まどか「助けて… 仮面ライダー!」 映司「変身ッ!」(340)


まどか「待って、よ…行かないで…」

まどか「私、も…一緒に…っ…!」

ほむら「…ありがとう、まどか。だけど、大丈夫。貴方は…『私達』が守るから」

まどか「駄目だよ…っ…。危ないよ…私、だって…っ…!」

ほむら「… … …。大丈夫。必ず…私は貴方の目の前に、戻る。…約束するから」

ほむら「… さあ、行きましょう」

???「… うん。これが、最後の戦いだ」

???「絶対に… みんなを、守ってみせる!」

???「… … …」

???「『変身』ッ!!!」

――――――――――

まどか「… … …」

自分の部屋で目覚めたまどかは、天井を見上げながら、呟いた。

まどか「…ゆめ…?」


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何処かのビルの屋上。
黒髪を風になびかせる少女は、街を見下ろしながら一つ小さく息を吸った。

その表情は、無。絶望も無ければ、希望もない。ただただ彼女は、街を、そしてそこを行き交う人々を見つめるだけだった。

ほむら「…また、始まるのね。もう何度目かも忘れたけれど…」

少女は手にした小さな宝石を太陽に掲げ、照らしてみる。その宝石は俄かに濁っているようにも見えた。

ほむら「…限界が近い。…私が滅びるか…それとも、この街が滅びるのか…」

ほむら「…それでも…。…それでも、諦めるわけにはいかない。巻き込むわけにはいかない」

ほむら「そのために…この時間も…」

ほむら「『まどか』」

ほむら「…そして…」

ほむら「『オーズ』」


鴻上「~♪~~♪♪」

ドアをノックする音が聞こえると、1人の女性が室内へ入ってくる。

里中「失礼します。会長、『例の方』がお見えになっていますが」

鴻上「おお、里中クン!少し待っていてくれと伝えてくれないかね。もう少しで完成する」

里中「…ケーキ作りですか。会長のケーキ、久しぶりですね」

鴻上「腕によりをかけているのだよ。我々と『彼』の初めての出会い…いや、接触とも呼ぼうかな。今日は…その『記念日』なのでね」

里中「分かりました」



鴻上「…よし、これで完成だ。入ってきたまえッ!」

鴻上の会長室のドアが、静かに開いた。


鴻上「ようこそ!そして、我々の素晴らしき『接触』に… … …」


鴻上「ハッピィバアアスデェェイッッッ!!!!」




魔法少女まどか☆マギカ × 仮面ライダーOOO/オーズ


第一話【メダルと 出会いと 魔法の少女】



三滝原中学の教室は、朝から忙しかった。
転校生の紹介、と言われ教室内が俄かにざわつき、騒がしくなる。
ドアを開けて入ってきたのは、長い黒髪の少女。その姿を見て鹿目まどかは僅かな緊張感と違和感を覚えたのだった。

まどか「(…あの子、夢に出てきた…)」

ほむら「暁美ほむらです。…よろしく」

さやか「おおっ、スゲー美人。…って、なんかあの子、まどかの方見てない?」

まどか「…え?…そ、そう…かな?」

さやか「むぅ。早速まどかに目をつけたか。見どころだけは褒めてやるか」

まどか「…どういう意味、なのかな、それ…」

ほむら「…(まどか…)」


昼休み。体調の悪い、と申し出た暁美ほむらを保健室まで案内するまどか。
しかし、鹿目まどかの違和感は拭えないどころか、強くなっていく一方だった。

まどか「(なんでこの子、言ってもいないのに私が保健委員だって…。それに、どんどん先行っちゃうし…まるで保健室の場所、知ってるみたい)」

ほむら「… … …」

人のいない、別校舎への渡り廊下に差し掛かったところで、暁美ほむらは急に足を止めた。

ほむら「鹿目まどか…貴方は、家族や友達の事を大切だと思っている?」

まどか「…え?…え…?」

ほむら「答えて」

まどか「… … … もちろん、大切だと思ってるよ。家族も友達も、みんな大好きだもん」

ほむら「… … … そう」

ほむら「その気持ちを、忘れないで」


ほむら「そして、私の忠告をよく聞いて。その気持ちが本当なら、この先何が起きようと『自分を変えよう』なんて思わないで」

まどか「…え?」

ほむら「大切なもの、なくしたいものを守りたいのであれば…自分は変わらず、そのままであって。…そうしなければ、貴方の大切なものは」

ほむら「全てなくなってしまう」

まどか「…え…?…それって、どういう…」

ほむら「それから、もう2つ。これから先、出会ってはいけないものがあるわ」

ほむら「1つは赤い目をした白い猫のような生き物」

ほむら「もう1つは妙なメダル。それを持った男がいたのだとしたら…そいつとも、関わらないで」

まどか「… … …」

ほむら「…初対面の私にこんな事を言われても妙に思うだけだと思うけれど、頭に入れておくだけでいいわ」

ほむら「…私は、貴方の味方だから」

まどか「え…」

ほむらは、そう言い残して廊下を1人で歩いていく。
まどかはその姿を茫然と見送るしか出来なかった。


さやか「キツネみたいな生き物に…メダルぅ!?あっはっは、なにそれ!?」

まどか「わ、笑いすぎだよさやかちゃん」

さやか「いやー、あんだけ才色兼備な美少女に見えてさ、実はそんなミステリアスな一面もあるなんてね!いいねいいね、新たな萌えジャンル」

仁美「まどかさん、本当に暁美さんとは初対面なのですか?」

まどか「…うん、そう、なんだけどね…実は… … …」

さやか「夢の中で会ったぁ!?うひゃー、本当ならファンタジー大作モノだね!」

まどか「もぅ…ひどいよさやかちゃん。真面目な話してるのに…」

さやか「ごめんごめん。でも、なんかホントに前世で結ばれてたりしてね」

仁美「うふふ、そうだったら素敵ですわね。…あら、ごめんなさい。こんな時間…今日の習い事に行ってまいりますわ」

まどか「ピアノと日本舞踊だっけ…毎日大変だね、仁美ちゃん」

仁美「お気遣いありがとうございます。それでは」

さやか「またね、仁美!…さて、と。それじゃまどか、これから暇でしょ?ちょっと付き合ってよ」

まどか「…え?う、うん、いいけど…どこ行くの?」

さやか「ふっふっふ」
さやか「いいトコロさ。隣町までついてきてもらうよ」

まどか「…(なんか嫌な予感)」


知世子「いらっしゃいませー!ようこそ、『レストラン・クスクシエ』へーっ!」

店のドアを開けたまどかとさやかを出迎えたのは、ハートをあしらった軽装のドレスを纏う、店主の笑顔だった。

まどか「わぁ…すごい」

比奈「今週は『不思議の国のアリスフェア』でーすっ!…って、さやかちゃん。今日はお友達連れてきたの?」

さやか「おー!今日も一段と可愛いね比奈姉さんっ!自分で作ったの?その衣装」

比奈「あはは、お恥ずかしながら…」

そう言って照れる女性は、アリスの青のエプロンドレスを着ながら、少し照れて顔を赤くした。

知世子「あら、さやかちゃん!良かった、お友達も一緒に来てくれたのね」

まどか「あ、は、はいっ。鹿目まどかっていいます」

さやか「約束通り連れてきたよ、知世子さん。どう?どう?合格でしょ?」

まどか「えっ?なに?ご、合格、って…」

知世子「ふーむ…」

そういって知世子と呼ばれた女性は顎に手を当てながら、まどかをじーっと見つめる。

まどか「え、え、えっと…」

知世子「素晴らしいわッッッ!!さやかちゃん、ナイス人選!!」

さやか「でっしょ!?」

まどか「え、あ、う…??」


そして10分後。

まどかとさやかは、いつの間にかメニュー表を持って店の入り口に立たされていた。

まどかの恰好は白ウサギ。ウサギの耳を頭につけ、簡単な白のドレスを着て、胸には大きな時計をぶら下げている。
さやかの恰好はチェシャ猫。猫の耳を頭につけ、こちらは黒のドレス。スカートの後ろについた大きな尻尾が特徴的だ。

知世子「それじゃ2人共、お客様の案内とオーダー取り、よろしくねー!」

さやか「あいあいさーっ!」

比奈「良かった、2人とも衣装がぴったりで。すごく似合ってるし」

まどか「… … …」

まどか「…えと…さやかちゃん…」

さやか「ん?どうした?まどか」

まどか「どうしたじゃないよ…!な、なんで急に私、こんな恰好で…お店の店員さんなんて…」

さやか「いやー、最近あたし、ここのお店に通っててさ。それで、店主の知世子さんって言うんだけど、あの人と仲良くなって」
さやか「それで、『さやかちゃん可愛いから、ここのお手伝いしてくれない?最近忙しくって』…なぁーんて言われてさっ!」
さやか「まぁ、あたしとしてもこのお店が人手不足で大変なの知ってるしさ。こんな感じでたまにお手伝いしてるのよ」

まどか「… … … さやかちゃん」
まどか「これって、アルバイトじゃ…」

さやか「いいや、違う。純粋な心を持ったさやかちゃんは、困った人を助け、ちょいとしたお礼を貰っているに過ぎないっ」

まどか「…(それをアルバイトと言うんじゃ…)」


まどか「それはいいんだけど、どうして今日は私まで…」

さやか「なんか今日はね。知世子さんと比奈姉さん…あ、この店のオーナーと、さっきのこの衣装作ったって言ってた人ね?2人にこれからお客さんがくるらしくってさ」
さやか「厨房でお話するから料理は大丈夫らしいんだけど、ちょっとその間ウェイトレスが足りないんだってさ。だからどーしても『お手伝い』が欲しいらしくって」

まどか「…でも私、そんな事できないよ…」

さやか「大丈夫大丈夫!まどかの可愛さならいけるって!」

まどか「そういう問題じゃ…それに私、可愛くなんて…」

知世子「いいえ、まどかちゃんならいけるわ。私が保障するから安心なさい」

まどか「ち、知世子さん、いつの間に…」

さやか「それにまどか、そういう衣装、実は結構好きでしょ?内心嬉しいんじゃないの?」

まどか「う…(ばれちゃった…)」

比奈「サイズがぴったりで良かった。こんなかわいい子に着てもらえて、私も嬉しいな。このフェアが終わったら、その服プレゼントするからね」

まどか「え、ええっ!?ほ、ほんとですか!?」

比奈「うんっ。だから今日だけお手伝い、お願いできるかな?」

まどか「は、はいっ!喜んでっ!!」

知世子「…ふっふっふ、作戦成功ね」
さやか「…うまくいきましたぜ、旦那」

知世子&さやか「ふふふふふふ…」


その後…。
夕方のティータイムという事もあり、混雑をはじめたクスクシエをまどかとさやかが駆けまわった。
基本的にオーダーを取り、書いた紙をキッチンの知世子に渡したり、後片付けをしたり…仕事は簡単なものであったが、忙しさは尋常ではない。
しかし持前の明るさや、かわいらしい衣装で少々のミスを見逃してもらったりもあり、なんとかその場を凌いでいったのだった。

さやか「ありがとうございましたーっ。デザートセットとクッキー、しめて753円のお会計になりまーすっ」

まどか「あ、ありがとうございましたーっ。…ふぇぇ、ようやく落ち着いてきたね…」

さやか「いやー、忙しかった忙しかった。あ、まどか、あそこのテーブル片付けちゃお」

比奈「あ、いいよ、2人共。私がするから、少し休んでて?」

知世子「そうよ。本当に助かっちゃったわぁ。2人がいなかったらどうなっていた事か…。結局『映司』くんは来なかったけど」

まどか「えいじ…さん?」

さやか「ほら、言ったじゃん。今日、知世子さんと比奈姉さん、特別なお客さん来る予定だったって」

比奈「まあ…忙しい人だし。今日日本についたばかりだろうから…」

さやか「え、海外とか行ってる人なんですか?」

知世子「そうよー。地球全土、東西南北、どこでも飛びまわってるんだから。…ここに来るのは数年ぶりね」

まどか「スゴイ人なんですね…。…でも、どうして世界中を回ってるんですか?」

知世子「うーーん… …」

比奈「…探し人、っていえば、まぁ大体合ってるかな?」

まどか「???」


知世子「まぁティータイムも終わったし、一旦お店閉めちゃおうかな。今日は映司くんが来るからディナーはしない予定だったし」

比奈「じゃあ私、表の看板下げてきますね」

知世子「さ、まどかちゃんとさやかちゃんも、適当に座って!これからケーキセット、出してあげるから!」

さやか「うっしゃー!待ってましたー!」

まどか「え、いいんですか…?」

知世子「当たり前でしょっ!あれだけ働いてもらったんだから。『お礼』もサービスしておくからね」

さやか「やっほー!」

まどか「…(お母さんにバレて怒られませんように…)」

比奈が玄関から出ようとしたその時。


外側から開いたドアのカウベルがカランカランと鳴り、1人の青年がクスクシエに入ってきた。


映司「お、遅くなりましたーっ!!ごめんなさいーっ!!」


エスニックな服装に身を包んだ青年は、店に飛び込むようにして入ってきた途端、手を合わせて大きくお辞儀をした。

まどか「… … … !」

まどか「… (あの人も、確か夢で…)…!」

まどかの脳裏に、映像が浮かんだ。
瓦礫の街を背後に、まどかから遠ざかり、ほむらと歩んでいく、1人の青年…映司の姿が。


比奈「え、映司くん…!」

映司「比奈ちゃん…!久しぶり!ごめんね、色々立て込んですっかり遅くなっちゃって…!あ、お店忙しいんなら俺、手伝いますよ!」

知世子「映司くん、おかえりなさい!いいのよ、お店の方はどうにかなったし。むしろ丁度落ち着いたところだったから」

映司「知世子さん…!お久しぶりです!『クスクシエ』も相変わらずですね!えーと…不思議の国のアリスフェア、ですか」

比奈「あはは…映司くんも相変わらず、忙しそうだね。少しは大人らしくなって落ち着いたかと思ってたけど」

映司「そ、そう言わないでよ比奈ちゃん…。… … … あれ?」

映司の視線に、見慣れない少女が2人、椅子に腰かけてこちらを見ているのが映った。

映司「知世子さん、新しいバイトの子、入ったんですか?」

知世子「まぁ、バイトっていうかお手伝いね。えーと、こっちの青い髪の子が、美樹さやかちゃんね」

さやか「火野映司さん、ですよね? …なんか知世子さんに聞いた印象と大分違うからちょっとびっくりだけど、よろしくお願いします!」

映司「え、印象って、どんな…」

さやか「世界中飛び回ってるっていうから、自家用ヘリで飛び回ってる大富豪っぽい人イメージしてたんですけどねー…あははは」

映司「あ、ああ…まぁ、そう思うよね…。あの…なんか、ごめん」

まどか「…(さ、さやかちゃん…失礼すぎる…)」


比奈「それでこっちの子が、まどかちゃん」

まどか「あ、私、鹿目まどか…っていいます。よろしくお願いします」

映司「よろしく!…っと、俺の自己紹介がまだだったかな。火野映司っていうんだ。まぁ、こんな感じで世界中回ってる旅人、って事で」

さやか「こんな感じがよくわかりませんよ…」

映司「うーん…どう説明すればいいのかなぁ。まぁ、とにかく、ながーい旅に出てるんだ。クスクシエは、俺の家みたいなもんかな」

知世子「嬉しい事言ってくれるわねぇ、映司くん。さ、座って座って。つもる話もたくさんあるでしょう」

比奈「私、みんなのお茶淹れてきます」

知世子「あ、よろしく比奈ちゃん!…うふふ、なんだか一家団欒みたいでいいわねぇ」

さやか「あの、お邪魔じゃないですか?あたし達このへんで御暇して…」

知世子「いいのよ。それに、今日のお礼がまだ済んでないんだから。お茶くらい付き合ってちょうだい、さやかちゃん、まどかちゃん」

まどか「… … …」

映司「… … …?」

映司の顔をじっと見つめるまどか。

映司「えっ、と… 俺、なんか、変?」

まどか「…!! あ、いえ!なんでもないんです!ホントに、なんでもないんです!!」

さやか「…惚れたな、お嬢ちゃん」

まどか「やめてよさやかちゃん…!!」

まどかの顔はいつの間にか真っ赤になっていた。


映司「へぇー…。隣町の、見滝原の学生さん」

さやか「ぴっちぴちのJCです!」

まどか「さやかちゃん、表現が古いよ」

映司は出されたコーヒーを一礼して啜りながら、笑顔で2人と、比奈と会話をしていた。その様子をカウンター越しに知世子が我が子を見るように眺めている。

比奈「最近の子ってホント大人っぽいよね。考え方もしっかりしてるし、はきはきしてるし」

映司「あはは、なんか俺の方が子どもみたいなんだな、本当に。 …ううう」

さやか「でも、人探しで世界旅行なんて、映司さんもすごいんですね。なんか冒険小説の主人公みたい!」

映司「人探し…?」

知世子「まあ、映司くんの目的はそうでしょ?…ね?」

映司「…人探し、か。うん、確かにそうだね。 …うん」

まどか「… … …?」


比奈「今日日本に戻ったんでしょ?…それじゃ、最初に鴻上さんの所に行ってきたの?」

映司「あ、うん。…あ、それで比奈ちゃんと知世子さんにも知らせておかなくっちゃね」


さやか「こうがみ…?どっかで聞いたコトあるような…」

まどか「あ、有名な財団だよ。お母さんの仕事でかかわる事あるみたいだから、私も知ってる」

さやかとまどかがそんな話をしている内に、映司は比奈と知世子に嬉々として語り始めた。

映司「…会長が言うには、期待していいってさ、『アンク』の事」

比奈「え…!ほ、本当に…!?」

映司「うん。急に直す方法が分かったって聞いたから俺も慌てて戻ってきたんだけど…まさかこんなに話が早く進むとは思わなかったよ」

知世子「それじゃ、割れたアンクちゃんのメダルは…」

映司「会長に預けてきました。ちょっと不安だけど…『必ず近いうち返すから安心したまえ!』って言ってくれたし。そういうトコ、信頼できる人だから」


まどか「… … …『メダル』…?」

まどかの脳裏に、昼間の暁美ほむらの言葉が蘇る。

【ほむら「もう1つは妙なメダル。それを持った男がいたのだとしたら…そいつとも、関わらないで」】

まどか「… (違う、よね。ただの偶然だよね)」


比奈「急に直す方法が分かった、かぁ…。でもやっぱりちょっと心配だなぁ。あの人の事だから…」

映司「まぁ…俺も、少し。 でも俺もメダルを直す方法はちょっと手詰まりしてたところだったし…他に頼れるところもないから。…それに、戻ってきた理由は他にもあるんです」

知世子「…ほかにも?」

映司「ええ。…アンクの事と、もう1つ。…日本に戻ってきた、もう1つの理由が…」

知世子「…聞かせて、映司くん」

比奈「そうだよ。私達、力になるから」

映司は2人の言葉を聞いて、俯いて息を大きく吐いた後吸って、大声で叫んだ。


映司「明日のパンツが買えないんですうううーーーっ!!!」

・ ・ ・

比奈・知世子・まどか・さやか「「「「 は ? 」」」」


映司「いや、世界回ってるのはいいんですけど、流石にお金も尽きてきちゃって…。食べ物とかは現地で働いたりしたり分けてもらったりも出来るし…寝るところもその辺でテント張るから困ってないんですけど」

さやか「…そこは重要じゃないんだ」

映司「やっぱりパンツは日本製なんです!一杯持ってったんですけどほとんどボロボロになっちゃって…。買うお金も、日本製だとどうしても高くって…」

比奈「あ、あはは… 映司くんらしい…」

映司「知世子さん。大変身勝手なんですけど、少しの間、クスクシエでまた働かせてもらえませんか?アンクの事待つのもあるんですけど…その前にまた、明日のパンツを買うお金を持っておきたくて…!」

知世子「もうっ。聞くまでもないじゃない。映司くんが働いてくれればウチも大助かりなんだから、いつまででも好きに働いていってちょうだい」

映司「あ、あ、ありがとうございますーーーっ!!」


まどか「…あしたの…パンツ…?」

まどかは少し顔を赤らめて呟いた。

比奈「映司くんね、本当にマイペースで計画も無しに世界を放浪してるんだけど…自分の履く…その、パンツだけはいつも綺麗にしておきたいんだって」
比奈「男はいつ死ぬか分からない。下着だけは常に一張羅を履いておけ… って、御祖父ちゃんの言葉を今でも大切にしてるの」

さやか「… … … ほんっとに極端な人だなー…」

比奈「よく言われてる。いろんな人とか…人じゃない人とかに」

まどか「… ???」


知世子「映司くんとアンクちゃんの部屋。今でもそのままにしてあるから、今日からあそこを使ってね。…また戻ってくれるなんて、私も嬉しいし」

比奈「掃除もちゃんとしておいたから。…ちょっと汚かったよ?」

映司「ありがとうございますっ、知世子さん!比奈ちゃん!」

さやか「あはは、なんかホントに皆楽しそうだなー。お店がもっと明るくなった感じ」

まどか「そうだね…。…なんだかよく分からない話もあるけど… きっと、色々あったんだね」

知世子「あ、もちろんだけど、さやかちゃんとまどかちゃんも、いつでも働きにきてね。従業員はいつでも不足気味だから」

さやか「もちろんですっ!ね、まどか」

まどか「う、うん…。 (…また、ああいう可愛い服着れるなら…いいかも…。…えへへ…)」

まどかがそんな事を考えている矢先。

頭に、声が響いた。

???【まどか――――  助けて――――   !!】

まどか「… っ!?」

さやか「…ん?どした?まどか」


???【助けて――― まどか―――― 早く――― っ !!】

まどか「だ… 誰…? この声、どこから…?」

???【助けて――― お願い―――― !!】

比奈「…?まどか、ちゃん?」

まどか「(…私以外には、聞こえてないの…?)」

しかし、まどかの頭には依然として謎の声が響いているのだった。
助けを呼ぶ、悲痛な叫びが。

まどか「… … …」

まどか「ご、ごめんなさいっ…! これで、失礼しますっ!!」

さやか「あ、ちょっと!まどかっ!?」

さやかの呼ぶ声を振り切り、まどかはクスクシエから飛び出していく。

知世子「…どうしたのかしら?」

さやか「…なんかあったのかな…。 ちょっと、あたしも追いかけてきます!」

映司「… … …!待って、さやかちゃん!」

同じくクスクシエから出て行こうとするさやかを、映司が静止した。


映司「俺も、行くよ」


まどかの辿り着いた先は、何処とも、何階かも分からないビルの中だった。
薄暗いコンクリートの部屋の中、声のする方向へ進んだまどかは、キョロキョロと辺りを見回す。

???【まどか―――― ! こっちだ―――― っ】

まどか「(声、大きくなってきてる…)」

まどか「…っっ!!??」

その時。

目の前に、落ちてきたモノ… いや、生物がいた。

白い毛で覆われた、犬のような…猫のような、生物。

生物は血を流しながら、荒い呼吸をしている。

まどか「酷いケガ…! あ、あなたが…私を呼んだの…?」

QB「… まど、か…」

まどか「…!しゃ、喋った…!?」

まどかがその生き物を抱え上げた瞬間、暗闇の先から大きな声がまどかに向け飛んできた。

ほむら「そいつから離れてッッ!!!」

まどか「…ほむら、ちゃん…?」

暗闇から出てきた暁美ほむらは、見たこともないような衣装を身に纏っている。


ほむら「…鹿目まどか、警告したはずよ…!その生き物に近づかないで」

まどか「で、でも、だって… この子、怪我してるよ…?」

ほむらの手には、拳銃のようなものが握られていた。本物なのだろうか。ただの女子中学生が持てる物ではないが…その表情に、曇りはなかった。殺意と呼ぶに等しい瞳で、生き物を睨んでいる。

ほむら「そいつと関わらないで… 離れないなら…」

まどか「… !!」

ほむらがこちらに駆け寄ろうとした瞬間。
別の方向から、まどかを引き寄せる手があった。

映司「まどかちゃんっ! こっち!!」

まどか「…!映司、さん…!さやかちゃんも…!」

その姿を見た暁美ほむらは、驚愕の表情を浮かべた。

ほむら「…!!! 火野、映司…っ!! …『オーズ』…ッ!?」

さやか「逃げるよ、まどか!早く!!」

まどか「う、うん…!!」

暗闇の先に立ち去るまどかとさやかと、1人の青年を…ほむらはただただ呆然と見送った。


ほむら「…なんてこと…。…既に、オーズとも…っ!?この時間軸は…!」


映司「…(気のせい、だよな。 …今、あの子… 俺の名前を…。 …それに… )」


さやか「なんなのよアイツ!単なる不思議ちゃんじゃなくて、コスプレの通り魔かよ!」

映司「あの子も君達の同級生…? …それに、その生き物…何?」

まどか「分からない… 分からないんですけど… この子が、『助けて』って…」

さやか「そんな声、あたしも映司さんも聞こえなかったけど…」

映司「…とにかく、怪我してるね。一旦クスクシエに戻ろう。 …あの子から逃げる意味でも、ね」

まどか「は、はいっ…!」

3人は、非常口を求めて駆けた。

しかし…いつまで経っても出口は見つからない。

それどころか…。

まどか「なに… ここ…」

映司「此処は… さっきまでの場所じゃ、ない…!?」

3人のいる場所は、いつの間にか、変貌を遂げていた。

まるで、絵本の中の世界。歪な絵をいくつも切って貼ったような絵本のような景色が、どこまでも広がっていた。
蝶が飛び交い、少女のような歌声が聞こえる。

しかし、そのどれもが不気味さを感じさせるものばかりだった。


さやか「なんなのよコレ…!夢じゃないよね…!?」

まどか「…!! 何か、いる!」

茂みのような場所から、毛玉のような生き物が這い出てきた。
髭を生やしたその生物は、四肢をギシギシと軋ませながらゆっくりと3人の方へと近づいてくる。
闇のような黒い目玉が見え、歪んだ口は笑っているようにも見える。

さやか「じょ、冗談…だよね…!コレ…!」

映司「… … …」

明らかに、生物達はこちらに向かってきている。そしてこの生物を近づけさせる事が、自分達にとって危険な事を、3人は察知した。

まどか「… !!」

まどかとさやかはお互い身を寄せて、恐怖した。
しかし、映司は2人から一歩前に出て、その生物達に立ち向かおうとする。

まどか「…!映司さん…!!」

映司「なんだかよく分かんないけど… 危ない事には変わらないみたいだな…!」

さやか「あ、危ないよ!映司さん!」

映司「… 大丈夫」

映司は2人の方を振り返り微笑むと、前に向き直り、『何か』を手にする。

すみません、間違えて二連続けてしまいました…


映司の手にした物は、3つの穴の開いた奇妙な機械のような物。
それを腰にあてがうと、まるでそれは生物のように映司の腰に巻きつき、ベルトのように装着される。

まどか「…!!!」

続いて映司は、ポケットから3つの『何か』を取り出す。

鈍く光るそれは…『メダル』だった。

映司は3枚のそのメダルを、2つベルトに装着し、まどかとさやかに言う。

映司「少し離れてて。危ないかも」

さやか「な、何…?」

そして、最後の1枚をベルトの真ん中に差し込むと、右手でベルトの脇にある丸い機械を取り外す。

駆けだすように構えた映司は、右腕を振り下ろしながら、大きく叫んだ。



映司「『変身』ッッ!!!!」


… … …

しかし、映司の身体には…

何の変化も起きなかった。


映司「… え?」


それが不思議でたまらない、といった様子で、映司はベルトに何度も何度も丸い機械を流すように当てる。
しかし、一向に機械は反応をしないままだった。

映司「え、え!?なんで、なんで!?ほら、変われよ!ほらっ!」

さやか「え、映司さん何やってるんですか!危ないってば!!」

映司「ち、ちょっと待って!! おかしいな…変身っ!! なんでだよ!!ほら!!タカ!トラ!!言えよッ!! … なんで…  … あれ?」

映司「なんだ… コレ…」

ベルトから取り出された3枚のメダル。
映司が手にしたそのメダルは…

どれも、錆びたように黒く光っていた。

映司「そんな…!どうして…!?」

まどか「映司さん、前!前!」

映司「…え?」

使い魔「キャハハハハハハハハ」

見れば、毛玉の化け物は映司の眼前へと迫っていた。

映司「やば… っ!!」

まどか「映司さーーーんっ!!」

その時。

銃弾のように3人の周りを飛び交う光が、毛玉の化け物を消し飛ばした。


映司「!!??」

映司の見た方向に…銃を構えた金髪の少女がいた。
少女は自信ありげに髪をかきあげると、再度銃口から、光のような銃弾を発射する。
単発式の銃のはずなのに、次々と発射される光弾は毛玉の怪物をどんどんと蹴散らし…やがてはその全てを消滅させた。

マミ「危ないところだったわね。…でも、もう大丈夫。安心して」

さやか「な、なにが…起きたの…?」

まどか「分からないけど… あの人が、助けてくれたみたい…」

金髪の少女はまどか達に近づくと、まどかが抱えている生物に手を掲げた。
俄かに光る少女の手は、生物の怪我を次々と治していく。

映司「…わぁ…す、すごい…」

まどか「ま…魔法みたい…」

マミ「…クス。察しがいいわね」

まどか「…???」


QB「…ふぅ。助かったよ、マミ」

さやか「!!! 喋ったぁぁあっ!?」

マミ「お礼ならこの人達に言って。私じゃ間に合わなかったかもしれないもの」

QB「どうもありがとう、まどか、さやか…。…あれ?ボクの知らない人がいるね」

まどか「…!なんで私達の名前…」

さやか「…って、映司さんの名前は知らないんだ」

映司「あはは…なんか、ショック」

QB「…鹿目まどか、美樹さやか。実はボクは、君達に会いに来たんだ。…『映司』は、少し計算外だったけどね」

映司「あははは…そ、そうなんだ…」

まどか「お願い…?」

QB「ボクと契約して、魔法しょ――――」

マミ「…待って、キュウべぇ。…もう少し落ち着いてから話をした方がよさそうよ」

QB「… … …。そうみたいだね」

まどか「…?」

マミ「『魔女』がくるわ」


空間を飛び交う蝶が一段と数を増し、大きく羽ばたいた。
その前方に、巨大な蝶の羽をもつ『何か』が存在する。頭部に咲いた薔薇は茂みに覆われており、人よりも数倍大きなその身体には、使い魔である蝶が群れている。

さやか「う、わっ…」

まどか「なに、アレ…!」

マミ「…3人とも、下がっていて。片付けてくるわ」


少女はそう言うと、蝶の群れの先の『魔女』と呼ぶ生物に向け、近付いていく。
それを阻もうとする蝶の使い魔と、毛玉の使い魔。少女の光弾に次々とそれらは消し飛ばされていく。

QB「使い魔の数が多いね。でも、倒せない相手じゃないよ、マミ」

マミ「分かっているわ!」

しかし、使い魔達の数は多い。
数十、数百にも及ぶ使い魔達は次々と、マミとその後ろにいるまどか達に迫っていた。

マミ「(火力の大きい技は他の人が巻き添えを喰らう危険があるし、大技を使う隙はない…!)」

マミ「(…くっ…!使い魔を無視して突破すれば、一撃で片付けられるけれど…!)」

マミ「(守りながら闘うとなると…っ!)」


さやか「な、なんか…やばくない…?押されてない、かな…」

映司「… … …」

映司は、黒く錆びた3枚のメダルを、手の中で忌々しそうに見つめていた。


QB「マミ!突破をして、魔女を…!」

マミ「分かっているわよ!でも…!3人を放っておくわけには…っ!!」

じわじわと押し寄せる、魔女の使い魔達。消しても消しても増えていくようなその大群。しかし、まどか達の後ろは壁で、これ以上後退が出来ない状態だった。

映司「…くそっ…!この…っ!!」

映司も身体能力を使い蹴りを使い魔にしているが、ダメージは少ない。蹴り飛ばしてもまた起き上がり襲い掛かる使い魔達。

まどか「…!!」

さやか「うううっ…!」

映司「なんで…っ!! 変身さえ、出来れば…っ!!」


???「 おい映司っ!!! メダル貸せぇッ!!! 」


空間を切り裂くような大声が、聞こえた。
まどかが見上げたその先に…人影が見える。

空間の出っ張りに座り込んだその金髪の男は、人間ではない、奇妙な紅い腕をこちらに差し出していた。

まどか「あの、人…」

映司「… アン、ク…」


映司「アンク――――ッ!!!!」


映司「お前…!本当に…!!本当に、戻って…ッ…!!」

アンク「どうでもいいから早く俺にメダル投げろッ!!死にてぇのかッ!!」

アンクと呼ばれたその奇妙な男は、怒号を上げて右腕をこちらに向けて揺らした。

映司「… … …!」

映司「頼むッ!!アンクッ!!」

映司はアンクに向け、3枚の黒く錆びたメダルを投げる。
正確なコントロールで投げられたメダルを、アンクは紅い腕に吸い込まれるように受け取る。

そして、その腕が俄かに光ると…アンクは少し、苦しむような表情を見せた。

映司「…アンク…?」

アンク「… … …」

アンク「受け取れッ!」

再び映司に投げつけられた、3枚のメダル。それを今度は、映司が受け取る。

まどか「… あ …!」

さやか「メダルに、色が…!」

映司「…! 戻った… 戻ったああああっ」

赤。黄。緑。 先程まで黒く錆びたメダルは、まるで別物のように光り、輝いていた。


映司「よっし…!サンキュー、アンクッ!…でも、どうやって…!そもそも、なんでメダルが使えないって知ってたんだよ?」

アンク「んな事はどうでもいいんだよッ!今の状況考えろ!!」

映司が振り返ると、マミと呼ばれた少女は以前苦しい状況に置かれていた。
使い魔の攻勢を銃弾で防ぐのみ。避ける暇もなしに、ただただ、後ろにいる映司達を守るように戦っていた。

映司「やばっ…! …とにかく、助かるよ、アンク!!」

映司はそう言うと一歩前に出て、再び、先程と同じようにベルトを腰に巻きつける。

まどか「映司さん…!?」

映司「まどかちゃん、さやかちゃん!今度こそちょっと危ないから、離れててね!」

映司は、かざすように、光り輝くメダルをベルトに入れていく。
赤く燃える炎のような、鳥のメダル。黄色く輝く毛色のような、虎のメダル。緑に広がる雄大な自然のような、バッタのメダル。

それぞれを装着し、ベルト横の丸い機械を取り出し、右手を上に掲げる。

映司「… … … いくよ、アンク!」

アンク「… とっとと片付けろ!」



映司「『変身』ッッ!!」

『タカ!』
『トラ!』
『バッタ!』

『タットッバ!タトバタットッバ!!』



上が赤く、中央が黄色く、下が緑の光に包まれた映司は…。

異形の戦士へと変貌を遂げていた。

映司「よっし!!今度こそ…変身できたっ!」

まどか「 … あ …」

まどかが、夢で見た光景。
廃墟となった街を進み、自分から遠ざかっていったその姿は…
今の映司の姿だった。

さやか「な、なに、今の…!タトバ…?なに、さっきの歌…!」


映司&アンク「歌は 気にしないで(するな)ッ!!!」


アンク「コイツも土産だ!使え、映司ッ!」

アンクが投げたのは、中央が空洞になった奇妙な『剣』。地面に深く突き刺さったその剣を、映司はいとも簡単に抜く。

映司「メダジャリバー…!…よし!行くぞ!」


QB「…!あれは…!?」

マミ「え…っ!?な、何…!?新しい魔女…!?」

QB「いいや、あれは…さっきまで一緒にいた男性だね。姿形は変わっているけど、確実に彼だ」

マミ「それじゃあ、あの人も『ソウルジェム』で変身を…!?」

QB「それも違う。彼に…いいや、あの力は、魔法の力じゃないよ」

マミ「!?… … … それじゃあ、彼は…!?」

QB「…『オーズ』さ」

マミ「オーズ…!?」


映司「マミさん、って呼ばれてたっけ…!?とにかく、助太刀します!」

映司「はぁあああああああっ!!せいッ!!たあッ!!」

剣の斬撃が、次々と使い魔を切り裂いていく。人間とは思えない、力強い大振り。その一撃でも、数体の使い魔を薙ぎ払えるほどの力だった。

マミ「…!! なんだか分からないけど…、助かるわッ!!」

マミも負けじと、銃撃で遠方にいる使い魔を撃ち落していく。

映司「おりゃあッ!!たあああッ!!」

マミ「はッ!やぁッ!」

次々と周囲の敵を倒していった2人は、やがて再び、魔女と呼ばれる生物への突破口を切り開いた。

マミ「よし、これなら…!」

アンク「映司ッ!」

映司「え?」

アンクが投げた3枚の銀色のメダルを、映司が受け取る。

アンク「早くジャリバーに入れろ!そいつもすぐ使えなくなる!」

映司「…!分かった!」

映司は、受け取ったメダルを素早く剣に入れる。レバーを引くと、剣の空洞が3枚の銀のメダルで埋まった。


映司「マミさん!俺が決めます!下がってください!」

マミ「え!え、ええ…!」

マミが自分の後ろに下がったのを確認した映司は、ベルトにしたように、剣に向け前に流れるように円の機械を滑らせる。

『トリプル!スキャニングチャージ!』

剣が、伸びるように光り輝く。
映司はそれを両手で構えると、魔女を鷹のような目で見据え、腰を低く落とした。

そして


映司「せいやぁ―――――ッ!!!!」


横への斬撃。
魔女から遠く離れてはいたが、その一撃は真空波となり、次元を切り裂くように魔女へと伸びていく。

魔女「!!!!!!!!」

魔女の身体が横に真っ二つに割れた瞬間、時空すら二つに割れるような錯覚を覚える。

大きな爆発。

気が付けば、魔女の姿はそこにはなく、まどか達のいた異様な空間も、単なる雑居ビルへと戻っていた。


さやか「や…やった…っ!」

まどか「スゴイ…!映司さん…!」

マミ「…魔法少女でもないのに、魔女を…!あなた、一体…」

QB「… … …」


映司「…(メダルが出てこない。分かってたけど、ヤミーやグリードじゃないんだ…)」

映司「…ん?」

映司の足元に、コロコロと何かが転がってくる。鈍く、黒く光るそれは、まるで宝石のような物体だった。

映司「…なんだ?コレ…」

マミ「…グリーフシードを知らないの?…まぁ、とにかく、大事な物なの。それを私に渡して… …きゃあっ!?」

マミの横をすり抜けるように…
『腕』が飛んできた。

先程までアンクという人物についていた、奇妙な紅い腕だ。

それが、映司の足元にあるグリーフシードをまるで奪うように持ち去る。
腕は先程までアンクのいた場所へ帰っていくと、元いた場所に戻るかの如く、アンクという人物の右腕となる。

アンク「… … …」

アンクは、紅い腕に持ったグリーフシードを興味深そうに眺めていた。


マミ「…何のつもりかしら?」

映司「お、おい、アンク!それ、この女の子に大切な物らしいから、返してやれよ!」

アンク「… … …」

アンク「悪いな。俺もコイツを狙ってるんだ」

映司「…え…!」

QB「… … …」

マミ「…『魔法少女』ではない貴方に、それは必要ないはずよね?…できれば、こちらに頂きたいのだけれど」

アンク「… はっ」

アンクは挑発するように笑う。手に持ったグリーフシードを返すつもりはない、という意思表示だろう。

マミ「… … … そう」

マミ「それなら… 私の敵という認識で、構わないのかしら?」

そう言って、マミは手に持った銃の銃口を…高台にいるアンクに向けた。


映司「ちょ、まっ…!あ、アンクッ!ホントに冗談やめて、それ返してやれって!」

アンク「るせぇ! …面白い。撃ってみろ」

マミ「… … …」

アンク「… … …」

映司「や、やめてって!!何かの誤解なんだって!!なぁ、アンク!アンクッ!!」

さやか「ね、ねぇ…何か分からないけど… やばいよね、また…」

まどか「… … …」

まどか「…(突然現れた化け物に、それを倒してくれた、映司さん。でも…マミと呼ばれた女の人と、アンクと呼ばれた男の人…)」
まどか「…(何がどうなってるのか分からないけど)」

まどか「…(きっと私は…私の運命は…何かに向けて、動き始めたんだ…)」


マミはクス、と笑ったかと思うと…

トリガーにかけた指に、力を込めた。

映司「やめろおおおおおおおおおおッ!!!!」


次回の、仮面ライダーOOO(オーズ)×魔法少女 まどか☆マギカ!!

アンク「そしてそいつと戦う運命にある奴らのコトを…『魔法少女』と呼ぶ」

映司「魔女…」

QB「映司という青年が変身したのは『オーズ』に間違いないね」

まどか「オーズ…?」

QB「… 魔女以外の敵が、現れたんだよ」

アンク「ヤミーだ」

まどか「だからこそ、私は… 力が欲しかった。 誰かの助けになれる、その力が」


次回【契約と 謎と ヤミー復活】

乙!前にもこのクロスでやったひと?

途中、投稿間違えた気がしてたんですが、特に間違えてませんでしたね…。失礼しました!

と、いうワケで 魔法少女まどか☆マギカ × 仮面ライダーオーズ のSSを書き始めたいと思います。
つたない文章と慣れない投稿ですが、どうか暖かい目で見ていただければ幸いです。

既にSSとしては先駆者様が何人もいらっしゃるネタで、元ネタ自体「今更かよ!」とつっこまれそうなものですが…
どうしても、自分として書いておきたいネタだったので投稿に走らせていただきます!

長いSSになると思いますが、よろしくお願いします!それでは!

>>52
いえ、別のSSは一度書かせていただきましたが、まどか×オーズは初です!

あ、それでは…
お恥ずかしいですが、コチラになります!

まどか「それは まぎれもなく コブラだなって」
まどか「それは まぎれもなく コブラだなって」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1342537441/)

言い忘れていて大変失礼しました…!

オーズの時間軸としては、言われています通り『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』の数年後となっています。なので恐竜系メダル以外の全てのメダルは使用可能な状態でスタートをしましたが… 設定で、すべてのメダルが使用不可能になっております。

まどマギの時間軸としては本編と変わりありません。一話からのスタートとなっております。

引き続きよろしくお願い致します!

お世話になっております!1です!

調整がつきましたので2話を投稿していきます。
投稿ペースはこんな感じに数日空けて、という形になりますのでよろしくお願いします…。
諸事情で、後半はかなり投稿ペースが遅れてしまうと思うのですが…逆に今のうちに書けるとこだけ書いておこうと思っております。
ゆっくりのろのろしたペースになってしまうのですが、お付き合いしていただければ幸いです…!


仮面ライダーOOO(オーズ)×魔法少女 まどか☆マギカ!!

前回の三つの出来事!!

一つ!

見滝原中学に通う学生、鹿目まどかと美樹さやかは、世界を放浪する青年、火野映司と出会う!

二つ!

謎の声に導かれた鹿目まどかは、未知の生物と謎の転校生、暁美ほむらに遭遇する。逃げる途中、謎の空間に映司、さやか共々巻き込まれ、『使い魔』と呼ばれる生物に襲われた!

三つ!

何故か変身が出来くなった火野映司!しかし突如現れたグリード・アンクの助けで『オーズ』への変身を遂げ、魔法少女・巴マミと共に魔女を撃退した!


マミ「グリーフシードを返すつもりが無いのならば…私の敵、という認識で構わないのかしら?」

アンク「…はっ。面白い。…撃ってみろ」

映司「あ、アンクッ!挑発するなって!え、ええっと…マミ、さん、だっけ?あいつああいうヤツなんですよ!冗談で言ってるだけですから、本気にしないで…!」

マミ「… … …」

アンク「… … …」

さやか「なんか分からないけど… やばい状況だよね、コレ」

まどか「…う、うん… でも…どうすれば…」

マミ「…キュウべぇ。あの人の事、知ってる?」

QB「… … …」
QB「いいや、ボクの知り得る人物では無いね」

マミ「…そう」

マミは少し悲しそうな顔をすると、自分の持っている銃のトリガーに指をかけた。

映司「やめろおおお――――ッ!!」


その時。

バタンッ!!!
勢いよくビルのドアが開き、全員がそちらの方を向いた。

そこには…。
キャスターのついた巨大なモニターをゴロゴロと気怠そうにこちらに運んで来る、1人の女性の姿があった。

映司「さ… 里中さんっ!?」

里中「火野さん。御集りのみなさん。ちょっと失礼します」

マミ「…お知り合いかしら?」

映司「う、うん…。 …って、そのモニターは、ひょっとして…」

里中、と呼ばれた女性は映司の言葉など聞かず、モニターの電源を入れる。


鴻上『 お察しの通りだよ火野映司くんッッッッッッ!!!!!! 』


映司「やっぱり出たぁぁああっ!」

巨大なモニターに映し出される巨大な顔と、スピーカーから出る巨大な声に、里中以外のその場にいる全員が驚いて耳を塞いだ。


さやか「な、な、な… なに…!?あの人…!?」

まどか「あ… あの人…鴻上ファウンデーションの、会長さん…!テレビとかで、よく見る…!」

鴻上『ほう!私の事をご存じとは、光栄だね』

まどか「は、はい…っ!ど、どうも…」

鴻上『アンク君も、無事に映司君の元へ辿り着けたようだね!今日は出会いと再会の連続だ。素晴らしいッ!』

アンク「… … チッ」

映司「それじゃあ、鴻上さん… アンクは…!」

鴻上『おおっと!その前に… 巴マミ君!申し訳ないが、その銃を下してはくれないかね』

マミ「!? …私の名前を…」

鴻上『欲望の種を奪おうとするその欲望… 実に素晴らしい! …が、今は堪えてくれたまえ』

マミ「… … …?」


鴻上のその言葉を聞くと、里中がマミに向かってツカツカと歩いてくる。

里中「会長から、プレゼントです」

手に持った小さなプレゼントボックスのリボンの紐を解くと、箱の中身を開けてみせた。

マミ「…!!?? これ…グリーフシード…ッ!?」

鴻上『これで巴マミ君とアンク君の欲望が、両方満たされるわけだ!…構わないだろう?』

マミ「…どうして、財団の会長さんが、グリーフシードを…?」

鴻上『残念ながら、今はその質問に答えられない。 とにかく、今は二人とも休戦をしてくれたまえ』
鴻上『私の… いいや、『私達』の欲望を満たすためにもね』

マミ「私達の…」

映司「欲望…?」

アンク「… … …」

さやか「… なんなのよ、コレ」

まどか「… … …」

まどか「…わけがわからないよ」




魔法少女まどか☆マギカ × 仮面ライダーOOO/オーズ


第二話【契約と 謎と ヤミー復活】



カウントダウンメダルス!

現在、オーズの使えるメダルは!

『タカ』
『トラ』
『バッタ』


ピピピピ…
目覚まし時計を止めると、まどかは天井をぼんやりと眺めた。

まどか「… … … また、ゆめ?」

QB「おはよう、まどか」

まどか「うへぁっ!?き…キュウ、べぇ…」


まどか「… そっか、そうだったね…」



詢子「…まどか。昨日は帰り、遅かったんだって?」

詢子とまどかは、朝の歯磨きをしながら会話をしていた。

まどか「…うん。先輩の家に、お呼ばれしてて…」

詢子「…ふーん」
詢子「別に小五月蠅い事言うつもりもないけどさ。晩飯前にはキチンと電話しろよ?」

まどか「…うん、ごめん、お母さん」


まどか「…あ、ねぇ、お母さん」

詢子「(ガラガラガラ…ペッ)…んー?どした?」

まどか「鴻上コーポレーションの会長さんって、知ってる?前言ってたよね」

詢子「…ああ、あの変なオッサン!…なんで急にそんな事聞くのさ」

まどか「う、ううん…。テレビで見て、ちょっと気になって… どんな人なのかなぁ、って」

詢子「どんな人… うーん…アタシもよく分からないね。あのオッサンは。何回かあそこの財団に営業で行ってさ… まぁ、何してるところなのかも正直よく知らないんだけどね」

まどか「…会社に行ってるのに?」

詢子「隠してるんだか、何なんだか。得体の知れない会社と会長、って印象かな。…えらくアタシの事は気に入ってたけどね」

まどか「え、そうなの?」

詢子「『君の中に潜むキャリアへの欲望は素晴らしい!これからの活躍、期待しているよッ!』って…バカでかい声で。 …面白い人だよ。アタシは嫌いじゃないね」

まどか「…(あはは…昨日の人、間違いなく会長さんなんだ、やっぱり…)」


昨日・夜。

クスクシエの二階。知世子と比奈が掃除をしてくれたと言う自分達の部屋に、映司とアンクは戻ってきた。

映司「… 久しぶりだな、この部屋も。…なぁ、アンク」

アンク「… … …」

アンクはかぶっていたパーティ帽子をぶっきらぼうにベッドに投げると、窓辺に腰かけた。

映司「あはは、知世子さんと比奈ちゃん、喜んでたな。やっぱ嬉しいんだよ、アンクが戻ってくると」
映司「歓迎パーティまで開いてくれて…お前もちょっとは嬉しそうな顔でもしてやればいいのに。…いや、でもそれも不自然か」

アンク「ふん。どうでもいい」

映司「またまたー、本心では喜んでるくせにー」

アンク「…ぶん殴られてぇか、映司」

映司「…はいはい、分かりました、っと」

映司は肩をすくめて、自分もベッドに腰掛ける。


映司「…なぁ、アンク。本当に…アンクなんだよな?お前」

アンク「…違うように見えるか」

映司「全然。だから不思議なんだよ。こんなに早く、お前が戻ってこれるなんてさ。…鴻上会長、本当にお前を元に戻せたんだ」

アンク「… … …元に、か」

映司「…?何かあるのか?」

アンク「…何もない。知ったところで、お前には何の関係もないしな」

映司「ちょっ… こっちはお前戻すために必死で世界中飛び回ってたんだぞ!散々苦労して…」

アンク「元から世界中飛び回ってるだろうが。俺がいようと、いまいと」

映司「…うっ。…確かに…」

アンク「… はっ。変わらないな、そのバカさ加減」

映司「なんだとー!?」

アンクは、皮肉めいた笑いをしながら、窓の外の景色を眺めている。
しかし、映司は知っていた。こういう笑い方をするときのアンクが、一番、喜んでいる時のアンクなのだと。


アンクは、ポケットをまさぐると銀色のセルメダルを取り出し、右手に吸い込ませていく。

映司「…やっぱり、セルメダルもとらないとなんだな」

アンク「当たり前だ。俺は、グリードだ」

映司「そのメダル、どうしたんだ?もうグリードもヤミ―もいないはずなのに」

アンク「鴻上に貰っている。あの野郎、お前にあれだけメダル吸い込ませておきながら、奥にまだメダル金庫がありやがった。相変わらず食えないヤツだ」

映司「…あはは、会長らしい」

映司「…(でも、戻ってきたんだ。本当に… アンクが…!)」

映司「…(呆気なさすぎるけど… これで、俺の夢が、叶ったんだ…)」

アンク「… … …」

映司「…(でも、あの子達は、一体…?)」


映司「なぁ、アンク。あの敵はなんなんだ?グリードでもヤミ―でもないみたいだし…あの怪物が現れた時、妙な空間に巻き込まれた。メダルも使えなかったし…」
映司「それに、一緒に戦ったあの金髪の女の子は知ってるのか?あの怪物から出てきた黒い宝石はなんなんだ?お前も欲しがってる、って…」

アンク「質問が多すぎてうざいんだよ」

映司「仕方ないだろ、俺は本当に何も知らないんだし… 鴻上会長は多分…いつものコトながら聞いても何も教えてくれないだろうし。アンクだけが頼りなんだよ」

アンク「… … …」

映司「アンク。俺達は…何に巻き込まれてるんだ?お前が復活した事と…関係してるのか?それだけでも…」

アンク「… … …」

映司「なあ、アンク…!また俺は、戦うべきなんじゃないのか…!?あの奇妙な敵と…」

アンク「… … …」

アンク「…『魔女』だ」

映司「…!?」

アンク「そしてそいつと戦う運命にある奴らのコトを…『魔法少女』と呼ぶらしい。…ふざけた名前だがな」


アンク「俺に銃を向けた、妙な金髪のガキがいたな。あいつが魔法少女…だそうだ。俺も復活してすぐに鴻上から聞いたから、詳しい事は知らん」

映司「…会長から…?」

アンク「『ソウルジェム』とかいう宝石を使い、あのドレスみたいなふざけた格好に『変身』し、高い戦闘能力を身につける…。人によって力は様々だそうだが」
アンク「その力で、あの化け物…魔女を倒す専門の奴らだとよ」

映司「魔女…。 …本当に、お伽話みたいな話だな。あいつらは、ずっとこの世界にいたのか?」

アンク「人知れず蔓延っているもの… そいつを同じく人知れず掃除するのが魔法少女だ」
アンク「人間の理由のはっきりしない自殺や他殺…行方不明まで、あいつらが絡んでいる事がほとんど、らしい」

映司「そんな…!それじゃ、まるで…!」

アンク「…人の生死を操る…。操られた人間は、自分の分からぬまま、気持ちが死へと追いやられる。ハッ、お前らの好きな『神様』にでも近いんじゃないのか?いや、『死神』か?」

映司「…随分と、スケールの大きな話だな…。…でも、そんな事を俺達が今まで知らなかっただなんて…」

アンク「お前らの入り込んだ、妙な空間が魔女の『結界』だそうだ。普通なら奴らはあそこに身を隠して人目につかないようにしている」
アンク「だが、あんな風に人目が少ないと、たまに人間を殺すために…自分の結界の入口をわざわざ開けてくれるんだとよ。有難い話だ」

映司「… それじゃ、まるで…」

アンク「…人を殺し、絶望を撒き散らす。…まるでグリード…か?」

映司「… … …」


アンク「魔女の目的は分からないが、とにかく人間の死を操り、絶望を撒き散らすのが奴らの行動らしい」
アンク「そいつらの駆除をするのが魔法少女。絶望と…希望。鴻上はそんな風に言っていたな」

映司「絶望と…希望?」

アンク「あと、お前の持っているメダルはそのままじゃ魔女空間じゃ使えないらしい。…しかも厄介な事に、一度あそこに持ち込んだら全てのメダルがいつでも使用不可能だ」

映司「…やっぱり… 俺の持ってるメダル。タカとトラとバッタ以外、黒くなったままだもんな」

アンク「『絶望』を撒き散らす魔女の作り出す結界の中に『欲望』の結晶のメダルを持ち込めば…魔女の放つ絶望すら、メダルが吸い込んじまうらしい」
アンク「だからお前の持っているメダルも、一度あの中に巻き込まれちまったから全部お釈迦だ。…『解放』しない限り使えない」

映司「…解放…」

アンク「… … … これで、俺の知っている事は全てだ」

映司「… … … まだあるだろ、アンク」

アンク「…あ?」

映司「…あの黒い宝石…グリーフシード、って呼んでたっけ?なんで…お前、アレを奪ったんだ?」

アンク「… … …」

映司「あれは、あの子達…魔法少女に、必要な物なんじゃないのか?なんでお前が… それに、お前はメダルをどうして解放できるんだ…?」

アンク「… … …」

映司「… それは言えない、か」

アンク「… ふん」


まどか「魔女の…」

さやか「卵…!?」

同じく、昨日の夜。教えられたマミの家に訪れたまどかとさやかは、テーブルを囲いながらマミとキュウべぇの話す『魔法少女』の話に耳を傾けていた。

マミ「ええ。でも大丈夫、この状態なら怖い物じゃないから。むしろ、これが無いと魔法少女は困るのよ」
マミ「…私のソウルジェム。少し宝石が濁っているでしょう?このままだと、魔力が弱まってしまって、そのうち魔法が使えなくなってしまう。…ね?キュウべぇ」

QB「そうだね。だから…」

マミは、自分のソウルジェムと、鴻上から貰ったグリーフシードをくっつける。
すると、マミのソウルジェムについていた黒い濁りは綺麗になくなり、眩しいほどの輝きを放つ宝石に変わった。

まどか「わぁ…」

マミ「これが、魔法少女が魔女を倒す見返りよ。…暁美ほむら。あの子も、魔法少女だったのね」

さやか「そうそう!見慣れない恰好して、キュウべぇを追いかけてて… でも、どうしてなんだろう?」

QB「ボクにも理由は分からないね。危ないところをまどかとさやかに助けてもらって、本当に感謝しているよ」

マミ「…十分に気を付けないとね。ただでさえ魔法少女は、グリーフシードを奪い合ってぶつかりあう事が多いから…」

まどか「…そんな。目的は同じはずなのに…」

マミ「仕方ないのよ。…そういうものだと、割り切るしかないわ」


さやか「でも…気になるのは映司さんだよ。あとあの変な男!腕が赤くて…変な、鳥みたいな頭した目つきの悪い…!」

マミ「…私も知り得ない存在ね。…キュウべぇは知っているみたいだけれど…」

まどか「…教えて、くれない…?キュウべぇ」

QB「…ボクも詳しく知っているわけじゃないけれど…映司という青年が変身したのは『オーズ』に間違いないね」

まどか「オーズ…?」


QB「遠い昔…錬金術師達が、様々な地球に生息する生命の力を『メダル』に封じ込めて、新たな生命体を作り出そうとしていた」
QB「しかし、とある王が、そのメダルの持つ力に魅せられ、そのメダルの全てを体内に取り込んでしまう。…世界を支配するという『欲望』のためにね」

さやか「…ひぇー、欲深いヤツもいたもんだなぁ」

QB「しかし、あまりに強い欲望は、王を暴走させ…やがては、自らを封印させるという結果に至ってしまった」
QB「欲望の具現化…それが映司の変身した姿、『オーズ』。どうして彼がその力を使えるのかは分からないし…そんな巨大なパワーをコントロールできるのも分からないけれどね」
QB「鳥、獣、昆虫… この世に生息する動物たちの力を欲望という名の器に閉じ込めたメダルの力を解放し、戦う。それがオーズさ」

まどか「でも…その王様の話って、昔の話でしょ?映司さんは変身するのにとても慣れてたみたいだったけど…」

QB「ひょっとしたら、ボク達の知り得ないところで密かに『何か』と闘っていたのかもしれないね」
QB「まるで…魔法少女のように」

マミ「… … …」


マミ「…アンク…。そう呼んでいたのね?」

さやか「うん、確か…」

QB「彼が何故グリーフシードを狙うのかは分からないけれど、彼と火野映司は友人のようだったね。結託して戦っていたようだ」

マミ「…つまり、魔法少女の敵、というわけかしら?」

まどか「ぜ、絶対違います!! 映司さんが、敵だなんて…そんな…!」

さやか「でも…あたし達だって、ちょっとしか関わってないじゃん。映司さんには」

まどか「そうだけど… でも、私達を助けようと頑張ってくれたし…!オーズになったのだって、私達を助けるために…!」

マミ「そうね。でも残念だけれど、彼らもグリーフシードを求める立場だったとしたら、私と敵対する形になってしまうわね」

まどか「そんな…!」

QB「まぁ、マミとしてはいつも通り、魔法少女として活動してくれれば問題はないよ。奪い合いに関しては、常日頃起きている事でもあるし…そこに1人、新たに別の介入があるというだけさ」

マミ「… オーズ。あのメダルの力は、未知数ね。魔法少女と戦って、どうなるのか…」

まどか「ま、マミさんっ…!!」

マミ「…クス。安心して。私も出来るだけ、無益な戦いは避けるつもりだから」


さやか「…でも、そういうのを考えても魅力的だなぁ。何でも願い事が一つ叶うなんて」

まどか「…う、うん…。そう、だね…」

まどか「…(私が魔法少女になれば…映司さんとマミさんが戦ったりすれば、止められるかもしれないし…)」

QB「ボクは魔法少女と契約を結ぶ存在だ。2人なら、きっといい魔法少女になれる。どんなに強い魔女にも打ち勝てるような、魔法少女に」

マミ「今まで私1人の戦いだったけれど…仲間が出来るのなら、こんなに嬉しいコトはないのよ」
マミ「グリーフシードだって分け合えるものだし…協力しあえる魔法少女がいるというのなら、本当に助かるわ」

さやか「くわえて願い事一つ叶えれるんだからなぁ…おいしいなぁ…」

QB「魔女と戦う運命を背負う対価、と考えてくれれば相違ないよ」

マミ「…でもね、私としては嬉しいのだけれど… 反対もしたいのよ」

まどか「…え?」

マミ「魔女との戦いは危険なの。力及ばず、戦って、死ぬ…なんてコトになっても、決しておかしい話じゃないわ。それが…ずっと、ずっと続いていくの」
マミ「敵は魔女だけじゃない。中には、グリーフシードの奪い合いに好戦的な魔法少女だっているわ。…暁美さんだって、どんな目的があるのか分からないし」
マミ「今回、そこにオーズと…アンクという謎の男が加わっている。状況はかなり悪いわ」

まどか・さやか「… … …」


さやか「うーーーん… リスクがあれば得るものも大きい、かぁ…。世の中都合よくいかないようになっているのだなぁ。さやかちゃん、また一つ大人になりました」

まどか「…でも、私は…魔法少女になりたい、かな…」

さやか「え。決まったの?まどか、叶えたい願い事」

まどか「…ううん、決まってない」

マミ「…?それじゃあ、どうして魔法少女に?」

まどか「… 私が少しでも、マミさんや… ううん、危ない魔女を倒せたら…きっと、誰かを助けられるから…」

マミ「…純粋に魔法少女として戦いたい、というわけなのね」

さやか「おおー、まどかにそんなファイターな一面があったとはねぇ」

まどか「そ、そういうわけじゃないよ!…私、誰かのコト助けられたら…それが一番、嬉しいから… だから、魔法少女に…」

マミ「結論を急ぐのは早いわ。契約は一生、自分についてまわるもの…。だから、今その時の感情で動いてはいけないの」

まどか・さやか「… … …」

マミ「… それじゃあ、しばらく… 私の元で、魔女退治の見学、してみない?」

まどか&さやか「…え?」


そして、一日明けた、昼さがり。
まどか、さやか、マミは、キュウべぇを介したテレパシーを使い、学校内で会話をしていた。

さやか「【しっかし、こうやって頭の中で会話するっていうのも妙な感じですねぇ】」

マミ「【うふふ、そのうち慣れるわよ。離れていても話せるし、私達以外には聞こえない。便利でしょう?】」

まどか「【そうだね…。…でもキュウべぇ、大丈夫なの?学校に来て】」

さやか「【あ、そうだよ。誰かに見られたら見世物小屋に売られちゃうよ?】」

QB「【ボクの姿は魔法少女や、まどか、さやかにしか見えないから安心してよ】」

まどか「【でも、ほむらちゃんに会ったら、また…】」

さやか「【!そーだ!アイツ、キュウべぇの命狙ってるっぽいんじゃなかったっけ?昨日だって…】」

QB「【大丈夫さ。むしろ、学校の方が安心だよ。マミもいるしね】」

マミ「【むしろ学校なら目立つ行動は避けるはずよ。…大丈夫、危なくなったらすぐに行くから、ね?】」

その時、教室のドアが開いて、暁美ほむらが入ってきた。

ほむら「… … …」

さやか「げ、噂をすれば」

まどか「ほ、ほむらちゃん…」

ほむら「…鹿目まどか、美樹さやか…来てくれるかしら」


まどかとさやかは、ほむらに呼ばれるがまま、屋上までついてきた。キュウべぇはまどかの肩に乗っているが、ほむらは手出しはしてこない。

何かあれば、すぐにマミを呼ぼう。まどかとさやかはその意思表示ををするため、お互いに見合って頷いた。

さやか「…それで、何の用よ?キュウべぇの事また襲おうとしてるの?」

ほむら「そのつもりはないわ。…もう、関わってしまった。手遅れよ」
ほむら「貴方達には、魔法少女の戦いに加わって欲しくなかった。…でも、もう遅い」

さやか「へん、自分の分のグリーフシードが減るから?」

ほむら「… … … 好きに解釈していい」

まどか「… … … (よく、分からないけど… ほむらちゃんは…違う気が、する…)」
まどか「(もっと大事な…何かを、心の奥に、隠してるような…)」

さやか「じゃあ何の用だよ」

ほむら「鹿目まどか。…昨日私が話したコト、覚えてる?」

まどか「…う、うん…」

ほむら「… … … なら、いいわ。そいつの甘い言葉に耳を傾けて、後悔をしないで」

まどか「… … …」


ほむら「火野映司… オーズとは、どこで知り合ったの?」

さやか「!? なんでアンタ、映司さんのコト…」

ほむら「質問をしているのはこちらよ。…答えてちょうだい」

まどか「…あの、えと…クスクシエっていう、レストランで…。それで、私がキュウべぇに呼ばれた時、心配で一緒に来てくれたの…」

ほむら「… … … そう」
ほむら「…此処では、随分と早いのね」

さやか「…?何か言った?」

ほむら「何でもないわ。…でも、分かったはずよ。貴方達の事は、火野映司や巴マミが、助けてくれる。まどか、貴方が魔法少女になる必要は何もない」
ほむら「それとも、貴方達の言う『グリーフシードの奪い合い』をさらに加速させるつもりかしら?」

まどか「…う…」

さやか「ちょっと!それは関係ないじゃん!それに、魔法少女になれば叶えたい願いが一つだけ叶えられるんでしょ?だったら、あたし達はあたし達で勝手にする」

ほむら「… … …」
ほむら「それが、貴方自身を滅ぼす結果になるとしても?」

さやか「なっ…どういう意味よ!?」

ほむら「…なんでもないわ」


ほむら「もうそいつと関わってしまった以上、魔法少女と魔女の話から貴方達を切り離せると思っていないわ」
ほむら「でも、覚えておいて」

ほむら「叶えたい願い… それは、自分や、周りの人間…家族や友人の哀しみを犠牲にしてまで、叶えるもの?」

ほむらはそう言いながら、まどかの方をきつく睨みつけるように見つめている。

まどか「… … …」

ほむら「…話はそれだけよ。…それじゃあ」

まどか「あ… ま、待って…!!」

立ち去ろうとするほむらを、まどかは引き留めた。

ほむら「…何?」

まどか「ほむらちゃんは… どんな願いで、魔法少女になったの…?」

ほむら「…っ… … …」

ほむらは踵を返す事なく、その場を去って行った。

さやか「…なんなのよ、あいつ…」

まどか「…ほむら、ちゃん…」


夕刻。ホームルームを終え、生徒達が次々と帰路につく。見れば、暁美ほむらは既に教室を出ているようだった。
まどかとさやかは大きく背伸びをして、大きくため息をついた。

さやか「んー… なんか、一日気ぃ張ってたせいか余計に疲れたー…」

まどか「そうだね… 今日はどうするの?さやかちゃん」

さやか「そうだなぁ。とりあえずマミさんともう一回魔法少女の話、してみたいし… そうなるとどっかファミレスでも行って話でもする?」

まどか「… あ、あのさ、さやかちゃん…」

さやか「んー?」

まどか「クスクシエ、行ってみない…?マミさんも連れていって、一緒に…」

さやか「…へ?だ、駄目だよ!あの変な鳥頭も一緒にいるかもしれないし、そうしたらまた…!」

まどか「だから、そうなる前に…!マミさん、きっと誤解してるんだよ。アンクさん、って人は分からないけど…」
まどか「映司さんは、絶対に私達の敵じゃないし、マミさんだって、きっと仲間が欲しいと思う…」
まどか「だから、奪い合う敵より、協力してくれる仲間を見つけてくれるほうが…きっと、みんな嬉しいと思うの…!だから…!」

さやか「…まどかは甘いねー。ああやってにらみ合ったモン同士ってのは、なかなか味方にはなれないもんだよ」

まどか「う…」

さやか「… … …。でも、まどか」

まどか「…?」

さやか「まどかの考え… … 嫌いじゃないわ!」

まどか「え」


さやか「あたしだって、マミさんの…魔法少女側についたからクスクシエに金輪際行けない、なんてのは絶対に嫌だしね」
さやか「知世子さんだって比奈姉さんだって、あたしに優しくしてくれるし。その大切な仲間っていう映司さんが悪い人なわけないし!」

まどか「さやかちゃん…!」

さやか「…まぁ、あの目つきの悪い鳥頭の説得には時間かかりそうだけど、そこはまぁ、なんとかなるでしょ」

まどか「それじゃ…!」

さやか「うん!今日はクスクシエに行くことにけってーい!多分、映司さんもいるでしょ!マミさんも一緒に連れて行こう!」

まどか「ありがとう…!さやかちゃん…!」

さやか「ぬふふ、その代わり代償は払ってもらうよ~… あーんなコトやこーんなコト、まどかにしてもらうからねぇ…」

まどか「う… か、軽いので、お願いね…?」

さやか「よし、そうと決まれば… キュウべぇ、カモンナゥ!マミさんテレパシーで呼ぶよ」

QB「残念ながら、そうはいかないみたいだ」

教室の開いた窓から、キュウべぇがぴょんと中へ入ってくる。

まどか「わぁ!びっくりした…」

さやか「…そうは、いかない…?どうしたのよ?」

QB「マミは… 先にクスクシエの方へ行ったみたいだね。…暁美ほむらも一緒だ」

まどか・さやか「… え!?」


QB「… 魔女以外の敵が、現れたんだよ」


その少し前、クスクシエ店内。
夕方少し前のティータイムは、甘味を求めて立ち寄る客たちで忙しくなる時間帯だった。
それが終わりようやく一息つける、と判断し、映司はカウンター前のテーブルに腰かける。

映司「ひぇー… 久しぶりにウェイターやると、結構キツイなぁ。…アンク。お前も少しは手伝えよ」

アンク「断る」

比奈「あはは、アンク、本当に何も変わらないね。…相変わらずお兄ちゃんの姿に擬態してるのは、ちょっと妹として違和感あるんだけど… やっぱアンクはそうでなくちゃね」

アンク「この姿形が一番馴染むようになっちまったんだよ。俺だって、好きでやってるわけじゃない」

知世子「お疲れ様!少し休憩にしましょう。はい、コーヒー」

映司「あ、知世子さん。ありがとうございます。 …今日は、来ないんですね。まどかちゃんと、さやかちゃん」

知世子「うーん、いつもだったら来てもいい時間なのにねぇ。今日はどうしたのかしら?」

映司「… なぁ、アンク。まどかちゃんとさやかちゃん、あのマミっていう女の子と一緒に帰っていったし… 仲よくしてやってくれよ?」

アンク「どういう意味だ」

映司「グリーフシードとかいう変な宝石だよ!…お前にどう必要なのか分からないけど、アレの奪い合いであっちも気が立っちゃったんだし…」
映司「相手は魔法少女でも、人間に変わりないんだ。せめて穏便に話し合ってくれよな」

アンク「…はっ!人間に変わりない、か」

映司「…?なんだよ…」

アンク「… 少なくとも、銃を向けてきたのはあっちだ。ただし、俺の求めている物の邪魔をするなら、相手が何だろうと敵に変わりない」
アンク「… ただ、オーズを使わないとこっちも話にならない。映司には、使える馬鹿でいてもらわないと困るからな。…こっちから手出しは出来ない」

映司「つ、使える馬鹿、って…。 …まぁ、頼むよ、ホント…」


知世子「…?二人とも、なんの話をしているの?」

映司「! い、いや、なんでもないんです!なんでも…!」
映司「…アンク…!知世子さんと比奈ちゃんには、このコト絶対秘密だからな…!余計な心配かけさせたくないし…!」

アンク「知るか」

映司「だからっ!お前はもうちょっと俺の考えにも協力する態度を…!」

アンク「!!!」

アンクは驚いたように、その場を立ち上がる。赤い腕を額に当て、何かを考えるように目を瞑った。

映司「…!?どうしたんだよ、アンク」

アンク「… … …」

アンク「ヤミ―だ」

映司「… … … はぁ!?ヤミ―!?だって、グリードは全部…!!」

アンク「とにかく行くぞ、映司!」

映司「あ、ちょ、待って…!アンク!おい、アンク!!」

クスクシエから飛び出したアンクを、急いで映司は追った。

比奈「… … …どうしたんだろ…?」

知世子「…これからディナータイムで忙しくなるのに… もうっ!あの二人ったら…」


市街地。
会社帰りのサラリーマンやOL、主婦は、何かから逃げ惑っていた。

映司とアンクの横をすり抜けるように慌てて走っていく群衆。
その先には…。

映司「…ヤミ―…!!そんな、どうして…!?」

アンク「屑ヤミ―だがな。…しかし、随分と数が多い」

映司とアンクの視線の先には、見慣れた敵…。
50体はいようかという屑ヤミ―が、鈍重な動きで街を彷徨っていた。

サラリーマン「うわああああ!!」
OL「助けてぇええええっ!!」

しかし、鈍重な動きでも力は強い。逃げ遅れた人を何匹かの屑ヤミ―が捕まえ、人間に寄生しようとしている。

映司「! 考えてる暇もないな…! アンク、メダルッ!」

アンク「…チッ。油断すんなよ、映司!」

助けを求める人達の方へ全力疾走する映司に向け、アンクは3枚のメダルを投げる。
バトンを受け取るようにメダルをキャッチする映司は、同時にオーズドライバーを腰に巻きつけた。


走りながら赤いタカのメダルと、緑のバッタのメダルを、オーズドライバーの左右に差し込む。

そして、黄のトラのメダルを真ん中に差し込むと同時に、オーズドライバーの横にあるオースキャナーを引き抜く。

音を立て、その時を待つオースキャナーに応えるように、映司は3枚のメダルをスキャンした。

映司「『変身』ッッ!!」

『タカ!』
『トラ!』
『バッタ!』

『タットッバ!タトバタットッバ!!』


映司「はぁああッ!! ッ! 逃げてください!」

屑ヤミー「うごぁあああ…!」

メダジャリバーの斬撃で怯んだ隙に、映司は襲われていた人の避難を促す。

映司「くそっ、本当に数が多いな…!!」

いつの間にか、自分を囲むように屑ヤミーがゆっくりとこちらに近づいてきている。

映司「せいっ!! はぁッ!! おりゃっ!!」

その1匹1匹に向け、メダジャリバーの斬りつけや蹴りを放つが、体力だけはある屑ヤミ―は、中々倒れない。

その間にも、何人かの逃げ遅れた人々が屑ヤミーに襲われようとしていた。

子ども「うわぁああああんっ!!」

映司「くそっ!! 間に合うか…!?」

屑ヤミーの群れをすり抜けていこうとする映司。全力で走るが、その距離は遠い。

屑ヤミー「うごああぁぁああ…!」

子ども「助けてぇえええええっ!!」

子どもを掴んだ屑ヤミーは、それを喰らうように抱きついた。
その時。

幾つもの銃弾が、屑ヤミーに当たった。その衝撃に屑ヤミーは仰け反り、子どもを手放す。


マミ「早く逃げてっ!!」

映司「…!マミ… さんっ!」

魔法少女に既に変身をしているマミが、銃を構えながら子どもに叫んだ。


マミ「…オーズ…火野、映司さんだったわね。それに、昨日の人も…」

アンク「…」

映司「あ、マミ、さん…!…でも、今は言い争いをしてる場合じゃ…!」

マミ「分かっているわ。…でも、何なの?この怪物は…魔女や使い魔の類じゃないわね」

映司「こいつらは…『ヤミー』です。今はまだ『屑』といって力もそこまではないんですけど…『欲望』を求めて人間に寄生をしたがります!街の人たちを守らないと…!」

マミ「ヤミー…。何故そんな奴らが…!?」

アンク「俺達にも分からん。とにかく、こいつらの殲滅が先だ」

マミ「言われなくても! …っ …はあああっ!」

マミは、手に構えたマスケット銃に魔力を込めるように集中する。金色に輝きはじめた銃から放たれる魔力の銃弾は大きく、前方にいる屑ヤミー数体を一瞬で消し飛ばした。

映司「!凄い…!」

消し飛ばされた屑ヤミ―からは、銀色のセルメダルが数枚残骸として残る。

アンク「セルメダルは俺が回収する!映司!お前は戦え!」

映司「わ、分かってるよ!ホントに人使い荒いんだから…!」


映司「くそっ!これじゃあ…!」

威力は高いが大振りが基本となるメダジャリバーの斬撃では、数の多い屑ヤミーの殲滅には適してはいない。
もっと素早く攻撃をする事が必要だった。

映司「でも、メダルが…!」

マミは既に映司とは別の場所で屑ヤミーの殲滅に取り掛かっている。遠距離からの射撃は、ヤミー達を自分に近づけさせない。

その時。

瞬時に、映司の目の前に暁美ほむらが現れた。

映司「!!!」

ほむら「…!」

両手にしているのは、拳銃だった。左右に大きく開いて構え、周囲のヤミーに銃撃を行う。

屑ヤミー「ぐおおおっ…!」

映司「君は、昨日の…!」


ほむら「早く」

映司「…え?」

ほむら「早くアンクに、メダルの解放をさせて」


映司「なんで、君、メダルのコトを…!それに今、アンク、って…!」

ほむら「私がこいつらを牽制している内に、早く!こいつらを倒せるメダルを!」

映司「… ! 分かった! アンク、これっ!」

映司はポケットから1枚の黒いメダルを取り出すと、アンクに向けて投げる。
アンクはそれを赤い右腕で受け取り、それを眺めた。

映司「アンク!そのメダル、昨日みたいに解放してよ!出来るんだろ!?」

アンク「… … …」

映司「頼むよ!アンク!タトバじゃ大人数の殲滅には向いてないんだ!」

アンク「… チッ、簡単に言いやがって…!」

アンク「… … …」

アンクは、右腕に力を込める。

俄かに掌が緑色に光り、アンクは手を開く。緑色のメダルが、そこには『復活』をしていた。

アンク「ぐ、ぅ…っ!」

しかし、アンクの表情は苦しさに歪み、その場に膝をついてしまう。

映司「! アンク…!?」

アンク「っ、はぁ…! ほらよッ!」

膝をついた状態で、アンクは映司にメダルを投げた。


映司「アンク!お前…大丈夫なのか!?」

アンク「…ッ、俺の心配してる暇があったら、とっととメダル変えろ!」

ほむら「大丈夫」

映司「…!?」

ほむら「あと1枚…いいえ、2枚は、大丈夫な筈だから」

映司「君は、一体…!」

ほむら「!」 映司「なっ…!?」

ほむらは、映司の視界から一瞬で消えた。
かと思うと自分の背後に移動をしている。そして周囲の屑ヤミー達は、いつの間にか何発もの銃撃を受けて、崩れ落ちていた。
まるで時間でも止めたかのような、ほむらの素早い動きに映司は驚いていた。

ほむら「今よ」

映司「い、今の、どうやって…!?」

ほむら「…急いで…!」

映司「…! わ、分かった!」

映司はトラのメダルを外すと、新たなメダルを真ん中にはめ込む。


『タカ』!
『カマキリ』!
『バッタ』!

オーズの上半身部分、その両腕に、蟷螂の鋭い鎌が装備される。

映司「よしっ! はああっ!やあっ!せいッ!!」

周囲を回転するように繰り広げる鎌の斬撃は、効率的に周囲の屑ヤミー達に攻撃をくわえられる。
素早く斬り、また別の敵へ。先程を圧倒する速度の攻撃で、ヤミーは次々とメダルへ変えられていった。

映司「これなら、いけるぞ…!」

マミ「…!?暁美ほむら、さん…!貴方、どうして…!」

ほむら「説明している暇はないわ。街を救うのが先、でしょ?」

マミ「…え、ええ…」


周囲の屑ヤミーを倒し、あと数体というところまでこぎつけた映司、マミ、ほむら。
そこへようやく、まどかとさやかとキュウべぇが到着した。

まどか「なに、あの敵…!」

QB「魔女や使い魔にはない反応だね。未知の敵といったところかな」

さやか「ワケわかんない…!と、とにかく…見守るしかない、かな…」

まどか「…(私が魔法少女になれば…一緒に戦えるのに…)」


『タカ』!
『トラ』!
『バッタ』!

『タットッバ!タトバタットッバ!!』

映司「マミさん、ほむらちゃん、少し離れてて!一気に片付ける!」

ほむら「…!」
マミ「…!?」

タトバコンボへ戻った映司は、もう一度、オースキャナーでベルトのメダルをスキャンする。

『スキャニングチャージ!』


映司「はあああ…っ!!」

オーズの下半身が、バッタのように細長く変わる。
その大きな脚力で映司は空高く舞い上がると、屑ヤミーの集団に向け、大きな赤、黄、緑の輪を出現させる。

映司「せいやああああ―――――――ッ!!!!!」

メダルの力の輪をくぐるごとに、加速するオーズの力。

ヤミーの集団に向けて放たれたキックは、大きな爆発を起こし、屑ヤミーを消滅させた。


映司「…っ、はぁ…。 良かった、うまく決まった…!」

映司は変身を解除し、大きく息を吸った。

ヤミーの集団を全て片付けたのを確認すると、マミとほむらも変身を解除する。


さやか「… す」

さやか「すげーーっ!!映司さんもマミさんも転校生も、かっこいいじゃんよーっ!!」

まどか「あ、さ、さやかちゃん…!」

マミ「…!美樹さん!…鹿目さんも…来ていたの?」

まどか「き、キュウべぇが、マミさんがこっちに向かったっていうから、心配で…」

マミ「…そう。心配して、きてくれたの…?」

まどか「は、はい…」

マミ「…ふふ、ありがとう。でも気を付けてね?私にも…何があるか、分からないんだから」

マミ(…心配して… …。… 本当に、嬉しい事ね)


ほむら「… 片付いたのね。…それじゃあ」

まどか「あ、ま、待って、ほむ…」
映司「あ、君!待ってよッ!」

まどか「…?」

ほむら「… … … 何かしら?質問には答えないわよ」

映司「いや、その…」

映司「…ありがとう。助けてくれて」

ほむら「… … …」

気のせいか、まどかには一瞬だけ、ほむらの顔が緩んだように見えた。

まどか「…(ほむらちゃん、やっぱり…悪い子じゃない)」


一方、マミは片膝をついて荒い息をしているアンクの方へ歩いていった。

マミ「今日は、随分と顔色が悪いのね。…先に手当をしましょう。どこか落ち着ける場所は…」

アンク「…余計な、お世話だ」

マミ「悪態をついている暇はないでしょう?…ほら、肩に掴まって」

アンク「…チッ」


映司「あ、マミさん!…有難う!あの、近くにクスクシエっていうレストランがあるんで、そこまで付き合ってもらえます?」

映司は駆け寄り、マミが担いでいたアンクの肩を引き継ぎ、クスクシエの方へ歩いていこうとする。

マミ「…クス。おかしいのね。マミ『さん』なんて… 映司さんの方が年上でしょ?」

映司「…あ、あれ?…なんでだろ。なんか、さんづけしないとダメなような気がして…」

アンク「… 雑談してる暇があるんなら、とっとと連れてけ…」

映司「あ… ご、ごめん。…よし、行くぞ、アンク。 …アンク?」

アンク「… ぐ、っ…」

しかしアンクは、力を失ったように映司の肩から手を離し、その場に崩れ落ちてしまう。

まどか「…!?え…」

映司「! アンク…!?おい、アンク!しっかりしろよ!」

アンク「… … …」


まどか「(魔女。 そして… ヤミーという謎の敵。 私のいる場所はきっと、いつもの平和な場所じゃ、なくなってるんだ)」

まどか「(だからこそ、私は… 力が欲しかった。 誰かの助けになれる、その力が)」


鴻上「ヤミー。魔女。魔法少女。オーズ」

鴻上「希望。絶望。そして… 欲望」

鴻上「再びこの世は、欲望によって破壊をされ… 再生をしようとしているのだ…!」

里中「会長。どうなさるんです?」

鴻上「里中君。アンク君に、一つプレゼントを運んでくれないかね」

里中「またですか」

鴻上「ああ、そして… 伝えよう」

鴻上「映司君に、彼の事を!!!」



次回の、仮面ライダーOOO(オーズ)×魔法少女 まどか☆マギカ!!

映司「アンクを治すために、必要な物、って…」

アンク「…忌々しい身体になったもんだ」

マミ「魔法少女同士と同じよ。暁美ほむらさんと同じように…結局、火野映司さんだって何を考えているか、分からないもの」

マミ「(私は、一体… 何を望んでいるの…?)」

さやか「ここ、病院の敷地内だよ!?こんな所で魔女が生まれたら…!」

マミ「私は… もう、誰も…失いたくない…!」

『ラッターラッター! ラトラーター!!』

映司「マミさん… 俺が手を差し出します…! 一緒に、戦ってください!!!」


次回【秘密と お菓子と 灼熱コンボ】

二話終了です、ありがとうございました。
繰り返しになりますが、後半になるにつれ更新ペースが大分落ちます…。
今の内に一度、謝っておきます、申し訳ありません!!!絶対に完結させます!!!

あ、それと…コブラの人とみなさん呼んでいただき、ありがとうございます!
前回のSSを読んでいただけている方が大勢いらっしゃって、感激している最中ですw

それでは、失礼します!

お待たせしました!三話が出来上がりましたので投稿していきます!
ペースが遅くなって大変申し訳ありません…仕事が忙しい関係でなかなか書く暇がなくって…
こんなゆったりペースですが、お付き合いしていただければ幸いです!


仮面ライダーOOO(オーズ)×魔法少女 まどか☆マギカ!!

前回の三つの出来事!!

一つ!

映司はアンクから『魔法少女』の事を知り、まどか達はキュウべぇから『オーズ』の存在を知る事になる!

二つ!

魔法少女になろうとするまどかとさやか。そこに現れる謎の少女、暁美ほむら。意味深な言葉を残し、彼女は去る!

そして三つ!

突如街に現れたヤミーの大群!映司はマミやほむらの力を借り、ヤミー達を撃退するのだった!


時計の音が、クスクシエの店内に響き渡る。
誰もいないような静けさ。しかし店内には映司、まどか、さやか、マミ… そしてキュウべぇの姿もある。
しかし、誰も喋ろうとはしなかった。
誰もが、上の部屋で意識を失って寝ているアンクの事が気がかりなのだろう。その世話は、比奈と知世子がしてくれていた。

重苦しい空気の中、映司が独り言のようにつぶやく。

映司「アンク… 一体、どうしたんだろう…」

マミ「… メダル。オーズに変身をするのに必要な、生物の力を欲望の殻に閉じ込めたアイテム…」
マミ「私には、アンクさんはあのメダルを解放してから様子がおかしくなったように思うのだけれど…」

映司「メダルの… 解放…」
映司「そもそも、何でアンクは魔女空間に持ち込んでしまって使用不可能になっちゃったメダルを再び使えるように出来るんだろう…?グリードのアイツにそんな力が、あるのか…?」

まどか「…グリード?」

映司「あ、いや!こっちの話…。 …とにかく、アイツ、人とはちょっと違う力があってさ。…でも、使えないメダルを再び使えるようにする、なんて…」

さやか「まぁ、フツーの人と違うのはすぐに分かるけどね…。髪型とか、腕とか、目つきとか…」

マミ「…そもそも、映司さんのメダルは本来全部使えていたのよね?それが、この前、魔女の結界に入ってしまった時に…」

映司「そう、みたい。アンクが言うのには、『欲望』の塊のメダルが、『絶望』が渦巻く魔女の空間のエネルギーを勝手に吸い込んじゃって、それで黒くなって、使えなくなったとか…」

まどか「… (似てる…。ソウルジェムと、メダル…。変身できたり、黒くなって使えなくなったり…)」
まどか「(わたしの…思い過ごし、かなぁ…)」


マミ「絶望を吸い込んでしまい使えなくなったメダルを、アンクさんが使えるように出来る…。…でも、それにはアンクさん自身が何か力を使わなければいけなかった…」

さやか「…まぁ、そう考えるのが妥当かなぁ。キュウべぇはどう思うのよ?」

QB「さあ。ボクはあくまで、魔法少女の契約を司る立場だからね。メダルとアンクという存在の因果関係についてボクが知っている事はないよ」

まどか「でも、映司さんの変身… 『オーズ』については知ってたよね…?」

QB「あくまで、情報としてさ。今回の件は魔法少女に関わりのありそうな事だからね。知らせておくべき事柄として調べておいたんだよ」

マミ「…そう。ありがとう、キュウべぇ」

QB「どういたしまして」

まどか「… (…なんだろう、この違和感…)」

映司「つまり、アイツがメダルの解放をするたびに体力や気力を消耗して、それで倒れた…ってわけか…」

映司は、手に持ったカマキリのメダルを複雑な心境で見つめている。

マミ「…消耗したものは、回復出来る筈だわ。でも、なんだか、そう一筋縄ではいかないみたいね」

映司「…(セルメダルは、鴻上会長に貰っているとアンクは言っていた。それじゃあ、グリードのアイツが体力や気力を失っても…『補給』が出来るはずなんだ)」

映司「…(でも、アイツは倒れた…。…どうして…?)」


再び沈黙が訪れた時、知世子と比奈が階段から降りてきた。

映司「! 比奈ちゃん、知世子さん!…どうですか…?」

比奈「…うん。意識は取り戻した、けど…」

知世子「ちょっと辛そうね。ベッドから起き上がれないみたい。 …それでも、アイスは食べてるんだけどね、今は」

さやか「あ、アイス?」

比奈「うん。アンク、何より好きだから。アイス」

さやか「あ、あはは… なんか、ちょっと可愛いところを発見してしまった…」

映司「… ありがとう。比奈ちゃん、知世子さん。いきなり面倒看てもらって」

知世子「当たり前の事をしているだけよ。 …それより、どうするの?映司くん」

映司「とにかく鴻上会長の所へもう一度行って、アンクの事、聞いてみます。メダルを預けて、アンクの事任せてたのは鴻上ファウンデーションだし、何か知ってるかも…」

そう言いながら立ち上がってクスクシエから出て行こうとする映司。
しかし、入口のドアは反対側から開いた。

里中「お邪魔します」

入ってきたのは、液晶画面を両手に抱えた里中だった。

映司「うわぁっ!?さ、里中さん!?」

さやか「… デジャブ?」


里中「お久しぶりです。クスクシエのみなさん。ちょっと、失礼しますね」

知世子「は、はぁ… 狭いところですが、どうぞ…」

里中はテーブルの上に画面を置くと、スイッチを入れた。


鴻上『また会ったね諸君ッ!!!!』


映司「また出たぁっ!?」

さやか「…いつも、あの調子なんだ…あの人…」

まどか「う、うん… そうみたい…。お母さんも、言ってた…」


鴻上『火野映司君。アンク君が倒れたそうだね。わざわざ足を運ばなくていいように、こちらから出向いたよ!』

映司「は、はぁ…。ありがとう、ございます…」


映司「でも、会長。どうしてアンクが倒れた事を…?」

鴻上『君にとっては失礼な話だろうが… 我々としてはこの事態は『想定内』だったという事だよ』

比奈「え…!?」

鴻上『今のアンク君は、絶望に塗れたメダルを再び欲望で塗装できるだけの力を持っている! …しかし、それには代償が付きまとっているのは事実だ』

マミ「やっぱり…そういう事なのね」

映司「じゃあ…あいつは、その『代償』のせいで…!」

鴻上『その通り。 だが、安心したまえ。アンク君を一時的ではあるが回復させる術はある』

映司「! 本当ですか!?」

鴻上『ああ。里中君に既にその為に必要な物は手渡してあるから、彼女の指示に従ってくれたまえ』

映司「あ、ありがとうございますっ…!」

さやか「良かったじゃん!映司さん!」

映司「う、うん!なんだか分からないけど…助かるのなら…!」


QB「… … …」


鴻上『里中君。それでは、映司君に例の物を渡してくれたまえ』

里中「…はい、会長」

里中は小さなプレゼントボックスを持って、映司の元へ歩み寄ってくる。

マミ「とにかく、原因が分かって良かったわ。一緒に戦ってくれた人が倒れたままじゃあ、こちらとしてもいい気がしないものね」

映司「…ありがとう、マミさん。心配してくれて…」

マミ「…クス、年上の映司さんにさん付けで呼ばれるのは、ちょっと不思議な感覚ね」

映司「う、うん…ごめん… (…なんか、大人っぽいんだよなぁ、この子)」

里中「火野さん。これを」

映司「あ、ありがとう!里中さん! …で、なんなんですか?コレ」

里中「開けてください」

そう言われ、映司は急ぐようにプレゼントボックスを開いた。

マミ「… え…?」

まどか「…あ…」

映司「…里中、さん。コレ… アンクを治すために、必要な物、って…」

里中「はい。それに間違いないです」

映司「だって、これ… …!」

映司の持つプレゼントボックスの中には…。


小さなグリーフシードが一つ、黒く、光り輝いていた。




魔法少女まどか☆マギカ × 仮面ライダーOOO/オーズ


第三話

【秘密と お菓子と 灼熱コンボ】



カウントダウンメダルス!

現在、オーズの使えるメダルは!

『タカ』
『トラ』
『バッタ』『カマキリ』


マミ「『ティロ… … フィナーレ!!』」

マミの放った巨大な大砲の砲撃は、跡形も無く怪物を消滅させた。

さやか「やったぁ!流石マミさん!」

結界が解け、元の公園に戻ったところでマミは魔法少女への変身を解き、小さくため息をつく。

マミ「喜んでくれるのは嬉しいけど…もう少し危機感をもってね、美樹さん」

まどか「そうだよ、さやかちゃん…。マミさんだって、命懸けで戦ってるんだから…」

さやか「あはは、ごめんごめん。…でも、グリーフシード落とさなかったね」

QB「獲物は大きかったけれど、さっきのも魔女から分裂した使い魔だったからね。もう少し成長をすれば魔女になるところだったけど」

マミ「魔女になれば、人を食い殺そうとしてしまう。…早めに片付けるに越した事はないわ」

まどか「…そう、ですね…」

マミ「…心配しなくても、魔女はいつでも蔓延っているものよ。嫌な事だけれど…グリーフシードも手に入るし。魔法も使い魔相手ならそこまで使わないし…節約戦法でいけるわね」
マミ「人に危害を与える前に魔女や使い魔を倒して…運がよければグリーフシードを手に入れる。これが私の魔法少女としての生き方…かしら」

まどか「…良かった…」

マミ「ふふ、鹿目さんは本当に優しい子なのね」

まどか「そ、そんな事…ないです」


さやか「でもさでもさ、万が一ならあの人に頼めばいいんじゃないですか?鴻上ファウンデーションの会長さん」

まどか「あ、そ、そうですよ…!二回もグリーフシードを渡してくれたんだし、きっといっぱい持ってるんですよ!グリーフシード!」

マミ「… … … いいえ、それは、私に渡す為に有る物ではないわ」

まどか「… え?」

マミ「…アンクさん。少なくとも、彼の力の回復の為… どうやってグリーフシードを手に入れているのかは未だ分からないけれど、目的だけははっきりしている」
マミ「そして、あの会長さんは魔法少女の為にグリーフシードを提供してくれるわけではないと思うの。だから…安易に期待をするよりは、自分で手に入れる方が得策だと思う」

マミ「自分の身は、自分で守る…。…今までだって、私は、そうしてきたんだもの」

まどか「…マミ、さん…」

さやか「な、ならさ… せめて、映司さんと一緒に戦うっていうのはどうかな?2人で戦えば、魔女退治も余裕になるだろうし…」

マミ「…。 映司さんとアンクさんは、少なくとも今は一緒にいるわ。グリーフシードを求めている人達と共闘をしても…それこそ、奪い合いになってしまうかもしれない」
マミ「魔法少女同士と同じよ。暁美ほむらさんと同じように…結局、火野映司さんだって何を考えているか、分からないもの」

まどか「そんな…」

マミ「…(そう。魔法少女が、共闘をする仲間を作るなんて… 無理な事だもの)」
マミ「(かつて私が…失敗しているように。 …『佐倉』さんと…別れた時のように…)」

マミ「…(でも、それじゃあ…)」

マミ「(私は今… 何故、鹿目まどかさんと、美樹さやかさんに… 戦いを見せているの…?)」

マミ「(私は、一体… 何を望んでいるの…?)」


まどか(あの日… 鴻上会長が、アンクさんにグリーフシードを渡した日から…マミさんの様子は、少し変わっていた)

まどか(ヤミーと呼ばれる怪物を、映司さんと一緒に倒した時は…これからきっと、魔法少女とオーズ、一緒に戦って、平和を守る…そんな事が出来るって、信じていたのに)

まどか(ほむらちゃんだって…グリーフシードの奪い合いじゃない。仲間になれる、って…思ってたのに…)

まどか(いつの間にか、マミさんは2人を避けるように戦っていた)

まどか(メダルを解放できるアンクさんが…その代償として、グリーフシードを接種しないと、死んじゃう、なんて…)

まどか(マミさん、ほむらちゃん…アンクさんと、映司さん。皆…グリーフシードを求めている。だからこそ、マミさんは…疑心暗鬼になっているのかもしれなかった)

まどか(わたしは…そんなマミさんを見ているのが…辛い)

まどか(少しでも、それを助けたかった。…でも、今のわたしに、何ができるの…?)

まどか(今は、魔法少女になっても…)


まどか「…ふぅ…」

まどかは、自室のベッドに横たわってそんな事をずっと考えていた。
自分に、何が出来るのか。

暁美ほむらは言った。誰かを悲しませたくないのなら魔法少女になるな、と。
巴マミは戦っていた。魔女に襲われる誰かを助けるために、魔法少女として。
火野映司は戦っていた。魔法少女を、アンクを、皆を助けるために。

それなら、自分のすべき事は、何なのか。そんな事が、まどかの頭の中をぐるぐるとまわり続けるのだった。

まどか「…ねぇ、キュウべぇ」

QB「なんだい、まどか」

まどか「わたしが魔法少女になったらさ…願い事、一つ叶えてくれるんだよね?」

QB「うん、勿論」

まどか「… その願い事…。…たとえば…」

QB「… … …」

まどか「みんなが、仲よくできるように、とか… そういうのじゃ、ダメかなぁ…?」


QB「随分と漠然としているね。具体的にどういう事なのかな」

まどか「うーん… わたしにも、分からないけど…」

まどか「…みんながグリーフシードを奪い合わないように、とか… みんなで笑ってクスクシエでお茶できますように、とか…」

QB「… … …」

QB「どうだろうね。もう少し具体性を持った願い事なら、叶えられると思うけれど」

まどか「…ぐたい、せい…」

QB「それだけ、まどかの中に潜在している魔力は凄まじいものなんだよ。それに今の君なら、マミより強い魔法少女にもなれる」

まどか「…つよい、魔法少女…」

まどか(…どうなんだろう。…強い魔法少女になれれば、マミさんや、みんなを…助けられることに、なるのかな…?)

まどか(願い事… わたしが、魔法少女になる事… どうすれば… みんなを助けられるんだろう)

QB「どんな願い事で契約をするかで、魔法少女としての能力に大きく関わる。…『何かをしたい』というまどかの願い事が具体性を帯びてくれば、きっとまどかの悩みも解消されるよ」

まどか「…そんなもの、なのかな…」

QB「そうさ」

まどか「… … … もう少し、考えてみる…。…おやすみ、キュウべぇ」

QB「おやすみ、まどか」


一方、クスクシエの映司たちの部屋。

アンクは、赤い右手に持ったグリーフシードを強く握った。
それが俄かに光を放ったかと思うと、掌の中のグリーフシードは消滅をしている。

正確にいえば、アンクがグリーフシードを『取り込んだ』のだ。

映司「… 2個目。鴻上会長は、それ以上のグリーフシードは用意できてないらしいけど… 動けるか?アンク」

アンク「…どうにかな。だが、グリーフシードが手に入らないのなら…しばらくはメダルの解放は出来ない」

映司「… … … どうにか、やってみるよ。お前が倒れちゃ、元も子もないもんな」

アンク「…ふん」

アンクはまた、窓際に座って月を眺めている。

アンク「… … … 忌々しい身体になったもんだ。セルメダル以外にとらなくちゃいけない物があるなんて、面倒にも程がある」

映司「はは、面倒も何も、自分の身体だろ。仕方ないじゃん」

アンク「… … …」

映司「… 完全に、復活なんて… そんな都合のいい話、ないもんな…」


映司は、あの後… 鴻上から説明を受けた事を思い出した。

鴻上『アンク君の身体は、元のグリードとしての身体ではない。 正確にはグリードとしての器に、新たな物を内包した形として、蘇っている』

映司「新たな…物…?」


鴻上『 ソウルジェムだ 』


マミ「…!?」

映司「そ、それって…!魔法少女の…!」

鴻上『残念ながら火野映司君。今は詳しい話は出来ない! だから事実だけを受け止めてくれたまえ。アンク君は元のタカのメダルの器に…ソウルジェムを包み込んでいる』

マミ「そ、んな…!?」

鴻上『勿論、願い事を叶えて契約をしたわけではない。だが、今の彼はソウルジェム無しでは活動が出来ないと言っても過言ではない!』
鴻上『その代わりといっては何だが、今の彼には2つの事が可能だ』


鴻上『1つは、魔法少女と同じように魔女の結界内でも活動できるようになっている事ッ!』
鴻上『グリード…欲望の怪人である彼には、メダルと同じように、本来ならば魔女の空間にいる事は出来ない。いればたちまち、消滅してしまうところだろう』
鴻上『だが、今、彼の中にはソウルジェムが存在している!魔女の絶望を唯一払拭できる、希望… その状態であれば、グリードである彼にでも魔女の空間に居る事が可能だ!』

マミ「グリード…?」

さやか「なんか、グリーフシードと響きが似ているような…」

マミ「…そのまま、【欲望】という意味ね。 …意味はよく分からないけれど、やはりアンクさんは…人間じゃ…」

映司「…うん」

鴻上『2つめは、火野君も知っているように、彼には絶望に塗り固められたメダルを再び使用できる状態にする事ができるッ!』
鴻上『これにも、彼の中にあるソウルジェムが関係しているのは言うまでもない。つまり、こういう事だ…』

鴻上『『絶望』に塗り固められた『欲望』のメダルを… ソウルジェムの『希望』の力で再び… 欲望のメダルへと解放する事だッ!!!』

マミ「…それって、つまり…!」

鴻上『そう!つまり今のアンク君には、魔法が使えるのだよ。メダルの解放という魔法がね』

鴻上『そして魔法を使ったソウルジェムがどんな状態になるのか… それを考えれば、どうして彼にグリーフシードが必要になるのかも、自然と分かる筈だ』

映司「… そんな…!じゃあ、メダルの解放を、続けていたら… アンクは… !」


映司「… また、元の割れたメダルに戻ってしまう… か…」

映司は、昨日の鴻上の言葉を噛みしめ、ぎゅっと拳を握りしめた。

アンク「… メダルの解放は、単にソウルジェムを穢れさせるだけじゃない。メダルを常に使用できる状態にしておくために…『コーティング』をする」
アンク「そして、『コーティング』をしたソウルジェムには…グリーフシードじゃ拭いきれない『穢れ』が、ずっと残り続ける」
アンク「多少はグリーフシードで回復できても、そう何度もメダルの解放をしていたらこっちの身が持たないって事だ」

映司「…お前、なんで…」

アンク「言ってもどうにもならないからな。…特にお前のような馬鹿には、言うだけ無駄だ」

映司「… … …」

映司「セルメダルが、お前の体力だとしたら、グリーフシードは、今のアンクの気力、ってところかな」
映司「どちらも使いすぎれば、壊れてしまう。…人間と同じさ。…だから、使いすぎて尽きちゃえば… 壊れる。…そんな解釈でいいんだろ?アンク」

アンク「… … …」

アンク「ふん、上出来だ」

映司「ははは…」


映司「でも…ソウルジェムを内包しなきゃ、アンクは復活できなかったんだよな。…割れたメダルの修復と、アンクの存在の復活…」
映司「その欲望の力を補うのが…ソウルジェム」
映司「鴻上会長がどうやって手に入れたのかは知らないけど… 会長には、感謝しなくちゃな。どんな形でも、アンクが戻ってきたんだから」

アンク「ハッ! こんな身体で戻されて、どう感謝しろっていうんだ。第一、今回のヤミーの件だって怪しい。鴻上が一枚かんでいるかもしれん」

映司「ま、まぁ確かに…あの会長なら、そうかもしれないけど。…でも、それでも… …少なくとも、俺や知世子さん…比奈ちゃんも…。アンクが戻ってくるのを、ずっと、ずっと…待ってたんだから」

アンク「… … …」

映司「…でもさ、似てるんだな。魔法少女も…メダルも…グリードも。全部…」

アンク「…あんな奴らと一緒にすんな。次からはあのマミとかいう女…俺達を敵に見てくるぞ。俺がグリーフシードを狙う理由が分かったんだからな」

映司「… … … それでも…きっと、協力できる」

アンク「どうやってだ。相変わらず甘い奴だな」

映司「マミさんだって、きっと悩んでいる。…俺には、なんとなく分かるんだ」
映司「…なんとなく、だけどね」


昨日。

魔女を無事に倒したマミに、まどかは提案をした。

まどか「ま、マミさん…!」

マミ「…何かしら?」

まどか「あ、あのっ… もう一度、クスクシエに、行きませんか…?」

マミ「…どうして?」

まどか「その…みんなで魔女を倒した方が、いいと思うし… マミさんだって、映司さんと一緒に戦えれば、きっと…!」

マミ「… … …」

マミ「今日はもう、遅いわ。…解散にしましょう」

まどか「… そう、ですか…」



マミ(… 馬鹿ね。私)

マミ(少しでも、一緒に戦える仲間がいるなんて… もう、止めにしようと思ったはずなのに)


翌日。
病院の待合室で待っていたまどかの元へ、さやかがうんざりした顔で戻ってきた。

まどか「…あれ?上条くん、逢えなかったの…?」

さやか「うん。なんか今日はなんか都合が悪いんだってさ。…海外からたまたま、こっちに凄腕の医者が来てるらしくてね。特別に看てもらってるんだって」

まどか「そ、そうなんだ…!…それじゃあ、腕の事…」

さやか「… … …」

さやか「無理だよ」

まどか「…え…?」

さやか「前に、言われたんだもん。『現代の医学』じゃ、どうしても無理だって…。 看てもらってるのだって、丁度いい症例か何かで観察されてるんだろうし」

まどか「そ、そんな事…」

さやか「… 誰かのために、願い事をする…。…マミさんには反対されたけど… あたし、悩んでるんだ」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「… … …」

さやか「あはは、でもまだ、分からないんだ。あたしが恭介の夢を叶えたいのか…それとも、あたしが単なる恩着せがましい恩人になりたいのか」

さやか「だから、当分悩んでおく事にするわ。…同じウジウジ悩み組同士、仲よくしよっ、まどか!」

まどか「…!」

まどか「… う、うんっ!」


ほむら「… … …」

その病院の、屋上。
風に当たり髪をなびかせる暁美ほむらは、じっと外の様子を観察していた。

ほむら(共闘。 …グリーフシードを奪い合う者同士が、出来る筈ないのに)

ほむら(火野映司… アンク… 巴マミ… 美樹さやか… そして、いずれ…佐倉杏子だって…)

ほむら(この街に、グリーフシードを求める者は…あまりにも多すぎる)

ほむら(…だからといって、失うわけにはいかない)

ほむら(失ったら、きっと、まどかは…)

その時、ほむらのソウルジェムが僅かに反応をした。

ほむら「…! 来た…!」


さやか「さあて、そいじゃあ帰りますかー… っと」

病院の外に出たまどかとさやかとキュウべぇは、帰路につこうとしていた。
しかしその矢先。

まどか「…ねぇ、さやかちゃん…。 …あれ、なんだろ…」

さやか「…!?あそこの壁… 何か、黒く光ってる…」

QB「! これは… グリーフシードだ。孵化しかかっている」

さやか「なっ…!? ま、まずいよ…!ここ、病院の敷地内だよ!?こんな所で魔女が生まれたら…!」

QB「魔力の浸食が始まっている。もうすぐに結界が張られてしまう。急いで此処を離れよう」

まどか「だ、ダメだよ!魔女が人間に憑りついちゃったら… 上条くんだって、危ないよ…!」

さやか「…!!」

さやか「まどか、急いでマミさん呼んできて!あたしは… ここで見張ってる!」

まどか「え…!?で、でもさやかちゃん…!」

さやか「ここで魔女を暴れさせるわけにはいかないよ!…まどかは、早くマミさんを…!」


ほむら「その必要はないわ」


まどか・さやか「…!?」

どこから姿を現したのか、2人の前にはいつの間にか、魔法少女に既に変身した暁美ほむらが立っていた。


アンク「…!」

映司「…アンク、どうしたんだ?」

アンク「魔女だ。孵化しかけている。…しかもかなりでかい。おい、急ぐぞ映司!」

そう言ってアンクは直ぐに部屋から出て行った。

映司「あ、ちょっと!アンク!急ぐ…って…!ま、待ってよ…!」

映司も急いでクスクシエの外へ出ていく。


クスクシエの外。少し離れた場所に、二台の自販機がある。
そこにアンクは銀色のメダルを放り込むと、その自販機が変形をし、バイクへと変わる。
それにまたがり一気にエンジンを吹かすアンクを見て、映司も慌ててライドベンダーへの変形を行った。

映司「間違いないんだろうな!アンク!」

アンク「… 分かるんだよ。…自然となッ!」

忌々しそうにアンクは言うと、ライドベンダーを走らせた。
映司も、少し遅れてアンクの後についていく。


ほむら「… 巴マミも、魔女の気配を察知してすぐ来るでしょう。だから、私が先行するわ」

まどか「ほ、ほむらちゃん…!」

さやか「あんた… また…!…グリーフシードの匂いを嗅ぎつけてきた、ってわけ…!?」

ほむら「今はそんな事を言っている場合?この病院で魔女を孵化させる気かしら」

さやか「ぐっ…」

ほむら「…とにかく、魔女は私が狩るわ。結界内に貴方達が入るのは危険よ。そこで待っていて」

さやか「…!」

ほむら「… (とはいえ、魔女はかなり大きい。万が一孵化をしたら、私でも少し危ないかもね…)」

まどか「ほむらちゃん…! …1人で、大丈夫なの…!?」

ほむら「… … …」

ほむら「ええ」


その時、2つのバイクのエンジン音が響き渡るように近づいてきた。

まどか「…!…映司、さん…!アンクさん!」

映司「お待たせ!…やっぱり、アンクの言った通りだ。…これが結界の入口か…」

ヘルメットを脱ぎ、近付いてくるアンクと映司を、ほむらはただ無表情に見つめていた。

アンク「とにかく変身しろ。さっさと結界内に入らないと、逃げられちまう」

映司「わ、分かったよ… とにかく、ここは俺とアンクでどうにかするから、みんなは…」

ほむら「…火野映司」

映司「…!ええと、ほむらちゃん、だよね…」

ほむら「… … …」

ほむら「魔女は、私1人で狩るわ。邪魔をしないで」

映司「え…!?」

アンク「…なんだと…!?このガキ…」

まどか「ほ、ほむら、ちゃん…?」


さやか「あ、あんた… 孵化させるまで待ってグリーフシード奪おうってわけ…!?」

ほむら「どうとでも捉えて結構よ。とにかく、此処は私1人で行くわ。…ついてこないで」

映司「だ、ダメだって!…今回の魔女、孵化すればかなり大きいんでしょ…!?だったら余計危ないよ!グリーフシードなら俺達、いらないからさ…!」

アンク「! おい、てめぇ!勝手な事ぬかすな!」

映司「アンクは黙ってろって!…次の魔女出てきたらあげるから!なっ!?」

ほむら「… … …」

映司「1人で行くより、2人で行く方が効率いいでしょ?魔法だって、そんなに使わなくて済むのなら、それに越した事ないだろうし…」

ほむら「… … …」

映司「お願いだ、ほむらちゃん。俺もついていく」

ほむら「… 今回だけ。…それ以降は、共闘はしないわ」

映司「ありがとう…! …アンクも、それでいいな。グリーフシードなら俺がどうにかするから。メダルの解放さえしなけりゃ、まだ持つんだろ?」

アンク「… … …」

アンク「チッ、好きにしろ…!ただし、俺も今回だけだからな…!あと終わったらアイス奢れ」

映司「はいはい…」


映司「『変身』ッ!!」

『タカ!』
『トラ!』
『バッタ!』

『タットッバ!タトバタットッバ!!』


オーズへ変身をした映司は、振り返って大きく頷いた。

映司「それじゃ…行ってくるよ。マミさんがもし来たら、気を付けて入ってって伝えておいて」

まどか「はい…!お願いします…映司さん、ほむらちゃん…」

さやか「… … …。お願いね。早いトコ、片付けて…!」

映司「うん、任せておいて!…それじゃ」

ほむら「…行くわ」

映司、ほむら、アンクの3人は、結界の内部に足を踏み入れて行った。それを見送るまどか、さやか、キュウべぇの3人。

さやか「大丈夫… だよね…」

まどか「大丈夫だよ…!映司さんとほむらちゃんなら、きっと…!」

QB「… … … !」

その時、まどかとさやかの目の前に、1つの影が割り込むように入ってきた。

まどか「…! マミ、さん…」

マミ「… … …」


ほむら、映司、アンク。薄暗く、長く…どこまでも続いているような錯覚を覚える、結界内部の回廊。
淡々とそこを進むほむらに、映司とアンクはついていくように歩いていった。

映司「…相変わらず、薄暗いなあ、結界の中って…。なんかお化け屋敷進んでる感じが…」

アンク「呑気な事言ってる場合か。先進むぞ」

ほむら「あまり急ぎ過ぎないで。衝撃でグリーフシードの孵化が早まるかもしれない」

映司「わ、分かった…。… … ほむらちゃん。ちょっと、聞いていいかな」

ほむら「…何かしら」

映司「ほむらちゃんは… グリーフシードの奪い合いのために、1人で此処に来ようとしていたのかな」

ほむら「…だとしたら?」

映司「…違う、と思うんだ。…俺、魔法少女の事あんまり詳しく分からないけど…なんか、ほむらちゃんはそういう事のために此処に入ってきたんじゃ、ないと思う」

ほむら「… … …」

映司「なんか、それ以外に、目的があったように思うんだけど… 俺の思い過ごしだったら、ごめん。でも何か、俺に出来る事があったら…」

ほむら「魔法少女がグリーフシードを求めるのは当たり前の原理よ。…それ以外の目的で、魔女とわざわざ戦うわけが…無い」

映司「… そっ、か…」

ほむら「… 先へ進むわ」

アンク「… … …」


ほむら「…もうすぐ先よ。グリーフシードがあるわ」

ほむらとアンク、それぞれのソウルジェムが大きく反応しているらしい。アンクの表情も、一段と険しくなっていた。

映司「…よし…!とにかく、気合入れていこう…!」

ほむら「… それじゃあ、行く――――」


その時。


オーズとほむらとアンク、それぞれの身体に…

幾多の黄色のリボンが、絡み付くように3人の身体を縛りあげ、身動きを取れないようにした。

ほむら「なっ…!?」
映司「うわっ…!な、何だ…!?」
アンク「…ッ!?」

そして、3人の背後から…声が聞こえた。


マミ「… ごめんなさい。少しだけ、我慢していて頂戴」

ほむら「巴… マミ…っ…!」


映司「な、なにするんですかっ!マミさん!」

アンク「おい!今すぐこの縄、ほどきやがれ…っ!!」

マミ「… 少し、強めの魔法を使ったから…簡単には解けないと思うわ」

ほむら「貴方… 自分で何をしているのか、分かっているの…?」

マミ「… … …」

映司「グリーフシードなら、マミさんとほむらちゃんで分け合えますって!何で、こんな事…」

マミ「…もう、いいの」

映司「…!?」

マミ「私は… 1人で、戦わなければいけないの。もっと、強くならなくちゃ… それは分かっていたのに…まだ、仲間を作ろうだなんて、思っていたから…」

マミ「私は… もう、誰も…失いたくない…!」

ほむら「な…っ…」


マミ「…戦いが終わったら、その魔法は解くわ。安心して。 …私が、魔法少女でなくなった時には、必ず」

映司「…!マミさん、それって、どういう意味…!?」

マミ「この魔女は… いいえ、元から、私は1人で戦って… もっともっと、強くならなくちゃいけないの。だから… 貴方達の力を借りるわけには、いかない」

ほむら「巴マミ…! …貴方、分かっているはずよ。この魔女は、貴方1人の力でどうにかなる強さじゃ…」

マミ「… … …」

マミ「分かっているわ。 …だから、試してみるの。自分が、どこまで出来るのかを」

映司「何を、言って…!」


マミ「… それじゃあ、さようなら」

マミはそれだけ言ってにっこりと微笑むと身動きを封じられた映司、ほむら、アンクの脇を走り抜けていく。

映司「ま…マミさんっ…!!」

ほむら「待ちなさい!! 行っては…駄目…!!」


結界の外。さやかとまどかは、心配そうに結界の入口を見つめていた。

さやか「…マミさん、大丈夫かなあ」

まどか「大丈夫だよ、今までだって、魔女倒してきたんだし… 今回は映司さんとほむらちゃんもいるし…」

さやか「うん、それならいいんだけどさ… …なんか、嫌な予感するんだよね」

まどか「…嫌な…予感…?」

さやか「マミさん… なんか、思いつめた顔してたから…」

QB「… … …」


マミ(… ごめんなさい、火野さん、暁美さん… でも、どうしても…試してみたいの)

マミ(私1人が、どこまで戦えるのか… 魔法少女としての、『覚悟』が、どれだけあるのかを…)

マミの脳裏に、今までの事がふいに流れていった。

家族を失った… 交通事故現場。自分を残して逝ってしまった、家族。瀕死の自分と…そこで出会った、キュウべぇという生物。
そして、魔法少女になって… 
他の魔法少女にも出会った。 そして、グリーフシードを分け与えようとする自分に、彼女達は言った。

魔法少女「誰彼かまわず親切にしてたら… 足元救われちゃうよ?」

魔法少女「魔法少女は皆、ライバルみたいなものなんだから」

…それでも、自分は、自分のやり方を捨てきれなかった。協力なんて出来ないと、分かっていた筈なのに。

そして… 初めて、仲間と呼べる存在にも出会った。 …だけど…。

杏子「あんたとはもう…覚悟が違う」

杏子「誰かのために戦ったり、願い事を叶えたりして… 魔法少女として、生きていけるわけ、ないじゃん…!」


マミ(… 佐倉さん…)

マミ(私はもう…誰も失いたくないの。大事な友達を… 素敵な仲間を…)

マミ(鹿目さん、美樹さん… 貴方達を、巻き込んじゃ、いけなかった…)

マミ(火野さん、暁美さん… 仲間にしては、いけなかった… きっと、いつか私達は、衝突してしまうのだから…!)


マミ「だから私は… 1人で戦う…!」

巴マミは、グリーフシードを眼前に誓いを立てるようにそう呟いた。

そして、グリーフシードの孵化が、始まる。


映司「ぐ、ぅ…!これ…外れない…!」

オーズの力をもってしても、タトバコンボの力ではこの魔法の縄は解けそうになかった。それでも映司は自分を縛りつけようとするリボンを引き千切ろうと精いっぱい力を込めている。
アンクは既に諦めたようにしているが、忌々しそうな視線をマミの去った先に向けていた。

映司「マミさん、なんで急にこんな事を… グリーフシードならいらないって言ったのに…」

ほむら「… おそらく、違う。今、巴マミ1人で魔女に立ち向かおうとするのは別の理由があるわ」

映司「…何か、知ってるの…?」

ほむら「… 巴マミは、交通事故で家族を全て失っているの。彼女自身も瀕死の重傷を受けたのだけれど、キュウべぇと魔法少女の契約を交わし、彼女だけは助かったのよ」

映司「…!」

ほむら「でも、彼女は…家族全員を助けられるほどの余裕がなかった…ただ単に、自分が助かる事だけを、望んでしまったの。…命をなくす寸前だもの、仕方のない事だとは思うわ」

ほむら「…今でも、きっと彼女は悔いているの。…そして、魔法少女になってからも…1人の仲間が彼女には出来ていた。…自分とは違う、『家族』を持つ仲間を」

映司「…そう、なんだ…」

ほむら「…でも、その仲間も… 自分の願い事のせいで、家族を失ってしまったわ」

映司「え…!?」


映司「願い事のせいで、家族を失うなんて… そんな…!」

アンク「… はっ。欲望に身を任せるからそんな事になるんだ」

ほむら「…そうなのかもしれないわ。…でも、その仲間には想定外だったの。…自分のせいで、自分の家族を失う、なんて事になるなんて」

ほむら「巴マミ自身も、仲間の支えになろうと必死になったわ。人一倍面倒見のいい性格と… 優しすぎるほど優しい性格」

ほむら「でも、仲間にはそれが苦痛だった。…そして、分かってしまった。グリーフシードを奪い合う魔法少女同士が、協力なんて出来ない事を」

映司「… … …」

ほむら「だから彼女も、巴マミの元を去って行った。 …傷心のマミに出会ったのが…鹿目まどか達と…火野映司、貴方なの」

映司「…そう、だったのか… マミさん… そんな事が…」

ほむら「今までは、いつもの、単なる優しさと親切心で私達に接していたに過ぎない。…でも、きっと気付いてしまったの。グリーフシードを奪う者が、あまりにも多すぎるから」

アンク「… … …」

ほむら「このままじゃ…また、仲間を失ってしまう。自分が大切にしている絆が…壊れてしまう。彼女は何よりもそれを恐れている」


ほむら「鹿目まどかや美樹さやかも連れてこなかった… きっと、彼女は『覚悟』をしてきた。自分1人で戦う、その覚悟を」

映司「…俺達を失うのが、怖いから…?」

ほむら「…巴マミは、誰かを守ろうとして…守れなかった事が、あまりにも多すぎた」

ほむら「だからこそ、誰かを失うのに人一倍臆病になってしまっているのに…それなのに優しくて、強い自分を作って、強いフリをしてしまう」

ほむら「簡単な話よ。…自分を失うのより、人を失う方が怖くなってしまっているの」

映司「…!!!!」

映司(… 昔の…俺だ…!)

ほむら「彼女は、今回の魔女が強いのを、分かっている…。だからこそ、自分でどこまで戦えるのかを試している」

ほむら「大切な仲間を守るために…自分1人で戦っていかなくてはいけない。それに気づいてしまった」

ほむら「…でも… 駄目なの」

映司「駄目って… 何が…?」

ほむら「… … …」

ほむら「巴マミは… この戦いで、死んでしまう」

映司「え…っ!?」


巨大なショートケーキの内部のような結界内部。
巴マミは1人、『お菓子の魔女』と対峙をしていた。
少女のような恰好をしたお菓子の魔女だが、マミは容赦はしない。魔法で単発式銃を次々と出現させると、強力な一撃を次々と使い魔に放っていく。

マミ「…っ!」

しかしマミの表情は暗く曇っていた。

マミ(… 怖い…。 …久しく、忘れていたのね… 1人で戦っていると意識する事が…こんなにも、怖いなんて…)

マミ(でも私は… やらなくちゃいけない…!)

使い魔を貫き、ショートケーキに埋もれた銃弾から、魔法のリボンが次々と生え…お菓子の魔女に向かって伸びていった。

お菓子の魔女「!!??」

マミ「思ったより大した事ないわね… 決めさせてもらうわ…!」

マミは魔力を集中し、大技に出ようとした。

魔女の胎内で、新たな魔力が生み出されているのを気付きもしないで。


映司「死ぬ… マミさんが…!?だって、あんなに戦い慣れているのに…」

ほむら「慢心… 自暴自棄… 魔女はそういった心に敏感。油断をしている内に食い殺す… それが、この魔女の特質…」
ほむら「… … …」
ほむら「私は…見てきている。…巴マミが…ここで、死ぬのを」

アンク「何…?」

映司「…! ほむらちゃん、君は、一体…!?」

ほむら「… … …」

ほむら「分かるの。…信じられないでしょうけれど… 事実。…もっとも、事実として起きないと、貴方だって信じてはくれないでしょうけど」


映司「信じるよッ!!!!」


ほむら「… … …」

ほむら「… え …?」


映司「…俺…よく分からないけど…1つだけ分かった事がある」

映司「ほむらちゃんは誰よりもマミさんの事を理解していて、そして心配してる…!だから、今はマミさんを助けなくちゃいけないんだろ…!?」


ほむら(…私が… 巴マミを、心配している…?)
ほむら(違うわ。単に、巴マミを失ってしまうと…まどかの心に大きな傷が出来てしまうから…そう言っているだけなのに)
ほむら(… 私は…)

映司は、解けない魔法の縄に精いっぱい力を込め、引き千切ろうとする。しかし、リボンはみちみちと音を立てるだけで全く動かない。
それでも映司は、力を込めるのを止めなかった。

映司「ぐ、ぅ…っ!!」

ほむら「無駄よ… 巴マミの拘束魔法は強力よ。私の力でも解除できない。…それに、今から行っても、間に合わない…!」

映司「… っ…! そうだとしても…っ!!」

映司「そうだとしても…!何もしないより、ずっとマシなはずだ…!」

映司「誰かを失う前に… 自分に出来る事を、精一杯する…! …っ、きっと、そうすれば…!助けられる命だって、あるはずなんだ…!!」

ほむら「…火野映司…。 私の言葉を、信じるの…?」

映司「さっきも、言ったよ…っ!!このままじゃ、マミさんが危ないんだろ…!!だったら…」

ほむら「貴方には、魔法少女の事は関係ないはずよ…!それなのに、どうして彼女を助けようとするの…!?」

映司「…そんなの、当たり前じゃないか…!」


映司「目の前で消えそうな命を見捨てるなんて… 出来るわけ、ないだろ…っ!!」

ほむら「… … …!!!」

ほむら(…やっぱり…)

ほむら(やっぱり貴方は… 『火野映司』なのね…)


ほむら「…アンク」

アンク「…あ?」

ほむら「腕だけになって、火野映司のポケットから2枚…メダルを出して」

アンク「…おい、俺はこれ以上メダルの解放は出来ねぇんだぞ!ふざけんな!」

ほむら「分かっているわ」

アンク「あ…!?」


ほむら「だから、私に渡して。…私が解放する」


映司「…え…!?」

アンク「なんだと…!?」

ほむら「この状況を打破するには… この魔法のリボンを『焼き切る』のと、巴マミの元に追いつく『速さ』が必要」

ほむら「…アンク。分かるわね。2枚だけ…私にメダルを渡して」

アンク「… お前…メダルの事をどうして…!」

ほむら「… … …」

ほむら「分かるのよ。…詳しすぎるくらいに」



リボンで縛りあげた魔女に向かって、マミは巨大な砲身を出現させ、照準を合わせた。

マミ「…これで決めさせてもらおうわ…!」

マミの魔力が砲台に集まっていく。そして、巨大な一撃を放った。

マミ「ティロ… フィナーレッ!!」

その弾丸は、正確にお菓子の魔女の腹部を貫いた。…しかし、爆発はしない。通常なら巨大な爆発が相手を飲み込む筈なのに…それがなかった。

マミ「… え …?」

お菓子の魔女「…!!!!」

大きな少女の姿をした魔女の口から…ピエロの顔をした芋虫のような魔女が、這い出るように出てきた。
まるでマミをあざ笑うかのようなその表情。

そしてその表情は、マミの眼前まで瞬時に近づくのだった。

マミ「 … あ … 」

マミ(… 駄目 … 速すぎ、る … 間に合わない …)



『ライオン』!

『トラ』!

『チーター』!


『 ラッターラッター! ラトラーター!! 』


結界の中に、メダルの音が響き渡る… マミは、そんな音を聞いた。


映司「うおおおおおおお――――――ッ!!!!」

口を開け、マミの頭部に喰らいつこうとする魔女。その横腹に、黄色の流星のような速さの物体が体当たりを食らわせた。

お菓子の魔女「!!!」

地面を滑るように転がる魔女。 そして体当たりをかました人影は、空中で数回転し、マミの眼前にスッと着地した。

マミ「… … …!」

マミ「映司… さん…?」


その頭部は、ライオンの鬣(たてがみ)のように凛々しく黄金に輝いていた。
鋭い爪はトラのように獲物を狩るために研ぎ澄まされ。
駆け抜ける脚は荒野のチーターのように鍛え上げられていた。


映司「おおおおおお――――――ッ!!!」


まるで獣のような咆哮をあげる映司。
マミの目の前に立ちふさがるように魔女の方を向くと、鋭い爪を構えた。


映司「… マミさん、お待たせしました…!」

マミ「…映司、さん…!だ、だって私… 貴方を…」

映司「マミさん。1人で戦おうとしないでください。まどかちゃんだって、さやかちゃんだって… ほむらちゃんだって…みんな、マミさんの事、心配してるんです」

マミ「… … … !」

映司「皆… 手を差し出してるんです。それなのにマミさんは…その手を取ってしまうと、自分の危険に人を巻き込んでしまうような気がしてしまう」
映司「…だから、手が取れないんです」

マミ「…! どうして…!?」

映司「分かるんです。 …俺が昔、そうだったから」

映司「でも…本当に強いって事は…1人で戦える事を証明する事じゃなかった。…俺もそれに気づいた」

映司「自分の為じゃない… 誰かのために戦う。誰かが自分のために戦ってくれる。…そして、それを信じ続ける。それが、本当に強いって事なんです!」

マミ「…!!!」

映司「マミさん… もう一回、俺が手を差し出します…!だから、ちゃんと手をとって…」


映司「 一緒に、戦ってください!!! 」


そう叫んだ映司。
『ラトラーターコンボ』の圧倒的な加速力は、瞬時に魔女の眼前まで移動をし…そして敵を鋭い爪で斬りつけた。


映司「うおおおおっ!!はあっ!!」

スピードが速いお菓子の魔女本体も、今の映司のスピードには翻弄をされている。
幾度と繰り返される虎の爪の攻撃に、魔女も耐えきれないようだった。

マミ「… … …」

マミ(… 今、映司さんが…私に手を、差し出している…?)

マミ(…違ったの、ね)

マミ(当たり前の話じゃない…!1人より2人… 2人より、皆…! その方がずっと…『強く』いられるって…!)

マミ(それなのに、私は…!)

座り込んでいたマミは、銃を地面に突き立てると、それを軸に空中に飛び上がった。


映司「せいっ!!やあああっ!! …っ!!??」

耐えきれなくなったお菓子の魔女は、口からもう一度… 『脱皮』をする。
その突飛な攻撃に映司も対応しきれず、マミと同じように魔女に頭部を喰いつかれてしまいそうになる。

映司「しまっ… !!」

しかし、今度は… 

魔女の横腹に、銃撃が何発も突き刺さり、爆発をした。

お菓子の魔女「!!??」

映司「…!!マミさん!!」


マミ「… 受け取ったわ… 映司さんの、手!!」


映司「…! 俺が近づいて攻撃します!合わせてください!」

マミ「オッケー!…今度こそ、ケリをつけるわ!」

攻撃から逃れようと上空に行こうとする魔女。
しかし、マミの銃撃がそれを許さない。上空に行けば圧倒的な火力の砲撃を次々と受けてしまう。

映司「よっし!!下りてきた!!」

そして地面や物陰に逃げ込もうとすれば、ラトラーターの攻撃を受ける。
どんなに速く移動しようと、映司はそれに対応をして、先回りをしてトラクローで斬りつける。

何度逃れようとしても、映司とマミはどこまでも追跡する。


その連携。連続攻撃に魔女はたまらずダウンをし、脱皮をする暇もなく地面に倒れ込んだ。

マミ「… 決めるわ…!映司さん、今度はこっちに合わせて!!」

マミはもう一度、必殺技を決めようと巨大な砲台を出現させる。

映司「…!分かりました!」

映司はその声を聞くと、素早くマミの元まで移動をした。


『スキャニングチャージ!!』


映司はベルトをスキャンし、構えをとった。
獅子の咆哮のような音が聞こえたかと思うと、魔女に向け3つの黄色の輪が出現している。

そして映司は、マミの出現させた砲台の上に飛び乗り、その時を待つ。

マミ・映司「はぁああああ…っ!!」


マミ「『ティロ・フィナーレェェェッ!!!!』」

映司「うおおおおお――――っ!!!!」


マミが砲撃を魔女に向け発射した瞬間、映司も魔女に向けて走り出す。
熱い程の光を放つ映司の身体は、やがてマミの弾丸と同じ速度になり…

そして、魔女に同時に到達する。


映司「せいやああああああ――――――――ッ!!!!」


巨大な爆発と共に、左右の腕の鋭い爪をクロスさせるように、映司は魔女の身体を、斬り抜けた。


お菓子の魔女「!!!!!!!!」

そして魔女は、その爆発と斬撃に飲み込まれるように…消滅をした。


マミ「…やっ、た…! …倒した…!」

結界が解け、元の病院の駐輪場に戻った瞬間、マミも魔法少女の変身を解き、座り込んでしまった。

マミ「… う、ぅっ…!…っ…!」

気付けば、マミは大粒の涙を流していた。
そして、その眼前に、1つの手が差し伸べられていた。

マミ「…っ…!」

まどか「… マミさん… ありがとう…ございました…!」

マミ「鹿、目、さん…っ!」

マミ「… ありがとう…っ!!」

まどかの手を取って立ち上がったマミは、そのまままどかの小さな身体を、思い切り抱きしめた。


映司「…手、取ってくれた… マミさん」

ほむら「…ええ。…貴方のおかげでね」

映司「良かった!…それじゃあ、これからは一緒に仲間になれるんだね、俺達…! … … あれ?ほむらちゃん…?」

映司の横にいた暁美ほむらは、いつの間にか消えていた。
まるで…魔法のように。


ほむら「ぐ、ぅ…っ!!」

人通りの少ない路地裏に、暁美ほむらは1人入り込み、苦しみに必死に耐えていた。

ほむら(メダルの、解放…!やっぱり…堪えるものがある…っ…)

ほむら(2枚でこんな風になってしまうのね…)
ほむら(…それだけ、今の私のソウルジェムの状態が…悪いという事…っ?)

ほむら「はぁっ…はぁ…」

ほむら「まどか…っ… 絶対に、貴方を…!」


知世子「さあ!不思議の国のアリスフェアも、今日でおしまいよ!みんな、気合を入れて働いて頂戴ね!」

映司「はいっ!着替えも終わったし…そろそろ店開けて… どわあああっ!?」

店の中央に、巨大なケーキがそびえ立っていた。
まるでウェディングケーキのような、巨大なケーキ。それはまるで…この前のお菓子の魔女の空間を、彷彿とさせるような。

比奈「す、すごい…!」

映司「これ… 誰が…」

マミ「うふふ…私です」

映司「ま… マミさん…!?」

マミ「私なりに、映司さんにお礼をしたいと思った結果よ。…コレ作るの、一日かかっちゃった♪」

映司「お、お礼って、コレ…?」

マミ「私、お菓子作りが得意だから…。もしこのお店の役に立てるのなら、きっとそれが恩返しになると思って」

知世子「素晴らしいわッ!不思議の国のアリスフェア、グランドフィナーレにふさわしい一品よ!!」


映司「こ、これ、どうするんですか知世子さん…」

知世子「勿論お客さんに出すわよ」

映司「到底出し切れる量じゃないと思うんですけど…!!」

知世子「その時は勿論、従業員のみんなで食べる事になるわね。こんな立派なもの、残したらバチが当たるわ」

比奈「こ、これを… みんなで…」

映司「… 無理だよ… 絶対…」


さやか「こんちは―――  うひゃああああっ!?なんだコレ!?魔女!?」

マミ「あら、失礼ね。腕によりをかけて作ったケーキに」

まどか「こ、これ… マミさんが作ったんですか…!?」

マミ「そうよ?映司さんや皆さんにお礼をしたくって… 思い切って作ってみたの☆」(マミーン


映司「よ、良かったっ!まどかちゃん、さやかちゃん!これ、今日お客さんに出し切れなかったら皆で食べきるそうだから、手伝ってくれない…!?」

まどか「え…!?」

さやか「…あっ」

さやか「ああああ… あたし、また恭介のトコ見舞い行かなくちゃなんだったー すっかり忘れてたー あははははははー」

さやか「さようならっ!!!!!!」

まどか「さ、さやかちゃん待ってよ!!ずるいよ!!わたしも…」

逃げようとするまどかの手を、マミが瞬時に握った。

マミ「… … … 逃がさないわよ?鹿目さんにも、お礼をしなくっちゃ♪」

マミは、屈託のない笑顔で、にっこりとほほ笑んだ。

まどか「… … …!」

映司・まどか「ひいいいいいいいいいっ!!」


アンク「…ふん」

一方、アンクは1人、ふてくされたようにカウンターに座り、切り分けられたケーキを頬張っていた。


次回の、仮面ライダーOOO(オーズ)×魔法少女 まどか☆マギカ!!


恭介「そのお医者さん、変わった人でさ。絶対に治らないとか、言わない人なんだ」

伊達「恭介。 肝心なのは、本人の気持ちだ」

さやか(あたしは…恭介の、何になりたいんだろう…)

鴻上「光栄だね!魔法少女とこうして話す機会があるとは思ってもみなかったよ」

杏子「アタシもこんなに早くあんたと話せるとは思わなかったよ」

鴻上「ハッピーバースデイッッッ!!!佐倉杏子君!!!」

まどか「ひ、仁美ちゃん…どこに、行こうとしてるの…!?だ、ダメだよ…!」

仁美「うふふ… ここよりもずっと、素敵なところですのよ」

映司「…!やばいな…!一刻も早く魔女を倒さないと…!」

伊達「屑ヤミ―!?なんで今更… それに、どうしてこの病院にいやがるんだ…!?」

伊達「… 『変身』!!」


第四話【恭介と 杏子と バース再誕】

うおお、改めてなんか随分長いお話になってしまいました…
三話、完了です。

感想、いつもありがとうございます!読ませていただいております!
前にも書きましたが長いSSになりまして…投稿しながらこんな点が良かった、悪かった、気になったなど言っていただけると何よりも嬉しくて力になります!

読んでいただいてありがとうございました!

『ドリルアーム・クレーンアーム・ショベルアーム・キャタピラレッグ・ブレストキャノン・カッターウイング』
フ ル ア ー マ ー バ ー ス
バースデイ!

アタッチメントウェポン 【バース・CLAWs】
6種類全てを同時に装着したフル武装形態

アンク「持つべきものは使える馬鹿だな」

映司「使いすぎ」

フォームチェンジ:部位毎のカスタマイズ
各コアメダルには担当部位や色・モチーフとなる動物・特殊能力等が設定されており、
スキャン時にバックル部分にセットされた3枚のコアメダルに応じて、それぞれ頭部・腕部・脚部に特徴的な外見と能力が与えられる。

()内は色を表す。


頭部
タカヘッド(赤) 複眼の色は緑。視覚面(視認距離)に優れる。
タカヘッド・ブレイブ(赤) わかりづらいが、複眼の色は赤。タカヘッドの進化系で、顔面にビークシールドを装備。特定のコンボの時にこの形態に変化。
ライオンヘッド(黄) 複眼の色は青。光を放つことが可能。
クワガタヘッド(緑) 複眼の色は橙。360度の視野をもつ。電撃も撃てる。
サイヘッド(白) 複眼の色は赤。大きなツノを持つ。
シャチヘッド(青) 複眼の色は黄色。深海でも視力・聴力を得ることが可能。水鉄砲も放てます。
プテラヘッド(紫) 複眼の色は緑。頭部プテラノドンの翼を展開し飛行可能。
コブラヘッド(橙) 複眼の色は紫。赤外線で隠れた敵を見つけることができる。コブラの頭部を使い攻撃できる笛・ブラーンギーを装備。

腕部
クジャクアーム(赤) 手甲型エネルギー解放器・タジャスピナーを使用可能。背中の翼で空も飛べる。
トラアーム(黄) 爪状の武器・トラクローを使用可能。コアメダル奪取が可能だが、扱いが不遇。
カマキリアーム(緑) 刃状の武器・カマキリソードを使用可能。
ゴリラアーム(白) ガントレット状の武器・ゴリバゴーンを使用可能。
ウナギアーム(青) 鞭状の武器・ボルタームウィップを使用可能。
トリケラアーム(紫) 両肩にワイルドスティンガー、両腕にトリケラガントレクスを装備。
カメボディ(橙) 両腕にコウラガードナーを装備。合わせることで防御力が高い大型の盾に。また、この部位だけモチーフを意識してか、「アーム」ではなく「ボディ」となっている。
イマジンアーム(赤) 両肩にオレノツノを装備。一度使用した後、メダルが消滅。

脚部
コンドルレッグ(赤) 鋭い爪で相手を引き裂く。必殺技ではカギ爪に変形する。
チーターレッグ(黄) 走力に優れる。相手に組み付き高速のキックを放つ。
バッタレッグ(緑) 跳躍力に優れる。必殺技では変形する。
ゾウレッグ(白) 地面を踏み込み振動を起こす。
タコレッグ(青) 地面や相手にくっつく吸盤を持つ。必殺技では八本の足に変形する。
ティラノレッグ(紫) ティラノサウルスの尾を装備。
ワニレッグ(橙) ラインドライブが発達したソウテッドサイザーを携える。地面を滑るように移動可能
ショッカーレッグ(金) コンドルレッグの色替え。一度使用したあと、メダルが消滅。

ご無沙汰しております、1です…
本当に時間が空いてしまいまして、申し訳ありませんでした。4話を投稿していきます。
待っていてくださった方、本当にありがとうございました…。

仮面ライダーOOO(オーズ)×魔法少女 まどか☆マギカ!!

前回の三つの出来事!!

一つ!

アンクの復活の秘密!それは、ソウルジェムを器にメダルを取り込むという結果のものだった!それを知ったマミは、アンクと映司から離れていってしまう!

二つ!

病院に出現した魔女・シャルロッテ!これを倒そうとした映司とほむらだったが、自暴自棄になったマミは2人を拘束し、1人で戦いに挑んだ!

そして三つ!

死を覚悟したマミの元に、オーズ・ラトラーターコンボになった映司が現れる!和解をした映司とマミは、協力をして魔女を倒したのだった!


マミ「グーテンターク!レストラン・クスクシエにようこそ」

マミ「今月はドイツフェアになっております。料理は子牛のカツレツ、デザートはバウムクーヘンがおススメになっております」

マミ「3名様ですね、こちらのお席へどうぞ」

映司「… … …」
まどか「… … …」
比奈「… … …」

マミ「知世子さん、5番テーブルのお客様、オーダー待ちです」

知世子「ありがとう、マミちゃん。少し休憩していいわよ?」

マミ「いえ、まだお客さんいっぱいいますから… あ、いらっしゃいませー!」

まどか「マミさん… すっかり、馴染んじゃいましたね」

映司「うん… なんか、俺達の出る幕がない、っていうか…」

比奈「…嬉しいような…悲しいような…って感じかな、私達」


少し時間が経って、クスクシエ店内の客も大分まばらになってきたところでマミ達従業員一同は一息ついた。

知世子「お疲れ様!皆、お茶淹れたからこっち来て休みましょう」

映司「ありがとうございます、知世子さん」

マミ「ふう… 私、ちゃんとお仕事できているかしら…?」

知世子「全然オッケー!新フェアで忙しいところだったから、マミちゃんが来てくれて助かっちゃったわー」

マミ「有難うございます。うふふ、映司さんや皆さんのお役に立てていたら何より嬉しいわ」

映司「あ、あはは… こちらこそ、ありがとうございます…」

まどか「なんだかマミさん、憧れちゃうな。衣装も似合ってるし…」

マミ「うふふ、ありがとう」


マミ「…ところで、美樹さんは今日はお休みなのね」

まどか「あ、今日はちょっと… 放課後は上条くんの所に行ってくるそうです」

マミ「…ああ、そうなのね。…美樹さんも大変そうね、色々と… でも、とっても素敵だわ」

映司「かみじょう?」

まどか「…あ、えっと… さやかちゃん、病院にお友達がいるんです。それで、ほとんど毎日お見舞いに行ってて」

マミ「… … うふふ、お友達、ね」

まどか「???」

映司「へえ、病院に… 何かの理由で入院してるとか…?」

まどか「… あ、それは…えっと…」

マミ「…話していいと思うわ、鹿目さん。 きっと美樹さんからは何も話さないでしょうし…言って誰かが困る事ではないもの」

まどか「…そう、ですね…」

映司「… … … ??」


病院の一室。
夕暮れの景色が見える窓からは心地よい風が吹き、カーテンを揺らしていた。

さやか「…そっか、これから、看てくれるんだ。そのお医者さん」

恭介「うん。でも何回か僕の事看てくれてるし、とってもいい人だから…大丈夫だよ」

さやか「あはは、恭介がそう言うなら大丈夫だね。…それじゃ、あたしはもう少ししたら帰るかな」
さやか「(…そういう事心配してるんじゃ、ないのにな… もうちょっと、一緒にいたかったのに…」

恭介「ごめん、さやか。折角来てくれたのに」

さやか「! な、なーに今更言ってんのよ!あたしだって、これからバイト… げふんげふん!ち、ちょっと知り合いの所行く用事あったし…」

恭介「…そう。時間を割かせちゃったかな、本当に、ごめん」

さやか「だ、だから気にしないでってば!」

さやか「(…あー、もう… あたしのバカ…!)」


さやか「… どうなの?恭介。 そのお医者さんが看てくれて…その、腕のコトとか…」

恭介「…いや、腕のコトは、何も言ってくれないよ。…多分、前と同じで治る見込みはない…って事だと思う」

さやか「… … … そっ、か…」

恭介「でもそのお医者さん、変わった人でさ。絶対に治らないとか、言わない人なんだ」
恭介「何より本人の気力とか『絶対に治してやる!』っていう気概とか… そういうのが、治療には大前提になるんだ、って…僕にいつも言ってくれる」

さやか「へぇ。なんか医者っぽくない人だね」

恭介「…多分、僕の腕は治らないけど…今は、そのお医者さんと話しててとっても楽しいし… 少しだけ、バイオリンのコト、忘れられるし…」

さやか「…そう、なんだ… (…忘れちゃう、か…。 …恭介は、それでいいのかな…)」

恭介「…出来ない事、無理な事にずっと憧れているのは… 段々、苦痛になってくるんだ。…だから、今は…」

さやか「… うん。恭介がそうしたいなら…それでいいと思う」


コンコン。
その時、ドアをノックする音が聞こえた。

恭介「あ… どうぞ!」

病室のドアを開けて入ってきたのは…

伊達「よう、恭介。元気してるか?」



魔法少女まどか☆マギカ × 仮面ライダーOOO/オーズ

第四話【恭介と 杏子と バース再誕】



カウントダウンメダルス!

現在、オーズの使えるメダルは!

『タカ』
『カマキリ』『バッタ』
『ライオン』『トラ』『チーター』


鴻上「ふふふーんふーんふーんふーん…♪ ふふふーんふーんふーんふん…♪」

里中「会長。お客様がお見えになってます」

鴻上「おおッ!先程連絡をくれた『彼女』かね。すぐにここに通してくれたまえ、里中君」

里中「ケーキ作りは大丈夫なんですか?」

鴻上「ああ、もう少しで完成するところだよ。それに…何よりケーキは、完成したところをプレゼントする相手に見てもらうのが一番だ」

里中「はぁ」

鴻上「完成した物を出すのは簡単だ。だが、1つの素材からこうした形になって提供する場面を見て、共感する事が何よりも大切なのだよ」

里中「作るのはいいですけど、後処理、たまには別の人にも任せてくださいね。後藤さんも最近顔出してくれなくて私ばっかりなんですから」

そう言って里中は一度鴻上の部屋から出ると、再び戻ってくる。
その後ろに、赤い髪の少女を連れて。

杏子「邪魔するぜ」


鴻上「光栄だ!魔法少女とこうして話す機会があるとは思ってもみなかったよ」

杏子「アタシもこんなに早くあんたと話せるとは思わなかったよ。随分簡単に部屋まで通すんだな」

鴻上「君達、魔法少女とこうした場を設けるのは早い方がいいと思ってね。今回、まさに魔法少女を名乗る者から直々に話がしたいというんだ。こちらとしても実に都合がいいのだよ」
鴻上「佐倉杏子君…といったかな。私はこの鴻上ファウンデーションの会長、鴻上光生だ」

杏子「…なんだか、会長って言われても随分拍子抜けするね。SPもつけないで。アタシら魔法少女に戦闘能力があるの知ってるだろ」
杏子「アタシがあんたを殺しに来た、なんて言ったらどうするつもりだい?」

里中「… … …」

里中は杏子の座るソファーの前に紅茶を一つ差し出すと、部屋の隅に行きじっと杏子の方を観察している。

鴻上「佐倉杏子君。君に、私を殺す理由があるのかな」

杏子「さてね。…ただ、会話の内容によっちゃ…そうなるかもしれないね」

鴻上「… 素晴らしいッ!!!」

杏子「…は?」

鴻上「君の瞳は、実に欲望に溢れている。やはり魔法少女という存在に目を付けた私は間違いではなかったようだ」

エプロン姿の鴻上はそう言いながら杏子の前に、バースデーケーキを一つ持ってきた。


杏子「…ケーキ?」

鴻上「今日の私達との…鴻上ファウンデーションと魔法少女の初めての接触に。そして、何よりも君に芽生えた『欲望』に対しての、誕生のケーキだ」

鴻上「ハッピーバースデイッッッ!!!佐倉杏子君!!!」

赤い苺で大量に盛り付けられたバースデイケーキを、杏子は受け取った。

杏子「… … …」

杏子「へっ、悪くないじゃん」

杏子はテーブルにあるフォークを掴むと、昼食でもとるかのようにガツガツとそのケーキを食べ始めた。

里中「良かった。今日は食べなくて済みそう」

杏子「?何か言ったか?」

里中「何も」


鴻上「さて聞こう、佐倉君。君の欲望は何かね?」

杏子「…欲望とか接触とか、よく分かんないけどさ。来た理由は単純だよ」

杏子「この会社で持ってるグリーフシードは幾つある?」

鴻上「何故この鴻上ファウンデーションに、君達魔法少女が持つべきグリーフシードがあると思うのかね?」

杏子「よく分かってるじゃん。あれは本来、アタシら魔法少女が血眼になって探しているモンだ。だからこそ、そいつがありそうな場所には敏感なのさ」
杏子「どこで知った、とは言えないけどね。とにかく…この会社にグリーフシードがあるのだけは、調べがついてるのさ」
杏子「見滝原… その周辺に今、魔法少女が妙に集まってる。それに、魔法少女以外にも妙な化け物やら奇妙な戦士がいるみたいだ」

鴻上「随分と調べ上げているね」

杏子「言ったろ?グリーフシードが手に入りそうな場所のチェックは入念にしておく主義なのさ」

杏子「… そして、その為ならあたしは何だってする」

杏子はそう言って、自分の持っているソウルジェムを脅すように鴻上にちらつかせた。

里中「綺麗な宝石…」

鴻上「魔法少女への変身を行う…ソウルジェム。実にいい輝きだ。…そして、とてもよく似ている」
鴻上「メダルの放つ、欲望の輝きと…ソウルジェムの放つ、希望の輝きがッ!!」

杏子「… … …」

杏子「(こいつ、どこまで知ってやがる…?)」


杏子「さて、いい加減はぐらかしてないで答えてもらうよ。…グリーフシードはどこにあるんだい?」

鴻上「…確かに、この会社には少なからずグリーフシードは保有している…と、言っておこう」
鴻上「しかし、だ。私がそれを手放す理由は…何もない。無論、魔法少女に提供する理由もだ。さて、佐倉君はどうするのかね?」

杏子「…あんたを締め上げて、死ぬ寸前まで痛めつけながらでもじっくり在り処を聞く…ってのはどうかな?」

杏子はソウルジェムを輝かせたまま、にぃと笑い鴻上に詰め寄ろうとした。
しかし、鴻上は全く怯えない。むしろ杏子がグリーフシードを求める素振りを見せる度… 嬉しそうな笑顔を見せるのだった。

鴻上「 素晴らしいッ!!! 」

杏子「…は?」

鴻上「他人…見ず知らずの人間を犠牲にしてまで欲望の種を求める、その欲望… 実に素晴らしいッ!!その欲望こそ、我々の戦いには必要なのだよッ!!」

杏子「…何、言ってるんだよ…」

鴻上「よろしい!!我が会社で保有しているグリーフシードの一部を、君に融資する事にしよう」

杏子「!? な… い、いいのかよ…?」
杏子「(あっさりしすぎてるぞ、おい…)」

鴻上「…ただし、こちらからも少しだけ、君の手伝いが必要だ。…私の言う『条件』をのんでくれるのなら…喜んでグリーフシードを提供しよう!」

杏子「…条件?なんだよ、それ」

鴻上「ふふふ…」


鴻上「君の活動拠点を、見滝原市に移してもらいたいのだよ」

鴻上「そして…」


伊達「… ふぅむ」

伊達は聴診器を恭介にあてて、少しだけ難しい顔をした。
しかし、緊張した面持ちでその顔を眺めている恭介と、その様子を見守るさやかを安心させるように、伊達は表情を一変させて笑った。

伊達「交通事故の後遺症の麻痺なんて、珍しいモンじゃない。前にも話したよな?恭介。 肝心なのは、本人の気持ちだ」

恭介「…はい」

伊達「リハビリの本当の意味ってのは、『自分らしく生きられる』状態に自分を持っていくコトだ。ただ単にバイオリンが弾ける身体になるコトじゃない」
伊達「今必要なのは手術や治療じゃなくて、恭介が生きたい自分を探す、っていうコトだな。…はは、まぁ、少し難しい話かもしれないな」

恭介「… … …」

伊達「…なぁ、恭介。…お前のなりたい自分、っていうのは、どんなんだ?」

恭介「… … …」

恭介「今は、まだ…分かりません」

さやか「…(恭介…)」

伊達「… … … そっか」


恭介「この腕が治るのなら、そんな夢も…持てたかもしれません。…でも、今の僕に…なりたい自分、なんて…」

伊達「…治るとか、治らないとか、そういう話じゃないんだけどなぁ」

恭介「…それ以外に、何かあるんですか…?」

伊達「あるさ」

恭介「バイオリンしか取り柄のない僕に…何の夢があるっていうんですか…!腕の動かない、この僕に…!」

さやか「恭介…!…先生、もうやめてください…!」

だが、伊達は話を続けた。その表情は笑っていても、眼は真剣に恭介の方を向いている。

伊達「現代の医学じゃ、その腕の完治は無理…って言われたんだろ?だったら、医学以外の方法でその腕を治すしかない」

恭介「どうやって…!」

伊達「かーんたん。気合と根性さ」

恭介「馬鹿にしないでください…!」

伊達「こんな場面で馬鹿にするわけないだろ?プラセボ、心理療法…リハビリだって、続けて初めて効果が表れる医療行為だ。薬や手術が全てじゃない。患者の『生きたい』っていう意識が、何よりも必要なんだ」
伊達「恭介。今、お前は生きたいか?」

恭介「…!」


伊達「これも前に話したっけ。俺、海外で医者してるんだわ。貧困で医療が受けられない国とか、内戦で子供の命なんざどうでもいいっていう国とか…色々と」
伊達「それこそ、ろくな物資なんかない。受けられる医療レベルも、この病院よりずっと低い。…けどな、それでも助かる命があるんだよ」
伊達「俺の所に来るのは…みんな、『生きたい』『助かりたい』… まるで祈りのように思い続ける人達ばっかだ。そして、その力が何より自分自身を助けられるっていうのは、誰よりも知ってるつもりだぜ?」

恭介「… … …」

伊達「っと、俺らしくない。少し説教くさくなっちまったな。…こういうの、嫌いなんだよね」
伊達「だが…これだけは言わせてもらうぜ。 奇跡を起こすのは、自分自身だ。初めから無理と諦めてちゃ、何も生まれやしない」

伊達「さて、と、これで失礼するぜ。お前に現代医学じゃ治療できない、なんて言った医者、引っ叩いてこなくちゃな」

そう言って伊達は恭介とさやかにウインクをして親指を立てると、病室から出て行った。

恭介「… … …」

さやか「…なんか、変わったお医者さんだね…。 … … … 恭介?」

恭介「… … …」

恭介「ごめん、さやか… 今日は、帰ってくれないか」

さやか「え…」

恭介「ちょっと… 考えたいんだ。1人で…」

さやか「… … …」

さやか「うん… 分かった」


伊達「…生きたい、助かりたい…かぁ。なんか、ホントにらしくねぇな」

伊達はそう言いながら頭をボリボリかいて、廊下を歩いて行く。

伊達「(…俺にそんな事言う資格ない、か。…でも、恭介を見てると…なんか、昔の俺を見てるみたいだな)」
伊達「(自分の命を諦めて、自暴自棄になって… はは、なんか懐かしいね)」

看護婦「伊達先生。お忙しい中ありがとうございました」

伊達「おおっと、お疲れ。なぁーに。 …ところで、その伊達先生っての、止めてくれない?」

看護婦「何を仰ってるんですか。国境や宗教、命の差をなくす流浪のスーパードクター、伊達明先生… まさかこの病院に来ていただけるなんて」

伊達「やめてよ、身体中かゆくなっちゃうからさ。…講演会のついででね。近くに難病の子がいるってんで、寄ってみただけだし。…まぁ、しばらくこの辺りに滞在するから、しばらく通ってみるよ」
伊達「(まだ、日本に戻ってから火野や会長に挨拶にも行ってないしな)」

看護婦「…上条、恭介くんですか…。…でも、あの子の腕は…」

伊達「おおっと、ところでその事で担当医と少し調整をしたいんだ。…案内してくれる?」

看護婦「ええ。こちらです」

伊達「サンキュー、よろしくっ」


帰路につくさやかの表情は暗く、瞳は潤んでいた。

さやか「… 奇跡を起こすのは、自分自身 …」

さやか(…それって、あたしが魔法少女になれば…叶うっていう意味なのかな…)

さやか(今、恭介に必要なものって…なんなんだろう…?)
さやか(このままあたしの願いで恭介の腕が治ったとして…それって…)

さやか(…安易に契約をすれば、いつか自分の身を滅ぼす…)
さやか(あたしは…恭介の、何になりたいんだろう…)

さやか「…分からない、なぁ」


恭介「… … …」

恭介(僕は、何がしたいんだろう…)

恭介は複雑な心境を抱えたまま、1人、暗い病室で自分の腕をじっと眺めていた。
開け放した窓からは依然、風が緩やかに病室に吹く。

恭介「… … …」

そして、その恭介を… 窓の外から、じっと見つめる影があった。
地上より数十メートル離れた病室を眺める、影が。

???(… … …)

???(いい、獲物… 復活の準備運動には、十分だ…)

その影は、じっと観察をしていた。
まるで、餌を狩る虎のように。


映司、マミ、まどかは今日の締めくくりとして、明日クスクシエで使う料理の材料の買い出しを頼まれて出かけていた。
そこには何故か不機嫌そうな顔をしてついてくるアンクと、マミの肩に乗っかるキュウべぇの姿もある。

辺りは夕暮れから、段々と夜になる時間になっていた。
会社帰りの人通りの多い繁華街を、映司たちは大きなスーパーマーケットの袋を持ちながら歩いていた。

映司「なんか悪いね。マミさんもまどかちゃんも、こんな所まで手伝いしてもらっちゃって」

マミ「いいえ、十分過ぎるほど知世子さんには御馳走になっていますし… 何より、私でお役に立てるのならいくらでもお手伝いしたいもの」

アンク「チッ。なんで俺がこんな事しなくちゃいけない」

映司「つべこべ言うなよアンク。居候の身なんだからちょっとは手伝えって。アイスくれないぞ?」

アンク「っざけんな!なんでもアイスで片付けようとすんな!」

マミ「…(なんでも片付く気がするのよね)」

まどか「… … …」

映司「…?どうしたの?まどかちゃん」

まどか「…!あ、いえ…その… さやかちゃん、結局来なかったなぁ、って…」


映司「不慮の事故で腕の動かなくなっちゃったバイオリニストの男の子、かぁ…。…なんか、大変そうなんだな、さやかちゃん」

マミ「…私達ではどうにもできない、というのが辛いところね。…美樹さんにとって上条くんがどんなに大きな存在なのか、私達には知りかねるから…」

まどか「… … …」

QB「さやかが魔法少女に契約をすれば、すぐにでも彼の腕も元通りに出来るのだけどね」

マミ「…そうね。…でも、他人の為に自分の願いを使って…それで自分に重い枷をつけられるのは、やはり反対だわ…。…それで自分を危険に晒す例だって珍しくないもの」

映司「…そう、ですね…」

QB「… … …」

まどか「…明日、学校にさやかちゃんが来たら…もう一回話してみます。…私達に、何か出来る事ないかな、って…」

マミ「そうね。それがいいと思うわ」

映司「俺も賛成!クスクシエに来てくれるんなら御馳走作って待ってるよ!な、アンク」

アンク「けっ」

まどか「あははは。…ありがとうございます」


まどか「… … …?」

ふいに、まどかの視線に、ある人物が止まる。

まどか「…仁美、ちゃん…?」

見ると、繁華街をふらふらと歩く、同級生の仁美の姿があった。
その目は虚ろで、まるで街を彷徨うようにふらふらと歩いている。しかし、その足は何処かへ向かっているようだ。

マミ「…?鹿目さんの同級生の子、よね…」

まどか「は、はい…。…仁美ちゃん!どうしたの?今日は、お稽古事はないよね…?」

仁美「… … …」

仁美「…あら。…うふふふ… 鹿目さん、ごきげんよう…。今日はお友達と一緒…ですか?」

まどか「…仁美、ちゃん…?」

マミ「…!魔女の、口づけ…!」

映司「え…?」


映司「え?魔女の…何…?」

マミ「…彼女の首筋を見て。妙な印があるでしょう?」

映司「…あ、ホントだ…」

マミ「魔女に見出された者につけられる…呪いの印といったところかしらね。あの印をつけられた人間は、そんな気がなくても…絶望に身を委ねてしまう」

映司「え、つまり…どういう事…?」

マミ「原因不明の殺人や自殺…。ニュースでよく見る事件になるわ。…とにかく、今の彼女は危ない状態なの…」

まどか「ひ、仁美ちゃん…どこに、行こうとしてるの…!?だ、ダメだよ…!」

仁美「うふふ… ここよりもずっと、素敵なところですのよ」
仁美「そうだ…。鹿目さんや、お友達のみなさんも是非… ご一緒に…」

そう言って仁美はフラフラと、またどこかに向かって歩き始めた。

まどか「仁美ちゃん!ま、待って!」

アンク「…魔女の元へ行こうとしているのか。…グリーフシードが得られるかもな。おい、行くぞ映司、マミ!」

マミ「とにかく、行きましょう。彼女を放ってはおけないわ」

映司「う、うん…!」


仁美の後を追って来たまどか、映司、マミ、アンクは、大きな工場に辿り着いた。

開いたシャッターの隙間から、まるで知っていたように中へ入っていく仁美の後をついていくと…。

まどか「!!!」

映司「な…なんだ、コレ…!こんなに人が…!」

工場内には、数十人にも及ぶ人々の集まりがあった。
皆、仁美と同じように虚ろな目をして、そこに立ちすくしている。そして、全員の首筋に『魔女の口づけ』と呼ばれる紋様が見えた。

マミ「…ここまで人を集めるなんて…使い魔の出来ることじゃないわ。間違いなく魔女ね。…ここまで人を呼び寄せるケースは、私も初めてだわ」

アンク「はっ。見ろ。 …さしずめ、集団自殺ってところか」

アンクが顎で指した先には、バケツに入れられた液体と、空になった漂白剤のボトルが大量に置かれていた。

映司「…!やばいな…!一刻も早く魔女を倒さないと…!」

マミ「魔女に構っていては、この人達が危ないわ。…映司さん、ここは分かれて行動しましょう」
マミ「私と鹿目さんは、あのバケツをどうにかして捨てるわ。その間に、映司さんは魔女の方へ。私もすぐに向かうから」

アンク「魔女の気配はあそこの物置からだ。…行くぞ、映司」

まどか「映司さん…!お願いします…!」

映司「うん、分かった!…マミさんとまどかちゃんも、十分気を付けて」


映司「『変身』!!」

『タカ!』
『トラ!』
『バッタ!』

『タットッバ!タトバタットッバ!!』

オーズへ変身した映司は、マミとまどかに向かって小さくガッツポーズをして、アンクと共に物置の中へと入っていった。

物置のドアを閉めた瞬間… 結界が、映司とアンクの目の前で広がっていく。

アンク「好都合だな。あっちからお出迎えのようだ」

映司「…よし!行くぞ…!」

映司はメダジャリバーを構え、使い魔達の攻撃に備える。


…一方。恭介の入院している病院。
伊達は夜の月に向けて大きく背伸びをし、深呼吸をした。

伊達「くああぁぁあ…。流石にちょっと疲れたか。今日はおでん食って帰って寝るとするかね」

屋上でのリフレッシュを終え、伊達は帰路につくべく病院内へ歩いていく。その手には、恭介のカルテがあった。

伊達(…確かに、こいつはちょっと…厳しいかもしれないね。楽器の演奏するとあっちゃ、相当量のリハビリと努力をして…どうにか可能性が見えてくるレベル、か)
伊達(恭介。あいつもまだ若いからなぁ。ここが人生の岐路、ってところだな)

伊達「…どうしたもんかねぇ。…ん?」

難しい顔をしていると…いつの間にか伊達は、屋上で囲まれていた。

伊達「…なっ…!? …なんだ、こりゃ…!?」

伊達の周りを取り囲んでいるのは…

屑ヤミー「うぅぅぅ…」

数十体の、屑ヤミ―だった。


伊達「屑ヤミ―!?なんで今更… それに、どうしてこの病院にいやがるんだ…!?」

しかし、ヤミーは質問に答えない。
ゆっくりとした動きで伊達に近づき、大きく腕を振りかぶり伊達に襲い掛かろうとする。

伊達「おっとっ!! …どりゃああッ!!」

伊達はパンチをかわすと、大きく回し蹴りをしてヤミーを転倒させた。
しかし、数が多い。そして、円を縮めるように伊達にじわじわと近づくヤミー達。

伊達「…ったく… ちょっとは質問に答えてくれよな。それとも、俺の講演会でも聞きにきた?」

伊達はそう言ってにぃっと笑うと、ベルトを腰に回し、装着した。

伊達「念のため持っておいて良かったぜ。危うく、会長に返しちまうところだった」

伊達はポケットからセルメダルを一枚取り出すと、親指で弾き、夜空に漂わせる。

伊達「… 『変身』!!」

そのメダルをキャッチし、バースドライバーの投入口にメダルを入れると、レバーをくるくると回転させた。

何かが開くような効果音が聞こえると、『バース』の装甲が次々と伊達に装着されていく。

そして伊達は、バースへの変身を遂げた。装甲のところどころに赤いラインが見える。

伊達「相変わらずプロトだがね。…屑さん達のお相手なら、十分だろっ!!」


さやか「… … …」

病院の出入り口のドアを開け、帰宅しようとするさやかの顔は暗かった。

さやか(…恭介… あたし、どうしたら…)

その時、病院の屋上から何かの声が聞こえた。

さやか「… え?」

病院から少し離れて屋上を見ると…
先日見た事のある、屑ヤミ―の集団と、それに1人で立ち向かう異形の戦士がいた。

伊達「おりゃああっ!!はあっ!!」


さやか「何アレ…!?こ、この間の怪物と… 映司さん、じゃないよね…あれ…」

さやか「…!!まさか… 病院の中にも、あいつらが…!?」

さやか「…恭介が、危ない…!!!」


恭介「… … …」

恭介(何だか、外が騒がしいな…。…何か、あったのかな…?)

しかし、自力では動けない恭介は側にあるナースコールを押そうとする。
その時。
窓から、何者かが恭介の病室の中へと入ってきた。

恭介「…え…?」

???「… … …」

恭介「あ、あ、あ…!」

???「君の欲望… 解放してもらうよ…」

いつの間にか、恭介の頭には、まるで自販機のコイン投入口のような『穴』が存在していた。
そして、謎の影はその穴に…
1枚のセルメダルを投げ入れた。


伊達「おりゃあッ!!」

動きの遅い屑ヤミ―に、伊達のクローズラインが炸裂する。
後ろから迫る敵には振り向き様の回し蹴りを放ち、よろめいた相手の首をすかさず掴む。

伊達「よいしょおおおおっ!!!」

大きく相手を空中に上げたブレーンバスターで相手を地面に叩きつける。
しかし、動きは遅くても体力のある屑ヤミ―にはあまり効果が見えず、数が一向に減らない。

伊達「…チッ、相変わらずタフだね。 …病院でブレストキャノンぶっ放すわけにもいかないし、ここはコイツで決めるか…!」

伊達はバースドライバーにセルメダルを投入すると、再びレバーを回した。

『クレーンアーム』

バースの右腕に、装甲のようなアームユニットが装着される。

伊達「はあッ!!」

そこから飛び出すように発射されるウインチが、ヤミーに直撃した。

伊達「くらえええええッ!!」

そのまま、ウインチで薙ぎ払うように周囲のヤミーに攻撃を加える。
ヤミー達は次々と撃破され、地面にはセルメダルが残った。


伊達「…ふぅっ。久々の実戦にしちゃ上出来か」

気付けば屋上の数十体のヤミーは殲滅され、散らばったセルメダルだけが残っていた。

伊達「しかし、何だってんだ。…今更ヤミーが出てくるなんて…とにかく、会長と火野の所に行ってみるしかないか」

そう言いながら伊達は白衣から1つの缶を出し、タブを開ける。

『ゴリラ・カン!』

伊達「ゴリラちゃん、メダル回収よろしく!」

伊達の手から離れたゴリラカンドロイドは腕を回転させ、次々とメダルを回収していく。

屋上入口付近のメダルを回収している時…
ゴリラカンドロイドが、何者かの斬撃によって破壊された。

伊達「…!?」

入口に立っていたのは、槍を構えた見知らぬ少女の姿だった。

杏子「… … …」

杏子は、撒き散らされたメダルを一枚拾い上げて興味深そうに眺めている。

杏子「へえ、これがメダル…ね」


伊達「お、おいおいお嬢ちゃん… そんな物騒な物振り回しちゃ危ないって」

杏子「… … …」

自分に話しかけてきた伊達を、まるで睨みつけるように少女は見つめる。

杏子「…『バース』。アンタの戦いぶり、見させてもらったよ。やるじゃん」

伊達「…そいつは、どうも。えーと… お嬢ちゃんは、何者なのかな?」

杏子「… … …」

杏子「『魔法少女』さ」

伊達「え?  … … … !?」

瞬間移動と見間違うような、少女のスピード。
気付けば、伊達の目の前にまで迫っている少女は、槍をバースのマスク目がけて突き出していた。

キィン!!!!

槍の先端を、どうにか伊達は掴んで少女の攻撃を止めた。

伊達「あっ、ぶねぇ…!何するんだよ…!」


杏子「アンタは少し邪魔になりそうだからさ。…早めに潰した方がいいと思ってね」

伊達「あ…?」

杏子「はあッ!!」

伊達「!!ぐゥッ!!」

伊達の腹に、杏子の鋭い蹴りが飛ぶ。
思わず槍を離してしまった伊達に向けて、すかさず、杏子の鋭い斬撃が浴びせられる。

伊達「うおっ!?ちょ、ちょっと、タンマ!!」

間一髪避け続けるバースに向けて、杏子は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

杏子「アンタ達は邪魔なんだよ!…アタシのグリーフシードの… そして、メダル集めのねぇッ!!」

伊達「メダル、集め…!? …!ぐわあっ!!」

一瞬油断をした伊達の肩に、槍の刃が斬りつけられた。

杏子「とどめだァっ!!」

そして、再度。

伊達の顔目がけて、杏子は槍を突き出した。



次話の調整がまだついておらず、次回予告はもう少しお待ちくださいませ…!

重ね重ね、投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
仕事を辞めたり新しくしたりで忙しい日が続いてしまいました。
今後、投稿ペースを早めていきたいと思います!感想などの書き込み、本当にありがとうございました!

では、失礼します!

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