咲SS見てたら自分も書きたくなったので投稿します。
・宮永照と花田煌が転校せず清澄に進学したらというメンバー改変のifルートです。
・この二人以外にも色々いじくってます。具体的には清澄にいたはずの何人かは違う学校にいます。
誰がどこに行ってるかは理由も含めて構想済みですがその学校の事まで書けるかは未定。
・麻雀についてはほぼ初心者のニワカなので、たまに出てくる闘牌描写についてはおまけみたいなもんって事で軽く流して下さい。
・ドラ牌は本来なら王牌のネクスト牌ですが、ここではドラ牌:○○ と書いてある牌=ドラ牌と言うことにします。
その方が見やすいよねってことで一つ。(1の都合です)
ではスタート。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1343412889
煌「ここが清澄高校ですか……」
煌「お父さん達に負担はかけられないから公立高校にしましたが、すばらですっ!」
煌は校門の前で校舎を見上げている。
煌「ここがこれからわたしが通うことになるがっこ」
ドンっ
煌「あ、ごめんなさいっ」
?「大丈夫、気にしてないから」
煌とぶつかった女子生徒は俯き加減の姿勢でそのまま歩き去っていく。
煌「って、ぶつかったわたしが言うのもなんですが下を向いてるとまた……あ」
今度は男子生徒の背中にぶつかっている。
何事もなかったように通り過ぎる女子生徒に、振り返った男子生徒は気づかなかった。
煌(ちゃんと見たわけではありませんが、歩きながら読書でもしていましたわね。
危ないですし今度会ったら注意してさしあげませんと)
煌「ここが清澄高校ですか……」
煌「お父さん達に負担はかけられないから公立高校にしましたが、すばらですっ!」
煌は校門の前で校舎を見上げている。
煌「ここがこれからわたしが通うことになるがっこ」
ドンっ
煌「あ、ごめんなさいっ」
?「大丈夫、気にしてないから」
煌とぶつかった女子生徒は俯き加減の姿勢でそのまま歩き去っていく。
煌「って、ぶつかったわたしが言うのもなんですが下を向いてるとまた……あ」
今度は男子生徒の背中にぶつかっている。
何事もなかったように通り過ぎる女子生徒に、振り返った男子生徒は気づかなかった。
煌(ちゃんと見たわけではありませんが、歩きながら読書でもしていましたわね。
危ないですし今度会ったら注意してさしあげませんと)
数日後
友人「新入生歓迎会も終わって、勧誘ラッシュもピークって感じになってきたねぇ」
煌「こういうのは中学でも高校でもそうは変わりませんね。先輩方のそういった真剣さはすばらです」
友人「それで、煌はどの部活に行くか決めた?」
煌「勿論、麻雀部ですよ!」
友人「そういえば中学の時もそうだったもんねー。でも清澄の麻雀部って確か……」
煌「? どうかしたんです?」
そして放課後
友人『噂で聞いたんだけど、去年の新入生が上級生達を徹底的に倒しちゃったらしくて。
その倒し方っていうのが、東一局だっけ?
最初は絶対に誰かに和了らせて、次からはわざと安い手で和了ってどんどん点数を上げていくんだって。』
煌(その噂が本当なら……)
友人『明らかに手加減してるよねー。
部員の人達はしばらく気が付かなかったらしいんだけど、気付いてからは必死に止めようとしてたみたい。
でも誰かの点数が無くなるまでそれが止まる事がなくって、全員自信を無くしちゃって退部しちゃったんだって)
煌(その方はきっと……)
友人(確か、その人の名前が―――)
煌(東場で爆発的火力を発揮する片岡さんみたいに、何か特別な力を持っているのかもしれません)
友人(―――宮永照っていうんだって)
煌(すばらっ! とてもすばらです!)
放課後・麻雀部部室
煌「たのもー!」
照「……」
照は麻雀卓に備え付けられている椅子に座り読書をしている。
煌の事などいないものであるかのように文庫本から目を離さない。
煌「貴方が清澄高校唯一の麻雀部員、宮永照さんですね」
照「……」
煌(まるで話を聞いていません。すばらくない)
煌「って、貴方もしかして入学式の時に校門でぶつかった……」
宮永照と呼ばれた少女は声のした方へ振り向く。
照「ああ、あの時の」
が、すぐに目線を手元に本に戻す。
煌「今もですけど歩いたり話したりする時くらい本から目を離しなさいな」
照「今ちょうどいい所、邪魔しないで」
煌「いやその気持ちは分からなくは無いですけど、今は部活の時間なのでは?」
照「部員が一人だけの麻雀部では何も出来ない。だから無期限活動停止中」
煌「じゃあ新入生を勧誘するとか友達を誘うとかメンツを揃える努力を―――」
照「それは無理。私と麻雀したいって人はもうこの学校にはいないから」
煌「えっ」
照は椅子から立ち上がりカバンを手に取ると部室を後にする。
先ほどまでずっと読んでいた文庫本はカバンの中に仕舞われていた。
煌「忠告、ちゃんと聞いてくれたんですね」
煌(したがる人がいないのに未だに麻雀部の部員なのは、自分はまだ麻雀がしたいと言ってるようなものですよ)
煌「っていうか、去年新入生だったって事は二年生だし先輩なんですよね……
なんだか言動が子供っぽいからすっかり忘れていました」
翌日昼休み 二年の教室
煌「ごめんください、このクラスに宮永照先輩はいらっしゃるでしょうか」
二年女子「宮永さん? 見た感じ一年生のようだけど何か用かしら」
煌「麻雀部に入部したいので部員である宮永先輩に話を通そうと思いまして」
二年女子「えっ……」
「おいあの新入生、麻雀部に入りたいってよ……」
「誰か止めてやれよ……何も知らない新入生がボコボコにされたり倒れそうになる所なんて見たくねぇって」
「でも、ボロボロにされて涙目になってる女子高生って興奮するよね」
「変態は黙ってろ」
煌(なるほど、噂の一人歩きかもしれませんが宮永さんの麻雀はこの高校では触れてはならないもののようですね)
二年女子「え、ええーと、あれ? さっきまでいたと思うんだけどどこか行っちゃった、かな?」
煌「窓を背にして本を読んでるのがそうじゃありませんか?」
二年女子「」
煌「席に座ってないから見つけられなかったんですね。失礼します」
二年女子「ちょ、ちょっと」
煌(先輩は気を遣ってくれたんでしょうけど、私は宮永さんの麻雀が見てみたいんですよ)
煌「宮永先輩、良かったら放課後いいですか?」
照「昨日の一年生か。昨日も言ったが私と麻雀したいなんて生徒は誰もいないよ」
煌「この学校には、ですよね?」
照「? ああ、そうだが」
煌「では今日の部活動は学校外でやりましょう。授業が終わったら校門前で待っていますね」
照「ちょっと待て。さっきから仕切っているが君はまだ麻雀部の部員ですら無いしそもそも上級生は私で」
煌「では、失礼いたたします」
照「お、おいっ。……行ってしまった」
照(組も名前も聞いてないから教室を尋ねる事が出来ない。
一年の教室を片っ端から見て回ればその内見つかるだろうけど)
照「それは恥ずかしいな……行くしかないか」
男子生徒「イクのが恥ずかしいって?」
照「変態は黙ってろ。それと今度新入生で変な妄想をしてるようだったら殴る」ギュインギュイン
男子生徒「ひぃ、ごめんなさい!」
二年女子「ああ、やっぱり宮永さんってかっこいい……っ」
放課後・清澄高校校門前
照「遅い」
煌「すいません、ちょっと用事に手間取ってしまいまして。でも待ってて下さったんですね。すばらです」
照「……はぁ、もういい。今日だけは許してあげるからどこへでも連れて行くと良い」
煌「そうこなくては!」
二人は煌の母校である高遠原中学へと足を運ぶ。
煌「いやー、懐かしいですわねー。まだ卒業して一ヶ月も経ってませんけど」
照「こんな所まで連れてきて何をするつもり?」
煌「何って、私達は麻雀部なのですからやることは一つです」
照「……やめといた方が良いと思うけど」
煌「言っておきますけど私の後輩たちは手強いですわよー」
高遠原中学・麻雀部部室
優希「リーチだじぇ!」
和「通りませんよ、ロン。役牌トイトイドラ2、8000の9000です」
優希「じょー!?」
マホ「折角の私のラス親がーっ!」
和「優希、ダマでも逆転出来る点差だったのになんでリーチなんかしたんですか?」
優希「その方がカッコイイからに決まってるじゃん!」
和「それで三位に転落したら意味が無いのでは」
裕子「確かに迂闊にも程がありますよ。まあその御蔭で私は二位ですけど」
ワイワイガヤガヤ
煌「おー、やってますねぇ」
照「楽しそうだな」
煌「そうでしょうそうでしょう! 自慢の後輩たちです」
照「……やっぱり帰る」
煌「まあまあそう言わず」
優希「あれ? 廊下からなんか声が聞こえてくるじょ?」
和「どなたかいらっしゃるでしょうか。えっと、あの方は確か」
優希「花田先輩!」
和「隣にいる人はどなたでしょう。花田先輩と同じ制服を着てらっしゃいますけど」
優希「とりあえず呼んでみるじぇ! おーい! 花田せんぱーい!」
ガラッ
煌「片岡さんに原村さん、お久しぶりです」
和「お久しぶりです」
優希「でもまだ一ヶ月も経ってないじょ。高校で友達出来なくて寂しくなったのかなー?」
煌「失礼な! 清澄には中学からの友達も結構進学していますしぼっちなんかではありませんよ!」
優希「でも先輩って遠くの学校に転校とかしたらそこでぼっちになってそう」
和「転校先で友達を作るのはとても難しいですからね……それは多いにあり得ます」
煌「原村さんは経験談だから良いとして、片岡さんは先輩相手に失礼ですわよ」
優希「私ものどちゃんみたいに思った事を言っただけだじぇ」
照「……」
マホ「あの、隣にいる方も花田先輩の同級生だったんですか?」
裕子「去年の三年生は花田先輩だけだったし、私は知らないな」
煌「紹介が遅れましたね。彼女の名前は宮永照、清澄高校の麻雀部員で2年生の先輩です」
照「どうも」
和「初めまして。高遠原中学麻雀部部長で三年の原村和です」
優希「最強美少女雀士で中学三年の片岡優希だじぇ!」
裕子「室橋裕子です。二年ですけど一応現役の中では一番の古株です」
マホ「ゆ、夢乃マホです。新入生で恥ずかしながら麻雀初心者です。
あの、さっきは花田先輩と同い年と勘違いしちゃってすいませんでした」
照「気にしてない」
和「……あの、清澄に麻雀部なんてあったのでしょうか?
去年のインハイ予選には名前が無かったと思うのですが」
照「部員は私だけだからな。実質無期限活動休止中だ」
優希「つまり花田先輩のぼっち仲間か」
煌「誰がぼっちですか! ていうか二人いればぼっちじゃないじゃないですよ!」
照「ぼっちか、否定はしない。私は強すぎて麻雀をすると周りから誰もいなくなる」
和「……失礼を承知で言わせて頂きます。そんなオカルトあり得ません」
照「だけど事実なの。私が強すぎてみんなやる気を無くすから」
和「随分自信があるんですね」
優希「おうおう高遠原中学きってのタコスガールを差し置いて最強を名乗るとは片腹痛いじぇ」
マホ「裕子ちゃん、タコスガールって強いの?」
裕子「いや知らんし」
和「……」
煌「さて、原村さんも臨戦態勢に入った所ですし一度やってみましょうか」
照「どうなっても知らないから……」
優希:25000 和:25000 煌:25000 照:25000
東一局
東家:片岡優希 南家:原村和 西家:花田煌 北家:宮永照 ドラ:九萬
優希「タコスパワーで絶好調だじぇ!」モシャモシャ
和「よろしくお願いします」
煌「楽しい対局にしましょう」
照「よろしく」
和(東一局で優希が親ですか……
集中力が続いてる間の優希は手作りも早いしミスも少ない。
手が付けられなくなる前に早く流してしまわないと)
煌(とか考えているんでしょうねぇ。
オカルトじみた能力に理屈を付けたがるのはデジタル打ちを絶対視しているのか、
お化けが怖いから信じたくないみたいなのと一緒なのかは知りませんけど)
照「……」
優希「リーチ!」
和(4巡目リーチですか、相変わらず早い。捨て牌は字牌ばかりですしここは現物切りでベタ降りですね)
煌(私も大人しく自風牌(西)でも切っておきますか)
照「……」
優希「一発きたじょ! リーチ一発ピンフ純チャン三色で裏ドラが……2つ!」
煌「いきなり親の三倍満で12000オール……相変わらず片岡さんの東場はオカルトじみてますわね」
和「だからそんなオカルトありえませんって何度言えば」
照「……」
煌(本当に様子を見てるだけでしたわね。ですが親の三倍満を挽回するのは流石に難しいのではないでしょうか)
優希:61000 和:13000 煌:13000 照:13000
東一局 一本場
東家:片岡優希 南家:原村和 西家:花田煌 北家:宮永照 ドラ:五筒
優希「連チャンいくじぇ!」
和「そうはさせませんよ」
煌「全力で止めさせて頂きます」
照「……」
照が目を見開いたその瞬間、優希たちは背後に大きな鏡がせり出してくるのを感じる。
優希(な、なんなんだこの感覚……背筋が寒くなるじょ……)
和(こんな……こんな事って。こんな幻覚を見るなんて完全に……
いいえ、そんなオカルトありえません! あってはいけないんです……)
煌(まるで全てを見透かされてるような気持ちになりますね。もしかするとこれが宮永さんの能力?
すばらと言うより恐ろしいですね。こんなの見せられたたら確かに麻雀やめたくなるのも分かります)
照「……」
照(麻雀はしばらくやってなかったからもう見えなくなったかと思ったが……
一度染み付いたものは簡単には消えないと言うことか。
さて、片岡優希は東場の流れを自分の物にする能力があるが、流れを邪魔されると一気に減速する。
そして南場では前半の勢いが完全に失われる。
そのため半荘を終えた時の収支はプラマイゼロ周辺でうろちょろしてる事が多いな。
続いて原村和。この子は基本能力が高いオールラウンダー。
期待値と危険度を天秤にかけて綺麗にベタオリ出来る計算高さも強さの秘訣。
だけど相手もそうだと思い込んでいてる所がある。
能力前提の戦術を立てる選手を相手にどう対抗するのやら。
最後に花田煌……
彼女については完全には理解できない。
片岡優希みたいに能力があるわけでもなければ原村和みたいに雀力が高いわけでもない。
妙なタフさはあるみたいだけど防御力が高いわけでもない。
かと言ってかつての清澄高校の麻雀部員みたいにただの一般人というわけでもない)
照「ある意味、一番厄介かもしれない」
煌「え? 何か言いました?」
優希「私の強さにビビってるって言ってるに決まってるに違いない。
ふっ、強すぎるのも罪だな……」
和「何言ってるんですか……」
マホ(しばらく黙りこんでいたと思ったらいきなり全てが分かったかのような意味深な発言……ミステリアスでカッコイイですー)ジーッ
優希(よし、いきなり連風中ホンイツトイトイのイーシャンテン!
鳴いても跳満確定だけどテンパイしたらまたリーチして一気に行くじぇ!)
照「チー」(一萬)
優希「じょ?」
和(一巡目からヤオ牌で鳴き? そんな事したら点数伸ばしにくいですし、北家が鳴いたら次はまた優希のツモ番……
親流しを狙うにしても非効率すぎます)
煌(始まりましたね)
優希「鳴いてくれるなら次が私のツモ番だから嬉しいんだけど」
照「ポン」(二索)
和(どう考えてもノミ手。下手すれば役無しで和了れませんよ)
優希「な、なんか調子狂うじょ……」
照「ツモ。役牌のみの一本場は800・500」
和「鳴いてノミ手和了で親を流しますか。
……ちょっと待って下さい! その手牌!」
二索三索 四索四索 發發發 自摸牌:四索 福露:一萬二萬三萬 二索二索二索
煌「ホンイツ、一盃口、二盃口だって現実的なケースですし、何よりこれは……」
和「配牌の時点で緑一色のリャンシャンテンですよ!」
照「そのとおりね」
優希「よっぽど私の連チャンが怖かったと見えるな。うむ、分からなくもない」
和「優希は黙ってて下さい!
このケースでいきなり一萬をチーなんて普通しませんよ!」
照「私は親のテンパイが早い気がしたから連チャンを止めようとしただけ」
和「……わかりました。そういう事にしておきます」
煌(原村さんはこういうプレイングが嫌いのようですね。
でもこれが片岡さん対策であると言うなら確かに分からなくはないですね……)
優希:60300 和:12500 煌:12500 照:14700
東二局
東家:原村和 南家:花田煌 西家:宮永照 北家:片岡優希 ドラ:九索
優希「それにしても、友達がいなくなるほど麻雀が強いって言ってた割に、ノミ手で流すなんて拍子抜けだじょ」
照「……」
和(本当はただの初心者なんでしょうか。そうじゃないとしたら舐められてるとしか思えません)
煌(本当にここから点数が連続和了で点数が上がっていくのでしょうか。
最下位なのに少しワクワクしてしまいますね)
和「私の親ですね、ここから連チャンで挽回させて貰いますから」
優希「のどちゃんは相変わらず麻雀してる時だけは強気だじょ」
煌「その心意気はすばらです! 私はここで同率最下位を脱出させて頂きますから」
3巡目
照「ポン」(白)
和(対家の私から役牌ポン。また安い手で和了るつもりですか)
照「ポン」(西)
煌(字一色を狙ってる。なんて事は無いんですよねぇ。という事はこのまま……)
優希「うーむ、やりづらいじょ」
照「ツモ。役牌2の1300・700」
優希「折角テンパイしてたのにー!」
和「親被りで最下位……」
煌(1800から2700ですか。
単純に前より点数が高ければ良いのか、翻数も一緒に上がっていくのかどっちなんでしょう)
優希:59600 和:11200 煌:11800 照:17400
東三局
東家:花田煌 南家:宮永照 西家:片岡優希 北家:原村和 ドラ:三筒
優希(よし来た! テンパイ!)
優希「リーチ!」
照「ロン、ピンフイーペーコータンヤオは5800の6800」
優希「じょー!?」
煌「一瞬で親が流されてしまいました……」
優希:52800 和:11200 煌:11800 照:23200
東四局
東家:宮永照 南家:片岡優希 西家:原村和 北家:花田煌 ドラ:七筒
和(最初に三倍満を和了ってから優希が何も出来ていませんね……
過去の対戦では東場の優希は大きいのを一発出すだけは終わらない事が多いのですが)
煌(そしてここまで徐々に点数を上げての三連続和了。これはいよいよ噂の信憑性が増してきましたね。
次はそろそろ親満でしょうか。私と原村さんは直撃で飛んでしまいますし気を付けないと)
優希「タコスパワーが足りない……マホマホ、タコス買ってきて!」
マホ「え、あ、はい!」
裕子「良いですよ。私が行ってきます」
マホ「良いの?」
裕子(マホじゃ帰りに転んで落としそうだし)
優希「釣りはとっとけー! その代わり東場が終わるまでに帰ってくるように!」
裕子(とか言ってるけどピッタリ渡してくるんだよなー。こんな感じで点数計算もちゃんとしてくれればもっと強くなるだろうに)
照「……」ギュインギュイン
優希「あれ? どっかから隙間風でも漏れてるきてるのか?」
和「さあ、さっきまでは何も感じませんでしたよ」
4巡目 宮永照のツモ番
照「リーチ」ギュインギュイン
照の捨て牌 西北北 西
和(もうテンパイしたんですか。しかもこの捨て牌では……)
煌(うわー……安牌全然ありませんね)
優希(現物持ってないし二枚持ってる内の南を切るじぇ)
ガッ ギュインギュイン ダーンッ
二筒三筒四筒 二筒三筒四筒 七筒七筒 二索三索四索 南南 ロン牌:南
照「ロン。リーチ一発一盃口ドラドラは12000の13000」
優希「え?」
和(ドラとオタ風のシャンポン待ち!?)
煌(これは読めないですわねー。
オタ風は場に捨てられやすいから出和了はしやすい。
ですが、一番捨てる可能性のある私と原村さんへの直撃では片岡さんに逆転出来ないまま私達が飛んでしまう)
和(そしてそれを見逃せばフリテンになり、ドラ牌でのツモ和了しか出来なくなる。
4巡目でそんなリーチを掛けるなんてまともに勝つ気があるとは思えません!)
優希「そういう待ち、嫌いじゃないじぇ……」
和「親満直撃を食らったのに何カッコ付けてるんですか!」
煌「まあまあ抑えて」
煌(原村さんが怒りたくなる気持ちはよぉ~く分かります。
でもそういう打ち方をする人だって確かに存在するんです)
優希:40800 和:11200 煌:11800 照:35200
東四局 一本場
東家:宮永照 南家:片岡優希 西家:原村和 北家:花田煌 ドラ:二萬
煌(これで4連続和了ですか。次は親ッパネ以上ですしそろそろ止めたいんですが……
宮永さんのテンパイスピードが早すぎてまるで追いつけませんね)
和(私か花田先輩への親満直撃で宮永さんの勝利が確定してしまう場面。
飛ばされないうちに早く安全圏まで持ち直さないと……)
優希「そろそろタコスパワーが切れそうだじょ……ムロちゃんまだー!」ジタバタ
裕子「はぁ……はぁ……も、戻りました」
優希「遅い!」
裕子「ここからタコス売ってる店って結構遠いですよね。先輩が一番知ってるはずなんですけど」
優希「もう少しで東場が終わるトコだったじょ! まあギリギリ間に合ったから許す!」
マホ「裕子ちゃん大丈夫? お水持ってこようか?」
裕子「いや良いよ……」
優希「タコスパワー補充完了だじぇー!」
一巡目
照「リーチ」ゴゴゴゴゴゴ
照の捨て牌 中
煌「ダブルリーチ!?」
優希「ていうかさっきから卓を中心に風が巻き上がってるよーな?」
和「そんなオカルトありえません!」
優希(また一発を食らったら溜まったもんじゃない。現物持ってるしここは確実にいくじょ)
優希の捨て牌 中
和(今度こそオタ風牌でも大丈夫、ですよね……?)
和の捨て牌 南
煌(こんなん当たったら事故だってーの!)
煌の捨て牌 西
照「……」
照の捨て牌 西
煌「ふぅ……」
煌(一発は免れましたか。しかし安牌が増えていませんね……)
三巡目
優希(私もテンパイ出来たけど安牌も無い……だけどタコスも食べたし東場で私が競り負ける訳ないじょ!)
優希「リーチ!」
優希の捨て牌 二索
ギュインギュインギュイン
ガシッ ドゴーン!
二萬三萬四萬 二索三索四索 三索四索 二筒三筒四筒 七索七索 ロン牌:二索
照「ロン。平和タンヤオ三色一盃口ドラ1。裏は……乗らなくて18000の20300」
優希「じょー!?」
和「うそ、東場で優希がマイナス!?」
和(これまでの対局でもめったに無かった事なのに……)
煌(東場に大きな影響力を与える片岡さんから直撃を取り続けての五連続和了。
すばら過ぎてもう何も言えませんね)
優希:21500 和:11200 煌:11800 照:54500
東四局 二本場
東家:宮永照 南家:片岡優希 西家:原村和 北家:花田煌 ドラ:八萬
優希「タコスパワーが通じない……あんた一体何者なんだ……」
照「だから言ったよね。私は強すぎるんだって」
煌「宮永さん……」
照「なに?」
煌「い、いえ……」
煌(貴女の言葉は強さを自慢したい訳でも事実を淡々と伝えてる訳でもない。
そんな気がしてなりません)
和「確かに強いのは認めます。でも、東場も終わってないのにまだ気が早いですよ」
照「そうは言うけど、その東場で終わるかもしれないな」
和「なっ……!」
照「さあ、続けよう」
3巡目
和「ポン」(發)
煌(上家の私から鳴いて宮永さんのツモ番を回さないつもりですね)
優希(速攻すると決めたらのどちゃんは早いから置いてかれないようにする)
優希「ポン!」(南)
和「ポン」(二萬)
煌(二人とも何が何でも和了るつもりなのか、それとも染め手なのか……
差し込み要求には応えても直撃は勘弁させてもらいますよ)
照「……」
中盤
優希(自風ホンイツ一盃口のテンパイまで来たじょ。
河を見た感じだとこれで順子は作れそうにないしドラを捨てよう)
優希の捨て牌:八萬
照「カン」 カンドラ:二萬
和(ドラ牌の大明槓ですか。これで満貫は確定。絶対に直撃させるわけにはいかない)
照「もいっこカン」
王牌からのツモ牌で東の暗槓 カンドラ:一筒
優希「おー、大明槓からの連続カンなんて初めてみたじょ」
和「0%ではありませんしいつかは起こる事ですよ。それが今日だっただけです」
煌(まさかこのまま嶺上開花なんて事は無いですよね。そうなったら大明槓の責任払いで片岡さんが飛んでしまいます)
二回目の王牌からのツモ牌は……一筒
照の手牌 二索二索二索 七索七索 八索八索 福露:東の暗槓 八萬の大明槓
照「……」
照の捨て牌:一筒
和(リンシャンハイをそのまま捨てましたか。二回も鳴いてますし間違いなくテンパイはしてるんでしょうね)
煌(いくら強いと言っても嶺上開花なんてそうそう出せる役ではありませんよね)
終盤
和(中盤のあたりからテンパイまでは来ているのに中々和了れない……
鳴いての染め手はやはりあからさま過ぎましたか。
宮永さんの捨て牌を見た感じでは、既にテンパイはしてて索子のどれかが当たり牌でしょう)
和のツモ牌:八索
和(……ベタオリするしか無いですね)
和の捨て牌は自分で三枚持ってるうちの1枚である二萬
残る1枚は照が捨てており、参萬も四枚とも既に場に捨てられている完全安牌である。
煌(こんな終盤になって完全安牌を捨てるという事はベタオリなんでしょうね。
私はテンパイすら出来てませんし同じくベタオリです。
倍満食らうよりノーテン罰符の方が断然安いですし、連続和了が止まれば打点も元に戻るかもしれません)
煌の捨て牌:中(自分で三枚持っているうちの1枚)
照「……」
ギュインギュインギュイン ガシッ バーン!!
照の手牌 二索二索二索 七索七索 八索八索 福露:東の暗槓 八萬の大明槓 ツモ牌:七索
照「ツモ。連風トイトイ三暗刻ドラ4の二本場は8200オール」
煌(止まりませんでしたか……)
和(危なかった……)
裕子「ちょ、ちょっと外出てくる……」
マホ「う、うん……」
優希:13300 和:3000 煌:3600 照:79100
東四局 三本場
東家:宮永照 南家:片岡優希 西家:原村和 北家:花田煌 ドラ:九萬
和「……」
優希「……」
照「……」
マホ「……」
煌(空気が重い……連続和了は積み重なれば大量得点になるという数字だけの問題ではない。
宮永さんが和了るのをただ見ている事しか出来ないっていう精神的なダメージの方が大きい。
原村さん達の精神力を信じてはいますが、もしこのまま誰かが飛ばされて終わったりしたら。
飛ばされた人はかつての麻雀部員のように、もう麻雀なんてやりたくないと思うかもしれない。
それに、宮永さんだって……)
煌「ずぼらっ!」
和「ふぇっ!?」
優希「い、いきなりどうしたんだ。
しかもずぼ……ずぼら? ずぼらしいなんて言葉知らないじょ」
和「ぷっ……くくっ……ずぼらしいって」
煌「そこ、何笑ってるんですか! ここから私のずぼらな打ち筋を見せて差し上げます」
照「チョンボでもするつもり?」
煌「そんなわけないでしょう!」
煌(まあ、応急処置みたいなもんですけど場の空気は和みましたね。
今後の私のあだ名が心配ですけど。とにかく今は……
ん? ていうか宮永さんも乗っかってくれましたね。
こういう冗談は完全にスルーだと思っていたのですが。
そういう意外な一面もすばらです。)
和のツモ牌:八索
和(……ベタオリするしか無いですね)
和の捨て牌は自分で三枚持ってるうちの1枚である二萬
残る1枚は照が捨てており、参萬も四枚とも既に場に捨てられている完全安牌である。
煌(こんな終盤になって完全安牌を捨てるという事はベタオリなんでしょうね。
私はテンパイすら出来てませんし同じくベタオリです。
倍満食らうよりノーテン罰符の方が断然安いですし、連続和了が止まれば打点も元に戻るかもしれません)
煌の捨て牌:中(自分で三枚持っているうちの1枚)
照「……」
ギュインギュインギュイン ガシッ バーン!!
照の手牌 二索二索二索 七索七索 八索八索 福露:東の暗槓 八萬の大明槓 ツモ牌:七索
照「ツモ。連風トイトイ三暗刻ドラ4の二本場は8200オール」
煌(止まりませんでしたか……)
和(危なかった……)
裕子「ちょ、ちょっと外出てくる……」
マホ「う、うん……」
優希:13300 和:3000 煌:3600 照:79100
東四局 三本場
東家:宮永照 南家:片岡優希 西家:原村和 北家:花田煌 ドラ:九萬
和「……」
優希「……」
照「……」
マホ「……」
煌(空気が重い……連続和了は積み重なれば大量得点になるという数字だけの問題ではない。
宮永さんが和了るのをただ見ている事しか出来ないっていう精神的なダメージの方が大きい。
原村さん達の精神力を信じてはいますが、もしこのまま誰かが飛ばされて終わったりしたら。
飛ばされた人はかつての麻雀部員のように、もう麻雀なんてやりたくないと思うかもしれない。
それに、宮永さんだって……)
煌「ずぼらっ!」
和「ふぇっ!?」
優希「い、いきなりどうしたんだ。
しかもずぼ……ずぼら? ずぼらしいなんて言葉知らないじょ」
和「ぷっ……くくっ……ずぼらしいって」
煌「そこ、何笑ってるんですか! ここから私のずぼらな打ち筋を見せて差し上げます」
照「チョンボでもするつもり?」
煌「そんなわけないでしょう!」
煌(まあ、応急処置みたいなもんですけど場の空気は和みましたね。
今後の私のあだ名が心配ですけど。とにかく今は……
ん? ていうか宮永さんも乗っかってくれましたね。
こういう冗談は完全にスルーだと思っていたのですが。
そういう意外な一面もすばらです。)
序盤
和「……」
和の捨て牌 九萬
煌(ヤオ牌とは言えいきなりドラを捨てますか……
持ち直したのは確かですが積極的に点数を伸ばしに行く気は無さそうですね)
煌「チー!」七・八・九萬
煌(この場はそれを利用させて頂きますよ!)
煌「ポン!」 白
煌「チー!」 二・三・四萬
煌(三福露もしましたがこれでテンパイです。
そして宮永さんは……)
中盤頃
照「リーチ」
煌(やはり来ましたね。
ドラ1枚とその同じ色の萬子を私が抱えてるんです。
筒子や索子での清一色やホンイツに、リーチや裏ドラを絡めたりしなければ次の打点制限である三倍満は難しい。
となると、私が明らかにテンパイをしてるこの状況でもリーチをしてくる。
そういう無茶をしても和了れてしまう能力だとしたらもうお手上げですが、そうじゃないなら―――)
ここから二巡後
照「……」
煌「ロン! 役牌ドラ1の三本場は2000の3900です!」
煌(打点を高くするにはどうしても無理しないといけない。
そこを狙い撃ちにすれば和了れる可能性だってある。私の予想通りでした。すばら!)
優希「あ! 東場終わっちゃったじゃないか!」
和「私は終わってくれてある意味ホッとしてますよ」
照「……花田煌」
煌「はい、なんでしょう」(何故フルネーム?)
照「私の連続和了を止めたのはこれで二人目だよ」
煌「そうなんですか。それは光栄です」
和(強いのは確かですけど、そんなに麻雀をやったことは無いんでしょうね。
連続和了が途切れないなんてそんなオカルトあり得ません。
ともかく宮永さんの連荘は止まりました。南場で絶対に逆転してます)
煌(一人目って一体誰なんでしょうね)
そして南入
優希:13300 和:3000 煌:7500 照:75200
南一局
東家:片岡優希 南家:原村和 西家:花田煌 北家:宮永照 ドラ:九萬
優希「マイナスのまま南入しちゃったじょ……」
和「私なんて焼き鳥ですよ。もちろん逆転しますけどね」
照「……」
煌(この点差で逆転するなんてね。私も諦めているわけではありませんがさすがに口に出すのは憚られるます。
普段の原村さんは大きく点差を付けられないですから、この点差になったらどうなるかと思いましたが……
すばらです)
中盤頃
照「ツモ、メンゼンのみの500・300」
優希「やっぱり南場だと力が出ないじょ……」
和「優希はもっと集中力が持続するように練習すべきですよ」
和(優希や私にとっての危険牌を抱えながら手を変えてのメンゼンのみですか。直撃を避けながらそのまま逃げ切るつもりですね)
煌(やはり打点が下がった。この調子なら私や優希は振込まなければ飛ぶ事はありませんね。
危険なのは原村さんですか。彼女は直撃を食らう事がめったに無いので安心ですが……)
優希:12800 和:2700 煌:7200 照:76300
南二局
東家:原村和 南家:花田煌 西家:宮永照 北家:片岡優希 ドラ:七索
和(私がここから勝つためには連チャンして宮永さんから直撃を取り続けるしかありませんね。
本来ならそういう奇跡を期待しなければならない状況を作らない事が私の打ち筋なのですが……
このまま引き下がるわけにもいきません)
四巡目
和「……」
和の捨て牌:四萬
煌(ちょ……! 私のメンタンピンの和了牌なんですけどそれー!
この状況でロン和了したら原村さんが飛んでしまいますから見逃しますけど、宮永さんにとって安牌かどうかしか考えていませんね。
折角早い段階で手が出来たと思ったらこれですか……)
照「……」
八巡目
和の捨て牌:二索
照の捨て牌には五索があるのでスジ打ちである。
更に、一巡目、3巡目で優希が二索を捨てていたので残りは1枚。
対子を作る事も出来ないので安牌である可能性は高い。
原村和は四巡目でテンパイしており、宮永照から直撃を取るために機を伺っていたのだが……
照「ロン。タンヤオドラ1の2000」
和「え?」
三萬四萬五萬 五萬六萬七萬 六筒七筒八筒 六索七索八索 二索 ロン牌:二索
スジ打ちが安全とされるのは、一番効率の良い平和系の両面待ちを考慮しているからである。
しかし、宮永照の待ちは地獄単騎だったのである。
優希(のどちゃんが振り込む所なんて久しぶりに見たじぇ。
そういえば前に振り込んだのは2000点とか四福露のノミ手で単騎待ちしてたマホにだったっけ)
煌(地獄単騎なんてあり得ない。原村さんの思考を逆に利用したような待ちでしたね。
東二局で見えたあの鏡はやはり相手の打ち筋を見抜くモノだったのでしょう。
点数の上がっていく連続和了より初見の相手の打ち筋を見抜く方がよっぽどオカルトですねぇ)
優希:12800 和:700 煌:7200 照:78300
南三局
東家:花田煌 南家:宮永照 西家:片岡優希 北家:原村和 ドラ:東
煌(さて、この時点で勝てる可能性があるのはほぼ私だけになってしまいましたね。
ここから宮永さんもびっくりな連続和了で奇跡の大逆転をしてあげますよ!)
7巡目
照「ロン。平和一通は3900」
煌「あ、あれー?」
優希:12800 和:700 煌:3300 照:82200
南四局
東家:宮永照 南家:片岡優希 西家:原村和 北家:花田煌 ドラ:一索
和(とうとうオーラス……もはや逆転不可能なほどの点差を付けられたのは初めてな上に焼き鳥ですか。
ここまで徹底的にやられてしまうと逆に清々しいですね)
照「……さっきからずっとこっちを見てるけどどうかした?」
和「あ、すいません」
照「始めて良い?」
和「ど、どうぞ」
和(宮永照さん。盤上しか見えて……いえ、盤上しか見ていない私には見えてない世界を見ている打ち手。
超能力とかそんなオカルトはあり得ませんが、人間は感情のある生き物です。
色んなポリシーを持って打っているのは当然の事で、その裏をかくと言うのも基本的な戦術のはず。
なんでその事に今まで気付かなかったんでしょう。
……きっと、人見知りだとか恥ずかしいとか自分に言い訳をしてちゃんと向きあって来なかったからなんでしょうね。
こんな私を友達だと言ってくれた穏乃や憧、そして優希達の事すら。
……そういえば、必ずドラ入りで和了る高火力麻雀を意識していた玄さんは今頃どうしているんでしょうか)
優希「のどちゃん、のどちゃんのツモ番だじょ」
和「あ、ご、ごめんなさい」
和(私にはポリシーと言える物なんてあるでしょうか。
牌効率重視というのはただのデジタル打ちでしかありません。
いけないいけない、とにかく今は目の前の相手に集中しないと)
優希「のどっち長考しすぎだじょー」
煌(……ふむ)
5巡目
照「リーチ」
照の河 東西四萬白
和(来た……! いつもの私ならオタ風切りで危険牌を避けつつ手替えを狙いますが)
和の手牌
一萬二萬三萬 一筒二筒三筒 一索二索三索 西西 九筒九筒 四索
和(メンゼン自風三色チャンタドラ1の跳満手を捨てるのは勿体無い。
それに、ここで逃げたら宮永さんに先に和了られてしまう気がします……!
なんて、勿体無いとか気がしますなんて完全に感情論じゃないですか)
和「……」
和の捨て牌 四索
和(でも、今だけはそれを信じてみたい気持ちなんです)
優希「ここでど真ん中を切るなんてどうしたんだのどちゃん! 投げ槍になるなんてらしくないじょ!」
和「いいんですよ優希、これで良いんです」
照「……」シュルシュルシュル……
優希「あれ? なんか風が弱くなった」
煌(思えば、先ほどから吹いていた風は宮永さんによる場の支配によるだったのかもしれませんね。
相手の打ち筋の弱点を突き刺して風穴を開けていくと行ったところなんでしょうか?
ですが、原村さんはそれを乗り越えた……)
和「ツモ! メンゼン自風三色チャンタドラ1は3000・6000です!」
そして終局
優希:9800 和:13700 煌:300 照:75200
和「ありがとうございました」
優希「お疲れ様だじぇ」
煌「すばらでした」
照「お疲れ、良い試合だった」
優希「そんだけ点棒貯めこんどいてよく言うなー」
照「オーラスまで誰も飛ばない対局は久しぶりだったから」
優希「花田先輩なんて虫の息だけどな」
煌「先輩の面目丸つぶれですね、アハハ」
優希「だな、ずぼら先輩!」
煌「なっ!?」
優希「東場での乱心を私が聞き逃したとでも思ったか?」
煌「やっぱりそうなりますか……」
優希「ん? なんか言った?」
煌「何でもないですよ。ってどこ行くつもりですか?」
優希「ウチのOGに変わった人がいたって事を言いふらして伝説にしてくるじょ」
煌「ちょ!? 正気ですか!?」
裕子「やめて下さいよ! 私はこの学校でまだ二年も過ごさないといけないんですから!」
マホ「高遠原の伝説……レジェンド? カッコイイ、のかなー?」
裕子「ほら追いかける! この中で一番被害を被るのはマホなんだよ!?」
マホ「う、うん! 待って下さい片岡せんぱーい!」
和「……」
照「……面白い奴らだ」
和「はい、私にとって自慢の友達です」
照「それ、似たような事を花田煌が言ってた。自慢の後輩だってさ」
和「そうですか……」
照「麻雀を通じて出来た仲間か……これからも大事にすると良い」
和「もちろんです。これからはもっと大切にします」
照「そう。流れ的に解散だろうし帰るよ」
和「分かりました。あの、機会があったらまた対局してくれますか」
照「誘われる分には断りはしないが、私は手加減が出来ないから」
和「望む所です」
照「そう。それじゃあ、また」
高遠原中学・校門前
照「原村和か。私と似ているかと思ったけどそんな事は無かったな。あの子には信頼出来る仲間がいる」
煌「私にはそんな仲間はいない、とでも?」
照「……いつからそこにいた」
煌「片岡さんを追いかけてたら校門の方へ歩いて行く貴女を見かけましたので。
連れてきた私がいないと帰れないでしょう?」
照「来た時の道は大体覚えてる。だから逆に戻れば大丈夫」
煌「迷子になる人のほとんどがそういう曖昧な感覚を頼りにするんですよ。
暗くなってくると同じ道でも全然違うように見えますから」
照「むぅ」
煌「むぅじゃありません。先輩の道案内をするのは後輩の勤めですから」
照「同じ高校の先輩後輩だからか」
煌「同じ麻雀部の先輩後輩だからですよ。
放課後に入部届けも提出してきましたし今日から清澄高校麻雀部の部員です」
照「まさか、放課後に遅れてきたのって」
煌「麻雀部に顧問の先生とかはいないんですね。
なので教頭先生にお渡ししようとしたんですが中々受け取ってくれませんでした。すばらくないです」
照「顧問だった先生は私が麻雀部に入って一ヶ月と経たないうちに別の学校へ転属したから」
煌「そうですか……」
照「それより麻雀部に入ったってどういう事? 団体戦にも出られないくらい部員もいないのに」
煌「だって、麻雀大好きですから!」
照「何度も言うけど私がいる限り清澄で団体戦に出るのは難しいと思うけど、それで良いのか?」
煌「だからって自分が辞めるなんて言い出さないでくださいね。
私は今日の対局で宮永さん、宮永先輩を怖いと思う以上に強さに惹かれてしまったのですから」
照「ふふっ、珍しい事を言う奴もいたものだ」
煌「案外そうでもないですよ。原村さんや片岡さんだってきっと同じ気持ちだと思います。
そうです、そうですよ! 原村さんと片岡さんが来てくれれば後一人入れば団体戦にだって出られます!」
照「それはどうだろうな。
片岡優希は不安定だから分からないが、原村和は個人戦に出れば間違い無く優秀な成績を残す。
上手く行けば全中制覇だって夢じゃない。
そうなれば県内強豪校の風越や龍門渕辺りが黙ってないと思う」
煌「全中制覇……宮永先輩の鏡にはそれほどまでの実力があると映っていたんですか」
照「……普通、そういう場合って鏡じゃなくて眼鏡じゃないか?」
煌「東二局で何か見られてた気がしたんですが……気のせいでしたかね」
照(原村和、片岡優希、そして花田煌か。
以前の麻雀部の先輩達では照魔鏡の存在にすら気付かなかったと言うのに。
特に花田煌は原村和みたいに私の予想を上回る行動をせず力づくでこじ開けてきた)
照「ホント、面白い奴らだよ」
煌「何か言いましたか?」
照「なんでもないさ」
煌「それにしても、原村さんが全中覇者ですか! 今からスカウトの準備を進めておかないといけませんね!」
照「公立のウチから出せる条件なんてほとんど無さそうだけど」
煌「でも公立にしては清澄の施設は整っていますよね。
それに学食にタコスがあるなんて珍しいですし……ふふん、閃きました!」
照「悪知恵が思いついたようだな。じゃあ団体戦に出れるようになるまでの運営は任せるよ、部長」
煌「え!? 私が部長ですか!?」
照「私はそういうのは苦手だから」
煌「まあそういう事でしたら仕方ないですね。
一年ですが不肖花田煌……部長、任されました!」
ここから一気に飛びます。
全中個人の部決勝戦オーラス ドラ牌:六萬
解説「オーラスを迎えてトップ原村選手と二位の大星選手の差は10,000と大きく開いていますが……」
実況「二位の選手の手牌。なんだかおかしな事になっていますね。字牌ばかりが並んでいますがこれは字一色でしょうか?」
解説「字一色七対子、ローカル役で言うところの大七星のテンパイですね。
大会ルールにローカル役やダブル役満は無いので普通の字一色ですがそれでも役満です。
七対子なので必然的にメンゼンの単騎待ちになり当たり牌が読みにくいですね。
そしてすでに河に2枚出ている北の、残り1枚を持っているのは現在トップの原村和選手です。
これは直撃させてオーラスで原村選手の飛び終了なんていう大逆転劇も十分あり得ますよ」
実況「とりあえず、すごいことが起こるかもってことです!」
解説「真面目に解説したのに適当に流さないでよー」
淡(見えてますよ原村和さん。貴女の手牌にある北極星の輝きが。
北が役牌にもならないこの状況でそれはいりませんよね。
だから、北は北家の私に返して下さいよ。北極星は真北にあるからこそ北極星って言うんですから……!)
和「……」
和の捨て牌:一萬
淡(さあ!)
和の捨て牌:六萬
モブ2「ポン!」
淡(え……?)
和の捨て牌:五索
淡(そんな……)
和「ノーテン」
モブ1「ノーテンです」
モブ2「テンパイ」
淡「……テンパイ」
実況「ここで試合終了ー! ベタオリと早和了を駆使しつつ着実に得点を伸ばしていった原村和選手が逃げ切りましたー!」
解説「オーラスのベタオリは見ているこちからすれば冷や汗ものでしたね。
最後の大逆転の手を張ろうとしていた中で、南家や西家の危険牌を切る事もいとわず北家の当たり牌である北を抱え続けていたのですから。
大星選手の待ちが直感的に感じ取っているかのような打牌でした。
牌譜を見る限りでは完全なデジタル思考だと思っていたのですが……考えを改める必要がありますね」
実況「おおっとアラフォーがうら若き中学生を蹂躙すべき獲物に認定したかー!」
解説「アラサーだよ! それに蹂躙とか物騒な言い方するのやめてー!」
和「ありがとうございました」
モブ1「ありがとうございました。いやーまるで歯が立ちませんでしたよー」
モブ2「ありがとう。もっと力を付けて今度はリベンジする」
淡「……ありがとうございました」
モブ1、モブ2は立ち上がり会場を後にする。
和も立ち上がり応援してくれていた優希達の元へ向かおうとするが、淡に呼び止められる。
淡「待って、原村、和さん」
和「はい、なんでしょう」
淡「オーラスの大七星テンパイ……どうやって察知した?」
和「大七星って字一色七対子ですよね? ローカル役もダブル役満もない大会ルールで狙うとすれば非現実的な役です。ですが」
淡「ですが?」
和「貴女の予選からの牌譜を拝見させて頂いたのですが、なるべく自風牌を集めているような打ち方をしているように見受けられました。
自風牌には役が付きますからそれ自体は誰でも考える事です。
ただ、貴女の場合は自風牌を含めての七対子を狙ったり雀頭にして単騎待ちしたり、それも無理なら国士無双の自風待ち切りさえしているような徹底ぶりでした。
だから、字牌だけでの七対子……大七星も十分にあり得ると思ったんです」
淡「あり得るのはあり得るね。でも統計的に見たら滅多にない事じゃない?」
淡(原村和はより安全な確率が高い打ち方をする選手だと思っていたからこそ大七星で張っていたんだから)
和「だって、それが貴女のポリシーなんでしょう?」
淡「ぽ、ポリシーだってぇ?」
和「ここぞという時に自分の信じるスタイルで勝利を掴むのが勝負の世界に生きる人間ですから」
淡「ま、まあそうとも言えるかな」
淡(私のはポリシーと言うより字牌を引き寄せる力を使って集めてるだけなんだけど。
まあ自風牌が一番集まりやすいのは間違ってないけど。伝える必要も無いか)
和「それにしても、やっぱり実物は想像上の大星さんより強かったです。3割増しと言ったところですか」
淡「は? 想像上の私?」
和「はい。その中では私の30勝20敗でした」
淡「へ、へー」
淡(何言ってんのこの子)
淡「と、ところでさ。全中で優勝したからには当然どっかの名門に行くんだよね?
千里山とか姫松みたいな全国大会の常連とか?
原村さんのいる長野だと風越……は今年予選敗退だから龍門渕?」
和「私は清澄へ行くつもりですよ」
淡「清澄? ってどっかで聞いた事あったような……あー!」
?「淡! いつまでも卓の前で長話してんだい。片付けをするスタッフさんに迷惑さね」
淡「あ、監督。負けちゃいましたーすいません」
?「気にしなさんな。アンタの自風牌を星に見立てて集める能力はまだ発展途上だしねぇ」
和「牌を星に見立てるとか、そんなオカルトありえません」
?「まあこの子はそういう打ち方をするっていう喩えだよ」
和「ああ、そういう事でしたか」
?(牌譜から架空の対戦相手を仕立てあげるとか、デジタルとオカルトの融合みたいな能力を持った子がよく言うよ)
優希「のどちゃん、遅い!」
?「あちらのお迎えも来たようだし、帰るよ淡」
淡「はーい。原村さん、清澄で団体戦に出るつもりだったらせいぜい宮永照さんの足を引っ張らないようにね」
和「まさか。足を引っ張るどころか私が宮永さんを全国へ導いて差し上げますよ」
淡「ははっ。それじゃあ全国で待ってるから頑張って」
和「はい、また全国で!」
優希「のどちゃんに負けたくせになんだか偉そうな奴だ」
和「でも、本当に強かったですよ。彼女はインハイにも必ず出てくるでしょう」
優希「のどちゃんが他の学校の選手に興味を持ったのは久しぶりだな。はぁ、また浮気かー」
和「う、浮気だなんて人聞きの悪い」
?「……そんなに我慢するなら他の子達みたいにさっさと出てくるのが賢明だったんじゃないかねぇ」
淡「ヒッグ……だって、同じ中学生に、負けたなんて初めてだったから、悔しいって思う前にどんな子なのか話したくって……」
?「初めてのライバルってわけかい。いいねぇ若い子は」
淡「インハイで当たったら今度こそ勝つ……!」
?「その意気だよ」
?(とはいえ、今年の長野は荒れそうだから清澄は厳しいかもねぇ。
とんでもない怪物を呼び起こした龍門渕と雪辱を誓う名門風越。
それにとんでもないダークホースが出てきそうな気も……。まぁこれは永年の経験によるカンでしかないがね。
宮永照は確かに圧倒的な実力を持っちゃあいるけど、さすがに一人でそういった学校を全て飲み込めるわけじゃない。
後一人、せめて原村和と肩を並べられるような選手がいればあるいは……)
そして時は流れて2月
とある中学校の教室 2時間目と3時間目の間の休み時間
京太郎「おーい、見てみろよこれ!
来年俺たちが行く学校のパンフ貰ってきたんだけどお前のねーちゃん載ってんじゃん!」
咲「京ちゃん、私はそんな人知らないよ?」
京太郎「え? でも宮永照って同じ苗字だし咲とそっくり……」
咲「私に麻雀をやってるお姉ちゃんなんていないから」
京太郎「そっか、咲がそこまで言うなら別人なんだな。珍しい事もあるもんだなー」
咲「麻雀なんか……」
京太郎「なんか言ったか?」
咲「な、なんでも無いよ。それより放課後に図書室で本を探すのを手伝って欲しいんだけど、駄目かな?」
京太郎「今日はやる事ないしいいぜー」
咲「ありがとう京ちゃん」
京太郎「にしても咲はほんっと読書が好きだよなー。
四六時中本を読んでる気がするけど他の趣味とかあるのか?」
咲「……うーん、無いかな」
京太郎「俺が言えた義理じゃねーけどそれで良いのか帰宅部よ。
もっと色んな事に興味を持っていくべきなんじゃないのか」
咲「好きになったものが後で嫌いになるのって、最初から興味が無かった場合より何倍も辛いから」
京太郎「読んでた本からの引用かー? そんな事言って本当はめんどくさいだけだろー」
咲「あはは、そうかもしれない」
京太郎「まあ高校ではどっかの部活に入ろうぜ。咲は友達も作らないとな」
咲「私にも出来るかな」
京太郎「心配すんなって! 俺もなるべくフォローしてやるつもりだから!」
咲「ありがとう。うん、頑張ってみるよ」
キーンコーンカーンコーン
京太郎「そろそろ授業始まるみたいだな。つっても後は卒業するだけの身としては気が入らないけどな」
咲「駄目だよ、最後の試験で赤点とかカッコ悪いし」
京太郎「それもそうだな、んじゃまた放課後な」
咲「うん」
咲(京ちゃんは自分が行けるギリギリのラインの清澄へ行く事にした。
受験勉強中に自分の出来る範囲の努力を惜しまなかった京ちゃんに、レベルを落としたらなんて言えなかった。
清澄に行きたくないなんていうのは私の我侭でしかないから、京ちゃんの努力をふいにするのは駄目だ。
でも、だからと言って京ちゃんと離れるのも心細いから、私も一緒に清澄に行くしか無かった。
自分の事だけど、小心者にもほどがあるよ。
清澄に行ったら絶対に麻雀をしているお姉ちゃんと向き合う場面が出てくる。
麻雀部自体は無名らしいけど、お姉ちゃんの名前は麻雀関係者や学校のみんなには知れ渡っているはずだから絶対に関係を疑われる。
その時に私はどうする? なんとしてでも受け流す? なんとかして受け入れる?
能動的な行動が取れない私はどちらも選べず状況に流されそうだな。
そんな私が出来る事と言えば京ちゃんが麻雀に興味を持たないでくれる事なんだけど……)
キリの良い所まで書きためといたのを一気に投稿。
慣れてなくて二回同じパートを投稿してしまいました、すいません。
今後は書けたパートからちょろちょろと更新して行く予定です。
清澄麻雀部に5人が揃ってから練習風景をちょろっと書いた所で次の学校へ→決勝で当たる4校を描いたら決勝となる予定。
入れ替えたメンバーがどんな感じで仲良くなっていくかをお楽しみ頂くSSなので、ニワカ仕込みの闘牌描写には期待しないで下さい。
大星淡ことあわあわの能力は描写がないので『大星』っていう名字から取ったオリジナルです。
友人に大四喜=グランドクロスって言われてそれを頂こうかとも思いましたが今回は大七星です。
現時点では風牌を集める(特に自風牌)+風牌の場所がなんとなく分かるって感じの能力です。
進化すると三元牌も集められるようになって大七星連発の魔物になる予定。
とりあえず風呂入ってきます。
……ここってDat落ちとか気にしなくて良いのかな。
ニワカだからわっかんねー全てがわかんねー
乙
乙! 面白かった~ あと、ここはオチナイから大丈夫だよ 続き期待してるよ!
風呂から帰還。
続きをちょっとだけ書いたので投下してから寝ます。
清澄高校 麻雀部部室
照「とりあえず優勝してみたが、結局今年中に部員が入る事は無かったな」
煌「インハイ個人戦の優勝をとりあえずで片付けられるのは宮永先輩くらいですよ。
にしても、全国覇者効果を期待したのですが途中入部はやっぱり難しかったですかね」
照「というかそのせいで余計周りと壁が出来た気がするんだが。
私の事を一歩引いて様子を伺ったりヒソヒソ話をしてるのをやたら見かけたり……
やっぱり怖がらせてしまったのだろうか」
煌「そういうのでは無いと思いますので安心して下さい」
照「そうかな。なら良いんだけど」
煌(ビビられてるというより完全に高翌嶺の花になっちゃってますね。
元々凛として芯のある美人だった所に、王者の看板まで載せられちゃったわけですから)
照「来年は団体戦に出たい。団体戦で1勝出来た時の和の喜びようは正直羨ましかった」
煌「そうですねぇ。私も後一年遅く生まれていればあの中に入れたのですが」
煌(宮永先輩との対局を機に原村さんは大きく変わった。
他人の打ち筋を全く研究せず、自分のデジタル麻雀を貫くだけの行き当たりばったりな闘牌をしなくなった。
そのお陰で片桐さん達も強くなれたしオーダーにも気を遣う事が出来ていました)
照「和と優希は結局ウチに来てくれるんだっけ」
煌「そうですね。本来なら片岡さんを学食のタコスで釣って、その片岡さんで原村さんを釣り上げる作戦だったのですが。
そんな必要はまるでありませんでしたね」
煌(二人ともすっかり宮永先輩に懐いちゃいましたから)
照「ともかく、これで四人か」
煌「あと一人なんてきっと楽勝ですよ。
何しろ、どの卓でも一人浮きを成し遂げた絶対王者がいるんですから。
今年の清澄の倍率が上がったのは宮永先輩と同じ部活に入りたい人が集まったからに決まってます」
照「だと良いけど。もし集まらなかったら……」
煌「アテがあるんですか?」
照「まあな、その子が入って本気で麻雀に打ち込んでくれるとしたら、ウチは全国優勝まで狙えるよ」
煌「そんな選手が!?」
照「ただ、彼女には部員が足りてないから入ってくれとか言いたくは無いんだ」
煌「何やら事情がおありのようですね」
>>1です。仕事行く前に覗いてみたらレスあって驚き。
点数計算や鳴いたあとのリーチについては完全にミスです。
点数については手牌を入力すると計算してくれるアプリを使っていて完全にそれ頼りです。
そういうミスはしないようになるべく注意していたんですが……適当に脳内補完しといて下さい。
和達に照の強さを見せつけるためだけの演出だったので、今後も必要であれば闘牌シーンを入れます。
矛盾点があったらどんどん突っついて下さい。
咲はお姉ちゃんに会いたいっていう最大のモチベーションが無いので魔王化しておらず、原作よりは大幅に弱くなってると思います。
照も白糸台での経験が無いので原作寄りはちょっと弱いかな?
とはいえ個人戦王者になれる魔物である事は代わりないんですが(笑
原作レベルの強さだと『インターハイと言えば宮永姉妹』状態になってしまいますし仕方ないですよね。
誰がどこに行ってるかはバレバレな伏線のようなものをちょろちょろ投下していくつもりです。
それでは仕事行ってきます。帰ってきたらまたちょっとだけ続き書くかも。
1>>です。
仕事から帰ってきて少しだけ書いたので更新します。
明日6時起きだよちょーねむいよー。
照「……事情は言えない。話を持ちだしておいて申し訳ないが」
煌「いいですよ。その方が来ようと来まいと来年は絶対に団体戦に出られるようにしてみせますから」
照「ごめん。彼女がここに来るような事があればその時は事情は説明する」
煌「はい、分かりました」
照「それにしても、団体戦に出られるくらいの人数が集まれば賑やかだろうな。
インハイ個人戦で戦ったのは団体戦にも出場しているような名門校の選手ばかりで応援も多かった。
煌が応援してくれてると思えばまだマシだったが、東京まで応援に来てくれた人は誰もいなかったからな」
煌「私は県予選で早々に敗退しちゃいましたからね。一緒に全国まで行けなくて申し訳なかったです」
照「応援してくれてただけで十分。
それに煌がいなければ私は今もここで本を読んでるだけだったんだから。
清澄高校麻雀部において一番の功労者は私ではなく煌だよ」
煌「褒めたって何もでませんよ」
照「褒めてない、本心だ」
煌「……っ、またそうやって」
照「?」
煌「麻雀では相手の打ち筋の裏をかいて淡々と和了っていく事が出来るのに、
日常生活においては駆け引きもへったくれも無い直球勝負ばかりですよね。
それに意外と感情的」
照「そんな事はない。人を考えなしの馬鹿みたいに言わないで欲しい」
煌「どうでしょうね。きっと原村さんや片岡さんもそう言うと思いますよ。
彼女たちの団体戦の時だって……」
照「その時の話はやめろ。恥ずかしい」
煌「えー、あの時の宮永先輩は―――」
時間は遡り、全中団体戦、長野県予選一回戦直前の会場
高遠原中学には名前の分かってないモブキャラがいますが、便宜上「飯島 いなみ(いいじま いなみ)」と名付けておきます。
高遠原駅がある伊那郡飯島町から取ってます。
京ちゃんと遭遇すると思い切り殴ってきそうな名前だ……
和「いいですか。先鋒の夢乃さんは即退場になるようなチョンボだけはしない事。
手持ちは100,000点もありますしチョンボを連発しない限りは飛んだりしないでしょう。
あとは基本を忘れず楽しんできて下さい」
マホ「はい! 原村先輩や宮永先輩みたいに上手くやれないですけど精一杯頑張ります!」
優希「マホマホ、そこで片岡優希の名前が出てこないとはどういう了見だ!」
マホ「ご、ごめんなさい! 片岡先輩もすごいです!」
優希「はぁ、まあ流石に宮永先輩と比べられちゃ気が引けるし別に良いけどな」
裕子「初出場でいきなり全国優勝だもんな……
そんな人がウチに来て麻雀してたんだからすごいと思うよ」
和「その優希には一番頑張って貰わないといけませんからね。
もし夢乃さんがマイナスで帰ってきたらそれを挽回した上でただひたすら引き離して下さい」
優希「任せろ! 東場でそのままぶっ飛ばしてやるじぇ!」
裕子(もしっていうか絶対マイナスで帰ってくるだろうけど……
マホに気を遣ってくれてるんだろうな)
和「お願いします。さて、中堅の室橋さんと副将の飯島さんですが……
優希は絶対にリードを保って帰ってくれますから、そのプラスを死守して下さい。
この辺りになると私達のリードに焦りだして直撃させて何とか落とそうとしてくるはずです。
一番厳しい所だと思いますが二人ならやれると信じています。
ですが、多少の点差なら大将の私が挽回して見せますのであまり気負い過ぎないように」
裕子「分かりました」
飯島「最善を尽くします」
和「じゃあ夢乃さん、そろそろ会場へ」
マホ「はい!」
同大会・観戦ルーム
照「控え室に行ってやらなくて良いのか?」
煌「私は清澄高校の一年生で、もう高遠原中学の生徒ではありません。
これは彼女たちの戦いですから私が口出しして良いことなんてありませんよ」
照「でも団体戦、出たかったんだろう」
煌「そうですねぇ……和さん達が私の意志を継いで団体戦出場にこぎつけてくれたのは先輩として誇らしいですが。
やはり自分たちの代であの舞台に立ちたかったです」
照「そうか。高校では立てると良いな」
煌「そうですね」
という所で今回の更新は終わりです。
展開が進むどころか逆戻りしてしまう始末。
次回はコピー雀士こと夢乃マホのデビュー戦と、その時の照の観戦風景を書いていく予定です。
のどっちやタコスに加えて照、すばら先輩をコピーしたマホマホを書きたいだけなので次鋒以降はキンクリします。
また闘牌描写か……今度はミスしないよう気を付けます。
そして質問なのですが、展開ってksk進行して早く次の学校へ行った方が良いのでしょうか。
それとも書ける範囲でじっくり描いた方が良いのでしょうか。
期待度と言うのには鮮度があると誰かが言っていましたし、もったいぶらず早く各学校のオーダーを見せた方が良いのかなとも思ってたりするんですが……
1です。更新分が書けました。
「更新分の一回目は更新を知らせる意味合いも兼ねてage進行でも良いんじゃね?」と友人に言われたので最初だけage進行です。
咲世界での全中団体戦のルールが分からないので基本的にインハイ団体戦準拠です。
ただ、少年野球が7回までみたいなのと同じような感じで対局数を減らし半荘一回・オーダー変更ありとします。
亀並の進行速度なので少しくらいはkskさせようと言う意図があったりなかったり。
あとは必ず一回はやらかすというマホのチョンボの罰符は4000・2000満貫払いを適用します。
その他の和了放棄や供託については一般的なルールに則って進めます。
また、今後出てくるか分からないキャラに名前を付けるのもアレなので対戦相手の名前は学校名とします。
マホ:100000 :100000 煌:100000 照:100000
東一局
東家:夢乃マホ 南家:千曲 西家:今宮 北家:弓振 ドラ:三萬
実況「さて始まりました全中麻雀長野県予選の一回戦。
東家から高遠原中学、千曲中学、今宮中学、弓振中学となります。
最近でこれといった成績を残した学校はありませんがどこに注目すべきでしょうか」
解説「個人的には弓振中学に注目したいところだが……
何かやらかすとしたら高遠原中学だろうな。
こういう初出場の学校は何らかの波乱を巻き起こすもんだ」
実況「そうですか、新風が巻き起こる事に期待しましょう」
マホ「よろしくだじぇ!」
千曲「よろしくお願いします」
今宮「よろしくー」
弓振「お、お手柔らかに……」
選手控室・兼観戦室
和「だじぇ? どこかで聞いたことあるような」
優希「私の真似だな。起家で私の真似をするとは目が高いな」
和「確か、夢乃さんは尊敬する人の打ち筋を頭の中に思い浮かべることで気持ちを落ち着けてるんですよね。
まだ麻雀を始めたばかりですし誰かを参考にする事から始めるのは間違っていないと思います」
優希「あってるようでちょっと違うんだけど、まあのどちゃんはそのままでいいか」
和「?」
優希「それにしても、私はそこまでだじぇだじぇ言って無い気がするんだけどなー」
裕子「今、意識的にだじぇって言わないようにしてるでしょ」
優希「さ、さてどうだろー」
和(図星ですね)
いなみ「そんなのどちらでも良いから夢乃さんを応援してあげてください」
対局ルーム
一巡目
マホ(片岡先輩の真似をしたらテンパイが早くなるような気がしますー。
と言うことで早くテンパイするためにドラ牌だろうとお構い無しだじぇ!)
マホの捨て牌 五索(赤)
千曲(いきなりの赤ドラ!? もう張ってるからなのか繋がってないから捨てただけなのか……)
千曲の捨て牌 西
今宮(いきなりそれなんて明らかに初心者だなーこの子。悪いけど狙わせてもらうよー)
今宮の捨て牌 九萬
弓振(な、なんか嫌な予感がするなぁ……怖いからこの局はこの子の現物切り続けるしか無いかなぁ……)
弓振の捨て牌 五索
二巡目
マホ(やっぱりテンパイ出来たじょ! このまま一気にやってやるじぇ!)
マホ「リーチ!」
マホの捨て牌 五筒(赤)
千曲(また赤ドラ捨てからのリーチ!? またオタ風捨てで良い、のか……?)
千曲の捨て牌 南
今宮(これじゃあ清一色狙ってるのバレバレじゃーん。そのリー棒無駄になりそうだねー)
今宮の捨て牌 八索
弓振(ど、どうしよう、やっぱりまた現物で……)
弓振の捨て牌 五索
二萬二萬二萬 三萬四萬五萬 五萬六萬七萬 七萬七萬 八萬八萬 ツモ牌:八萬
マホ「一発きたじょー!
ええっと、リーチ、一発、ドラがひとつ、萬子だけだから清一色で、一と九が無いからタンヤオもついて、ええっと」
弓振「あ、あのー、リーチでのツモ和了だからメンゼンも付きますよ」
マホ「あ、そうでした! 後リーチしたから裏ドラが乗るんですよね……」
裏ドラ:七萬
マホ「わわっ、3つも乗っちゃいました……ええとええと」
千曲「もう数えなくて良いよ。それ数え役満だから」
マホ「え、あ、はい。数え、役満……? 私、役満和了っちゃったじょー!」
今宮「点数は言うまでもないけど一応申告しようねー」
マホ「あ、はい。親の数え役満は16000オールだじぇ!」
控え室
優希「まさか数え役満まで言っちゃうとはびっくりだじょ……
私もあそこまでツイてた事はほとんど無いというのに、味方だけど羨ましいじぇ!」
和(あ、だじょって使った)
いなみ「派手な和了りかた……すごい」
裕子「あーあ、こんな事したら完全に目をつけられちゃうよ」
観戦ルーム
照「数え役満か、私も和了った事はないな」
煌「そうなんですか? 宮永先輩ほどの実力でしたらとっくに……ああ」
煌(連続和了で数え役満に到達するまでに誰かに止められるか誰かが飛んでしまうんでしょうね。
圧倒的強さで個人戦優勝を成し遂げた彼女なので、麻雀でなら何でも出来るとと思ってしまいがちでしたが……
意外な盲点ですね)
照「役満か……」
煌(雀士としては一度は出したい到達点ですよね、気になるのは分かりますよ)
マホ:148000 千曲:84000 今宮:84000 弓振:84000
東一局 一本場
東家:夢乃マホ 南家:千曲 西家:今宮 北家:弓振 ドラ:南
実況「ほ、ほんとに何かやらかしましたねぇ」
解説「あの子、理牌も覚束ないようだし初心者だな。
ビギナーズラックの一言で片付けられるのだろうか。
はたまた他の何かが上乗せされていたのか……」
マホ(ええーと、次は最初の局を終えた後の宮永先輩のクールなかっこ良さをイメージして……)
マホが数秒ほど目を閉じた後で、その瞳を大きく見開く。
すると三人の後ろに宮永照のそれよりは少し小さな照魔鏡がせり上がってくる。
千曲(え? なんか私達の事を見てる気がするんだけど何かしてるの?)
今宮(親だから早くツモ牌引いてくれないと始められないんだけどなー)
弓振(え? な、なんなのこれぇ~……なんか後ろに鏡出てきたしぃぃ。
他のみんなは反応ないし私だけに怪奇現象?
怖い。もう帰りたい。今すぐ帰りたいぃぃ)
マホ(うーん、宮永先輩みたいにジーっと見つめてみたら何か分かる気がしたんだけど……見えました!
千曲の人は、なんか私をどう扱って良いか分からないって感じみたいです。
だったら最後まで私は虚勢を貼り続けてみせます。
あとこの人からは何かやってきそうって感じはしないけど、大将さんの事を信頼してるみたい。
気をつけておいた方が良いって原村先輩に伝えておかないと!
今宮の人は何が出来るって感じ人は誰もいないみたい。
でも私に狙いを定めてきてる感じがするし怖いかも。
あとは弓振のこの人……臆病なのかテンパイ気配をいち早く察知してさっさとベタオリしちゃうみたいです。
ほとんど和了らないけどほとんど振り込まない。これってすごい事なのかなぁ?
ともかく他の二人からは感じ取れない物が感じられました。
次鋒以降の人も結構頑張ってるみたいです。きっとここが一番の強敵です。
と、言うことで。情報整理も出来ましたし決めの一言行きますよー!)
マホ「一番やっかいなのはあなたですか……」ゴゴゴゴゴ
弓振(!? え……え!? なななな何なのー!?
なんでこっち睨んできてるのー!?
強い人がいる先鋒に放銃率の低い私をおいて後半で追い上げようなんて言ったの誰ぇ~!
なんかこの子強いっていうか滅茶苦茶怖いよぉぉぉ。
お、おうち帰りたい……)
実況「おや、弓振の選手が今にも泣き出しそうですがどうかしたのでしょうか」
解説「高遠原の選手が何かしているように見えたが……
あんな可愛らしいナリをしている子が何かした所でたかが知れてると思うがね。
……いや、あの目からは相当な威圧感を感じるな。
ともかく弓振の選手が落ち着くまで少し開始を遅らせてやってくれ。
あの状態でまともに対局はできんだろう」
控え室
和「これは宮永先輩の真似ですね。
目標とするには最高の人だと思いますけど少々早いのではないでしょうか。
相手を観察して本質と弱点を見抜く宮永先輩並の洞察力は一朝一夕で真似はできませんよ」
優希「最近、のどちゃんって宮永先輩の事になるとよくしゃべる気がする。それもすごく活き活きと。
なんだかテレビの向こうのアイドルに熱を上げてる嫁さんのいる旦那の気分だじぇ……」
観戦ルーム
照「弓振にさえ気をつけていれば大丈夫そうだな」
煌「何か分かったんですか?」
照「夢乃マホと言ったかな。あの子、私のアレを使ってみせたぞ」
煌「私達と初めて対局した時にも出していた、相手の本質を映し出す照魔鏡でしたっけ」
照「ああ、何かされた事にすら気付かない様子の千曲と今宮は弱いに違いない。
唯一反応を見せてビクついていた弓振も強いとは限らないが、他よりは可能性があるな。
実際にあの卓に入って直接見たわけではないから推測でしかないが」
煌「なるほど。それでも大体当たってるような気がしますよ、すばらです」
煌(そういえば宮永先輩をコピーした夢乃さんって、宮永先輩が持つ強者のプレッシャーもコピーしているんでしょうか。
あれまで真似を出来たら相手校の皆さんが可哀想な事になるのでは……)
対局室
実況「弓振の選手なんとか気持ちを持ち直したようなので試合再開です」
解説「しかし今度は弓振だけでなく千曲と今宮も顔色が悪くなってきたな。
高遠原の夢乃マホか……一体何者だ?」
一巡目
マホ「……」ゴゴゴゴゴ
マホの捨て牌:北
千曲(なんだろう、よく分からないけど高遠原の子から嫌なプレッシャーを感じるような……
さっきも数え役満和了ってたし実はものすごく強い……?)
今宮(なんか体がすっごくだるくなってきたなー。
今日の朝はご飯もおかわりしてきたし体調は万全だったはずなんだけどー」
弓振(帰りたい帰りたい怖い帰りたい……
でも帰れない帰れない怖いけど帰っちゃいけない……)カタカタカタ
千曲「……」
千曲の捨て牌:二筒
マホ「ポン」 福露:二筒二筒二筒
マホの捨て牌:西
マホ(とにかく手を進めればすぐに和了れるような気がしますー)
今宮(鳴くのはやいなー。そこをポンしてくるならこれはもういらないかな)
今宮の捨て牌:三筒
マホ「チー」 福露:一筒二筒三筒
今宮(これって、二筒をアンコで持ってたって事だよねー。なんでそういう鳴きするかなー)
今宮の捨て牌:八索
煌(あ、この流れもしかしなくても……)
マホ「ロン、役牌のみの一本場は……2300?」
白白白 一萬一萬 七索 九索 ロン牌:八索 福露:一筒二筒三筒 二筒二筒二筒
今宮「え、えぇーっ? 何その汚い待ちー!!」
弓振(よ、良かったー。私も八索持ってたけど振り込まずにすんだよ)
控え室
和「な……夢乃さんは何をやっているんですか!
チャンタや三暗刻も狙えたあの手牌を役牌のみにするなんて!
ああいう和了り方をしていいのは連荘が出来る実力があって連荘する事をポリシーとしている宮永先輩だけですよ!」
いなみ「抑えて抑えて、夢乃さんは初心者ですから……」
優希「同じ和了り方でも宮永先輩と他の人とじゃ反応が違うとか贔屓目にほどがあるじぇ」
観戦ルーム
煌「あちゃー、やっぱりそう来ましたか」
照「私の連続和了は最初は打点が低い。
あれを一回だけ真似た所で大した攻撃翌力にはならない。
だけど誰にも追いつけないスピードで和了るから連荘や親流し狙いに使うと有効」
煌「そういえば、全国大会でも3連続和了くらいまではほぼ確実に和了ってましたね」
照「ちなみに私は対戦相手には連続和了をさせた事が無い。
私が二連続で和了れない時だろうと必ず違う相手が和了っていた」
煌「どんだけですか……」
マホ:150300 千曲:84000 今宮:81700 弓振:84000
東一局 二本場
東家:夢乃マホ 南家:千曲 西家:今宮 北家:弓振 ドラ:七索
マホ(ええと次は……)
千曲「……」オロオロ
今宮「……」ジロジロ
弓振「……」カタカタカタ
マホ(な、なんか空気が怖いですー。
しかも今宮の人がなんか怖いし……
こういう時は花田先輩のようなユーモアセンスで場を和やかにしてみせます!)
マホ「ずぼら!」
千曲・今宮・弓振「!?」
実況「え? 今なんと言いましたか?」
解説「……本当によく分からん子だ。
目から発せられていた威圧感が一瞬にして雲散した。
あれは相当な気分屋なのだろうか」
控え室
優希「今ここに、高遠原中学のレジェンドが誕生した……!」
裕子「こんなのがレジェンドって嫌すぎですよ……」
観戦ルーム
煌「わ、私の真似ってあれなんですか!?」
照「あの時の対局で煌が輝いていたシーンと言えば私の親の流した東四局だから。
あれが煌の特徴だとして真似する事にしたと思う。
それにしても素晴らしい、いやずぼらしい発声だった」
煌「わざわざ訂正しないで下さい!
あああ、あんなのが私の特徴だなんて思うと恥ずかしい……」
照「夢乃マホにはそう見えたんだろうから仕方ない。
あの子のコピー能力も完全じゃないと言うこと」
煌「そうだと良いのですけど、宮永先輩の照魔鏡までコピー出来た夢乃さんの能力が完全じゃないとは思えなくて」
照「心配しなくてもあれは本来の煌とは違う。私でも全部は分からなかったのにあの子に分かって良いはずがない」
煌「そ、そうですか」
煌(なんだかムキになってるような気がするのですが何故でしょう)
一巡目
マホ(さて、みなさんの反応はと言うと……)
千曲(ずぼらって、予告チョンボ? いや私達の打ち筋がずぼらだって上から目線で言ってるのかもしれないし……)
今宮(なんか分かんないけど面白ーい。自分でズボラって言うなら狙わせてもらうよー)
弓振(やっぱりこの人意味が分からないよぉぉ。
お家帰りたい。早く終わってくれないかなぁ……)
マホ(とりあえず張り詰めた空気が少しはほぐれたみたいです。
あとは楽しく麻雀をするだけです)
11巡目
千曲「ツモ。リーチメンタンピンドラ1の二本場で裏ドラは……乗らなくて4200・2200です」
マホ「あれー?」
観戦ルーム
煌「なんかあっさりと親を流されてしまいましたが……」
照「あの時の煌は逆境をはねのけた感じだったから、大量リードを持ってる今は真似るべきじゃなかった。
私の真似をしたせいで対戦相手の体調が悪化したから、きっとなんとかしようと思ったの行動だろう。
優しい子だと思う。でも煌の事は理解できてはいない」
煌(照魔鏡で見通しきれなかったのがそこまで悔しかったのでしょうか。
私は特別な力なんてないただの凡人だと思うんですけどねぇ。
ま、それでも私はやれる事をやるだけなんですけどね!)
控え室
優希「インパクトはあったけど終わってみると何て事はなかったじょ」
和「花田先輩のポリシーは自分の出来る事を精一杯やることですから。
千曲のリーチは8巡目で夢乃さんより早かったですし、彼女の打ち筋に倣って今回は素直に降りたのでしょう。
それでもツモ和了されてしまうのはどうしようもありません」
裕子「その割にはあれー? とか言っちゃってますけど」
和「……ですよね。どういう事なんでしょう」
いなみ「分かんない、全てが分かんないです」
マホ:146200 千曲:92600 今宮:79500 弓振:81800
東二局
東家:千曲 南家:今宮 西家:弓振 北家:マホ ドラ:九索
一巡目
マホ(親流されちゃいました……
な、なんとかしないと!)
千曲「……」
千曲の捨て牌:南
マホ「ポン!」南南南
千曲(え? 一巡目からいきなり? 大四喜や字一色でも狙える手牌なのかな……)
千曲の捨て牌:九索
マホ「ポン!」 九索九索九索
千曲(えぇ~!? これで狙える役って言ったらチャンタ、混老頭、または役牌くらいだよね……
大量リード持ってるしさっさと流す作戦なのかな……
そう見せかけておいてチャンタ系や字牌からのドラ3で思わぬ失点をさせるとか……?
とりあえずチャンタにならない中張牌を切ろう……)
千曲の捨て牌:五萬
マホ「ロンです! 字牌ドラドラドラは満貫なので8000です!」
千曲「うわ、やっぱり思わぬ失点……」
今宮「いや、ちょっと待ってよー。その手牌なんかおかしいってー」
マホ「え?」
マホの手牌
五萬五萬 七萬七萬 二索三索四索 ロン牌:五萬 福露 南南南 九索九索九索
実況「おおっとこれは……」
解説「ここで役無しチョンボとはな。
ルールが分かっていないにしろ余計な事をしなければリードは守れるだろうに。
やはりただの初心者なのだろうか?」
弓振「これって、役無しチョンボじゃ……」
マホ「あれ!? 字牌って役が付くんじゃないんですか!?」
千曲「オタ風または客風って言って、場風の東でもなく自風牌の北でもない風牌は役が付かないんだよ」
マホ「そ、そーだったんですかー!?」
今宮「ちなみにこの場合は4000・2000の満貫払いで親の連荘で再スタートだからー」
マホ「そ、そうですか……」
今宮(三色三暗刻のリャンシャンテンだったのになんて事してくれたのよー!)
控え室
裕子「あーあやっちゃったよ……」
和「覚えるのがややこしいと思って、東場は東以外で泣いちゃいけませんよとしか教えていませんでしたから……
役にならない事まで覚えていなかったんですね」
優希「でもまだまだリードはあるから何とかなるじぇ!」
マホ:138200 千曲:96600 今宮:81500 弓振:83800
東二局
東家:千曲 南家:今宮 西家:弓振 北家:マホ ドラ:二索
マホ(とんでもない失敗をしてしまいました……
挽回するためにもここは私が最も憧れている先輩である原村先輩のように……
大きな失点を抑えるミスの無い打ち方をしてみせます……)
千曲(今度は急に静かになった。さっきのチョンボは油断させるためだったのかな?)
中盤頃
今宮(よーし! ここに来て大三元テンパイ!
まだ河に出てない白と發のシャンポン待ちだし一気に逆転しちゃうよー!)
今宮の捨て牌:七筒
マホ「……チー」 六筒七筒八筒
千曲(今宮がテンパイしたっぽいな。安牌無いから捨て牌にある六萬のスジを打とう)
千曲の捨て牌:三萬
マホ「……ポン」 三萬三萬三萬
千曲(これはどう見ても食いタン特急券……
高遠原は今宮の張りが大物だと察知しているのかもしれない。
打点は低いだろうけど一位からの直撃も嫌だしこれで……)
千曲の捨て牌:九萬
今宮(鳴きまくってるけどまた役無しチョンボでもするつもりー?)
今宮の捨て牌:一萬のツモ切り
弓振(高遠原も今宮もテンパイしてそう……
今宮の方が怖い雰囲気だしこっちの現物かなぁ……)
弓振の捨て牌:一萬
マホ「……大物手で一気に逆転を狙う、それがあなたのポリシーなのでしょう?」
今宮「?」
マホ「ですが、それが分かれば対策のとりようはいくらでもあるんですよ」
マホのツモ牌:三筒
マホ「ツモ、タンヤオのみは……500・300です」
控え室
和「今宮のテンパイ気配を察した途端に手を早めての食いタンですか。
まるで私があそこで対局しているかのような打ち方でした」
裕子「マホは原村先輩の事が一番好きみたいですから、対局中の仕草まで完璧な再現度でしたね」
優希「それがあなたのポリシーなのでしょう……? どうだ? 似てるか?」
いなみ「いいえ、あんまり」
優希「じょー……」
観戦ルーム
照「見事な読みだった。さすが原村和をコピーしただけの事はある」
煌「相変わらず宮永先輩の原村さんへの評価は高いですね」
照「あの時も言ったけど原村和の実力は全中制覇を狙えるレベルだから。
起家だけは片岡優希、後は全部原村和のコピーで行けたら完璧なのに……
一日一回しか真似出来ないのは残念」
煌「ずっと真似出来るなら最初から最後まで宮永先輩を真似すれば良いんじゃないんですか」
照「それもそうだった。で、煌はなんで機嫌悪そうにしてるの」
煌「機嫌なんて悪くしてませんよ」
煌(宮永先輩は原村さんの実力を高く買っている。
それは先輩だった私としてはとても誇らしい事です。
それだけしか無いはずなのですが、何故か語気に力が篭ってしまいました。
これはすばらくないですね)
現時点の得点
マホ:139300 千曲:96100 今宮:81200 弓振:83500
ということで今回の更新はここまでです。
次回はマホマホの対局の終了+キンクリ進行での団体戦終了までです。
ここまで咲の出番が少ない……早く出してあげたいです。
ちなみに対戦相手の千曲、今宮、弓振は原作で清澄と対戦した学校の名前から使っています。
弓振だけ他の学校よりキャラが立ってるように見えるのは解説の人の母校だからです。
解説の人……一体何田プロなんだ……
1です。
投下した後で気づいたのですが今宮の大三元テンパイでこのシャンポン待ちはあり得ないですね・・・・・
適当な牌でのリャンメン待ちをしてると変換しといて下さい。
すぐにでも書き直したいのですが睡眠時間がやばいので仕事から帰ってきてからにします。
すいません。
という事でぱっぱと書き上げて投下してきました。
割と珍しい組み合わせになるキャラを出してみたつもり。
照「アルバイト………?」照「アルバイト………?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1344012705/)
1です。キリの良いところまで書いてから一気に投稿しようと思ったのですが、
とりあえず出来てる所まで更新しときます。
マホ:139300 千曲:96100 今宮:81200 弓振:83500
東三局
東家:今宮 南家:弓振 西家:マホ 北家:千曲 ドラ:東
観戦ルーム
照「そういえば、室橋裕子や飯島いなみはどこか変わった所がある打ち手なのか?」
煌「いえ、夢乃さんみたいに盛大なチョンボはしないですが特に癖のない平均的な打ち手ですよ」
照「それって、まずいんじゃないか?」
煌「まずいとは?」
照「二人に特徴が無いのなら、夢乃マホのコピー能力はもうネタ切れという事になる」
煌「あ……」
照「幸いにも全中は半荘一回だけな上に起家で稼いだ得点もある。
崩れ落ちる前に逃げ切れるだろうが……」
煌「どこまで削られてしまうかが心配ですね……」
対局室
マホ(どどどどおしよう!? ええとええと……)
千曲(急に目線をキョロキョロさせ始めたがどうしたんだ?
また何かやらかす気なのかな……?)
今宮(あーもーさっきから出鼻挫かれてばっかりでイライラしてきたー!
幸いにも親で連風牌がドラだしここで大きく挽回してやるー!)
弓振(ここまで何も出来てない……
でもなるべく失点を抑えるのが私の仕事だし……
このまま何もせず何もされずを維持しよう……)
一巡目
今宮(ラッキー、ドラの連風牌が手元に二枚きたー。
鳴いてでも揃えれば満貫確定で打点は十分だし、とりあえず早めに和了って連荘するよー)
今宮の捨て牌:西
弓振(あうう、親の連風ドラが二枚も……
でもこれさえ持っていれば親の連荘は防げるかも……)
弓振の捨て牌:西
マホ(と、とりあえず合わせ打ちですー!)
マホの捨て牌:西
千曲(あれ? これって私が西を捨てたら四風子連打になるんじゃない?
うーん……原点割れこそしてるけど現在二位だし、また高遠原が何かしてくる前にさっさと次鋒に回そう)
千曲の捨て牌:西
今宮「えっ」
実況「おおっとここで四風子連打による途中流局です。
大会ルールではツミ棒が一本置かれた上での親流れとなります」
解説「今宮の手牌は中々良かっただけに気の毒だったな」
今宮(なんなのよもー)
マホ:139300 千曲:96100 今宮:81200 弓振:83500
東四局 一本場
東家:弓振 南家:マホ 西家:千曲 北家:今宮 ドラ:七索
弓振(私の親だけど配牌最悪……
七対子なら狙えそうだけど、ドラを持ってないから打点が低すぎる。
とりあえず何とかテンパイまで持っていって次の局に賭けよう)
中盤頃
千曲(弓振の中張牌のツモ切りが多くなってきた。
四萬・五萬といった捨て牌も多いし平和系じゃなく対々系のテンパイ?
スジが見えないし対子の自風を崩すしかないかな……)
千曲の捨て牌:西
今宮(んー? 千曲はオリかなー?
でも私はメンタンピン一盃口のテンパイだしダマテン維持で出和了り狙うよー)
今宮の捨て牌:八萬
マホ「カン!」福露:八萬八萬八萬八萬 カンドラ:八筒
マホ(とりあえず一回でも大きく牌を引きます)
千曲(ここで大明槓……場を荒らして高遠原に何の得があるんだ?)
控え室
優希「あ、弓振にカンドラが乗った」
和「安易なカンはしないようにと何回も注意しておいたのに……」
裕子「まあでも、あれが本来のマホなんですよね。ちょっと安心しましたよ」
終盤頃・観戦ルーム
照「夢乃マホがまた大明槓したぞ。そしてまた弓振にカンドラが……
ただの七対子が一気に跳満手になった」
煌「恐らくは宮永先輩が見せた大明槓からの二連続カンを真似しようとしているのではないでしょうか。
とはいえ彼女のコピー能力は一日一局限りのようですし空振りに終わっているようですが」
照「仮に一日中コピー出来たとしても、出るかどうかはその日次第。
あれはドラが乗るからやってみたらたまたま二連続カンになっただけ。
原村和も言っていた通り確率的には0%じゃないから起こる事もある」
煌「確かにそうですが、その確率を跳ね上げる能力もありそうだなと思いまして」
照「残念ながら私にそういう力は無い。
嶺上に大輪の花を咲かせられるのは……」
煌「?」
照「……いや、今言った事は忘れて」
煌「はぁ」
対局室
弓振(高遠原のお陰で打点がいきなり上がったけど……
今宮の人も絶対テンパイしてる。直撃食らうの嫌怖いなぁ……)
弓振が選択したのは自分が二枚持っていた八筒。
今宮も河に一枚捨てている現物であり、すでに七筒が河に4枚出ているため完全安牌である。
弓振はテンパイを崩してベタオリを選択したのだが……
次順に弓振が引いた牌はベタオリしなければ和了牌になっていたはずのものであった。
弓振「テンパイです」
マホ「テンパイです」
千曲「ノーテン」
今宮「テンパイ」
マホ(あれ? 弓振さんの手牌……)
実況「東四局は荒牌による流局、二本場となり弓振の連荘となります」
解説「それにしても、折角今宮より先にテンパイしたと言うのに最後のベタオリはなんだ?
待ち牌は危険牌では無かったしアレをしなければ次順で和了れていたというのに。
消極的にもほどがあるな」
控え室
和「弓振の消極性に助けられましたね」
優希「ん? のどちゃんはああいうベタオリは褒めるかと思ってた」
和「まさか、張るべき所で張らないと勝てないじゃないですか。
相手より先に張れたと思われる状況で跳満手なら、期待値が上回るので私なら勝負します。
弓振の先鋒はなるべく放銃をしたくないと思っているのかもしれませんが……
そんなのポリシーとは認めません」
現在の状況
マホ:140300 千曲:93100 今宮:82200 弓振:84500
東四局 二本場
東家:弓振 南家:マホ 西家:千曲 北家:今宮 ドラ:?
と、あまり進みませんでしたが今回はここまで。
近所のマクドに引きこもって書いてたのですが、ずっと座ってて疲れました。
電源も無線も通ってるしSS書くにはすごい便利なのですが椅子と机の間が狭い……
お待たせしてすいません。
まとまったキリの良い所まで書き上げてから投稿しようと思ったら時間が掛かってしまいました……
ということで今から今回の更新分の投下をスタートします。
マホ:140300 千曲:93100 今宮:82200 弓振:84500
東四局 二本場
東家:弓振 南家:マホ 西家:千曲 北家:今宮 ドラ:三索
実況「さて、四風子流局から荒牌流局で二本場。
一見場が落ち着いて来たかのようですが」
解説「弓振が先ほどの跳満を和了れていればまた荒れて面白くなると思ったのだが……。
っとすまない。さっきといい弓振にはつい感情的になってしまうな。
客観的な解説が出来ないようでは私もまだまだか」
実況「縁のある学校なだけに仕方ないですよ。
さてその弓振ですがここで連荘して現在トップの高遠原に迫る事が出来るでしょうか」
終盤
今宮「ロン! 場風一盃口ドラ2の二本場は8600!」
マホ「は、はい!」
弓振「……」
観戦ルーム
煌「あちゃー。やられてしまいましたかー」
照「しかし親は流れて南場突入。このまま行けばプラスのまま終われるかもしれない」
控え室
和「今宮の人には夢乃さんが初心者だと勘付かれてしまったかもしれません。
なんとかしのぎ切れれば良いのですが……」
優希「まあでも麻雀は4人でやるものだ。
マホマホの直撃ばかりと言う事も無いと思うじょ」
和「それならば良いのですが……」
和(弓振は数に入らないのも同然の打ち方をしていますから実質は3人で打っているようなもの。
そして、夢乃さんは一年生ですから順当に考えれば狙うのは当たり前です。
直撃を狙いすぎるあまり千曲と今宮が潰し合う形になればベストですが……)
マホ:131700 千曲:93100 今宮:90800 弓振:84500
南一局
東家:マホ 南家:千曲 西家:今宮 北家:弓振 ドラ:三索
マホ(だんだん点差が縮まってきちゃいましたー……
だけどもう何もすごい事が出来そうな気がしません……
でも、私は……)
和『あとは基本を忘れず楽しんできて下さい』
マホ(原村先輩に教わった事を信じて目一杯やるだけです!)
4巡目
弓振「……」
弓振の捨て牌 發
マホ(ポン! したいですけどまだスルーです。
基本の形はメンタンピン、メンタンピンです)
中盤
千曲「リーチ」
マホ(先にリーチされちゃいました……
でもあの時鳴かなかったお陰で發が切れます)
終盤
千曲「ツモ、リーチメンゼン平和赤1、裏ドラが……1つ乗って4000・2000」
マホ(もう少しで流局まで持ち込めたのに親を流されちゃいました……
でも直撃はさせなかったです)
控え室
和「夢乃さんの今の打ち方は……」
裕子「メンタンピンの基本形ですね。
危険牌か分かってないから危うい場面もあったけど結果的に振り込まなくて良かったです」
優希「のどちゃんが口を酸っぱくして何回も言ってたもんな」
和「人の真似ばかりしてましたから私の教えた事なんてほとんど覚えてないと思ってましたよ。
……私でも、少しは先輩らしい事が出来ていたんですね」
優希「あれー? のどちゃん泣くのはまだ早いじょー?」
和「な、泣いてませんよっ」
優希「うむ、泣くのは大将戦が終わるまで取っとくんだじょ」
和「……そうですね」
マホ:127700 千曲:101100 今宮:88800 弓振:82500
南二局
東家:千曲 南家:今宮 西家:弓振 北家:マホ ドラ:九萬
序盤
マホ(メンタンピン、メンタンピンですー)
マホの捨て牌 九筒
今宮「ポン」
福露:七筒八筒九筒
中盤
マホ(やっとイーシャンテン……
九萬はドラですけどこれがあるとタンヤオにならないので捨てます)
マホの捨て牌 九萬
今宮「ロン! 自風三色チャンタドラ1の食い下がりは7700です」
マホ「は、はいっ」
実況「おおーっとここで一位の高遠原が振り込んでしまいました」
解説「高遠原はタンピン一盃口確定の綺麗な形が出来上がっていたからな。
リーチや裏ドラを重ねれば満貫以上にもなり得る手を崩したくなかったのだろう」
今宮(予想通りー。馬鹿正直にタンヤオを狙ってたみたいだねー)
マホ:120000 千曲:101100 今宮:96500 弓振:82500
南三局
東家:今宮 南家:弓振 西家:マホ 北家:千曲 ドラ:七筒
観戦ルーム
照「鳴いてのチャンタは食い下がり1翻で、苦労と対価が見合わないから狙わない方が良い。
夢乃マホが初心者らしくタンヤオ系を狙っていると踏んで、狙い撃つためだけの手作りに見えた」
煌「これで2位との差は約20000ですか。
点差が埋まってきましたしそろそろ夢乃さんだけを狙うのは得策ではないはずです。
先鋒はなるべく持ち点を稼ぐのが仕事ですから」
照「でも、先行逃げ切りが有利な麻雀では一位抜けをするのも先鋒の大きな仕事」
煌「ですよね……」
一巡目
今宮の捨て牌 五萬
千曲(いきなりど真ん中!? またチャンタで高遠原狙いか……?
そこまで露骨に動いて高遠原が連続で振り込むとは思えないんだけど)
弓振(本当にチャンタ狙いならヤオ九牌はなるべく手元に持ってる事にしよう……)
マホ(メンタンピン、メンタンピンですー)
終盤
マホ(やっとテンパイ出来ました。でも一索があるからタンヤオじゃないです。
こういう時は……)
***
和『テンパイした時点で自分の知ってる役が無いなと思ったら、リーチを掛けてみましょう。
これでとりあえず立直の役が付いて和了れるので、役なしチョンボにはなりません。
一発や裏ドラの有無によっては思わぬ高得点につながるかもしれませんよ。
あと、リーチを掛けるためにもなるべくポン、チー、カンは言わないようにして下さい』
マホ『はいっ! 分かりましたっ!』
***
マホ「リーチです!」
マホの捨て牌:發
弓振(リーチするのには遅すぎるような……
それに高遠原はさっきから今宮の危険牌が多いし危ないと思うんだけど……)
流局間近
マホ(あ、これがあればタンヤオになってた……リーチしたのは焦りすぎだったかなぁ。
タイミングって難しいですー)
マホの捨て牌:四索のツモ切り
今宮「ロン! 平和ドラ1は2900の3900です」
マホ「は、はいっ」
実況「今宮が高遠原からの連続直撃で連荘になります。
しかし今宮はリーチも掛けずダマテンだったため点数は大して高くはなりませんでしたね」
解説「高遠原はタンヤオに固執するかと思ったがリーチを優先したな。
あの時に一索を捨てていたら純チャンが乗り親満直撃で一気に逆転されていた。
多分偶然なんだろうが巡り合わせというのは面白いものだな」
弓振(ほら、無理に和了ろうとするから直撃受けちゃった。
やっぱりそれじゃ駄目なんだよ……)
マホ(一索を捨ててたら逆転されていたんだ……
そういえば一索って麻雀の牌で唯一鳥さんの絵が描かれてるんですよね。
なんだか、この鳥さんに守って貰ったような気がするかもです)
マホ:116100 千曲:101100 今宮:100400 弓振:82500
南三局 一本場
東家:今宮 南家:弓振 西家:マホ 北家:千曲 ドラ:北
今宮(良い感じー。これを繰り返して一気にまくっちゃうよー)
今宮の捨て牌:五索
千曲(またど真ん中……点差も縮まってきたしもう今宮に和了らせるわけにはいかない)
千曲の捨て牌:五索
弓振(高遠原がタンヤオ狙い、今宮がチャンタ狙いだから……
なるべく字牌を集めてテンパイまで持って行こう。
どっちかがテンパイしたと思ったら字牌崩して逃げ切る)
弓振の捨て牌:七索
マホ(メンタンピン、メンタンピンですー)
マホの捨て牌:一索
そして千曲、弓振が今宮の出和了りを牽制する流れになった結果……
今宮「ノーテン」
弓振「テンパイ」
マホ「ノーテンです」
千曲「テンパイ」
実況「牌効率無視の今宮、テンパイ出来ずに親流れです」
解説「親番で高遠原への直撃で一位浮上を狙ったようだが露骨すぎたな。
弓振と千曲がヤオ九牌を抱えていた事で鳴いて手を進める事も出来ずこの結果だ。
しかし、手が悪いからテンパイ維持を重視したと思われる千曲はともかく……
弓振はまさかの大三元テンパイからのベタオリだったな。
ベタオリしてもテンパイを維持できる手作りのセンスは悪くないが……」
マホ(初手で一索捨ててから良い牌が引けなくなったような……気のせい?)
マホ:114600 千曲:102600 今宮:98900 弓振:84000
南四局 二本場
東家:弓振 南家:マホ 西家:千曲 北家:今宮 ドラ:白
控え室
優希「やっとオーラスでラス親は焼き鳥の弓振……
このまま親流れで終了だじぇ!」
和「それはそれで良いのですが、出来れば最後は夢乃さんに和了って欲しいですね」
裕子「確かに千曲と今宮の打点によっては逆転されかねなくなってますけど」
和「そういうのでは無くてですね。あ、確かにここで突き放しておくことも確かに大事ですけど。
夢乃さんは私と優希が最後の全中に出たいがためにルールも曖昧なまま出てもらいました。
それでも優希や私の物真似で何故か奮闘出来たのは予想外でしたが」
優希(あ、やっぱりそこは否定するのかー)
和「今は物真似なんかじゃなく自分の意志で打っているんだと思います。
そうやって和了る一回は偶然で生まれた起家の数え役満よりも大きな価値がある。
私はそう思うんです」
優希「のどちゃん……確かにその通りだじぇ!
マホマホ頑張れー! 最後に一発ぶちかましてやれー!」
裕子「頑張れマホー!」
いなみ「頑張って夢乃さーん!」
和「こ、ここで叫んでも聞こえないと思うのですが……」
優希「言い出しっぺののどちゃんが何言ってるんだ。ほら、のどちゃんも応援するじょ!」
和「わ、分かりましたよ……夢乃さん頑張ってくださーい!」
対局室
序盤
弓振(ラス親でマイナス16000かぁ……
高遠原が数え役満和了った時はどうしようかと思ったけどそこからはあんまり点数を取られずに済んだ。
あとはいつものように振り込まいようにしながら終局を待とう……)
弓振の捨て牌:一索
マホ「ポン! ってわわっ」
千曲「どうしたの? 鳴くの? 鳴き間違いは大会ルールだと和了放棄になるけど……)
マホ「わーそれは駄目ですー! 鳴きます成立させます!」福露:一索一索一索
マホ(鳥さんの事を考えてたらつい鳴いちゃいました。どうしよー……)
***
和『もしどうしても鳴きたい場面になった時はなるべくポンにしましょう。
字牌……数字が書いてない牌は役が付きますし同じ牌ばかりを集めると対々和で和了れる時もあります』
マホ『なるほどー』
和『でもさっきも教えたように無闇には鳴かないで下さいね』
マホ『はいっ!』
***
マホ(こうなったら対々和を狙うしかないです!
ええっと同じ種類の牌が一杯あれば良いわけだから……)
四巡後
マホの手牌 七萬七萬七萬 三筒三筒 四筒 白 ツモ牌 四筒 福露:一索一索一索 七索七索七索
マホ(テンパイまで来ちゃいました。ここは当然和了りますよー)
マホの捨て牌:白
今宮「ポン」
マホ(ロンに聞こえてびっくりしちゃいました……)
流局間近
マホ(もうすぐ終わっちゃいます……でもここは絶対に和了りたい!)
マホは自分の右手側にある、まっすぐに並んだ二枚と横になっている一枚の一索を見つめる。
彼女はその牌に描かれた三匹の孔雀達がこちらを見つめ返してくれているような気がしていた。
マホ(お願い鳥さん、力を貸して!)
マホ「……」
マホのツモ牌 三筒
観戦ルーム
照「これは……」
煌「おおっ……!」
対局室
マホ「ツモ! 対々和の三本場は……ええと」
弓振「……1600・1000だよ」
マホ「すいません……1600・1000です!」
控え室
和・優希・裕子・いなみ「いやったああああ!」
先鋒戦終局
マホ:118200 千曲:101600 今宮:97900 弓振:82400
と、先鋒戦が終了した所で今回の更新は終了です。
本当ならコークスクリューツモを真似ようとして山を崩しちゃうギャグ展開なども入れるつもりでした。
でも入れるタイミングを探っている内に終わってしまう始末。
マホの持ち点ももっと少ない状態で終わるつもりだったのですが……。
なかなか計画通りに行かないものですね。
乙
>>87
今宮が親チョンしてるぞー
>>93
おお、すいません……子和了ですから点数申告間違ってますね。
報告感謝です。ちょっと書きなおしてきます。
って何を言っているんだ俺は……親チョンの意味が分かってなくて変な事言ってましたorz
ニワカですいません。
南場で南家だから連風牌になるのも見落としていたのでついでにそこも修正しておきました。
これで一応今後の点数の辻褄も合うはず……という事で修正です。
>>87はこっちだったと言うことで補完お願いします。
マホ:127700 千曲:101100 今宮:88800 弓振:82500
南二局
東家:千曲 南家:今宮 西家:弓振 北家:マホ ドラ:九萬
序盤
マホ(メンタンピン、メンタンピンですー)
マホの捨て牌 九筒
今宮「チー」
福露:七筒八筒九筒
中盤
マホ(やっとイーシャンテン……
九萬はドラですけどこれがあるとタンヤオにならないので捨てます)
マホの捨て牌 九萬
今宮「ロン! 連風チャンタドラ1の食い下がりは7700です」
マホ「は、はいっ」
実況「おおーっとここで一位の高遠原が振り込んでしまいました」
解説「高遠原はタンピン一盃口確定の綺麗な形が出来上がっていたからな。
リーチや裏ドラを重ねれば満貫以上にもなり得る手を崩したくなかったのだろう」
今宮(予想通りー。馬鹿正直にタンヤオを狙ってたみたいだねー)
マホ:120000 千曲:101100 今宮:96500 弓振:82500
南三局
東家:今宮 南家:弓振 西家:マホ 北家:千曲 ドラ:七筒
観戦ルーム
照「鳴いてのチャンタは食い下がり1翻で、苦労と対価が見合わないから狙わない方が良い。
夢乃マホが初心者らしくタンヤオ系を狙っていると踏んで、狙い撃つためだけの手作りに見えた」
煌「これで2位との差は約20000ですか。
点差が埋まってきましたしそろそろ夢乃さんだけを狙うのは得策ではないはずです。
先鋒はなるべく持ち点を稼ぐのが仕事ですから」
照「でも、先行逃げ切りが有利な麻雀では一位抜けをするのも先鋒の大きな仕事」
煌「ですよね……」
一巡目
今宮の捨て牌 五萬
千曲(いきなりど真ん中!? またチャンタで高遠原狙いか……?
そこまで露骨に動いて高遠原が連続で振り込むとは思えないんだけど)
弓振(本当にチャンタ狙いならヤオ九牌はなるべく手元に持ってる事にしよう……)
マホ(メンタンピン、メンタンピンですー)
終盤
マホ(やっとテンパイ出来ました。でも一索があるからタンヤオじゃないです。
こういう時は……)
こまけぇこたぁ(略
暫く更新無かったから心配だったんよ
続きマダー?
実況「先鋒戦終了ー! 親の数え役満という派手な開幕な開幕でしたが終わってみればトップと2位の差は16600。
高遠原中学、起家の大量得点を吐き出す形となりました」
解説「むしろそこで稼いだお陰でプラスで帰る事が出来たと言う方が正しいかもしれない。
役なしチョンボを宣言したり二連続で直撃を取られたりと、打ち方が非常に安定しない選手だった。
それよりも私はこんな大荒れの場でも原点付近まで持ち直した千曲や今宮を評価したいね」
実況「そんな三校に対して弓振高校のみ大きくマイナスです。
点数が増えたのは流局テンパイのみで唯一の焼き鳥ですね」
解説「直撃だけは食らっていないが、引いているだけでは勝てないと言うことだ」
解説(と、体面上は言ってみたが……
高遠原の夢乃マホ、将来が楽しみな選手だ。ちっちゃくて可愛いしな)
マホ「ありがとうございました!」
千曲「お疲れ様でした。なんだか妙に神経を使う試合だった」
今宮「ホントだねー。ねー、弓振の先鋒さんもそう思うでしょー?」
弓振「あ、あはは……そうですね」
千曲「あー疲れた。早く次鋒にバトンタッチしようっと」
今宮「私もお腹空いっちゃったし控え室でお菓子食べよーっと」
千曲と今宮が席を立ち控え室に戻っていく。
マホもプラスで終われた事を尊敬する先輩達へ報告に戻ろうとする。
だが、椅子に座ったまま俯いている弓振高校の選手が気になり足を止める。
マホ「あの……」
弓振「? どうかした?」
マホ「なんで一回も和了ろうとしなかったんですか?」
弓振「え? ええっ?」
弓振(和了らなかったじゃなくて、和了ろうとしなかった……?)
マホ「あ、え、偉そうな事言ってすいません!
でもロンされるのを怖がっているだけじゃ駄目だと思うんです!」
弓振(放銃されたくない私の心境を見透かしているかのような……
や、やっぱり見られてたんだぁ……)
弓振「……そこまで見えてたなら分かるよね」
マホ「分かります、分かりますけど……。
やっぱり和了らないと楽しくないと思うんです」
弓振「!!」
タッタッタッ
弓振次鋒「おーい、先鋒戦終わったのに何してんの?」
マホ「す、すいません。私が引き止めちゃって……」
弓振次鋒「ふぅん。それにしても君の数え役満にはびっくりしたなぁ。
この子がマイナス10,000切るのってほとんど無いもの」
マホ「そうなんですか。すいません」
弓振次鋒「それが勝負なんだし謝らなくても良いって」
弓振「ご、ごめん。そろそろ他の学校の次鋒も来るだろうし控え室に戻るね」
弓振次鋒「? まあいいけど。とにかく後は私達に任せときなさいっ」
弓振「うん……」
弓振(楽しくない、か……
この三年間ずっと失点を抑える打ち方ばかりしてきた。
その防御力を買われて三年でやっとレギュラーになれた時は嬉しかったけど……
楽しみながら打ってた事なんて無かったなぁ)
ということで今回の更新分です。
>>98
まとまった分量になるまで一気に書き上げる→見なおしてから連続投下のスタイルでやってるので
どうしても投稿感覚が空いてしまうんですよね……
心配をおかけして申し訳ない。
更新が遅れそうな場合は生存報告がてら雑談レスでも投下した方がいいでしょうかね。
省レス進行するほど消費も早く無いですし。
作者は許してやれ
その作者のスレの読者も許してやれ
関係ないスレで使うのは怒られても仕方ない
>>110
だな
ネタはあくまでTPOを弁えるのが肝要だな
控え室
優希「マホマホ、よくやった!」ガバッ
マホ「わわっ、苦しいですよせんぱーい」
裕子「プラスで帰ってこれるか不安だったけど、先鋒の役目を見事に果たしたね」
いなみ「本当に凄かった。むしろ私が足を引っ張りそうで不安になってきた……」
和「夢乃さん……」
マホ「は、はいっ」
マホ(オーラスで変な鳴きを入れたの、やっぱり怒られちゃうかなぁ……)
和「頑張りましたね。最後の和了も一生懸命さが伝わってくる良い闘牌でした」
マホ「えっ。おこら、ないんですか……?」
和「怒るわけないじゃないですか。先鋒お疲れ様でした」
マホ「原村先輩……うう、ありがとうございますぅ」
優希「まったく、マホマホといいのどっちといい気が早い奴ばっかだじぇ」
和「ゆ、優希っ!」
マホ「?」
アナウンス『間もなく次鋒戦を開始します。選手は速やかに入場して下さい』
優希「っと、次は私だったな」
和「優希、行ってらっしゃい」
優希「のどちゃん、行ってくる」
和(私達の間に沢山の言葉は必要ありません)
優希(のどちゃんがどう思ってるかなんて手に取るように分かるかんな!)
対局室
優希「待たせたな! 遅れて真打登場だじぇ!」
親決めにより東一局の親は片岡優希で、南家:今宮、西家:千曲、北家:弓振となる。
次鋒戦開始時点 優希:118200 今宮:97900 千曲:101600 弓振:82400
場を流すべく喰いタン特急券投稿。
>>1はなんJ語について特に思う所は無いので使われても気にしません。
ただ、自分は使わないので>>110や>>111が言うようにほどほどが良いのかなとは思います。
使う人も使わない人も>>1にとっては貴重な読者さんなんで区別するつもりは無いと言うことで一つ。
こんな感じでこの話はおしまいって事でお願いします。
ここから先はksk進行じゃけんのう
優希「よろしく!」
今宮「よろしくお願いしまっす」
千曲「お願いしまーす」
弓振「よろしくお願いします」
優希:118200 今宮:97900 千曲:101600 弓振:82400
東一局
東家:優希 南家:今宮 西家:弓振 北家:千曲 ドラ:六萬
8巡目
優希「ツモ! 立直メンタンピン一盃口ドラ1……
裏が一つだから点数は変わらないが跳満の6000オールだじぇ!」
実況「おおっと高遠原中学、また起家で大物手をツモ和了しましたね」
解説「配牌の良さが先鋒が数え役満を和了った時と似ていたような気がするがこれは偶然か?」
優希(マホマホの数え役満には届かなかったか……
でももう一回跳満を出せば数え役満の得点を超えるじぇ!)
優希:136200 今宮:91900 千曲:95600 弓振:74400
東一局 一本場
東家:優希 南家:今宮 西家:弓振 北家:千曲 ドラ:北
9巡目
優希「ツモ! 立直メンゼン白で裏が……2つ乗って満貫の一本場は4100オール!」
実況「高遠原中学、親満ツモで二連荘に突入します」
解説「最初から飛ばしてるが途中で息切れしたりしないだろうか。
この手の選手はえてして後半に失速する事が多いのだが」
優希:148500 今宮:87800 千曲:91500 弓振:70300
東一局 二本場
東家:優希 南家:今宮 西家:弓振 北家:千曲 ドラ:北
7巡目
優希「ツモ! 立直一発メンゼン赤1で裏が……のらないから2本場で4100オール!」
実況「いきなり三連荘ですね。役は安定しませんが毎回満貫相当の高得点を維持しています」
解説「メンゼンでテンパイしたらどんな待ちだろうがとにかく立直を掛けてくるな。
それでもツモ和了出来る引きの強さを持ち合わせてるようだし調子に乗せると止まらないタイプだな。
こういう華のある選手は上に行ってもいきなり活躍するだろうな」
解説(ただし、安定して良い成績を残す事が必要な公式戦では分からないがね)
優希:160800 今宮:83700 千曲:87400 弓振:66200
東一局 三本場
東家:優希 南家:今宮 西家:弓振 北家:千曲 ドラ:一萬
優希が立直を掛けるも全員が降りて流局
テンパイは優希と弓振 ノーテンは今宮と千曲
優希の出したリーチ棒が供託点となり親の連荘で四本場となる。
優希:161300 今宮:82200 千曲:85900 弓振:67700
東一局 四本場 供託点:1000点
東家:優希 南家:今宮 西家:弓振 北家:千曲 ドラ:二萬
7巡目
優希「リーチ!」
優希の捨て牌:北
弓振(またリーチきた! でもこの自風をポンすればテンパイだし今度こそ止める!)
弓振「ポン!」 福露:北北北
優希(一発を消された……)
三巡後
弓振「ロン! 自風ドラ2の四本場は3900の5100、供託リー棒が2本で合計7100です」
優希(親を流された……でもまだまだ東場は終わってじゃないじぇ)
ただいまの状況
優希:155200 今宮:82200 千曲:85900 弓振:74800
東二局
東家:今宮 南家:弓振 西家:千曲 北家:優希 ドラ:?
点数計算をする上で誰が何の役をどういう形で和了ったか考えないといけないので結局そこは書くことに。
本当はキンクリするつもりだったんですけどね。
出番が遅くなってごめんな咲ちゃん。
≫118 おおう、そうだったのですか……ご指摘ありがとうございます。
間違ってばかりで恥ずかしくなってきたorz
1です。
今日の寝る前にでも投下出来そうなんですがマホの時に収支計算を間違えて高遠原の得点が100点増えてたみたいです。
今回の投下の最初に点数を修正しておきます。
優希:155100 今宮:82200 千曲:85900 弓振:74800
東二局
東家:今宮 南家:弓振 西家:千曲 北家:優希 ドラ:七萬
10巡目
弓振(テンパイ出来た。ホンイツ役牌確定の三面待ちで他がテンパイしてる様子もない……
これなら行ける! けど捨て牌からはまだ予測出来ないだろうし出和了も考えてリーチはしないでおこう)
次順
弓振「ツモ! ホンイツ役牌メンゼンツモ一盃口で6000・3000!」
弓振(うわー、リーチしたら立直一発も付いてたのになぁ。
まぁ、高めの一盃口が付いて跳満だしこれでよしとしよう)
優希:152100 今宮:76200 千曲:82900 弓振:86800
東三局
東家:弓振 南家:千曲 西家:優希 北家:今宮 ドラ:六索
4巡目
優希「リーチ!」
優希の河 一筒北南 六萬
今宮(テンパイはやっ。ベタオリしたい所だけど字牌持ってないし三萬のスジで……)
今宮の捨て牌 三萬
優希「ロン! リーチ一発タンヤオで裏ドラが……乗らないかー! 5200の6200!」
優希の手牌 三筒四筒五筒 五筒六筒七筒 二索三索四索 八萬八萬 二萬四萬 ロン牌:三萬
今宮「三萬の嵌張待ちって……引っ掛けリーチじゃない!」
優希「んあ? おー、言われてみればそうだじょ!」
控え室
和「結果的にモロヒになっただけで、優希はただテンパイしたからリーチしただけなんですけどね」
裕子「あんな待ちでも自力でツモってきたり今回みたいな出和了りがあるのも片岡先輩なんですよね」
和「本人は引っ掛けようと思っていないだけに余計引っ掛かるんですよね。
そのまま和了れず流局なんて事も多いですが今回は吉と出てくれて良かったです」
裕子(東場ではこういう形でもツモ和了出来る確率が異常に高いって事はスルーですか。
まあ私もそんなオカルトあり得ないとは思いたいですけどね)
優希:157300 今宮:71000 千曲:82900 弓振:86800
東四局
東家:千曲 南家:優希 西家:今宮 北家:弓振 ドラ:白
1巡目
優希「リーチ!」
優希の捨て牌:中
今宮(ここに来てダブリー!? 現物持ってて良かったぁ……)
今宮の捨て牌:中
弓振(これはベタオリすべきだろうけど、最後まで逃げ切れるかなぁ)
弓振の捨て牌:中
千曲(現物無い……最悪当たっても良いように点数の高くなりにくそうな牌で)
千曲の捨て牌:九萬
優希「うーん、一発ならず!」
優希の捨て牌:七索
この後も全員がベタオリを続け全員が逃げ切る事に成功する。
そして千曲の親が流れて南入する。
優希:159300 今宮:70000 千曲:81900 弓振:85800
南一局 供託点:1000
東家:優希 南家:今宮 西家:弓振 北家:千曲 ドラ:北
一巡目
優希(南入しちゃったじょ……まあリードは大量にあるしのんびり行くじょ)
優希の捨て牌:西
弓振「ポン」
弓振(この人に親やらせると危ない気がする……早く和了らないと!)
弓振の捨て牌:一萬
優希(ドラを捨ててまでして早和了。そうくるか……)
千曲(うーん、どうしようかな。私の捨て牌で今宮が鳴いてくれるのが良いんだけど)
千曲の捨て牌:八萬
優希「チー!」 福露:六萬七萬八萬
優希(宮永先輩はともかく同じ中学生にスピードで負けるわけにはいかないじぇ)
優希の捨て牌:九索
今宮「チー」 福露:七索八索九索
今宮(スピード勝負になるなら東一局みたいな高打点にならないだろうし積極的に参加するよー)
千曲(……鳴いて手を進めるのは良いんだけど、ね)
八巡目
千曲「リーチ」
千曲の河 九索 九索 白 西 西 西 二萬 (八萬は優希にチーされている)
千曲(こうなった時にどうするつもり?)
優希の福露:六萬七萬八萬 二萬三萬四萬
今宮の福露:七索八索九索 二索二索二索
弓振の福露:西西西 八萬八萬八萬
優希(まだイーシャンテンなのにリーチされてしまったじょ……
ベタオリしたい所、なんだけど……)
優希の手牌 六七筒八筒 三筒三筒 二筒 五筒 ツモ牌:北 福露:六萬七萬八萬 二萬三萬四萬
優希(動かせる牌で安牌が無いじょ……
しかも場には筒子が出てないから筒子の清一色の可能性が高いし、北は千曲の自風牌でドラ……
どっちにしても痛そうだじぇ。でもどっちかと言われると……)
優希の捨て牌:二筒
優希(三筒を私が二枚持っているんだ。そこが繋がっている可能性が一番低いはず!)
千曲(へぇ。そこを切れるんだ)
三巡後
千曲「ツモ、リーチツモドラ2で4000・2000と供託点が1000です」
千曲の手牌 二筒二筒二筒 三筒四筒五筒 六筒七筒八筒 北北 三索三索 ツモ牌:三索
優希(あ、あっぶなかったじょー!!)
観戦ルーム
照「親被りこそしたものの跳満直撃を回避出来たのは最善の結果だったな」
煌「ですねぇ。北をツモって来た時はヒヤヒヤしましたよ……」
優希:155300 今宮:68000 千曲:90900 弓振:83800
南二局
東家:今宮 南家:弓振 西家:千曲 北家:優希 ドラ:八萬
優希(さっきのベタオリ出来たのは我ながらあっぱれだじぇ。
ふふふ、南場に入ってもそんなにカンは鈍ってないに違いない)
終盤頃
今宮「ロン! タンピンドラ1で5800!」
優希「じょー!?」
優希:149500 今宮:73800 千曲:90900 弓振:83800
南二局 一本場
東家:今宮 南家:弓振 西家:千曲 北家:優希 ドラ:二萬
この局は中盤頃に弓振が平和一盃口ドラ2テンパイでリーチ掛けたが和了れず流局を迎える。
千曲は手が悪いのもありベタオリ、今宮は手を変えながら自分も和了ろうとするが失敗に終わりノーテンで親流れとなる。
優希は弓振から遅れること2巡後でタンヤオのみをテンパイ、全ツッパだったが結果的に振り込まずテンパイで終える。
優希:151000 今宮:72300 千曲:89400 弓振:84300
南三局 二本場 供託点1000
東家:弓振 南家:千曲 西家:優希 北家:今宮 ドラ:一萬
終盤頃
弓振「ツモ、タンヤオツモの二本場は1200オールと供託点が1000点です」
千曲(この子、結構ダマテンが多い気がする。打点より高遠原からの出和了りを狙ってるのかな)
優希:149800 今宮:71100 千曲:88200 弓振:88900
南三局 三本場
東家:弓振 南家:千曲 西家:優希 北家:今宮 ドラ:八索
中盤頃
弓振「リーチ」
千曲(とか思ってたらリーチしてきた。こっちもテンパイだし追いかけさせてもらうよ)
千曲「リーチ」
優希(二人リーチか……ここは凌いで供託点が溜まった所をかっさらう事にするか)
終盤頃
今宮「ラッキー! 平和ツモだけど三本場で1000・700プラスリー棒2本もらうよー」
優希(じょー……)
優希:149100 今宮:75500 千曲:86500 弓振:88900
南四局
東家:千曲 南家:優希 西家:今宮 北家:弓振 ドラ:三筒
この局も優希は和了る事ができず、今宮が弓振に一盃口ドラ2を振りこみ終局を迎える。
先鋒戦終局時
マホ:118100(+18100) 千曲:101600(+1600) 今宮:97900(-2100) 弓振:82400(-17600)
次鋒戦終局時
優希:149100(+31000) 千曲:86500(-15100) 今宮:70300(-27600) 弓振:94100(+11700)
次鋒戦が終わった所で今回の投稿は終了です。
最後に収支計算計算してたらまた計算間違いを発見したので修正しておきました。
高遠原の中堅、副将はほぼモブキャラだし今度こそキンクリで飛ばすんだ……
こうして先鋒・次鋒が作った点差を中堅・副将が何とか守りきり大将戦へ。
そして―――
和「ツモ、役牌のみは500・300です」
実況「ここで大将戦終了ー!
原村和選手、大将戦の収支こそプラス5000ですが次鋒までの大量リードを守りきり2回戦に進出です!」
解説「高め役への放銃をことごとく避ける守備力の高さが素晴らしかった。
一発大きな役を直撃できれば他のチームにも勝機があっただろうが……
チームプレイに徹していた彼女はまるで隙が無かったな」
解説(片岡優希に原村和か……この二人がどこに入るかで来年のインハイは大きく動くな。
はてさて、どうなることやら)
観戦ルーム
煌「やりましたよ! 原村さん達がやりましたよ!
ってどこ行ったんですか宮永先ぱーい?」
対局室前廊下
和「あら? あれはもしかして……」
照「名前を言ったら特別に入れて貰えたんだけど、本当にここなの?」ウロウロ
和「宮永先輩!」
照「ああ、いたいた。原村和、一回戦突破おめでとう」
和「わざわざそれを言うためにここまで?」
照「それもあるけど、今の気持ちを聞いてみたくて」
和「今の気持ち、ですか?」
照「そう、出会った頃の原村和は私と似ている気がしたから。
そんな原村和がどういう気持ちで団体戦に臨んだのか知りたくて」
和「そうですね……まずは責任を感じていました」
照「一位で通過することへの?」
和「それは大将としての責任ですね。確かにそれもありますけど……
私が気にしていたのは部長としての責任です」
照「例えば?」
和「オーダーの決め方からみんなになんて声かけをするかと言った所でしょうか。
傲慢な言い方かもしれませんが私の言葉一つで成績が変わり兼ねないと思いましたのでとても気を使いました」
照「たった一言で成績が変わるって、それってオカルトじゃ?」
和「メンタルコントールは立派な心理学ですよ」
照「じゃあそういう事にしておく」
和「じゃあってなんですか、もう……」
照「それで、今思ってる事はそれだけ?」
和「……後はこれから起こる事を見てもらった方が早いと思います」
ダッダッダッ
優希「やったなのどちゃああああんっ!!」ガバッ
和「ちょ、ちょっと優希、首に腕巻き付けられたら苦しい……」
いなみ「部長なら何とかしてくれると思って凌いだ甲斐がありましたよ」
マホ「ほんどうに、よかっ、よがっ……」
裕子「一回勝ったくらいで鳴くな……ってあれ? 私もなんか……」
優希「じょおおお、麻雀やってきて良かったじょおおお」
和「そうですね……こうしてまた麻雀が楽しいと思えるようになれたのはみんなのおかげです……」
照(たかが1勝って笑う奴がいたら私が絶対に許さない。
だってこの子達の泣き笑いはこんなにも綺麗なんだから。
……なんて、こんな事を考えてしまう私は完全に傍観者だ)
煌「宮永照を探していると言ったらここだと言われて来てみたんですが……
あれ? 宮永先輩もしかして泣いてらっしゃいます?
それに原村さん達も……」
照「煌……確かに私達は部外者だね」
煌「ええ、そうですね」
照「でも、それでも私は今嬉しい」
煌「ええ、そうですね」
照「そして、それ以上に羨ましい……」
煌「ええ、そうですね……」
照「来年の私達はこんなチームを作れているかな」
煌「もちろん、とてもすばらなチームになっていますよ!」
そして二回戦、高遠原中学は先鋒:優希 次鋒:和 中堅:裕子 副将:いなみ 大将:マホ
このような先行逃げ切りオーダーに変更する。
だが、対戦相手は名門風越女子の附属中学だった。
一回戦の対局を見て警戒されていた優希は何とかプラスで終えるも完全に抑えこまれていた。
和は風越付属との点差を広げる闘牌を行い、次鋒戦終了時点で約40000の点差を付ける事に成功する。
しかし、彼女たちの快進撃はそこまでだった。
実況「大将戦終了ー! 風越女子付属、中堅以降から徐々に追い上げて大将戦で点差をひっくり返しました!」
解説「先鋒戦、次鋒戦は早く終わらせる事だけを考えた風越女子付属の作戦勝ちだったな。
片岡優希と原村和の両名との真っ向から勝負は得策で無いとした判断は正しい。
名門らしからぬ逃げの一手ではあったがね」
星夏(何とでも言ってくれて結構ですよ。
先輩達の名誉挽回のためにも、中等部の私達は絶対に全国へ行かないといけないんだから)
解説(それにしても高遠原の夢乃マホ……
多牌1回に山崩し1回と明らかに浮き足立っている事が分かるチョンボがあったな。
1回戦の勢いはどこへ行ったのやら)
観戦ルーム
照「……帰ろう。勝った喜びは共有出来ても負けた悔しさは本人達にしか分からない」
煌「確かに、今はそっとしといてあげた方が良いかもしれませんね……」
帰路の途中
照「今頃、原村和達はどうしているだろう」
煌「気になるのなら行ってあげれば良かったのでは?」
照「帰る時にも行ったけど」
煌「分かっていますよ。全中大会の舞台に立てるのは中学生の選手だけ。
インターハイの舞台に立てるのも高校生の選手だけ。
それ以外はいくら関わっていようと結局の所は部外者という事はね」
照「……そう」
煌「多分、私達が来年インターハイに出られたとしても彼女達の気持が100%理解してあげられる事はないでしょうね」
照「確かに、そうかもしれない……」
煌「だって、私たちは最後まで負けませんからね!」
照「……え?」
煌「つまり、全国制覇ですよ! 宮永先輩がいるならきっと出来ます!」
照「そんなに甘くは無いと思うけど」
煌「いえ、きっと出来ます。というかして貰わないと困ります。
私は出来るだけ長く宮永先輩と麻雀をしていたいですから」
照「……無茶を言う。でも、やりがいはある」
煌「すばら! そうこなくては!」
照「私も、煌と最後まで麻雀をしていたいし」ボソリ
煌「何か言いましたか?」
照「いいや、何でもない」
煌(聞こえてしまった……私はなんて地獄耳なんでしょう。
でも必要とされてるのはとてもすばらな事ですし……
何より、宮永先輩も同じ気持を持ってくれている事がこの上無く嬉しいです)
回想から時は戻り、再び清澄高校の麻雀部部室。
照「あれを聞かれていたのは一生の不覚……」
煌「私も聞くつもりでは無かったんで事故みたいなものだったと諦めて下さい」
照「あの言葉は今もあの時も私の正直な気持ちだから事故だとは思いたくないな」
煌(すばらッ!! 天然で言っちゃう辺りがまたすばらッ!!)
照「そのためにも4月からの新入生勧誘を頑張らないとね。任せた煌」
煌「丸投げですか!?」
ということで今回の更新は終わりです。
中学編は書いてて自分でも長すぎるとは思ってましたのでこの辺でキンクリです。
次回から原作1巻の時間軸に入ります。
清澄高校 入学式当日
和「ここが清澄高校ですか……良い学校ですね」
優希「だな! 学食にタコスあるし最高の環境だじょ!」
和(優希に受験勉強をさせるのは難しかったですが何とか一緒の高校へ行く事が出来ました。
学食にタコスがあるという花田先輩の情報が大きなモチベーションになったようです)
和「入学式の会場は体育館ですか。優希、行きましょう」テクテク
優希「らじゃっ!」テクテク
京太郎「……」
咲「お、遅れてごめんっ。って、どうしたの京ちゃん」
京太郎「今、すっげぇ可愛い子がいた……」
咲「ふーん、そうなんだ」
京太郎「なんだよその興味無さそうな反応はよー」
咲「だって私はその子の事見てないし……」
京太郎「見たらびっくりしすぎて目が飛び出ると思うぜー」
咲「それは大げさ過ぎるって、あり得ないよー」
京太郎「それくらいすげーっていう例えだよ。今日学校に来てるって事は俺達と同じ一年生なんだろうな」
咲「同じクラスとかだと良いね。でもとりあえず体育館に入らない?」
京太郎「それもそうだな。行くか」
体育館
優希と和は真ん中より少し前の左端の席で、京太郎と咲は最前列から4つ目の真ん中辺りの席です。
照は在校生代表として一番後ろの左端の席に座っています。
校長「であるからして新入生の諸君には~」
優希「ふぁ~ぁ、中学でも高校でも校長の長話は変わらないなぁ」
和「こら優希、あくびなんてしちゃいけませんよ。
話の流れからしてもうすぐ終わりますから我慢して下さい」
京太郎「zzz」
咲「京ちゃん完全にすっかり寝ちゃってるよ……
でも、私としては逆に助かったかも」
教頭「それでは続きまして在校生代表から歓迎の挨拶です。在校生代表、宮永照」
照「はい」
咲(京ちゃんに色々詮索されずに済むしね……)
ざわざわ……
「宮永照ってあのインターハイ個人戦を終始一人浮きの状態で勝ち抜いた絶対王者!?」
「歓迎の挨拶してくれるんだ! 感激だよー! それだけでも清澄に来て良かった!」
優希「宮永先輩、やっぱり人気者なんだなー」
和「麻雀無名校から彗星のごとく現れて全国制覇を成し遂げた人ですからね」
優希「んー? それは遠まわしに自分の事も持ち上げてるのかー?」
和「そ、そんじゃありませんよっ。私は宮永先輩のように圧勝と言うほどではありませんでしたから。
決勝戦では大星さんに逆転されそうでしたし」
優希「またその子の話かー。のどちゃんはホント好きだよな!」
和「ああいえばこういう。どう返せばいいんですかー。
それより宮永先輩のスピーチが始まりますよ。一字一句聞き逃さないようにしましょう」
優希「それはちょっと難しい相談だじょ」
照「新入生の皆さん。この度は入学おめでとうございます。
通学路で見かけるつぼみの桜達を見ていると、新しい環境に身を置くことになった皆さんと重なります。
あの桜達が満開に咲き誇る頃には皆さんも学校に慣れてくれればと思います。
この清澄高校は歴史と伝統のある高校ではありますが、それ以上に生徒の自主性を尊重する校風を持っています。
その象徴が校内の様々な事を決める権限を持つ学生議会です。
一般的な学食にはない珍しいメニュー、改修を繰り返しながらも現存する旧校舎などは学生議会の決議によるものです」
優希「タコスや麻雀部の部室があるのはそのお陰と言うことか……
過去の先輩達、グッジョブだじょ!」
和「優希、声が大きいですよ」
和(私が聞くように促したのもありますが、あの優希がはちゃんと話を聞いています。
宮永先輩の話は具体的な例が出てくるから話も分かりやすいですし、何より舞台映えする容姿なので視線が釘付けにされてしまいます。
そうです、だから私は宮永先輩から目が離せないのであってこれは一般論なんです。
これはオカルトなんかじゃありません)
照「そんな私達を暖かく見守りながらも、時には諌めてくれるのが先生達です。
その先生方についての事で、新入生の皆さんには一つ聞いて欲しい事があります。
皆さんの理科系科目の担当になると思われる○○先生は、面白い実験を行った生徒に対しては成績を優遇してくれます。
ただしそちらにばかりかまけてテストの結果も振るわず、実験で先生を満足させる事も出来ず赤点……
なんていう生徒もいましたのでほどほどにしておいて下さいね」
アハハハ
咲(お姉ちゃん無理してるなぁ……
普段はこういうジョークみたいな事ほとんど言えないのに。
私達新入生の緊張をほぐすために一生懸命考えたんだろうな。
って、あれ? さっきまで持ってた原稿を折りたたんじゃった。
もうすぐ話が終わるのかな?)
照「ですが、何事もほどほどにと言うのも考え物です。
今すぐにとは言いませんから、夢中になれる物を見つけて下さい。
高い山々がそびえるこの長野の地で、森林限界の上でも見事に咲く花のように。
この三年間で誰かに誇れるような大輪の花を咲かせて下さい。
私達在校生一同も微力ではありますが、貴女達が進むべき道を照らして行こうと思っています。
何かあった時は遠慮なく頼って下さい」
咲(あれ、これって……
お姉ちゃん、あんな昔にした話をまだ覚えてくれてたんだ……)
和(今までで一番響いてくる言葉なのに、何故か素直に感動出来ない……
私達に向けられた言葉なのは確かだけど、一番に伝えたい人が存在するような……
一体誰に向けられているのでしょう)
照「最後になりましたが、私達の愛する清澄高校へようこそ。
すばらしい学校ですので皆さんもすぐにこの学校が好きになると思います。
以上を持ちまして私からの歓迎の挨拶とさせて頂きます。
在校生代表、宮永照」ペコリ
パチパチパチ
優希(最後の『すばらしい』のアクセントが花田先輩と同じだったじょ)
和(すばらしい挨拶でした。身が引き締まる思いです)
咲(―――でもごめんね、それでも私はお姉ちゃんのようには出来ないよ……)
すぐに更新するつもりだったので前回だけsage更新でした。
ずはらっ!!!!!
別端末からこっそり書き込んだつもりだったのにID同じで恥ずかしくなった。
ちょっと続き書いてくる。
そしてsage忘れるという痛恨のミス。
とりあえず出来てるところまで投稿して体裁を保つっ。
「続きまして、新入生代表による誓いの言葉です。
新入生代表、原村和さん」
和「はい」
優希「頑張ってこいのどちゃん」
和「行ってきますね、優希」
京太郎「んぁ……」
咲「おはよう京ちゃん」
京太郎「わりぃ、校長の話聞いてる内に寝ちまってた。今どのへん?」
咲「新入生代表の人が挨拶をする所だよ」
京太郎「確か入試で成績トップだった女子生徒だっけ。
眼鏡で三つ編みでいかにも地味っぽい典型的優等生とかだったりして」
咲「それは眼鏡の人に失礼だよ。ほら、今立ち上がった人がそうじゃないかな?」
京太郎「……あの時の子だ」
咲「え?」
京太郎「ほら、校門で咲を待ってた時に見かけたっていうすげー可愛い子だよ」
咲「そうなんだ。……確かに、ものすごく綺麗な人だね。
私と同じ一年生とは思えないくらい」
京太郎「例えばこの辺とかなー」
咲「胸の辺りばっか見てどうし……
京ちゃーん! それセクハラだよ!」
京太郎「っとと、そんなに怒るなって。ほら、そろそろ始まるみたいだぜ」
咲(確かに私はちんちくりんだけどさ……これでも女の子なんだからね)
和「本日は私達新入生のために盛大な入学式を催して頂き、誠にありがとうございます。
校長先生をはじめ、諸先生ならびに来賓や在校生の皆様にも心より御礼申し上げます」
優希(のどちゃん、原稿持ってないけどどうした……?
って、席に忘れてるじゃん! 大丈夫かな……)
咲(あれ? 在校生の人達は自宅学習でほとんどの人が来てないんじゃなかったっけ?
来ているとしたら生徒会の人か在校生代表の……さすがに考えすぎかな)
和「朝方はまだまだ冷え込みますが、今朝は例年と比べて温かいように感じました。
長野の厳しい寒さも私達の晴れ舞台を祝福するために気を遣ってくれたのでしょうか。
先ほどから○○校長先生を始めとして、ご来賓代表の△△様……
そして在校生代表の宮永照先輩から温かい言葉を頂戴し、まことに感無量であります」
京太郎「あの子すげーな。原稿丸暗記してる上にアドリブでスピーチした人の名前まで入れてるじゃん。
……ん? 在校生代表の宮永照? おい咲ー」
咲「zzz」
京太郎「こいつ寝てやがる……」
咲(あわわわ、原村さん余計な事しないでよぉぉ)
和「私はこれまで自分や両親の価値観こそが正しいものだと信じて疑いませんでした。
しかし、この学校へ進学するきっかけとなった出来事を機に考え方が変わりました。
人にはそれぞれ個性と言うものがあって、それを理解する事が大事だと気付かされたのです。
この学校には個性的で素晴らしい先生や先輩がたくさんいらっしゃいようですので、
私達新入生一同、色々と勉強させて頂きたいと思っています。
温かい指導と迷わないために明るく道を照らして下さるよう、どうかよろしくお願いします」
優希(のどちゃん、清書した原稿と全然違う事を言ってるじょ。
まるで宮永先輩の挨拶に対して返信をするような……)
和「私達は歴史と伝統のある清澄高校の生徒として、OBの方々や先輩達に恥じぬような学生生活を送る事をここに誓います。
以上を持ちまして、私からの誓いの言葉とさせて頂きます。
本日は本当にありがとうございました。新入生代表、原村和」
パチパチパチ
和(聞いてくれましたか? 宮永先輩……)
照(私の話を聞いて即興で挨拶を作り変えたんだ。さすが和、私としても嬉しいよ)
京太郎「すっげー……可愛いしスタイル抜群だし頭良さそうだし完璧じゃねぇか……
是非お近づきになりたい」
咲(道を照らすっていうくだり、完全にお姉ちゃんの挨拶に応えるためのアドリブだったよね。
単純に先輩の言葉に感動したからなのかな、お姉ちゃんだからこそなのかな。
あの人、実はお姉ちゃんと知り合いだったりするのかなぁ)
クラス発表の掲示板前
ざわざわ……
「あ、俺原村さんと同じクラスだよ! ラッキー!」
「なにぃ! 羨ましいぞこのヤロー!!」
咲「人気者だね原村さん」
京太郎「そりゃあ当たり前だろー。
そういや俺は知らなかったんだけど、原村和って子はなんかの競技の全中王者でもあるらしいぜ」
咲「へぇ、そうなんだ」
咲(私は京ちゃんと一緒のクラスって事だけが分かっただけで十分かな)
京太郎「俺達のクラスに名前ねーかなぁーっと……」
優希「のどちゃーん! こっちに私とのどちゃんの名前見つけたじょー!」
和「ま、待って下さいよ~。あと廊下は走っちゃっていけません。
……前見て下さい前!」
京太郎「えーと確か、麻雀だったような?」
咲「……え?」
ドーン!
京太郎「おわ!? っと、大丈夫かちびっ子」
優希「チビって言うな! 立派なれでぃに向かって失礼だじょ小僧!」
京太郎「なんだとー!? ……まあそれだけ元気があるなら大丈夫か。
ほら、手を貸してやるから。立てるか?」
優希「う、うん……すまんな」
和「大丈夫ですか? すいません、私の友達がご迷惑をお掛けしました」
京太郎「良いって事です、よ……? ってあんた原村和さんですよね?!」
和「え、あ、はい。そうですけど」
京太郎「うおーすげー間近で見るとやっぱり超可愛い!」
和「あ、ありがとうございます……」
和(面と向かって褒められるのは恥ずかしいです……)
京太郎「ああすんません、名前も名乗らず調子に乗って。
俺、須賀京太郎って言います」
和「あ、はい。須賀くんですね」
優希「すがきょーたろーって言うのか。
名前順で並んでるあのボードで私の近くにあった気がするじょ」
和「と言うことは私達と同じクラスなんですね。改めてよろしくお願いします」
京太郎「マジすか!? こちらこそよろしく!
ほら咲、この二人は俺達と同じクラスらしいぞ。友達作りの第一歩だぞ」
咲「う、うん……」
京太郎(まあ、咲と原村さんが友達になれば、俺も原村さんに自然と近づけるっていう策略もあるわけだけどな。
ここは俺の青春のためにも頑張ってくれよー)
咲「え、えっとみや……咲って言います」
優希「みや……? なんて?」
和「宮崎さんですか?」
京太郎「おいおい緊張しすぎだろ。ほら、みやながさきだろ?」
和「え、宮永……?」
咲「あぅ……」
和「そういえばどことなく似ているような……もしかして宮永照先輩の妹さんだったりします?」
咲「ええっとー、はい……」
咲(やっぱり知り合いだったよぉぉ。しかも麻雀の全中王者らしいし……
これは、京ちゃんが麻雀に興味を持つ展開が簡単に想像出来るなぁ……
どうしよう……)
あ、文章削除するの忘れてて前後の会話がおかしくなってる……
ちょっと修正して投稿しなおしてきます。
和「私はこれまで自分や両親の価値観こそが正しいものだと信じて疑いませんでした。
しかし、この学校へ進学するきっかけとなった出来事を機に考え方が変わりました。
人にはそれぞれ個性と言うものがあって、それを理解する事が大事だと気付かされたのです。
この学校には個性的で素晴らしい先生や先輩がたくさんいらっしゃいようですので、
私達新入生一同、色々と勉強させて頂きたいと思っています。
正しい道へ進むための温かい指導と迷わないために道を明るくを照らして下さるよう、どうかよろしくお願いします」
優希(のどちゃん、清書した原稿と全然違う事を言ってるじょ。
まるで宮永先輩の挨拶に対して返信をするような……)
和「私達は歴史と伝統のある清澄高校の生徒として、OBの方々や先輩達に恥じぬような学生生活を送る事をここに誓います。
以上を持ちまして、私からの誓いの言葉とさせて頂きます。
本日は本当にありがとうございました。新入生代表、原村和」
パチパチパチ
和(聞いてくれましたか? 宮永先輩……)
照(私の話を聞いて即興で挨拶を作り変えたんだ。さすが和、私としても嬉しいよ)
京太郎「すっげー……可愛いしスタイル抜群だし頭良さそうだし完璧じゃねぇか……
是非お近づきになりたい」
咲(道を照らすっていうくだり、完全にお姉ちゃんの挨拶に応えるためのアドリブだったよね。
単純に先輩の言葉に感動したからなのかな、お姉ちゃんだからこそなのかな。
あの人、実はお姉ちゃんと知り合いだったりするのもしれない。
だとしたらどういうつながりなんだろう)
クラス発表の掲示板前
ざわざわ……
「あ、俺原村さんと同じクラスだよ! ラッキー!」
「なにぃ! 羨ましいぞこのヤロー!!」
咲「人気者だね原村さん」
京太郎「そりゃあ当たり前だろー。俺達のクラスに名前ねーかなぁーっと……」
咲(私としては名前がない方がいいな……
京ちゃんと原村さんが仲良くなったら私だけ取り残されるかもしれないし……)
京太郎「そういやさっきまで俺も知らなかったんだけど、原村和って子はなんかの競技の全中王者でもあるらしいぜ」
咲「へぇ、そうなんだ。何の競技?」
京太郎「えーと確か、麻雀だったような?」
咲「……え?」
優希「のどちゃーん! こっちに私とのどちゃんの名前見つけたじょー!」
和「ま、待って下さいよ~。あと廊下は走っちゃっていけません。
……前見て下さい前!」
ドーン!
京太郎「おわ!? っと、大丈夫かちびっ子」
優希「チビって言うな! 立派なれでぃに向かって失礼だじょ小僧!」
京太郎「小僧だとー!? ……まあそれだけ元気があるなら大丈夫か。
ほら、手を貸してやるから。立てるか?」
優希「う、うん……すまんな」
和「二人共大丈夫ですか? すいません、私の友達がご迷惑をお掛けしました」
京太郎「良いって事です、よ……? ってあんた原村和さんですよね?!」
和「え、あ、はい。そうですけど」
京太郎「うおーすげー間近で見るとやっぱり超可愛い!」
和「あ、ありがとうございます……」
和(面と向かって褒められるのは恥ずかしいです……)
京太郎「ああすんません、名前も名乗らず調子に乗って。
俺、須賀京太郎って言います」
和「あ、はい。須賀くんですね」
優希「すがきょーたろーって言うのか。
名前順で並んでるあのボードで私の近くにあった気がするじょ」
和「と言うことは私達と同じクラスなんですね。改めてよろしくお願いします」
京太郎「マジすか!? こちらこそよろしく!
ほら咲、この二人は俺達と同じクラスらしいぞ。友達作りの第一歩だ」
咲「う、うん……」
京太郎(まあ、咲と原村さんが友達になれば、俺も原村さんに自然と近づけるっていう策略もあるわけだけどな。
ここは俺の青春のためにも頑張ってくれよー)
咲「え、えっとみや……咲って言います」
優希「みや……? なんて?」
和「宮崎さんですか?」
京太郎「おいおい緊張しすぎだろ。ほら、みやながさきだろ?」
和「え、宮永……?」
咲「あぅ……」
和「そういえばどことなく似ているような……もしかして宮永照先輩の妹さんだったりします?」
咲「ええっとー、はい……」
咲(やっぱり知り合いだったよぉぉ。しかも麻雀の全中王者らしいし……
これは、京ちゃんが麻雀に興味を持つ展開が簡単に想像出来る……)
こっちが正しいです。
いらないかなと思った部分を削除し忘れて変なことになってました。
眠さで色々とやられてるみたいなんで今日の所はこの更新を最後に寝ます。
続きはまた後日。
京太郎「宮永照? どっかで聞いた事あったような……」
和「これじゃないですか?」
京太郎「そうそう! 学校案内!
麻雀のインターハイ個人戦王者、やっぱり咲の姉ちゃんだったんだな」
咲「そ、そうだね」
京太郎「なんで隠してたんだよー。水くせえじゃんかよー」
咲「もしそうだって知ったら色々聞いてきてたでしょ?
いくら有名人だからってプライベートの事なんてしゃべる訳にはいかないよ」
京太郎「あー……うん、確かに正論だわ。俺が悪かった」
咲「分かってくれたらいいよ」
咲(な、なんとかごまかせた……隠しててごめんね京ちゃん)
和「宮永さんをはじめとして、宮永先輩のご家族は協力的なんですね。羨ましいです」
京太郎「? 原村さんの所はそうでもないの?」
和「え? ええっと……」
優希「あーもう! 宮永先輩とか宮永さんとかややこしいな。咲ちゃんの事は咲ちゃんって呼んでいいか!?」
咲「ふぇ!? う、うん、良いよ。えっと……」
京太郎「声でけぇよチビ、じゃなくって……なんだっけ?」
優希「そういえば名乗るのはまだだったな!
私は未来のグランドマスター……名を片岡優希と言う!」
和「いつもの事ですけどグランドマスターはハードル上げすぎじゃないですか?」
優希「なにおう!」
咲「えっと、じゃあ……片岡さん?」
優希「名前でいいじょ!」
咲「じゃあ優希ちゃんで」
優希「うむ、それでよろしい!」
京太郎「じゃあ俺は優希で」
優希「お前は駄目だじょ!」
京太郎「なんでだよ!」
優希「修行が足らん!」
京太郎「意味わかんねーよ!」
和(私が言葉に詰まってるのを見て助けてくれたんですね。ありがとう優希)
和「クラスも確認できた事ですしとりあえず教室へ行きませんか?」
京太郎「それもそーだなー」
同日・麻雀部部室
煌「お疲れ様でした。すばらなスピーチになったようですね」
照「煌が一緒に原稿を考えてくれたおかげ」
煌「私は軽くアドバイスをしただけですよ。
それに後半は完全なアドリブだったそうじゃないですか。
森林限界を越えても咲き誇る大輪の花、実にすばらです」
照「ちゃんと伝わってると良いけど」
煌「心配しなくても大丈夫ですよ。
それよりも明日からの新入部員勧誘の作戦を考えませんとっ」
照「うん、任せる」
煌「やっぱり丸投げ!?」
照(ちゃんと伝わったかな、咲……)
翌日、新入生へのオリエンテーリングが行われる。
中学の時にも同じような事を聞かされた新入生たちはあくびを噛み殺しながら時が過ぎるのを待つ。
彼らにとって一番にして唯一の目的はこの後に始まる部活動紹介だ。
それは紹介する側にとっても同じであり、麻雀部の部員である宮永照と花田煌もその中に含まれる。
文化系の部活であり、芸術系でもないため発表できる作品も無く、部員はたったの二名。
そんな最悪の状況の中、部長の花田煌が考えた作戦は―――
ドラで地獄単騎待ちをするような大博打、麻雀のルールを面白おかしく説明したショートコントだった。
煌「ショートコント! 麻雀!」
照「まーじゃん」
煌「麻雀の基本は牌を3つずつ集める所から始まります」
照「みっつずつ、みっつずつ」
煌「って、牌をみっつずつに分けてるだけじゃないですか」
照「ロン、なんかすごくごちゃごちゃしたやつ」
煌「勝手に役を作らないで下さい! しかも牌が一枚多いですよ!」
照「みっつずつ集めたらこうなった」
煌「良いですか。麻雀で和了るためには同じ名前の牌か同じ種類の牌で階段上に3つ並べたものを4つ。
それに同じ牌が2つ揃ってないといけないんです」
照「合計14枚?」
煌「本当なら牌を引いた時に14枚になるので、手持ちは13枚なのですがそれは今はいいでしょう。
そんな訳でとりあえずこれはポイです」
照「鳥が飛び立っていきました。来年はまたここへ戻ってきてね」
煌「一索に描かれてるのは渡り鳥じゃありませんけどね。
ちなみに先ほど捨てた牌を含めた1や9が書かれた牌などをヤオ九牌と言います。
基本的にはあまり持っていない方が良い牌です」
照「やっぱりそのままどこか遠くの国を旅してきてね」
煌「切り替えはやっ!? まあ必要な場合もありますしケースバイケースですけどね。
ともかくこれで基本の形が出来ましたね。ちょっと見せて貰えますか?」
照「これは……タンヤオ?」
煌「さきほど言ったヤオ九牌がありませんからそうですね。
麻雀における基本的な役の一つです」
照「基本は大事」
煌「その通り! ……ん? ちょっと待って下さいね。
234m 234m 234m 555s 77p ってこれ四暗刻じゃないですか!」
照「鳥の次は魚か……動物園?」
煌「そのアンコウじゃないです! 役満と言って麻雀で一番高い点数が入る役です」
照「さすが高級食材……」
煌「だから深海魚じゃないですから……
ともかく、麻雀とはこんな感じで特定の組み合わせを効率良く作っていくゲームです」
照「4人で行うゲームなので相手との押し引きや読み合いも楽しさの一つですね」
煌「運の要素もありますが、練習をすれば確実に実力が付いてきます。
そんな二面性を併せ持つ競技であり、やってみると結構奥が深いですよ」
照「目指せ未来のチャンピオン!」ニコッ
煌「貴女がそれを言いますか……というわけで私達麻雀部からの部活動紹介は終わります。
ありがとうございました」
パチパチパチ
舞台袖
照「恥ずかしかった……」
煌「自分で決めといてアレですが、なんであれでゴーサイン出しちゃったんでしょうね……
でもダダ滑りでは無かったようで良かったです」
照「みんなに見えるように大きく牌を描いた画用紙を貼った段ボールを作ったり、色々準備するのも楽しかった」
煌「そうですか、それなら良かったです」
照「でも、あの一索はひどかったね」
煌「二人で描いた方でマシな方を選ぼうって事にして私が選ばれたわけですが……
どんぐりの背比べもいいとこでしたね」
照「くくっ、私が描いたのと並べた瞬間を思い出したらなんか笑いがこみ上げてきた」
煌「あー、忘れようとしてたのに! ぷっ! あはっ、あははははは!
あーやっぱり駄目ですあれは無理!」
照「私が扇子が2つ並んでるのと変わらないねって言って、煌の『絵心のセンスがありませんね』っていう返しがまた……っ」
煌「あれはギャグのつもりで言ったのではありませんからね! だからこそ面白かったんですけど!」
照「あれで完全にツボに入ったよね。うん、貴重な体験だったよ」
煌「なんかお茶を濁そうとしませんか!?」
教師「そこ! うるさいですよ!」
煌「あ、はい、すいません……」
照「すいませんでした……」
オリエンテーリングが終わった後の一年の教室
京太郎「えらくお茶目な人なんだな、お前の姉ちゃん」
咲「普段はあんな感じじゃないんだけどね……」
優希「ていうか終始棒読みだったじょ」
和「さすがに緊張してらしたんでしょうね。でも評判は上々みたいですよ」
「宮永先輩にあんな一面もあったのか……」
「昨日の凛とした姿と違ってなんか親しみやすい感じだったねー」
「宮永先輩可愛い」
「何故誰も花田先輩の方には触れないんだよ。俺が貰って良いって事なのか」
「二人とも誰のものでもねーよ」
京太郎「麻雀とか紹介の内容の前に二人の話になってる感じだけどな」
優希「まー勝てば官軍と言うし二人の人となりをアピールするのは良いと思うじょ」
京太郎「まあなー。宮永先輩は美人だし花田先輩もなんかほっとけない感じがするし」
咲「私だってあと二年もしたらきっと……」
京太郎「なんか言ったか咲ー?」
咲「なんでもないっ」
和「まあ好評だろうと不評だろうと私が麻雀部に入る事は確定なのであまり関係ないですが」
優希「私もな!」
京太郎「そうなるとインハイ王者と全中王者が揃い踏みじゃん。
なんかすげー面子だな。二人が勝ち進む所を間近で見てみたくなってきたぜ」
咲「……え、きょ、京ちゃんは運動だって出来るしどこか運動部に入った方が良いんじゃないかな。
ほら、そこで私マネージャーやるしっ」
京太郎「ここの運動部は結構強いし、今から始めてレギュラー取るのはキビシーだろうしなぁ。
麻雀だったら個人戦があるから試合出れるじゃん。
そもそもドジっ子のお前にマネージャーなんてさせたら他の部員の皆さんに迷惑が掛かります」
咲「むぅ、これでも家事は結構出来るんだからね」
京太郎「へいへい、わーってるって。
そんな事より咲も麻雀部に入ったら良いじゃん」
咲「え……それはちょっと……」
京太郎「折角出来た友達が入るって言ってんだし同じ部活に入った方がよくねーか?」
優希「あの宮永先輩の妹……さぞ強いだろうな」
和「優希、姉妹ともども同じ競技をやっているとは限らないのですからそれは偏見ですよ」
咲「そ、そうそう! 原村さんの言うとおりだよ!」
和「ですが、ご両親と宮永先輩と宮永さんで面子が揃っていますし、全くやった事が無いわけでも無いと思うのですが」
咲「え、えーっと……」
和「宮永先輩は一年の時に上級生が辞めてからは誰とも打ってなかったそうですからね。
いくら天才だったとしても家族麻雀でもしていないと実践の経験値が足りないと思います」
咲(辞めちゃった、か……お姉ちゃんと打ったらそうなるよね。あの時だって……)
咲「確かに麻雀をやった事はあるけど……ある、けど……」
京太郎「お、おいどうした? なんか顔色わりーぞ?」
咲「あ、あはは……お姉ちゃんがあまりにも強かったもんだから思い出したらちょっと、ね……」
優希「宮永先輩の強さはトラウマレベルだからなー。
私ほどの強者にならないとちょっと耐えられないじょ」
和「私は徹底的に叩きのめされたお陰で逆にやる気が出ましたけどね」
優希「のどちゃんはドMだからな」
和「なっ!?」
京太郎「なんですとー!?」ドキドキ
咲「そ、そうなんだ……」
和「優希! 須賀くんと宮永さんが変な勘違いしてるじゃないですか!!」
優希「でもあながち間違ってもないと思うじょ」
和「間違ってます! 半端に強い人よりは目標にするのに良いと思っているだけです!」
咲(お姉ちゃんと麻雀してそんな風に言える人もいるんだ……
みんながみんな原村さんや優希ちゃんのようには行かないのは分かってる。
だけど、この二人といれば私も変われるかもしれない)
京太郎「しっかし、トラウマレベルってやべーな。
チャンピオンが普通に打つと普通の人じゃ何も出来ないんじゃねーの?」
和「あ……」
優希「おおう……」
麻雀部部室
「あ、ありがとうございましたーっ」ササッ
「じゃあ私達、次の部活を見学してきますねーっ」ササッ
煌「ああっ、待って下さいよー」
照「……ごめん、つい本気で打ってしまった」
煌「良いって事ですよ。あの子達だって手加減された方がきっと嫌な思いをしたでしょうから。
宮永先輩の勢いを止められない私の力不足が原因です」
照「そんな事は無い。煌はよくやってくれてる」
煌「お褒めの言葉がありがたいですけどね。
こればっかりは実力が伴わないとどうしようもありませんから」
旧校舎・廊下
和「さきほどの人達、来た方向からすると麻雀部の部室から出て来たみたいですね」
優希「遅かったか……いきなり掃除当番にされて嫌な予感はしてたんだじょ」
咲「……」
京太郎「やっぱり付いて行くって言い出したと思ったら今度は俺の後ろに張り付いてるし。
学校で姉ちゃんに会うが恥ずかしいなら今日はやめとくか?」
咲「ううん、大丈夫」
京太郎「それなら良いけどよ」
優希「そうこうしてる内にたどり着いたじょ! たのもー!」
ガラガラ
煌「あ、どうもいらっしゃいませ。おや、原村さんと片岡さんじゃないですか!
お久しぶりですね」
優希「やっぱり二人ぼっちだったじょ……でももう心配すんな!
私とのどちゃんが来たからには全国への扉は開けたようなもんだじぇ!」
和「さすがにそれは気が早いですよ……」
照「和、優希。久しぶり」
和「お久しぶりです、宮永先輩に花田先輩」
煌「お久しぶりです。あと後ろのお二方は……?」
京太郎「あ、原村さん達と同じクラスの須賀京太郎って言います」
煌「こんにちは、部長の花田煌です」
京太郎「一応入部希望なんですけど……見事に女子ばっかっすね」
煌「長野県の男子麻雀は女子以上に寡占市場ですからねぇ。
本格的にやりたい人は別の所へ行ってしまうんですよ」
煌(まあ、女子チャンピオンに叩きのめされてプライドが傷つけられたくない人達もたくさんいるんでしょうけどね……)
京太郎「そうなんすか。つか、もしかして女子しか受け付けてなかったりします?」
煌「そんな事はありませんよ。ただ女子ばかりの中に男子一人と言うのは息苦しくないですか?」
京太郎「別に大丈夫っすよ。むしろこんな美少女達に囲まれるなんて願ったりかなったりっすよ」
優希「照れるなー」
京太郎「中にはちんちくりんなのもいますけど」
優希「なんだとー」
京太郎「まあ男手だって必要だと思うんで、雑用とかも含めてこき使ってやって下さい」
煌「力仕事を引き受けてくれるのはありがたいですが、入部したからには貴方も大切な麻雀部員です。
なんでもかんでも雑用を押し付けるような扱いはしないので安心して下さい」
京太郎(な、なんていい人なんだ……
原村さんがいるって理由だけでホイホイ付いてきたのが恥ずかしくなってきたぜ……)
京太郎「はい! ルールとかまだあんま分かってねーけど精一杯頑張ります!」
煌「いいでしょう。ところで、さっきからずっと後ろに隠れてる子はどちら様です?」
京太郎「おおっ、まだそんな所にいたのかよ! ほら、部長さんに挨拶しとけって」
咲「う、うん……」
煌(おや? この方は……)
照「……」
咲「初めまして花田先輩、原村さん達のクラスメイトの宮永咲って言います」
煌「みやなが……という事は」
照「私の、妹だよ」
咲「……」
煌(おや、なんだか気まずい空気ですね。姉妹仲がよろしく無いのでしょうか)
照「ここに来るまでに迷わなかった?」
咲「ううん、京ちゃんや原村さん達に付いてきたから大丈夫だったよ」
照「そう、咲は昔から方向音痴だから気になったんだ」
咲「お姉ちゃんだって人の事言えないでしょー」
照「でも咲よりはマシ」
咲「マシじゃありませんー。むしろお姉ちゃんの方がひどいですー」
京太郎「方向音痴の自覚はあるんだな……まあ自覚ない方がやばいから良いけど」
煌(……思い違いのようですね)
照「須賀くんと言ったっけ。いつも咲から『京ちゃん』の話は聞いていたよ。
妹の世話をしてくれて感謝してる」
京太郎「世話ってほどの無いですよ。
お姉さんほどの有名人に『京ちゃん』で覚えられてて光栄っす」
照「毎日『京ちゃん』の事を聞かされていたから自然と覚えたよ。
一番印象に残っているのは中1の体育祭で―――」
咲「わわっ! それ言っちゃいけない奴だよー!」
照「ああ、ごめん」
京太郎「? あん時俺なんかしたっけ?」
咲「……覚えてないなんて、京ちゃん最低」
照「最低だな」
優希「最低だじぇ!」
和「最低ですね」
煌「すばらくないですね」
京太郎「えー!? つか後の三人は乗っかってるだけじゃないすか!」
和「ええと、こういうのには乗っからないとノリが悪いのだと優希から教わっていたので……
間違ってましたか?」
京太郎「いやそこまで大げさに考えこむ程でもないけど!
分かった、分かったよ。えー中1の体育祭だろ? ええーっと……」
咲「あっ、別に思い出さなくても良いからっ」
京太郎「俺にどーしろと!?」
煌「咲さんの言う通りにすれば良いのでは?」
京太郎「まあそれで良いならそれでいいけどよ」
優希「そんな事より麻雀しよーじぇ!」
和「そうですね。宮永先輩には是非私の成長を見て貰いませんと」
照「自信満々だね。いいよ、やろう」
煌「では私も……ってこれじゃあの時と被ってしまいますね。
折角6人も部員が集まっているのですし違う人に入ってもらいましょうか」
咲「じゃ、じゃあ折角だから京ちゃんが……」
ドクンッ!
『もうやめてよ!』
『次はレートを倍にして―――』
『もうやだよぉ……』
『麻雀なんか……麻雀なんか!!』
京太郎「そうだなー、役の名前を知ってるくらいだけど折角だから胸を借りるつもりで」
咲「―――やっぱり、私がやる」
京太郎「えっ?」
咲「京ちゃんはそこで見てて」
京太郎「あ、ああ……いいけど」
京太郎(なんかよく分かんねぇけどすげぇ威圧感……こんな咲、初めて見たぜ)
咲(私がやらないと。私が何とかしないとまたあの時みたいになっちゃう……!)
照「……」
和「よろしくお願いします」
優希「よろしくな咲ちゃん!」
照「……よろしく」
咲「よろしくお願いします。
あ、先に聞いておきたいんですけどウマやオカはどうしてるんですか?」
煌「ここは雀荘ではありませんし順位点などは決めていませんが」
咲「じゃあ端数は?」
煌「四捨五入で計算していますね」
咲「分かりました。色々聞いてすいませんでした」
咲(なら24600から25400の間か……うん、イメージできた)
優希「細かい点数計算まで考えてるだと……咲ちゃん、やはり只者ではないなっ」
和「優希が考えてなさすぎなだけです」
咲「私の場合は知らなくて100点の差で鳴くのが嫌なだけだよ」
煌「まあ、そういう場面なんて実際にはほとんど無いと思いますけどね」
照「……じゃあそろそろ始めようか」
和「そうですね」
京太郎「インハイチャンピオンと全中チャンピオンの対局かー。すげー楽しみ。
咲、片岡、二人の勝負に水差すんじゃねーぞ」
優希「なにおう! あたしの強さを見せてやるじぇ! 後で吠え面かくんじゃねーじょ!」
咲「あはは、頑張ってみるよ」
京太郎(しっかし、今の咲からはまるで負ける様子が見えねーのは何故なんだろうな……)
ということで今回の更新は終わり。
ここまで一気に投下したかったので書きためてました。
期間空いたしいい加減忘れられてるような気もするなぁ……
おお、ほんとだ! ニュアンスで覚えてたから同じようなものだと思ってた……>オリエンテーション
まこと部長についてもちゃんと考えていますので登場をお待ち下さい。
いつになるかはわかりませんが……
お待たせしてしまって申し訳ありません……ようやく更新の目処が立ちそうです。
今日の昼間か明日の夜中には投下出来ると思うのでもう少しお待ち下さい。
ルールを調べてみたら四捨五入も五捨六入もあるらしいって書いてたので今回は四捨五入にしてしまいました。
花田先輩が自分の計算しやすい方を選んでるんだと解釈して頂ければなと思います。
では続きです。
咲:25000 和:25000 優希:25000 照:25000
東一局
東家:宮永咲 西家:片岡優希 南家:原村和 北家:宮永照 ドラ:3s
咲「私が起家かー。よろしくお願いします」
優希「取られちゃったじぇ……」
煌(宮永先輩は北家ですか。
ラス親は一位確定なら連荘は無いですし、そこまでひどい事にはならずに済みそうですね)
照「……」
2巡目
照「ポン」
照「チー」
4巡目
照「ツモ、タンヤオのみは300・500」
煌(始めからギア全開ですねー。妹さんは見知った相手ですから見る必要が無いと言うことでしょうか)
優希「よし、次は私の親だじぇ!」
咲:24500 優希:24700 和:24700 照:26100
東二局
東家:片岡優希 南家:原村和 西家:宮永照 北家:宮永咲 ドラ:7m
4巡目
照「ツモ、ピンフツモは400・700」
優希「じょー……」
和(速やかに他家の親を流し、自分の親番では連荘で得点を稼ぐ。
それが貴女のポリシーなんですよね、宮永先輩。
シンプルかつ合理的な戦術だと思います。
もっとも、それが実現出来る宮永先輩の実力あってこそですが)
咲:24100 優希:24000 和:24300 照:27600
東三局
東家:原村和 南家:宮永照 西家:宮永咲 北家:片岡優希 ドラ:8p
和(私の親番ですね。
点差はまだ3000ほどですし、喰いタンでも良いので少しでも差を縮めておかないと)
和「ポン」
和「ポン」
優希「ツモ番回ってこないじぇ……」
煌(原村さんは鳴いて手を早めるつもりですね。
ですが、宮永先輩は更に先を走っていますよ)
照「ツモ。一盃口ドラ1ツモは1000・2000」
和「くっ……」
和(テンパイまで行けたのに届きませんでしたか……
さすが宮永先輩です。どう計算すれば最短の道筋に辿り着けるのでしょう)
煌(全員の親を流して宮永先輩の親番ですか。
ここまでは順調、というかいつも通りですね。
ここからが他家の踏ん張りどころですよ)
咲「……」
咲:23100 優希:23000 和:22300 照:31600
東四局
東家:宮永照 南家:宮永咲 西家:片岡優希 北家:原村和 ドラ:5m
照「……」ギュインギュイン
京太郎「あれ? なんか急に風が……」
煌「須賀君は宮永先輩の対局を間近で見るのは初めてでしたね。
彼女が打つ時はこうなる事も多いので覚えておいて下さい」
京太郎「はぁ……」
10巡目
照「リーチ」ギュインギュイン
和(来た……! でもこちらはまだ一向聴ですか。
回し打ちで様子を見ながら無理そうならベタオリするしか無いですね)
12巡目
照「……」ギュインギュイン
ガシッ トンッ
照「ツモ。リーヅモ一盃口ドラ2は4000オール」
京太郎「すげー……ここまで宮永先輩しか和了ってないっすね。
麻雀ってこんなに和了れる競技なんすか?」
煌「いいえ、一般的には4回に1回和了れれば良い方だと言われていますね。
ですが宮永先輩は2回に1回……5割以上の確率で和了ります」
京太郎「マジっすか。さすがインハイチャンピオン」
和「……っ」
煌(あらら、全中チャンピオンの前でそれを言うとは思慮が足りませんねぇ)
京太郎「あ……すまん」
和「良いですよ。全中とインハイの強さが格段に違うのは分かっています。
何しろ王者になった私が一番身に染みて理解していますから」
和(学年の差だからと言い訳はしたくありませんが……宮永先輩が強いのは事実です。
ですが、いつまでも棒立ちしてるだけの私ではありませんよ)
咲「……」
咲:19100 優希:19000 和:18300 照:43600
東四局 一本場
東家:宮永照 南家:宮永咲 西家:片岡優希 北家:原村和 ドラ:8m
照「……」ギュインギュイン
和(そろそろ止めないと……それも出来れば宮永先輩から直撃を取る形で。
とはいえ、直撃を取るために無茶な打ち方をするのは私のポリシーに反します。
あくまで牌効率や期待値重視の上で場に応じた打ち方をさせてもらいます)
4巡目
和(平和のみですが何とかテンパイ出来ました。
ですが、高めが狙える段階ですし立直はまだやめておきましょう)
照「リーチ」ギュインギュイン
照の捨て牌:北 9p 白 北 3s
和(と思ってたらここで立直!? 仕方ありません。
今回は宮永先輩に私の成長を見てもらうための物で大会ではありません。
次に自分のツモ番が回ってきたら立直を掛けて勝負に出ましょう。
親リー相手ですが待ちも悪くはないですし、ここで攻めておかないと宮永先輩に勝てません)
咲「……」
咲の捨て牌:北
優希「宮永先輩が張ったけどそんなの関係ないじぇ! リーチ!」
優希の捨て牌:北 南 9s 9s 7s
和(優希もリーチを掛けてきましたか。普段ならオリる事を考える状況ですが……)
和「リーチ」
和(今回は仕掛けさせてもらいますよ!)
和の捨て牌 西 西 9s 南 1p
咲「カン」 1pの大明槓 カンドラ:7s
和「えっ……?」
優希「じょ?」
照「……」
和(3人がリーチしている状況で大明槓!?
一発消しにしたってカンドラやカン裏が乗る可能性を考えたら無謀すぎます)
咲「……」
咲の捨て牌:西
煌(リンシャン牌をそのまま切りましたか。
原村さんの現物である上に当たり牌である可能性は確かに低いですが……)
次巡
和(優希は和了れず私のツモ番ですね)
和「……」和のツモ牌:2p
和(和了れず、ですか……)和の捨て牌:2p
咲「カン」2pの大明槓 カンドラ:4p
和(また大明槓!? 今度こそ何が目的なのか分かりません……)
咲「……」
咲の捨て牌:西
煌(またリンシャン牌から出た安牌切り……
1p、2pの暗刻を持っていたのですから、カンせずに1pを落とすのが安全だったのではないかと思いますけどね)
そして次巡
シュルシュル……
京太郎「風が止んだ……?」
照「……」
照の捨て牌:4p
和「ロン! メンピンドラ2に、カン裏が一つ乗って8000。
更にリー棒2本と積み棒1本で合計10300です」
和(メンピンのみが満貫まで打点が上がり、結果的に宮永先輩を射程圏内に捉える事が出来ました。
それ自体は良い事なのですが……)
和「宮永さん、あの状況で二回も大明槓をするのは間違っていると思いますよ」
咲「え? えーっと、リンシャン牌が引けてツモ回数が増えるから和了りに近づくかなーって……」
和「……」ジー
咲「や、やっぱりダメだったかな……」
和「安易なカンは周りの打点を上げかねないですから気をつけた方がいいですよ。
ましてや手の進まない大明槓は基本的にやらない方が良いと思います」
咲「はい……」シュン
煌(宮永先輩にツモ巡を回さないようにして連荘を阻止しようとしてたのかもしれませんけどね。
でも、それにしたって大明槓をしてまでリンシャン牌を引く事にどういう意味が……)チラッ
煌「……!」
煌(……これは!)
優希「くぉらー! いくら誰かが和了った後とは言え勝手に牌をめくるのはマナー違反だじぇー!」
煌「す、すいませんっ。つい……」
優希「部長がそんなのだと先が思いやられるな……」
煌「アハハ、全くもってその通り。すばらくない事をしてしまいましたね」
照「……」
咲:19100 優希:18000 和:28600 照:34300
南一局
東家:宮永咲 南家:片岡優希 西家:原村和 北家:宮永照 ドラ:西
和(南入して一位との点差は5700、これなら十分にトップも狙えますね。
宮永先輩、私の打ち筋を見ていて下さいね)
優希「焼き鳥のまま南入しちゃったじょー……」どよーん
咲「ゆ、優希ちゃん大丈夫……?」
優希「集中力が切れてきただけだからだいじょーぶー」
咲「そ、そうなんだ……」
4巡目
照「ポン」福露:北北北
和(役牌ポンですか。早和了りでこのリードを守り切るつもりですね。
そうはさせませんよ)
和「ポン」福露:西西西
和(最速で上がるために不要牌を抱えない結果がこれです。
役牌ドラ3、私が和了ってまくって見せます)
8巡目
照「ツモ。自風のみは300・500」
咲「親流れちゃった……」
和(そう上手くはいきませんか……)
咲:18600 優希:17700 和:28300 照:35400
南二局
東家:片岡優希 南家:原村和 西家:宮永照 北家:宮永咲 ドラ:1s
優希「和了れないし最下位だし良い事無しだじょ……
でも最後の親だし頑張るじぇ!」
咲「……」
南二局は照が3巡目に234sのチー5巡目に555pのポンをして、捨て牌は6m
優希(2福露しての中張牌捨てか。また親が流されそうだじぇ……
ともかく連荘をしない事には始まらないな。
タンヤオしか無くて高めで平和が付くだけだけど、テンパイしてるし和了り牌が来たらとっと和了るじょ!)
咲「……」
咲の捨て牌:3m
優希「ロン! それは私の和了り牌だじぇ!」
咲「わっ」
優希「タンヤオに平和が付いて2900頂くじょ」
咲「うう、最下位になっちゃったよ……
最下位、私が、サイ、カイ……?」
咲「……」ヒュオオオ
煌「」ゾクッ
煌(なんなんでしょう、今一瞬だけ寒気がしたような……
そう、まるで真冬の日本アルプスに何の装備もなく取り残されたような……)
照「……」
咲:15700 優希:20600 和:28300 照:35400
南二局 一本場
東家:片岡優希 南家:原村和 西家:宮永照 北家:宮永咲 ドラ:1s
照「ポン」
照「チー」
照「ロン。タンヤオのみの一本場は1300」
優希「んがー! 最後の親流されちゃったじょー!」
咲:15700 優希:19300 和:28300 照:36700
南三局
東家:原村和 南家:宮永照 西家:宮永咲 北家:片岡優希 ドラ:5p
照「ロン、白赤ドラ1は2600」
和「はい」
和(5巡目の辺張待ち……流石に情報が少なすぎて躱すことが出来ませんでした……)
咲:15700 優希:19300 和:25700 照:39300
南四局
東家:宮永照 南家:宮永咲 西家:片岡優希 北家:原村和 ドラ:1p
和(とうとうオーラス……
ラス親の宮永先輩をまくるには直撃で4翻以上、ツモ和了で跳満以上、他家への直撃で倍満以上ですか。
宮永先輩はベタオリノーテンで切り抜けようなんて消極的な方法は取らないに違いありません。
つまり、即効で和了ってそのまま終局させるはず。
だとすれば……逆転の手を張ったら直ぐにリーチを掛けて裏ドラが乗る可能性に託します!)
4巡目
咲「ポン」 福露:888p
和(宮永さんは染め手狙いで逆転しようと言った所なんでしょうか。
でも今回の私は一位を狙うために攻め続けるだけです)
8巡目
和(来た……! 平和タンヤオ三色同巡一盃口テンパイ!
宮永先輩への直撃なら十分に逆転出来る打点ですが、そう安々と振り込んでくれるとは思えません。
なら、リーチを掛けてツモ和了でも逆転出来る打点に上げて置くのが一位狙いなら上策ですね)
和「リーチ」
和の捨て牌:9p
和(勝負です、宮永先輩……!)
咲「……」
ヒュオォォォ……
京太郎「さむっ! この部室なんか寒くないすか!?」
優希「そういえばなんか寒いしちょっと息苦しいようなそうでもないような」
和「空調が壊れているのでしょうか。長野の4月はまだまだ寒いですからね。
明日にでも用務員さんに言って直してもらいましょう」
煌「……多分、それでは直らないと思いますよ。
ここの空調は先日直してもらったばかりですから」
照「……」
和「そうなんですか? もうオーラスですし、この対局が終わったら温かい飲み物でも飲んで落ち着きましょう。
そうすればきっとおさまりますよ」
煌「だと良いのですが……」
京太郎「おーい咲ー、お前は大丈夫か?」
咲「……大丈夫だよ?」ニコッ
京太郎「」ゾクッ
京太郎(な、なんだ……? 今すっげぇ寒気した……
咲の奴、どうしまったんだ?)
照「……とにかく、早く終わらせよう」
照の捨て牌:9p
咲「……カン」スッ
北の暗槓 カンドラ:南
咲「……もいっこカン」
8sの加槓 カンドラ:6s
ヒュオオオ……
咲「……ツモ」
咲「嶺上開花ドラ2は2000・4000。それと原村さんのリー棒が1000点ですね」
咲の手牌 1p 456p 234s ツモ(嶺上)牌:1p 8888s(小明槓) 北北北北(暗槓)
和・優希「えっ……?」
京太郎「?」
照「……」
煌(なるほど……)
咲「……お疲れ様でした」ペッコリン
和「え、ああ、はい。お疲れ様でした」
優希「結局ラス引いちゃったじぇー。だが次こそは負けん!」
照「……お疲れ様」
終局
咲:24700 優希:17300 和:22700 照:35300
スコア 咲:±0 優希:-8 和:-2 照:+10
咲「……! あ、あのっ。今から市の図書館に本を返しに行かないといけないのでこれで……」
煌「そうですか。お疲れ様でした。
明日からまたよろしくお願いしますね」
咲「……はい。じゃあまた」そそくさ
京太郎「あ、おい咲! 一人で電車なんか乗ったらまた迷子になるだろ!
す、すいません。俺も今日は早退しますわ」
照「そう。須賀京太郎くん、だったよね。咲の事を頼みます」ペコリ
京太郎「伊達に中1の頃から面倒見てませんよ。任せといて下さい!」スタタタ
優希「……ん? あれ? 嶺上開花って1翻だよな……?
それとドラ2でなんで満貫になるんだ?
おーい咲ちゃん点数申告間違ってるじぇー。っていない!」
和「宮永さんならさっき帰りましたよ。
それに、70符3翻は満貫で合っています」
優希「70……符?」
和「得点表を暗記してるだけだからそんな事になるんです。
やはり一から点数計算の仕方を教える必要がありますね」
優希「じょ!?」
和「明日の昼休みにみっちりと学習してもらいますから」
優希「じぇぇぇぇ……」
和(それにしても、70符3翻の上に嶺上開花とは珍しい和了り方でしたね。
常に連続和了を狙う宮永先輩、ドラを抱えたがる玄さん、字牌を抱えたがる大星さん。
宮永さんも彼女達と同じようになるべくカンをする事をポリシーとしているのでしょうか。
非効率的過ぎる事だとは言え、ついきつく言ってしまいました。明日会ったら謝らないと)
校門前
咲「はぁ……はぁ……」
咲(気づいたらオーラスで2位確定の和了なんてしちゃってた……
原村さん達、きっと怒ってるよね。怖くなって逃げ出してきちゃった。
でも、最下位になった辺りから取られた分を取り返す事しか考えられなくなってた。
まるで雪山で遭難した人が闇雲に麓の平地を目指すように、プラマイゼロを目指すことで頭が一杯になってた)
咲「……なのに、狙う役は嶺上開花っておかしな話だよね」
咲(お姉ちゃんはこんな使い方をするために教えてくれたわけじゃないのに……
ごめんなさい。やっぱり私、こういう麻雀しか出来ないよ。
明日も一応部活には行くけど、私の麻雀が嫌がられるようになったらすぐ退部しよう……)
京太郎「おーい、さきー、どこだー? 電車乗るんだったら道案内してやるぜー」
咲(京ちゃん……来てくれたんだ。
でもごめんね、本当は借りてる本なんて無かったんだ。
だから今日はこのまま一人で家に帰るよ。京ちゃんもすぐ切り上げて部室か家に帰ってね)
夕暮れ時・部室
煌「さて、外も暗くなってきましたし今日の所はこの辺にしておきましょうか」
和「そうですね、お疲れ様でした」
優希「お疲れー。結局宮永先輩が毎回一位かー。分かってたけど強すぎだじょ」
照「お疲れ様、二人共この一年で成長したね。
私が飛ばせなかったのは県代表レベルくらいからだったし、一年目から十分通用すると思う」
優希「相変わらず宮永先輩の基準はとんでもない所にあるなー。
飛ばなかったら県代表ってインフレしすぎだじぇ」
煌「つまり、去年の長野県予選で宮永先輩と当たって飛ばなかった私も県代表レベルと言うことですね」ドヤ
照「煌は他の人を相手にしても大体マイナスだから無理かな」
煌「」
和「とはいえ麻雀は連戦連勝は出来ないようになっている競技です。
ですから、私はいつか宮永先輩から一位を取ってみせます」
照「うん、期待してる」
煌「それじゃあ、原村和さんと片岡優希さん。そして今日はもう帰ってしまいましたが宮永咲さんと須賀京太郎君。
貴女達4名はこれから清澄高校麻雀部の部員です。
明日からは部長であるこの花田煌と宮永照先輩と共に更なる上達を目指しましょう」
和・優希「はい!」
煌「それでは今日の所は解散!
後片付けは私達上級生がしておきますので、寄り道せず速やかに帰宅して下さいね」
優希「はーい」
和「分かりました。お願いします」
煌(これで女子は団体戦に出られる人数が集まりました。
一人しかいない男子の須賀君には悪いですが、今は嬉しい気持ちで一杯ですね。
……ですが、五人目の部員となった宮永咲さんは麻雀をしている時はとても不安定であるように見えました)
照「煌? 早く片付けて私達も帰ろう」
煌「え、ああはい。分かりました」
煌(今から宮永先輩から話を聞ければ手っ取り早いんですけどね。
去年に私がアテがあるか質問した時に言い淀んでいた『本気で打ち込めば全国優勝まで狙える打ち手』とは多分彼女の事なんでしょう。
東四局に私が見た三枚目のリンシャン牌は宮永さんの当たり牌でしたし、オーラスの嶺上開花は私達には見えない物が見えているとしか思えませんでした。
何よりあの時感じた寒気はまるで……
いえ、確信が得られるまでそういう風に考えるのはやめにしましょう。
でも私の考えが正しいのだとしたら、その時は宮永先輩達のために出来る限りの事はさせてもらいますからね。
それが清澄高校麻雀部の部長としての責務だと思いますから)
お待たせしました。今回の更新はここまでです。
本編がどうなるか分からないので独自解釈の設定をぶち込んで『ここではこういう事になってる』としていきます。
少しずつ世界線が歪んだ結果だと思ってもらえれば良いなーなんて。
乙!
しかし点数申告の部分の違和感がなんとも…
俺の意見で>>218とは違うかもだけど。
たとえば。
>>210
>和「ロン! メンピンドラ2に、カン裏が一つ乗って8000。
> 更にリー棒2本と積み棒1本で合計10300です」
供託は場にあるもので、上がった点数ではない。
なので、あくまで「8000の上がりに1本」で8300を申告すべきところを、変に供託を計算に加えたから、振り込んだ相手が払うべき点数が結局どこにも申告されていない。
まあそもそも供託は自分が出した分も含めて3本あるんだけど、おいといて。
供託をどういう風に処理すれば良いか分からないのでこんな事になっちゃってるんですよね……。
仮になんですけど、リー棒出た時点で『供託点:照から1000』とか書いておいて、和了った時には和了った点数だけ言えば良いんでしょうかね。
場に出た時点で誰のものでもないとして、「場に供託が何本あるか」を考えるだけなはずなんだけどなぁ。
>>213
>優希「……ん? あれ? 嶺上開花って1翻だよな……?
> それとドラ2でなんで満貫になるんだ?
> おーい咲ちゃん点数申告間違ってるじぇー。っていない!」
(ちょい略)
>和「得点表を暗記してるだけだからそんな事になるんです。
> やはり一から点数計算の仕方を教える必要がありますね」
優希は「点数計算」自体ができないわけじゃなくて、
「点数計算を入れて役作り」をするのが苦手なだけだから、
70符だろうがなんだろうが「上がり型」を見てそれが何点か分からないわけじゃないよ。
翌日・放課後
煌「さて、今日は一年生同士で打ってみましょうか。私と宮永先輩は脇で見ていますね」
京太郎「ちょ、ちょっと待って下さいって!
ええと、鳴いたら役なしチョンボの可能性が高くなるな……
手の作り方とかまだよく分かんねーし、役牌以外は鳴かずにテンパイしたら即リーで良いのか……?」ブツブツ
優希「今更勉強したって遅いじぇ! 男だったら潔くとっとと席につけぃ!」
和「初心者でも勝てる事があるのが麻雀なので、ともかく一度やってみない事には何も分かりませんよ」
京太郎「そ、そっか。そうだよな!」
和「なので、私は常に最善を尽くさせてもらいます。手加減はしませんよ」
京太郎「お、おう……出来たらなるべくお手柔らかに頼むぜ」
咲「私もしばらく麻雀やって無かったから初心者みたいなものだよ。一緒に頑張ろ」
京太郎「俺は『みたいなもの』ですらない完全な初心者なんだけどな。
でもまあ、咲みたいな奴がいてくれるだけでちっとは気が楽かな」
煌(私からすると咲さんこそ一番すばらな打ち手であるように思うのですけどね。
彼女が原村さん達に圧勝して私の考えは確信に変わるのでしょうか)
場決めの結果は東場:京太郎 南場:優希 西:和 北:咲に決定。
照は京太郎と優希の後ろ、煌は咲と和の後ろから対局の様子を見守りながら牌譜を記録しています。
優希「ぐぬぬ、京太郎め……私から起家を取るとはやるな!」
和「意図的にイカサマしてるならともかく、サイコロは全自動卓が回しているんです。
誰が起家になる可能性もあり得ますよ」
京太郎「初っ端から親か。流れとかよく分かんねーしとりあえずガンガン攻めるしかねーな」
煌「さて、外野が色々言っても仕方ないですから私達は黙って記録を取っていますね。
なるべく邪魔にならないようにしますので、皆さんは心置き無く打ちたいように打って下さい」
照「みんな頑張って」
四人「はい!」
東一局
東場:京太郎 南場:優希 西:和 北:咲
12巡目
京太郎「よっしゃ! 先制親リー!」
和「ロンです、そのリーチ通りません。2000」
京太郎「うおっ張ってたのかよ!」
優希「この巡目で2福露だからなー。のどちゃんならテンパイしてると思ってたじぇ」
和「私ならって、私は普通に打っているだけですよ」
和了役:タンヤオ赤1(30符2翻)和から京太郎への直撃。
京太郎の立直は通らなかったのでリーチ棒の1000点は場に出なかった。
京太郎:23000(-2000) 優希:25000 和:27000(+2000) 咲:25000
東二局
東場:優希 南場:和 西:咲 北:京太郎 ドラ:6p
5巡目
優希「ドーン! 立直一発ツモ……のみ! 2000オールだじぇ!」
咲「4巡目親リーなんて早すぎるよ……振り込まなくて良かったぁ」
京太郎「俺の立直はロンされて通らなかったのに優希のリーチは一発ツモ……
この違いはなんだ……」
優希「それは当然、私が美少女だからだな!」
和「何を馬鹿な事を言ってるんですか。
須賀君の待ちは単騎待ちだった上に捨て牌が生牌でしたが、優希は三面待ちで和了れる確率が高かっただけですよ
優希の手牌 222m 456m 78m 345s 東東 ツモ牌:6m
咲「ホントだ、綺麗な三面待ちになってるね。これなら私もリーチすると思う」
咲(待ちは変わらないから2mで暗槓出来るし)
優希「まー手の進み方によっちゃダブ東とか混一色とかも考えたんだけどなー。
連荘を優先させてもらったじぇ」
京太郎「へーっ、色々考えてんのなー」
和了役:立直、一発、門前清自摸和(30符3翻)親である優希のツモ和了
京太郎:21000(-2000) 優希:31000(+6000) 和:25000(-2000) 咲:23000(-2000)
東二局 一本場
東場:優希 南場:和 西:咲 北:京太郎 ドラ:9p
優希「またまたリーチ!」
和(6巡目の親リーに対し私は一向聴……ここは危険牌を抱えつつ回し打ちですね)
和「……」トン
咲「これ、かな……?」トン
京太郎「こ、これって現物ってやつだよな……?」トン
優希「くぅ、一発ならず!」
そしてそのまま優希は和了れず流局となる。
優希「テンパイだじぇ」(和了れれば立直、平和、ドラ2確定)
和「ノーテンです」
京太郎「テンパイだ」(和了れれば対々和、タンヤオ)
咲「ノーテンだよ」
優希「きょーたろーは当たり牌持っていないか……誰だ?」
和「私ですよ。親リー相手に生牌ばかり掴まされたので最終的にベタオリしました」
優希「やっぱりのどちゃんかー。きょーたろー、命拾いしたな!」
京太郎「俺なら振り込んでたみたいな言い方だなぁおい!?
……まあ、掴まされてたら多分振り込んでただろうけど」
咲「トイトイ、タンヤオのテンパイかぁ。和了りたいのは分かるけどちょっと押しすぎだよー。
危険牌をどんどん切っちゃうから自分の事でも無いのにすごいハラハラしちゃった」
京太郎「だって押し引きとかよく分かんねーし……
でも結果的にはノーテン罰符で俺が3位に浮上だぜ。
まぁ、別に自慢できるような事じゃねーけど」
咲「え……?」
流局:テンパイは親の優希と京太郎、ノーテンは和と咲
優希のリーチ棒が供託点1000点となり、テンパイ連荘の二本場になる。
京太郎:22500(+1500) 優希:31500(+500) 和:23500(-1500) 咲:21500(-1500)
咲「あ、ホントだ。京ちゃんが3位になって私が最下位に……」
ヒュオオオ……
煌「あ……」ゾワゾワ
煌(また寒気がしてきました。昨日と同じですね……
ここから宮永さんの本気が見られるんでしょうか)
照(咲……やっぱりまだ……)
東二局 二本場
東場:優希 南場:和 西:咲 北:京太郎 ドラ:西
3巡目
京太郎「これでいっか……」
京太郎の捨て牌:8s
咲「……ポン」
優希「こんな巡目から鳴いてくるとは……連荘を止めに来たか。
いいじぇ、受けて立ってやるじょ!」
咲の手牌 7m 67p 23s 555s 西西西 福露:888s
煌(さて、これで宮永さんの役牌ドラ3の一向聴ですけど、どの牌を捨てるのでしょうね。
普通なら7mでしょうが……)
咲「……」トン
咲の捨て牌 6p
煌(え……? 孤立してる萬子を残して手を遠ざけた?
何故そのような打ち方を……まさか)
次巡 咲のツモ番
咲の手牌 7m 7p 23s 555s 西西西 ツモ牌:5s 福露:888s
ヒュオオオ……
咲「カン」
嶺上牌からのツモ:7m カンドラ:4p
煌(7mを引いてきた……! これはもう間違いありません。
宮永さんには嶺上牌に何があるか見えているんですね。これはすばらですよ!)
咲「……」
咲の捨て牌:7p
3巡後
咲「……」
咲のツモ牌:西
ヒュオオオ……
咲「カン」
嶺上牌からのツモ:4s カンドラ:東
咲「……ツモ。3200・6200」
咲の手牌 77m 23s 555s ツモ牌(嶺上牌):4s 福露:8888s(暗槓) 西西西西(小明槓)
煌(加槓からの嶺上開花……嶺上牌が見えるだけじゃなく槓材も集まりやすいと言うことでしょうか)
優希「また嶺上開花か! 咲ちゃんは珍しい役を和了るなぁ」
和(なるべく対子や刻子を抱え込む、それが宮永さんのポリシーだと言うことでしょうか。
そうすれば確かに必然的にカンや嶺上開花の機会には恵まれますが……
そんな重い手作りで何度も和了れるほど麻雀は甘くないですよ)
和了役:翻牌、嶺上開花、ドラ4(跳満)子である咲のツモ和了+供託点1000点回収
京太郎:19300(-3200) 優希:25300(-6200) 和:20300(-3200) 咲:35100(+13600)
東三局
東場:和 南場:咲 西:京太郎 北:優希 ドラ:4s
和(私の親番……配牌は悪くないですしまずは一つ和了って連荘ですね)トン
咲「……リーチ」
咲の捨て牌:1m
京太郎「ダブリーですとー!? ええいもうこれしかねー!」トン
京太郎の捨て牌:西
優希「ほっ……助かったじぇ」トン
優希の捨て牌:西
和「……」トン
和の捨て牌:1m
咲「……ツモ、2000・4000」
優希「ダブリー一発ツモ!? あと一手早かったら地和だじょ!」
京太郎「すげー……」
和(あっさりと親が流されてしまいましたか。
昔の事とはいえあの宮永先輩と打っていた実力は本物、と言った所なんでしょうか。
全中にも大星さんを始めとして手強い人はたくさんいましたけど、高校の世界にはもっと色んな人がいるんですね。
……面白いじゃないですか)
煌(また和了った! 完全に独走状態じゃないですか!)
咲「……」
煌(……でも。どうしてでしょう。全然嬉しそうではありませんね。
こういう事が出来るのは、麻雀が大好きな中から選ばれた一部の人間であるはずなのに)
和了役:ダブル立直、一発、門前清自摸和(40符4翻の満貫切り上げ)子である咲のツモ和了
京太郎:17300(-2000) 優希:23300(-2000) 和:16300(-4000) 咲:43100(+8000)
東四局
東場:咲 南場:京太郎 西:優希 北:和 ドラ:4s
咲「……あ、あれ? 私……」
和「宮永さん? 宮永さんの親番ですよ?」
咲「……えっ? あ、あれ? ごめんなさい」
京太郎「呑気に構えてるとまた抜かれっぞー」
咲「そ、そうだね……」アセアセ
煌(あら、背筋の寒くなるような感じが消えましたね。
集中力はそんなに続かないと言うことなのでしょうか)
8巡目
和「リーチ」
和の捨て牌 9s 白 南 4s 中 1m 2s
和の手牌 222345(赤)67p 11s 発発発
煌(役牌ドラ1赤1で2・5・8pと1sの多面待ちですか。
しかも4sのお陰で1sはスジ引っ掛けになっていますね。
これは和了れる可能性高いですよー)
咲「えーと、これかな?」
咲の捨て牌:1s
和「ロン、8000です」
咲「あ、はい……」
煌(意外とあっさり引っ掛かっちゃいましたね。
親だから連荘のために和了っておきたかったにしろ、この点差で無理せずベタオリで親を流すべきだったはずです。
ちょうど現物の対子がありましたし、それから落としても良かったように思いますが……)
和了役:立直、一発、翻牌、ドラ1 赤1(満貫) 子の和から咲への直撃
京太郎:17300 優希:23300 和:24300(+8000) 咲:35100(-8000)
南一局
東場:京太郎 南場:優希 西:和 北:咲 ドラ:4p
4巡目
咲「……」トン
咲の捨て牌 白
京太郎「それポン!」福露:白白白
更に7巡
咲「……」トン
咲の捨て牌 中
京太郎「またまたポン!」副露:中中中
京太郎の捨て牌:4p
優希「おっとそれチー!」福露 345p
煌(対子になっている三元牌を二枚も捨てた……?
須賀くんが抱えてるのを察してさっさと吐き出したんでしょうか。
いや、それが分かってるなら七対子しか狙えない状況になろうと小三元や大三元の目は潰しておくべきです。
一体どういう意図が……?)
12巡目
優希「それだー! ロン! 3900!」
京太郎「げっ……俺の大三元がー!」
優希「あぶなかった……親の役満とか完全に勝利有りだからな。突っ張って良かったじぇ。
ていうか咲ちゃんとのどちゃん、あからさまに役満の気配あったのになんで差し込んでくれないんだ!」
咲「直撃で飛び終了だけは勘弁したいかなと」
和「私はラス回避優先です」
優希「消極的だなぁ。そんな体たらくでは勝利は掴めないじぇ!」
和(そもそも発二枚は私が持っていたので大三元はあり得なかったんですけどね)
和了役:タンヤオ、ドラ2(30符3翻) 子の優希から京太郎への直撃
京太郎:13400(-3900) 優希:27200(+3900) 和:24300 咲:35100
南二局
東場:優希 南場:和 西:咲 北:京太郎 ドラ:白
優希「2位浮上で親番来たじぇ! タコスぢから切れてきたけどここで一気にまくってやるじぇ!」
12巡目
和「ツモ。1300・2600」
優希「やっぱりタコスぢからが無いと駄目だじょぉぉぉぉ……」
和(裏は乗りませんでしたか、仕方がないですね。
トップとの差は4300ですし親番で何とかしましょう)
和了役:立直、門前清自摸和、平和、タンヤオ(20符4翻) 子の和のツモ和了
京太郎:12100(-1300) 優希:24600(-2600) 和:29500(+5200) 咲:33800(-1300)
南三局
東場:和 南場:咲 西:京太郎 北:優希 ドラ:7p
1巡目
和「……」トン
和の捨て牌:北
咲「……」トン
咲の捨て牌:西
京太郎「あ、それポン」福露:西西西
5巡目
咲「……」トン
咲の捨て牌:7p
煌(え……?)
京太郎「あ、それもポン」福露:777p
6巡目
咲「……」トン
咲の捨て牌:8p
京太郎「あ……それロン!」
咲「え……?」
京太郎の手牌 456m 222p 8p ロン牌:8p 福露:777p 西西西
咲「あわわ、壁の向こう側だから安全だと思ってたのに」
京太郎「壁……? なんだそれ」
和「所在が明らかになっている牌を頼りに比較的安全な牌を推察する技術ですね。
とはいえ、これは両面待ちだと想定しての物なので単騎待ちの今回には当てはまりませんが」
優希「そもそもこれワンチャンスの壁だしそこまで安全でも無いじぇ。
どれどれ、咲ちゃんの手牌はどんな―――」
煌「片岡さん、対局中に他人の牌を見るのはマナー違反だと私に注意してくれたのは貴女ではありませんでしたか?」
優希「あ……っと、これは失礼したじぇ。
ともかく、きょーたろーにとってこれが人生初の和了になった訳だな! 気分はどうだ!」
京太郎「ロンって言うのにすげー力入っちまったよ。和了れるとやっぱ気持ちいいもんだな!」
咲「おめでとう京ちゃん。って振り込んだ私が言うのはちょっと情けないけど」
照「……」
優希「宮永先輩どうしたんだ?
チャンピオンからするときょーたろーのマグレみたいな和了が許せないとか?」
京太郎「え、マジっすか。なんかすいません……」
照「あ、いや……そんな訳じゃないよ。
おめでとう須賀くん、君の麻雀は今この瞬間から始まったと言っても過言じゃない。
これから色んな和了を積み上げて行ってどんどん上達していって」
京太郎「あ、はい。有難い言葉ありがとうございます!」
咲「京ちゃん、ありがたいとありがとうで言葉が被ってるよ」
京太郎「うるせー! そういう突っ込みだけは一人前だよな咲はー!」グリグリ
咲「ちょ、ちょっと、いーたーいーよーっ」ジタバタ
煌「はいはい、まだオーラスが残っていますからやっちゃって下さいね!
この点差なら誰にも勝利の目はありますから最後まで気を抜かないように!」
四人「はい!」
照「……」
煌(宮永先輩もやっぱり気づいているんでしょうね……)
和了役:飜牌、ドラ3(30符4翻) 子の京太郎の咲への直撃
京太郎:19800(+7700) 優希:24600 和:29500 咲:26100(-7700)
南四局
東場:咲 南場:京太郎 西:優希 北:和 ドラ:1s
優希「あれ? 点差が開いてないのもそうだけど、このままだと西入しそうだじょ」
煌「そういえばそうですね。
うーん、基準となる点数は決めていませんでしたし、今回はトップが30,000以下なら西入としましょうか」
和「分かりました」
和(どんな形であれ和了れればトップ確定の状況ですし、役牌か喰い断で最速で終わらせてしまいましょう)
優希「嫌な予感がするじぇ……」
咲「……」
2巡目
京太郎「……」トン
京太郎の捨て牌:北
和「ポン」 福露:北北北
優希(役牌が鳴かれた! これは最速のギアで来そうだじょ)
4巡目
咲「……」トン
咲の捨て牌:9p
和「ポン」 福露:999p
優希「あー、これは……」
5巡目
咲「……」トン
咲の捨て牌:6s
和「ポン」 福露:666s
優希「駄目っぽそうだじぇ……」
6巡目
和「ツモ。400・700です」
優希「やっぱり逃げ切られたかー……」
和了役:飜牌(40符1翻) 子の和のツモ和了
京太郎:19400(-400) 優希:24200(-400) 和:31000(+1500) 咲:25400(-700)
トップが西入の基準点を越えたので終局
スコア 京太郎:-6 優希:-1 和:31000:+6 咲:25400 ±0
和「お疲れ様でした」
優希「お疲れー。終わってみれば思ったよりスコアが平坦になったなー」
京太郎「お疲れさん、東場では咲が無双してて俺なんて和了れないまま飛ぶんじゃないかと冷や冷やしてたぜ」
咲「お疲れ様でした。壁とかスジとか下手に知ってるせいでそれに頼りきっちゃったよ」
煌「4人ともお疲れ様でした。
では起家になった人が順に抜けていく感じでどんどん回していきましょうか」
優希「えー! そんなの私が不利なんですけどー!」
照「だったら起家から東南西北の順番で抜けていく事にすれば良いと思う」
優希「それだ! さすが宮永先輩!」
京太郎「ともかく今回は俺が抜けるって事っすよね」
煌「じゃあ次は私が入りましょうか。宮永先輩、牌譜の記録をお願いしますね」
照「分かった。須賀君にも書き方を教えながら記録したいからゆっくり目に対局して欲しい」
煌「了解しました」
京太郎「よろしくお願いします」
※ここからは闘牌描写はスキップしてスコアだけになります
スコア 優希:+20 和:+4 煌:-24 咲:±0
優希「やったー! 一位だじぇ!」
煌「まぁ、いきなり親ッパネに振り込んだらこうなりますよね……」
咲「あはは……トバなかっただけでも運が良かったですね」
和「南家だった私が抜ける番ですね。二位で抜けるのは心残りではありますが仕方ないですね」
照「じゃあ次は私が入る。須賀くんは今度は和から牌譜の書き方を教わっておくように」
京太郎「よ、よろしくな!」
京太郎(ラッキー!)
咲「むー……」
スコア 優希:-26 照:+36 咲:±0 煌:-10 (東四局の照の親番で優希が飛んで終了)
優希「じょー……」(天を仰ぐ)
咲「何も出来ないまま終わっちゃったよ……やっぱりお姉ちゃんはすごい」
照「……」
煌「打ち合いに応じてしまった片岡さんの意気は買いたいのですが、運が無かったとしか……」
咲「えっと、次は西家の私が抜ける番ですよねっ」
煌「そうですね。代わりに……二回休んでる須賀くんに入ってもらいましょうか」
京太郎「お、俺っすか!? 宮永先輩と同じ卓に入って無事でいられるんだろうか……」
咲「……」ガックシ
和「宮永さん、もしかして牌譜の記録方法が分からなかったりします?」
咲「分かるよー……」
和「その割にはなんだか困ってるように見えますけど」
咲「困っているというか何というか……はぁ」
和「?」
スコア 京太郎:-22 煌:-18 優希:-15 照:+55
三人「……」
和「これは……圧倒的ですね」
咲「うん……」
照「さ、三人ともオーラスまで誰もトバなかったんだから……」
煌「うーん、宮永先輩はやっぱり強いですね! すばらです!」
京太郎「次元の違いを感じた……」
優希「今この時を生きていられることに感謝したい気分だじぇ……」
煌「さてと、外も暗くなってきましたし今日は終わりにしましょうか。
私は牌譜のデータをパソコンに入力してから帰るので皆さんは先に解散して下さい」
和「あの、そういう事でしたら私も何か手伝えると思うのですが」
煌「いいえ、こういうのは部長の仕事であり特権ですから。
真っ先に確認して明日以降に繋げたいからやってるんです。気にしないでください」
和「そうですか。そのデータ、入力が終わったら私ももらって良いですか?」
煌「勿論! でも他の人に見せるのだけはやめて下さいね。
宮永先輩や原村さんの情報は外部の人にはなるべく秘密にしておきたいですから」
和「分かりました。ありがとうございます」
優希「のどちゃんが他人の牌譜を見るだと……?
『相手が誰だろうと自分のベストを尽くすだけです!』って言ってたのどちゃんはもういないんだなぁ」しみじみ
煌「それでは今日は解散! 皆さんお疲れ様でした」
一年四人「お疲れ様でした!」
照「お疲れ様、外はもう暗いからみんな気をつけて帰ってね」
煌「宮永先輩も先に上がって良いですよ」
照「え、でも……」
煌「折角同じ部活になったんですし、たまには妹さんと話をしながら帰って下さい」
照「……分かった、ありがとう。だってさ咲、一緒にかえろ」
咲「うん、途中までは京ちゃんも一緒だけど良いかな?」
照「むしろその方が助かる。夜道を私達だけで帰るのはやっぱりちょっと不安だし」
京太郎「俺なんかで良ければエスコートは任せて下さい」
照「よろしく」ぺっこりん
照「じゃあお先、煌もなるべく早く帰るようにね」
煌「はい、分かっていますよ」
咲達の帰路
照「咲はいつも須賀君に送ってもらってるの?」
咲「うん。中学が同じなのもあって結構ご近所さんなんだー」
京太郎「そうなんですよねー。ほっとくとすぐ迷子になるんで。
ていうか咲がいるって事は宮永先輩も同じ中学だったんですよね?」
照「うん。実はどこかで会ったことがあったのかも。
生徒会やクラス委員とは無縁だったからそんなに目立ってた訳じゃないけど」
京太郎「それが今やインターハイの個人戦王者ですもんねー。
宮永先輩みたいなOGがいるんだから、うちの中学も捨てたもんじゃないですね」
照「OGじゃない、卒業生。私まだオールドじゃないから」
京太郎「ああすんませんっ」
咲「お姉ちゃんってそういう所結構気にするよね」
照「間違いを訂正するのは当然の事だから」
咲「言葉の意味に囚われすぎだと思う。
話し言葉と文章言葉は違うんだからもっと柔軟に考えないと駄目だよ」
照「その結果たくさんの誤植が生まれた。これはいけない事だと思う」
咲「だーかーらーっ。しゃべる時にそこまで堅苦しく考えてる人なんてめったにいませんーっ。
今は文章にもシンプルさが求められる時代なんだよっ」
照「そんなの認めない」
咲「うぅーっ。この頑固者ーっ」
京太郎(あーなんか微笑ましい光景だなぁ。俺はしばらく黙っとこう)
部室
煌「さてと、ちゃちゃっとデータを入力して帰りますかね」カタカタ
煌(対局ごとにメンバーの名前を入れ替える、このひと手間が実に心地良いですね。
それだけ部員が集まったのだと実感させてくれます。
さて、入力はこれで終わりましたし各種データの集計に入りますか)
煌「と言っても、かつての部員の方が残してくれたアプリにデータを突っ込むだけなんですけどね」ポチポチ
煌(ふむふむ、宮永先輩は相変わらず圧倒的ですね。和了率がとんでもない数字ですよ……
原村さんは最終的な収支ではほぼプラスで連対率も高く安定してますね。
片岡さんは落差が激しいですが常に一位を狙い続けての結果ですし爆発力もあります。
須賀君はちょっと放銃率が高いですね。まずはオリるタイミングなどを教えるべきでしょうか。
そして宮永咲さん……時折宮永先輩と対峙している時のようなプレッシャーを感じるのですがイマイチ安定しないんですよね。
何より、あの時の南三局……)
宮永咲:77p 888p 111m 333m 東東 2m
煌(最低でも三暗刻対々和ドラ2の跳満、そもそもツモり四暗刻のテンパイですよ?
あの巡目でそれだけの手牌に出来る豪運にも注目すべきですが……
そんな事よりもドラの7pを落とす理由の方が気になって仕方ありません。
手加減してるように見えると思い、牌を見ようとした片岡さんを止めたは見たものの……
まともな理由を探す事が困難な一手なんですよね。
しかも自分で1m3枚と3m3枚を持ってるから安牌に近い1mや2mではなく8pを落として直撃……
単騎待ちだったのでどちらにしろ読めなかったのですが、他の選択肢はいくらでもあったはず。
あれではわざと振り込んだようにしか……ん?)
一戦目 宮永咲:±0 二戦目 宮永咲:±0 三戦目 宮永咲:±0
煌「三連続でプラマイゼロ……!?」ガタッ
煌(まさか、毎回プラマイゼロを狙っていた……?
一位を取り続けるより格段に難しい事を、あの宮永先輩がいる卓でもやっていたと言うんですか!?
いや、宮永先輩が強いのは確かですが不意に大きな一発が来るような高火力型の打ち手ではありませんから打点が読みやすい。
点数調整をする上では逆にやりやすい相手です。もしかして……)
煌「……いや、そんなはずはありませんよね」
煌(ああ、一瞬でも宮永先輩が宮永さんのプラマイゼロに協力してるだなんて思ってしまった自分が恥ずかしい。
初心者が相手でも敬意を持って全力をぶつけるあの人が手加減をする事だけは絶対にない。
ですが、毎回プラマイゼロを狙う宮永咲さんとプラマイゼロにとって都合の良い打ち方を宮永先輩。
二人の間に何かあるのは間違いありません。
あまり人の家の事情に口出しはしたく無かったのですが……
このデータを見れば原村さんが宮永さんに良くない感情を抱くに違いありません。
清澄高校麻雀部の部長としての私がしなければならない事、それは―――」
宮永家・照の部屋
prrr
照「もしもし、どうしたの煌こんな時間に」
煌『夜分遅くにすいません。今日の牌譜をまとめていたらある事に気づいてしまいまして」
照「……そろそろ来ると思ってた」
煌『宮永咲さん、妹さんが毎回プラマイゼロを狙っている事、やっぱり気づいていたんですね』
照「……うん」
煌『私は別に構わないのですが、向上心と勝気の強い原村さんとは絶対に反目しあう事になります』
照「……うん」
煌『それで宮永さんか原村さんのどちらか抜ける事になってしまえば団体戦にも出られなくなります』
照「……うん」
煌『何より、二人だけではく片岡さんや須賀君も私達にとって大切な後輩です。
私達には全員が楽しく正しく研鑽に励めるようにする義務があります』
照「……うん、その通りだと思う」
煌『なので、明日はいつもより1時間早く登校してきて貰えないでしょうか。
咲さんや宮永先輩がどのようにして今の打ち方になったのか。
そして、咲さんが麻雀の事を好きではない理由を聞かせてもらいます』
照「……っ。そこまで分かるんだ」
煌『最後のはカンですよ。一人の麻雀好きとしてのね』
照「分かった。明日はなるべく早めに家を出るよ。じゃあお休み」
煌『お休みなさい』ピッ
照「……この話を他人にするのなんて初めてだな。大丈夫かな。
いや、きっと大丈夫。煌なら分かってくれるはず」
照(余計な事を他人にバラすお姉ちゃんを許して貰おうとは思わない。
でも、咲にまた麻雀の楽しさを思い出してもらうためなら私は―――)
照「なんて、一人で悩んだりしてても仕方ない。明日は早いしもう寝よう」
照(願わくば明日が咲にとって良い転換期になりますように……)カチャ
以上で今回の更新は終わりです。
時間をわすれて一気読みしちゃった
ちょーおもしろいよー
これとアルバイト以外にも書いてるものがあったら教えて欲しいよー
県名が表示されなくなったらしいのでトリップを付けてみるテスト。
>>277
モモ「屋上のステルスさんっすよ」
洋榎「必勝祈願や!」
この2つとかがそうですね。
他にもVIPで即興SSをたまに書いてたりしました。
即興は時間辺りの文章量は増えますけど質が安定しないので最近はほとんどやってませんが……
ジリリリリ パタン
照「……ん」ノソノソ
照「顔洗ってこよ」
洗面所
母「おはよう、照」
照「お母さんおはよう」
母「ご飯ならもう出来てるわよ」
照「ん、ありがと」ジャーバシャバシャ
母「それにしても今日は早いのね」
照「うん、学校でちょっとね」フキフキ
母「そっか。高3にもなると色々あって大変でしょうね」
照「うん。あ、タオルは洗濯機の中で良い?」
母「待って、今からお父さんの服を回すからこっちのカゴに入れといて」
照「わわ、危ないところだった」
母「危ないところって……
気持ちは分かるけどそこまで言われるとあの人が可哀想になってくるわね」
照「でも嫌なものは嫌」
母「まあ貴女くらいの年だとそうよねぇ」
リビング
父「おはよう、早いな」
照「おはようお父さん」(トースターに食パンセット)
父「学校はどうだ?」
照「今は楽しいよ」
父「そうか」
照「うん」
父「……」
照「……」
チーン
照「……」食パンぱくぱく
父「……」コーヒーごくごく
照「ご馳走様。着替えたらすぐに出るから先に言っておくね。
行って来ます、お父さん」
父「おう、行ってらっしゃい」
スタスタ
父「……」
清澄高校・麻雀部部室前
照「あ、煌だ。おはよう」
煌「おはようございます、宮永先輩も今来たばかりですか?」
照「うん。鍵を取りに行ったら先に取りに来たって言われた」
煌「そうですか、とりあえず中に入りましょうか」ガチャ
照「そうだね」
煌「飲み物はココアで良いですか?
もうすぐ暖かくなってきますし今のうちに使いきってしまわないと」
照「良いよ、ココア好きだし」
煌「分かりました。ココアと言えば、私が初めてここに来た時も飲んでましたよね。
殺風景な部室なのにお菓子や甘い飲み物だけは置いてあるんだなって思ったものです」
照「あれはいつか来る新入部員やいつか戻ってくる元部員に振舞おうと思って用意してた。
一年の時は結局誰も来なくて、賞味期限前に全部自分で食べる事になってたんだけど」
煌「そうだったんですか……」
煌(うーん、この振りはすばらくなかったですね。
大量に置かれていたお菓子にそんな経緯があったなんて今まで知りませんでしたよ)
照「でも、色々味見してる内にお菓子自体が目的になっちゃってたんだけどね」
煌「今でも結構買い込んでますもんね」
照「うん、昔と違って一緒に食べる人もいるから楽しい」
煌「原村さん、片岡さん、須賀くん、そして宮永さん。今年は4人も増えましたね。すばらな事です」
照「私にとっては去年増えた一人が一番意味があるんだけど」ボソッ
煌「何か言いましたか?」
照「どこから話を切り出そうかなって考えてただけ」
煌「私はいつでも良いので宮永先輩のタイミングに合わせますよ。ただ―――」
照「ただ?」
煌「あまりに遅いとホームルームが始まってしまいますのでそれまでにはお願いします」
照「……そうだね。ホームルームは大事だね。
よし。やっぱり時系列通り順番に説明していくよ」
煌「よろしくお願いします」
―――あれは私が8歳で咲が6歳の時だった。
咲「今年もいっぱいお年玉もらったね!」
照「うん。そうだね」
咲「何を買おうかなー。やっぱりお菓子かなー?」
照「私は新しい筆箱買いたいかな」
咲「じゃあ私はキュアキュアのやつを買う!」
照「キュアキュアかー。私もそれにしようかな」
咲「おそろいだね。この際だからみんなキュアキュアで揃えちゃおー」
照「おー」
母「こらこら、そんな風に買い物したら折角貰ったお年玉をいきなり使いきっちゃうわよ?」
咲「やだ! キュアキュア買いたい!」
照「使わなかったらお父さん達が取り上げちゃうんだし、それなら全部使っちゃうよ」
父「取り上げるわけじゃないんだけどなぁ」
照「お父さん達が何を言っても私達は買い物に行くんだからね」
母「もう、仕方ない子達ねぇ。貴方」
父「はぁ、出来ればこんな事したくは無いんだがな……
照、咲、ここはそのお年玉をどうするかでお父さん達と勝負をしようじゃないか」
咲「しょうぶ? 何するの? じゃんけん?」
母「これよ」
父「どっこらしょっと。これを出すのも久しぶりだなぁ」
照「なんだっけこれ。ドンジャラ?」
父「ちょっと似てるけど違うな。これは麻雀と言う遊びなんだよ」
咲「まーじゃん?」
母「そう、麻雀。今からやり方を教えるからちょっとやってみましょう」
父「もしお父さん達に勝ったらお年玉は好きにして良いし、お父さん達がもう一回お年玉をあげようじゃないか」
照「分かった。それだったらやる。咲もそれで良い?」
咲「うん。お年玉増えるなら頑張る!」
照「そうだね、一緒に頑張ろう」
咲「おー!」
そして対局がスタートした。
父「ロン、3900だが点数計算はまだ早いだろうし4000にするか」
咲「ふぇぇ。全然和了れないよぉ」
照「難しいね」
結果 父:48000 母:46000 照:10000 咲:-4000
咲「棒が無くなっちゃった……」
母「これで終わりね」
照「何も出来なかった……」
父「さて、負けた二人には罰ゲームだな」
母「そういう事だから負けた二人のお年玉は一部没収させてもらうわよ」
咲「えぇ~!?」
父「でも負けたんだから仕方ないだろ?」
照「……うん」
これが私と咲の人生初の麻雀だった。
煌「お年玉を賭けての麻雀だったんですか」
照「実際は無計画にお金を使おうとする私達からお金を取り上げるための方便だったんだけどね。
その時のお金は学費の一部になってたりするよ」
煌「子供の好き放題にさせるのは優しさではなく甘やかしてるだけですからね」
照「うん。聞き分けの無い私達を納得させるためには有効な手段だったと思う。
今でも無駄遣いをしないように教えてくれた事には感謝してる」
煌「くれた事には……?」
照「その手段として麻雀を選んだ事が良くなかった。
実は私達の両親ってインターハイ出場経験者で元実業団の選手だったんだ」
煌「元県代表だったんですか! すばら!
あ、でもそんなお二人が子供相手に自分の土俵で戦うとは……」
照「うん、少し大人げないよね。それに……」
煌「それに?」
照「二人は、プロを夢見ていたほどだった自分達の執着。
そして私達の隠された力を読み違えていた」
―――そして、少し大人げない手お父さん達以上に私達は意地っ張りで何も知らない子供だった。
そんな二人に本気で勝とうとするくらい無謀であり、勝つことがどういう事か全く分かってないくらい無知でもあった。
照「お年玉、結局これだけになっちゃったね」
咲「キュアキュアセット揃えられないね……」
照「咲、次は勝てるように頑張ろう。キュアキュアセットを揃えるんだ」
咲「うん……」
照「そのためには『まーじゃん』に強くならないとね」
咲「でもどうすれば良いか分からないよ」
照「とりあえずちゃんとルールと役から覚えないとだね」
咲「分かった、頑張る」
でも麻雀はルールすらうろ覚えの子供が簡単に勝てる競技じゃない。
私は基本的なルールだけはすぐ覚えたけど、牌効率や押し引きのタイミングは全く分からないから中々2位以上になれかった。
咲に至っては役の有り無しを中々覚えられずにいた。
お父さんもお母さんも仕事が忙しいから中々打つ機会も無かったし、私達は中々上達する事は無かった。
1年後:照9歳、咲7歳
咲「ツモ! いーぺーこードラ4!」
母「残念だけど咲は一度チーをしているからその役は成立しないわよ?」
咲「え? そうなの?」
父「和了りの形にはなってるから、4sだったらタンヤオで和了れてたんだけどなぁ」
父(ドラ牌の暗槓でドラ4か。引きの強さは凄まじいな。
ちゃんとルールを覚えれば伸びるかもしれん)
照「惜しかったね」
咲「うー! つまんない! もうやめる!」ドタバタ
三人「……」
照「7歳くらいの子供だったら当然の反応だよね」
煌「そうですね……7歳とかならそれくらいの方が健全な反応だと思います」
照「お父さん達もそう思ってたみたい。
最低限のアドバイス以外は特にフォローはせず、晩御飯にプリンを付けるくらいで何とかなると思ってたみたい」
煌「プリンですか。……そういえば宮永先輩が特に好きなお菓子って」
照「麻雀で勝った時はご褒美として出てきて、負けた時は没収された分のお年玉から還元される形で出てきたからね。
だから、私達にとってプリンは麻雀とは切っても切れない関係な特別なお菓子なんだ」
煌「なるほど……」
照「話が逸れたね。
えっと、とにかくお父さん達はそんな風に思っていたんだけど私はそうは思っていなかったんだ」
煌「と言いますと?」
照「そういう風に泣いたり怒ったりする咲を見ていられなかった。
お姉ちゃんだっていう責任感と、それ以上に咲が麻雀をやめてメンツが足りなくなるのが嫌だったんだ。
その頃にはもう私は麻雀に取り憑かれていたんだろうね」
煌「……」
照「だから咲にはなんとか勝ってもらって楽しさを知って欲しかった。
でも私は今も昔も手加減が嫌いだから、わざと振り込んだりなんて事もしたくは無かった」
だから私は子供らしい単純な発想で、咲に『ひっさつわざ』を伝授する事にしたんだ。
ブロロロロ
照「……」(天才少女・三尋木咏ちゃんも大絶賛! 『はやりんのラブじゃん☆』読書中)
咲「うわー綺麗だなー」
照「……」
咲「お姉ちゃんも外見ようよー。キレイだよー」
照「……これだ」
咲「折角ピクニックに来たのに勿体無いよー。お姉ちゃんも景色見ようよー」
照「うっ……気分悪い……」
咲「もう! 本が好きだからって車の中でも読むからそうなるんだよー!
お母さーん! 袋ちょうだい! お姉ちゃんが危ない!」
母「え、ちょっと待ってちょうだいね。
いつもは確かダッシュボードに……」パカ
『スナック つぼみ』と書かれたマッチ
父「おい、ちょっとまっ」
母「……貴方、後で少し話があります」
父「ち、違うんだそれは!」
母「言い訳なら後でちゃんと聞いてあげますよ」(ニッコリ)
父「お、おう……」
照「うぇ……もうダメ……」
咲「お母さーん! 早くふくろー!!」
長野県のとある山の頂上
咲「大丈夫?」(背中をさすりながら)
照「ありがとう、何とか落ち着いてきた……」
咲「お姉ちゃんずっと本を読んでたけど何読んでたの? 面白かった?」
照「麻雀の本を読んでたんだ」
咲「麻雀の話はもう良いよー。つまんないし」
照「そんな事言わずに見てよ。このページ」
咲「りんしゃんかいほう?」
照「これって他に役が揃ってなくても鳴いてたりしても、これだけで和了れるらしい」
咲「ふぅん」
照「なんか必殺技っぽくてカッコイイと思わない?」
咲「分かんない。そんな事よりほら、あそこに花が咲いてるよ」トテトテ
照「あ、待ってよ」トテトテ
そこに咲いていたのは一輪の白い花だった。
当時の私達じゃ花の名前なんて分からなかったけど、とてもキレイな花だった。
咲「うわぁ、キレイだねー」
照「うん」
照「……咲」
咲「ん? なーに?」
照「さっきの話には続きがあるんだけど、嶺上開花って山の頂上に咲く花っていう意味らしいんだ」
咲「山の頂上に咲く……? あ! 私の名前だ!」
照「そう。だから、私は咲にピッタリのひっさつわざだと思うんだ」
咲「うん!」
照「大きな木なんて生えてないような場所でもこの花はこんなにキレイに咲いてるんだ。
咲もこの花みたいに強くなれるよ。だから、また麻雀やろうよ」
咲「この花みたいに……分かった。私がんばる」
そして―――
咲「カン! ……ツ、ツモ! りんしゃんかいほう!」
父「オーラスに親満ツモか。最後にまくられたなぁ」
咲「やったー! 一位だー!」
照「咲、良かったね」
咲「うん!」
こうして、咲は『ひっさつわざ』を覚えた。
煌「良い話ですね。思い切り車酔いしてたくだり以外は」
照「本当ならもっと格好良く決められたら良かったんだけどね。
小学生の女の子じゃこれが限界だったよ」
煌「ともかく宮永さんが嶺上開花を得意とする理由は分かりました。
ですが、ここまでの話を聞いてる限りですと今の宮永さんとの繋がりがまるで感じられません」
照「そうだね。問題はここからなんだ。
……世間では一部の選手の事を『牌に愛された子供達』だなんて言ってるみたいだね」
煌「去年のインハイで大暴れした選手達が出てきてから言われるようになりましたね。
と言いますか、宮永先輩がその筆頭ですよ」
照「あんまり気にして無かったけどそうらしいね。
でも世間的に筆頭だとされてる私と比べても咲は同じくらいの力があると思う」
煌「非凡な才能の持ち主である事は私にも感じられました」
照「だけど、才能に恵まれているからと言って幸せになれるとは限らない。
それは去年までの私を知ってる煌なら分かるよね?」
煌「……」
照「そう、私達の強さは時として他人の運命すら狂わせる」
当時の私達もそうだった。
麻雀から寵愛を受けた私は徐々に取り憑かれていき、咲はハッキリと拒絶する道を辿る事になる。
さらに1年後:照10歳、咲8歳
咲「カン! ツモ! リンシャンカイホウ!」
母「親満ツモかー。これは厳しいわね」
父「咲はすごいなぁ。でもお父さんだって負けないからな」
照「今日も絶好調だね」
結果 母:+10 咲:+3 父:+1 照:-14
母「ラス親で何とかまくれたわね」
咲「うーん、残念」
父「ははは、惜しかったなぁ」
照「負けちゃった。咲はもう少しだったね」
咲「う、うん……」
咲が『ひっさつわざ』を覚えてからは2位以上になる事も増えて楽しく打っていた。
その代わりに私が4位になることが増えた。
負けず嫌いの私は相当悔しかったけど、なるべく顔には出さないよう頑張ってはいた。
お姉ちゃんとして咲にカッコ悪い所は見せられない。
それに何より、4人で麻雀を打つことが楽しかったからそれを壊したくなかった。
でも、よく気の回る咲にはそんな事なんてお見通しだったらしい。
咲「今日もいっぱい遊んだねー。もう真っ暗だよー」
照「そうだね。早く帰らないとね」
咲「でも外灯さんのおかげで道は明るいね!」
照「うん」
咲「迷子にならずに済むね!」
照「咲は道が明るくても迷子になるけどね」
咲「外灯さんはえらい!」
照「聞いてない……」
咲「真っ暗な道を照らして帰り道を教えてくれる外灯さん……私はお姉ちゃんみたいだと思うんだー」
照「え?」
咲「じゃじゃーん!」(天才少女・三尋木咏ちゃんも大絶賛! 『はやりんのラブじゃん☆』)
照「それ、私が読んでた麻雀の本だよね。
読み終わったから図書室に返したんだけど咲も借りたんだ」
咲「うん。あのねそれでこのページを見てほしいの。
お姉ちゃんにぴったりな『ひっさつわざ』が載ってたんだよ!」
咲が好意で見つけてくれた私の『ひっさつわざ』
それが今後の私達の運命を大きく動かして行くことになる。
照「さて、その必殺技とはなんでしょう?」
煌「え? ええっ!? いきなりクイズですか!?
えーと、今の流れからすると特殊な役だと思うんですが」
照「ヒント、咲だから嶺上開花というのとほぼ同じような発想」
煌「つまり宮永先輩の名前の『照』から連想される役と言う事ですよね」
照「うん」
煌(この字自体が入ってる役は無いですよね。
『咲』から『開花』というように、同じような意味の言葉を見つければ良いのでしょうか)
煌「ええーと、平和、立直、一盃口―――
あ、まさかそれって……」
照「チューレンポートー……?」
咲「うん! 麻雀で一番得点が入る役なんだよ! 最強の『ひっさつわざ』だよ!」
照「役満かー。確かに『ひっさつわざ』っぽいね」
咲「それにちゅうれんぽうとうって昔の人が使ってた懐中電灯の事なんだってー」
照「そうなんだ」
咲「うん。真っ暗でも照らして帰り道を教えてくれる懐中電灯さんや外灯さん。
それが私はお姉ちゃんの名前みたいだと思ったんだー」
照「咲……」
咲「えと、私、なにかおかしい事言っちゃったかな……?」
照「ううん。ありがとう、すごい嬉しいよ」
咲「えへー。これで2人共『ひっさつわざ』が出来たしあいこだね!」
照「そうだね。私にも『ひっさつわざ』が出来たし次からは負けないよ」
咲「私だって負けないからね!」
こうして私にも『ひっさつわざ』が誕生した。
九蓮宝燈、子供だった私には「ちょっと難しい清一色」くらいとしか思わなかったけど、役満の中でも和了れる可能性が特に低いと言われる幻の役だ。
当然、そんな簡単に和了れるわけもない。
でも咲が折角考えてくれた私の『ひっさつわざ』なのだから何とかして和了りたいと思った。
だから私は九蓮宝燈に対してのイメージを固める事にした。
完全に日が沈み真っ暗になった道に火を灯しながら一歩ずつ進んでいく。
それが九蓮宝燈のテンパイに近づいていく様子と似ているような気がして、それなら何とか和了れるような気がした。
―――そして、『和了れるような気がするから』で和了れてしまうのが牌に愛された子供達だった。
オーラス
父(ラス親):51,000 咲(南家):22,000 照(西家):9,000 母(北家):18,000
照(お父さんには東場の親で稼がれ過ぎた。
点差は42,000、勝つためには三倍満以上の直撃か役満ツモ……)
照の配牌 345m 156s 11p 北白中
照「……」(目を閉じる)
咲「お姉ちゃん……?」
父(照に限って投了なんて事はないだろうが……どうしたんだ?)
照(今は南四局。南の空を照らしていてくれたお日様が私のいる西の空へ沈んでいく頃だ。
そろそろ灯で道を照らさないと迷子になっちゃう人が出てくる。
お日様が沈みきる前に火を灯していかなきゃ)
照の手牌 345m 889m 156s 11p 北白中 ツモ牌:1p
照「……」トン
照の捨て牌:北
次順 照のツモ牌:2p
照「……」トン
照の捨て牌:中
さらに5順後
咲「カン!」(6mの暗槓)カンドラ:8m
母「……」
母の捨て牌:6p
照(お母さんは咲にテンパイ気配を感じてオリる気かな。
今は一位だし無理はしないよね)
照「……」
照の手牌 345m 889m 5s 111p 234p ツモ牌:5p
照「……」トン
照の河:北 中 白 白 1s 6s 5s
父「ポン」副露:555s
照(お父さんは早和了りで連荘狙いかな。
でも私がやることは変わらない)
そして、ラスの一巡前―――
照(来た……! 誰にも和了られず何とかここまで来られた)
照の手牌:9m 111p 234p 567p 8 99p ツモ牌:9p
照(夜を迎える直前に全ての道に火が灯った。
後は海に日が沈みきる前に最後の火を灯すだけ……)トン
照「ツモ。8,000・16,000」
11p 123p 456p 789p 99p ツモ牌:9p
父「な……!?」
咲「ちゅーれんぽうとー! お姉ちゃんの『ひっさつわざ』だ!」
母「しかも純正九蓮宝燈……」
父「ちょっと待て。必殺技ってどういう事だ?」
咲「私の『ひっさつわざ』がりんしゃんかいほうでねー。
お姉ちゃんの『ひっさつわざ』がちゅーれんぽーとーなの!」
母「リンシャンがやけに多いとは思ってたけど、あれも狙ってやってたって言うの?」
母(もしそれが本当なんだとしたら二人にはとてつもない強運が宿っているのかもしれない。
それこそ一年目からプロの頂点に立った、あの小鍛治健夜のような天性の才能が……)
父(だが……)
父「……照、咲。次からはその『必殺技』は禁止だ」
照・咲「え……?」
照「私達の強運……いや、ここまで行くともう能力と言って良いかもしれない。
それを認めたからこそだったんだ」
煌「と言いますと?」
照「お父さん達は高校時代から流れや手牌を読む事に重点を置くアナログ派の打ち手だった。
だから私達の言ってる事もすぐに信じてくれたけど、同時にある迷信を思い出した」
煌「……九蓮宝燈を和了った人間には不幸が訪れると言うものですね。
有名な話ではありますが都市伝説の類でしかありませんよね」
照「でも、やっぱり気にはなるよね。
ましてや私のそれは九蓮宝燈を和了るための能力だし。
二人は不吉な物が憑いてるのかもしれないって思ったんだろうね」
煌「宮永先輩……」
煌(でも、自分の名前から連想出来るものであり妹から見つけて貰った役を否定されたのはとても辛かったでしょうね)
照「この頃になると私達も勝つために必要な技術やカンが身についていたからそれでも構わなかった。
子供が夢見るヒーローの『ひっさつわざ』から卒業する時が来た。そう思っていた」
―――でも、私達は牌から愛されていた。情熱的に、そして一方的に。
日増しに強くなっていく私達の能力は何年かすると私達自身にも制御出来なくなっていた。
勝とうとすると自然とその形になってしまう。
それはもう、アナログというよりはオカルトの域だった。
そんな私達の打ち方を見て、二人が現役時代を思い出すのも時間の問題だった。
更に2年後 照12歳 咲10歳
照(タンピン三色を狙おうと思ってたのに今日も筒子が集まってきちゃったな。
筒子は安牌だらけだからオリるのは簡単だけど……)
照「……」トン
照の捨て牌:2s
照(今は3位だし勝つためにはやっぱり和了らないと)
照「ツモ。8,000・16,000」
母「……」ギリ
父「照、それは止めなさいと何度言えば分かるんだ」
照「ごめんなさい」
照(九蓮宝燈の噂は調べたから私も知ってる。でも私は勝ちたい。
それにこれは私の役だから……)
また別の日の対局:オーラス
咲「カン。……あ」
照「咲?」
咲「……え? ああ、うん」
咲「……もいっこカン。リンシャンツモ。2,000、4,000」
父・母「……」
咲「あ。あはは……」
父「……次はお年玉にしよう。そして今回からはレートを上げる」
煌のセリフ抜けてた。>>331を部分を再投稿します……
煌「どうしてそんな事を……」
照「私達の強運……いや、ここまで行くともう能力と言って良いかもしれない。
それを認めたからこそだったんだ」
煌「と言いますと?」
照「お父さん達は高校時代から流れや手牌を読む事に重点を置くアナログ派の打ち手だった。
だから私達の言ってる事もすぐに信じてくれたけど、同時にある迷信を思い出した」
煌「……九蓮宝燈を和了った人間には不幸が訪れると言うものですね。
有名な話ではありますが都市伝説の類でしかありませんよね」
照「でも、やっぱり気にはなるよね。
ましてや私のそれは九蓮宝燈を和了るための能力だし。
二人は不吉な物が憑いてるのかもしれないって思ったんだろうね」
煌「宮永先輩……」
煌(でも、自分の名前から連想出来るものであり妹から見つけて貰った役を否定されたのはとても辛かったでしょうね)
照「この頃になると私達も勝つために必要な技術やカンが身についていたからそれでも構わなかった。
子供が夢見るヒーローの『ひっさつわざ』から卒業する時が来た。そう思っていた」
―――でも、私達は牌から愛されていた。情熱的に、そして一方的に。
日増しに強くなっていく私達の能力は何年かすると私達自身にも制御出来なくなっていた。
勝とうとすると自然とその形になってしまう。
それはもう、アナログというよりはオカルトの域だった。
そんな私達の打ち方を見て、二人が現役時代を思い出すのも時間の問題だった。
更に2年後 照12歳 咲10歳
照(タンピン三色を狙おうと思ってたのに今日も筒子が集まってきちゃったな。
筒子は安牌だらけだからオリるのは簡単だけど……)
照「……」トン
照の捨て牌:2s
照(今は3位だし勝つためにはやっぱり和了らないと)
照「ツモ。8,000・16,000」
母「……」ギリ
父「照、それは止めなさいと何度言えば分かるんだ」
照「ごめんなさい」
照(九蓮宝燈の噂は調べたから私も知ってる。でも私は勝ちたい。
それにこれは私の役だから……)
また別の日の対局:オーラス
咲「カン。……あ」
照「咲?」
咲「……え? ああ、うん」
咲「……もいっこカン。リンシャンツモ。2,000、4,000」
父・母「……」
咲「あ。あはは……」
父「……次はお年玉にしよう。そして今回からはレートを上げる」
母「貴方、どういうつもり……?
そんな事をしたら家族間の遊びじゃなくなってしまうわよ」
父「照ももうすぐ中学生だ。そろそろ真剣勝負の雰囲気を知ってもらう必要がある」
母「だからってなんでお金に絡めるのよ。競技麻雀とギャンブルの麻雀は別物じゃない」
父「現実を知ってもらうためと、俺達自身の気を引き締めるためでもある。
いいか、お前も次からは本気でやるんだ」
母「……分かったわ」スッ
母「……そこまで言うなら私も実業団時代に戻ったつもりでやらせてもらうわ」
咲「お父さん、お母さん……?」
父「これからは卓を囲んでる時の俺達はお父さんとお母さんなんかじゃない。
倒すべき敵だ、そのつもりで打つように」
咲「ま、待ってよお父さん。そんなの」
照「分かった。私もそのつもりでやる」
咲「お、お姉ちゃんまでっ。そんなのおかしいよ!
だって麻雀はみんなで楽しく―――」
父「お前たちの才能がそれを認めてくれないんだよ!
……分かってくれ」
咲「……っ」
南二局
母「ツモ。2,000・4,000ね」
照「親被りで三位……」
南三局
咲「……」トン
父「ロン。12,000」
咲「え……? 辺張待ち……?」
父「なんて温い打ち方をしてるんだ……。そんな調子で勝てると思ってるのか!」
咲「ひっ……」ビクッ
咲「お、お母さぁん……」ブルブル
母「……」ニヤリ
咲「っ」ゾクゾク
照(これが二人の本気か……さすがに強い。目つきが私達を倒しに来てる。正直圧倒されそう。
でも、私だって負けるわけにはいかない……負けたくない!)
オーラス
照(オーラスで西家。これなら今回も……)ゴッ
父・母「……!」
咲「お、お姉ちゃん……?」
照(見える……。今回は索子か)
父「ポン」
母「ポン」
照(私のツモ順を飛ばして安い手で流すつもりだね。
でも、そんな好き勝手にはさせない)ゴッ
照「ツモ。8,000・16,000」
照(そのくらいのつむじ風じゃ私の火は消えはしない……!)
照「これでまくったね」
結果:母:0 照:+40 父:-15 咲:-25
父「……仕方ない。これが今回の賞金だ」バサッ
咲「ほ、本当にそんな沢山あげちゃって良いの……?」
母「何を言っているの? 咲は最下位なんだからこれよりもっと出さないといけないわよ?」
咲「え……そんなの無理だよ! お年玉だけじゃ払えないよ!」
父「負けたのが悪い」
母「そうね、負けたのが悪いわね」
咲「ほ、本気で言ってるの……? うそだよね? 冗談だよね!?」
父「これが現実だ。払えないと言うなら取り返すしかない、自分の力で」
咲「………………ひどいよ。こんなの違う、私は絶対に嫌だ」
咲「だから……私はみんなで楽しく打っていた頃の麻雀を取り戻す」ゴッ
その対局での咲は本当に凄かった。いや、怖かった。
和了るのを止められる気がまるでしなかったし、カンドラを載せたりして一撃ごとが重かった。
私達3人も何とか必死に凌いでいくつもりだったんだけど、大明槓の責任払いでそれすらも難しかった。
それだけ咲は必死だったんだと思う。
結果:照:-40 咲:+55 母:-4 父:-11
咲「お姉ちゃんが飛んだから終わりだね」
照(全く歯が立たなかった。強い、これが咲の本気か)
咲「じゃあ、全員のプラスとマイナスを清算させてもらうね」
母「清算?」
咲「お父さんが負けた分は自分の力で取り返せって言ったから。
だから私はさっき負けた-25の分だけで良い。後はお父さん達に返す」
父「何……?」
咲「これでみんなの借金はプラマイゼロだよ。
だからさっきまでの事は忘れてみんなでまた楽しく麻雀を―――」
母「あんな物を見せられた後で楽しくなんて出来るわけないでしょ。
あれだけの力を見せつけられたのに、このまま引き下がれる訳ないじゃない。続けるわよ」
父「子供相手に大人げないが、俺達も一度は本気でプロを目指した人間だからな。
強い相手とは徹底的にやりあわずにはいられないんだよ。
さて、次はまたレートを上げるか」
咲「……! もうやめてよ! 私は子供だけどこんなのはおかしいって分かるよ!?
お姉ちゃんもそう思うよね!?」
照「良いよ。やろう」
咲「え……」
照「私はただ真剣勝負がしたいだけだから。
ここまでレートが上がったら咲はもっと本気を出さないといけないよね。私はそれが見たい」
咲「お姉ちゃんまで……」
照「じゃあ、サイコロを回すよ」
咲「……」
しかし、その対局での咲はとても静かだった。
ロンやツモの声が響く事も無かったし、何より咲の麻雀をを象徴する鳴きである「カン」を聞くことも無かった。
結果 照:+20 母:-2 父:+2 咲:-20
照「咲……手加減したでしょ」
咲「そ、そんなこと」
照「じゃあなんでカンしなかったの」
咲「それは出来るタイミングが無かったから」
照「しようと思わなかったからだよね。咲なら集められるはずなのに」
咲「……」
照「それならそれで良いよ。咲の小遣いがどんどん無くなっていくだけだし。
今回で何ヶ月分無くなったのかな」
咲「もうやめてよ。もうやだよぉ……」
それは自分が勝てないからでもお小遣いが無くなるから泣き言を言ってる訳でもなかった。
真面目にやれば咲ならむしろ勝ち越しただろう。
それにお父さんもお母さんも麻雀が絡んでいない時は本当に良い親だったから、本当にお小遣いゼロなんて事も無かっただろう。
でも、そんな二人すら豹変させる真剣勝負の『麻雀』をやりたくなくなっていた。
母「ロン。7900」ニヤァ
咲「……」ガタガタ
そして、真剣勝負では生かしておく理由でもない限りは弱い人間から狙われていく。
戦う意志など無い咲に、三人から一族郎党を殺された将兵のような敵対心が突き刺さる。
そして―――
咲「」
その仕打ちに耐え切れなくなった咲の中で、何かが切れるのが見えた気がした。
思い返せばこの頃から私は照魔鏡に目覚めていたんだろうと思う。
でも、そんな事はどうでも良かった。
咲「……」ヒュオオオ……
身も凍えるくらい空気が冷えていく感覚に比べれば些細な事だった。
咲「……カン、もいっこカン。ツモ。2000・4000」
父「ロン、3900だ」
咲「……」ジャラ
結果:父:+5 咲:±0 照:-2 母:-3
咲「……カン、ツモ。1300オール」
咲「……カン、ツモ。700オール」
咲「……カン。もいっこカン。ツモ。8,000」
照「ツモ。8,000・16,000」
結果:照:+15 咲:±0 父:-12 母:-3
それからの咲は吹雪の山でも凍えない機械のように、ただ一つの目標を目指していた。
一切手を抜くことなく精密に、正確に。照魔鏡にもそう映っていた。
だから私達には攻撃に目を向けるあまり防御が疎かになっているんだと思っていた。
……もう少し早く気づいてあげていれば、あんな事にはならなかったかもしれないのに。
父「終局、か……」
母「また照がトップね」
照(さっきから何かおかしい。勝った時でもまるで勝負をしていた気がしない。
最初は咲が食らいついてくるのにオーラスが近くなると急にそれが無くなるから?)
父「咲はまた2位か。一度は照を圧倒したのにさっきからあまりパッとしないな。
まぁ3位やラスばかりな俺達に比べればよくやっている方だが」
母「照を相手に原点付近で踏ん張るなんてよく頑張って―――」
母「……!」(対戦結果をまとめたノートをすごい勢いでめくっていく)
父「どうかしたのか?」
母「……咲、貴女さっきからずっとプラマイゼロを狙ってるわよね」
咲「……」
父「何だと……? おい、どうなんだ。本当にそんなふざけた事をしているのか?」
咲「……ふざけてなんか無いよ」
父「咲、おまえ……!」
咲「だって勝ったらみんな怖い顔するし負けるのも怖いもん!
だから勝ちも負けもしないようにプラマイゼロを狙うしかないの!」
照「……私が大勝出来ないのも咲が何かしてるから?」
咲「私達家族なんだよ!? こんなにお金貰えるような賭けをするなんておかしいよ!」
母「だから一人が負け過ぎないように調整してるとでも言うの?
しかも私にはバレにくいようにそれをしていたなんて……」
父「対局全体の流れを支配するほどの力が無いと出来ないな。
そこまで出来るのに何故勝とうとしないんだ」
咲「だって勝つとみんな私が見たくない顔をするんだもん!
私はみんなで楽しく遊びたいだけだったのに!」
母「だからって手加減されるのは一番屈辱的よ」
咲「私だってこんなの楽しくないよ!」ポロポロ
照「咲……?」
咲「勝っても! 負けても! 勝ちも負けもないようにしてもみんな楽しそうじゃない!
私も楽しくない! もう私にはどうして良いか分かんない!
麻雀なんか……麻雀なんか!」グーの手を作る
咲「大っ嫌い!!!」
ガンッ!
母「咲!?」
咲「大嫌い大嫌い大嫌い! 麻雀なんか無くなっちゃえばいいんだ!!」
ガンッ! ガンッ! ピシ
父「わ、分かった! 分かったからもうやめるんだ!」ガシッ
咲「うわあああああん!」
照「……」
咲が泣きながら小さな握り拳を振り下ろし続けたのは全自動卓のサイコロボックスだった。
小学生の女の子が叩いたくらいじゃヒビが入る程度でしか無くて、逆に咲の手からは血が出ていた。
咲はものすごく痛そうで、ものすごく辛そうな顔をしていた。
咲は麻雀を嫌いになってしまったんだ。私にそう実感させるには十分過ぎる表情だった。
私達が、私が……咲をこんなになるまで追い詰めてしまったんだ。
清澄高校・麻雀部部室
照「これが咲の麻雀が嫌いになった理由で、この日を最後に家族麻雀は廃止になった」
煌「楽しみ方の違いについて、最後まで溝は埋まらなかったんですね……」
照「それもある。でもそれ以上に私達はその強すぎる力に振り回された。
こんな力、無ければ良かったのにって思った事もあったよ」
煌「私や原村さん、片岡さんは宮永先輩とその強さに憧れています。
そんな風に自分を責めないで下さい」
照「分かってる。私はそのお陰で救われたから」
煌「そうですか。私が少しでも役だったのなら光栄です」
煌(……でも、いまだ完全に救われてはいないんでしょうね。
何故なら、私達は宮永先輩の『ひっさつわざ』であるはずの九蓮宝燈を見た事がありませんから。
今のような連続和了フォームになった経緯も分かりませんし)
照「でも咲はまだあの頃から何が正解の道なのか分からないままで彷徨ってる。
だから咲も同じように助けてやって欲しい」
煌(ですが、今は宮永さん……宮永咲さんの事が最優先事項です。
それが宮永先輩にとっても良い事に違いないはず)
煌「分かりました。必ず何とかしてみせます」
照「ありがとう」ペッコリン
煌「わわっ、顔を上げて下さいっ」
照「でも……」
キーンコーンカーンコーン
煌「ほら、もうすぐホームルームが始まりますから教室に行かないと」
照「またホームルームって言ってる。そんなに好きなの?」
煌「別に好きという訳ではありませんが一日の始まりですし……」
照「でも遅れる訳にも行かないね。じゃあ出よう」(頭を上げる)
煌「そうです、そうしましょう」
ガラガラ
照「それじゃあ、また部活で」
煌「また放課後に。それまでには咲さんの事について考えておきます」
照「よろしく」スタスタ
煌「さて、どうしましょうかね……」スタスタ
煌(負けた時の恐怖心がスイッチになっていて、あの凍える咲さんが出てくる訳なんですよね。
あの状態にならないよう、咲さんには最下位になりにくい打ち方を覚えてもらうべきなんでしょうか。
いや、そもそもプラマイゼロにしようとする癖は抜けていない訳ですからまずはそこから直してもらって……)
煌「……いや、それじゃダメでしょ!」
煌(細かい技術とか矯正なんか、そういうアプローチはすばらくない。
咲さんに必要なのは麻雀の楽しさを思い出してもらう事! これしか無いでしょ!
それを原村さん達が咲さんのプラマイゼロに気づく前にやらないと。
そのために私がやるべき事は―――)
煌「決まりましたよ。正直言って私では力不足でしょうがこの作戦で行くしかないですね」
煌(待って下さいね、宮永咲さん。雪山で遭難している貴女を救い出してみせますからね)
これで今回の更新は終了です。
今回のパートはこのSSを始めるにあたって特に書きたいと思っていたシーンの一つです。
なので無駄に力が入って更新が遅くなってしまいました。
長い間お待たせて大変申し訳ありませんでした。
放課後・清澄高校麻雀部部室
煌「皆さんこんにちは。全員揃いましたね」
優希「待ちくたびれたじぇ!」
京太郎「しょうがねーじゃん。咲と……原村は掃除当番だったんだし」
優希(名前で呼ぶかちょっと悩んだな。チャラそうな癖に可愛い所あるじゃんかー)
和「お待たせしてすみません。メンツは揃ってるんですし先に初めてもらっていても良かったのに」
煌「いえ、今日の練習は全員が揃ってからで無いと出来ないメニューだったので」
咲「6人でやる練習ですか?」
煌「厳密には違うんですがそんなところですね。
ところで、二人は何か気づくことはありませんか?」
咲「急に何かと言われても……本棚の本が増えたとかですか?」
和「あ、雀卓が増えてませんか?」
煌「原村さん正解です。須賀君に倉庫から運んできて貰いました」
京太郎「ま、こういうのは今後とも俺に任せて下さい」
煌「ちなみに、昨日の記録をファイリングして置いてあるので本が増えてるというのも正解です」
優希「そっちは知らなかったじぇ。でも普通は雀卓の方から気づくと思うけどなー」
咲「だ、だって毎日ずっとチェックしてたから」
和「花田部長も昨日は編集お疲れ様でした。後で見せて貰いますね」
煌「それも良いですけどまずは練習です。
今日は3人ごとに分かれて三麻をしようと思います」
京太郎「サンマ? なんすかそれ」
照「三人でやる麻雀の事。サンマっていうのはその略称」
煌「一部の牌を使用しなかったり、その事によって消滅する役があったりします」
京太郎「え、マジっすか。なんか難しそう」
照「でも、そのお陰で混一色や清一色が狙いやすくなってるから高い手で和了れたりする。
それに加えて北を抜きドラとして扱えるからさらに打点も上がりやすい」
京太郎「へー、何か派手に点数移動が起こりそうなルールですね」
照「……そうだね」
照(だから、咲のプラマイゼロを崩すためにこの練習方法にしたの?
でもきっと駄目、むしろ逆効果だと思う。
それで良いのだったら自分のフォームを捨ててでも私がスコアを調整してみせれば良かっただけ)
煌「ではメンツの振り分けを発表しますね。
原村さん、片岡さん、須賀くんでこちらの卓へ。
私と宮永先輩、宮永さんであちらの卓で練習をしましょう」
照(煌、あなた一体何を考えて……)
場決めの結果
東家:宮永照 南家:花田煌 西家:宮永咲
東家:片岡優希 南家:須賀京太郎 西家:原村和
煌「席に着きましたか?」
京太郎「着きました。対面に誰もいないっていうのはなんか変な気分だなぁ」
優希「いつでも始められるじぇ!」
和「まだですよ。卓を三麻用の設定にしてからでないと。
花田先輩、ルールや収支の設定はどうするんですか?
大会ルールの4人麻雀に一番近いのはアリアリの丸取りですが」
煌「そうですね。ですが点差計算などが難しくなりますし今回はツモ損で開始点は35,000とします。
無駄鳴きが多い須賀くんに面前での手作りを覚えてもらうためにもチーと喰い断は無しで。
後付けは……有りにしておきましょうか」
和「分かりました。じゃあその設定にしますね」
煌「ではこちらもそのように設定しましょう」
咲「ツモ損で後付だけアリですね。分かりました」
咲(三麻のルールだと一番やりやすいな)
照「……」
煌「では、始め!」
一時間後
和「ロン。5,300です」
京太郎「うげ」
和「これで須賀くんのトビ終了ですね」
優希「今度はダマのシャボ待ちか……」
和「ツモ損ルールでは立直するよりはダマでの出和了りを狙う方が期待値が高い場合もありますからね。
もっとも、相手もそれは承知の上なので普通は警戒しているものなんですが」
京太郎「ぐう……」
優希「やーいやーい、怒られてるー」
京太郎「うっせ」
和「良いですか。須賀くんはまずその不用意な振り込みを少なくするのが大事です。
そうすれば少なくとも飛ぶ可能性は大分減りますから和了ろうとするのはそれからです。
和了りたいのは分かりますけど東一局の親リー相手に二向聴で全ツッパなんて」(以下略)
京太郎「す、すんません……」
優希「マホマホを震え上がらせたのどちゃんのお説教タイムが始まったじぇ……」
優希(触らぬ神に祟りなし。大人しくなるまであっち行ってようっと。
さて、あっちはどうなってるかなーっと)
咲「……」トン
照「……」トン
煌「……」トン
優希「こっちは第四戦目が始まったあたりのようだじぇ。
さて、過去三戦目のスコアはっと……」
一戦目 照:+50 咲:±0 煌:-50
二戦目 照:+30 咲:±0 煌:-30
三戦目 照:+40 咲:±0 煌:-40
優希「圧倒的じゃないか宮永先輩は……
てゆーか順位が毎回一緒だし、花田先輩が弱いのか?」
煌「結構グサっと来る事を言いますね」トン
優希「あ、えーと……」
煌「まあこのスコアは紛れも無い事実ですし片岡さんがそう言うのも無理はないですよ」
優希「つ、次はきっとやれるじぇ!」
煌「ありがとうございます。さて、頑張りますよ!」トン
照「ロン。1,000」
煌「あ、はい……」
優希「は、話しかけてごめんなさいだじょ……」
和了役:平和 照→煌のロン和了
咲:35,000 照:36,000 煌:34,000
こまめに更新して欲しいという書き込みがあったのでひとまず投下しました。
もう少し書き溜めはあるんですが対局の展開を調整したいので今回はここまでです。
毎度の事ですがお待たせしてすいません。
乙
プラスマイナスは3万点基準でOK?
えーとだとすると、三戦目まで毎回すばら先輩がトバされてるってことかな。
まあ、宮永姉妹相手かつ三麻で打点が高くなると、流石にこうなるか。
さて、すばら先輩の狙いは何だろう。
>>368
この清澄高校では持ち点が35,000の四捨五入という設定なので、プラスマイナスゼロの点数は34,500~35,400ですね。
それと、すばら先輩が飛んでるのは1戦目と3戦目です。
どうしてこうなってるかについては後々書くつもりなのでお待ちください。
東二局 東家:照 南家:煌 西家:咲
照「ツモ。1,000オール」
照「ツモ。1,400オール」
優希「いつもの宮永先輩の連続和了が始まったな。あっという間に二本場だじぇ」
和「花田先輩も止めるために動こうとはしているみたいですけどね。
このルールだと鳴いて仕掛けていくのは難しいでしょうね」
優希「あ、のどちゃんお疲れ。きょーたろーの躾は終わったのか」
和「躾だなんて人聞きの悪い。ちょっとルールを教えていただけですよ」
京太郎「……」チーン
優希「ちょっと、ねぇ……」
煌(原村さんもこっちに来てしまいましたか。
みんなが見ていない間に問題を片付けるつもりだったのですが仕方ないですね)
東二局 二本場
煌「リーチ!」トン
煌(まあ、どっちにしろ私のやる事は変わりませんしね!)
照「ロン。4,300」
煌「すばらっ! 行けると思ったのですがやはり宮永先輩は早いですね」
照「煌も結構良い手を張ってたみたいだね。惜しかった」
煌「リーチをかける時はいつもの事ながら気持ちが昂ぶりますね。和了れればなお良いのですけど」アハハ
咲「……」
和了役:タンヤオ、ドラ1 照→煌のロン和了
咲:32,600 照:45,100 煌:27,300
東二局 三本場
照「ロン。6,400」
煌「今度は速攻で行こうと思ったのですがまたやられてしまいました」
照「そうやってしょっちゅうフォームを変えるのは良くないと思うよ」
煌「うーんやっぱりそうですよね。自分でも分かっているんですけど」
咲「……」
東二局 四本場
咲(お姉ちゃんにこっぴどくやられちゃってるのに、花田先輩はなんでこんなに楽しそうなんだろう。
私はどうすればやり過ごせるのかで頭が一杯なのに。
……私もこんな風に麻雀が出来れば―――)
照「ロン。12,400」
咲「あ……え?」
優希「あちゃー。これは大きいの貰っちゃったじぇ」
和「完全安牌がなくてオリにくい状況ではありましたが、親リー相手に少し迂闊でしたね……」
咲(ううん、そんなんじゃない。私が対局に集中してなかったせいだ。
だからお姉ちゃんがおこ、って……)
照(これで咲がラスに転落……)
咲「……」ヒュオオォ……
照(やっぱり来たか、でも私は絶対に手を抜いたりなんかしない。
むしろ、この状態の咲―――私が生み出してしまった魔物を退治して咲を解放してみせる。
そのためには、やっぱりプラマイゼロを阻止するかない)
和了役:立直、平和、三色同順 照→咲のロン和了
咲:20,200 照:63,900 煌:20,900
東二局 五本場
咲「……カン。リンシャンツモ。3,500、6,500」ヒュオォォ……
煌「あっという間にラスに転落してしまいました。これはすばらくない」
照(さすがに強い。簡単に連荘はさせてくれないか。
でも現時点ではまだ私の一人浮きの上に咲はまだマイナスだ。
このまま逃げ切って咲のプラマイゼロも阻止してみせる)
和了役:嶺上開花、混一色、ドラ2 咲のツモ和了
咲:30,200 照:57,400 煌:17,400
東三局 東家:煌 南家:咲 西家:照
4巡目
煌「親ですしガンガン攻めていきますよ!」トン
照「ポン」 副露牌:中中中
照(これでテンパイ。煌には悪いけど短期決戦に持ち込ませてもらう)トン
煌「これは良い感じですよー。すばら!」トン 煌の捨て牌:9p
咲「……カン」 副露牌:9999p
咲「……キタ」 抜きドラ:北
咲「……カン」ヒュオオオ 副露牌:9999s
和「大明槓から抜きドラを引いて更にカンだなんて……」
優希「なんかちょっと寒くなってきたじょ……」
咲「……リンシャンツモ」ヒュオオオ……
優希「そ、そのまま和了っちゃったじぇ! こ、これってどうなるの?」
煌「私の捨て牌の大明槓から始まってるので私の責任払いですね」
照「……」
照(大明槓、抜きドラ、さらに暗槓で嶺上開花……なんて支配力なの。
ともかくこれで咲が原点を超えた。ここからは点数調整をさせないように動かないと)
和了役:嶺上開花、対々和、ドラ1、抜きドラ1 咲→煌(大明槓の責任払い)
咲:42,200 照:57,400 煌:5,400
南一局 東家:咲 南家:照 西家:煌
優希「南入か……ここまでは宮永先輩がまだトップだな。
咲ちゃんがトップ抜けをするためには花田先輩の残り点数が問題になってくるじぇ」
和「……そうですね」
優希「のどちゃん?」
和「いえ、なんでもありません」
和(宮永さんは本当に勝つ気があるのでしょうか。
大明槓からの責任払い自体は嶺上開花を狙おうとする宮永さんのポリシーだと考える事はできます。
ですが、宮永先輩との点差を考えるとこの和了り方は上策とは言えません。
プラスで終われれば勝ちとも言える競技ですから、稼げる時に出来るだけ稼ぐのは間違いではありませんが……)
4巡目
照「……」トン 照の捨て牌:5p(赤)
煌「ここで赤ドラ切りですか。警戒が必要ですね」トン
咲「……」トン
照「ロン、1000」
咲「はい」
照(案の定自分から削られに来たか。そう来るなら私にも考えがある。
煌……悪いけど飛んでもらうよ)
煌「どんどんオーラスが近づいていきますねー」
和了役:タンヤオ 照→咲(子のロン和了)
咲:41,200 照:58,400 煌:5,400
南二局 東家:照 南家:煌 西家:咲
6巡目
煌「まだ諦めませんよ。リーチ!」トン
照(常に前向きな煌の打ち筋は見ているととても晴れ晴れしい気分になる。
でもそれだけじゃ咲を取り巻く吹雪は止まないみたいだ。
煌が悪いわけでも咲が悪いわけでもない。私のせいなんだ。
そして、私は何とかしてくれようとしている煌の気持ちを踏みにじろうとしている。……ごめんね)
照の手牌 234p 234s 234s 56s 88s
照(147sの三面張のうち、高目の47sなら煌は飛んで試合終了。
咲のプラマイゼロも阻止した上に私のトップになる。
それできっと咲は解放される)
煌「うーん、一発ならず!」 煌の捨て牌:1s
照「……」
照(違う、それだとまだ届かない。この局で決着を付けるためには高目で和了らないといけない)
次巡
煌「なかなか引けませんねー」煌の捨て牌:1s
照(だからそれじゃないって言ってるのに……!)ギリ
咲(やっぱり麻雀をしている時のお姉ちゃんは怖い……
私にはちゃんと向き合う事は出来ないよ。だから……)
咲「……」ヒュオオオ……
海底牌
照「……」照のツモ牌:4s
照(海底摸月まで来てしまったけどここは和了るべきか。
門前清自摸和、平和、タンヤオ、一盃口、海底摸月で4,000オール。
煌はリーチをしているけど持ち点が5,400だから400残る。
でも咲の点数は37,200で原点以上だから煌を飛ばしてつつプラマイゼロにする点数調整は出来ない)
照「ツモ。4,000オール」
優希「おー! 海底摸月に門前清自摸和も付いて満貫だじぇ!
宮永先輩はこうなるのが分かっていたから和了らなかったのか」
和「そんなの……そんなのポリシーでもなんでもありません!」バンッ
京太郎「」ビクッ
京太郎「び、びっくりした……俺がボー然としてる間になんかあったんすか?」
和「宮永先輩、この局の打ち筋はどういう事ですか!
和了れる場面はいくらでもあったのに何度も見逃すなんて!」
優希「の、のどちゃん落ち着くんだじぇ」
京太郎「な、何が起こってるのかよく分かんねぇけど落ち着けって。な?」
和「二人は黙ってて下さい!
仮に打点が必要なのだとしても高目が出るのを待つよりは立直を掛けるべきじゃないんですか!?
そもそも、最速で和了ってリズムを作っていくのが先輩のポリシーじゃなかったんですか……?」
京太郎「原村……?」
和「宮永さんも宮永さんであまりやる気があるようには見えませんし、こんなのまるで……」
煌「原村さん、今は対局中です。そういった話は対局が終わってからにしませんか」
和「……はい。取り乱してしまい、すいませんでした」(両手を握り締める)
優希「と、とりあえずそこに座って少し落ち着こう」
煌「片岡さんは原村さんをお願いします。では、対局を続けましょうか」
京太郎「え……このまま続けるんすか?」
煌「ええ、この対局を終らせないことにはどうにもならないですから」
咲(やっぱり、私が麻雀をするとこんな事になっちゃうんだ……)
和了役:門前清自摸和、平和、タンヤオ、一盃口、海底摸月 照のツモ和了
咲:37,200 照:67,400 煌:400
南二局 一本場 東家:照 南家:煌 西家:咲 ドラ:中
照(ポリシーか……そう胸を張って言えるほど私は信念を持って打てていたかな)
煌「ポン!」 副露:中中中
照(オーラスの九蓮宝燈で一発逆転するような打ち方を否定されて、色々模索して行き着いた先がここだっただけだ)
煌「ポン!」 副露:999p
照(咲のプラマイゼロを崩すためだけにそれを曲げようとしている私がポリシーを語るなんて事は……)
照「あ……うん」
煌「ここまで露骨に仕掛けていったのに振り込むなんてらしくないですよ」
照「……」
煌「ここまで露骨に仕掛けていったのに振り込むなんてらしくないですよ」
照「……」
和了役:翻牌(中)、混一色、ドラ3 煌→照のロン和了
咲:37,200 照:55,200 煌:12,600
南三局(オーラス) 東家:煌 南家:咲 西家:照
照(余計な事を考えてる場合じゃなかった。
ともかくこれでオーラス、咲がプラマイゼロにならないような和了り方をして一気に勝負を決める!)
7巡目
照(おかしい、何故か手が重い。咲の支配力に私が負けている?
重い手が必要になってくる満貫以上ならともかくこの段階で……)
煌「ロン! 3,900です!」
咲「はい」
照「……!」
照(ここに来て咲の点数を削るの?
こうなると次の局で咲がリンシャンのみで和了ればプラマイゼロになってしまう。
煌は私に協力してくれるんじゃなかったの……?)
和了役:翻牌(東)、ドラ2 煌→咲のロン和了
咲:33,300 照:55,200 煌:16,500
南三局(オーラス)一本場 東家:煌 南家:咲 西家:照
照(煌、一体何を考えているの?
本当はしたくなかったんだけど照魔鏡で覗かせてもらう)ゴッ
照「……」
煌「このまま連荘で逆転しますよー」トン
照(……そういう事だったんだ)
咲「……」ヒュオオオ
咲(オーラスで33,300。あとはこの局でリンシャンのみを和了ればプラマイゼロ達成出来る。
それで終わり。私がいると雰囲気が悪くなるしやっぱり退部させてもらおう)トン
煌「ポン!」 副露:南南南
咲(いきなり場風牌鳴かれちゃったけど、ツモ順がずれたお陰で2巡後に西が来る。
それを暗槓して嶺上牌から当たり牌を引いてくればそれで終わりだ)ヒュオオオ
次巡
煌「おお、来ましたよ! カン!」南の加槓 副露:南南南南
咲「……」
咲(取らないで! それは私の嶺上牌なのに!
しかもツモ牌がずれたせいで西が引けなくなっちゃった……。
この局は花田先輩に和了って貰って次の局で調整しよう)
咲「……」ヒュオオオ
?『そのために……お姉ちゃんの和了牌を止めないとね』
数順後
咲(牌が集まってきた、きっとこれがお姉ちゃんの当たり牌なんだろうな。
後は花田先輩に差し込めれば……)
煌「お二人は今日の麻雀は楽しめていますか?」トン
咲「えっ、私は……」トン
煌「私は楽しめていますよ」
照「……」トン
煌「お二人ともとても強いので、こちらが退屈させてないかの方が心配ですけどね」ハハハ
咲「……本当の事を言ってください。私なんかと麻雀しても楽しくなんか―――」
煌「楽しいですよ」トン
咲「そ、そんなはず……」トン
煌「圧倒的点差であっても役満で一発逆転が可能だったり、それをさせないように全力で逃げ切ったり。
そういった3人または4人の技術や理論、そしてポリシーを全力でぶつけ合って良い成績を狙うんです。
だから、麻雀って楽しいんですよね」トン
咲「でも私は……」
煌「貴女も同じですよ。だって、毎回途中までは勝つために点数を稼いでるじゃないですか」
咲「……!」
煌「何故か途中から失速しちゃってますけど。そこは改善点ですね」
咲(確かにそうだ……プラマイゼロを狙うだけだったら最初から原点付近でウロウロしていれば良いだけの話だったんだ。
それなのに途中まではトップになるまで点数を稼ぎにいくなんて事をしてた。
手加減してると思われないようにするためと、最下位になる事の恐怖心からやってると思ってた。
でも、本当は私も勝ちたかった……?)
煌「まあこういうお小言は対局が終わってからにとっておきましょう。
ともかく今はこの対局を、麻雀を一緒に楽しみましょうよ!」
咲「麻雀を、楽しむ……」
京太郎「咲が色々考えて麻雀してんだなーってのは分かるんだけどよ。
もっと単純になっても良いんじゃねーかな?」
咲「もっと、単純に……」
照「咲、自分のやりたい事をやって」
咲「自分のやりたい事、私のやりたい麻雀は―――」
?『プラマイゼロだよね?』
咲(違う。ううん、違わないけど手段が違う。
私がやりたいのはプラマイゼロそのものじゃない)
?『じゃあなんなの?』
咲「みんなと楽しむ麻雀です!」
咲(だから貴女の力はもう借りない。今まで辛い事を引き受けてくれてありがとう)
?『そっか。でも、私は貴女の不安定な感情が生み出したもう一人の貴女……
頼りたくないなら気持ちを強く持つんだよ』
咲(う……頑張ってみる)
?『そこはハッキリ大丈夫って言って欲しいんだけど……
さて、そういう事だし私は引っ込むから。その手牌も最後の餞別として置いていくよ』
咲(手牌って……これは……)
咲の手牌 555(赤)p 888p 44s 66s 西西西
?『貴女がそれを和了る事が出来れば変われるかもしれないね。
それじゃあ、元気でね』スゥゥ
咲「……」
煌「宮永さんのツモ番ですよ」
咲「は、はい……!」スッ
咲「……」
咲(今日はこれ、和了ってもいいんだよね?)
?『……』
咲(違う、そうじゃない。和了りたい、勝ちたい。
誰かの意見や顔色を伺うかがうんじゃなくて、自分の意志で今はそう思える。だから!)
咲「ツモ! 8,000、16,000の一本付です!」
京太郎「え……もしかしてこれ、役満ってやつですよね?」
照「四暗刻、一番簡単だと言われているけどれっきとした役満の一つだよ」
京太郎「つか今の点差で咲が役満を和了ったって事は……」
和了役:ツモり四暗刻 咲のツモ和了
咲:57,500 照:47,100 煌:400
咲「私が勝った……?」
照「そうだよ。……気分はどう?」
咲「うれしい、うれしいよぉ……!」
照「……そっか。良かった」
煌「すばらです! オーラスでまさか役満を張っているとは思いませんでしたよ」
咲「花田先輩、あの私……」
煌「おっと、その続きはみんなの前で話して下さい。出来ますよね?」
照「待って。それだったら私が」
煌「駄目ですよ。これは宮永さんが言わないといけない事なのですから。ね、宮永さん」
咲「はい! み、みんな、ちょっと聞いて欲しい事があるんだけど……」
和「ええと、私も取り乱した事についての正式な謝罪を……」
咲「ま、待って。原村さんは別に悪いわけじゃなくて本当に悪いのは私だからまずは私の話を聞いて欲しくてそれでえと……」
咲「……」
和「……」
京太郎「頑張れ、咲」肩に手を置く
咲「京ちゃん……分かった、頑張る。
い、今までごめんなさい! 実は私……」
煌『そこから宮永さんは『初めて』麻雀を始めたきっかけから、『今までの』麻雀をするようになった経緯を話しました。
詰まりながらも一生懸命に話すその姿は、前に進もうとする気持ちが伝わってきてとても好感の持てるものでした』
和「そんな事が………」
優希「私達にそれを話してくれたのは今後も見逃してくれって訳じゃないんだよな?」
咲「ううん、これからはもうそんな事はしない。ちゃんと打って、みんなと麻雀を楽しむから」
優希「それならよしとするじぇ」
和「手加減されていたのはショックですが、そういう事情があったのでしたら私からは何も言えないです」
和(両親に認めてもらいたいという気持ちは私にもよく分かりますし……)
優希「それにしても……改めて見てみると見事にプラマイゼロだじぇ」ペラペラ
和「花田先輩が纏めた昨日の牌譜ですか。
思えば私に牌譜を見せるのを少し渋っているように見えたのは事情を知っていたからだったのですね」
煌「先に原村さんが気づいてしまうと話が拗れてしまいそうでしたので」
優希「確かに……話の順序が違っていたらのどちゃんは咲ちゃんに平手打ちしていたかもしれないじぇ」
咲「ひぅ……っ」
和「そ、そんな事しませんよ!」
京太郎「あの、それって無い方が良いんじゃないすか?」
煌「……何故そう思うんですか?」
京太郎「だってこれって言ってみれば咲の黒歴史っていうか嫌々打ってた麻雀の記録じゃないですか。
これ見る度に色々思い出したりするんじゃ」
和「未来の後輩達がその牌譜を見る日が来るかもしれません。事情を知らないで見ると色々邪推されるのでは」
煌「なるほど、それは確かにそうですね。では、宮永さんはどうしたいですか?」
咲「私は出来れば残しておいて貰いたいです。
確かに色々と思い出したくない事が呼び起こされそうだけど……
そういう麻雀をしていた私だって私の一部なので」
煌「そうですか、じゃあ置いておきましょう。
これから沢山の牌譜が生まれるんです。
その中の宮永さんの記録を見れば未来の後輩も変な噂は立てないでしょう」
咲「こんな事もしてたんだなって、思い出話に出来るようにしていきたいです」
煌「なりますよ。きっとね」
優希「そうとなったら早速対局だじぇ! 咲ちゃん勝負だー!」
咲「う、うんっ。私負けないから!」
和「では須賀くん、先ほど私が言った事をちゃんと覚えているか実践を交えて復習しましょうか」
京太郎「お、お手柔らかにお願いします……」
照(初めて煌を照魔鏡で覗いた時は特に大した特長なんて無かった。
せいぜい飛び終了が極端に少ないくらいだと思ってた。でも、本当は違ったんだ。
煌の能力……いや、能力だなんて言い方は野暮だ。
彼女のポリシーは『終局を迎えるその瞬間まで皆と麻雀を楽しむこと』
咲を救うためにするべきことは力ずくでの妨害なんかじゃ無かった。
麻雀を楽しむ気持ちを思い出して貰う事だったんだ。
これで咲も、私も、本当の意味で前に進む事が出来るよ)
照「煌、ありがとう」
煌「私は部長としてやるべき事をしたまでですよ」
照「そうだね、本当にありがとう」
煌「し、辛気臭いのはやめにしませんかっ。
清澄高校麻雀部はこの日を持って正式に動き出すんですから。
そんなめでたい日にしんみりした空気なんて似合いませんよ」
照「確かに。じゃあ、今度とも充実した部活になるようにお願いね」
煌「ってやっぱり丸投げですか!」
こうして清澄高校麻雀部は、一年の活動停止期間と一年の活動休止期間を経てようやく再出発を遂げたのでした。
これで今回の投下は終了です。そしてこの作品においてやりたかった事はほぼ吐き出しました。
あとはインターハイ予選開始までの日常を書いていくだけとなります。もう少しだけお付き合い下さい。
ちなみに、作中に説明していませんでしたが積み棒は200点の計算になっています。
確認はしましたが、書いてる途中で気づいたのでもしかしたら修正し忘れてるかも……
翌日 清澄高校・麻雀部部室前
咲「……」ソワソワ
京太郎「何してんの?」
咲「わ、きょ、京ちゃん!? 京ちゃんこそどうしたの」
京太郎「どうって、これから部活に行くんだけど」
咲「そう……そっか。そうだよね」
京太郎「お前もだろ? みんな待ってるぜ」
咲「う、うん……」
京太郎「じゃ、そういう訳だからそこ開けてくれよ」
咲「え、ええと……京ちゃんが開けたら良いんじゃないかな」
京太郎「ドアの前に立ってるのは咲じゃん。
だから、咲があける、分かった?」
咲「……」
京太郎「咲がそんなんだとみんな気を使っちまうよ。普通にいこうぜ普通に」
咲「……分かった」
京太郎「うむ、それでよろしい」
咲「じゃあ行くよ……」ガチャ
煌「おや、ようやく来ましたね。遅いので先に初めてますよ」トン
照「ロン。5,800」
煌「あら……?」
和「終局ですね。よそ見しても良いですけど河も見ましょうよ」
煌「うーむ、これはすばらくない」
照「……」
照(咲のことが気になってたんだろうから私はあえて何も言わない)
咲「あの、こんにちは……」
煌「はい、こんにちは」
優希「教室を出たのは一緒だったのにどこ行ってた?」
咲「借りてた本があったから返却に……」
京太郎「俺は担任に雑用押し付けられてた」
優希「そっかー。咲ちゃんは本を返しに行ってたのかー」
京太郎「俺は無視かよ!」
煌「須賀くん達のクラスは……あの先生でしたね」
照「頼み事が多いよね。引き受けてくれた生徒は内申書で優遇してるって噂があるから断るに断れないけど」
京太郎「そうなんすか? なら次からもなるべく引き受けるかな」
煌「断った所で減点はしてないらしいので程々で良いと思いますけどね。
さて、世間話はこの辺りにして練習の続きをしましょうか。
早速ですけど須賀君と宮永さんは私と先輩と入れ替わりで卓に入って下さい」
京太郎「了解です」
咲「が、頑張ります」
和「よろしくお願いします」
優希「負けないじぇー!」
麻雀シーンはキンクリして結果だけ
咲:+38 和:+5 優希:-20 京太郎:-23
咲「あ、ありがとうございましたっ」
京太郎「焼き鳥かよー!」
和「やはり……」
優希「やはり?」
和「いえ、宮永さんの実力が予想通りだったので」
咲「え?」
優希「確かに圧倒的だった……宮永先輩がもう一人増えたような気がしたじぇ。
さすが宮永姉妹と言った所なのかな?」
和「姉妹だから両方麻雀が強いとか、そんなオカルトありえません。
私が宮永さんを強いと思ったのは……その、意図的にプラマイゼロをやっていたと聞いたからです」
京太郎「やっぱりプラマイゼロって難しいもんなのか?」
和「普通に勝つより何倍も難しいですよ。
私も帰ってからネト麻で試してみたんですが一度も出来ませんでした。
それを毎回狙って出来る咲さんは……
いえ、すいません。こういう話はあまりしたくはないですよね」
咲(やっぱりまだ原村さんには遠慮されてるみたい……
でも、それは私が恐縮してるせいでもあるんだよね。よし)
咲「あの、私は大丈夫だよ!
でもプラマイゼロを狙ってる時って何というかこうしなきゃと思ってやってただけだから難しいとか考えた事なくて、だから実際の実力とはまた別の話だったように思ってるんだだから……ケホッ」
京太郎「あーもうそうやって一気にまくし立てるからむせるんだよ」
煌「確か煮沸しておいた水が冷蔵庫に入っていたはずなので持ってきますね」
照「咲、大丈夫?」背中さすり
咲「けほっ……ありがとうお姉ちゃん。もう大丈夫」
照「そんなに焦らなくてもみんな逃げたりしないから」ヒソヒソ
咲「……うん。みんないい人たちだもんね。私、この部活に入って良かった」
煌「はい、お水をお持ちしましたよ」
咲「ありがとうございます、花田先輩。
あの、わがままなのは分かってるんですけど連荘しても良いですか……?
もっとみんなと打ちたいんです」
煌「宮永さん……ええ、勿論良いですとも!
私はこのまま外れていますので宮永先輩と誰か……」
照「いいよ。私も抜けてるから。
というか、咲が言ってたので思い出したけど私も図書室に本を返しに行かないと」
煌「あ、それでしたら私もご一緒して良いですか? ちょっと必要な資料があるんですよ」
照「じゃあ四人にはそのまま対局してて貰って良いかな?」
煌「すぐに戻りますので私への来客や入部希望者が来た時は対応をお願いします」
和「分かりました。行ってらっしゃい」
図書室
照「本の返却に来ました」
図書委員「あ、宮永さん。これでまた新入荷本制覇ですね。どうでした?」
照「こういったジャンルの本は中々読む機会が無いからとても興味深かった」(小声)
煌(本の事になると元気になるんですよね。
さて、二人が話している間に私は用事を済ませてきましょう)
数分後
煌(見つかって良かった。すばらです。
でもすぐ見つかるという事は同時に誰にも借りられていなくて人気が無いという事であって……少し複雑な気持ちですね)
照「……」スラスラ
図書委員「……」スラスラ
煌(ホワイトボードで筆談……? 図書室だから静かにしようという配慮でしょうか。
にしても二人共書くスピードが早いですね……)
煌「すいません、本を貸し出しをお願いしたいのですが」
図書委員「はい、貸出ですね。学生証をお願いします」
煌「これです。お願いします」
照「その本……」
図書委員「はい。お預かりしますね」ピッ ガガー
煌(切り替え早い。この図書委員……すばらです)
図書委員「あ、珍しい。宮永さんが借りてない本があるなんて」(貸出票を確認しつつ)
煌「え? そうなんですか?
宮永先輩ってここにあるものはほぼ全て読んでるんじゃないかってくらい読んでるイメージだったのですが」
照「それはもう読んだ事ある本だから。ちっちゃい頃に、ボロボロになるまでね」
煌「あ……なるほど。本当に、珍しい事もあるものですね」
照「うん、そうだね」
図書委員「そうですねー。はい、これで処理は終わりました。ありがとうございましたぁ」
煌「ありがとうございました」
廊下
煌「この本……『はやりんのラブじゃん☆』があの時の話に出てきた麻雀本だったのですね」
照「うん。目立つ表紙だしすぐに見つけたんだけど、やっぱり読もうとは思えなかった。
それさえ無ければとっくに完全制覇だったんだけどね」
煌「そうですか。じゃあ……完全制覇は一週間ほどお預けでも良いですか?」
照「うん、良いよ。それ、須賀君に勉強させるために借りてきたんでしょ」
煌「はい。初心者でもとても分かりやすいと評判が良いですからね。
何を隠そう、私もこれで麻雀を覚えた人間の一人なので」
照「煌もそうなんだ。この本を読んだ当時は解説役のお姉さんに憧れたよね」
煌「ですねー。そのお姉さんは今も現役ですけど……」
照「……」
煌「当時の気持ちを今も持っているかと言われれば……」(はややー)
照「私はちょっと真似出来ないな……」(はややー)
煌「私もですね……」ハハハ
照「時の流れは恐ろしい」シミジミ
部室
煌「ただいま戻りました。何か変わった事はありました?」
和「いえ、特に何もありませんでした」
優希「悪いことも、良い事もなー」タメイキ
京太郎「クラスの連中はもうほとんどがどうすんのか決めてるみたいなんすよね」
煌「新入生勧誘期間もそろそろ終わりですしね……
結局男子は団体戦に出られる人数は集まりませんでしたか」
京太郎「まー仕方ないっすよ。男子で麻雀に興味のある奴は他の高校に行っちゃうでしょうし」
京太郎(そんな連中より何倍も美味しい思い出来るから満足してるし。
むしろそういった男子諸君に申し訳ないくらいだぜ)
煌「でも個人戦には出られると思うので、大会に備えてこれを読んで勉強しましょう」
京太郎「なんすかこれ? お、表紙の子可愛いっすね」
照「この本が出た頃の大人気アイドルだからね」
京太郎「へー、でも俺は知らないっすね。ガキの頃はボールばっか追っかけまわしてたからアイドルとかはなぁ。
なになに、はやりんのラブじゃん……?」
咲「えっ。そ、それって……」
京太郎「おー、すごい分かりやすいかもこれ」ペラペラ
煌「これで勉強すれば未来のインターハイ王者だって夢じゃないかもしれませんよ」
京太郎「ははは、そこまでは大げさでしょー」
咲(実際になった人がいるんだけど……京ちゃんの目の前に)
咲「あ、京ちゃんの場合は基本ルールが分かってるから一番後ろから読んだ方が良いよ」
京太郎「そうなのか?」ペラペラ
咲「この本は一番後ろが役の解説になってるんだよ」
京太郎「へぇ、詳しいんだな」
和「真ん中辺りに小テストがあって読んだ内容の確認が出来るようになっているんですよね」
優希「のどちゃんも読んだ事あるのか?
そういえばのどちゃんの私服センスってこの人と似てるような……」
京太郎「え!? 原村って普段からこんな服着てんの!?」
優希「食い過ぎ良すぎだじぇこのエロ犬め!」
京太郎「いやいやこんな破廉恥極まりないのが私服とか言われたら普通の男だって反応するもんなんだよ!」
和「破廉恥!? 私のセンスってもしかして破廉恥なんですか……?」ズーン
京太郎「い、いやぁ……俺は良いと思うぜ?」
咲「……」ジト目
京太郎「ああやめて咲さんその視線痛すぎるから!」
咲「だってーねえ優希ちゃん」
優希「うん、最低だな」ジト目
京太郎「それほんとやめて下さい。マジで反省してますんで」
和「は、はれんち……」ズーン
わいわいがやがや
煌「宮永先輩、ここに先輩の見たかったものはありますか?」
照「……うん。たくさんあるよ」
煌「そうですか。でも、ただ見ているだけなのもつまらないと思いませんか。
私達だって、清澄高校の麻雀部員なんですよ?」
照「それもそうだね。じゃあ、混ぜて貰おうか」
煌「ええ。でも」
照「うん。私達は先輩だからね」
煌「はい。……みなさん! 雑談で盛り上がるのもいいですけど練習してからにしましょうか」
咲「あ……すいません」
照「須賀くんはその本を読んで勉強しててね。10ページ分の内容を覚えられたら小テストをするから。
合格出来たらその次のページを見ていいよ」
京太郎「次のページって……?」
煌「牌のお姉さんのフルカラー写真集ですね」
京太郎「やりますやります超頑張りますっ!!」
照(ラブじゃんが売れたのは解説本として優秀だったのもあるけど、ページ構成が上手かったというのもあるんだよね。
そういえば、この本を買ってきてくれたのはお父さんだった気がするけど、まさか、ね……)
煌「後の5人ですが、まずは宮永さんは須賀に内容の解説をしてあげて下さい。
麻雀をやってなかった時期も長いですし、一応再確認と言うことで」
咲「はい、分かりました」
煌「では、残りの4人で打ちましょうか」
優希「じゃあ早速席決めするじぇー!」
煌(ようやくここまで来られましたか。まるまる一年掛かってしまいましたが間に合って良かったです。
……宮永先輩の引退までに)
照「ん? どうかした?」
煌「いえ、なんでもありませんよ。席決めを済みましたし準備しましょう」
煌(夏のインターハイまでの数ヶ月は、なるべく充実した時間にしないといけませんね。
それが部長としての責務であり、私が宮永先輩のために出来る事です)
照「……」
照(最後の一年、少しでも長くここで麻雀をしたい。そのためには大会で勝たないといけない。
……そろそろ、あの事を精算しないと)
今回の更新はこれで終了です。お待たせしてすいませんでした。
あと、やりたかったネタも切れてきたので全部消化出来たらそろそろ完結させます。
もう少しだけお付き合い下さい。
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