勇者「パーティーにまともな奴がいない……」(1000)

初オリジナルssです。

微エロはあっても完全なエロシーンは無しでいきたいと思います。

魔法、お金の単位、装備などはドラクエを引用しますが、オリジナル設定満載です。

主要キャラクターの中にはとあるキャラクターをモチーフにしたキャラクターが少数います。

それでもよければ見てください



勇者「初めまして」ペコリ

王「そんなに硬くならなくてもよい、楽にしておれ」

勇者「あ、はい」

勇者「こんな子供に何の用があるのでしょうか?」

王「しっかりしておるな」

勇者「はい」

王「うむ、実はお主に重要な用があるのだ」

勇者「なんでしょうか?」

王「お主もわかっておると思うがお主は勇者なのだ」

勇者「え?」

王「お主は勇者なのだ」

勇者「は!?」

王「だからお主は勇者なのじゃ」

勇者「だから、どういう意味!?」

王「知っておるのじゃろう」

勇者「いや、全く知らないんですけど!!」

王「ぬ、父親から聞いておらぬのか?」

勇者「聞いてないよ、もしかしてあのダメおやじが勇者だったの!?」

王「お主の父親はただのグータラのダメ人間じゃ、だがお主の母親は勇者の血を引いておるのじゃ!!」

勇者「……」

王「母親からは聞いておらぬのか?」

勇者「あの人は俺が小さい時に愛人作って出て行きました」

王「お主の母親がか?」

勇者「はい」

王「いつ頃だ?」

勇者「俺の記憶にあの人との記憶がないのでわからないです」

王「……」

勇者「……」

勇者「王様?」

王「そんな複雑な家庭環境だったとは知らなかった……すまぬ」

勇者「気にしてませんから」

勇者「ところでダメおやじのとは知り合いなんですか?」

王「うむ、お主の父親とは昔からの友人でな、今でも酒場で飲んだりしておるのだ」

勇者「王様が酒場に行っていいんですか?」

王「お忍びじゃから大丈夫だ、あと町の民と話す事も重要じゃしな」

勇者「そうですか」

勇者「そんなにダメおやじと仲いいのに聞いてなかったんですか?」

王「今でも仲良くやっておると言っておった、お主と母親も仲がいいと……」

勇者「それはあれです、二人目の母親です」

王「……そうか」

勇者「もう慣れてますから、気にしないでください」

王「うむ……」

勇者「で、俺が勇者なのはわかったですけど、具体的にどうすればいいんですか?」

王「おお、忘れておった、お主には魔王を倒しに行ってもらいたい」

勇者「魔王?」

王「うむ、最近は大人しくしておるらしい、しかし魔王は存在自体が脅威、人々は魔王が存在しておるだけで不安なのじゃ」

勇者「それって俺が悪者になるんじゃないですか?」

王「魔王は悪、それは古来から決まっておることなのじゃ」

勇者「だからって何もしてない魔王を倒せって……どうなの?」

王「魔王を倒せば周りの国から大量の討伐金が支給されるのじゃ、そうすればこの国はもっと強くなれる」

勇者「偉そうなこと言っておいて結局金?」

王「金は命より大事なのじゃ、お主も王になればわかる」

勇者「わかりたくもない」

王「話はここまでだ、質問はあるか?」

勇者「聞きたい事は山ほどあるけど聞いても仕方ないしもういいよ」

王「おい、最初の敬語はどうしたのだ」

勇者「いろいろありすぎてもう面倒臭い」

王「別にいいのじゃが」

勇者「ならこれからタメ口でいい?」

王「別にいいぞ」

勇者「じゃあタメ口で」

王「……では勇者よ、魔王討伐に行ってくれるか?」

勇者「断る」

王「魔王討伐に行ってくれるか?」

勇者「断る」

王「……なぜだ」

勇者「俺が家を出たら妹が一人になっちまう」

王「父親は別として母親がおるじゃろう」

勇者「毎日カジノ漬けのダメな母親なんだ」

王「……そうか」

勇者「俺がいなくなったら妹の面倒を見る人間がいなくなる、それに俺が働かないと家族が飢え死にしちまう」

王「なんと言っていいのかわからんが―――――」

女大臣「そんな年で家族を養うために働くなんて、なんて健気な勇者なのでしょう!!」ガタン!!


突然入ってきたのは高そうなローブを着た、眼鏡で巨乳の勇者と同い年ぐらいの女の人だった。


勇者「……誰?」

王「大臣、お主また盗み聞きをしておったのか」

勇者「こんな若いのに大臣?」

王「そうじゃ」

勇者「そんな若さで大臣なんてよっぽどのエリート?」

王「うむ、この国一番の天才と言っても過言ではない」

勇者「天才って本当にいるんだな」

王「うむ、彼女が来てからはあらゆる仕事がうまくいっておる」

勇者「ふーん」

王「じゃが情に弱いのと盗み聞きをする癖があるのが問題じゃ」

女大臣「王様、私は今ものすごく感動しています!!」

王「そ、そうか……」

女大臣「なんて、なんてかわいそうなんでしょう」

勇者「同い年の人にかわいそうって言われるのって意外と傷つくんだぞ」

王「安心しろ、お主よりも1歳も年上じゃ」

勇者「ほぼ同い年……」

女大臣「王様、勇者がいない間、勇者の家にメイドを派遣してはどうでしょうか?」

王「そうじゃな、勇者、お主はどう思う?」

勇者「もちろん無料だよな?」

女大臣「当たり前です!!」

王「勝手に決めてほしくないのじゃが……」

勇者「いいの!?」

女大臣「いいですよ!!」

女大臣「私が責任を持ってあなたの家族を養っていきます!!」

王「だから勝手に決めないで―――――」

女大臣「この国の財政状況なら彼の家を養うことなど簡単ではありませんか」

王「だからと言って一つの家族だけを特別扱いするのはあまり……」

女大臣「勇者の家族への援助ではダメですか?」

王「……わかった、援助を許可する」

女大臣「これで大丈夫です!!」ズイッ

勇者「あ、ありがとう(本当に凄いな、いろいろ……)」

王「では行ってくれるのか?」

勇者「ここまでやってもらったんだ、行くよ」

王「ではそこにある鉄の鎧、鉄の盾、鉄の剣、鉄の兜はお主にやろう」

勇者「いいの?」

王「うむ、魔王は強敵じゃからな」

勇者「ありがとうございます」

女大臣「明日までに必要最低限の食料と資金を準備しておきますので」

勇者「あ、ありがとうございます」

女大臣「いえいえ、旅には必要不可欠ですので」

勇者「そうなんだ……」

王「旅はお主の思っている以上に過酷なものなのじゃ」

勇者「わかってます」

女大臣「今あなたが思っている三倍は過酷な旅になります」

勇者「そんなに?」

女大臣「はい」

王「それぐらいの心構えで臨めという事じゃな」

女大臣「では私は明日の準備をしてきます」スタスタ

王「うむ、頼んだぞ」

王「勇者よ、出発は明日だ、しっかり準備しておくのじゃぞ」

勇者「わかりました」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

勇者の自宅

勇者「ただいま」ガチャ

妹「おかえり!!」タタタッ


茶色がかったツインテールで十歳くらいのかわいい少女が勇者に近寄ってくる


妹「遅かったね」

勇者「ああ、いろいろあってな」ドサッ

妹「その荷物は?」

勇者「ああ、王様にもらったんだ、見るか?」

妹「別にいい」

勇者「ああ、そう……」

妹「お腹空いた、ごはん!!」

勇者「ああ、わかったわかった」スタスタ

勇者「食べ物ってあったかな?」ガチャ

勇者「思った通り、空っぽだな」

勇者「この時間じゃ食材屋も閉まってるだろうしな、どうしよう」

妹「お兄ちゃん、お腹空いた!!」

勇者「ああ、わかってる」

父親「勇者、帰ってたのか」スタスタ

勇者「なあ、食い物ってもう無いのか?」

父親「さあな、俺は知らん」ガチャ

勇者「おい、どこ行くんだ」

父親「酒場だよ、先に寝てていいぞ」スタスタ

勇者「おい、待て!!」

父親「話なら明日にしてくれ」

勇者「……」

妹「お兄ちゃん、あれは?」

勇者「ん、ジャガイモじゃん」スッ

妹「ジャガイモは嫌!!」

勇者「じゃあ夕飯はないぞ」

妹「もっと嫌!!」

勇者「だったら我慢しろ」

妹「……わかった」

母親「ただいま」ガチャ

妹「お帰り!!」ダキツキ

勇者「遅かったですね」

母親「ごめんごめん、カジノのおっさんがうるさくてさ」

母親「夕飯ってある?」

勇者「これから作るところです」

母親「そう、私ちょっと出掛けてくるわね」

勇者「どこ行くんですか?」

母親「あんたの給料を倍にしてあげるの」ニッコリ

勇者「待て!!それは今月の生活費――――」

母親「倍になれば問題ないでしょ」バタン

勇者「おい、馬鹿かあんた!!」ガチャ

勇者「どこ行ったんだよ」キョロキョロ

勇者「いない……」

妹「お兄ちゃん……」

勇者「大丈夫、大丈夫だから」ナデナデ

勇者「寒いし中入ろうか」

妹「うん」

勇者「さて、ジャガイモと少しの調味料で何が作れるのか」

妹「ポテトチップス!!」

勇者「それはお菓子だから駄目だ」

妹「ぶー」

勇者「正直ジャガイモだけで飯なんて無理だよな」

妹「どうするの?」

勇者「買いに行くしかないよな……」

勇者「まだやってる食材屋ってあるかな」

妹「お出かけ!?」

勇者「ああ、買い物行くか?」

妹「行く行く行く!!」

勇者「じゃあ準備しろ」

妹「はーい!!」タタタッ

勇者「準備できたか?」

妹「うん!!」

勇者「じゃあ行くか」ガチャ

妹「わーい!!」

勇者「北風が冷たい……」

妹「大丈夫?」

勇者「大丈夫大丈夫」ニッコリ


物陰

女大臣「なんて、なんて健気な少年……」ポロポロ

王「わかったから涙を拭いてくれ、目立って仕方ないわい」スッ

女大臣「すいません」ブー

王「またお約束なことを……」

女大臣「ありがとうございます」スッ

王「お主……」

女大臣「もう大丈夫です」ニッコリ

王「いや……そういう意味でじゃなくてじゃな……」

女大臣「早くしないと勇者さんが行ってしまいます」スタスタ

王「う、うむ、そうじゃな」スタスタ

おばさん「おや、勇者じゃないか、何してるんだい?」

妹「夕ご飯買いに行くの」

おばさん「そうかい、でも今の時間じゃあやってる食材屋は少ないんじゃないかい?」

勇者「でも、家に帰っても何もないんで」

おばさん「……私の買ったやつでよければ少し分けてあげようかい?」

勇者「いいんですか?」

おばさん「ああ、いいよ」

勇者「ありがとうございます」

勇者「お金はちゃんと払いますんで」

おばさん「別にお金なんていいのに」ニッコリ

勇者「ちゃんとお金を払わないと悪いんで」

おばさん「じゃあこの肉と野菜でいいかい?」

勇者「はい」

おばさん「200ゴールドでいいよ」

勇者「はい、ありがとうございます」

妹「ありがとね」ニコニコ

勇者「ありがとうございました」スタスタ

おばさん「……若いのに大変なんだねぇ」

女大臣「感動です……」ウルウル

王「わかったから泣くのをやめんか」

おばさん「……」ジー

王「いや、決して怪しい者ではないぞ」

おばさん「あんた達は勇者の知り合いかい?」

女大臣「一応知り合いです」

おばさん「しっかりしてるだろ、あの子」

女大臣「そうですね、健気で素敵です」ウルウル

おばさん「そうだろ、あんたもそう思うだろ」ウルウル

王「わしはどう反応すればよいのじゃ?」

おばさん「アンタいい人だね、今日家でご飯食べていかないかい?」

女大臣「いいんですか?」

おばさん「いいさ、人類皆家族じゃないかい」

女大臣「おば様……」

おばさん「おいで」スタスタ

女大臣「はい」スタスタ

王「……」

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勇者「ん、朝か」ガリガリ

妹「……」スゥスゥ

勇者「そういえば今日出発だったな」スタスタ

妹「あれ?出掛けるの?」

勇者「ああ、ちょっとな」

勇者「あれ?」

勇者「父さん、ここにあった荷物知らないか?」

父親「ああ、それなら売ったぞ」

勇者「は?」

父親「借金返済のために売ったんだ、あれお前のだったか?」

勇者「テメェ自分の物じゃ無かったら売るんじゃねぇよ!!」ガシッ

父親「すまんすまん」

勇者「……」

父親「でも俺は鎧と盾しか売ってないぞ」

勇者「じゃあ誰が―――」

母親「あ、兜と剣は私が売ったわよ」

勇者「何やってんですか!!」

母親「金の兜と剣にしようと思ったら失敗しちゃって」ニコニコ

勇者「そう言えば昨日のお金はどうしたんですか?」

母親「ごめん、負けちゃった」

勇者「……俺出掛けるから、詳しい事は後から来る大臣さんに聞いてくれ」

父親「あ、ああ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



勇者「おはようございます」スタスタ

王「うむ、おはよう」

王「鉄の装備一式はどうしたのじゃ?」

勇者「えーと、その……売られちゃった」

王「……どういう事じゃ?」

勇者「父親と母親に売られちゃった」ニッコリ

王「……なんと言っていいかわからんが――――」

勇者「でも俺にはこれがあるから」

王「ヒノキの棒?」

勇者「昔からの愛用品だし」ナデナデ

王「これから城の皆で送るのに布の服にヒノキの棒で歩くのか?」

勇者「問題でも?」

王「わしが満足な装備も与えないケチな王様みたいになってしまうじゃろ」

勇者「実際ケチな王様じゃん」

王「確かにそうじゃが……」

女大臣「心配無用です」ガチャ

勇者「また盗み聞きしてたの?」

女大臣「はい」

勇者「堂々と言っちゃうもんな」

王「何が心配無用なのじゃ?」

女大臣「こんな事もあろうかと地下通路を作っておきました」

勇者「凄ぇ!!」

女大臣「これで城や町の人に見つかることなく町を出ることができます」

王「いつの間に……」

女大臣「昔の地下通路がありましたので」

王「さすが天才じゃな」

勇者「天才とはちょっと違う気がするけど……まあいいか」

妹「お兄ちゃん!!」タタタッ

勇者「い、妹!?」

女大臣「さすがに家族の方にはお別れを言った方がいいと思いましたので」

王「父親と母親はどうしたのじゃ?」

女大臣「父親は二日酔いで頭が痛いそうです」

勇者「母親はどうせカジノだろ」

女大臣「はい」

妹「これ持って行って」スッ

勇者「ありがとう……」

妹「狐のお面だよ」

勇者「いや、見ればわかるけどさ……」

妹「見つかっちゃいけないんでしょ?」

勇者「あ、うん、ありがとう」

女大臣「いい光景ですね」ウルウル

勇者「いろいろ間違ってるけどね」

勇者「しかもなんであんた泣きそうなの?」

女大臣「感動的ですので」ウルウル

勇者「この程度で泣けるってヤバくない?」

王「そろそろ出発じゃな」

勇者「ああ」

女大臣「中庭の隅に入口があります」

勇者「じゃあ行ってくる」スタスタ

王「必ずや魔王を倒すのじゃぞ」

勇者「家族のこと任せたぞ」ガチャ

女大臣「わかってます」

王「大丈夫じゃとよいが……」

女大臣「きっと大丈夫です」

兵士「王様、準備ができました」ガチャッ

王「すまんな、勇者はもう出発した」

兵士「ど、どういう事ですか?」

女大臣「勇者の見送りは必要ないということです」

王「そういう事じゃ」

兵士「わ、わかりました」ガチャ


こうして、貧乏でお人好しで苦労人な勇者の冒険が始まったのである。

今日はここまでです。

明日からは一日6スレ前後投下していきます。

勇者の旅立ちなのでまだ仲間はゼロですがこれかれいろいろな奴が入ってきます。

設定で分からないことや矛盾点などがあったらどんどん質問してください。

~~~~~~~~~~~~~~~~


城付近の森

ゴトッ

勇者「思ったより長かったな」

勇者「つーかここどこ?」

勇者「確か王様にもらった地図があったよな」ガサゴソ

勇者「最初の町は何処だ?」バサッ

勇者「ここが俺達のいた町だから……」

勇者「まずは農の町か」

パラッ

勇者「ん?」スッ

勇者「手紙?」

『勇者様へ
 これから魔王討伐の旅に出るにあたり言いたいことがあります。
 まずどこかの町で仲間を探すようにしてください。
 仲間がいれば旅も楽しくなりますし、魔物との戦いも有利になります。
 決して一人だと思わず、頑張ってください。
    女大臣より』

勇者「何のチュートリアルだよ」

勇者「……仲間ねえ」

勇者「仲間ってどうやって作ればいいんだろ……」

勇者「友達みたいな感じで話しかければいいのか?」

勇者「でも仲間ってそんなに簡単なものじゃないよな」

勇者「……まあ向こうで考えればいいかな」スタスタ

勇者「パーティーか……」スタスタ

勇者「俺が戦士だからほしいのは魔法使いと僧侶かな」スタスタ

勇者「後は格闘家とかもいると戦いが楽になるな」スタスタ

勇者「男ばっかだとむさ苦しいし、女ばっかりだとハーレムってバカにされるし……」スタスタ

勇者「パーティーって難しいな……」

勇者「でもみんなで仲良くって素敵だな」

勇者「……何だろう、俄然やる気が出てきたぞ」スタスタ

勇者「おっしゃ!! 強くて素敵なパーティーを作ってやるぜ!!」タタタッ

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農の町

ワイワイガヤガヤ

勇者「賑わってるけど、町ってより村だな」スタスタ

おじさん「ん、君は旅人かい?」

勇者「あ、はい」

おじさん「旅ができるなんて、若いっていいね」

勇者「そうですかね?」

おじさん「こんなおじさんじゃ旅は出来ないからね」

勇者「あの、すいませんがパーティーを作りたいんですけど何処に行けば作れるんですか?」

おじさん「唐突だね」

勇者「す、すいません」

おじさん「そうだね、酒場とかがいいんじゃないかな」

勇者「ありがとうございます」

おじさん「いい仲間が見つかるといいね」

勇者「今なら誰がいますかね?」

おじさん「今なら勇者様がいると思うよ」

勇者「勇者様?」

おじさん「うん、なんでも魔王討伐に行くそうで二日前からこの村にいるんだ」

勇者「そうなんですか」

おじさん「今の時間なら酒場にいると思うよ」

勇者(勇者って何人もいるのか? 王様は何も言ってなかったしな……)

勇者「勇者ってどんな人?」

おじさん「会ってみればいいじゃないか、驚くと思うよ、酒場はそこを真っすぐ行けばあるよ」

勇者「あ、ありがとうございます」スタスタ

勇者(驚く?)スタスタ

勇者(まあ、俺以外に勇者の血を引いてる人間がいても不思議じゃないしもしかしたら仲良くできるかもな)スタスタ

勇者(……待てよ、目的は一緒なんだから運が良ければ仲間になってかれるかもしれない)スタスタ

勇者(しかも仲間が勇者なら最強のパーティーが作れるじゃん!!)

勇者「俺って幸運じゃね?」

勇者「そうと決まれば酒場までダッシュ!!」タタタッ

勇者「こんにちは!!」ガチャ

マスター「いらっしゃい」

勇者「ここに勇者がいるって聞いたんだけど」

マスター「あそこの奥の席に座ってますよ」

勇者「あの人?」チラッ

勇者「あれ、女?」


奥の席に座っていたのは長い黒髪にうろこの鎧をまとった少し年上の美しい女性だった。


マスター「はい、勇者様は女性ですよ」

勇者「え!?」

マスター「どうしたんですか、勇者様に会いに来たんですよね」

勇者「ま、まあな」

勇者(やばい、年上の女と話したこと無いんなんてないぞ)

勇者(あ、女大臣がいたか……でも女大臣とは流れで話しただけだし、なんて声かければいいんだ?)

勇者(近所のおばさんなら向こうから話しかけてきてくれるんだけどな……)

女勇者「……」ゴクゴク

勇者(牛乳飲んでるって事は未成年?)

勇者(ダメだ……話しかけ方がわからない)

勇者(もう少し観察していよう、そうすれば会話の糸口が見つかるかも)

勇者「……」ジー

マスター「ご注文は?」

勇者「注文?えーと……」

マスター「メニューはこちらです」スッ

勇者「あ、どうも」

勇者(高い……)

勇者(自分で作った方が断然安いじゃん)

勇者(一番安いのは牛乳か)

勇者「ぎゅ、牛乳で」

マスター「ミルクですね、かしこまりました」

勇者(ミルクって言うのか、間違えちゃったよ)

勇者「やばい、こういう店って入ったこと無いから緊張するな」

マスター「どうぞ」スッ

勇者「ありがとうございます」

勇者(おかわりは……自由な訳ないよな)

勇者(ゆっくり飲まないとな)チビチビ

女勇者「……」ジー

勇者(こっち見てる?)

女勇者「……」スタスタ

勇者「……(やばい、こっち来た)」

女勇者「何か用ですか?」

勇者「え?」

女勇者「さっきからずっと見てたじゃないですか」

勇者「あ、あんたが勇者だって聞いたからさ」

女勇者「はい、私は勇者です」

勇者(本当に勇者なんだ)

勇者「……」

女勇者「何か?」

勇者「あんたが女だったからさ……」

女勇者「勇者に性別は関係ないと思いますが」

勇者「そ、そうだよな」

女勇者「はい」

勇者「お、俺も勇者なんだよ」

女勇者「はい?」

勇者「俺も勇者なんだ」

女勇者「……」

勇者(あれ、怒らせた?)

勇者「それで目的も一緒だから一緒に旅しようと思ってさ」

女勇者「あなたは本物の勇者なのですか?」

勇者「俺は王様に言われただけだからあんまり実感は無いんだけどな」

女勇者「……」

勇者「どうした?」

女勇者「この人は偽物の勇者です!!」ガタッ

勇者「は!?」

町人達「なんだなんだ?」ザワザワ

勇者「お前何言ってんだよ!!」

女勇者「この男は偽物の勇者です、早くこの町から追い出さないと大変なことになります」

勇者「何意味わかんない事言ってんだ!!」ガシッ

男「おい、勇者様から離れろ!!」

勇者「待てよ、俺も本物の勇者だ!!」

男「証拠はなんだ」

勇者「証拠?」

男「お前が本物の勇者だって証拠だよ」

勇者「証拠って言われても……」

勇者「無いけど俺は勇者だ」

男「信じられるわけ無いだろ!!」

勇者「だよな……」

男「布の服にヒノキの棒の勇者がいる訳ないだろ!!」

勇者「テメェ人を見た目で判断してんじゃねぇぞ!!」

男「お前と勇者様を比べたら全員が勇者様を勇者だと言うぞ!!」

町人達「そうだそうだ!!」ガヤガヤ

勇者「そ、それは否定できない……」

女勇者「この男を町から追い出してください!!」

勇者「おい、何勝手な事言ってんだ!!」

男「わかりました」

勇者「勝手に話進めんな!!」

男「勇者様のためにこいつを殺せ!!」

町人達「おォォォォォ!!」

勇者「お前等の大事な勇者様は俺を追い出せって言ってたぞ」

男「構うものか」

勇者「俺が構うわ!!」

男「動くなよ」ジリジリ

勇者「待て、話し合おうぜ」

男「いまさら何言ってんだ」ジリジリ

勇者「話し合えばきっと誤解は解ける」

男「無理だ」

勇者「このわからずや!!」


そう怒鳴ると勇者は自分が飲んでいた牛乳を目の前にいた男の顔めがけて思いっきりかける。
そして怯んだ町人達の人込みを一瞬でかき分け、酒場の外に飛び出す。


勇者「なんでこうなるんだよ!!」タタタッ

勇者「しかもめっちゃ追ってきてるし」タタタッ

勇者「どっか隠れられそうな場所は……」タタタッ

ひたすら走っていると道の端に人間が一人入れるほどのタルが置いてあった。


勇者「ラッキー!!」

勇者「よっと」ストッ

ドコニイッタンダ? サガセ!!

タタタッ

勇者「逃げ切ったな」ガタガタ

勇者「あれ、出られない?」ガタガタ

勇者「何このお約束の展開」ガタガタ

勇者「うおっ!?」ガタン

ゴロゴロ

勇者「嘘、マジで!?」ゴロゴロ

ゴロゴロ

勇者「お約束過ぎるだろ!!」ゴロゴロ

勇者「ちょ、止まれ!!」ゴロゴロ

勇者「ギャァァァ!!」ゴロゴロ

ドゴン!!

勇者「なんで最初の町でこんな目にあうんだよ……」フラフラ

勇者「う……回ったせいで気持ち悪いし……」ウエッ

女大臣「大丈夫ですか?」サスサス

勇者「あ、悪い……」

女大臣「吐き気はありませんか?」

勇者「ん?」

女大臣「どうしました?」

勇者「なんでここにいるんだ?」

女大臣「王様に頼まれて来ているんです」

勇者「あ、そう」

女大臣「勇者様もこの町に来てたんですか」

勇者「俺達の町から一番近いからな」

女大臣「そうですね」

勇者「そうだ、この町で勇者に会ったんだ」

女大臣「そうですか」

勇者「なあ、勇者って何人もいるのか?」

女大臣「どうでしょうね、でもそんなにホイホイ勇者なんていないと思いますが」

勇者「だよな」

女大臣「その女勇者様と話し合うべきだと思いますよ」

勇者「なんで女って知ってんだ?」

女大臣「見てましたから」

勇者「何処から?」

女大臣「最初からですね」

勇者「見てたなら助けてくれよ」

女大臣「あなた一人でも大丈夫だと思いましたので」

勇者「まあ、これくらい一人で乗り切れなきゃダメなんだと思うけど」

女大臣「とにかくあの女勇者様と話してみない事にはどうしようもないですよ」

勇者「そうだけど……酒場までたどり着けないだろ」

女大臣「妹様からもらったお面があるじゃないですか」

勇者「……これをつけろと?」

女大臣「ほかにいい案があるならそちらをどうぞ」

勇者「……」スチャッ

勇者「どうだ?」

女大臣「素敵ですよ」

勇者「棒読みだな」

女大臣「気のせいです」

勇者「あ、妹元気?」

女大臣「はい、城に来ては王と遊んでいますよ」

勇者「あのドケチ王と?」

女大臣「はい」

勇者「そうか、元気ならいいや」

女大臣「妹様は本当に素敵だと思います」

勇者「だろ、かわいいだろ」

女大臣「はい、めちゃくちゃにしたいくらいかわいいです」

勇者「めちゃくちゃにしたいって……お前女だろ」

女大臣「恋に性別や血縁関係なんて関係ありませんよ」

勇者「お前ってレズ?」

女大臣「レズではありません、両刀です」

勇者「あ、そう……」

勇者「別にお前がどんな性癖だろうと気にしないけど妹に手を出したらぶっ殺すからな」

女大臣「わかっています」

勇者「妹が心配になってきた……」

女大臣「いいから早くした方がいいのではないですか?」

勇者「じゃあ行くか」

ちょっと中途半端になりましたが書きためが無いのでここまでです。

だいたいこのくらいの時間に更新していきます

女大臣「ヒノキの棒は隠しておいた方がいいですよ」

勇者「隠すってどうやって?」

女大臣「布に包めば意外とバレませんよ」

勇者「マントでいいかな」キュッ

女大臣「まるで変態みたいですね」

勇者「ストレートに言われると傷つくんだけど」

女大臣「では私はこれで」スタスタ

勇者「ついて来てくれないの!?」

女大臣「一応仕事で来てるので仕事を終わらせてきます」

勇者「ああ、そう言えばそうだったな」

女大臣「時間がありましたら女勇者様の事も調べておきますので」

勇者「ああ、頼む」

女大臣「それではまた」スタスタ

勇者「頑張れよ」

勇者「……俺も行くか」スタスタ

勇者「……」スタスタ

町人「……」ジー

勇者(みんなめっちゃ見てるし)

女「何あの人?」ヒソヒソ

主婦「関わらない方がいいわよ」ヒソヒソ

勇者(せめて俺に聞こえないようにしろよ)スタスタ

勇者(とにかく酒場に行かないと)スタスタ

男「何処行きやがったんだ?」キョロキョロ

勇者「……」スタスタ

勇者(面倒臭い奴きた……)

男「おい」

勇者「……」ビクッ

勇者(無視しよう、ここは無視が一番いい)スタスタ

男「お面かぶってるお前だよ」

勇者「わ、私でございますか?(裏声)」

男「お前以外にお面かぶってる奴なんていないだろ」

勇者「ですよね」

男「お前ヒノキの棒を持った頭悪そうな男見なかったか?」

勇者「頭悪くねぇよ!!」

男「は?」

勇者「いえ、頭が悪いかどうかはわからないと思いますのですよ(裏声)」

男「勇者様をあれだけ怒らせたんだ、よっぽどバカなんだろうな」

勇者「なんでもあの女勇者が正しいと思ってんじゃねぇぞ」ボソボソ

男「何か言ったか?」

勇者「いえ、なんでもございません(裏声)」

男「独り言言いやがって、気持ち悪い」

勇者「鏡見てこい、目の前にもっと気持ち悪いもんがいるぞ」

男「あ!?」

勇者「なんでもありません(裏声)」

勇者「それより勇者様はどちらにいらっしゃるのでしょうか?(裏声)」

男「勇者様なら酒場だ」

勇者「どうもありがとうございました(裏声)」スタスタ

勇者(裏声しんどいな……)

勇者「女勇者いるか?」ガチャ

女勇者「私に何か用ですか?」

勇者「ああ、つーかついさっき聞いた声忘れんな!!」カパッ

女勇者「あ、あなたは……」ギリッ

勇者「マスター、悪いけど他の奴らは入れないでくれ」

マスター「わかりました」ガチャ

女勇者「何の用ですか」

勇者「別にあんたに復讐しに来たわけじゃないから」

女勇者「では何のためにここに来たんですか?」

勇者「とりあえず、話し合いに来た」

女勇者「……いいでしょう、無駄だとは思いますが」

勇者「まず聞きたいんだけど俺の何が気に食わなかったの?」

女勇者「全てですね」

勇者「ぶっ殺すぞ!!」

女勇者「あなたの何もかもが嫌なんです」

勇者「普通に傷つくよ、その言葉……」

女勇者「どうして……どうしてあなたのような人間が勇者なんですか!!」

勇者「そんな事言われてもな……」

女勇者「あなたはいくつの流派を習得したのですか?」

勇者「流派?」

女勇者「剣の流派です」

勇者「……ごめん、俺そういうの習得した事無い」

女勇者「……な!?」

勇者「俺自己流だから」

女勇者「あなたのような人間が……なぜ勇者なのですか」

勇者「確かにあんたからしたらムカつくかもな」

女勇者「わかったらこの町から出て行ってください」

勇者「それは出来ない」

女勇者「なぜですか?」

勇者「俺は俺が好きな時に出ていく」

女勇者「言う事を聞けば何も危害は加えません、出て行ってください」

勇者「初めて来た町だからもっと満喫したいんだ」

女勇者「観光気分ですか……」

勇者「そうだ」

女勇者「そんな理由でこの町にとどまるのですか」

勇者「そうだ」

女勇者「……」

勇者(別に出て行ってもいいけどなんか負けた気がするんだよね)

勇者「それにあんな事されて黙って帰れるほど優しくないし」

女勇者「わかりました、では私と勝負してください」

勇者「はい?」

女勇者「私と戦って下さい」

勇者「何言ってんのあんた?」

女勇者「私はあなたがこの町にいる事が耐えられない」

勇者「そんなに俺のこと嫌い!?」

女勇者「私は弱い人間が嫌いです」

勇者「別に弱くはないから」

女勇者「だからそれを確かめるために戦うんです」

勇者「面倒臭いな……」

女勇者「嫌なら出て行ってください」

勇者「それはもっと嫌」

女勇者「なら戦って下さい」

勇者「……戦えばいいんだろ」

女勇者「そうだとさっきから言っています、バカなんですか?」

勇者「お前ドSなの?」

女勇者「そうです」

勇者「……」

女勇者「何か問題でも?」

勇者「別に……」

女勇者「とにかくあなたを見ているとイライラしてきます」

勇者「俺もお前見てるとムカつく」

勇者「特に自分の事をドSとか言っちゃうところが特にムカつく」

女勇者「MのくせにMじゃないと言い張るあなたのような人間がいるからいけないんです」

勇者「そんなに俺が嫌いか?」

女勇者「はい」

勇者「即答だもんな」

女勇者「当たり前です」

女勇者「私が負けたらあなたの事を一応認めましょう」

勇者「無駄に上から目線だな」

女勇者「言っておきますが私の方が年上です」

勇者「そうだけどさ……」

女勇者「あなたが負けたら即刻この町から出て行ってください」

勇者「……勝ったら居ていいのか?」

女勇者「好きにしてください」

勇者「わかった」

女勇者「さあ、剣を抜きなさい」シャキン

勇者「仕方ねぇな」

マスター「すいませんが外でやっていただけますか」

勇者・女勇者「はい、すいません」

勇者「マジでやんのか?」ガチャ

女勇者「当たり前です」スタスタ

女勇者「あなたこそそんな剣でいいのですか?」

勇者「ああ、これが俺の刀だからな」

女勇者「言っておきますが手加減はしませんよ」

勇者「俺も手加減する気ないし別にいいよ」

男「お前は偽物の勇者!!」

勇者「違う!!」

男「いつの間に酒場に……」

勇者「地面を掘ってみろ、地下通路があるから」

男「な!?」

勇者「嘘だ」

男「貴様……」

男「勇者様、ここは俺達が――――」

女勇者「皆さんは手を出さないでください」

男「なぜですか!!」

女勇者「彼は私が倒します」

勇者「凄い自信だな」

女勇者「自信がなければ勇者なんてやっていられないと思いますよ」

勇者「確かにそうかも」

※補足

女勇者の言っていた流派について

流派は有名どころからマイナーなものまで星の数ほどあり、多くは道場で修行し、認定試験を合格すると習得した事になります。

資格のようなものだと考えてもらえればいいです。

ちなみに女勇者は有名どころの流派はほとんど習得しています。

ちなみに勇者は家族を養うために働いていたため、道場にいったこともありません。

そのため流派や認定の事などをまったく知りません。

今日はここまでです。

補足は本編での説明では分かり辛い時にたまにつかっていきたいと思います。

キャラクターが変に説明口調にならないようにするため、これからも活用していきます。

戦闘シーンは地の文で進めて行きます。

女勇者は鞘から剣を抜くと五メートルはあった間合いを一気に詰め、勇者目掛けて剣を大きく振り下す。
その攻撃はとにかく速く、周りの野次馬達が完全に彼女を見失ってしまうほどの速さだ。

だが勇者はそんな目にも止まらぬ早業をしっかりと見切り、紙一重の所で剣を回避していた。

勇者は女勇者の顔を見ると僅かに微笑み、無駄のない素早い動きでヒノキの棒を大きく横に薙ぎ払った。

だが女勇者は後ろに跳び、その攻撃を楽々回避する。

女勇者の表情に変化はない。
この程度は女勇者にとっても想定内だ。
自分の前に立っている少年も勇者と名乗っている者。
それが嘘であったとしても今の一撃で死んでしまってはあまりにお粗末だ。
それに一撃で倒してはあまりにも面白みに欠ける。

彼女はざわつく周りの野次馬達を一瞥すると、勇者に向かって跳ぶ。
それだけで勇者と女勇者の間にあった距離はゼロになる。

女勇者は自分の最大の武器であるスピードを最大限に生かし勇者に斬りかかる。
女勇者のスピードを持ってすれば刹那のうち勇者をただの肉塊にする事も可能だ。
女勇者の剣が攻撃が勇者をズタズタにする……はずだった。

しかし勇者はどの攻撃もギリギリの所で回避し、最後に後ろに軽く跳び、女勇者から距離を置く。

女勇者は剣を持つ手の力を僅かに緩め勇者を睨みつける。
彼女は勇者の戦い方に違和感を抱いていた。
まるで真っ白な紙にインクを一滴垂らしたような漠然とした、しかしどことなくはっきりとした違和感。
そんな不思議な違和感が彼女の胸の内にあった。

「今度はこっちからいかせてもらうぞ」


勇者はそう言うと女勇者目掛けて跳ぶ。
トンッ、という音と共に勇者が軽やかに距離を詰める。
その行為自体は別段変ではない。
しかしとにかく速い。
そのスピードは女勇者と同等……いやそれ以上に速かった。

周りの人々がざわつくのがわかる。
だが女勇者は全く怯まなかった。
それどころかこれはむしろ女勇者にとって好都合だ。

確かに速度は勇者の方が速い。
しかしそのスピードを持ってしても覆らないものがある。

それは剣の性能の差だ。
どんなに勇者が速く女勇者を斬りつけてもその攻撃は女勇者の致命傷になる事は無い。
それに引き換え、女勇者の剣は布の服を着た勇者を一撃で殺す事ができる。
それどころか勇者のヒノキの棒が女勇者の剣の刃にぶつかれば勇者のヒノキの棒はたちまち真っ二つだ。

防御は考えない。
女勇者はそう決め、跳び込んでくる勇者目掛けて剣を突く。

だが勇者体が浮いた状態にもかかわらず無理矢理体を捻った。
ゴキキ、という骨を擦るような音が女勇者の耳にも聞こえた。
彼女の剣が勇者の脇腹をかすめる。
勇者の服が斬れ、僅かに赤く染まっていた。

それでも勇者は止まらない。
勇者は勢いそのままヒノキの棒を振り下ろす。

女勇者は勇者の一太刀をかろうじて回避する。
僅かに体勢が崩れるが無理矢理元に戻す。
ついさっきまでの女勇者ならこのまま反撃をしていただろうが、一旦相手と距離を置く。

「あなたは―――」


そのあとに続く言葉が女勇者の口から出る事は無かった。
女勇者の中にあった漠然とした違和感が形になる。

目の前の勇者は戦士であって戦士で無かった。

戦場では一瞬のミスが死につながる。
だから本当に強い戦士とは冷静で堅実に戦える戦士なのだ。
それはどんな戦士も知っている基礎の中の基礎。

しかしこの勇者は全く違った。

この勇者に堅実という言葉は無い。
一瞬一瞬が綱渡りの様な、常に自分の身を危険にさらすような戦い方。
しかもさっきの行動は明らかに自分の体自体を囮に使った、まともな戦士なら絶対に使わない行動だ。

勇者の戦い方を一言で表すならチャンバラだ。
とにかく目の前の敵を倒す。
それだけを重点に置いた戦闘スタイルだ。


「あなたは邪道です」

「だから自己流だって最初に言っといただろ」


勇者はさらっとそう返した。













勇者の住む町ではチャンバラが少年達の遊びの主流だった。
町の少年達はお小遣いを貯め、ヒノキの棒を買ってチャンバラをしていた。
もちろん勇者もその一人だ。

しかしヒノキの棒は脆く、一週間もチャンバラをすればヒノキの棒は折れてしまう。
だから少年達は貯めておいたお小遣いで新しいヒノキの棒を買っていた。
しかし勇者の家にはそんなお金は無く、一本のヒノキの棒を買うのが限界だった。

勇者はこう考えた。

ぶつけ合うから折れてしまうのならぶつけなければいい。
だからこそ勇者は剣をぶつけ合う戦い方では無く、剣を避ける戦い方を使うようになった。
敵の攻撃を回避し、相手の隙をつく。
そのために相手の攻撃をギリギリで引き付けて回避するようになっていった。

勇者にとってこの戦いもそのチャンバラの延長線上にあった。
一撃でもくらえば致命傷。
ならその攻撃に当たらなければいいだけの話だ。

ヒノキの棒と剣がぶつかればヒノキの棒は切れてしまう。
なら剣とぶつからなければいい。

勇者はそう考え、女勇者と戦う。

とにかく女勇者の剣を避ける事だけに集中し、女勇者の隙を探した。

女勇者は今まで勇者が戦ってきた相手の中では最強クラスだ。
だが最強でも相手は人間。
隙が全く無いことなどあり得ない。

勇者はその隙を見つけるため、ひたすらに女勇者の攻撃を紙一重で回避する。

「どうした、俺を殺すんじゃなかったのか?」


勇者は女勇者を挑発し、微笑する。

頭に血が上れば、攻撃が単調になり、隙が大きくなる。
心の変化は剣の変化に直結するのだ。
これもまた、チャンバラで身に付けた戦術の一つだ。

女勇者の表情が一瞬だけ険しくなる。

勇者はそれを見逃さない。

勇者は気付かぬうちに笑っていた。

女勇者の剣が勇者に襲い掛かる。
しかし勇者はその攻撃をまたしても紙一重でかわすと、女勇者の顔目掛けヒノキの棒で突く。
だが当てる気は無い、その攻撃もあくまで女勇者を怒らせるためのものだ。

女勇者は素早く攻撃を回避し、勇者と距離を置いた。

勇者はヒノキの棒を強く握り、次の一撃のための準備をする。

次の一撃が勝負の時だ。
勇者はそう呟き、女勇者を睨む。



 












「あなたには……あなたにだけは負けたくない!!」


女勇者はそう言い放つと剣を持つ手に力が込めた。
頭に血が上っている事には気付いていたがもうどうする事も出来ない。
一度火が付いたらもう止まらないのだ。

お互いの距離は五メートル。
どちらともその気になれば一瞬で詰められる距離だ。

いつの間にか騒いでいた野次馬達が静かになっていた。

静寂の中、先に動いたのは勇者だった。
トンッ、という軽やかな足音が響く。
その足音よりも早く彼女と勇者の距離はゼロになる。

女勇者は剣をさらに強く握り、剣を真横に薙ぎ払った。
ゴウッ!! という音が辺りに響く。
しかし肉を切ったような音は一切しない。

女勇者は瞬時に自分の攻撃がよまれていた事を感じた。
自分の周囲を素早く見渡し勇者の位置を探る。


女勇者が気付いた時には勇者はすでに女勇者の横に回り込んでいた。
そして勢いを殺すことなく女勇者の懐に飛び込む。

沸騰していた頭が一瞬にして冷える。
逃げるかべきか、攻めるかべきか。
女勇者の頭の中に二つの戦術が浮かぶ。
答えは最初から決まっていた。

女勇者の腹部に鈍い痛みが走る。
やはり鎧を着ていても痛みは強い。
だが女勇者は勝利を確信していた。

女勇者の左手が勇者のヒノキの棒を掴み、そのまま勇者を引き寄せる。


「私の勝ちですね」


女勇者は勝ち誇ったように笑う。
勝利が確定した感覚に酔いしれる。


勇者に逃げ場は無い。

女勇者は勇者の心臓めがけて剣を突く。
グサッ、という嫌な音が聞こえた。
傷口からは真っ赤な液体が流れ出ている。

女勇者はあまりの驚きに一瞬動きが止まってしまった。

女勇者の剣は勇者に刺さっていた。
しかし剣は勇者の心臓ではなく左腕に刺さっていた。
勇者は躊躇うことなく左腕を盾にしたのだ。

その行為はあまりにも常軌を逸していた。
戦士が腕を盾にするという事は、武器が持てなくなるという事だ。
それなのに目の前の勇者は迷うことなく腕を盾にしたのだ。

驚きのあまり女勇者の思考が一瞬停止する。
それは女勇者の最大のミスだった。

その隙に勇者は女勇者の剣を奪い取る。

「な……!?」


我に返った女勇者は言葉を失っていた。
ほんの一瞬の隙。
勇者がそれを狙っていた事にやっと気がついた。

勇者が左腕に刺さった剣の柄の部分を掴む


「まだやる?」


勇者は左腕に刺さった剣を引き抜きながら女勇者に聞いた。
その顔は苦痛で僅かに歪んでいるものの冷静だ。

剣の女勇者に勝ち目は無い。
女勇者はその場に膝をつく。


「負けました……」


女勇者は声を絞り出した。
ひたすらに流派を習得してきた女勇者にとって、自己流なんてものしかしらない勇者に負けた事は屈辱でしかなかった。
自分の下唇を強く噛む。


潔く負けよう。
女勇者はそう心の中で呟く。
勇者らしく、潔く負けを認めよう。
そう、勇者らしく。

女勇者は立ち上がり、勇者に近づいて行った。

女勇者「私の負けです……」

勇者「これで認めてくれる?」

女勇者「仕方ありません」

勇者「ほら、剣」スッ

女勇者「ありがとうございます」シャキン

男「勇者様……」

女勇者「彼も勇者です」

男「そ、そうなんですか?」

女勇者「でなければ負けていません」

勇者「なあ、回復魔法とか使える?」

女勇者「出来ないんですか?」

勇者「悪いが俺は魔法の学校には行って無い」

女勇者「仕方ないですね」ポワワン

勇者「悪いな」

女大臣「いい戦いでしたね」スタスタ

勇者「何時から見てたんだ?」

女大臣「女勇者いるか? から聞いてました」

勇者「最初じゃねぇか!!」

女大臣「はい、最初から聞いていました」

勇者「お前さ……」

女大臣「なんでしょうか」

勇者「……なんでもない」

女大臣「女勇者様ですよね」

女勇者「はい」

女大臣「単刀直入に質問します、あなたは勇者ではありませんね」

勇者「え?」

女大臣「あなたについて軽く調べさせていただきました」

女大臣「確かにあなたは勇者の血を引く女性の子供だった時期がありました」

女大臣「しかしあなたの母親は勇者の血を引く女性、つまり勇者様の母親の子供ではありません」

勇者「え、意味わかんないんだけど」

女大臣「彼女は勇者ではないという事です」

女勇者「……」

女大臣「何か間違いはありますか?」

中途半端ですが今日はここまでです。

地の文はかなり手直ししましたがやっぱり納得いくものは出来ませんでした。

実力不足です……

勇者「ちょっと待ってくれ、俺の頭が追いつかない」

女大臣「追いついて来てください」

勇者「それが出来ないから苦労してるんだろ!!」

女大臣「で、どうなんですか?」

勇者「でもあの人の事を本当の母親だと思ってるんじゃ――――」

女大臣「それはありえません」

勇者「それもわかってんのか」

女大臣「私が調べた所によると勇者の血を引く女が彼女の所にやってきたのは彼女が五歳の時です」

女大臣「五歳ならそのくらいの事はわかるはずです」

勇者「お前あの短時間でそこまで調べたのか」

女大臣「10分もあれば余裕で調べられますので」

勇者「凄ぇな」

勇者「つーか仕事は?」

女大臣「終わらせましたよ」

勇者「仕事しながら調べたのか?」

女大臣「はい、同時に二つの事が出来ないなど、大臣失格ですので」

勇者「お前って凄いな……」

女大臣「で、女勇者様はどう言い訳するつもりですか?」

勇者「言い方ってのがあるだろ」

女大臣「職業柄仕方のない事です」

女勇者「……」

女大臣「黙ってないで何か言ったらどうですか」

女勇者「確かに私は勇者ではありません」

勇者「なんでそんなことしたんだ?」

女勇者「長くなりますよ」

勇者「別にいいぞ」

女大臣「話してください」

女勇者「私の家は貧乏でその日食っていくのもつらい家でした」

勇者「俺と同じって事か?」

女勇者「母親は私を生んで間もなく死んでしまったそうです」

女勇者「そんな風でも私と父は二人で毎日を必死に生きていました」

女大臣「あなたのお父様とは真逆のタイプの父親ですね」

勇者「あのダメおやじは本当にダメ人間だからな」

女勇者「そんな日々が続いていたある日、父が一人の女性を連れてきました」

勇者「それがあの人って事か?」

女勇者「はい、その女性は勇者の血を引いていると言っていました」

女勇者「私と父とあの女性は貧しいながらも楽しく生活していました」

女勇者「しかし5年ほど経ったある日、あの女性は新しい男を作って私と父の前から姿を消しました」

勇者「家と一緒だな」

女勇者「それがきっかけで父は徐々におかしくなっていきました」

女大臣「一途な人は心が脆いですからね」

勇者「家の父親は全然平気だったぞ」

女大臣「あの方はお酒が恋人ですから」

勇者「あ、そうか」

女勇者「それでも父は生きるために必死で働きました」

勇者「家のダメおやじにそれを聞かせてやりたいね」

勇者「あと母親にも聞かせてやりたい」

女大臣「無駄だと思いますよ」

勇者「知ってる」

女勇者「しかし年老いて心も体もボロボロの父はもう働けるような体ではありません」

女勇者「ですから私が働かなくては生きていけません」

女大臣「そこで勇者の血を引く女性の娘の振りをして勇者として魔王討伐をして賞金をもらうつもりだったわけですね」

女勇者「その通りです」

女勇者「私達の村は人の出入りが激しかったので多くの人々は私とあの女性が本当の親子だと思っていたようです」

女勇者「勇者になるのは簡単な事でした。」

勇者「お前も苦労したんだな」

女大臣「勇者様と一緒で過酷な運命の人間だったのですよ」ウルウル

勇者「なんで涙目なの?」

女大臣「なんて、なんて親孝行な女性なんでしょう」ウルウル

勇者「いや、あんた知ってたんだろ」

女大臣「それでも本人から聞かされると……感動します」ポロポロ

勇者「ほら、ハンカチで拭け」スッ

女大臣「ずみまぜん」ブー

勇者「誰が鼻かんでいいって言った!!」

女大臣「だめなんですか?」

勇者「おまっ……鼻水でベタベタじゃん」

女大臣「すいません」ブー

勇者「謝りながら鼻かんでんじゃねぇよ!!」

女勇者「私の話はここまでです」

勇者「とにかくお前は勇者じゃないって事か」

女勇者「まあ、簡単に言えばそう言う事です」

女勇者「ですから、何の努力もしてなさそうなあなたが自分を勇者だと言った時は殺したくなりました」

女大臣「それであんなに勇者様を毛嫌いしていた訳ですか」

女勇者「はい、私は努力しても絶対になれないのに、彼は努力も無しになった勇者になれるなんてムカつきますからね」

男「おい!!」

勇者「何、なんか文句あんの?」

男「お前じゃない、俺はそっちの女に言ってんだ」

女勇者「何でしょうか」

男「俺達の店の借金さっさと払え!!」

おっさん達「そうだそうだ!!」

女勇者「待ってくれると言ったではありませんか」

男「それはお前が勇者だと思ってたからだ、勇者じゃないとわかった以上待つ気は無い」

勇者「器が小せぇ奴ばっかだな」

男「黙ってろ!!」

女勇者「今は返せませんが必ず返します」

男「今すぐ返せって言ってんだよ」

おっさん達「早くしろ!!」

勇者「人を肩書きで見る人間なんて死ねばいいのにな」

女大臣「全くその通りです」

勇者「あ、別にあなた達の事を言ってるわけではありませんよ」ニヤニヤ

男「明らかに俺達の事を言ってるだろ!!」

勇者「あ、バレちゃった?」

おっさん達「お前等黙ってろ!!」

勇者「金魚のフンが偉そうに何言ってんだ」

おっさん達「ガキが……」

勇者「なにも思いつかないなら黙っててくれていいよ」

おっさん達「……」

勇者「さすが金魚のフン、ボスがいないと何の出来ねぇのか?」

女大臣「かっこ悪いを形にしたような人達ですね」

男「だから黙ってろ!!」

勇者「すんませーん」

女大臣「続けてください」

男「金がないなら体で払ってもらうしか無いな」ズイッ

女勇者「私に指一本触れたなら一瞬であなたを肉塊に変えますよ」チャキ

男「お前の父親を探し出してそいつから金をもらってもいいんだぜ?」ニヤニヤ

おっさん達「探せばすぐに見つかるぞ」

女勇者「くっ……」ギリッ

男「どうするんだ?」

女勇者「後で……必ず―――――」

男「だから今すぐって言ってんだろ!!」

勇者「家族をダシに肉体関係を迫るとか何処のエロ小説?」

女大臣「凌辱モノっぽいですね」

勇者「女大臣もそういう本読むのか?」

女大臣「ええ、両刀ですから」

勇者「ああ、納得」

女大臣「でも触手だけは好きになれませんね」

勇者「それは俺もわかる」

男「お前等ちょっと黙ってろ!!」

勇者「はいはい」

女大臣「気にせず続けてください」

男「やれ!!」

おっさん達「おう!!」ガシッ

女勇者「は、離しなさい!!」

男「金が払えたら離してやるよ」

女勇者「貴様……」ギリギリ

男「さすがの勇者様もこれだけの人数に掴まれたら動けないのか?」ニヤニヤ

勇者「あれってボコボコにしても問題無いよな?」

女大臣「あります」

勇者「え?」

女大臣「借金をしたのは彼女ですから今回は彼女の方に非があります」

勇者「マジ?」

女大臣「マジです」

勇者「もし俺があいつらをボコボコにしたらどうなるんだ?」

女大臣「この町と私達の町とに大きな亀裂ができて最悪戦争になります」

勇者「俺の行動一つで戦争!?」

女大臣「あくまで最悪の場合です」

女大臣「勇者とはそれほどのものなのです」

勇者「じゃあどうればいいんだ?」

女大臣「自分で考えてください」

勇者「教えてくれないの?」

女大臣「私はいつもあなたの傍にいるわけではありません」

勇者「……自分で考えればいいんだろ」

女大臣「その通りです」

勇者「どうせわかってんだろ」

女勇者「当たり前じゃないですか」

女勇者「いいから早く離しなさい!!」

男「離してほしかったら金を払いな」

勇者「いくらだ?」

男「あ!?」

勇者「借金はいくらっだって聞いてんだよ」

男「4000ゴールドだ」

勇者「わかった」ガサゴソ

男「何がわかったんだ」

勇者「ほら、4000ゴールド」ポイッ

男「うおっ!?」ジャラジャラ

勇者「これで文句ねぇだろ」

女大臣「王様にもらった軍資金をあげてしまっていいのですか?」

勇者「別にいい、最初っから貧乏旅の予定だったし」

勇者「つーか俺がこうするってわかってたんだろ」

女大臣「はい」

男「なんでお前が払うんだ!?」

女勇者「どうして……」

勇者「理由がないと金も払っちゃダメなのか?」

男「お前に何の関係ある!!」

勇者「俺と女勇者は一応姉弟になるんだし関係無いわけじゃないだろ」

男「何意味わかんない事言ってんだ!?」

勇者「お前のめちゃくちゃな言いがかりよりマシだと思うけど」

男「なんだテメェ!?」

勇者「あ、初めまして勇者と申します」

男「テメェバカにしてんのか!!」

勇者「口が悪いのは元々だ」

勇者「で、どうするんだ?」

男「俺は認めんぞ!!」

女大臣「お金を持って帰ったらどうですか?」

男「ああ!?」

女大臣「叩けば埃が出る身ですよね」

女大臣「ここで引くのが無難だと思いますが?」ニッコリ

男「……チッ、わかったよ」

男「行くぞ」スタスタ

おっさん達「はい」ゾロゾロ

勇者「大丈夫か?」

女勇者「どうして助けたんですか?」

勇者「どうしてって言われてもな……」

勇者「俺お人好しだから、他人が困ってると放っとけないんだよ」

女勇者「……あなたはバカなんですね」

勇者「はぁ!?」

女勇者「言葉の通りです」

勇者「テメェに言われたくねぇよ」

女勇者「ついさっきまで殺し合いをしていた人間を助けるなど頭の中身が腐っているのではありませんか?」

勇者「おい、誰のおかげで助かったと思ってやがんだ?」

女勇者「その事に関してはお礼を言います、ありがとうございました」

女勇者「それでも私はあなたの事をバカだと思います」

勇者「バカが余計なんだ!!」

女大臣「ずいぶん仲良くなりましたね」

勇者「これが仲良しだったら猿と犬は親友だな」

女勇者「別に私はあなたの事を否定しているわけだはありません、ただあなたの行為がバカだと言っているだけです」

勇者「そこが一番の問題!!」

女大臣「勇者様、彼女を仲間にしてはどうですか?」

勇者「何言ってんの!?」

女大臣「勇者様も彼女の強さは知っていらっしゃるでしょう」

勇者「でも偽物の勇者だぞ、しかもドSだぞ」

女大臣「パーティーには変わった人間が必要ですよ」

勇者「変わったっていうかただの変人だろ」

女勇者「どちらかといえばあなたの方が変人です」

勇者「変人ぞろいのパーティーじゃねぇか」

女大臣「では決定でいいですね」

勇者「勝手に決めるな」

女勇者「私だって受けた恩は忘れません、あなたの旅に同行させていただきます」

勇者「……俺の想像してたパーティーと違う」

女大臣「予想と結果は異なるものです」

勇者「限度ってもんがあるだろ」

女大臣「細かい事は気にしない方がいいですよ」

勇者「もういいよ、わかった」

女勇者「これからお願いします」

勇者「こちらこそ」

こうして、最初の仲間である年上お姉さん系ドS偽勇者(女勇者)が仲間になったのであった。

今日はここまでです。

最初の仲間が出来ました。

まだモンスターが出てないので、次から出していけたらなと思います。













~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



スライム「……」プルプル

勇者「……」

スライム「ピキーピキー」訳『か、かかってこい!!』

勇者「……別にお前が襲ってこないなら戦う気はないんだけど」

スライム「ピキキ?」訳『僕をいじめないの?』

勇者「だから襲ってくる気が無いなら俺も攻撃しないって」

スライム「ピキピキー」訳『あれ、君は僕の言葉がわかるの?』

勇者「わかって無かったらとっくに斬りかかってると思うぞ」

女勇者「ついに脳みそが腐り始めたんですか?」

勇者「突然何!?」

女勇者「モンスターに話しかけているので」

勇者「俺はモンスターの言葉がわかるんだよ」

女勇者「……やはり脳みそが腐り始めたんですね」

勇者「本当だからね!!」

スライム「ピピキー」訳『ねえ、言葉がわかるなら薬草をくれない?』

女勇者「ではなんと言ってるんですか?」

勇者「薬草がほしいってさ」

女勇者「本当ですか?」

勇者「本当だよ」

勇者「ほら」スッ

スライム「ピ、ピキー!!」訳『ありがとう、本当にありがとう!!』

女勇者「喜んでるみたいですね」

勇者「そりゃ喜ぶだろ、ほしい物もらったんだから」

女勇者「そうですか……」ジー

勇者「そのかわいそうな人間を見るような目をやめろ!!」

スライム「ピキキーピキー」訳『これで友達を助ける事が出来るよ』

勇者「よかったな」

女勇者「……」ジー

勇者「だからその目をやめてくれない?」

スライム「ピキッキ」訳『こ、これは僕の気持ち』スッ

勇者「お礼なんていいよ」

スライム「ピキキ」『そんな事言わずにもらってよ』

勇者「じゃ、じゃあもらうよ」パシッ

スライム「ピキキキ、ピピピキキキキキ」訳『これはスライムの笛って言って、この笛を吹けばいつでもスライムが助けに来てくれるんだ』

勇者「あ、ありがとう」

スライム「ピキキ」訳『じゃあまたどこかで』ピョンピョン

女勇者「それはなんですか?」

勇者「スライムの笛だってさ」

女勇者「使えるんですか?」

勇者「これを吹くとスライムが助けに来てくれるんだってさ」

女勇者「だからあなたはバカなんです」

勇者「もしこの笛が役に立ったら土下座しろよ」

女勇者「……所であなたはどうしてモンスターの言葉がわかるんですか?」

勇者「小さい時に人間の言葉がしゃべれるスライムの下で働いてた事があったんだ」

女勇者「どうしてですか?」

勇者「7歳のガキを雇ってくれる所なんて限られてたんだよ」

女勇者「……確かに小さい頃は働ける場所が限られていますからね」

勇者「わかるのか?」

女勇者「はい、私も職場探しには苦労しましたから」

勇者「お互い苦労したんだな……」

女勇者「そうですね……」

女勇者「それでそのスライムに言葉を教わったんですか?」

勇者「ああ、結構長い間働いてたからモンスターの言葉は完全にマスター出来てる」

女勇者「スライム以外もわかるんですか?」

勇者「スライムの言葉をマスターしたら自然とわかるようになってた」

女勇者「案外凄い人なんですね」

勇者「いろんな仕事してきたからな、こう見えてもいろいろ出来るんだぞ」

女勇者「自画自賛ですか、気持ち悪い」

勇者「お前が凄い人って言ったからだろ!!」

女勇者「お世辞を本気で受け取るなんて……やっぱりあなたはダメですね」

勇者「お前も十分ダメだろ」

女勇者「あなたほどではありません」

勇者「それは自覚してる」

女勇者「で、次は何処に行くつもりですか?」

勇者「ここから一番近いのは……ドラゴンの村だ」

女勇者「あそこですか……」

勇者「知ってるのか?」

女勇者「はい、何度か行った事があるので」

女勇者「ちなみにドラゴンの住む山が近くにあるからドラゴンの村と呼ばれているんです」

勇者「ふーん、ドラゴンが住んでるんじゃないのか」

女勇者「言っておきますがドラゴンの村ではドラゴンは嫌われ者ですよ」

勇者「え?」

女勇者「あそこの村人はドラゴンと非常に仲が悪いですから」

勇者「せっかくドラゴンの村なのに?」

女勇者「なんでもドラゴンが頻繁に襲いに来るそうですよ」

勇者「……おかしいな」

女勇者「どうしました?」

勇者「何でも無い、気にすんな」

女勇者「あなたの事を気にする暇は私にはありません」

勇者「知ってる」

勇者「ドラゴンか……会ってみてぇな」

女勇者「今のあなたと私でドラゴンに勝てると思いますか?」

勇者「戦う気なんて無いよ」

勇者「男ってのは一度はドラゴンに憧れるんだ」

女勇者「わかりませんね……」

勇者「女にはわかんないかもな」

女勇者「多分人類にもわからないと思いますよ」

勇者「じゃあ俺も町の半分は人類じゃないって事か?」

女大臣「そうですね」

勇者「とにかくドラゴンには会ってみたいな」

女勇者「死ぬなら一人で死んでくださいね」

勇者「わかったわかった」

女勇者「日が暮れる前に行きますよ」スタスタ

勇者「わかったわかった」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~

ドラゴンの村

ザワザワ

勇者「賑わってる?」

女勇者「どちらかと言えばざわついているに近いですね」

勇者「何かあったのんだな」

女勇者「そう考えるのが妥当ですね」

村人「あんたら旅の人かい?」スタスタ

勇者「そうだけど」

勇者「なあ、あの人だかりって―――――」

女勇者「村長は何処にいますか?」

勇者「今俺が質問してるんだけど」

女勇者「まずは村長に会わないといけません」

勇者「そんなに村長に会うのが大事か?」

女勇者「はい、こういう小さな村では特に大事です」

勇者「そうだったのか……知らなかった」

女勇者「だからあなたはバカなんです」

村人「村長ならあっちの人だかりの中だよ」

勇者「さっきも言おうとしたけど何あれ?」

村人「知らないのかい、ドラゴンが捕まったんだ」

女勇者「ドラゴン?」

村人「ああ、なんでも凄い弓兵の人が生け捕りにしたそうだ」

女勇者「凄い弓兵ですか……」

村人「ああ、心も広い素敵な人だ」

女勇者「私達とは真逆な人間ですね」

勇者「そうだな」

村人「会ってみるといいよ」

勇者「なあ、ドラゴンには会えるか?」

村人「ドラゴンなら檻に入ってるから誰でも見れると思うよ」

勇者「そうか、ありがとう」

勇者「やっぱりおかしいな……」

女勇者「どうしました?」

勇者「別に」

女勇者「行ってみますか?」

勇者「ああ」

勇者「……」スタスタ

女勇者「だから何をそんなに悩んでいるのですか?」スタスタ

勇者「ドラゴンが気高き生き物って事は知ってるよな?」スタスタ

女勇者「はい、ドラゴンの基礎知識ですよね」スタスタ

勇者「ああ、じゃあドラゴンは気高いから危害を加えない限り人間を攻撃しないってのは知ってるか?」スタスタ

女勇者「それは初耳ですね」スタスタ

勇者「それが本当だとしたらこの村人が襲われる事は無いはずなんだよ」スタスタ

女勇者「ですがこの村の人々はドラゴンに何度も襲撃されていますよ」スタスタ

勇者「だからドラゴンに危害を加えている人間がいるはずなんだ」スタスタ

勇者「そいつを探し出す」スタスタ

女勇者「そんな事をしている人間が素直に白状するとは思えませんが」スタスタ

勇者「それをドラゴン本人に聞きに行くんだ」スタスタ

勇者「それぐらい考えればわかるだろ」スタスタ

女勇者「無理ですね、あなたの思考回路はおかしいですから」スタスタ

勇者「その言葉をそっくりそのままお前に返してやるよ」スタスタ

ドンッ

勇者「あ、すいません」

弓兵「別に気にするな」ガハハハ!!

女勇者「弓?」

弓兵「お前達は旅の者か?」

女勇者「もしかしてあなたがドラゴンを仕留めた弓兵ですか?」

弓兵「ああ、そうだとも」

それはあごに髭を蓄えた2メートルを超える短髪の大男だった。

勇者「……」

弓兵「何だ坊主、そんな怖い顔してどうしたんだ」

勇者「ちょっと腹が痛いだけだ」

弓兵「そうか、今の時期は食あたりが怖いからな、注意しろよ」ガハハハ

勇者「これから注意するようにするつもり」

弓兵「お前達もドラゴンを見に行くのか?」

女勇者「はい」

弓兵「見たら驚くと思うぞ、めちゃくちゃでかいからな、がはははは!!」

弓兵「おっと、俺は酒場に行く、後で会えるといいな」スタスタ

勇者「ああ」

女勇者「そうですね」

勇者「……どう思う?」スタスタ

女勇者「あの男自体は悪い人間では無さそうですね」スタスタ

勇者「だよな」スタスタ

女勇者「私の予想ですがあの男はこの村に雇われた弓兵だと思います」スタスタ

勇者「村に雇われることなんてあるのか?」スタスタ

女勇者「町には兵士がいますが小さな村にはいませんから必然的に強そうな兵士を雇わなければならないんです」スタスタ

女勇者「さっきの男性は見た所フリーの弓兵のようですからドラゴン討伐を依頼されたと考えるのが妥当です」スタスタ

勇者「物知りだな」スタスタ

女勇者「世間の基礎知識です、知っていて当然ですよ」スタスタ

勇者「……」スタスタ

勇者「って事は悪いのはそれを依頼した人間って事か?」スタスタ

女勇者「あくまで私の予想ですが」スタスタ

勇者「ここか……」

勇者「まるで要塞だな」

女勇者「そうですか? 石でできた巨大な虫籠にしか見えませんが」

勇者「ああ、そうも見えるな」


二人の目の前には石造りの四角く窓が二つしかない大きな建物があった。


村長「誰だお前達は」

勇者「勇者です」

女勇者「女勇者です」

村長「勇者?ずいぶん貧相な勇者だな」

勇者「お前もずいぶんと貧相な頭だな、毛は何処に落したんだ?」

女勇者「勇者、きっと今日は急がしくて家に忘れてしまったんです」ヒソヒソ

村長「ずいぶんと生意気なガキと女だな」

※補足

モンスターについて

モンスターには二種類おり、理性をもったモンスターと持っていないモンスターがいます。

持っているものの例 スライム・サキュバスなど    持っていないものの例 ゾンビ・ミイラ男など

高等なモンスターはたいてい理性を持っていると考えてもらって結構です。

ただし理性があるからいい奴とは限りません。

今日はここまでです。

ちなみに勇者の魔物の言葉が分かる設定は最初からありましたが発揮するタイミングが無かったためこんなに後になってしまいました。

村長「お前達もドラゴンを見に来たのか?」

勇者「当たり前だろ、ハゲ散らかしたおっさんを見に来たわけじゃねぇ」

村長「俺だって好き好んでハゲてるんじゃねーんだ!!」

勇者「で、ドラゴンは何処だ?」

村長「ドラゴンはこの中だ」

勇者「自由に見ていいんだろ」

村長「勝手にしろ」

女勇者「言われなくても勝手にします」スタスタ

勇者「勝手にさせてもらうぞ」スタスタ

勇者「……」ガチャ

ドラゴン「……」

そこには真っ赤な鱗の全長10メートルはあるドラゴンが鉄の檻に入れられていた。


女勇者「大きいですね」

勇者「そりゃドラゴンだしな」

女勇者「そんな事はわかっています」

ドラゴン「グルルル」訳『人間か、お前達も興味本位でオレを見に来たのか』

勇者「確かに興味本位だけどそれだけで来たわけじゃねぇぞ」

ドラゴン「グルル」訳「ふん、オレを殺しに来たのか?」

勇者「別にお前を殺すために来たわけじゃねぇから」

ドラゴン「ガルル」訳『では何の用だ?』

勇者「理由が無いと来ちゃダメか?」

ドラゴン「グルルル」訳『生意気な人間だな』

村人達「……」ザワザワ

女勇者「勇者、周りの者たちが怪しがっています」ヒソヒソ

勇者「また今度来るな」スタスタ

村長「お前等何してる!!」

勇者「ドラゴン見てただけじゃん」

村長「ドラゴンと会話しているように見えたが」

勇者「話しかけちゃダメなのか?」

村長「ドラゴンに話しかけても無駄だぞ、こいつ等は人間の言葉などわからん」

勇者「そんなもんわかんねぇだろ」

村長「お前は頭が悪いみたいだな、こいつ等は人間の言葉もわからん劣等種だぞ」ニヤニヤ

勇者「お前の頭も十分劣等種だぞ」

女大臣「これからさらに劣等種になりますね」

村長「お前達は俺を怒らせたいのか!?」

勇者「お前がムカつく事言うから言い返してるだけだ」

女勇者「私は純粋に楽しんでいます」

村長「お前等……」

勇者「こんな変人と一緒にされたくないな」

女勇者「あなたも大概ですよ」

勇者「でもお前よりマシだ」

村長「そんな話はどうでもいい!!」

勇者「あ、そう」

村長「とにかく余計な事は絶対するな、わかったな」

勇者「わかったよ」スタスタ

女勇者「わかっています」スタスタ

勇者「また来るからな」スタスタ

村長「来るな!!」

勇者「さて……これからどうする?」スタスタ

女勇者「とりあえず日が暮れる前に宿を見つけませんか?」スタスタ

勇者「ああ、そうだな」スタスタ

勇者「いくら持ってる?」スタスタ

女勇者「私ですか?」スタスタ

勇者「お前に決まってんだろ」

女勇者「私は無一文です」

勇者「……マジで?」

女勇者「でなければ借金などしていません」

女勇者「あなたはいくら持っているんですか?」

勇者「300ゴールドだけど」

女勇者「……安い宿なら何とかなります」

勇者「び、貧乏旅ってわかってたし仕方ないよな」

女勇者「そうですね」

勇者「……」

女勇者「……」

勇者「……と、とにかく宿を探すぞ」

女勇者「勇者、あそこはどうですか?」

勇者「……あそこ?」


それは廃墟一歩手前のオンボロの宿屋だった


勇者「俺は慣れてるからいいよ、別に野宿でも大丈夫だし」

勇者「女勇者はいいのか?」

女勇者「大丈夫です、私も野宿でも大丈夫な人間ですから」

勇者「あ、そう言えばそうだったな」

女勇者「はい」

勇者「つーかやってるのか?」スタスタ

女勇者「私に聞かないでください」スタスタ

勇者「お前があそこがいいって言ったんだろ」スタスタ

勇者「こんにちは」ガチャ

おじいさん「いらっしゃい」

勇者「……ここって宿屋だよな?」

おじいさん「そうだよ」

勇者「泊まっていい?」

おじいさん「一部屋50ゴールドだよ」

勇者「人数じゃなくて?」

おじいさん「ああ、何人でも一部屋なら50ゴールドだ」

女勇者「一部屋で」

おじいさん「はいよ」

勇者「勝手に決めるなよ!!」

女勇者「ただでさえ貧乏旅なんです、安い方がいいでしょう」

勇者「お前と同じ部屋って……嫌なんだけど……」

女勇者「それはこっちの台詞です」

おじいさん「106号室だよ、これ鍵ね、場所はそこの地図に書いてあるから」コトッ

勇者「じいさん、この地図ボロボロ過ぎて読めないんだけど」

おじいさん「心の目で見てくれ」

勇者「それで見れたら苦労しねぇよ」

女勇者「歩きまわれば見つかります」スタスタ

勇者「お前って案外雑だな」タタタッ

女勇者「ここですね」ガチャッ

勇者「思ったより綺麗だな」

女勇者「二段ベッドですか……勇者はどちらがいいですか?」

勇者「下でいいよ、上行くの面倒臭いし」

女勇者「そんなんだからダメなんです」

勇者「どこかにダメな部分があったか!?」

女勇者「全てです」

勇者「じゃあ俺が上で寝ればいいんだろ」

女勇者「嫌です、私が上で寝ます」

勇者「どっちだよ」

女勇者「あなたは下でいいと言ったじゃないですか」

勇者「お前言ってる事めちゃくちゃだぞ」

女勇者「自分でもわかっています」

勇者「なら言うんじゃねぇ」

勇者「とにかく荷物の整理だ」ガサゴソ

女勇者「勇者、少し出掛けてきていいですか?」

勇者「いってらっしゃい」ガサゴソ

女勇者「行ってきます」ガチャ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

夜  宿屋


女勇者「ただいま戻りました」ガチャ

勇者「おかえり」

女勇者「いろいろ調べてきました」

勇者「だと思った」

勇者「なあ、お前はあのハゲをどう思う?」

女勇者「てっぺんハゲはやっぱりかっこ悪いですね」

勇者「俺もそう思うけど今はそっちじゃない」

女勇者「何かしら裏がありそうですね」

勇者「やっぱりそうか」

女勇者「後あの弓兵の事ですが、やはり雇われていたようですね」

勇者「ドラゴンを捕まえるように命令したのは誰だったんだ?」

女勇者「ハゲのようです」

勇者「って事やっぱりあのハゲが何かしら絡んでるって事?」

女勇者「当たり前です、それがわからないなんてあなたはバカですか?」

勇者「すぐバカって言うよな」

女勇者「バカじゃないんですか?」

勇者「もういい、お前面倒臭ぇ」

勇者「俺もう一回ドラゴンの所行ってくるわ」

女勇者「わかってます」

勇者「多分遅くなるから先寝てていいからぞ」

女勇者「言っておきますが変な事があったらあなたを肉塊にしますからね」

勇者「そんな気は無い」

勇者「お前の胸がもう少し大きかったらその可能性があったけどな」

女勇者「そうですか、あなたは今すぐに肉塊になりたいようですね」チャキッ

勇者「じゃあ行ってくる」タタタッ

勇者「……」タタタッ

勇者「まだハゲいるじゃん……」タタタッ

勇者「こんばんは」

村長「何の用だ!!」

勇者「ドラゴンを見に来ただけだよ」

村長「……怪しいな」

勇者「怪しいならボディチェックしたら?」

村長「得物を置いていけ」

勇者「はい」ポイッ

勇者「これで文句ないだろ」

村長「おい、得物を渡せ!!」

勇者「お前の持ってるのが俺の得物だ」

村長「ヒノキの棒が!?」

勇者「俺がそれ以外に武器を持ってるとでも?」

村長「……」

村長「余計な事はするなよ」

勇者「はいはい」ガチャ

注※ドラゴンはドラゴンの言葉でしゃべっていますが読みやすいようにで訳した状態で表記します。


勇者「おい、起きてるか?」

ドラゴン「ふん、また来たのか、人間」

勇者「また来るって言っただろ」ドサッ

勇者「それにどうせ暇なんだろ」

ドラゴン「オレに話しかけてきたのは貴様が初めてだ」

勇者「他の奴らはお前の言葉なんかわかんないからな」

ドラゴン「そうだな、オレは貴様等の言葉がわかるのにな……」

勇者「皮肉か?」

ドラゴン「かもな」

勇者「そうだ、肉持ってきたけど食うか?」

ドラゴン「いいのか?」

勇者「お前にあげるために持ってきたんだ」スッ

ドラゴン「悪いな」モグモグ

勇者「聞きたいんだけどお前は何をして捕まったの?」

ドラゴン「オレは気高き竜だ、人間など相手にはしない、人間共が勝手に騒いでいるだけだ」

勇者「お前はいいのか?」

ドラゴン「ん?」

勇者「そんな訳のわからない理由で殺されていいのか?」

ドラゴン「殺されたく無いに決まってる」

ドラゴン「だが、オレがどれだけ足掻いてもここから逃げるのは不可能だ」

ドラゴン「逃げるのが不可能だとわかっているのに足掻くのは無様だろ?」

勇者「生きるために足掻くのを無様だとは俺は思わねぇ」

ドラゴン「それは貴様が人間だからだ」

ドラゴン「オレは気高きドラゴン、無様に生きるよりも美しく散る事に美学を感じる生き物だ」

勇者「気高きドラゴンね……」

ドラゴン「貴様も物好きだな、オレの話し相手をするなんて」

勇者「変人だからな」

ドラゴン「面白いな、貴様は」

勇者「俺もお前と話してると楽しいよ」

ドラゴン「ふん、お世辞か」

勇者「お世辞とかじゃなく本心だよ」

ドラゴン「……」

勇者「どうした?」

ドラゴン「……何でも無い」

勇者「そうか」

勇者「……」

ドラゴン「……」

勇者(何この沈黙……)

ドラゴン「……貴様の横にいた女は何者だ?」

勇者「あいつはただの旅の仲間、それ以上でもそれ以下でもない」

ドラゴン「二人旅か?」

勇者「ああ、仲間募集中だ」

ドラゴン「改めて聞こう、貴様の目的は何なんだ?」

勇者「目的なんてねぇよ」

勇者「ただ俺ドラゴンが好きなんだ、かっこいいし」

勇者「特にお前は好きだな、かっこいいし話が合うし」

ドラゴン「……そうか」

勇者「お前は俺の事どう思う?」

ドラゴン「そうだな……今の所は変わった奴だな」

勇者「今の所は?」

ドラゴン「印象なんてものは一秒ごとに変わるものだろう」

勇者「まあ、そうだな」

ドラゴン「やはり貴様は変人だ」

勇者「自覚してるよ」

勇者「それにあんたも十分変だ」

ドラゴン「ふふ、死ぬ前に貴様のような人間に会えてよかった」

勇者「俺もだ、お前に会えて良かった」

ドラゴン「ふふ、かわいい奴だな、貴様は」

勇者「そんな事言ってくれるなんてうれしいねぇ」

ドラゴン「ここで会ったついでだ、オレの願いをきいてくれるか?」

勇者「ここから出してほしいのか?」

ドラゴン「バカ言うな、俺は気高き竜だ、そんな見苦しい事を願ったりしない」

勇者「そうか」

ドラゴン「俺の介錯を頼みたい」

勇者「俺にか?」

ドラゴン「ああ、死ぬのなら名も無き村人に殺されるよりも貴様に殺されたい」

勇者「……嫌だね」

ドラゴン「……そうか、残ね―――――」

勇者「俺はお前をここから逃がす気でいるからな」

ドラゴン「何?」

勇者「お前が無実だとわかった以上、お前を見殺しには出来ないから」

勇者「俺がここから出してやるよ」

ドラゴン「貴様正気か?」

勇者「ああ正気だ」

勇者「じゃあまた明日来るわ」スタスタ

ドラゴン「阿呆が……」

今日はここまでです。

結構まじめにいちゃラブ? を書いてみました。ドラゴンと。

予想ですがあまりにも具体的だとちょっとあれですが、アバウトな予想なら好き勝手にやってくれて結構です

~~~~~~~~~~~~~~~~~


檻の建物の外


村長「また話しかけてたみたいだな」

勇者「文句ある?」

村長「返事はあったか?」ニヤニヤ

勇者「あんたこそ育毛シャンプーの効果はあったか?」ニヤニヤ

村長「お前……いい加減にしろよ」ギロッ

勇者「ただのジョークだろ、イライラするとハゲるぞ」

村長「もうハゲとるわ!!」

勇者「自覚はあるんだな」

村長「当たり前だ」

勇者「それよりドラゴンの処刑はいつだ?」

村長「明日の夜だ」

勇者「絶対だな」

村長「なんで予定を変える必要があるんだ」

勇者「女勇者が見たいらしいんだ、早めたりすんなよ」

村長「安心しろ、俺は予定はきちんと守る」

勇者「わかった」スタスタ

勇者「……一旦帰るか」スタスタ

勇者(その前に弓兵に会っておいた方がいいな)タタタッ

勇者「えっと……酒場は……」キョロキョロ

勇者「あっちか」タタタッ

勇者「こんばんは」ガチャ

マスター「いらっしゃい」

勇者「弓兵いるか?」

弓兵「ん、俺に用か?」

勇者「ああ、ドラゴンについて聞きたいんだ」

弓兵「ドラゴン?」

勇者「あんたが仕留めたんだろ?」

弓兵「ああ、俺が仕留めたんだ、と言っても微妙だけどな」

勇者(微妙?)

勇者「どうやって仕留めたのか教えてくれないか?」

弓兵「どうやってって……別に普通に仕留めただけだぞ」

勇者「ドラゴンは強かったか?」

弓兵「いや、村長の命令で寝込みを襲ったからそこまで大変ではなかったよ」

勇者「あのハゲか……」

弓兵「俺としては少し不満だったがな」

勇者「あんたは正々堂々戦いたかったのか?」

弓兵「そりゃそうだろ」

弓兵「まあ、雇い主に逆らう訳にはいかんからな」

勇者「そういうもんか?」

弓兵「そういうもんだ」

弓兵「お前も飲むか?」ゴクゴク

勇者「俺未成年だから飲めない」

弓兵「そうか、残念だな」

勇者「あんた名前は?」

弓兵「弓兵だ、呼び捨てでいいぞ」

勇者「あ、ああ」

弓兵「しかしあのドラゴンも気の毒だな、無実の罪で殺されるなんて」

勇者「……あんたわかっててこの仕事を引き受けたのか?」

弓兵「ああ、俺達のいた町ではドラゴンは守り神だったからな」

弓兵「ドラゴンの事は詳しいんだ」

勇者「ドラゴンが理由が無い限り人間を襲わないってのも知ってたのか?」

弓兵「当たり前だ」

勇者「ならなんでこの仕事を引き受けたんだ?」

弓兵「報酬が良かったんでな」

勇者「やっぱり世の中金って事か……」

弓兵「そう言う事だ」

弓兵「金を得るためなら仕事は選べないんだ」

勇者「その言葉をろくに働いてない人間に聞かせてやりたいね、特にダメおやじ」

弓兵「見損なったか?」

勇者「いや、あんたの言い分もわかるよ」

勇者「理想で飯は食えないからな」

弓兵「苦労したんだな」

勇者「それなりにはしてる」

勇者「そろそろ帰るよ、いろいろありがとな」

弓兵「ああ、またいつでも来い」

勇者「そうする」ガチャ

勇者「つーかマジでそさっきの言葉をダメおやじと母親に聞かせてやりてぇよ」スタスタ

勇者「……」スタスタ

勇者「ドラゴンにはあんな事言ったけどどうすればいいんだろうな……」スタスタ

勇者「使えそうな道具とか無かったっけ?」ガサゴソ

勇者「スライムの笛……」

勇者「……まあ使ってみて損は無いよな」

ピーーーー

勇者「……」

勇者「……」

スライム「お呼びですか?」ピョンピョン

勇者「ああ、俺が呼んだんだけど、お前しゃべれるの?」

スライム「はい、スライムはしゃべれる個体が多いんですよ」

勇者「意外だな」

スライム「よく言われます」

勇者「なあ、この笛って何回でも使えるのか?」

スライム「はい、何回使ってもらって結構ですよ」

勇者「女勇者の土下座決定だな」

勇者「これ持ってる奴って何に使ってるんだ?」

スライム「いろいろです、簡単な手伝いから性処理までいろいろな事を頼まれます」

勇者「明らかに間違った使い方してる奴がいるのは気のせい?」

スライム「多分気のせいです」

勇者「まあいいや、お前もこの辺に住んでるんならドラゴンが捕まってる事は知ってるよな」

スライム「はい、あの方には何度も助けていただいて」

勇者「知り合いなんだ」

スライム「この辺りのモンスターの間では有名なんですよ」

勇者「そうなんだ」

勇者「で、あのドラゴンを助けようと思うんだけど手伝ってくれない?」

スライム「あの方を助けて下さるんですか!?」

勇者「ああ、そのつもりだけど」

スライム「僕も何度もあの方に助けていただいています、喜んでお手伝いいたします」

勇者「ありがとう、そこでなんだけどドラゴンの檻の鍵の場所を探してくれるか?」

スライム「任せてください」ピョンピョン

勇者「出来るだけ早くな」

スライム「わかってます」

勇者「……」スタスタ

勇者「一旦寝るか」スタスタ

勇者「疲れたな」ガチャ

おじいさん「……」ウトウト

勇者「布団で寝ろよ」スタスタ

勇者「ただいま」ガチャ

女勇者「遅かったですね」

勇者「起きてたのか」

女勇者「もう朝なので」

勇者「え?」

女勇者「そろそろ日の出ですよ」

勇者「……マジかよ」

女勇者「時間すらもわからなくなったんですか?」

勇者「それぐらいわかるわ!!」

女勇者「で、どうでしたか?」

勇者「俺の思った通りだった」

女勇者「助けるんですか?」

勇者「そのつもり」

女勇者「やはりあなたはバカですね」

勇者「うるせぇよ」

女勇者「見ず知らずのドラゴンを助けるなんてバカでしかありません」

勇者「悪かったな、バカで」

女勇者「まあ、あなたの仲間になった以上手伝いますよ」

勇者「ああ、ありがとう」

勇者「作戦とかってあるか?」

女勇者「村人を皆殺しにすれば簡単ですよ」

勇者「虐殺じゃねぇか!!」

女勇者「何か問題でも?」

勇者「問題しかねぇよ」

女勇者「あなたは誰にも見つからずにやるつもりなんですか?」

勇者「当たり前だろ」

女勇者「面倒臭いですね」

勇者「虐殺の方が百倍面倒臭いわ!!」

女勇者「ところで鍵の場所はわかっているんですか?」

勇者「鍵は今探してもらってる」

女勇者「協力者がいるんですか?」

勇者「ああ、一人だけどな」

女勇者「まずは鍵を見つけられなくては私達も動きようがありませんが」

勇者「まあ、確かにそうだよな」

女勇者「鍵を見つけるのに何日かかる事やら……」

スライム「見つかりました」ガチャ

勇者「早くない!?」

スライム「昔の上司が凄く仕事の早い人だったんで」

勇者「どんな人?」

スライム「変わった人でした、今はどこかの国で大臣をしてるそうです」

勇者「だいたい想像がついた」

女勇者「で、何処にあるんですか?」

スライム「村長の家にあります」

勇者「また面倒臭い所に……」

女勇者「文句を言っても仕方ありません、行きますよ」

勇者「普通夜だろ」

女勇者「私達は暗殺者ではありません、それに朝の方が警戒されません」

勇者「そこまで言うならわかったよ」

スライム「僕も少し行ってきます」

勇者「何処に?」

スライム「ちょっといろいろありまして」ピョンピョン

女勇者「私達も行きますよ」スタスタ

勇者「ああ」スタスタ

今日はここまでです。

明日はドラゴンの村最終回です。

勇者「作戦は?」スタスタ

女勇者「見張りを気絶させて鍵を奪って逃げます」スタスタ

勇者「大丈夫か、その作戦?」スタスタ

女勇者「ダメだったらあなたを囮にして逃げます」スタスタ

勇者「つまり全力で探せって事だな」スタスタ

女勇者「そう言う事です」スタスタ

女勇者「妙ですね……」スタスタ

勇者「何がだ?」スタスタ

女勇者「うまくいき過ぎていると思いませんか?」スタスタ

勇者「それはスライムのおかげだろ」スタスタ

女勇者「確かにそうですが、誰かの操り人形にされているような気がしてなりません」スタスタ

勇者「まあ、確かにな……」スタスタ

女勇者「今は操られているとわかっていても操られるしかないのですが」スタスタ

勇者「他の方法も無いもんな……」

女勇者「ここですね」

勇者「見張りはどっちが倒す?」

女勇者「じゃんけんで決めましょう」

勇者「じゃんけんポン」

女勇者「……私ですか」

勇者「言っとくけど殺すなよ」

女勇者「私が人殺しをしそうな人間に見えますか?」

勇者「俺の目には殺人鬼にしか見えない」

女勇者「では行ってきます」チャキッ


女勇者は二人いる見張りの後ろに素早く回り込むと、一人の頭を殴り、もう一人の腹を殴る。
見張り二人は声も無く地面に倒れた。


勇者「凄いな」スタスタ

女勇者「これくらい簡単です」

女勇者「行きますよ」ガチャ

勇者「何処だ?」ガサゴソ

女勇者「早くしてくださいね」ガサゴソ

勇者「わかってるよそんな事」ガサゴソ

女勇者「なぜスライムに場所を聞かなかったんですか」ガサゴソ

勇者「お前だって聞いてないんだから同罪だろ」ガサゴソ

女勇者「……何処にあるんですか!!」ガサゴソ

勇者「キレるな、黙って探せ」ガサゴソ

女勇者「面倒臭い……こんなもの全部壊せば見つかります」チャキ


女勇者は剣を抜くと、目の前に会ったタンスを縦に真っ二つに叩き斬る。


勇者「何してんだ!!」

女勇者「この中にはありません」

勇者「冷静に何言ってんだ、タンス真っ二つじゃん」

女勇者「時間短縮のためです」

勇者「だからって人の物を真っ二つにするな!!」

女勇者「面倒臭いですね」

勇者「面倒臭くない!!」

女勇者「全く」ガサゴソ

女勇者「ん、これですかね?」スッ

勇者「それでいいだろ」

女勇者「そんなめちゃくちゃな……」

見張り「そこまでだ!!」

勇者「また面倒臭い事に……」

見張り「動くな!!」

女勇者「私達が怪しい人間に見えますか?」

勇者「残念だが今の俺達はただの盗人だ」

女勇者「……そうですね」

見張り「動くなよ」

女勇者「どうしますか?」ヒソヒソ

勇者「俺が何とかする」ヒソヒソ

女勇者「頼みましたよ」ヒソヒソ

勇者「任せとけ」ヒソヒソ

見張り「何こそこそ話してる!!」

勇者はヒノキの棒を抜くと、見張りとの間にあった距離を一瞬で詰める。

見張りがそれに気づき剣を抜こうとする。
しかしそれはあまりにも遅い。

勇者はヒノキの棒を見張りの膝をヒノキの棒で叩いた。

骨が折れるような音と共に見張りが地面に膝をつく。

勇者は見張りが膝をついたのを見ると、ヒノキの棒をまるでバットのように構える。
そして見張りの頭めがけてヒノキの棒をフルスイングした。

バゴッ、という音が部屋にが響き、見張りが壁に激突する。
棚の上に積まれていた本の山が音を立てて崩れた。

見張りの頭からは血が出ていた。
口が僅かに動いているが何を言っているかは聞きとれない。
頭を打った衝撃で声が出ないのだろう。


「なあ、これって何処の鍵だ?」


勇者は見張りに鍵を見せて尋ねた。
だが見張りの唇が動くが、何を言っているか聞こえない。


「ドラゴンの檻の鍵か?」


勇者がそう聞くと、見張りは首を縦に振った。


「じゃあ、少しの間ここで寝ててくれ」


勇者はそう言うと見張りの首の後ろを軽く殴り、見張りを気絶させた。

女勇者「相変わらず速いですね」

勇者「女勇者、早く」タタタッ

女勇者「わかっています」タタタッ

女勇者「いいのですか?」タタタッ

勇者「ちゃんと手加減したよ、骨は折れてないと思う」タタタッ

女勇者「顔がバレてしまいましたがいいんですか?」タタタッ

勇者「後でちゃんと謝りに行く」タタタッ

勇者「……やべぇ、日が昇ってきたぞ」タタタッ

女勇者「うまくいき過ぎていますね」タタタッ

勇者「今はやるしかねぇだろ」タタタッ

女勇者「……そうですね」タタタッ

女勇者「村長は私に任せてください」タタタッ

勇者「殺すなよ」タタタッ

女勇者「わかっています」タタタッ

勇者「任せたぞ」

女勇者「はい」


女勇者はさらに加速し村長の顔面にとび蹴りを打ち込む。

村長の体は竹トンボのように吹き飛び、壁に激突する。


勇者「明らかにやり過ぎだろ……」

女勇者「早くしてください」

勇者「今思ったけど絶対勇者のやる事じゃねぇな」ガチャ

ドラゴン「グルルル」訳『本当に来たのか!?』

勇者「来るって言っただろ」ガチャガチャ

勇者「開いたぞ」ガチャン

ドラゴン「グルル」訳『すまんな』ドスドス

勇者「見つかる前に逃げるぞ」タタタッ

勇者「女勇者、逃げるぞ」ガチャ

女勇者「はい」

弓兵「そこまでだ」

勇者「……弓兵」


そこには弓兵と10人ほどの男が立っていた。


勇者「バレたか……」

弓兵「あれだけ派手に動けばバレるに決まってるだろ」

勇者「……ああ、確かに」

女勇者「そこを退けば危害は加えません、退いて下さい」

男「ならばドラゴンを置いていけ」

勇者「……退かないとこのハゲを殺すぞ!!」

女勇者「勇者のやる事とは思えませんね」

勇者「お前だって一応勇者だろ」

女勇者「私は偽物の勇者です」

勇者「どうする、退かないと本気で殺すぞ!!」

男「く……」

勇者「退けよ、面倒臭ぇな」

男「村長はもういい、あいつらを殺すぞ」

勇者「だったらこんなハゲなんかいらねぇよ」

弓兵「……そろそろだな」

勇者「何が?」

弓兵「突撃!!」


弓兵が叫ぶと数十人の兵士が辺りから飛び出してきた


兵士「動くな!!」タタタッ

勇者「次から次へとなんだよ」

女勇者「あれは……正規の兵士ですか!?」

弓兵「正確には正規のハンターだ」

勇者「ハンター?」

女大臣「久しぶりですね」スタスタ

勇者「女大臣!?」

スライム「間にあったみたいですね」

女勇者「す、スライム!?」

女大臣「彼もハンターの一人です」

勇者「もはや意味がわからなくなってきた……」

男「なんだお前等!!」

弓兵「おっと、動くなよ」ギリッ

勇者「ちょっ、マジでどうなってんの!?」

弓兵「詳しくはそこの女勇者にでも聞け」

勇者「だからあんた何者?」

弓兵「ハンターだ」

勇者「ハンター?」

女勇者「世界規模で様々な事件や違法行為を捜査し犯人を逮捕する組織です」

勇者「全然知らない」

女勇者「……でしょうね」

勇者「こいつ等って何したの?」

女大臣「この人達はドラゴンの卵を密猟してました」

女勇者「あらゆるモンスターの卵の密猟は禁止されていましたね」

弓兵「その通り」

女大臣「あなた達のおかげで捜査が楽でした」

女勇者「私達を操っていたのはあなた達でしたか……」

弓兵「お前たちの働きは予想以上だったな」ガハハハ

女大臣「私達の想像通りに動いてくれましたしね」

勇者「そりゃどうも」

女大臣「ちなみにあなた達ともこの町でちょっとだけ会話していますよ」

勇者「いつだよ!!」

女大臣「思い出して下さい」

勇者「もういい、無理だからいいよ」

弓兵「お前達もだ」

兵士「行くぞ」スタスタ

男達「……」スタスタ

女大臣「ドラゴン、あなたは早く帰った方がいいですよ」

勇者「そうだな、またなドラゴン」

ドラゴン「グルルル」訳『また会おう、勇者』バッサバッサ

弓兵「ご協力に感謝する!!」ビシッ

勇者「したくて協力したわけじゃねぇよ」

スライム「利用してすいませんでした」

勇者「気にしてねぇよ」

女大臣「あなた達のおかげでこの仕事が早く済ませました、感謝します」

女勇者「こちらこそありがとうございました」

勇者「どうでもいいんだけどお前って城に帰ってる?」

女大臣「私はテレポートが使えますので」

勇者「あ、そう」

女勇者「……」

女大臣「ではまた会いましょう」スタスタ

弓兵「ありがとな」スタスタ

スライム「またどこかで」ピョンピョン

~~~~~~~~~~~~~~~~

昼 村の広場

勇者「女大臣にいいとこは全部持っていかれたな」

女勇者「仕方ありません、あの人は化物ですから」

勇者「……そうだな」

女勇者「結局仲間は見つかりませんでしたね」

勇者「別に急ぐほどでもないだろ」

女勇者「ですがこの先二人旅というのも……」

勇者「なあ、これからは宿屋の部屋分けようぜ、お前怖い」

女勇者「それはこちらの台詞です」

勇者「お前が、あそこの女の子ぐらいナイスバディだったら間違いが起こるけど、今のお前なら絶対に起こらねぇよ」


勇者が指差したのは赤髪のムチムチで巨乳の勇者と同い年くらいの美少女だった。


勇者「今のお前は絶対に安全だ、良かったな」ニッコリ

女勇者「勇者、下半身にお別れを言いなさい」ニッコリ

勇者「目が本気なんだけど……」

赤髪の少女「……」スタスタ

女勇者「勇者、こっちに来ましたよ」ヒソヒソ

勇者「え、もしかして聞こえてた?」ヒソヒソ

女勇者「謝った方がいいのではないですか?」ヒソヒソ

勇者「何を謝るんだよ、ナイスバディーは褒め言葉だろ」ヒソヒソ

女勇者「とにかく何とかしてください!!」ヒソヒソ

勇者「俺に言うなよ、お前が何とかしろよ!!」ヒソヒソ

赤髪の少女「久しいな」

勇者「え、はい?」

赤髪の少女「会いたかったぞ、勇者」


少女はそう言うと勇者と唇を重ねる


勇者「ん?」

女勇者「な!?」

勇者「……」

勇者「何してんだお前!!」

赤髪の少女「ふふん、これで契りは交わしたぞ」

勇者「誰、お前誰!?」

赤髪の少女「まあ、この姿では仕方ないか」

赤髪の少女「オレだ」

勇者「……もしかして……ど、ドラゴン!?」

ドラゴン「その通り、オレは気高き竜だ」

勇者「待って、俺の知ってるドラゴンと違う」

女勇者「昔聞いた事があります、ドラゴン族にはドラゴンを人間に変える秘術があると」

ドラゴン「その通り、オレは貴様と契りを交わすために人間になったんだ」

勇者「ち、契り?」

女勇者「婚約の事です」

ドラゴン「これでオレは貴様と契りを交わしたな」

勇者「キスは婚約じゃねぇ!!」

ドラゴン「旅仲間を探しているんだろ、オレが加わる」

勇者「勝手に決めるな!!」

勇者「それに今のお前はただの少女だろ」

ドラゴン「オレの力をなめるなよ」


そう言うとドラゴンは息を大きく吸い、紅蓮の炎を吐いた


勇者「……」

ドラゴン「体だって貴様等よりずっと丈夫だ」

女勇者「わかりました」

勇者「マジか!?」

女勇者「人間になってまであなたに会いに来たのです、それに強いですし」ヒソヒソ

ドラゴン「本当か!?」

勇者「わかった、ただ結婚はしないぞ」

ドラゴン「ふふん、旅が終わるころには気も変わるさ」


こうして、人間になったドラゴン(巨乳)が仲間に加わったのだった。

※補足

ハンターについて

突然出てきちゃいましたが、ドラゴン編中盤には出る事が確定していました。

大抵の町にはハンターがおり、怪しい場所や人間の情報を聞くと捜査をし、逮捕します。

彼等はいわば世界警察の様なものです。

今日はここまでです。

キャラが増えてきたので、明日の補足でサラッと性格や年齢などを書きたいと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



勇者「今思うと前衛しかいないよな、このパーティー」

女勇者「そう言われるとそうですね」

ドラゴン「それがどうした?」

勇者「だから最後くらい後衛がほしいなって話」

女勇者「最高にどうでもいいです」

勇者「俺にとっては大事な事なの!!」

女勇者「別に今の状態で困る事も無いんですし、大丈夫です」

勇者「この先どんなのが出てくるかわかんねぇぞ」

女勇者「何が出てきても倒します」

勇者「確かにそうだけどやっぱり魔法使いとかほしいじゃん」

ドラゴン「今のままでいい気がするぞ」

勇者「怪我したら回復してくれる魔法使いがいないとこれから絶対厳しいぞ」

女勇者「下級魔法ですが回復なら私が出来ます」

ドラゴン「なら安心だ」

勇者「攻撃魔法は?」

女勇者「できません」

勇者「やっぱり一人は魔法使いがいる!!」

ドラゴン「魔法使いはそんなに便利なのか?」

勇者「火とかも操れるんだぞ」

ドラゴン「火ならオレも吐けるぞ」

女勇者「そうですね」

勇者「そういう事じゃねぇんだよ!!!」

女勇者「あなたは本当に面倒臭いですね」

勇者「じゃあお前等は何を仲間にしたいの?」

ドラゴン「もういらんだろ」

女勇者「正直誰でもいいです」

勇者「このままじゃいろいろ危険だろ」

ドラゴン「だいたい魔王を倒す必要があるのか?」

勇者「冒険の根本を否定すんじゃんねぇ!!」

女勇者「いいから次の町へ行きませんか?」

勇者「せめて計画を立てて仲間を探そうぜ」

ドラゴン「勇者、飯はまだか?」

勇者「町に着くまで我慢してくれ」

女勇者「勇者、いいからさっさとしてください」

勇者「わかったよ、行けばいいんだろ!!」

女勇者「そう言う事です」

ドラゴン「早く」

勇者「次は何処だ?」バサッ

勇者「えーと……」キョロキョロ

勇者「温泉の町が一番近いな」

ドラゴン「温泉?」

女勇者「大きなお風呂の事です」

勇者「この町はそれが有名なのか?」

女勇者「はい、町の宿屋にはすべて温泉がついているそうです」

勇者「ただのでかい風呂だろ」

女勇者「いえ、ただのお風呂と違い体にとてもいいそうです」

ドラゴン「人間は体にいいものが好きだな」

女勇者「人間はどんな体になろうとも長生きしたい人が多いですからね」

勇者「女勇者はどうなんだ?」

女勇者「私は体をめちゃくちゃにしてまで長生きする気はありません」

ドラゴン「勇者はどうだ?」

勇者「俺も変な体になるんなら長生きしたくないかな」

女勇者「とにかく行きますよ、日が暮れます」

勇者「そうだな、野宿は準備が面倒臭い」

ドラゴン「野宿した事あるのか?」

勇者「……ない」

女勇者「基本的に宿屋で寝てますからね」

勇者「……いいから行くぞ」スタスタ

女勇者「そうですね」スタスタ

ドラゴン「勇者、飯はまだか?」スタスタ

勇者「町までの辛抱だから」スタスタ

ドラゴン「……どれくらいだ?」スタスタ

勇者「一時間も歩けば着く」スタスタ

ドラゴン「……」トボトボ

勇者「お菓子ならあるぞ」スタスタ

ドラゴン「本当か!?」

勇者「食うか?」スッ

ドラゴン「ああ!!」モグモグ

女勇者「勇者、私ももらえますか?」

勇者「お前ってお菓子食ったっけ?」

女勇者「はい、大好きです」

勇者「ほれ」スッ

女勇者「ありがとうございます」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


温泉の町


勇者「案外早く着いたな」

女勇者「そんな事はどうでもいいです、早く宿を探しましょう」

勇者「相変わらずのドSだな、お前は」

女勇者「ドSですから、仕方ありません」

ドラゴン「宿なんて何処でもいいだろ」

勇者「俺達は貧乏旅だから、何処でもいいなんて言えないの」

女勇者「大丈夫です、村長の家から盗んでおいたお金があります」

勇者「テメェ何やってんだ!!」

女勇者「女大臣に渡したのですが持っていっていいと言ったので」

勇者「だからって持ってくるな」

女勇者「タンスを斬った時に拾ったので」

勇者「もはや盗人じゃん!!」

ドラゴン「細かい事はいいだろ」

勇者「細かくない、全然細かくない」

勇者「とにかくちゃんと返してこい」

女勇者「3000ゴールドも入っていますよ」

ドラゴン「どうする?」

勇者「……」

勇者「ありがたく使わせてもらおう」

女勇者「そうですね」

勇者「宿は普通の所でいいだろ」

女勇者「はい、贅沢は禁物です」

勇者「贅沢は敵だからな」

女勇者「そこの普通の宿屋でいいんじゃないですか?」

勇者「そうだな」

ドラゴン「勇者、飯は?」

勇者「お前そんなに腹減ってんの?」スタスタ

ドラゴン「元がドラゴンだからな」スタスタ

勇者「まあ、言われてみればそうだな」スタスタ

勇者「宿屋に着いたら飯食おうな」スタスタ

ドラゴン「ああ、約束だぞ」スタスタ

勇者「わかったわかった」スタスタ

女勇者「……結婚すればいいんじゃないですか?」スタスタ

勇者「する気は無い」スタスタ

女勇者「そうですか」

勇者「こんにちは」ガチャ

おばあさん「いらっしゃい、一部屋300ゴールドだよ」

女勇者「一部屋で」

おばあさん「はいよ、これ鍵ね」カチャン

女勇者「どうも」

勇者「早ぇよ!!」

女勇者「なんですか?」

勇者「だいたい三人で寝られるわけねぇだろ!!」

おばあさん「その部屋はシングルベッド一つとダブルベッド一つだから大丈夫だよ」

勇者「余計な事言ってんじゃねぇ!!」

勇者「俺お前等と寝るの嫌だよ」

女勇者「なら外で寝てください」

勇者「もっと嫌だ!!」

女勇者「なら我慢してください」

女勇者「だいたい私だってあなたと同じ部屋で寝るのは嫌なんです」

勇者「じゃあ別の部屋にしろよ!!」

おばあさん「文句言うんじゃないよ!!」

勇者「すいません!!」

キャラクタープロフィール

勇者   年齢18歳

小さな頃から苦労してきたため、性格が捻くれている。
目的のためなら犯罪まがいな事も出来る(ただし殺人はしない)。物凄いお人好し。

パーティーの中で一番スピードが速く、戦い方も独特。

好きな物はドラゴン系の大きくてかっこいいモンスター。


女勇者   年齢22歳   Aカップ

勇者と同じく小さい頃から苦労してきた。
最年長で、パーティーのまとめ役。
ドS。

胸が小さい事がコンプレックス(昔のあだ名はペチャパイ)。

隙が少なく、安定した戦い方をする。

好きな物は甘い物




ドラゴン     年齢(人間年齢)18歳   Dカップ

勇者と結婚するために人間になったドラゴン。
人間になったばかりなので人間社会の事をいまいち知らない。
勇者に対してとても積極的。

パーティーの中では最強の火力を誇る(通称バ火力)。

好きな物は勇者。



女大臣       年齢19歳     Cカップ

勇者達を見守る大臣。
とにかく何でもできる天才。
戦闘もめちゃくちゃ強い
両刀で、かわいい、美しいものなら何でも大丈夫(ただし触手はダメ)。

好きな物はエロ本(触手モノ以外)

今日はここまでです。

キャラクタープロフィールは新しいキャラクターが出てきたらまたやります。

温泉に入るのは明日になっちゃいました。

Dって巨乳じゃない…

女勇者「行きますよ」スタスタ

勇者「結局同じ部屋かよ」スタスタ

ドラゴン「楽しみだ」スタスタ

勇者「何も楽しみじゃねぇ……」スタスタ

おばあさん「温泉は奥だからね」

女勇者「わかりました」スタスタ

女勇者「ここですね」ガチャ

ドラゴン「おお、広いな」

勇者「そりゃ三人部屋だから」

女勇者「荷物はわかりやすい所に置いておいて下さいね」

勇者「荷物って言うほどの量じゃないだろ」ドサッ

女勇者「地図とスライムの笛だけですが立派な荷物です」

勇者「スライムの笛で思い出したけど、これ凄ぇ使えるんだぞ」

女勇者「そうですか」

勇者「約束だ、土下座しろよ」

女勇者「嫌です」

勇者「約束を守れ!!」

女勇者「私は一言も土下座をするとは言っていません」

勇者「……」

女勇者「私は夕飯を買いに行ってきます」スタスタ

勇者「逃げるのか?」

女勇者「バカは黙りなさい」ガチャ

勇者「……」

勇者「超ムカつくんだけど」

ドラゴン「オレが慰めてやろうか?」

勇者「別にいい」

ドラゴン「そうか……つまらんな」

勇者「もういい、寝る」ゴロン

ドラゴン「もう寝るのか?」

勇者「女勇者が帰ってくるまで寝る」

ドラゴン「そうか、じゃあオレも寝ていいか?」

勇者「勝手にしろ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夜 勇者たちの部屋


女勇者「ただいま帰りました」ガチャ

勇者「……」スヤスヤ

ドラゴン「……」スヤスヤ

女勇者「……」

勇者「ん、女勇者……?」ウトウト

女勇者「おはようございます」

勇者「ああ、今帰ってきたのか?」

女勇者「はい」

ドラゴン「……」スヤスヤ

勇者「はい?」


ドラゴンは勇者に抱きついたまま眠っていた。


女勇者「……」

勇者「待て、誤解だ!!」

女勇者「何も言っていませんが?」

勇者「視線が冷た過ぎる!!」

ドラゴン「ん、起きたのか?」

勇者「起きたのかじゃねぇ、なんで俺のベッドで寝てんだ!!」

ドラゴン「寝ていいか聞いたらいいと言っただろ」

勇者「誰が俺のベッドで寝ていいと言った!!」

ドラゴン「ダメなのか?」

勇者「ダメだ」

ドラゴン「契りを交わした男女は同じ布団で寝るのだろう?」

勇者「だから結婚してねぇよ!!」

女勇者「わかりましたから夕食の準備を手伝ってください」ガサガサ

勇者「わかったわかった」

ドラゴン「夕飯はなんだ?」

女勇者「あなたの大好きな肉です」ドサッ

ドラゴン「おお!!」

勇者「もう調理してあるのか」

女勇者「この部屋では料理は出来ませんからね」

勇者「確かに」モグモグ

女勇者「そう言えば妙な噂を耳にしました」モグモグ

勇者「噂?」モグモグ

女勇者「はい、なんでも有名な暗殺者がこの町にいるそうです」モグモグ

ドラゴン「暗殺者?」モグモグ

女勇者「いわゆる殺し屋のです」モグモグ

勇者「目的は?」モグモグ

女勇者「わかりません、だから町の人が脅えているんです」

女勇者「あなた達も注意してくださいね、標的は私達かもしれないんですから」

勇者「でも俺達って恨まれるような事したっけ?」

女勇者「今の所行った町全てで恨まれる様な事をしています」

勇者「ああ、そうだったね」

勇者「でも俺達が狙われてるかどうかもわかんねぇぞ」

女勇者「ですが用心する事に越したことは無いでしょう」

勇者「まあ、そうだな」

ドラゴン「もし襲われたらどうする気だ?」

女勇者「殺します」

勇者「極端過ぎ」

女勇者「勇者、片付けをお願いしていいですか?」

勇者「了解」

女勇者「ドラゴン、温泉に行きませんか?」

ドラゴン「いいぞ」

女勇者「勇者、片付けは任せましたよ」ガチャ

勇者「わかってる」

ドラゴン「女勇者は温泉に入った事あるのか?」スタスタ

女勇者「ありません」スタスタ

女勇者「ドラゴンは入った事ありますか?」スタスタ

ドラゴン「オレは風呂自体初めてだ」スタスタ

女勇者「ここですね」ガチャ

勇者「お風呂のマナーはわかりますか?」

ドラゴン「ここで服を脱げばいいんだろ」ヌギヌギ

女勇者「意外と知っているんですね」ヌギヌギ

ドラゴン「オレは気高き竜だからな」ヌギヌギ

女勇者(やっぱり大きいですね……)

ドラゴン「あそこに入るんだろ」ガラガラ

女勇者「タオルはいいんですか?」キュッ

ドラゴン「風呂は裸で入るんだろ」スタスタ

女勇者「そうですが……まあいいですか」

ドラゴン「温かいな」チャポン

女勇者「温泉ですからね」チャポン

ドラゴン「なあ、女勇者は勇者の何なんだ?」

女勇者「いきなりですね……」

ドラゴン「どうなんだ?」

女勇者「ただの旅の仲間です」

ドラゴン「本当か?」

女勇者「はい、あんなバカの事などどうでもいいです」

ドラゴン「そうか……」

女勇者「それに勇者はあなたの物でしょ」

ドラゴン「……かわいい奴だな、貴様は!!」ダキッ!!

女勇者「ど、ドラゴン、離してください!!」

ドラゴン「これくらいいいだろ」

女勇者「よくありません!!」


女勇者はドラゴンを掴むと全力で背負い投げをする


ドラゴン「うお!?」ドボーン!!

女勇者「まったく……」

ドラゴン「あはははは、凄いな!!」

女勇者「なんで笑っているんですか……」

ドラゴン「なあ、契りを交わした男女はある事をするんだろ?」

女勇者「まあ……はい」

ドラゴン「具体的に何をするんだ?」

女勇者「ドラゴン……それを勇者に聞きましたか?」

ドラゴン「聞いてない」

女勇者「……結婚した男女は性交をするんです」

ドラゴン「……ああ、繁殖行動の事か」

女勇者「確かにそうですが少し違うと言うかなんと言うか……」

ドラゴン「繁殖行動じゃないのか?」

女勇者「だいたいドラゴンは爬虫類、人間は哺乳類ですよ」

ドラゴン「今の俺は哺乳類だ」

女勇者「……繁殖行動です」

ドラゴン「まあ、繁殖行動は生物の基本だからな」

女勇者「……言っておきますが、今夜するとか言わないで下さいよ!!」

ドラゴン「ダメなのか?」

女勇者「ダメに決まっています!!」

ドラゴン「繁殖行動は動物のもっとも重要な行動だろ」

女勇者「……あなたは人間の事をどのくらい知っているんですか?」

ドラゴン「ほとんど知らないな、あはははは!!」

女勇者「笑いごとではありませんよ」

ドラゴン「まあ、ゆっくり覚えていくさ」

女勇者(ドラゴンには人間の事を教える必要がありますね)

ドラゴン「そう言えば、なんでタオル巻いてんだ?」

女勇者「風呂ではタオルを巻く人と巻かない人に別れるんです」

ドラゴン「胸が小さいとタオルを巻くのか?」

女勇者「違います!!」

ドラゴン「そうか」

女勇者「とにかく私と勇者であなたに人間の事を教えます」

ドラゴン「すまんな」

女勇者「今のままだと何をするかわかったものではないので」

ドラゴン「なんか言ったか?」

女勇者「何でも無いです」

今日はここまでです。

>>195

おっぱいの件ですが、C、Dくらいから巨乳と言う事でお願いします。

世間の基準はどれくれいなんだろう……

>>207


C・Dで「巨」とか・・・ハードル低いなwww

重要な事を聞きたいのだが、ドラゴンは卵を盗まれたって話だが鶏みたいに無精卵も産み落とすのか?



それとも独自の設定があるのかな?

~~~~~~~~~~~~~


廊下


勇者(間違って女湯入っちまったけど、誰にも気づかれなかった……)

勇者「言っとくが覗きにいったんじゃねぇからな!!」

勇者「裸に興味が無いかと言えば嘘になるけど」

勇者「それにしても俺ってそんなに存在感無いのか……」

勇者「しかも裸見ちゃったし……まあセーフだよな、多分」

勇者「つーかなんで話しかけたのにバレねぇんだよ!!」

勇者「……やめよう、一人でつっこんでも寂しいだけだ」

勇者「今度こそ男湯に行こう」スタスタ

勇者「それにしても女勇者ホントに胸無かったな……」ヌギヌギ

勇者「ドラゴンが横に居たってのもあるけどあれはあれでかわいそうだった」ヌギヌギ

勇者「ペチャパイって言ったら怒るだろうな」ヌギヌギ

勇者「ドラゴンは凄かった、いろんな意味で凄かった」ヌギヌギ

勇者「言っとくが、見たくて見たわけじゃねぇからな、たまたま目に入っちまっただけだからな」

勇者「そう、あれは事故だ、誰も悪くない!!」スタスタ

勇者「これが温泉か」チャプン

勇者「……温泉ってのもいいな」

チガイマス!!

勇者(なんか騒いでるな)

勇者「平和で何よりだ、うん」

???「お前が勇者か?」

勇者「ん、なんか言ったか?」

???「お前が勇者なのか?」

勇者「……まず出てこい、話はそれから」

???「わかった」スタスタ


そこに現れたのは見かたによっては男にも女にも見える勇者より年上の黒いローブを纏った人間だった。


勇者「誰だお前?」

???「俺は暗殺者だ、聞いてないのか?」

勇者「暗殺者ね……噂では聞いた、俺を殺しに来たのか?」

暗殺者「お前を殺しに来たわけじゃない、希望があるなら殺してやるぞ」

勇者「遠慮しとく、厄介事は嫌いだし」

勇者「なら何の用?」

暗殺者「お前は有名人だから一目見ようと思って来た」

勇者「俺が有名人?」

暗殺者「あれだけいろいろすればそりゃ有名にもなる」

勇者「自覚はねぇけどな」

暗殺者「自覚がなくても周りの連中は騒ぐ」

勇者(俺達を殺しに来たわけじゃなさそうだな)

勇者「この町に来た理由はなんだ?」

暗殺者「とある男を殺しに来た」

勇者「依頼主は?」

暗殺者「それは言えない」

勇者「ふーん、ならいいよ」

暗殺者「……お前変人か?」

勇者「俺毎回変人って言われてないか?」

暗殺者「俺に聞くな」

勇者「ああ、すまん」

ドラゴン「勇者いるか?」スタスタ

勇者「……」

ドラゴン「やっぱりいたな」ニッコリ

勇者「お前は何しに来てんだ!!」

ドラゴン「嫌な臭いがしたんでな」

勇者「嫌な臭い?」

暗殺者「俺の事か?」

ドラゴン「貴様に決まってるだろう」

勇者「いいからタオルを巻け、タオルを!!」キュッ

ドラゴン「貴様のタオルは腰だけなのか?」

勇者「女と男ではタオルのサイズが違うの」

暗殺者「タオルが透けて余計エロくなったような気がするのは俺だけか?」

勇者「もう一枚巻いとけ」キュッ

ドラゴン「風呂は裸で入るものなんだろ?」

勇者「そうだけどタオルを巻くのがマナーなの」ポタポタ

勇者「つーかお前どっから来たの?」ポタポタ

ドラゴン「壁に穴を開けてきた」

勇者「何してんだ!!」ポタポタ

ドラゴン「勇者、鼻から血が出ているぞ、あいつにやられたのか!?」

勇者「どちらかと言うとお前にやられた」ポタポタ

ドラゴン「?」

女勇者「ドラゴン、何をしているんですか!!」タタタッ

勇者「俺と大差ねぇ胸――――」


勇者がその言葉を言い終わる前に女勇者の蹴りが勇者を襲う。


勇者「……」ドボーン!!

ドラゴン「大丈夫か?」

勇者「なんとか……」

勇者「悪いけど引っ張ってくれない?」

暗殺者「仕方ない」ガシッ

勇者「悪い」

女勇者「自業自得です」

勇者「そりゃすいませんね」

暗殺者「ふーん、全員集合か」

女勇者「あなたは?」

勇者「お前がさっき言ってた暗殺者だ」

女勇者「何の用ですか?」

暗殺者「勇者にも言ったが俺はお前等の相手をするために来たわけじゃないんだ」

ドラゴン「……貴様、人間じゃないな?」

勇者「え!?」

ドラゴン「ベースは人間だ、だが何かと混ざってるな?」

暗殺者「さすがはドラゴン、大正解」

女勇者「強さを得るために人間であることをやめた人間ですか」

勇者「よく知ってるな、お前等……」

女勇者「一般知識です、あなたは本当にバカなんですね」

勇者「どうせ俺はバカですよ」

ドラゴン「臭いからして……吸血鬼か?」

暗殺者「大正解、そこまでわかるのか」

勇者「吸血鬼と合体したって事か?」

女勇者「まあ、簡単に言えばそう言う事です」

勇者「俺でも出来るのか?」

女勇者「あなたはスライムとでも合体していてください」

勇者「しねぇよ!!」

勇者「お前の体の半分は吸血鬼って事?」

暗殺者「いや、ゾンビも交じってるから、三分の一が吸血鬼だ」

女勇者「そこまで混ぜてよく理性を保っていられますね」

勇者「どういう事?」

女勇者「人間とは違う思考、考え方を持ったの動物と混ざったわけですから精神に相当な負担がかかっているはずです」

暗殺者「まあ、合体した時はかなり不安定だった」

勇者「ゾンビに理性は無いだろ」

暗殺者「ああ、だが理性が無い分、体の力を制御せず存分に使える」

勇者「おぞましいな、いろんな意味で」

暗殺者「これぐらいしなけりゃ強くなれない」

ドラゴン「女で殺し屋の世界に居るのは過酷だもんな」

勇者・女勇者「え!?」

ドラゴン「ん、気付いてなかったのか?」

女勇者「しゃべり方が男だったので」

勇者「顔も中性的だし」

暗殺者「凄いな、そこまでわかるのか」

ドラゴン「ふふん、オレをなめるなよ」

勇者「それも臭いか?」

ドラゴン「ああ、竜は鼻がいいんだ、男と女じゃ臭いが全然違う」

暗殺者「面白いな、あんたら、気に入ったよ」

勇者「そりゃどうも」

女勇者「ところであなたの標的は誰ですか?」

暗殺者「俺が狙ってるのはとある男だ」

女勇者「もう少し詳しく教えてください」

暗殺者「金髪のムカつく野郎だ」

勇者「知ってるか?」

女勇者「私は知りません」

ドラゴン「オレもだ」

暗殺者「まあ、今日はあいさつに来ただけだ、またな」ピョンッ

勇者「……何だったんだあいつ?」

女勇者「私に聞かないでください」

ドラゴン「勇者、一緒に入ろうぜ!!」ダキッ

勇者「ちょ……離せ!!」

ドラゴン「夫婦なんだし、いいだろ」

勇者「だからいつ夫婦になった!!」

勇者「マジで離れてくれ、胸が―――――」


勇者がその言葉を言い終わる前に女勇者の跳び蹴りが直撃し、ドラゴンと二人仲好く温泉に落ちる。


勇者「テメェふざけんな!!」

女勇者「先に出ますね」

女勇者「ドラゴン、行きますよ」スタスタ

ドラゴン「勇者と一緒に―――――」

女勇者「行きますよ!!」

ドラゴン「あ、ああ」スタスタ

女勇者「そこ直しといてくださいね」スタスタ

勇者「ドラゴンが壊したんだろぉが!!」

女勇者「あなたの嫁でしょ、あなたの仕事です」

勇者「ざけんな!!」

女勇者「覗きに来ましたよね?」

勇者「……」

女勇者「私達の裸見ましたよね?」

勇者「あれは事故だ」

女勇者「言い訳です」

女勇者「大事な部分を斬り落されるのと壁を直すののどっちがいいですか?」

勇者「……直せばいいんだろ!!」

女勇者「そう言う事です」

※補足

ドラゴンについて

>>211
ドラゴンは有精卵しか生みません、無性卵が採れるなら村長達も密猟なんてしません。

ちなみにドラゴンは卵を産んだ事が無いです。

運悪く村長達に目を付けられてしまっただけです。

今日はここまでです。

他にも聞きたい事があったら自由に書いといて下さい



>>232
>>1さんも変人さんですか?(ハァハァ

~~~~~~~~~~~~~~~~~


部屋


勇者「ただいま」ガチャ

女勇者「片付きましたか?」

勇者「どんだけ大変だったと思ってんだ?」

ドラゴン「すまんな」

勇者「本当にそう思うなら片付け手伝ってくれよ」

ドラゴン「オレが手伝えば倍時間がかかってたと思うぞ」

勇者「それもそうだな」

女勇者「綺麗に直っているんでしょうね」

勇者「人に頼んどいて文句言うんじゃねぇ!!」

女勇者「それにしてもその金髪のクソゴミ野郎とは誰なんでしょうか」

勇者「そこまで言ってなかったような気がする……」

ドラゴン「その金髪は強いのか?」

勇者「さあ、とにかくその金髪には関わらないほうがいいな、めっちゃ面倒臭そうだし」

女勇者「自分から進んで面倒臭い事をするくせによく言えますね」

勇者「したくてやってるわけじゃねぇから」

女勇者「私には進んでそう言う事をやっているように見えますが」

ドラゴン「不幸体質だもんな」

勇者「それは認めるけど……」

女勇者「どうせ今回もあなたのせいで面倒事に首を突っ込む羽目になるんです」

勇者「俺のせい?」

女勇者「当たり前です」

ドラゴン「あはははは、さすが勇者」

勇者「一体何が面白い……」

女勇者「明日は全員で行動しますからね」

勇者「なんで?」

女勇者「あなたとドラゴンを暴走させないためです」

ドラゴン「オレ達が暴走するように見えるのか?」

女勇者「逆に暴走しない自信があるんですか?」

勇者・ドラゴン「無い」

女勇者「だったら全員行動します」

勇者「言っとくけどお前だってよく暴走するからな」

女勇者「それはそうですね」

ドラゴン「お前すぐ斬りかかるんだろ」

女勇者「否定はしません」

勇者「とにかく明日は全員行動って事でいいな?」

女勇者「はい」

ドラゴン「具体的には何をするんだ?」

勇者「仲間探し」

女勇者「買い物です」

勇者「いまさら買い物?」

女勇者「この先どんな敵が出てくるかわかりません、回復道具などを買っておくべきです」

勇者「じゃあやる事は二つだ」

女勇者「明日は早いですからね、二人も早く寝なさいよ」

勇者「はいはい」

ドラゴン「わかった」

女勇者「私は寝ますね」ゴロン

勇者「おい」

女勇者「なんですか?」

勇者「何シングルで寝てんだ、お前はドラゴンとダブルベッドだろ」

女勇者「夫婦なんですから一緒のベッドで寝てください」

勇者「だから夫婦じゃねぇって言ってんだろ!!」

ドラゴン「勇者、早く寝るぞ」

勇者「そこでは寝ねぇ!!」

勇者「女勇者、さっさと退け!!」

女勇者「退くわけ無いじゃないですか」

勇者「……テメェ」

女勇者「黙っててくださいね……」

勇者「ふざけんなよ」

女勇者「騒がしくしたら殺しますからね」

勇者「……」

女勇者「……」スヤスヤ

勇者「寝るの早ぇな」

ドラゴン「寝たのか?」

勇者「ああ、もういい、俺も寝る」ゴロン

ドラゴン「そうだな」

勇者「寝ないのか」

ドラゴン「ふふ、いい夜だからな」

勇者「そうか?」

ドラゴン「こんな夜は空を飛びたくなるよ」

勇者「飛ばないのか?」

ドラゴン「今のオレは人間だ、空は飛べんよ」

勇者「……悪いな、知らなかったよ」

ドラゴン「気にするな、オレの選んだ道だ」

勇者「ドラゴン……」

ドラゴン「今は睦言を交わそうではないか」


そう言うとドラゴンは勇者に馬乗りになる。


勇者「え、は?」

ドラゴン「勇者、一つになろうか」


ドラゴンは勇者を強く抱きしめる。


勇者「おい、いい話が台無しだぞ!!」

勇者「この話でそれは無いだろ!!」

ドラゴン「邪魔者もいない、それに結婚した男女は繁殖行動を行うんだろ?」

勇者「待て、それは合ってる、けど間違ってる!!」

ドラゴン「女勇者は今夜はするなと言っていたが、善は急げだ」


そう言うとドラゴンは勇者と唇を重ねる。


勇者(このまま流されてもいいかな……待て、これは不味い、いろいろな意味で不味い!!)

勇者「女勇者が隣で寝てるから」

ドラゴン「それがどうした?」

勇者「いや、ある種興奮するけど……じゃなくて流石にこれはダメだ」

ドラゴン「勇者は嫌なのか?」

勇者「嫌っていうか……」


ドラゴンの手が勇者の股間を軽く触る。


勇者「落ち着け、やめろ……」

ドラゴン「ふふん、口では嫌がっているが、体は正直だ――――――」


女勇者の跳び蹴りでドラゴンの言葉は中断される。


勇者「お、女勇者さん……起きてらっしゃったんですか……」


女勇者の踵が勇者の股間を襲う。


勇者「ちょ……それは反則……」

女勇者「黙りなさい、何がある種興奮する、ですか」

勇者「聞いてたのか……」

女勇者「あなたは痴女だったんですか」

勇者「女じゃねぇし」

女勇者「黙りなさい」


女勇者の踵がもう一度勇者の股間を襲う


勇者「お前……めちゃくちゃ……」


ドラゴン「ずっと起きてたのか、あははははは!!」

勇者「なんで満面の笑みを浮かべてるの?」

女勇者「私に聞かないでください」

ドラゴン「勇者、続きはまた今度だ」

勇者「やらねぇよ」

女勇者「いいからさっさと寝なさい」

勇者「わかったわかった」ゴロン

ドラゴン「仕方ないな……」ゴロン

勇者「寝る子は育つからな、胸が……」ボソッ

女勇者「ベッドを血で染めたいようですね」

勇者「ごめんなさい」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


朝 街中


勇者「まずは買い物でいいか?」スタスタ

女勇者「はい」スタスタ

勇者「迷子になるなよ」スタスタ

ドラゴン「オレを誰だと思ってるんだ?」スタスタ

勇者「気高き竜だろ」スタスタ

ドラゴン「ああ、その通りだ」スタスタ

ザワザワ

女勇者「ずいぶん視線を感じますね」スタスタ

勇者「暗殺者の言うとおり有名人みたいだな」スタスタ

女勇者「あれだけ暴れたんですから当然ですね」スタスタ

勇者「それほど暴れた覚えは無いんだよな」スタスタ

女勇者「あなたの思っている三倍は暴れてますよ」スタスタ

ドラゴン「オレもそう思うぞ」スタスタ

勇者「俺ってそんなに暴れてたか?」スタスタ

女勇者「勇者ですし、有名になる事は悪い事では無いですよ」スタスタ

勇者「出来ればもっといい事で有名になりたかった」スタスタ

女勇者「私が思うに無理だと思います」スタスタ

ドラゴン「勇者に普通って言葉は似合わないしな」スタスタ

勇者「喜んでいいの?」スタスタ

ドラゴン「褒め言葉だぞ、一応」スタスタ

勇者「一応って……」スタスタ

女勇者「すいません、薬草と回復薬と毒消し草をもらえますか」

店の人「全部で300ゴールドだ」

女勇者「どうぞ」チャリン

店の人「まいど」

勇者「思ったよりすぐ終わったな」

女勇者「次の場所に行きましょうか」

勇者「次は何処に?」

女勇者「酒場です」

ドラゴン「酒場に何しに行くんだ?」

女勇者「仲間を探すには最適の場所です」

勇者「……お前意外といい奴」

女勇者「意外とは余計です」

勇者「酒場はあっちだ」スタスタ

女勇者「急に元気になりましたね」

ドラゴン「酒場なら飯が食えるな!!」スタスタ

女勇者「二人とも元気ですね」スタスタ

勇者「早く早く!!」

ドラゴン「女勇者、腹減ったぞ!!」

女勇者「なんだかんだ言っても仲良しじゃないですか」スタスタ

勇者「こんにちは」ガチャ

イケメン「朝っぱらから買い物なんて……もう少し休ませてくれよ」

魔法使い「朝は安いんだよ!!」

女戦士「魔法使い、静かにしなさい」

遊び人「つまんないわねー、朝から買い物に行くくらいだったらどっかに遊びに行かない?」


奥の席に居たのは、銀の鎧を身にまとった金髪の美少年をリーダーとしたパーティーだった。


勇者「金髪……」

ドラゴン「あれが暗殺者が言ってた奴か?」

勇者「まだわかんねぇけど多分そうだろうな」

女勇者「なんとなくムカつきますね」

勇者「初対面の人間にそういう事言っちゃいけません」

イケメン「ん、君達もパーティーかい?」

勇者「そうだけど」

イケメン「……そうかそうか、と言う事は君が勇者なのかな?」

勇者「なんで知ってんだ?」

イケメン「君達は有名じゃないか」

勇者「つーかお前誰だ」

イケメン「はっはっは、自己紹介が遅れたね、僕の名前はイケメン、君の兄だ」

勇者「は!?」

女勇者「あなた兄がいたんですか!?」

勇者「いない……何言ってんだお前」

イケメン「父親は違うけど母親は同じだよ」

イケメン「僕を生んだあとにあの人は君の父親と結婚して君を生んだんだ」

イケメン「異父兄弟って事だね」

勇者「……」

イケメン「まあ一度も会ったことが無いんだったら仕方ないかもしれないね」

勇者「あの人なら普通にあり得るな」

女勇者「ビッチですからね、あの人は」

勇者「下手するともっと子供がいそうだもんな」

勇者「つーか勇者って二人以上居ていいもんなのか?」

イケメン「そりゃいいさ、勇者の子孫が一人しかダメなんて法律は無いからね」

女勇者「あなたと全然似てませんね」

勇者「父親が違うからだろ、多分」

イケメン「僕のパーティーを紹介するよ」

イケメン「そこの小さいのが魔法使いだ」

魔法使い「魔法使いだよ、よろしくね!!」


15歳ぐらいの短めの髪の少女が一歩前に出てお辞儀をする。


イケメン「で、こっちが女戦士」

女戦士「女戦士です」


女勇者と同じくらいの年のポニーテールの女性が無愛想に返事をする。


イケメン「で、最後が遊び人だ」

遊び人「どうもー」


20歳後半くらいの金髪のナイスバディーな女性が微笑みながら挨拶をする。



イケメン「そっちのパーティーは?」

女勇者「女勇者です」

ドラゴン「オレは気高き竜だ」

勇者「ここは俺が紹介するんじゃないの?」

女勇者「気のせいです」

今日はここまでです。

すいませんが明日は休ませていただきます。頼んどいたエロゲが届くので

>>234
変人であり変態です。

それなんてエロゲ?

勇者(……何だろう、あっちのパーティーが凄く羨ましい)

魔法使い「前衛しかいないの?」

女戦士「バランスが悪いパーティーですね」

女勇者「初対面にそんな事を言うなんて、よほど常識が無いんですか?」

勇者「お前が言うな」

ドラゴン「なあ、あいつはオレの義兄になるのか?」

勇者「なんで風呂でタオル巻く事は知らねぇのに義兄は知ってんの?」

ドラゴン「知識が偏ってるだけだ、あはははは!!」

勇者「お前時々意味わかんねぇ所で笑うよな」

ドラゴン「そうか?」

勇者「まあ、面白いしかわいいからいいんだけどさ」

ドラゴン「突然うれしい事を言ってくれるな、貴様は」

女勇者「イチャイチャするなら外でやってきてください」

勇者「俺がいつイチャイチャした!!」

女勇者「現在進行形でイチャイチャしてます」

イケメン「ちょっといいかい?」

勇者「何?」

イケメン「君とは一度話しておきたかったんだ」

勇者「俺と?」

イケメン「うん、お互い勇者なんだし話しておいて損は無いだろ」

勇者「俺は別に話す事はねぇぞ」

イケメン「僕はあるんだ」

勇者「手短にしろよ」ドサッ

女戦士「私達は席を外した方がいいですか?」

イケメン「別にここにいてくれていいよ」

女勇者「私達は出ていく気は無いですからね」

ドラゴン「夫婦はずっと一緒にいるものだろ?」

勇者「うん、知ってる、そしてわかってる」

勇者「で、何の話がしてぇんだ?」

イケメン「君の正義についてさ」

勇者「正義?」

イケメン「僕は世の中から悪を全て排除するためにこうやって旅をしているんだ」

イケメン「君は何のために旅をしているんだい?」

勇者「俺はそんなこと考えた事もねぇよ」

イケメン「俺はただ王様に頼まれたから魔王討伐の旅をしてる、それだけ」

女戦士「あなた達に正義は無いんですか?」

女勇者「正義で飯が食べられますか?」

ドラゴン「正義が絶対に正しいとは限らんだろ」

勇者「悪いけど俺達はそういう人間の集まりなんだ」

イケメン「……勇者なのに正義が無いのか?」

勇者「だいたい正義って言葉自体が曖昧で微妙な言葉だろ」

勇者「お前は世界から悪をすべて排除するって事が正義なんだろ」

イケメン「その通りだ」

勇者「仮にそれを正義ってするなら俺達は正義を持ってない」

女勇者「私達は自分達がやっている事を正義と感じた事もありませんし」

ドラゴン「オレ達は自分が正しいと思った事をやってるだけだ」

勇者「そう言う事」

イケメン「君達……」

遊び人「まあ、言ってる事は一理あるわね」

ドラゴン「話がわかるな、貴様」

遊び人「どうもありがとう」ニッコリ

勇者「俺の言いたい事はそれだけだ」

イケメン「君達とはうまくいきそうにないね」

勇者「俺もそう思う」


その時数十本のナイフがイケメン目掛けて飛んでくる。


勇者「おい!!」

イケメン「焦っちゃダメだよ」


イケメンは剣を鞘から抜くと大きく振り、ナイフを全てたたき落とす


勇者「……凄ぇな」

イケメン「これくらい出来て当たり前だろ」

イケメン「出てきたらどうだい」

暗殺者「やっぱ死なないよな」ピョンッ

勇者「やっぱりお前だったか……」

暗殺者「まさかあんたとこいつが兄弟だったなんてね」

イケメン「今度こそきちんと殺さないとね」

暗殺者「それはこっちの台詞だ」

暗殺者「刺し違えても殺してやるよ」

勇者「勝てるのか?」

暗殺者「勝てるわけ無いだろ、だけど引く気はないね」

勇者「……」

女勇者「勇者……」

勇者「わかってるよな」

女勇者「あなたは本当に厄介事が好きですね」

勇者「ドラゴン」

ドラゴン「ああ、わかってる」

勇者「殺すなよ」

ドラゴン「わかってる」ニッコリ


ドラゴンの拳が暗殺者の腹に突き刺さる。


暗殺者「が……は!?」

勇者「悪いけどお前を見殺しには出来ない」

暗殺者「な……ぜだ!?」

女勇者「自分から命を落とすなんてバカなんですか?」

暗殺者「俺はあいつを殺すために……」

ドラゴン「ちょっと黙ってな」

勇者「イケメン、剣をしまえ」

イケメン「悪いがそれは出来ない、そいつは悪だ」

勇者「世の中を善と悪で分けるんじゃねぇよ、バカ、死ね」

イケメン「退け」

勇者「剣をしまえ」

イケメン「……」

イケメンは動きを止め、剣を構えた。
目を閉じ、呼吸を調える。

勇者の体に戦慄がはしった。
理由は簡単だ。
体が恐怖を感じているのだ。
考えるよりも先に体が動く。

イケメンの剣が辺りを薙ぎ払う。
ゴウ、と言う轟音が酒場の中に響き渡った。
たった一撃。
たった一振り。
そのはずなのに半径3メートルにあった物が全て吹き飛び、床が剥がれ、粉々になる。

だが勇者には当たっていなかった。
勇者は後ろに大きく跳び、その攻撃をギリギリで回避していた。

正直予想以上の強さだ。
一撃でもくらえばと考えると背筋が凍った。
だがその半面に強い相手に心が高鳴る自分もいる。

いつの間にか勇者の顔にあった笑顔は消えていた。
勇者の目はいつの間にか獣の目へと変化している。

まずは相手の攻撃方法を理解しなければならない。

勇者は素早く思考する。
答えは恐ろしく単純だ。


「衝撃波か……」



勇者はヒノキの棒を握りしめながら苦々しくつぶやく。

1メートル弱の剣が3メートルを薙ぎ払える原理はわかった。
だがわかった所でそれを的確にかわせるかと言えばそれは難しかった。

言うならば目に見えない剣と戦うようなものなのだ。
目に見えない攻撃ほど厄介で回避し辛いものはない。

イケメンが勇者目掛けて走り出す。
その速度は圧倒的に勇者に劣っていた。

だが勇者は近づけない。

その圧倒的な攻撃範囲と、見えない攻撃を避ける自信は勇者には無い。

イケメンが剣を大きく振り上げる。
その姿にさっきまでの優男の姿は無い。
その姿はもはや大型の肉食獣そのもののようだった。

イケメンの剣が大きく振り下ろされる。

その一撃で数メートル先にある壁が轟音を立てて吹き飛ぶ。
正直洒落にならないほどの威力だ。

もちろん勇者にそんな大振りな攻撃は当たらない。
だが避けれらるからと言って勝てるわけではなかった。

広い攻撃範囲と異常な攻撃力。
下手に近づけばイケメンの格好の的だ。


「君は戦い方はスピードで敵を翻弄するタイプだね。だけどそんなものは僕には通じない」


イケメンは満面の笑みを浮かべる。
その顔は悪を倒せる事を心から喜んでいた。
それはさながら英雄のようだ。


「今のお前にとって俺は悪って事か?」

「そうだね、言っておくが僕は悪に対して容赦する気は無い、たとえ家族であってもね」


その言葉に勇者は苦笑する。
英雄が悪役を倒す物語。
その茶番っぷりに笑ってしまう。


「やっぱお前の考え方には賛同出来ねぇな」


イケメンの顔が僅かに曇る。
その顔はすぐに怒りの表情へと変わった。
怒りはやがて殺意へと変化する。

イケメンが大きく一歩前に出た。
勇者との距離を推し測り、剣を構える。

勇者もイケメンを睨みつけた。
逃げる気は無い。

戦う事だけに集中し、それ以外の思考を全てストップする。
全てを忘れ、今だけを見る。

イケメンの剣が辺りを薙ぎ払った。

テーブル。
椅子。
床。
あらゆる物が吹き飛び、あるいは粉々になる。

しかし吹き飛んだ瓦礫の中に勇者の姿は無い。

勇者はイケメンの背後にいた。
それこそ光の如き早さで背後に回り込んでいた。

全力の一撃を放ったイケメンは隙だらけだ。

脇腹に激痛が走り、口の中が血の味がする。
どうやら衝撃波を完全に避けきれたわけでは無いようだ。
だがそんな事を気に留めている時間は無い。

勇者はヒノキの棒を構え直し、イケメンに襲いかかる。

ヒノキの棒がイケメンの顔面をとらえる。

容赦などしない。
メキリ、と言う音を勇者は聞いた。

だがイケメンは倒れない。
それどころか剣を大きく振りかぶり攻撃態勢に入っている。
額からはおびただしい量の血が流れている。
なのにイケメンは全くその事を気にしていないようだった。

勇者の背筋が凍る。
逃げ切れないとわかっていても無意識に後ろに跳び、ヒノキの棒を盾にしてしまう。

轟音と共にヒノキの棒が折れ、腹部に激痛がはしった。

踏ん張る暇も無く、酒場の外まで吹き飛ばされる。


「……」


イケメンは頬から血を流し、勇者を見ていた。

吹き飛ぶ瞬間に投げたヒノキの棒の片割れが掠めたのだろう。

体を動かそうとすると激痛が走った。
だが激痛に耐えながらも立ち上がる。


「まさか……これが全力じゃねぇよな?」


歪な笑顔を浮かべながら問いかける。

正直動けるかどうかも不安だが、そんな事は気にせず相手を挑発する。


「まだやるのかい?」

「俺はまだ死んでね――――ごほっ!!」


吐血する。
体はもう限界に近いようだ。
気付けば指先の感覚が無い。


「正直、君と殺り合うのは早すぎたね」


イケメンはそれだけ言うと剣を鞘にしまった。

今日がここまでです。

エロゲをやり過ぎて地の文を書く時間が少なかったため、誤字脱字が多いかもしれません。

>>255

サバト鍋の「竜✝恋」です。とても面白かったです。

勇者「テメェ……」

イケメン「兄さんと呼んでくれ」

勇者「呼ぶかボケ!!」

勇者「ごほごほ!!」

イケメン「君を殺すのはまた今度だ」

勇者「俺はまだやれるぞ」

イケメン「今の君を殺す気はない」

イケメン「次会ったときに君を殺す事にするよ」

勇者「何のつもりだ」

イケメン「君と戦ってみてわかったよ、君は正義の悪党だ」

勇者「意味わかんねぇよバカ、死ね」

イケメン「君とは本物の剣で殺り合いたいね」

勇者「……」

イケメン「また会おうか」スタスタ

勇者「酒場直せよ!!」

イケメン「悪を滅ぼすためには犠牲も必要なのさ」

勇者「マスター涙目だぞ!!」

イケメン「じゃあ僕が半額払おう」

勇者「全額払えバカ、死ね」

イケメン「お金はここに置いておきますよ」チャリン

マスター「あ、はい」

イケメン「じゃあまた今度」スタスタ

勇者「ま、待て……」

勇者「う……」フラッ

ドラゴン「勇者!!」タタタッ

女勇者「とにかく回復を」ポワワン

勇者「わ、悪い」

マスター「君達は払えるかい?」

勇者「えーと……無理だ」

マスター「……わかったよ」

勇者「俺達金ねぇんだ」

マスター「見ればわかるよ」

勇者「王様の住所書いとくから、そこに請求しといて」カキカキ

マスター「はいよ」

勇者「ごほごほ!!」

ドラゴン「大丈夫か!?」

勇者「た、多分」

女勇者「表面が治っただけで、中は治ってませんから動かないようにしてくださいね」

勇者「わかってる……」

勇者「……つーか暗殺者は?」

女勇者「さ、さあ私に聞かないでください」

勇者「つーかマジで死ぬかも……」

ドラゴン「勇者、死ぬなら最後にオレを抱け!!」

勇者「女の子がそう言う事大きい声で言っちゃいけません!!」

女勇者「そんなに元気なら死にませんよ」

勇者「ドラゴン、悪いけど肩貸してくれない?」

ドラゴン「ああ、いいぞ」ガシッ

勇者「ごほごほ!!」スタスタ

勇者「どんだけ火力高ぇんだよ、あいつ」スタスタ

女勇者「だいたい、勇者同士が殺し合うこと自体おかしいんです」スタスタ

勇者「でもあいつとわかり合う事は無いんじゃないかな……多分」スタスタ

ドラゴン「考え方が違い過ぎるからな」

勇者「ああ、ムカつく奴だ」



女戦士「とどめを刺さなくてよかったんですか?」スタスタ

イケメン「正直僕も限界なんだ」スタスタ

イケメン「血を流しすぎたしね」

遊び人「ヒノキの棒であそこまで戦えるなんて凄いわね」

イケメン「全くだよ、今殺すのは惜しい」

イケメン「彼が剣を持てば、本気で戦えそうだ」

魔法使い「遊んでたもんね、イケメン」

イケメン「正直ここまでやられるとは思ってなかったよ」

女戦士「泳がせておくんですか?」

イケメン「まあ、そうなるね」

女勇者「そんなにあの男は凄いんですか?」

イケメン「実際に剣を交えればわかるよ」

遊び人「あの勇者は剣じゃないけどね」

魔法使い「また戦う事になるの?」

イケメン「ああ、次に会うときは必ず殺すよ」ニッコリ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夜  宿屋


勇者「……ん?」

ドラゴン「目が覚めたか?」

勇者「俺……」

女勇者「寝ていたんですよ、帰って来てからずっと」

勇者「暗殺者は?」

女勇者「来てますよ」

暗殺者「……」

勇者「お、怒ってる?」

暗殺者「あれだけの事をしといて怒って無いと思うか?」

勇者「ですよね……」

暗殺者「俺は死んでもあいつに復讐したいかったんだ……」

ドラゴン「どうしてそこまで復讐にこだわる」

暗殺者「俺の師匠はあいつに殺された」

女勇者「あの金髪の目標は悪を根絶やしにする事ですから当然でしょうね」

暗殺者「なのにお前は俺の邪魔をした!!」

勇者「自殺しようとしてる人間を止めるのは普通の事だろ」

暗殺者「自殺じゃなく復讐だ」

勇者「ナイフ一本であいつを殺せると思ってたのか?」

暗殺者「……」

勇者「死ぬ気だったんだろ」

暗殺者「それは――――――」

女勇者「死ぬ事は復讐ではありませんよ」

暗殺者「わかってる!!」

暗殺者「でも俺はあいつを師匠のために殺したいんだ」

女勇者「復讐は師匠のためではなく自分のためでしょう?」

暗殺者「違う!!」

女勇者「違いません」

女勇者「あなたは復讐を言い訳に逃げているだけですよ」

暗殺者「う、うるさい!!」

女勇者「復讐以外に生きる糧が無いんでしょう?」

暗殺者「……」

女勇者「あなたは本当にかわいそうな人間ですよ」

女勇者「命令と復讐でしか生きられない人間」

暗殺者「ああ、俺はそれ以外生き方を知らない」

ドラゴン「裏社会の人間はそういう奴が多いからな」

勇者「どういう事?」

ドラゴン「貴様は何も知らんのだな」

勇者「悪かったな、何も知らなくて」

ドラゴン「いいさ、オレがちゃんと教えてやるよ」ニッコリ

勇者「無駄にエロいのは気のせいだよな」

ドラゴン「エロく言ったんだ」

勇者「ですよね」

女勇者「裏社会の人間に、楽しさや優しさは必要ない、むしろ邪魔なんです」

勇者「そう言う事か」

暗殺者「そうだ、だから俺には復讐しかない」

暗殺者「だから仕方ない――――――」


女勇者の拳が暗殺者の腹を撃ち抜く。


暗殺者「が……はあ!?」

女勇者「あなたはバカなんですか、バカなんですね」

勇者「おいおい……」

女勇者「言い訳ばっかりでムカつきます」

暗殺者「知らないんだ……」

女勇者「知らないんだったら知ろうと努力しようとしたらどうですか!!」

暗殺者「どうやってだ」

女勇者「自分で考えなさい!!」

勇者「言ってる事めちゃくちゃ……」

女勇者「私は言い訳が嫌いです」

勇者「わからんでも無いけどさ……」

ドラゴン「やけにイラついてるな」ヒソヒソ

勇者「あいつもいろいろつらい事あったからああやって言い訳して逃げる奴見るとイライラするんだと思う」ヒソヒソ

女勇者「勇者、暗殺者を連れていきましょう」

勇者「突然どうした!!」

暗殺者「何言ってんだ……」

女勇者「復讐以外の生き方を彼女に教えましょう」

勇者「俺はいいけどさ……」

ドラゴン「別にかまわんぞ」

暗殺者「……」

女勇者「復讐を捨てなさい」

女勇者「そして知りなさい」

ドラゴン「女勇者があんな事言うなんて珍しいな」

勇者「なんだかんだ言ってもこのパーティーは苦労人の集まりだし、放っとけないんだ」

勇者「お前を助ける時もなんだかんだで手伝ってくれたし」

暗殺者「いいのか?」

勇者「ああ、お前がいいならな」

暗殺者「……頼む」


こうして半分人外で一癖も二癖もある暗殺者が仲間になったのであった。

キャラクタープロフィール


イケメン   年齢20歳

勇者の兄。ドラゴンを超える火力と衝撃波が武器。
厳しい家庭で育ったため、悪を憎む心が強い。お金持ちの家の息子。
世の中を善と悪に分けようとする考え方は父親譲り。
元は弱いくせに偉そうなことを言う典型的な小物キャラだったが、ドラゴン編あたりでキャラ変更しこうなった。


暗殺者   年齢20歳前後   胸 普通サイズ

中世的な顔立ちの女性。実際イケメンにも美人にも見える。
裏社会で生きてきたため、楽しむこと、うれしい事を知らない。
詳しい年齢は不明。
ゾンビと吸血鬼と合体しているため、高い身体能力と、回復能力を持つ。
元は吸血鬼のおっさんだったがハーレムでいいかと思って女に変更。ただし性格としゃべり方は同じ。

今日はここまで。

>>283
ミスった……女戦士に脳内変換しといてください

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





女勇者「これで四人ですね」

勇者「そうだな……」

ドラゴン「元気が無いな」

勇者「俺の剣折れちゃったんだよね……もう使い物にならねぇ……」

ドラゴン「……そう言えばそうだったな」

女勇者「寿命でしょう、新しいのを買ったらどうですか?」

勇者「……そうするか」

暗殺者「少し遠いが、武器の町があるぞ」

勇者「何だそれ」

女勇者「世界各地の武器が集まる町です」

勇者「そんな町があったんだ」

暗殺者「有名だぞ」

勇者「そうなんだ、知らなかった」

女勇者「相変わらずバカですね」

暗殺者「けど遠い、結構遠い」

勇者「どれくらい?」

暗殺者「そうだな、少なくとも一日はかかる」

女勇者「となると野宿も覚悟しておかなければならないわけですか」

暗殺者「そう言う事だ」

勇者「でも行かないと武器が買えないだろ」

女勇者「少なくともイケメンや魔王に勝てる武器は手に入らないでしょうね」

勇者「じゃあ行くしかないだろ」

女勇者「そうですね、私も少し剣を見たいですし」

ドラゴン「じゃあ出発だ」

勇者「そう言えばお前等の武器ってなんだ?」スタスタ

ドラゴン「オレは拳だ」スタスタ

暗殺者「基本はナイフだが使おうと思えば何でも武器にする」スタスタ

勇者「じゃあ武器はいらないのか?」スタスタ

ドラゴン・暗殺者「ああ」スタスタ

女勇者「野宿ってどうやるんですかね」スタスタ

勇者「なんだかんだで初めてだもんな」スタスタ

ドラゴン「適当な場所で寝ればいいだろ」スタスタ

勇者「野宿ってそんなもんなのか?」スタスタ

女勇者「違います」スタスタ

勇者「じゃあどういうのなんだ?」スタスタ

暗殺者「基本はテントを張ってそこで寝るもんだ」スタスタ

勇者「テントなんて持ってねぇよ」スタスタ

ドラゴン「じゃあ地面に寝るんだな」スタスタ

女勇者「簡易テントとか持ってないんですか?」スタスタ

暗殺者「一応あるけど」スタスタ

女勇者「けどなんですか?」スタスタ

暗殺者「三人用しか持ってない」スタスタ

女勇者「一人が見張りをすればいいでしょう」スタスタ

勇者「……俺の事?」スタスタ

女勇者「男でしょう」スタスタ

勇者「そう言うと思った」スタスタ

女勇者「嫌なんですか?」スタスタ

勇者「俺だってテントで寝てぇ」スタスタ

女勇者「あなたとドラゴンが一緒のテントで寝たら大惨事になるじゃないですか」スタスタ

勇者「なるか!!」スタスタ

ドラゴン「続きは今日にするか?」スタスタ

勇者「今度こそ女勇者に殺される」スタスタ

暗殺者「俺は気にしない」スタスタ

女勇者「そう言えばあなたの体はどうなっているんですか?」スタスタ

暗殺者「一応ベースは女の体だ」スタスタ

暗殺者「ちゃんとあそこもある」スタスタ

勇者「じゃあところどころ吸血鬼とかゾンビみたいな部分があるのか?」スタスタ

暗殺者「見た目にはそこまで変わった部分は無いが体の中はだいぶ変わってるらしい」スタスタ

勇者「心臓が二つあるとか?」スタスタ

暗殺者「さすがにそこまでは変化しない」スタスタ

暗殺者「自然治癒能力が上がってたり、基礎能力が高かったりするくらいかな」スタスタ

勇者「それでも十分凄いじゃん」スタスタ

暗殺者「まあな」スタスタ

勇者「お前のそのしゃべり方と顔も合体のせいか?」スタスタ

暗殺者「ああ、ゾンビも吸血鬼も男だったらしいからその影響だと思う」スタスタ

暗殺者「昔は女の子の顔してたし、話し方も女の子だったし、あと胸ももう少し大きかったし」スタスタ

女勇者「……」スタスタ

勇者「なのに負けてるんだな、お前」スタスタ

女勇者「死にたいようですね」スタスタ

勇者「冗談だよ、冗談」スタスタ

ドラゴン「勇者、手を出せ」

勇者「え?」

ドラゴン「いいから早く」

勇者「あ、ああ」スッ

ドラゴン「よしよし」


ドラゴンは勇者の手を掴むと自分の胸に押しつける。


勇者「は?」

女勇者「……」

暗殺者「大胆だな」

ドラゴン「人間の男はこんな脂肪の塊が好きなのか?」

勇者「そりゃあ、まあ……」モミモミ

ドラゴン「何がいいんだ?」

勇者「柔らかさ……とかかな」モミモミ

女勇者「勇者、それ以上揉み続けるなら殺しますよ」

勇者「言うと思った」

ドラゴン「なんだ、もういいのか?」

勇者「女の子がそんなに簡単に胸を触らせちゃいけません」

ドラゴン「貴様だから触らせてるんだ」

勇者「……なんかすまん」

暗殺者「俺達どっか行ってこようか?」

勇者「行かなくていい!!」

女勇者「やるなら夜やりなさい」

勇者「いいの?」


女勇者の蹴りが勇者の顔面に直撃する。


女勇者「殺しますよ?」

勇者「じょ、冗談じゃん……」

女勇者「黙りなさい」

暗殺者「嫉妬?」

女勇者「あなたも肉塊になりたいんですか?」

暗殺者「遠慮いたします」

勇者「あれ、洞窟?」

女勇者「見ればわかります、バカなんですか?」

勇者「怒ってる、怒ってるよね?」

女勇者「知りません」

暗殺者「今日はここで野宿だ」

ドラゴン「まだ明るいぞ」

暗殺者「洞窟ってのは敵だらけだからしっかり休んでから行った方が安全だ」

勇者「じゃあ今日はここで野宿」

女勇者「テントの張り方を教えてもらえますか?」

暗殺者「いいぞ」

勇者「じゃあ俺は飯探しに行ってくる」スタスタ

ドラゴン「オレも―――――」

女勇者「あなたはこっちの手伝いです」

ドラゴン「オレは留守番か!?」

女勇者「いいから手伝いなさい」

ドラゴン「わかった」

~~~~~~~~~~~~~~





勇者「木の実と肉しか取れなかった」スタスタ

暗殺者「肉が取れただけでも十分だ」

勇者「でもあんまり取れなかった」

ドラゴン「最悪タンパク質は貴様から取ればいいし、大丈夫だ」

勇者「それはどっちの意味で?」

ドラゴン「貴様の好きな方でいいぞ」

勇者「どっちも嫌だ」

女勇者「誰が調理するんですか?」

勇者「肉は焼けばいいとして、木の実はどうしよう……」

暗殺者「生で食える奴だからそのまま食えばいい」

勇者「じゃあ火をおこすだけでいいのか」

ドラゴン「オレがやってやろうか?」

勇者「ああ、頼む」


ドラゴンはいくを軽く吸うと、小さな炎の球を吐きだす。


女勇者「凄いですね」

ドラゴン「当たり前だ、オレは竜だぞ」

勇者「たまに忘れそうになるけど竜なんだよな、お前」

ドラゴン「今は一応人間だけどな、あははははは!!」

勇者「火を吐ける人間が何処にいる」

勇者「焼けたぞ」

暗殺者「そうだな」モグモグ

女勇者「そうですね」モグモグ

勇者「もう食ってるし」

ドラゴン「勇者も食えよ」モグモグ

勇者「はいはい」モグモグ

女勇者「勇者、ドラゴン、近くに湖があるのでそこで体洗って下さいね」

ドラゴン「じゃあ一緒に行くか」

女勇者「誰が一緒に行けといいました!?」

ドラゴン「いいじゃん、ぶーぶー」

女勇者「黙りなさい」

勇者「つーか、なんで俺達だけ?」

暗殺者「俺が見つけてきたんだ、知ってて当然だろ」

勇者「あ、そうなんだ」

女勇者「あなたから行ってきてください」

勇者「俺?」

女勇者「あなたからです」

勇者「はいはい」スタスタ

今日はここまで。

そう言えばまだモンスターと戦ってなくね?

者「寒い地域じゃなくて良かった、マジで良かった」ヌギヌギ

勇者「とうっ!!」ドボン

勇者「気持ちいい」

勇者「いいな、ちょっと泳いでみるか」バチャバチャ

勇者「はは、たまにはこうやって遊ぶのもいいな」バチャバチャ

勇者(もし誰かが見てたら恥かしくて死ぬな、これ)

暗殺者「楽しそうだな」

勇者「やっぱり見られてた!!」

勇者「つーか何見てんだ、今何も着てねぇぞ!!」

暗殺者「大丈夫、俺は男の体に何かを感じたりなんかしない」

勇者「それでも恥ずかしいだろ」

暗殺者「誰が?」

勇者「俺がだよ!!」

暗殺者「同性に裸を見られても何も感じんだろ」

勇者「じゃあお前は俺にも女勇者にも裸を見られても大丈夫なのか!?」

暗殺者「ああ」

勇者「ああ、じゃねぇよ」

暗殺者「でも、男でも女でもあるってのは不便なんだ」

>>312 最初は勇者です。 初っ端からミスった

勇者「知らねぇよ、何がだよ」

暗殺者「俺は男にも女にも性的興奮を感じられない」

勇者「……俺はそれを聞いてどう反応すればいいんだ?」

暗殺者「それは自分で考えてくれ」

勇者「それじゃあお前恋愛とかできなくね?」

暗殺者「出来ないさ」

勇者「それでいいのか?」

暗殺者「俺にとってはこれが普通だ」

暗殺者「お前はドラゴンと結婚するんだろ」

勇者「何がどうなってそうなる!!」

暗殺者「じゃあドラゴンの事は何とも思ってない?」

勇者「いや、多分惹かれてる……と思う」

暗殺者「……俺にはその惹かれている、と言うのがわからん」

勇者「そんなの俺だってわかんねぇよ」

勇者「用は直感だよ、直感」

暗殺者「よくわからん」

勇者「無理にわからなくてもいいだろ、そのうちわかれば大丈夫だ」

勇者「なあ、タオルって持ってる?」

暗殺者「持ってない」

勇者「ああ、そう……」

勇者「ちょっと濡れてもいいから着るか」

暗殺者「それがいい」

勇者「あんまり見ないでくれる?」

暗殺者「ああ、すまんすまん」

勇者「終わったぞ」スタスタ

女勇者「わかりました」

女勇者「ドラゴン、暗殺者、行きますよ」

ドラゴン「ああ」

暗殺者「俺も?」

女勇者「はい」

ドラゴン「裸の付き合いってやつだ」スタスタ

暗殺者「なんか違うと思う」スタスタ

女勇者「覗いたら殺しますからね」スタスタ

勇者「はいはい」

ドラゴン「勇者も一緒に入ればよかったのに」ヌギヌギ

女勇者「相変わらず勇者の事が大好きなんですね」ヌギヌギ

ドラゴン「夫婦だからな」ヌギヌギ

暗殺者「仲良しだしな」ヌギヌギ

ドラゴン「だろ」ヌギヌギ

女勇者「暗殺者、あなたって胸が小さくなったんですよね?」

暗殺者「ああ、実際小さいだろ」

女勇者「……」

暗殺者「どうした?」

女勇者「何でも無いです、本当に何でも無いです……」

ドラゴン「人間胸だけじゃないぞ」チャプチャプ

暗殺者「胸が小さくても心が大きければ大丈夫」チャポン

女勇者「そうですね……」

女勇者(悪意は無いんですね……)

ドラゴン「こんな物の大きさで印象が変わるなんて不思議だな、人間は」

暗殺者「胸は男のロマンだから」

ドラゴン「よくわからんな」

暗殺者「俺もよくわからん」

女勇者「何の話ですか!!」

ドラゴン「胸の話だ」

女勇者「どうでもいいです」

ドラゴン「お前は胸のロマンがわかるのか?」

女勇者「わかる気も無いです」

ドラゴン「やっぱり勇者に聞いた方がいいか」

暗殺者「そうだな」

女勇者「聞かなくてもいいです!!」

暗殺者「俺も聞かない方がいいと思う」

ドラゴン「そうか……」

女勇者「あれは実は変態ですから」

暗殺者「人畜無害に見えるけどな」

女勇者「あれほど人畜有害な人間はいません」

暗殺者「そうか?」

女勇者「あんなのが人畜無害だったら全人類が人畜無害です」

暗殺者「そうかもな」

ドラゴン「それがあいつの良さだ、あははははは!!」



勇者「何だろう、凄くバカにされてる気がする……」

~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日 朝


勇者「……」スヤスヤ

女勇者「起きなさい」


勇者の蹴りが勇者の腹に直撃する


勇者「ちょ……お前……」

ドラゴン「いい朝だ」

暗殺者「気持ちいいな」

女勇者「勇者、さっさと行きますよ」

勇者「死ね……」

女勇者「あなたが死になさい」

暗殺者「いいから行くぞ」

勇者「はいはい」スタスタ

ドラゴン「勇者は後ろで待機してろ」スタスタ

勇者「は?」

女勇者「剣を持っていない人が前衛に居られても困るだけです」スタスタ

暗殺者「黙って後ろで待ってろ」スタスタ

勇者「女の後ろに隠れるって……かっこ悪!!」

女勇者「いいから黙って歩きなさい」スタスタ

勇者「男の気持ちも考えろ、死ね」

暗殺者「反抗期か?」

勇者「誰がだ!!」

暗殺者「お前だ」

ドラゴン「オレがしっかり教育しとく、安心しろ」

勇者「お前は俺のなんだ」

ドラゴン「妻だ」

勇者「やかましい、死ね」

女勇者「マイブームなんですか?」

暗殺者「言いマイブームではないな」

勇者「うるせぇ!!」

ガサガサ

勇者「なんだ?」

女勇者「静かにしなさい」

勇者「……敵か?」

暗殺者「そうみたいだ」

オーク「ブヒヒヒ」

勇者「オークか……」

暗殺者「通称レイプ魔、捕まったら冗談抜きでやばい相手だ」

オーク達「ブヒヒヒヒ」

女勇者「あんな連中にやられるくらいだったら勇者にやられた方がマシです」

勇者「どんな比較!?」

勇者「でも俺は男だから大丈夫」

暗殺者「オークはどっちもイケるからお前も捕まったらやられるぞ」

勇者「どういう事なの?」

暗殺者「アナルが狙われてるって事だ」

勇者「それはヤバい!!」

女勇者「とにかくこの豚どもを殺せばいいんですね」

勇者「ここは俺が―――――」

ドラゴン「貴様はそこで隠れてな」

女勇者「邪魔です、勇者」

勇者「今回は見てるだけか……」

暗殺者「一瞬だ、すぐ楽にしてやるよ」

※裏話  (これは設定したけれども多分使う必要のない設定を紹介する場所です。そのため飛ばしてもらってもかまいません)

勇者の職歴

7歳  スライム運送でアルバイトを始める……勇者がちょっと話していた職場。
                     スライムの旦那が経営している。


9歳  賭場での手伝い開始……悪いお客を追い払う仕事を開始。
              基本的に話し合いで解決していた。


11歳  賭場での手伝い終了……用心棒として顔が知れてしまったため自分から辞めた。


11歳  逃がし屋の手伝いを開始……町からいろいろな事情で逃亡する人間の手伝いを開始する。
                 仕事が少ない割に日給がいいので、勇者としてはありがたかった。

14歳  スライム運送で正社員に昇格……スライム運送の主任に昇格。
                  時給制から日給制になった。

16歳  用心棒の仕事を開始……不定期に仕事を引き受けていた。基本的にチンピラのボコるか、チンピラの抗争の手伝い。
               ここで勇者の剣術がみがかれた。

16歳  逃がし屋の仕事を辞める……これも顔が知れてしまったため自分から辞めた。


17歳  スライム運送でチーフに昇格……実質スライム運送ナンバー2に昇格 


18歳  勇者になる……王様に頼まれしぶしぶやることになる。
           ちなみにスライム運送には就職したままである。

今日はここまで。

ちなみに他にもどうでもいい設定があるので需要があったら紹介します

先頭にいたオークの首が吹き飛ぶ。
それは文字通り一瞬だった。

オークの首を持った暗殺者がオークの群れの中心に立っていた。


「楽しませてくれよ」


オークの首を地面に投げ捨て、また笑う。
残忍で凶悪な笑顔だ。

暗殺者は襲いかかってくるオークを一瞥すると地面の小石を拾う。
彼女はそれをオークに投げつけた。

普通なら目潰し程度の効果しかない小石だが、彼女が使えばそれは凶器に変化する。

小石は吸い込まれるようにオークの右目に直撃した。
肉に当たった時とは違う、水分を含んだグチャ、という音が響く。
オークの右目からは大量の血が溢れ出ていた。
痛みのせいかオークが大声で喚いている。

うるさい。

暗殺者のナイフが一瞬で右目の無いオークの首をはねる。
鮮やかな赤色の液体が暗殺者のローブを濡らす。

「やっぱ弱いよ、お前等」


暗殺者はつまらなさそうに呟くと手に付いた血をぺろりと舐める。

暗殺者の強さがわかったのか、オーク達の一部が逃げだし始めていた。
背を向け逃げて行くオーク達を暗殺者はつまらなそうな目で見る。

逃がす気は無い。


暗殺者の手にはいつの間にか数十本のナイフが握られている。
逃げるオーク達の背中に向かって無数十本のナイフを投げつける。

ナイフは一本も外れる事無くオーク達の背中に刺さる。
オークは音を立てて地面に倒れた。
猛毒の塗ってあるナイフだ、多分即死だろう。

相変わらず弱い。

暗殺者は舌打ちをしながら地面に落ちたオークの首を蹴る。

隣でもオークの倒れる音がする。

横を見ると女勇者が血まみれで立っていた。
周りは血の海になっており、肉塊と化したオークの死骸がごろごろ転がっている。


「終わったか?」

「はい、こんなのに負けると思いますか?」


相変わらずの口調だ。
暗殺者は手に付いた血を舐めながら笑う。

女勇者は剣を軽く振り、剣に付いた血を掃った。
彼女はもう戦う気も無いようだ。
逃げて行くオークを横目で見ながら、彼女は剣を鞘にしまう。


「いいのか、殺さなくて?」

「私はあなたと違って戦闘狂ではありません」

暗殺者はその言葉に苦笑いを浮かべる。
どうやら全部見抜かれているようだ。

バレたからと言ってどうという事は無いのだが。

暗殺者は手に握っている数本のナイフを懐にしまい、周りを見る。
オークの姿は無く、洞窟は静まり返っている。


「そうだ、ドラゴンは―――――」


言いきる前にドラゴンは見つかった。

ドラゴンは呑気に立っていた。
彼女の近くの壁にはオークが突き刺さっている。

なんと言うか、異様な光景だった。

どうやったかは容易に想像がつくが、実際に出来るのは彼女だけだろう。


「終わりましたね」

「そうだな」


つまらなそうにそう言うと暗殺者はオークの背中に刺さったナイフを回収し始めた。

女勇者「自分で回収するんですか?」

暗殺者「当たり前だ、毎回ナイフを投げっ放しにしたら金がいくらあっても足りない」

女勇者「まあ、そうですね」

ドラゴン「弱いな」

暗殺者「やっぱり強くないと面白くないよな」

勇者「終わった?」

ドラゴン「何処にいたんだ?」

勇者「お前等が戦うって言ったから岩陰で隠れてたんだよ」

女勇者「それにしてもずいぶん派手にやりましたね」

ドラゴン「そうか?」

女勇者「頭から壁に突き刺さっているのは派手以外の何なんですか」

暗殺者「いいからさっさと行くぞ、あいつ等がまた来ても迷惑だ」スタスタ

勇者「そうだな」スタスタ

女勇者「この洞窟を抜けたら武器の町ですね」スタスタ

暗殺者「そうだ、一つ聞きたいんだが金はあるよな?」スタスタ

女勇者「……多少は」スタスタ

勇者「剣って一本いくらぐらいなの?」スタスタ

女勇者「いいのを買おうとすれば4000ゴールドほどですね」スタスタ

勇者「全然足りなくね?」スタスタ

女勇者「はい」スタスタ

勇者「いや、はいじゃなくて……」スタスタ

女勇者「なんですか?」スタスタ

勇者「買えねぇじゃん!!」スタスタ

暗殺者「おいおい、大丈夫か?」スタスタ

ドラゴン「いつもの事だ、何とかなるだろ」スタスタ

女勇者「そうですね」スタスタ

勇者「お金は何ともならねぇだろ」スタスタ

暗殺者「そろそろだぞ」スタスタ

ドラゴン「勇者、腹減った」スタスタ

勇者「じゃあまずは飯を食うか」スタスタ

ドラゴン「肉がいいぞ」スタスタ

勇者「はいはい」スタスタ

女勇者「よそでイチャイチャしてきなさい」スタスタ

勇者「絶対言うと思った」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~


武器の町


勇者「本当に武器屋ばっかだな」スタスタ

女勇者「だから武器の町だと言ったじゃないですか」スタスタ

ドラゴン「まずはどうする?」スタスタ

暗殺者「酒場で情報集めのついでに昼飯食うか」スタスタ

勇者・ドラゴン「賛成」スタスタ

女勇者「言っておきますが情報収集のついでに昼食ですからね」スタスタ

ドラゴン「わかってるわかってる」スタスタ

勇者「安くていい剣売ってないかな」スタスタ

暗殺者「叶わぬ願い」スタスタ

勇者「言ってみただけだ」スタスタ

女勇者「最悪ヒノキの棒でいいんじゃないですか?」スタスタ

勇者「最悪な、最悪」スタスタ

暗殺者「奮発していいヒノキの棒でも買うか?」スタスタ

女勇者「凄いヒノキの棒を買ってもいいですよ」スタスタ

勇者「結局ヒノキの棒じゃねぇか!!」スタスタ

ドラゴン「いっそ素手でどうだ?」スタスタ

勇者「絶対嫌だ」スタスタ

勇者「こんにちは」ガチャ

マスター「ちーす」

女勇者「若いマスターですね」

マスター「君いくつ、かわいいね」

勇者「ペチャパイだけどな」

女勇者「殺してあげましょうか?」

勇者「すいません」

勇者「なあ、安くていい剣売ってる場所ってあるか?」

マスター「あ、そんなの知るか」

女勇者「知らないんですか?」

マスター「知ってるよ、教えてあげよっか?」ニコニコ

勇者「死ね、すみやかに死ね」

マスター「男に興味は無い」

暗殺者「性格悪いな、お前」

マスター「黙れ」

勇者「こいつ女だぞ」

マスター「先言ってくれよ」ニコニコ

勇者「うぜぇ」

ドラゴン「飯あるか?」

マスター「こんなとこで食うより、俺と一緒にどっか食いに行かない?」

勇者「そんなんでいいのかよ」

マスター「ここは俺の店だ」

勇者「うわぁ……」

ドラゴン「一人で食ってろ」

勇者「かわいそうだな、俺が一緒に行ってやろうか、もちろんお前の奢りで」ニヤニヤ

マスター「うるさい!!」

勇者「かわいそうだな、ふられちゃって、本当にかわいそうだよ」ニヤニヤ

マスター「性格悪いな、テメェ」

勇者「お互い様だ」

ドラゴン「これがナンパなのか?」

勇者「ああ、ああいうバカは無視するのが一番いいから覚えとけ」

マスター「誰がバカだ!!」

勇者「俺の目の前にいる酒場のマスター」

父親「酒あるかい?」ガチャ

マスター「いらっしゃい、あるよ」イライラ

マスター「さっさとどっか行けよ」

勇者「一緒に飯行くんじゃなかったのか?」ニヤニヤ

マスター「しつこい!!」

父親「ん、勇者じゃないか」

勇者「な、なんでお前がいるんだ!?」

父親「なんでって、ここに凄い酒があるって聞いたから」

女勇者「これがあなたの父親ですか?」

勇者「あ、ああ」

ドラゴン「初めまして、お父様」

父親「え、えーと、君は?」

ドラゴン「息子さんをオレに下さい」

父親「ああ、どうぞ」

勇者「おい、勝手に話を進めんな!!」

ドラゴン「こういうのは早い方がいいだろ」

勇者「良くない!!」

今日はここまで。

久々登場のお父さんです。

勇者「つーかどうやって来た」

父親「馬車に乗ってきたけど、それがどうした?」

ドラゴン「馬車があるのか?」

勇者「あっても乗れねぇよ、金銭的に」

勇者「馬車っつっても魔物に襲われる可能性は0じゃねぇぞ」

父親「どうしても酒がほしかったんだ、仕方ないだろ」

女勇者「本当にお酒が恋人なんですね」

父親「酒のためなら死んでもいいさ」

父親「……所で君は?」

女勇者「申し遅れました、勇者の保護者役をしております、女勇者です」

勇者「何時から俺の保護者になった」

暗殺者「勇者の上司の暗殺者だ」

勇者「お前の部下になったつもりは無い」

ドラゴン「勇者の妻のドラゴンだ」

勇者「違う」

父親「出来の悪い息子がお世話になってます」

女勇者・暗殺者「いえいえ」

勇者「お前が言うな!!」

父親「本当にお前を見ているとお前の母さんを思い出なあ……」

勇者「俺は顔を覚えてねぇけどな」

父親「会ってみたいか?」

勇者「会ったってどうしようもねぇだろ」

女勇者「私は会いたいです」

勇者「なんで?」

女勇者「あの人は私達親子をおかしくしたんですから……」

暗殺者「殺したいほどにか?」

女勇者「殺す気はありません、ただ話したいだけです」

父親「まあ、俺にとってはどうでもいいんだけど」

女勇者「自由ですね」

勇者「父さんは会いたくねぇのか?」

父親「俺にとって一番大事なのは酒と自分、それ以外は正直どうでもいい」

勇者「だろうな、で今の母さんはギャンブルと命だろ」

父親「ああ、だから結婚したんだ」

父親「お互いが自由に生き、たまに欲求は解消し合う、そんな関係が俺達にはベストだ」

勇者「息子の前でそんな話すんな」

父親「別にいいだろ、そう言う事を知ることによって大人になっていくもんだ」

女勇者「勇者には聞いていましたが……凄いクズっぷりですね」

父親「まったく……そんな風に思ってたのか」

勇者「黙れ、仕事もやらずに一日中酒飲んでる奴を尊敬できるか」

暗殺者「奥さんは一緒じゃないのか?」

父親「さっきも言っただろ、お互いの生活には干渉しないって」

女勇者「黙って出てきたんですか?」

父親「ああ、正直あいつがどんな生活を送っているかも知らん」

ドラゴン「……凄い屑っぷりだな」

勇者「今更何言われても驚かねぇよ」

父親「ははっ、物分かりのいい息子でうれしいよ」

勇者「褒められたのに全然うれしくねぇ」

ドラゴン「なんとなく似てるな」

暗殺者「確かに何処となく似てる」

女勇者「親子ですからね」

勇者「うれしくねぇ……」

女勇者「人畜有害な所とかそっくりじゃないですか」

勇者「ダメの部分じゃねぇか!!」

父親「お前は母親似だよ」

勇者「会ったこと無い人に似てるって言われてもね」

女勇者「いつも以上に言葉にとげがありますね」

勇者「気のせいだ」

父親「まあいいか、おい、その凄い酒ってのは無いのか?」

マスター「今日は売り切れだ、明日来な」

父親「そうか、そうするよ」スタスタ

父親「勇者、頑張れよ」ガチャ

勇者「面倒臭い事が起こらないといいけど……」

女勇者「もう十分面倒臭い事に首を突っ込んでるじゃないですか」

勇者「そうだけどさ」

暗殺者「で、これからどうする?」

勇者「剣を買う」

ドラゴン「なあ、さっき言ってた安くていい剣が売ってる店って何処だ?」

マスター「ここから真っすぐ行ったところの店だ」


勇者「やけに素直だな」

マスター「用が住んだらとっとと出てけ」

暗殺者「言われなくても出て行くよ」ガチャ

勇者「……」スタスタ

女勇者「どうしたんですか?」

勇者「酒のためって言ったってわざわざ来るなんておかしいと思って……」

暗殺者「酒の他にも目的があるって事か?」スタスタ

勇者「多分……」スタスタ

女勇者「そんな事私達には関係ないじゃないですか」スタスタ

ドラゴン「そうだ、それは貴様の父親の問題だろ」スタスタ

勇者「あいつは自分が良ければそれでいいって考え方だからなぁ……」スタスタ

勇者「それに俺に会いに来たって可能性もあるし」

女勇者「どういう事ですか?」スタスタ

勇者「俺達がこの町に来た時にあいつが来てるって都合が良過ぎるだろ」

女勇者「……確かにそうですね」

勇者「まあ、今は剣を買うことが最優先、あいつの事は今はいいや」スタスタ

暗殺者「調べといてやろうか?」スタスタ

勇者「出来るの?」スタスタ

暗殺者「当たり前だ、俺は暗殺者だぞ」スタスタ

勇者「……今の所は調べなくていいよ」スタスタ

暗殺者「本当にいいのか?」スタスタ

勇者「そのうち頼むかもしれねぇ」スタスタ

暗殺者「わかった」スタスタ

ドラゴン「ここみたいだな」

勇者「こんにちは」ガチャ

武器職人「……どうも」


そこにいたのは40歳前後の渋い男だった。


勇者「剣がほしいんだけど」

武器職人「今まで使ってきた武器は?」

勇者「え?」

武器職人「お前が今まで使ってきた武器はなんだ?」

勇者「ヒノキの棒だけど」

武器職人「……帰れ」

勇者「ちょっと待て、まだ何も言ってねぇじゃん」

武器職人「まともな剣も持った事無い奴に剣なんて売れるか」

勇者「……どういう事?」ヒソヒソ

女勇者「どうやら職人気質の人間のようですね」ヒソヒソ

ドラゴン「なんだそれ?」

女勇者「簡単に言えば頑固な人です」

勇者「なあ、頼むよ」

武器職人「別の所をあたりな」

勇者「……あんたの剣がいいんだ」

ドラゴン「そんな事言ってたか?」ヒソヒソ

女勇者「嘘ですよ」ヒソヒソ

武器職人「……お前の剣の腕前は?」

勇者「え?」

武器職人「どれほどの流派を習得した」

勇者「……一つも習得してない」

武器職人「そんな奴に俺の剣は売れない!!」

女勇者「見た目はこんなんですが意外と強いんですよ」

暗殺者「ああ、なんて言ったって勇者だからな」

武器職人「ダメだ、お前に剣を売る気は無い」

勇者「……今日は帰る、また明日来る」スタスタ

ドラゴン「いいのか?」スタスタ

勇者「じゃあまた明日」ガチャ

勇者「下手に粘っても無駄、日をおいて着た方が成功率が高い」スタスタ

女勇者「何の情報ですか」

勇者「俺の経験」

女勇者「信憑性0ですね」

暗殺者「まあ、話し続けてても無駄だと思うし、今日は帰った方がいいだろ」

勇者「だろ、引き際ってのが大事なんだよ」

ドラゴン「面倒臭いな、交渉と言うものは」

暗殺者「だが出来れば武器になる」

勇者「とにかく宿屋を見つけようぜ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


路地裏


父親「……」ガサゴソ

女大臣「どうしてここにいるんですか……」

父親「女大臣さん、あなたこそなんでここに?」

女大臣「仕事です、あなたは?」

父親「凄い酒があるって聞いたんでそれを買いに来たんですよ」

女大臣「……それだけですか?」

父親「……ははっ、あなたには嘘は通用しないですよね」

父親「勇者に用があって来たんです」

女大臣「そうですか」

父親「理由は聞かないんですか?」

女大臣「相手を詮索する趣味はありませんので」

父親「そうですか」

女大臣「こんな場所にはこれから来ない方がいいですよ」

父親「どうしてですか?」

女大臣「この町に厄介な者が迷い込んでいますから」

今日はここまで。

中途半端ですいません。今回は長めです。

父親「厄介な者?」

女大臣「はい、力だけを追い求める狂人です、あなたも注意した方がいいですよ」

父親「忠告ありがとうございます」

父親「それではまた」スタスタ

女大臣「……あなたは勇者様を苦しめるのが本当に好きですね」

父親「ははっ、バレていましたか」

女大臣「バレバレですよ」

父親「他人の不幸ほどうまい酒の肴は無いじゃないですか」

女大臣「やっぱりあなたは最低の屑ですね」

父親「そうかもしれませんね」

女大臣「まあ、口出しする気はありませんが……」

女大臣「私は仕事に戻ります」スタスタ

父親「はい、頑張って下さいね」

女大臣「勇者様達が何処にいるか知っていますか?」スタスタ

父親「いや、何処にいるかまでは知らないですよ」

女大臣「そうですか……」スタスタ

女大臣「急いだ方がいいですね」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夜 宿屋


勇者「どうしようかな……」

暗殺者「交渉か?」

勇者「ああ、いい方法が思いつかなくて」

暗殺者「あのおっさん頑固そうだからな」

勇者「でも凄ぇ人だと思うぞ」

女勇者「何を根拠にそんな事を言っているんですか?」

勇者「理由は無ぇよ」

女勇者「結局直感ですか」

勇者「お前直感の凄さを知らねぇな、凄ぇんだぞ」

女勇者「どうでもいいです」

暗殺者「まあ、直感なんて当てになんないしな」

勇者「じゃあ凄いおっさんじゃねぇと思うのか?」

ドラゴン「いや、あのおっさんはタダ者じゃないぞ」

暗殺者「ああ、あの人は刀を作れる数少ない職人だ」

勇者「知ってたのか」

暗殺者「ああ、有名な人だからな」

女勇者「刀とはなんですか?」

勇者「刃が片方にしかついてなくて細い独特の形をした剣だ」

勇者「斬れ味を究極まで追求したものだと鉄でも斬れる凄い剣だ」

女勇者「詳しいですね」

勇者「刀はかっこいいし好きなんだ」

女勇者「でも使いづらそうですね?」

暗殺者「勇者の戦い方にはあってると思う、刀は防御は弱いが、攻撃は最強だから」

ドラゴン「でも交渉はうまくいくのか?」

勇者「微妙だな、明日も無理かも……」

女勇者「とりあえず、私達は買い物に行ってきますね」

ドラゴン「何買うんだ?」

女勇者「私も剣を強化してもらいたいので」

勇者「そんな金あんのか?」

女勇者「私だって交渉ぐらい出来ますよ」

暗殺者「恐喝だろ」

勇者「もしくは剣を振り回して脅すかだな」

女勇者「何か言いましたか?」

勇者・暗殺者「何も言ってません」

女勇者「次言ったら肉塊にしますからね」

勇者・暗殺者「了解」

勇者「じゃあ俺は暗殺者と交渉か」

暗殺者「丸一日交渉するのか?」

勇者「無理だと思ったらさっさと帰るよ」

勇者「出来るだけ粘るけどね」

暗殺者「うまくいくといいな」

女勇者「別行動は久々ですね」

勇者「ドラゴンの村の時以来だな」

女勇者「そうですね」

勇者「暗殺者は行きたい所無いのか?」

暗殺者「別に無いな、武器もいらないし」

勇者「あ、そう」

ドラゴン「勇者、今日はどうだ?」

勇者「無理、つーか明日も明後日も無理」

女勇者「別にやってくれてもいいですよ」

勇者「なら右手に持った剣をしまってくれるかな?」

女勇者「何の事ですか?」ニッコリ

勇者「目が笑ってねぇ……」

暗殺者「死んでもいいから楽しんだらどうだ?」

勇者「悪魔のささやきが聞こえるんですけど」

ドラゴン「どうする?」

勇者「絶対嫌だ」

暗殺者「ちっ、つまんないなあ……」

勇者「死んだ理由がダサ過ぎだろ!!」

女勇者「女を抱いて死ねたら本望じゃないんですか?」

ドラゴン「しかも美人だぞ」

暗殺者「抱いちゃえよ、さっさと抱いちゃえよ」ニヤニヤ

勇者「いつの間にか周りが敵だらけになってんだけど!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日  道具屋前


女勇者「いろいろ買えましたね」スタスタ

ドラゴン「次は何処に行くんだ?」スタスタ

女勇者「武器屋ですかね」スタスタ

ドラゴン「了解」

女勇者「人通りが少ない所に来てしまいましたね」

ドラゴン「迷ったのか?」

女勇者「いえ、路地裏に来てしまっただけなので、すぐに戻れば大丈――――」


突然女勇者の後頭部に激痛が走る。
彼女は立っていようと必死に踏ん張るが地面に倒れてしまった。


女勇者「くっ!!」

男「こいつでいいんですか?」

リーダー「ああ、目標はこいつだ、そっちのはお前等の好きにしろ」

男「それにしてもこいつを捕まえるだけで3000ゴールドっていい仕事ですよね」

リーダー「まったくだ、こんな楽な仕事なかなか無いぞ」

女勇者(ドラゴンが……まずい!!)

男「じゃあこっちは俺が好きにしますね」

リーダー「ああ、勝手にしろ」スタスタ

男「へへ」

女勇者(……何とか動けますね)

女勇者「気持ち悪いです……」

男「ん、なんか言ったか?」

女勇者「気持ち悪いです!!」


女勇者は叫ぶと、男の股間を蹴りあげる


男「ぐあっ!!」

男「テメェ!!」

女勇者「黙りなさい!!」


さらに追撃の拳が男の顔面をとらえる。


男「がはっ!!」

女勇者「さっきは油断しただけです、あまり調子に乗らない方がいいですよ」

男「わ、悪かった、逃がしてくれ」

女勇者「ドラゴンをどうする気ですか?」

男「逃がしてくれ!!」

女勇者「質問に答えてください、ドラゴンをどうするつもりですか?」

男「お、俺達はあいつを捕まえてくれって頼まれただけだ」

女勇者「さっきの男は何処に行ったんですか?」

男「そ、それは言えない」

女勇者「何故ですか?」

男「ば、バラしたら俺が殺される」


女勇者は男の顔面に蹴りを入れる。


女勇者「答えなさい」

男「む、無理だ」

女勇者「言わなければ私があなたを殺しますよ」

男「……食材屋の裏にあるボロ小屋だと思う」

女勇者「わかりました」

男「じゃあ逃がして―――――」


女勇者は男の腹を思いっきり蹴って気絶させる。


女勇者「とにかく勇者の所に行かなくては」フラフラ

女勇者「くっ……」ドサッ

女大臣「大丈夫ですか」スタスタ

女勇者「ど、どうしてここに?」

女大臣「血が出てますよ」

女勇者「私は大丈夫です、ただドラゴンが連れて行かれてしまいました……」

女大臣「……遅かったですか」

女勇者「ど、どういう事ですか?」

女大臣「詳しい話は後でします、今は勇者様と合流しましょう」フキフキ

女勇者「そ、そうですね」

女大臣「摑まってください」スッ

女勇者「すいません」ガシッ

今日はここまでです。

来年まで数時間ですね。

今夜はずっと起きてるつもりですので、物語の事、俺の事、聞きたい事があったら聞いてください。

ちなみに明日は午前中に更新します。

>>1は処女ですか!?

>>361

女なら処女です。

あとどれぐらいで完結しますか?
きちんと完結できそうですか?
ドラゴンは好きな時に変身解除可能?

>>364

一応完結は出来ますが、今のところどれぐらいかかるかはわかりません。

ドラゴンの変身は自由に解除できません。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


武器屋


勇者「なあ、剣作ってくれよ、頼むよ」

武器職人「嫌だ、さっさと帰れ」

勇者「ケチだなぁ……」

暗殺者「……さすがにストレート過ぎないか?」

勇者「これくらいストレートに言った方が成功しやすいだろ」

暗殺者「恋人同士でもそんなストレートな事言わない」

武器職人「さっさと別の場所に行け」

勇者「そんな事言わないで頼むよ」

武器職人「嫌だ」

暗殺者「全然ダメだな」

勇者「……じゃあどうやったら作ってくれる?」

武器職人「俺の剣を使いこなせる人間で、しかも内面の強さも持っているなら作ってやる」

勇者「自分で言うのもなんだけど俺結構強いよ」

武器職人「……証明出来るものはあるのか?」

勇者「そんなもんねぇよ」

武器職人「ならダメだ」

暗殺者「それは俺が証明できる」

武器職人「……お前が?」

暗殺者「こいつはあんたが思ってる二倍は強いぞ」

勇者「それって強いの?」

暗殺者「それにあんたの剣とこいつの戦闘スタイルは本当に相性がいい」

武器職人「……まあ、あんたが強いのは認めよう、だが内面の強さはどうだ?」

暗殺者「内面は……腐りきってる」

勇者「おい!!」

暗殺者「正直に言っただけだ」

武器職人「なら無理だ」

勇者「そこは嘘ついてでも正義の味方だって言ってくれよ!!」

暗殺者「そう言う所がダメなんだろ」

勇者「うるせぇ」

武器職人「わかったらさっさと帰れ」

勇者「頼むよ、マジで頼むよ」

武器職人「帰れ、お前に剣を作る気は無い」

暗殺者「一旦帰るか?」

勇者「そうするか……」

女勇者「勇者!!」ガチャ

勇者「いきなりなんだ?」

女大臣「ドラゴンがさらわれました」

勇者「女大臣!?」

暗殺者「誰?」

勇者「女大臣、俺達の旅のサポートとかしてくれてる」

女大臣「あなたが暗殺者ですね、女勇者から聞きました」

暗殺者「そうか、初めまして」

女大臣「初めまして」

暗殺者「……あんたからは凄い気配を感じるな、一回殺し合ってみたい」ニッコリ

女大臣「ここで殺し合いをしますか?」

暗殺者「別にいいぞ」

女勇者「なんで殺し合う気満々なんですか」

勇者「そんな事よりドラゴンがさらわれたって何!?」

女勇者「すいません、私が油断したばっかりに……」

勇者「ドラゴンをさらったのは誰だ」

女大臣「さらっていったのは町の不良チームのボスです」

勇者「じゃあそいつを殺せばいいのか?」

女大臣「いえ、黒幕は別の人物です」

勇者「じゃあ誰だ!!」

女勇者「落ち着いて下さい」

女大臣「そいつは強さだけを追い求める狂人です」

勇者「名前は!!」

女勇者「だから落ち着いて下さい」

女大臣「強者です」

勇者「そいつに捕まってるんだな?」

女大臣「そうです」

勇者「ちょっと行ってくる」スタスタ

女大臣「どうする気ですか?」

勇者「そいつを殺しに行く!!」スタスタ

女勇者「待って下さい」

勇者「早くしねぇとヤベぇだろ!!」

女勇者「それはそうですが……」

暗殺者「剣も無いお前に何が出来る」

勇者「殴る」

暗殺者「一瞬で死ぬぞ」

勇者「……でも――――――」

女勇者「だいたい強者の居場所はわかってるんですか?」

勇者「……」

勇者「女大臣……」

女大臣「すいませんが私は知りません」

勇者「……」

女勇者「町をしらみつぶしに探すつもりですか?」

暗殺者「そのリーダーは何処にいるんだ?」

女勇者「食材屋の裏のボロ小屋です」

暗殺者「じゃあ行ってくる」スタスタ

女勇者「私も行きます」スタスタ

勇者「俺も――――――」

暗殺者「お前は待機だ」

勇者「でも……」

武器職人「おい!!」

勇者「何だよ!!」

武器職人「持ってけ」ポイッ

勇者「……何だよこれ」パシッ

武器職人「刀だ、切れ味は俺が保証する」

勇者「どういう事だ」

武器職人「勘違いするな、終わったら返しに来いよ」

勇者「いいのか?」

武器職人「ちゃんと返しに来いよ」

暗殺者「勇者、今は待機してろ」

勇者「なんで!!」

暗殺者「お前は強者を殺せ、俺はリーダーを殺す」

女大臣「勇者様、ここは二人に任せましょう」

女勇者「勇者、仲間を信じてください」

勇者「……くさい台詞だな」

女勇者「ベタな台詞は好きなんじゃなかったですか?」

勇者「絶対帰ってこいよ」

女勇者「くさい台詞ですね」

勇者「くさい台詞が好きなんでね」

暗殺者「行くぞ」タタタッ

女勇者「はい」タタタッ

勇者「……」

勇者「強者ってのは何者なんだ?」

女大臣「さっきも言った通り強者は善悪を問わず力だけを追い求める男です」

勇者「なんでそんなに力がほしいんだ?」

女大臣「あんな狂った人間の思考回路などわかりません」

勇者「……なんでドラゴンを?」

女大臣「ドラゴンは強力な力を秘めていますから」

勇者「そうか」

女大臣「勇者様は知らないかもしれませんがドラゴンは巨大な力の塊です」

女大臣「強者はそれを手に入れたいんでしょう」

勇者「じゃあ早くしねぇと殺されるんじゃ――――――」

女大臣「落ち着いて下さい」

勇者「……ああ、悪い」

女大臣「準備には時間がかかります、今は二人の帰りを待ちましょう」

勇者「ああ、わかってる」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

女勇者「こっちです」タタタッ

暗殺者「わかった」タタタッ

女勇者「雑魚は私が処理します、リーダーはあなたが殺してください」タタタッ

暗殺者「お前がボスを殺さなくていいのか?」タタタッ

女勇者「あいつはあなたに似たタイプの人間ですからあなたの方が戦いやすいはずです」タタタッ

暗殺者「殺し屋って事か?」タタタッ

女勇者「だと思います」タタタッ

暗殺者「任せろ」タタタッ

女勇者「お願いします」タタタッ

暗殺者「あそこだな」タタタッ

女勇者「はい」タタタッ


女勇者は跳び蹴りで扉を蹴破る。


男達「なんだテメェ等!!」

女勇者「暗殺者、先に行ってください」

暗殺者「ああ」タタタッ

女勇者「死にたくないなら逃げた方がいいですよ」

男達「調子にのってんじゃねーぞ」

今日はここまでです。

正月は更新時間がまばらになってしまいますが、時間を見つけては更新していきたいと思います。

シリアスに出来るか不安だ……

沙耶の唄欲しい……

女勇者は剣を鞘から抜くと一番近くにいた男を斬り裂く。

男の体は綺麗に二つに分かれ、鮮血が飛び散る。
それはまるで血の噴水のようだ。
鮮血が女勇者の顔を赤く染めた。

女勇者は左手で顔に付いた血を拭うと武器を構えた男達を見つめる。
その目はいつも以上の憎悪と怒りの念が込められていた。

後ろから数人の男達が近づいてきている。

遅い、とにかく遅い。
まるでのろまでドジな亀だ。

目で見なくとも相手動きがわかった。
気配だけで動きがわかる。

女勇者の右手が剣を握りしめる。
女勇者は振り向き様に剣を大きく横に薙ぎ払った。

その一撃で数人の男達が肉塊と化し、血の飛沫が辺りを赤く染める。

女勇者はそんな血の雨の中でも男達を見ていた。
彼女の顔に表情は無い。
ただ怒りと憎悪だけが込められた両目だけが彼等を見ている。

「どうしたんですか、早く私を殺したらどうですか?」


抑揚の無い、あらゆる感情の死んだ声が部屋にこだまする。

だが男達は動けない。
動けない。

男達と女勇者の距離は5メートル。
女勇者にとってその距離は十分射程圏内だ。

彼女が前に大きく跳んだ。
たった一回の跳躍だが、それだけで男達との距離は0になる。

男達の顔は驚きと恐怖で歪んでいた。
後ろの方にいた男達は窓から逃げ出そうとしている。

普通なら逃げる者を追う気は無い。
だがあの男達は例外だ。

小金欲しさに自分の仲間をさらった人間を許す気など毛頭無い。

女勇者の剣が目の前の男達を血の噴水に変える。
深紅の血が女勇者の顔を、壁を、周りの男達を赤く染めた。

女勇者は止まらない。
彼女の剣が周りの男達を次々と切り刻む。
なめらかで無駄の無い動きだった。

とにかく一人も逃がさない。
喉元を、腹を、首を、頭を、とにかく斬りまくる。
とにかく立っている者全てをズタズタに斬り刻む。

深紅の血が彼女を濡らし、全身が真っ赤に染まる。
紅く染まったその姿は正義の味方と言うよりも悪魔の様だった。

だがそれでもいい。
それで私は結構だ。

私は勇者では無い。
私は正義の味方になれるような人間でもない。
だったら悪魔でいい。
それで仲間が救えるのなら悪魔でも、狂人でも結構だ。

勇者はすでにいるのだから。
悪者を倒してお姫様を助けるのは勇者の仕事だ。

なら私の仕事は――――。

紅い悪魔が脅える男の首を刎ねる。

残り一人。

悪魔は腰がぬけて動けない男にゆっくりと近づいて行く。

男は脅えきっている。
男のズボンが濡れていた。
アンモニア臭が僅かにする。


「待て、待ってくれ、助けて――――」


だが悪魔は止まらない。
剣を大きく振りかぶる。

最後の一人を叩き斬る。
幕切れはあまりにもあっさりとしていた。

彼女は近くにあった布切れで剣の血を軽く拭き取り、剣を鞘にしまう。

周りは血まみれで、普通の人間が見たら嘔吐してしまうくらいの惨状だった。
だが女勇者はいつものように無表情のまま、その肉塊を眺めている。


「ううっ」


呻き声が女勇者の耳に届く。

生き残りがいたようだ。

はたから見れば、同情に値するような状態の男は荒い呼吸で苦しんでいた。

だが女勇者の心に同情は無い。

今の彼女の心の中にあるのは怒り。
それ以外の感情は一切存在しない。

冷酷な彼女の視線に気付いたのか、男の表情が恐怖で歪む。

容赦などしない。

ブスリ、と彼女の剣が男の心臓を貫く。

その一撃で部屋は沈黙に満たされた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

暗殺者「ここか?」タタタッ

リーダー「……なんだ、あの女じゃないのか」

暗殺者「誰の事だ?」

リーダー「黒髪の美人の事だよ」

暗殺者「部下から聞いたのか?」

リーダー「見なくてもわかるだろ、あんな屑が勝てるわけ無い」

暗殺者「部下を屑呼ばわりか」

リーダー「屑は屑だ、それ以外になんて表現できる」

暗殺者「……確かにそうかもな」

暗殺者「って事はお前の事も屑って呼ぶしかないな」

リーダー「それは俺が屑って事か?」

暗殺者「それ以外にどんな意味がある」

リーダー「それ以外無いよな」

暗殺者「物分かりが良くて助かる」ニッコリ

リーダー「お前面白いよ、マジで面白い」

暗殺者「そりゃどうも」

リーダー「しかも、俺と同じ匂いがする」

暗殺者「ふーん、お前みたいな暗殺者の屑と一緒にされたら俺もおしまいだな」


リーダーの右手からクナイが放たれる。


暗殺者「ずいぶん乱暴だな」


暗殺者は簡単に回避する。


リーダー「何だよ、ただのあいさつだろ」

暗殺者「言っとくけど俺はあいつみたいに優しくないぞ」

リーダー「俺だって優しくないさ」

リーダー「それにお前は最高にムカつく野郎だ、殺してやるよ」

暗殺者「奇遇だな、俺も同じことを思ってたところだ」ニッコリ

リーダー「一瞬だ、さっさと死ね」ニッコリ

今日はここまでです。

明日はちょっと出掛けるので、更新できません。

地の文は時間がかかるから、あんまり書けない……


リーダーは姿勢を低くすると、両手を袖の中に入れ、攻撃の準備を始めた。
両手から無数のクナイが放たれる。

だが暗殺者はたった一本のナイフで飛んできたクナイを全て弾き飛ばした。
そして飛んでくる最後の一本を左手で掴むと、リーダー目掛けて投げ返す。

しかしリーダーはすでにそこにはいなかった。

彼はクナイを投げた瞬間に跳躍していた。
まるでそこだけ無重力のように空を駆けている。

暗殺者がクナイを投げたのとほぼ同時に暗殺者の後ろに着地する。
無音の部屋に、トンッ、という足音だけが響いた。

軽く見積もっても7メートルは跳んでいただろう。

リーダーは素早く、暗殺者の前に回り込むと彼女の心臓をクナイで突いた。

だが暗殺者のナイフがそのクナイをはじく。

ガキン、と金属がぶつかる音がこだまする。


「避けないと、死んじまうぞ」


そう言い、リーダーは追撃を繰り返した。
両手に持ったクナイを振り回す。

だが暗殺者はその攻撃全てを回避する。
暗殺者にとってその程度の攻撃を回避することなど容易い事だ。

暗殺者はほんの少しだけ後ろに下がった。
そしてリーダーの右目目掛けてナイフを突く。

もちろん暗殺者のナイフは簡単に回避される。

だがその一瞬、リーダーはナイフの動きにのみ集中し、下の注意力が全く無い。
それこそ暗殺者の仕掛けた罠だ。

相手の注意をわざと逸らす。
古典的だが、もっとも効率的な罠。

暗殺者は素早く足払いをかけ、リーダーを転ばせる。


バランスを崩したリーダーは、後ろにひっくり返るように転んだ。
足元をまったく見ていないリーダーはいとも簡単に引っ掛かってくれた。
その拍子にクナイが何本か散らばる。

暗殺者は迷わずリーダーの心臓を狙う。

右手でナイフを握りしめ、倒れた相手へ覆いかぶさるように襲いかかった。
鈍く光る銀色のナイフは真っすぐにリーダーの心臓へと進む。

ガキン、と言う金属同士がぶつかり合う音が部屋に響き渡る。

ナイフはリーダーの右手に持ったクナイとぶつかって停止していた。

この男は一瞬で地面に落ちたクナイを拾い防御したのだ。

男が邪悪な笑顔を見せる。
言葉にしなくてもわかった。

そんな小細工で俺を殺せると思うな。
その残忍笑顔はそう言っていた。
嘲笑を含んだ嫌な笑顔だ。

苛立く笑顔だ。

リーダーの前蹴りが暗殺者の腹部に直撃する。

肺の中の空気が吐き出される感覚が彼女を襲った。

後ろに跳ばされない様に踏ん張るが、後ろに跳ばされる。


「それで殺せるわけ無いだろ、ゴミが」


リーダーは立ち上がると、そう言い放つ。
悪意の塊のような言い方は正真正銘の屑の証のような気がする。


「無様に転ばされといて何言ってんだ」


暗殺者もまた立ち上がると、そう言い放った。
こちらの言葉にもまた悪意が込められている。

お互いの距離は7メートルほど。

暗殺者はナイフを、リーダーはクナイを投げる体制に入る。

投げたタイミングはほぼ同時だった。
飛び交う刃物はさながら流星群のような神秘的光景に見える。

刃物達はぶつかり合い、音をたてて地面に落ちる。

暗殺者はまるで闘牛のように真っすぐに走り出した。
落ちなかったクナイが肩や足をかするが止まらない。

ほとんどぶつかるようにリーダーの胸にナイフを突きたてる。

だがリーダーは蹴りで暗殺者の右手の軌道を変え、動かずにナイフを回避する。
その姿はまるで闘牛を派手な動きで回避するカイボーイの様だ。

暗殺者とリーダーの距離は0だった。

リーダーはほとんど予備動作も無く、暗殺者を殴った。
脇腹にリーダーの拳が突き刺さる。

暗殺者の体がビクリと痙攣した。
胃の中の物が逆流してくるような感覚が襲う。

軽く意識が遠のくが、必死に引きとめる。

暗殺者は大きく後ろに跳んだ。

リーダーは楽しそうに微笑み、彼女を眺めている。
相変わらずの悪意のこもった微笑み。
その姿はまるで悪魔だ。


『変わってあげましょうか?』


声が聞こえた。

ただその声は外部からの物ではない。
脳に直接語りかけてくるのだ。


『あなた一人で倒せるの?』


もう一度声が脳に響く。
その声は心底楽しそうな口ぶりだった。


『今はまだ大丈夫』


彼女はそう返事をした。

反応は無い。

それが声の返答だ。

彼女は再びナイフを構え、攻撃の姿勢をとる。

一瞬でリーダーの前まで移動した。

このまま長期戦になれば彼女に勝機は無い。
ならばこの一撃で勝負を決める。

リーダーの心臓目掛けナイフを突き出す。

クナイとナイフがぶつかり合い、火花が散った。
刃物同士がギリギリと音をたて擦れる。

普通なら間合いを取るべき場面だ。
だが彼女に退路は無い。

止められたナイフを構え直し、大きく横に振る。

とにかく一撃。
一撃当たれば勝機は生まれる。

ナイフを振り、相手を翻弄する。
とにかく相手に反撃のチャンスを与えてはならない。

その時、暗殺者はリーダーが笑っている事に気付いた。

理由はわからないのに寒気がする。

リーダーの口が僅かに動く。
何を言っているかは分からないが、何をしようとしているかはわかる。

魔法。
リーダーは魔法を詠唱していた。

一瞬の静寂。

後ろに跳ぼうとするが間に合わない。

直径2メートルほどの水の球が彼女を飲み込んだ。

息が出来ずもがくが無意味だ。


「お前にはお似合いの死に方だろ」


リーダーは汚い笑みを浮かべながら、暗殺者を眺めている。


『頼む……』


暗殺者は頭の中に語りかけた。



『こんな場面で交代?』

『こんな場面だからこそだ』


呼吸が苦しくなってきた。
意識が遠のく。


『仕方ないわね、私を楽しませて頂戴ね』


彼女は頭の中の回路を切り替えた。
頭の中の別の何かが起動する。















異変を感じ取ったのは今さっきだった。

目の前の暗殺者に変化は無い。
だが何かが変化している。
言葉で言い表せない何かが変化している。

いつの間にか水の球が赤くなっていた。

リーダーがその異変に気付いた時、水の球が爆発する。

爆風は無い。
水だけを相殺されたのだ。


「あなたがリーダーね、こんにちは」

「……お前は?」


暗殺者の口調は明らかに変化している。
いや、それ以前に何か根本的な何かが違っていた。

彼女の右手からはおびただしい量の血が流れていた。
彼女の立っている地面には血の水たまりが出来ている。


「代償か……」


リーダーは誰に言うわけでもなく呟いた。

強力な魔法を生みだす方法は2種類存在する。
一つは自分の持つ魔力を使う方法。
もう一つは自分の体の一部を代償にして魔法を生みだす方法。

彼女は自分の血を代償に魔法を生み出したのだろう。


「そんな事はいいから戦いましょうよ」


暗殺者は楽しそうに言った。
その顔は恍惚の表情をしている。

暗殺者は左手にナイフを握ると大きく跳んだ。
そしてまるで床を走るように壁を走る。

リーダーもクナイを構え、相手の攻撃を待つ。

暗殺者は壁から跳び、リーダー目掛け、矢のように飛んで来る。

ガキィン、という金属音が響き渡った。
ナイフとクナイが擦れて火花が散る。

その時リーダーは勝利を確信していた。
右手の使えない暗殺者に攻撃手段は無い。


彼は左手でクナイを構えた。

だがその瞬間、彼の右手の二の腕に激痛が走った。

二の腕は暗殺者に噛まれていた。
尖った犬歯が二の腕に食い込み、血が溢れ出る。

彼は無理矢理に右手を振り回し暗殺者を吹き飛ばす。

ブチッ、と肉が千切れ、大量の血と共に激痛が襲う。


「あぐっ!!」


リーダーは怒りを込めた目で暗殺者の睨んだ。

彼女は彼から2メートルほど後ろの地面に立っている。

口を動かし何かを咀嚼していた。
何を咀嚼しているかなど簡単だ。

彼の二の腕を食っている。

暗殺者は心底不味そうに肉を吐きだした。
口の周りは血で真っ赤に染まっている。


「やっぱり不味いわね、精子も不味いし、男っておいしい場所が無いのね」


暗殺者は楽しそうに微笑む。

めちゃくちゃだ。
壊れている。
それ以外の言葉が見当たらない。


「多重人格なのか?」


リーダーは問いかけた。
それ以外にあり得ない。


「ちょっと違うわ、多重人格って言うのは人格同士が同等なはずでしょ。でも私は違う。私達は同等じゃないの、私は彼女の許しが無ければ表には出てこれないの」


彼女は楽しそうに続ける。


「あの子が私を消そうと思えば私を消す事も出来るのよ」


彼女はそれだけ言うと無言で攻撃姿勢をとる。

彼女は蛙のような構えをする。
そして全力で跳んだ。

地面スレスレの低空飛行をしながら彼を狙っていた。

矢のように突っ込んでくる。

回避する時間は無い。

リーダーは持てるだけのクナイを投げつけた。
とにかく近づかれたくない。

だが彼女は避けなければ、防御もしなかった。
真正面からクナイの雨に突っ込む。

クナイが体に突き刺さり、血が飛び散る。
しかしクナイはどれも急所に当たっていなかった。

避ける間もなく暗殺者のナイフが彼の右足を斬り裂く。


「あ、がァァァァァァァ!!」


声を上げ地面に倒れる。
立ち上がる事も出来ない。


「あら、もう勃てないの?」


いつの間にか彼女が目の前に立っていた。

肩や腕にはクナイが突き刺さっている。

血まみれの女性はにこやかに笑いかけてきた。

髪を掴まれ、無理矢理に立たされる。
足からはおびただしい量の血が溢れ出ている。


「そんなんじゃ私をイかせるどころか濡らすことだって出来ないわよ」


そんな言葉を言いながら左足にナイフを突き刺す。
やはりその顔は恍惚の表情をしていた。


「え、これから面白くなるのに、仕方ないわね」


彼女は残念そうな声を上げた。

そして彼女は目を閉じる。

暗殺者「ドラゴンは何処にいる」

リーダー「ちょ、ちょっと待ってくれ」

暗殺者「何を待つんだ」

暗殺者「何ならまた交代しようか?」

リーダー「わ、わかった、言うから俺の質問に答えてくれ!!」

暗殺者「……わかった」

リーダー「あいつは何者だ!!」

暗殺者「俺の中にいるもう一つの人格だ」

暗殺者「あいつに教えてもらってただろ」

リーダー「……」

暗殺者「じゃあさっさと話せ」

リーダー「多分武器屋の裏の家だ」

暗殺者「本当だな」

リーダー「あ、ああ」

暗殺者「私の出番ね」

リーダー「お、おい!!」

暗殺者「足って二本もいらないわよね」

リーダー「ちゃ、ちゃんとしゃべっただろ!!」

暗殺者「さっきも言ったでしょ、まだ私は濡れてもいないのよ」

リーダー「ひ……」」

暗殺者「時間が無いからさっさと殺すわね」

暗殺者「もっと楽しみたかったわね……」


暗殺者はナイフを胸に突き刺す。


リーダー「あ、ああ……」ガクン

暗殺者「次はもっと遊ばせてよ」

暗殺者「わかってる」

暗殺者「……」スタスタ

女勇者「終わりましたか?」

※補足

魔法について

簡単に説明しましたが魔法は二種類あり魔力を使うタイプと自分の体を使うタイプに分かれます。

自分の体を使うタイプは代償と呼ばれ、血、皮膚、肉などの部位を媒体に魔法を発生させます。

当然大きな魔法には大量の代償が必要となるため、下手をすれば死にます。

生まれつき魔力は決まっており、成長する事も無いので、代償は魔力の少ない人たちが多く利用します。

今日はここまでです。

まだもう一戦残ってると思うとしんどい……

暗殺者戦は時間の関係で結構雑になっちゃってると思います。すいません

勇者戦はもっと頑張ります。

口調がはっきり違うから読み間違う事もないけど、主人格を「 」、副人格を『 』で
書き分けてみるとか?
ただこれだと副人格が表に出てる時に、心の中の主人格との会話で混乱するね
表層 : 主「 」、副『 』
心中 : 主「( )」、副『( )』
とか?

暗殺者「ああ、終わったよ」

女勇者「殺したんですか?」

暗殺者「その辺に転がってる」

暗殺者「お前も派手にやったよな」

女勇者「仕方のない事です」

女勇者「傷を塞いでおきましょうか?」

暗殺者「いや、大丈夫だ」

女勇者「そうですか」

暗殺者「それにしても、勇者のやる事じゃないよな」チラッ

暗殺者「皆殺しか?」

女勇者「はい」

暗殺者「ずいぶん派手にやったな」

女勇者「数が多かったんです」

女勇者「それに私は勇者ではありません」

暗殺者「ああ、そうだったな」

女勇者「で、場所はどこですか?」

暗殺者「武器屋の裏の家だってさ」

女勇者「私達の出番はここまでですね」

暗殺者「ああ、そうだな」

暗殺者「ここはどうする?」

女勇者「女大臣に頼んでおけば片付けてくれます」

暗殺者「そうか」

女勇者「行きますよ、勇者が待ってますから」スタスタ

暗殺者「そうだな、こっからはあいつの仕事だ」スタスタ

女勇者「で、あれは誰ですか?」

暗殺者「聞いてたのか?」

女勇者「はい、少しですが」

暗殺者「……後でしっかり話す」

女勇者「そうしてください」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


武器屋


暗殺者「ただいま」ガチャ

勇者「勝ったのか?」

暗殺者「ああ」

女勇者「皆殺しですが」

勇者「そうか」

女勇者「ずいぶん頭が冷えたようですね」

勇者「……さっきは悪かった」

暗殺者「謝る事じゃない」

女大臣「場所は何処ですか?」

女勇者「武器屋の裏の家です」

勇者「って事はここの裏って事?」

女勇者「そう言う事です」

武器職人「ずいぶん近くだな」

暗殺者「後、悪いんだが後処理頼めるか?」

女大臣「安心してください、すでに後処理は始めてます」

女勇者「仕事が早いですね」

女大臣「大臣ですから」

勇者「じゃあ行ってくる」

武器職人「ちゃんと持って帰ってこいよ」

女勇者「死んだら許しませんよ」

勇者「わかってる」

暗殺者「死ぬな、それだけだ」

勇者「わかってる」

女大臣「頑張ってくださいね」

勇者「ああ」

勇者「じゃあ」ガチャ

女勇者「……で、何者なんですか、強者とは」

女大臣「前に言ったとおりです」

暗殺者「なんか隠してるだろ」

女大臣「……さすがですね」

暗殺者「嘘には敏感なんでね」

女大臣「強者は私の知った人物です」

女勇者「……知った人物?」

女大臣「はい、私の兄弟子にあたる人物です」

武器職人「なんでその事をあいつに教えなかったんだ?」

女大臣「全ての情報が武器になるとは限りません」

女大臣「それにこの情報を知った所で勇者様が有利になる訳ではありません」

暗殺者「勇者に迷いが生まれないようにって訳か」

女大臣「その通りです」

暗殺者「凄いなあんた、大臣やってるのがもったいないくらいだ」

女大臣「過大評価ですよ」

女大臣「あの方は力を追い求めるような人間では無い人間でした……」

女勇者「人間なんてすぐに変わってしまうものです」

暗殺者「どうしてそうなったかは知ってんのか?」

女大臣「ある程度は知っています」

暗殺者「あ、そう」

女大臣「聞かないんですか?」

暗殺者「聞いたところで意味は無いだろ」

女大臣「そう……ですね」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者「……」スタスタ

強者「……」


そこには黒い服を着た白髪の男が立っていた。


勇者「お前が強者か?」

強者「いかにも、貴公が勇者か?」

勇者「ああ」

強者「ほう、想像とは違う男だったか……」

勇者「ドラゴンは何処だ」

強者「心配するな、まだ何もしとらん」

勇者「何処だって聞いてんだ」

強者「屋根裏部屋だ」

勇者「素直に返す気は……無いよな」

強者「その通りだ、それでは何のためにさらってきたのかわからんだろう」

勇者「そうだよな、わかるよ」

強者「何がだ?」

勇者「あんたの言い分もほんのちょっとだけわかる、強さを追求するってのは大切だ」

強者「……貴公に俄然興味がわいてきた」

勇者「あんたは自分のために力を得るようなタイプには見えねぇしな」

強者「……」

強者「貴公は力を得たくは無いのか?」

勇者「他人を犠牲に力を得るってのも有りだろ思う、けどそれに俺の仲間を使うんならそれを止める」

強者「全くの他人ならいいのか?」

勇者「俺の知ってる人間じゃないなら勝手にやってくれ」

強者「外道だな、貴公は」

勇者「お互い様だ」

強者「だがドラゴンを返す気は毛頭無い」

勇者「だろうな」

強者「お互い、剣で語り合おうではないか」


強者は黒色の剣を抜く。


勇者「そうだな、それしかないよな」


勇者もまた、刀を抜く。

今日はここまでです。

昨日は更新できずすいません。鯖が復活するまで待ってたら寝ちゃいました。

もう戦闘シーンは書けているんですが、自分で納得できていないので明日にさせていただきます。本当にすいません。

勇者と強者は同時に走り出す。

二人とも姿勢を低くし、攻撃態勢に入った。

お互いに頭の中を戦闘用に切り替える。
無駄な事を何も考えず、戦う事だけに集中した脳に。

勇者の刀と強者の剣が激突した。

金属音と共に火花が散った。

お互いの顔が近づく。
お互いに笑ってはいるが目は獣そのものだ。

奥歯がギリギリと鳴っているのがわかる。
膝も笑っていた。

一瞬でも気を抜けば死ぬ。
直感でそう感じた。

つばぜり合いの状態で二人の体が停止する。

一瞬の停止。
一瞬の静寂。

だが次の瞬間にはまた火花を散らしながら剣と刀が激突する。

防御しては攻撃する、を何度も繰り返す。
一瞬の油断もミスも許されない。

お互いに精神をぎりぎりまで集中させた戦い。
その姿はまさに獣同士の喰い合いだった。


「ははは、面白い、やはり貴公は面白いぞ!!」


つばぜり合いの状態で強者が言い放つ。
顔は無邪気な子供の笑顔のようだ。

この男にとって戦いは生きている証なのだろう。
勇者はそう感じていた。


「あんたも十分面白ぇよ」


勇者は相手の目を見てそう言い返した。

剣と刀が擦れ合い音をたてる。

自然と右手に力が入った。
さらに相手に近づく。

自然と笑顔がこぼれた。
邪悪で心底楽しそうな笑顔。

強敵と戦える事。
自分よりも強い相手と戦える事がうれしい。

強者の剣に弾かれるように後ろに吹き飛ぶ。

勇者は2メートルほど離れた場所に着地した。
態勢はほとんど崩れない。

勇者は刀を両手で構え直すと、強者の方を見た。

楽しいそうに。
本当に楽しそうに。
強者は右手に黒い剣を握りしめ笑っていた。

彼もまたこの戦いを心底楽しんでいるのだ。

一瞬の隙が命取りになると言う極限状態が二人の何かを猛烈に刺激している。
心が、体が、何かが燃えていた。

先に仕掛けたのは勇者だった。

一瞬で強者との距離を無くし、剣を振り下ろす。

ガキィン、と言う音が炸裂する。

強者の剣が勇者の刀を止めていた。

強者は刀を弾くと勇者の懐に飛び込む。

決して素早いわけではない。
だが隙が全く無い。

逃げられない。
そう感じた勇者はとっさに刀を盾にした。

金属同士がぶつかる音と共に刀を持つ手に衝撃が走る。
予想以上の衝撃に手が痺れた。

あまりの衝撃に僅かに後ずさりしてしまう。

強者の攻撃は止まらない。

姿勢を低くすると、恐ろしい速さで突進してくる。
その姿は獲物を狙う肉食獣の様だ。

勇者は刀を構え直すと、大きく横に薙ぎ払った。
僅かに衝撃波が起こり、砂煙がまき上がる。

だが強者はそこにはいない。

勇者はとっさに周りを見渡した。
それらしき姿は無い。

だが次の瞬間、勇者は右足の鋭い痛みで膝をついていた。
見なくても血が出ているのがわかる。

太もも辺りから出た血が足を伝いゆっくりと地面に落ちる。

理由は簡単。
斬られたのだ。

勇者が刀を横に薙ぎ払った瞬間に後ろに回られていた。

速い。
勇者が出会ってきた中で最も速いかもしれない。
そう感じるほど速い。

奥歯を噛み締め、踏ん張る。
だが足に力が入らない。

血が絶え間なく傷口から流れ出ていた。
傷は深い。

いつの間にか、強者が目の前に立っていた。
右手に持った剣からは血が垂れている。

勇者はとっさに後ろに跳んで距離を置く。

着地した時に態勢が僅かに崩れた。

それでも刀を構え直し、攻撃の準備をする。


「ほう、まだ目が死んでおらぬか、やはり我の見込んだ通りだ!!」


強者は楽しそうにそう叫んだ。
残虐で、邪悪な笑顔。

顔には勇者の血が数滴飛び散っている。

強者は剣を両手で構えた。

来る。
そう分かっているのに体の反応が間に合わない。

ゴウッ、と言う音が聞こえた。

強者は勇者目掛けて跳んでいた。
助走も無いのに、さっきよりも速い。

体が強張るのがわかる。
恐怖が彼の体を支配している。

勇者は動かない体を強引に動かし、刀を構え直した。

強者の攻撃に備える。

真正面からぶつかれば足に怪我を負っている彼に勝ち目は無い。
ならば……受け止めるのではなく受け流せばいい。

勇者は構えを微妙に変える。

刀の角度を調整し強者とぶつかる。

今まで以上に剣と刀が擦れる音がした。
力が流れて行くのが感覚でわかる。

力を左へと受け流し、右足にかかる負担を減らす。

次の瞬間、勇者は強者目掛けて刀を突き出した。
隙を極限まで少なくし、今の自分の出せる最速で突く。

ブスリ、と刀が肉に刺さる感覚。

刀は強者の左肩を貫いていた。
左肩からはドス黒い何かが溢れ出ている。

ドス黒い何かはもはや人間とはかけ離れた物体のように見える。
いや、実際人間とはかけ離れた物だ。

今になって自分の戦っている相手が人間ではないと自覚した。


「血も通ってねぇのか」

「我が人間だったのは昔の話だ」



強者はそう言った。
口調は今までと変わらないのに、寂しそうに聞こえた。

彼は剣を大きく縦に振り下ろす。

だが勇者はそれを素早く回避した。

だが服の左肩が僅かに破れ、血が出る。

これ以上血を流すのは危険だ。

すでに右足の感覚が無くなりつつあった。

勇者は刀を強く握り、後ろに跳ぼうとする強者に追撃をする。

チャンスはここしかない。
そう自分の心に言い聞かせる。

後ろに跳ぶ強者に向かって跳んだ。

強者に向かって刀を大きく縦に振る。

刀は空を斬り、強者の首を斬り裂こうとする。

だがガキィン、と言う音と共に刀が止められた。
火花が飛び散り、得物同士が擦れてギリギリと音をたてる。

強者がとっさに剣で防御したのだ。

だが勇者は止まらない。
ここで引き下がるわけにはいかない。

強者の脇腹目掛け左足で蹴りを入れる。

ドゴッ、と鈍い音が聞こえた。

だが強者に足が当たった瞬間、勇者の脇腹にも痛みが走る。

強者も勇者の脇腹に蹴りを入れていたのだ。

胃の中の物が逆流しそうになる。

お互いに吹き飛び、地面に転がった。


「貴公の強さはこんなものではなかろう」


強者は立ち上がり、剣を構える。
左腕はドス黒い液体に染まっていた。


「あんたも本気で来いよ」

勇者も立ち上がろうとする。

右足が斬られたせいでうまくバランスが保てない。
だが痛みに耐え、立ち上がる。

刀を握り直し、強者に突っ込んだ。

ここまでくれば小細工など無用。
正面から正々堂々斬り込む。

強者は剣を大きく振りかぶり、横に薙ぎ払う。

空を切る音。
飛び散るドス黒い液体。

だが勇者には当たらなかった。
勇者はすでにそこにはいない。

勇者の刀が振り下ろされる。

強者の左手を斬り落した。

左手が宙をくるくると飛んでいる。
ドス黒い液体が辺りを染めた。

強者の顔が苦痛にゆがんでいるのが見えた。

その時強者の動きが僅かに鈍っていた。

勇者はそれを見逃さない。

後ろに跳ぼうとする強者の胸に剣を突き刺す。

だが勇者の腹にも剣を突き刺さる。

予想以上の激痛がはしる。

お互いに得物が突き刺さったまま静止した。

静寂。

勇者は前に進んだ。
僅かに動くだけで剣が体の奥に刺さっていくのが感覚でわかる。

腹に激痛が走る。

血で足が滑る。
前に進むのがつらい。

だが前に進む。


「さ……すがだ」


強者はつらそうにそう言った。
だが、なぜかその声には強さが滲み出ている。

今まで背負って来た物の重さがその強さを生みだしているのだろう。

多分それは強者の信念だ。
人間であることをやめてまで貫き通す信念。
人間をやめてまで守りたかった何か。

それが彼の強さ。

だが勇者にも貫き通したい信念がある。
守りたい者がある。

だからこそ、自分の信念を貫き通す。
自分の守りたい者を守る。

それが勇者の強さ。

勇者は相手の顔を睨みつける。


「ははっ、こんな所で死ぬわけにはいかねぇんだよ!!」

勇者は刀を離し、強者の腹を殴った。
拳には筋肉とは程遠い硬い感触があった。

血で足が滑り、僅かにふらつく。

強者は膝をついていた。

負けられない。
絶対に負けられない。

勇者は体を大きく捻った。
そのまま大きく振りかぶり、強者に殴りかかる。

強者はとっさにかわそうとするが間に合わない
間に合わせない。


「おおォォォォォォ!!」


大声を上げ、殴りかかる。

勇者の拳が強者の顔面に突き刺さる。

メキリ、と言う骨が折れるような音がした。

それが強者の顔の骨なのか勇者の手の骨なのかは分からない。

強者は竹トンボの様に回転しながら2メートルほど吹き飛ぶ。

立ち上がってはこない。

静寂。
無音。

勇者のその場に崩れ落ちた。

体が動かない。
満身創痍。

音が無い。
目の前が霞む。

勇者は必死に意識を繋ぎ止め、刀の鞘を杖にしながら立ちあがった。

強者「ここまでか……」

強者「戦士が……剣ではなく拳で勝敗を決めるか」

勇者「最初に言っただろ、俺は外道だって」

強者「貴公は俺の思った通りの男だ」

勇者「?」

強者「貴公は……我にそっくりだ」

強者「愛する人のために命をかけられる、いい人間だ」

勇者「……あんたは守れたのか?」

強者「守れていたら、我はこんな姿にはなっておらん」

勇者「……」

強者「殺せ」


強者は自分に刺さっている刀を抜き、勇者に渡す。


勇者「最初っから殺す気だ」

強者「飾らんな、貴公は」

勇者「ああ、普通の勇者ならあんたに手を差し伸べてただろうな」

強者「そうだな」

勇者「後悔してるのか?」

強者「まさか、こんな闘いを出来て後悔する必要など無かろう」

勇者「……」

勇者「ドラゴンは本当に無事なんだろうな」

強者「杞憂だ」

勇者「……」

勇者「遺言くらいなら聞いてやる」

強者「遺言……か」

強者「無いな」

勇者「いいのか?」

強者「伝えたい事も、それを伝えたい人もおらん」

勇者「そうか」

勇者「心臓を刺せばいいのか?」

強者「うむ、我だって心臓を刺されれば死ぬ、一撃で頼むぞ」

勇者「そのつもりだ」


勇者は倒れている強者の心臓を刀で突き刺した。

今日はここまでです。

戦闘シーンは難しいです……

ちなみに俺はドラゴン大好きな厨二病です。

勇者「……死んだか」


勇者は強者の剣を強者に握らせる。


勇者「成仏しろよ」

勇者「とにかく屋根裏部屋に行かねぇと」フラフラ

勇者「これは本当に死ぬ……」フラフラ

勇者「鍵かかってるし……」

勇者「……」


刀で鍵を叩き斬る。


勇者「ドラゴン、居るか?」

ドラゴン「勇者、勇者か!!」タタタッ

勇者「元気で何よりだ」

ドラゴン「結界はどうした?」

勇者「結界?」

ドラゴン「ああ、ビリってしただろ」

勇者「えーと、多分刀で斬っちゃったと思う」

ドラゴン「結界をか?」

勇者「ああ、多分」

ドラゴン「さすが勇者、オレの夫だ!!」ダキッ

勇者「わかったからさっさと帰るぞ」

ドラゴン「ああ」

勇者「……」

ドラゴン「ん?」

勇者「無事でよかった……と思う……」

ドラゴン「思うってなんだ、思うって」

勇者「そのままの意味だ」

ドラゴン「なんと言うか、色気に欠けるな、貴様は」

勇者「元々だ」

ドラゴン「別の言い方は無かったのか?」

勇者「お前は俺のあれだから……死なれたら困る、だから無事でよかった、これでいいか?」

ドラゴン「だからあれってなんだ」

勇者「あれはあれだ」

ドラゴン「だからもっと詳しく言ってくれ」

勇者「……」

ドラゴン「……」

勇者「仲間だよ、仲間!!」

ドラゴン「……それだけか?」

勇者「それだけ……って訳でも無いけど……」

ドラゴン「……」

勇者「ああ、もう!!」


勇者はドラゴンと唇を重ねる。


勇者「……」///

ドラゴン「……」

勇者「……」///

ドラゴン「……」

ドラゴン「あ、ありがとう」///

勇者「あ、ああ」

勇者「行くぞ」フラフラ

ドラゴン「ああ、そうだな」スタスタ

勇者(やばい、これは死ぬかもしれない)フラフラ

勇者(恥ずか死ぬ)フラフラ

勇者(ああ、なんでこんなベタな事を……)フラフラ

~~~~~~~~~~~~~~~


武器屋


勇者「ただいま……」フラフラ

ドラゴン「悪かったな」

女勇者「勇者、ドラゴン!!」

暗殺者「二人とも大丈夫か?」

ドラゴン「オレは大丈夫だ、それよりも勇者が……」

女大臣「とにかく血を止めましょう」

女勇者「はい」ポワワン

女大臣「勇者様、いきますよ」ポワワン

勇者「悪いな」

女勇者「強者はどうなったんですか?」

勇者「死んだ、と言うより俺が殺した」

女大臣「そう……ですか」

暗殺者「とにかくみんな無事でよかった」

女大臣「まっだぐでず」ポロポロ

勇者「わかったから泣くな、今ハンカチ持ってねぇから」

女大臣「自分でもっでまずので」

勇者「ああ、そりゃ良かった」

勇者「武器職人、これ返す」スッ

武器職人「ああ」パシッ

武器職人「……おい」

勇者「ん?」

武器職人「ほら、お前にお似合いのボロ刀だ」ポイッ

勇者「……いいのか?」

武器職人「折ったら許さんからな」

勇者「でもこれかなりいい刀じゃ――――」

武器職人「折ったら許さんからな!!」

勇者「……大事にするよ」

女大臣「よがっだでずね」ポロポロ

勇者「わかったからちょっと泣き止め」

暗殺者「とにかくみんな無事でよかった」

父親「やっと終わったか」ガチャ

勇者「父さん、何の用だ」

父親「お前に言い忘れた事があったんでね」

女大臣「私達は席を外しましょうか」

勇者「別にいいよ」

勇者「で、何の用だ?」

父親「これをお前に渡そうと思ってたんだ」スッ

勇者「なんだよ、これ」

父親「お前の母親が今居る場所が書いてある」

女勇者「ほ、本当ですか!?」

父親「ああ、これを届ける為にここまで来たんだ」

勇者「今更会う必要なんて無い」

父親「本当にいいのか?」

勇者「……」

父親「まあ、お前達が次に立ち寄る町がその町だ、気が向いたら会いに行け」

勇者「わかった」

父親「物分かりがいい子で助かったよ」ニッコリ

勇者「……」

父親「じゃあ、帰るかな」

勇者「こんな事のためだけに来たのか?」スタスタ

父親「当たり前だ、お前のために来たんだぞ」ガチャ

ドラゴン「どうするんだ?」

勇者「今の所はわかんねぇ、とにかく行ってから決める」

女勇者「そうですね」

武器職人「頑張れよ、あんた達」

勇者「ああ、ありがとう」

女勇者「荷物はまとめてあります」

勇者「仕事が早いな」

女勇者「あなたとは違って私は手際がいいんです」

勇者「なんでそうムカつく言い方しか出来ないのかな」

女勇者「元々です」

ドラゴン「じゃあ行くか、おんぶしてやろうか?」

勇者「余計なお世話だ」

女大臣「後処理は私に任せておいて下さい」

女勇者「では、お願いします」スタスタ

女大臣「はい」

女大臣(勇者様と女勇者様はどうするんでしょうか……)

女大臣(心配です……)


こうして、勇者たちは新たな町へ向かうのであった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


武器屋裏の家


女大臣「……」

女大臣「あなたらしい死に方ですね」

女大臣「結局あなたは何のために力を求めたんでしょうね」

女大臣「……そんな事あなたにもわかりませんよね」

弓兵「ったく、あいつ等は加減って物を知らないのか?」スタスタ

女大臣「ありがとうございました」

弓兵「いいさ、あんたには借りがある」

弓兵「こいつが強者か?」

女大臣「はい」

弓兵「戦場で死ねたのなら本望だろ」

女大臣「そうですね、今も昔のこの人の居場所は戦場だけでしたから」

弓兵「そう言えばあんたの兄弟子だったっけ?」

女大臣「はい」

弓兵「いい顔で死んでるな」

女大臣「そうですね」

女大臣「やはり勇者様はこの人に似ています」

弓兵「こいつと勇者が?」

女大臣「はい、好きな者のために戦う所なんてそっくりです」

女大臣「ただ、勇者様は救えて、強者は救えなかった、それだけの事です」

弓兵「……」

女大臣「すいません、関係無い話をしてしまいましたね」

弓兵「別に構わんよ」

弓兵「こいつは好きな人のために力を望んだのか」

女大臣「私にはわかりません」

女大臣「多分本人ですらわかっていませんから」

女大臣「だからこそ勇者様と戦ったんだと思います」

※キャラ紹介



強者    体の年齢は22歳

大切な者を守るために力を追い求めた男。
実際は27歳だが特殊な方法で不老の力を得たため。、22歳から年をとっていない。(不死ではないため死にます)
白い髪は地毛。
初期設定では勇者達の仲間になるはずだったが負けて仲間になると言うのが強者のキャラに合っていなかったので悩んだあげく変更した。
そのため細かい設定や重い過去がある。


弓兵   35歳

ハンターの一員。
女大臣には借りがある。(そのうちそのエピソードを書くかもしれない)
基本的に細かい事は気にしない性格。
ちなみに物凄く強い。(勇者にも楽勝で勝てる)
だが職業柄、自由に戦闘出来ないのが悩み。

今日はここまでです。

次回からは次の町です。

ちなみに俺はキャラを考えてからストーリーを作るので、大抵のキャラには本編には出てこないが、しっかりとした設定があります。

もし時間があったら紹介したいと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


海辺の町 宿屋


女勇者「思ったよりすんなり着けましたね」

勇者「そうだな」

暗殺者「おばさん、泊まれ?」

おばさん「四人部屋は無いから二人部屋を二つでいいかい?」

ドラゴン「どうする?」

暗殺者「別にいいだろ」

女勇者「そうですね」

おばさん「100ゴールドね」

女勇者「どうぞ」スッ

おばさん「これ鍵ね」カチャン

勇者「じゃあ俺は暗殺者と―――――」

女勇者「私は暗殺者と一緒の部屋でいいです」

ドラゴン「じゃあオレは勇者とだな」

勇者「勝手に決めんな!!」

暗殺者「そんなに怒るなって」

勇者「それはダメ、絶対ダメ!!」

女勇者「夫婦なんですから、いいじゃないですか」

勇者「だからそう言う事じゃなくて!!」

ドラゴン「オレと一緒がそんなに嫌なのか……」

勇者「いや、そういう意味では無く……」

ドラゴン「ちゃんと眼を見て言ってくれ」

勇者「すまん、今はちょっと無理」

ドラゴン「どうしてだ?」

勇者「それは……その……」

女勇者「ドラゴン、買い物に行きませんか?」

ドラゴン「ああ、行く」

ドラゴン「勇者、後でゆっくり聞くから準備しといてくれ」スタスタ

勇者「あ、ああ……」

勇者「ダメだ、うまくしゃべれない……」スタスタ

勇者「あれからドラゴンの目が見れねぇ」ガチャ

暗殺者「独り言か?」

勇者「なんでここに居るんだ!!」

暗殺者「窓のカギが開いてたんだ、不用心だな」

勇者「なんで俺の部屋に居るのかって事だよ!!」

暗殺者「お前があまりに変だから心配してやってんだ」

勇者「余計なお世話だ」ドサッ

暗殺者「女勇者がフォローしてなかったらどうなってたと思う?」

勇者「う……」

暗殺者「いいから話せよ」

勇者「だ、大丈夫だ、自分で解決する」

暗殺者「……」

勇者「なんだよ」

暗殺者「恋の悩みなら俺よりうまく解決してくれそうな奴がいるけどどうだ?」

勇者「……そう言えばお前恋がわかんねぇって言ってたな」

暗殺者「俺に聞かれるのも嫌だろ」

勇者「信用できる?」

暗殺者「少なくとも俺は信頼してる」

勇者「……そうだな、じゃあ頼む」

暗殺者「ちょっと待ってろよ」

勇者「……」

暗殺者「……」

勇者「どうした?」

暗殺者「初めましてでいいわよね、よろしくね」

勇者「誰だお前!!」

暗殺者「自己紹介がまだだったわね、私は暗殺者の中のもう一つの人格よ」

勇者「え、は?」

暗殺者「今言った通りよ」

勇者「え、って事はあんた吸血鬼?」

暗殺者「ちょっと違うわね、吸血鬼の人格も入ってるかもしれないけど私は私だから」

勇者「じゃああんたは一体何?」

暗殺者「言葉で説明するのは難しいわ、いろいろ複雑だから」

勇者「ああ、そう」

暗殺者「そんな事より恋の悩みがあるんでしょ、早く話してくれない?」

勇者「あんたに言ったら暗殺者にも聞こえるんだろ」

暗殺者「そうね」

勇者「結局暗殺者にも話してるようなもんじゃん……」

暗殺者「細かい事を気にしてると後悔するわよ、特にベッドの上だと」

勇者「意味がわからん」

暗殺者「まだ若いもんね」

勇者「若いとか関係ねぇよ!!」

暗殺者「いいから早く話してくれない、私もう我慢できないの」

勇者「なんでそう一々下ネタっぽいのかな……」

~~~~~~~~~~~~~~~~

説明中

~~~~~~~~~~~~~~~~

暗殺者「つまりキスしてから恥ずかしくなっちゃったわけね」

勇者「そういう訳です」

勇者(思い出しても恥ずかしい……)

暗殺者「思春期のガキか」

勇者「うるせぇ!!」

勇者「あと勝手に男の方に戻んな!!」

暗殺者「ああ、すまん」

暗殺者「……で、あなたはどうしたいの?」

勇者「そんな簡単に切り替えられるんだ」

暗殺者「私は自由に出てこれないけどね」

勇者「男の方の暗殺者に主導権があるって事か」

暗殺者「男っぽいだけで男では無いわよ」

勇者「じゃあ男っぽい方に主導権があるのか」

暗殺者「そう言うことね、それにしても主導権ってエッチよね」ニコニコ

勇者「全然エロくねぇよ」

暗殺者「で、どうしたいの?」

勇者「とにかく今まで通り話せるようになりたい」

暗殺者「そんなの簡単じゃない」

勇者「本当に!?」

暗殺者「一回抱けばキスで恥ずかしいなんて言わなくなるわよ」

勇者「抱いたら抱いたで恥ずかしくなるんだから意味ねぇよ!!」

暗殺者「お互い恥ずかしい部分をいっぱい見たり、見られたりする訳だから大丈夫よ」ニッコリ

勇者「無理、絶対無理」

暗殺者「じゃあキスした事を忘れて話せばいいじゃない」

勇者「それはそうだけど……」

暗殺者「私が出来るのは助言まで、行動はあなたがするしかないのよ」

勇者「そうだけど」

暗殺者「じゃあ飽きてきたから終わるわね」

勇者「結局飽きたのかよ!!」

暗殺者「とにかく頑張って、私達は応援してるわよ」

勇者「ありがとう」

暗殺者「エッチする時は呼んでね、見たいから」

勇者「絶対嫌だ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夜 勇者の部屋


暗殺者「なんで俺も?」

勇者「頼む、俺一人じゃ不安なんだ」

暗殺者「思春期の子供かよ」

勇者「そんな事言わずに頼むよ」

ドラゴン「ただいま」ガチャ

勇者「お、お帰り」

暗殺者「早かったな」

暗殺者「肩の力を抜いて、相手を真っすぐ見る」ヒソヒソ

勇者「わ、わかってる」

ドラゴン「肉が安かったんでたくさん買ってきたぞ」ドサドサ

勇者「ありがとう」

ドラゴン「暗殺者も一緒だったのか」

勇者「あ、ああ、母親の事を調べてもらってたんだ」

暗殺者「なんでそこで嘘をつく!!」ヒソヒソ

勇者「本当の事言ったら超ダサいじゃん!!」ヒソヒソ

ドラゴン「で、どうだったんだ?」

暗殺者「ええと……出掛けてみたいだ」

ドラゴン「そうか」

暗殺者「じゃあ俺そろそろ戻るから」スタスタ

勇者「おい」

暗殺者「幸運を祈る」ガチャ

勇者「……」

ドラゴン「……」

勇者「……」

ドラゴン「今日はどうだった?」

勇者「あ、別に普通……かな」

ドラゴン「そうか」

勇者「……」

ドラゴン「勇者は会いたいのか?」

勇者「え、あ、母親に?」

ドラゴン「ああ、それ以外に何がある」

勇者「……正直どっちでもいいかな」

勇者「別に会いに行ってもいいけど、何か怖いし……」

ドラゴン「オレも一緒に行ってやろうか?」

勇者「大丈夫、俺の問題なんだし」

ドラゴン「そう一人で悩まない方がいいぞ」

勇者「そ、そうか?」

ドラゴン「恋人は共に苦難を乗り越えるものだろう」

勇者「じゃあ一緒に行ってくれる?」

ドラゴン「いいぞ」

勇者「ありがとう」

ドラゴン「……治ったな」

勇者「何が?」

ドラゴン「今オレの眼を見て話してるだろ」

勇者「あ、確かに」

ドラゴン「女勇者の言うとおりだな」

勇者「何が?」

ドラゴン「勇者の事を話したら、恥ずかしがってるんじゃないかって言ってたんだ」

勇者「え?」

ドラゴン「こっちから積極的に話せばきっと大丈夫だってアドバイスしてくれたんだ」

勇者「えーと、話したの?」

ドラゴン「ああ」

勇者「……何処まで話したの?」

ドラゴン「全部話したぞ」

勇者「……」

ドラゴン「?」

勇者「もう嫌だ……死にたい」

ドラゴン「勇者?」

女勇者「ドラゴン、夕飯は作れますか?」ガチャ

ドラゴン「勇者に作ってもらう」

勇者「悪い、今日は作れない……」

女勇者「じゃあ私が作りますね」

勇者「悪い……」

暗殺者「まあ、うまくいったからいいじゃん」

勇者「……そうだな、ポジティブに考えないと」

女勇者「もうこれ以上あなたの評価が下がる事は無いんですよ」

勇者「……ああ、うれしい限りだ」

暗殺者「元気出せよ」

勇者「ああ、そうだな」

女勇者「明日行きますか?」スタスタ

ドラゴン「早いな」モグモグ

女勇者「焼くだけですから」

勇者「え、お前も行くの?」モグモグ

女勇者「当たり前です」モグモグ

暗殺者「俺も行くからな」

勇者「なんだ、結局みんなで行くのか」モグモグ

女勇者「その方が気が楽でしょう」モグモグ

勇者「まあ、確かにそうだな」モグモグ

※裏話

ドラゴンがたまに言う恋人やら夫婦やらの話や知識の大半は女勇者から聞いたものです。
そのため女勇者はドラゴンと勇者が何があったかは大抵把握しています。

暗殺者も男目線で勇者の相談にのってあげたりしています。
その相談の大半はどうでもいい事なんですが、暗殺者はちゃんと聞いてあげます。

今日はここまでです。

確かに強者の描写はありませんでした。すいません。

今後はそんな事が起こらないよう注意していきます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日 町中


勇者「ええと、こっちだな」スタスタ

女勇者「本当に居るんですかね」スタスタ

勇者「俺に聞かれても……」スタスタ

ドラゴン「お前の父親を信じるしか無いだろう」スタスタ

勇者「まあ、そうだけどさ……」スタスタ

暗殺者「信じられるような男じゃ無かったけどな」スタスタ

勇者「それは言えてる」スタスタ

ドラゴン「とにかく会いに行ってみればいいだろ」スタスタ

勇者「そうだな」スタスタ

暗殺者「会ったらどうする気だ?」スタスタ

勇者「そればっかりは会ってみねぇとわかんねぇかな」スタスタ

女勇者「とにかく私は話し合いたいです」スタスタ

勇者「ぶれないな、お前」

女勇者「当たり前です」

ドラゴン「で、何処なんだ?」スタスタ

勇者「あと少しだ」スタスタ

勇者「この家みたいだな」スタスタ

暗殺者「ずいぶんボロい家だな」

女勇者「誰かいませんか?」コンコン

勇者「結構ガンガン行くな、お前」

女勇者「悩んでいても仕方無いでしょう」

ドラゴン「そうだぞ、悩んでもいい事なんて無い」

勇者「それはそうだけどさ……」

暗殺者「お前って意外とガラスのハートなんだな」

勇者「顔すら覚えてない母親に会うんだ、当然だろ」

女勇者「女の子みたいですね、ロマンチストですし」

勇者「うるせぇ!!」

???「どうぞ」

女勇者「行きますよ」

勇者「待って、少しだけ待って!!」

ドラゴン「こういうのは止まらない方が楽だぞ」

勇者「そりゃそうだけどさ……」

ドラゴン「行くぞ」グイッ

勇者「マジかよ」

女勇者「失礼します」ガチャ


そこには40代後半の白衣で白髪交じりの黒髪の男が椅子に座っていた。

勇者「……」

???「どちら様ですか?」

暗殺者「俺は暗殺者です」

女勇者「女勇者です」

ドラゴン「ドラゴンだ」

勇者「俺は勇者、ここに女の人がいると思うんだけど」

???「彼女とはどのようなご関係ですか?」

勇者「息子です」

???「……と言う事は、勇者君かな」

勇者「……はい、そうです」

???「自己紹介が遅れたね、私の名は博士だ」

勇者「博士……」

女勇者「勇者の事を知っているんですか?」

博士「うん、勇者君の事は彼女から聞いているよ、イケメン君の事も、それから女勇者君の事もね」

女勇者「え?」

博士「おっと、君達に紹介しておかなくちゃいけない子がいるんだ、おいで」


奥の方からやってきたのは15歳くらいの茶髪の少年だった。

博士「彼女の息子の剣士君だ」

剣士「よ、よろしくお願いします!!」ペコリ

暗殺者「お前の子供か?」

博士「まさか、私はもう子供を作るような年じゃないよ」ニッコリ

ドラゴン「でも恋人なんだろ?」

博士「いやいや、私は彼女のやりたい事に興味があるだけですよ」

勇者「やりたい事?」

博士「うん、なんでも―――――――」

勇者母「ただいま」ガチャ


帰って来たのは見た目は20代後半に見えるスレンダーな茶髪ロングの幸薄そうな女性だった。


博士「あ、帰ってきたみたいだね」

勇者母「あれ、お客さん?」

博士「君のお客さんだよ」

勇者「どうも」

女勇者「お久しぶりです」

勇者母「勇者に女勇者じゃない、ずいぶん大きくなったわね」

勇者・女勇者「え?」

勇者「覚えてるのか?」

勇者母「当たり前じゃない、自分の子供を忘れる親なんて居ないわよ」

勇者母「自分で産んだ子供じゃなくってもね」

女勇者「……」

ドラゴン「勇者の妻のドラゴンだ」

勇者母「もう旦那さんがいるの、ダメな息子だけど捨てないであげてね……」

勇者「あんたにダメなんて言われたくねぇよ」

勇者「あとその挨拶をやめろ」

ドラゴン「事実じゃないか」

勇者「いつから妻になった」

勇者「って言うか旦那さんって言っただろ」

勇者母「あなたがお嫁さんでしょ?」ニッコリ

勇者「違う!!」

女勇者「……あなたに聞きたい事があります」

勇者母「何?」

女勇者「あなたは何故父を捨てたんですか」

勇者「いきなりか?」

女勇者「はい」

勇者母「……」

勇者母「長い話になるけどいい?」

女勇者「構いません」

勇者母「勇者、あなたにも関係ある事よ」

勇者「ああ」

博士「お茶だよ」コトン

女勇者「すいません」

勇者「すまんな」

勇者「で、どういう事?」

勇者母「私はね、同じ場所に留まれないの」

勇者「話が見えてこねぇな」

勇者母「なんて言うか、同じ男性とずっと一緒に居るって事が出来ないの」

勇者母「だから私は常に移動し、常に恋し続けたいの」

勇者「そんなもんあんたの自分勝手な生き方じゃねぇか」

女勇者「言ってる事がメチャクチャです」

勇者母「自分でもわかってる、でも私は同じ場所で同じ人と連れ添うのが無理なの」

勇者「意味わかんねぇ……」

暗殺者「その事を相手の男は知ってるのか?」

勇者母「付き合う前にその事はきちんと話すわ」

勇者母「今まで付き合った人はみんないいって言ってくれた人達なの」

勇者「じゃあ父さんも女勇者の父親も知ってたって事か?」

勇者母「そうよ、いい人達だったわ」

勇者「でも悪いのはあんただろ」

勇者母「そうね」

勇者「認めるのか」

勇者母「私は自覚があっても治せないの、どうやっても」

女勇者「じゃあ私の父はその事を知っていたのにおかしくなったのですか?」

勇者母「あの人は一途な人だったからね」

暗殺者「これはまた腐った性格の人だな」

ドラゴン「腐ってると言うより自分の生き方に正直なんじゃないのか?」

暗殺者「自分の生き方に正直なくせに世間体を気にする奴ほど愚かな奴はいない」

暗殺者「勇者の父親は世間体なんて気にせず、自分の生き方を貫いてただろ」

勇者母「自分でも最低の人間だってちゃんと自覚してるわ……」

勇者母「恨まれたって仕方無いわ」

勇者「わかっていてもやめられない、なんてかわいそうな私ってか?」

勇者「素敵な悲劇のヒロインだな」

勇者母「そうかもしれないわね」

勇者「あんたは結局世間体を気にして自分の生き方を貫けない出来ない中途半端な人間だ」

女勇者「勇者、言動を慎みなさい」

勇者「残された方の気持ちが全くわかってねぇよ」

勇者母「そうね、私は間違ってるわよね」

女勇者「間違っていませんよ」

勇者「は!?」

女勇者「この人はこの人なりの筋の通し方をしていますから」

勇者「おかしいだろ――――――――」

女勇者「私はあなたみたいな人間が大っ嫌いですが」

女勇者「同じ人と付き添えない、けれどその償いとして自分の子供を一時も忘れない、そんな物はただの自己満足です」

勇者母「そうね、全部私が悪いの……」

女勇者「同情を誘うような事を言う訳ですか、卑怯者ですね」

勇者母「……そうね、あなたの言う通りね」

勇者母「私の事ならどう思ってくれても構わないわ」

女勇者「そう言う所が嫌いなんです、八方美人でいられない事を分かっているくせに八方美人でいようとする」

博士「ずいぶん嫌われてるみたいだね」

勇者母「仕方のない事です」

剣士「母さん……」

勇者母「大丈夫よ」ニッコリ

暗殺者「そいつもあんたも息子か?」

勇者母「ええ、そうよ」

女勇者「そうでしょうね」

勇者「もうこの話は終わりだ」

ドラゴン「勇者はそれでいいのか?」

勇者「正直今更何言われてもどうでもいいよ、結果的に俺をおいて行った事には変わりねぇんだから」

暗殺者「わからんでも無いな」

勇者「とにかくこの話はここまで」

今日はここまでです

勇者母は今までのキャラと明らかに違う感じにしました。

今までのキャラは自分の生き方を貫き通す奴(強者、イケメンなどなど)と世間体だけを気にする奴(王様)で、真ん中がいなかったので、
勇者母はどちらでも無くてどちらでもある奴にしました。

暗殺者「じゃあ話題を変える、あんたのやりたい事ってのはなんだ」

勇者母「えーと―――」

博士「それは私から話すよ」

勇者「ああ」

博士「彼女はね、魔王と対話したいんだ」

女勇者「対話ですか?」

勇者「何のために」

勇者母「もし魔王と対話できるなら、勇者やイケメンや剣士たちが戦わなくてもいいでしょ」

勇者母「そうすれば誰も傷つかない」

勇者「そんなもんただの理想論だろ」

暗殺者「いつになく噛み付くな」

勇者「理想論に理想論って言って何が悪い」

博士「そうとも限らないよ、君達は実際に魔王を見た事があるのかい?」

勇者「それは―――――」

博士「やってみなくちゃわからないだろ」

女勇者「あなたも魔王と対話がしたいんですか?」

博士「まさか、そんなものになんて興味は無いよ」

暗殺者「じゃあ何のためにその人に協力してるんだ?」

博士「私は生物学者でね」

博士「私はね魔王の事を知りたいんだ」

博士「魔王ほど生態の知られていない生き物は無い、私はその生態に興味があるんだ」

女勇者「それを調べてどうするんですか?」

博士「どうする気も無い、ただ私は知りたいだけだよ」

博士「君達にも興味があるよ、ドラゴンと人間の子供はどんな子供が生まれるかとかね」

ドラゴン「貴様に見せる気は無い」

博士「まあ、そう言われると思ってたよ」

勇者「待ってくれ、魔王ってのは世界を滅ぼそうとする奴の総称なんじゃないのか?」

ドラゴン「それは違うぞ」

勇者「え?」

ドラゴン「魔王と言うのは一種の生き物の名前だ」

ドラゴン「いやちょっと違うか、オレ達が魔王と呼んでるだけで本当の名前は知らん」

勇者「なんだそれ」

博士「本当の名前は誰も知らないよ」

博士「知ってるのは魔王だけだからね」

勇者「ちょっと待て、じゃあ最初の勇者は魔王を倒してないのか?」

勇者母「きちんと止めを刺して殺したはずよ」

勇者「じゃあなんで魔王が生きて―――――」

博士「何故かはわからない、でも魔王は生きてこの世界の何処かに居るんだよ」

勇者「じゃあ魔王は何人もいる?」

博士「世界に魔王は一人だけだよ、今までも、今もね」

女勇者「不思議な話ですね」

博士「それを知るために私は研究をしているんだよ」

博士「魔王の事を知れば、何か新しいものが見えるような気がするんだ」

暗殺者「で、あんたは何処まで知ってる」

博士「情報はたくさんあるよ、掃いて捨てるほどね、でも正直どれもこれも噂の話で胡散臭い物ばかりなんだ」

暗殺者「結局何もわかって無いのか」

博士「残念ながらね」

博士「そこで君達にお願いがあるんだ」

勇者「初対面の人間にか?」

博士「君が勇者だから頼んでいるんだ」

博士「もちろん君達にも利益は与えるさ」

暗殺者「内容次第だな」

女勇者「そうですね」

博士「私と剣士を魔法の町に連れて行ってほしい」

勇者「連れて行くだけでいいのか?」

博士「うん、そこから先は自分達で何とかするよ」

暗殺者「あんたはどうする?」

勇者母「私も後から行くわ、ここでやる事も残ってるし」

勇者「で、俺達の利益ってのはなんだ」

博士「魔法の町には魔王の重要な情報がたくさんあるんだよ」

勇者「なんでそんな事知ってるんだ」

博士「無用な詮索は感心しないね」

勇者「あんたを信頼しきってる訳じゃねぇんだ」

博士「……困った」

博士「そこは私を信じてもらうしかないね」

勇者「……」

ドラゴン「どうする?」

勇者「お前等はどうだ?」

女勇者「私は構いません」

暗殺者「今はこいつを信用するしかないだろ」

勇者「……別にいい、連れてってやるよ」

博士「本当にありがとう、助かったよ」

暗殺者「魔法の町にはどうやって行くんだ?」

博士「この町から船に乗って港に行ってから少し歩けばつけるよ」

勇者「出発は何時がいい?」

博士「そうだね、明日とかどうだい?」

暗殺者「俺達はいつでも構わんよ」

博士「じゃあ決定だね」

剣士「よろしくお願いします」

勇者「じゃあ明日な」ガチャ

女勇者「これからどうしますか?」スタスタ

勇者「特にする事もねぇし部屋に帰る」スタスタ

女勇者「あなたはあの人を許せますか?」

勇者「……許すも何もねぇよ、憎んだり、恨んだりしてねぇんだから」

女勇者「……」

勇者「それにあいつがいたからって俺の父親が変わってた訳じゃねぇしな」

女勇者「あの人がいたら私と父の人生は変わってたんですかね……」

勇者「……」

勇者「そんな事俺に聞くな」スタスタ

※補足

名前について

魔王の名前で、名前を知らないと言いましたが、理性のある魔物達は自分達の名前を持っています。(皆自らの種族に少なからず誇りを持っているため)

ドラゴンは自分たちの事を気高き竜と言ってますしスライムも自分の事をスライムと言ってます。

その名前を人間の言葉にしたものを人間が使ってる訳です。

しかし魔王だけは誰も名前を知らないため。

仕方なく魔の王、魔王と呼んでいる訳です。

今日はここまでです。

少なくてすいません。

ちょっと話が浮かんでこなくて苦戦中なので、もしかしたら明日も少なくなっちゃうかもしれません。

~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日 船着き場


勇者「この船でいいのか?」

博士「うん、これだね」

剣士「お願いします」ペコリ

女勇者「よろしくお願いします」

暗殺者「船旅はどのくらいだ?」

博士「丸一日だよ」

ドラゴン「長いな」

博士「一瞬だよ、一瞬」

博士「港に着いてから少し徒歩移動したら魔法の町だ」

女勇者「行きましょうか」スタスタ

勇者「そうだな」スタスタ

船乗り「出発するぞ!!」

船乗り「錨をあげろ!!」

ドラゴン「おお、動いてる、動いてるぞ!!」

勇者「わかったからそんなに暴れないでくれ」

博士「うんうん、船旅はいいものだね」

女勇者「……」

勇者「女勇者、昨日の事だけど――――」スタスタ

女勇者「たら、ればの仮定の話をしても仕方ありませんよ」

女勇者「重要なのは今、現実です」

勇者「……」

女勇者「これが一日考えて出した私の答えです」

勇者「それでいいのか?」

女勇者「それ以外に答えなんてありませんよ」

女勇者「だって現実は一つじゃないですか」

勇者「……」

女勇者「この話はこれで終わりです」

勇者「……最後に聞きたいんだけど、あんたはあの人の事母親だって思ってるのか?」

女勇者「はい、短い間でしたが母親だった事に変わりありませんから」

女勇者「今までもこれからもあの人は私の母親です」

女勇者「あなたはどうなんですか?」

勇者「俺も同じだよ」

勇者「あの人は俺の母親だ」

女勇者「……安心しました」ニッコリ

勇者「何が?」

女勇者「お互い考えていた事は同じみたいですね」

勇者「そうかもな」

暗殺者「良かったな」ピョンッ

勇者「暗殺者?」

暗殺者「お前等ずいぶん思い詰めてたみたいだったからさ」

女勇者「別にそんなつもりはありません」

勇者「思い詰める必要性がねぇだろ」

暗殺者「強がっちゃって、俺に嘘は通じないぜ」

勇者・女勇者「……」

暗殺者「お前等が昨日どんな事考えてたのかは知らないけど、答えが出せたんならそれでいいさ」

暗殺者「良く言うだろ、とにかく答えを出せって」

勇者「……お前は俺達の答えをどう思うんだ?」

暗殺者「答えが合ってるかどうかは大した問題じゃない、重要なのは答えを出す事だ」

暗殺者「答えを出せない人間はいつかおかしくなっちまうからな」

暗殺者「それにこの問題に答えなんて無いようなもんだろ」

女勇者「ふふっ、あなたっぽい言葉ですね」

暗殺者「そうか?」

女勇者「あなたらしい言葉です」

勇者「ホントにな」

暗殺者「何はともあれ良かった」

勇者「ああ」

女勇者「はい」

暗殺者「これも一つの区切りだ」

ドラゴン「勇者、女勇者、暗殺者、くじ引きをやるぞ!!」スタスタ

勇者「は?」

ドラゴン「くじ引きだ、くじ引き」

勇者「それはわかったけど、くじ引き?」

ドラゴン「ああ、部屋割りを決めるくじ引きだ」

女勇者「面白そうですね」

暗殺者「たまには部屋割りを変えても面白そうだしな」

博士「同じ色の人と同じ部屋だからね」

ドラゴン「二人部屋が三つだからな」

剣士「誰になるんでしょうか……」オロオロ

勇者「安心しろ、どいつもこいつもまともじゃねぇから」

剣士「そ、そうですか」

博士「じゃあ一斉に引くんだよ」

勇者・女勇者・ドラゴン・暗殺者・剣士「せーの―――」バッ

ドラゴン「赤か」

勇者「あ、俺もだ」ヤッタ

ドラゴン「また一緒だな!!」

勇者「あ、ああ」

勇者(今一瞬うれしいって思った自分が悔しい……)

ドラゴン「やっぱりオレ達は夫婦だな」

勇者「そうかもな」

ドラゴン「ん?」

勇者「え?」

女勇者「私は黒です」

剣士「あ、僕もです」

女勇者「よろしくお願いします」

剣士「こ、こちらこそ」ペコリ

暗殺者「俺はあんたとか」

博士「そうみたいだね」

暗殺者「仲良くしようや」

博士「そうだね」

博士「あ、これ部屋の鍵ね」

勇者「ああ」パシッ

女勇者「行きましょうか」スタスタ

剣士「あ、はい」スタスタ

勇者「子供なんだから跳び蹴りとかすんなよ」

女勇者「する訳無いでしょう」

勇者「その辺の常識はあるのか」

女勇者「当たり前です」スタスタ

ドラゴン「なんだかんだで仲良く出来そうだな」

勇者「以外に子供好きかもしれないしな」

ドラゴン「貴様は子供は好きか?」

勇者「俺は普通」

暗殺者「お前等は部屋に行かないのか?」

勇者「もう少ししたら行くよ、後でお前等の部屋に行っていいか?」

暗殺者「俺はいいが……」

博士「私も別にかまわないよ」

暗殺者「じゃあいいぞ」

勇者「悪いな」

勇者「行くぞ」スタスタ

ドラゴン「恋人っぽく手を握るぞ」スタスタ

勇者「恥ずかしいから嫌だ」スタスタ

一方その頃 女勇者達の部屋



女勇者「……」

剣士「……」

女勇者「……」

剣士「……」

女勇者(困りましたね、何の話をすればいいかまったくわかりません……)

剣士「ゆ、勇者さんってかっこいいですよね」

女勇者「え、そ、そうですか?」

剣士「だって口も達者だし、剣術も凄いんですよね」

女勇者「剣術は自己流ですし、あの口からは悪口しか出ませんよ」

女勇者「それにあの人は正義の味方なんて柄じゃないですからね」

剣士「そ、そうなんですか?」

女勇者「はい、まあ、自己流でも剣術は強いですが」

剣士「それでもやっぱり尊敬します」

女勇者「あなたは剣術はやっていないんですか?」

剣士「……やってるんですけど、まだまだ習得出来てなくて」

女勇者「何処の流派ですか?」

剣士「え、伊田流ですけど」

女勇者「伊田流ですか……一度剣を振ってもらえますか?」

剣士「あ、はい」


剣士は木の剣を構え、大きく縦に木の剣を振る。


女勇者「……」

女勇者「あなたは腕で振っていますね」

剣士「え?」

女勇者「体全体を使って振ればもっとうまくなりますよ」

剣士「ほ、本当ですか?」

女勇者「はい」

剣士「あ、ありがとうございます」

剣士「女勇者さんは詳しいんですか?」

女勇者「その流派は習得済みなので」

剣士「そうなんですか」

剣士「他にはどんな流派を習得したんですか?」

女勇者「有名な流派はだいたい習得しましたね、懐かしいです」

剣士「す、凄いじゃないですか!!」

※キャラ紹介


博士     47歳

生物学者であり、科学者。
基本的に生物専門で、魔王など、珍しい生き物の生態に興味がある。
それ以外の事には基本的にそこまで興味が無く、結婚はしていない。
好物はちくわ。
ギリギリまでキャラが決まらず、何度も変更がされていたキャラ。(女だったり、若者だったり、おじいさんだったりした)


剣士     14歳

勇者の弟にあたる、父親は不明。
勤勉で努力家である。
性格も良く、空気も読める、作中一の常識人。
兄である勇者、イケメンを尊敬している。(ちなみに勇者の事は噂で聞いている)
多分最初で最後のショタキャラ?








今日はここまでです。

海辺の町編(母親編)はこれで終わりです。
勇者母の紹介はちょっと長めなので明日にまわします。

女勇者「それほどでも無いですよ、それにそれだけ覚えても私は勇者達に敵わないんですから」

剣士「でも凄いです、尊敬します」

女勇者「あ、ありがとうございます」

剣士「凄いんですね、僕なんてまだ全然で……」

女勇者「焦っても仕方の無いものです、自分のペースでやって行くのが大切なんですよ」

剣士「あ、はい」

女勇者「いい子です」ナデナデ

剣士「あ、ありがとうございます」///

女勇者「顔が赤いですが大丈夫ですか?」

剣士「な、何でも無いです!!」

女勇者「そうですか」

女勇者「あなたも魔王を倒したいんですか?」

剣士「はい、僕も勇者なので」

女勇者「あなたは真面目ですね、バカな兄達と違って」

剣士「だって僕は勇者さんやイケメンさんみたいに強く無いですから」

剣士「僕も強くなって勇者さんやイケメンさんみたいになりたいんです」

女勇者「そうですね、あなたも小さいながら勇者ですからね」

剣士「でもまだまだ先になりそうですけど」

剣士「弱いですから」エヘヘ

女勇者「あなたは私に似ていますね」

剣士「え?」

女勇者「……決めました」

剣士「な、なんですか?」

女勇者「私があなたに剣術を教えます」

剣士「え?」

女勇者「私があなたを強くします」

剣士「ほ、本当ですか?」

女勇者「はい、嫌でなければ教えますよ」

剣士「う、うれしいです、お願いします」

女勇者「言っておきますが、私だってそんなに強くは無いですよ」

剣士「そんな事無いですよ、お願いします」

女勇者「こちらこそお願いします」

女勇者「ただ勇者達に憧れるのはいいですが性格だけは似ないでくださいね」

剣士「あ、はい、わかりました」

女勇者「短い間ですが、私が教えられる事は全部教えます」

剣士「で、出来ますかね?」

女勇者「出来る出来ないの問題ではありません、やるのです」

剣士「は、はい!!」

女勇者(こう言う所も昔の私を見ているみたいですね)

剣士「今からお願いできますか?」

女勇者「いいですよ」

女勇者「じゃあまずは基本の動作からですね」

剣士「お願いします!!」

~~~~~~~~~~~~~


勇者達の部屋


ドラゴン「……」ニコニコ

勇者「なんでそんなに楽しそうなんだよ」

ドラゴン「勇者の父親にも母親にも結婚の了承を貰ったんだ、これでいつでも契りを交わせるぞ」

勇者「あ、そう言えばそうかもな」

ドラゴン「もしオレが今契りを交わしたいって言ったらどうする?」

勇者「今は無理だ」

ドラゴン「ならいつならいいのか?」

勇者「そのうち」

ドラゴン「意地悪だな、貴様は」

勇者「元々だ」

勇者「それに今は魔王を倒す事が目標だろ」

ドラゴン「じゃあ魔王を倒したらいいか?」

勇者「わからん」

ドラゴン「ずるいぞ、貴様!!」

勇者「ごめんごめん」

ドラゴン「謝っても許さん」

勇者「本当にごめんなさい」ニコニコ

ドラゴン「笑いながら言っても説得力が無いぞ」

勇者「え、マジで笑ってる?」

ドラゴン「ああ、マヌケな顔だ」

勇者「うるせぇ」

ドラゴン「……」

勇者「……」

ドラゴン「なあ、デートしないか?」

勇者「え?」

ドラゴン「ほら、恋人と言うのはデートするものなのだろう」

勇者「そうだけど……誰から聞いたんだ?」

ドラゴン「女勇者に教えてもらったんだ」

勇者「あいつか……」

ドラゴン「今までデートなんてした事無かったし、してみないか?」

勇者「別にいいけど、ここ船だぞ」

ドラゴン「船を一周するだけではデートにならんのか?」

勇者「大きい船だし、デートになるのかな?」

ドラゴン「オレに聞くな」

勇者「俺だって知らねぇよ」

ドラゴン「……とにかく行くぞ!!」


ドラゴンは勇者の手を握ると、勢い良く部屋の外に飛び出した。


勇者「そんなに引っ張るな」

ドラゴン「おお、デートっぽい、デートっぽいぞ!!」

勇者「デートかどうかは別にして楽しいならそれでいいよ」

ドラゴン「勇者はどうだ、楽しいか?」

勇者「ああ、楽しいよ」ニッコリ

ドラゴン「広いな、海は」

勇者「そりゃ海だから」

ドラゴン「勇者は泳げるのか?」

勇者「普通かな、泳げるけどそんなに泳ぎがうまい訳じゃないし」

ドラゴン「難しくは無いのか?」

勇者「俺は気がついた時には泳げてたからな、そう言えばドラゴンって泳げないの?」

ドラゴン「泳げない訳じゃない、ただ泳いだ事が無いだけだ」

勇者「それって泳げないって事じゃ――――」

ドラゴン「泳いだ事が無いだけだ」

勇者「変な所で意地になるよな、お前」

ドラゴン「……」

勇者「どうした?」

ドラゴン「女勇者から聞いたのとちょっと違うな……」

勇者「何が?」

ドラゴン「貴様はお姫様抱っことか言うのが出来るか?」

勇者「あいつは一体何を教えたんだ……」

ドラゴン「どうだ?」

勇者「出来るけど、恥ずかしいから嫌だ」

ドラゴン「出来るんならやってくれよ」

勇者「嫌だ」

ドラゴン「わかった、じゃあじゃんけんで貴様が勝ったらやらなくていい、でもオレが勝ったらやってくれ」

勇者「……わかった」

勇者「行くぞ、じゃんけんポン」

ドラゴン・勇者「……」

勇者「俺の勝ちね」

ドラゴン「もう一回、もう一回だけやってくれ」

勇者「嫌だ」

ドラゴン「……」

勇者「……」

ドラゴン「……」

勇者「……」

勇者「ああ、もう、わかったよ!!」

ドラゴン「本当か!?」

勇者「ちょっとだけだからな、わかったな」

ドラゴン「ああ、わかってる」


勇者はドラゴンをお姫様抱っこで抱き上げる


勇者「こんなんでいいか?」

ドラゴン「女勇者はここからキスをするって言ってたぞ」

勇者「一体どこの知識だ!!」

ドラゴン「してくれないか?」

勇者「ふざけんな!!」

ドラゴン「頼む、一生のお願いだ」

勇者「もう使っちゃうのかよ!!」

ドラゴン「……」

勇者「わかった、わかったよ!!」


勇者はドラゴンの頬にキスをする。


勇者「これでいいだろ!!」///

ドラゴン「ああ、十分だ」ニコニコ

勇者「……うれしいならそれでいいか……」

※キャラ紹介


勇者母     年齢不明


若くてきれいな女性で偽善者。見た目は20歳後半の女性。
勇者の血を引く唯一の女性であり、彼女と彼女の子供以外に勇者の血を引くものは居ない。

常に恋をしていたい人で、同じ人と長年連れ添えない。
だが肉体関係を持った男は本当に少ない。

自分勝手に生きている人間だが、他人に嫌われるのが嫌い。
そのため、どんな事を言われても怒らない。

イケメンとは和解済み。(イケメンは彼女が居なくなっても苦労していないためそこまで怨んではいないため)

自分の子供の事は常に気にしており、大事に思っている。

今日はここまで。

ドラゴンと勇者のイチャイチャは久々に書いた気がします。

女勇者も実は努力家です。そのためまじめな剣士に自分の昔を重ね合わせています。

暗殺者「二人して楽しそうだな」ニヤニヤ

勇者「一番見られたくねぇ奴に……」

暗殺者「そう怒るなって」

博士「君は私の事を聞く気だったんだんだよね?」

勇者「……ああ、そうだよ」

博士「少し私の昔話に付き合ってくれるかな」

勇者「いいよ、聞く気だったし」

勇者「お前は聞いたのか?」

暗殺者「いや、俺もまだだ」

博士「私は若い頃、魔法の町で学者をしていたんだ」

博士「退屈な毎日だったよ、人殺しの方法をただひたすらに研究するの毎日だからね」

勇者「それで魔法の町に詳しかったのか」

博士「うん、私の学者としての地位は結構上だったからね」

博士「でも、そんな生活に嫌気がさしてね、私は魔法の町を出る事を決意したんだ」

勇者「誰も止めなかったのか?」

博士「まさか、みんな私を引き留めたよ、脅迫まがいの事をしてくる奴もたくさん居たさ」

博士「夜逃げ同然で町を出て私は世界を旅していた」

ドラゴン「そこまで自分の研究を嫌っていたのは何故だ?」

博士「人殺しの道具を作ってるのも嫌だったし、私は本と睨み合っているのがとてつもなく苦痛だったんだ」

博士「魔法の本と睨めっこしているよりも旅をしながら生物を研究している方が私には合っていたんだ」

博士「そんなある日に出会ったのが彼女さ」

暗殺者「勇者の母親か」

博士「彼女は私の研究に興味を持ったんだ、私の魔王の研究にね」

ドラゴン「それで一緒にいたのか」

博士「うん」

暗殺者「あんたにとって生物学ってのはなんだ?」

博士「私にとって生物学は全てだ」

勇者「学者ってのは良くわからんな」

博士「学者なんてみんなそんなもんさ」

博士「だからこそ、私は魔法の町に戻る事を決意したんだ」

暗殺者「殺されるかもしれないのか?」

博士「うん、魔王の事を知るためには行くべきだと思うんだ、命と引き換えになってもね」

暗殺者「あんたの原動力はそれだけか?」

博士「うん、それ以外は無いよ」

博士「おっと、そろそろ夕食の時間だ、部屋に帰るよ」スタスタ

暗殺者「そうだな」

暗殺者「お前等はどうする?」

勇者「俺達は自分で作って食うよ」

暗殺者「わかるか?」

勇者「ああ、まだなんか隠してるよな」

暗殺者「重要な事を何か隠してるな」

暗殺者「……いつまでお姫様抱っこしてるんだ?」

勇者「……」

ドラゴン「どうした?」

勇者「帰る」スタスタ

暗殺者「お姫様抱っこで?」

勇者「文句あんのか?」スタスタ

暗殺者「無いよ」ニヤニヤ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日 港


勇者「やっと着いたな」スタスタ

ドラゴン「長かったな」スタスタ

暗殺者「十分楽しんでだ奴等が何言ってんだ」スタスタ

博士「ここからは徒歩移動だよ」スタスタ

女勇者「どのくらいかかるんですか?」スタスタ

博士「今日中には着けると思うよ」スタスタ

ドラゴン「どんな所なんだ、魔法の町は?」スタスタ

博士「そうだね、治安は安定してるけど政府が腐り切ってるから注意した方がいいね」スタスタ

暗殺者「政府が?」スタスタ

博士「うん、訳のわからない罪で人が処刑されている場所だからね」スタスタ

勇者「なんだそれ」スタスタ

博士「政府のやり方に従わない者は捕まり、拷問にかけられ、最終的に殺される」スタスタ

博士「これがあの町のやり方だよ」スタスタ

女勇者「ハンター達は動かないんですか?」スタスタ

博士「拷問や処刑は裏で行われている事だ、表は治安のいい普通の町だよ」スタスタ

剣士「僕達は何に注意すればいいんですか?」スタスタ

博士「とにかく静かにしていれば大丈夫だろうね」スタスタ

暗殺者「暴れるなよ、勇者」スタスタ

勇者「なんで俺?」スタスタ

女勇者「あなたが一番暴走するでしょう」スタスタ

勇者「そうか?」スタスタ

女勇者「そうです」スタスタ

剣士「戦わなければ大丈夫です」スタスタ

女勇者「そう言う事ですね」スタスタ

勇者「そう言うお前も十分暴走するだろ」

女勇者「気のせいです」

博士「……魔物がいないね」

勇者「ああ、全然居ない」

博士「昔はこの辺りに大量の魔物が居たんだけどね」スタスタ

ドラゴン「魔物の臭いは全くしないぞ」スタスタ

博士「不思議だね」スタスタ

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魔法の町



門番「お前達は何者だ!!」

女勇者「私達は旅のものです」

門番「……通れ」

勇者「ゆるいな、おい」スタスタ

暗殺者「中で問題を起こせばすぐ殺せるからだろ」スタスタ

勇者「つーか変装とかしなくていいの?」スタスタ

博士「下手に変装なんてしたらかえって目立っちゃうよ」スタスタ

ドラゴン「みんな魔法を使ってるんだな」スタスタ

女勇者「魔法の町ですからね」スタスタ

博士「市民に紛れた兵士達が山ほどいる、この町に信じられる人間は居ないよ」ヒソヒソ

剣士「まずはどうしますか?」スタスタ

勇者「とにかくこの町の事を調べる準備だ」スタスタ

女勇者「面倒臭いですね、手っ取り早い方法は無いんですか?」スタスタ

ドラゴン「さっさと調べて帰ろうぜ」スタスタ

勇者「問題を起こすなってさっき言ってたのは誰だ!!」スタスタ

剣士「こうやって見ると普通の町ですよね」スタスタ

暗殺者「町は普通だ、ただ政府が腐ってるだけだよ」スタスタ

勇者「全くその通りだ」スタスタ

勇者「……」

ドラゴン「ん、どうした?」

イケメン「久しぶりだね、勇者」スタスタ

勇者「久しぶりだな、お兄様」

イケメン「……相変わらず口が悪い様だね」

勇者「そう怖い顔すんなよ、今あんたと殺し合う気はねぇよ」

イケメン「ああ、僕もそうしたい」

遊び人「二人とも子供ねー」

イケメン「どうやら剣を手に入れたようだね」

勇者「剣じゃなくて刀だ、バカ」

イケメン「バカは余計じゃないかな?」

勇者「バカにバカって言って何が悪い」

女戦士「子供ですね」

女勇者「あなた達は何の目的でこの町に?」

遊び人「魔王の情報があるって聞いたのよ」

暗殺者「成果は?」

魔法使い「全然ダメだった」

ザワザワ


勇者「ん?」

剣士「あれ、いつの間にか人が――――」

兵士「動くな!!」

勇者「え?」

兵士「お前達は勇者だな?」

イケメン「もちろん」

勇者「そうだけどなんだ」

兵士「現行犯だ、逮捕する!!」

勇者「は?」

兵士「町中での喧嘩は立派な犯罪だ」

勇者「俺達がいつ喧嘩した」

イケメン「そんな理由で逮捕が出来るものか」

兵士「話は向こうで聞く」

暗殺者「ドラゴン、剣士を連れて逃げろ」ヒソヒソ

ドラゴン「え?」

暗殺者「なんとなく読めた」ヒソヒソ

暗殺者「そこの細い路地から逃げろ」ヒソヒソ

暗殺者「さいわいあいつは勇者とイケメンを見ててお前達を見てない」ヒソヒソ

遊び人「魔法使い、あなたも一緒に行くのよ」ヒソヒソ

魔法使い「そ、そんな……」

遊び人「このままだと私達は捕まる、その前に早く行きなさい」ヒソヒソ

魔法使い「わ、わかった」

剣士「こっちです」タタタッ

ドラゴン「後から助けに行くからな」タタタッ

魔法使い「……」タタタッ

勇者「まだ町に着いて一時間も経ってねぇぞ」スタスタ

イケメン「君達に関わるとロクな事が無いな」スタスタ

勇者「どっちかって言うとお前のせいだろ、死ね」スタスタ

イケメン「少しは言葉遣いを覚えたらどうだい?」スタスタ

勇者「相手と会話できればそれで十分だ」スタスタ

イケメン「野蛮だね、君は」

兵士「黙って歩かんか」

今日はここまでです。

ちょっと超展開になったような気がします。

明日は魔法について詳しく説明する予定です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


牢屋


女勇者「なんでこんな事に……」

暗殺者「抵抗したらもっと面倒臭い事になってたし、これが最善だろ」

遊び人「今の状態でも十分面倒臭いけどね」

女戦士「その通りです」

暗殺者「お互い様だ、我慢しろ」

勇者「……なんで男女別なんだ?」

イケメン「別にいいじゃないか、向かい側なんだし」

勇者「なんであっちは木の床でこっちは地面なの、ずるくない?」

イケメン「レディーファーストだよ」

勇者「訳がわかんねぇよ」

博士「……どうやらここでは魔法は使えないみたいだね」

遊び人「じゃあどうしようもないわね」

女戦士「勇者さんでしたっけ、あなたはどう責任をとる気ですか?」

勇者「なんで俺のせいになってんだ、どっちもどっちだろ」

女戦士「何を偉そうに……」

勇者「喧嘩両成敗だ、覚えとけ」

遊び人「今回はどちらが悪いかもわからないもんね」

女勇者「誰か武器は持ってないんですか?」

暗殺者「ナイフならあるけど、こんなもんじゃどうしようも無いだろ」

勇者「お、ヒノキの棒が落ちてる」

女勇者「もっと使い道がありませんね」

勇者「そうだな……」

遊び人「困ったわね」

イケメン「きちんと話をすればわかってもらえるさ」

博士「どうだろうね」

勇者「あんたはここからどうなると思う?」

博士「さあ、私も牢屋に入れられた事は無いからね」

イケメン「どう言う事だい?」

勇者「この町のお偉いさんがそこまでいい奴かどうかはわかんねぇって事」

イケメン「まさか……」

勇者「それぐらい理解しとけよ」

???「お前達が勇者だな」ガチャ

入って来たのは高そうな服を着て、立派な髭を生やした50歳ほどの男だった。


イケメン「あなたは誰ですか?」

大臣「私は大臣だ」

勇者「さっさと出してくれない」

大臣「もちろんそのつもりだ、ただ条件がある」

イケメン「条件?」

大臣「ああ、お前達には魔王を生け捕りにしてもらいたい」

勇者「何のために」

大臣「そんなものはお前達は気にしなくていい」

イケメン「それは正義のための事ですか?」

大臣「お前達はただ魔王を生け捕りにすればいのだ」

大臣「わかったか?」

勇者「他人に何かを頼む態度じゃねぇな、わかったらその立派な髭剃って出直してこい」

イケメン「何をするかわからない相手に手を貸す気は無い」

勇者「そう言う事だ、わかったら帰れ、そして速やかに髭を剃れ」

大臣「貴様……」

勇者「貴様って呼び方やめてくれない、ドラゴンが使ってるし、ドラゴンの方がよっぽどかわいいから」

暗殺者「それをドラゴンの前で言ってやれよ」

勇者「恥ずかしくて出来ねぇよ」

女勇者「臆病者ですね」

勇者「うるせぇ」

イケメン「僕は手伝う気は無い」

大臣「貴様……」

勇者「だからそれやめろって」

大臣「お前達が取引に応じない限りここから出す気は無いぞ!!」

勇者「勝手にしろ、そして髭を剃れ」

博士「相変わらずやり方が汚いね」

大臣「……ほう、まさかお前に会えるとはな」

博士「久しぶりだね」

勇者「知り合いだったのか」

博士「この町の諸悪の根源だよ、彼は」

勇者「つーかさ、お前俺達の事はめただろ」

大臣「ああ、その通りだ」

大臣「……まあいい、また来る」スタスタ

イケメン「あの人は僕の敵だ」

勇者「だろうね」

女勇者「どうするんですか?」

暗殺者「外の三人に全てを託すしかないだろ」

遊び人「大丈夫かしらねー」

勇者「ドラゴンは……どうだろう」

博士「剣士君は頭は回るんだけどね」

女戦士「魔法使いはイケメンさんにベッタリですからね」

暗殺者「……こっちでも脱出方法を考えればいいだろ」

女勇者「そうですね」

イケメン「あんな悪を放置する訳にはいかない」

勇者「正義感に燃えてるねぇ」

イケメン「あんな悪が許されていい訳無いだろう」

博士「正義ね、私にはもう無いかもしれないな」

勇者「俺にだってねぇよ」

一方その頃         町中


ドラゴン「助けに行くぞ!!」

魔法使い「どうやって、作戦はあるの?」

ドラゴン「これから考えればいいだろ」

剣士「すぐに殺されるなんて事は無いでしょうから、ある程度時間はあります」

魔法使い「イケメン、大丈夫かな……」

ドラゴン「勇者と一緒なんだ、無事に決まってる」

魔法使い「あの人ってそんなに強いの?」

ドラゴン「当たり前だ、イケメンよりもずっと男前だしな」

魔法使い「イケメンの方がかっこいいよ!!」

ドラゴン「勇者は男前でしかも口も達者だぞ」

魔法使い「口が悪いだけよ、イケメンは礼儀もしっかりしてる」

ドラゴン「勇者だって――――」

剣士「もういいです、その話は」

魔法使い「あなたはどっちがいいと思うの?」

剣士「僕は男なんでそんなことわからないですよ」

ドラゴン「勇者だな」

魔法使い「イケメンに決まってる」

剣士「二人とも落ち着いて下さい、今はみんなをどうやって助けるか考えましょう」

ドラゴン「町の真ん中のでっかい建物の中に居るんだろ、正面突破でいいだろ」

剣士「そんな危険な方法はダメです」

魔法使い「魔法があれば大丈夫」

剣士「相手がわからない以上作戦はしっかりと練るべきです」

ドラゴン「作戦があるのか?」

剣士「それは無いですけど……」

剣士「とにかく情報を集めましょう」

ドラゴン「面倒臭いな」

剣士「時間はあるんですから作戦をしっかりと決めましょう」

魔法使い「じゃあ――――」

剣士「場所を選んで下さい、こんな町中じゃあ作戦がダダ漏れです」

魔法使い「じゃあどうするの?」

剣士「そうですね……」

ドラゴン「宿屋でいいだろ」

剣士「え、そ、それは……」

魔法使い「ちょっと……」

ドラゴン「ん、なんか変な事言ったか?」

剣士「……そ、そうですね、そうしますか」

ドラゴン「ああ、それがいい」

魔法使い「ま、まあいいよ、わかった」

剣士「き、気を取り直して、情報を集めましょうか」

ドラゴン「でもどうやって集めるんだ、兵士にそんな事聞いたらオレ達も捕まるぞ」

剣士「さりげなく聞くんですよ」

魔法使い「出来るの?」

剣士「やるしかないです」

ドラゴン「やるなら早くするぞ!!」

魔法使い「頑張るよ!!」

剣士「……頑張りましょうか」

※補足

この世界での魔法について説明します。

まず魔法を発動させる方法は、詠唱、魔法陣、道具の三種類です。

詠唱は分かりやすいので省略します。

魔法陣は地面、や壁などに陣を描き、そこに魔力を注ぐ事で発動します。
時間はかかりますが、その分強力な魔法を、少ない魔力で発動できます。

道具は、あらかじめ魔法が封じられた道具に少量の魔力を注ぐ事で発動できるものです。
基本形はお札ですが、魔法を封じる事が出来るのならなんでも大丈夫です。
封じられている魔法しか発動できず、威力も低いですが、一瞬で発動できるため魔法使いは基本的に常備しています。

この先の戦闘では魔法を使っていきたいので、明日ももう少し解説します。

今日はここまでです。

個人的にツンデレの黄金比は9対1なので女勇者にもそれを適応しています。

強者編でちょっとデレたので、次は何時になるの分かんないです。

ちなみに10対0でもいけます。

3:7(好き)→0:10(大好き!)
よりも
10:0([ピーーー]カス)→0:10(愛してる)
のがええやろ そういうことや

剣士「どの人に聞きま――――」

ドラゴン「なあ、あのでかい建物ってなんだ?」

剣士「いきなりですか!?」

男「ああ、あれはこの町の行政機関の建物だよ」

ドラゴン「ふーん」

魔法使い「あそこって牢屋もあるの?」

剣士「作戦聞いてました!?」

男「ああ、あそこは刑務所も兼ねてるから」

剣士「ありがとうございました」

男「いやいや、どういたしまして」スタスタ

剣士「二人とも作戦聞いてましたか?」

ドラゴン「情報を集めるんだろ」

剣士「さりげなくです」

ドラゴン「さりげなく無かったか?」

剣士「はい、全然」

魔法使い「とりあえずちょっとは情報が手に入ったしいいじゃん」

剣士「これからもこんな危ない橋を渡るのなんて危険過ぎます」

魔法使い「じゃあこれから気をつけます」

剣士「本当に気をつけて下さいね」

ドラゴン「そういえば、貴様はイケメンの恋人か?」

魔法使い「え、あ……いつか恋人になるの!!」

ドラゴン「なんだ、今は違うのか」

魔法使い「うう、うるさい、まだなれないの!!」

魔法使い「あ、あなたこそどうなの?」

ドラゴン「オレか、オレ達はいつでもラブラブだぞ」

魔法使い「……う、嘘ね、嘘に決まってるわ」

ドラゴン「なんで嘘を言う必要がある」

魔法使い「胸ね、やっぱり胸なのね」

ドラゴン「まあ、貴様は小さいからな」

魔法使い「う、うるさい!!」

剣士「喧嘩しないで下さいよ」

魔法使い「ずるい、私なんかまだ恋人にもなれてないのに!!」

ドラゴン「オレ達はもう三回もキスをしたぞ」

魔法使い「く、悔しい!!」

剣士「ドラゴンさんもそう言う事言わないで下さい」

ドラゴン「ふふん、オレは真実を言ったまでだぞ」

剣士「年下相手に張り合わないで下さい」

魔法使い「誰が子供よ!!」

剣士「そんな事誰も言ってないじゃないですか」

剣士「あと、今の僕達凄く目立ってます」

ドラゴン「何か問題があるのか?」

剣士「問題だらけです、むしろ問題しかないです!!」

魔法使い「悔しい!!」

剣士「それはわかりましたから」

チンピラ「道の真ん中で騒いでんじゃねーぞ!!」

剣士「すいません、すぐ移動しますから」

ドラゴン「礼儀正しいんだな、勇者なら反論してるぞ」

剣士「僕達が完全に悪いんですから」

チンピラ「ああ……結構かわいいじゃねーか、ちょっと来いよ」


チンピラはそう言ってドラゴンの腕を掴む。

剣士「ちょっと待っ――――」

ドラゴン「図に乗るなよ、人間風情が」

イケメン「は?」

剣士「え!?」


ドラゴンの左ストレートがチンピラの顔面に直撃する。


イケメン「あが……!?」


さらにチンピラの右脇腹にフックを入れ、そのまま右足の回し蹴りで吹き飛ばす。


剣士「……」

ドラゴン「気安く触るな、オレに気安く触れていい男は勇者だけだ」

魔法使い「す、素敵……」

剣士「何やってるんですか!!」

ドラゴン「勇者が言ってたぞ、こう言うのは正当防衛だって」

剣士「明らかな過剰防衛じゃないですか!!」

ドラゴン「ちょうどいいな、こいつに聞けばいいだろ」

ドラゴン「おい、あそこに入る方法は無いのか?」

チンピラ「げほげほ……そんな事言う訳ねーだろ」

魔法使い「そんな事言っちゃっていいの?」ニッコリ

チンピラ「……」

チンピラ「東だ、東側の右から三番目の窓の鍵が壊れてる」

剣士「なんでそんな事を知ってるんですか?」

チンピラ「少し前にダチを助けるときに壊したんだ」

ドラゴン「貴様は裏の事を知らないのか?」

チンピラ「何の事だ?」

剣士「兵士が来てます、行きましょう」

ドラゴン「そうだな」タタタッ

剣士「あなたも行きますよ」

チンピラ「ガキが偉そうに、自分の身くらい自分で守れる」タタタッ

魔法使い「早くしてよ」タタタッ

剣士「わ、わかりました」タタタッ

タタタッ

剣士「ここまで来れば大丈夫ですね」ハァハァ

ドラゴン「ちょうどいい所に宿屋があるぞ」

剣士「……じゃあ行きますか?」

魔法使い「い、行くわよ」スタスタ

剣士「こんにちは」ガチャ

おじさん「一晩10ゴールドだよ」

剣士「お願いします」スッ

おじさん「部屋の鍵ね」コトン

剣士「ありがとうございます」スタスタ

剣士「さすがにここならバレないですよね?」ガチャ

ドラゴン「大丈夫だろ」

魔法使い「……有力情報ゲットね!!」

剣士「まだ入り口が見つかっただけです、中でどうするかを考えないとダメです」

ドラゴン「中に入れたら後は何とかなるだろ」

剣士「僕はあそこまで戦闘能力ないんで無理です」

魔法使い「でも中の構造なんてどうやってもわかんないよ」

剣士「そ、そうですけど」

魔法使い「だったらしっかり準備するしかないんじゃない?」

ドラゴン「そうだな、そうするべきだ」

剣士「……じゃあ、何を準備した方がいいですか?」

ドラゴン「オレは何もいらない」

剣士「そうですよね」

魔法使い「私は魔法具があれば十分」

剣士「じゃあその他にも必要そうな物も買っておきますね」スタスタ

ドラゴン「魔法具の事もわかるのか?」

剣士「はい、魔法についてもある程度分かってるので」

魔法使い「魔法具はお札型のでお願いね」

剣士「わかりました」ガチャ

魔法と属性について

魔法には当然属性があります。
属性は火、水、氷、風、地の五大属性です。

それぞれで魔力消費が違い、水<氷<地<風<火となります。

そのため暗殺者が水の球体を爆発させた時は莫大な魔力(代償)を使用しています。

今日はここまでです。

剣士のツッコミが冴えてます。

剣士は結構好きな方のキャラです。

>>592
イ ケ メ ンw

いいぞ、もっとやれ

>>598

ミスった チンピラに脳内変換お願いします

>>596
>そのため暗殺者が水の球体を爆発させた時は莫大な魔翌力(代償)を使用しています。
>魔法と属性について

ってことは、
それぞれで魔翌力消費が違い、水>氷>地>風>火となります。
じゃね?

>>600
ミス多くてすいません。その通りです。

多分もう無いと思いますが……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 
夕方 牢屋


兵士「夕食だ」ガチャ

勇者「夕食は出るんだな」

女勇者「お昼も出てない訳ですし、当然です」

暗殺者「まあ、俺達が死んだら困るって事だろ」

女勇者「でしょうね」

勇者「なあ、俺パンよりお米がいいんだけど、変えてくれない?」

兵士「この町の主食はパンだ、文句を言うな」

勇者「パンとか喰い慣れてねぇんだよ、喉に詰まったらどうすんの、死ぬよ?」

暗殺者「ただのクレーマーだな……」

女勇者「イライラしてるのはわかりますが、食事に文句をつけないで下さい」

勇者「はいはい」

勇者「今回はパンでいいよ、明日は米で頼むな」

兵士「……」

勇者「無視すんなよ」

女戦士「何なんですか、あなたは」

女勇者「気にしないで下さい、嫌いな相手にはいつもあんな感じですから」

女戦士「……ところでさっき言っていたはめられたって言うのは何の事ですか?」

勇者「俺とイケメンは計画されて捕まったって事」モグモグ

女戦士「何のためにですか」

勇者「魔王を生け捕りにさせるためだろ」モグモグ

遊び人「そのためにあんなめちゃくちゃな事を言って逮捕したのよ」モグモグ

暗殺者「あんたもわかってたのか」モグモグ

遊び人「あれだけ無茶苦茶の事をして気付かない訳無いでしょ」モグモグ

女戦士「一体何のためそんな事を?」

イケメン「世界平和のためでは無いだろうね」モグモグ

勇者「あんたは知ってるか?」モグモグ

兵士「知っていても話す気は無い」

勇者「博士はどうだ?」モグモグ

博士「知らないね、どうやら私がこの町を出た後の計画みたいだね」

遊び人「女戦士は食べないの?」モグモグ

女戦士「精神統一をしていますので」

勇者「それって時間の無駄遣いじゃね?」モグモグ

女戦士「精神統一は心の乱れを直す重要なものだ、無駄ではない!!」

勇者「キレるなよ……」モグモグ

遊び人「女戦士は沸点が低いから気をつけてね」モグモグ

勇者「もう少し早く教えてほしかったかな」

兵士「黙って食べろ」

勇者「文句があるなら出て行け」

イケメン「君の口の悪さはある種尊敬に値するね」

勇者「……なあ、ここの鍵って何処にあんの?」

兵士「鍵は全て大臣様が管理している」

勇者「お前信用されてないの?」

兵士「そう言う規則なのだ」

勇者「信用されてないって事じゃん」

兵士「黙っていろ」

勇者「了解」

大臣「気は変わったかね」ガチャ

勇者「また来たよ、つーか髭剃ってねぇし」

大臣「手伝う気になったかな?」

イケメン「あなたに協力する気は無い」

勇者「俺も無いぞ」

大臣「ここから出られなくていいのか?」

勇者「でもあんたに協力したらここから絶対に出られるって保障も無いだろ」

暗殺者「その通りだ」

大臣「それは私が保障しよう、と言うより魔王を生け捕りにしてもらうには外に出さなくてはいかんだろ」

勇者「まあ、協力する気は無いけどね」

大臣「……」ギリッ

イケメン「理由を教えてもらえないかな?」

大臣「お前達が知ることではない」

イケメン「なら一生協力する気は無いよ」

遊び人「胡散臭すぎるのよね」

勇者「わかったら髭剃って出直してこい」

大臣「……」

女勇者「いいからさっさと帰ってください、下種が」

大臣「貴様!!」


大臣は鉄格子越しの女勇者の胸ぐらを掴む。


大臣「誰が下種だ!!」

勇者「おい、女に手を出しちゃダメだろ」

イケメン「男として最低だね」

大臣「……もういい!!」

勇者「乱暴だな」

大臣「愚民が……」ガチャ

勇者「性格悪いな、あの髭」

女勇者「あなたが言えた事ですか」

イケメン「あんなに怒らせちゃったら今度こそ拷問を始めるんじゃないか?」

勇者「大丈夫だろ」

女戦士「何が大丈夫か説明してみろ!!」

勇者「そうキレるなって、いつもの敬語はどうした」

遊び人「そうよ、怒ってても仕方ないわ」

女戦士「……」

勇者「……おい、水くれ」

兵士「そこに桶があるだろ」

勇者「汚ねぇだろ、この水」

兵士「……仕方ないな」スタスタ

兵士「ほら」スッ

勇者「……」ニヤリ

兵士「な――――!?」


勇者は鉄格子の向こうに居る兵士の顔面をヒノキの棒で突く。


兵士「が……」ドサッ

勇者「楽勝」ニヤリ

女戦士「あなたは一体何を……」

勇者「女勇者、鍵持ってんだろ」

女勇者「はい」ガチャガチャ

女戦士「いつの間に!?」

遊び人「さっき胸ぐらを掴まれた時に盗んだのよ」

暗殺者「見えてたのか」

遊び人「だって遊び人だもの」

イケメン「君も知ってたのかい?」

勇者「まさか、盗んでるかどうかは賭けだった」

博士「危ない作戦だね」

暗殺者「俺達はずっとこうやって来てるんだ」

女勇者「開きましたよ」ガチャ

勇者「じゃあこっちも頼む」

女勇者「わかってます」ガチャ

勇者「……よっ、と」ズルズル

イケメン「何してるんだ?」

勇者「こいつを牢屋に入れとく」スタスタ

勇者「これでちょっとは時間が稼げる、と思う」ガチャ

博士「さて、こっからどうするんだい?」

イケメン「あの大臣を倒す」

博士「やめた方がいいと思うよ」

イケメン「なんで――――」

博士「大臣が何を持っているかわからないんだ、下手に戦わない方がいいよ」

勇者「俺もそう思う、魔王の情報を集めてさっさと逃げた方がいい」

イケメン「……」

勇者「止める気は無いけどね」

イケメン「僕は僕のやり方でやる、他人に流される気は無い」ガチャ

遊び人「じゃあまた今度ね」タタタッ

女戦士「……」タタタッ

博士「大丈夫かな」

勇者「俺達は俺達の事をすればいいだろ」

女勇者「どうするんですか?」

暗殺者「とにかくここから移動しないと不味いだろ」

博士「そうだね」ガチャ

勇者「行くあてはあるのか?」

博士「無いよ」

勇者「無いのかよ」

暗殺者「困ったな……」

女勇者「資料なら普通資料室にあるんじゃないんですか?」

博士「その資料室が何処にあるのかわからないんだよね」

勇者「とにかく探しまわるしかねぇ!!」タタタッ

博士「見つかったらどうするんだい?」タタタッ

女勇者「殺せばいいです」タタタッ

博士「……君達は凄いね」タタタッ

暗殺者「褒めてくれてありがとう」タタタッ

博士「昔とずいぶん構造が変わってるね……」タタタッ

勇者「とにかく昔資料室があった場所に案内してくれ」タタタッ

博士「あ、ああ、わかったよ」タタタッ

勇者「兵士がいないな……」タタタッ

博士「ここはあくまで研究施設だからね、私達が逃げたのが知られれば、兵士が山ほどやってくるさ」タタタッ

暗殺者「じゃあ時間との勝負だな」タタタッ

今日はここまで。

気がついたらこのssを始めて一カ月経ってました。早いですね

博士「ここだ」ガチャ

勇者「……埃っぽいな」スタスタ

暗殺者「人が居なさそうな部屋だな」ガサゴソ

女勇者「使わなくなった資料置き場といった所ですかね」

勇者「魔法兵器、魔道装置、どれもこれも物騒なもんばっかだな」パラパラ

博士「この町の研究なんてほとんどが人殺しのためのものだよ」

勇者「……」パラパラ

勇者「……魔道騎士、なんだこれ?」


『魔道騎士
 体と武器に魔法を組み込み戦う兵器。
 今の所五人の候補者が存在する。
      発案者 博士』

勇者「博士、これがあんたの研究か?」

博士「……そうだよ」

博士「私がこの町で最後に行った研究だね」

勇者「これも兵器だよな」

博士「結局これが出来上がる事は無かったけどね」

女勇者「どうしてですか?」

博士「燃費が悪すぎたんだ、とても人間の魔力供給だけじゃ動けないんだよ」

暗殺者「この候補の五人はどうなったんだ?」

博士「この研究所の何処かに保管されてるんじゃないかな」

女勇者「もう魔道騎士に改造されたんですか?」

博士「一人だけね、残りはみんな失敗して死んでしまったよ」

博士「多分その一人だけが保管されてる……」

勇者「物騒な研究だな」

博士「だから私はこの町から出たんだ」

暗殺者「それにしても、この町は戦争でもする気なのか?」パラパラ

博士「その通りさ」

勇者「え?」

博士「彼等の目的はこの町を大きくする事だからね、必要なら戦争だってするさ」

博士「もちろんそんな事を知っているのはごく一部の人間だけだけどね」

暗殺者「何がしたいんだろうな」

博士「少なくとも私にはわからないよ」

勇者「……ん、『魔王の書』……これか?」ガサゴソ

博士「うん、思ったより早く見つかった様だね」

暗殺者「これで後は逃げるだけだな」

勇者「ああ……先帰ってていいぞ」

暗殺者「どうしたんだ?」

勇者「あの髭の計画を調べる」

博士「何のためにだい?」

勇者「あの髭が悔しがってる姿を見たいから」

勇者「先に逃げてていいぞ」

女勇者「手伝いますよ」

勇者「……いいのか?」

女勇者「はい、あなたの暴走はいつもの事ですし、私のあいつには苦しんでもらいたい」

勇者「ははっ、そうだな」

暗殺者「さっさと終わらせて逃げるぞ、ドラゴンが待ってる」

勇者「悪いな」

博士「私も手伝うよ、あの男の計画は潰しておきたいしね」

勇者「……」

剣士「勇者さん、居ますか!!」ガチャ!!

勇者「剣士か、脅かすなよ……」

ドラゴン「勇者!!」


ドラゴンは体当たりするほどの勢いで勇者に抱きつく。


勇者「ぐはっ!?」

ドラゴン「無事か?」

勇者「たった今無事じゃなくなった……」ゲホゲホ

魔法使い「イケメンは!?」

勇者「あいつ等ならどっか別の場所にいる、多分探せばすぐ見つかると思う」

魔法使い「……ありがとう、じゃあね!!」タタタッ

剣士「早く逃げましょう!!」

勇者「……悪い、まだ仕事が残ってるんだ」

剣士「な、なら僕も手伝います」

勇者「悪いな」

剣士「いえ、僕が決めた事ですから」

剣士「あと、皆さんの武器です」スッ

勇者「ありがとう」

女勇者「ありがとうございます」

博士「さて、じゃあ行こうか」タタタッ

女勇者「そうですね、急いだ方がいいです」タタタッ

勇者「心当たりはあるのか?」タタタッ

博士「多少ならあるよ」タタタッ

剣士「何するんですか?」タタタッ

女勇者「簡単に言えば嫌がらせです」タタタッ

剣士「嫌がらせ……ですか」タタタッ

暗殺者「ああ、バカみたいにくだらない最高の嫌がらせだ」タタタッ

ドラゴン「面白そうだな」タタタッ

勇者「博士、どの辺りだ?」タタタッ

博士「もう少し先だよ」タタタッ

博士「あの扉だ」タタタッ

勇者「ドラゴン、任せた」タタタッ

ドラゴン「ああ、わかった」

剣士「え?」


ドラゴンは跳び蹴りで鉄の扉が吹き飛ばす。


勇者「相変わらずの火力だな」

兵士長「そいつらが脱獄者だ!!」

兵士達「動くな!!」

女勇者「……どうするんですか?」

暗殺者「戦うしかないだろ」


勇者は掴みかかってきた兵士の右腕を斬り落とす。


勇者「言っとくけど手加減する気ないからな」

暗殺者「死にたくなかったら逃げた方がいいぞ」

兵士長「くっ……」

女勇者「わかったらさっさと道を開けて下さい」

暗殺者「道を開けないなら血祭りだな」

甲冑「……」スタスタ

兵士長「い、一旦退くぞ」タタタッ

兵士達「は、はい」タタタッ

勇者「なんだあれ……」

女勇者「何なんでしょうか」


それは真っ白な西洋甲冑を着た兵士だった。

博士「あれは魔術甲冑だよ、普通の甲冑の何倍も硬いんだ」

女勇者「あれもあなたの作ったものですか?」

博士「うん、あれも私が作ったものだ」

勇者「戦う気か?」

甲冑「目標ヲ捕捉、攻撃ヲ開始スル」

暗殺者「……自我は無いみたいだな」

博士「ああ、あの甲冑を着た人間は遅かれ早かれ自我が無くなる」

博士「彼も自我を無くしたんだろうね」

勇者「剣を持ってないな」

博士「ああ、剣なんか使うより素手で戦った方がよっぽど頑丈だからね」

ドラゴン「ここはオレの出番だな」

勇者「え?」

ドラゴン「向こうが素手ならこちらも素手の方がいいだろ」

勇者「……大丈夫か?」

ドラゴン「気高き竜をなめるなよ」

暗殺者「行くぞ」タタタッ

女勇者「すぐ戻ってきます」タタタッ

剣士「ま、負けないで下さいね」タタタッ

勇者「頼んだ」タタタッ

甲冑「目標逃亡、追撃ヲ開始スル」タタタッ


だがドラゴンの蹴りで追撃を遮られる。



ドラゴン「何してる、貴様の相手はオレだぞ」

甲冑「……目標変更、戦闘ヲ開始スル」

ドラゴン「ふふん、物分かりがいい奴だ、そう言う奴は好きだぞ」

甲冑「攻撃開始」

ドラゴン「かかってこい、人間風情が」

今日はここまでです。

明日は初の得物無しの戦いです。

ドラゴンと甲冑は同時に殴りかかった。

お互いに左手で相手の右手の一撃を防御し、動きが止まった。

ドラゴンと甲冑はお互いに睨み合う。

甲冑の奥は真っ暗で中に人間が居るかどうかも疑わしかった。


「見かけ倒しでは無いみたいだな」


ドラゴンは甲冑を睨みながら、小さな声で言った。
比喩でもお世辞でも無い、ただの本心。
相手を甘く見ていた事への謝罪も僅かに含まれていた。

甲冑はドラゴンの右手を弾くと、ドラゴンの腹目掛けて、左手で殴りかかった。
鎧が擦れるのか、ギチギチと音が鳴る。

だが、ドラゴンはそんな単純な攻撃を素早くかわすと、右フックを相手の脇腹にお見舞する。

一般人の攻撃だったら大したダメージにならないだろう。
しかしドラゴンの場合、その一撃で数メートル相手が吹き飛ぶ。

甲冑もその攻撃で吹き飛び、地面を転がっていた。
ゴロゴロと音をたてて転がる。

だがその鎧には傷一つ付いていない。

甲冑は素早く起きあがると、ドラゴン目掛けて跳んだ。

高く跳び、ドラゴんめがけて落ちて行く。

体を大きく捻り、鎧を着ているとは思えない速度で蹴りを放つ。

ゴウッ、と言う風を切るような音が響き、衝撃波が床を破壊する。

だがドラゴンはタッチの差で後ろに跳び、回避していた。

ドラゴンは体が浮いたまま、甲冑の方を睨み、狙いを定める。

大きく息を吸い、酸素を蓄える。

静寂。

次の瞬間にはドラゴンの口から紅蓮の炎が吐き出される。
散らばる事なく一直線に進むそれは炎の槍のようだ。

炎の槍が甲冑の胸に突き刺さり、文字通り甲冑の胸を焦がす。
ジリジリと焦げるような音が鳴り、焦げ臭いにおいが漂っている。

獣のような咆哮が部屋に響く。

甲冑は炎の槍を真正面から受けながら突っ込んできた。

普通なら一瞬で炭になるほどの威力の炎を受けながらも突っ込んで来る。


「なっ……!?」


呼吸が乱れ、炎の槍の威力が弱まる。

不味い、と直感的に察知する。
だが予想に反し、体が動かない。
理由はすぐにわかった。
酸素を使い過ぎたのだ。

ドラゴンは舌打ちをし、防御しようとした。
だが間に合わない。

甲冑の右拳がドラゴンの腹に突き刺さる。
メキメキと体が嫌な音をたてる。
ただでさえ少なくなった酸素がさらに無くなるような感覚。
気を抜けば、口から内臓を吐き出してしまいそうだ。

吹き飛ばないよう努力する暇も無く、四メートル近く、後ろに吹き飛んでいた。

受け身をとる暇も無く、無様に地面を転がる。

普通の人間なら、骨の一本や二本は折れていただろう。
だがこんな化物同士の戦いではそんな常識は通用しない。

ドラゴンは起きあがり、こちらを見ている甲冑を見る。


「げほげほ……さすがに無傷では無いみたいだな」


苦しそうに息を吸いながらこぼす。

甲冑の鎧の胸の部分は溶けて、グチャグチャになっていた。

二人の化物はお互いに睨み合い、攻撃態勢に入る。

無音。

地面を蹴り、甲冑が跳ぶ。
ドラゴン目掛けて一直線に跳ぶその姿はまるで弾丸だ。

だがドラゴンは動かない。

甲冑が弾丸なら彼女は弾丸を斬り裂く剣だ。

弾丸と剣が激突する。

轟音と共に辺り一帯に衝撃波がはしった。

その衝撃波は四方の壁が吹き飛ばし、床をクレーターの様にへこませる。

ドラゴンと甲冑はその中心に立っていた。
お互いに右拳がぶつかり合っている。

剣は弾丸を受け止めていたのだ。

「どうした、その程度か?」


ドラゴンは甲冑の頭を掴むと、床に思い切り叩きつけた。
クレーターの様にへこんだ床にクモの巣状の亀裂が走る。

だが甲冑は頭を掴んでいる手を振り払うと、後ろに大きく跳んで逃げた。

顔の部分が大きく歪んでいるが、致命傷にはなっていない。


「頑丈だな、貴様も」


ドラゴンは地面を蹴り、甲冑に向かって走り出す。

甲冑は腰を落とし、ドラゴンの顔面目掛け、右拳を突き出す。
空を切る音が壁の無い部屋に響く。

だがドラゴンは姿勢を低くし、その攻撃をかわしていた。

次の瞬間、ドラゴンの回し蹴りが甲冑の顔を捉える。
顔の部分の鎧がメキメキと音をたてた。

甲冑は竹トンボの様に回転しながら、吹き飛んだ。
地面を音をたてながら転がる。

顔の部分はすでに形すら保っていなかった。

だがそれでも、それだけの攻撃を受けてもまだ立ち上がる。

甲冑が地面を蹴り、弾丸と化す。

ドラゴンは正面からその攻撃とぶつかり合う剣と化す。

何度目かの激突。

剣は弾丸を受け止めていた。

ゼロ距離で睨み合う二人。


「貴様の負けだ」


ドラゴンは短く言うと、息を大きく吸った。
破壊への準備。
破滅の予兆。

一瞬の静寂の後、甲冑が紅蓮の炎に包まれた。
灼熱の炎が甲冑を溶かす。

炎の中でも甲冑はドラゴンに殴りかかる。

だがドラゴンは容易くその攻撃をかわす。

その程度の攻撃は想定済みだ。
何度も同じ手を食うほど愚かではない。


「いい事を教えておいてやる」


ドラゴンは限界まで体を捻り、最後の一撃の威力を高める。

今までの一撃とは明らかに違う渾身の一撃。


「恋する乙女より強い者は無いんだ」


ドラゴンのアッパーが甲冑の顎を砕いた。

甲冑が真上に吹き飛ぶ。

轟音と破片を撒き散らしながら甲冑は地面に堕ちた。

ドラゴン「オレの勝ちだな、人間」

甲冑「ぐぐ……」

ドラゴン「……なんだ、中にはちゃんといたのか」

甲冑「お前は誰だ、俺は……?」

ドラゴン「気にするな、考える方が面倒だ」

甲冑「……」

ドラゴン「どうする、貴様の望むようにしてやるぞ」

甲冑「……お前の好きにしろ」

ドラゴン「そうか、なら――――」


ドラゴンは甲冑の顔面を殴り、気絶させる。


ドラゴン「さて、これからどうするかな」

ドラゴン「オレも無傷じゃないし、少し休んだ方がよさそうだな」ドサッ

勇者「ドラゴン、無事か?」タタタッ

ドラゴン「勇者、早かったな」

勇者「ああ、早く逃げるぞ」

女勇者「早くしましょう、私達まで燃えてしまいます」

ドラゴン「燃やしたのか?」

剣士「魔法具とマッチが役に立ちました」

暗殺者「どれだけ燃えるかはわからんが、あいつの計画はもう無理だろうな」

女勇者「いじめがいがあると思ってたのですが微妙でしたね、いい玩具になると思ってたんですけど……」

暗殺者「そりゃ残念だ」

女勇者「拍子抜けです」

勇者「今後に期待しとけばいいだろ」

女勇者「言っておきますが、あれは私が目を付けたんですからね」

勇者「なんか変な意味に聞こえるぞ」

女勇者「言っておかないと、あなた達が遊び始めるじゃないですか」

暗殺者「お前ってああいう傲慢なタイプ大っ嫌いだもんな」

女勇者「当たり前です」

勇者「ドラゴン、歩けるか?」

ドラゴン「勇者、お姫様抱っこしてくれ」

勇者「歩けないのか?」

ドラゴン「歩けるが脇腹がな……」

勇者「出口まで無理か?」

ドラゴン「無理だ」

勇者「……わかったよ」

ドラゴン「やった!!」


勇者はドラゴンをお姫様抱っこする。


暗殺者「そんなに嫌そうじゃないな」ニヤニヤ

勇者「痛いって言ってんだ、仕方ないだろ」

女勇者「いいからさっさと行きますよ」タタタッ

勇者「はいはい」タタタッ

女勇者「剣士、そのあたりも燃やしといてください」

剣士「はい」


剣士は魔法具を使って、火の球を生み出す。


剣士「こんなことしていいんですかね?」ボウッ

女勇者「何かあったら勇者が何とかしてくれます」タタタッ

勇者「無理だ」タタタッ

博士「大丈夫、こんな混乱した中で犯人を見つけるのは不可能だよ」タタタッ

暗殺者「だといいけど」タタタッ

女勇者「そこも燃やしといて下さい」

博士「あ、そこはダメだよ」

勇者「なんでだ?」

博士「そこは……住人のための研究の資料が置いてある所だからね」

女勇者「……わかりました、早く行きますよ」タタタッ

博士「……」タタタッ

今日はここまで。

得物を使った戦闘しか書いた事が無かったので肉弾戦はちょっと微妙かもしれません。

次回までに特訓しときます。

最近シリアスばっかりだったので、ちょっとほのぼの系を書けたらなと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


数日後 港


勇者「魔法の町で大火災だってさ、大変だな」パラパラ

暗殺者「新聞なんてものは当てにならんぞ」

勇者「いや、新聞ってのも意外といいぞ、半分以上は嘘だけど」

暗殺者「情報ってのはやっぱり真実じゃないとダメだろ、裏社会の情報なら嘘なんて一つも無いぞ」

勇者「嘘一つで命にかかわるもんな」

暗殺者「良くわかってるな」

勇者「常識だろ」

女勇者「わかりましたから、そのくだらない話をやめて下さい」

勇者・暗殺者「了解」

剣士「それにしても、ずいぶん大きな事件になっちゃいましたね」

博士「表から見れば有名な研究機関の大火災だからね」

ドラゴン「犯人の特定を急ぐって書いてあるぞ」

博士「ただの建て前だよ、ハンターに動かれてもボロが出るばかりだからね」

女勇者「ハンターは動いてないんですか?」

博士「うん、自分達で犯人を見つけるから協力はいらないとでも言ったんじゃないかな」

ドラゴン「これからどうするんだ?」

勇者「とりあえず一回王様の所に帰ろうと思う」

暗殺者「書類も見つけましたしな」

勇者「ちょうど船もあるし、一回帰って女大臣とこれからの事を話し合っといた方がいいだろ」

女勇者「そうですね」

勇者「博士達は?」

博士「私達は南に向かう事にするよ」

勇者「じゃあここでお別れだな」

剣士「短い間でしたがありがとうございました」

女勇者「きちんと稽古はしてくださいね」

剣士「はい」

暗殺者「船が出るみたいだぞ」

勇者「またな」スタスタ

博士「また今度会えるといいね」

暗殺者「そうだな」スタスタ

ドラゴン「貴様等も頑張れよ」スタスタ

剣士「はい!!」

船乗り「出発!!」

勇者「……長い船旅になりそうだな」

女勇者「そんなことわかり切ってたじゃないですか」スタスタ

ドラゴン「みんな同じ部屋は久々だな」

勇者「そう言われればそうだな」ガチャ

暗殺者「遅かったな」

勇者「鍵はどうした」

暗殺者「そこにある」

勇者「……世間ではこれを針金って言うんだ、覚えとけ」

女勇者「これからは何処でも自由に入れる訳ですね」

ドラゴン「やったな!!」

勇者「何もやってねぇよ、むしろ犯罪だぞ」

女勇者「別に大丈夫ですよ、バレなければ」

勇者「バレないって保証は無いだろ」

暗殺者「バレなければいいのか?」

勇者「金持ちなら別にいいだろ」

暗殺者「いや、ダメだろ」

勇者「ちゃんとわかってる」

暗殺者「絶対わかってないだろ」

勇者「ある程度分かってるよ」

女勇者「どっちでもいいです」

勇者「それにしても……帰るの久々だな、元気にしてるかな、あいつ」

女勇者「誰の事ですか?」

勇者「言ってなかったっけ、妹の事」

女勇者「聞いたような、聞いてないような……」

勇者「アバウトだな」

ドラゴン「オレの義妹になるのか?」

勇者「言っとくけどまだ結婚するって言ってねぇからな」

ドラゴン「あれだけの事をして契りを交わす気が無いのか……」

勇者「意味深な言い方やめろ!!」

暗殺者「でもキスしたりしてるじゃん」

女勇者「そうですね、しかも何回も」

勇者「つーかお前がお姫様抱っことか教えたんだろ」

女勇者「な、なんでその事を……!?」

勇者「ドラゴンから聞いた」

女勇者「……」

勇者「お前ってコテコテの恋愛小説とか好きなの?」

女勇者「黙りなさい!!」

勇者「図星かよ……」

女勇者「違います」

暗殺者「でも実際は好きなんだろ?」

女勇者「……少しだけですが」

ドラゴン「オレにも読ませてくれ」

女勇者「……一冊だけですよ」ガサゴソ

勇者「いつの間に買ったんだよ」

女勇者「買い物の時に時々買ってたんです」

ドラゴン「これ読んでいいか?」

女勇者「どうぞ」

暗殺者「……」

勇者「お前は読まないのか?」

暗殺者「こう言うのはよくわからん」

勇者「……久々にお前が男だって感じたかも」

暗殺者「私は嫌いじゃないわよ」

勇者「突然人格を切り替えるな」

暗殺者「ごめんなさいね、お詫びに脱いだ方がいいかしら?」

勇者「脱ぐな、絶対脱ぐな」

暗殺者「わかってるわよ」

女勇者「あなたが言うと冗談に聞こえないんですよ」

暗殺者「あら、一応初対面なのにズバズバ言うのね」

女勇者「暗殺者から多少の事は聞いてるので」

暗殺者「知ってるわよ、記憶は共有してるから」

勇者「そういえばそうだったな」

暗殺者「ドラゴンの事もちゃんと知ってるのよ」

ドラゴン「……」スヤスヤ

勇者「本読んでねぇ……」

暗殺者「読み始めてすぐに寝てたぞ」

勇者「だから突然切り替えるな」

暗殺者「ちょっと飲み物買ってくる、なんかいるか?」スタスタ

勇者「お茶」

女勇者「何か甘い飲み物をお願いします」

暗殺者「わかった」ガチャ

勇者「……二人って久々だな」

女勇者「そうですね、二人で旅してた頃が懐かしいですね、短かったですけど」

勇者「そうだな……」

女勇者「それにしても、変わったメンバーが集まりましたね」

勇者「ああ、一人で町に向かいながら考えてたパーティーが懐かしいよ」

女勇者「嫌なんですか?」

勇者「まさか、暗殺者とドラゴンとお前がいてこそのパーティーだろ」

女勇者「後あなたですね」

勇者「あ、そうだな」

女勇者「四人がいてこそのこのパーティーですよ」

勇者「……でも魔王を倒したらみんなバラバラなんだよな……」

女勇者「一生会えない訳じゃないんです、気にする事無いですよ」

勇者「女勇者は魔王を倒したらどうするんだ?」

女勇者「……そうですね、特には決めてません」

女勇者「あなたは魔王を倒したらどうする気ですか?」

勇者「俺もわかんねぇかな」

女勇者「ドラゴンと結婚するんじゃないんですか?」

勇者「わかんねぇ」

女勇者「……あなたはドラゴンの事が好きなんじゃないんですか?」

勇者「好きだよ、でも結婚ってなるとさ」

女勇者「?」

勇者「俺の家って貧乏だし、父親も母親もダメ人間だからさ」

勇者「ドラゴンはそれで幸せなのかなって……」

女勇者「……」

勇者「俺なんかよりもっといい―――――」


女勇者は思いっきり勇者の背中を叩く。


勇者「痛ってぇ!!」

女勇者「シャキッとして下さい」

勇者「え?」

女勇者「ドラゴンの幸せはあなたと共に居る事です」

勇者「……」

女勇者「それに大事なのはあなたの率直な気持です」

勇者「……女勇者、ありがとう」

女勇者「お礼を言う必要はありませんよ」ニッコリ

勇者「……初めて笑った顔見た気がする」

女勇者「き、気のせいです」

今日はここまで。

船旅は続きます。

暗殺者「買ってきたぞ」ガチャ

勇者「あ、おかえり」

女勇者(笑ったのなんて何年ぶりでしょうか……)

暗殺者「ほら、リンゴジュース」

女勇者「ありがとうございます」

勇者「これウーロン茶じゃん、俺緑茶が良かったんだけど」

暗殺者「緑茶が売って無かったんだ」

勇者「なんで、緑茶が無いんだよ、あの良さがわかんねぇのか?」

暗殺者「単に知名度が低いだけだろ」

勇者「うまいのにな、緑茶」

女勇者「あんな苦い飲み物の何処がいいんですか」

勇者「苦いからこそいいんだろ」

女勇者「意味がわかりません、誰が好き好んであんなものを」

勇者「苦いから、一緒にある菓子が余計に甘くてうまいんだって誰かが言ってたぞ」

女勇者「ただの気のせいですよ」

暗殺者「まあ、その人次第って事だ」

勇者「……」

暗殺者「それにしても良く寝るよな」

勇者「今になって疲れが出たんだろ」

女勇者「休ませてあげた方がいいですね」

暗殺者「そうだな」

勇者「……凄い暇だな」

暗殺者「ああ、暇だ」

女勇者「話す事なんて無いですしね」

勇者「毎日話してるからな……」

暗殺者「なんかやる事無いのか?」

女勇者「トランプならありますよ」

勇者「トランプか……」

暗殺者「トランプでいいだろ」

女勇者「何やります?」

勇者「トランプと言ったらポーカーだろ」

暗殺者「そうだな、トランプはポーカーだよな」

女勇者「大富豪とかやらないんですか?」

勇者・暗殺者「……大、富豪?」

女勇者「知らないんですね」

勇者「知らない、何それ」

暗殺者「聞いた事も無い、本当にトランプのゲームか?」

女勇者「はい、有名なゲームですよ」

勇者「カジノには無かったぞ」

暗殺者「裏のカジノにも無かった」

女勇者「カジノが全てじゃありませんよ」

勇者「大富豪?」

暗殺者「どんなゲームだ?」

女勇者「知らないのなら、ポーカーでいいです」

勇者「言っとくけど、俺強いよ」

暗殺者「本当か?」

勇者「やってみればわかるだろ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





ドラゴン「ん、いつの間に……」

勇者「俺の勝ちだ!!」

暗殺者「本当に強いんだな、お前」

女勇者「人間何か一つは優秀なものがあるものなんですね」

勇者「何その言い方!?」

暗殺者「ポーカーって運だろ、なんでお前がそんなに強いんだ?」

勇者「ポーカーってのは運じゃなく実力の勝負だよ」

女勇者「基本は運のゲームじゃないですか」

勇者「そう思ってるうちは勝てねぇよ」

勇者「あ、おはよう」

ドラゴン「ああ、おはよう」

女勇者「もう夜ですけどね」

勇者「疲れはとれたか?」

ドラゴン「ああ、ありがとな」

ドラゴン「そう言えば、勇者は魔王の資料を読んだのか?」

勇者「読んでみたけど、いまいち意味がわからなかった」

女勇者「意味不明な単語が満載でしたからね」

勇者「女大臣に聞いてみればいいだろ」

暗殺者「知らなかったらどうするんだ?」

勇者「女大臣なら何とかしてくれるだろ」

暗殺者「メチャクチャ言ってるけどあの人なら出来そうだな」

女勇者「究極の変人ですけどね」

ドラゴン「でも変人は天才なんだろ?」

勇者「ちょっと違う、天才と変人は紙一重ってのが正しい」

暗殺者「博士も変人だしな」

女勇者「そう言うあなた達だって変人じゃないですか」

勇者「天才じゃないけどね」

女勇者「あなたが天才だったら世界中の人間全て天才ですよ」

勇者「うるせぇ」

暗殺者「そういえば、あとどのくらいで着くんだ?」

女勇者「明日の夕方には到着できるみたいです」

勇者「まだ丸一日ここに居なくちゃいけないのか……」

女勇者「寝れば一瞬ですよ」

暗殺者「寝るのか?」

女勇者「はい、疲れましたし」

勇者「おやすみ」

女勇者「起こさないで下さいね」ゴロン

勇者「起こさねぇよ」

ドラゴン「オレも寝るかな」ゴロン

勇者「お前今まで寝てただろ」

ドラゴン「まだ眠いんだ」

ドラゴン「一緒に寝るか?」

勇者「自分のベッドがちゃんとある」

ドラゴン「つまらんな」

勇者「おやすみ」

ドラゴン「ああ、おやすみ」

勇者「……」

勇者「俺全然眠くないんだよな……」

暗殺者「なら起きてればいいだろ」

勇者「そうだけどさ……」

勇者「つーか、いくら仲間だからってここまで無防備ってどうなんだ?」

暗殺者「まあ、思春期の男の前でこの無防備さはちょっと危険かもな」

勇者「だよな、お前もそう思うよな」

暗殺者「でもお前そんなこと出来るか?」

勇者「無理」

暗殺者「なら大丈夫だ」

勇者「ドラゴンには絶対そんなこと出来ない」

暗殺者「ドラゴンの場合受け入れてくれるんじゃないか?」

勇者「うん、なんかそんな気がする……」

暗殺者「女勇者にそんなことしたら問答無用で斬られるだろうしな」

勇者「第一女勇者は胸が小さいしありえな―――――――」


その言葉を言い終わる前に勇者の顔面に分厚い本が直撃する。


勇者「あが……」ドサッ

暗殺者「……生きてるか?」

勇者「あ、ああ、何とか生きてる」

勇者「起きてたなら起きてたって言えよ」

女勇者「黙りなさい、気持ち悪い」

勇者「本当の事言っただけ―――――」


勇者の顔面に分厚い本がもう一冊直撃した。


暗殺者「生きてるか?」

勇者「死んだ、今のは死んだ……」

女勇者「バカな事言ってないでさっさと寝なさい」

暗殺者「胸だけが女を計るもんじゃないぞ」

勇者「ああ、俺もそう思う」

女勇者「それ以上言ったら上半身が無くなりますよ」

勇者・暗殺者「ごめんなさい」

※補足

小説について


この世界では娯楽が限られるため、小説はお金のかからない娯楽として多くの人が楽しんでいます。
そのためパーティーのメンバーも一度は小説を読んだ事があります。


各キャラの本の趣味

勇者は基本的に何でも読みます。(刀のでてくる本がちょっと好き)

女勇者は恋愛小説(特にベタな物)を好んで読んでます。

ドラゴンは神話とかを読みます。

暗殺者はミステリー系が好きですが、基本的に本はそこまで読みません。

今日はここまでです。

ほのぼのはどうしてもグダグダしちゃいますね。ほのぼのの書き方って難しいです。

~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日 夕方  町(勇者の住んでいた町)


女勇者「着きましたよ」

勇者「……ん、もう?」ガリガリ

ドラゴン「丸一日寝てたな」

暗殺者「さっさと行くぞ」

勇者「みんな起きてたのか」

女勇者「当たり前です」

暗殺者「早く行くぞ」

勇者「ああ、わかってる」スタスタ

女勇者「今から城に行きますか?」

勇者「夕方だし大丈夫だろ」スタスタ

ドラゴン「なあ、突然行って会えるもんなのか?」スタスタ

勇者「居れば会わせてくれるだろ」スタスタ

暗殺者「居なかったら?」スタスタ

勇者「……待つ」スタスタ

女勇者「長い間出掛けてたらどうするんですか?」スタスタ

勇者「その時はその時だ」スタスタ

女勇者「計画性がまるで無いんですね」スタスタ

勇者「そりゃ悪かったな」スタスタ

暗殺者「あれが城か?」スタスタ

勇者「ああ、あれだ」スタスタ

兵士「止まれ!!」

勇者「通してくれ、勇者って言えばわかるか?」

兵士「勇者……嘘をつくな、勇者は魔王討伐の旅に出ているはずだ!!」

勇者「ちょっと用事で帰って来たんだ」

兵士「……ダメだ、お前が勇者だと言う保証がない!!」

女勇者「どういう事ですか?」

勇者「裏からこっそり出発した訳だし、顔を覚えてるはず無いよな……」

勇者「……とりあえず王様を呼んでくれ」

兵士「ダメだ、明日の昼にまた来い」

ドラゴン「なんで今はダメなんだ?」

兵士「今王様は忙しいのだ」

女勇者「どうしてもダメですか?」

兵士「ああ、当たり前だ」

女勇者「暗殺者、お願いします」

兵士「ん?」


暗殺者は兵士の首の後ろを軽く殴り気絶させる。


女勇者「行きますよ」

勇者「いつそんな作戦決めたんだ?」

暗殺者「お前と兵士がしゃべってる時に決めた」ガチャ

勇者「王様怒るかな?」スタスタ

暗殺者「大怪我した訳じゃないし大丈夫だろ」スタスタ

勇者「気絶させてる時点でダメだろ」スタスタ

女勇者「他の兵士がいなくて好都合でした」スタスタ

勇者「なんで兵士がいないんだ?」スタスタ

ドラゴン「いつもならいるのか?」スタスタ

勇者「こんなに少ないはず無いんだけどな」スタスタ

勇者「こんにちは」ガチャ

妹「あ、お兄ちゃん!!」タタタッ

勇者「い、妹!?」

女勇者「ずいぶんかわいいですね、勇者の妹とは思えないです」

勇者「母親が違うんだよ」

女勇者「そうなんですか、納得です」

勇者「納得してんじゃねぇ」

勇者「なんでここに?」

妹「王様がいつでもお城に遊びに来ていいって言ってくれたから」

暗殺者「かわいい子だな」

妹「あなた達は?」

女勇者「勇者の姉の女勇者です」

暗殺者「勇者の友達の暗殺者だ」

ドラゴン「勇者の妻のドラゴンだ」

勇者「いろいろ間違ってるけど、だいたい合ってるからまあいいよ」

妹「よろしくね、お姉ちゃん」

女勇者「お、お姉ちゃん!?」

勇者「俺の姉なんだしお姉ちゃんだろ」

妹「お姉ちゃんは嫌なの?」

女勇者「い、いえ、お姉ちゃんでいいです」

暗殺者「王様は何処に居るんだ?」

妹「王様なら奥の部屋だよ」

勇者「ちょっと行ってくるな」スタスタ

妹「いってらっしゃい」

勇者「王様、居るか?」ガチャ

王「……おお、勇者か、久しぶりじゃな」

暗殺者「表の兵士が入れてくれなかったから気絶させたからな」

勇者「通してくれなかったんだ」

王「素直な事は重要じゃと思うがそこまで清々しく言われるとな……」

女勇者「女大臣は居ますか?」

王様「居るには居るのじゃが、今は少し手が離せない用事があるのじゃ」

勇者「そう言えば、兵士が少なかったけど、あれと関係あるのか?」

王「うむ、そうじゃがお主たちが気にする事では無い」

暗殺者「今日中に会えないか?」

王「すまぬが明日まで―――――――」

女大臣「今からで大丈夫です」スタスタ

王「終わったのか?」

女大臣「はい、後は部下の者に頼んでおけば大丈夫です」

ドラゴン「いいのか?」

女大臣「はい、気にしないで下さい」

女勇者「これを解読してもらいたいんです」スッ

女大臣「……」パラパラ

女大臣「これは?」

暗殺者「魔王の情報らしい、俺達じゃ解読できないから持って来たんだ」

女大臣「……今すぐは無理ですが、数日待っていただけるなら解読出来ます」

勇者「頼む」

王「うむ、順調な旅の様だな」

勇者「ああ、おかげ様で楽しい旅を続けてるよ」

ドラゴン「……」ジー

勇者「どうした?」

ドラゴン「いや、王と言うものを初めて見たんでな」

ドラゴン「人間の中では最も高等なのだろう?」

勇者「うーん、別に高等って訳じゃないと思う、ゴミみたいな奴もいる訳だし」

女勇者「と言うより、ゴミみたいな者の方が多いんじゃないですか?」

暗殺者「偉い奴等ってのはほとんどがゴミだろ」

王「よく王の前でそんな話ができるのう……」

勇者「王様と女大臣はいい奴だと思うぞ」

王「そ、そうか?」

勇者「他の偉い奴らに比べたらだけど」

女大臣「王様は常に民の事を考えていらっしゃるとてもいい方ですよ」

暗殺者「王ってのは私利私欲しか追い求めてない奴ばっかりだと思ってたけど違うんだな」

女勇者「多少はマシなのもいないと困ります」

王「王の前でそんな話をする者達は初めてじゃぞ」

暗殺者「別にお前の話をしてるんじゃないんだ、気にすんな」

王「勇者、お主の仲間はなかなかの変人揃いみたいじゃな」

ドラゴン「そんなに褒めるな、照れるだろ」

勇者「褒められてないからね、むしろちょっとバカにされてるからね」

王「いやいや、いい意味での変人揃いと言う意味じゃ」

ドラゴン「あははははは、照れるね」

勇者「……じゃあ用事も終わったし帰るか」

王「明日にでも来てくれ」

勇者「ああ、わかった」ガチャ

妹「お兄ちゃん、終わった?」

勇者「ああ、夕飯は食ったか?」

妹「まだだよ」

勇者「じゃあ家に帰って夕飯にするか」

妹「はーい」

女勇者「じゃあ私達は宿屋にでも―――――」

勇者「俺の家でいいだろ、金ももったいないし」

女勇者「……ではお言葉に甘えさせていただきます」

ドラゴン「初めてのお泊りと言うやつだな」

勇者「うーん……ちょっと違うかも」

暗殺者「だいたい何度も一緒に寝てるだろ」

妹「……お兄ちゃん、ちゃんと耳栓するから思いっきり楽しんでいいからね」ニッコリ

勇者「女大臣だよな、女大臣しかいないよな」

妹「間違ってる?」

勇者「間違ってないけど、そう言う事言わない」

今日はここまで。

ちょっとした会話に伏線が張れるように努力していきたいと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者の家


勇者「久々の家だな」ガチャ

妹「ちゃんと毎日掃除しといたんだよ」

勇者「すまんな」

妹「偉い?」

勇者「偉い偉い」ナデナデ

妹「えへへ」ニコニコ

ドラゴン「……ずるい」ボソッ

勇者「ん、なんか言ったか?」

ドラゴン「何も言ってない」

勇者「……夕飯のリクエストはあるか?」

ドラゴン「別に何でもいいぞ」

暗殺者「俺もだ」

妹「チャーハン!!」

女勇者「じゃあチャーハンで」

勇者「了解」

勇者「そういえば材料あるのか?」ガサゴソ

女勇者「……」ズズズ

妹「お姉ちゃんはお兄ちゃんの事好きなの?」

女勇者「な、何言ってるんですか!!」

妹「私はお兄ちゃんの事好きだよ」

女勇者「な、仲間としては信頼しています」

妹「じゃあ好きなんだ」

女勇者「言っておきますが恋愛的な好きではないですからね」

女勇者「わかりましたか?」モグモグ

女勇者(緑茶の後のお菓子とはこれほどおいしいものだったんですか……感動です)

妹「うん」

妹「ドラゴンさんはお兄ちゃんの事好き?」

ドラゴン「ああ、貴様なんかよりずっと好きだ」

妹「ううん、ドラゴンさんより私の方がもっと好きだよ」

ドラゴン「貴様のは恋愛的な好きではないだろ?」

妹「私はお兄ちゃんと結婚するって決めてるの!!」

女勇者「仲の良い兄弟なのですね」

暗殺者「苦労したからだろうな」

ドラゴン「何言ってる、勇者と結婚するのはオレだ」

女勇者「ドラゴン、大人げないですよ」

ドラゴン「これだけは譲れん、勇者と結婚するのはオレだ」

妹「私だよ!!」

ドラゴン「オレだ!!」

女勇者「……」

暗殺者「子供の喧嘩だ、気にすんな」

女勇者「そうですね、そうします」

ドラゴン「勇者に聞いてみるか?」

妹「いいよ」

勇者「具は少ないけど出来たぞ」スタスタ

女勇者「勇者、私はあなたの事を初めて凄いと思いました」

勇者「あ、ああ、ありがとう」

女勇者「そして緑茶、あなたをバカにしてすいませんでした」

勇者「緑茶の話!?」

ドラゴン「勇者、オレと妹、どっちが好きだ」

勇者「……突然どうした?」

ドラゴン「オレの質問に答えろ」

妹「どっちなの?」

勇者「……どっちも好きじゃダメか?」

妹「同じはダメだよ」

勇者「……妹の事も好きだしドラゴンの事も好き、それ以上でもそれ以下でも無い」

ドラゴン「だからそれは―――――――」

勇者「この話はここまで、これ以上この話はするな」

妹・ドラゴン「……」

勇者「ほら、チャーハンだ」コトン

ドラゴン「勇者の阿呆め」ボソッ

暗殺者「あの答えはどうなんだ?」ヒソヒソ

女勇者「好きの方向性が全く違う訳ですから、仕方ないと思いますけど……」ヒソヒソ

暗殺者「けど?」ヒソヒソ

女勇者「言い方がちょっと不味かった様な気がします」ヒソヒソ

暗殺者「だよな、もっといい言い方があったよな?」ヒソヒソ

女勇者「はい、勇者は変な所で鈍感ですから」ヒソヒソ

暗殺者「絶対喧嘩すると思う」ヒソヒソ

女勇者「私もそう思います」ヒソヒソ

妹「……」モグモグ

ドラゴン「……」モグモグ

勇者(なんでこんな空気になってんだよ……)モグモグ

一方その頃  城


王「で、どうなったのじゃ?」

女大臣「最悪、戦争ですね」

王「……やはりそうか」

女大臣「仕方のない事です、元から魔法の町は怪しい動きをしていた訳ですし」

王「世界と魔法の町の戦争……いつか起こると思っておった……」

女大臣「まだ戦争が起こると決まった訳ではありませんよ」

王「それにしても、魔法の町での大火災とは不思議な事が起こったものじゃ」

女大臣「起こした人間は特定できています」

王「ほう、仕事が早いのう」

女大臣「ありがとうございます」

女大臣「大火災を起こしたのは勇者様達です」

王「……ん、どう言う意味じゃ?」

女大臣「勇者様達が持ってきた資料は魔法の町の物でした」

女大臣「そして勇者様達が町をいた時期と大火災の時期も重なります」

王「つまり、勇者達が大火災を起こしたと言うのか?」

女大臣「はい、間違いなく」

王「……あの者たちは事の重大さを知っておらぬようじゃが?」

女大臣「そうですね」

王「何を考えておるのか……」

女大臣「どちらにせよ今回の件で世界は変化するでしょうね」

王「そうじゃな」

王「魔法の町はどうなるのじゃろうな」

女大臣「他の町のハンターや兵士達も動き出しました、これで魔法の町の計画が全て露見すると思います」

王「そうか、うまくいくと良いな」

女大臣「やっとハンターが動けるようになった訳です、必ず成功させて見せます」

王「任せたぞ」

女大臣「もう一つ報告が」

王「なんじゃ?」

女大臣「勇者様の両親が厄介な所に借金していまして……」

王「……何故生活保護を受けて借金する必要がある」

女大臣「酒とギャンブルが原因でしょうね」

王「今度城に呼んで来い、わしが直々に説教する」

女大臣「無駄なような気もしますが……」

王「無駄でもやらないよりはいいじゃろう」

女大臣「そうですね」

王「で、その厄介な場所とは?」

女大臣「チンピラ共です」

王「チンピラか……厄介じゃな」

女大臣「はい、連中は加減というものを知りませんから」

王「その辺はわし等が介入する事も出来んからな」

女大臣「勇者様もいますし大丈夫だと思いますが……」

王「だと良いがな」

~~~~~~~~~~~~~


勇者の家


勇者・ドラゴン・女勇者・妹・暗殺者「いただきました」

父親「ただいま」ガチャ

勇者「おかえり」

父親「ああ、帰ってきてたのか」

勇者「ちょっと用事があったんだ」

父親「ふーん、そうか」

女勇者「淡白な会話ですね」

父親「いつもの事だよ」

父親「じゃあ出掛けてくる」

勇者「またか……」

父親「いつもの事だろ」スタスタ

妹「ねえ、お兄ちゃんも帰ってきてるんだし、今日ぐらい一緒に居ようよ」

父親「……今日はうまい酒が入ったらしいんだ」ガチャ

妹「……」

勇者「気にすんな、いつもの事だ」

女勇者「息子より酒ですか……」

妹「……」

勇者「そんな事前からわかってただろ」

暗殺者「そうだな」

勇者「そんなに落ち込むな」

母親「ただいま」ガチャ

妹「おかえり!!」タタタッ

勇者「おかえり」

母親「あれ、帰ってきてたんだ」

勇者「ちょっと用事があって」

母親「……じゃあ久々に夜のカジノにでも行ってこようかな」

勇者「勝手にしろ」

妹「え?」

母親「悪いけど妹の面倒見といてくれない?」

勇者「いいよ」

妹「お母さんも行っちゃうの?」

母親「今日は当たりそうな気がするのよ」

勇者「行ってきていいよ、いつもの事だし」

今日はここまでです。

中途半端ですいません

番外編をやろうと思っていて、主要キャラ以外のスピンオフを計画しています、そこでアンケートをとらせてもらいたいと思います。

次の三キャラでスピンオフが見たいものを選んでいただき、最も投票数が多かったもののスピンオフをやりたいと思います。(4以外は戦闘シーンがあります)

1、強者(結構鬱めのシリアス)

2、弓兵(ちょっと鬱めのシリアス)

3、イケメン(シリアス)

4、そんなん要らない

母親「そう言えばその人達は?」

勇者「俺の旅の仲間」

母親「そう言えば、旅に出るって言ってたわね」

女勇者「今更ですか?」

母親「子供にやりたい事をやらせるのが私の教育方針なの」

女勇者「自分が遊びたいだけの様な気がしますが……」

母親「それもほんのちょっとはあるわよ」

女勇者「ほんのちょっとには見えませんよ」

母親「そうだ、お金持ってる?」

勇者「あるけど、まず何に使うか言え」

母親「借金返済よ」

勇者「……何回目の借金かわかってる?」

母親「何回?」

勇者「六回目だ」

母親「思ったより少ないのね」

勇者「普通の人間は借金なんて一回するかしないかだ!!」

母親「私だけの借金じゃないわよ、二人の借金よ」

勇者「……いくら?」

母親「3000ゴールド」

勇者「……」

女勇者「要りますかか?」

勇者「……いいのか?」

女勇者「いいですよ」スッ

暗殺者「盗んだ金だし、別にいいだろ」

ドラゴン「自由にすればいい」

勇者「本当にありがとう」

勇者「ほら、カジノに使ったら殺すからな」スッ

母親「私だってそんなにバカじゃないわよ」

ドラゴン「もうすでにバカな気がするのはオレだけか?」

暗殺者「俺もそう思う」

勇者「で、誰に借りたんだ?」

母親「食材屋の裏の貸金よ」

勇者「いつもの所じゃねぇのか?」

母親「いつもの所はもう貸してくれないの」

勇者「……」

母親「そういえばそっちの人は勇者の奥さんなのよね?」

ドラゴン「なんで知ってるんだ?」

母親「父親から聞いたのよ、勇者と仲良くしてやってね」

ドラゴン「ああ、オレが勇者を幸せにしてやる」

勇者「それ俺の台詞じゃね?」

母親「じゃあ行ってくるね」ガチャ

勇者「ああ」

勇者「……」

暗殺者「どうしたんだ?」

勇者「ちょっと気になる事があって」

勇者「……ちょっと出掛けてくる、先寝てていいぞ」

暗殺者「一緒に行こうか?」

女勇者「私達も手伝いますよ」

勇者「いや、まずは俺だけで調べてみる」

妹「行っちゃうの?」

勇者「明日遊んでやるよ」

妹「……うん」

勇者「いい子だ」ナデナデ

暗殺者「日が昇る前には帰ってこいよ」

女勇者「明日も城に行くんですから」

勇者「わかってる」ガチャ

勇者「……冬の夜は冷えるな」スタスタ

勇者「嫌な予感が当たってないといいけど……」スタスタ

勇者「……確かここだったな」スタスタ


それはボロボロで今にも壊れそうな小屋だった。


勇者「おい、いるか?」ガチャ

金髪「……ん、勇者さんじゃないっすか」


そこには金髪で勇者より少し年下の絵に描いたようなさわやか美少年が寝転がっていた。


勇者「久しぶり」スタスタ

金髪「あれ、旅に出たんじゃないんすか?」

勇者「ちょっと用事があって帰って来たんだ」

金髪「……もしかして俺に会いに来てくれたんすか……感動っす!!」ウルウル

勇者「いや、ちょっと聞きたい事があって来たんだ」

金髪「何の事を聞きに来たんすか?」

勇者「食材屋の裏に貸金なんてあったか?」

金髪「ああ、あそこは注意した方がいいっすよ、危ない連中がやってますから」

勇者「……やっぱり」

金髪「何かあったんすか?」

勇者「ちょっとあそこで金借りた奴がいてさ……」

金髪「それはヤバいっすね」

金髪「勇者さんは虹色のバラって不良グループ覚えてますか?」

勇者「虹色のバラ?」

金髪「勇者さんが潰したグループっすよ」

勇者「ああ、いたようないなかったような……」

金髪「勇者さんが出て行ったあとで壊滅寸前のあのチームに新しいリーダーが来たんすよ」

勇者「それで復活したのか?」

金髪「そうみたいっす」

金髪「しかも一般人にも平気で手を出すらしくって俺達も困ってるんすよ」

勇者「その貸金もそいつ等がやってるのか?」

金髪「そうみたいっす、なんでもひどい高利貸しみたいっすよ」

勇者「クズだな」

金髪「本当っす、一般人には手を出さないって言うルールも守れないクズなんすよ」

勇者「その昔ながらのルールを守ってるから俺もお前等に手を貸したんだもんな」

金髪「……懐かしいっすね、勇者さんとチンピラ崩れのクズ共を狩ってた頃」

金髪「あの頃の勇者さん、最高にかっこ良かったっす!!」

勇者「そりゃどうも」

金髪「またあのポーカーのイカサマ見せて下さいよ」

勇者「別にいいけど、お前出来るの?」

金髪「……無理っす」

金髪「勿体ないっすよ、あの技術があるならカジノで稼げばいいじゃないっすか」

勇者「俺はカードゲームとして楽むだけ、カジノには行かないって決めてんだ」

金髪「残念っす……」

勇者「話を戻すけど、その虹色のバラってのは潰さないのか?」

金髪「相手のリーダーの強さがわからない以上手が出せないんすよ」

勇者「ヤバい奴なのか?」

金髪「みたいっす」

勇者「……情報を集められるか?」

金髪「もしかして手伝ってくれるんすか!?」

勇者「ああ、俺も関わってる訳だし」

金髪「ありがとうございます!!」

勇者「こっちこそ、突然悪いな」

金髪「いいんすよ、俺の体も心も勇者さんのものですし」

勇者「言っとくが、俺はそっち系の趣味は無いからな」

金髪「やっぱり俺の思いは受け取ってもらえないんすか……」

勇者「ああ、俺もう婚約者いるから」

金髪「ほ、本当っすか!?」

勇者「嘘ついても仕方ないだろ」

金髪「マジっすか……」

勇者「お前もいい加減いい人探せ」

金髪「……わ、わかりました」

金髪「あの……ちょっと時間かかってもいいっすか?」

勇者「なんかあったのか?」

金髪「諜報部隊を別の事に使ってるんすよ」

勇者「……人手不足なのか?」

金髪「申し訳ないっす」

勇者「気にすんな」ゴソゴソ

金髪「どうしたんすか?」

勇者「ちょっと待ってくれ」ピー

金髪「なんすか、それ?」

勇者「スライムの笛」

金髪「スライムを呼ぶんすか?」

勇者「ああ、ちょっと時間かかるけど絶対来てくれる」

黒スライム「俺様を呼んだのはテメェ等か?」ピョンピョン

金髪「これっすか?」

勇者「ああ」


やって来たのは真っ黒のスライムだった。


黒スライム「けっ、こんなクソガキに使われるなんて俺様も堕ちたもんだな」

金髪「勇者さんの何処がクソガキっすか、勇者さんは男でも惚れる男っすよ!!」

勇者「それはお前だけだ」

勇者「何、お前よっぽど凄いの?」

黒スライム「当たり前よ、俺様は伝説の諜報員と呼ばれてるスライムだぞ」

勇者「……ごめん、知らないわ」

黒スライム「な、なんだと!?」

金髪「俺、聞いたことあるっすよ」

勇者「え?」

金髪「伝説の諜報員って言われてるスライムがいるって昔ダチに聞いた事があるっす」

黒スライム「分かってるな」

勇者「こいつがそれって事?」

金髪「そうっすよ!!」

勇者「……」

黒スライム「俺様の凄さがわかっただろ」

黒スライム「しかも俺様は初めてハンターになったあの噂のスライムとライバルだったんだ」

勇者「知らねぇよ!!」

勇者「……待てよ、俺そのスライムと会った事あるかも」

黒スライム「なんだと?」

勇者「うん、俺あった事ある」

金髪「やっぱ、勇者さんは凄いっすね」

勇者「会っただけだし、凄くも何ともねぇから」

黒スライム「……お前はあいつのなんだ」

勇者「は?」

黒スライム「お前はあいつの何なんだ!!」

勇者「……一応友達、かな」

黒スライム「……ライバルの友が困っているのなら助けるのが男って生き物だ」

黒スライム「手伝ってやるよ」

勇者「……よくわかんねぇけどありがとう」

金髪「男っすよ、尊敬するっす!!」

黒スライム「当然だ」

金髪「やっぱり男ってのは不器用なのがかっこいいっす、惚れちゃいます」

勇者「お前の場合本気で惚れるから凄いよな」

金髪「強い男ってのは素敵っす!!」

勇者「俺にはよくわからん」

黒スライム「強い男ってのはいつの時代も素敵なもんだ」

勇者「お前いくつ?」

金髪「かっこいいっす!!」

勇者「まあ、細かい事はいいか」

黒スライム「そう言えば何をすればいいんだ?」

金髪「虹色のバラって言う不良チームの情報を集めるんす」

黒スライム「諜報って事だな?」

金髪「そう言う事っす」

勇者「久々に来て、こんなこと頼んで悪かった」

金髪「いいんすよ、俺に任せといて下さい」

黒スライム「俺様にかかれば三日で調べ上げてやるさ」

勇者「多分家にいると思うから、なんかあったら家に来てくれ」

金髪「了解っす!!」

勇者「じゃあ明日も来るよ」ガチャ

金髪「はい!!」

金髪「勇者さん、素敵っす……」

黒スライム「叶わぬ恋だな」

金髪「う、うるさいっす!!」

今日はここまでです。

アンケートありがとうございました。とりあえず今は本編に全力を注いでいきたいと思います。よろしくお願いします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者の家


勇者「ただいま」ガチャ

勇者「さすがに寝てるか……」

暗殺者「早かったな」

勇者「うおっ!?」

暗殺者「あんまりでかい声出すと起きちまうぞ」

勇者「じゃあ突然現れるなよ……」

暗殺者「ちょっと水飲みに来ただけだ」ゴクゴク

暗殺者「お前はあっちの部屋だからな」

勇者「わかってるよ、あそこが俺の部屋だし」

暗殺者「わかってるならいい、じゃあまた明日」スタスタ

勇者「ああ、また明日……」

勇者「……」

勇者「なんだよあいつ」ガチャ

ドラゴン「……今帰ったのか」

勇者「あ、ああ(なんか凄く怖い顔をしてる様に見えるのは気のせい?)」

ドラゴン「そこに座れ」

勇者「あ、はい(気のせいじゃ無かった……)」

ドラゴン「勇者、お前はオレと妹のどっちが好きだ」

勇者「それは――――――」

ドラゴン「どっちかしっかり決めてくれ」

勇者「……」

勇者「なんでそんな事聞くんだよ」

ドラゴン「……不安なんだ、貴様が本当はオレの事を好きでも何でもないんじゃないかって……」

勇者「……」

勇者「妹は好きだけど、それは兄弟として好きってこと、ドラゴンは恋人してって言うか、女として好きだ」

ドラゴン「……本当か?」

勇者「俺が嘘ついてるように見えるか?」

ドラゴン「じゃあなんでさっきはあんな事言ったんだ」

勇者「それは……」

ドラゴン「それは?」

勇者「……あいつもまだ小さいし夢を壊しちゃ悪いだろ」

ドラゴン「……」

勇者「……」

ドラゴン「あはははははは!!」

勇者「な、何!?」ビクッ

ドラゴン「理由があまりにも貴様らしかったから可笑しくて」

勇者「驚いて損した気分だよ」

ドラゴン「そう怒るなよ」ダキッ

勇者「抱きつくな、邪魔臭いな」

ドラゴン「鱗も無いし冬は寒いんだ」


ドラゴンは勇者をさらに強く抱きしめる。


勇者「明日も早いんだし、さっさと寝るぞ」

ドラゴン「たまには一緒のベッドで寝ようぜ」

勇者「……今日だけだからな」ゴロン

ドラゴン「さすが勇者だ」

勇者「ちょ、足を絡ませるな、冷たいから」

ドラゴン「竜は冷え症なんだ、仕方ないだろ」

勇者「今作っただろ、絶対今思いついただろ」

ドラゴン「気のせいだ、気のせい」

隣の部屋


暗殺者「仲直りしたぞ」

女勇者「良かったですね」

暗殺者「誤解が解けて良かったよ」

女勇者「そうですね」

暗殺者「それにしても一緒の布団で寝るほど仲いいのにキスまでって不思議だよな」

女勇者「勇者もドラゴンもその辺の線引きはしっかりしてるんですよ」

暗殺者「ふーん、意外としっかりしてるんだな、二人とも」

女勇者「しっかりしてなかったら一緒の部屋で寝かせてませんよ」

暗殺者「良く見てるんだな、勇者とドラゴンの事」

女勇者「最年長ですから、子供の事はしっかり把握しておいた方がいいでしょう」

暗殺者「最年長としての義務ね……本当にそれだけか?」

女勇者「……なんですか、その言い方は」

暗殺者「別に変な意味はない」

女勇者「他の理由なんて有りませんよ」

暗殺者「そうか……」

女勇者「言いたい事があるならはっきり言ってくれませんか?」

暗殺者「……お前がそれ以上の感情を抱いてるんじゃないかって思ったんだ」

女勇者「勇者の事なんて好きじゃ――――――」

暗殺者「恋愛的な感情って意味じゃなくて、家族みたいな感情って事だよ」

女勇者「それは……」

暗殺者「ドラゴンと勇者の事を兄弟みたいに思ってるだろ」

女勇者「……はい」

暗殺者「そこまでならいい、ただそれ以上の感情は持つべきじゃないって事」

女勇者「わかってます」

暗殺者「わかってるならいいんだ」

女勇者「私は勇者とドラゴンの幸せを願ってますから」

暗殺者「知ってるよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日  城


勇者「おはよう」

王「おはよう、みんな元気そうじゃな」

女勇者「はい、おかげ様で」

女大臣「昨日いただいた資料ですが、解読できました」

暗殺者「さすがだな、仕事が早い」

女大臣「ありがとうございます」

勇者「で、内容は?」

女大臣「こちらにわかりやすくまとめてあります」スッ


『魔王
 具体的に住処、生態は一切不明。
 雪の町にある光る石が何か関係している。
 ただし詳細は不明』


勇者「全然内容ねぇじゃん」

女大臣「ここに書いてあるのはこれだけです」

女大臣「それにこの資料は七年も前の物ですよ」

勇者「あ、そうなんだ」

女大臣「今度はきちんと確認して持ってきて下さい」

暗殺者「そんなん確認してる暇は無かったんだ」

女勇者「過ぎた事を行っても仕方ありません」

女大臣「雪の町に行くんですか?」

勇者「まあ、何か情報があるなら行った方がいいだろ」

ドラゴン「寒い所かよ……」

勇者「我慢しろ」

女大臣「ここから少し遠いので船の準備をしておきますね」

暗殺者「いつも悪いな」

女大臣「いえいえ」

金髪「勇者さん、わかったっす!!」ガタン!!

勇者「金髪!?」

王「ど、どうやって入って来たのじゃ!!」

王「兵士を呼べ!!」

勇者「待って、俺の知り合いだから!!」

金髪「妹さんに聞いたら、城に行ったって言ってたんで……」ハァハァ

ドラゴン「誰だ?」

勇者「金髪だ」

金髪「あんたが勇者さんの婚約者っすか?」

ドラゴン「ああ」

金髪「……本当だったんすね、おめでとうございます」ウルウル

女勇者「何なんですか、この人は?」

勇者「気にしなくていいから」

勇者「で、何がわかったんだ?」

金髪「虹色のバラのリーダーっす」

金髪「なんでも殺し屋って奴で、凄い奴らしいんす」

暗殺者「殺し屋?」

勇者「暗殺者、知ってるのか?」

暗殺者「ああ、裏社会じゃ有名な奴だ」

勇者「居場所は何処だ?」

金髪「すいません、そこまではまだ……」

勇者「一日でそこまで調べれば上出来だ、ありがとな」

金髪「あ、ありがとうございます!!」///

女勇者「だから何なんですか!!」

勇者「聞かない方がいいと思うぞ」

今日はここまでです。

勇者とドラゴンのイチャイチャと女勇者と暗殺者の会話はもっと長くてもいいかと思ったんですが、テンポの為短くしました。(3分の1くらいにしました)

勇者「他にはわかった事はないか?」

金髪「後一つあるっす」

勇者「なんだ?」

金髪「あいつ等の目的の一つに勇者さんへの復讐があるんすよ」

勇者「俺への?」

女勇者「あなたは何処でも恨みをかいますね」

勇者「別にかいたい訳じゃねぇから」

暗殺者「……金髪とか言ったか?」

金髪「はい、そうっす」

暗殺者「ちょっと手伝ってくれるか?」

金髪「い、いいっすよ?」

暗殺者「勇者達は一回家に帰った方がいい」

ドラゴン「なんでだ?」

暗殺者「殺し屋は手段を選ばない事で有名だ、もし勇者への復讐が目的なら妹が危ないかもしれん」

王「それは本当か!?」

暗殺者「ここで嘘ついて何の得になる」

王「ゆ、勇者、早く帰れ!!」

勇者「わかってる」タタタッ

ドラゴン「オレも行く」タタタッ

女勇者「私も行きます」タタタッ

王「へ、兵隊を出した方が―――――」

女大臣「下手に動けばこちらの動きが相手にバレてしまいます」

暗殺者「ああ、その通りだ、今回は動かないでくれ」

女大臣「わかっています」

金髪「ど、どうするんすか、えーと……」

暗殺者「暗殺者だ」

金髪「暗殺者さん!!」

暗殺者「今、考えてる最中だ」

暗殺者「使える奴はお前以外にいるか?」

金髪「えーと、黒スライムがいるっす」

暗殺者「三人か……」

暗殺者「一か所でもアジトが分かれば……」

金髪「小さいアジトなら一か所知ってるっすよ!!」

暗殺者「……とにかくそこに行ってみるか」

金髪「了解っす!!」

殺者「案内してくれ」

金髪「は、はい、こっちっす!!」ガチャ

暗殺者「ああ」タタタッ

金髪「ど、どうするんすか?」タタタッ

暗殺者「調べるだけだ」タタタッ

金髪「妹さんは無事っすかね?」タタタッ

暗殺者「わからん、もし狙われていたならもう遅いかもしれん」タタタッ

金髪「じゃ、じゃあ早くした方がいいんじゃないっすか!?」タタタッ

暗殺者「向こうは勇者達に任せる、俺達は殺し屋のアジトを見つけるのが仕事だ」タタタッ

金髪「勇者さん達間に合ってるといいっすけど」タタタッ

暗殺者「今はこっちに集中しろ」タタタッ

金髪「わ、わかったっす」タタタッ

金髪「ここの家がアジトっす!!」

暗殺者「……中に人は居るか?」

金髪「わ、わかんないっす」


金髪はドアの僅かな隙間から家の中を覗く。

金髪「いない……みたいっすね」

暗殺者「ちょっと退いてくれ」ガチャガチャ

金髪「な、何やってんすか?」

暗殺者「開いたぞ」ガチャ

金髪「ちょ、勝手に開けちゃダメっすよ!!」

暗殺者「汚い部屋だな」スタスタ

金髪「どうなっても知らないっすよ……」ガサゴソ

暗殺者「何かあっても俺が何とかする」

金髪「お、男らしいっすね」

暗殺者「殺し屋につながるものは無さそうだな」ガサゴソ

金髪「そうっすね」

不良A「さっさと来い――――あれ、鍵開いてる?」ガチャ

金髪「や、ヤバ――――」

暗殺者「こっちだ」


暗殺者と金髪は押し入れに素早く隠れる。


不良B「掛け忘れただけだろ」スタスタ

不良A「だよな」スタスタ

不良B「それにしてもあの勇者って野郎が帰ってきてるなんてな」

不良A「ああ言うのをバカって言うんだよな」

金髪「勇者さんは――――――」

暗殺者「落ち着け」

不良A「そんな簡単に出てくるのか?」

不良B「妹がさらわれたって分かれば、嫌でも出てくるだろ」

金髪「一般人に手を出すなんて最低っす……」

暗殺者「金髪、あいつ等から殺し屋の居場所を吐かせるぞ」

金髪「……わかったっす」

暗殺者「行くぞ……一、二の……三!!」


二人は同時に飛び出し、不良に殴りかかる。


不良A「ぐ……なんだテメェ等!!」

暗殺者「黙れ」


暗殺者は不良Aの肩にナイフを突き刺す。


不良A「あぐ……」

暗殺者「静かにしてれば何もしない」

不良B「大丈夫か?」

金髪「他人の心配してる暇があるんすか?」

不良B「テメェ……」

暗殺者「単刀直入に聞く、殺し屋の居場所は何処だ?」

不良A「し、知るか……」

暗殺者「次は何処を刺してほしい?」

不良A「……言わない」

金髪「さっさと言った方が楽っすよ」

不良A「テメェ等に言う気は無い!!」

暗殺者「そうか、ならいい」

不良A「え?」

暗殺者「こっちの奴に聞く」

不良B「な……!?」

暗殺者「そいつはお前が見張っとけ」

金髪「は、はいっす」

暗殺者「隣の部屋で聞いてやるよ」ガチャ

不良B「は、放せ」ズルズル

暗殺者「安心しろ、死なない程度にしといてやるよ」ガチャン

金髪「……」

不良A「……」

金髪「話す気にはならないっすか?」

不良A「あ、当たり前だ!!」

金髪「……」

不良A「……」ガタガタ

金髪「しゃべったらどうっすか?」

不良A「話す訳ないだろ!!」

暗殺者「ちっ、ダメだ」ガチャ

金髪「どうしたんすか?」

暗殺者「ちょっとな……」


暗殺者は血まみれのナイフを金髪に見せる。


金髪「わ、わかったっす」

不良A「……待て、待ってくれ!!」

金髪「どうしたんすか?」

不良A「話す、話すから」

暗殺者「さっさと話せ」

不良A「殺し屋は北の教会だ」

金髪「教会っすか?」

不良A「ああ、もう使われてない教会だ、そこに勇者の妹もいる」

暗殺者「本当だな?」

不良A「ああ、本当だ」

暗殺者「ありがとよ」


暗殺者は不良Aの腹を殴り気絶させる。


金髪「さっきの奴殺しちゃったんすか?」

暗殺者「まさか、気絶させてあるだけだ」

金髪「情報を引き出すのがうまいっすね」

暗殺者「死の恐怖ってのを植え付けてやればあっという間だ」

暗殺者「これくらいは覚えておいた方がいい、将来役に立つぞ」

金髪「了解っす」

今日はここまでです。

今回のシリアスはちょっと長くなるかも

~~~~~~~~~~~~~~


勇者「無事でいてくれよ……」タタタッ

女勇者「急ぎましょう」タタタッ

ドラゴン「間に合ってくれよ」タタタッ

勇者「……」タタタッ

ドラゴン「なんだあれ?」タタタッ

勇者「チンピラか……」

チンピラ「久々だな、勇者」

勇者「誰だよお前」

チンピラ「虹色のバラだよ」

女勇者「何の用ですか」

チンピラ「昔の復讐ってわけだ」ニヤニヤ

チンピラ達「殺しはしないから安心しな」ゾロゾロ

勇者「……」

勇者「女勇者、ドラゴン、先に行っててくれ」

女勇者「わかりました」タタタッ

ドラゴン「すぐ来いよ」タタタッ

チンピラ「おい、待て!!」

勇者「黙ってろ、お前等の目的は俺だろ」

チンピラ「ほう、いい度胸してんじゃねーか」


勇者は近くに落ちていたヒノキの棒を拾い上げる。


勇者「今の俺は非常にイライラしてんだ、手加減は出来ねぇぞ」

チンピラ「はっ、この人数差で勝てると思ってやがるのか?」

勇者「ああ」

チンピラ達「バカじゃねーの?」ゲラゲラ

勇者「何がおかしいんだ?」

チンピラ「はははは、最高だよお前!!」

勇者「汚い笑い声あげてんじゃねぇよ、ゴミ」

チンピラ「はははは……さっさとやっちまえ!!」

チンピラ達は一斉に勇者に向かって走り出した。
どのチンピラもヒノキの棒や鉄パイプを握っている。

六人。
勇者は相手の人数を確認すると、ヒノキの棒を構えた。
呼吸を調え、攻撃のタイミングを探る。

一人のチンピラが勇者の頭目掛けてヒノキの棒を振り下ろす。

だが遅い。
遅すぎる。
いや、正確には勇者が速過ぎるのだ。

勇者はいとも簡単に相手の攻撃を回避すると
相手のヒノキの棒が振り下ろされる前に反撃を開始する。

勇者は力の入っていない、滑るように滑らかな動作でヒノキの棒を振った。

振るのに力は必要無い。
重要なのは全身を使って滑らかに振る事だ
体から肩、肘、手首を滑らせるように使う事によって腕だけの力よりよっぽど少ない隙で大きな力を生み出せる。
それが刀を実際に使ってみて感じたことだった。

その証拠に顔面にヒノキの棒が直撃したチンピラは、まるで竹トンボのように回転しながら四メートルほど吹き飛んだ。

勇者はすぐにヒノキの棒を構え直し、相手を睨みつける。

それを見て怖気づいたのか、走ってきていたチンピラ達が一斉に止まった。
今までの勢いは何処に行ったのか、僅かに後ろに下がる者もいる。

拍子抜けだ。
いや、チンピラにそんな事を求める事こそ間違っていたのかもしれない。

まるで風船から空気が抜けるみたいに彼の体からやる気が抜けていく。


「やる気がねぇならとっとと帰れ、俺はさっさと帰りたいんだ」


勇者はつまらなそうにヒノキの棒をクルクルと回す。

さっきまでの獣の目は今は無い。
今まで溢れていたやる気はいつの間にか気だるさへと変わっていた。

だが相手は道を開ける気配も無く、ただ押し黙ったまま勇者を睨んでいた。

勇者は深いため息ををつくと、ヒノキの棒を構え直す。
弱い者いじめる趣味はないが道を開ける気がない以上、目の前のチンピラ共を倒すしか道は無さそうだ。

勇者は姿勢を低くして、地面を軽く蹴り、チンピラ達に向かって跳んだ。

だがそれはチンピラ達にとっては恐ろしく速く、誰一人として反応できない。

まずは目の前にいるチンピラの右足目掛け、ヒノキの棒を横に薙ぐ。

ゴキッ、という誰が聞いても骨が折れた音が響いた。
それと同時に鈍い呻き声も聞こえる。

勇者はさらに左肩にヒノキの棒を振り下ろす。

もう一度同じ音が響いた。

チンピラは痛みのせいなのか気を失い、その場に倒れ込む。

だが勇者は止まらない。

彼は崩れ落ちるチンピラを踏み台し、少し後ろに立っているチンピラ目掛けて跳ぶ。

相手の体が硬直しているのが、ここからでも分かった。
蛇に睨まれた蛙というのはこういう状態の事を言うのだろう。

全身を使い、相手の脳天にヒノキの棒を振り下ろす。

鈍い音と共にチンピラが地面に倒れた。


「ここまでか」

周りを見渡しながらぼんやりと呟く。

いつの間にか残りのチンピラ達はそれこそ霧のように消えていた。

だが追う気力も無いためヒノキの棒を捨てる。


「なんなんだ?」


勇者の中に一つの疑問が渦巻いていた。
本当に些細な違和感。

チンピラにしては統率された戦い方。
そして引き際。
なんとなく嫌な予感がした。

勇者「何なんだ、この違和感?」

勇者「……」

勇者「とにかくさっさと帰らねぇと」タタタッ

勇者「……」タタタッ

勇者「女勇者、ドラゴン!!」

女勇者「勇者……すいません」

ドラゴン「間に合わなかった……」

勇者「気にすんな、仕方ねぇよ」

女勇者「勇者、こんなのが置いてありました」スッ

勇者「……」


『勇者へ
 妹を返してほしかったら明日の朝、南の空き地に来い
 必ず一人で来る事、誰かと一緒に来たら妹の命は無いものと思え』


勇者「典型的な誘拐文だな……」

ドラゴン「勇者?」

勇者「……まだ丸一日ある、暗殺者が帰ってくるまで待機だ」

女勇者「頭が冷えてますね、少しは変わったんですか?」

勇者「ああ、俺だって成長するさ」

勇者「それに今回だって無闇に走り回ってどうにかなる訳じゃねぇだろ」

女勇者「その通りです」

女勇者「家の中で争った形跡は無さそうです」

勇者「って事は乱暴な事されて連れて行かれた訳じゃねぇって事か」

ドラゴン「そうだとしても安心できんぞ、相手はチンピラだ」

勇者「今はとにかく暗殺者を待つしかないだろ」

女勇者「そうですね」

金髪「勇者さん!!」タタタッ

暗殺者「妹と殺し屋の場所がわかった」タタタッ

勇者「何処だ?」

暗殺者「北の教会だ」

勇者「ありがとう」

女勇者「今すぐ行くんですか?」

勇者「ああ、そのつもりだ」

暗殺者「勇者」

勇者「ん?」

暗殺者「……俺に行かせてくれないか?」

勇者「……殺し屋と戦いたいのか?」

暗殺者「ああ」

勇者「理由は?」

暗殺者「お前よりも殺し屋の事を知ってるし、あいつに聞きたい事がある」

勇者「……じゃあ任せるよ」

暗殺者「悪いな」

金髪「俺が責任をもって妹さんを助けるっす!!」

勇者「ああ、頼むよ」

金髪「任せておくっす」

女勇者「私達は何か出来る事は無いですか?」

暗殺者「今の所は別にいい、何かあったら金髪にれんらくしてもらうようにする」

女勇者「分かりました」

暗殺者「じゃあ行くぞ」タタタッ

金髪「了解っす」タタタッ

ドラゴン「珍しいな、お前戦闘好きだろ?」

勇者「ちょっと気になる事があってね」

勇者「少し出掛けてくる」スタスタ

女勇者「わかりました」

今日はここまで。

地の文が不安定ですいません。

勇者「……」スタスタ

勇者「黒スライム、いるんだろ?」

黒スライム「なんだ、気付いてやがったのか」ピョンッ

勇者「気配がしたんだ」

黒スライム「ほう、なかなか出来る奴だな、お前は」

勇者「今はそんな話じゃねぇよ」

黒スライム「……お前の言いたい事はわかってる」

黒スライム「あいつ等と戦って違和感があっただろ」

勇者「……凄いな」

黒スライム「最初から凄いって言っただろ」

勇者「チンピラにしては統率がとれてたな」

黒スライム「ああ、付け焼刃とはいえあれは確実に兵士の戦術だな」

勇者「お前も分かってたのか」

黒スライム「あんなもの誰が見てもわかる」

勇者「……」

黒スライム「まあ新米兵士より下手くそな戦い方だったがな」

勇者「どうなってんだ?」

黒スライム「今の所は何も分からん」

勇者「調べてくれるか?」

黒スライム「当たり前だ、それが俺の仕事だからな」

黒スライム「……気をつけろよ」

勇者「何がだ?」

黒スライム「これはチンピラの復讐なんてもんじゃないぞ」

勇者「分かってる」

黒スライム「……じゃあまた後で、報告は後からする」ピョンッ

勇者「ああ」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~


北の教会


暗殺者「……」ガチャ

殺し屋「遅かったじゃ―――――あれ、誰?」


そこには20代後半の茶髪の男が座っていた。


暗殺者「お前の部下が教えてくれたんだ」

金髪「妹さんを返すっす!!」

殺し屋「妹、誰それ?」

金髪「トボけても無駄っす、あんたが誘拐したのは知ってるっすよ!!」

殺し屋「えーと……ああ、あの子ね、はいはいはい」

殺し屋「……誰だっけ?」

金髪「勇者さんの妹っすよ!!」

殺し屋「ああ、そう言ってくれないとわかんないよ」

金髪「いいからさっさと妹さんを返すっす!!」

殺し屋「あの子ならここにはいないよ」

暗殺者「じゃあ何処だ?」

殺し屋「さあ、悪いけどそう言う事は別の奴に任せてるんだ」

金髪「嘘ついてるんじゃないっすか?」

殺し屋「嘘だと思うなら調べてみればいいさ、俺はここにいるからさ」

金髪「……」

暗殺者「金髪、妹の居場所を探しに行ってくれ」

金髪「りょ、了解っす!!」タタタッ

殺し屋「ありゃりゃ、帰っちゃうの?」

暗殺者「安心しろ、俺は残る」

殺し屋「ありがとね、ちょうど退屈してたんだ」

暗殺者「それにしても、裏社会でカリスマとまで呼ばれたテメェがチンピラのリーダーなんかやってるなんてな……」

殺し屋「いんや、それはちょっと違うぜ」

殺し屋「俺は裏社会のカリスマでもないしチンピラ共のボスでもない」

暗殺者「何言ってんだ?」

殺し屋「俺は今も昔も賞金稼ぎさ」

殺し屋「金が貰えるんなら町のゴミ拾いだってやってやるよ」

殺し屋「貰える金が高い仕事を選んでたら、自然と裏社会の仕事が多くなっちゃっただけだよ」

殺し屋「裏社会のカリスマなんてのはあくまであだ名だよ、うんこ君と同じだ」

暗殺者「うんこ君?」

殺し屋「あ、俺の昔のあだ名、茶髪だけでうんこ君って今考えるとひどいあだ名だよね」

暗殺者「じゃあこれも賞金稼ぎの一環って訳か?」

殺し屋「ああ、いい給料貰ってるんだ、あ、今羨ましいと思っただろ」

暗殺者「……」

殺し屋「思い出した、お前暗殺者だろ」

暗殺者「……ああ、そうだ」

殺し屋「お前の事は知ってるよ、体を改造したんだってね」

暗殺者「詳しいんだな」

殺し屋「当り前さ、俺は人間が好きだからね」

殺し屋「あ、もちろん生きてる人間がって事だからね」

暗殺者「分かってる」

殺し屋「よかったよかった、変な誤解されちゃたまらないもん」

暗殺者「……」

殺し屋「ん?」

暗殺者「予想と少し違ったんでな」

殺し屋「……よく言われるよ、特に初対面の人にはね」

殺し屋「変なあだ名がついちゃうと先入観が生まれちゃうから良くないと思うんだ」

殺し屋「うんこ君ってあだ名だけで不潔と思われちゃうだろ?」

暗殺者「……そうだな」

殺し屋「おっと、無駄話が長くなっちゃったかな」


殺し屋は鉈を構える。


殺し屋「お前は俺を殺しに来たんだろ?」

暗殺者「ああ」


暗殺者もまたナイフを構える。


殺し屋「言っとくけど加減とかはしないよ、相手に失礼だからさ」

暗殺者「……」

今日はここまで。

敵キャラが全体的にキャラが濃い気がする……

亀レスですまないんだが、強者の持ってた黒い剣はどこ言ったんだ?

とりあえず乙乙

殺し屋は壁を蹴って、暗殺者に向かって跳んだ。
一見簡単そうにその動作を行っているが、それは体のばねを最大限に使った高度な動作だ。

暗殺者は僅かに後ろに後退りし、ナイフを構えた。

武器の威力的にはあちらの方が上だが、他も面では圧倒的にナイフが有利だ。
第一鉈は戦闘用の武器ですら無い。

相手の武器の間合いを計算し、避ける準備をする。

彼女は体を反らせ、横に振られた鉈をすれすれで回避した。
彼女の首のすぐ横を鉈が通過する。

さらに殺し屋の背中目掛けてナイフを数本投げる。


「あはは、お前見かけによらず凄い奴だったんだ」


殺し屋は彼女から数メートル後ろに着地し、こちらを振り返った。
右手には鉈を持ち、左手には数本のナイフを持っている。


「あ、これ返そっか?」

殺し屋はナイフを彼女目掛けて投げる。
だがそれは殺意を持ったものではなく、本当にナイフを返すために投げたのだった。

その行為は彼女にとって侮辱に等しいものだった。
完全になめられている。
そう感じざるを得ない。


「気にしなくていいよ、えーとなんだっけ、名乗るほどの者じゃあございませんから……あれ、違った?」


彼は楽しそうにケタケタ笑いながら鉈を構え直す。

軽い感じで一歩跳び、暗殺者の前まで移動する。
軽やかで、素早くて、無駄のない動き。

その動作だけで相手の強さが嫌というほど分かる。

殺し屋は鉈を大きく振り上げ、暗殺者目掛け振り下ろす。
その顔は無邪気な子供のようにも、残酷な殺人鬼のようにも見える。

殺し屋の鉈と暗殺者のナイフが激突した。

暗殺者は僅かにナイフを傾け、力を受け流す。

真正面からぶつかり合えばナイフは鉈には勝てない。
だが逆に言えば真正面から戦わなければ勝てるという事だ。

少しずつだがナイフを持つ右手への負担が減っていく。

後はこのまま力攻撃を受け流しきり反撃をするだけだ。
彼女はそう考え、すでに頭の中でどう反撃するかを思考していた。

だがしかし。


「武器ってのは鉈だけじゃない、全身の事を言うんだよ」


そんな軽い声と共に重い蹴りが彼女の鳩尾に直撃する。

殺し屋のつま先が彼女の鳩尾にめり込む。

意識の飛びそうな激痛と、吐き気が彼女を襲う。
そして気付いた時には石ころの様に数十メートル蹴り飛ばされていた。

必死に痛みをこらえ立ち上がる。
呼吸は乱れ、冬の風の様にヒューヒューと音をたてていた。
目の前はくらみ、足元もおぼつかない。

だが彼女はナイフを構え、姿勢を低くし、攻撃態勢をとる。

その様子を殺し屋は楽しそうに眺めていた。
その目は何か愛おしいものを見ているようだ。

「やっぱり人ってのは素敵だ、お前を見てるとそう思うよ」


そんな声を聞きながら暗殺者は殺した目掛けて跳んだ。
一直線に、彼の急所目掛けてただ真っすぐに突き進む。

ガキィン、という金属音が教会全体を包む。

殺し屋の鉈は彼女のナイフを防いでいた。

滑らかな動作で彼女のナイフを弾くと、素早く反撃に転じる。
その一連の動きは実にスムーズで隙が無かった。

殺し屋の鉈が振り下ろされる。

もう一度金属音が鳴り響いた。

暗殺者のナイフは本当にギリギリでナイフを受け止めていた。
あとコンマ一秒遅ければ鉈が彼女の体を切り裂いていただろう。

無音。
静寂。

その瞬間、二人は完全に停止していた。

お互いにどう動こうか、相手がどう動くかを探っているのだ。

暗殺者は弾かれるように後ろに跳んだ。

殺し屋も同じように後ろに跳ぶ。

お互いの距離は十メートルほど、互いに十分に射程圏内だ。


「うん、もういいや」


突然殺し屋はそんな事を言った。
冗談でもおふざけでもなくそう言っているのだ。

暗殺者は無言のまま教会の椅子に座りだした男を見ていた。
蔑む訳でも、侮蔑する訳でもない、ただただ見る。


「何言ってんだ?」

「そのまんまの意味、俺もう飽きちゃっただよね」


殺し屋は椅子に座ったまま、すんなりと言い放った。
全身の力は抜け、今襲いかかれば容易く殺せてしまいそうだ。

暗殺者は無言のまま殺し屋に襲いかかった。

刹那の内に相手の懐に飛び入り、ナイフで心臓を貫く。

だがしかし、今回もまた鉈で防がれていた。

だが彼女の攻撃は終わっていない。
素早く左手で椅子を掴むと、殺し屋の脳天目掛けて椅子を振り下ろす。

木材が割れる音と共に血と椅子の破片が飛び散る。


「な……」


暗殺者はそれ以上声が出なかった。

殺し屋は左手で椅子を砕いていた。
椅子の破片が手に刺さり、ほんの少しだけ血が出ている。

この男は一瞬の攻撃を一瞬で判断し、一瞬で防御したのだ。


「ダメダメ、椅子ってのは座るためのものであって武器じゃない」


殺し屋は歌うように言った。

次の瞬間、殺し屋の前蹴りが彼女の腹に直撃していた。

肺の酸素が吐き出される感覚と共に後ろに吹き飛ぶ。

彼女は痛みに耐えながらも態勢を整え、地面に着地する。

すでに意識は朦朧としている。


「無益な戦いって言うのは俺の趣味じゃないんだ、骨折り損のくたびれ儲けってやつ?」

「お前はこれを無益な戦いだと思ってるのか?」

「ああ、だって俺を倒したってお前等が探してるなんとかって子が返ってくる訳じゃないだろ」


暗殺者は呆れた様な顔をしてナイフを構えた。

それにつられて殺し屋も椅子から立ち上がる。

お互いの視線がぶつかる。

暗殺者は姿勢を低くし、殺し屋向かって跳―――――――。

その瞬間、暗殺者の右腕は吹き飛んでいた。
宙をクルクルと舞い、ゆっくりと地上に落ちて行く。

暗殺者が振りかえるとそこには殺し屋がいた。
返り血で顔を赤く染めた殺し屋が。


「終わりだよ。あ、まだやりたいならやってあげてもいいけど」


そう言うと殺し屋は鉈をしまった。

殺し屋「久々に楽しめたよ、ありがとね」

暗殺者「テメェ……」

殺し屋「あ、手斬っちゃったけど良かった?」

暗殺者「なんで殺さない……」

殺し屋「え、だって殺す気ないし、あれだよ、えーと、なんだ?」

暗殺者「どうでもいい」

殺し屋「あ、思い出した、男ってのは無益な戦いはしないんだ」キリッ

暗殺者「……」

殺し屋「あれ、かっこいいと思ったんだけどな……失敗した?」

殺し屋「……とにかく殺す気は無い」

殺し屋「あ、あと本当に腕大丈夫?」

暗殺者「くっつけとけば治る」

殺し屋「良かった良かった、じゃあまた今度」ピョン

暗殺者「クソが……」


暗殺者はその場に崩れ落ちた。

今日はここまでです。

>>784

黒い剣は強者と一緒に埋葬されました。

>>444 の強者の剣というのは黒い剣の事です。 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


町 東側


不良「あぐ……」ドサッ

勇者「妹の誘拐を提案したのは誰だ?」

不良「知らない、俺はそれには関わって無い」

勇者「関わって無い?」

不良「今の虹色のバラは複数の派閥に別れてるんだ、俺はあそこの派閥じゃない!!」

勇者「知らないんだな?」

不良「知らない、知ってる訳ない!!」

勇者「……ったく、情報が集まらねぇな」

不良「くそっ、なんで帰って来てんだよ」

勇者「用事だ、用事」

勇者「殺し屋ってのは何処の派閥なんだ?」

不良「あいつはリーダーって名目になってるけど違う」

勇者「じゃあ実質のリーダーは誰だ?」

不良「魔法剣士って奴だ、虹色のバラの中じゃあ一番部隊も持ってる」

勇者「……魔法剣士ね」

不良「ちょうどお前が出て行ったくらいに虹色のバラに入ったんだ」

勇者「そいつの事はわかるか?」

不良「知らない、俺はあいつが嫌いだしな」

勇者「なんで?」

不良「あいつは金を使って人を使うんだ」

勇者「金?」

不良「ああ、あいつの部下も大半は金で雇われたり金に釣られた奴等だ」

勇者「ふーん」

勇者「まあいいや、情報ありがとう」

不良「さっさと帰れ」

勇者「負けといて偉そうなこと言ってんじゃねぇよ」

不良「帰ってくれ……」

勇者「……もう俺はいいかな」

不良「え?」

勇者「さっさと出て来たらどうだ?」

兵士達「動くな!!」タタタッ


兵士達は不良の腕を掴む。


不良「何なんだよ、放せよ!!」

弓兵「麻薬の密売って言えば分かるよな」

不良「……」

弓兵「連れて行け」

兵士「はっ」スタスタ

弓兵「帰ってきてたのか」

勇者「なんでここに来てんだ?」

弓兵「ちょっと会議があってな、それと命日だからだ」

勇者「会議ね……」

弓兵「坊主こそこんな所でどうしたんだ?」

勇者「人探しだよ、ちょっといろいろあってね」

弓兵「……困っているのなら手伝ってやろうか?」

勇者「別にいい、ハンターに手伝ってもらうような事じゃない」

弓兵「俺個人として協力するんだ、ハンターは関係ないぞ」

勇者「……」

勇者「いいのか?」

弓兵「ああ、お前達にはいろいろと借りがあるからな」

勇者「……」

弓兵「……」

勇者「俺の妹が町のチンピラ共に誘拐された」

弓兵「何処のグループだ?」

勇者「虹色のバラだ」

弓兵「……それでここにいたのか」

勇者「ああ、無駄足だったけどな」

弓兵「他の奴らはどうした」

勇者「暗殺者……って言って分かるか?」

弓兵「ちゃんと女大臣から聞いてる」

勇者「暗殺者は殺し屋の所に妹を助けに行った」

勇者「ドラゴンと女勇者は俺の家で待機してる」

弓兵「殺し屋?」

勇者「知ってるのか?」

弓兵「ああ、有名な男だからな」

勇者「……一旦戻るかな」スタスタ

弓兵「俺も行こう」スタスタ

勇者「本当にいいのか?」スタスタ

弓兵「さっきも言っただろ、気にすんな」スタスタ

勇者「……殺し屋ってのは強いのか?」スタスタ

弓兵「ああ、かなり強いはずだ」スタスタ

勇者「……」スタスタ

弓兵「だがあいつは目的のためなら手段は選ばんが、目的じゃないのなら何もしない」スタスタ

勇者「ずいぶんと極端な奴だな……」スタスタ

金髪「勇者さん!!」タタタッ

勇者「金髪?」

金髪「すいません、妹さん助けられなかったっす……」

勇者「え!?」

金髪「俺達が行った時にはもう別の場所に連れてかれてて……」

勇者「気にすんな、お前のせいじゃない」

弓兵「不味い事になったな……」

金髪「だ、誰っすか?」

勇者「弓兵だ」

弓兵「よろしく」

金髪「よ、よろしくっす」

弓兵「で、場所はわかるのか?」

金髪「すいません……」

勇者「……見当はついてる」

金髪「ほ、本当っすか!?」

勇者「詳しい場所は知らねぇけどな」

弓兵「犯人はわかってるのか?」

勇者「魔法剣士らしい、確証はないけど……」

弓兵「魔法剣士か……」

勇者「知ってるのか?」

弓兵「ああ、今俺が追っている男だ」

金髪「何者なんすか?」

弓兵「……お前達は知らなくていい」

勇者「なんだよそれ」

弓兵「知る必要は無い」

勇者「あ、そう」

弓兵「……」

勇者「……」

金髪「……と、とにかく一回帰った――――――」

殺し屋「やっと見つかった、この町はやっぱり広いね」

勇者「誰だ?」

殺し屋「どうも初めまして、殺し屋と申します」ペコリ

勇者「……」

殺し屋「あれ、知ってると思ってたけど知らない?」

殺し屋「は、恥ずかしい……」///

金髪「なんでここにいるんすか!!」

殺し屋「お前はえーと……まあいいか」

金髪「ふざけんなっす!!」

勇者「俺に会いに来たのか?」

殺し屋「ああ、お前に会うために遥々北の教会からやって来たんだ」

金髪「俺の事無視すんなっす!!」

殺し屋「顔は覚えてるんだけど名前がね……年かな……」

勇者「暗殺者はどうした」

殺し屋「ああ、ちゃんと生きてるよ、片腕斬っちゃったけどね」

金髪「お前……」

殺し屋「そう怒るなって、あれは事故だよ、事故」

勇者「で、何のために俺に会いに?」


勇者はそう言い刀を抜く。


殺し屋「あわわ、落ち着いて落ち着いて」アタフタ

勇者「は?」

殺し屋「俺は戦いに来た訳じゃない、お前と話に来たんだ」

金髪「う、嘘かもしれないっすよ!!」

殺し屋「ひどいなー、俺なんか悪い事した?」

勇者「分かった、二人で話した方がいいか?」

殺し屋「俺はどっちでもいいよ、ただ茶々が入るのは嫌かな」

勇者「弓兵、金髪、悪いけど先帰っててくれ」

金髪「だ、大丈夫っすか?」

弓兵「坊主なら心配いらん、行くぞ」スタスタ

金髪「き、気を付けてくださいね」スタスタ

今日はここまでです。

ここは登場キャラが多くなっちゃってますが、大丈夫かな……

勇者「……で、何の話?」

殺し屋「あ、それは嘘、本当は話す事なんて無くてただ会いに来ただけ」

勇者「あ、そう」

殺し屋「……あれ、怒らないの?」

勇者「怒ったって仕方ないだろ」

殺し屋「変わってるね、お前」

勇者「あんたに言われたくねぇよ」

殺し屋「俺のは個性的なだけ、お前のとはちょっと違うよ」

勇者「個性と変は紙一重だと思うけど?」

殺し屋「じゃあ俺もお前も個性的って事でいいや」

殺し屋「……じゃあそろそろ行くね」スタスタ

勇者「お前にこの仕事を頼んだのは魔法剣士か?」

殺し屋「……誰から聞いたの?」

勇者「俺の予想だ」

殺し屋「凄い予想だ、大正解」

勇者「理由は?」

殺し屋「金さえもらえれば俺は何でもする」

勇者「魔法剣士の居場所は?」

殺し屋「それは言えない、それだと契約違反になる」

勇者「律儀だな」

殺し屋「契約違反したら報酬がダメになるからさ、あれだよ、骨折り損のくたびれ儲けになるだろ」

殺し屋「……あれ、前にも言った気がするけど気のせいかな?」

勇者「そんなもん知るか」

殺し屋「まあいいや、こんだけでも話してみて面白かったよ」

勇者「そりゃどうも」

勇者「……俺を殺さなくていいのか?」

殺し屋「バレたんじゃなくてお前の予想なんだから別に殺す必要無いだろ」

勇者「いいのか?」

殺し屋「仕事に私情持ち込むの嫌いだけど、俺あいつ嫌いなんだよ」

殺し屋「それにお前と魔法剣士が戦ってる所見てみたいんだ、怖いもの見たさってやつかな」

勇者「ちょっと間違ってるけど……まあいいか」

殺し屋「あ、やっぱり間違ってたんだ、ごめんごめん」

勇者「まあ、魔法剣士は自分で探すから別にいい」

殺し屋「俺は傍観者として楽しませてもらうよ」

勇者「勝手にしろ」

殺し屋「あはは、やっぱりお前は変……じゃなくて個性的だ」

勇者「……」

殺し屋「さてと、じゃあ俺は行こうかな」

勇者「俺も行かせてもらう」

殺し屋「期待してるよ、久々に面白そうなものが見れそうだし」

勇者「戦う気は無いのか?」

殺し屋「ほとんど無いね、まあその時の気分で決めるけど」

勇者「……」

殺し屋「行かなくていいの?」

勇者「もう行く」スタスタ

殺し屋「じゃあまた今度」ピョンッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者の家


勇者「ただいま」ガチャ

女勇者「おかえりなさい」

勇者「暗殺者は?」

暗殺者「……すまん」スタスタ

勇者「治るまでどのくらいかかるんだ?」

暗殺者「二週間くらいだな」

勇者「じゃあ今回は待機だな」

暗殺者「俺が弱いばっかりに……」

ドラゴン「貴様のせいじゃない」

女勇者「自分を責めない方がいいですよ」

暗殺者「……」

弓兵「で、どうだったんだ?」

勇者「やっぱり魔法剣士が犯人みたいだ」

弓兵「……居場所は?」

勇者「それはまだわかってない……」

女勇者「調べれば何とかなります」

ドラゴン「虹色のバラとかいうのを片っ端から潰していけばいいだろ」

金髪「……つまり前哨戦っすね!!」

女勇者「そう言う事です」

黒スライム「なら食材屋の裏を攻撃するといいぞ」ピョンッ

ドラゴン「なんだ?」

黒スライム「俺様の名は黒スライムだ、覚えとけ」

勇者「スライムの笛で呼んだんだ」

ドラゴン「ああ、よろしく……」

黒スライム「あそこは人の出入りが激しい、多分お前等探してる情報があるはずだ」

女勇者「ありがとうございます」

黒スライム「いいって事よ」

勇者「場所も決まったか……」

弓兵「でもどうやって入る、下手にやればこっちが不利だぞ」

勇者「……」

母親「ただいま――――ってあれ、妹は?」

勇者「ちょっといろいろあってな」

勇者「借金は返したか?」

母親「それが利子の分を払えって言われたのよ!!」

母親「とりあえず帰るって言って逃げて来たわ」

勇者「後で怒鳴り込んでくるぞ」

母親「知らないわよ」

女勇者「……いくらですか?」

母親「何が?」

女勇者「借金ですよ」

母親「1000ゴールドよ」

勇者「それ俺達が返してくるよ」

母親「え、いいの?」

勇者「ああ、ちょっと用事もあるし」

女勇者「入る名目が出来ましたね」

勇者「ああ」

女勇者「私と勇者と弓兵は中の制圧、ドラゴンと金髪は外から来る増援を片付けて下さい」

弓兵・勇者・ドラゴン・金髪「了解」

女勇者「では、行きましょうか」

弓兵・金髪・ドラゴン・勇者「ああ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


貸金


女勇者「1000ゴールドです」

貸金屋「すいませんが利子がつくので2000ゴールド必要なんですよ」ニコニコ

勇者「ちょっと待ってくれ、ついさっき1000ゴールドって言ってただろ!!」

貸金屋「そう言われましても……」

女勇者「困りましたね」

貸金屋「困ったのはこちらの方ですよ、ちゃんと払っていただかないと困るんですよ」

勇者「絶対おかしいだろ!!」


勇者は貸金屋の胸ぐらを掴む。


女勇者「勇者!!」

弓兵「落ちつけ」

貸金屋「な、何すんだ!!」

貸金屋「調子こいてんじゃねーぞ!!」

勇者「お前こそ偉そうに何言ってんだ!?」

貸金屋「おい、出て来い!!」

男達「なんすか?」ゾロゾロ

貸金屋「こいつ等にいろいろ教えてやれ」

勇者「なんだお前等」

男「用心棒だ」

勇者「……」

男「さっさと払っちまえよ」

勇者「もう金がねぇんだ」

男「だったら稼いで来いよ!!」


男は勇者を殴る。


勇者「……殴ったな?」

男「だったらどうした?」ニヤニヤ


勇者は刀を抜き、男の両腕を斬り落す。


貸金屋「な……!?」

勇者「正当防衛ってやつだ」ニヤリ

女勇者「そうですね」

弓兵「……好き勝手にやってくれ、責任は俺が持つ」

勇者「逃げたい奴はさっさと逃げた方がいいぞ」ニヤリ

今日はここまでです。

明日から来週月曜日まで忙しくなるので投下が少なくなるかもしれません。

極力頑張りますが、ダメだったらすいません。

勇者と女勇者は得物を構え、背中合わせに立っていた。

周りには数えきれないくらいの男達が剣を構えて立っている。
ざっと数えても30人は超えているだろうか。

二人は何も言わず周りの男達を睨みつける。

数秒の静寂。

勇者と女勇者は同時に相手に斬りかかった。
相手が剣を持っていると言っても、それはただのチンピラ。

勇者はある男を斬り裂き、女勇者は別の男を突き殺す。
それは本当に一瞬の事だった。

一人の男が女勇者の背後から斬りかかる。

だが勇者は一瞬でその男の背後に回り込むと男を一撃で仕留める。

二人はまた背中合わせになり、周りを囲む男達を見た。
お互いの呼吸が重なり、お互いの背中の温かさが伝わる。

弓兵は二階の制圧に行ったのだろう、ここにはいなかった。

つまり二人以外は全員敵という事だ。

勇者は邪悪な笑みを浮かべた。

周りが全員敵という事は単純に敵を全滅させればいいのだ。
これほど分かりやすい作戦はない。

「行けるか?」

「当たり前です」


会話はそれだけだった。
むしろそれだけで十分だ。

勇者と女勇者の関係は友人でも、恋人でもない。
しかしそれ以上に二人は何かで通じ合っている。
ドラゴンとはまた違った意味で深い関係だ。

勇者は一歩前に出ると、前の男達目掛けて刀を横に薙ぎ払った。

その一撃で目の前が血に染まり、真っ赤な水溜りがいくつも出来あがった。
元人間の残骸達が宙を舞っている。

きっと勇者の背後にもその光景が広がっているのだろう。

勇者は振り返ることなく、目の前の敵を貫いた。
目にも止まらない、刹那の一撃。

崩れ落ちる男を横目で見ながら次の標的を探す。

とにかく前だけを見続ける。
背中は彼女に任せてあるのだから。

そこにある感情は一つ。
信頼。

お互いに剣を交えたからこそ。
一緒に旅をしたからこそ。
絶対的な信頼があるのだ。

勇者は振り向く事無く、横にいる男を縦に振り下ろす。

肩から太ももまでを一太刀で斬り裂いた。
まるで魚を捌くかのようにあっさりと真っ二つになる。

勇者の黒髪と顔が赤く染まる。
服はすでに元の色が分からない位真っ赤になっている。

窓から逃げ出す男達を一瞥し、刀を構え直した。

逃げて行く者に興味は無い。

勇者は大きく一歩前に進み、刀を振りかぶる。

背後に殺気を感じた。
敵が背後にいるのが直感的にわかる。

だが彼は決して振り返らない。

背後で呻き声と人を斬る音が聞こえた。


「ありがとな」


勇者は小さな声で呟く。
女勇者に聞こえたかどうかは分からない。
いや、聞こえなくてもいい。

勇者は振りかぶった刀を振り下ろす。
空を斬りながら刀は男の肩目掛けて真っすぐに進む。

滑らかで無駄のない動作。
背中を気にしなくていいから出来る動作だった。

血が炸裂し、床と壁をさらに赤く染まった。

勇者は穏やかに笑う。

背中を預けられる事に。
そんな仲間がいる事に安堵しながら。

















女勇者は体を大きく捻り、目の前の男を一気に叩き斬った。

四人ほどの男が赤く染まり、血を炸裂させる。

あれほどいた男達も今では十人をきっていた。

仲間に背中を預けるという事。
仲間の背中を守るという事。
それはどちらも女勇者にとって初めての経験だった。

今までの彼女には心を許せる人間なんていなかった。
勇者という肩書を持つために仲間は昔に捨てたからだ。

勇者というのは孤高で気高き者でなければならない。
彼女はそう信じて来た。

だが今は違った。
今の彼女には仲間がいた。
友人がいた。

一人の少年が彼女の信じてきた概念を、考え方を、全てを変えたのだ。

彼は私の何なんでしょうか……
そんな気持ちが浮かぶ。
答えはぼんやりとした雲の様な状態で彼女の心に存在していた。
だが雲から形になる事は無い。

女勇者は素早く地面を蹴り、勇者の背後にいた男に斬りかかる。

男が勇者を斬る前に女勇者の剣が腰のあたりから横に真っ二つにする。

男は一撃で絶命した。

勇者は一度も振り向かなかった。

多分それは彼女を信頼しているからなのだろう。
仲間を守る感覚。
それは不思議な、本当に不思議な感覚だった。


「ありがとな」


そんな時、勇者の声が聞こえた。
様々な音が混じり会う中で微かに、しかし確かに。

温かく、優しい声。
信頼と安堵の混じった声。
心の中に響く声。

女勇者の中でぼんやりとあった思いがはっきりとした形を手に入れた様な気がした。

それは思った以上に単純で、それでいて思った以上に不思議なものだった。

これが本当にそれかどうかは分からない。
でもこれはまぎれもなく答えの一つだ。

そうですか、私はこんなに簡単な気持ちに気付けなかったんですか……
彼女は僅かに苦笑する。

だが自嘲では無い、不思議な苦笑。

彼女は最後の一人を剣で貫いた。

呻き声と共に地面に倒れる男を眺める。

これで勇者と女勇者の仕事は終わりだ。


「終わったな」


勇者の声が無音の部屋に響く。
聞きなれた、優しい声。

そう、ここが今の私の居場所。
それが彼女の答えだった。

なら私は勇者の何になれるのでしょうか?
そんな事をふと考える。

答えはすぐに出た。
いや、むしろ決まっていた

口にするのも恥ずかしい答え。
勇者でもなんでもない、一人の乙女が考えた答え。
一人の戦士の乙女が出した答え。

女勇者「勇者……」

勇者「ん?」

女勇者「分かりました」

勇者「え、な、何が?」

女勇者「あなた達は私を強くしてくれました」

勇者「……」

女勇者「あなた達は私に多くの事を教えてくれた」

女勇者「……そのきっかけを作ってくれたのはあなたです」

勇者「俺?」


女勇者は勇者を抱き締める。


勇者「え、ちょ……!?」

女勇者「決めました」

女勇者「私はあなたとドラゴンの、刃になりたい」

女勇者「あなたとドラゴンを守りたいんです」

勇者「……くさい台詞だな」

女勇者「あなたのがうつったんです」

勇者「……そうかもな」

女勇者「そうですよ」ニッコリ

今日はここまでです。

なんとか女勇者のデレまで持って行けました。(次のデレはいつになるんだろう……)

明日は短いですが弓兵戦です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


弓兵は素早く階段を上りきり、周りを見渡した。
貸金屋と五人の男がこちらを睨んでいるのが見える。

弓兵は微笑し、相手の目を見る。

チンピラ六人など弓兵にとっては敵ですらない。

弓兵は矢筒から矢を取り出すと、弓につがえた。

右手で弓を引き絞り、左手で狙いを定める。
その動作は機械の様に精密で、機械の様に早かった。

弓はギリギリと音をたて、矢を放つ時を待っている。

後は右手を離すだけだ。

弓兵の弓から矢が放たれる。

ヒュンッ、という音がこだました。
矢じりを鈍く光らせながら矢は飛んでいく。

矢は一直線に男に突き刺さる。
グサリ、と文字通り男の胸を貫く。

男はひざから崩れ落ち、声も上げず息絶える。

残り五人。

弓兵は無駄な動きをほとんどせず、次の動作に移る。

彼は次の矢を矢筒から取り出した。
そしてそれを素早い動きで弓につがえ、すぐに放てる状態にする。

硬直していた男達が一斉にこちらに向かって走り出した。
どの男も目を血走らせ、鬼のような形相だ。
それこそ死の恐怖から逃げる為に必死なのだろう。

だが弓兵は表情一つ変えず、その場に立ち続ける。
彼は弓につがえていた矢を矢筒に戻し、弓も投げ捨てると、男達を見て、僅かに嘲笑した。

お前達に弓矢は必要ない、という意味だ。

男達の顔がさらに険しくなる。
一人の男が弓兵目掛け剣を振り下ろした。

ゴウッ、という力強い音を響かせながら剣が襲いかかる。

だが弓兵はいとも簡単にその攻撃をかわした。
そして、剣を振り切り隙だらけの顔に回し蹴りを撃ちこむ。

回し蹴りは相手のこめかみ辺りに直撃し、骨が折れるような音が僅かに聞こえた。
相手の体が浮くのがわかる。

だが弓兵の反撃が終わった訳ではない。

弓兵は姿勢をギリギリまで低くし、相手に急接近すると、相手の顎にアッパーカットを叩きこむ。
メキリ、と嫌な音が聞こえる。
あごの骨が折れたのだろう。

男は大きく後ろに仰け反りながら地面に倒れた。
口からは血を流し、意識はとっくに失っている。

さっきまでこちらに走ってきていた男達は立ち止り、こちらの様子をうかがっている。

妥当な判断だ。
だがしかしその程度では到底技量の差はカバーできない。


「逃げるなら逃げればいい、情報をくれるなら逃がしてやる」


弓兵は貸金屋を睨みながら言い放った。
低く、凄みのある声。
普段の温厚そうな声とは真逆の声だった。


立ち止っていた男達が窓から逃げ出していく。

我先にと窓から飛びおりる男達の姿は滑稽で無様だった。

弓兵は弓を拾うと、一人残された貸金屋に近づいていった。

弓兵「どうする?」

貸金屋「は、話せば許してくれるんだろ!?」

弓兵「だからそう言ってるだろ」

貸金屋「な、何が聞きたい!!」

弓兵「聞きたい事は一つ、魔法剣士の居場所だ」

貸金屋「そ、それは言えない……」

弓兵「……ならいいさ」

貸金屋「え!?」

弓兵「下の二人を呼んでくるかな」スタスタ

貸金屋「待て、待ってくれ!!」

弓兵「話す気になったのか?」

貸金屋「た、ただ条件がある」

弓兵「条件?」

貸金屋「あ、ああ、俺が場所を言ったって絶対に言わないでくれ!!」

弓兵「……」

弓兵「わかった」

貸金屋「……あいつは町外れの赤い屋根の家にいる」

弓兵「本当だな?」

貸金屋「ほ……本当だ」

貸金屋「これで本当に逃がしてくれるのか?」

弓兵「……約束は守るさ」

貸金屋「……」タタタッ

弓兵「……」スタスタ

勇者「終わったのか?」

弓兵「ああ……また派手に殺したな」

勇者「正当防衛って言えば大丈夫だろ」

弓兵「ここまで来ると怪しいかもな」

女勇者「相手が斬りかかって来たんですから仕方のない事です」

弓兵「まあいい、俺が何とかしとく」

女勇者「ありがとうございます」

勇者「で、場所は?」

弓兵「町外れの赤い屋根の家だとさ」

女勇者「場所も分かりましたし、早くと行きましょう」

勇者「俺が戦っていいのか?」

弓兵「ん、どういう意味だ?」

勇者「お前の目標ならお前が戦った方がいいんじゃないかって思ったんだけど」

弓兵「別にいい、魔法剣士を殺すか捕まえられればな」

勇者「ああ、そう」スタスタ

ガチャ

ドラゴン「お、終わったか」

弓兵「増援はどうした?」

金髪「ドラゴンさんが投げ飛ばしたら、みんな逃げたんすよ」

勇者「そりゃ人をボールみたいに投げたら普通は逃げるだろ」

ドラゴン「やはり弱いな、人間は」

金髪「あ、場所分かったんすか?」

勇者「ああ、これから行ってくる」

弓兵「勇者、俺も同行していいか?」

勇者「別に構わねぇけど、なんでだ?」

弓兵「保険だ、お前が殺されても俺がとどめを刺せばいいんだからな」

金髪「勇者さんが負ける訳ないっすよ!!」

弓兵「だから保険だって言ってるだろ」

勇者「なんでもいい、来たいなら来い」

弓兵「そうさせてくれ」

女勇者「では私も――――――」

勇者「お前は待機」

女勇者「な、何でですか!!」

勇者「大人数で行けばバレる可能性も増える訳だし、今回は人質もいる訳だから特に気をつけたい」

女勇者「ですが……」

勇者「あくまで今回は待機なだけ」

女勇者「わ、わかりました……」

勇者「今回はドラゴンを守ってやってくれ」ボソッ

女勇者「わかってます」

ドラゴン「じゃあオレ達は勇者の家で待ってるな」

勇者「そうしてくれ」

金髪「頑張ってくださいね」

勇者「はいはい」

勇者「行くぞ、弓兵」スタスタ

弓兵「年上に行くぞは無いだろ」スタスタ

勇者「俺は誰にでもこうやって接してんだ」スタスタ

弓兵「まったく、俺じゃなかったらキレてるぞ」スタスタ

勇者「うるせぇ」スタスタ

今日はここまでです。

弓兵の強さが伝わったら幸いです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


弓兵「場所は分かるのか?」スタスタ

勇者「だいたい見当はついてる」スタスタ

弓兵「……」スタスタ

勇者「あそこだ」


それはやけに真新しい石造りの家だった。


弓兵「ずいぶん重々しい建物だな」

勇者「石造りだからだろ」

弓兵「だといいがな」

勇者「……お前はどうするんだ?」

弓兵「お前が戦いでも見させてもらう」

勇者「あ、そう」

弓兵「お前だって変に戦いに手をだされるのは嫌いだろ?」

勇者「ああ、殺したくなる」

弓兵「だから俺は何もする気は無い」

勇者「そうか」

弓兵「じゃあ作戦も決まったし、突入するか」スタスタ

勇者「そうだな」スタスタ

殺し屋「おっと、そこの二人、止まりなさい」ピョンッ

勇者「……手を出さないんじゃなかったのか?」

殺し屋「そのつもりだったんだけど、お仕事が増えちゃってね」

弓兵「仕事?」

殺し屋「勇者以外のこの家に入ろうとする者を排除しろって言われちゃったんだ」

殺し屋「やる気出ないし、正直やりたくないんだけどお金もらってる以上仕方ないよね」

弓兵「つまり、俺を殺しに来たと」

殺し屋「うーん、まあ言っちゃえばそうだよね」

弓兵「勇者、先行け」

勇者「そうするつもりだ」スタスタ

殺し屋「頑張ってね」ニコニコ

弓兵「こんな所で戦ってる暇無いんだけどな」ガリガリ

殺し屋「俺だってこんな所で戦いたくないよ、勇者と魔法剣士の戦い見たいし」

殺し屋「でも仕事は絶対こなすのが俺のポリシーなんだよね」

弓兵「仕事熱心だな」

殺し屋「そうじゃなきゃ裏の世界で生きてなんていけないよ」

殺し屋「時には情や私情も我慢しなきゃね」


殺し屋は何処からともなく貸金屋の生首を取り出す。


弓兵「お前が殺ったのか?」

殺し屋「情報を漏らした裏切り者には罰を、それも俺の仕事なんだ」

殺し屋「かわいそうだろ、あんな場面じゃ話すしか選択肢は無かっただろうにね」

弓兵「見てたのか」

殺し屋「ああ、もし良かったら弔ってやってくれよ」

弓兵「悪いが、そう言うのは俺の仕事じゃない」

殺し屋「あ、そうだったね、ごめんごめん」

殺し屋「無駄話はこれくらいにしようか」

弓兵「ああ、そうだな」

殺し屋「いざ、尋常に勝負」

弓兵「……」

殺し屋「あれ、今度こそ結構きまったと思ったんだけどな……」

弓兵「お前じゃどうやってもきまらんだろ」

殺し屋「あははは、そうかもね」

殺し屋「まあいいや、さっさと終わらようよ」

弓兵「同感だ」

殺し屋は鉈を構えて走り出した。

規則正しい足音が草むらに響く。
だがそれは異常だった。
その速度はもはや人間の速度ではない。

だが弓兵はそんな速度で走る殺し屋に的確に狙いを定める。

下手な小細工など必要ない。
一撃で仕留める。

弓から矢が放たれた。

矢は吸い込まれるように殺し屋へと一直線に突き進む。

だが矢は綺麗に縦に真っ二つになり、地面へ落ちた。

理由はすぐにわかった。

殺し屋は秒速90メートルの矢の弾道を見切り、叩き斬ったのだ。
しかもほぼ速度を落とす事無く、だ。

もはや人間の動きではない。
だが殺し屋はそれを普通に行っているのだ。

二人の距離がゼロになる。

殺し屋は鉈を大きく横に振った。
ビュンッ、と音をたて鉈は弓兵の喉に襲いかかる。

弓兵はその攻撃をギリギリで回避し、腹に拳の一撃を加える。


「う……」


殺し屋は苦しそうに呻き、衝撃を減らすため、大きく後ろに跳ぶ。

崩れた態勢を空中で立て直す。
そしてそのままほとんどバランスを崩すことなく地面に着地した。


「あはは、相撃ちか」


殺し屋は楽しそうにそう言った。
満面のその笑みはまるで子供のように無邪気で悪人のように邪悪だ。

弓兵は斬られた左腕を庇いながら殺し屋を睨む。
傷は浅いが出血がひどい。

殺し屋は人間には到底不可能な動作で、二メートル近い高さまでジャンプする。
そして、弓兵目掛け真っすぐに落ちてくる。

ガキン、と音を鳴り、殺し屋の鉈が停止する。

弓兵は小さなナイフで殺し屋の鉈を止めていた。


「こんな物でも、もって置いて損はないんだな」


彼は皮肉めいた笑顔で呟く。
ほんの僅かでも鉈かナイフがずれていれば弓兵の頭はきれいに二つになっていただろう。

左腕からとめどなく血が流れ、地面を濡らす。

長引けば弓兵は確実に不利になるだろう。
なら、短期決戦をするまでだ。

弓兵は殺し屋の頭を鷲掴みにすると、全力で地面に叩きつけた。

殺し屋は人間が出したとは到底思えない音を上げて地面に叩きつけられる。
地面に異様な亀裂がはしる。
普通なら気絶、いや即死クラスの攻撃だ。

だがしかし、殺し屋はそんな一撃をくらっても立ち上がる。
頭からはおびただしい量の血が流れ、顔が真っ赤になってもだ。


「ははは、最高だ、最高に最高だよ!!」


彼は頭から血を流し、楽しそうに笑っていた。
茶色の目が星の様に輝き、満面の笑顔を浮かべて。

中途半端ですが今日はここまでです。

そう言えば弓って後衛だったような……

「ならそろそろ本気で行くよ!!」


殺し屋は鉈を構え、地面を蹴る。
今までとは比べ物に張らないくらい速かった。

弓兵は弓を放とうとするが、間に合わない。

気がつけば、殺し屋はもう目の前に迫ってきていた。

弓兵は大きく横に跳び、回避した。

変な態勢で跳んだせいで、足首に鈍い痛みが走る。
だがそんなものを気にしている暇は無い。

痛みに耐えながら、素早く態勢を立て直す。

殺し屋が方向転換し、こちらに走ってくるのが見えた。

弓兵は一瞬で弓を引き絞り、狙いを定めると、放つ。
さっきと同様に矢は吸い寄せられるように殺し屋目掛けて飛んでいく。

しかし、またしてもに矢は真っ二つに斬られ地面に落とされる。

だが、彼にとってはそれは想定内。
いや、むしろ斬り落としてもらわなくては困るのだ。

「な……!?」


殺し屋が驚きの声をあげる。

その声とほぼ同時に殺し屋の右腕と右肩に矢が突き刺さる。


「矢が一本でしか撃てないなんて誰が言った?」


弓兵は口元を少しだけ緩めて微笑した。
あご髭を触りながら、殺し屋を見る。

それは誰もが思いつき、しかし誰も出来ない事だった。
彼は一度に三本の矢を弓につがえ、三本の矢を同時に撃ったのだ。
さらに二本の矢が先頭の一本の矢の死角になるように計算もして。

殺し屋は自分に突き刺さった矢を無理矢理引き抜くと、地面に放り投げた。

その顔は痛みで僅かに歪んでいるものの、相変わらず笑顔だ。
何がそんなに楽しいのか、僅かに声も漏れている。


「はは、ははははは、あはははははは!!」


何かが爆発したように大声で笑い出す。
高らかで、まるで子供の様に澄み切った声。

鉈をくるりと回し、近くにある植物を斬り裂く。
それは戦慄を覚えるほど凶暴で無邪気な姿。

弓兵は弓を構え、殺し屋の心臓に狙いを定めた。
後は右手を離せば、矢は殺し屋の心臓を貫くはずだ。

だが殺し屋は気付いていないのか、まだ笑い続ける。
戦闘中とは思えないほど無防備な姿だった。


「こんなに命の危機を感じたのは久々だ、最高だよ!!」


殺し屋は鉈を構え直すと、大きく跳躍した。

小細工も何もなく、ただ一直線に弓兵に向かって跳ぶ。
やはり速度は人間の域を超えている。

弓兵は素早く狙いを右足に変えると矢を放つ。

この状況で心臓に矢を放っても無意味。
なら相手に致命傷を与えるよりも相手の速度を殺す事に専念する。

だが彼の予想に反し、殺し屋は速度はおちなかった。
太ももに矢が刺さるが、まったく気にせず跳んでくる。

弓兵が横に跳ぼうとするが間に合わない。

殺し屋の鉈が彼の左の太ももを斬った。

鋭い痛みにその場に膝を突く。
傷は予想以上に深く、赤い液体が溢れてくる。

殺し屋は方向転換し、また弓兵目掛けて走り出した。
その顔は、次はとどめだ、と嘲笑っているように見える。

弓兵は痛みに耐えながらも、立ち上がる。
太ももからさらに血が溢れ、足先が痺れる。
だがそのくせ頭はいつも以上に冷えていた。

一度に五本の矢をつがえ、殺し屋目掛けて放つ。
銀色の矢が一斉に殺し屋目掛けて飛びだす。

矢が多過ぎたせいか、全体的に狙いが逸れていた。
さらに速度も全体的に遅い。

当たり前のように殺し屋は体をくねらせ、いとも簡単に矢を回避する。
しかも相変わらず速度を全くおちていない。

殺し屋が弓を回避した瞬間、弓兵は素早く何かを詠唱した。
そして口元を緩めて僅かに笑う。

殺し屋の顔に疑問の色が浮かぶ。

その瞬間、弓兵の放った五本の矢がガスに引火したかのように爆破する。
一本一本が誘爆し、爆弾と同等、それ以上の威力を生み出す。

爆発は容赦なく殺し屋を呑みこんだ。
異様な熱風が辺りを通り抜けていく。

殺し屋がいた場所は焦土と化し、ちらほら地面が燃えている。

弓兵はゆっくり立ち上がり、照度を眺める。
殺し屋は燃え尽きたのだろう。

弓兵は弓をしまい、その場から立ち去ろうとする。


「だからお前は行っちゃダメだって言っただろ」


だが殺し屋焦土の上に立っていた。
服は所々黒く焦げ、体にも軽傷とはいえない火傷がいくつもある。
右手はだらりと下がり、ほとんど動いていない。

しかし、殺し屋は確かにそこに立っていた。

「まさか魔法を使ってくるなんてね、全然予想してなかったよ」

「魔法が使えないなんて言ってないだろ」


殺し屋はその言葉に笑った。
血に塗れた真っ赤な笑顔。

殺し屋は左手に鉈を構える。

今までの様な素早い動きではなく、ゾンビのようにフラフラ歩く。
右足はまともに機能していない。

殺し屋の顔にはいつもの笑顔は無い。
表情の無いその顔は今までとは違う何かを感じさせた。

弓兵は弓をしまい、殺し屋を見る。
その顔にさっきまでの敵意は無く、いつもの温厚なおっさんになっていた。


「武器をしまえ、もう終わりだ」


殺し屋の体が僅かにピクリと動き、その場に停止する。
そして笑顔に戻る。


「あはは……そうさせてもらうよ」


殺し屋は鉈をしまい、その場に仰向けに倒れた。

殺し屋「あはは、もう立てないや」

弓兵「俺ももう無理かな」ドサッ

弓兵「引き分けでどうだ?」

殺し屋「何でもいいよ、俺負けとか気にしないし」

弓兵「じゃあ引き分けだ」

弓兵「……」

殺し屋「帰らないの?」

弓兵「勇者が帰ってくるまで待たんとな」

殺し屋「あはは、そう」

殺し屋「動けるようになったら動こうかな」

殺し屋「大丈夫、不意打ちなんて卑怯な真似はしないから」

弓兵「そんな事わかってる」

殺し屋「……見に行きたかったな、あの二人の戦い……」

弓兵「同感だ」

今日はここまで。

弓を使う戦闘って難しい……しかも時間がなかったのでかなり大変でした。

あと人がたくさん死ぬことについてですが、戦闘シーンが多く、勇者パーティーの性格を考えるとどうしても多くなってしまいます。
ただ、読み返すと別に殺さなくてよかった様な気がするキャラもいたので(リーダー、貸金屋)これからは考えてやっていきます。

殺し屋「……」


殺し屋は起きあがり、伸びをする。


殺し屋「……さてと、じゃあそろそろ行こうかな」

弓兵「下手に動くと死ぬぞ」

殺し屋「あはは、俺って案外丈夫なんだよね」

殺し屋「以外だろ?」

弓兵「全然以外じゃない」

殺し屋「あ、そう」スタスタ

弓兵「帰るのか?」

殺し屋「観戦だよ、決勝戦はまだ終わって無いだろ」スタスタ

弓兵「俺を放っておいていいのか?」

殺し屋「相討ちで俺は気を失ってました、って事で」

弓兵「適当だな」

殺し屋「何もしないならどうって事ないよ」

弓兵「……」

殺し屋「言っとくけど、邪魔したら怒るからね」

弓兵「お前ほど子供じゃないんだ、そんな事するか」

殺し屋「なら安心」スタスタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~


建物の中


勇者「……」スタスタ

魔法剣士「思ったより早かったな」

勇者「あんたが魔法剣士?」


そこに30歳前後の黒髪で眼鏡をかけた男が立っていた。


魔法剣士「その通り」

勇者「……妹は何処に居る」

魔法剣士「ちゃんと無事だ、安心しろ」

勇者「ならさっさと返せ」

魔法剣士「そう焦るな」

勇者「いいから早く言え、こんな茶番につきあってるこっちの身にもなってくれ」

魔法剣士「ん、今なんて言った?」

勇者「茶番だよ、茶番」

魔法剣士「……ほう、お前にはこれが茶番に見えるのか?」

勇者「茶番以外のなんだって言うんだよ」

魔法剣士「若いなお前は」

勇者「は?」

魔法剣士「これは茶番なんかではい、お前たちへの復讐だ」

勇者「……お前と会ったのなんて初めてなんだけど」

魔法剣士「お前は知らなくても俺は知ってる」

勇者「?」

魔法剣士「俺は魔法の町の兵士だ」

勇者「……ああ、それで」

魔法剣士「……まさか忘れたのか?」

勇者「火事の事だろ、覚えてるよ」

魔法剣士「いや、お前達は全くもって分かって無い、あそこにどれほど重要な資料や研究があったと思う」

勇者「知らねぇよ」

魔法剣士「知らないで済まされると思うな」

魔法剣士「あれで燃えたものがどれほどの事か分かるのか!!」

勇者「だからそんな事言われてもわかんねぇよ」

魔法剣士「……だからガキは嫌いなんだ」

勇者「黙れ、あとガキって言うな」

魔法剣士「あそこにあった大量の兵器の重要性が分かって無いのか」

勇者「兵器?」

魔法剣士「兵器だ、戦争のために造られた兵器の半分が燃えたんだぞ!!」

勇者「そんなもん燃えた方が良かっただろ」

勇者「だいたい戦争って何だよ」

魔法剣士「今までに類を見ない、大規模な戦争だ」

勇者「大規模な戦争……くだらねぇ」

魔法剣士「お前の様な若者にはわからんだろうな」

勇者「分からなくて結構だ」

魔法剣士「後は魔王を生け捕りにすれば完璧だった計画がお前達のせいで崩れたんだ!!」

勇者「戦争に魔王?」

魔法剣士「魔王の魔力があれば魔道騎士を動かせるんだ、博士から聞いてるんだろう?」

勇者「何も聞いてねぇよ」

勇者「博士は凄さは知ってるけどな」

魔法剣士「ああ……あいつは最高の科学者だ、ただ性格に問題があったがな」

勇者「お前等の方が問題ありだろ」

魔法剣士「お前の主観で物事を判断するな」

勇者「……」

魔法剣士「……魔王生け捕りに協力する気は無いか?」

勇者「は?」

魔法剣士「手伝うなら妹も返してやる、火事の件も……まあいいだろう、どうする?」

勇者「兵器を作るのに協力する気はねぇな」

魔法剣士「……妹はどうする」

勇者「返す気がないならお前を殺して取り返す」

魔法剣士「ガキが偉そうに」

勇者「ガキをなめんなよ」

魔法剣士「……まあいいか、策はある」

勇者「……」

魔法剣士「言っておくがお前は殺すぞ」

勇者「俺だってお前を殺す気だ」

魔法剣士「ふふっ」

勇者「なんだ」

魔法剣士「俺は勝っても負けてもいいんだ」

勇者「?」

魔法剣士「剣を抜け、ガキとの話は疲れる」


魔法剣士は剣を抜く。


勇者「あんたいくつだよ」

今日はここまでです。

短めですいません。

魔法剣士の剣が赤く染まる。

血で濡れたので無い。
剣自体が発火し炎を纏っていた。

紅蓮の炎が剣を包み込むその姿は異様な光景だ。


「ずいぶん派手な演出だな」


勇者は小馬鹿にするように言い放つ。
意図的に苦笑し、相手の神経を逆撫でする。

だが魔法剣士はそんな事を気にする事無く、勇者目掛けて走り出す。
タッ、タッ、タッ、と足音がリズムを刻む。

勇者や女勇者ほどではないが、速い部類に分類されるだろう。


紅蓮に燃える剣が、勇者目掛けて振り下ろされる。
ゴウッ、と音が鳴り、剣を纏う炎が辺りに散らばる。

剣を回避した勇者の髪を散らばった炎が焦がす。
頬にも炎がぶつかり、皮膚を焼く。

魔法剣士はもう一度剣を高く振り上げ、勇者目掛けて振り下ろす。
紅蓮の剣が勇者目掛けて襲いかかる。

だが勇者の刀がそれを阻止した。
刃がぶつかり合う音が石造りの建物に反響する。

炎の残骸があたりに飛び散り、勇者の体を焼く。

この状態は勇者に不利だった。
魔法剣士の剣は回避しても防御しても炎が飛び散ってくる。
しかもそれは多かれ少なかれ勇者の皮膚を焼く。

たとえどんなに小さなダメージでも長期戦になれば決定打になってくる。
それは勇者が一番理解していた。

勇者は後ろに大きく跳び、魔法剣士との間合いを取る。

ここで無闇に得物をぶつけ合う必要は無い。
むしろあの剣に近距離で戦うこと自体間違っているのだ。

勇者は呼吸を調え、短く息を吐く。


「どうした、ずいぶん慎重なんだな」


魔法剣士は眼鏡を位置を直し、剣を構え直す。
相手を挑発するような顔つきで勇者を見ていた。

勇者は気にせず、少しだけ後ろに下がった。
挑発に乗るほどバカではない。

魔法剣士はつまらなそうに首を振ると走り出す。

紅蓮の剣はより一層強く燃えあがった。
それは剣が炎を纏っているというより、炎が剣を覆っているのに近い状態。

勇者は短く息を吸うと、刀を構え、紅蓮の剣との距離を推し量る。

剣を防御するだけでは意味が無い。
重要なのはどう炎を回避するかだ。

共に剣と刀が衝突した。
部屋全体に金属音が響き渡り、共鳴する。

勇者は刀を僅かに傾け、威力を受け流す。
出来る限り、炎に焼かれる時間を短縮する。

魔法剣士の剣の軌道がずれ、僅かな隙が生まれた。
一瞬の、ほんの僅かな隙。

その一瞬で勇者は魔法剣士の懐に飛び込む。

正直ここで攻めるのは良策とは言えない。
だが出来る限り勝負に決着をつける為には仕方がない。
この勝負での長期戦は勇者にとってデメリットでしかないのだ。

流れる様な動作で剣を横に振る。
無茶な戦略だが、勇者のスピードがあれば、勝機はある。

だが勇者の刀は魔法剣士の剣で止められる。
距離が近過ぎる為、常に体が焼かれる。

普段の勇者ならここで退くのだが、今回は退かない。
今退けば確実に勝機を逃す、そんな気がした。

一瞬のうちに魔法剣士の背後に回り込み、下から上に斬り上げる。

体を素早く回転させ、防御に転じようとするが、間に合わない。
間に合わせない。

刀が綺麗に魔法剣士を斬った。
赤黒い液体が噴き出し、勇者の服と顔を染める。
そのくせ刀はいつも以上に銀色に鈍く輝いていた。

さらに追撃を加える為、一歩踏み出す。


「俺の魔法が炎だけだと思うなよ」


声は嫌というくらい落ち着いていた。
氷の様に冷たい声が部屋全体を包む。

その声とほぼ同時に強風が起きた。

まるで何か巨大な生き物に押される様な感覚。

勇者の体が簡単に吹き飛ばされた。
防御する暇も耐える暇もない。

そのまま二メートルほど吹き飛ばされ、おもちゃのように地面に叩きつけられる。

勇者は刀を杖代わりにして立ち上がる。
体に異常は無さそうだ。


「調子に乗るな、ガキ」

魔法剣士の剣の発火は終わっていた。
だがその代わりに、剣を風の様なものが包み込んでいる。

もちろんそんなものは目に見えない。
だが勇者にはなんとなくわかった。
野生の勘、とでも言うべきか。

魔法剣士はゆっくりとした動作で剣を振り上げると、大きく振リ下ろした。
もちろんこの距離では剣は当たらない。

だがその瞬間、勇者の背筋を何かが走り抜けた。
動物的な勘のような、危機を知らせるものだ。
言いようの無い恐怖感が心の奥底から湧き上がる。

勇者が突発的に刀を盾にしたのとほぼ同時に刀に何かが激突した。
強烈な一撃に、勇者の右手がビリビリと痺れる。
あまりの衝撃に後ろにのけ反る。

その衝撃波とも何とも言えない何かに警戒しながらゆっくりと刀を構え直す。
目は常に相手の剣を見続ける。

魔法剣士は眼鏡の位置を直しながら不敵に笑っていた。
相変わらず相手を挑発するような笑顔だ。


「風……か?」


勇者は訝しげに聞いた。
もちろん回答なんて期待していないし、分かったとしても回避できるとは限らない。

魔法剣士は何も言わず、剣を大きく振り上げる。

勇者は魔法剣士目掛けて全力で走り出した。
防御や会費は一切考えず、相手を一撃で仕留める事だけを考える。
奥歯がギリギリと鳴き、関節が負担に耐え切れず悲鳴を上げる。
だがここで止まる訳にはいかない。
さらに態勢を低くし、加速する。

魔法剣士の剣が振り下ろされるのと、勇者の刀が魔法剣士の肩を貫いたのは同時だった。


「あ……がはっ!!」


腹部への異様な激痛に吐血する。
かすめただけでこの威力だ、直撃していたら即死だっただろう。

勇者は素早く相手から剣を引き抜き、刀を振り下ろす。

響く金属音。
勇者の刀が止められたのだ。

ギチギチと得物同士を鳴らしながら睨み合う。

勇者は距離を置く事無く、追撃を加える。
手数なら勇者の方が圧倒的に多い。

相手を翻弄するように、上段、下段、中段と、攻撃を仕掛ける。

とにかく相手に反撃する隙を与えない。


「ガキが、なめるな!!」

魔法剣士の剣に弾かれ、後ろに弾き飛ばされる。

うまく着地できず、膝をつく。
さっきのダメージがかなり効いているようだ。

だが止まっている暇は無い。
止まればそこにあるのは死だけだ。

勇者は素早く態勢を立て直し、走り出す。
生きる為の全力疾走。
腹部の激痛などを気にしている暇は無い。

魔法剣士の剣が見えない球を吐き出した。
音もなく、姿も無い、だが人を殺す事の出来る悪魔が勇者目掛けて襲いかかる。

勇者は歯を食いしばり、見えない敵に斬りかかる。
ガキィン、という高らかな音が響く。
追い返されてしまいそうな異様な力に必死で耐える。


「あ、あァァァァァァ!!」


叫び声が自然と漏れた。
右手の感覚はほとんど無い。
だが、押し切る。
押し切って見せる。

一歩踏み込み、力を押し返す。

刀が見えない何かを斬っているのがわかる。


「あァァァァァァァ!!」


強烈な風。
轟音。

勇者に襲いかかっていた何かが消滅する。

安堵のせいか疲れのせいか膝の力が抜ける。
だがここで止まる訳にはいかない。

勇者は一瞬で距離を詰める。

魔法剣士が後ろに跳ぼうとするが、その前に足を斬る。

魔法剣士の右足の膝から下が吹き飛び、そのまま地面に倒れた。
血が溢れ出て、床を赤く濡らしている。

勇者は刀を鞘にしまい、魔法剣士に近づく。

魔法剣士「俺の負けだ……ははっ」

勇者「何がおかしいんだ?」ハァハァ

魔法剣士「言っただろ、俺は勝っても負けてもいいんだよ」

勇者「どういう意味だ?」

魔法剣士「俺は戦争の火種になるって事だ、これで戦争が起こる……」

勇者「?」

弓兵「こいつの目的は戦争を起こす事だったって事だ」

勇者「殺し屋は殺したのか?」

弓兵「どっかにいるだろ、出てくる気は無いだろうけど」

勇者「戦争の火種って?」

弓兵「魔法の町は戦争を起こすきっかけを欲しがってた、でこいつがそのきっかけって事だ」

魔法剣士「魔法の町の兵士が殺されたとなれば、戦争は防げないからな」

勇者「なら殺さなきゃいいだろ」

弓兵「片足が無いこいつを魔法の町に返すのか?」

勇者「……」

魔法剣士「ははっ、買っても負けても、お前達は負け――――――がはっ!!」


弓兵は魔法剣士の腹を殴り気絶させる。


弓兵「とにかくこいつを連れて城に戻るべきだ」

勇者「そうだ、妹は!?」

妹「お兄ちゃん」タタタッ

勇者「お前大丈夫か?」

妹「うん、平気」

勇者「どうやってここに?」

妹「おじさんが開けてくれたの」

勇者「おじさん?」

妹「うん」

勇者「名前は?」

妹「名乗る者ではございませんって言ってた」

勇者「……なんだそりゃ」

弓兵「誰だっていいだろ」

勇者「まあ、そうだな」

弓兵「さっさと行くぞ」


弓兵は魔法剣士を持ちあげる。


勇者「ああ、わかった」フラフラ

今日はここまでです。

戦闘シーンがマンネリしない様にいろいろ工夫してるんですが難しいです。

>>915完全に同意
最初に批判して申し訳なかった

~~~~~~~~~~~~~~





王「そうか……戦争が起こるのか……」

勇者「すいません」

王「お主が謝る事じゃない、戦争は遅かれ早かれ起きるはずじゃった」

暗殺者「大規模な戦争ってどれくらいなんだ?」

女大臣「魔法の町とその他の町の連合軍の戦いです、世界戦争と言ってもいいですね」

ドラゴン「そんなの魔法の町の惨敗に決まってるだろ」

女勇者「あの町には腐るほど兵器があるんですよ、あれを出し惜しみせず使われれば勝てるかどうかも危ういです」

女大臣「その通りです」

暗殺者「話からすると魔道騎士が最終兵器なんだろ?」

勇者「でも魔王がいないから動かせないらしい」

女勇者「……話が見えてきましたね」

暗殺者「ああ、大まかな筋書きはだいたいな」

弓兵「魔王が捕まればそれこそ大惨事だ」

ドラゴン「だがあいつ等には勇者がいないだろ」

勇者「……いや、策があるってあの眼鏡が言ってたぞ」

弓兵「策か……」

弓兵「……悪いが、魔法剣士を連れて来てくれ」

女大臣「分かりました」スタスタ

女勇者「どうするんですか?」

弓兵「聞いてみるしかないだろ」

暗殺者「素直に口を割るのか?」

弓兵「あいつ次第だな」

女勇者「ここは勇者の出番ですね」

勇者「なんでだよ」

暗殺者「だって口悪いし、よくしゃべるし」

ドラゴン「貴様の口の悪さは達人技だからな」

勇者「褒められてるはずなのに全然うれしく無いんだけど」

女勇者「褒めてません」

勇者「……あ、そう」

女大臣「連れてきました」


魔法剣士が二人の兵士に付き添われて部屋に入ってくる。


魔法剣士「ははは、いつ戦争は起きるんだ?」スタスタ

弓兵「安心しろ、どうせすぐ起こるさ」

魔法剣士「俺が拘束された事はもう魔法の町は知ってるんだろ?」

王「うむ、いつ魔法の町が宣戦布告してきてもおかしくないじゃろうな」

勇者「ずいぶん回りくどいやり方だな」

魔法剣士「魔法の町だって一枚岩じゃないんだ、町をまとめる為には立派な理由が必要だ、ガキにはわからんだろうな」

勇者「そうかもな」

女勇者「ですが、たかが兵士を一人拘束しただけで理由になるものなんですか?」

女大臣「この男はただの兵士ではありませんよ」

ドラゴン「何がどう違うんだ?」

女大臣「この男は魔法の町で特殊な訓練を受けた兵士です」

勇者「特殊な訓練?」

女大臣「はい、生まれた時から英才教育を受けた、重要な兵士という事です」

弓兵「かなりの資金を投じて育てた兵士が拘束されて足を斬られたんだ、あとは分かるだろ」

魔法剣士「言っとくが他の奴らと俺を一緒にするなよ、あいつ等は化物だからな」

勇者「一番弱いって自覚してるのか?」

魔法剣士「ああ、あいつ等は人間の強さを逸脱してる、俺なんか足元にも及ばん」

勇者「……」

黒スライム「そいつは戦争の火種としてこの町に送り込まれたんだ」ピョン

勇者「……いろいろ悪いな」

黒スライム「気にするな、好きでやってんだ」

女大臣「この方は?」

勇者「黒スライムだ」

黒スライム「こいつは最初っから戦争を起こすためにこの町に送り込まれてきたんだ」

勇者「……じゃあ復讐ってのは?」

黒スライム「火種に火をつける作戦だ」

黒スライム「こいつが勇者に勝っていても、兵士どもがこいつを殺して火種に火がついてただろうしな」

ドラゴン「じゃあどうやっても戦争の回避は不可能になるぞ?」

黒スライム「そう計画されてたって事だ」

魔法剣士「だから言っただろ、俺は勝っても負けてもいいって」

ドラゴン「ここに死にに来たのか」

魔法剣士「そうだ」

暗殺者「……じゃあお前は捨てられたのか」

魔法剣士「言いようによってはそうとも言えるな」

勇者「意味わかんねぇな、その考え方」

魔法剣士「……ガキ、お前将棋やった事あるか?」

勇者「は?」

魔法剣士「将棋だ、将棋、知らないのか?」

勇者「知ってるよ、やった事もあるし」

魔法剣士「敵の王の駒をとるためには他の駒を捨てることだってある、あれと同じ事だ」

勇者「あれはゲームだろ」

魔法剣士「戦争だってゲームだ、偉い学者や大臣達にとってはな」

ドラゴン「……貴様自身はどうなんだ」

魔法剣士「何が?」

ドラゴン「捨て駒になって良かったのか?」

魔法剣士「弱い一人の兵士として生きていくよりはよっぽどいいだろ」

女勇者「……間違った考え方とは言いませんが、私は賛同しかねます」

魔法剣士「だろうな、それに分かってもらう気はない」

勇者「あ、そう」

王「……お主に聞きたい、魔道騎士とは何なのじゃ?」

魔法剣士「魔法の力を体に組み込んだ兵器……いや、兵士とも言えるかな」

弓兵「人体実験か、ずいぶん物騒なことしてるんだな」

魔法剣士「お前等のものさしで物事を計るな」

女大臣「でも魔道騎士は動かないんですよね」

魔法剣士「魔力が足りないだけだ、それ以外はすべて完成してる」

女大臣「そこでその魔力を補うために魔王を使う訳ですね」

魔法剣士「ああ、その通りだ」

勇者「でも勇者がいないんだろ?」

魔法剣士「前にも言っただろ、策はある」

女大臣「その策というのはなんなのですか?」

魔法剣士「なんで勇者しか魔王を倒せないか知ってるか?」

暗殺者「さあな」

魔法剣士「詳しい事は知らんが、魔王の住む場所に入るには勇者の血を引く者がいないと入れないらしい」

勇者「へー、そうなんだ」

魔法剣士「知らなかったのか?」

勇者「いきなり勇者だって聞かされて旅してたんだ、そんな事知るか」

魔法剣士「まあいい、つまり入る方法さえ発見できれば勇者の協力が無くても魔王を捕まえられるってわけだ」

暗殺者「そんな事話しちまってよかったのか?」

魔法剣士「別に隠す必要なんて無いだろ」

暗殺者「気構えて損したな」

魔法剣士「お前達が勝手にそう考えてただけだろ」

暗殺者「で、お前達はそれを使って魔王を生け捕りにする訳か」

魔法剣士「その通り、そうすれば魔道騎士も動かせる訳だ」

弓兵「……こりゃ魔王討伐を急がせた方がいいかもしれんぞ」

魔法剣士「ははっ、間に合えばいいけどな」

王「船の準備はどうなっておるのじゃ?」

女大臣「もう少し時間がかかります」

王「勇者、船の準備が出来次第、雪の町へ向かうのじゃ」

勇者「わかってる」

女大臣「勇者様達は出発の準備をしておいて下さい」

女勇者「わかりました」

ドラゴン「暗殺者、腕はまだダメか?」

暗殺者「もうちょっとだな」

女大臣「あとで病院に行っておいて下さい」

暗殺者「了解」

女大臣「勇者様、あなた様もこの紙に書いてある病院に行って下さい」スッ

勇者「え?」

女大臣「今回の戦いでも怪我をしたようですし、きちんと見てもらってきて下さい」

勇者「大丈夫だって」

女大臣「分かりましたね?」

勇者「……」

女大臣「……」

勇者「わかったよ」

女大臣「分かればいいんです」

女大臣「他の皆様もきちんと休息をとっておいて下さい」

ドラゴン「わかってる」

女大臣「戦争の事は気にせず、魔王討伐だけを考えて下さい」

暗殺者「わかった」

女大臣「戦争の事は私達で何とかしますので」

女勇者「わかりました」

女勇者「行きますよ」ガチャ

勇者「ああ」スタスタ

今日はここまでです。

>>917 気にしないでください。

女大臣「……その人も連れて行って下さい」

兵士「はっ」スタスタ

魔法剣士「楽しみにしてるぞ」スタスタ

弓兵「勝手に言ってろ」

黒スライム「じゃあ俺様も―――――」

女大臣「あなたは残ってもらえますか?」

黒スライム「なんでだ?」

女大臣「聞きたい事や頼みたい事がありますので」

黒スライム「……別にいいけどよ」

王「始まるのじゃな……」

弓兵「やっぱり、って感じだな」

女大臣「そうですね、ですがあそこまで魔法の町の兵器が進化していたとは思いませんでした」

弓兵「人体実験までしてるとは思わなかった、俺達の情報集めが不足してたな」

女大臣「気にする必要は無いです」

王「他の町にもその情報を伝えておいてくれるか?」

女大臣「分かりました」

弓兵「で、俺達はどう動けばいい?」

女大臣「今の所は待機ですね、もう少し時間をおくべきですね」

女大臣「下手に動いても犠牲が増えるだけですし」

弓兵「そうだな」

女大臣「黒スライムさん、でしたか?」

黒スライム「ああ」

女大臣「今分かっている事を教えていただけませんか?」

黒スライム「何をだ?」

女大臣「役に立ちそうな情報なら何でも構いません」

黒スライム「だいたいはさっきの奴が言ってた通りだ」

弓兵「魔道騎士については何か分かるか?」

黒スライム「さあな、博士って科学者が作った事と莫大な魔力を喰う事以外は分からん」

女大臣「そうですか……」

黒スライム「ただその博士って奴は勇者達と面識があるみたいだ」

弓兵「面識?」

黒スライム「詳しい事は分からん、ただ面識があるのは事実だ」

黒スライム「勇者は魔道騎士についてそんなに知らないみたいだがし、博士の居場所もわからんけどな」

弓兵「じゃあ聞いても無駄か……」

黒スライム「あと魔道騎士と博士はずいぶん関わりがあったみたいだ」

弓兵「そりゃ制作者なんだし当たり前だろ」

黒スライム「そう言う意味じゃない、魔道騎士の中の人間と深い関係だったって意味だ」

弓兵「どういう関係だ?」

黒スライム「それは分からん」

弓兵「……」

王「魔法の町の武力は分かるか?」

黒スライム「兵士の数ならお前達の方が圧倒的に多い、ただ奴等に兵器があるから何とも言えんな」

黒スライム「特に人間をベースに作られた兵器には注意が必要だ」

弓兵「……とにかく今はこちらの兵力と武力を調えるしかないな」

女大臣「そうですね」

弓兵「黒スライムだったっけ、悪いけど魔法の町について調べてくれないか?」

黒スライム「別にいいぜ」

弓兵「じゃあ任せたぞ」

王「女大臣は他の町と作戦を練っておいてくれ」

女大臣「わかりました」

王「他の国との連携はわしが話し合っておく」

弓兵「お願いします」

黒スライム「長話は情報の漏洩につながるぞ」

弓兵「そうだな、この辺でいいか?」

女大臣「十分です」

弓兵「じゃあ作戦通りに」スタスタ

黒スライム「何かわかったら伝えに来る」ピョン

女大臣「……ついに始まりますね」

王「そうじゃな……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


数日後 船着き場


勇者「毎回毎回悪いな」

女大臣「大臣として当然の仕事をしただけです」

女大臣「皆様、お気をつけて下さいね」

勇者「分かってる」

女勇者「戦争の事はどうなったんですか?」

女大臣「そちらの方は私達に任せておいて下さい」

女勇者「……わかりました」

暗殺者「お前等も無理するなよ」

女大臣「私達の事は気にせず魔王討伐だけを考えておいて下さい」

暗殺者「ああ、わかった」

女大臣「雪の町に着いたらここに行ってください」スッ

ドラゴン「何があるんだ?」

女大臣「私の知り合いが住んでいます、きっと力になってくれると思いますので」

ドラゴン「どんな人だ?」

女大臣「私の師です」

勇者「わかった、会いに行ってみる」

女大臣「そうして下さい」

女大臣「私ももう少し力になれればよかったのですが……」

女勇者「いえ、十分過ぎるほど力になっていますよ」

妹「お兄ちゃん」タタタッ

勇者「妹!?」

女大臣「私が呼んでおきました」

妹「早く帰ってきてね」

勇者「わかってる」

妹「いってらっしゃい」

勇者「ああ」

船乗り「出発するぞ!!」

ドラゴン「女大臣、無茶はするなよ」スタスタ

女大臣「分かっています」

女大臣「では、ご武運を」


こうして勇者一行は雪の町へと向かうのであった。

※キャラ紹介

金髪    17歳

チンピラグループの副リーダー。
チームでは尋問や情報収集が仕事。
倒すより逃げる戦闘スタイルを持つ。
そのため足はとても速い。
ちなみにかっこいい者に憧れ、そういう人なら男女を問わず惚れる。





殺し屋    28歳

裏社会のカリスマと呼ばれる凄い男。
その通り名と残虐非道な噂からよく勘違いされるが、本当は適当で軽い男。
仕事のためなら手段を選ばないが、仕事以外で人を殺す事は嫌う。
戦闘スピードは作中で最速を誇る。
また飛んでくる何本ものナイフを全て掴めるほどの動体視力を持っている。

今日はここまでです。

今日で勇者の町編が終わりました。

スレも少ないですし、雪の町編に入ってもそんない書けそうにないので、番外編、勇者達のバレンタインをやろうと思います。

明日は勇者達のバレンタインをやります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


時間は雪の町に出発する一日前の朝に巻き戻る。


女勇者「……」スヤスヤ

ドラゴン「女勇者」

女勇者「ん……」

ドラゴン「女勇者!!」

女勇者「……な、なんですか?」

ドラゴン「今日はあの日だ」

女勇者「……はい?」

ドラゴン「忘れたのか、チョコレートの日だ」

女勇者「チョコレート?」

ドラゴン「ああ、チョコレートだ」

女勇者「……バレンタインの事ですか?」

ドラゴン「ん、そんな名前だったかもしれんな」

女勇者「……それがどうしたんですか?」

ドラゴン「そのバレンタインはチョコレートを好きな人にあげる日なんだろ?」

女勇者「そうですね」

ドラゴン「オレも勇者にチョコレートをあげようと思うんだ」

女勇者「……そんな事のために私を起こしに来たんですか?」

ドラゴン「ああ」

女勇者「……」ゴロン

ドラゴン「おい、勝手に寝るな!!」

女勇者「あげたいんなら食材屋にチョコが売ってます」

ドラゴン「オレがあげたいのは手作りのチョコレートだ」

女勇者「……なら頑張って作って下さい」

ドラゴン「女勇者も一緒に作ろうぜ」

女勇者「渡す相手がいないじゃないですか」

ドラゴン「勇者がいるだろ」

女勇者「あなたが勇者にチョコをあげるんじゃないんですか?」

ドラゴン「二人で一緒にあげた方が恥ずかしく無いだろ」

女勇者「……チョコをあげるのが恥ずかしんですか?」

ドラゴン「そりゃ恥ずかしいだろ」

女勇者「なんでキスが出来てチョコがあげられないんですか……」

ドラゴン「いや、なんとなくあげ難いだろ」

女勇者「全くもってわかりません」

ドラゴン「とにかく一緒に作ろうぜ」

女勇者「……わかりました」

ドラゴン「ありがとな」

女勇者「はあ……」

ドラゴン「で、何を準備すればいいんだ?」

女勇者「手作りチョコなんて所詮はチョコを溶かして固め直したものです」

ドラゴン「じゃあチョコレートを買ってくればいいのか?」

女勇者「そう言う事です」

ドラゴン「じゃあ買ってくる」タタタッ

女勇者「……」

女勇者「朝から元気ですね……」

女勇者「……」ゴロン

20分後


ドラゴン「買ってきたぞ」

女勇者「……そうですか、今から作りますか?」

ドラゴン「当たり前だ」

女勇者「……わかりました」

ドラゴン「よし、そうと決まればさっそく作るぞ」

女勇者「はい……」

ドラゴン「テンション低いな」

女勇者「寝起きはいつもこんな感じです」

ドラゴン「そうか」

女勇者「で、どんなのを作るんですか?」

ドラゴン「手作りのチョコレートだ」

女勇者「いえ、どんな形にするかという事です」

ドラゴン「勇者の好きな形がいい」

女勇者「勇者の好きな形……ですか?」

ドラゴン「ああ」

女勇者「ドラゴンは何が好きだと思いますか?」

ドラゴン「う、うーん……」

女勇者「ドラゴン、こういうのは最初が一番重要です」

女勇者「どんな形にするか、何をトッピングするかをきちんと決めて下さい」

ドラゴン「あ、ああ」

女勇者「で、どうするんですか?」

ドラゴン「刀形にしようと思う」

女勇者「……難しそうですか作ってみましょうか」

ドラゴン「女勇者は何の形にするんだ?」

女勇者「私も作るんですか?」

ドラゴン「さっきそうやって言っただろ」

女勇者「……」

暗殺者「朝っぱらからどうした?」スタスタ

ドラゴン「暗殺者、貴様も一緒にチョコレートを作るぞ!!」

暗殺者「いきなりなんだ?」

女勇者「今日はバレンタインです」

ドラゴン「一緒に作ろうぜ」

暗殺者「遠慮する」

ドラゴン「みんなで作った方が楽しいだろ」

暗殺者「俺はそう言うの苦手なんだ」

ドラゴン「……」

女勇者「わかりました」

暗殺者「悪いな、俺一応男だから」

女勇者「わかっています」

女勇者「では勇者にバレない様にしてもらえますか?」

暗殺者「ああ、そっちの方が向いてるしそうする」

ドラゴン「じゃあ頼んだ」

暗殺者「任せとけ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者「ん、ああ……朝か」

暗殺者「ダラけた生活してるな」

勇者「ちょっと黙ってろ、頭痛ぇ」

暗殺者「ただの寝過ぎだろ」

勇者「そうだよ」

勇者「……あれ、ドラゴンは?」

暗殺者「なんで自分の布団の中を確認するんだ?」

勇者「最近勝手に人の布団に入ってくるんだよな、狭くて困る」

暗殺者「うれしいくせに」

勇者「うるせぇ」

勇者「で、ドラゴンは?」

暗殺者「台所で料理してる」

勇者「……俺ちょっと出掛けてくるわ」

暗殺者「俺も一緒に行っていいか?」

勇者「食材屋だぞ」

暗殺者「夕飯の買い出しか?」

勇者「チョコだよ、チョコ、今日バレンタインだろ」

暗殺者「なんでお前が」

勇者「毎年バレンタインには妹にチョコあげてんだ」スタスタ

暗殺者「……」

暗殺者「お前それ間違ってるぞ」スタスタ

勇者「何が」ガチャ

暗殺者「ちょっと待て」

勇者「何?」

暗殺者「あいつ等かなり集中してるから、行かない方がいいぞ」

勇者「じゃあどうやって外に出るんだよ」

暗殺者「窓があるだろ」

勇者「窓から出るの?」

暗殺者「ああ」

勇者「……静かに行けば大丈夫だろ」

暗殺者「女勇者がキレるぞ」

勇者「……」

暗殺者「……」

勇者「……窓から出ればいいんだろ」

暗殺者「分かればいいんだ」

勇者「じゃあ行くかな」スタスタ

暗殺者「マジで買いに行くのか?」

勇者「だから今日はバレンタインだって言ってんだろ」

暗殺者「バレンタインって何の日か知ってる?」

勇者「大切な人にチョコをあげる日だろ」

暗殺者「間違ってない様で間違ってるぞ」

勇者「どの辺が?」

暗殺者「一回ぐらい女からチョコもらった事あるだろ」

勇者「近所のおばさんが毎年俺たち兄弟にくれる」

暗殺者「いや、そうじゃなくて、同い年くらいの女の子に貰った事無いのか?」

勇者「同い年の女の知り合いなんてほとんどいなかったから」

暗殺者「……」

暗殺者「バレンタインって言うのは女が好きな男にチョコをあげる日だぞ」

勇者「え?」

暗殺者「社会一般ではそう言う日だ」

勇者「……まあいいや、妹へチョコ買って帰るぞ」スタスタ

暗殺者「そう言うと思ってたけどさ」スタスタ

勇者「別に男があげちゃいけない訳じゃねぇだろ?」

暗殺者「ああ、一般的に女が男にあげるってだけだ」

勇者「ならいいだろ」スタスタ

暗殺者「ダメダメ、バレンタインって言うのは乙女のためのビッグイベントよ」

勇者「また突然出て来たな……」

暗殺者「最近暇だったのよ」

暗殺者「あなたも今年こそはチョコもらえるかもね」スタスタ

勇者「期待しとく」スタスタ

暗殺者「釣れないわね」

勇者「正直そう言うの興味無い」

暗殺者「残念ね」

金髪「勇者さん!!」タタタッ

勇者「金髪、おはよう」

金髪「おはようっす」

金髪「勇者さん、今日は何の日か知ってますか?」

勇者「バレンタインだろ?」

金髪「そうっす、だから俺、勇者さんと暗殺者さんのためにチョコ作ったんす!!」

勇者「あ、ああ……」

暗殺者「うれしいわね」

金髪「二人ともどうぞっす」スッ

勇者「あ、ありがとう……」

暗殺者「今度はあなたをプレゼントしてほしいわね」

金髪「あれ?」

暗殺者「い、いや、何でも無い」

勇者(無理矢理入れ替わったな……)

今日はここまでです。

バレンタインにもエロゲを買おうか考え中。

金髪「じゃあまた今度っす」スタスタ

勇者「ああ」スタスタ

暗殺者「これから盛り上がる所だったのに」

暗殺者「うるさい」

勇者「そう言うのは口に出さない方がいいぞ、変人に見えるから」

暗殺者「わかってる」スタスタ

暗殺者「まあ、バレンタインなんだし今日は時々私が表に出るわよ」スタスタ

暗殺者「勝手にしろ」スタスタ

勇者「だから口に出して会話すんな」スタスタ

食材屋「いらっしゃい」

勇者「チョコ五個下さい」

食材屋「100ゴールドね」

勇者「どうぞ」

食材屋「どうも」

勇者「……」スタスタ

暗殺者「ずいぶんたくさん買ったな」スタスタ

勇者「お世話になってる人にもあげないといけないからな」スタスタ

暗殺者「ふーん」スタスタ

勇者「まずは城だな」スタスタ

暗殺者「城?」スタスタ

勇者「ああ」スタスタ

一方その頃


ドラゴン「うーん……」

女勇者「出来ましたか?」

ドラゴン「うまく出来ないな……」

女勇者「ん……もう少し溶かした方がいいですね」

ドラゴン「そうか」

女勇者「ドラゴン、大事なのは心です、形ではありませんよ」

ドラゴン「……」

女勇者「なんですか?」

ドラゴン「女勇者はうまく出来てるな」

女勇者「あ、あんまり見ないで下さい」

ドラゴン「なんでだ?」

女勇者「恥ずかしいじゃないですか」

ドラゴン「……そんなに綺麗なのにか?」

女勇者「他人のものは綺麗だったり、素敵に見えるものです」

ドラゴン「そう言うものか?」

女勇者「そう言うものです」

ドラゴン「そうなのか」

女勇者「……勇者とは何も無いですか?」

ドラゴン「特に何も無いな、一緒に寝てるだけだ」

女勇者「そうですか」

ドラゴン「あと最近勇者が一緒に寝ても文句言わなくなったんだ」

女勇者「勇者自身そこまで嫌じゃないんでしょ」

ドラゴン「いや、最初は足が冷たいとか狭いとか文句しか言わなかったんだ」

女勇者「そういう人間なんです、勇者は」

ドラゴン「そうか?」

女勇者「はい、そうです」

女勇者「まあ、あなた達なら安心なんですが」

ドラゴン「何がだ?」

女勇者「こっちの話です」

女勇者「……それよりトッピングです」

ドラゴン「トッピングは何に注意すればいいんだ?」

女勇者「とにかく綺麗にしてください、見た目はかなり重要ですから」

ドラゴン「ああ、わかった」

女勇者「頑張ってください」

~~~~~~~~~~~~~~



勇者「はい、これ」スッ

女大臣「……なんでしょうか?」

勇者「バレンタインの贈り物だ」

女大臣「バレンタインと言うのは―――――――」

勇者「それは分かってる」

暗殺者「勇者にとってバレンタインってのはお世話になってる人にチョコをあげる日なんだ」

女大臣「……」

勇者「いつも世話になってるし」

女大臣「ありがとうございます」

女大臣「では私からも」スッ

勇者「あ、ありがとう」

女大臣「暗殺者様もどうぞ」

暗殺者「ああ、ありがとう」

女大臣「私からは友チョコです」

勇者「友チョコ?」

女大臣「仲の良い人や友達にあげるチョコの事です」

暗殺者「今はそんなのもあるのか」

勇者「とにかくありがとう」スタスタ

女大臣「はい」

勇者「じゃあまた明日」ガチャ

女大臣「わかりました」

暗殺者「残りは誰にあげるんだ?」

勇者「世話になってる人だ」スタスタ

暗殺者「そうか」スタスタ

暗殺者「……うふふ、これで二個目ね」スタスタ

勇者「また突然……」スタスタ

暗殺者「私の言った通り今年は貰えたじゃない」スタスタ

勇者「一つは友チョコでもう一つは男からだけどな」スタスタ

暗殺者「友チョコだってもらえればうれしいでしょ?」スタスタ

勇者「まあ、そうだけどさ」スタスタ

暗殺者「もしかして本命はドラゴン?」スタスタ

勇者「いや、あいつはそう言うの興味無さそうだろ」スタスタ

暗殺者「そうかしら、あなたの為なら作ってくれそうだけど」スタスタ

勇者「バレンタインって言葉自体知らないだろ」スタスタ

暗殺者「……もしかして、ドラゴンのために買ってあげたの?」スタスタ

勇者「そうだよ」スタスタ

暗殺者「ふふっ、かわいい所があるのね」スタスタ

勇者「あ、そう」スタスタ

暗殺者「そう言う事言われても何も感じない?」スタスタ

勇者「ああ、特には感じないかな」スタスタ

暗殺者「……ドラゴンに言われたら?」スタスタ

勇者「うれしい……かな」スタスタ

暗殺者「うふふっ」スタスタ

勇者「なんだよ」スタスタ

暗殺者「何でも無いわ」スタスタ

勇者「ただいま」ガチャ

ドラゴン「あれ、いつの間に出掛けてたんだ?」

勇者「お前等が集中してるって聞いたから窓から出たんだ」

女勇者「そうですか」

暗殺者「ちょっと用事が会ったらしいんだ」

女勇者「用事?」

勇者「……みんな、いつもお世話になってるお礼だ」スッ

女勇者・ドラゴン・暗殺者「……」

暗殺者「ははははは!!」

勇者「なんで笑うんだよ!!」

暗殺者「悪い悪い、突然でびっくりしたんだ」

暗殺者「ありがとな」

女勇者「ありがとうございます」

ドラゴン「……」

勇者「ドラゴンも」

ドラゴン「あ、ああ」

女勇者(ずいぶん緊張してますね)

女勇者「暗殺者、勇者、これを」スッ

勇者「……あ、ありがとう」

暗殺者「悪いな」

勇者・暗殺者「か、かわいい……」プルプル

暗殺者「なんと言うか……乙女って感じだな」プルプル

勇者「テディベアの形してるし、デコレーションも……」プルプル

勇者・暗殺者「はははは!!」

女勇者「そうですか、よほど死にたいようですね」ニッコリ

暗殺者「すまん、あまりにもかわいかったからつい……」

女勇者「それ以上言ったら本気で斬りますよ」

勇者「ごめんごめん、ありがとう」

暗殺者「うれしいよ」

女勇者「いえ」

女勇者「ドラゴン、今ですよ」ヒソヒソ

ドラゴン「あ、ああ」

ドラゴン「勇者―――――――」

妹「ただいま!!」ガチャ

勇者「あ、おかえり」

勇者「はい、チョコ」スッ

妹「ありがとう」

妹「私も、はい」スッ

勇者「?」

妹「チョコだよ」

勇者「あ、ありがとう」

妹「えへへ」

ドラゴン「……」

勇者「あ、なんだった?」

ドラゴン「別に何でも無い……」

勇者「そ、そうか」

勇者「昼飯の準備しなくちゃ」スタスタ

女勇者「完全にタイミングを失いましたね」ヒソヒソ

暗殺者「どうすんだよ」ヒソヒソ

女勇者「こればっかりはドラゴンが頑張らなければどうしようもありません」ヒソヒソ

暗殺者「まあ、そうだけどさ……」ヒソヒソ

女勇者「それにまだお昼、時間はあります」ヒソヒソ

~~~~~~~~~~~~





女勇者「……もう夜ですよ?」

暗殺者「知ってる」

ドラゴン「暗殺者、これ……」スッ

暗殺者「あ、ありがとう」

ドラゴン「……」トボトボ

女勇者「なんでキスが出来てチョコが渡せないんですか……」

暗殺者「俺に聞くなよ」

女勇者「早くしないと、バレンタインが終わりますよ」

暗殺者「だから俺に言ってもどうしようもないだろ」

ドラゴン「……」トボトボ

女勇者「ドラゴン、早く渡さないとどんどん渡しづらくなりますよ」

ドラゴン「……分かってる」

女勇者「だったら早く渡した方がいいです」

ドラゴン「分かってるだが、どうしても……な」

暗殺者「……とにかくお前の頑張り次第だ」

女勇者「そうですよ」

ドラゴン「ああ……」トボトボ

女勇者「……大丈夫ですかね?」

暗殺者「俺達の出来る事はこのくらいだろ」

女勇者「そうですけど……」

暗殺者「見守るしかないぞ」

女勇者「そうですね」

勇者の部屋


勇者「寝るかな……」ガチャ

ドラゴン「……」

勇者「どうした?」

ドラゴン「いや、その……」

勇者「あ、チョコどうだった?」

ドラゴン「うまかったぞ」

勇者「そりゃよかった」ゴロン

ドラゴン「……」

勇者「まだ寝ないのか?」

ドラゴン「ああ」

勇者「……」

勇者「もしかしてなんかあった?」

ドラゴン「何も無いぞ」

勇者「……」

勇者(何なんだろう、この変な空気……)

ドラゴン「……ゆ、勇者、こ、これ」スッ

勇者「え、もしかして……!?」

ドラゴン「女勇者ほどうまくないが作ったんだ」///

勇者「ありがとう、うれしい」

ドラゴン「そうか、良かった」///

勇者「十字架ってのが凝ってるよな」

ドラゴン「え?」

勇者「いや、十字架型ってのがいいよな―――――ぐはっ!?」


勇者の言葉はドラゴンの脇腹へのパンチで遮られる。


勇者「げほげほっ、何!?」

ドラゴン「何でも無い!!」

勇者「なんで怒ってんの!?」

ドラゴン「うるさい!!」ガチャ

勇者「……なんだよ」モグモグ

勇者「あ、普通にうまい」モグモグ

勇者「でもなんで十字架?」

勇者「……まあいいか」ゴロン

勇者「……」

ドラゴン「……」ガチャ

ドラゴン「……」モゾモゾ

勇者「……普通にうまかったぞ」

ドラゴン「……そうか」

ドラゴン「勇者、あれは十字架じゃなくて刀だ」

勇者「あ、そうだったんだ」

ドラゴン「なのに貴様は十字架と―――――」

勇者「ごめんごめん」

ドラゴン「ふんっ、今回は許してやる」

勇者「ありがとな」

ドラゴン「それはどれへのありがとうだ?」

勇者「全部」

ドラゴン「……ふふっ」

勇者「だから足を絡めるな、冷たいから」

ドラゴン「たまにはいいだろ」

勇者「毎日じゃねぇか」

ドラゴン「嫌か?」

勇者「……足だけだぞ」

これでバレンタイン特別編は終了です。

明日は丸一日パソコンが触れないので、日曜日の午後九時頃に新しいスレを立てて雪の町編を投下していこうと思います。

では新スレで会いましょう。

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