村娘「お願いします、助けて下さい!!」
勇者?「……」スタスタ
村娘「麓の村が襲われてるんです! 早くしないと……っ」
勇者?「わざわざご苦労だな、こんな山の中まで」
村娘「勇者様! お願いです!」ガシッ
勇者?「そもそも俺は勇者じゃない」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1342072535
村娘「え……でも、村長は勇者って」
勇者?「年寄りの勘違いだろうな」
村娘「……じゃあ、『水浴びしていた女の子達を魔物から助けた』という話も?」
勇者?「6年は前の話だな」
村娘「勇者様ですよね!」
勇者?「……違うが」
勇者?「悪いが帰れ、今はそんな気分になれないんだ」スタスタ
村娘「……何でもします」
勇者?「なら帰れ」ザッ
< トントントントン
村娘「……」
勇者?「…」
村娘「何を作ってるんですか……」
勇者?「墓標だ」ザクッ
村娘「お墓……誰か亡くなったんですか」
勇者?「昨夜息を引き取ったんだ」
村娘「そのせいで、助けてくれないんですか」
勇者?「そうだ」
村娘「………帰りません」
勇者?「……」
勇者?「ほら」スッ
村娘「?」
勇者?「水だ、ここまで歩いて疲れたんだろ」
村娘「……走って来ました」ごくっ
勇者?「どの位だ」
村娘「………昨日のお昼から」
勇者?「悪いがやっぱり諦めろ」
勇者?「今の言葉で大体分かった、村に帰れ」
村娘「どっ、どうしてですか!?」
勇者?「半日以上かかる距離な上に今から行っても2日は経つ、となれば村はもう放棄されたか死んでる」
勇者?「『無駄』なんだよ」
村娘「……~~!」
勇者?「怒りたければ怒れば良い、帰れ」
・・・朝
勇者?「……」ガチャ
村娘「…zzZ」
勇者?(まだいたのか)
くいっ
勇者?(足の靭帯がおかしいな、帰れないのか)
勇者?(切れてはない、となれば3日で歩けるな)
村娘「……ぅん……? ここっ」ばさっ
勇者?「よく寝てたな、もう日暮れだ」
村娘「……勇者様」
勇者?「違うと言ってるのにな、ほらカレーだ」
村娘「? ドロドロしてる」
勇者?「甘口にはしてる、食べろ」
村娘「ご馳走様でした、美味しかったです」
勇者?「なら寝ろ、少しでも早く足を治して帰れ」
村娘「待って下さい」
勇者?「なんだ」
村娘「……治してからなら、一緒に来てくれますか」
勇者?「考えてはおこう」
・・・深夜
村娘「……」
< 「………、……っ」
村娘(?)ムクッ
村娘(……声が聞こえる)
< 「……ぁ、あっ…あ……んぁ!」
村娘「~!?」ビクッ
村娘(……)
村娘(ちょ、ちょっとだけ覗くなら……)ギィ
< 「……今、あの娘起きたみたいよ」
< 「なに?」
村娘(!!)バサッ
村娘(~~っ)がたがた
< ガチャ
村娘(…)
< ひた…ひた……
村娘(…………)
< すっ
< なでなで
< 「……問題ない」
村娘(………)
・・・朝
勇者?「……跳んでみろ」
村娘「…」ぴょこ
勇者?「2日で治ったか、良かったな」
村娘「……」
勇者?「なんだ」
村娘「いえ、ご結婚されてたんですか」
勇者?「独り身だ、山で狩りしながら暮らしてるだけのな」
勇者?「何故そんな事を聞いた」
村娘「いえ、何でもないです……」
勇者?「……」スタスタ
< ガチャッ
村娘(勇者様……と、誰かいたような気がしたのに)
村娘「って、勇者様! 私の村は!?」
勇者?「その容器に入れろ」コトッ
村娘「え? あの、これって」
勇者?「ナイフは消毒してある」
村娘「……どうしろと」
勇者?「『血』を採れ、死なない程度にな」
村娘「!?」
村娘「っ……これで良いですか」
勇者?「………」
村娘(やくそうがあるから良かったけど、頭がクラクラする)
勇者?「麓の村まで行く、ついて来い」
村娘「本当ですか! ありがとうございます!」
勇者?「言っとくが、丸3日経ってる以上ある程度の事は覚悟しろ」
村娘「……はい」
勇者?「仮に、魔物が村にまだいたとしても俺は戦わないからな」
村娘「え……」
勇者?「見つかれば死ぬ、そう考えてろ」
村娘「でも、勇者様なら勝てるんじゃ…!」
勇者?「勇者じゃないから戦わないと気づけ」
< ザッザッ・・・
勇者?「この滝の下に村があるんだったな」
村娘「はい、滝の内部にある洞窟と山道を経由して降ります」
勇者?「時間がかかり過ぎる、エレベーターでも作ったらどうなんだ」
村娘「えれ……べーた?」
勇者?「……何でもない、とにかくこの滝を一気に降りるぞ」
村娘「ちょちょちょちょっ!!? 勇者様やめて降ろしてぇ!!」
勇者?「暴れるな」
村娘「無茶です!! たかすぎます!!」
勇者?「黙ってろ、舌を噛むぞ」バッ
村娘「きゃぁあああーーー!!?」
勇者?「少しは静かに出来ないのか」
村娘「~~~!!」
勇者?「……」
< シュルッ
勇者?「着地するから掴まってろ」スッ
< ピタッ
村娘「……止まった」
勇者?「動くなよ、落ちたくないならな」スタスタ
村娘(空中を歩いてる!?)びくっ
< グラッ
勇者?「動くな」
村娘「は……はぃ」
勇者?「着いたぞ、離れろ」ぱっ
村娘「きゃっ」ドサッ
勇者?「静かにしろ」
村娘「~! いくらなんでも…むがっ?」
勇者?「……来い」バッ
村娘「むー! むー!?」
勇者?「………」ガサッ
サキュバスA「それでね、さっきなんかまた1人私のテクニックで死んじゃって……」
サキュバスB「下手なのよ貴女、人間は興奮し過ぎると死んじゃうのよ?」
サキュバスC「んー、またお腹空いたからしてこよーかなー」
サキュバスB「貴女もいい加減やめなさいよ……まだ複数の人間に犯されるのが好きなの?」
サキュバスC「うっさいなー、久しぶりの男なんだもん」
勇者?「……魔物とは聞いていたが、サキュバス?」
村娘「はい」
勇者?「殆ど無害な相手だろう、男を1人ずつ相手にしてやれ」
村娘「な、何言ってるんですか? サキュバスは男性の精だけじゃなく命も奪うんですよ!」
勇者?「………」
勇者?「……とにかく暫く様子を見る」
村娘「!」
< ガサッ
サキュバスB「?」
サキュバスC「どーかしたー?」
サキュバスB「何でもないわ」
サキュバスB「じゃあ私は少し寝るから、貴女達は楽しんで来なさい」
サキュバスA「私も!? いや、まあ……確かに小腹が空いたかも」
サキュバスC「よーし! ヤリますかー♪」バッ
サキュバスB(やれやれ……どの若いサキュバスもプライドがないわね)
ファサァッ!
サキュバスB(まあ仕方ないかもしれないわ……本当に久しぶりだものね)ヒュバッ
サキュバスB「……」
< バサッバサッ
サキュバスB(よくこんな辺境に村があったわね、奇跡とも思えるわ)
< スタッ
淫魔兵「お帰りなさいませ」
サキュバスB「ご苦労」
淫魔兵「先程、再び暴れ出した人間の雌を何人か処刑しました」
サキュバスB「そう」スタスタ
サキュバスB(面倒くさい女達……男達は満足してるのにね)
村娘「そんな……女の人達が殺され…?」
勇者?「あくまで一部だとは思うが」
村娘「勇者様! もうのんびり見てる場合じゃないですよ!?」
勇者?「……」ガサッ
村娘「あっ……」
淫魔兵「ん? 何だ貴様、小屋に戻れ!」チャキ
勇者?「武装はしていても『淫魔』クラスのサキュバスか、その程度でよく粋がるな」
淫魔兵「……!」
淫魔兵「下がれ、斬り裂かれたいのか!」
勇者?「下がるのはお前だ、『最下級位』で太刀打ち出来ない時点でさっきのサキュバスを呼んだ方が賢明だぞ?」
シャキン!
淫魔兵「……黙れ人間風情が」
勇者?「……」シュルッ
勇者?「最後に警告するぞ? 下がれ淫魔」
淫魔兵「殺す……!!」
< ギチッ
淫魔兵「!?」ピタッ
勇者?「……しばらくそこで喚いてるしかないぞ?」
淫魔兵「馬鹿な、魔法障壁すら発動する間もなくこの私が封殺されるなんて……!」
勇者?「材質は『ミスリル銀』、付加した属性は『処女の血』による対淫魔属性だ」
勇者?「『 ワイヤー 』なんて代物は初めて見たろう、使い方さえ上手くすれば淫魔クラスは生け捕り出来る」
淫魔兵「くっ、敵襲だ! 誰か来てくれー!」
勇者?『お前はそこにいろ』パクパク
村娘(凄い……流石は勇者様ですね、分かりました!)こくっ
勇者?(……『あいつ』が死んでから面倒な事ばかりだな全く)
< スタスタ
勇者?(ああ、面倒だ)
サキュバスB「何事?」
淫魔兵B「敵襲のようです! 相手は1人ですが、妙な力で淫魔兵が次々と戦闘不能に…」
サキュバスB「私が出ます、貴女達は他の『夜魔』クラスのサキュバスを呼んで下さい」
淫魔兵B「はっ!」
サキュバスB(…『淫魔』クラスとはいえサキュバス相手を軽く戦闘不能? 何者なのかしら)
勇者?(……来たか)
サキュバスB「貴方が侵入者ね、何者なのかしら?」
勇者?「何者かは関係ないな、俺は今現在この村に来ている中で最も賢いお前と話したかった」
サキュバスB「……」
サキュバスB(武器は無し、防具らしい防具も無し……)
サキュバスB(………)
勇者?「なぜ、お前達サキュバスがこんな村にいる? 『城』で何かあったのか」
サキュバスB「!!」
サキュバスB「……貴方、何者なの……ただの人間が知ってる筈ないわ」
勇者?「答えろ」
サキュバスB「貴方こそ答えなさい、どこまで知っているの? 『戦争』は知っているの?」
勇者?「………」
勇者?「戦争が起きているのか、何と戦っているんだ」
サキュバスB「人間に私達魔族が戦争を仕掛けたのよ、もう50年は前になるわ」
勇者?(…なるほど)
サキュバスB「戦いは最初のうちは魔族が優勢で、私達も『城』で安全に暮らしてたわ」
サキュバスB「……でもね、ある時魔族が急に弱くなったの」
勇者?「……」
サキュバスB「知ってるかしら? 今サキュバスを孕ませる事が出来る『インキュバス』が1人しかいないのよ」
勇者?「まさかそのインキュバスしかいないせいで魔族の数が激減してるのか」
サキュバスB「ええ、しかもそのインキュバスが『魔王』としか性交しないから……」
勇者?「魔王……か、となると減る一方みたいだな」
サキュバスB「……何でも知ってるのね、貴方」
勇者?「いいや知らないな、お前達がここにいる理由はなんだ」
サキュバスA「あ! いたよ!!」
サキュバスC「人間だ!」バサッ
勇者?「……あの2人も見たところ戦士ではないみたいだしな」
サキュバスB「……実は…」
勇者?「人間が数の力で押し返して来た結果が、弱いサキュバス達の追放という避難措置……か」
勇者?「そこまで人間が戦えるとは驚きだな」
サキュバスA「ま、所詮は数の差だけだと思うケド」
サキュバスB「住める場所を見つけても上位のサキュバスが占領してたり、人間の軍があったり……」
サキュバスB「いよいよ諦め始めた時、この村を見つけたのよ」
勇者?「………」
サキュバスB「さあ、これで満足なら貴方の話を聞きたいわね」
勇者?「……俺の話を聞いて時間を稼ぐつもりなら、無駄だ」
サキュバスB「何の事かしら」
勇者?「『夜魔』クラスのお前なら、他の淫魔を呼び寄せられるのは知っているという事だ」
サキュバスA「でもアンタに拒否権は無いわよ」ザッ
サキュバスB「待ちなさい」
サキュバスB「……仮に、貴方が何者か置いておくにしても私達を知り過ぎよ」
サキュバスB「この男……人間じゃないわ」
勇者?「いや人間だ、勇者でも魔王でも淫魔でも無いぞ」
勇者?「俺は指を切れば血も出る、ちゃんと赤い人間の血だ」
スタスタ
勇者?「それより、だ……俺は最初お前たちのリーダー格を殺すつもりで来たんだが」
サキュバスB「っ!」ビク
勇者?「そう警戒しなくて良い、俺はお前たち全員を保護したい」
サキュバスC「信用できるの?」
サキュバスA「保護って……今よりもいい暮らしができるわけ?」
勇者?「あぁ、『元の暮らし』に戻してやる」
サキュバスB「………」
< ザッザッザッザッ
淫魔兵「サキュバス様! 只今助太刀します!」
淫魔兵「怪しい奴め……! 仲間を解放しろ!!」チャキ
サキュバスB「!」
サキュバスB「……」
サキュバスB(まだ『何か』に縛られた淫魔を救助出来てない?)
サキュバスB(そう言えばこの男、一見丸腰に見えるけど……)
勇者?「…」
勇者?「答えを聞かせてくれるか」
サキュバスB「……」
サキュバスA「……」
サキュバスC「……」
サキュバスB「具体的には……どうやって保護する気?」
勇者?「それが条件だ、『何も詮索するな』」
サキュバスB「!……貴方、どこまでも隠して……っ」
サキュバスA「ね、ねぇ……さっきの『元の暮らし』って、ほんと?」
サキュバスB「A?」
サキュバスA「だってB、やっぱり戻れるなら戻りたいよ」
サキュバスB「~~!! 根拠がないわ! 本当に信じて良いのかどうかも分からない!!」
サキュバスB「ましてや人間なのよ!? 私達を軍に売り渡すかもしれない!!」
勇者?「……そこのお前」
サキュバスC「?」
勇者?「お前が一度『見て』、信用するに値するか判断したらどうだ」
サキュバスC「……」チラッ
サキュバスB「し、C……」
サキュバスC「……」
サキュバスC「行く」
勇者?「人質ならこちらも用意する、建物の出入り口前の茂みに俺を案内した女がいる」
サキュバスB「人間の女……? いつのまに?」
サキュバスA「ちょっとC! アンタ本当に大丈夫なの?」
サキュバスC「いざとなれば私がアイツを殺るからへーき」
勇者?「半日したら人間の女を殺して構わない、2時間で戻る」
サキュバスC「近いの?」
勇者?「俺を山の方まで運んでくれ、飛べば速い」
シュル
勇者?「それと、今解いたから動けない淫魔はもう大丈夫だ」
サキュバスB(……今何か糸みたいなのが見えた?)
< バサァッ
サキュバスC「とーちゃく、この小屋に何かあるの?」
勇者?「入れ」
サキュバスC「ん」スタスタ
サキュバスC「……これ、お墓?」
勇者?「ああ、数日前に友人が死んだんだ」
サキュバスC「……ふーん」
< ガチャッ
勇者?「待て」
サキュバスC「なに?」
勇者?「忘れるなよ、『詮索するな』だ」
サキュバスC「……お化け屋敷じゃないよね」
勇者?「開ければわかる、だが『知ろうとするな』」
サキュバスC「………」ギィィ
サキュバスC「……?」
サキュバスC「……っ!!???」
勇者?「……」
< バサァッ
サキュバスC「……足元にお気をつけ下さい」スッ
勇者?「悪いな」
サキュバスB「随分早いのね、どうだった?」
サキュバスC「……このお方は、その……信用出来ます」
サキュバスA「? どうかしたのC」
サキュバスC「……みんな、一緒に行こう? みんなで帰ろ?」
サキュバスB「……」チラッ
勇者?「全員来てくれて構わない、人数に関係なく迎え入れてやる」
サキュバスB「貴方、名前は?」
勇者?「『詮索するな』『知ろうとするな』だ」
サキュバスB「あくまで教えないのね、それとも名前が『詮索するな』なの?」
勇者?「普通の名前だ、普通の」
淫魔兵「あの、人質はどうなさいます?」
淫魔兵「村の人間も……」
勇者?「村の人間はまだ監禁したままでいい、後で人質にした女がやる」
サキュバスB「じゃあ決まりね、みんな荷物を持って来なさい」
サキュバスA「ね? どんな所なの?」
サキュバスC「………行けば、分かるよ」
村娘「勇者様!」がしっ
勇者?「なんだ」
村娘「いきなり捕まって怖かったです……」
勇者?「そうか、とりあえずお別れだな」サッ
村娘「なんでですか?」
勇者?「……色々あってな、20年近く姿を消す」
村娘「え?……どこか遠い所に淫魔達を連れて行くんですか」
勇者?「ああ、お前のせいでな」
勇者?「だからお前にやって貰う事がある」
村娘「はい?」
勇者?「今から20年、毎日村の外や村で起きた事を日記に記せ」
勇者?「それから、何かまた困った時は20年後まで待ってろ」
村娘「……」
村娘「それで良いのなら、喜んで♪」
村娘「ずっと貴方様の帰りを待ってますね、勇者様!」
勇者?「……」
勇者?(だから、勇者じゃないんだがな)
< バサァッ
サキュバスB「こんな小屋が入り口なの?」
サキュバスA「うわぁ……狭そう」
勇者?「1人ずつ入れ、最後に俺が入る」
淫魔兵「……罠、とかないよね?」
勇者?「心配するな何も気にしなければ問題ない」
< ガチャッ
淫魔兵「……」スタスタ
勇者?「次、入れ」
サキュバスC「………」
勇者?「後はお前だけだ」
サキュバスC「……あの」
勇者?「なんだ」
サキュバスC「………」
サキュバスC「……っ」
勇者?「わかった、1つだけ答えてやるから話せ」
サキュバスC「……」
サキュバスC「『あれ』は、私達が平和に暮らしてた時代の『城』ですか?」
勇者?「……」
勇者?「違う」
サキュバスC「では一体あの場所は……!」
勇者?「どこでも無い、どの時間でもどの場所でもない」
勇者?「『あれ』は、俺の死んだ友人が残した……言わば反則技だ」
サキュバスC「………」
勇者?「気が済んだなら、行け」
< ガチャッ
サキュバスC「……どうかお元気で、貴方様に一生の中で会えた事は絶対忘れません」
勇者?「……」バタン
勇者?「……」スタスタ
勇者?(『お前』のおかげで、しばらく退屈はしないみたいだよ)スッ
勇者?(まだ調節が分からなくてな、しばらく会えないみたいだ)
勇者?「じゃあな、 『魔王』 」スッ
< ガチャッ
< バタン
なるほどわからん
おっつん
書き終えたら解説よろしく
< バサァッ
淫魔兵「あちゃー、みんな先にいるかな?」スタッ
淫魔兵「さっきの人間さん! ちょっと遅れちゃいましたけど入りますねー!」
< ガチャッ
< バタン
淫魔兵「意外に中は綺麗だね、さてとみんなは……」
淫魔兵「……」スタスタ
淫魔兵「……みんなー!」
淫魔兵「みんな!! 誰かいるんでしょ!?」
淫魔兵「みんな!! サキュバス様! 人間さん!」
淫魔兵「だ、誰か……誰もいないの?」
「誰も……いないの?」
「こんにちは」
【ん? 見かけない顔だな、というかどこから……】
「こんにちはされたら、こんにちはするのが英国紳士だよ」
【紳士って……お前、女だろう】
【……まて、えー国とはなんだ】
「イングランド……というかヴァチカン? 詳しいのは分かんないや」
【貴様、淫魔じゃないな…何者だ……!】
「ぼく? ぼくはねぇ……うーん」
―――― 「時間と次元に影響されない、『魔王』かな?」
【魔王……だと………?】
< ギィィ……
勇者?「……ついさっきから20年か、思ったより変わらないな」
スタスタ
勇者?「……」
勇者?(久しぶりだな、元気にしてたか)スッ
勇者?「………」
勇者?(さて、麓の村まで行くか)スタスタ
勇者?「……?」
勇者?「これは……『ポスト』か? 誰が作ったんだ」
勇者?(中に何かあるな)カチャ
勇者?(手紙……3通ある)
勇者?「! ……差出人は村娘か」ガサッ
―――― 「あれから20年が経ちました」
―――― 「私はあの後三年で結婚し、子供も産まれました」
―――― 「勇者様、あれから村は1つの街に発展し以前よりも栄えるようになったのですが……」
―――― 「今、私達家族は大変な目に合っているのです」
―――― 「どうか……またお助け下さい、このままでは私達家族を筆頭に街が最悪の末路を辿る事になります」
勇者?「……残りの二通も差出人は村娘……?」
―――― 「勇者様、すでに半年が過ぎています」
―――― 「先月ついに私の夫が処刑されました……何故あなたはまだ来てくれないのですか」
―――― 「助けて下さい」
―――― 「私はどうなっても構いません、せめて娘だけでも助けて下さい」
―――― 「もう逃げながら待つ事は出来ません」
勇者?「………」ガサッ
―――― 「勇者、あなたがいなくなり既に21年経っている」
―――― 「この手紙を入れた小屋には『生活している痕跡』があるのを見た、あなたはもう帰って来ているのだろう」
―――― 「だから私はその小屋に2ヶ月住んでみたが、面白い事が分かった」
勇者?「……ほう」
―――― 「勇者は『これまでの21年間ずっと小屋で生活している』、それが私なりの答えだ」
―――― 「どんな魔法かは知らないけど、あなたに拒否権は無い」
―――― 「この手紙を読んだら直ぐに街の酒場に来い」
―――― 「さもなければ『王立十字軍』にあなたの事を話す」
勇者?(……王立十字軍?)
勇者?(十字軍といえば、悪魔や魔女狩りを連想させるが……)
勇者?(………)
勇者?「面倒な時期に来てしまったな」
勇者?(何にせよその十字軍は明らかに人間の軍隊、俺の存在を知られるのは面倒だ)
勇者?(……行くか)
< ワイワイガヤガヤ
勇者?(確かに随分と発展してるようだな)
「そこの兄さん、騎士団の人かい」
勇者?「違うが」
「なんだ違うのか……消えな」
勇者?(……?)スタスタ
勇者?(かなりの店が出てはいるが、幾つかは一般の人間を立ち入りさせてないな)
勇者?(騎士団……十字軍と関係あるとしか思えない)
勇者?「酒場はどこだ」
女「はい?」
勇者?「酒場だ、場所を教えろ」
女「はぁ……余所から来たんですか?」
女「酒場は向こうの南ストリートと北ストリートに挟まれた路地にありますよ」
勇者?「そうか」スタスタ
女「あの、騎士団の方ですか」
勇者?「違うが」
女「……そうですか、お気をつけて」
勇者?(以前とは大違い過ぎるな……20年ってこんなものか?)
勇者?(……ここか)ギィィ
店主「いらっしゃい」
勇者?「……」チラッ
男「……」
白服「……」
勇者?「……」チラッ
女「……」
仮面「……」
勇者?(……誰が村娘だ?)
店主「お客さん、座りなよ」
勇者?「ああ」
店主「何飲む?」
勇者?「任せる」
勇者?「………」
勇者?(毎日いるとは限らないか? 逃げていると書いてあったが)
< 「おいそこのお前」
勇者?「……」
白服「さっきから何だその仮面は、外せ」
仮面「……」
白服2「聞こえないか? これは『王立十字軍』の命令だ」
勇者?(あの『女』、なんだ…?)
店主「はいよ」コト
勇者?「店主、あの仮面を被った『女』はいつからあそこに?」
店主「女なのかい? さあ、毎日この位の時間にいるが……」
仮面「…!」
仮面「……」スッ
白服「?」
勇者?「!!」
白服2「……あの男がなんだって?」
仮面「……」
白服「おい、何とか言っ…」
仮面「 勇者さん助けてっ!! 」
勇者?(!? 声が違う、村娘じゃない……!)
白服「ゆう……しゃ?」
白服2「何を言ってるんだお前」
仮面「は……!!」バッ
―――― バシュゥッ
< 「うわぁ!?」
< 「くそ、煙幕?」
< 「逃げられるぞ!!」
仮面「こっち……!」バッ
勇者?「違う、そっちの角の先に同じ服装の男がいる……こっちだ」グイッ
仮面「…!」
今日は終わる
< タッタッタッ・・・
勇者?「来てるか」
仮面「直線は追いつかれる、曲がって……!」
勇者?(なに?)
―――― ヒュバァッ!!
白服「見つけた、向こうだ!!」スタッ
勇者?(……! 何だ、今の動きは……)
仮面「速い…! こうなったら人質でも取って……」
勇者?「角を曲がったらその仮面を捨てろ、何とかする」
仮面「はぁ!? 素顔までバレたらどうなるか!」
勇者?「黙ってろ」ガシッ
仮面「ひゃ……っ」
< カランッカラカラ……
―――― ヒュンッ
白服「・・・」スタッ
白服2「!」スタッ
< カラカラ……
白服「この仮面、女が着けていた物か」
白服2「見失った……!?」
白服「・・・」
白服「そこの2人、これの持ち主はどこに?」
少女「……!」ピタッ
女?「まぁ、何かあったんですか?」
白服2「どうも『淫魔』の疑いがありましてね、追っていたのですが……」
女?「それは大変ですね、さっきの男性と女性ならその路地に入って行きましたよ」
白服「協力に感謝する」ヒュバァッ
白服2「良い散歩を、お嬢さん方」ヒュバァッ
女?「……」ニコニコ
少女「……」
女?「……行ったか」
女?「当面はこの姿でいるか、おいお前」
少女「……」
女?「……おい?」
少女「い、いきなり……女になった」
女?(…面倒な奴だな)
少女「凄い、『母』からある程度は聞いてたけど、まさか変装も出来るなんて……」
女?「…………厳密には変装ではなく変身に近いが、まあいい行くぞ」
女勇者?「……そうか、お前が村娘の子供か」
少女「まあね、その辺は手紙で知ってるよね」
女勇者?「……」
少女「どうかした?」
女勇者?「村娘の夫、つまりお前の父親についても手紙で知った」
少女「ああ…そうよ、死んだわ」
少女「半年前よ、私の父が連中にあらぬ疑いをかけられて処刑されたのは」
女勇者?「連中、とはやっぱり『王立十字軍』か」
少女「? ……ああ、21年もどこかに行ってる事になってたのよね」
少女「ついて来て、家で『日記』を渡すから」
女勇者?「……」
女勇者?(全く……次から次へと)
< ガチャッ
少女「ちょっと待ってて、今とってくるから」タタッ
女勇者?(……)
< 「んー、どこかな……ここ?」
勇者?(やれやれ)ズズ
勇者?(……)チラッ
コトッ
勇者?(これは、写真? カメラが普及してるのか)
勇者?(……右が村娘か? 随分と大人びたな)
勇者?(抱いているのが少女か、少なくとも15年は前か)
< 「ああ、あったあった」
少女「おまたせ、母が勇者に渡すようにって言ってたの」
スッ
勇者?「そうか」パラパララッ
少女「ちゃんと書いてあるわよ」
勇者?「ああ、色々あったみたいだな」
勇者?「しかし対淫魔の為だけに作られた騎士団か……そんな人間の味方がなぜお前達家族を?」
少女「私達だけじゃない、十字軍がこの村が淫魔と関わっていたのを知ってから村で魔女狩りが……」
勇者?「お前の父親は、日記の通りならば突然捕まって処刑されたな? 何故だ」
少女「こっちが聞きたいわ、母も捕まってしまった以上知る術はないけどね」
勇者?「・・・捕まったのか」
少女「あなたが来るのが遅かったの、捕まったのは先週よ」
勇者?「あの最後の手紙はお前が送ったのか」
少女「そうよ」
少女「2ヶ月住んだのは嘘だけどね、まさか本当に来るとも思わなかったし」
勇者?「……だがお前の考え方は正解だったぞ」
少女「え?」
勇者?「いやいい、それより」
勇者?「…日記にあるこの『サキュバスが捕まっている』について詳しく聞かせろ」
少女「……淫魔に興味あるの?」
勇者?「…違うが」
少女「12年位前なんだけどね、私が五歳の時サキュバスが近くの民家で捕まったのよ」
勇者?「捕まったのは1人か?」
少女「らしいわね、噂だとあなたが連れて行った淫魔達のはぐれとか」
勇者?「………」
少女「思えばあの日からね、十字軍の連中がこの村の女を怪しみだしたのは」
勇者?(発端は捕まった淫魔、そして火種が燃え移った結果が村娘達か)
勇者?「……所で、十字軍の騎士は全員がさっきの奴等のように身体能力が高いのか」
少女「ええ、でなきゃ淫魔の軍勢と戦えないでしょ」
勇者?(……ただの人間が一度の跳躍で数十m、有り得ないな)
勇者?(だが納得はいくか? それなら淫魔達がただの数の差で押される訳だ)
少女「早速だけど勇者、あなたには私の母を助け出して貰いたいの」
勇者?「わざわざ脅迫してまでか」
少女「元はといえば、あなたが早く来てくれなかったから父も母も大変な目にあってるのよ!」
少女「ただでさえ滅茶苦茶なのに……! 母を助け出してもここには住めないのにっ!」
勇者?「助け出してやるから落ち着け、処刑されるのはいつだ」
少女「……来月よ」
勇者?「まだ時間はあるな、なら数日かけて脱獄させればいい」
少女「でもグズグズしてたら……」
勇者?「17の子供に何が出来る、いいからお前はこの家で待っていろ」
勇者?(………~)
勇者?(面倒だ)
勇者?(だが、『王立十字軍』の騎士達の身体能力……見過ごせないか)
白服3「……」スタスタ
< シュルッ
白服3「?」
< ギチィ・・・!!
白服3「なっ……!?」
白服3「誰だ!!」ググッ
―――― ブチィッ!
< 「!?」
白服3「何だかは知らないが、糸なんかで縛ろうとはいい度胸だ」シャキ
白服3「だが我らパラディンを嘗め過ぎたな……」グッ
―――― ヒュバァッ!
< (っ、速い……!!)
白服3「捉えた」ヒュン
< ドズッ
< 「がっ……」
白服3「トドメを刺す前に聞く、何者だ」ズブッ
< 「………」
< 「………し」
白服3「なに?」
< 「……」
< 「少し、迂闊過ぎないか? 刺しただけで死ぬ相手かどうかも確認せず近くにいるのは」
白服3「………ぇ」
―――― メシャッゴキィッッ
白服3「ごぁン、っ! ?ッ……ぅぐ、ゲボァ…………」
ドサッ
< 「……さて、とりあえずコイツに聞くか」
少女「……zZZ」
< ギシ……
少女「……?」ぴくん
勇者?「起こしたか」
少女「!?」ガバッ
少女「な、なんでいるのよ! 鍵は!?」
勇者?「民家の鍵くらい、造作もない」
勇者?「それより聞きたいのは『聖十字教会』とは、どこにあるどういう建物だ」
< バタン
勇者?「……ただの教会らしいな」
白服3「ンー!! ンムッ、ンー!!ンゥゥー!!」
勇者?「……」スタスタ
勇者?「人間の体で最も痛覚がある部位はどこか、わかるか」スッ
白服3(な、なんなんだコイツ……なんなんだコイツ!!)ガタガタ
勇者?「……ここに一本の針がある」
白服3(?)
勇者?「この針を刺したら、当然痛いだろう……な」ズドッ
白服3「―――― ッッ!!?」
勇者?「……そこまで痛く無いはずだ、かなり深く刺した」
白服3(ひっ……ひっ……ぃ)ガタガタ
勇者?「………」スッ
< するっ
白服3「た、頼む助けてくれ……」
勇者?「正直に答えろ、『聖十字教会』に本当に村娘がいるんだな」
白服3「い、いる! まだ移動されてないならいる!」
勇者?「では、サキュバスは?」
白服3「…………」
勇者?「……」チャキ
白服3「ひ、ぎぃぃぃいい!! ぎっ! ぃぁ……」
勇者?「人間の『痛覚』は皮膚の下に最も多くある、何より神経の隙間に針を刺すならともかく」
< ズブッ
白服3「たっ、頼むやめてくれ……ぎぃっ!?」
勇者?「……知ってる事は話した方が楽だぞ、そのうち神経に針が直撃すれば発狂する程の痛みが走る」
勇者?「さあ、話して貰おうか」チャキ
白服3「ひ、ひぃ……っ」
< カツ……カツ…ッ
白服α「只今帰還致しました、団長」
< 「フム、どうだったかね? 『本土』は」
白服α「何やらまた新たな兵器が開発されたようです」
< 「兵器?」
白服α「『 銃 』と言う、遠距離からほぼ確実に敵に致命傷を負わせられる物だそうです」
< 「はは、しかしそれでも我々『聖教騎士団』の力には程遠いのだろう?」
白服α「……はい、私のような未熟者ですら『銃』の豆粒を捉える事が出来ました」
< 「謙遜は止したまえ、君は私が知る中でも最も『インキュバス』に近い男だ」
白服α「お褒めの言葉、光栄です」
< 「しかし数十年前までは考えられなかったものだ、汚らわしい淫魔を犯すなど……」
< 「……おっと、犯すではなく儀式だったか」
白服α「……」
< 「α君、この後すぐに淫魔と儀式を交わして力を蓄えておきなさい」
白服α「は、了解しました」
白服α(………)
白服「チッ……締まりが悪いな」ジュプッジュプッ
白服2「むしろ良い方だ、『本土』の儀式用に飼育されてる淫魔なんてただの肉塊だぞあれ」
白服4「あれに比べたらたった12年しか使い込まれてないコイツは最高の女だぜ」ジュプッ
白服β「お前らそろそろ出ろ、『本土』から帰ったαが儀式に使う」
白服2「あぁ!? αの奴、帰ったのかよ……」
白服「所で3の奴、まだ巡回から戻らないのか」
白服4「知らねえよ糞がッ、あのエリートの前に射精しておくか」ビュルビュルッ!
白服β「嫌がらせかお前」
白服4「ふぅ、ざまあみろ」
< ……ガチャ
白服α「入るよ」
白服α「……酷い臭いだ、待っててくれ」スッ
淫魔兵「……ぅ…あ?」
白服α「……」シュゥゥ
白服α「『本土』で学んだんだ、私の魔力を一時的に内部暴走させれば物質を消滅させられる」
淫魔兵「ぁ……ぁぅ?」
白服α「汚れも臭いも、全部消したんだ」ナデナデ
淫魔兵「……ぁ」ポフッ
白服α「ゆっくり今日はおやすみ、私がいる間は他の騎士は手を出さないよ」
白服α「さて、じゃあ私はそろそろ戻るよ」スッ
< ぐいっ
淫魔兵「……」
白服α「! ……もう少し居た方が良いかい?」
淫魔兵「……」
白服α「……たまたま、か…おやすみ」スタスタ
< バタン
白服α「……!」
白服β「『また』、手を出さずか?」
白服α「私は充分強い、これ以上彼女を汚してまで魔力を得る必要なんてない」
白服β「彼女って……ありゃ淫魔、モンスターだぞ」
白服α「…違う、彼女には『壊れる事が出来る心があった』んだ」
白服β「心が壊れるのは当然だ、何人の犠牲者を出した化け物だと思ってやがる」
白服α「彼女は何もしてない」
白服β「そういう問題じゃねえんだよ馬鹿が」
白服β「いい加減、区別をつけろってんだよ! あれは人間じゃない、敵である化け物だ!」
白服α「……」ギロッ
白服β「っ……」
白服α「……なら敵じゃなくなれば良いんだろう、この戦争を終わらせれば良い」
< スタスタ
白服β(実力はあんのになぁ……どうしてああ堅いのか)
少女「おはよう」
勇者?「ああ」
少女「……昨日の夜、何してたの」
勇者?「情報搾取というやつだ」スタスタ
少女(さ、搾取……?)
少女「って、どこいくのよ」
勇者?「『聖十字教会』に行って来る」
勇者?(……)スタスタ
勇者?(街なのに随分と入り組んでるな、治安は大丈夫なのか)
勇者?(しかし『レンガ』造りの建物か……)スタスタ
勇者?(たった20年でここまで進化するものなのか?)
白服「!」
白服(あいつは……昨日の!)
白服(……挙動不審な上に、どこに向かってるんだ?)
勇者?「……」スタスタ
白服(とりあえず後を尾行して、そこで取り押さえるか)
< シュルッ
白服(ん? なんだ今の)
―――― スパッ
< ゴトン……ブシャァァァ
勇者?(切れ味が増したタイプのワイヤーだったが、ここまで簡単に首を落とせるとはな)シュルッ
勇者?「……」ゴソゴソ
勇者?(なるほど、これなら良いかもな)
< ズズ・・ッ
女白服?「……行くか」スタスタ
< シュルッ
女白服?(ワイヤーは……念の為しまっておく)
神父「はぁ、新入騎士様ですか……」
女白服?「今日から配属されたのですが、何分慣れていない身……ここに収監された囚人の警護をしたいのよ」
女白服?「構わないわよね? 神父さん♪」
神父「し、しかし『通達書』もなく勝手にそんな……」
女白服?「あら、勝手じゃないわよ? 『王立十字軍』の騎士たる私が命令したの」
神父「………」
女白服?(通達書、か……細かい点まで進化しているな…押し切れるか?)
< 「構わない、私が許可する」
神父「!! これは……α様」
女白服?(なに……?)
白服α「そこの彼女は恐らく私が用意した『移送隊』だ、秘密裏にという話だからごまかしたんだろう」
白服α「随分早かったね、他の騎士はどこに?」
女白服?(これは…思わぬ展開だな)
女白服?「私が1人よ、『上』からの命令であなたと私の2人だけが効率が良いから」
白服α「……団長が? 確かに秘密裏に移送するなら少数が良いかもしれないが」
白服α「……」
白服α「君、名前は?」
女白服?「名前はともかく宜しくね、早く移送の準備にかかりましょ?」
白服α「ダメだ名乗って貰う、後々君に支給出来なくなる」
女白服?「α様はそんなの気にしなくて良いんですよ、私は代理も同然なので♪」
白服α「代理……そうか、君は他の騎士の代わりなのか」
女白服?「ええそうですよ?」ニコッ
白服4「急ぐぞ、移送隊として派遣されたってのに遅刻なんてヤバすぎる!!」
白服2「他の移送隊は先に行ったのか!?」シュバァッ
白服β「らしいな、αの事だから直ぐに出発するかもしれんぞ」
白服2「まじかよ…」
< ニチャッ
白服4「うぉあ!」ドシャァッ
白服2「何やってんだおま……えっ?」
白服β「うっ……!? これは……」
白服4「ぎゃああああ!! 首が、血がぁあ!?」
白服2「こいつ、白服の奴だ……何に殺られたんだ!?」
白服β(断面が不自然に綺麗過ぎる……こんな刃の剣、あるのか?)
白服β(いや、αや団長クラスなら『魔導』でどうにでも…)
白服β(だがだとしても、一体誰に?)
移送隊「な……に?」
神父「で、ですから……騎士様なら先に囚人を連れて出発しました」
騎士「ここにいるぞ」
神父「し、しかし……」
移送隊「α様は誰と出発したんだ」
神父「……ぇ? いや、あれ」
神父「申し訳ない、何故か……霧がかったように『女』ということしか思い出せません」
騎士(……まさか、淫魔の類か?)
女白服?「あなた、お名前は?」
女囚人「……」
女白服?(さすがにこの姿では分からないか)
女白服?(……村娘、か……)スタスタ
―――― 「勇者様ですよね!」
女白服?(最後に別れて3日も経ってないのに、村娘は20年の歳月を経ている)
女白服?(どこか寂しい気もするな)
白服α(……)スタスタ
< バタン
女白服?「ここは?」
白服α「この建物を抜けたら移送先の騎士に受け渡します」
白服α「……が、貴女に聞きたい」
女白服?「?」
女囚人(……)
白服α「『彼女』が言う、 ユーシャ とは何ですか?」
女白服?「!……私に聞く事なのかしら?」
女囚人(……!!)
白服α「……やはりか」
< ヴゥ・・ン
女白服?「っ!!」
女白服?(『魔剣』? 人間なのに『夢魔』クラスの魔導が行使出来るのか)
白服α「貴女の心が読めない時点でおかしいとは思ってたが、まさか淫魔とはね」
白服α「私はな、他者の心が読めるんだ」スタスタ
白服α「先程から『彼女』が何度も呟いてたよ、心の中で『ユーシャ様が来てくれた』ってね」
女白服?「お前…気づいてたのか」チラッ
村 娘「ゆ、勇者様……やっぱり本当に勇者様なんですね!」
白服α「答えて貰おう、君は何者だ」ヴゥン
女白服?「……」
女白服?「悪いが、俺は女でも無ければ淫魔ですらない」
白服α「なら何者なんだ」
< ズズッ・・
勇者?「勇者でも淫魔でもないのは確かなんだがな」
白服α「……!!」バッ
白服α(変身? 何なんだこの男……!)
勇者?「言っておくが動かない方が良いぞ」
白服α「なに? ……」
< シュルッ
白服α「糸……?」
勇者?「視認出来るのか、とても人間とは思えないな」
白服α(……金属に見える糸、この鋭利さでは切れ味は相当の物…)
勇者?「行くぞ村娘、お前の娘が待ってる」
村 娘「はい!」ぎゅっ
< タッタッタッ
白服α(……よし)
白服α「はァッ!!」
―――― ジャキィィィン!!
白服α(全身から魔剣を剣山のように出せば容易く斬れる……切れ味はあっても耐久性は皆無か)
白服α(あの2人、間違いなくどこかに逃げたな)スッ
白服α(隠れ場所を突き止めて全員捕縛だ……!!)
村娘「ゆ、勇者様……っ、はぁ……私…っ」
勇者?「どうした、もっと走れ」
村娘「あっ」ガッ
< ドサッ
勇者?「!」
勇者?(……そうか、村娘は昔ほど走れない)
村娘「あぅ……あはは、おばさんだなぁ私」フラフラ
< 「そこまで、のようだな」
勇者?「……」
白服α「何者かは問わない、抵抗するならすれば良い」
白服α「だが私は強いぞ、少なくともあんな糸では傷1つ付けられない程度に」
白服α「さぁどうする」
勇者?「なら抵抗させて貰おう」シュルッ
白服α(また糸か…!)
―――― ザシュン・・!!
白服α「……は、っ!?」
< グラッ
白服α(何だと……『銃』すら見切った私でも、見えなかった?)ドシャ
白服α「が、ぁ……貴様なにをした」
勇者?「ワイヤーを使う必要はないと思ったんだ、どうやらお前は以前に両断された経験があるらしくてな」
白服α「……!?」
勇者?「簡単に言えば、お前が今まで受けた中で最も威力のあるダメージを『再現』した」
白服α「貴様……なに、者だ」
勇者?「別に化け物とかではないんだがな」
今日はこの辺で
乙
今度の続きはいつかな?
>>154
明日の午前を予定しています
白服α「化け物じゃない…? ならなんだ、人外じゃないと言うならお前は!」
勇者?「……」スタスタ
勇者?「立てるか」
村娘「ありがとうございます勇者様…」
勇者?「行くぞ、追っ手の速度は異常だからな」
白服α「……っく」
勇者?(……斬られた傷が塞がりかけているな、まったく人外はどちらか分からないな)
< タッタッタッ
白服α(クソ、逃げられた……!!)フラフラ
白服α(はぁ……はぁッ、ぐぁ…血を流し過ぎたのか)フラフラ
白服α(あの男は一体何者だ、何故か顔や表情が思い出せない)
白服α(淫魔でなく、化け物じゃない……?)
白服α(ふざけてるッ……人間の筈がない)
少女「………おかあさん」
村娘「少女っ、無事で良かった……」
少女「お母さんこそ! 大丈夫? 怪我はない?」
村娘「あはは、久しぶりに走ってちょっと疲れたかな」
勇者?「……」スタスタ
村娘「勇者様、約束を覚えてくれていたのですね」
少女「やっぱり知り合いなんだね」
勇者?「……まあそうだな」
―――― 数時間後
村娘「それでね、勇者様はサキュバス達を連れて……」
少女「遠くに旅立ったんでしょ、もうそこは何度も聞いたよ」
村娘「ふふ、あの頃は今も鮮明に覚えてるわ」
少女「……」チラッ
勇者?「なんだ」
少女「……勇者さ、このまま一緒に住まない?」
村娘「ちょっと何言ってるの!」
村娘「ぁぅ……すいません勇者様」ぺこり
勇者?「……」
勇者?「とりあえず返事はする、断る」
少女「え、なんでよ」
村娘「少女、勇者様にはね……」
勇者?「そうじゃなくてな、今度はお前達2人が生きてる間に帰れなくなる」
村娘「……はい?」
勇者?「悪いがな」
少女「私達2人って……勇者だって死んじゃうわよ!」
勇者?「老衰はしない体質だ」
勇者?「それにな、何も二度と会えない事は無いはずだ」
少女「えっ、そうなの」
村娘「……」
勇者?「少し『慣れ』さえすればいつでも来れる、だからまずはやりたい事をやらせて貰う」
勇者?「お前達2人は街の騒ぎが治まるまで隠れてろ、いいな」スタスタ
< ガチャッ
< バタン
村娘「……」
< ガチャッ
勇者?「……何か用か」
村娘「あの、21年間聞きたかったんです」
勇者?「何がだ」
村娘「勇者様の家の傍に埋葬された『友人』、勇者様とどんな関係があったんですか!」
勇者?「『友人』は友人だろう」
村娘「違います!! 私、夫を失って初めて気づいたんです!」
村娘「この手で墓標に花を添えた後、私は……っ」
村娘「……初めて会った時の勇者様とまったく…まったく同じ『目』をしていた」
勇者?(ほぉ)
村娘「勇者様、あなたは私を何度も鬱陶しく思っていたのでは?」
村娘「幼いとはいえ、愛する人を亡くした所へ私が来たのは目障りだったのでは?」
勇者?「さぁな」
村娘「……知りたいんです、何故今回も助けて頂いたのかを」
勇者?「最初からそう言えば教えたが……まあいい」
勇者?「………『魔王』」
村娘「?」
勇者?「『魔王』だ、あそこに埋葬されたのは」
村娘「ま、ま魔王? とは、やっぱりあの?」
勇者?「そうだ」
村娘「……でも、ならどうして戦争が?」
勇者?「それを後々調べる、『魔王』は俺とずっといたんだからな」
村娘「しかし、勇者様と魔王は友人だったんですか…? どうにも信じられないというか」
勇者?「『魔王』は俺の妻でもあったと言えば納得か?」
村娘「!?」
勇者?「……後は自分で想像するんだな、俺はもう行く」
村娘「また、会えますよね」
勇者?「……そうだな」スタスタ
勇者?「………」
勇者?(しまった、言いそびれたな)スタスタ
勇者?(俺は勇者じゃない)
―――― 「『魔女狩り』って知ってるかい」
「なんだ? 淫魔を狩るのか」
―――― 「ちょっと違うかな、要するに【怪しい奴は魔女】っていう考え方が実現された行為だね」
「……?」
―――― 「ぼくのいた世界ではね、大昔に魔女狩りが行われたんだ」
―――― 「酷いものだったよ、女子供関係なく痛めつけられる時代だった」
「あまりこっちの世界には縁がなさそうだ」
―――― 「くす、そうかもね」
―――― 「この世界は本当に素晴らしいよ……『ファンタジー』そのもので、ぼくの世界とは大違い」
―――― 「……でもね、それでもぼくの世界と同じ悲劇は繰り返してはいけないよ」
―――― 「拷問は痛くて辛いし、死刑より酷い刑もある」
―――― 「■■■■■は、絶対に『魔女狩り』なんていけないよ」
「…あ、ああ……覚えておこう」
―――― グシャぁァァッ!!
白服2「ひぎぃぃぁああああああ!?」
―――― スパッ
< ズシャッ
勇者?(……だから『俺』は宗教なんてものが存在しないようにした)
< シュルッ
勇者?(だから『アイツ』は人間に余計な力を与えないようにしてた)
白服4「クッ、何者だ貴様ァァッ!!」
勇者?「この世界はな、あくまでファンタジーでなければいけなかった」
ジャギィンッ!!
スパァッッ!!
勇者?「多少の発展は許そう、多少の戦争は許そう」
白服4「死ねぇ! 化け物ぉぉっ!!」
―――― ピタッ
白服4「……!! 糸?」ギギギ
勇者?「…………だが」ピンッ
―――― ツルッ
白服4「え」
< ゴトッ
勇者?「『魔女狩り』なんて大量虐殺は、絶対に許さん」
< シュルッ
白服4「うわあああ!? 腕が、腕がぁ!!」
勇者?「だからお前達妄執者は全員ここで死ね」
< ビチャッ
―――― カツ・・カツ・・・
騎士「止まれ、撃つぞ」
勇者?「マスケット銃か、よく狙うんだな」スタスタ
騎士「くっ、騎士達よ……これより神罰を代行する! 撃て!!」
―――― ズドドドォッ!!
勇者?「銃口を向ける速度が遅いな」シュルッ
騎士(いつのまに背後を……!?)
―――― スパァッッ
勇者?(装填すらさせん)
騎士2「ひぃ―――― ぐぉぇ」ギギギ
騎士3「ゼヒュ……ッゥ」ギギギ
勇者?(……)ピンッ
―――― ズシャァァ
< ドシャドシャッ
勇者?(……)シュルッ
勇者?(まだ奥にいるな)
勇者?(……『十字大聖堂』)スタスタ
勇者?(まだ未完成だが、四年前から『聖十字教会』の西側に位置する事実上の『軍施設』)
勇者?(奴らがサキュバスを監禁しているとしたら、ここしかないな)
< ザッザッザッザッ・・!
勇者?(……)
勇者?(不要、か)シュルッ
白服β「……囲め」
白騎士「了解ッ」
< ザッザッザッザッ・・・・
勇者?「……」
白服β「言うまでもなく、貴様は包囲された」
勇者?「確かに言うまでもないな」
白服β「武器の糸を捨てて大人しく投降するか、ここで我々に『神罰』を受けるか」
白服β「選べ化け物」
勇者?「斬れば良い、その腰にあるミスリル剣の刃で俺を一斉に斬り捨てろ」
白服β「………」
勇者?「………」
―――― 「殺せ」
白騎士「神罰を代行する!」シャキィ
< シャキィ
< シャキィ
< シャキィ
勇者?(……)
白騎士「うおおおおおおお!!!」
< ビュンッ!!
白服β「……ッッ!!?」
―――― 藍色のコートに身を包んだ男に騎士のロングソードが振り下ろされた瞬間、俺は見た。
勇者?「………」
―――― 刃が触れるか否かの刹那に、男は声無く何かを呟く。
―――― その直後、振り下ろした騎士のロングソードを筆頭としてその場にいた全員の剣が爆散した。
―――― まるで見えざる壁でもあるかのように、中心に立つ男を避けながら……
―――― ……破片は、血の雨を降らせる最悪の凶器と化して騎士達を襲ったのだ。
白服β(ぐぉ……!!)
―――― バキィィィンッ!!
白騎士「ギャ……ッは、ごぉ…っ」ドシャッ
< 「目、目が……ぁっ!! 耳がぁっ!!」
白騎士3「ヒュー……ヒュー……」フラフラ
白騎士4「し、神罰を・・・だい、代行する……っ」ビチャッ
勇者?(辛うじて生き残ったのがいるか)シュルッ
―――― ヒュルンッ
―――― スッパァンッッ
< ドシャドシャドシャッッ!!
勇者?(……)
勇者?(? 数が足りないな)
―――― シャッッ
ズドン!!
ドガッ!!
ガゴォォンッ!!
勇者?「~~ッ!!」メシャッ
勇者?(……成る程、『人外』は他にもいたか)ズルズルッ
白服β「やってくれたな悪魔め、数少ない『十字騎士』を全滅させやがって」スタッ
勇者?「……目で追えなかった、随分速く動くんだな」
白服β「ああ、貴様を殺すには充分過ぎるスピードだ」
―――― シャッッ
< ドゴンッッ!!
勇者?「ッ、ぐ」フラッ
―――― 「まだまだぁっ!!」シャッッ
< ガッ!!
< バチンッ!!
< ドズッ!!
勇者?(チィ……音速の12倍か? 服や移動した後に摩擦熱が発生していないのを見ると『魔法』に近いのか)
勇者?(……何にせよ、これでは埒が開かないな)メキッ
―――― ガシィィッ!!
白服β「なっ……」ブワッ
勇者?「接近戦は苦手でな、肉弾戦も特に嫌いだが……仕方ない」ミシィ
白服β(この俺を捉えた……!?)
勇者?「……」スッ
白服β(大丈夫だ、この一撃を乗り切ったら次は慎重に……!)
勇者?「……」ブンッ
< ゴチャァッ!!
勇者?「言っておくが『次』はない」ぽいっ
< ドチャッ
勇者?「………」
勇者?(……静かになったな、数少ないと言っていたが本当らしい)
< カツ……カツ……
勇者?(しかし建物内を見れば、『アイツ』が喜びそうな美術だ)
< カツ……カツ……
勇者?(全て大理石か? それも上等な白、だな)
< カツ……カツ……
勇者?「……さて」カツン
白服α「昼間は手痛い目にあったが、『次』はない」カツン
勇者?「面倒だな、そうまでして大量虐殺をしたいか」
白服α「正義が悪魔を裁くのが罪だというなら、貴様はなんだ」
勇者?「『魔女狩り』はこれからの未来に影を落とす、最悪の産物だ」
白服α「なぜ断言する、なぜ神のように全て分かる?」ヴゥン
白服α「お前は我々の神でもなければ未来を知ってる訳でも無い、なのに何故貴様が断言する!」
白服α「応えろ異形の怪魔!! 貴様は何者だ!!」
勇者?「……」
勇者?「お前達、人間を作った神……か」
白服α「…!」
勇者?「残念ながら俺はお前達の神でも無ければ怪魔でも無い」
勇者?「それは『断言が出来る』」
< カツ…カツ……
勇者?「しかしな、もう一つ残念な事に俺は未来を同じく『断言が出来る』」
白服α「なぜだ」
< カツ……カツ…カツッ
勇者?「とある友人がお前達人間の未来を幾つかの運命として、既に予知しているからな」
白服α「友人だと……!!」
勇者?「お喋りは終わりだ、仲良く雑談する気はないんでな」
白服α(……っ、上等だ)ヴゥン
勇者?「……」シュルッ
勇者?「……」ピンッ
―――― ヒュパァッ!!
白服α「はァッ!! 同じ芸は通じんぞ!?」ジャキィッ
< バチィッ
勇者?(魔剣をあそこまで容易に操れるのか)
勇者?(なら折角だ、『剣』の風情を味わうか)
< ヴゥゥ……ンッ
白服α「魔剣だと? 剣の勝負という事か!」ダッ
勇者?「いや、俺は接近戦は苦手なんだ」ヒュッ
白服α「!!」
―――― ズガガガァァッッ!!!
白服α「……!! 貴様、なんだ今のは……ッ」
勇者?「伸縮自在、長さはリーチとして最大の戦力だ」ヴゥン
白服α(どんな魔力があればそんな真似が出来る、クソ……!!)バヂィンッ
勇者?「右、左、フェイントだ……右」ヴンヴンッ
―――― バヂィンッ!! ヒュォッ!! ズバァッ!!
白服α(く、近づけない……!)
勇者?「……」ピタッ
勇者?(……この男、魔法障壁で対魔法を完璧にしてるのか?)
白服α(止まった? チャンス―――― ッ!!)バッ
勇者?(……)
勇者?(呆気ないな、まったく)
勇者?「【絶大なる衝撃を与えよ】」
< ドゴォォォッ!!
白服α「ゴフッ……!?」
白服α「……こ、この程度で……っ」ヨロッ
勇者?「【全身を引き裂け】」
―――― ブシャァ!!
白服α「ぐあああああ!!?」ドサッ
白服α(なんだ!? 何で魔法障壁が効かない!?)
勇者?「……その傷なら流石に戦闘不能だな」
勇者?「『次』からは、魔法障壁なんて張らずに俺を絞め殺すんだな……無理だろうが」スタスタ
白服α(……ッ、出血が止まらない……)
< カツッ・・カツッ・・・・
勇者?「部下なら全員始末した、最後はお前だ」
< カツ……カツ……
勇者?「『魔女狩り』の引き金は引かせん、悪いがお前には死んで貰う」
勇者?「大司教か? 神官か? なんて呼べば良い」
団長「……『騎士団長』、そう呼んでくれるかね悪魔の化身くん」ニヤリ
勇者?「……教会関係者とは程遠そうだな、どうやら」シュルッ
今日はここで
キリンちゃんの人?
乙
魔王死ななきゃの人?
団長「君は凄いな、私が誇る騎士達をまるでゴミのように殺してしまった」
勇者?「そうでもないな、音より速い人間に肋骨を全て粉砕されて死にそうだ」
団長「それは結構……死んでくれたまえ」ニヤリ
団長「さて、さて、私はα君がどうなったか気になるんだがね」
勇者?「α? ……魔剣の使い手か」
団長「彼は強かったろう」
勇者?「……強いな、とても人間とは思えん」
団長「では君は彼をどうした? 何故に君はここに君臨しているのかね」
勇者?「奴は殺した、だから生きている」
団長「……優秀な部下を失うと心が痛む、勇者君は酷い男だねぇ……」
< カツ、カツ……
団長「所で君はこんな夜更けに大聖堂に何のようかね?」
団長「懺悔か、祝福か」
勇者?「どれでもないな」
団長「ではどんな目的で私の優秀で最強にして最高の『駒』を破壊したのか述べよ罪人!!!」バッ
< ズドン!!
勇者?「……ッ」ゴフッ
勇者?(床から槍……? 面白い魔法と魔導の使い方だ)
団長「その槍は罪人に刺さったが最後、抜けない」
団長「私はね、『神罰の槍』を射る事が出来る選ばれた人間なんだ」スタスタ
勇者?(抜けない、確かにな)ググッ
団長「……」スッ
団長「話を聞きたまえ罪人」バッ
< ズドン!! ズドン!!
勇者?「がはッ……は、肺を…2つ貫くと、はえげつないな……」グシャ
団長「貫いてはいないさ、呼吸する度に肺が切り裂かれるように貫いたんだ」ニヤリ
勇者?「悪趣…味だな」
団長「私の性癖は関係ない、懺悔したまえ」
団長「君は、何の目的があったのかね? 何者だ」
団長「それを聞くまでは私も槍を投げ続けるしかないのだが……」
勇者?「聞きたい事があっただけだ」
団長「ほう、言いたまえ」
勇者?「……『誰』だ……?」ビシィッ
団長「!?」ビクッ
団長(わ、私の槍にヒビ? ばかな)
勇者?「『誰が』、お前達に力を与えたか言え」ビシィッ
勇者?「どうやって力を得る、どうやって力を使う、どうやって誰にどうして知った?」
< バリン!
団長「くっ、黙りたまえ!!」バッ
―――― ヒュドドドド!!
勇者?「……」グチャァ
団長「……」
団長「しまったな、思わずトドメを……」
< 「答えてないぞ? 俺の質問に」
団長「……!?」バッ
勇者?「どうした、トドメとは何の話だ」
団長「な、なんだ! 何故無傷でそこにいる!!」
勇者?「おかしな事を言う奴だ……なら聞かせてくれ、『俺を貫いている姿』が思い出せるのか?」スタッ
団長「………っ、!」
団長(何故だ、顔や姿が思い出せない……)
勇者?「満足か? ならば俺の質問に答えて貰う」スタスタ
団長「……」
団長「応えようじゃないか、私は今ので君に惚れたよ」
勇者?「………」
団長「さて……では教えよう」
―――― スタッ
勇者?「!」
団長「何を驚く? 『瞬間移動』など君にとっては珍しくもなさそうだがね」
勇者?(槍を無制限に『魔導錬成』、更には『転移魔法』か……)
勇者?(魔力だけなら……『幻魔』クラスに匹敵するな)
団長「君は私に聞いたな」ガチャッ
団長「どうやって力を得ているのか? 簡単さ、雄にとっては非常に低俗極まりない行為で済むんだ」
< ギィィ・・・
勇者?(あれは、まさか)
団長「見たまえよ、『女』をただレイプするだけで我々は神の力を得られるのだ」
淫魔兵「………」ジャラ
勇者?「…………」
――――――――――――――――――――
淫魔兵「ん? 何だ貴様、小屋に戻れ!」チャキ
勇者?「武装はしていても『淫魔』クラスのサキュバスか、その程度でよく粋がるな」
淫魔兵「……!」
――――――――――――――――――――
勇者?「……」
―――― 「12年位前なんだけどね、私が五歳の時サキュバスが近くの民家で捕まったのよ」
―――― 「捕まったのは1人か?」
―――― 「らしいわね、噂だとあなたが連れて行った淫魔達のはぐれとか」
勇者?(そうか、『あの時』に1人遅れて……取り残されたのか)
団長「彼女は既に『本土』の魔術師が混乱の魔法をかけ続け、心は破壊したよ」
団長「まったく大変だったものだ、淫魔と思ったら潜在魔力は『夢魔』クラスだったのだから」
団長「……これが君の知りたい事さ」
< スタッ
団長「さて、まだ聞きたい事はあるかね」スタスタ
勇者?「『誰が』それを解明した、人間とただ性交しただけでは淫魔の性質を移す事はできない」
団長「君は博識だな? もしや勇者君の方が詳しいのではないかな」
勇者?「………」
団長「ふふ、海の向こうを見たことはあるかね」ニヤリ
勇者?「海……?」
団長「ご存知ないか、まあいい」
勇者?(……『他の大陸』が関係しているのか)
勇者?(いや、有り得ない……この今いる大陸の他には2つしかない筈だ)
勇者?(それとも、『四天王』が人間に敗れたのか?)
団長「海の向こうにある2つの大陸、その片方は約60年前に我々『聖教騎士』が支配した」
団長「どうやったかは私も知らないが、淫魔達を統べる4人の王の1人を生け捕りにしたらしい」
勇者?「生け捕り!?」
団長「はは、君でも驚くのか」
勇者?「………」
団長「始めはただの人間ばかりだったがね、いつしかその『王』を生け捕りにした男が研究したのだ」
団長「……『淫魔とはどういう生物なのか』、とね」
< カツ……カツ……
団長「生け捕りにした淫魔を切り裂いては繋げ、犯し、千切り、治癒させる」
団長「そんな繰り返しの果てに、その男はついに我々人間に『力』をもたらしたのだよ」
団長「理屈は分からないが……とても簡単だった、捕まえた淫魔をその男が魔法をかければいい」
団長「後は……先に言った通り、ただただ陵辱すれば良かったのさ」ニヤリ
勇者?「………何者だその男」
団長「『教皇』と呼ばれているよ、彼は優れた知識で魔法や魔導の仕組みすら解明した」
勇者?(魔法や、魔導を?)
勇者?(………)
勇者?(………)
勇者?(……っ)
勇者?「おい」
団長「なんだね? 私に出来る事ならなんでも……」
< パンッ
団長「え」
勇者?「え、じゃないだろう? 腕を散らしたんだぞ」スタスタ
団長「ひぃぃ!? な、何を怒っている!! 私が何か…」
勇者?「……喋るな」スッ
< ゴキッ
団長「ぎぁあああああ!! く、ばけもの!!」ヒュッ
勇者?(転移魔法か)バッ
―――― ヴンッ!!
勇者?「放て」スッ
―――― スタッ
団長「は、話し合おう!? 私は君に応えたのに君は……」
< ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスッッッ!!!
団長「……な・・・ぜ・・?」グラッ
< ゴシャッ
勇者?「床を含め360度全方位にお前の好きな『槍』を放ってやったんだ、安らかに死ね」
勇者?(…………)
勇者?「………」
< カツ……カツ……
勇者?「……」
勇者?(この淫魔を治して、それから『 α 』を治癒させてから……)
勇者?(やる事は山積みか)
淫魔兵「……あ、あれっ?」
勇者?「気分はどうだ」
淫魔兵「あ、『さっきの』人間さん?」
勇者?「お前、今の自分の名前覚えてるか」
淫魔兵「えっ? ……淫魔兵です」
勇者?「…それでいい、行くぞ」スタスタ
淫魔兵「えぇ!? ちょ、あの、ここどこですか!?」
白服α「…」
白服α「だ……団長はどうした」
勇者?「殺した、だからお前には生きて貰わないといけない」
白服α「くっ……生き延びる位なら、死ん…」
淫魔兵「……」
白服α「!!」
勇者?「…?」
白服α「………その娘はお前が、やったの……か?」
勇者?「そうだ」
白服α「…………」
淫魔兵「?」
白服α(これが、本来の……『あの日』までの彼女)
白服α(……)
勇者?「命を繋ぐ程度に回復した、俺の話を聞け」グイッ
白服α「……どうしろと?」
勇者?「『本土』とやらに戻った後、教皇に伝えろ」
勇者?「 『魔女狩りを止めただけでは済まさない』とな 」ブンッ
白服α「っ!」ドサッ
< 「行くぞ、お前の仲間の所へ」
< 「は、はい」
白服α「っ、待ってくれ!」
淫魔兵「!」
< 「何だ」
白服α「お前じゃない! 彼女に頼みがある……!!」
淫魔兵「わ、私ぃ?」
淫魔兵「私に……なにか?」
白服α「……」
白服α「手を、握ってくれ……」ガクガク
淫魔兵「ぇ……あ」スッ
白服α(………ああ)
白服α(この温かさだ、思い出した)
勇者?「……」
勇者?「……先に外で待つ」スタスタ
淫魔兵「えっ、わかった……」
白服α(……!)ぎゅっ
―――― 「12年位前なんだけどね、私が五歳の時サキュバスが近くの民家で捕まったのよ」
「ただいまー!」
「お母さん、お腹空いた! ごはんは?」
< 「来たらだめ!! いやぁぁ!!」
< ガタンッガシャーン!
「……おかあさん?」
「!! ガキがいたのかよ」
「この女は縛っとくからお前あのガキ殺せ」
「チッ、仕方ねぇな……男根が疼いてるってのに手間かけさせやがる」スタスタ
「ひっ……」
< ズバァッ
< グシャッ
「な、なんだてめぇ!! この女がどうなってもいいのか!」
「その女性を離しなさい下衆野郎……ッ」ヴンッ
「く、このぉ……!」
< ザクッ
「お母さーん!!」
「貴様……人間の中でも最低のクズだ!!」
「るせぇっ! お前、8年前に村に来た淫魔だろ!? お前らとヤッてから俺達はこうでもしねえと狂っちまいそうなんだよ!!」
< ドサッ
「……ねえ! しっかりしなさいよ!」
「ぁ……貴女は、どちら様かは知りませんが…ありがと……」
「ただの淫魔よ、覚えてないの!? 昨日パンをくれたのに……」
「ああ……あの時の娘ね」ニコッ
「お母さん! おかあさぁん!!」
「泣かないの、坊や」
「………サキュバスさん、この子をお願いしても?」
「な、何言ってるのよ! 私はただでさえ十字軍に追われてるのに……」
「…ぉ……ね、がいします……」
< ドサッ
白服α(……助けてくれたのも、育ててくれたのも……)
白服α(全部、君だったね……)
< 「それじゃ……誰かは知らないけど、さようなら」スッ
白服α「……っ」
白服α(………)
白服α(ご……ごめんなさい……)
白服α(結局、僕は貴女を助ける事は……!)
白服α(『最初』から最後まで出来ませんでしたぁ……!!)ギリ
―――― 「追い詰めたぞサキュバス!!」
―――― 「観念するがいい!」
「そう簡単に、捕まってたまるか!」ヴゥンッ
―――― 「魔剣だ! 気をつけろ騎士達よ!」
―――― 「神罰を代行せよ!!」
< ズバァッ!!
「きゃぁ……っ!」ドサッ
「『姉さん』に触るなぁ!!」
―――― 「!? なんだコイツ、邪魔だ!」
< ブシャァァァッ!!
「!?……やめて、そいつには手を出さないで!」
「私を殺すなりなんなり好きにすればいいじゃない!」
白服α「ひっぐ……ごめんなさい……」
白服α「結局……僕は弱くて、逆らえなくて……!」
白服α「じゅ、12年もっ……助け、られなぐて………!」
白服α「ごめんなさい……っ」
勇者?「……中に入れ」
淫魔兵「ど、どうなってるんですか? 『さっき』来た時は仲間はいないわ『今』は村が街になってたり」
勇者?「『詮索はするな』、だ」ガチャッ
淫魔兵(怪しいなぁ……)
勇者?「入れ」
淫魔兵「はいはいっ」タタッ
淫魔兵「……!?」
サキュバス「あら? どなたかしら」
サキュバスB「ここは『夜魔』クラス専用の寮よ?」
淫魔兵「えっ、え……?」チラッ
淫魔兵(あれ!? 扉が、なくなってる!?)
サキュバスB「貴女…見た所『夢魔』クラスね、寮を間違えてるわよ?」
サキュバス「凄いわ! 優秀な淫魔なのね!」
< ドタタタタッ
淫魔兵(ど、どうなってるの!? まるで……昔の『城』の中みたいにっ)タタッ
< ドンッ
淫魔兵「きゃっ」
サキュバスC「みゃぁ!」ドサッ
淫魔兵「あはは、すいません……ってあれ!?」
サキュバスC「おや? しばらく見てなかったけどおひさー」
淫魔兵「サキュバスC様!? やっぱり、あの人間の扉を潜って?」
サキュバスC「……?」
サキュバスC「……ああ、『半年』も遅れたのね?」
淫魔兵「?」
サキュバスC「よーこそ、ここは『城』の中よ」
淫魔兵「え、でもっ……今は戦争中じゃ?」
サキュバスC「その辺は『魔王』様に聞くといいわ、ほら」チラッ
淫魔兵「陛下に?」チラッ
淫魔兵「えっ………?」
< 「おや、新入りさんかい?」
< 「またか……やれやれ」
< 「そんな風に言ったら可哀想だよ?」
< 「たしかに俺がいけないし……まあ、とりあえずだな」
勇者?「 歓迎するよ、若い淫魔の娘さん 」ニコッ
< ガチャッ
< バタン
勇者?「……」スタスタ
勇者?(多少の『調節』は出来るようになったが、まだまだ危うい)
勇者?(『お前』に会える日が待ち遠しい)スッ
勇者?(『魔王』、お前が死んでないのは分かってる)ゴバァッ
< ゴドン!
勇者?(そもそも、お前は死なないだろう)ガギン
< ガチャッ
勇者?(……だから、この棺に入ってる黒髪の女はお前であってお前じゃない)なでなで
勇者?(この死体は、お前なんかじゃない……)なでなで
え?これって勇者が魔王をさらった話の>>1?
『 年代不明 』
< ドンッ!!
< ドンッ!!
女?「くぅ、王女! お前はそこの魔法陣で逃げなさい!」
王女「しかし『お婆様』! あなたはどうするのです!」
女?「私はいいから! アンタは魔法陣で移動した先の山を登りなさい!!」
王女「山……? そこには一体誰が!?」
女?「勇者がいるわ! 早く行って!!」
< ドガァァッ!!
女?「……っ! 久しぶりね」
白服α「………」ヴゥンッ
女?「悪いけど私の大切な孫娘はとっくに移動したわよ」
白服α「どこにだ」
女?「……さあ? 勇者以外に頼れる人知らないの私」
白服α「!」
白服α「…………死ね、『少女』」ズバァッ
とりあえず第二部完
>>238
違う
今日はここで
サキュバス達のクラス詳細
最上級:『王魔』(宇宙の創造が可能)
超上級:『天魔』(四天王達の実力、ある意味未知数)
上級:『幻魔』(転移魔法や魔導錬成が可能)
中級:『夢魔』(魔剣のみならず多少の創造魔法が可能)
下級:『夜魔』(速い強い美しい)
最下級:『淫魔』(サキュバス)
この世界のモンスターって基本的にサキュバスだけ?
>>246
一応スライムや小さなドラゴンはいますが、基本的に『使い魔』程度にしか扱われません
戦争が始まる前は人間とサキュバスしかいないレベルの世界だった位に、数もサキュバスが圧倒的
乙
ドラゴンが使い魔か斬新だな
じゃあRPGで敵をエンカウントしても
「サキュバスが2体現れた」
「野生のサキュバスが襲ってきた」
的な感じにしかならんのか
―――― 「この世界はね、ぼくにとっては異世界なんだ」
【だろうな、私も『ニンゲン』という種族は聞いた事がない】
【何より……お前のその姿が理解出来ない】
黒髪「そうかもしれないね、『人間』の体はとても万能とは言えない」
【なら何故お前はその姿を好む? 翼も無いのに】
黒髪「歩くのは価値があるんだ、素晴らしい事なんだよ?」
黒髪「考えてみてよ、二本の棒だけで器用に動けるんだよ? 歩く走る跳ぶ蹴る……ってね」
【………興味深いな】
黒髪「良かった♪ 君とは美味しい紅茶が飲めそうだ」にこっ
【……理屈は理解した】
黒髪「飲み込みが速いんだね、じゃあ早速試してよ」
【……まず、脳と心臓から派生させればいいか】
黒髪「うん」
< ズズ・・・ッ
女勇者?「ん? ……視界がおかしいな、部屋が緑に見える」
黒髪「目が光を正しくキャッチ出来てないのかも?」
女勇者?「………」ズズ
女勇者?「見える、が……改めて見るとお前男だったのか」
黒髪「しっ…!? 失礼な! ぼくは女の子だよこれでもね!」
黒髪「君こそなんで女の子になったんだよ! 信じらんないな、もうっ」
女勇者?(人間の容姿はサキュバスが近いというから、サキュバスの姿を模したんだが……)
黒髪「ほら、これが陰茎だよ」
女勇者?「これか、実物を見ないと分からないな」
黒髪「まあそうだよね……ちなみにサキュバスって交配するのかい?」
女勇者?「しないな、寿命は2000年を目安にしてるしお前の世界みたいに争う事がないから増やす必要がない」
黒髪「……ふぅん」
黒髪「ね、ちょっと試していい?」
女勇者?「?」
女勇者?「……これが性交か、甘く見ていた」ドサッ
黒髪「ご、ごめんね……まさかそこまで感度良好とは思わなくて」
女勇者?「いやいい、何故か満たされた感覚がする」
黒髪「ぼくのいた世界だと人間の中には中毒になるのもいたからね」
女勇者?「大体は理解出来た、次は私が試していいか」
< ズズ・・・ッ
勇者?「……どうだ」
黒髪「うんうん、よくできてるよ!」
< グシャァッ
黒髪「信じらんないよ!! 女の子のお尻になんてことするのさ!!」
勇者?「だからって腕を吹き飛ばさなくてもいいだろう……」
黒髪「君はぼくと『同じ』だからいいの!」
黒髪「……で、どう? サキュバスの雄を作る気になった?」
勇者?「…少し考える、それよりも頼みがある」
黒髪「なにかな」
勇者?「専用の『世界』を創るから、私にお前の世界について教えてくれないか」
勇者?「……文字や本、か」
黒髪「どうかな」
勇者?「『こちら』にもあるが、お前の世界の文字は読めないな」
黒髪「そこはぼくの知識を君が好きに犯してくれていいよ」
勇者?「いいのか」
黒髪「……うん」
勇者?「………」
勇者?「なら、まずは今の姿を解かないか」
黒髪「だね」
< ズズズズ・・・ズズッッ
勇者?「……………」
黒髪「どうかな? ぼくの知識」
勇者?「……」なでなで
黒髪「あ、早速知識の応用だね? 傷心の女の子は慰めてあげるのが紳士だよ」
勇者?「何となく、お前が俺を見つけた時の表情の意味が分かった」
黒髪「えへへ……♪」
勇者?「ようこそ、ファンタジーの世界へ」
勇者?「ここにいたか」
黒髪「うん、それ紅茶?」
勇者?「淫魔達にお前の知識を基にした茶の葉を栽培させた」スッ
黒髪「ありがとう♪」こくっ
勇者?「どうだ」
黒髪「? これ、紅茶じゃないよ」
勇者?「そうなのか」
黒髪「土壌の問題なのかな……ぼくの世界に無い、リンゴにも桃にも感じる味と風味だね」
勇者?「つまり甘い、と」
黒髪「うん、凄く美味しい」こくっ
勇者?「毎日夜になると空を見るな、何故だ」
黒髪「ぼくの世界はね、時代が進むにつれて『夜』がなくなってしまったんだ」
勇者?「悪い事か」
黒髪「うん、悪い事」
黒髪「人間の成体にも満たない子供は明るい夜の世界を歩き、暗い夜の世界に怯える」
黒髪「……酷い話だよね、『夜』にも意識はあるのに」
勇者?「…魔王」
黒髪「なにかな」
勇者?「俺が受け入れる、お前がこの世界を支配しろ」
黒髪「嬉しいけど、ぼくがどういう存在かは以前の『交わり』で分かったでしょ」
勇者?「ああ、恐ろしい化け物だな」
黒髪「……」
< むぎゅ
黒髪「……?」
勇者?「お前の貸した『ショウセツ』に書いてあった、こういう時はこうすると」
黒髪「……」くす
黒髪「それ、ぼくにプロポーズするってこと?」
勇者?「いや違う」
< グシャァッ!!
< 「……肺を吹き飛ばされると喋り辛いんだが」
黒髪「……でも本当にぼくを受け入れてくれるなら嬉しいや」
勇者?「そうか」
黒髪「この世界は本当に綺麗で、夜の星空も……宇宙空間で見るよりずっと美しい」
黒髪「『価値』だけなら、きっとぼくよりも貴いと思うよ」
勇者?(……興味深いな)
黒髪「ね、そろそろ君の名前を教えてよ」
勇者?「名乗ってなかったか?」
黒髪「くす、2ヶ月経つのにまだだよ」
勇者?「……」
勇者?「先に言っておくが、俺はお前の知る存在じゃないからな」
黒髪「…」
勇者?「俺の真名は・・・」
< ガチャッ
< バタン
勇者?(これで、俺の『調節』が合っていれば今は340年は前の世界だが……)
勇者?(……)スタスタ
勇者?(『墓』がある、という事は失敗か)
勇者?(……分かってはいたが、時空間の行き来は容易ではないらしい)
勇者?「……」
―――― 「はぁ…はぁ……っ」
< タッタッタッ・・・!
―――― 「そっちに行ったぞ!」
―――― 「挟み込むんだ!」
―――― (こ、このままじゃ……!)
―――― (……あ)
―――― (あの『小屋』、もしかしたら……!!)
< ゴソゴソ
勇者?(『アイツ』の下らない本に影響を受けて試しに作ったワイヤー、どこだ)
勇者?(時代によっては今までのミスリル銀製じゃ太刀打ち出来ないからな)ゴソゴソ
勇者?(……とはいえ、ミスリル銀より硬く柔らかい金属が作れたのは偶然だったが)
< シュルッ
勇者?(……)シュルッ
勇者?(やっと見つけた、かなり埃まみれになってるな)
< ドンドン!! ドンドン!!
< 「誰か! 誰かいませんか!!」
< ガチャッ
勇者?「誰だ」
王女「!! お願いします、私を助けて下さい!」
勇者?「断る、帰れ」
王女「そんな……! どうかお願いです、助けて……っ」
< ガァンッ!!
勇者?「……!?」グシャァッ
王女「きゃぁ!?」
白兵装「……男を1人射殺、クリア」
< 「こちらA班…周囲半径80m圏内、クリア」ザザッ
王女「そ、そんな……勇者様…」ガクッ
白兵装「さあ、大人しく来るんだ」
王女「いやぁ!! 離して! 私は絶対にあなた達に捕まらない!」
白兵装「いい加減にしろ糞餓鬼ッ!!」
< ガァンッ!!
王女「―――― ッ!?」ドサッ
< 「今の銃声はなんだ」ザザッ
白兵装「足を撃っただけだ、問題ない」
王女「ぐ……ぅぅッ」
白兵装「王女は確保した、爆破しろ」
< 「了解」ザザッ
―――― ギュィィ・・・ッ
白兵装「ッ! なんだ今の音は」
< ボトッ
白兵装「え」ブシャァッ
王女(……!?)
勇者?「この小屋を爆破だと? ふざけるな」シュリィッ
王女(み、眉間を弾丸で撃ち抜かれたのに……無傷?)
白兵装2「動くな! 武器を捨てろ!!」カチャ
白兵装3「抵抗すれば射殺する!」
勇者?「……」シュルッ
勇者?「撃ってみろ、丁度試したかったんだ」シュリィッ
白兵装3「!? 撃てぇっ!!」
< ドドドドドドドドォォッッ!!
―――― ガギギギィン!!
白兵装2「何……?」
白兵装3「ばっ、ばかな…!!」
勇者?(……性能も使い方によってはミスリル銀以上だな、合格だ)シュリィッ
勇者?「……」シュルッ
王女(『機関銃』と『対魔物理装甲』で武装した兵達を……無傷で瞬殺)
勇者?「お前」
王女「はい、助けて頂き感謝します勇者様」
勇者?「何者だ? 誰に俺の事を聞いた」
王女「祖母の『少女』に、幼い頃から貴方様の武勇伝はお聞きしております」
勇者?(孫娘? となると……)
勇者?(……『調節』失敗にしては誤差が酷いな、前回は一年程度だったが)
勇者?「……少女の孫娘とか言ったな」ペタペタ
王女「はい、お婆様をやはりご存知ですね……いたっ」ビク
勇者?「銃弾は肉を貫通しただけだ、……しばらくすれば歩ける」
王女「ありがとうございます勇者様」
勇者?「お前達一族には何度も言ってるがな、俺は勇者じゃない」
王女「しかし私を助けて下さった貴方様は、私にとっては勇者様と同義なのです」
勇者?(今までの中ではまともな理由だが納得はしないな…)
王女「……」
勇者?「外の死体は処理はした、『痕跡』すら残していないから安心しろ」
勇者?「だが、話して貰おうか? お前の年齢と今の世界について」
王女「どこまでご存知なのでしょう?」
勇者?「『王立十字軍』という組織が淫魔と戦争しているのは分かる」
王女「…では、戦争がいよいよ後2ヶ月で終局を迎えるのも?」
勇者?「知らないな、話せ」
王女(やはり、この方はお婆様の言った通り……最後に姿を消した時以降の世界を知らない)
王女「お話します、今この世界で何が起こっているのか」
勇者?「つまり……あれから53年しか経ってない、『王立十字軍』は世界征服に乗り出す、新兵器と淫魔を使って強力な兵を作り出している」
王女「はい」
勇者?「……呆れるが、同時に『教皇』が何者なのかある程度予測出来るな」
王女「! 教皇をご存知で!?」
勇者?「先日……まあ、お前達にとっては53年前に騎士団長から直に聞いた」
勇者?「僅かな時間で200年かかる技術を飛躍的進化させたんだ、淫魔でも人間でも無いのは確実か」
王女「では、私の両親を奪ったあの男は何者なのですか」
勇者?「さあ、な? 会って見なければ認識出来ない」
勇者?「何にせよ、少し待っていろ」スッ
王女「? どこへ行くのですか」
勇者?「教皇が『いなかった事』にすれば、全ての発端は取り除かれる」
勇者?「お前の両親も捕まる事はない筈だ」スタスタ
王女「そ、そのような事が可能なのですか!?」
勇者?「ああ、つまり早くもお別れだ」
王女「……」
勇者?「『奥の部屋』には近づくなよ、じゃあな」ガチャッ
━━━━ ズ ッ ・・・
勇者?(……?)
勇者?(『調節』が発動しない、なぜだ?)
━━━━ グ ニ ャ リ
勇者?(ッ!? ゼリーのような空間の歪み……どうなってる)
”我等は〔猟犬〕、時空の護り手なり”
勇者?(……?)
━━━━ ズンッッ!!
勇者?「……ッガハ、何…?」ドサッ
”去れ”
”此処等時空は我等の領域、主の命に従い侵入者を滅する”
”去れ”
”去れっ”
”去れッ”
”去れッ!!”
勇者?(……傷が塞がらない、魔法も魔導も不可)
勇者?(……)スッ
━━━━ グシャァッ
勇者?(ッッ!! く、腕が……)
”無駄だ”
”如何に貴様が優れた存在だとしても、我等〔猟犬〕に勝る事はない”
勇者?(……)
勇者?(コイツ、まさか……)
勇者?「主は何者だ」
”我等の主は、『爆炎ノ神』なり”
勇者?「……神、か」
勇者?「…………」スタスタ
勇者?「また来る、その時はお前達を消す」スタスタ
”・・・御意・・・”
< ガチャッ
王女「!」
勇者?「どうやら俺は暫くこの世界にいなければならないらしいな」スタスタ
王女「ゆゆ、勇者様!? 肩に穴……というか、腕が!?」
勇者?「……よく見ろ、本当にそう見えるか」
王女「…………」
王女「? あ、あれ」
勇者?「気のせいだ、少し休んでろ」
< シャカッ
勇者?(ミスリルで作ったのか? 頑丈な機関銃だな)カチャカチャ
勇者?(………)スッ
―――― ターンッ!
勇者?(当たったな、射程圏なら多少の風があっても狙撃対象を1mm単位で調節しながら当てられるか)
勇者?(とにかくあの王女とやらに食事を作らなければな)スタスタ
< ガチャッ
勇者?「少し待ってろ、血抜き以外にも時間がかかる」
王女「……zZZ」
勇者?(……寝てるならいい)
勇者?(……)スッ
< ボォ!
勇者?(火をつけたら……食器と調味料の準備か)スタスタ
< パカッ
勇者?(バターと油、後は……醤油ソースでいいな)
―――― 「えへへ、ぼく達新婚さんみたいだねぇ」
勇者?「新婚? 確か『フウフ』の契りを交わしたばかりの人間だったか」
黒髪「そうだよ、新婚さんはね~最初の頃はお互いに助け合うものってね」
勇者?「なぜ、一生ではないんだ?」
黒髪「うーん? そりゃ……途中から相手に対する愛が薄れちゃうんじゃないかな」
勇者?「そういうものか、人間は」
黒髪「あ、そこの野菜とって」
勇者?「ああ」スッ
黒髪「ふっふー、ぼくのイタリア仕込みのカルパッチョをお見せしよう!」
勇者?「……」
< くすっ
勇者?「……」ジュゥ
勇者?「……」シャカシャカ
勇者?「……」カンカン
勇者?(………)
勇者?(魔王、か)
勇者?(お前も確か……『神』だったな)
勇者?(『1000の自分の中にある唯一の女にして単独個体』)
勇者?(ふ、今思うとその自己紹介は痛々しくないか?)
勇者?「……」
―――― 「ひ、ひどいやひどいやっ!」
勇者?「だからって腹に風穴開けなくていいだろう……食べたばかりなのに」
黒髪「君がぼくの料理を『まあまあ美味しい』なんて言うからでしょ!?」
勇者?「そんなに悪い意味ではなかったんだが……」
黒髪「……」じとっ
勇者?「そんな目で見るな……分かったから」
黒髪「じゃあ後でお風呂作っておいてね♪」
勇者?「……」
王女「まぁ、食事まで振る舞って頂けるなんて……勇者様には何て感謝すれば…」
勇者?「味は良い筈だ、お勧めはカルパッチョだ」
王女「カルパ……チョ?」
勇者?「そのサラダ、みたいな料理だ」
< スタスタ
勇者?「……後でカルパッチョの感想を聞かせろ」スタスタ
王女「……」
王女(殿方が直に作って下さった料理なんて初めて、美味しそう)
< ぱくっ
王女「……!!」
―――― 「君は不思議だね」
黒髪「ぼくの事を簡単に受け入れたり、簡単にぼくに『あれ』を作らせたり」
黒髪「……一言で言えば、お人好し」
< チャプン
勇者?「お人好しか、まあ否定はしないが」
黒髪「今ぼくが君に『殺して』って言ったら殺すでしょ」
勇者?「なぜそうなる」
黒髪「なんだか、君はいつもぼくの言いなりな感じがしちゃってね」
勇者?「……」
勇者?「……」スッ
黒髪「?」
< ぼそぼそ
黒髪「…っ」
勇者?「忘れるな、分かったか」
黒髪「……うん」
勇者?(………)
勇者?「湯加減はどうだ」
< 「とても良い温度です」
勇者?「そうか、俺は少し書斎にいる」スッ
勇者?「……着替え、置いておくぞ」
< 「え? あ、はい」
< 「…」
< (女性用の着替えがある?)
< ガチャッ
王女「あの……」
勇者?「どうした」
王女「この下着なのですが、少々サイズが……」
勇者?「………」
勇者?「!!」バッ
王女「!?」ビク
勇者?「………い、いやすまないな…反射的につい」スッ
王女(今の防御動作はいったい……)
―――― 「もー!! 怒ったぞぉっ!?」
勇者?「ま、待て! せめて痛覚を遮断させ……」
黒髪「問答無用、乙女の夢と希望が包まれている胸を侮辱した君には死すら生温い……っ」
< ゾンッゾンッッ!!
勇者?「っ、」ドサッ
黒髪「控え目な大きさなのはわざとなのに! わざとなのにぃっ!!」ヒュバァッ
< ズバグシャゾリュッバリンゴキバキメキブチャァッッ!!
< 「……」
黒髪「……ふん」
勇者?「……これでいいか」
王女「ありがとうございます……////」スッ
勇者?「お前の部屋はこの部屋を出て左だ」
王女「はい」
勇者?(思ったよりもコイツの一族は全員どこか……人間にしては精神力が強いな)
勇者?(恐らく境遇だけなら村娘や少女よりも壮絶な筈だが)
王女「……」スタスタ
勇者?「何かあれば来い、俺はここにいる」
王女「……」ニコリ
< ガチャッ
< バタン
< バタン
王女(……)
王女(っ……)ズルッ
王女(私、こんなに呑気で……何やってるんだろう)
王女(お婆様は生死不明、家臣や私の騎士達も十字軍に何をされるか……)
王女(なのに、安全な所で1人安心して)
王女(さっきなんかカルパッチョの美味しさに声まで出して)
王女(…………)
王女(…私、どうしたら)
今日はここで
魔王様万歳
勇者?「……」ペラッ
勇者?「……」
―――― 「これがぼくの世界にある本だよ」
―――― 「……絵の横に文字が書いてあるな」
―――― 「うん、慣れると楽しいよ」
―――― 「これは何て書いてある?」
―――― 「あ、そっか……英語が分からないんだね」
勇者?「………」ペラッ
勇者?「”HELLSING”、か……あの頃は読めるようになっても下らないから読まなかったが」ペラッ
勇者?(発想は確かにユニーク、魔王がこの主人公を俺みたいだと言う意味も僅かに理解出来る)
< パタン
勇者?(だが、やはりこれは本の世界でしかない)
勇者?(今いる『この世界』の解決の糸口にはならないか)
王女「おはようございます」
勇者?「食事は作ってある、好きにしていい」
王女「? いつの間に…」
勇者?「気にするな」スタスタ
< ピタリ
勇者?「だが、取り敢えず言うが……あまり俺に気を使うな」
王女「……分かりました」
勇者?(……)カチャカチャ
勇者?(……)カチャカチャ
< ガシャッ
勇者?(……)
< シュコォッ!!
< シュパァッ
勇者?(…どうだ)
< スパン!
ドドドドドドドォオッッ!!
勇者?(範囲は扇状240mか、威力は以前まで使っていたワイヤー並み)
勇者?(『ワイヤー弾』、熱に強いミスリルなら作れるとは思っていたが中々の性能だな)
勇者?(後は銃の調整をすれば範囲の可変も可能に出来るな)
< スタスタ
勇者?(……いや、これで充分か)
王女「あ、勇者様」
勇者?「違うが、まあいい…なんだ」
王女「昨日お話した事を詳しく、この紙にまとめさせて頂きました」バサッ
勇者?「……読め、と?」
王女「いいえ、しかし今の私に与えられた時間は多くありません」
王女「ですからもしも、勇者様が私と共に国を救って下さるならばお読み下さい」
王女「例え勇者様が拒んでも私は1人で十字軍と戦うつもりです」
勇者?「…」
勇者?「そこに座れ、読み終わるのに少し時間がかかる」バサッ
―――― 『王立十字軍』
その組織はその名が示す通り、『人の大陸』に君臨する王国が設立した対淫魔を目的とした討伐軍。
『十字』の紋章が意味するは<交わり>、聖なる行為と考える性交を快楽と食事に置き換える淫魔を否定しているのだ。
しかしその『十字軍』の将官であった後の教皇が、ある日突然『双島』の一つの大陸を支配する淫魔を打ち倒した。
『四天』を冠する淫魔の1人、四天王を生け捕りにしたのだ。
この功績に王国はその将官を『王立十字軍』の総帥として称え、国王に次ぐ莫大な権力を与えた。
そして教皇を名乗り、教皇は捕らえた淫魔を基に研究を始めた。
「『淫魔の頂点』とは『この世界の頂点』である。」
「この研究が成功すれば『君達人間が』新たな頂点になれるだろう」
勇者?(………)ペラッ
―――― 『白騎士計画』
遂に教皇の研究が完成されたのは戦争が始まり『45年後』。
教皇は淫魔達の肉体に宿る『不可視の核』を突き止めた。
その核に特殊な呪を紡げば、淫魔たちの肉体を循環する魔力回路が人間との性交で『分裂』する事が判明した。
しかしそれは『王立十字軍』の意義に反する、故にそれは禁忌とされた。
『淫魔を受胎させる』事が可能だとも判明しなければ、だったが。
勇者?(………………………)
『淫魔と人間のハーフ』。
この言葉にどれだけの権力者が魅了されたのか。
少なくとも、この『白騎士計画』が実行に移されてしまう程度に国内は腐敗した。
淫魔の『クラス』が高ければ高い程、それと性交した者は膨大な魔力を手にした。
数年かけて十字軍の内部で行われた『儀式』は数百名の『白騎士』を生み出し、凄まじい兵力を教皇は指揮する事になる。
ただの最下級クラスの『淫魔』と性交した者でさえ、一呼吸の間に蝿を八つ裂きにし。
戦場において功績を残した者は『夜魔』や『夢魔』と性交し、大地を割り、空を切り裂き、音を越える戦士となった。
遂に、戦争が始まって70年後『白騎士十字軍』と名乗る教皇の『私兵軍隊』が淫魔だけでなく人間をも支配するようになった。
勇者?(戦争が始まり70年……丁度『魔女狩り』の発端を潰した時期か)
< ペラッ
勇者?(…………)
―――― 『国王第2夫人、第3夫人の裏切り』
教皇が国内で白騎士達を使って様々な『仕掛け』を施す中、国王の5人いる妾達の中で教皇につく派閥が現れた。
「真に<王>となる男は教皇なり」
絶大な支持を誇るようになった教皇に魅了された『第2夫人』と『第3夫人』は、裏で教皇と服従の契りを結ぶ。
そしてそれに影響された夫人達の下に位置した、家臣達は次々と教皇の駒と化した。
今から17年前、第5夫人である『王女の母』が遂に王女を産み落とした直後に暗殺されてしまう程だった。
勇者?(……)チラッ
王女「……」
辺境の村を広大な『街』に変えた村長の娘であった第5夫人は、国王がある意味『地位や名誉を上回る』愛を注いだ女性だった。
それ故になのか、或いは他の夫人達の嫉妬を買ったのか。
宮内においても第5夫人は幾度も『いじめ』を受け、国王にとって初の子供である王女を産み落とした時に……
勇者?(………見るに耐えないな)バサッ
王女「!」
勇者?「今捨てた紙に書いてあるのはお前の憎しみや怒りだった、読む必要は無いだろう」
勇者?「……それとも、同情されたくて読ませてるのか」
王女「いえ、構いません……」
勇者?(しかし……となると17か、まだ若いのにこの風格は感心出来る)ペラッ
< バサッ
勇者?「……」
勇者?「大体分かった、お前が苦労したのもここに来る直前に城が陥落したのもな」
王女「はい」
勇者?「だが、どうやってこの山に来た? 『少女』がまだ健在なのも少し気になる」
王女「えっ、と……お婆様のお話ではここで2ヶ月程過ごした事があったんです」
勇者?(そういえばそんな事を言っていたな)
王女「それで……信じて下さらないかもしれませんが、お婆様はその『16歳の姿』で老いなくなったのです」
勇者?「不老だと?」
王女「はい、魔法は使えなくとも『魔法陣』が使える魔力を持っていました」
王女「お婆様はその魔法陣で私をこの山に転移させ、今に至ります」
勇者?(……この小屋は多少『あれ』の影響を受けてはいる)
勇者?(だが、そのせいで少女の肉体に付加されていく『時間』が止まったのか?)
王女「……勇者様」スッ
勇者?「なんだ」
王女「私と一緒に戦ってくれる事に、感謝します」
勇者?「戦う訳ないだろう」
王女「たたか……ぇ?」
勇者?「俺は出来得る限り、お前の手伝いはする」
勇者?「だが『戦う』訳じゃない、俺は戦いには行かない」
勇者?「『元に戻す』為に手伝う、理解したか」
王女「……………はい、分かりました」
勇者?「ならいい、明日の朝にここを出る」スタスタ
王女「今日は休むのですか」
勇者?「お前の足の事を考えてな、明日は途中まで歩いて日が暮れたら俺が走ってやる」
勇者?「だから今日は休め、いいな」
王女「はい!」
<白騎士十字軍・王城>
白服α「第1夫人派の軍隊は全滅、これでこの国はアンタの物だよ」
< 「『教皇』、様」
教皇?「んん、私に国王は務まらんよ……フゥ」シュボッ
白服α「勘弁してくれ、アンタが支配した国を誰が王になるんだ」
教皇?「なぁに、適当な野心家を私の駒として王に据えるも良し、『この世界』初の女王も良しさ」スゥ
白服α「ケホ、それはなんだ?」
教皇?「『タバコ』という娯楽さ、んん、やはり安物は良い……葉巻よりも風情がある」フゥ
白服α「……風情、ね」
教皇?「所でこの報告書にあるのは真実かね? 王女を逃がしたのは痛かったねぇ?」スゥ
白服α「それについて話がある」
教皇?「んん、それは本当なのかな」フゥ
白服α「『セイレム街』の武装兵に確認させたが、1時間もしない間に連絡が途絶えた」
白服α「相手が誰にせよ、並みの人間が退けられる武装兵じゃない」
白服α「間違いない、『奴』だ」
教皇?「『勇者』か! 凄いな、てっきり都市伝説だと私は思っていたよ」フゥ
白服α(『トシデンセツ』? また訳の分からない言葉を……)
教皇?「まるでファンタジーだねぇ、んん……会ってみたいよ」スゥ
教皇?「……んん、でも困るなα君」スゥ
白服α「何がだ」
教皇?「あの王女の境遇、そして今はこの城が陥落し各地はパニック」ポイッ
教皇?「更には、未だに尻尾を見せない『第4夫人派』の軍……」フゥ
白服α「……」ゾク
教皇?「あの子供にはまだ出来る事はある」
教皇?「私ならば直ぐにでも自分の剣となるような騎士を見つけてレジスタンスを立ち上げ反旗を翻し全力で敵を滅する!!」
白服α「……」
教皇?「……」
教皇?【 3日で王女を殺せ、いいな? 】
白服α「御意」ザッ
白服α「……」スタスタ
執行人「よぉ! 『向こうの大陸』に行くんだってな」
白服α「『執行人』か、お前達の出る幕じゃないぞ」
執行人「あん? てことは、相手は人間か」
白服α「『片方は』な」
執行人「…なんだよ片方って」
白服α「それを今度こそ突き止めてやる、だからお前達『執行人』は他の『異端審問』で暴れていろ」スタスタ
執行人(つれないなー……俺達なら化け物も『神』すらも殺せるのに)
勇者?「荷物はいいな」
王女「危険な旅になるかもしれないのに、着替えなんて必要でしょうか?」
勇者?「俺が知り得る限りの知識なら、間違いなく必要だ」スタスタ
王女「しかし勇者様は手軽なバックに『本』を二冊しか……」
勇者?「……俺は着替えも食事も必要ないんでな」
王女(その割に逞しい体ですね…)
< カツカツ
勇者?(……)
勇者?(山道が整備されている? しかもこれは……)
王女「『アスファルト』が珍しいですか?」ヒョコッ
勇者?「! 知ってるのか」
王女「ええ、悔しいですが教皇の知識がもたらした物です」
王女「ある程度の森林を残し、更にはここまでの足場に安定した道…」
王女「国中で貿易商人達が喜びの声を上げた功績ですね」
勇者?(『前回』からたった50年しか経過していないにも拘わらず、技術は数百年進んでいる……)
勇者?「?」
王女「どうかなさいましたか」
勇者?「この辺りを直進すれば滝がある筈だが」
王女「そこは今、『ダム』になっていて麓の街へ水を送っているんです」
王女「あ、『ダム』って分かります?」
勇者?「……恐らくお前よりは知ってるな」
王女「そうなのですか?」
<聖域・セイレム>
勇者?「『セイレム』?」
王女「はい、お婆様の母である『村娘』という方がこの街の元村長と決めた名だそうです」
勇者?「……村娘の代で村長と関わりがあったのか」
王女「みたいですね、噂だと村娘様が老後に亡くなられる前まで、手放さなかった日記なんかもあったらしいです」
勇者?(村娘もさすがにこの時代にはいないか)
勇者?(だが、それでもたった50年の間で随分変わったな)
王女「『本土』に渡るには船が必要です、この街から続く街道を通って近くの町を経由しましょう」
勇者?「港に直接向かわないのか」
王女「それは……危険です、野盗や『傭兵』が屯する村しか無いので」
勇者?「だが、街道を確保出来たのには驚きだが……遠回りになるんだろう」
王女「そうですが、『白騎士』もいない無法地帯を歩くよりはマシかと」
勇者?「構わない、1日でも早く着けるならそのプランにする」スタスタ
王女「で、でも……」
勇者?「安心しろ」スタスタ
< スッ
王女「?」
勇者?「その『本』が……お前を守る」スタスタ
王女「本?? ……あ、待って下さい勇者様!」タタッ
警備兵「ちょっとちょっと! そっちは立ち入り禁止だよ君達!」バッ
王女「!」
勇者?「何故だ」
警備兵「無法地帯なのは知ってるだろ、何より『善民』は必ず法に従わなければならないんだ!」
勇者?「法、か……?」チラッ
王女(し、知らないです! この区域も教皇が指揮してました!)
勇者?「なら善民でなくて構わない」ポイッ
警備兵「?」パシッ
勇者?「それで見逃せ、不満なら……」シュルッ
警備兵「!?」
王女(あの指先から僅かに見える糸……!)
王女「勇者様、だめ…」
警備兵「すっげぇぇ!! 金塊じゃねえか! ありがとよ兄ちゃん達!」
< 「キャッホホーイ」
王女「………」
勇者?「正確には『金剛石』(ゴルトアイゼン)なんだが……まあいいか」スタスタ
白服α「………歩数にして5328941289976歩、距離は大体580kmか」スタッ
白服α(もう日暮れか、近くの町で宿を取るか)
白服α(……っ)フラッ
白服α(海上を走って渡るのがこんなに大変とは、素直に執行人に転移魔法を頼むべきだったか)
白服α(まあなんにせよ)
白服α(また会えるのが楽しみぞ、勇者……!)スタスタ
一気に読んだら頭がこんがらがった
しかし戦闘力がDB並にインフレしてないかこの世界……
地球人(?)がこの世界における超越者な理由もまだ明かされてないし、謎が多すぎてワクワクする
>>348
途中途中の勇者?の回想で軽く触れてましたが、魔王は地球人(?)ではありません
>>黒髪「嬉しいけど、ぼくがどういう存在かは以前の『交わり』で分かったでしょ」
>>勇者?「ああ、恐ろしい化け物だな」
正体、とまでは言えませんが。
これが魔王様の『本質』と思って頂けると良いかと
店主「宿ぉ? ねぇよ、んなもん」
勇者?「休める場所もないならこの酒場にいる連中はどうやって一夜を過ごしている」
店主「『売春宿』だよ、この町にゃそれしかないっつの」
王女(……!)
店主「そっちのお連れさんなら可愛いし、2人位客とれば今夜ぐれぇ休めるぜ?」
王女「け、結構です!!」
勇者?「この酒場の二階、そこはどうだ」
< ゴトッ
勇者?「金ならあるんだが」
店主「……」
店主「いらね、換金するのは面倒だしそんなの持ってたら殺されちまう」
勇者?「無駄みたいだな、行くぞ」スッ
王女「えっ、でも」
勇者?「……やめておけ、お前は守れても他は保証出来ん」
勇者?「さて、夜になったからには早く宿を見つけないとな」
王女「しかし、あれは…」
勇者?「空き家くらいあるだろう、先客がいたら追い出せば良い」
< 「あ、そこのお兄さん!」
勇者?「……」スタスタ
王女(こういった町で声をかけられても、無視するのが一番ですね)スタスタ
?「ちょちょ、ちょっと! 君達寝泊まりできる所探してるでしょ!?」
勇者?「……」ピタッ
?「『ぼく』の家においでよ、2人共歓迎するよ!」
< バタン
?「ちょっと散らかってるけど、奥はそうでもないから安心してね」
王女「助かりましたわ、感謝します」
?「ふふー、そう言ってくれると嬉しいな」スタスタ
勇者?(…………)
勇者?(なんだ? この部屋……『不快』な、何かを感じるな)
?「物珍しいかな」ヒョコッ
勇者?「何がだ」
?「あ、やっぱり余所から来たんだね」
錬金術師「ぼくは錬金術師、そしてここはぼくのアトリエなのさ!」
王女「錬金術……私のお父様が生前、騙されたとか」
勇者?「物理的に異物を金であるアルゴンに変換させるのは不可能だからな」
錬師「……ま、まぁ…片方の言いたい事はわかるけど片方は意味不明だよ?」
勇者?「だが確かに異様な気配はする、アトリエというより工房か」
錬師「君、もしかして『白騎士』なの?」
勇者?「違うが……多少魔力に敏感なだけだ」
錬師「でも嬉しいなぁ、ぼくの錬金術って『白騎士』達が使う魔法に比べるとゴミだって言われるから…」
王女「本当に物を金に?」
錬師「難しいかな…ぼくのお父さんやお母さんは、『材料を結果に変える力』って言ってた」
勇者?「結果に、か」
勇者?(……それより、この女……)
錬師「お疲れなんだよね、今パイを作るからお風呂入っててよ」
勇者?(………)
王女「優しい女の子でしたね」
勇者?「らしいな」
王女「? どうかなさいましたか」
勇者?「いや、構うな……」スタスタ
王女「??」
< 「念の為、『本』は脱衣所まで持って行けよ」
王女「はい!」
王女(この本、何か魔法の力でもあるのでしょうか?)
王女(表紙には<Book of Eibon>と書かれているようですが……見たこともない文字なので読めません)
錬師「~♪」ヒョコッ
錬師「久しぶりの♪ お客さんっ♪」
錬師(材料は小麦粉と砂糖に水♪ 好きな中身は~♪)ゴソゴソ
勇者?(……)
勇者?(『錬金術』、もし本当なら……)
錬師「材料を全部混ぜて、出来上がり!」
勇者?(!? パイの作り方じゃない!)
錬師「あとは……」スッ
錬師(…………)
< ゴトッ!
錬師「出来た♪」
勇者?「今のは『創造魔法』か、何者だ」シュルッ
錬師「? お兄さん、何言ってるの」
勇者?「ただの人間に魔法の類は使えない、何者か聞いてるんだ」スタスタ
錬師「これが『ぼく』の錬金術だよ? 魔力なんていらない、魔法じゃない魔法なんだよ」
勇者?「っ!」ピタッ
錬師「お兄さんが何を警戒してるかは知らないけど……お願い、乱暴しないで」
勇者?(そうか、『これ』が……!!)
勇者?「乱暴はしない、少し驚いただけだ」
錬師「そ、そうなの? 良かった…お兄さんの顔が怖いからびっくりしたよ」
勇者?「後で色々見せてくれ、錬金術を」スタスタ
錬師「うん、喜んで!」
―――― 「うわあああ!! どうしよう!?」
勇者?「どうした魔王」
黒髪「ごめん■■! 実は……」
勇者?「?」
黒髪「その、ぼくの分身というか……『人間版』のぼくを作ったんだ」
勇者?「!! そんな化け物が人間の地に迷い込んだらどうなると……」
黒髪「だからごめんってばー! 一緒に探してー!」
勇者?「特徴は?」
黒髪「髪の毛はちょっと赤くなってて、胸は少しぼくより大きいだけだよ」
勇者?「………魔王、お前…」
< グシャァァッ
勇者?(あの後探しても見つからなかったが……)
勇者?(まさか人間と交配して子孫を残しているとは……)ハァ
勇者?(それに、『錬金術』は恐らく魔王の世界にあったものが変異した形だ)
勇者?(つまりこの世界にも『向こう』にも無い力だが…)
勇者?(放っておくか否か、迷うな)
勇者?(見たところ錬師は人間の血が混ざり過ぎて魔王みたいな事は完全に出来ないだろうしな)
勇者?(……全て終わったら迎えに来るか)ハァ
王女「ご馳走様でした、とても美味しかったわ」
錬師「お粗末様! そう言ってくれると嬉しいなぁ」
王女「あ、私も片付けを手伝います」
錬師「ありがとー!」
勇者?(……)スッ
勇者?「俺は少し外にいる、何かあれば呼べ」
< 「はーい」
勇者?(やれやれ…)スタスタ
錬師「じゃーん! 洗剤いらず!」
王女「れ、錬金術にしては……水と汚れた食器=綺麗な食器って、何か違うような」
錬師「ぼくも小さい頃は思ったけど、今では自然だよ」
錬師「多分、今のぼくなら『淫魔』+『淫魔』=『夜魔』なんて事も出来るしね」
王女(……え)
錬師「ぼくの両親は錬金術の失敗で病気になって死んじゃったけど、錬金術は足し算を早く出来る魔法だって言ってた」
王女「い…淫魔を足し算」
錬師「あ、例えであって本当にやった事はないよ!」
王女「ええ……でも、人格はどうなるのか気になってしまって」
―――― 「俺は、そもそも戦い方なんて知らない」
黒髪「え?」
勇者?「今言ってたろう、『たまには反撃したら』と」
黒髪「うん、君ならぼくを粉砕する位は出来るかなって」
勇者?「それは痛そうだが、基本的にどう立ち回ればいいか分からない」
黒髪「うーん……」
黒髪「君のいる『この世界』は、多分君が戦うような敵は入って来れないんじゃないかな」
勇者?「お前はその気になれば俺を殺せるだろう」
黒髪「君もでしょ、君はあの■■■■■なんだから」
黒髪「それにぼくは君が戦う姿なんて見たくないよ、こんな平和な世界なのに」
勇者?「……そうか」
勇者?(まったく)
勇者?(お前が少しでも教えてくれないせいで、俺は大迷惑だ)
勇者?(誰が解決すると思ってる……)
勇者?(『魔女狩り』は上手く解決したが、もっとマズい)
勇者?(教皇、奴の知識は明らかに『向こうの世界』の技術だ)
勇者?(最悪の場合、都市攻略型兵器なんて物まで出て来る可能性すらある)
勇者?(……俺だけにどう立ち回れと言うんだ)
錬師「こんばんは」ヒョコッ
勇者?「どうした」
錬師「えっ、だってさっき『後で色々見せてくれ』って」
勇者?「あぁ……そうだったな」
錬師「もー、忘れないでよお兄さん」
錬師「ところで……」
錬師「やっぱりお兄さんも名乗れないのかな」
勇者?「?」
錬師「さっきね、お姉さんに名前を聞いたら事情があって名乗れないって」
勇者?「ああ、仕方ないな」
錬師「じゃあお兄さんも名乗れないの?」
勇者?「……知りたいか」
錬師「うん、ぼくは錬金術師だよ!」
勇者?「………」スッ
錬師「ふぁっ?」ドキッ
勇者?「~~」ボソッ
錬師「それがお兄さんの名前?」
勇者?「ああ」
錬師「何だか貴族の名前みたい、アz―――― 」
勇者?「ダメだ」ぽふっ
錬師「むぐぅ?」
勇者?「俺の名前は口にするな、色々と面倒なんだ」
錬師「うーん……わかった」
勇者?「なら中に入るぞ、錬金術を見せてくれるんだろう」
―――― 【 あるンガイの森に♪ 少女が一人♪ 】
―――― 【 綺麗な黒髪♪ 綺麗な顔♪ 】
―――― 【 娘は笑って住んでいた♪ 】
―――― 【 娘は一人♪ 男は一人♪ 】
―――― 【 冷たい肌の少女に恋をした♪ 】
―――― 【 男は求愛し娘を犯した♪ 】
―――― 【 娘は痛いと♪ 娘は怖いと♪ 言いました♪ 】
―――― 【 男は娘を犯して♪ 男は娘を犯して♪ 】
―――― 【 逃げないように♪ 手を切って♪ 足を落として♪ 耳を取って♪ 目を吸った♪ 】
―――― 【 怒った少女♪ 男を拒絶♪ 】
―――― 【 怒った男♪ 少女を求め♪ 】
―――― 【 男の怒り♪ 欲望の炎♪ 】
―――― 【 喚ばれた化身がこんにちわ♪ 】
教皇?「……全部燃やして♪ さぁおしまい♪」
教皇?「……んん」シュボッ
教皇?「フゥ、いやぁ煙草が美味い」
教皇?「んん、火の熱さに煙の匂い……ああ香ばしいねぇ」スゥ
< ガサリ
教皇?「なになに、『強姦罪への死刑許可』と『姦通罪への死刑許可』ぁ?」
教皇?「馬鹿馬鹿しい、宗教国家ほど醜いものはないねぇ」フゥ
教皇?「強姦には死刑許可、姦通罪は今日から無しだ」サラサラ
教皇?「フゥ、んん? 『淫魔を三体捕獲』、確か現れたのは4人だったのに一人足りないなぁ」スゥ
教皇?(まあいいか、ヤリたいなら好きなだけヤればいい)
< ガチャッ
執行人「オッス! 教皇さん!」
教皇?「元気だね、私に何か用かな?」
執行人「許可貰いに来ましたぜ!」
教皇?「許可、ああはいはい……そういえば君はここ数ヶ月禁止してたね」
執行人「おかげさまでまた俺が最強に近づいたぞ」
教皇?「先日は一人で王国軍を滅ぼしたものねぇ、うんうん頑張ってる」スゥ
教皇?「いいよ、今から2日間『四天王』と儀式しておいで」フゥ
執行人「ひゃっほう! 久々に女が抱けるぜぇ!!」
教皇?「んん、楽しんでくれ」スゥ
教皇?(さて……)
教皇?(そろそろ陽が昇る、『彼』ならばそろそろ見つけられるだろう)
教皇?(楽しさだ、ああ楽しみだ……)
教皇?(私は君の真名を知っているよ……)
教皇?(私は君がどれだけ幼いかも知っている、君の美しさを知っている)
―――― 『魔女狩りを止めただけでは済まさない』
教皇?(結構さ! 女性が辱められる姿に耐え切れないんだろう?)
教皇?(……ふ、私が『魔女狩り』が起きないようにしたのに君が止めた気になってるとはねぇ)
教皇?【 何も知らずに『勇者』を名乗りながら、おいで……<這いよる混沌>ちゃん 】
勇者?(………)
錬師「ふぁあ、それで……じゃあこの木材に万力を足したら『輝光水晶』(ダイヤ)になるの?」
勇者?(きこうすいしょう? …ダイヤの事か)
勇者?「錬金術の力の範囲を考えれば、恐らくな」
錬師「んー、イマイチ分かんないや……なんで木を炭にして『げんそ』を圧縮すればダイヤになるのか」
勇者?「さっきも説明はした筈だがな」
錬師「むにゃぁ、ちょっと仮眠してい?」
勇者?「構わない」
錬師(朝までお喋りしたの、久しぶり……)ドサッ
勇者?(寝たか、流石に人間は睡眠を取る必要があるな)
白服α「こんな顔を見なかったか」スッ
店主「……」チラッ
白服α「どうだ」
店主「見たよ、昨夜この店で宿を探していた」
白服α「それで?」
店主「追い返した、ヤバそうな男を連れててな」
白服α「……」
白服α「追跡する、その男が触れた場所を教えろ」
< ガチャッ
< バタン
王女「勇者様、本当に良いのでしょうか?」
勇者?「普通に考えろ、何の事情も知らないあの子供を巻き込んだ時を」
王女「……せめてお別れはしたかったです」
勇者?「後で来れば良いだろう」スタスタ
勇者?「一応、錬師が生活に当分困る事はないだろう……錬金術なら金塊を金に替えられるしな」
王女(……)スタスタ
王女(またね、錬師さん)
< スタスタ
< ガチャッ
白服α(勇者の触れた場所に漂っている魔力の残滓、それを追って行けば……)キィン
白服α(……?)
白服α(空気中に残滓が多量に浮遊している、近くにいたのか!?)バッ
< タッタッタ
錬師「あれー? お兄さんとお姉さん、どこに行ったんだろ」キョロ
白服α(…………)スタスタ
錬師「この『本』、忘れてったの気づいてないのかなぁ」
< 「そこの少年」
錬師「?」
白服α「誰を探してる? この女か」スッ
錬師「そうだけど……って、ぼくはこれでも女の子だよ! 失礼な!」
白服α「……他に『若く見える』男はいなかったか」
錬師「いたけど、あれ? 『白騎士』さんがお兄さん達に何か用?」
―――― ヴゥゥンッ!
白服α「奴を呼べ、そうすれば見逃す」シャッ
錬師「ひっ…!?」ビクッ
白服α「腕を切り落とされたいか、どうなんだ!!」スタスタ
錬師「ぃひあっ! ぁ、その、お兄さんの名前呼んじゃだめって……ぼくっ」ジリジリ
白服α「……ガキ、良いから呼べ」
錬師「ひ、………た、たすけてぇ!! だれかっ!」バッ
白服α(ち、足だけ断っておくか)ヒュッ
< ガキィンッッ!!
白服α「!」
「……自動防御術式の発動による召喚、感謝します『マスター』」
錬師「ぇえ……?」
Eibon「現在交戦中の敵は明確なる敵意を持っていますが、『結界』を閉じますか」
錬師「!! そ、そのまま! そのままでいて!」
Eibon「了解、では救援として『マスター』へ救助要請を行います」ギンッ
白服α(ただの本だった物が人間になったかと思えば、『結界』に『魔眼』?)
白服α(勇者め、奴の持ち物も ”こう” なのか!!)
今日は終わる
そういえばアザ・・・げふんげふんは作中では神でさえもないって言われたそうだけどどうなんだろう
久しぶりに酉をつけた
>>399
>>勇者?「残念ながら俺はお前達の神でも無ければ怪魔でも無い」
「残念ながら『俺は』お前達の神~」、とあるように『彼』は間違いなく神や邪神ではありません。
勇者?「……」ピタッ
王女「どうかなさいましたか?」
勇者?「忘れ物だ、戻るぞ」
王女「え? ……あ、そういえば私『本』を忘れて来たかもしれません!」
勇者?「それが幸いしたな」スタスタ
勇者?(エイボンの書が発動した、か)
勇者?(緊急避難術式は発動していないなら、相手は刃物を持ったチンピラか……?)
―――― ガギィン!! ガギィン!! ガギィン!!
Eibon「……」
錬師「ひ……大丈夫なのこれ?」
Eibon「ご心配なく、神話級魔術を行使されない限り私の結界は破れません」
錬師「で、でも……」
白服α(思ったよりも堅いな)ヴンッ
白服α(魔剣が駄目なら、更に威力の高い魔導をぶつけるという手もあるが)
白服α(………)
Eibon(この人間、私を見て笑っている?)
白服α「おい、小娘」
Eibon「性別はないので『エイボン』とお呼び下さい」
白服α「マスターに救助とか言っていたな、いつ来る? いや、来るのか?」
Eibon「えぇ」
Eibon「しかし…」
白服α「?」
Eibon「既に貴方の背後にマスターはいますが」
白服α「なっ―――― !?」
< シュリィィッ
< ピンッ!
< ゴシャッ
勇者?「……遅くなったな、エイボン」シュリィッ
Eibon「お久しぶりです、マスター」キィンッ
勇者?「……」スタスタ
錬師「っ…」びくっ
勇者?「大丈夫だ、安心しろ」
錬師「……っ」ビクビク
Eibon「…?」
< ドスドス!!
勇者?「……」
勇者?「!? がふッ、何……」
白服α「久しいじゃないか化け物」ヴゥゥ…ン
―――― シャッ!!
Eibon「!」ズバァッ
錬師「お、お姉さん!!」
< パキンッ!
Eibon「ご心配なく、結界と同時に自己修復魔法陣を展開しました」
錬師「でもっ! お兄さんが!」
勇者?「……」シュリィッ
白服α「『ワイヤー』か? その程度で俺は殺し尽くせんぞ!!」シャッ
< ズバァッ!!
< ピンッ! ゴシャッ
勇者?「っ」ドチャッ
白服α「ぎっ……」グチャッ
錬師(ひぃ…っ!? 2人の首が・・・)
勇者?「……あまり良い気はしないな、喉笛と骨を両断される感触とは」スタッ
錬師「あ、あれ? どうしてお兄さんがそこに……」
Eibon「……」
Eibon「面白い人間がいたものですね」
勇者?「らしいな」
白服α「……」スタッ
白服α「哀れだな? 自分の死体を見るとは」ゲシッ
錬師「どうなってるの!? ここ、今度は白騎士さんが自分の死体を蹴って……」
勇者?「これはキリがないという奴だな」
Eibon「マスターの魔力を私に注いで頂ければ空間ごと異次元に敵を隔離しますが」
勇者?「それで解決すればいいが、無理だろう」
白服α「さて、勇者? 少し過激な挨拶も済んだ訳だし本題に入らないか」
勇者?「本題とは」
白服α「お前が匿っている王女だ、引き渡せ」
勇者?「渡したらどうなる?」
白服α「殺す」
勇者?「なら出来ないな」
白服α「流石は勇者だな? 目の前の善が大切か」
白服α「お前は50年前、俺を通して教皇に言ったな! 『魔女狩りを止めただけでは済まさない』?」
白服α「図に乗るなよ? お前は騎士を十数人虐殺しただけで、何もしちゃあいない!」
白服α「魔女狩りは教団や国すら予想していなかった、人々の疑心から起こる自然現象だ!」
勇者?「……」シュルッ
勇者?「興味が出る言葉だ、続けろ」
白服α「……話が通じるなら、続けるさ」ヴンッ
Eibon(一先ず刃を納めましたか)
白服α「お前はあの時、あの日、言っていた」
白服α「魔女狩りは大量虐殺で、未来に影を落とす、そう言っていた」
白服α「良い事を教えてやる、教皇は『未来永劫』魔女狩りが起きる事は無いと言っていたのだ」
勇者?「それを信じるのか?」
白服α「馬鹿が、『科学』はサキュバス程度の擬態なら既に暴ける」
勇者?「……いつからだ」
白服α「『あの時』は試作段階だったが、今では魔力磁場に反応して人間と淫魔を分ける装置は開発されていた」
勇者?「……………教皇が作ったのか」
白服α「如何にも」
勇者?「……」
白服α「教皇の権力だけじゃない、民衆からの支持もまた大きい」
白服α「教皇があの日の直後に魔女狩りの必要はないと言ったら、民衆は従ったよ」
白服α「わかるか、今や教皇率いる『騎士団』は世界を導く絶大な光になりつつある」
白服α「それを! お前みたいなお伽話から飛び出したような曖昧な存在に、壊される訳にはいかない!!」
勇者?「………」
勇者?「…」チラッ
Eibon「……」くすっ
勇者?「はぁ、なら聞かせてくれるか」
白服α「なんだ」
勇者?「王女は何故、死なないといけないか教えてくれ」
白服α「王女が存在するだけで、不要な争いが起きるからだ」
勇者?「そうじゃない、『もっと個人的な理由』でいい」
白服α「……は?」
勇者?「俺はな、正直今の話を聞いて『どうでもいい』と思っている」
白服α「……」
勇者?「お前の話を聞いて、俺がただの徒労に終わったのは分かった」
勇者?「だがぁ……悪いが、王女が存在するのは大切だ」
勇者?「教皇とやらがいなくなったら、王女が必要になるだろう?」
白服α「……勇者、お前…!」
勇者?「『そもそも』だ」
勇者?「こう言ってはなんだが、俺は勇者じゃない」
勇者?「ましてや理想主義者のテロリストでもない」
勇者?「この際だ、またお前に伝言を頼むとしようか」
白服α「……」
勇者?「……ふむ」
【 この世界の支配者はお前じゃないんだよ、この世界の未来を決めるのは『俺』だ 】
白服α「~……っ!!?」ゾワァッ
Eibon(これは怖いですね…)ゾクリ
錬師(……?)
白服α「……く、何て傲慢なっ! 貴様はここで…」
勇者?「殺すか、ならやればいい、やれよ?」
勇者?「ただその場合は『殺し尽くされたら』お前の負けだぞ」
白服α「っ……」ぞくっ
白服α(はったり……の筈だ、俺は『殺し尽くせない』筈だ…)
勇者?「やめておけ、教皇に伝言をした方が懸命だ」
白服α「……」
< スッ
白服α「……次は殺す」
―――― ギュォン!!
Eibon「空間に一時的な断裂反応あり、敵は転移魔術を行使したかと」
勇者?「ああ」
Eibon「ではまたの機会にお呼び下さい」ペコッ
< ギィン
< バサッ
錬師「わ、また本になっちゃった……」
王女「離れて見てましたが、寿命が縮む思いでした」
勇者?「心配するな」
王女「勇者様より、レンちゃんですよ」
錬師「お姉さん!」ぎゅっ
勇者?「巻き込んで悪かったな、錬師」
錬師「何か事情はあると思ってたけど……お兄さん達は王族だったんだね」
勇者?「俺は王族じゃないがな」
短いがここで
シリアスではないがこちらもよろしく
士郎「もう駄目だ…イリヤが可愛い過ぎる」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1345111044/l50)
まずいな、酉をまた忘れてしまった…
てす
……
これで駄目なら酉はやめるか
<白騎士十字軍・王城>
< ギュォン!!
白服α「ぐぉっ!」ドサッ
教皇?「おやお帰り」
教皇?「んん、首尾はどうだったね?」スゥ
白服α「勇者は倒せなかった、俺1人では危うい!」バッ
教皇?「ほう、王女を殺せと命じたのに?」
白服α「教皇、アンタは以前も今度も勇者に興味を示していたな!」
白服α「あいつは何者なんだ、まるで俺の『力』すら見抜いたように……」
教皇?「まあ落ち着いてくれα君、何があったのかねぇ?」フゥ
白服α「奴の『本』だ」
教皇?「興味深い」
白服α「突然本が人間になったと思えば、俺の魔剣を弾く結界や連絡手段に『魔眼』!」
白服α「もうお伽話のキャラクターでは済まない、あの男は何なんだ!」
教皇?「……んん、落ち着きたまえよ」スゥ
< ギシッ
教皇?「『人間になる本』、その人間は何か言ってないかね? 名前なら尚良い」
白服α「本、やつの名は……」
白服α「……確か、『エイボン』と名乗っていた」
教皇?「『 Book of Eibon 』・・・!!」
白服α「ブック…? なに?」
教皇?「『エイボンの書』だよα君、魔導書と呼ばれる立派な『化け物』だ」
白服α「……化け物? 本がか」
教皇?「君はその本一冊に阻まれただろう」
教皇?「だが悲観的になる必要はないよ、α君の全身全霊の一撃で初めて結界を破れるような相手だ」
教皇?「ふふ、しかし驚いたねぇ……エイボンの書が出て来るとは」
教皇?(勇者、いいや……『君』の正体はもはや明白だな?)
白服α「全身全霊、か? 一応勝てるのかあれに」
教皇?「まあね、しかしムリはもうしなくて構わない」
白服α「何故だ」
教皇?「状況が変わったのだよ、盛大にね」
教皇?「『執行者』を呼びなさい、彼等にもα君同様の『力』を渡したい」
白服α「? …御意」
教皇?(さて、そうなると面倒だが楽しくなってきたねぇ)フゥ
教皇?「『ビヤーキー』」パンパン
< シュンッ
《 如何されました、我が主 》
教皇?「『向こう』にゲートを開けなさい、少しはなしたい相手がいる」
《 仰せのままに 》
< シュンッ
< ガチャッ
< ゾロゾロ・・・
執行人「何だってんだよ教皇さん、せっかく四天王を滅茶苦茶にしてたってのに」
白服α「口を慎め、執行人」
シスター「そうね、教皇様に失礼よ執行人」
シスターβ「いいんじゃないの? 教皇様は許してるし」
神父α「それより、我々を召集するとは何事でしょう?」
巫女?「……」
教皇?「やあ、皆いつもご苦労様だねぇ?」
教皇?「今回集まって貰ったのは他でもない、君達の使命を果たす時が来たんだ」
白服α「!!」
執行人「は? ……確か俺らの使命って」
シスターβ「『人間を檻に入れる神』を討つ事ね」
神父α「では、まさかついに?」
教皇?「その通り、君達にはこれより!」
教皇?「 『神』 を、殺して貰うよ」
白服α(………神だと)
教皇?「なに、難しい事は頼まないよ」
教皇?「『神』とはいえ既にα君が何度か戦闘して生還してるしねぇ」
執行人「うわ、いつの間に!?」
白服α「ほんの数時間前までな」
シスター「流石は騎士団の中で一番の古株ね、実力も私達並みだけの事はあるわ」
教皇?「だが、彼の場合は例外中の例外だよ? 今の君達では瞬殺が良い所だ」
執行人「おいおい、俺達は今じゃ淫魔の軍を単体で無力化できる程度には強くなったぜ?」
執行人「なのに俺達より弱い白服αの奴は平気で俺達は……瞬殺?」
教皇?「君達は何か勘違いをしているよ」
執行人「なに?」
教皇?「んん、『強い』『強くない』という問題ではなく、我々は『壊す』『壊せない』の力でなきゃいけない」
教皇?「分かるかな? α君は既に身を持って知ったろうけどね、『神』にとって肉体の強さは無問題なんだ」
神父α「興味深いですな」
シスターβ「ええ、つまり教皇様は……」
シスターβ「『壊す』力を私達にプレゼントして下さるのでしょう?」
白服α「…」
教皇?「その通り! んん、シスターβには後で君に合った力をあげよう」
シスター「βだけずるいわね」
神父α「まあまあ」
白服α「安心しろ、お前達にも渡される」
白服α「……教皇、準備は?」
教皇?「んん、ばっちりだよ」
教皇?「……ね?」チラッ
巫女?「…」コクン
教皇?「じゃあ皆に紹介しよう、私の友人をねぇ」
< ビシッ
< ガシャァン!!
執行人「!?」
シスター「空間が…『割れた』!?」
< ガシャガシャ・・・ガシャガシャガシャン!
神父α「?? しかし直っていきますね」
シスターβ「割れただけ?」
銀髪?「割れただけなのかしら?」
シスターβ「って、ぇ!?」
銀髪?「あら新鮮♪ 可愛いじゃない」
執行人「何だその女、そいつが教皇さんの友達かよ」
教皇?「あまり失礼な事は言わない方が良いよ執行人?」
執行人「……すんません」
銀髪?「それにしても酷い扱いね、人間風情にまた力を与える為に呼ばれるなんて」
教皇?「嫌とでも?」
銀髪?「さぁね~」
教皇?「まあとにかく、α君以外は初めて会うだろう」
教皇?「『彼』の名は『 ルシファー 』、君達に力を与えてくれる魔王だよ」
ルシ「こっちでの実力だと、精々四天王クラスかしらね」
執行人「お、おいおい……色々ツッコミ所があるな」
神父α「魔王の肩書きを持っている時点で何者かは見当もつきませんがね」
ルシ「あら? そんなに難しく考えなくていいわよ」
教皇?「そうだねぇ、ただ彼は女の姿をした魔王だし」
ルシ「明らかにややこしくさせようとしてるわね」
教皇?「……さ、後は頼むよルシファー」
ルシ「任せてよ」
勇者?「……面倒だ」
王女「仕方ありませんよ、あの村に置き去りにしたらまた白騎士が戻って来てしまいます」
錬師「そうだよ、お兄ちゃんが悪いんだよーだ」
勇者?「……」
勇者?(まさか連れて行く事になるとはな)
錬師「お兄ちゃん」
勇者?「…ちゃんはやめろ、何でお兄ちゃんなんだ」
錬師「なんとなく~」
勇者?「……?」
王女「どうかしましたか」
勇者?「いや、気にするな」スタスタ
錬師「あ! お兄ちゃんの首に切り傷ついてるよ!」
勇者?「!」バッ
< ズキッ
勇者?「これは……」
王女「先程の戦闘でしょうか、傷はちょっと引っ掻いた程度ですが」
勇者?(……)
勇者?(………)
勇者?(…………)
勇者?(『誰か』が、こちら側に来たのか)
勇者?(それとも、『向こう側』に行ったのか)
勇者?(……)スタスタ
勇者?(教皇の仕業か)
勇者?「荒野が途切れて来たな」スタスタ
王女「向こうに森が見えますね」
勇者?「あの森を抜けるのか」
王女「真っ直ぐ進んだ場合はそうなります」
勇者?「だが村は無い、そうだろう」
錬師「私知ってるよ! あの森には沢山の『竜』がいるんだよね」
王女「ええ、あの竜達は森からは出ないので教皇や私のお父様も放置していました」
勇者?「成程、人間の村や町よりは安心できるな」
王女「竜は肉食ですよ!?」
―――― 『 かえってきた 』
―――― 『 だれが? 』
―――― 『 ぱぱだよ、ままに にてるにんげんもいるよ 』
―――― 『ぱぱが!?』
―――― 『 みんないそいでじゅんびしてっ 』
―――― 『 しらないひともいるけど、ぱぱをかんげいしなきゃ! 』
―――― 『 きれいっていってくれるかな、ぱぱ 』
< 竜の森 >
勇者?「あまり変わってないな」スタスタ
王女「前にも来た事があるんですか?」
勇者?「来た、というのは正解ではないし初めて来たな」
錬師「綺麗な葉っぱ……これキラキラしてるよ」
勇者?「それを食べれば人間の性別が逆転する代わりに、100年は不老でいられるぞ」
錬師「え」
勇者?「あっちの木にある紫色の実は、人間なら万病に効くし淫魔なら一時的に快楽を得られる」
勇者?「この森はな、1つの薬屋なんだ」
王女(ど、どれも伝説級の薬なんですが……)
勇者?「とは言え、あまり意味はないか」
錬師「なんで?」
王女「……淫魔は元々不老な上に、快楽は人間がいれば問題ない」
王女「淫魔にとってはペットのようでも、大きな竜は人間にとって強敵」
勇者?「つまり誰も近寄らない」
錬師「そっか……だからこんなに沢山余ってるんだ」
勇者?(……魔王、お前のせいだからな)くすっ
―――――――― 「竜とスライムは絶対なのがファンタジーなんだよ!?」
勇者?「リュウ……と、スライム?」
黒髪「そう! こんな森には綺麗なドラゴンに、かわいいスライム!」
勇者?「……ドラゴン、というと以前お前が見せた『バハムート』か」
黒髪「『FF』の事は忘れて! ぼくが竜のデザインするから、君が作ってよ」
勇者?「だが、そういうモンスターは作らない方が……」
黒髪「君は『過去の人』、ぼくは『魔王様』!」
黒髪「ふふん、ぼくの旦那様になるならまずは魔王の言うことを聞いて貰おうかな♪」
勇者?「……ああ、わかった」
黒髪「じゃあ早速いまから絵にするから…」
< ガバッ
< 「ひゃああっ! ちょ、■■!?」
< 「『知識の交わり』をした方が早い、早く姿を変えた方が良いぞ」
< 「や、やだやだ! あれ物凄い快楽なんだよ!? ていうか知ってるよね!?」
< 「………」
< 「今の『知識』はずるいよ……」
< 「俺の気持ちが分かってくれたならいい」
勇者?(だから、スライム位にすれば良かったんだ)
勇者?(まったく……)
< ガサッ
王女「きゃっ」びくっ
錬師「お姉さん?」
王女「今、なにか……」
錬師「えー! お化け!?」
勇者?(竜かスライムに決まってるだろう)
今日はこれで
< ガサガサッ
王女「ゆ、勇者様……やっぱり何かいます」
錬師「お兄ちゃん、それに何だか周りがガサガサ言ってるよ…?」
勇者?「……」
勇者?(竜がわざわざ囲みに来る事はない、となれば…)
< シュルッ
勇者?(野盗、もしくは騎士団か)
勇者?「……」シュルッ
王女(あの糸、つまりこれは敵?)
勇者?「姿を出したらどうだ? 恥ずかしくないのかそんなにガサガサと音を立てて」
< ピタッ
錬師「あ、止んだ」
王女「……」
勇者?(? 『止んだ』というよりは、『消えた』ように感じるな)
< 「……■■、■■■■■■■っ?」
< 「■■!」
< 「■■■……■■■■、■■■■■■■■」
王女「な…何ですか? この声」
錬師「変な言葉……」
錬師「お兄ちゃん、わかる?」
勇者?「…………」
勇者?「いや、何を言ってるのかさっぱりだ」
―――― 『ぱぱ、きっとわたしたちにあいたいんだよ』
―――― 『でも、ちがったら?』
―――― 『いまちょっとこわかったよぱぱの め 』
―――― 『ねえねえ、ならちかくにいる にんげんにそっくり なすがたになろう?』
―――― 『さんせい!』
―――― 『ぱぱにほめてもらえるかなぁ』
―――― 『よし、ならきまりだね』
勇者?「……!」
王女「 」
錬師「……お兄ちゃん、あれ…」
勇者?(…………これは……)
< グジュル・・グジュル・・っ
< ズびゅッ…‥ギュブィリュルァッ・・・
< 「 t#,% ぱぱ g@(i・・r/・・/^ 」ズル…ズル‥ ッ
< 「 ぱ…… パ 」ズル ッズル ッ
王女「ひっ……ぃやぁぁ!!」
勇者?「落ち着け、あの速度なら歩いても逃げ切れる」ガシッ
錬師「お兄ちゃん、あれなに? 生き物なの…?」
勇者?「……分からない」
勇者?「いや、『知らない』」スタスタ
勇者?「行くぞ王女、仮に何かあってもエイボンの書があるとはいえ余り関わるな」
王女「はいっ!」たたっ
錬師「……」
< ズル……ズル…
―――― 『ま、まってぱぱ! どうして?』
―――― 『おかしいよ、【にんげんとおなじすがた】をしてるのに……』
―――― 『どうして? どうして?』
―――― 『ぱぱは、わたしがきらいなの…?』
< ガサッ
?(案の定、だね)
?( ここにいる『竜』は、確かに以前は普通の『竜』だった )
?(でもそれはあくまで、以前の事)
?(今の” お父様 ”にはとても彼女達を救う事は出来ない)
?(彼女達の目は『数千年』の間に進化…いいえ、変化した)
?(長い年月をこの様々な薬剤を守る森の中で生活していくうちに、竜達はそれぞれの容姿のみを『視覚化』させた)
?(その結果、彼女達は自身を独自の肉体に進化させた)
?(彼女達は逞しい竜にも、美しい人間の雌にもなれる)
?(……彼女達の目が、そう映す)
?(彼女達はもう竜にはなれない)
?(そして彼女達は決してお父様には救えない)
?(だから私は待ち続けるわ)
竜?「 スライムの一族すらいないこの狂気の森で、私は最後の竜として待ち続ける 」
竜?「 いつか、救済の音色を奏でる楽団が来るまで…… 」
<竜の森の外>
王女「はぁ…はぁ……」
錬師「お姉さん、大丈夫?」
王女「……」
王女「っ!」
勇者?「吐きそうか」
王女「……」
勇者?「エイボン」
< ギィン
Eibon「お呼びですかマスター」
勇者?「しばらく王女の傍にいてやれ、お前のその姿は落ち着く筈だ」
Eibon「はぁ、男性にも女性にも見えるように実体化してるのですが」
勇者?「だから落ち着く、任せたぞ」
Eibon「イエス、マスター」
王女「……」
Eibon「少々グロッキーなようですね」くすっ
王女「…あなたは」
Eibon「私が傍にいれば貴女は落ち着くそうですよ、王女様」
錬師「本のお姉さん、また会ったね」
Eibon「私は常に貴女達と共にいた筈ですがね」
勇者?(……)
勇者?(さっきのは、スライムじゃなかった)
勇者?(見たことの無い…異形の『何か』だ)
勇者?(どうなってる)
勇者?(…………分からない)
勇者?(教えてくれ、魔王……この世界は今どうなってる? どうすればいい)
勇者?(俺は……何も知らない、何も分からないんだ)
< 翌朝 >
Eibon「マスター」
勇者?「なんだ」
Eibon「何故、転移魔法をお使いにならないのです?」
勇者?「理由があるからだ」
Eibon「気にはなりますが、遠回しな言い方をするからには話すつもりはないと考えて宜しいですか」
勇者?「そうだ」
Eibon「分かりました、では何故私がこんな事をお聞きしたかについて説明します」
勇者?「……確かにな」
Eibon「ええ、騎士団という敵勢力がありながらも野宿してまで徒歩を貫くのはやはり効率が悪いと思います」
勇者?「よく喋る奴だな」
Eibon「一目で済む内容ですよ、文にすればですが」
勇者?「……」
勇者?「エイボン」
Eibon「はい」
勇者?「今のこの世界はな、俺の手には負えない」
勇者?「ましてや教皇なんて訳の分からないのもいるんだぞ?」
Eibon「そのようですね」
勇者?「手に負えない」
Eibon「会話における最低限必要な言葉が大分無い気がしますが」
勇者?「……どう言えばいい」
Eibon「『手に負えないから、あちこちで人間なり淫魔なりと手を組みたい』」
Eibon「……で宜しいのでは」
勇者?「ならそれだ」
Eibon「復唱しないのですか」
勇者?「当たり前だ」
今日はここで
< 半日後・竜の森から80km離れた草原 >
―――― ギィンッ
剣士「うわあっ!」ドサッ
白服A「フン……!」ヒュッ
< グシャァッ
銃士「剣士ィッ!! 畜生ぉぉ!!」バッ
< ガァンッガァンッ!!
白服B「遅いッ」シャッ
白服C「たかが拳銃で我々と対等に渡り合えると思うな!!」シャッ
拳士「シャァァアッ!!」ギュン
白服A「!」ゴガッ
拳士「顎をまともにヒットされたお前じゃ、まともには立てないだろう!?」
白服A「ヒット、か? 今のが?」スッ
拳士「え…」
< ブチンッ
白服A「やれやれ、首1つもぐのに手間取った」
白服C「残ったのは後5人だ」
< ガァンッガァンッガァンッガァンッッ!!
銃士「撃て! 撃ち続けるんだ!!」ガァンッ
女銃士「は、はいっ!」ガァンッ
弓士「ボウガンの修理、まだなのか!!」
薬士「もう少し待ってくれ!」
< シュタタタタタタッッ!!
白服B「無駄無駄! 俺達から逃れようなんざ……!!」シャッ
銃士「と、飛んだ!」バッ
< ズバァン!
銃士「ぐおぁ!?」ドサッ
銃士「ぃ、ひ……!!」
< ザクッ!!
白服B「……」クルリ
< ガァンッ!!
白服B「おっと」シャッ
女銃士「……ぁ、あ」ガタガタ
弓士「どいてろ女銃士!!」ガバッ
女銃士「弓士さん…っ」
弓士「ウォオオオオオオオオオ!!」ガシュッッ
< ガガガガシュシュンッッ
白服B「チィ……! 最新式の電動タイプか!!」シャシャッ
白服B(……)ニヤリ
弓士「ッ!?」ビクッ
白服A「残念だったな」ザクッ
弓士「ぐふぅっ……ッ!!」
女銃士「ゆ、弓士さん!」バッ
< ゴヂュッッ
女銃士「!?」バッ
白服C「後ろの注意がなってないな」グズッ
薬士「 」
女銃士「あ、あ……ああっ」
白服C「さてお嬢さん、どうやって生き抜く?」
白服A「命乞いか、罪の懺悔か?」
白服B「それともその手にある拳銃で頭を撃ち抜くか?」スタスタ
< シャッ
―――― ヒュン!
白服A「!?」バッ
< ガキィン!
白服B「なに……?」
「はァッ!!」ザッ
白服B(!? な、速……)
―――― ズバァン!!
白服B「ぐぅぅッ!」ガクッ
「今だ、逃げるぞ女銃士!!」
女銃士「はっ、はい!」バッ
白服B「追え!」
白服A「わかってる!」
白服C「逃がすかよ!!」
―――― シュルンッ
勇者?「面白そうだが、残念だったな」ピンッ
< ブシャァァァッ!!
勇者?「……どっちに逃げた?」
< ガサガサッ
王女「向こうでした! 早く追いかけましょう勇者様」
錬師「……」
勇者?「分かった、追跡するからお前達は後から着いて来い」
勇者?「それと王女、錬師には死体を見せるなよ」
王女「はい分かってます」
錬師(み、見えない…)
勇者?「……」タタタ
勇者?(……?)ピタッ
勇者?(足跡が消えたか、となると近くに身を潜めてるな)
勇者?「白騎士達ならいない、出てこい」
勇者?「……」
< ガサッ
「……貴方は何者か」
勇者?「事情があって港に直線で向かってるが、そろそろ村を見つけたいと思っててな」
「何者かと聞いている」
勇者?「見ての通りだ」
「……」
「白騎士達をどうした? まいたのか」
勇者?「殺した」
「……! なるほど、分かった」ガサッ
女騎士「案内しよう、私は女騎士だ」
女銃士「ぁ、えっと、私は女銃士です!」スッ
勇者?(……女? 人間のようだが…)
王女「……」ザッザッ
女騎士「助かったよ、貴方達がいなければ私達の命運もここで尽きていただろう」
勇者?「らしいな、仲間を救えなくて悪かった」
女騎士「…なに、彼らも危険は承知で外まで着いて来てくれたんだ」
女銃士「……」
女騎士「それに、いずれは彼らの無念を晴らす、必ずな」
勇者?「ただの冒険者じゃないようだな、お前達こそ何者だ」
女騎士「……」
女騎士「…レジスタンスだ、私達は」
王女「!!」
女騎士「私達はいつか機会を見て、騎士団を倒そうと考えている」
勇者?(……ほう)
勇者?「さっき一度見たが、白騎士に一撃加える程の実力らしいな」
女騎士「未熟者だよ私は、仲間を助けられず更には私自身生き残れるか定かじゃなかった」
勇者?「そうか、『そういう事』にしておこう」
女騎士「…引っ掛かる言い方をしてくれるじゃないか」
王女「あの、本気なのですか?」
女騎士「うん?」
王女「本気で教皇と戦うおつもりですか?」
女銃士「女騎士様は嘘は言いません!」
女騎士「まあ落ち着け女銃士、彼女が疑心になるのも理解できる」
女騎士「教皇は確かに『王族』からしてみれば反逆者であり、何より圧倒的兵力で民を縛っている」
女騎士「だが同時に、教皇の味方をすれば理想的な人生が得られ、街や国の人間を守ってくれている」
女騎士「……そこへ弱小な武装集団が押し入っても、民が教皇達を庇うと言いたいのだろう?」
王女「…! え、えぇ……そうです」
女騎士「だとしても私達は戦う覚悟ならあるさ」
女騎士「騎士団の白騎士達は間違いなく、弱い民達の一部を暴力で抑えている」
王女「…」
女騎士「それを私達人間は平和と考えて良い筈はないよ、絶対にね」
錬師「良い人だなぁ、かっこいい……」
勇者?(どこか複雑な気分だがな、俺は)
勇者?(元々、俺は力だけで支配していたからな)
今日はここで
女銃士「あっ」
女銃士(赤の紐、ということは今の村は警戒態勢に入ってますね)
女銃士「女騎士様、村が合図をしろと……」
女騎士「警戒態勢か……やはり私達を心配してくれているらしい」
女騎士「えーと、勇者だったかな? 少し下がってて貰いたい」
勇者?「ああ」
王女(あれ、いつのまに自己紹介を!)
錬師(何だかお兄ちゃんと騎士のお姉さんだけ私達を置いて行ってるなぁ)
< カシャン
女騎士「弾は?」
女銃士「リロード済みですっ!」
王女(あれは…拳銃? 照明弾などではないのでしょうか)
勇者?(……)
女騎士「……」スチャッ
女騎士「……………………」
―――― ダァーンッ!
―――― ギュィィ・・・ッ
< チュンッ
< ガッッ
< コンッ
< ヂュィンッッ
―――― カァーン!
見張り「!! 合図だ! 女騎士様が近くまできてるぞぉ!」バッ
< カーン、カーン、カーン!
< カーン、カーン……
王女「え、鐘の音……?」
錬師「撃っただけなのに!」
女銃士「ふふ、凄いでしょう? 女騎士様にしか出来ない緊急用の合図なんです!」
女銃士「きっと今日も鐘の真ん中を撃ち抜いたんですよね女騎士様っ♪」
女騎士「あはは……あまり騒がれると照れるな」
勇者?(……『跳弾』)
勇者?(恐らくただの銃弾の直線的な弾道では狙えない位置に、的となる鐘があったのだろうが)
勇者?(……………この距離でただの人間に実行出来る技ではない)
<レジスタンスの隠れ村>
勇者?「……」
王女「……」
錬師「……お姉ちゃん」ギュッ
< 「そいつらが白騎士じゃない証拠はありません、直ぐに殺すか拘束すべきです!」
女騎士「何度も言っているだろう、彼等に私は救われたのだぞ!」
< 「ならば何故! 私の、私の夫は助けられなかったんですか!!」
< 「そうだそうだ! タイミングが良すぎる!!」
< 「きっと様子を窺ってから助けたフリをしてここに案内させる気だったのです!」
< 「決断を、女騎士様!」
勇者?(…予想外とはいえ、随分な言われ様で驚きだ)
女銃士「あ、あの…皆さん落ち着いて……話を」
男「うるせぇ! 落ち着いてられるかよ!!」
女騎士「皆、私の話を聞いてくれ! 彼等は―――― 」
女騎士「……」チラッ
王女「?」
勇者?「!」
勇者?(まさか…)
女騎士「……彼等は、あそこにいる彼女は、多分騎士団で噂の『第一王女』だ」
< 「…」
< 「……」
王女(え、えぇぇっ!? バレてる!?)
勇者?(やっぱり気づかれてたのか)
錬師「そう言えば、お姉ちゃんはお姫様だったねぇ」
女銃士「ひゃああああああ!? ぉお王女様ぁっ!!?」
女「お、王女様……?」
男B「そう言われて見れば、五年前のパレードで見た少女に似ている……?」
男「………」
< 「そんな、てっきり白騎士に捕らえられたのかと……」
< 「だが王女は生きている所か、我々の目の前に……!」
< 「王女が我々と共に…!」
< ざわ・・ざわ・・・
錬師「凄い影響力だね……」
王女「……は、はい」
勇者?「良かったな」
女騎士「とりあえず、これで何とか……」
< 「じゃああっちの男はなんだ?」
< 「護衛じゃないか、こっちの大陸まで逃げて来たんだろ」
< 「ただの人間が、女騎士様でもないのに白騎士3人を倒せる訳がない!」
女騎士「なっ……」
女騎士「いい加減にするんだ!! 彼こそ私よりも王女様を守るに相応しい力の持ち主だぞ!」
勇者?「おい、勝手な事を……」
< 「だったら人間である証拠を見せろー!」
< 「男だけでも殺せー!」
< 「王女は我々がお守りするんだー!」
女騎士「というわけで私と決闘だ」
勇者?「頼むから言わせてくれ、どうしてこうなった」
王女「こんなの我が国の法では無効の決闘です! やめさせて下さい!」
女銃士「でも、レジスタンスの皆さんは女騎士様と男が決闘してみてから決めるって…」
王女「決闘は相手が降参するまで何をしても良いのですよ!?」
王女(……勇者様が絶対に女騎士さんを傷つけるとは思えない)
王女(それに、勇者様の『不死性』を考えたら……万が一、人間の常識を逸脱した姿を見られたりしたら!)
王女「勇者様……」
女騎士「なるべく手加減はする、適当に鍔競り合いをして周りを納得させよう」
勇者?「……面倒な事になったな」
女騎士「済まない、彼等の多くは王宮に仕えていた者達なんだ」
女騎士「数日前、騎士団が王宮の者達を次々と虐殺されていく中…死に物狂いで逃げて来たね」
勇者?「難儀なものだ」
女騎士「どうか悪く思わないで欲しい、彼等は復讐に取り憑かれているだけだ」
勇者?「復讐に取り憑かれているのを悪くは思わないが、あいつらはそれだけで戦う覚悟は持ってない」
勇者?「要するに、人間の力の『象徴』であるお前がレジスタンスを支えてるんだろう」
女騎士「……ふ、貴方は不思議な男だ」チャキッ
勇者?(女騎士の武器に合わせ、ロングソードを選んだが)
< チャキッ
勇者?(……『無駄』、だろうな)
女騎士「そろそろ始めよう、皆に不審がられたくない」
勇者?「ああ」
女騎士「……」
< フッ
―――― ガンッッ!!
勇者?「……っ、!?」ブワッ
< ドサッ!
勇者?「がはっ、ゴフッ……今のは…?」
< フッ
女騎士「済まない、今の位ならば貴方なら平然と受け止めると思ったのだ」スタッ
勇者?「……接近戦は苦手でな」ムクッ
勇者?「だが女騎士」
女騎士「?」
勇者?「俺を本気で倒す気で来い」
女騎士「……」
< フッ
勇者?(速い……音速の数倍で移動出来るのか)チャキッ
< シュタタタタッッ
女騎士(『本気で』、とは……白騎士を倒せる程の実力はあるのだろうが…)
女騎士(魔法の類は一切禁止の決闘、それも彼は私の本質を見抜いている筈……)
女騎士(………なら、腕の一本は覚悟して貰おう)ザッ
勇者?「っ!」バッ
< ズバッ
勇者?(避けきれないか)ズキッ
< チャキッ
勇者?「!」ブンッ
女騎士「はっ!」ヒュンッ
女騎士「隙有りッ!」ヒュッ
< ズバァッ
勇者?「っ、く」グラッ
勇者?(……もう少しか?)
女騎士「何をしている、呆けるな!」バッ
勇者?「済まないな」ブンッ
女騎士(なんだ、この太刀筋は……大振りな上に構えが素人だ)シャッ
< フッ
< ズバァッ
< ブンッ
< シャッ
錬師「お姉ちゃん、お兄ちゃんが大変だよ!」
王女「大丈夫でしょう、勇者様ならあの程度……」
錬師「お兄ちゃんの傷、治ってないよあれ!」
王女「!?」びくっ
王女「……」
王女(傷がある、それもあんなに出血して……!)
今日はここで
なぜさっさと村を出ていかないんだろう。不自然すぎるだろ。
レジスタンスを仲間にしておけば心強いだろ
>Eibon「『手に負えないから、あちこちで人間なり淫魔なりと手を組みたい』」
って言ってるしな
>>539
>>541 の通り、王女の目的は『打倒教皇』・勇者?の目的も『打倒教皇』なので
そんな2人にしてみればレジスタンスの集団と出会えたのは奇跡的偶然……と思って下さい
某スレのせいで良心とは何か見失いつつある
何故凛をレイプしたんだこの野郎
>>544 むしろ『ここで犯らねば慎二はクズだ』と思ったからやった、反省してる
―――― ザシュッ
勇者?「っ……!」ビチャッ
女騎士「……」スタッ
勇者?「一撃も当てられないとはな……人間じゃ勝てないレベルだ」ヨロヨロ
女騎士「対して、貴方は7箇所を斬られて出血多量で意識は途切れる寸前」
女騎士「私には貴方がただの人間にしか見えない」
勇者?「それで……いい、じゃないか…」ドサッ
王女「勇者様!!」バッ
錬師「お、お兄ちゃん!」
男「王女様、まだその男が安全とは……」
王女「!!」キッ
男「ぁ…」ビクッ
王女「今の健闘を見て何も思う物がなかったと言うのですか、この人でなし!!」
王女「今すぐに! この方の手当てをしなさい!!」
男「は、はい!」
錬師「ど、どうしよう……お兄ちゃん……」オロオロ
< 「レン……人気の無い所に移動して下さい」
錬師「?」
< 「私です、エイボンです」
錬師「? ……あ、そっかこの本…」
< 「マスターなら平気です、問題なのは貴女がここにいる事ですよ」
錬師「?」
< 「早く運べ! まずは止血を……」
< 「確か魔石の予備があった筈だ、あれで切断された筋を……」
女騎士「……」チャキッ
女騎士(……何か、不自然だ)
女騎士(確かに王女様の言う通り、あれだけ『本気の決闘』を見たら感動の1つもするだろう)
女騎士(だが、私は傷1つ負っていないのに……何故誰もそこに不審を抱かないのか?)
女騎士(勇者、と名乗っていたかあの男)チラッ
女騎士(…)
女騎士(不思議な男だ、他人のような気がしない)
女騎士(王女様の隣にいた少女も恐らく、只者ではないな)
女騎士(これは後で勇者に会うのが楽しみだ)スタスタ
錬師「『血の呪い』?」
Eibon「そうです、マスターが撒いていた血の『ような』赤い液体には特殊な魔術が働いていました」
Eibon「匂いを僅かに嗅ぎ、深紅の赤を目に焼き付けてしまえばどんな人間も呪いの術者に操られる事になります」
錬師「……えっと、つまり?」
Eibon「もうあの決闘を見ていたレジスタンスの人間は全員マスターに深層心理を操作されています」
Eibon「言ってみれば、もうこの村でマスターがもめ事に絡まれる事は無いでしょう」
錬師「そうなんだ、やっぱりお兄ちゃんは凄いね」
Eibon「貴女や王女様も充分凄いですよ」
錬師「え、どうして」
Eibon「あの血の呪いの効果が全く及んでいなかったのは3人」
Eibon「まず、最後までマスターの『知り得る限りでの本来の実力』を期待していた王女様」
Eibon「彼女は対魔法の素質があったのか、最後まで呪いの効果はありませんでした」
錬師「そうなのかな、お姉ちゃん慌ててたけど……」
Eibon「えぇ、普通にマスターの仮の姿に騙されてましたね」くすっ
Eibon「……次に、あの女騎士と名乗る女性です」
Eibon「マスターはどんな見解をお持ちかは知りませんが、彼女は人間でしょうね」
Eibon「にも関わらず彼女は対魔法の素質に、超人的な身体能力を持ち、『魔眼』にも似た観察眼を有している」
錬師「や、やっぱりあの女騎士さん…強いんだ」
Eibon「私が生まれた世界なら、死徒に匹敵する怪物でしょう」
錬師「あれ、3人目は私だよね」
Eibon「はい」
錬師「ぼくってそんなに呪いに耐性あるのかな」
Eibon「正直に答えますと耐性なんてありませんよ」
錬師「え、対魔法の素質とかも?」
Eibon「はい」
Eibon「しかし今こうしてあの場所から離れたのは、貴女の持つ力が原因なのは否定出来ませんね」
錬師「……?、?」
Eibon「もし……貴女が、マスターの呪いを『否定』したとしましょうか」
錬師「否定、って『だめ』~とか『嫌』~って?」
Eibon「それです、貴女が否定した場合」
Eibon「マスターの施した魔術は全て粉砕されてしまいます」
錬師「……………」
錬師「……えっ」
Eibon「意味は分かりますか」
錬師「壊れるんだよね?」
Eibon「粉々に」
錬師「……ぼく、そんな凄い力を持ってたの?」
Eibon「気づいたのはさっき私が貴女から漂う魔力を何となく眺めていたからでしょう」
Eibon「それに凄いとは言い難いです」
錬師「な、なんで」
Eibon「場合によっては……貴女はとてもマスターにとって邪魔かもしれませんから」
錬師「!」
Eibon「……」
Eibon「さすがに冗談ですよ、貴女を連れて来ておいて捨てるなんてマスターはしません」くすっ
錬師「~~っ!!」
< レジスタンスの隠れ村・治療所 >
勇者?(やれやれ、暗示の真似事なんてするものじゃないな)スタスタ
< 「おう、怪我はどうだ王女様の護衛さん」
勇者?「問題ない、王女はどこだ」
< 「王女様ならレジスタンスを仕切る幹部と女騎士様のいる本部にいるよ」
< 「ここを出て右の壁沿いに進めばわかるさ」
勇者?「そうか」スタスタ
勇者?(当面は問題ないな)
< スタスタ
勇者?「……」スタスタ
勇者?「…!」
女騎士「随分早い回復じゃないか、人間なら普通半月はかかる怪我だが?」
勇者?「……やはり効果無しか」
女騎士「貴女こそやはりただの人間じゃないな」
勇者?「王女は何をしている」スタスタ
女騎士「彼女なら戦術に長けた元軍師達と会議をしてる」スタスタ
女騎士「今まではレジスタンスとは名ばかりの『反逆者』だったが、王位正当後継者である王女が来れば状況は変わる」
女騎士「王女の声、そして意志があれば国の民や多少の貴族はどうにか出来る」
女騎士「後は我々レジスタンスが教皇の首を取れば……」
勇者?「大勝利、か」
女騎士「間違いなくな」
勇者?(……頭と筋は良い、だが……)
女騎士「……」スタスタ
勇者?「騎士団の力を理解してるんだろうな」
女騎士「……そこを突かれると痛いな」
勇者?「あの集団が銃火器を手にしてる以上、『白騎士』でない相手も驚異的な筈だ」
女騎士「だろう、私もそれは考えている」
女騎士「試しに銃に対抗出来る盾や防具を作った事もあった」
勇者?「…あの口径に対抗するには」
女騎士「ふふ、身動き出来ない程の重量の防具しか作れないさ」
女騎士「……だから、レジスタンスが出来るのはなるべく死なないように時間を稼ぐ事だよ」
女騎士「私が教皇の所へ辿り着ければ、レジスタンスの勝利」
女騎士「辿り着けなければ、レジスタンスの敗北……王女の努力も水の泡だ」
勇者?「そうか、お前がレジスタンス内で重要視されてるのは……」
女騎士「唯一教皇を殺せる、白騎士の護衛共と戦える秘密兵器という訳だな」
女騎士「まあ最も、昼間のように仲間も救えないのでは話にならないか」
勇者?「何故そんなに制約があり気な言い回しなんだ」
女騎士「制約、という程のものじゃない、私が未熟なんだ
」
勇者?「未熟、か?」
女騎士「未熟、だ」
勇者?「……」スタスタ
女騎士「……」スタスタ
勇者?「…」
女騎士「王女の近くにいた少女を宿に預けているが、会うか?」
勇者?「いや明日でいい」
女騎士「……そうか」くすっ
勇者?「何がおかしい」スタスタ
女騎士「なに、忘れて欲しい」スタスタ
勇者?「……」
女騎士「いい加減、聞かないのか」
勇者?「何を」
女騎士「どこに向かっているか、聞きたくないのか」
勇者?「……さあな」
女騎士「私を本気で倒してみてくれないか」チャキッ
勇者?「……剣士としての誇りか、何かか?」
女騎士「いや、私としては照れ隠しみたいなものさ」
勇者?「物騒な照れ隠しだ」
女騎士「………」チャキッ
女騎士「決闘の申し出を受けるか、否か」
勇者?「然り……でいいか?」
女騎士「ふ、先程の決闘より余裕があるな」
勇者?「本気でいいと言ったのはそっちだからな」スッ
< シュルッ
女騎士(糸……ワイヤーか、なかなかエグい戦術を使――――
< シュルッ……ズニュルルルルルルルッッッ
女騎士「 ―――― っっ!!? 」
<女騎士宅>
女騎士「……ん」
女騎士「…」
< ガバッ
女騎士「!! こ、ここは?」
勇者?「お前の家だろう? 多分な」
女騎士(……たしかに、だが)
女騎士「決闘は、私はどうなったんだ……何時間寝ていた」
勇者?「決闘は俺の勝ちだ、お前はあの時気絶させた」
勇者?「ちなみにまだ2時間も寝てない、安心しろ」スッ
女騎士「……」
今日はここで
< ……チュン…チュン…
王女「…ん」パチ
王女「……」もぞもぞ
王女(朝……起きなきゃ)
王女「っ……」クラッ
王女「……」フラフラ
王女「…」
< ドサッ
< ガシャーンッ
< ガチャッ
女銃士「ふわぁ……おはようございます王女様ぁ」
女銃士「って、あれ? 王女様?」
女銃士「ちょっと、やだ……しっかりして下さい! 大丈夫ですか王女様!!」バッ
王女「…」ツゥゥ
女銃士「嘘、鼻血……どうしよう、誰か! 誰か来て下さい!!」
女銃士「王女様!! 王女様っ!!」ユサユサ
勇者?「……王女が倒れたのか」
女騎士「らしい、昏睡状態に加えて鼻血が出ている事もあって村の医者達が診てる」
勇者?「病気か」
女騎士「分からないな、少なくとも暫くは動かす訳には行かない」
女騎士「……私個人の考えとしては、慣れない数日の旅による疲労だとは思うんだがな」
勇者?「可能性としては有り得るな」
女騎士「何にせよ、王女様が戻っただけでも我々には幸運だったのだ……ゆっくり休んで貰いたい」
勇者?「……」
女騎士「どうかしたか」
勇者?「今更だがな、なぜ自然に俺の部屋にいる」
女騎士「貴方の部屋じゃない、宿の部屋だ」
勇者?「……なるほど」
女騎士(しかし昨夜の決闘は驚かされたなぁ……)
< ガチャッ
錬師「お兄ちゃん、大変だよ!!」
勇者?「王女が倒れたか」
錬師「あれ、知ってたの」
女騎士「ふふ、一足遅かったな」
錬師「あ……おはようございます!」
女騎士「おはよう」くすっ
<レジスタンスの隠れ村・治療所>
女騎士「王女様はどのお部屋に?」
医者「これは女騎士様、王女様ならば二階奥の個室で休まれていますよ」
女騎士「では、症状はどんなものなんだ? 何かの病気なのか」
医者「いえ、恐らく疲労が原因ではないかと……」
女騎士「やはりそうか、ありがとう」スタスタ
女騎士「やはりだな、疲れや無理が祟ったのだ」
勇者?「面倒な病でない分マシだな」
< ガチャッ
女騎士「失礼します」
勇者?「……」
王女「…」
女騎士「…ふむ」
勇者?「まだ寝ているようだな」
女騎士「眠る必要があるなら寝かせてやろう、彼女の体はそれを望んでいるんだ」
勇者?「そうだな、『置き土産』でもして行くか」
< キィン……
女騎士「?」
勇者?「夢見が良くなるようにしただけだ、少しはマシになる」スタスタ
女騎士(夢見が良くなるって、どんな魔法なのだ……)
女騎士「だが……」チラッ
女騎士(……貴女が羨ましいよ、王女)
< スタスタ
< ガチャッ
―――― 【 どうしてあんな女に王は寵愛を捧げたのかしらねぇ 】
「それは……お母様が村長だから…」
―――― 【 ただの辺境村の村長一族なのに、私が選ばれないなんて…… 】
「そんなこと……いわれても」
―――― 【 あんたなんて生まれない方がみんなが幸せになれたんじゃないの 】
「…!」
―――― 【 だって、貴女が生まれたから母親が死んだようなものじゃなぁい? 】
「……やめて」
「もうやめてよ、いつまでつづけるの」
「ほっといてよ!! どうしてお母様が死んだ事に悲しむ暇も与えてくれないの!!」
「みんな死んじゃえばいい!! 伯母様達なんて死んでしまえばいい!!」
「醜い嫉妬にまみれて、優しさの欠片も見出せずに地獄に落ちてしまえばいい!!」
「貴女達がお父様に愛される訳ない!!」
「貴女達とお母様は違う、同じであってたまるか!!」
「いつか見届けてやる!! お母様を蔑み、辱め、私をここまで痛めつけたお前達の死に様を!!」
白服α「その前にお前が先だがな」ザシュッ
王「 」ドシャッ
「お父様……!?」
白服α「特に恨みは無いがな、お前達には死んで貰うよ」スタスタ
「ひっ……嫌、こないで!」
「なんで、なんで私ばかりこんな目に……」
白服α「逆に考えたら良いじゃないか?」スタスタ
白服α「お前は誰にも救われる事無く、幸せになれず、母親を殺され自分も殺される」
白服α「そのために、生まれて来たんじゃないかってな」
「…………」
白服α「哀れな事だな、さよならだよ王女」ヴンッ
王女「ッッ」ガバッ
王女「はぁ……はぁ……っ」
王女(今のは…夢?)
< わなわな……
王女(……憎しみだけ、生々しく残ってる)
王女(……)ギリッ
王女「……」スッ
< ガチャッ
王女「…」スタスタ
勇者?「良い夢は見れたか」スッ
王女「っ!」びくっ
勇者?「お前の睡眠中に見る夢の内容を弄った、どうだった」
王女(……!!)
王女「…」ギロッ
勇者?「……!」
< バシィッ
勇者?「…」
王女「二度と悪夢を見せないで下さい、そしてしばらく話しかけないで下さい」スタスタ
勇者?「……」
勇者?(……………『悪夢』?)
勇者?(……)
勇者?(……)
勇者?「有り得ない」
< 港・宿屋 >
シスターβ「おかえり、神父α」
神父α「ただいまシスターβ」
シスターβ「どうだったの」
神父α「教皇様の言っていた通りだったよ、『こっちの大陸』に第4夫人派の軍が潜伏していた」
シスターβ「それで?」
神父β「……分かるだろう? 『いつも通り』だった」
神父α「シスターβこそ、何か収穫はあったかい?」
シスターβ「あったわよ? すごーく大収穫♪」ごろん
神父α「ふぅん、聞きたいですね」
シスターβ「教皇様から頂いた力を利用して、検索スキルを作り上げたの」
神父α「検索スキル?」
シスターβ「簡単よ、顔と名前を思い浮かべながらそいつの心を見るの」
シスターβ「すると不思議! 居場所も周りの様子も見れちゃう!」
神父α「凄いなぁ、そんなのは私には真似出来ませんね」
シスターβ「まあ些細な副作用があるんだけどね、それも工夫次第では楽しいわ」
神父α「副作用?」
シスターβ「そ、検索した相手を悪夢に似た幻想世界に精神だけ飛ばしてしまうのだけれど……」
シスターβ「……その幻想世界も操れる私には、検索相手を人形みたいに弄べるから楽しいのよ♪」
今日はここで
女騎士「おはようございます王女様、具合は如何でしょう」
王女「お気になさらず、それよりも再び会議を開くために幹部を招集して頂けますか」
女騎士「・・・」
女騎士「お言葉ですが、まずは貴女の体の回復を待つべきではないでしょうか?」
王女「女騎士さん、残念ながら私一人の都合で先延ばしにするわけには……」
女騎士「いいえ貴女が万全であるからこそ、我々レジスタンスは機能するのですよ」
女騎士「ですから王女様、どうかここはお体を休めて……」
王女「……」
王女「わかりました」
勇者?「王女の様子がおかしい?」
女騎士「ああ、どうも何か焦っているようなのだが」
勇者?「だが?」
女騎士「…これは勘の域を出ないが、目が昨夜までの彼女と違う気がした」
勇者?「目か」
女騎士「・・・」コクン
女騎士「単に私の恥ずかしい思い込みと決めつけなら良いんだ、だが彼女にもしものことがあれば不味い」
勇者?「どうしろと?」
女騎士「貴方が王女様を見てくれないか」
勇者?「悪いが医者じゃあないぞ」
女騎士「ふふ……貴方がさっきかけた魔法のせいでないとは言い切れまい」
勇者?「・・・なるほどな」
女騎士「では頼んだ、私は少し外を見て来る」スタスタ
勇者?(やれやれ)
勇者?(だが、そうか……俺のせいというのも有り得るか)
勇者?(・・・)
勇者?(考えても仕方ないな)
勇者?(王女の様子を見てやるか)
< ズズッ・・・
?勇者「よし、と」スタッ
王女「……」うとうと
王女「…っ」
王女(しっかりしなきゃ、私がこんなだから…)
?勇者「王女」すっ
王女「!?」ビクッ
?勇者「どうかしたか」
王女「い、いえ……なんでも」
?勇者「様子がおかしいと聞いたが」
王女「誰がそんなことを…!」
?勇者「聞いてどうする」
王女「……なんなのですか」
王女「朝はおかしな悪夢を見せて、今度はなんなのですか!?」
王女「第一、昨日はあんなに大怪我したりして今はケロッとして!」
王女「あんなに心配させておきながら平然として、何か言う事はないのですか!!」
?勇者「……」
?勇者「王女」
王女「…は、はい?」
?勇者「少し、目を閉じていろ」
王女「え?」
< スッ・・・
王女「ぇ…え、やっ……」
?勇者「閉じてろ」スッ
王女「・・・」
王女「…」すう
?勇者(よし、『入り込める』な)キィィンッ
色々あってPCに頭から突っ込んだので携帯からで行きます
遅くなって申し訳ない
< キィィンッ!
王女「……」ピタァ
?勇者「……」ピタァ
● ● ●
● ● ● ●
―――― 【 問題ない、すぐ済む 】
―――― スタンッ
?勇者「……ここは」
?勇者(城、か? それにしては…)
?勇者(どこか異質というのか、『王女の夢』にしては随分薄暗いな)
< 「いや! 来ないで!! 誰か! 誰かぁぁ!!」
?勇者(……王女?)
王女「お父様…っ、お母様……!」
白服α「次はお前だ王女」ヴンッ
< シュタンッ
王女「ひっ…!!」
王女(・・・!!)
< ザクンッ ―――― !!
?勇者「…残念だったな」ポタポタ
王女「勇者様………!!」
白服α「……」
?勇者「王女の夢になぜお前がいるかは知らないが、ここで退場だ」
王女「勇者様! 逃げて下さい!!」
?勇者「?」
王女「早く逃げてっ! お願いです…!!」
< ゴフッ!!
?勇者「……!! な、何?」ビチャッ
?勇者(馬鹿な…『夢』で俺を・・・)
ドサッ
?勇者(……身体を動かせない)
?勇者(ということは、これは『王女の夢が描いた世界』なのか?)
王女「ぃ、嫌…やだ、勇者……様」ガタガタ
王女「死んじゃ……また、私のせいで……!!」
白服α「さあ、次はお前の・・・」
?勇者(……)
?勇者(終わりにする)キィィンッ
―――― キィィンッ!
?勇者「……」スッ
王女「…」グラッ
< ガシッ
?勇者(・・・すまなかったな)
?勇者(強制的に『夢』を終わらせたが、今見た悪夢は記憶に残るだろう)
?勇者(……)
王女「…」すやすや
< ズズ・・・
勇者?「エイボン、少しいいか」
Eibon「どうかなさいましたかマスター」
勇者?「王女の周囲をお前の魔術で調べろ」
Eibon「何故です?」
勇者?「……王女の『夢世界』がおかしい、近くに夢魔かいるとしか思えない」
Eibon「夢魔クラス以上のサキュバスを調べるのですね」
勇者?「ああ」
Eibon(夢魔クラス…ですか)
Eibon(昨夜、マスターがあの女騎士に一瞬だけ解放した魔力を考えれば通常は逃げ出す筈)
Eibon(よほどの愚か者か、あるいはそれだけの力を持っているのか)
Eibon(……いずれにせよ相手はマスターを敵に回したのを後悔するでしょうね)
Eibon(ましてや『夢』を操るなんて……ね)くすっ
< 港・宿屋 >
シスターβ「凄いわ……ついに見つけたわよ」
神父α「!」
シスターβ「今、王女の幻想世界を弄ってたら誰かが王女と共に乱入してきたのよ」
神父α「他人の『夢』に? 夢魔でしょうか?」
シスターβ「違うわ、男よ? サキュバスではなく『男』だったわ」
神父α「では、我々の目的地は・・・」
シスターβ「もう少し調べるわ、標的が見つかったからにはあとは場所だけね」
< 広場 >
錬師「・・・」
ぶらーんぶらーん
錬師(王女のお姉ちゃんは今休んでるし、お兄ちゃんはどこかに行っちゃうし)
錬師(つまんないなぁ)ぶらーん
< ザッ
錬師「?」
女騎士「やあ」
ぶらーん…ぶらーん……
女騎士「ふ、それで1人でブランコか」
錬師「同じ年の子供いないんだもん」
女騎士「そうだな……ほとんどの子供は厨房か、訓練をしているからな」
錬師「訓練?」
女騎士「貴女位の子供にも拳銃や剣の使い方を教えているのだよ」
錬師「ボクと…同じ年?」
女騎士「そうだよ、いつ白騎士がここを突き止めたとしても大人子供関係なく対処できるようにね」
女騎士「…最も、我々が対処出来ないような絶望的な状況下でしか子供の出番はないが」
錬師「・・・」
女騎士「ああ、つい話し込んでしまったな」くすっ
女騎士「勇者が君を呼んでいたよ、一緒に行こうか」
錬師「お兄ちゃんが?」
< 宿舎・勇者?の部屋 >
< ガチャッ
女騎士「連れてきた」
錬師「お邪魔しまーす!」
勇者?「来たか」スッ
勇者?「・・・」
勇者?「女騎士も、何故いる?」
女騎士「連れて来いと頼んだのは貴方だろう?」
勇者?「『女銃士に』頼んだ筈だが……」
女騎士「まぁ良いじゃないか、私も暇していてな」
錬師「そうだったんだ!」
勇者?「……まぁ構わないが」
ドサッ
錬師「…本?」
勇者?「物の中に含まれている元素を簡単に説明した物だ、お前に渡す」
錬師「良いの? 凄く上質な紙で出来た本みたいだけど…」
勇者?「構わない、安価に手に入るからな」
錬師「へぇ……」パラパラ
女騎士(どんなインクを使えばこのような図が描けるんだ?)
勇者?(『教科書』が珍しいようだな)
錬師「……」パラパラ
< コンコン
勇者?「女銃士か」
女銃士「す、すみません……レンちゃんがどこにも…ぁ」
錬師「?」
女銃士「あれぇ……いつの間に」
女騎士「私が連れて来たんだよ、ごくろうさま」くすっ
女銃士「そんなぁ! 酷いです女騎士様っ」
女騎士「私も暇していたのが悪いんだよ、ふふ」
勇者?「……」
錬師「……」パラパラ
勇者?「……二人とも座れ、適当な本でも貸してやる」
女騎士「ふふ、悪いな」
< 半日後 >
女銃士「Zzz」ダラーッ
女騎士(……興味深い書だな)パラッ
錬師「……」パラパラ
勇者?「……」
勇者?(来たか)
< コンコン
< ガチャッ
Eibon「おや、読書会なら私も呼んで頂きたかったですね」
勇者?「お前は博識だからな、待ってたぞ」
女騎士(………)
勇者?「そのまま読むなり寝るなりしてて構わない、俺は少し用がある」
錬師「うん、分かった!」
女騎士「私も着いていって構わないかな?」
勇者?「構わないが、詮索して来ても何も答えないからな」
女騎士「勿論」くすっ
勇者?「……夢魔よりも厄介?」
Eibon「ええ、マスターの『アレ』以外に初めて私は見ました」
勇者?「何を見たんだ」
Eibon「『糸』、と表現しましょうか」
女騎士「なに……? 王女に何が起きているんだそれは」
Eibon「一本の『糸』が彼女の全身に絡まり、締め上げ、王女の心を完全に物にしている」
Eibon「それが今の状態でした」
勇者?「その『糸』の先にいる奴等を探し出せるか」
Eibon「……」フルフル
女騎士「……なんということだ」
Eibon「サキュバスの『幻魔クラス』でも感知出来ないような、精巧な力でした」
勇者?「・・・」
Eibon「マスターの『アレ』なら、簡単に解けるとは思われますが」
女騎士(?)
勇者?「エイボン」
Eibon「……失礼しました」
勇者?「二日後、それを実行する」
Eibon「!」
女騎士「?」
Eibon「では、この村より離れた場所に?」
勇者?「今夜から用意してくれ」
Eibon「分かりました」スタスタ
女騎士「……詮索しようにもここまで分からないとはな」
勇者?「分からなくて良い」
女騎士「私に出来る事は無いのか、何でもいい」
勇者?「特には無い、お前はレジスタンスを纏めていれば問題ない」
女騎士「……そうか」
< 治療所・個室 >
王女「……ぅ」
王女「ぅぅ……いぁ」ビクン
王女「おと……さ………おかぁさ……」
王女「うぅっ……っあ」ビクッビクッ
王女「ぁぁあ……」
王女「ぁああぁあぁああああああああぁあ」ポロポロ
看護婦「王女様!?」ガチャッ
看護婦「王女様、どうなさいました! 王女様!」
王女「ぁぁぁぁあ……!!」
ガバッ
看護婦「ぇ……」
< ガンッ!!
看護婦「きゃぁあ!?」ドサッ
王女「フーッ……フーッ……」わなわな
ガシッ
看護婦「お、王女様……お止め下さい……」
王女「・・・」ギリリッ
―――― パシッ
王女「!!」ばっ
勇者?「……」
王女「ぅう! うぅぅぅ……!!」ぐいっ
勇者?「まだそんな所にいたのか」
王女「ぅぅ……ぁぁああ」ポロポロ
勇者?「戻ってこい、まだ問題は山積みなんだ」
勇者?「その程度で負けるのかお前は」
王女「・・・ッ」ビクッ
王女「・・・」
< ドサッ
看護婦「ぉ王女、様!」
勇者?「………」
勇者?「女騎士を呼んで来い、ここは俺が」
看護婦「はいぃ!」タタタッ
勇者?「……」スッ
王女「……っ」
勇者?「……」
――――― ・・・
シスターβ「……?」
シスターβ(なに? ずっと王女を見てる)
シスターβ(……)
ゾクッ
シスターβ「こ、コイツ……私を視ているッ!!」
シスターβ「王女を介して……私を視て……ッ」
――――― ・・・
王女「……すぅ」Zzz
勇者?(気配が消えた、俺の視線に気づいたか)
勇者?(王女を通して肉体が爆散する程度の魔力を送ったつもりだが)
勇者?(一方的に回線を切られた、相手は生きている)
勇者?(回線を切る余裕があったからには、ほぼ無傷だろう)
勇者?(……『白騎士』、それも白服αのような規格外の人間)
勇者?「……」
王女「…Zzz」
< ツウ・・・
勇者?(夢は、見る者だけの世界でなければならない)
女騎士「王女は?」バッ
勇者?「……」
王女「…Zzz」
勇者?「眠ってる、が」
< ユサユサッ
勇者?「起きないな」
女騎士「そんな……一体何が起きて!?」
勇者?「・・・」
< 港町・宿屋 >
シスターβ「……」
神父α「シスターβ?」
シスターβ「場所は掴んだ、明日の夜行くわよ」
神父α「どうかしたんですか」
シスターβ「流石は神を名乗る事はあるわ……受け流せなかったら死んでた」
神父α「……なるほど」
神父α「さて、なら自分も少し調整しときます」
シスターβ「ええ、必ず殺すわよ……全員ね」
遅くなりましたが再開します
とある勇者を書いてたら時間がかかってしまいました
落ちます
・・・リーンリーン
女騎士「……結局王女は昏睡したままか」
勇者?「そうだな」スタスタ
女騎士「……」スタスタ
勇者?「なんだ、その目は」
女騎士「いや、圧倒されているだけだ」
女騎士「貴方達は余りにも……落ち着いている」
勇者?「落ち着いているか」
女騎士「違うのかな」
勇者?「違うな、動揺していないだけだ」
女騎士「ほう……それは落ち着いていると言わないのか」
勇者?「『困った』が正解だな」
勇者?「……ああ、困ったが正解だ」
女騎士「意外だな、貴方は表情に出ない分とても冷静に見える」
勇者?「そうか」スタスタ
女騎士「……」スタスタ
< ガチャッ
女騎士「入って構わない」
勇者?「そのつもりで連れて来たんだろう」
女騎士「ふふ、まあそうだな」
勇者?「何が聞きたい」スタスタ
女騎士「私が本当に成すべき事は何か、教えて貰いたい」
勇者?「……」
女騎士「二日後、王女の為に何かを行うのなら私にも手伝える筈だ」
女騎士「彼女はレジスタンスにとって最後の希望、何が何でも助けたい」
勇者?「まるで俺は神頼みの神みたいだな」
女騎士「…」
勇者?「場合によるが、俺が『作業』している間に白騎士が襲ってくる」
女騎士「ッ……人数は?」
勇者?「予測不可能だな」
勇者?「最低でも人間離れしたのが一人、後はそいつの護衛か」
女騎士「護衛?」
勇者?「『魔法使い』と言えば分かりやすいか?」
女騎士「・・・なるほど」
勇者?「王女は俺が何とかする、だがそれも直ぐに済む訳ではない」
勇者?「お前達レジスタンスが白騎士を止めるしかない訳だ」
女騎士「……ふ、私一人で何とかしてみよう」
勇者?「頼もしいな」
女騎士「これでも騎士なんでね」
< しばらくして >
女騎士「……」パラッ
勇者?「……」
女騎士「……」パラッ
勇者?「俺が持ってきた本、随分真面目に読んでいるんだな」
女騎士「こういった性交に関する書物は中々無い、品性がどうのと理由をつけてな」
勇者?「だろうな、俺もあまり読まない」
女騎士「性交の上では男が女を上回るのが常だからだ」
勇者?「性別は関係なく興味が無い」
女騎士「……貴方はそうかもしれないな」くすっ
女騎士「だが女性にも性の知識は必要なんだ、知らないから怖いし『ケガレ』になる」
勇者?「よくある話だな」
女騎士「いや、無いさ、本当に残酷な現実は何処にでもあって見えないようになっている」
女騎士「私にはそれが許し難いんだ」
勇者?「そうか」
女騎士「……」パラッ
勇者?「……」
勇者?(この時代は中世に近い、それだけに男尊女卑位はあるか)
勇者?(…いや、大きく影響しているのはサキュバスか)
< ガチャッ
< バタンッ
勇者?「……」
Eibon「早かったですね」
勇者?「途中で女騎士が寝たからな」
Eibon「途中で? 」
勇者?「…性交はしていない」
Eibon「冗談ですマスター、それでどうします」
勇者?「手頃な場所を探しに行く、ついてこい」
Eibon「了解マスター」
結局頑張りたくなかった勇者はおまえか書いたのか?
>>679
何かもう結構言い逃れ出来ませんね…
そうです、私ががんばる勇者を書きました
携帯しか書き込む手段が与えられず、投下速度も個人的モチベーションも低下
これは何かもう自分はダメなのではないか……そう思った時です
唐突に番外編なる物を書きたくなった
そしてモチベーションが上昇仕切った頭で書きまくり、書きまくり、完結させ・・・
現在第三部の終わった後の、第四部でがんばる勇者をサブストーリーとして加える事にしました。
これで携帯になっても情熱は冷めない
とりあえず年末から始まる第四部をお楽しみ下さると幸いです
< 港町・廃屋 >
―――― ドッ!!
盗人「ぎゃぁぁぁぁぁあ!!? う、腕がぁ!」
盗人「悪かったよ、盗んだ物は全部返すって!!」
盗人「だから頼む…たずけてぐれぁぇぇ」
神父α「……では懺悔なさい、汝の犯した罪とは何ぞや」ザッ
盗人「ぇ、えっと確か子供のいる家とジジイやババアの家から金を……」
盗人「それだけだぁ!! 頼む、命だけは、命だけは……!!」
神父α「よくわかりました」
神父α「子供のいる家、即ちその『女の子達』には何もしていないのですね」
盗人「・・・」
神父α「そうなんですね?」
盗人「……ぁ、いやその」
盗人(あとちょっとで……腰の銃に手が……!!)
神父α「女の子達は二度と子を宿せない体になるまで痛めつけられたそうです」
神父α「…『亡くなった父親のペンダントまで盗んだ男』にね」ニッコリ
盗人「だから何なァンだよォオオオオ!!?」バッ
< カチャッ!
神父α「!」
< ダァンッ!!
< ギンッッ
盗人「……」
盗人「え? はっ?………」
神父α「……」
盗人「ひ、ひぃぃいいい!?」カチャッ
< ダァンッ!! ダァンッ!!
< ギィンッ!! ギンッッ!!
神父α「無駄ですよ、私の『紅き結界』は罪人である者の弾丸を決して通さない」
神父α「そして貴方は裁かれる」スッ
盗人「う、うわぁぁああぁあぁああああああ!!?」
< シュパンッ
神父α「……」ヒィン
盗人「…ぁが」スパッ
< ビチャッ
神父α「……こんなものですかね」
神父α(僕も『処刑者』として働きを見せなければ)
神父α(教皇様に最初に神の首を差し出せば僕は世界を救った救世主になれるんだ、明日に向けて万全にしないとね)
神父α「さて、せめて火葬しましょう」
< ボッ
< ゴオオオ……
神父α「………」
< 翌朝 >
女銃士「おはようございます、王女様」
王女「……」
女銃士(まだ目を覚まさないですか)
女銃士(……もし、このまま目を覚まさなかったら)
女銃士(………)ぞくっ
女銃士「お、お体を拭きますね…王女様 」
女銃士(大丈夫、女騎士様だって大丈夫だと言っていたんだから)フキフキ
女騎士「全員抜刀!!」
―――― ジャカカカカッ
女騎士「……早朝から集まって貰い、申し訳無い」
女騎士「だが、既に知っている者は知っているだろう! 王女様はいま現在、昏睡状態にある」
男鎧「なんだって!?」
男鎧B「一体なぜ!」
女騎士「我らが怨敵、『白騎士』の仕業だからだ!!」
「「 !! 」」
女騎士「だが狼狽えなくていい、王女様の件は護衛の者に任せた」
男鎧「あの男に任せて平気なのですか?」
女騎士「彼にしか出来ない、これは断言出来る」
女騎士「しかし!!」ビュン!!
男鎧B「おわっ!」
女騎士「王女様を守るのは我らの使命である事には変わらない!」
女騎士「これより村を畳み、女子供を近くの港に避難させる!!」
女銃士(……村を畳む? それって………)
男鎧「女騎士様、まさかこの一件が終わったら……?」
女騎士「我々はこの一件が終わり次第、『本土』へ進む!! これは機なのだ!」
< 「本土に!?」
< 「王女様が加わったとはいえ、まだ戦力が……」
< 「それに港もまだ安全かどうか…」
女騎士「まだそんなことを言っているのか、我々はあの平和だった国を取り戻すのではなかったのか!!」
女騎士「非人道的な行為で得た力を振りかざし、我々が愛した国を混沌に染めたのは誰だ!」
女騎士「我々が討つべき相手、教皇だろう!!」
< 「「・・・」」
―――― 「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」
錬師「わっ、凄い声だね」
勇者?「気合いみたいなものか」ザッ
錬師「ねぇお兄ちゃん、何を探してるの」
勇者?「少しでいい、それなりの広さがある空き地を探している」
錬師「どうして?」
勇者?「王女を起こす結界を張るからだ」
< 「マスター、最低でも半径20mの空間が欲しいです」
勇者?「……」
< シュルッ
勇者?「……そんな空間が森にあるわけないだろう」
錬師「え、え? お兄ちゃん?」
< 「レン、下がった方が良い感じです」
錬師「えぇ!?」
勇者?(半径20か)シュリィッ
勇者?(このワイヤー、そこまで伸びるのか?)
―――――― ピンッッ!
―――― ヒュインヒュインッッ
< ドバババババババ・・・!!
錬師「わぁあっ!?」
Eibon「レン!」キィンッ
錬師「エイボンのお姉さん……っ」
Eibon「……やれやれ、マスターは少し周りを見るべきですね」
勇者?「エイボンの結界があれば充分だろう」シュルッ
Eibon「まあそうですが」
Eibon「……だいぶ見晴らしが良くなりましたね」
勇者?「これでいいのか」
Eibon「お任せ下さい」ギンッ
錬師「お兄ちゃん、何かぼく手伝える事ってある?」
Eibon「レンは私のお手伝いをして下さい」
錬師「どうするの」
Eibon「まずは錬金術で……」
勇者?(……)
勇者?(ここはエイボン達に任せて戻るか)
勇者?(女騎士達が森の音に驚いているかもしれないからな)
勇者?(……)ザッ
勇者?「?」
勇者?(……なんだ、『小屋』の方から不快な感覚がした)
勇者?(・・・)
勇者?(気にはなるが、まだ非常時という訳でもないようだな)
< スタスタ
< 元レジスタンスの村 >
女騎士「……」
勇者?「随分綺麗になったな、寂れた雰囲気はどこへやらだ」
女騎士「……」
勇者?「……」
勇者?(寝てる、のか)
女銃士「起こしちゃ駄目ですよ、勇者さん」
勇者?「・・・違うが、まあいい…久しぶりに言ったな」
女銃士「?」
続きは今夜で
女銃士「女騎士様、皆さんに指示を出しながら一人で10人分の働きをしたりして……」
勇者?「疲れたのか」
女銃士「だと思います、女騎士様だって女の子ですから」
勇者?「……」
勇者?(そういえば女騎士は何か制約がどうのと言っていなかったか)
女騎士「……ん」もぞっ
勇者?「ん?」
女騎士「…」コテンッ
勇者?「・・・」
勇者?(やれやれ、少しは寝かせてやろう)
< 医療テント >
王女「…!」ビクン
王女「ぉ……ぁっ、ぁ…ぁ」ビクビクビクン
看護婦「!」
看護婦(またこの発作……護衛の方に言わないと)
< タッタッタッ
< 「誰か! 護衛の方はどちらに!? 王女様が、王女様が!!」
王女「ぁあ……っ、あ」ガタガタ
勇者?「……そうか、今行こう」
女銃士「私も行きましょうか?」
勇者?「必要ない」スタスタ
看護婦「早く! 王女様、とても苦しそうで……」
勇者?「……」
< バサッ
看護婦「王女様!」
勇者?「…………?」
看護婦「あ……れ? いない」
勇者?「あっちのテントじゃないのか」
看護婦「いえ、確かにこの医療テントで・・・」
勇者?「……」
王女「・・・」ユラッ
勇者?「……ッ!!」バッ
王女「あ'' あ'' あ'' あ'' あ''ぁぁぁぁぁぁぁっァアアッッ!!! 」ビュン
< バリバリッ…グシャッ
勇者?「っ……ッが」ビチャッ
看護婦「…」ビシャッ
看護婦「えぇ…?」ぬるっ
看護婦「きゃあああっ!! ぁぁぁぁ!?」
王女「ぁぁぁ・・・」ギロッ
看護婦「ひぃい……!」ガタガタ
女銃士「どうしま……こ、これっ勇者さん!?」ビクッ
看護婦「た、助けてぇ!!」
女銃士「くっ……」カチャッ
勇者?「撃つな」ガシィッ
王女「!?」
女銃士「え……あれ、生き返っ……」
看護婦「」ドサッ
女銃士「ひゃややぁー!? 出たぁ!!」ガタガタ
勇者?「……どうでもいいが撃つなよ?」
< ミシッ……
王女「ぁが……ぁああぁああ」ギギギ
勇者?「・・・」
勇者?「驚いたか、見ての通り正攻法では俺は殺せない」
勇者?「どうするんだ」
女銃士「?」
女銃士(誰に話しかけてるんだろう…)
―――――― ・・・ ・・・
シスターβ(……はん)
シスターβ(私達『処刑者』は結成時から騎士団で精鋭として扱われて来たわ)
シスターβ(でもね、その使命は『神を殺す』事)
シスターβ(多少の不死性なんて予測と対策済み、嘗めるな邪神が・・・!!)ヴンッ
―――――― ・・・ ・・・
王女「………ッ」ガクン
勇者?「!」
女銃士「王女様! ご無事ですか!」ダッ
勇者?「来るな」
女銃士「しかし…!」
勇者?「他の奴等にもここは任せろと言っておけ」
勇者?「それよりも準備をしろ……『白騎士』が来るぞ」
女銃士「し、白騎士が……?」
勇者?「そうだ、直ぐに女騎士を叩きおこ… ドズンッッ
< ビチャビチャッ
王女「ァアアぁああぁああ」ジュゥゥ
勇者?(チッ……腕に熱を、いや炎を纏っているのか)ゴフッ
勇者?「女銃士、行け」
勇者?「王女は俺がやる」
女銃士「っ??! はい!!」ダッ
勇者?「……」シュルッ
< 少し離れた森 >
Eibon「ふぅ、術式は完成です」
錬師「これで王女のお姉さんが助けられるんだね」
Eibon「正確にはマスターが助けるのですが」
『エイボン、聴こえるか』
Eibon「!」
Eibon(マスター? どうされました)
『向こうから襲撃してきた、中々厄介だ』
Eibon(厄介……)
『そっちで起動の準備をしておけ、連れていく』
Eibon「了解マスター」
――――― ジャララァッ
勇者?「……」
< シュリィッ
王女「 あ'' あ'' あ'' あ'' あ''ぁぁぁぁぁぁぁっァアアッッ!!! 」
―――――― ギュオオオオォンッ !!
< ドロッ
勇者?(……ワイヤーをどれだけ張り巡らせても、周囲ごと爆炎で溶かされてはな)
勇者?(しかし、まさか相手の扱う力がここまで特殊だとは……)
< ジャラッ
勇者?(この鎖……外れない上に魔力を異常な速度で吸っている)
―――――― ・・・ ・・・
シスターβ( 『オレイカルコスの鎖』、対象の魔力に比例して拘束力を高め、魔力をも吸収する )
シスターβ(あのルシファーとかいう魔王から貰った魔具……流石の効果ね)ヴンッ
―――――― ・・・ ・・・
王女「……」ギロッ
勇者?「……」
< ジャラッ
勇者?(どうやらこの鎖は『俺という存在』を縛りつける力があるようだな)
勇者?(無限に殺されるのは避けたいところだが)
勇者?「さて、な」シュリィッ
王女「 あ''ぁぁぁっァア ッ!! 」バッ
―――――― 「怖い夢を見た時、貴方はどうしますか」
女騎士「・・・」ジャキッ
女銃士「ぜ、全員構え!」チャカッ
< 「「 ・・・!! 」」ジャカカッ
「まずは気持ちを落ち着ける為に紅茶? 家族に話す?」
「様々な答え、そして日常が広がっていきますね」
「……ちなみに僕は」
神父α「もう一度…夢を見たいと、そうねがいました」
女騎士「・・・」
女騎士「悪いが意味不明だ」
神父α「おや、分かりにくいですか」
女騎士「違うな、意味不明だと言った……自己紹介からいきなりミステリアスな言葉を語られても私は興味がない」
神父α「・・・悪夢とは自身だけが知る、自分だけの弱さです」
女騎士「まだ続けるか」チャキ
神父α「神に仕える者としてその弱さとは向き合うのが使命、そう思っていたのですよ」
< ザッ
女騎士「ッ (来るか)」スラッ
神父α「・・・もっとも」
神父α「今となっては睡眠は不要の、弱さの無い力を手にしましたが」ユラッ
女銃士「!?? (いつのまに背後に……!!)」
女騎士「なっ……」
―――― ボッゴォォッ
神父α「おっと、凄い飛び蹴りが来ましたね」
< キィン…キィン…キィン…キィン…
女騎士「紅い・・・結界!?」
女銃士「た、助かりました女騎士様!」
女騎士「銃士隊、撃て!!」
女銃士「!、了解!! てぇっ!」ジャカッ
< ダァンッ!! ダンダンッ!!
< ダダダァンッ!!
神父α「本当にレジスタンスのようですね、武器まで揃えて…しかし」ギギギン
神父α「僕の『紅き結界』はあなた方罪人では決して破れない」
神父α「………裁きを執行します」ヴゥン
女騎士(蒼い剣……!)
女騎士(あの紅い結界……確かに硬そうだ)
女騎士(まあ、こっちは悪いことなんてしてないから弾かれる訳はない、何かタネが?)
< フッ
神父α「『蒼き一閃』」シャカッ
女騎士「!!」ギィンッ!!
女騎士(この男…一人で乗り込んで来るだけの事はある、完全に私を捉えている)ビリビリ
神父α「・・・変ですね」シャキ
神父α「ただの人間が今の速度で動けるのもおかしいし、僕の剣を受けて折れないあなたの剣もおかしい」
女騎士「ふ、女には秘密がツキモノだよ」バッ
神父α「なるほど」
< ギンッッ!!
女騎士(……この男の持つ剣、ただならぬ気配を感じる)
―――――― ・・・ ・・・
シスターβ(なんて奴なの……)
シスターβ(・・・き、気持ち悪い、なんなの!?)ゾクッ
―――――― ・・・ ・・・
勇者?「……」ジャラッ
女勇者?「……」ジャラッ
女白服?「……」ジャラッ
勇者?(……思っていた以上に厄介な鎖だな)
女勇者?(『個々に顕現』しても駄目か)
女白服?(となると少し真面目にやった方が良いのか)
勇者?(・・・)
女白服?(お前がやれ、俺達は一度戻る)
女白服?(…)チラッ
王女「ぁぁ…」
―――――― ・・・ ・・・
シスターβ(……っ)
シスターβ(くそ、目を合わせる度に吐き気がする……なんなのあの分身)
―――――― ・・・ ・・・
< ズズ・・・
勇者?「………」
―――――― ・・・ ・・・
シスターβ(!?)
―――――― ・・・ ・・・
王女「…!!」
勇者?「少し手荒にやるぞ王女」ユラァ
< ガシャンッ
勇者?「・・・」
―――――― ・・・ ・・・
シスターβ(嘘でしょ……どうやってあの鎖を)
―――――― ・・・ ・・・
< ガン・・・ッッ!!
王女「ぃぁあ あ'' !? 」ドサッゴロゴロ
勇者?「……」ユラァ
―――――― ・・・ ・・・
シスターβ(コイツ……平然と王女を殴り飛ばした)
シスターβ(でも殺してない所を見ると、甘いようね)
シスターβ(さぁ王女! あんたの出番はこれからでしょう!!)ヴンッ
―――――― ・・・ ・・・
王女「がっ……ひ、ひぎぃ………っ」ガクガク
勇者?「!」
勇者?(まだ何かあるのか)
< レジスタンスサイド >
――――― ギィンッ!! ギンッッ!!
神父α「……」
< フッ
< ガギィン
女騎士「はぁ……はぁ……」フッ
神父α「身体能力は評価しますよ、並の白騎士では敵わないかもしれないほどにね」
女騎士「はぁ…っ、はぁ……っ」
神父α「しかし扱いきれないようだ」
神父α「 その力の源である『剣』を 」ニッコリ
女騎士「…」ビクッ
神父α「図星ですか、なら貴女が騎士でいられたのもその剣のお陰かな?」
女騎士「……デタラメだな、私は剣等無くとも騎士だ」
神父α「さて、ではこの剣でそれを…」
< ドゴォォォオオオ・・ッ
神父α「!」
女騎士「なっ……!?」
女銃士(あっちには確か王女と勇者さんが……って、何がどうなったら火柱が上がるの!?)
男鎧「なぁ、向こうに行かなくて良いのか俺達……ここは女騎士様に任せてさ」
女銃士「・・・」
女銃士「動く余裕があれば、ですよ」
男鎧「?」
女銃士「ほら多分…女騎士様が負けたら、私達死んじゃいませんか」
男鎧「……ッ」ジャカッ
女騎士「私達もできる限り援護しましょう!」ジャカッ
―――――― ゴォオオオオオオ
勇者?「これでどうだ」ボッッ
王女「!!?」
< ゴガァン!!
< ドザァッ!! ドサッ! ゴロゴロ・・・ッ
王女「ぃ……ぎ、ひぁ」
―――――― ・・・ ・・・
シスターβ(コイツ……教皇様の『憎悪の炎』が効かない上に、鎖を解いてから異常に強くなってる)
シスターβ(何が起きてるの……この私でも皆目見当がつかないなんて)
―――――― ・・・ ・・・
王女「ッ!!」ガバッ
勇者?(まだ平然と起き上がれるか、王女の体も強化されているようだ)
勇者?(そしてどんどん王女の目が虚ろになっていく)
王女「ぁあぁああ!!」ゴォオ
勇者?「……」ジュゥゥ
勇者?「王女、少し痛むが……お前なら問題ないだろ」
―――― ダッ!
勇者?「俺の知る限り、お前達一族は全員まれに見る強さの女だからな」グッ
勇者?「行くぞ」ヒュン
勇者?「肉弾戦は大の苦手なんだ、後で相応の礼は貰うぞ」
王女「 あ'' あ''ぁぁぁぁぁぁ!! 」バッ
< ガッッ・・メキィッ・・・
―――― 音速で飛び掛かる王女を捉えた男は、左拳をただ振った。
―――― 空気に振動が走り、聴覚を刺激するより早く、打たれた拳撃が王女の体の中心を貫く。
―――― 僅かに空中に王女の体が固定された直後、凄まじい衝撃波と共に吹き飛ばされる華奢な体躯。
< ドッゴォォオオオ!!
王女「 ―――――― ッッ!! 」
・・・・・
Eibon「……! レン、来ます」
錬師「誰が?」
Eibon「先程の巨大な火柱を立てた本人です」
錬師「え、それってまずいんじゃ…」
< ギュン!
< ドバァッ! ズザザザァァッ
王女「ぅ…ゲホォッ」ボロッ
錬師「お姉さん…!?」
Eibon「……やはり彼女でしたか」
勇者?「……」ユラァ
Eibon「始めますかマスター」
勇者?「急げよ、王女を操ってる白騎士が妙な鎖を使ってる」
Eibon「鎖?」
―――――― ・・・ ・・・
シスターβ(……)クスッ
―――――― ・・・ ・・・
< キュルンッ!! ジャララララララァァッ!!
Eibon「……なるほど、『オレイカルコスの鎖』ですね」キィン
錬師「わっ、くさり?」
< ガシャンッ
勇者?「防げるのか」
Eibon「邪悪な怪物を神々が天使達に捕らえさせる際に用いられた『幻の金属』ですよ?」
Eibon「私みたいな本を捕らえる以前に、元の世界にあった魔術結界が相手では効果は皆無です」
―――――― ・・・ ・・・
シスターβ(鎖がどいつもこいつも効かないなんて……聞いてないわよ、あのエセ魔王…!)ギリッ
シスターβ(……仕方ないわね)ヴゥン
シスターβ(少し早いけどね、死んで貰うわよ王女様)クスッ
―――――― ・・・ ・・・
王女「……!?」ビキッ
王女「ぁ……ぁあ」ツゥ
勇者?(! 耳から血が…?)
Eibon「!!」
勇者?「急げエイボン、まだか」
Eibon「マスターはもう『発動』出来るようにしてください」
勇者?「急げ」
【 皆消えて無くなればいい 】
【 私の家族を、家を、国を、全てを奪った奴等が憎い 】
【 母が何をしたの? 】
【 母は私を産んだだけなのに、父と愛し合って生まれた素敵な思い出になるはずだったのに 】
【 なのに・・・その母は、 】
―――――― ・・・ ・・・
シスターβ(誰に殺された? 思い出してごらんなさい)
シスターβ(あんたの大切な物を奪ったのは教皇様だけなの? 違うわよね)
シスターβ(ほら、思い出して)
―――――― ・・・ ・・・
【 ・・・母は、『皆に殺された』 】
【 だから次は私がやるんだ……仕返しするんだ 】
【 母を助けてくれなかった勇者様も、神様も、人も、みんなみんな!! 】
王女「・・・ッッッ」ギョロッ
勇者?「どのくらい待てばいい」
Eibon「20秒です」キィィィン
勇者?「それでいい」
< バヂバヂィッ!!
王女「だァアアッ!!」ヒュン
勇者?(雷を纏ってるの…か?)
< スカッ
王女「!」ズザァァッ
勇者?「大人しくしていろ」ガシッ
王女「グゥゥぅああああ!!」ジタバタ
バシャァッ!
勇者?「……!」
勇者?(王女の体が水になっただと)
Eibon「マスター、『門』の準備は整いました」
錬師「魔方陣の中央のサークルに乗って!」
勇者?「……」
< モコモコモコモコ…
王女「……」パシャパシャ
勇者?「こことは違う異世界には、『水も滴る良い男』という言葉があるらしいが」
勇者?「お前の場合はどう言えば良いんだろうな?」
王女「……ッァァ」ゴゴゴッ
勇者?「土を腕に纏っても、無駄だと分からないか」
勇者?「なら、縛り上げてからゆっくりと教育してやる」シュルッ
勇者?「まぁ縛るのは『そっち』だがな」
Eibon(レン、私達は村に戻りましょう)ひそ
錬師(え、なんで?)
Eibon(マスターを敵に回した上にこれだけの手間をかけさせたのです、王女は心配ないでしょう)
Eibon(しかし気がかりなのは村から漂う『魔術』の気配です、私でも感じたことの無いタイプなんですよ)
錬師(女騎士のお姉さん……!)
Eibon(急ぎましょう)
錬師(うん!)
< タッタッタッ……
勇者?(……気を利かせたのか、エイボン)
勇者?「全く、錬師には名前を教えてあるから問題ないんだがな」
王女「 あ'' あ''ぁぁぁぁぁぁぁっァ……ッ 」ヨロヨロ
勇者?「……」ピンッ
< シュリィッ
< スパンッッ!!
王女「ぁ、ぁ」ドサッ
勇者?(同じ傷に26回ワイヤーを叩き込んでようやく足を切断か、それも直ぐ治癒するようだな)
勇者?(まぁ好都合だ)
ガシッ
王女「あ?」
勇者?「もうそろそろ起きて貰うぞ王女」ズルズル
王女「ぅっがぁぁ! あがぁあ!!」ジタバタ
< ぽいっ
王女「ッんぁ」ドサッ
勇者?「・・・」
勇者?(さて、久々の『運動』になるな)
勇者?(ましてや王女の夢と接触する羽目になるとは、この世界もまだまだわからんな)
勇者?(とりあえず、だ)ガシッ
王女「……!」ビクッ
勇者?「戻って来たら礼ぐらい言えよ」
< ぎゅっ
―――――― ギンッッ!!
──── 王女を抱き締めたまま、男は固まる。
── 静かに、堕ちるような眠気を二人は感じながら地面の魔方陣に縛られていた。
── 猶予は僅か、限られた時間の中で『彼女達』は帰って来れるのか。
──── それとも、夢の世界から抜け出せないのか。
── その短すぎる時間の中では、王女を操っていたシスターβですら何が起きたかは決して感知は出来ない。
── ・・・夢は誰にも邪魔出来ない。
―――――― ・・・ッ
女騎士「ッ……ぐぁああああ!!」
< ポタタッ
女銃士「女騎士様ぁ!」
女騎士「はっ…はぁっ……来るな…」ガクガク
神父α「罪深き罪人、最期に言い残す言葉はありますか」
< シャキンッ
女銃士(つ……強いなんてものじゃない、あの金色の光を放つ剣が出てきてから女騎士様も太刀打ち出来なくなってる!)
女騎士「はぁ……はぁ…」グッ
< フッ
神父α「『黄金の一閃』」ヒュパァン!!
女騎士「ぅああああ!!」ガギィン
――――― ガギィンッッ!!
バギンッ!! ガガガッ
ギャリン!!
< ゴガァン!!
女騎士「ぐっフ…ァ」ヨロッ
神父α「……」シャキンッ
―――― ダァン!
< ギンッッ
神父α「チッ」
女銃士「撃て!! 撃てぇ!!」ダンダンダンッッ
< ダダダダァンッ! ダァーンッ!
神父α「……」イラッ
神父α(仕方ない)シュッッ
女銃士「来ます! 全員散開しつつ陣を維持!」バッ
男鎧「死ぬなよ女銃士!」バッ
男鎧B「油断するな、相手は白騎士ぃぃん?」ズバシャァァア
男鎧「!?」
神父α「二人」シャカッッ
男鎧「ご…ッほぅ」ゴチャッッ
< 「お、男鎧ぉぉい!!」
< 「ちきしょうが! あいつには婚約者が居たってのに!」
< 「もう駄目だ……うわぁぁ!」
女銃士「……ッ」ジャカッ
神父α「……まだ撃つのですか」
女銃士「レジスタンスに加わった時より覚悟は出来ています!!」ダンダンッッ
< ギンッッ
神父α「ふッ」ヒュパァン!!
女騎士「だぁ!!」ギィンッ!!
女騎士「女銃士! 私は気にせず全員一斉掃射!!」
女銃士「そ、そんな……」
女騎士「当たらない! 私は気にせずやれぇっ!!」
< ダダダダァンッダダダダダダダダァァンッ!!
女騎士「ハァッ!!」
神父α「……1つお訊きしても?」ギィンッ
女騎士「なんだ!!」ヒュヒュヒュ
神父α「何故、あたかもあなた方が正義を気取っていられるのか理解が出来ない」
―――――― ヒュパァンッッ
女騎士「……」プシャッ
女騎士「ッッ!?」ブシャァァアッ
女騎士「ぁ………」ドサッ
女銃士「女騎士様ぁ!!」
神父α「どうしても、気に入らない」シャカッッ
< スバッ
女銃士「いっ…ッ」ガクッ
神父α「…」
女騎士「ぁ…ぁぐ」ヨロッ
神父α「気に入らない」
神父α「今の世界に何の不満があるのです? サキュバス共を倒す騎士団に何の不満が?」
神父α「教えてくれますか、ねッ」ガッ
女騎士「!!」
< ミシッ……ミシッ……
女騎士「ゃ……め、ろ」
神父α「確かに我々は少し力を誇示し過ぎたかもしれません」ミシミシッ
神父α「しかし、その最奧に存在する目的には多くの人間を救う筈です」
< ミシッ……パキッ
女騎士「!? たのむ、剣から足をどかしてぇ……」
神父α「なのに、あなた方は盗られた玩具をムキになって奪い返す子供のように…醜い」
< ビキッ……バリッ
女騎士「……!!」
< ビキッ……ビキッ……
神父α「もし、本当に何かのために戦っているのなら」
神父α「・・・立ち上がってみて下さいよ」グッ
女騎士「っ! や、やめろ……!!」
< バリィィンッ
女騎士「……」
女騎士(………父さん……ごめん)
< ゴフッ…ビチャッ
神父α「!」
< シュゥゥゥ………
神父α「これは……なるほど、貴女は全てが偽りの存在だったのですね」
神父α「なんて醜い」
女騎士?「……ヒュー…ヒュー」
神父α「貧相な体になりましたね、金髪は藍色に、手足はまるで骨と皮だ」
神父α「どんな仕組みかは解らないが、この折った剣のお陰で今まで美しい女騎士を演じていたようだ」
神父α「・・・その真実は奇病に侵されたただの娘とは」
< シャキンッ
神父α「罪深い、本当に罪深い」
女騎士?「……ヒュー……ヒュー…」
< 「迎撃用術式、マスターの許可により行使します」
神父α「!!」バッ
Eibon「こんばんは、聖剣の担い手様」キィン
錬師「お姉さん!!」
女騎士?「…ヒュー……ヒュー」
Eibon「……なるほど」
Eibon「レン、貴女はこの迎撃結界から出ないで下さい、いいですね?」
錬師「う、うん」
Eibon「…」
神父α(なんだ……白服αが言っていた結界を張る女?)
< ヴゥゥ…ンッ
神父α(魔方陣!?)バッ
< パキン!
女騎士?「う……っ」ドサッ
錬師「わ!? お姉さん!」
Eibon「転移魔法を使いました」
神父α「……何者です」ジャキッシャキンッ
Eibon「私は『魔導書エイボン』、ただの本です」
神父α「本……」
Eibon「さて」
Eibon「マスターに代わってあなたを退治します」
< ??? >
王女(……あぁ、まただ)
王女(また『最初』に戻ってる)
< 「あなたがいなければ……」
< 「王女なんて生まれなければ……」
< 「母親に似てなんて憎らしい……」
王女(嫌……来ないで)
王女(私は何もしてない、何も悪くないじゃない…っ)
王女(…みんな…)
王女(……)
王女(皆死んでしまえばいい‥‥)
< ドロッ
< ズルッ・・・
王女(…あ、また入ってきた)
王女(夫人達の足元から伸びた黒い影……)ビクンッ
王女(私の体にまとわりついて、染み込んで、)
王女(また私を深い憎悪に堕としていく…この繰り返し)
< ズルッ!
王女「ぁぐ……ふ、んぅ」ガクガク
王女「ぁ…ああ」ズキッ
王女(……痛い)
王女(・・・でも、気持ち良い……満たされていく)ガクガクッッ
──── ズジュルッ・・ビチャッグジョルルルッッ
王女(…頭の奥が痺れてくる)
王女(目は見えなくなる、けれどその代わりに全身が気持ち…良い)
王女(黒い粘着液が張り付いた所からゆっくり……)
< ズズズズズズズズズズ………
王女(ゆっくり……静かに速く、私を心地好い達成感で包み込んでくれる)
王女(あぁ、流れ込んでくる…! あの醜い人間が、夫人達が、そして『勇者』さえもが死んで逝く姿が……!!)
────── 「・・・ら礼ぐらい言えよ」
王女「………え?」
王女(い…今の……こえは?)
パァッン!!
< 「ッッ!?」グジュルン
< 「何だこれは……!!」
白服α「ぐ、王女ぉおッ!!」
─── ガシッ
王女「痛いっ……!」
白服α「俺を憎め人間を憎め怒れ怒れ怒れ怒れ怒れ怒れ怒れ怒れ怒れ怒れぇぇ!!」
王女(い、痛い……頭が、割れる)
王女(体の中に『いる』物が暴れてる…!)ズキィッ
─── キンッ
白服α「……!!」ガクッ
白服α?【 これは…ぁ!! 】
王女「……?」
「こっちだよ」ぐいっ
王女「っひゃ」ヨロッ
「立ち止まらないで、捕まっちゃうよ」
王女(まだ目がよく見えない……誰? )
< ダッ!
「こっち、手を離さないで」
─── 小さく、冷ややかな手に強く引かれながら王女は走り出す。
─── 背後から追ってくる黒い影達の音に追われるように、そして自然と動く足に釣られ。
─── 憎く、そして恐怖の象徴でもある白服αの声が王女の背を這う。
< 「逃がさない」
< 「お前の両親同様に、俺は王女を必ず殺す」
─── 王女の足が止まりかける。
─── すると、うっすらと見えてきた視界の中央で小さな人影は王女の手を握りしめた。
「絶対にこの手は離さないからね」
─── 更に強く手を引かれ、王女は走り続ける 。
─── 足の裏に接する冷えた大理石らしき床を、裸足で王女ともう一人の『誰か』が駆けていく。
王女「……あっ 」
─── 走り続けた先に、薄明るい『外』が微かに見える。
─── ・・・城の回廊を進んでいたのに、だ。
< ガチャッ
< バタンッ
王女「はぁ…はぁ……あれ、ここ……」
王女(霞んでた目が見えてきた、けど……ここって城の中じゃない)
王女「……『貴女』が私をここに?」
白少女「そうだよ王女」
神父α「シッ…!!」ヒュパァンッッ
Eibon「おっと」ガァンッ
< ザザザッ
神父α(動きは一般的な『女性』の動き、なんら問題はない)
神父α(なのに何故でしょう? 彼女から発せられるこの……得体の知れない気配は)ザッ
Eibon(・・・とか思ってるんでしょうね)クルッ
Eibon(見たところ最初はあの自称『蒼の剣(笑)』と『黄金の剣(笑)』に驚かされましたが)
Eibon「…鞘が無いのでは、ね」
神父α「罪人を処刑せよ、黄金の一閃!!」
―――― ズガガガァッッ!!!
Eibon「……」ピンッ
Eibon(まぁ彼もそれなりに使いこなせてはいるようです、かの『ブリテンの聖剣王』程ではありませんが)ヴンッ
< ゴッガァン!!!
―――― ギィンッッ
神父α「!!」
神父α(完全に相殺された……だと)
Eibon「貴方の剣撃は私には届きません」
Eibon「そして貴方は私に勝てない、そもそもここからは戦いにもならないでしょうね」
神父α「……今のを相殺したからですか」
Eibon「ええ、確信です」
神父α「僕を少し嘗めていますよ、その驕り程痛々しいものはないな」
Eibon「驕りですか……」クスッ
Eibon「何も知らずにここへ来させられたようですね、可哀想に」
神父α「っ」ピクッ
Eibon「気づくのが遅すぎる、貴方達が敵に回した相手が一体どういう存在なのか」
Eibon「たかが『本』一冊にすら勝てないのに……」
Eibon「貴方の剣撃は私には届きません」
Eibon「そして貴方は私に勝てない、そもそもここからは戦いにもならないでしょうね」
神父α「……今のを相殺したからですか」
Eibon「ええ、確信です」
神父α「僕を少し嘗めていますよ、その驕り程痛々しいものはないな」
Eibon「驕りですか……」クスッ
Eibon「何も知らずにここへ来させられたようですね、可哀想に」
神父α「っ」ピクッ
Eibon「気づくのが遅すぎる、貴方達が敵に回した相手が一体どういう存在なのか」
Eibon「たかが『本』一冊にすら勝てないのに……」
神父α「・・・」
神父α「私は……ッ、僕は! 神を殺す為に力を得たんだ!!」
神父α「貴女のような何の思想も無い輩に……」
Eibon「哀れですね」
神父α「!!」
く、だめだ寝よう…
── サァァァ‥‥‥‥
王女「…ここは、どこなの」
王女(とても綺麗な花畑……でも咲いてるのは全部白い花だけ)
< ネットリ
王女(降ってるのも………雨じゃない、何か別の水?)
白少女「王女、行こう」ぐいっ
王女「っ……ま、待って」
白少女「時間無いよ」
王女「時間って、あなた何を……」
王女「言っ…てッ……ぇ?」グラッ
< ガクッ
王女(また目が見えなくなってきた……頭が痛い)ズキィッ
白少女「つい数秒前まで王女は憎悪を元に身も心も操られてたの、そして今もね」
王女「……操られてた、ですって?」
白少女「今の現実世界にいる王女はちょっとした神話に登場してもおかしくない程の化け物になってる」
白少女「王女達が呼ぶ『勇者』でも今は王女を救うことが難しくなってるほどに」
王女「・・・」
白少女「私の手、握って」
王女「……これから、どうすれば? ここは現実じゃないなら夢? どうしたら…」
白少女「簡単だよ、まずは逃げよう?」
王女「逃げるって、どこに?」
白少女「現実世界じゃないって言ったでしょ、ここは王女の夢の中なんだよ」
白少女「だから本来は逃げる場所は王女が知ってるし私も『あの女』も干渉は出来ない」
白少女「でも今は違う、王女の夢に入れる……ツール? って言うのかな、それを悪用されてるからこんな事になってるんだ」
王女「……え、と」
白少女「難しいな、ナイアとは凄く普通に通用してたんだけど」
白少女「とにかく」ぐいっ
白少女「『王女はこのままだと心と夢が死ぬ』、『解決するには私と来る』」
王女(…ナイア?)
白少女「それだけ、私の言葉を聞いてくれればいいから」ニコリ
神父α「……これは一体なんの冗談だ…何だこれ・・・ッ!!?」
< パキッ……ビシィ!
神父α「僕の『黄金の剣』に拮抗するどころか…武器破壊……!?」
神父α「一体何者なんだ貴女は!!」バッ
Eibon「何に見えますかね私」
Eibon「……どんな気分です? 弱者を貰い物の剣でいたぶって正義を語っていたのは」
Eibon「先程なんて私と打ち合ってる中で、『神を殺す為に』なんて言っていましたが」
Eibon「その『『 エクスカリバー 』』で殺せると本気で思ったのですか?」
神父α「…えくす、なに……?」
Eibon「その黄金の剣(笑) は正式名称『エクスカリバー』、邪神が創った島で生み出された聖剣です」
Eibon「そしてもう一本の蒼の剣(笑)……これは『カリバーン』という同じ聖剣」
神父α「……邪神、だと」
Eibon「クス、いるんですよ……心優しい愛嬌のある神様がね」
Eibon「数多くの悲劇を目前にして、その神は一つの島を作り出したのです」
Eibon「それこそが『アヴァロン』、貴方が持つ聖剣が生まれた地です」
< ザッ
神父α「もういい・・・つまり、僕の剣は神を殺せる力を持っていないと?」
Eibon「ええ、神話級どころか精々一つの国に二つはある聖剣物語ですよ」
神父α「…………」
神父α「ならばせめて君を処刑しよう」シャキンッ
Eibon「処刑ですか、私の罪状は何なのか気になる所です」
Eibon「しかし私も余裕があるわけではないので……」スタスタ
< ピタッ
Eibon「次の一撃でその『エクスカリバー』を、その次でもう片方の『カリバーン』を」
Eibon「・・・かつての三姉妹がしたように、粉々に砕きます」ヴンッ
神父α「やれるならやってみるといい、僕の黄金と蒼の一閃で断ち切ってみせます!!」シャキン
Eibon「ええ、来て下さい」
Eibon(実に容易に引っ掛かってくれますね)クスッ
── サァァァ‥‥‥‥
王女(…何時間歩いたんだろう、ずっと白濁とした花畑が続いてると思ってたら……多分この少女の目的地に着いたのだろうけど)
王女(でも……ここ、って…)
白少女「ほら王女?もうすぐ着くよ」
< グイッ
王女「ま、待って!……ここには入っちゃだめよ」
白少女「……?」
王女「『ここ』は、私たちの来る場所じゃないの……これ以上進むのは絶対に駄目」
白少女「名前を言うのも、嫌?」
王女「……っ」
白少女「『罪を意識する人間の乙女は聖域に触れられず』、とっても詩的だね」
白少女「そんなに嫌?貴女にとっての罪はそんなに重い?」
王女「違…、私は罪なんて……」
白少女「ならおいで?今の王女は追われてるんだよ、とても怖い、怖い悪夢に」
王女「でも……!」
白少女「ほら…『みんな』歓迎してくれるよ、おいで………」
王女「ぁ…」
白少女「ようこそ、魔王城へ」ニコリ
── カツッ…カツッ……カツッ………
王女(……灰色に染め上げられた石造りの門を潜っても、中に広がるのは同じ灰色…)
白少女「こっち」グイッ
王女(広い…初めて見た、けど……)
王女(何でだろう? 何か決定的な物が欠けている気がする )
白少女「・・・おいで」ニコリ
王女(手を引かれて奥へと進んで行っても……全部灰色?)
王女「…色が、無い」
やはり無理だ
お待たせして申し訳ない、予期せぬ出張が重なって精神的にも時間的にも書く気になれなかった
今夜辺りに書き溜めを少しずつ消化しようと思う、
長期間の間何の連絡も無く放置してしまってすいませんでした
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