で書いてある。
『starvice=electronics』と英語で書かれた表札があって、マークは鍵でその部屋のドアを開けた。
中は殺風景で、家具とかもほとんど置いていない。
上条は小さな声で『おじゃましまーす』というが返事はない。
マーク「おかしいですね……」
上条「なんだか……嫌な予感がするぞ」ゾクッ
マーク「奇遇ですね、私もです」
ドアを開けると、中では信じられない光景があった。
上条とマークは現実逃避した。
上条は乾いた笑みを浮かべながらも頬を赤くし、そして「あーお腹すいたな」とごまかしながら天井を見上げていた。
マークは絶句しながら、目を白くし口から魂が抜けていた。
バードウェイ「お兄ちゃーん、いらっしゃーい☆」
上条「」
マーク「」
バードウェイ「どうしたの?」
上条「」
マーク「」
バードウェイ「もうお兄ちゃん、何か反応してよ!」
上条「……な、なんだこれ!くそっ土御門、俺はお前のことを誤解していたぞ!」
マーク「」
上条「素晴らしいじゃないか、HAHAHAHA!」
マーク「ボス……気でも触れましたか」
バードウェイ「まぁあれだよ。これが、学園都市で殴られた私のささやかな復讐という訳だよ」
上条「な、俺を陥れようと!」
バードウェイ「なんだ?良かったのか?変態だな、変態お兄ちゃん!」
上条「なんだなんだよなんですか!?の三段活用!」
まずおかしいのは服装からだ。いつもの服装ではなく、メイド姿なのだ。
どこから拾ってきたのかはしらないが。
上条の属性に『妹メイド属性』というのが追加される。
土御門に『変態野郎』と言ってしまったことに真剣に謝りたい上条だった。
マークは未だ状況が理解できていない様子。上条は「うぉぉぉ!」といった感じだ。
バードウェイ「この服装もなかなか悪くないな。動きにくいってのはあるけど。着替えてくる」
上条(ま、まぁいい。いつでもチャンスはあるんだ、頑張れ上条さん!)
今日は終わりですー
超お久しぶりです。
交通事故で四月初旬から一週間ほど前まで入院生活を送っていました。
構想していた展開も頭からすっ飛んで、やっと書き溜めをしました。
取り敢えず投下
バードウェイ「で?何のようなんだ」
上条「ちょ、ちょっとだけ用事があってな」
バードウェイ「用事?」
上条「ああ、ちょっとな」
バードウェイはその用事をぼかす上条を怪訝な視線で見た。
見つめられてると勘違いした上条が顔を紅くし、更にバードウェイは怪訝な視線を強める。
しかしその用事とやらをぼかしていては、目的は果たされない。
最終目的は、バードウェイと上条が『恋愛関係』になることである。
上条「タワーブリッジに観光に行きたいんだよ!」
バードウェイ「タワーブリッジ?大英博物館とかバッキンガム宮殿とかじゃなくてか?」
上条「大英博物館は霊装が置いてあるそうだから俺の右手で壊したらアレだろ?で、バッキンガム宮殿はブリテン・ザ・ハロウィンの時に入ったからな」
バードウェイ「別に構わないが、ここからテムズ川だと結構遠いぞ」
上条「え、マジで」
バードウェイ「大体、面倒くさいから、私は行かない。お前一人で行って来い」
上条「そんな、ご無体な!」
バードウェイ「マークだったらいいぞ」
言葉とは裏腹にバードウェイの内心は『別に行ってもいいが……』だった。
しかし、素直になれないのが実質思春期の少女のバードウェイである。
日本語でいうなら『ツンデレ』という言葉が一番近い、とマークは思う。
が、何故急にツンデレ、というヤツになったのかがマークの一番の疑問だった。
ハワイ諸島、一端覧祭での罪悪感か。それとも……。
マーク「私は、『暗闇を誘う日暮れ』に食事を招待されているので」
バードウェイ「そ、そうか………なら私が行こう……か?」
上条「い、いいのか?」
バードウェイ「ま、まぁ?良く考えたら明日は何もないし、暇だったからな。付きやってやらんこともない」
上条「助かるぜ、バードウェイ!」
バードウェイ「今夜はどうするんだ?寝る所は?」
上条「ホテル借りてねぇんだよ、いつ申請が認証するか分からなかったからな」
バードウェイ「じゃあ泊まっていくといい。丁度、今日の晩御飯は『ナベ』というやつにしようと思っていなからな。あれは人数が多いほうが楽しいんだろ?」
上条「イギリスに、白菜とかはあるのか?」
バードウェイ「あまり置いてないが、日本人街なら多くあるんじゃないか?」
上条「成程、じゃあ買いに行くか」
少し寒いので、バードウェイはジャケットを羽織った。
マークは残るらしく、携帯端末を触りながら上条とバードウェイを見送った。
日本人街はそれ程遠くはないが、日本人街といってもやはりイギリス人が多い。
日本人が経営している八百屋には、日本で作られた日本産の野菜が多いらしく人気だとか。
上条「ん?なんでこんなに柚子だけ売れてんだ?」
店主「お、兄ちゃん日本人かい。柚子はイギリスにはあまり無いからね。日本とから取り寄せるとなると高くつくから、安めで売っているウチのが売れるのさ。
それより何を買いに来たんだい?」
上条「鍋をするんで、白菜とえのきだけと豆腐とか…」
店主「ほう、鍋か。こっちに来てからじゃあんまり食べてないな。えーっとえのきだけは70円、白菜は90円、豆腐は80円だよ」
上条「へぇ安いな」
店主「褒めてもなんにもでねーぜ」
店主はハハハと、笑った。
会話に参加してこないバードウェイは、おみやげ屋でキーホルダーを漁っている。
それに気付かない上条は出来るだけ大きめの野菜を探していると、バードウェイの声が聴こえてきた。
何かを見つけたのか、手元には何かを持っている。
上条は鍋に必要な野菜を買って、バードウェイの手元にある何かを確認しに側に寄った。
手元にあったのは、御坂美琴がこよなく愛するお子様系マスコットキャラクター通称、ゲコ太。
どうやら、バードウェイのお眼鏡にかなったらしく、何種類もあるゲコ太キーホルダーを漁っている。
上条「……」
こんな髭の蛙のどこがいいのだろう、と思ったりはするが男と女の価値観の相違かもしれない。
先ほどから、バードウェイは可愛いだろ?やこれがいいんじゃないか?と上条に同意を求めてくるのだが。
余計な事は言わずに、適当に肯定しておけばいいだろうと上条は思っているので適当に頷いていた。
しかしバードウェイにはその適当さがバレていたのか、上条をジト目で睨んだ。
バードウェイ「なぁ上条当麻、お前。適当に頷いてるだろ?」
上条「なんの事だ」
バードウェイ「お、これはなかなか気に入ったぞ」
バードウェイが手にとったのは、制服を着たゲコ太だった。
というか、こんな蛙人形が海外進出している事に驚くが。
バードウェイは、ポケットから長財布を取り出して残金を確認した。
30ドル(日本円で3000円程度)しかないが、こんな3ドル程度のキーホルダーを買うぶんには問題はない。
バードウェイは財布から金銭を取り出そうとすると、上条がバードウェイの肩をとんとん、と二回叩いた。
上条「まぁ、待てって」
バードウェイ「?」
そういう上条に、バードウェイは怪訝そうな表情を浮かべた。
上条「ほら、色々世話になる予定だし買ってやるよ」
バードウェイ「へ?お前、金欠じゃないのか……?」
上条「それくらい気にしないぞ」
キーホルダーをレジに置いて、黒い皮財布からその分の金銭を出した。
ゲコ太のキーホルダーを購入すると、包装紙ごとバードウェイに押し付けた。
バードウェイは素直にありがとう、と言う事はなく歩き始めて小さな声で「ありがとう」と呟いたのだが、上条の耳には届かなかった。
と少し本筋から外れてしまったのだが、鍋の材料はまだ揃っていない。
鍋に欠かせないものといえば、『豚肉』だ。『牛肉』でもいいが、少なくとも上条家では豚肉だ。
材料は一応、鶏団子鍋にしようと思っているから豚肉や牛肉を買うかどうかは分からないが。
マークもいないし、バードウェイと二人きりなのだ。
インデックスと鍋をするのとは、訳がちがう。肉はそれほど多くは要らないし、足らなければ適当にぶち込めばなんとかなるだろう。
主婦のようにメニューを考えている上条は、再び鍋の利便性をありがたく思った。
上条「ここが日本なら、もっと鍋のバリエーションも豊富だったんだけどな」
バードウェイ「例えばどんなのが?」
上条「そうだな、キムチ鍋とかもつ鍋とか。あんまり俺らは食べないけど石狩鍋とかもあるな」
バードウェイ「そうなのか、私たちの食べるナベはどんなのだ?」
上条「そうだな、鶏団子鍋にしようか。さっきの八百屋で豆腐とえのきだけとしめじ、ネギ、春菊、すだちは買ったから……」
バードウェイ「肉か?」
上条「いや、鶏団子鍋なら鶏挽き肉だな。そこの肉屋で売ってないかな?」
上条とバードウェイは、昔ながらといった感じの古い肉屋に立ち寄った。
店主は見た感じのイギリス人だ。
アメリカ英語とは少し違った英語でバードウェイと会話しているのだが、上条は全く理解出来ないといった様子。
そこで、上条はバードウェイに翻訳を頼むことに。
バードウェイ「で、何を翻訳すればいいんだ」
上条「えーと、鶏挽き肉350グラム下さいって」
店主は、ガラスケースから鶏挽き肉を取り出した。
長年、仕事をしているのか手慣れた手つきで計量し、袋詰していく。
値段は日本円で460円とかなり安い部類。もしかしたらバイオ鶏的なものなのかもしれないが、気にしていてもキリがないし。
バードウェイ「さて、これからどうするんだ?」
上条「帰るか。腹減ったしな」
バードウェイ「そうだな」
……………
『明け色の陽射し』拠点にて。
上条とバードウェイは一時間ほどかけて帰宅した。時刻は既に七時を過ぎていて、双方ともに腹の音が鳴り止まない。
上条は、げっそりしたような顔で袋から野菜や肉を取り出して、キッチンに並べて感想を述べた。
上条「うん、壮観壮観!非常によろしいですなぁ」
バードウェイ「何を言っているんだ?」
上条「いや、インデックスと鍋をすると決まってモヤシだけの水炊きになっちゃうからさ。こんだけの食材を揃えることがないんだよな」
バードウェイ「そうか」
バードウェイは興味がないと言わんばかりに適当な返事をした。
しかし、何かを思い出したかのようにバードウェイは落ち込んでいる上条へ話しかけた。
バードウェイ「そういえば。悲しいことに、私の調理スキルは0だよ。手伝えるのは皿ならべくらいだぞ」
上条「まぁ……小学生だしな」
バードウェイ「はぁ?私が小学生に見えるか?」
上条「見える……気がするってその杖でどうするんでせう?それって象徴武器……」
バードウェイ「殺されたくなければ、はやくナベを作れぇええ!」
上条「イ、イエスマム!」
と悪い乗りした上条は、ぷりぷりと怒りながらこたつに足を突っ込んで雑誌を眺め始めるバードウェイをまるで娘を見るような気持ちで眺めた。
しかし、遅いと本当に殺されかねないので鍋の準備を始める。
棚に入っていたカセットコンロを取り出して、その上に土鍋を置いた。
上条「さて、作り始めますか」
バードウェイ「……手伝おうか?」
上条「そうだな、ちょっとやってもらいたい事もあるし頼む」
バードウェイ「さて、何をすればいい?」
上条「俺は野菜を切るから、バードウェイは春菊の柔らかい葉をもぎ取ってくれ。ほらこんなやつ」
バードウェイ「分かった」
上条「まずはだな、白菜はタテ半分に切る。こんな風にざくっとな」
バードウェイ「へぇ、手馴れているな」
上条「まぁな。で葉と芯の部分を切り分けて、葉の部分は大体四センチ感覚で切る。
芯の部分は斜めに包丁をいれて三センチくらいに切りきざんでいくんだ」
バードウェイ「成程」
と、上条の実演を聴きながら春菊の柔らかい葉をもぎ取っていく。
上条「えのきはだな、下の土が汚い部分を切り落とすんだ。四センチくらい切ればいいかな?
切った後は水で適当にほぐす。白い部分もほぐせば食べれるようになるし。この作業だけでも美味しくなるんだぜ。」
上条「のあとは、しめじだな。根元の部分は食べれないから切り落とす。っていっても一センチ、二センチくらいでいいんだけどな。
これを二、三本ずつほぐしておいてくれ」
バードウェイ「分かった」
上条「ネギだな。縦に細かい切り目をいれて、端から刻んでみじん切りにする。ネギは上条さん家でも結構使ってた食材の一つだ。
すだちは横半分に切るだけでいいんだ」
バードウェイ「なんか、お前のイメージが変わったよ。主夫って感じだよ」
上条「嬉しくないです……。次は肉か。ボウルってどこにあるんだ?」
バードウェイ「確かこっちの棚に……あったぞ」
上条「ありがとう。さて、ここで肉に入りたいところなんですが!まずは作らなければならないものがあるんだ。
胡麻油と醤油、小さじ1/2で、しょうが汁、小さじ1/2。酒と片栗粉が大さじ一杯。水が大さじ三杯。で塩が小さじ1/6だ。卵を入れても美味いぞ」
バードウェイ「それをこのボウルに入れるのか?」
上条「ああ。まぁ正確に1/2じゃなくても、大体でいいんだ」
上条「これとさっきのネギとひき肉を入れて粘り気が出るまで混ぜるんだが……」
上条はボウルの中に手を突っ込んだ。
肉の感触とべたべたとした醤油等の調味料で、変な感触になっていく。
信じられないといった感じで、バードウェイが上条を見るのだが。
次第に美味しそうに見えてきて、腹の虫が再び鳴った。
上条「あ」
バードウェイ「あ、ああ。聴いたな?聴いたんだな?」
上条「か、上条さんは聴いてませんのことよー」
バードウェイ「目が泳いでいるぞ」
上条「ま、まぁ取り敢えず完成させようぜ。粘り気が出てきたし、土鍋に水を入れてくれ」
バードウェイ「どれくらい?」
上条「そうだな……大体半分よりちょっと多めで」
バードウェイ「分かった」
上条「そして、予め作ってあった出汁の出番だ!昆布と薄口醤油。で少量のミリンで作ったやつな」
上条「で、その出汁が沸騰するのを待って。先にこのタネを丸めていこうか」
バードウェイ「それ……私にもやらせてくれないか?」
上条「おお、是非やってくれ。将来の為にもなるだろうしな」
上条(俺のな)
バードウェイ「泥団子を作る感覚でいいんだな?」
上条「ああ、余っても仕方ないから全部使ってしまおう」
バードウェイ「もう沸騰したぞ?」
上条「流石、学園都市製のカセットコンロだな。火力が違うよ」
上条「さて、肉団子投下だ。ここで蓋をして三分ほど待とう」
バードウェイ「……上条当麻。この材料費、私が出そうか?」
上条「なんだよ、お前らしくないな。俺の知ってるバードウェイは気が強くて、事実上の男勝りで、それでいて女の子だろ?気を使うなよな」
バードウェイ「そうか。そうだな、私らしくなかったよ」
上条「でもさ……本来、敵対関係にあるのにこうやって一緒に鍋を作ってるって不思議な気分だよ」
バードウェイ「そうだな、私もそう思うよ」
二人の間に沈黙がながれる。
ハワイ諸島の件、一端覧祭の件。上条はまだその事を許したつもりはない。
その点ではまだ、上条とバードウェイは敵対関係なのだ。
しかし、上条が惚れたのはバードウェイの見せた微かな優しさ。
上条は大きく息を吐くと、土鍋をリビングへ持っていった。
机の上に土鍋とカセットコンロを置いて
上条「ここからはリビングでも出来る作業だからな」
バードウェイ「成程」
上条「それは後なんだよ。葉だから熱が通りやすいし。今投下したのがしんなりしてきたらそれを入れるんだ」
バードウェイ「料理というのは、複雑だな」
上条「まぁ慣れてしまえばどうってこと無いけどな」
バードウェイ「……そうか」
上条「ほら、もうしなっとしてきただろ?ここで春菊、白菜の葉、すだちを投下!しょうがを添えて出来上がりだ!」
バードウェイ「美味しそうな匂いがただよって……」
上条「ポン酢で頂こうじゃないか」
バードウェイ「くっ、まだか上条!」
上条「そう急ぐな、鍋は逃げないぜ。限界まで腹を空かせて、あの肉団子を……食べようじゃないか」
バードウェイ「……」
バードウェイが固唾を飲んだ。
そして、上条が蓋を開けたその時、二人の箸とフォークは肉団子へと向かっていった。
そんなリビングの光景を観察している一つのカメラがあった。
遠い遠い異国の地、日本の学園都市では上条当麻の友人。土御門元春と他の魔術組織に招待されたはずのマークがいる。
土御門「まさかバレないとはな……余程カミやんに気を許しているらしい」
マーク「土御門元春、私は少し涙が……。ボスのあんな姿を見ることが出来るなんて……」
土御門「まるで夫婦同士だにゃー。それを言ったらレイヴィニア=バードウェイは怒るんだろうがな」
マーク「これからどうしますか?」
土御門「あいつらがくっつくようにサポートする以外の選択肢はないぜい?」
終わりです。文章を書くのが久しぶりで少し変かもしれません、
鍋ばっかりにしすぎた気もしなくない
乙
体には気をつけてね
気長に待ってる
乙
身体に無理せずになー
書いてくれて、ありがとう
上条「しめじを入れるぞ」
バードウェイ「えのきの間違いではないか?」
ふう…乙
やっぱりバードウェイ最高だ・・・っ
無理しないように頑張ってください!
>>1は病み上がりなんだ
みんな、そう急かしてやるなよ
無理せず頑張ってー
生存報告です。
>>75
>>76
>>86
>>88
>>90
>101
>102
>107
心配していただきありがとうございます。
少し熱を出してしまい、再び病院通いになったところで中間考査です。
明日には中間考査が終わるので、更新再開したいと思います
>>1よ、こちとら待つのにゃ慣れてっから焦らずゆっくり養生してくれよ
>>116
そう言ってくれると助かります。
書き溜め中なのでもうすこしお待ちを
皆さん、こんばんわ
書き溜めが終わりましたが、それほど多くないかも。
今回は視点移動が多かったり、時間を飛ばしてたりします。
投下しまーす
目が覚めると、見慣れない天井が目に入ってきた。
ぱちぱち、と瞼を数回開閉し、体全体を伸ばして気持ちよさそうな声を出した。
時刻は七時を少し過ぎた頃。
普段よりもボサボサな髪の毛をくしゃっと押さえつけて、大あくびをしながらドアを開けた。
リビングには昨日の鍋の洗い物がシンクに積まれている光景しか無く、バードウェイの姿はない。
昨日、鍋を食べ終わった後に眠ってしまい風呂に入った記憶もない。
体が少しベトベトしているので、風呂は入っていないのは分かるのだが、何故灰色の寝間着に変わっているのだろうか。
上条「誰かが着替えさせてくれたのか?」
返事はない。
上条「……腹減ったな」
上条は腹をさすりながら、冷蔵庫を開けた。
中には昨晩で使わなかった材料や、誰かの酒などが入っていたが朝ごはんになりそうなものはない。
いつもの癖で炊飯器を探してしまうが、そういえばなかったな、と気付いた。
上条「はぁ」
バードウェイの姿が見えない。
色んな部屋を探して回るが、彼女が居る形跡すら確認できない。
深い溜息をついて、携帯電話を取りに自分が寝ていた部屋に戻ると、何故かバードウェイが居た。
というより最初から居たらしく、何故か照れくさくなった。
音を立てずに、腰を降ろして顔を覗きこんだ。
上条「……」
少しだけ顔が緩んだ。
そして上条がもっと近くで見ようと顔を近付けた瞬間、上条の腰がどん、と蹴られた。
上条の体は無防備なバードウェイに覆い被さり、そしてかしゃっという電子音が聴こえた。
覆い被さられていたバードウェイが目を覚まして、その状態に気付いた。
上条が完全に、襲い掛かっている構図にしか見えなかった。
上条を蹴った張本人、土御門はニヤニヤしながら携帯電話をポケットに入れる。
土御門「カミやんったら獣だにゃー」
上条「つ、つつつ土御門ォ!?」
バードウェイ「……上条当麻?」
上条「ば、バードウェイ……?」
バードウェイは上条当麻をどかして、平手打ちを思い切りぶち込んだ。
へぶっ!?と情けない声を出して布団に転がる上条を更に足で踏みつけた。
顔を真っ赤にしながら、上条を足蹴りにする。
土御門「やれやれだぜい」
そう言って微笑ましく見ていた土御門だったが、腹に妙な違和感を感じた。
ぐぎぎゅるぎゅるるると腹が鳴り出し、余裕綽々だった彼の表情は苦痛に変化する。
土御門トイレを探すために腹を抱えて寝室を飛び出した。
しかし、トイレがどこにあるか分からない。
青い表情をしながら、探しまわる姿にバードウェイは笑う。
未だに踏まれている上条には何が起こったのかは理解できなかったが、土御門の身に不幸が訪れているという事だけはわかった。
バードウェイ「即席だったから、効力が心配だったが成功はしたな」
上条「な、何をしたのですか?」
バードウェイ「簡単な話、便意を肥大化させる魔術だよ。まぁ便意だけだから便は出ないし、その便意は暫くは消えないだろうな」
上条「恐ろしいですね」
バードウェイ「ハワイで実験してみたんだが、お前に効力は無かったな」
上条「もし効力があったらグレムリンに殺されてましたね。俺」
バードウェイ「ほら、トイレの中で悲鳴が聴こえるだろう? 意外と出そうなのに出ないってのは辛いものなんだ」
上条は、バードウェイに金輪際余計な事はしないと誓ったのだった。
………
ここは学園都市。
木漏れ日の中で、茶髪の少年は爽やかな笑みを浮かべていた。
名前は海原光貴。といっても変装しているだけで、実は日本人ではないのだが。
レッサーという魔術結社予備軍のメンバーから聴かされた情報は海原にとっては歓喜するしか無かった。
自分の愛する人間の一番のライバルが、他の人へと流れてくれたからだ。
海原「ふふふ」
笑みがこぼれて怪しい人になるが、幸い誰も見ていなかった。
遠い英国の居るであろうライバルこと上条当麻の成功を祈りながら、御坂に近付く方法を探していた。
今、海原が居るのは常盤台中学の外部のほうの寮の眼前だった。
御坂が出てくるのを早朝から待っているのだが、一向に出てくる様子がない。
海原「出て来ませんね……」
一方通行「海原か。またオリジナルをストーキングかァ?」
杖をついた最強の超能力者、一方通行が突然現れた。
海原はあまり興味がないのか、のっそりとした動きで一方通行を見た。
一方通行の右手には打ち止めという、御坂美琴のクローンの手があり、その打ち止めは怪訝そうな表情で海原を見ていた。
しかし海原は気にしない。海原は御坂美琴が好きなのであり、打ち止めや妹達は好きではない。(顔は好みのそうだが)
一方通行「急にどォした。オリジナルには三下がいンだろォが」
海原「それが朗報です。上条当麻は他の女へと走りました」
一方通行「ハァ? つゥか嬉しそうだな」
キラキラとした爽やかな笑みで、はいと答えた。
一方通行と打ち止めは軽蔑するような目で海原を見ていた。
しかし海原にとっては打ち止めや一方通行よりも、当の御坂美琴が気になるらしくドアをずっとみつめている。
海原「はぁ、御坂さん……」
ショチトル「エツァリ? こんなところで何をしているんだ」
海原「!?」
一方通行「例の女子中学生が出てくるのを見張ってたンだってよ」
ショチトルの額に青筋が立った。
ショチトルは海原へ視線を向けると、少し体を後ろへ動かした。
次の動作で無防備な海原の腹部に容赦なくショチトルの鋭い蹴りがめり込んだ。
ゴッ、という鈍い音がしたがショチトルは構わずもう片方の足で更に無防備となった股間を思い切り蹴った。
一方通行は苦虫を噛み潰したような表情になり、打ち止めはもはやゴミを見るような目で悶絶する海原を見ていた。
海原「ご、ごがぁ」
ショチトル「まだ女子中学生にうつつを抜かしていたのかエツァリ。お前はもう一度指導する必要があるな」
海原「し、ショチトル……! ま、待って、ちょ、痛くて動けません……っ」
ショチトル「私が引きずってやるから安心しろ」
一方通行「ご愁傷様」
打ち止め「はやく行こうよってミサカはミサカは提案してみる」
ショチトル「あっ、逃げるなエツァリ!」
海原「ここで捕まる訳にはいかないのですよ!!」
股間を抑えながら、歩く海原光貴は一方通行によるとみすぼらしいし、可哀想だと言っていた。
…………
学園都市の騒動なんていざしらず、上条は隣で無口になった少女をみてため息を付いた。
土御門は自白と条件で、魔術を解除してもらいトイレ越しに情報を渡してもらった。
今回、イギリスに用があったのでついでにからかいに来たのが理由らしい。
コレ以上、カミやん病の感染を防ぐにはとっととくっついて貰うしかなかったからだという。
その話をきいたバードウェイの表情には変化がなく、少しがっかりした上条だった。
上条「はぁ」
バードウェイ「……」
上条「なぁ、連れてきて貰って悪いんだが、もっと会話しませんか?」
タワーブリッジに訪れた二人だったが、会話がない。
やはり先程の事件が効いているのだろうか?
そう思い始める上条は非常に余計な事をしやがって、と未だ便所に居るであろう土御門へ怒りをぶつける。
無口のままに見て回り、おみやげを買って結局、会話がなく帰宅することになった。
大失敗だ、と上条は帰りの車で大きくため息を吐いた。
英国に居れる時間それほど長くはないのだが、まだ猶予はあるし上条は再びプランを練り始める。
そんな時だった。バードウェイが初めてウチを開いた。
バードウェイ「……上条当麻」
上条「ど、どうした?」
バードウェイ「その……悪かった」
上条「いぇっ、俺も悪かった!」
バードウェイ「……そうか」
と素っ気ない返答だったが、声色が変わっていた。
上条はほっと胸を撫で下ろし、プランを考える事も忘れて車の中で眠ってしまう。
バードウェイは上条当麻の寝顔をみているうちに、眠たくなったのかバードウェイも眠ってしまった。
運転手によれば、仲の良い兄妹。あるいは恥ずかしがり屋のカップルのようだったとか。
拠点につくと、上条は携帯を触っており、運転手はそれに初めて気付いた。
彼の膝には、すやすやと歳相応のように眠るバードウェイが居た。
上条「ほら、バードウェイ。着いたぞ」
トントン、とバードウェイの肩を数回叩いた。
バードウェイはすぐに目を覚まし、車から出ると大きく体を伸ばした。
窮屈だったのだろう。
上条はダンボールみたいな所に詰められた事もあるので、そんなに苦ではない。
この拠点についたのは夜中であり、運転手もかなり眠そうだった。
上条はお疲れ様でした、と一礼すると拠点の中に入って上着を地面へ投げ捨てた。
風呂に入って早く寝たい気分だったので、先に入るぞーと声をかけて洗面所に入った。
日本と違う所は、風呂に一週間に一度程度しか入らない所。
つまり、バスタブにお湯は入っていない。
上条家でも水道代を抑えるために、12月以降じゃないと風呂のお湯は沸かさなかったが。
頭と体をさっと洗って、上条は風呂から出た。
今日の朝のまま、ぐちゃっとなっていた布団の中に潜りこんで携帯のアラームを設定して、電気を消した。
バードウェイは、風呂にも入らず寝てしまっている。
上条「おやすみー」
誰に言うわけでもないが、一応形式として言っておく。
こうして、長いようで短い一日は幕を閉じたのだった
…………
一週間がすぎて、日本へ帰国する上条。
ヒースロー空港にはバードウェイと、拠点には居なかったパトリシアといつの間にか帰国していたマークの三人が見送りに来てくれた。
大きな荷物を抱えて、上条はまたな、と言う。
しかしこの旅行は全くもって意味がなかったという訳ではないが、恋人どころか近付けたのかも怪しい。
はぁ、と軽い溜息をついた上条は大きな持ったまま人混みの中へ紛れ込んだ。
バードウェイはさて、と場を切り替えるために言葉を出して踵を返した。
そのまま歩き出すバードウェイの背中には若干寂しさがあったような気がしたが、パトリシアとマークは気にしなかった。
一方、上条はというと。
超音速旅客機を前にして怖気づいていた。
何故かVIP扱いで、この辺に学園都市の思惑や期待がのしかかっているような気がしてならない。
中に入ると、未だ青い顔をしている土御門がぐったりとした様子で座っている。
苦笑いをした上条を、土御門がキッ、と睨んだがいつものように威圧出来ていない。
土御門「カミやん……俺の腹に触ってくれぇ」
上条「え?」
土御門「この魔術、ある意味強力だぞ……糞、レイヴィニア=バードウェイめ……」
上条「それじゃあ……まぁ」
そう言って土御門の腹に右手で触った。何かを破壊したような感触が上条に伝わる。
ふぅ、と息を吐いて、土御門は憑き物が落ちたかのように安心した。
強力だったんだなー、と上条は同情するが自業自得の面もあると思っている。
落ち着いた土御門が唐突にこんな事を言い出した。
土御門「カミやん、本当にレイヴィニア=バードウェイでいいんだな?」
上条「……」
土御門「アイツは、英国最大級の魔術結社の若きボスだ。カミやんが、望んでいる平和とはかけ離れた存在だ」
上条「俺は……後悔はしたくない」
土御門「そうか。だったら俺が口を挟む理由もないな。頑張ってくれ」
上条「ありがとう」
土御門は席をたって、まだ離陸していない超音速旅客機から降りた。
まだこっちに残るらしく、どこかへ歩いて行くのが窓の隙間から見える。
少し微笑みながら、上条はシートへもたれかかった。
ドアが閉まり、きいぃぃぃぃぃぃんと甲高い音が鳴って離陸していく。
上条は失念していたのだ。超音速旅客機の恐ろしさを。
土御門の会話で、すっかりと。
ゴッ!と音と共に徐々に体へとGが掛かり、吐き戻しそうになるような感覚を必死で抑えながら早く日本へ着くことを願っていた。
しかし、ジェットコースター嫌いの人が嫌々乗るとたった一分ほどが体感時間では物凄く長く感じるのと同じで、上条の体感時間が数時間だとしても、実質数十分しか
経っていないなんてこともある。
二時間ほど経って、学園都市の第二十三学区に着いたが上条の目に生気は無かった。
うわ言のように、『死にたくない』と呟き第七学区行きのバスに乗って自宅に戻ってきた。
生気が戻り始めた頃、机の上にすごく綺麗な字で書いた紙が置かれているのに気がついた。
インデックスだとひと目で分かる。
日本語も、日本人の自分よりもインデックスのほうが達筆なのだ。
上条「えーと、一週間分の食料を三日で食べてしまって神裂に助けを求め、現在必要悪の教会に仮居候ってか」
上条「インデックスの馬鹿……」
上条「でもどうしようもないしなぁ。取り敢えず今日のご飯は適当に食べてきて、それから電話するか」
上条「国際電話って高いんだよなぁ」
溜息をついた。
上条はポケットに適当に放り出した鍵を拾い上げて、適当なファミレスへ向かう。
道中、見覚えのある怪しげな男の姿があった。
スルーしようとしたのだが、その男が上条を見つけて近付いて来る。
名前は海原光貴。いつも綺麗な服装をして、整った顔をしている。
そんな男が一体、なんでこんな薄汚れた服装をしているのか。
海原「良かった、貴方に会えて」
上条「どうしたんだ? いったい何が……」
海原「いや、久しぶりに御坂さんに会おうと寮の前で待っていたのですが、ショチトルに見つかってしまい……」
上条「ショチトル? 誰だそれ」
海原「まぁ昔馴染みのようなものですよ。未だに女子中学生にうつつを抜かしていたのか、と今追いかけられていて。かれこれ一週間は寝ていません」
上条「た、大変なんだな」
海原「ショチトルが、顔の広い友人に頼み込んでツインテールの風紀委員まで出てきているんですよ」
上条「成程」
海原「た、助けてくれませんか!?」
上条「無理」
海原「そ、そんな!」
上条「無理です」
海原「クッ、仕方がありませんね。御坂さんの写真二十枚で手を打ちませんか?」
上条「要りません」
海原「レイヴィニア=バードウェイの写真を撮ってくるというのは?」
上条「い、要りません」
海原「……そうですか。残念ですね」
上条「……で? どうやって助ければいいんだ」
海原「……! と、取り敢えずショチトルの説得さえしていただければ!」
上条は大きな溜息をついて、キラキラと目を輝かせている海原へ視線を向ける。
上条「じゃあその、ショチトルって子に会ってくるよ」
海原いわく、居場所はすでに割れているらしい。
第七学区の雑居ビルの一室を借りていて、普段はそこで霊装の調整などの仕事をして食っていっているらしい。
この時間帯は、フランス系の業者から頼まれた霊装の作成をやっているとか。
ストーカーのように詳しいが、裏を返せばそれだけ心配という事なのだろう。
携帯の地図を見ながら、雑居ビルへ向かった。
外から見たら、機械的なビルに挟まれた西洋風の建物だが、一階のロビーは掛け軸や、生花が置いてあって和風だった。
そこの二階の奥がショチトルという少女の住まいらしいが、奥の部屋の表札には違う名前があった。
上条「うーん、アイツの知り合いだから魔術系だとは思ってたが、偽名を使ってるのか」
インターフォンを鳴らすと、ショチトルと思わしき少女が出てきた。
初対面なので、どちら様ですか、的な反応だったが上条は海原に頼まれて来たというと少し眉をひそめた。
ショチトル「海原、というとエツァリが変装している少年の名前だったか」
上条「ああ、多分そうだと思う。それでだけどさ……」
ショチトル「弁解……か?」
上条「ああ。海原のやつ、何日も寝てないんだってさ。勘弁してやってくれないか」
ショチトル「悪いが、それは出来ない。あ・の・男・は・女子中学生にうつつを抜かしているとんだ変態野郎だ。
一週間ほど前だったか。例の中学生が住んでいるという寮の前に日が明けた頃から真昼間まで見ているようなストーカーまがいの行動をしているんだ。
一度矯正してやらないと……と思い友人というか知人に頼んで捜索を依頼していた」
上条(う、海原の奴! 救いようがないぞ!)
ショチトル「まぁ私自身も、正直面倒くさくなっているもの事実。あなたがエツァリを殴ってくれればここはおさめる」
ショチトルは、汗がだらだらと出ている上条に追い打ちをかけるように言った。
彼女はニコッと微笑み、上条は気色の悪い薄ら笑いを浮かべている。
しかしここで断れば捜索活動は続けられるのだろう。
そう思うと、上条が海原を殴ったほうが海原の為になるような気もしなくない。
上条「分かった。やろう」
ショチトル「……そうか。頼んだ」
上条「じゃあな、ショチトル」
と言って上条は雑居ビルの階段を駆け下りていく。
その背中をショチトルは見ていたが、やがて部屋に入った。
雑居ビルを飛び出した上条は、海原が待っていた公園まで小走りで向かっていく。
座っていた海原は上条が現れたのを見て、立ち上がる。
海原の目の間に立つと、上条は大きく腕を引いた。
腕目掛けて、拳で殴りつけた。
それほど、本気を出すつもりはなかったのだが海原にとっては痛かったらしい。
海原は腕を抑えて、唸り声をあげていた。
上条は何故かスッキリしたような表情をしている。
上条「これでショチトルも許してくれるってさ」
海原「あ、ありがとうございます……」
上条「ストーカーまがいな行動はするなよ?」
海原「あ、そうだ。お礼に渡したいものがあるんです」
そう言った海原は、ポケットから二枚のチケットを取り出す。
そのチケットを二つ折りにして、上条の右手に握らせた。
海原「チケットですよ。最近できたウォータープールっていう場所の無料優待券。
知人から貰ったのですが、御坂さんはこういうのあまり好きじゃないと言うんで譲りましょう」
上条「へ?」
海原「貴方の想いの人を一緒に行ってください。期限は来年の九月末までなので、どうにかなるでしょう」
上条「なんで、それを知っているんだ?」
海原「さぁ、何故でしょうね」
………
第一七七支部という、風紀委員の詰所の中で携帯が一通のメールを知らせた。
持ち主は携帯電話のディスプレイに表示されたショチトルという文字にすこし意外そうな表情を浮かべた。
内容は、問題は解決した、の簡潔かつ短い文だった。
持ち主は、ショチトルの言っている問題を理解した上で、顔文字付きで了解、と返信する。
椅子にもたれ掛かっているツインテールの風紀委員にその事を伝えるとほっとしたような表情を浮かべた。
この風紀委員は海原をストーカーだと思い込み、捜索していた。その問題が解決した事にほっとしたのだろう。
別の机で、幾つものモニターの前でキーボードを叩いていた花飾りの風紀委員はサラッと、
「似たようなものじゃないですか」
と毒舌を吐いた。
ツインテールの風紀委員の額に青筋が立ったように感じられた携帯の持ち主は場を沈めるために「まーまー!」と叫んだ。
他にも協力を依頼していた、常盤台の空気使いや、その他もろもろの人に問題解決の事を書いたメールを送信する。
一件落着、と思う持ち主だった。
………
場所は変わり、イギリス。
レイヴィニア=バードウェイの妹、パトリシア=バードウェイとレイヴィニア=バードウェイの部下であるマーク=スペースは机に降っしているバードウェイ
を遠巻きに、心配そうに眺めていた。
タワーブリッジ以降の一週間は、バードウェイを組織を束ねるボスから普通の女の子になっていたとマークは言う。
つい数時間前までのハイテンションが馬鹿みたいに静かになっている。
こそこそとしているパトリシアとマークの存在に気がついたのか、バードウェイはよろよろ、と歩き出した。
パトリシアはバードウェイの肩を掴んで、事情をきこうと椅子に無理矢理座らせた。
腰に手をやって、パトリシアはバードウェイを目を見た。
パトリシア「お姉さん」
バードウェイ「……」
パトリシア「私は、お姉さんが何でこんな状態になっているか、検討がついています」
バードウェイ「な、に?」
パトリシア「あのツンツン頭の日本人さんが居なくなって、寂しんですよね
バードウェイ「は? 私が寂しいなんて、そんな」
パトリシア「言い方を変えます。何か足らない気がしませんか? つい最近まであった何かが足りない。心に隙間があいたような」
バードウェイ「……」
パトリシア「無言は肯定……ですよね? お姉さんはその日本人さんを特別に思っているんじゃないですか?」
バードウェイは依然として無言を続ける。
理由は、パトリシアの言っていることが的確すぎたからだ。
心に空いた隙間。何かがない違和感。
ヒースロー空港から帰ってきてからはずっとそんなモノに、心を蝕まれていた。
バードウェイは、まだ自分の気持ちを整理できていない。
上条当麻だって、ただ仲の良い友人程度にしか思ってなかった筈なのに。
バードウェイ「まだ、分からない。でも、私は……後悔はしたくない。確かめに、学園都市へ飛ぶ事にするよ」
パトリシア「お姉さん……」
バードウェイ「私が説教されるとはな。だが、お前の説教は少し、優しいな」
パトリシアには理解出来なかったが、一端覧祭の顛末をしているマークにはその意味が分かった。
バードウェイは茶色のコートを羽織って、机に投げ出されていた財布をコートのポケットに入れる。
そして、どこか吹っ切れた様子のバードウェイの背中は、気合なんていう感情が見えているような気がした。
外に出たバードウェイは、清々しいまでに晴れている青空を見上げた。
少し、気温が低いか。
バードウェイ「さて、私は。上条当麻に逢いに行く」
寒いロンドンの街を、バードウェイは歩いて行った。
終わりです、
展開がおかしくなったような気もしなくないけど……
このSSまとめへのコメント
とりあえず、作者失踪作は検索妨害になるから削除してほしい
続き期待してます!