【ゆるゆり】千鶴「笑顔を探して」 (51)

千鶴「………」

千歳「こたつは温かいなぁ」

千鶴「………」

千歳「どうしたん?ほら、みかんの皮剥いたで」

千鶴「……姉さん」

千鶴「笑顔ってどうやって作るの?」



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千歳「笑顔の…作り方?」

千鶴「うん」

千歳「そもそも笑顔は作るもんやないと思うけどなぁ」

千鶴「でも、姉さんっていつも笑顔だよね」

千歳「そうかなぁ~?」

千鶴「私はいつも姉さんのこと見てるけど、いつもにこにこしてるよ?」

千歳「なんか照れるで」

千歳「でも何でそんなこと聞くんよ?」

千鶴「この前公園であった子に、『お姉ちゃんの笑顔は素敵』って言われて」

千鶴「ちょっと嬉しかったの…」

千歳「それは良かったなぁ~」


千鶴「でも、それ以来笑顔を意識してもなかなか出来なくて」

千鶴「いつも笑ってる姉さんに聞けば、何か分かると思ったんだけど…」

千鶴「うーん…」


千歳「そんなに焦っても始まらんよ。緑茶淹れるけど飲む?」

千鶴「うん」

コポポ・・・

千歳「ほら、淹れたてやで」コトッ

千鶴「ありがとう」

千歳「熱いから気を付けて飲まんとあかんよ~?」


千鶴「大丈…つっ!」ビクッ

千歳「ほら言わんこっちゃない」

千歳「ゆっくり冷まして飲まんとなぁ」


千鶴「うぅ…」

千鶴(どうしてこうも私は猫舌なんだ…)イライラ

千鶴「……あっ」


千歳「どうしたん?千鶴」

千鶴「今、お茶に私の顔が写ったんだけど」

千鶴「私の怒り顔って、こんなに怖かったんだ…」


千歳「あはは、何やそれ」

千鶴「こんな自分の顔が嫌になってきちゃうよ」


千歳「でも、昔の千鶴はもっと笑ってた気がするで?」

千鶴「えっ、そうだっけ?」

千歳「寂しがり屋で甘えん坊さんやったなぁ」

千鶴「うーん…」

千歳「まぁ、甘えん坊なのは今も変わらんけどなぁ」アハハ

千鶴「ちょっと!」

千歳「そや、いい事思いついたで」ガバッ

千鶴「姉さん、どこ行くの?」

千歳「えっとたしかこの辺にあったはずなんやけど…」ゴソゴソ

千歳「…あった!」スタスタ


千鶴「姉さん、それ何?」

千歳「ほら、アルバムやで」

千鶴「うわっ、懐かしい…」

千歳「懐かしいなぁ」

千鶴「これは…私達がまだ5歳の頃だったやつだ」

千歳「どれどれ見せて~」


千歳「『町内会お化け屋敷大会』…ってなんやっけ」

千鶴「町内会の子どもたちがお化けになりきって暗闇を走り回る…そんな感じだった気がする」

千歳「あれ?千鶴って暗いの苦手やなかったっけ」

千鶴「えっ?そ、そうだっけ…」

千歳「夜の廊下が暗いからって、毎晩うちのこと起こしてトイレ行っとったやん」

千鶴「う、うん」(恥ずかしい…)

千歳「千鶴が暗いとこ苦手になったのって、何があったんやっけ?」

千鶴「えっと…たしか」ペラペラ

千鶴「たぶん、これだと思う」

千歳「これって…」


千鶴「私と姉さんが裏山でかくれんぼした時だよ」

千歳「あぁ、あの時は確か…」


――
――――
――――――――

ちづる「お姉ちゃん!今日は何して遊ぶ?」

ちとせ「ちづるは元気やなぁ。この前のお化け屋敷も張り切ってて…」

ちづる「えへへ。お姉ちゃんをビックリさせたくて頑張ったんよ?」

ちとせ「頑張りすぎやっ!うちビックリしておしっこ漏らしてしもうたんよ!?」

ちづる「あはは、うちら双子なんやし気にせんといてよ」

ちとせ「もう…」

ちとせ「そういえば、明日のお風呂掃除当番って、うちとちづるどっちやっけ?」

ちづる「おばあちゃんは『どっちかがやってね』って言ってたけど…」

ちとせ「ちづる、お風呂掃除やりたい?」

ちづる「いややわ」

ちとせ「じゃあ、じゃんけんで決めようや」

ちづる「それもいややわ、お姉ちゃんじゃんけん強いもん」

ちづる「そや!お姉ちゃんかくれんぼせぇへん?」

ちとせ「かくれんぼ?」

ちづる「かくれんぼして、負けたほうが明日のお風呂掃除するんや!」

ちとせ「ええで!じゃあうちが鬼やるから、ちづるは隠れる方な!」

ちづる「じゃあ、夕方までに見つけたら、お姉ちゃんの勝ちな」

ちとせ「この裏山の中だけやで?家に逃げたりしたら反則やからな!」

ちづる「よーい…」

ちとせ「はじめ!」

ちとせ「98…99…100!」

ちとせ「よーし、行くで!」ダッ

ちとせ(ちづるの隠れそうな所は…)

ちとせ「やっぱり、神社やろうなぁ」



―神社―

ちとせ「あれー?ちづるおらへんなぁ」

ちとせ「倉庫に…木陰に…うーん」

ちとせ「ここじゃないんかな?」

タッタッタッ


ちづる(ふふ、お姉ちゃん気付いてない!)

ちづる(お賽銭箱の中におるなんて、思わへんやろうなぁ)

ちとせ「あかんもう夕方や・・・けどちづる見つからへんなぁ」

ちとせ「ひょっとしてもう帰ってたり…」

ちとせ「一旦家に帰ろかなぁ」




ちづる「そろそろ夕方やし、外に出てみよっと」ガタッ

ちづる「あ、あれ…お外真っ暗や」

ちづる「あかん…おばあちゃんに怒られてまう!帰ろっ…」


ガランガラン!!(後ろの本坪鈴が鳴る音)


ちづる「ひゃああああああ!!!」

タッタッタッ

ちづる「あ、あかん…どっちが帰り道やったっけ…」

ちづる「暗くてよく分からへん…」

タッタッタッ

ちづる「も、森が真っ黒で、生き物みたいや…」

タッタッタッ…ズルッ

ちづる「きゃあ!」ドサッ

ちづる「いたた…膝擦りむいてもうた…」


ちづる「ひっく…こわいよぉ…おねえちゃぁん…」

ちづる「暗い…怖い…痛い…」

ちづる「たすけて…」

ちとせ「あーっ!!こんなとこにおった!」

ちとせ「ちづるー!やっと見つけたで」

ちづる「ぐすっ…おねぇちゃぁん…」

ちとせ「よしよし、おねえちゃんが来たからにはもう大丈夫やで~」


ちとせ「ほな、一緒に帰ろうか」

ちづる「…うん」


ちとせ「ところで、ちづるはどこに隠れておったん?」

ちづる「神社のお賽銭箱の中…」

ちとせ「もう!そんなとこに隠れるから神様のばちが当たったんよ」

ちづる「ごめんなさい…」

ちづる「おねぇちゃん…」

ちとせ「どうしたん?」

ちづる「おばあちゃん、怒ってた?」

ちとせ「ちづるの事心配しとったよ」

ちづる「そう…」

ちとせ「お風呂掃除は、明日おねえちゃんと一緒にやろうな」

ちづる「うん」

ちづる「あと、一つお願いしていい…?」

ちとせ「ん?」

ちづる「夜中にトイレ行くの怖いから、一緒に付いてきて…」

ちとせ「あれ?ちづるって暗いの平気やなかったの?」

ちづる「………」(フルフル)

ちとせ「しゃあないなぁ」

――――――――
――――
――


千鶴「そんな事もあったね」

千歳「あったなぁ」

千鶴「あれっきり夜中に一人でトイレに行くの怖くなってね」

千歳「寝る前にちゃんとおトイレ行かへんからやで?」

千鶴「で、でも今はもう平気だもん」

千歳「ほんまに?」

千鶴「うん」

千歳「前に肝試し大会で、ずっーと震えてうちの側を離れなかったのはどこの誰やったかなぁ?」

千歳「一緒にお風呂入ったり、毎晩寝る時はうちの布団にもそもそ入ってきては…」

千鶴「わーっ!ちょっと姉さん!」


千歳「言ったやろ?甘えん坊なのは変わらんって」アハハ

千鶴「ぅ…」

千歳「でも、暗いの苦手になっても千鶴は普通に笑ってたで?」

千鶴「うん、それは覚えてるんだけど…」

千歳「どうして笑顔が無くなっていったんやろうなぁ」

千鶴「私にも分からないや」


千歳「ほら、これって小学校の入学式の」

千鶴「これも懐かしいね」

千歳「あの時の桜、綺麗やったね…千鶴も嬉しそうやん」

千鶴「ピースまでしてる…」


千鶴「小学校の頃も、色々なことがあったね」

千歳「お父さんの住んでる都会の方へ移ったし」

千歳「初めての街に住んだ時は、なんか慣れへんかったな」

千鶴「空気もおいしくなかったしね」

千歳「千鶴なんか初日から迷子になるしなぁ」アハハ



千鶴(あれ?このアルバム…)

千鶴(ページをめくる度に、私の笑顔が無くなってるような…)

千鶴「気のせいかな」

千歳「ん?」

千鶴「ううん、何でもない」


千鶴「そろそろお昼だね」

千歳「昨日作ったの煮物でも温めよか」

千鶴「あとお漬物もね」

千歳「お腹すいたなぁ」

「「いただきます」」

千歳「うんうん、やっぱ煮物はおいしいなぁ」

千鶴「姉さんの漬けた漬け物もいい感じだよ」

千歳「そぉ?なら良かったわぁ」


千歳「そういえば千鶴って、昔からお野菜よく食べてたなぁ」

千鶴「え?」

千歳「千鶴って、昔からおばあちゃんの作ったお野菜が大好きでな」

千歳「うちもやけど、千鶴って苦手な野菜とかないやろ?」

千鶴「まぁ…うん」


千歳「小学校の頃なんか、給食で野菜が出た時もな」

千歳「うちと千鶴だけ残さず食べて、先生によく褒められてたなぁ」


千鶴「全然覚えてないや…」

千歳「ふふっ」

千鶴「おばあちゃんの野菜かぁ」

千歳「どうしたん?」

千鶴「ほら、さっきのアルバムにあった…」

千鶴「これこれ」

千歳「んーと、『マラソン大会』かぁ」

千鶴「あれは私達がまだ2年生だった頃だね」


――
――――
――――――――

ちづる「えーっと、そろそろ私達2年生組が走る番かぁ」

ちづる「さっさと給食食べてお姉ちゃんのとこ行かなきゃ」モグモグ

「あっ!ちづるちゃん!」

「ねぇちづるちゃん、お野菜食べてくれない…?」

「私も私も!お願い!」


ちづる「えっ?別にいいけど…」モグモグ

「やった!ありがとう」

「食べ残すと先生怖いんだよねー」


ちづる(…こんなに美味しいのに)モグモグ

ちづる「うぅ…ちょっと食べ過ぎちゃったかな」

ちづる「おねえちゃんのとこ行かなきゃ」タッタッタッ



ちとせ「ちづるー、こっちやでー!」

ちづる「お、おまたせ…」

ちとせ「今日はやけに食べるの遅かったなぁ」

ちづる「ちょっと食欲がね」

ちとせ「緊張しとるん?うちはこの日のために特訓したんやからな!」

ちづる「おねえちゃん走るの苦手だもんね」

ちとせ「学年とっぷふぁいぶを目指すで!」


ちづる「あはは…頑張ろうね、おねえちゃん」

ちとせ「ちづる~、うちの赤白帽知らへん?」キョロキョロ

ちづる「後ろにぶら下がってるよ…」

ちとせ「あ、ほんまや」スッ


ちとせ「町内一周マラソン!張り切って行くで!」

ちづる「最後まで走りきれるかなぁ」

ちとせ「何弱気になっとるんや、気合入れていくで」



「位置についてー ようい、ドン!」パァン

ちとせ「ぜぇ…はぁ…も、もう無理や…」

ちづる「お、お姉ちゃん…まだ半分だよ…?」

ちとせ「うぅ…やっぱ走るのは苦手やわ…ぜぇ…」

ちづる「わ…私ももう…はぁ…」

ちとせ「ち、ちづるは走るの得意やろ…なんでそんなにバテバテなんよ…」

ちづる「バテてるんじゃなくて…はぁ…わき腹が痛いんだよぉ…」

ちとせ「えぇ!?…そ、それってどういうことや…げほっ」

ちとせ「あかん…歩こう、ちづる…」

ちづる「えっ?…でもっ…とっぷふぁいぶはどうするの…はぁ…」

ちとせ「ら、来年また頑張ればええ…今年はもう…無理や…はぁ…」

ちづる「う、うん…」

ちづる「すっかり夕方になっちゃったね」

ちとせ「ちづる~、あと学校までどれくらいなん?」

ちづる「さっき薬局を通ったから、あと少しじゃないかな」

ちとせ「うちもう足が限界や…」

ちづる「さっき休憩したばかりなのに」



ちとせ「そういえば、ちづるは走るの得意なのに、何でうちより疲れてん?」

ちづる「いやね、クラスの子達が残した野菜を食べたらお腹が…」

ちとせ「えーっ!なんやそれ!?」

ちづる「で、でも…無理に押し付けられたわけじゃないし…」

ちとせ「もう!そういうところが甘いんよちづるは!」

ちとせ「あかん、なんかむかむかしてきたで」

ちとせ「うちの可愛いちづるに何て事してくれたんや!」


ちとせ「ちづる!学校まで一気に走るで!」

ちづる「えっでも、姉さん足がどうのって…」

ちとせ「そんなん関係ないで!ほら行くで!うおりゃああああっ!!」ダダダッ


ちづる「姉さん足速いよ!」

学校に辿り着いたと思ったら、お姉ちゃんはすぐさま、私に野菜を押し付けた3人組の元へ向かっていった。
それはそれはもの凄い剣幕で、その子たちを怒鳴りつけていた。

…見ているこっちが怖くなるくらいに。


「だからなぁ!あんたらがうちの可愛いちづるにそんなもん押し付けなければ…」
「人の話を聞く時はちゃんと目を見ぃ!」
「お野菜残す子はバチが当たるんやで!って、話し聞いとるんか!」ガミガミ


結局その子たちは、私にちゃんと謝ってくれてくれた。
その後になってうちのおばあちゃんの作ったお野菜を食べさせてみると、それがどうも気に入ったみたいで…

「ちづるちゃんのお家のお野菜、とってもおいしいね!」
「ねぇねぇ、今度はもっと色んなお野菜教えてよ!」


いつの間にか、その子達とは大の仲良しになって…

ちとせ「夕日がきれいやなぁ、ちづる」

ちづる「うん」

ちとせ「そういえば、マラソン大会の練習の時も、こんな夕日を見ながら河原を走ってたなぁ」

ちづる「うん…」

ちづる「ねぇ、お姉ちゃん」

ちとせ「ん?」

ちづる「あの時、お姉ちゃんが私のために怒ってくれたでしょ?」

ちとせ「あはは、あの時はうちも我を忘れてたわ…恥ずかしいわ」

ちとせ「あの時はな、うちの妹が嫌な目にあってるのが許せへんかったのと、」

ちとせ「ちづると一緒に毎日走って練習したのに、とっぷふぁいぶになれなくて悔しかったんよ…」

ちとせ「情けないなぁ、お姉ちゃんなのに…取り乱してしもうて」


ちづる「でも…私は嬉しかったよ?」

ちづる「お姉ちゃんが、私のことをこんなに大事に思っててくれていたなんて」

ちづる「前に神社でかくれんぼした時も、お姉ちゃんが助けてくれて…」

ちづる「私のお姉ちゃんは、お姉ちゃんだけだよ」


ちとせ「な、なに言っとるんよ!」

ちづる「それにお姉ちゃんのお陰で、仲良しの子が3人出来たもん」

ちとせ「た、たまたまやで…そんなん」

ちづる「ねぇ…また来年も、一緒に練習しようよ」

ちとせ「ちづる…」

ちづる「次は…半分より上を目指そうよ!」

ちとせ「えぇ!?なんやそれ!とっぷふぁいぶどころやないやん!」

ちづる「走るの苦手な姉さんがいきなりとっぷふぁいぶなんて目指せないよ!」

ちとせ「なせばなるもんやで!」

ちづる「…そうかなぁ」

ちとせ「そうやで」


ちづる「…来年も頑張ろうね」

ちとせ「頑張ろうな、ちづる」

――――――――
――――
――


千歳「懐かしいなぁ」

千鶴「姉さんが本気で怒ったのって、あの時だけだった気がする」

千歳「いややわ恥ずかしいわ」


千鶴「でも姉さんって、今でも走るの苦手だよね」

千歳「これについてはどうしようもないんよ…ほんまに」

千鶴「でも…次のマラソン大会は無かったんだよね」

千歳「そっか!その次の週に、うちらは転校してしもうたんやったな」

千鶴「せっかく友達もできたのにね…」

千歳「残念やったなぁ」


千鶴「次の学年でも、友だちができたと思ったら転校して、また次の年も…」

千鶴「そんな繰り返しだったね」

千歳「お父さんの転勤やから、しゃあないんやけどな」

千鶴「うん…」

千歳「そや千鶴、お風呂の洗剤買ってきてくれへん?」

千鶴「もう切らしてたの?」

千歳「もうちょっと節約せぇへんとなぁ」

千鶴「…で、私が行くの?」

千歳「嫌なん?」

千鶴「だって、外寒いし…こたつ温かいし…」

千歳「うちだって出たくあらへんよ」

千鶴「どうする?」

千歳「ここは公平にじゃんけんで決めようや」

千鶴「えー…だって姉さんじゃんけん強いじゃん…」

千歳「そんなの偶然やって」

千鶴「うー…じゃあいくよ?じゃーんけーん…」

千歳「ぽん!」

千鶴「やっぱ負けちゃった…」

千鶴「どうしてこう私はじゃんけんが弱いんだろう…」

千鶴「……」

千鶴「やっぱり寒いなぁ」

千鶴「洗剤も買ったし、はやく帰ろう…」


千鶴「……あっ」チラッ

千鶴「自販機だ…おしるこもある」

千鶴「はぁ…おしるこは温かいなぁ」

千鶴「今の時間は…もう3時か」

千鶴「なんだか眠くなってきちゃった…」



楓「あれ?ちづるお姉ちゃん?」

千鶴「あっ、楓ちゃん」

楓「何飲んでるの?」

千鶴「えっと…おしるこだけど」

楓「わぁ…あったかそう…」

楓「……」

千鶴「良かったら飲む?…飲みかけだけど」

楓「ありがとう!」

楓「ねぇ、千鶴お姉ちゃんはどうしてお外にいるの?」

千鶴「ちょっと姉さんにおつかいを頼まれたんだ」

楓「千鶴お姉ちゃんのお姉ちゃんって、あのにこにこ笑ってる人でしょ?」

千鶴「会ったことあるの?」

楓「この前、千鶴お姉ちゃんと間違えちゃったんだぁ」

楓「でも、とっても優しくしてもらったの!」

千鶴「ふふ、私の自慢の姉さんだもん」

楓「楓のお姉ちゃんも、とっても優しんだよ!」

千鶴「楓ちゃんは、どうしてお外に?」

楓「実はね、楓のお友達が今度引っ越すことになっちゃったの…」

楓「だから、お友達のみんなでお別れパーティをやってたんだぁ」

千鶴「そうだったんだ…」

楓「また会おうねって約束したけど、やっぱり寂しいの」

楓「毎日いっしょに遊んでたのに…」


千鶴「引っ越し…お別れ……かぁ」

楓「どうしたの、千鶴お姉ちゃん」

千鶴「私と姉さんはね、小学校の頃に何度もお引っ越しをしたんだよ」

千鶴「だから、仲の良くなった友達とも、すぐに離れ離れになっちゃたんだ」

楓「千鶴お姉ちゃん…」


千鶴「前に、楓ちゃんに「笑顔が素敵」って言われて、とっても嬉しかった」

千鶴「でも昔は私だって、姉さんと同じくらい笑ってたんだよ?」


千鶴「けれど…引っ越しと転校を繰り返していって…怖くなったの」

千鶴「大切な友達と別れるのが…ね」


千鶴「仲良しの友達や楽しい思い出を作っても、すぐに無くなる…そんな思いをするなら」

千鶴「最初からそんなもの、作らなければいいんだって」


千鶴「そばに居てくれたのは、姉さんだけだった」

千鶴「私の側には姉さんが居てくれる…優しい姉さんが居るなら、それだけでいいと思ってた」

楓「……」




千鶴「ふふっ、そんな考え方をしてたから、笑顔の作り方まで忘れちゃったのかな?」

楓「えっ?千鶴お姉ちゃん?その笑顔…」

千鶴「家でアルバムを見て懐かしんでたら、自然に思い出しちゃったみたい」


楓「お姉ちゃん…」

千鶴「姉さんも言ってたけど、笑顔は作るものじゃないね」

楓「お姉ちゃんは、もう怖くないの…?」

千鶴「実は中学に上がるとき、おばあちゃんがうちにおいでって言ってくれてね」

千鶴「だからもう引っ越すことは無いとおもう」



千鶴「それに…今の私はとっても幸せだから」

千鶴「姉さんと一緒に楽しい学校生活を過ごせられて、ね」

千鶴「時々、イラっとする事もあるけれど…」

千鶴「だからこうして、楓ちゃんとお話できるのも楽しいの」ニコッ

楓「お姉ちゃん…」

楓「やっぱり、千鶴お姉ちゃんのお姉ちゃんにそっくりだね」


千鶴「双子だからね」フフッ

楓「そうだね!」アハハッ

千鶴「…だからね、かくれんぼする時は、絶対に罰当たりなことをしちゃいけないよ?」

楓「なるほど・・・・うん、分かった!」


千鶴「あっ、もうこんな時間だ」

楓「楓のお姉ちゃんも心配しちゃうし、そろそろ帰るね」

千鶴「うん」

楓「またこの公園で合ったら、昔のこと聞かせてね!」

千鶴「ちょっと恥ずかしいけど…楓ちゃんにならいっか」

楓「えへへ…やったぁ」



楓「ばいばーい!」

千鶴「またね!」

千鶴「ただいまー」

千歳「なんや千鶴、えらい遅くなったな」

千鶴「ちょっと公園でね…」

千歳「そか、おかえり」


千鶴「ねぇ、姉さん」

千歳「んー?」

千鶴「その…これからも、よろしくね」

千歳「……」

千鶴「あれ?どうしたの」

千歳「なんや、ちょっぴり昔の千鶴に戻った気がしてな」

千鶴「そ、そうかな…」


千歳「ふふっ…こちらこそよろしくな、千鶴」

千歳「そういえば千鶴、その手に持っとる紙は何なん?」

千鶴「あぁこれね、楓ちゃんから教えてもらったんだけど…」

千鶴「明日、七森町のマラソン大会があるんだって」

千歳「ま、マラソン大会ぃ!?」

千鶴「あれ?姉さんは出場しないの?」


千歳「ほ…ほら、うちはその…何というか走るのがその…」

千鶴「いつかマラソン大会で"とっぷふぁいぶ"になるんじゃなかったの?」

千歳「そ…それはそのぅ…」


千歳「そ、そや!じゃんけんでうちが勝ったら、マラソン大会はナシや!」

千鶴「じゃあもし私が勝ったら、このまま練習に行こうね?」


千歳「望むところや!…じゃーんけーん…」

千鶴「ぽん!」

千歳「なんでぇ…こんな時に限って…はぁ…負けたりするんよぉ…ぜぇ」

千歳「ち…千鶴…そろそろ休憩せぇへん?…はぁ…もううちの足が…」

千鶴「ほら姉さん!あと800メートルだよ!頑張って!」ニコッ

千歳「な…なんか千鶴の笑顔が怖いで…げほっ…」


千鶴「ファイト、ファイト!あと少しだよ!」

千歳「も、もう堪忍したってぇー!!…ぜぇ…はぁ…」



おしまい(やで!)

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