れんげ「にゃんぱs」蛍「ーーすって、つぎ言ったらぶち殺すぞ糞ガキャアアアア!!」 (87)

夏海「やっほー。おはよー」

蛍「おはようございます」

小鞠「おはよう、ほたるん」

蛍「おはようございますセンパイぃ!!」

れんげ「にゃんぱすー」

蛍「……」

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夏海「いやあ、いきなりで悪い悪い。買い物帰りに近く通ったから、降ろしてもらったわ」

蛍「全然いいです。家にならいつでも寄ってください」

小鞠「見て見てー! これ新しい服買ってもらったんだー」

蛍「きゃー! すっごくかわいいです! センパイにぴったりだと思いますぅうう!」

小鞠「えへへ。でも採寸合わせからあんまり確認してないんだよね。部屋で着替えてもいい?」

蛍「あ、も、全然、ぜーんぜんOKです!」ハァハァ

れんげ「ほたるん、ほたるん」

蛍「あ?」

れんげ「にゃんぱすー」

蛍「ーーチッ」

れんげ「……」

蛍「少し待ってて下さい。お茶とお菓子持ってきますから」

小鞠「その間に着替えておくかぁ」

蛍「二秒で戻ってきます!!」

夏海「さーてと、ゲーム、ゲーム?……」

れんげ「なっつん、なっつん」

夏海「ん? どうしたー、れんちょん」

れんげ「ほたるん具合悪いん」

夏海「えっ。いや、そんな風には見えなかったけど」

れんげ「なんかいつもと様子が違うのんな」

夏海「いやいや、いつも通りでしょ。気のせい気のせい」

れんげ「気のせいのんな」

小鞠「どう? 大人っぽいでしょ」

蛍「はい!(か、かわいいー!!かわいすぎるぅぅうう!!)」

夏海「うりゃうりゃ」

れんげ「なっつん、ウチあれやりたいん。ぷよぷよとテトリス」

夏海「あ、ちょーっと待ってね。……んー、やっぱりこのアセンだと器用貧乏だな。TEにも火力振るか」

小鞠「色が赤だとお姉さんって感じでいいよね。ほら、このフリフリとかも」フリフリ

蛍「っったはー!! もうたまんねぇぇええええ!!」

れんげ「ほたるん」

蛍「そうだ! センパイ、わたしお母さんに商店で買い出し頼まれたんですけど、よかったら今から一緒に行きませんか? その服で外を出歩いてみましょう」

れんげ「ほたるん」

小鞠「うん。いいよ」

蛍「それじゃ」

れんげ「待ってほしいのん。ウチも行くー」

蛍母「あら、みんなでお出かけ?」

れんげ「用事頼んだん」

蛍母「いいえ、別に頼んでないわよ。買い置きならまだあるし。でも、気を付けてね。暗くなる前には帰ってくるのよ」ナデナデ

れんげ「わかったのんな! こまちゃーん! ほたるーん!」

小鞠「あ、れんげも行くー?」

れんげ「行くのん!」

蛍「センパイ、少し待っててもらえますか」

れんげ「ほたるん、どこに行くのん」

蛍「ちょっと来て。話があるの」

れんげ「話ってなんなん」

蛍「ねぇ、れんちゃん。わたしこれから、こまちゃんセンパイと二人で買い物に行くの。『二人』で」

れんげ「ウチも行きた……」

蛍「」ギロリ

れんげ「おおう!?」

小鞠「どうしたの二人共、はやく行こうよ。あれ、れんげどうし」

れんげ「ほたるん、どこに行くのん」

蛍「ちょっと来て。話があるの」

れんげ「話ってなんなん」

蛍「ねぇ、れんちゃん。わたしこれから、こまちゃんセンパイと二人で買い物に行くの。『二人』で」

れんげ「ウチも行きた……」

蛍「」ギロリ

れんげ「おおう!?」

小鞠「どうしたの二人共、はやく行こうよ。あれ、れんげどうしたの?」

れんげ「やっぱりウチは行かないのんな」

小鞠「なんでー。行こうよ」

蛍「」ジー

れんげ「……お腹痛いから辞めとくの」

小鞠「そっかー」

れんげ「ねーねー、ただいまなの」

一穂「おかえりぃ。晩御飯の用意できてるよー」

れんげ「いらないのんな」

一穂「あら」

タッタッタッ

れんげ「うー!」

一穂「どうしたー、れんちゃん。なんかあったかー」

れんげ「なんでもないの」

一穂「ケンカでもしたかー」

れんげ「なんでもないの!」

一穂「そうかい」

れんげ「うー!」

一穂「だめだぞー。ちゃんと仲直りするんだぞー」

れんげ「……どうやったら仲直りできるん」

一穂「ようし、あたしに任せな」

一穂「今日の昼休みはみんなで野球だー」

夏海「あはは、なんだよ急に」

一穂「三人三人の二チームに分かれてねー」

蛍「センパイ! あたしと一緒に組みましょう!」

小鞠「いや、わたしは……」

夏海「あははー! だめだよ、ウチのねーちゃんバット重くてまともに振れないから、運動オンチのほたるんと同じチームは話にならないって」

一穂「それじゃあ、宮内チームと越谷&蛍チームで」

れんげ「!?」

蛍「……え」

一穂「ん?」

れんげ「……」

蛍「……」

一穂「(なるほどなるほど)」

夏海「おりゃあ!」

一穂「そっちいったぞー」

蛍「わ、あっあっ」

夏海「このまま二塁もいただきー!」

れんげ「ほたるん、ウチへ投げるのー」

蛍「……」

蛍「やあっ」

コロコロ……

一穂「ほいっと」ヒョイ

夏海「あっちゃー。さすがにランニングホームランにはならなかったかー」

れんげ「ほたるん……」

蛍「」プイッ

一穂「んー」

小鞠「ほたるん、牽制だよー。近くの人にボール渡さなきゃ」

夏海「こらー! 敵に塩を送るなー!」

小鞠「あんたこそ初心者に手加減しろー!」

蛍「くっ……!」

れんげ「やっぱりほたるん、ウチのこと嫌いのんな」

一穂「蛍ー。れんちゃんを信じてあげてー」

れんげ「ねーねー……」

一穂「大丈夫、きっと上手くいくよー」

蛍「……」

小鞠「ちゃあっ」

夏海「お、珍しく当たった。っちぇ、ホームスチール決めたかったのにな」

小鞠「いいから走る!」

夏海「うっしゃ、まずは一点いただきー!」

蛍「くっ」

れんげ「ほたるん!」

蛍「えーい!」

バシッ

れんげ「ねーねー!」

一穂「ほいきた」


ズザザザザ……!


一穂「残念アウトー」

夏海「わー! やられたー!」

蛍「やった!……あ」

れんげ「やったのほたるん!」

蛍「……」

一穂「はい、チェンジだよー」

夏海「くっそー。結局無得点かー!」

れんげ「ほたるん、さっきはすごかったのんな!」

蛍「う、うん」

一穂「蛍、れんちゃんと仲良くしてあげてねー」

蛍「はい……」

れんげ「ありがとうなの、ねーねー!」

一穂「いいえー、あたしは何にもしてないよー」

蛍「……ざけやがって」

一穂「ん?」

蛍「い、いえ。なんでもありません」

一穂「そっか」

蛍「」ギリギリ…

夏海「短くしっかり持って」

蛍「こ、こうですか?」

れんげ「ほたるん、かっとばすのー!」

一穂「どーどー。落ち着きなー」

小鞠「いくよー」

蛍「はいセンパァイ」

小鞠「にゃあ」

蛍「」ブンッ


スッポーン


フォンフォン…


れんげ「んな!?」

一穂「――れんちゃん!!」


ドンッ

一穂「……」

れんげ「……ねーねー?」

小鞠「え、えっ?」

夏海「かず姉ぇ!!」

蛍「いやああああああああああああああ!!」


蛍「」ニヤリ


れんげ「!?」

夏海「かず姉!かず姉! こまちゃん救急車!」

小鞠「わ、わかった!」

れんげ「ほ~た~る~ん!!」

ドッ

蛍「きゃっ」

れんげ「なんでこんなことするん!! なんでねーねーを!! ウチに文句があるならはっきり言うん!!」

蛍「……わ、わたし。うわああああん」

夏海「れんちゃん!!」

れんげ「なっつん離すの!!」


バシン!!


れんげ「……」

夏海「そんなことしてる場合かよ!! ほたるんだってわざとやったわけじゃないだろ!!」

れんげ「わざとなの!!」

夏海「いい加減に……!」

蛍「やめて下さい、センパイ。わたしが悪いんです……わたしが……ああああああああん!!」

夏海「ほたるん……」

れんげ「……」

一穂「そんなわけないでしょー」

れんげ「本当なの! ねーねーにバットぶつけた時、ほたるん笑ってたのん!」

一穂「んー。仮にもしそうだったとしても、蛍を執拗に責めるのはよくないと思うなー」

れんげ「でも……!」

一穂「れんちゃん、お姉ちゃんを心配してくれる気持ちは嬉しいけど、蛍ちゃんとも仲良くしなくちゃいけないよ。あの子は転校生でこんな田舎に越してきてから不安も多いだろうし、学校の生徒だって少ないでしょう。れんちゃんとはこれから何年もあの子と一緒にいるんだよ。なにがあっても友達として大事にしなきゃね」

れんげ「ねーねー……」


ガラッ


れんげ「!」

一穂「やあ、蛍」

蛍「あ、あの……せ、先生、ごめんなさい!!」

一穂「大袈裟だよー。ケガは大したことないって」

蛍「ぜんぜぇ……」ポロポロ

一穂「おー、よしよし。わざわざ病院までご苦労さん。お腹すいたかい、リンゴ食べなー」

蛍「うわーん」

蛍「本当にすいませんでした」

一穂「もういいよー。大丈夫だから気にしないでー」

蛍「でも本当によかった……先生が無事で」グスッ

れんげ「……」

一穂「うんうん。れんちゃんも蛍と一緒に帰んな。もうそろそろ日が暮れる頃だぞー」

れんげ「わかったの」

蛍「失礼します」

一穂「さいならー」



蛍「……」

れんげ「ほたるん……」

蛍「本当に、本当によかった。先生が無事で……」

れんげ「……うん」ジワッ


蛍「 ど う し て お 前 じ ゃ な か っ た ん だ ? 」

れんげ「……どういう意味なん」

蛍「言葉どおりの意味よ。最近の子どものくせに頭悪いんだね、れんちゃんは」

れんげ「やっぱりわざとだったのんな」

蛍「別に先生を狙ったつもりはないんだけどなぁ。あーあ、あの時先生がれんちゃんを咄嗟に庇ってなかったら今頃……」

れんげ「……」

蛍「でも、自業自得だよね。こんな糞ガキを守ったりするから、ああなるのよ」

れんげ「ほたるん」

ほたるん「ああん?」

れんげ「ウチ、何か悪いことしたん? だったら謝るん」

れんげ「ねーねーに言われたのん。ほたるんと仲良くしなさいって。なんでもするから許してほしいのん」

蛍「……別にぃ。れんちゃんは何も悪いことしてないよぉ」

れんげ「じゃあ、なんで……」


蛍「癪に、障るんだよおおォォォッ!! テメェのその態度がなあああァァァァーーーーッ!!」


れんげ「ひっ」

蛍「特にその喋り方がッ!! 気持ち悪ぃんだよ!! キチガイじゃあるめぇし!! それともキチガイかぁ!? んーだ『にゃんぱす』って!? キチガイ王国のキチガイ人が使うキチガイ語かあああああああ!?」


ドゴッ


れんげ「うっ!!」

蛍「なんでもっ! するって! 言ったよっ! なぁアアア!?」ドゴッ ドゴッ

れんげ「い、痛いの……イッ!」

蛍「必要最低限、わたしと、関わろうと、するなっ! 事あるごとに、調子に、乗るなっ!」ドゴッ ドゴッ

れんげ「おえぇっ」

蛍「それから、わたしがこまちゃんセンパイに仕掛けてる時は絶ッッッ対に邪魔すんな!! 解ったか、あああああん!?」

れんげ「……ひっぐ……ぇぇぇえええん……!」

夏海「おはよー」

小鞠「おはよう」

蛍「おほようございます」

れんげ「……」

夏海「れんちょん、元気ないなー」

蛍「ごめんなさあい……わたしが先生にあんなことしたから……」メソメソ

小鞠「あ、あんまり一人で抱え込まないで。あれは、あそこにいたみんなの責任だと思うし……」

夏海「あー! もうやめやめ! この話暗くなるぅ」

蛍「センパーイ!」

小鞠「おー、よしよし」

蛍「ヘッヘッ! ハッハッ! にびぇげほほんおぽおおん! スーハースーハー!」ハァハァ

れんげ「……メダカにエサあげるん」

蛍「ブピョっ」

れんげ「!」

夏海「どうしたー、れんちょん。……って、うわあ!?」

小鞠「ひ、ひどい……」

れんげ「メダカが切り刻まれて死んでるん」

蛍「なんで……」

れんげ「サワガニが水槽に入ってるん。こんなのがいたら食べられるに決まってるん。誰かがやったのんな」

蛍「はあん! れんちゃん、もしかしてわたしのこと疑って!」

れんげ「それ以外考えられないん!」

夏海「あんたまた……!」

小鞠「や、やめなよ。れんげ自分で入れたんじゃないの?」

れんげ「違う……ぢがうのんなぁ……」グスッ

小鞠「ほたるん、本当に一人で大丈夫?」

蛍「はい。先生が入院中の間はわたしが代わりにれんちゃんのお世話するって決めましたから」

夏海「無理すんなよー。ほら、れんちょんも何か言いなよ。よろしくお願いします!って」

れんげ「……絶対イヤなん」

夏海「はあ……これだもんなぁ」

蛍「いいんです。わたしが悪いんです。お姉さんをあんな目に合わせたら、恨まれても仕方ないでしょうし、小さい子はビックリしちゃいますから」

夏海「いやいや、あんたも子供じゃん」

小鞠「ほたるんは大人だね」

蛍「そんなことないですよぉ」ニヘラ

れんげ「(なっつん……こまちゃん……助けて……)」

蛍「おらああッ!!」

ドゴッ

れんげ「めぇっ!」

蛍「まだ解んねぇのか、この豚野郎ぉッ!! 親の教育が足りないのかああああんん!!?」ドゴッ ドゴッ

れんげ「……なんで」

蛍「はあああん?」

れんげ「なんでウチに嫌がらせするん。家まで付いて来るん。構ってほしくないって言ったのはそっちなん」

蛍「だから教育が足りねぇっつってんだろ!! 人の話聞いてんのか糞ガキィイ!!」ドゴッ ドゴッ

れんげ「び!」

蛍「センパイ達に違和感を与えるような態度取るんじゃねぇよ、スカタンがッ! これからわたしがみっちり調教してやるから覚悟しろ」

れんげ「図工の時間なの。ねーねーの絵描くなんな」

小鞠「れんげ上手いね」

れんげ「ウチの十八番なんな!」

夏海「なんだよ、すっかり元気だな」

蛍「うふふ」


蛍『いいか、何があっても明日からいつも通りのお前を演じろ。糞尿垂れ流しの馬鹿みたいに気丈に振る舞え。じゃないと、殺すっ』


れんげ「……」

夏海「おーっし、そろそろ給食だなあ」

れんげ「続き描くなんな」

蛍「ぺーい」

れんげ「!?」

夏海「うわっ……なんだよこれ!」

小鞠「うぅ……無理。わたし、こういう絵は無理ぃ」

蛍「いつの間にか、れんちゃんが描いた先生の絵が、ゴア表現に磨きの掛かったポルノ&スプラッターに……」

夏海「おい! どういうつもりだよ、れんちょん!」

れんげ「」チラッ

蛍「」ギロリ

れんげ「……画伯のちょっとした気まぐれなんな」

小鞠「酷いよ、れんげ!」

蛍「らあああッ!!」

ドゴッ

れんげ「サングっ!」

蛍「アホかテメェはぁぁあああん!? こっちに目配りしてんじゃねぇよタコッ!! 勘付かせるようなことすんなっつったろうがボケぇぇえええぇぇえ!!」ドゴッ ドゴッ

れんげ「わ、わかったの……明日からもっと上手にやるなんな……うっ……ううっ……!」

蛍「ブレインデッドォおおおお!!」

ドゴッ

れんげ「ふるちっ!」

蛍「時代送れの台詞使わせようとしてんじゃねぇよ、糞田舎モンがぁぁああ!! 今日から心入れ換えろやハゲッ!!」

れんげ「……かはっ。ぉえ」

蛍「吐くな!! 飲めッ!」

れんげ「うぷ。……ゴクン」

れんげ「にゃんぱすー」

夏海「……」

小鞠「……」

蛍「……ほ、ほら、センパイ。れんちゃんが挨拶してますよ」

小鞠「ねぇ、最近のれんげ、ちょっと変じゃない?」

夏海「なー。暗くなったと思ったら、急に元気になるし。行動が変人じみてるというか……いや、それは前からだけど、なんというか……病んでる感じ?」

小鞠「うん。メダカ殺したり、怖い絵描いたり、かず姉がいなくなってから絶対おかしいよね」

夏海「ねーちゃん!」

小鞠「あ! ご、ごめん。ほたるん」

蛍「いいんです。実際にわたしのせいですから」

夏海「いや、あれは事故だって」

蛍「でも、れんちゃんには優しくしてあげてください。昨日、二人で話したんです。辛い時こそ明るく振る舞っていようって。れんちゃん、わたしのことも許してくれて、今も精一杯がんばっているんです」

小鞠「そう、だったんだ……」

夏海「くぅ?! 勘違いしたわたしが馬鹿だった! ほたるんにれんちょん、あんたらホントにいい子だよー!」

蛍「きゃあ。苦しいですよ、センパイ」

れんげ「うっ」ズキン

夏海「ん? どうした、れんちょん」

れんげ「な、なんでもないのん。なっつん、くらえー。ウチの必殺チョークスリーパーなん!」

夏海「うわあ、ギブギブ」

蛍「れんちゃん、危ないよー」

れんげ「やりすぎたなんな」

夏海「へへっ。いつものれんちょんだ」

小鞠「ほたるん、れんげをよろしくね。わたしたちに何かできることがあったらなんでも言ってよ」

蛍「ありがとうございます。な、なななんでもですかあ!? ぷぴょぴょぴょぽおおおおん!!」

れんげ「ウチとほたるんは無二の親友なん!」

蛍「ねー」

蛍「調子乗んなっつってんだろうがオラアアアアアアアッ!!」

ドゴッ

れんげ「いっ! ゆ、許してほしいのん……」

蛍「ああああん?」

れんげ「……許して下さい」

蛍「おい、あれ言ってみ」

れんげ「あれって、なんな……なんですか?」

蛍「分かれぇぇえ!!」

ドゴッ

れんげ「うぎっ……に」

蛍「に?」

れんげ「にゃんぱs」

蛍「ーーすって、つぎ言ったらぶち殺すぞ糞ガキャアアアア!!」

ドゴッ

れんげ「うげえぇえぇぇえぇぇ!!」オロオロ

蛍「チィッ! 明日はちゃんとやれよ」

れんげ「……帰ったなんな」

れんげ「……」

れんげ「うっ……うっ……ぇぇぇぇぇん。痛い……痛いのん。ウチ、悪いことしてないのに、どうしてこんな目に遭うん……」


ガラッ


れんげ「!?」

楓「よぉ」

楓「一穂のヤツ、入院したんだって?」

れんげ「駄菓子屋……何の用なん」

楓「用っつーか、お前一人で大丈夫だったか。……いや、学校の友達が面倒見てくれてるって話は聞いたんだけどな」

れんげ「……」

楓「べ、別に心配だったからとか、そういうわけじゃねぇぞ。あいつには何かと世話になってるし、義理立てみたいなモンっつーか……」

れんげ「」ジー

楓「な、なんだよ」

れんげ「うおー! 駄菓子屋! 一緒にグレートマンごっこして遊ぶん!」

楓「落ち着けって、とりあえず上がってもいいか?」

れんげ「うおー!」

楓「ははっ……」

楓「!?」


バッ


れんげ「ひう!」

楓「ーーおい、なんだよこのアザ」

れんげ「……」

楓「おい!」

れんげ「……転んだだけなんな」

楓「嘘つけ! 服で隠れてるとこだけ、こんなふうに……どう見ても殴られた痕じゃねぇかよ!」

れんげ「……」

楓「一穂にも話してないのか? いや、アイツがこんなこと黙ってるわけねぇ。ここ最近の傷だろ」

れんげ「……」

楓「誰だ。誰にやられたんだ!?」

れんげ「……ぅ……ぅぅう……!」ジワッ


ダッ


れんげ「……ぇぇぇぇええん! うあああぁぁぁぁん!!」

楓「……わりぃ。問い詰めるようなマネして。苦しかったよな。安心しろ、もう大丈夫だ」ギュウ

れんげ「うっ うっ」

楓「こんな小さい子供に……。ちきしょう、絶対に許さねぇ……!」

ブゥゥゥゥウウ…


れんげ「ヒック……どこに連れて行くん」

楓「おっ。落ち着いたか? とりあえずは病院だな」

れんげ「……」

楓「しばらくは私の家にいろ。一穂……っつーか、先輩にはいま話さなくていい。もう少し余裕ができたらでいいからな」

れんげ「駄菓子屋……ありがとなん」

楓「(問題は誰にやられたかなんだよな……まあ、それも後でいいか)」

楓「!?」


キキィィ!


れんげ「どうしたん」

楓「……誰かいる」

「れーんちゃーん」

れんげ「ひっ」

蛍「勝手なことしてんじゃねぇぞブタァァァアアアアアア!!」

楓「よぉ、テメェだったか。れんげを虐待してる奴は」

蛍「あはっ。人聞きの悪いこと言わないで下さいよ。先生の代わりに躾してるだけじゃないですか」

れんげ「うぅぅぅ」

蛍「おいコラ逃げられるとでも思ったのかッ!! あぁ!? だだ漏れなんだよ舐めたことしやがってドサンピンがぁぁああ!!」

れんげ「ひぃぃいい、いっ!! 駄菓子屋はやく行くの!!」

楓「おう、しっかり掴まってな」


ブゥウン


蛍「」ニヤッ

れんげ「もういないのん!? 追ってこないのん!?」

楓「大丈夫だよ。こっちはバイクなんだぞ」

れんげ「うっ……うぅぅぅっ」

楓「(こんなに震えて……れんげ、私が守ってやるからな)」


ビンッ


楓「なっ」


ギギギギガガガシャン!!

れんげ「……う」

楓「大丈夫か?」

れんげ「!? 駄菓子屋!」

楓「ワイヤーか何か仕掛けてやがったな。……すまねぇ。ちょっと、立てそうにない……」

蛍「うふっ」

れんげ「ぁぁ……」

蛍「うふ、ふ、ふふふふひっひゃはははっははは!!」

楓「れんげ、逃げろ」

れんげ「イヤなの!! 駄菓子屋と一緒にいるん!!」

楓「馬鹿。お前のために言ってるんじゃねぇよ。このままじゃ動けねぇから、助けを呼んできてほしいんだ。ここ、夏海ん家の近くだろ?」

蛍「」スッ

れんげ「いやなの!!」

楓「れんげ」

れんげ「だがじやど……いっじょにいるのん……!」

楓「お前はいい子だよ。お願い、聞いてくれるだろ?」

れんげ「んぐっ……うああああああぁぁぁぁあぁああ!!」

楓「……ホント、いい子だよ」


グサリッ


楓「ーーっ!」

蛍「邪魔、しないで」


グサッ


楓「ごあぁっ!!」

蛍「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔」


グサグサグサグサッ


楓「くっ……そ」

蛍「あっあっあっあっあっ! アッハハハハハハハハ!!」

ドンドン!

れんげ「ごまぢゃんなっづん開げでぇ」

夏海「れんちょん? なんでこんな時間に……って、うわあ!」

小鞠「どうしたのその格好! 怪我してるじゃん!」

れんげ「はやぐ、だがじやが……」

小鞠「あれ、ほたるんも?」

れんげ「!?」

蛍「センパイ……」

夏海「ーーひっ」

小鞠「うぎゃああああああ!?」

夏海「どうしたんだよ! 血まみれじゃんか!」

小鞠「なんで……何があったの二人とも!」

れんげ「だがじや……」

蛍「助けて下さい……わたしたち、襲われたんです……」

夏海「だ、誰に」

蛍「……駄菓子屋のお姉さんです」

夏海「う、うそだろ」

蛍「本当です。なんとかここまで逃げてこれましたけど、もう近くに来てるかも……」

れんげ「ぢがう!! ぢがうのん!! ぼだるんが!!」

蛍「見ての通り、れんちゃんも取り乱しちゃって」

夏海「そんな……」

小鞠「お母さーん! 警察呼んでー!」

蛍「う、うぅぅ……ごはあ!!」ハァハァ

れんげ「……」

夏海「母ちゃん、はやく!」

雪子「蛍ちゃん大丈夫!?」

蛍「大丈b……ぼくぁあああ!!」

小鞠「ほたるん死なないで!」

蛍「ハァ……ハァ……センパイ……最期に……うっ! お願い、聞いてもらってもいいですか……?」

小鞠「なに!?」

蛍「みんなで……学校に行きたい……です……」

夏海「母ちゃん病院やめ! 学校に向かって!」

雪子「え!?」

蛍「おばさん、ありがとうございま……ごぱぁ!!」

雪子「ごめんねぇ、蛍ちゃん。私こんなことしかできなくてぇ……」グスッ

夏海「しょうがないよ。ほたるんに、最後の思い出を……くっ!」

小鞠「ほら、肩貸してあげる」

蛍「ありがとうございますセンパイィイヒヒッ」

雪子「それじゃあね」

れんげ「待つのん!」


ブロロロロ…


れんげ「……ヌぅぅううぅぅぅぅ! どうじでごうなるのん……」

小鞠「ほたるん、本当に絆創膏一枚だけでいいの?」

蛍「はい。残り少ない時間を、無駄な手当てに使いたくはないので」

れんげ「なっつん、こまちゃん!」

夏海「うおー! ほたるーん!」

蛍「わたし、死ぬ前に、みんなで鬼ごっこがやりたい……です」

小鞠「わーん! そんな身体で大丈夫なのー!?」

蛍「やりたすぎて今すぐにでも死んじゃいそ……おうふ!!」

夏海「わかったよ! わかったから、しっかりしろー!」

蛍「ハァハァ……じゃあ、最初はわたしが鬼ですね……十秒数えますから逃げて下さい……いーち!にー!さーん!」

夏海「やるからには全力だあ! そうでなきゃ、ほたるんが報われない!」

小鞠「あれ、れんげは?」

蛍「……どうして逃げないんですか?」

れんげ「お前の狙いはウチなの。もう関係のない人は巻き込みたくないのんな」

蛍「フン」ギラッ

小鞠「……え。あれ、包丁?」

夏海「え」

蛍「いい度胸だ死にさらせブタ野郎ぉおおぉぁぁァァァアアアアアア!!」


ーーグサッ

れんげ「!」

蛍「……あなたも邪魔をするんですか? 夏海センパイ」

夏海「痛ッ」

小鞠「夏海ぃ!」

夏海「おいおい、ちょっと待ってよ。どういうことだ、ほたるん」

蛍「わばびべだぅおらぁぁぁあああッ!! っっるせぇぇぇエエエエエ!! 引っ込んでろ!! なんのために人気のない場所へ来たと思ってるんだコラあああああ!!」

れんげ「なっつん!」

夏海「……へへっ。そっか。なんか、色々と適当にあしらってごめんよ、れんちょん」

夏海「本当に馬鹿だな。よく考えれば、ウチよりずっと頭のいいれんちょんが、理由も無しに変な態度取るわけないもんな」

蛍「お前も……ぶッ殺すぃ!!」

夏海「もっと早く気付いてやるべきだったなぁ……すまん」

れんげ「なっつん! 逃げるのん!」

小鞠「夏海!」

夏海「ここはウチが食い止めるから、ねーちゃん。れんちょんのこと、よろしく」


ググ…


蛍「フッー……フッー……!」

夏海「くっ! はやく!」

小鞠「でも!」

夏海「はやく!!」

小鞠「……行こう、れんげ!」

れんげ「なっつん!なっづん!」

蛍「ふぴー……。いいんですかぁ? こんなところで、あんな糞ガキのために命を投げ捨てて」

夏海「へへっ。悪いけど、死ぬ気はないよ、ほたるん。すぐに縛り上げてやるんだから……! あんたには聞きたいことが山ほ」


ーースパッ


ブシュゥゥ!!


夏海「ゴボボボボバッ」

蛍「こっちはあんたに構ってるほど、お暇じゃないッチャアアアアア!!」

れんげ「のん!」ズザッ

小鞠「れんげ!」

蛍「ほーほーほーたるこい」

れんげ「なっづん……だがじや……」

小鞠「はやくこっち!」

蛍「ほたるんみたいな欲望がハートから抜け出してどこいったオイィィィィイイイイイイイイ!!」

れんげ「ん」

小鞠「(シッ。しばらくここに隠れよう)」

蛍「センパーイセンパーイ」

サカナニナッテソラハウミィ?



小鞠「……行った」

れんげ「」ガタガタ

小鞠「いまのうちに学校から出よう。山の中ならわたしたちの方が地の利はあるし」

れんげ「……もう、いいのん」

小鞠「え」

れんげ「ウチが全部悪いん。ウチがほたるんに気に入らないことしたからほたるん、おかしくなったなんな。ねーねーや駄菓子屋となっつんのことも、全部ウチのせいなんな……」

小鞠「違うよ! そんなことない! れんげは何も悪くない!」

れんげ「こまちゃん……」

小鞠「ほたるんだって、少し間違っちゃっただけだよ……」

れんげ「スゥー……スゥー……」

小鞠「一先ずここまで来れば安心だあ」

れんげ「むにゃむにゃ……駄菓子屋ぁ……」

小鞠「……夏海」

小鞠「うっ」ジワッ

小鞠「ヒック……しっかりしなくちゃ……お姉ちゃんだもん……だってわたしお姉ちゃんだもん……」メソメソ


「まっすぐに伸びたあぜ道にぃ。誰かのちっちゃな忘れものぉ」


小鞠「ひっ」


「片っぽになぁったくつが示すは、」


蛍「ーー晴れぇえッ!!!」

小鞠「わああああああ!! れんげれんげ起きてぇぇ!!」

蛍「ライジングサンフォーユー!! インザスカァアアイ!!」

小鞠「ハッ!ハッ!」

蛍「センパイィイ待ってぇぇえええええ糞ガキぶッ殺おおおおッッッすあおあぁかびでるぎゃ!!」

小鞠「どうしよう……この先、たしか崖だよ」

れんげ「……」

小鞠「どうしたのれんげ! はやく逃げないと!」

れんげ「もう誰も巻き込みたくないなんな」

蛍「カーッ!!」

れんげ「おーいこっちなのー!」

小鞠「うそでしょ、何する気!?」

れんげ「へっ!へっ!」

蛍「くたばれ小便垂れおぱんぽんがアアアアァァァァーーーッ!!」

れんげ「ふぅん!」

蛍「!?」


バッ!!


ヒュゥゥゥゥーーー・・・


小鞠「れんげぇーーーーー!!」

蛍「なにィイイイイイいいいいいいい!?」

れんげ「ウチはみんなを傷付けて殺したほたるんのこと許せないん。ほたるんと仲良くできなかったウチも許せないん」

れんげ「でも死ぬ時は一緒なん!!」

蛍「愛してますセンパァァァアアアアイ!!」

小鞠「れんげえええええ!!」

れんげ「くらえ必殺ッ!! ウチの筋肉バスターなの!!」

蛍「クソガアアアアああッ!! このわたしがこんなところでぇぇゎぐびゲェエエキィィィイ!! あっ」


ーードスン

一穂「ほら、れんちゃんの大好きな梅昆布茶だよぉ」


 あれからしばらく時間が経ち、わたしとかず姉は亡くなった四人のお墓参りに来ていた。


小鞠「お花、これでいいかな」

一穂「うん。ありがとう」


 今はもうすっかり落ち着いた様子のかず姉だけど、あの事件当時はいままで見たこともない取り乱しようで、葬式の席では、ほたるんの両親と立ち会い、お互いに泣きながら謝っている姿は本当に痛ましかった。


一穂「あっ」

小鞠「どうしたの?」


 お墓に添えた花が揺れる。後から聞いた話によると、ほたるんはわたしのことが好きだったらしい。
 その気持ちを察することができなかった自分がとても疎ましい。もっと早くに気付いていたら何かが変わっていたのかもしれないのに。こんな悲惨な事件は起こらなくて済んだのかもしれないのに……。

一穂「いまねー、れんちゃんが笑った気がしたー」


 けれど、いつまでも自分を責めて、悩んで、苦しんでいるフリをするのは甘ったれた考えだ。
 わたしの責任は死んでしまった四人の分まで精一杯生きていくことなのだから。この痛みをずっと胸に抱いたまま、最期の時まで明るく振る舞って、それでも忘れずにいることなのだから。


一穂「あの二人、天国で仲良くしているといいねー」

小鞠「……そだね」


 澄みきった快晴の空で、流れる空気と共に鳥たちが泳いで行く。
 風になびき、レンゲの花がもう一度揺れた。



れんげ『ーーほたるん、にゃんぱすー』

蛍『にゃんぱす?』


fin

一穂「いまねー、れんちゃんが笑った気がしたー」


 けれど、いつまでも自分を責めて、悩んで、苦しんでいるフリをするのは甘ったれた考えだ。
 わたしの責任は死んでしまった四人の分まで精一杯生きていくことなのだから。この痛みをずっと胸に抱いたまま、最期の時まで明るく振る舞って、それでも忘れずにいることなのだから。


一穂「あの二人、天国で仲良くしているといいねー」

小鞠「……そだね」


 澄みきった快晴の空で、流れる空気と共に鳥たちが泳いで行く。
 風になびき、レンゲの花がもう一度揺れた。



れんげ『――ほたるん、にゃんぱすー』

蛍『にゃんぱす~』


fin

完結致しましたのでHTML化依頼しておきます
……最後の最後で、波ダッシュが文字化けしたので二重投下しました。すいません

一穂「あの二人、天国で仲良くしているといいねー」

小鞠「……そだね」


澄みきった快晴の空で、流れる空気と共に鳥たちが泳いで行く。
風になびき、レンゲの花がもう一度揺れた。



れんげ『――ほたるん、にゃんぱs』

蛍『ーーすって、つぎ言ったらぶち[ピーーー]ぞ糞ガキャアアアア!!』

fin





てっきりこういうオチになるのかと思ったわ

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