マミ「せっかくのとこ悪いけど、一気に決めさせて…もらうわよ!」
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
ドォォォ――――ン!!!
まどか「あっ、あっ」
さやか「あぁ!」
脱皮し、マミを喰らおうとする『お菓子の魔女』。
マミ「!!」
ドゴォォォ――――!!!
お菓子の魔女を貫く光。爆発する魔女。
まどか「な、何?今の…光みたいな…」
さやか「魔女から出てきた、魔女を…貫いた」
マミ「…何がどうなってるの…?」
コブラ「危なかったな、お嬢ちゃん。もう少しでその可愛い顔にギザギザの傷がつくとこだったぜ」
さやか「ヒューッ!」
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第1話「異世界の戦火」
―― その少し前 ――
コブラ「どうだ、レディ。タートル号の調子は」
レディ「あまり良くないわね。この地帯を抜ける程度は出来るでしょうけど、次の星ですぐ整備に入らないと…」
コブラ「ったく、なんだって急に不調になんかなりやがるんだ」
レディ「原因は分からないわ。ブースター、反加速装置、シールド…全て異常は無いみたいなのだけれど、どうもスピードがフラついて落ち着きがないのよ」
コブラ「じゃじゃ馬め。人参でもやれば落ち着くか?」
レディ「それで直れば苦労はしないわね。とにかく、出来るだけ急いでみるわ」
コブラ「頼むぜ、レディ。それまで俺は… …ふぁぁ、一眠りしておく」
レディ「分かったわ。… … …!!あれは!?」
コブラ「!?どうした?」
タートル号の目の前に突如現れるブラックホール。
レディ「ブラックホール!?そんな…予兆もなく突然現れるなんて!」
コブラ「おいおい、タートル号の不調の次はブラックホールときたか!?俺はまだ厄年じゃないんだぜ、チクショー!」
レディ「シールド全開!加速でどうにか突っ切って…!… …ダメ!飲み込まれるわ!!」
コブラ「どわぁぁぁ―――!!」
ブラックホールに飲み込まれ、コントロールを失いながら闇に沈んでいくタートル号。
レディ「コブラ… コブラ!!」
コブラ「…っ! …くぅー、痛ててて…」
レディ「大丈夫?怪我はない?」
コブラ「しこたま頭をぶつけたくらいだよ。…ったく、危うく三度目の記憶喪失になりかけたぜ」
レディ「良かったわ。…どうやら、無事みたいね私達」
コブラ「ああ。…タンコブが痛いのを見るに、どうも生きているらしい。…にしても…どこだ、ここは?」
レディ「…座標に無い場所ね。計器は正常に動いているみたいだけれど…」
コブラ「…!おいおい…なんだ、こりゃあ…」
タートル号の周りに広がるお菓子の山。そこを彷徨うようにうろつく、ボールのような一つ目の怪物達。
コブラ「どうやら俺達はヘンゼルとグレーテルになっちまったみたいだぜ。レディ、パンでも千切ってくれ」
レディ「それじゃあ元の場所に帰れないでしょ。…駄目、タートル号のデータベースでもこの場所の情報は見つからないわ」
コブラ「そんな馬鹿な!ありとあらゆる情報がこの船のデータベースには詰まってるはず…!… … …なァんだ、ありゃあ?」
タートル号から少し離れた場所で、死闘を繰り広げるマミとお菓子の魔女。
マミの銃撃が次々と巨大な人形のような怪物にに炸裂していく。
コブラ「…レディ、俺はどうもヘンゼルとグレーテルの話を間違えてたらしいぜ。どうも、グレーテルはスカートから銃を出して、そいつで魔女を倒す話だったらしい」
レディ「銀河パトロールと海賊ギルドの争い…じゃないみたいね。…まるで、本当におとぎ話を見ているみたいだわ」
コブラ「まったくだ。記憶喪失より性質が悪いぜ。これが夢じゃないときてる」
レディ「…でも…少し危ないわね。あの子の闘い方」
コブラ「…ああ。何かが吹っ切れたように闘ってる。あれじゃあ…」
言いながら、コクピットを出て行こうとするコブラ。
レディ「!どこに行くの、コブラ」
コブラ「俺のこういう時の勘は鋭いんだよ。特に美女が野獣に喰われそうな時はね」
タートル号から出て、その様子を伺う。
マミのティロ・フィナーレを喰らい、脱皮をしてマミに襲い掛かるお菓子の魔女。
その瞬間、コブラは左腕のサイコガンを抜く。
コブラ「危なかったな、お嬢ちゃん。もう少しでその可愛い顔にギザギザの傷がつくとこだったぜ」
さやか「ヒューッ!」
まどか「え、どうしたのさやかちゃん」
さやか「いや、なんか言わないといけない気がして」
まどか「なにそれこわい」
コブラ「怪我はないかい?」
マミ「え、あ、ハイ…。…有難うございました…」
コブラ「そりゃあ良かった。俺が来るのが遅けりゃ、アンタ死んでたかもしれないからな」
マミ「そ、そうでしたね…本当に…」
QB「…」
まどか「ねぇ、キュウべぇ。あの人も魔法少女…?」
さやか「いや、どう見ても少女じゃないでしょアレ」
まどか「魔法中年…?」
さやか「ちょ、ま」
QB「いや、分からないね。ボクでも、彼が誰なのか見当がつかないよ。魔法少女でもなく、結界の中に入れて、しかも一撃で魔女を倒せる人間なんて」
コブラ「…!おおっと、俺とした事が。他に2人も淑女がいた事に気付かなかったぜ。…うん?」
まどか「あ、あの…その… … 初めまして」
さやか「ねぇねぇ、さっきのビーム、どっからどうやって出たの!?あれもやっぱり魔法!?」
コブラ「あー、俺はその、魔法ってのはどうも苦手でね。… … …」
QB「…」
その時、結界が解けて全員が元の病院前に戻る。
コブラ「…!!なんだなんだ!?どうなってるんだ!?」
マミ「結界が解けたのよ。…ひょっとして、それも分からないのに結界の中に入ってこれたの?」
コブラ「…まぁ、成行きでちょっと。ところで御嬢さん方にお聞きしたいんだけどね、ここは一体どこなんだ?」
さやか「見滝原だけど」
コブラ「ミタキハラ星?聞いたことないな」
さやか「いや、町、町。なに、おじさん、宇宙人?」
コブラ「おじさんは止してくれよ。アンタ達からならそう見えるかもしれんがね、こう見えてハートは繊細なんだ」
まどか「ティヒヒヒ」
マミ「…訳が分からないけれど、とりあえず私の家でお茶にしましょうか?…もちろん、貴方も一緒に、ね」
コブラ「お、嬉しいねぇ。美女からお茶のお誘い」
ほむら「おい」
――― 巴マミ家。
まどか「ジョー…ギリアン、さん?」
コブラ「そ、いい名前だろ。サインだったらいつでも書くぜ」
さやか「(っていうか…日本人じゃないよね、どう考えてもその名前…)」
コブラ「…まぁ、俺の事はどうでもいい。おたくらの事を色々聞きたいんだが…さっきの場所といい、あの戦いといい、一体どうなってたんだ?」
ほむら「…本当に何も知らないのね。魔女の事も、結界の事も…魔法少女の事も」
コブラ「魔法少女…?」
マミ「私から説明するわ」
コブラに魔法少女、魔女との戦い、戦い続けるワケを全て教えるマミ。
さやか「ちょっ、そこまで教えちゃっていいの?マミさん」
マミ「あの戦いを見た以上、隠し通せるわけないし…それに、命の恩人だもの。何も教えずにいるのはこちらとしても失礼だと思うわ。…でしょ?キュウべぇ」
QB「ボクからは特に意見はないよ。さやかとまどか、魔法少女でない人間が2人見学に来ていたのだから、今更1人増えたところで何も変わらないしね」
マミ「…少なくとも、私の運命は変わっていたと思うの。ジョーさんが助けてくれなければ…本当にあのまま、頭を喰いちぎられていてもおかしくなかったもの」
QB「…」
マミ「私もまだまだ、魔法少女としてツメが甘いのかもね。どこか浮かれながら戦っていたのかもしれない」
ほむら「… … …」
マミ「貴方も、ごめんなさい。帰りにちゃんと解放するって約束したのに、すっかり忘れちゃってて☆」テヘペロ
ほむら(…絶対わざとね、巴マミ)
さやか「にしても…転校生、どういう風の吹き回しよ。一緒にマミさんの家で話がしたい、だなんて」
まどか「…きっと、これから一緒に戦おう、って言いに来てくれたんだよね?ほむらちゃん」
ほむら「…勘違いしないで。そんな気はないわ」
まどか「ぅ…ご、ごめん…」
マミ「あら、それじゃ一体どうしてかしら?」
ほむら「… … …」
コブラ「…ん?」
ほむら(なんなの、この世界は…)
ほむら(今まで巡ってきたどの時間軸の中にも、こんな男が現れる事はなかった)
ほむら(魔法少女では有り得ない、けれど…魔女を倒す程の力を秘めた存在…)
ほむら(…インキュベーターの何かしらの陰謀…?分からない…。…ここは、この男の様子をしばらく観察するしかない)
コブラ「… … …美人に見つめられるのは結構だがね。そう凄まないで、もうちょっと優しく潤んだ目で見て欲しいもんだ」
ほむら「…くっ!」
ほむら(なんなの、コイツ…!本当に読めない…!)
まどか「あはは、ほむらちゃん、照れてるー」
ほむら「!ちっ、違うわッ!」
マミ「あら…うふふ」ニコニコ
さやか「ははは、なぁんだ。転校生でも顔赤くする事あるんだ」ニヤニヤ
ほむら「」
コブラ「しかし信じ難いねぇ。おたくらみたいなか弱い少女があんな化け物と常日頃から戦ってる、なんてのは…。まぁ実際に見たんで信じないわけにもいかないが」
マミ「…説明して納得できるものでもないから、ああして鹿目さんや美樹さんに見学をしてもらっていたのだけれど…ツアー参加者が増えるのは予想外だわ」
コブラ「いやホント、良い物が見物できたよ。お捻りあげたいくらいだね」
マミ「それで…2人はどう?これで見学ツアーは終わりにするつもりだけれど…決心はついた?」
さやか「…」
まどか「…」
マミ「これ以上、生身の身体で戦いの傍にいるのは危険だと思うわ。…決断を急かすわけじゃないけれど、何より貴方達が心配なの」
まどか「…わたしは…マミさんと一緒に戦う、って…そう、決めたから…!」
ほむら「安易な決断はしないでと忠告したはずよ、まどか」
まどか「でもっ!マミさんが…マミさんが!」
マミ「…有難う。でもね、鹿目さん。何度も言うように魔法少女になるのにはとても危険な事なの。…私のためだけに、魔法少女になるという答えを出すのは止めてちょうだい」
まどか「で、でもっ!マミさん、戦うの怖くて、寂しくて、辛いって…だから、わたし、一緒に…!」
マミ「だからこそよ。…美樹さんにも言ったのだけれど…誰かのために願いを叶えるというのは、きっとこれから先、後悔する事になるわ」
まどか「…」
さやか「…」
マミ「だから、後悔なんて絶対にしない、魔法少女になって戦い続けられる…その心に揺らぎが無くなった時に、決めてほしいのよ」
マミ「…鹿目さん。私は、貴方達が戦いに加わろうと、加わらなかろうと…こうしてお友達としていれれば、それだけで…何よりも心強いのよ。それだけは言っておくわ」
ほむら「…。鹿目まどか、何度も言うけれど…私の忠告、忘れないでね」ガタッ
まどか「… … …うん。分かってる。…ありがとう、ほむらちゃん」
マミ「あら、もうお帰り?」
ほむら「ええ」
マミ「…今日は、貴方を縛ったままにしておいてごめんなさい。でも、私少し…貴方の事、信じられるかもしれない」
ほむら「… … …」
マミ「グリーフシードの奪い合いじゃない…貴方の行動には、何か信念のようなものを感じるの。…私の勝手な勘だけれどね」
ほむら「…私も、無益な戦いはしたくないわ。…それだけは言っておく」
マミ「そう…良かった」
ほむら「…お茶、御馳走様…」バタン
さやか「… … …」
さやか「デレたよ!ついにデレたよあの子!鉄壁の牙城にヒビが入ったよ!」
まどか「ちょ、さやかちゃん、声大きい…!」
コブラ「…若いってのはいいねぇ、どうも」
マミ「それじゃあ…別の話をしましょう。私達の事はおしまい。ジョー…さん。次は貴方の話を聞かせてくれる?」
コブラ「…そうだなぁ、マティーニでも飲みながらじっくり語りたいところだが…生憎この部屋には無さそうだし、仕方ないな」
コブラ「俺は…まぁ、しがないサラリーマンでね。宇宙観光の最中に突然謎のブラックホールに飲み込まれて…気が付いたらあのザマだ。マミが華麗に戦ってるところにお邪魔したってワケさ」
まどか「うちゅー…かんこう…?」
コブラ「ああ」
さやか「え、え?その、単なるしがないサラリーマンなのに、宇宙船に乗ってたってわけ?」
コブラ「まぁ、そこまで薄給でもないんでね。宇宙船の1隻くらいは奮発して持っていて、それでちょぃとした旅行に」
まどか・さやか・マミ・QB「… … …」
コブラ「…俺、何か変な事言っちまったかな」
さやか「え、えぇと…どこまで信じればいいのかな…?!正直、全部が嘘っぱちにしか思えないし…ま、まぁ、とにかく…本当に結界の中に入った理由は分からないんだよね?」
コブラ「そういう事。ここがどこの星かも分からないザマだよ。参った参った」
まどか・さやか・マミ・QB「… … …」
コブラ「…どうも俺は、会話教室に通ったほうがいいみたいだな」
コブラ「地球!?日本!?ここがか!?」
さやか「…本気でビックリしてるよ、この人…」
コブラ(この子らの反応を見るに、この星には星間交流の概念が無いようだが…ここが地球だってぇ!?俺の知っている地球とは随分違うぜ)
コブラ(見たところ、文明はかなり遅れて…いや、俺からすれば太古と言うに近いな、ここは)
コブラ(あのブラックホールの先は…過去の時代へと続いていたのか?…いや、それとも、この場所は…)
マミ「でも…仮にジョーさんが宇宙人だとすれば、あの魔女を倒した謎の攻撃にも何となく納得できるわ」
さやか「そうそう、アレ!あのレーザーみたいな光。どっから出てきたの?」
コブラ「あ、いやぁ魔法が苦手ってのは実は嘘でね。俺もちょっとした魔法みたいなものが使えるんだ。こう、念じて、ドバァーっ、と」
まどか「え、じゃあ本当に…契約して魔法を?」
QB「それは違うね。ボクの見る限り、彼はソウルジェムを持っていない。信じ難いけれど、生身の人間のようだ」
コブラ「そういう事。察しがいいね、そこの宇宙人は」
QB「!?」
まどか「ティヒヒ、ジョーさん。キュウべぇは宇宙人じゃないよ。…わたしにもよく分かんないけど」
コブラ「…へ?そうなの?」
QB「…」
マミ「それじゃあ、元いた世界と、今いる私達の世界、見滝原…ジョーさんは全く違う世界にきてしまったという事?」
コブラ「どうもそうらしい。しかも帰る方法が分からないときてるし、いやぁ参ったよ」
さやか「魔法少女の話の次は別世界からきた人、かぁ…。あははは、もうあたしチンプンカンプン」
マミ「…繰り返すようだけど、キュウべぇは本当にこの事については関与していないわけね」
QB「もちろん。わけがわからないのはボクも同じさ。ジョーの言う事が全て嘘とは思えないのも同意見だね」
コブラ(ブラックホールがレーダーにも反応せず、突然タートル号の前に現れるなんてのは明らかに不自然だった。あれは…誰かが俺をこの世界に呼び寄せるための意図だ。…誰かが俺を、ここに来させた)
まどか「それじゃあ、住む場所も無いわけですよね?…どうするんですか、これから」
コブラ「ん?あぁ、まぁ適当に考えるさ。生粋の旅行好きでね、どこでも寝れるのが自慢なんだ」
さやか「いや、そういう事じゃなくて」
コブラ「分かってますって。それじゃあ、俺もアンタ方の言う『魔法使い』になってみようかね?」
マミ「え?」
コブラ「行くアテがあるわけでもない、帰る方法も分からない…ともなれば、願いを叶えられるという魔法少女さんの傍にくっついてるのが一番出口に近いと俺は思うんだ」
マミ「魔法少女になるという事?」
コブラ「止してくれよ。マミの服はとってもキュートだがね、俺があんなの着たら蕁麻疹が出ちまうよ」
まどか(…想像しちゃった)
コブラ「見滝原とか言ったか。しばらくはこの辺りをブラブラさせて貰いながら、アンタら魔法少女の様子を見せてもらうよ」
まどか「…本当に大丈夫なんですか?あの、私、お母さんとお父さんに話して泊めてもらうように…」
コブラ「気持ちは嬉しいがね。年頃の御嬢さんがこんな男を家に連れ込んだら水ぶっかけられて追い出されるのがオチだよ」
マミ「私の家でもいいのよ、一人暮らしだし」
QB「マミ、ボクもいるんだけど」
コブラ「大丈夫大丈夫、心配ご無用。散歩が好きなんだ、気ままにフラフラしてるさ」
さやか「あたし達も、ジョーさんが何か元の世界に帰る手がかりみたいなの見つけたら教えるよ」
コブラ「有難いねぇ。いいのか?さやかだって色々忙しいだろうに」
さやか「あたしは… …大丈夫。マミさんを助けてくれたんだ、何か恩返しをしたいのはあたしもまどかも同意見!でしょ?」
まどか「うん。今度はわたし達が助ける番だと思うし」
コブラ「助かるぜ。…それじゃ、一旦この辺で失礼させてもらうよ。また会おう」
マミ「…ありがとう、ジョーさん。また会いましょう」
コブラ「レディーが俺を必要とするのなら、宇宙の果てからでも飛んで来るさ」
――― マミのアパート、入口。
コブラ「…さてと」ピッ
コブラ「レディ、聞こえるか。今どこにいる?」
レディ「ええ、聞こえるわよコブラ。今はタートル号に乗って太陽系をぐるりと回っているところ。あの場所から現実世界に戻った瞬間に、タートル号で外宇宙に飛んでみたの。…本当に、あなたのいる場所は地球のようだわ」
コブラ「だろうな。それで、元の世界に帰れそうな方法はあるか?」
レディ「残念だけれど…分からないわ。この世界に飲み込まれたブラックホールを探してはいるんだけれど、探知は出来ない。そちらはどう?」
コブラ「こっちも手詰まり。黒幕も何も分かったもんじゃない。…もっとも、あのキュウべぇとかいう生物は怪しいとは思うがね」
レディ「それじゃあ、あの子達の周辺をしばらく監視するの?」
コブラ「そうする。俺の直感ではこの事件には何かしら、かの女達が関係している。それに、女の子の傍にいるのは悪い気はしないからな」
レディ「呆れた。 …コブラ、何点か教えておきたい事があるのだけど、いいかしら?」
コブラ「よろしくどーぞ」
レディ「まず、私達が最初に辿り着いたあの場所。かの女達が『結界』と呼ぶ場所ね。分析したのだけれど、あの場所は言っていたように、現実世界とは少し次元の異なる場所のようね」
レディ「難しい話はしないけど、私達のいた世界にも例のない、亜空間よ。あの場所に何かしら、私達が元に戻れるためのヒントが隠されているかもしれないわ」
コブラ「ああ。俺はそのヒントを探しに、ここに残ってみる。しかし、どうやったらあの空間に入る事ができるのかが分からない。レディ、何かいい方法はないか?」
レディ「あるわよ」
レディ「『結界』のデータをタートル号のコンピューターで分析出来たの。あの空間の一定のエネルギー…かの女達なら『魔翌力』と呼ぶ未知のエネルギーを解析して、こちらのレーダーで感知できるようにしておいたわ」
コブラ「ほー、流石レディ。仕事が早くて助かるぜ」
レディ「ただ、その空間に直接入る事は出来ないのよ。空間を断裂してその内部に侵入する方法は私でも分からない。可能ならば、その内部に入る能力を持った魔法少女の後をついていくのが得策でしょうけど…」
レディ「単身で貴方が結界に入る方法がないわけでもないの」
コブラ「興味深いね。聞かせてくれるかい?」
レディ「あの結界を『テント』と考えてくれれば分かりやすいわ。一度開いたテントの中には、入口が見つからない限り不可能よ。…ただし、テントを開く場所さえ分かれば、貴方は結界の中に単身で潜り込めるわ」
コブラ「…なるほど。確かマミの話じゃあ、『グリーフシード』ってヤツが孵化する瞬間に魔女が生まれ、同時に結界がその場所に生じると言うが…」
レディ「そのグリーフシードの発する魔翌力のエネルギーのデータを、タートル号にインプットしたわ。つまり貴方が結界を張り、孵化をする前にその場所に立ってさえいれば」
コブラ「俺も晴れて、テントの中で楽しくお食事出来るってわけか」
レディ「そういう事。私とタートル号はしばらく地球周辺の宙域でそちらの探知をするわ。貴方の周辺に魔翌力が探知でき次第、リストバンドに位置を送る事が可能よ」
コブラ「了解。助かるぜレディ」
レディ「でも…単身で戦うのは十分気を付けたほうがいいわ。あの魔女という怪物がどれほどの力を持つものか、未だ分からない点が多いから」
コブラ「分かってますよ。…魔女狩りはかの女達の専売特許だ。あんまりやりすぎないようにはするさ」
レディ「それと…もう一つ、これは関係がないかもしれないのだけど…伝えておきたい事があるの」
レディ「…貴方と私が見た魔法少女…巴マミと言ったかしら。あの子が例の化け物と戦っているところを、タートル号のモニターで分析してみて、分かった事があるの」
コブラ「分かった事?」
レディ「かの女の身体から、生体が発生させるエネルギーが探知できないの」
コブラ「!?どういう事だ!?」
レディ「私にも分からない。ただ、人間が本来発生させるべきエネルギーが、かの女の身体からは検知できなかった。…ある一部分を除いては」
コブラ「一部分…?」
レディ「右側頭部の髪飾りの留め具部分。唯一、生体エネルギーがこちらで探知できた場所よ」
コブラ「…ソウルジェム。かの女達が魔法少女になるために必要な道具と言っていたが…」
レディ「そのソウルジェムの発生させるエネルギーが、抜け殻の巴マミを動かしていた…と言っても過言ではないわ。まるで…マリオネットのように」
コブラ(どういう事だ…?あの宝石は魔翌力の源…契約の証、としかマミからは教えられなかった)
コブラ(かの女はこの事実を知っているのか?いや、隠し事をしている様子は無かったし、そんな大事な物だと知っているのなら余計に伝えなければいけない事だ。…まさか、知らないのか?)
コブラ(…キュウべぇ、とか言ってたか。あの野郎、やはり食えないヤツみたいだぜ)
コブラ(しかし、こいつはまだ俺の中に仕舞っておいた方がいいな。…いつか、分かる日はくる。いきなりそれを知っても混乱を招くだけだ)
コブラ(その事実を知る時まで…俺がソウルジェムを、かの女達を守ればいい。それだけだ)
レディ「報告は以上ってところかしら。何か質問は?」
コブラ「あー…一つ心配事があるんだがね、レディ」
レディ「何かしら?」
コブラ「この国の通貨さ。酒もメシも食えないんじゃあ、魔法使いどころか動けもしないぜ」
レディ「ああ、そうね。…ごめんなさい、通貨については私も調べられないわ。ただ、タートル号に換金していない金塊があるから、どうにか売り払えれば不自由はしないはずよ」
コブラ「おー、そうだったそうだった!やっぱり持っておくべきはデキる相棒と資産だね、ハハハ」
レディ「ふふふ。夜が更けて人目が無くなったら、一度地球に降りて必要な物を渡す事にしましょう。…それじゃあね、コブラ。十分気を付けて」
コブラ「了解。そっちもよろしく頼むぜ」ピッ
コブラ「さて…色々分かった事は多いが、何から始めるかねぇ」
葉巻に火をつけて、一服をするコブラ。
コブラ「…先は長そうだな。それじゃあまず…軽い運動でもしてきますか」
――― 一方、ほむらの家。
ほむら(私は…数えきれないほどの時間を、繰り返し、やり直してきた。その度…あの夜を越えられず、また同じ時間を巻き戻しをして…)
ほむら(巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子…そして、私と、まどか)
ほむら(それぞれの時間に、それぞれの運命が存在し、違った展開を見せていた。…それでも、まどかを助けられる時間軸は、まだ見つからないのだけれど)
ほむら「…ジョー・ギリアン…」
ほむら(あんな男が存在する時間なんて、今まで一度も無かった。…私の存在を皆が覚えていないように、彼の事を知っている人物もいない。…インキュベーターでさえも知らないようだった)
ほむら(私と同じ…いいえ、彼自身、自分がこの世界に何故来たのかを知らないのだとすれば、完全なるイレギュラーの存在)
ほむら(この繰り返す時間の中に投じられた、一つの駒。…でも、それがどんな影響をもたらすのか未だに分からない)
ほむら(…巴マミは、あそこで死んでいてもおかしくなかった。彼の存在が、もし…魔法少女を救うために、運命を変えるために、あるのだとすれば…)
ほむら(この先…まどかと私の運命…『ワルプルギスの夜』も…)
ほむら「…倒せるというの?」
――― 見滝原から少し離れた場所。その結界内部。
結界内部は、さながら巨大な書物庫のようであった。幾つもの小さな本が飛び交い、交差する。その本達はどれも手足が生え、笑いながら飛んでいた。
その中央に佇む『辞典の魔女』は結界内の侵入者に攻撃を続けている。
自らのページを開き空間内に文字を具現化させ、弾丸のようにそれらを高速で目的に飛ばし、コブラを攻撃するのだった。
コブラ「どわぁぁっ!っと、っと!うひぃぃーっ!」
叫び声をあげながら結界内を駆けまわり、次々と繰り出される文字の弾丸を避けるコブラ。
コブラ「ったく、活字アレルギーになりそうだぜ!悪趣味な攻撃してくれちゃって」
言いながら左腕のサイコガンを抜き、膝をついた体勢で止まり、『辞典の魔女』へ向けて銃口を構える。
コブラ「さあ、撃ってきな。相手してやるよ」
辞典の魔女「!!」
止まった目標に向け、今まで以上の頻度で文字の弾丸を打ち続ける魔女。
ドォォォォ―――ッ!!
だがその攻撃の全てはサイコガンの連続放射で防がれ、それらを貫いた光は本体である辞典の魔女へと向かっていく。
辞典の魔女「!!!」
攻撃を受けたせいか、一瞬魔女の攻撃が怯み、動きが止まる。その隙にコブラはにぃ、と笑って立ち上がり、サイコガンに意識を集中した。
コブラ「喰らえーーーッ!!」
威力の高い、精神を集中させたサイコガンの一撃は辞典の魔女の瞳を貫く。
崩れるように地面に落ちていく巨大な本。その姿に背を向け、コブラは静かに左手の義手をつけた。
コブラ「っとぉ!」
魔女が倒れた事を現す結界の解除。元の世界に戻ったコブラの手にはグリーフシードが握られていた。
コブラ「こいつがグリーフシードか。…しかし、こいつ一つ手に入れるのにも相当苦労するもんだな、一筋縄じゃいかなそうだ」
手にしたグリーフシードを掌の上で転がしながら、呆れたように見つめる。
コブラ「それで…何か用かい。こそこそ隠れてないで出てきたらどうだ」
静かにそう言うコブラの後ろ。ビルの物陰から、ひょっこり姿を現すキュウべぇ。
QB「君の目的を知りたくてね。少し観察させてもらっていたのさ」
コブラ「そりゃ光栄だ。先生は今の戦いに、何点をつけてくれるのかな?」
QB「君は一体何者なんだい?契約もしていないのに魔女と戦う力を有する存在…。魔法少女である暁美ほむらもそうだけれど、君はそれ以上にイレギュラーな存在だね」
QB「何よりも、君は何故魔女を倒すんだい?ソウルジェムを持たない君にとっては、無意味そのものの行為であるはずだよ」
コブラ「…無意味ねぇ」
コブラ「…ソウルジェム、っていうのは願いを叶えてくれる魔法の宝石。そんな風にかの女達は思っているかもしれないが…」
コブラ「だが、このグリーフシード、ってヤツは…そんなメルヘンチックなもんじゃないね。あんな化け物の身体から出てくるんだからな」
QB「何が言いたいんだい?」
コブラ「俺は宝石にはちょいと五月蠅くってね。いやー、なかなかこのグリーフシードとソウルジェム…似ていると思ってさ」
QB「…」
コブラ「ひょっとしたらこいつを持っていたら俺の願いが叶って元の世界に戻れる手がかりになるかも…なぁーんてね」
QB「説明はマミから受けたはずだよ。グリーフシードはソウルジェムの穢れを吸い取る存在だと」
コブラ「分かってるよ。ま、折角この世界にきた記念だ。お土産の一つに貰っておこうと思ってさ」
QB「わけがわからないよ。君の存在は、暁美ほむら以上に理解不能だ」言いながら立ち去るキュウべぇ。
コブラ「…へっ」
葉巻を口から離し、紫煙を吐くコブラ。月を見上げながら、不適な笑みを浮かべる。
その顔には、どんな運命にも立ち向かう、自信のような感情が溢れていた。
―― 次回予告 ――
青春ってのはいいねぇ。男と女、色恋沙汰っていうのはどこの世界でもあるもんだ。
ここは恋という分野で宇宙一と言われるコブラ教授の出番ってワケ。他人の恋愛に首突っ込むのはあんまり好きじゃないんだが、ここは恋のキューピッドになってやろうじゃないの。
だが一方で次々と事件が起こりやがる。妙な赤い魔法少女が俺に斬りかかるの、まどかとその友達が魔女に襲われるので忙しいったらないよ全く。
どの世界でも、モテる男ってのは辛いもんだねぇ、ほーんと嫌になっちまうぜ。
次回【魔法少女vsコブラ】で、また会おう!
と、いうわけで1話終了です。
初めまして!SSというものを書くのも、投稿をするのも初めてな新参者ですがどうかよろしくお願いします。
まどマギ×コブラはどうしても見てみたいクロスで、今回自分が形にしたのも情熱あっての事なのですが…なにぶん、文章力が追いつくのかどうか不安でいっぱいなのですが、見てくださる方が1人でもいらっしゃってくだされば幸いです。
更新頻度はかなり遅くなるかも…纏めて投稿しようかと思いますので、1週間以上かかると思います。
それでは、また会おう!
>しかしクリスタルボーイが来てもQBと手を組むメリットはないし、勝手に暴れて場をかき乱すだけではあるまいか
QB「君はエントロピーと言う言葉を知っているかい?」
クリボー「知るか馬鹿!そんな事よりオ○ニーだ!!」
こうですね、分かります。
1です、お世話になっております!
皆様の暖かいご声援、本当に感謝してもしきれません。イラストまで…ww嬉しくてびっくりで嬉しくて毎日涙流しながら見てます。
おかげさまでこちらも気合が入り、予定より早く2話の調整ができました!本当にありがとうございます!
と、いうわけで次より投下していきます。よろしくどーぞ!
恭介「さやかは、僕を苛めてるのかい?」
さやか「え?」
恭介「何で今でもまだ、僕に音楽なんか聴かせるんだ…。嫌がらせのつもりなのか?」
さやか「だって…それは、恭介、音楽好きだから…」
恭介「もう聴きたくなんかないんだよ!」
恭介「自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて」
恭介「僕は…僕は…っ!ああ!!」
さやか「!!」
聞いているCDに向けて振り下ろされる、恭介の腕。
瞬間、その腕を掴み、それを止める別の手があった。
コブラ「やめときなよ。そいつを壊したら、アンタはもっと大事なものを壊しちまう」
まどか「ヒューッ!」
第2話「魔法少女vsコブラ」
――― 少し前、夕刻、巴マミ家。
コブラ「いやー、お茶に続いて夕メシまで御馳走になるってのは、嬉しいもんだ。おまけにお誘いが美女からとあっちゃあね」
マミ「うふふ。…もう少しで出来上がるから、冷たい紅茶でも飲んで待っててね」
コブラ「どーも。…しかし、いつもマミは一人の食事かい?若いんだし、寂しいんじゃないかな」
マミ「あら、そんな事ないのよ。キュウべぇは…今日は出かけているみたいだけれど。最近は、鹿目さんや美樹さんが来る事も多いし…今日はジョーさんがご一緒してくれるから腕の振るいようがあるわ」
コブラ「たはは、美女にモテるってのはいつの時代も悪くないもんだねぇ」
コブラ(そろそろジョーって呼ばれるのも止めさせたいところだけど…仕方ない、か)
コブラ「しかし今日は俺だけ。その、まどかやさやかは何か用事かい?」
マミ「ええ、鹿目さんは、今日は何か用事があるみたい。美樹さんはいつものところみたいね」
コブラ「いつもの?」
マミ「言ってなかったかしら。彼女、幼馴染がいるんだけれど…その人の所に毎日のように通っているの。今は丁度その時間だから」
コブラ「ちぇー、毎日いちゃいちゃ、楽しい時間ってわけか」
マミ「そういう訳じゃないのよ。…もっと深刻な理由なの、彼女の場合は」
コブラ「不慮の事故で手を動かせなくなった悲劇の天才ヴァイオリニスト…ね」
マミ「上条恭介くん、って言うんだけれど…美樹さんは毎日彼のお見舞いに行っているのよ。…献身的よね、事故以来、ずっとらしいわ」
コブラ「惚れてるのかい」
マミ「ふふ、どうかしら?…まぁ、彼に対する美樹さんの思いが誰よりも強いのは確かだと思うわ」
コブラ「だったら、余計にハッキリさせないといけないね。女の一途な思いってのは、なかなか男には理解されないもんだぜ」
マミ「そういうものかしら」
コブラ「そうとも。…よぉーし、マミの夕メシが出来る前に、俺がいっちょ恋の指導に行ってやるかぁーっ」
マミ「…二人の邪魔にならないかしら?」
コブラ「大丈夫大丈夫!そういう色恋の問題は宇宙一、俺が経験してるのさ。先輩として教育してきてやらなきゃあな」
マミ「…ジョーさん、貴方…」
マミ「酔ってるのね」
コブラ「へへへ、この世界のカクテルも悪くない味でね。つい昼間から」
マミのアパートから出て、教えられた病院の場所へ上機嫌で歩んでいくコブラ。
コブラ「オーマイダーリン オーマイダーリン~ …♪ … …んん?」
コブラ「ありゃあ…まどかと…ほむらと言ったか。あんなところで何してるんだ?」
ほむら「まだ貴方は、魔法少女になろうとしているの?まどか」
まどか「…それは…まだ、分からないけど…でも、やっぱり…あんな風に誰かの役に立てるの、素敵だな、って…」
ほむら「…私の忠告は聞き入れてくれないのね」
まどか「ち、違うよ!ほむらちゃんの言ってる事も分かるよ!とっても大変で、辛くて、危ない事も分かってるの!」
まどか「この前だって…マミさん、あんなに戦い慣れしてるのにすごく危なかったって、分かってるから…」
ほむら「…」
まどか「…ねぇ、ほむらちゃんはさ」
まどか「魔法少女が死ぬところって…何度も見てきたの?」
ほむら「…」
ほむら「ええ。数えるのも諦めるくらいに」
ほむら「この前の巴マミの戦い…もし、あの男の介入がなければ、彼女も死んでいたのでしょうね」
まどか「魔法少女が死ぬと…どうなるの?」
ほむら「結界の中で死ぬのだから、死体は残らない。永久に行方不明のまま…それが魔法少女の最後よ」
まどか「そんな…」
ほむら「そういう契約の元、私達は戦っているのよ。誰にも気づかれず、忘れ去られる…魔法少女なんてそんな存在なの。誰にも見えず戦い、感謝もされず、散っていく」
ほむら「それでも貴方は、キュウべぇと契約をするつもりなのかしら。…貴方を大切に思う人が、身近にいるのだとしても」
まどか「… … …ぅ…」
ほむら「誰かのために魔法少女になりたいと言うのなら、誰かのために魔法少女にならない、という考えが浮かんでもいいはずよ。それを忘れないで」
まどか「… … …分かった」
ほむら「そう、良かったわ」
まどか「…ほむらちゃん!」
踵を返し、立ち去ろうとするほむらの背中にまどかが声をかける。
ほむら「何かしら」
まどか「…ありがとう。私の事…いつも、心配してくれて…」
ほむら「… … …(ホムホム)」
立ち去るほむら。
コブラ「…おっかないだけの子だと思ってたけど、どうも俺の見当違いだったかな」
道端に隠れていたコブラは、ひょっこりと顔を出して笑った。
まどか「!い、いたんですか」
コブラ「偶然。たまたま居合わせちゃってね、失礼だったかな」
まどか「…だ、大丈夫です。それより、どうしたんですか?こんな所で」
コブラ「いや、なぁに、恋に悩める純朴な少女がいると聞いてね。人生の先輩としてアドバイスに馳せ参じようとしている最中さ」
まどか「…え?」
コブラ「つまり俺は恋というプレゼントを運ぶサンタクロースってわけ」
まどか「わけがわからないよ」
まどか「えぇ!?さやかちゃんと恭介くんの応援に行く…って…」
コブラ「そういう純真な恋はさ、誰かが肩を押さなくちゃ駄目なんだよ!というわけでまどか、俺を病院まで案内してくれ」
まどか「そ、そんな…邪魔になっちゃいますよ…」
コブラ「いいから!さぁ、案内してくれ我が愛馬よ!」
まどか「… … …さやかちゃんの邪魔だけはしないでくださいね。いつも静かに音楽とか2人で聞いてるみたいなんですから」
コブラ「邪魔なんてするかっ。俺に任せておけっての」
まどか「…分かりまし…ウェヒッ!ジョーさん…お酒、飲んでません?」
コブラ「だはははー!こんなの飲んでるうちに入らない入らない。さ、病院まで頼むぜ」
まどか(…さやかちゃんに後で怒られませんように…)
コブラ「ここが彼の病室か」
まどか「はい」
コブラ「どれ、それじゃあ早速」
まどか「ま、まままま、待って!…駄目ですよ、いきなり入っちゃあ!さやかちゃん、今頑張ってるかもしれないんだし!」
コブラ「…頑張ってる?」
まどか「そうですよ。その…あの…恭介くんと、えっと…い、いい感じになってるかもしれないし…」
コブラ「… … …」
コブラ「どうもそういう感じじゃなさそうだぜ、まどか」
まどか「え?」
耳を澄ませろ、とジェスチャーをするコブラ。
病室からは、微かに怒号のような叫び声が聞こえてきた。聞いたことのないような、悲しい叫び声が。
まどか「あ…」
コブラ「乗り込むぜ」
恭介「もう聴きたくなんかないんだよ!」
恭介「自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて」
恭介「僕は…僕は…っ!ああ!!」
さやか「!!」
聞いているCDに向けて振り下ろされる、恭介の腕。
瞬間、その腕を掴み、それを止める別の手があった。
コブラ「やめときなよ。そいつを壊したら、アンタはもっと大事なものを壊しちまう」
まどか「ヒューッ!」
さやか「!?ジョーさん!?それに…まどかも!」
まどか「あ…。…う…ご、ごめん、さやかちゃん…」
恭介「…ッ!!離せよ…離してくれよ!」
コブラ「この手を離してアンタのバイオリンが聞けるなら喜んで離すがね。誰かを傷つけるために振り下ろされる手なら、俺はあの世の果てまで離すつもりはないぜ」
恭介「…ぐ…ッ!…うぁぁぁ…ッ!くそぉ…ッ…!」
拳から力が抜けたと分かったコブラは、恭介の腕を解放した。
涙を流しながら、誰かに訴えるように語り始める恭介。
恭介「諦めろって…言われたんだよッ…!今の医学では治らないなら…バイオリンはもう…諦めろって…ッ!」
さやか「…そんな…」
コブラ・まどか「… … …」
恭介「もう一生動かないんだよ、僕の手は…!奇跡か魔法でもない限り… …!」
… … …。
場を重苦しい沈黙がしばらく流れる。
すると、さやかがゆっくり、静かに言う。
さやか「…あるよ」
コブラ・まどか「…!」
さやか「奇跡も、魔法も…あるんだよ」
――― 一方。
杏子「…それで?アンタは何が言いたいのさ」
QB「行動は急いだほうがいいという事さ。この前、杏子の縄張りの魔女を倒したのは彼だよ」
杏子「…!マジかよ。随分ナメた真似してくれるじゃんか」
QB「ボクでさえ、彼がどんな素性で何を目的をしているかはさっぱり分からない。勿論、どうするかは杏子の自由だけど、何かが起きてからでは遅いからね」
杏子「…ジョー・ギリアンとか言ったか?おかしな名前しやがって。…上等じゃないのさ」
QB「どうするんだい?杏子」
杏子「確かにムカつく話だね。ちょいとお灸をすえてやった方がよさそう、っていうのは同意見」
杏子「見滝原…あそこはマミの縄張りだったね。前々から魔女の発生頻度が高かったから縄張りをそっちに移そうと思ってたんだけど…」
杏子「丁度いいじゃん。…マミも、ジョーとかいう男も、まとめてぶっ潰せばあそこのグリーフシードはアタシのものになる」
QB「気を付けてね、杏子。あそこには、更にもう一人、イレギュラーな魔法少女もいるから」
杏子「ふん。退屈しなくて済みそうじゃん。ほんじゃあ、行きますか」
QB「今夜かい?」
杏子「急かしたのはお前だろ?…まずは、アタシの縄張りを荒らしたヤツ」
杏子「ちょいとお仕置きが必要だからね」
さやか「ごめんね…二人とも。変なトコ見せちゃって」
さやか「こんな事言うの失礼なのは分かってる。…でも、今日は帰ってくれないかな」
さやか「怒ってるわけじゃないの。…むしろ、感謝してる。ジョーさんが止めなければ、恭介きっと、怪我してたから」
さやか「なんていうか…あたしも、ちょっとだけ…考える時間、欲しいの」
さやか「…ありがとう。…ごめんね」
・
まどか「…大丈夫かな、さやかちゃん。やっぱり、無理にでも一緒に帰ったほうが…」
コブラ「ああいう時は、一人でじっくり考えるもんさ。誰にだって落ち着いて考える時間は必要だ」
まどか「…そう、なのかな…。わたしがもっとちゃんと、二人の事フォローできれば… …っ!?」
言い終わらない内に、まどかの頭にポンと左手を乗せるコブラ。
コブラ「まどか。そうやって何でもかんでも自分のせいにするクセ、おたくの悪いクセだぜ」
時間が止まったかのように、黙る二人。しばらくすると、まどかはポロポロと噛み殺していた涙を流し始める。
まどか「… …ぅっ、くっ…!だ、だって…!さやかちゃん、かわいそうでっ…!あんなに、あんなに頑張ってるのにっ…!わたし、何もできなくて…っ!」
コブラ「泣くなよ、まどか。人は、涙を流すから悲しくなるんだぜ」
パチ パチ パチ。
二人の前に、拍手をしながらゆっくりと現れる人影。その口には棒状のチョコレート菓子を銜えている。
杏子「名演説だね。感動してアタシも泣いちゃうくらいだよ」
そういう杏子の表情は、憎悪に満ちた薄ら笑いだった。
まどか「…っ!だ、誰…?」
コブラ「そいつはどうも。なんならカフェでお茶でもしながらゆっくり語りあおうか?」
杏子「遠慮しとくよ。それに…生憎そんな気分じゃないんだ」
言いながら、赤いソウルジェムを見せびらかすように取り出し、不適に笑う杏子。
まどか「…!ソウルジェム!?」
そしてそれを使い、魔法少女へと変身する杏子。
出現した巨大な槍を演舞のように振り回し、それを終えて槍を前に構えた戦闘態勢へと移る。
杏子「アタシの縄張りを荒らしてくれるなんて、ナメた真似してくれるじゃん。…ジョー・ギリアン!」
コブラ「…やれやれ、夕メシの時間には間に合いそうにないなこりゃあ」
まどか「あ、あ…っ!」
コブラ「まどか、すまないが、先に帰ってマミに夕飯に少し遅れると伝えておいてくれないか」
コブラ「冷めたカレーライスは好きじゃないから、暖かいうちに帰るつもりだがね」
杏子「その余裕…ぶっ潰してやるよッ」
コブラ「急げ、まどかっ!巻き込まれるぞ!」
まどか「…っ!は、はいっ!!」
まどかが走り出すと同時に、杏子がコブラに向けて一気に距離を詰め、槍を振り下ろす。
杏子「でゃああああッ!!はぁッ!うおりゃあッ!」
コブラ「うおっ、とぉっ!ほっ!よっ!」
閃光のような素早い攻撃を次々と避けるコブラ。
コブラ「熱烈なアプローチだなこりゃあ!だがもう少し女の子らしいほうが好みなんだがね!」
杏子「残念だったな!アタシはそんなにおしとやかじゃないんだよッ!」
まどか「早く…早く、マミさんかほむらちゃんに助けを求めないとっ…!」
まどか「このままじゃジョーさんが…!」
急いで、マミのアパートまで走るまどか。
だがその瞬間、信じがたいものを見てしまう。友人である志筑仁美が、何かに憑りつかれたようにフラフラと歩く、その姿を。
まどか「…!ひ、仁美ちゃん!?」
仁美「あら、鹿目さん…御機嫌よう」
まどか「こんな時間に何してるの?お、御稽古事は…!?こっちの方向じゃないでしょ?どこに行こうとしてるの…!?」
仁美「うふふふ…」
仁美「ここよりもずっと、いい場所ですのよ」
まどか「…!」
仁美の首筋にある、魔女の口づけの印。そしてその刻印は、気付けば仁美の周りにいる生気のない人間達のほとんどについているのだった。
まどか「そんな…こんな時に…!?ど、どうすれば…!」
彷徨うようではあるが、確実にある場所に向かう、仁美をはじめとした集団。
放っておくわけにもいかず、まどかはその後についていくのだった。
まどか(あああ、ど、どうしよう…!)
まどか(わたしのバカ!マミさんの番号も、ほむらちゃんの番号も聞くの忘れてたなんて…ッ!)
まどか(仁美ちゃんも放っておくわけにいかないし…ジョーさんも…っ!いくら強いからって魔法少女が相手じゃ、どうなるか…!)
そんな考え事をしているうちに、集団はいつの間にか小さな町工場に辿り着く。
町工場の工場長「俺は、駄目なんだ…。こんな小さな工場一つ満足に切り盛りできなかった。今みたいな時代に…俺の居場所なんてあるわけねぇんだよな」
まどか「!!」
まどか(あれ…洗剤…!)
詢子「―――いいか?まどか」
詢子「―――こういう塩素系の漂白剤には、扱いを間違えるととんでもないことになる物もある」
詢子「―――あたしら家族全員、毒ガスであの世行きだ。絶対に間違えんなよ?」
まどか「…っ!駄目!それは駄目!皆が死んじゃうよ!」
まどかを優しく、包むように止める仁美。
仁美「邪魔をしてはいけません。あれは神聖な儀式ですのよ。…私達はこれから、とても素晴らしい世界へ旅立つのですから」
コブラ「うおおっと!!」
杏子の渾身の一薙ぎを上空に跳躍して避けるコブラ。真上にあった電信柱の出っ張りを掴み、杏子の攻撃範囲から逃れる。
コブラ「ち、ちょっとタンマ!あんたの縄張りに入ったのは謝るからさ、もう許しちゃくれないかね!平和的に行こう!」
杏子「…へっ、ちったぁ懲りたかい」
コブラ「懲りた懲りた、大反省!俺もうなぁーんにもしないから!」
杏子「…そうかい、それじゃあ…。… … …なんてねっ!」
杏子「生傷の一つもつけないで帰すなんて、アタシの腹の虫が収まらないんだよッ!」
そう言って、コブラの掴まる電信柱を斬る杏子。
コブラ「!!どわあああっ!?」
切り落とされ下に落ちる電信柱と一緒に、コブラも地面に叩きつけられるように尻餅をつく。
コブラ「いちちち… …って、のわぁぁぁあっ!?」
杏子「くらえええーッ!!!」
瞬間、それを見計らっていた杏子はバランスを崩して座り込んでいるコブラの頭上へ、槍を振り下ろす。
ガキィィィィンッ!!
振り下ろされた槍は…。
杏子「… …ッ!なんだと…っ!?」
コブラの左腕に食い込み、血の一滴も流さずに止まっていた。
杏子「…くっ!」
その異常な事態に杏子は素早くバックステップをして、コブラの様子を伺うように構える。
杏子「てめぇ、その左腕…何者なんだ…!?」
コブラ「…身体がちょいと頑丈なもんでね。特に俺の左腕はな」
にやっと不敵に笑い、ゆっくりと立ち上がるコブラ。葉巻にライターで火をつけながら、身体についた埃を払う。
コブラ(…とはいえ、こいつはちょっとまずいな。手加減をして戦ってどうにかなるもんじゃないらしいね、魔法少女ってヤツは)
コブラ(だからって素性の知れない魔法少女にサイコガンを使うわけにはいかない…。女を殴るのは俺の主義じゃない…参ったね、お手上げだ)
コブラ(…こうなりゃあ…『アレ』でいくしかないか)
コブラ「仕方ないな、こうなりゃあ俺の奥の手を見せてやるぜ」
杏子「…ほー、楽しめそうじゃん。何をしてくれるんだい?」
コブラ「…驚くなよ?」
槍の刃の音を鋭く鳴らす杏子に対し、コブラは葉巻を杏子の方へ投げ捨てると…。
コブラ「これが俺の奥の手…逃げるが勝ちだぁーッ!!」
瞬間、猛然と走り出して杏子の隣をすり抜けるコブラ。
杏子「…!!??て、てめぇ!待ちやが…っ!?」
その時、杏子の近くに投げ捨てられた葉巻が閃光のように眩い光を一瞬放つ。
杏子「うおおっ!?」
5秒ほどそれは辺りを照らす。次に杏子が目を開けた瞬間、そこにコブラの姿はなかった。
杏子「…くっ!逃げられた!…あのヤロー、あの腕といい、ただ者じゃないなやっぱ…!」
杏子「…でも、このままじゃ済まさねぇからな、絶対…!」
まどか「…!離してッ!!」
仁美の手を振り切り、洗剤の入ったバケツに猛然と走るまどか。それを掴みとると、勢いよく窓の外へ投げ捨てる。
まどか(…よ、よしっ!これでひとまず安心…)
しかし、その行動をしたまどかに向けられる…恨むような人々の視線。
まどか「…え…」
群衆「あぁぁああぁぁぁああああっ…!!」
まるでゾンビが血肉を求めるようにまどかへ襲い掛かる群衆。
まどか「きゃあああああっ!!」
襲い掛かる群衆から逃げ、急いで側にあった物置に逃げ込むまどか。
まどか「ど、どうしよう…どうしようっ…!やだよ…誰か、助けて…っ!」
その瞬間。
まどか「…ッ!!」
まどかの周りに広がる、魔女の結界。それと同時に…窓の割れる音が、微かに聞こえた。
テレビのようなモニターや、使い魔や、木馬がまるで水中のように浮翌遊する空間。その空間内に、まどかも同じように浮翌遊していた。
モニターに映し出されるのは、まどかが今まで見てきた、魔法少女の戦いの光景。
まどか(これって…罰なのかな)
まどか(わたしがもっとしっかりしてれば…さやかちゃんも、仁美ちゃんも、ジョーさんも…もっとちゃんと、助けられたのに…)
まどか(だからわたしに、バチがあたったんだ)
その自責の念はまるで声のように結界内に響き渡る。
気付けば、まどかの手足をゴムのように引っ張る、翼の生えた不気味な木製人形達。四肢を引き千切ろうと、徐々にその力は増されていく。
まどか(わたし…死んじゃうんだ…ここで…っ!う、ぐっ…!)
まどか(痛いよ、苦しいよ…っ!)
まどか(もう…嫌だよっ…!!)
その時、まどかの四肢を引っ張る四人の『ハコの魔女の使い魔』が次々に光の波動に消された。
まどか「…!!」
まどか「…ジョーさん!」
コブラ「結界が張られる前に窓に飛び込めて良かったぜ。バラバラになった美少女なんざ、地獄でも見たくないからな」
まどか「… …!!ひ、左手が…ジョーさんの、左手が…!」
まどかが見た、ジョー・ギリアンの姿。
硝煙をあげるその銃口は、本来あるべき左腕の場所にあった。見たこともない、異形の銃。まるでそれは身体の一部のように当たり前にそこにあるようだった。
コブラはまどかの前に立ちはだかり、背中を向けながら語る。
コブラ「…まどか、俺も一つ、罰を受けなきゃいけないのかもしれないな」
コブラ「俺はあんたらに嘘をついていたんだ」
まどか「嘘…?」
コブラ「一つは、俺はしがないサラリーマンなんかじゃないって事」
コブラ「一つは、俺は宇宙観光の最中なんかじゃなかったって事…」
コブラ「そして…最後の一つ、俺の名前はジョー・ギリアンじゃないって事だ」
コブラが喋っている間に、魔女の使い魔は次々とコブラとまどかを襲おうとする。
しかし、それらの全てはサイコガンの連射で次々と撃ち抜かれ、一つとして外されることはない。
まどか「…それじゃあ、あなたは…?」
コブラ「俺は…別の世界では、海賊をしていた。宇宙を流れ星のように駆けながらお宝を見つけ、糧にしていた一匹狼の海賊さ」
コブラ「俺には、一つの名があるんだ。…それは」
まどか「それは…?」
サイコガンに、コブラの精神が集中される。銃口が淡く光り、鋭い、サイコエネルギーをチャージする音が聞こえた。そしてコブラは目を見開き、叫ぶ。
コブラ「俺の名はコブラ!不死身の…コブラだぁーーーッ!!」
ドォォォォォ――――ッ!!!
まるで大砲の砲撃のようなサイコガンの一撃が、放たれた。
サイコガンの高められた精神エネルギーの光は、使い魔達を焼き払い、その本体であるモニターに隠れた『ハコの魔女』をも爆破した。
そして、結界が解け元の物置に戻るコブラとまどか。
コブラは目を閉じて微笑みながら、左腕の義手をサイコガンに被せる。
まどか「… … …」
コブラ「今まで黙っててすまなかった。だが、見知らぬ世界で俺の正体をペラペラ喋るわけにもいかなくてね。何せ、あっちじゃあ俺の首を狙ってる奴がごまんといるからな」
まどか「ジョー…じゃなくって、コブラ…さん?」
コブラ「そ。…まぁ、色々語るのは後だ。少し急ぎたいんでね」
まどか「…まだ、何かあるんですか?」
コブラ「ああ、急ぎの用がある。まどかも一緒にきてくれ、重大な事だ」
まどか「… … …」
まどかが緊張した面持ちでコブラをじっと見ると、コブラはにっこりと笑って駆け出す。
コブラ「早くしないとマミのカレーが冷めちまうんだよーっ!俺ぁ疲れて腹が減って死にそうなんだーっ!」
まどか「… … …へ?」
呆然とするまどかを後目に、物置から急いで出ていくコブラ。
まどか「ま…待ってください!ひ、仁美ちゃんは!みんなはーっ!?わたし一人じゃどうすればいいか分からないよーっ!ねぇ、コブラさーーーーんっ!!」
まどかの声は、空しく、町工場の中に響くのだった。
―― 次回予告 ――
さやかが魔法少女になっちまった!俺やまどかとしては複雑な気持ちだが、さやかには何よりも叶えたい願いがあるんだとさ。
健気な少女の願いは受け止められ、一人の戦士が誕生する。まー、男を守る女ってのは俺はあまりお勧めできないんだがね。ここは良しとしてやろうっ。
だが綺麗な事ばっかりじゃないみたいだね。暁美ほむらに、謎の赤い魔法少女。そしてもう一人、俺の事を追っかけてくる輩もいるみたい。
相変わらず俺が元の世界に戻る方法も分かんないわ、もーいい加減にしてくれってんだ!
次回【忍び寄る足音達】で、また会おう!
2話終了です、ありがとうございました!
本当に皆様のご声援、ご期待に沿える作品になれるか不安でいっぱいで…でも書いててすごく楽しいです!ww
コブラのセリフは本当にそれっぽく聞こえそうな言葉を探すのが難しいですが、頭の中で那智さんと内田さんに喋ってもらってがんばってます。脳内再生できる、とか言っていただけると本当に幸いで…ww
つたない文章ですが、これからも精一杯やっていきます!それでは、また会おう!
1です!いつも沢山のコメント、ありがとうございます!
おかげさまで三話の調整も早くできましたので、次から投稿していきます。
今回はいわゆる「繋ぎの話」になってしまい、内容的には少し地味になってしまうかも…ご了承くださいませ。
それでは、よろしくどーぞ!
第3話「忍び寄る足音達」
――― 巴マミ家。早朝に訪れたさやかを、マミは快く受け入れた。
テーブルに置かれた、2人分の紅茶とお茶菓子。マミは静かに紅茶を飲むとテーブルに置き、優しく言う。
マミ「…そう。決心、したのね…美樹さんは」
俯いていたさやかはゆっくりと顔をあげ、強い意志の宿った瞳でマミを見つめる。
さやか「…うん。あたし、もう迷わない。…でも、契約をする前にマミさんに伝えたほうがいいかなって」
マミ「そうね。…とても嬉しいわ。私が言うのも何だけど、美樹さんは少し慌てん坊さんだから…ふふふ」
さやか「あはは、バレてましたかー」
マミ「…願い事は、やっぱり上条君の事かしら」
さやか「… … …はい」
マミ「…そこまで決心したということは、どうしても叶えたい願いなのね。後悔しない、確固たる決心が」
さやか「…昨日、まどかとジョーさんが、恭介の病室に来てくれたんです。恭介、もう自暴自棄みたいになってて、暴れようとして…」
さやか「あたし、もうその時自分でもワケわかんなくなっちゃって、いっそ今すぐキュウべぇと契約すればこんな恭介見なくて済むって考えちゃってた」
さやか「でも…ジョーさんが、恭介を止めてくれらから。だからあたしも、恭介と同じように、少しだけ落ち着けた」
さやか「あたしは、ずっと一人で恭介の事考えてるんだと思ってた。でも…実際は違ったんですね。マミさん、ジョーさん、まどか…みんな、心配してくれてるんだ、って」
さやか「だから仮にあたしが魔法少女になっても、心細くなんてない。…戦い続けられる。そう思ったんです」
マミ「…そう。私も、鹿目さんと美樹さんに出会うまでずっと一人だと思ってたから、よく分かるわ」
マミ「一人ぼっちで戦って、悩むのって…すごく苦しくて、悲しくて、辛い事」
マミ「…魔法少女になる前に私に言ってくれてありがとう、美樹さん。…全力で、あなたのサポートをするわ」
QB「話は終わったかな。それじゃあさやか、契約をしよう」
さやか「…うん」
マミ「…あ、そうそう。美樹さん、一つだけ訂正しておく事があるの」
さやか「…?え?」
マミ「あの人『ジョー・ギリアン』さん。本当の名前は違うらしいの。…「俺の名前は『コブラ』だ」って。昨日、あの後教えてもらったわ」
さやか「…はは、やっぱり変な名前じゃん」
マミ「私達は、仲間。…辛い時は一人で背負いこんだり、嘘や隠し事はしないで、みんなで助け合いましょう」
さやか「… … …うんっ!!」
QB「それじゃあ、さやか。君の願いを言ってごらん」
さやか「あたしは――― 」
さやかを包み込む光。そして生まれる、新たなソウルジェム。
レディ「おかえりなさいコブラ。出張はどうだったかしら?」
コブラ「もう最高だね。魔女はうじゃうじゃ湧いてるわ、魔法少女には因縁つけられるわ、退屈って言葉が懐かしいくらい」
タートル号内。
人目につかない丘でレディと待ち合わせたコブラは、一旦タートル号で外宇宙へと飛び立った。
レディ「…?これは?」
レディにグリーフシードを一つ手渡すコブラ。
コブラ「相棒にプレゼントさ。大事にしてくれよ」
レディ「まぁ、ありがとう。…どうせならもっと綺麗な宝石がいいのだけれどね、フフ」
コブラ「そいつはまた後でのお楽しみ。とにかく、そいつをタートル号の方で解析しておいてくれ。何か分かるかもしれん」
レディ「オーケー。それじゃ、朝食だけでも食べて行く?用意しておいたのよ」
コブラ「ワオ!嬉しいねぇ、ここんところレディの手料理が恋しくって恋しくって!」
レディ「その割には、マミとかいう子の家で随分と嬉しそうに御馳走になっていたようだけれど?」
コブラ「…ははは、こいつぁ厳しいや」
仁美「ふぁぁぁ…」
仁美「…!やだ、私ったら、はしたない」
まどか「仁美ちゃん、眠そうだね」
仁美「なんだか私、夢遊病というか…昨日気が付いたら大勢の人と一緒に倒れていて。それで病院やら警察やらで大変だったんですの」
まどか「…それは、大変だったね」
まどか(救急車呼んだのもパトカー呼んだのもわたしなんだけどね…。…もうっ!ジョーさん…じゃ、なかった、コブラさんが行っちゃうから…)
まどか(ふぇぇ…わたしも眠くて死にそうだよ…)
仁美「…ところで、さやかさんはどうしたのでしょう?まだ学校に来ていないみたいですけれど…」
まどか「…うん。何かあったのかな…さやかちゃん」
仁美「毎日元気に登校していましたのに…おかしいですわ」
まどか(…まさか、何かあったんじゃ…!)
和子「はーい、みんな揃っているかしらー?それじゃあ朝のHRを…」
さやか「ごめんなさーーーいっ!!遅刻しましたーーーっ!!」
和子「!!!」
早乙女先生が教室に入ろうとした矢先、後ろから大慌てで来たさやかが前にいた先生に気付かず教室内に突進してくる。
その体当たりを食らった先生は、衝突事故のような勢いで黒板に頭からぶつかるのだった。
さやか「…あ」
まどか「…あ」
和子「… … …」
和子「美樹さんはいつも、とっても元気ねぇ…?…先生も、とっても、嬉しいワァ…」ニコニコ
そう言いながら満面の笑みを浮かべる先生の背後には、ドス黒いオーラが禍々しく煙をあげていた。
さやか「ぎゃあああああああああ!!すいませんすいませんすいませんーーっ!!」
まどか(…良かった、いつも通りのさやかちゃんだ…)
そして、昼。各々の生徒が昼食を持ち、それぞれの食事場所に分散していく。
さやか「ね、仁美。顔色悪いし、お昼は保健室借りて休んでれば?少し寝たほうがいいよ」
仁美「え…?でも、私は単なる寝不足で…」
さやか「だからこそだよ。放課後にいつものお稽古事もあるんでしょ?今のうちに休んでおかないと身体壊しちゃうよ?」
仁美「… … …そうですわね。それでは、そうさせてもらいましょう」
さやか「よっし、それじゃ、保健室まで一緒するよ。ほら、まどかも一緒に」
まどか「え?う、うん…」
仁美「申し訳ございません、さやかさん、まどかさん」
さやか「いいのいいの、途中で倒れたら大変だし、行こう行こう」
まどか(…どうしたんだろ?さやかちゃん。…なんだか、仁美ちゃんを保健室に行かせたがってるみたい)
仁美を保健室まで送り届けると、さやかはまどかの方を振り返る。
さやか「さ、まどか。一緒にお昼食べよっ、屋上で」
まどか「屋上…?」
さやか「実はさ、呼んであるの。マミさんと、コブラさん!」
まどか「魔法少女に!?」
コブラ「なったぁ!?」
さやか「うん、今朝にね。…2人にも、ちゃんと伝えないといけないと思って」
まどか「ど、どうして…?」
さやか「まぁ、理由は色々あるんだけどさ。…何より、あたしの叶えたい願い、しっかり見つけられたから。後悔なんてしない、命懸けでも、叶えたい願いが」
コブラ「…」
マミ「私と相談をしたの。願いのためなら、その命を戦いに捧げても構わない…その決意があるから、キュウべぇとの契約を、しっかり見届けさせてもらったわ」
QB「そして願いは叶えられ、さやかは魔法少女になったというワケさ」
さやかの手には、太陽に照らされ、煌めく青のソウルジェムの指輪があった。
まどか「…やっぱり、上条くんの事?腕を…治したの?」
さやか「…うん。昨日はありがとう、まどか、コブラさん。2人が来てくれたから、あたし、決められたんだ」
さやか「ずっと考えてた。マミさんが言ったように、他人の願いを叶える前に自分の願いをはっきりさせる、って事。あたしは、恭介の何になりたいんだ、って」
さやか「昨日、恭介の腕の事…ずっと治らないってお医者さんに告げられた、って2人とも聞いてたよね?…その時ね、あたし、もう自分なんかどうなってもいいから恭介の腕を治したいって考えたんだ」
さやか「でも、それは少し違うんだって…その後分かったの。…あたしには、仲間がいる。先輩のマミさんが、コブラさんが…そして、あたしの可愛い嫁のまどかがね、えへへ」
さやか「あたしがどうしようもなく自暴自棄になっても、助けてもらえるかもしれない。…逆に、誰かがピンチになったら、あたしが救えるかもしれない!」
さやか「恭介も、マミさんも、コブラさんも、まどかも、助けられるかもしれない!…だから、どんなに怖くても大丈夫だって!…そう思って、あたしは魔法少女になった」
さやか「後悔なんて一つもしていないよ。魔法少女が叶えられる願いは一つだけど、あたしが叶えられる願いは、無限大なんだからっ!」
コブラ「…いい目になったな、さやか。そんな顔が出来るなら何も心配する事ないぜ」
マミ「でしょ?…ふふ、私の後輩は優秀なのよ」
さやか「でへへ」
まどか「… … あの、その…わたし、わたしっ…!」
さやか「…まどか」
さやかはゆっくりとまどかに近づくと、頭にポンと右手を置いて、にんまりと歯を見せて笑う。
さやか「あんたが引け目を感じる事は何も無いの。まどかはいつも通り、あたしの友達で、可愛いおもちゃで、さやかちゃんの嫁でいてくれればいいのだー!」
まどか「えぇぇ…それもちょっと…」
マミ「…鹿目さんは、魔法少女にちょっと詳しい、普通の中学生。それでいいと思うの。…だから、これからもよろしくね?私達の、大切な仲間なんだから」
まどか「…はい」
QB「…」
コブラ「出来れば、疲れたらマッサージとかもお願いしたいねぇ。特にマミは重い物ぶら下げて肩こりが酷い…いででででっ!」
笑顔でコブラの足を踏みつけるマミ。
さやか「3人とも、放課後は空いてる?ちょっと来て欲しいところがあるんだ」
まどか「…?」
さやか「へへ、実は恭介にサプライズプレゼントしようと思ってね。ま、とにかく暇なら病院まで来てよ、詳しくは後で教えるからっ!」
マミ「…ふふふ、美樹さんの事だから何となく想像ができるけれども、楽しみだわ」
さやか「えへへへ…それじゃ、また後でっ!」
さやかはそう言って元気に手を振ると、屋上から慌ただしく出ていく。
まどか「さやかちゃん、魔法少女になって…良かったみたい。あんなに嬉しそう」
コブラ「…ああ。頼もしい仲間になるぜ、ああいう目をした奴はな」
マミ「そうね。…私も張り切って後輩の指導にあたらなきゃ」
まどか「…えぇと…ところで、コブラさん。あの、ここ学校の敷地内なんですけれど…よく入り込めましたね…?」
コブラ「ん?なぁーに、忍び込むのは俺の専門なんでね。必要なら監獄でも軍事基地でも銀行でも、どこでも潜り込める」
マミ「…あまりおススメできない特技よね、正義の魔法少女の仲間としては」
――― その後。
さやか「そっか、退院はまだ出来ないんだ」
恭介「うん、足のリハビリがまだ済んでないしね」
さやか「でも、本当に良かった…恭介の手が動くようになって」
恭介「…さやかの言っていた通り、本当に奇跡だよね、これ…」
さやか「…」
自然に笑顔になるさやか。
恭介「… … …」
さやか「…どうしたの?」
恭介「さやかには…酷いこと言っちゃったよね。それに、さやかの友達にも。…いくら気が滅入ってたとはいえ…」
さやか「変な事思い出さなくていいの。あたしが皆に謝っておいたし…今の恭介は大喜びして当然なんだから。そんな顔しちゃだめだよ」
恭介「…うん」
さやか「…そろそろかな?」
恭介「?」
さやか「恭介、ちょっと外の空気吸いに行こ?」
恭介「さやか、屋上に何か用なの?」
さやか「いいからいいから」
屋上へと上がるエレベーター。車椅子のハンドルを握るさやか。不安そうな恭介。
そして、屋上へ到着したエレベーターの扉が開く。その向こうには…。
恭介「…!みんな…!」
上条恭介の家族、病院関係者…そして、鹿目まどか、巴マミ、コブラ、それぞれの姿があった。
皆、恭介の復活を心待ちにしていた人達ばかり。恭介とさやかは、拍手に出迎えられた。
さやか「本当のお祝いは退院してからなんだけど、足より先に手が治っちゃったしね」
歩み寄る、恭介の父親。そして差し出されたのは、以前愛用していたバイオリン。
恭介「…!それは」
恭介父「お前から処分するように言われていたが、どうしても捨てられなかった」
恭介父「さあ、試してごらん」
少し戸惑いながら、それを受け取る恭介。しかし、戸惑いはやがて微笑みにかわり、弦がしなやかに美しい音色を奏で始める。
まどか「わぁ…!」
マミ「素敵な音色ね…」
コブラ「酒の合いそうな音色だね。一杯ひっかけてもい…いでででででーーーっ」
笑顔でコブラの足を踏みつけるマミ。
さやか(…後悔なんか、あるわけない。…まどか、マミさん、コブラさん)
さやか(あたしの願い、叶ったよ)
――― その様子を近くの観光タワーから見つめる杏子。そしてその傍にいるキュウべぇ。
杏子「マミに加えて、謎の魔法少女、ワケの分からない筋肉男…更に新しい魔法少女、ねぇ。見滝原も随分騒がしくなったもんだ」
QB「ボクにもわけがわからないね。元々魔女の発生率が他の都市と比べて桁違いに高い場所だから魔法少女が増えるのは納得が出来るけど、ボクの知り得ない人間が2人もいるなんて」
杏子「まぁ、いいさ。アンタの言っている通り、ここは絶好の狩場だ。…それに、新人が1人くらい増えたところでアタシにとっちゃどうってことないね」
QB「とるべき行動は色々多いようだね。どこから手をつけるんだい?」
杏子「ふん…」
杏子「とりあえず、新人に先輩が教育でもつけてやる、ってのはどう?」
――― 少し時間が経って、高いビルの屋上。先程までの病院の様子を観察していたほむらは、物思いにふけていた。
ほむら「…美樹さやか」
ほむら(彼女も、魔法少女に…。まぁ、予想の範疇ね、今まで何度かその世界も見てきた)
ほむら(あとは佐倉杏子。私が知る見滝原に集う魔法少女は、まどかも含めて…五人)
ほむら(…あの男を除いて)
その時、ビルの屋上の扉が開いて誰かが入ってくる。
ほむら「!?」
驚いて振り返るほむら。そこに現れたのは、まどかだった。
まどか「…ほ、ホントにこんな所にいたんだ、ほむらちゃん…!」
ほむら「… … …どうして?」
まどか「え、えっとね…?コブラさんが、あっちのビルの屋上にほむらちゃんがいる、って教えてくれて…」
ほむら(有り得ない…病院からこのビルまで、数百m離れているのよ。私だって、魔法を使って観察していたというのに…)
ほむら「…それで、私に何か用かしら?」
まどか「あ、そ、そうだよね…。急に来てごめんね、ほむらちゃん。えっと…その、さやかちゃんが、魔法少女になったの」
ほむら「知っているわ」
まどか「え!?し、知ってるの!?」
ほむら「ええ。…それで?」
まどか「う…だから…新しい魔法少女も、1人増えたから…」
ほむら「私も、貴方達の仲間になれと言うのかしら」
まどか「… … …うん。マミさん、凄く頼りになるし、さやかちゃんだって一生懸命頑張ろうとしてる。…コブラさんは…あはは、よく分かんない人だけど、とっても強いし…」
まどか「だからね、ほむらちゃんも…私達と一緒に戦ったら、きっと…」
ほむら「…」
まどか「きっと…私達、ほむらちゃんの力になれる。だから…」
ほむら「…」
ほむら(力に…なれる。魔法少女が私の力になれなかった時間が、幾つあったかしら)
ほむら(ある時は力及ばずワルプルギスの夜に負け、ある時は互いを殺し合い…ある時は)
ほむら(私自身が、その魔法少女…まどかを、[ピーーー]時も…っ!)
まどか「…ほむらちゃん、前にマミさんに言われてたよね?グリーフシードの奪い合いじゃなくって、ほむらちゃんは何か別の意志があって戦ってるって」
まどか「わたしにも分かるの。ほむらちゃんは、絶対に…『何か』をしようとしているって」
まどか「そしてその何かを、私達のためにしてくれているって」
ほむら「…!」
まどか「わたし…まだ、魔法少女になれなくて。臆病で、弱虫で、嘘つきだから…」
まどか「でも、私は少しでも力になりたいの。さやかちゃんの、マミさんの、コブラさんの…そして、ほむらちゃんの!」
まどか「だから…一緒に戦って、みんなで頑張ろうよ。みんなで、魔女を…!」
ほむら「…甘いわ」
まどか「!」
ほむら(私達全員…五人の力を使えば、ワルプルギスの夜に勝てるかもしれない。でも、そう信じるたびにどこか歪が起きて、私達は夜を迎える前に崩れていった)
ほむら(あと二週間、私達が力を合わせてしまえば、きっと…どこかで私達は崩壊してしまう。だから私は、一人で時間を繰り返してきた)
ほむら(…でも…)
ほむら(この時間軸では…私はどうするべきなの?…今度こそ、ワルプルギスの夜を迎えられ、倒せて…まどかと朝を迎える事が出来る?)
ほむら(… … …)
ほむら「…私達魔法少女は皆、誰かを救えるほど余裕があって戦っているわけじゃないの」
まどか「…ぅ…」
ほむら「叶えた願いの代償を支払うために、必至に戦って、その命を削っている。…だから、仲間として戦うなんて、出来るはずがない」
まどか「…」
ほむら「…でも、考えておくわ」
まどか「… …え!?」
ほむら「少なくとも私は、貴方達の敵じゃない。…それだけは覚えておいて」
ほむら「貴方が私の忠告を忘れないと約束をしてくれるならの話だけど」
まどか「!!! …う、うんっ!!…ありがとう、ほむらちゃん!!」
心からの笑みを浮かべる、まどか。その笑顔につられ、ほむらの表情も少しだけ緩んだ気がした。
――― その一方、コブラ達のいた世界での話。
タートル号が、ブラックホールに飲み込まれた宙域付近。そこに停泊をしている、二つの宇宙船があった。
いずれの船も『海賊ギルド』の紋章が刻み込まれている。その二つの船同士の交信。
ギルド幹部「『ソウルジェム』というものを知っているかね?クリスタルボーイ」
ボーイ「知らんな」
ギルド幹部「だろうな。太古の昔…いわばおとぎ話に登場するような、陳腐な噂だからな。…だが、もしそれがあれば…我々は宇宙そのものを塗り替えられるかもしれんのだ」
ボーイ「そんな話のために俺を雇ったというのか?」
ギルド幹部「ククク…そう言うな。これは確かな情報なのだ」
ギルド幹部「この付近で観測されたブラックホール…。今はもう消滅してしまっているが、我々がそのブラックホールのデータの解析に成功した」
ギルド幹部「そしてそのブラックホールが行きつく先…その先に、一つの反応があったのだよ」
ボーイ「ほう」
ギルド幹部「我々の知るところによる、ソウルジェムという宝石…伝えられているデータに似たエネルギーの反応がな。非常に強いパワーを秘めた宝石だ」
ギルド幹部「その石の力は強く…伝説では、どんな願いでも一つだけ叶える事が出来る程の力を秘めた物と言われているのだ」
ボーイ「くだらんお伽話だな。それで、俺にその石コロを探しに行けというのか。ギルドにも随分舐められたものだ」
ギルド幹部「そう言うなクリスタルボーイ。…お前をこの役に選んだのは、理由がある」
ギルド幹部「そのブラックホールに、飲み込まれた船が一隻あった。…タートル号だ」
ボーイ「…!コブラ…」
ギルド幹部「我々のこの時代に、ソウルジェムは存在しない。だが、ブラックホールの先には確かに、太古の昔に存在したといわれるソウルジェムのデータに似た反応が出ているのだよ」
ギルド幹部「だがホール事態は非常に小さいものでね。ギルドの艦隊が入り込めるほどではない。まして、銀河パトロールとの抗争もあって戦力をそちらに削る事もできない」
ボーイ「…つまり、俺に乗り込めと?」
ギルド幹部「君が適任なのだよ、クリスタルボーイ。依頼は必ず遂行する、無敵の殺し屋…まして君は、そのコブラに因縁があるのだろう?」
ボーイ「…」
ギルド幹部「我々ギルドの繁栄に、ソウルジェムが必要なのだ。そしてこれは本部からの直々の命令だ。…行ってくれるな、クリスタルボーイ」
ボーイ「…いいだろう。くだらんお伽話に付き合ってやる」
ボーイ「…ソウルジェムを手に入れ、コブラを、この手で…。…舞台としては上出来だ」
ギルド幹部「必要なら部下も数名つけるが?」
ボーイ「必要ない。宝石の数個など、俺一人で十分だ」
ボーイ「コブラもそうであるように…俺も、殺しに関しては一人の方が仕事をしやすいんでね」
ギルド幹部「いいだろう。それでは、君の船の前に人工ブラックホールを作る。また、君の船にもその装置を用意しておいた。帰還の時に使用したまえ」
クリスタルボーイの乗る小型の船の前に、黒い渦が巻き起こる。そして、それに飲み込まれていく一隻の宇宙船。
ボーイ「クックック…俺とお前とは、やはり深い因果で結ばれているようだな。…今度こそ貴様の息の根を止めてやる…コブラ!」
―― 次回予告 ――
さやかの特訓が始まった!一人前の魔法少女になれるよう、俺も勿論手伝うつもりだぜ。
だがそう簡単な話じゃないみたいだ。あの赤い魔法少女が、今度はそのさやかに因縁をつけてきた。
一方、俺の方にも一人、厄介な来客が現れやがった!クリスタルボーイぃ!?ったく、ゴキブリ以上にしつこい野郎だねあのガラス人形は!
だがヤツの目的は俺を倒すだけじゃないみたいだ。何か別の目的があるらしいんだが…ロクでもない事に決まってるな!お前の思い通りにはさせねぇぜ!
次回【ソウルジェムの秘密】で、また会おう!
NGワードが…orz
>>113 訂正
× ほむら(私自身が、その魔法少女…まどかを、[ピーーー]時も…っ!)
○ ほむら(私自身が、その魔法少女…まどかを、殺してしまう時も…っ!)
というわけで3話終了です。私って、ホント、地味。
皆様のおっしゃられている通り、コブラを出すにあたってどうしてもクリスタルボーイも…という欲望に従順になってしまい、今回の登場となりました。
上手く物語に絡ませられるか、皆様からどう映るか不安でいっぱいなところですが、しっかりやっていきたいと思います!
コメント、イラスト、議論…本当にいろいろとメッセージをいただき、ありがとうございます!これからもよろしくお願いします。
それでは、また会おう!
乙ですたー!
クリボー来たー!!
クリボー「よーし!今日はマミマミでオ○ニーだ!!」
コプラ「お前・・・まさかそれが目的かぁ??」
まどか「そ、そんなの絶対おかしいよ///」
クリボー「魔法少女が色々消耗してくると、ソウルジェムの中身がドロドロに濁ってくるだろ?」
クリボー「あのドロドロを何かに利用出来ないかな?」
クリボー「QBを銃で打つとドロドロした白い何かになるだろ」
クリボー「あれを何かに利用できないかな!?」
クリボーネタがひどすぎるwwww
クリボー「なんでお前が鬱クラッシャーで俺がオ○ニーキャラなんだーッ!!」
1です、お世話様です!
4話の調整ができましたので次より投稿してまいります!
つたないSSですが、スペースコブラを聞きながら待機していただけると幸いですw
それでは、よろしくどうぞ!
第4話「ソウルジェムの秘密」
さやか「く、ゥ…ッ!はぁ、はぁ…!」
美樹さやかは、苦戦をしていた。
青の魔法剣士に対するのは、落書きの魔女・アルベルティーネ。弱ったさやかに対しここぞとばかりに使い魔を繰り出してくる。
魔女の攻撃は、落書きを実体化させ突進をさせる事。飛行機の落書きにのった使い魔達は次々とさやに特攻し、襲い掛かってきた。
さやか「ぐ…このぉッ!!」
さやかは剣で次々と使い魔を斬り捨てていくが、それだけに留まってしまっている。魔女の攻撃を防ぐ事に精一杯で踏み込めない。完全なる劣勢。
さやか(駄目…突破口が見えないっ…!このままじゃあ…!)
まどか「ね、ねぇ、マミさん、コブラさん!やっぱりさやかちゃん一人じゃ無理だよっ!助けてあげないと…っ」
マミ「…」
コブラ「…さやか、助けが必要かい?」
だがコブラの問いかけに、さやかは力強く答える。
さやか「必要ないッ!!あたしは…まだやれるッ!!」
まどか「…そんな、さやかちゃん…!」
さやか(このままじゃ、いずれあたしの体力が尽きて、負ける…!)
さやか(…それならいっそ…!)
さやか「でやあああああッ!!」
マミ「…っ!美樹さん!?」
決心をしたさやかは、勢いよく魔女に向けて駆けていく。つまり、防御を完全に捨てた体勢。使い魔達の突進を次々と受けるが、それでもさやかが止まる事はない。
攻撃を受けた瞬間に、回復。彼女の契約が癒しの祈りによるものなので、ダメージに対する回復力は他の魔法少女とは桁違いにある。さやか自身がそれを知っているのだった。
だから、捨て身の特攻に全てを賭ける。
魔女「!!」
この特攻に魔女も驚いたのか、涙を流すような悲しい表情を浮かべる。だがそんな事は構いもしない、魔女の眼前までさやかは迫っていた。
さやか「これで、トドメだぁーーーっ!」
魔女の眉間に、剣を突き刺す。
血のような黒い液体が噴出したかと思うと、魔女は消滅した。
そして結界が解かれ、四人は元いた路地裏へと戻る。
さやか「はぁ、はぁっ…!」
さやかの手には、魔女を倒した証…グリーフシードがしっかりと握られていた。
まどか「さやかちゃんっ!」
膝をつき、荒く息をするさやかに駆け寄るまどか、マミ、コブラ。まどかはいち早くさやかに駆け寄ると力の抜けたようなさやかを抱きしめた。
さやか「へ、へへ…あー、やっぱりまどかはあたしの嫁だねー」
まどか「さやかちゃん…っ!大丈夫…!?あんなに、あんなに無理しなくても…!」
涙を浮かべながらさやかをギュッと抱きしめるまどか。
さやか「無理しなくっちゃ。あたしも早く、一人前の魔法少女にならなくっちゃね。…どうだったかな、マミさん。あたしの戦い方」
初めての実戦、魔女との戦いにさやかは一人だけで戦いたいとマミとコブラに申し出た。初め、マミは反対をしていたがさやかの強い希望があり、それを通してしまった。
マミ「…そうね。初めての戦いにしては上出来よ。自分の魔法能力をもう理解しているし、それをしっかり活かせている」
マミ「ただ…少し、美樹さんの戦いは捨て身すぎるわ。あんなにダメージを受けてしまっては、ソウルジェムの濁りも強くなってしまう」
言いながらマミはさやかに近づき、さやかのソウルジェムとグリーフシードをくっつけ、穢れを取り除いた。ソウルジェムは光を取り戻し、さやかもまどかからそっと離れ、立ち上がる。
さやか「でも、あたしの持ち味ってそれくらいしかないと思うし…」
マミ「だからこそよ。ああいう戦い方は余程苦戦した時だけにしないと…。コブラさんはどう思う?」
コブラ「ああ、悪い。さやかの肌に見とれて戦いに集中できなくってね。いやー、なかなか露出度の高い衣装だ。三年後が楽しみだぜ」
さやか「え… お、おわぁぁっ!?」顔を赤くするさやか。
マミ・まどか「…」
コブラ「ハハ…ハって、あ、いやぁ、ジョーダンだよ、ジョーダン」
QB「それじゃあ、その真っ黒になったグリーフシードはボクが貰おうか」
さやか「?どうするの?」
キュウべぇにグリーフシードを手渡すさやか。そしてキュウべぇは、そのグリーフシードを背中に取り込む。
QB「きゅっぷい」
まどか「えぇ!?た、食べるの!?」
QB「これもボクの役目だからね」
コブラ「随分な偏食だな。あんなもの、健康に良くっても食う気にゃなれないぜ」
QB「別に好き好んで食べるわけじゃないよ。ただ、あのままじゃあグリーフシードが魔女化してしまうから」
コブラ「…」
コブラ(やはりおかしいな、グリーフシードは魔女から生まれる種だ。そいつが魔法少女の穢れを吸い込むと、再び活性化し、魔女が孵化するだと?)
コブラ(そもそも、その穢れとかいうシステムとそいつを吸い込む種…。つまり魔法少女と魔女は、単なる別種族じゃない事を現している)
コブラ(…ソウルジェムとグリーフシード。そして、そいつを食らうキュウべぇ。やはり全ては無関係じゃないって事だな)
マミ「どうしたのかしら?コブラさん」
コブラ「いや、マミの肌もなかなか綺麗で悪くないなと感心していてね」
マミ・さやか・まどか「…」
コブラ「すいませんでした」
マミ「さてと、それじゃあそろそろ解散にしましょうか?今日の見滝原パトロールと特訓はこれまでよ」
さやか「うん、まどかもマミさんもコブラさんも、付き合ってくれてありがとう!」
マミ「大切な後輩のためだもの、当然よ。それに、美樹さんは覚えが早いから…確実に成長しているわ。次からは、一緒に戦いましょう」
さやか「…!は、はいっ!」
コブラ「さぁーて、それじゃあ巴さんのお宅でディナーパーティとしゃれ込みますかね」
まどか「あ、あの…わたしもお邪魔していいですか?」
マミ「ええ、勿論大歓迎よ。一人で食べるのよりずっと楽しいし…それに、鹿目さんも大切な後輩ですもの。」
まどか「ありがとうございますっ! …ティヒヒ、実はお夕飯、マミさんのお家で御馳走になるって言ってきちゃったんです」
マミ「うふふ、それなら大丈夫ね。」
さやか「あ、ごめんなさいマミさん!あたしは、ちょっと寄るところがあって…」
マミ「あら、そうなの…?残念ね」
まどか「さやかちゃん、寄るところって、どこか行くの…?」
さやか「な、なんでもないのっ!大したところじゃないからっ!…それじゃみんな、また明日ーっ!」
何か慌てたように夜道を駆けていくさやか。それを見送る三人。そして…。
コブラ「… … …それじゃあ、尾行開始といきますかぁ。にぃひひ」
マミ「ええ、うふふ」
まどか「ウェヒヒヒヒ」
QB「人間は何を考えているのか分からないね」
――― 上条恭介家の玄関先。
聞こえてくる美しいバイオリンの音色は、そこに恭介がいる事を証明していた。
しかしさやかは、その音色を玄関先で聞いているだけだった。
さやか「…」
さやか(恭介…退院したなら連絡くれればいいのに…)
さやか(…練習、してるんだ…)
さやか(…)
そっと踵を返すさやか。しかし、その先には一人の少女が立っていた。
さやか「!」
杏子「折角来たのに会いもしないで帰る気かい?随分奥手なんだねぇ」
さやか「だ、誰…?」
杏子「…この家の坊やのためなんだろ?アンタが契約した理由って」
さやか「…ッ!アンタも、魔法少女…!?」
杏子「…おいおい」
杏子「先輩に向かって『アンタ』はねーだろ?生意気な後輩だね」
その様子を、物陰から見ている三人。
コブラ「…げぇ、アイツは…」
まどか「あの時の人…!今度はさやかちゃんに襲い掛かるつもり…なのかな…?」
マミ「あれは…佐倉さん…!」
コブラ「!?知り合いか、マミ」
マミ「ええ。…二人も佐倉さんに会ったことがあるの?」
コブラ「会ったなんてもんじゃないよ。この間、熱烈な歓迎を受けたところでね」
マミ「おかしいわ、佐倉さんは隣町を中心に魔女を狩っていた筈なのだけれど…」
まどか「この前はコブラさんを襲ってきたんです…。さやかちゃんに…何か用事、なのかな」
マミ「とにかく、私が直接話を…」
コブラ「いや、ここは少し様子を見ておこうぜ。かの女が何を目的にしているのか分からない。…危なくなったらすぐ前に出る準備はしておいて、な」
マミ「…そう、ね」
マミ(…佐倉さん…)
QB「…」
マミはソウルジェムを握り、コブラは左腕に右腕をかけながら、その会話を聞いている。
杏子「一度だけしか叶えられない魔法少女の願いを、くだらねぇ事に使いやがって。願いってのは自分のためだけに使うもんなんだよ」
さやか「…別に、あたしの勝手でしょ!アンタなんかに関係ない!」
杏子「…気に入らないね」
杏子「そういう善人ぶってる偽善者とか、何を捨てても構わないとか考えてる献身的な自分に惚れてる姿とかさ」
杏子「…ホント、気に入らない」
さやか「…もう一度言うよ。あたしが何を願おうと、何のために戦おうと…アンタには関係ない事でしょ。何?それとも単なる憂さ晴らし?」
杏子「… …美樹さやか…だっけ?魔法少女として、あんたにちょっと指導にきたのさ」
さやか「必要ない。あたしには…仲間がいる」
杏子「…ぬるい。ま、指導ってのは建前さ。…実はあたしも、見滝原で活動を始めようと思ってね」
さやか「え…」
杏子「ここの魔女の発生頻度、異常に高いんだよねぇ。…まるで、何か大きな事が起きる前触れ、みたいな感じに。まぁとにかく、魔法少女としては絶好の狩場なわけ」
杏子「それなのにあんたらときたら特訓だの何だの…しまいにゃ、魔女になるであろう使い魔ですら倒しちまう始末だ。グリーフシードを集めるのに効率が悪すぎるんだよ」
さやか「…!放っておけって言うの!?」
杏子「人間四、五人食わせりゃ、アイツらは魔女に成長する。弱い人間を魔女が喰らい、あたしら魔法少女がその魔女を喰らう。…基本的な食物連鎖の話さ」
さやか「…!」
さやか「違う…間違ってる!!魔法少女っていうのは…。魔女から人を守るのが魔法少女なの!!…人を守らなきゃいけないのに、魔女に成長させるために人を食べさせるなんて、そんなの、間違ってる!」
杏子「…ばーっかじゃねーの。くだらない…くだらないくだらないくだらない。やっぱどこまでいっても巴マミの後輩だね」
さやか「っ、マミさんの事…知ってるの!?」
杏子「…どうでもいいじゃん。…それよりさぁ、アタシにいい考えがあるんだけど、どう?」
さやか「…」
杏子「アタシが協力してやるよ。今すぐこの坊やの家に魔法で忍び込んで、その手足を潰してやるっていうのはどう?」
さやか「…っ!?」
杏子「恩人に一言もかけないで退院するなんて、酷い話だよねぇ?…もう、この恭介っていう子は、アンタ無しでも生きていけるんだ」
さやか「…黙れ…黙れ、黙れ…!」
杏子「もうコイツにアンタは必要ない。どんどんアンタから離れていく。…それならいっそ」
杏子「もう一度…今度は手足を使えなくして、アンタ無しじゃあ生きられない身体にするのさ。なぁに、自分でやりづらいって言うんじゃ、アタシがやってやるよ」
さやか「…あんただけは…」
さやか「あんただけは、絶対に…絶対に許さないッッ!!」
杏子「…へへ、それじゃあ…場所を移そうか?ここで戦うわけにいかないだろ?」
・
まどか「… … …」
コブラ「俺達も行くぜ。ここで出て行って戦闘になったら面倒だ、広い場所に出たら…だ。いいな、マミ」
マミ「…っ。え、ええ…」
マミ(…佐倉さん。貴方は…何が目的なの…?)
――― 大きな歩道橋の上、さやかと杏子は移動をし、お互いに対峙をしている。
杏子「ここなら邪魔は入らないね。…さぁ…始めようか?」
そう言って杏子はソウルジェムを使い、変身する。自分の身の丈ほどある巨大な槍を器用に振り回し、戦闘態勢をとる。
さやか「…!」
さやかがソウルジェムを取り出そうとした瞬間…。
まどか「さやかちゃんっ!!」
さやか「!まどか!それに、マミさんに、コブラさん!」
さやかに駆け寄るまどか、マミ。ゆっくりと後ろから歩いてくるコブラ。
杏子「…!巴、マミ…!」
マミ「佐倉さん…。久しぶりね、元気そうでよかったわ」
杏子「…アンタに心配されなくても、一人で出来てるよ。…魔法少女として、な」
マミ「…そう」
さやか「皆…。…邪魔しないでっ!あたしは、コイツを…!」
コブラ「落ち着きなよ、さやか。…それに、かの女はまだお前さんの腕じゃ勝てる相手じゃないぜ?」
さやか「そんなの、やってみなくちゃ…!」
マミ「…佐倉さん。貴方が何を考えているのか、私には分からないわ。けれど…何故美樹さんと戦おうとするの?貴方が嫌う『無駄な魔力の消耗』にしか思えないわ」
杏子「アンタには関係ないね。アタシは、新人の教育にきただけさ。魔法少女の何たるかを、ね」
マミ「指導には私があたっているわ」
杏子「アンタのやり方は…手緩い。このままじゃあ…コイツ自身が身を滅ぼしちまうのが、分からないかい?」
マミ「… … …」
杏子「本当は口だけで言うつもりだったんだけどね…生意気な奴で、あっちからやろうって言ってきたんだ。アタシからふっかけたわけじゃないよ」
さやか「…マミさん。戦わせてください!…あたしがどれだけ出来るようになったか…確かめる意味でも!」
マミ「美樹さん…」
その時、全員の前にふと現れる人影があった。
まどか「…っ!?ほ、ほむらちゃん…!」
ほむら「…」
現れた暁美ほむらは既に魔法少女に変身していた。五人をぐるりと見回すと、その中心に移動する。
コブラ「…!」
コブラ(俺の目でも、かの女がどの方角から来たか、分からなかった…!?)
ほむら「…巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか…そして、コブラ…まどか。全員揃っているようね」
杏子「…魔法少女?…ああ、そうか。アンタがキュウべぇの言っていた、もう一人のイレギュラーか」
ほむら「これで、この周辺の魔法少女は、全員。例外もいるようだけれど」
コブラ「へへへ、まぁね」
まどか「…」
QB「何か用かい?暁美ほむら」
ほむら「貴方がこの場に居るのは少し嫌だけれど、仕方ないわね。…全員に、話しておくべき事があるの」
さやか「な、なによ…!」
ほむら「ただし、落ち着いて聞いて。そうじゃないと…私達全員、死ぬ事になるわ」
マミ「死ぬ…!?」
ほむら「ええ。間違いなく」
杏子「…初対面でいきなり現れておいて、そんな話を信じろっていうの?」
ほむら「ええ、そうよ。嫌ならいいわ。ただ私は、無益な戦いをする馬鹿の敵だということは覚えておいて」
杏子「なんだとっ…!」
さやか「…」
マミ「暁美さん、話って…?」
ほむら「…」
ほむら「貴方達に話しておくべき事がある。決して悪い話ではないわ。ただ、これから起こる事を、しっかりと把握しておいて欲しいの」
ほむら「二週間後、 この街に、ワルプルギスの…」
ほむらが話を始めた瞬間。
コブラ「…!さやか、避けろッ!」
さやか「…えっ?」
コブラはさやかの頭を抱えて、地面に伏せる。その瞬間…
二人の頭をかすめる、レーザー光。
ほむら「…ッ!?」
杏子「何だ…!?今の攻撃は、どこから…!?」
勢いよく伏せたせいで、さやかはソウルジェムを落としてしまう。
歩道橋の傾斜にそれは転がっていき…誰かの足元で、宝石は止まった。
さやか「あ…!」
コブラ「…!お前は…ッ!」
ボーイ「…こいつがソウルジェムか。なるほど、よく出来た宝石だ」
まどか「…!な、なに…!?なんなの、あの人…!」
六人の後方に立つ人物は、人間では無かった。
能面のような金色の顔、骨格のような金属の身体は、透明のガラスのような肉で覆われている。異形の怪物…少なくとも、少女達には、この世では存在し得ない存在。
コブラ「…クリスタルボーイ…!」
コブラは左腕の義手を抜き取ると、サイコガンを怪物に向けて構える。
杏子「!」
ボーイ「久しぶりだな、コブラ。まさかこんな場所で会うとは思わなかったが、やはりソウルジェムに関わっていたか」
マミ「…コブラさんの知り合い…?」
コブラ「…ちょっとした、な。なぁーに腐れ縁さ、出来れば二度と会いたくなかったがね」
ボーイ「くくく、そう言うなコブラ。俺は貴様に会いたくてここへやって来たのもあるんだからな」
コブラ「そいつは有難いね。でも出来れば美女に言われたい台詞だな」
ほむら(いけない、ソウルジェムが美樹さやかから離れている。これ以上離れたら…!)
さやか「か、返してよ!誰か知らないけど、それはあたしの物なのっ!」
ボーイ「ほう、この宝石には所有者がいるのか。てっきり鉱山から掘り出せるのかと思ったが、まさかこんな場所から反応が出ると思わなかったのでね」
コブラ「そいつを返してもらおうかガラス人形。お前には必要ない物だ」
ボーイ「…ふふふ、それが、必要なんだよ」
まどか「あの人は、一体…?」
コブラ「クリスタルボーイ…俺の居た世界の、殺し屋さ。悪の組織の幹部…なんて言った方が分かりやすいかな。少なくとも俺達の味方じゃない事は確かだ」
マミ「あの身体は…人間じゃない…!?」
コブラ「サイボーグだ。化け物と言ったほうが似合うね。俺が何度倒しても、また俺の前に現れる…ゴキブリみたいな野郎さ」
コブラ「クリスタルボーイ!何故この世界にお前がいるのか教えてもらおうかッ!」
ボーイ「俺がここにいる理由か…いいだろう、教えてやる」
ボーイ「一つは、コブラ。お前の後を追ってきたのさ。お前の足取りをようやく掴んでね、ブラックホールを辿ってこの世界に足を踏み入れたのが分かったからな」
ボーイ「そしてもう一つは…この石コロを探しにきた」
ボーイは掌で、さやかの青のソウルジェムを転がしながら言う。笑顔はない、能面のような表情がニヤリとほほ笑んだような錯覚を全員が受ける。
ほむら「…!何故ソウルジェムの事を…!」
ボーイ「太古の昔にあったと言われる、魔法の宝石…俺のいた世界にはそんな伝説があってね。そいつがこの世界に存在すると聞いて探しに来たが…まさかこんなに容易に手に入るとはな」
ボーイ「そこの餓鬼に礼を言わなければな。お前さんのおかげで仕事が早く済みそうだ」
さやか「…っ!」
コブラ「海賊ギルドがソウルジェムを狙っているってのか。驚いたね、いつからそんな少女趣味になったんだ?」
ボーイ「この宝石には随分な力があるそうだな。…魔法。そう、まるで願い事を叶えるかのような、魔法の力が」
QB「…!」
ボーイ「こいつの持つ膨大なエネルギー…そいつをギルドは求めているそうだ。くだらん夢物語だと思っていたが、現物が手に入ったのなら俺の仕事は完了だ」
ほむら「止めなさい!今すぐソウルジェムを返さないと…」
ボーイ「そう言われて素直に返すとでも思うのか?俺は今すぐこの場でこの宝石を砕いてもいいんだぞ」
ほむら「…く…っ!」
ボーイ「コブラ。貴様と決着をつけたいと思っていたが、また次回にしておこう。今は元の世界に戻る事にしておくよ、クク」
コブラ「…!戻れるというのか!」
ボーイ「どうかな」
その時、轟音を立てて歩道橋の真上に何かが接近してきた。
クリスタルボーイは、その何かに向かって跳躍をする。見たこともないような形の飛行機…宇宙船と言ったほうが正しいのだろう。
コブラ「ッ!待て、ボーイ!」
ボーイ「それじゃあなコブラ。せいぜいこの世界を楽しむといい」
さやか「ま、待ってよッ!あたしのソウルジェム…!!」
宇宙船はゆっくりと旋回をすると、空に飛び立っていく。
…そして、次の瞬間。
さやか「…ぁ…っ」
まるで糸の切れた人形のようにその場に倒れるさやか。
杏子「…!?な、なんだ…どうしたんだよ…!?」
杏子はさやかが倒れる前にその身体を抱き留め…そして、その異常事態に気付く。
杏子「…!どういうことだオイ……! こいつ…死んでるじゃねえかよ!!」
まどか「… … …え?」
マミ「…死ん、で…?」
まどか「そ、そんな、どういう…?」
QB「まずいね、魔法少女が身体をコントロールできるのはせいぜい数百メートルが限度だ。離れすぎてしまったようだね」
マミ「! キュウべぇ…それって…!?」
ほむら「…ぐ、っ…!」
その時、頭上にもう一つの飛行物体が現れる。轟音に気付き、コブラは上を見上げた。
コブラ「タートル号…レディ!」
レディ「コブラ、急いで!クリスタルボーイの宇宙船は急速で地球から離れようとしているわ!このままだと…!」
コブラ「ああ、今行く!…まどか、さやかの方を頼むぜ!」
コブラ「さやかのソウルジェムは…必ず俺が取り戻してくる!」
まどか「さやかちゃん…さやかちゃん!ねぇ、返事してよっ!さやかちゃん!」
コブラの声には反応せず、必至にさやかの身体を揺さぶるまどか。
タートル号は歩道橋にギリギリまで寄り、乗車口を開ける。急いでそれに飛び込もうとするコブラ。
マミ「ま、待って!コブラさん!私も行くわ!」
コブラ「!」
マミ「わけが分からないけれど…ソウルジェムを取り戻さなくちゃ!私だって手伝えるわ!」
コブラ「マミ…」
ほむら「私も行くわ。…このままじゃ、まずい」
コブラ「…!分かった、助かるぜ2人共!」
タートル号が、コブラ、マミ、ほむらを乗せ飛び立った後。
さやかの身体を必死に抱きしめるまどか。そして…キュウべぇに詰め寄り、首を鷲掴みにする杏子。
QB「苦しいよ、杏子」
杏子「どういう事だよ… なんで、コイツ…死んでるんだよ!!てめぇ、この事知ってたのかよッ!!」
QB「壊れやすい人間の肉体で魔女と戦って、なんてお願いは出来ないよ。魔法少女とは、そういうものなんだ。便利だろう?」
まどか「さやかちゃん… さやかちゃん…っ!」
QB「まどか、いつまで呼び続けるんだい?『そっち』はさやかじゃないよ」
QB「またイレギュラーが増えたのは本当に驚きだけれど、とにかくコブラ達が『さやか』を取り戻してくれるのを願うばかりだね」
杏子「なんだと…」
QB「魔法少女である君たちの肉体は、外付けのハードウェアでしかない。コンパクトで安全な姿が与えられ、効率よく魔力を運用できるようになるのさ」
QB「魔法少女の契約とは」
QB「君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事を言うのさ」
杏子「ッッッ!!っざけんなぁ!! それじゃあ…アタシ達、ゾンビにされたようなもんじゃねえか!!」
QB「むしろ便利だろう?いくら内蔵を壊されようが血を流そうが、魔力で復活ができる。ソウルジェムを砕かれない限り、君たちは無敵なんだ」
QB「弱点だらけの肉体より、余程戦いでは便利な筈だ」
まどか「…酷いよ… 酷すぎるよっ…」
まどか「こんなのって… 酷すぎる…!」
クリスタルボーイの乗る宇宙船を眼前に捉えたタートル号。
コブラ「レディ、このままヤツの宇宙船に特攻して、でかい風穴をあけてくれ。そこから突入する。さやかのソウルジェムを無傷で取り返さなくちゃいけねぇ」
レディ「分かったわ。加速ならこっちの方が段違いに上よ、任せて」
コブラ「オッケー。…準備はいいかい?マミ、ほむら」
既にソウルジェムを使い、魔法少女となっているマミとほむら。しかしマミの表情はどこか優れないようだった。
コブラ「マミ」
マミ「…何が何だか、分からないの。…美樹さんが何で…倒れてしまったのか。ソウルジェムが身体から離れてしまったから?そんな事、知らない…!」
マミ「私も…ああなっちゃうの?ソウルジェムが離れると…死んでしまうの?」
マミ「分からない…もう何も、分からないッ…!」
コブラ「…マミ。とにかく今は、さやかのソウルジェムを取り戻す事だけを考えろ。話はその後だ」
マミ「……う、うぅ…ッ…」
コブラ「マミッ! アンタの大事な『後輩』だ! 助けられるのは…アンタしかいないッ!!」
マミ「…!!」
レディ「距離、50。衝撃に気を付けて…!このまま突っ込むわよ!」
ほむら「…」
・
ボーイ「…ふふふ、やはり来たか、コブラ」
ボーイ「貴様の墓標は、元の世界ではないようだな。…この世界だ」
―― 次回予告 ――
クリスタルボーイの野郎、ふざけた真似してくれるよ全く!さやかのソウルジェムを奪ったうえで俺を殺すだと?へっ、上等じゃねぇか!
奴の船に乗り込んだ俺とマミとほむら、ついにボーイとの決闘だ。相変わらず俺のサイコガンは効かないわ、魔法も物ともしない。いやだねー、ホント!
だが諦めちゃいられねぇ!さやかのソウルジェムは絶対に取り戻してみせるぜ!俺達は決死の作戦であの野郎に立ち向かう事になったっ!
次回【決戦!クリスタルボーイ】で、また会おう!
4話終了です、有難うございました!
前回のNGワードの件など、ご指摘いただきましてありがとうございました!
そして、毎回コメントや議論などをたくさんいただき本当にありがとうございます。励みにさせていただいております。
次回…ほとんど戦闘シーンになると思いますが、よろしくお願いしますw
それではっ!
乙ですたー!
クリボーの台詞を聞いたときの、QBの反応が気になるなぁ・・・
さやか「」
クリボー「よーし、今夜はさやかちゃんをおかずにオ○ニーだ!!」
QB「その反応は理不尽だよ」
お世話になっております、1です!
5話が調整できましたので投下していきます。
今回はほぼ戦闘描写…というかなりムチャな事をしてしまい、自分の文章力の無さを露呈するような形になってしまいました。
ただどうしてもコブラ&魔法少女vsクリボーをやりたくって、そのために1話使ってしまいました。申し訳ない…。
不自然な点、お見苦しい点などあると思いますが、よろしくお願いします。
始める前に、議論されていたクリボーの特殊偏光クリスタルについてです。
マミさんやほむらの攻撃が有効ではないかという点について、少しこちらで考えさせていただき、設定を致しました。
ほむらの攻撃(現代重火器)<マミさんの通常攻撃(魔法銃での攻撃や魔法)<クリボーの特殊偏光クリスタル<ティロ・フィナーレ
こんな感じで設定をさせていただいております。不自然ですいません…!
至らない点ばかりですが、お付き合いしていただけると幸いです。それでは、よろしくお願いします!
第5話「決戦!クリスタルボーイ」
レディ「距離30、20…!皆、どこかに掴まって!間もなくクリスタルボーイの宇宙船と衝突するわ!」
コブラ「了解!派手にやってくれ!」
ドォォォォンッ!!
マミ「きゃあああっ!!」
小規模の爆発が起きたように大きく揺れる、タートル号船内。
しかし狙いは完璧。タートル号はクリスタールボーイの操縦する宇宙船の後部に体当たりをかけ、見事に風穴を開ける。
コブラ「完璧だぜレディ!カースタントマンでもこの先食っていけそうだなっ!」
機体上部のハッチが開き、コブラは急いで梯子を上り外へと出ようとする。
コブラ「御嬢さん方、急ぐんだ!ヤツの宇宙船に飛び移るぞ、着いてこい!」
ほむら「ええ」
マミ「…」
コブラ「…マミッ!」
マミ「…! 分かったわ…今はとにかく、美樹さんのソウルジェムを…取り戻す!」
コブラ「上出来だ!いくぜ、皆っ!」
レディ「コブラ!忘れ物よ!」
レディがコブラに向けて、箱を投げた。それをキャッチするコブラ。
レディ「シガーケースよ。葉巻が切れた時のために、ね」
コブラ「…! あぁ、レディ。ありがとよ!」
タートル号上部船体。高速で移動を続け、クリスタルボーイの宇宙船を追う船体の外は激しい風が吹きすさぶ。
ハッチから外に出た瞬間、その豪風に吹き飛ばされそうになるほむらとマミ。
コブラ「俺に掴まれ!ヤツの宇宙船に移動する!」
マミ「移動する、って…どうやって!?」
コブラの腕にほむらが、肩にマミが掴まりつつも、マミは疑問の声を投げかける。その声にコブラは不敵な笑みを浮かべるのだった。
コブラ「こうするのさ」
コブラの空いている腕のリストバンドから、細いワイヤーが勢いよく発射される。ワイヤーの先端の刃が見事にクリスタルボーイの宇宙船の風穴内部に突き刺さり、コブラはその安定性を確認した後…。
コブラ「振り落とされるなよぉッ!!」
ほむら「…!!」
マミ「きゃあああああああああああああっ!!」
高速で縮まるワイヤー。三人の身体は吸い込まれるように、クリスタルボーイの宇宙船に移動していく。
レディ「…コブラ…皆!無事でいて…!」
――― 一方、地上。抜け殻となったさやか、それを抱きかかえるまどか。そして、キュウべぇに詰め寄る、杏子。
杏子「騙してたのかよ、あたし達を…っ!」
QB「騙していた?随分な言い方だね。さっきも言っていた通り、弱点だらけの人体で戦いを続けるより遥かに安全で確実なやり方なんだよ」
まどか「酷すぎるよ…っ!さやかちゃん、必死で…!強くなる、って…頑張るって…戦ってたのにっ…!」
QB「君たちはいつもそうだね。真実を伝えると皆決まって同じ反応をする。どうして人間は、そんなに魂の在り処にこだわるんだい?」
QB「ワケがわからないよ」
杏子「…!!畜生…っ!!ちくしょおおおっ!!」
やり場のない怒り、悲しみ…全てをぶつけるように、杏子は月夜に吼えるように叫んだ。
まどか「…コブラさん…っ!お願い…さやかちゃんを、助けて…!」
月を背景に、遥か上空を飛ぶ二隻の宇宙船。見えずとも、まどかはそこに向けて、祈った。
コブラ「うおっ、とぉ!!」
コブラは自分の身体を下にして、地面に滑り込む。三人はクリスタルボーイの宇宙船内に侵入を成功させた。
コブラ「無事かい、2人とも」
ほむら「…ええ、何とか」
マミ「む、無茶苦茶なやり方だったけど…どうにか無事だわ」
コブラ「そいつぁ良かった。…ここは…貨物室か?」
三人が侵入した場所は、無機質な、まるで鉄の箱の中のような場所。周りに数個の貨物があるだけの殺風景な部屋だった。
そして…その奥。
クリスタルボーイは、まるで三人を待っていたかのようにその場に立っていた。
ボーイ「遅かったじゃないかコブラ。待ちくたびれたぞ」
コブラ「待たせたなガラス細工。延滞金はしっかり払わせてもらうぜ」
コブラは左腕の義手を抜き、サイコガンを構える。マミとほむらも、異形の相手に向かい戦闘態勢をとるのだった。
【人工ブラックホール、生成準備完了。本船の前方に超小型のブラックホールが発生します。生成まで、あと10分…】
コブラ「…!?なんだとぉ!?」
ボーイ「ククク、タイムリミットはあと10分。コブラ、朗報だ。元の世界にもうすぐ戻れるらしいぞ」
ほむら「…!どういう事…!?」
ボーイ「聞こえなかったのか小娘。あと10分でこの船はブラックホールに吸い込まれ、異次元空間へとワープする。到着先は…我々の住む、未来の世界だ」
ほむら「!!」
ボーイ「元の世界に戻るのが目的だったのだろう?感謝しろコブラ、俺はお前の命の恩人だ」
コブラ「お前がぁ?ごめんだね、どうせ恩を売られるなら美女がいいに…決まってらぁッ!」
言いながらコブラはサイコガンの砲撃を次々とクリスタルボーイに浴びせる。
しかし、その砲撃の全てはボーイの体内で屈折し、素通りをしていくのだった。
マミ「!?こ、コブラさんの攻撃が…!」
ボーイ「クククク…忘れたわけではあるまい。サイコガンは俺には無力だ」
ボーイ「しかし、礼を言わせてもらうよコブラ。1つだったソウルジェムを一気に3つまで増やしてくれるというのだからな」
ボーイ「このままその女どもをワープさせれば…あとはその身体からソウルジェムを剥ぎ取ればいいだけだ。ふふふ…」
コブラ「どうかな。その前にお前にでかい風穴を開けてやるぜ」
ボーイ「ククク…はっはっはっは!!笑わせるな。コブラ、お前は今俺の掌の上で踊っているに過ぎん」
ボーイ「お前の行動パターンは実に分かりやすいよ。情に流されれば、貴様はきっと俺の船に乗り込んでくる…。そう思って、あえて貴様をあえてここへ呼び込んだのだからな」
コブラ「何だと…!」
ボーイ「どうやらソウルジェムとやらは、その女達の身体と繋がっている…いわば、『魂』のようなもののようだな。先程の青髪の女で確信させてもらった」
ボーイ「このまま俺が元の世界に戻ろうとすれば…貴様たちは必ずここへやってくる、というわけだ。それも1人ではない、わざわざソウルジェムを持つ女を2人も連れて、な」
マミ「…くッ…!」
ほむら「…」
ボーイ「コブラ。何故俺がこの貨物室を戦場に選んだか分かるか?此処には、貴様の武器である『臨機応変』が使えないのだよ。あるのは空の鉄箱だけだ。貴様の武器となるような物は、ない。お得意の逃げ回る戦法も場所が限られているぞ」
ボーイ「おまけに俺の特殊偏光クリスタルにはサイコガンは効かん。…さぁ、どうやって俺を倒すつもりかね?…コブラ!」
【ブラックホール、生成完了まで、あと8分です】
コブラ「!」
ボーイ「ソウルジェムは、この扉の先のコクピットにある。…あと8分。俺を倒して、この扉を潜って…奪い取れるかな?」
コブラ「…やってみせるさ!」
コブラは腰のホルダーから愛銃の『パイソン77マグナム』を抜き、3連射する。
しかしその弾丸の全てを、クリスタルボーイは右腕の鉤爪を盾のように使い、防御した。鉤爪に穴は開く威力ではあるが、その弾は身体にまでは届かない。
コブラ「!…ちっ…!」
ボーイ「一度食らった手をもう一度食らいはしない。…さぁ、次はどうするつもりだ?」
ほむら「…行くわ」
コブラ「…!」
カチリ。
微かに、時計の秒針のような音が聞こえたような気がした。その瞬間、暁美ほむらはクリスタルボーイの目の前にいつの間にか移動し、拳銃を構えていた。
コブラが次に気付いた瞬間…
クリスタルボーイの周囲は、鉛弾で包囲されていた。
コブラ・マミ「!」
ボーイ「何…!」
数十発、いや、数百発の弾丸が、クリスタルボーイの身体に次々と命中をしていく。その衝撃にクリスタルボーイは思わず仰け反る…が。
倒れはせず、一歩後ろに下がっただけで留まった。全ての弾丸はクリスタルボーイの身体に軽く埋まった程度で、穴すら開いていない。
ほむら「…!」
ボーイ「驚いたな…何だ、今の攻撃は。貴様の拳銃では不可能な連射だ…どうやった?」
ほむら「く…っ!(この銃じゃあ…威力が、足りない…!?)」
ボーイ「ククク…まぁいい。そんな安物の骨董品では俺の特殊偏光クリスタルには傷すら …つかんのだァッ!!」
ボーイは右の鉤爪を開き、ほむらに向けてビームガンを放つ。
ほむら「ッ!!」
ボーイ「!」
カチリ。また秒針の音が聞こえる。瞬間移動でもするかの如く、ほむらはその攻撃を素早い動きで避け、後ろへと下がっていく。
その瞬間…マミは次々と武器である単発式銃火器をスカートから取り出し、宙に浮かせる。
マミ「次は、私よッ!お人形さん!」
一発、それを撃つごとに銃を捨て、次の銃に切り替える。しかしその銃弾をクリスタルボーイは鉤爪で弾き、貨物室の天井へと跳弾させる。
ボーイ「そんな物が俺に効くとでも…思っているのか!!」
マミ「思っていないわ。…だから…こうするのよ!」
跳弾をして、開いた天井の穴が俄かに光り始めたかと思うと…その光から、絹のような魔法のリボンが勢いよく出現し、クリスタルボーイの身体に巻きついていく。
ボーイ「…!これは…!」
マミ「これが私の戦い方よ!…一気に決めるわ!」
マミは魔力を集中させ、巨大な、大砲のような銃器を目の前に出現させる。そしてその銃口をクリスタルボーイの方へ向けた。
マミ「喰らいなさい! ティロ・フィナー…!!」
ボーイ「…ふんっ!!」
マミ「…!!」
クリスタルボーイは自分の身体に巻きついた魔法の糸を…自らの腕力で、引き千切る。そして鉤爪をロケットのようにマミに飛ばし、攻撃をした。
マミ「きゃあッ!!」
鋭利な刃物のような、その爪。マミはどうにか単発式銃火器の銃身でその攻撃を受け止める、が…その衝撃はすさまじく、マミの身体は天井へと叩きつけられてしまう。
マミ「あぐゥっ!!」
コブラ「!マミ!!」
ボーイ「…魔法。ソウルジェムの力とやらか。…少し驚いたが、サイボーグのこの俺には通用しないようだな」
コブラ「畜生…いい加減にしやがれ、この野郎!」
コブラは再び、サイコガンの連射をクリスタルボーイに浴びせる。…が、やはりその光はクリスタルボーイを素通りしていく。
ボーイ「…次は貴様だ!死ね、コブラッ!!」
クリスタルボーイはコブラに向けて突進をし、鉤爪を大きく振り、その身体を切り裂こうとする。
コブラ「く、ッ!」
コブラはその攻撃を次々と避ける、が…相手も並の瞬発力ではない。コブラが避ければ、次の手を繰り出し…いずれ、回避行動は追いつかれてしまう。
ガキィィィンッ!!
鈍い金属音。コブラのサイコガンが、クリスタルボーイの鉤爪に掴まれた。
ボーイ「ふふふ…。…っ、はぁッ!!」
クリスタルボーイはコブラの左腕を掴んだまま、勢いよくコブラを投げ飛ばす。
コブラ「どわぁぁぁぁぁあっ!?」
身体が大きく宙を舞う。物凄いスピードで、コブラは鉄箱の山に叩きつけられた。派手な金属音が幾重にも音を立て、コブラの身体は鉄箱の山へと沈む。
ほむら「…!コブラ!」
ボーイ「…その程度では死なないのだろう?コブラ。今トドメを…刺してやる!」
ほむら「させない!」
カチリ。
クリスタルボーイの眼前に、突如として、安全ピンの抜かれた手榴弾が数個現れた。
ボーイ「何…!!」
ドォォ――――ン!!!
派手な音を立てて手榴弾が連鎖して爆発する。流石にその衝撃にクリスタルボーイの身体も吹き飛ぶ…が。クリスタルの身体には全く傷はついていなかった。
ゆっくりと立ち上がり、鉤爪をほむらの方向へ向ける。
ボーイ「相変わらず攻撃の読めないヤツだが…。言った筈だぞ…そんな骨董品で俺の身体に傷はつかん、と」
ほむら(…時間稼ぎにはなったようね…。やはり、手榴弾程度じゃアイツの身体はびくともしない…!)
ほむら(…とにかく、今はコブラを助けないと!)
マミ「はあああっ!!」
次の瞬間、マミがクリスタルボーイに向けて特攻をかける。銃器を鈍器代わりにし、その頭部を次々と殴る。
マミ「私のッ、後輩を…返しなさいッッ!!」
多少ダメージがあるのか、クリスタルボーイは反撃せず、しばしその攻撃を受ける。
ほむら(…今のうち…!)
カチリ。
ほむらはコブラの近くに瞬間移動をし、倒れているコブラの身体を起こそうとする。
ほむら「…!」
しかし、助けに行った筈のコブラは既に起き上がり、シガーケースから葉巻を取り出してジッポライターで火をつけていた。
ほむら(そんな…生身の人間なのよ!?魔法でガードしているわけでもないのに…あんな勢いで叩きつけられても…平然としているなんて)
コブラ「よぉ、ほむら。葉巻の煙は大丈夫かい?」
ほむら「そんな事言ってる場合じゃ…!」
コブラ「アンタに一本プレゼントだ」
コブラはシガーケースから葉巻を一本取り出し、ほむらに手渡す。
ほむら「!! 今はこんな… … …。 !…これ、葉巻じゃ…ない?」
コブラ「超小型の時限爆弾さ。先端のスイッチを押せば、5秒で爆発する。局部的ではあるが、おたくが今投げた手榴弾の数倍の威力はあるぜ」
コブラ「しかし、ヤツの懐に入ってそいつを爆発させる隙がない。…だが、君なら出来るんだろう?ほむら」
コブラ「時間を止めて動ける、君ならな」
ほむら「!!!!」
【ブラックホール生成完了まで、あと、5分です】
ほむら「…気づいていたの?私の能力に」
コブラ「それ以外に説明がつかないからさ。俺の目に見えない動きなんて、そう易々と出来るもんじゃない」
コブラ「魔法少女にはそれぞれ能力がある。マミは拘束系の魔法だし、さやかは回復が得意なようだな。…瞬間移動をするだけの能力かと思ったが、それじゃあさっきの銃弾や手榴弾の説明がつかない」
コブラ「時間を止める…いや、時間を『操れる』と言った方が適切かな?それがあんたの能力だ、ほむら」
ほむら「…!」
マミ「やああっ!っ、はぁッ!!」
クリスタルボーイをひたすら銃身で殴り続けるマミ。押しているようにも見えるが…クリスタルボーイは、反撃をしようとしていなかった。
ボーイ「…成程。その辺りの賞金首やギンガパトロール隊員よりは余程有能と見える。こうして受けるダメージも、通常の人間と比べて段違いに強い。魔法による身体能力の向上か」
ボーイ「だが、それが限界のようだな…!!」
マミ「ッ!!」
クリスタルボーイはマミの銃を一瞬で掴み、身動きを取れなくする。瞬間、空いている鉤爪をマミの腹へと突き出し…。
ドォンッ!!
ほむら「!!」
ボーイ「ぐ、…ッ!」
見ればコブラはいつの間にかパイソンを抜き、クリスタルボーイに向け発射していた。間一髪のところ、クリスタルボーイは後ろに仰け反り、マミはその間に後ろへと下がる。
コブラ「ほむら。お前さんにしか頼めない事だ。…そいつをヤツの腹に埋め込んできてくれ」
ほむら「…」
ほむら「もし、嫌だと言ったら?」
コブラ「… … …」
ほむら「正直に言うわ。私が此処へ来たのは、まどかの悲しむ顔が見たくなかったから。美樹さやかを失えば、きっとまどかの心に大きな穴がきっと空いてしまう」
ほむら「でも、私だって命は大事よ。私がこの葉巻型の爆弾を、アイツの身体に埋め込んできて、どうするの?アイツの身体がそれより頑丈だったら?」
ほむら「私はまだ…生きて達成する使命がある。こんなところで死ぬわけにはいかない。私には、助けるべき人がいる」
ほむら「ここで私が逃げ出したら、どうするの?コブラ」
コブラ「…いいや、アンタはやってくれる。俺はそう信じている」
ほむら「信じる?私を?…何故?」
コブラ「アンタには、助けるべき人がいる。それと同時に…アンタには助けが必要だからだ」
ほむら「…!」
コブラは葉巻から紫煙をゆっくり吐き出し、不敵に笑いながらゆっくりと立ち上がる。サイコガンをクリスタルボーイに向けて構えると、その横で茫然としているほむらに向けて、視線は合わせず語りかけるのだった。
コブラ「ほむら、アンタは何かを抱えている。俺にはそれが何かは分からない。だが君はずっとそれに立ち向かっている。…俺が君と出会った時からだ」
コブラ「そしてその『何か』に怯え…助けを求めている。だから俺は、全力でアンタのそれを手伝うつもりさ」
ほむら「…何故、それを…!!」
コブラ「君は隠しているつもりでも、俺には分かるのさ。…女に嘘は何度もつかれてきたが、女の瞳に嘘をつかれた事は…ほとんどないからな」
ほむら「… … …」
コブラ「さやかを助け、全員でその『何か』に立ち向かう。君はその『何か』を知っているようだが…今はまだ何も話さなくてもいい。少なくとも、あのガラス人形を倒すまではな」
コブラ「だが…俺は守ってみせる!君を…君達をっ!!何があっても、守り抜いてみせる!!」
ほむら「…!!!!」
ボーイ「…少し油断をしたな。…次はないぞ、コブラ…!」
頭に弾丸の穴を開けながらも、クリスタルボーイは立ち上がり、こちらを睨む。
ボーイ「死ねぇぇ、コブラァァァーーーッ!!」
鉤爪を振りかざしながら、全力でコブラに向けて疾走してくるクリスタルボーイ。サイコガンの連射も構わず、コブラに向かう。
ほむら「…分かったわ。…あなたを信じるという事は『この時間軸では』…愚かなのかもしれない。…それでも…皆を、まどかを助けれられる可能性があるのなら…私は貴方に賭けてみたい」
ほむら「…不思議ね、少しだけ…そんな衝動に駆られたわ」
コブラ「…感謝するぜ、ほむら」
ほむら「貴方が礼を言う必要はないわ…コブラ」
ボーイ「ハァッハッハッハァーーーッ!!」
完全にコブラを捉えたと確信したクリスタルボーイは、笑いながら突進をしてくる。
カチリ。
だが、次の瞬間。クリスタルボーイの足が止まった。
ボーイ「…何…?」
特殊偏光クリスタルに埋め込まれた葉巻のタイマーは『00:00』と記されていた。
ドゴォォォォォ―――――――――!!!!
大きな爆発がクリスタルボーイの身体を包むように起こった。
ボーイ「うぐぉぉぉぉぉッ!!??」
僅かに、クリスタルの破片が辺りに散らばった。
気付けば、ほむらは、コブラの真後ろにいた。コブラはそれを見ると、にぃ、と笑顔を見せて再びクリスタルボーイに向き直る。
コブラ「美人に見とれて時間を忘れたか!クリスタルボーイッ!!」
サイコガンの連射。クリスタルボーイの特殊偏光クリスタルは先程の爆発で胸部に風穴があき、防御ができない状態となっていた。
正確にその穴を通るサイコガンの弾道は内蔵のような金属を次々と破壊していく。
ボーイ「!!!!」
コブラ「マミッ!!今だ、アレをもう一度やってやれッ!!」
マミ「…!分かったわ…。…今度は、外さない!!」
クリスタルボーイが怯んでいる間に、マミはもう一度魔力を集中する。 再び巨大な砲身が現れ、銃口をもう一度、クリスタルボーイの方向へ構えた。
マミ「『ティロ・フィナーレ』ッッッ!!!」
爆音のような銃撃音が貨物室に響く。マミの頭身ほどもある巨大な弾丸は、ゆっくりと正確にクリスタルボーイの方へ突き進んでいき、そして…。
ボーイ「ぐわああああああああああああああッッッ!!!」
ドオォォォォォォォォォォンッッ!!!
まるで星空の煌めきのように、粉々になったクリスタルが辺りに散らばった。
クリスタルボーイの身体は木端微塵となり、残骸の破片が転がっているのみとなっている。
マミ「…やった…!あはは…た、倒した…!」
ほむら「…」
コブラ「2人とも、いい仕事だったぜ。100点満点だ」
三人が笑顔を浮かべた瞬間、船のアナウンスが無常にも時を告げる。
【ブラックホール、生成完了まであと1分30秒。船員は安全な場所で待機をしてください。繰り返します…】
マミ「…!!」
ほむら「…くッ…!時間が…!」
その時、貨物室の風穴から声が聞こえた。見れば、エアーバイクに乗ったレディが宇宙船と並走している。レディはそこからロープを垂らした。
レディ「皆、急いでロープに掴まって!タートル号は離れた場所で避難しているわ、早くしないとブラックホールに巻き込まれる!!」
マミ「で、でもまだ…美樹さんのソウルジェムが!!」
ほむら「…私が行くわ。もう一度、時間を…」
コブラ「いいや、俺が行く。ほむら、入ったことのない未来の宇宙船の中から一つの宝石を探し出せるかい?」
ほむら「…で、でも…」
コブラ「こういうのは俺の専門さ。…マミ、ほむら!先に脱出しろ!俺は後から行くぜ!」
そう言ってコブラは、貨物室の先のコクピットへと走っていく。
マミ「!!コブラさんっ!!」
コブラ「ちっ…あの野郎、厄介な仕事残してくれたぜ…。宝探しゲームのつもりか?」
船体が大きく揺れはじめる。それは、ブラックホールがもうすぐ出来上がる事を示していた。
コブラ「さぁーてと…どこに隠れてるのかな?ソウルジェムちゃんは…!」
宇宙船、コクピット。閑散とした場所ではあるが、コクピットはかなり広い。一見しただけでは青い宝石は見当たらないようだ。
【ブラックホール、生成完了まであと1分です。船内の乗組員は衝撃に備え…】
コブラ「ちぃーっ!分かってますってんだ…!…どこだー?どこだ、ソウルジェムは!」
操縦席、椅子の下、機器類、あらゆる場所を探すが、見当たらない。そうしている間にも刻々と時間は過ぎていき…。
コブラ「ちくしょー!あのガラス人形め、最後に罠しかけやがって…!どこだよ、どこにあるんだっ!?」
コクピットのモニター。船体の眼前には、既に超小型のブラックホールが誕生しかけている。船はいっそう揺れ始め、今にもそれに吸い込まれそうだ。
【ブラックホール、生成完了まであと10秒です。9、8、7…】
コブラ「くそーっ!!間に合わね… …ん?」
操縦桿にやけくそで腕を叩きつけた瞬間… 壊れた機械の中に煌めく、一つの青い光。操縦桿はダミーで、実は空の鉄箱だったのだ。
【4、3…】
コブラ「こいつかァ――ッ!!」
急いでコブラはそれを取り出し、貨物室へと走る。が…。
【2、1…0。異次元へのワープを開始します】
コブラ「うおおおお―――――ッ!!」
無常にも、船体はゆっくりとブラックホールに吸い込まれていく。
轟音を立ててブラックホールに吸い込まれていく、クリスタルボーイの宇宙船。
エアーバイクに乗り込んだレディ、ほむら、マミの3人はただそれを見送る事しかできなかった。
マミ「あ、あ…!」
ほむら「…!」
レディ「…」
マミ「そんな…っ!間に合わなかったの…!元の世界に、戻ってしまったのというの…!?レディさんだって、この世界にまだいるのに…!」
マミ「そんな…!!!」
ほむら「…」
ほむら(…私を、まどかを助けると…約束したのに…)
レディ「…ふふ、それはどうかしら」
マミ「え?」
レディ「私は彼と長い付き合いだけれど…彼が、やり始めた事を途中で放棄した事は、一度もないわ」
レディ「…たとえ、そこが見知らぬ世界の中だろうとね」
ガキィィンッ!!
その時、エアーバイクの機体に突き刺さる、ワイヤーの先の刃。
マミ・ほむら「!!」
そのワイヤーの先に…ウインクをしながら手を振る、1人の男の姿があった。
コブラ「おーい!レディ、早く降ろしてくれーっ。俺は高所恐怖症なんだよーっ」
力無いさやかの右手に、コブラはそっとソウルジェムを握らせた。
まどか、ほむら、マミ、杏子…コブラ、レディ…そして、キュウべぇ。全員で、時間が止まったかのようにさやかの様子を見る。
祈るような、視線の数々。
…そして。
さやか「…あれ…?」
ゆっくり起き上がるさやか。何が起きたのか分からない、という表情で辺りを見回す。
さやか「…あれ、あたし…どうしたの…?」
まどか「さ…さやか、ちゃん…っ…」
マミ「…美樹さんっ…!!」
さやか「ま、まどか…?マミさんも…なんで、泣いてるの…?あれ?あれ?」
まどか「うわぁぁぁあああんっ!!」
マミ「…っっっ!!」
大声を出して泣きながらさやかに抱きつく、まどか。そしてその2人を包むように優しく肩に手を置く、マミ。
少しだけ、微笑んで…ほむらもその様子を黙って見ていた。
コブラ「仲間、か」
レディ「どうしたの?コブラ」
コブラ「…俺達が失ってきたものを…かの女達に失わせたくはない。…そう思ってね」
コブラは葉巻に火をつけると、満足気に笑みを浮かべ…月に向けて煙を吐いた。
―― 次回予告 ――
さやかのソウルジェムを取り戻したのはいいものの、その秘密は皆にバレちまった!どうやらキュウべぇの野郎、契約と同時にかの女達の魂をソウルジェムに移し替えちまったらしい。タチの悪い詐欺だぜ。
ショックを隠し切れない魔法少女達。不安になっちまうのも無理はないってもんだよ。特にさやかにゃ、色々ワケがあるみたいだね。
そんな矢先、新たな魔女が出現する。触手がうねうね、気持ち悪いの何の。こんな中戦えっていうのも無茶な話かもしれないが…しかし、俺が必ずあんた達を守ってみせるぜ!
次回、【魔女に立ち向かう方法】で、また会おう!
5話終了でございます!
というわけでクリボーさん退場、次回からはさやかちゃんルートです。
戦闘描写は本当に苦手でして…SSとして成り立っているかどうか不安でいっぱいですが、どうか生暖かい目で見てやってください(土下座)
それでは、また会おう!
どうも、1です!
投稿が遅くなって申し訳ありません!夏場は仕事が非常に忙しく…と少しだけ言い訳をば。本当にごめんなさい…。
夏を過ぎればまた投稿ペースも落ち着けると思いますが、もう少しだけ一週間以上かかる状態が続きそうです…。
6話、仕上がりましたので投稿していきます。
ご指摘のあった「時間を止めてソウルジェムを探す」という方法ですが確かにその手もありましたね(汗)
ただ、ほむらの思考としては時間停止に魔力の消費があるのでどこに隠されているかわからないソウルジェムを探すよりもクリボー撃退の後に探す、という考えで行動していた…と後付で考えていただければ幸いです。すいません!
それでは、よろしくお願いします1
さやか「…騙してたのね、あたし達を」
QB「不条理だね。ボクとしては単に、訊かれなかったから説明をしなかっただけさ。何の不都合もないだろう?」
マミ「…納得出来ないわ。…キュウべぇ、何故…教えてくれなかったの?ソウルジェムに…私達の魂が移されていた、だなんて…!」
QB「君からそんな事を言われるのは心外だね。魂がソウルジェムに移ったのは、マミ、君が魔法少女になったからだよ?失いかけていた命を救うことを望んだのは君自身じゃないか」
マミ「私の事はどうでもいいわ。…美樹さんの立場はどうなるの?彼女は、叶えたい願いを叶えただけ…それだけなのに」
QB「『それだけ?』」
QB「戦いの運命を受け入れてまで、叶えたい願いがあったのだろう?さやか、君は魂がソウルジェムに移ると知っていたのなら、願いは叶えなかったのかい?」
さやか「…!」
QB「戦って、たとえその命が尽きようとも、恭介の腕を治したかった。それならば肉体に魂が存在しない程度、どうという事はないだろう?」
マミ「キュウべぇ、貴方…!」
QB「恨まれるような事をした覚えはないよ。君たち人間は生命の消滅と同時に魂までも消えてしまうからね。ボクとしては、少しでも安全に戦えるように施しをしているつもりなのだけれど」
コブラ「… … …」
第6話「魔女に立ち向かう方法」
クリスタルボーイを倒した、翌日。
マミのアパート。マミ、さやか、コブラの三人はキュウべぇを問い詰めるべく、そこに集まっていた。魔法少女の存在とは、ソウルジェムとは何か。その願いの代償として失った物を、確かめるべく。
QB「マミ、さやか。君たちが今日まで無事に戦ってこれたのは、ソウルジェムのおかげなんだよ」
QB「肉体と魂が連結していないからこそ、痛覚を魔力で軽減して、気絶するような、ショック死をしてしまうような痛みをも君たち魔法少女は耐える事が出来る」
QB「本来、君たちが受けるべき痛みを今ここで再現してみせようか?」
マミ「…っ…!」
コブラ「やめときなよ。そんな事再現したって何の得にもなりゃしない」
QB「そうかな。マミもさやかも、現実をまだ受け入れていないからね。魔法少女として戦う事の意味を」
さやか「… … …」
コブラ「それじゃあ、その『意味』とやらを教えるのがアンタの目的かい?冗談よしてくれよ、お前はかの女達の教師でも何でもない。ただ契約を結ぶだけの存在の筈だ」
QB「イレギュラーの君にとやかく言われる必要も感じないね」
コブラ「おおっと、触れちゃいけない話題だったかな?それとも、アンタには契約を結んで魔女を倒す以外に何か目的でもあるのかい?」
QB「…」
QB「君は、何者なんだい?」
コブラ「言わなかったかな?俺は、コブラさ」
コブラ「マミ、俺はちょいと野暮用があるんで失礼するぜ。君のお茶はいつも最高の味だ」
マミ「…えぇ。…ありがとう、コブラさん」
コブラ「…さやか」
さやか「… … …」
コブラ「アンタが叶えた願い。…それに賭けたお前さんの思い。しっかり思い出すんだ」
コブラはそう言い残して、マミの部屋から出ていく。
さやか「…あたしの…願い…」
―― 学校。
和子「はーい、今日は…美樹さんは欠席、ね。それじゃあ、HRを始めましょう」
まどか「…」
まどか(さやかちゃん…大丈夫かな…。マミさんも学校来てないみたいだし…。…やっぱり、みんな…ショック、なのかな…)
まどか(わたしに出来る事って…何も、ないのかな?…ずっと見ているだけで、臆病で…っ…)
ほむら「… … …」
廃墟と化した教会。ステンドグラスから漏れる光を浴びながら、1人俯いて考え事をする杏子。
杏子「…」
杏子「なんなんだよ、一体」
杏子(意味が分からねェよ。アタシはただ…魔女を狩って、自分のためだけに…ただ、それだけのために戦ってきた筈なのに…)
杏子(ワケのわからねー男は出てくるし、魔女じゃない変な化け物は出てくるし…アタシは、もう死んで…ソウルジェムがアタシの魂になってるって…?)
杏子「…くそ…っ!こんな…こんな…!」
杏子は自らの赤色のソウルジェムを忌まわしげな瞳で見つめる。
それでも、その宝石をたたき割る事は出来ない。それが自らの命であると、知っているから。
杏子「…なんで…」
杏子(なんで、アタシは…こんなに悲しくて、悔しいんだよ…っ!…畜生…っ!)
杏子「くそ…アタシらしく、ないな…」
杏子は立ち上がり、廃墟からそっと出ていく。
――― その夜。
ピンポーン。
恭介父「はい、どなたでしょうか?」
恭介父「…ああ、貴方は確か…病院の方で、恭介の演奏を…」
恭介父「そんな、わざわざ有難うございます。…どうぞ、上がってください。恭介からも貴方のお話は聞いています。…その節ではお世話になったそうで」
恭介父「恭介は部屋にいますから、案内しますよ。…え?必要ない?そ、そうですか…?それでは…」
コンコン。
恭介「…?父さん?」
松葉杖をつきながらドアまで近づき、自分の部屋のドアをゆっくり開ける恭介。
恭介「…!あなたは、確か…」
コブラ「よー、元気かい?」
コブラは花束を恭介に手渡すと、にぃ、と笑った。
コブラ「快気祝いに来たぜー。おー、いい部屋住んでるじゃねーかー。どれ、お宅拝見っと」
恭介「そ、それは…どうも…」
恭介「酒臭ッ!!」
一方、同時刻。杏子に呼び出され、森林の中を歩くさやかと杏子。
一度は、対峙した相手。だが、心に思う事はお互いに同じなのであろう、虚ろな瞳で杏子の後をついていくさやか。
そして辿り着いたのは、廃墟と化した教会であった。
杏子「アンタは、後悔してるのかい?こんな身体にされた事」
さやか「…」
杏子「アタシは別にいいか、って思ってる。なんだかんだでこの力のおかげで好き勝手できてるんだしね」
さやか「…あんたのは自業自得でしょ」
杏子「そう、自業自得。全部自分のせい、全部自分の為。そう思えば、大抵の事は背負えるもんさ」
さやか「…それで、こんなところに呼び出して何の用?」
杏子「ちょいとばかり長い話になる。…食うかい?」
さやかにリンゴを投げる杏子。一度はそれを受け取るが…床に投げ捨てるさやか。
その瞬間、杏子はさやかの胸倉を掴む。
杏子「…食い物を粗末にするんじゃねぇ。…殺すぞ」
さやか「… … …」
杏子「…ここはね。…あたしの親父の教会だったんだ」
杏子は、静かに、しかし強い口調で語り始めた。誰に言うでもない、まるで独り言のように虚空を見ながら話す杏子の目は、とても悲しく、しかし強い瞳であった。
―― 佐倉杏子の、父親。幸せだった筈の家族。
あまりに正直で素直であったために、世間から淘汰された神父の話。しかし、それでも自分に正直であり…家族も、そんな父親を責めはしなかった。
貧しくても、その日の食糧を求める事すら苦しくとも、佐倉杏子の家族はしっかり家族として機能していたのだった。
杏子「…皆が、親父の話を真面目に聞いてくれますように、って。それがあたしの、魔法少女の願い」
その願いは叶えられ、杏子には魔法少女としての枷が与えられた。それでも、彼女は構わなかった。自分さえ頑張れば、家族は幸せになれるのだと…そう信じていたから。
―― しかし。
父親に、杏子の魔法はバレてしまった。偽りの信者、偽りの信仰心、全てが魔法の力であるものだと。
―― そして、杏子の魔法は、解けてしまったのだった。
杏子の父親、母親、幼い妹すらも巻き込んだ、無理心中。杏子の願いは、家族の全てを壊してしまったのだ。
杏子「アタシはその時誓ったんだ。もう二度と…他人のためにこの力は使わない、って」
杏子「…奇跡ってのは、希望ってのは…それを叶えれば、同じ分だけ絶望が撒き散らされちまうんだ」
杏子「そうやって、この世界はバランスを保って、成り立っている」
恭介「…あの時は、本当に有難うございました。…自暴自棄になっていた僕を、止めてくれて。…あの時、コブラさんが止めてくれていなかったら…」
コブラ「なぁ、恭介。奇跡ってヤツはどうやって起きるんだろうな?」
恭介「…え…」
窓辺に腰かけて、コブラは笑顔を浮かべながら呑気にそう語りかける。まるで独り言のように、虚空を見ながら。
恭介「…どうやって、って…それは…」
コブラ「アンタのその腕、医者からも治癒は絶望的なんて言われてたんだろ?今こうして動いて、しかもバイオリンが弾けるまで回復するなんて奇跡以外の何物でもない」
コブラ「そいつを不思議に思ってね。恭介、アンタ自身はどう考えてるのかちょいと世間話に来たんだ」
恭介「…僕自身も、本当に偶然とは思えないのは確かです。神様が僕の願いを叶えてくれた…なんて考えるのも、おこがましい話ですし」
コブラ「神様、ね」
コブラ「その神様って奴が身近にいたのかもしれないぜ?…アンタの場合」
恭介「…え?」
コブラ「病室にいて、ずっと落ち込んで、ふさぎ込んでいたアンタを、神様とやらがずっと見ていてくれたんじゃないかな」
恭介「… … …」
コブラ「その神様ってヤツぁ、お前さんが想像してるような白髪の老いぼれ爺なんかじゃないと思うね。もっとチンチクリンで、自分に馬鹿正直なクセに奥手で恥ずかしがり屋で、それでも頑張ってアンタのために祈りを叶えてくれた」
恭介「…さや、か…?」
コブラ「奇跡って奴は、叶えるのにそれだけの対価が必要だと俺は思ってるのさ。…ひょっとしたら、アンタの奇跡のためにこの世界で頑張ってるヤツが1人いるんじゃないのかな。ま、あくまで俺の考えだがね」
さやか「何でそんな話を私に?」
杏子「アタシもあんたも、同じ間違いをしているからさ。だから、これからは自分のためだけに生きていけばいい。…これ以上、後悔を重ねるような生き方をするべきじゃない」
さやか「… … …」
杏子「もうあんたは、願い事を叶えた代償は払い終えているんだ。これからは釣り銭取り戻す事だけ考えなよ」
さやか「…あたし、あんたの事色々誤解していたのかもしれない。…その事はごめん、謝るよ」
さやか「でも、一つ勘違いしている。…私は、人の為に祈ったことを後悔なんてしていない。高過ぎる物を支払ったとも思っていない」
さやか「その気持ちを嘘にしないために、後悔だけはしないって決めたの」
杏子「…なんで、アンタは…」
さやか「この力は、使い方次第で素晴らしいものに出来る。…そう信じているから」
さやか「それから、そのリンゴ。どうやって手に入れたの?お店で払ったお金は?」
杏子「…!」
さやか「言えないのなら、そのリンゴは貰えないよ」
さやか「あたしは自分のやり方で戦い続ける。…それが嫌ならまた殺しに来ればいい。もうあたしは負けないし…恨んだりもしない」
そう言い残し、静かに教会から去っていくさやか。
杏子「…ばっかヤロウ…」
恭介「…はは、まさか…」
コブラ「そう、まさかなんだよ。アンタの身体に起こった奇跡は、単なる偶然。誰に感謝するわけでもない、これからは自分のために、自分のバイオリンのためだけに生きて行けばいい。なんたってあんたは天才ヴァイオリニストなんだからな」
恭介「… … …」
恭介「それじゃあ…まるで、僕が最低の人間みたいじゃないですか」
コブラ「そう思うのかい?じゃあアンタの腕が治ったのは誰かのおかげなのか?それとも、本当に単なる偶然なのか?」
恭介「…貴方は、何を言いに来たんですか?」
コブラ「言っただろ?俺は世間話をしにきたんだよ。機嫌を損ねちまったかな?」
恭介「… … …」
コブラ「俺はバイオリンの音色に興味はないからなぁ。どうせ聞くんなら美女の甘い囁きを耳元で…なんてね」
コブラ「しかし、この世で一番、アンタのバイオリンの音色を聴きたがっている人間がいる。アンタの家族や親族より、ずっと強い気持ちでさ。…アンタはそれに応えてやらなきゃいけない」
コブラ「アンタに起こった『奇跡』を、アンタがどう考えるのかによるかだけどな」
恭介「… … …」
コブラ「それじゃ、俺は失礼するぜ。こう見えて忙しいんだ。デートの約束とかね」
恭介「… … …」
恭介「…待って、ください…!」
コブラ「…」
恭介「…もう少しだけ…もう少しだけ、貴方の話を聞かせてください。…考えたいんです」
コブラ「…ああ」
コブラ「それじゃあ、ちょいとした身の上話をさせてもらおうかな。今日の予定は全部キャンセルだ」
―― その翌日。親友の仁美に呼び出されたさやかは、ファーストフード店に来ていた。テーブル越し、まるで対峙をするかのような、仁美の強い視線。
そして、神妙な面持ちで語り始める。
仁美「ずっと前から…私、上条君の事をお慕いしておりましたの」
さやか「…!!」
さやか「…そ」
さやか「そうなんだぁ…!あははは、恭介のヤツ、隅に置けないなぁ」
仁美「さやかさんは、上条君とはずっと幼馴染でしたのよね」
さやか「あ、ま、まぁ…腐れ縁っていうか、なんていうか…」
仁美「…本当に、それだけですの?」
さやか「…!」
仁美「…もう私、自分に嘘はつかないって、決めたんですの。…さやかさん、貴方はどうなのですか?」
さやか「どう、って…」
仁美「本当の自分と、向き合えますか?」
仁美「―― 明日の放課後に、私、上条君に思いを告白致します」
仁美「―― それまでに、後悔なさらないように決めてください。上条君に、思いを伝えるかどうかを…」
―― その夜。自分の家を出て魔女退治に出かけようとするも、思考が回らず立ち止ったままのさやか。
さやか「…」
まどか「…さやかちゃん」
さやか「…!まどか…」
まどか「付いていって、いいかな…?…マミさんにもコブラさんにも言わないで魔女退治に行くなんて…危ないよ…?」
さやか「…あんた…なんで、そんなに優しいかな…っ…。あたしに、そんな価値なんて、ないのに…っ、ぐ…!」
まどか「そんな事…!」
さやか「あたし、今日、酷い事考えた…っ…!仁美なんていなければいいって…っ…!恭介が…恭介が、ぁ…仁美に、取られちゃうって、ぇ…えぐっ…!」
まどか「…」
そっと近づき、さやかの身体を優しく抱くまどか。
さやか「でも…あた、し…っ!なんにも出来ないっ…!ひぐっ…!だってもう死んでるんだもん…ゾンビなんだもん…っ!」
まどか「さやかちゃん…」
さやか「こんな身体で、抱きしめてなんて…っ、言えないよぉぉ…!!」
その時、さやかとまどかに近づく1人の影があった。
まどか「…! …あなたは、あの時の…」
レディ「…少し、いいかしら?美樹さやかさんと、鹿目まどかさん。…お届けものに来たわ」
近くにあったベンチに座った、さやかとまどか。さやかが泣き止み、落ち着くのを待ってからレディは静かに話し始める。
レディ「突然でごめんなさい。…まどかさんとは少しだけ顔を合わせたけど、さやかさんは…知らなかったわね、私の事。私はコブラから貴方達魔法少女の事は聞いているのだけれど」
さやか「… … …」
レディ「こんな恰好だから警戒するのは当たり前よね。…私はコブラの相棒、レディ…アーマロイド・レディというの」
さやか「…やっぱり変な名前」
レディ「ふふ、そうね。…こんな時に突然で驚くわよね。コブラがどうしても、私に、貴方達に届け物をして欲しいと言うから」
まどか「…届け物、って…?」
レディ「上条恭介君からの預かりものがあるわ」
さやか「…!!!」
レディはそう言って、小さな封筒を一つ、取り出して見せた。
レディ「受け取ってもらえるかしら?」
さやか「… … …」
まどか「さやかちゃん…」
しかし、さやかの表情は優れず、レディの持つ封筒に手を差し伸べる様子も無い。
レディ「…それから、コブラからもう一つ頼まれごとをしているの」
レディ「昔話を、さやかにしてやれ、ってね」
さやか「…え…?」
レディ「退屈な話なら聞かなくていいわ。この封筒だけ受け取ってくれてもいい。ここから逃げ出してもいい。…もし良かったら、そのままベンチに座っていてくれないかしら」
さやか「… … …」
さやかは動かず、俯いたままでいる。まどかはその身体をそっと支えたままだった。
レディ「…昔、あるところにとてもヤンチャなお姫様がいたの。祖国を怪物に滅ぼされ、復讐に燃えるあまりにその怪物を自ら倒しに行った…そんな無茶をした、バカなお姫様よ」
レディ「でもそのお姫様の力じゃあ、とてもその怪物には敵わなかった。…でもね、ある人が、私を助けてくれたの」
レディ「祖国を滅ぼされ、仲間も失い…全てを失った私を、その人は守ると言ってくれた。…何があっても守る、何があっても殺させやしない、って…」
まどか「…それって、レディさんと、コブラさん…?」
レディ「…ふふふ、どうかしら?」
レディ「その人は、全てを…命を賭けて、時間さえも飛び越えて…お姫様を助けてくれたわ。だから、お姫様も…その人に一生ついていくと決めたの」
さやか「… … …」
さやか「素敵な話だね。…でも、知らない人からそんな話を聞いても…あたしは…」
レディ「…そうだと思うわ。私だって不思議だもの。何故こんな話をコブラが私にさせているのか」
レディ「でも…なんとなく…私はね、そのお姫様とさやかさんが似ていると思うの」
さやか「…あたしと…?」
レディ「お姫様とその人との幸せな時間はあったわ。…でも、そう長くは続かなかった。 お姫様はある日、瀕死の重傷を受けてしまったの。…銃撃戦があって、ね」
レディ「お姫様には一つの選択肢があったの。そのまま死ぬか…もしくは、全く別の身体に魂を宿して、新しい人生を送るか」
さやか「…!」
―― 昨日。上条恭介の部屋、コブラと恭介の会話の続き。
コブラ「俺には1人の相棒がいてね。親愛なる最高のパートナーが」
コブラ「そいつは以前、瀕死の重傷を負った。…医者に言われたよ。奇跡は起きない。このまま死ぬのを待つしかない、とね」
恭介「…」
コブラ「一つだけ、彼女が助かる道があった。…まぁ、嘘だと思うかもしれないが聞いてくれ。…全く別の身体に、その相棒の魂だけを移し、生まれ変わる…そんな事が出来たのさ」
恭介「…作り話、ですか?」
コブラ「そう思ってくれて構わないさ。作り話なら、俺もなかなかいい小説家になれそうだろ?」
コブラ「話の続きだ。…だが、俺は相棒がそんな身体になる事は望まなかった。俺はそいつを愛していたし、彼女だってそんな事は望まないと思っていた」
恭介「…」
コブラ「だがかの女は、新しい身体に自分の魂を注ぎ、生まれ変わった」
コブラ「以前のように愛されなくてもいい。ただかの女は、俺と一緒にいる事だけを望んだ。そのためなら、例えその身体が機械の身体になろうとも…ってね」
恭介「…素敵な話ですね」
コブラ「そう思うかい?そりゃ良かった。恭介、アンタと俺は気が合いそうだ」
恭介「気が合う?」
コブラ「そうさ。俺はその時、かの女と共にずっと旅を続けていくと心に誓ったからさ」
コブラ「何を犠牲にしてもいい。どんな事をしてもいい。かの女が俺を愛してくれるのなら、かの女がどんな身体になろうと俺は全てをかの女に捧げようとな」
恭介「… … …」
コブラ「そこに、愛するとかそういう概念はない。俺は相棒に出来る事を全てする。相棒も同じ事を俺にしてくれる。同じ目的を持ち、同じ『道』を進む…。いい関係だろ?」
コブラ「…恭介。アンタのバイオリンには、そういう『道』が築けるのさ。世界中、全ての人にその音色を聞かせてやれるように…なんて道がな」
恭介「…ええ。僕は…たくさんの人に、自分の音色を届けたいと思っています」
コブラ「へっへっへ」
コブラ「だったら、まず…その音色。聞かせてやるべき人がいるはずさ。…『相棒』がね」
恭介「…!」
レディ「お姫様は…新しい身体。おおよそ人間とは言えない、機械の身体に自分の魂を移したわ」
レディ「彼に愛して欲しいとは望まなかった。…ただ、かの女はずっと旅がしたかったの。その人と過ごす時間…その人の進む道を同じように進んでいくのが、何よりも素敵な時間だったから」
さやか「… … …」
レディ「そう思ったのは、彼を信頼していたから。どんな身体になろうとも、約束をずっと守ってくれると信じていたから。私を、ずっと守ってくれるという…ね」
レディ「…ねぇ、さやか。貴方にとっての恭介という人は、どんな人なの?」
さやか「…恭介…」
レディ「貴方は、自分が愛される資格がない…そんな風に考えている。…じゃあ恭介君は、そんな貴方をすぐに見捨ててしまうのかしら」
レディ「貴方が愛した彼は、そんな人?」
さやか「…!」
レディ「…誰かの傍にいたいと思うには、条件があるの。それは、何があってもその人を信じる事。どんな事があっても自分を見捨てない。必ず傍にいてくれる…。自分がそう信じる事が、何よりも大切」
レディ「コブラと、私。…さやかと、恭介。…ふふ、本当に似ていると私は思うわ」
レディ「だから、貴方にお届けものよ」
レディは封筒から一枚の紙を取り出し、さやかの掌の上に置いた。
まどか「…!それって…」
さやか「…!」
紙には、恭介の字が記してあった。リハビリ中でまだ震えた字体であったが、力強く握った黒のインクで、しっかりと書かれてある。
【明日の放課後、僕の家でもう一度コンサートを開かせてください。僕をずっと信じてくれていたさやかに、聞いて欲しい曲があります。 ―― 上条恭介】
さやか「!!!!」
レディ「…こんな素敵なコンサートチケット、世界中どこを探しても見たことないわ。…幸せね、さやかは」
さやかは声にならない泣き声をあげながら、大粒の涙を流した。
まどかも、その身体を支えながら、微笑み、泣いた。
マミ「…!これは…」
マミのソウルジェムが俄かに光って反応を示す。
コブラ「魔女か?」
マミ「そうみたい…近いわ!大変よ、美樹さん!近くで魔女が生まれ… …」
ガサッ。
ソウルジェムの反応に慌てたマミは、思わず近くの茂みから身体を出してしまう。
マミ「… あっ」
さやか「… えっ」まどか「… あっ」
さやか「マミさん!それに…コブラさんも…!」
コブラ「あ、ははは、よぅさやか、まどか。おや、レディもいるのか。奇遇だねー、いや、たまたま通りかかってさ、ホントホント」
マミ「そ、そうなの!偶然通りかかってたまたま2人を見つけちゃって!それで、ええと…べ、別に盗み聞きしてたわけじゃないのよ!本当に!」
さやか「…マミさん、嘘ついてるのバレバレですよ…」
マミ「…あ、あはは…そうね。えーと… …ごめんなさい」
さやか「… ぷっ。あ…アハハハハハッ!マミさん可愛いーっ!」
まどか「ティヒヒ」
コブラ「はっはっはっは!」
マミ「うううう…」
顔を赤くするマミ。照れる顔なんてあまり拝めないもので、さやかもまどかもコブラも、その顔に笑ってしまう。
さやか「…魔女が近いんですね。行きましょう、マミさん、コブラさん。私の戦い方…もう一度、見ていてください!」
ベンチから立ち上がったさやかは、ソウルジェムを手に握りしめ、力強く握りしめた。
まどか「…さやかちゃん、大丈夫なの…?」
さやか「…まどか。もう…心配いらないよ。あたしは一人なんかじゃない。それが…やっと分かったから」
さやか「恭介、マミさん、コブラさんにレディさん…まどか。それにアイツ…佐倉杏子だって。みんな…あたしの事心配してくれてる。だからあたしは、その期待に必ず応える」
さやか「魔法少女さやかちゃんは伊達じゃないってトコ、見せてあげなくちゃね!」
さやかはまどかの方を振り向き、最高の笑顔を見せる。その笑顔に、まどかも安心をしたようだった。
マミ「…それじゃあ、行きましょう!」
レディ「さやか」
さやか「…レディさん。…ありがとうございましたっ」
レディ「どういたしまして。…彼を信じるのよ。そうすれば、きっと彼もそれに応えてくれるのだから」
さやか「…はいっ!!」
さやか、マミ、コブラ、まどかは駆け出し、その場を去る。
ほむら「いいのかしら。先に獲物を見つけたのは貴方よ。佐倉杏子」
杏子「…アイツのやり方じゃ、グリーフシードの穢れが強いからな。獲物は魔女だ。今日は譲ってやるよ」
ほむら「意外ね。貴方が他人にグリーフシードを譲るなんて」
杏子「ふん。…たまにはこういう気まぐれも起きるのさ」
ほむら(…共闘。グリーフシードの奪い合いは時に魔法少女同士の抗争を生み、それが全員の身を滅ぼした時間軸も存在する)
ほむら(佐倉杏子と、美樹さやか…。相性の悪い2人だとは思っていたけれど、この世界では…)
杏子「今日は見学だ。新人の戦い方、見届けてやる」
ほむら「…そうね」
コブラ「こいつは…」
マミ「…鹿目さん、少し下がっていて。…なかなか手ごわそうだわ」
まどか「!は、はいっ!」
現れた『影の魔女』は今まで出会った魔女の中でも巨大な部類であった。本体こそ人間と同サイズの影であるものの、それを取り巻くような無数の木の枝はまるで主を守るように生えている。
刃物のように鋭利な枝の先は、今にも三人に襲い掛かりそうに蠢いていた。
さやか「い、意気込んだのはいいけど、…あの枝はちょっと厄介そうだなぁ…。マミさん、どうしましょう…?」
マミ「そうね… 全部切り取っちゃうってのはどうかしら?」
コブラ「了解。庭師になれそうだぜ」
マミは単発式銃火器を宙に浮かせ、コブラは左腕のサイコガンを抜き、影の魔女に向けて構える。
コブラ「俺達があの盆栽の手入れをしてやる。見栄えが良くなったら本体を倒してくれ、さやか」
さやか「は、はい…!」
まどか「さやかちゃん、気を付けて…!」
さやか「! …うんっ!任しといて!」
マミ「それじゃあ…行くわよっ!!」
踏み込み、影の魔女に近づくマミとコブラ。領域への侵入者に対し、魔女は触手のような枝を次々と振り下ろしていく。
マミ「!!」
マミとコブラは立ち止り、自らに近づいてくる木の枝を次々と撃ち落していく。
目にも止まらない連射、しかも正確な一撃一撃は、次々と触手を撃ち落していく、が…。
コブラ「…!少しまずいな」
マミ「…この枝…っ、再生している…!?」
撃ち落した木の枝は一度は動かなくなるものの、少しの時間ですぐに再生を始めてしまっていた。襲い掛かる木の枝を落とすのが精一杯のマミとコブラは苦戦を強いられた。
コブラ「参ったな、キリがないぜ!」
マミ「くっ…一体どうすれば…!」
さやか「… … …!」
さやか「マミさん、コブラさん!…あたし、行きます!」
コブラ「何…っ!?」
さやか「でやああああああああッ!!」
銀に光る剣を前方に構え、さやかは影の魔女本体に突撃を開始した。それと同時に、木の枝はさやかに反応をし、襲い掛かろうとする。
マミ「!!!美樹さんっ、危ないわ!!」
さやか(このまま捨て身でいけば…皆を守れる!…例え、あたしのソウルジェムが穢れても…!)
さやか(… … …)
さやか(違う!)
さやか(大切なのは… 大切なのは、一歩を踏み出しすぎない、勇気…!一緒に戦おうって、マミさんは言ってくれた!…だから…!)
さやか「コブラさん!マミさん!一度だけ…一瞬だけ、道を作ってください!!…お願いしますッ!!」
マミ「…道…?」
コブラ「…! そうか…よぉし、分かった!マミ、俺らの周りは任せたぜ!」
マミ「え、ええっ!?」
コブラは自分の周囲の触手への攻撃を止め、影の魔女本体に向けてサイコガンを構える。自らの精神力をサイコガンに貯め、狙いを定めた。
コブラ「いくぞォォォーーーーーッ!!!」
大砲のようなサイコガンの一撃。影の魔女本体に向かっていく光は、周りを囲む木の枝を次々と消滅させていく。…それと同時に。
さやか「はああああーーーーーッ!!!」
コブラの作った『道』。触手が再生をする前にさやかはその残骸を踏み越え、影の魔女本体に向けて駆けていく。
そして眼前に現れたのは守るものを失った、影の魔女本体だった。
さやか「くらええええッ!!」
魔女本体に突き刺される剣。魔法で高められた攻撃は、一撃で魔女を葬り、消滅させた。
さやか「…あたしね、分かったんだ。…あたしが、何をしたかったのか」
まどか「…」
月夜が差し込む、ビルの屋上。夜風にあたりながら、さやかとまどかは空を見上げながら会話をしていた。
さやか「あたしが望んでいたのは…恭介の演奏をもう一度聞きたかった…それだけだったんだ」
さやか「あのバイオリンを…もっとたくさんの人に聞いて欲しかった。それで…恭介に、笑って欲しかったんだ。自分の演奏で、人を笑顔に出来るように…恭介自身も」
まどか「…さやかちゃん…」
さやか「…ちょっと悔しいけどさ、仁美じゃ仕方ないよ。あはは、恭介には勿体無いくらい良い子だしさ。きっと幸せになれる」
さやか「それに…あたしには使命がある。…まどかを、マミさんを…見滝原に住む皆を守るっていう、魔法少女の使命がね!」
まどか「でも…さやかちゃんは、恭介くんの事を…」
さやか「明日のアイツの演奏聞いたら…言ってやるんだ。アンタの事お慕いしてる子がいるって。…このさやかちゃんが、恋のキューピッドになってやろうっての!」
さやか「…それがどんな結果になろうと、後悔なんてしない。恭介にも、仁美にも…嘘をついて、生きていて欲しくなんかない」
さやか「皆…あたしの大切な人なんだ。あたしは、その大切な人たちにずっと笑っていてほしい。…だから、あたしも頑張れるんだ」
まどか「… … …」
さやか「まどか。勿論…アンタにも、ね!」
まどか「… うんっ!」
翌日の放課後、恭介の部屋。
恭介「… さやか。有難う、来てくれて」
さやか「… ううん。あたしも…ありがとう」
恭介「それじゃあ…聞いてくれるかな。…僕の、バイオリン」
さやか「… うん!」
上条家から、静かに『アヴェ・マリア』が流れる。まだ完璧な演奏とは言い難い。しかしそれは、世界中のどんな演奏より人を感動させられるような弦の音色であった。
その演奏を、外から聞いている仁美。
仁美「… … …」
仁美(…いい曲。とても静かで、力強くて…)
仁美(…私、諦めません)
仁美(でも、今は… もう少しだけ… この演奏を聴いていたいって、そう感じますの)
仁美(この音色を奏でさせられるのは… さやかさん、今は、貴方しかいないのですから…)
夕日が美しく差し込む、見滝原市。
その日はまるで、街全体を、一つの旋律が包み込んでいるかのようであった。
ほむら(… … …)
ほむら「ワルプルギスの夜まで…一週間」
ほむら(まどか…必ず貴方を、守ってみせる。…この時間軸で、全てを終わらせてみせる)
ほむら「…いよいよ…夜を迎えるのね」
ほむら(…巴マミ。美樹さやか。佐倉杏子。…コブラ。…そして、私)
ほむら(…終止符を打つ、必ず…!)
―― 次回予告 ――
さやかが一人前の魔法少女になれてさあこれからだって矢先に、暁美ほむらがとんでもない事を言い始めた!
なんでもあと何日かしたら超巨大な「ワルプルギスの夜」とか言う恐ろしい魔女が見滝原に出てくるんだとさ。かの女はそいつを倒すために、何度も時間を繰り返してきたって話だ。
か弱い女の子にそんな重荷を背負わせちゃいけないよな。俺達はワルプルギスの夜を倒すための作戦を練る事にした。
しかしそんな時、俺にビッグニュースが飛び込んできちまう!なんとレディが、元の世界に戻る方法を見つけちまったんだと!
どうすりゃいいのよ俺ぇー。
次回【夜を超える為に】で、また会おう!
6話終了、さやかちゃん編終了でございます。
原作を詰め込みまして、あれやこれや忙しい展開になっておりますがご了承くださいませ(汗)
次回更新も少し遅れそうです…しばしお待ちください!
それでは、また会おう!
1です!お待ちいただいていた方、申し訳ございませんでした…!
ようやく第七話の調整がつきましたので投下していきます。
いつもレス、有難うございます!すべて拝見させていただいております…!
皆様の期待に応えられるよう、ラストに向けて頑張っていきたいと思います。
それでは、よろしくどーぞ!
コブラ「…それで、俺に何の用なんだい?」
夕日の差し込むビルの屋上。目を閉じ、微笑みながら葉巻をくわえたコブラと、それをじっと見つめる少女…暁美ほむら。
コブラ「お前さんから呼び出しなんて随分珍しいじゃないか。しかも、俺だけ。 好意は嬉しいがね、あと数年経ってから考えさせてもらうよ」
ほむら「… … …」
ほむら「『ワルプルギスの夜』が来るわ」
コブラ「… 何だって?」
ほむら「今までの魔女とは比べものにならない、超大型の魔女…。放っておけば、数時間…いいえ、数分でこの見滝原を滅ぼしてしまい…最悪の場合、更に広がるわ」
ほむら「規模は未知数。被害は地球全体に及ぶなんて話になっても、おかしくはない」
コブラ「…そんなものが来るって、どうして分かる?」
ほむら「…私には、もう一つ能力があるの」
ほむら「いいえ、正確には、私の能力は応用に過ぎない。…私の本当の力は、『時を操る事』。そして、それは…過去さえも操れる」
コブラ「…! ほむら、ひょっとしてお前さんは…まさか…」
ほむら「…ええ、何度も…数えるのも諦めるくらい、見てきているわ」
ほむら「この世界が滅びていく、その様を」
風が、一段と強く2人を吹き抜けていった、そんな気がした。
第7話「夜を超える為に」
さやか「…やっぱりここにいたんだ」
杏子「! …アンタ、どうして…」
以前会話をした、廃教会。そこへ足を運んださやかは、予想通り杏子と出会う事が出来た。
さやか「コレ、あんたに渡そうと思ってさ」
さやかは手に持っていた紙袋からリンゴを一つ取り出し、杏子に向けて投げた。それを受け取った杏子は、きょとんとした顔でさやかを見ている。
さやか「…この前は、ごめん。あたしの事、アンタなりに心配してくれたのに…嫌な事言っちゃって」
杏子「… … …」
さやか「だから、謝りに来た。…それで…改めて言うのもおかしい話だけど…これからも、その…あたしと仲よくしてほしいなぁ…なんて」
さやかは杏子の顔色を横目で伺いながら、恥ずかしそうに頬を?いた。
杏子「…アンタさぁ」
杏子「よくそんな台詞言えるよな。…聞いてるこっちが恥ずかしくなるよ」
さやか「べっ、別になんだっていいでしょ!!…あたしだって、コレでも頑張って謝りにきてるんだから…!」
さやか「…あんたと…その… 仲悪いまま、終わりたくないし…」
杏子「…かぁー。ホントに、呆れるくらい馬鹿正直なんだねアンタって」
さやか「そ、それはあんただって一緒でしょっ!?…ほら。こっちだって恥ずかしいんだからさ…」
そう言って、さやかはゆっくりと右手を杏子に向けて差し出した。
杏子「…分かったよ」
杏子はぷいとそっぽを向きながらも、さやかの差し出された右手に、自らの右手を重ねた。
コブラ「…時間を何度も繰り返し、そのワルプルギスの夜とやらと何度も戦って…それでも負け続けて、今に至る、ねぇ」
ほむら「信じてもらえるとは思っていないわ」
コブラ「信じるさ。俺も昔、同じような事をした」
ほむら「…?」
コブラ「それで、何で俺を呼び出したんだ?仮にそいつが現れるとしてそのバカデカい魔女を口説き落としてくれ、なんて話じゃないだろ?」
ほむら「…」
ほむら「貴方は、幾度となく私達を救っている」
ほむら「魔女の撃退、巴マミの救出、美樹さやかのソウルジェム奪還…貴方のしている行動の全ては、魔法少女達にとってプラスへと働いているわ」
ほむら「答えて。…何が目的なの?」
コブラ「そうだなぁ。目の前でか弱い女の子達が困っていたから、かな」
ほむら「分からないわ。単なる人助けでこんな事をしているとでも言うの」
コブラ「…信じられないかい?」
ほむら「ええ、私には理解し難い事だわ」
コブラ「勿論、俺は元の、俺のいるべき世界に戻ろうとしている。そのためにアンタら魔法少女にくっついて行動しているのも目的の一つさ」
コブラ「ただね、趣味なのさ」
ほむら「…趣味?」
コブラ「困っている女の子の顔を、安心させてやるのがさ」
ほむら「…つくづく分からないわ、貴方の事が」
コブラ「よく言われるよ」
ほむら「…」
ほむら「過去…どの時間軸でも、私は失敗を積み重ねている。時にはワルプルギスの夜に負け、時には…魔法少女同士で殺し合う、そんな世界も存在したわ」
コブラ「物騒だねぇ。何があったんだ」
ほむら「魔法少女の正体に気付いてしまったからよ」
コブラ「…ソウルジェムの穢れ、か」
ほむら「気付いていたのね」
コブラ「アンタに黙っていて申し訳なかったな。相棒にちょいとグリーフシードの成分を分析してもらってね。…それで、分かったのさ」
コブラ「…ソウルジェムの『穢れ』。アレが、魔女の正体だ。つまり魔法少女と魔女は、表裏一体の存在って事…違うかい?」
ほむら「…ええ、そうよ」
ほむら「そして、その正体に気付いた魔法少女達は自分たちこそ災厄の元凶だと気づき、互いを殺し合った」
ほむら「…ある意味、正しい行動だったのかもしれないわ。キュウべぇに利用されたままの自分達を、消せたのだから」
ほむら「…そうでしょ?…インキュベーター」
ほむらがそう言った瞬間、物陰からひょっこり現れるキュウべぇ。
コブラ「黒幕さんのお出ましか」
QB「…」
QB「驚いたね。遠い未来世界から来たイレギュラー…『コブラ』、そして時間を繰り返し戦ってきた魔法少女…『暁美ほむら』」
QB「僕の知り得ない人間が2人も関わっていたのは、本当に驚きだ。奇跡以外の何物でもないのかもしれないね」
コブラ「インキュベーター…ね。俺の疑問がようやく解けたぜ」
コブラ「アンタは少なくとも地球生物で無い事は分かっていた。しかしこの世界には、星間交流の概念がない。何故宇宙生物が魔法少女と呼ばれる存在の周りをウロチョロしているのかがようやく分かったぜ」
QB「本当に驚きだよ。君はこの星…いいや、宇宙がどんな運命を辿っていくのかを知っているわけだ、コブラ」
コブラ「興味があるかい」
QB「そうだね。僕達の目的は『宇宙の寿命』を伸ばす事にあるわけだから。僕達の行動がどんな素晴らしい結果を生んでいるのかを知りたいのが本音さ」
コブラ「宇宙の寿命…?」
ほむら「…この地球外生命体の目的は、一つ。魔法少女を魔女化する時に発生するエネルギーを、回収する事」
コブラ「はっ、そんな事をしてどうなるって言うんだ?売り払って通信販売でも始めるのか」
QB「宇宙には、エネルギーが存在するんだよ。そしてそのエネルギーは、どんどん減少を続けていくのを知っているかい」
コブラ「さあね。朝食を食べてないからじゃないかな」
QB「宇宙全体は、僕達インキュベーターによって支えられているんだよ。僕達がエネルギーを回収し、供給を続けているからこそ宇宙は現状を保っていられているんだ」
QB「そしてそのエネルギーの、最も効率のいい回収方法は」
QB「魔法少女が、魔女に変わる瞬間。その瞬間のエネルギーの回収が最も効果的に、宇宙の寿命を延ばす事に繋がるのさ」
コブラ「どの世界にも、狂信者ってヤツはいるもんだな」
QB「信仰じゃない、事実だよ。コブラ、君達のいる未来でも僕達の存在は知られていないのかい」
コブラ「さあてなぁ。お宅らみたいな連中はごまんといるからね。特に熱心な宗教家ほど目立っちまうからな。埋もれちまったんじゃないかい」
QB「僕達は、地球が誕生する遥か以前から人間の有史に関係してきた」
QB「数えきれないほど多くの少女…とりわけ、第二次成長期にあたる少女達と契約を交わし、希望を叶えてきたのさ」
ほむら「…そして、それを絶望へと変えて、エネルギーを回収していく。祈りを呪いに変えて」
QB「酷い言い方だね」
ほむら「人を食い物にしてきた貴方に、否定をする権利なんてないわ」
QB「ワケがわからないよ。僕達が宇宙を永らえさせてきたからこそ、君達人類全体の歴史があるんだ。一部の人間の消滅が全体を救っている事に、何の問題があるんだい」
QB「むしろ感謝されて然るべき話さ。僕達がいなければ、ほむらだってこの世界にはいない。コブラのいた未来だって、存在しないんだよ」
QB「それに僕達は、侵略という形でエネルギーを回収したりなんていう野蛮な真似はしていない。少女達の願いを叶えて、その代償を払ってもらっているだけさ。『契約』という形でね」
QB「そこに、何の問題があるんだい」
コブラ「…確かに、それなら何の問題もないな」
ほむら「…!?」
コブラ「だが、それならはっきりと俺達は選択肢が与えられているはずだ。…おたくら異星人と契約して宇宙のために戦うか、否かのな」
QB「コブラ。君は宇宙が滅んでもいいと言うのかい」
コブラ「さてね。だが、宇宙が滅びようとするのだと言うのなら、そいつも宇宙の一つの選択ってヤツじゃないか。インキュベーターってやつぁ、契約を元に宇宙の寿命を延ばそうとしているんだろ?」
コブラ「それなら元来、かの女達が何をしようが自由の筈さ。魔法少女になって契約した少女が何をしようと勝手…その筈だ」
QB「…」
コブラ「かの女達は希望を抱き、絶望はしない。街を襲う魔女から人々を守り、立派にその使命を全うしていく…それで十分だ。宇宙の寿命を延ばすために人柱になれ、なんて契約はしていないはずだぜ」
ほむら「…ええ、確かにそうね」
QB「甘い考えだね。それで魔女は倒せても、ワルプルギスの夜が倒せるとでも思っているのかい」
コブラ「さあてなぁ。やってみなきゃ分からないさ」
QB「僕は少なくともその前例は見ていないからね。希望が絶望に変わらなかった魔法少女は、存在しない。だからこそ僕達インキュベーターはそのエネルギーを宇宙に安定的に供給してきたのだから」
ほむら「っ…」
コブラ「前例がなけりゃ、作ればいいだけだ。そう難しい事じゃない」
コブラ「俺が…いいや、俺達がやってみせる。ワルプルギスの夜を、超えてやるさ」
コブラはそう言いながらにぃと微笑み、ビルの屋上を後にするのだった。
QB「暁美ほむら、君はどう思うんだい」
QB「『鹿目まどか』という魔法少女の存在なくして夜を超えられた時間軸が、存在したのかい」
ほむら「… … …」
QB「無いだろうね。それだけまどかの魔力は絶大だ。どんな巨大な魔女であろうと、魔法少女化した彼女に敵う敵など存在しない」
QB「逆に言えば、まどかが魔法少女にならなければ、ワルプルギスの夜には勝てない。君がまどかを魔法少女にしたがらない事と、君が時間を幾度も繰り返しているのがその証明になっている」
QB「君はどうするんだい?ほむら」
ほむら「私は、まどかを守る力を欲し、魔法少女の契約を交わした」
ほむら「だから、彼女を魔法少女にせず、ワルプルギスを倒すまで…絶対に諦めるつもりはない」
QB「分からないね。そんな方法を今まで見つけてもいないから、君が今この時間に存在するのだろう?」
ほむら「貴方達インキュベーターの目的は分かっているわ。…まどかが魔法少女になれば、同時に最悪の魔女を生む事になる」
ほむら「今まで、魔女にならなかった魔法少女はいないと言ったわね」
ほむら「狙いは一つ。まどかの膨大な魔力。魔女化に発生する莫大なエントロピーの発生が目的で、あなたはまどかに付きまとっている」
QB「だからどうしたというんだい?」
ほむら「貴方の思い通りにはさせない。私は絶対に…まどかを魔法少女に、させない」
QB「ほむらは、それでワルプルギスの夜を倒せるとでも思っているのかい?」
ほむら「…さっき、コブラにも言われた筈よ」
ほむら「前例がなければ、作ればいいだけの事」
ほむら「この時間軸で私は、それを作ってみせる」
キュウべぇに背を向け、階段を降りながらほむらは考えていた。
ほむら(…他人をアテにしない。それが何度も時間を重ねた結果の教訓だというのに)
ほむら(この時間でも、私は他人を頼りにしようとしている。…巴マミに、佐倉杏子に、美樹さやか…)
ほむら(…コブラ)
ほむら(まどかを、魔法少女にさせない。…でもそうしないと、ワルプルギスの夜は倒せない。…それが、絶対に崩せない公式だった)
ほむら(私に残された時間も、長くはないのかもしれないわ。…私の希望が、絶望に変わってしまうその前に、手を打たないと)
ほむら(…夜が来るまで、あと数日しかない)
ほむら(それなら、この時間軸で私の取るべき行動は一つしかない)
ほむら(賭ける事。それが私の…答え)
ほむら(持てる力を全て使って…ワルプルギスを、倒すという事)
その後、夜。
人目が無くなったのを見てコブラはレディと近くの小さな林の中で落ち合う。
茂みに隠れたタートル号から出てきたレディは、手に湯気の立つコーヒーカップを持っていた。
レディ「はい、コブラ。コーヒーよ」
コブラ「おー、ありがとよレディ。やっぱ相棒と過ごす時間っていうのが一番落ち着くねェ」
レディ「あら、そうかしら。巴マミの家も随分と気に入っているようだけれど?」
コブラ「あちゃー、ははは。それは言わないお約束」
レディの淹れたコーヒーを啜りながら、ぼんやりと月を眺めたままのコブラ。少し間を置いて、レディがゆっくりと語りかける。
レディ「…ねぇ、コブラ。ニュースがあるの。…良いものか悪いものかは分からないけれど」
コブラ「?」
レディ「…」
レディ「今なら、元の世界に戻れるわ」
コブラ「なんだって…!?どういう事だ?」
レディ「クリスタルボーイの宇宙船が、ブラックホールを生成し、元の世界に戻ったわよね。…あの重力場が、僅かに検知できたの」
コブラ「するってぇと…タートル号でそいつを追跡できるってのか?」
レディ「…ええ。以前、エンジニア達にタートル号に異次元潜航能力を取り付けてもらったわよね。今まではここが『どの世界』で『どの次元を辿って』元の世界に戻ればいいか分からなかったからそれが役に立たなかったのだけれど」
レディ「今なら座標が確定できる。クリスタルボーイの船の軌跡を辿っていけば、元の世界に戻れるわ」
コブラ「そいつは有難いな。あのガラス細工、いい土産を置いていってくれたじゃないの。あとでハグしてやらないとな」
コブラ「…だが、そう簡単な話じゃないんだろう?その調子じゃ」
レディ「…ええ、その通りよ」
レディ「ブラックホールの重力場の検知量はどんどん小さくなっていくわ。そのうち、完全に消滅する。そうなるともう…元の世界に戻る経路が再び見つからなくなってしまう」
コブラ「そいつはどのくらいもちそうなんだ?」
レディ「… … …」
レディ「明日には、完全に消滅してしまうでしょうね」
コブラ「…神様ってやつは随分と意地が悪いんだな。嫌われちまうぜ」
…林の中。
コブラがビルから出てきたのを見つけ、その後をずっと付いてきた人影が一つ、あった。
まどか「… … …」
まどかは急いで林の中を抜け出そうと駆け出すのであった。
――― 後日。
さやか「…ここが、あの転校生の家?」
マミ「ええ、ここがそうみたいね」
杏子「呼び出しなんて随分な心変わりじゃねーか。なんだってんだよ」
ガチャ。
アパートの一室のドアが開き、その部屋から暁美ほむらが顔を出した。
ほむら「…入ってちょうだい」
それだけ言って、ほむらは部屋の中へと戻っていく。
杏子「…」
さやか「…ねぇ、マミさん。入っていいのかな。あいつの事…信用して」
マミ「…信じてみましょう。だって暁美さんが今まであんな顔で私達に『相談したい事があるから私の家で』なんて言ってくれたの、はじめてだもの」
マミ「逆に、信頼していいと思うわ。今まで心を開いてくれなかった暁美さんがようやく私達の方に歩み寄ってくれたのだから」
さやか「…それもそう、か。何事も前向きに考えなきゃいけませんね、うん」
杏子「ま、完全に信用しきったワケじゃねーけどな。…それじゃ、入るか」
杏子はアイス最中を一齧りすると、先陣をきって部屋の中へ入っていった。
杏子「これは…」
さやか「な、なんなの…コレ…!?」
暁美ほむらの部屋の中は、貼りだされた写真や資料で埋め尽くされていた。
マミ「…これが、貴方の言っていた…いいえ、隠していた事なのね、暁美さん」
ほむら「ええ、そうよ」
ほむら「これが、『ワルプルギスの夜』。単独の魔法少女では対処できないほど巨大な魔女」
ほむら「こいつが…あと数日で、この街に現れる」
マミ「…キュウべぇから、噂だけは聞いた事があるわ。数十年…数百年に一度現れる魔女。強大で凶悪、一度具現化すれば数千人を巻き込む大災害が起きる…と」
さやか「そ、そんな魔女が…見滝原に現れるっていうの?」
ほむら「ええ、そうよ」
杏子「…なるほどな。なかなか面白そうな話じゃねーか。ただ分からない事があるんだけどな」
杏子は貼りだされた写真の数々を興味深そうに眺めながらも、ほむらに質問をした。
杏子「なんでアンタは、そんな魔女が現れるって事が分かるんだい?」
ほむら「… … …」
ほむらは一呼吸置いて、意を決したように話した。
ほむら「私が、未来から来たからよ」
マミ「…未来…から…?」
杏子「…」
さやか「…は、はは…冗談よしてよ」
ほむら「…本当よ」
ほむら「私の魔法少女としての能力。それは『時間を操る事』。そして私は、このワルプルギスの夜を倒すために幾度も時間を繰り返してきた」
ほむら「何度も繰り返して…そして、敗れては、時間を巻き戻した。いいえ、『巻き戻している』。それが私の現状よ」
杏子「…仮にアンタの話を信じるとしてもだ。アタシ達が、『ワルプルギスの夜』に何回も負けて、死んでるって事かい?」
ほむら「…そうね。何度も負け…いいえ、下手をすれば、ワルプルギスの夜を迎える前に、貴方達が死んでしまったという例もある」
ほむら「希望が、絶望に変わってしまった時に」
マミ「どういう…事…?」
ほむら「…キュウべぇから言われていなかった事実は、2つあるわ。1つは、私達魔法少女の魂は契約をした段階でソウルジェムに移されてしまったという事」
ほむら「そして、もう1つ」
ほむら「魔法少女は…ソウルジェムの穢れを拭っていかないと、魔女として生まれ変わってしまう」
マミ・さやか・杏子「!!!」
杏子「馬鹿な、そんな話…!」
ほむら「ええ、聞いていないでしょうね。あいつらインキュベーターにとって、コレを貴方達が契約前に知る事は都合が悪いことだから」
さやか「それじゃあ、あたし達が今まで倒してきたのは… …」
ほむら「…元、魔法少女。…でも、仕方のない事なの。そうしなければ、私達もああなってしまうのだから」
さやか「そ、んな…!」
マミ・杏子「… … …」
沈黙。
崩れ、膝をつくさやか。歯を噛みしめる杏子。…しかしマミは、ぐっと拳を握りしめて涙を流すのを堪えるのだった。
マミ「…暁美さん、教えて。…何故、それを私達に教えてくれるの…?」
ほむら「それは…私が貴方達に隠しておきたくなかったから」
ほむら「…かつて、過去で『仲間』だった貴方達。…巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか…」
ほむら(…そして、鹿目まどか)
ほむら「貴方達ともう一度…仲間として戦いたかったから。…だから、嘘や隠し事はしないと、決心したのよ」
マミ「… … …」
ほむら「私の話を信じないのなら、それでいいわ。…元々私は一人で戦うつもり―――」
マミ「信じるわ」
ほむら「…!」
ほむらが諦めたように話し始めた時、マミはその声を遮るように強く言った。
マミ「…続けて。魔法少女の事、貴方の過去の事…そして、ワルプルギスの夜の事を」
コブラ「随分とデカい魔女だな!こいつは倒し甲斐があるぜ!」
エアーバイクに乗って空中を駆けるコブラ。幾重にも張り巡らせた洗濯ロープのような糸には、セーラー服が干してある。
そしてそのロープの先には、巨大な六本足の首の無い、異形の魔女がいた。
魔女は自身の周りを旋回するコブラに向けて次々と使い魔を放つ。スカートから出てくる使い魔もまた、下半身だけの異形。その脚には鋭利な刃物のようなスケート靴が履かれていた。
コブラ「へっ!あいにく俺は足だけの女に興味はないんだよッ!!」
右手はエアーバイクのハンドルをしっかり握り、左手のサイコガンを抜いてコブラは次々と使い魔を撃ち抜いていく。
だが、その数は膨大でこちらの攻撃をする余裕はあまりなかった。敵が巨大であるゆえ、チャージをしないサイコガンの射撃ではあまりダメージがないようであった。
コブラ「ちっ…!この…!」
コブラは一度体勢を立て直すため、『委員長の魔女』から離れる。
その様子を、黙って見つめるまどか。結界の中に入れたのは、他でもないキュウべぇであった。
QB「少し苦戦をしているみたいだね。まどか、どうするんだい?」
まどか「… … …」
QB「君が魔法少女になればすぐにでも彼を助ける事ができるよ」
まどか「…もう少しだけ、見てる」
まどか「見ていたいの。コブラさんが、魔女と戦っているところを」
QB「…」
観客がいる事には気づいていたが、あえて黙って闘っていたコブラ。
横目でまどかの方を見ると、にぃと笑って軽くウインクをした。
まどか「…!」
コブラはエアーバイクのアクセルを吹かし、突撃をする体勢をとる。
コブラ「行くぞぉ、生足の化け物!!」
コブラ「いやっほォォォーーーーッッ!!」
フルスロットルで飛び出したエアーバイクとコブラ。魔女は当然のように使い魔を次々とコブラに向けて発射していく。
だがコブラは正確にその攻撃を避け、魔女本体へと近づいていった。やがて委員長の魔女はコブラの目と鼻の先まで距離が縮まり…。
コブラ「くらえーーーッッッ!!」
ドォォォォォ―――――――ッッッ!!!
サイコガンの巨大な砲撃が魔女をつつむように焼き、消滅させる。その爆発にエアーバイクとコブラも飲み込まれてしまう。
まどか「!コブラさんっ…!」
しかし次の瞬間、爆風の中から脱出するエアーバイク。
まどかの元へ戻っていくコブラの右手の中には、しっかりとグリーフシードが握られていた。
――― 同時刻、再び、暁美ほむらの部屋。
ほむらは、全てを話し終えた。
魔法少女の希望が、絶望に変わったその時、魔女へと生まれ変わる事。それは、思ったよりずっと容易く起きてしまうという事。
そして、それが過去、凄惨な魔法少女同士の殺し合いすら生んでしまったという事。
さやか「…やっぱり、信じらんないな…。…あたしも、魔女になった事がある、だなんて…」
杏子「… … …」
さやか「ねぇ、転校生。…あんたは、魔女になったあたしを…殺したの?」
ほむら「…ええ」
さやか「あはは…だろうね。あたしだって…逆の立場だったら、そうするしかないもん」
ほむら「…結局、私達はワルプルギスの夜を迎える前に共倒れをしてしまう事が多かった…。それほど、希望が絶望に変わるのは容易い事だから」
ほむら「キュウべぇ…いいえ、インキュベーターは、だからこそ人間を食い物にしているの。脆く、儚い存在だからこそ」
ほむら「魔女が、見滝原を滅ぼそうが奴らには関係ない。目的は、私達が魔女化する時に発生するエントロピーの回収。…それだけなのよ」
杏子「…アンタの話してる事を全部信じるわけじゃねーけどよ。…そいつが本当だったらとんでもねー話だな。それじゃ、アタシ達はあいつに化け物にされたのと同じじゃねぇか」
杏子「忌々しくて…反吐が出そうだ」
杏子はチョコ菓子を噛み切ると、憎らしげに自身のソウルジェムを見つめ、握りしめる。
さやか「…それで、あんたはどうしたいの?…あたしたちに、こんな話をしてさ…」
座り込んださやかは、力無くほむらに語りかける。…その瞳は、既に絶望に淀んでいるようにも思えた。
さやか「あんたの話なんか信じたくもないけど…でも…嘘をついてるとも、思えないよ…。…どうしてだろ。…ねぇ、どうすればいいの?こんな化け物にさ」
ほむら(…やはり、無理だったの…?)
ほむら「…共に、戦って欲しい」
マミ・杏子・さやか「… … …」
ほむら「鹿目まどか…彼女が魔法少女になれば、ワルプルギスの夜を倒すのは容易い。でも…それは同時に、最悪の魔女を生む事にもなる。ワルプルギスの夜以上の」
ほむら(何よりも…まどかを失いたくないから)
ほむら「だから、まどかの力なくしてヤツを倒さなければいけないの。巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか…そして私。…あと…」
マミ「…コブラさん、ね」
ほむら「…ええ。その五人で、ワルプルギスを倒す」
ほむら「あと数日でヤツは見滝原に現れる。…だから、協力をしてほしいの。全員でヤツを倒す…その協力を」
しかし、他の三人は黙ったままであった。
杏子「…その、ワルプルギスの夜を倒したとして…その後は、どうなるんだ?」
ほむら「…」
杏子「きっといつかはアタシ達は、絶望しちまうんだろ?…そして、化け物になって、死んでいく…。それならいっそ、ここで…」
ほむら「…それも、選択肢の一つだと、思うわ」
ほむらは、三人に見えないように後ろ手で拳をぎゅっと握りしめるのだった。
ほむら(私が、馬鹿だった…)
ほむら(佐倉杏子が言っている事の方が理にかなっている。夜を超えられても、いつか私達は絶望を迎え、魔女化してしまう)
ほむら(…結局、いつ死んでも…変わりはないのだから。…愚かなのは、それでも『仲間』を求めている、私の方…)
しかし、その時、マミは顔を上げて強い口調で言った。
マミ「…いいえ、それは違うわ」
ほむら「…!」
マミ「確かに…佐倉さんの言っている通り、魔女になる前に自分でピリオドを打つ方が正しい判断かもしれない」
マミ「…でも、それでも…私達の行動に、変わりはない筈よ」
マミ「街の平和を脅かす魔女を倒す、魔法少女であり続ければ…絶望なんて、しない。それは今までずっと続けてきた事だわ…!」
さやか・杏子「…!」
マミ「…私のこの命は、消えていてもおかしくはなかったの。いつ死んでも後悔はしない。…そう決めていた。だからせめて…ギリギリまで粘ってみたいの」
マミ「私はもっと生きていたい。もっと…鹿目さんや、コブラさん…佐倉さんや美樹さんと楽しい時間を過ごしていたい。…もちろん、暁美さんとも、ね」
マミ「だから私は…ワルプルギスの夜を超えてみせるわ」
マミ「何があっても…ね」
そう言って、ほむらに向けてにっこり微笑む。
ほむら「…!…マミ、さん…」
マミ「…ふふ」
マミ「やっと名前で呼んでくれたわね」
さやか「…マミさん…」
マミ「美樹さん…貴方だって、その筈よ」
マミ「貴方は、上条君の演奏を、もっと聞きたい…そう願っていたのでしょう?あの演奏をもっとたくさんの人に届けてあげたい、って…」
さやか「…!!」
マミ「私達は、ここで倒れてはいけない。…私達の命を、繋いでくれた人がいる。だから…それを無駄にしてはいけないの」
マミ「美樹さん…レディさんに貰った、上条君のチケット…決して無駄にしてはいけないわ。…私は、そう思うの」
さやか「…恭介…」
さやかは唇を噛みしめ、瞳を閉じてしばし沈黙する。
そして、すっくと立ち上がった。
その瞳には絶望ではなく、希望の笑顔が浮かんでいる。
さやか「…あっはは!…なんか、バカみたいだね。今までやってきた事となんにも変わらないのに、こんなに悩んでさ…!」
杏子「…!お前…」
さやか「あたしは…見滝原を守る、正義の魔法少女、さやかちゃん!…すっかり忘れてたよ。それだけ守ってれば、何も悩む事なんてなかったのに」
マミ「…美樹さん…」
さやか「…転校生。いや、ほむら!…やったろうじゃん!一緒に、戦おう!」
さやかは笑顔、だが強い目でほむらを見つめ、すっと右手を差し出した。
ほむら「…ええ、お願いするわ」
ほむらは嬉しそうに瞳を閉じ、その右手に自分の右手を重ねた。
杏子「… … …」
マミ「…佐倉さん、貴方は…」
杏子「アタシは今まで、自分のためだけに生きてきた。だから、今更アンタ達に協力しようなんて気はさらさらないね」
さやか「ばっ…あんた、ここまできて何言って…!」
杏子「うっせーなー。…めんどくさいんだよ、仲間とか、協力とか…めんどくさいんだよ」
ほむら「… … …」
杏子「…だけど」
マミ・さやか「!」
杏子「ワルプルギスの夜を一人じゃ倒せないっつーのも事実みたいだな。だから…今回だけ、付き合ってやるよ。その…一緒に、ってやつに…さ」
さやか「…アンタ…」
さやか「どこまで素直じゃないのよ…こっちまで恥ずかしくなるでしょ」
杏子「うるせーっ!!おめーに言われたくねーよこの色ボケ!!」
さやか「!い、色ボケはないでしょっ!!このお菓子女!!」
杏子「んだとー!!」
マミ「…と、とりあえず…皆、協力してくれるみたいね…」
ほむら「…ええ」
マミ「あ…暁美さん。…今の笑った顔、とても素敵ね」
ほむら「…」
ほむらは少し照れながらも、微笑んでいた。
ほむら(…そう、そうなのね…)
ほむら(この時間軸では…巴マミは魔女に食い殺されていて…美樹さやかは魔女になっていた筈…)
ほむら(でも…それを。その絶望を、全て逆に希望に変えてくれた人がいた)
ほむら(…コブラ)
ほむら(魔女に喰い殺されそうだったマミを助けてくれて…さやかの上条恭介への絶望すら拭ってくれた)
ほむら(わけの分からないガラス人形からソウルジェムを奪い返してくれて…敵対していた佐倉杏子すら、こちらに歩み寄ってくれた)
ほむら(そして、こうして今、夜を迎えようとしている…)
ほむら(…まどか)
ほむら(この時間で…貴方を助けられるかもしれない。…ようやく、貴方と朝を迎えられるかもしれない)
ほむら(まどか、待っていて…!…私が必ず、貴方を助けてみせる…!)
――― 夜。結界の解けた工業地帯のような場所で、コブラとまどかは座り込んでいた。
まどか「…教えてください、コブラさん」
まどか「なんで…なんで、魔女を倒してくれるんですか。…なんで、元の世界に戻らないんですか」
コブラ「…知っていたのかい」
まどか「…ごめんなさい、あの…。…でも、言わずにはいられなくって…」
まどか「コブラさん、元の世界に戻れるのに…なんで、まだここにいるのか…分からなくって…!だって、だって…!皆をずっと助けてくれてるのに…っ…コブラさんは…っ!」
まどか「もうちょっとで元の世界に戻れなくなるって、レディさん言ってたのに…!魔女と戦ってるってキュウべぇに言われて、わたし、我慢できなくて…っ…!何もできない私が、悔しくて…っ!!」
泣きそうになるまどかの頭に、コブラは優しく手を乗せる。
コブラ「なぁ、まどか。例えば…」
コブラ「例えば、お前さんの目の前に、子猫が一匹いる」
コブラ「その猫が、車に轢かれそうになったら、まどかはどうする?」
まどか「…!」
コブラ「お前さんの性格じゃあ、放っておけないだろ?…俺だって同じさ」
コブラ「誰かを助けたり、救ったりするのに理由はいらない。赤の他人だろうが何だろうが関係ない。…自分自身の願いだけが、自分を動かせる」
コブラ「俺ぁな、女の子が泣いたり悲しんだりするのがこの宇宙で一番苦手なんだぜ」
コブラ「例えここが違う世界だろうがなんだろうが…そこに俺が助けたいと思う人がいるのなら、力になるのが俺の趣味なんだ」
コブラ「いい趣味だろ?」
まどか「…コブラさん…!」
コブラ「さ、行こうぜ。…今日はちょいと、お呼ばれをしているんでね」
まどか「…誰に、ですか?」
コブラ「決まってるだろ?」
コブラ「街を救う、魔法少女達さ」
・
タートル号のレーダーから、クリスタルボーイの宇宙船の航路の反応が完全に途絶えた。
しかし、それを見てもレディは何も言わず、ただ心の中で静かに微笑むだけだった。
―― 次回予告 ――
いよいよ明日がワルプルギスの夜の決戦!俺達としても結束を固めておかなきゃいけないな。しっかり頼むぜ、皆。
っと、その前に話をしなきゃいけないヤツがいたな。インキュベーターの野郎さ。あいつに説教しておかなきゃ、俺の腹の虫が治まらないぜ。
そして…まどかに、ほむら。いよいよ全てを話さなきゃいけないぜ。全ての謎を解き明かし、俺達は最強の魔女に立ち向かう事になる。
次回のCOBRA×魔法少女まどか☆マギカ。【五人の魔法少女(前篇)】。よろしくゥ!
七話終了です!
次回からワルプルギスの夜…というわけで次回予告を何故かOVAバージョンにしてみましたw
ラストまであと数話…お付き合いいただければ幸いと思います。
相変わらずペースは少し落ちそうですが、よろしくお願い致します…。
それでは、また会おう!
1です!ご無沙汰しておりました…!ようやく投下の準備ができましたのでやっていきます。
今後のためにトリップをつけてみました。よろしくお願いします。
不在の間、応援コメントにイラストにAAなど…本当に、本当にありがとうございます!!嬉しくて泣いてましたw
早く次を書きたかったのですが、仕事の関係で…という言い訳は今後しないよう、もう少しコンスタントに投下できたらなぁ…なんて思っています。
それでは、よろしくどーぞ!
QB「――― 彼らでは、荷が重すぎたんだよ」
まどか「そんな… あんまりだよ…っ!こんな… こんなの、って… ないよ…っ!」
QB「――― まどか、運命を変えたいかい?」
まどか「え…!」
QB「――― この世界の全てを覆す力。君には、それがあるんだよ」
ほむら「! 駄目!まどか!そいつの言う事に…ッ!!」
まどか「… … …本当に?」
QB「――― 勿論だよ。だから」
QB「ボクと契約して、魔法少女に ―――」
ほむら「駄目ぇぇえええええええッ!!!」
・
まどか「… … …」
まどか「また、あの夢だ…」
第8話 「5人の魔法少女(前篇)」
見滝原市には、大粒の雨が朝から降り注いでいた。
暁美ほむらが言うのにはそれはワルプルギスの誕生…スーパーセルの前兆だと言う。
コブラとレディは林の中に身を潜めたタートル号のコクピットから、その雲を眺めていた。
レディ「かの女が言うには…明日。この見滝原という街を覆うように、魔女が生まれるというのね」
コブラ「ああ。どうやら本当らしいな。こんな雷雲、見たこともないぜ」
レディ「…それで、どうするの?コブラ。その『ワルプルギスの夜』に勝算はあるの?」
コブラ「へへ、俺がこう見えて計算高いの知ってるだろ?レディ。基本的に勝てない勝負はしないんだぜ」
レディ「…基本的に、ね」
コブラ「…ああ」
コブラ「今回ばかりは分からんね。ほむらがワルプルギスの夜に勝てた歴史は存在しない。つまり、どうやって倒すのかも分からない。気合や根性でどうにかなるんなら鉢巻でも作っておくけどな」
コブラ「未知数さ。今回のヤマはちょいとばかり、危険な賭けになるかもしれない」
レディ「ふふ、でも、それも慣れた事でしょう?コブラ」
コブラ「まぁね。それが海賊ってもんだからな」
コブラ「…さぁて、それじゃあそろそろ出てきてもらおうか。相変わらずコソコソ隠れるのはいい趣味とは言えないぜ、インキュベーター」
椅子に腰かけながら、のんびりとそんな風に語りかけるコブラ。
船内の物陰から、ひょっこりと姿を現すインキュベーター。
レディ「…!」
QB「相変わらず常人とはかけ離れた察知能力だね、コブラ。君が本当に人間なのかは大いなる疑問だ」
コブラ「地球外生命体にそう言ってもらえるとはね。診察したいなら結構だが、料金は高いぜ」
QB「いいや。それはボク達インキュベーターの成すべき事ではないからね」
コブラ「そうだったな。幼気な少女を騙してエネルギーを回収するのがお宅らの仕事だ」
QB「否定はしないよ。君達人間にとってボクは敵でも味方でも構わない」
QB「ただボク達は、宇宙の永らえさせられればそれでいい。それが使命なのだから」
コブラ「結構な使命だね。それで?アンタは説法でもしに俺の船に来たのかい」
QB「…」
QB「君達未来人ともう一度話す機会を設けたくてね。ボク達にとって、やはり君達の存在はとても興味深い」
コブラ「…いいぜ。レディ、客人にコーヒーだ。とびっきり苦いヤツを頼むぜ」
QB「君達のいた世界が存在するのは、ボク達インキュベーターが宇宙の寿命を永らえさせるのに成功した事の証明だ」
QB「ボク達は地球の誕生の遥か以前から存在し、その使命を全うしてきた。だからそれが無事未来まで続いているのだとしたら、それはやはり非常に興味深いわけだ」
QB「何せ人類の発展は、ボク達と紡いできた歴史と言っても過言ではないのだからね」
コブラ「ご立派だね。基金でもたてたらどうだい」
レディ「…しかし、そのために貴方達は人を…魔法少女達の希望を絶望に変え、その命を奪ってきた」
QB「君も、それを疑問視するのかい。例えば、蟻の巣から一匹の蟻を摘まみ出して殺す事に何の影響があるのかな。むしろその蟻は、宇宙に対して貢献が出来るんだ。意味のない死じゃない、素晴らしい事じゃないか」
レディ「でも、かの女達は人間よ。蟻ではないわ…!」
QB「随分と都合のいい意見だね。蟻なら良くて、人間では駄目。ボク達からすれば60億以上の個体数から毎日数個を摘出する程度、何も気にする事ではないと思うけれど」
コブラ「… … …」
QB「むしろその犠牲が、全ての人類を救う事に繋がっているんだ。インキュベーターが責められる理由は何もないじゃないか」
コブラ「…そうでもないさ。アンタらは、単に上から胡坐をかいて人に頼っているだけの存在に過ぎない」
QB「どういう事かな?」
コブラ「宇宙のエネルギーが減っていく一方、太古の昔のアンタらが見つけたのが少女達を糧にしてそのエネルギーを補っていくという方法。…だったかな」
コブラ「だが、そいつの効率性自体を疑うね。何千年何万年も昔のシステムに頼っていないと宇宙が消滅しちまうってのは、甚だ可笑しな話だ」
コブラ「インキュベーターの目的は、いたいけな少女を殺す事だったのかな。それとも、宇宙を永らえさせる事だったのかな?」
QB「…」
QB「つまり、もっと効率のいいエネルギーの回収方法があるとでもいうのかい」
コブラ「そいつを模索するのもあんたらの目的に含まれる筈だ。何にしても、俺ぁその宇宙の寿命とかいうやつに貢献するつもりは全くないからな」
コブラ「かの女達だってそうだ。アンタらには感情がないから分からないかもしれないがね」
コブラ「同じ種族、同じ志の人間を殺されていい気分のするヤツはいないぜ。そうしないと宇宙が滅びちまうっていうのなら」
コブラ「宇宙なんざ、滅びちまうべきなんじゃないかな」
QB「コブラ。君の意見は宇宙全体の害悪に過ぎないよ」
コブラ「残念だったな。俺はもともと色ぉーんな奴に恨まれてるんだよ」
コブラ「汚いんだよ。やれ宇宙のためだの人類のためだの言って人を食い殺して自分達を正当化する。感情は無いクセに、そこはクリーンに見せたいわけか?」
QB「理解をして欲しいだけさ。人が存在しないと、ボク達も生きていけない。少しは歩み寄らないとね」
コブラ「だから『契約』という形で少女達を騙しているわけだ」
QB「君がそう思うのも自由さ」
コブラ「まぁ、そこは褒めてやるさ。…勝手な奴もいてね、人なんざ平気で食い物や踏み台にするヤツは、俺の世界にもごまんといる。しかしアンタらは、契約後生き延びる術も与えてくれてるのだからな」
コブラ「だから俺は、そいつを最大限活用させてもらうよ」
QB「…」
コブラ「かの女達の未来を、醜い魔女なんかにさせやしない。…とびっきりの美女になってもらわないと、俺が困るんだ。未来に住んでいる俺がね」
そう言ってコブラは立ち上がると、タートル号から出て市街地へと歩いて行った。
ほむら「…それじゃあ、明日。教えておいた場所に集まって。そこにワルプルギスの夜が生まれるわ」
さやか「りょーかい。…あはは、なんか、集合って言われるとピクニック行くみたいでなんか緊張感ないけど…」
マミ「…でも、確かにそこで…私達の決戦が始まるのね」
ほむら「ええ。…何度も私が、挑んできた場所だから」
杏子「ま、緊張感なんざ持たなくていいんだよ。万全のコンディションで臨むためにしっかり寝て…しっかり食っておくコトだな」
さやか「アンタはお菓子食って体調万全だから便利だよね…」
杏子「どういう意味だよ」
ほむら「…それじゃあ、明日。…教えておいた時間と、場所で」
マミ「ええ。…頑張りましょうね、暁美さん」
ほむら「…」
ほむらは少しだけ頭を下げると、マミの部屋から出て、雨の降る外へと出て行った。
さやか「なーんかやっぱり実感ないなー。…明日、最強最大の魔女が生まれて…生きるか死ぬかの闘い、なんて」
杏子「生きるか死ぬかの闘いなんざ常日頃からやってるだろ。要するに、いつもと変わらねーんだよ。アタシ達にとっちゃあ、魔女が大きかろうが小さかろうが関係ない」
さやか「…そっか。いつもと変わらない…。そう思ってればいいのか。たまには良い事言うじゃん」
杏子「たまには、が余計なんだよ」
マミ「ふふ、本当にいつも通りで安心ね、2人は」
その時、来客を知らせるチャイムが鳴り、ガチャリとドアが開く音。
コブラ「やぁ淑女の皆様、お揃いで」
マミ「あ、コブラさん。…まぁ、どうしたの?それは」
コブラ「手ぶらじゃ何だしね。美人の店員に良いのを見繕って貰ったのさ」
そう言うコブラの手には、花束が一つ握られていた。コブラはコートの雨粒を払って部屋に入ってくると、笑顔でそれをマミに差し出す。
マミ「…この花…。ふふ、有難うコブラさん。それじゃあ飾っておくわね」
さやか「相変わらずキザだねー、コブラさんは。今時の男はそんな事しないよー」
コブラ「ハハ、だろうな。俺のいた時代でもなかなか見かけなかったぜ」
さやか「…さーてーはー…相当場数を踏んでいると見たねッ。…モテたでしょー?」
コブラ「ま、そこそこに」
さやか「うわぁ」
コブラ「ところで、ほむらは来なかったのかい。てっきりここにいると思ったんだが」
マミ「あら、彼女が目当てだったの?」
コブラ「とんでもない。マミにも勿論会いたくて来たんだぜ」
マミ「…あの、そういう意味じゃないんだけれど…」
苦笑いをしながら、花を花瓶に移すマミ。
杏子「アイツならさっきまでここに居たぜ。丁度アンタとすれ違いだ」
コブラ「ありゃあ、そいつは残念。タイミングが悪かったな」
さやか「明日のコトもあるしね。ほむらはほむらで、何か準備があるんじゃない?」
コブラ「…成程、ね。それじゃ、ちょいと俺は追いかけてみるとするか」
マミ「え?来たばかりだし、お茶でも飲んで行っても…」
コブラ「そいつぁ有難い。少し後でゆっくり頂きに来るぜ。ちょいとかの女に話があるんだ」
コブラ「それじゃあな。…そうだな、紅茶はダージリンがいいね。美味そうなクッキーもあったら最高だ」
マミ「…クス。はいはい、用意しておくわね」
そう言ってすぐにマミの部屋を出ていくコブラ。
呆気にとられた様子でそれを見送るさやかと杏子。
さやか「珍しいね、あの人があんなすぐ帰るなんて」
マミ「何か目的があるとすぐに飛んでいっちゃう性格みたいね。…まだ一か月くらいしか一緒じゃないけれど…分かりやすいのか分かり辛いのか…」
杏子「勝手な奴だな」
さやか「…アンタには言われたくないと思うよ」
マミはガラス製の花瓶にコブラから貰った白い花を綺麗に飾り付けると、テーブルの中央に置いた。
さやか「へーっ、綺麗。…花とかあんまり見ないから分からないけど、いい色してますね。コレ」
杏子「これ、何の花だ?」
マミ「…これはね、ガーベラの花よ」
杏子「ガーベラ?」
マミ「そう。キク科の多年生植物で…花言葉は『希望』。ふふ、本当に色々な事に詳しいのね、コブラさん」
さやか「…やっぱりキザだぁぁ…」
大粒の雨が降りしきる中、傘も差さずに一人立ち、何もない空を見上げる少女。
ビル街の中心。開発中で、何も無い草原のような広く拓けた場所。そこには…明日、いや、過去…確かにワルプルギスの夜が存在するのだった。
コブラ「…やっぱりここだったか、ほむら」
ほむら「…何か用かしら?必要な事は伝えた筈だけど」
そのほむらの後ろに着いたコブラ。少女はそちらを見る事なく、冷たいような言葉を放つ。
コブラ「一つ、聞いておきたい事があってね。お邪魔だったかな」
ほむら「…構わないわ。何かしら」
コブラもまた、雨の中傘を差さずに、雨粒を身体に受けている。それでもいつものにやけた表情は崩さずに、葉巻はしっかりと銜えていた。
コブラ「…話さないのかい、まどかには」
ほむら「… … …」
ほむら「ワルプルギスの夜の事を?何故?まどかには関係のない事だわ」
コブラ「おいおい、関係ないはないだろ?かの女にはしっかりと関係がある筈だぜ」
コブラ「あんたがかの女を親友だと思っているように…かの女もまた、あんたを親友だと思っている」
ほむら「…そんなワケないわ」
ほむら(…それは、過去の話。…この時間軸の話では、無い)
ほむら「もう一度言うわ。…何故、話さないといけないの。まどかは魔法少女ではない。一緒にいても危険なだけよ」
コブラ「俺達が負ければどこにいたって同じだろ?それに、かの女は関係無いわけじゃない。魔法少女の闘いを何度も見てきている」
ほむら「それだけだわ。…まどかには、魔法少女に関わって欲しくなかった。それなのに…関わってしまった。その事実だけで十分過ぎるほど危険なのに」
コブラ「…まどかが魔法少女になる事が、か」
ほむら「… … …」
コブラ「アンタの行動は、まどかを自分達から遠ざけたいとする一方、守りたいという行動にも見える。以前、ガラス人形と戦った時に言っていたっけな。まどかの悲しむ顔は見たくない、ってさ」
コブラ「ほむら。あんたが時間を繰り返してまで戦う理由は…まどかを守りたいからだ。しかし、まどかを魔法少女にしてはいけない。…そんなルールがお前さんの中にある」
コブラ「そして、まどかは魔法少女としての素質がありすぎる。その力は強大だ。…ワルプルギスの夜を超える魔法少女となり…最悪の魔女へとなってしまう。…違うかい?」
ほむら「… … …」
ほむら「どうして…」
コブラ「仕事柄、探偵の真似事をする事も多くてね。つい考えちまったのさ」
コブラ「当たっちまったようだな」
ほむら「… … …」
ほむら「ええ、その通りよ」
ほむら「まどかを魔法少女にするわけには、いかないの。…どんな魔法少女も…いいえ、どんな人間でも…希望は絶望へと変わってしまう」
ほむら「私達と一緒にまどかが戦ってしまっては、いけない。まどかの悲しむ顔を…もう、見たくないの。まどかが魔女に変わるその瞬間を、見たくない。まどかの悲しむ顔なんて、もう見たくない…!!」
コブラ「…」
ほむら「私は…まどかを守る。最初の時間で、最初に出会った、最高の友達を…失いたくない。だから…絶対に、私はワルプルギスの夜に負けられない…!」
コブラ「…なぁ、ほむら。あんたは、『皆で』ワルプルギスの夜を倒すんじゃなかったのかい?」
ほむら「… … …」
コブラ「闘えるだとか、闘えないだとかは関係ない。…要は、自分の意志さ。自分の願いだけが、自分を動かせる。…アンタがまどかを守りたいと言うのなら、まどかの気持ちはどうなるんだ?」
ほむら「…まどかには、私の気持ちなんて…どうだっていいの。私が守ると決めたんだもの。そのための…魔法少女の力。だから…まどかは何もしなくていい」
コブラ「それじゃあかの女の気持ちは無視するのかい」
ほむら「まどかが私に対して、何を思うと言うの。…この時間軸では、まどかには何も伝えていないというのに」
コブラ「…伝えなくても、伝わる事もあるさ。…特にほむら。あんたの行動は、分かりやすいからな」
ほむら「…?…どういう―――」
ほむら「!!!!!!!」
その時、ほむらは初めてコブラの方を振り向いた。
自分の後ろにいるのは、コブラだけだと思っていた。だからこそ、全てを語っていた。…それなのに。
まどか「… … …」
そこには、自分と同じく、雨に濡れるまどかの姿があった。
ほむら「どう、して…」
まどか「…わたし、ずっと、考えてたんだよ。どうして、ほむらちゃんが…戦っているのか。…前に、マミさんが言ってたから。ほむらちゃんは、グリーフシードを奪うためだけに戦ってるんじゃない、って」
まどか「魔女を倒して…さやかちゃんのソウルジェムも、返してくれた。…ずっと、何でか、分からなかった」
まどか「…だから、聞こうと思ってたの。どうしてほむらちゃんは…」
まどか「わたしを助けてくれようとしているのか。わたしを…魔法少女にさせないようにしてくれているのか」
ほむら「…!!」
まどか「ほむらちゃんは…ずっと、わたしを守ってくれてたんだね。違う時間を、何回も繰り返して…ずっと、ずっと…」
まどか「なんで…?なんでそこまで、わたしの事を…」
ほむら「…っ…!」
まどか「わたしだって…皆の…ううん、ほむらちゃんの力になりたいよっ…。でも、ほむらちゃんはいつも…わたしを魔法少女に近づけないようにしてくれて…それが、わたしを守ってくれている事になっているんだって、今分かった…」
まどか「教えて…どうしてほむらちゃんは、魔法少女に…」
ほむら「関係ないわ」
まどか「…!」コブラ「…」
ほむら「まどか、貴方には関係ない事なの。だから話す必要もな―――」
まどか「関係あるよッ!!!!」
ほむら「…まど、か…?」
まどか「ほむらちゃんはわたしを助けてくれる!だからわたしも、ほむらちゃんを助けたい!どうしても…どうしても、力になりたいの!だから…わたしは知りたい!!」
まどか「どうしてほむらちゃんが魔法少女になったのか…どうして、何度もわたしを助けてくれるのか…!話してくれるまで、わたしは此処から離れないッ!」
まどか「わたしは…ほむらちゃんの事ッ―――」
その瞬間、まどかに抱きつくほむら。
涙に震える掠れた声。今までの彼女からは聞いた事のないような弱々しい声。
ほむら「逆、なの…全部、全部、逆っ…!」
まどか「ほむら、ちゃん…?」
ほむら「私を助けてくれて…私を、友達だと言ってくれて、守ってくれたのは…全部っ…まどかなのよっ…!だから私は…貴方を、失うわけには…っ…!!」
ほむら「でも…ッ、でも、貴方は何度も私の前から…っ、ひぐっ、消えて、しまって…!!何度も、何度も消えてしまうのよッ…!!」
ほむら「私の一番大切な友達を、守りたい…!!それだけなのよっ…!!」
まどか「… … …」
降りしきる雨の中、まどかの服を握りしめ、強く抱くほむら。まどかもコブラも初めて聞く、彼女の弱音。
だがまどかは、涙を流しそっと微笑みながら、ほむらの肩をそっと抱く。
コブラ「…(さて、お邪魔虫はこの辺りで消えるとするかぁ)」
コブラは瞳を閉じ、微笑みを浮かべながらその場を後にする。
ほむら「まどかを、救う。それが私の魔法少女になった理由。そして今は…たった一つ、私に残った、道しるべ」
ほむら「でも時間を繰り返せば繰り返すほど…貴方と私の距離は遠くなって、ズレていく」
ほむら「それでも私は…まどかを守りたい。だから…ずっと、時間を繰り返してきた」
ほむら「解らなくてもいい。伝わらなくてもいい。私は、貴方を守れれば、それで…」
まどか「解かるよ…ほむらちゃん」
ほむら「…まどか…」
まどか「…初めて、泣いてくれた。初めて、ホントの言葉で話してくれたから。…だから、わたしはほむらちゃんの言葉、解かるよ。…全部」
ほむら「… … …」
まどか「だから…わたしは、ほむらちゃんを助けたいの。お願い…わたしを、魔法少女に…!」
ほむら「…駄目よ」
まどか「… … …」
ほむら「それじゃあ、駄目なの。…貴方を、この闘いの中に巻き込めない。貴方には…ずっと、笑っていて欲しい。私の傍で、ずっと…」
ほむら「だから…それじゃあ、駄目。それじゃあ、私のしてきた事が全て、無駄になってしまう」
ほむら「私に、貴方を守らせて」
アナウンス「―――本日午前七時、突発的異常気象による避難指示が発令されました」
アナウンス「見滝原市周辺にお住まいの皆様は、速やかに最寄の避難場所への移動をお願いします。繰り返します―――」
・
マミ「…来るのね、いよいよ…」
ほむら「ええ。…本当にいいの?」
杏子「良くなかったら此処にいねーよ」
さやか「そうそう。…ま、ちょっと怖いけどさ。これも魔法少女のお仕事…ってヤツだよね」
マミ「皆、必ず生きて帰るわ。…だから、行きましょう、暁美さん」
ほむら「… … …ありがとう」
杏子「にしても、アイツ遅いな。どうしたんだ?」
さやか「…まさか…」
マミ「そんな事はないわ、美樹さん。…彼は、きっと来てくれる。今までだってそうだったんだもの。…だから」
その時、上空に聞こえる轟音。異常気象の突風を物ともせず、空中に停止するタートル号。
ほむら「…コブラ…」
コブラ「よう、待たせたな皆」
コブラ「それじゃ行こうぜ。パーティ会場へ…な!」
まどか「… … …」
避難場所である学校の体育館から、暴風吹き荒れる外を眺めるまどか。
その手に握りしめられているのは、一本のガーベラの花であった。
まどか「ほむらちゃん…。わたし…」
まどか「…ごめんね…」
――― 次回予告 ―――
遂にワルプルギスの夜との決戦だ!まぁー奴さんのデカい事強い事、この上ない!流石の俺でもちょっと骨が折れそうだぜ。
俺とほむら、マミ、さやか、杏子の力をもってしてもなかなか厄介な仕事だ。まぁ、後にも引けない事だし死ぬ気でやってやろうじゃないの!
しかしそんな中、戦いの中に突然現れるまどか。どうやらかの女は何かの決心をして来たらしい!こうなりゃもう怖いもんナシだ。
だが物事そう上手くはいかないねぇ。…大変な事が起きちまうみたいだぜ。
次回のCOBRA×魔法少女まどか☆マギカ。【五人の魔法少女(中篇)】。よろしくゥ!
8話終了です!ありがとうございました!
仕事もようやく落ち着きまして、次回からは更新ペースをあげてラストまでいきたいと思います。
しつこいようですが…本当に、いろいろなご支援をいただいて有難うございます。何よりの励みになっております!
こちらも力が入り、良いものを書こうと…努力はしているのですがなかなか難しいものですね…。
でもコブラとまどマギが大好きです!!!
それでは、また逢おう!
クリ「特殊ソウルジェムで出来ている俺の身体はワルプルのように堅く、マミさんのおっぱいのように柔らかいのだ」
クリ「ということで今日もこの女でオナニーだ」
さやか「いやああああああああああ!!」
どうも、1です!9話が完成しましたので投下していきます。
いつも応援コメント、本当にありがとうございます!残りあと数話となってしまいましたが、最後までお付き合いいただけると幸いです。
それでは、よろしくどうぞ!
避難場所である、見滝原市体育館。
暴風雨が吹き荒れる外の景色を茫然としたような表情で見つめるまどか。そして、その横にまるで何かを待つように佇むキュウべぇ。
2人の間に、少し前、会話があったせいだろう。ただただその空間には沈黙が流れていた。
それは、魔法少女の本当の姿。希望が絶望に変わるその瞬間と、その意味。インキュベーターはその全てをまどかに話したのだった。
重い沈黙を先に破ったのはまどかだった。
まどか「…騙してたんだね、全部」
QB「君も彼と同じ事を言うんだね、まどか」
まどか「…だって…!皆、一歩間違えたら…死んじゃってたかもしれないんだよ…!?それで、それで…魔女になって、戦うなんて事になったら…!」
QB「それこそ『当たり前』なんだよ、まどか。有史以前からずっと繰り返してきた事実さ。魔法少女は遥か昔から世界中にいたんだ」
QB「そして彼女達は、希望を叶え、ある時は歴史すら動かし」
QB「最後には絶望に身を委ねて散っていく」
まどか「…!」
QB「祈りから始まり、呪いで終わる。それが数多の魔法少女が繰り返してきた歴史のサイクルさ」
まどか「… … …」
まどか「ほむらちゃんも…マミさんも、さやかちゃんも、杏子ちゃんも…必ずそうなるって言うの…?」
QB「さっきも言った筈だよ。祈りは必ず、呪いに変わる。だからこそ魔法少女は僕たちインキュベーターに必要なのだから」
まどか「… … …」
まどか「そんな事、ない」
QB「どういう事かな?」
まどか「希望は、絶望に必ず変わるワケじゃない。…ずっと持っていられる希望だって、あるんだよ」
QB「君がそれを作って見せるとでも言うのかい、まどか」
まどか「わたしが…みんなを、助けてみせる…!!」
強い瞳。強い声。
まどかの右手には一本のガーベラの花が握られていた。
禍々しい瘴気のような、霧と風が向かい風となって五人に吹いていた。
まるでそこに行くのを拒むかのような向かい風。しかし、五人はその風に向けて歩んでいくのであった。
マミ「…レディさんは、来ないの?」
コブラ「ああ。俺は基本的にかの女を仕事に手伝わせないスタイルなのさ。今回は俺の船の留守番を頼んであるからな」
さやか「そっか…。そもそも宇宙船が壊れちゃ、コブラさんが帰れなくなっちゃうもんね」
コブラ「その意味もあるが、まぁかの女は余程の事があった時の助っ人を頼んであるというわけだ」
杏子「これが『余程の事』じゃなけりゃ、アンタの余程の事はいつ起きるんだよ」
コブラ「そうだなぁ。美女達が軍隊アリみたいに俺に襲い掛かってきた時は、流石に助けてもらおうかな」
さやか「あはは…よくそんな冗談言いながら歩けるね」
コブラはにぃ、と葉巻を銜えた口元を緩ませた。
ほむら「… … …」
マミ・杏子・さやか「…!」
前方からこちらに向かってくるものが多数ある。
それは、まるでサーカスのパレード。
象、木馬、人形…まるで祭りのように賑やかに、それらは五人を通り抜けていくのだった。
さやか「使い魔…!?」
さやかはソウルジェムを取り出すが、ほむらがそっと手を出してそれを静止させる。
ほむら「いいえ。少なくともこいつらは私達を攻撃しないわ。…まだ、早い」
コブラ「本体だけを叩けばいいわけだ。目的としては単純でいいね」
ほむら「そうね。…シンプルだからこそ、絶対的でもある。力の差が歴然と出るわ。…私達が、敵う相手か否か」
さやか「… … …」
杏子「…さやか?…震えてるのか」
さやか「…あ、あはは…なんか…ど、どうしても…怖いなぁ。ごめん、情けないの分かってるし、今更だけど…こ、怖くって…どうしようもなくて…」
そう言うさやかの表情は曇り、身体が小さく震えていた。心配をする杏子も、その恐怖心による震えを必死に耐えている。
杏子「… … …」
さやか「…バカ、だよね。もうとっくにあたしなんか人間じゃないのに…死ぬのが、怖いなんてさ…。ホント、バカだと思うよ…笑ってくれても…」
杏子「ほら」
さやか「…!」
俯いて震えるさやかの眼前に、杏子の手が差し出された。
杏子「手、握れよ。ちょっとは抑えられるだろ?震え」
さやか「… … …杏子…」
杏子「怖いのは誰だって一緒さ。我慢なんざしなくていい。怖いならアタシの手なんか握らないで逃げてもいいんだ。誰も責めないよ」
杏子「ただ、アンタのバカさ加減じゃ怖くてどうしようもなくても、行こうとするだろ?」
杏子「だから、同じバカ同士、手でも握ってやるよ。少しはマシになるだろ」
さやか「… … …」
さやか「恥ずかしいヤツ」
杏子「うるせーよ」
さやかは微笑みながら、そっと杏子の手を握った。
五人の中で、前方を躊躇いなく歩く、ほむらとコブラ。そして、それに必死でついていく、マミ。今にも恐怖心で歩みが止まりそうなのは、マミも一緒だった。しかし、前を歩く2人はすたすたと先を進んでいく。
マミ「…2人とも、強いのね…。私なんて、逃げ出したくてたまらないのに…」
ほむら「逃げ出してもいいのよ、巴マミ。…責めるつもりなんて、ないわ」
マミ「…いいえ、行くわ。…でも… … …どうしても…怖くて…」
コブラ「マミ。俺もほむらも、別に強いわけじゃないぜ」
マミ「…え?だって…」
コブラ「俺もほむらも、『未来』を信じているのさ。だからこそ、その未来がくるように突き進んでいける」
マミ「…未来…」
ほむら「… … …」
コブラ「明けない夜なんざない。夜が明けなきゃ、サンタクロースはプレゼントを渡す事すらできない。だから、俺達はしっかり朝を迎えさせてやらないとな」
マミ「…コブラさん…」
コブラ「ついてきな、マミ。魔法少女は、必ず俺が守ってみせる」
詢子「どこへ行こうっていうんだ?」
まどか「…!ママ…」
詢子「まどか…あたしに、何か隠してないか?」
まどか「… … …」
詢子「言えない、ってのか」
まどか「…ママ、わたし…」
まどか「友達を助けるために、どうしても今行かなくちゃいけないところがあるの」
詢子「駄目だ。消防署に任せろ。素人が動くな」
まどか「わたしでなきゃ駄目なの」
詢子「… … …」
パァン。
廊下に響くような、乾いた音。
詢子「テメェ1人のための命じゃねぇんだ!あのなぁ、そういう勝手やらかして、周りがどれだけ―――」
まどか「分かってる」
詢子「…!」
まどか「私だってママのことパパのこと、大好きだから。どんなに大切にしてもらってるか知ってるから。自分を粗末にしちゃいけないの…よく分かってる」
まどか「だから、違うの」
まどか「みんな大事で、絶対に守らなきゃいけないから。…そのために、わたしに出来る事をしたいの」
詢子「…なら、あたしも連れて行け」
まどか「駄目。ママは…パパやタツヤの傍にいて、二人を安心させてあげて欲しい」
詢子「… … …」
まどか「ママはさ。私がいい子に育ったって、いつか言ってくれたよね。…嘘もつかない、悪い事もしない、って」
まどか「今でも、そう信じてくれる?」
詢子「… … …」
詢子はふぅ、と諦めたように溜息をつき、まどかの両肩を掴んでその目をじっと見つめる。
詢子「…絶対に、下手打ったりしないな?誰かの嘘に踊らさせてねぇな?」
まどか「うん」
まどか「わたしを…皆を助けてくれる、頼もしい人がいるから。だから、安心して。絶対にわたし、無事で帰ってくるよ」
――― その少し前。
体育館に避難していたまどかを、同じように廊下で呼びとめた人物がいたのであった。
まどか「…!!コブラ、さん…!」
コブラ「よう、まどか。元気してるか?」
まどか「み、みんなは…!?ワルプルギスの夜に向かって行くんじゃ…」
コブラ「ああ、俺もこれから行くところさ。その前に、まどかに渡す物があってね」
まどか「…渡す、物…?」
コブラはまどかの所まで近づくと、手にもっていた花をまどかの手に握らせた。
まどか「…これ…」
コブラ「昨日みんなには渡したんだけどな、お前さんに渡すのを忘れてた。俺とした事がうっかりしてたぜ」
まどか「… … …」
コブラ「まどか。お前さんは今のままで十分強い。だから、なりたい自分になろうとするな。自分を犠牲にして他人を助けようなんてするな」
コブラ「ただ、自分の信じる道だけを進んでいけばいい。それが、まどかの強さだ」
まどか「…!!」
コブラ「じゃあな。…美人のお袋さんにも、よろしくっ」
コブラはウインクをして微笑むと、体育館の外へと出ていく。
まどか(コブラさん、わたし、見つけたよ)
まどか(自分の信じる道、歩いていける道)
まどか(全部、自分で決められたんだよ。もう迷わない。絶対…後悔なんてしない!)
まどか(わたしは…!)
吹き荒れる雨の中。傘もささずに、少女は駆けていく。
自分の信じる道を、ただひたすら。
五人は歩みを続けた。
一段と、風を強く感じたその時、ほむらは足を静かに止めて、四人がいる後ろを振り返る。
ほむら「…逃げ出すなら、此処が最後よ。後戻りは出来ないわ」
ほむらは静かに、それを全員に告げた。
マミ「…」
さやか「…」
杏子「…」
しかし、誰一人として踵を返す者はいなかった。俯く者もいなかった。
ただ魔法少女達は前を向き、その先に存在するであろう巨大な敵に強い瞳を向けている。
コブラ「途中下車はいないようだぜ、ほむら」
ほむら「…本当に、いいのね」
マミ「ええ。…答えは、さっきと変わらないわ」
さやか「どうせ何もしなきゃ死んじゃうんだし…私達が、どうにかしなきゃね」
杏子「乗りかかった船だ。最後まで付き合ってやるよ」
ほむら「… … … ありがとう、皆」
コブラ「… 見えてきたぜ、アイツが…どうやらそうみたいだな」
ほむら「ええ、間違いないわ。…あれが…」
マミ「ワルプルギスの… 夜…」
コブラ「ここが終点か。それじゃあ皆、派手にやるぜ」
さやか「…うん!」
杏子「行くぜ…!」
魔法少女達はソウルジェムを取り出し、それぞれの戦闘態勢をとる。
コブラは左腕の義手をゆっくり抜き、サイコガンを目標に向けて構えた。
ほむら「…来るわ…!」
5 4 3 2 1 …
まどか「はぁっ、はぁ…っ!」
QB「もうすぐ着く筈だよ、まどか」
まどか「ほ、本当に…?まだ、影も形も…!」
まどか「…!」
QB「到着したようだね」
QB「あれが、ワルプルギスの夜」
QB「歴史に語り継がれる、災厄。この世の全てを『戯曲』へと変える、最大級の魔女だよ」
まどか「あ、あ、あ…!」
まどかの眼前に広がる光景。
それは、まさに死闘とも呼べる戦いの光景であった。
巨大な歯車には、逆さに吊るした人形のようなドレス。
数多の少女達が笑い声をあげるような声が、あちこちに響くように聞こえる。
それは、まるで城塞。巨大な城が空へ浮かび、笑い声をあげながらそこに佇む。
今までの魔女とは比べものにならない巨大な姿。そして、感じられる禍々しい気迫。魔法少女にとっては、まさにそれは最悪の敵と呼ぶに相応しかった。
さやか「はああああああッ!!!」
杏子「うおおおおおおッ!!!」
さやかと杏子は、剣と槍を構え、ワルプルギスの夜へと続くサーカスのロープを駆けていく。
その横を飛び交う、銃弾や砲撃。
地上からはマミ、ほむら、そしてコブラの砲撃が続いていた。
マミ「…ッ!はッ!やッ!」
ほむら「…!」
マミは魔法で召喚した単発銃を次々と目標に向けて放ち、ほむらも用意したあらん限りの銃火器を次々と放っていく。
巨大な爆発が次々と起こる中、本体へ辿り着いたさやかと杏子は勢いよく跳躍をし、魔力を高め、斬撃を放つ。
一撃。
剣と槍による鋭い一撃を与えると、2人は魔力を使いゆっくりと地上に降りる。
ワルプルギスの夜「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!」
杏子「マジかよ…効いてねぇ…ッ!」
ほむら「続けて攻撃するわ!加勢して!」
さやか「くっ…!それならもう一度…!」
コブラ「おっと、もうちょっと待ってくれ。俺の番がまだ終わってねぇぜ」
マミ「え…!?」
コブラはサイコガンを上方に向けると、高めた精神エネルギーの全てを放出する。
まるでそれは、巨大な光の大砲。瘴気を切り裂き、真っ直ぐにワルプルギスの夜に向かう。
ズオオオオオ―――――――ッ!!!
ワルプルギスの夜に触れ、それは巨大な爆発を起こした。爆風で見えなくなった相手に向け、コブラは次々とサイコショットを放つ。
コブラ「ショータイムだ!遠慮しないで続けてどんどんいけ、皆!」
ほむら「…!」
杏子「っしゃあ!任せとけ!」
カチリ。
時間を止め、銃火器をワルプルギスに向けて再び連射するほむら。銃弾、グレネード、ロケットランチャー…用意した全ての武器を惜しむことなく相手に向けて放っていく。
再び動き出し、ワルプルギスの夜に向け進んでいく数百、数千の弾丸。
その間に、マミとコブラも攻撃を続けていく。
マミ「…!『ティロ・フィナーレ』ェェッ!!!」
コブラ「うおおお―――っ!!!」
巨大な銃身から出る、魔力の一撃。左腕の砲身から出る、巨大な精神力の砲撃。
その全てが魔女に確実に当たり、次々に爆発と爆風を生む。通常ならば、どんな敵でもそれだけで消滅するだろう。
しかし、さやかと杏子はそれでも再びワルプルギスの夜に向けて突進していく。
さやか「今度こそ決めるよ!!」
杏子「ああ!いい加減、くたばらせてやるぜ!!」
意気込み、駆け抜ける2人。
まどか「…皆…!」
QB「… … …」
どこか、安心して見守るようなまどか。それは、今までになかった光景だからだろうか。
巨大すぎる敵。しかしだからこそ、五人は今までにない団結力で次々と効果的な攻撃を仕掛けられている。全ての攻撃が当たり、お互いをフォローできている。
まどか(これなら…勝てる…!)
しかし、まどかは…いや、全員はまだ気づいていなかった。
ワルプルギスの夜が、こちらに対し何の攻撃も仕掛けていない事に。
さやか「いくよ!もう一回ッ!!」
あと少しで、もう一度城塞へと辿り着く。2人は剣と槍を構え、再び一撃をくわえようとしていた。その瞬間、地上からの砲撃は止み、2人の攻撃を待つ。
まさに完璧なチームワーク。…その筈だった。
杏子「…!!! なッ…!?」
まさに、ワルプルギスに斬りかかろうとした時。爆風の中から出現する…影。
幻影「キャハハハハハハハハハハハ!!!」
幻影「アハハハハハハハハハハハハ!!!」
人型の黒い影は素早くさやかと杏子の2人の眼前に来ると、武器のようなもので2人を攻撃した。
さやか「きゃああああああッ!!!」
とっさの防御も間に合わず、さやかは幻影の攻撃により地上へと叩き落された。
杏子「ッ!!さやかッ!!」
一瞬、さやかの方へ気を取られてしまった杏子。その隙に、もう一体の幻影も杏子に向けて攻撃をする。
杏子「ぐああああッ!!」
マミ「!!美樹さん、佐倉さんっ!!」
コブラ「なんだありゃあッ!?」
ほむら「…!幻、影…!?ワルプルギスが吸収した…魔女の…魔法少女の、魂…!!」
コブラ「くそぉ…!!さやかぁ!杏子ッ!!」
地上に叩き落されたさやかと杏子。どうにか自身の魔力でそのダメージを軽減するものの、魔法少女の幻影は追撃をかけようと2人に急速に迫る。
さやか「くッ…!だ、大丈夫…!?杏子…」
杏子「ああ、なんとか… …ッ!? 危ねェッ!!」
体勢を立て直そうとするも、幻影は今にも斬りかかってきそうなほど間近に迫っていた。
その時。
ズオオオオ―――――ッ!!
杏子「!!」
2体の幻影を一気にかき消す、光の波動。
幻影が消えた先に見える、サイコガンを構えた男の姿。
さやか「ヒューッ!さっすがコブラさん!助かっちゃった!」
コブラ「元気そうで何よりだ。…しかしあの野郎、なんて攻撃してきやがるんだ。悪趣味にも程があるぜ」
杏子「…余裕ぶっこいてる暇もなさそうだぜ。…来るぞ!」
上空を見据える杏子。その視線の先を追うように、コブラとさやかもワルプルギスの夜の方を見る。
城塞から次々と出現するのは、何体…いや、何十体もの、魔法少女の幻影。それらは敵であるコブラ達に向け、笑い声をあげながら突進してくる。
コブラ「やれやれ…こういうモテ方は勘弁して欲しいよ、ホント」
マミ「2人とも!大丈夫!?」
慌ててさやか達の方へ駆け寄るマミとほむら。5人は再び合流をし、臨戦態勢をとる。
さやか「はいっ!…でも、ちょっとピンチかも…!」
コブラ「マミ、ほむら!迎撃するぜ!」
マミ「…!何…あの幻影の数は…!」
ほむら(…あんな攻撃、今まで見たことは無かった…。それだけアイツが…ワルプルギスの夜が追い詰められているという事…?」
ほむら(でも…それじゃあ、あの魔女の本気はどれだけ…!)
コブラ「ほむらッ!」
ほむら「―――ッ!!」
コブラ、マミ、ほむら。遠距離武器に特化した3人は、こちらに向けて突っ込んでくる幻影群を迎撃する。
魔法銃、現代火器、そしてサイコガン。それぞれの砲撃は幻影達を次々と消滅させていくが、全てに対応できるわけではない。残りの幻影は次々と5人に向けて襲ってくる。
さやか・杏子「はあああああああッ!!!」
こちらに近づく幻影は、一歩前に出たさやかと杏子の斬撃で倒していく。一体一体が、魔法少女と同レベルの闘い。しかしながら、戦闘経験を積んだ2人の戦士は次々と幻影を斬り捨てていくのだった。
――― しかし。
ほむら(… 終わ、らない…ッ!!)
コブラ「くそっ!出し惜しみなしか!」
幻影は減るどころか、次々と城塞からこちらに向かってくるのだった。
マミ「はぁっ、はぁ…!」
さやか「くっ…!ぐ、ゥ…っ!!」
幻影を次々と倒していく魔法少女とコブラ。しかしながら、長引く戦闘による魔力の消費で、魔法少女のソウルジェムはどんどん黒く濁っていく。
ほむら(このままじゃ…私達まで危なくなる…!!)
さやか「あ、ッ…!!」
杏子「!!さやかッ!!」
最も経験が浅いさやかの限界が、一番先にきたようだった。体勢が崩れ、地面に膝をつけてしまうさやかに襲い掛かる、複数体の幻影達。
さやか「… !!!」
自分の最期を感じたのか、思わず目を瞑ってしまうさやか。 …しかし、そのさやかの目の前に立つ、一人の男の姿。サイコガンは次々と幻影を撃ち抜き、倒していった。
さやか「コブラ…さん…!」
コブラ「安心しな。何があっても守ってみせるぜ」
…しかし、状況はどんどん苦しくなっていくばかりだった。
そして…5人は未だ、気付かなかった。
ワルプルギスの夜が、次なる攻撃を仕掛けようと動いている事に。
まどか「 … !!!」
その異変に気付いたのは、鹿目まどかが最初だった。誰よりも遠くから状況を見ていたからこそ、気付けた事実。
彼女は、戦いを続ける5人の元へ急いで駆け寄る。
そして、あらん限りの声で叫ぶ。
まどか「逃げてええええ――――――ッ!!!!」
ほむら「…! まどかっ!?」
マミ「鹿目さん…!?どうして…!!」
コブラ「… … …!! 何だ、ありゃあ…っ!!」
そして、まどかの叫びの意味を、5人は知る。
城塞の周りを取り囲んでいるのは…根本が折れた、幾つもの巨大ビルだった。
ワルプルギスの夜はそれらのビルを、こちらに向けて飛ばしてくる。まるで、とてつもなく巨大な弾丸のように。
コブラ「くそおおお―――ッ!!!」
コブラはサイコガンを次々と巨大ビルに向けて発射する。
しかし…間に合わない。崩れた鉄塊は全員を押し潰そうとばかりに、ゆっくりと、しかし確実に迫い来るのだった。
ほむら(… !! このままじゃあ、まどかまで…ッ!!!)
カチリ。
ほむらは時間停止をして、こちらに走り寄ってくるまどかに近づき、引き留めようとその場に押し倒した。
カチリ。
魔力を消費した状態での、精一杯の時間停止。
まどか「あっ…!」
砂埃をあげ、地面に倒れ込むほむらとまどか。
その先には…
魔力を消費しすぎて動けなくなったさやか、杏子、マミと…その3人を必死で守ろうとサイコガンの連射を続ける、コブラの姿。
さやか「…もう、駄目…っ!!」
杏子「くそ…っ!!ここまで、かよ…!!」
マミ「そんな…そんな…ッ!!!」
眼前まで迫る、巨大なコンクリートと鉄の塊。
コブラは、喉が引き裂かれるような声をあげた。
コブラ「俺に掴まれぇぇぇぇぇ―――――――――――ッッッ!!!!!!!」
ドオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!
墓標のように、4人を押し潰すコンクリート。
爆風が、ほむらとまどかを襲う。
そして、無情なまでの静けさが、辺りを包むのだった。
まどか「… … …」
ほむら「… … …」
そこには、さやかと、杏子と、マミと、コブラの姿は無かった。
今まで、確かに4人が存在した場所。しかしその場所は、無数の建造物の残骸により、掻き消えてしまっていた。
コブラの叫びが、嘘のように消えていた。静寂は恐怖心と絶望を現し…同時に、4人の死を現すのだった。
ほむら「… ぐ …ッ …!!」
まどか「…嘘…だよ…。みんな…みんな、死んじゃったの…?」
まどか「そんなの、嫌だよ…。 …返事、してよ…マミさん…。さやかちゃん…杏子ちゃん…!コブラさん…!」
まどか「こんなの… こんなのって… !!!」
ほむら(… 駄目だった…。 今回、も…)
まどか「いやあああああああああああああああああああああああああッ!!!」
まどかの悲痛な叫びが、静寂を切り裂いた。
絶望を表情に灯す2人の眼前に現れる、1つの影。
それは、インキュベーターだった。
QB「さぁ、鹿目まどか、暁美ほむら。君達はどうするんだい?」
まどか「… … …」
ほむら「…!くッ…!!」
QB「希望は、全て消えた。後に残った物は絶望しかない」
QB「どうするんだい?このままこの街が…いや、この世界が滅びるのを待つのかい?」
まどか「… … …」
QB「手段はある筈だ。それは、2人とも分かっている事だね。 …鹿目まどか、君自身が希望となる以外に絶望を払拭する方法は存在しない」
QB「もし、君自身が希望となる決意があるのなら…」
ほむら「駄目…っ!まどか…!あいつの言う事に…ッ!!」
まどか「…ある、のなら…」
ほむら「… まど、か…っ!!」
QB「もし君に決意があるのなら」
QB「ボクと契約して、魔法少女になってよ」
――― 次回予告 ―――
全く、コブラと魔法少女の下敷きなんて喜ぶのはどこのどいつだぁ!?勘弁してほしいよホント。
憐れ、宇宙海賊コブラの冒険もここで仕舞い…って、俺を待ってる美女がうじゃうじゃいるのにおちおち死んでられるかってんだチクショー!!
一方、まどかはいよいよ決意を固めて魔法少女になっちまう。しかしその願いは、誰も予想しなかったとんでもない願い事だった!!
まどか、ほむら…一体どうなる事やら。平穏が宇宙の彼方で欠伸してるぜ。どんな結末が待っているのか、いよいよラストスパートだ。
次回のCOBRA×魔法少女まどか☆マギカ。【五人の魔法少女(後編)】。よろしくゥ!
9話終了です!ありがとうございました! コブラ、ここに死す!w
なんだか終わりが近づくにつれて作者としても胸にくるものがありますね…w
もう少し、お付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします!
それでは、また逢おう!
1です、お世話になります!
第10話、投下していきますのでよろしくお願いします!
ワルプルギスの夜編もラスト。上手く纏められたのか不安ですが…ひたすら「スペースコブラ」を流しながら書きましたw聞きながらお読みいただけると幸いです!
それでは、よろしくどうぞ!
瓦礫の山にぴょこんと飛び乗ったその生き物は、2人の少女に向けて告げる。
その声に、感情は無い。ただ、今そこにある事実をただただ冷酷に告げ、そして選択を迫るのだった。
QB「――― ボクと契約して、魔法少女になってよ」
その言葉に、1人の少女は明らかな敵意を向ける。
しかし、もう1人の少女は…その言葉に希望を見出してしまうのだった。
ほむら「…ッ…!ま、どか…っ!駄目…っ!駄目よ…!!」
まどか「… … … ほむらちゃん …」
ほむら「やめて…!貴方が魔法少女になったら、私は…っ、私は…!!」
まどか「… 約束、守れなくてごめんね、ほむらちゃん…」
ほむら「そんな言葉…聞きたくない…!まどか…!お願い…っ!やめてぇ…!」
QB「さぁ、まどか、君は何を願うんだい?君の魂なら、どんな願いでもその対価となり得る」
まどか「… … …」
まどか「私の願いは ―――」
ほむら「駄目ェェェェェェェェッ!!!!!!」
第10話「五人の魔法少女」
吹き荒ぶ嵐の中、1人の少女はハッキリとした眼差しでその生物を見つめる。
それは、今までの鹿目まどかからは考えられない程の明瞭な言葉だった。
まどか「私の願いは…」
まどか「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい」
まどか「全ての宇宙。 過去と未来の全ての魔女を。 …この手で!」
ほむら「っ…!!」
QB「! その祈りは…そんな祈りが叶うとするなら、それは時間干渉なんてレベルじゃない!因果律そのものに対する叛逆だ」
QB「まどか、君は… 神になるつもりなのかい」
まどか「神様でも、何でもいい。皆… これまで魔女と戦い、希望を信じてきた人達の涙を、もう見たくない。そのためなら、どんな事だってしたい」
まどか「それを邪魔するものなんて… ルールなんて、全部壊して、変えてみせる!」
まどか「これが、私の願いよ。…インキュベーター」
ほむら「駄目…!!まどか…!!そんな事をしたら… そんな願いが叶ってしまったら、まどかは…!!」
まどか「… ほむらちゃん …」
まどか「本当に、ごめん。 …でも、私は…皆の笑顔が戻るなら、この命を使っても構わない」
ほむら「そんな…!それじゃあ、私は…何の為に…!!」
まどか「… … …ごめん…いくら謝っても、足りないと思う。 …でも、ほむらちゃんがずっと私を守ってきてくれたから、今のわたしがあるの」
まどか「魔女が存在する限り、いつか…わたしもほむらちゃんも、きっと哀しみを背負わなくちゃいけない」
まどか「ううん、マミさんだって、さやかちゃんだって、杏子ちゃんだって… 世界中の、どの時間でも… 哀しみはずっと消えない」
まどか「コブラさんが、みんなの希望になろうとしてくれた。…でも…それは、叶わない願いだった」
まどか「だから…代わりになれるのは、わたししかいない。わたしは…皆の、希望になりたい。その為なら…この命を犠牲にしても、構わない」
ほむら「嫌よ…!まどかがいなくなったら…私は、どうすれば…!!」
まどか「… … …」
まどか「ありがとう、ほむらちゃん。…本当に、今まで…ありがとう。…だから、もう、いいんだよ」
ワルプルギスの夜が、笑っている。
まるで世界そのものに対し嘲り笑うかの如く、その笑いは響き渡った。
しかし、まどかとほむら、そしてキュウべぇの周りはまるで時間が止まったかのように静まり返っているように思えた。
まどかは一歩、キュウべぇに対して近づき、その手を差し出した。
まどか「――― さぁ、インキュベーター。 どんな願いも叶えられる…そう言ったよね。 …今のが、わたしの願いよ」
QB「… … …」
まどかの周りを、光が包む。
それは、まどかの願いが成就されようとする瞬間を示していた。
ほむら「まどか…ぁっ!」
まどか「――― !!」
インキュベーターとの契約がなされ、新たな魔法少女が誕生する瞬間。
祈りを捧げるように瞳を閉じ、手を差し出すまどかは、微笑みを浮かべていた。
光が増す。風が巻き起こる。 …全てが、変わる。
――― その時。
「おおっと、その契約 ――― 異議アリだ」
まどか「――― !!」
まどかの瞳が、開いた。
「まどか、俺は言った筈だぜ。 自分を犠牲にして、他人を助けようとするな、ってな」
「希望ってのは、なるモノじゃない。 作るものだ。 まどかの今までしてきた事は、十分『俺達』の希望になって…力になっている。 まどかは、まどかが思っている以上に、強い」
まどか「… !!」
ほむら「この…声…」
「それにな、俺のいた世界では、神様ってのはもっとボインなんだぜ」
「14歳のいたいけな少女が神様になっちまっちゃあ、俺の世界と違っちまうんだよ。 ――― お前さんにそんな重荷を背負わせる世界なら、俺が変えてやる」
「――― いいや、壊してやる」
QB「…!!」
「俺は、あんた達を守ると約束した。 そして、男ってのは… 一度交わした約束は、守りきらなきゃいけない生き物なんだぜ!!」
まどか「!!!」
瓦礫の山。そこから、光が溢れだしてる事に気付いた。
その光は段々と強くなる。鉄筋を、コンクリートを、硝子を… 全てを溶かし、『道』を作ろうとする、その光。
「そのためなら… 俺は何度でも立ち上がる!何度でも挑むッ!! だから… 俺を、俺達を、信じろ!!まどかッ!!」
コブラ「俺は ――― 不死身のコブラなんだからなァッ!!!」
ドゴォォォォ――――――ッ!!!!!!
上空に放たれた巨大なサイコショットは、雲を切り裂き、太陽の光を浮き出させた。
その光に包まれる、1人の男。
天に構えたサイコガンを右手で抑え、その男はまどかとほむらに向け、不適な笑みを浮かべるのだった。
そして、その男の周囲には、マミ、さやか、杏子…それぞれの姿があった。
まどか「コブラ…さん…!」
ほむら「コブラ…!」
QB「…信じ難い。一体、どうやって」
コブラ「へへへ、覚えときなインキュベーター。 サイコガンは、心で撃つものなのさ。この銃は俺の精神(サイコ)エネルギーに反応し、そいつを曲げる事も、増す事も出来る」
コブラ「つまり、だ。オタクらに無い『感情』の力が、俺達を救ったのさ」
QB「!」
コブラ「かの女達、魔法少女を助けたいという感情。その思いは力になり、鉄だろうが何だろうが一瞬で溶かしちまうくらいのエネルギーを持つ。そいつが、俺達を助けた」
コブラ「な?キュウべぇ。感情ってヤツも、捨てたもんじゃないだろ?」
QB「…」
さやか「ビルが飛んできた瞬間、コブラさんのサイコガンが一瞬でビルを溶かしてくれた。そいで、その熱があたし達にこないように、あたしの魔力でバリアを張ってたのさ!」
マミ「美樹さんの自己回復能力の応用ね。…本当に助かったわ」
ほむら「そんな… だって、私達は魔力を消費して…ほとんど動けないくらいまで…」
さやか「へっへっへー」
さやかはニヤリと笑い、見せつけるように右手を差し出す。その手には、グリーフシードが握られていた。
コブラ「色々と賭けだったぜ。あの瞬間、俺がセーブせずサイコガンを撃つ瞬間、さやかがバリアを張ってくれなけりゃいけない」
コブラ「保険はかけておくもんだな。堅実ってのも少しは悪くないかもな」
コブラの大きな手には、大量のグリーフシードがあった。
QB「その為に…君は、魔女を倒していたのか」
コブラ「そういう事。もしもの時のために…ってヤツさ。こう見えて俺は貯蓄派でね」
コブラ「俺の手をさやかが握った瞬間、その穢れはコイツが吸い取ってくれる。もう少し遅かったら火傷しちまうところだったが、間に合ってホッとしたよ」
杏子「ホント、ギリギリの賭けだったな。…正直生きた心地しなかったぜ」
コブラ「まぁ、これで全ては解決だ。…ほむらっ!」
ほむら「…!」
コブラはほむらに向け、グリーフシードを投げた。それを受け取ったほむらは自分のソウルジェムにグリーフシードを当て…再び立ち上がった。
コブラ「さ、後半戦だ。…9回裏、逆転ホームランはここからだぜ!」
さやか「うんっ!」
マミ「ええ…!」
杏子「おうっ!」
ほむら「…!」
ゆっくりと、しかし確実に都心部へと移動しようとするワルプルギスの夜。
しかし、その巨体に刺さるようにぶつかる、巨大なサイコガンの一撃。
ワルプルギスの夜「!!!」
コブラ「何処にもいかせねぇぜ、城の化け物。 ここから先は通行止めだ!」
ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
再び現れた『敵』に反応したワルプルギスの夜は、再びその周囲から幻影を出現させる。
マミ「…!来るわッ!」
杏子「よっし、いくらでも相手してやるぜ!」
さやか「もういくら来ようが平気だもんね!…絶対、負けないッ!」
まどか「… コブラ、さん… わたし…」
コブラ「…まどか、俺はお前さんに何かをしろ、なんて命令した事は一度も無いぜ。 自分の進むべき道、切り開くべき道は自分で決めるんだ」
コブラ「まどかには、仲間がいる。魔法少女だけじゃあない。お前さんの周りにいる全ての人々が、まどかの希望となっている筈だ」
まどか「…!」
コブラ「神様なんざ必要ない。…希望ってのは… 自分の手でも、作り出せるんだぜ!」
まどかの頭にポン、と手を乗せたコブラは微笑みを向ける。そしてその手を離し、迫りくる幻影に向けて駆けだすのだった。
まどか「…自分で作り出す…希望…」
まどか「… … …」
まどかはキュウべぇの方をもう一度振り向き、その生物を見つめるのだった。
杏子「マミッ!危ねぇぞ!!」
マミ「!!」
背後に忍び寄っていた幻影を、杏子の槍が切り裂く。
杏子「ったく、昔っから甘ったるいんだよ。…弟子に助けられるようじゃ、師匠としてまだまだだな」
マミ「…クス。そうね…佐倉さん。 …ありがとう」
杏子「へっ。…油断すんなよ!来るぞ!」
次々と迫ってくる幻影を、コブラのサイコガンが撃ち落す。
それを避けきり、コブラに近づく幻影は…さやかの斬撃によって斬り捨てられた。
コブラ「様になってきたじゃねぇか!その調子なら彼氏もしっかり守れそうだな、さやか!」
さやか「バッ…!か、彼氏とか言わないでよっ!そういう話は後回しっ!!」
コブラ「こりゃ失礼!それはそうと、どんどん来るぜ!照れてる場合じゃないぞ!」
さやか「誰が照れさせてるのよっ!!」
ほむら「…ッ!」
迫る幻影を銃器で次々と撃つほむら。 …しかし、間に合わず至近距離まで迫られてしまう。
一体の幻影が、笑い声をあげながらほむらの目の前で斧を振りかざした。
ほむら「しまッ…!」
その幻影をかき消す、一筋の光。
まるで『矢』のようなその光は、かき消すように幻影を撃ち抜く。
ほむら「な…ッ!」
ほむらの見た先には… 弓を構え、微笑むまどかの姿があった。
まどか「…あ、あはは… 当たった…良かったぁ…」
ほむら「まどかッ! その恰好… 貴方は、魔法少女に…!!」
まどか「…うん」
ほむら「どうしてッ!? 契約してしまっては、折角コブラが繋いでくれた事が…!」
まどか「違うよ。 …願い事は、もう叶ってるから」
ほむら「え…!」
まどか「神様にはならない。ただ、わたし自身が一つの希望になれれば…それで十分なんだ、って…ようやく分かったんだ」
まどか「わたしは、ほむらちゃんに守られるわたしじゃなくて…ほむらちゃんを守るわたしにもなりたいの」
まどか「ほむらちゃんが…ずっと、わたしにそうしてきてくれたように」
ほむら「!!!!!」
まどか「だから戦う。皆と同じように、わたしも…街を守る、魔法少女になる!」
まどか「どんな絶望にも… 勝てるようにッ!!」
ワルプルギスの夜に弓を向けるまどか。
繰り出される幻影を次々とその矢で射ぬく。正確なその射撃は一撃も外れる事なく、目標に当たっていく。
さやか「え…ま、まどかっ!その姿…!」
マミ「…なったのね、魔法少女に」
まどか「ティヒヒ、遅ればせながら。…えと、似合うかな…?」
杏子「…ちょっと少女趣味すぎやしないか?アタシには死んでも似合いそうにない服だ」
マミ「うふふ、とってもよく似合っているわよ、鹿目さん」
まどか「あ、ありがとう…ございます」
まどか「…コブラさん。 …わたし、答えが出せたよ。 …1人で、考えて…!」
コブラ「… へへへ、似合ってるぜ、まどか。…それに、いい顔が出来るようになったじゃねぇか。先生は100点満点をあげるぜ」
まどか「…!ありがとうございます!」
ほむら「… … …」
まどか「…ほむらちゃん…」
コブラ「ほむら。お前さんの願いは、崩れ去っちまったか?違うんじゃないのか」
コブラ「未来は、1人で掴みとらなくてもいい。5人で掴みとる希望も、あっていいんじゃないか。5人の魔法少女が…希望となれる世界だ」
ほむら「…!」
まどか「…違うよ、コブラさん! …今は、6人… コブラさんも入れて、6人!…でしょ?」
コブラ「! …ああ、そうだな!」
ほむら「… 私は…」
ほむら「私は… まどかが…いいえ、皆が笑っていられる世界なら、それでいい。…だから…」
ほむら「だから私は…ワルプルギスの夜を、倒す!!」
コブラ「ようし!そんじゃさっさと、あの馬鹿でかい疫病神を追い払うとしますかぁ!!」
さやか「…!みんな!もう一回アレが来るよ!!」
ワルプルギスの夜の周囲に、再び崩れた建造物が浮遊しはじめた。もう一度、こちらへの攻撃を開始しようとする狼煙。
しかし、それを見ても6人の表情に恐怖はなかった。
全員が対象を見据え、それぞれの構えをとる。
コブラ「それじゃ、いい加減終わらせるとしますかぁ。少しオイタを許し過ぎたぜ」
まどか「…はいっ!」
さやかと杏子は、剣と槍に力を宿す。
マミとほむらは、それぞれの銃の照準を対象に合わせる。
そして、コブラとまどかはお互い背中合わせの恰好になり、サイコガンと弓を構える。
ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
ほむら「…これで、終わらせる…!」
マミ「ええ… 魔女に… あんな姿になった、魔法少女を…放ってはおけないわ」
さやか「… あたし達の街は、あたし達が守らなくちゃ…ね!」
杏子「跡形もないくらいに… 吹き飛ばしてやるぜ!」
まどか「どんなに大きな壁でも… 必ず、超えてみせるっ!これからも!」
コブラ「…ようし、意気込みは良し、だ!派手な花火をぶっ放してやろうぜ!皆!」
コブラ「行けぇぇぇぇ――――――――ッッ!!!!!」
2つの刃の投擲。2つの銃弾の発射。そして、2つの光が同時に、ワルプルギスの夜へと向かって行く。
浮遊するビル群を物ともせず、それぞれが滅ぼすべき対象の元へと、真っ直ぐに。
そして… … …。
大きな爆発が起きた。
大きな光が辺りを包んだ。
それはまるで、嵐を吹き飛ばすかのような衝撃。
そして、それが止んだ時、その爆発の後には何も存在しなかった。
あれだけ街を包んでいた雷雲すら、そこには存在しない。
ただ一つそこにあったのは…吹き飛んだ雲の間から照らす、太陽の光。
その光が、まるで6人を称えるように差し込む。
ほむら「… … …」
コブラ「夜明け、ってのはいつ見ても良いもんだな、ほむら」
ほむら「… … … ええ。 …とても、綺麗」
コブラ「…ああ。 最高だぜ」
一筋の涙がほむらの頬を流れた。
まどか「終わった… 終わったんだよ!ほむらちゃん!ワルプルギスの夜を…倒したんだよっ!!」
ほむら「…!まど、か…」
思わずほむらに抱きつくまどか。
まどか「ほむらちゃん…!これで… これでようやく、ほむらちゃんの…っ!うう、っ…!ぐすっ…!」
ほむら「… … … ありがとう、まどか…」
肩に回されたまどかの手をぎゅっと握り返す、ほむらの手。
さやか「やったんだ… あはは、夢みたい…あんな大きな魔女を、倒せた、なんて…」
杏子「ようやく生きた感じがするな。今更ながら、随分無茶したもんだよ」
マミ「うふふ…でも、皆無事だったんだから、良かったんじゃないかしら」
杏子「…そうだな。 …あ?」
さやか「?どうしたの?杏子」
杏子「コブラは… どこ行きやがったんだ、あいつ」
マミ「…あら… 本当…」
レディ「… … …!」
コブラ「ようレディ、ただいま」
レディ「おかえりなさい、コブラ」
コブラ「心配したか?」
レディ「いいえ、ちっとも。だって、貴方の仕事だもの。 無事で帰ってこないはずがない、でしょ?」
コブラ「おーヤダヤダ。男心をちっとは分かってくれよ。心配した、なんて優しい言葉を求めてる時も俺にだってあるんだぜ?」
レディ「ふふ、考えておくわ。…さ、コーヒーを淹れておいたわ。船内で飲みましょう」
コブラ「嬉しいねぇ。帰るべき我が家と相棒と、最高のコーヒー。文句のつけようがない」
コブラ「それじゃ… ささやかな祝杯でも、あげるとしますか」
―― 次回予告 ――
ワルプルギスの夜も倒して、ようやく俺の肩の荷も下りたってところだな。お伽話ならめでたしめでたしで終わるところだが…ところがそうもいかないんだなぁ。
なにせ元の世界に戻る方法が見つからないときてる。これには流石のコブラさんもお手上げってわけ。どうしたもんかね。
しかし、ひょんな事から俺は元の世界に戻る事が出来るようになったわけ!いやー、めでたしめでたしで終われそう… って、毎度の事ながら、そう簡単にいかないわけだコレが。
最後くらい平和に終われないもんかね、全く、海賊のつらぁーいところよ。
次回、最終話【エピローグ さようなら、コブラ】で、また会おう!
10話終了です!ありがとうございました。
次回で最終回となります。ここまでお付き合いくださった皆様…本当にありがとうございました!みなさんのおかげでここまで続ける事ができました。
最後まで気を抜かずしっかりやっていきたいと思います…頑張ってくれ、コブラ!w
それでは、また逢おう!
クリボー「このSSともお別れか・・・寂しくなるな・・・」
ワルプル「キャハハハハハハハハ!! アハハハハハ!!」
クリボー「・・・よし!最後はワルプルで[田島「チ○コ破裂するっ!」]だ!!」
ワルプル「キャハハハ・・・ハッ!? キャー!イヤァー!!」
クリボー「このSSともお別れか・・・寂しくなるな・・・」
ワルプル「キャハハハハハハハハ!! アハハハハハ!!」
クリボー「・・・よし!最後はワルプルでオナ二ーだ!!」
ワルプル「キャハハハ・・・ハッ!? キャー!イヤァー!!」
>>天に構えたサイコガンを右手で抑え、その男はまどかとほむらに向け、不適な笑みを浮かべるのだった
不適じゃアカン
不敵や
乙
>>421 あわわ、ありがとうございます。誤字でした…。
1です!
お待たせを致しました…!待っていただいた方、遅れてすいません!
最終話の調整がつきましたので投稿をします。
ここまでお付き合いをくださいまして本当にありがとうございました…!完成までこぎつけられたのも皆様のおかげです。
それでは、よろしくお願いします!
ピピピピピ…
まどか「うぅ~ん…っ…」
カチッ。
まどか「…ふぁぁ…よく、寝たなぁ…」
まどか「… … …」
まどか「夢…見なかったなぁ…」
詢子「おーい、まどか起きてるか~?メシにするぞ~」
まどか「あ…はーいっ」
まどか(…えへへ…なんだか、いい一日になる気がするなぁ…)
最終話「エピローグ さようなら、コブラ」
まどか「うーん…」
詢子「ふぁぁ…おはよ、まど… …なんだ、またリボンの色、悩んでるのか?」
まどか「…あ、ママ、おはよう。ティヒヒ…みんなかわいくって…」
詢子「前から言ってるだろ?赤だって。 …ま、そこまで悩むんならいっそ両方持って行っちまえばいいんじゃないか?」
まどか「あ!そうだね…うん、そうする!」
詢子「決めたら朝食食べに行くよ。…あー、台風の低気圧がまだ残ってて頭痛いわー」
まどか「ママ…それ、単に飲み過ぎだと思うよ…」
詢子「はっはっは。…さ、行くぞ」
まどか「それじゃ、行ってきまーす!」
知久「行ってらっしゃーい!」
タツヤ「いったーっしゃーい!」
詢子「気を付けてなー!」
まどか「はーいっ!」
まどか(いつも通り、何の変りも無い朝…だったなぁ)
まどか(わたしは…ううん。さやかちゃんも、マミさんも、ほむらちゃんも、杏子ちゃんも…コブラさんも。みんな、あの戦いを生き抜いて…この街を守った、なんて…。実感ない)
まどか(でも…空は今日も晴れていて。清々しい空気を…胸いっぱいに吸い込める)
まどか(私は…魔法少女になったんだ)
まどか「…えへへ」
さやか「…なーに朝からにやついてるんだぁ?まどかー」
まどか「ふぇっ!?い、いつの間に…」
仁美「…いつの間にも何も、今ここまでまどかさんが歩いてきたのではありませんか?」
まどか「… … … 天狗の仕業」
さやか「何を言っているお前は」
さやか「しかし、実感ないよねぇ、まどか」
まどか「あ、さやかちゃんも同じ事思ってた…?実はわたしも」
さやか「うん。こんなふうに朝フツーに登校できるなんて、夢にも思わなかったもん」
仁美「…お2人とも、何のお話をされているのでしょう?」
さやか「! あ、あははは!いやぁ、あんな台風が起きた後でよく学校やってるなーって!学校吹き飛んでるかと思ってさぁ!」
まどか「そ、そうそう!そういう事なんだよっ!」
仁美「…また私に内緒のお話を… 不潔ですわー!」
涙を流しながらダッシュをして学校に向かう仁美。
まどか「… 行っちゃった。 …ところで、さやかちゃん。…仁美ちゃんと、恭介くんの事は…」
さやか「ああ、アレ?しばらくその話は抜きにしよう、ってお互いに話したの」
まどか「…?」
さやか「恭介のヤツ、今はリハビリの事しか頭に無いし。そういう所鈍感で嫌になっちゃうからさ。…仁美にも、かわいそうだし。だからしばらくこの話はやめて、友達として改めて…って話したの」
まどか「…すごいね、さやかちゃん。そういう事ズバっと言えるって」
さやか「うーん。前までのあたしだったら、無理だったかな? 一皮剥けた、って感じかな。スーパーさやかちゃん的な」
まどか「あはは」
さやか「お。前方に目標確認」
まどか「…あ、ほむらちゃんだ」
さやか「おっはよー、ほむら!今日も暗いぞー!どうしたー!?」
ほむら「…おはよう、まどか」
まどか「おはよっ、ほむらちゃん」
さやか「うおぉい!出会って即無視かいっ!しかもまどかまで!?」
ほむら「… … …」
まどか「… … …」
さやか「…おーおー、見つめ合って頬赤く染めあっちゃって…新婚初日かっての、あんたらは」
まどか「な、なにいってるのさやかちゃんてばっ…!て、ティヒヒ、…えと…い、一緒に行こ?ほむらちゃん」
ほむら「ええ」
杏子「よう」
まどか「!?杏子ちゃん!どうして…それに、その恰好…」
さやか「ウチの制服じゃん!…ま、まさかアンタ…」
杏子「今日からこの学校に転校してきたんだよ。拠点を本格的に移そうと思ってな。この方が好都合だからさ」
さやか「えええええっ!?」
まどか「あはは、杏子ちゃんのスカート初めて見た。すごく可愛いよ」
杏子「!? ばっ、ばっかやろ…!こっちだって恥ずかしいんだよ…!そういう事言うのやめろ…!」
さやか「あれー?制服違ってるんじゃないのー?男子用制服じゃなかったっけー?」ニヤニヤ
杏子「こ・の・や・ろ…!」
さやか「やるかこのー!!」
ほむら「…騒がしいわね」
まどか「あはは…でも、2人ともすごく嬉しそうだよ」
ほむら「… … …」
キーンコーンカーンコーン
まどか「あ!大変!授業はじまっちゃう!」
さやか「にゃんだとー」
杏子 「にゃんだとー」
お互いに頬を引っ張り合っている2人。
4人は学校まで駆けて行こうとするが…その前方を遮るように、1つの影が出てきた。
マミ「はぁっ、はぁ…!」
まどか「ま、マミさん!?」
さやか「どうしたんですか、そんなに息あげて…」
マミ「た、大変なの…」
杏子「魔女か!?朝っぱらから迷惑な野郎がいたもんだな」
マミ「ち、違うの!そうじゃなくて…!」
まどか「それじゃあ、一体…?」
マミ「コブラさんが…いなくなっちゃうの!!」
一同「えええええええええっ!?」
森林の中。タートル号の外で、コブラとレディは森林浴を楽しみながら、朝のコーヒーを啜っている。
コブラ「くぁぁぁあ…。やっぱり地球で感じる朝の光と空気が一番だね。過去の世界だとしても」
レディ「ええ。あれだけ風が吹き荒れたから、雲1つないわね」
コブラ「新鮮な空気を吸い込み、朝の森林浴。…なーんて健康的な生活かね。健康診断、一発オッケーだな」
レディ「元から何の問題も出てないでしょ?貴方の身体は」
コブラ「色々不具合が起きてるんだよ。特に最近、グラマラスな身体を見てないからな。精神的に問題アリだ」
レディ「…怒るわよ、かの女達」
コブラ「おおっと、オフレコで頼むぜ。 …それで、データは間違いないのか?」
レディ「ええ。何百光年か離れた先に、ブラックホールが発生したわ。周囲には何もない宙域なのだけれど…そのブラックホールのデータ、私達が吸い込まれた物と一致している」
コブラ「原因不明のブラックホールが再発…ねぇ。何か裏がありそうだが、まぁ、この話に乗っからないわけにはいかないな」
レディ「詳しい分析は付近でするけれど…元の世界に戻れる可能性は、極めて高いわね。行ってみる価値はあるわ」
コブラ「ああ。名残惜しいが、この世界ともさよならだ。忙しい海賊稼業に戻るとするかね」
レディ「でも…少し不安ね。かの女達…魔法少女。別れくらい言ってからの方がいいんじゃない?」
コブラ「俺の性分じゃない。…それに、もう俺の力は必要ない。だったら、この世界の役割は、かの女達に任せるとするさ」
レディ「…悲しむわよ、きっと」
コブラ「…乗り越えて行けるさ。可憐な魔法少女の闘いに、俺みたいな血生臭い男がずっと隣にいたんじゃ、絵にならない。別れを言えば余計辛くなる。…だろ?」
レディ「… … …ええ、そうね」
コブラ「そうと決まれば出発だ。俺の気が変わらない内にな」
レディ「それじゃあ、タートル号の調整をしてくるわね。数分したら発てると思うわ」
コブラ「ああ、頼んだぜレディ」
コブラを残してタートル号のコクピットに戻るレディ。
コブラ「… … …」
コブラは、何か思うような表情をしながら、葉巻の煙を青空に浮かべるのであった。
森の中を駆けていくマミ、まどか、さやか、杏子、ほむら。
まどか「ど、どうして急に…!?」
マミ「今朝…コブラさんに改めてお礼を言おうと思って、宇宙船のところまで行ったの…そうしたら…!」
さやか「元の世界に帰れるっ、て…!?」
マミ「…ええ、偶然聞いてしまったから、急いで皆のところに来たの…」
杏子「あのヤロー、何も言わないで帰るつもりかよ!」
さやか「でも…どうやって!?確か元の世界に戻る方法がないとか言ってなかったっけ!?」
マミ「…確かに、そう言っていた筈だけれど…」
まどか「… … …」
ほむら「… … …」
ほむら(…まどか…)
レディ「メインエンジン、反加速装置、制御システム、オールクリア。…それじゃあ、行くわよコブラ」
コブラ「…よろしくどーぞ」
コブラは葉巻から煙を吐き出し、苦笑いを浮かべた。
レディ「…タートル号、発… … …」
コブラ「…?どうした?レディ」
レディ「出発は遅れそうね、コブラ」
コブラ「んん? … … … ありゃあ」
タートル号のコクピットから、こちらに駆けてくる5人の少女の姿が見えた。
まどか「コブラさーーーーんっ!!!」
コブラ「あーあ。これじゃ恰好がつかないねぇ、参った参った」
コブラは頭をボリボリと?きながら、両手を大袈裟に上げた。
レディ「…ふふふ、そう言う割には嬉しそうじゃない?コブラ」
コブラ「言ってくれるなよ、レディ」
マミ「はぁっ、はぁっ…」
さやか「ま、間に合ったぁ…」
タートル号のハッチが開き、中から苦笑いをしたままコブラとレディが出てくる。
コブラ「おいおい、おたくら、学校が始まるんじゃないかい?無断欠席とは褒められないなぁ」
杏子「怒れるような性格もしてないだろ?お前の場合」
コブラ「ははは、ごもっとも」
マミ「…何も言わずに帰っちゃうなんて…寂しすぎるわ」
さやか「そうだよ!…それにあたし達、まだお礼も何もしてないよ!」
コブラ「したさ」
さやか「え?」
コブラ「久しぶりに、いい物を見せてもらった。…仲間と呼べる者の絆。そしてそいつが起こす奇跡。…俺が久しく忘れていたものを、思い出させてくれた」
まどか「…コブラさん」
コブラ「…まどか。お前さんの願い事が叶った結果かい?これは」
まどか「… … …はい」
コブラ「…全く。何でも願いが叶うっていう折角のチャンスをこんな事に使っちまいやがって」
ほむら「…!まさか…!」
杏子「…?どういう事だ?」
レディ「…!まさか、鹿目まどかの魔法少女になる願い…そのおかげで…!?」
まどか「…私、魔法少女になって、皆を助けられるようになれば…それだけでいいんです。…だから、その時の願いは…一番役に立つ人のために使おう、って」
コブラ「… … …」
――― ワルプルギスの夜との決戦の日。
ワルプルギスの夜へと向かって行くコブラと魔法少女達。
その後ろで、対峙をするまどかとキュウべぇ。
まどか「…キュウべぇ。私、魔法少女になる」
QB「…!」
まどか「願いは… コブラさん達に、元の世界へ戻る方法を与える事。…それだけだよ」
QB「たったそれだけかい?君には、宇宙そのものを作り変える力すらあると言うのに」
まどか「…それでも構わないって、思ってた。わたしが神様になれるなら…こんな世界、作り変えちゃえ、って」
まどか「でも…わたしはまだ、信じていたい。わたしを含めた皆が笑いあえて…信じあえる。神様なんていなくても、そんな世界が築ける、って」
まどか「…例え、コブラさんが…元あるべき場所に戻ったとしても。…『わたし達』魔法少女が、この世界を守れる。…そう信じていたい」
QB「…」
QB「君の願いは、エントロピーを凌駕した。本当に構わないんだね、まどか」
まどか「うん」
QB「それじゃあ…君の願いを――― 叶えよう――――」
そして、2人の間を眩い光が包んだのだった。
QB「そしてまどかは、魔法少女となったというわけさ」
さやか「アンタ、いつの間に…」
まどか「わたし達の願いは、コブラさんのおかげで全て叶った。…でも、コブラさんとレディさんの願いが、まだ叶っていない。…そう、だよね?」
レディ「…鹿目さん…」
まどか「だからせめて…。…これが、わたしの恩返しだと、思うから…」
コブラ「…全く… あんな弱々しかったヤツが、いつの間にかこんなはっきり物事を決められるようになるとはな」
コブラはまどかに近づくと、まどかの頭にポン、と右手を乗せた。
コブラ「…ありがとよ、まどか」
そして髪型がぐちゃぐちゃになるほど、頭を撫でる。
まどか「ティヒヒ」
さやか「宇宙の果てにブラックホール…」
マミ「その中に再び入れば…私達の前に現れた時と、同じ現象が起きて…コブラさん達は元の未来へ帰れる…。…そうなの?キュウべぇ」
QB「ブラックホールが、まどかの願いによって生じたものだと言う事は間違いないね。まどかの願いは、コブラが元の世界へ戻る方法を『与える』事。だから、その中へ入るのは自由というわけだ」
マミ「…でも、貴方は行くのでしょう?…コブラさん」
コブラ「どんな人間にも、帰るべき場所はあるのさ。…それに、おたくらは俺が思ったより遥かに成長した。これなら俺がいなくなっても安心だ」
杏子「師匠気取りかよ。…気に入らねェなぁ」
コブラ「…杏子。初めにお前さんに斬りかかられた時はどうなるかと思ったが…ようやく人前で素の自分が出せるようになったみたいだな」
杏子「…どういう意味だよ」
コブラ「さぁてね。ま、とにかく、さやかの面倒をしっかり見てやってくれよ」
コブラはそう言うとにぃと悪戯っぽく笑った。
さやか「ちょ、ちょっと、どういう意味よ!なんでこいつに面倒みてもらわなきゃならないワケぇ?!」
杏子「…ま、確かに面倒見甲斐がある後輩かもしれねーな」
さやか「うがあああああ」
コブラ「さやか」
さやか「何さっ」
コブラ「お前さんの明るさなら、どんな絶望も払拭できる。笑顔を忘れるなよ。アンタの最高の魅力だ。…彼氏とのデートの時にも、な」
さやか「なっ…か、彼氏ってなによ…恭介とはまだ別に…!」
コブラ「恭介とは一言も言っていないんだがね俺は」
さやか「うがああああああああああ」
まどか「あははは」
コブラ「マミの作るお菓子や紅茶は最高だったぜ。俺の相棒に勝るとも劣らない。おかげで甘党になるところだった」
マミ「…有難う。光栄だわ」
レディ「珍しいわね。お酒と料理以外でそんな事言うなんて」
コブラ「おいおい、グルメなんだぜ俺は。何に対しても、だ。 …これからは、お前さんが皆の先頭に立つんだ。しっかり頼むぜ、マミ」
マミ「ええ。…先輩だものね。しっかり舵を取るつもりだわ」
コブラ「ああ。ついでに後輩のバストやヒップの向上計画に是非とも取り組んで欲し… いでえーーーーっ!!!」
マミに足を踏まれ、レディに頭を叩かれるコブラ。
マミ「…こうしてツッコミを入れるのも最後なのね。少し…寂しいわ」
レディ「同胞をなくしたような気分だわ」
コブラ「…ああ、全く寂しいね、ホント」
頭を摩りながら、足に息を吹きかけるコブラ。
コブラ「…ほむら。…これからも…まどかを、いいや、魔法少女達を守る存在であってくれよ」
ほむら「… … …」
コブラ「自分だけで苦労すればどうにでもなる…。綺麗事かもしれないが、そんな事は無いんだ。…もう時間を繰り返す必要も無いんだしな」
ほむら「… … …」
ほむら「そう、ね…」
コブラ「まだまだ、まどかは頼りない。かの女を引っ張っていくのは君だ。…よろしく頼むぜ」
まどか「た、頼りない…かぁ…。…うう、少しショック」
ほむら「…ええ、解かったわ」
コブラ「…まどか。お前さんの心と力があれば、全ての絶望を払拭できる。そこのエイリアンとも仲良くしていってくれよ」
QB「インキュベーターと呼んで欲しいのだけれどね」
まどか「…はい。…わたし、頑張ります!」
コブラ「ほむら、まどか。誰かを、何かを守るために、犠牲はいらない。 必要なのは、守りたいという意志だ。結果は関係ない」
コブラ「だから、これからも精一杯学生生活を満喫して、いい女になって、未来の俺のために美人の先祖を作っておいてくれよ?」
ほむら「… … …」
まどか「あはは…動機は不純ですね…」
コブラ「…お。…いい物があったぜ。…まどか」
まどか「?」
コブラは、ポケットから1つ、ガーベラの花を取り出した。それをまどかの頭につける。
コブラ「タートル号でコーティングしておいたモンさ。枯れる事なき希望。…なぁーんてね」
まどか「わぁ…有難うございます!…あ」
そして、まどかの髪を結ってあるリボンを解き、手にするコブラ。
コブラ「俺は、君達の事を忘れない。…交換しておくぜ」
まどか「…はい。…私も…忘れません」
コブラ「それじゃあ…行くとするか。こういうのは長引かせるもんじゃないね。どんどんこの世界に居たくなってくるぜ」
さやか「…いいんだよ。いつまでも居ても」
コブラ「そうもいかない。人は皆、あるべき場所へ戻る。そいつに逆らっていちゃあいけない。自然の摂理ってやつさ」
マミ「…そう、ね。…もしも…もしも、もう一度逢えるのなら…また、この世界に来てくれるかしら?コブラさん」
コブラ「もちろん!女の子の成長過程の観察は俺の趣味の一つなんだ」
杏子「大した趣味だな。…ま、その時は熱烈に歓迎してやるよ」
コブラ「楽しみにしてるぜ。…その時は、何も言わずに笑って待っててくれよ?」
まどか「…勿論ですっ!」
レディ「…それじゃあ、コブラ。…行きましょうか」
コブラ「ああ。そうだな…」
コブラ「それじゃあ、愛しき魔法少女諸君!…元気でな! …あばよ」
上空にゆっくりと浮上をするタートル号。
エンジンに火がついたかと思うと、あっという間に空の彼方へと飛び去ってしまう。
その様子を、ただただ見上げる5人の魔法少女。
まどか「…行っちゃったね」
さやか「…何か、あっという間だった…な。今まで」
マミ「辛いものね。…お互い、住む世界が違う、というのは…」
杏子「落ち込んでても仕方ねーよ。…アタシ達はアタシ達で、精一杯生きていく。それしかないだろ?」
まどか「…そうだね。… … …」
さやか「なーに落ち込んでんのよまどかっ、あたしの嫁は笑顔が一番可愛いんだぞぉ?」
そう言いながらまどかに抱きつくさやか。
まどか「わ、わ…っ!んもぅ…分かったよ、さやかちゃん…」
マミ「うふふ…それじゃあ、行きましょうか?」
杏子「そうだな。行くぞ、まどか」
まどか「…うん…。 …?ほむらちゃん?」
ほむら「… … …」
まどか「どうしたの?ほむらちゃ…」
カチリ。
その時、大きく時計の秒針の音が聞こえた。
ほむら「…え…!!??」
それは、暁美ほむらが幾度となく経験をした感覚。
全ての時間が流れを止め…そして、逆戻りをしていく。
時間が、巻き戻っていく…その感覚――――。
ほむら「そんな…!私は時間を戻そうとは思っていない!…どうして…!?どうしてなの…!?」
しかし時間は非常なまでに崩れ、ほむらの意識は暗闇へと落ちようとしていた。…元の、自分が病室へといる、あるべき時間へと。
ほむら「どうして…っ!!??」
その時。自分自身の声が、暗闇の中で響いた。
QB『――― 君は、どんな祈りでソウルジェムを輝かせるのかい?』
ほむら『私は―――』
ほむら『私は、鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守る私になりたい―――』
ほむら「…!」
ほむら(…そう、だったの…)
ほむら(この結果は…彼女を、まどかを【守る】結果には繋がらなかったのね)
ほむら(わたしが時間を巻き戻せる限界は、ここまで…。これ以上時間が進めば、まどかが魔法少女になる【後】へしか戻れなくなる)
ほむら(そして…このまま時間が進めば、再び私達は…滅んでしまう。…そういう事…)
ほむら(… … …)
ほむら(それに…私は、この世界を望んでいないのかもしれない)
ほむら(まどかが…【皆に】微笑む…この世界では…)
ほむら(数多の時間の中で巡り合った、1人の男。…可能性はゼロに近くても、こんな時間も確かに存在はしていた)
ほむら(それが、ワルプルギスの夜すら超えさせられる。…そんな希望がある、世界)
ほむら(…いい夢を、見させて貰ったの。…だから…)
ほむらは、病室で目を覚ます。
カレンダーは、見覚えのある日にちで止まっていた。
ほむらは傍らのテーブルに置いてあった眼鏡をそっと手にすると、それをかけた。
ほむら「…コブラ。…有難う。希望は、存在する。それを思い出させてくれて」
ほむら「…今度こそ、私は…この世界で、彼女を助けてみせる」
ピピピピピ…
まどか「うぅ~ん…っ…」
カチッ。
まどか「…ふぁぁ…よく、寝た…」
まどか「… … …」
まどか「…すごく、悪い夢見てた気がするなぁ…」
まどか「…歯、磨きにいこ…」
まどか「おはよ、ママ」
詢子「おう、おはようまどか。…うぅん?」
まどか「…?どしたの…?」
詢子「…それ、誰に貰ったんだ?…まさかぁ、男の子からかぁ?」
まどか「な、なに?何のこと…?」
詢子「今時花の髪飾りねぇ。ロマンチックだとは思うけれど、さすがにチョイと幼すぎないかな」
詢子は少し笑いながら、まどかの頭から1つの白い花を取り出した。
まどか「え…あ…?…??なんでだろ…?」
詢子「…覚えがないのか?…じゃあ…まどかの部屋にあったのかな?うーん、でもガーベラなんて花瓶にさしておいたっけな」
まどか「… … …」
まどか「でも…すごく、綺麗な花だね」
コブラ「ふぁぁ…よーく寝たぜ」
レディ「おはようコブラ。ふふ、久しぶりにぐっすり寝れたようね」
コブラ「ああ、このところ退屈なくらい平和だからな。…おかげで変な夢見ちまった気分だ。なんだったか忘れたが」
レディ「貴方らしいわね。…あら?コブラ」
コブラ「んん?」
レディ「…コブラ。平和を謳歌するのもいいけれど、そういう物を私の前に出すのはどうかと思うわね」
コブラ「…?何の事だ?」
レディ「貴方の首にかかっている赤いリボンの事よ」
コブラ「…。本当だ。…おかしいな、見覚えのないリボンだ」
レディ「まぁ、覚えがないのにリボンを貰ったの?」
コブラ「ご、誤解だよレディ。はは、えーと…ホントになんだっけか」
そう言いながら、慌ててポケットにリボンを仕舞い込むコブラ。
コブラ(…しかし、どこか懐かしい香りだな)
その時、タートル号のレーダーのアラート音が鳴る。
コブラ「…!なんだ!?」
レディ「…! コブラ、前方に海賊ギルドの艦隊よ!」
コクピットから見えるのは、ギルドの大型戦艦が幾つも宙域に待機する光景。
そして、モニターに映し出される男の姿。
ボーイ「久しぶりだなコブラ。会いたかったよ」
コブラ「!!クリスタルボーイ!お前の仕業か」
ボーイ「くくく…お前さんがこの辺りの宙域にいるという情報を掴んでね。首を長くして待っていたところだよ」
コブラ「大層な歓迎だぜ。パレードでも開いてくれるのかな?」
ボーイ「軽口もここまでだ。…この宙域が貴様とタートル号の墓場だ!」
レディ「どうするの!?コブラ…」
コブラ「… … …」
コブラ「上等じゃねぇか。売られた喧嘩は買う主義。ここは…正面から突破だ。タートル号の性能を見せてやろうぜレディ」
レディ「了解。連中に一泡吹かせてやりましょう」
コブラ「よろしくどーぞ!…覚悟しろよ、ガラス人形!」
コブラ「俺は…不死身のコブラだからな!!」
艦隊へと単独で突っ込んでいくタートル号。
しかし船内のコブラの表情に不安はない。
葉巻を銜えたその顔は、自信に満ち溢れた不敵な笑みだった。
今までお付き合いくださり本当に有難うございました!
正直自分でも完成まで出来るとは思っておらず(失礼な話ですがw)ここまで書けた事に驚きです。
自分の書きたかったものは表現できた…とは思っておりますが、稚拙な文章と表現力で申し訳ございませんでした本当に。
『形』となり完成まで漕ぎ着けられたのも本当に皆様の温かいコメントや応援が頂けたからと思います。
何度も繰り返すようですが、本当に有難うございました。
以下、可能ならいただいた感想や質問にコメントをしていきたいと思うのですが…大丈夫でしょうか?(汗
ここまで読んでいただいたご感想や、不明な点、悪かった点などをお教えいただけるとありがたいです。
それでは、本当にありがとうございました!!
乙
コブラ最高にかっこいいな!
乙
コブラがかっこよすぎて
ヒューッ!としか言えねえ
ちなみにこの結末はどんな狙いでいつから考えてた?
普通のクロスなら放り込んだキャラの活躍でハッピーエンドを導くってのが
スタンダードだから新鮮ではある
乙っした!
まどかが契約しちゃった時には「えー」と思ったけど、なるほどそう来たかと最終話で納得させてくれるとは。
憎い作りですな!
ほむループ後の、まどかの花の髪飾りとコブラのリボンで、これからアニメ本編とは異なる結末になるのかも・・・
という予感を持たせた引きも綺麗だったですよ。
なんにせよ、完走おめでとうございました!!
>>454さん
ありがとうございます!
コブラさんをかっこよく見せるのに本当に苦労した作品でした…(汗
そう言っていただけると幸いです!
>>455さん
ありがとうございまヒューッ!
ラストについては、この作品を作り始める段階で考えておりました。間を考えず、「こう始めて、こう終わろう!」というのを当初から考えており、無事にその結果に辿り着けた形ではあります。
まどマギのラストはハッピーともバッドとも両方とれるラストだったので、このSSもそれに寄せてみたいなぁー…という欲望の結果となっておりますw
>>456
ありがとうございます!おかげさまで完走できましたー!
憎い作りとは…そ、そんなお言葉をいただけるとは本当に光栄です…。
そうですね、本編と同様、これからどうなるかわからない、という結果がやはり二つの作品の締めにふさわしいかと思いこの形にしました!
乙
コブラのお陰で問題が解決するわけじゃなく、
希望ときっかけを与えて終わるってのがすごくよかったわ
原作でもコブラがいろいろ手助けはするけど、
結局最後はゲストキャラとかヒロイン自身が頑張ってるもんな
乙!
なるほど、ほむらがまどかを守れなくなることで願いと相反しちまったのか
描写から見てこのSSでは一つの時間軸を巻き戻してるって設定でおk?
まどか契約でえーってなったけど…
こうするかって…
って他の人と同じことしか言ってねえな
レディがちょこちょこ良いキャラしてた
乙
>>461
他の人と感想が似るってそれはとっても作品の完成度が高いんだなって
クリ「感動のフィナーレ!最後は俺の爆発[田島「チ○コ破裂するっ!」]だ!」
クリ「オオオーッ!!」シュパアアァ
クリ「感動のフィナーレ!最後は俺の爆発オナ二ーだ!!」
クリ「オオオーッ!!」シュパアアァ
個人的には、時間の巻き戻しには、不満が残ります。
これだけやって、ほとんどすべてが「無かった事」になるなんて……ほむほむが報われない。
次の時間軸で成功させるにしても、コブラ抜きでやらなきゃ、ですし。
原作のエンドを『バット』だと思っているから、かもしれませんが……。
でも、面白かった! なにより、コブラが かっこいい! いちいちかっこいい!
完結してくれて良かった!そして、楽しい時間をありがとう!
乙でした!
今回の周回はまどか契約でパーだけど、コブラの精神と爪痕が残っているから無駄じゃないよってエンドじゃないのかこれ
あかん。鳥肌立ったぜ……
乙
乙ヒューッ!
まあこのエンドだろうなとは思ったwwww
これもほむらが経験したひとつの答えだよ
でもほむらの願いである「出会いをやり直し、まどかを守れる自分になる」という正解には当てはまらなかった
しかしこの誤答があったからこそ、ほむらもまた前に進むための希望になった
だからこれも「HAPPY END」じゃないかな
ほむら自身も
>ほむら(それに…私は、この世界を望んでいないのかもしれない)
>ほむら(まどかが…【皆に】微笑む…この世界では…)
こんなこと言っちゃってるしね
何はともあれ面白かった
またどっかで会いたいよ
ヒューッ!乙
同じようなクロス書いてるから見習いたい
なんとも綺麗な終わりかた。
いい風来坊だったなあ。
魔法少女の契約時の願いはどんな形であれ必ず成就するものだから、
悲観する必要ははないと思うぜー。
乙
ヒューッ!
おおう、こんなにコメントが… 本当にありがとうございます!
>>459さん
ありがとうございました!
そうですね、そういう部分は原作基準でいった部分はものすごーくあります!
特に好きなエピソードが「6人の勇士」編なので…wミスティやゴクウのようにまどマギ側の魅力も出していきたいなぁ…と常々思っておりました!
>>460さん
ありがとうございました!
はい、時間軸に関しては同時間…という書き方をしましたが、こちらとしては『ちょっとだけパラレル』な感じで書いていました。
ソウルジェムの存在が確認された場合の未来の時間…という事で今回巻き戻された時間ではどういう未来となっているかは、謎…ということで一つ…w
>>461さん
ありがとうございました!
一応まどマギなので、ラストにはまどかも魔法少女にしなきゃ…ああでもそれじゃハッピーエンドが…あわわ(汗)という切羽詰まった状況がしばらく続いた結果でしたw
レディ、うまく表現できていたとお言葉をいただけて何よりです(泣)マミさんのレディ化がどんどん進んでいったので…
>>462さん
ありがとうございました!
さ、作品の完成度…うう、なんというお褒めのお言葉…光栄です。
>>463、464さん
時々、このスレはコブラよりクリボーの方が人気なのではないだろうかという錯覚を覚えますw
クリボー「今日は無礼講だ!ティッシュのお代わりだぜ!」
>>465さん
ありがとうございました!
そうですね…自分も、まどマギのラストは『バッドエンド』だと思っておりました。だからこそ普通にハッピーエンドじゃ駄目だなぁ、というプレッシャーがかなりありました…ww
次に繰り返す時間がどういう結果をもたらすのかは分かりません。ひょっとしたら違う結果が待っているのかも…という少しの希望を、ほむらと同様の気持ちで作者も感じて書いた所存でございますっ!
本当に、最後までお付き合いくださいましてありがとうございました…!
まぁまどかを契約させなきゃって思うってことはまどかにも活躍させなきゃって思ってるってことだから、そういう人から見たらまどか消滅エンドはバッドエンドだよね
面白かった乙。
次なる地平でコブラの精神を受け継いだほむほむが勝利を手に入れることを願う。
>>466さん
ありがとうございました!
そうですね、巻き戻した前の時間はほむらにとってはすべて無駄ではないのと同様に、今回はまどかとコブラにもある程度欠片を残した…という結果になります。
この時間軸で何が起こるのか…それはあなたの作り出すお話次第!って事で…w
>>467さん
ありがとうございました!
鳥肌なんてたててると、野生のコブラに食われちゃうぞ!
>>468さん
ありがとうございまヒューッ!
おおう、見破られていましたか…w そうですね、原作がハッピーともバッドともとれる終わり方でしたので、こちらもやはりそれに近い終わりが相応しいのでは…と考えました。
ご指摘いただいた文章は、まどほむ推奨派たる結果です(何)
はい!これで終わりにせず、SSも続けていきたいと思っております!またお会いしましたら是非よろしくお願いします!
>>469さん
ありがとうございまヒューッ!
SS書きさんですかっ!み、見習うなんて滅相もないです。
是非是非お書きしているSSを教えてくださいっ!
>>470さん
ありがとうございました!
コブラ原作で、結構異世界に飛ぶ話が多いのでこのお話でも『いい風来坊』の部分を出せたなら本当に幸いです…!
そうですね、ほむらの願いもきっと違う形で成就される世界が必ずあるはず…です!
>>471さん
乙、ありがとうございます!これからもがんばります!
>>472さん
ありがとうございました!
見ろよあのコメントを!まるで鋼みてぇだ!
>>473さん
ありがとうございました!
はい…。原作アニメのラストは、不覚にも泣いてしまいましたし…消滅エンドは悲しすぎましたw
面白かったと言っていただけるのが本当に幸いです。そうですね、コブラの生き様を受け継げるほむらの存在は、次の時間でも大きな影響となると思います。
ヒューッ!今まで見たまどSSの中でサイコーの作品だったぜ、乙!!
>>478
ちょww自己レスしてるぞwwww
ヒューッ!
完結するとどうなるんだ?ウサギとワルツでも踊るのか?
ウサギとワルツ…
そうだ!時空を超越するあのウサギマシンなら、またコブラを見滝原にぶっ飛ばす事が出来るかもしれん!
>>482
それだ!
※但し、一歩間違えると泥酔した造物主が作ったような世界に放り出されます
たしか世界を渡れる宝石とか持ってたなかったっけ?蝶々仮面が持ってた奴
スゲー面白かったよ!
ぐわああ、安価ミスを…
訂正>>478 「×473さん ○>>475さん」 です、申し訳ありません…!
>>480さん、ありがとうございました!
>>479さん
ありがとうございました!
そ、そんな賞賛の言葉を頂けるとは…なんと言っていいものか、いやはや、本当にありがとうございます!(汗
他のまどSSも沢山参考にさせていただき、精進していきたいと思います!
>>481さん
完結するとどうなる?知らんのか、日が昇る。
シバの鍵編も名作でしたねぇ、ある意味異なる2つの物語が絡み合うクロスものだった…なんて感じもしています。
>>482さん >>483さん
コブラ「またあのウサギと追いかけっこぉ?冗談じゃない!そういうのはドレスを着た美少女のお仕事さ」
とはいえ、異次元にぴょんぴょん飛んで行けるウサギを使ってまどマギとコラボ…というのを実は考えておりましたw
ただ、知名度が少し低めのエピソードというのもあり今回の形になってしまいましたが…。
>>484さん
どうでしたっけ…!漫画、友人に貸しっぱなしで…読み返さないと…!(汗
>>485さん
おお!ありがとうございます!
一読させていただきましたっ!残念ながら元ネタが分からなかったのですが…(汗
台詞回しがスタイリッシュで凄いですね…!それに更新ペースが…早い、早すぎる!尊敬します…(汗
教えてくださってありがとうございました!ひそかに張り付きたいと思いますw
>>486さん
ありがとうございます!
そ、そう言っていただけると本当に有難いです…。自分の書いたモノが人にどう映るか、というのが本当に不安でしたので…。
乙!
このほむらならコブラの助け無しでも頑張っていけそうだ……
次回作なんか書く予定はあるのかしら
ヒューッ!!
でもほむらが過去に戻っても別な時間軸が生まれるだけなんじゃ?
乙!
へいマスター、>1にタルカロスをおごってやってくれ!
それにしてもエレ速はやすぎんだろ
次回作はマミさんが主人公でコブタ…だろ?
あれ?こんなじかんにだれだろう?
決まった! >>495のやつマミさんを本気で怒らせやがった!
>>491
元々ある並行世界を渡ってる移動説と、ほむらが戻った所から分岐する分岐説がある
ひねてったがちゃんと昇華したラストだった。
乙ヒューッ!
これで終わらせたらみんな魔女化するだろ、と思ったらちゃんと閉めてた。
最後の最後で逆転するのは巧かったね。
>>490さん
ありがとうございました!
そうですね、唯一の引き継ぎを行っている人物でありますので、かの女の行動がどんな結果を生むのか…とご想像いただけると助かります!(何
次回作ですか!とりあえず自分は地元で細々とオリジナル小説で同人誌を作っておりますので…またそれが落ち着けば、と思っております。…特撮が好きなのでそっちでできたらなぁ、なんてwまどマギやコブラもまた書きたくてうずうずしてますw
>>491さん >>497さん
ありがとうございました!
そうですね…こちらのSSとしては497さんが仰っている「分岐説」に寄っていますかね…。運命の決定している時間軸だとしても、ほむらの行動でそれを捻じ曲げられるという前提は存在すると思います!
>>494さん
ありがとうございました!
タルカロスとかホントにどっかのコンセプトバーとかで再現してくれないかしら…!wごちになります!
って、ま、まとめサイトにのってるううううう!!!ありがとうございます、言われて気づきました(汗)
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません