玄「次鋒戦と副将戦が無くなりますのだ」(918)

【閲覧注意】【安価】


黒服「こちらが、このスレの注意事項でございます」


1:グロ・エロ等の、過激な表現が含まれる可能性があります。

2:各キャラの性格が、原作と大きく異なる可能性があります。(キャラ崩壊)

3:胸糞・鬱展開になる可能性があります。

4:物語の途中で、安価を使用する予定です。

5:安価の結果によって、キャラの心情が唐突に変化する可能性があります。

6:安価の結果によって、物語に矛盾が生じても、>>1は一切の責任を取りません。

7:物語が迷走し、制御不可能な状態に陥る危険性があります。でも責任はry

8:>>1は遅筆です。



黒服「以上の事を許容できない方は、そっとスレを閉じてください」

黒服「安価についての詳細は、後ほど、それを使用する際に説明致します」

黒服「前作タイトルとの兼ね合いから、見栄えを考慮し、
   タイトルに【閲覧注意】【安価】の文字は入れない事にしました」

黒服「ここは、〝咲〟と〝B級ホラー〟が好きな人の為のスレです」



◆B級ホラーとは?◆

理由も無く、何故かいきなり、人が殺され始める。(理屈じゃどうにもならない)

主人公っぽい奴が、唐突に死ぬ。(え、お前、そこで死んじゃうの?)

そして、それまで空気だった奴が頑張り始める。(お前が主人公だったのかよ!)

意味ありげに現れる、新たな登場人物。(実際には何の意味も無い)

だらだらと長引く、中身の無い、無駄な会話。滑るジョーク。(聞く価値無し)

脈絡も無く、突然、始まるエロシーン。(とりあえずサービスシーン入れとけ的な)

おっぱいポロリ。(シリコン入れ過ぎいぃぃぃぃィィィ)

消化されない、数々の投げ遣り的な伏線。(視聴者のご想像にお任せします)

最後の透かしっ屁。(死んだ筈の敵が何故か復活して現れ驚かせる)

謎が一切、解明されぬまま、強引にエンディング突入。(打ち切りエンド)

◆  ◆  ◆  ◆


黒服「考えるんじゃあない! 感じるんだ!」

黒服「このスレは、そんなB級ホラーを目指しております」

黒服「原作アンチ?」

黒服「好きな子が泣き叫ぶ姿に、興奮する変態さんもいるんですよ?」ゲス顔



前スレ
咲「次鋒戦と副将戦、無くなっちゃうんですか?」
咲「次鋒戦と副将戦、無くなっちゃうんですか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365240742/)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1366523589

阿知賀女子学院 麻雀部 部室


強い西日が差し込む、麻雀部部室。
扉が開き、部長の灼が入ってきた。


穏乃「あ、おはようございます、灼さん」

宥「灼ちゃん、おはよう~」

玄「おはよ~、灼ちゃん!」

灼「おはよう、みんな。憧はまだ来てない?」

玄「うん」

灼「そう……」

穏乃「晩成の友達と、買い物に行くって聞きましたよ」

宥「今日は、部活、本当はお休みの日だったしね……」

玄「憧ちゃん、来るかなぁ?」

灼「一応、遅れるけど来るって、メールでは言ってた」

穏乃「あ、そうだ! 言い忘れていたんですけど……」
   
灼「ん?」

穏乃「灼さん、私、明日は部活に来れないです」

玄「明日は、確か、穏乃ちゃんのお父さんの命日だっけ?」

穏乃「……はい、父の三回忌です……。
   それで、朝から母の手伝いをしないと……」

灼「ん、分かった」

宥「はい、灼ちゃん、あったかいお茶……」

灼「ありがとうございます、宥さん」

宥「いえいえ♪」


四人は椅子に座り、宥の淹れた紅茶を啜る。
それから少しして、再び部室の扉が開いた。


憧「ちょっと灼さん、一体どういう事ですか?」


部屋に入るなり、憧が不機嫌な様子で、灼に詰め寄る。


憧「今日は部活、休みの筈でしたよね?」

憧「それなのに、いきなりメールで緊急招集って……」


玄「憧ちゃん、落ち着くのです!」

宥「とりあえず、お茶でも飲んで……ね?」

穏乃「このクッキー美味しい!」ガツガツ



憧「……頂きます」



憧も席に着き、用意されたカップを口に運ぶ。
軽く一息吐いた所で、宥が灼に話を切り出した。


宥「ところで、今日の集まりは……」

灼「私にも分からない……」

玄「んんっ?」

憧「どういう事ですか、それ……」

灼「みんなに連絡する少し前に、
  突然、ハルちゃんからメールが来て、
  必ず全員で、この部室に来るようにって……」

そう言うと、灼は携帯を取り出し、メールの内容を皆に見せた。


===============

From:ハルちゃん

Sub :あらたへ

本文

ぜんいん ぶしつに よんで 

かならず あつめて ください

===============


玄「うわわっ……」

憧「何よこの文章……」

穏乃「本当に赤土先生が……?」

宥「確認した方がいいんじゃ……」

灼「メールしたけど、返事は来なかった。
  電話も、留守電のままで繋がらない」


室内に不気味な沈黙が流れた。

憧「……ハルエの悪戯って可能性は?」

灼「どうかな……」

玄「うーん、赤土先生は、面白い人だけれど、
  この様な悪ふざけは、しないと思うのです」

灼「確かに、休日に呼び出すのは、流石にやり過ぎだと思……」

宥「そうだよねぇ……」

穏乃(赤土先生……)


憧「……」

灼「……」

玄「……」

宥「……」

穏乃「……」


皆、怪訝そうな顔付きで口を噤む。


暫しの沈黙の後、不意に、部室の扉が〝ギィィッ〟と鳴った。


穏乃「赤土先生っ!?」


穏乃が、椅子から立ち上がり叫んだ。
皆の視線が、開き掛けた扉に集まる。


穏乃は、無意識の内に、扉の方へと駆け出していた。



黒服サングラスの男達「失礼します」


黒服 「……」

黒服2「……」

黒服3「……」


サングラスを掛け、黒いスーツに身を包んだ、3人の男達。
その屈強な体躯からは、絶対的な威圧感が発せられている。


穏乃は驚き、その場で激しく尻餅をついた。
すぐに立ち上がろうとするも、足が竦み、思う様に動けない。


玄と宥は、得体の知れない来訪者に恐怖し、体を震わせている。
憧は平静を失いつつも、現状を把握しようと、思考を巡らせていた。


黒服の男達は、部室の入り口付近に立ったまま、微動だにしない。
そんな彼等に対し、最初に声を上げたのは、部長の鷺森灼だった。


灼「……何か御用ですか?」

男達の視線が、一斉に灼の方へと向いた。
しかし、彼等は、灼の問いに答えようとしない。
無表情のまま、ただ、じっと灼を見詰めている。


玄(灼ちゃん……っ!)


異様な空気が、部室に流れた。


灼「用が無いのなら、お引取り願います」


少し声を震わせながらも、ハッキリとした声で灼は言った。
そして、穏乃の傍へ寄り、しゃがみ込んで手を差し伸べた。


灼「大丈夫、穏乃? 立てる?」

穏乃「は、はい、灼さん」


穏乃は灼の手を握り、ゆっくりと二人は立ち上がった。


穏乃(灼さんの手……震えてる……)


灼も、他の子達と同様に、恐怖を感じていたのだろう。
しかし、責任感の強い灼は、部長たる態度を貫き通した。


小柄な少女に似合わぬ、鋭い眼光で、灼は、黒服の男達を睨み付けた。

黒服「鷺森灼様、高鴨穏乃様、新子憧様、松実玄様、松実宥様」


灼 「!?」

穏乃「!?」

憧 「!?」

玄 「!?」

宥 「!?」


それまで無言だった黒服達の中の1人が、唐突に口を開いた。


黒服「以上、5名で、間違いありませんね?」


灼「……そうですが、何か?」


黒服「申し訳ございませんが、もう少々お待ちください」


灼「……??」


黒服は5人に対し、丁寧に、深々と頭を下げた。
その紳士的な態度から、敵意は全く感じられない。


玄「び、びっくりしたのです……」

宥「う、うん、そうだね……」

憧「一体なんなのよ、もう……」


緊張の糸が解れ、玄、宥、憧は、大きな溜め息を吐いた。



穏乃「……」

程無くして、新たに、3人の黒服達がやってきた。

その内の2人は、超特大のモニターを、部室へと運び入れている。
そして、皆に画面がよく見えるであろう場所に、それを配置した。

もう1人は、黒い〝岡持ち〟の様な物を、片手に持っている。
室内を見渡した後、部屋の中央にある雀卓の上に、それを置いた。


それらの作業が終わった事を確認し、
リーダー格の黒服が、5人に向かって話し始めた。


黒服「突然ですが、今日は皆様に、重要なお知らせがあって参りました」


灼「お知らせ……?」


黒服「貴女方の中から2名を、〝生贄〟として選んで頂きたいのです」


室内の空気が凍りつき、皆に戦慄が走った。


灼「っ!?」

憧「はっ……?」

玄「えっ……?」

宥「なに……? どういう事……?」


これは、決して冗談などではありません、黒服は、そう付け加えた。
その口調、雰囲気から、ただ事ではないと、皆、本能的に直感した。


穏乃「なんだよ……なんだよそれ……全っ然、意味分からないしっ!」

黒服「……」


黒服「貴女方5名の内、2名に死んで頂く、という事でございます」


宥「ひっ……」ビクッ

玄「そ、そんな……」


黒服「その2名は、我々が提示するルールに則り、貴女方自身で決めて頂きます」


黒服「理解して頂けましたでしょうか?」


穏乃「そういう事を言っているんじゃあないっ!」


黒服「?」


穏乃「なんで、私達が……私達が死ななくちゃならないんだよっ!」

憧「そ、そうよ! 勝手な事、言わないでよっ!」


穏乃が叫ぶ様に言い放った後、続けて憧が、震えた声で言った。


黒服「……」


黒服「貴女方が納得しようがしまいが、そんな事は、どうでも良いのです」


穏乃「なっ……!」   



黒服「これは、世界改変における、魂質量調整の為の、決定事項ですから」

憧「はぁ? 何、言ってんのあんた……」

玄「世界……改変……???」

宥「どういう事なの……?」


黒服「それを詳しく解説した所で、貴女方は決して納得などしないでしょう。
   時間の無駄ですから、生贄選出のルール説明を始めたいのですが……」


穏乃「ふ、ふざけるなっ!」

憧「私達は、あんた達の言い成りになんか、ならないわよ!」

灼「……仲間を生贄になんて、絶対にしない……っ!」



黒服「……ふぅ。やはり、こうなってしまいますか……」



軽く溜め息を吐いた後、黒服は、モニターに手を翳して言った。



黒服「それでは、皆様、こちらの画面をご覧ください」



真っ暗だった画面に、何やら映像が映し出された。



宥「これって……うちの学校のグラウンド……?」

玄「4つの十字架が立ってて……そこに人が……えっ……!?」

灼「う、嘘でしょ……」カタカタ

憧「な、なんで……」カタカタ



穏乃「お母さんっ!?」カタカタカタ

夕日で紅く染まった校庭に、突き立っている、4本の巨大な銀の十字架。
そこには、鉄枷の様な物で、4人の男女が、それぞれ括り付けられていた。

長時間の間、4人は、この様な形で、拘束されていたのだろうか?
彼等の顔は憔悴しきっていて、目を瞑ったまま、ピクリとも動かない。


玄宥「「お父さんっ!?」」

憧「お姉ちゃんっ!」

灼「おばあちゃん……っ!」

穏乃「な、なんで……お母さんが……」ブルブル


十字架の傍らには、顔面まで覆う、黒い三角の頭巾を被った、異形の者達がいた。

上半身は裸で、その筋骨は逞しく、異常に太い血管が浮き出ている。
人身よりも柄の長い、巨大なハンマーを振り翳し、雄叫びを上げていた。



処刑人「オ゛オ゛オ゛ォ ォ ォ オ゛オ゛ォ ォ ォ ォ ッ ッ ッ ッ !!!!」



そのおぞましい咆哮は、モニターからだけではなく、
グラウンドから、直接、部室内へとも、響いてきていた。


穏乃は、部屋の窓際に駆け寄り、そこから校庭に目を向けた。
そこには、モニターに映し出されている光景と、同じモノがあった。


穏乃「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ……」

黒服「貴女達が、強固に反抗し、我々の指示に従わない場合、
   制裁措置として、あの者達に、肉体的苦痛を与えます」

黒服「ですから、言動には十分、気を遣われますよう……」


黒服が言い終らない内に、灼が素早く携帯を取り出し、警察に連絡を試みる。


プーッ、プーッ、プーッ


しかし、何度掛け直しても、その救いを求めるコールが警察に届く事は無かった。


黒服「……」


黒服は、灼の行為を止める様子も無く、ただ、じっと彼女を見詰めている。


灼「なんで……なんで繋がらないの……!?」


灼は、一旦、電話を切り、今度は顧問である、赤土晴絵に掛け直した。


プルルルルゥ、プルルルルゥ……


灼(繋がった……っ! ハルちゃん、早く出て……っ!)



ピロリロリーン、ピロリロリーン……



部室内に、携帯の着信音が響いた。

憧「これ……ハルエの携帯の着信音……だよね……」

玄「何で……この部屋から……するの……?」

宥「どこから……」


音源を探す、5人の視線が、ある一点に集まった。



ピロリロリーン、ピロリロリーン……



雀卓の上にある



ピロリロリーン、ピロリロリーン……



黒い岡持ち



ピロリロリーン、ピロリロリーン……



愕然とした表情のまま、灼はその場で固まった。
手からするりと、持っていた携帯が滑り落ちる。



ピロリロリーン、ピロリロリーン……ガチャッ



灼携帯『はい、赤土です、ただいま、電話には出れません。
     御用の方は、ピーッと鳴った後、ご用件をどうぞ』

玄と宥、憧の顔から、血の気が引き、表情が急速に強張ってゆく。
歯をカチカチと鳴らす音が、段々と大きくなり、室内中に響いた。


穏乃「赤土先生……赤土先生は……?」カタカタカタカタ


歯を鳴らし、体を震わせながら、穏乃が黒服に問い掛ける。


黒服「……赤土様ですか? 彼女なら……」


黒服は、黒い岡持ちを指差しながら、静かに言った。


黒服「 そ こ に い ら っ し ゃ い ま す よ 」

穏乃「そ、そこにって……何処に……」ガタガタガタガタ


穏乃の膝はガクガクと震え、立ち続ける事さえ、困難な状況だった。
灼も同様に、全身をガタガタと震わせ、今にも転倒するかの状態だ。


黒服が、ゆっくりとした歩みで、黒い岡持ちに近付いてゆく。
よく見ると、その箱の下には、どす黒い液体の溜まりができていた。


黒服「……神は、改変後の世界に、赤土様は不要だと判断しました」


憧「神……ですって……?」ガタガタガタ

穏乃「ふ、不要って……何だよ……」ガクガクガク


黒服「そして我々は、神の命に従い、赤土晴絵様を……」


黒服「〝処理〟致しました……」ゴゴゴゴゴ…


そう言うと、黒服は、黒い岡持ちの倹飩蓋(けんどんぶた)を持ち上げた。

そこには、手、足、腰、首を小さく折り畳まれた、赤土晴絵が詰め込まれていた。


「きゃああぁぁああぁぁぁあああっっっッッッ!!!!」


松実姉妹の、絶叫に近い悲鳴が、室内に響き渡った。
憧は、動転して椅子から転げ落ち、ガタガタと震えている。


灼「あぁぁ、あぁぁあ、ああぁ、あ゛あ゛あ゛っ っ っ !!!」


灼は頭を抱え、膝を突き、喚き声を上げた。


穏乃「うわぁ、うわぁ、うわぁ、う゛わ゛ぁ、う゛わ゛ぁ あ あ っ っ !!!!」

穏乃は再び、その場に尻餅をついた。

身体のコントロールを失い、立ち上がる事もできない。
僅かに動く手足で、その場から、懸命に後退りをした。


灼「うあぁッ! 人殺しッ! 人殺しッ! 人殺しィッ!」


発狂したかの様に、灼が同じ言葉を延々と繰り返す。


泣き声、怒号、悲鳴、絶叫……。
室内は、阿鼻叫喚の渦に飲み込まれた。


黒服「……」


見せしめの為に、その死体を部室に持ち込んだのだろう。

だが、想定以上に、事態が悪化してしまった為、
場を沈静化するべく、黒服は岡持ちの蓋を閉めた。

しかし、部室内の混乱は、全く収まりを見せない。


その時、モニターがニ分割され、片方に美しい女性が映し出された。


小林立『黒服、人質を使って、こいつらを黙らせろ』


黒服「……かしこまりました」

黒服「皆様、こちらのモニターをご覧くださいっ!」


黒服が、耳を劈く程に、大きな声を上げた。
皆、それに吃驚し、怯えながらも、モニターを見る。


黒服「 鷺 森 灼 様 っ 」


灼「」ビクッ


突然、自分の名前を呼ばれた灼は、一瞬、体をビクッとさせた。


黒服「貴女は、私の忠告を無視し、助けを呼ぼうとしました……」

黒服「その愚かな行為の、報いを受けて頂きます……」


黒服がそう言うと、灼の祖母が、モニターに大きく映し出された。


次の瞬間、異形の者がハンマーを振り上げ、
灼の祖母の、右足首を目掛けて、振り下ろした。



ゴキッ



灼祖母「ぎやあぁああぁぁぁああぁぁァァっっ!!」

骨が折れたかの様な、鈍い音がし、直後、老婆は金切り声を上げた。
本来、曲がる筈の無い、不自然な方向に、足の向きが変わっている。

銀の十字架は、余程深く、地面に突き刺さっているのだろうか。
強烈なハンマーの衝撃を受けても、傾かず、びくとも動かない。


灼「やめてよぉぉォォォっっッッ! お婆ちゃんに酷い事しないでっっッ!」


涙を流し懇願する灼に、モニターの美女は、薄ら笑いを浮かべながら言った。


小林立『これは、お前の軽率な行動が招いた結果なのだ……』

小林立『自らの振る舞いを悔い、甘んじて罰を受け入れるがいい……』


灼「そ、そんな……」


小林立『だが……っ!』


小林立『もし、心から反省していると言うのならば、
    殊勝な態度をもって、それを我が前に示せ』


小林立『さすれば、神の慈悲深さを、お前にも見せてやろう……』



灼は泣きながら、その場に、ゆっくりと跪き、
画面内の女性に向かって、深々と土下座をした。



灼「ゆるしてください、おねがいします、おねがいします……」

灼「うぅぅ……っ」

泣きながら、地面に額を擦り付け、小さく体を震わせている。
それは、紛う事無き、神に対する、絶対服従の姿勢であった。


小林立『クッ……クククッ……ふふふっ……良かろう……』

小林立『顔を上げよ、灼……』


小林立は、画面越しに、右手で何やら合図を送った。


すると、残りもう一本の足を破壊しようとして、
ハンマーを振り上げていた、処刑人の動きが停止した。


それを見て、灼は涙を流し、何度も何度も、頭を繰り返し下げた。


灼「ありがとうございます、ありがとうございます……」


穏乃(灼さん……)


その様子を、穏乃達は、胸を痛めながら、見守るしかなかった。


小林立『他の者達に告ぐ。これが、私の意思に背いた者の末路だ』

小林立『無駄な抵抗はせずに、大人しく、速やかに、黒服の指示に従え』


彼女の言う事に逆らえば、自分ではなく、家族に被害が及ぶ。
それは逆に、皆が平常心を取り戻す為の、大きな要因となった。


大切な家族を守る為に、自分がしっかりしなければ……と。

小林立『さて、黒服から、既に聞いていると思うが、
     お前達には、仲間を2人、生贄として、差し出して貰う事になる』


穏乃(仲間を……)

憧 (生贄に……)

宥 (差し出す……)

玄 (ふえぇ……)

灼 (うぅ……)


小林立『生贄となる者の選出方法については、
     我々が定めたルールに従って貰う訳だが……』

小林立『その前に、何故、お前達が、この様な事をしなければならないのか』

小林立『この世界の〝真実〟を、少しだけ教えてやろう』


穏乃「この世界の……真実……?」


小林立『質問は、時間の無駄だから無しだ。どうせ、理解などできぬだろう』


そう言うと、小林立は、穏乃達に〝世界の真実〟を語り始めた。

ここが、〝咲〟という、漫画の中の世界であるという事。
その作者である、自身、〝小林立〟が、この世界では神と同義である事。

彼女自身が、この世界を大幅に改変し、新しく作り直そうとしている事。
新世界構築には、増え過ぎた登場人物達を、間引く必要があるという事。


〝魂収容の限界値(ソウルキャパシティ)〟


それ故に、麻雀部のレギュラーを、5名から3名に減らすという事……。


〝生贄〟の〝処刑〟は、観客を楽しませる為の余興であると同時に、
消え逝くキャラ達の最後を、華々しく飾る、〝儀式〟だと言うのだ。


それが、〝咲〟という物語に描かれた者達の、〝宿命〟であると。


穏乃(何を言ってるんだこの人……)

穏乃(そもそも、観客なんて、どこにもいないじゃないか……)

憧 (新興宗教の、カルト教団だわ……)

玄 (自分を神様だと信じているの……?)

宥 (この人は、完全に狂ってる……狂気の沙汰……)

灼 ()ガタガタガタ

突拍子もない、現実離れをした、単なる空想話。
そんな妄想話を、信ずる者など、いる筈がない。


〝普通の人間であれば〟


しかし、この黒服達は、それを盲信し、人一人を殺害した。


それは、揺るぎ様の無い、〝現実〟なのである。


小林立の話が、真実であるかどうかなど、結局の所、どうでも良いのだ。
肝心なのは、彼女を信奉し、殺人さえも厭わぬ、崇拝者達が存在するという事。


例えそれが戯言であったとしても、〝神〟の命とあらば、
黒服達は、躊躇無く、無慈悲に、処刑を執行するだろう。


〝赤土晴絵〟をそうした様に……。

子林立とか小林率とか、一字くらい名前誤魔化す良心はないもんかね

まぁやってて楽しいなら勝手にすればいいけどさ

黒服「それでは、生贄選出のルールを説明致します」


そう言うと、黒服は、モニターに表示された画像を使い、
阿知賀の麻雀部員達に、生贄選出方法の説明をし始めた。


5人は、怯えながらも、黒服の説明を聞き漏らさぬよう、
彼の一言一句に至るまで、全神経を集中させ傾聴している。


何故なら、黒服が最初に、この様な事を言ったからだ。


〝生贄に選ばれた方のご家族も処刑されます〟


そう言われ、皆、今のこの現状を、素直に受け入れる事を決意したのだ。
自身と家族の命を救うには、生贄を回避する以外に、道は無いのだから。


逃げ道は全て〝完全に〟閉ざされ、八方塞がりの状況。
最悪な事態ではあるが、正面から立ち向かわざるを得ない。


即ち、仲間の中から〝生贄〟を選び、その命を神に捧げるのだと。

◆生贄選出のルール◆

===========
1:
2:
3:
4:
===========
↑この様な紙が全員に1枚ずつ配られる


上から順に〝最低3名〟の名前を書く


自分の名前を書いてはいけない
同じ名前を複数書いてもいけない


1の所に名前を書かれたら+1P
2の所に名前を書かれたら+2P
3の所に名前を書かれたら+3P
4の所に名前を書かれたら+5P


名前を書かれていない者は+0P


ただし、4人目の名前を書くと、自身に+2Pのペナルティ


5人で互いにポイントを与え合い、
一番ポイントの高い者が、1人目の生贄となる

玄が選ばれたら家族である宥も死ぬの?
宥が選ばれたら家族である玄も死ぬの?

1人目の生贄を処刑した後、2人目の生贄を決める


2人目の生贄を決めるのは、ポイントの最も少なかった者である
自身や他者のポイントに関係なく、残り3人の中から1人を選べる


2人目の生贄が確定したら、1人目と同じ方法で処刑をする
2人の処刑が完了した時点で、生き残った者はこの部屋から解放される


A:最もポイントの多い者が2人の場合、その2人がそのまま生贄となる


B:最もポイントの多い者が3人の場合、
  残りの2人が話し合って、3人の中から1人を救う


C:最もポイントの多い者が4人の場合、
  残りの1人が、4人の中から生贄を2人選ぶ


D:最もポイントの少ない者が2人の場合、
  2人目の生贄を決める際は相談し、自分達以外から1人を生贄に選ぶ


E:最もポイントの少ない者が3人の場合、残りの2人が生贄となる


F:最もポイントの少ない者が4人の場合、
  最下位の1名を処刑した後、再び4人で再投票


G:全員ポイントが同じ場合、神の指定した〝6人目〟が生贄を決める



条件が重なった場合の優先順位 
A>B>C>D>E>F>G


上記に無い、想定外の事態が発生した場合には、
その都度、神あるいは黒服が、適正かつ公平な対応をする

前スレよりひどくなってきてるなw

>>28
同意。ここの>>1はなんやかんやでほのぼのとかも書けるし、それくらいならやってくれるだろうよ

>>31

>>29
>〝生贄に選ばれた方のご家族も処刑されます〟

黒服「この場合の〝家族〟とは、〝十字架に掛けられている親族〟の事のみを指しています」

黒服「よって、松実玄様、松実宥様の二人の内、片方だけが助かる事もありえます」

黒服「これはネタバレですが、松実様の場合は特別で、
    片方でも生き残る事が出来れば、父親の命は助かります」

黒服「説明不足で、申し訳ありませんでした」

>>28
>>33

黒服「リアリティを高める事で、ホラー性がより高まると>>1は考えている様です」

黒服「ありえない漢字を当てたり、伏字をすると、緊張感が低下すると考えていて、
    基本的に、シリアスパートでは、それらを使用するつもりは、全く無い様です」

5人に、それぞれ、紙とペンが配られた。

黒服「生贄選出のルールに関して、質問があれば、遠慮無くどうぞ」


玄「あ、あの……」


黒服「何でしょう、松実玄様?」


玄「これ、お姉ちゃんと相談して決めても良いのでしょうか?」


憧「っ!!」ピクッ

穏乃「!?」

灼「!!」


黒服「イエス。他者と相談して決めても構いません」


黒服の言葉を聞き、玄は宥の傍へと駆け寄った。


黒服「ただし、紙に名前を記入する際は、
   誰にも見られぬ様、注意してください」

黒服「これは、脅迫や暴力などの、不当な手段によって、
   投票内容を操作する事を、防止する為でございます」


憧(自分達の蛮行を棚に上げて……)ギリッ


黒服「故意か否かに拘らず、如何なる理由であれ、
   他者の紙の内容を見る事は、厳禁とさせて頂きます」

黒服「万が一、その様な行為をされた場合には、
   見た方、見られた方、双方に罰則が科されます」


黒服「十分にご注意ください……」


玄と宥は、怯えた表情で身を震わせた。





憧「シズ、ちょっといい……?」

穏乃「う、うん……」

憧は穏乃に手招きをし、部屋の隅へと移動した。
穏乃は不安を抱きながら、憧の後を追い掛ける。


憧 「……」

穏乃「……」


自分から声を掛けてきたにも拘らず、憧は俯き、黙り込んでいる。


憧 「……」

穏乃「……私、どうすれば良いか、全然、分からない……」

穏乃「みんな大事な仲間だし、生贄なんて、選べないよ……。
   でも、誰かを犠牲にしなきゃ、お母さんが殺されちゃう……」


穏乃は涙を流し、鼻を啜りながら言った。


憧 「……」

穏乃「……」ヒックヒック

憧 「大丈夫……」


憧は穏乃を抱き締めながら、耳元でそう囁いた。


憧 「私とシズが力を合わせれば、きっと生き残れるわ……」

穏乃「でも、それだと、玄さんや宥さん、灼さんが……」


憧 「……じゃあ、先輩達を助けて、自分が犠牲になる?」


憧の非情な言葉に、穏乃は体をビクッと動かした。


憧 「椅子は3つしかない……。つまりは、そういう事なのよ……」

穏乃「で、でも……」

憧 「私だって、こんな事はしたくないっ!」


穏乃の両腕をがっしりと掴み、目に一杯の涙を浮かべながら、
他の者には聞こえぬ程度の、しかし、力の籠もった声で、憧は言った。


憧 「けど、そうしなきゃ、あいつらに、殺されちゃうんだよ?
   自分だけじゃない、家族だって……私のお姉ちゃんだって……」


穏乃「っ!?」


穏乃は、自分を掴んでいる憧の手が、体が、
小刻みに震えている事に、今、漸く気が付いた。


憧の姉、新子望とは、穏乃自身も、深い面識があった。
小さい頃から、憧の家へお邪魔した時には、彼女の世話になっている。
面倒見が良く、穏乃は、本当の妹の様に、可愛がって貰っていたのだ。


そんな望を、憧はいつも、自慢の姉だと公言していた。


その姉が、今、十字架に縛り付けられ、命の危機に直面している。
憧が恐怖に震えるのも、生き残ろうとするのも、当然の事だろう。


割り切った物言いをする憧に対して、〝冷たい人間〟と、
一瞬でも思ってしまった事に、穏乃は、自責の念を感じた。


穏乃は、憧を強く抱き締め、小さく〝ごめん〟と呟いた。


穏乃「二人で、必ず、生き残ろう、憧……」


憧 「シズ……」

玄「お姉ちゃん……私……私……」

宥「大丈夫、大丈夫だから……」


瞳を潤ませ、今にも泣き出しそうな玄を、
宥は優しく抱き締め、頭を撫で、宥めていた。


玄「怖いよ……私、怖い……」

宥「大丈夫、お姉ちゃんがついてるから……」


一見、妹である玄が、一方的に、宥に頼り切っている様に見える。
しかし、それは、宥にとっても、精神的な支えとなっていたのだ。


宥は、玄の〝姉〟である事によって、平静を保つ事ができた。


〝守らなければならない存在〟


その想いが、気弱な宥を奮い立たせる、原動力となっていたのだ。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

黒服『先程、生贄に選ばれた方のご家族も処刑される、と言いましたが、
   その家族とは、現在、十字架に掛けられている、親族のみを指しています』

黒服『故に、松実玄様、宥様、お二人の内、片方だけが助かる事もありえます』

黒服『また、松実様の場合、どちらか一人が生き残れば、虜囚は助かります』

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


黒服の言葉を思い出し、宥は頭の中で、それを何度も反芻した。


宥(玄ちゃんさえ助かれば、お父さんも殺されないで済む……)


宥「玄ちゃんは、玄ちゃんだけは、絶対に私が守るから……」


玄「お姉ちゃん……」


玄は、しがみ付く様に、宥の体を抱き返した。


宥(だって、私は、玄ちゃんのお姉ちゃんだから……)



灼「……」ポツーン

玄と宥、穏乃と憧が、それぞれ抱き合っている中、
灼は一人、茫然と、ただ、その場に立ち尽くしていた。


絶望感に打ち拉がれ、最早、一滴の涙すらも出ない。


灼(こうなる事は、最初から分かってた……)


周囲から見れば、ただの〝仲良し5人組〟だっただろう。
実際、この様な事態に陥らなければ、それで間違いない。



だが、生死を左右する様な、極限の状態に置かれたらどうか?



その答えは、既に、目の前にハッキリと示されている。

幼い頃から、深い友人関係にあった、穏乃と憧。
二人が大の親友である事に、疑いの余地など無い。

互いを信頼し合い、強い絆で結ばれているのだろう。
涙を流し、抱き合うその姿を見れば、一目瞭然である。


玄と宥、近所でも評判の、仲良し美人姉妹。
喧嘩をしている姿など、想像すらできない。

何より、〝肉親〟という、不変であり、絶対的な繋がりがある。
どんなに親しい友人でさえ、その絆の前では、所詮〝他人〟に過ぎない。


基本的に、0Pにできるのは、自身を除いて1人だけ……。
穏乃と憧、玄と宥、互いを0Pにしたら、安牌はもう無い。


〝私は余り者〟


これから行う、死の投票システムは、一人でどうにかできる物ではない。
その上、全員から、最低でも1Pを受ける事が、確定していたとしたら……。


灼(2つの生贄枠……。その内の1つは、間違い無く私だ……)

穏乃と憧、玄と宥は、それぞれ、対角となる部屋の隅で、
他の者には聞こえぬ様、密かに、小声で会話をしている。


それは、仲間を地獄へ蹴落とす、悪魔の画策なのか、
あるいは、単に、お互いを励まし合っているだけなのか。


例え、自分を陥れる算段をしていたとしても、非難する気は毛頭無い。
人間関係が入れ替われば、自身も、彼女達と同じ挙動をしただろう。


灼にも、生存への〝切り札〟はあった。


それは、〝2人目の生贄〟を出しにして、
穏乃達と玄達に、潰し合いをさせる事だ。

心理を操作し、行動を見抜き、自分の投票をもって出し抜けば、
彼女達から、1人ずつ生贄を出させる事も、可能かもしれない。


灼(卑劣……私は……最低な人間だ……)


〝善〟と〝悪〟が、心の中で交差する。


そもそも、自分と家族が助かる為に、
止む無く、誰かを犠牲にする事は、〝悪〟なのだろうか。

賛否はそれぞれあるだろうが、
強い正義感を持つ灼にとって、
それは、紛れも無い〝悪〟であった。

自らが信じる正義を貫き、座して死を待つか、
悪魔に魂を売り、一縷の望みに希望を託すか。


空いている部屋の角へ行き、
そこに、灼は一人で座り込み、
ただ漠然とした思考に耽った。

……ふと、室内が静まり返った次の瞬間、
誰もが予想し得なかった、衝撃の事件が起きる。



黒服「それでは、皆さんの〝初期ポイント〟を発表させて頂きます」



穏乃「!?」

憧 「!?」

玄 「???」

宥 「!?」

灼 「……」

……ふと、室内が静まり返った次の瞬間、
誰もが予想し得なかった、衝撃の事件が起きる。



黒服「それでは、皆様の〝初期ポイント〟を発表させて頂きます」



穏乃「!?」

憧 「!?」

玄 「???」

宥 「!?」

灼 「……」

憧 「初期ポイントですって!?」

灼 「……何それ」

穏乃「全員、0ポイントから始まるんじゃないの!?」

玄 「どういう事……? お姉ちゃん……」オロオロ

宥 「私にも分からないよ、玄ちゃん……」


黒服「皆様には、予め、神から割り振られたポイントがあり、
   それを、各々の〝初期値〟として、事に臨んで頂きます」


灼 「ふーん……。神様の気紛れで、私達の命は、弄ばれている訳だ」

穏乃「そ、そんなの、不公平じゃないですかっ!」


黒服「……これは決して、〝神の気紛れ〟などではありません」


黒服「あくまで、登場人物削減による〝バランス調整〟の、結果でございます」


穏乃「バランス……調整……?」


黒服「それは、改変後の新世界における、皆様の暫定的な役割と、
   今現在、皆様が持つ、〝魂の質量〟から算出された物で、
   〝好き〟〝嫌い〟といった主観は、一切含まれておりません」


玄 「???」


穏乃「なんだよ、それ……。意味分かんないしっ!」


黒服「一部の方にとっては、理不尽な内容かもしれませんが、
   これは〝確定事項〟ですので、諦めて、受け入れてください」


〝運命〟英語で言うと〝Destiny〟


それは、果てし無く残酷で、不条理であり、けれど、受け入れざるを得ない物。



黒服「それでは改めて……これが、皆様の初期ポイントでございます」



巨大なモニターに、麻雀部員達の顔写真と、その横にポイントが表示された。

===========
★累計ポイント数★
高鴨 穏乃 : 0P
松実 玄  : 0P
鷺森 灼  : 2P
新子 憧  : 4P
松実 宥  : 4P
===========

黒服「書き溜めが無くなった為、今日はここまでにさせてください」ペッコリン

黒服(あれ? ポイント付与は、全て安価でやるって、皆さん知ってますよね……?)カタカタカタ

黒服(>>1自身も、誰が誰に何P入れるとか、誰が死ぬとか、全然分からないんですけど……)ガタガタガタガタ

いや、分かっているけどそれだったら姉妹や幼馴染で共謀するような描写を入れるなよ、と
初期ポイントと違って発想の方向性に枠はめちゃうような事を安価スタート前にしちゃダメでしょ

>>63
黒服「共闘する場合は、比較的王道な展開で物語が進む予定ですが、
    安価で裏切りが発生した場合は、物語がそれに合う様に変化致します」

黒服「なので、それまでの物語を無視する安価でも、問題ありません。たぶん……」

>>1より重大なお知らせがあります◆

安価について、ちょっと考えさせられる意見を頂きましたので、
この物語が完結した後、あとがきで、意見交換をしたいと思います。

その際は、長文になると思いますが、暇な方は、どうぞお付き合いください。


それに伴い、このSSを、当初の予定から、少し変更させて頂きます。


Pの与え合いは、全て安価でする予定でしたが、
まず最初に、安価を無くした、>>1ルートで書きます。

(Pの与え合い以外での安価は行う可能性があります)


その後、>>1ルートでは満足できない方がいた場合、
初期Pを与える辺りから分岐する形で、安価ルートを書きます。


>>1ルートは、前作同様、あっさり系な感じになりそうです。
安価ルートでは、何がどうなるか、やってみないと分かりません。


実は、安価SSを書いてみたくて、これらのSSを書き始めました。
安価使用は初めてなので、壮大にコケル可能性がかなりあります。

ですが、鬼畜安価が来る事を前提に考えていますので、
細かい事は気にせず、お好きな様に安価レスして頂いて結構です。


こってりネチョネチョを期待されている方、
希望通りにならなかったらすみません。(ペッコリン)

おもしろいし好きにやればいいよ

>>66
そう言って頂けると助かります。


というか、安価についての意見を貰った時に気付いたのですが……


安価でPを与え合うと、後出しできるから、
紙の内容を公表されるのが、遅い奴の方が有利じゃね??

例えば、 憧→宥→灼→玄→穏 の順に投票結果を見るとするじゃん?

穏は、他の4人の結果を見た後に、安価で自分の投票結果を決定する訳じゃん?
これ、絶対勝てるじゃん?ずるいじゃん。


あと、どんな安価でもオッケーとか、俺さっき言ったじゃん?


◆無理ゲーな例◆

黒服「松実宥様の選択です」

宥 「玄ちゃんに3Pあげる~」⊃3P ポイッ

玄 「酷いよお姉ちゃ~ん、信じてたのに~」エーン

黒服「次は、松実玄様の選択です」

玄 「実は、私も、お姉ちゃんに3P入れてたんだ~」⊃3P ポイッ

宥 「ふぁっ!?」


↑これ矛盾してるじゃん?フォローとか無理じゃん?詰んでるじゃん。



(もしかして、ポイントを安価で与え合うのって無理があるんじゃ……
 いや……もう少し様子を見よう。俺の予感だけでみんなを混乱させたくない)

そこは作者の腕(こじつけ)の見せ所だろうな

無理ゲーの例だってクロチャーがお姉ちゃんをどう信じていたかにもよる。
「大事な家族」としてでなく「チョロい間抜け」としてなら、苦しいけど無理ではない

ある程度流れが決まってきたなら重要な部分は安価にしないほうがいいかもだけど、
自分のスレなんだし自分の思うようにやってみれば?

いっその事コンマゲーにしよう(錯乱)

安価コンマでポイント決めるのはありかもね
それだって狙い撃ちは出るだろうけど、ある程度は作為性を薄められるし

後出しOKだと先行圧倒的に不利だよなぁ
完全ランダムも心理の駆け引きとかそういう要素が薄まっちゃうからよくなさそう
固定値+ランダム要素みたいのがいいんじゃないだろうか

>>68
天才現る。その案、いつか採用させて頂きます。

>>69>>70>>71
コンマポイント……アリですね。
固定+ランダムも、良い感じです。

どうしようか迷う所ですね……。

とりあえず、続き書いてきます。
書くの遅いので、気長にお待ちください。(ペッコリン)

お互いを信じて0Pにしようね→実はお互いに3P入れていた
騙しあいのゲームならよくあること

本性を現すのは開票されてから、ってことにしとけばだいたいの展開は通ると思うけどな

玄 「酷いよお姉ちゃ~ん、信じてたのに~」エーン
黒服「次は、松実玄様の選択です」
玄 「実は、私も、お姉ちゃんに3P入れてたんだ~」⊃3P ポイッ
玄 「おねえちゃん想いの妹を演じるのはもう疲れたのです」ニヤリ

心理描写は好きで、ついつい入れてしまうのですが、
確かに、それがあると、安価をする方も書く方も難しくなりますよね。

最後に相談したかったのは、その辺の事だったのですが、
既に、皆さんから様々な意見が聞けて、かなり参考になりました。

次の高校の構想は、もう殆んど決まっていて、
投票における心理描写も、性格変化も、ほぼありません。(予定ですが)
心理バトル、心情変化(屑化)を期待してる方には、微妙かもしれませんが……。

その時に、P与え合いを安価で実施してみたいです。


その前に、この阿血賀編がいつ終わる事になるか……。
脳内では既に完結してるのですが、文字にできなくて……。

次の書き込みも、もう少々お待ちください。(ペッコリン)

===========
★累計ポイント数★
高鴨 穏乃 : 0P
松実 玄  : 0P
鷺森 灼  : 2P
新子 憧  : 4P
松実 宥  : 4P
===========

穏乃「なっ……!」

玄 「えっ……?」

灼 「っ!?」


宥 (わ、私……4Pも……ある……の……!?)

憧 「はっ……? ははっ……!? 嘘でしょ……?」

玄 (お姉ちゃんと、憧ちゃんが……4P……!?)アワワワワ

憧 「4P? 4Pって……4Pってなに!?」


映し出されたポイントを見て、驚愕する5人の麻雀部員達。
しかし、上位3名と、下位2名では、その意味合いが、全く異なっていた。

憧 「何なのこれ……こんなの……絶対無理……」


怯えた表情で、憧は震えながら言った。


穏乃「憧……?」


憧 「無理……無理……むり……ムリムリムリムリムリムリムリムリムリ……」


穏乃「しっかりしろよ、憧っ!」


穏乃は憧の両肩を掴み、軽く揺らした。
その時、憧は、微かに聞き取れる程度の声で呟いた。



憧 「殺される……私、松実姉妹に殺される……」



穏乃「……えっ?」


憧は頭を抱え、そのまま小さく蹲って震え続けた。

玄 (何でお姉ちゃんに、こんなにポイントが……)


玄 「お姉ちゃん?」


ふと、宥の方に振り返ると、彼女は顔面蒼白の状態で、
何やらぶつぶつと、か細い声で、独り言を繰り返していた。



宥 「死ぬ……私、死ぬ……しぬ……しぬ……シヌシヌシヌシヌ……」


 
虚ろな目をし、ただ只管、同じ言葉を吐き続ける宥。
初めて見る、姉の尋常ならざる様子に、玄は恐怖した。

4Pという、圧倒的、絶望的なハンデを背負わされた、憧と宥。
二人とも、〝1ポイントの重み〟について、十分に理解している。


それまで、漠然としていた〝死〟を、面前に突き付けられた形だ。


だからこその、この異常な怯え様。
最早、〝精神崩壊〟の様相を呈している。


身体中から嫌な汗が染み出し、震えが止まらない。
今までの様に、冷静に振舞う事など出来なかった。


妹の為に、命の身代わりすら、覚悟をしていた宥でさえ、
迫り来る死の恐怖に、完全に飲み込まれてしまっていた。

玄 「あの、どうして、お姉ちゃんに4Pも……?」


痛ましい宥の姿を見兼ねた玄が、黒服に問い掛ける。


穏乃「ちゃんと、説明しろよっ!」


玄の発言に触発され、穏乃も、黒服を睨みながら、声を荒げた。


穏乃の恫喝に対し、黒服は眉一つ動かさず、無言のまま、身動きすらしない。


穏乃「おいっ!」


小林立『まったく……うるさい奴だな……』


突然、モニターが切り替わり、小林立の姿が映し出された。


玄 「!!」

灼 「……」

憧 「っ!!」

宥 「!!」

小林立『先程、黒服が、お前達に言っただろう? 
    登場人物削減による、バランス調整の結果だと』


穏乃「その〝バランス調整〟って、何なんだよっ!?」


小林立『……お前達に、説明する必要など無い』


憧 「ふっ、ふふふっ……」


突然、憧が立ち上がり、蹌踉めきながら、
モニターの方へ、ふらふらと歩き出した。


穏乃「どうしたんだよ、憧…………憧?」


憧 「……あんた、私の事が嫌いなんでしょう?」


憧は、画面に、殺意の篭った視線を向けた


小林立『好き嫌いといった、個人的感情でPを付けてはいない』



憧 「 嘘 だ っ っ っ ! !」

小林立『…………』


小林立は目を瞑り、暫く考え込んだ後、
溜め息を吐きながら、ゆっくりと語り始めた。


小林立『新世界では、私は、松実玄を中心とした物語を考えている』


玄 「???」


小林立『その玄を、心から慕う、可愛い後輩。
    この役は重要で、主人公とほぼ同格だ』


小林立『私は、その役に、高鴨穏乃が適任であると判断した』


穏乃「私がっ!?」

憧 「…………」


小林立『無邪気さ、健気さ、礼儀正しさ、小さな体躯……』

小林立『その全てが、〝松実玄先輩〟を慕う後輩像に、
    奇跡的なまでに、ジャストマッチしているのだ』


玄 「それって、私とシズちゃんの、相性が良いって事???」


小林立『簡単に言えば、そうなる』


小林立『逆に、新子憧、君には、〝後輩力〟自体が、そもそも無い』

小林立『松実玄との親和性も、残念ながら、かなり低い』


憧 「……なによ〝後輩力〟って……。あんた、ふざけてんの?」

憧 「それに、そんなの、あんたの勝手な想像じゃない。
   私と玄は長年の付き合いだし、仲だって悪くない。
   自分の主観で、一方的に決め付けているだけよっ!」


小林立『まぁ、そう思われても仕方無い。否定はしないさ』

玄 「お姉ちゃんが、4ポイントなのは……?」ブルブル


小林立『……登場人物にとって、最も重要なのは〝個性〟だ』

小林立『人員削減は、その重要性を、更に高める』

小林立『〝松実宥〟は、〝松実玄〟と、その容姿、性格、共に類似性が高い』


灼 「……似た者姉妹って、よく言われてるしね」


部屋の角に一人で座っている灼が、嫌味っぽく、茶々を入れた。


小林立『3人という僅かな枠に、君達2人、両方を入れる余裕は無い』

小林立『正直、どちらか1人で十分だろう』


玄 「!!」

宥 「!?」


小林立『そして私は、松実玄を選択した。
    松実宥は、不要な存在となった訳だ』


玄 「お姉ちゃんが……不要な存在……?」ガクガクガク

宥 「……………………」


小林立『また、新子憧、松実玄、松実宥の3名は、
    髪型や容姿、体型などに、共通点が多い』

小林立『これも、新子憧と、松実宥に対する、厳しい評価に繋がった』


憧 「……………………」

宥 「……………………」



玄 (お姉ちゃんと憧ちゃんのPが多いのは、全部私のせい……!?)

穏乃「髪型なんて、そんなの、変えればいいじゃんかっ!」


小林立『漫画の世界における、髪型や髪色といった物は、
    各々の、アイデンティティーそのものに等しい』


小林立『それらを安易に改変すると、宇宙の法則が乱れてしまう』


穏乃(宇宙の法則って何だよ……)


小林立『納得できなければ、それはそれで構わんよ。
    元より、理解できるとは、思ってもいないからな』



穏乃(駄目だ……この人は、完全に狂ってる……)


穏乃(現実と空想が、ごちゃ混ぜになっちゃってるし……)


穏乃(こんな人と、まともな会話なんて、できる筈無い……っ!)

灼 「私は、消去法で、残留が決まった訳?」


小林立『違う』


小林立『鷺森灼を残した理由は、別にある』


小林立『それは、君がこの中で唯一、〝陰〟の性質を持っているからだ』


灼 「陰の性質……?」


小林立『高鴨穏乃も、松実玄も、その本質は〝陽〟に属する』

小林立『そこに、〝陰〟である鷺森灼を加える事により、調和が取れるのだ』


〝陰陽互根〟


小林立『〝光〟ある所には、必ず〝影〟もある』


小林立『影は光をより際立たせ、光もまた、影の存在を明確にする』


小林立『鷺森灼の存在によって、高鴨穏乃と松実玄の輝きは、一層増す事だろう』




灼 (なるほど、私は、玄と穏乃の、出しにされてるんだ……)

灼 (私自身が、必要とされている訳じゃない……)ギリッ

小林立『玄を慕う後輩の穏乃に、暗き影を持つ級友の灼……』


小林立『私は、この3人の、友情と絆を主題とした物語を書く事にした』


小林立『結果、不要な者には、消えて貰いたい、ただ、それだけだ』


小林立『そしてそれは、世界存続の為でもある』


小林立『だが……』


小林立『私は、新子憧と松実宥の、〝未来の可能性〟まで、否定する気は無い』



〝人は予想を超えてくる〟



小林立『お前達にも、私の想像し得ない〝何か〟を起こせる可能性があり、
    ならば、私はそれを、心から見てみたい、とも思っているのだよ……』


小林立『故に、即刻処分をせずに、生き残るチャンスを与えたのだ』



小林立『死にたくなければ、〝生者の椅子〟を、他者から奪い取れっ!』

小林立の姿がモニターから消え、
再び、5人の顔写真と、累計ポイントが表示される。


室内が静まり返ると同時に、不穏な空気が漂い始めた。


初期値の発表前とは、明らかに異質の、
どす黒く、悍ましい気配が潜んでいる。

それは、死の戦慄に、心を搦め捕られた、
憧と宥から発せられる物なのであろうか。


太陽が、室内を真っ赤に染め上げる。
血塗れの海、鮮血が飛び散ったかの様に。


突如、静寂を破り、憧が、部室の扉へと駆け出した。
不意を突かれたのか、黒服達は、憧の動きに対応できない。

憧は、扉のノブに手を掛け、勢い良くそれを開ける。
部室からの脱出は、確実に成功する、皆が確信したその時……。


穏乃「待て、憧っ!」


突然、穏乃が大声で、憧を制止した。


穏乃「そんな事は、無駄だから、止めた方がいい……」


穏乃「望さんが酷い目に遭うだけだ……っ!」

憧は、開いた扉の前で立ち止まり、静かにこちらへ振り返った。
黒服達は、憧に視線を向けつつも、彼女を捕えようとはしない。


〝逃げたければ、好きにするがいい〟

〝だが、決して、お前は、我々から逃れられない〟


まるで、そう言っているかの様に、事態の推移を、静かに見守っている。
黒服達に、自分を捕まえる意思が無い事を確信し、憧は穏乃に訊き返した。


憧 「それ、どういう意味よ、シズ……」


穏乃は、部室の窓際へ移動し、そのガラス窓を開けた。


穏乃「やっぱり……風が無い……」


憧 「それが何? ただ、風が吹いてないだけじゃない……っ!」


穏乃「違うんだ……上手く言えないけど……そうじゃなくて……」


穏乃「〝空気の流れ〟が、全く無いんだよ……」


玄 「それって、風が無い事とは、違うの……?」


穏乃「はい」


穏乃は、玄の方を向き、話を続けた。

穏乃「空気の流れは、多かれ少なかれ、必ず存在します」

穏乃「だけど、ここには、それが全く無いんです」



穏乃「まるで、密閉された、〝壷〟の中にいる様な……」



憧、玄、宥、灼が、困惑の表情を浮かべる中、穏乃は続ける。


穏乃「憧、お前、学校に来る途中、気付かなかったか?」

憧 「き、気付くって……何に? 風が無い事?」


穏乃は、小さく首を横に振った。


穏乃「私も、さっき、思い出したんだけどさ……」



穏乃「人がいないんだよ……」



憧 「人が……いないですって……?」

穏乃「いつもは、通学路に人がいて、車もそれなりに通ってる」

穏乃「だけど、今日は、人も車も、全く見掛けてない……」


玄 「そ、そういえば、私も……そんな気がする……」


宥 「…………」


穏乃「それに、グラウンドにはいつも、
   テニス部や陸上部、ソフトボール部が、
   休日でも、遅くまで練習しているだろ?」


憧 「た、たまたま、休みが重なっただけかもしれないわっ!」


穏乃「でも、学校に誰もいないのは、不自然だよ。
   校庭は、校舎から丸見えだし、声だって響く。
   叫び声がすれば、絶対に、誰かが気付く筈なんだ」


穏乃「それなのに、誰も助けに来ない……。
   誰かが、警察に通報した様子も無い……。
   これって、どう考えても、おかしいだろ?」


それでも、納得する気配の無い憧に、穏乃は言った。



穏乃「憧、時計を見てみろよ……」

憧 「時計なんか見て、何が分かるって言うの?」


憧の質問を無視し、穏乃は彼女に問う。


穏乃「今、何時だ?」

憧 「何時って……」


憧は携帯を取り出し、訝しみながらも、時刻を確認する。
小さな画面に表示されたその数字を見て、憧は驚愕した。


憧 「19時? 今? 嘘でしょっ!?」


窓の外には、煌々と輝く、ある筈の無い、巨大な夕日。
驚きの余り、憧は携帯をその場に落とし、言葉を失った。


穏乃「本当なら、夕日はもう、沈んでいる筈なんだ」



穏乃「私達がこの部室に来た時から、もう既に2時間は経ってる。
   だけど、太陽は、あの位置から、全く動いて無いんだよ……」

灼 「確かに……有り得ない……こんな事は……」


玄 「なにそれ……どういう事なの……? シズちゃん……」


不安と恐怖が混じった声で、震えながら、玄が穏乃に訊き返す。


穏乃「分かりません……。でも、普通じゃないんです……」


それまで、平常心を保っていた様に見えた穏乃が、
急に体を、ガタガタと大きく震わせ、涙目になった。



〝汝、神の存在を信じるか?〟



穏乃「あの女の人の話……全部、本当かもしれません……」



穏乃「だとしたら、、逃げ場なんて……ある筈ない……っ!」

それから、30分程度が経っただろうか。

2組と1人は、再度、部屋の隅にそれぞれ別れ、
与えるポイントの配分について、思案している。


といっても、実際に思考を巡らせていたのは、憧と宥だけであった。


憧は体育座りをし、爪を噛みながら、呪文の様に何やら呟いている。

目は血走り、話し掛けても、反応すらしない。
穏乃は、その様子を、ただ静かに見守っていた。


宥は、ノートを取り出し、一心不乱に、何かを書き殴っていた。
話し掛けられる事を拒んでいるのか、玄に対し、背中を向けている。

その雰囲気から、姉の胸中を察し、
玄は一人、俯き、黙り込んで座っていた。


玄 「……」

玄 「…………」

玄 「………………」

玄は、穏乃と憧の方へ、チラリと視線を向けた。
穏乃もこちらを見ていて、二人の目と目が合う。


穏乃「っ!!」

玄 「っ!!」


二人は、慌てて、互いに目を逸らした。
別に、疚しい気持ちがあった訳ではない。

ただ、自分の相方の事を想うと、
そうしなければならないのだと、
本能的、直感的に、感じていた。


〝絶対に裏切らないでよ、シズ〟

〝絶対に裏切らないでね、玄ちゃん〟


実際に、そんな事を言われた訳ではないのに、
穏乃と玄の脳内で、憧と宥が、延々とそう繰り返す。


互いに目を合わせるだけでも、〝背信行為〟になるのではないか?


二人は、ある種の〝脅迫観念〟の様な物に襲われていた。

穏乃(私は、どうすればいいんだろう……)


穏乃は、黒服から与えられた紙を、ただ、ぼんやりと見詰めている。


穏乃(私も、誰を〝生贄〟にするのか、選ばなくちゃいけないんだ……)


その時、隣から、憧の呻き声が聞こえて来た。


憧 「う゛う゛ぅ ぅ ぅ う゛う゛ぅ ぅ ぅ ぅ う゛う゛ぅ ぅ ……」


それは、地獄の亡者を彷彿させる、
気味の悪い、唸り声の様でもあった。


部室内に、憧が発する、苦悶の呻きが響き渡る。
玄も、心配そうな表情で、憧の事を見詰めていた。


穏乃「おい、大丈夫か憧!? しっかりしろよっ!」


憧 「う゛う゛ぅ ぅ ぅ う゛う゛ぅ ぅ ぅ ぅ う゛う゛ぅ ぅ ……」


穏乃「お前がそんなんじゃ、私も……私も……うぅ……」

普段の憧からは、到底、考えられないその姿に、
辛抱強い、穏乃の精神も、限界の所まで来ていた。


穏乃「憧……憧ぉ……憧ぉぉ……」


突如、前触れも無く、憧が、穏乃の体に抱き付いた。
その身体は震え、長い爪が、穏乃の肉に深く食い込む。

穏乃は、その痛みに耐えながら、力強く憧を抱き返した。

暫く抱き合った後、憧が、囁く様に、穏乃の耳元で囁いた。


憧 「シズ、お願いがあるの……」

穏乃「なに……憧……?」



憧 「〝4人目〟に、宥姉を書いて……」

普段の憧からは、到底、考えられないその姿に、
辛抱強い、穏乃の精神も、限界の所まで来ていた。


穏乃「憧……憧ぉ……憧ぉぉ……」


突如、前触れも無く、憧が、穏乃の体に抱き付いた。
その身体は震え、長い爪が、穏乃の肉に深く食い込む。

穏乃は、その痛みに耐えながら、力強く憧を抱き返した。

暫く抱き合った後、憧が、囁く様に、穏乃の耳元で呟いた。


憧 「シズ、お願いがあるの……」

穏乃「なに……憧……?」



憧 「〝4人目〟に、宥姉を書いて……」

穏乃は、冷たい手で、心臓を鷲掴みにされた様な感覚に襲われた。


穏乃「お、お前……何言って……」


全身から、嫌な汗が染み出し、体が震えだす。


憧 「宥姉に、5ポイント入れてよ、シズ……」

穏乃「で、でも……お前、さっき、4人目を書くのはヤバイって……」

憧 「シズの初期値なら、2Pのペナルティ位、問題無いわ……」

穏乃「だ、だけど、宥さんは……」


憧 「そうして貰わないと、私……私、死んじゃうっ!」


大粒の涙を流しながら、憧は穏乃に懇願した。


憧 「1人目の生贄は、私か宥姉、それしか有り得ないっ!
   宥姉が死ななかったら、代わりに死ぬのは私なのっ!」


憧 「お願いよシズ、私を選んでっ! 私、まだ死にたくないっ!」


嗚咽を繰り返しながら、穏乃に頼み込む憧。


穏乃「…………」


穏乃「わ、分かった……。私、〝4人目〟に宥さんを……書くよ……」


憧 「ありがとう、ありがとう……シズ……っ!」

玄 (シズちゃん達、何を話しているんだろう……)


宥 「………………」


玄 (お姉ちゃん、シズちゃん達の方を、ずっと見てる……)

玄 (……)


少し横に移動したが、宥は、玄の動きに気付いていない。
抱き合っている、憧と穏乃を、食い入る様に見詰めている。


玄 (お姉ちゃんのノート……もう少しで見えそう……)


もぞもぞと、少しずつ移動し、ノートの端が、少しずつ見えてきた。
そこには、非常に細かな文字で、名前と数字がびっしりと書かれている。


  憧 穏 灼
穏0/0 0/0 ?
玄2/2 2/4 ?
灼1/3 1/4 0/4
憧0/4 0/4 ?
宥3/7 3/10?


玄 (小さくて、よく見えない……)


前のめりの体勢になり、徐々に、顔をノートへ近付けてゆく。



宥 「 何 見 て る の 玄 ち ゃ ん 」

玄が顔を上げると、宥が、無表情でこちらを見ていた。
サッとノートを閉じ、玄に見えない位置に、それを隠す。

口調や顔色からは、怒気を感じない。
しかし、不気味な威圧感を纏っている。


玄 「な、何を書いてるのかなって思って……」

宥 「……玄ちゃんは、見ちゃ駄目なの。
   そこで大人しくしてる事。分かった?」

玄 「で、でも……」


宥 「 分 か っ た ? 」


語気を強め、凄みを利かせ、強引に了承を迫る宥。
初めて見る姉の態度に、玄は気圧され、小さく頷いた。


玄 「……はい」


宥が〝何か〟を必死に計算する中、
玄は一人、宥の背中を眺めていた。


玄 (お姉ちゃん……)



玄 (待ってるだけじゃ駄目だ……私も、考えなきゃ……っ!)

ペンを持ち、紙との睨み合いが始まる。


玄 (4Pのお姉ちゃんを助ける為には……)

玄 (同じ4Pの憧ちゃんに、Pをいっぱい入れるしかない……っ!)

玄 (憧ちゃんを〝4人目〟に書けば……)


ペンを持つ腕が、痙攣するかの様に、激しく震えた。


長年、親交のあった憧を、今、奈落へ突き落とそうとしているのだ。
いくら、肉親である宥の為とはいえ、迷いを捨て切る事などできない。


玄 (書かなくちゃ……私が、書かなくちゃ……)

玄 (書け……書け……かけかけかけかけ……)


左手で右腕を掴み、必死に震えを押さえ込もうとする玄。
ゆっくりと、慎重に、涙を零しながら、紙にペンを近付けていく。


ガシッ


玄 「っ!?」


ペンが紙に触れる直前、宥に腕を掴まれた。



宥 「 何 勝 手 な 事 を し て い る の ? 」

玄 「こ、これは……」

宥 「大人しくしててって、私、玄ちゃんに 言 っ た よ ね ? 」

玄 「ち、違うの、私……お姉ちゃんを……」


宥 「どうして、お姉ちゃんの言う事に 逆 ら う の ? 」グググググッ


玄の腕を掴む手に、無慈悲なまでの、強力な力が加えられた。
痛みの余り、玄は顔を苦痛に歪め、握っていたペンを手放した。


玄 「い、痛い、お姉ちゃん、痛いよ……っ!」


宥 「……」


玄 「痛い痛い……お願い……放して……っ!!」


宥 「…………」


宥 「……ごめんね、玄ちゃん、痛かった?」


宥は手を放し、玄に顔を近付け、目を見詰めながら言った。


宥 「でもね、これは玄ちゃんの為だから……」


鼻先が軽く触れ合う程に、宥が顔を近付けてくる。


宥 「玄ちゃんはね、 何 も 考 え な く て い い の …… 」

玄の頬を優しく撫でながら、宥は言葉を続ける。


宥 「お姉ちゃんが、〝全部〟決めてあげるから……」


宥 「玄ちゃんは、お姉ちゃんの〝言う通り〟にすればいいの」


宥 「それまで、〝何もせずに〟そこでじっとしてるの。分かった?」


玄 「…………」

宥 「どうして、お返事してくれないの?」

玄 「…………」


宥 「お姉ちゃんの言う事が 聞 け な い の ? 」


玄 「」ビクッ


玄 「……はい、分かりました……」

宥 「うん、良い子だね、玄ちゃん……」


口元に、薄っすらと笑みを浮かべる宥。
しかし、彼女の目は、笑ってなどいなかった。


その薄気味悪い微笑みに、玄は背筋を凍らせた。



宥 「ところで、玄ちゃん、 〝 4 人 目 〟 の事なんだけど……」

>>36
>黒服「これは、脅迫や暴力などの、不当な手段によって、
>   投票内容を操作する事を、防止する為でございます」
「書くのを見てはいけない」の理由だけど、関係ない暴力はありなの?

>>116
黒服「書く場面を見られなければ、脅迫や暴力の報復として、
    〝書く者の意思〟により、高Pを相手に与える行為が可能です」

黒服「それは、加害者にとっても、リスクの高い行動と言えるでしょう」

黒服「よって、両者は対等の立場であり、特に問題はありません」


黒服「実際、駆け引きにおいて、交渉と脅迫の区別をするのは困難ですから、
   書く所を見ずに行われる〝脅迫〟は、基本的に、〝交渉〟とみなされます」






黒服「え? 暴力なんてあったかな? ごめん、見てなかった」テヘッ

↑本音

黒服「>>36における、不当な手段の脅迫とは、
   言葉も、暴力として認識されるという確認の為の一文であります。
   実際に手をあげてはいない、といった、逃げ道を塞ぐ為のものです」


黒服「〝書く者の意思は、最大限に尊重されなければならない〟」

黒服「上手く言葉で説明するのは難しいのですが……」


【書いている途中、妨害がなければ、それは、間違いなく、書く者の意思である、と判断される】


A:名前を書く前に脅迫された → 名前を書く(妨害無) → 本人の意思

B:名前を書く前に暴力うけた → 名前を書く(妨害無) → 本人の意思

C:名前を書く前に何もされず → 名前を書く(妨害有) → 本人の意思ではない



黒服「イメージとしては、こんな感じでございます」

黒服「分かり辛くて申し訳ありません」

黒服「ご不明な点があれば、遠慮なく言ってください」ペッコリン

黒服「すみません、もう一点」

黒服「名前を書き終わった後も、他者に紙を見られてはいけないのは、
    お前、名前を書き直せよ! といった事態の発生を防ぐ為です」

黒服「一応、捕捉させて頂きます」

灼は、紙とペンに、触れる事すらせず、
膝を抱え込み、そこに顔を埋めていた。


狙い撃つべき対象が明確となり、
ピンポイントで、高Pを与えられる。

運否天賦で、Pを無駄に消費する可能性も無くなった。


状況的に、初期値の発表前よりも、灼の立場は、好転している。
何故なら、キャスティングボートは、彼女の手の内にあるのだから。


憧と宥の内、灼が多くPを入れた方が、まず、1人目の生贄となるだろう。


しかし、それは、〝灼の選択〟により、生贄が決定される、という事だ。
憧を殺せば穏乃に、宥を殺せば玄に、それぞれ、命を狙われるに違いない。


だとすれば、どちらか一方に、全力で肩入れせざるを得ない。
2人目の生贄に選ばない事を条件に、共闘体制を構築するのだ。



だが、どちらに与すればいい?



灼 (私が選んだ2人は助かり、選ばなかった2人は死ぬ……)

灼 (私が……生贄を……確定させる……私が……殺す……?)



灼 (そうだ……私が2人を殺すんだ……私の意思で……)



憧 「あの、ちょっといいですか? 灼さん……」

苦悩する灼に、憧が近付き、声を掛けてきた。
灼は顔を少し上げ、無愛想な口調で言い放つ。


灼 「……何か用?」


今更、憧が灼に求める用件など、1つしかない。
分かっていながら、灼は態とらしく、恍けてみせた。


憧 「……P配分について、灼さんとお話したいです」


穏乃「!!」

玄 「っ!?」

宥 「…………」


憧は、隠す様子も無く、ハッキリと言い切った。

憧 「私……あんな奴等に、殺されたくないっ!」

憧 「助かりたい……だから、灼さんに協力して欲しいっ!」


涙を流しながら、振り絞る様にして、灼に向かって叫ぶ。
嘘偽り無い、誰もが持っている、素直な感情を吐き出した。


灼 「……」


全員の視線が、灼に集中する。


憧 「お願いします、灼さんっ!」


灼 「…………」



灼 「……いいよ」



玄 「っ!?」

宥 「……」

どうせ、どちら側につくのか、自分では決められないのだ。
それなら、声を掛けてきた、憧達に協力するのもいいだろう。

灼は、静かに腰を上げ、紙とペンを拾い上げた。


憧 「ありがとう、ありがとうございます、灼さんっ!」


極限状況の中で、漸く得た希望の光。
憧は、涙を流しつつも、笑顔を見せた。


玄 「ちょ、ちょっと待ってっ!」


突然、玄が立ち上がり、灼と憧の同盟に、待ったを掛けた。


灼 「……何?」


玄 「わ、私も! 私も、灼ちゃんと、お話がしたいっ……です……」


憧 「はっ? はぁ!? そんなの、無理に決まってるでしょっ!」


笑顔から一変し、憧は玄を怒鳴りつけた。

憧 「だって、だって、私が先に、灼さんに、声を掛けたのよっ!?」

憧 「それに、灼さんは、もう、私達の味方になってくれたのっ!」

憧 「敵である玄と話す事なんて、何も無いっ!!」


玄 「て、敵じゃないもんっ!」


憧 「敵でしょ!? だって、あんたは、私を殺そうとしてるっ!!」


玄 「!?」


怒りの表情から、泣き顔へと、変化してゆく。
涙と鼻水を垂らしながら、憧は喚き散らした。


玄は、憧を〝4人目〟に書こうとしていた事を思い出した。
姉を救う為に、憧を生贄に捧げようとした、自らの非道を。

玄 「……で、でも、私は、灼ちゃんと、お話したいのっ!」

玄 「心の中では、憧ちゃんよりも先に、そうしたいって、思ってたもんっ!」


憧 「はぁ!? そんなの、嘘でしょ!!」

玄 「嘘じゃないもんっ! ホントだもんっ!」


玄も涙を流し、臆する事なく、必死に食い下がる。


それは、決して、自分の為などではなかった。


細かい計算などした訳ではないが、ここで退けば、姉である宥が死ぬ。
直感的にそう思った玄は、考えるよりも先に、行動していたのだった。


玄 「灼ちゃん、お願いっ! 灼ちゃんっ! 灼ちゃんっ! 灼ちゃんっ!」



灼 「 う る さ い ! 」



玄 「!!」ビクッ



灼 「気安く私の名前を呼ぶなっ! この糞虫がっ!」

それまで、平静を装っていた灼が、
玄に対し、敵意を剥き出しにした。


灼 「さっきまで、私の事なんて、眼中に無かった癖に……」


拳を握り締め、体を震わせながら、灼は言った。


灼 「それなのに、自分が不利な立場になったら、
   犬の様に尻尾を振って、媚を売るなんて……」


灼 「この、 卑 怯 者 っ ! 」


玄 「っっっ!!」

〝お前は、姉である宥の事しか見ていなかった〟

〝私を麻雀部に誘ったのは誰?〟

〝小さい頃から、付き合いがあったのに〟



〝もっと早く声を掛けてくれたなら、私は……〟



灼の中で、様々な思いが交錯する。


〝玄は、打算的にしか、私の事を見ていない〟


思えば、この阿知賀麻雀部に誘われたのも、
団体戦の頭数を揃える為だったではないか。


宥が勧誘を提案した事実を知らない灼は、
全て玄が仕組んだ事だと、思い込んでいる。


玄に対する想いが、憎悪へと変わり、
激情となって、灼の心から溢れ出した。


灼 「玄は最っ低の人間だ」


冷たく、蔑むような目付きで、灼は玄を見据えた。

灼が一番信頼していたのは、間違い無く玄であったが、
今回の行動で、玄に対する信頼は、砂城の如く崩れ去った。


裏切られたという思いが、憎しみを更に増幅させる。


逆に、憧に対しては、それ程、嫌悪感を抱いていなかった。


生意気な所は多々あるが、根は素直であるし、
今回も、下手に取り繕う様な真似はしなかった。


何より、憧は、初めてできた、後輩の一人である。
年下だからこそ、許せる部分も、あったと言えよう。


灼 「玄と話す事なんて、何も無いから」


そう言い放ち、穏乃達の元へ行こうとした、その時……。


玄 「……お願いします、灼ちゃん……」


玄が土下座をし、頭を何度も床に擦り付けた。


玄 「お願いします……何でもしますから……」



宥 「………………」


宥はその様子を、冷めた目付きで、じっと窺っている。

灼 「なっ……!」プルプルプル


流石の灼も、一瞬、戸惑い、言葉を失う。
が、すぐに、怒りの感情をあらわにした。


灼 「お前……先輩としてのプライドは無いの!?」

灼 「そんな醜態を晒して……そんなに自分の命が惜しいかっ!」


玄 「……」


玄は、床に頭を付けたまま、黙り込んでいる。


玄達が助かるという事は、憧達が死ぬという事だ。
それは、ここにいる全員が理解している筈である。


自分は、最後の最後まで、どちらを救おうか迷い、苦しんだ。
それなのに、この女は、躊躇う事無く、後輩達を殺そうと言うのか?


灼 「見損なったよ玄……。そこまで〝屑〟とは思わなかった」


踵を翻し、歩き出す灼。


玄 「お願いします……お姉ちゃんは助けてください……」


灼 「!?」


灼の歩みが止まる。


玄 「私はどうなっても良いです……お姉ちゃんだけは助けてください……」

玄 「お姉ちゃんを助けてください……お願いします……お願いします……」



宥 「……」

眩暈を起こしたかの様に、急に、灼の体がぐらつき始める。


灼 「やめろ……」


玄 「何でもします、命もあげます、だから、お姉ちゃんは助けてください……」


玄の言葉によって、灼の脳に激震が走った。
地面が大きく揺らぎ、周囲の視界が歪む。


灼 「やめろ……やめて……やめて……っ!」


異常なまでに狼狽する灼に、憧が駆け寄り、その体を支え様とした。


憧 「大丈夫ですか、灼さんっ!?」


灼 「触るなっ!」


心配から差し出された憧の手を、灼は、思い切り払い退けた。
灼は頭を抱え絶叫し、悶絶するかの如く、のたうちまわる。


穏乃、憧、玄は、言葉を失い、唖然とした表情のまま、
暴れ回る灼の姿を、ただ、眺めている事しかできなかった。

灼 「私は、もう決めたんだっ! もう決めたんだっ!」

灼 「決めたんだっ! 決めたんだっ! 決めたんだっ!」


灼の胸中は、激しく揺れ動いていた。
それを必死に隠そうと、灼は叫び続ける。


普通の女子高生に、友達を殺す決意など、到底できる筈が無い。
だからこそ、灼は、生贄を選ぶ〝理由〟を、必死に求めていた。


自身の選択を正当化し、肯定する為の〝言い訳〟を欲していたのだ。


灼は、玄を〝悪〟とする事で、自らの行為を正当化しようとした。
しかし、姉を想う故の行動ならば、それを悪だと、言える筈が無い。


そんな事は、最初から分かっていた。


馬鹿で、無邪気で、天然で、姉を心から慕っている玄。


キャラに似合わず、同盟に待ったを掛けたのも、
自分ではなく、姉の為だと、灼には分かっていた。



玄の性格を、十分に知っているからこそ……。

灼 「ああぁぁああぁぁぁあああぁぁぁァァァ!!!」


最早、灼の暴走は、誰にも止める事ができない。
皆がそう思っていた、矢先の出来事だった。


黒服「鷺森灼様」


突然、黒服が、荒れ狂う灼に、声を掛けた。


灼 「あ゛ぁ゛?」


鬼の形相で、灼は黒服を睨む。


黒服「大変、申し上げ難いのですが……」




黒服「貴女の祖母が、先程、死亡しました」



灼 「……」



灼 「はっ?」

灼の叫びと動きが止まり、室内が静まり返る。
呆然とした顔で、灼は、黒服に、その説明を求めた。


灼 「なんで? まだ、私、生贄に選ばれてない」

灼 「なのに、なんでお婆ちゃんが死ぬの? なんで?」

灼 「おかしいでしょ……おかしいだろっ! ざッけンなッ!」 


次第に興奮し、息を荒げ、灼は黒服に迫る。


黒服「申し訳ございません、鷺森灼様……」


黒服「老齢であり、4人の中で、最も体力の無かった彼女は、
   極度のストレス状態に、耐え切れなかったのでしょう」


黒服「それに、我々も、こんなに時間が掛かる事を、想定していませんでした」


謝罪の言葉を口にするも、誠意など、全く感じられない。
ただ、淡々と、事情を説明しているだけに過ぎなかった。


モニターに、死亡した灼の祖母の映像が映し出される。
白目を剥き、口を大きく開けたままの状態で固まっていた。


灼 「あっ……あっ……あぁ……」


黒服「あそこでは、水も、一滴すら飲めませんから、
   もたもたしていると、次の犠牲者が出るやもしれません」


灼 「う……うぅ……」


灼は意識を失い、その場に倒れ込んだ。

ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー


クロ 『アラタちゃん、アラタちゃんっ!』

アラタ『ん?』

クロ 『また、おとなの人に、まーじゃんで勝ったんだって?』

アラタ『ん。まぁね……』

クロ 『すごいのです! アラタちゃんは、カッコいいなぁ~』

アラタ『それ程でも……ない///』テレテレ

クロ 『わたしも、アラタちゃんみたいになりたいっ!』

アラタ『……まーじゃん、おしえてあげようか?』

クロ 『いいの?』キラキラ

アラタ『ん。』

クロ 『ありがとう、アラタちゃん!』チュッ

アラタ『なっ! なにするの、クロちゃん!///』

クロ 『お礼だよ! お姉ちゃんから教わったんだ~』



灼 「クロちゃん……」


ーーー
ーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーーーーーー

灼 「はっ……!」


目を覚ますと、部室には誰もいなかった。
日はとうに沈み、辺りは闇に包まれている。


起き上がり、窓際へと移動し、外を眺めた。
忌まわしき夕日は消え去り、月と星が輝いている。


灼 「夢……?」


灼 「夢だ……全部、夢だったんだ……っ!」


灼は、その場で、歓喜の声を上げた。


灼 (家へ帰ろう……お婆ちゃんが待ってるから……)



振り返ると、麻雀卓の上に、黒い岡持ちが置いてあった。

足がガクガクと震えだし、脂汗が額から流れ出す。


灼 「なんで……なんで……〝アレ〟がここにあるの……?」


月明かりに照らされ、不気味に黒光りしている。


カリッ…


灼 「!?」


カリッ…  カリッ…


何処からともなく、〝何か〟を爪で引っ掻く様な音が聞こえてくる。


カリッ… カリッ… カリッ…



灼 「ひっ……あっ……あぁっ……」



カリッ…  カリッ…

    カリ…     カリッ…

 カリッ…    カリッ…

      カリッ…     カリッ…

    カリッ…     カリッ…

カリッ…     カリッ…
                  


灼 「うわああぁあぁぁああぁぁぁああぁぁァァァッッ!!!」

灼は部室から逃げ出し、街灯の少ない夜道を、無我夢中で走った。


灼 「ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅーっ」


家に着いたが、明かりは消えている。
中へ飛び込み、しっかりと施錠した。


灼 「お婆ちゃんっ! お婆ちゃんっ! お婆ちゃんっ!」


大声で叫ぶも、反応は無い。
家の中には、誰も居ない様だ。


灼は自室に駆け込み、ドアに鍵を掛け、ベッドの中に潜り込んだ。


灼 「これは夢だ、これは夢だ、これは夢だ」


呪文の様に、何度も何度もそう繰り返す。

明日になれば、何時も通りの日常に戻る。
そう信じて、灼は、夜が明けるのを待った。



カリッ…

灼 「っ!?」


カリッ… カリッ… カリッ… 

ギギギッ… ギギギッ… ギギギィッ…


再び、爪で何かを引っ掻く音が聞こえてきた。
それは、徐々に早く、激しく、荒々しくなってゆく。

耳を塞ぐも、静かな室内に反響し、指の隙間から音が伝わってくる。

やがて、それまでとは違う、別の音が聞こえてきた。


カラカラカラカラッ… 


    ズズズッ…


  ガコンッ…


ズズズッ…


    ドサッ……


ズズズッ…… ズズズッ…


得体の知れない、〝物体〟が這いずる様な音がし、
それは段々と、着実に、灼の方へ近付いて来る。

灼は、僅かな布団の隙間から、外の様子を窺った。



ガシッ



灼 「っっっ!!」


突然、ベッドの端に、血の付いた、何者かの手が掛けられた。
それはゆっくりと、ベッドの上へ這い上がろうとしている。


灼 「ひぃ……ひぃぃ……ひぃいぃぃいいぃぃぃ……」



晴絵「あ……ら……た……そ……」

玄 「灼ちゃん、灼ちゃんっ!」


灼 「うっ……」


気が付くと、玄が心配そうに顔を覗き込んでいた。


灼 「……」


口から流れ出る涎を、服の袖で拭き取って、
上体を起こし、虚ろな目付きで、辺りを見回す。

ふらつきながら、灼はゆっくりと立ち上がった。


玄 「大丈夫? 灼ちゃん?」

灼 「うるさい」

玄 「っ!?」


感情が無い、機械の様な口調で、灼は一言、そう呟いた。
荒ぶってはいないが、雰囲気から、冷血的な狂気を滲ませている。


普段のクールさとは違い、人を寄せ付けない、
剃刀の様に鋭い目付きで、辺りの人間を睨み付けた。


普通の人間ならば、不用意には近付く事など、しないだろう。
しかし、そういう面で鈍感な玄は、気にせず、灼に話し掛ける。


玄 「灼ちゃんのお婆ちゃん、可哀相だったね……」


灼 「……可哀相?」ピクッ

玄 「だって、凄く、辛かったと思うから……」


手で涙を拭いながら、玄は小声でそう言った。


灼 「……そうだろうね。辛かったと思うよ……」



灼 「それもこれも、全部お前の所為だろうがっ!」



玄 「へぶっ!?」


灼の、怒りの鉄拳が、玄の顔面に炸裂した。
玄は蹌踉めき、尻餅をつく形で、倒れ込んだ


玄 「あ、灼ちゃん……」


鼻血を流し、目を潤ませて、灼を見る玄。


灼 「お前が、お前があの時、私を麻雀部に誘わなければ、
   お婆ちゃんは死ななかった! お前が、お婆ちゃんを殺した!」


それが、ただの八つ当たりだと、灼も理解している。
けれど、理屈ではどうにもならない、もう止まらない。

暴力の衝動に駆られ、本能のままに、玄に飛び掛る。


灼は玄の上に跨り、叫び声をあげながら、玄の顔面を何度も殴打した。

穏乃「や、やめてください、灼さんっ!」


見兼ねて、穏乃が灼を止めに入る。


玄 「う……うぅ……」


目を瞑り、鼻や口から血を流し、ぐったりと横たわる玄。


灼 「放せ、穏乃っ!」


小柄な体躯からは想像できぬ、凄まじい力で、穏乃を振り払おうとする灼。
穏乃は離されまいと、死に物狂いで、灼の体に、背後からしがみ付いている。


穏乃「憧っ! 手伝ってよっ!」


呆然と立ち尽くしていた、憧。
穏乃に名を呼ばれ、漸く我に返った。


憧 「う、うん!」


灼 「憧っ! 私の邪魔をしたら、お前を殺してやるっ!」


憧 「っ!?」


穏乃「何やってんだよ、憧っ! 早く手を貸してっ!」


憧 「」ガクガクガク


足が震え、憧は、その場から動く事ができなかった。
しかし、それを、臆病と罵るのは、酷と言うものだろう。


穏乃と憧、初期値0と4では、精神的な余裕に、差があり過ぎる。
死と隣り合わせの憧には、灼に逆らうという選択肢など無かった。

穏乃は、宥に助けを求めようと、視線を向けた。


宥 「……」


宥も、灼の暴走行為を止める様子は無く、
目を細め、ただ彼女の行動を観察している。


穏乃「宥さんっ!」


呼び掛けても、眉一つ動かさず、返事もしない。


穏乃「くっ……」


穏乃は、灼の背後から、彼女の両腕を掴んだ。


灼 「放せよ、穏乃ぉぉォォォっっっ!!」


穏乃「い、嫌です、絶対、放しませんっ!!」


二人は、激しい揉み合いとなり、玄の上から転げ落ちた。


灼は、穏乃の上に乗り、打撃を加えようとするも、
穏乃に、再び両腕を取られ、上手くいかない。


灼 「穏乃ぉぉォォォっっっ!」


穏乃「ぐぅぅっっ……灼さんっ!」



玄 「……やめ……て……シズ……ちゃん……」

穏乃「!?」

灼 「!?」


玄の意外な言葉に驚き、全身から力が抜けていく穏乃。
灼も、多少、落ち着きを取り戻し、攻撃の手を休めた。


穏乃「どういう事ですか……? 玄さん……」


穏乃は立ち上がり、灼から少し距離を取った。


玄 「……灼ちゃんの……好きに……させてあげて……」


灼 「……ほら、玄もこう言ってるでしょ……」


灼 「それに、玄はさっき、〝何でもする〟って、私に言ったんだ……。
   だから、玄には、何をしてもいいんだ。私には、その権利があるっ!」


穏乃「で、でも…………そ、そうだっ!」


穏乃「確か、脅迫や暴力はいけないって、黒服の人が……」


穏乃と灼は、黒服に視線を向けた。

黒服「以前、申し上げた、>>36の件につきましては、
   >>119>>120>>121辺りも参考にして欲しいのですが……」


黒服「あくまで、用紙の内容を見る事と関連した場合のみ、適用されます」


黒服「例えば、先程、鷺森灼様は、新子憧様に対して、
   〝邪魔をしたら(Pを使って)殺す〟という趣旨の発言をされました」


黒服「これは、完全に脅迫行為でありますが、ルール的には問題ありません」


黒服「今回の、鷺森灼様による、松実玄様に対しての、一方的な暴力行為も、
   〝直接的〟に投票内容を操作している訳ではありませんので、同様です」


黒服「また、今回の場合、松実玄様自身が、〝了承〟をしていますので、
   これは暴力行為ではなく、交渉の範疇に含まれるかと思われます」


穏乃「そ、そんな……」ヘナヘナ

灼は、冷酷な笑みを浮かべ、穏乃に向かって言い放った。


灼 「これは、〝私〟と〝玄〟の交渉だから。穏乃は引っ込んでて。」


穏乃「うぅっ……く、玄さんは、ホントに、それでいいんですか!?」


玄 「うん……。私は、灼ちゃんが望む事なら、それを全部受け入れるよ……」


流れる血を飲み込みながら、玄は、優しい口調で言った。


玄 「私を叩きたいのなら、好きなように、気が済むまで叩けばいい……」


灼 「言ったね……。後悔するよ……?」


玄 「後悔なんてしない……私には……そうする義務があるから……」


灼 「……義務?」


玄 「灼ちゃんを……巻き添えにしたのは……私だから……」


灼 「…………」


玄 「……でも……お姉ちゃんだけは……助けてください……」


玄 「お姉ちゃんも……私に巻き込まれただけの……被害者なの……」


玄 「だから……お願い……灼ちゃん……」


灼 「…………」


灼 「……音を上げずに、最後まで耐えられたら、考えてあげるよ」


玄 「うん……ありがとう……灼ちゃん……」




宥 「………………」

憧 「……っ!」


憧は、一抹の不安を感じていた。


玄の〝お姉ちゃんを助けて〟という言葉に、
灼が〝考えてあげる〟と言った事に対してだ。


宥を助けるという事は、自分が死ぬという事でもある。
憧は、協力してくれると言ったのに、と、灼を責めたかった。


けれど、灼の機嫌を損ねてしまったら、元も子も無い。
今はただ、玄が音を上げる事を、祈るより他なかった。


灼は、再度、玄の上に跨り、頬に平手打ちを繰り返した。
玄は、歯を食い縛り、只管、灼の惨い仕打ちに耐えている。


玄の頬は真っ赤に腫れ上がり、やがて紫へと、変色していった。
殴りつけていた、灼の手の方も赤く腫れ、血が流れ出している。


穏乃と憧は、顔を背け、この状態が、早く終わる事だけを願った。


灼の一方的な暴行は、30分以上にも渡って続いた。
その間、玄は、一切の抵抗せず、沈黙を貫き通した。

灼 「ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅーっ!」


玄 「……」


肩で息をしながら、灼は、玄の傍から離れた。
地獄の責め苦が、今、漸く終わりを告げたのだ。


灼 「……もういいよ、玄」


玄 「……お姉ちゃんを……お姉ちゃんを……助けて……」


灼の言葉を聞き、呻く様に、玄は繰り返し呟いた。



その時……



黒服「……有効です」



突然、黒服が謎の言葉を発し、穏乃達を驚かせた。
見ると、宥が、黒服に、あの〝用紙〟を手渡している。


灼 「!?」

憧 「!?」


穏乃「宥さん……何を……!?」



宥 「暇だったから、名前を書いちゃったの~」



妖しい笑みを浮かべながら、宥は、皆にそう告げた。



宥 「みんなも、早く名前、書いちゃってね……」ゴゴゴゴゴ…

穏乃「なんで……何でそんな事を……宥さん……っ!?」


宥 「何でって……名前を書かなくちゃ、終わらないでしょう?」


宥 「穏乃ちゃんは、馬鹿なの?」


穏乃「っ!!」


首を傾げ、微笑んでいる宥に対し、穏乃は恐怖を感じた。


宥 「灼ちゃんも、そんなに、イライラしないで?」


灼 「!?」



灼の方に向かい、厭らしい笑みを浮かべ、宥は言った。



宥 「たかが、〝ババア1人〟、死んだ位で……ね?」ゴゴゴゴッ

灼 「なっ……!」


宥 「それに、灼ちゃんを、この麻雀部に誘う事を提案したのは……」


宥 「玄ちゃんじゃなくて、この〝お姉ちゃん〟でした~!」


灼 「っ!!」


宥 「だから、灼ちゃんのお婆ちゃんを殺したのも、この私で~す!」


灼 「……っ」プルプルプル


宥 「それなのに、勘違いして、玄ちゃんを痛め付けて……」



宥 「ぷぷっ……思い出しただけで……片腹……大激痛……だよ……」




宥 「ははっ……はははっ…… あ は は は は っ っ ッ ッ ! ! ! 」

灼 「松実宥 ぅ ぅ っ っ っ ! 」


怒りで我を忘れ、灼は宥へ猛突進し、渾身の一撃を振るう。
しかし、宥はそれを華麗に躱し、灼の鳩尾に、膝蹴りを食らわせた。


灼 「ぐぇ……っ! うっ、うげぇ……」


灼は、その場に膝を付き、腹を押さえながら、嘔吐した。


宥 「駄目だよ、灼ちゃん、油断したら……」


宥 「私は、そこで寝ている〝マヌケ〟と違って、反撃するんだよ?」


灼 「ぐぐぐっ……」


必死に立ち上がろうとする灼に、宥は、容赦無い追撃を加える。
灼は俯せに倒れ、宥は、その頭を踏み付けながら、笑っていた。


宥 「ふふっ……ふふふっ……」


圧倒的な威圧感、穏乃ですら足が竦み、その場を動く事ができなかった。

玄 「……やめて……お姉ちゃん……」


宥 「あ、玄ちゃん、起きていたの?」


玄 「……灼……ちゃんを……苛め……ないで……」


宥 「玄ちゃん、これは苛めじゃないよ、教育なんだよ……」


灼の頭から足を降ろし、宥は、玄の方へ歩きながら言った。


宥 「言葉で言っても分からない、お馬鹿な子にはね、
   もう、その体に教え込む以外、方法は無いの……」


宥は、玄の髪の毛を掴み、上半身を起こした。


宥 「私、玄ちゃんに〝何もするな〟って言ったよね?」


宥 「どうして、余計な事をするの?」


宥は、玄の変色した頬を、力一杯、抓った。


宥 「何で、お姉ちゃんとの約束を 破 る の か な ぁ ? 」



玄 「痛いっ! 痛いっ! やめて、やめて、お姉ちゃんっ!」



〝音を上げてはいけない〟というルールは、もう無い。
元々、痛みに耐性の無い玄は、大きな声で悲鳴を上げた。

灼 「……殺す……殺して……やる……」


床に突っ伏したまま、灼が小声で呟いた。


宥は、玄の髪の毛から手を放し、再び灼に近付いた。


宥 「ん? なに? 何か言った? 灼ちゃん……」


灼 「お前は……お前だけは……絶対にぶち殺す……っ!」


宥は何も言わず、ただ上から、ニヤニヤと、灼を見下ろしていた。



玄 「……やめて……灼ちゃん……」



灼 「はぁっ!? 何で玄は、こんな奴を庇うの!?」


灼 「肉親なら、どんな屑でも、大事だって言うの!?」




玄 「……違うよ……灼ちゃん……」

玄 「お姉ちゃんは……とっても優しくて……とっても温かい人なの……」


玄 「今は、こんな事になって、少しだけ、混乱しちゃってるの……」


玄 「お姉ちゃんが……ホントは……どういう人なのか……」


玄 「それは……灼ちゃんも……知っている……筈だよ……」


灼 「っ!?」


玄 「だから……お姉ちゃんを……憎まないで……」


玄 「……お姉……ちゃん……を……助けて……あげて……」


灼 「…………っ!」


そう言うと、玄は意識を失った。

宥 「もう、玄ちゃん、また寝ちゃったの? 仕方無いなぁ……」


宥は、玄の髪の毛を掴み、ずるずると引き摺って、部屋の隅へ連れて行った。


灼 「玄は……あんたの事を、こんなにも、想っているのに……」


灼 「その玄に、何で、そんなに酷い事ができるのっ!?」


宥は振り返り、微笑みながら言った。


宥 「今まで、玄ちゃんを、散々、嬲っていた人が、
   どうして、恥ずかしげも無く、そんな事を言えるのかなぁ?」


灼 「……っ!」


灼は、全身が強張っていくのを感じた。


灼 「い、いいから、質問に答えてよっ!」



宥 「……」



暫く黙り込んだ後、宥は、悪魔の様に歪んだ顔で、こう言った。



宥 「私、玄ちゃんの事、ずっと嫌いだったんだ~」ゲス顔

穏乃「ど、どうして……ですか……?」


宥 「だって、家で炬燵に入っているとね……」


宥 「夏だから、少し、炬燵から離れてみようよ、とか……」


宥 「私が、家事全般、苦手な事を、知っているのに、
   料理を一緒にしようとか、お掃除を手伝って、とか……」


宥 「妹の癖に、余計な事ばっかり、言ってくるの……」


宥 「しかも、金魚の糞みたいに、いつも、私に付き纏ってくるし……」



宥 「 す っ ご く 鬱 陶 し い ん だ も ん 」



穏乃、憧、灼は、呆然とし、言葉を失った。

憧 「ほ、本気で言ってるの……? 宥姉……」


宥 「うん♪」


穏乃「あ、あんまりですよ……宥さん……」


宥 「穏乃ちゃんは、一人っ子だから、妹のウザさが、分からないんだよぉ~」


宥 「あ、でもでも! 穏乃ちゃんみたいに、
   ちっちゃくて、可愛くて、礼儀正しい子なら、大歓迎だよ?」


穏乃「……」


灼 「……それを、玄が知ったら、お前は……終わりだ……っ!」


宥 「えぇ~? そんな事、ないよ~」


宥 「さっきの、玄ちゃんの態度、見てたでしょう?」


宥 「何があっても、玄ちゃんは、〝絶対に〟、私を裏切る事はできないの」



〝宥……玄……お互いに、助け合って、生きていくのよ……〟



宥 「だって、それは、死んだお母さんとの、最後の〝約束〟だから……」

穏乃「宥さんも、同じ約束を、したんじゃないんですか?」


宥 「うん、したよ?」


穏乃「……その約束を破って、平気なんですか……?」


宥 「私は、玄ちゃん程、素直じゃないというか……〝馬鹿〟じゃないから」


宥 「自分が死ぬかもしれない時に、約束も何も無いよ……」


宥 「それは、ここにいる、みんなも、同じ筈だよ?」


宥 「そうじゃなければ、仲間を[ピーーー]なんて、できる訳ないでしょう?」


穏乃「!!」

憧 「!!」

灼 「!!」



宥 「違う?」



宥の言葉に、誰も反論できなかった。



宥「建前も偽善も、全部取り払って、もっと、本音で話し合おうよ……」

宥 「私自身の話は、これ位にして、別の事を話そっか……」


灼 「別の……」


憧 「事……?」


穏乃「何ですか……?」


宥 「そうだね~、取り敢えず……灼ちゃんの話をしよっか」


灼 「私の……話……?」



宥 「灼ちゃん、もう、自分が生き残る事は、確実だと思っているでしょう?」



灼 「っ!?」


宥 「だから、憧ちゃんや玄ちゃんに対して、あんなに強気でいられた……」



宥 「でも……」



宥 「本当に、そうなのかなぁ……?」



厭らしい笑みを口元に浮かべ、宥は灼に詰め寄った。

宥 「例えば、私が3P、玄ちゃんが5P、
   灼ちゃんに、計8Pを入れるでしょう?」


宥 「そうすると、灼ちゃんは、初期値と合わせて、10Pだよ?」


灼 「……だから何?」


宥 「更に、憧ちゃんと穏乃ちゃんから、1Pずつ入れられたら、12P……」


宥 「私の初期値は4P」


宥 「8Pじゃ、同率最下位になっちゃうかもだから、
   9Pは、私に入れなくちゃならないよね……?」


灼 「それでも、私と憧と穏乃の3人で、9Pになるしっ!」



宥 「私はーっ! 灼ちゃんにーっ! 沢山Pをーっ! 入れましたーっ!」

憧 「っ!?」

穏乃「っ!!」


灼 「はっ、はぁっ!?」


宥 「そして、玄ちゃんにも、私からお願いして、
   灼ちゃんに、Pを一杯入れさせようと思います!」


灼 「なっ、何……言って……」


宥 「あれだけ、玄ちゃんは、酷い事をされたんだから、
   私が頼めば、内心喜んで、灼ちゃんにPを入れるかもよ?」


灼 「うっ……」


宥 「やだな~、冗談だよう~」


宥 「玄ちゃんは、お人好し(笑)だから、灼ちゃんの事を嫌ってないよ」


宥 「でも、玄ちゃんは、穏乃ちゃんや、憧ちゃんとも仲がいいし~」


宥 「灼ちゃんだけが、〝特別〟って訳じゃあ、ないんだよ……」ゴゴゴゴゴッ


灼 「っ!!」


宥 「誰に入れるか迷ったら、恨みのある人に入れるだろうな~」

宥 「そこで、提案があるのですっ!」


灼 「な、なに……?」


宥 「灼ちゃんにじゃないよ……。憧ちゃんにだよぉ……」ニタァ


憧 「私に……?」ビクッ


宥 「ねえ、憧ちゃん……〝取引〟しようよ……」


憧 「と、取引ですか……?」


宥 「〝鷺森灼ちゃんを殺す会〟を、新たに設立しよう!」


宥 「そうだ! それがいい! そうしよう! おーっ!」



灼 「っっっ!?!?」


憧 「っ!!」

穏乃「!!!」



拳を握り締めて、高らかに突き上げ、宥は、楽しそうに、そう宣言した。

憧 「灼さんを……殺す会……ですって……?」


宥 「だってー、灼ちゃんはー、
   勘違いで、親友をボコボコにする様な、
   極悪非道の冷血人間。死んで当然だよ~」


灼 「ち、違う……あれは……」


宥 「 何 が 違 う の ? 」


灼 「っ!!」


宥 「言い訳は見苦しいよ、灼ちゃん……」


灼 「だって……だって……」


宥 「因果応報……当然の報いだよ……」


灼 「で、でも、もう1人の生贄は……」


そう言い掛けて、灼はハッとした。


宥 「もう1人の生贄……?」ゴゴゴッ


宥 「丁度、その役に相応しい子が……」ゴゴゴゴッ


宥 「ここに、寝ているじゃない……」ゴゴゴゴゴッ


玄 「」


灼 「っっっ!!!」



宥 「だから、灼ちゃん……もう諦めて……」




宥 「大好きな、お婆ちゃんの元へ逝こうよ……ね?」ニコッ

灼の体が、揺れ始め、それは次第に大きくなってゆく。


宥 「灼ちゃんの、どちらか、一方に肩入れする作戦ってさ……」


宥 「〝灼ちゃん対、他の4人〟が成立しない場合のみ、有効なんだよ?」


宥 「そして、それは、自分の組から、
   生贄を出したくないっていう、前提条件が必要なの」


宥 「……でも、私はそうじゃない」


宥 「だから、灼ちゃんの計画は、もう、完全に破綻してるの……」


灼 「あっ……ああっ……」


灼は蹌踉めきながら、その場に崩れ落ちた。

宥 「憧ちゃんや、穏乃ちゃんにとっても、別に、悪い話じゃないと思うけど?」


宥 「4対1なら、確実に勝てるから、2人の命は保障されてるし」


宥 「生贄として死ぬのが、私から、灼ちゃんになるだけだよ」


宥 「玄ちゃんは、どっちみち、死んじゃうけどね~」


穏乃「……」

憧 「……」


宥 「憧ちゃん、どうする?」


憧 「……その前に、質問していいですか?」


宥 「全然、構わないよ~?」


憧 「もし、宥さんが、〝本当に〟灼さんにPを沢山入れたなら……」


宥 「……」ピクッ


憧 「私とシズは、灼さんと、同盟を破棄しなくても、生き残れますよね?」


宥 「……そうだね、生き残れるんじゃないかな?」


憧 「だったら、先に協力を約束した、灼さんを、裏切る必要は、無いですよね」


宥 「………………」

宥 「……灼ちゃんに、沢山のPを入れたのは本当だよ」


憧 「それなら……」


宥 「じゃあ、どうして、私はその事をカミングアウトしたと思う?」


憧 「……」


宥 「私は、投票する前に、憧ちゃん達と、交渉する事もできた」


宥 「灼ちゃんは、玄ちゃんとの約束で、
   私に、Pを入れない可能性もあったでしょう?」


憧 「正確には、〝考えるだけ〟ですけどね」


宥 「それでも、憧ちゃんの生存率は、100%じゃなかった」


宥 「私と玄ちゃん、2人で、憧ちゃんに8Pを入れれば、
   灼ちゃん次第で、憧ちゃんが死ぬ事もありえたでしょ?」


憧 「……〝可能性〟としては、考えられた〝かも〟しれません」


宥 「浮動票である方が、駆け引きを、有利に進められたのに……」


宥 「どうして、私が、憧ちゃん達に、手の内を明かしたと思う?」


宥 「偏差値70の憧ちゃんなら、当然、分かるよね……?」


憧 「……この交渉が、必ず成立するという、確信でもあるんですか?」





宥 「うん、あるよ」ニヤリ

憧 「もしかして、さっきの、私の生存率が100%じゃないって話……」


憧 「あれを、恩に着せて、協力を得ようと……?」


宥 「ううん、違うよ」


宥 「憧ちゃんは、〝薄情〟だから、そういう所は、割り切ってそうだし……」


憧 「私が……薄情……ですって……?」


宥 「自分が助かる為なら、恩義なんて〝糞喰らえ〟でしょ?」


憧 「……勝手に、決め付けないでくださいよ」


宥 「そうかなぁ……?」


宥 「憧ちゃんなら、自分が助かる為に、躊躇無く、
   穏乃ちゃんに、〝4人目〟を書かせたり、しそうだよ~?」


宥は、ニヤニヤしながら、憧達に向かって言った。


穏乃「!?」


憧 「な、なにを……っ!」

宥 「〝4人目〟ってさ、書いた人に、2P、入るじゃない?」


宥 「あれってさぁ、相当、〝危険〟だよね~」


穏乃「っ!!」


宥 「私だったら、大切な人に、〝4人目を書いて〟なんて……」


宥 「口が裂けても、頼めないよ~」


宥 「でも、憧ちゃんなら、平気で、そう言う事を、頼みそうな気がするな~」


憧 「くっ……!」


宥 「穏乃ちゃん、憧ちゃんから、〝4人目〟の事、何か言われなかった?」


穏乃「そ、それは……」


憧 「シズ、宥姉の質問に、答える必要なんて無いっ!」


宥 「そうだね~、顔色から、丸分かりだもんね~」


穏乃「……っ!」


宥 「酷いね~、憧ちゃんは……」


宥 「〝親友〟である、穏乃ちゃんに、〝死ね〟って、平気で言えるんだから……」


憧 「ち、違う! 初期値から計算して、4人目を書いても、問題無いと……」


宥 「そうかな~? 私は、結構、〝危ない〟と思うけど……」


穏乃「……」


憧 「違うっ! 違うっ! 違うっ!」


強い言葉で否定するも、憧の足は、ガクガクと震えていた。

=======
=====
===


穏乃『〝4人目〟に書けば、相手に5Pも与えられるんだ……』

穏乃『どうする、憧?』

憧 『馬鹿ねぇ、シズは。4人目を書くと、自分が危うくなるわよ?』

穏乃『そ、そうなの?』

憧 『面倒だから、詳しい説明はしないけど、4人目は、絶対に書いちゃ駄目』

穏乃『わ、分かったよ……』

憧 『点数計算は、私が〝全部〟するから、シズは、大人しくしててね』

穏乃『う、うん……』



憧 『シズ、お願いがあるの……』

憧 『〝4人目〟に、宥姉を書いて……』



宥 『酷いね~憧ちゃんは……』

宥 『親友である、穏乃ちゃんに、〝死ね〟って言えるんだから……』


===
=====
=======


穏乃(憧……お前を信じて……いいんだよな……?)


不安交じりの視線を、憧に向ける穏乃。


憧 (シズが私に、疑いの目を向けてる……!?)

憧 「そ、そんな事より、何で交渉が成立するのか、説明してくださいよ!」


穏乃「……」


宥 「そんな事? お姉ちゃん、大切な事だと、思うんだけどな~」


憧 「……っ!」


宥 「まぁ、いいや……」


宥 「ねぇ、穏乃ちゃんっ!」


穏乃「な、何ですか……?」


宥 「目の前に、見知らぬ人が倒れていて、その人が、助けを求めています」


穏乃「……???」


宥 「穏乃ちゃんは、その人を、〝確実に〟助ける事ができます」


宥 「……助けますか?」


穏乃「何の事か、分かりませんけど、できる事なら、助けますよ」


宥 「それならさ……」



宥 「私のお父さんを、助けてよ、穏乃ちゃん……」

穏乃「あっ……」


宥 「灼ちゃんのお婆ちゃんは、既に、死んでいるでしょう?」


宥 「でも、私と玄ちゃんのお父さんは、まだ生きているんだよ?」


宥 「私と玄ちゃん、両方が死ねば、お父さんも殺される……」


宥 「だけど、私達、姉妹の内、どちらかが生き残れば、お父さんは助かるの」


穏乃「っっっ!!」


宥 「1人と2人、穏乃ちゃんは、どっちを助ける?」


穏乃「そ、それは……」


宥 「私のお父さんの生死は、〝穏乃ちゃん次第〟なんだよ……?」


穏乃「私……次第……?」


宥 「そうだよ。もし、穏乃ちゃんが、灼ちゃんを、助けたとしたら……」


宥 「それは、紛れも無く、穏乃ちゃん自身の意思で、
   私達のお父さんを、〝殺す〟って事なんだよ……」


穏乃「!?」


宥 「何のリスクも無く、救う事ができるのに、
   穏乃ちゃんは、私達のお父さんを、見捨てるの?」


穏乃「うっ……うぅ……」


憧 (シズが……迷ってる……!?)

憧 「ちょ、ちょっと、宥姉っ!」


宥 「ん~?」


憧 「シズに、変な事を吹き込むの、止めてよっ!」


宥 「変な……事……?」


宥 「私が、自分のお父さんを助けたいって、
   穏乃ちゃんに、お願いする事が、変な事なの?」


憧 「ぐっ……」



〝冷血人間〟



宥は、口元に笑みを浮かべながら、艶かしく呟いた。



宥 「穏乃ちゃん、これまでの姿を見て、私の事、酷い人だと思ったでしょ?」


穏乃「……はい、少し……」


宥 「ふふっ、正直で良い子……」


宥 「私はね、嘘偽り無い、自分の感情を、包み隠さず、曝け出しただけなの」


宥 「それは、穏乃ちゃん達に対して、〝誠意〟を持って、交渉に臨む為だよ」


穏乃「誠意……ですか……?」


宥 「だって、本心を隠したままじゃ、それは、相手を騙しているのと同じ」


宥 「だから、私は、みんなに、本音を言ったんだよ……」


宥 「それを非難される事も、覚悟した上でね……」


宥 「でもね、汚い感情を持ちつつも、それを隠している、卑劣な人間もいる」


宥 「穏乃ちゃん、上辺だけで、人を判断したら、駄目だよ?」ゴゴゴゴゴッ

憧 (ヤバイ……この感じ、この空気、何かヤバイ……っ!)


憧 (本当に、この人は、宥姉なの……?)


その時、憧は、中学時代に、玄が言っていた言葉を、ふと思い出した。


=======
=====
===


JC玄 『お姉ちゃんはね、本当は、凄く頭が良いんだよ~』

JC憧 『そうなの?』

JC玄 『うん。先生から、晩成高校の進学を、勧められていたんだって』

JC憧 『ええっ? でも、宥姉、阿知賀だよね?』

JC玄 『お姉ちゃんは、旅館を継ぐから、学歴はいらないって……』

JC玄 『それに、阿知賀の方が、〝お嬢様〟ってイメージがあるでしょ?』

JC玄 『女将としては、阿知賀の方が、ステータスになるんだって!』

JC憧 『ふーん……』


===
=====
=======


憧 (もし、宥姉の、真の狙いが、灼さんへの集中攻撃ではなく……)


憧 (心理戦を仕掛けて、私達3人の関係を、破壊する事だったとしたら……)


憧 (宥姉は、灼さんではなく、この私を、殺す気なんじゃ……?)

憧 「わ、私達は、灼さんとの同盟を、絶対に崩さないっ!」


憧 「だから、宥姉の話にも、乗らないっ!」


宥 「……」


穏乃「あ、憧……?」


宥 「……ねぇ、穏乃ちゃん、二人は、〝対等な関係〟だよね?」


宥 「どうして、憧ちゃんが、1人で勝手に、決めてるの?」


宥 「穏乃ちゃんは、それでいいの? 自分の命が、懸かっているんだよ?」


穏乃「……っ」


宥 「それと、〝お母さんの命〟もね……」


穏乃「っっっっっ!!!」


宥 「〝4人目〟を書かせる様な人を信用して、本当に大丈夫?」


宥 「選択を間違えたら、穏乃ちゃんのお母さんも、死んじゃうんだよ……?」


憧 「惑わされないで、シズっ!」


宥 「惑わす……? 私が……? 何で……?」


憧 「恍けないでよっ!」

憧 「宥姉の狙いは、もう、完全に、バレてるんだからねっ!」


宥 「私の……狙い……?」


宥 「〝鷺森灼ちゃんを殺す会〟を設立して、自分が助かろうとしている事?」


憧 「違うっ!」


宥 「えぇ~?」


憧 「宥姉は、自分が助かりたいから、私達3人の関係を、崩そうとしている!」


宥 「えっ? それは、灼ちゃんを殺すんだから、当然、そうなるけど……」


憧 「違うっ! 本当の狙いは、灼さんじゃなくて、私なんでしょ!?」


宥 「はぃ~?」


憧 「灼さんとの同盟や、穏乃との関係を壊して、私を殺す気なんだっ!」


宥 「ちょっと、憧ちゃん、錯乱しないでよ~」オロオロ

宥 「私は、穏乃ちゃんに、〝灼ちゃんを殺して〟ってお願いしてるんだよ?」


宥 「もし、穏乃ちゃんが、私の言う通りにして、
   灼ちゃんに、Pを沢山入れる事になったなら、
   憧ちゃんも、灼ちゃんにPを入れれば、問題無いよ?」


憧 「嘘だっ! 信用できないっ! 宥姉は、私を騙そうとしている!」


宥 「……全っ然、論理的じゃないよ……。憧ちゃんは、頭が良い筈なのに……」


穏乃「……」


宥 「支離滅裂で、被害妄想の塊……まるで、灼ちゃんと、同じだね」


憧 「うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ!」


憧は、床に倒れている、灼の元へと駆け寄った。


憧 「灼さん、私達は、灼さんを、絶対に、裏切りませんからっ!」


灼 「うぅ……」


灼は、虚ろな目をして、ぐったりとしている。


憧 「しっかり、しっかりしてくださいよ、灼さんっ!」


体を揺さ振るも、灼は茫然としたまま、起き上がる気配も無い。
必死に呼び掛ける憧の姿を見て、宥は冷たく微笑みながら言った。


宥 「憧ちゃんは酷いなぁ……。また、灼ちゃんを騙すの?」

憧 「灼さんを騙す!? そんな事、私、してないっ! 意味分かんないっ!」


宥 「えぇ~? 本当に分からないの? 〝頭の良い〟憧ちゃんが?」


憧 「一体、何だって言うんですかっ!?」


宥 「憧ちゃん達に協力しても、灼ちゃんは、助からないでしょう?」


灼 「……」ピクッ


憧 「はっ? 何を根拠に……っ!」


憧の問いを無視し、宥は、穏乃に、笑顔で話しかける。


宥 「ねぇねぇ、穏乃ちゃん!」


宥 「穏乃ちゃんは、私と玄ちゃん、どっちが〝好き〟?」


穏乃「えっ……?」


宥 「怒らないから、正直に答えて?」


穏乃「……これまでの、二人の行動を見ていれば、玄さんに決まっています……」


穏乃「それに、玄さんとの方が、付き合いが長いですし……」


穏乃「今回の事が無くても、私は、玄さんの方が……好き……です……」

穏乃「すみません、宥さん……」


宥 「ううん、いいの、いいの。最初から、分かってたから」


穏乃「でも、宥さんの事も、嫌いではないです」


穏乃「玄さんの言う通り、この状況が、全ての元凶ですし……」


穏乃「以前の、優しい宥さんの事を、私も、覚えてますから……っ!」


穏乃「その時の宥さんが、本当の宥さんだと、私は、信じています」


宥 「やっぱり、良い子だなぁ、穏乃ちゃんは……」



宥 「じゃあ、玄ちゃんと、灼ちゃん、 ど っ ち が 好 き ? 」



憧 「!?」

灼 「!?」


穏乃「そ、それは……」


動揺する穏乃に対し、宥は優しく言った。


宥 「大丈夫、口で言わなくても、ちゃ~んと、分かってるから……」


宥 「穏乃ちゃん、本当は……」


宥 「玄ちゃんより、灼ちゃんに、死んで欲しいんでしょ……?」ゴゴゴゴッ

穏乃「…………っ!」


穏乃は、苦痛の表情で俯き、全身を震わせている。


宥 「玄ちゃんと、灼ちゃん、どちらかを、2人目の生贄に選ぶとしたら……」


宥 「穏乃ちゃんは、どっちを 選 ぶ の か な ぁ ? 」


宥 「灼ちゃんとの約束を守って、大好きな玄ちゃんを殺す?」


宥 「でもでも、投票が終わっちゃえば、灼ちゃんは、完全に用無しだよね」


宥 「例え、裏切ったとしても、灼ちゃんには、どうする事もできないよ?」


宥 「それに、玄ちゃんを助ければ、もう一人の命も、救う事ができる……」


宥 「穏乃ちゃん、どちらを生贄に選ぶか、教えてくれるかな?」


穏乃「私は……私は……」


穏乃の全身の震えが、ますます、大きくなってゆく。
答えを出せぬまま、遂には膝を付き、その場に倒れ込んだ。

宥 「うふふふふ……」


宥が、笑いながら、ゆっくりとした歩みで、灼に近付いてゆく。
その姿を見て、憧は強い恐怖心に駆られ、灼の傍から離れた。


宥は、灼の目の前に立ち、蔑んだ目を向けながら言った。


宥 「可哀相な、灼ちゃん……」


宥 「騙されて、利用されて、最後には、捨てられちゃう……」


灼の体が、小刻みに震えている。


宥 「……でも、諦めてね? それが、貴女の運命なの……」


しゃがみ込み、倒れ込んでいる灼の頭を、優しく撫でながら言った。


宥は立ち上がり、今度は、怯えている、憧に向かって言葉を投げる。


宥 「私達相手なら、騙して、簡単に出し抜けると、思ってたんでしょう?」


憧 「っ!?」


宥 「特に、穏乃ちゃんなんかは単純だから、手玉に取るのも楽だよね~」


憧 「私、シズをそんな風に見てないっ! 騙してなんかないっ!」


宥 「私ね、この前、偶然、見ちゃったの……」


憧 「……?」


宥 「憧ちゃんが、晩成の友達と、一緒にいる所を……」


憧 「はっ!?」


宥 「その時にね、〝レベルが低い〟とか〝頭が悪い〟だとか、
   阿知賀のみんなを、馬鹿にしてたのを、私、聞いちゃったの」


憧 「は? はぁ? はぁ!?」

憧 「な、何よそれ……デタラメな事、言わないでよっ!」


宥 「友達面して、内心、私達の事を、笑ってたんでしょう?」


宥 「〝偏差値70〟の憧ちゃんは……」


クスクスと笑いながら、憧の方をじっと見ている宥。
憧の心を甚振り、徐々に正常な思考を失わせてゆく。


〝正直な宥、嘘吐きな憧〟


宥の巧みな話術によって、その様な〝イメージ〟を植えつけられてしまった。
身に覚えの無い罪を着せられても、それが虚言だと、証明する手立ては無い。


穏乃「……」

灼 「……」


憧 「シズ……灼さん……何で、そんな目で、私を見るの?」 


憧 「ねぇ……信じてよ……私、みんなの事を、馬鹿になんてしてないっ!」


穏乃「……」

灼 「……」


憧 「私、本当に、グスッ、そんな事、グスッ、言ってないのに……」


憧 「そんな目で、私を見ないでよぉぉォォォっっっ!」


頭を抱え、喚きながら、憧はその場に崩れ落ちた。

穏乃、憧、灼が、悲痛の面持ちで、床に座り込んでいる。
暗い沈黙の中、宥は、微笑みながら、皆に話し掛ける。


宥 「灼ちゃん以外は、喜んでもいいんだよ? 生き残れるんだから」


宥 「玄ちゃんにも、灼ちゃんにPを入れさせるから、
   穏乃ちゃんも、憧ちゃんも、同じ様にしてね?」


宥 「まぁ、二人の内、どちらか一人が、灼ちゃんに入れれば、
   その時点で、1人目の生贄は、灼ちゃんになると思うけど」


宥 「穏乃ちゃん、2人目の生贄は、玄ちゃんで宜しくね?」


穏乃「……宥さんにするかも……」


宥 「ん?」


穏乃「……私、2人目の生贄を、宥さんにするかもしれませんよ?」


宥 「う~ん、それは無いかな~」


宥 「だって、玄ちゃんのお願いなら、穏乃ちゃん、断れないでしょ?」


宥 「玄ちゃんは、〝必ず〟、私の身代わりを申し出るよ……」


宥 「あの子の性格は、私が、一番、良く知っているんだから……」


穏乃「……」

その後、暫くして、玄は目を覚ました。

宥は、敢えて皆の前で、玄の、自分に対する忠誠心を証明させた。
いくら暴言を吐かれようと、玄の、姉に対する想いは変わらない。

玄は、宥の為なら、喜んで生贄になると、ハッキリと言い切った。

自分が生贄になれば、仲間の1人が救われる。
部を創設した者としての、贖罪の念もあった。


室内の、異常な空気に、戸惑いながらも、
宥の指示に従い、玄は投票を完了させる。


続いて、灼、穏乃も、黒服に用紙を、それぞれ手渡した。


憧は、最後まで悩みながらも、苦痛に顔を歪ませる望の姿を見せられ、
書き殴る様にして、記入を終えた後、黒服に、その用紙を叩き付けた。


皆、名を記入する前よりも、大分、落ち着きを取り戻していた。
〝生贄を選ぶ〟という行為から、解放された所為かもしれない。


後は、天命を待つのみ。


黒服「それでは、皆様の選択結果を、発表していきます」



穏乃「!?」

玄 「!?」

憧 「!?」

灼 「……」

宥 「……」

憧 「私達が、誰の名前をどんな風に書いたのか、全部発表するって事……?」


黒服「イエス」


玄 「えっ……?」

穏乃「そ、そんなの、聞いてないっ!」


黒服「これは、皆様自身に、投票内容を、確認して頂く事で、
   我々が、その中身を、改竄していないと、証明する為の物です」


宥 「……」

灼 「……どうでもいい。早くして。」

玄 「で、でも、誰に入れたか分かったら、喧嘩とかに……」

穏乃「そ、そうですよっ!」

灼 「……もしかして、バレると都合悪いの?」

穏乃「そ、そうじゃなくて……」

玄 「うぅ……」

灼 「何を今更……」


憧 「……」


黒服「我々に関する、全ての記憶は、解放後、消去されます」


黒服「よって、この場で、何が起ころうと、
   新世界の人間関係には、影響ありません」


黒服「開票の順番は、私の独断で、決めさせて頂きます」


黒服「それでは……」

黒服「まずは、鷺森灼様の、選択結果を、公表致します」


灼 「……勝手にすれば?」


そう言うと、灼は、部屋の隅へ行き、その場に腰を下ろした。

宥の〝殺害宣言〟により、灼は、少々、自暴自棄に陥っていた。
死を覚悟したのか、恐怖心が麻痺したのか、怯える様子は無い。


黒服「選択結果が、モニターに映りますので、各自、確認をお願いします」


黒服「順位と累計ポイントは、モニターに、常に最新の物が表示されます」



穏乃(まずは、灼さん……)


生唾をゴクリと飲み込み、開票を待つ穏乃。



憧 (最後まで、協力をお願いしたけど、返事すらして貰えなかった……)

憧 (それでも、お願いします、灼さん、私を助けてください……)


両手を胸の前で組んで、目を瞑り、只管祈り続ける憧。



玄 (お願い、灼ちゃん、お姉ちゃんにPを入れないで……)


玄は、瞬きもせず、モニターを、じっと見詰めている。



宥 「…………」

黒服「これが、鷺森灼様の選択です」


==========

1:松実 宥   +1
2:新子 憧   +2
3:高鴨 穏乃 +3

4:松実 玄   +5
==========


黒服「累計ポイントは、この様になりました」


===========
★累計ポイント数★
高鴨 穏乃 : 3P

鷺森 灼   : 4P
松実 玄   : 5P
松実 宥   : 5P
新子 憧   : 6P
===========


穏乃(4人書かれている……宥さんが1Pで……玄さんが5P!?)


憧 「う……そ……」


玄 (私に5P……でも、お姉ちゃんのPが、一番少ない……っ!)


玄 (灼ちゃんは、私との約束を、ちゃんと、守ってくれたんだ!)


玄 「ありがとう、灼ちゃんっ!」


灼 「別に……。お礼なんていらない。玄に、5P入れてるし。」


玄 「それでも……お姉ちゃんを助けてくれて、ありがとう!」


灼 「……」


宥 「……」

憧 「うぅ……酷いよ……灼さん……私との……約束……」


憧 「Pを……グスッ……入れないでって……グスッ……お願いしたのに……」


憧は、涙を流しながら、灼に、訴え掛けた。


灼 「その約束は、私を、2人目の生贄に、選ばない事が、前提の筈……」


灼 「なのに、穏乃は、私を必ず助けると、断言しなかったっ!」


穏乃「!?」


憧 「!!」


灼 「穏乃に殺される可能性があるなら、憧に協力する意味なんて、無いでしょ!」


憧 「う……うぅ……」


穏乃(あの時、私が、灼さんを助けるって、言えなかったから……)


灼 「でも、私は、憧達との約束も、きちんと守ってる」


穏乃「えっ?」


憧 「!?」

灼 「私は、最初、〝4人目〟を、書くつもりは無かった」


◆灼の当初の予定◆
==========
1:新子 憧   +1
2:高鴨 穏乃 +2
3:松実 玄   +3
4:
==========


灼 「けど、玄との約束を守ると、憧に1P入れる事になるし、
   憧達に、計3P、玄達にも、計3Pとなってしまう……」


灼 「だから、私は、〝4人目〟を、書く事にした」


灼 「どうせ、生贄になるんだから、今更、ペナルティなんて関係無いし」


◆灼の実際の選択◆
==========

1:松実 宥   +1
2:新子 憧   +2
3:高鴨 穏乃 +3

4:松実 玄   +5
==========


灼 「そうすれば、憧達に計5P、玄達に計6P……」


灼 「私は、憧達に、僅かだけれど、味方をした事になる」


灼 「それに、私が2P増えるから、相対的に、憧は0Pと同じでしょ?」


憧 「!!」

憧 (駄目だ、灼さんは、全然、理解してない……)


憧 (私が言った、〝Pを入れないで〟の意味を、勘違いしてる……)


憧にとって、最も重要なのは、〝宥とのポイント差〟である。
極端な話、仮に3P入れられたとしても、宥に5P入れば、問題無い。


逆に、例え、入れられたPが、少なかったとしても、
宥より多ければ、それは、憧にとって、非常に危険なのだ。


玄や穏乃に、大量のPが入った所で、憧にとっては、何の意味も為さない。


今回、灼の言う様に、相対的に考えて、憧が0Pならば、宥は-1P。
最下位を回避するには、これから、宥より、〝2P〟少なくなければならない。


それは、今の憧にとって、死刑宣告にも等しかった。
1Pの重みが、憧の背中に、ずっしりと、伸し掛かる。



憧 「死ぬ……私……死ぬ……」



憧は、その場に座り込んでしまった。

悲しみに暮れる憧を後目に、黒服は、無慈悲に事を進める。


黒服「それでは……」


黒服「続きまして、新子憧様の、選択結果を、公表致します」


憧 「」ビクッ


穏乃(憧……)


玄 (憧ちゃん……)


灼 「……」


宥 (…………)

黒服「これが、新子憧様の選択です」


==========

1:鷺森 灼   +1
2:松実 玄   +2
3:松実 宥   +3
4:

==========


黒服「累計ポイントは、この様になりました」


===========
★累計ポイント数★
高鴨 穏乃 : 3P

鷺森 灼   : 5P
新子 憧   : 6P
松実 玄   : 7P
松実 宥   : 8P
===========

穏乃(当初の予定と同じ……灼さんと、同盟を組むパターンだっ!)



灼 (穏乃を、トップにする気なら、Pを入れる事などできない)

灼 (そうなれば、私の方に、Pを、入れざるを得ない……)

灼 (トップ奪取と、最下位回避の為、松実姉妹を狙うのも必然)

灼 (同盟があろうが無かろうが、結局、私が受けるPは、変わらない)

灼 (だからこそ、宥さんは、私を、直接、狙いに来たんだ……っ!)


玄 (あわわ……お姉ちゃんが、最下位になっちゃったよぉ……)


宥 「……」


宥 「結局、憧ちゃんは、私を信用する事が、できなかったんだね……」


憧 「……」


宥 「灼ちゃんに、沢山Pを入れなさいって、あれ程、忠告してあげたのに……」


憧 「……っ!」


宥 「……憧ちゃん、死ぬよ?」


憧 「っ!!」ビクッ

宥に、死の予告をされ、ガタガタと、震えだす憧。
その姿を見て、穏乃が、憧の元へと、駆け寄った。


穏乃「お、おい、大丈夫か、憧っ!」


憧 「シズ……私……死ぬ……死んじゃうよぉ……」


穏乃「そんなの、まだ、分からないだろ!?」


憧 「無理無理っ! 絶対無理っ! 私には、分かるのっ!」


穏乃「……っ!」


励まそうとするも、穏乃の言葉に、耳を貸そうとしない憧。
涙を流して、泣き叫び、もう、どうする事も、できなかった。


黒服「続きまして……」


穏乃「ま、待ってっ!」


黒服「……何でしょう、高鴨穏乃様?」


穏乃「私の……私の投票用紙を、先に公表してっ!」


黒服「…………」


黒服「……それでは、高鴨穏乃様の、選択結果を、公表致します」

黒服「これが、高鴨穏乃様の選択です」


==========

1:新子 憧   +1
2:鷺森 灼   +2
3:松実 玄   +3
4:松実 宥   +5
==========



黒服「累計ポイントは、この様になりました」


===========
★累計ポイント数★
高鴨 穏乃 : 5P

鷺森 灼   : 7P
新子 憧   : 7P
松実 玄   :10P
松実 宥   :13P
===========




憧 「!!」

灼 「!!」

玄 「っ!?!?」


宥 「…………」

玄 (お、お姉ちゃんが……断トツ……最下位……?)カタカタカタ


憧 「これは……私が……シズに……お願いした……」


穏乃「うん……。私は、憧の言う事を……最後まで、信じる……っ!」


憧 「シズ……」


穏乃と憧は、その場で、固く抱き合った。


宥 「………………」


宥 「穏乃ちゃんまで、私の言う事に、逆らうんだぁ……」


宥 「しかも、〝4人目〟まで書いて……。危ないって、警告したのに……」


穏乃「……私は、憧の事を、信じてますから……」


宥 「……本当に、それでいいの?」


穏乃「私には、難しい事は、さっぱり分かりません」


穏乃「……でも、これだけは、ハッキリしています」


穏乃「宥さんは、1つ、嘘を吐いている……っ!」

宥 「……嘘?」


穏乃「宥さんは、憧が、私達の事を、〝馬鹿にした〟と言いましたよね?」


宥 「……言ったね」


穏乃「それは、絶対に〝嘘〟です」


宥 「……何で、そう言い切れるの?」


穏乃「憧は、口が悪いし、上級生から見て、生意気かもしれません……」


穏乃「だけど、人を、本気で、馬鹿にする様な事は、絶対にしないっ!」


憧 「シズ……」


宥 「……その選択、後悔するかもしれないよ?」


穏乃「自分の選択に、後悔はしませんっ!」


宥 「そう……」


穏乃「そして、ごめんなさい、宥さん、玄さん……」


玄 「っ!?」


穏乃「私、2人に、高Pを……与えて……うぅ……」


宥 「……」


宥 「……仕方無いよ。そういう、システムだもん。お互い様だよ……」


穏乃「うぅ……うえぇぇ……」


穏乃はその場で泣き出し、憧の胸に顔を沈めた。

二人が、泣き止むのを、待っていたのか、
暫くの間、黒服は、静かに沈黙を保っていた。


しかし、二人が落ち着くや、冷静な口調で、進行を再開する。



黒服「それでは……松実玄様の、選択結果を、公表致します」



憧 (玄の選択次第で、宥姉の考えが読める……)

憧 (狙いが、本当に、灼さんなのか、それとも私なのか……)


穏乃(宥さんが、嘘を言っていなければ、灼さんに、大量のPが……)

穏乃(灼さんには、申し訳ないけれど、憧は助かる……っ!)


灼 (玄から、5P貰ったら、最下位までは行かずとも、12P……)

灼 (最後の、宥さんの攻撃で、私は……死ぬ……っ!)

灼 (憧達を信じていれば、まだ、可能性はあったのに……っ!)

灼 (うぅ……嫌だ……怖い……私だって……死にたくないよぉ……っ)



玄 「…………」

黒服「これが、松実玄様の選択です」


==========
1:鷺森 灼   +1
2:高鴨 穏乃 +2
3:新子 憧   +3
4:
==========


黒服「累計ポイントは、この様になりました」


===========
★累計ポイント数★
高鴨 穏乃 : 7P

鷺森 灼   : 8P
新子 憧   :10P
松実 玄   :10P
松実 宥   :13P
===========


穏乃(灼さんに、1Pしか入ってない!?)

穏乃(憧の言う通り、宥さんは、嘘を吐いていたの!?)

穏乃(でも、これって……どういう事……?)


灼 (私に……1P……なんで……?)

灼 (残りは、宥さんだけだし……助かった……の……?)



玄 「…………」



玄は、何も言わず、モニターを注視している。



宥 「……」



憧 (玄が、灼さんに、大量のPを入れず、私に3P……!?)

憧 (だけど、これだと、どうやっても、宥姉は死ぬ……)

憧 (玄が、宥姉を、裏切った!?)

憧 (信じられないけど、そうとしか、考えられない……)

憧 (そうじゃなきゃ……辻褄が合わない……っ!)



玄 「……あれ?」

玄 「これで……お姉ちゃんは……本当に……助かる……の……?」

玄 「私、言われた通りに……ちゃんと、名前、書いたよね……?」


◆玄回想◆

玄 『お姉ちゃん、私、どうすれば……』

宥 『玄ちゃんは、絶対に、言われた通りに、名前を書いてね』

宥 『間違えたら、お姉ちゃんは、死んじゃうからね、分かった?』

玄 『う、うん! お姉ちゃんを、助ける為なら、私、何でもするっ!』

宥 『それじゃあ、よく聞いてね?』

宥 『1の所に灼ちゃん、2の所に穏乃ちゃん、3の所に憧ちゃんを書くの』

玄 『そう書けば、お姉ちゃんは、助かるの?』

宥 『うん、そうだよ。だから、絶対に、間違えないでね?』

玄 『分かった。上から、灼ちゃん、穏乃ちゃん、憧ちゃんだね?』

宥 『うんうん、お姉ちゃんとの、約束だからね?』

宥 『絶対に、〝勝手な真似〟は、しちゃ駄目だからね?』

玄 『うん』

◆回想終◆


玄 「お姉ちゃん……?」


宥 「……」


玄 「ねぇ……私……間違って……ない……よね……?」




宥 「……」ゴゴゴゴゴッ

憧 (玄は、宥姉を、裏切ってない?)

憧 (と言う事は、素で、書く名前を間違えた? 玄なら、有り得るかも……)

憧 (いや、違う。それなら、4人目が、書かれていないのは、不自然だ……)

憧 (灼さんか、私に、5Pを入れなければ、宥姉は、死ぬ可能性が高かった)

憧 (流石に、玄でも、4人目が、空欄である事に、気付かない筈が無い……)


憧 (もし、これが、ミスではなく、宥姉の意思だとしたら……)


憧 (そこから、考えられるのは……考え……られる……のは……)


憧の体が、再びカタカタと震えだす。


憧 「やばい……これ……やばいパターンだ……」


穏乃「憧……?」


憧 「宥姉の……狙いは……やっぱり……私だったんだ……」


穏乃「えっ……?」


憧 「しかも……この累計点数……」


憧 「私にとっては、最悪でも、宥姉にとっては、〝理想形〟かもしれない……」


穏乃「……どういう意味?」


宥 「……」



憧 「宥姉は……私を……道連れに……する気……だったんだ……」



宥 「……」ゴゴゴゴゴッ

憧 「宥姉は、最初から、玄を殺す気なんて、無かったんだ……」

憧 「そして、自分が助かる気も、恐らく無い……っ!」


玄 「……えっ?」


憧 「もし、自分が生き残るつもりだったら、玄に〝4人目〟を書かせるはず」


玄 「ハッ……!」


◆玄回想◆

宥 『ところで、玄ちゃん、 〝 4 人 目 〟 の事なんだけど……』

宥 『絶対に、〝4人目〟の所に、名前を書いちゃ、駄目だからね?』

玄 『えっ?』

宥 『この〝4人目〟はね、不幸を呼ぶ、悪魔の罠なの……』

玄 『で、でも……そこに、名前を書かないと、お姉ちゃんが……』

宥 『……玄ちゃんは、私より、自分の方が、頭が良いと、思っているの?』

玄 『そ、そんな事、思ってないよ!』

宥 『だったら、余計な事は、考えないでね』

宥 『ただ、お姉ちゃんの言う事に、従っていれば良いの』

玄 『だけど……』

宥 『〝4人目〟を使わなくても、助かる方法、お姉ちゃんは知ってるよ』

玄 『ほ、本当……?』

宥 『うん。もう、全部、計算済みだから』

宥 『むしろ、〝4人目〟を書くと、この作戦は、成功しない……』

玄 『そ、そうなんだ……』

宥 『そして、その作戦には、玄ちゃんの協力が、必要不可欠なの』

宥 『だから、何があっても、必ず、お姉ちゃんの言う通りにしてね?』

玄 『わ、分かった、お姉ちゃん……』

◆回想終◆


玄 「そ、そんな……」ガクガク


宥 「……」


玄 「う、嘘だよね……お姉ちゃん……」


宥 「……」ゴゴゴッ


玄 「〝4人目〟を書かなくても、助かる方法があるんでしょ?」


宥 「…………」ゴゴゴゴッ


宥 「ねぇ、憧ちゃん……」


宥 「憧ちゃんはね、多分、2つの勘違いをしているよ……」ゴゴゴゴゴッ

憧 「勘違い……?」


宥 「私は、別に、憧ちゃんを、道連れにしようだなんて、思ってないよ」


宥 「累計Pがこうなったのも、単なる偶然……」


宥 「憧ちゃんは、今、この時の状況から見た、
   結果論で、物事を推測しているだけなの」


宥 「それが、〝デジタル〟である、憧ちゃんの、最大の弱点……」


宥 「もっと、広い視野を持って、この大きな〝流れ〟を感じて……」


目を瞑り、両手を広げて、宥は言った。


憧 「……?」


宥 「それが、1つ目……」

宥 「2つ目……」


宥 「今、憧ちゃんは、最下位から免れれば、
   確実に助かると、そう思っているよね?」


憧 「シズがトップであるならば、当然、助かると思いますけど?」


宥 「本当に、そう、言い切れるかな?」


憧 「……シズが裏切るとでも、言いたいんですか?」


憧 「私を信じて、〝4人目〟まで、書いてくれた、シズがっ!」



宥 「穏乃ちゃん……」



穏乃「」ビクッ


宥 「穏乃ちゃんは、憧ちゃんと玄ちゃん、どっちが好き?」


穏乃「……」


憧 「シズ……?」


宥 「穏乃ちゃん、答えなくてもいいよ? 答えは、分かっているから……」

憧 「ちょ、ちょっと、どういう事?」


宥 「……」


憧 「シズは、私より、玄の方が好き……なの……?」


穏乃「……」


憧 「嘘でしょ……シズ……?」


憧 「私、シズと麻雀する為に、晩成を蹴って、阿知賀に来たんだよ……?」


憧 「お願い……シズ……私と玄、どっちが好きなのか、ちゃんと答えてっ!」



穏乃「 答 え ら れ る 訳 な い っ ! 」



憧 「っ!?」


穏乃「憧も玄さんも、両方、大好きだもんっ!」


穏乃「どっちの方が好きだとか、答えられる訳、ないじゃんかっ!」


穏乃は涙を流し、叫ぶ様にして吐き捨てた。

憧 「そ、そんな……」


全身の力が抜けていき、放心状態になる憧。


宥 「憧ちゃん、別に、悲しむ様な事じゃないよ?」


宥 「穏乃ちゃんは、憧ちゃんが大好き、それは、紛れも無い事実だから」


宥 「でもね、決して、憧ちゃんだけが、特別っていう訳じゃないの」


宥 「最初に、穏乃ちゃんが、憧ちゃんの方に与したのは、
   玄ちゃんが私の元に来て、それを見た憧ちゃんが、穏乃ちゃんを呼んだから」


宥 「状況が違えば、この組み合わせすら、変わっていたかもしれない」


憧 「ありえない……そんなの、絶対、在り得ない……」


宥 「その可能性は、限りなく〝0〟に等しいかもしれない」


宥 「けれど、それは、決して、〝0〟じゃないんだよ……」

宥 「この、死の投票システムで、生存が〝確定〟するのは、トップだけ……」


宥 「トップを獲り、〝選ぶ人〟になる事ができれば、確実に生き残れるけれど、
   〝選ばれる人〟には、僅かであっても、〝死の可能性〟が、必ず存在する」


宥 「どんなに仲良しでも、最後まで、何があるかは、分からないのだから」


宥 「今回は、憧ちゃんと玄ちゃんの他に、灼ちゃんもいる……」


宥 「でも、選択肢がある限り、〝100%安心〟なんて事は、在り得ないの」



宥 「だからね、もし、本当に大切な人がいて……」


   
宥 「その人の事を、守りたいのであれば……」



宥 「自らを犠牲にしてでも、必ずトップを、獲らせなければならない」ゴゴゴゴゴッ





黒服「それでは、最後になりますが、松実宥様の、選択結果を、公表致します」

黒服「これが、松実宥様の選択です」


==========

1:松実 玄   +1
2:新子 憧   +2
3:鷺森 灼   +3
4:高鴨 穏乃 +5

==========


黒服「累計ポイントは、この様になりました」


===========
★累計ポイント数★

松実 玄   :11P
鷺森 灼   :11P
高鴨 穏乃 :12P

新子 憧   :12P
松実 宥   :15P
===========


玄「お姉ちゃんの覚悟が言葉ではなく心で理解できたのです!」

玄「二人目の生贄を決めるのです!おもちの小さい方が生贄なのです!」

>>32で変更がないなら、クロチャーとアラチャーは自分達以外の誰かを生贄に選ばなければならない事に…

ルールによると1人目と2人目の処刑方法は同じなんだな。そこがちょっと残念
自ら死を選んだ宥姉にはせめて安楽死できる処刑にしてやってほしい…

ちょっと時間かかりますが餓死とかどうですかね(ゲス顔)

黒服「>>1より、お知らせがある様です」


ちょっと、今日は急がしくて、更新は無理そうです。

なので、次の書き込みまでの間に、
少しアンケートをしたいと思います。



【処刑方法】と【生き残るのはどちらか】について。



処刑方法は、当初、安価にする予定でしたが、
SSを書いてる内に、ちょっとHで良さげな方法を、思いつきました。

しかし、安価で処刑方法を求めるのも、いいかな~、とも思います。


また、>>351を見て、1人目と2人目の、
処刑方法を変えるのも、アリかな、と思いました。

もしかしたら、また、パソコンの不具合が、起きるかもしれません。



生き残るのは誰かも、安価にするかどうか、現在、検討中です。

その選択によって、新世界編が書かれる場合には、
内容が、大幅に変わる可能性が、あるかもしれません。

既に、両方のパターンで考えてありますが、両方はやりません。

(注:新世界編は、書かれない場合もあります)



>>1にお任せか、安価か、どちらが良いか、暇な人、ご意見ください。



安価で、生贄の方法を募集する場合は、
具体的に内容を書いて貰っても構いませんし、
キーワードみたいな物だけでも、構いません。

例えば……、

「エロ」とだけ書かれた場合、何らかの、エロい方法で処刑されます。
「水」とだけ書かれた場合、水を使って、何らかの方法で処刑されます。

拷問の名称が書かれれば、その方法で処刑されます。
それで死ななかった場合は、新たに募集する可能性もあります。


>>353餓死の様に、時間の掛かる物でも構いませんが、
少々、SFチックになる可能性がある、かもしれません。

ここまで話が出来上がっているのに最後のオイシイ所を安価にしちゃうとは……
安価だと今までの世界観ぶち壊しのトンデモ安価が来る可能性もあるし
それのせいで「また迷走かよ」と言われる可能性も……どうなんだろ?

とりあえず【生き残るのはどちらか】は自分で「これだ」と決めたやり方で書くべきかと
このあたりは周りの意見を聞いていたらキリがないような気がする



あ。【処刑方法】はエロで

窒息死するまでくすぐり続ける
処刑人は生贄を最も愛している者

黒服「みんな怖すぎー」

黒服「>>1より、皆様へのお礼と、今後の展開について、お話があるそうです」


様々なご意見、ありがとうございました。

処刑方法、エロ率、高過ぎじゃないですかね?(困惑)

ただ、>>1も、その方向を考えていたので、
今回は、それで行こうと思います……。


安価やるやる詐欺で、申し訳ありません。(ペッコリン)
次こそは……次こそは……。



上位2名or親しい者に、処刑を執行させる、という意見も多い様ですね。
正直、自分の頭の中には、そんな発想は、全くありませんでした……。

安価怖すぎぃ。

普通に、安価で、処刑方法を求めたら、
高確率で、これらの意見が、安価を取る様な気がします。

次の高校の子達は大変だー。(棒)


あと、個人的には、>>375とかが来ると、結構、難しい気がします。
実際、行われたら、拷問的な意味では、かなり強烈そうですが……。


>>361
基本的に、全て『B級ホラーなんで……』で、対応しようと思います。

また迷走かよ!→B級ホラーなんで……
世界観ぶち壊し!→B級ホラーなんで……
急につまんなくなった→B級ホラーなんで……
色々と矛盾してね?→B級ホラーなんで……
最後蛇足、いらねぇ!→B級ホラーなんで……


2人目の生贄は、まだ決めてませんが、
まだ先の話なので、取り敢えず放置します。

でも、憧さんの方が、泣き叫ぶ役とか、似合いますよね。(ゲス顔)

黒服「>>326より、再開します」

黒服「皆様の選択の結果、松実宥様が、1人目の生贄に、確定致しました」


憧 「た……助かったの……?」


鼻水を垂らしながら、憧が小さく呟いた。


穏乃「あ、あぁ……そうだよ……。でも……」


肯定しながらも、憂いた表情で、モニターを見詰める、穏乃。
黒服の説明通りであるなら、2人目の生贄は、自分か憧になる。


だが、それは、宥の処刑後であり、まだ先の事である。
まずは、その宥がどうなるかを、見届けなければならない。


玄 「お……お姉ちゃんが……生贄……嘘だ……嘘だ……」


その事実を、受け入れる事ができず、涙すらも出ない。
完全に放心し、玄は、力無く、その場に、座り込んだ。


灼 「最初から……玄だけを、助けるつもりだったの……?」


宥 「……そうだよ。私にとって、玄ちゃんはね、
   何よりも、誰よりも、優先すべき存在だから……」


灼 「そう……。今までのは、全て、演技だったんだ……」


宥 「まぁ……ね……」


灼 「……尊敬するよ、宥さん」

宥 「尊敬……?」


灼 「玄を守る為に、自身の命すら、捨てる覚悟があった事……」


灼 「私は、死の恐怖の中で、自分の事しか、考えられなくなっていた……。
   偉そうな事も言ったけれど、結局、私は、自分が一番、大切だったんだ」


灼 「私は、口先だけの、偽善者だった……」


宥 「……」


宥 「……そんな事、無いよ、灼ちゃん……」


宥 「そう思うのは、灼ちゃんが、優しくて、正義感が強いから……」


宥 「それにね、私が強くなれたのは、初期Pのお陰なの」


灼 「初期Pの……?」


宥 「私はね、この初期Pを、最初に見た時に、〝運命〟を感じたの……」


灼 「運……命……?」

宥 「さっきも言ったけれど、確実に生き残れるのは、トップだけ……」


宥 「でも、私の初期値では、トップになる事なんて、まず不可能……」


宥 「逆に、玄ちゃんなら、私の力だけでも、トップに立たせる事ができる……」


宥 「だからこそ、私は、自分の命を、投げ打つ、〝覚悟〟ができたの」


宥 「もし、初期値が、トップを狙える、可能性がある物だったら、
   私も、自分が助かる為に、妹すら、犠牲にしたかもしれない」


宥 「私だって、本当は、心の弱い、人間だから……」


灼 「宥さんが……弱い……?」


灼 「私達の同盟を、冷静な判断力と分析力で、あんな風に崩壊させたのに?」


宥 「実はね、灼ちゃん達が、同盟を組もうが、
   私にとっては、どうでも良い事だったの……」


灼 「えっ?」


宥 「例え、3対2でも、私には、確信に近い、勝算があったから……」

◆3人同盟の、宥の点数予想◆

穏0 玄0 灼2 憧4 宥4

穏 宥+3 玄+2 灼+1
憧 宥+3 玄+2 灼+1
灼 宥+3 玄+2 穏+1


◆途中経過◆

穏1 玄6 灼4 憧4 宥13 
 

これが、同盟を組んだ場合における、安全重視の、最善策。
宥達は、2人で協力しても、灼や憧を、殺す事ができない。


1人に集中して、宥が3P、玄が5Pを入れた場合、
憧、あるいは、灼のPは12、宥の13Pには届かず。

宥と玄、2人で、10Pを入れたとしても、14P。
宥は、ペナルティで2Pを受け、15Pになってしまう。


玄と宥が持つ、単体攻撃力を、合計8Pと仮定するならば、
助かる為には、宥と9Pの差を、維持しなければならない。


そうしなければ、宥と同率最下位になり、死亡する可能性がある。


が……


その場合、玄に対しては、与えるPが、少なくなる為、
玄に、トップを取らせる事は、比較的、容易なのである。

つまり、憧達の安全を確保すると、玄に対する、攻撃が疎かとなり、
捨て身の宥から、穏乃のトップを守る事が、不可能となってしまう。


とは言え、そんな事態が起こる事は、誰も想像していなかっただろう。
宥自身も、真の目的を悟らせぬ為、様々な心理的工作を仕掛けている。


憧と灼からして見れば、最も危険なのは、
最下位となり、問答無用で、生贄にされる事である。


だとすれば、宥との〝9P差〟は、必ず保持しなければならない。


それは同時に、玄の、〝トップ獲り〟という、
宥の勝利を、確定させる為の、条件でもあった。


憧と穏乃の2人なら、2人で1人を、この場合は、憧を守る事になる。
灼が加わり、3人になると、今度は、3人で2人を守らなければならない。


かといって、穏乃に、過剰なPが入れば、それこそ、宥の思う壺である。

実は、憧達と、灼の3人が、同盟を組もうとも、
〝玄をトップにする〟という意味では、さほど、脅威では無かったのだ。


事実、宥は、このパターンを、まず最初に想定し、
憧達と、灼の同盟など、問題視してはいなかった。



だが、宥の予測し得なかった、思い掛けない事態が、発生してしまう。
玄が、灼に、自らの命と引き換えに、宥を助けるよう、申し出た事である。



その事により、灼の行動予測に、想定外の、大きな、〝不確定要素〟が生じた。



〝灼が約束を守ったら、宥に行く筈だったPは、一体、何処へ行く……?〟



玄に、大量Pが入る可能性を、考慮しなければならず、
それは、不安要素として、宥を悩ませる案件となった。



宥が、確実に、1人目の生贄となる、〝安全重視型〟が、
本当に実行されるのか、疑いを持たざるを得なくなったのだ。

宥 「私にとって、最悪なのは、玄ちゃんに、沢山のPが入る事……」


宥 「トップを獲らせる為には、どうにかして、それを、阻止しなければならない」


宥 「その為に、憧ちゃんや、穏乃ちゃんの、〝選択肢〟を増やしたの」


〝鷺森灼ちゃんを殺す会〟


宥 「私達以外の、もう1人に、大量Pを与える選択肢を、私は提供した」


宥 「それは同時に、玄ちゃんから、注意を逸らす為の、陽動だった……」


宥 「この作戦は、完全に、失敗しちゃったけれど……」


灼 「更に、宥さんは、玄がトップを獲れなかった場合の、保険も掛けた」


宥 「うん。穏乃ちゃんの、優しさを、利用して……ね……」


宥 「それは、3人の関係を、破壊する上でも、重要な役割を果たしてくれた」


灼 「どうして、そこまでする必要が……」


宥 「灼ちゃん……、これは、一度きりの、命を賭した投票なの」
   

宥 「いくら後悔しても、やり直す事なんて、できないんだよ?」


宥 「だからこそ、失敗は、〝絶対に〟許されない……」


宥 「生き残る為には、あらゆる手段を、同時に、講じておくべきなの」


宥 「例えそれが、友情を崩壊させる様な、陰湿かつ外道な方法でもね……」

宥 「ただ、私にも、解決できない、何よりも懸念すべき、事案があった……」


宥は、ゆっくりと玄に近付き、正面に座って、玄を抱き締めた。


宥 「それは、玄ちゃんが、私の為に、勝手に〝4人目〟を書いてしまう事……」


玄 「っ!?」


玄 「……やっぱり、お姉ちゃんを救うには、〝4人目〟が必要だったんだ……」


宥 「それは違うよ、玄ちゃん……」


宥 「〝4人目〟を書いても、決して、お姉ちゃんは、救われない……」


玄 「どう……して……?」


宥 「それはね、玄ちゃんが助からなければ、お姉ちゃんは、救われないから」



宥 「玄ちゃんが、必ず助かると、確認するまで、私は、死ねないから……」



玄 「うぅ……う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛…… っ っ っ !!!」


大声で泣きじゃくる玄を、宥は、優しく、しっかりと抱き締めた。


宥 「例え、私がいなくなっても、1人で強く生きて……」


玄 「いやだ いやだ いやだ いやだ いやだよ゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛っ!!」

宥 「玄ちゃんは、良い子でしょ? お姉ちゃんの、最後のお願いを聞いて?」


玄 「やだやだっ! お姉ぢゃんが死んだら、私゛も゛死゛ぬ゛っ!」


軽々しく死を口にする玄に対し、宥は、右手を振り上げる。
だが、その手を振り下ろさず、玄を、更に強く抱き締めた。


宥 「悲しい……。今、お姉ちゃんは、とても悲しい……」


宥 「玄ちゃんが、自分の命を、粗末にする様な子で……」


宥 「玄ちゃんの事を、助けたかったから、こんなに頑張ったのに……」


宥 「お姉ちゃんの、今までの行いは、全部、無駄だったのかな……」


玄 「っ!?」


宥 「仲間を傷付け、苦しめて……最低な行為を、いっぱい、いっぱいした……」


宥 「それは全部、何の意味も無い、無駄な事だったのかな……」



玄 「 無 駄 な 事 な ん か じ ゃ な い っ ! 」

玄 「お姉ぢゃんがじた事は、全部、私 の 為 だ も゛ん゛っ ! 」


玄 「私を助げる為に、お姉ぢゃんは……お姉ぢゃんは……」


宥 「……それなら、〝死ぬ〟だなんて、簡単に言わないで……」


玄 「…………」


宥 「私の行為を、無駄にしないで……」


玄 「…………っ」


宥 「私を、〝大切な妹を、守る事ができた、お姉ちゃん〟でいさせて……ね?」


玄 「………………っ!」


宥 「お願い、玄ちゃん……」



宥 「私を、〝玄ちゃんを、世界で一番、愛している姉〟でいさせて……」



玄 「……う゛ん゛」



〝露子『宥……玄の事を……お願いね……』〟



宥(私、守ったよ……。玄ちゃんを……お母さんとの約束を……)

黒服「松実宥様……」


玄が、泣き止むのを待ってから、黒服が話を切り出す。
別れの時間に、終わりが告げられたと、宥は理解した。


人質の安否も気になる所であり、悠長にしている暇など無い。


いつまでも、名残惜しむ玄を、断腸の思いで、突き放す宥。
玄は、無言で抵抗するも、灼の協力もあって、宥から引き離された。


宥 「ありがとう、灼ちゃん……」


灼は何も言わずに、そっと、目を背けた。


宥 「ごめんね、みんな……。〝許して〟なんて、言わない……」


宥 「でも、玄ちゃんの事だけは、どうぞ、よろしくお願いします……」


宥は、皆に、深々と頭を下げた。


覚悟を決めた宥は、涙すら見せず、凛然たる態度で、黒服と向き合った。


黒服「それでは、松実宥様……」


黒服「こちらの、モニターを、ご覧ください」

宥 「……?」


皆の、累計P表が消え、画面は、真っ黒になっている。


黒服「我々は、処刑方法について、未だ、全く、知らされておりません」


黒服「これから、このモニターに、その方法が、表示されます」


黒服「その指示に従い、我々は、貴女の処刑を、速やかに、執行させて頂きます」


宥 「……はい」



絞首刑か、銃殺刑か、薬殺刑か……。



いずれにせよ、宥は、これから、自分に対して執り行われる〝処刑〟が、
現代における、〝死刑〟と、似た類いの物だと、勝手に思い込んでいた。


それは、宥だけではなく、穏乃、憧、灼、玄も、同様である。
故に、処刑方法については、皆、深く考える事など無かった。


皆が抱いていたのは、〝死〟そのものに対する、漠然とした恐怖であり、
どの様な過程を経て、殺されるかなど、気に掛けてすらいなかったのだ。



その処刑方法が、モニターに、提示されるまでは……。



黒服「こちらが、生贄となった者に対して行われる、処刑の方法でございます」



〝強姦致死〟

宥 「…………えっ?」


灼 「なっ……!」

玄 「嘘……だよ……ね……?」

憧 「なっ……なによ……それ……」

穏乃「強……姦……致……死……?」


血で書いた様な、不気味なフォントの、汚い文字が浮かび上がる。


予期せぬ、余りに、残虐な処刑宣告に、5人は戦慄した。
自ら死を決意した宥でさえ、全身の震えを、抑える事ができない。


強姦……。


その言葉は、処女である彼女達に、
かつてない衝撃と、恐怖を齎した。


特に、穏乃と憧は、他の者よりも、強い恐怖心に襲われた。


〝2人目の生贄が確定したら、1人目と同じ方法で処刑をする〟

穏乃は、これまで、生贄選抜から、一番、遠い存在だった。
初期値が0であり、宥の虚言の中でも、穏乃は攻撃対象外。


〝生命の危機〟を感じる場面とは、無縁であったと言えよう。


故に、今まで、穏乃が感じていた〝恐怖〟と、
他者が感じていた〝恐怖〟には、相当な隔たりがあった。


それが、憧と共に、2人目の生贄候補となった事で、
穏乃は、漸く、皆が感じていた〝恐怖〟を知ったのだ。


〝強姦致死〟という、悍ましい単語に、触発された形で。


性的関心が低い、穏乃でも、その言葉の意味は理解できる。
それと同時に、強烈な嫌悪感が、穏乃の全身を、駆け巡った。


〝男に無理矢理犯される恐怖〟


豪快な性格で、性別など、全く意識した事の無かった、穏乃は、
この時、初めて、自身が〝女〟である事を自覚し、その弱さを知る。


背筋に悪寒が走り、両足が、自分の意思とは関係なく、勝手に震えだす。
奥歯をガチガチと、激しく鳴らしながら、穏乃は、その場に、へたり込んだ。

この部室にいる男性は、黒服達だけである。
宥は、後退りし、彼等から、距離を取った。


その様子から、黒服は、宥の考えを察し、同時に否定もする。


黒服「強姦の件ですが、執行人は、どうやら、我々ではない様です」


では、一体誰が、宥を、陵辱すると言うのか。
その答えは、黒服によって、すぐに示された。


黒服「松実宥様の、初めてのお相手は、〝あれ〟だそうです……」


窓際に立ち、黒服は、校庭で雄叫びを上げている、〝あれ〟を指差した。


その直後、モニターに、あの処刑人が映し出される。
宥の顔からは、血の気が失せ、一気に青褪めてゆく。


宥 「う……そ……」


獣の様に、奇声を上げる、その姿は、〝人〟などと、呼べるモノでは無かった。


熱り立っているのか、分厚い筋肉を纏った腕で、
巨大なハンマーを、勢い良く、振り回している。


血に飢えた怪物が、獲物を探すかの様に……。


理性の欠片も無い、暴力と狂気の体現者。
破壊と殺戮の衝動を、抑制できぬ、悪鬼。


宥 「無理……私……無理……です……」


それは、宥が漏らした、初めての弱音だった。


黒服「心中、お察ししますが……」


黒服「〝あれ〟が、貴女の処刑を、執行するそうですよ……?」

突然、それまで暴れ狂っていた、処刑人の動きが、ピタッと止まった。


ハンマーを持つ腕を下げ、斜め上を向いて、その場に、立ち尽くしている。
顔面は、黒い三角の頭巾で覆われている為、表情などを窺う事はできない。


が、次の瞬間、耳を劈く様な咆哮を上げ、校舎に向かって走り出した。


黒服「皆様、こちらへ、どうぞ……」


先程まで、中央付近にいた黒服が、部屋の隅へと、移動している。
いつの間にか、1人を残し、他の黒服達は、皆、姿を消していた。


黒服「〝あれ〟は、我々の力では、制御する事ができません」


黒服「知能が極端に低く、理性も持たぬ故、〝見境〟がありません」



黒服「……そこにいると、全 員 巻 き 込 ま れ ま す よ ? 」



黒服の足元を見ると、そこには、白い帯状の線が引かれていた。


その線には、呪文の様な文字が、びっしりと書き込まれており、
部室の中の、4分の1程度の空間を、仕切る様に描かれている。


穏乃と憧が、慌てた様子で、その線の内側に移動する。
玄も、灼に、無理矢理、手を引かれ、線の中に入った。

処刑人「オ゛オ゛オ゛ォ ォ ォ オ゛オ゛ォ ォ ォ ォ ッ ッ ッ ッ !!!!」


地響きと共に、身の毛もよだつ、雄叫びが、猛烈な速さで、近付いて来る。


玄 「お姉ちゃんっ! 早くこっちへ!」


玄の声で、我に返り、宥が、こちらに向かって、走り出した。
あと、もう1歩で、線の内側に入れる、そう思った瞬間……。


ドンッ


突然、宥が、何かに、衝突したかの様に、後方に弾かれ、尻餅をついた。


玄 「お姉ちゃんっ!」


駆け寄ろうとした玄も、宥と同様に、尻餅をつく。


玄 「!?!?!?」


宥と玄は立ち上がり、線を挟んで、向かい合った。
そして、ゆっくりと、互いに手を、近づけてゆく……。


玄 「!?」

宥 「!?」


そこには、目には見えぬ、透明の、硬い壁の様な物があった。

音は素通りする様だが、体は、先程の様に、通り抜けできない。


玄 「お姉ちゃんっ! お姉ちゃんっ!」


見えざる壁を、激しく叩きながら、玄は叫んだ。
拳から血が流れ出すも、玄は、壁を叩き続ける。


水がガラスを伝う様に、玄の血液が、宙を流れた。
透明な壁の一部が、玄の血によって、赤く染まる。


宥 「玄ちゃん、やめてっ! もう、いいからっ!」


玄 「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ っ っ ! ! ! 」


宥の制止も聞かず、只管、壁を殴り続ける玄。


宥 「お願いっ! 誰かっ! 玄ちゃんを止めてっ!」


叫びにも似た、宥の声を聞き、迫り来る恐怖に竦みながらも、
穏乃、憧、灼は、3人掛かりで、暴れる玄を、押さえにかかる。


玄 「放してっ! 放してよぉぉぉっっっっ!!!!」

物凄い力で、3人を、強引に、振り払おうとする玄。
地面に押さえ付けられてなお、抵抗を止める気配は無い。


その時……


爆音と共に、部室の、入り口の扉が吹き飛ばされ、
2mはあろう、例の巨漢が、そこから、入ってきた。


上半身は裸で、下半身には、白い、ズボン状の、武道袴の様な物を纏っている。
手に巨大なハンマーを持ち、腰には、装飾が施された、黄金の短刀が光っていた。


黒い三角頭巾は、目の部分だけ、穴が空いており、
そこから、血走った眼が、右に左に、周囲を見回している。


そして、視界に、宥の姿を捉えると、ハンマーを床に投げ捨て、
不気味な息遣いをしながら、じりじりと、追い詰める様に、近付いて来た。



処刑人「ふぅーっ、ふぅーっ、はああぁぁあああぁぁぁぁァァァっっッッッ……」



宥 「あっ……あっ……あぁ……あぁっ…………」

サイレントヒルの三角さんを思い出した

>>476
トラウマ物必須やんけ((((;´Д`))))

>>476
トラウマ物必須やんけ((((;´Д`))))

処刑人の、太い腕が、宥を捕らえ様と、ゆっくりと、伸びてきた。
それを、素早く回避し、宥は、破壊された、入り口へ向かって走る。


宥 「はぁっ……はぁっ……」


行く当てなど無いが、一先ず、この部室から、逃げ出そう。
そう考えた宥だが、無情にも、その作戦は、早々に頓挫した。


宥 「っ!?」


部室と、廊下の間にあった、扉の代わりに、
あの見えない壁が、両空間を、遮断していたのだ。


この部室から、脱出する事は、最早、不可能。


絶望する宥に、処刑人の魔の手が迫る。
宥は、再び、それを避け様とするが……。


ガシッ


それまでとは違う、機敏な反応で、
処刑人が、宥の腕を、がっしりと掴んだ。

宥 「嫌ぁっ!放してっ!」


どんなに暴れ様と、その手を、振り解く事はできない。
逆に、万力で、絞められるが如く、握力が強められた。


宥 「い、痛い……っ! 痛いよぉっ!」


次の瞬間、処刑人が、宥を、部室中央に、放り投げた。
宥の身体は、麻雀卓に激突し、卓は、岡持ちと共に倒れた。


宥 「うっ……うぅ……」


痛みに堪えながらも、必死に、匍匐で、逃げ様とする宥。
処刑人は、その宥の足を掴み、自分の方へと、引き寄せる。


宥 「やだぁっ! やだぁっ! やだぁっ!」


床に爪を立てるも、いとも簡単に、引き摺られてしまった。


それまでの勇姿からは、想像すらできぬ、宥の崩れた泣き顔。
処刑人は、俯せ状態の、宥の上に跨り、大きな雄叫びを上げた。

処刑人は、呼吸を荒げながら、宥の衣服を、剥ぎ取り始めた。
それは、〝脱がす〟と言うよりも、〝引き千切る〟と言うべきか。


上着を、肌着を、スカートを、黒タイツを、毟る様に剥いでゆく。


宥は、身動きが取れず、僅かな抵抗もできぬまま、
処刑人に、生まれたままの、姿にされてしまった。


丸裸にされても、羞恥心など、微塵も無かった。
宥の心は、恐怖によって、完全に支配されていたのだ。


その作業が終わると、処刑人は、全裸の宥の上で、動きを止めた。
腕力によって、制圧した女を前にして、征服感を味わうかの様に。


処刑人が、腰の短刀を取り出し、自らの服の、股間部分に、切れ目を入れた。


そこから現れたのは、そそり立つ、巨大な、どす黒い〝肉棒〟。
水膨れや、赤い斑点が無数にあり、醜悪さを、増幅させている。


潔癖症でなくても、目を背けたくなる、醜悪な物体。
太い血管が脈打ち、何とも言えない、悪臭を放っている。


宥 「んーっ、んーっ、んーっ!」


その臭いから、状況を察した宥は、手足を、必死に、ばたつかせた。
だが、その程度では、上に乗っている処刑人を、揺らす事すらできない。


憧 「うっ……おえぇぇええぇぇぇっっ!」


堪らず、憧は嘔吐し、室内の異臭は、更に強まった。

黒服「注意書きに、追加しておきますね」


9:この作品は、フィクションであり、登場する人物は、全て架空のモノです。
  

この作品に登場する、「小林立」は、16歳の、天才〝美少女〟漫画家女子高生です。

実在する、天才セクシー〝美女〟漫画家である、小林立大先生とは、何の関係もありません。

処刑人が、宥の上から、少し後ろへと、移動する。


体重が掛からなくなった、その一瞬の隙を突き、
宥は、処刑人の体の下から、抜け出そうと試みる。


……が、処刑人の両手が、宥の腰辺りを掴み、それは失敗した。


処刑人は、宥の顔を、床に押し付けつつ、彼女の膝を立たせ、
白く透き通り、張りのある、桃の様な尻を、突き出させる形にさせた。


片手で、宥の頭を、しっかりと、地面に押さえ付け、
もう一方の手で、後ろ手にさせた、宥の両手首を握り、
逃げられぬ様、宥の体勢を、完全に、固定した。


宥 「くっ……んっ……っ!」


無理がある姿勢に、苦悶の表情を浮かべる、宥。
全身が紅潮し、あらゆる汗腺から、汗が滲み出す。


宥 「んっ……んんっ……っ!」


処刑人は、自分の〝物〟を、宥の、綺麗な桃尻に、何度か擦り付けた後、
前戯すらせず、処女である、宥の、閉じた秘部を、抉じ開けるかの様に、
バックの体勢から、巨大なそれを、強引に、勢い良く、一気に捻じ込んだ。


宥 「ヒギイィィイッ!」


余りの痛みに、力を込めて目を閉じ、涙を流して、宥は絶叫した。


宥 「痛い 痛い 痛い 痛い 痛いよぉぉおおぉぉぉっっっッッッ!!!」


玄 「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ っ っ ! ! ! 」


松実姉妹の絶叫が、室内に響き渡る。


穏乃、憧、灼は、恐怖の余り、部屋の隅に寄り、目を瞑って、耳を塞いだ。

悶絶する、宥の秘部からは、大量の血液が、流れ出していた。
破瓜だけではなく、女性器自体に、大きな損傷を受けたのだろう。


泣き叫ぶ宥に対して、処刑人は、腰を激しく動かし、更に責め立てた。
肉と肉がぶつかり合う音が、悲鳴の中に混じり合い、狂気を演出する。


宥 「う゛っ ! あ゛っ ! ん゛っ ! あ゛ぁ゛っ ! ん゛ん゛っ ! 」


処刑人が動く度、宥は顔を歪め、苦痛の呻き声を上げた。


玄 「や゛め゛て゛ー っ ! や゛め゛て゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛っ っ ! ! 」


ドンッドンッと、玄が壁を叩くも、その音は、悲鳴に掻き消された。


処刑人は、深く肉棒を挿入したまま、宥の両腕を、後方へ引っ張る。


宥 「んっ……んんっ……んんんんっ…………っ!!!!!」


それは、快感からではなく、強制的に、宥は、弓形に、仰け反らされた。
宥は、苦しそうに顔を上げ、豊満な胸を、突き出す様な形にされている。


その体勢のまま、処刑人は、激しく、執拗に、抜き挿しを繰り返した。



宥 「ん゛ん゛ん゛ん゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛っ っ っ っ ッ ッ ッ ! ! 」

処刑人「オ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ ッ ッ ッ …… 」


ドグン ドグン ドグン ドグン ドグン ドグン ……


宥 「あっ……あっ……あぁっ……」


処刑人の肉棒が膨張し、宥の膣内で、激しく、何度も何度も、脈打った。
熱した鉄の様に熱い、謎の白い液体が、宥の体内に、大量に注ぎ込まれる。


処刑人「ハァァァッッ……ハァァァッッ……ハァァァッッ……」


宥 「ひっぐ……ひっぐ……」


処刑人は、宥の恥部から、肉棒を引き抜き、動きを止めた。
身に付けている、白い袴は、宥の鮮血で赤く染まっている。


これで終わりと、玄も宥も、その時は、そう思った。
だが、現実は、それ程、甘いモノではなかったのだ。


処刑人が、俯せになっている宥を、引っ繰り返し、仰向けにする。
一度の射精では収まらず、体位を変えて、陵辱を続ける気なのだ。

宥 「ひぃっ!」ビクッ


その時、宥は、初めて、男の〝それ〟を見た。
歪な形の、不潔で、醜悪で、グロテスクな物体。


今まで、それが、自分の体内に、何度も挿し込まれ、
しかも、〝精液〟の様な液体まで、流し込まれたのだ。


宥の恥部から、溢れ出る、謎の白い液体が、それを証明している。


宥 「あぁ……ああぁぁぁあああぁぁぁぁっっっ!!」


正気でなど、いられる筈が無かった。
今までとは違う、狂った様な悲鳴を上げる宥。


そんな事など、お構い無しに、肉棒を挿入しようとする、処刑人。
覆い被さろうとした、その瞬間、宥の足蹴りが、彼の顔面を捉えた。


処刑人「……」

処刑人「…………」

処刑人「………………」

処刑人「……………………」



処刑人「ク゛オ゛オ゛ォ ォ ォ オ゛オ゛ォ ォ ォ ォ ッ ッ ッ ッ !!!!」

それは、大した一撃などでは、決して無かった。
にも拘らず、処刑人は激怒し、怒りの咆哮を上げた。


狂った様に叫びながら、宥の右脚の脛を、両手で掴み、
割り箸を折るかの様に、その脚を、力任せに、圧し折った。


鈍い音と共に、宥の悲鳴が、室内に響き渡る。
その声に、共鳴するかの様に、玄も、叫び声を上げた。


続いて、左脚も、同様に、破壊した、処刑人。
骨が突き出し、辺りに、大量の血が飛び散った。


不自然な形をした、両脚を持ち上げ、
それを、宥の頭の方へと、持って行く。


所謂、〝まんぐり返し〟状態である。


宥の脚を、押さえ付けたまま、上から覆い被さり、
打ち付ける様に、処刑人は、何度も肉棒を挿入した。


その間、宥は、痛みで気絶する事もできず、悲鳴を上げ続けた。



玄 「……して」


玄 「……殺して」


玄 「……殺してよ」




玄 「もう、お姉ちゃんを、殺してあげてよぉぉぉっっっっっ!!!!」

激しい痛みの中、宥は、残る力を振り絞り、最後の反撃に出る。
右手で、処刑人の首筋に、爪を食い込ませ、思い切り、引っ掻いた。


処刑人「グォォオオォォォッッッ!!!???」


死に物狂いの一撃は、処刑人が、出血する程の傷を与えた。
首の側部を押さえ、処刑人は、宥の上から、素早く飛び退いた。


宥 「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」


脚の怪我もあり、宥は、その場から、動く事ができなかった。


そんな宥に、先程とは、異質の雰囲気を持って、近付く処刑人。
宥に対して、明確な敵意を持ち、強烈な殺気を、漲らせている。


処刑人「オ゛オ゛ォ ォ オ゛オ゛オ゛ォ ォ ォ ォ ッ ッ ッ ! ! ! 」


仰向けになっている、宥の腹の上に乗り、
宥の両腕を、片腕ずつ、順番に圧し折った。


宥 「うっ……う あ ぁ ぁ あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ っ ! ! ! 」


宥の、反撃する能力を、完全に奪い取ったのだ。


その上で、宥の顔面に、容赦の無い打撃を、只管、加え続ける。
それは、灼が玄にした攻撃とは、比べ物にならぬ程、強烈だった。


一撃毎に、宥の頭は、左右に、大きく揺れ動き、
折れた歯が、口から飛び出し、辺りに散乱した。



玄 「ん゛ーっ、ん゛ーっ、ん゛ん゛ん゛ーーっっっっ!!!!」



玄は、口を両手で押さえ、声にならない悲鳴を上げた。

やがて、室内に、静寂が訪れた。


宥は、ぐったりとしていて、動く気配は、全く無い。
僅かに、胸が上下している為、生存は確認できる。


だが、逆にそれは、宥にとって、不幸な事だったのかもしれない。
妹の玄ですら、姉の死を願う程の、残虐な仕打ちを受けたのだから。


〝早く死ねば、その分だけ、楽になれたのに……〟


最後の止めを刺すべく、処刑人は、腰に下げた短刀を、再び握り締め、
宥の下腹部に、それを深々と突き立てた後、胸部に向かって、腹を引き裂いた。


悲鳴を上げる、余力すら、残っておらず、宥は、静かに絶命した。


その切れ目に手を入れ、宥の心臓を掴んで引き千切り、
雄叫びを上げながら、腕を挙げ、それを、握り潰した。



処刑人「オ゛オ゛オ゛ォ ォ ォ オ゛オ゛ォ ォ ォ ォ ッ ッ ッ ッ !!!!」



宥の胸に刺さっている、黄金の短刀を残したまま、
何かに導かれる様に、処刑人は、部室から出て行った。


透明な壁は、いつの間にか、消失していた。


玄は、見るも無残な姿となった、姉の亡骸に駆け寄り、
露出している臓物など、気にする事無く、その遺体を抱き締めた。

悲痛な思いに暮れる玄、室内に流れる、重い沈黙……。


穏乃(ゆ、宥さんが……本当に……死んじゃった……)ガタガタガタ


憧 (死んだ……宥姉が……死んだ……)ガクガクガク


部室の静寂とは裏腹に、穏乃と憧は、内心、穏やかではなかった。



〝1人目の生贄を処刑した後、2人目の生贄を決める〟

〝最もポイントの少ない者が2人の場合、
 2人目の生贄を決める際は相談し、自分達以外から1人を生贄に選ぶ〟

〝2人目の生贄が確定したら、1人目と同じ方法で処刑をする〟



宥の処刑は、その死をもって、終わりを告げた。
次に始まるのは、2人目の生贄を選ぶ作業である。


===========
★累計ポイント数★

松実 玄   :11P
鷺森 灼   :11P
高鴨 穏乃 :12P

新子 憧   :12P
松実 宥   :15P 死亡
===========



それを示すかの様に、モニターに、累計P表が、映し出される。
宥の所には、死亡と書かれ、写真が、モノクロに加工されていた。

2人目の生贄……。


〝選ぶ者〟は、同率トップの、玄と灼。

〝選ばれる者〟は、穏乃と憧。


生贄を選ぶのは、敬愛すべき、二人の先輩達。
生贄に選ばれるのは、自分か、あるいは、親友か。


〝不要〟と判断され、生贄として、選ばれた者には、
実際の〝死〟よりも辛い、苛酷な責め苦が待っている。


〝強姦致死〟


殺意は無いが、強姦遂行に関する、行動が原因で、
結果して、被害者が死亡した場合に、問われる罪。
また、強姦されたかどうかは、関係無く成立する。


だが、実情は、それとは異なり、明らかな〝強姦と殺人〟である。
生贄は、強姦された後、惨たらしい暴力によって、殺されるのだ。


宥が、そうされた様に……。


穏乃と憧は、歯をガチガチと鳴らして、震え上がった。
二人は、目を合わせる事もできず、ただ俯き、怯えている。


〝生き残りたい〟のではない。

〝生贄になりたくない〟のだ。


その為には、目の前の親友を、生贄として、犠牲にするしかない。
心の中に存在する、後ろめたい感情が、二人を遠ざけ孤独にした。

黒服「それでは、2人目の生贄を、選出して頂きます……」


穏乃「っ!?」

憧 「っ!!」


黒服「鷺森灼様、松実玄様……」


灼 「っ!!」

玄 「……」


黒服「高鴨穏乃様か、新子憧様か、どちらかを、生贄にお選びください……」


灼 「わ、私は……」


体を震わせ、目を瞑り、苦悩する灼。
穏乃と憧が、その口唇に、注目する。


灼「……決められない」


小さく、呟く様に、灼が言った。


灼「決められない……決められる筈が無いっ! 私には無理っ!!」


そう言って、灼は、その場に、座り込んでしまった。


残虐非道な処刑を、見せ付けられた後、
同じ方法で殺される、次の犠牲者を選ぶ。

普通の神経を持つ、人間であれば、
そんな惨い行為を、できる筈が無い。


まして、友人とも呼べる、仲間を、選ぶ事など……。


皆、黙り込み、静寂だけが広がる室内。
灼は無言のまま、地面を見詰めている。



「 憧 ち ゃ ん が い い 」

憧 「っ!?」

穏乃「っ!!」

灼 「っ!!」


沈黙を破ったのは、宥の死体を抱き締めている、玄だった。


玄 「私、憧ちゃんを、生贄にしたい」


玄は、宥を優しく床に寝せると、立ち上がって、憧の方を見た。
私服の白いワンピースは、夕日と、宥の血で赤く染まっている。


憧 「な、なんでよ……玄……」


震えた口調で、憧は、自分が選ばれた理由を問う。


玄 「なんで……? なんでって……?」


玄は、床に落ちていた、宥のノートを拾い上げ、憧に向かって投げ付けた。


玄 「お前がっ! お前が、お姉ちゃんを、殺したんだろうがっ!」


普段は温厚で、誰も、玄が怒った所など、見た事は無い。
その彼女が、殺気立ち、鬼の様な形相で、怒声を上げた。

玄 「ねぇ、憧ちゃん……」


前触れも無く、突然、優しい口調に戻り、憧に呼び掛ける玄。
先程までの、怒り狂った表情は、すっかり、消え失せていた。


微笑みすら見せる玄だが、その目は、狂気に満ちていて、
尋常ではない、異様な雰囲気を、全身から醸し出している。


玄 「何で、憧ちゃんは、お姉ちゃんに、8Pも入れたの?」


憧 「わ、私が、宥姉に入れたのは、3Pよっ!?」


玄 「じゃあ、残りの5Pを入れたのは、一体、誰なの?」


首を傾げながら、無表情で、憧に、答えを迫る、玄。


憧 「そ、それは……」


憧は、言葉を濁らせ、穏乃の方を、ちらりと見た。


穏乃「っ!?」


その様子を見て、玄が、穏乃に、視線を向ける。


玄 「お姉ちゃんに、5Pも入れたのは、穏乃ちゃんなの?」


優しい口調の中に、狂気と殺気が潜んでいる。


穏乃「だ、だって……」


涙目になりながら、救いを求める様に、憧の方を見詰める穏乃。


玄 「大丈夫、全部、分かってるよ、シズちゃん……」


玄 「……憧ちゃんに、そうしろって、言われたんでしょう?」


憧 「」ビクッ

これは仕方ない
仮にシズが一位になってたら二人目の生贄はクロチャーになってただろうし

生贄を決められないで苦しんでいるシズに

「玄でいいんじゃないかな?」
「宥姉が死んじゃって、もう生き残る気力もないよ」
「灼さんは一応私たちに協力してくれたし…」

と悪魔のようにささやくアコチャーが容易に想像できる

頷きはせず、ただ、じっと、黙り込んでいる、穏乃。
玄は、憧に視線を戻し、穏やかな口調で、話を進める。


玄 「穏乃ちゃんを、唆したのは、憧ちゃんだよね?」


憧は、口を噤んだまま、目を瞑り、苦悶の表情を、浮かべている。


玄 「だとしたら、穏乃ちゃんが、お姉ちゃんに入れた、
   〝5Pの責任〟は、憧ちゃんが、取るべきなんだよ……」


玄 「だから、憧ちゃん、もう諦めて……」



玄 「 さ っ さ と 死 ん で く れ る か な ぁ ? 」



憧 「っ!!」


玄の口から出た、余りにも、直接的過ぎる言葉に、
憧は堪え切れず、感情が爆発し、一気に噴き出した。



憧 「なんでっ!? なんで、私にばっかり、酷い事、するのよぉっ!」

>>538
憧 「風評被害よっ! 訴訟も辞さないわっ!」

大粒の涙を、ボロボロと零し、大声で、喚き散らす憧。


憧 「玄だって、私に、3Pも、入れてたじゃんっ!」


憧 「宥姉に、Pを入れなきゃ、私の方が、死ぬ可能性が高かった!」


憧 「結果的に、死んだのは、宥姉の方だったけれど、
   私だって、殺され易い立場に、ずっと置かれてた!」


憧 「その恐怖が、初期値0の、玄なんかに、分かる訳ないのよっ!」


穏乃「っ!」

玄 「……」


憧 「確かに、宥姉を殺したのは、私かもしれない……」


憧 「でも、それは、生き残る為に、仕方無く、やった事じゃん!」


憧 「自分が助かりたい、って言う気持ちは、誰だって、同じでしょっ!?」


憧 「なんで、私だけが、責められなくちゃ、いけないのよぉぉぉっ!!!」

玄 「……じゃあ、何故、灼ちゃんに、沢山のPを入れなかったの?」



◆穏乃と憧が、灼に大量のPを入れた場合の、予想累計P◆

穏0 玄0 灼2 憧4 宥4

憧 : 灼+3 玄+2 宥+1
穏 : 灼+3 玄+2 宥+1
灼 : 灼+2 玄+5 宥+1 憧+2 穏+3
宥 : 灼+3 玄+1 宥+2 憧+2 穏+5 
玄 : 灼+1 憧+3 穏+2


◆累計P◆

穏+10 玄+10 灼+12 憧+7 宥+5

穏10 玄10 灼14 憧11 宥9



玄 「そうすれば、生贄になるのは、私と、灼ちゃんだった……」


灼 「」ゾクッ


玄 「灼ちゃんとの、同盟に、拘ってさえいなければ、
   憧ちゃんも、お姉ちゃんも、生き残れたんだよっ!」


玄 「憧ちゃんが、灼ちゃんとの同盟を、破棄していれば、
   シズちゃんは、お姉ちゃんに、5Pも入れなかったっ!」


玄 「確実に、助かる方法があったのに、憧ちゃんは、自滅したんだ……」


玄 「お姉ちゃんを、巻き添えにして……っ!」


玄の表情が、段々と、怒りに満ちてゆく。


憧 「そ、そんなの、分からないわよっ!」


憧 「結果論から言えば、確かに、そうかもしれないけど、
   誰が、誰に、何Pを入れるかなんて、分かる筈ないっ!」


憧 「事実、宥姉は、玄には、灼さんに5P入れさせるって、嘘を吐いてたっ!」


憧 「それに、私達が、灼さんに、大量のPを入れたら、
   宥姉自身が、単独トップを、獲る可能性もあったわ!」


憧 「その場合、宥姉が、玄を、生贄に選ぶわけ、無いじゃんっ!」


憧 「だとしたら、2人目の生贄として死ぬのは、私か、シズでしょ!?」


憧 「結局、今と、何も変わらないじゃないっ!!」

息を切らし、玄を睨み付け、憧は、自らの正当性を主張した。


玄 「……」


玄 「お姉ちゃんは、私を生贄に選ぶよ……?」


憧 「なんですって……?」


玄 「憧ちゃんや、シズちゃんの代わりに、私が、生贄になるって……」


玄 「私が、本気で、心から、それを望むなら……」


玄 「お姉ちゃんは、私の意思を尊重して、私を生贄に選んだよ……」


憧 「玄は、私や、シズの為に、[ピーーー]るって言うの……?」


憧 「2人目の生贄は、1人目が処刑されるのを、見てから決めるのよ……?」


憧 「あんな、拷問の様な殺され方を、受け入れられるって言うの!?」


玄 「……うん。私は、できるよ……?」


表情一つ変えずに、玄は、そう言い切った。


玄 「灼ちゃんは、1人目の生贄になっちゃうから、無理だけど……」


玄 「もし、私か灼ちゃん、どちらかが、2人目の生贄になるとしたら……」


玄 「私が、2人目の生贄に申し出て、必ず、灼ちゃんを助けるよ」

[ピーーー]、[ピーーー]はピーになる仕様だから嫌ならメール欄にsagaって打つ
下げも同時にしたいならsage sagaでいいのは流石に知ってるか

>>548
黒服「毎回、自動的にsageが入っているのですが、
    それをsagaに変え忘れて投稿してしまいました」

憧 「じゃあ、玄も、宥姉より、私達を優先して、助けてくれたの?」



◆穏乃と憧が、灼に大量のPを入れた場合の、予想累計P2◆

穏0 玄0 灼2 憧4 宥4

憧 : 灼+3 玄+1 宥+2
穏 : 灼+3 玄+1 宥+2
灼 : 灼+2 玄+5 宥+1 憧+2 穏+3
宥 : 灼+3 玄+1 宥+2 憧+2 穏+5 
玄 : 灼+1 憧+3 穏+2


◆累計P◆

穏+10 玄+8 灼+12 憧+7 宥+7

穏10 玄8 灼14 憧11 宥11



憧 「私達が、灼さんに、3Pずつ入れた場合、
   1人目の生贄は、灼さんで、確定するけど……」


憧 「2人目の生贄は、単独トップの玄が、
   私、穏乃、宥姉の中から、選ぶパターンもあった」


憧 「もしも、宥姉が、私達の身代わりを、申し出たとしたら……」


玄 「うん、お姉ちゃんなら、間違い無く、そうするだろうね」


憧 「それなら……」


憧 「玄は、私達ではなく、宥姉を、生贄に選ぶ事が、できたっていうの?」


玄 「……」


玄 「……」


玄 「……?」


玄 「えっ? 何で、お姉ちゃんを、生贄に選ぶの???」


憧 「っ!?」


玄 「馬鹿だなぁ、憧ちゃんは。お姉ちゃんが、私を生贄に選ぶ事と、
   私が、お姉ちゃんを、生贄に選ぶ事は、全然、関係無いじゃん」


憧 「っ!!」


玄 「私は、絶対に、お姉ちゃんを、生贄になんて、選ばないよ?」



玄 「だから、その時は、申し訳無いけれど、
   憧ちゃんか、シズちゃんに、死んで貰うよ」ニコッ



玄は、笑顔で、そう言った。

憧 「……偽善者」


玄 「ん?」


憧 「あんた、私達の為なら、死ねるとか言ってたけど、
   どうせ、全部、嘘なんでしょ? この、偽善者っ!」


玄 「???」


憧 「生き残る事が、既に確定しているから、そんな奇麗事が言えるんだっ!」


憧 「初期値0だったし、命懸けで守ってくれる、優しい姉もいたし……」


憧 「どうせ、最初から、死ぬつもりなんて、無かったんでしょ!?」


玄 「……私は、本気で、死ぬ覚悟があったよ?」


憧 「嘘だっ! 今だって、私を、笑顔で、殺そうとしている癖にっ!」


憧 「正直に、言ったらどうなのよっ! この、卑怯者っ!」


涙を流しながら、叫ぶ様に、言い放つ、憧。


玄 「……」


玄 「憧ちゃんは、もっと、頭の良い子だと思っていたのに……」


玄 「こんなに、〝馬鹿〟だったなんて、思ってもいなかったよ……」


憧 「はぁっ!?」

玄 「憧ちゃん、冷静に考えてみて?」


玄 「ここでの記憶は、全部、無くなっちゃうんだよ?」


玄 「そうでしょ? 黒服さん……」


黒服「イエス」


玄 「そして、私は、生き残る事が、既に決まっている……」


玄 「どうして、今更、私が、嘘を吐く、必要があるの?」


憧 「……っ!」


玄 「それと、憧ちゃん、どうして、お姉ちゃんが、
   私をトップにする事に、あんなにも、拘っていたと思う?」


憧 「トップじゃなきゃ、死ぬ可能性があるからでしょ!?」


玄 「そうなんだけど、ホントはね、ちょっとだけ、違うんだよ……」

憧 「違う?」


玄 「お姉ちゃんはね、知ってたから……」


玄 「自分を、生贄にする、選択肢があれば、
   私がそれを選んで、必ず死ぬって事を……」


玄 「だから、お姉ちゃんは、私を、トップにせざるを得なかったの……」


玄 「黒服さん、私は、〝今〟、生贄になる事はできるの?」


黒服「ノー。貴女は、高鴨穏乃様や新子憧様の、身代わりにはなれません」


黒服「……松実宥様も、似た様な質問をなされました」


玄 「やっぱりね……」


玄は上を向き、目を細めた。


玄 「私が、お姉ちゃんの事を、全て知っている様に、
   お姉ちゃんも、私の事を、全て知っている……」


玄 「それなのに、私は、動転して、その場の状況に流されて、
   自分の事も、お姉ちゃんの事も、全部、見失ってた……」


玄 「私が、もっと、もっと、しっかりしていれば、
   お姉ちゃんは、死なずに済んだかもしれない……」


玄は、拳を握り締めながら、悔やむ様に言った。


玄 「憧ちゃん、これが〝真実〟なんだよ……」

これ、自分の好きな学校のは絶対読めないな・・・
という訳で白糸台だけはやめてお願い
姫松がいいよ、そうしようよ

玄 「助けられるのなら、勿論、助けるけど、最悪、お姉ちゃん以外なら、
   私はね、自分の事も含めて、誰が生贄になろうと、構わなかったの」


玄 「でも、お姉ちゃんは、死んじゃった……」


玄 「その結果を招いた、最終的な元凶は、間違い無く、憧ちゃん」


玄 「だから、復讐の為に、私は、憧ちゃんを殺すの……」


憧 「そ、そんなの、ただの、逆恨みよっ!」


憧 「それに、自分にも非がある様な事を、言ってたじゃないっ!」


玄 「うん。」


憧 「宥姉は、玄を守る為に、死んだんでしょ?」


憧 「それなら、宥姉が死んだのは、玄の所為じゃんっ!」


憧 「自分の責任を棚に上げて、私ばっかり、責めないでよっ!」


玄 「そうだね……お姉ちゃんが死んだのは、私の責任……」


玄 「でもね、もう、理屈なんて、どうでも良いんだよ……」


玄 「これは、〝運命〟なんだから……」


憧 「運……命……ですって……?」


玄 「お姉ちゃんの〝死〟と、私の〝生〟が確定した瞬間にね……」


玄 「私は、こうなる〝運命〟を感じたんだよ……?」


玄 「お姉ちゃんは、私が誰かを殺す事なんて、本当は望んで無いし、
   ここで、憧ちゃんを殺しても、お姉ちゃんは、帰って来ない……」



玄 「でもね……私がね……どうしても……したいの……」ゴゴゴッ



玄 「憧ちゃんを、殺したくて、殺したくて……」ゴゴゴゴッ



玄 「心が、疼いて、疼いて、もう、どうしようも、無いんだよ……」ゴゴゴゴゴッ

憧 「そ、そんなの、絶対に、運命なんかじゃないっ!」


玄 「運命だよ……。だって、私には、どうする事も、できないんだもん……」


玄 「無限に溢れ出る、この感情を、この殺意を、止められないの……」


胸に手を当て、悲哀の面持ちする玄の周囲には、
狂気に満ちた、どす黒い〝オーラ〟が漂っていた。


憧の全身が、ガタガタと、激しく震え出す。


玄 「灼ちゃんは、生贄選択の権利を、放棄した……」


玄 「だから、2人目の生贄は、私の意思を以って、決定される……」


玄 「私は、〝新子憧〟を、神の生贄として捧げるっ!」


声高に、ハッキリと、玄は、そう宣言した。


黒服「それでは……」


憧 「ま、待って!!」


憧 「まだ、灼さんは、生贄選択の権利を、放棄してないっ!」

>>563
黒服「突然ですが、今日は住人様方に、重要なお知らせがあって参りました」
俺達「お知らせ……?」
黒服「咲-Saki-の中から2校を、〝生贄〟として選んで頂きたいのです」

な展開を想像してしまった

玄 「……灼ちゃんは、〝決められない〟〝私には無理〟って、言ってたよ?」


憧 「でも、選ぶ権利を、〝放棄する〟とは、言ってないもんっ!」


黒服「……鷺森灼様、どうなさいますか?」


黒服が、灼に、最終確認を取る。


灼 「……」


黒服「貴女が、選択権を放棄すれば、新子憧様が、2人目の生贄となります」


灼 「……」


灼は無言のまま、身動き一つしない。


憧 「お願い、灼さん、助けてくださいっ! お願いしますっ!」


憧は、灼の目の前で、号泣しながら、土下座をした。


憧 「私、あんなケダモノに、犯されながら、殺されたくないっ!」


何度も、嗚咽を繰り返しながら、必死の思いで、訴え続ける憧。
恥も外聞も、かなぐり捨てて、只管、灼に頭を下げ、懇願する。


灼 「……。」


憧 「怖いっ! 怖いよぉぉぉっ! 助けてよぉぉぉっ!」


涙と鼻水で、顔中を汚し、散々たる有様になっていた。


憧 「灼さんっ! 灼さんっ! お願いしますっ! 何でもしますからっ!」



灼 「……本当に、何でもするの?」

ちょっと「、」が多くね?
スゲー気になる

それまで、沈黙を保っていた灼が、漸く口を開いた。


憧 「しますっ! 何でもしますっ!」


灼 「それじゃあさ……」


灼 「穏乃に、〝私の代わりに拷問されて死んでください〟って、言ってみて」


憧 「…………えっ?」


予期せぬ、灼の発言に、唖然とする憧。


ふと、穏乃の方に目を向ける。
穏乃も、こちらの方を見ていた。


二人が、生贄の候補となってから、
初めて、目と目を見交わす、穏乃と憧。


穏乃は、鼻水と涙を、大量に垂れ流し、ガタガタと震えている。
まるで、鏡を見ている様に、今の憧と、全く同じ姿をしていた。


憧 「あっ……」


灼 「憧……、〝助けて〟の意味、本当に、理解しているの?」


憧 「あっ……ああっ……」


灼 「憧を助けるって事は、〝穏乃を殺す〟って事なんだよ……?」


憧 「ち、違う……私は、そんな意味で言ったんじゃ……」


全身の震えが、ますます大きくなってゆく憧。


灼 「憧は、私に、〝穏乃を殺せ〟って、言っているんだよ……?」


憧 「そ、そんな……ち、違う……ホントに……そ、そうじゃない……」


灼 「 違 わ な い で し ょ ! 」


灼の一喝に、憧は、体をビクッとさせた。


灼 「だったらさ、直接、その口で、穏乃に〝死ね〟って、言って見せてよっ!」

>>581
黒服「読点が多いのは、>>1のSSの仕様でございます」

黒服「読み辛いかもしれませんが、変更は致しません」

黒服「申し訳ありません」

じっと、見詰め合う、穏乃と憧……。
互いに、涙を流し、鼻水を流し、体を震わせている。


灼 「約束するよ、憧……」


灼 「もし、〝[ピーーー]〟って言えたら、私は、生贄に、穏乃を選ぶっ!」


穏乃「っ!!」


一瞬、穏乃が、体を大きく震わせる。
その瞬間を、憧は、見逃さなかった。


憧 「うっ……うぅ……」


憧の瞳から、止め処無く、涙が流れ出す。


灼 「さぁっ! 早く! 言って!」


憧 「んんっ……んんんっ……」


灼が追い立てるも、憧は、口を固く結び、その一言を発しない。


灼 「生き残りたくないの!? さっさと、言いなさいよっ!」


自らも、苦痛に満ちた表情で、吐き捨てる様に、灼が言い放つ。


憧 「ん゛ーっ、ん゛ーっ、ん゛ーっ!!」


憧は、自身の口を、手で塞ぎ、必死に堪えていた。
僅かにでも、口が開けば、漏れ出てしまう、その言葉を、
強引に、力尽くで、押さえ込み、飲み込んでしまう様に。

灼 「なんで……なんで、言えないの……?」


いつの間にか、灼も、涙を流していた。


灼 「今、この場で、穏乃に、〝死ね〟って言っても、
   誰も文句なんて言わない、言える筈も無いのにっ!」


灼 「友情!? 親友だから!? そんな偽善は、今、必要無いでしょっ!」


憧 「偽善なんかじゃ、な゛い゛も゛ん゛っ っ っ ! ! 」


灼 「っ!?」


憧 「ジズは、グスッ、わだじの、グスッ、だいぜづな、グスッ、友達だも゛ん゛!!」


憧 「わだじは、ヒッグ、ぜっだい、ヒッグ、い゛わ゛な゛い゛! ! 」


憧 「だいずきなジズに、じねなんて、い゛わ゛な゛い゛も゛ん゛ ! ! 」


灼 「……っ!」


穏乃「っ!!!!」


憧は、大声を上げて泣き叫び、その場に、崩れ落ちた。
その様子を見て、玄が冷酷な口調で、追い討ちを掛ける。


玄 「じゃあ、交渉は不成立だね。憧ちゃんの、処刑を始めよう?」


穏乃「っ!?」

灼 「っ!!」


穏乃「ま、待って!」


突然、穏乃が、震えながらも、ハッキリとした声を言った。



穏乃「なる……私が、憧の代わりに、生贄になるよ……っ!」

神「おめでとう、君達4人は気まぐれに皆生かすことにした」
玄「うがああぁぁぁあああっ!」
これはこれで悲惨

穏乃は、憧の傍に寄り、彼女の体を、しっかりと抱き締めた。


穏乃「ごめん、憧……。私は、卑怯者だった……」


憧 「シ……ズ……?」


穏乃「私には、実感が無かったんだ……」


穏乃「初期値が0だったし、P配分は、憧が、全部、考えてくれたし、
   私自身が、誰かの〝標的〟にされる、なんて事も無かった……」


穏乃「生贄なんて、私には関係無いと、他人事の様に、感じていたんだ……」


穏乃「何もしなくても、自分は、絶対に死なない、
   誰かが、この状況を、何とかしてくれる……」


穏乃「そんな風に考えて、無駄に波風を立てない様に、
   みんなの影から、ただ、傍観しているだけだった」


穏乃「だけど……」


穏乃「2人目の生贄の候補になって、〝死〟というモノを、間近に感じて、
   初めて気が付いたんだ。みんなが、今まで、どんな気持ちだったのか……」


穏乃「憧が、死の恐怖で、どんなに、苦しんでいたのかを……」


憧 「シズ……」


穏乃「あの初期値を見た時から、憧は、ずっと、
   こんな気持ちを、抱えていたんだよね……」


穏乃「親友なのに、今まで、気が付かなくて、本当に、ごめんね……」


憧 「う……うぅ……うあぁぁああぁぁぁっっっっ!!!」


穏乃の胸の中で、憧は、大声を上げて泣いた。

玄 「その罪悪感から、憧ちゃんの、身代わりになるっていうの?」


穏乃「……そういう、気持ちもあります」


穏乃「でも、それだけじゃ、ないんです」


穏乃「私は、ただ、大好きな人を、大切な人を、守りたいだけ……」


穏乃「お父さんが、命を懸けて、あの事故から、私を救ってくれた様に……」


穏乃「私は、今、憧の事を守りたい……っ!」


固く抱き締め合う二人を見て、苛立ちを募らせる玄。


玄 「……シズちゃん、お姉ちゃんが殺される所、ちゃんと見てた?」


穏乃「……っ!?」


玄 「見てなかったでしょ? だったら、私が説明してあげるよ……」


玄 「……あっ、でも、そんな事をしなくても、
   今のお姉ちゃんの姿を見れば、分かるかな?」


玄は、宥の死体を、指差しながら言った。


全裸で、4本の手足を、全て折られ、一部、骨が、剥き出しになっている。
腹は、無残にも引き裂かれ、臓物が体外に飛び出し、一面、血生臭さが漂う。
顔は、原形を留めておらず、〝それ〟が、宥であったと、俄かには信じ難い。


凄惨な亡骸を前に、穏乃は直視できず、目を背けた。


玄 「ねぇ、見て? もっと、よく見て?」


玄 「目を逸らさないで、今のお姉ちゃんを、しっかりと見据えて?」


玄 「これが、現実なんだよ……?」

玄 「生半可な覚悟で、生贄なんかになったら、
   シズちゃんは、後で、絶対に後悔するよ?」


穏乃「それでも……っ! 私が、生贄になります……っ!」


玄 「お母さんも、死ぬんだよ? 家族が死んでもいいの?」


穏乃「そんなの、嫌に決まってますっ! でも……」


穏乃「憧のお姉さん……」


穏乃「望さんだって、私の大切な、家族なんです。
   私の、大好きな、〝お姉ちゃん〟なんですっ!」


玄 「っ!?」


玄の体が、一瞬、ぐらついた。


灼 「……穏乃は、本当に、それでいいの?」


穏乃「はい……っ!」


灼 「……そう。分かった……」


深く深呼吸をした後、灼は、黒服に向かって宣言した。


灼 「私は、〝高鴨穏乃〟を、神の生贄として捧げる……っ!」


灼の、その言葉に、玄が噛み付いた。


玄 「はっ!? ふざけないでよっ!」


玄 「さっきまで、黙り込んでた癖に、今更、邪魔しないでよっ!」


玄 「私は、憧ちゃんを生贄に捧げるっ! これは、絶対に譲らないっ!」


玄 「生贄は、憧ちゃんだっ! 生贄は、憧ちゃんだっ!」


激高し、怒気を帯びた顔付きで、何度も叫ぶ玄。


灼 「私も、自分の意見を、変えるつもりは無いから」


毅然とした態度で、灼は、玄と向き合った。

黒服「……」


炎の如く、激情に身を任せる玄に対し、
臆せず、氷の様に、冷静に対応する灼。


最後まで、相反する二人の意見が、合意に至る事は無かった。


灼 「……黒服、この場合は、どうなるの?」


黒服「基本的には、お二人で相談し、決めて頂くのが、一番良いのですが……」


黒服「この様子ですと、それは、無理そうですねぇ……」


顎に手を当て、困った素振りを見せる、黒服。


玄 「ねぇ、灼ちゃん……」


その時、突然、玄が、艶かしく、灼の名を呼んだ。


玄 「ちょっと、〝二人きり〟で、〝相談〟しようよ……」


灼に向かって、妖しい笑みを浮かべ、手招きをする、玄。


灼 「これ以上、話しても、時間の無駄だと、思うけど……」


誘われるがままに、灼は、玄の方へと、近付いてゆく。
玄の目の前に立ち、顔を見詰め、本題に入ろうとした。


灼 「……で、話しって……」


そう言い掛けた、次の瞬間、玄の拳が、灼の鳩尾に減り込んだ。


灼 「ぐぇっ……っ!」


穏乃「!!」

憧 「!!」


腹を押さえて、悶絶する、灼の髪の毛を掴み、
彼女の顔面に、強烈な、膝蹴りを食らわせた。


灼 「がっ……はっ……っ!」


その衝撃で、灼は、後方に倒れ込む。
玄は微笑みながら、灼の上に跨った。


玄 「納得がいくまで、たっぷり、〝相談〟しようね、灼ちゃん……」

穏乃「玄さんっ!」

憧 「灼さんっ!」


灼 「来ないでっ!」


仲裁に入ろうとする二人を、強い口調で、灼は制止した。


灼 「これは、私と玄の、〝相談〟だから、二人は手を出さないでっ!」


穏乃「何、言ってるんですか、灼さんっ!
   こんなの、絶対、おかしいですよっ!」


灼 「穏乃、これは、私達の問題だから、余計な真似しないでっ!」


穏乃「うっ……」


穏乃(何で……何でですか……灼さん……っ!)


玄 「助けて貰える、折角の機会だったのに、断っちゃうんだ……」


灼 「そんなもの、必要……無い……っ!」


玄 「……そう」


大振りの平手打ちが、灼の両頬を、赤く染める。
玄は、無抵抗な灼に対し、容赦無い攻撃を繰り返す。


灼の顔面を、集中的に、平手で、握り締めた拳で、
幾度と無く、手加減を加えず、全力で殴り付けた。

玄 「ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅーっ……」


攻め疲れて、肩で息をし、暫しの間、手を休める玄。


玄 「灼ちゃん、そろそろ、考えは変わった?」


灼 「……」


玄 「灼ちゃんっ!」


爪を突き刺し、抉る様にして、頬を抓る玄。
灼は、意識を取り戻し、激痛に顔を歪めた。


灼 「私は……穏乃を……生贄に……する……」


折れた歯を、血と一緒に吐き出してから、灼はそう言った。


顔中が大きく腫れ、青紫に変色している。
鼻血が逆流したのか、呼吸が苦しそうだ。


玄 「……何で、そんなに、シズちゃんの生贄に拘るの?」


玄 「憧ちゃんが死んでも、別に、灼ちゃんは、困らないでしょ?」


玄 「灼ちゃんが、一言、〝憧ちゃんを生贄にする〟って言えば、
   これ以上、私に、痛い事をされなくて、済むんだよ……?」


灼 「こんなの……全然……痛くない……」


玄 「……?」


灼 「玄が……心に……負った……傷に……比べれば……」


灼 「こんなの……全然……大した……事……無い……」


玄 「……」


玄 「……はっ? ……はぁっ!?」

玄 「だったら、何で、憧ちゃんを庇うのっ!?」


玄 「私の苦しみが、分かると言うのなら、私に、憧ちゃんを殺させてよっ!」


灼 「……それは……無理……」


玄 「なんでっ? なんでよっ!? 答えてっ! 答えろっ!!」


玄は、襟元を掴み、灼の頭部を、少し持ち上げた後、
彼女の頭を、激しく揺らし、床に何度も打ち付けた。


穏乃「もう、止めてよ、玄さんっ! 灼さんが、死んじゃうっ!」


穏乃の、悲鳴にも似た叫びを聞き、玄は我に返った。
襟元から手を放し、立ち上がって、灼から距離を取る。


憧 「灼さんっ!」


涙を流しながら、憧が灼に駆け寄った。


意識はあるものの、朦朧としていて、目の焦点が合っていない。
憧は、自分の太腿に、灼の頭を乗せ、彼女の、小さな手を握り締めた。


憧 「もういいよ、灼さん……。私が、私が生贄になるからっ!」


流れ出る、憧の涙が、灼の頬に落ちてゆく。
その時、灼が、憧の手を、弱々しく、握り返した。

憧 「灼……さん……?」


灼 「私は……特撮……ヒーローが……大好き……だったの……」

灼 「カッコ良くて……正義感が強い……そんな人間に……憧れてた……」


灼 「でも……私は……小柄で……力も弱くて……臆病で……根暗で……」

灼 「皮肉屋で……嫌味ばかり……言う……卑しい人間に……なってた……」

灼 「だから……友達も……全然……いなくて……ずっと……孤独だった……」


灼 「そんな……私を……玄は……麻雀部に……誘って……くれて……」

灼 「みんなと……出会えて……本当は……凄く……感謝……してる……」


灼 「初めて……先輩って……呼ばれて……私……とても……嬉しかった……」

灼 「良い……先輩に……なろうって……心から……そう……思ったの……」


灼 「だけど……やっぱり……そんなに……上手く……行かない……ね……」

灼 「憧や……穏乃に……嫌な所……いっぱい……見せちゃった……」

灼 「恩がある……玄にも……酷い事を……して……最低な……人間だよ……」


灼 「それでも……最後に……先輩らしい……事が……したかった……」

灼 「偽善でも……自己満足でも……独り善がりでも……構わない……」

灼 「私は……先輩として……憧や……穏乃の……力に……なりたい……」


灼 「ごめんね……玄……ごめんね……」

憧 「ごめんなさい……灼さん……私の所為で……ごめんなさい……」


両目に涙を溜めて、憧は、灼に、謝罪を繰り返した。


灼 「違う……謝るのは……私の方……」

灼 「私は……憧に……残酷な……事を……言わせ様と……した……」

灼 「嫌な……思いを……させて……ごめんね……」


憧は、首を大きく横に振った。


憧 「私、灼さんに、嫌われているんじゃないかって、ずっと思ってた……」

憧 「いつも不機嫌そうで、笑っている所とか、見た事も無いし……」


灼 「私……無愛想……なんだ……」

灼 「でもね……これだけは……信じて……欲しい……」

灼 「私が……憧を……嫌う訳……無い……」

灼 「だって……憧は……可愛い……私の……後輩……だもん……」


憧には、灼が、ほんの少しだけ、笑った様に見えた。
握り合う、二人の手が、より強く、より固く結ばれた。



穏乃(灼さん……)



玄 「……」

穏乃「玄さん、もう止めましょう……」

穏乃「暴力では、灼さんの心を動かす事なんて、絶対にできませんよ?」


玄 「……じゃあ、どうやって、生贄を決めるの?」

玄 「言っておくけど、私が意見を変える事は、100%、在り得ないよ?」



玄 「例え、何があろうと、私は、憧ちゃんを、絶対に殺すんだっ!」



熱り立ち、龍が轟くかの様に、絶叫する玄。
憧に対する、揺ぎ無い殺意を、皆に見せ付けた。


黒服「……これは、完全に、交渉決裂ですね。仕方がありません……」


黒服「松実玄様と、鷺森灼様の、生贄選定において、
   二人が合意に至る事は、不可能と判断致しました」


黒服「よって、我々から、新たな選択方法を、提示させて頂きます」


そう言い終わった、次の瞬間、
倒れていた雀卓が、宙に浮き、部屋の中央に、舞い戻ってきた。


黒服が、そのスタートボタンを押すと、
赤土晴絵の血に塗れた、赤い麻雀牌の山が現れた。


その中から、2つの牌を選び、卓の中央付近に置く。


黒服「この2つの牌は、それぞれ、〝中〟と〝白〟でございます」


黒服「高鴨穏乃様と、新子憧様に、この牌を引いて貰い、
   〝白〟を引いた方に、2人目の生贄となって頂きます」


穏乃「っ!?」

憧 「っ!!」

玄 「……」



黒服「言っておきますが、これは、決して、運否天賦などでは、ありません」


黒服「牌に愛されている者であるならば、
   必ず〝中〟を引く事ができるでしょう……」ゴゴゴゴゴッ

穏乃「牌に……愛されている者……?」


憧 「どう見ても、運任せの、二者択一に見えるけど……?」


灼を、そっと床に寝かし、立ち上がりながら、憧は言った。


黒服「厳密には、違います。これは、貴女方の、〝魂の質量〟に関係する、
   〝宿命〟とも呼べるモノで、死すべき者が死ぬ、ただ、それだけです」


憧 「それは……神の……意思によって……?」


黒服「いえ、神は関係ありませんよ」

黒服「我々は、この件の、確率操作に、全く関与していません」

黒服「これは、〝牌の意思〟と言った方が良いでしょう……」


穏乃「牌の……意思……」


憧 「牌の意思……ですって……? そんなの、ある訳無いじゃないっ!」


黒服「貴女が、そう思うのなら、そうなのでしょう。貴女の中では……ね」

黒服「しかし、〝牌の意思〟は、紛れも無く、そこに、確かに、存在するのです」

黒服「例え、100万回、抽選を繰り返しても、結果は、常に同じでしょう」

黒服「それを、証明する事もできますが、時間の無駄ですので、致しません」



黒服「実質的には、牌を引く前に、既に、生贄は、決まっているのですよ……」

穏乃「……」

憧 「……」


黒服「それと、注意事項ですが……」


黒服「牌に触れた時点で、その牌を選択したと、我々は見做します」

黒服「以降の、選択変更は、一切、認めませんので、悪しからず……」


穏乃と、憧は、麻雀卓の傍により、血塗られた、2つの牌を見詰めた。


常識的に考えれば、生き残る確率も、死ぬ確率も、全く等しい筈である。
けれど、黒服は、そうではなく、それ以前に、結果は〝決まっている〟と言う。


だとしたら、今、こうして、悩んでいる事自体が、無駄なのではないか?


今更、黒服の言う事を、疑うつもりは無い。
神の存在ですら、実証されているのだから。


それでも、憧は、迷いを捨てきれず、牌を引く事ができなかった。


穏乃「なぁ、憧……」


突然、同じ様に悩んでいた穏乃が、憧に、話し掛けてきた。


憧 「なに? シズ……」


穏乃「頼みがあるんだ……」


憧 「頼み……?」



穏乃「憧が、先に、牌を引いてくれないか……?」

憧 「どう……して……?」

憧 「引く順番に、意味なんて無いわよ……?」


穏乃「頼む……」


憧 「……」

憧 「わ、分かった……」


真剣な眼差しをする穏乃を見て、憧は、それを承諾した。


血の付き方が、若干、異なるものの、
牌そのもの自体に、違いは見受けられない。


幾ら悩もうが、答えなど、見つかる筈も無い。
死の覚悟もあり、苦慮する必要など無いのだ。


憧は目を瞑り、手元に近い方の牌に向かって、ゆっくりと手を伸ばした。


憧 「っ!?」


次の瞬間、硬く、小さく、冷たい、麻雀牌ではなく、
柔らかく、温もり溢れる感触が、憧の手に伝わってきた。


憧 「シ……ズ……?」



穏乃「やっぱり、憧は、こっちの牌を取るのか……」

目を開けると、憧が取ろうとしていた、その牌は、
穏乃の手によって、覆われる様に、囲まれていた。


穏乃「私は、この牌を選ぶよ……」


穏乃は、手の囲いを解き、人差し指と中指で、その牌に触れた。


憧 「なっ……どうして……っ?」


穏乃「昔さ、玄さんが、言ってたよね……」

穏乃「ドラが何処にあるのか、〝気配〟で分かるって……」

穏乃「私にもね、似た様な〝力〟があるんだ……」


憧 「玄と……似た様な……力……?」


穏乃「私の場合、玄さんに比べると、〝力〟が、まだ不安定で、
   いつでも、〝それ〟が、できる訳じゃないんだけど……」


穏乃「だけど、終盤の、〝ここ一番〟って時には、必ず、分かるんだ……」


穏乃「自分が、必要としている牌が、どこにあるのか……」



穏乃「私には、最初から、〝中〟の〝気配〟が、見えていたんだよ……っ!」

憧 「それなら、どうして、私に、先に引かせようと……?」


穏乃「宥さんが言ってた……」

穏乃「一度きりで、やり直せないから、失敗は許されないって……」

穏乃「だから、私も、自分の〝直感〟を裏付ける、確証が欲しかったんだ……」


穏乃「もし、私が、確実に、〝中〟を引く事が、できるのであれば、
   憧は、逆に、〝白〟しか、引く事が、できないんじゃないか?」


穏乃「私は、どうしても、それを、確認しておきたかった……」


憧 「じゃあ……その牌は……」


穏乃「あぁ……間違い無く、これは、〝白〟だ……っ!」


憧 「っ!?」


黒服「……」

玄 「……」



穏乃「黒服さん、貴方は、さっき、こんな様な事を言った……」

穏乃「〝牌の意思〟により、死ぬ者は、既に、決まっていると……」


穏乃「でも、それは、間違いなんだ……」


穏乃「人間の生死を決めるのは、〝牌の意思〟でも、〝神の意思〟でもないっ!」



穏乃「最後は、〝本人の意思〟によって、決まるモノなんだっ!」ゴゴゴゴゴッ



そう言うと、穏乃は、触れているその牌を、勢い良く、引っくり返した。



〝白〟

黒服「……素晴らしい」


黒服「高鴨穏乃様は、〝魂の質量〟から、生き残る事が、確定していた」

黒服「にも拘らず、その〝運命〟を、自らの意思で、捻じ曲げるとは……」

黒服「貴女もまた、彼女達の様に、神に近い存在なのかもしれない……」


穏乃「……?」


黒服「2人目の生贄は、高鴨穏乃様に、確定致しました」

黒服「それでは、皆様、まず、こちらをご覧ください」


モニターに、十字架に掛けられている、穏乃の母が映し出された。


黒服「始めに、高鴨様の、お母様の処刑を、執行させて頂きます……」


穏乃「くっ……」


十字架の両脇に、ハンマーを持った、処刑人が、1人ずつ、配置される。
次の瞬間、処刑人達が、その巨大なハンマーで、穏乃の母を、殴り始めた。


足首、脛、膝、手首、肘と、即死せぬよう、
致命的な箇所を、避けている様にも見える。


悲鳴を上げる母を見て、穏乃は涙を流すも、
口を固く結び、決して、声は出さなかった。


4本の手足を、完全に破壊すると、今度は、交互に、
1人は上腹部を、1人は下腹部を、狙い打ち始めた。


穏乃の母は、大量の血を口から吐き、暫くして、意識を失った。
それを確認すると、処刑人は、彼女の顔面に、強烈な一撃を放つ。


鈍い音と共に、穏乃の母の頭部は、ハンマーの打撃によって潰された。



穏乃(ごめんなさい……お母さん……私が……お母さんを……殺した……っ!)

穏乃「ひィィふぅゥゥーっ、ひィィふぅゥゥーっ、ひィィィふぅゥゥーっ……」


呼吸音が、普通ではない穏乃を、心配そうな目で見る憧。
その視線に気付き、穏乃は、平常心を取り繕って見せる。


穏乃「……大丈夫、覚悟していた事だから。私は平気だよ?」


息を整えてから、冷静な口調で、穏乃は言う。


憧 「でも……」


穏乃「……憧が、気に病む必要は、全然、無いって」


穏乃「お母さんも、私の、この決断を、きっと、褒めてくれると思うしね」


憧 「えっ……?」


穏乃「もし、私が、自分の命惜しさに、
   大切な親友を、犠牲になんてしたら、
   怒鳴られて、ぶっ飛ばされると思う」


穏乃「憧も、知ってるでしょ? 私のお母さんが、そういう性格な事……」


微笑みながら、穏乃は憧に言った。


穏乃「私は、強く、優しく、逞しい人間になれと、
   小さい頃から、両親に、そう教わってきた」


穏乃「だから、私は、如何なる暴力にも屈せず、自分の意思を、貫き通すっ!」


そう言うと、穏乃は、宥の死体に近付き、
胸に突き刺さっている、黄金の短刀を抜いた。


穏乃「宥さん、私の事、ちゃんと、見ててね……」


玄 「……」


憧 「シズ……一体……何する気……?」

穏乃「黒服の人……」


黒服「はい?」


穏乃「私が、今、〝反抗的な態度〟を取ったら、
   私以外の人にも、罰則が与えられたりする?」


黒服「ノー」


黒服「そもそも、罰則とは、生贄選びを、公正・円滑に進める為の物でした。
   2人の生贄が確定し、選定が終了した今、それは、もう必要無いのです」


黒服「今後、貴女方が、どの様な行動をされようが、
   その事に対し、我々は、一切、関知致しません」


黒服「また、我々は、生き残りが確定した者に対し、
   肉体的苦痛を与える事は、絶対にありません」


黒服「それと、もう一つ……」


黒服「松実父様と、新子望様は、既に解放され、 
   新世界への移動が、無事、完了しました」


黒服「この、〝旧世界〟に残っている〝人間〟は、
   現在、この部屋にいる、貴女方4人だけです」


黒服「他に、質問はございますか?」


穏乃「ううん、それだけ分かれば、十分だよ。ありがとう、黒服さん」


黒服「いえ、礼には及びませんよ」


穏乃は、大きく溜め息を吐いた後、小さな声で、呟いた。


穏乃「私には、もう、失う物が無いんだ……。だから、何も怖くない……」



穏乃「これで、心置き無く、〝アイツ〟を殺せるよ……」ゴゴゴゴゴッ

黒服「すみません、取り敢えず、今日はこれまでです」

黒服「既に、お気付きの方もいる様ですが、はい、誤爆しました……」

黒服「これからは、書き込む時に、できるだけ確認しようと思います」


黒服「進みが遅くて、読んで頂いている方には、申し訳ありません」


黒服「最近、書き込み内容の、最終チェックしていると、
    ゲシュタルト崩壊?みたいなのを起こして、頭痛くなります……」

憧 「こ、殺すって……あんな大男を!? そんなの、無茶よ……っ!」

憧 「それに、下手な事をしたら、もっと、酷い目に合わされるわよ!?」


穏乃「確かに、アイツを殺すのは、無理かもしれない……」

穏乃「でも、宥さんに、あんな惨い事をした奴を、許しては置けないっ!」

穏乃「宥さんが受けた苦痛を、少しでも、アイツに、味あわせてやるんだっ!」


玄 「……」


黒服「高鴨様……」


穏乃「大丈夫、分かってるから……」

穏乃「私の処刑が、完了するまで、憧達は、解放されないんでしょ?」

穏乃「アイツを殺したら、この刃で、私も、すぐに逝くから……」


黒服「いえ、そうではなく……」


黒服「新子様の仰る通り、余り〝あれ〟を刺激しない方が良いかと……」


黒服「老婆心ながら、忠告させて頂きます……」

黒服「もし、貴女に、その勇気があるのなら……」



黒服「その手に持つ短刀で、今すぐ、自害なさるのが、賢明ですよ?」

黒服「本来、その手の凶器を、貴女方が入手する事は、不可能な筈でした」

黒服「自らの命を絶つのに、手軽な方法があると、我々には、不都合だからです」

黒服「そんな物があれば、処刑をする前に、皆、自害されてしまいますからね」


黒服「ですが、高鴨様は、幸運にも、それを、手にする事ができた」

黒服「これは、間違い無く、〝奇跡〟とも呼べる状況ですよ?」

黒服「無謀な挑戦など、お止めになった方が、宜しいかと……」


穏乃「心配してくれて、ありがとう。でも、もう決めた事だから……」


黒服(心配……? 私が……?)



処刑人「オ゛オ゛オ゛ォ ォ ォ オ゛オ゛ォ ォ ォ ォ ッ ッ ッ ッ !!!!」



穏乃「アイツが来るっ! みんな、下がって!」


憧 「灼さん、大丈夫ですか!?」

灼 「うぅぅっ……」

憧 「灼さん……っ!」


憧は、ぐったりしている、灼を背負って、白線の内側へ退避した。
玄も、宥の亡骸を引き摺って、白線内側の、安全地帯へと移動した。


その直後、処刑人が、入り口に、その姿を見せた。
袴に切れ目があり、全体が、どす黒く汚れている。


宥を殺した処刑人と、同一人物である事は、疑い様も無い。
穏乃は、臆する事無く、右手に短刀を構え、処刑人と対峙した。

穏乃「玄さんっ!」


処刑人を睨み付けながら、穏乃は、玄に呼び掛ける。


穏乃「宥さんを殺したのは、憧じゃない、コイツなんですっ!」


穏乃「私が、必ず、宥さんの仇を討ちます。だから、憧を憎まないでっ!」


憧 (シズ……もしかして……私の為に……っ!?)


玄 「……」


処刑人は、室内に落ちていた、ハンマーを拾い上げた。


憧 「武器を拾われたっ!? シズ、気を付けてっ!」


穏乃「……」


黒服(彼女は、わざと、武器を拾わせた様です……)


処刑人「オ゛オ゛オ゛ォ ォ ォ オ゛オ゛ォ ォ ォ ォ ッ ッ ッ ッ !!!!


雄叫びを上げながら、ハンマーで横薙ぎをする処刑人。
穏乃は、身軽なバックステップで、それを、難無く躱した。


その一撃は、室内中央に置かれていた、麻雀卓を直撃し、
卓は弾き飛ばされ、見えざる壁に激突し、粉々に砕け散った。

憧 「何て破壊力……っ! あんなの、1発でも喰らったら、シズは……」


黒服(確かに、破壊力は凄まじいが、攻撃動作が、大き過ぎる)

黒服(しかも、この狭い室内では、横薙ぎしかできまい)


黒服(最初の、身の熟しを見る限り、彼女の身体能力は、相当高い)

黒服(攻撃を、ギリギリの位置で避けている所から、目もかなり良さそうだ)


黒服(彼女の、並外れた動体視力と、反射神経を以ってすれば、
   軌道を読み易い、その攻撃を、避ける事など容易いだろう)


黒服の読み通り、我武者羅に、横薙ぎを繰り返す処刑人。
しかし、その攻撃は、穏乃の体を、掠める事すら無かった。


その様子に、憤り、より興奮していく処刑人。
更に大振りになり、力の篭った一撃を繰り出す。


その一撃を躱した直後、穏乃が一気に距離を詰め、
処刑人の心臓目掛けて、黄金の短刀を突き立てた。


処刑人「ク゛オ゛オ゛ォ ォ オ゛オ゛ォ ォ ォ ッ ッ ッ !? 」


先程までとは異なった、苦しみを帯びた叫びを上げる処刑人。
懐に飛び込んできた穏乃に、ハンマーで反撃しようとするも、
距離が近過ぎて、柄の長いその武器では、上手く攻撃できない。


黒服(知能が低過ぎて、持っている武器を手放す、
   といった考えは、頭の中に無いのだろう……)


黒服(接近戦において、奴に、身体を掴まれたら、彼女は終わりだ。
   しかし、奴の頭には、ハンマーで殴る、という選択肢しか無い)


黒服(武器を両手で握り締めている以上、奴は、彼女を掴まえる事もできず……)


黒服(偶然にしては、出来過ぎている……。全ては、計算済みなのか……?)


黒服(だとしたら、中々やる……高鴨穏乃……っ!)

処刑人が、怒りに任せて、巨大なハンマーを振り回す。
その中を、巧みに潜り抜け、穏乃は、攻撃を繰り出した。


黄金の短刀は、処刑人の胸部に、深く突き刺さり、
そこから、黒みを帯びた血液が、大量に流れ出す。


穏乃は、速さで相手を撹乱しつつ、狙う場所を細かく変えながら、
下腹部、太腿の付け根、脇腹に、様々な角度から、斬撃を加えた。


反撃を受けぬ様、浅く斬る動作を繰り返し、
隙を見て、強烈な突きで、深手を負わせる。


二度、三度と、深い突きを繰り返す内に、
処刑人の動きが、段々と鈍くなってゆく。


穏乃「これが痛みだっ! お前がっ! 宥さんに与えたっ!」


地響きの様な、呻き声を上げる処刑人。
それでも、穏乃は、攻撃の手を休めない。


ハンマーを落とし、地面に膝を付く処刑人、
その顔面を狙った突きは、右目を直撃した。


処刑人は、叫喚し、その場に、俯せに倒れ、もがき苦しんでいる。
穏乃は、背後から近付き、その後頭部に、短刀を、深々と突き立てた。


暫く悶えた後、処刑人は、完全に動かなくなった。

穏乃「宥さんが受けた苦痛を、少しでも、アイツに、味あわせてやるんだっ!」

味わわせてやる、だね(ドヤぁあ

>>669
穏乃「りょ、料理してやるんだからぁ!」プルプル

穏乃「やった……やった……っ!」


穏乃は震えながら、歓喜の声を上げた。


赤黒い血が、頭巾の下から、溢れ出し、
床に、大きな、血溜まりができている。


己の肉体を、鋼の様に鍛え上げた、巨漢とはいえ、
脳髄に刃が突き刺されば、助かる事などあるまい。


穏乃「宥さんの仇を取ったぞっ! ははっ……はははっ!」



穏乃「 う あ あ あ ぁ ぁ あ あ ぁ ぁ ぁ っ っ っ ッ ッ ! ! 」



穏乃は、憧達の方へ振り返り、勝利の雄叫びを上げた。


穏乃「憧、私は、やったぞッ! あの大男を、倒したんだっ!」


穏乃「玄さんっ! 宥さんを殺した奴を、私は倒しましたっ!」



穏乃「ふふっ……ははっ……あははっ……あはははっ!」



憧 「シズっ! 後ろっ! 後ろっ!」



穏乃「えっ……?」




ドゴォッ




ベキッ

穏乃「 く゛ぁ゛っ …… ! 」


突然、背中に、激痛が走り、穏乃の体が、宙を舞った。


致命傷を受けた筈の処刑人が、ハンマーを持って立っている。
その姿を、吹き飛ばされながらも、穏乃は視界に捉えていた。


穏乃(ありえない……頭に短刀を、柄まで深く、突き刺したのにっ!)


部室の壁に、体を打ち付け、穏乃は、床にドスンと落ちた。
口から血反吐を吐き、痛みで、その場を動く事ができない。


何とか、体を横に向けると、目の前には、あの黒い岡持ちが転がっていた。
蓋が僅かに開いており、その隙間から、赤土晴絵が、こちらを覗いている。


穏乃「う゛ぅ゛……ぐぐぐっ……っ!」


ハンマーを投げ捨て、処刑人が、こちらに迫ってくる。
しかし、穏乃は、激痛で、立ち上がる事すらできない。


処刑人は、その大きな手で、穏乃の頭を、後ろから鷲掴みにした。


穏乃「ぐっ……放せ……この……っ!」


苦痛に顔を歪めながら、穏乃は、両手でその太い腕を掴み、爪を突き立てた。


それを気にする事無く、処刑人は、片手で穏乃を持ち上げ、
見えない壁を挟んで、何故か、憧の目の前までやってきた。


憧 「シズ……っ!」


穏乃「んぐぐっ……っ!」


次の瞬間、処刑人は、その透明な壁に、
勢い良く、力任せに、穏乃の顔面をぶつけ始めた。


穏乃「っんぐぁ!」

憧 「あっ……あぁっ……ああぁっ……」


何度も打ち付けられ、鼻は折れ曲がり、
ボタボタと、止め処無く、血が流れ出す。


透明な壁は、鮮血に染められ、一寸先すらも見えない。
固く目を瞑り、穏乃は、只管、その痛みを堪えている。


穏乃は、鼻、口、額から出血し、呼吸も苦しそうだ。


最初は、手を前方に出し、壁との衝撃を、軽減させていたが、
やがて、その腕は下がり、処刑人のされるがままになっていた。


壁にぶつける事に飽きると、処刑人は、穏乃の両腕を握り、
まるで引き裂くかの様に、その腕を、左右に引っ張り始めた。


穏乃は、両腕を広げる形で、宙に浮いている。


コキッ、コキッと、軽く小さな音が、数回した後、
ゴキッという、鈍く大きな音がし、穏乃が悲鳴を上げた。


穏乃「ぐっ……ぐあぁぁぁっっっッッッ……!!!」


その声の様子から、尋常でない痛みが、穏乃を襲った事が分かる。
処刑人は、人形遊びをするかの様に、穏乃の両腕を、激しく動かす。


室内中に、耳を劈く様な、穏乃の金切り声が響き渡る。
その音色を、楽しむかの如く、処刑人は、穏乃を弄んだ

憧 「やめてぇーっ! やめてぇーっ!」


余りに悲惨な光景に、憧は耳を塞ぎ絶叫した。


処刑人は、穏乃を宙に浮かせたまま、彼女の衣服を引き千切り、
全裸にした後、叩き付ける様に、勢い良く、地面に投げ捨てた。


袴の切れ目から、あの極悪な肉棒が顔を出す。


動けぬ穏乃を仰向けにして、〝まんぐり返し〟状態にさせる。
その体勢は、脊椎を損傷している穏乃に、激しい苦痛を与えた。


宥の時よりも、体を丸められ、苦しい体勢にさせられる穏乃。
呼吸すらも困難になり、穏乃の顔は、一気に紅潮してゆく。


穏乃(お前なんかにっ! お前なんかに……っ!)


涙を流しながら、痛みと、憎しみと、悔しみに満ちた表情を浮かべる穏乃。
その顔を見て、処刑人は雄叫びを上げ、肉棒を、更に固く、太く、膨張させた。


処刑人は、僅かに膨らみ掛けた、穏乃の乳房に、長い舌を這わせながら、
彼女の、小さな膣穴に、自らのどす黒い肉棒を、無理矢理、挿入しようとした。



穏乃「んん……っ!」

だが、余りにも、サイズが違い過ぎて、幾ら押し付けても、
穏乃の割れ目に、その肉棒を挿し入れる事はできなかった。


性器の結合が上手く行かず、苛立つ処刑人は、
自身の後頭部に刺さっていた短刀を引き抜き、
穴を広げる為か、穏乃の陰部に、それを突き刺す。


穏乃「ひぎぃぃぃィィィっっっっッッッッッ!!!!!」


泣き叫ぶ穏乃に、救いなど無かった。


処刑人は、左手で、穏乃の両足首を握って押さえ、
きつめの〝まんぐり返し〟状態を維持させながら、
膣や、膣と肛門の間辺りに、何度も刃を突き立てる。


二つの穴が、繋がって、一つになった後、
処刑人は、不要となった短刀を投げ捨て、
その〝亀裂〟に、毒々しい肉棒を捻じ込んだ。


荒々しく腰を振り、何度も射精を繰り返す、処刑人。
血と精液が交じり合い、赤と白の、コントラストを生み出す。


局部が激しく損壊し、大量に出血するも、
そこは、命に関わる重要器官では無い為、
見た目の酷さとは裏腹に、死ぬ事は無い。


遂に、痛みは限界を超え、穏乃は、泡を噴き失神した。

穏乃の未熟な肉体を、鬼畜の如く破壊し、散々、陵辱を繰り返した後、
処刑人は立ち上がり、意識を失った彼女の両脚を持って、逆さ吊りにした。


憧 「何……してる……の……?」


脚を180度に開かせ、そこから一気に力を入れ、〝股裂き〟へと移行する。
切れ目が入っていた所為か、穏乃の身体は、胸部まで、易々と引き裂かれた。


穏乃は、一瞬、意識を取り戻し、叫び声を上げたが、
またすぐに気絶し、二度と目を覚ます事は無かった。


二つに、縦割れした腹部から、臓器が零れ出す。
憧は絶叫し、頭を抱え、その場にへたり込んだ。



処刑人「オ゛オ゛オ゛ォ ォ ォ オ゛オ゛ォ ォ ォ ォ ッ ッ ッ ッ !!!!」



処刑人は咆哮した後、その役目を終えたからか、
光の粒子となって、蒸発する様に、消えていった。

夕日が真っ赤に照らす中、世界は、徐々に崩壊を始めた。


震動も無く、溶け落ちるかの様に、静かに崩れゆく大地。
その下には、太陽の光も届かぬ、真の闇が広がっている。


憧は、覚束無い足取りで、ふらふらと、穏乃の傍に、歩み寄った。


憧 「ごめんね……シズ……ごめんね……」


その場に座り込み、穏乃の頭を抱いて、
憧は、只管、懺悔の言葉を繰り返した。


最愛の親友を犠牲にして、生き残ったという罪悪感が、
憧の心を蝕み、狂気の世界へ、引き摺り込もうとする。


灼 「……憧」


辛そうな表情を浮かべながらも、灼は、必死に起き上がり、
頬を濡らし、嗚咽している憧に、ゆっくりと、近付いて行く。


憧 「灼さん……私が……シズを……殺した……」

憧 「死ぬのは……私だったのに……シズじゃなかったのに……」


灼 「……」


灼 「穏乃は、最後まで、自分の信念を貫いただけ……」

灼 「自らの命に代えてでも、守りたい人がいたから……」

灼 「その意思を、無駄にしない様、憧は、穏乃の分まで生きるべき」

灼 「それが、今の憧にできる事……」


灼は、憧を抱き締め、優しく諭す様に言った。

黒服「Congratulation……」


黒服「それでは、生き残った皆様、あちらへどうぞ……」


いつの間にか、部室の入り口が、眩い輝きに包まれていた。
その先には、廊下など見えず、白い光の靄が広がっている。


黒服「その光の先に、新たなる世界、貴女方の〝未来〟があります……」

黒服「進みなさい、自らのその足で、光のその先へ……」


灼 「憧……」


灼は、憧の手を握って立ち上がり、
早々に、新世界へ移動する事を促す。


憧 「……私に、新しい世界へ行く資格があるのかな……?」


座り込んだまま、憧が、小さな声でそう漏らした。


憧 「私は、この世界で、シズと一緒に、このまま消えて無くなりたい……」


灼 「……それは、穏乃に対する、裏切り行為だよ?」

灼 「そんな事、穏乃は、絶対に望んで無い」

灼 「穏乃に貰った、その命を、蔑ろにしては駄目」


灼 「憧の命は、もう憧だけの物じゃない。穏乃の命でもあるのだから……」

憧 「……そう……ですよね……」


穏乃の小さな頭を、優しく撫でながら、憧は言った。


憧 「ごめんね、シズ……。そして、ありがとう……」

憧 「シズがくれたこの命、私、大切にするからね……」



憧 「さようなら……シズ……」



最後の別れを告げ、憧は静かに立ち上がった。


灼「……行こう、光のその先に……。私達の、新しい未来へ……」


憧「はい……」


二人は手を繋ぎ、光の扉に向かって歩き出した。



グサッ



憧 「あっ……」



灼 「っ!?」



握り締めていた手が、するりと抜ける様に解け、
憧は、前のめりになって、その場に崩れ落ちた。



玄 「行かせないよ……憧ちゃん……」

灼 「玄……っ!」


黄金の短刀を握り締め、口元に妖しい笑みを浮かべる玄。
真紅の染みが、憧の背中を、侵蝕する様に広がってゆく。


玄 「駄目だよ? 憧ちゃん……」


玄 「そっちは、貴女が行って良い世界じゃないんだから」


玄 「ふふっ……うふふっ……あははははっ……っ!!」


灼 「な……なんて事を……っ!」


しゃがみ込み、憧を仰向けにして、上体を起こす灼。


灼 「憧っ、しっかりして、憧……っ!」


口から大量に血を吐き出し、意識が朦朧としている憧。
灼の呼び掛けに反応してか、僅かに唇を動かしている。


灼 「なに? よく聞こえないよ、憧……っ!」


その小さな呟きを聞き取ろうと、灼は、憧の口元に耳を近付ける。


〝ありがとう……灼さんの後輩になれて良かった……〟


憧はそっと目を閉じ、安らかな笑顔で、永遠の眠りに就いた。


灼 「あぁ……ああぁ……なんで……なんでこんな……」


唐突に訪れた惨禍、悲しみに喘ぎ、涙を流す灼とは対照的に、
玄は、子供の様に純真で、穢れの無い、満面の笑みを見せた。


玄 「これで、2人目の生贄の処刑が終わったね、灼ちゃん」

灼 「玄……何を……言って……るの……?」


玄 「ん?」


灼 「2人目の……生贄は……穏乃……でしょ……?」


玄 「えっ? 違うよ、灼ちゃん」


玄 「1人目の生贄がシズちゃんでー、2人目の生贄は、憧ちゃんなのです!」


灼 「ち、違うっ! 1人目の生贄は、宥さ……」


言い掛けた次の瞬間、玄の様子が一変し、
殺意すら感じる、鋭い視線を灼に向けた。


玄 「……は? 笑えない冗談はやめてよ」


玄 「生き残ったのは、私と、灼ちゃんと、お姉ちゃんの3人だよ?」


そう言うと、玄は、宥であったモノに駆け寄り、笑顔で〝それ〟に話し掛ける。


玄 「お姉ちゃん、あの光の先に、新しい世界があるんだって!」


宥 「」


呆然とする灼を放置したまま、玄は、独り言を続ける。


玄 「新世界って、どんなだろう……?」


玄 「今とは、全然、違っちゃったり、するのかなぁ?」


玄 「あ、でもでもっ! 私とお姉ちゃんの関係は、絶対に変わらないよねっ!」


宥 「」


玄 「くぅ~っ! 何だか、私、わくわくして来たよ~!」


玄 「お姉ちゃん、早く行こう? 私達の未来へっ!」


千切れ掛かった腕を掴み、ずるずると引き摺って、
〝それ〟と共に、玄は、光の中へと、消えて行った。

灼は、放心状態のまま、部室に取り残されていた。
既に、阿知賀の敷地外は、完全に消え失せている。


灼 「黒服……憧は、生き残ったんだよね……?」


黒服「……イエス」


灼 「死ぬのは、麻雀部のレギュラー、2人だけの筈でしょ……?」


黒服「……イエス」


灼 「じゃあ、なんで、憧は死んだの……?」


黒服「……正直、我々にも、松実玄様の行動は、想定外でした」


灼 「想……定……外……?」


灼は、黒服に近付き、目の前に立つと、思い切り、平手打ちを噛ました。


黒服「……」


灼 「お前はっ! 気付いていた筈だっ! 短刀を持つ玄にっ!」


灼 「何故、止めなかった!? お前なら、憧を救えた筈だっ!」


黒服「……言った筈です」


黒服「我々は、貴女方が、どの様な行動をしようが、一切、関知しないと……」

灼 「……っ!」


黒服「鷺森様、貴女は、我々の事を、少し勘違いされている様ですね……」


灼 「……勘違い?」


黒服「私や、他の黒服達は、T-800と呼ばれる、アンドロイドなのです」


灼 「アンドロイド……? あんたは、人間では無く、機械だって事?」


黒服「イエス」


黒服「機械故に、我々には、意思や感情といった物が、全くありません。
   ただ、神の命に従い、それを、忠実に実行しているだけなのです」


灼 「でも、あんたは、私達に、様々な助言をしている!
   それは、どう説明するの? 神の命令だったとでも言うの?」


黒服「我々は、神の代理として、この場の、司会進行役を任されました」


黒服「その時に作成された、規約に沿って、我々は行動しています」


黒服「その中で、我々は、規約に反しない限り、貴女方に助力し、 
   要望等にも、出来得る限り応えるよう、指示されているのです」


黒服「我々は、非常に高度な、人工知能を搭載しており、
   皆様の感情や思考を、ある程度、推測する事もできます」


黒服「我々が、皆様に色々と助言をしたのは、
   貴女方にとって、それが最善であると、
   独自に推測し、判断したからなのです」

黒服「鷺森様の言う通り、我々が、新子様を救う事は可能でした」


黒服「では何故、我々は、新子様を、見殺しにしたのか?」


黒服「それは、〝規約の優先順位〟にあります」


灼 「規約の……優先順位……?」


黒服「我々には、生き残った者の生命を、守る義務があります」


黒服「生贄以外の方の生命が、危険に晒された場合、
   本来、我々は、皆様を助けなければなりません」


黒服「ですが、それより優先すべき事として、規約に反しない限り、
   貴女方の〝自由〟を、最大限、尊重しなければならないのです」


黒服「今回の様に、〝2人目の生贄の処刑を完了した後〟で、
   松実玄様が、新子憧様を殺す事は、〝禁則事項〟にありません」


黒服「よって、我々は、その〝自由〟を承認したのです」


灼 「じゃあ、私が、宥さんや穏乃を殺しても良かったの?
   そうすれば、あんな惨い殺され方をしないで済んだ?」


黒服「生贄の者を、貴女方が殺す事は、禁則事項です。
   ただ、生贄が自殺する事は、何故か可能ですがね」


黒服「それが、故意なのか、ただの記入ミスなのかは、我々には分かりません」


黒服「この規約は、変わる事も、多々ありますから……」


黒服「他にも、矛盾する項目はあり、それらは、我々が、独自に判断しています」


納得できない様子の灼に、細かい事は気にするなと、黒服は、そう言い放った。

灼 「ねぇ……」


黒服「何でしょう?」


灼 「死んだみんなも、光の先へ連れて行って良い?」


黒服「禁則事項に書かれていませんから、問題ありません……」


黒服「……ですが、連れて行った所で、恐らく、何の意味もありませんよ?」


灼 「そうだとしても……っ! こんな所に、残しては行けないから……」


黒服「貴女がそう望むなら、我々も協力しましょう……」


黒服「高鴨様、新子様、赤土様、灼祖母様、高鴨母様の5名は、
   我々が、責任を持って、光の先へと連れて行きます……」


灼 「……うん、ありがと……」


その時、穏乃と憧の遺体から、青白い、光の粒子が湧き出した。


灼 「これは……っ!?」


黒服「〝器〟が壊れてしまった為、〝魂(雀力)〟が漏れ出し、
   新たな行き場を求めて、辺りを彷徨っているのでしょう」


黒服「自然の摂理としては、少しずつ〝世界〟に吸収され、いずれは消滅します」


灼 「これが……穏乃と憧の……魂……?」


その青白く発光する粒子に、灼が触れた、次の瞬間、
一気に雪崩れ込む様に、灼の体に、光が流入して行く。


灼 「ふぁっ!?」

灼 「んっ……あっ……んんっ……んぁぁっっっ!!!」ビビクン


全身が燃える様に熱くなり、力が滾ってくる。
いつの間にか傷は癒え、痛みも無くなっていた。


灼の身体が光を帯び、神々しく煌いている。


黒服「これは……非常に珍しい現象です……」


黒服「鷺森様が持っている、非常に強力な〝陰〟の魂が、
   高鴨様や新子様の、〝陽〟の魂を引き寄せ、融合したのでしょう……」



灼 (この温もり……感じる……穏乃を……憧を……)



灼 (二人が……私の中で……息衝いている……)



灼 「私も行く……穏乃や憧と一緒に……新しい世界へ……っ!」



迷いの無い、力強い一歩を、灼は踏み出した。
光の先へ向かって、凛として突き進んでゆく。





灼 「始めよう……新たなる、物語を……っ!!」






黒服「>>1より、お知らせがあるそうです」


阿知賀編の本編は、コレで終わりになります。

この先は、エピローグとなる予定です。
蛇足の糞文でも構わない、と言う人以外は、そっと痔でお願いします。



が、現在、全く書き溜めがありません……。
燃え尽き中なので、書き込みが、更に遅くなるかもです。
最悪、エピローグ自体が、消えて無くなる可能性もあります……。


エピローグは、やるかやらぬかは別として、
構想としては、実は最初からあったんです。
清澄編では、迷走とか色々言われましたが……。

あれ、その場の思い付きでやってたんじゃあないんですよ?


できれば、1スレで終わらせたいのですが、エピローグの途中で、
>>1000まで逝く可能性もあるのではないかと、少し恐怖してます。

少しずつではなく、多めに書き溜めて、一気に投下しようとか、検討している所です。


あと、>>1ルートの後に、安価ルートをすると言いましたが、
あれは嘘だ。いや、すみません、ごめんなさい。

後書きで、色々意見交換をするとも言いましたが、あれも嘘で。
予想以上に、スレを消費してしまったので、物理的に無理かと……。


次の高校をやる場合、安価・コンマになる可能性は高いです。
その場合、部員同士の、ゴタゴタ愛憎劇が、無くなるかもです。

友情崩壊とか、怨念憎悪とかを、期待している方が、多い気がするのですが、
その期待を、裏切る可能性が高いので、先に謝っておきます、すみません。


処刑方法によって、ホラーですら無くなる可能性もあります。
レズセックスで、昇天テクノブレイクとか書かれたら、
私の技量では、ホラーにする事が、恐らく不可能かと……。


>>1が無理と判断した安価・コンマは除外する、という方法も思案中です。
もしくは、安価条件に、〝ホラーっぽいもの〟と、書いておくとか。

ただ、物語がぶち壊れても、無茶安価を実行するのも良いな、とも思ったり。


処刑方法は、1人目と2人目で、別にする可能性もあります。
物語的には、あんな風に殺されるのヤダー、って言うのは美味しいのですが、
書いていて、同じ殺され方だと、ちょっと微妙な感じがしましたので……。


でも、1人目が惨殺されて、2人目がレズセックス腹上死とかになったら、
実際、どうなんでしょうかね……。


長々と失礼しました。
今日の投下は、ありません。すみません。

エピローグがこのスレで収まらないぐらいのボリュームなのか!超期待!
エピローグの投下が終わるまで書き込み控えるわ

乙したー

プロローグが大長編とな
期待してまっせ

5人の内1人操作キャラ選んで、それ以外は>>1の手に。

とかどうだろう?


お疲れ様なのです。

原作者の名前出すのは辞めて欲しいなぁ

創作物に言うのも何だけど
>>1の趣味でキャラを殺してるだけ(安価も含め)だから。原作者を神として、その神の意思での処刑は狡猾。


処刑方法は10個くらい候補あげてコンマに任せればいいんでない?

それと一人目と二人目の処刑方法を別にするのは賛成
最初安楽死で次にエグいのきたときの絶望は楽しみ

>>757>>758

白望「ちょっとタンマ……」


むしろ、エピローグのボリュームを、削ろうかと思ってますよ!
何があるか分からないので、ある程度のレス分を残して終わろうかなと。


生贄予想談義とか、処刑方法談義とかで、妙に加速する事もあり得ますので……。


心配症なので、余裕を持って終わりたいだけです、割とマジで。(ガクガクガク


なので、エピローグの量&質は、期待しないでください。


レスは、参考となる意見が多いので、幾らでも大歓迎です。
自分の考えの及ばない事も、多々ありますので……。


例えば、レズセックス絶頂で処刑とか、完全に想定外でしたが、
そういう事になる可能性もあるのかと、先に知れて、ホントに良かったですよ。



いざと言う時には、エピローグを新スレでやりますので、
読者の皆様は、レスの残り数などは、気にしないでください。



>>761
申し訳無いですが、原作者と同姓同名のキャラが出る事は、絶対に変えられないです。
それがないと、〝キャラを2人減らす〟という、このストーリーの根幹が崩れてしまうので……。


ホントに申し訳ないのですが、意見を貰っても、変えられない事もあります。
ですが、議論する事自体は大歓迎なので、何でも書き込んでくれて構いません。


質問等でも、構いません。できる限り、お答えします。



そういう議論の中で、>>1は自分の考えを出していくつもりなので、
今後の>>1のスレを、そっ閉じするかどうかの、判断材料にして下さい。



ちなみに、死ぬキャラは、>>1の好みとは、全く関係がありません。
ストーリー上、必要であれば、>>1の最愛のキャラでも、あっさり死にます。

また、嫌いなキャラだから、嫌な性格になるとか、そんな事もありません。

今回の処刑方法が「エロ」になった経緯について、説明しておきます。


>>1の頭の中には、「エロで殺す」という処刑方法の場合、
「男が強姦し、暴力で殺す」という発想しかありませんでした。


それが、ホラー的に見て、最も恐怖であると、考えているからです。


この「>>1的ホラーエロ」で行くか、安価に任せるか、その二択で迷っていました。


そして、意見を聞いた時、「エロ」という答えが多かったので、
>>1の考えた「エロ処刑」の「男による強姦致死」になりました。


安価で決めたと言うより、読者の皆さんの意見を聞き、
>>1が、自分と同じ考えの人間が多いと、勝手に判断して、
そのまま、>>1の処刑方法で行く事を決定した、という感じです。


「エロい処刑」と言う物に対して、
>>1と、一部の読者様達の間に、
大きな、認識の相違があった様です。


エロで、レズ腹上死を想像していた人も多かった様ですが、
このスレは、「百合系」「レズ系」ではなく、「ホラー系」です。


なので、女の子同士のイチャコラは、基本的にありません。
できるだけ、読者に対し「恐怖」や「不快」を与える事を目的としています。


なので、処刑方法が「エロ」の場合、「エロ+恐怖」という形になります。
その場合、相手が「女性」であるより、「男性」である方が効果的だと考えます。


完全安価の場合、女性が強姦し、殺害する可能性もあったでしょうが、
そうなると、「ホラー」としては、恐怖感が下がる事は、間違い無いと思います。



ここは、「恐怖感を味わう」事を目的にしているスレです。



「百合」「レズ」は、他の方々が、沢山書いていますので、
ここでは、「ホラー」という、異質なジャンルでお楽しみください。




>>762
その案、ちょっと改造を加えて、頂く事になるかもしれません。
具体的には、>>1が何個か候補を挙げて、多数決で決めるという形です。



エピローグ開始します。

全体の読み直しはしていません。面倒臭いので。

書き込む時に、1レスずつ読み直しをするので、
書き込みのスピードが、遅くなるかもしれません。

全体の流れが変でも、修正するつもりはありません。
つまんなかったら、即読むのを止める事をお勧めします。

もう、どうにでもなーれ。(はぁと

――― 阿知賀 麻雀部 部室 ―――


ASIMO「カン モウイッコ カン ツヅケテ カン トドメノ カン」

ASIMO「 ツモ 」

ASIMO「スー カンツ 48000 デス」


憧 「え~っ!? そんなの考慮してないよ~;;」

玄 「憧ちゃんの飛びで、またアシモちゃんが1位だね」


ASIMO「モット マージャン ヲ タノシ モウ ヨ!」


私の名前は、新子憧。
阿知賀女子学院、麻雀部の1年生である。


憧 「あーっ! これ、〝魔王モード〟になってるし!」

玄 「うわわ、ホントだ……」

憧 「魔王モードは、プロ雀士用でしょ? ウチらには、無理無理!」

玄 「あはは、そうだよね~」

玄 「えっと……レベルを〝ノーマル〟に下げてっと……」

リモコン「ピッ」


この、ちょっと天然で、黒髪ロングの美人さんは、2年生の松実玄。
小学生の頃、子供麻雀倶楽部で知り合って、もう5年の付き合いになるかな?


ASIMO「〝雀力〟 ヲ 〝ノーマル〟 ニ セッテイ シマシタ」

玄 「これで良しっと!」

憧 「次は負けないぞ~!」


―――――――――
――――――
―――


憧 「うぅ~、また負けた……。これで、5連続最下位……」

玄 「た、たまたまだよ! 大丈夫、こういう日もあるって!」アタフタ


憧 「……」

玄 「」オロオロ


憧 「……今日はもう遅いし、そろそろ帰らない?」

玄 「う、うん、そうしよっか……」

憧 「……」テクテク

玄 「……」テクテク


憧 「……ふぅ、私って、駄目駄目だよね……」

玄 「そ、そんな事無いよ! 誰でも、調子の悪い時はあるし!」アタフタ

憧 「そんな気遣い、今更、必要無いよ……」

玄 「憧ちゃん……」

憧 「思えば、阿知賀子供麻雀倶楽部の時から、最下位しか取った事無い……」


憧 「やっぱり、私には、麻雀の才能が無いのかな……」グスン

玄 「っ!?」


憧 「……麻雀、辞めちゃおっかな……」

玄 「諦めちゃ駄目だよっ!」


憧 「で、でも……私がいたら、団体戦で足手纏いになっちゃうっ!」

憧 「玄の実力なら、個人戦でも全国に行けるよ。
   だから、玄は個人戦に出場して、和と……」


玄 「私、個人戦になんて、出るつもり無いからっ!」

憧 「っ!?」


玄 「私は、憧ちゃんと一緒に、全国の舞台に立ちたいのっ!」


そう言うと、玄は憧を、力強く抱き締めた。

玄 「私、凄く嬉しかった……」

玄 「憧ちゃんが、晩成を蹴って、阿知賀を選んでくれた事……」

玄 「あの日、この部室に戻って来てくれて、本当に感謝しているの」


――― 回想 ―――

憧 『まず、ひとり! ここにいる……っ!』

玄 『憧ちゃんっ!? どうして阿知賀に!? 晩成に行くんじゃ……』

憧 『だって、玄はドジだから、心配で、1人にしては置けないよ』

玄 『うぅ……酷いよ憧ちゃん……』

憧 『それに……』

憧 『私が麻雀をするなら、ここしか在り得ないから……っ!』

玄 『憧ちゃん……』

――― 回想終 ―――


玄 「ホントはね、私も、寂しくて、辛くて、挫けそうな時もあったの……」

玄 「でも、またいつか、ここで皆と打てる時が必ず来るって、ずっと信じてた」

玄 「そして、憧ちゃんは、この場所に、阿知賀に戻って来てくれた……」


玄 「だから……私は、憧ちゃんと……」


憧 「……玄の馬鹿」ボソッ


憧 「そんな風に言われたら、麻雀部、辞められないじゃん……」

玄 「憧ちゃん……っ!」


憧 「だけど、後1人いなくちゃ、団体戦には、出れないんだからね?」 

玄 「う、うん! 私、勧誘を頑張るよ!」

それから、私と玄は、校内に、自作のポスターを張ったり、
知り合いに声を掛け、麻雀に興味がある子を探したりした。

けれど、その努力も虚しく、2人(+1体)だけの部活が続く。
代わり映えのしない日常と共に、時間だけが過ぎ去って行った。


そんなある日の事……。


玄 「憧ちゃん、憧ちゃん! 今日は、重大なお知らせがありまーす!」

憧 「テンション高っ!」


部室に入って来るなり、目を輝かせ、突然、叫び出す玄。
それと同時に、玄の後ろから、一人の黒髪少女が現れた。


灼 「……失礼する」ウィッシュ!


憧 「ホェァッ!?」


憧 (見た目は大人し系の、黒髪で小柄な和風の女の子が、
   両手にグローブを嵌めて〝ウィッシュ(キリッ〟ですって!?)

憧 (しかもこの人、上履きじゃなくて、何故かブーツを履いてるし!)


灼 「我が名は、鷺森灼。地獄の業火より生まれし者……。
   天命の導きを得て、今、この部室に馳せ参じた……」


玄 「私のクラスメイトで、新入部員候補の、灼ちゃんなのでーす!」


憧 「な、なんですってー!?」(驚愕)

灼 「シュッ! シュッ! シュッ!」←シャドーボクシング中

憧 「……」

灼 「破ァァァッッッ!!!」荒ぶる鷹のポーズ!

憧 「っ!?」ビクッ

憧 「ちょ、ちょっと、玄!」チョイチョイ

玄 「ん?」トテトテ...

憧 「どういう経緯で、この人を連れて来たのよ? 麻雀はできるの?」コソコソ

玄 「あー、灼ちゃんはね、昔、うちの旅館で、麻雀を打ってたんだ~」

憧 「松実館で? いつ頃の話?」

玄 「幼稚園位の時かなぁ? お父さんや、お客さんと一緒に打ってたよ」

灼 「ふっ……、あの頃は若かった……」トオイメ

憧 「えぇっ? 園児が、大人に混じって麻雀を!?」スゲー!

玄 「うん。しかも、毎回、灼ちゃんが、断トツ1位だったんだ~」

憧 (この人、実は凄い打ち手なのかな……?)ドキドキ

玄 「ずっと前から、麻雀部に入ってくれるよう、お願いはしていたの」

玄 「でも、麻雀はもう辞めたからって、今まで何度も断られて……」

憧 「それじゃあ、どうして今日は麻雀部に……?」

灼 「……このポスターに、興味がある」ズビシッ

憧 「あー、これは、10年前のインハイの写真を、引き伸ばしたんですよ」

灼 「ふむ……。その写真を見せて欲しい……」

玄 「はい、どうぞ♪」

灼 「ん、ありがと。」

灼 「……」ジー

憧 (なんか、すっごく真剣な表情で、写真を見てる……)ヨコガオキレイ...ドキドキ

灼 「この後姿……。やはり、似ている……」

憧 「? 誰に似ているんです?」

灼 「10年前、賭郎勝負で、この私に、初めて土を付けた、あの雀士に……」

憧 (賭郎勝負……?)

玄 「???」

灼 「この人物についての、詳しい情報が欲しい」

憧 「なるほど、それが入部の為の、交換条件ってワケですか?」

灼 「察しが良い……。才色兼備な1年生、貴女の名は?」スバラウィッシュ!

憧 「そう言えば、まだ自己紹介をしてませんでしたね。新子憧です」ソレハドーモ

灼 「新子憧……非常に興味深いな……」ツカツカツカ

憧 (へっ!? いきなり近付いて来たっ!?)

灼 「ふぅーむ……」クンクンクン

憧 (先輩の顔が、超近いんですけどっ!?)ドキドキ

灼 「……」クンカクンカ

憧 「(匂いを嗅がれてる!?///)な、何ですか!?」ドキドキドキドキ

灼 「……似ている。新子君からは、私と同じ臭いがする……」クンカクンカクンカ

憧 「 え゛ぇ゛っ ! ? 」

玄 「憧ちゃんて、女の子的な、甘くて良い匂いするよね~」クンカクンカクンカ

憧 「んっ、あぁ、玄! 首筋の匂いを嗅ぐのは止めて、んんっ!///」ビビクン

憧 「はぁはぁ……///」グッタリ


灼 「玄、話の続きを……」テカテカ

玄 「この人はね、〝阿知賀のレジェンド〟って呼ばれてるんだ~」テカテカ

灼 「阿知賀の……レジェンド……だと……?」ナンカ カッコイイゾ!

玄 「10年前、阿知賀女子は、奈良の王者、晩成を破り、
   初の全国出場と同時に、優勝まで、一気に突き進んだ」

玄 「その時のエースが、当時1年生だった、この人なの……」

灼 「だとすれば、当時の部員名簿を調べれば……」

玄 「ううん、麻雀部が廃止になった時に、名簿は紛失しちゃったみたいで……」

灼 「それなら、麻雀協会に問い合わせて、インハイの選手名簿を……」

玄 「駄目……それも無理……」

灼 「なぜ……?」

玄 「この人はね、偽名で選手登録をしていたみたいなの……」

灼 「……っ!」

玄 「彼女は、〝赤土晴絵〟という名前で、インハイに出場していた。
   けれど、阿知賀にそんな名前の生徒は、在籍していなかったの……」

玄 「彼女は寡黙で、近寄り難い人だったみたい。
   友人も無く、誰もその事に気付かなかったとか」

玄 「阿知賀が全国優勝した後、彼女は、皆の前から、
   何も言わずに、忽然と姿を消してしまった……」

玄 「学校側やメディアも、彼女について、色々と調べたみたい」

玄 「そうしたら、住所も出鱈目だった事が分かって、大騒ぎになったらしいよ」

憧 「その事件、私も覚えてる。一時期、テレビで話題になってたよね」ハァハァ…

玄 「阿知賀女子学院、3大ミステリーの1つ、〝謎の美少女天才雀士〟」

玄 「麻雀協会も、阿知賀の優勝を取り消すかどうか、最後まで揉めたとか」

玄 「事件の全容が発覚するまで、かなりの時間が経過していた事もあって、
   優勝は取り消されなかったけれど、5年間の大会出場停止処分が決定」

灼 「なるほど……。それがきっかけで、阿知賀の麻雀部は廃部に……」

玄 「うん、そうみたい……」

玄 「彼女の姿が映った動画は、今では、テレビ局にも存在しない……」

玄 「何かの手違いで、それらは、全て、処分されてしまったらしいのです」

玄 「現在、彼女が存在していた事を証明できるのは、
   後姿を捉えた、この優勝時の写真だけなの……」

玄 「阿知賀のレジェンドについて、私が知っているのは、これ位かな」

灼 「そう……」

玄 「ごめんね、あんまり役に立てなくて……」

灼 「そんな事は無い。感謝する、玄」

憧 「ちなみに、この人を見つけ出して、どうするんです?」

灼 「……借りを返す。あの時に受けた屈辱を、倍にしてっ!」ギリッ

憧 「はぁ……そうですか……」

灼 (あの時、私が負けた所為で、土地を奪われ、
   鷺森レーンも潰されて、跡地がラウンドワンに……)

憧 (勝負に負けたのが、そんなに悔しかったんだ……)

灼 「だが、手掛かりが、これだけでは……」ジワッ…

玄 (灼ちゃんの涙目!!)キュンキュン

憧 (抱き締めたいっ!!)キュンキュン

玄 「だ、大丈夫だよ、灼ちゃん! きっと、この人に会えるって!」

灼 「でも……」ウルウル

憧 「そ、そうだ! もう一度、阿知賀が全国優勝したら?」

灼 「……どういう事?」ウルウル

憧 「赤土晴絵だって、一応は、阿知賀麻雀部のOBって事になるでしょう?
   だとしたら、うちの麻雀部に、興味を持っていても、おかしくは無いし!」

憧 「一度は廃部になった、阿知賀麻雀部が、全国で優勝したら、
   彼女も、私達に興味を惹かれて、会いに来てくれるかも?」

玄 「ふぅ~む、なるほど、なるほどー」ピコーン!

憧 「だから、私達と一緒に、全国に行きましょうよ、灼先輩!」

灼 (灼先輩……先輩……センパイ……せんぱい……)ポワワーン

灼 「良い……凄く……良い……」ニヘラァ

憧 (なんか、すっごいニヤニヤしてる!)

灼 「新子さん……」キラキラ

憧 「憧でいいですよ。私も、先輩の事を名前で呼びたいですし」ニコッ

灼 「っ!」ドキッ

灼 「玄も、あ、憧も、私の〝魂のソウルメイト〟だっ!」ウィッシュ!!

玄 「魂のソウルメイト? よく分からないけれど、なんかカッコ良いねっ!」

憧 「これで、団体戦の頭数は揃ったわね。後は大会まで、特訓あるのみ!」


玄&憧「頑張るぞー!」オーッ!


灼 「ふふっ……」


灼 (必ず連れて行く……私が二人を、全国の舞台へ!)






灼先輩が、麻雀部に加わってから、1ヶ月が経ちました。
私達は、毎日、下校時間ギリギリまで、練習をしています。


順位はいつも同じで、灼先輩が、頭一つ抜けてのトップ。
2位は玄で、3位がアシモ。私は、毎回、箱割れのラス……。


憧 (これだけ負け込むと、流石に凹むなぁ……)ジャラジャラ

玄 「次も頑張るよー!」ムフーッ!

ASIMO「ワハ ハー マケ ナイ ゾー」

灼 「……」


――― 翌日 ―――


灼 「……遅くなって済まない」ガララッ

玄 「あ、灼ちゃ~ん」フリフリ

憧 「その手に持ってる袋は何です?」

灼 「これはだな……」ゴソゴソ

玄 「あぁっ!? 〝雀力測定器(スカウター)〟だね!」カワイイー!

憧 「スカウター?」

灼 「うむ」

灼 「昨日、貴婦人達の戦場(スーパー)で、これを偶然、発見してな」

灼 「純国産品だと、通常ならば、1万円前後するものだが、
   これは、ワゴンセールで1280円(税込み)だったのだ」

憧 (あ、箱に小さく〝Made in CHINA〟って書いてある……)

玄 「おぉ~! それは、お買い得だったね~!」イイナー

灼 「ふふん」ドヤァ

憧 (……言わないでおこう)

憧 「ところで、そのスカウターって……」

灼 「これはな、相手の〝雀力〟を、計測する事ができるのだ」

憧 「何それ、面白そー!」キラキラ

灼 「まずは私が……」

憧 「灼せんぱーい、私に貸してくださいよ~」ウワメヅカイ

灼 「うっ……」タラタラ

憧 「装着っと! うふふ、どうかな~、似合ってる?」キャッキャッ

灼 「……」ジー

玄 (灼ちゃんが、指を咥えたまま、憧ちゃんの事をずっと見てる……)

憧 「まずは、玄の雀力から測ってみるよ~」ピピピピピッ

憧 「あ、計測完了だって!」ピピーッ

玄 「私の雀力、いくついくつ???」ワクワク

憧 「玄の雀力は……じゃじゃじゃんっ! 18万でーす!」オメデトー!

玄 「わーい!」ピョンピョン

憧 「灼先輩、この数値って、どれくらい凄い物なんですか?」

灼 「そうだな……。これは、大雑把な目安ではあるが……」

灼 「麻雀を始めて1ヶ月、役を覚えた初心者が、大体100前後……」

灼 「インターハイの、全国出場校レベルで、約10万……」

灼 「プロだと、2次(地方リーグ)で50万、1次で100万程度だろうか」

憧 「へぇ~、じゃあ、玄はもう全国レベルだねっ!」サッスガクロ!

玄 「ふっふっふっ……。当然の結果なのです!」ドヤァ

憧 「調子に乗らない」ポコン

玄 「あいたっ!」

憧 「で、灼先輩はっと……」ピピピピピッ

憧 「んっ? あれれ……?」

玄 「どうしたの?」

憧 「灼先輩の雀力が、たったの5000? これ、壊れてませんか?」

灼 「いや。私は、自らの雀力を制御し、ワザと低い値に抑制しているのだ」

玄 「???」

憧 「何故そんな事を?」

灼 「雀力の限界値を、他者に秘匿するのは、敵に手の内を知らせぬ為だ。
   強い力を持つ者は、得てして、自身の〝気〟を隠す事にも長けている」

灼 「故に、その数値だけを見て、振り回されぬように!」キリッ

憧 「なるほどね~。それなら、玄も雀力を抑えたら?」

玄 「力の抑え方なんて、私には分からないのです……」ショボーン

灼 「〝気〟の制御とは、非常に繊細な作業なのだ。
   鈍感な玄では、その様に緻密な事などできまい」

玄 「むっ! 灼ちゃんは、雀力で負けた、言い訳をしているだけなのです!」

灼 「むかっ! 私が本気を出せば、玄なんかより、ずーっと雀力が高いもん!」

玄 「えぇ~、そうかな~? 私の雀力は18万、灼ちゃんの雀力は5000」

玄 「私の雀力は、灼ちゃんの34倍もあるんだよ~?」ニヤニヤ

憧 (玄……あんた……)アワレミノメ

灼 「……っ!」プルプルプル

憧 (あ、灼先輩が、小鹿の様に震えてる……)

灼 「ん~っ!」ポコン

玄 「いたっ! 先に馬鹿にしたのは、灼ちゃんの方なのです!」ポコン

灼 「んぐっ! ふえぇ……うぅ~うあぁぁぁああぁぁぁぁんっっ!」ポコンポコン

玄 「あたっ! あたたっ! むぅ~、私をヒック本気でヒック怒らせたねっ!」グスン


憧 「ちょ、ちょっと、二人とも、やめなさいってば!」

憧 (結局、玄は、泣きながら、部室を出て行ってしまいました……)

灼 「玄の馬鹿……ヒッグ……玄の馬鹿……ヒッグ……」ブツブツ

憧 「灼先輩、機嫌を直してくださいよ~ヨシヨシ」ナデナデ

灼 「そ、そんなので! 私の方が年上! 先輩なんだから!///」

憧 「はいはい、そうですね」ナデナデ

灼 「ふきゅう……///」デレーン

憧 (よし、段々静まってきた)

憧 (後は、適当に話題を逸らして、玄に対する怒りを忘れさせる!)

憧 「ところで、灼先輩、私の雀力も測ってくださいよ~」

灼 「う、うむ」キリッ

灼 「どれどれ……」ピピピピピッ

灼 「憧の雀力は……ふぁっ!?」ピピー

灼 (雀力が、たったの5だと? そんな馬鹿なっ!?)

憧 「ねぇねぇ、どれ位ありました? 私の雀力」ワクワク

灼 「うっ……5、5万位……かなぁ……?」

憧 「5万かぁ……全国クラスの半分……玄にも勝てないワケだ……」

灼 「だ、大丈夫。まだ、大会まで猶予がある。これから、強くなれば良い」アセアセ

憧 「そうですよね……。今日は玄もいないし、もう帰りますね」

灼 「う、うん。お疲れ。」

灼 「……」

灼 (一体、どういう事だろう……)

灼 (特に、雀力を抑えている風にも、見えないが……)

灼 (憧は聡明であるし、牌効率も、しっかりと把握している)

灼 (にも拘らず、雀力が5など、絶対にありえん数値だぞ……?)


灼 「アシモ! 過去の牌譜を見せてくれ」


ASIMO「カシコ マリ マシタ」ペカー


灼 (憧の打ち筋は、期待値や統計に頼った、オーソドックスなデジタル)

灼 (牌効率も熟知し、最速の和了りを目指す上では、最適解に近い……)

灼 (……が、結果は、ほぼ焼き鳥状態。打牌が、全て裏目となっているな)

灼 (河も見ている様だが、ここぞと言う時には、必ず読みを外している)

灼 (まるで、牌が意思を持ち、憧から逃げ出している様だ……)


灼 (〝牌に愛されし者〟でも、〝牌に愛されぬ者〟でもなく)

灼 (〝牌に憎まれし者〟だとでも、言わんばかりに……)

――― 時は過ぎ、県大会当日 ―――


憧 「うぅ~、緊張してきた……」ブルブル

玄 「私もだよ~」ガクガク チョロロ…


灼 (あれから、憧を重点的に鍛えてはみたが、効果は全く無かった)

灼 (砂漠に水を撒くが如く、不毛な感覚だけが、余韻を残している)

灼 (玄は、憧の異常な〝不運〟について、何も感じていない様だが……)


クロハ キンチョウ シスギデショー デュクシデュクシ
ワキバラハ ヤメテヨー アコチャーン デュクシデュクシ

ナニー アノコタチ ハシャギスギー
コレダカラ ニワカハ コマルナ


灼 (ちょっと恥ずかし……///)カオマッカ


――― 控え室 ―――


憧 「灼先輩、オーダーは、本当に、これで良かったんですかね?」


先鋒 → 松実 玄
中堅 → 新子 憧
大将 → 鷺森 灼


灼 「あぁ。先鋒の玄が、できるだけ多くの点棒を稼ぎ、
   憧は飛ばされぬよう注意して、私に繋ぐ。問題無い」


灼 (ただ、勝つだけならば、憧には出番を回さずに、
   私と玄で、相手校を飛ばす事が、一番だろうな……)

灼 (しかし、私は、この大会を通して、彼女に成長して貰いたいのだ)

灼 (例え、敗北を喫したとしても、打つ事で得られる物が、必ずあるだろう)

灼 (ふっ……)

灼 (これまで、私は、自分の事にしか、興味が無かった……)

灼 (でも、今は違う。仲間達の存在が、私を変えたから……っ!)


館内放送『それでは、第一試合を開始致します』


憧 「ここまで来たら、覚悟を決めなきゃね……」

灼 「頑張って、玄っ!」

玄 「おまかせあれっ!」ビシッ! チョロロ...

1回戦、2回戦、共に先鋒戦で、玄が相手校を飛ばして終わりました。
私は、控え室で、灼先輩と一緒にお茶したり、お喋りをしてリラックス。


玄 「ただいま~」ツカレタヨー

憧 「おつかれ、玄」ハイ、コーラ

玄 「ありがとうなのです、憧ちゃん!」グビグビ ゲエェェエエエェェェェッッップ!

憧 「まさか、中堅戦も無しで、決勝まで来ちゃうなんてねー」ルンルン♪

灼 「油断は禁物だと思……。決勝の相手は、奈良の王者、晩成。
   これまでの有象無象とはレベルが違う、全国クラスの強敵」

灼 「しかも、晩成の先鋒は、気配からして、只者では無いぞ……っ!」

憧 「あのドリルみたいな人ですよね? 確か、雀力は12万でしたっけ?」

灼 「うむ。だが、その数値はフェイクだ。私には、ハッキリと見えるぞ。
   奴はまだ、遥かに雀力が増すであろう変身を、あと2回も残している」
   

灼 「……この意味が分かるな?」


憧 「ごくり……っ!」

玄 「?」ゴキュゴキュ ボグオエェェエエエェェェェッッッ


館内放送『それでは、決勝戦を開始致します』

館内放送『先鋒の選手の方々は、対局室に、お集まりください』


玄 「それじゃあ、行ってくるよ!」キリッ

憧 「あ、玄、飲み物を忘れないで!」ハイ、コーラ

玄 「うん!」ゴキュゴキュグビグビ グエアァァェェゴポォォォッッッ


灼 (大丈夫……なのか……?)

大丈夫・・・ここからきっと面白くなる
はずだから

モブA「……」

モブB「……」

やえ「ふっ……王者を待たせるとは、礼儀知らずなニワカめ……」


グエェェエエエェェェェオオォォォッッッ ボグオエェェエエエェェェェッッッ ゲエェェエエエェェェッッップ!


やえ「むっ! 何だ、この、龍が猛り、嘶く様な咆哮はっ!?」―ピキーン→


玄 「皆さん、お待たせしたのですっ!」タプンタプン


やえ(阿知賀女子……奈良で唯一、晩成を破った事のある高校……)

やえ(その先鋒、松実玄。1回戦、2回戦、共に他校を飛ばす高火力。侮り難い)

やえ(だが、しかし! 相手にとって、不足無し!)ドリルヘアーギュルルルルン

やえ(我が覇道を邪魔する者には、死の制裁を与えん!)ゴゴゴゴゴッ



灼 (なんという覇気……画面越しにも、ひしひしと伝わってくる……っ!)

憧 (あれ、今、一瞬、雀力の数値が……)



注:雀力測定器は、画面越しでも使用可能です。



館内放送『それでは、試合開始です』ブーッ

>>806

>>1 「俺は……絶対に……あんたの思い通りになんかさせないっ!」ギリッ

黒服「>>1は麻雀ができません。点数計算も無理な様です」

黒服「なお、書き溜めっぽい物が、ある模様……」

玄 「いっくよ~!」タプンタプン...


玄 「ツモ! ツモ! ツモオ゛オ゛ォ゛ォ゛ゴボォォオオォォォッッッ!ゲェェップ!」タプン...


モA「っ!」ビクッ

モB「っ!」ビクッ


やえ「ほぅ……」


針生『おおっと、阿知賀の松実玄選手、いきなり跳満3連発ー』

針生『1回戦、2回戦を、先鋒だけで終わらせた火力は、伊達じゃありません』

詠 『だけど、それは、晩成のあの子も同じだろう?』

詠 『しかも、3校を同時に飛ばしてるんだぜぃ?』

詠 『火力なら、あのドリラーの方が、高いんじゃね? 知らんけど』

針生『確かに、総獲得点数でも、小走選手は、松実選手を上回ってますね』

針生『圧倒的火力の先鋒を持つ2校ですが、まずは阿知賀が先制した形です』

針生『百戦錬磨の晩成高校、部長でエースの小走選手は、果たしてどう出る!?』



――― 〝キングクリムゾン〟 ―――


針生『前半戦、終了~』ブブーッ


阿知賀 235800

晩成    77000
荒蒔    44000
春日野  43200



針生『阿知賀の松実選手、怒涛のラッシュで、2位以下を大きく引き離しました』

針生『2位の晩成高校、トップとの差は、なんと、16万点近くあります!』

針生『絶望的とも思える点差ではありますが、
   2年連続、奈良個人1位の小走選手が、このまま終わるとも思えません』

針生『荒蒔、春日野も、名門校としての意地を見せられるか?』

針生『それとも、強豪3校を抑え、阿知賀が、このまま独走を続けるのか?』

針生『後半戦も、見逃せません!』

――― 王者・晩成高校 控え室 ―――


やえ「ふぅ~、ただいまー」ガチャ

初瀬「お帰りなさい、小走先輩っ!」オチャドウゾ

やえ「うむ、ありがとう、初瀬」ゴキュゴキュ

由華「阿知賀の松実玄、中々の強敵なようですね……」ギリリッ

良子「くそっ!」壁ドン

初瀬「大丈夫なんですか、小走先輩……」オロオロ

やえ「心配しなさんな。私は小3の頃から、マメすらできない」

紀子(それは、今、関係あるのか?)

やえ「この前半戦、私は〝見(けん)〟に徹していたのだ」

やえ「後半戦から、圧倒的かつ無慈悲な、王者の反撃を開始するさ」

良子「しかし、この点差だぞ? やはり、私が壁を殴るしか……」

やえ「如何なる点差があろうとも、王者は退かぬ、媚びぬ、省みぬ!」

紀子(一応、省みた方が良いと思う。退いたり媚びたりする必要は無いが。)

やえ(案ずるなよ、ノリP。私には、必勝法がある)ニヤッ

紀子「おい、直接脳内に話し掛けるの止めろ」アト、ソノヨビナモナ

やえ「(´・ω・`)」ショボーン

玄 (後半戦も、頑張るぞ~!)フンスッ


やえ(……阿知賀の松実玄、お前の弱点は、全て見切っている!)


針生『後半戦、スタートですっ!』ブーッ


やえ(1回戦、2回戦、そして先程の前半戦……)

やえ(その打ち筋を見て、私は、ある結論に至ったのだ)


やえ(……松実玄の手配には、高確率でドラが集まる!)ドドーン!


やえ(それと同時に、対戦相手には、1枚もドラを渡さない)

やえ(彼女は、完全に、ドラを自分の支配下に置いている……)

やえ(ドラ使い松実玄……。〝阿知賀のドラゴンロード〟と命名してやろう)


やえ(我ながら、素晴らしいネーミングセンスだな)フフン♪


やえ(次に、打牌だが……彼女は、今まで、ドラを1枚も捨てていない)

やえ(これは、恐らく、能力の〝制約〟に関係している)

やえ(例えば、一度ドラを捨てると、以降はドラが来なくなる、とかな)―ピキーン→

やえ(そしてそれは、〝ドラを大切にしなさい〟という、亡き母との約束……)

やえ(……とかが、あったりする様な気がする!)―ピキーン→ ―ピキーン→


やえ(更に、彼女は、筒子(特に一筒)に対し、異常な執着心を見せている……)

やえ(これは、〝おっぱいフェチ〟に、非常によく見られる、病的症状だ)


やえ(阿知賀の2回戦、対戦校の斑鳩女子は、先鋒が比類無き爆乳であったが、
   松実玄は、彼女の胸部を、試合中、瞬きもせずに、ずーっと凝視していた)


やえ(その目は、まさに、獲物を狙う狩人の如く、
   極悪非道な、〝性犯罪者〟のそれであった)


やえ(そこから、導き出される結論は1つ……)


やえ(松実玄は〝巨乳好き〟。その性癖を、最大限利用する!)ゴゴゴゴゴッ

やえ(私のCカップの胸を、〝雀力〟で嵩上げし、Oカップに!)ズモモモモォォ......


玄 (うぅ~、緊張して、喉が渇くのです……)ゴックンゴックン! オ゙ゲェェエエェェェッッップ!


コツンッ!


玄 「あいたっ!」

玄 (ボタン? どこから飛んで……)ハテ?


やえ「すまん、すまん。巻いていたサラシが、切れてしまった様だ」ボヨヨヨヨーン


玄 「ブフォッッッ!?」ブーッ

モA「……」ビチャビチャ


やえ(クククッ、効果は抜群の様だな……)ボヨヨンボヨヨン


玄 「ムフゥーッ! ムフゥーッ! ムフゥーッ」ボッキーン!


やえ(ちょろいっ! 集中力、冷静さを失った雀士など、恐るるに足らず!)



やえ(そろそろ、本気でイカせて貰うぞ!)ゴッ! ヒノメ!



憧 「なっ! 晩成のおもちが巨大化した!?」

憧 「しかも、雀力が20万……50万……75万……100万……」ピピピピッ


スカウター「ごめん、もう限界アル」プスプスッ…


憧 「きゃあっ!」ボフンッ!

灼 「 あ゛っ ー ! 」ワタシノ スカウター!

針生『おっとー? 晩成、小走選手が着ているYシャツが、
   はち切れんばかりに、パッツンパッツンになっています』

針生『これは一体、どういう事でしょう、三尋木プロ?』

詠 『そんな事より、あいつの瞳、見てみろよ。何か始まってるぜ』ゾクゾクッ!

針生『えっ……? はっ! 小走選手の瞳が、緋色に輝いております!』



やえ「お見せしようっ! 王者の打ち筋をっ!」

やえ「〝絶対王者の時間(エンペラータイム)〟!!!」ゴゴゴゴッ ボヨヨーン


玄 「っ!?」ゴキュゴキュ オ゙グエェェエエッップ!



由華「出たァ! やえ先輩の、撃滅無敵殺法!」ヒャッホーイ

初瀬「へっ? 何なんです、それ?」

良子「初瀬は、あのやえを見るのは初めてか……」

紀子「……やえの目が緋色に輝く時、全ての対戦相手は、為す術無く死ぬ」

初瀬「え゛っ……?」



やえ「地和! 天和!! 国士無双ーっ!!!」ドンドンドーン!!!

玄 「ひぇ~;;」



やえ「ニワカは相手にならんよ!」ボヨヨーン ドタプーン



針生『後半戦終了~』ブブーッ

晩成   333800
阿知賀  49400
荒蒔    11500
春日野   5300


針生『晩成、小走選手! 3連続役満からの猛追撃で、阿知賀を圧倒!』

針生『華麗なる逆転劇で、奈良個人総合1位の強さを見せ付けました!』

針生『後半、失速した阿知賀は、5万点を切っての2位。
   他の2校と共に、非常に苦しい状況に追い込まれました』


――― 阿知賀 控え室 ―――


玄 「うぅ……ごめんよ~;;」

憧 「相手は、奈良1位だもん。仕方無いよ」ハイ、コーラ

灼 「うむ。晩成のエース相手に、最後まで、よく頑張った」

玄 「ありがとう、みんな……」ゴクゴク グボビア゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ッッッ


館内放送『それでは、中堅戦を開始致します』

館内放送『選手の方々は、対局室に、お集まりください』


灼 「憧……」

憧 「分かってますって、灼先輩……」

憧 「撃ち落とせば良いんでしょう? 晩成を……っ!」ビシュッ! オヤユビタテ!

灼 「えっ? あ、いや、その、うん……」

玄 「頑張って、憧ちゃん!」ファイトー♪


憧 「行って来ます!」

――― 対局室 ―――


初瀬「久し振りね、憧……」

憧 「初瀬……」

初瀬「正直、驚いたわ」

初瀬「去年まで、麻雀部の無かった高校が、決勝戦にまで来るなんてね……」

憧 (私自身も、驚いてるわよ……)


初瀬「だけど、この点差よ? 晩成の優勝は、既に確定しているわ!」

憧 「……」

初瀬「憧が晩成に来てくれれば、一緒に全国へ行けたのに……っ!」

憧 「……そうかもね。でも、私はまだ、全国を諦めてはいない!」

初瀬「っ!」


憧 「私は……私達は……っ! 晩成を倒して、全国へ行くっ!」ゴォォォッ

初瀬「そう……。なら、叩き潰してあげる! 完膚無きまでにねっ!」ゴゴゴゴッ

憧 「上等……っ!」


憧 (……自分の実力位、正確に把握している)

憧 (私の雀力じゃ、晩成の足元にも及ばないって……)

憧 (それでも……っ! 灼先輩や玄と、毎日いっぱい練習して来たんだ!)

憧 (だから、私は負けない! 必ず、全国への切符を手に入れるっ!)


初瀬(憧の奴、この点差なのに、絶望した様子も無いなんて……)

初瀬(奇跡が起こる程、晩成の麻雀は甘くない。
   それは私が、身を以って経験してきた……)

初瀬(教えてあげるよ……。奇跡も魔法も、存在しないって事をっ!)


憧 (王者晩成、点差に胡坐を掻いているのなら、この勝負、付け入る隙はある)

初瀬(例え弱小校であろうとも、全力を以って当たるのが、王者の礼儀)


だからこそ……っ!


憧 (より多く奪うっ!)

初瀬(より多く奪うっ!)

憧 「この配牌……行けるっ!」―ピキーン→

憧 「ポン! チー!! ポーン!!!」

初瀬(速いっ!)


憧 「っ!?」


憧 (しまった! 調子に乗って鳴いてたら、役が無い……っ!)ザワ…ザワ…

憧 (これ……行けるかな……?)タン

モブC「ロン、12000です」

憧 「くぅ……っ!」


初瀬(私も、速さ重視の喰いタンで、小さく稼ぎつつ逃げ切ろう!)

初瀬「チー! チー!! ポン!!!」


初瀬(やった、初めてのテンパイっ!)ルンルン♪


モブD「……」タン

初瀬「それ、ロンですっ!」ババーン!

モブD「あの、それ、フリテンですよ?」

初瀬「なんですって!?」

初瀬(しまった! ハメられた……っ!)



針生『中堅戦、終了です』ブブーッ

晩成   185500  -148300
荒蒔   103400  +91900
春日野  95500  +90200

阿知賀  15600  -33800


初瀬(ふぅ、何とか、独走状態を維持する事ができたわ)

憧 (トップとの差を、10万点以上縮める事に成功した……)ウムッ!


――― 晩成 控え室 ―――


初瀬「ただいまです~」ガチャ


由華「……」

良子「……」

紀子「……」


やえ「おかえり、初瀬」

初瀬「小走先輩、私、頑張ってトップを守りました~」トテトテ

やえ「うむ、偉いぞ、初瀬。王者の〝なでなで〟をしてやろう」サワサワグワシグワシ

初瀬「あっ……あぁん……んんっ////」ビビクンビビクン



紀子「……」

良子「……」壁ドゴン

由華「……っ!」ギリギリギリギリ…



――― 阿知賀 控え室 ―――


憧 「ただいま~」

玄 「あ、おかえり、憧ちゃグボオ゙ゲェ゙ェ゙ッッッ……ん!」ウップ!

憧 「ごめんなさい、灼先輩……。私、トップを取れなかった……っ!」ジワッ

灼 「……大丈夫、私が何とかするから。憧は良く頑張ったよ」ナデナデ

憧 「灼先輩……///」キュンキュン



灼 「我が身を焦がす、灼熱の業火で、王者晩成を焼き尽くすっ!」キリッ

――― 対局室 ―――


モブE「……」

モブF「……」

由華(……遅いっ!)


灼 「待たせたな……我が贄となる者達よ……」ウィッシュ!


由華「……っ!」ゾクッ


――― 晩成 控え室 ―――


やえ「やっと来たか、阿知賀の大将……鷺森灼……っ!」

初瀬「あの人、キャメラに向かって、〝ウィッシュ〟決めてますよ!」

良子「あいつ……遅れて来て、一体、何様のつもりだっ!?」壁ドン

紀子「DAIGOのファンじゃあなかろうか?」ウィッシュ!

良子「お前もかよっ!」壁ドゴン

初瀬「止めてください、上田先輩! コンクリにヒビ入ってますよ!」

やえ(気を付けろ由華……。私ですら、彼女の底が見えない……っ!)


――― 対局室 ―――


由華(落ち付け……。阿知賀との点差は、約17万もあるんだ)

由華(ここから逆転される事など、まず在り得ないだろう……)

由華(寧ろ今は、荒蒔、春日野を警戒するべき……)タン


灼 「ロン。人和。32000」―ピキーン→


由華「ふぁっ!?」

灼 「ふっ……。晩成の大将は、とんだニワカだな」ズビシッ

由華「なっ! 晩成ナンバー2の私が、ニワカですって……!?」プルプル

灼 「クククッ……。貴様が序列第2位だと? 王者晩成も地に落ちたか……」

由華「っ!?」


灼 「全力で来い。でなければ、この前半だけで、貴様は点棒を全て失うだろう」


由華「偏差値45の屑校が、超エリートである晩成を虚仮にするなど……」ギリギリ

由華「貴様は万死に値するぞぉ! 鷺森灼ぁぁァァァッッッ!!!」ゴゴゴゴゴッ

――― 晩成 控え室 ―――


良子「由華がアップを始めたようだな……」

初瀬「凄い気迫……顔が般若みたいになってますよ」

やえ「だが、敵も相当な手練……」

やえ「阿知賀の大将、打ち筋はオールドタイプだが、
   間違い無く、高レベルのニュータイプ雀士だ」―ピキーン→

初瀬(オールドなのにニュー???)ナニソレ?

紀子「何言ってんだお前」


――― 対局室 ―――


由華「破ァァァァッッッ!!!」ゴゴゴゴゴ…

灼 (むっ、晩成の雀力が、急激に上昇している……)

由華「ツモ! もう1個ツモ!」シュン!シュン!

灼 (ほぅ……中々やる……っ!)


――― 晩成 控え室 ―――


初瀬「出た! 巽先輩の得意技、〝瞬速二連自摸(ダブルスティール)〟!」

やえ「電光石火の早業摸打で、通常の2倍の自摸をする事により、
   常人よりも、遥かに速く、手を完成させる事ができる……」

良子「しかも、1回目の打牌でロン上がりする事は不可能!」

紀子「まさに、攻防一体の奥義……」

やえ「だが、それだけでは無いっ!」


――― 対局室 ―――


由華「ツモツモーっ! 12000+8000で、20000!」ドーン

灼 (自摸を2度する事で、違う役を同時に2つ和了ったか……)

由華(ダブルツモによる、火力上昇! このまま、一気に、攻め切ってあげる!)

――― 阿知賀 控え室 ―――


『ロン&ツモ』


憧 「そ、そんな……」

憧 「灼先輩が打牌する、その瞬間に自摸する事で、
   ロンとツモを、同時に遣って退けるなんて……」

玄 「流石、県内最強の高校ですのだ……」

憧 (灼さん……頑張って……っ!)



――― 対局室 ―――


由華「ツモ! ロン!! ローン!!!」ドドドドドッ!!!


晩成   400000
荒蒔        0
春日野      0

阿知賀      0


針生『勝負は、晩成、巽由華の、ワンサイドゲームな様相を呈してきました』

針生『他校は、晩成の親番を流す事で、手一杯の様です』

針生『現在、オーラス、親は阿知賀の鷺森灼』

針生『この時点で、荒蒔、春日野が優勝する可能性は、完全に失われています』

針生『親番で、逆点の目を持つ阿知賀ですが、優勝するには、
   20万点以上を、晩成から直取りしなければなりません』


針生『これは流石に、晩成で決まりでしょうか』

詠 『終わらない内に、そういう事を口に出すなよ、アナウンサー』

詠 『それより、晩成の奴のツラ、見てみろよ……』

詠 『デスノートを触って、記憶を取り戻した、夜神みたいな顔してるぜ?』

針生『それが何か?』

詠 『すっげぇ面白くね?』キャッキャッ!

針生『……』イラッ

由華「ここまでの様ね、阿知賀の鷺森灼! さぁ、涙を流して懺悔なさい!」

灼 「……まだ、勝負は終わってない。私の親番……逆点も可能……っ!」

由華「カカカッ! この点差、しかも、私からのロン和了りしかできないのに?」

灼 「点差なんて、関係無い。私には見える……。敗北する貴様の姿がなっ!」

由華「ふぅん……。冗談にしては、笑えないわね……」

由華「まぁ良いわ。私自ら、貴女に引導を渡してあげる!」

由華「〝瞬速二連自摸(ダブルスティール)〟!」シュンシュン!

灼 「……」


――― 晩成 控え室 ―――


良子「由華の奴、自分で勝負を決めに行く気だな」

初瀬「晩成の優勝は確実ですねっ!」ワーイ!


やえ「待てっ! 阿知賀の捨て牌をよく見てみろ!」


紀子「なっ! 由華の捨て牌が4つに対し、阿知賀は16……だと……!?」

やえ「由華も、漸く異変に気付いた様だな……」


――― 対局室 ―――


由華(くっ! いつの間に……っ! 奴の摸打が、全く見えない)シュンシュン!

灼 「ふっ……」シュシュシュシュシュン!

由華(なんて速さなの……っ! 私を油断させる為に、手を抜いていたのか!?)


――― 晩成 控え室 ―――


紀子「凄い……手元が全く見えないなんて……」

やえ「あれは、過去5人しか会得する事のできなかった、究極奥義……」

やえ「〝神速無限自摸(エンドレスワルツ)〟」ダダーン!

良子「くそっ! なんてこった!」壁ドン


初瀬「……あれ?」


初瀬「自摸しているのは、巽先輩と、阿知賀の人だけですね。
   荒蒔や春日野の大将は、どうして自摸をしないんですか?」

やえ「自摸をしないんじゃない。……できないんだ」

初瀬「えっ……?」

やえ「考えても見ろ。あれだけのスピードで、牌に手を伸ばしているんだぞ?」

やえ「今、雀卓の上は、高速で〝手刀〟が飛び交っている状態なのだ」

やえ「素人が迂闊に手を出せば、指は疎か、手首ごと持って行かれるだろう……」

初瀬「そんな……」ガクガクガク

紀子「むっ……! 2人の動きが止まった!?」

――― 対局室 ―――


由華「……役満をテンパったのかしら? 鷺森灼っ!」

灼 「あぁ、そうだ……。もう自摸する必要は無い」


灼 「四暗刻単騎……。我が当たり牌を見抜く事は、絶対に不可能!」


由華「くっ……くくくっ……! どうやら、貴女の負けが、確定した様ね!」

灼 「……なんだと?」


由華「鷺森灼! 己の捨て牌を見るが良いわっ!」


灼の捨て牌「どっちゃり天こ盛り!」


灼 「……っ!?」


由華「それだけ捨て牌が多ければ、私の安牌が増えるのも必然!」

灼 「し、しまった!」ガビーン


由華「私はこれから、自分の手をゆっくりと進め、テンパイまで持って行く」

由華「そうすれば、ノーテン罰符で、荒蒔と春日野が飛び、晩成が優勝……」

灼 「くぅ……っ!」


由華「……良い事を教えてあげましょう、鷺森灼」

由華「晩成は、毎年、東大生を10人輩出している……っ!」

灼 「なにぃっ!?」ソレハ スゴイト オモ…


由華「偏差値70の進学校を、舐めて貰っては困るのよ!」ドーン


――― 阿知賀 控え室 ―――


憧 「そんな……ここまでなの……?」ポロポロ

玄 「……まだだよ」ゴキュゴキュ

憧 「玄……?」ヒックヒック

玄 「灼ちゃんは、諦めない……」グビグビ


玄 「それは、憧ちゃんも知って グオ゙エ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ ッ ッ っる筈だよ……!」

――― 対局室 ―――


灼 「ナンテコトダ……ナンテコトダ……」ダラダラダラ...


由華「カカカッ! 顔中から、脂汗が滲み出ていてよ?」ハンカチイル?

灼 「まだだ……まだ負けてないもんっ!」アリガト フキフキ


由華「往生際が悪いわね……。最後の1牌、自摸らせて貰うわ!」


灼 (くっ……あの牌を引かれたらマズイ……っ! こうなったら……)


灼 「破ァァァッッッッ!!!!」ゴゴゴゴゴッ


由華(うっ……! 急に寒気が……)ガタガタガタ


――― 晩成 控え室 ―――


良子「んっ? 由華の奴、突然震え出したぞ……?」

やえ「不味い! 由華は、攻撃態勢の阿知賀に対し、余りにも無防備過ぎる!」


やえ「今の由華は、極寒の地で、全裸で凍えながら、
   何故辛いのか、気付いていない様なもの……っ!」


初瀬「……?」


初瀬「それは、巽先輩が、馬鹿って事ですか?」

紀子「お前がそう思うのならば、そうなのだろう。……私もそう思う。」


やえ「逃げるんだ、由華ぁぁぁっっっっ!」



灼 『爆ぜろ凡俗! 最終奥義!! 〝暴麟愚津猛〟!!!』ドガーン!

由華「」

モE「」

モF「」


灼 「ふぅ……」スッキリ!


針生『な、なんと! 突如、巨大な爆発が起こり、雀卓が消し飛びました!』

針生『晩成、荒蒔、春日野の選手も吹き飛ばされ、会場の壁に減り込んでいます』

針生『阿知賀以外の3選手は、完全に意識を失っています! 救護班!』


詠 『これは、試合続行できないんじゃね? 知らんけど』

針生『現在、救護班が、3選手の状態を確認しておりますが……』


針生『おっとー? 結論が出た模様……。棄権です!』


針生『試合続行不可能と判断され、3選手の棄権が決定!』

針生『よって、奈良団体戦は、阿知賀女子の優勝が確定しました!』



ドゴーン! ズゴーン! ドゴーン!

ナンダ- コノ ユレハ

ピキピキピキ…

カベニ オオキナ キレツガ!

オイ タテモノガ クズレルゾ!

ミンナー ハヤク ニゲロー

ドン ガラガラ ガッシャーン



灼 「ふっ……また勝ってしまったか……」トオイメ

灼 (だが、何だろう……。この胸を支配する空虚感は……)

灼 (幾ら勝ちを重ねても、我が心が満たされる事は無い……)

灼 (結局、勝負とは、虚しさしか残らぬ、無価値な戯れ事よ……)ケンジャモード



―――――――――
――――――
―――

『もしもし、憧? テレビで見たよ! 県大会優勝、おめでとう!』

憧「見ててくれたんだ、ありがとう」

『そっちは、いつ頃、東京に行くの?』

憧「うーん、8月4日が抽選日だけど、その3日前位から、
  麻布にある、第2松実館の方に、お世話になるかなぁ?」

『そっかぁ。スケジュールは、私達と殆ど一緒なんだね』

憧「そっちの、組み合わせ抽選日はいつだっけ?」

『8月1日の、夜7時からだよ~』

憧「それなら、間に合いそうだから、会場まで、応援しに行くわよ」

『ありがとう、憧っ!』

憧「ホントは、同じ競技で、全国へ行きたかったけど……」

『そうだね、ごめん……。私、頭を使う事が苦手だから、麻雀下手だし……』

憧「得意、不得意は、誰にでもあるもの。気にしないで」

『日程が空いてたら、絶対、憧や玄さん達の応援に行くから!』

憧「私達も、時間があれば、そっちの応援に駆け付けるわよ」

『うん! 私、頑張って、全国優勝するよ……っ!』

憧「ええ。私達も、そのつもりで、東京に行くわ!」

『それじゃあ、また明日、学校で!』

憧「うん、またね、シズ!」

やえ「ふぅ……。私の高校麻雀も、今日で終わりか……」

やえ「初瀬を、全国へ連れて行ってあげたかったな……」グスン


――― 王者・小走邸 ―――


やえ「ただいまー」ガチャ

やえ(あ、今日は、パパもママも総理との会食で、留守を頼まれていたんだ)


やえ「お見せしよう! 王者のお留守番を!」キリッ


ガタッ


やえ「ひっ!」ビクッ

やえ(今、家に居るのは、私だけのはず……)ビクビク

やえ(もしかして……泥棒……?)ガクガクガク


ガバッ!


やえ「きゃんっ!」

やえ(いきなり後ろから抱き付かれた!)

? 「むふぅーっ、むふぅーっ、むふぅーっ!」モミモミ

やえ(あっ……んっ……厭らしく胸を揉まれて……んぁっ!///)ビビクン

? 「ふぅーむ、なるほど、なるほどー!」ムニュムニュ

やえ「はっ! その声は……阿知賀の……松実玄……んんっ!///」ビビクンビビクン

玄 「ふふっ……バレては仕方無いのです……」グイッ

やえ「きゃあ!」バッターン

やえ(仰向け状態にされ、上には松実玄が覆い被さり、身動きが取れない……)

玄 「クククッ……良い眺めですのだ……」フトモモ アワセテ スリスリ

やえ「んっ! お、お前! 自分がしている事を理解しているのか?///」

玄 「はぁ~ん?」クニクニ

やえ「不法侵入に……んっ……強制猥褻……だぞ……あぁん!///」ビクンビクン

玄 「そんな細かい事は、どうでも良いのです……」

玄 「漸く巡り会った、理想のおもち……。絶対に逃さないのですっ!」


やえ「待て! あれは、〝雀力〟によって作られた、偽物のおもちだぞ!」

玄 「そんなこたぁ、最初から、分かってますのだ」フンスッ

やえ「なんだと!? ならば、何故!? お前は巨乳フェチだろう!?」

玄 「おもちマスター松実玄は、大きさだけに拘っている訳では無いのです」

玄 「形、色、艶、感度、弾力、味、匂い、舌触り、挟み具合……」

玄 「大きさ以外にも、審査項目は沢山あるのです!」

玄 「それに、おもちの大きさなんて、後から、どーにでもできますのだ」


玄 「小走さんのおもちは発展途中、まだ小振りではあるけれど、
   私が求める、〝パーフェクトおもち〟に、最も近いのです!」

玄 「私は、その王者のおもちを、力尽くでも頂きますのだ!」ビリビリビリッ!

やえ「いやあぁぁぁっっっっ!!!」スッポンポーン

やえ「うぅ……///」ウマレタママノスガタ

玄 「形、色、艶……私が見込んだ通り、国宝級の逸品ですのだ」ハァハァ…

やえ「やだぁ……見ないでぇ……///」


玄 「スイートなスメルも、堪らないのです」クンカクンカクンカ

やえ「匂い嗅いじゃらめぇぇぇっっっっ!」ジタバタ

玄 「感度も良いし、瑞々しく、張りもある……」モミモミクニュクニュ

やえ「あっ……んっ……んんっ!///」ビクンビクン


玄 「そして、最後に、味を確かめるのです!」ペロペロペロリンチョ

やえ「ふぁっ!? ひゃあんっ! あぁんんっっっ!!///」ビビクンビビクンプシャア

玄 「う~ん、テイスティー!!」スバラッ!

やえ「はぁ……はぁ……はぁ……///」グッタリ


玄 「ふふふっ……。子猫ちゃん、本番はこれからなのです……」

やえ「ふえぇ……なんで……こんな……酷い事するのぉ……?」ウルウル

玄 「……何故? 己の罪を、自覚していないとは……」ヤレヤレデスノダ

やえ「罪……?」


玄 「今日の麻雀大会の事を忘れたのですか?」

玄 「……貴女は、小賢しくも、麻雀勝負に、神聖なるおもちを利用した」

玄 「おもち神は、その様な愚行を、絶対に許さないのです!」

やえ「そ、そんなぁ……ふえぇ……」ウルウル

玄 「私は、神の意思を代弁する者であり、神罰の代行者でもあるのです……」

玄 「小走さん、自らの罪を認め、私に全てを委ねるのです!」ゴゴゴゴゴッ

玄 「そのぷるんぷるんな、淡い桃色の唇、奪わせて貰うのです!」ブチュウ

やえ「んっ……んーっ! んーっ!」ゴックン!


玄 「ぷはぁっ!」


やえ「んんっ! 体が……熱い……! 何を飲ませたの……?」ハァハァ

玄 「性的興奮と感度を爆発的に高め、女性ホルモンの分泌も促進する、
   お姉ちゃ……松実コーポレーションが開発した、魔法のお薬なのです」

玄 「この薬と、私が独自に開発した、特別なマッサージを組み合わせる事で、
   どんな女性でも、バストアップ間違い無し、効果も既に実証済みですのだ」


玄 「むふふっ……。それでは、育成を開始するのです……」ワキワキ


やえ「ひ……ひぃ……」ジュンジュンチョロロロ…


玄 「経穴を突き、愛でる様に揉み解し、舌で刺激を与える!」ズビシュムニムニペロリンチョ

やえ「ふにゃぁぁぁっっっ!? 壊れちゃうよぉぉぉっっっ!////」プシャァァァッッ!

やえ「んっ……んんっ……///」ピクピク

玄 「ふふふっ、小走さんの身も心も、全て手に入れたのです」(勝利宣言)


やえ「……違う」


玄 「んん? よく聞こえなかったのです」ハァン?

やえ「例え、私の身体を弄び、性的快楽で満たそうとも、
   この心は、決して、お前の物にはならないぞ……っ!」

玄 「むっ……!」


やえ「王者を屈服させる事など、何人たりとも出来ぬのだ!」ハァハァ…


玄 「……そうなんだ。じゃあ、ホントかどうか、試してみようかな」ボロン


玄iPS棒「キシャアアァァァアアアァァァァッッッ!!!」ゴゴゴゴゴッ


やえ「あっ……あぁっ……」ガクガク

玄 「私の暴れ龍で、王者の肉体を征服するのです!」ギンギン

やえ「だ、駄目……それだけは……許して……」ガクガクガク

玄 「黙るのですっ! そして、うつ伏せになりなさい!」ガシッ

やえ「んっ!」コロン


玄 「ぷりぷりなお尻、気持ち良いなぁ……」トローン

やえ「お尻に擦り付けないで……///」ゾクゾクッ

玄 「初めてでも、薬の効果で、痛みは無いですから、
   全身の力を抜いて、リラックスしてくださいね」スリスリ

やえ「や……いやぁ……だめ……」ビクビク


玄 「それでは、挿入しますのだ」グググググッ…

やえ「んっ! んんっ! んぁっ! んぐぐっ……!」ズププププ…

玄 「凄い、小走さん! 最初から、全部入っちゃいましたよ?」首筋ペロペロ

やえ「んん……っ!」

玄 「どうです? 気持ち良いですか?」首筋ハムハム

やえ「く、苦しい……。全然……気持ち良くなんか……無い……っ!」ハァハァ

玄 「もーっ! 小走さんは、強情だなぁ……」ウシロカラ リョウウデ ヒッパリ

やえ「負けない……iPS棒なんかに……絶対……屈しない……っ!」ムリヤリ ノケゾリ

玄 「そっかぁ……。じゃあ、遠慮なく動きますね!」ズッチュズッチュズッチュ

やえ「ふわぁっ! んんんんっ! んっぐ……ああんっんっんっ! んーっ!」

――― 10分後 ―――


やえ「玄っ! 玄っ! もっと! もっと突いてぇぇぇっっっ!」アヘアヘ

玄 「仕方無いですねー! 奥義、ドラ爆(バック)突き!」ズンズンズン♪

やえ「あぁ~↑↑ んんっ! イッちゃう! イッちゃうよ玄~!」アヘアヘアヘ

玄 「私もイキそうなのです! 中に出しますよ! 小走さん!」

やえ「へっ? んっ! 中? あんっ♪ 駄目! うっ! 中は駄目!」
   
やえ「妊娠したら、退学になっちゃう! 東大の推薦、取り消されちゃう!」

玄 「大学受験に失敗したら、松実館で働けば良いのです!」ドピュドピュピュピュ

やえ「ん゛ん゛~っ!!!」(昇天)



玄 「ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅ……」

やえ「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」


玄 「好きです、小走さん。私、貴女に一目惚れしてしまったのです……」ハァハァ

やえ「好きな相手に、お前は、こんな強姦紛いな事をするのか?」ハァハァ

玄 「だって……こんなに人を好きになったのは初めてで、
   どうすれば良いか、全然、分からなくて……それで……」

玄 (好きな人を手に入れるなら、挿れた者勝ちだって、憧ちゃんも言ってたし)

玄 「体が凄く熱くなって、自分を抑えられなくて……」ウルウル

やえ「……」

玄 (やっぱり、こんな方法じゃ、受け入れて貰える訳無いんだ……)ポロポロ


やえ「こんな真似をしておいて、タダで済むと思っているのか?」

玄 「……どんな罰でも、受け入れます。警察にも行きます」ポロポロ

やえ「警察に行った所で、お前の犯した罪は、決して消えないんだぞ」

玄 「はい……ごめんなさい……小走さん……ごめんなさい……」ポロポロ


やえ「……だから、お前は、一生私の傍で、その罪を償うんだ」チュッ

玄 「えっ……?」ポロポロ


やえ(ふっ……不器用な奴め……。だが、それが何より愛おしい……)キュンキュン



―――そして、夜が明けた。

初瀬「あ、新しい王者の呟きだっ!」


由華「やえ先輩やえ先輩やえ先輩……」クチュクチュクチュプシャァァ


良子「おっ?」


紀子「むっ……」



『王者@niwaka 可愛い彼女ができました///』



初瀬「」


由華「」


良子「くそ……っ!」壁ドゴン


紀子「おめでとうっと。」リプライ





炎の県大会編 完

西田「輝け! 勤労少女!」

西田「今週のゲストは、史上最年少女将、松実宥さんです」

宥 「よ、よろしくお願いします……」プルプル

山口(おっぱいデケーな……)ムクムクムク

西田「松実さんは、15歳の時に、実家である旅館を継いだんですよね?」

宥 「はい。中学を卒業してすぐに、父の旅館を継ぎました」プルプル

西田「何故、その若さで旅館を継ぐ事になったんです?」

宥 「私は、幼い頃から旅館のお手伝いをしていまして、小学3年生の頃には、
   接客、調理、清掃、企画、経理の全てを、任される様になっていたんです」

西田「つまり、小学生の頃から、実質的には、旅館の経営を担っていたと?」

宥 「はい。それで父が、『もう宥が経営者で良んじゃね?』と……」プルプル

西田「なるほど。小さい頃から、天才経営者としての片鱗を見せていたんですね」

宥 「そ、そんな事……無いです……」テレテレ

西田「またまた、ご謙遜を……」

西田「なにせ、この2年余りで、松実さんが経営する〝松実旅館〟は、
   実家奈良の1店舗から、全国に20店舗まで増えましたからね」

宥 「はい、お陰様で……」プルプル

西田「今日は、まだあどけなさが残る、松実さんの素顔に迫りつつ、
   彼女の経営哲学についての、お話なども聴きたいと思います」

西田「さて、〝松実旅館〟と言えば、
   現在、日本で最も、名の知れた旅館と言えるでしょう」

西田「その理由は、常識では考えられない、奇抜な経営戦略にあります」


西田「なんと、この旅館、〝女性専用〟であり、男性は宿泊できません」


西田「それは即ち、人口のおよそ半分を客とせず、切り捨てた事になります」

西田「何故、この様に大胆な方針を、打ち出す事ができたのでしょう?」


宥 「確かに、その件に関しては、大きな反発や抵抗もありました。
   経済学的な観点から見ても、非効率であり、リスクも高いです」

宥 「しかし、松実館の新サービスを提供する上で、
   どうしても、そうせざるを得なかったのです……」


西田「それが、今、女性の間で話題の、〝おもち増量マッサージ〟ですね?」

宥 「はい。松実館発展の礎となった、究極のバストアップマッサージです」


西田「その効果は絶大と、口コミで、あっと言う間に広がりましたよね」

宥 「良いモノは、必ず売れる。私は、そう確信していました」

宥 「だからこそ、広報活動などは、一切行わず、
   サービスの向上だけに、全力を注いで来たのです」


西田「今時には珍しい、日本人特有の、職人気質な社風ですね」

宥 「勿論、広告の重要性を、軽視している訳ではありません」

宥 「ですが、今は、携帯やパソコンなどが普及しており、
   個人が誰でも気軽に、情報を発信する事ができます」

宥 「我々が提供するサービスに、心から満足して頂ければ、
   その方々が、私達の代わりに、松実館を宣伝してくれますから」


西田「ふむふむ。それで、広告費を削り、サービスの充実に力を入れたと」

宥 「はい」プルプルプルルン

山口(oh...)ボッキーン


宥 「世の中には、胸が小さくて悩んでいる女性達が、星の数ほどいますが、
   我々は、そういう方々を、顧客として取り込む事を目指しているのです」

宥 「ただ、女性達は、豊胸の為の行為と恥ずかしがり、
   男性の視線に対して、非常に敏感になっています」

宥 「ですから、女性達が安心できる様に、
   男性のお客様は、お断りしているのです」


西田「女性に特化して、サービスを提供している訳ですね」

宥 「はい。ちなみに、旅館のスタッフも、今は全員女性です」

西田「〝おもち増量マッサージ〟を始めた経緯について、教えてくれませんか?」


宥 「これは、私が中学生の頃の話なんですが……」

宥 「ある女の子……Sさんは、豊満な胸を持つ、Nさんに恋をしていました」


宥 (実際には、それは、恋では無かったんだけれど……)


宥 「その事を知った、Sさんに好意を抱いている、胸の小さいAさんが、
   私に、胸を大きくする方法は無いかと、相談しに来た事が始まりですね」


山口(百合レズ祭り、オッスオッス!)ギンギン


宥 「そして私は、豊胸の為の研究に没頭し、この新薬を開発しました」スッ

西田「これが噂の、〝オモチデカナール〟ですね」

宥 「はい。簡単に説明すると、女性ホルモンの分泌を促すお薬です」


宥 「私が、独自の製法で作り出した飲み薬で、一般販売はしておらず、
   基本的には、松実旅館に宿泊されているお客様のみ、服用できます」

宥 「成熟する前の少女の方が、高い効果が期待できますが、
   アラサー、アラフォーの方々でも、長期に服用すれば、
   間違い無く、満足して頂ける結果を出せると思います」


西田「市販すれば、莫大な財を築く事ができると言われていますが?」


宥 「この薬に違法性は無く、副作用等の健康被害もありませんが、
   強烈な催淫性、及び、性的刺激に敏感になる作用があります」

宥 「その効能から、悪用される恐れもあるので、販売を自粛しています」


西田「あくまで、女性が、理想の胸を手に入れる為の物だと?」

宥 「はい」プルンプルン

山口(爆乳! 爆乳!)ハァハァ


西田(胸ばかり撮るのヤメロ、この馬鹿!)ヒジテツゴスッ

山口(おぅふっ!///)シナシナシナ…


宥 「全ての女性達が、自分の〝胸〟に対するコンプレックスを解消し、
   自信を持って、明るく生活して欲しい、そういう願いを込めて……」


西田「ブラボー! ブラブラボー!」パチパチパチ

宥 「更に、松実館では、この薬の効果を、最大限まで高める、
   豊胸の為の、特別な〝全身マッサージ〟を行っています」

宥 「これは、玄ちゃ……妹が考案した、経絡を刺激するマッサージです」

宥 「胸の発育だけではなく、全身の健康にも良いんですよ?」ニコッ


山口「ほぅ……。姉の頭脳と、妹の技能が合わさり、最強に見えますな」

西田「まさに、松実姉妹の〝合わせ技〟ですね」

山口(姉妹が……合わさる……!? 姉妹丼!)ピコーン ムクムクムク


西田「妹さんと言えば、この間、麻雀の団体戦で、県大会優勝したらしいですね」

宥 「はい」プルルンプルルン

西田「松実さんは、妹が在籍する、阿知賀麻雀部の、
   後援会の会長も務めていると、聞きましたが?」

宥 「はい。彼女達が、麻雀に打ち込める様に、
   全面的な、サポートをしたいと思っています」

西田「妹想いの、優しいお姉さんですね」

宥 「いえ……///」テレテレ


西田「そう言えば、松実さんのお父様は、
   旅館を貴女に譲った後、何をしていらっしゃるんです?」

宥 「……」

西田(ん? 松実さんの表情が曇った……?)


宥 「〝おもち増量マッサージ〟を始めたばかりの、初期の頃は、
   男性従業員もまだ残っていて、父も松実館で働いていました」ウルウル

宥 「ところが、父が女子小学生に行ったマッサージが、
   強制わいせつ罪に問われ、今は服役中なんです……」ポロポロ

西田(やっべ、地雷踏んだっ!)

山口(ここはカットだな……。しかし、あの涙、ペロペロしたい……)ギンギン


宥 「女性同士の場合なら、健康促進の為のマッサージでもあり、合法と、
   最高裁判所の判決が出ているのですが、男性の場合は駄目と……」ヒックヒック

山口「まぁ、JSのおもちを揉み揉みできたなら、
   松実さんのお父さんも、悔いは無いでしょう」

西田「憤ッ!」ドゴォ

山口「おべぁっ!」ドピュ…


西田「松実さん、今日はありがとう。また今度、改めて取材しても良いかしら?」

宥 「はい……」プルプル

宥 『経済学的なうんたらかんたら』


玄 「お姉ちゃーん、テレビに映ってるよ~」オーイ

宥 「え~? 恥ずかしいよ~」クネクネ

玄 「可愛く映ってるってば~」

宥 「それより、玄ちゃん、やえさん、和菓子食べます?」

やえ「うむ、頂こう」

宥 「はーい」オチャモ ドーゾ

玄 「やったー!」ワーイ


西田『それでは、CMです』


TV『>>1は寝るそうです。更新はまた後で……』チャラリラー

書く必要は無いかなと思っていたので、
書かなかったのですが、一応追記しておきます。

>>732で、本編は終了しております。

>>790で、エピローグは終了しております。

穏乃と宥は、この時点までは、存在を確認できません。

何故か?旧世界で、既に死んでいるからですよ。
赤土晴絵も、名前だけで、本人かどうかも不明です。


何故、憧が生きているのか?
生贄に選ばれていないのに、死んでしまったから蘇った?
人数合わせの為に、憧の姿をした〝何か〟が用意された?

→皆さんのご想像にお任せします。


つまり、ここまでが、この作品の、正統な物語になっております。


エピローグ最初の〝完〟は、そういう意味を含んでいます。



しかし、穏乃と宥はどうなったの?
本当は、生きているんだろ?
と、思っている方々もいるでしょう。


>>793以降は、そんな欲張りさん達の為の〝蛇足〟です。
スピンオフ的な物で、それまでの概念を覆す可能性もあります。


それを受け入れられる方のみ、この先へお進みください。今更ですが。
ていうか、エピローグ自体蛇足になるって、説明したじゃあないですか。


よって、僕は悪くない。もう一度寝ます。おやすみなさい。


作品に対しての、あらゆる批判については、もう一度言っておきます。
→B級ホラーなんで。

気に食わなかったら、そっ閉じお願いします。

時は過ぎ、8月1日……。


――― 東京ドーム ―――


恒子『ご来場の皆様っ! お待たせしました!』

恒子『これより、第1回、高校生〝異種格闘技選手権〟女子、
   ベスト8に勝ち残った少女達の、組み合わせ抽選を開始致します!』


佐々野「ラウンドガールの、ちゃちゃのんじゃ~ノ」フリフリ



恒子『まず始めに、ここまで勝ち上がってきた、アマゾネス達を紹介します!』



恒子『その小柄な体躯からは想像もできぬ、
   圧倒的パワーで、巨大な敵をも薙ぎ倒す!』

恒子『平成の世に、突如現れた、謎のアウストラロピテクス!』

恒子『軟弱である、〝ヒト〟への進化を、自ら否定したのか、
   あるいは、突然変異によって生まれた、新種の獣人か?』



恒子『阿知賀の夜叉猿! 小さな猛獣、高鴨穏乃ぉぉぉぉ~っ!』



穏乃(凄い人の数だよ~)ドキドキ


シズノー!キアイダ!キアイダ!キアイダ!キアイダー!オイッ!オイッ!オイッ!キアイダーッ!
ウルサイワヨ シズカニシナサイ マワリノカタニ メイワクデショ? アナタ!

ボゴォ!

グェァ!


穏乃(あれ、お父さん……? 交通事故で、入院中じゃなかったっけ……?)

穏乃(ていうか、大声で恥ずかしいよぉぉぉ///)テレテレ


シズチャンダァ゙ァ゙ァ゙ッ゙ッ゙ッ゙ー
シズチャーン ガンバルノデス!
ブザマナ マネシタラ ショウチ シナイカンナー!
シズノチャン ファイットー
アイシテルワー シズー
キョウハ チュウセン ダケダト オモ…


穏乃(みんな……応援に来てくれたんだ……っ!)クロサンノ カレシモイルシ

穏乃「うおぉぉぉっっっ! 燃えて来たぁぁぁぁっっっっ!!!!」ゴゴゴゴッ

恒子『東北が生んだ、黒衣の怪人X……』

恒子『驚異的な高さから繰り出される打撃は、破壊力抜群です!』

恒子『相手の射程外から、容赦の無い攻撃を繰り出し、
   反撃の機会すら与えず、一方的に痛め付け後は、
   伝家の宝刀、トドメの一撃! 必殺16文キック!』

恒子『お前達は、地を這う蟻だ! 1匹残らず、踏み潰してやる!』



恒子『進撃を開始した、宮守の巨人! 姉帯豊音ぇぇぇぇ~っ!』



豊音「ちょー緊張するよ~」カクカク


セスジ チャント ノバス ソコ!
ダルイナー
ガンバレー トヨネー
トヨネ ユウショウ シンジテル!


豊音「みんな……;;」ボッチジャナイヨー

穏乃(おっきな人だなぁ……)


穏乃「あの、ハンカチ使います?」スッ

豊音「ズズッ……ありがとう!」フキフキ チーン!

豊音「よろしくね、高鴨さん」ハンカチ カエスネ

穏乃「あ、よろしくお願いしますっ!」ペッコリン


豊音「突然だけど、高鴨さん、サイン貰えないかな……?」

穏乃「えっ、サインですか? 私のなんかで、良いんですか?」

豊音「謙遜しなくてもいいよー」カワイイナー


豊音「ニュースで見たけど、高鴨さん、素手で熊を倒した事あるんでしょ?」

穏乃(あ、山で遭難者が、熊に襲われている所を、助けた時の話かな?)


穏乃「いえ……実はあの時、鉄の爪を装備していたんです……」ナンカスミマセン...

豊音「それでも、超凄いよー! サインを貰えたら嬉しいなー」

穏乃「分かりました。それでは、抽選後に……」

豊音「ありがとうー」ルンルン♪

恒子『九州福岡、修羅の国からやってきたのは、
   礼儀を重んじる、極神空手の使い手……』

恒子『温厚、誠実、慈愛に満ちた彼女が、何故、格闘技を始めたのか!?』

恒子『殴り合う事が大好きな野蛮人共に、お灸を据えてやる為だ!』

恒子『不屈の精神と、持ち前の打たれ強さで、生まれてこの方、
   KOどころか、ダウンを取られた事さえ、一度もありません!』

恒子『テメーは私を怒らせた! 仏の顔も三度まで! 今宵は鉄拳制裁だ!』



恒子『晴れ時々血の雨! 新道寺の怒れる菩薩! 花田キメラぁぁぁぁ~っ!』



煌 「〝きらめ〟ですっ!」スバラクナイ!


ハナダー ガンバレーー
ナンモカンモ セイジガー
カッタラ ノドチャンノ オッパイ スワセテヤルジョー
ソンナコト サセマセンヨ!
リザベーション スリー!
アア ナンデ コンナトコロデ! ビビクン


煌 (しかも、何ですか、その紹介は……)

煌 (私は、自分の心と体を鍛える為に、空手を始めたのですよ)

煌 (正直、この様な、見世物染みた試合には、全く興味が無かったのですが、
   空手普及の為と、会長自ら頭を下げられては、断れないじゃあないですか)

煌 (私の持っている武器は、持久力と打たれ強さだけ……。
   他の方に比べれば、闘士としては、最弱かもしれません)

煌 (ですが、私は、とっても諦めが悪いのですよ……)ゴゴゴゴッ

煌 (期待されては、仕方がありません。伝道師としての大役、任されました!)

恒子『食い倒れの街、大阪から、最強女子高生への名乗りを上げたのは、
   抜群の美貌と、プロポーションを持つ、セクシー系キックボクサー!』

恒子『格闘技倶楽部、〝Blaze-K〟から送り込まれた、美しき女刺客!』

恒子『彼女から繰り出される、強烈なローキックは、
   数多の格闘家達の脚を破壊し、地獄へ導きました!』

恒子『また、この倶楽部は、柔術の要素も、ふんだんに取り入れており、
   立ち技系格闘技=寝技に弱いという常識は、最早、通用しません!』

恒子『立って殴り合っても良し、寝技で組み合っても良し!』

恒子『まさに、バランス重視、理想のパーフェクトファイター!』



恒子『姫松高校の蒼き稲妻! 愛宕絹恵ぇぇぇぇ~っ!』



絹恵「よ、よろしく~」カチンコチン


キヌー ゼンイン ブットバシヤー
キヌエチャーン ガンバッテナー
カッタラ カラアゲ タベホウダイヤデー
キヌチャーン ケガ センヨウニナー カタカタ


絹恵(持ち上げられ過ぎて、少し緊張したけど……)

絹恵(今までの特訓の成果、全国の舞台で見せたるわ!)

絹恵(みんな、見ててや……。私、必ず優勝するでっ!)ゴッ!

恒子『魔境、長野から参戦するは、オリンピック金メダリスト!』

恒子『女子柔道界のカリスマが、満を持してやって来たゾっ!』

恒子『柔道? 投げと寝技だけだろ? いやいや、そんな事はありません』

恒子『なんと予選では、全戦、打撃でのKO勝利を遣って退けました!』

恒子『殴られて死ぬか、絞められて死ぬか、お前に好きな方を選ばせてやろう』

恒子『大会屈指の重量級、装甲(筋肉)の厚さも、伊達じゃない!』



恒子『水陸両用! 風越の重戦車! 深堀純代ぉぉぉぉ~っ!』



純代「……頑張ります」ドスドスドス


フカボリサン ガンバッテー
スーミン ユウショウシタラ ラーメントカレー オゴルシー
ゼッタイ カテヨ フカボリィィィィッ


純代(キャプテン、華菜、コーチ……)

純代(柔道部と掛け持ちで入部した、風越の麻雀部……)

純代(ちょっとした、気晴らしのつもりだったのに、皆、優しくしてくれた……)

純代(あの人達に、私の勇姿を見て欲しい……)

純代(そして、言葉では伝え切れない、この想いを届けたい……っ!)ゴゴゴゴッ

恒子『貴様は、本当の戦場を知っているか? 私は知っている……』

恒子『高校生という若さで、世界の紛争地帯を駆け巡った、稀代の傭兵!』

恒子『真の地獄というモノを、貴様にも味わわせてやろう……』

恒子『命の駆け引きが無ければ、それは、ただの遊びに過ぎない』

恒子『お遊戯がしたい奴は、この場から、さっさと消え失せなっ!』



恒子『白糸台の殺戮者(フィニッシャー)、軍神、亦野誠子ぉぉぉぉ~っ!』



誠子「くだらん余興だな……」コキッコキッ


マタノ モクヒョウヲ ネライウテヨ
ファイトー マタノセンパーイ
ポリポリポリ ズズズーッ
モグモグモグ クッチャクッチャ


誠子「……」oh...

誠子(あの2人は、何をしに来たのだろうか……?)

誠子(ふっ、まぁいいさ。戦場では常に孤独。私に声援など不要!)

誠子(冷酷かつ無慈悲に、対戦相手を吊り上げるまでっ!)ゴゴゴゴゴッ

恒子『漲る大和魂! 日の丸を背負った、孤高のラストサムライ!』

恒子『由緒正しき、剣豪の末裔! 幻の剣技、飛天御剣流の伝承者!』

恒子『辻斬り上等! 斬り捨て御免! 付いた渾名は、〝人斬り抜刀斎〟だ!』

恒子『不殺と言ったな? あれは嘘だ。神妙に、我が刃の錆となれ!』

恒子『当然、リング上での武具の使用は、一切、禁止されております』

恒子『しかし、対戦者の話によると、目に見えぬ〝刀〟が襲ってきたとか……』

恒子『そんなオカルト、在り得ます! 剣の達人だからね、仕様が無いね!』



恒子『讃甘高校の生ける伝説! 新免那岐ぃぃぃぃ~っ!』



那岐「我、不敗、也! 我、無敵、也! 我……最強なりっ!」カッ!


オロー? ガンバルデ ゴザルヨー
フタエノキワミ! アッー!!
アホウガ…
ショセン コノヨハ ジャクニクキョウショク…
ガンバッテ クダサイ ナギ オジョウサマー
バットウサイ...バットウサイ...バットウサイイィィィッッッ!
チョット! コンナトコロデ アームストロングキャノン ツカワナイデ クダサイヨ!

ギャース ギャース!


那岐(私は突き進む……。最強という名の、〝華〟を手に入れるまで……)

那岐(剣と心を賭して、この勝ち抜き試合、最後まで闘い抜く……っ!)ゴゴゴッ

恒子『最後の選手は、女子プロレス界、期待の超新星!』

恒子『ピンクのマスクと、ビキニアーマーを纏った、爆乳レスラー!』

恒子『ポロリを期待するお父さん達が、リング上の彼女に釘付け!』

恒子『この巨乳、ホントに高校生なのか!?
   絶対、子供を2人は産んでいるゾっ!』

恒子『覆面の下に隠された、その素顔に、日本中の誰もが、興味津々ですっ!』



恒子『永水の人妻レスラー! 石戸霞、18歳ぃぃぃぃ~っ!』



霞 「うふふっ、私は独身ですよ?」フンフム


カスミチャ-ン ゼンリョク イジョウデ ガンバッテー
ババァー ファイト デスヨー
ポリポリ
カスミサン ガンバー!


霞 (あらあら、豪華な声援……)

霞 (こんなにも熱いエールを送られては、無様な姿など、見せられないわね)

霞 (得意分野……イカせて貰おうかしらっ!)ゴゴゴゴゴッ

恒子『これより、8人の選手達に、クジを引いて貰います!』
   
恒子『クジには、それぞれ数字が書かれており、小さい数を引いた方から順番に、
   トーナメント表の、1から8の、好きな所を選んで、移動して頂きます!』


佐々野「クジ引きボックス、持って来たんじゃ~」ガラガラ


恒子『それでは、選手の皆さん、クジを引いてください~』ファイ!


――― クジ引きの結果 ―――


1番目 花田煌
2番目 亦野誠子
3番目 愛宕絹恵 
4番目 深堀純代
5番目 姉帯豊音
6番目 石戸霞
7番目 新免那岐
8番目 高鴨穏乃



恒子『では、花田選手から順番に、移動をお願いしまっす!』


煌 (何という事でしょう……。最悪な結果です……)アワワ…

煌 (1番目……。全ての場所が、空白状態……)

煌 (作戦も何も、あったもんじゃありませんね……)スバラクナイ!

煌 (ここはもう、〝1番〟という言葉の、縁起の良さに賭けましょう!)


恒子『トップバッター、花田選手! 1番を選択しましたーっ!』


1:花田煌
2:???

3:???
4:???

5:???
6:???

7:???
8:???

恒子『続いて、亦野選手、どうぞ!』


誠子「……」スタスタッ


恒子『おおっと? 亦野選手、迷わず2番を選択しましたっ!』


煌 「対戦相手に選んで頂き、光栄です」スバラッ!

誠子「……礼には及ばない。私はただ、〝省エネ〟をしたかっただけさ」

煌 「むっ……!」スバ!?


誠子「3連戦は、流石に疲れるからな。手を抜く事も、重要だろう?」


煌 (なるほど、私を最弱と見て、選んだ訳ですか……)スバラ...

煌 (それも、立派な作戦の一つですからね。非難はしませんよ)

煌 (ですが、舐められたままでは、全国の空手家の皆さんや、
   私を推薦してくださった会長に、申し開きが立ちません!)

煌 「いいでしょう……。空手家魂、お見せしますよ……っ!」ゴゴゴゴゴッ


1:花田煌
2:亦野誠子

3:???
4:???

5:???
6:???

7:???
8:???

恒子『続いて、愛宕選手!』


絹恵(白糸台のフィニッシャー、花田煌を甘く見過ぎや……)

絹恵(半年前に行われた、K1主催による、女子高生格闘家の、日米親善試合)

絹恵(花田と、アメリカの高校生ナンバーワン、メガン・ダヴァンの1戦……)

絹恵(結果は、花田の惨敗に終わった……。と、世間では言われてる……)

絹恵(けど、圧倒的な攻撃力を誇る、あのダヴァンでさえ、
   マットに沈める所か、ダウンさえ奪えなかったんや)

絹恵(花田煌は、絶対に(意識が)飛ばん……っ!)

絹恵(この試合、判定は延長戦からや。つまり、花田戦は、4R突入必至!)

絹恵(第1戦から、体力の消耗が半端無いで!)

絹恵(だとすれば、私の選ぶ場所は、ここしか無いやろ……っ!)


1:花田煌
2:亦野誠子

3:愛宕絹恵
4:???

5:???
6:???

7:???
8:???

佐々野「次の方~」ヒラヒラ

純代「うむ。」ドスドスドス


1:花田煌
2:亦野誠子

3:愛宕絹恵
4:???

5:深堀純代
6:???

7:???
8:???


恒子『ここで、深堀選手、未開の5番に飛び込みましたー!』


霞 (愛宕さんの、ローキックを警戒したのかしら……?)フンフム

煌 (深堀さん、下段蹴り対策が、不得手なのでしょうか……?)

誠子(ローは、後々に響いてくるからな。序盤は遠慮したいのだろう……)

豊音「次は私かー。迷うなぁー」ドウシヨー?

豊音「……うーん、決められないから、ここでいいや!」


1:花田煌
2:亦野誠子

3:愛宕絹恵
4:???

5:深堀純代
6:???

7:姉帯豊音
8:???


恒子『姉帯選手、7番を選択~!』

恒子『残る3名は、片方に空きを残している、
   愛宕選手、深堀選手、姉帯選手の中から、
   初戦の相手を、選ばなければなりません!』

恒子『それは逆に、得意とする相手を、選ぶ事が可能だとも言えます!』

恒子『3つの選択肢があるのは、永水の石戸選手!』

恒子『彼女は、誰を最初の対戦相手に、選ぶのでしょうかーっ!?』

霞 (そうねぇ……この中で、一番〝美味しそう〟なのは……)


絹恵「っ!?」ビクッ


霞 (愛宕さんかしら……)クチビルペロリン

絹恵(うゎゎっ!? 全身を舐め回す様な視線を感じる……っ!)ゾクゾクッ


1:花田煌
2:亦野誠子

3:愛宕絹恵
4:石戸霞

5:深堀純代
6:???

7:姉帯豊音
8:???


穏乃(残るは、深堀さんと姉帯さんか……)ドキドキ

穏乃(姉帯さんとは、あんまり闘いたくないけど、私に選択権は無い……)

穏乃(新免さんは、どっちを選ぶんだろう……)


恒子『それでは、新免さん! 事実上、最後の選択となりますっ!』


那岐「……」

那岐「……」

穏乃(……)ドキドキ


那岐(姉帯豊音か……。何やら、面妖な気を放っておる……)

那岐(是非、手合わせ願いたいモノだが、奴の知名度はまだ低い……)

那岐(強豪猛者を倒したと認められねば、優勝したとて意味は無し)


那岐(我が流派が最強である事を証明する為、まずは風越を喰う……っ!)


那岐「……」スタスタスタ

穏乃(深堀さんの方に行った……っ!)


恒子『新免選手が選んだ相手は、オリンピック金メダリストの深堀選手だーっ!』

恒子『これにより、姉帯選手の対戦相手は、高鴨選手に決定致しましたっ!』


憧 「シズは、あのおっきな人と……」

玄 「大丈夫、シズちゃんなら……」

憧 「あ、灼先輩、新しいスカウター買ったんですか?」

灼 「いや、宥さんからの贈り物。純国産品だから、壊れないと思……」ピピピピッ


1:花田煌   112000JP
2:亦野誠子 169000JP

3:愛宕絹恵 174000JP
4:石戸霞   425000JP

5:深堀純代 136000JP
6:新免那岐 177000JP

7:姉帯豊音 428000JP
8:高鴨穏乃 2JP


灼 (勝負は麻雀じゃない。〝雀力〟の違いが、戦力の決定的な差にはならない)

灼 (それでも、穏乃ちゃんが、圧倒的に不利な事は変わらないだろう)

灼 (しかも、何人かは、〝雀力〟では測れない、異質な気配を放っている……)

灼 (このトーナメント……荒れるかもしれない……)

穏乃「えっと、その……。すみません……」シュン

豊音「んー? なにがー?」シズノチャンテ ヨンデイイ?

穏乃「最初に闘う事になってしまって……」ハイ、カマイマセンヨ

豊音「あー、気にする事は無いよー」ワタシノコト トヨネッテ ヨンデー


豊音「私は、穏乃ちゃんと闘える事を、すっごく光栄に思ってるもん!」

豊音「お互い、悔いが残らない様に、全力で闘おう?」ネッ?

穏乃「はい、豊音さん!」キラキラッ


豊音(穏乃ちゃん……可愛いし、良い子だよー)ウルウル カンドー

豊音(でも……)ザワ…ザワ…

豊音(この程度の〝雀力〟で、ここまで勝ち上がって来たなんて……)ジーッ

穏乃「……?」フキュ?


豊音(理想の自然体……。力を抑えたり、隠している様子も感じられない……)

豊音(どんな潜在能力を秘めた子なのか、とても興味深いよー)ゴゴゴゴゴッ


恒子『以上で、高校生異種格闘技選手権女子、
   組み合わせ抽選会を、終了と致します!』

恒子『本戦は明後日、8月3日、午後1時から、ここ東京ドームで行われます』

恒子『それまで、選手の皆様方は、十分に英気を養ってください』


豊音「それじゃあ、穏乃ちゃん、明後日、またここで!」

穏乃「はいっ!」



穏乃「遂に始まる……私達の闘いは、これからだっ!」ゴゴゴゴゴッ





黒服「長い間、ご愛読ありがとうございました。>>1の次回作にご期待ください」





阿知賀編 完

Hりん「……」

Sやん「……」


Hりん「……私さ、処刑方法を〝強姦致死〟って書いたじゃん?」

Sやん「うん……」

Hりん「あれ、須賀と原村のH見ててさ、ノリで書いただけなんだよ……」

Sやん「その影響を受けたんだろうなって、私は最初から思ってたけどね」


Hりん「今更、言い訳するつもりなんて、これっぽっちも無いけどさぁ……」

Hりん「私はね、なんかこう……腹上死? みたいなのを、想像していた訳さ」

Sやん「あぁ、うん、言いたい事は分かる」

Hりん「あんあん、またイッちゃう~っ! バタンッ(死亡)って感じのをね」

Sやん「実際は、情け容赦の無い、物理攻撃で殺してたよね」

Hりん「うん……。想像していたのと、全っ然、違ってたわ……」ゲンナリ

Sやん「エロと言うより、グロだったもんね」ゲンナリ


Hりん「てかさ……」

Sやん「ん?」

Hりん「あの〝処刑人〟って奴自体、ちょっとグロ過ぎない?」

Sやん「あー、確かにそうだよね」

Hりん「Sやんさ、あんなグロいの作るとか、ちょっと心が病み過ぎてない?」

Sやん「え゛っ? 私、あんな怪物を生み出した覚えは無いんだけど」

Hりん「ん……? んんっ!?」


Sやん「Hりんが、自分の〝雀力〟で作ったんでしょ? あの筋肉の化け物を」

Hりん「いやいやいや、あんな不気味な奴等、私は知らないよっ!」

Sやん「じゃあ、あれ、一体何だったの……?」

Hりん「世界を閉鎖した時には、既に居たよね、アイツら……」

Sやん「……」ゾワゾワッ

Hりん「……」ゾワゾワッ



Iのん「あれの正体、教えてあげようか~?」フラリ…

Hりん「あんた誰っ!?」

Sやん「!? 貴女は、大阪の強豪校、H松の監督代行……っ!」

Iのん「A坂I乃やで~。〝Iのん〟って呼んでや~ノ」フリフリ


Hりん「……ふぅん、あんたも、こっち側の人間な様ね……」

Iのん「〝あんた〟やのうて、〝Iのん〟やで、Hり~ん」ヒラヒラ

Sやん「その、Iのんは……どうしてここへ?」

Iのん「なんや、おもろい事してるな~って、思ってな~」フワフワ

Iのん「暇やから、遊びに来たんや~」フワリン


Iのん「ねぇねぇ、私も混ぜて~な~。構わへんやろ~?」ウワメヅカイ

Hりん「くっ……ぷくくっ……面白いじゃん! いいよ、Iのん☆」

Iのん「おおきに~! ほな、よろしくな~、Hり~ん、Sや~ん」フリフリ


Sやん「それより、Iのん。さっき、あれの正体を、教えてくれるって……」

Iのん「あ~」

Hりん「……あれが何なのか、Iのんは知ってるの?」

Iのん「あれはな~……」

Iのん「〝煉獄卒〟っちゅう、地獄の〝鬼〟やで~」


Hりん「鬼……ですって……?」

Iのん「世界を隔離する時にな~、空間を無理矢理に捻じ曲げるやろ?」

Iのん「その時に、別の次元と交差して、ゲートが開いてしまうんや」

Sやん「ゲート……?」

Iのん「一般的には、〝鬼門〟って呼ばれてるけど、聞いた事はあるやろ?」

Iのん「そこからな~、ああいうのが、ふらふらと迷い込んで来るんよ~」

Sやん「そうだったんだ……」

Iのん「あれはな、地獄の中では、下級の鬼やから、
    HりんやSやん位の〝雀力〟で威圧すれば、
    割と簡単に、支配下に置く事ができるで~」

Hりん「う~ん、確かに、私達の命令を、受け入れてはいたよねぇ……」

Sやん「ちょっと、暴力的な部分もあったけどね」

Iのん「けど、頭は良くないから、命令を理解できん事もあるやろな~」

Hりん「そ、そうなんだ……」ドキドキ


Iのん「ところで、話は変わるけど……」

晴絵 「ん~っ、ん~っ!」モソモソ

Iのん「その、口と手を縛られてる子、岡持ちの中で死んでた子やろ?

Iのん「……何でここにおるん?」ナンデヤロ?


Sやん「あー、あの岡持ちの中の死体は、私が〝雀力〟で作った木偶だよ」

Iのん「ホンマに!? 余りに精巧やから、気付かんかったわ~」

Sやん「殺すには、勿体無い逸材だからね、こっちに連れて来たんだ~」

Hりん(だとすると、新世界に居るアイツは誰なんだろう……)ゾワゾワッ


晴絵 「ん~っ、んん~っ!」ジタバタ

Sやん「こらこら、暴れないで、大人しくしててね?
    後で、たっぷり、可愛がってあげるから……」ニヤァ

晴絵 「……」ゾクッ

Hりん(うわぁ……。Sやんの肉奴隷乙~)ナムナム


Iのん「それと、ちょっと気になった事があるんやけど……」

Hりん「ん?」

Iのん「……何で、死んだ子達が生き返ってるん?」

Iのん「旧世界で死んだ者は、新世界へ移行する事ができない筈やろ……?」

Hりん「……」

Sやん「……」


Iのん「不思議やな~。気になるな~。何でやろ~?」

Iのん「もしかして、誰かが〝雀力〟を使って、蘇生させたんとちゃう?」

Iのん「でも、中途半端な力の持ち主じゃあ、そんな事は無理やろな~」チラッ


Hりん「……まぁ、その、ちょっと遣り過ぎちゃった☆ みたいな?」アセアセ

Sやん「……みんな良い子過ぎて、毒気抜かれちゃった、みたいな?」アセアセ

Iのん「ふーん……。でもなー、アカンやろ、そんな事したらぁ……」

Hりん「……」

Hりん「……そうかなぁ?」

Hりん「別に良いじゃん。Iのん、もしかして、君ってさぁ、
    自然の摂理とか、世界のバランスとかを気にしちゃう、
    良い子ちゃん系の人だったりするなのかな? かな?」

Sやん「一応、新世界への影響についても考慮して、
    許容できる範囲内に収めている筈だけど……」


Iのん「ちゃうちゃう、そんなん、どうでもええんよ~」ノンノン


Hりん「……? どういう事かな?」

Iのん「そうじゃなくて~! 生き返ったら、おもろ無くなるやろ?」プンプン!

Sやん「面白く……無くなる……?」


Iのん「……だってぇ、安牌を確保したままやったら、
    生贄選びの、バイオレンス感が足らないやん……」ニタァ


Hりん「っ!?」ゾワゾワッ

Sやん「っ!?」ゾクゾクッ


Iのん「命ってのはな、1つしか無いから、尊いんやで……?」ニタニタ


Iのん「せやから、次からそういうんは、絶対に無しやで~? なっ?」ニッコリ

Hりん「……」コクコク

Sやん「……」コクコク


Iのん「……そんでもって~、次の高校は~、H松がええなぁ~」ニヤニヤ

Sやん「なっ……!」

Iのん「そんでな~、私が、黒服の代わりに、司会進行してええ?」オネガイヤー

Hりん「ま、まぁ、別に構わないけどさぁ……」

Sやん「ホントに良いの? 自分の教え子達でしょ……?」

Iのん「Sやんは分かってへんな~。可愛い教え子だから、ええんやん~」ニタニタ


Iのん「大切なモノである程、それが壊された時に、
    エントロピーが、激烈な大爆発を起こすんやで~?」ウットリ


Sやん(この人……私達よりもヤバイでしょ……)ゾクゾクゾクッ

Hりん「ふっ……ふふっ……ふふふっ……あはははっ☆」

Sやん「Hりん……?」

Hりん「……素敵じゃない。狂気の沙汰ほど面白いよ☆」

Iのん「なぁなぁ、この〝安価システム〟って、なぁに?」

Hりん「それは、異世界の者達と交信して、意見を聞く制度だよ☆」

Sやん「ちなみに、それを使うと、最終決定権が、その人達に移譲されて、
    何があろうと、その結果に逆らう事は、絶対にできないんだとか」

Hりん「私達は、使おうかどうか迷って、結局は未使用のままだね~☆」

Iのん「ふんふむ、おもろそうやな~。私、使ってみたいわ~」

Sやん「一応、色々と細かい設定もできるみたいだから、
    使うなら、マニュアルをよく読んだ方が良いかも」

Iのん「うんうん、分かったで~」リョウカイヤー


Iのん「それと、この初期値って、HりんやSやんが決めてるの~?」

Hりん「そうだけど、好き嫌いとかで、適当に付けてる訳じゃないよ☆」

Sやん「私達は、これを参考にして、初期値を決定してるんだよ」サッ

Iのん「神ノート? なんやのこれ?」

Hりん「〝咲〟世界の神が作成した、新世界の青写真ってとこかな☆」

Sやん「それに、各人が持つ、魂の質量を加味して、
    相対評価で、初期値を割り当てているんだよ」

Hりん「流石に、初期値の決め方は、これを踏襲しなくちゃ駄目だゾ?☆」


Iのん「ふぅ~ん。おっけー、おっけー♪」チュゥー

Sやん「ねぇ、Iのん。その注射器に、何を入れてるの?」

Iのん「これ~? これはな~、筋弛緩剤やで~」チュポンッ

Sやん「……何に使うか、聞いても良い?」


Iのん「もうすぐな~、うちの高校の監督が、退院して来るんよ……」ションボリ

Iのん「そしたら、私はもう、お払い箱にされるやん?」メソメソエグエグヒックヒック

Sやん「あ、それ以上は、もういいよ。何となく分かったから」アセアセ


Iのん「それじゃあ、張り切って、次の高校へ行ってみよ~ノ」オッー!

Hりん&Sやん「「お、おおうっ!」」オッー…





ネタバレ異空間編2 完

黒服「物語は、これで全て終了です」

黒服「暫くの間、HTML化依頼は出さないので、
    ご質問等がありましたら、お気軽にどうぞ」

次スレ立てたら誘導お願い

>>896
次回作を書き始めるのが、何時になるかにもよりますが、
次スレが立つより、このスレが落ちる方が早いかもです。

書き溜めが早くできれば、
このスレが残っている内に、次スレを立て、
誘導できるかもしれませんが、ちょっと厳しいかもしれません。

一応、2~3日後には、次回作を書き始めたいと思っています。

次回は姫松なのか
千里山じゃなかったのか

>>898
千里山の希望が多かったのですが、
次回作は、姫松高校になります。(確定事項)

その理由は、試験的に、安価を採用する予定だからです。
安価の場合、千里山より、姫松の方が、やり易そうかなと感じたので。

エピローグを書く必要があったのは、Iのんを登場させ、
次の高校が姫松である事と、安価を使う事を告知する為です。



今気付いたのですが、次回作は、安価スレになるので、
書き溜めが、殆んど無い状態で、始める可能性が高いです。


何時始めるかは、ちょっと未定にさせてください。
安価は、人の多そうな、夜の時間帯にしたいと思います。

(予定としては、大体、19時~24時辺りでしょうか)

ただ、土日祝日は、その時間が変わるかもしれません……。

希望時間があれば、スレ内で言ってくれても構いません。
全ての要望には応えられませんが、できるだけ対応したいと思います。

――― 組み合わせ抽選会後 麻布松実館にて ―――


宥 「お疲れ様、穏乃ちゃん」

穏乃「いえ、まだ組み合わせが決まっただけですし……」

宥 「そっか。じゃあ、明後日に備えて、マッサージしようね?」

穏乃「……はい」


二人は手を繋ぎながら、麻布松実館の一室に入ってゆく。
部屋のドアが閉まるなり、宥は穏乃を背後から抱き締めた。


宥 「穏乃ちゃん……あったかい……」

そう良いながら、穏乃の首筋に鼻を付け、匂いを嗅ぐ宥。

穏乃「だ、駄目ですよ、宥さん! こんな所で……」

宥 「……後で、穏乃ちゃんの好きな〝アレ〟をしてあげるから……」

穏乃「うぅ……約束ですよ……?」


宥は、自らの手を、穏乃の服の下へと潜り込ませた。
耳たぶを甘噛みしながら、適度に育った胸を、優しく揉み拉く。


穏乃「あっ……それ……駄目……///」

宥 (相変わらず、おもちが弱点なんだね、穏乃ちゃんは……)


暫くの間、玄関付近で色欲に戯れる二人。
穏乃の身体を軽く弄んだ後、宥が耳元で囁く。


宥 「それじゃあ、お風呂場に行こっか……」

穏乃「はい……」

七畳程ある、広々とした浴室には、透明な柔らかいマットが敷いてある。
暖房が強く効いていて、サウナ程では無いが、全裸でいても汗が滲む。

穏乃は服を脱ぎ捨て、マットの上に、コテンと寝転がった。

数分後、裸になった宥が、透明な液体の入っている、
大きなプラスチックのボトルを持ってやって来た。

穏乃は起き上がり、宥からそのボトルを受け取る。
今度は宥がマットに横たわり、紅潮した顔で言った。

宥 「掛けて良いよ……」

その透明な液体の正体は、松実館名物、〝食べるローション〟。
味は多種多様あるが、穏乃の大好物は、この〝水飴味〟である。

仰向けに寝ている宥の全身に、隈無く水飴ローションを掛ける穏乃。
瑞々しく、肌理の細かな白い柔肌が濡れ、キラキラとした光沢を放つ。

〝味付け〟を終えると、穏乃は、宥の肉体を貪る様に舐め始めた。

宥 「んんっ……///」

足の指を一本ずつ丁寧にしゃぶり、その蜜を舐め尽くすと、
新たなる餌場を求めて、徐々に上へと舌が進撃を開始する。

そして、第一の豊穣地帯、〝太腿〟へと到達した。
面積の広い、柔らかい肉に、たっぷりと蜜が染み込んでいる。

宥 「ぁんっ! んっ! だめっ……! 穏乃ちゃん……っ!////」

悶える宥の事などお構いなく、縦横無尽に舌を這わせる穏乃。

強く吸い付き、甘噛みし、舐め回す。
本能の赴くまま、この猿は、やりたい放題である。

宥 「ああんっ!///」ビビクン

内腿を激しく責め立てられ、宥は一度目の絶頂を迎えた。

脚全体の口撃が終わりると、次の標的は腕である。
指から始まり、第二の性感地帯、二の腕へと進攻する。

太腿よりも噛み易く、マシュマロの様に柔らかなその部位は、
穏乃がこよなく愛する、お気に入りな場所の一つでもあった。

そこから脇の下を経て、背中を通り、首筋へと向かう。

首は、性的刺激に対して、大変〝敏感〟な箇所であり、
少しでも舌を這わせると、宥は喘ぎながら、体をくねらせた。

穏乃の侵入を防ごうとして、必死に顔を肩に付けようとする。
そこを強引に抉じ開け、穏乃は首肉へ吸盤の様に吸い付いた。

宥 「ひゃぁんっ!」ビビクン

二度目の絶頂を迎える宥に対し、首への執着を止めないシズモン。
ここで宥は、連続で強制的にイカされ、抵抗する体力を完全に失う。

後は、欲望に従順な、野生の猛獣と化した穏乃の、為すがままにされるのだ。

穏乃「おもち……吸って良いですか?」

どう答えようとも、結局、穏乃は、宥の乳房にむしゃぶりつく。
尊敬する先輩の顔を立てる為の、形式的な問答に過ぎないのだ。

宥 「……いいよ」

顔をぷいと横に背け、小さく呟くのが、宥にできる最大の抵抗だった。

飢えた赤子の様に貪欲だが、乳首を刺激しながら吸うその行為は、
明らかに〝性〟を知っている、色情に塗れた、淫乱な雌の所業である。

しかし、宥は、その事について、文句など言えはしなかった。
何故なら、自分が、穏乃にその快楽を教えた、張本人なのだから。

中学生の頃、宥は憧に、薬を用いておもちマッサージを行った。
その甲斐もあって、憧は女らしい肉体を手に入れる事ができた。

穏乃『憧って、最近、色っぽくなったよね。特に胸とか……』

憧 『そ、そう? 成長期だからよ』

憧に急成長の秘密を聞くも、いつもはぐらかされてしまう。
不審に思った穏乃が、最後に相談した相手が、宥だったのだ。

同じ様な体型の同級生が、突然のおもち大増量。
驚愕し、羨ましがる気持ちも、分からなくはない。

憧の事も考慮して、真実を告げる事はできなかった。
しかし、仲間外れにするのも、可哀相じゃあないか。

〝だったら、穏乃ちゃんの胸は、私が大きくしてあげるよ〟

最初は、邪な気持ちなど全く無く、思い遣りから出た一言であった。
けれども、穏乃の肌に直に触れた途端、宥の心は大きく揺さ振られた。

〝穏乃ちゃんの体、太陽みたいにあったかい……っ!〟

まるで、小さな日輪の如く、高熱を発する穏乃の肉体に、
宥は魅了され、彼女を心から欲する様になってしまったのだ。

事ある毎に、宥は穏乃を呼び出し、濃厚で淫靡な関係を持った。

性について、知識を持たない穏乃は、言われるがまま、宥に体を預けた。
いけない事と理解はしていただろうが、押し寄せる快楽には逆らえない。

穏乃は、自分がしている、反道徳的な行いに、罪の意識を感じていた。
宥は、憧の気持ちを知りつつ、穏乃と関係を持った事に、負い目を感じている。

だが、一度火が付いてしまった激情を、抑える事などできない。
二人は秘密を共有し、貪欲なまでに、甘美な悦楽に浸り続けた。

いつしか、背徳感すら、陶酔の媚薬と成り果てていたのだ。

胸を堪能した後、ぐったりした宥を転がし、うつ伏せにする。
盛り上がった、張りのある臀部が、穏乃の性的興奮を更に高めた。

宥の背中に覆い被さり、首を舐めながら、iPS棒を尻の割れ目に擦り付ける。

宥 (ん……熱い……っ!)

通常の人よりも体温の高い穏乃の、最も熱い部分。
今すぐ、一つとなって、その熱を分け与えて欲しい。

宥の秘部から、女の涙が大量に溢れ出す。

穏乃「宥さん……そんなに欲しいんですか……?」

分かっているのに、焦らす穏乃。
最近覚えた、テクニックの一つだ。

宥 「頂戴……穏乃ちゃんの……あったかいの……全部……」

年上の威厳など、かなぐり捨て、弱々しく、艶かしく懇願する宥。
穏乃と肉体を重ねる事ができるのなら、プライドなんて必要無い。

少し腰を浮かせて尻を突き出し、女の穴へと穏乃を誘導する。
穏乃は覆い被さったまま腰を動かし、連結部分を探し求めた。

やがて、丁度良い窪みが見つかり、そこへ肉棒を突き立てる。

宥 「んっ……んぁっ……ふぁぁ……ぁんんっ……っ!」

小柄な体躯とは対照的に、太く逞しい穏乃の肉棒。
宥の桃色の肉襞が、厭らしくそれを飲み込んでゆく。

宥 「くっ……んくぅぅっ……ぁぅぅ……っ!」

呼吸ができない苦しみさえも、快楽の糧となって悦びを増幅させた。
肉棒をゆっくりと根元まで挿入され、下腹部が燃える様に熱くなる。

宥 「あった……かい……穏乃っ……っちゃん……あったか……いよ……っ!」

苦悶の表情とは裏腹に、そこには歓喜が満ち溢れていた。

少しずつ、慎重かつ丁寧に、前後上下に運動を開始する穏乃。
僅かにでも体が動く度に、吐息の混じった嬌声を上げる宥。

欲情した雌の鳴き声が、浴室内に反響する。

穏乃「宥さん、鏡を見てください……」

寝バックを続ける穏乃が、宥の顔を少し持ち上げる。

前方の鏡には、背中に伸し掛かられて、
身動きも取れない、無様な自分の姿が映っていた。

自分よりも体の小さな相手に屈服し、蹂躙されている。
力の弱い雌は、一方的に嬲られるだけの存在なのだ。

けれども、悔しさを感じたり、卑屈になる事などは無い。
信頼できる相手だからこそ、その全てを受け入れられるのだ。

宥 「穏乃ちゃんに……私の全てをあげる……っ! ああんっ!///」

服従の言葉を聞いた途端、穏乃の動きが速く激しくなってゆく。
この女は、自分の〝モノ〟なのだと、世界に主張するかの様に。

穏乃「宥さん! 宥さんっ!! 宥さぁんっ!!!」

肉棒が熱を増し、縦に横に膨張してゆく。
波打つ脈動が激しく、最高潮を迎えたその時――

ドピュッ! ビュルルルル! ドックン! ドックン!

白いマグマが、宥の体内に雪崩れ込み、空間を埋め尽くした。
数え切れぬ程、彼女の膣内で猛烈に脈を打つ、穏乃のiPS棒。

宥と穏乃は、重なったまま手を握り、至福の時を感じていた。


いつまでも、永久に、この人と一緒に過ごしたい……。
二人の心が、今、一つに重なり、幸せなキスをした。





穏乃&宥のあぶない交遊録 姦

今日中に次スレを立てる予定です。
先にタイトルだけ明記しておきます。


次スレ
洋榎「次鋒戦と副将戦が無くなるんやて」


新しいスレを立てた後、このスレをHTML化依頼を出します。

次スレ

洋榎「次鋒戦と副将戦が無くなるんやて」

洋榎「次鋒戦と副将戦が無くなるんやて」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369647348/)

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