玄「一旦お別れ!」照「!」(276)
玄「……」
照(阿知賀がドラを……)
照(……)タン
怜「ポン!」チャッ
照(理由は分からないけど、あんなに大切にしていたのにどうして……)
照(それに……この子を取り巻く空気が……変わった……?)ツモリ
照(……)
照(……これは通るはず)タン
玄「ロン!」
照「!!」ハッ
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――そうだ……
玄「メンタンピン…」
――咲の時もそうだった……
玄「一盃口ドラ6――」
――そして阿知賀……松実さんも……
玄「16000の2本場は16600です!」
――人は予想を越えてくる
テン テン テン テテン♪
< マモナク、キョウトデス。トウカイドウセン、サンインセン、コセイセン…
照「……んあ?」ヨダレタラー
< ナラセン ト、キンテツセン ハ オノリカエ デス。キョウモ シンカンセンヲ ゴリヨウクダサイマシテ、アリガトウゴザイマシタ。
照「……」ボー
< キョウト ヲ デマスト ヨネハラ ニ トマリ…
照「ファッ!?」
携帯< ヴーンヴーンヴーンヴーンヴーン
照「……」ピッ
照「……もしもし?」
菫『遅い!!!』
照「」キーン
照「す、菫……受話器越しに怒鳴らないd」
菫『これが怒鳴らずにいられるか!集合時間は覚えているか!?』
照「……その、15時と5時を間違えて」
菫『そんな間違いがあるか!もう夕方だぞ!?それで今どこにいるんだ!!』
照「それが……」
菫『なんだと!!??』
照「だから今京都駅n」
菫『会場は青森だと何度も言っていただろ!!』
照「落ち着いて菫、ちょっとしたよくある手違いで……」
菫『これが落ち着いていられるかバカ!大体どうして京都にいるんだ!』
照「いや私にも何がなんだか」
菫『政府主催の麻雀国際交流なのにどうするんだ!先方のノヴォシビルスク女子の方々は既に来られてるんだぞ!?』
照「え、に、ニボシビール?」
菫『あと三時間でレセプションが始まる!乾杯の前のスピーチはお前の役割だったろ!』
照「ちょ、ちょっと待って、今切符売り場だから、すぐに折り返してそっちへ向かうか……あ……」
菫『今度はなんだ!?』
照「お金足りない……」
菫『』
照「とりあえず近くの郵便局まで行って引き出してくる」
菫『……』ハァ
照「もしもし?」
菫『……もういい、どのみち今からでは間に合わん』
照「ごめんね」
菫『許さん』
照「」
菫『……だが、今何を言ったところで解決するわけじゃない。先方には私から謝っておく』
照「えっと、あの、私は何をすれば」
菫『その辺の本屋にでも入ってロシア語で謝る練習でもしておけ』
照「……」ハァ
菫『ため息をつきたいのはこっちなんだがな』イラッ
照「菫もいつか分かる時がくる……」
菫『あ?』イライラ
照「人は予想を越えるものなんd」
菫『むしろ嫌な予想どおりだったわ!!』ガチャッ
照「……」ツー ツー ツー
ピロリロリン♪
照「!」ピッ
from:菫
『落とし前は後できっちり付けてもらうぞ』
照「……」パタン
照(やばい……)テクテク
照(『まったく仕方ないやつだな。次からは気を付けろよ』みたいなのを予想してたのに……まさかこんなに怒るとは)テクテク
照(帰ってからのことを考えると……)ブルッ
照(お説教は確定として……一体どんな陰険な罰を課せられるんだろう……)テクテク
照(部員のカバン持ち……一週間部室掃除……半荘空気椅子……)
照(ハッ!ま、まさか東京バナナの買い食い禁止とか!?)タチドマリ
照(なんてやつだ……さすがサディスティックシューター菫……恐ろしいことを考える……)カタカタ
照「……」
照「……ん?」
照「あれ……?」
照「アレレ……?」
照「……」
照「……ココハドコ?」
照「たしかこっちから来たはず……」テクテク
照「えっとここは……こっちだった気がする……いや、こっちだったっけ?」キョロキョロ
照「う……なんか細い路地裏に入ってしまった……」テクテク
照「……暗くてよく見えない」ウウ
照「えっと――」ヨソミ
ドンッ
照「ッ!」
照「す、すみません」
不良A「おうこら、どこ見とんねん!」
照「えっ、あの」
不良B「あー!あかん、今ので間違えて振りこんでもうたやんけ!」
照「ご、ごめんなさい」ビク
不良B「ええとこまで行っとったのにどないしてくれるんじゃコラ!」
照「えっ……」
不良C「ちょお待ち、この顔どっかで見たことあるで」
照「!」サッ
不良C「あっ、そうや思い出した!白糸台のエースやんけ!」
不良A「うわほんまや!有名人やん!」
照「ち、違う、私はただの」
不良B「何やあんた宮藤照やったんか」
照(宮永や)
不良C「宮永や」
不良B「んなもんどっちでもええわ」
照(よくない)
不良B「……そうやあんた麻雀強いんやろ? ちょっと向こうで俺らとええ話しよか」
照「わ、わたしは今急いでいるので」
不良A「なんかしとんじゃコラ!」
照「っ」ビクッ
不良A「さっきのチャラにしたる言うてんねや、言うこと聞けや」ガシッ
照「え……ちょ、ちょっと……」ビクビク
不良C「心配すな、ただの儲け話や」ガシッ
照「い、嫌だ!離せ!」ケリ
不良B「ぐっ、優しゅうしたってたらこのアマぁ!」フリカブリ
照(殴られる……!)ギュッ
?「やめるのですボクたち!」
>>キョウトヲデマストヨネハラニトマリマス
米原はマイバラなんだが
あと東京から乗ったなら京都の次は新大阪じゃね?
?「十六文キーック!」ドゴォ
不良B「ぐぁっ!!」
照「……え」
?「女子相手に三人がかりとは卑怯なのです!」
照(逆光で見えないけど、この声どこかで……)
不良A「なんじゃワレ!」
不良C「B君大丈夫か!」
不良B「ふ……ふふ……なんややらしい身体つきしとる女やんけ」
不良B「マワされたいようやのぉワレェ!!」
照(!……まずい……こいつ逆上して……)
照「そ、そこのあなた!わたしのことはいいから早く逃げて!」
?「へ?」
>>10
正直すまんかった
実は新幹線のことよく知らんので脳内返還たのむ
不良B「逃げられると思ってんのかコラ」ガシッ グイッ
?「うわわ」ヨロ
警察A「あーそこまでや」カタ ポン
不良B「は?」
不良AC「げっ」
警察B「『マワす』てえげつないこと言いよるなぁ。しっかり聞いとったでー、強姦未遂や」
警察A「なんや余罪もありそうやな」
不良B「くっ」ダッ
不良AC「うわわ」ダッ
警察B「あっ、待たんかいこら!」ダッ
警察A「こちらA、そっちにガキが三人逃げたから挟んでくれ!」ダッ
タタタ…
照「行っちゃった……」
?「私たちも今のうちに行きましょう!」ギュッ
照「あ、うん」ギュ
照(……そうだ、この声は)
?「さっきあなたが連れ込まれるのを見て、もしやと思って追いかけたのです」テクテク
照(日が沈んじゃって顔がよく見えない……通りに出れば街灯で顔を確かめられるはず)テクテク
?「あの、大丈夫でしたか?お怪我は?」ヒカリアタル
照(!)
照(やっぱり……)
?「えと、もしかしてどこか痛いところとかあったり」オロ
照「ううん、大丈夫……」
?「あぁそれなら良かったです!」ホッ
照「それと……ありがとう……松実さん」
玄「……へっ?」ドウシテワタシノナマエヲ?
照「久しぶりだね」
玄「えっ?えっ?」コンラン
照「……もしかして覚えてない?」
玄「い、いえ、そんなことは、その……暗くてお顔が見えなくて
照(そうか、私が明るいところに行けば)
玄「……あーーーーっ!!」
照「うん」
玄「宮藤さん!!」
照「宮永や」
玄「お久しぶりです宮永さん!!」ブンブン
照「うん久しぶり」ブンブン
玄「まさか、えっ、どうして関西にいらっしゃるんですか!?」
照「う……それには深い事情があって……」
照「そ、それより松実さんはどうしてここに?奈良じゃなかったっけ?」
玄「家のお使いで買い出しに来ているのです!」ドヤァ
照「ああ、旅館なんだっけ」
玄「!!そんな事までご存知だとは……」
照「あ、いや、それは」
玄「対戦相手のデータを調査して忘れない!さすがチャンピオンなのです!」
照「え、あ、うん、そうそう」
照(本当はあの大会のあと松実さんのことが気になって調べたからなんだけど)
照(ちなみに菫に頼んだら何故かノリノリで調べてくれた)
照(そう……菫から渡されたビデオで初めて見た時、あの卓で初めて出会った時、初めて照魔鏡で視た時)
照(私は彼女に咲を重ねていた)
照(両親が別居したことで離ればなれになる前の咲を)
照(特定の牌を惹き付ける天賦の能力、それ故に打たれ弱く臆病な性格……姉に依存する様もそっくりだった)
照(私が愛し、そして避けてきた妹にそっくりだった)
照(そして……準決勝の最後に見せたあの意志も――)
玄「……さん、宮永さん!」
照「……!」ハッ
照「ごめん、何だったかな」
玄「ええと、照さんの深い事情について聞いていたのですが……もしかして聞いちゃだめでしたか?」
照「いや、そんなことはないんだけど、ちょっと恥ずかしいというか」
玄「ふぅ~む」ナルホドナルホド
照「よくある間違いというか何というか」
玄「なるほどー、つまり西と東を間違えちゃったってことですね!」
照「えっ何で分かるの」
玄「よくある間違いじゃないですか」
照「いや、ないでしょ」ッテ、スミレナライウトオモウ
玄「?照さんだってそう言ってたじゃないですか」
照「……」
玄「……」ハテ?
照「なるほど」ポン
照(菫……やはり私は正しかったみたいだよ)タブン
玄「それはそうと、どこかに行かれるところだったんですか?」
照「え?」
玄「いえ、もしも戻るなら駅構内を移動するだけで済むはずなのに、外にいらっしゃったということは」
照「……あ、そうだった!この辺にATMとかないかな」ユウチョノ
玄「ああそれなら、ここから少し歩いたところにありますが……ええと、そこの道をまっすぐ行って二番目の信号を」
照「……よかったら案内してくれないかな」
玄「え?」
照「その……京都は来るの初めてだから迷いそうだし」
玄「あ、そうですね!気付かなくてすみません!」
照「知ってる場所なら迷わないんだけどね、いや本当に」ウソジャナイヨ?
玄「……?ええ、そうですね」キョトン
照「じゃお願いします」
玄「おまかせあれ!!」
<ピコン♪
<ツウチョウ、マタハカードヲオイレクダサイ
照「」
玄(ど、どうしたんだろう)
照「」
玄(ATMの前に立った宮永さんの顔が青くなっていって……)アワワ
照「」
玄「あ、あの、どうかしましたか?」オソルオソル
照「……ゆう○ょのキャッシュカード家に忘れた」
玄「えっ」
照「しかもカードケースごと……」クレジットモナイ
玄「えっと、ちなみにお財布の中にはいくらぐらいあるので?」
照「……」チャリン
照「……2096円」
玄「うわわ」
照「その、いつもギリギリまで卸さない派だから」ワカルカナ
玄「そうすれば極力使わなくて済みますもんね」ワカリマスヨ
照「よかった分かってくれて」ホッ
玄「でも今回は裏目に出ちゃいましたね」
照「ど、どど、どうしよう」アワワ
玄「ふぅーむ……」
玄「うん!大丈夫、大丈夫なのです!私が立て替えますので!」
照「えっ、でもそれはさすがに悪いよ」
玄「いえ、ここは私におまかせあれ!」ゴソゴソ
照「でも……」
玄「大丈夫なのです!」ゴソゴソ
sageが外れてたスマヌ
照「その、いつもギリギリまで卸さない派だから」ワカルカナ
玄「そうすれば極力使わなくて済みますもんね」ワカリマスヨ
照「よかった分かってくれて」ホッ
玄「でも今回は裏目に出ちゃいましたね」
照「ど、どど、どうしよう」アワワ
玄「ふぅーむ……」
玄「うん!大丈夫、大丈夫なのです!私が立て替えますので!」
照「えっ、でもそれはさすがに悪いよ」
玄「いえ、ここは私におまかせあれ!」ゴソゴソ
照「でも……」
玄「大丈夫なのです!」ゴソゴソ
照「でもそれってお使い用のお金なんじゃ」
玄「こんなこともあろうかとコツコツ貯めておいた第二のお財布があるのです!」ゴソゴソ
照「そんな……」
玄「第二のお財布が…」ゴソゴソ
照「こつこつ貯めたものならそれこそ悪いし……」
玄「第二の…」ゴソゴソ
照「菫あたりに連絡して迎えにきてもら……ん?」
玄「……」ゴソゴソ
照「松実さん?」
玄「……」ゴソ
玄「……家に忘れちゃったみたいなのです」
照「……」
玄「……」ジワ
照「!?」
照「だ、大丈夫、大丈夫だから」
玄「お役に立てなくて申し訳ないのです」グス
照「いやこっちのほうが……というかほんと気にしないで」
玄「にしても困りましたね」
照「目的地に行けないどころか帰れなくなるなんて……」
玄「そういえば今夜はどうするおつもりで?」
照「今夜?」
玄「今日はもう遅いですし、スミレさんという方が迎えにいらっしゃるのは早くても明日以降ですよね」
照(菫にはまだ連絡もしてないけど……)
照「うーん、まだ決めてないけど……ファミレスで夜を明かすとかかな」
玄「……」スッ ←携帯
照(ドリンクバーだけで8時間は居座れるはず)
玄「……」プチプチプチ ピッ
照(いや、やっぱりフライドポテトの盛り合わせも……)
玄「……」
照(あとハンバーグランチも一晩一つくらいならギリギリ……)
ヴーヴーヴー
玄「!」ピッ
照(いや待てよ、彼奴とて仮にもシャープシューターを名乗る者……明日の昼までに迎えが来れば……)
玄「……」ヨシ
照(デザートも少しは食べられるかも……)
玄「それじゃ行きましょうか宮永さん!」
照「そうだね、やっぱりチーズ月見ハンバーグがいいと思う」
玄「おまかせあれ!」
ガタンガタン…
ガタンガタン…
玄「……♪」
照「……」
< ツギハー、シンタナベ、シンタナベデス
照「……」
照「あれ?」
照「あの……松実さん?」
玄「どうかしましたか?」
照「私はどうして電車に乗っているの?」
玄「電車の方が楽じゃないですか」
照「なるほど」
玄「もしかして車の方が良かったですか?」
照「ううんそんなことないよ。関西の電車乗ったことなかったし、ちょっと新鮮かな」
照「ってそうじゃなくて!」
照「私今からチーズ月見ハンバーグを食べるつもりだったんだけど」
玄「おまかせあれ!家に着いたらすぐ作りますから待ってて下さいね!」
照「いや違った、ファミレスでチーズ月見ハンバーグを食べながら迎えを待つつもりだったんだけど」
玄「だめです」
照「えっ」
玄「女の子が一人、繁華街の飲食店で夜を明かすなんて危険なのです!」
照「私なら大丈――」
玄「さっき犯罪に巻き込まれかけたこと忘れたんですか?」
照「う」
玄「私なら大丈夫、というその思い込みが一番危ないんですよ!」
照「うう」
玄「って先生が言ってました!」
照「ううう……」
玄「めっですよ!めっ!」メッ!
照(久しぶりに会った他校の年下の女の子にメッされてしまった……)
照「……それなら言わせてもらうけど」ジトメ
玄「な、なんですか?」
照「さっきは助けてくれて本当にありがとう」
玄「何を言われたってこれだけは絶対に引きませ……え?」
照「あの時……松実さんの声が聞こえた時はすごく嬉しかった」
玄「あ、あの////」
照「正直かなりヤバかったからってのもあるけど、あんなにホッとしたのはきっと松実さんの声だったからだと思う」
玄「い、いえ、そんな……私は当たり前のことをしただけで……えへへ////」テレテレ
照「でも」
玄「へ?」
照「どうしてあんな危ないことしたの? 下手すると松実さんまで、ううん、松実さんの場合もっと酷いことされてたかも知れなかった」
照(主におもちのせいで)
玄「わ、私は飛び出す前にちゃんと電話でおまわりさんに連絡を」
照「それでも!」
玄「!」ビクッ
照「警察を待たず単身で飛び込んで、しかも飛び蹴りまでして……」
照「偶々近くにいた警察が駆けつけてくれたからよかったけど、もしあと数分来るのが遅かったら、きっと大変なことになっていた」
玄「う……」タシカニ
照「さっき松実さんは『当たり前のこと』と言った。当たり前に人助けをしようとする松実さんはとても良い子だと思う」
照「でも実際に可能かどうかは別。普通の女の子がたった一人で三人の男の人に挑むのは無茶」
照「もう二度とあんな危険なことしないで」
玄「はい……ごめんなさい」ナノデス
照「……」
玄「……」シュン
照「ごめんね、きつい言い方になって。でも本当に心配だったから」
玄「宮永さん……」
照「けどさっきも言った通り、松実さんの声が聞こえた時はとても嬉しかった」
照「何かお礼が出来るといいんだけど……」
玄「!」
玄「そ、それなら私の家に来て下さい!」
照「え?それじゃお礼どころかさらに迷惑をかけることになっちゃうよ」
玄「いいえ!迷惑なんかじゃありません!」
照「だって、その、急に押しかけたらお家の方も困るだろうし」
玄「既にメールで報告済みなのです!」
照(いつの間に……)
玄「迷惑どころかお父さんもお姉ちゃんも喜んでましたよ!」
照(……あれ?)
玄「だから全く問題ないのです!」
照「というかお礼になってないし……」
玄「ふーむ……じゃあこれならどうですか? 」
玄「うちの旅館では早朝に一度大浴場を掃除するのですが、明日はバイトさんがお休みなので私が一人で掃除しなければなりません」
照「ふんふむ」
照「お姉さんは?」
玄「もうこの時期になると寒くてお姉ちゃんには無理なのです」
照「寒い……ってまだ8月下旬だけど……」
玄「お姉ちゃんはとっても寒がりなので」
照(……そういえばインターハイでもマフラー巻いてコート着てたっけ)
玄「ですからもし宮永さんに手伝っていただけると、とても助かるのですが」
照「なるほど……まぁそういうことなら」
玄「じゃ決まりですね!」
照(ん?でも泊めてもらうことを思うと、風呂掃除程度では少なすぎるような気が)
照「……」ウウム
< カシハラジングウマエー、カシハラジングウマエー
玄「ここで乗り換えなのです!行きましょう宮永さん!」ギュ
照「え? あ、うん」ギュ
照(まぁいっか……)
~吉野駅~
玄「到着なのです!」
照「長かった……」ハァ
玄「宮永さん完全に寝てましたもんね」アハハ
照「あっ……えと、その、さっきはごめんね」
玄「さっき?」
照「ずっと松実さんの肩に頭乗っけてたみたいだし……しかも服に涎こぼしちゃったし」
照(おもちのおかげでスカートにはこぼれなかったけど)
玄「ああ何だそんなことでしたか。私の肩で良かったらいつでもお貸しするのです」
照「でも周りの人に笑われてた…」
玄「別に嫌じゃなかったですよ。お姉ちゃんもよく同じことしますし……あ……」
玄「――そっか……」ポソ
照「ん?」
玄「ううん、何でもないのです」ニコ
照「?」
眠たくなってきたので今日はここまで
照「あ、ロープウェイだ」
玄「ここからはロープウェイ!」
玄「と言いたいところなのですが、もう今日は運行していないのです……残念ですが」
照「ううん気にしないで。昔住んでた家の近くにもあったし」
玄「あっ、そういえばご実家は長野でしたっけ」
照「実家というか……うん、まぁそんな感じ」
照「というかよく知ってるね」
玄「実は咲……あ、すみません、ええと妹さんの――」
照「咲でいいよ」
玄「――あ、はい。咲ちゃんのチームの副将の子と幼なじみなんです」グウゼンナノデス
照「副将って……あの、うわわなおもちをお持ちの?」
玄「そう!うわわなおもちをお持ちの!」キラキラ
照「え……なに?」ビクッ
玄「あれはまさに驚くべきおもちですよ。さすが宮永さん分かっていらっしゃる!」ウンウン
照(いや、あれは嫌でも目につくと思う)
照「それで打ち上げの時あんなに清澄と仲良さそうに歓談してたんだ」
玄「あ……あの時はご挨拶にいけなくて申し訳ありませんでした」
照「ううん。私もあの時はマスコミの相手で忙しかったから」
照(本当は何度か近付いて話しかけようとしたけど、そのたびに記者が邪魔してきて結局話しかけられなかった)
照(それに話しかけて恐がられたらと思うと……たぶんあの時の私のイメージは最悪だったと思うし……)
照「……」ウーム
玄「実は何度か話しかけようとしたんですけど」
照「……え?」ホントニ?
玄「周りにずっと記者の方々がいらっしゃったので」
照(やはりマスコミは害悪)
玄「それにあの宮永さんに話しかけると思うと緊張しちゃって……」テヘヘ
照「……やっぱり恐かった?」
玄「いえそんなことは全くないのです!」
照「!」
玄「たしかに準決勝の途中までは恐くて恐くて」
玄「正直泣いちゃうかと思いました」ナキマセンデシタガ
照「そっか……」ナイテタデショ
玄「けれど宮永さんのおかげで、私思い出したんです」ナイテマセンッテバ
玄「私にとって大切なもの、私にとって大切なこと」
玄「私の麻雀にとって大切なことを」
玄「宮永さんがいなかったらきっと思い出せなかったし、きっと気付けなかったのです!」
照「……!」
照「それって……」
< パッパーッ
玄「あ、来た来た!あれです!あの車なのです!」オトーサーン!
照「えっ」
玄「さ、行きましょう宮永さん!」ギュッ
照「ちょっと待っ」ギュッ
照(なにこのデジャヴ)
~松実館~
玄「ただいまー」
宥「玄ちゃんおかえりなさい」
玄「すぐに晩ご飯つくるからちょっと待っててね」
宥「あ、お味噌汁はもう作っておいたよ」
玄「えっほんと?やったぁお姉ちゃんのお味噌汁だぁ」バンジャーイ
宥「うふふ……炊飯器と一緒に居間に持っていってるからね」
玄「もう寒い時期なのに、ありがとうなのです!」ペコリ
宥「玄ちゃんがお友達を連れてくるって言ってたから、お姉ちゃん頑張っちゃった」エヘヘ
宥「……あら?そういえばお友達は?」
玄「宮永さんなら外で誰かと電話中だよー」ガララ
< エプロン、エプロンー♪ パタパタ
宥「宮永さんって……え?」
照「そういうわけだから奈良まで迎えにきて」
菫『……まずどういうわけか説明しろ』
< カン…カン…モウイッコカン…
< コルホーズリーチ…!!
< ウウッ
照「だからキャッシュカードを忘れて……」
菫『そこじゃない!どうして京都にいたのに今奈良にいるのかをだな!』
< ロン…バルチックフリート…!
< グハァッ
照「んー……と、話すと長くなるんだけど」
菫『こちらは今忙しいんだ、手短かに話せ!』
< 90プ50ハンハ、アオテンジョウルールニツキ、1583チョウ2967オク4399マン7800テン…!
< グァァアアッ
照「松実さんの家に泊めてもらうことになった」
菫『?!い、今松実と言ったか!?』
< ypaaaaaaa!! ypaaaaaaaaa!!
< ロシアジンコワイヨー… (ガクブル
< テルー タスケテー!
照「言った」ウシロウルサイ
菫『まさか松実宥か!?』スマヌ
照「拾ってくれたのは妹の方だけど」
菫『っ……そ、そうか』
照「?なぜ興奮しているの?」
菫『べ、別に興奮などしていない!』
照「……」フーン
菫『いいから続けろっ』
照「それで明日にでも迎えに来てほしいんだけど」
菫『……残念だがすぐに行くのは無理だ』
照「本当に残念そうだね。どうして?」
菫『ど、どうしてって別に残念そうになんか』
照「そっちじゃなくて、どうしてすぐに来れないの?」
菫『……すぐに来るのが当たり前みたいな言い方をするな』イラッ
照「だって残念そうだったから……」
菫『残念そうじゃない!』
照「『残念だ』って菫が言ったんじゃない」
菫『お前と話していると疲れる。切るぞ』
照「うん」バイバイ
菫『待て!切るな!』
照「どうしろと」
菫『とにかく、催しが終わるまでは無理だ……思った以上に強行軍だぞこっちは』
照「強いの?」アイテハ
菫『強い』ダイトウリョウガ
照「がんばれ」
菫『他人事のように……まぁいい。三日後にはそちらへ行く』
照「うん、いつもごめんね菫」
菫『許さん』
照「」マタカー
菫『それより、くれぐれも松実さんに迷惑をかけないように』コッチノセリフダ
照(……もうかけてるかもしれない)
菫『わかったな?返事は?』
照「わかった。それじゃ」バイバイ
菫『……ま、待て!』
照「……今度は何?」
菫『えっと……その……だな』
照(おなかすいた……)クー
菫『……松実さんに代わってもらえんか』ボソ
照「どっちの松実さん?」
菫『ゆ……宥……さんのほう……////』ボソボソ
菫『何を言わせる!』ガァァ
照「え……今なんで怒られたの」
菫『……と、とにかく代わってくれ』ゴホン
照「??……よく分からないけどちょっと待ってて」
-台所-
玄「お姉ちゃんびっくりしてたのです」ジュー
照「急だったから……今更だけどごめんね」イイニオイ
玄「そうではなく、私の連れてきたお客さまが宮永さんだったからなのですよ」チーズツキミハンバーグナノデス!
照「私だったから?」ワーイ
玄「なにしろ元チャンピオンですから」
照「???なるほど?」
玄「……もちろんそれだけじゃないですけど」ポソッ
照「えっ?」
照「えっ?」
照「今何かーー」
宥「電話終わったよ」ガラガラ
照「あ、うん。菫は何か言ってた?」
宥「ううん、宮永さんをよろしくとだけ」
照「そう」
玄「お姉ちゃん、スミレさんって人と知り合いだったの?」
宥「弘世さんだよ」オボエテナイノ?
玄「?」ヒロセサン…?
照「対局に弓矢を持ち込んでた恐い人いたでしょ」
宥(それイメージ……)
玄「???刀を持ち込んでた人ならいらっしゃいましたが……」1カイセンデ
照「なにそれこわい」
訂正
照「今何かーー」
宥「電話終わったよ」ガラガラ
照「あ、うん。菫は何か言ってた?」
宥「ううん、宮永さんをよろしくとだけ」
照「そう」
玄「お姉ちゃん、スミレさんって人と知り合いだったの?」
宥「弘世さんだよ」オボエテナイノ?
玄「?」ヒロセサン…?
照「対局に弓矢を持ち込んでた恐い人いたでしょ」
宥(それイメージ……)
玄「???刀を持ち込んでた人ならいらっしゃいましたが……」1カイセンデ
照「なにそれこわい」
宥「準決勝で私と対局した白糸台の人だよー」
玄「ああ!あのこわ……じゃなくて」
宥「玄ちゃん!」コラッ
玄「あの、今のは違うんです。ええと、その」アセアセ
照(やはり私は正しかった)
宥「もう、玄ちゃんったら……」
玄「ご、ごめんなさい!」
照「!」ソウダ
照「……ところで……菫の様子はどうだった?……まだ怒ってた?」
照(経験則からすると、第三者が間に入ると菫の怒りはやや軽減される傾向がある……)
照(この人なら……ヤツの怒りを鎮めてくれるかもしれない……!)
宥「あ……そういえば何か様子がおかしかったような……」
宥「ぎこちないというか、震えているというか」
照「あの菫が?」
宥「えーっと……こ、ここ、こここんなか、か、か感じじ」ガクガク
照「……」マジデ?
玄「マッサージ機にでも座ってらしたんでしょうか」ハテ?
玄「あ、でも今のモノマネはお姉ちゃんが寒い時の感じに似ているのです」
宥「そっか……今日寒いもんね……」
照「えっ」
宥「え?」
照「あ、ううん、何でもない」
照(……今の気温は23℃)
照「きっと疲れてるんだと思う。今回の相手チームはかなり強いし……電話で話してる時、後ろで禍々しい気配がしたし」
玄「たしか外国のチームとの交流会でしたっけ?」
照「うん。シベリアの学校」
宥「」ブルルッ
宥「玄ちゃん……寒くなってきたからこたつに戻るね……」ブルブル
照(こたつ!?)
玄「あっ、それじゃ宮永さんもお姉ちゃんに付いて、先に行っててください」
照「えっ」
玄「私はおかずを作ってから行きますから」
照「あの……私はこたつはちょっと」マダアツイ
玄「ご心配なく!お姉ちゃんのこたつとは別にちゃぶ台がありますので!」
照「そうなんだ……えっと、何か手伝えることがあれば」
玄「いいえ大丈夫なのです!お客様なのですから全部私におまかせあれ!」
照「そ、そう」
宥「宮永さん……早く行こう……」ガタガタ
照(そんなに?)
玄「~♪」ジュージュー
宥「さむかったぁ……あー溶けるー……」ヌクヌク
照(何て不便な体質……)
宥「宮永さんは入らないの?」アッタカイヨ?
照「い、いや私は遠慮するよ」
宥「そう?あったかいのに……」
照(暑そう)トイウカ アツイ
宥「はぁ……それにしても玄ちゃんが宮永さんを連れてきた時はびっくりしたな……」
照「やっぱり迷惑だったかな」
宥「ううん、全然そんなことないよ。だって玄ちゃんが連れてきたんだもん」
宥「玄ちゃんのお客様は私にとってもお客様だから」
照「そういうものなの?」
宥「そういうものだよ。驚いたのは連れてきたのが宮永さんだったから」
照「それ松実さんにも言われた」
宥「えっ……玄ちゃんが?」
照「元チャンピオンだからって」
宥「……あー、うん……うーん……」
照「違うの?」
宥「それもそうなんだけど……」
宥「……言っていいのかな…」ポソ
照「?」
宥「実はね、玄ちゃん最近よく宮永さんのことを話すの」
照「えっ」
宥「準決勝の後くらいからかな」
照「……恐かったって?」
宥「あはは、そうだね。ちょっとしたトラウマにはなってたかも」
照「やっぱり……」
照(まぁ分かっちゃいたけど)ハァ…
宥「でもね、宮永さん」
宥「玄ちゃんはそれ以上に大きなトラウマを乗り越えることができたの」
照「……それ以上に?どういうこと?」
宥「うーん……それは私の口からは言えないかな……たぶんね」
宥「越えることが出来ないはずのものを越えることは凄く難しいこと。それが心の問題なら、なおさらそう」
照(そうだ、あの時私は松実さんが私の予想を越えてくるなんて、思ってもみなかった)
照「けれど松実さんはたしかに越えてきた」
宥「玄ちゃんがそれを乗り越えることが出来たのは、宮永さん、あなたが居たからだと思う」
照「……実は松実さんにも同じことを言われた」
照「でもかなり優しい性格みたいだから……気を遣ってるだけなんじゃないかって思うと……」
宥「玄ちゃんは優しいよ。とっても優しくてあったかい子」
照「うん」
宥「でも同時にとっても素直で正直な子だから」
照「……」
宥「だから信じてあげてほしいな」
照「……あなたは怒ってないの?」
宥「えっ……わたし宮永さんに何かされたっけ」
照「大事な妹さんを泣かせた」
照(もし私がその立場なら……うん、咲を泣かせる奴は絶対に許さない)ゴゴゴ
宥「んー……でもあれは試合だったし……それに玄ちゃんの気持ちが一番大事だから」
照(あ、でも咲を一番泣かせたのは私だった)シオシオ…
宥「むしろ私は宮永さんに感謝してるかな」
照「……感謝?」
宥「さっきも言ったとおり玄ちゃんはとっても優しいの。優しくて強い子なの」
照「うん」
宥「私ね、小さい頃からいつも玄ちゃんに助けられてばかりだったんだ」
宥「本当ならお姉ちゃんの私がしっかりしなきゃいけないのに、って思いつつも玄ちゃんの優しさに甘え続けてきた」
宥「『玄ちゃんには出来ないことなんて何もない、だから私が玄ちゃんに出来ることなんて何もない』」
宥「いつしかそんな風に諦めてしまっていたの」
宥「でも準決勝の先鋒戦の前半が終わって、泣きじゃくる玄ちゃんを抱きしめてる時に思い出したんだ」
宥「“あの時” も、そして “あの時” も……いつも泣いていたのは私の方で、玄ちゃんは黙って抱きしめてくれていたけど」
宥「きっと玄ちゃんも泣きたかったんだろうなって」
宥「私が泣いていたから我慢していただけなんだろうなって」
宥「我慢して……私が泣き止むのを待って……悲しみが通り過ぎるのを待っていたんだろうなって」
宥「そう思ったら、ああ玄ちゃんもただの女の子なんだって、お姉ちゃんとして玄ちゃんを支えなきゃって」
照「松実さん……」
宥「宮永さんと戦ったことで、玄ちゃんはやっと私の前で泣くことができたの」
宥「だから……玄ちゃんを泣かせてくれてありがとう。私に『お姉ちゃん』させてくれてありがとう、宮永さん」
宥「なんて。ふふ、妹の涙を喜ぶなんてお姉ちゃん失格かな?」
照「ううん……あなたは良いお姉さんだよ……」
ガララッ
玄「よいしょっ……と。お待たせしました!宮永さんご所望のチーズ月見ハンバーグなのです!」
宥「わーい」
照「すごく美味しそう。それじゃさっそくいただき……ぁ」
照(横にピーマンが添えてある……だと……?)ガーン
宥「いただきまーす」
照(で、でもさすがに人様の家で出されたものに文句を言うわけには……)ソワソワ
宥「~♪」モグモグ
照「……」ゴゴゴ
玄「お姉ちゃん、美味しい?」
宥「あっははふへおいひいよ」ハフハフ
玄「ふふっ良かったのです。……おや?」
照「……」ゴゴゴゴ
玄「……」フーム
照「……」ギュルギュルギュルギュルギュル
玄「宮永さん、もしかしてピーマン苦手でしたか?」
照「ふぇっ、い、いや、そんなことは」シュゥンッ
玄「あっ違いましたか。すみません変なこと聞いて」
照「え……あ、っと……その……」
玄「……あっ!」
玄「そういえば私今日はピーマンがラッキーフードなのでした!」
照「ら、らっきーふーど?」
玄「そういうわけですので宮永さん、もしよろしければピーマンを譲っていただけませんか?」
照「あ……うん、いいよ」
玄「ありがとうなのです!代わりに私のホウレンソウあげますね!」ニコッ
照「うん、ありがとう」
照「……」
宥「玄ちゃん御飯おかわりー」
玄「はーい」
照(なるほど……これは甘えたくなる気持ちも分かる……)
玄「はいお姉ちゃん。あ、ほっぺにお米ついてるよ」クス
宥「んー、どこー?」ミツカラナイヨー
玄「とってあげるからじっとしててねー」
宥「ん……」
照「……」
照(……なんという姉の威厳ブレイカー)
照(妹が咲で良かった)ウム
明日は沖縄で雪中行軍の予定なので寝ますね……
パタパタ…
玄「こちらです!」
照「……」キョロキョロ
玄「ここは少し段が高いですので気を付……おや、どうされましたか?」
照「ん……外からじゃ分からなかったけど、すごく広いね」ナガイトイウカ
玄「一応これでも旅館ですから!」ジマンノロウカデス!
照「でも良かったの?ここってお客さんの通る廊下でしょ?」
玄「え、ええまぁ……その……」
照「?」
玄「……お恥ずかしい話ですが、実は今日はお客様が殆どいらっしゃらないのです」
玄「数少ないお客様も一階の離れの部屋をご利用ですので……」
照「じゃ二階(ここ)には今誰もいないってこと?」
玄「あ!でも決して流行ってないってわけじゃないんですよ?この間だって林間学校の団体様が3件も続いたんですから!」
照「いや別に流行ってないとは一言も」アセ
玄「それにこの辺の地域は桜の時期が書き入れ時ですし……」
照「ここの桜景色、有名だもんね」
玄「そうなんです!」
玄「あれは何と言いますか、山が桜色のカーテンに包まれたようになって……それはそれはとっても綺麗なのです!」
照「へぇ……」
玄「人の混み具合もすごいですが」ハァ
照「桜のカーテンか……一度見てみたいな……」
玄「ぜひその時はいらして下さい!沢山の桜の花でお迎えしますよ!」エヘヘ
照「うん、その時はぜひ」
玄「はい!さぁ着きましたよ」
照(そうか……似ていると思ったけれどやっぱり違う)
玄「ここが私の部屋なのです!」ガチャッ
照(咲は森林限界を超えた高山に咲く一輪の花)
照(……けれどこの子は)
玄「残念ながら客室に泊まっていただくことは出来ませんので、私の部屋で――……宮永さん?」ドウカシマシタカ?
照「松実さんは……」
玄「?はい何でしょう?」
照「まるで阿知賀の山に集る千本の桜だね」
玄「――……へ?」
玄「――……へ?」
照「冬の終わりを告げる優しい色で山を包み人を癒してくれる」
照「一度は別れても、また会えた時こうして素敵な色を見せてくれる」
照「ドラ爆の千本桜だよ」
玄「……」
照(我ながら上手いこと言えた!)ヨシッ
玄「……」
照「……」
照(あ、あれ?反応が悪い?)
玄「……えと……ちょっと居間に忘れ物をしたのです。先に入ってて下さいね」パタパタ
照「え」
照「……」ポツーン
照(……咲の時は大ウケしたのになぜ)
照(もしかして変なこと言っちゃったかな?)
照(……)
照「……」オモイダシチュウ
照「……」
照「……ぅ」オモイダシタ
照「…ぅゎぁぁぁぁぁああああああああああ……」クロレキシハッセイ
玄「うう……顔が熱い……////」カオマッカ
玄「いきなりあんなこと真顔で言わないでほしいのです////」キュッ ジャー
玄「……」バシャバシャ
玄「……ふぅ、これで多少マシになったはず//」
宥「玄ちゃん?」
玄「ひゃう!」ビクン
宥「あれ?宮永さんは……ってどうしたの?顔赤いよ?」
玄「べ、別に赤くないよ!宮永さんは私の部屋で休んでもらってるから!」
宥「そう……あっ、そうそう、大浴場空いたから使ってもいいって」オトウサンガ
玄「えっいいの?」
宥「うん、せっかく他県のお友達に来てもらったんだから、むしろ使いなさいって」
玄「やたっ!じゃ大急ぎで用意するね!」パタパタパタ…
宥「私は先行ってるねー」サムイカラ
宥「……」
宥「……用意って何の?」キョトン
照(……ああああああああああああああ)マダヤッテタ
照(ああああああああ恥ずかしいこと言っちゃったぁあああああああああ)
照(あああぁぁあーあー聞こえなーい!私はなんにもおぼえてなーぁぁあぁあぁああああああああ)クロレキシ ショウキョチュウ
玄「宮永さん!」ガチャッ
照(あぁぁああああああああぁああああああ)
玄「ど、どうしたんですか!?」テルユスリ
照(ああああぁぁぁぁぁぁぅぅゎ……え……?)
玄「耳を抑えたりして、もしかして耳が痛いんですか!?」
照「ファッ!?」ビクッ
照(い、いつの間に)
玄「たた、大変なのです、診療所の受付時間はもう終わっているけど電話すればなんとか……!」アタフタ
照「あ、いや、これはその……」アワワ
照「大丈夫」キリッ
玄「えっ、で、でも今すごく苦しそうにして…」
照「ただのイメージクリーニングだから」
玄「え……クリーニング……?」トレーニングジャナクテ?
照「綺麗好きだからね」
玄「??よくわからないのです」
照「わからなくていいから」ヒッシ
玄「は、はぁ……」
照(まずい……完全に不審がられている)
照(とりあえず話をそらさなきゃ)
照「あー……そういえば忘れものって何だったの?」
玄「!」
玄「忘れてました!これを持って付いてきて下さい!」ハイ
照「これって……もしかしてアレ?」リョカンノ
玄「はい!浴衣なのです!」
照「ここって……」
玄「大浴場なのです!」
玄「ここでゆっくり長旅の疲れを落として下さいね」
照「でも良いの? 私お客さんじゃないのに」
玄「今日はもうお客様の入浴はありませんし、それにお父さんの許可が下りましたから」イイノデス
照「そう……あとでお礼言わなきゃ」
照(明日の朝はここを掃除するのか)
照「どれどれ」ノレンクグル
玄「えっ」
照「あぁ、なるほど脱衣所からして結構広いんだね」キョロキョロ
玄「あの……」
照「ん?どうして中に入ってこないの?」マタワスレモノ?
玄「えと……女性はこちらなのです」
照「!」カァァ
照「……その……内装が気になって覗いてみただけで間違えたわけでは」
玄「はい」ニコニコ
照(いや待てよ、この場合にこの答え方は逆に不味いのでは……)ハッ
照「ち、違う!やっぱり間違えてた!」
玄「わかってます」クス
照(よし……何とか変態認定は回避できた。物わかりのいい子で助かる)フゥ…
玄「それじゃ改めてご案内いたします!」ノレンクグル
照「男湯とは左右対称になってるんだね」
玄「基本的にはそうですね。浴槽のデザインなどがやや異なりますが」
照「服はこのカゴに入れればいいのかな」パサ
玄「はい。あ、もし貴重品などがあればそちらのミニロッカーへどうぞ」ヌギヌギ
照「ううん特に何も……あ、財布がある……けどまぁいいよ。どうせ二人っきりだし」チラ
玄「よいしょっ……そうですね。まぁお姉ちゃんが中にいますから二人っきりではありませんが」プルン
照「ああそれでこっちのカゴにも服が入ってたんだ」チラチラ
玄「お姉ちゃんは寒がりなので最低でも二時間は入っているのです」プルン
照「……」ペタ
玄「んー」ゴソゴソ
玄「と……はい、これ小さいタオルです」プルン
照「……」ペタペタ
玄「それと大きいタオルはこちらに……あれ?どうされたんですか?」ヌガナインデスカ?
照「いや……ちょっと格差社会について少し考察を」イマヌグ
玄「?」
照「……」ヌギヌギ
照「ぐぬぬ……」パサリ
玄「???」
ガラガラ
照「おー……」
玄「……」ドヤァ
照「なかなか風情のある内装だね……」
玄「大きな旅館の大浴場ほど広くはないですが自慢の温泉なのです!」ザバー
照「えっ温泉なの?」ザバー
玄「はい!といっても温泉なのは露天だけで、中のお風呂は普通のお湯ですが」ザバー
照「露天風呂もあるんだ」キュッキュッ ジャー
照「えっと石けんは……」
玄「どうぞ」ハイ
照「ありがとう」
玄「最近はジェットバスやサウナ、釜風呂、電気風呂まで付いてるところも多いそうですが」
照「インハイで泊まったホテルのお風呂はそんな感じだった」ゴシゴシ
玄「残念ながらうちにはそんな余裕もスペースもありませんから、この地域の風景を武器とすることにしたのです!」ゴシゴシ
照「なるほど、それで露天風呂なんだ」ゴシゴシ
玄「しかも桶は檜で出来てます」ドヤァ
照「へぇ」ザバー
玄「あ、シャンプーリンスはこちらです」プルン
照「……」
玄「宮永さん?」プルン
照「――え?ああ、ありがとう」
玄「はい!」
照(……油断するとおもちに目が持っていかれる)ワシャワシャ
照「……」チラ
玄「~♪」ワシャワシャ プルプル
照「!」オオ…
照(それに引き換え……)ストーン
照「……」クスン
玄「♪~あれ?どうかされましたか?」ワシャワシャ
照「ううん、ちょっとシャンプーが目に入っちゃっただけだから」ゴシゴシ
照「ええと……露天風呂は」アライオワッタ
玄「中の浴槽の横にあるガラス戸から出られますよ」ワシャワシャ
玄「私はまだもう少しかかりそうですので、先に行っててください」
照「うん」
照「ガラス戸、ガラス戸……ああ、これか」
照「窓かと思ったけど扉だったんだ」ヨイショ
照「……あれ?」
照「反対かな」ヨイショ
照「わかった、引き戸だ」ガシッ
照「危うく恥をかくところだっ――」グッ グッ
照「」アカナイ…
玄「どうされたのですか?」アライオワッタ
照「松実さん、このガラス戸壊れt――
玄「窓に何かついてましたか?」
照「――綺麗に磨かれていて気持ちの良い窓だなぁと」
玄「えっそうですか?」パァァ
照「ウン」
照(嘘はついてない)
玄「ここは私の担当なので、そう言っていただけると嬉しいです」エヘヘ
照「……そうだったんだ」
照(ごまかそうとして咄嗟に見たままのことを言ったんだけど……うーん)
照「明日はこの窓を拭けばいいのかな?」
玄「え?どうしてですか?」キョトン
照「どうして、ってさっき電車で話したでしょ」
玄「電車……?」ハテ
照「えっ」
玄「――あ……ああ!そうですね!」ポン
照「……まさか忘れてた?」ジト
玄「い、いえそんなことは!それじゃ明日はよろしくお願いしますね」
照「こちらこそ、分からないところがあったら教えてね」
玄「はい!」ガラガラ
照(……なるほど、そっちがガラス戸か)
宥「あ……やっときたぁ……」チャプン
玄「遅くなってごめんね、お姉ちゃん」
照「おお……」
宥「ふふふ、すごいでしょ……うちの露天風呂からの絶景……」チャプチャプ
照「あ、うん……それも凄いけど」チラ
宥「?」ユサッ
照(そうか……絶景……絶景か……)ジー
玄「宮永さん、私たちもはいりま……」ハッ
照(ぐぬぬ……)ジー
玄(……宮永さんが真剣な目でお姉ちゃんのおもちを見てる)
照(これが絶景と絶壁の差……)ゴゴ
玄(おもちの丸みを二次元的になぞるような視線の動き……汗と飛沫の流れ具合から質感と弾力を読み取ろうとする集中力……)
玄(駅前での和ちゃんに対する反応といい、さすがはチャンピオン……よく解っていらっしゃる!)ウム
照「……」ゴゴゴ
玄「……」フフフ
宥「え……なに……どうしたの二人とも……」ビク
うーん眠いと考えも文章もまとまらない
ちょっと流れがgdgdしてきたので今日は寝ます
カッとなって勢いで書き始めるのはよくないと思った(小並感)
その場その場の思いつき進行なんで前後に矛盾が出来そうでこわい
照「ふぅー…」チャプ
玄「極楽なのです……」チャプン
宥「あったかーい……」チャプチャプ
照「はぁ……」
玄「わが松実館の温泉の感想はいかがですか?」
照「なんだか……なんて言えばいいのかな……昔を思い出すというか」
宥「それはノスタルジーだねー」
照(ノストラダムス?)
玄(モスタル人?)
玄「長野は温泉が多いですもんね」
照「それもあるけど、何だか松実さんといると懐かしい気分になる」
玄「え……私とですか?」
照「ずっと昔から一緒にいたような、そんな感じ」
玄「……実は私もなんです」
照「松実さんも?」
玄「理由は何となく分かってるんですが、宮永さんにもそう思っていただけていたと思うと何だか……」
玄「……うれしいのです」エヘヘ
照「そ、そう」テレ
照「――私もうれ……!」ハッ
宥「……」ジー
照「……何?」
宥「玄ちゃん」
照「え?」
玄「お姉ちゃん?」
宥「玄ちゃんは玄ちゃんだから玄ちゃんって呼んであげて?」
照「???」ドイウコト?
宥「私とお父さんも松実さんだから松実さん呼びはややこしいと思うの」
照「……なるほど」
玄「たしかに……」
照「でも良いの?名前で呼んでも」
玄「もちろんなのです!」
照「それじゃそうさせて貰うね……その……」
照「……く、玄ちゃん?」
玄「!?」
宥「あらあら」ウフフ
照「え……やっぱ駄目かな」
玄「い、いえ、まさか “ちゃん” 付けとは思わなかったので」ドキドキ
照「松――……宥さんがそう言ってたから……」
宥(玄ちゃんは玄ちゃんだからねー)ブクブク
照「玄 “さん” の方がいいかな?」
玄「いえ……あ、あの……どちらかといえば……」モジモジ
玄「……前者でしょうか」カァァ
照「前者って……玄ちゃん?」ノホウ?
玄「……////」コクリ
宥「それじゃ今度は玄ちゃんも照ちゃんのこと名前で呼ばなきゃね?」
玄「えっ!」
照(数年ぶりに『ちゃん』付けで呼ばれた……)
宥「だって咲ちゃんと被っちゃうし、なにより一方だけが名前で呼ぶのは不公平でしょう?」
玄「そ、そうですね……それじゃ……」
照「……」ドキドキ
玄「……照……さん?」
照「っ!」
照「あ、ありがとう。これからもよろしくね……玄ちゃん」ドキドキ
玄「は、はいこちらこそよろしくお願いします……照さん」カァァ
宥(今日のお湯、いつもよりあったかーい)ニコニコ
照(……なんだろう猛烈に恥ずかしくなってきた)ドキドキ
玄(ううう……はずかしいよー……嬉しいけど……)カオマッカ
照(名前で呼ばれるのなんて慣れてるはずなのに……)ドキドキ
照「……」
玄「……」
宥「あったかーい……」ウフフ
照(だめだ、何か変な空気になってる……何か、何か話題は……)
照「そ、そういえばこの温泉の種類は?」
玄「えっ!?あ、はい、ええと、たしかナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉です」
照(???名取り……無探査……演歌……?)
照「……それでその効能は?」
玄「美肌効果や火傷、裂傷に効くそうです」
玄「それと保温効果に優れているそうですよ」
照「へぇ……」チラ
宥「ぶくぶくぶくブクブク(あったかーい)」
照(口まで浸かってる……)
玄「あと慢性婦人病にも効くと聞きました」
照「慢性婦人病ってなn
照(はっ…もしかして)チラ
玄「?」ポヨン
宥「ぶくぶく」ボヨーン
照「」ナルホド…
玄「照さん?」
照「……謎はとべてすけた」ボソ
照「」ザブン
玄「えっ!ど、どうされたんですか!?」オロ
照「……」ブクブク
玄(お姉ちゃんの真似……!?)ナゼ
照「ぅぅう……」フラ…
玄「大丈夫ですか?」オロ
照「茹だった……」
玄「ほらしっかり肩につかまって下さい」ヨイショ
照「ありがとう……」
玄「私がいくら言っても頑に出ようとしないからですよ」
照「一瞬目の前が真っ暗になった」
玄「一瞬どころか完全に目が回ってました」
照「う……」
照「まさかこんなになるとは思わなかったから」オコッテル?
玄「まったくもう……心配させないでください」オコッテマス
照「やっと部屋に着いた……」ゴメンネ
玄「よいしょ……あらかじめ布団を敷いていてよかったです」
照「……宥さんは?」ゴロン
玄「まだ入ってますよー。あと一時間は出てこないと思います」アオギマスネ
照「そんなに……?」アリガト
玄「お姉ちゃんは寒がりですので」パタパタ
照(寒がりって熱に強い人のことだっけ……?)スズシイ
照「ところで明日はどうするの?」
玄「どう、ですか?」
照「明日の予定のこと」
照(他に何か手伝えることがあれば手伝いたい)
玄「んーそうですね……照さんはどこか行きたい場所とかありますか?」
照「私が行きたい場所?」ドウシテ?
玄「阿知賀や奈良、関西など色々とご案内したいのです!」
照「えっ、でもこれ以上迷惑をかけるわけには」
玄「もうまたそんなこと言って……」
照「だって……」スミレニオコラレル
玄「迷惑なんかじゃありませんし、むしろ私がそうしたいって言ってるんですよ」
玄「間違いだったとはいえ、せっかく関西に来られたのですから……良い思い出を作って帰ってほしいのです」
玄「私が言い出したって言えばきっと弘世さんだって分かってくれます。それに……」
照「それに?」
玄「……それにもっと照さんと仲良くなりたいのです」
照「そ、そう」テレ
玄「縁があればまた会える、また会えれば仲良くなれるって憧ちゃんのお母さんも言ってたのです」
玄「ですから明日は私にご案内させてください」ペコリ
照「……ぁ」
照(困った……嬉しいけど気恥ずかしくて反応に困る)
照(こういう時どういう顔をすればいいんだろう)
照(とりあえず笑ってみるか)ニヤリ
玄「!?」ビクッ
照(間違えた、こっちだ)エイギョウスマイル
玄「……つまり駄目ってことですか?」
照「えっ」ナゼ
玄「……」ショボン
照「いや、あのそういうことじゃなくて」
照「」スゥー
照「ありがとう、それじゃお願いするよ」ニコリ
玄「ほんとですか!?」パァァ
照「私も玄ちゃんともっと仲良くなりたいから」テレ
玄「そう言ってもらえると嬉しいです」エヘヘ
照(この素直さが眩しい)
玄「それじゃ改めて、明日はどこに行きたいですか?」
照「んー……」
玄「奈良だけじゃなく京都や大阪も買い出しによく行きますので、ご案内できますよ!」
照「それじゃ取りあえず……」
照「……阿知賀を案内してくれる?」
玄「はい!おまかせあ……って、え?阿知賀ですか?」
照「うん。駄目?」
玄「駄目ではないですが……何しろ田舎ですので照さんにとって面白い物があるかどうか……」
照「さっき玄ちゃんは阿知賀の自然や風景の素晴らしさを私に語ってくれた」
照「あなたが誇りに思っている自然を、町を、私は自分の目で見てみたい」
照「大阪や京都は別の時にでも行けるから……」エンセイトカデ
照「今は今の状況でしか出来ない体験をしたい」
玄「照さん……」
玄「……わかりました!そんなに大きな町ではありませんが、精一杯ご案内します!」
照「うんお願いね」クス
玄「おまかせあれ!」
'" . . . . . . . . . `
/ . . : : : : : : : : : : : : : : . . \
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_/ { / //〉x芹示ミ.x:ト : : :| ,イ芹示ミx. |: : : | |
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__/ ∧_ イ:i_.ヽ.乂ぅ;ソ 込 _ン'′!:. :.:.:|:.|
'" /\ノ:.|ハ , ハ: :. :.|: |
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} /:.:|: : :.lヽハ i } 人 : : : : : |
//: : i!: : :|: : :.ゝ 、 ノ イ: :.:l:. :.:/ : :.l
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/ __. i∧: :.| \|:. :.| : : :.v~i__ __レヘ: :.|: /: 〃/:. : l
/`¨´ ̄\-┼‐\!‐ ┴ ┴‐‐く 入__/^ヽ ` y/¨´: : : : : l
ハ \ \∧ ∧ / ` .:.:..l
. / ! 、 | x─‐ヘ x─‐┐ ’'ヽ
´ / `| 〉: :. :.__Y^Y__: : : :〈 ハ
ー‐ | 〈: : : : : :.j‐┼:. :.::. :. 〉 ′ l
、 V 〉__/i! 〈\.:.:. :.∧ |
玄「それじゃ電気消しますねー」カチッ カチカチッ
照「……豆電球だけ付けといて」モゾ
玄「え?こうですか?」カチカチカチッ
照「ありがと」モゾモゾ
玄「どういたしまして」ナノデス!
照「……」
玄「……」
照「理由、聞かないの?」
玄「聞いてもいいんですか?」
照「……あまり聞かれたくない」
玄「じゃ聞かないでおきますね」
照(素直すぎる)
玄「――実は私も豆電球付ける派なんですよね」
照「玄ちゃんも?」エッ
玄「一人で寝る時だけですけど」
玄「暗闇が苦手というか……なんかお化けが出そうじゃないですか」ブルッ
照「……わかるよ」
玄「わかりますか」
照「仰向けに寝てて、暗闇の天井からのっぺりした白い顔が垂れ下がって来たらどうしようとか」
玄「そ、それは怖い……」ブル
照「目が暗闇に慣れてきた頃、月明かりの障子に正座してる女の人の影が映って」
玄「映って……?」ブルブル
照「頭をコックリコックリと前後に揺らしだしたかと思うと、それがどんどん速くなっていって……」
玄「あわわ……」
照「最後には髪の毛を前後にバッサバッサと振り乱れさせて……!!」
玄「て、てて、照さん!?」
照「って感じのことを想像しちゃったりするよね」
玄「も、もう止めて下さいよ……本気で怖かったです」
照「……玄ちゃん」
玄「なんですか?」
照「もう少しそっち寄ってもいいかな」
玄「?良いですけど、どうして……って、えっ、なんでそんなに震えてるんですか?」
照「自分で言ってて怖くなってきた」ガクガク
玄「」
照「ごめん、暑いと思うけどしばらくこのままで」ガクガクガク
玄「まったくもう……こんなところまでそっくりなんですから」ギュッ
照「え?」
玄「こうして手を握ってれば大丈夫ですよ。お化けはあったかいのが嫌いですから」
照「……私は宥さんじゃないよ」
玄「あ、やっぱりバレてましたか」テヘ
照「あまり似てないと思うけど」
玄「そうですね、見た目は全く似ていないと思います」
照(……今一瞬胸に視線を感じた気がする)
玄「何となくです。最初に会った時から何となく似てるなーって思って。それが何なのかは分かりませんが」
照「そう……」
玄「どうやら震えは収まったようですね」
照「あ、うん、ありがとう」
玄「……ふふっ」
照「?」
玄「なんだか不思議な気分です」クスクス
照「なにが?」
玄「だって、あまり会話も出来ないまま別れた照さんと再会して、まだ一日も経ってないのにこうして仲良くなって」
玄「同じ布団で手をつないで眠ることになるなんて」
玄「ほんの十時間ほど前の私には想像もできなかっただろうなと思うと……ふふっ」
照「……そうだね。私もそう思う」
照「ずっと嫌われたと思ってたから」
玄「そんなことあるわけ……!」
照「それにもっと泣き虫だと思ってたけど、以外としっかりしてて驚いた」
玄「もう……誰のせいだと思ってるんですか」
照「ふふっ」
玄「……私だって照さんがこんなに怖がりだと思いませんでした」
照「な……」ンダト
玄「もっとクールでカッコ良くて、何事にも動じない人だとばかり思っていたのですが」ニヤニヤ
照「……自分だって怖がってたくせに」
玄「怖がらせようとして自爆した人に言われたくありません」
照「……」ヌヌヌ
玄「……」ムムム
照「……」
玄「……」
照「……」
玄「……」
照「……玄ちゃん?」
玄「……はい……なんですか……」ムニャ
照「あ、まだ起きてた」
玄「……もう眠りかけてましたよ……」ムニャムニャ
照「その……幽霊って信じる?」
玄「……もしかして思い出して怖くなってきたんですか?」ギュ
照「いや、そういうわけじゃ……」ギュ
玄「……そうですね……実際いるかどうか分かりませんから何とも言えませんが……」
玄「……私は……信じたいです」
照「信じたい?」
玄「……そうすれば……お別れしてもまたいつか会えるじゃないですか……」ムニャ
玄「」フワァ…
照「それってどういう」
玄「……ごめんなさいわたしもうだめで……す……」ムニャムニャ
照「え」
玄「」スー スー
照「……」
照(……寝よう)
照「……」
照(天井のシミが人の顔に見える……)ウウ…
玄「」スー スー
みなさん
おやしみなさい・・・
/^ヾo
○= ノ:;☆_;;.ヽ===○
∥(⌒(´・ω・`n ∥ .∥
/(_,,..てっ..,,__ ノ  ̄./i
_,.(~ ̄  ̄ ̄~ヘ, | !
(~ ,::::::☆:::::::::☆:::::::::::::::.'' }i |
ノ ..:☆::::::::::☆:::::::::::☆::::." 丿
今すごくリアルが忙しいので次回がもうちょい先になるか、今週中に一度投下して少し時間が空くかのどっちかになると思います
取り急ぎ報告まで
忙しくて全然書けてないけどとりあえず投下します
チュン チュン
チュン チュン
照「」スー スー
チュン
チュン
照「」スー スー
照「……んっ…ぁぅ…」モゾ
照「んぅ……」モゾモゾ
照「」スー スー
チュン チュン
チュン チュン
照「」スー スー
照「」ギュルルルル
照「」スー…
チュン
照「ちゅんのみっ!?」ガバッ
照「……」
照「……」キョロキョロ
照「……なんだ夢か……」
照「……」フワァ…
照「……」ゴシゴシ
照「……」
照「……」ボー
照「……あれ?」ココドコ?
―大浴場―
ペタペタ
ジャーーーーーーーー キュッキュッ
カラン
玄「ふん、ふんふふん♪」テレレレ
玄「ふん、ふんふふん♪」テレレレ
ゴシゴシ
ゴシゴシ
玄「ふん、ふん、ふん、ふん、ぱんぱららっぱっぱん♪」
ザバー
カポーン ジャー
キュッキュッ
玄「あーたーらしーいーあーさがきったー♪」ゴシゴシ
玄「きーぼーぉのーあーさーが♪」ゴシゴシ
玄「よろこーびなんちゃらふーんふふん♪」マジックリーン
玄「おーおぞーらあーおーげー♪」チューーー…シュ
玄「らーじおーぉのーこーえにー……んー洗剤が少なくなってるなぁ」プシュプシュ
玄「後で買いにいかなきゃ」
ザバー
ジャー キュッキュッ
玄「ばーんだーのさーくらーか、えーりのーいろー♪」ゴシゴシ
玄「はーなーはー、よーしのーにあーらしーふくー♪」ゴシゴシゴシ
玄「やーまとーおーもちーと、うーまれーt
ガラガラッ!!!!
玄「ひゃっ!!」ビクッ
照「」ゼーハーゼーハー
玄「び、びっくりした……どうしたんですかそんなに慌てて」ドキドキ
照「」ゲホゴホ
玄「だ……大丈夫ですか?」
照「お……」ゼー
玄「お?」
照「……」コホン
照「おはよう」キリッ
玄「えっ……あ、お、おはようございま」
照「じゃなくて、遅れてごめんなさい」
玄「へ?」
照「約束してたのにうっかり寝坊してしまった」
玄(……そういえば何か約束してたような)
玄(なんだったっけ……?)
照「すぐに取りかかるから、最初だけやり方を教えて?」
玄(だめだ思い出せない)ウーン
照「……もしかしてもう終わっちゃった?」
玄「……」
照(腕を組んで無言で床を見てる……もしかして怒ってる……?)
玄(うーん……阿知賀を案内するのは10時くらいからだし……大阪を案内するのは明日だし……約束……)ムムム
照(眉間に皺が……やっぱり怒ってるのかも……)
照(いやでもまさか菫じゃあるまいし、寝坊ぐらいで玄ちゃんがそんな……)
玄(約束……約束……)
照「あの、どうかしたの?」オソルオソル
玄「……いえ……今ちょっと(思い出す)準備をしていますので少々お待ち下さい」
照「準備……って掃除用具はそこに置いてあるみたいだけど、まだ何か」
玄「あっ!」ポン
照「」ビクッ
玄「そうだ、そうでした!思い出しました!」
照「えっ」
照「えっ」
―居間―
照「……」ムスー
宥「……」ヌクヌク
宥(……照ちゃんから不機嫌なオーラを感じる)ヌクヌク
宥「あの、何かあったの?」
照「……何かって何が?」ムスー
宥「えっ……と……なんだか機嫌が悪そうだから」
照「別に怒ってない」プイ
宥「そ、そう」
照「……」プクー
宥(フグ……)
宥「……あ、朝ご飯まだかなー。ちょっと手伝ってくるね」ヨイショット
照「待って」
宥「え?」
照「私が行ってくる」
宥「そんな……照ちゃんはお客さんなんだから私が」
照「いいから、こたつで待ってて」ガラガラ
ピシャ
宥「あ……」
宥(お客さんを動かしてしまった)
宥(追いかけて引き止めなきゃ)
宥(……)ヌクヌク
宥(……こたつから出られない)ヌクヌク
宥(あと十秒、あと十秒だけ)ヌクヌク
ガラガラ
玄「お待たせー」カチャカチャ
宥「あ」ヌクヌク
宥(結局出られなかった……)
玄「ええと、これが照さんのお茶碗、これがお姉ちゃんのお茶碗、これが私の」カチャカチャ
宥「あの……台所に照ちゃん来なかった?」
玄「うん、もうすぐ来ると思うよ。配膳を手伝いたいって言われたからお願いしたの」
宥「そうなんだ……」
玄「これは照さんのお箸、これはお姉ちゃんの……あ、私のを忘れてきちゃった」カチャ
宥「……」
玄「取ってこなきゃ」ヨイショ
宥「玄ちゃん、照ちゃんと何かあった?」
玄「?何かって何が?」
宥「さっきの照ちゃん、ちょっと不機嫌そうだったから……」
玄「んー、大丈夫じゃないかな」
宥「え?」
玄「照さんは不機嫌でもないのに不機嫌そうに見えちゃう損な人なんだよ」
宥「何気に失礼なこと言ってるよ、玄ちゃん」
玄「だから怒ってるように見えてもそれは見た目だけ。実際はすごく優しいんだから」
宥(怒ってるというか拗ねてる感じだったけど)
玄「昨日だって、今朝のお風呂掃除を手伝ってくれるって言ってくれたんだよ」ヤサシイデショ?
宥「手伝ってもらったんだ」ヤサシイネ
玄「ううん、すっかり忘れてて照さんが起きる前に殆どやっちゃった」
宥(……なるほど)
ガラ…ラ…ラ…ララ……
照「お、おまたせ……」カチャ…カチャ…
宥「ジェンガ!?」
玄「ありがうございます照さん」ニコニコ
照「な、なんのこれし……き……」グラグラ
宥(はわわ……)
照「大丈夫(キリッ」
宥(ちょ、ちょっとそんなに傾けたら)
グラァ
照「」
宥「あぶな――」
玄「それじゃ後は私におまかせ下さい!」ヒョイ
照「あ」
宥(……ギ……ギリギリセーフ)バクバク
照「……」
玄「これはお姉ちゃんの、これは照さんの」テキパキ
照「……」
宥(あ、照ちゃんの表情が)
玄「あとはお鍋からお味噌汁を」
照「……」シュン
宥(照ちゃん……)
宥(照ちゃん……)
玄「それにしても照さんが手伝って下さって本当に助かったのです」
照「……え?」
玄「朝食は食器が多いので三回くらい往復しなきゃって思ってたのですが」
玄「照さんが手伝って下さったおかげで、たった一回で済みました!」
玄「本当にありがとうございました」ペコリ
照「ど……どういたしまして」テレ
玄「それにしても一度にあんなに沢山運べるなんて、さすが元チャンプなのです!」
照「それほどでもない」テレテレ
宥「元チャンプは関係ないような」
宥(それにしても……やっぱり玄ちゃんって……)チラ
玄「?」
宥(でも照ちゃんも大概……)チラ
照「ん?」
宥「まぁいっか」ボソ
照「え?何が?」
宥「ううんなんでもない」
玄「さぁ冷めない内に食べましょう!」
宥「いただきまーす」
照(??なんだったんだろう?)イタダキマス
とりあえずここまで
来月からしばらく遠い所にいっちゃうので間が空きます
照玄っていいよね、字面はお坊さんっぽいのに響きはエビフライにかけて食べると美味しそう
し
やっと帰ってきました
生存報告とスレ保守だけでもしようかと思ったけれど予想通り書き込めなかった(異国のIPだから?)
>>178さんありがとう
投下は早ければ14日~17日の間にでも
(もし何か希望のシチュとかあれば言って下さい。終点は決めずにだらだら書いていくつもりなので参考にします)
ちょっと急いでるので少しだけ
今回はマジで少ない
玄関
玄「いってきまーす」
照「いってき…わわっ」グラ
玄「あっ」サッ
ポヨン
照「」
玄「ふー、危ない危ない……って、照さん?」
照「……ワーオ」ムニムニ
玄「あの、大丈夫ですか?」
照「うん、ちょっと靴ヒモ踏んじゃって……ありがとう」
玄「今日は歩きますから、しっかり結んでおいて下さいね」
照「わかった」
玄「それじゃ先に表に出てますから」ガラガラ
ピシャン
照「……」
照「……ババロア」ボソ
照「それでどこに行くの?」オマタセ
玄「うーん、まずは神社ですかね。近いですし」マツミデス
照「神社?」
玄「ふふふ……ただの神社じゃありませんよ?」
照「と、いうと?」
玄「なんと、あの憧ちゃんのお家でもあるのです!」ジャーン
照「おおー(誰だっけ)」パチパチ
玄「というわけで行きましょう!」
照「うん、って何この大きな鳥居。昨日は家の前にこんなのあったっけ?」
玄「毎日ありますよー」
照「……全然気付かなかった」
玄「昨日はかなり暗くなってましたから」
照「ということは向こうに見える大きな建物が神社?ほんとに近いんだね」
玄「いいえ、あれはお寺です」
照「へぇ。なんていうお寺なの?」
玄「……とても有名なお寺ですよ」
照「そうじゃなくて、お寺の名m
玄「ところで照さん」
照「ん?」
玄「夕べはよく眠れましたか?」
照「――うん、ぐっすり寝たよ。温泉と玄ちゃんの晩ご飯のおかげかな」
玄「そう言っていただけると嬉しいです」エヘヘ
照(……本当はあの後、天井のシミが気になって1時間くらい寝付けなかった)
照(なんとなく目をやった障子に人の影が映った時は心臓が止まるかと思った)マジデ
照(まぁ……普通に考えれば従業員の人が廊下を歩いてただけなんだろうけど……)
玄「照さん?」
照「そういえば今朝、変な夢見たよ」
玄「変な夢ですか?」
照「そう、すごく変な夢」
玄「どのくらい変な夢ですか?」
照「――えっと……青森に向かってたはずなのに気が付くと奈良にいた、ってくらいの」
玄「ふんふむ、それは変ですね。あり得ません」
照「……」
玄「あっ、よくあります」
照「だよね、やっぱり」
玄「はい!」
照「やっぱりないよね」
玄「はい!」
玄「……あっ」
照「」ソッカー
玄「あ、その、えー……あ、それでどういう夢だったんですかっ?」
照「中のみを和了される夢」
玄「役牌のみということですか?」
照「変でしょ?」
玄(……よくあることのような……あ、でもよくありすぎて逆に殆ど見かけないかも)コノマンガデハ
玄(嶺山開花とかの方がよく見かけるもん)コノマンガデハ
玄「そう考えるとたしかに変かもしれませんね」
照「牌が14枚とも中なんて」
玄「えっ、それ変じゃないですか?」
照「うん」
玄「……んんっ?」
照「しかも中がドラだったから、変どころか大変だった」
玄「???そ……うですね……?」
照「わぁ……近くで見ると大きいお寺だね」
玄「山伏さん達の間では有名な修行場らしいですよ」
照「なんて名前だっけ」
玄「え……ええと……それはですね……あの……」キョロキョロ
照(もしかして知らないのかな)
玄「!」ミツケタ
照(あ、表札見てる)
玄「カナミネヤマ寺です!!」
照「おお」
玄「とっても、とっても有名なお寺なのです!」ドヤ
照「へぇー」
照(別の看板に書かれてるフリガナと違うみたいだけど黙っておこう)
(内容の無い会話で)すまんな
ちょっと明日早いのでこれだけです
前回同様かなり少ないですが
~憧の家~
玄「到着なのです!」
照「結構広い……それにいい眺め」
玄「ここからの眺めはよくポスターになっているのです!」
照「へぇ。じゃここも結構有名な神社なのかな」
玄「それはもう、なんたって憧ちゃんのお家ですから!」エヘン
照(え……そんなに有名人なの? もしかして芸能人?……ちょっと緊張してきた)
玄「憧ちゃーん!」
シーン
照「……」
玄「……あれ? あーこーちゃーん!!」
シーン
玄「……」
照「反応がないね」
玄「……仕方ないので」
照「別のところにいくの?」
玄「玄関のインターホンを鳴らしてみます」
照「最初からそうすれば良かったんじゃないかな」
ピンポーン
玄「……」
照「……出ないね」
玄「おかしいですねぇ……あっ!」
照「どうしたの?」
玄「そういえば今週は家族でどこかに行くとか言ってた気がします」
照「それじゃ駄目だね……というかこんな立派な神社なのに空けていていいの?」
玄「どうせ桜のシーズンやお祭りの時以外は地域の人しか来ませんから」
照「そうなんだ。でも一度会ってみたかったな」
玄「え?インターハイで会ったじゃないですか?」
照「えっ」
玄「私たちのチームの中堅ですよ」
照「……あー」
玄「もしかして忘れちゃってました?」
照「いや、顔は覚えてる。けど名前が難しい人が多くて」
玄「あー確かに変わった読み方の人多いですよね」
照「そもそも人数が多すぎて名前まで覚えきれない」
玄「ですよねぇ」
照「あっ、玄ちゃんのことはすぐに覚えたよ」
照(あんなに失点したのは久々だったし)
玄「えへへ有り難うなのです。私も照さんのことはすぐに覚えました」テレ
玄「というか知ってました。有名人なので」
照「……有名人……いつも言われるけれどあまりピンとこない」
玄「他人の目と自分の目は違いますからね」
玄「それに自分の姿を自分の目で直接見ることはできないですから、なかなか気付かないことも多いんですよね」
照「誰かに言われたの?」
玄「言われたり言われているのを見たり、です」
照「そっか……あっ」
照「有名人といえば、その中堅の……」
玄「憧ちゃんですか?」
照「そう、私あまりテレビとか見ないから、その子の名前を聞いたのは初めてなんだけど」
玄「?」
照「いや、インハイの時に聞いてるはずだから初めてではないか。でも天江さんみたいなタイプじゃないよね」
玄(天江さんって衣ちゃんのことかな)
照「要するに、あまりよく知らないから今の内にどんな子なのか聞きたいなって」
玄「どんな、ってとても良い子ですよ? たしかに衣ちゃんとはタイプは違いますけれど」
照「そうじゃなくてどういう種類の有名人なのかなって思って」
玄「えっ憧ちゃんって有名人なんですか!?」
照「ん?」
玄「え?」
照「ごめん、なんか勘違いしてた」
玄「いえこちらこそ誤解を招くようなことを言ってしまったみたいで」アセ
照「もともとこの神社そのものが有名だったんだね」
玄「そうなのです。たしかナンチョウのゴショ?だったとかなんとか」
照(難聴……?御守……? 耳の病気にご利益があるってことかな)
照「それは菫を連れてこなきゃ」
玄「弘世さんはこういうのが好きなんですか?」
照「うーん、というか菫は人の話を間違えて聞いてる時があるから……」
玄「むむむ、それはよくないですね」
照「本当に。今は私がついているから良いけれど、将来が心配」ハァ
菫「」ボキッ
淡「ひっ、ど、どうしたの?」オハシガ…
菫「いや……なんか今すごく腹立たしいことを言われた気がしてな」
短いけど今夜はこれで
すみません、リアルがめちゃくちゃ忙しくて一旦お別れ中です
何とか続けるつもりですのでしばらくお待ち下さい
すみません
ちょっと保守します
玄「あれから穏乃ちゃんのところや灼ちゃんのところにも行ってみましたが……」
照「お友達、みんな留守だったね」
玄「まだ夏休みが残っていますから、みんなインハイで動けなかったぶん家族旅行してるんだと思います」
照「なるほど」
玄「すみません無駄に歩かせてしまって……」
照「ううん、阿知賀の観光もできたから」
照(……正直、初対面の人達と話すのは苦手だからホッとした)
玄「見る場所が少なくて申し訳ないです、何しろ田舎なもので」
照「ううん楽しかった。今は都会住みだから懐かしい気分になる」
玄「ご実家の辺りもこんな感じだったんですか?」
照「少し違うけど東京よりは似ている」
玄「上り坂が多くて大変だったのでは」
照「いや、実家の近所も坂だらけだったし慣れて……」グー
玄「あ」
照「……でも少しお腹へったかも」
玄「そうですね……もうすぐお昼ですし……そこの食堂に入りましょうか」
照「賛成」
~店内~
照「あー……冷房が涼しい……」
玄「晩夏とはいえまだまだ日中は暑いですねー」
照「それにしても、やっぱり歴史的な建物が多いね。シーズンじゃないのに観光客もよく見かけるし」
玄「うちの家業もそれで成り立ってますから」
照「そういえばさっき山伏さんの格好したガイドさんがいた」
玄「あれは本物の山伏さんですよ?」
照「えっ、でも後ろを観光客っぽい人達がぞろぞろ付いていってたけど」
玄「あぁおそらく体験修行の人達じゃないでしょうか」
照「体験修行?って山伏の?」
玄「はい、よくは知りませんがお寺でやっているそうですよ」
照「へぇ」
玄「やってみたいですか?」
照「え? いや、うーん……」
照「……ちょっと興味あるかも」
玄「うちのお父さんは一度参加したことがあるそうなんですが」
照「うん」
玄「なんでも岩の上に立って滝に打たれたり」
照「おお……いかにも」
玄「急な岩場にしがみつきながら山を登ったりと中々の荒行だそうです」
照「ふむふむ」
玄「中でも覗き修行というのが凄いらしくて」
照「覗き?」
玄「どんなのだと思います?」
照(覗き……山伏って忍者みたいなものだっけ?たしか映画では……)ウーン
照「……千里山の子がやってたみたいな能力を鍛えるとか?」
玄「それならむしろ照さんの方が覗きのイメージに近いような……」
照「たしかに」
玄「というかオカルト系ではありませんよ。もっと現実的な恐さです」
照「え……恐いの……?」
玄「まず腹這いになって断崖絶壁から身を乗り出してが崖の下を覗きます」
照「えっ危な…」
玄「次に山伏さんが後ろから腰のベルトを掴んで質問してくるそうです」
照「……」
玄「『仕事をきちんとやるか!』」
照(そういえば親善交流すっぽか……いや、違う違う、あれは事故だし)
玄「『家族を大事にするか!』」
照(……さ、咲の件はちゃんと解決したし)
玄「『弱い者いじめをしないか!』」
照(……)
照「……大丈夫、玄ちゃんは強い者のはず」ボソ
玄「え?」
照「なんでもない」
照(……私から高得点取ったし)
玄「それで『はい』と答えるたびにベルトをこう持ち上げて」グイ
照「……」
玄「身体を崖の方へ押し出してくるらしいです」ズズズ
照「……」ハラハラ
玄「落ちそうなくらいまで身を乗り出したあたりで、やっと引き上げ」スッ
照「……」ホッ
玄「てくれたと思いきや一気に突き出されてそのまま谷底へ!!」ドンッ
照「」
玄「と見せかけて実は命綱がついてるので少しガクッとずり下がるだけだそうです」
照「……え」
玄「ですから絶対安全なのです!」
照「あ……そうなんだ」
玄「やってみたいですか?」
照「い、いや、私はその」
玄「何ならお父さんから頼んでもらってツアーに参加…」
照「ちょっ」
玄「と言いたいところなのですが、あいにく修行場である山は女人禁制だそうで」
玄「残念ですが……」
照「……そ、そう、なら仕方ないね、残念だなー」
玄「あ、でも女性のためのコースがあったような気がしますからお父さんに」
照「っ!く、玄ちゃん、これ!これ何?」
玄「え?んーと、ああそれは柿の葉寿司ですね」
照「お寿司なの?これが?」
玄「美味しいですよ。奈良の特産品なのです!」
玄「といってもお隣の和歌山や石川でも作られてるそうですが」
照「へぇ……初めて聞いた」
玄「と、そうでした、お父さんに電話して体験修行の予約を
照「これ!私これにする!すみませーん注文お願いします!」
玄「えっ?ちょ、ちょっ待、私まだ決めてな
店員「はい、ご注文お伺い致します」
照「柿の葉寿司とざるソバと鮎の塩焼きと葛もちと草もち下さい」
玄「そんなに食べるんですか!?」
照「ほら玄ちゃんも早く」
玄「わわっ、ちょっと待って下さい、えっとカレーにしようかな……いや、やっぱりラーメンの方が……」ブツブツ
照(ふー……何とか煙に巻けたかな)
照(……)ペラ
照(あ、この葛ロールってのも美味しそう)
取り急ぎここまで
また夜に少しだけ投下します
少しだけ投下します
店員「お待たせしましたー」
照「おお……これが柿の葉寿司……」
照「それではさっそく」アーン
玄「え?ちょ、ちょっと待って下さい!」
照「なに?」
玄「葉っぱごと食べたら駄目ですよー」
照「え、食べられないの?」
玄「食べられないことはないと思いますが、多分おいしくないかと」
照「桜餅の葉っぱは食べられるのに」
玄「あちらは桜の葉の塩漬けですから美味しいですが……」
照「柿の葉は美味しくないと?」
玄「食感が固くて……何より苦かったですので」ウェ
照(食べたことあるんだ)ムキムキ
照「おお、これは」
玄「どうですか?」
照「なかなか身の締まったアジだね」シタリガオ
玄「サバなのです」
照「……」
照「……えっと奈良の魚はサバが美味しいんだね」
玄「いえ、奈良に海はありませんので……」
照「」
玄「しいて言えば鮎でしょうか……って照さん? どうかされましたか?」
照「……え……あ、やっぱり鮎なんだね、うん分かってたよ、実家も海なし県だったから、そうだと思った」アセアセ
照(少し苦しいか……?)
玄「えっ!長野も海がなかったんですか!?」
照「そ、そうだよ。有名なのに知らなかったんだ?」ホッ
玄「ああっ、これは大変失礼をば! 地理が苦手なだけで決して長野に興味がなかったわけでは」
照「まったく仕方ないなー玄ちゃんは」
玄「奈良と長野にそんな共通点があったとは知りませんでした……」
照(私も知らなかった)
玄「……っと、すみません止めてしまって。どうぞお先に召し上がって下さい」
照「それでは……」アム
照「……おいしい……!」
玄「でしょう!」
照「いやほんと美味しい、美味しいよコレ」パクパク
玄「そうでしょうそうでしょう!」
玄「世間では昔から『奈良に美味いものなし』なんて言われてますが、柿の葉寿司があるのです!」
照「そんなこと言われてるんだ」ハジメテキイタ
玄「と、そうこうしている内に私の料理も来ましたね」
照「えっと……ラーメン……じゃないよね?」
玄「これはにゅうめんなのです!」
照(New men?)
玄「これも奈良の郷土食なのです」
照「見た目はソーメンに似てるね」
玄「ソーメンですよ?」
照「え、でも今ニュー・メンって」
玄「にゅうめんですよー、ソーメンを煮ると書いて煮麺、それが訛ってにゅうめんです!」
照「ああなるほど……あれ? じゃ、ソーはどこへ行ったの?」
玄「え?索子がどうかしましたか?」
照「ん?」
玄「?」
照「……」
照「(ま、いいか)……それにしても玄ちゃんは物知りだね」
玄「えへへ、いつもお客様にお料理のご案内をしていますので」
照「あぁそれで郷土料理に詳しいんだ」
玄「にゅうめんは作り方も簡単ですし、レシピを差し上げますから照さんもぜひお家で!」
照「あー……うん、今度(咲に)作って(もらって)食べてみるよ」
玄「ぜひそうしてください!」
照「それにしても名前の響きだけ聞くと乳製品っぽく感じるね」
玄「そう!そこが良いんですよね、照さんさすが分かっていらっしゃる!」ウヘヘ
照(え? 何が?)
とりあえずここまでです
もうちょいお待ちください
すみません時間が全くないので一旦保守ります
明日から来週中に少し
失礼、トリ付け忘れました
このSSまとめへのコメント
新田辺とか地元民の俺、大歓喜ww