勇者「拒否権はないんだな」(704)
国王の間
王「良く来た、勇者よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ」
勇者「は……」
王「魔王が蘇って久しい。前魔王が前勇者によって倒されてからも同じく、じゃ」
勇者「はい」
王「今日そなたをここへ呼んだのは……分かるな?」
勇者「……必ずや、魔王を倒してごらんに入れます。この、勇者の印にかけて、必ず……!」
王「うむ……頼んだぞ、選ばれし者よ!」
勇者宅
母「おかえりなさい、私の可愛い勇者……王様に失礼は無かった?」
勇者「ただいま母さん……そんな事しないよ」
母「ふふ、そうね……私の可愛い子」
母「……」
勇者「そんなに、寂しそうな顔をしないで。俺にはこの……勇者の印がある。必ず……生きて戻るから」
母「ええ……」
勇者「王様から支度金ももらったし、街で装備を調えたら……行くよ」
母「そう……そうね。くれぐれも無理はしないで……」ギュ
勇者「ああ……ありがとう、母さん……ふ、痛いって……」ギュ…
母「……これを、もって行きなさい」シュル
勇者「……これは?」
母「私の宝物……貴方のお父様がくれた、ペンダントよ」
勇者「え……でも……」
母「貸すだけ。帰ってきたら……返してね?大事なものだから。でも……きっと貴方を守ってくれる」
勇者「……わかった。じゃあ暫く借りるね」
母「つけてあげる……良く似合うわ。心配ないと思うけど、なくさないでね?」
勇者「大丈夫さ。絶対……なくさない」
母「……もう、行きなさい」
勇者「ああ……行ってきます!」
カチャ。バタン……
母「……さようなら、私の勇者きっと、もう……」
母「……」
母「……貴方、貴方の息子は大きくなりました」
母「ごめんね、勇者……」
母「……」
母「私の役目も、終わりね……」
16年前
??「…… ……」ウロウロ
??「……落ち着けよ、鬱陶しい」ウロウロ
??「だ、黙れよ側近!これが落ち着いてられるか!」ウロウロ
側近「お前がそこで動き回ったって、すぐに出てくる訳じゃないだろ……ったく」ウロウロ
??「じゃあお前も落ち着けよ」ウロウロ
側近「うっせぇな!これが落ち着いてられるか!」ウロウロ
??「うわ理不尽」
おぎゃー!
??・側近「「産まれた!」」
使用人「側近様、魔王様!お生まれになりました!可愛い男の子です!」
魔王「そ、そうか……でかした!でかしたぞ后!」
側近「で、后様は?」
使用人「母子共に健康ですよ」ニコ
使用人「さ、どうぞお二人とも……魔王様、だっこして上げて下さいな」
后「あ、魔王……ふふ、産まれたよ」
魔王「ああ……頑張ったな」
側近「うわ、お前そっくり……もうちょっと后様に似れば良かったのに……」
后「……」
魔王「……どうした?」
后「魔王、手……」
魔王「手? ……なんだ、つなぎたいのか」ぎゅ
后「や、うん、嬉しいけどそうじゃ無くて……赤ちゃんの手、右の手の平……見て?」
魔王「小さいな、潰しそうだ……っと…… ……嗚呼、やっぱりか」
側近「…………」
后「魔王と同じだね」
魔王「ああ、そうだな……そうか……そう、か……」
后「……一ヶ月」
魔王「……ああ」
后「一ヶ月したら、出て行くね」
側近「そりゃ、早すぎないか」
后「……それでもぎりぎりだよ」
魔王「そうだな……ぎりぎりだ」
側近「……ッ くそ、すまん! ……分かってたはず、なんだが」
后「もしかしたらって思ったけど……やっぱり、駄目だったね」
魔王「仕方あるまい……おい側近、俺は一ヶ月、后とチビと部屋に篭もる」
側近「は!? ……ああ、はいはいはい!その間は俺に執務丸投げね!」
后「ごめんね、側近」
側近「謝るなよ、后様 ……こいつが仕事するとか言ったって、どうせ俺がふん縛って后様の部屋に放りこむだけだし」
魔王「何ソレ酷い」
側近「……覚悟はできてるっての」
魔王「で……チビの名前は?」
后「……あれしかないでしょ」
側近「あれしかないな」
魔王「そうか……そうだな。よし!チビ、今日からお前の名前は………!」
始まりの街
勇者「さて、最低限の武器防具も揃えたし」
勇者「酒場で仲間を募れとか王様に言われたが……」
勇者「……いくら勇者とは言え、レベル1の俺に着いてきてくれる奴なんかいるのかね」
酒場
勇者「すみませーん」
「おぉ、あれは…」「勇者だ」「勇者!?」「来たか!」「勇者様!!!」
ざわざわ、ざわざわ
勇者「!?」
「勇者様!俺を是非貴方のお供に!」「私を!」「私だ!」
バタン!
ユウシャサマーオレトイッショニーワタシトー
ドンドン!!
オスナー!
ユウシャサマー!
勇者「……一人旅じゃ駄目ですかね」
勇者「いや、いくらなんでも……なんだよ、これ……」
バタン!
勇者「!?」ビクッ
??「勇者様」
勇者「は、はい……」
??「ふふ……大丈夫です、私はここの事務員です」
勇者「あ、はぁ……」
事務員「とりあえず、皆様には落ち着くように言いましたから安心して下さい」
勇者「あ。はい……すみません」
事務員「勇者様の旅立ちは王様が声高に宣言されましたからね……引いちゃう気持ちは分かりますが、許してあげて下さい」
勇者「い、いつのまに……」
事務員「数日前ですよ。今日のこの日まで、皆我慢していたんです世界の平和を、希望を……担う勇者様のお役に立ちたいと思っているんですよ、皆様」
勇者「……はい」
事務員「どうぞ、奥の部屋へ。それと……16歳のお誕生日、おめでとうございます」
勇者「あ……ありがとうございます」
まだちょっとしか書いてないけど、バイト行ってくる
続きは夜からがんばります!
行き当たりばったりだから遅いけど……
1です。
職場からもしもしです。
帰るまでに一レス位は書けるかなと。
事務員「どうぞ、おかけ下さい」
勇者「あ、どうも……」
事務員「さて……」
勇者「……」
ドケ、ユウシャサマヲミセロウワナニスルジャマダ
ザワザワヒソヒソ
勇者(……魔物より怖いかも)
事務員「皆様浮き足立っておられるだけですから」
勇者「はぁ……」
事務員「人員に希望はございますか?」
勇者「あ、えーと……俺、まだレベル1なんで…」
事務員「ふむ……回復役は必要でしょうね」
勇者「ですねぇ……」
ソウリョ!ソウリョ!ワタシ!ダマレコムスメ!
ギャーギャー、ギャーギャー!
勇者「……回復、て僧侶以外出来ないんですか?」
事務員「まぁ、その道のエキスパートですから」
勇者「はぁ……」
事務員「あまり深く考えず、直感で選んで大丈夫だとは思いますよ?」
勇者「そう言うもん、ですか」
事務員「希望を聞いてからこう言うのもなんですがね」
事務員「ここに登録されてる僧侶だけでも相当な数です。才能もレベルも、性格だってまちまちです」
事務員「ただ、皆様勇者様に着いていきたい、役に立ちたい、一緒に魔王を倒したいという……」
事務員「志は同じですよ」
勇者「あ……」
事務員「貴方は希望の光ですから、勇者様」
ただいま。やっとこPC
勇者「……」
事務員「期待は重いですか?」
勇者「……いえ、俺は勇者ですから」
事務員「そうですね……世に一人しか存在を許されぬ、選ばれし印をその拳に握る者。汝の名は勇者……」
勇者「……?」
事務員「気にしないで下さい。古い吟遊詩人の……詩の一説です」
事務員「話を戻します。直感で選べ、と言うのは、勿論冗談では無いんですが……」
事務員「ご希望ならば、私が適当な人材をチョイスしますよ?」
勇者「……いえ、俺が選びます……選ばせてもらいます」
勇者「多分、誰を選んでも、きっと光は射すんです。俺は……勇者ですから」
事務員「……」
勇者「そうする運命を……誰でも無い俺が握っている、んです……よね?」
事務員「……流石、勇者様ですね」ニコ
勇者「なるほど……直感。そう言う意味では正解ですね」
事務員「では、まずは僧侶でよろしいですか?」
勇者「はい。後……もう一人前衛が欲しいな」
事務員「戦士、武闘家……ですね」
勇者「……では、戦士で。後、やっぱり……魔法使い、ですかね」
事務員「了承しました。では、名簿をお渡しします。それぞれ一覧にしてあります」
勇者「…………」ペラペラ
事務員「気になる方が居られましたら、この部屋へお呼びしますので……決定は一度、会ってからをお勧めしますよ。文字だけでは分かりかねますから」
勇者「そうですね……では、レベルが1の彼と……こちらと……」
事務員「(ほう……)お言葉ですが、即戦力にはなりませんよ?勇者様もまだレベル1。最初は……心強い方の方がよろしいのでは?」
勇者「いえ……良いんです。確かに未知数ですが……」
勇者「一緒に高め合って、光をつかみ取りたい」
事務員「(……ニッ)」
事務員「……では、この方達をお呼びします。最初はどなたから?」
勇者「全員一辺にお願いします」
事務員「……ふむ」
勇者「俺の直感……信じます」
事務員「分かりました。ではこちらの部屋では手狭ですね。酒場の方へと集めますので少々お時間よろしいですか」
勇者「お願いします」
15分後
ザワザワ…
ダレダ、ダレヲヨブンダロウ
オレダワタシダダマレオレダ…
事務員「勇者様、準備が整いました……どうぞ」
キィ…
シーン……
ざわざわざわ……
勇者(選ばなかった人には申し訳ないが……)チラチラ
勇者(壁にもたれてる彼……良い体つきだな。しなやかな良い筋肉だ)
勇者(魔法使いは……あれだな目の奥に何か宿してる感じだ。年若い娘だが……ちりちりと魔力の波動を感じる)
勇者(僧侶は……あいつか。ちょっと気が弱そうだけど……)
勇者「では……貴方と、貴女と……貴女に。お願いできますか」
戦士「……ああ」
魔法使い「いい目、してますね勇者様」
僧侶「わ、わわわわ、私、ですか……!?」
勇者「はい。お名前を伺っても?」ニコ
戦士「戦士だ」
勇者「うん……宜しく」
戦士「ああ」
勇者(寡黙そうだが……近くで見るとやはり良い身体だな。握手も力強かった。面構えも良い)
魔法使い「魔法使いよ……宜しく」
勇者「こちらこそ……君は、炎に特化してる様だね」
魔法使い「……!」
勇者「違った?」
魔法使い「いいえ……正解よ。流石ね」ニッ
勇者(情熱的な色……当たったか。自身に満ちあふれてる感じだな。期待できそうだ)
勇者(そして美人だ)
僧侶「あ、あの……私なんかでよろしいのでしょうか……?僧侶、と申します……あ、あの……」
勇者「そんなに緊張しないで……」クス
僧侶「あ、はい……あの、すみませ……あ、じゃなくて。お願いします!」
勇者(ふむ……普通に見えるが……神の加護、か?握手から伝わるこの安らぐ感じ……)
勇者(そして可愛い)
勇者「改めて、勇者です。宜しく」
では、飯とお風呂を済ましてきます
夜戻ります
ご飯まで少しだけ
勇者「では、お世話になりました」
事務員「貴方達の行く道に光あらんことを」ニコ
事務員(まだ小さな光……小さな背。でも……あの子達ならきっと)
事務員(古の腐った縁を……腐ったこの世界の不条理を……)
事務員(光で、照らしてくれる)
事務員「さて、私も行きますか……ああ、いけないその前に、あの子起こさなきゃ……」
旅籠
勇者「さて、とりあえず食事にしようか。ここの飯は旨いよ」
戦士「暢気だな。魔王を倒す旅にでようと言う勇者が……街から出る前に食事だと?」
勇者「今の俺たちの力量を知ることは大事だろ、戦士。自己紹介もかねて、な」
魔法使い「そうよ、腹が減っては戦は出来ぬ。私、グラタンと赤ワイン」
勇者「流石に酒は駄目だろ、まだ正午前だ」
魔法使い「けーち」
僧侶「あ、あの、私もお酒はどうかと……あ、えっと、ミートソースのパスタと、ピッツァマルゲリータと……プリン」
勇者「良く食うね、僧侶……でもプリンは後ね?」
僧侶「……はい」ムゥ
戦士「……カレー。甘口」
勇者「えっ」
魔法使い「えっ」
僧侶「えっ」
戦士「………」ムス
気がついたらうとうとしてました
危ない危ない
勇者「じゃあ改めて……自己紹介と行こうか。お腹もふくれたしね」
魔法使い「ああ、お腹いっぱい……コーヒーもらって良い?」
勇者「あ、じゃあ俺も。僧侶は……プリン?」
僧侶「は、はい!それとチーズケーキとバナナジュースも良いですか?」
戦士「腹壊すぞ……俺はイチゴのパフェ」
勇者「えっ」
僧侶「えっ」シマッタソレモタベタイカモ…
魔法使い「ぷっ」ツイカスレバ、ソウリョ
戦士「……」ムス
勇者「ええと……良いかな?」
オマタセシマシター
勇者「じゃあ、俺から……勇者、レベル1。獲物はこれ」シャキン
僧侶「それは……光の剣!?」
魔法使い「……失礼な言い方だけど、すごいレア物持ってるわね。あら?でもこれ……」
戦士「……ぼろぼろだな」
勇者「ああ。親父の形見らしい……親父は、先代、元勇者と言う」
勇者「母の話によると、元勇者も、元々勇者も……まあ、要するに代々語り継がれて来たって奴だ」
戦士「魔王を倒した剣か?」
勇者「どうだかな。確かに相当使い込んであるんだろうが」
魔法使い「私は剣とかには詳しくないけど……これ、新しい傷じゃ無いんでしょう?」
僧侶「そのようですね……光の残照は感じます……が、とても少ないです」
戦士「歴戦の勇者が震ってこそ……真価を発揮する代物か?」
勇者「どうだかな……って言うより、そんなの分かるのか?僧侶……」
僧侶「……微かに力、光は確かに感じますけど……正直、それほど威力があるようには見えませんね」
魔法使い「ねぇ、勇者と戦士は……魔法について詳しいの?」
勇者「ん? ……恥ずかしながら、それほど。俺は……初期の回復魔法ぐらいしか」
戦士「俺にはさっぱりだ」
魔法使い「ふうん……まあ、そうよね、まあ良いわ」
勇者「なんだよ、ハッキリ言えよ」
魔法使い「後で説明するわ。とりあえず自己紹介、しちゃいましょ」
勇者「ああ……まあ、とにかく形見でもあるし……僧侶が言うようになんかしらの力は感じるんだけどな」
勇者「とりあえず、鉄の剣よりは軽くて扱いやすいんだ。手になじむというか」
勇者「で、まぁ……俺もまだレベルは1だ。七光りに頼るぐらいが丁度良いって訳だ」
戦士「成る程な」
勇者「で、さっきも言ったけど、魔法については初期の回復魔法が使えるぐらい」
勇者「多少の魔力があるのはわかってるが、当然ながら本職さんの足下にも及ばない」
勇者「これぐらい、かな」
戦士「では、次は俺だな」
戦士「戦士だ。俺もレベルは1。登録所の事務員も言っていたが、王のお触れを聞いて登録したばかりだ」
戦士「実戦経験は……乏しい。無いに等しい。まさか、自分が選ばれるとは正直思っていなかった」
戦士「だが……それなりに鍛錬は積んできたつもりだ。勇者の光の剣ほどでは無いが、俺の獲物も使い込んである」
戦士「この国の騎士だった父から譲り受けた鋼の剣……当分、新調しなくても大丈夫だろう」
勇者「……良く研がれてるな。良い剣だ」
戦士「ああ」
僧侶「あの……勇者様の光の剣は、手入れしないのですか?」
勇者「……鍛えられる鍛冶屋が存在しないらしい」
僧侶「……え?」
魔法使い「魔法剣の扱いはとてもデリケートで難しいのよ」
魔法使い「知識として存在は知ってても、どうにも出来ない場合が多いの」
魔法使い「鍛冶の知識と、魔法の知識、確かな技術……」
魔法使い「それ以上の何かを知り、持っている者にしか……できないの」
勇者「……詳しいな」
魔法使い「自己紹介ついでにその辺も話すわね」
魔法使い「私の両親は共に大魔導師とまでは行かないけど……まあ、二人とも結構良い魔法使いだったのよ」
魔法使い「勿論、私の師でもあるわ。家には膨大な量の魔法関係の本があったから、知識はかなりの物だと自負してる」
魔法使い「まあ……私のレベルも1だからね。胸を張って言えないのが……ちょっと恥ずかしいけど」
僧侶「凄い……」
魔法使い「あら、興味ある?」
僧侶「も、勿論です……!」
魔法使い「ふふ、そうよね……機会があれば家にいらっしゃい。ここからはだいぶん、遠いけどね」
僧侶「は……はい…ッ!!」きらきら
魔法使い「で、さっき勇者様に言い当てられた通り、炎の魔法が得意よ」
魔法使い「講釈は後にして……さ、次どうぞ?」
僧侶「あ、私は僧侶……癒やしの魔法を専門にしています」
僧侶「この町に来るまでは教会に遣えていました……レベルは皆様と同じ、1です」
僧侶「一応回復専門ですが……弓は得意です」
魔法使い「……意外」
僧侶「そ、そうですか……?」
戦士「その細腕で……?」
僧侶「あ、その……勇者様ほどではありませんが……」
僧侶「これを、つかいます」ス…
勇者「随分と細いな……それにちょっとしつれ……うわ、軽ッ」
僧侶「これは、エルフの弓です……その、あの……私、孤児でして」
僧侶「神父様に拾われた時に、その……私の傍に置いてあったと……」
魔法使い「ああ、成る程……」
僧侶「……?なにか……?」
魔法使い「……ううん、なんでも。心優しいエルフからの贈り物なのかな、って」
僧侶「ロマンチック、ですね。でも……もしかしたら、形見とかそう言うのかも知れないし」
僧侶「大事にしたくて……練習したんです」
勇者「……なんか、暴露させちゃってごめん」
僧侶「いいえ。お気になさらず……これから一緒に旅をする仲間ですから」ニコ
魔法使い「一通り終わったし……良いかしら?」
戦士「なんだ?」
魔法使い「さっきの魔法の話、ね。ちょっと長くなるけど良いかしら?」
勇者「ああ、構わない。知識が増えるのはマイナスにはならない」
魔法使い「じゃあ……まず最初に。魔法には属性があるのはわかるわよね?」
勇者「炎とか、水とかだろ?」
魔法使い「そう。そして人……人だけじゃ無いわね、魔物も、生きとし生けるモノ全てにあるのよ」
戦士「……?」
魔法使い「まだ何も難しい話してないわよ。眉間に皺寄せないでよね」クスクス
戦士「……チョコパフェ。糖分が不足すると頭が回らん」ムス
勇者「まだ食うの!?」
僧侶「あ、私ジャンボパフェ!」
勇者「……その細身の身体の何処に入るんだ」
魔法使い「さっき、勇者様が私を見て炎に特化する……要するに、私の属性は、火。炎」
勇者「俺は魔法に詳しいわけでは無いからな……何となくイメージって言うか……直感?」
僧侶「正しいですよ、勇者様。ちなみに私は水です」
勇者「水……」
僧侶「そうです。水を見ると何を思い浮かべますか?優しい、とか……癒される、とか……」
勇者「確かに、そう言うイメージは持ちやすいな」
魔法使い「そう。人にイメージを関連づけるのに何が一番早いか分かる?」
勇者「う、ううん……と」
魔法使い「初対面、話していない。勿論、人となりも分からない、となれば?」
勇者「外見……」
魔法使い「まぁ……そうね。及第点。表情とか、態度からも感じ取れるわよね」
戦士「堂々としていれば強そうに見え、怯えていれば弱々しくみえると言う事か」
魔法使い「そうそう。そういうのもあるけど……一番簡単なのは色だと思わない?」
勇者「色……」
魔法使い「勇者様は、じっと私の瞳をのぞき込んでいた。どうして?」
勇者「……意思の強そうな女の人に見えた。恥ずかしいけど……情熱的な印象をうけたな」
魔法使い「ふふ、嬉しいわね。そう……私の瞳は赤。炎の色は?」
勇者「……! 赤」
おはよう
昨日は寝てしまた……
勇者「僧侶は……蒼、戦士は……翠か。て、事は……?」
魔法使い「僧侶は水の加護、癒やしの力。戦士は大地の加護」
戦士「大地?」
僧侶「そうです。とても力強い大地の加護を受けてらっしゃいます。大陸を渡る風や、緑の芽吹き。母なる大地が死に絶えた場所ではどちらも死んでしまう……とても、暖かい力です」
戦士「………」ムス
僧侶「……ど、どうなさいました?」アセ
魔法使い「あはは、照れなくても良いのに」
勇者・僧侶(照れてる顔なのかっ)
魔法使い「100%瞳の色で判断できるわけじゃ無いんだけど……貴女には分かるのね、僧侶」
僧侶「はい……分かる、と言うより……感じます。そして勇者様は……金の双眸をお持ちです。間違いなく、輝く光の加護を」
勇者「へぇ……」
僧侶「……人の肉体は、闇と光、両方で形成されていると言われています」
勇者「ん?それは……どういうこと?」
僧侶「光と闇の獣。汝の名は人間」
魔法使い「…………」
勇者「獣?」
僧侶「はい。現し身、所謂肉体は闇で。精神は光で。だから、人はとても弱く、強くもなれる」
勇者「………???」
戦士「……プリン・ア・ラモード」
勇者(もう糖分消費したのかよ)
僧侶(……流石に恥ずかしい)ケドタベタイドウシヨウ
魔法使い「コーヒーお変わりね」
勇者「ええと……?属性が二つある、って事?」
魔法使い「そうじゃ無いわ。んー…説明が難しいわね」
魔法使い「たとえ話と思えば良いわ」
魔法使い「人はどちらにもなれる。選び取ることが出来る」
魔法使い「闇を選べば悪になれる。光を選べば善になる」
勇者「あ……なんとなくわかりやすいかも」
魔法使い「人は唯一、種族を捨てられる生き物なのよ」
勇者「……?」
魔法使い「人は闇の手を取り契約することで、魔物に転じることが出来る唯一の種なの」
勇者「……何?」
魔法使い「魔物やエルフ、所謂人以外の種族は、生まれついたそれから転じることは出来ないの。人間にはなれない」
僧侶「人は、とても強くとても弱い。だけど、無限の可能性を秘めているのです。故に、光と闇の獣と呼ばれるのです」
戦士「そんな話は聞いたことが無い」
魔法使い「……でしょうね。私もはっきりとは知らないわ。古書でかじった程度」
僧侶「古い……おとぎ話の本を神父様が持っていらしたのです。偉そうに話してしまいましたが、神話の一説なのかもしれません。でも……」
魔法使い「言い得て妙、て感じかしらね?」
僧侶「そう、ですね……」
魔法使い「まあ、でもちょっと脱線したわね」
僧侶「ア……すみません」
勇者「いや……難しいけど、知ってて損は無い話だし……単純に興味がある」
魔法使い「ええと……話を戻しましょ。勇者様の属性は光」
勇者「うん」
魔法使い「さっきの光と闇の話はいったん忘れてね」
魔法使い「光の属性って言うのは、勇者しか持ち得ないものなの」
勇者「そうなのか?」
魔法使い「ええ、きっとレベルが上がれば光属性の魔法を使えるようになると思うけど」
魔法使い「どんなに優れた魔法使いや僧侶でも、光の呪文だけは行使できないのよ」
僧侶「回復魔法、と言えば誤解されがちですが……癒やしの力に長けて居るのは一般的には水や緑の加護なのです」
僧侶「加護、と言うのは契約と思って下されば良いかと」
戦士「俺に魔法の力は無いぞ」
魔法使い「命は産まれる時に、精霊と契約すると言われるわ。ソレが属性として体内に残留して加護となるのよ」
魔法使い「戦士の場合は優れた筋肉とか、その力。大地の守護を受けていればそれは強靱。魔法は使えなくても充分に恵まれてるでしょ?」
戦士「ふむ」
魔法使い「勇者様は光の精霊と唯一契約できる、選ばれた人間って事。……世界に一人しか存在できないのはその所為なのよ」
勇者「ああ……それは知っている」
勇者「勇者が存在するのは、魔王を倒すためだ」
僧侶「…………」
勇者「俺の使命だからな」
魔法使い「……そうね。だから、頑張らなくちゃね」
戦士「その通りだ」
僧侶「はい」
僧侶(今は……まだ)
魔法使い(話すべきじゃ無いわね)
勇者「さて……じゃあそろそろ」
戦士「ああ、行くか?」
僧侶「行きましょう」
魔法使い「旅の始まりね」
その頃
??「勇者は世界に一人しか存在できない」
??「勇者が産まれると言う事は、魔王もまた、産まれると言う事」
??「希望と絶望」
??「光と闇」
??「表裏一体」
??「腐った世界の腐った不条理」
??「運命の子は、まだ限りなく遠くて、果てしなく近いよ」
??「今はまだ……ね」
旅籠
勇者「……いきなり路銀が0に近いってどういうこと」
魔法使い「食べ過ぎなのよあんた達……今夜の私の酒代無いじゃ無い!」
戦士「………」ムス
僧侶「ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」
勇者「と、とりあえず……レベルアップを兼ねて隣の町を目指そうか」
戦士「無理は禁物だな。今夜は……野営か」
魔法使い「そうなるわね……森が近くにあったはずよね?」
僧侶「森の中で野営ですか……危なくありませんか?」
戦士「俺がいる。守ってやる」
魔法使い(レベル1だけどね……)
僧侶「そ、そうですね!勇者様もいらっしゃいますし!」
勇者「とりあえず、この川沿いを進もう。森に突き当たる」
……
………
僧侶「美しい流れですね」テクテク
魔法使い「一見平和に見えるわね」
戦士「油断するなよ」
魔法使い「そうよ、僧侶……あ、そんなにのぞき込むとあぶな……」
僧侶「大丈夫ですよ……きゃっ」
ばっしゃーん!
僧侶「吃驚した……」
勇者「………」
戦士「………」
魔法使い「………」
僧侶「あれ、どうしたんですか」
勇者「おい、なんで濡れてないんだ」
僧侶「え?あれ……ほんとだ冷たくない……!!」ズズズ……
ズルズルズル……
魔法使い「!!僧侶、後ろ!!」
水の中から、モンスターが現れた
僧侶「……ッ(しまった、弓が…ッ)」
魔法使い「頭下げて! ……ッ炎の手よ、その拳で焼き尽くせッ」
勇者「……ッ」
ジュウウ……ギャアア……ッ
モンスターは霧になり、消え失せた
ばしゃあああんッ
僧侶「きゃッ ……冷たいッ」
戦士「……どうなってるんだ?」
勇者「話は後だ……僧侶、ほら捕まって」
僧侶「あ、あぁ……すみません……」
魔法使い(この子……まさか……)
勇者「なるべく隊列を崩さず、水辺から遠いところを歩こう……引きずり込まれる訳には……」
戦士「勇者、先頭を行け。殿は俺が」
魔法使い「僧侶、大丈夫?ほら、こっち」
僧侶「あ、はい……すみません……くしゅんッ」
勇者「ゆっくり進もう。日が陰れば野営の準備だ。森の中で安全そうな場所を探すんだ」
………
…………
森の中
勇者「流石に……実戦は……違うな」
勇者(距離にすれば……大して始まりの街から離れていない)
勇者(しかし……疲労感が半端ない)
戦士「レベルも少しは上がった。僧侶と魔法使いを休ませないとな」
戦士(無理をさせる訳にはいかんだろうな……この辺でストップか)
戦士(魔法力とやら、無限ではないのだろうし)
魔法使い「そうね……次、モンスターの群れに襲われたら……やばいかな」
魔法使い(MPが切れるほど消費したのは初めてだわ)
魔法使い(これが……戦い)
僧侶「うぅ、足が痛い……」
僧侶(それに、寒い……火に当たりたい)
僧侶(でも、足を引っ張るわけには……ッ)
勇者「良し、今日はここまでにしよう。戦士、野営の準備を」
戦士「分かった。魔法使いと僧侶は休んでろ」
魔法使い「……ありがと」
僧侶「す、すみません……」
……
………
僧侶「あ、あの、私達も何かお手伝いを……」
魔法使い「無理しちゃ駄目よ、私達体力無いんだから……」
僧侶「あぅ……でも……」
魔法使い「私達の仕事は、MPを回復させること。足を引っ張らないこと」
僧侶「……はい」シュン
魔法使い「ねえ僧侶、貴女……」
僧侶「はい……?」
勇者「良し、火が付いた。二人とも、こっちへ」
魔法使い「いえ、良いわ」
僧侶「……? あ、ハイ、行きましょう魔法使いさん」
パチパチパチ……
僧侶「暖かい……」
魔法使い「ここ……そんなに離れてないわよね」
勇者「……」
戦士「焦って命を落とす方が愚かだ。俺たちの力はまだまだ未熟だ」
戦士「勇者の判断は正しい……それに、ここは良い場所だ」
魔法使い「そうね……美しい森だわ」
僧侶「……安心しました」
勇者「ん?」
僧侶「戦士さんが良いと言うのなら、大地の愛に満ちあふれて居るんですよ。安全……かどうかはわかりませんけど、安心できる場所です」
魔法使い「……」
勇者「ああ、成る程。戦士には大地の加護があるから分かるのか……」
戦士「……」ムス
勇者「(あ。照れた)」
魔法使い「(照れたわね)」
僧侶「(戦士さん可愛い)」
勇者「準備してきた非常食で今日は……凌げるが問題は明日からだな」
勇者「(明日の夜には目的の街につけるか……?焦りは禁物。いや、しかし……)」
戦士「それも問題無いだろう」
勇者「?」
戦士「……生きるための殺生の権利は誰にでも等しい」
僧侶「………」ビク
戦士「幸い、豊かな森だ。狩猟に出れば良い」
勇者「狩りか、しかし……」
戦士「得意なのだろう、弓」
僧侶「はい……仰りたいことは、わかります」
勇者「ああ……」
魔法使い「モンスターは倒すのに、動物は殺せないと?」
僧侶「……ッ」
勇者「魔法使い、よせ」
魔法使い「……」
戦士「僧侶」
僧侶「はい……いえ、はい。大丈夫です……」
勇者「……じゃあ、明日の朝、戦士と僧侶に狩りに行ってもらおうか」
勇者「その間に俺と魔法使いで片付けとか済まそうか」
魔法使い「……」
勇者「じゃあ、今日はもう休もう。とりあえず俺が見張るから、三人は休んでくれ」
勇者(三人は……休んだか。寝息が聞こえる……それだけ、森が静かだって事か)
勇者(それほど街から離れていないのに……光が遠い。寂しい物だ)
勇者(レベルも少しは上がった……無理ができる程俺たちは強くない)
勇者(焦るな。俺は……勇者だ)
勇者(大丈夫だ。しかし……)
勇者(魔法使い……僧侶が川に落ちてからどうにも様子がおかしかった)
勇者(僧侶が……水に濡れていないのを見て……顔が青くなってた)
勇者(随分苛々してた様だったが……)
勇者(街に着いたら、ゆっくり話そう)
魔法使い(……眠れない。初めての実戦で興奮してる)
魔法使い(それだけ……じゃない。僧侶、あの子……)
魔法使い(魔物がいたから……その後は……)
魔法使い(……ッ 嫉妬してる!?この私が…!?)
魔法使い(落ち着くのよ、魔法使い。私は、炎の担い手!)
魔法使い(……私だって…ッ)
魔法使い(勇者は、今日は聞いてこなかった。心配そうに……私を見てた)
魔法使い(気付かれた……かな)
魔法使い(休まなきゃ。ちゃんと休んで……聞かれたら、冷静に説明するのよ)
魔法使い(冷静に……ッ)
僧侶(弱肉強食……わかってます)
僧侶(生きるためには、食べなくてはいけない)
僧侶(……神よ、お許し下さい)
僧侶(私だけじゃ無い。勇者様、魔法使いさん、戦士さん……)
僧侶(みんなが生きて、強くなって……)
僧侶(魔王を倒す……)
僧侶(勇者様……ああ、お願いするの、忘れた)
僧侶(神父様のお話が本当なら……いいえ、神父様は……嘘など)
僧侶(神様……人の子に与える試練とは、かくも厳しい物なのですか…?)
僧侶(……私達を、おまも……り……く、だ……)スウスウ
戦士(まだ腕がしびれているな)
戦士(……命を屠ると言う事は、重いんだな)
戦士(狩りは頻繁に行ってきた。食べるために仕方ない。命の摂理……)
戦士(人に害をなすから、殺す。食べるためでも無く。自分を、仲間を守るため)
戦士(そんな俺が……大地の加護を受ける、か)
戦士(……)
戦士(皮肉な物だ)
戦士(魔法だの、加護だの、精霊だの……)
戦士(良く解らん。わからん、が……)
戦士(世界とはそう言うものなのだろう)
戦士(……休むか。勇者とかわってやらねばな)
森の上空
??「悩みなさい、思いなさい」
??「それが生きると言う事」
??「……なんてね」
??「ああ、時間食っちゃった。あの子……無事だったかな?」
??「久しぶりに元の姿に戻ったら……なんか変な感じ」
??「さて、戻らないと」
??「勇者君、頑張るのよ?君なら、きっと……」
??「ちょっと……楽しかったな、人間ごっこ」
??「人間ごっこ、か……皮肉ねぇ」
??「あの事務員の女の子にはかわいそうな事しちゃったけど……」
??「まぁ、生きてるし大丈夫でしょ」
??「……生きてる、か」
??「やっぱり、皮肉ね」
バッサバッサバッサ………
そして、夜は更ける―――
朝
戦士「起きたか」
僧侶「はい…おはようございます」
戦士「では行くか……大丈夫か」
僧侶「……はい」
戦士「……む」
僧侶「あ………」
ピピピ……チチチ……
戦士「………」
僧侶(鳥が……戦士さんの肩に)
戦士「食うには小さいな」
僧侶「……」ビクッ
戦士「僧侶」
僧侶「は……ハイ」
戦士「生きるためだ。無駄な殺生はしない」
僧侶「はい……」
戦士「必要な分を、必要なだけ。屠った命は、無駄にしない」
僧侶「……」
戦士「感謝を込めて、全部食う。それが……礼儀だ」
僧侶「……!はい」
戦士「そう言いながら、俺たちは無益にモンスターの命を奪う」
僧侶「……戦士さん、それは」
戦士「聞いてくれ」
僧侶「……」
戦士「守るためだ」
僧侶「……」
戦士「生きるためだ。命の重さに差違は無い」
僧侶「ハイ」
戦士「矛盾してるが……それが、生きると言う事なのだと思う」
僧侶「……ハイ」
戦士「……すまん。言い訳だ。自分を正当化しているだけだ」
僧侶「いいえ……貴方が、惨い方で無いのは、わかります」
僧侶「それは……動物たちが教えてくれます。その手に剣を持ち、命を屠ろうとも」
僧侶「心優しく、強くいらっしゃる……誠に、大地の加護を受けるに相応しい……素敵な方だと思います」
戦士「……」
僧侶「行きましょう、戦士さん。私達が生きるために」
戦士「……ありがとう」ニッ
僧侶(どきッ)
僧侶(笑顔……優しいんですね)
僧侶(戦士さん……)
勇者「おはよう、魔法使い」
魔法使い「……おはよう」
勇者「よく眠れ……なかったみたいだね」
魔法使い「……ごめんなさい」
勇者「なんで謝るの……ああ、火起こすの手伝ってくれる?」
魔法使い「ええ……」
魔法使い「旅、始まったばかりなのに……管理もできないなんてね、身体の」ボッ
勇者「ありがとう……どちらかと言うと心だろう?」
魔法使い「!」
勇者「僧侶が川に落ちて濡れていなかったことと、関係ある? ……よね」
魔法使い「……優れた加護を受ける者はね、干渉を受けないの」
勇者「?」
魔法使い「私が炎の優れた加護を持っているとすれば、私の身体は如何なる炎にも焼かれることは無いの」
勇者「あ……じゃあ、僧侶は……あれ、でも……」
魔法使い「自然の物は別。ああ……言い方が悪かったわね」
魔法使い「自然の力で産まれた炎……たとえば、こうして道具で起こした火。暖かさを感じるわ。身を暖めてくれる。指に触れれば火傷する」
魔法使い「優れた炎の加護を受けた魔物に炎の魔法が効かなくても、その屍肉を火であぶれば食べられるようになる」
勇者「……たとえがちょっとえぐいな。わかりやすいけど」
勇者「魔法の炎で焼かれることは無い、って事だな」
魔法使い「……そうね」
勇者「僧侶の水の加護、が……そういうことか」
勇者(最初、落ちたとき……濡れていなかったのは水の魔物の干渉の範囲。曰く、優れた加護を持つ僧侶は……)
勇者(その水の干渉を受けず、濡れなかった)
勇者(その後、自然の水に戻ったときには……冷たさも感じてた。ずぶ濡れになってた)
勇者「……成る程」
魔法使い「理解したみたいね」
勇者「理屈は分かった。まあ……目の前で見たしな」
魔法使い「あの子の身体は、水の干渉を受けない……優れた癒し手になるわ。流石勇者様ね」
勇者「……君は?」
魔法使い「残酷ね、聞くの?」
勇者「……すまない」
魔法使い「……炎よ」ボッ
勇者「!?」
魔法使い「よく見て……ッ ぐ…ッ」ジュウ…ッ
勇者「おい、やめろ……ッ」
魔法使い「……言葉にさせないで頂戴ッ」
勇者(威力は押さえたんだろうが……魔法使いの腕に火傷の跡が)
勇者(………)
勇者「気持ちは分かるが……馬鹿野郎」
魔法使い「……」
勇者「回復するぞ」パァッ
魔法使い「……ごめんなさい。でも…ッ」
勇者「鍛錬……とか、レベルがあがれば……」
魔法使い「素質の問題よ。契約だもの」
魔法使い「……本当、残酷ね、勇者様は」
勇者「すまん……が、自棄にはなるな。俺の直感を信じろ、魔法使い」
魔法使い「……え?」
勇者「自信に満ちた目をしてた。情熱的な何かを宿す目」
魔法使い「……」
勇者「羨み、怨んで曇らさないでくれ」
魔法使い「……」
勇者「簡単に、すっきり解決とはいかんだろうが……」
勇者「認める強さも、君にはあると思う……あって欲しい」
魔法使い「……!」
魔法使い「認める、強さ」
勇者「プライドが許さないとか言うなよ?」
魔法使い「そ…ッ そんなちっぽけなプライド持ち合わせてないわよ!」
勇者「あははは、そりゃ失礼」
魔法使い(……勇者は、やはり勇者なのね)
魔法使い(笑顔が……眩しい)
戦士「帰ったぞ」
僧侶「ただいまです」
魔法使い「…ッ」ビク
勇者「おお、ごくろ……て、え……」
僧侶「熊さん、仕留めちゃいました」
戦士「勇者、解体するの手伝え」ドサッ
勇者(デケェ…何日分だよ……)
僧侶「お腹いっぱいになりますねぇ」フフ
魔法使い(……僧侶、恐ろしい子)
ちょっと休憩します
需要があれば簡単なスペック書きますが
いらないですかね
不要なら続けますねー
ちょっとおやつ漁ってコーヒー入れてきます
魔王城
??「ただ~いまぁ~!側近~!」ダキッ
側近「のわ、なんだなんだ……ッ」ダキッ
??「ただいま、ってば」
側近「お、おぅ、お帰り……て、早いな……あいつは?」
??「貴方に早く会いたくて、ダーリン♪」ホッペニチュー
??「……無事に旅立ったわよ。仲間も申し分なし」
側近「そ、か」
??「浮かない顔ね」
側近「お前が言うか、泣きそうな顔して」
??「……」ギュ
側近「……心配すんな。大丈夫だ今度こそ……」ギュ。ナデナデ
??「そうね……あの子なら」
側近「で、お前なんでそんな格好してんの。誘ってんですか」
??「あ、やっぱそそる?事務員ちゃんの制服、そのまま着て来ちゃった♪」ムナモトチラッ
側近「背中破れてんぞ」オウフ、セクシー
??「だってー羽出さなきゃ飛べないし」モットミル?
側近「そりゃそーだろうが、だからって」ミタイデスオネガイシマス
??「……人間の服、久しぶりだったからねぇ」ザンネン、キガエチャイマス、マホウデ、エイッ
側近「堪能したか、魔導将軍」アアアアアア、モッタイナイ
魔導将軍「うん……なんか寂しいね。嬉しいはずなのに」
側近「……だな」
魔導将軍「魔王様は?」
側近「……そろそろ、やばいな」
魔導将軍「そっか……」
側近「最後かもな」
魔導将軍「……ん」
側近「今日は……一緒に寝るぞ」
魔導将軍「いやんえっち♪」
側近「……多分、明日はもう」
魔導将軍「……」ギュ
側近「喜べよ、魔導将軍……俺たちは喜ばなきゃいけねぇだろ?」
側近「泣くな、喜ぶんだ……喜ばなきゃいけねぇんだ!」
魔導将軍「分かってる。わかってるよ……!でも、側近…ッ」
側近「……祈ってやれ。運命の子の為に」
魔導将軍「この、腐った世の中に、光を……ッ」ウワアアアアアン
飯食ってきました
数ヶ月後
勇者「街だ。街が見えた!」
魔法使い「酒!酒!お風呂!」
僧侶「ごはん……おやつ……」
戦士「……俺も、おやつ」
町長「おぉ、これは勇者様!ようこそいらっしゃいました!」
勇者「あぁ、町長、か……とりあえず、宿、どこ……」
魔法使い「風呂、先だってば…いや、酒……」
僧侶「ご飯、ごはん……うぅぅう」
戦士「糖分が足りん……」
町長「え、あ、あの……」テイウカコイツラクサイ
町長「ゆ、勇者様御一行を宿へ案内しろッ湯を沸かし、宴の用意だ!」ツライタビダッタンダロウガ……ホントウニクサインデスケド
……
………
…………
女湯
魔法使い「生き返るー!!」チャポーン
僧侶「魔法使いさん、早く出ましょう……お腹すいて、死んじゃう」グゥ
男湯
戦士「……至福」カポーン
勇者「戦士、先に身体洗えよ!匂いが……ッ」オユニヨゴレガッ
……
………
…………
勇者「では、一月ぶりの街での宴に」
戦士「温かい風呂に」
魔法使い「美味しい食事に」
僧侶「暖かいベッドに」
「「「「乾杯!」」」」
勇者「……いや、しかし参ったな」モグモグ
戦士「ゾンビとだけはもう戦わん」ムシャムシャ
魔法使い「だから下がれって言ったのに……魔法の詠唱中に飛び出していく戦士が悪い」ノウキンメ
僧侶「で、でもまさか切ったら爆発するとは……」センシサンノセイジャナイデス
勇者「腐敗ガスが飛散、まさに悲惨」ドヤ
戦士「剣が汚れた」ウマイコトイッタツモリカ?
魔法使い「しかも道に迷うとか」チズミナサイヨ
僧侶「あれは魔法使いさんの所為ですよ」イキナリニゲダスンダモノ
魔法使い「だ、誰だって混乱するわよ、あんな汚物頭から被ったら…」アンタモサケンデタデショ
なんかちょっと前にたった勇者「 ってスレに似てる気がするけど同じ人?
>>81
違います。
内容は確認してないので分からないですけど
この手のSSのスレを立てるのは初めてです
勇者「まぁまぁ、無事に着いたし匂いも取れたし」ウマカッタ。コーヒー
魔法使い「結果オーライ?暢気ねぇ」ワタシワイン
僧侶「良いじゃありませんか、久しぶりに布団で休めるんですし」パフェー、フタツー、イチゴトチョコ
戦士「ところで……ここから先は?」サケハダメダトイッタダロ、アホ
勇者「うん……それなんだけど」
勇者「さっき、町長に北の塔に行ってくれないかと頼まれた」
魔法使い「北? ……この町って、大陸の最北端じゃない、塔なんて……」
勇者「……船で渡るんだ」
僧侶「船、ですか……」
勇者「ああ、用意はしてくれるらしい。古いとはいってたけどね」
戦士「理由は?」
勇者「黒い影の目撃が増えてる。今のところ害は無いが、大きな翼を持っているらしい」
僧侶「魔物……ですかね」
魔法使い「害が無いとは言え……放っておけない、わね」
勇者「聞いた以上ね」
勇者「多数のコウモリを伴って飛来するらしい。住民が怯えてる」
戦士「そこに現れた光の勇者様にすがる以上の安心は無いな」
僧侶「コウモリ……というと、サキュバスの使いですかね、一般的には」
僧侶「魔王の居城も………北の果て、最果ての地」
勇者「ここは魔王の城から近くは無い。が……」
魔法使い「遠くも無い」
戦士「レベルは……もう少し上げておいた方が良いだろうな」
勇者「うん……丁度良いだろう」
魔法使い「たかが、数ヶ月前は……四人そろってピイピイ言ってたのにねぇ」
勇者「……俺たちは確かに強くなった。だけど満足するレベルってのはどこだ?」
僧侶「分かりませんね……己の限界を感じられるまで、でしょうか」
戦士「レベル上限まで言ったところで、それは安心とイコールじゃ無い」
魔法使い「どこまで行っても不確定な物よ、満足なんて。諦めない限りね」
勇者「安心は……魔王を倒したときに実感する物だと、俺は思う。世界に平和をもたらすこと」
勇者「一つ、皆に質問したい……が、答えは今言わないで欲しい」
戦士「……?」
勇者「俺も、俺なりに考えたんだ。だけど……正解があるのか否か、答えが一つなのかすら分からない」
勇者「この旅の間、皆には色々な事を教えてもらった」
勇者「街から街へ。色々な経験をし、知識を増やした」
勇者「そして……原点が分からなくなった」
僧侶「原点……」
勇者「始まりは……どこだ?」
魔法使い「無謀な問いね……」
勇者「……僧侶、覚えてるか?」
僧侶「はい……?」
勇者「初めて野営をした次の日。俺に勇者の印を見せてほしいと言ったときの、話だ」
僧侶「勿論、です」
……
………
…………
僧侶「勇者様、一つお願いがあるのですが……よろしいでしょうか?」
勇者「うん……?何かな」
僧侶「勇者の印を……お見せ戴けないかと」
勇者「ああ……別に良いけど」
僧侶(右手の手のひらに……光る、剣の印)
僧侶「とても……強い力を感じます。混じり気なしの光、そのもの」
勇者「……前に、君と魔法使いが言ってたよね。なんだっけ……光の属性は勇者だけ、だとか」
僧侶「はい……あのとき、説明しようかと思ったのですが……」
僧侶「勇者様は、勇者が世界に一人しか存在しないこと。そして、その選ばれし勇者だけが光を使役できることは……」
勇者「俺は…恥ずかしながら、属性だとか、加護だとかそういうのは知らなかった」
勇者「勇者が世界に一人だと言う事は知ってた。それは親父……元勇者が死んだって事だからね」
僧侶「はい……」
勇者「先に一つ、聞きたい。勇者は……勇者からしか産まれないのか?」
僧侶「はい、と確かに応えることはできません。今の勇者様のケース以外を確かにこの目で見たわけではないので……」
勇者「そうか……」
僧侶「ですが、勇者が産まれると言う事は、魔王もまた……産まれると言う事なのです」
勇者「!?」
僧侶「それが新たな誕生なのか、復活なのかは分かりません」
僧侶「勇者と言う存在がある限り、魔王もあるのです。逆も……然りでしょう」
勇者「もし、もし……俺が死んだら…?」
僧侶「何年か、何十年か、何百年か……いつかまた、勇者様がお生まれになるのでしょうね」
勇者「……じゃあ、死ねないな」
僧侶「勇者様…?」
勇者「俺が魔王を倒して、終わりにしなきゃいけない」
僧侶「……はい、しかし」
勇者「魔王はまた、復活する?」
僧侶「………」
勇者「俺の親父は強かった……らしい。母曰く、だが」
僧侶「……存じております。お話の上で、ですが」
勇者「ああ。倒しきれなくて復活したとすれば……俺は、親父以上に強くならなければいけない」
勇者「俺がしくじると、時代の勇者に迷惑がかかる」
僧侶「……強く、なりましょう、勇者様」
勇者「ああ……そうだな」
僧侶「まだ、魔王に目立った動きはありません。しかし……」
勇者「魔物を野放しにするわけにも行かないからな」
僧侶「はい。人の子の身に、時間は無限ではありません。でも……」
勇者「焦らず、確実に。だが迅速に」
僧侶「はい。平和をもたらしましょう」
……
………
…………
魔法使い(そんな話をしてたのね)
戦士「……」ムゥ
僧侶「戦士さん…どうしたのですか?」
戦士「その話は……おかしく無いか?」
勇者「そう……あのときは気がつかなかった。否、深く考えなかった」
魔法使い「………」
僧侶「………」
勇者「僧侶も何も言わなかった」
勇者「多分……僧侶も魔法使いも、博識だ。気付いていたんだろう」
勇者「戦士が、今言ったとおりだ」
勇者「時間が合わないんだよ」
勇者「俺は、勇者の印を持って生まれたと母が言ってた。て、事は」
勇者「親父は遅くても俺が腹の中に居る間に死んでたことになる」
勇者「だが、産まれたときからこの印がある、と言う事は……」
魔法使い「魔王が存在する故に、勇者が産まれるのだとしたら」
魔法使い「既に魔王は復活、ないし産まれていた」
勇者「……そうだ。俺は、確かに16歳だ。親父は……人間だ。元勇者だ」
勇者「俺は、母から何時も聞かされていた。親父は元勇者。前魔王を倒したのだと」
戦士「……勇者が産まれたから、魔王が産まれると言うのは?」
僧侶「それも時間が合いません。勇者様は……人間です」
僧侶「まだ、16歳です」
僧侶「魔王が復活したのは……何時ですか?」
戦士「……王が出したお触れの内容だ。魔王が復活して…既に」
魔法使い「50年は軽く超えた。私達は、勇者のお父様が先代の勇者だとは知らなかった」
僧侶「勇者の血を引く者しか、勇者になれないとしたら」
僧侶「何時、貴方のお父様とお母様は、貴方を授かったのでしょうか、勇者様」
魔法使い「僧侶……!?」
僧侶「これは私の勝手な妄想です。あり得ない話です。ですが……」
僧侶「50年前。勇者様が授かり、前勇者様が天に召された」
僧侶「そして、お母様が貴方を連れて、時を超えていらした」
勇者「………」
戦士「………」
魔法使い「………あり得ないと言い切れないわね。説明は付く」
魔法使い「でも、そんな事を認めてしまうと、何でもこじつけられるわよ」
魔法使い「お腹の中で50年、暖めてた、とかね」
僧侶「そう、ですね……」
戦士「……王は知っていたのか?」
勇者「え?」
戦士「お前の父が前勇者だと言う事を、だ」
戦士「知らねば、あのお触れには納得がいく」
戦士「たとえば、お前の母が勇者の印を授かった息子を連れて、16年前にあの国に来た」
戦士「王国は無条件で手厚く保護するだろう。確かな印を持っているのだから」
魔法使い「お触れの説明は付くけど、勇者様の出生の謎の解決にはなってないわよ、戦士」
僧侶「……知らぬ事は恥ではありませんよ、皆様」
勇者「は?」
僧侶「わからないなら、聞きに行けば良いんです。北の塔に出向いた後」
僧侶「レベルアップを兼ねて、私達の街に戻りましょう?」
僧侶「船も貸して戴けるんですし、距離的に陸を行くより近いです」
魔法使い「……はぁ、まあそうだけど」
僧侶「北の塔を攻略後、魔王の城に出向くなら」
僧侶「その前に世界を見て回りましょう」
僧侶「……もしかしたら、魔王と勇者様のその……不思議な出生の秘密を」
勇者「解く鍵が見つかるかもしれない、か……」
魔法使い「ふむ」
戦士「……時間があるか?」
僧侶「大丈夫です。多分……」
魔法使い(僧侶……多分、まだ何か隠してるわね)
魔法使い(……後で問い詰めてみるか)
勇者「………良し。答えを今出さないで欲しいと言ったのは俺だ」
勇者「今日はゆっくり休んで、明日、北の塔に出発しよう」
勇者「午前中に道具や装備の補充、準備を整えてくれ」
勇者「北の塔にも……答えの欠片が落ちているかもしれないな」
魔法使い「そうね……とりあえず目の前の問題から片付けましょうか」
僧侶「……はい」
戦士「俺はもう少し、鍛錬をしてくる」ガタッ
勇者「俺は………部屋へ戻るよ」ガタン
魔法使い(……今しか無いわね)
魔法使い「僧侶、ちょっと良い?」
僧侶「はい……お部屋で、良いですよね」
魔法使い(……分かってるみたいね)
僧侶と魔法使いの部屋
魔法使い「貴女……何か知ってるわよね?」
僧侶「そうですね……多分、魔法使いさんより、少しだけ」
魔法使い「……教えて貰えるのかしら」
僧侶「全部、お教えします……が、勇者様と戦士さんには…」
魔法使い「黙っておけと?」
僧侶「はい……それから、時間を下さい」
魔法使い「は!?」
僧侶「今、全てを告げるわけには。ですが……少しだけ」
魔法使い「なんなのよ、それ……」
僧侶「……私、幾つに見えます?」
魔法使い「アンタ……何言って」
僧侶「知りたく、ないんですか?」
魔法使い「…ッ ……勇者様と同じぐらい、か…もう少し下。見た目は、ね」
僧侶「ですよね。やはり、気がついていらっしゃいましたか?」
魔法使い「………人じゃ無いでしょ、貴女」
僧侶「………はい」
魔法使い「………」
僧侶「……私は、孤児です」
魔法使い「ええ……」
僧侶「神父様に幼い頃、保護されました。エルフの弓を抱いて、泣いていたそうです」
僧侶「神父様は、亡くなる前に仰いました。私を抱いて息絶えていたのが、多分母……水の加護を持つ、エルフの娘だったそうです」
魔法使い「……私、あの初めての野営の日、貴女を羨んだわ。優れた加護を持つ、癒やしの手である貴女に」
僧侶「………」
魔法使い「確かに、人であっても……素晴らしい加護を受ける事はあるでしょう。だけど…」
魔法使い「エルフの血を引いているのならば、納得させやすかった。私とは……人、とは違うのだもの」
僧侶「……」
僧侶「私は……そうですね。多分、60歳ほどだと思います」
僧侶「前魔王、そして、前勇者様の命の火の……消えていくのを、感じることが出来たんです」
僧侶「その頃の私は、知識もなかったので、今から考えると、ですが……」
僧侶「多分……」
魔法使い「その先は、今は言えない、って言うのね?」
僧侶「確信はないんです。さっき仮説として申し上げたのも、本気です」
魔法使い「……?」
僧侶「16年前に、確かに勇者様の命の芽吹きを感じ取ったんです」
僧侶「なので……まだ、分からないから、言えない、んです」
魔法使い「さっき、全部教えるって言ったじゃないの」
僧侶「……確かに、全部は申し上げていません。ですが……」
僧侶「分からないのも、本当なんです」
魔法使い「……エルフの言う事は難解だって聞くけど、確かね」
僧侶「私はハーフエルフですよ。多分、ですけど。父を知らないので」
魔法使い「え?でも……」
僧侶「エルフは、癒やしの魔法は使えません。ご存じでしょ?」
魔法使い「あ……!」
僧侶「癒やしの魔法は、弱くて強い、人間の特権です」
僧侶「初級魔法講座で習いますよ」クス
魔法使い「……ああ、もう認めるわ」
僧侶「はい?」
魔法使い「貴女には勝てないわ……ねぇ」
僧侶「??」
魔法使い「この旅が終わったら、本当に家にいらっしゃいよ」
僧侶「あ…是非!」
魔法使い「その代わり、私にも色々教えてよ?」
僧侶「勿論です! ……あ、あの」
魔法使い「ん?」
僧侶「その、私がハーフエルフ、多分、て事は……その」
魔法使い「ああ、内緒にしとけって話ね」
魔法使い「言わないわよ、信じなさい」
僧侶「は、はい……その、自分の口から、言いたいんです」
勇者の部屋
勇者(考えても答えは出ない)
勇者(……分かってる、んだ。だが……)
勇者(くそ…ッ)
勇者(………)
コンコン
勇者「……はい?」
戦士「まだ起きてたか」
勇者「ああ……鍛錬は終わったのか?」
戦士「考えるな、と言うのは無理だろうが」
勇者「ああ……」
戦士「魔法使いの言うとおりだ。目先の事を片付けよう」
戦士「で、だ……最悪、世界を回っても答えが見つからなくても」
勇者「……?」
戦士「魔王に聞けば分かるんじゃないか?」
勇者「………」ポカーン
戦士「なんだ、その馬鹿面は」
勇者「……脳筋スゲェ」ポカーン
戦士「……」ムス
勇者「いや……うん、ありがとう」
戦士「フン。さっさと休めよ」
勇者「ああ……ああああああああ!」ガバッ
戦士「な、なんだ」ビク
勇者「町長に呼ばれてたの忘れてた!」バタバタッバタン!
戦士「……人の事言えるのか、あいつは」クックック
魔王城
??「久しぶりね、魔導将軍」
魔導将軍「あ………ッ」
??「……側近は?」
魔導将軍「今……一人で」
??「そう……今日、貴女と話す時間はあるのかな」
魔導将軍「残念だけど……無理かな。今朝、出発したみたいだから」
??「行くのね」
魔導将軍「うん……后様はまだ駄目だよ」
后「そう、だね……まだ」
魔導将軍「大丈夫だよ。戻るから」
后「うん……」
魔導将軍「死ねないからね、戻る迄は」
后「………」
魔導将軍「後で、話そうね」
后「うん、そうだね……」
魔導将軍「大丈夫。私達とは違う」
后「特異点……?」
魔導将軍「そう。やっと」
后「前代未聞」フフ
魔導将軍「やっと断ち切れる……と、良いな」
后「……そう、だね」
魔導将軍「……行くね。後で」
后「うん、後で」
バッサバッサバッサバッサ………
后「……この腐った世の中に、光を」
では、バイトに行ってきます
またもしもしからかけたら書くかもしれません
1時間間違えてました、阿呆です
魔法使い「……ねぇ」
勇者「……なぁ」
戦士「僧侶、大丈夫か?」サスサス。フナヨイハツライナ
僧侶「あ、ぁう……す、すみませ……ッ」オーエー……モウハクモノナイ
魔法使い「塔のてっぺん、見えないけど」
勇者「見えないな」
戦士「我慢するな、ほら水」ヨシヨシ
僧侶「あ、ありがとうございます…」ゴクゴク……ッ ウ、オーエー…モ、ダメ
魔法使い「これ上るの!?」
勇者「……無理かな」
戦士「…おぶって上るか」ホラツカマレ
僧侶「あ、歩けます…」ハズカシイ…
魔法使い「諦め早ッ」
勇者「いや……入り口が見当たらん」
魔法使い「え?」
僧侶「え?」
戦士「え?」
勇者「いや……まじで」
??「足で上ろうったって無理よ~落ちたら死んじゃうわよ」
勇者「!? 何処から…ッ」
バッサバッサバッサ……スタッ
勇者「後ろか…ッ」バッ、シャキッ
魔導将軍「はいはい、物騒な物しまってね、別に攻撃する気ないから」
戦士「お前……何者だ?」グッ
魔法使い「そんな言葉……信じられると思うの?」スー、シンコキュウ
魔導将軍「あらあら。余裕ないなぁ……」
僧侶「あ、貴女は……待って下さい、皆さん!」
魔導将軍「うん、僧侶ちゃんには隠せないよねぇ」
勇者「……し、知り合い、か?」
僧侶「…………」
魔法使い「……何で、名前まで」
魔導将軍「戦士君に魔法使いちゃんも落ち着いて、ね?」
戦士「むぅ……」
魔導将軍「さて、勇者君」
勇者「………僧侶、こいつは…誰だ?」
僧侶「……皆様、知っている方、ですよ?」
僧侶「お久しぶりです……事務員さん」
魔導将軍「見違えたわね、みんな」ニコ
勇者「じ……」
魔法使い「事務員!?」
戦士「……まさか」
僧侶「……」
魔導将軍「答えから言うと、正解……でもさ、僧侶ちゃん、一つだけ質問。ね?」
僧侶「……何でしょう」
魔導将軍「あの時、私は完璧に魔族の力を封印してた。どうして分かったの?」
僧侶「……魔力、は関係ありませんよ。事務員さんと貴女が同じ、と……」
魔導将軍「感じ取った、ね。流石ね……」
僧侶「驚いているんですよ?私……まさか、って…まさか、魔族だったなんて」
魔導将軍「うん、そうね……心臓、ばくばく言ってるモンね」
僧侶「!!」
戦士「僧侶……俺の後ろへ」ス…
僧侶(……心臓が飛び出しそう。これほど……強い、力……)
魔法使い(殺気は感じない……なのに、何なの、この…圧倒される…!!)
戦士(肌を刺すぴりぴりしたこの力……隙が、ない)
勇者(これが…事務員!? そして、魔族……魔王の……手下…?)
魔導将軍「そんな黙り込まなくても……もう」
魔導将軍「まあ、予定通り会えて良かったわ…みんな、見違えたわね」
勇者「何が……目的で、あの街に姿を現した…?否」
勇者「何故、あんな……何がしたいんだ!」
魔導将軍「落ち着きなさい、勇者君。貴方は勇者なのよ?」
魔導将軍「光に導かれし運命の子。その君が取り乱してどうするのよ」
勇者「く……ッ」
魔導将軍「あの街に行ったのは、君たちをここへ呼び出すため」
魔導将軍「あんなこと、って……始まりの街の事務員に化けた目的、ね?」
魔導将軍「勿論、魔王様を討伐してもらうためよ……さて。他に質問は?」
魔法使い「ふ、ふざけないでよ!貴女、魔王の手先なんでしょ!?」
勇者(何が……何が目的なんだ?)
僧侶(………)ビクビク
戦士(魔王は、これ以上…ッ)
魔導将軍「あー、まぁ、ねぇ…うーんと。色々教えてあげたいけど」
魔導将軍「残念ながらあんまり時間が無いのよねー」
魔導将軍「質問は一人三つまで。ね?魔法使いちゃんの今のはサービスしとくわ」
勇者「……本当に戦闘する意思はないんだな?」ス……
魔法使い(勇者!?剣を下ろすなんて……ッ)
魔導将軍「そう言ったでしょ?……今のもサービスしとくわ」
勇者(…確かに殺気は感じない。信じて……良いのか?)
僧侶「……大丈夫ですよ。もし、襲うつもりなら私を真っ先に攻撃したでしょうし」
僧侶「手の内を明かしませんよね?事務員さん」
魔導将軍「流石聡明ね、僧侶ちゃん……ちなみに、私は魔導将軍よ」
魔法使い「魔導将軍……」
魔法使い(こいつ……こいつも炎の使い手……でも、この力は……ッ私との、差は……)
魔導将軍「ねぇ、質問……本当にないの?」
戦士「……僧侶は、どうしてお前の正体がわかったんだ?」
僧侶「!!」ビクッ
魔導将軍「そうねぇ……」チラ
僧侶「……」
魔導将軍「それは後で直接聞きなさい。説明するには時間がかかるし……僧侶ちゃんの口から聞いた方が信じれるでしょ」
魔法使い(こいつ……僧侶の正体を知ってる…!)
勇者「お前は、魔王の手下で間違いないんだな?」
魔導将軍「んー、ちょっと違う。私は魔王様の仲間。君たちと一緒だね」
勇者「…ッ 一緒にするな!」
魔導将軍「やだ、睨まないでよぅ……寂しいなぁ」
魔法使い「魔王は……どうして世界を滅ぼそうとするの?自分の縄張りで大人しくしていれば良いじゃない!」
魔法使い「北の果ての果て、なんて……普通の人間にはたどり着けないのよ!?」
魔導将軍「でも、君たちはたどり着く。そして、魔王を倒すの」
勇者「………!?」
魔導将軍「……ああ、一人三つって言ったけど、駄目ね、ギリギリ。時間が無いわ」
魔導将軍「御免、嘘になっちゃった。信用してもらおうと思って嘘吐くつもりはなかったんだどなぁ…」
魔導将軍「あのね、魔王様は世界を滅ぼすなんて一言も言ってないよ?」
戦士「……!?」
魔導将軍「それは……君たち人間の大いなる勘違い。でも、これだけは言える」
魔導将軍「勇者は、魔王を倒す」
魔導将軍「………あー、やばい。もう戻らなきゃ」バサッ
勇者「…ッまて……!」
魔導将軍「………大きくなったね、勇者君」
勇者「……!?」
魔導将軍「ここから、ずっと北。最果ての街のさらに奥、最果ての城。魔王様の居場所」
魔導将軍「また、後でね?」
勇者「……ッ 待て…ッ」
戦士「やめろ、追うな…ッ」
魔法使い「………」
僧侶「………」
さて、今度こそ本当にバイト行ってきます
また夜に。
ご飯まで少しだけ
勇者(どういうことだ……大きくなった?あいつと……事務員とあったのはつい数ヶ月前だ)
勇者(いや、そもそも……事務員…なのか?いや……でも僧侶が……)
勇者(………僧侶に)バッ
魔法使い(……僧侶には分かる、ていうのは理解できる。あの話を聞いたから)
魔法使い(でもどうして……あいつがそれを知ってるの!?)
魔法使い(……ッ力の、差…ッ私は……ッ 僧侶ッ)バッ
戦士(どういうことだ……あいつは、僧侶の口から聞け、と言った)
戦士(それよりも、あいつの言っていたことは、一体……!?)
戦士(魔王は……滅ぼすとは…言っていない?勘違い…!? …僧侶!)バッ
僧侶「……そんな、一斉に振り向かれなくても」
勇者「僧侶」
魔法使い「僧侶……」
戦士「……そう、りょ」
僧侶「ハイ……知っている事は全て、お答えします」
僧侶「魔法使いさん、約束……守って下さったんですね。ありがとう……ございます」
……ご飯です、無念
また夜、来られたら来ます
勇者「魔法使い…?」
魔法使い「……」フイ
戦士「何か、知ってるのか」
僧侶「魔法使いさんは、私の……その、正体に気付かれていたんです」
僧侶「言わないで欲しいとお願いしてただけです。あの……ごめんなさい」
戦士「正体、って……なんだ。僧侶、お前まさか……ッ」
僧侶「ええと……あの、私が魔物の仲間だったとか、そういうのじゃないですよ?」
僧侶「そりゃ、私……人間、じゃないですけど……」
勇者「!?」
戦士「人間じゃない、だと!?」
魔法使い「………」
僧侶(そりゃ……驚きます、よね)
僧侶(戦士さん……)チラ
僧侶(……疑われるのも辛いけど)
僧侶(嫌われるのはもっと怖い)
僧侶(でも………!)
僧侶「私は、ハーフエルフです……多分、ですが」
勇者「ハーフ、エルフ?」
戦士「………」
僧侶「順番に、お話しします」
僧侶「この……エルフの弓と共に、とある森の奥の教会の傍で、神父様に拾われ、育てられました」
僧侶「私を抱いて息絶えていた水の加護を持つエルフの娘が、私の母だと思います」
僧侶「父はわかりません。恐らく人の子であると推測はできますが……」
僧侶「神父様は亡くなる直前に、それを私に教えてくれました」
戦士「……どうして、父親が人の子だとわかる?エルフ族は人に干渉しない、と聞いたことがあるぞ」ギロッ
魔法使い「……ッ戦士、それは……」
僧侶「良いんです、魔法使いさん。ちゃんと順番に話しますから」
僧侶(戦士さんに睨まれると……心が、痛い)
勇者「……」
僧侶「エルフは、確かに人の子に干渉するのを嫌います」
僧侶「……人より遙かに長い寿命を持つと言われていますから、嫌うと言うより、干渉すべきでないと言う考えなのかもしれません」
勇者「そうなのか……?」
僧侶「……はい。文献での知識、なので確かなことはわかりませんが」
僧侶「私は、自分以外のエルフ……ハーフエルフも含めて、ですが」
僧侶「会ったことがないので」
僧侶「血の半分が人の子であろうと言う根拠は……」
僧侶「癒やしの魔法は、人間だけに許される特権だから、です」
魔法使い「……私もすっかり忘れてたんだけど」
魔法使い「魔法に携わる者なら、知ってて当たり前の知識なのよ」
魔法使い「もし僧侶がエルフだったり、エルフと魔族のハーフだったりした場合」
魔法使い「……回復魔法は使えないの」
魔法使い「だから……僧侶は……魔物の仲間なんかじゃないのよ!」
魔法使い「いい加減、睨むのやめなさい! …ッ仲間に、そんな目……向けないで!戦士!」
戦士「………ッ」
僧侶(泣いちゃ駄目。まだ駄目)
僧侶(神父様にも言われた。何かを訴えるとき、謝るときや、真実を伝えるとき……)
僧侶(涙は、疑いの元になる……ッ)グ…ッ
勇者「……僧侶が、人じゃない、ハーフエルフ、だと言うのは分かった」
勇者「でも、どうして隠してたんだ?」
勇者「魔族の仲間だと疑われるのが……いやだったのか?」
僧侶「いいえ……そういうわけではないんです。その……」
僧侶「私は……既に、60年ほど生きています」
戦士「!?」
勇者「ろ……く、じゅ…うねん?」
僧侶「……はい。50年ほど前、前魔王の気配と、前勇者様の気配が失われるのを感じました」
僧侶「その時の私はまだ幼かったので、本当に感じただけだったのですが」
僧侶「そういう……何かを感じる、と言う力に、長けている、んでしょうね」
僧侶「だからさっき、事務員さ……魔導将軍の事を、知っている気配だと感じた、んです」
魔法使い「魔族だとは分からなかったと言っていたわね。あれは……どういうこと?」
僧侶「始まりの街で会った事務員さんと、さっき目の前にいた魔導将軍が同一人物であると感じた、んです」
僧侶「……魔導将軍から感じる魔力は、凄まじいものでした」
魔法使い「……」
勇者「……」
戦士「……そうだな、それは俺にも感じた。魔力には疎いはずの俺にも…分かるほど」
僧侶「はい。あれだけの魔力の持ち主ならば、彼女の言うとおり、完全に魔族の力を封印していた、と言うのも……納得できませんか?」
勇者「……成る程」
僧侶「そして、勇者様」
勇者「なんだ……?」
僧侶「私は、16年前、貴方の命の芽吹きを確かに感じました」
僧侶「なので……先日、私が申し上げた仮説……貴方のお母様が、時を超えていらしたのではないかと言う、あれ……」
僧侶「……割と、本気なのですよ」
勇者「……そ、んな」
魔法使い「……」
戦士「……」
僧侶「魔法使いさんにお話ししたのは、ここまでです。ね?」
魔法使い「ええ……そして、勇者様と戦士に黙ってろと言われたから、私は言わなかった」
僧侶「はい。ありがとうございます」
魔法使い「で……僧侶、貴女あの時、言えるのはここまで、って言ったわよね」
魔法使い「続き……今日は聞かせて貰えるのかしら?」
僧侶「……はい、勿論です」
僧侶(ごめんなさい、戦士さん、魔法使いさん……勇者様)
勇者「その前に……」
僧侶「はい?」
勇者「一つだけ、聞かせてくれ」
勇者「さっき僧侶は、どうして奴……魔導将軍の、危害を加える気は無い、って奴を信じた?」
戦士「……ああ、それは俺も聞きたい」チャキ
魔法使い「……ッ戦士」
戦士「密通を疑われてもしょうが無いだろう、魔法使い。あれほど……実力差を感じながら」
戦士「緊張に震えているのは……伝わった。だが……恐怖は伝わらなかった。僧侶、応えろ」
戦士「……返答次第で、斬る」チャキン
僧侶(……切っ先から伝わる、戦士さんの殺気と、戸惑いと……これは、悲しみ?)
僧侶(動けば、首をかききられるな……)
僧侶(……悲しみ…どうして?)
僧侶「言ったとおり、なんです、戦士さん」
僧侶「彼女……魔導将軍は、私が感じる事を知っていました。気付いていました」
僧侶「手の内を明かす……私の口から、事務員さんが魔導将軍であるとばらしたくなければ」
僧侶「私の口を封じます……力の差は歴然です。容易いです」
僧侶「貴方達を恐怖で支配してから、ゆっくり……言葉を、告げられますよ」
魔法使い「……それに、もし仲間を殺された私達が激昂して襲いかかったら」
魔法使い「一瞬で私達、全員皆殺しにされてたわよ」
勇者「……ああ、そうだな。そうしたら、彼女の目的が達成されない」
僧侶「はい。だから魔導将軍は、話にきた……殺気を感じませんでした。だから……」
戦士「……ッしかし!」
魔法使い「しつこいわね、この脳筋!理解しなさいよ!」
勇者「魔法使い……落ち着け」
戦士「……ッ 頭を、冷やしてくる…ッ」クルッ スタスタスタ
僧侶「あ……戦士さん…ッ」
魔法使い「放っておきなさい、僧侶……すぐ戻ってくるわよ」
僧侶「でも……」
勇者「俺が見てくるさ。魔法使い、僧侶を頼む」スタスタスタ
僧侶「……」
僧侶(泣いちゃ……駄目ッ)グス
魔法使い「……大丈夫よ。二人なら……モンスターが出たってどうにかするわ」フゥ
僧侶(グス……ひっく)
魔法使い「僧侶……」ギュ
僧侶「……ッ」
魔法使い「……大丈夫。大丈夫よ。ちゃんと……二人とも貴女を信じてる」
魔法使い「私達は仲間……大事な仲間でしょ?」
僧侶「…ッ ま、ほ……つか……さ………ッ」
魔法使い「……」ナデナデ
僧侶「わ、わかってます……信じて、くれるって信じて……ッ」
魔法使い(……僧侶)
僧侶「でも、痛い……痛いんです。胸が……戦士さん、に、にら、にらまれ……ッ」
僧侶「……戦士さんから、悲しみを感じ、ました……そしたら、胸……ッ いた、く……て!」
魔法使い「……僧侶、貴女」
僧侶「はい……?」ヒック
魔法使い「戦士が好きなのね?」
僧侶「……!?」ビクッ
魔法使い「……違う?」
僧侶(戦士さんが、好き……ああ、そうか、だから……)
僧侶(だから……戦士さんに、嫌われるのが怖いんだ)
僧侶「……多分。良く、わかりません、けど……多分……」
魔法使い「……貴女、こんなに聡いのに、そういうのには鈍感なのね」クス
僧侶「………」
魔法使い「大丈夫。戻って来てまだぐだぐだ言う様なら」
魔法使い「私があの脳筋、丸焦げにしてやるわ」クス
僧侶「……そ、それは、駄目です」クスクス
魔法使い「ほら、泣き止みなさい。まだ……全部聞いてないわよ」
僧侶「……はい!」ゴシゴシ
魔法使い「あいつら何処まで行ったのかしらね……」
魔法使い(勇者がいるから、宥めて帰ってくると思うけど)
僧侶「遅いですね……あ」
戦士「………」
勇者「……ごめん、大丈夫だったか?」
魔法使い「遅いわよ」
勇者「ひとまず、街へ戻ろう。今……モンスターに襲われるのはまずい」
勇者「……じき、夜も明ける」
魔法使い「そうね……船で続きを話しましょう」
勇者「ああ……良し、戻ろう」
勇者(士気がガタガタだ。魔導将軍……お前の狙いは、これなのか?)
勇者(しかし……引っかかる)
勇者(勇者は魔王を倒す……何故、魔王の手先がそんな事を?)
船上・甲板
魔法使い「……何を話してたの?」
勇者「ん?」
魔法使い「ん、じゃ無いでしょ」
勇者「まあ……色々」
魔法使い「話してくれないの?」
勇者「……そう言う訳じゃ無い、が……言いにくいな」
魔法使い「………」
……
………
…………
戦士(感じる、気づく……ッしかし!)
戦士(疑ってるわけじゃない。信じたい……だが…)
戦士(なんだ? ……喉が、苦しい)スタスタ
勇者「おい、戦士!待て!」スタスタ
戦士「……勇者か」
勇者「気持ちは分かるが……あれは無いだろう、戦士」
勇者「仲間割れ……させるのが目的だとすれば、思うつぼだぞ」
戦士「! …お前」
勇者「俺だって信じたい。僧侶は、仲間だからな」
戦士「……仲間、か」
勇者「魔導将軍とやらの目的や真意はわからん。が……少なくとも僧侶は……」
戦士「ああ……あいつは、嘘は言わないだろうな」
勇者「お前、分かって……」
戦士「……エルフは嘘をつけないんだそうだ」
勇者「は?」
戦士「種族の特徴だ。精霊と優れた契約を結べるという恩恵の代わりの制約」
戦士「……思い出したんだ。いつかの街で、僧侶が教えてくれた」
勇者「戦士……」
戦士「さっき言っただろう。エルフは人に干渉しないと聞いたことがあると」
勇者「ああ……」
戦士「その話を教えてくれたのも、僧侶だ」
勇者「……」
戦士「この世界のどこかに、エルフの隠れ里があるという」
戦士「地上であり地上で無い、祝福された楽園」
戦士「この旅が終われば、可能ならば訪ねてみたい、と」
戦士「……僧侶が、言ってた」
戦士「僧侶は大事な仲間だ、勇者」
勇者「…ああ」
戦士「だが……いや、信じてる。だが…ッ」
勇者「裏切られるのが怖いのか?」
戦士「いや……そうじゃない。よくわからん」
勇者「……?」
戦士「何となく……喉が苦しい」
戦士「胸が締め付けられるようだ」
……
………
…………
魔法使い「……はぁ」
勇者「なんだよ、その間抜けな声は」
魔法使い「馬鹿ねぇ、ほんとに…」
勇者「おい」
魔法使い「貴方は信じてないの、僧侶のこと」
勇者「いや、そんな事はない。俺は……魔導将軍の言葉が、気になるだけだ」
勇者「僧侶の説明に、納得できないところが会ったわけじゃないんだが……」
勇者「……そうだな。パズルのピースが欠けてて、気持ちが悪い」
魔法使い「まあ……言ってることは分かるわ。まだ……真実にはほど遠い感じ」
勇者「ああ。僧侶の話も途中で終わってるしな」
勇者「だからといって……僧侶に全ての答えを求めるのも……おかしな話だ」
魔法使い「僧侶が全てのピースを持ってる事はあり得ないわよ」
魔法使い「だから世界を回る、んでしょ」
勇者「……時間はあるのか?」
魔法使い「魔導将軍も、そんな事言ってたわね」
魔法使い「時間が無い」
勇者「ああ……それより、僧侶は?」
魔法使い「部屋で休んでる」
勇者「ああ。船酔いか……話を聞くのは戻ってからだな」
魔法使い「そうね……」
魔法使い(頑張りなさい、僧侶)
勇者「……何笑ってんだよ、お前は」
魔法使い「ん? ……何でもないわ」
勇者「戦士も部屋か?」
魔法使い「さっき僧侶の様子を見てくるって」
勇者「!おい……」
魔法使い「仲間を信じなさい、勇者様」
勇者「………」
魔法使い「大丈夫よ……あの二人は」フフ
勇者「お前……何企んでる?」
魔法使い「内緒」
勇者「魔法使い」ジッ
魔法使い「……好き」
勇者「!?」ドキッ
魔法使い「僧侶はね、戦士が好きなのよ」
魔法使い「野暮ってもんよ?」
勇者「……街に着くまで甲板にいるしかないのか」ドキドキ。フイ
魔法使い「何想像してんの、あの奥手同士がどうにか出来ると思ってんの?えっち」カオアカイヨ
勇者「……ッ ち、違うわッ そんなんじゃねぇよ!」バカタレ
魔法使い「あははは…ッ」マッカダ、マッカ
勇者「……!」シランッ
勇者(……吃驚、した。くそ、なんだこれ)ドキドキ
魔法使い(この馬鹿。バカバカバカ。もう、鈍いのばっかり!)ドキドキ
ね、眠気限界……
また明日……
寝ます
おはよう
今日も頑張る。
今日中にお……おわ、らないかも…
船室
僧侶(うぅ……横になっても気持ち悪い)
僧侶(お話、しなきゃいけないのに……)
僧侶(……うぇ)グター
コンコン
僧侶「はい………」
戦士「入るぞ」ガチャ
僧侶「せ、戦士さ……ッ」ガバッ
戦士「……横になってろ。辛いんだろう」
僧侶「……すみません」コロン
戦士「………」
僧侶「………」
戦士「………」
僧侶「………」
戦士「………」
僧侶「………」
戦士「………」
僧侶「………」
僧侶(く、空気が重い……)
戦士「僧侶」
僧侶「………ハイ」
戦士「俺は……お前を信じてる。仲間だと……思ってる」
僧侶「……………ハイ。ありがとうございます」
戦士「………」
僧侶「………」
戦士「俺は……いや」
僧侶「………」
戦士「以前、エルフの話をしてくれたな」
僧侶「ハイ。確か……立ち寄った街の教会に、美しいエルフのモニュメントがあったんでしたね」
戦士「そうだ……お前によく似てた」
僧侶「え……」
戦士「慈愛に満ちた可憐な表情だった。お前の話を聞きながら……僧侶はエルフみたいだと思った」
僧侶「戦士さん……あ、あの」
戦士「褒めてるんだ……いや、偉そうだな。その。なんて言うか」
僧侶(あれ、ドキドキする。心臓、飛び出しそう……)ドキドキ
戦士「……俺は、魔法とか属性とか、良く解らん」
戦士「魔導将軍の話を聞いて……お前に剣を向けたこと、後悔はしていない」
僧侶「……ハイ」
僧侶(魔導将軍……彼女と対峙したときも……心臓が飛び出しそうだった)
戦士「俺の……俺たちの目的は魔王を倒すことだ」
僧侶「ハイ」
戦士「魔導将軍の言っていたことはさっぱりわからん。魔法使い曰く、俺は脳筋だからな」
僧侶「い、いえ、あのそれは!」
戦士「良い。本当のことだ。己が聡い等、思ったことも無い」
戦士「だが……ん……どう、旨く言葉を紡いだら良いのかわからん。だが」
戦士「この旅が終わって、エルフの里を訪ねて見たいとお前が言ったとき」
戦士「……その隣にいたいと、思ったんだ」
僧侶(……心臓が飛び出しそう。なのに……嫌じゃ、ない)
戦士「もし、お前が……魔物の仲間だったとしたら、それは叶わない」
戦士「俺は……それが、嫌、だ」
僧侶「……戦士さん」
戦士「…喉が苦しかった。胸が締め付けられる様だった」
僧侶(……胸、苦しい。涙が……)ポロポロポロ
戦士「これが何なのかわからん。わからん、が……」
戦士「……泣かないで欲しい。笑っていて欲しい。隣で」
僧侶「う、ぅ………うええええッ」ポロポロポロ
戦士「ああ、だから……ッ」ギュ!アレ、オレナニシテルンダ
僧侶「ヒック、ヒック……」センシサン、アタタカイ
戦士「……魔王を倒して、一緒に……エルフの里を探そう。何年、かかってもいいから」ナデナデ。ヒッコミツカンドウシヨウ
僧侶「………」ウエエエエエ
戦士「……い、嫌なのか?」ヨシヨシ
僧侶「ち、違いますッ」ブンブンブンッ
僧侶「嬉しいです、死んでも良いくらい」ニコ
戦士「阿呆、俺が困る」
僧侶「でも……私……」
戦士「ハーフエルフだから、か?」
僧侶「……ハイ」
戦士「…何時までも若いお前の、可憐な顔を見れるのなら俺は幸せなのかもな」
僧侶「え……」カァッ
戦士「……残すのは、辛いが」
僧侶「まだまだ、先の………話です」
僧侶「それまでに、一杯……一緒に、その……」
戦士「……」グイッギュ!
僧侶「あ……ッ」
戦士「………」チュ
僧侶「…ぁ ……」
……
………
…………
北の街。船着き場
魔法使い「………朝、ね」ネムイ
勇者「朝だな」ネムイナ
戦士「……すまん」ソウリョ、オヒメサマダッコナウ
僧侶「スゥスゥ……」
魔法使い「で……なんで僧侶は起きないのかしら?あんた、まさか……ッ」
戦士「な、なんだ!くっついてる間に寝てたんだから仕方ないだろう!」
戦士「抱きついたまま離れないし、起こしても起きないし、抱き上げて船から下ろすしか!」
勇者「珍しく饒舌」
魔法使い「顔真っ赤」
戦士「……泣かしてしまったからな。疲れたんだろう」
勇者「激しいなおい」
魔法使い「!!あ、あんたなんて事……ッ」ホノオヨ!
戦士「お、おい、待て!魔法使い、早まるな!」
僧侶(むにゃー…)
勇者「……とにかく、俺たちも休もう。先に町長の所に報告に行ってくる」
魔法使い「そうね……私もお風呂入って一回寝よう」
戦士「……僧侶を寝かしてくる」モヤサレルカトオモッタ
勇者「いったん解散だな。3時間後に旅籠で集まろう」
魔王城
后「おかえりなさい、魔導将軍」
魔導将軍「ただいま……間に合った、かな」
后「……話してる時間は、無いね」
魔導将軍「ああ、私また……嘘吐いちゃったね」
后「ううん……良いの。また、って?」
魔導将軍「あの子達にも……時間、無くて」
后「……そっか。大丈夫……後は、私が」
魔導将軍「そうね……ごめんね」
后「大丈夫よ……ありがとう、魔導将軍」
魔導将軍「じゃあ……行くね」
后「うん………後で」
后「……もう、少し」
后「ごめんね………」
后「………すぐに、行くから」
旅籠
勇者「あれ、俺が最後か……すまん」
魔法使い「随分長い間町長と話してたのね……寝てないでしょ」
僧侶「大丈夫ですか…?」
勇者「ああ、平気……では無いけど。まあ……大丈夫だよ」
戦士「とりあえず座れ……町長はなんと?」
勇者「魔導将軍の事は……一応撃退した事にしておいた。まさか……本当の事は言えないしな」
魔法使い「……そうね」
勇者「信じさせるのに一苦労だ。それに……」
僧侶「目的を達成したでしょうから、もう来ない……でしょう」
戦士「………」
勇者「ああ。俺もそう思う。後、船を貸してくれる様に頼んでおいた」
勇者「……これで、世界を回れる。魔王を……倒しにいける」
僧侶「……」
戦士「……」
魔法使い「……浮かない顔ね、皆」
勇者「僧侶、話の続きを聞かせてくれるね?」
僧侶「はい。勿論です」
魔法使い「情報を整理しましょう。欠けたピースは少なくないわ」
戦士「目に見えている確かな事から確認しよう。まず、王様が魔王討伐のお触れを出した」
僧侶「勇者様が魔王討伐に出られるので、その補佐をする者を募集する、ですね」
魔法使い「前勇者に倒された筈の魔王が復活、ないし、新たに産まれたのが50年ほど前よ」
勇者「前勇者は俺の親父だ。だが、登録所に集まった皆は、その事実を知らなかった」
僧侶「私達三人が選ばれたのは……偶然、ですよね?」
魔法使い「……魔導将軍は、魔族の力を封印し事務員になりすましていた」
戦士「しかし……封印していたのなら、下手な小細工は不可能じゃ無いのか?」
勇者「少なからず俺も魔力はある……いくらレベルが1だったとしても」
勇者「……事務員は人間にしか見えなかった。力の差は……先日の時点でも歴然だったんだ」
勇者「まあ…それすらも未熟で解り得なかったと言われてしまえば、それまでなら」
僧侶「いえ……でも、あの場には私が居ました。だから……」
魔法使い「魔導将軍の封印は完璧だった、て事ね」
僧侶「はい。勇者様と事務員さ…魔導将軍が奥の部屋にいらっしゃる間」
僧侶「私達も同じ建物内に居ましたから……何かあれば、わかります」
戦士「しかし、封印していたなら……僧侶の力はいつ見抜いたんだ?」
魔法使い「推測、だけど……」
魔法使い「登録に行ったとき、皆握手しなかった?あの事務員と」
僧侶「しましたね……」
戦士「したな」
魔法使い「……それじゃないかな」
戦士「?」
魔法使い「あの時は、勇者様についていきたい。私はこれだけがんばれる。認めて欲しいって」
魔法使い「誰もが思ってたはず。しかも、私達はとても未熟だった」
魔法使い「触れ合ったことで、漏れ出した物を情報として拾うぐらいは…封印してたって、容易いことじゃないかしら」
僧侶「……そうですね。私自身、この力を……人間である事務員さんに、漏れないように隠す、つもりにはならなかった」
戦士「……ふむ」
勇者「どうしたら良いのか迷っていたら直感で選べ、と言われたんだ」
勇者「それも困難ならチョイスしても良いとは言われたが、断った」
勇者「俺はまず、名簿からレベル1の人だけを選んで、集めてもらった」
勇者「その時点で強ければ、旅は楽だったろうけど……共に高め合って行きたかったんだ」
勇者「そして……言われた通り、直感で選んだ」
魔法使い「何か仕組まれた……訳では無いわよね」
戦士「選びあぐねる勇者の背を押しただけ、だな」
僧侶「勇者様を信じた、んですね……魔導将軍は」
勇者「……え?」
僧侶「北の塔での……魔導将軍の言葉に繋がる気が…しません?」
僧侶「勇者は、魔王を倒す」
魔法使い「……あいつは魔王の手先なんでしょ?なんで、そんな事…」
戦士「本人曰く、仲間、だがな」
勇者「……俺も揺動かと思ったが」
僧侶「嘘を吐いているようには……見えませんでした。どこか……悲しそうでした」
魔法使い「……その話はとりあえず置いておきましょ。順番に、ね」
戦士「そうだな。見える物も見えなくなる」
魔法使い「あの日、こうやって旅籠で食事しながら話してて」
魔法使い「勇者様のお父様が、前勇者だと知った」
勇者「あの時……僧侶と魔法使いは矛盾に気がついてたのか?」
魔法使い「おかしいな、とは思ったけど……まだ言うべきじゃ無いと思ったの」
魔法使い「勇者様は多分、そういうことに殆どの知識を持っていない」
魔法使い「今混乱させちゃ駄目かなって。それに………」
魔法使い「……僧侶の能力の方が気になった、のが大きいかな」
僧侶「……すみません」
勇者「………」
僧侶「私は……前にも言いましたが、もし、時を超えていらしたなら」
僧侶「……可能ならば、の前提付きですけど」
僧侶「それも、何かの運命なのかと思ったんです」
僧侶「運命は、変えられません……多分。後は、魔法使いさんと一緒です」
僧侶「まだ、知識の乏しかったであろう勇者様を混乱させては……と」
勇者「……ごめん、なんか、気を遣わせた、な」
魔法使い「謝らないといけないのは私達よ、勇者様」
魔法使い「結果、こうして………迷路に迷い込んだんだもの」
戦士「それは……違うだろう」
お昼してきます
>>174
座骨神経痛だと思う
明日病院行く
戻りました
>>175 お大事に…
頑張ります!
でも、もうすぐバイト
戦士「その時その時、選択肢を選び取った結果が今、だろう」
戦士「今、迷路に迷い込んだ事すらも必然じゃないのか」
戦士「今から俺たちはさらに結果を求めて、出さなくてはいけない」
戦士「……魔王を倒し、平和を。望む結果はそれの筈だ」
勇者「……お前は格好良いなぁ、戦士」
戦士「……」ムス
魔法使い(照れた)
勇者(照れた)
僧侶(戦士さん…)カコイイ
戦士「と……とにかくここからが一番ややこしい問題なんだろう!勇者!」
勇者「あ? …ああ、うん。そうだな」
勇者「遅ればせながら、だが……俺も、矛盾に気がついた」
勇者「考えても考えても堂々巡りだ」
勇者「この間、質問の答えは後で聞かせて欲しいと言った」
勇者「……撤回、するよ」
魔法使い「え……?」
勇者「あ、いや……その。今、こうやって一緒に考えて出す答えは」
勇者「聞きたいんだが…勿論。この間戦士と話してて……」
勇者「世界を回って、ピースの欠片が見つからなければ」
勇者「魔王に聞けば良いって言われたからな」
僧侶「……」ポカーン
魔法使い「……」ポカーン
戦士「……」ムス
勇者「……ほら、みんな同じ反応するだろ?戦士」クスクス
僧侶「あ…でも、凄い、凄いです、戦士さん!」
僧侶「それが一番確かですよ!」
戦士「そ、そうか……僧侶が、そういうなら」テレ
魔法使い(うわ、わかりやすく照れた!)
魔法使い「まあ……魔王に聞く、てのも、確かに欠片を埋める一つの方法でしょうけど」
魔法使い「……魔王が、最後のピースを持ってるとは限らないんじゃ無いかしら?」
勇者「うん……それも分かってる」
勇者「俺たちだけで出した答えが必ずしも正解じゃ無いな、って……思ったんだ」
勇者「……撤回、てのもおかしいな、御免」
勇者「……よし、とりあえず、俺たちの意見を統合して、答えをだそう。話し合いを……続けよう」
僧侶「…ハイ」
魔法使い「そうね、ええと……私達は、それぞれ矛盾に気がついた。矛盾とは?」
僧侶「時間が、あわない」
戦士「魔王が復活、ないし産まれたのは50年前」
勇者「親父である元勇者は、人間だ。そして、俺は確かに16年前に産まれてる」
僧侶「はい…命の喪失と、誕生。確かに感じました」
魔法使い「ちょっと待って……待って……ええと……」
戦士「どうした?」
魔法使い「僧侶、貴女は確かに……16年前、勇者様が産まれるのを感じた」
僧侶「? …ハイ、そうです」
魔法使い「で、前魔王、前勇者の命の炎が消えたのを感じたのが、およそ50年前」
僧侶「はい」
勇者「……?」
魔法使い「50年前、魔王が復活、ないし産まれてる、のよね?」
僧侶「……あ!」
魔法使い「それは、どうやって判断したの?」
僧侶「……私、魔王の誕生は、感じていません」
戦士「……何?」
僧侶「いえ、でも……魔王の誕生を感じる、事は…出来ないのかも……」
魔法使い「もう一度聞くわよ。じゃあ、どうやって、誰が……魔王が復活したと判断したの?」
勇者「………」
戦士「………」
僧侶「………」
魔法使い「魔王がいるかぎり、勇者は産まれる」
魔法使い「……魔王が復活した時点で、勇者が産まれると。同時であると仮定したら」
魔法使い「魔王は、16年前に復活した事に………ならない?」
僧侶「どちらが先か分からない以上、確かに……仮定、ですが……」
僧侶「勇者が産まれた時点で、魔王が復活する、とも言えますね」
勇者「なん、だよ……それ。俺が産まれたから…?」
戦士「違う、勇者。そうでは無い」
魔法使い「……御免。卵が先か鶏が先か、だわ、これじゃ」
僧侶「でも……良い線行ってる気がしませんか。私が……話そうと思っていた事よりも」
僧侶「真実に近い気がします」
勇者「……ああ、そうだ。僧侶の話を……聞くのがまだだった」
魔法使い「勇者、ちょっと休憩しない?顔色が……」
魔法使い(真っ青だわ……)
勇者「………」
勇者「いや、大丈夫だ。こんな事で……ショックを受けていられない」
勇者「もし、俺の…勇者という命の所為で魔王が……産まれるなら」
勇者「俺が断ち切れば良いだけだ」
僧侶「……私の仮説は、外れている気が……いえ、多分外れてます」
僧侶「私は……勇者のお母様がエルフか、もしくはその……要するに、人では無いのでは、と」
僧侶「……思っていたんです。そうすれば、時を超えても、何でも、その……」
魔法使い「矛盾を強引に追いやれる、ね」
僧侶「はい……ですが、勇者様は人間です……回復魔法が使えます。でも」
勇者「……」
僧侶「勇者、と言う存在は、そんな枠を超えていらっしゃるのではないかと……」
僧侶「…旨く説明できません。すみません。どう、言っても……傷つけてしまうような、気がして」
戦士「僧侶……」
勇者「……大丈夫だ、と言うのは簡単だ。多分……混乱してる」
勇者「だけど……」
勇者「……怖がって逃げてたら、先には進まない。俺は……逃げない」
勇者「続けてくれ、僧侶」
僧侶「……誰にも持ち得ない、光の加護。勇者の印からは、混じり気なしの光を感じました」
僧侶「光そのもの、運命に導かれし、選ばれた子……汝の名は勇者」
僧侶「光と闇の獣、汝の名は、人間」
僧侶「勇者は、人間です。選ばれた特別な存在です。強くも弱くもある、人間です」
僧侶「でも……勇者は、特別なんです」
僧侶「そんな風に、知っている知識と言葉を並べると、矛盾だらけなんです」
僧侶「そして……魔導将軍のあの言葉」
僧侶「勇者は、魔王を倒す」
魔法使い「魔導将軍は、言い切った。魔王の仲間だと言いながら」
勇者「……俺の存在意義はどこだ?」
魔法使い「勇者!?」
勇者「…自棄になってるわけじゃ無い、魔法使い」
勇者「問題はもう一つある。魔導将軍のもう一つの言葉だ」
戦士「……魔王は、人を滅ぼすなんて言っていない。人間の大きな勘違い」
勇者「そうだ。俺たちは何処で、魔王が人を滅ぼそうとしていると聞いた?」
魔法使い「でも、モンスターが……」
勇者「前魔王が倒された時、モンスターは居なくなったか、僧侶」
僧侶「………ッ いい、え……」
戦士「……なんだと?」
僧侶「私は…前魔王の命の炎が消えたのを感じました。魔物の気配は……弱く、なりました」
僧侶「ですが……消えては……いません………」
魔法使い「…………」
戦士「…………」
勇者「今は……どうだ」
僧侶「あの当時、まだ幼かったので、ハッキリとは言えませんが……」
僧侶「確かに、徐々に強く……」
魔法使い「魔王の居城に近づいているからって言う可能性は?」
僧侶「それは……何とも……」
勇者「……はじまりの街へ、戻ろう」
戦士「……勇者?」
勇者「あそこは、ここより遠い。もし力が弱まっていくのなら土地柄だと判断も出来る」
勇者「王に、話を聞くことも出来る」
勇者「……俺の母さんも、いる」
戦士「……決まりだな。話すだけでは……正直、埒があかん」
魔法使い「そうね……」
僧侶「でも……無駄ではありませんでしたよ」
魔法使い「当然よ。私達は、逃げない!」
戦士「そうだ。俺たちは……」
勇者「真実を手に入れ、今度こそ魔王を……倒す!」
今日中には終わりませんでした。無念
バイトです
また夜に
あーはっはっは、あほやと笑ってください
シフト今日入って無かった
宿屋 僧侶と魔法使いの部屋
ゴソゴソ…
僧侶(魔法使いさん……? 眠れない、のかな)
僧侶「……大丈夫、ですか」
魔法使い「あ……ごめん起こしちゃった…?」
僧侶「いえ、私も……何だか、眠れなくて」
魔法使い「そう……私、ちょっと……出てくるわ」
僧侶「どちらへ…?」
魔法使い「酒場……つきあう?」
僧侶「お酒ですか……いいえ。お邪魔でしょう?」
魔法使い「……え、え?」ドキ
僧侶「さっき旅籠を出るとき、勇者様、一人で飲みに行かれましたもんね」ニコニコ
魔法使い「……随分余裕ね、アンタ」
僧侶「は、はい!?」
魔法使い「戦士とくっついたからって…ッ」
僧侶「く、くくく、くっついたって、そんな!!」マッカッカ
魔法使い「……で、やったの?」
僧侶「………は!?な、ななななな、なに、なにを、ですか!」
魔法使い「白状しなさい!」ガバッ
僧侶「きゃ、ちょっと…ッ押し倒さないで下さい!」キャー
魔法使い「ん……?」チョット、コレハ……ムニ
僧侶「ど、何処触って…ッ」イヤー
魔法使い「………負けた」ショボーン
僧侶「何が、ですか……」ハナレテクダサイ、ヨイショ
魔法使い「……戦士、くそ、いい目見やがって脳筋の癖に…」
僧侶「何の話です……ほら、早く行かないと勇者さんに会えませんよ?」
魔法使い「え、べ、別にあいつに会う為に行くわけじゃ…ッ」
魔法使い「お、お酒が飲みたいだけよッ」スタスタバタンッ
僧侶「ふふ、いってらっしゃい……」
僧侶「でも……いい目、って何だろう?」
僧侶(明日……戦士さんに聞いてみよう)
酒場
勇者(……分からないことだらけだ)
勇者(魔王を完全に倒す方法なんて……あるんだろうか)
勇者(………母さん)
勇者(母さんは……何か、知っているのか?)
勇者(………俺に出来ること、あるのか?)
勇者(僧侶は……俺が死んでも、魔王が居る限り、勇者はまた産まれると言った)
勇者(……俺自身は逃げられる。しかし)
勇者(そんな事は……できない。したく、ない)
キィ……パタン
勇者(……やはり、魔王を完全に…倒すしかない)
勇者(しかし…復活では無く、新たに産まれるのだとしたら……ッ)
魔法使い「なんて顔してるのよ……」トナリ、イイワヨネ
勇者「……魔法使い?眠ったんじゃ」
魔法使い「寝れないわよ……」
勇者「だな……僧侶は?」
魔法使い「起こしちゃった……のか、起きてたのか」ワインチョウダイ
勇者「そうか……」オレモオカワリ
魔法使い「………」
勇者「………」
魔法使い「戦士は鍛錬?」
勇者「だろうな……」
魔法使い「………」
勇者「………」
魔法使い「……怖い?」
勇者「何がだ」
魔法使い「真実を知ること、かな」
勇者「怖くない……と、言えば嘘だな」
勇者「怖いよ。でも、知る権利がある。知らなきゃいけない……何より、知りたい」
魔法使い「………」
勇者「俺は、勇者だからな」
魔法使い「……僧侶が、言ってたこと」
勇者「気にするな、か?」
魔法使い「いいえ……流石に、言えないわそんなこと」
勇者「そうだな」
魔法使い「私は……いえ、私も。あれが真実に近いんだろうなと思うわ」
勇者「私……も?」
魔法使い「多分、戦士も……貴方も」
魔法使い「そんなに長い時間じゃ無いけど、僧侶と一緒に居て…」
魔法使い「僧侶の、感じる力って……推測だけど」
魔法使い「それをそれ、これをこれ、って……そのまま、文字通り、形通りに」
魔法使い「すとん、って受け止める力、だと思うの」
勇者「……うん」
真穂使い「わかりにくい、かな」
勇者「いや……寧ろ、それ以外の表現が思いつかないな」
魔法使い「うん……だから……」
勇者「真実に近い、か」
魔法使い「そう……でも、所詮近い、だけ。言葉は悪いのだけど」
勇者「ああ……真実そのものは、俺たちの目で確かめるべきだ、だろ?」
魔法使い「……確かめたい、かしらね」
勇者「確かめなくちゃいけない。そうでないと……見失う」
魔法使い「見失う……」
勇者「そうだ。俺は……自分を、勇者である意味を見失う」
魔法使い「………」
勇者「……心配、してくれてたんだろ。ごめんな、魔法使い」
魔法使い「当たり前、でしょ……仲間なんだから」
勇者「見失うわけにはいかないな。俺自身の事も……お前の事も」
魔法使い「え……」ドキ
勇者「大事な仲間だからな」
魔法使い「あ、ええ……そうね」…ソウヨネ
勇者「なあ、魔法使い」
魔法使い「……何よ」
勇者「………」ジィ
魔法使い「………」ジィ
勇者「魔法使い……」
魔法使い「は、い……」ドキドキ
勇者「………」カタニアタマ、トン
魔法使い「ど、う……したの、よ」ドキドキドキドキドキ
勇者「………きも、ちわる……ぃ」ノミスギタ
魔法使い「………はぁ!?」
勇者「う、ぇ………」
魔法使い「ちょ、ちょっと!勇者!?」
……
………
…………
朝。船着き場
僧侶「おはようござ……どうしたんですか、勇者様!?」カオ、マッサオ…
魔法使い「おはよう。阿呆は放っておきなさい」サ、フネニノリコムワヨ。スタスタ
戦士「……勇者、肩を貸すからさっさと歩け」オマエマダサケクサイ
勇者「……すみません」ユラサナイデ…
……
………
…………
僧侶「明日の朝には着くそうですね」
魔法使い「そうね……船酔い、大丈夫?」
僧侶「ええ、慣れたのと……船酔いに効くハーブを町長から戴きましたので」
魔法使い「……ハーブ?」
僧侶「薬草酒です。二日酔いにも効くそうですよ?はい、お裾分け」
魔法使い「……誰かさんにあげたら良いじゃない」ムッ
僧侶「ですから、お願いしますね?」
魔法使い「……ッ なんで、私が!」
僧侶「あ、戦士さんとお約束してるので、失礼します」ニコ。スタスタ
魔法使い「ちょ、ちょっと……ッ」
……
………
…………
船室
勇者(………)グター
コンコン
勇者(………)グター
……ゴンゴンッバタン!
勇者(!)ビクッ
魔法使い「……情けないわね、全く!」
勇者「ま、魔法使い……」カ、カオガコワイ
魔法使い「ほら、薬草酒。二日酔いに効くんですって」サッサトノミナサイコノバカタレ
勇者「……用意、してくれたのか」…スゴイニオイガスルンデスケド
魔法使い「私じゃ無いわ、僧侶よ。船酔いにも効くんですって」ダカラサッサトノメッテイッテンデショ
勇者「そ、そうか……ありがとう……」ツカ、コレムカエザケッテヤツジャ
魔法使い「……じゃあ、戻るわ」フイッ
勇者「(ごくごく……うえ、まずッ) ……げほ、げほげほごほッ」
魔法使い「ちょ、だいじょ……ッ」
勇者「げほげほ…ッ ま、ほうつか……ッ」グイッ
魔法使い「な、なによ!?」ヒッパンナイデヨッ
勇者「昨日は、悪かった」
魔法使い「……良いわよ、もう。そりゃ……悩みもする、わよね……良いわよ」
勇者「ん、いや……それもあるんだけど」
魔法使い「何……てか、離してよ」
勇者「嫌だ」
魔法使い「は!?」
勇者「……昨日、お前の顔見て、話してると…落ち着いて……まあ、それで酔いも回ったんだけど」
魔法使い「……はぁ」
勇者「俺……」ダキッ
魔法使い「!?」ビクッ
勇者「魔王倒すから」
勇者「魔導将軍の言葉に従うみたいで嫌だけど」
勇者「倒して、倒しきって」
勇者「……勇者は、俺で最後にするから」
魔法使い「………」
勇者「そしたら」
魔法使い「……そしたら?」
勇者「俺、勇者じゃ無くなるけど」
魔法使い「………」
勇者「ただの、俺になる、けど」
魔法使い「………」
勇者「ああ、もう、苦手だこう言うの!くそッ」オデコニチュッ
魔法使い「!?」
勇者「……それでも、良い?」クソハズカシイカオアツイアツイアツイ
魔法使い「……だ、だって、あんた…今でも充分……」カオモエソウ
魔法使い「……勇者らしくないわよ。いや、凄く立派な勇者だと思うわ!?だけど…」
魔法使い「飲み過ぎて吐いたり、二日酔いでぐったりしたり……」
魔法使い「でも、そんな……勇者らしくない、そう言うあんたも……」
魔法使い「……いえ、そんなアンタだから。ていうか、あああもう!」
魔法使い「あんたが、アンタだから、好きなのよ!」チュッ!
勇者「まほうつか……ッ 」……クチビルヤワラケェ、チュ、チュ
魔法使い「ぁ、ン……ッ」
勇者「……ん、なぁ、魔法使い」
魔法使い「な、によ……」
勇者「明日、街に着くまで…」ギュ
魔法使い「……」
勇者「こうして、眠らせて……(スゥ、ス……)」
魔法使い「……え、ちょ……ッ (寝ちゃった…?)」ギュ
魔法使い「……ほんと、馬鹿ね……」ギュウ
……
………
…………
甲板
戦士「…で、一服盛ったと?」コワイナオマエ
僧侶「人聞き悪いです、戦士さん」コワクナイデス、プゥ
戦士「その、薬草酒に何か混ぜたんだろ?」スネナイスネナイ。ナデナデ
僧侶「睡眠草をちょっとだけ。寝るに限りますよ、二日酔いは」モットー
戦士「……船酔いも寝るに限ると思うんだが。ふらふらしてるだろ」パ。ササエテタテヲハナシテミル
僧侶「え?そんな事は……あ」フラフラフラ
戦士「眠いだろ」ガシ。モタレトケ
僧侶「くっついてるから、気持ち良いです…」ハイ。スリスリ
戦士「……眠いって言うんだ、それ」ヨイショ、ダッコ
僧侶「きゃッ」キャー
戦士「俺たちも部屋に戻るぞ。今のうちに……ゆっくり眠ろう」チュ
僧侶「はい……そうですね」エヘ
……
………
…………
魔王城
??「…………」
側近「……これ、何時まで続くんだ?」
??「…………」
魔導将軍「そんなに長くは続かないわよ」
??「…………」
側近「だよな」
??「…………」
魔導将軍「大丈夫。今回は……」
??「…………」
側近「特異点、か?」
??「…………」
魔導将軍「そ……どうなるかはわかんないけど」
??「…………」
側近「そうか。じゃあ、俺たちの時より…」
??「…………」
魔導将軍「そうね……きっと、近づける」
??「…………」
側近「断ち切れるか?」
??「…………」
魔導将軍「どうかしらね。でも、亀裂ぐらいは」
??「………ぅ」
側近「…そろそろ、后様も必要だな」
??「………ゥ」
魔導将軍「まだ……ぎりぎりまで…ッ」
??「………ウ」
側近「ああ……ッ泣くなよ、魔導将軍!」
??「……ゥウ」
魔導将軍「あんたもね、ダーリン♪」
??「…………」
側近「阿呆……俺たちは……」
??「…………」
魔導将軍「そう……喜ばないと、ね」
はじまりの街。国王の間
王「よくぞ戻った、勇者よ! おぬし達が旅だったのがまだ数ヶ月前とは…思えぬ程の成長ぶり!」
王「見違えたぞ!素晴らしい!」
勇者「お褒めにあずかり、光栄です」
王「して、本日はどうしたのじゃ?わざわざこの国に戻ってくるとは…」
勇者「はい……王様に一つ、お尋ねしたい事がございます」
王「ふむ…?」
勇者「その目的を達し次第、魔王の居城へと乗り込みます」
王「……重要な、事なのじゃな?」
王「わざわざ旅の足を止め、儂に会う為に戻りくるほどの案件か」
勇者「はい……お許し戴けるのでしたら、どうぞお人払いを」
王「うむ……良し、下がれ!」
王「……これで良いか」
勇者「ありがとうございます」
勇者「王様…母がこの国に訪れ、私が旅立つまでの話を……教えていただけませんか」
王「ふむ……良いだろう。長くなる……そなたも、仲間の皆も楽にし面を上げるが良い」
王「16年前じゃ。そなたの母が、乳飲み子のそなたを連れ、謁見を申し出た」
王「門兵の話を聞くと、その幼子の手には確かに、勇者の印が刻まれているという」
王「儂はすぐに人払いをし、娘に会った」
王「娘は、上質な布でそなたの身体をくるみ、愛おしそうに抱いておった」
王「話はこうじゃ」
王「この子は光に導かれし、運命の子、勇者である。そして、己の息子であると」
王「それ以外の一切を聞かず、この国に住まわせて欲しい」
王「そして16迄育てし後、勇者として旅立たせて欲しいと」
勇者「………」
王「儂は無条件で受け入れた。勇者の印を持つ幼子じゃ。光の加護を持つ、運命の子じゃ」
王「疑うべくもない。住居を与え、生活に必要な金銭を与えた」
王「娘は、そなたを育てるために必要な分以外の一切を受け取らなかった」
王「……そなたの身をくるんでいた織物を見て、すぐに高貴な血筋だろうとはわかっておった、がの」
王「故の事情があるのだろうと、詮索はせずに居た」
王「娘は、こうも言った」
王「50年ほど昔に、魔王が復活したのだと。その魔王を倒すべく産まれた息子を差し出すのは心苦しいと」
王「だが……運命には逆らえない。しかし、この子は確かに、魔王を倒すのだと」
王「自信を持って、告げたのだ」
王「人の口に戸は立てられまい?勇者誕生の話は、既に世界中に広まっておった」
王「そして……16年という長い月日が流れ、娘は立派な母に。お主は精悍な若者に育った」
王「そなたの誕生日の数日前。改めて儂はお触れを出したのじゃ」
王「内容は良く、知っておろう?」
王「50年以上もの昔に復活した、魔王を倒すべく、勇者がこの度討伐へと立ち上がる事となった」
王「故に我こそはと思う者は立ち上がり、勇者の手助けをせよ……とな」
勇者「……はい」
王「ここ何十年もの間に、魔物の数は増え、力をつけだして来たとの報告は各地から受けておった」
王「娘の話を聞いて、得心したのだ。成る程、魔王の復活か、とな」
王「だが、勇者は再び生を得た!前勇者が昔成し遂げた偉業を再度……どうか、世に平和をもたらして欲しい」
勇者「はい……必ずや」
王「ふむ、しかし……こんな話を聞きに参ったのか?」
勇者「少しでも真実を掴むためでございます。叶うならば……二度の復活を許さぬ為に」
王「……そうか。そうじゃな」
王「期待しておるぞ、勇者よ、その仲間達よ!」
王「絶えぬ平和を……!」
はじまりの街
勇者「……どう思う」
僧侶「お母様に、お会いするべきかと」
魔法使い「そうね、話を聞く限り……勇者様のお母様が鍵を握ってる」
戦士「…あれほどすんなり、信じるものなのか?」
僧侶「それは……仕方ありませんよ。目の前に運命の印を突きつけられれば」
僧侶「しかもそれは、平和の為に欠かせないもの」
魔法使い「浮き足立つ…と言えば言葉は悪いけど」
戦士「……筋の通った物語を読むようなものか」
勇者「……家へ、行こう」
勇者(母さん……)
魔法使い(漸く……パーツが揃う…?いえ、でもまだ……)
僧侶(近づいているのは分かる……だけど…この、不安……いえ。寂寥感は…なんだろう?)
戦士(いよいよ……か……守れるか。否……守る!)
勇者「母さん……ただいま」
キィ
シーン……
勇者「母さん……?母さん!」
魔法使い「勇者様?」
僧侶「お母様は……?いらっしゃらない?」
戦士「……でかけている、のでは?」
勇者「……いや、母は、滅多に家を空けたりは…」
魔法使い「お買い物ぐらいは、行くでしょ……帰ることを知らせてた訳でも無いんだし」
勇者「そうか……そうだな」
戦士「……楽観視はしない方が良い。最悪の事態も…想定すべきだ」
魔法使い「戦士!」
僧侶「……大丈夫ですよ、皆さん。不穏な気配は……感じられません」
僧侶「寧ろ……優しく包まれるような…大きくて、暖かい…気配がします」
魔法使い「良い家で育ったのね、勇者様」
僧侶「……母の愛、ですかね」
勇者「……ありがとう」
勇者「良し、帰りを待とう……適当に座っててくれ」
勇者「母さんが帰るまでに……情報の整理だ」
魔法使い「とは言っても……もう、後は……お母様に聞く位しか」
僧侶「一つ、大きな問題が残ってますよ……魔王は人を滅ぼすか否か」
戦士「……そうだ。僧侶、モンスターの気配はどうだった?」
勇者「王の話からは……分からなかったな。信じ込んでると言えばそれまでだが」
僧侶「そうですね、お母様のお話を疑いなく飲み込んで居られました。それに…」
僧侶「モンスターの気配は、確実に強くなっています。あの時、旅立ったときとは……格段に」
戦士「何…?」
魔法使い「……王様の信じ込みも、強ち間違ってない?」
僧侶「はい……魔王が滅し、モンスターの力が弱った。復活に際し、徐々に力をつけた、とすれば」
僧侶「いえ、多分……確実に、その通りです」
勇者「……じゃあ、母さんは」
魔法使い「伏せるべき所は伏せて、全て真実を伝えた、って事?」
戦士「そう判断するのは早いだろう……母君に聞いてからだ」
勇者「……しかし、それが真実だとして」
勇者「魔王が人間を滅ぼそうとしてる、と言う事には繋がらないぞ」
魔法使い「人間の大いなる勘違い、だったかしら……魔導将軍が、言ってたの」
僧侶「モンスターが強くなっていけば……勘違いするには…事足りる」
戦士「………しかし」
勇者「母さん……か」
僧侶「………」
魔法使い「ねぇ、勇者のお母様って、どんな人?」
戦士「なんだ、こんな時に」
魔法使い「良いじゃないの。これ以上……私達だけでぐちゃぐちゃ考えたって」
魔法使い「正直……どうにもならないわよ」
魔法使い(近くて、遠い……もどかしい。けど……進むしか無い)
僧侶(なんだろう……寂しい……とても。この家は、暖かいのに…何故?)
戦士(守るだけだ。信じるものに向かって進むだけだ。だが……すっきりしない)
勇者「母さんは……優しい人だったよ。だけど、何時も寂しそうだったな」
勇者「柔らかく笑って…さっき僧侶が言ったように、暖かく包んでくれるような人だった」
勇者「でも、その笑顔が……寂しそうに見える、んだよな」
僧侶「……貴方の事を、愛していらっしゃったんでしょう。勇者として……送り出さなければいけない運命に…」
僧侶「寂しさを、感じておられた、のかも……」
僧侶「羨ましいです……」
魔法使い「!(そうだ、僧侶は…ッ) あ、ごめん、あの…ッ」
僧侶「謝らないで下さい、魔法使いさん……義理の父が居ましたから」
魔法使い「………ご、めん」
僧侶「もう……」クスクス
勇者「………遅い」
戦士「勇者?」
勇者「俺……ちょっと探してく……ッ」ズキンッ
勇者「痛……ッ」
魔法使い「勇者!?」ガタンッ
勇者「なんだ、これ……ペンダント…?」チカッ
僧侶「……光って、ます」
??「……う、しゃ……ゆう……しゃ」
魔法使い「何か、聞こえる……」
勇者「ペンダントから……この声は、母さん!」
??「勇者……聞こえる?」
勇者「母さん、母さんだね!?今、どこに……ッ」
母「ああ、良かった。通じたね……でも、時間が無いから落ち着いて聞いて?」
魔法使い(また……時間が無い……)
母「今ね、私は……魔王城に居るの」
勇者「な……ッ 攫われたのか!?」
母「……聞いて。あのね、い………ま……」
勇者「母さん!すぐ……ッすぐに助けに行くから!」
母「……… ごめ、 …ね……」
スゥ…
僧侶「光が……消えた」
戦士「……マジックアイテム、の類か?」
僧侶「……いえ、ただのペンダントの様です……今、は」
勇者「母さん!母さん!」
魔法使い「勇者様、落ち着いて! ……今は?」
僧侶「……お母様の気配だけ、感じます」
勇者「……糞ッ くそ、魔王め……ッ許さない……ッ」
僧侶(おかしい……この家には、お母様の守りの力…暖かい、愛情しか感じないのに…)
戦士「行くしか……無いのか」
勇者「すぐに出発だ! ……糞、船で……ここから……ッ」
僧侶「……待って!」
勇者「僧侶、今は……ッ 母さんが!」
僧侶「待って下さい、これ……まだ光ってます!」
勇者「!?」
魔法使い「……な、にこれ……この、魔力……ッ」
戦士「ぐ、う……ッ」
勇者「僧侶、貸して……それ…ッかあさ……ッ」グッ
「「「「!!」」」」
勇者達は、暖かい光に包まれた
……
………
…………
勇者「………う、ぅ…」
魔法使い「勇者様!」
僧侶「気付きましたか…」
戦士「………」
勇者「!!みんな……ここ、は……」
??「ごめんね、無茶しちゃった」
勇者「………母さん!」
魔法使い「勇者様がペンダントに触れた瞬間に、眩い光に包まれて……気がついたらここにいたの」
僧侶「……そして、この方…貴方のお母様がいらっしゃいました」
僧侶「あの光は…お母様の魔法だったのですね」
戦士「…転移術と言うそうだ」
勇者「え……でも、それじゃ……ここは……」
母「うん、そう……魔王城だよ」
母「間に合って良かった。ギリギリだけど……」
勇者「どう…いう、事だよ」
勇者「ああ、いや…そんな事より、母さん、無事だったんだね!?」
母「もう、落ち着いてっていったのに……」クス
魔法使い「お母様……聞きたいことが」
僧侶「教えて…くださいますか?」
母「うん。全部、教えてあげる。まあ……もっとも、嫌でも知る事になっちゃうんだけど」
戦士「……?」
母「とりあえず…ちょっと移動して良いかな」
母「時間が、無いの」
母「歩きながら話すね」
母「本当は、勇者には格好良く乗り込んで来て欲しかったんだけどね」
母「本当に……時間が無いんだ」
魔法使い「……時間が無いって、あの…どういう…?」
母「……魔王が、復活するの」
勇者「!?」
僧侶「…魔王は、まだ復活してなかった…のですか?」
母「正確には……復活準備が終わる、かな」
戦士「復活準備が終わると……どうなる?」
母「………」
勇者「母さん!」
母「順番に、ね?」
母「僧侶ちゃんは、気付いてるよね?」
僧侶「………ハイ」
勇者「何……?」
母「勇者、取り乱さないと約束して」
勇者「……」
母「勇者?」
勇者「……ッ わかったよ」
母「今の私は、魔族だよ。そして魔王の仲間……」
僧侶(………ッ仲間!?)
魔法使い「ちょ、僧侶、どういうこと!?」
僧侶「わ、わかりません、わかりません!魔族であるという、ことは……でもッ」
戦士「どういうことだ……!?」
勇者「な……ん、で……母さん………が………」
母「…さ、ついた。ここだよ」
母「開けるよ?」
勇者「母さん!」
キィ
母「紹介するね側近と、魔導将軍。魔導将軍はあったことあるよね」
母「それから……あれが、魔王」
母「魔王で、私の旦那様で、貴方の……お父さんだよ、勇者」
側近「后様、帰ったか……間に合ったな」
魔導将軍「間に合ったって言うか、間に合わしたって言うか……でしょ」
魔導将軍「久しぶりねぇ、勇者君達?」
側近「うっわぁ……本当に魔王様そっくりじゃねぇか……」
后「ただいま……ああ、もう本当にぎりぎりだったね」
后「魔王……ただいま。帰ったよ……ほら、勇者が、来たよ?」
魔王「………ゥ」
魔導将軍「早速で悪いけど、助けて、后様」
側近「俺達二人じゃもう限界だ……情けねぇけど」
后「うん……そうだね、そうしないと……話す時間、無いしね」
僧侶(これが……魔王……そして、元、ゆう…しゃ……?)
魔法使い(馬鹿な……ッなんなの、この魔力……ッこんなの、どうやったって……!)
戦士(どういう事だ……三人が……魔王を、押さえ込んでいる……!?)
勇者「う、ぅ………うわああああああああああああああああ!」
后「ああ、もう…取り乱さないでって言ったのに」
側近「いや、無茶だから」
魔導将軍「后様は昔から、さらっと酷いよね」
勇者「なんだ、なんなんだよ一体!」
勇者「その、死体みたいなのが……魔王!?俺の父だと!?」
勇者「母さんが……魔族って……どういう事だよ!!」
側近「うっわぁ、なんか反応まで魔王様そっくりだし ……笑えねぇな」
魔導将軍「側近」
側近「……すまん」
母「ごめんね、勇者。でも本当なのほら……魔王の右手、見て?」ヒョイ
魔法使い「勇者の……印!?まさか!」
戦士「勇者は一人しか存在しないんだろう…!?」
僧侶「……いえ、光が感じられませんどころか……」
后「勇者は光に導かれし運命の子」
后「魔王は闇に抱かれし運命の子」
后「光と闇の獣」
后「汝の名は」
勇者「……にん、げん」
后「良く出来ました……っと、こんな格好の侭で御免ね」
魔導将軍「まあ、我慢してちょうだい …魔王様、押さえとかないとさ」
側近「全部吹き飛ばしちまうからなぁ……」
后「大丈夫、最後までちゃんと、話すぐらいは持つから」
后「後は……ちゃんと知って、ね?」
僧侶(ちゃんと、知る……?どういう…意味?)
魔法使い(魔王を押さえる……魔力を全力でぶつけて復活を阻止してる、て事!?何故…)
戦士(魔王は……人を滅ぼす…いや、大いなる勘違い…!?何だ!?)
勇者「……だ、だから何なんだ!人間が……なんだって言うんだ!」
后「うん……説明、するね。質問…全部応えられないかもしれないから」
后「聞いてね」
后「私達は……勇者と旅を共にする仲間だった」
魔導将軍「今でも仲間でしょ」
側近「ちゃちゃ入れんなよ、魔導将軍」
后「…ふふ、で……今の君たちみたいに、魔王の元までたどり着いた」
后「ちょーっと、強引な手段使っちゃったけど」
魔導将軍「……ちょっと?」
側近「だから、突っ込むなってば」
后「本当ならね、持つはずだったんだ。勇者が、魔王と対峙するまで」
后「今まで、そうして繰り返されてきたんだけど」
后「今回は……違ったんだよね。初めて」
魔導将軍「特異点」
后「そう。前代未聞」
側近「お前さんだよ、僧侶」
僧侶「……私!?」
后「そう、ハーフエルフの癒やしの娘」
僧侶「……」
后「…貴方が仲間であると言う事実が、今までと唯一違う点」
魔導将軍「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れる、唯一の亀裂」
側近「……確定なのか?」
后「どうかな。なってみないとわかんないけど」
后「とにかく、今までと違ってる事は、確か」
后「…話、戻すね」
后「私達は、こうして、今の貴方達と同じように」
后「…良く解らない言葉の羅列を聞かされた」
后「私は……水の癒し手、僧侶」
魔導将軍「炎の魔法使い」
側近「緑の戦士、だ」
勇者「………」
すみません。風呂とご飯を。
また夜に。
うおおおおう。もすこし!
后「そして、魔王は勇者」
后「正直、訳が分からないよね」
后「でも、それで良い。貴方達は……後に、知る」
魔導将軍「永劫に繰り返されたろう、行為」
側近「……もう、分かるだろ。俺たちの目の前に居た魔王は………」
后「同じ。貴方と同じ。魔王と同じ」
后「右手に、勇者の印を持っていた」
后「私の、愛しい魔王と同じ」
后「光は跡形も無く枯れ、闇に焼き尽くされた、漆黒の剣の印」
后「なぜなら………勇者は、魔王の眼前に」
后「そう、貴方……愛しい、私の子供……汝の名は、勇者」
僧侶「………勇者は、世界に一人しか存在できない」
僧侶(まさか……)
魔法使い「光は…光の加護を受けられるのは、勇者だけ」
魔法使い(そんな……)
戦士「……勇者は、魔王を倒す」
戦士(馬鹿な……)
勇者「そして……魔王に」
勇者(なった、のか……?)
后「優秀だね、貴方達は」
側近「……俺たちも同じだったろ、后様」
魔導将軍「そうだっけ?側近もう少し、パニクってなかったっけ」
后「正確にはちょっと違うかな」
后「勇者は魔王を倒す。倒すんだけど」
后「……魔王は勇者の光を奪い去る」
后「勇者は、魔王の闇を手に入れる」
后「光と闇」
魔導将軍「表裏一体」
側近「弱くもあり強くもある」
后「汝の名は、人間」
后「勇者が滅び、魔王が産まれる」
魔導将軍「魔王が滅び、勇者が産まれる」
側近「腐った世の中の、腐った不条理 ………理解、したか?」
后「……繰り返される、運命の輪」
后「……さて、時間が無いね」
側近「泣くな、魔導将軍。喜べ……俺たちは喜ばなくちゃいけない」
魔導将軍「わ……ッ 分かってる、わよ…!」
勇者「……ッ どういうことだよ!俺が……魔王になるのを、喜ぶのか!?」
后「…ごめんね、勇者。でも、魔王はこれでやっと解放されるの」
后「魔王を解放するためには、貴方が……魔王になるしかないの」
后「……もし、それを否とすれば……この世界は、存在した事実を失う」
僧侶「……世界が滅びる、と…言う事ですか」
后「うーん、まあ、そうかな」
魔法使い「そんな……ッ」
戦士「……お前達が、前勇者と旅をしているときに、その選択肢を選び取ることだってできただろう!」
后「うんそうだね、ご尤も」
魔導将軍「私達も、そう思ったよ、勿論」
側近「何で俺たちだけ、ってな」
后「だったら、どうして……勇者が産まれるの?」
后「何代も、何代も語り継がれる、勇者と魔王の戦い」
后「誰かが選択肢を間違えれば、終わっていた世界」
勇者「……勇者は、世界を救う、んだ」
僧侶「勇者様!」
戦士「勇者……」
魔法使い「………!」
勇者「勇者は、世界を救う。勇者は魔王を倒す……魔王は、人を……世界を、滅ぼす」
后「…自分の子供に、こんな事を選ばせる私は、親失格だよね」
后「魔王が解放されるのは、嬉しい」
后「でもね、私達が喜んでいるのはね…」
魔導将軍「喜ばなくてはいけない理由があるからよ」
側近「そう。ここからは、前と違う……」
勇者「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れる、唯一の亀裂……特異点」
僧侶「!!」
后「そう……僧侶ちゃんの、存在」
魔導将軍「私達は、人間から……魔王様の力で魔に変じた」
側近「人間は唯一、闇を選び取り、魔に変じる事ができる」
戦士「……ッ 待て、それじゃ…ッ」
后「繰り返される腐った不条理に、射した一条の光……ああ、もう駄目ね、限界だわ」
魔導将軍「心配しなくても大丈夫よ、貴方達は、ちゃんと知る事ができる。全てを…… ……魔王様、くッ」
側近「俺たちが知る事のできなかった分まで、ぜーんぶ、な……ッ くそ、もう……ッ」
バチバチバチッ
魔法使い「あ……あ、ま……魔王が……ッ」
戦士「立ち上がる……ッ!?」
后「勇者!滅びを選ぶなら、それも構わない!それも……ッ」
魔導将軍「それでも、変わる! ……勇者、選ぶのよ!」
側近「……ッ この腐った世界に、光……ッ を!」
魔王「………お前が、勇者か」
バチバチバチッ
勇者「あ、 ……あ……」
バチバチバチッ
魔王「さあ、我が手を取れ」
バチバチバチッ
勇者「………ッ」
バチバチバチッ
魔王「光と闇は、表裏一体。どちらを欠いても存在できぬ」
バチバチバチッ
勇者「……拒否権は無いんだな」
魔王「ああ……世界は美しい」
勇者「俺は……魔王を、倒す!」
バチバチバチッ!
パキン……ッ
…
……
………
…………
??「………さま、 ……さま」
魔王「う……うん……?」
??「魔王様、お目覚めですか?」
魔王(………ッ)ガバッ
僧侶「勇者様!」
魔法使い「勇者……さま…!」
戦士「……勇者、大丈夫か」
魔王「え………俺? …え?魔王…?」
魔王(ここは……ベッドの上?)
魔王(ああ、そうか、俺は………)
魔王(そうか……もう、勇者じゃ無いのか……)
??「お加減、如何ですか?」
魔王「…君、は?」
使用人「この…代々の魔王様にお仕えし、城を守っております、使用人と申します」
魔王「え?はい……?」
使用人「貴方は、いえ……貴方達は、お知りになる」
魔王「君が……全てを教えてくれる、と?」
使用人「私の知る限りはなんなりと……ですが」
魔王「?」
使用人「お食事を先に……色々、お話もあるでしょう。どうぞ……」
魔王「あ……」
使用人「失礼致します」スタスタ、パタン
僧侶「……良かった、目、覚めて……」フエ
魔法使い「勇者、様……勇者様!」ダキッ
戦士「……覚えて、いるか?」ナクナソウリョ
魔王「ああ……何となく…」マホウツカイ、ウレシイケドクルシイ
魔王「あ!勇者の印……! ……ッ 真っ黒、だな」
戦士「……僧侶」
僧侶「ハイ……」
魔王「……僧侶、君は……感じた?」
僧侶「ハイ、色々と……感じ、見………知り、ました」
僧侶「もう……魔王様、とお呼びするべきでしょうか」
魔王「……そうだな。俺は魔王を……倒した」
魔王「世界を……守ったんだ」
僧侶「ハイ……貴方は、誠に……輝かしい、光の勇者様でありました」
魔王「!!母さんは……ッ魔導将軍と、側近は……!?」
僧侶「……魔王を含め、あの方々は……失われました」
魔王「う……し、なわれた?」
魔法使い「………」
戦士「………」
僧侶「悠久の空の彼方へ還り、この……世界へ孵るのだと」
魔法使い「…貴方のお母様が、貴方に……伝えて、と」
戦士「そして……ありがとう、と」
魔王「………ッ」
僧侶「……恐らく」
僧侶「あの方達も、こうして……同じ経験をなぞってこられたのでしょう」
僧侶「……ゆ、魔王様のお力でその身を闇に染め」
僧侶「来るべき、次代の勇者様に……真実をお伝えするために」
魔王「………」
戦士「……特異点」
魔王「戦士?」
戦士「唯一以前と…今までと違う点……僧侶の存在だ」
魔王「………」
僧侶「………」
魔法使い「………」
魔王「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れる、唯一の亀裂…か」
魔法使い「繰り返し、繰り返し……修復を許さなかった物語のページを」
魔法使い「書き換える可能性が出てきた、って事ね」
僧侶「一字一句違えば……それは、別の物語になり得る可能性がある」
僧侶「しかし……」
魔王「可能性は可能性に過ぎず、決定では無い」
戦士「……俺は」
戦士「お前達と共にあり、次代への……希望があるのなら」
戦士「闇に身を染めても構わん……だが!」
僧侶「………私は、人ではありません。魔へと……変じる事は、できません」
魔法使い「……ねぇ、魔王の子が勇者、と決まったわけじゃ無いんでしょ!?」
魔法使い「ま、魔王が…子供を作らなければ良いだけじゃないの!?」
僧侶「……確証はありませんよ、魔法使いさん」
僧侶「幸い……か、どうか分かりませんが、魔王様を除いた私達の身体に……まだ、変化はありません」
僧侶「このまま……魔王様だけを置いて、私達の世界に帰ったところで」
僧侶「もし、どこかで……勇者様が産まれたら」
僧侶「……魔王様の復活を、止める人がいなければ、世界は、失われます」
僧侶「勇者様……魔王様が、救った世界が……滅びます」
魔法使い「………」
戦士「………」
戦士「選ばざるを、得ないのか……ッ」
魔法使い「………」
僧侶「私は、ハーフエルフですから」
僧侶「人よりは、遙かに永い時間を生きることが出来ます」
僧侶「戦士さん……以前、話しましたよね?」
戦士「……?」
僧侶「残すのは、辛いと」
戦士「……ッ ああ」
僧侶「解決……しましたよ?」ポロポロポロ
戦士「じゃ、じゃあ……何故、泣くんだ!」ギュ
僧侶「人より、永く生きられますが……魔族の様に、永劫に近い生は持ち得ません」ポロポロ
僧侶「私が……残して行く、側になっちゃいます、ね……」フェ……ウワアァァン
魔法使い「……ッ」ヒック
魔王「……」オマエガナクナ、マホウツカイ……グス
戦士「……ゆう……魔王」
魔王「……なんだ」
戦士「俺を、魔族にしてくれ」
魔王「……おい」
戦士「それから、お前と魔法使いに、子供が出来る迄の間に」
戦士「僧侶と旅に出ることを許してくれ」
魔法使い「な、ななななな、なに、なにいってんのよ、戦士!?」
戦士「……来るべき時には、必ず戻る」
魔法使い「戦士!ちょっと、あんた……ッ 聞いてるの!?」
戦士「じゃあ…お前は、国へ帰るのか?」
魔法使い「……じょ、うだんでしょ……私は……魔王様の力で魔族に、なるのよ!」
魔王「お、おいおいおい、お前ら落ち着けよ!」
魔法使い「……選び取るのは、私よ!自分よ……この、手でちゃんと……選ぶのよ!」
魔法使い「それとも、な、何よ!私と、その……ッ こ、子供…ッ作るのは……!!」
魔王「あああああ、分かった!分かったから黙れ! 嫌じゃ無い!嫌じゃ無いから!」
魔法使い「……仮説、だけど」
魔法使い「もし、勇者の子が、次の勇者になるなら……」
魔法使い「……わ、私、しか……いないでよ!?」
魔法使い「折角勇者様が……アンタが守った、この世界を」
魔法使い「最悪の形で、終わらせる訳に……いかないじゃない!」
魔王「うん……いや、だから、わかったから……黙って……」ギュ。スゲェハズカシインダケド
コンコン、カチャ
使用人「お話はお済みですか?」
「「「「!!!!」」」」マッカッカ
使用人「私の事はお気になさらず、どうそ……お食事の準備ができましたので」
魔王(つったって、なぁ……)
僧侶(は、はずかしい……)
魔法使い(アナガアッタラハイリタイ……)
戦士(………何も考えまい)
魔王「使用人、ちょっと聞きたいんだが」
使用人「はい、何でしょう?」
魔王「……こいつらを、魔族にしようと思えば、どうすれば良いんだ?」
使用人「ああ……簡単です」
魔王「簡単?」
使用人「はい、願えば良いのです。願えば……必ず、叶います」
魔王「……そうか」
使用人「ですが、ひとまず……お食事に」
魔王「あ、ああ……」
僧侶「あ!あの、使用人さん!もう一つだけ……」
使用人「はい…?」
僧侶「これ……勇者様の持っていらした光の剣なんですが……」
使用人「………!! これは!?」
魔王「相変わらずぼろぼろだな……ん? これ……」
僧侶「はい……」
僧侶「勇者様が、魔王を……倒されたとき。私達は、勇者様の身体から発する激しい光に包まれました」
僧侶「そうして……その一部がこの剣に吸い込まれたのです」
使用人「………まぁ」
魔法使い「……?」
僧侶「光が……あの方達と共に失われた後には、私達と……これだけが残されていたんです」
魔王「………」
使用人「特異点……そうですか」
僧侶「……?」
使用人「以前の時、は。この剣に、亀裂が一つ増えました」
使用人「そして、刀身の光は……消えゆく魔王様方と共に、微かの残照を残し、失われたのです」
僧侶「……違う」
魔王「ああ……光は」
僧侶「この剣から失われた筈の光は……完全に、では無いですが、かなり取り戻されています」
使用人「はい……刀身の傷は、変わりませんがね」
使用人「優れた鍛冶師に任せれば……かつての輝きを取り戻すかもしれません」
戦士「………そうか、これも」
魔法使い「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れる、唯一の亀裂の一部!」
魔王「……そうか、ふふ……変わった、んだな」
戦士「ああ……俺たちは無駄じゃ無かった」
魔法使い「違うわよ、戦士……一歩前進、て言うの」
使用人「……では、お席にどうぞ」
……
………
…………
数年後
魔王「おい、后。癒し手と側近は?」
后「旅支度中よ!魔王様も手伝いなさいよ!」
魔王「ああ……そうか、今日…立つのか」
后「……寂しい?」
魔王「そりゃ……な。て、お前、それ何持ってんだよ」
后「ん?おくるみ」
魔王「……おくるみ?ただの毛布じゃねぇか」
后「子供が生まれた必要でしょ-?使用人に頼んで作ってもらったのよ!」
后「最高級の糸で編んだ、あったかいの! ……綺麗な、水色でしょ」
魔王「……ああ、まぁ」
后「貴方も……こういうのに大事に包まれて、抱かれて……」
魔王「……!お前……」
后「記憶力は良いのよ、私」
后「いざとなれば売れる!最高級品!」
魔王「……おい!」
后「……冗談よ」
魔王「うん…綺麗な色だ」
后「そ……癒し手の…瞳と一緒の色にしたの」
魔王「成る程、ね」
癒し手「あ、魔王様、后様!」
側近「癒し手、走るな、転ぶ!」
癒し手「魔王様……后様。旅立ちを許してくれて、ありがとうございました」
魔王「気にするな……エルフの里、見つかると良いな」
癒し手「はい……願えば、叶いますよ」
魔王「……そうだな」
側近「魔王……行ってくる」
魔王「ああ」
側近「…すぐ、知らせろよ」
魔王「分かってるよ」
后「私、外まで見送るわ」
魔王「ああ、頼んだ……じゃあ、二人とも。また後で、な?」
癒し手「はい!」
側近「留守は頼んだ……魔王、執務サボるなよ」
魔王「……ッうるせぇ、早くいけ!」
魔王「……いった、か」
魔王「……子供か」
……
………
………
魔王「一ヶ月?」
使用人「人の子の時間にしてほぼ、ですが」
魔王「そうか……」
使用人「次代の勇者が産まれてから、復活準備に入るまで」
使用人「ほぼ、それぐらいしか、魔王様のお体は……絶えられません」
使用人「闇に身を染めたとは言え……元勇者ですから」
使用人「微かな、光の残照は……貴方を、苦しめます」
使用人「その後は……」
魔王「ああ、分かってる……后と側近の魔力で押さえてもらうしか無い、んだな」
使用人「……はい。ですが」
魔王「ん?」
使用人「そこに、癒し手様のお力が加わった場合は……未知数です」
魔王「……良いも悪いも、な」
使用人「……ハイ」
使用人「特異点の存在により」
使用人「前后様も……」
魔王「……転移術、とやらで俺たちを強引に連れてきた、な」
使用人「ハイ」
魔王「そうか……わかった。ありがとう……下がってくれ」
……
………
…………
魔王「一ヶ月、か……」
魔王「……親父の顔なんか、覚えてないもんな」
后「どうしたの、魔王」
魔王「ん?いや……ああ、そうだ、后」
后「何?」
魔王「これ……やるよ」
后「……これ、あの時の……ペンダント」
魔王「ああ……母さんが俺に…旅立ちの時に貸してくれたんだ」
魔王「親父からもらった大事なものだから、返してねって言われたけど……」
后「………」
魔王「もし、子供が生まれたら……否、いいさ」
魔王「后の、好きにしたら良い」
后「魔王………」
魔王「大丈夫だ……次代は無理でも、その次がある」
魔王「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れる、唯一の亀裂……」
魔王「俺たちは確かに、それを刻んだんだ」
后「そうね……願えば必ず……」
魔王「ああ……叶うんだ」
遠くて近い、未来―――
勇者「ええと……君は…」
??「あ、はい!あの、まだ……レベル1の、魔法使いなんですけど……」
??「知識と、魔力には自信があります!それに…鍛冶も得意です!」
おしまい
長い時間オツキアイありがとうございました!
題名考えて、なんとなーく勇者が魔王で~って考えて
そのまま勢いでスレ立てたので
考え考え書いてたら遅くなりました。
見て下さってありがとうございました!
伏線回収しきれたか不安。
そんで無駄に続けようかと思っちゃったりしちゃったり。
とりあえず質問とか……あればこたえますー
寝ちゃったら、明日w
えー…
僧侶がハーフエルフであることがこれからどうなってくのか気になってたのに…!
一乙!
>>302
その辺は次に書く予定です
(もう予定にしちゃったり)
すぐ書き出すかどうかは未定ですが
魔王「ああ……世界は美しい」
に、続けます……多分
遅くまでありがとうございました。
私もこれで眠れます……
それでは!
おっ!
もう>>1居ないかな?
僧侶と戦士が好きな俺が拙いながらもイメージ描いてみた。次スレに期待を込めてhttp://i.imgur.com/EaLfkVa.jpg
http://i.imgur.com/LzEfRiP.jpg
おはようございます!
>>324
ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
一発で目さめた!
すげぇ!
ありがとー!
午後からかけたら続き書きます。
が……ちょっと色々考え中
先に、番外編ぽいの書くかも。
新しいスレ立てたら、ここに書いた方が良いんでしょうか
何個も立てていいんかな……
>>324です
反応貰えてて嬉しい!帰ったら勇者と魔法使いも描こうと思います。
遅筆だからスレ落ちて無ければまた載せに来ます!!
もどりましたー、1です
が、もうすぐバイトです
少しだけ
>>336
可愛い僧侶と戦士ありがとうございました^^
始まりは終わりだった。
古の神との忘れられた契約。
限りなく遠く、果てしなく近い最果ての地。
神は光と闇を生み出し、大地を作り水を育み炎を抱き過ごした。
一つ、命が産まれた。
それは紛れも無い命だった。
それは感じ、見、知る事ができた。
神はそれに、ヒトと言う名を与えた。
一つ、命が産まれた。
それもまた、紛れも無い命だった。
それは生み出し、使役する事ができた。
神はそれに、マと言う名を与えた。
ヒトとマは交わり、様々な命を産みだした。
神はその都度、相応しい名を与えた。
何時しか、命は神の手を離れた。
ヒトとマの境界は薄れ、何時しか光と闇は混じり合った。
命は国を作った。
太陽が昇り、月が沈む。
命は命を作った。
月が昇り、太陽が沈む。
命は、命だった。
光と闇だった。
命は、光と闇の獣だった。
……
………
…………
少女「………」ポケー
神父「……聞いてますか?」
少女「……ッ あ、すみません、神父様!」キイテマス!
神父「ふふ……怒ってはいませんよ、僧侶」
僧侶「すみません……なんだろう、話を聞いていると…」
僧侶「目の前に……イメージ?が…広がったんです」
神父「……ほう?どんな?」
僧侶「神様は、大きくて……暖かい、風の様でした」
僧侶「そこに優しい水と、力強い炎と、暖かい風が絡んで……」
僧侶「輝く影がどこまでも伸びているような……」ハッ
僧侶「ご、ごめんなさい、偉そうに……ッ」
神父「……いいえ。そうして想像する、膨らませると言うのは大事なことですよ」
神父「想像力があると言う事は、魔法を扱う上で重要ですからね」
神父「……貴女は、色々な事を感じる取る事ができますから」
神父「良い、癒やし手になるでしょう」
僧侶「あ、ありがとうございます……」
神父「さて、今日はここまでにしましょう。この本を書庫に直し、食事の準備を手伝って下さい」
僧侶「はい、神父様」
神父「午後からは、お使いを頼まれてくれますか?」
僧侶「はい、私でよろしければ」
神父「では、裏山で薬草を摘んできて下さい。種類はあとでメモにしておきますから」
……
………
…………
僧侶「ええと……これ、と…これと」プチプチ
僧侶「あれ、これどっちだっけ……確か、これが……」プチプチ
僧侶「ふぅ、こんなモン……かな?」
僧侶「……よし。さあ、日が暮れる前に帰らなく……ッ !!」ドクン!
僧侶(なに、これ……ッ 胸、が……ッ)ドクン
僧侶(違う、頭……ッ 何かが……)ドクン
僧侶(流れ……こんでくる……!?)ドクン、ドクン
僧侶「ヒ、カリ、と……ヤミ…… 失われ……」
僧侶(な、に……!? …寂しい、辛い……イタイ、カナシイ…… )
僧侶「……二つの、大きな……命…… 失われた……?」
僧侶(まだ……どきどきしてる……)
僧侶(………胸が、苦しい)
僧侶「………早く、戻ろう………神父さま ……のところ」タタタッ
……
………
………
僧侶「神父様!」バタン!
神父「…どうしました、僧侶。ドアは静かにね?」
僧侶「す、すみません、あの、あの……ッ」
神父「落ち着いて……ね?何があったのです」
僧侶「……先ほど、何か……大きな…光と、闇…? あの」
神父「……?」
僧侶「……二つの、命が……失われました」
神父「………」
僧侶「その……感じ、ました」
神父「そう、ですか……」
僧侶「………」ジィ
神父「大丈夫です、僧侶。そんな不安な顔をしないで」
神父「……貴女は、感じる事ができますから」
僧侶「でも、こんなの……し、知り……ません」
僧侶「……悲しくて、寂しかった」
僧侶「とても……」ポロポロポロ
神父「私には…残念ながら感じる事はできませんから、貴女の涙を共有する事はできませんが」
神父「気を強くもって下さい……引きずられてはいけませんよ」
僧侶「……はい」
神父「貴女がもう少し大きくなったら……お話ししますね」
僧侶「……?」
神父「いえ……それより、薬草は集まりましたか?」
僧侶「あ、はい……!睡眠草と、着つけ草……それから毒消し草です」
神父「………僧侶」フゥ
僧侶「はい?」
神父「……着つけ草と毒草は間違いやすいから、気をつけてとあれほど」ハァ
僧侶「あ、ああああ!すみません!」マタヤッチャッター!
神父「全く……明日、やり直しです」
……
………
…………
僧侶「神父様、薬草集まりましたよ」キィ、パタン
神父「……ああ、お帰りなさい……すみません。その机の上に」
僧侶「はい……すぐ、お食事にしますね」
神父「僧侶、その前に」
僧侶「……はい?」
神父「話しておきたい事があります」
僧侶「無理、なさらないで下さい…神父様、お顔の色が……」
神父「では、なおさらです………貴女を、森の中の川の傍で拾って」
神父「……もう、30年以上経ちました」
僧侶「はい……」
神父「私は……老い、もう歩く事も侭成りません」
神父「貴女は……人では無い。今の姿は……未だ、少女のそれです」
僧侶「……はい」
神父「気付いていました……よね」
番外編と良いながら、長々と書いてしまいそうです。あああああああ。
途中ですが。バイト行ってきます。
夜戻れたら戻ります。
勇者「拒否権はないんだな」
武井「そうなのぉ~~~~~!!」
あ
「きょ、拒否権は、な、ないんだな」
「そうなのぉ~~~~!!」
僧侶と戦士が愛されすぎて吃驚した……
324ありがとう
続き頑張る
僧侶「………」
神父「モンスターが、力をつけ始めています」
僧侶「……はい」
神父「以前、貴女が言いましたね……あの日を、境に」
神父「とても輝かしい光が産まれた。この世の全ての光の祝福を受けるべき、命が産まれたようだ……と」
僧侶「…はい。まだ私が幼い頃に感じた……命の灯火の消失の時と、同じように……感じました」
僧侶「ですが……」
神父「……貴女は、悲しそうな顔で続けてこう言った……」
神父「至上の喜びの様で居て、とても寂しく悲しいと」
僧侶「……あの時、神父様は……何も教えてくれませんでした」
僧侶「自分には感じる事はできないから、と」
神父「はい」
僧侶「……どうして、と。今、お聞きしてもよろしいですか…?」
>>1おかえりお疲れ様!!
魔法使い全体像がなかなか難しい...途中イメージだけどアドバイスとかこういうイメージとかあればお願いしますhttp://i.imgur.com/XCr1zXr.jpg
神父「その前に……おさらいしましょう」
僧侶「……?」
神父「貴女が自分の目で本を読み、感じ、考える事ができるようになった頃」
神父「私は、貴女のお母様の事を初めて話しました」
神父「ショックを受けるだろうとは思いましたが……何れは知らねばならぬ事です」
神父「貴女が、私を父の様に慕ってくれている事は分かっています」
神父「私も、娘の様に……貴女が、可愛い」
神父「ですが……貴女は、エルフの娘」
神父「人の子よりも遙かに永い時を生きる貴女は……いつか己の姿に、私と……人と違う者であることを」
神父「……感じ、知るのですから」
僧侶「ハイ……」
>>374
うわあああああ、可愛い!
えーと、自分の中のイメージは……あー
スレンダー(ひんぬー)で勝ち気なおねーさんタイプ、かなぁ
でも凄い可愛い!
なんとなーくショートヘアなイメージだったんだけど
……そうか、こんなに可愛いイメージもってくれてのか!
ありがとおおおおおおおおおおおおおおおお!
やる気出てきた!
書くよ!
……しかしあれです。
自分に絵心ないので羨ましい限り。
そんでもってこうやって書いて貰えるのはものすげぇ嬉しい。
神父「貴女の母であろうエルフは、産まれたばかりの貴女と、エルフの弓をこの世に遺しました」
神父「それは……きっと意味のあることなのだと思います」
神父「私の教えは、幼い貴女には辛かった事でしょう」
神父「毎日のお祈りも、古書を読み解く事も、薬草の扱いも……」
神父「なのに貴女は、文句一つ言わず、素直に従事してくれた」
神父「今では、初歩的な回復魔法も身につけ、あまつさえ、弓の才能までも開花させた……」
神父「エルフの血を引くというだけでなく、貴女自身のがんばり、努力の賜です」
神父「もし、何時ぞや……くじける事があっても」
神父「血を、知を……誇り、胸を張って前に進もうとして、下さい」
>>374
こりゃまた可愛いね
イメージではショートボブくらいの、やっぱり1と一緒で勝ち気で気が強い感じかなー。お酒好きみたいたし、サバサバ系な。
んー、そうだなぁ、年齢は
戦士=魔法使い>勇者>僧侶(見た目だけ)
かな
18前後>16>14.5(実際は60前後)
みたいな
>>379
おう、前下がりボブとか良い感じw
僧侶「……ハイ」グス
神父「泣き虫なところは……幼い頃の侭ですね」クス
神父「泣くことなど、無いでしょうに……」
僧侶「……ッ は、ぃ…です、が……」
神父「私の……命の火はもう……そんなに、小さいですか?僧侶」
僧侶「!!」ビク
神父「……ふふ、素直さも貴女の良いところですよ」
神父「僧侶、貴女の父は……人間です」
僧侶「……え?」
神父「回復魔法は、弱くも強くもある……人の子だけが扱える特別なもの」
神父「人間だけの特権です……エルフの血を引く貴女が扱えると言う事は」
神父「貴女の半分は、人の子の血で構成されていると言う、証」
神父「貴女は……ハーフエルフ。その正体を知られると…」
神父「危険な目に遭うこともあるでしょう…なるべく、人には知られない様に……なさい」
僧侶「神父様……! わ、私は、ずっとここに……ここに、居ます!」
説明が難しいなぁ…
後ろから前に向かって、長くなってくボブヘアかな
ちなみに、僧侶は昔からどじっこ
神父「それは、なりません」
神父「私が土に還ったら……貴女は、ここを旅立ちなさい」
僧侶「神父様!」
神父「私には感じる事はできません。ですが……世界には、この美しい大地のどこかに」
神父「きっと……貴女を必要とする、人が居ます。から……」
僧侶「………」グス……ヒック
神父「なるべく、街を転々となさい。一所に長く留まらぬ様……」
神父「なるべく、人に奇異の目を向けられぬ様……貴女が、危険な目に遭わない様に」
神父「自分自身で、回避してください」
僧侶「……ッ」グス、ポロポロポロ
神父「さっきの質問に、応えましょう……あの時、答えなかったのは」
神父「簡単です……答えられなかった、からですよ」
僧侶「……神父様」
神父「何度も、言いますが……私は感じる事はできません」
神父「僧侶、貴女のその感情は貴女だけのもの」
神父「貴女が今まで見て、知り感じたもの……今から、そうするであろうもの」
神父「一つ一つを大事にし……自分で、答えを見つけなさい。見つけて……下さい」…ゴホッ
僧侶「神父様! …もう、もう良いです!もう良いですから……しゃべらないで!」
神父「大丈夫です………私は神に仕える者…死は……いえ、怖くないと言えば嘘でしょうね」
神父「ですが……この暖かい大地、澄み渡る空……そういう、モノ一つになれるのです」
神父「……寂しくは、ありません。だから、貴女も……そんなに泣かないで」
僧侶「……神父様、嫌です……ッ」ギュッ
神父「ごめんなさい、僧侶……そうして抱きしめられても」
神父「貴女の髪を撫でる腕は、上がらないんです……」
神父「……僧侶。良く聞きなさい」
神父「貴女が感じた、輝かしい命の誕生……それは、多分」
神父「勇者様の…命の、光です」
僧侶「勇者……さま?」
神父「そうです……人間を、世界を……命を滅ぼす、魔王を倒せる唯一の希望」
神父「光に導かれし、運命の……子」
神父「貴女が、例え……勇者様と共にあらずとも」
神父「その光を……視界に写し、心に焼き付ける事は……」
神父「貴女にとって……プラスになるでしょう」ゼィゼィ
僧侶「神父様!神父様! いやああああ!」
神父「すぐに…で、無くて良い……何時か」
神父「ここを離れ、貴女の旅に……出るのです……僧侶」
神父「私の………む、す………」スゥ……
僧侶「神父様!嫌です!いや………ッ あ……ッ」
神父「………」
僧侶(……神父様の、命の、炎が………きえ………)
僧侶「神父様ぁぁぁぁぁ!」ウワアアアン
僧侶「……一人は、嫌、で………す……」
……
………
…………
僧侶(あれから……どれぐらい、たったんだろう)
僧侶(……神父様の弔いを済ませて、書庫にある本を片っ端から……読んで過ごした)
僧侶(何度も神父様に読んでいただいたおとぎ話から)
僧侶(昔は難しくて、読めなかった……古詩や魔術書まで)
僧侶「………」
僧侶(私は……これからどれぐらい)
僧侶(一人で過ごさないといけないんだろう)
僧侶(一つの所に留まることは……出来ず)
僧侶(……親しい人も、作れない。心を……許せない)
僧侶(………エルフの、血なんて)
僧侶(ハーフエルフなんかに、産まれた為に……ッ)
僧侶(…………)
僧侶(……勇者様、か)
僧侶(私には……関係、無い世界の出来事)
僧侶(世界なんて、終わるなら………終われば、良い)
僧侶(私は………ッ)
……
………
…………
僧侶「神父様……」
僧侶「こうして、毎日……話しかけても」
僧侶「貴方は……もう、答えては下さらない……」グス
僧侶「神父様。お言いつけ通り……旅に、出ようと思います」
僧侶「神父様の魂は、空の彼方へと還られた……」
僧侶「……器を蔑ろにする…私を、許して下さい」グス
僧侶「本当は、嫌です。嫌ですけど……」
僧侶「…………行ってきます。偶に、帰るのは……構いません、よね?」
僧侶「………」
僧侶「………」
僧侶「………」クルッスタスタスタ
……
………
…………
街
僧侶(ここは……水分と賑やかな街ですね……)
僧侶(?? …あっちに人だかりが)スタスタ
「ねぇねぇ、聞いた!?勇者様が、お生まれになったんですって!」
「知ってる!でもさぁ、まだ幼い子供なんでしょ? …残念!」
「お前何考えてんだよ、歳が合ってても相手になんかしてもらえねぇよ」
「そういう意味じゃ無いわよ! …一目みたいじゃない、ねぇ?」
「旅立たれるのって……16歳になったら、よねぇ、確か」
「その頃……ああ、私達おばさんねぇ……」
「だから、さぁ……」
「い、良いじゃないの!夢見るぐらい!」
僧侶(………夢、か)
「で、何処の国にいらっしゃるの?」
「始まりの街だってさ……この近くの港から船が出てるし行ってくれば?」ゲラゲラ
「だからそんなんじゃないって!あぁ……でもさぞかし美少年なんだろうなぁ」
「……顔で魔王倒す訳じゃねぇだろが」
僧侶(はじまりの街……港)
僧侶(勇者様が……16歳になるまで……否。ずっとこの街にはいられない)
僧侶(かといって、はじまりの街に今から滞在する訳にも……)
僧侶(………)
僧侶(仕方ない……港に近い町なら、人の出入りも激しいでしょうし)
僧侶(しばらくは、ここに……)
僧侶(それから……2.3年ごとに)
僧侶(……だったら、多分大丈夫……よね)
僧侶(まずは、教会探さないと……)
僧侶(働かなきゃ)
僧侶「えっと……」キョロキョロ
僧侶「あ……すみません、そこの……えっと、お嬢さん」
??「え?私? …なぁに、お姉ちゃん」
僧侶「私……今日この町に来たばかりで。教会を探しているんですが……」
僧侶「知ってます?」
??「ええ、知ってるわ。そこの細い道を、丘の方に上がっていったらあるわよ」
僧侶「ああ!そうですか……ありがとう!」
??「……お姉ちゃんは、えっと…かみにつかえるおしごと、とか言う…人?」
僧侶「ええ、そうです。よく知ってますね」ニコ
??「回復魔法が得意なのよね!私もね、大きくなったら、一杯魔法覚えたいの!」キラキラ
僧侶「そうですか……頑張って下さいね」
僧侶(夢のある、目………夢、か)
??「そう!私のお父さんとお母さんは、とっても強い魔法が使えるの!」
??「私も、お父さんとお母さんみたいになるんだ!」
僧侶「……素晴らしい夢をお持ちですね。くじけないように…頑張ってくださいね」
僧侶(父……母。 ……ああ、神父様、私は……ッ)
??「……お姉ちゃん、どうしたの?どこかいたいの?」オロ
僧侶「え?」
??「なんか……泣きそうな顔、してる」
僧侶「あ、ああ… いいえ。大丈夫です。何でもありませんよ」
僧侶「修行の辛さを、ちょっと……思い出しただけです」
??「う……やっぱり、辛いのね」ウゥ
僧侶「ああああ、いえ、でも、あの! …夢に向かって、頑張れば……きっと、叶いますよ」アタマポンポン
??「……うん!私、頑張る!」ニコ
僧侶「……あ、あれ…そういえば、お一人ですか?」
??「ううん、お父さんとお母さんは、あそこの道具屋さんで……あ、来た!」
僧侶「ああ……良かったです。貴女はこの町に住んでいらっしゃるんですか?」
??「ううん、これから船に乗って、遠い街まで帰るの」
??「港町はコウエキがサカンだから……何とか?」ヨクワカンナイ
僧侶「そうですか……では、旅の無事をお祈りしていますね」
僧侶「ありがとうございました、お嬢さん」
「魔法使い!帰るわよ!」
魔法使い「はーい、ママ!お姉ちゃん、バイバイ!」
僧侶「ええ、さようなら……さて、教会は……あっちですね」
……
………
…………
命は国を作った。
太陽が昇り、月が沈む。
命は命を作った。
月が昇り、太陽が沈む。
命は、命だった。
光と闇だった。
命は、光と闇の獣だった。
光は星でもあった。
静かに、音も無くただ、大地を照らし続けた。
闇は夜でもあった。
静かに、音も無くただ、大地を包み込んだ。
獣は、獣だった。
雨に濡れ、太陽に灼かれても。
命として、そこにあった。
番外編1 おしまい
番外編2につづきます
獣は、獣だった。
雨に濡れ、太陽に灼かれても。
命として、そこにあった。
獣は、ヒトだった。
ヒトは、雨を凌ぎ、太陽を凌ぐ術と知を身につけた。
ヒトは、弱かった。
命は、儚かった。
父「今だ、魔法使い!」
魔法使い「ハイ! ………ッ 炎よ!」ゴォ!
父「………ッ 良し、そこまでだ…流石、私の…いや、私と母の子だ。偉いぞ」
魔法使い「!! …ありがとう、パパ!」
父「……魔法の腕と覚えは良いが、他は変わらないな、お前は」
魔法使い「あ……ご、ごめんなさい」
父「父とは言え、師。言葉遣いと態度はきちんとしなさいと、何度言えば分かる」
魔法使い「…………」
父「……謝罪もできんのか」
魔法使い「も……申し訳ありませんでした」
父「……… では、食事だ。母に準備をするように伝えてきなさい」
魔法使い「……ハイ」クルッスタスタスタ
魔法使い「マ……お母様。今日の鍛錬、終了しました」
母「そう……お疲れ様、魔法使い。どうだった?」
魔法使い「はい。以前教わった炎の魔法は、コントロールできるようになったようで」
魔法使い「…お父様に褒めて戴きました」
母「そう!それは素晴らしいわ。やはりお前の炎の加護には期待できるわね」
母「私とも父とも違う瞳を持って生まれてきた時はどうしようかと思ったけれど…」
母「素晴らしい素質を持っているのね、流石、私達の子ね」
魔法使い「あ……ありがとう、ございます」
母「父は、なんて?」
魔法使い「食事に、しようと……仰っておられました」
母「そう、じゃあすぐに準備するわね」
母「出来る迄貴女は、自分の部屋にいらっしゃい」
母「新しい魔法書を買っておいたわ。それを明日までに読むこと」
魔法使い「はい……お母様」スタスタスタ
パタン
魔法使い(新しい魔法書……これか)ズシ
魔法使い(重い……これを明日までに読め、ですって!?)
魔法使い(……無理、って弱音を吐ければ、どれだけ良いか)
魔法使い(優れた加護………)ペラ
魔法使い(父も、母も……持っている)ペラ
魔法使い(二人と違う属性を持って生まれた私)ペラ
魔法使い(産まれて落胆した、なんて……何度も聞いたわ)ペラ
魔法使い(……聞き飽きたわ!)ペラ
魔法使い(平気よ)ペラ……グス
魔法使い「……頭に、入らない」
魔法使い(でも、ちゃんと読まないと……理解しないと!)ペラ
……
………
…………
魔法使い(……進まない)ペラ
魔法使い(書庫、行きたいな)ペラ
魔法使い(おとぎ話とか、古書とか、古い詩とか……)ペラ
魔法使い(鍛錬、しだす前は……朝から晩まで、読んでたな)ペラ
魔法使い「ああ、駄目だ……無心、無心」
母「魔法使い!食事よ」
魔法使い「は、はい!すぐ行きます!」ガタ
魔法使い(……今日は眠れないわね)
魔法使い(涙の跡は……残ってないわよね)
魔法使い(粗相、しないように……ちゃんと食べないと)カチャ
魔法使い「いただきます」
母「はい、召し上がれ……父、魔法使いはどう?」
父「そうだな、炎の魔法に関しては、後は数をこなす、経験を積むことだろう」
父「正直、教えることは……無い」
魔法使い「………」
母「魔法使い、父に感謝のお言葉は?」
魔法使い「あ、ありがとうございます!その……そう、言っていただけて嬉しくて」
魔法使い「その、思わず、言葉に……詰まりました」
父「うむ、それは……まあ仕方ないな。許す……が、食事中といえど気を抜くな」
父「実戦では命取りだ」
魔法使い「はい……申し訳ありません」
母「では……そろそろ良いかしらね」
父「ああ、そう思って申し込んでおいた」
魔法使い「?」
父「一週間後、港町へ行け」
魔法使い「……???」
父「始まりの街で、闘技会が開かれる」
父「港町から船に乗り、お前はそれに出場するんだ」
魔法使い「私が、ですか?」
母「そうよ。それで優勝できれば、名も通り勇者様の旅立ちに連れて行っていただける可能性が高くなるわ」
魔法使い「勇者様の……旅立ち?」
父「勇者様がお生まれになったのは知っているな」
魔法使い「はい……存じ上げております」
父「勇者様は16の歳になると、魔王を討伐する旅に出られる」
父「まだ数年先だが、その時になれば、旅の共を選ばれるだろう」
父「あの街では勇者様がお生まれになってから」
父「三年に一度、こうした闘技会を開催している」
父「お前は今年、それに出場するのだ」
魔法使い「え……ちょ、ちょっと待って下さい!何時の間に、そんな!」
母「魔法使い」ジロ
魔法使い「………」
父「勝て、そして名を売れ。そして、勇者様と共に旅立て」
魔法使い「………そ、そんな、無茶な」
母「無茶ではないわ。どれだけ貴女に書を与え、鍛錬をし……厳しくしてきたと思っているの」
母「私と父の子です。何が無茶であるものですか?」
父「そうだ……お前なら出来る」
父「優れた炎の加護を持っていれば、お前の身は炎に焼かれる事は無いのだし」
父「お前が優勝すれば、我が家の名にも箔が付く」
魔法使い「!!」
母「一週間、私と父と、みっちり鍛錬すれば、大丈夫ですよ」
父「そうだ。お前の炎の魔法の筋は悪くない」
父「否、素晴らしい素質を備えているに違いない。優れた加護を受けし者なのだから」
母「きっと、素晴らしい結果を出せるわ」
母「さぁ、魔法使い。食事を済ませたら、部屋に戻って書の続きをなさい」
母「大丈夫よ」
父「そうだ。大丈夫だ。お前は、この父と母の子なのだからな」
……
………
………
魔法使い(私が、闘技会に出場!?)ペラ
魔法使い(……勇者様の旅立ち、って……)ペラ
魔法使い(どうして、どうして何時も、あの人達は……!)ペラ
魔法使い(……一週間、地獄だな)ペラ
魔法使い(寝れる、かな……ああ、でも読んでしまわないと)ペラ
魔法使い(さっぱり頭に、はいんないや)ペラ…
魔法使い(……昔は、こんなんじゃ無かったのに)
魔法使い(パパと、ママと……三人で良く、港町、行ったな…)
魔法使い(………あの頃、は……)
魔法使い(スゥ……)
……
………
…………
魔法使い「ヒトと、マは……」ブツブツ
魔法使い「あ、この挿絵綺麗……これが、エルフ?ふぅん…」
魔法使い「人と変わらないんだな……」ブツブツ
魔法使い「良し!読んだ! …次は、こっち……ん、炎の…?」
魔法使い「何時もパパとママが、炎の加護がどうとか……言ってたな」
魔法使い「……ふふ、二人とも、吃驚するかな」
魔法使い「ええと…まず、深呼吸して……」
魔法使い(………)
魔法使い「炎よ!」ポッ
魔法使い「!!」
魔法使い「で………できた!」
魔法使い「出来た!私にも出来た!」
魔法使い(驚くかな……ううん、絶対褒めてくれる!)
母「魔法使い-?まだ本読んでるの?おやつにするわよー?」
魔法使い「!! はーい、ママ!今行くわ!!」タタタ
魔法使い「ママ!見てみて!」
母「まあ、どうしたのそんなに慌てて……」クスクス
魔法使い「(……スゥ)炎よ!」ポッ
母「!!」
魔法使い「ねぇ、ママ、見た!?今の、見た!?」
母「そう……やはり炎の加護を受けていたのね」
魔法使い(……え?ママ?)
母「魔法使い、どれぐらい練習したの?」
魔法使い「え…書庫で本、見つけて……やってみたらできたの」
母「…本当に?」
魔法使い「う……うん!本当に!」
母「そう……これは……やはり、期待できるわね」
魔法使い(褒めて……くれないの?)
母「魔法使い。凄いわ!」ニコ
魔法使い「! …う、うん!凄いでしょ!?」ニコ
母「ええ、流石私と父の子ね! …産まれた時、私とも父とも違う属性を持っているようだから」
母「……あまり、期待していなかったけど……良く出来たわね!」ニコ
魔法使い(……あ、あれ……)
魔法使い(褒められてる筈なのに……嬉しく、ない……)
魔法使い(なんで……?)
父「どうした、何を騒いでる?お茶にするんじゃないのか」
母「ああ、父……実は、魔法使いが……」
魔法使い(パパとママ……なんか話してる)
魔法使い(凄い、とか……サスガ、ワタシタチノコとか……)
魔法使い(何でだろう……涙が、でそう)
父「そうか……魔法使い」
魔法使い「は、はい、パパ……なぁに?」
魔法使い(やっと、褒めてくれる?何時もみたいに、頭なでなで、って……)
父「正直、お前には余り期待をしていなかった」
父「しかし、属性が違っても、やはり私達の子だ」ニコ
父「今までは仕方ないと諦め、甘やかしてきたが……」
父「今日から、私と母は、父と母であり、そうでない。お前の師だ」
魔法使い「え………」
父「今日からは、お父様お母様と呼びなさい。そして、師と仰ぎなさい」
母「そして、きちんと敬語で話すこと。常に気を引き締めて居ること」
父「お前は必ず、素晴らしい炎の使い手になる……優れた炎の加護を持っているのだからな」ニコ
魔法使い「パパ、ママ……」
父「違う」
魔法使い「お、とう……さま、おかあさ……ま」
母「そうです。それから、今日限り書庫への立ち入りは禁じます」
魔法使い「!!」
母「貴女に相応しい本は、きちんと選んであげるから心配しなくて大丈夫よ」ニコ
……
………
…………
魔法使い(ん………夢?ああ……私…寝ちゃったのか…)
魔法使い「!! ……ッちょ、今……ッ …ああ、もうこんな時間…ッ」
魔法使い(それにしても……懐かしい夢を……見たな……)
魔法使い(続き……読まなきゃ)ペラ
……
………
…………
一週間後
母「では、気をつけて行ってらっしゃい、魔法使い」
父「頑張ってこい」
魔法使い「ええ……行ってきます」スタスタ
魔法使い(長い一週間だった……まだあちこち痣だらけ)
魔法使い(……でも、見つからなくて良かった)
魔法使い(火傷……こんなの、見られたら……ッ)
魔法使い(……目的が目的で無ければ)
魔法使い(悠々自適、一人旅………喜ばしい筈なのに、ね)
魔法使い(………ああ、行きたくない)
魔法使い(でも、行かなくちゃ。勝たなくちゃ)
港町
魔法使い「相変わらず、賑やかねぇ……あら?」
魔法使い(あの丘の上に……確か教会があったはずなのに)
ボォオオオ…
魔法使い「あ!出航の合図!?急がなきゃ…ッ」
魔法使い(……何時の間になくなっちゃったんだろ)
魔法使い(長く来てないからな……まぁ、良いか)
魔法使い「すみません!乗ります!」
……
………
………
魔法使い「着くのは明日の朝、か……」
魔法使い「で、昼前には大会が始まるのね……」
魔法使い(のんびりする暇は、無いなぁ……)
コンコン
魔法使い「はい!」
船員「失礼します、お食事をお持ちしました」
魔法使い「え?頼んでませんけど……」
……
………
…………
魔法使い(なんかやたら良い部屋だと思ったら)
魔法使い(特別室ですって!?)
魔法使い(豪華なベッドに、豪華な食事)
魔法使い(……我が家の娘に相応しく、か)
魔法使い(一人で食べても、つまんない)
魔法使い(確か……用があったら呼び鈴ならせとか言ってたわね)
チリンチリーン
コンコン
船員「お呼びでしょうか?」
魔法使い「………わ、ワイン頂戴」ウワ、コエウラガエッタカッコウワルイ
船員「……赤と白がございますが?」
魔法使い「え!? あー、赤で」ドウチガウノ
船員「グラスでよろしいですか?」
魔法使い「え、ええ…結構よ」ナニソレホカニナンカアルノ
船員「すぐにお持ち致します」
パタン
魔法使い「………」
コンコン
魔法使い「はい!」ハヤッ
船員「グラスワインの赤でございます」
魔法使い「あ、ありがとう……」
パタン
魔法使い(ぐびッ ……ッごほ、げほッ)
魔法使い「苦……ッ」
魔法使い「………何、やってんだろうな、私」
魔法使い(誰かと、食堂で食べたかったな)
魔法使い(私………)
魔法使い(一人って……さみ、し……)スゥ
……
………
…………
始まりの街
魔法使い「……頭が、イタイ」ズキズキ
魔法使い(気がついたら朝だった…ここが、はじまりの街)
魔法使い(凄い……港町に引けを取らないぐらい賑やか…
魔法使い(闘技会、か……)
魔法使い(いやだなぁ……)
「出場者の方ですか?」
魔法使い「え!あ、ハイ!」
「では、コチラにお並び下さい」
魔法使い(………並ばされてしまった)
魔法使い(長蛇の列……これ、全員……出場者!?)
魔法使い(うわ、あの人凄い筋肉……てか、剣でかッ)
魔法使い(あんなの振り回すの!?)
魔法使い(あっちは……双剣かな)
魔法使い(………いや、無理無理無理!)
??「おい」
魔法使い(殺されちゃうって!)
??「おい!」グイ
魔法使い「はいいぃ!?」
??「出場者か?」
魔法使い「え、あ……はい」
魔法使い(厳つい鎧……この人も、出場者?)
??「出場者ならば、きちんと手当を受けろ」
魔法使い「え? …あ」
魔法使い(腕の火傷か……見えてたのね)
魔法使い「これは別に……痛くないから」
??「そうか……では好きにしろ」クル
魔法使い「あ、待って!貴方も……出場者?」
??「違う……俺は出られない」
魔法使い「え、でも……鎧着てるじゃない」
??「……父が騎士として勤めているからな」
魔法使い「???」
??「騎士の身内は出れないルールだ。審判を勤めるのも騎士だからな」
??「公平を期すためだ」
魔法使い「ああ、そうなんだ……えっと、残念ね」
??「何故だ?」
魔法使い「え?だって……勇者様の目にとまるかもしれないじゃない?」
??「……自分が未熟なことは知っているつもりだからな」
??「背伸びをし、愚かさを晒すのは御免だ」
??「勇者様と共に…と考えるなら」
??「それまでにもっと鍛えれば良い」
??「……ここで、自信を無くせば遠回りになる」
魔法使い「………」ポカーン
??「もう良いか、行くぞ」
魔法使い「ああああああ、待って!」
??「なんだ?」
魔法使い「あの、あ、ありがとう!」
??「……は?」
魔法使い「あ、えっと! …な、名前聞いて良い?」
??「……戦士」クルスタスタスタ
魔法使い(ぶ、無愛想な奴………)
魔法使い(でも……不思議。なんか……あいつの言葉で)
魔法使い(胸のつかえが……取れた、気がする)
魔法使い(………良し!)
「次の方、どうぞ…」
魔法使い「ごめんなさい、辞退するわ!」
「は!?」
魔法使い(未熟、か……そう、そうよね)
魔法使い(ここで優勝なんて……無理だろうし)
魔法使い(いやいや出たって……どうせ実力は出せないわ)
魔法使い(堅苦しい敬語もやめた!)
魔法使い(頭が痛くなるだけのお酒も)
魔法使い(でも、このまま帰らなかったら……心配するかしら)
魔法使い(……優勝出来なかったら、また…蔑まれるだけよね)
魔法使い(だったら、実力で……勇者様の仲間になれば良いのよ!)
魔法使い(路銀は……まだあるわね)
魔法使い(今日は、宿にとって)
魔法使い(まず、食事をしよう)
魔法使い(それから……!)
……
………
…………
獣は、ヒトだった。
ヒトは、雨を凌ぎ、太陽を凌ぐ術と知を身につけた。
ヒトは、弱かった。
命は、儚かった。
ヒトは、強かった。
命は、輝いていた。
儚い輝きは、未来へと続いていた。
未来は、過去だった。
番外編2 おしまい
番外編3へ続きます
死ぬほど眠い
……今日は、も、無理__○_モウネルココデネル
おやすみー
寝てた!起きた!
ヒトは、強かった。
命は、輝いていた。
儚い輝きは、未来へと続いていた。
未来は、過去だった。
過去は、現実だった。
現実は、夢でもあった。
このタイミングで申し訳ないんだが、魔法使いのイメージ、だいたいだけど決まってきたのでまたアドバイスあればお願いします。
続き読みたいけど今日は限界だからまた明日以降orzhttp://i.imgur.com/ZtqTzhA.jpg
>>445
ほんとうまいなぁ……すげぇ(・▽・)
イメージにかなり近い!
戦士「……98……99………」ビュン
戦士「100……ッ」フゥ
戦士(……良し、これを後……)
父「おい、戦士」
戦士「……ああ、親父か。何だ」
戦士「急ぎじゃ無いなら後にしてくれ」
父「お前なぁ……実の親父に愛想の無い……」
父「まあ良い、俺はでかけるから、後は頼んだ。今日は多分帰らんよ」
戦士「そうか……1ッ」ブンッ
父「……せめて俺の顔ぐらい見てくれよ…つれない息子だ…」トボトボ
父「ああ、飯代おいとくからな!鍛錬も良いけど、ちゃんと食えよ!」
戦士「……5ッ… ……ああ」
パタン
戦士(……後、94…ッ)
……
………
…………
戦士「……今日は……これぐらいで」フゥ
戦士「親父……ああ、出かけたんだったか」
戦士(飯代……これだけ、か?)
戦士(……全く。食って動かねば筋肉にならんと言うのに)
戦士(………今日は、何処に行ったんだかな)
戦士(立派な騎士様が毎夜酒場通いとは)
戦士(平和の証、か……くだらん)
戦士(一人分を作るなら、外で食った方がマシか……)
パタン
……
………
…………
旅籠
「いらっしゃーい、あら、戦士君!開いてるところ座ってね」
戦士「ああ……スープと、飯をくれ」
「……君ねぇ、育ち盛りなんだから、もうちょっと食べないと」
戦士「…親父に言ってくれ、それは」
「え?なぁに……質素倹約も騎士の証!とか? …流石騎士様ねぇ」
「ちょっと待ってね~、すぐに…… はいはーい!すぐ行きます!」
戦士「ち……!」
戦士(違う、と否定したところで、どうしようも無いか)
戦士(流石、ね……あいつの本性を知れば驚くだろうに)
戦士(それとも……お得意の話術で美談に持ち込むか)
戦士(……いい年して、節操ないからな)
「はいどうぞ、お待たせ……これはサービスよ」
「いつも食べに来てくれるからね……女将さんには内緒。今日の牛肉のワイン煮は…イイできだから」
戦士「……すまない、ありがとう」
「良いのよ……その代わり、後でちょっと…良い?」
戦士「? …ああ」
「私、後30分ほどで終わるから。ゆっくり食べててね」スタスタ
戦士(なんだ? …まあ良い。正直……助かる)
戦士(貴重なタンパク源だ……食欲もそそる)
戦士(……いただきます)
……
………
…………
「ごめん、お待たせ!」
戦士「ああ、別に……」
「もう食べ終わった?じゃあ……ちょっと、酒場に行かない?」
戦士「……俺は酒は飲まん」
戦士(それに……親父と鉢合わすのは……勘弁して欲しい)
戦士「ここでは駄目なのか」
「ん……じゃあ、ちょっと外、歩こうか」
戦士「では、家まで送ろう。街の外れだったろう……夜道に女一人は街中といえど、な」
「あらあら、戦士君……立派になって」
戦士「ちゃかすな……行くぞ」
戦士「話とは……なんだ」
「んー……二年前さぁ、闘技大会、あったじゃない?」
戦士「? …ああ」
「あの時、戦士君出てなかったよね」
戦士「騎士の身内はでれんからな」
「それで、さぁ……」
戦士「……」
「………」
戦士(……帰って、もう少し鍛錬をしたいんだがな。急かして良いものか)
「……優勝者、覚えてる?」
戦士「双剣使いの長身の男だろう。覚えているが」
「私……あいつに結婚申し込まれちゃってさ」
戦士「……はぁ」
「はぁ、って、君ねぇ! …まあ、良いわ。それでね」
「来年は闘技大会、無いでしょ? ……いや、暫く、か……」
戦士「そうだな……勇者様が16歳になられるからな」
戦士「勇者様が旅立たれた後まで、このお祭り騒ぎは続かんだろう」
戦士「……で、それがどうかしたか」
「景気良いの、今のうち……だけ、じゃない?」
「騎士様達も、国の警備やらなんやらで……今は忙しいけど」
戦士「今も、だろう……騎士達の毎日の勤めは変わらん」
「……そっか、そうだよね」
戦士「…何が言いたい?」
「……その、優勝した奴にさ、結婚申し込まれてさ」
戦士「それは……さっき聞いたが」
「ん、もう!だから……国を出ようって言われたのよ!」
戦士「………はぁ」
戦士(さっきから、何が言いたいんだ……)
「そしたら、もう会えなくなるじゃない!」
戦士「………誰に」
「………ッ 戦士君は、鈍いなぁ…ッ」
戦士「………い、いや……すまん、しかし、さっきの話に、どうつなが……」
「貴方の、お父様によ!」
戦士「………」
戦士(また……奴か)
戦士「……いや、だか」
「景気が悪くなっちゃうと、女将さんだって私を雇う余裕無くなるかもしれないし」
「そしたら、あいつが言う通り、港街にでも行った方が、職あるかもしれないけど」
「でも、騎士様は……この国、離れられないじゃない!?」
戦士(……ああ、なるほど。やっと話が繋がった)
戦士(もう少し……当を得たしゃべり方ができんもんか)
「だから、さ……」
戦士「だから、と言って……」
戦士「それを俺に言って……どうするんだ?」
「だーかーらー……」
「騎士様、奥様を亡くされて長いじゃない」
「……お母さん、居なくて寂しいなんて歳じゃ無いかもしれないけどさ」
戦士(ああ……うんざりだ)
「その……騎士様、ね?前に酒場で……」
戦士「その先はあいつ……否、父に直接言うんだな」
戦士「俺ができることは何も無い」
「そ、そんな冷たい事言わなくても良いじゃない!貴方、息子でしょ!?」
戦士「……双剣の男はどうするんだ」
「そりゃ……もし、騎士様が……」
戦士(……ハァ)
戦士「奴の女好きは今に始まったものではない」
戦士「……さあ、ついたぞ。家はこの近くだろ」
「………ッ もう、良いわよ!」プンスカ。スタスタ。バタン!
戦士(………)スタスタ
……
………
…………
戦士(……もうこんな時間か)
戦士(親父は……帰ってないな)
戦士(全く……あいつは見境なしに口説いて回るから)
戦士(……母が死んで10年か)
戦士(騎士と言う身分で、食うには困らんとは言っても)
戦士(男で一つで厳しかったろうとは思う……感謝はしている、が)
戦士(亡き母に操を立て続けろと言う気も無いが)
戦士(こっちの身にもなってくれ)
戦士(………鍛錬、しよう)
バタン!ガタガタガタ!ドン!
戦士「!? …なん……ッ」
父「かえったーぞー!おぉ、起きてたのか、息子ー!」
戦士「親父……」サケクサイ…
父「みずー…みず、く……」スゥスゥ
戦士「…………」
戦士「……風邪は引かんだろう、この季節……放っておくか」
戦士(……全く)
翌朝
父「おう、早いな戦士」
戦士「…起きてたのか」
父「あー…昨日は悪かったな」
戦士「その台詞を聞かんで良い日を作って欲しいもんだ」
父「ほんとお前、冷たいねぇ…」
戦士「冷たくされなかったら身の程を弁えろ」
父「……泣くぞ」
戦士「おっさんが泣いても可愛くないぞ」
父「ほんとに……この子は……」シクシク
戦士「鬱陶しいからやめろ……行ってくる」
父「また鍛錬か? …精が出るねぇ」
戦士「仕事だろう、早く行け」パタン
父「あーもう、人の話をきかないー…」
父「仕方ないな、一人で行くか」
……
………
…………
戦士(……45.46……)
戦士(毎晩浴びるように酒を飲み……)
戦士(毎朝、何でも無かったような顔で、俺よりも早く起きる)
戦士(……健全な肉体には健全な精神?)
戦士(どこがだ。酒浸りで何時も目の下に隈を作っているような男だ)
戦士(………68.69)
戦士(加齢と共に衰えたとは言え……)
戦士(騎士としての勤めも、必要な体力も筋肉も残して)
戦士(……)
戦士(99……100ッ)ブンッ
戦士「……言われた侭に、日々の鍛錬を欠かさないのは」
戦士「俺が……父を尊敬しているから、か」
戦士(頭では……分かっているんだけどな)
戦士(……あの女癖の悪ささえなければな)
父「お、いたいた、戦士!」
戦士「! …なんだ、仕事はどうした。ついに首になったか」
父「戦士、それは酷い」
戦士「………すまん」
父「今日は直行直帰。お前も誘おうと思ったのに、人の話聞かないからさぁ」
戦士「?」
父「勇者様とご母堂様に会ってきたんだよ」
戦士「………親父が?」
父「……騎士、ですから、父さん」
戦士「父さんとか言うな気持ち悪い」
父「なんだよ、俺の事尊敬してるくせに~」
戦士「な……ッ 聞いて、たのか」ハズカシイナクソ
父「お前は素直じゃないねぇ。独り言はもっと小さな声でねぇ?」
戦士「……切るぞ、このロクデナシが!」マッカ
父「いやいやいや、お前じゃまだ無理……まあ、とにかく家、入れ」
父「……ちょっと話がある」
戦士「……?」
……
………
…………
父「飯まだだろ、今日は俺が作ってやるよ」
戦士「……ああ」
戦士(親父の飯か……何時から食ってないんだか)
父「まあ、座っとけ。んで、聞け」
戦士「……なんだ」
父「まあ、さっきも言ったけど、会ってきたんだよ」
戦士「勇者様と母君にか」
父「そ……あの人達の家はさ、この国の人達もはっきりとした場所を知らないわけだ」
戦士「何かあっては困る、どころじゃないからな」
父「そう……で、まあ、騎士でも一握りの人間しか知らない」
戦士「ああ」
父「まぁ、実際俺がお前連れて会いに行ったとして」
父「それがばれたら父さん、失職どころか首も危ういんだけどな」ハッハッハ
戦士「……笑い事じゃない」アホウカ
父「……なあ、戦士」
戦士「なんだ」
父「お前、勇者様を守りたいと思うか?」
戦士「……は?」
父「あー…だから、勇者様と一緒に旅をしたいと思うか?」
戦士「……選ばれたとしたら光栄な事だからな」
父「そうじゃねぇよバカタレ。名誉だとか、そういうのはどうでも良いの」
父「守りたいか?守れるか? ……世界を、救いたいか?」
戦士「!」
父「……そういうこと」
戦士「俺……は」
戦士(俺は、強くなりたい。誰よりも……親父よりも)
戦士(何のためだ。世界を守るため?誰かを守るため……)
戦士(俺は……どうして強くなりたいんだ?)
父「まだわからん……か、な」
父「いや、まだ分からなくて良いんだ。ただ……」
父「お前は強くなりたいんだろ? …身体だけ鍛えたって、意味はねぇんだよ」
父「まぁ…蒸し返して悪いけどさ」
父「お前のさっきの独り言だ。俺を…尊敬してくれるのは嬉しいさ」
父「確かに、まだ幼いお前がお父さんみたいに強くなりたい!って」
父「目、きらきらさせてた時にはもう、こう…食べちゃいたい位可愛い!って思ったけどもさ」
戦士「………」ヤメロコロスゾ
父「だから、とりあえず身体鍛えなさいって言ったわけ」オマエジャムリダッテ
父「俺はまだ、お前より強いよ、戦士」
父「守らなくちゃいけないものがあったからな」
戦士「………」
父「病気で死んじゃったけど……母さんも、お前も」
父「この国の人達も。今では、勇者様と母君も、だ」
父「今はまだわからなくて良いけどさ。守りたいものが出来た時」
父「よわっちぃと、どうしょうも無いだろ?」
父「だから、鍛錬は大事。基盤が出来てりゃ、いざって覚悟が出来た時」
父「……お前は多分、俺よりも強く………」
戦士「………」
父「訂正。俺ぐらいには強くなるかな」
戦士「……おい」
父「そりゃそーだろ!この街には母さんの墓があるんだから!」
父「母さんを愛する気持ちは、誰にも負けません!」エッヘン
戦士「……守るもの、守りたいもの、か」
父「そ……で、もし勇者様にあって」
父「お前が守る覚悟を覚えたなら……って思ったんだけど」
父「失職する訳にいかんしなぁ」
戦士「……珍しくまともな判断ができたじゃないか」
父「酷ッ ……あれ、戦士ちゃん、顔が赤いでちゅよ?」
父「どうした。父さんが格好良いと思ったら、素直に言っていいんだよ!」
戦士「死ね」サァシネイマシネスグシネ
父「……流石に、泣くってば。まぁ、でも……」
戦士「なんだ、死ぬ覚悟ができたか」
父「違うわ! …もし、勇者様とお前に、縁があれば」
父「導かれるだろうよ」
戦士「………そう、か」
戦士(国中の誰からも好かれる立派な騎士様、か)
戦士(………成る程な)
父「て、訳で、これをお前にあげようと思います」
戦士「これは……鋼の剣?」
父「まあ、本当になんの変哲も無いそこら中で売ってる奴だけどな」
父「俺が使い込んでるから、お前の手にもなじむよ」
父「俺だと思って、肌身離さず大事に……ッ 振り上げるな、ごめん父さんが悪かったごめんなさい!」ダカラケンオロシテ
戦士「……ありがとう、親父」
父「でかくなったなぁ、お前……」
戦士「……アンタに育てて貰ったからな」テレ
父「…照れた顔はかわい………ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」ヤメレ
父「良し……しゃべってる間にできた。食べるか!」
戦士「………この黒焦げの物体はなんだ」
父「え?お肉」
戦士「……阿呆!もったいない!」ヤッパキル!
……
………
…………
戦士(親父は……今夜も酒場か)
戦士(…俺も親父の様に、強くなれるか?)
戦士(勇者様を守りたいか……まだ、わからん)
戦士(しかし………)
戦士(………)
戦士(鍛えて、おくか)
戦士(新しい剣……手になじまさんとな)
……
………
…………
未来は、過去だった。
過去は、現実だった。
現実は、夢でもあった。
寝て見る夢、現実に見る夢。
共に、希望を抱き、絶望に抱かれる。
共に必ず、願いがある。
番外編3 おしまい
番外編4へ続きます
ね む い。
番外編は多分、次で最後。
書き終わったら新スレ立てるかもかもかも。
寝ます。おやすーみー
今日は家族に乗っ取られててパソコンに触れないよ
少しだけ変わって貰ったから
暇だから書いてみたイメージ乗せてみる
……下手だけど笑わないでね
http://imepic.jp/20130209/580500
324いつもありがとう!
……お絵かきって大変ね…
ではまた夜に!
「ウ・ディ・タ」とは?
・完全無料のゲーム作成ツールです。
・wikiや講座や情報やブログも充実してるので安心。
・作成したゲームは自由に配布したり、コンテストに投稿することも可能。
・「コモンイベント」を利用すれば、難しいゲームシステムも実現できます。
□このツールで作られたゲーム
ある旅人の手記、霧留待夢、片道勇者、巡り廻る、一本道迷宮、悠遠物語、ヤジルシージ、
Gravity、ワノハナ、魔王は倒れ、世界は闇に包まれた、などなど
おはよう。昨日は寝てしまた……
>>499
XPなら持ってる
寝て見る夢、現実に見る夢。
共に、希望を抱き、絶望に抱かれる。
共に必ず、願いがある。
命は願い、祈った。
命は喜び、悲しみ、寂しさを覚えた。
例えヒトとマが違えたとしても、同じであることを願った。
勇者「母さん、ただいま」ドサ
母「お帰り勇者……お疲れ様。大丈夫だった?」
勇者「母さんはいつもそれだなぁ」
母「大事な貴方に何かあったら困るもの……全部あった?」
勇者「うん、それにしても……王様って親切だよなぁ」
母「………そうね」
勇者「わざわざ食料とか、届けてくれるんだもんね」
母「街中とは言え……貴方や私に、もしなんかあったら、っていう配慮よ」
母「……甘えすぎなのは分かっているけど」
勇者「うん……でも」
勇者「母さんに何かあったら、俺だって困る…て言うか、嫌だ」
母「……そう、だね。でも私は大丈夫だよ?」
勇者「何いってんの、そんな細い身体して」
母「ふふ……」
勇者「じゃあ、俺これ片付けてくるから。あ……そうだ、手紙入ってたよ」
母「手紙?」
勇者「厳重に封印してあるよ……母さん宛」
母「何かしらね……ああ、お片付けお願い。全部裏の物置で良いわ」
勇者(良し……これで全部、か)パタン
勇者(……凄いよな、勇者って)
勇者(物心ついた時には、この家に母さんと住んでた)
勇者(食料から衣服まで、全部……王様が家の近くの小屋まで届けてくれる)
勇者(決まった日、決まった時間に小屋まで取りに行って……)
勇者(必要なモノを書いた紙を置いて、帰ってくる)
勇者(……不自由は、確かに無かった。けど……)
勇者(……勇者って、そんなに貴重なのか?)
勇者(否……小さい頃から母さんに聞かされてきた)
勇者(魔王は、勇者にしか倒せない。そして、勇者は、世界に一人しか存在できない)
勇者(だから、勇者は……俺は)
勇者(こうして、危険が無いように、街の外れに居を構え)
勇者(必要無い限り、街にも降りられず、ひっそりと……16の誕生日を待つ)
勇者(……王国保護の箱庭の隅に監禁されてる)
勇者「………」
勇者(裏庭を駆け回って、遊ぶ事ができた)
勇者(たまに、こっそり……母さんと街にも遊びにいった)
勇者(母さんが居たから、寂しくはなかった。けど……)
勇者(何時からだったかな。母さんの代わりに、小屋へ行くようになったの)
……
………
…………
母「勇者、母さん小屋まで行ってくるね」
勇者「……ねぇ、母さん大丈夫?そんな細い腕でさ……荷物、重いでしょ?」
母「ん?まだまだ大丈夫よ?」
母「母さん、まだまだ若いんだから……」
勇者「うん……気をつけて帰ってきてね?」
母「勇者は心配性ねぇ……んーじゃあ」
勇者「?」
母「今日から、勇者が取りに行ってきてくれる?」
勇者「え……良いの!?」
母「荷物、重いよ?」
勇者「うん!」
母「まあ……歩いて一分もかからないし」
勇者「うん!」
母「じゃあ、これ。お手紙、荷物の代わりにおいてきてね?忘れちゃ駄目よ?」
勇者「うん!」
母「……一人で大丈夫?」
勇者「大丈夫だよ!僕……ううん、俺、もう10歳だぜ!」
母「ふふ……じゃあ、お願いね。母さん、待ってるから」
……
………
………
勇者(…そうだ、5年前だ)
勇者(あれから、俺が行くようになった)
勇者(人には会わなかった)
勇者(母さんはあれから……ほとんど何処にも行かなくなったな)
お昼ッ
お腹いっぱい。もうチョットだけ。
勇者(母さんは……寂しくないのかな)スタスタ
母「ご苦労様。もうすぐ出来るからね」
勇者「ねぇ、母さん」
母「ん?」
勇者「母さんは……寂しくない?」
母「……何が?」
勇者「あ……手伝うよ。 …街にも出なくてさ。父さんも……居なくて」
母「ありがと… 勇者は、私と二人で……寂しかった?」
勇者「俺? …いや。母さんがいたから」
母「……私もよ。私も、勇者が居たから寂しくなかったよ?それに…」
母「父さんと約束したもの。立派な勇者にする、ってね」
勇者「……でも、母さん、まだ若いんだしさ」
勇者「再婚、とか…」
母「それは……出来ないなぁ。考えたことも無い」
勇者「俺が……居るから?勇者……だから?」
母「んー。愛してるから」ニコ
勇者「……俺がハズカシイよ」
母「嘘じゃ無いもん。愛してるよ……父さんも、勇者も」
勇者「……ん」
母「そういえば何時だっけね。勇者つれて、こっそり街に行ったよね」
勇者「覚えてるよ。俺が、荷物受け取りに行く様になった頃?」
母「うん、そうだね。あれが最後だったかな」
勇者「アイス買って貰ったな。賑やかで楽しかった」
勇者(そうだ……あの後も、何回か連れて行けって……駄々捏ねたな)
勇者(でも……母さんは、寂しそうに、困った様に笑って)
勇者(ごめんね、って……言うだけだった)
勇者(……泣きそうな顔、してた)
勇者(いけない事なんだ、って……何となく気がついて)
勇者(言わなくなったんだ……)
勇者きたああ!魔法使いのイメージまた夜に載せに来ます!!
1の絵は高速で保存した。
母「もっと見せてあげたかったけどね」
勇者「うん……俺は、勇者だから……」
母「………」
母「さ、できた。食べようか……お皿、並べてね」
勇者「うん」
母「ああ、そうだ、明日ね」
勇者「?」
母「お城の騎士様がいらっしゃるのよ」
勇者「……ここに?」
母「貴方の旅立ちも近いから………ね」
勇者「…………」
母「勇者?」
勇者「……ごめん、嫌な訳じゃ無いんだ」
勇者「その日の為に、母さんは……俺をこうやって、一人で立派に育ててくれた訳だし」
勇者「………」
母「寂しい?」
勇者「…ちょっと、だけ」
母「そうね、でも……」
勇者「……?」
母「うん、寂しいけどね、母さんも」
母「連れて行ってあげれなかった分、一杯街を、世界を見ていらっしゃい」
母「人に触れて、色々な経験して………強くなって」
母「……貴方なら、絶対…魔王を倒せるわ」
母「勇者ですもの………私の、可愛い息子ですもの」
勇者「母さん……」
>>514
魔法使い楽しみにしてる!
ちょっと用事ができてしまった
また後ほど。か、夜にー
>>476
勘違いだったらスマン
お前本名イニシャルE.Mか?
>>518
詮索はやめれ
遅くなりましたが魔法使いいくつか載せときます。
http://i.imgur.com/lEkgBT4.jpg
http://i.imgur.com/KCND7hW.jpg
http://i.imgur.com/AmyppTP.jpg
今規制されてて代行にお願いしてるのでレス頂いてもお返事できないかも。スマヌ。
番外編書いてる間に忘れそうなので、酉つけとく
母「それに、まだ……もう少し先の話」
勇者「…うん」
母「さあ、片付けてしまおっか」
母「午前中には騎士様がいらっしゃるわ……今日は早く、寝ましょう」
……
………
…………
翌朝
勇者(なんか……落ち着かない)ウロウロ
勇者(そりゃそうだ……母さん以外の人と会うなんて何年ぶりだ?)
勇者(ましてや……面と向かってしゃべるなんて)
勇者(………産まれて初めて、だぞ……俺)
母「勇者、落ち着かないのはわかるけど……」
勇者「あ、ごめん、母さん……」
母「ううん、仕方ないって分かってるんだけど」
母「折角裏庭で摘んだお花、はげちゃうわよ……全部」クスクス
勇者「あ………ご、ごめん!」アセ
コンコン
勇者「!!!」キタ!
母「はぁい?」
騎士「勇者様、母君様。城から参りました、騎士でございます」
母「どうぞ。開いてます」
勇者(………き、緊張する)
騎士「失礼します……」
カチャ
勇者(人だ……ッ)アタリマエダケド
騎士「些か不用心ですかな、開けたままと言うのは……貴方が、母君様?」
母「ええ、初めまして、騎士様……いらっしゃるのが騎士様ですから。何かあっても守って下さる、でしょう?」
騎士「それは勿論……しかし、びっくりしました。母君様と言うよりは……」
騎士「まだ少女の様だ。 …勇者様と同じ年頃と言っても通りそうですね?」
母「ふふ、ご冗談を……お口が達者でいらっしゃるのね。ほら、勇者…ご挨拶、なさい?」
勇者「あ、あの……すみません。勇者です……初めまして」
騎士「お初にお目にかかります、勇者様。騎士でございます。本日は……少しの間、お付き合い願います」
勇者「あ、はぁ……」
……
………
…………
騎士「まず、王よりのお言葉を」
騎士「旅立ちの日、すなわち勇者様がめでたく16歳におなりになられる日」
騎士「王の間へとお立ち寄り下さい」
騎士「僅かですが、旅の役に立つようにと金銭をご用意するそうです」
母「まぁ」
勇者「は、はい……」
騎士「勇者様は……王様にお会いになったことは?」
勇者「い、いえ……ありません」
騎士「そうですか。当日、ゆっくりと言葉を交わす暇は無いでしょうから」
騎士「お望みであれば、一度謁見の機会を設けますが?」
勇者「………母さん?」
母「自分で決めなさい、勇者。貴方の旅は、貴方のもの」
勇者「ええ、と……」
騎士「お返事は今日で無くともよろしいですよ」
勇者「いえ……あの、お願い致します」
騎士「……そう、仰ると思いました」ニコ
勇者「……?」
騎士「いえ、ね。私事になるんですが」
騎士「私にも、息子がおりまして」
騎士「歳も勇者様と近いんですが……ただ、強くなりたいと申すんですよ」
勇者「………」
騎士「何の為に強くなりたいか、何を守りたいのか」
騎士「まだ、なぁんにも分かっちゃ居ないんでしょうが」
騎士「強くなるためならって、何でも吸収しようと言うその意欲は」
騎士「同じ、剣を握るものとして、同じ男として……父として、ね」
騎士「単純に、褒めてやりたくなるんですよ」
騎士「ついでに、与えてやれるものなら、与えてやりたい、ってね」
勇者(俺には、父がいないから分からないけど)
勇者(父親ってのは……母親とはまた違った意味で)
勇者(暖かい、のかな……この人も、息子を愛してる…んだろうな)
勇者(息子ってのが騎士になりたいのかはわかんないけど)
勇者(道を同じくするなら、か……)
勇者(………良いな、そういうの)
勇者(勇者は……一人しか居ない、からな)
騎士「鍛錬を欠かすなと言えば、朝夜版」
騎士「肉は筋肉に良いと言えば、肉を食い、睡眠が重要だと言えばきっちり休んで」
騎士「機械みたいな生活、してやがりますよ」
騎士「今度は柔軟性が必要だと教えてやろうかと思うんですが」
騎士「そしたら体操しだしそうな……ま。筋肉馬鹿なんですけどね」
勇者(俺の親父……生きてたら、この人みたいだったのかな)
勇者(この人の息子が……ちょっと羨ましい)
騎士「何時だったか、脳を働かすには糖分が必要だって言って」
騎士「パフェ食わせたら、すっかり甘党になっちゃってねぇ」
騎士「嘘じゃ無いし、必要ない訳じゃ勿論無いんですが」
騎士「一緒に飯食う度に、ジャンボパフェ食うんですよ」
騎士「いっかつぃ身体してパフェですよ……」ククク
騎士「似合わねぇにも程があるってね」アハハハ
勇者(……前言撤回。息子で遊んでるんかこの人は)
母「……息子さんを愛していらっしゃるんですね」
騎士「ええ、勿論」キッパリ
騎士「…早くに母親を亡くしてるんでね、体当たりの子育てですが」
騎士「愛情はたっぷりですよ」
母「ステキですね」ニコ
騎士「……ああ、あまりにもお茶が旨くて、ついいらん話を。失礼しました」
騎士「……世が世なら。勇者様にとって、良い友達になりそうな奴なんですがね」
騎士「勇者様、最後に一言だけ。どうぞ、この世界を………お救い下さい」
騎士「そして……光に導かれし運命の子……その、小さな肩に、世界の命運を背負わせていまう」
騎士「身勝手な私達をお許し下さい」
勇者(……もう一回撤回。やっぱ……素敵な親父だ)
勇者「顔を上げて下さい……俺…は、勇者ですから」
勇者「……必ず、世界を救います」
勇者「大丈夫、ですから」
騎士「……ありがとうございます。我らに出来ることがありましたら、なんなりと」
騎士「では………長くお邪魔致しました。王様との謁見の日取りは、またご連絡いたします」
……
………
…………
勇者「ねぇ、母さん」
母「ん?」
勇者「親父って……どんな人だった?」
母「そうねぇ……」
母「素敵な人だったよ。勇者は……覚えてないだろうけど」
勇者「うん……」
母「まっすぐで、一生懸命でね」
母「ちょっと……抜けてる所もあったけど」
母「私の事も、勇者の事も、すごく愛してくれてたよ」
勇者「そっか……やっぱり、今日の騎士さんみたいに」
勇者「……いや、いいや」
母「そうね……あんな感じかなぁ」
母「多分、勇者がパフェが食べたいって言ったら」
母「100個ぐらい、用意してくれるような人」フフ
勇者「……それは、嫌がらせ?」オイオイ
母「ん?勿論、喜んでもらいたくて、だよ」
母「それで、周りの人とかに、殴って止められるの」
母「俺は勇者の為に! …って、泣きながら渋々一個だけにするかな」
勇者「……立派な父親像が音立てて崩れた」
母「……ふふ」
勇者「あ。ごめん……」
母「何で?」
勇者「なんか……ごめん」
母「大丈夫よ。大丈夫……思い出しただけ」
母「さあ、寝ましょうか。今日も……疲れたでしょう」
勇者「うん、おやすみ、母さん……」
母「おやすみなさい、勇者」
……
………
…………
謁見の日
コンコン
勇者「はい、開いてます」
騎士「……不用心ですよ、勇者様」
勇者「信用、してますから」
騎士「……全く。では、参りましょうか……では、勇者様、こちらのマントを」
勇者「あ……はい」
騎士「目まで隠れるように……貴方のその金の瞳は目立ちますから……良し。良いですね」
騎士「では、母君様。夕刻までにはお送り致しますので」
母「ええ、お願い致します」
勇者「行ってきます、母さん」
騎士「王も忙しい身ですから……旅立ちに際しての注意点や、こちらからの援助のご説明が主になると思いますが」
勇者「はい」
騎士「聞きたいこと等があれば、事前にまとめておかれる方がよろしいですね」
騎士「道すがら、私に聞いて下さっても良いですよ」
勇者「あ、ありがとうございます」
騎士「後、お帰りの際に……世界地図を差し上げますね」
騎士「時間が許せば、色々な街にお立ち寄りになられると良い」
騎士「……良い娘がいる酒場なんかの詳細も一緒にお渡ししましょうか」クスクス
勇者「は!? …け、結構です!」
騎士「ふふ……では、参りましょう」
母「気をつけてね、勇者…… 騎士様、どうぞ宜しくお願いします」
パタン
母「とうとう……後一ヶ月、か」
母「勇者、私を怨むかな? …貴方を……魔王を、怨むかな」
母「どんな決断をするんだろう」
母「どんな人を……仲間に、するんだろう」
母「勇者………これだけは、忘れないでね」
母「私も、魔王も……心から、貴方の事を愛しているんだよ」
母「この腐った世の中の、腐った不条理……」
母「貴方は……断ち切れるかしら。勇者……」
命は願い、祈った。
命は喜び、悲しみ、寂しさを覚えた。
例えヒトとマが違えたとしても、同じであることを願った。
世界は悠久だった。
空は青く、果てしなかった。
命は消え、星になった。
星は、光だった。
光は、闇に包まれ、太陽が昇り、月が昇る。
そうしてまた、何時しか命が産まれた。
過去は現在になった。
現在は未来になった。
命は、願いだった。
願いは、どこにでもあった。
神が住まいし限りなく遠く、果てしなく近い最果ての地。
そこにも、願いはあった。
朝と夜は繰り返され、永劫の時を生き続ける。
終わりは、始まりだった。
番外編4 おしまい
ピンクの栞を続けて読む?
はい
いいえ (ぴっ)
途中で送信した私のバカタレ
ピンクの栞を続けて読む?
はい
いいえ
番外編5へ進む (ぴっ)
眠いらしいので寝ますよ
おーやすみー
乙
安価じゃなくてもはいはいはいはいはいノシ
ピンクの栞www
おはようー
今日は一日用事があるので明日の午前中になっちゃいます
落ちないと思うけど……保守していただけるとありがたいです
まあ、落ちたら落ちた時だけどw
>>542
安価にした方がよかったかな?
どっち先にかくー程度なんだけどwww
>>543
そう言う世代なんだよ、察しろwww
て訳で、切る前に安価
だいぶん遠いけど
>>600
ピンクの栞or番外編5?
番外編もこれでおしまいにしたいです
計画なしでやるとまとまらなくてすまん
遠いよねw
んじゃ、安価
>>560で
んじゃッ
番外編求ム
おはよう!
んじゃ番外編だなー
その前にこっそり
http://imepic.jp/20130212/352340
ウディタの件みてこっそりと。
(http://www.geocities.jp/kurororo4/looseleaf/様の素材お借りして弄ってます)
さて。
僧侶?!
>>571
の、つもりwww
需要があるなら他もつくるかも
事務員(本物)「さて、書類はこれと、これ……」トントン
事務員(本物)「勇者様のお誕生日も近いし……忙しくなるわねぇ」
魔導将軍「精が出るわね、お嬢さん?」
事務員(本物)「……? ごめんなさい、今日の登録は終わってしまったんです」
事務員(本物)「また明日来て貰えます?」
魔導将軍「大丈夫、それには及ばないわ」
事務員(本物)「え?」
魔導将軍「忙しいでしょう? ……手伝ってあげる」
事務員(本物)「え……きゃッ…」クラクラ
魔導将軍「暫く、お眠りなさい……と、危ない危ない」ダキ
魔導将軍「旅立ちの日まで二週間……さて」
魔導将軍「久しぶりねぇ、人間ごっこ」
魔導将軍「んー、翼隠したら服着れるわね……よっと…ごめんね」ヌガシテ、ト
魔導将軍「あらん、セクシーな下着……よいしょっと、ちょっと胸がきついなぁ」
魔導将軍「ん、おっけー……御免ねぇ、事務員ちゃん。二週間のロングバケーション、楽しんでね」
魔導将軍「……夢の中、だけど」フフ
……
………
…………
魔導将軍「……はい、次の人ー」
魔導将軍(久しぶりに人間の仕事なんかすると疲れるなぁ)
魔導将軍(ああ、側近にマッサージしてほしい)
魔導将軍(あれから10日ほど……)
魔導将軍(最初はぱらぱらだったけど…)
魔導将軍(王様のお触れが出てから、来るわ来るわ……ハァ)
魔導将軍(この中から三人ほど、か……)
僧侶「あの、すみません……登録って、ここで良いんでしょうか…?」
魔導将軍「はい、こんにちは……どうぞ?」ニコ
魔導将軍(また一人……あら、この子……?)
僧侶「あ…良かった。えっと、お願いします」
魔導将軍「じゃあ、この書類に記入して貰えるかしら?」
僧侶「はい……ペン、お借りします」
魔導将軍(僧侶、レベル1……ふむ)
僧侶「これで……よろしいですか」
魔導将軍「ええ、結構ですわ……では、登録させていただきます。勇者様に選ばれるとよろしいですわね?」ハイ、アクシュ
僧侶「あ……はい!」アクシュー
魔導将軍(水……優れた加護を受けてるわね……それに……)
魔導将軍(この子……人じゃないわね……エルフ……否、回復魔法が使えるのか)
魔導将軍(珍しい……ハーフエルフ? ……へぇ)
僧侶「勇者様は……」
魔導将軍「うん?」
僧侶「どんな方をお連れになるのでしょう……」
魔導将軍「…さぁ。でも、回復要因は重要だと思うけれど?」
僧侶「私は……世界の謎を知りたいんです」
魔導将軍「世界の、謎」
僧侶「はい……勇者様の目的が、魔王の討伐と言う事は存じておりますが」
僧侶「お供することで、少しでも……触れられるなら」
魔導将軍(なるほど……)
魔導将軍「一朝一夕でなされるものではありませんからね」
魔導将軍「……不可能ではないと思いますよ?」
僧侶「ええ、でも……不純な動機ですよね」
魔導将軍「厳しい言葉かもしれませんが」
魔導将軍「運命に選ばれるものですから……勇者様ご自身も、これからの…行く末も」
僧侶「………」
魔導将軍「貴女の手が必要であるならば」
魔導将軍「勇者様が……否、運命が」
魔導将軍「貴女を選ぶかも知れませんよ」
僧侶「そう……ですね」
魔導将軍(腐った世の中の、腐った不条理……もし。何かしらの介入を許す隙間があるのなら)
魔導将軍(……それすらも、必定であるとは思いたく無いわね)
……
………
…………
魔導将軍「はい、では書類をお預かりします」
戦士「ああ」
魔導将軍(良い筋肉してるわねー……昔の側近みたい)オットイケナイ、ミトレチャッタ
戦士「勇者様の旅立ちは、正確には何時なんだ?」
魔導将軍「確か3日後とお聞きしていますよ」
戦士「そうか……もう相当数の登録があるんだろう?」
魔導将軍「そうですね……それはもう ……不安、ですか。選ばれるかどうか」
戦士「…そうで無いと言えば嘘になるが。所詮、実戦経験も無い。魔王を倒すのであれば」
戦士「……否。弱気ではいかんな」
魔導将軍(ふむ)
戦士「俺なんかが……と言う気持ちが無くは無いが。そういうのはにじみ出るものだろう」
戦士「で、あれば……せめて自信を持って、勇者様とご対面したい」
魔導将軍「立派な心がけだと、思いますよ……はい、オーケーです。これで、登録させていただきますね」アクシュー
戦士「……宜しく頼む」アクシュ
魔導将軍(緑の加護……やっぱり側近みたい)フフ
魔導将軍(優しい子、みたいね、ぶっきらぼうだけど)
魔導将軍(暖かい気配が流れ込んでくる……)
戦士「俺は、まだ……なんの為に強くなりたいのか、わからん」
魔導将軍「?」
戦士「だが……それが、勇者様の為であれば良いと思う。今は」
魔導将軍「何時か、いい人が見つかれば」
魔導将軍「勇者様とその人と……守るものが二つに増えるだけですわ」
魔導将軍「そうすれば……より、強くなれますよ?」
戦士「………」ムス
魔導将軍(照れた………のか?)
……
………
…………
魔法使い「ここで良いのよね、登録って」
魔導将軍「はい、結構ですよ。では……この書類に記入を」
魔法使い「……結構詳しく書かされるのね」
魔導将軍「皆様、勇者様の御為に……といらっしゃいますから」
魔導将軍「あまり、身元や得体の知れない方は……申し訳ありませんが、こちらで跳ねさせて戴くのですよ」
魔導将軍(勇者様、がそんなことに負けるとは思わないけどね……)
魔導将軍(人間ってややこしい……私も元人間だけど)
魔導将軍(魔族になるって……こういうことなのかしらね)
魔法使い「ふぅん……まあ、良いわ。はい」
魔導将軍「お預かりします」
魔導将軍(ん? …この子……あの家の出なのか)
魔導将軍「はい、結構です。では……登録完了です」アクシュー
魔法使い「…怪しいところは無かった、って事ね」アクシュ
魔導将軍(……火の加護……だけど。ふむ……)
魔導将軍(あの家の人間は優れた加護を持つ人が多かった筈。でもこの子は……)
魔導将軍(苦労、したんでしょうね)
魔法使い「……何?じっと見て……」
魔導将軍「ああ、失礼しました……魔法を使役する方の登録は多いので」
魔導将軍「つい、数を数えてしまいましたわ」
魔法使い「……やっぱり、多いのね」
魔導将軍「剣を扱う方、武術を得意とする方、回復専門の方……同じ様に多いのですけれどね」
魔導将軍「魔法系は、さらに属性で分けられますから」
魔法使い「………」
魔導将軍(あ、しまった……地雷踏んじゃった?)
魔法使い「……珍しい属性の人は居た?」
魔導将軍「…個人情報は漏らせませんわ、ごめんなさいね」
魔法使い「あ、そうよね……ごめんなさい」
魔法使い「でも……」
魔導将軍「不安になる気持ちは様々、されど皆様同じですよ」
魔導将軍「どうぞ、堂々としていらして下さいな」
魔導将軍「まあ、本当に自信の無い方は、登録すらされないでしょうけどね」
魔法使い「……ふふ、そうね……ありがとう、事務員さん」
魔導将軍「どういたしまして」
……
………
…………
勇者「では……貴方と、貴女と……貴女に。お願いできますか」
戦士「……ああ」
魔法使い「いい目、してますね勇者様」
僧侶「わ、わわわわ、私、ですか……!?」
勇者「はい。お名前を伺っても?」ニコ
魔導将軍(成る程……勇者様のお眼鏡に…否)
魔導将軍(運命に導かれたのは、あの三人、って事ね)
魔導将軍(光に導かれし運命の子……そしてこの世の行く末を担う運命に選ばれた子達)
魔導将軍(ここまでは、一緒。まだ……一緒)
魔導将軍(だけど………!)
勇者「では、お世話になりました」
魔導将軍「貴方達の行く道に光あらんことを」ニコ
魔導将軍(まだ小さな光……小さな背。でも……あの子達ならきっと)
魔導将軍(古の腐った縁を……腐ったこの世界の不条理を……)
魔導将軍(光で、照らしてくれる)
魔導将軍(そして……特異点)
魔導将軍(何かしらの介入を許す隙間………前代未聞)
魔導将軍(ここからは………変わるのかしら)
魔導将軍(否、変わる! ……腐った世界の、腐った不条理を断ち切る、特異点…!)
魔導将軍「さて、私も行きますか……ああ、いけないその前に、あの子起こさなきゃ……」
魔導将軍(………でもこの、人間の服…側近に見せたいな)
魔導将軍(……うーん)
魔導将軍「…貰っちゃお」バサッビリッ
魔導将軍(あああ、背中破れた…ッ 翼が……ま、いっか)コレモセクシー
バッサバッサバッサバッサ
事務員「う……うん……」サムイッ
事務員「あ、あれ、私さっきまで仕事してた……は、ず……」
事務員「きゃあああああ、な、なんで裸なの!?」ギャー
……
………
…………
后「勇者は世界に一人しか存在できない」
側近「勇者が産まれると言う事は、魔王もまた、産まれると言う事」
魔導将軍「希望と絶望」
后「光と闇」
側近「表裏一体」
魔導将軍「腐った世界の腐った不条理」
后「運命の子は、まだ限りなく遠くて、果てしなく近いよ」
魔導将軍「今はまだ……ね」
側近「……だとさ、魔王……否、元勇者様」
魔王「………」
后「もう、喋れないんだね」
側近「ああ、立ち上がれないしな」
魔導将軍「笑わないしね」
后「……繰り返されるのかな」
側近「特異点」
魔導将軍「前代未聞」
后「それすらも必定?」
側近「それでも……俺たちは、喜ばないといけない」
魔導将軍「腐った世界の、腐った不条理を……今度こそ」
后「断ち切れる?」
側近「まだ、わからん」
魔導将軍「でも、何らかの介入を許した。恐らく、あのハーフエルフの娘」
后「すぐにでは無いかも……」
側近「だが、確実に変わる。変わっていく」
魔導将軍「そう……私達の時とは違う」
后「これから先は………貴方達の物語」
始まりは終わりだった。
古の神との忘れられた契約。
限りなく遠く、果てしなく近い最果ての地。
神は光と闇を生み出し、大地を作り水を育み炎を抱き過ごした。
一つ、命が産まれた。
それは紛れも無い命だった。
それは感じ、見、知る事ができた。
神はそれに、ヒトと言う名を与えた。
一つ、命が産まれた。
それもまた、紛れも無い命だった。
それは生み出し、使役する事ができた。
神はそれに、マと言う名を与えた。
ヒトとマは交わり、様々な命を産みだした。
神はその都度、相応しい名を与えた。
何時しか、命は神の手を離れた。
ヒトとマの境界は薄れ、何時しか光と闇は混じり合った。
命は国を作った。
太陽が昇り、月が沈む。
命は命を作った。
月が昇り、太陽が沈む。
命は、命だった。
光と闇だった。
命は、光と闇の獣だった。
光は星でもあった。
静かに、音も無くただ、大地を照らし続けた。
闇は夜でもあった。
静かに、音も無くただ、大地を包み込んだ。
獣は、獣だった。
雨に濡れ、太陽に灼かれても。
命として、そこにあった。
獣は、ヒトだった。
ヒトは、雨を凌ぎ、太陽を凌ぐ術と知を身につけた。
ヒトは、弱かった。
命は、儚かった。
ヒトは、強かった。
命は、輝いていた。
儚い輝きは、未来へと続いていた。
未来は、過去だった。
過去は、現実だった。
寝て見る夢、現実に見る夢。
共に、希望を抱き、絶望に抱かれる。
共に必ず、願いがある。
命は願い、祈った。
命は喜び、悲しみ、寂しさを覚えた。
例えヒトとマが違えたとしても、同じであることを願った。
世界は悠久だった。
空は青く、果てしなかった。
命は消え、星になった。
星は、光だった。
光は、闇に包まれ、太陽が昇り、月が昇る。
そうしてまた、何時しか命が産まれた。
過去は現在になった。
現在は未来になった。
命は、願いだった。
願いは、どこにでもあった。
神が住まいし限りなく遠く、果てしなく近い最果ての地。
そこにも、願いはあった。
朝と夜は繰り返され、永劫の時を生き続ける。
終わりは、始まりだった。
魔導将軍「……何の詩?」
后「名も無き古の詩。魔王が……まだ勇者だった時、教えてくれた」
側近「……皮肉だな」
魔導将軍「皮肉ね」
后「永遠、光と闇、太陽と月……」
側近「表裏一体」
魔導将軍「過去、未来、現在……」
側近「何時か……終わるのか?」
魔導将軍「何時か、終わらす、のよ」
后「そう。だから私達は、喜ばなくてはいけない」
魔導将軍「願うなら、私達が悠久の空の彼方に還った時」
側近「世界へ孵った時」
后「古は、古へ。未来は未来へ……新しい物語を、あの子達はきっと紡いでくれる」
后「そこから先は……新しい、誰もしらない誰かの物語」
番外編5 おしまい
考えなしに続けちゃった番外編、終了!
次こそ
魔王「ああ……世界は美しい」
に続きます
新スレorピンクの栞?
>>600
さて、お昼食べてバイトまで魔法使いでも作るわー
http://imepic.jp/20130212/487960
作り直してみた。
ばーいとー!
ピンク
も、もちろん>>1の方が面白いんだからねっ(*´д`*)
>>626.629
アクエリオンってあれしかしらんかったー
いちおくねんと~って歌
……あれ、アクエリオンだよな?www
けしからん乳しとるな恨めしい…www
>>630
なんのフォローだ照れるだろやめろwww
ありがとw
「…で、一服盛ったと?」
怖いなお前、と。
悪戯めいた戦士の声が続く。そんなことありませんと、僧侶が拗ねたように告げた。
――甲板。気の問題と薬のおかげか、潮風の冷気に晒された僧侶の頬から薄いながらも
赤みは失われて居なかった。
「人聞き悪いです、戦士さん」
拗ねた様な声は続く。戦士を下から睨む様に顔を上げ、微かに頬を膨らせた僧侶の顔を見下ろす
戦士の表情が愛おし気に緩む。
幼子をあやす様に、柔らかそうな蒼い髪を撫で、戦士はか細い僧侶の身をそっと抱き寄せた。
「その、薬草酒に何か混ぜたんだろ?」
「睡眠草をちょっとだけ。寝るに限りますよ、二日酔いは」
「……船酔いも寝るに限ると思うんだが。ふらふらしてるだろ」
どこかとろんと惚ける僧侶の蒼い双眸を見つめる侭、戦士は支えの手を離す。
途端、ふらりと細い身は揺らぎ、戦士の逞しい腕が再度力強く抱きしめる。
「え?そんな事は……あ」
僧侶は船酔いの所為以上にふらふらしている様に見える。
蕩けた目、覚束ない足下。
船酔いに効果があるのであればそれだけで眠くなる成分が含まれているだろうに……とは、戦士の経験則。
「眠いだろ」
「くっついてるから、気持ち良いです……」
もたれて良いと抱いた身をさらに抱き寄せ、戦士は夢心地に似た僧侶の言葉にくすりと笑った。
ただでさえ揺れる船の上。戦士は僧侶を歩かせるに偲びないと、その身を軽々と抱き上げた。
「……眠いって言うんだ、それ」
「きゃッ」
驚きと照れからの、はにかむ様な、愛しい僧侶の声。
思わず戦士の唇は孤月を描き、胸の奥の方に微かな欲望の熱を感じ……誤魔化す様に僧侶の頭を己の胸へとそっと押しつけた。
勇者が飲むであろう薬草酒には、さらに僧侶の配慮で睡眠草入りであると言う。
果たして街へと帰還した後、勇者は起きられるのだろうか、と腕の中の蒼い髪へと唇を寄せ苦笑する。
「俺たちも部屋に戻るぞ。今のうちに……ゆっくり眠ろう」
「はい……そうですね」
戦士はゆっくりと、僧侶を抱き上げた侭彼女の船室へと向かった。
「すみません……ありがとうございます」
僧侶は、心地揺れに、戦士に抱かれる心地よさに、夢の中に居るような錯覚を覚えていた。
つかの間の幸せ、とわかってはいた。
街へ着いてしまえば、否応なくまた、生と死をかけた戦いの中に身を置かなければならない。
戦士の腕はそっと僧侶を寝具の上へと下ろし、ゆっくりとその傍らへと腰掛けた。
優しく、優しく僧侶の髪を梳く、無骨な指。
僧侶はそこへとうっとりと視線を這わせ、ああそうだ……と呟いた。
「ん?」
「戦士さんに、お聞きしたい事があったんです……」
僧侶が発した声も、視線と違わずどこかうっとりと惚ける。
己の耳の中で、ふわふわと反響するように脳裏に広がった――笑みを浮かべた侭、僧侶は瞳を閉じた。
言葉を続ける。
「昨夜、魔法使いさんが言ってたんです……」
「……ろくな事じゃない気がするんだが」
戦士はうんざりとした色音を声に潜め、僧侶の言葉の続きを待つ。
「戦士の癖にいい目見やがって、って……いい目、って何です…?」
「?」
僧侶の言葉に、戦士は思わず眉根を寄せる。意味が分からないと、緑の視線が僧侶に問う様に見つめる。
ゆっくりと僧侶は瞳を開き、頬を緩めた。柔らかい笑みを浮かべながら、言葉を続ける。
「私の胸、触って……負けた、とか…えっと。何だっけ……それで、ああ、そうだ……それで、いい目見やがって、て」
何の事なんでしょうか……と落とされた笑みと僧侶の声にかぶせて、噎せ咳いた戦士の騒ぎが重なった。
戦士の頬は赤く赤く染まり、やはりろくな事じゃ無いと、深いため息を一つ。
「……そう言う事だ、と……言ってもお前には…否、今の僧侶にはわからんだろう」
「……?」
僧侶は、横たわる侭小首を傾ぐ。
ギシ、と音を立て、戦士が身じろいだ。
ゆっくりと僧侶の頬に唇を寄せるに動き、体重をかけない様そろりと、そのか細い身の上へと覆い被さる。
「………」
「………」
戦士の顔が、近い。
ゆっくりと近づいてくる唇を求める様、僧侶は頬を持ち上げた。
熱に浮かされるかに蕩けた蒼い瞳。
潮風から解放され、定温に保たれた室内の空気と、戦士と離れずにいる事で暖められた
僧侶の頬は、先ほどから増して微かに赤く、色香とも言える雰囲気を醸し出す柔らかく笑む表情。
甲板で僧侶と触れ合う際に感じた、身体の奥の奥でく燻る欲望の炎を、今はしっかりと自覚する事ができる。
求めに応じる様に、戦士は僧侶の小さな唇に口付けた。
満足気な吐息を漏らすその唇に舌を這わせ、そのままやや強引に、僧侶の口内へとねじ込んだ。
驚きか悦か、びくりと小さなその身を震わせるも、僧侶はおずおずと戦士の背へと腕を回す。
暫くの後。戦士はそっと離れ、僧侶の頬へと唇を寄せた。
僧侶の耳元に、熱く荒い息がかかる。
「あ、の……大丈夫、です。わかります、よ?」
「……何が、だ」
僧侶は戦士の胸へとすり寄り、くすりと小さな笑みを漏らした。
ぎゅう、と抱きしめ、嬉しそうに気恥ずかしそうに、言葉を続ける。
「私には、隠せないです……戦士さん……あの、その……熱い、です。戦士さんの気持ち……」
「そ……そうか、そう、だな……」
「……私も、その」
「良い。言うな………辛く、ないんだな?」
一瞬の間。僧侶が、戦士の胸に顔を埋める侭、小さく頷いた。
「……辛ければすぐに言え。無理はしない……したくない」
「はい……でも」
「でも、は無しだ、僧侶……」
僧侶の耳朶へと、熱い舌を這わす。ああ、と思わず声を漏らし、僧侶は慌てて身を捩った。
「ち、違います、あの……ッ わ、私も、そう……し、たいん、で……ッ」
「なら、何故……離れる?」
戦士の、困惑した様な、照れた様な……切羽詰まった声が落ちる。
違うんです、と僧侶のやはり困った様な声。
恥ずかしいのだろうとの思いに行き当たり、戦士は耳元から僧侶の首筋へと唇を沿わせた。
その唇は悪戯気に弧を描き、白い項を食む。
先よりも大きく、僧侶が思うよりもはしたない声が、細い喉から漏れた。
戦士の大きな手はするすると僧侶の身の上を滑り、肩から胸へとたどり着く。
衣服の上からさらりと頂きを撫で、ああ、と声を漏らした。
「……ふ…ッ ン、なん……で、す……?」
「いや……いい目、な…」
くつくつと、戦士は喉を鳴らし笑う。確かに、と独りごち、柔らかい膨らみの先を摘む。
「あ、 ……ッ ゥ」
不器用に、僧侶の体中を這い回る大きな手。
抱き合い、口づけを交わし、ゆっくりゆっくりと戦士は、僧侶の身を快感に解していく。
いつの間にか我慢することを忘れた僧侶の喉からは、甘い声が漏れ続け、何時しか衣服まではぎ取られていた。
船酔いの薬の所為で夢見心地に蕩けていた僧侶の思考はさらに熱で蕩け、じりじりと這い寄る悦楽に不快では無い重みを感じていた。
しっとりと汗で濡れた身から戦士がゆっくりと身を離す。
「………?」
僧侶の疑問の浮かんだ蒼い双眸は、神具横で装具を手早く、されどぎこちなく脱ぎ捨てる戦士の身を捉える。
刹那、羞恥から僧侶は、素早く顔を背けた。
「……僧侶、ここでやめないと……もう」
僧侶は、戦士の声に顔を背けた侭、嫌です、と呟いた。
「ここまで、して………やめる、気です……か?」
戦士の答えは無い。やや乱暴に僧侶の身へと覆い被さり、激しく唇を塞ぐ。
ハァハァと、どちらの物ともつかない荒い息。
僧侶の白い太ももをぐいと開き、戦士はゆっくりと身を寄せた。
「……ッ」
「御免。ごめん……ッ 痛いな、痛い……な」
「良い、良い……ッだ、だい……ッじょうぶ、で、す……か、 ……ら、ァッ…」
ゆっくりと分け入られていく。痛さと、感じた事の無い感覚に、僧侶は大きく背を反らせる。
悲鳴に似たか細い声。されどそこにはあるのは苦痛だけでは無かった。
愛しい者の暖かさを感じる事。それがこれほどまでに満たされる事なのかと、僧侶の瞳には歓喜の涙が浮かぶ。
喉が苦しい。胸が痛い。
甘く切ない、愛の痛み。
ゆっくりと動く戦士の動き、一つ一つに、僧侶の歓喜の声が重なる。
羞恥は忘れ、喜びだけに支配された内側は焦がされるかに熱い。
徐々に高まるに連れ、少しずつ大胆に、早くなる。
微かな痛みを感じては居たが、己の中で達するであろう戦士のその高ぶりが
僧侶には嬉しかった。
一つ、小さな小さな咆哮を僧侶の耳元で落とし、戦士はぐったりと僧侶の上へと身を預ける。
曰く、果てたのだろうと……想像が付く。
暫しの間、その侭抱き合っていた。
ゆっくりと戦士が身を離し、その侭ごろんと僧侶の横へと横たわる。
「……僧侶」
「はい……大丈夫です。あの……ありがとう」
「ありがとう?」
「はい……私の身を案じて下さって……」
「……何言ってるんだ、お前は」
クスクスと、笑いあった。小さくちゅ、と音を立て、何度も何度も唇を寄せる。
汗ばんだ肌を寄せ合い、足を絡め合う。
何時しか、眠ってしまうまで。
装具を身につけ、殺伐とした大地に、再び足を着ける迄。
おまけ。
僧侶「あ、魔法使いさん、見て下さいあれ」
魔法使い「んー?」
僧侶「ほら、『勇者の印チョコ』ですって」
魔法使い「チョコぉ?」
僧侶「今日、バレンタインですよ」
魔法使い「ああ……そうか、そんな日あったわねぇ、って」
魔法使い「あのねぇ、貴女が新しい杖が欲しいとか言うから、勇者様と戦士を宿に残して」
魔法使い「こうして街に出てきたんでしょうが!」
僧侶「だ、だってぇ……」オコラナイデクダサイヨゥ
魔法使い「余計な物見てるんじゃないわよ全く……」オコッテナイケドサァ
僧侶「でも、ほら。良く出来てると思いません?これ」
魔法使い「……こっちにもあるわよ、『勇者の印クッキー』」
僧侶「あ、おいしそう……」
魔法使い「貴女、お腹すいてるだけでしょ……」
僧侶「ち、違います!もう、魔法使いさん、私の事なんだと思ってるんですか!」
魔法使い「食いしん坊」
僧侶「……うぅ」ヒテイデキナイ
魔法使い「……こんな時じゃなければね」
僧侶「そう、ですね……ですけど」
僧侶「ね、これ買って帰りません?」
魔法使い「はぁ?」
僧侶「良いじゃないですか、こんな時ですけど……チョコ買って、あげるぐらいの便乗したって」
僧侶「罰、あたりませんよ」
魔法使い「……自分が食べたいだけじゃないの」
僧侶「ち、違いますってば!ちゃんと戦士さんにあげます!」
魔法使い「で、一緒に食べるでしょ」
僧侶「………そ、そんな事」ナイデスタブン
魔法使い「……まあ、良いか。じゃあ……チョコにしようかな。ワインにもあうし」
僧侶「魔法使いさんも食べる気満々じゃないですか……」
魔法使い「……勇者様にも買って行くわよ」
僧侶「あ、やっぱりあげるんですね」クスクス
魔法使い「! …す、すいません、これ一つください」
僧侶「ふふ……一つで良いんですか? あ、私このクッキー一つで」
魔法使い「良いの! …貴女こそ足りるの?一個で」
僧侶「良いんですー半分こするんですー」
魔法使い「ああ、はいはいはい。ラブラブで良いですね!」
僧侶「魔法使いさんだって。 ……はい、お金。ありがとうございます」
魔法使い「ほら、今度こそ杖見に行くわよ!」
僧侶「はーい! うふふ、戦士さん、喜ぶかなぁ」
……
………
…………
僧侶「戦士さん!お土産です!ハイ」
戦士「ん? ……これは?クッキー?」
魔法使い「ほら、アンタにもあるわよ」
勇者「え?俺……あ、クッキーだ……何これ、勇者の印チョコ……に、クッキー…」
勇者「……商人ってのは…どこの世界も逞しいな」
僧侶「ハッピーバレンタイン、です」
魔法使い「……だ、そうよ」
戦士「ああ、今日は……バレンタインデーか」ニコニコ
勇者「甘い物好きだもんなぁ、戦士は……」
戦士「僧侶がくれたものなら何でも嬉しいさ。ありがとうな、僧侶」
僧侶「はい!後で一緒に食べましょうね」
魔法使い「……見てる方が恥ずかしくなるわ」
勇者「別に良いんじゃない?魔法使いも……ありがとな」
魔法使い「……うん。まぁ……ハッピーバレンタイン」
あー甘い甘い。反吐が出るッwww
慣れないもん書くと気持ち悪い!
って訳で、はっぴーばれんたいーん。
ピンクもこれで終了!
あんまえろくできませんでした。すまん。
次こそ
魔王「ああ……世界は美しい」
に、続きます!
近い内にスレ立てますー
ここは適当に使っちゃってくれておーけーですー
さて、昼飯食ってバイトだ!
見てくれてありがとう。
あと、324には多大な感謝を!
おまけ読む
↓
ニヤニヤする
↓
現実に戻る
↓
…鬱だs(ry
となりまひた(´・ω・`)
次も楽しみにしています!
>>651
かわああああ!!!!
>>652
ごめん、書いて貰ったイラストから服装ぱくってしまった……www
後戦士と勇者!
でもバイト!
おもしろい(。-∀-)
ご馳走さま(*≧∀≦*)
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