勇者「なぜだ!? 魔王は倒したのに、姫が目を覚ましてくれない!」
魔術師「魔王の呪いで昏睡状態となった姫を救う方法はただひとつです」
勇者「どうすればいいんだ!?」
魔術師「ずばり……姫が愛する者のキス」
魔術師「つまり勇者殿、あなたのキスです!」
勇者「なっ……!」
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勇者「でも、キスだなんて……! 他に方法はないのか!?」
魔術師「これしかないのです」
勇者「しかし……お手に触れたことすらないのに……」
国王「勇者よ、余からも頼む。娘を起こしてやってくれ」
勇者「陛下がそうおっしゃられるのなら……」
勇者「では……」ゴクッ
勇者「……」チュッ
シーン…
勇者「起きない! 起きないじゃないか!」
魔術師「おかしいですねえ……もう一回やってもらえませんか」
勇者「……」チュッ
魔術師「もう一回」
勇者「……」チュッ
魔術師「もう一回」
勇者「……」チュッ
勇者「ダメじゃないか! どういうことだよ!」
魔術師「うむむ、つまりこれはようするに……」
魔術師「勇者殿は姫から愛されてなかった、ということになります」
勇者「なんだってぇぇぇ!?」
勇者「あああ……」ガクッ
魔術師「これは予想外の展開です」
魔術師「早急に姫が愛している者を探し出さねば……」
国王「となれば、余しかおるまい!」
国王「愛する父親のキスで目覚める娘、実にロマンチックではないか!」
国王「……」チュッ
シーン…
魔術師「起きませんね」
勇者「ダメでしたね」
国王「うぐぐ……」
国王「こうなったら、全力で姫を目覚めさせる者を探すのだぁっ!」
王妃「父親のキスではなく、母親のキスという手もありますわよ」
王妃「……」チュッ
シーン…
王妃「こぉの、親不孝者がぁっ!!!」
騎士「私は幼い頃、姫と遊んでいた時期がありました」
騎士「私ならば目覚めさせられるかも……」
騎士「……」チュッ
シーン…
騎士「うぐぅぅ……逆玉に乗るチャンスだったのに……」
貴族娘「わたくしの出番がきましたわー!」
貴族娘「わたくし、姫の親友ですわ!」
貴族娘「わたくしならば、姫を目覚めさせられるはずですわ!」
貴族娘「……」チュッ
シーン…
貴族娘「ダメでしたわー!」
村長「わしは姫に会ったことなどないんじゃが……」
国王「いいからやれ!」
村長「は、はいっ!」
村長「……」チュッ
シーン…
国王「起きなかったか……」
村長(ぐふふ、この唇は一生洗わんぞ……!)
魔王「我を復活させたと思ったら、キスをしろだと!?」
勇者「そうだ。もしかしたら、お前を愛してた可能性もあるからな!」
国王「早くしろっ! 間に合わなくなっても知らんぞ!」
魔王「わ、分かった!」
魔王「……」チュッ
シーン…
国王「よし、再び抹殺しろ」
勇者「イエッサ」ザシュッ
魔王「ギャーッ!」
国王「こうなったら誰でもいい! 誰か娘を目覚めさせてくれーっ!」
チンピラ「……」チュッ
村娘「……」チュッ
スライム「……」チュッ
馬「……」チュッ
武道家「……」チュッ
兵士「……」チュッ
神父「……」チュッ
酒場の親父「……」チュッ
セーブポイント「……」チュッ
ミミック「……」チュッ
シーン…
国王「くそぉ……どうして目覚めんのだ……。娘は誰を愛していたというのだ……」
魔術師「私にもさっぱり……」
勇者「――あ、もしかして!」
魔術師「なんですか?」
勇者「魔術師、あんたは姫の魔法授業を担当していただろう?」
魔術師「たしかにそうですが……」
勇者「もしかしたら、姫はあんたにこそ恋をしていたのかもしれない!」
魔術師「!」ハッ
魔術師「そうだったのかーっ!」
魔術師「姫、今あなたを救い出します!」
魔術師「……」チュッ
シーン…
国王「ダメだったね」
勇者「ドンマイ」
魔術師「あああああ……」ガクッ
魔術師「ちくしょう!」ガシッ
魔術師「このクソアマ! てめえはどうやったら起きるんだよぉぉぉっ!」ユサユサ
勇者「お、おいっ!」
国王「コラ、乱暴にするでないわ!」
魔術師「うおおおおおおおおおおおお!!!」ユッサユッサ
チュッ
勇者「あ、乱暴に揺さぶられて、姫の唇が姫の手に当たった……」
姫「――ん」パッチリ
姫「ふぁぁ、よく寝たわ」
勇者「な……」
勇者「なにぃぃぃ!?」
国王「なんじゃと!?」
魔術師「なんで!?」
勇者「こ、これはつまり……姫が愛していたのは――」
姫「あら、こんなところに手鏡があるわ」サッ
姫「キャーッ! 私ったら相変わらずセクシー!」
姫「んもう、鏡の中の自分にキスしちゃう!」チュッチュッチュッ
勇者「そういえば、長い間眠ってたからすっかり忘れてたけど……」
国王「娘は元々……」
魔術師「こういう人でしたよね……」
勇者「アホらし……」
国王「政務に戻るか……」
魔術師「……失礼します」
バタン…
姫「あら、誰もいなくなってしまったわ」
姫「ま、いっか」
姫「私には私さえいれば……ね!」
― 完 ―
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