さやか「美樹さやかは死んだ」(245)

ラブホテルの非常階段

杏子「この非常階段にはカメラはついてないからな。でも中にはある。だから――」

杏子「あそこの結界の入り口には、柵から飛んで突入するぞ」

まどか「見つかったら問題だよね。学校帰りで制服だし」ウェヒヒ

さやか「魔女倒したら、カメラに映らないように一目散に逃げよう」

杏子「とりあえず、ちゃんと魔女を倒すことに神経注げよ」ハァ

まど・さや「は~い」

杏子(大丈夫かよ……)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1334885923(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)

杏子「それに今、皆のソウルジェムはギリギリなんだ。一気に叩くぞ」

まどか「さやかちゃんはお留守番してた方が……」ウェヒヒ

さやか「なぬ!?こんな如何わしい所に嫁のまどかを向かわせるわけには……」

杏子・まどか「はいはい」

さやか「適当なっ。魔女退治は人数多い方がいいでしょ」

杏子「それもそうか」

さやか「ていうか、なんでラブホテルのカメラの位置なんて知ってるのさ?」

杏子「よしっ、行くぞ!」

さやか「ちょ、ちょっと」

杏子「首ポーンっとやられたら、死亡と思えよ」ダッ

結界内

ヒョオォオォォオオ

まどか「中世の武器とかかな?」テクテク

杏子「甲冑とか、エグい拷問機具もあるな……」テクテク

さやか「ねえ、あの奥にいるやつ魔女じゃない?」ユビサシ

杏子「だなっ」

まどか「先手は私っ!」ビュ!!

まどか「あ、外れた!素早いよ、あの魔女」ビシュビシュ!

杏子「あんま、無駄撃ちすんなよ」ダダダダッ

杏子「いくぞ、さやか!」チャッ

さやか「合点!」ダッ

-----
--
-

杏子「とどめだ!」ググッ

ニヤッ

杏子(魔女が、笑った?)

ヒュン!

杏子(短剣!?)

「杏子!あぶない!」ドスッ!!
       ↓↓
魔女---短剣→さやか  杏子

まどか「さ、さやかちゃん!?」

魔女---杏子--------------------------------------短剣-→さやか<ズザザザアア

カランコロン

まどか(さやかちゃんのソウルジェムが落ちた!?早く回復を)ダダダッ

杏子「くそっ!!」ジャキ

杏子(さやかがあぶねえ!早くグリーフシードを――)

杏子「おらああああ!」ザシュ

シュウウウウウウ   ラブホテル屋上

まどか「さ、さやかちゃん!?大丈夫?……あれ?」

杏子「やばい、さやかと逸れた!」

一階下の一室<きゃあああああああ!!!!

杏子「誰かに見つかったか!」バッ

杏子「まどか。私の槍の柄をしっかり掴めよ」ジャキ

まどか「どうするの?」オロオロ

杏子「悲鳴がした部屋まで、槍にぶらさがって確認する。さやかの“死体”が見られた可能性がある」

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--
まどか「杏子ちゃん落ちないでね?」グググ

杏子(何でベランダがねえんだよ。くそ、カーテンで見えづらい。押し入るか?)フラフラ

一室

清掃のスタッフ1「お、女の子が死んでる!」ガタ

スタッフ1「……制服プレイ……?いや、この制服あそこの中学かしら?」

杏子≪まどか!グリーフシードだ。取りあえず意識だけでも回復させよう≫

まどか≪それが杏子ちゃん……あの魔女グリーフシードを落とさなくて……≫グググ

杏子≪何っ!?≫

まどか≪ゆ、揺らさないで!落ちちゃうよ。杏子ちゃん≫グググ

杏子(やばい、さやかの心臓からの出血が予想以上に多い)グラグラ

スタッフ1「あ、助けて!女の子が!」

スタッフ2「どうしたの?」

スタッフ2「きゃあああああああ!!誰かぁぁああ」

杏子(くそっ!くそっ!さやかを回収できない!)

まどか(どうしよう、さやかちゃんが死んじゃうよ。さやかちゃんが……そんなのヤだよ)

屋上

まどか「……杏子ちゃん。さやかちゃんは?」

杏子「――遅かった。警察呼ばれちまった。私達もヤバいから一旦引こう」

杏子「さやかのソウルジェムは持ってるか?」

まどか「うん……でもホントギリギリだよ。真っ黒」

杏子「傷が思ったより深かった。このままここにいるとソウルジェムが治癒を続けよう魔翌力を使っちまう。そーすると、濁っちまってやばい」

杏子「危険だけど、ソウルジェムを身体から引き離すほうがいいかもしれない」

杏子「魔女になる前に100mいや、念のため200mは離れよう」ダッ

まどか「うん」ダッ

マミの家 テーブルを囲む四人の魔法少女。テーブルの上には、四人分の紅茶と黒く澱んだソウルジェムが一つ。

ほむら「で?さやかの身体を置きっぱなしにしてここに戻ってきたって言うの?」バンッ

まどか「……うん。魔女がグリーフシード落とさなくて」

ほむら「美樹さやかのソウルジェムを貸して」

まどか「はい」

ほむら「ヤバいわね……杏子。さやかの傷はどのくらいのレベルなの?」

杏子「一般人なら即死だ。心臓を短剣が一突き。魔女を倒して結界が崩れたから、短剣は姿を消した。だから血は流れ放題だった」

マミ「暁美さん、それじゃあ」

ほむら「そうね。ソウルジェムを美樹さやかの身体から約100m以内に近づけると、自己修復を始めるわ」

杏子「やっぱり……くそっ、私のミスでっ……」ダンッ

ほむら「あなたのせいじゃない。今は慢性的なグリーフシード不足。仕方ないわ」

マミ「今あるのは、この一つだけ」コトッ

ほむら「それもギリギリの」

まどか「――ねえ、さやかちゃんどうなっちゃうの?」

ほむら「今むやみに身体の回復が始まるとソウルジェムが限界を超え、魔女に変貌してしまう」

まどか「そんな……」

マミ「でも、しっかりと距離をとってソウルジェムを保管して、私が魔法をかけ続ける。そしてグリーフシードを集めて、美樹さんの“治癒”の力を促進させれば、身体の復活も可能よ」

ほむら「でも世間では死亡扱い。今後美樹さやかが日常生活を謳歌することはできない」

まどか「ほむらちゃん。そんな言い方ってないよ!!」バッ

マミ「鹿目さん落ち着いて。暁美さんもよ」

ほむら「落ち着いているわ」

マミ「そう。でも暁美さん、爪は噛んじゃ駄目よ」

ほむら「……ごめんなさい」

まどか「マミさん……どうしたらいいんでしょう」

マミ「私達は世間には決してばれてはいけない。誰にも相談できない。家族と過ごす時間も、友だちと遊ぶ時間も、趣味も勉学も。

   魔女と戦う使命を持つことで多くのものに制約ができてしまった」

マミ「そんな一人ぼっちな状態でも生きていけたのは、日常を楽しめたのは、魔法少女の仲間がいたからよ」

マミ「これから美樹さんはその日常を送ることが難しくなった。私達がしっかりと支えてあげないと」グス……グス……

まどか「そんな。こんなのってないよ……」グスッ

杏子「私と同じ根無し草になっちまうのか、くそっ。私のせいだ……」バンッ

ほむら「美樹さやかには家族がいるのよ。あなたとは違う」

杏子「ああぁ?」ギロッ

まどか「ちょ、ちょっと!?」

ほむら「美樹さやかはすぐに家族に会いに行けるのに、顔を合わすことができなくなるのよ。

    それに学校生活も。何より――上条恭介にも会えない」

ほむら「回復には時間がかかっても、身体は持って帰るべきだったわね」

まどか「それは……」

杏子「はっ、そうだよな。私に時間停止の力があれば、さやかは助かっただろうさ」ガタッ

杏子「ま、その力を失った魔法少女に言うのは酷か?」

ほむら「何とでも言いなさい。三人もいながらこうなった事態を反省してくれればいいわ」

杏子「おい――ほむらてめえ」ガシッ

マミ「喧嘩はやめなさい!」バンッ

杏子「でも、こいつを一発殴らねえと!」

マミ「私達で争っても美樹さんは喜ばないわ。いつも私達を笑顔にしてくれたのは美樹さんでしょ……

   ソウルジェムが濁ってしまう。皆一旦落ち着きましょう」

杏子「……つっ」パッ

ほむら「わ、私を罵倒するなり、殴るなり好きにすればいいわ」ストン

ほむら「こんなお荷物魔法少女は邪魔でしょうし。それに慣れているわ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「それより――」

ほむら「一番酷なのは美樹さやか」

ほむら「見滝原市の平和を守ると言っていた美樹さやかがなぜこんな目に遭わなくちゃいけないのよ」グス

ほむら「ワルプルギスの夜での苦戦でも諦めずにいられたのも、さやかのおかげ」グス

ほむら「私達をいつも励ましてくれたさやかから、なぜ幸せな日常を奪うのよっ……ううぅ」グス

ほむら「魔法少女になる辛さを経験して、絶望しそうになったさやかを……

    あなたは『守ってやる』って言ったじゃない……杏子……」ポロポロ

杏子「……」

マミ「……」

<ユーガッターメール

まどか「……」カパッ

まどか「見滝原市の繁華街で殺人事件発生。見滝原中の生徒が巻き込まれた可能性あり。

    部活は中止で、集団下校もしくは親の送迎の許可。下校中の生徒は至急家に連絡。

    尚、犯人は未だ見つかっていない……学校からのメール……」

杏子「あああ!くそっ!」バンッ

まどか「……さやかちゃん……」

ほむら「もう無理ね……どうしようもないわ……奇跡も魔法も限度はあるわ」グスッ

マミ「記憶を消すには数が多すぎるわね。それに行う魔翌力も足らない」

まどか「じゃあ……もう、さやかちゃんは……」

杏子「社会的に死んだことにされんのかよっ」

ほむら「そう……ね」

マミ「ええ。でも――」

マミの両手<パァン

マミ「……美樹さんは死んでない。非情に聞こえるかもしれないけれど、

当面はグリーフシードを集め、美樹さんを復活させるのを目標としましょう。皆は極力魔法を使わないように」

まどか「……マミさん。さやかちゃんを回復させるなら何個ぐらいグリーフシード必要なのかな?」

杏子「2個もあったら、いけるか?」

マミ「ええ、十分よ」

ほむら「皆のソウルジェムがギリギリだから、2個集めるのに、2個は必要なのかしら……」

マミ「美樹さんの分の2個を集める間の、美樹さんのソウルジェムを維持するグリーフシードも必要ね。

   今のところ私の魔法で維持は可能だけれど早く欲しいわね」

マミ「手元にある唯一のグリーフシードも美樹さんのソウルジェムを抑えるので精一杯ね」

まどか「私、頑張るよ……さやかちゃんのために」グッ

<プルルルル

まどか「――もしもし?」ピッ

知久『まどかは今どこにいるんだい?』

まどか「先輩の家だよ。前話したマミさん」

知久『そうか……車で迎えに行くから、場所を教えてくれるかい?』

まどか「うん。~~~~」

知久『分かった。さやかちゃんとは一緒?』

まどか「…………」

知久『まどか?』

まどか「ううん。さやかちゃんとは途中で別れちゃった」


まどか「さやかちゃんなら大丈夫だよ。だって、小さいころから私を守ってくれたもん」

まどか「オドオドしてた私をいつも守ってくれたもん。絶対大丈夫」

まどか「さやかちゃんは、私の“せいぎのみたか”だから」エヘヘ

知久『小学生のころのさやかちゃんは、いつもそう言っていたもんね。大丈夫だよ。まどかは心配しなくていいよ。今すぐ行くから』プツ ツーツーツー

まどか「……」

まどか「――っ」

まどか「グスン……やっぱり、嫌だよぉ……今からでも間に合うよ。さやかちゃんの身体にソウルジェムを戻しに行こうよ」グス、グス

マミ「鹿目さん……」

杏子「まどか……」

ほむら「ううっ……」グス

次の日、朝のニュースで報じられたときのさやかちゃんの写真は、どれも笑っていたのが使われていた。

そしてワイドショーでは、なぜラブホテルで刺殺体として発見されたのか話題となっていた。

見つからない凶器。カメラに写っていない犯人。

テレビ<被害者から犯人のDNAが採取されなかったらしいですから、犯人は殺傷目的だったのでは――

テレビ<もしかしたら、これは、可能性の一つとしてですけど、


   “援助交際を行う中高生に対する制裁なのかもしれません”


私は、焦点も合わさずただボーっとテレビをみていた。ママにもパパにも見ない方がいいと言われたけど、

なぜか悲しくても辛くても見なければいけないと思った。

偉そうに暴論を電波にのせるコメンテーターに対して怒る気もしなかった。

そして、食事も喉を通らなかった。

少しすると、アナウンサーが謝罪していた。不適切な発言だって。

誰に謝っているのかな。さやかちゃんのパパとママはテレビなんか観てないよ。

さやかちゃんだって観てない。

誰に謝っているんだろう。

さやかちゃんが援助交際なんてするわけないじゃん。

今日はここまでですいません。続きは月曜日で

学校を休んだ私のそばにずっとパパが寄り添ってくれている。

すぐにでも抱きついて泣いてしまいたいぐらいなのに。

私は何もする気が起きなかった。次の日もまた次も。

そして、あの不適切な発言によってさやかちゃんがいた日常は大きく変わってしまった。

そのたびに……私のソウルジェムが刻々と澱んでいくのを実感できた。

TV< はい。一時期ちょっと荒れていたと思います……それと――

まどか「なんで、この子は、こんな適当なこと言うの?『繁華街でよく見ました』って、当たり前じゃん……

    上条君の見舞いや私達と買い物とか……さやかちゃんは普通の女の子だよ?」

知久「生放送じゃないから、インタビューの都合の良くないところは編集しているんだよ」

知久「まどかだけじゃなく、僕も含めて、皆さやかちゃんのことは信じているさ」

まどか「うん……」

ピンポーン

知久「はーい」タッタッ      ガチャ

ほむら「あの、今日の分のプリントです……」

知久「ああ、ありがとう」

ほむら「まどかさんは今日のお通夜に来られそうですか?」

知久「うん。今日は昨日より落ち着いているよ」

ほむら「そうですか」

知久「そうだ。ほむらちゃんにお願いがあるんだ」

ほむら「はい、なんでしょうか?」

知久「実は、さやかちゃんの家族とは家族ぐるみの付き合いでね……二人ともひどく憔悴しきっている」

ほむら「ええ、ニュースで少し……」

知久「さやかちゃんは、あまり学校のことを親に話さなかったらしいんだ」

ほむら(一時期、魔女になりかけていたし……年頃の女の子はあまり話さなくなるものね)

知久「何か、さやかちゃんとの思い出とかあればいいんだけど」

ほむら「よく休日は遊んでいましたけど、少し間を置いた方が……」

知久「そうかもしれない。けど、二人ともしきりに『もっと娘と話すべきだった。なぜ気付けてあげられなかったんだろう』と後悔しているからね」

ほむら「……分かりました。ご家族とお話しする機会があれば……」

知久「ありがとう。君も辛いだろうけど」

ほむら「いえ……」

通夜。

マミ(お通夜ってこういう進み方だったのね)

マミ(……)

マミ(……美樹さん。安心して。あなたのソウルジェムは輝きを失ってはいない)

マミ(もう少しだけ待っていて)グスッ

マミ(大丈夫。もう少しもう少しだから)ゴシゴシ

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--
-

さやかの母「……まどかちゃん」

まどか「おばさん……」グスッ

さやかの父「後ろの子は?」

まどか「あ、同じクラスの暁美ほむらちゃ――、あ、えっと、暁美ほむらさん、

    先輩の巴マミさん、さやかちゃんのお友達で隣の市の佐倉杏子さん」

< ペコッ

さやかの父「さやかには色んな友だちがいたんだな……全然知らなかったよ」

さやかの父「あいつ、何も言わなかった。怪我していても、涙で目を腫らしていても。私はね、父親失格だったんだ」

まどか「――っ」グッ

まどか「あのね、少し前に市内の工場で事件があったでしょ?」

ほむら「集団昏倒事件です。犯人は逃走したらしいですけど」

さやかの母「ええ?」

さやかの父「それがどうしたんだ?」

まどか「犯人を追い払ったのは実はさやかちゃんなの」

さやかの父「そんなバカな」

マミ「あの……一時期、さやかさんがバットを持っていたことありませんか?」

さやかの母「ええ、河川敷で野球をするんだって……」

マミ「丁度、その時期ですよね?」

杏子「見滝原の自然災害で、避難し遅れた寝たきりの老人を運んだのも」

杏子「避難解除されるまで、子ども達とずっと遊んで、不安を取り払おうともしていた」

ほむら「ニュースの内容を私達は一切信じていません。マスコミもつき放しています」

杏子「あーあと、友だちができない転校生と、諦めずにコミュニケーションをとり続けたのも、な」

ほむら「うるさいわね。それで……さやかさんとはよく遊んでいまして……そのときの写真を」ガサ

さやかの母「あの子、写真を見せたことなんてなかったのよ……それに、今聴いた話を全く知らなくて……」

まどか「『恥ずかしいから言ってない』ってさやかちゃん照れていました……」グスッ

さやかの母「どれも――笑っているわね」ウウッ

マミ「いつも笑っていましたから。悲しむ時は、誰かの代わりに一緒に泣いてくれました……」

ほむら「私達はさやかさんに助けられました」

さやかの父「はは、こんな笑顔を見たかったよ……。でも、さやかは少しうるさくなかったかい?

      あいつは男っ気がありすぎて」

杏子「へへ――」チョイチョィ

マミ(こら)ツンツン

杏子「そうです、ね。でも私たちはそんなさやかが好きで」

まどか「ほかにも、私が絡まれた時もマミさんがナンパされた時も、守ってくれて――」

まどか「小さいころから、さやかちゃんは私を守ってくれて――」ポロポロ

まどか「さやかちゃんは、正義の味方だったんです」グスッグスッ

さやかの父「そういえば小さいころは――」

さやかの母「そうね。小さいころからずっと『まどかがなかされたから、男子とケンカした』とか『まどかがしんぱい』」

さやかの父「『まどかはわたしが守らないと』だったり『わたしはせいぎのみかたになる!』って言っていたり」

さやかの母「あ、確か将来の夢に『まどかをまもる』って書かなかったかしら?」ウフフ

さやかの父「ああー『せいぎのみたか』って書いていたな」ハハ

さやかの母「さやかのことだから、机の奥の方にとってあるかも」

まどか「すごく恥ずかしかったんですよ。皆の前で発表したんで……」エヘヘ

さやかの母「まだ部屋には触れてないから、今度探してみるわ」

さやかの母「ありがとね、まどかちゃん達。今度さやかの目の前で、お話聴かせてね」オジギ

マミ「はい……」

さやかの父「ありがとう。それと写真は貰ってもいいかな?」

ほむら「ええ」

マミ「探したらまだあると思います」

さやかの父「そのときはよろしくお願いします」オジギ

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--

次の日。マミの家

ほむら「よかったのかしら……」

杏子「大丈夫だって。嘘は言ってないし」



マミ「……魔女の反応ね」

杏子「……頼むから、グリーフシード落としてくれよ」

マミ「行きましょう。佐倉さん」

ほむら「じゃあ、私も――」

杏子「二人で大丈夫だ。ほむらは休憩しとけ」

ほむら「……ええ……分かったわ」

魔女の結界

オオォオオオォオォオオオォオオ

杏子「至る所にステッキが落ちてるな」テクテク

マミ「このステッキで使い魔は倒しましょうか」ニギッ

杏子「ああ」

マミ「もう一度確認するわ。極力魔法は使わない」

杏子「ああ」

マミ「けれど武器と治癒だと、回復のほうが魔力を使用するから気を付けてね」

杏子「ああ」

マミ「佐倉さん聞いているの?」

杏子「聞いてるよ。もう私はあんなミスはしたくないからな」

マミ「そう……」

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-
シュゥゥウゥウウゥゥン

マミ「ふぅー。大砲1、マスケット銃2、リボンが3mと80cmか……」シュタ

杏子「細かいなぁ……それにしても抑えすぎじゃないか」

グリーフシード< カランコロン

杏子「よかった……グリーフシードだ」

マミ「美樹さんのためだもの。もっと節約できたわ」ヒョィ

杏子「私もそれは一緒だ。でもこの魔女で言えば、マミ……体力回復しなくていいのかよ」

マミ「あら、私は無傷よ」エッヘン

杏子「嘘だ。グリーフシード拾うとき、足を曲げなかった。

   誇らしげに振り向くとき、表情を作ってたのが見えた」

マミ「佐倉さん……周りを見るようになったわね」

杏子「だから、さ」

マミ「私はまだ大丈夫よ」

杏子「でも……」

マミ「自然治癒力という魔法は誰だって使えるのよ、知っていた?少ししたら治るわよ」

杏子「少しぐらい魔力使うのだったら問題ないだろ」

マミ「それより問題は、部屋がシップ臭くなることよね」フフフ

マミ「紅茶が飲めないわ」

杏子「あのなぁ。これでマミにも何かあったらどーすんだよ」

マミ「あら、師匠を弟子が心配するの?」

杏子「そのことにはもう触れるなよな」ハァ

次の日。

魔女の結界

ほむら(魔女もいるようね……マミがあと少しで来るからそれまでの間……)ヘンシン

ゴトゴト ボトンッ コロ 

ほむら(私の場合は、魔法少女になっている時間も極力減らして……)ヘンシンカイジョ

ほむら(限りある武器で戦うわ)ジャキ!

ほむら「私も戦わなきゃ」    ターン!

ほむら(まどかが契約してしまったこの世界で過ごしていく、生きていくことを決めた

    私はもう負けられない……大切な仲間を失いたくないのよ)

ほむら「……ガラクタを運ぶ使い魔?」ジィー

使い魔<  フワフワフワ

ほむら「ねえあなたたち。これあげるわ。金属集めるの好きなのでしょう?」ハイッ

使い魔< ガシッ

フワフワフワフワ

ほむら「金属を集める魔女でよかったわ」フゥ~

ほむら「よし……十匹は集まってるわね」ジィー

ポチッ

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マミ「お待たせ」シュタ

ほむら「ちょうどいいところよ。魔女がいるところまでの使い魔は倒したわ」

マミ「ありがと暁美さん。頑張ったわね」

ほむら「ええ。拳銃を十発も使ってしまったわ」

マミ「爆弾は?」

ほむら「五つ」

マミ「ごめんなさい、もうちょっと早く来ていれば」

ほむら「いいのよ。爆弾はいつでも作れる。それよりもあの魔女をお願い」

マミ「オーケー。分かったわ」

ドンッ

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

五日後。土曜日。マミの家。

コロン、コロン。

マミ「グリーフシードが集まったわ」

杏子「よしさっそく……」

ほむら「まどか?大丈夫?」

まどか「うん……さやかちゃんに会えるんだよね?」グスッ

マミ「ええ、ソウルジェムが一定の輝きを保つよう見ていたから大丈夫。もうすぐ会えるわ」

まどか「ごめんね、皆。私何にもできなくて……」

マミ「私は鹿目さんも心配だったのよ」

まどか「ごめんなさい。でも、さやかちゃんに会えるんで大丈夫です」

ほむら「まどか。さやかの遺骨は持ってきたかしら?」

まどか「うん。キュゥべえにとってきてもらったやつだよね」ガサゴソ

ほむら「この小さな肉片で大丈夫かしら……」

杏子「大丈夫さ。魔力を使用させない魔法を解いてくれ、マミ」

マミ「ええ」パァァアアア

さやかのソウルジェム<  ズズズズズズズ

マミ「ソウルジェムに遺骨を近づけて……それとグリーフシードも」

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-
マミ「これが2つ目のグリーフシードよ」

シュゥゥゥゥウウウウ

杏子「さ、さやか――」




さやか「あれ?なんで私テーブルの上で寝てるの?」

ほむら「よかった……よかった。うぅ」ダキッ

さやか「ありゃ。ほむらが可愛くなってる?どうしたのさ、皆も何かほむらに言ってやってよ」キョロキョロ

まどか「やったーーーーーー」ガバッ

ドスン!

ほむら「ぐぇつ」

さやか「ちょ、まどかっ。痛い。痛いって。マミさん助けてー」

マミ「美樹さんっ」ダキッ

さやか「え、マミさんも――」

杏子「さやかーーーーー」ガバッ

さやか「杏子も!?」ズドーーン

暁美ほむら。鼻骨骨折。

さやか「なんで皆が抱きついてきたか説明がさやかちゃん欲しいです!」

マミ「わ、分かったわ」グシグシ

杏子「ゆっくり説明してやるから」グシグシ

ほむら「落ち着いて聴くのよ」ボタボタボタ

まどか「ほむらちゃんは安静にしていて。マミさん。治してあげてください」

マミ「ええ」

マミ「それで――こう――そして――」

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一時間後。

ほむら「世間では、あなたは死んでしまっているの」

ほむら「あと、上条恭介はそれ以来、ヴァイオリンを触っていない」

ほむら「志筑仁美はショックで、休みがちになっているわ」

ほむら「それと両親には会いに行かない方がいい」

ほむら「混乱させてしまうだけよ……」グスッ

ほむら「あなたは社会的に生きられなくなってしまったのよ……」

ほむら「家族と生きる方法はある。けれど、現実的に考えて見て。社会と隔離され生きられると思う?」

まどか「ほむらちゃん、もうちょっと言い方――」アセ

さやか「ソウルジェムが真っ黒で荒れていた私なんかにも、ご飯ができたことを知らせてくれたし朝起こしてくれた」

さやか「真夜中に帰ってきても、笑顔で『おかえり』って言ってくれたんだよ」

ほむら「でも、亡くなった人を迎え入れることはできないわ……」

さやか「……」

杏子「なぁ、ほむら。お前もうちょっと言い方ってのがあったんじゃない?」

ほむら「あ……ご、ごめん、なさい」

さやか「……」

マミ「美樹さん。暁美さんの言っていることは、本当よ」

まどか「さやかちゃん……これ、その次の日の新聞」ハイ

さやか「――っ」フルフル

さやか「嘘だっ」ダッ!

マミ「美樹さん!」

まどか「さやかちゃん!」ダダダ

ガチャン

杏子「私もまどかについてくからな」

ガチャ

杏子「涙ふいとけ、馬鹿」ダダダ

ほむら「……」グス

マミ「はい、暁美さん。ハンカチ」

ほむら「私最低ね……」グス

マミ「ううん。ただ、少しだけ不器用なだけよ」ギュ

ほむら「ううぅう」

さやか(嘘だよ、嘘だよ。こんなの。私は生きているんだよ。

    今、走って、息を白くして、汗も出している。足も痛くなってきた……

    涙も出ている)ダッダッダッダ

さやか「私は死んでなんかない」ダッダッダッダ

さやか(魔法少女はゾンビなんかじゃないんだ)グスッ

さやか「ここを曲がると、私の家が――」ダッ

マンション前。

さやか「はぁ、はぁ。何も変わってない」

まどか「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。さやかちゃん。待って」ハァハァ

まどか「今誰かに見られるのは、ぜぇ、ぜぇ、まずいよ」ハァハァ

さやか「車もあるし――――くるまも?」バッ

さやか「何よ、これ。なんで車に傷が?落書きがされてんの!?」

罰 ビッチ 自業自得、エンコー、親不孝者
さやかちゃん俺とエンコーして!3000円?2000円?

さやか「何で、何でよっ!」

まどか「さやかちゃん、静かに、静かにしないと!ばれちゃう」


        正義の鉄槌が下ったのだ(笑)


さやか「こんなの絶対おかしいじゃん!私がおかしいことした!?何したっていうのよっ!」バンッ

まどか「さ、さやかちゃん……」

さやか「私はただ……魔女を……倒そうとしただけじゃん……なんで」

さやか「こんな――」ウッ    バタン

まどか「杏子ちゃん!?」

杏子「気絶させただけだ。マミの家戻るぞ。ばれるとマズい」ダッ

まどか「うん……」タッタッタッタ

夕方 マミの家の寝室

まどか「さやかちゃん……」

さやか「ごめん……一人にしてくれる?」

まどか「うん……」

ギィィ パタン

マミ「どう、鹿目さん」

まどか「ううん。話できなかった」

ほむら「今は一人にさせてあげましょう」

杏子「で、今後どうすんだよ」

まどか「どうするって?」

杏子「さやかのことだよ。見滝原市に居させるつもりか?」

杏子「ここに居ても辛いだけじゃないか」

まどか「ご両親や恭介君に一言は?駄目かなぁ」

ほむら「無理ね」

ほむら「家族や上条恭介、クラスメイトや近所の人も美樹さやかが援助交際をしていたとは誰も思ってない。

    けれど、美樹さやかの事を何も知らない人たちは楽しんでいる」

ほむら「実家の住所もばれてしまった以上、嫌がらせは飽きるまで続くのよ」

ほむら「現に、援助交際を行う女子中高生への暴力事件が増えている」

ほむら「その多くの視線が集まる中で、美樹さやかが生きていた事が知られると、非常に厄介なことになる」

杏子「殺された少女が生き返るか……つーなると、そこにある身体は誰のということになるもんな」

マミ「警察にも病院にも、美樹さんの情報はあるものね……テレビでも連日放送されたし……」

ほむら「奇跡を体験した天才ヴァイオリニストの幼馴染が、ってことで扱いやすかったでしょうし……

   ごまかすなんて無理よ」

まどか「でも……あっ!」

まどか「会わせた後、上条君たちの記憶を消すのはどうかな?」

ほむら「それは美樹さやかが辛いだけよ」

まどか「そうだよね……そうでした」シュン

マミ「記憶を消す魔法ならできるわよ。二三人同時も可能。でも暁美さんの言うとおり、美樹さん自身が辛いと思うの」

杏子「だろうな。それにさやかからしたら、両親に生きていると知って欲しいんじゃないか」

まどか「でもさやかちゃんのパパとママなら大丈夫だよっ。周りに言いふらさないよ」

杏子「う~ん……」

ほむら「でもね、言葉に出さなくても、行動に現れたりするものなのよ」

杏子「じゃあ、引っ越すのはどうだ?誰も知らない遠くの土地へさ」

ほむら「それでも、さやかは、“美樹さやか”とは生きられないのよ」

杏子「んーじゃあ――」

ガチャ

まどか「さやかちゃん!」

ほむら「今の話聞いていたの?」

さやか「うん、ごめん」

杏子「で、さやかはどうしたい?」

ほむら「杏子」

さやか「ねえ、皆にお願いがあるんだ。私、一回だけでいい。両親に会いたいよ」

マミ「美樹さん……」

ほむら「そのあとはどうするの?」

さやか「……二度と会わないよ」

まどか「さやかちゃん……」

杏子「いいのかよ、それで。私ら家族いない組は両親に会いたいと思っても会えない。

  でもお前は会おうと思ったら、いつでも会いに行けるんだぞ」

杏子「一回では済まない」

杏子「私はこんなすれた性格しているけど、家族に会えるなら何回でも会いたい」

杏子「謝りたいことはたくさんあるしな」

マミ「佐倉さん……」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「大丈夫、大丈夫だから。私の両親だもん。黙っていてくれるよ」

ほむら「……そう」

マミ「分かったわ……それじゃあ会う方法を考えましょう」

ほむら「ちょっと……」

マミ「大丈夫よ。万が一のことを考えて、私は待機しておくし、ね?」ニコッ

ほむら「……ん、……まぁ」

さやか「じゃあ!」バッ

杏子「一回ぐらいいいか」

ほむら「そうね、不安は残るけれど」

さやか「ありがと!」

まどか「でも周りにばれないようにしないとダメだね」

マミ「変装しましょう」

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----
---
ワイワイ ワイワイ

さやか「ねえ、まどか?」

まどか「あ、さやかちゃん動かないで!」アタフタ

さやか「ごめん、ごめん」

杏子「片方の眉毛だけ色変わったな」ケラケラ

ほむら「……私より黒いのは止めてほしかったのに」

マミ「あら、実はその髪自信あったのね。前はどうでもいい反応していたのに」

マミ「『え、私特別な手入れはしてないわよ。あなたと違って天然ものよ』って言っていたじゃない」

ほむら「ああ、それは違う世界の私ね」ファサ

マミ「私が知っているのは、目の前の暁美さんだけよ」フフ

ほむら「まどか。余ったら、巴マミの縦ロールを真っ黒にしましょう」

さやか「黒にしたら、マミさんサザエになっちゃうんじゃん」ハハハ

杏子・まどか・ほむら・マミ「サザエ食べたことないの?」

さやか「杏子にまで……サザエって先っぽ黒じゃなかったの……」

杏子「確か緑っぽくなかったか?」

まどか「次は、どうしよっか」

ほむら「美樹さやかが着ないような服を選びましょう」

マミ「わくわくするわね」

杏子「そうだな、う、動きやすい格好にしないとな」

さやか「せ、背中からネクタイみたいなのぶら下げている服とか恥ずかしいから止めてね」ケラケラ

ほむら「それは私のことかしら?」

まどか「あ、あれ、ネクタイじゃなかったの!?」ビックリ

ほむら「まどかまで……」

マミ(……美樹さん……いえ、鹿目さんたちも……まぁ私もだけれど……)

まどか「さやかちゃんは、そこいらの中学生には負けない身体を持っていると思うんだよね」

杏子「でも身体のライン強調しすぎのは、私は好きじゃないなー」

ほむら「あなた達二人は、まず今までのさやかをイメージするのは忘れなさい。今度のさやかは黒髪よ。冒険して原色強めでも――」

まどか「さやかちゃん48人の方が人気でると思う」シタリガオ

杏子「それは流石に気持ち悪い。つーか何の話だ」

まどか「さやかちゃんは“イイ”ってことだよ!」

さやか「あははー恥ずかしいなぁ」

マミ「鹿目さんは美樹さんのことになるとテンションあがるわね」フフ

ほむら「そうなのよね、いつもそう」

マミ「ねえ、あなた達。服を選ぶのを楽しむのは良いけれど、

   ここの家にあるのは私の服しかないのよ。選択するほど種類はないわ」

まどか「うーんそっかー」ブツブツ

ほむら「しかし、巴マミのファッションセンスは、全ての時間軸において抜きんでていた」

ほむら「とても中学生とは思えない」

杏子「すげえな……私は?」

ほむら「あなたはいつも変わらず。洗濯しているのかしらってぐらい」

杏子「……よし、私に似合う服も選んでくれ。それを着て帰る!」

さやか「あんたねぇ。当初の目的を忘れないでくれる?」

杏子「文句言うなっ!その染める奴買ってきたのは私だぞ」

まどか「お金は私だけどね」

杏子「店員の野郎に『きっと学校で怒られたんだろうな』って思われているんだ!」クソッ

杏子「学校行ってねえよっ!」

さやか「怒るところはそこなの?」

マミ「そして忘れていると思うけれど、服は私のよ」

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--

さやか「おおぉ、私生まれ変わったみたい」ジャジャーン

杏子「でも胸のあたりブカブカだろ?」ケラケラ

さやか「いや別に……なんで?」

杏子「……チィ」ブンッ

パシィィン

ほむら「私を殴ろうとするのは止めなさい」ヒリヒリ

杏子「いや、仲間とハイタッチを」

ほむら「ハイタッチはグーとパーではないわ。それに私はあなたと仲間ではない。まどかも拳を向けないで」

まどか「さやかちゃん、似合ってるよ」ウェヒヒ

マミ「ええ、その服最近着ていないから、美樹さんにあげるわ」

さやか「いいんですか、やったー」

さやか「――じゃあ、両親に会ってきま――」ダッ

ほむら「待ちなさい」ガシッ

さやか「なんでよっ」

ほむら「再会を果たすのはいいと思うわ。けど、あなたのことだから、その、なんと、いうか、やっぱり、不安なのよ」

さやか「大丈夫だよ。行く途中は静かに行くし」

まどか「ついていこうか?」

ほむら「そうよ、私も――」

さやか「大じょーぶだって」ヘラヘラ

まどか「さやかちゃん……」

マミ「……再会が終わったら呼んでね。万が一の場合を考えて、記憶を消す準備をするから……」

マミ「そんな魔法を使いたくはないのだけれど……ね」

さやか「……はい。これより、美樹さやか行ってきます!」ダダダダダ

まどか「大丈夫かな……」

ガチャ    タッタッタッタ

マミ「大丈夫よ、きっと」

タッタッタ  ドテッ   <イッタァイ!マミサンノヒールタカイ!

マミ「大丈夫よ、きっと」

夜 見滝原市

さやか「ばれないように、ばれないように。普通の中学生っぽく歩く」ブツブツ

さやか「普通てなんだろーか、と考えないように歩く、歩く、歩く」ブツブツ

さやか「あ……」ピタッ

○○楽団第△△回演奏会のお知らせ

さやか「ありゃー特別ゲストの一人に恭介の名前が載ってる!楽器触ってないらしいのに、出られるのかな?」

さやか「というか、このこと知らなかった!」

さやか「……」

さやか「そっか、そりゃ死んでたからね……」ウゥウゥウ

さやか「中学生は500円でいいのか……」

さやか「駄目だ、お金持ってない……」

さやか「どこかに2500円落ちてないかなぁ」トボトボ

さやか「あ、どっちにしろ駄目だ。生徒証の提示ができないじゃん。私ってほんとバカ」

さやか「どっかに2000円落ちてないかなぁ」トボトボ

さやか「なんか鮮やかで女の人が描かれたお札でもいいからぁ~」

さやか「こんなことしてる場合じゃない!」ダッタタタタッタ

さやか「パパとママに会いに行かないと」ダッタッタタタタ

さやか「でも、どんな話をすればいいんだろ……」タッタッタット、トトト

さやか「それに車の落書きのこともあるし」トトト  ピタッ

さやか「援助交際って報道あったし、怒られるかも……」

さやか「そもそも車はあるけど、もう居ない可能性も……」

さやか「今私が言ってもややこしくするだけで迷惑かも……」クルッ

さやか「――っ。ああーもう、いつもの私だったら!!!」ピタッ

さやか「………うう……うん……遠目でもパパとママの姿は見ようかな?」クルッ

マンション前。

さやか(う~緊張するよ。家出したとき以上に緊張する)ドキドキ

キョロキョロ

さやか(よし誰も居ない)

さやか(暗証番号は、えーと)ピポペポパ

さやか「ピンポンして逃げるか……それともホントに会う?」

ウィィィィイン

さやか「やっぱり、会って話したいなぁ……」テクテク    ピタッ

さやか(ん、投函スペースに誰かいる?)

さやか「あんた、何してんの?」

男「――っ」ビクッ

さやか「ねえ」

男「知り合いに葉書を……」

さやか「嘘。そこシール剥がしてあるけど“美樹”でしょ。イタズラ?こっち向きなさいよ」ガシッ

男「ひっ……」

何度も殴られたような腫れた頬、切り傷のある額、不自然に汚れた服。

さやか「どうしたの、その怪我」

男「お願いです!見逃してください!お願いします。お願いします!」

ダダダダダダ

さやか「ちょ、ちょっと」ポカーン

<おい、ちゃんといれてきたか?

<は、は、は、はい。いれてきました。

<これで顔面殴られずに済んだな。ハハハハ

さやか(落書きとかをしている奴ら?)

さやか「落ち着け。落ち着け。ここで行ったら私ってことがばれちゃうかもしれない。追うな。追うな」

<次は何すっかなー。タイヤにナイフでも刺すかぁ。

<それはまずくない……ですか?

<口答えすんなよ。 バキッ

<援助交際をするような親不孝者の犯罪者を、生んだ家族にはそれ相応の罰が、

 もとい俺の憂さ晴らしの標的になってもらうんだよ ハハハハハ

<犯罪者の親は玩具になっても文句はいえんよな  

<せいぎのなのもとにーーーってな ハハハ 

さやか「――っ!」バッ

さやか「――」ダダダダダダダダダダ

さやか「このっ―――」ダダダダダダダダ

さやか「クズ野郎ーーーーーーー!!!!!」ダダダダダダ    バキッ
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さやか「……人の頭って案外固いなぁ……」ポタポタ

さやか「折れちゃった……」ポタポタ

さやか「血も出てる……」

さやか「痛い……痛いよ」

さやか「もう会えない」

さやか「こんな私に会う資格なんてない」トボトボ

さやか「家族にも、恭介にも、まどか達にも――」トボトボ

さやか「私は、魔法少女だと、マミさんみたいな魔法少女になると頑張ってきたのに……

    こういうのはダメだよ……なんか違う。違うよねマミさん」

さやか「あの男……もう一人いた奴が揺すっても起きなかった……」

さやか「ダイジョウブなのかな」

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深夜2時

まどか「さやかちゃん大丈夫かな……」

ほむら「大丈夫よ。きっと長話になっているだけよ」

杏子「マミはともかくまどかは寝ててもいいんだぞ?」

まどか「ううん……さやかちゃんからテレパシー来るまで待ってるよ」

マミ「紅茶を淹れましょう……温かい紅茶をね」

まどか「私、手伝います」

マミ≪美樹さん、返事して≫

マミ≪美樹さん?≫

マミ「駄目ね……返答がないわ」

ほむら・杏子・まどか「くぅ、くぅ」zzz

マミ「美樹さん……もうお昼よ……」

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-

さやか「私が魔女を倒したせいでああいうやつが生き延びている……のかもしれないんだよね」

さやか「どうしたらいいのかな……」

続きは火か水で。
IDに「SS」が入っていてちょっとウレシイ

ほむらがDQN殺害→お前ら「DQNざまああwwほむほむgjww」

さやかがDQN殺害→お前ら「うわ…犯罪者乙」

人間って面白っ!

>>94
キリカ魔女
さやかが、転がってたステッキで使い魔に応戦してた

さやか(マミさんのテレパシーまた来た……)

さやか(一日中ずっとだ……)

さやか(私って最低……こんな先輩を無視して……)

さやか「でも私はもう、会えないから」

さやか(どうしたらいいか、わかんない。だから)

テクテクテク

さやか「ここがいいかな」

廃工場跡

さやか「……剣を私に……」チャキ

さやか「喉元に……」ブシュウウユユウウウウウウ

さやか「は、あう、あ、が………」ヒュー

さやか(一部だけ傷を残して、回復――)シュユユウウウウウウ

さやか「あーあーんんーあ、あーあえいうえあお」

さやか「ちょっと治しすぎたかな?声が戻っちゃった」チャキ

さやか「えいっ――」ブシュウウウウウ ボタボタ
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---
-

さやか「よし、これで。声からは私って分からない」

さやか「マミさんみたいに器用に魔法が使えたらなぁ……」

さやか「後は換装した魔法少女の服か」

さやか「キュゥべえ曰く、当人に一番適した服装らしい……けど」

さやか「その当人が強くイメージしたり、強く願えば!」シュゥゥゥウン

さやか「やった!やっぱり、奇跡も魔法もあるんだよ」ジャーン

白いマントに、白いワンピース。

さやか「これは、私っぽくない!……ちょっと白がくどいかな?

というかマントとワンピースの組み合わせがちょっと……」


さやか「身体が無くなっても生き返る。紅茶を魔法で出せる。時間を止められる」

さやか「なのに何で、両親には会えないんだろうね」

さやか「簡単なことなのに。インターフォンを鳴らせばすぐなのに」

さやか「向かいから叫んでも会えるのに」

さやか「魔法使いすぎちゃったなぁ……」ゴシゴシ



さやか「魔女の反応……よし、がんばろ」

【金平糖の魔女】

さやか「おりゃああああ」ブンッ

魔女<ササッ!   ヒュンヒュンヒュン

さやか(金平糖が飛んでくる!?でも隙だらけ!)

さやか「あぶなっ……杏子今だよっ!」

さやか「―――そっか」クルッ

さやか「私、一人だった」

ヒュゥゥウウン   ドォン!!!!

モクモクモクモクモク モワワモワ

さやか「重いっ……」グググ

さやか「でも……私がこいつを倒さないと誰かが犠――」

----
< 犯罪者を生んだ家族にはそれ相応の罰が、もとい俺の憂さ晴らしの標的になってもらうんだよ ハハハハハ

            正義の鉄槌が下ったのだ(笑)
-----

さやか「倒さないと……」ググ…

さやか「……ううぅう。分かんないよ」

さやか「マミさん……私はやっぱりマミさんみたいな人には……」

ドォオオン!!

マミ「いたわっ。魔女よ!」ユビサシ

杏子「よし、速攻で片づける!」

マミ「ええ。魔法は最小限でお願いね!」

さやか(マミさんと杏子!?)ジワッ

さやか(駄目だよ、私に気付かないで!)ズルズルズル

さやか(会えないよ、もう――)ズルズル ガバッ!  タタタタタッ

結界の出口

さやか(はぁ、はぁ。ばれなかった……)

さやか「はぁはぁ……」

ほむら「――っ」

さやか「あ、ほむ――」シマッタ

ほむら「……結界から抜け出してきてどうしたの?」

さやか「な、なんのこと?」

ほむら「声も変えて……どうしたの?私達から逃げようとしているのかしら?」

さやか「だって!」

ほむら「まどかが心配しているわ」

さやか「まどかには、心配しないでとでも伝えておいてよ。私はもう……

    マミさん家のティーパーティーには参加しない。参加できないよ」

ほむら「なぜ?ご両親に会いに行っていないの?」

さやか「そうだよ、手前で戻ってきちゃった」

ほむら「なんで、なんで行かなかったのよ!」ガシッ

さやか「ねえ、ほむら。魔法少女ってなんだろうね?」パッ

さやか「マミさんのような正義の味方には私はなれなかったの」

さやか「私には向いてなかったんだよ」

ほむら「さや――」

さやか「そうだ、恭介や仁美のこと……お願いしてもいい?」

ほむら「ええ……」

さやか「あと、もう皆には会わないよ」

ほむら「会わない理由って何?」

さやか「頭ン中でぐるぐる回っているの。何が何だか分からないよ。ごめんねほむら」ドンッ

ほむら< ドテッ

ほむら「ちょ、ちょっと待ちなさい!今から二人を連れてくるから」

さやか「だ、か、ら、もう会わないから……」タッタッタッタッタ

ほむら「ああもう、なんで私には時を止める能力がないのよ!」ダッ

ほむら「はぁ、はぁ……どこ行ったの……さやか」

杏子≪おい、ほむら。どうして来なかったんだよ≫テレパシー

ほむら≪ちょっと、ね≫

ほむら(さやかのソウルジェムを確認したわけではないけれど、あの様子だと徐々に濁ってくるに違いない……

早くしないと。取り返しのつかないことになる……さやかの魔女化。それだけは避けないと)

杏子≪おい、ほむら。なんかあったのか?≫

ほむら≪今度話すわ……≫

杏子≪そっか。じゃあマミの家で待ってるぞ≫

ほむら≪ええ≫

そして、数日。

マミ「美樹さん。どこに行ってしまったのかしら」

杏子「見滝原市から出て行ったのかもな」カチャカチャ

ほむら「今日はフォーク使うのね」

杏子「手づかみで食べる気分でもないし、怒る奴もいないからな」モグモグ

マミ「私はもう飽きれているから、怒らないだけなのだけれど」ジッ

杏子「うっ……」

まどか「さやかちゃん……どこに行ったの……」

ほむら「大丈夫よ。きっと、すぐ会えるわ……」

その夜。

バケツ< ポチャポチャポチャ

さやか「誰もいませんよぉーに」ソロリソロリ

マンションの前。

さやか「よし、いない!」ボソボソ

さやか(見滝原市を出る前に、せめて、車をキレイにしよう……)

キュッキュッキュツ

さやか「中々落ちないなぁー」

ゴシゴシゴシゴシ

さやか「むぅ、これはコインとかで削ったのかな?消せないや」

ブォロロロロロ

さやか「……そろそろ誰かに会いそうだし……ここから離れよう……」ダッ

< 待って。

さやか「……なんで、私がここにいるって分かったんですか……」

< ふふ、魔法よ。

さやか「私はもうこの街から出ます。さよならです。マミさん」

マミ「美樹さん。あなた……」

マミ(今日の昼に暁美さんから聞いたけど、何があったの?)

さやか「マミさんの横に立って戦うことができないんです」

さやか「分かんなくなってきて」ジワッ

マミ「美樹さん。ご両親に会う前に何があったの?」

さやか「ごめんなさい!」ダッ!

マミ「美樹さん!」

マミ(……落書きの掃除中だったのね……)パァァアアァア

マミ「美樹さんの代わりに私が――」

車< ピカピカピカ

マミ「本当は自分の手で消したいのだけれど」

マミ「美樹さんを追いかけなきゃ」タッタッタッタ

--------
------
----

時は過ぎ、一か月後。

TV< ――市の路上で、20代男性が足から血を流し倒れているのが発見されました。

QB「……最近こんな事件多いね」モグモグ

TV< 尚、被害者の男性はコンビニ強盗後の逃走中だったことからも――

TV< 北関東一帯で発生している事件との関連性を――

QB「マミはこれを、美樹さやかの“犯行”だと思っているのかい?」モグモグ

マミ「……」

TV< これで19件目に――

QB「今、マミは僕が“犯行”という言葉を発した時に表情を曇らせたね」キュップイ

マミ「それは……」

QB「それはおかしいよ、マミ。世間で称賛されたとしても、人を傷つけるのは君たちの世界では罪というものだろう?」

QB「仮に犯人逮捕に協力して、うっかり傷つけてしまったら救急車を呼べばいい。

  むしろ自分の能力で治したほうが手っ取り早い。それをしないってことから」

QB「美樹さやかには、“犯行”って言葉が適しているじゃないか」

QB「徐々に“これはやりすぎではないのか”という意見が増えてきているんだろう」

QB「人間の考えることは、僕にはさっぱり、わからない」キュップイ

マミ「久しぶりに帰ってきたと思ったら、そんなことを私に言いに来たの?」

QB「僕はお昼ご飯を食べに来たんだよ。食事中にTVなんて昔も見てたじゃないか。ごく普通の世間話だよ、マミ」

マミ「世間話で美樹さんのことを悪く言うのは止めて」

QB「僕は事実を言ったまでだよ。あと事実を言うと美樹さやかのソウルジェムはまだ濁りきらないだろうね」

マミ「ホント!?」

QB「結構前に遠くから見たときは半分ぐらいだったかな」

マミ「よかった」フゥー

QB「安心はできないよ、マミ――このままだと美樹さやかは魔女になるだろうね」

QB「魔法少女の力をただの人間に向け続け生きてきた魔法少女を僕は知らない」

マミ「そう……この話、鹿目さんには言ってないでしょうね」

QB「言ったよ。目覚まし時計が庭に飛んでったさ」

マミ「QBは美樹さんの場所知っているの?」

QB「今は、知らないよ」キュップイ

マミ「なら帰って」

QB「マ――」

マミ「帰って」

QB「ヒドイヨ、マミ。おじいさんの腰の骨を折ったひったくりを捕まえるだけでなく、

  全治四か月の大怪我を負わせた美樹さやかは、君たちの中ではヒーローなのかい?」

QB「僕には生憎感情がないからわからないけれど、ね。美樹さやかの行いは、

  街の平和を守る魔法少女がすることなのかな?同じ立場にいるマミもそういうことをするのかい?」

マミ「キュゥべえ!帰って」

QB「ちょっと言い過ぎたみたいだね。じゃあね、マミ」シュタ

マミ「美樹さん……その行為はあなたが望んだものなの?」

マミ「あなたを大切に思う人は、その行為を……望んでいるの?」

< はぁはぁ。なんなんだよ、お前は!

「あんたたち。集団暴行はダメだって習わなくてもわかるよね?」

< うっさい!

「いいよ。警察に突き出すから……」パァァァァァァアアアア

< な、な、へ、へ、変身!?

「大丈夫。大丈夫だよ。死にはしないし。いつか治るよ。きっと」ジャキ

ヒュン! 

< うああああああ!!     ザシュゥン!

「……耳元にケータイ置いておくから。110番につながってるよ」ゴトッ

別の日。

< おいおいお嬢ちゃん。この建物は入ってきちゃだめだよ。

「うるさい」

---

キキィィィィイイイイイ

< おい!急に飛び出すなよ!

「さっきの“事”見てたよ」

---

< 誰かたすけて!嫌ぁぁあああ!!

< 黙れってこの!

「ねえ、嫌がってるよね、その人」

新聞紙<  グシャ

まどか「……今度は茨城県……」ボソッ

知久「まどか。僕その新聞まだ読んでないんだけど」

まどか「ごめん、パパ」ペコ   タッタッタッタ

知久「……まどか」

まどか(さやかちゃんのソウルジェムが心配だよ……)

まどか(さやかちゃんは、本当のさやかちゃんは)

まどか(私の大好きなさやかちゃんは――)

まどか(こんなことしないよ)グスッ

そしてさらに一か月。  真夜中の公園。

ほむら「杏子。来たわね」

杏子「こんな時間に呼び出して。牛丼かラーメンか、何をおごってくれるんだい?」

ほむら「生憎、財布は持ってきていないわ。今持っているのは――」ガサゴソ

杏子「なんだよ、クーポン券か?」

ほむら「これよ」パァ

杏子「グリーフシードじゃねえか!しかも三つも」

ほむら「あなたに頼みたいことがあるのよ」

杏子「……マミはこのこと知っているのか?」

ほむら「さっき伝えたら怒られたわ。この中の一つはマミからの贈り物よ」

ほむら「マミも考えることは一緒。普段から魔力を節約してグリーフシードを使わないように心掛けていたみたいね」

杏子「魔女退治は気にしなくていいからさやかを探せ、か……」

ほむら「ええ、その通りよ」

杏子「まどかには伝えているのか?」

ほむら「いいえ」

杏子「仲間外れは良くないぞ」

ほむら「……まどかに、今のさやかの状態を見せたくないのよ」

ほむら「それだったら私たちでさやかを捕まえたい」

杏子「……さやかを心配するあまり、体調崩したり、戦いに影響が出たり……今のまどかには荷が重いか」

ほむら「ええ。このことを伝えたら、学校を休んでまでさやかを探しに行きそうだもの」

杏子「まぁ、魔法少女になっても、さやかへの依存つーか何というかは治ってないし、な」

ほむら「今までのまどかもそういうタイプが多かった」

杏子「――わかったよ、元々私は、そういう性分だったんだ。どこへでもさやかを探しに行くさ」

ほむら「そう言ってくれて助かるわ」

杏子「で、どこに行けばいいんだ?」

ほむら「とりあえず、埼玉県で一昨日さやかが現れたらしいから」

杏子「りょーかい」ダッ!

数日後、病院にて。

男A「くっそ。あの女ぜってぇ許さねえ」

男B「首はもう、大丈夫ですか?」

男A「うっせえって!」ボコッ

男A「またあの家にイタズラすれば、ノコノコ出てくるだろ」

男A「なんの、関係があるか知らねえが……」

男A「おい、行くぞ!」ガシッ

男B「は、はい」

その夜  マミの家

マミ「美樹さん……本当にどこに行ってしまったのかしら……佐倉さんが見つけてくれるといいのだけれど……」

ほむら「そうね……」

マミ「お茶会も寂しくなったわね」

ほむら「生徒の安全を考えて、七時以降の外出は控えるよう……いえ、もう禁止みたいなものね」

マミ「私昨日、ナンパされたわよ。うちの中学校は簡単にヤれるという噂がまだ消えてないみたい」

ほむら「もうちょっと言葉を選んでほしいのだけれど」

マミ「ごめんなさい」

ほむら「まどかも門限が六時になってしまったし……」

マミ「鹿目さんとは、廊下ですれ違うか、深夜の魔女戦でしか会わなくなったわね」

ほむら「前みたいに五人で集まれないのかしら、ね」

マミ「……三か月弱も経過したし……そろそろ元の見滝原市に戻るわよ」

ほむら「そうかしら」

マミ「そしたら、美樹さんも一度くらい、顔を出してくれるわよ!」

ほむら「そうだといいのだけれど――」

シャカシャカシャカシャカ

男B「い、いいんですか、周りの車にもやっちゃって」

男A「いいからやれよ」バキッ

男B「痛つ……わ、わかりましたよ!」

シャカシャカ シューーーー

男A「あいつが来なくても来てもどっちでもいい」

男A「鬱憤を晴らさないとやってられねえ――」

< あ、あなたち!何をやってるの!

男A「や、やべえ、住人に見つかったか!」ガサゴソ

< ちょっと待ちなさい!

男A「逃げるぞ!」

男B「ま、待って!」ガッ   ドテッ!

< あなたたちね。落書きをしていたのは。

男B(つ、捕まったら、今までのことがばれてしまう……)

男B(あ、あいつに無理やりやらされたことがすべて、家族に)

男B(イヤダイヤダイヤダイヤダ)

さやかの母「警察を呼ぶわ」

男B「うわああああああああ!!!!」バッ

スプレー< シュゥゥゥウゥウウウゥゥ!!!!

男B「あああ!」ダッ  ドン!

さやかの母「うううう、目が!」ドン!

さやかの母「あ――」グラリ

ゴスン!

風見野市

ガヤガヤ

< ねえ、聞いた?私小学校のPTAの繋がりで、見滝原市に友達がいるんだけどね。

< 何々?

< あのラブホテルで亡くなった女の子いたでしょ?

< あああったね~あれから放課後の寄り道厳しくなったらしいよ。

< 私の娘も、制服で買い物していたら先生に怒られたって言っていてねー

< 先生も大変ねぇ。

< そ、れ、で、その女の子の母親がね。

< うんうん。

< 不審者に刺されたか殴られたか、したらしいのよ。

< うっそー、怖いわね。犯人こっちにこなきゃいいけど。

ワイワイ ガヤガヤ

さやか「……ウソ……そんな、こと……」

事件から二週間後の日曜日。

マミ「鹿目さん。美樹さんの母親のことは本当なの?」

まどか「はい。車止めに目をぶつけて……治療を受けていたんですけど……」

ほむら「……」

まどか「治らないらしく……失明だって言ってました」グスン

マミ「……そんな」

ほむら「……」

まどか「なんで……こんなことになるの?ねえ……」グス

マミ「鹿目さん……」

ほむら「ねえ」

まどか「……何、ほむらちゃん」

ほむら「最近頻発していた事件あるわよね」

まどか「……さやかちゃんがしている、犯罪をした人が怪我をした状態で捕まるやつでしょ」

ほむら「あれが、月曜日からパッタリと止まったの」

マミ「もしかしたら、美樹さんは」

ほむら「気付いたかもしれない」

まどか「見滝原市に帰ってくるかもしれないってこと?」

ほむら「ええ」

まどか「探しに行こう!」ダッ

ほむら「でね、まどかには魔女退治のほうをお願いできないかしら」

まどか「……どういうこと、ほむらちゃん」

マミ「そうよ、協力して探しましょう」

ほむら「杏子が今までずっとさやかのことを探している。杏子が見つけてくれるかもしれない」

ほむら「それに四人で探していたら、魔女退治の方が疎かになってしまうわ」

まどか「でも私もさやかちゃんのことがっ!今まではさやかちゃんに守られっぱなしだったんだもん」

まどか「今度は私がさやかちゃんをとめて――」

マミ(……暁美さんの意図がわかったわ)

マミ「そうね一刻も早く美樹さんを探しましょうね」

マミ「鹿目さん。その気持ちはすごくわかるけれど、美樹さん探しは私たち三人でするわ」

まどか「マ、マミさんまで!?そんなっ酷いよ」

マミ「鹿目さん。あなたは美樹さんを捕獲できるような魔法を覚えていないでしょ」

まどか「うっ……そうですけど……」

マミ「そして暁美さんが一番魔女を倒せる確率が低いのよ。捕獲できるような魔法も持っていないし……」

ほむら「うっ……」

マミ「大丈夫、安心して。私たちが見つけるわ」

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街はずれの工場裏。

男A「出たな!女っ!」バッ

バチバチバチバチ

さやか「やっと、見つけた。一週間もかかっちゃったよ。あんた探すのに」

さやか「へえ、スタンガン持ってるんだ……」ニヤァ

男B「止め、や、止めたほうが……」ズザザ

男A「うるせえ、俺は怒ってるんだよ」バッ

さやか< ビリビリビリビリ!

さやか「散々悪いことしておきながら、護身用のスタンガン?何それ冗談のつもり?」ビリビリビリ

男A「な、なんでスタンガン喰らって、動けるんだよ!」バチッ

ビリビリビリ!

男B「いつの間にか、服が変わっている!?」ガクブルガクブル

さやか「ねえ、あんたに聞きたいことがあるんだ……」ビリビリビリ

男A「ひぃ、来るな!来るな!」ヘナッ ゴトッ

さやか「あなたの右足にかざした私の右手を見て」

男A「そ、それが何だって――」

さやか「あなたが、あいつと一緒にイタズラをしてたんだよね?」ヒダリテノユビサシ

男B「」ガタガタ

男A「……な、なんなんだよ、てめえは!?」

ザシュュ!!

男A「ああああがががああ」

男B(きゅ、きゅうに右足に剣が刺さった!?)

さやか「ねえ、答えてよ」

男A「ぐ、がああああ」



さやか「ねえ、あなたの左足にかざした私の右手を見て」

男B(剣はど、ど、どこからきたんだ!?)

さやか「答えてよ」

さやか「あなたたちみたいな奴を、なんで命をかけて守らないといけないの?」

さやか「答えてよ」

ザシュ!

男A「ぐああわわわわわあああ!!」

さやか「うるさい」バッ

男A「むぐっ!」

さやか「あなたの口を塞いだ右手を見て」

男A「んんぐんうんんん!」

さやか「もう一度聞くよ。なんで“美樹さやか”の母親にけがさせたの?」

さやか「それなのになんでヘラヘラ笑って過ごしてるの?」

さやか「ねえ、答えてよ」

さやか「あんたみたいな男の命、守る価値あんの?」

さやか「ねえ――」



「そこまでだ、さやか」

杏子「そこまでだ」

さやか「杏子……」

杏子「手を離せ。さやか」

さやか「止めるの?なんで」

杏子「いいから離せって言ってんだ」

さやか「……」パッ    スクッ

杏子「ここでそいつを殺したら、本当に人でいられなくなる」

さやか「構わない。私はそれで構わないよ」

杏子「それは魔女になることよりも……人ではなくなる」

さやか「こいつさえ殺せば私はどうなってもいい。そう考えると絶望なんてしなくて済むの」

杏子「そんなのおかしいって分かるだろ!」ギリッ

さやか「そういえば言ってたよね。絶望と希望は差し引きゼロだって」

杏子「……」

さやか「何も知らない一般人は、平穏な日常っていう希望を祈るでしょ」

さやか「それで、こいつみたいな悪い奴が絶望を背負えばいいんだっ」ジャキ!

ザシュ!

ガキィィィイイン!

さやか「なんで止めるの?」ググググ

杏子「うるさい。頭冷やせ」ググググ

バッ!!

さやか「こんなクズのせいで周りの大切な人が傷つくかもしれないんだよ!」シュタ!

さやか「あんたはそれを我慢できるの?」

杏子「……」シュタ!

さやか「私は、決めたんだ。マミさんみたいな魔法少女にはなれなくても、ね」

さやか「魔女よりも悪い奴がいたら私は戦う。それがたとえ人間でも」

さやか「邪魔するやつも許さない」ギリッ

男A「タ、タスケ」グイグイ

杏子「うっさい」ボコッ

男A「――っ」バタッ

杏子「さやか……前もこんなことがあったな」

杏子「二人で対峙して武器を構えて……魔法少女の後ろにいたのは魔法少女じゃないただの人間で……」

さやか「……」チャキ

杏子「いいよ、やってやるよ」グッ

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まどか「さやかちゃんは、私の“せいぎのみたか”だから」エヘヘ
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杏子「――っ」ギリッ

杏子「来なよ。正義の味方。橋の上の続きをしようか!」ダッ

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次で終わります。ごめんなさい来週の水曜日になりそうです

>>98
そうだったんですね、初めて知りました。
漫画のほうは読んだことなかったので……

 距離が狭まる。

 反響する足音。床を削る刀剣の音。自分にしか聞こえない歯ぎしりの音。

 佐倉杏子は穂先で美樹さやかを穿つ。

 さやかは切っ先で迎えうち、辺りに衝撃が広がった。

 さやかが膝をついたのを視認した杏子は地面と平行になるように槍を振った。

 しかし、突如出現した刀剣により杏子の攻撃は不発に終わってしまう。

「はぁはぁ、捕まえた……」

 舌打ちがさやかの耳に届いたころには、槍の周辺に刀剣が縁取るように現れた。

「くっそ。槍がとれねえ!」

 槍を無理やり抜こうとする杏子に向け、距離を取りながらも刀剣を飛ばすさやか。

(その構えは――)

 五六本避けたころだろうか。

 杏子は諦めて変身を解き、すぐさま変身をする。

「簡単なことじゃんか」

 杏子は再度さやかに槍を向けた。

「なんで斬りかかってこなかったんだ!お前、手ぇ抜いてんのかよ!?」

 杏子の怒りを交えた問いに対し、さやかは静かに工場の入り口を指さした。

「――マミ!?」

「マミ!手を出すなっ!このバカは私が止める!」ギリッ

 入口から動こうとしない巴マミは、間を置いてさやかに尋ねた。

「ねえ、美樹さん。今日は飛びきりのケーキと紅茶があるのよ。どうかしら。この後――」

 さやかはマミを一瞥して、杏子に向かって刀剣を投げ、それに合わせ距離を詰めていった。

(分かったわ佐倉さん。私は手を出さない。本当は魔法少女同士で争いたくはないのだけれど……)

 巴マミはソウルジェムを右手に持ったまま、二人の戦いを見届けることにした。

(佐倉さんがもし負けてしまったら……ううん。大事に至る前に止めないと)

 ガキィイン!ガッ!キンッッ!

「はっ。マミのやつがいたから恐れて攻めに来れなかったのかよっ!」 

 キンッ!カンッ!カンッ!ヒュォン!

「結局、さやかは半人前のままだね!」

「うるさい!」ブンッ!

(冷静じゃない分、やりやすいが……冷静になれってのも無理な話だよな……なぁ、さやか)

 杏子は大振りになったさやかの両手を槍の腹で弾き、右足でさやかの脇腹を蹴りあげる。

「うっ」ガハッ

 ガシャン!!! ドンッ ゴロゴロ

 さやかは天井近くのガラスをぶち破り、一つ向こうのフロアまで飛んで行った。

「佐倉さん!やりすぎよ!」

「うっさい。向こうは殺る気なんだ!」

 そう言い放った杏子は、斬られた脇腹を押えながら、さやかの元へ翔けていった。

(ちぃ、いつ斬られた?……これは本気出さないとやばいな……)

オォオオオォオオオオオォオオオ

「さやかぁ!もう終わりか?」

 木箱が積まれた棚から粉塵が飛んでいた。そしてそこから小さな木片が地面に転がった。

「そこか――」ハッ

 杏子が足を止めた瞬間、頭上から刀剣が落下してきた。

「罠か」バッ     カッカッカッカッカ

 その数、24。

 杏子は避けきった後、木箱の方に目を向けた。

「さやか。次の手は何だ?」

 ブシュゥウ

「まだ終わってないよ」

一方、魔女の結界

オオォオオオオォオオオォオオオ

まどか「……心配だよ……さやかちゃん」ヒュン!!

魔女< ギャッ!

まどか≪マミさん……どうですか、そっちは≫

まどか≪マミさん?≫

マミ≪だ、大丈夫。安心して。私達で美樹さんを連れ戻すから……≫

まどか≪――お願いします≫

まどか(でも……)

まどか(やっぱり心配。早く私も行こう)グッ

ググググ ヒュゥン!!

(大丈夫よね。佐倉さん……)タッタッタッタッタ

 マミは二人の状況を確認するために、一つ向こうのフロアへ急いだ。

 < ポタポタポタ

「佐倉さん!?」

 先ほど斬られたのとは逆の脇腹に、さやかの刀剣が刺さっていた。

 頭上から降り注いだ刀剣とともに落下していたさやかに気付かず、背後をとられてしまっていた。

「大丈夫だマミ。心配するな」ハァハァ

 強がる杏子は、上段からの攻撃を柄で防いでいた。

「でも――!」

「私は大丈夫だっての」

 力を入れるたび、杏子の傷口からは血が流れ出す。

 刺さったままのため、回復しようにも回復ができない。

 そして、二刀流で柄ごと杏子を斬りつけようとするさやかは一向に手を緩めるつもりはない。

「……強がってんじゃないわよ」グググ

「――前に言ったよな。お前はまだひよっ子だって!」

 杏子は力技でさやかを押し切ろうと試みる。

 結果、さやかの刀剣は×を示すように防御に回っていた。

「ほら、これで、五分五分だろ――!」グググ

 柄でさやかを押し倒した杏子は、ニヤリと笑う。形勢の逆転。

「お前の負けだ、さやか」グググ

 そして、柄はさやかの胸の膨らみを歪ませるまでに至った。杏子はさやかに問う。

「な、さやか。一緒に帰ろう」

 さやかは小さく首を振った。そして――

 最後の力を振り絞り、柄を二つの鍔で受け止め、両手に持つ刀剣の切っ先を杏子に向ける。

「ゆ、優位なのはこっちのままだぞ――」グググ

 さやかは切っ先を杏子に向けたまま、視線を逸らした。

 二本の刀剣から“カチッ”と音が漏れた。刀身は射出され、杏子の首を切り裂いた。

「な、なんだよ。それ……」ブシュウゥゥウウウウ

「杏子。ごめんね」

 さやかは目を擦り、徐に立ち上がった。

 手に付着した杏子の血を適当にマントで拭うと、背を向けて歩きだした。

「そんな顔するなよ」グラ

 当たり一面に杏子の血が飛び散り、流れ出す。

「バ、バカさやか……」バタンッ

 力が出せず杏子は背中から倒れた。さやかは執拗に目を擦った後、マミに視線を飛ばした。

「マミさんも私を…止めるつもりなの?」

 マミは静かに頷き、グリーフシードを放り投げた。

 一つは杏子の身体の上に。もう一つはさやかに向かって。

「何の、つもり?」  ブンッ    カランカラン

「美樹さんのソウルジェムは限界の筈よ」  

「こんな施しいらないです、マミさん」

「私は美樹さんのことが心配なの」

 夜風が隙間から入り込み、さやかのマントを靡かせる。

「……私はもう、あの中学校の生徒じゃなくなったんです」ダッ

「“美樹さやか”は死んだんですよ。先輩ぶらなくていい!」ブンッ!

 刀剣を受けたマスケット銃は力負けしてしまい、地面に転がる。

「美樹さん……仕方ないのね」

 マミは小さく首を振ると、地面からマスケット銃を表出し、さやかに構える。

「ええ。私を止めるつもりならマミさんでも容赦しません」

 すぐに後退し、さやかは多数の刀剣を地面から表出する。

「もう魔法少女コンビを組むことも、お茶会をすることもないんです」

「そう……それは残念ね」ガチャ

(まず、あれを……取らないと)

 マミはさやかを中心に円を描きながら移動する。照準はさやかに向けたまま静かに歩を進める。

「攻撃してこないんですか?」ビュッ!

 さやかはそう言うと、マミと距離を一瞬で詰める。

(迅い!?)

 ヒュォン!

 “ティロ・フィナーレ”用の銃を出現させ、さやかの攻撃の出鼻を挫く。

「うぐ」カランカラン

(今の内に探しましょう)

 銃が顎に当たり、ふらつくさやか。そのさやかには攻撃を仕掛けず、マミは辺りを探る。

(あったわ。これを……)

 マミは地面に落ちているグリーフシードを拾った。

 杏子はグリーフシードをソウルジェムに当てながら、天井を見ていた。

(マミは強い。けど……相手がさやかだ)

< キンッ! ザシュッ!

(なぁ。さやか。マミとは先輩後輩の関係ではなくなったけどさ)

< これで終わりだぁ!!!

(武器の出し方が一緒だった。剣を私に向けた時も。マミと構えが同じなんだよ。

 つーかまだマミのこと“さん”付けじゃんか)

(マミを尊敬していることは変わってないんだろ……だからさ――)

< ドォオォォォォオオン!! 

「さやか!マミ!」

< ガラガラガラガラ   ゴゴォォォォオォオオオオォオオ

 さやかはマミと戦う直前に杏子に刺さっていた刀剣を消していた。そのため、杏子は回復することが可能になった。

 しかし、治癒に時間がかかりまだ立ち上がれるほどには回復していなかった。

(工場が半壊して、煙のせいで全く見えねぇ……)

「おい!マミ!さやか!」

 杏子の叫びは倒壊する棚や壁の音で二人には全く聞こえなかった。

 そして粉塵の隙間から見えたのは、美樹さやか一人だけだった。

「おい、マミ!やられたのか!?マミ!」

「な、なんで、あのとき――撃たなかったんですか!」

 さやかは足元に転がるグリーフシードを一瞥し、瓦礫に向かって叫んだ。

 力を込めた右手に持つ刀剣にはマミの血がべったりとついていた。

 “あのとき”……さやかは刀剣を振り降ろした。
 
 遠距離攻撃を得意とするはずなのに距離を突如として詰めてきたマミに、焦りながらも振り降ろしたのだ。

 零距離で発砲するのかと思いきや、マミはマスケット銃を持たずに、さやかの腹に向かって手を伸ばしていた。

 グリーフシードを臍にあるソウルジェムにぶつけるために、マミは斬撃を直に受けてしまった。

 その斬撃は後ろの棚を崩し、壁や天井にまで衝撃を及ぼしていた。

「美樹さん!待って!その人は殺――ゃだめよ!」

 瓦礫の隙間から叫ぶマミの声は届かない。

「……マミさん……ごめんなさい……」スタスタ

「美樹さ――!お願い!」

「魔――少女について色々お話した――ゃない!」

「『私は――ができるような魔法少女がいい――ねっ』って――かしそうに――じゃない!」

 壁や屋根の崩れ落ちる音がマミの声をさやかから遠ざける。

「美樹さんっ!」

 そのとき、さやかの目の前に拡がる粉塵から声が届く。





「さやかちゃん。ごめんね」

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 いつのころだったろうか。

“泣き虫まどかちゃん”というあだ名が全クラスに広まっていたころだから、小学校1、2年だったっけ。

 私はその“泣き虫まどかちゃん”の前をよく歩いていた。

 ちょっかいを出そうとする男の子を問答無用で上履きで叩いていた。

 まどかに比べてあだ名がたくさんあった。どれもこれも暴力的なものだった気がする。

“上履き美樹”って変なのもあったね。

 そんなあだ名が流行ってた時、いつも後ろに隠れるまどかが言ったんだ。

「ま、守ってくれてありがとう、さやかちゃん」

 私はそれが嬉しかった。一人っ子だったから妹ができたみたいで嬉しかったのかもしれないね。

 先生が一言コメントしてくれる連絡帳に、

“まどかにおれいをいわれました。うれしかったです”

 と書くのが嬉しくて、嬉しくて。

 まどかのために追い返すことが多くなると、時々男の子が泣くときもあった。

 そのせいで、三者面談をしたような、しなかったような。

 それでもまどかにイタズラする男子はいた。

 周りのクラスメイトより成長が早かった私は、よりまどかを守ろうと頑張っていた気がする。

 いや、躍起になりすぎていた。

 そして、まどかのランドセルに虫を入れようとしていた男子達を追い払った後のことだった。

「さ、さやかちゃん。そこまでしなくていいよ……」

 まどかが後ろから小さな声でそう言った。

「なんで?まどかはイヤなことされたんでしょ!?だから、やりかえさないと!」

「で、でも」オドオド

「あ、の、ね、まどか。そんなにビクビクしてるからやられちゃうの!」

「でも、なぐっちゃうのはダメだよ、女の子なんだし……」

「むこうがするまえにこっちがすればいいんだよ」

「ダ、ダメだよ」ビクッ

 まどかのためにと思っていた私はそのとき気付いた。

 私を見るまどかの目は、からかう男子に向ける目と同じだったのだ。

「ま、まどか……でもさっ」

 普段のまどかは弱弱しく腕を握ってくるから、いつも私からまどかの手を握ってあげていた。

 けれど、その時だけまどかは力を込めて腕を掴んできた。

 フラつく私の目の前にまどかは立ちふさがってきた。

「ダメだからね!さやかちゃん!」

 そう叫んだまどかの顔は真っ赤だったけれど、何より――

 私を止めようとするまどかの表情が、私を見つめるまどかの瞳が――

「ま、まどか……わかったよ。ごめん」

 私は次の日の連絡帳に、

“まどかとちゃんと友だちになれました。うれしかったです”

 そう書いた気がする。

 そして、その日から、まどかは私の横を歩くようになった。

 けれでも、まどかをからかう男子や、陰口を言う女子は無くならなかった。

 だから、私は時々まどかの前に立ってまどかを守っていた。

 その姿を見た誰かに『まるで正義の味方だね』と言われた記憶が今も残っている。

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「ごめんね、さやかちゃん」

 まどかはそう呟くと、矢を持つ右手を離した。

「あのときと一緒だ、ね “泣き虫まどかちゃん”……」

 そう零したさやかを矢は貫いた。そしてさやかは膝を折り、地面に倒れた。

「わ、私はね、さやかちゃん。

 私はさやかちゃんを“人を殺す悪い奴”にさせたくないの。ごめんね……」

 まどかは涙を拭い、伏せるさやかの元へ急いだ。

 杏子は傷を癒し終え、マミも瓦礫から自力で抜け出した。

「佐倉さん。鹿目さん。私の家に戻りましょう」

 マミは魔法でさやかの傷を癒し、さやかに“眠り”の魔法をかける。

 男のケータイで救急車を呼んでいたほむらがその状況を遠目から見ていた。

マミの家。

マミ「ねえ、美樹さん。身体の調子はどう?」

まどか「……」

杏子「……」

さやか「……」

まどか「ねえ、さやかちゃん?」

ベランダに続く窓ガラスに額を当てたまま動かない、皆を見ようとしないさやかは呟いた。

さやか「ごめんね」

マミの家。

マミ「ねえ、美樹さん。身体の調子はどう?」

まどか「……」

杏子「……」

さやか「……」

まどか「ねえ、さやかちゃん?」

ベランダに続く窓ガラスに額を当てたまま動かない、皆を見ようとしないさやかは呟いた。

さやか「ごめんね」

さやか「……ホントにごめん」

杏子「まあ、治ったから気にしないよ」

マミ「私もよ」

さやか「ありがと……でもやっぱり、私はここにいれないよ」

まどか「そんな、また前みたいに皆で魔――」

さやか「私はもう魔法少女にはなりたくないの……」

さやか「なんかわかんなくなっちゃてさ」

さやか「命かけて戦ってもあんな奴がいる。あんな奴がたくさん居るんだって思うと、ね」

QB「それは困ったよ」キュップイ

杏子「そうかい、そうかい。なんでこのタイミングで来るんだ?」

QB「僕の言葉の真意は別として、さやか。ソウルジェムはね、自然と濁っていくものなんだよ」

マミ「確かにそうね」

さやか「キュゥべえは、魔法少女としてグリーフシードを集めないといずれ魔女になるよって言いたいんでしょ」

QB「そうだね、いずれ魔女になってしまう」

さやか「――いいよ。それで。皆がすぐ倒してくれるでしょ」

ベシン!!  ゴツン!!!!!

まどか「だめだよ!」

杏子「ま、まどか?」

さやか「まどか……なんで叩くのさ」ヒリヒリ

マミ(窓大丈夫かしら)

まどか「そんなこと言わないでよ……言わないでよ」ジワッ

さやか「ああぁ。まただねこれは。ごめんまどか。冗談冗談」ハハ

杏子「あ、笑った」

マミ(あれ、キュゥべえが居ないわ……)

杏子「マミも見たよな?」

マミ「え、ええ、しっかりと」

さやか「いや、今のはち、違う」

杏子「あんさ、すぐに整理はつかないかもしれない。だから」

マミ「そうよ。いつでも家に来ていいのよ」ニコッ

さやか「杏子……マミさん……」

マミ「美樹さんは、上条君の腕を治すために魔法少女になって“治癒”の力を得た」

マミ「でも“守ろう”という気持ちは、昔から持っていたと思うのよ」

マミ「でないと、見滝原の平和を守るなんてできっこないと思うわ」

さやか「それは……マミさんの戦っている姿にあこがれて」

マミ「ううん。美樹さんは昔から持っていたハズよ」

マミ「私はいつでも待ってるわ。先輩ですもの」ニコッ

杏子「ああ、私も。人ン家でな」

まどか「あと、ケーキ食べながらでしょ」ウェヒヒ

さやか「見ない内に、まどかも言うようになったんだね」

ガチャ  バタン

まどか「あ、ほむらちゃんだ。おかえり」

ほむら「さやかはちゃんと居るわね?」

さやか「……三対一で負けたからね」

まどか「もしかして根に持っている?」ウェヒヒ

さやか「ううん。手を煩わせちゃったなってね」

ほむら「そう……」

ほむら「あなたに渡したいものがあるのよ」

さやか「なに?」

ほむら「あの男の搬送先の病院と、病室の番号よ」カサッ

まどか「ほ、ほむらちゃん!?」

マミ≪それを渡してしまっていいのかしら?≫

杏子≪そうだぞ。良くない方向に行っちゃうかもしれないだろ≫

ほむら≪ハッキリさせた状態で戻ってきてもらいたいのよ≫

ほむら「……どうする?」

さやか「……興味ないって言ったら、嘘になるよね」

まどか「さ、さやかちゃん……」

ほむら「この情報を使って何をしてもいいわ。私は止めないし、批判もしない」

杏子「ほむら……」

さやか「ん、ありがと」ガサ

ほむら「それと魔女になるときは事前に知らせなさい。私の爆弾で仕留めてあげるわ」ニコッ

マミ(話聞いていたのね……)

さやか「マミさん達ならともかくほむらに負けるとは思えないよ」ヨイショ

まどか「さやかちゃん。どうするの?」

さやか「ありがと。もう大丈夫。ちょっと考えさせて。整理がついたら皆に会いに来るから」

ガチャ バタン

まどか「さやかちゃん……」

次の日、丘の中腹の公園。

さやか「魔法少女……だめだ」

さやか「考えるたびに頭が痛くなる……」

カサッ

さやか「見滝原市総合病院かぁ……」

< やだよぉ。僕はここで待ってる!

< 駄目よ。朝は行くって言っていたじゃない。

< 絶対つまらないじゃん!公園で遊んでる方がいいもん!

さやか「……子どもがぐずってるのかな?」

< お墓参りなんてちっとも面白くない!

< そんなこと言ったら、お昼ごはん食べられないわよ?

さやか(お墓参りかぁ……そりゃ子どもは楽しくないよね)

< ……公園で遊んでる。

< もう。

さやか(私もこんな子どもだったような)

< あ!……お昼ごはんはファミレスだったんだけどなぁ……

< デ○ーズ!?

< そ、そうよ。デ○ーズ。

さやか(そうそう。何かに釣られちゃうんだよね)

< ママ!早く行こう!お墓参り早く行こう!   グイグイ

< はいはい。○ニーズがホント好きなんだから。

< は、や、くぅ~

さやか「行ってみようかなぁ……お墓参り」

さやか「私のお墓ももうできているだろうし……」

さやか「美樹家もたしかここらへんだった気がするんだよね」

墓前

さやか「……」バシャ

さやか「……」バシャ

さやか「……」バシャ カランカラン

さやか「死んじゃったんだねー、私」

さやか「ホントはここにいるのに」

さやか「“美樹さやか”は死んだ」

さやか「じゃあ、私は誰なんだろうね」

さやか「こういうの見ると結構“くる”なぁ」

さやか「ねえ、中にいる“私”」

さやか「私はどうしたらいいと思う?この後どうしたらいいと思う?」

さやか「ねえ……ずっと、ずっと、ずっと、ずっと」

さやか「考えても答えがでないんだ」

さやか「ねえったら」

さやか「まぁ……答えないよね」

さやか「んむぅ……どうしよう……」

< あ……

さやか「ん?」

「先客がいたのね……」コツコツ

さやか「――あ、すいませ……」ビクッ

「?」

さやか「……」

「どなた?」

さやか「さやかちゃんの友だちです。さやかちゃんのお母さん」

母「そうだったの」

母「やっと見つかったものがあってね。無理にでも出てきちゃって……ここ段差あるかしら」コツコツ

「はい。ちょっと高めのが一段」

母「ありがとね」

「じゃあ、私はこれで……」

母「え、ええ」

「――っ」ウルッ

母「ちょっと待って」ガシッ

「な、なんですか」ゴシゴシ

母「待って。いや、でも、けれど、ええ――」

「??」

母「で、でも、この、感じ……」

「?」

母「あなた、もしかして、もしかして、さやか?」

「うえっ?」

母「あなたさやかじゃない?そうよ、さやかよ!」ガシガシ

「ちょっと待って下さい!おばさん!私はさやかの友だちで」グワングワン

「“美樹さやか”じゃないです!それに、さやかはもう――」バッ

カランッ

母「あっ――」グラリ

「危ない――」ガシッ

母「やっぱり、さやかの匂いがするわ。それにこの手は、さやかの手だもの!」

「だから、違いますって」

(体重とか、手の肉つきとかは変化させてなかったなぁ……匂いも考えてなかった)

「声も全然違うでしょ」

母「でも」  ハラリハラリ

「あ、何か落ちましたよ」ヨイショ

母「ああ、ごめんなさい」

母「それさやかのお友達に渡す物で、やっと見つかったのよ」

「へえ、画用紙……」

母「小学校の時の、さやかの将来の夢よ。確か二年か三年のとき……」


まどかをまもるせいぎのみたかになる    みきさやか

「みたか?」

母「そう……なぜか“みかた”って言えなくてね。勘違いしてたのかしら……」

「せいぎのみたか――」

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さやか「ねえ、ママ!まどかをまもるためにさっ、せいぎのみたかになりたいんだけどどうすればいいの?」

母「うーん。トマトを食べることかな?」フフ

さやか「んもうっ、ちがう!たべなくてもへいき!」

母「じゃあ、夜トイレに普通に行けるようになることかな?」

さやか「だ・か・ら」

母「まどかちゃんのお母さんに聞いたら、まどかちゃんは夜トイレ行けるみたいだよ」

さやか「えーうそだーあのまどかがー?」

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母『もう毎日毎日よー』

詢子『こっちもこっちも。最近さ、まどかのやつ夜トイレ行くのを怖がらないようになって、理由を聞いてみたんだよ』

詢子『てっきり、背伸びしたような答えを言うのかと思ったらさ』

母『ふんふん』

詢子『「さやかちゃんなら、こわがらずにいっているとおもうから」だってさ』アハハ

母『あらまぁ』ウフフ
-
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母「もう年齢的にも怖がらずにトイレには行ってほしいわね」フフフ

さやか「んーそんなことより、さ!」

母(もう学校やママさんから注意を受けることはなくなったし……)

母(まどかちゃんもさやかのことを慕ってくれているみたいだし)

母(迷惑になってないわよね?多分……)

さやか「ママ教えてよー」ガシガシ

母「困ったわねー。えっとね、正義の味方というのはお花屋さんやサッカー選手とは違うのよ」

さやか「なんでー?」

母「正義の味方はね、誰にでもなれるのよ」

さやか「え?」

母「あ……お花屋さんもサッカー選手も頑張れば誰でも慣れるのよ。で、でも勉強や練習が必要なの」アセアセ

さやか「せいぎのみたかは?」

母「正義の味方になるにはね、変身して大きくなれなくても、バイクに乗れなくても」

母「――魔法が使えなくても大丈夫」

母「誰にでもなれるのよ、正義の味方には」

さやか「うそだー」

母「本当よ。後は気持ちね」

さやか「きもち?」

母「さやかの“まどかちゃんを守りたい”という願いを叶えようと頑張る気持ち」

さやか「ふーん。頑張ればいいんだね!」

母「前みたいにやりすぎないように。それと――」

 今日の晩御飯は、トマトを頑張ってみようねー正義の味方ちゃん」

さやか「えぇー」

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母「……どうかしたの?」

「いえ……ちょっと」ポロポロ

(そうだ。私は最初から決めていたんだ……深く悩む必要なかった。

 魔法少女になる前から願いごとは決まっていたんだ)

母「ハンカチを」ハイ

「ぐす……」ギュ

(私はその願いをまだ叶えきれてない――)

(まだ頑張りきれてない!)

母「ホントに似てるわね……目が見えなくなったのが最近だから勘違いしちゃうのかしら」

「そんなにさやかちゃんに似てる?」ゴシゴシ

母「ええ」

「……だったら、こうして」ダキッ

母「目隠ししてどうするの?私は目が見えないのよ?」

「ちょっとだけ待っていて。私がハイっていうまで目を開けちゃだめだよ」

母「だから、私は目が見えないの」

パァァァアアァ

母(何?暖かい何かが目を包む……)

「あの。“正義の味方”ってどうすればなれますか?」

パァァアァアア

母「そうね……頑張ることじゃないかしら?一生懸命」

「そうですか……」

母「それと――」

--
母「前みたいにやりすぎないように。それと――」

 今日の晩御飯は、トマトを頑張ってみようねー正義の味方ちゃん」

さやか「えぇー。ねえ。どうやってがんばればいいの?」

母「まどかちゃんと一緒に遊んだり、お話したり、友達たくさん作ったり――」

さやか「うんうん。他には?」

母「他には……」
--

母「そばに居てあげることじゃないかしら」

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「――はい。コーヒー飲むか?」

母「んっ……」

父「やっと起きたか?」ホレッ

母「え?私寝ていたの?あれ、ベンチ?」コシコシ

父「ああ遅いから心配で見に行ったらね、寝ていたもんだから」

父「やっぱりこんなに早く外に出るのはまずかったかな?」

母「確かにちょっと疲れたかしら。見えないのって不便ね」

父「それとベンチの横にこの画用紙置いてあったけど、まどかちゃんに会ったのか?」

母「ううん。ある子にちょっと見せたのよ……あれ?」

父「ん?」

母「裏に文字って描かれていたかしら?」コシコシ

父「あっ……ホントだ。というか、なんで見えたんだ?」

母「え?――あっ」


『ハンカチはいずれお返します   by  

二週間後。見滝原市総合病院。

さやか「久しぶり」

男A「ひっ!」カチカチカチ

さやか「ナースコール押しても無駄だよ。今コード斬ったから」

男A「な、何しに来たんだっ!」ガタガタガタ

さやか「あんたで最後なの。他の人たち探すの苦労してさぁ。二週間もかかっちゃった」

男A「最後ってなんだよ……」ガチガチガチ

さやか「膝から下動かないんだってね。神経きれちゃったんだよね?」

キラッ

男A「剣を向けるな……」ヒィ

さやか「別に命を頂戴しに来たわけじゃないよ」パアアアアァアア

男A「へ?」

さやか「もう一人の奴は大丈夫そうだからあんたに言うけど……」

さやか「もし悪いことしようとしたら……私が許さないからね」ゴゴゴゴゴゴゴ

さやか「それとこの服とか諸々、他言したら……」パァァァアアァァァ

男A「―――っ!!!!」
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---

< お~い!見舞いに来てやったぞぉ~ ヘラヘラ

ガラッ

< あれ、何部屋の隅で丸くなってんだよ。

男A「も、もう見舞いはこなくていい……俺はもう」ガタガタブルブル

< なんだよ。足が動かないって言うから、落書きしにきたのに…… ジィー

男A「もう……」ガチガチガチ

< 動いてんじゃん。

そして――

【紐の魔女】結界内。

マミ「佐倉さん気をつけて!」

ほむら「使い魔は私が一掃したわ。杏子、後はお願い」

杏子「よっしゃあ!!!」

魔女      キラッ   ←杏子        >ダッ!

マミ「――っ!」シュルルルルル

グルグルマキマキ

杏子「ぐへっ」ドシーン

杏子「おいマミ!リボンで首絞めるなよ!」

マミ「ごめんなさい。でもそのまま魔女に向かっていっていたら、死んでいたわ」

杏子「はぁ?どういう意味だよそりゃ」

まどか「杏子ちゃん。槍の柄や穂先欠けてない!?」

杏子「ああ……罠か」

ほむら「そうみたいね。魔女の周りに見えない糸が張り巡らされている」ジッ

杏子「じゃあ片っ端から斬っていくしか――」

キラッ キラッ           キラッ     キラッ

マミ「……まずいわね……使い魔は囮だったみたいね……それと“魔女の周り”ではないわ」    キラッ

まどか「それって……」  キラッ

マミ「私達の周りよ」               キラッ

ほむら「しまっ――」    キラッ   キラッ

まどか「なら矢で――」キリキリキリ

マミ「鹿目さん危ないっ!」

まどか「え?」   ブシュウウウゥウ

まどか「痛っ。指が切れた!?」

杏子「少しでも動いたら身体がサイコロステーキかよ」ハァ

ほむら「良かったじゃない。丁度私の盾にわさびと醤油があるわ」

杏子「冗談言える暇あんのか」

ほむら「冗談言う余裕があったら、現物を目の前に投げるわよ」

マミ「はぁ」   キラッ

マミ(私達それぞれを円柱の中に閉じ込める形で糸が天井に伸びているわ。

   槍で斬れるならいいのだけれど、振りかぶれないようね)

マミ(どうしましょう、困ったわ)

魔女< ニタァ

杏子「おいおい、やばいぞ。天井が回転し始めた」    キリキリキリ

マミ「当然だけど、糸も合わせて捩じれ始めたわね」    キリキリキリ

ほむら「つまり?」      キリキリキリ   プツッ

マミ「死ぬわね」      プツッ ブシュブシュウウウゥウ

まどか「そんな……」    プツプツプツ ブシュウウゥウウ

まどか「嫌、嫌、助けて……」 ブシュウウゥウウ

まどか「助けて!!!!さやかちゃん!!!!!」


< ダッ            スパッ!!!!!

パラ   パラ    パラ

まどか「糸が……切れた?」

杏子「はぁーやっと来たな」

マミ「そうね、また賑やかになるわね」

ほむら「“騒がしく”の間違いな気がするのだけれど」

< シュタ!

???「大丈夫?まどか」ダキッ

まどか「ずっと待ってたんだよ!うれしい……戻ってきてくれて……」

まどか「さや――」ギュゥゥゥウ

「さやかちゃんだと思った?残念!せいぎの――」


                                 終

おまけ

ほむら「で、恰好よく登場した割に一番大けがを負った言い訳はあるのかしら?」

マミ「防御なしで戦っていたようなものだったわね」フフ

杏子「適当に突っ込むからだよ」ケラケラ

さやか「ホント……すいません」

ほむら「あなたが魔女に右腕落とされたから、まどかは血まみれになったのよ」

<フ~ン、フ~ン  シャワワワワワー

さやか「面目ないです……」ドゲザァ

杏子・マミ(お風呂場から鼻歌が漏れてる……)

さやか「いや、その、みなさん怪我されていたので、さやかちゃんが頑張るしかないと思って、

    つい、真正面から、突っ込んじゃって」

ほむら「その右腕治すためにグリーフシード使ってしまったものね……戻ってきてそうそう迷惑かけて。

    あなたという人は」ハァ

さやか「マジですいません……」

ほむら「髪から滴り落ちた血のせいで制服はクリーニングよね。あなた代金払えるの?

    それに親御さんにどう説明すべきか……明日まどかは学校に夏服でいくしかないのかしら」

さやか「ううぅ」

マミ「まぁ、美樹さんに色々言いたいことがあるけれど、まだ肝心なこと言ってないじゃない?」

杏子「そうだ、そうだ。代表してほむらが言えよ」

ほむら「はぁ?何で私が?皆で言えば……」

さやか「何なりと、何なりと」ドゲザァ

杏子「ほら、まどかが居ないうちに早く」ケラケラ

マミ「そうよ、そうよ。鹿目さんより先に行っちゃいましょう」フフフ

ほむら「……」

さやか「ほむら?」

ほむら「わかったわよ、言えばいいのね?」

さやか「な、な、なに?」アトズサリ

< ガチャ

杏子「あ、出てきた」

< バタンッ    サ、サ、サヤカチャ~ンガモドッテキタヨォ~

杏子(なんだ、その歌)

マミ「ほら、暁美さん。はやく」

杏子「ほれほれ」

ほむら「言うから!言うから。ちょっと待って」

さやか「?」

ほむら「すぅ~はぁ~」グッ

ほむら「――――おかえりなさい。美樹さやか」

さやか「あ……」

さやか「――っ」ジワッ

さやか「――――うん!ただいまっ!」ニカッ!

                                了

この拙く分かりづらいSSを読んでいただき、そして、レスありがとうございました!

次回は

・さやか「マミさん家の本棚で遊ぼう」(短い)
・まどか「生きているとマミさんの縦ロールがこんなにも美味しい」ハムハム(短い)
・まどか「サイボーグ?」009「魔法少女?」(長い)

のどれかだと思います。では、また。

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