杏子「気に入らねー魔法少女どもをボコボコにしてやる」(1000)


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※このSSは杏子ちゃんが極悪で残虐な行為を繰り返します。ご注意ください。



杏子「この近辺の魔法少女は多過ぎんだよ」

杏子「巴マミ、暁美ほむら、美樹さやか、鹿目まどか、暁美ほむら……そしてアタシ」

杏子「六人もいるじゃねえか」

杏子「……」

杏子「あ、五人だった」

杏子「まあ多過ぎることに変わりはねぇな」


杏子「しかもアイツラ、正義の味方を気取ってやがるのが気に入らねー」

杏子「アタシは一人で戦ってるのに、アイツラは群れて行動してるのもムカつくな」

杏子「それに最近じゃアタシの縄張りでも魔女退治してやがる」

杏子「おかげでアタシの獲物が減っちまった」

杏子「……少し前までは狩り放題だったのにさー」

杏子「魔女が減ったからすることがなくて……毎晩グッスリ眠れちまう」


杏子「全部アイツラのせいだ!」

杏子「バイトを始めるくらい暇な時間が出来ちまったのも……」

杏子「バイト先の賄いメシが美味いのも……」

杏子「給料あるから着る物にも困らなくなったのも……」

杏子「全部アイツラのせいだ!」

杏子「こうなったらアイツラ全員に、お礼参りしてやる……!!」


杏子「まずはそうだな……美樹さやかを狙うか」

杏子「アイツは一番気に入らないんだよ」

杏子「大した実力もないくせに突っ掛かってきたり」

杏子「他人の為に願いを使う優しさを持ってたり」

杏子「そのくせ時折見せるフツーの女の子らしさが可愛いのもムカつくんだよな!」

杏子「クックック……アイツは病院送りにでもしてやるか!」


~放課後~

さやか「今日は一人で下校中のさやかちゃんです」

杏子「おっ……いたいた。都合よく一人で歩いてやがる」

杏子「しかもイヤホンして音楽を聴いてるとはな……ふふっ」

杏子「周囲への警戒を怠るとどうなるか……その身体に教えてやるよ!」

ブブー!

杏子「ん……!? さやかの方へトラックが突っ込んで……!」

トラック「危なーい!」

キキー! ドカーン!

さやか「きゃあああ!?」


さやか「あっ……ぐっ……!!」

さやか「あ、足が、トラックの下敷きに……」

さやか「痛い……痛いよぉ!」

さやか(魔法少女に変身すればこれくらい耐えられるけど……!)

トラック「す、すみません! 大丈夫ですか!?」

さやか(駄目だ、人に見られちゃう……こんな状況じゃ魔法少女になんてなれないっ!)

さやか「誰か……誰か助けて!!」


杏子「……何てことだ!」

杏子「アイツを病院送りにする絶好のチャンスじゃねーか!」

杏子「行くぜ、変っ身!」キュピーン





杏子「情けねー恰好してるじゃないか、美樹さやか!」

さやか「あ、あんた! っ……なんで人前で魔法少女になってんのよ!」

杏子「ああん? んなことアンタには関係ないだろ?」

杏子「今からアンタは病院送りにされるんだからなあ!」

さやか「なっ……!?」

さやか(コイツまさか、動けないあたしを痛めつける気じゃ……!)

杏子「おりゃあああ!」

ドカーン!


さやか「っ……!?」

さやか(トラックを吹っ飛ばした……!?)

杏子「さーて覚悟しな、ソッコーで病院送りしてやる!」

がしっ

さやか「え、ちょっと待って……」

杏子「いくぜぇぇぇ!」

さやか「ひゃあああああ!」

ばひゅーん

トラック「と、飛んでいった……何者なんだ彼女は……」


~病院~

杏子「無事にさやかを病院送りにしてやったぜ」

杏子「医者の話じゃ入院は確実らしい」

杏子「へんっ! ざまーみろってんだ」

杏子「あんな奴、しばらくは病院でのんびり過ごして、疲れを癒しちまえばいいんだ!」

杏子「……後は仕上げに、言葉攻めして精神的に追い詰めてやるとするか」

杏子「面会の許可が出る日が楽しみだね! あーはっはっは……!」


~病院・さやかの病室~

まどか「でも良かった、さやかちゃんが無事で……」

マミ「トラックに轢かれた、なんて聞いたから凄く心配したのよ?」

さやか「いやー、怪我自体は骨折程度だったんだけどさ」

さやか「能力を使えば簡単に治せるけど……お医者さんの前じゃ使うわけにもいかなかったから」

ほむら「貴女にしては賢明な判断ね、美樹さやか」

まどか「もう! ほむらちゃんたら、そんな言い方しちゃ駄目だよ!」


マミ「……ところで、貴女を助けた謎の人物がいるっていう噂を耳にしたんだけれど」

さやか「あ、うん……あいつに助けられたんだ。佐倉杏子に」

まどか「杏子ちゃんに?」

ほむら「意外ね……そういう人助けとかしないタイプだと思っていたけれど」

さやか「それがさ、訳わかんないんだよ……あいつさ、人前で変身しちゃったんだよ? あたしを助けるために」

ほむら「何ですって? 白昼堂々と魔法少女の力を使ったというの?」

さやか「うん。あいつ、他人に正体を知られるのがトラウマなくせにね……」

マミ「そうだったわね……彼女は確か、お父さんに魔法のことを知られて……」

まどか「…………」


まどか「……きっとさ、杏子ちゃんは……」

さやか「?」

まどか「さやかちゃんのことが大好きなんだよ!」

さやか「っ!! ば、バカ! 変な冗談はよしてよ!」

まどか「ううん、冗談で言ってるわけじゃないよ。杏子ちゃんはきっと、さやかちゃんのことが大好きで……」

まどか「さやかちゃんと友達になりたいって思ってるんだよ!」

まどか「だから魔法を使うことも躊躇わなかったんじゃないかな?」

さやか「そう、なのかな……? でも……」


マミ「……ねえ美樹さん。貴女はどう思ってるの?」

さやか「え……?」

マミ「貴女は佐倉さんに助けられて、感謝している?」

さやか「う、うん。ちょっとおせっかいな気もしたけど、まぁ一応は感謝してる……」

マミ「ならその気持ちに正直になるべきよ。きっとその方が良い関係を築けるわ」

マミ「私たちと彼女は今までライバルみたいな関係だったから、急に仲良くなるのは無理でも……」

マミ「少しずつ、歩み寄っていけたらいいなって私は思うの」

さやか「マミさん……」


ほむら「……佐倉杏子と敵対関係にあっても、何も利がないわ」

ほむら「彼女は魔法少女として優秀な部類に入るもの」

ほむら「これを機に、彼女を仲間に引き込むのも良いと思う」

さやか「……ははっ、えらそーな言い方してるけど、アンタもアイツと仲良くしたいってわけね?」

ほむら「…………」

ほむら「否定はしないわ」


さやか「……みんなやっぱりアイツと仲良くしたいって思ってるんだ?」

まどか「もちろんだよ!」

マミ「同じ魔法少女だもの、お友達になりたいと思ってるわ」

ほむら「……戦力になる人間を拒む理由はないわ」

さやか「……そっか、みんなが言うなら仕方がないや。あたしもアイツと仲良くしてみるかな」

マミ「ふふ、決まりね? ……私たちの今後の目標は、佐倉さんと仲良くなること。これで良い?」

まどか「はいっ!」

さやか「うんっ!」

ほむら「……ええ」


~数十分後・さやかの病室~

杏子「よう、美樹さやか! 相変わらずシケた顔してるね」

さやか「……何よ? お見舞いに来てくれたわけ?」

杏子「いいや? 魔法少女のくせに事故で怪我するようなマヌケを笑いに来ただけさ」

さやか「……ふーん。で? 笑えるツラしてた?」

杏子「ああ傑作だね! 気分が晴れ晴れするな」

さやか「むがー!! アンタ何なのよその態度は! ちょっと見直しかけてたのに!」

杏子「見直す? 馬っ鹿じゃねーの? どこにそんな要素があったんだよ」

さやか「あーもう! 用がないなら帰ってよ!」


杏子「おっと、そういうわけにはいかないさ。まだ話があるからね」

さやか「何よ?」

杏子「アンタ、しばらく入院するんだろ?」

さやか「……ほんの数日だけどね。いきなり魔法で治癒したら不自然だし」

杏子「そのあいだ、巴マミたちの戦力に穴が開くわけだ」

さやか「っ!! あ、あたしだってホントは皆と戦いたいよ! でも……」



杏子「ならアタシが、アンタの代わりに戦っておいてやるよ」


さやか「え……?」

杏子「アイツラと組んで、魔女を退治しておいてやる」

さやか「い、いいの? だってアンタ、あたし達のやりかたは気に入らないって、ずっと一人で戦ってきてたのに……」

さやか「なのに、あたしなんかのために……協力してくれるっていうの?」

杏子「勘違いすんなよ? アタシはグリーフシードが欲しいだけなんだからな」

杏子「勿論アンタの代わりに戦うんだから、アンタの取り分をアタシのモンにさせてもらうよ?」

さやか「ちょ……な、なによそれ!! ずるくない!?」

杏子「あっはっは! どーだい、悔しいだろ?」

さやか「こ、困るわよ! アタシのソウルジェムが真っ黒になったらどーしてくれんのよ!」

杏子「なーに心配すんな、アンタがどーしてもっていうならちょっとぐらい分けてやる」



杏子「……だからさ、アンタは余計なこと考えないで大人しく寝てりゃーいいんだよ」



さやか(あ……)


さやか(……そっか、分かっちゃった)

さやか(コイツ、あたしに気を使ってこんな言い方してるんだ)

さやか(……何よ、悪者ぶっちゃってさ。馬鹿みたい!)

さやか(でも……)

杏子「あん? なんだよ黙り込みやがって、そんなに悔しいのか?」

さやか「……うん、くやしいよ」

杏子「そーかそーか! ははっ、こりゃ気分いいぜ!」

さやか(……ちょっとだけアンタがカッコ良く思えちゃってさ)


杏子「ま、とにかくだ。アンタは入院生活を満喫してればいいよ」

杏子「そのあいだにアタシは大活躍さ! アイツラからも信頼されまくるだろーね」

杏子「退院する頃にはアンタの居場所なんてなくなってるかもしれねーな? ふふっ」

さやか「バーカ、そんなわけないでしょ。アンタじゃあたしの代わりなんて務まるわけないじゃん」

さやか「すぐに退院して、あたしと皆のコンビネーションってやつをみせてやるんだから!」

さやか「だから……」

さやか「それまで待ってなさいよね……杏子」

杏子「ふん……楽しみにしてるよ、さやか」


――病室から出た――

杏子(くっくっく……さやかの不安を煽りまくってやったぜ!)

杏子(『自分は要らない子なんじゃないか』と、震えるアイツの姿が目に浮かぶな)

杏子(アタシ自身が巴マミのグループに入ることで、さやかの地位を奪いつつ……)

杏子(更に他の連中の弱みも握る)

杏子(我ながら恐ろしい策を思いついたもんだ。ふふ……)

杏子(さて、お次は誰を陥れてやろうかな……!)


次回、巴マミ編へ続く。

杏子「そーだ、マミの家に居候して精神的苦痛を与えてやろう!」


当スレでは杏子ちゃんにしてほしい残虐行為を募集しております。

どうぞお気軽にご意見、ご要望をくださいませ。

全てのお声を反映することは出来ませんが、可能な限り物語に組み込んでいきたいと考えております。


      /: : : : : : : : : :/=ミ__V\ V: : : : /     l: ハ: : : : : : : : /: : : : : : : : :}
      l : : : l :!: : : :〃  二ヾミ、\V: : :/     l: ! l: : : : : : : /: : : : : : : : : :!
      {: ハ´l:ハ: : : / ん: . : } 〉` ゝ∨{     // !: : : : : :/j: : : : : : : : : : }
      {: ハ Vヘ: : { _{‐し: ソ       ∨`ー--/─/:-:、:_/ l : : : : : : : : : :,′
      ∨ !∨ ヽ:{  ` ‐´             テ二/=≦ノ`ヽ: : : : : : : : : :l
         !: {  V   //             ん: : :ィ´ ヾz/:/: :/: : : : : : !
         Vハ             ´         {‐:し :リ / /:/: :/: : : : /: :/
          Vハ      ┌v--  _      `'ー'く    /:イ: :/: : : : //:/
         l: : :\      {     `ーv┐/ / / / /://:/: : : : //:/
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  /⌒\/ ヽ  く          \/  ヽ 、/⌒ヽ : : : : : : : !

  ※このSSでは杏子ちゃんが極悪で残虐な行為を繰り返しますが
   お待たせしたみたいで申し訳ございません。ご注意ください。


~マミの家~

杏子「と、いう訳でだ。さやかが復帰するまでアタシもマミ達と一緒に戦うよ」

マミ「佐倉さんが協力してくれるなんて心強いわ、これから宜しくね!」

杏子「おう、任せときなって。さやかの10倍は役に立ってみせるからさ!」

ほむら「貴女と美樹さやかの実力差を考えれば、それくらいの働きは余裕でしょうね」

まどか「もうっ、ほむらちゃんたら! またそんな言い方をして……!」

ほむら「ご、ごめんなさい。冗談よ」

マミ「うふふ」


マミ「……ところで佐倉さん、以前から聞きたかったのだけれど」

杏子「え?」

マミ「貴女って普段、どこで寝泊まりしているの?」

杏子「ああ、基本的に野宿だよ。たまにホテルとかにも泊まるけど」

まどか「ええっ!? の、野宿っ?」

マミ(……やっぱり)

まどか「危なくないの? その、泥棒に遭ったりとか……」

杏子「なーに平気だよ。魔法少女なんだし」

ほむら「……ある意味尊敬するわ、その神経の図太さは」

杏子「よせやい照れるだろっ」


マミ「……うん、わかりました」

杏子「ん?」

マミ「今日から佐倉さんには私の家で暮らしてもらいます!」

杏子「なっ……!? オイ、本気で言ってるのかよマミ?」

マミ「もちろん私は本気よ。いくら魔法少女だからって、年頃の女の子が野宿だなんて良くないわ」

マミ「だからね、佐倉さん。私と一緒に暮らしましょう?」

杏子「いや、でも、そんなの悪いし……」

マミ「遠慮なんてする必要ないわよ。どうせ私は一人暮らしなんだから」

杏子「う、うーん……」


ほむら「……巴マミの言う通りにするべきだと思うわ。いざというときに貴女の所在が分からないと不便だもの」

ほむら「まどかもそう思うでしょう?」

まどか「えっ? ……うん、そうだね! それに一緒に過ごせば、もっと仲良くなれると思うし!」

マミ「ふふ。ほら、二人もこう言ってるわよ?」

杏子「…………」

杏子「分かったよ。マミ、アンタの家に住ませてもらうことにする」

マミ「うん、決定ね! それじゃあ改めて……よろしくね、佐倉さん♪」

杏子「ああ、よろしくな。世話になるよ」


杏子(…………)

杏子(上手くいったな。予想通りの展開だ!)

杏子(甘ちゃんなマミならアタシを放って置かないだろうと思ったよ)

杏子(おかげで滞りなく計画が進められる)

杏子(……今回の目的は、マミの家を乗っ取ることだ!)

杏子(見滝原市をアタシの縄張りとして管理することになった場合、拠点が必要になるだろうからな)

杏子(まずはマミの弱みを握って、精神的に追い詰めて……)

杏子(そんでもってこの家をアタシのものにしてやるぞ!)

杏子(それに……マミはこの街の魔法少女たちにとってリーダー的存在だからな)

杏子(しかも美人だし、料理も上手だし、優しい、スタイル抜群だし……)

杏子(アイツが腑抜けちまえば他の連中の士気もガタ落ち。アタシの天下が待ってるっていう寸法さ)

杏子(くくく……たっぷり可愛がってやるよ、マミ)


ほむら「……でも寝るところはどうするつもりなの? ベッドは二つもないでしょう?」

杏子「あ、そっか。なんだったらアタシがソファーで寝るぞ?」

マミ「ふふ……大丈夫、こんなこともあろうかと来客用のお蒲団が用意してあるのよ!」

まどか「さすがはマミさん! 備えは万全ですね!」

ほむら「ちなみにその蒲団が役に立ったことは?」

マミ「一度もないわ。新品同然よ」

杏子「ふーん。友達が泊まったりとか、そーいうことは無かったんだな」

マミ「…………うん」


~翌朝、マミの家~

マミ「それじゃあ私は学校に行くけど……散らかしたりしないでね?」

杏子「んなことしねーって」

マミ「出かけるときはちゃんと鍵をかけるのよ?」

杏子「ガキじゃねーんだからそれくらい分かるよ」

マミ「お昼代はテーブルの上に置いたからね? お腹が空いたら何か買うのよ?」

杏子「……なあ、もしかしてアタシをからかってるのか?」

マミ「あら、分かっちゃった?」

杏子「……さっさと学校行けよっ!」

マミ「うふふ……いってきます♪」

ガチャッ

杏子「…………」

杏子「よし、行ったな。今のうちに家中を漁って……」

杏子「マミの弱点をゲットしてやるぞ!」


杏子「何かねーかな」

ガサゴソ

杏子「おっ、日記じゃん。読んでみるか」

杏子「ふむふむ、こいつは面白い……」

QB「……何をしてるんだい、杏子」

杏子「見れば分かるだろ? マミのプライベートを暴いてるんだよ」

杏子「くくっ……そうかそうか。アイツ、体重が増えたことを悩んでるんだな」

QB「他人の秘密を盗み見るなんて……あまり褒められた趣味じゃないと思うけど」

QB「何故そんなことをしているのかな?」

杏子「もちろんマミの奴を陥れてやるためさ」

QB「なんだって!? 杏子、まさかキミは……マミを裏切るつもりかいっ!?」

杏子「っ!? なんで分かったんだ!?」

QB「僕の洞察力を甘く見ないでよね、お見通しだよ!」

QB「マミの気持ちを踏みにじるなんて許せない! これは報告させてもらうからね!」

杏子「ちっ! こーなったら仕方ねぇな……テメェも可愛がってやるよ!」

QB「な、何をっ? やめっ……うわああ!」


~浴室~

杏子「はーいお客様ー、痒いところはございませんかー」

わしゃわしゃ

QB「あー、もうちょっと尻尾のほうを……」

杏子「はーい」

QB「そこそこ、ふぅー……いいキモチ」

杏子「シャンプー流しますねー、目をつぶってくださーい」

シャワー

QB「んー……」

杏子「はい、おしまいでーす。お疲れ様でしたー」

QB「いやーサッパリしたー」


QB「ありがとう、おかげで生き返った気分だよ!」

杏子「そいつは良かった。あと、ついでにコレをやるよ」

QB「なんだい、コレは?」

杏子「ノミ避けの首輪だよ。着けてるだけで効果があるスグレモノさ」

QB「それはありがたい。マミはこういうことに気が利かなくてね……」

杏子「そうなのか? 意外だな」

QB「マミってば僕のことを妖精さんか何かだと思ってるらしいんだよ」

QB「ノミ、ダニ対策なんて考えてもくれないんだ」

杏子「なるほど、そりゃ大変だな。ま、これからはアタシが居るから心配すんな」

杏子「ただしその代わりに……分かるだろ?」

QB「……うん、分かってるよ……君がマミに何をしようと、僕は邪魔をしない」

QB(ごめんよ、マミ……)

>>91
裸か!?裸なのか!?


杏子「さてと。マミが学校に行っている間に『仕込み』を済ませてやるかな」

QB「仕込み?」

杏子「ああ、美味しい美味しいカレーを作ってやろうと思ってね」

QB「なんだ、意外と優しいところもあるんだね、杏子は」

杏子「バーカ、んな訳ねーだろ。これは嫌がらせなんだよ」

杏子「マミの奴、自分が太ってると思い込んでるらしいからな。ウマいモンを腹一杯食わせて苦しませてやるんだ」

QB「ひ、酷い……! 乙女の悩みを嘲笑う行為だ!」

杏子「くだらねーこと考えてるアイツが馬鹿なんだよ」

杏子「痩せる必要なんて無いくらい理想的な体型のくせにダイエットしようだなんてな」

杏子「しかも日記によると食事制限で痩せようとしてるみてーだし……ますます馬鹿げてるぜ」

杏子「くっくっく……アンタの思い通りにはさせねーからな、マミ」


QB「それで、まずはどうするんだい?」

杏子「冷蔵庫には殆ど食材が入ってなかった。まずは材料の買い出しだな」

QB「と、なるとお金が必要だよね……やっぱりマミのお財布に手を出すの?」

杏子「馬っ鹿、んなことしてバレたら追い出されちまうかもしれないだろ」

杏子「ここは自腹を切るんだよ。バイトで稼いだ金でな」

杏子「アタシはこの家に居座り続けて、最終的に占領するのが目的なんだ。そのためには慎重に動かねーとな」

QB(なんて狡猾なんだ……僕なんかじゃとても太刀打ちできそうにない……!)


――数時間後――

杏子「そんなわけで、カレーを作ったぞ」

QB「充分に煮込まれてトロリとした茄子が食欲をそそるね」

杏子「佐倉杏子特製のスペシャル野菜カレーだ。美味くて美味くて食べ過ぎちまうだろうよ」

QB「……その分、マミは苦しむことになるんだね……」

杏子「それだけじゃねーぞ。なんと隠し味にアタシの愛情がたっぷり込められてるんだ!」

杏子「くくっ、アタシみたいな奴の愛情入りだなんて知ったら……マミはさぞかし困惑するだろうよ」

QB「見事な搦め手だね……一分の隙も見当たらないよ」

杏子「そーだろ? くっくっく……マミの反応が楽しみだな」


~放課後~

マミ(ふうっ、少し遅くなっちゃったわ)

マミ(先生ったらいきなり用事を押し付けるんですもの……)

マミ(早く帰らないと佐倉さんが心配だわ。ちゃんとお昼御飯は食べたのかしら?)

マミ(今は何してるのかな……出かけてる可能性もあるけど)

マミ(もしかしたら退屈して寝てたりするかもしれないわね)

マミ(……ふふっ)

マミ(私ったら佐倉さんのことばかり考えてる……)

マミ(でも、いいものね。帰りを待つ人が居るっていうのは)


~マミの家~

マミ「ただいまー」

QB「あ、マミ! お帰りなさい!」

マミ「……あら? キュゥべえ、お洒落な首輪を着けてるじゃない。どうしたの?」

QB「杏子から貰ったんだよ、良いでしょう?」

マミ「佐倉さんから?」

QB「うん! しかもそれだけじゃなくてね、さっきシャンプーもしてもらったんだ!」

QB「全身サッパリして気持ち良かったよ! また今度してもらう約束もしたんだ♪」

マミ「そうなの……良かったわね」

マミ(ちょっぴりガサツなイメージがあったけど……優しいのね、佐倉さんって)


マミ「でもキュゥべえったらズルいじゃない。自分だけ佐倉さんに色々してもらって」

QB「えへへ……」

マミ「……ところで、その佐倉さんは何処に居るの?」

QB「杏子なら買物に出掛けたよ。ゴハンを炊こうとしたらお米が無かったから、慌てて買いに行ったんだ」

マミ「あら、そうなの……悪いことしちゃったわね」

QB「そろそろ帰ってくる頃だと思うけど……」

杏子「うーっす」

QB「あっ、噂をすれば……だね」

QB(もう帰ってきちゃった、か……)


マミ「お帰りなさい、佐倉さん」

杏子「おー、もう帰ってたのか。お帰りマミ」

マミ「ええ、ただいま。買物に行ってくれたんですって?」

杏子「そーだよ。ほら、米だ」

杏子「やっぱカレーにはライスがないと話にならないからな!」

マミ「……カレー?」

杏子「ふふふ……そうさ! 今日の晩御飯はアタシの手作りカレーなんだぞ!」

マミ「まあ! 佐倉さんが作ってくれたの? ……でもどうして急に?」

杏子「そりゃ勿論マミに食べさせるために決まってるだろ?」


マミ「えっ……わ、私のために?」

杏子「……ま、そーいうこった」

マミ「ふふっ……ありがとう、すっごく嬉しいわ!」

杏子「たくさん作ったからな。腹一杯食べてくれよ?」

マミ「ええ、喜んで頂くわ。夕食の時間が楽しみね!」

マミ「でもその前に……今日の魔女退治に出掛けましょう? 鹿目さんも暁美さんも待ってるわ」

マミ「それに、いっぱい身体を動かしたほうが、ご飯も美味しく食べられるでしょうしね?」

杏子「! ……そうだな」


魔女「うわー」

杏子「とりゃー」


――無事に魔女退治を終え帰宅した――

杏子「さすがに魔法少女が四人もいれば魔女退治も余裕だったな」

マミ「ええ、そうね。私なんか攻撃に参加するタイミングが殆ど無かったわ」

マミ「佐倉さんが大体の敵を倒しちゃうんですもの」

杏子「マミに余計なカロリー……じゃなかった、魔力を消費させる必要もないだろうと思ってな」

杏子「あれくらいの雑魚ならアタシに任せてくれればいいんだよ」

マミ「そういうわけにもいかないでしょう。私達はチームなんだから」

杏子「へいへい。まあその辺の議論は……メシでも食べながらにしないか?」

マミ「そうね。佐倉さんが作ってくれたカレー、ご馳走になるわ」


…………。

マミ「美味しい……!」

杏子「だろ? バンバンおかわりしてくれよ?」

マミ「ええ! これは何回もおかわりしちゃいそうだわ……」

杏子「ふふっ……そいつは良かった。期待していた通りのセリフが聞けて嬉しいよ」

杏子「さーて、アタシも食べるかな。……いただきます」

杏子「もぐもぐ……うん、旨い! 我ながら良く出来てるな!」

杏子「こりゃアタシもおかわりが止まらなくなりそーだぞ」

マミ「うふふ……よかったわね」

杏子「ああ。マミも好きなだけ食って良いからな?」


杏子「……ま、カレーって結構カロリーあるんだけどさ」

マミ「ちょ! ちょっと、そういうこと言うの止めてよ……」

杏子「あっはっは、気にすんなって! マミは全然太ってないんだから平気だろ?」

マミ「そ、そーかしら? 私、太ってない?」

杏子「マミのどこが太ってるって言うんだよ? 見事なスレンダー美人じゃねーか」

マミ「そう? そうかしら? えへへ……」

杏子「あ、でも美人って言うのは言いすぎだったかな」

マミ「……もうっ! わざわざ訂正しなくてもいいのに!」

杏子「あははっ!」

マミ(佐倉さんったら、一言多いんだから……)


マミ(……それにしても)

マミ(誰かに夕食を作ってもらうなんて、何年ぶりかしら……)

マミ(こんなふうに一緒に食卓を囲むなんてこともずっとなかったし……)

マミ(お昼はいつも鹿目さん達と食べてるけど……そういうのとはまた違うのよね)

マミ(あったかい御飯があって、団欒があって……)

マミ(……なんだか思い出しちゃうなぁ、昔のこと……)

マミ(…………)

マミ(……お父さん……お母さん……)


杏子「……マミ? 泣いてるのか?」

マミ「え……? あ……」

マミ「……ご、ごめんなさい、みっともないところ見せちゃって……」ゴシゴシ

杏子「もしかしてカレー辛過ぎだったか?」

マミ「……違うの、そんなことないわ」

マミ「美味しくて、幸せだから……涙が溢れちゃったの……」

杏子「そーかそーか、ならジャンジャン食え! もっと幸せな気持ちになれるさ」

杏子「……満腹になりゃ、悲しいことも嫌なことも……少しの間だけは忘れられるだろーしな」

マミ「……うん。ありがとう」

杏子「いいから食いなって。ほら、おかわり分けてやるよ」


――食事を終えた――

QB『マミ、泣いていたね』テレパシー

杏子『ああ、そーだな。泣くほどカロリーが気になったんだろ』テレパシー

QB『……あの子の涙を見て、キミは何とも思わないの?!』

QB『あんな……あんな酷いことをして、何とも思わなかったの?!』

杏子『何も感じないわけないだろ? サイコーに気分が良いさ!』

杏子『手作りのメシを誰かに食べてもらえるのが、こんなに楽しいことだったなんてな……くっくっく』

QB『杏子……キミってやつは……!!』



杏子(マミを精神的に追い詰める作戦は大成功だ)

杏子(これならこの家を乗っ取るのも余裕だな……ふふ)

杏子(……よし。今夜、一気に勝負をしかけてやるぞ!)


~その夜・マミさんinベッド~

マミ(はぁ……さっきは格好悪いところ見せちゃったなぁ)

マミ(お父さんとお母さんを思い出して泣いちゃうなんて……)

マミ(……もう立ち直れた気でいたけれど……私、寂しかったのね)

マミ(うん……そうなんだわ。だから佐倉さんを強引に泊まらせた……善意の振りをして)

マミ(嫌な子ね、私。自分の心を満たすために他人を利用したんだわ)

マミ(…………)

マミ(数日したら佐倉さんは、この家を出て行っちゃうのよね……きっと)

マミ(美樹さんが復帰するまでの協力関係ですもの……)

マミ(私なんかとずっと一緒にいてくれるはずがないわよね……)


杏子「……まだ起きてるか?」

マミ「あっ……佐倉さん? どうしたの?」

杏子「なーに、マミと話がしたいと思ってさ」

杏子「邪魔するぜ。もっと奥に詰めてくれよ」

マミ「きゃっ? ちょっ、ちょっと……何で私のベッドに入ってくるの?」

杏子「いーだろ別に、取って食おうってんじゃないんだからさ」

杏子「まあ駄目だって言っても無理矢理入れさせてもらうけどな」

マミ「もう……強引なんだから……」


杏子「……うん、やっぱ二人で寝ると少し狭いな」

マミ「私から力尽くで奪っておいて……そんなこと言うの?」

杏子「いや、この狭さがちょうどいいんだよ」

杏子「……今夜は寝かさないからな、マミ」

マミ「えっ……!?」

マミ「ま、待って! それどういう意味で……な、何をする気!?」

杏子「何って、さっき言ったじゃねーか。マミと話がしたいんだよ」

マミ「あ……そ、そう。変な意味じゃないのね」

杏子「変な意味?」

マミ「な、何でもないから! それで、話って何?」


杏子「……別に特別な話があるってわけじゃないんだ」

杏子「ただ、マミと色々なことが話したいだけさ」

マミ「色々って言われても……良く分からないわ」

杏子「うーん、じゃあさ。好きな食べ物はなんだ?」

マミ「え? そうね……やっぱりケーキとか?」

杏子「好きな色は?」

マミ「黄色ね」

杏子「惚れてる男はいるのか?」

マミ「い、いないわよそんなの」


…………。

マミ「ふあ……」

マミ(ちょっと眠くなってきちゃった……でも佐倉さんは寝かせてくれそうにないわね)

杏子「んーと、じゃあ次は……」

マミ「……ねえ、さっきからずっと質問ばっかりだけど、楽しいの?」

杏子「ん? ああ、楽しいぞ。マミのことをたくさん知れるのはさ」

マミ「……私のことを?」

杏子「そーさ。だから……次はこのおっぱいについて聞こうかな!」ガバッ!

マミ「きゃ!? や、やだっ、揉まないで……!」

杏子「……すげえな。いったい何でこんなに大きくなったんだ?」モミモミ

マミ「し、知らないわっ……知らないから、止めっ……ひゃん!?」


杏子「おー。マミがそんな声出すなんてな……こりゃ面白いや、ここが弱点なんだな」モミッ

マミ「あひっ!? お、お願いだからっ……そんなとこ触らないで、佐倉さんっ!」

杏子「ふっふっふ。どーしようかな?」

杏子「そうだな……止めてやってもいいけど、その代わりにアタシの要求を呑んでもらおうかな?」

マミ「よ、要求?」

杏子「どーする? ほらほら、早く決めないともっと激しくしちまうぞー?」モミモミモミモミ

マミ「あんっ……!! わ、分かったから!! なんでも言うこと聞くからもう止めて!」

杏子「言ったな? よーし、それならこれくらいで勘弁してやろう」

マミ「はぁっ、はぁっ、はぁっ……た、助かった……」


マミ(さ、佐倉さんがこんなスキンシップをしてくるなんて思わなかったわ……)

マミ(変な汗かいちゃったじゃない、もぅ……)

マミ(……ちょっぴり楽しかったけど、ね)

マミ(夜更かしして、一緒になってはしゃいで……)

マミ(ふふ……まるで普通の女の子みたいよね)

マミ(…………)

マミ(……やっぱり、佐倉さんにはこの家に居て欲しいな)

マミ(私の我が儘だけど……寂しさを紛らわしたいだけなのかもしれないけど……)


杏子「さーて、約束通りアタシの言うことを聞いてもらうぞ」

マミ「な、何かしら? 痛いのとかは嫌よ?」

杏子「ふっふっふ……どーだろうなぁ?」

マミ(ま、まさかエッチなことだったりしないわよね……?)

杏子「よし、それじゃあアタシからの要求は……」



杏子「アタシを、マミの家族にしてくれ」



マミ「え……? 家族……?」

杏子「そうさ、家族だよ」

マミ「それって……えと、つまり、どういう意味で……?」


杏子「……アタシはさ、サイテーな人生を送ってきたんだ」

杏子「家族を失って、汚いことにも手を染めながら生きてきた」

杏子「今更そのことを後悔する気はないよ。過ぎたことだからな」

杏子「でもさ……」

杏子「これからもずっとそんな人生を送るのかって思うと……怖いんだ」

杏子「いつかアタシは壊れちまうんじゃないかって」

杏子「辛くて、嫌で、心が折れちまうかもしれないって」

杏子「そう考えると……怖いんだ」

マミ「…………」


杏子「でもな……」

杏子「魔女と戦って傷ついても、生きることに疲れても」

杏子「……帰る場所さえあればアタシは頑張れると思うんだよ」

杏子「あったかい寝床があって、あったかい飯を食えて……」

杏子「そんでもって……マミがいてくれれば、アタシは頑張れる」

杏子「きっと、このサイテーな人生も怖くない」



杏子「だからさ、この家を……此処をアタシの帰る場所にさせてくれよ」



マミ「佐倉さん……」

マミ(……貴女は、こんな私なんかを必要としてくれるの?)

マミ(私の家族になってくれるの?)

マミ(私と……一緒に居てくれるの?)


杏子「……い、嫌だなんて言ったらまたおっぱいモミモミするぞっ」

杏子「今度はマミが泣くまで揉むのを止めないぞっ」

杏子「それでも嫌だって言うなら……」

杏子「……アタシは……大人しく出て行くよ」

マミ「…………」

マミ「……馬鹿ね」

杏子「え?」

マミ「私が佐倉さんを……大切な家族を追い出すわけないじゃない」

杏子「……!」


マミ「私もね、ホントは寂しかったの」

マミ「寂しさを埋めるために誰かに傍に居て欲しくて……」

マミ「だから佐倉さんをウチに誘ったのよ」

マミ「でも、きっと貴女はいつか居なくなってしまうと思ってた」

マミ「なのに……」

マミ「なのに貴女の方から一緒に居たいなんて言ってくれて……」

マミ「私……こんなに嬉しい気持ちになっちゃった……」

杏子「マミ……」

マミ「佐倉さん……こんな私だけど……家族と呼んでくれる?」

杏子「……勿論さ!」

マミ「……ありがとう、佐倉さん……!」


マミ「……うふふ、嬉しい。これで私たちは家族ね?」

杏子「そうだぞ。……やっぱり出ていけなんて言ったら泣くからな!」

マミ「ふふ、そんなこと言わないわよ」

マミ「もうこの家は私と佐倉さんの家なんだから」

杏子「へへ……そっか」

杏子「そうだ、これからもメシはアタシが作るよ」

杏子「マミが幸せ太りするくらい美味いメシを毎日作ってやる!」

マミ「ふ、太るのはちょっと困るわね……」

杏子「あはは!」


――数時間後――

杏子「ZZZ……」

マミ「今夜は寝かさない、なんて言っておいて……先に寝ちゃったのね」

マミ「しかも思い切り抱きついてくれちゃって。私は抱き枕じゃないのに、まったくもう……」

杏子「むにゃむにゃ……ぁ」

マミ「?」

杏子「おかあ……さん……」

マミ(あ……)

マミ「お母さん、か……」

杏子「すぅ……すぅ……」

マミ「大丈夫、これからは私が一緒よ……もう何も怖くないからね?」

ギュッ……


――翌朝――

マミ「ふあぁ……おはよう、佐倉さん」

杏子「おう、遅かったな。もう朝飯の準備は出来てるぞ」

マミ「……佐倉さんのせいで寝不足なのよ……」

杏子「ふーん、アタシは全然眠くないけどな?」

マミ(……私より先に寝てたものね)

杏子「ま、別に良いかそんな細かいことは。それより朝飯だ!」

杏子「昨日のカレーの残りに手を加えて、ホットサンドにしてみたんだけど……どうだい?」

マミ「美味しそうね。喜んでいただくわ!」

杏子「へへ……」


マミ「……ところで、佐倉さん。昨夜の話だけど……」

杏子「うん?」

マミ「昨日も話した通り、今後はこの家を自分の家だと思ってくれて構わないわ」

マミ「でも、私から一つだけ条件を出そうと思うの」

杏子「……な、なんだ?」ゴクリ

マミ「……杏子って呼ばせて頂戴?」

杏子「へ?」

マミ「だって私たちはもう家族でしょう? いつまでも名字で呼んでたらおかしいじゃない」

杏子「……ははっ、そーだな! うん、アタシのことは杏子って呼べよ!」

マミ「ええ、それじゃあ……朝ご飯にしましょうか、杏子?」

杏子「おうっ!」


杏子(…………)

杏子(ふう……条件とか言われた時は焦ったが……上手くいったみたいだな!)

杏子(精神的に追い詰めて、冷静な判断力を奪って……不当な要求を飲ませてやる作戦は大成功だ!)

杏子(これでもう此処はアタシんちになるわけだ……ふふ)

杏子(それにしてもチョロイ奴だぜマミは……)

杏子(昨日も『マミが居てくれれば頑張れる』なんて言ったら、まるで花が咲いたみたいに嬉しそうな顔しやがった)

杏子(アタシはただ本心を言葉にしただけなのにな……くくく)

杏子(あんなにチョロイといつか悪い奴に騙されるんじゃないかって、逆に心配になっちまうね)

杏子(おっと、もうすでにアタシという極悪人に騙されてるんだった。それなら変な虫が着く心配もねーな!)

杏子(ふふ……今日から『家族』として守ってやるとするかね……あーっはっは!!)


※おまけ

~昼休み・マミのクラス~

まどか「マミさーん、起きてくださーい」ユサユサ

マミ「ううーん……むにゃむにゃ……」

ほむら「起きないわね……」

まどか「珍しいね、マミさんが学校で寝ちゃうなんて」

ほむら「そうね。早く起きてくれないと昼食を食べる時間が無くなってしまうのだけれど……」

まどか「うん……それに二年生の私たちがここに居るのも、ちょっとね」

ほむら「確かに……さすがに三年生の教室は居心地良くないわね」

まどか「早くマミさんに起きてもらわないと。マミさーん?」ユサユサ

マミ「あふ……駄目よ杏子……そんなとこ触っちゃ……」

まどほむ「…………!?」


まどか「も、もうマミさんたら……変な寝言だね?」

ほむら「そ、そうね……それに杏子って、いつから名前で呼ぶようになったのかしら」

マミ「もぉ……またなの……? もう、ホントにおっぱい好きなのね……杏子ったら……むにゃむにゃ」

まどか「ねえほむらちゃん……今、マミさんなんて……?」

ほむら「おっぱ……いえ、この場で言うべき言葉ではないわね」

マミ「うふふ……今日も甘えん坊さんね……一緒に寝ましょ、杏子……」

ほむら「……そっとしておきましょう。彼女は幸せな夢を見ているのよ……」

まどか「……うん。そうだね」





マミ「…………」

マミ「あら? もうこんな時間じゃない……ずいぶん寝ちゃってたのね、私」

マミ「……それにしてもおかしな夢だったわね」

マミ「私がお母さんになって、杏子を育ててあげる夢だなんて……うふふ」


次回・暁美ほむら編に続く。

杏子「大好きなまどかの前で恥をかかせてやるぜ!」

杏子「そうだな……アイツが苦手そうなゲーセンにでも連れて行こう!」


沢山の鬼畜な提案をありがとうございます。

ゲーセンネタはほむら編に輪姦させていただきました。

残念ながら本編に入れ切らなかったものは後ほど「小ネタ集」としてまとめたいと考えております。

あ、今さらですけど>>93-94の方、お気になさらないでください。
むしろワロたwww


                         _ --. . 、./ , ─--
                          ̄` ヽ.(:V: ∠--_ 、
                       ,..-...... ̄>-- ' ̄`. . .、:::ヽ.、
                      ヽ:::::::;∠ : /`: ヘ: :-. 、:.ヽ::::::::>
                       }::; ' : : : : _ _: : : : : : :\ ヽ::::!
                       ソ : ,/ ;ィ:/ ヽ: ト : ト: : : Y Y
                       ,': : /!: ハ:i   }:廴!:ハ:i : |: :}、
                      .i : : i !厂i「  i/ |厂i,イ: :!: ハ
                      .|i: | i ==   ==./∠ '、: ヽ、
     ,  ──  、         iヘ:トヽ ,,,  __ ,,,//ソノ: : ヽ 二=-

   , .' i /  / / , ヘ、       `ヽ从.   i  `' }_ .< ̄ : : \──'
  ハ  | i  / / ./ /.ハ         , 丁.-`─<   .ハヽ : : : :`>-. . __ ノ
 ./  ヽ Y / ././ ./ /.ハ         i  ハ -  ─ .i/:/: :ト : ヽ __ ,  - '
 iヽ _  >─ .、./, イ  , .ハ        |  トヽ._.....┐.// |ヽ:ハ .ヽ:ヽ.、
 ト-->'    ヽ── '   .}        .|  .K::::::`::::::':::::ヽ!  .i .ヽヘ、`> ニ=-
 レ'- 、   ,イヾ ───.,'         |  .i二二六二二i   !  `
. {    ヽ ,イi.∧ ヽ 、  ./        .|  ト─ ┤.├─┤ |
. ヽ、   } ┐' || ヽ、   /        .|  i  ./  .i   .i .i
  .`¬'  | .iヽ  > '           !  | ./   .!   .i ∨
     i_.」._」  ̄            .,ノ  }'      >-' !  .`<
      | |               彡, .ヘj         V ヽ ミ'
      | |_

     /!┘>    さやかシナリオ・番外編ですが、
     i==!イ i    杏子ちゃんは極悪非道です。ご注意ください。


~見滝原市・病院~

杏子「おーっす。今日も来てやったぞ、さやか」

さやか「あ、また来たんだ杏子。今日も話を聞かせてくれるの?」

杏子「勿論さ。いつものようにアタシの活躍を聞かせてやるぜ! 覚悟しろよ?」

さやか「あんたって意外とマメな奴だよねー、毎日必ず報告に来るなんてさ」

杏子「くっくっく……嫌になるだろ? 何も出来なくて、話を聞くだけの自分が」

さやか「……そーね。ちょっとだけ」

さやか「恭介もこんな気分だったのかなーって思うよ」

杏子「恭介? ああ、さやかが願いを使って助けたボーヤのことか」

さやか「うん、そーだよ」

さやか「したいことが出来ないって、こんなにもどかしい気持ちになるんだね……」


さやか「……でも、そんな思いをするのも今日で終わりなんだけどさ!」

杏子「そっか。退院は明日だもんな」

さやか「そーよ! 魔法少女さやかちゃん、大復活!」

さやか「…………」

さやか「……あんたは、どーするの?」

杏子「ん?」

さやか「あたしが復帰するまで代わりに戦ってくれる約束だったでしょ?」

さやか「それってつまり、あたしが退院したら……」

杏子「あー、そのことか」

杏子「……残念だったな、アタシは抜けるつもりはねーよ」


さやか「え……? こ、これからも一緒に戦ってくれるの?」

杏子「オイオイ、前にも言ったかもしれねーけどな……勘違いすんなよ?」

杏子「アンタらと慣れ合う気はねーんだからな」

さやか「……あくまでグリーフシードが目的だっていうのね?」

杏子「そういうことさ。あと、ついでに……」

杏子「さやかとかいうヘタレ魔法少女にアタシの実力を見せつけて、自信喪失させてやろうかと思ってね」

さやか「なっ、誰がヘタレよ!」

杏子「ふふ……すぐに分かるさ。アタシとアンタの圧倒的な実力差ってやつがな」


杏子「ま、自分の弱さをよーく理解したら……アタシの戦い方を手本にでもするんだね」

杏子「そ-すりゃアンタも少しはマシになるだろーよ!」

杏子「……さやかは経験が足りないだけで、才能はあるんだしさ」ボソッ

さやか「え?」

杏子「な、なんでもねーよ! 今のは忘れろ!」

さやか「…………」クスッ

さやか「まったくもう、杏子ってば相変わらず素直じゃないんだから……」





杏子(あぶねーあぶねー、つい本音が出ちまったぜ)

杏子(まあアタシの狙いはバレなかったみたいだから良しとするか。くっくっく……)

杏子(……そうさ、さやかは才能はあるんだ)

杏子(それならアタシ色に染め上げて、便利な手駒として使ってやるのも悪くないよねぇ!)

杏子(楽しみに待ってなよ、さやか。近い将来、アタシがアンタのご主人様になってやるよ!)


さやか「……あいにくだけどね、あたしは杏子の活躍を見たって自信喪失なんてしないんだから!」

さやか「むしろやる気がみなぎって、魔女も使い魔もボッコボコにしてやるわよ!」

杏子「はっ……意気込みは認めてやるけどな、あんま調子に乗るんじゃねーぞ」

杏子「油断してるとまた怪我して病院に逆戻りになっちまうぞ?」

さやか「むっ。馬鹿にしないでよね、そんなミス犯すわけないじゃない」

杏子「どーだか……数日とはいえ、ブランクがあるわけだからね」

杏子「思い通りに動けなくて大失敗をやらかすんじゃないか?」

さやか「そんなの杏子の勝手な想像でしょ!」

杏子「アタシの予想は結構当たるんだぜ?」

さやか「当たるもんか!」

杏子「ふーん……そこまで言うなら賭けでもしようか」

さやか「え? 賭け……?」


杏子「そう、賭けだ」

杏子「さやかが間抜けなミスを犯して怪我をしたら……アタシの勝ち」

杏子「アタシの予想が外れて何事もなかったら……さやかの勝ち」

杏子「負けた方は、そうだな……何でも言うことを聞く、ってことにしよう」

杏子「ど-だい、この勝負乗るかい?」

さやか「……いいじゃない、乗ったよ!」

杏子「ほー、即決か」

さやか「当たり前じゃん、その条件ならあたしが負けるわけないもんね!」

杏子「ふっふっふ……後悔しても知らねーぞ」

さやか「後悔なんかあるわけないでしょっ」

杏子「よーし、良く言った。そんなら明日から勝負開始だ!」


さやか(……でも、あたしが勝ったら何をさせようかな)

さやか(何でも言うことを聞かせられるのかぁ……どうしよ)

さやか(……そういえば、杏子って結構料理が出来るんだっけか)

さやか(マミさんが嬉しそうに話してたよね、毎日美味しいゴハンを作ってくれるんだって)

さやか(……ずるいよね、マミさんだけ杏子の手料理を食べられるなんて)

さやか(良し、決めた! あたしが勝ったら杏子にご馳走を作らせよう!)

さやか(……いや、待てよ? 料理だけじゃもったいないかな?)

さやか(他にも色々させたいな。うーん……)

さやか(そうだ! 杏子にはあたし専属のメイドになってもらおう!)

さやか(料理だけじゃなくて他のこともやらせよう。もちろんメイド服姿でね!)

さやか(うっふっふ。勝利が楽しみだわ……!)


杏子(くく……やっぱ馬鹿な奴だな、さやかは)

杏子(アタシの出した条件じゃあ圧倒的にさやかが不利なのに気がつかないなんてね)

杏子(……アタシは賭けの期限を指定していない。つまりアタシが勝つまで勝負は続くってことさ!)

杏子(さやか……アンタはもうアタシの手の内にいるんだよ)

杏子(気がついた時には手遅れだ。アタシの命令をきいてもらうことになるぞ……ふふふ)

杏子(アンタがアタシの下僕になる日もそう遠くねーぞ、さやかぁ!)

杏子(くっくっく……ふっふっふ……はぁーはっはっは!!)

………………

…………

……


マミ「駄目です」

杏子「えっ?」

マミ「そんな賭けなんて認めるわけないでしょ。魔女退治は遊びじゃないのよ?」

さやか「別に平気ですって! あたしが怪我しなければいいだけなんですから!」

マミ「だーめ。余計なこと考えてたら頭から齧られちゃうかもしれないわ」

杏子「えー、でもさ……」

マミ「それに、負けたらなんでも言うことを聞くだなんて……よ、良くないと思うわ」

杏子「え?」

さやか「……マミさん、もしかして変な想像してません?」

マミ「し、してないわよ!」

マミ「とにかく、駄目なものは駄目! 言うこと聞かない子は……お家に入れてあげないわよ!」

杏子「ううっ! ご、ごめんなさい、賭けはしません……」

マミ「……うん、分かれば良いのよ♪」


さやか「……怒られちゃったね」

杏子「うん……」

さやか「賭けとか止めて真面目に戦おっか……」

杏子「そーだな……」

さやか「……それにしてもさっきの杏子の顔、情けなかったわー」ニヤニヤ

さやか「さすがのアンタもマミさんには逆らえないのね?」

杏子「う、うるせいやい!」





杏子(く、くそう。今回の作戦は失敗か……)

杏子(……た、たまには敗北の味を知るのも悪くないけどな!)

杏子(悔しくなんてないさ! この経験がアタシをもっと強くするんだからね!)

杏子(お、おぼえてろよぉ……)


今度こそ次回・暁美ほむら編へ続く。

※生存報告

    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! オセェ...チョーオセェ
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ
   ノ. ,ノ ゙̄i
   `(´ )JJ   /杏\

諸般の事情により次回投下は大幅に遅れます。
申し訳ございません。
予定では八月の第三週ごろに投下できる見込みです。

    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! ウゼェ...チョーウゼェ

   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  
   ノ ./ ゙̄i   
  ~(_つJJつ  /杏\

今日明日中に続きを投下出来なかったら
以前書いてボツにした全く関係ない短編
『ほむずきんちゃん』を投下してお茶を濁します

                 ,-、 _
             ,...--ヾ- i:.Y:/., ┐_
    ___. . . ─────ヾ-.、!/-.'_: : ヽ

    >: : : :/: : :/: : : : ヘ: : : :> 、──┴.、

   ./: : : : /:/ |∧ : ト ト : :ヽ、: : : : ヽ:::::::::::::/
   /: /: ,イイ.7   ヽ:|  /7ヾ 、 : : ヽ:∨:::::;'.|
   V1 /.  i_/       i 」  i:/ : : :i: ∨ノ!:i
    〉' ''''   ______''''  ./ : : 人 : i  .ij
   {:.{    {      ヽ 1 /- '> ノ:ノ
   V> 0 乂 ,     乂  , . ─ ': !
     /-ヾ彡'  ̄ `<─<: : : : : : |

    /ゝ__.人'_     )  ハ: : : : : :ヽ
     /: :ヽ_(  ̄ ̄ ̄ フ-- .| : : : ∧ヾ、
    ゝ_!(_ヽ __/)ヽ.ノ: ,イ: : ノ

       , <_  , 、`-.' ̄).、
      ,.' .¬─.┬──‐┬ ヽ
      ゝ- '---/___.」--'

このSSでは杏子ちゃんが残虐行為を繰り返すのが本来の流れですが
ほむら編の執筆に苦戦しているので……

たまにはほのぼのもいいよね!
と、いうわけで超番外編『ほむずきんちゃん』、始まります。


QB「昔々あるところに、赤頭巾を被った可愛い女の子がいたんだ」

QB「焔のように真っ赤な頭巾がトレードマークな彼女は、皆からほむずきんちゃんと呼ばれて親しまれていたよ」

QB「そんな彼女がある日、母親からお使いを頼まれたことから物語は始まるんだ」



さやか「ほむらー、悪いんだけどお使い頼まれてくんない?」

ほむら「構わないわ」

さやか「さんきゅー。んじゃ、これをまどかのとこまで届けてやってよ」

ほむら「これは……葡萄酒と手作りのケーキね。まどかのために用意したの?」

さやか「ま、そんなとこかな。まどかってば一人暮らしだから心配だしね」

ほむら「そうね……」


QB「そんなわけで……母親から甘ーいケーキと葡萄酒を受け取って、ほむらはまどかの家に向かったよ」

QB「まどかの家は山奥にある。ちょっぴり危険な道のりだけど……大丈夫かなあ?」



ほむら「まだまだ先は長いわね」

ほむら「あの花畑で少し休憩するとしましょう」

ほむら「……ふう」

ほむら「お腹も空いたし、私の分のケーキを食べようかしら」

にゅいーん

ほむら「やっぱり便利ね、この盾。ケーキも焼きたてのまま収納出来るなんて」

ほむら「……ホムホム」

ほむら「それにしても、こんな山奥に娘一人をお使いに行かせるなんて……」

ほむら「正気の沙汰とは思えないわね」

ほむら「やっぱりさやかってホント馬鹿」


QB「愚痴りつつもケーキを堪能しているほむらだけど……」

QB「こんなところでのんびりしていていいのかな?」

QB「実はこの辺りには危険なオオカミが出るんだ」

QB「襲われないうちに移動したほうがいいと思うんだけど……」

QB「あ……もう手遅れみたいだね」



杏子「ほむらー!」

ほむら「あら、杏子」

杏子「よう! 今日も美味しそうだね!」

ほむら「ケーキのことね? 良かったら半分あげるわ」

杏子「アタシが言ったのはそっちじゃないんだけど……まあいいや、ケーキもらうぞ!」

ほむら「はい、どうぞ」


QB「赤毛のオオカミは、ほむらを食べたいみたいだね」

QB「今はケーキで満足しているみたいだけど……」

QB「いつ牙を剥くか分からないよ。恐ろしいなあ」

QB「……おや、早速なにか企んでいるみたいだ」



杏子「もぐもぐ。ほむらはこれから何処へ行くんだ?」

ほむら「まどかの家よ。ケーキと葡萄酒を届けに行くの」

杏子「ふーん……その二つだけなのか?」

ほむら「え?」

杏子「どうせならさ、お花も持って行ってあげたらどうだい? きっと喜んでもらえるぞ!」


ほむら「でも……お花なんて持ってないわ」

杏子「大丈夫! そこら辺に生えてるのを持ってけばいいんだよ!」

ほむら「それもそうね。幸いこの辺りは綺麗なお花が沢山咲いているし……」

杏子「うんうん!」

ほむら「それじゃあ此処でお花を摘んでいくことにするわ」

杏子「アタシはちょっと用事があるから手伝えねーけど……頑張れよ、ほむら!」

ほむら「ええ頑張るわ。ありがとう、杏子……金髪で巨乳の猟師には気をつけるのよ?」

杏子「うん? 大丈夫だよ、アタシはオオカミなんだからね! じゃーな!」


杏子「……ふふふ」

杏子「これで時間稼ぎは出来た……」

杏子「今のうちにまどかの家に行くかな!」

杏子「前菜にまどかをパクっと頂いて……」

杏子「遅れてきたほむらはメインディッシュとしてご馳走になっちまおう!」

杏子「楽しみだなあ……くっくっく」



QB「大変だ、オオカミはまどかもほむらも食べちゃうつもりらしい」

QB「嗚呼、無力なまどかとほむらの運命や如何に?」


~まどかの家~

コンコンッ!

杏子「こんにちはまどかちゃん。私だよ、ほむらだよ!」

まどか「あ、ほむらちゃん! 鍵はかかってないから入っていいよ~」

杏子「ごめん、悪いんだけどまどかちゃんがドアを開けてくれないかな?」

まどか「えっ、なんで?」

杏子「両手いっぱいにケーキを持ってるから、私じゃ開けられないんだ!」

まどか「わあっ! そんなにいっぱいケーキを持って来てくれたの? いま開けるね!」

杏子「くくく……」

ガチャッ

まどか「……えっ!? あなたは、杏子ちゃん……!?」

杏子「いただきまーす!」


QB「ずる賢いオオカミは嘘をついて、まどかの家に上がり込んだ!」

QB「そして驚いたまどかが抵抗するよりも先に牙を剥き、首筋に食らい付いたのであった!!」



杏子「はむっ」

まどか「ひあっ!?」

杏子「あむあむ……んちゅっ……れろ……」

まどか「や、止めてよっ! くすぐったいっ……あひぃっ!!」

杏子「うーん美味しい♪ やっぱりまどかはほんのり甘いんだな……はむはむ」

まどか「んひっ!? ず、ずるいよ、ほむらちゃんのフリをするなんて……あひぃっ!?」

杏子「くくく、お菓子に釣られたまどかが悪いんだよ……れろれろれろっ」

まどか「~~っ!!」


杏子「さてと、次はそのさくらんぼみたいな唇をいただいちまおうかな!」

まどか「や、やめっ……!」

杏子「むちゅ~♪」

まどか「んむっ!?」

杏子「れろっ……ぴちゅ……ちゅぱ……」

まどか「あ……ふあ……」

杏子「ちゅっ……どうした? もう抵抗しないのか?」

まどか「ふぇ……?」

杏子「くくっ……眼がとろけちまってるな」

杏子「まあいいさ。全身余すところなく美味しくいただいてやるよ、まどか」

まどか「あふ……あんっ……! そこは、だめぇ……!」








QB「そのあと可哀想なまどかはオオカミに食べられちゃったんだ……」


QB「さて、なにも知らないほむらは、まどかの家にやってきたよ」

QB「まどかに喜んでもらえると信じて摘んできたお花と、ケーキと、葡萄酒を持って……」



コンコン

ほむら「まどか? 私よ、ケーキを持ってきたわ」

???「そーかいそーかい。んじゃ、中にお入りよ」

ほむら「ええ、お邪魔するわね」

ガチャ

ほむら「……? なにこの臭い……」

???「さっきまで運動してたからね、ちょっと汗臭いのかもしれないね」

ほむら「そうなの? 元気いっぱいなのね、まどかは」

???「くくっ……そうさ、アタシはいつだって元気いっぱいさ」


ほむら「あら、まどか? お蒲団にもぐりこんで何しているの?」

???「それはね、とっても気持ちのいいことさ」

ほむら「どうしてお蒲団の中でもぞもぞ動いているの?」

???「こうすると気持ち良くなれるからさ……んちゅっ……ちゅぱっ」

ほむら「……どうして何かをしゃぶるような音を立ててるの?」

???「ここを舐めると気持ち良くしてあげられるからさ……ジュルジュル!」

まどか「あひぃいん! きょ、杏子ちゃん、もっとぉ……!!」

ほむら「……どうしてまどかの声が布団の中からするの?」

???「それはな……こういうことさ!!」

ガバッ!

ほむら「なっ……!?」



QB「布団を跳ね飛ばして現れたのは凶暴なオオカミと……」

QB「一糸まとわぬ姿にされてしまった哀れな犠牲者、まどかであった!」


QB「生まれたままの姿のまどかに気を取られたほむらは……」

QB「オオカミに隙を突かれてあっという間に取り押さえられてしまったよ!」



杏子「捕まえたぜ、ほむら~?」

ほむら「くっ……離しなさい!」

杏子「ほら、まどか。打ち合わせ通りに……」

まどか「う、うん……ごめんね、ほむらちゃん……」

ほむら「まどかっ! 貴女いったいなにを……!?」

杏子「なーに、ほむらにはたくさん酒をご馳走しようと思ってさ」


QB「まどかはほむらが持ってきた葡萄酒を口いっぱいに含むと……」

QB「そのまま口移しでほむらに無理矢理呑ませ始めたんだ!」



まどか「んっ……んんっ……!」

ほむら「うぷっ……んぐぅ……!!」

ごくっごくっ……

杏子「あはは! 良い飲みっぷりだねえ、ほむら!」

ほむら「ぷはっ……! ま、まどか、どうしてこんなことを……!」

まどか「だって……言うこと聞けば杏子ちゃんがもっと気持ち良くしてくれるって……」

ほむら「……!? 佐倉、杏子……まどかに何をしたの!?」

杏子「なにって、ナニに決まってんだろーが? あははははは!」


杏子「……さ、続けな、まどか」

まどか「ふぁい……」

ほむら「やめっ……んぶっ!!」

杏子「さてと、アタシはこっちのお口からほむらに飲ませてやるかね……」

ほむら「んんーっ!? んー!! んんーっ!!!」



QB「恐ろしいオオカミと、その傀儡と化したまどか」

QB「二人からの責めを三日三晩受け続け……」

QB「次第にほむらは正気を保てなくなっていったよ」

………………

…………

……


ほむら「も……もうやめひぇ……わたひ……これいじょうは……」

杏子「あはは! 締りのないツラしやがって!」

まどか「ほむらちゃん……素敵だよ」

ほむら「まどかぁ……」

まどか「ね、ほむらちゃん。ほむらちゃんももっと気持ち良くなっちゃおうよ」

まどか「杏子ちゃんに美味しく食べてもらっちゃおう?」

まどか「そしたら私とおんなじになれるんだよ……?」

ほむら「ま、まどかぁ……」

杏子「……どーするんだい、ほむら?」

ほむら「わ、わらひ……わたひは……!!」


QB「そんなわけで、ほむらもオオカミに食べられちゃった」

QB「ほむらもまどかも、もう日常には戻れない」

QB「オオカミに骨までしゃぶられて……」

QB「いや、魂までしゃぶりつくされて……」

QB「死ぬまでオオカミに食べられ続けるんだ」

QB「でも……」



ほむら「あふっ……杏子……おねがい、私もうっ……!」

まどか「杏子ちゃぁん……私もぉ……!」

杏子「あははは! 今日も腹いっぱいになるまで美味しく食べてやるよ!」



QB「うん、三人とも幸せそうだね!」

QB「めでたしめでたし!」



『ほむずきんちゃん』

おしまい。

次回こそ暁美ほむら編になります。
9月頭くらいには投下できるかと……

    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  アタシさ、皆に謝らなきゃいけないことがあるんだ……
   ノ /)i杏i|、
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ



    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  実はね……
   ノ /)i杏i|、
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ



    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  レスの下に自動でついてる「自治スレッドで~」の文字は
   ノ /)i杏i|、   アタシが幻惑魔法で見せてるんだ……!
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

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          リノ(! ゚ ヮ゚ノリ   幻惑魔法のせいで
          ノ /)i杏i|、    大事なところも隠れちまうんだ……
         (( Uく__ハj_)   l
              /し'ノ     |     レ'::::::::::::::::::::|
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           l ,イl//`ヘヘ!   i      レ'  /´::::::|
          リノ(! ゚ ヮ゚ノリ   .!
          ノ /)i杏i|、     どういうことだよオイ……
         (( Uく__ハj_)     コイツ>>241ズレてるじゃねーか!
              /し'ノ     | 
              ,'      l    ./::::::::::::::::::::::|
           i       |     {:::::::::.::::::::::::::|
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              ;       .;      |  \:::::::::::::|
          i         l     |   \:::::::|
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             ,'         !    l  ヽ/      、
          i         !     !   '.     `、
             !       !    ;      .     
             l        |    :     :      :
          !      !    .;    .,'        !自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

投下は来週予定です。自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  アタシさ、皆に謝らなきゃいけないことがあるんだ……
   ノ /)i杏i|、
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ



    /i´Y´`ヽ
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   l ,イl//`ヘヘ!
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  実はね……
   ノ /)i杏i|、
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ



    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  暁美ほむら編が>>1の都合で
   ノ /)i杏i|、   前編・後編に分かれることになっちまったんだ……!
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ



    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  そんなわけで今回の投下は
   ノ /)i杏i|、   暁美ほむら編(前編)になるよ
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ

    //. /: /: : : : : : : : : /: : : : : :|: : : : : :ヽ: : : : : : ヽ: : ヽ\\

    /   /: ://: : : : : : ,/: : : : : : :ハ : : : : : : ',: : : : : : : ヽ: :ヽ .ヽヽ
       /: :/ : : : : : : //イ : : : : // |: : : : : : : | : : : : : : : |: : ハ  V
     ': :〃:/: : : 、 // ||: : : : /イ   !: :!: : : : :リ、: : : : : : :ハ: : :|
      |: :! ! |: : : : /ヽ |: : : :/〃   |: :| : : : /: :!: : : : : : | ヽ: :!
     V:| |: V: : l_l { \_: : |_,{{   |: ハ_:_:./_!: |: : : : :!: :|  V
      V .|: :ハ:/、/≧=ァミ: :| ヽ ーj/¨|: / |`リ、: : :/: :リ
       |: | ,ヘ:ハ弋:::ノ `ヽ     〒テニzzレ|: /: :/: :/
       |: :\| \{ヽヽ        弋:::::ノ〃リ/: :/: :/
       /: : : : \       '   ヽヽヽ /ノ:/: /
        /: : |: : : : |> .   ‐‐、      イイ : : イ
.      /: : イ: : :/: ! : : 个.- ニ′-‐: ニ :´:|: : : : |
     /: //⌒Y_ノ/⌒j′    |⌒ヽ-イ⌒ヽ: : |:ヘ
.    /: /′  {    |´  、    ´7   }   〉: ヽ:ヘ
   /::/ヘ    ヽ   ヽ    ′ /   /   / \: : :ヘ
 /: /   \    \  \-----/  /  /   \: :ヘ

このSSでは杏子ちゃんが極悪非道な行為を繰り返しますが
だいぶ間隔が開いてしまったのでこれまでのあらすじ。

第一話・美樹さやか編
→杏子ちゃんの手によってさやかが病院送りにされる

第二話・巴マミ編
→杏子ちゃんがマミの弱みを握り住居を乗っ取る

第三話・美樹さやか編番外
→退院の決まったさやかを陥れようとする杏子ちゃん。
しかしマミによって阻まれさやかは助かる



第四話・暁美ほむら編(前編)
→今回のお話です


~見滝原市・とある鉄橋~

ほむら(同じ時間を繰り返しているのだから、当たり前だけれど……)

ほむら(変わらないわね、此処から見る風景は)

ほむら(……あの日もこんな夕焼けが綺麗な日だった)

ほむら(私がまどかに命を救われた、あの日も……)

ほむら「…………」

杏子「なーに一人で黄昏れてんだよ、ほむら?」

ほむら「きゃっ……!?」


杏子「おー。意外と可愛い声で驚くんだな、アンタ」

ほむら「……何か用かしら、佐倉杏子?」

杏子「いや? たまたま通りがかっただけさ」

杏子「なんだか悩みでもありそうなツラしてたからね、つい声をかけちまったんだよ」

ほむら「……そう」

杏子「で、何でこんなとこでボーッとしてたんだい?」

ほむら「貴女には関係のないことよ」

杏子「……まどかのことでも考えてたのか?」

ほむら「っ!」

杏子「ふふっ……図星だな?」

杏子「気がついてるか? アンタって意外と顔に出るタイプだぞ」

ほむら「余計なお世話よ……」


杏子「そーそー、まどかと言えばさ……前から気になってたことがあるんだよな」

ほむら「何?」

杏子「アンタとまどかはスッゲー仲が良いじゃん?」

杏子「なのにアンタは……何で時々、すごく悲しい眼でまどかを見るんだ?」

ほむら「!」

ほむら「……気のせいでしょう」

杏子「いいや、間違いないね」

杏子「……愛おしい、けれど何かを諦めている」

杏子「そんな眼をしている時があるんだよ、ほむらは」


ほむら「貴女は何が言いたいの?」

杏子「……悩みがあるんだろ? 話してみなよ、聞いてやるぜ」

ほむら「悩みなんて……ないわ」

杏子「嘘だね」

ほむら「本当よ」

杏子「本当だ、って言うならなんで眼を逸らすんだ?」

杏子「ほら……こっちを見て正直に答えろよ」

ほむら「しつこいわよ、佐倉杏子。貴女に話すことなんて……!」キッ

杏子「よしよし、ようやく眼を合わせてくれたね」



杏子『……さあ、告白しな。アンタの苦しみを』



ほむら「あ……」

ほむら(何……? 頭がボーっとして……)


杏子『警戒する必要なんてない。アタシ達は仲間なんだから』

杏子『話してみなよ。幾らかは気が楽になるぞ?』

ほむら「ええ……でも……」

杏子『怖がらなくていいさ。無理して全部を語る必要はないんだからな』

杏子『まずは少しずつ聞かせてくれれば良いんだよ』

杏子『さあ、話して御覧』

ほむら「うん……そうね」

ほむら「……話すわ、私の想いを」


ほむら「私は……」

ほむら「私は、まどかに伝えたいことがあるの」

ほむら「……あのとき助けてくれてありがとう、って言いたい」

ほむら「約束守れなくてごめん、って謝りたい」

ほむら「まどかのことを誰よりも大好きだって……」

ほむら「嘘偽りのない言葉で、本当の気持ちを伝えたい」

ほむら「……でも……ダメなの」

ほむら「私の『今』とまどかの『今』は、もう修整出来ないほどズレてしまった」

ほむら「時間の流れが、私とまどかの間に絶望的な距離を生んでしまった」

ほむら「だから言えないの。伝えられないの」

ほむら「何も知らないまどかに伝えたって、きっと気持ち悪く思われるだけだもの……」


杏子『表に出せぬ秘めたる想い……』

杏子『なるほど……それでアンタは悩んでたのか、ほむら』

ほむら「ええそうよ……情けないと思うでしょう?」

ほむら「拒絶されて傷つくのが怖い臆病者なのよ、私は……」

杏子『恥じる必要はないさ。人は皆、怯えながら生きている』

杏子『誰もが臆病者なんだよ、人間っていうのはな』

ほむら「…………」

杏子『だが、ほむらは運が良いぜ? アタシという味方を得たんだからな』

ほむら「味方……?」


杏子『そうさ。アタシはアンタの力になってやる』

杏子『さあ、眼を閉じてみな』

ほむら「……うん」

杏子『ほむらが勇気を出せるように……』

杏子『ほんの一歩踏み出せるように』

杏子『素敵な魔法をかけてやるよ』



………………

…………

……



ほむら「……?」

ほむら(私……何をしていたんだったかしら?)

ほむら(思い出せない……誰かと話をしていたような気もするけれど……)

ほむら(……疲れているのね、私)

ほむら(早く帰りましょう。いつの間にか日も沈んでいるし……)


QB「行ったみたいだよ。ちょっとボーっとしてたけど問題はないみたい」

杏子「……よし。偵察ごくろうさん」

杏子「久しぶりに使ったから心配だったけど……」

杏子「上手くいったみたいだな、アタシの幻惑魔法!」

QB「……どうして暁美ほむらの悩みなんか聞き出したの、杏子?」

杏子「アイツがまどかに特別な感情を抱いていることを確認したかったからね」

杏子「アタシのプラン通りに事を運ぶためにも重要なことだったんだよ」

杏子「ふふ……あんなにも簡単にアタシの術に嵌まってくれるとは思ってなかったけどな」

杏子「ほむらの奴……いつもクールでカッコいいくせに、あんな切なげな表情みせやがって」

杏子「思わず胸がキュンってしちまったぜ、くっくっく……」


QB「……杏子はまた酷いことをする気なんだね」

杏子「そうさ。今回の目的はほむらに赤っ恥をかかせることだ」

杏子「ほむらの奴は随分とまどかに執着してるからな」

杏子「だからまどかの前で恥ずかしい思いをさせて、苦しめてやるのさ!」

QB「な、なんて非道なんだ……キミは人の心を持っていないの……!?」

杏子「へっ、アタシはとっくの昔に人間を辞めてるんだぞ?」

杏子「んなもん持ってるわきゃねーだろうが!」

QB「うう……」


QB「ぼ、僕はキミに意見できる立場じゃないけど……でも」

QB「出来ればあまり可哀想なことはしないであげてほしいな」

QB「ほむらに恥をかかせて満足したら、それ以上のことは……」

杏子「くっくっく……馬鹿言うなよ、キュゥべえ」

杏子「そんな程度でアタシが満足するなんてありえないだろ?」

QB「……やっぱりそうだよね……」

QB(……可哀想なほむら。でもゴメンね、僕は杏子に逆らえないんだ……)


杏子「……アタシはほむらとまどかみたいな『お友達ごっこ』の関係が大嫌いでね」

杏子「ああいう奴らを見るとメチャクチャにしてやりたくなるんだよ!」

QB「そのためにほむらの面子を潰すっていうの……?」

杏子「ああ。ほむらがたっぷり恥を晒して、落ち込んだ姿を見せれば……」

杏子「甘ちゃんのまどかはきっと心配して放っておかないだろう?」

杏子「その優しさを逆手に取って、二人の友情をブチ壊してやるのさ!」

QB「どういうこと? 優しさが友情を壊すって……」


杏子「落ち込むほむらと、慰めるまどか」

杏子「普通に考えれば信頼関係が強まりそうなシチュエーションだが……」

杏子「優しさっていうのは受け取りかた次第で全く別のものになることもあるんだよ」

杏子「アタシがほんの少し誘導してやれば、二人は友情を深めるどころか……ってわけさ」

QB「?……良く分からないや……」

杏子「くく……感情が理解できないお前には難しいかもな」

杏子「ま、キュゥべえにも分かるように簡単に言うと、アタシの今回の最終目標はだ……」

杏子「ほむらとまどかが二度と元の『お友達』に戻れないように――――」




杏子「あの二人を恋人同士にしてやるってことさ!!」




QB「なっ……なんだって……!?」


QB「そんな馬鹿な! 二人を同性愛者にするつもりかい!?」

杏子「ふふ……禁断の恋ってやつさ。面白いだろ?」

杏子「まあ普通ならそう簡単に恋愛観が変わることはないだろうが……」

杏子「だがアイツらはアッチの素質がある」

杏子「少し背中を押してやれば簡単に道を踏み外すだろうよ……くっくっく」

QB「ただでさえ魔法少女という非日常を生きている彼女たちを……」

QB「更なる茨の道へと追い込むなんて……!」

QB「何て残酷なことを企むんだ、杏子は!」


QB「はっ!? そういえばさっき別れ際に……ほむらに変な魔法をかけていたよね……!?」

QB「勇気が出る素敵な魔法とかなんとか!」

QB「もしかしてアレでほむらを洗脳して、思い通りに操るつもりなんじゃ……!?」

杏子「……はあ、相変わらずオマエはアホだな。洗脳なんてつまらない真似するわきゃねーだろ」

杏子「あくまであの二人の意志を尊重して、カップル成立させてやるのが一流ってもんさ」

QB「そ、そうなんだ……」

QB「でもそれならさっきの魔法は何だったの?」

杏子「くくっ……アレはな、ほむらに暗示をかけたんだよ」

杏子「ほむらが『弱い自分をまどかに隠せなくなる』ようにな……!」

QB「弱い自分を……?」

杏子「そうさ……ほむらの奴、明日になったら驚くだろうよ!」

杏子「今までまどかに隠してきた本当のじぐおえごほぉおええええっ!」ビチャビチャビチャ

QB「うわぁあああああああ!?」


QB「ど、どうしたの杏子!? 急に吐くなんて……大丈夫なの!?」

杏子「がはっ、ごほっ……やべ、幻惑魔法の反動か……」

杏子「封印してたのに無理矢理使ったから……身体への負荷が……ごふっ!」ビチャッ

QB「ひいっ!」

杏子「……すげぇ、人間ってこんなに血を吐けるんだな」

杏子「はあはあ……おえっ……」

杏子「……ふう……少し落ち着いてきたぞ。えーと、それで……なんだっけ?」

QB「は、話よりもお医者さんに行った方が……」


杏子「あーそうだ、ほむらを陥れるために暗示をかけたんだった」

杏子「アイツらの『お友達』の関係がブチ壊れる第一歩となるような、ね」

QB「それどころじゃないよ!! 杏子、キミの身体は……!」

杏子「まどかと友達でいられなくなったとき……」

杏子「ほむらがどんな泣き顔を見せてくれるか、今から楽しみだな!」

杏子「想像しただけでワクワクするぜ!」

杏子「ワクワクしすぎてなんかこう胃を針で刺すような痛みを感じるぞ!」

杏子「くっくっく……あーっはっはっはうぐごおげええええっ」ビチャビチャ

QB「うわあああああああ!?」


~翌朝・登校時~

ほむら(あら、あそこを歩いているのは……美樹さやかだわ)

ほむら「……おはよう、美樹さやか」

さやか「あ、ほむらじゃん。おいーっす!」

さやか「いやー、こうして登校中に会うのは久しぶりだね」

ほむら「そうね。貴女が無事に退院出来てよかったわ」

さやか「何よ? 珍しく嬉しいこと言ってくれるじゃない」

ほむら「……粗忽な貴女のせいで、魔法のことがバレるんじゃないかと心配していたのよ」

さやか「はあ……そうね、あんたはそういう奴だったわね」


さやか「……おっ、まどか発見! おーい、まどかぁー!」

まどか「あ、さやかちゃん、ほむらちゃん!」

ほむら「……っ!?」ドクンッ

ほむら(何……? まどかを見たら、急に胸が苦しく……!)

さやか「おっはよー! まどか!」

まどか「おはよう、さやかちゃん! 今日からまた一緒だね♪」

さやか「おおっ、あたしの嫁よ! 嬉しいぞぉー!」

まどか「うふふ、さやかちゃんったら……」

ほむら「ううっ……うううう……」

まどか「あれ? ほむらちゃん、どうかしたの? 顔色が……」

ほむら「まどかっ……まどかぁっ!!」ダキッ!

まどか「えっ!? きゃっ……!!」

さやか「ちょっ、ちょっとほむら!? なに急に抱き着いてんの!?」


まどか「あわわ……! ほむらちゃ、気持ちは嬉しいけどこんな所じゃダメだよ……!」

ほむら「ぐすっ……ひぐっ……」

まどか「……?」

ほむら「ごめんなさい、まどか……私……私は……!」グスッ

まどか「……ほむらちゃん? 泣いてるの……?」

ほむら「ううっ……ひぐっ……うううう……!」ポロポロ

さやか「ま、マジ泣き? どーしたのよ、あんた!?」

まどか「ほむらちゃん……」


まどか「……大丈夫だよほむらちゃん、落ち着いて?」ナデナデ

まどか「悲しいことがあったのかな? 良ければ私に話してほしいな」

ほむら「ぐすっ……まどかっ……まどかぁ……」

モブ1「なんなんだろ、あれ……」ヒソヒソ

モブ2「泣いてるみたいだけど」ヒソヒソ

モブ3「き、禁断の恋ですわ……!」ヒソヒソ

さやか「と、とりあえず場所を移そうよ。目立っちゃってるからさ」

まどか「……うん、そうだね。行こう、ほむらちゃん?」

ほむら「ぐすっ……ひっく……」コクン


杏子「ふふ……暗示はバッチリ効いてるみたいだね」ノゾキミ

杏子「ほむらの奴、アタシの期待したとおりに……いや、期待以上の醜態を晒しやがった」

QB「あれが暁美ほむら? まるで別人じゃないか……」

QB「……ホントに暗示をかけただけなの?」

杏子「おっと変な勘違いはするなよ?」

杏子「昨日も言ったが、アタシはほむらを意のままに操ってるわけじゃない」

杏子「あくまでアイツが元々抱いていた感情を利用しているだけさ」

杏子「それにしても……まどかにあんなこと仕出かして……くくっ」

杏子「恥ずかしくて恥ずかしくて死にたくなっちまうだろうなあ、ほむらの奴!」


~学校・保健室~

まどか「少し、落ち着いたみたいだね?」

ほむら「ええ……」

さやか「まどかに抱き着いたまんまだけどね」

ほむら「それは……その……」

ほむら「ごめんなさい、まどか……私、貴女から離れたくない……」ギュッ

まどか「安心して、ほむらちゃん。私なんかで良ければ一緒に居てあげるから……」ナデナデ

さやか「……まどかは優しいねぇ」


さやか「でもさ、このままじゃ授業を受けらんないよ? どーすんの?」

まどか「私は……ほむらちゃんが元気になるまで傍に居ようと思うの」

まどか「悪いけど、さやかちゃんは先生に言い訳しておいてくれないかな?」

さやか「オッケー。まどかは保健係だし、適当に理由を付ければ納得してもらえるでしょ」

ほむら「……ごめんなさい、美樹さん……貴女にも迷惑かけてしまって……」

さやか「『美樹さん』? ほむらがそんな風に呼ぶのって初めてだね」

ほむら「あっ……その、つい……」

さやか「ふふっ。まあとにかく、先生にはあたしから言っておくから」

さやか「二人はゆっくりしてなよ?」

まどか「うん、お願いするね、さやかちゃん」

ほむら「……ありがとう」


ほむら(……まどかと二人きりになってしまった……保健の先生も外出中みたいだし……)

ほむら(他に誰も居ない部屋で、まどかとベッドに腰掛けて……これじゃまるで……)

ほむら(っ!? わ、私ったら何を考えてるの……!?)

まどか「……ねえ、ほむらちゃん」

ほむら「はひっ!?」

まどか「?」

ほむら「ご、ごめんなさい……えっと、なにか?」

まどか「あ、うん。ねえ、ほむらちゃん……何かあったの?」

まどか「今のほむらちゃん、とっても辛そうで……私まで悲しくなっちゃうよ」

ほむら「まどか……」


ほむら「……私にも良くわからないの」

ほむら「まどかを見たら急に胸が苦しくなって……」

ほむら「まどかへの気持ちが溢れ出して、抑え切れなくなって……」

まどか「えっ……?」ドキッ

まどか「わ、私への気持ちって?」

ほむら「あっ! その……今のは……」

ほむら「な、なんでもないから……えと、気にしないで?」

まどか「う、うん……」


ほむら「…………」

ほむら「その……ごめんなさい」

まどか「えっ?」

ほむら「……気持ち悪いよね。いきなり抱き着いたり、こんなこと言ったりして……」

まどか「そ、そんなことないよ!」

まどか「私は、ほ、ほむらちゃんにならくっつかれても嫌じゃないし……」

ほむら「本当……?」

まどか「ほ、ホントだよっ」


~廊下・保健室前~

杏子「良い感じじゃないか」ノゾキミ

QB「何を話しているのかは聞き取れないけど……ギクシャクしてるのが見て取れるね」

杏子「そーだな。その証拠にアイツ等、さっきから目を合わせようともしねー」

QB「仲良しなはずの二人が、気まずくて顔も見れなくなるなんて……」

杏子「くっくっく、やっぱアタシの魔法は凶悪だね!」

杏子「……だが、このまま二人を保健室に居させても事態は進展しないだろうな」

QB「僕としてはそのほうが心が痛まずに済むんだけど……」

杏子「残念だがそうはいかねーよ」

杏子「ちょいと強引な手段になるが……二人にはドキドキのイベントを用意してあるのさ!」

QB「いったいどうするつもりなの?」

杏子「ふふ……それはな……」









(省略されました。続きを読むにはあんこちゃんあんあん!と書き込むか次回投下をお待ちください)

次回・暁美ほむら編(後編)へ続く。



~よくあるご質問~

Q.どうして前後編になったの?
A.杏子ちゃんが極悪過ぎてオチがまだ決まってないからです

Q.幻惑魔法の設定が原作と違くない?
A.杏子ちゃんが極悪過ぎてドラマCDを聴く前に書き始めてたからです

Q.次回投下はいつなんだよ
A.杏子ちゃんが極悪過ぎて8割ほどは書き終わってるので9月中にはなんとか…

さやかちゃんさやさや


    |∧∧|       (( ) )   (( ) )  ((⌒ )
 __(;゚Д゚)     (( ) )   (( ⌒ )  (( ) )

 | ⊂l       l⊃|    ノ火.,、   ノ人., 、  ノ人.,、
  ̄ ̄|.|.  .|| ̄ ̄   γノ)::)  γノ)::)   γノ)::)
    |.|=.=.||       ゝ人ノ  ゝ火ノ   ゝ人ノ

    |∪∪|        ||∧,,∧ ||∧,,∧  ||  ボォオ

    |    |      ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
    |    |      ( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
   ~~~~~~~~     | U (  ´・) (・`  ). .と ノ

   ↑>>307      u-u (    ) (   ノ u-u
                  `u-u'. `u-u'







    |∧∧|       (( ) )   (( ) )  ((⌒ )
 __( ゚д゚ )___   (( ) )   (( ⌒ )  (( ) )

 | ⊂l     l⊃|    ノ火.,、   ノ人., 、  ノ人.,、
  ̄ ̄|.|.  .|| ̄ ̄   γノ)::)  γノ)::)   γノ)::)
    /i´Y´`ヽ      ゝ人ノ  ゝ火ノ   ゝ人ノ
   ハ7'´ ̄`ヽ.      ||∧,,∧ ||∧,,∧  ||  
   l ,イl//`ヘヘ!    Σ (・ω・`) (・ω・`) ∧∧

   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  Σ( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
   ノ /)i杏i|、     | U (・`  ) (・`  ). .と ノ

 (((( Uく__ハj_)====<>     ) (   ノ u-u
      し'ノ           `u-u'. `u-u'


          /i´Y´`ヽ

          ハ7'´ ̄`ヽ.
          l ,イl//`ヘヘ! ______
    ___ _リノ(! ゚ ヮ゚ノリ<\  \

;;⌒`) <   |(ノ /   ニつヽ ´.  ̄ .ヽ
 ;;;⌒`)\/ `´| ) /´---.´    ( )())          ∧,, ∧
.       ̄\∪ ><二>二 ./| ̄/__          ( ´・ω)

.   γ ⌒ ヽ|。<\リンゴ /--| | < ヽ         、/  っっ
.   (( Φ ) ||<(_| \ヽ |.(( * )) )        └ー-、ぅ
.    \_ ノ└―――┴\__ノ     ∧,, ∧
                         r、´・ω・))

                ∧ ,, ∧      >  _/´
      n__n        (´・ω・)       'し-一┘
    ∧ノ,, ∧ノ         c'   っ
  c('・ω・`)っ       (_,'ーo'
   ` ̄ ̄´


投下は今週の土曜日を予定しております

    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  アタシさ、皆に謝らなきゃいけないことがあるんだ……
   ノ /)i杏i|、
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ



    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  実はね……
   ノ /)i杏i|、
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ



    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  延期。
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ

申し訳ありませんが投下は来週になります…

    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!  コーヒー飲んで
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  タオル当てた。
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ




    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!  
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  さやかの。
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ

//イ:::::::::::::_:_:::::::::::::::::/::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::ヽ::::::`ヽ///
//:|::::::::::/::::::`ヽ:::::::/::::::/::::::::::/:ッァ:::;ノ'、:::::::::::::::::::::::∨:::::::::::::::::::::::::\/

//::!::::::/:::::::::::::::::::::,':::::/i:::::::::/:/.//   \:::ヽ:::::::::::::i::::::::::::::::::∨:::::::::::
//∧:/:::::::::::::::::::::::;!:::/ .|::::::/:/ 〃      \::iヾ、:::::ト、::::::::::::::::∨;;;;:::::
////i::::::::::::::::;::::::/.l:/  !:::/:/  /         )'  'i/_∨::::::::::::::l;;;;;;;;;;
////!:::::::::::::::l::::;‐-ll、_ .Ⅵ'              /!⌒八:::ト、:::::::!;;;;;;;;;;
////!:::!:::::::::::!:;'  i _≧ェ、          , ッイ::j::l ,′;}ノ:∧::::i;;;;;;;;;;;
////Ⅳ::!::::::::!! マ ̄ ア::心≧ェ、_   ゝ._:_.:)ノ八:::::ノ    |;;;;;;;;::}:/::::::::::::
///:::| Ⅵ::::::::l|.  ヽ. 弋:::::::ソ`ヽ ̄::'/:::'::::::^ヽ、__.:::::     l;;;;;;;/;;;;;;;;:::::::
///:∧.| \:::::!.       ̄...:::ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::      j;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
/////少-、\!                、       /‐- 、;;;;;;;;;;;;;;;;;;
/////////:三入           __    _, 、    /    ヽ;;;;;;;;;;;;;;;
///////////ノ::::>._     ,/vー ̄ ̄、 ソ   .イ       i;;;;;;;;;;;;;;
/////////∧ヽ::\i:::≧ェ.、 ヒゝ、:::::::::::::::ノノ ,.ィ::∧ヽ        |;;;;;;;;;;;;;;

※このSSは杏子ちゃんが極悪で残虐な行為を繰り返します。ご注意ください。


~保健室~

ガラッ

杏子「よっ、お二人さん!」

ほむら「きゃっ……!?」

まどか「杏子ちゃん!? ど、どうしてここに?」

杏子「ほむらの様子が変だ、って話を聞いてね。見に来てやったよ」

ほむら(話を聞いて……? 誰から聞いたのかしら……?)

杏子「ふーん、確かに様子がおかしいな……何だか弱々しい感じだ」


杏子「大丈夫なのか? 熱とかはないか?」

ほむら「……」コクリ

まどか「うん、体調は悪くないみたいなの」

杏子「ふむふむ、となると精神的な問題か……」ジロジロ

ほむら「っ……」ギュウ

まどか「く、苦しいよほむらちゃんっ、締めつけすぎ……!」

ほむら「あっ……! ご、ごめんなさい……」

まどか「だ、大丈夫だよ。……杏子ちゃんも、あんまりジロジロ見ないであげて?」

杏子「ああ、ワリイ」


杏子「うーん、要するに気持ちが落ち込んじゃってるって感じかー」

杏子「……おっ、そーだ! 良いこと考えたぞ!」

まどか「え? どうしたの、急に」

杏子「思い付いたんだよ、ほむらを元気づける方法をさ」

ほむら「え……?」

まどか「ホントっ? なになに、どうするの?」

杏子「ふっふっふ……それはな」

杏子「学校サボって、思いっ切り遊んじまえば良いんだよ!」

まどか「え……えー?」

ほむら「そ、それはちょっと……」


杏子「なあ、ほむら! 抜け出しちまおうぜ、授業なんかどーでも良いじゃん?」

ほむら「いえ、その……私は……」

杏子「ほむらもたまには息抜きしたいよな?」

ほむら「え……ええと」

杏子「ほら、行こうぜ! まどかも誘ってさ!」

ほむら「は……はい」

ほむら「そ、そうだよね、一日くらい、そんな日があったって、良いよね」

まどか(……ほむら、ちゃん? なんだか喋りかたが……)

杏子「よっしゃ、決まりだな! どっか遊びに行こーぜ!」


杏子「もちろんまどかも一緒だからな?」

まどか「えっ? う……うんっ!」

まどか「ほむらちゃんが行くなら……放っておけないもん、私も行くよ!」

杏子「よしよし、それじゃあ早速ゲーセンにでも行こうか!」

杏子「楽しいゲームがいっぱいあるし、ほむらも気に入ると思うぞ!」

まどか「あ、でも待って、早退するならさやかちゃんに伝えておかないと……」

杏子「細かいことは良いんだよ。さ、行こーぜ!」グイグイ

ほむら「あ、ちょ、ちょっと、押さないで……!」


QB《やっぱりいつものほむらと違うね》テレパシー

QB《普段の彼女なら強引に誘われても断るのに……》

杏子《くくっ、アタシの暗示のおかげだな》テレパシー

QB《恐ろしい力だね……杏子の魔法は》

QB《……もしかしてほむらは、一生このままキミの暗示の影響下にあるの?》

杏子《さすがにそこまで強力な暗示はかけらんねーよ》

杏子《一日経過するか、もしくは……》



杏子《とんでもなくドキドキするような経験をすれば、暗示は解けるだろうね》ニヤリ



QB《ドキドキ……?》


~ゲームセンター~

杏子「ここがアタシのお気に入りのゲーセンさっ!」

まどか「へー、そうなんだ?」

杏子「そうだよ。最新機種がそこそこ揃ってるし、警察もあんまり来ないから補導の心配も少ないんだ」

ほむら「ほ、補導……?」

杏子「そんなにビビるなよ、いざとなったらアタシが魔法でどうにかするし」

ほむら「はい……」

杏子「……それにしても、ずっとまどかの腕に抱き着いたまんまなんだな、ほむら」

ほむら「……ごめんなさい……でも、私は……」

まどか「よしよし……気にしないでいいんだよ、ほむらちゃん?」ナデナデ

杏子「ふふ、まどかは面倒見がいいんだな」


杏子「さてと。まずは何から遊ぶかなー?」

ほむら「…………」

ほむら(……やっぱりゲームセンターって苦手……騒がしいし、チカチカするし)

ほむら(どうして断らなかったのかな、私……)

まどか「……ねえ、ほむらちゃん」

ほむら「あ……なに? まどか、どうかしたの?」

まどか「あのさ、えっと……もう学校はずる休みしちゃったわけだし……」

まどか「せっかくだからさ、思いっ切りはしゃいじゃおうよ!」

まどか「それで、嫌なことも暗い気持ちも全部吹き飛ばしちゃお?」

まどか「……ねっ?」

ほむら(まどか……私を元気づけようとして……?)

ほむら「……うん、まどか……一緒に楽しもう?」

まどか「うんっ!」


杏子「んじゃ、まずは肩慣らしにこれなんかどうだい?」

ほむら「これは?」

杏子「クイズゲームさ。まあ試しに二人でやってみなよ」チャリーン

まどか「よーっし! 頑張ろう、ほむらちゃん!」

ほむら「わ、私、あんまり自信ない……」

まどか「大丈夫! ほむらちゃんは勉強も出来るし、きっとクイズも簡単だよ!」

ほむら「えっ!?」

ほむら(どうしよう……私が勉強出来るように見えるのは……)

ほむら(ループを繰り返して同じ授業ばかり受けてるから、っていうだけなのに……)

ほむら(こんなクイズゲームの問題なんて分からないわ、きっと……)

まどか「あ、始まるよ!」


☆第一問☆

『大人気ガールズバンドアニメ、『おりこん!!』の主人公、おりこの親友の名前は?』

まどか「あっ、『おりこん!!』だ! 私このアニメ観たことあるよ!」

ほむら「え……ええっ? あ、アニメ……?」

杏子「あー、言い忘れてたけど。問題のジャンルはアニメ・特撮を選択しておいたよ」

まどか「そーなの?」

ほむら「い、いまさらそんなこと言われても……!」

ほむら(アニメ? 特撮? そんなの観ないから全然わかんない……!)

まどか「……えーと、おりこちゃんのお友達の名前は……き、り、か、っと」ピポッ

\ピンポーン/

ほむら「あ……」

まどか「やったあ! 大正解だよっ!」

ほむら「う、うんっ」

まどか「よーし、この調子で行こう!」


~数分後~

まどか「わー! 全問正解だって! すごいね、ほむらちゃん!」

ほむら「や、やったね、まどか……」

ほむら(……結局、私は一問もわからなかった……)

ほむら(時間停止も答えが分からなきゃ役に立たないし……)

杏子「おお、初めてにしちゃスゲーじゃねーか」

まどか「えへへ、アニメとかって得意なんだ! 私、小さい弟がいるから一緒に観ることが多くて」

杏子「なるほどなー」

まどか「それに、杏子ちゃんが教えてくれなきゃ分からない問題もあったし……ありがとね、杏子ちゃん!」

杏子「なーに、礼ならいらねーよ」

ほむら(まどか、楽しそう……佐倉さんも……)

ほむら(いっそ私なんていないほうが……)

まどか「……」ジーッ

まどか「ほむらちゃん、次いこっか!」

ほむら「はい……」


QB(ひどく落ち込んでるよ、ほむら……)ノゾキミ

QB(自分が役に立てなかったことがショックだったんだね……可哀相に)

QB(負い目を感じてるのか、まどかから少し距離を置いてるし……)

QB(あんな様子じゃあ、ラブラブになる余裕なんてなさそうだ)

QB(杏子はこの後どうするんだろう……)


杏子「この辺はクレーンゲームのエリアだぞ」

まどか「色々あるね……あっ、ほむらちゃんアレ見て!」

ほむら「?」

まどか「あそこのクレーンゲーム、景品がゆまにゃんのヌイグルミだよ!」

ほむら「あ……ホントだ……確か見滝原市のイメージキャラクターなんだよね?」

まどか「そうだよ。いま大人気なんだよね、ゆまにゃん!」

まどか「いいなあアレ、可愛いなあ……」

杏子「まどかはゆまにゃんが好きなんだな。そんなら挑戦してみよーぜ、クレーンゲーム!」

まどか「うん! やってみたい!」


ほむら(クレーンゲーム……私じゃ取れないんだろうな……)

ほむら(また時間停止が役に立たなそうなゲームだし……はぁ)

杏子《……なあ、ほむら》テレパシー

ほむら《?》

杏子《アンタ、挑戦してみたらどーだい?》

ほむら《え、でも……私、初めてだから……》

杏子《ここでバシッとゲットすれば、さっきの汚名返上になるじゃんか》

杏子《きっとまどかにも喜んで貰えるぞ?》

ほむら《そ、そうだよね……うん、それじゃあ私やってみます……!》


ほむら「ね、ねぇまどか……まずは私が挑戦してもいい?」

まどか「え? うん、いいよ!」

まどか「頑張ってね、ほむらちゃん!」

ほむら「ありがとう……ちょっと不安だけど、やってみる……!」

ほむら「ええと、まずはお金を……あっ!」

チャリーン

まどか「ああっ、隙間に入っていっちゃった!」

ほむら「う、ううう……」


杏子「ははっ! 緊張しすぎなんだよ、ほむらは」

杏子「ほら、まずは身体の力を抜きなっ」

モミモミッ

ほむら「ひゃうっ!?」

杏子「こんなに固くなってるじゃんか、もっとリラックスしないと上手くいかないぞ?」

ほむら「リ……リラックスすればいいの?」

杏子「そーそー。深呼吸でもしてさ」

ほむら「すー、はー……」


杏子「そしたらナカを良ーく見てご覧?」

杏子「特に穴の近くは大事なトコだからね、じっくり、なめ回すように観察しな」

ほむら「分かった……」ジーッ

杏子「すぐにオトせそうな奴がいるのが分かるだろ?」

ほむら「うん……あの子ならイケそうな気がする」

杏子「よしよし、飲み込みが早いじゃねーか」

杏子「そうだな……アイツのお股のところにアームをブチ込んでやりな」

杏子「そうすりゃあっさり堕ちるだろうよ」

杏子「大事なのはイメージさ。どこに挿入れるか、アームがどう動くか……よーく考えな」

ほむら「いめーじ……」

ほむら「なんだか……私、出来ちゃいそうな気がしてきた……」

杏子「ふふ、上手くイッた自分を想像出来たみたいだな」

杏子「それじゃ……挿入れるぞ……」

ほむら「お願い、します……」

チャリーン


ピロピロピロ...

ほむら「あ……動き出した……!」

まどか「ほむらちゃん、ファイトだよ!」

ほむら「うん……!」

ほむら「まずはこっちに移動して……」

ピロピロピロ...

杏子「ん、良い位置だ!」

ほむら「それで次はこっち……」

ピロピロピロ...

まどか「どきどき」

ほむら「……ここだわ!」

ピロピロピロ...

杏子「!」

まどか「あっ……!」

ゴトッ!


杏子「おお! 一発で取るなんてやるじゃんか!」

まどか「すごい、すごいよほむらちゃん!」

ほむら「やった……やったわまどか! 私にも取れた!」抱き付きっ!

まどか「きゃっ!」

ほむら「初めてだったけど出来たの! 嬉しい……!」

まどか「ほ……ほむらちゃ、顔が近すぎるよぉ……!」ドキドキ

ほむら「あっ……!」パッ

ほむら「……ご、ごめんなさい、私ったらまた……!」

まどか「う、ううん。大丈夫だよ」

まどか「はしゃいじゃってるほむらちゃんも可愛かったし……」

ほむら「も、もう……まどかったら、からかわないで……」

まどか「えへへ……」


QB(クイズゲームで落ち込んだかと思えば……)

QB(今度はクレーンゲームで大はしゃぎ、か)

QB(……そうか、そういうことだったんだね)

QB(思い切り落ち込ませたあと、逆に思い切り喜ばせる)

QB(その落差でほむらの張り詰めた心を緩めさせ、普段なら見せない一面を引き出し……)

QB(まどかの前で恥ずかしい思いをさせたというわけか……!)

QB(そしてまどかも、そんなほむらにときめいている……)

QB(恐ろしく緻密な作戦だ……まるで悪魔の所業だよ)

QB(佐倉杏子……僕はとんでもない魔法少女《カイブツ》を生み出してしまったのかもしれない……!)


杏子「……おーい、せっかく取った景品を忘れてるぞ、ほむら」ぽいっ

ほむら「きゃ……あ、ありがとう」

ほむら「……そうだ、これあげるね、まどか」

まどか「え、いいの?」

ほむら「うん。今日付き合ってくれたお礼に……」

まどか「でも、ほむらちゃんの初めてだったんでしょ?」

ほむら「……だからこそ……私の初めてだから、まどかに貰ってほしいの……」

まどか「ほむらちゃん……」///

ほむら「まどか……」///

杏子「ははっ、やっぱアンタらってお似合いのカップルだよな」

ほむまど「えっ!?」


ほむら「さ、佐倉さん、何を言って……!」

まどか「そ、そうだよ! 女の子同士で、か、カップルだなんて……!」

杏子「ふぅーん、違うのか? 二人とも好き合ってるもんかと思ってたけど」

ほむら「違っ、そんなんじゃ……!」

まどか「わ、私たちは……えと、友達だもん! ね、ほむらちゃん?」

杏子「友達ねぇ……?」ニヤニヤ

まどか「もうっ……」


~数時間後~

杏子「アタシのオススメは一通りプレイし終わっちまったなー」

まどか「いっぱい遊んだね!」

杏子「どーだいほむら? 楽しかったかい?」

ほむら「うん、とっても」

ほむら「ゲームセンターって苦手だったけれど、良い思い出になった……かな」

杏子「アタシのおかげだな!」

杏子「いや……大好きなまどかがいたから、かな?」ニヤニヤ

ほむら「っ……」///

まどか「きょっ、杏子ちゃんたらまた恥ずかしいこと言って……!」

杏子「あははっ」


まどか「ほ、ほむらちゃんも元気になったことだし……そろそろ出ようか?」

ほむら「そっ、そうだね。もうゲームセンターは満喫したから……」

杏子「おっと待ちなよ。その前に記念撮影といかないかい?」

ほむら「え? 記念撮影……?」

まどか「あっ、プリクラだね!」

杏子「そ。せっかくだから撮っておこうぜ」

まどか「うん、いいね! 行こっ、ほむらちゃん!」

ほむら「え、ええ……」



杏子「……ふふ」

杏子(さて、いよいよ大詰めだ)

杏子(お友達同士の楽しい日常はこれでお終い)

杏子(夢から覚める時間だぜ、ほむら……!)


~プリクラマシーン内部~

杏子「えーと、背景を選んでっと……」

ほむら「中は結構狭いんだ……」

まどか「そ、そうだね。息がかかっちゃいそうなくらいだね」

杏子「二人とももっとくっつきなよ、入りきらねーぞ」

ほむら「うん……」///

まどか「そ、そうだね」///

杏子「準備できたな。んじゃ撮るぞー」ポチッ

『5』

ほむら「なんだか頬が引きつってるような気がする……」

まどか「リラックスしてニッコリ笑わなきゃねっ」

『4』

杏子「あれ、まどか? 髪に糸クズついてるぞ?」

まどか「えっ? やだっ、どこ?」

ほむら「……? 私には見えないけど……」

『3…』


杏子「ほら、まどかの前髪の辺りだってば。ほむら、とってやれよ」

ほむら「は、はい……まどか、こちらを向いてもらってもいい?」

まどか「う、うん」

ほむら(……! まどかの顔がこんなに近くに……)ドキドキ

まどか(あ……ほむらちゃん、どんどん真っ赤になって……)ドキドキ

ほむら「い、糸クズなんて見当たらないわ……?」

杏子「もっと良く見ろよ! ほらそこ、なんかくっついてんじゃん!」

ほむら「ん……?」じーっ

杏子「――――ま、嘘だけどな!」

ぐいっ!

ほむら「きゃっ!?」

まどか「ふぇっ……!?」

……ちゅっ!


ほむら「っ……!?」

まどか「んむっ!?」

パシャッ!

ほむら「ふあっ……! ま、まどか、ごめんなさい……!!」

まどか「ほ、ほむらちゃ……! いま、わ、私たち、キスしちゃっ……!」

ほむら(まどかの唇と私の唇がくっついて……!)ドキドキ

ほむら(し……しかも少し湿った感触が……これってまどかの……!?)ドキドキドキ

ほむら(うう……ドキドキしすぎてもう頭がおかしくなりそう……!!)ドキドキドキドキ

杏子「あっはっは、決定的瞬間が撮れたな!」

ほむら「さっ……佐倉さ……」



ほむら「……佐倉杏子! なんてことを!」



杏子「……」ニヤッ


まどか「ひ、ひどいよ……こんなのってないよ!」

杏子「ふふふ、そんなに怒るなって」

杏子「好きな人にファーストキスを捧げられたんだ、もっと喜びなよ!」

ほむら「ふぁ、ファーストキスって……!」

まどか「ど、どうして私が初めてだって知ってるの!?」

ほむら「え?」

まどか「あっ……」


ほむら「ま、まどかも初めてだったのね……?」

まどか「えと、じゃあほむらちゃんも……?」

ほむら「うん……初めてだったの」

まどか「そ、そっか……ごめんね、ほむらちゃんの初めてを貰っちゃって」

ほむら「いえ……わ、私は、初めての相手がまどかで……よ、よかったわ」///

まどか「ほむらちゃん……! わ、私も……その……」///

杏子「撮影した写真に落書き出来るみたいだな。何か書くか?」

ほむら「まどか……」///

まどか「ほむらちゃん……」///

杏子「……聞いてねーな。勝手にやらせてもらうか」

杏子「うーん、『キス魔でゴメンネ♪ガマン出来なくなっちゃった☆』とでも書いておこう」カキカキ


杏子「プリクラも撮ったし、充分に遊び尽くしたな!」

ほむら「え、ええ……そうね」

まどか「でもこの写真、スッゴく恥ずかしいよぉ……」

杏子「まだそんなこと言ってんのか? いいじゃんか、二人の愛の証だろ」

ほむら「愛……」///

杏子「まあ、ほむらも元気を取り戻したみたいだし、今日は解散といこうか」

まどか「う、うん」

杏子「それに……アタシが居たら、熱々カップルさんのお邪魔になりそうだしね?」

まどか「……っ」///

ほむら「なっ……い、いい加減にしなさい佐倉杏子!」

杏子「はははっ! それじゃ、またな!」ダッ

まどか「あっ、杏子ちゃん!?」

タッタッタ……

ほむら「……止める間もなく行ってしまったわね」

まどか「うん……」


まどか「……でも良かった、ほむらちゃんが元気になったみたいで!」

ほむら「え?」

まどか「ほら、朝のときみたいに暗い顔してないし、いつもの調子に戻ってきてるよ」

ほむら「あ……そういえば……たしかに気分も楽になった気がするわ」

ほむら「なんだかずっと頭の中がモヤモヤしてたのだけれど……それももうなくなったみたい」

まどか「ふふ、杏子ちゃんが一緒に遊んでくれたおかげだね!」

ほむら「ええ……」

ほむら「でも、私が元気になった一番の理由はまどかが居てくれたからよ」

ほむら「まどかが傍に居てくれたから、私は……」

まどか「ほむらちゃん……えへへっ」


まどか「……ね、これからどうしよっか?」

ほむら「えっと……」

ほむら「……今さら学校へ行くのも気が進まないし」

ほむら「その、良かったら……わ、私の家に来ない?」

まどか「えっ……」ドキッ

ほむら「ダメ、かしら?」

まどか「う、ううん! 私、ほむらちゃんちに行きたいな!」

まどか「その、えと、ほむらちゃんといっぱいお話したい気分だし……」

ほむら「まどか……」///

まどか「ほむらちゃん……」///


杏子「くくく……大胆な行動に出たな、ほむら」

QB「……二人とも行っちゃうけど、追わなくていいの?」

杏子「ああ。アイツラはもう放っておいても問題ないからな」

杏子「後は勝手に転げ落ちるだけさ、禁断の愛の世界にね……くくくっ」

QB「そんな……」

杏子「!」

杏子「話はあとだ。この気配……魔女が近くに居るぞ」

QB「ええっ!? た、大変だ! すぐにほむら達を呼び戻さなきゃ!」

杏子「馬鹿、んな無粋な真似が出来るかよ」

杏子「アイツラの邪魔をするわけにはいかねー。アタシ一人で片づけてやるさ」

杏子「……行くぜ!」ダッ!


~数時間後~

まどか「ご、ごめんねほむらちゃん。お風呂借りたうえに下着まで……」

ほむら「あのままじゃ風邪をひいてしまうもの。仕方がないわ」

ほむら「そ、それに……まどかをあんな風にしてしまったのは……わ、私のほうだし……」///

まどか「ほむらちゃんっ……は、恥ずかしいから、もうそのことは言わないで……」///

ほむら「ご、ごめんなさい」

まどか「……え、えとっ……みんなは今頃どうしてるかなっ?」

まどか「さやかちゃんもマミさんもまだ学校なのかな?」

ほむら「そ、そうね。まだ授業中なんじゃないかしら」


まどか「杏子ちゃんはどうしてるのかな。マミさんの家でのんびりしてるのかな」

ほむら「佐倉、杏子……」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「私ね、思い出したの」

まどか「えっ? なんのこと?」

ほむら「今日、私の調子がおかしかった理由」

まどか「あ……原因が分かったんだ?」

ほむら「ええ」

ほむら「……私は昨日、佐倉杏子と会っていたのよ」

ほむら「そして彼女に幻惑魔法で暗示をかけられた……」


まどか「暗示って、どんな?」

ほむら「まだ完全には思い出せていないけど、たしか……」



杏子『本当の自分を、まどかにさらけ出しな』



ほむら「……彼女はそう言っていたわ」

まどか「ホントの、ほむらちゃん……」

ほむら「ええ、そうよ」

ほむら「自分に自信が持てなくて、ずっと言いだせずにいた私の本当の気持ちを……」

ほむら「まどかのことが大好きだっていう気持ちを……」

ほむら「……佐倉杏子は引きだしてくれたの」

まどか「そっか……じゃあ私たちがこうしているのも、杏子ちゃんのおかげなんだね」

ほむら「ふふ、そうね……たくさん感謝しないとね」


ほむら(……本当に、『今回』の佐倉杏子は良い働きをしてくれている……)

ほむら(家族として巴マミの心の隙間を埋め……)

ほむら(ライバルとして美樹さやかの技術を伸ばし……)

ほむら(そ、それに……私とまどかの仲も取り持ってくれた……)

ほむら(……佐倉杏子が何を考えているのかは分からないけれど)

ほむら(おかげで皆、戦力面でも精神的な面でも充実している)

ほむら(これなら……今回は……上手くいくかも知れない)


まどか「ほむらちゃん? 難しい顔してどうしたの?」

ほむら「……ねえ、まどか」

ほむら「大切な話があるのだけれど、聞いてくれる?」

まどか「うん、勿論だよ!」

ほむら「ありがとう……」

まどか「それで、話ってなあに?」

ほむら「……あのね、まどか」

ほむら「信じられないかもしれないけど……」

ほむら「私……私ね……」



ほむら「――――未来から、来たんだよ」

次回・鹿目まどか編へ続きます。
が、その前に巴マミ番外編が挟まる予定です。

それにしても暁美ほむら編を書き終えるのに
3か月弱もかかるなんて思ってませんでしたわ。

※おまけ

マミ「……それで、私達に黙ってゲームセンターで遊んでた、ってわけ?」

まどか「は、はい……」

さやか「まったくもー! 心配したんだからね!」プンスカ

ほむら「……ごめんなさい」

杏子「まーまー、いいじゃんか! そのおかげでほむらも元気になったんだしさ!」

マミ「それはそうだけど……」

杏子「ほむらってば大はしゃぎしちゃってさー、プリクラも凄いのが撮れたんだぜ?」

さやか「ふーん? プリクラなんて撮ったんだ、見せてよ」

ほむら「っ!?」


まどか「そ、それはダメっ!!」

さやか「……ははーん? その慌てっぷり、さては相当恥ずかしい写真を撮ったんだな?」

マミ「あら、面白そうね。無断欠席の罰として見せてもらおうかな?」

ほむら「お願い、やめっ……!?」

りぼーん☆

まどか「きゃっ、これ……マミさんのリボン……!?」

マミ「ごめんなさい、少し拘束させてもらうわね……ふふっ」

さやか「さっすがマミさん! 歴戦の勇者の判断力ですなぁ」

まどか「ひ、ひどいよマミさんっ」


さやか「んで、どんなのを撮ったわけ? ちょっと見せてよ」

杏子「んー? でも二人が嫌がってるしなあ」

ほむら「佐倉杏子……!」

マミ「ケーキ2個でどうかしら?」

杏子「オーケー、手を打とう」

まどか「杏子ちゃん、そんなぁ……」

杏子「ほれ、これがそのプリクラだよ」

マミ「うふふ、さーて二人はどんな顔をしてるのかしら?」

さやか「見せて見せて!」

まどか「やだっ、やめてよぉ……恥ずかしいよぉ!」

ほむら「うううう……!」


さやか「あはは、なにコレ! ほむらってば目が半開きになってるよ!」

ほむら「……え?」

マミ「ふふ、本当ね。いつもの暁美さんからは考えられないわ」

まどか「……?」

ほむら(……どういうこと、この反応? 私とまどかがキスしてることには触れないの……?)

杏子《一つ貸しだぞ、ほむら、まどか》テレパシー

ほむら《佐倉杏子? 貴女なにかしたの?》テレパシー

杏子《幻惑魔法でちょっとね。アイツらには当たり障りのない写真に見えてるはずだよ》

まどか《本当?》

杏子《まあ何て言うか……確かにアレを見られたら恥ずかしいもんな》


ほむら《……気を使ってくれたのね?》

杏子《そんなんじゃねーよ》

ほむら《なんにせよ、貴女のおかげで助かったわ》

まどか「私とほむらちゃんのキスプリクラは見られずに済んだんだねっ」

さやか「ん?」

マミ「え?」

まどか「あ」

杏子「オイオイ……」

ほむら「……まどか……声に出てるわ……」

次回は巴マミ番外編になります。
投下は一応今月中になるかと……

      /i´Y´`ヽ
     ハ7'´ ̄`ヽ.
____l ,イl//`ヘヘ! __

\   \リノ(! ゚ ヮ゚ノリ\  \
   ̄| ̄| ̄∪ ̄∪ ̄| ̄ ̄
    |  | 杏子運輸 |
   \.|_____|


あんこちゃんは明日の6時くらいに投下したいなぁと思いました
思っただけで投下するとは言いませんでした

    ,. . ──‐. .、
  , ‐'─── 、: :ヽ
../      _ ヽ : ヽ
    _ 二: : : :ヽ.ヽ: :i  , ───-. .、
     >.、:: ̄::ヽ : ヽ: !/, ': : ; ─: : : : 〉、
   /: : : :`!::::::::::ヽ-、!: : : : /: :`. 、-, ': \
  ./: : : : : : :∨::::::::::::::V,....-/ : : : : : : :>、 : : :ヽ- ヘ

  .,: : : : : : : : :∨; ─,'. ─' ,イ: : : : : :;イ ヽ : : : i: : : ヽ、
  i: : : : : :/: : :/: : /: : : : /:|: : : : : ;イ: !  !ト 、: ト、: : ヽ
  |: : : : : !: : : ! / : : : : : i: :!: : : : :ハ丁>ij.、ヾ ! ヽ: :} ヽ、
 .|: : : : : | : : |': : : : : : : : :|: i: : : : /  i:i_x‐┬-xヽ、 .∨!:ヽヾミ、
 |: : : : : :|: : :|: : : : : : : : : i: :i: : : /  ヽヽ っ:::ヘ   !∧: ヽ

. | : : : : : | : : !: : : : : : : : : i:八 : /      .乂_!.   ` ┐ヽ
..|: : : : : : :i: : :|: : : : : : : : :ハ: ヽ:i       iヽヽヽ     、: !
.|: :|: : : : : :!: : i: : : : : : , ‐┘ ヽ: :!                  ヽ:.|
|: : i: : : : :八: :|: : : : / ─,   ヾ、           , ゥ  ̄`,  }:.|
!: : :}: : : : : :ヽ: !: : : !ヽ、 '‐┐             / `     /.i'
: : :.i: : : : : : : ヽヽ: : :>-- ┐             !      /
: : :.!: : : : : : : : :ヾ、: : : : : 「 ヽ           ` - '   /
: :./: : : : : : : : : _>, < ̄  ヽ、           , イ
: /: : :, ── '─‐,. '     ̄ ̄ ヽ     , ─<
/: : :/    > '          .ハ    ./
: : :/    /              !.、 .∧
: :/  >'               .|ハ ./ ヾヽ、
:/ >'                  }.V

このSSでは杏子ちゃんが極悪非道な行いを繰り返しますが
レガーレ・ヴァスタアリアなんて知りません。ご注意ください。


マミ(それは、美樹さんの退院祝いに皆でささやかなパーティをしていたときのことでした)



杏子「ティロ・フィナーレって、なんなんだ?」

マミ「え?」

まどか「ふぇっ?」

さやか「あー……」

ほむら「…………」


杏子「ほら、たまに叫んでるじゃん『てぃろ・ふぃな~れ~』って」

杏子「あれ、なんなんだ?」

マミ「わ、技名だけれど……」

杏子「ふーん、技名かー」

杏子「じゃあ何で技名を叫ぶんだ?」

マミ「えーと、その……何て言うか……」

マミ(……元々は辛い戦いの中で気を紛らわせるために始めたんだけど)

マミ(でも、今はただ単にカッコつけてるだけで深い理由はないのよね……)

マミ(い、言えないわ、そんなこと……!)


マミ「その、あのね、あれは……」

まどか「あ、あれは気合いを入れてるんですよね、マミさん!」

マミ(!)カナメサン!

マミ「ええ、そうよ! 最大限の威力を引き出すために気持ちを込めてるのよ」

杏子「なるほど、思い切り技をぶっ放すためだったのか」

さやか「そ、そうなんですか。いやー、初めて知りましたよー」

杏子「ふむふむ。マミは技名を叫ぶと気合いが入るのか……」

杏子「そーだ! それならさ、マミのために新しい技名を考えてやろうか?」

マミ「えぇっ?」


杏子「うん、決めた! アタシたち四人で技名を作ってプレゼントしてやるよ!」

さやか「ちょ、四人でって! あたし達も考えるわけ?」

ほむら「……あまり気が乗らないのだけれど」

杏子「なんだよ冷たい奴らだなー。マミを喜ばせたいと思わないのかよ」

さやか「いやー、なんつーか恥ずかしいし……」

マミ「う、ううう……そうよね、恥ずかしいわよね……」

さやか「あっ! べ、別にマミさんのことが恥ずかしいとかそーいうんじゃないですからね!?」

マミ「……ぐすん」


まどか「わ、私は杏子ちゃんの意見に賛成だよ!」

杏子「おっ?」

まどか「私、カッコイイ技名を考えたりするの好きだし……」

まどか「マミさんに素敵な必殺技をプレゼントしてあげたいな!」

マミ「鹿目さん……!」

杏子「まどかは良い奴だな……それじゃあ一緒に考えよーぜ!」

まどか「うんっ」

まどか「ね、ほむらちゃんも一緒に考えよ?」

ほむら「まどかがそう言うなら……」

さやか「しょーがないなー、あたしも付き合ってあげるよ」


杏子「んじゃ、案を出していこうか……っとその前に」

杏子「悪いけど、まずマミには耳を塞いでおいてもらおうかな」

マミ「え? どうして?」

杏子「新技が決まってからマミに発表する、って形にしたほうが盛り上がるじゃん?」

さやか「あー、なるほどね」

マミ「まあ言いたいことは分からなくもないけど……」

杏子「と、いうわけで……キュゥべえ!」

QB「呼んだかい?」

杏子「話は聞いてただろ? マミの耳を塞いでてやってくれよ」

QB「わかったよ。それじゃあマミ、ちょっと失礼するね」

モフモフ

マミ「きゃっ、く、くすぐったい!」

杏子「よしよし。これで準備万端だ」

杏子「それじゃあ早速、皆で考えようか!」

まどか「うん!」

ほむら「……ええ」

さやか「おっけー」



マミ(まったくもう……杏子ったら強引なんだから)

マミ(でも、私のためにしてくれてるのよね……)

マミ(うふふっ……ありがとう、杏子)


杏子「まずは……やっぱ技名にはマミのイメージと合った言葉を入れたいよな」

まどか「マミさんのイメージかあ」

さやか「というと……頼れるお姉さん的な?」

ほむら「……技名には結び付かないわね」

杏子「お姉さんか……いっそのこと女王とかにしないか?」

さやか「じょ、女王様……? なんかヤラしい……」ちらっ

マミ「?」

さやか「あ、いえ、なんでもないです!」


まどか「女王……英語にするならクイーンだね!」

杏子「お、いいかも」

ほむら「クイーン……それなら『クイーンオブハート』なんてどうかしら?」

さやか「アリスからの引用? ほむらにしてはファンシーなセンスじゃん」

ほむら「た、単なる思い付きよ」

まどか「クイーンオブハートかあ……うん、どことなくマミさんっぽい気がするかも!」

杏子「確かに。そういうの好きそうだよなアイツ」

さやか「童話をもじって技名を決めるとか、喜びそうだよね」



マミ(……なんだか好き勝手言われている気がするわ)


まどか「じゃあマミさんの新必殺技は『クイーンオブハート』で決定しちゃう?」

さやか「いいんじゃない? あたしとしてはサッサと決めちゃいたいし」

杏子「ああ、アタシも特に文句は……」

杏子「……いやちょっと待てよ? クイーンオブハートってどんな技なんだ?」

さやか「ああ、そう言えば……」

ほむら「確かに……攻撃の際の掛け声には思えないわね」

まどか「マミさんの魔法は銃を撃つのと、リボンを操るのと、治療するのだから……」

さやか「その中からだったら回復が一番雰囲気に合ってるかな?」

杏子「回復するたんびに叫ぶのか? 『クイーンオブハート!』って」

ほむら「なんだか……間抜けね」

さやか「無駄に疲れそうだよ……」

杏子「うーん、残念だけどクイーンオブハートは却下だな」

まどか「そっか、クイーンオブハートは却下……っと」メモメモ

さやか「あれ、何してんの?」

まどか「一応メモしておこうと思って……えへへ」


杏子「もっと技名っぽいのを考えようぜ。強そうなやつ」

さやか「強いヤツと言えばなーんだ? はい、まどか答えてー」

まどか「えっ!? うーんと……強い人といえば、勝つ人?」

ほむら「強者が勝利する……シンプルだけど真実をついた論理ね」

さやか「勝利……つまりビクトリー! 必殺! ビクトリーファイヤー!!」

杏子「おおっ、なんか熱いな」

まどか「よ、良くわかんないけど強そう!!」

ほむら「まさしく必殺技っぽい響きだわ」

さやか「……でもダサいよね」

杏子「自分で言うか」

さやか「ノリでごまかしてみたけど無理だわ、ダサい」

まどか「うーん……そもそもビクトリーって単語が少年マンガ的な感じだよね」

ほむら「そうね、巴マミのイメージからは掛け離れているわ」

杏子「んじゃ、ビクトリーは却下で」

まどか「は~い。ビクトリーファイヤーは却下、っと……」メモメモ



マミ(なんだかんだ言って、みんな楽しそうね)

マミ(……私は見てるだけで退屈になってきたんだけど……)


まどか「マミさんって正義のヒロインだよね」

さやか「そうだね。見滝原を守る正義の魔法少女だもん」

杏子「けっ、気に入らねーな」

まどか「でも正義の味方マミさんが……あえて逆に悪っぽい技を使ったらカッコイイと思うんだ!」

さやか「おおーっ。アリかも?」

杏子「ダークヒロインか……イイな、気に入った!」

まどか「でしょ? えへへ」

ほむら「その表情から察するに……まどかはもう悪っぽい技名を考えついているわね?」

まどか「うん! あのね……『ナイトメア・バインド』ってどうかな!」

さやか「ナイトメア? 悪だから悪夢ってこと?」

ほむら「それにバインド……『拘束』かしら?」

杏子「合わせて『悪夢の拘束』……つ、強そうだな!」

まどか「えへへ……ほら、マミさんの拘束魔法って名前がないでしょ?」

まどか「だから技名をつけてあげたいなあ、って前から思ってたんだ~」

さやか「前から考えてたのね、まどか……」

ほむら「貴女って子は……」

まどか「てへへ」



マミ(あ、そういえばトイレットペーパーがなくなりそうなのよね)

マミ(後で買いにいかないと)


杏子「マミの新必殺技は『ナイトメア・バインド』で決定で良いのか?」

さやか「ま、いいんじゃない? 割とカッコイイ気がするし」

まどか「わーい、それじゃあナイトメア・バインドに決定……」

QB「みんな、ちょっと待って」

まどか「え? どうかしたの、キュゥべえ」

QB「僕も意見したいんだけど、いいかな?」

杏子「キュゥべえも技名を決めたいのか?」

QB「うん。なんたってマミとの付き合いが一番長いのは僕だからね」

QB「マミを喜ばせるためなら協力しないわけにはいかないよ」

さやか「へー、アンタって意外と義理堅いんだ」

杏子「ふーん……?」



マミ(みんなの視線がこっちに……ああ、キュゥべえを見てるのね)

マミ(……なんとなく居心地が悪いわ)キョロキョロ


杏子「んじゃ、キュゥべえの意見とやらを聞かせてもらおうか」

QB「うん。まどかの考えたナイトメア・バインドだけど……英語でしょ?」

QB「マミのティロ・フィナーレはイタリア語なのに、いきなり英語の新技を使うのは変なんじゃないかな」

さやか「あ……確かに、言われてみると……」

杏子「そうだな、イタリア語で統一しないとカッコ悪いかもな」

まどか「えー? じゃあナイトメア・バインドはボツなの?」

QB「僕はその方が良いと思うね」

杏子「さて、どうする?」

さやか「うーん、残念だけど……キュゥべえの言うことも理解できるし」

まどか「そっかあ……じゃあナイトメア・バインドはお蔵入りだね」メモメモ

ほむら「……キュゥべえ。まどかの案を否定した以上は、代替案があるんでしょうね?」

QB「勿論さ。こんなこともあろうかと考えておいてあったんだ」

さやか「……まどかみたいだね」


QB「僕の考えた技名は――――『シルテ・アルビコッカ』」

まどか「しるて、あるびこっか?」

QB「淵き流砂という意味さ」

QB「流れる砂のように敵を搦め捕り、藻掻けば藻掻くほど深みに嵌まる……」

QB「マミの拘束魔法をイメージした名前だよ」

さやか「へー、かっこいいじゃん」

杏子「すげー強そうだし!」

QB「語感を優先したから文法的には正しくないけどね」

ほむら「……まどかはどう思うの?」

まどか「うん、いいんじゃないかな!」

ほむら「そう……」

杏子「じゃあ反対意見もなさそうだし……」

さやか「『シルテ・アルビコッカ』に決定だね!」

まどか「はーい、『シルテ・アルビコッカ』に決定っと……」メモメモ


QB(……やった、上手くいったぞ!)

QB(『シルテ・アルビコッカ』……その意味は『淵き流砂』なんかじゃない)

QB(『シルテ』は『罠』。そして『アルビコッカ』は……『あんず』)

QB(すなわち『あんずの罠』!)

QB(『あんず』はもちろん杏子のことを指している!)

QB(マミならきっとこの意味が分かってくれるに違いないよ!)

QB(『みんな杏子に騙されてる』、という僕からのメッセージも伝わるはずだ!)


杏子「つーわけで、マミの新技が決まったぞ!」

QB「もう僕はマミから離れても良さそうだね」ヒョイ

まどか「えへへ、マミさん! 技名が決まりましたよー」

マミ「…………」

さやか「……マミさん?」

杏子「どうしたんだ? 黙り込んじゃって……」

マミ「…………」

杏子「…………!?」



杏子「し、死んでる……!?」


さやか「いや寝てるだけでしょ」

まどか「マミさんだけ話に加われなかったから、退屈して寝ちゃったんだね」

ほむら「くだらない冗談はやめなさい、佐倉杏子」

杏子「なんだよノリ悪いなー」

QB「ほらマミ、起きてー」ぺちぺち

マミ「ふぇ……? あ、ごめんなさい、ウトウトしてたわ……」

杏子「マミが居眠りしてるあいだに技名が出来たぞ」

マミ「まあ……! それで、どんな名前になったの?」

QB「それはね……」

杏子「『シルテ・アルビコッカ』だよ」

マミ「シルテ、アルビコッカ?」


まどか「はい! 淵き流砂っていう意味だそうです」

マミ「え?」

さやか「マミさんがリボンで敵を搦め捕るのをイメージしたとかなんとか」

マミ「そうなの? ……でも、『アルビコッカ』って」

ほむら「……?」

マミ(アルビコッカって、『あんず』って意味じゃ……)

杏子「あれ、お気に召さなかったか? 良いと思ったんだけどなー」

マミ(あ……! もしかして、杏子……?)

マミ「……ふふ、そういうことね」

QB「!」

マミ「気に入ったわ、シルテ・アルビコッカ。これから使わせてもらうことにするわね!」

まどか「やったあ!」

ほむら「……喜んでもらえてなによりだわ」

さやか「いやー、良かった良かった」


マミ「……ところで、そのメモは何?」

まどか「あ、これですか? みんなのアイディアをまとめたものです」

マミ「見てもいいかしら?」

まどか「はいっ」

マミ「ありがとう。……ふむふむ」

クイーンオブハート

ビクトリーファイヤー

ナイトメア・バインド

シルテ・アルビコッカ

マミ「ふふふ、みんな色々考えてくれたのね」

杏子「ちなみに一番ダサいのがさやかの作品だぞ」

さやか「ちょっ! 何よそれ!」

マミ「ふぅん? 美樹さんが考えたのはどれなのかしらね?」クスクス

さやか「や、やめてよマミさん! 恥ずかしいっ……!」


QB(……さっきのマミの反応……ボクのメッセージは伝わったみたいだ!)

QB(やったぞ、これで今後は杏子のことを警戒してくれるはず……)

QB(もう思い通りにはいかないよ、杏子!)



マミ(ふふ。アルビコッカ……『杏子』ね)

マミ(わざわざ自分の名前を技名に入れるなんて……可愛いところがあるじゃない、杏子ったら)

マミ(しかもそれを私に贈るってことは、私に名前を呼んでほしいってことよね)

マミ(うふふ……愛されちゃってるなあ、私♪)



杏子(なんかマミがこっち見てニヤニヤしてる……)

さやか(なんかマミさんの眼差しが慈愛に満ちてるよ……)

まどか(マミさん……やっぱり杏子ちゃんのこと……?)ドキドキ


………………

…………

……。




マミ(そんなわけで、私に新しい技が出来たわ)

マミ(シルテ・アルビコッカ……大切な家族の名を冠したこの技があれば……)

マミ(きっとどんな困難にも立ち向かえる……!!)

マミ(身体が軽い……こんな気持ちになるなんて初めて……)

マミ(――――もう何も怖くない!)

次回、最sy回・鹿目まどか編へ続く。









     , -─-、
     ,マミ-─-'、

     ν*(ノノ`ヽ)        albicocca
     ξゝ ゚ ヮ゚ノξ        女][アルビコッカ][英:apricot]
      /_つc / ̄ ̄ ̄/__ [複:-che][植]アンズの実、アプリコット、[俗]膣
        \/___/

ここまで






に関するツッコミなし

※生存報告

    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!  >>434
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  とうとう秘密がバレちまったね……
   ノ /)i杏i|、   クラスのみんなには内緒だぞ?
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ

今月中には投下します。


    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! 
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  投下は日曜になるよ
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ



    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! 
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  アタシは投下が「日曜だ」と言ったな……?
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ







    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! 
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  アレは嘘だ
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ


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このSSは杏子ちゃんが極悪非道な行為を繰り返します。ご注意ください。


~マミの家~

杏子「――――ワルプルギスの夜?」

ほむら「ええ。一週間後、奴はこの街に現れるわ」

マミ「どうしてそう断言出来るの?」

ほむら「今まで隠していたけれど……私の魔法は『時間』に関するものなのよ」

ほむら「だから未来のことも少しだけ分かるの」

さやか「ああっ! もしかして昨日、抜き打ちテストがあるのを知ってたのも……!」

ほむら「……そうよ、私の魔法のおかげ」

さやか「ええーっ! なにそれズルイ!」

まどか「さ、さやかちゃん。それは今は置いておこうよ」



まどか《……ほむらちゃん、未来から来たってことは話さないの?》テレパシー

ほむら《話すと長くなるし……信じてもらえるとは限らないから》テレパシー


マミ「……私たちは勝てるの? ワルプルギスの夜に」

ほむら「それは分からないわ。戦ってみないことには……」

杏子「ふーん。未来が分かるって言っても万能じゃあないんだな?」

ほむら「ええ、不確定要素に左右されることが多いのよ」

ほむら「でも、ワルプルギスの夜がどんな敵なのかは分かるわ」

さやか「そうなの?」

ほむら「ええ」

杏子「へえ……じゃあさ、そのワルプルって奴はどんぐらい強いわけ?」

ほむら「ワルプルギスを放置していたら……間違いなく見滝原全域が廃墟と化してしまう」

ほむら「アレはそれだけの力を持っているわ」

さやか「……マジ?」

ほむら「事実よ」


マミ「今までで一番厳しい戦いになりそうね……」

ほむら「…………」

まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん」

ほむら「えっ?」

まどか「私たち5人が力を合わせれば、ワルプルギスの夜にも絶対勝てるよ!」

まどか「だからそんなに心配そうな顔しないで、ね?」

ほむら「まどか……」

さやか「そーだよ! どんなに敵が強くたって、正義の魔法少女は負けないんだから!」

マミ「ふふっ、そうね。私たちならきっとどんな敵だって倒せるわ!」


ほむら「……そうね。そうよね」

ほむら「必ず勝ちましょう。ワルプルギスの夜に……!」

まどか「うんっ!」

さやか「おう!」

ほむら「まずは……私が知るワルプルギスの情報を全て伝えるわ」

ほむら「そこから戦略を練りましょう」

マミ「わかったわ」

杏子「…………」


………………

…………

……

マミ「なるほどね……」

さやか「聞けば聞くほどヤバい敵だっていうのが分かるよ」

ほむら「……怖じ気づいたのかしら?」

さやか「はっ! んなわけないじゃん!」

さやか「むしろ逆に燃え上がっちゃってますね、さやかちゃんは!」

まどか「ふふ、さやかちゃんったら……」

さやか「……ところで、杏子はどーかしたの? さっきから黙り込んじゃってるけど」

杏子「…………」

マミ「杏子?」



杏子「――――悪いがアタシは抜けさせてもらうよ」



ほむら「え……?」


杏子「んな化け物と戦って、収入がグリーフシード1個じゃ割に合わねーじゃんか」

杏子「そういうのは相手にしない、って決めてんだよアタシは」

ほむら「貴女、本気で言ってるの……?!」

まどか「わ、ワルプルギスを放っておいたら沢山の人が犠牲になっちゃうんだよ?」

杏子「関係ねーな。この街がどうなろうと知ったこっちゃねーし」

杏子「何千、何万と死んだって、アタシはアタシさえ生きてりゃそれでいいんだよ」

さやか「……なにそれ、冗談にしちゃ笑えないんだけど」

杏子「冗談を言ってるように聞こえたか?」

杏子「アタシにとって他人の死なんてどうでもいい」

杏子「仮にアンタの大好きなボーヤが瓦礫に押し潰されて死んだって、アタシには関係のないことさ」

さやか「……杏子っ、あんた!!」グイッ

杏子「んだよ……離せよ」

マミ「やめなさい!」


マミ「杏子……本当に、それが貴女の本心なの……?」

杏子「ああそうさ。何か文句でもあんのか?」

まどか「そんな……どうして……?」

杏子「だいたいアンタらはバカなんだよ。赤の他人のために命を張るなんてさ」

杏子「アンタらみたいなバカに付き合って、アタシまで死ぬなんて御免だね」

マミ「……私たちは家族でしょう? 赤の他人なんかじゃ……」

杏子「くく……あーはっはっは! おいマミ、まさかオマエ本気にしてたのか?」

マミ「え……」

杏子「家族だ? 笑わせるぜ、あんなのゴッコ遊びに決まってんじゃねーか!」

マミ「!!」

杏子「あれはな、アンタんちに居座るためにテキトーなこと言ってただけだよ」

杏子「アタシとアンタが家族になんてなれるわけねーだろうが!」

さやか「……っ!!」

まどか「だ、ダメだよさやかちゃん! 暴力はダメ!」ガシッ

さやか「離してよまどか! このバカをぶん殴ってやるんだから!」


マミ「――――出ていって」

まどか「えっ、ま、マミさん……?」

マミ「出ていきなさい。……赤の他人を、私の家に居させてあげるつもりはないわ」

杏子「……けっ、言われなくたってそのつもりだよ」

まどか「ま、待ってよ二人とも! そんな、そんなのって……!」

杏子「……じゃあな」

マミ「……さよなら。もう二度と顔を見せないで」

まどか「あ……! 杏子ちゃ……!」


ガチャッ

...バタン

さやか「……なんなのよアイツ!! あそこまで最低なヤツだったなんて思わなかった!」

まどか「き、きっと何か事情があるんだよ! じゃなきゃ杏子ちゃんがあんな酷いこと言うわけないよ!」

マミ「…………」

まどか「ねえ、ほむらちゃん! ほむらちゃんもそう思うよね? 杏子ちゃんが理由もなくあんなこと……」

まどか「……ほむらちゃん?」

ほむら「……どうして……? 今度は、今回こそは、上手く行く、って……思ってたのに……」

まどか「あっ……」

マミ「……暁美さん、泣いているの?」

ほむら「またダメなの……? 私がいけないの? 私が、私のせいで……っ」

まどか「……っ!!」

まどか「そんなことないよ! ほむらちゃんは悪くない!」

まどか「……私、もう一度杏子ちゃんと話してくる!」

ダッ

さやか「あ、ちょっとまどか!?」


~路地裏~

まどか「待ってよ杏子ちゃん!」

杏子「……ウゼーな。着いてくんなよ」

まどか「ねえ杏子ちゃん、どうしてあんなことを言ったの?」

まどか「あんなの杏子ちゃんの本当の考えじゃないよね? 何か理由があるんだよね?」

杏子「しつこいぞ。さっきも言っただろ、アレがアタシの本心だって」

まどか「で、でも今まで仲良くやってきたでしょっ? これからも一緒に戦おうよ! ワルプルギスをやっつけようよ!」

杏子「……そういうのがウゼェって言ってんだよ!!」

まどか「ひっ……!?」ビクッ


杏子「……ああ、そうだな。アタシの発言に何か理由があるとしたらそれはアンタらだよ」

杏子「アタシはアンタらみたいな正義の味方ごっこしてるヤツらが大嫌いでね」

杏子「特にまどか、アンタは『誰かのために戦うのが幸せなの~』とかほざくタイプだろ?」

杏子「虫酸が走るんだよね、そーいう偽善者ってさあ!」

まどか「ぎ、偽善なんかじゃないよ! 私はホントにみんなを助けたいと思ってるもん!」

杏子「……救い用のねーバカだな、テメーは」

杏子「やっぱりアンタらとは戦えないね。そんな理想を強要されるなんて真っ平ゴメンだ」

まどか「強要だなんて……」


杏子「アタシは風見野に帰る」

杏子「もうアタシに干渉すんなよ。今度会ったら……殺すぞ」

まどか「きょ、杏子ちゃ……」

杏子「…………」スタスタ

まどか「あ……」

まどか「…………」グスッ

まどか「……こんなの……こんなのってないよ……っ」


………………

…………

……

まどか(――――杏子ちゃんが私達のもとを去ってから、もう六日が経ちました)

まどか(あれから杏子ちゃんが姿を見せることは一度もなく……)

まどか(みんなも決して話題に出そうとはしませんでした)

まどか(表向きは平気そうに振る舞っているけど……)

まどか(やっぱり何処か重たい空気です)

まどか(……杏子ちゃん……)


~ほむらの家~

まどか「……いよいよ明日、だね」

ほむら「ええ……」

まどか「やっぱり杏子ちゃんは来てくれないのかな」

ほむら「……彼女のことは忘れましょう」

ほむら「戦う意志がない者を無理に連れて来ても……意味がないもの」

まどか「…………」


ほむら「それよりも……まどか、忘れていないわよね?」

まどか「えっ?」

ほむら「約束したでしょう。たとえ何があっても……」

まどか「……魔力を使い切っちゃダメなんだよね」

ほむら「そうよ」

ほむら「……貴女が命を賭けて全力を出せば、ワルプルギスの夜は倒せるかもしれない」

ほむら「でもそれと同時に……」

まどか「私が魔女になっちゃう……」

ほむら「……ええ」

ほむら「約束よ、まどか。絶対に魔女にならないで」

ほむら「……私を、置いて逝かないで……」

まどか「……うん……」


~さやかの家~

さやか「あーあ……明日、か」

さやか「はあ……期末試験よりずっと緊張するよ」

さやか「……ワルプルギスの夜……勝てるのかな、あたし達で」

さやか「……せめて、あと一人いてくれたら心強いのに」

さやか「…………」

さやか「……な、何考えてんのよ、あたしは!」

さやか「あんなサイテーなヤツの力を借りるなんてありえないわ!」

さやか「あたし達だけで倒してみせるんだから……!」


~マミの家~

ガチャン!

マミ「あっ……ティーカップが……!」

マミ「杏子のお気に入りだったのに……怒られちゃうわ」

マミ「…………っ」

マミ「馬鹿ね……なに言ってるのかしら、私」

マミ「杏子は……佐倉さんはもう出て行ったんだから、関係ないわよね」

マミ「……他の食器も片付けましょう」

マミ「明日の戦いの前に、気持ちの整理をつけておかなきゃ……」


QB(杏子……いったいどういうつもりなの?)

QB(今まで皆を騙して信頼を得てきたのに、それを全部ひっくり返しちゃうなんて)

QB(僕にはキミの考えがさっぱり分からないよ……)

QB(マミたちを利用して見滝原を手中に収めたかったんじゃないの?)

QB(…………!)

QB(そうか、わかったぞ……!)

QB(ワルプルギスの夜は強敵だ……さすがのマミたちもただでは済まないだろう)

QB(きっと杏子は、みんなが弱り切ったところで襲い掛かって……!)

QB(なんてことだ……みんなに知らせないと!)


~決戦の日~

マミ「いよいよ、ね」

さやか「いかにも何か起きそうな天気じゃん」

ほむら「……作戦は覚えているわね?」

まどか「うんっ、バッチリだよ!」

ほむら「勝ちましょう、ワルプルギスの夜に……!」

QB「……僕の忠告も忘れていないよね?」

QB「間違いなく佐倉杏子は漁夫の利を狙っている」

QB「ワルプルギスの夜に勝利したあとも、油断は禁物だよ」

マミ「…………」

さやか「……ふんっ」

まどか「……ホントに、そうなのかな……」

ほむら「まどか……」


QB「まどか、キミはまだ杏子を信じているのかい?」

まどか「だって……」

QB「彼女がこの町を狙っているのは疑いようのない事実だよ」

QB「最悪の場合、キミたちを殺してでも奪おうとしてくるかもしれない」

まどか「そんなこと言わないでよ! 杏子ちゃんが、そんなっ……!」

QB「警戒は怠るべきじゃないと思うけどなあ」




ほむら「……まどか、お喋りはそこまでよ」

まどか「え?」



マミ「そうみたいね……この気配」



さやか「いよいよお出ましってわけ?」



ほむら「ええ……来るわ!」



まどか「……ワルプルギスの夜……!!」





《アハハハハハハッッ!》


~風見野市~

「うわっ……凄い風だな」

「なんかデッカイ嵐が来てるらしいよ」

「へー……」

「見滝原じゃ避難警報だかなんだかが発令されたらしいぞ」

「マジかよ、こっちもヤバいんじゃねーのか?」

杏子「…………ふんっ」


《アハハハハハッ!》

さやか「くっそ、どーなってんのよ!」

マミ「攻撃が全然通じてない……!?」

《キャハハハハハッ!》

まどか「それにっ、使い魔も強すぎるよぉっ!」

ほむら「いったん体勢を整えましょう! 時間停止を使っ……」

まどか「っ! ほむらちゃん、後ろ!! 使い魔が……!」

《キャハハッ!》

ほむら「なっ……しまっ!!」

...ドスッ

ほむら「ぐ、あ……」

まどか「ほ……ほむらちゃん!!」


マミ「暁美さん!?」

さやか「このバカ使い魔っ、ほむらから離れろ!!」ザシュッ!

《キャハッ!》

ほむら「う……くぅっ……」

まどか「ほむらちゃん、しっかりして!」

マミ「待ってて、いま治療するわ!」

ほむら「……わ、私は大丈夫、よ……」

さやか「そんなに血を流して何言ってんのよ!」

マミ「使い魔の攻撃がお腹を貫通したのよ、平気な訳が……」

ほむら「そ、そんなことより、みんな、散らばって……! 一カ所に集まったりなんかしたら奴に……」



《アハハハハハッ!!!!!》



まどか「あ……!!」

ほむら(――――っ!!)

ほむら(逃げ……ダメっ、間に合わない!!)


…………。

まどか「く、うぅっ……!」

まどか「ほむらちゃん、みんなっ……大丈夫っ?」

ほむら「まど、か……ゴフッ……げほっ、げほっ!」

まどか「ほむらちゃんっ!!」

さやか「ぅ……」

マミ「ぁ……」

まどか(さやかちゃんもマミさんも酷い怪我……!)


ほむら「まど、か……あなたは、二人を連れて、逃げて……」

まどか「そんな……! ほむらちゃんを置いていけって言うの!? そんなこと出来るわけないよ!」

ほむら「わ、私は、もう、戦えない……から」

ほむら「だから……捨てて、いってちょうだ、い」

まどか「ほむらちゃんのバカっ! 弱気なこと言わないでよ!」

ほむら「早く、しなさいっ……! 今、マミや、さやかを、助けられるのは……あなたしか……」


《アハハハハハハハ!》

まどか(どうしよう……このままじゃ……!)

まどか(みんなやられちゃう……マミさんも、さやかちゃんも)

まどか(大好きなほむらちゃんも……!)

まどか(私……私に出来ることは……)

まどか「…………」

ほむら「……まど、か?」

まどか「……ごめんね、ほむらちゃん」

まどか「やっぱり約束……守れないみたい」

ほむら「……っ!!」


ほむら「まどっ……まさ、かっ……!!」

まどか「あのね、ほむらちゃん……お願いがあるの」

まどか「私がいなくなっても……みんなと仲良くしてほしいんだ」

ほむら「まど、かっ……そんな、最期みたいなこと……言わないで……!」

まどか「……マミさんは、意外と寂しいがり屋さんだから、側に居てあげてね?」

まどか「さやかちゃんは、ほむらちゃんを怒らせちゃうこともあるけど……あんまりケンカしないでね?」

ほむら「やめて……そんなお願いなんて聞きたくないっ」


まどか「ほむらちゃん……私ね、本当に、本当にあなたのことが大好きだった」

まどか「だから……後のことは……私が魔女になっちゃう前に、よろしくね……」

パァアアア...

ほむら(まどかの全身が、光って……!?)

ほむら「待って……やめて、まどかぁっ……!」

まどか「私、みんなと戦えて良かった」

まどか「最期に大好きなみんなを守れるなら……」

まどか「私、とっても幸せだよ」

ほむら「まどかっ……まどかぁぁぁぁっ!」




杏子「――――幸せ、ねぇ?」




まどか「……え?」


杏子「それがアンタの幸せってわけか、まどか?」

まどか「きょ、杏子ちゃん!? 来てくれ……きゃ!?」

ジャラジャラジャラ!

ほむら「こ、これは……鎖っ……?」

まどか「鎖で出来た檻が、私たちを囲んで……」

まどか「ど、どういうつもりなの、杏子ちゃん!」

杏子「……アタシさあ、アンタみたいに幸せとか何とかほざいてる奴を見ると……」

杏子「踏みにじりたくなるんだよね、その幸せごと!」

まどか「っ……!?」

杏子「だからアタシがブッ壊してやるよ」

杏子「自分の命を犠牲にして誰かを助けるなんていう……くだらねー幸せをさぁ!!」


ほむら「佐倉、杏子っ、まさか貴女……!」

ほむら「まどかを犠牲にしないために、一人でワルプルギスと戦う気なの!?」

まどか「なっ……! そんなっ、無謀過ぎるよ!」

杏子「はあ? 何言ってんだアンタら」

杏子「アタシはあーいうのとは戦わねー主義だって言ったろうが」

まどか「え……?」

杏子「戦いはしない。ちょいと遊んでやるだけさ」

ほむら「ど、どういう……?」

杏子「……まあ大人しくそこで見てなよ」

杏子「アタシが美味しいトコ全部持っていく、クライマックスシーンをさ!」


まどか「ま、待ってよ杏子ちゃん! ここから出して! 私も一緒に戦っ……」

杏子「なんだまどか? そこの死にかけを放っておく気か?」

さやか「うう……」

マミ「くっ……あっ……」

まどか「……!」

杏子「ほれ、お情けでグリーフシードも二つ三つ恵んでやるよ」

杏子「アンタはそいつで魔力を回復して、死に損ない共を治療してやりな」

杏子「ま、地味な仕事だけど……アンタにはお似合いさ! あはは!」

まどか「杏子ちゃん……」

まどか「…………」

まどか「……うん、分かったよ。私はここで、みんなを治療する」

まどか「それが終わったら、すぐに手伝いに行くから! だからお願い……絶対、絶対死なないでね?」

杏子「……約束はできねーな」

杏子「なんたってアタシは悪党だからね」


《アハハハハハッ!》

杏子「おっと、お客様がお待ちのようだ」

杏子「そろそろおもてなしをしてやらねーとな」

杏子「んじゃ……ちょっくら行ってくるぜ!」

ダッ!

まどか「杏子ちゃんっ……!」

ほむら「……勝手な真似してっ……!」

ほむら「まどかっ、早く治療を……」

ほむら「死なせるわけにはいかないわっ……佐倉杏子を、私たちの仲間をっ!」

まどか「うんっ!」


《キャハハハハッ!》

杏子「さーて……待たせたね、ワルプルギス」

杏子「ここからはアタシがお相手してやるよ」

杏子「この佐倉杏子サマの魔法を存分に味わってもらうぜ?」

《アハハハハハッ!》

杏子「……行くぞ」

杏子『――――ロッソ・ファンタズマ!』


《アハハハハハッ!》

杏子『ほらほらっ、どこ見てやがる!』

杏子『アタシはこっちだぞ使い魔どもっ!』

《キャハハハハ!》

杏子『ふん、そんな攻撃あたるかよ!』

《アハハハハハッ!》

杏子『悔しいかい、ノロマ?』

杏子『悔しかったらアタシのスピードについてきなよ!』

《キャハハハハ!》


まどか「す……すごい……杏子ちゃん、ワルプルギスを翻弄してる……!?」

ほむら「でも、あの戦い方じゃ、決定打には……ごほっ!」

まどか「ま、まだ喋っちゃダメだよ、ほむらちゃん!」

ほむら「いえ……私のほうはもう平気よ」

ほむら「それよりもマミとさやかを……手分けして治療しましょう!」

まどか「う、うん、わかった!」


…………。

さやか「う……ゲホッ、ごほっ」

まどか「頑張って、さやかちゃん!」

マミ「くっ、ううっ」

ほむら「二人とも意識が戻らないわ……!」

まどか「どうしよう、このままじゃ杏子ちゃんが……」

まどか「……あれ……?」

ほむら「どうしたの、まどか?」

まどか「ワルプルギスの夜が……向かってる方向が変わったような……?」

ほむら「え?」

《キャハハハハ!》

ほむら「……確かに、さっきまでは避難所に直撃するコースだったのに」

ほむら「今は……あっ!?」

まどか「もしかして……!」

ほむら「佐倉杏子が、ワルプルギスの夜を誘導してるんだわ!」

まどか「それも、出来るだけ人がいない方向に……!?」


《アハハハハハ――――》

まどか「ワルプルギスの夜がどんどん遠ざかってくよ!」

ほむら「……幻惑魔法による撹乱でワルプルギスを誘導する……」

ほむら「考えたこともなかったわ、そんなの……」

まどか「『ワルプルギスとは戦わない』って、こういうことだったんだ……!」

まどか「でもあんな作戦があったなら、どうして杏子ちゃんは話してくれなかったんだろう……」

まどか「杏子ちゃん一人でやるより、みんなで協力したほうが……」

ほむら「…………」

ほむら「恐らく……あのやり方では被害をゼロにすることは出来ないからよ」

まどか「え?」


ほむら「大勢の人を救うために、街の一部を選んで犠牲にしなければならない……」

ほむら「そんな非情な選択が、マミやさやかに……貴女に出来る?」

まどか「……!」

ほむら「それに……もしかしたらワルプルギスを誘導した先で……」

ほむら「……一般人が巻き込まれて命を落とすこともあるかもしれない」

まどか「そ、そんな……じゃあ、まさか、杏子ちゃんは」

ほむら「私たちの手を汚させないため……」

ほむら「自分ですべての罪を背負うため、一人で戦うことを選んだのよ……!」

まどか「……杏子ちゃん……!!」


杏子(……そろそろアイツらも気がついたころかな?)

杏子(ふふ、さぞかし悔しいだろーねぇ?)

杏子(必死こいて倒そうとしてた敵を、アタシが逃がしちゃうんだからさ!)

杏子(『命を賭けて街を守る!』……なんて考えのまどかからしたら、最悪の展開だろうしね!)

杏子(活躍の場を奪われ、街にも被害が出る……)

杏子(まどかのヤツが涙で枕を濡らすのが目に浮かぶようだよ!)

杏子(あーっはっはっは!)


《アハハハハッ!》


杏子『おっと、そんなに慌てるなよワルプルギス』

杏子『グリーフシードの貯えもタップリある』

杏子『まだまだ夜はこれからさ!』

杏子『アタシとのダンス、楽しんでもらうぜ?』


《アハハハハハッ!》


杏子『……はッ、喜んでもらえて何よりだ!』


さやか「……ま、まどか……?」

まどか「さやかちゃん! 気がついたんだね!」

さやか「あたしは確か、ワルプルギスの攻撃を喰らって……」

さやか「って何これ? あたし達の周りに檻みたいのが」

まどか「杏子ちゃんの魔法だよ、私達を守ってくれてるんだ!」

さやか「杏子がっ……来てくれたの!?」

まどか「うん、実は……」


さやか「……そんなっ、じゃあ杏子がマミさんに酷いこと言ってたのは……」

まどか「……私達を巻き込まないためだったんだよ……」

さやか「あの馬鹿っ!!」

まどか「もう立てるよね、さやかちゃん? 早く杏子ちゃんのとこに行こう!」

さやか「もちろんよ! あいつにだけ良いカッコさせらんないって!」

ほむら「こっちも準備は出来たわ」

マミ「ごめんなさい、お待たせしちゃって……」

まどか「マミさん!」

マミ「私も事情を聞いたわ。急いであの子の所へ向かいましょう」

マミ「佐倉さんを……いえ、杏子を一人で戦わせるわけにはいかないもの!」

まどか「はいっ!」


さやか「それじゃあ早速、この邪魔な檻をブッ壊しちゃいましょーか!」

マミ「ええ、美樹さんお願い!」

さやか「おう、任せ……」

パキィィン...

さやか「……えっ、あ、あれ? まだ何もしてないよ、あたし」

まどか「檻が、勝手に消えちゃった……?」

ほむら「……まさか……!!」


《アハハハハハッ!!》

杏子「……げほッ! う、ぐ、おぇぇぇ……っ!」

ビチャビチャビチャ...

杏子「ごほっ……げ、幻惑魔法の反動、かっ……こんなときに……」

《アハハハハハッ!》

杏子「……へっ、面白ぇ」

杏子「血まみれの魔法少女! アタシに相応しいじゃんか!」

杏子「まだ魔力は尽きちゃいねぇ! こんくらいじゃ終わらねーぞ!」

杏子「ロッソ・ファンタズマぁぁあっ!」


《キャハハハハッ!》

《キャハハハハッ!》

《キャハハハハッ!》

さやか「くっそお! 邪魔だってのっ!」

まどか「まだこんなに使い魔がいたなんて!」

マミ「これじゃあ杏子の所へ行けない……!」

さやか「ほむらっ! 時間停止はっ!?」

ほむら「無理よ! 今の私の魔力じゃ、この数を突破出来るほどの時間は止められないっ……!」

マミ「強行突破しかないってわけ、ねっ!」

まどか(急がないと……杏子ちゃんが!)


《アハハハハハ――――》

杏子(……なんだ? ワルプルギスの夜が……)

杏子(姿勢を変えようとしてる?)

杏子(っ! そーいや、ほむらのヤツが言ってたな)



『ワルプルギスの夜は逆さまの姿勢で宙に浮かんでいるわ』

『けれど奴が本当の力を解放するときは、その体勢をやめる』

『……そうなったら、この街は終わりよ』

『ワルプルギスの夜は、見滝原を完全に壊滅させるでしょうね……』


《――――アハハハハハッッッ!!!》

杏子「……ふざけんなッ!!」

杏子「げほッ……この街はアタシの縄張りだ! アタシの狩り場だ!」

杏子「見滝原のものは全部アタシのものなんだよ!」

杏子「マミも、さやかも、まどかもほむらも、全部、アタシのものだ!」

杏子「う、ぐっ……おぇぇっ……!!」

杏子「はぁっ、はぁっ……テメーなんかに、好き勝手されてたまるかぁっ!」

《アハハハハハッ!》

杏子「うぉぉぉぉぉぉっ!」


まどか「な、何っ? 凄い魔力を感じるよ!?」

さやか「あっ、あれ見て! 真っ赤な光が……」

マミ「この感じは、杏子!?」

まどか「だ……ダメっ! ダメだよ杏子ちゃん! そんなことしたら杏子ちゃんが……!」

さやか「あいつまさか、死ぬ気なの……!?」

マミ「杏子っ……!」


《アハハハハハハハハッッ!》

杏子「喰らいやがれぇぇぇぇぇぇ!!!」












――――私たちはもう家族でしょう?


杏子(あ……)


――――あんたのことは……まあ嫌いじゃないよ


杏子(なんだこりゃ……)


――――頼りにしてるわ、佐倉杏子


杏子(走馬灯、ってやつか……?)


――――杏子ちゃん、一緒にがんばろうね!


杏子(ふんッ……)


杏子(最期まで、うるせー連中だな……まったくよ)


………………

…………

……

ほむら「空が……晴れていくわ」

マミ「ワルプルギスの夜が去ったのね……」

まどか「……でも……」

QB「いやあ、凄い威力だったね」

QB「……佐倉杏子の『最期の』一撃は」

QB「まさか全力を出したワルプルギスの夜の攻撃を逸らすなんて!」

QB「おかげで街への被害もごく最小限に抑えられた」

QB「ワルプルギスの夜を討ち滅ぼすまでには至らなかったみたいだけど、退けることは出来たし」

QB「見滝原を狙う悪の魔法少女、佐倉杏子ももういない」

QB「理想的な結末と言えるよね!」

まどか「……ぐすっ」

マミ「キュゥべえ、貴方って子は……」


QB「どうしたんだい皆? そんな浮かない顔して」

QB「悪は滅びた! 皆も無事だ! まさしくハッピーエンドじゃないか」

さやか「……黙れよっ!」

QB「きゅっ!?」

まどか「キュゥべえには……私達の気持ちがわからないの?」

QB「……杏子は見滝原を狙ってた。君たちを欺いていたんだよ」

QB「なのになんで、彼女の死を嘆くんだい?」

まどか「杏子ちゃんが悪い魔法少女だったどうかなんて、関係ないっ!」

まどか「もしキュゥべえの言うことがホントだったとしても、私達は杏子ちゃんに生きていて欲しかった!」

マミ「縄張り争いなんて、私達にはどうでもいいの」

マミ「ただ……杏子がいてくれれば、それだけで良かったのに……」

QB「……君達は、そこまで杏子に毒されてしまったんだね……」


さやか「う……あああああっ!!」

ほむら「……さやか?」

さやか「杏子ぉっ!!」

さやか「帰ってきなさいよ馬鹿ぁっ!」

さやか「あんたには言いたいことがいっぱいあんのよっ!」

さやか「っ……グリーフシードが欲しいならっ……いくらでもくれてやるわよっ……」

さやか「だからっ……」

さやか「帰ってきてよ、杏子ぉ……」グスッ

マミ「美樹さん……ううっ……」

ほむら「……くっ」

まどか「……うわあああん……!!」





杏子「……ほー? それじゃあさっそく献上してもらおうかな、グリーフシード」

さやか「っ……!?」

マミ「え……!?」


杏子「よぉ、どいつもこいつもシケたツラしてるな?」

まどか「きょ、杏子ちゃん!? ……え、ホントに杏子ちゃんなの!?」

杏子「なに当たり前のこと言ってんだ。寝ぼけてんのか?」

ほむら「あの状況でどうやって……!?」

杏子「へっ、あれくらいどーってことねーよ」

杏子「アタシがちょいとばかし本気を出せば、ね」

さやか「きょ、杏子……!!」

杏子「ん?」

さやか「生きてたならなんでさっさと出てこなかったのよ!」

さやか「あたし達がどれだけ心配したか……!」

杏子「あー、はいはい……説教なら後回しにしてくれ」

杏子「……さすがのアタシもちょっとキツかったからさ、早いとこソウルジェムを浄化したいんだよ」

さやか「……馬鹿っ!」ブンッ!

杏子「あ痛てっ、グリーフシード投げんなっ! 先っぽが刺さったぞ!」


マミ「……くすっ」

杏子「な、なんだよマミ。何がおかしいってんだ」

マミ「うふふ……だって、杏子ったら全然いつも通りなんですもの……」

マミ「本当に……あなたが無事で本当に良かった……!」グスッ

杏子「おいおい、泣いてんのかマミ?」

杏子「……鬼の目にも涙、ってやつだな」

マミ「なっ……だ、誰が鬼ですって!?」

杏子「あははっ」


まどか「杏子ちゃん!」

杏子「ん?」

まどか「ありがとう……それと、ごめんなさい」

まどか「あのとき私のこと止めてくれて……杏子ちゃんにこんな無理をさせちゃって……」

杏子「……感謝されるよーなことはしてねーよ」

杏子「謝られるようなこともな」

まどか「でも……」

杏子「アタシはアンタが気に入らなかったから、アンタの見せ場を奪っただけさ」

杏子「……悪どいだろ? ははっ」

まどか「……もうっ、杏子ちゃんったら」

まどか「でも私はそんな杏子ちゃんが大好きだよっ♪」

杏子「ばっ、何言ってやがんだよ」

まどか「えへへっ」


ほむら「…………」

さやか「おーいまどか、ほむらが怖い顔してるぞー」

まどか「あっ、か、勘違いしないでねっ? 私が一番大好きなのはほむらちゃんなんだからっ!」

ほむら「そう。嬉しいわまどか」

ほむら「ところで佐倉杏子。ちょっとお話ししたいことがあるから来てもらえるかしら?」グイグイ

杏子「ちょっ、耳引っ張んな! いてててっ!」

まどか「ほ、ほむらちゃん!? どこ行くの!?」

ほむら「人の来なそうな体育館裏よ。屋上でもいいわ」

さやか「何処のだよ! ……って消えた!?」

マミ「わ、わざわざ時間停止を使ったの……?」

まどか「ほ、ほむらちゃーん!!」


QB(……わけわかんないよ!)

QB(みんな杏子に騙されてたって言うのに……)

QB(なんであんなに楽しそうに笑うんだろ?)

QB(そんなに杏子が好きなのかな)

QB(感情がないボクにはさっぱり理解出来ないや)

QB(…………)

QB(……でも、杏子が生きてたってことは)

QB(また彼女にシャンプーして貰えるかもしれないよね……?)

QB(……きゅっぷい!)


………………

…………

……

まどか(……こうして、私たちはワルプルギスの夜を乗り越えることが出来ました)

まどか(街への被害もごく僅かで……)

まどか(軽い怪我をした人が何人かいたみたいだけど、死傷者はゼロ)

まどか(『大災害を耐え抜いた奇跡の街、見滝原!』なんてニュースにもなっちゃいました)

まどか(みんなの笑顔を守れたのは……全部、杏子ちゃんのおかげです)

まどか(……あれから、杏子ちゃんはまたマミさんの家で暮らし始めました)

まどか(時々さやかちゃんとケンカもするけど、それは信頼する仲間だからこそで……)

まどか(みんなで一緒の時間を過ごせて……私、とっても幸せです!)

まどか(こんな毎日がずっと続いてくれればいいなぁ……)

エピローグ・佐倉杏子編へ続く

  |: : l: : : : : :{: : |ヽ: : : : : :{ヽ:ヽ     ,X:ヽ \: : :ヽ   \: :\: : : : : : : :V: : /: :
  |: : l: : : : : :l: : | ヽ: : : : : :iヽ:ヽ  /  ,>、,-r<===r-  ヽ: : ヽ: : : : : : :V:/: : :
  |: :li: : : : : :|: i: {  ヽ: : : : :ヽ ヾ、 '  イ ,/ ////C, リ    \:ヽ: : : : : : V: : :
  |: l |: : : : : :l:|T:「 ̄` ヽ: : : ヽ  `    |  {/////}       チ: : : : : : : V: :
  |:.| .l: : : : : :l:.| ヾ_ __ 二ヽ: : ヽ        l/ー ' リ        イ: : : : : : ヾ}: : :
  |:l ゙、: : : : :ヾl イ V//c` \:.、       ゝ―‐'        彡:, '  ̄ヽ:.}: :
  l:|  ヾ、: : : :ヽ ! {///}   `゙                    ,.<´`ヽ i:l: : :
   l:|  ヾヽ: : :.ヽ {,ーリ                       /,....`゙  |: : :
      ヽ ヽ: :ヽ\ヽ´  ノ        ,. ヘ           )  }  ノ: : :
         lヽ:ヽ         ,.  '´   ,- |          ⊂ '  /:, -=
         |        ,. '´    ―   ノ         ,........ - ',イ /:
          ヽ       ヽ       ,/         /: : : :/   /: :
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                       ̄  //,.::::´:::::::::::::::::/       |: : : :
このSSは杏子ちゃんが残虐行為を繰り返すSSでした。ご注意ください。



~廃墟と化した教会~

杏子「ただいまー、ってか?」

杏子「……うわっ、ヒデーなこりゃ。こんなに散らかっちまって……」

杏子「この前の嵐のせいだな……まったく、ワルプルギスのヤローめ」

杏子「しゃーない、気合い入れて掃除するか」

杏子「こんなことならアイツらに手伝ってもらうべきだったかな……」

杏子「……いや、コレはアタシがやらなきゃいけないんだ」

杏子「アイツらの手を借りるわけにはいかねーよな」


………。

杏子「よいしょっ、と」

杏子「ん。あらかた片付いたな」

杏子「もうこれくらいで充分だろ」

ヒラリ...

杏子「あっ……?」

杏子「写真……か」

杏子「こんなもんがまだ残ってたなんて、な」


杏子「……父さん」

杏子「母さん……」

杏子「モモ……」

杏子「……天国なんてモンがあるかどーか知らないけどさ」

杏子「アタシも、ようやく皆と同じトコに行けそうだよ」

杏子「……うん、そうなんだ」




杏子「アタシ……もう死んでるんだ」


杏子「この前の嵐の時に、ワルプルギスっていうスゲー化け物と戦ってさ」

杏子「相打ちになって死んじゃったんだよな、これが」

杏子「……今ここにいるのは幻。まあ幽霊みたいなもんさ」

杏子「凄いだろ? アタシの周りの連中も、誰も気が付いてないんだぜ」

杏子「マミも、さやかも、まどかもほむらも、アタシが死んでることを知らないんだ」


杏子「……今日も何も言わずに出て来たからさー、きっと不思議に思うだろうね」

杏子「いつまで待ってもアタシが帰ってこなくて、さ」

杏子「アイツらは馬鹿だから、一生アタシの帰りを待ち続けるだろうなー」

杏子「ふふ、想像しただけで笑えるよ」

杏子「最期まで極悪だろ? アタシってばさ」

杏子「父さんの言う通りの邪悪な魔女になってやったよ、あはは」


杏子「……ふう、いっぺんに話したせいかな? やけに疲れちまった」

杏子「アタシも……そろそろ休ませてもらおうかな……」

杏子「……よっこらしょ」ゴロン

杏子「はは……さすがに木の床は寝心地悪いな」

杏子「まあ贅沢も言ってらんねーか……」

杏子「…………」

杏子「……おやすみ、皆……」



「――――杏子ぉっ!!」



杏子「……?」


さやか「待ちなさいよ! なに黙って居なくなろうとしてんのよ!」

マミ「お願い杏子っ……私たちを置いていかないで!」

まどか「杏子ちゃんっ! 死んじゃやだよぉ!!」

ほむら「私はまだ、貴女に恩を返してないわ……!」

杏子「――――ははは」

杏子「最期の最期で、アタシの計画は大失敗に終わっちまったみたいだね……」

さやか「なに言ってんのよ……! んなトコで寝てないで起きなさいって!」


杏子「あーあ……仕方がねーな」

杏子「こーなったら悪党らしく捨てゼリフでも遺していくかなあ……」

マミ「馬鹿っ……! 変な冗談はやめてよ!!」

杏子「マミ……アンタはお姉さんぶってるのがウゼェんだよ」

マミ「えっ……?」

杏子「変に気を使うんじゃねーよ……一つしか歳が違わねーんだからさ」

マミ「……うん、うんっ、分かったわっ……」


杏子「さやか……アンタは無理して明るく振る舞ってる時があるよな」

さやか「何よ……それの何が悪いのよっ……!」

杏子「……ガマンする必要なんてねーんだよ。泣きてーときは泣け、バカ」

さやか「うるさいっ……! 今はそんなことどうだっていいでしょ!」

さやか「だから杏子……お願いだから……いかないでよぉ……!」

杏子「そーそー……そうやって泣けばいいさ」


杏子「ほむら……アンタは一人で何でも出来ちまうトコが気に入らねーな」

ほむら「いいえ……私は……皆がいなきゃ何も出来ないわ……」

杏子「……なんだ、分かってんならいいんだよ」

杏子「後は……まどか以外の仲間も大事にしてやれよ……?」

ほむら「……貴女もっ、その中の一人よ……! 貴女を……失いたくない!」

杏子「はは……冗談はよせって……」


杏子「……まどかは……アタシが言いたいこと、分かるよな?」

まどか「えっ……?」

杏子「……もっと自分を大事にしろ」

杏子「アンタが傷付いたら悲しむヤツが周りにいる、ってこと……忘れんじゃねーぞ……」

まどか「杏子ちゃんだって! 杏子ちゃんがいなくなっちゃ、私も、皆も、悲しいよぉ!!」

杏子「ばーか、アタシはいいんだよ……」

まどか「なんでっ……なんでそんな……!!」


杏子「あー……言いたいこと言ったからスッキリした……」

杏子「負け犬の遠吠えってのも、良いもんだな……」

杏子「もう……思い残すこともねーや」

まどか「やめてよっ……縁起でもないこと言わないでよぉ……!」

杏子「……ああ……最期に、もう一つ言わせてもらうよ……」

杏子「……アタシさ……ホントは、アンタ達のこと……」

杏子「――――……。」

まどか「え……? 何? 聞こえないよ杏子ちゃんっ……!」

ほむら「っ!? 佐倉杏子の身体が……消えていく……!!」

さやか「待って……待てって言ってるだろ! 行かないでよ、杏子ぉ!」

マミ「また……また家族を失うなんて……そんなの嫌ぁ……!!」



杏子(……じゃあな、みんな……)



まどか「杏子ちゃんっ……杏子ちゃぁぁぁん!!」


………………

…………

……。


~数ヶ月後・魔女の結界内部~

マミ「美樹さんっ、使い魔がそっちにいったわ!」

さやか「おっけー任せて! てりゃあああ!!」

ズバズバズバ!

使い魔「ギィャァァァ...」

さやか「うっしゃ、ちょろいもんね!」

まどか「さすがさやかちゃん!」

ほむら「……とりあえず、使い魔は一掃できたみたいね」


マミ「あとは、この奥にいる魔女を倒すだけね!」

さやか「さやかちゃん大活躍! のおかげで楽勝ですねー」

ほむら「ええ……今日のさやかは特に良い動きだと思うわ」

さやか「おっ?」

マミ「暁美さんが美樹さんを褒めるなんて珍しいわね」

ほむら「せ、正当な評価をしただけよ」

まどか「うふふ」


マミ「でも確かに最近の美樹さんは凄いわね。何かコツを掴んだみたいな……」

さやか「あ……うん、ちょっと杏子に助言されたことを思い出してさ」

さやか「参考にしてみたらスッゴい戦いやすくなったんだよねー」

まどか「へぇー、そうなんだ?」

ほむら「杏子はさやかのことを良く見ていたものね」

さやか「……最近になってようやく分かったよ。あいつのアドバイスって凄い的確だったんだね」

さやか「なんてゆーか? あたしへの愛が込められてるってゆーか? あははっ」

マミ「わ、私だって杏子に愛されてたわっ」

マミ「必殺技も考えてもらったもの!」

ほむら「何を張り合ってるのよマミ……」


まどか「私がこうして皆と一緒に居られるのも杏子ちゃんのおかげだし……」

まどか「杏子ちゃんは……私たちに沢山のものを残していってくれたんだね」

ほむら「そうね……」

まどか「そ、それに……ほむらちゃんとも、らぶらぶになれたし……」ピトッ

ほむら「も、もうっ、まどかったらこんなとこで……」

まどか「えへへ……」

ほむら「うふふ」

さやか「あー……ごほんごほん」

マミ「……そういうのは二人っきりの時にしてくれないかしら?」

ほむら「あっ、ご、ごめんなさい……」

まどか「つ、つい……その……」


QB(……佐倉杏子、キミは本当に恐ろしい魔法少女だったよ)

QB(キミの悪意がどれだけ皆の心を傷付けたことか……)

QB(……でも残念だったね)

QB(キミという巨悪に打ち勝ち、みんなはまた一つ強くなった)

QB(くじけることなく彼女たちは今も戦い続けているよ)

QB(悪は滅び、必ず最後に正義が勝つものなのさ……この世界は)

QB(…………)

QB(首輪、そろそろ買い替えないとなあ……)


さやか「……そういえば今日はこの後、マミさんが晩ご飯をご馳走してくれるんだよね?」

マミ「ええ。マミさん特製のスペシャル野菜カレーが用意出来てるわよ♪」

さやか「おおっ、こりゃノンビリしてらんないや」

まどか「早く魔女をやっつけちゃわないとね!」

ほむら「ふふ……そうね」

マミ「それじゃ、みんなやる気も充分みたいだし……行きましょうか!」

さやか「おうっ!」

まどか「はいっ!」

ほむら「ええ!」

















           /Y: : l: : : : : : ヽ:::::ヽ: : : : `ヽ、:::::ヽ: :\::::::::::::::::、
          /: /: : {: : : : : : ヽ:ヽ::::::ヽ: : : : : :\::::ヽ: : \:::::::::::::、
         /: :/: : : :i{: :ヽ: : : : : :\: ヽ、: : :――,: :ヽ: : : :\: :::::::.:、
        /: : : l: : iヽ{ ヽ、:ヽ: : : : : :\、:ヽ:、: : : : : : : ヽ: : : : : ヽ::::::::ヽ
       l: : : :|: : :l:.i、ヽ>: ヽ: : : : : 、: ヾ、: ヽ:\: : : : : ヽ : : : : :.ヽ::.:::::\

       |:/ .|:/i: : : l「´,ゝ、 _,>:ヽ: : : ヽ、Y´_ヽヽ: : : : : :ヽ: : : : : : : : :.:.:.:.:`ヽ、
       レ i/ l:i: : ヾ rTリ ' ヾ、ヽ: :ヽ>{, ヽ: : : : : : : :ヽ: : : : : : : : : :.:.:.:::::::`::ヽ..、

         '  ヽi、: :iヽ |;.}   ヽ:ヽ: :.l }'ヽ ノ: : : : : : : : :ヽ: : : : : : ::::::::::ヽ`ヽ、:::::::::::`::ー..-..、
            ヽヽノ  '     ヽ:.i: :| -,'イ: : : : : : : : : : : ヽ::::::::::::::::::::::::::::ヾ/` ゙ ー--::::::::::::::
             ヽ         、 !:|、:| |  l: ヽ: : : : : : : : : : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::`:ヽ.、    ̄ ̄
              ヽ    _,      ! /    ヽ: ヽ: : : : :\: : : ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`::゙ ー-..、_
     __r-.、,-、     `ヽ ´          ノソー-―- 、: :ヽ: : :ノ :::::::::::::;;;;;:;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   ,r‐〈 .| Y |r-、     ヽ   __ - ' ヽ//:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ: : /::::::::::::::: ;     ;:: : : ::::::::::::::::::::,'
 ,r〈ヽ ヽ| ,!r‐' ,)ヽ       ̄     / /         , ':::::::::::::::::::::::;    ,':::::::::::::::::::::::::::,'
 ,>、ヽヽJ` ー'ヽ ./            //         l :::::::::::::::::::::,:'     ,'.:::::::::::::::::::::::;
 { ヾ'       .!            / ___  -_-      , ` --       (::::::::::::::::::::::, '
  ヽノ       ,ノ ,、__          /r,. - '´ ´       l           ゙ ゙ ::::::::::::::,:'


                 ≪……頑張れよ、みんな……≫


これにてこのSSは完結です。

皆さんのご声援のおかげで悪は滅び、ハッピーエンドを迎えることができました。
悪が支配するバッドエンドも考えていたのですが、
やはりQBが言っていたように最後に
正義が勝つ結末でなければならないと思いなおし、この結末になりました。

5か月間もの長い間お付き合いいただき本当にありがとうございました。

ちなみに>>134に「小ネタ集をやる」と書き込んだ気もしますが
それはどうやら幻惑魔法だったようです。

ご感想ありがとうございます。

皆さまのレスを拝見しているうちに
せっかくだからやっぱり小ネタ集をやろうかなあ
という気分になってきてしまったので
HTML化依頼を出すのはもうちょっと後にしようかと思います。

そんなわけで当スレでは杏子ちゃんにしてほしい残虐行為を改めて募集いたします。
どうぞお気軽にご意見、ご要望をくださいませ。
全てのお声を反映することは難しいかと思いますが、可能な限り組み込んでいきたいと思います。

最悪の場合>>1が失踪してスレが落ちる可能性もありますが
ご容赦くださいませ。

: : : : : : : : : :/:/i:.:.:y ,/:/i:.;.;. : : : / __  //ヽ /:: : :///    /:,i:. : : :/: : : : : :.|
: : : :i: : : : : : ::イ:.:i:.;// iヘY:.; : : : /  ち>-、 ゞ、: /  /    /:'/: : : /:.: : : : : :.|
: : :.l: : : : : ::.;./:、:.i:|  i/ i:.:.: : : :/  |イ//ソ`ヽ: .X _ /    // /: : イ:.;.;. : : :/: /

: : :i: : : :i: : :.:/:.A:.i:i ヽr i|:.:. : :/   弋-,ノ  ,リ`      / /:/ /:.:. : : :/: /
: : i: : : :l: :.:.:l: :/ ヽ:、ヽヽ}:.:. : .!     、´            チソ ̄ 7:.:. : : /: /
: :i: : : : l: :.:.i: /  ヾ:.ヽ、 i: i:i:::     `´           ,JY`> /: ': :./:./
:/: : : :.:i: :.;i:.:/    _ヾ:. : : |:::::     ヽヽヽ        /J/ / /: : : ノ/
: : : : :.:.i :.;.i:.;|  / ̄,/  ヾ:::::.             、 し'  ,/:.: :/ '
: : : :.:.:.:i:.:.:i.:.i     /     ::::.              ヽ,/イ ´
: : : :.:./:i:.:.i―-- 、, /       \      , ― ァ    ヽヽ /
: : :.;./;.;.i:.:| ヽ   ヽ、        \     ー '       /
: :.;.;/:.:/i:.;|__.\    \      ,.へ、    _ _ ,  ' ´
:.;.;/‐'´ l:|   ` ヽ 、ヽ  ゝ、   /     ̄ ̄
.:./    l:|       `ヽ、  \/

このSSは杏子ちゃんが極悪非道な行為を繰り返すSSで、
今回は通り魔的犯行編です。ご注意ください。


~ある日の見滝原市・住宅地~

杏子「さて……ほむらとまどかを恋人同士にしてやったことだし」

杏子「次は何をしてアイツらを追い詰めてやろーかな?」

QB「き、君はまだ悪事を重ねる気なのかい!?」

QB「いったいどれだけ皆を傷付ければ気が済むの……!?」

杏子「くくっ……さてね?」

杏子「……ん、あれは……」



仁美「はあ……」



杏子「……いかにも金持ってそうなお嬢ちゃんじゃんか」


QB「あれは……さやかの友人の志筑仁美だね」

杏子「ああ、アイツがさやかの話に良く出てくる志筑仁美なのか?」

杏子「ふーん……そーかいそーかい」ニヤッ

QB「はっ!? ま、まさか杏子、仁美にまで何かする気じゃ……!」

杏子「くっくっくっ……良く分かったな?」

QB「そ、そんなのダメだよ!」

QB「彼女は魔法少女じゃないんだよ!? 素質も持たない一般人だ!」

QB「それなのに酷い目に合わせるなんて……!」

杏子「ふんっ、さやかなんかと友達になっちまったアイツが悪いのさ!」

杏子「それに友人であるアイツが傷付けば、さやかもショックを受けるだろうしね……ふふふ」

QB「そ、そんな……!!」


杏子「さーて何をしてやろうかな……?」

杏子「……そーだ! さやかが普段、仁美のことをどう話してるかチクってやろう!」

QB「な、なんだって!?」

杏子「自分のいないところで友人が陰口を叩いていると知ったら……さぞかし傷付くだろーねぇ?」

QB「杏子っ、キミはまさか二人の友情を引き裂くつもりなのかい!?」

杏子「結果的にそーなるかもしれないな? ははっ!」

QB「外道っ……! なんて鬼畜なんだキミは……!」

杏子「褒めてもらって光栄だよ……あーはっはっ!」

QB「ううっ……」

杏子「……んじゃ、早速行動に移るとしますかね!」


仁美「はあ……」

仁美(最近、なんだか独りでいる時間が増えましたわ……)

仁美(恭介さんはコンクールの練習で忙しいみたいですし……)

仁美(さやかさんもまどかさんも、ご一緒する機会がないですし……)

仁美(私は今日もお稽古をこなして……独り寂しく家に帰って……)

仁美「はあ……」


杏子「なあアンタ、もしかして志筑仁美じゃないか?」

仁美「えっ? あ、はい。そうですわ」

杏子「やっぱりそーか! いやー、話に聞いてた通りのコだなー」

仁美「……貴女は? どこかでお会いしましたかしら……?」

杏子「アタシは佐倉杏子。さやかの友達だよ」

仁美「まあ! さやかさんの?」

杏子「そ。アイツからアンタの話は良く聞かされてたからさー、つい話しかけちゃった」

杏子「あ、もしかして迷惑だったか? ごめんな」

仁美「い、いえ! そんなことはありませんわ」

杏子「そっか、良かった」


杏子「なあ、今から時間あるか? ちょっと喫茶店でも入って話そうよ」

仁美「えっ? えーと……」

杏子「一度話してみたかったんだよねー、さやかが大好きだっていう大親友の仁美ちゃんとさ!」

仁美「だ、大好き? 大親友? さやかさんが私のことをそんなふうに……?」

杏子「そーそー。さやかってばアンタのことホントに大好きらしくてさー」

仁美(さ、さやかさんが……私のことを……?)

杏子「えっへっへ、気になるか? 気になるだろ? だったらちょっとお話ししてこーぜ?」

仁美「うーん……」

仁美(少しくらいなら……寄り道しても構いませんわよね……?)

仁美「……はい、ぜひ色々聞かせてください!」

杏子「よっしゃ、んじゃどっか入ろうぜ!」





杏子《くくく……まんまと釣られやがったな》テレパシー

QB《友人が自分のことを周りにどう話しているのか……誰だって気になるもんね》テレパシー

QB《巧みに人間の心理を突いているよ……やっぱりキミは恐ろしい魔法少女だね……》

杏子《そうだろ? くくくっ》


~喫茶店~

杏子「それじゃ改めて、アタシは佐倉杏子だ。よろしくな」

仁美「私は志筑仁美です。よろしくお願いしますわ」

杏子「うーん……やっぱさやかの言ってた通り、言動の一つ一つから上品さが感じられるな、アンタは」

仁美「さ、さやかさんがそんなふうにおっしゃっていたんですか?」

杏子「おう。『上品で、いかにもお嬢さんって感じで……』」

杏子「『でもお茶目なトコもある、とっても可愛いヤツで……』」

杏子「『あたしの自慢の友達だよ!』……ってな具合に言ってたな」

仁美「な、なんだか恥ずかしいですわ……」


QB(……効果はてきめんみたいだ……)

QB(志筑仁美の顔があんなに真っ赤になってるよ)

QB(陰で好き勝手言われていることを知って、相当な衝撃を受けたんだね)

QB(しかも杏子は嘘を一つもついていない)

QB(後でこの会話がさやかに伝わることも想定している訳だ……)

QB(くっ……やっぱり杏子には敵わないよ……)


杏子「そーいえば仁美の手はスベスベで綺麗だ、とも言ってたな」

仁美「そ、そんなことまで? もうっ、さやかさんたら……」

杏子「……うん、確かに綺麗だな」

仁美「あまり見つめないでくださいまし……」

杏子「なあちょっと触ってみてもいいか?」

仁美「えっ! は……はい」

杏子「さんきゅー。んじゃ遠慮なく」


杏子「……おお、スベスベだ」ナデナデ

仁美「んッ……く、くすぐったいですわ」

杏子「何か特別な手入れとかしてるのか?」ナデナデ

仁美「い、いえ特には……ひゃんっ!?」ビクン!

杏子「撫で心地いいなぁ……ずっとこうしてたい気分だよ」ナデクリナデクリ

仁美「や、やめてくださっ……そんな、股のトコばっかり弄らないで……!」

杏子「あ、悪い悪い! つい夢中になっちまった」

仁美「はあはあ……きょ、杏子さんて……積極的な方なんですのね……」///


仁美「と、ところで、気になっていたことがあるのですが……」

杏子「なんだい?」

仁美「さやかさんとは、どういうふうにお知り合いになったんですか?」

杏子「うーん、何て言うか……」

杏子「同じコトしてたら知り合った、って感じかな」

仁美「同じコト……?」

杏子「詳しくは言えないよ、さやかも嫌がるだろうしね」

杏子「あ、でも別に悪いことしてるわけじゃないからな?」


仁美「……ソレは今も続けられているのですか?」

杏子「ああ」

杏子「念のため言っておくけど、アンタには出来ないことだよ」

仁美「そう、ですか……」

杏子「さやかのヤツも、その用事が忙しくてなかなかアンタに会えないでいるけど……」

杏子「……別に仲間外れにしようとしてるわけじゃないぞ?」

仁美「はい……」

杏子「いつか機会があったら、きちんと話したいって言ってたし」

杏子「その時まで待っててやってくれよな?」

仁美「……わかりましたわ」

杏子「んじゃこの話はお終いだ」

杏子「次はそーだなあ、仁美のおっぱいの揉み心地についてさやかが語った時の話でも……」

仁美「や、やめてくださいまし!」


………………

…………

……


~喫茶店を出た~

仁美「今日はありがとうございました。とっても楽しかったですわ♪」

杏子「アタシも楽しかったよ、付き合ってくれてサンキューな」

杏子「仁美の家はどっちなんだ?」

仁美「私の家はこっちの道をまっすぐですわ」

杏子「おっ、なら同じだな。途中まで一緒にいこうぜ」

仁美「はい、喜んで」


杏子(くくく……これでもかと言うほどさやかの陰口をチクってやったぜ!)

杏子(もうウンザリしてるだろーね、仁美の奴!)

杏子(途中であやうく魔法少女の話をしそーになっちまったけど……)

杏子(良い感じにはぐらかして、さやかへの不信感を増すことにも成功した!)

杏子(ふふっ! 今度二人が顔を合わせる時が楽しみだね!)

杏子(あーっはっはっは!)


仁美(うふふ、楽しかったですわ)

仁美(こうして誰かと一緒にお茶したのも……)

仁美(ずいぶんと久しぶりでしたわね)

仁美(…………)

仁美(でも……きっと明日からまた、私は一人ぼっちなんですわ)

仁美(杏子さんに会えたのは偶然ですし……)

仁美(さやかさんも……)


仁美(……さやかさんが放課後に何かしていらっしゃるのは薄々気が付いていましたけど……)

仁美(私に内緒で一体なにをしていらっしゃるのかしら……)

仁美(杏子さんも教えてくれそうにないですし……)

仁美「はあ……」



《だったら……いっそ力ずくで聞き出しちゃえば良いんだよ》



仁美「え……」

杏子「!」


杏子(魔女――!! ちっ、アタシとしたことが迂闊だった!)

仁美「この声は……? 嫌っ、私は、そんな……!」

《やっちゃおうよ! ほらほら!》

仁美「あ……ああ……?」

杏子「仁美っ! 耳を貸すな!」

《やっちゃえヤッちゃえ殺っちゃえ!》

仁美「う、ああああっ!」

ブンッ!

杏子「うわっ!」


仁美「あああっ、うああっ!」

ブンッ!

杏子「くっ……! やけにキレのあるボディブローじゃんか!」

杏子「なんか格闘技でもかじってんのか、仁美っ?」

仁美「ああああっ!」

杏子「……聴こえちゃいねーか」

QB「ど、どうするんだい杏子!?」

杏子「お、いたのかキュゥべえ」

QB「酷いよっ!?」


杏子(……さて、どーするかな?)

杏子(魔女を倒せば仁美も正気に戻るだろーけど、それじゃつまんねーな)

杏子(単なる人助けなんてアタシの性に合わねーし)

杏子「……そーだ! ここは一つこの状況を利用して……ふふっ」

QB「え、何をする気なの?」

仁美「ああぁぅああ!」

杏子「…………」スタスタ

QB「え、ちょっと杏子! そんな無防備に近付いたら危ないよ!」


ゴスッ!

杏子「う、ぐっ……!」

仁美「あはぁ……♪」

杏子「……はは、結構イテェな、仁美のパンチ……」

QB「杏子!? そんな、わざわざ自分から殴られに行くなんて……!?」

仁美「あはっ、あははっ!」

ガスッ! バキッ! ドスッ!

杏子「ぐっ、あっ、うっ……!」

QB「は、反撃しないと! 何やってるの杏子!?」


杏子《バーカ、これでいいんだよ》テレパシー

QB《!?》

杏子《仁美自ら『証拠』を作ってくれるんだ、利用しない手はねーだろ》

QB《証拠……ハッ、まさか!?》

QB《仁美に暴力を振るわせて、慰謝料を請求するつもりなのかい!?》

杏子《ご名答!》

杏子《イイトコのお嬢さんなら警察沙汰は避けたいだろーからね》

杏子《くくっ……たっぷり儲けさせてもらうぜ、仁美ちゃんよぉ?》

QB《ひ、酷過ぎる……!》


仁美「あはぁっ……あはははっ……!」

ドカッ!バキッ!

杏子「ぐっ、くぅぅっ……!」

杏子「なかなかやるじゃんか、仁美……」

杏子「ぺっ……口の中、切れちまった」

仁美「あははは――――」

杏子「ほら、もっとこいよ! こんぐらいじゃアタシは倒れねーぞ!」

仁美「あははあは!」

ガスッ!ボカッ!


ドスッ!

杏子「げほっ……い、今のは中々効いたな……」

仁美「うふ、うふふ……」

仁美「……ねえ、杏子さん……?」

杏子「っ! アンタ正気に……」

仁美「どーしてわたくしに殴られてくれてるんですのぉ?」

仁美「もしかしてそーいう趣味をお持ちなんですのぉ……うふふっ!」

杏子(いや、違うか……魔女に操られて喋ってるだけだな)


杏子「……アタシさ、仁美の気持ち良く分かるんだよ」

仁美「……?」

杏子「アンタ、さやかの……友達の輪に入れなくて辛かったんだろ?」

仁美「っ!!」

杏子「でも勇気がなくて、自分の気持ちが言いだせなくて……」

杏子「いっぱいいっぱい胸の中にため込んじまってる」

仁美「う……うるさいですわっ!!」

バキィ!

杏子「げほっ!」


杏子「……ちょ、ちょうどいい機会じゃんか」

杏子「ここでブチまけちまえよ!」

杏子「溜まったモン全部はき出しちまえ!」

仁美「うううううっ……!」

杏子「アンタのやり場のない気持ちも全部……」

杏子「……みんなアタシが受け止めてやるからさ」

仁美「うあああああああっ!!」

仁美「わたくしはっ、恭介さんが好きで! でもさやかさんも好きで!」

仁美「みんなで仲良く過ごせたらいいって、そう思ってただけなのに!」

仁美「どうしてなんですの!? なんで私は、一人ぼっちなんですの!?」

バキッ!ゴスッ!ドカッ!

杏子「か、はっ……」

杏子「っはは! そう、それでいいんだよ!」


仁美「はぁっ……はぁっ……!」

杏子「ゲほッ……な、なんだ、もう終わりか?」

仁美「……ど……どうしてっ……!」

杏子「うん?」

仁美「なぜ杏子さんは、今日会ったばかりのわたくしに……そこまで……!」

杏子「…………」

杏子「……んなモン決まってんだろ?」

仁美「え……」

杏子「アタシ達は今日、一緒にお茶を飲んで……」

杏子「さやかの話で盛り上がって、楽しい時間を過ごした」

杏子「……なら、アタシ達はもう友達じゃんか」

杏子「友達の愚痴くらい、いくらでも聞いてやるのは当たりまえのことだろ?」

仁美「――――!!」

杏子「だからさ、アンタは……」



杏子「一人ぼっちなんかじゃ、ねーんだよ」



仁美「あ、あああああああっ……」


仁美「――――あ……」

フラッ...

杏子「おっと!」ガシッ

杏子「気を失ったか……流石に無理をさせすぎたかな」

杏子「ま、もう充分殴られたし……イテテ」

杏子「そろそろ魔女のお相手でもしてやりますかね!」

ゾゾゾゾ...

QB「杏子! 魔女が来るよ!」

杏子「分かってるっての!」

杏子「――――行くぜ!」


………………

…………

……。


仁美「う……わ、私は……いったい……」

杏子「目が覚めたか、仁美」

仁美「杏子さ……!? そ、そのお怪我は……」

杏子「これか? これは……」

仁美「あっ……ああっ!!」

仁美「わ、私っ、なんてことを……ごめんなさいっ……ごめんなさい杏子さん!」

杏子「はは、へーきだよこれくらい」

仁美「でもっ、私が杏子さんを! 私のせいで……!」

杏子「大丈夫だってば。この程度なら唾つけとけば治るし」

仁美「わ、わかりましたわ! なら僭越ながら私が唾をつけさせて――――」

杏子「いやいらねーから!! やめろって!!」


仁美「ごめんなさい……本当に……なんてお詫びをしたらいいか……」グスッ

杏子「だから大丈夫だって。あーもう、泣くなよ」

杏子「アンタは普通の状態じゃなかったんだ。なんか変な声が聞こえただろ?」

杏子「アレに操られてただけで……アンタは何も悪くないんだよ」

仁美「でも……だって……」グスグス

杏子「やれやれしょうがねーな……」

杏子「……んじゃ、アンタにはアタシをキズモノにした責任を取ってもらおうかな?」

仁美「は、はい! 私にできることならなんでもしますわ!」

杏子「そーだなぁ、それなら……」

杏子「……パジャマ」

仁美「え?」

杏子「パジャマ買ってくれよ」

仁美「ぱ、パジャマですか……?」


杏子「そ。んでもって仁美の部屋に置いといてくれ」

仁美「えと、それはどういう意味が……」

杏子「アタシさ、友達の家でパジャマパーティするのが夢だったんだよな」

杏子「だからいつでも仁美の家にお泊りできるようにさ」

杏子「アタシのパジャマ、置いといてくれよ」

仁美「そ、そんなことで許してくださるのですか……?」

杏子「そんなこと、だと? おいおい、アタシの夢を馬鹿にする気か?」

仁美「い、いえっ! そんなことはありませんわ!」

杏子「んじゃ決まりだな! パジャマ、買っておいてくれよ?」ニカッ

仁美「……はいっ! 買っておきますわ!」

仁美「ですから……遠慮せずに好きな時に来てください!」

杏子「おうっ!」


仁美(……杏子さんみたいな人……初めてですわ)

仁美(今日会って、少しお話しただけなのに私の気持ちを見抜いて……)

仁美(私の気持ちを正面から受け止めてくださった……)

仁美(しかもあんなに私が酷いことしたのに笑って許して下さるなんて)

仁美(それに……あんな素敵な笑顔で……私のことを友達だなんて言ってくださって……)

仁美(杏子さん……)ドキドキ


仁美「あ……でも……そういえば」

杏子「ん? どうした?」

仁美「あの……一つだけ聞いてもよろしいですか?」

仁美「私が聴いたあの声は……私を操ったあの声は、いったい何だったんですの?」

仁美「それに、杏子さんの服装が一瞬で変わって、何かと戦っていたような気が……」

杏子「ああ、あれか」

杏子「うーん……まあアレが、アタシやさやかの秘密ってわけだ」


杏子「詳しく説明するのは止めとくよ。それはさやかの役目だからね」

杏子「いつか自分から説明したい、って言ってたしな」

仁美「…………」

杏子「どうしても、っていうなら教えてやってもいいけど?」

仁美「……いえ、いいですわ」

仁美「杏子さんがそうおっしゃるなら、私はさやかさんを信じて待ちますわ」

仁美「……友達、ですもの!」

杏子「……ん、そっか」


杏子「……おっと、もうこんな時間じゃんか! そろそろ帰らねーとな」

仁美「あ……! わ、私も門限が……!」

仁美「どうしましょう、今からじゃ走っても間に合わないですわ……!」

杏子「あちゃー……悪い、アタシが誘ったせいだな」

仁美「い、いえ! そんなことは!」

杏子「……なあ仁美、アンタは高いトコ平気か?」

仁美「え? あ、はい、割と大丈夫ですけれど」

杏子「んじゃアタシが連れてってやるよ! ひとっ飛びでアンタんチまでさ!」

ガシッ!

杏子「ほら、しっかり掴まれよー?」

仁美「え、あの、杏子さん? いったい何を?」

杏子「……クラスのみんなには内緒だぞ?」

仁美「え……きゃああああ!?」

バヒュゥゥゥゥン!





QB「……飛んでっちゃった」

QB「……ぼ、僕を置いてかないでよー! 待ってよ杏子ー!」


杏子(……いやー、それにしてもまさかこんなに上手くいくなんてな)

杏子(単にちょっと苛めてやろうと思ってただけなのに……)

杏子(魔女のおかげで第2の寝床をゲットだぜ!)

杏子(これで万が一マミの家を追い出されても安心だな!)

杏子(仁美の奴も良い駒として扱えそうだし……)

杏子(たっぷりと可愛がってやるとするかね! あーはっはっは!)

杏子(……さーてお次は何をしてやろうか!)


~数日後~

恭介「聞いてくれないか中沢? 最近志筑さんがとっても楽しそうなんだ!」

恭介「杏子さん、っていうコと友達になったらしいんだけどさ」

恭介「『私の全てを受け止めてくださった方ですの』とか」

恭介「『私はあの方をキズモノにしてしまった責任をとる必要があるんですの』とか」

恭介「『一緒にお空も飛びましたの。とっても気持ち良かったんですのよ?』とか」

恭介「楽しそうにその子のことを話してくれるんだ!」

恭介「志筑さんが幸せそうでボクも嬉しいよ……ってあれ?」

恭介「中沢? どうして鼻血なんか出してるんだい?」

次回、『鬼畜調教! 汚される純粋無垢な幼女 ~いつかは今じゃないよ~』編へ続く

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: :VI!:.:j:.:.:.:.:.|:.:.!:.{:.:.:j: : : : : : : : : :、           ///,//O//l///}
!: :/: VI:/l:.:.jVI{:.l:.:/: : : : : : : : : : :',          ヽ//l//O{/////
∨: : : /: :l/: : : :.j/: : : : : : : : : : : : }          //,イ////l///

このSSは杏子ちゃんが鬼畜行為を繰り返します。ご注意ください。


~ある日の見滝原市・路地裏~

杏子「アタシは風見野に帰る」

杏子「もうアタシに干渉すんなよ。今度会ったら……殺すぞ」

まどか「そんな……待ってよ杏子ちゃん!」

杏子「…………」

まどか「杏子ちゃんっ……杏子ちゃぁあん!」





杏子(……と、まあそんなわけで風見野に戻ってきたわけだが)

杏子(とりあえずワルプルギスとやらに備えてグリーフシードを稼いでおくかな……)

杏子(……お、早速魔女の気配が)


~魔女の結界内部~

魔女「ギャアアア...!」

杏子「一丁あがりっと」

杏子「やっぱ援護射撃がねーと少し面倒くせーなぁ」

杏子「ま、そんくらいでやられるアタシじゃねーけどさ」

杏子「……しっかし、どーするかねコレ」



ゆま「…………」



杏子「おいガキ、起きてるか?」

ゆま「あ……あ……」

杏子(……周りに転がってるのは……このガキの両親か?)

杏子(とっくに手遅れだな……やれやれ)


ゆま「うう……ううっ……!」

杏子「泣いたって両親は生き返んねーぞ」

ゆま「……うあああっ!」

杏子「チッ……これだからガキは……」

杏子(……ん? そーだ、イイコト思い付いたぞ!)

杏子(ここでこのガキを攫って……アタシ好みに調教してやるってのも面白そーだな!)

杏子(くっくっく……テンション上がってきた!)

杏子「よぉーし、クソガキ!」

ゆま「っ!?」ビクッ

杏子「来な。アタシがお前を立派な鬼畜にしてやるよ」


~風見野市・公園~

杏子「ほら食べな。美味しい美味しいアンマンだぞー」

ゆま「……もぐもぐ」

杏子「鬼畜の道は険しいからな、しっかり食べて体力をつけるんだぞ!」

ゆま「……きちく?」

杏子「悪い奴、ってことさ」

ゆま「わたし悪いコになるの?」

杏子「そーさ! お前は血も涙もない極悪人になるのさ!」

ゆま「……よくわかんない」


杏子「鬼畜はいいぞー、好きなことを好きな時に出来る」

杏子「サイっコーに楽しい生活だぞー」

杏子「今から始めればホラ! 洗剤もセットでつけちゃうぞー」

ゆま「……ねえ、お姉ちゃん」

杏子「ん?」

ゆま「きちくになれば、お姉ちゃんみたいに強くなれるの?」

ゆま「お姉ちゃんみたいにキラキラーって変身して、バケモノをやっつけられる?」

杏子「…………」

杏子「……アタシみたいに、っていうのは無理だね」

ゆま「そう、なんだ……」

杏子「……でも、アタシの調教を受けて立派な鬼畜になれば……」

杏子「アタシの次くらいには強くなれるかもしんねーな?」

ゆま「……!」

ゆま「じゃあなる! わたし、きちくになるよ!」

杏子「くくっ……よく言った!」


杏子「ところで、お前の名前は何て言うんだ?」

ゆま「えっ?」

杏子「いつまでも『お前』じゃ、やりづらいだろ」

杏子「アタシは杏子。佐倉杏子だ」

ゆま「わたしはゆま! 千歳ゆまだよ!」

杏子「オッケー、ゆまだな」

杏子「んじゃ、ゆま! 早速調教してやるよ!」

ゆま「わーい!」


~調教生活1日目~

杏子「よし……あそこのばーさんを最初の獲物にしよう」

杏子「あの荷物をムリヤリ奪ってやりな!」

ゆま「う……うん!」

杏子「なーに大丈夫さ、アタシの教えた通りにやれば上手くいくよ」

ゆま「が、がんばるね!」

ゆま「……おばーちゃん! その荷物貸して?」

バーチャン「おやまあ……持ってくれるのかい? ありがとうねぇ」

ゆま「どういたしまして!」

ゆま「よいしょ……わあ、重たいね!」

バーチャン「欲張っていっぱい買っちゃったからねぇ……大丈夫かい? 持てるかい?」

ゆま「へーきだよ! わたしに任せて!」

ゆま「よいしょ、よいしょ……」


…………。

バーチャン「ありがとうねぇ、わざわざ家まで運んでもらっちゃって」

バーチャン「はい、お礼にさっき買ったリンゴをあげるね」

ゆま「いいの? わーい」

ゆま(やったあ! 上手く荷物を奪えたよ!)



杏子(くくっ……なかなか見込みがあるじゃんか)


~調教生活2日目~

杏子「さて今日は……おっ、アレがいいな」

ゆま「どれ?」

杏子「あっちから走って来る男の子がいるだろ」

ゆま「うん」

杏子「アイツに嫌がらせして転ばせてやりな!」

ゆま「ええっ? で、でもそんなことしたら……」

杏子「甘ったれんな! 言うこと聞かねーと柔らかいベッドでスヤスヤ寝かせるぞコラ!」

ゆま「ひっ……! そ、そんなのやだよ! 日中からそんなノンビリしてたら一日が勿体ないよ!」

杏子「そーだろう? ならさっさとやれ!」

ゆま「う、うう……」


少年「ハァハァ……!」タッタッタ

ゆま「……ええ~い!」

ガッ!

少年「うわああっ!?」

ズシャァ!

少年「い……痛い……」

少年「な、何をするんだよ!」

ゆま「えっ、えーっと」


店員「……ようやく捕まえたぞ、ボーズ」ガシッ

少年「ひっ!?」

ゆま「え?」

店員「ありがとうよ嬢ちゃん。コイツは万引きの常習犯でな」

店員「嬢ちゃんのおかげでようやく捕まえることが出来たよ」

ゆま「そ、そーなの?」

店員「そうだよ。……オラッ、大人しくついて来やがれ!」

少年「く、くそぉ……!」


ゆま「はわぁ……」

杏子「どーだい、ゆま? 調子に乗ってる生意気なガキを不幸のドン底に落としてやった気分は」

ゆま「えと……あのね」

ゆま「胸の奥があったかくなって……ポカポカして……」

ゆま「……すっごいキモチ良かった!」

杏子「はは! そうかそうか!」

杏子「ゆまは才能があるぞ、アタシが保証するよ」

ゆま「ホント? じゃあ、すぐにゆまもキラキラーって変身出来るようになる?」

杏子「あん?」


ゆま「キョーコの言う通り、きちくの才能があるんでしょ? なら……」

杏子「ばーか、ゆまにはまだ変身は無理だよ」

ゆま「えー? じゃあ後どれくらいかかるの?」

杏子「そうだなあ、このままならあと一年は必要かなあ」

ゆま「一年も!? そんなのヤダよぉ、もっと短く出来ないの?」

杏子「ふう、やれやれ……」

杏子(ちょいと調子に乗っちまったみたいだな)

杏子(仕方ない、次はキツめの調教にしてやるかね……くくくっ)


~調教生活3日目~

杏子「今日はこの河原で鬼畜行為をおこなってもらうぞ」

ゆま「ここで何をすればいいの?」

杏子「それは自分で考えな」

ゆま「えっ……」

杏子「今回アタシは一切口出ししない。お前の実力……みせてもらうよ」

ゆま「……! 分かったよ! わたし頑張るね!」

ゆま「ゆまの鬼畜っぷりに腰抜かさないでよね、キョーコ!」

杏子「くく、楽しみにしてるぜ?」

杏子「んじゃ、アタシは隠れて見てるからな。精々ガンバレよ」

ゆま「うん!」


ゆま(よーし、何をしちゃおっかなあ)

ゆま(まずはゴミでも拾おうかな?)

ゆま(……うん、いいかも!)

ゆま(いっぱいゴミを集めて……ゴミ処理場をパンクさせちゃおう!)

ゆま(きっとみんな困るぞー、えっへっへ)

ゆま(さっそく行動開始だよ!)


…………。

ゆま「よいしょ、よいしょ……」

ガサゴソ

ゆま「ふう、だいぶ集まったなぁ」

ゆま「……あれ? コレは……お財布だ!」

ゆま「えっへっへ、良いもの見つけちゃったな~、どうしよっかなあ~」

ゆま「うーん……そうだ!」

ゆま「交番まで持って行って、持ち主に謝礼を要求しちゃおう!」

ゆま「えっへっへ、わたしってば鬼畜だね!」


ゆま「えーと、この近くの交番は~」

トテトテ

男「ああっ、オレの財布だ!!」

女「嘘、マジで?」

ゆま「えっ?」

男「間違いない……この前スラれたオレの財布!」

女「なんでこんなチビが持ってるわけ?」

ゆま(このお兄ちゃんが財布の持ち主さんなんだ……)

ゆま(えへへっ、交番に行く手間が省けたね!)

ゆま「あのね! このお財布はわたしが……」

男「……お前が盗ったんだな!?」

ゆま「……え?」


男「返せよ!」

ガシッ!

ゆま「きゃっ!」

男「中身は……からっぽじゃんか!? クソッ、このガキ!!」

ゆま「ち、違うよ! わたしはただ拾っただけで……」

女「うわ、このチビ最低だねー。しらばっくれる気だよ」

男「舐めやがって……! こいっ、警察に突き出してやる!」

グイッ!

ゆま「やだっ! 離してよぉ!」

男「ったく! どんな教育を受けてきたんだか……親の顔が見てみてーな!」

女「泥だらけで汚ないカッコだし、虐待でも受けてたんじゃないのぉ? アハハ!」

ゆま「……っ!!」


?「あのー、すみません」

男「ん? なんだよ金髪縦ロールのオネーサン」

?「その子は盗ってませんよ。私、その子が拾うところを見ましたから」

男「え?」

ゆま「!」

?「ねえそうよね? あなたは拾っただけよね?」

ゆま「あ……うん! そうだよ、わたしは盗ってなんかないよ!」

男「そ、そーなのか?」

女「なに信じかけてるのよ! そんな金髪縦ロール巨乳オンナに騙されちゃダメだって!」

男「いや、でもこの金髪縦ロール巨乳お姉さん(若干垂れ目)が嘘をついてるようには見えないし」

女「なんでそんなこと言えんのよ!」

男「いや、だって美人だし」

女「……バカッ! もう知らない!」タッタッタ

男「あ、オイ! ちょっと待てよ!」タッタッタ


?「ふう……困った人達だったわね」

ゆま「あっ、ありがとう金髪縦ロールの巨乳(垂れ目気味)で紅茶好きそうなお姉ちゃん!」

?「いいのよ、お礼なんて」

?「それより早くお姉ちゃんのところに帰りなさい? 向こうで待ってたわよ」

ゆま「え? う、うん。バイバイお姉ちゃん!」

?「ええ、バイバイ」

タッタッタ...

?「…………」

?「やれやれ……世話の焼ける奴だな」

キラキラー

杏子「このアタシにわざわざ幻惑魔法まで使わせやがって、まったく……」

杏子「……おえっぷ」


………………

…………

……。

杏子「偉そうなコト言った割には随分とブザマだったじゃんか、ゆま」

ゆま「うう……」

杏子「通りすがりの一般人に助けられるなんてね……情けない」

ゆま「ごめんなさい……」

杏子「ま、でもこれで分かったろ? 身の程って奴がさ」

杏子「一人じゃ何にも出来ないんだよ、お前は」

ゆま「あ……」ビクッ

杏子「これに懲りたら調子に乗った言動は控えてだな……」

杏子「……ん? どーした?」

ゆま「う……うああ……!」ガクガク


《この役立たずが!》

《何にも出来ないゴミなんだよ、お前は!》

《お前なんて産むんじゃなかったよ、まったく!》

《今度ふざけた真似したら捨ててやるからね!》



ゆま「う……ううう……!」

杏子「お、オイゆま? どーしたってんだ?」

ゆま「……ゆ、ゆまっ、はっ! 役立たずなんかじゃないよ!」

杏子「なっ……?」

ゆま「何にも出来ないゴミなんかじゃないっ! ゆまは何だってするよ!」

ゆま「だから……だからっ……」グスッ

ゆま「ゆまを捨てないでよ、キョーコぉ……」

杏子「…………」


杏子「……甘えたこと言ってんじゃねーよ」

ゆま「っ!」ビクッ

杏子「『捨てないで』、だと? 何も分かっちゃいねーな」

杏子「……アタシがお前の鬼畜調教を途中で止めてやるわけがねーだろうが」

ゆま「え……?」

杏子「調教はまだまだ続くんだ、お前が嫌だって言ってもな」

ゆま「それって……つまり……」

杏子「くっくっく……調教が終わるまでいっつも傍に居て監視してやる、ってことだよ」

ゆま「……!」

杏子「立派な鬼畜になるまでは逃がさねーからな、ゆま!」

ゆま「……え、えへへ……ホントに、キョーコは鬼畜だね……」

ゆま「こわくて……ゆま、涙がとまんないよ……」グスッ

杏子「そーだろ? あーっはっはっは!」

ゆま(キョーコ……ありがと……)


~調教生活5日目~

たっくん「パパどこー? パパー?」グスッ

杏子「……ゆま、お前ならあの迷子をどうする?」

ゆま「うーん、わたしなら……お菓子をムリヤリ食べさせてあげちゃうかな!」

ゆま「知らない人からお菓子を貰ったとなれば、あの子きっと叱られるに違いないよ!」

ゆま「えっへっへ、想像しただけで楽しくなるねっ」

杏子「くくっ、なかなかやるようになったな」

杏子「……ちなみに与えるお菓子ってのは?」

ゆま「もちろん幼児でも食べられる、安心安全のオヤツだよ!」

杏子「よぉーし完璧な解答だ! それで行け!」

ゆま「うん!」


…………。

まどパパ「この子と一緒に遊んでくれたんだね、ありがとう」

たっくん「ありがと~」

ゆま「えへへ、どういたしまして」

まどパパ「お菓子まで貰っちゃって……」

まどパパ「ほらタツヤ、ちゃんとお礼を言いなさい?」

たっくん「ごちそうさまでした!」

ゆま「いえいえ、おそまつさまでした!」

まどパパ「ふふ……」


まどパパ「それじゃ、帰ろうかタツヤ」

たっくん「やだ! ゆまともっと遊ぶ!」

まどパパ「こらこら、お姉ちゃんを困らせちゃダメだろ?」

たっくん「やーだー!」

ゆま「ごめんね、たっくん……わたしももう行かないと」

たっくん「うー……」

ゆま「また今度一緒に遊ぼう? ね?」

たっくん「……うん」

ゆま「そーだ! 指きりして約束しようよ、ほら!」

たっくん「ゆびきり?」

ゆま「うん、こうやってね」

ゆま「ゆーびきりげんまん……」


杏子(ほほー……実現出来るかどうか分からない約束なんかして幼児を騙すとはね)

杏子(調教は順調だな。ゆまが一人前の鬼畜になる日もそう遠くないぞ……くっくっく!)

杏子(……しかし、だ)

杏子(もうすぐほむらが言ってた例の日だ)

杏子(しばらくゆまを放置プレイしてやる必要があるな)

杏子(さて、何処に放り出してやろうか……)

杏子(……そーだ! こんなときこそアイツんちに行けばいいんじゃんか!)

杏子(ゆまをアイツの家に送り込もう!)


~調教生活6日目~

仁美「杏子さん! またお会いて嬉しいですわ!」

杏子「悪いね、急に邪魔しちゃって」

仁美「いいえ、杏子さんならいつでも歓迎いたしますわ♪」

仁美「ところで……そちらの方は?」

ゆま「初めまして! わたしは千歳ゆまだよ!」

仁美「ふふっ、元気な方ですわね」

仁美「私は志筑仁美ですわ。よろしくおねがいしますわね」

ゆま「うんっ!」


杏子「今日はさ、コイツ……ゆまのことで頼みがあって来たんだ」

仁美「頼み、ですか?」

杏子「ああ。しばらくの間、コイツを泊めてやってほしいんだよ」

杏子「……いいかな?」

仁美「……杏子さんの頼みでしたら喜んでお受けしますが……」

仁美「でもいったいどうしてなんですの?」

杏子「ま……ちょっと事情があってね」

ゆま「…………」


仁美(……ゆまさん、あんなに悲しそうな目をされて……)

仁美(きっと何かあったんですのね)

仁美(…………)

仁美「……わかりましたわ。しばらくの間、ゆまさんをお預かりいたします」

杏子「すまないな、仁美……ほらゆま、ちゃんと御礼をいいな」

ゆま「お姉ちゃんありがとう!」

仁美「ふふ、どういたしまして」

仁美「さて……それでは両親に事情を説明してきますわね」

仁美「お二人は私の部屋でお待ちになっていてくださいな」

ゆま「はーい」

杏子「ん。頼むよ」


~仁美の部屋~

杏子「……それじゃ、後のことは分かるな?」

ゆま「うんっ」

ゆま「杏子の『用事』が済んで帰ってくるまで、この家に居座ってればいいんだね!」

杏子「バカッ、声がでけーよ」

ゆま「あわわ」

杏子「まったく……そんなんでやっていけるのかよ?」

ゆま「だ、大丈夫だよ。わたしの鬼畜な本性がバレないようにネコかぶるよ」

ゆま「それだけじゃないよ。別れが辛く悲しくなるようにいっぱい楽しい思い出も作っちゃうよ」

杏子「……また口だけにならないといいな?」

ゆま「ぶー」


ゆま「……ね、キョーコ」

杏子「ん? なんだ?」

ゆま「杏子の『用事』、って……いつものバケモノ退治と関係あること?」

杏子「……さて、どーだろーね」

ゆま「ゆまは手伝えないの? ゆまに出来ることは……」

杏子「ばーか、自分から手伝いを願い出るなんて鬼畜失格だぞ?」

杏子「お前はこの家でアクギャクヒドーなことしてりゃいいんだよ」

ゆま「……うん」


ゆま「……それじゃあ、さっそく鬼畜なことしちゃおうかな!」

杏子「お、やる気まんまんだな。いいぞいいぞ」

ゆま「キョーコ! ゆまにプレゼント買ってちょーだい!」

杏子「……はあ? なんだそりゃ」

ゆま「えへへ、鬼畜なわたしからの不当な命令だよ」

杏子「オイオイ、アタシがお前の命令に大人しく従うと思ってんのか?」

ゆま「……ふーん、そんなコト言っていいの?」

杏子「あん?」

ゆま「言うこと聞かないとキョーコの恥ずかしい秘密をヒトミにバラしちゃうよ?」

杏子「な、なんだって?」

ゆま「ゆまね、知ってるんだよ? キョーコが毎晩寝る前に、オ……」

杏子「っ!! わ、分かった! 分かったからその先は言うな!」

ゆま「えへっ♪」


杏子「クソッ、アタシとしたことが見られてたなんて……!」

ゆま「ゆまは鬼畜だもん! 弱みを握るくらい当然のことだよ~」

杏子「……まったく、大したヤツだよお前は」

杏子「今回は負けを認めてやる。んで、何を買ってきて欲しいんだ?」

ゆま「うーん、どうしようかなー」

ゆま「……キョーコが帰ってきてから決めよっかな」

杏子「は?」

ゆま「うん、そうしよう。キョーコが帰ってきたら、一緒にデパートとか行って、それでプレゼントを決めるの!」

ゆま「だから……ね? ちゃんと帰ってきてくれなきゃ、ダメなんだからね!」

杏子「はぁ……仕方ねーな、分かったよ」

杏子「約束してやる。アタシは必ず帰ってきて、ゆまにプレゼントをくれてやるよ」

ゆま「わーい! 絶対だよ!」


仁美「あら、なんだか楽しそうですわね? 何のお話ですか?」

ゆま「えへへ……あのね! 今度キョーコとお買いものに行く約束したんだー♪」

ゆま「しかもキョーコがプレゼント買ってくれるんだよ!」

仁美「まあ! 良いですわね、うらやましいですわ~」

ゆま「じゃあヒトミも一緒に行く? キョーコに欲しいもの買ってもらいなよ!」

杏子「お、オイ! なに勝手なこと言って……」

ゆま「……キョーコ? 良いよね?」

杏子「くっ……!」

仁美「?」


杏子「わ、わかったよ、仁美も一緒だ! なんでも買ってやるよ!」

仁美「良いんですの? 別にそんな無理していただかなくても……」

杏子「いいんだよ。友達に贈り物するくらいフツーだろ?」

杏子「……コイツが迷惑掛けちまうことだしね」

ゆま「ゆまは迷惑なんてかけないよ!」

仁美「ふふっ……杏子さんがそうおっしゃるなら、お言葉に甘えさせていただきます」

仁美「素敵なプレゼントを買ってもらいますわね」

杏子「よし、決まりだな。何が欲しいかは今度出かけるときまでに決めとけよ?」

仁美「はい♪」

ゆま「えへへ、楽しみだな~」


杏子(やれやれ……まさかゆまに一本取られるなんてね)

杏子(ここまで才能があるとは思わなかったよ、まったく)

杏子(……ま、あれだな。ゆまもだいぶ成長したって証拠だし)

杏子(合格祝い的なモンだと思って、なんか買ってやるとしよう)

杏子(……その前にワルプルギスの夜を片づけなきゃなんねーけど)

杏子(アタシにかかれば魔女の一つや二つ、どうにかなるだろ!)

杏子(よっしゃ、いっちょ気合い入れていくとしますか!)

次回・『復讐の魔法少女』編へ続く

              ,. . ------ィ─<:::::>..、: : : ヽ 、:ハ: : : :ヽ. 、
          , .<: : : : : : : : : : :ヽ::::::::::::::::; -ヽ`ヽ、:ヽヽ: !: : : : ヽ. 、
     「>. .∠_ : : : : : : : : : : : : : i::::::::>': : : : : : : ヽ: i: :!:i: : : : : i : ヽ
   ,-x.__i: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ム ': : : : : : : : : : : : マ|: :|j: : : : : ト、 ハ
  ,: : : : :V: : : : : : : : |: : : : : : : : : : : :/: : : : : : : : : : : : : : ij : : : : : : : ! ヽ ム
  !: : : : ∧ : : : : : : : | : : : : : : : : : , ': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /  .マ: !
  |: : : : : :∨: : : : : : :|,,: : : , -.、 :/ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /   .!: i
  .i: : : : : i X : : : : : : i '' /, ^ヽ.V : : : : : : : : : : : : : : : : : :: : : : : : /    |: !

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  .i i: : : : i ' ri |、: : : : i  ム ' , : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /    ノ
  ノ' ヽ: : ヽ .|:! `ヽ: : : ヽ rz !: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :i

     ` ! :ヽゝ 、 ヽ` -`- |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |
     ノ  /i lヽ   ` i  .! : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |
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      ゝ <v' ノ  ., < ̄`>、: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ム        //
      , イ、  ./,  ̄ ̄ ̄` ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : `. .、 ___ /:,
    /  ヽ_//         ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /
          i        ,  、 ` < : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /
          !  /  , <    `> `ヽ、: : : : : : : : : : : : : : : : __>': ヽ、
          ヽ '  /  , ---       ヽ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
.          く ./ ,<            〉、 : : ト.、 : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
           > '              ./ .ヽ : : i ヽ : : : : : : : : : : : : : : : : ハ
.        , <              ./   .マ: :|  .iヽ: : : : : : : : : : : : : : : :

       /                ., '     .i : !  ハ .マ: : : : : : : : : : : : : : :
このSSは杏子ちゃんが魔女も震えあがるほど残虐な行為を行いますが
今回はまどっち達が復讐劇を繰り広げます。ご注意ください。


~ある日の放課後・マミの家~

まどか「と、いうわけで、何かしてあげようと思うんだけど……どうかな?」

ほむら「素晴らしい考えだわ。私は賛成よ、まどか」

マミ「そうね、ワルプルギスの夜を倒せたのも彼女のおかげだし……」

さやか「ま、御礼に何かしてやるのも良いよね」

まどか「えへへ……じゃあ決まりだね」

まどか「杏子ちゃんに『お返し』をしよう!」


まどか「何をしてあげたら喜んでもらえるかなぁ?」

さやか「やっぱ食べ物系じゃない? 美味しい料理を作ってあげるとか」

ほむら「そうね、佐倉杏子は食に対してこだわりがあるものね」

まどか「きっと喜んでもらえるよね!」

マミ「新しい洋服を買ってあげるとかはどうかしら?」

まどか「あっ、それもいいですね!」

さやか「うん、あたし達でコーディネートしてやるのも楽しそうじゃん?」

ほむら「意外とアクセサリーなんかも喜んでもらえるかもしれないわね」


まどか「ご馳走の材料に、お洋服に、アクセサリー……」

まどか「うーん、買いたいものがいっぱいあるねー」

ほむら「そうね……何を買うか絞り切らないと、お金が足りなくなりそうだわ」

さやか「平凡な女子中学生のサイフにゃ限界があるもんねぇ」

マミ「どうしましょうかしら?」

ほむら「いっそ佐倉杏子に欲しいものを決めてもらうのはどう?」

さやか「えー? それはつまんないでしょ」

まどか「杏子ちゃんには内緒にしておいて、サプライズを演出したいな」

ほむら「なるほど……それもそうね」


さやか「……ところでマミさん? 今日は杏子のやつはどこ行ったんです?」

まどか「あ、それ私も気になってたんです。杏子ちゃんはいつ頃帰って来るんですか?」

マミ「うーん、それがね? 杏子ったら野暮用があるとかで出かけちゃったのよ」

マミ「何処へ行ったのか、何時くらいに帰ってくるのかも聞いてなくて……」

ほむら「……昨日のワルプルギスとの戦いの疲労が残っているとか、そういうことはなさそうだった?」

マミ「ないみたいよ。全然元気で、朝食もモリモリ食べてたわ」

ほむら「そう……なら良いのだけれど」



QB「――――ああ、杏子なら今頃デートを楽しんでいるはずだよ」



マミ「…………え?」

さやか「なっ……!?」


ほむら「デート、ですって?」

QB「そうだよ。以前から約束していたみたいだったね」

マミ「ほ、本当に!? 相手は誰なの!?」

QB「名前までは聞いていないけれど、年下の女の子が一緒だったよ」

さやか「と、年下の……女の子!?」

まどか「へぇ~、杏子ちゃんにもそんな人がいたんだ……素敵だね!」

さやか「どこがよ! 女の子って、そんな……!」

マミ「そ、そうよ! 私の杏子が知らない女の子と一緒だなんてありえないわ!」

さやか「……ちょーっとマミさん? 『私の杏子』ってなんですか? 別に杏子はマミさんのじゃないでしょ?」

マミ「あっ、そ、それはその……ほ、保護者的な意味であって別に変な意味じゃ……」


まどか「杏子ちゃんの彼女さんは年下かあ~、何歳くらいの子なのかな?」

さやか「か、彼女って決まったわけじゃないでしょ」

マミ「そ、そうね、キュゥべえの勘違いの可能性もあるんじゃないかしら」

QB「でもプレゼントを買ってあげるとか何とか言っていたよ」

さやか「ぷ、プレゼント……?」

ほむら「……親しい間柄なのは確かみたいね」

マミ「うう……」

まどか「どんなコなんだろ、気になるね?」

ほむら(年下の女の子……もしかしたら……?)


~見滝原市・デパート~

さやか「と、いうわけでさやかちゃん達は杏子を尾行することにしました」

ほむら「……お返しをどうするかは決めないの?」

さやか「まあまあそれは後で、ってことで」

マミ「……ここに杏子が来ているのね?」

QB「そう聞いているけど」

さやか「デパートでデートねぇ……何を買うつもりなのかな」

まどか「あっ! あそこにいるの杏子ちゃんじゃない?」

さやか「ホントだ! ということは、一緒にいるあの子が……!」

マミ「杏子の恋人……!?」

ほむら(あれは……やっぱり……)


ゆま「お買い物♪ お買い物♪」

杏子「オイオイあんまりはしゃぐなよ、転んで怪我するぞ?」

ゆま「平気だよ~」



さやか「……幼女じゃん!!」

マミ「そ、そんな……まさか杏子がそういう趣味だったなんて……!」

まどか「歳の差カップルだね♪」

ほむら(……単純に面倒を見てあげてるだけだと思うけど)


ゆま「お買いも……きゃっ!?」フラッ

杏子「危ないっ!」

ガシッ

杏子「……ったく、言ったそばから転ぶなよな」

ゆま「ご、ごめんねキョーコ」



マミ「だ、抱き着いたわ!」

さやか「こんなとこであんな大胆な……!」

まどか「ラブラブだね~、私も……えいっ!」ダキッ

ほむら「きゃっ! まどかったらそんないきなり……」///

まどか「えへへ」///

さやか「……おい」


ゆま「それにしても残念だったね、ヒトミが来れないなんて」

杏子「アイツには愛しい愛しい恋人クンがいるらしーからな」

杏子「今頃仲良くデートしてるんじゃないか?」

ゆま「ふーん? ……男の子と一緒に遊ぶのって楽しいのかなぁ?」

ゆま「ゆま、そういうの良く分かんないや」

杏子「ははっ、もーちょい大人になれば分かるかもな」


マミ「何を話してるのかしら……」

さやか「シッ! 静かに、今聞き取るから!」

さやか「……恋人……男の子……わかんない……」

さやか「くぅっ、単語だけしか聞き取れない!」

まどか「ううん、分かったよ! それらの言葉を繋げると――――」

まどか「『恋人に男の子を選ぶなんてわけわかんない! やっぱり女の子同士で愛し合うのがだよねー』」

まどか「っていう感じの会話をしてるんだよ!」

マミ「な、なんですって……!?」

さやか「や、やっぱり二人はそーいう関係なの!?」

ほむら「その解釈は強引過ぎるんじゃないかしら……」

まどか「そんなことないよ! だってほら、わ、私たちだって……」///

ほむら「そ、そうね、私たちが愛し合ってるのと同じことよね」///

マミ「はいはい」


ゆま「さてさて! 何を買ってもらおうかなー」

杏子「あんまり高いのはダメだかんな」

ゆま「はーい♪」

杏子「……やけに素直だな?」

ゆま「えへへ、そのほーがキョーコの好感度がアップするでしょ?」

杏子「くくっ……なるほど、実に鬼畜な判断だ」

杏子「その身体にはすっかりアタシの調教が染み付いたみたいだね?」

ゆま「えへへ」


さやか「……鬼畜……調教……身体に……染み付いて……?」

さやか「な、なによそれ……どんな会話してんのよあいつ!」

まどか「杏子ちゃんが鬼畜な調教をあの子にして……」

マミ「か、身体に覚え込ませたってこと!? ナニを!?」

まどか「杏子ちゃんてば、大人だね……」///

ほむら「佐倉杏子がそういったことに詳しいとは思えないけど……」

まどか「……こ、今度、私たちもしてみよっか……?」///

ほむら「えっ……そ、その、それは……」///

さやか「ええい! いい加減にしろぉっ!!」

まどか「ご、ごめんなさい」


さやか(はあ……まったく、まどかもほむらも色ボケしちゃって)

さやか(……それにしても、なんか……杏子のやつ)

さやか(あたし達といるときより楽しそうにしてる気がするなあ……)



マミ(……私たちには見せない、ありのままの自分をさらけ出してる、っていう感じがするわね……)

マミ(……やっぱりあのコは特別な関係なのかしら)

マミ(ちょっぴり、悔しいな……)


さやか「……よっしゃ、決めた!」

マミ「美樹さん?」

さやか「杏子とあの子が……その、恋人同士だっていうならさ」

さやか「二人で仲良く使えるようなものをプレゼントしてやろーよ!」

まどか「あっ、それ素敵だね!」

マミ「……そうね、それもいいわね」

マミ「杏子たちの幸せを願って……ペアになっているものを贈りましょう!」



ほむら(……どうしよう、完全にタイミングを逃したわ)

ほむら(いまさら『あの二人は恋人じゃない』なんて言い出せない……)


さやか「んじゃ何にする? カップルが使うものって言えば……夫婦茶碗とか?」

まどか「め、夫婦茶碗?」

マミ「女子中学生が喜ぶものじゃないでしょう、それは……」

さやか「あはは、確かにそーだね」

マミ「食器を贈るなら……ティーカップとかのほうが良いんじゃないかしら」

まどか「うん、カップなら可愛いデザインのも沢山ありそうだよね!」


杏子「あー、そういやアタシのお気に入りはマミが割っちゃったんだよな」

マミ「ごめんなさい、あのときは色々あってボーッとしてたから……」

さやか「ならカップでちょうど良さそうだね。後はどんなデザインのにするか……」

さやか「……って杏子!?」

まどか「あ、えっ!? い、いつの間に!?」

杏子「よぉ、こんなトコでなにしてんだ?」

ゆま「こんにちわー」


杏子「なんか買い物の相談でもしてたみたいだったけど……」

マミ「いえっ、べ、別になんでもないわよ!」

さやか「そ、そうそう! たまたま通り掛かっただけなんだからねっ!」

杏子「ふーん?」

まどか「きょ、杏子ちゃんこそどうしたの? その子とお買い物?」

杏子「おう、ちょいと約束してたもんだからね」

ほむら「……良かったら紹介してもらえるかしら、その子のこと」

杏子「ん? ああ、コイツはゆま。千歳ゆまだよ」

ゆま「初めまして!」ニパッ

杏子「ま、なんつーかアタシの弟子みたいなモンだね」

マミ「で、弟子!?」

さやか「ホントに!?」

杏子「こんなことで嘘ついてどーするよ」


まどか「あの……杏子ちゃんは、その子とデートしてたんじゃないの?」

杏子「はぁ? デートぉ? アタシとゆまがか?」

杏子「ありえねーだろ、何言ってんだ?」

ゆま「デートって……男の人とするやつだよね?」

さやか「……ちょっとキュゥべえ?」

QB「あれ、おかしいな……この国では二人で買い物に行くことをデートって呼ぶんじゃなかったのかい?」

マミ「はあ……なんだ、やっぱりキュゥべえの勘違いだったのね……」

杏子「??」


ゆま「ね、キョーコ? このお姉ちゃんたちとはどーゆうカンケーなの?」

杏子「うーん、なんて言えばいいかな……」

ゆま「……あ!?」

杏子「お?」

ゆま「お姉ちゃんたち、キョーコとお揃いの指輪つけてる!」

マミ「ああ、これね? これは魔法しょ……」

杏子「っ! マミ!!」

マミ「えっ?! な、なに?」

ゆま「どーしたのキョーコ?」

杏子「あ、ああ、いや、何でもねーよ」

ほむら(……なるほど、そういうことね)


ゆま「……あのね、ゆま知ってるよ」

杏子「な、何をだ?」

ゆま「そのお揃いのユビワって、ケッコンユビワって言うんでしょ?」

さやか「……は、はぁ?」

ゆま「大好きな人同士でつけるんだよねー? ゆまだってそれくらい知ってるんだから!」

杏子「おいおい? なに言ってんだよお前は」

ゆま「えへへ、キョーコってば照れちゃって!」

ゆま「みんなとラブラブなのが恥ずかしいんでしょ?」

杏子「らぶらっ……!? ち、ちげーよバカ! これはそーいうんじゃなくて……」

ゆま「いいないいなぁ……ねえキョーコ! ゆまもお揃いの指輪が欲しいな!」

杏子「!」


ゆま「何でも買ってくれる約束だったよね? ゆまもおんなじ指輪が欲しい!」

杏子「……駄目だ!」

ゆま「え……どーして?」

杏子「それは……その、お前にゃまだ早いんだよ指輪なんて」

ゆま「えー?」

QB「おや、指輪が欲しいのかい? だったら僕と契約して……」

杏子(お前は黙ってろっ!)蹴りっ!

QB「きゅっぷい!」

ゆま「あれ? いまキョーコ何か蹴っ飛ばした?」


マミ《……どうしたのかしら、杏子?》テレパシー

ほむら《どうやらあの子を……千歳ゆまを魔法少女にしたくないようね》

まどか《杏子ちゃんは優しいから、あんなちっちゃな子を戦わせたくないんだよ、きっと》

さやか《……あいつのことだから多分そーだろうね》

マミ《でもあの子、指輪を……ソウルジェムを欲しがっちゃってるわ》

まどか《うん、このままだとキュゥべえと契約しちゃいそうだよ……》

さやか《……そーだ!! それならさ、あたし達の魔法で……ごにょごにょ》

ほむら《なるほど、面白い考えね》

まどか《ちょうどお返しにもなるし、すっごく良いと思うよ!》

マミ《それじゃあみんなで力を合わせて……!》


ゆま「指輪ほしい! ゆーびーわー!」

杏子「ダメなモンはダメなの!」

ゆま「ひどいっ、酷いよキョーコ! わたしとは遊びだったの!?」

杏子「どこでんな言葉覚えたんだよ!」

マミ「……ねえゆまちゃん? ちょっといいかしら?」

ゆま「う?」

まどか「えへへ、私たちからゆまちゃんにプレゼントをあげるよ」

ゆま「え? ほんと? なになに?」

さやか「ふっふっふ……じゃじゃーん! こんなんでましたー!」

ゆま「あ……指輪! キョーコのとお揃いだ!」

杏子「!? お、おい、どーいうことだ!?」


ほむら《私たちの魔法で作ってみたのよ》テレパシー

まどか《ソウルジェムの指輪ソックリでしょ?》

杏子《……なるほどな、ソウルジェムの贋作ってとこか》

マミ《銃や剣が作れるなら、って思って試してみたんだけど》

さやか《いやー、思いのほか上手くいったね》

ほむら《普段使い捨てている武器と違って消えたりしないはずよ》

まどか《四人分の魔力が込められてるもんね!》

杏子《……わりぃ、サンキューな》


ゆま「キョーコとお揃いだぁ! やったやった!」

マミ「ふふ、満足してもらえたかしら?」

ゆま「大満足だよ! ありがとうお姉ちゃんたち!」

まどか「じゃあもう指輪が欲しい、なんてワガママ言わない?」

ゆま「うん!」

さやか「よしよし、ゆまちゃんはイイコだねー」

杏子「やれやれ……」


杏子《助かったよ……おかげでコイツを魔法少女にせずに済みそうだ》テレパシー

ほむら《とりあえずは、ね》

まどか《ふふ、それにしても杏子ちゃんは優しいね!》

杏子《は?》

さやか《隠さなくたっていいって! そのコを危険なことに巻き込みたくなかったんでしょ?》

マミ《だから魔法少女のことも教えてなかった。違うかしら?》

杏子《……バーカ、そんなんじゃねーよ》

杏子《また魔法少女が増えたらアタシの取り分が減っちまうだろ?》

杏子《ライバルを予め潰しておきたかった。それだけのことさ》

マミ《くすっ……》

ほむら《相変わらずね、貴女は》

さやか《ま、そーいうことにしておいてあげるよ》

杏子《けっ、うるせーやい》


杏子「……なあ、ところでマミたちはこのあと暇なのか?」

マミ「え? ええ、とりあえず予定はないけれど」

杏子「だったら一緒にメシでも食おうぜ、せっかくみんな揃ってるわけだしさ」

まどか「うん、良いね! ゆまちゃんのことももっと知りたいし」

ほむら「反対する理由はないわ」

杏子「ゆまもそれで良いか?」

ゆま「うん! ゆま、お姉ちゃん達と仲良くなりたいな!」

さやか「へー、うれしーこと言ってくれるじゃない?」

マミ「ふふ、それじゃあ……どこかお店に入りましょうか?」

まどか「賛成ですっ!」

杏子「おう!」


さやか(はあ……結局、杏子に恋人なんていなかったわけだ)

さやか(……良かった……)

さやか(…………)

さやか(っ!? あ、あたしってば何でほっとしてんのよ!?)

さやか(べ、別にあいつに恋人がいようがいまいがカンケーないし!)

さやか(ただ、その……そうよ、ライバルと競い合う時間が減っちゃうかも、って思ってただけで)

さやか(嫉妬とかそーいうんじゃないんだから!)


マミ(うふふ、杏子に喜んでもらえてよかったわ)

マミ(でも……良く考えるとゆまちゃんに指輪をあげただけで……)

マミ(杏子自身には何も贈ってあげてないのよね)

マミ(……今度、二人っきりのときにプレセントしちゃおっかな?)

マミ(魔法を使えばいろいろと作れそうだってことが分かったし……)

マミ(たとえば……あんなものやそんなものとか)

マミ(それとも……)

マミ(きゃっ! わ、わたしったら何考えてるのかしらっ!)///


ゆま(あれ……そういえば?)

ゆま(お姉ちゃん達からは指輪を貰ったけど……)

ゆま(結局キョーコからは何も買ってもらってない!)

ゆま(うう、ずるいよキョーコ!)

ゆま(うやむやにして誤魔化そうったってそーはいかないんだから!)

ゆま(えっへっへ……今度3倍にして返してもらうんだからね!)

次回・絶望編へ続く

次回投下は1/28あたりを予定しておりますが
杏子ちゃんが極悪すぎて断言はできません

       /i´Y´`ヽ △
      ハ7'´ ̄`ヽ. .|
      l ,イl//`ヘヘ! |  
      リノ(! ゚ ヮ゚ノリ |
      ノ ⊂)i杏i| つ

   三 ((  く__ハjノ_」 |
         とつ  .:|
          , -‐i!‐-、
       i::::..゙ー'  i
      三  '、::::::..... /
         `'‐-‐′

                     r 、...-――- ...
               . イ:| ..:..:....:....:.....:.....:.. ミ...、
                /........:| ..:...:......:ヽ:、:...:. \:.. \
               /  ./ /| ..:...:{:......:|:..ヽ\ヽ:.ヽ:.....ヽ
            / ..:..:,i:/ i:i:...:.乂:__ト_:..ト:..ヽi:.....∨:..‘,
             / .:′/{/___乂..:..:..ト.丁x=ミ、..:i!..:..:..iう):..:
            ,′:|...:|l ,ァ=ミ ∧{:..:{  'f.::うi}ト、|..:..:...i)):....{
          /イ 八 :{ { ん:.1  \}   ヒ..ソ |:..:...|::.八:.、
        /´ |.八:..ド ヒツ  '   / /i ハ|:..:...「i:.i:. ト\
         | ..:ト\/i/            |:..:...|ノ::|:..|
           : ...:|:{     __ .  ≦ `i   |:′:..};⌒}:}r‐y
       _ r‐ ミ...:込.   ‘廴     ノ   j{:..:.../ /7 ム=、
      〈 v`{__ノ ヽヽ:{:> ..         . イハ|r<トイ (_/ノ ム
    r―廴}     __}_ :ト、:{::.:ir≧i‐_ ...斗≦}八 __入  ( イノ ノ
    > ._)    ( __,.. ヽ≧八¨¨}}r― ´  人r乂      ‘ァ'
    〈 Y、   /    ハ>‐‐ミ }}}_,. ≦ ̄ ̄ 〉{ \下 ==イハ
    ヽノ \ _ , ィチ 〉.........:={:..:}-:............. 〈八  了不´ |

        { `廴_ /  {............:.:.廴「`:.............. } /  // }:{   {、
       ノ /:ハ:i   {:.:.:.:.:.::イ| |ヽミ::........:.:.{ム:、 j::{ |、 ノ}'\
        ,イ{ {:/  }:}   ノ</::/八.{ ∧:{>ミ:.:.〉 ト __ノ 八:∨ム  ノ

このSSは杏子ちゃんがおにちくですが予定を変更して
ざんねん! さや仁編でした!


~学校・薄暗い体育倉庫~

さやか「あーもぉっ! どーして開かないのよ!」ガチャガチャガチャ!

仁美「……どうやら完全に閉じ込められてしまったみたいですわね」

さやか「はぁ……体育倉庫に閉じ込められるとかベタ過ぎでしょ……」

仁美「まさか実際に経験することになるなんて思ってもみませんでしたわね……」

さやか「そーだね……」

さやか「……うーん、思い切り蹴飛ばせば開くかな?」

仁美「や、やめてくださいましっ」

さやか「あはは、冗談だよ」

さやか(ホントに本気でやったら、ドアが粉々になっちゃうだろーしさ)


仁美「困りましたわね……携帯電話も手元にないですし」

仁美「それに……くしゅん!!」

さやか「大丈夫? 寒いの?」

仁美「はい、少しだけ……」

さやか「体育で汗かいた後だもんね……体操着だし」

仁美「早くどなたか気が付いてくださると良いのですけど……」

さやか「ま、すぐにまどかが来てくれるでしょ。少しの辛抱だって!」

仁美「そう……ですわよね」

さやか「うんうん」

さやか(テレパシーで呼べばいいだけのことだもんね)


さやか《まどかー? 聴こえるー?》テレパシー

まどか《はい、まどかです》

さやか《あっ、まどか? あたしあたし! ちょっと助けてほしいんだけど!》

まどか《ただいまテレパシーに出ることが出来ません》

まどか《御用のあるかたはピーッという発信音の後に――――》

さやか(ありゃりゃ、まどかはマナーモードになってるみたいだ)

さやか(仕方ない、ほむらを呼ぶかな)

さやか《ほむらー? ほむほむー?》

ほむら《……おかけになった魔法少女は、ただ今テレパシーが届かないところにいるか、電源を切って――――》

さやか(ほむらは電源切ってるのか。マメだなー)


さやか(うーん、ちょっと悪いけど……マミさんに助けてもらうしかないみたいだ)

さやか《あのー、マミさん? お願いが……》テレパシー

マミ《ぷー、ぷー、ぷー》

さやか(通話中だ……困ったなー)

さやか(わざわざ杏子を呼ぶほどのことでもないし……キュゥべえ呼んでも意味ないし)

さやか(やれやれ、純粋に待つしかないみたいねー)

さやか(誰か来てくれるまで……仁美と二人っきり、か)


仁美「さやかさん? 先程から難しい顔をされて……どうかしましたの?」

さやか「えっ、ああ、別になんでもないよ」

仁美「はッ!? まさか私のブルマ姿に欲情して、いやらしい想像を……!?」

さやか「ええっ!?」

仁美「いけませんわっ、密室だからってそんな破廉恥な行為をするなんてっ!」

さやか「いや、んな馬鹿な……」

さやか「…………」

さやか「ぐへへ、バレちまっちゃしょうがねぇ……太股をナデナデさせろー!」

仁美「きゃーっ♪」


さやか「……ぷっ」

仁美「……くすっ」

さやか「あははっ! なんか久しぶりだね、こーいうバカなやり取りするのも」

仁美「ふふっ、そうですわね」

仁美「さやかさんもまどかさんも、最近お忙しいみたいでしたから……」

さやか「……ゴメンね、仁美」

さやか「ちょっと色々あってさ、なかなか話す時間が取れなかったんだ」

さやか「その、別に仁美のコト嫌いになったとか……そーいうんじゃないからね、絶対!」

仁美「ふふっ……大丈夫、わかってますわ」


さやか「……恭介とはどーなの? 仲良くやってるわけ?」

仁美「それが……恭介さん、コンクールに向けての練習が忙しいみたいで」

仁美「あまり一緒にいる時間がありませんの……」

さやか「えー、マジ? 恭介ってば、こーんなに可愛い恋人をほったらかしにしてるんだ?」

さやか「仁美に寂しい想いをさせて……罪な奴だねぇまったく」

仁美「ふふっ……でもそんなふうに、ヴァイオリンに真剣な恭介さんだからこそ……私は好きになったんです」

さやか「あーはいはい、お熱いですなー」


仁美「それに私、寂しくなんかありませんのよ?」

さやか「え、なんでさ?」

仁美「実は私……つい先日、新しいお友達が出来ましたの」

仁美「その方のおかげで最近は毎日が充実してますのよ」

さやか「へー、もしかして……浮気?」

仁美「違います! もうっ、さやかさんたら酷いですわ!」

さやか「ごっ、ごめんごめん」

仁美「そもそもその方は女性ですのよ? 浮気だなんて……」

仁美「……浮気、だなんて……」

仁美「………ぽっ」///

さやか「ちょっ!?」


さやか「え、えーと。それで、その新しいお友達ってのはどんなコなの?」

仁美「うふっ、実はさやかさんも良く知ってる方ですのよ」

さやか「へえ? 誰だろ……」

仁美「ポニーテールが良くお似合いで……」

さやか「ふむ」

仁美「ちょっぴりネコさんみたいな釣り目で」

さやか「ほうほう」

仁美「お菓子が大好きで、いっつも何か食べていらっしゃって……」

さやか「ん……? え、もしかして……」

仁美「うふふ、お分かりになりました?」

仁美「私、佐倉杏子さんとお友達になりましたの!」

さやか「ええーっ!? ウソ、いつ知り合ったの!?」

仁美「実は……」


仁美「あんこちゃんあんあん!」

仁美「……と、いうわけなんです」

さやか「そっか、そんなことが……」

仁美「はい、危ないところを助けていただいて……」

さやか「……じゃあ、仁美にも話さなきゃだよね」

さやか「あたし達の、秘密」

仁美「……聞かせてくださいますか?」

さやか「うん、あたしね……」


さやか「あんこちゃんあんあん!」

さやか「……ってなわけなんだ」

仁美「魔法少女……それに、魔女ですか……」

さやか「そ。仁美が操られた、っていうのも魔女の仕業」

さやか「……信じらんないだろーけど、ホントのことなんだ」

仁美「いいえ……私信じますわ、さやかさんのこと」

仁美「私の大好きなお友達が、嘘をつくはずなんてありませんもの!」

さやか「仁美……」

さやか「ふふっ……ありがと」


仁美「今の話だと、さやかさん以外にも魔法少女はいらっしゃるみたいでしたけれど」

さやか「あ、うん。あたしだけじゃなくて杏子もそうだし……」

さやか「まどかもほむらも、あと三年の巴マミって人も魔法少女なんだ」

仁美「まあ! まどかさんも暁美さんもなんですか?」

仁美「最近やけに仲が良いと思ってましたけど……そういう理由があったんですのね」

仁美「……ちょっぴり、仲間外れになった気分ですわ」

さやか「ごめんね、内緒にしててさ」


さやか「……でもね仁美、魔法少女になろうなんて思っちゃダメなんだからね?」

仁美「あ……同じようなことを杏子さんにも言われました」

仁美「アンタに出来ることじゃないから、首を突っ込むな……と」

仁美「……やっぱり、命の危険があることだからですか?」

さやか「うん、それもあるんだけど……」

仁美「?」

さやか「……この指輪、さ。キレーでしょ?」

仁美「えっ? あ、はい。ソウルジェムっていうんですわよね?」

仁美「……何と無く、不思議な雰囲気を持った指輪だと思いますわ」

さやか「仁美は鋭いね」

さやか「これね……あたしの魂なの」

仁美「たま、しい……?」


さやか「そう、魂」

さやか「いまここにあるあたしの身体は単なる人形で……」

さやか「このちっぽけな指輪こそが、あたしそのものなんだ」

仁美「そ、そんな……!?」

さやか「魔法少女はその魂をソウルジェムに変えられてしまうの」

さやか「コレがないと死んじゃうんだよ、あたしたち魔法少女って」

さやか「その代わりにソウルジェムさえ無事ならどんな怪我も治っちゃうから……」

さやか「便利といえば便利なんだけどさ、あはは」

さやか「……けどそんなゾンビみたいな身体になんかなりたくないでしょ?」

さやか「だからさ、魔法少女になんてならないほうがいいんだよ」

さやか「じゃないと、あたしみたいに……ゾンビにっ……」

さやか「あ、あれ? おかしーな。目にゴミでも入ったかな、えへへ……」ゴシゴシ

仁美「…………っ」


仁美「さやかさんっ……」ぎゅっ

さやか「え、ちょ、仁美?」

さやか「あ、あはは。やだなあ、いきなり抱き着かないでよ」

仁美「……大丈夫。大丈夫ですわ」

仁美「さやかさんは、ゾンビなんかじゃありません」

さやか「……!」

仁美「だって……だってさやかさんはこんなにも温かいですもの……!」

仁美「さやかさんはさやかさんです。私の、大切なお友達にかわりありませんわ!」

さやか「仁美……」

仁美「だから……そんなふうに自分を傷付けるのはやめてください、さやかさん……」

さやか「う……うう……」

さやか「仁美……仁美ぃ……!」グスッ


…………。

さやか「はは……みっともないとこ見せちゃったね」

さやか「……もう吹っ切れたつもりだったんだけどさ」

さやか「仁美に話したら、なんだかまた悲しくなっちゃって……泣けてきちゃった」

さやか「ごめんね、仁美」

仁美「謝らないでください、さやかさんが頭を下げる理由なんてありませんわ」

仁美「さやかさんの本当のお気持ちを聞かせてもらえて……私、嬉しいくらいですもの」

さやか「あたしもあんあん泣いて、なんだかスッキリしたよ」

さやか「……ね、仁美。約束して? 魔法少女になんかならないって」

仁美「……はい」

仁美「でもその代わりに、困ったことがあったら何でもおっしゃってくださいね」

仁美「微力ながら皆さんのお手伝いをさせていただきますわ」

さやか「うん、ありがと」

さやか「あっ……それと!」

仁美「?」

さやか「あたしが泣いたなんて……皆には内緒なんだからね!」

仁美「うふふっ……わかってますわ、さやかさん」


ゴンゴンッ!

「さやかちゃん、仁美ちゃん! 中にいるの?!」

仁美「あら、この声は……」

さやか「まどかだ! 助けに来てくれたんだ!」

さやか「おーいまどかぁ! 早く開けてくれーい!」バンバンバン

「……いま開けるから静かにしなさい」

さやか「おっ? ほむらも来てくれたの?」

ガチャガチャ...

ガチャンッ

まどか「さやかちゃん! 仁美ちゃん!」

さやか「おぉー、あたしの嫁ー! 会いたかったぞー!」抱きっ!

まどか「きゃっ、や、やめてよさやかちゃん!」

仁美「まどかさん、暁美さん、助けていただいてありがとうございます」

まどか「えへへ、どういたしまして」


ほむら「……あら? 志筑さん」

仁美「はい?」

ほむら「胸元が変に濡れているけれど、どうしたの?」

さやか「!?」

仁美「あっ……これは、その……」チラッ

さやか「べ、別に何もなかったよ! 気にしないでよ、あはは……」

ほむら「……明らかに怪しいのだけれど」

まどか「も、もしかして……! 二人でナニか変なコトしてたの!?」

さやか「ち、違うよ! なんでそーいう方向に話を持ってくのさ、あんたは!」


さやか「ほら、仁美からも何か言ってやってよ!」

まどか「ど、どーなの仁美ちゃん?」

仁美「……は、恥ずかしくて……私の口からはとても言えませんわ……」///

さやか「おぉい! そーいう冗談はいらないから!」

まどか「や、やっぱりそうなんだ」///

ほむら「ふふ、貴女もやるわね」

さやか「ちがーう!! 別になんもしてないってば!!」

さやか「ほ、ほら早く行こ! 次の授業がもう始まっちゃうでしょ!」

スタスタスタ...

仁美「あ、待ってくださいまし、さやかさん!」


さやか「もう、仁美が変なコト言うからややこしくなったじゃんか!」

仁美「だって秘密にするように言われていましたし」

さやか「う……確かにそーだけど、アレじゃ余計に恥ずかしいじゃん!」

仁美「うふふっ、ごめんなさい」

さやか「はぁ……ま、いーけどさ」

さやか「久しぶりに仁美と二人で話が出来て楽しかったしね」

仁美「はい、私も……さやかさんの秘密を聞かせてもらえて嬉しかったです」

さやか「誰があたし達を閉じ込めてくれちゃったのか知らないけど……」

さやか「ハプニングを提供してくれた『誰か』に感謝、ってとこかな?」

仁美「ふふ、そうですわね」

            /\       冂        /ヽ
           \/         ̄        ヽ/
                  ̄    ̄
      /\    /   _,ィへ∨_,ィヘ、_′ \     /ヽ
       \/      く三五∨牛三ヲ、     、 ヽ/
         /    /:γ´: ;、: l: : : : :`ヽ:':,    、
          '    ,'//厂: :!:/∧:i: :}: : :ハ::',    ,
    ┌─┐ i   .i::,'::!: :ル'|ル' }ハ:八:} }:|:!ヽ  .i  ┌─┐
    └‐‐┘ l    .{j{从/ニ土、  =弋厶リノ:}    l  └‐‐┘
.           | 从八{゚;j}    '{゚;j} /ヵ:j
            、    }{∧ '' '' _'__ '' ''ム': ,'   /
      /ヽ ヽ  j: ::::≧-.., _ ,. ,-≦:::::{      /\
     ヽ/    \ f⌒⌒ヽ\/f⌒i⌒ヽ/    \/
              ゝi__}__ノ_____ゝ_)‐'ー'
          / 〉            〈 \
           ヽ/       r┐     \/
             、       凵
  ニ|ニ    r     r─、   __     七_    l     ─
  ゝ_ノ  d‐      _ノ   (ノ`)   (乂 )   レ'´V   ゝノ


――少し時間を遡り――




さやか「あーもぉっ! どーして開かないのよ!」ガチャガチャガチャ!

仁美「……どうやら完全に閉じ込められてしまったみたいですわね……」



杏子(くっくっく……)

杏子(よぉし……気まずい関係の二人を密室に閉じ込めてやったぞ!)

杏子(さてさて、アイツらはどんな愉快なショーを繰り広げてくれるかな?)

杏子(たっぷりと楽しませてもらうよ……くくっ)

杏子(このカビ臭い跳び箱の中からな!)


QB《言われた通り、カギを閉めてきたよ》テレパシー

杏子《ごくろーさん》

杏子《んじゃ、引き続き作戦のほうを進めるぞ》

QB《……わかったよ》

QB《今回の目的は、さやかと仁美の仲をメチャクチャにすること……だったよね?》

杏子《そうさ。せっかくこの前に仕込みをしたんだからな》

杏子《ちゃーんと二人の関係を進展させてやらなきゃねぇ……くっくっく》


仁美「早くどなたか気が付いてくださると良いのですけど……」

さやか「ま、すぐにまどかが来てくれるでしょ。少しの辛抱だって!」

さやか(テレパシーで呼べばいいだけのことだもんね)



杏子《『テレパシーを使えばいい』……さやかの奴はそう考えてるだろう》テレパシー

杏子《そこでキュゥべえ、お前の出番だ》

QB《さやかのテレパシーに割り込んで、邪魔すればいいんだよね》

杏子《そーさ。しっかりやれよ?》

杏子《まどか達が助けに来ちまったら作戦が台なしだからな》


QB《……おかけになった魔法少女は、ただ今テレパシーが届かないところにいるか、電源を切って――――》

さやか(ほむらは電源切ってるのか。マメだなー)

さやか(うーん、ちょっと悪いけど……マミさんに助けてもらうしかないみたいだ)



QB《上手くいってるよ。今度はマミにかけるつもりのようだね》テレパシー

杏子《くくっ、無駄だってのにね》

杏子《ああ、キュゥべえ。アタシにだけはさやかからのテレパシーが通じるようにしておけよ?》

QB《え? どうして?》

杏子《そうすれば交渉に持ち込めるからな》

QB《なるほど、『助けてほしければ代わりに……』ってやつだね》

杏子《そーいうことさ。くっくっく……簡単には助けてやらねーぞ、さやか!》


QB《ぷー、ぷー、ぷー》

さやか(通話中だ……困ったなー)

さやか(わざわざ杏子を呼ぶほどのことでもないし……キュゥべえ呼んでも意味ないし)

さやか(やれやれ、純粋に待つしかないみたいねー)



QB《あれ……?》

杏子《ん、どした?》

QB《えと、さやかがさ……杏子にはテレパシーかける気がないみたい》

杏子《え……》

杏子《そ、そっか……さやか、アタシのこと頼ってくれないんだ……》

QB《杏子……》

杏子《な、なんだよ! 別に寂しくなんかねーからな!》


さやか「……ぷっ」

仁美「……くすっ」

さやか「あははっ! なんか久しぶりだね、こーいうバカなやり取りするのも」

仁美「ふふっ、そうですわね」



QB《二人とも随分と楽しそうだね……》

杏子《……ふんっ、お前にはそう見えるかもしれねーな》

QB《え? 違うのかい?》

杏子《アレはな、気まずい空気をごまかすために無理して笑ってんだよ》

QB《そ、そうなの?》

杏子《アイツらもいろいろとあったみたいだからね》

杏子《そう簡単に仲直りは出来ねーのさ》

QB《なるほど……》

杏子《くくっ……まぁそーいうわけで、だ》

杏子《無理してる可哀相な二人のために、アタシがちょいと力を貸してやろーと思うわけだよ》

QB《え……?》


杏子《アイツらきっと、何を話せばいいか分からなくて困ってるだろーからねぇ》

杏子《ここは一つ、幻惑魔法で気分転換させてやろうじゃないか!》

QB《な、なんだって!?》

杏子《くくっ……まずはそうだな……》

杏子《強くてカッコいい佐倉杏子様の幻で頭がいっぱいになるようにしてやろうかな!》

QB《そ、そんな……!? 二人っきりなのに他の女の子のことを考えちゃうなんて……嫌がられること間違いなしだよ!》

QB《『また他のオンナのこと考えてたのね……最低!』》

QB《ってな感じのセリフが昼ドラであったから間違いないよ!》

杏子《くくっ、知らねーなそんなこと》

杏子《アタシはアイツらを気遣って、ムードを変えてやろうとしてるだけだからなぁ?》

QB《嘘ばっかり……!》

仁美「実は私……つい先日、新しいお友達が出来ましたの」

仁美「その方のおかげで最近は毎日が充実してますのよ」

さやか「へー、もしかして……浮気?」

仁美「違います! もうっ、さやかさんたら酷いですわ!」

さやか「ごっ、ごめんごめん」

仁美「そもそもその方は女性ですのよ? 浮気だなんて……」

モヤモヤ...

仁美「……浮気、だなんて……」



杏子『なあ、仁美……今だけはアタシのオンナになってくれよ』

仁美『い、いけませんわ! 私には恭介さんが……!』



仁美(……!?)

仁美(わ、私ったら何を考えて……!)

仁美(嗚呼っ、ダメですわ! こんな破廉恥な想像っ)

仁美「………ぽっ」///

さやか「ちょっ!?」


QB《幻惑魔法は仁美の方に効果が出たみたいだね》

杏子《くくっ、そーだな……見ろよ、さやかのあの呆れ返った表情!》

杏子《『まーた仁美のビョーキが始まったよ……相変わらずだなぁ』》

杏子《『でも……何も変わってなくて安心しちゃった!』》

杏子《って考えてる顔だぞ、あれは!》

QB《友達にあんな目で見られて……可哀相な仁美! 悪いのは全部杏子なのに!》

杏子《はっはっは! 気分良いぜ!》

杏子《お次はなんだかシリアスな空気になる幻惑魔法をかけてやるかな……!》

QB《ううっ! なんて便利なんだ、幻惑魔法!》


さやか「……ってなわけなんだ」

仁美「魔法少女……それに、魔女ですか……」

さやか「そ。仁美が操られた、っていうのも魔女の仕業」

さやか「……信じらんないだろーけど、ホントのことなんだ」

仁美「いいえ……私信じますわ、さやかさんのこと」

仁美「私の大好きなお友達が、嘘をつくはずなんてありませんもの!」

さやか「仁美……」

さやか「ふふっ……ありがと」



QB《そんな……まさかさやかが、ずっと秘密にしてきた魔法少女のことを打ち明けちゃうなんて!》

杏子《くっくっく……アタシが作り上げたなんとなくシリアスな雰囲気に呑まれたんだろうよ》


さやか「……けどそんなゾンビみたいな身体になんかなりたくないでしょ?」

さやか「だからさ、魔法少女になんてならないほうがいいんだよ」

さやか「じゃないと、あたしみたいに……ゾンビにっ……」

さやか「あ、あれ? おかしーな。目にゴミでも入ったかな、えへへ……」ゴシゴシ



杏子《あははっ! シリアスムード過ぎてとうとう泣きだしやがったな、さやか!》

杏子《良い光景だぜ……見てるだけで胸が締め付けられて苦しくなるよーだ!》

QB《うぅっ……》

杏子《ん? どーした?》

QB《僕……僕っ! こんな残酷な光景もう耐えられないよ!》

ダッ!

杏子《あ、おいキュゥべえ!?》

杏子(ちっ……逃げ出しやがったか、甘ったれめ)

杏子(……まぁいいさ、アタシ一人で楽しませてもらうとするよ……くっくっく)


仁美「……大丈夫。大丈夫ですわ」

仁美「さやかさんは、ゾンビなんかじゃありません」

さやか「……!」

仁美「だって……だってさやかさんはこんなにも温かいですもの……!」

仁美「さやかさんはさやかさんです。私の、大切なお友達にかわりありませんわ!」

さやか「仁美……」

仁美「だから……そんなふうに自分を傷付けるのはやめてください、さやかさん……」

さやか「う……うう……」

さやか「仁美……仁美ぃ……!」グスッ



杏子(……くくっ、よかったなぁさやか?)

杏子(秘密をバラしちまって、情けない姿を見られて)

杏子(すっかり仲が進展したじゃねーか)


杏子(その代わりに、自分がフツーの人間じゃないってことを改めて思い知って……)

杏子(酷く傷ついたみたいだけどねぇ……くっくっく)

杏子(仁美も今後はさやかへの認識が変わるだろーけど……)

杏子(ま、ここから先はアタシの知ったことじゃないね!)

杏子(アンタらがどーなろうとアタシの責任じゃない)

杏子(せいぜいがんばって仲良くするがいいさ……あーっはっはっは!)


ゴンゴンッ!

「さやかちゃん、仁美ちゃん! 中にいるの?!」

仁美「あら、この声は……」

さやか「まどかだ! 助けに来てくれたんだ!」

さやか「おーいまどかぁ! 早く開けてくれーい!」バンバンバン

「……いま開けるから静かにしなさい」



杏子(……っと、もうまどか達が来ちまったみたいだな)

杏子(さやかと仁美の関係をいじくりまわすのも満喫したことだし……)

杏子(んじゃ、そろそろネタばらしといこうかね)

杏子(くくっ……アタシがここから飛び出してったら、きっとびっくりするぞアイツら!)


さやか「ほ、ほら早く行こ! 次の授業がもう始まっちゃうでしょ!」

スタスタスタ...

仁美「あ、待ってくださいまし、さやかさん!」

まどか「さやかちゃん待ってよー、もっと詳しく話を……」

ほむら「まどか、私は鍵を職員室に持っていってから行くわね」

まどか「あ、うん、お願いね!」

ほむら「それじゃ忘れずに閉めて、っと……」

ガチャガチャ...ガチャン!

ほむら「授業に遅れたくないし……急ぐとしましょう」

タッタッタ...



杏子「え……」

杏子「ちょ、待っ……」

次回・絶望編へ続く







今回の書き方は分かりづらかったかなぁと思うのですが
要するにあんこちゃんあんあん!というわけです。

        /:/,:':/::/::::::::::::::/:/ /::::::/  /    Ⅵ:::::::::::::ハ::::::::::::::::::':;::::::::::.
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        /|   \     .!    ヽ ノ   ノ      ノ  ∧!:::::::::!

このSSは杏子ちゃんが残虐非道な行為を繰り返しましたが絶望編改め
トゥルーエンド編(前編)をお送りいたします。ご注意下さい。


~マミの家~

ゆま「こんにちは、マミお姉ちゃん!」

マミ「あ……ゆまちゃん、今日も来たのね……」

ゆま「ねぇマミお姉ちゃん! お姉ちゃんちにキョーコ来なかった?」

マミ「……来なかったわよ」

ゆま「えー、ホント? その辺に隠れてたりしない?」

マミ「居ないわ……杏子は……ここにはいないの」

ゆま「そっかぁ……うーん、キョーコったらどーしたんだろ」

マミ「あのね、ゆまちゃん……杏子は……」

ゆま「もう3日も連絡がないんだよ? まったくキョーコってばズボラなんだから!」

マミ「違うのよ、ゆまちゃん……杏子は、もう……」



マミ「杏子はもう、この世にはいないのよ……」



ゆま「…………」


ゆま「えへへぇ……」

ゆま「マミお姉ちゃんたら、またその冗談なの?」

ゆま「前にも言ったよね? あんまり面白くないよ、それ!」

マミ「ゆまちゃん……」

ゆま「ヒトミもおんなじ冗談言ってたけど……」

ゆま「誰かが死んだとか、そーいうウソって言っちゃいけないんだよ?」

マミ「冗談でも嘘でもないの……本当のことよ」

マミ「杏子はいないの、死んでしまったのよ……!」

ゆま「……えへっ、えへへへへぇ……」

ゆま「……ゆま、しつこいお姉ちゃんはキライだなぁ」

マミ「……っ!」


ゆま「……まあいいや! ここにいないなら探しにいこっと!」

ゆま「じゃあね、マミお姉ちゃん!」

マミ「あっ……ゆまちゃ……!」

ガチャッ バタンッ!

マミ「……ゆま、ちゃん……」

マミ「う……うう……」グスッ

マミ(……こんなの、酷すぎるわ……)

マミ(ゆまちゃん、あんなに悲しい目をして……)

マミ(……どうして)

マミ(どうして逝ってしまったのよ、杏子……)


~廃教会~

ほむら「…………」

ほむら(誰もいない、わよね……)

ほむら(それに、何も残っていない)

ほむら(もしかしたらと思ったけど……)

ほむら(やっぱりそんな都合の良い話があるわけないわよね……)

ガタッ

ほむら「っ!! 誰っ!?」


ゆま「……えへへ、こんばんわ」

ほむら「千歳、ゆま……どうしてここに?」

ゆま「ゆまはキョーコを探しに来たんだよ!」

ほむら「そう……」

ゆま「ホムラこそ何してたの? ……あっ! もしかしてキョーコとかくれんぼしてたとか!?」

ほむら「……違うわ」

ほむら「ただ少し探し物をしていただけよ」

ゆま「なーんだぁ」


ゆま「ここにもキョーコはいないのかぁ……どこ行ったのかなぁ?」

ほむら「……ゆま、貴女は志筑仁美の家に住んでいるんだったわよね」

ゆま「えっ? あ、うん。そーだよ」

ほむら「ならそろそろ帰らないと……あの家は門限が厳しいのでしょう?」

ゆま「あっ! そうだった! ありがと、ホムラ!」

ゆま「門限を破って怒られたりなんかしたらキョーコに笑われちゃうところだったよ!」

ほむら「……どういたしまして」

ほむら「ついでだし、途中まで送りましょうか?」

ゆま「ううん、だいじょーぶ! 一人で帰れるもん!」

ほむら「そう……なら気をつけて帰りなさい」

ゆま「うん! バイバイ!」


~帰り道~

ゆま(ほんと、キョーコってば何処で何してるんだろ?)

ゆま(早く帰ってこないせーで、マミもヒトミもみーんな、キョーコが死んだなんて変な冗談を言いはじめるし……)

ゆま(そんなことあるわけないのにね! キョーコが死ぬなんて!)

ゆま(キョーコは……ゆまが一人前になるまで監視し続ける、って言ってたもん)

ゆま(ゆまを捨てていなくなるなんてありえないんだよ!)

ゆま(きっと何処かに隠れてて、ゆまを困らせようとしてるんだよね!)


ゆま(キョーコは極悪だもんなぁ……早く見つけださないと、また何か酷いコトしてくるかも?)

ゆま(ぶるぶる、想像しただけでも怖くなっちゃう!)

ゆま(急いで見つけよっと! 今度はどこを探そうかな……)



「――――今日は夕日が綺麗だね」



ゆま「……?」

「まるで街が鮮血に染まるようだよ」

「キミもそう思わないかい、おチビちゃん?」

ゆま「……お姉ちゃん、誰?」

「私は呉キリカ。キミと同じ魔法少女だよ」


ゆま「魔法、少女……?」

キリカ「うん? とぼける気かな?」

キリカ「無駄なことだね。キミが魔法少女であることはお見通しだよ」

キリカ「何よりその指輪が証明している。動かぬ証拠さ」

ゆま「何言ってるの? これはお姉ちゃん達が……」

キリカ「まあいいさ、あれだ、そんなことは瑣事に過ぎない」

キリカ「どうせ――――」










――――すぐにお別れだからね


~さやかの家~

さやか「はぁっ……」

さやか「なんか、全然元気でないや……」

さやか「あれから毎日……こうしてウジウジして……」

さやか「こんなんじゃダメだよね……向こうで杏子も呆れてるだろーなぁ」

さやか「もっとシャキッとしなきゃ……」

♪~♪~♪

さやか「うわっ!?」

さやか「け、ケータイか、びっくりしたなあもぉ」

さやか「ん……仁美から電話? なんだろ?」


さやか「もしもし、仁美?」

仁美『はぁっ、はぁっ……さ、さやかさん? あのっ、お願いします! 力を貸してくださいまし!』

さやか「ど、どしたの? 何かあったの?」

仁美『駅前も、商店街も、教会も探したのにっ……いないんです!』

さやか「落ち着いてよ! 事情を説明して?」

仁美『っ……ゆ、ゆまさんが……』

仁美『ゆまさんがいないんです、どこにも!』

さやか「えっ……?」


さやか「ゆ、ゆまちゃんまだ帰ってないの……?!」

仁美『ゆまさんが門限を守らないなんて初めてのことでっ……』

仁美『おかしいと思って探しに出たんですけど、どこにもいないんですの……!』

さやか「門限、っていうか……もう11時になるじゃん!」

さやか「絶対おかしいでしょソレ! 何かあったんじゃ……!?」

仁美『ううっ……』

仁美『もし、ゆまさんに何かあったら……私……私っ……!』

仁美『天国の杏子さんに顔向け出来ませんわっ……!』グスッ

さやか「仁美……!」


さやか「わかった、あたしも探すの手伝うよ!」

さやか「まずは皆に連絡をとってみる。もしかしたら誰かの家にいるかもだし」

さやか「皆で探した方が効率もいいしね!」

仁美『お、お願いします……!』

仁美『私もまだ、もっと探してみますわ!』

さやか「うん、でも物騒なトコに入っちゃダメだからね?」

さやか「そーいうのはあたしに任せて、仁美は人通りの多いトコとか探して!」

仁美『は、はいっ……』

さやか「……だいじょーぶだよ仁美、絶対見つかるって!」

さやか「なんてったって、あたし達魔法少女がついてるんだから!」



………………

…………

……


~夜・廃教会周辺~

まどか「ゆまちゃーん! いたら返事してー!」

ほむら「…………」

ほむら「……この辺りにもいないみたいね……」

まどか「うん……」

まどか「マミさんたちの方はどうなのかな……」

ほむら「何も連絡がないところからいって……成果はあがっていないのでしょうね……」

まどか「……そう、だよね……」


ほむら「……私が……」

まどか「えっ?」

ほむら「私があの時、千歳ゆまをちゃんと送り届けていたら……」

ほむら「こんなことにはならなかったのに……」

ほむら「私のせいだわ……」

まどか「ほむらちゃん……」

まどか「……大丈夫! ゆまちゃんはきっと無事だし、絶対に見つかるよ」

まどか「だから、そんなに自分を責めないで……ね?」

ほむら「……ごめんなさい……」


~見滝原市・繁華街~

仁美(ゆまさん……どうしてどこにも居ないんですの……?)

仁美(まさか、誰かに連れ去られたとか……)

仁美(それとも杏子さんの後を追って……)

仁美(っ! だ、駄目ですわ、変なことを想像しては……)

仁美(ゆまさんは……きっとちょっと迷子になってしまっただけですわ)

仁美(早く見つけてあげないと……)

仁美(……あと探していないところは……)



《――――――……》



仁美(……町外れの、廃工場……?)


~見滝原市・廃工場~

仁美(携帯のライトだけでは暗くて良く見えませんが……)

仁美(……かなり荒れ果てていますわね)

仁美(あちこちに機械の部品やガラス片が落ちてますわ)

仁美(……この辺りは先日の嵐の被害が特に大きかったから、ですわね)

仁美(正確には嵐のせいではなく、魔女との戦いが原因なのだそうですけれど……)

仁美(……確か、ワルプルギスの夜とかいう……)

仁美(…………)

仁美(ワルプルギスの夜……)

仁美(杏子さんの命を奪った魔女……)

仁美(……っ)グスッ


仁美(……泣いてもいられませんわ)

仁美(今は……ゆまさんを探さないと)

仁美(いなくなってしまった杏子さんの分も……)

仁美(私が、ゆまさんを守らなければいけないんですから)



《――――――……》



仁美(……? いま何か光ったような……)

仁美(工場の奥……?)

仁美(少し……行ってみましょう)


仁美(……あ)

仁美(この部屋、天井が抜け落ちてますわ)

仁美(雲の切れ間から少しだけ星空が見えますわね)

仁美(あの程度では明かりの足しにもなりませんけど……)

仁美(…………あら?)

仁美(良く見ると、床が変な色に染ま……)

仁美「…………ひっ!?」

仁美(こ、これ……血の跡……!?)

仁美(いったいここで何が――――)


きらり、と。

紅い輝きが視界の端に映る。

「あっ……?」

仁美は反射的にその輝きへと視線を向け、震える手で携帯電話のライトをかざした。

ぼんやりとした明かりに照らし出され、何かのシルエットが浮かび上がる。

「…………!?」

血の跡が一面に広がる床の上。仁美からほんの数歩の距離に。

打ち捨てられるようにして、得体の知れないモノが転がっていた。


ソレは紅く、黒いカタマリ。

ボロ切れと化した『衣服』に包まれ、

乾いた血で『髪』が張り付いており、

『肌』はドス黒く変色していて、

棒のように硬直した『腕』を突き出し、



そして、その『指』には、見覚えのある指輪がはめられている――――


「あ……あああ……!」

あのカタマリを飾り付けている指輪は、誰のものだったろうか。

大好きな人とお揃いなのだと。

優しいお姉ちゃん達から貰ったのだと。

あの美しい指輪を得意げに自慢していた幼い少女の名は、なんだったろうか。

仁美は必死に頭を働かせるが、答えは出てこなかった。

「あああぁああぁぁっ!!!」

その答えを、拒絶していた。


(ウソですわウソですわウソですわウソですわ――――!!)

心臓が早鐘の如く鳴り響く。

呼吸も荒く、整えることが出来ない。

滲みだした脂汗で衣服がじっとりと湿っていく。

(そんなはずないアレが■■さんだなんてそんなわけない!!)

現実を否定する呪文を唱えながら、覚束ない足取りで歩み寄り、

(私の勘違いに決まってますわそうですわ――――)

カタマリから突き出る腕に、その指に、手を伸ばす。


(そうコレは■■さんなんかじゃなくて廃棄された機械か何かで――――)

仁美は震える指先でソレを掴むと、

(指輪に見えるのも電球とかで、暗いから恐ろしい想像をしてしまっただけに決まって――――)

ずるり、という気持ちの悪い感触と共に、紅き指輪を引き抜いた。

「…………あ」

そして、黒ずんだ汚らしい滓がこびりついたソレを手の平に乗せ、悟る。



これは――――



千歳ゆまが身につけていたものと、同じ指輪だ。










つまり、

考えるまでもなく、

足元に転がるこの物体は。


「――――嫌ああああああぁああ!!」

廃工場に叫び声がこだまする。

「そんな……どうしてッ……あああああ!!」

仁美は自分の衣服が汚れることも構わず、そのカタマリを抱きしめた。

冷たく、グニャリとした感触のソレは、

誰もが生理的な拒絶感を覚えるだろう。

それでも仁美は、両の手を離すことはなかった。

「なんで! なんでこんなっ……!!」


認めたくはなかった。

ソレが何なのか。

『誰』であるのか。

決してその名を口にしてはいけないと思っていた。

しかし溢れだす涙を抑え切れないように、

ついに仁美の口から彼女の名がこぼれ落ちる――――


その直前。



《――――――……》



「え……?」

誰かの笑い声が、微かに仁美の耳に届く。

しかしその声の主が誰であるのか確かめる前に、

「……あぐっ!?」

仁美は頭蓋が叩き割られるような痛みに襲われ、

――――そのまま意識を失い、ドサリと床に倒れ込んだ。


~とある屋敷~

キリカ「上手くいったよ、織莉子。全部キミが指示した通りさ」

キリカ「この通り、指輪も回収してきたよ」

織莉子「ご苦労様、キリカ。いつもありがとうね」

織莉子「……それで、あの子は?」

キリカ「うん? ああ……あの無力なお姫様なら、暗い暗い檻の中で眠っているよ」

キリカ「万が一、目を覚ましても平気さ。拘束具を着せてあるからね」

織莉子「さすがキリカね、手際が良いわ」

キリカ「ふふ! 織莉子にそう言ってもらえるだけで、天にも昇る心地だよ」


キリカ「さてさて、私は次に何をすればいいのかな?」

キリカ「織莉子のために、私の時間を、私の命を使わせておくれよ」

織莉子「次は……この写真の魔法少女がターゲットよ」

織莉子「彼女は私たちが成し遂げる救世の妨げになる存在なの」

キリカ「と、いうことは……また『処理』すればいいのかい?」

織莉子「ええ、千歳ゆまと同じようにしてくれればいいわ」

キリカ「千歳ゆま? ……誰だっけ、それ」

織莉子「……相変わらず他人の名前を覚えていられないのね、キリカは」

キリカ「私が覚えておく必要のある名前は『美国織莉子』だけだからね!」

織莉子「クスっ……まったくもう、貴女って子は」


織莉子(……私が予知した、いずれ来たる『絶望』……)

織莉子(それを回避するためにも、私たちは戦い続けなくてはいけない)

織莉子(この手で罪を犯してでも……)

織莉子(…………)

織莉子(あの『絶望』の中心にいた千歳ゆまは片づいた)

織莉子(次は貴女の番よ――――)






織莉子(――――暁美、ほむら)

次回・トゥルーエンド編(後編)へつづく。

          人
          (  )
         ┌:‐┐

          `|...|´
         /i´Y´`ヽ
        ハ7'´ ̄`ヽ.

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     ∧,,∧リノ(! ゚ ヮ゚ノリ
    /ο ・ )Oニ)<;;>
    /   ノ lミliii|(ヾゝ
   (o_o,イ__ヽ´|(__) ノ~⌒)彡   ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
      ノllllllllヽ| | ̄ノl ノ
     / /~ヽ ノ'''''''~ヽヽ\ヽ_
     ヽニフ|_|   (_/  ヽノ
         (_ヽ

: : : i: : : : : : 、: : : : : : :ヽ: : ヾ:..:ヽ: : : : :ヽ: : : : : : : : : ヘV: /: :i::i: : Vii/ l三/三三Aiiii|

: : : i: : : : : |\ヽ: : : : : : :ヽ、:ヽヽ:、 \: : :ヽ: : : : /: : : ヽヽ,: :::|ノiii/ /,三.i三三|  liii|
: : : i: : : : : |:::: ヽ:、ヽ: : : : : .ヾ、ヽ:、  \: :::ヽ: : : : : : :、: Y,ヽ>/iii/ /三三i三三|  |iiii|
: : : i: : : : : |::: :::ヽヽヽ:、: : : :.、:i ヽ:i  ,,>< :゙、: : : : : :ヽ:i>,/iiii/ /三三/ 三三l|  |三|
: : : :l: : : i: :|:::   :.、、:、: :、: : : i:| iノr'´   \::.: 、: : : : : i:ァ>-/三三 /三三三|  |l三、
: : : :.i: : : i、:.、    ヽ,ヽ:.、: : : :|/l:|     _ヽ: :i: : : : :l:tイ/,三三 .i.三三三 |\ |,三ヽ

: : : : : : : :i、: .、    i:, ヽ:、: イ  | ,/ ,イ-l| ゙、:i: : : : :i:|/三三三 i 三三三 |/ ヾ-rr}

:ヽ: :i: : : :i:.i ヽ:、    !  l:iX: :|   /////ヽ| |: i: : : : i/,.三三三 | 三三三 |    !!!!、
: :ヽ:ヽ: : :i:ヽ ヾ.、     !' l: | / / .V.ノ、 }<i |: i: : : /三三三三/三 三 三.|     ヽ
: : : : ヽ : : : ヽ  \      l:.| !/|   V`゙´ リ ,i:.i l: :/三三三三 /三三三三.|     `
: : : : :.ゝヽ: __ヽ_       リ       ゝー' /:/ .|<三三三三 / 三三三三 |  , '  ̄
: :ヾ:.:.:ヽ\\: \:::::::..              ノ  /,:イヽミ三三/三三三三三.| '´
: : :\:.:.ヽ::::\`゙ー-:::::::::..              /ノ,,| /   T-rL,三,r=、三r-'   ,
: : : : : ヽ:.ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::.     , - 、      / /   / //   ,'__ , --- 、_ /
: : : : : : : : :ヾ、::::::::::::::::::::::::::::::, - '´    `ヽ、  ,/ ./  / // ,r '´  __   ` ー 、  ,..-
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. . : : :\ヽ,r ' ´         ヽ、  \ /  ム.///  ,... イ;;;{       `゙ヽ、
/ ̄,ヘ: _::.:.:.:.:..: : : :ヽヽ          、  \  |  /{ ノ=、 ,.r'´   ,l;;;;|          l
  /  /ヽ ̄/`ヽ::::i             \  ヽ.| / .`}t<´    r '´             |

このSSは杏子ちゃんが極悪非道でしたがトゥルーエンド編(後編)です。
ご注意ください。


~とある屋敷~

『お願い――――目を醒まして!』

『ごめんよ織莉子……私は、もう』

『嫌ッ……待って、行かないで、キリカぁああぁ!』





織莉子「――――――っ!?」

織莉子(また、この予知だわ……)

織莉子(やはり未来を変えるためには……千歳ゆまだけでなく暁美ほむらも……)


織莉子(…………)

織莉子(キリカは『私一人で大丈夫だよ』と言ってくれたけれど……)

織莉子(ここは万全を期すためにも、私も動くとしましょう)

織莉子(そうなると問題は……千歳ゆまから奪ったこの指輪をどうするか、ね)

織莉子(もしこれが暁美ほむらの手に渡ったら、予知の通りになってしまう)

織莉子(さて、どうしましょうか……)

織莉子(……そうだ、確かお父様の書斎には金庫がある)

織莉子(あそこにしまっておくとしましょう)


~路地裏~

ほむら「…………」

まどか「この辺りにもいないね、ゆまちゃん……」

まどか「どうしよう、ほむらちゃん……このまま見つからなかっ――――」

ほむら「……っ!! まどか危ないっ!!」

まどか「え、きゃあ!?」

ガキィン!!

キリカ「……おや? そんな小さな盾で私の一撃を防ぐなんて」

キリカ「なかなかやるね、今度の標的は」

まどか「なっ……あ、貴女だれ!?」

ほむら「……呉、キリカ……!?」

まどか「!?」

ほむら(まさか……まどかを狙って……!?)


キリカ「へえ、私のことを知ってるのかい? どこで会ったかな?」

ほむら「……答える義理はないわね」

キリカ「ふぅん……まあ関係ないけど」

キリカ「私はただ標的を『処理』するだけだからね」

まどか(……あの子が呉キリカ……!)

まどか(前にほむらちゃんが話してくれた、別の時間軸で会った魔法少女……)

まどか(魔法少女狩りの犯人……私を殺した人の一人……!!)ゾクッ


キリカ「君達はさっきの『オチビちゃん』よりも歯ごたえがありそうだね」

キリカ「困ったな、朝食の時間に間に合うかな? まあ意地でも間に合わせるんだけど」

まどか「……オチビ、ちゃん?」

まどか「待って、オチビちゃんって、まさか……」

ほむら「貴女、千歳ゆまに何かしたの……!?」

キリカ「千歳、ゆま……? 何だかさっきも聞いたような……」

キリカ「……あ、そうだ! 私の一人目の標的の名前だ!」

キリカ「魔法少女だっていうのに変身もしないで……」

まどか「……え?」

キリカ「私にあっさり敗れた無力なお姫様……彼女が千歳ゆまだったかな!」


ほむら「何を言っているの……? あの子は、魔法少女なんかじゃ……」

キリカ「うん? 君達までそんなことを言うんだ?」

キリカ「そんな嘘になんの意味があるんだか……やれやれ」

キリカ「彼女はソウルジェムの指輪をしていた――――」

キリカ「間違いなく魔法少女である証じゃないか」

まどか「――――!?」

まどか「ち、違うよ! あれはソウルジェムなんかじゃなくて、私達が作った――――」

キリカ「まあ、そんなことはどうだって良いんだよ」

キリカ「君達も、すぐにあのオチビちゃんと同じ所へ行くんだからさ」

ほむら「…………!!」


まどか(そんな……じゃあ、ゆまちゃんは、もう……?)

まどか(私達が作った指輪のせいで……魔法少女狩りに……?)

ジワ...

ほむら《しっかりして、まどか!》

まどか《!》

ほむら《あいつの言葉が真実とは限らないわ……惑わされてはダメ!》

まどか《う、うん!》

キリカ「――――さて、おしゃべりはここまでにしようか!」

キリカ「急がないと日が明けてしまうからね、早々に決着をつけさせてもらうよ!」

ジャキッ!!

ほむら「来るわ、気をつけてまどか!」

まどか「うんっ!」


~病院・駐輪場~

マミ「やっぱり『いる』わね……」

さやか「くっそぉ……! こんなときに魔女が出るなんて!!」

マミ「でも放っておくわけにもいかないわ。下手すればそれこそ……」

さやか「……ゆまちゃんが襲われるかもしれないもんね」

マミ「そういうことよ、急いで片付けましょう!」

さやか「はい、マミさんっ!」


~魔女の結界内部~

さやか「…………」

マミ(さっきは、ああいうふうに言ったけど……)

マミ(……美樹さんも、本当は気がついているのでしょうね)

マミ(ゆまちゃんが……既に手遅れな可能性もある、ってこと)

マミ(…………)

マミ(駄目ね……悪いことを考えるのはやめましょう)

マミ(信じなきゃ、あの子の無事を……)


さやか「それにしても……」

マミ「うん?」

さやか「見てるだけで胸やけしそうな結界ですね、ココ」

マミ「そうね……これが本物だったら胸が弾むんだけど」

さやか「さすがに手をつける気には……なれないなぁ」

さやか「ほら、見てくださいよコレ。ぶよぶよしてますよ」

マミ「いったい何で出来てるのかしらね」



マミ「――――この、お菓子の山」


さやか「っと……魔女はこの奥にいるみたいですね」

マミ「そうね。準備はいい?」

さやか「はいっ!」

マミ「それじゃあ……開けるわよ!」

バタンッ!











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       r、_ ,.イ_/\    ト、;;;;;;;;;;;;</////////
       { __      r-、 / \;;;;;;;;;;;;;;</////

          `ゝ ... ___i  /    \;;;;;;;;;;;;;;;;
                `'













さやか「なんだ、ずいぶん弱っちそうな魔女じゃん」

マミ「一気にケリをつけるとしましょうか。……でも、油断は禁物よ」

さやか「分かってますって!」

さやか「いっくぞー!! たああああっ!」

マミ「喰らいなさいっ!」


…………。

さやか「ふうっ……あっさり片付いたね」

マミ「そうね。見た目通り、大したことなかっ――――」

まどか《マミさん、さやかちゃん! お願いっ……助けて!》

マミ《鹿目さん! 何かあったの!?》

まどか《いま、悪い魔法少女に襲われてるんです!》

さやか《魔法少女に!? どーいうことよソレ!》

まどか《詳しいことはわかんないけど、ゆまちゃんのことも知ってるみたいで……きゃあ!?》

マミ《鹿目さん!? 鹿目さん、どうしたの!?》


マミ「くっ! テレパシーが途絶えたわ!」

さやか「どーいうこと!? なんで魔法少女がまどか達を襲って!?」

マミ「それにゆまちゃんのことも関係あるみたいだった……!」

さやか「急いで二人を探そう!」

マミ「ええ!」

マミ(もう一度テレパシーを送って、場所の確認を……)



さやか「――――っ!? マミさん、後ろ!! 魔女が――――!!」



マミ「え……?」














――――グシャリ

ゴキメシャブチバキメシャ...


~路地裏~

キリカ「ふぅ……ふふふ、なかなか手こずらせてくれるね」

ほむら「まどか、大丈夫!?」

まどか「だ、大丈夫……ちょっと腕を掠っただけだから……」

ほむら「そう……」

ほむら(……やせ我慢、してるわね)

ほむら(あの傷じゃあ弓が引けないわ……)


ほむら(それに……いつもよりまどかの動きが鈍いわのも問題ね)

ほむら(相手が魔女じゃないから、というのもあるでしょうけど……)

ほむら(やっぱり千歳ゆまのことが気掛かりなんでしょうね……)

ほむら(…………)

ほむら(許さないわよ、呉キリカ……)

ほむら(お前は私の大切な友達を傷付けた……!!)


まどか(どうしよう……血が止まらないよ……)

まどか(それに、マミさんもさやかちゃんも、テレパシーに応えてくれなくなっちゃった)

まどか(きっと向こうでも何かあったんだ……)

まどか(早く……早くなんとかしなきゃ)

まどか(でもどうすればいいの? あの子の魔法……周りの時間を遅くするものらしいけど)

まどか(あれがある限り攻撃も当たらない。逃げることも出来ない……)

まどか(…………)

まどか(……ゆまちゃんもこんなふうに、酷い目に合わされたのかな……)

まどか(私達のプレゼントのせいで……勘違いされて……)

ジワ...


キリカ「うーん、そろそろ観念してほしいんだけれどなぁ」

キリカ「大人しくやられてみる気はないかな?」

ほむら「お断りよ」

まどか「こんなトコで死ぬ気なんてないもん!」

キリカ「……うん?」

キリカ「あれ、もしかしてキミ達は……」



織莉子「――――苦戦しているみたいね、キリカ?」



ほむら「!?」

キリカ「あれっ!? 織莉子、来ちゃったの!?」

キリカ「私一人で充分だって言ったのに!」

織莉子「ごめんなさい、貴女のことが心配だったから……」


ほむら《美国、織莉子!!》

まどか《あの人が、美国織莉子……!?》

ほむら《そうよ……予知能力を持つ魔法少女……!!》

ほむら《……状況は最悪ね》

ほむら《まどか! ここは私が時間を稼ぐわ、貴女は逃げて!》

まどか《だ、駄目だよそんなの! ほむらちゃんを置いてなんて……!!》

ほむら《いいから早く!》

まどか《でもっ……!!》


ほむら《……まどか、貴女のその怪我では戦えないでしょう?》

まどか《!!》

ほむら《ハッキリ言わせてもらうわ。今の貴女は足手まといなのよ》

まどか《そ、そんな……》

ほむら《だから貴女は早くここから離れて、マミやさやかと合流しなさい》

まどか《…………っ》

まどか《わかったよ……ほむらちゃん》

まどか《でも!! 必ず戻ってくるから! マミさん達を連れてくるから!》

まどか《それまで……絶対に無事でいてね……?》

ほむら《……ええ》

まどか《絶対……絶対だからね!!》

ダッ!


キリカ「あっ、一人逃げるよ織莉子!」

織莉子「構わないわ。放っておきましょう」

織莉子「これくらいで私の計画に影響は出ないもの」

ほむら「……大した余裕ね」

ほむら「そんな簡単に私を倒せると思っているのかしら」

織莉子「……貴女が、暁美ほむらね」

織莉子「残念だけれど貴女に勝ち目はないわ」

キリカ「そうさ! 私達のコンビネーションにキミ一人で勝てるわけないよ!」

キリカ「無駄な抵抗は止したほうが良いと思うけどな?」

ほむら「……甘く見ないでほしいわね」


ほむら「例え勝ち目がないとしても私は絶対に諦めない……」

ほむら「まどかは絶対に守ってみせる! 貴女達に殺させはしないわ!!」

織莉子「…………」

織莉子「貴女、何か勘違いしていないかしら」

ほむら「……えっ?」

織莉子「私の狙いは貴女よ、暁美ほむら」



織莉子「――――まどか、なんていう子を害する気はないわ」



ほむら(…………!?)


ほむら(どういうこと……?)

ほむら(美国織莉子は、まどかを殺そうとしているのではないの?)

ほむら(……なら、千歳ゆまを襲った理由は?)

ほむら(以前の時間軸のように魔法少女狩りを行なったのだと思っていたけれど……)

キリカ「――――考え事してる余裕なんてあるのかなっ!?」

ほむら「っ! しまっ……!!」

ザシュ!!


ほむら「あっ……くっ……!!」

ほむら(足がッ……立てない……腱を切られた……!?)

ガクッ...

キリカ「ははっ! ほら見てよ織莉子! 私一人でも上手く出来たでしょ?」

織莉子「……少し卑怯だった気もするけれど」

キリカ「うっ。ま、まあ良いじゃないか。これで目的は達成できるよ」

織莉子「ふふっ、そうね。ありがとう、キリカ」

ほむら「くっ……うぅ……」

ほむら(このままじゃやられる……治療を……)

ほむら(時間を……時間を稼がなきゃ……!)


ほむら「貴女達は……どうして私を……千歳ゆまを襲ったの……?」

キリカ「……図々しいな、キミ」

キリカ「自分が質問なんて出来る立場だと思っているのかい?」

ほむら「くっ……」

織莉子「構わないわキリカ。少しくらい話をしてあげましょう?」

キリカ「……織莉子がそう言うなら仕方ないね」


織莉子「私が貴女を襲った理由……」

織莉子「それは、貴女が世界の『絶望』を生み出す存在だからよ」

織莉子「そして『絶望』の鍵となるのが千歳ゆまだった。だから……」

キリカ「私が彼女からソウルジェムを奪い、天国へご招待した、ってわけさ」

キリカ「ま、安らかな眠りにつけてオチビちゃんも幸せだろうよ!」

ほむら「…………!」

ほむら(やっぱり千歳ゆまは……もう……!)


ほむら「……あの子は魔法少女なんかじゃない、普通の女の子だったのよ……!?」

ほむら「あの子が絶望の鍵になる? そんなわけないじゃない!」

ほむら「なのに貴女達は……!」

織莉子「そう……千歳ゆまは魔法少女ではなかったの」

織莉子「でも関係ないわ。私の世界を脅かす者は全て排除するだけ」

織莉子「例えそれが何の力も持たない『一般人』だとしても……ね」

ほむら「っ!!」


織莉子「さて……そろそろ話も終わりにしましょうか、暁美ほむら」

織莉子「これ以上、回復のための時間を稼がれても困るし……ね」

ほむら「ちっ……!」

キリカ「それじゃあ織莉子! そろそろ幕引きといこうか!」

織莉子「ええ。そうね、キリカ」



織莉子「せめて――――安らかに眠らせてあげましょう」



ほむら(まどか………!)



………………

…………

……










《――――――…………》



仁美(……声が……聴こえる……?)

仁美(あなたは……いったい誰……?)

仁美(……私に何をしろと? 何の力もない私に……)

仁美(…………)

仁美(――――――私に、魔法少女の力をくださるの?)

次回、トゥルーエンド編(後編2)へ続く。


    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!  くっくっく……
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  まだ書き貯め終わってないのに
   ノ /)i杏i|、   無謀にも投下予告してやるぜ……
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ




    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!  
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  次回投下は8日になるよ
   ノ /)i杏i|、   
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ

⌒ヽ          r ⌒ヽ    、 _ ,ノ
  , '⌒ヽ       (    ⌒ヽ/  l  \   , '⌒ヽ   ´ ⌒ヽ
      )    (         )   i    ヽ(          )
     ⌒ヽ  '⌒   /⌒ヽ       '⌒\    ⌒ヽ   ⌒ヽ
 ⌒ヽ     Y    (         (      ⌒ヽ 、        ⌒Y







    /''⌒\
  . ,,.'--==""フ
   l ,イl//`ヘヘ! ほーら空を良く見てみな。
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ まだお日様が出てるぞー?
   ノ /)i杏i|、  まだ8日だぞー?
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ
.,,.,.,,,.,.,,,.,.,,,.,.,,,.,.,,,.,















    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!  
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  ごめんなさい
   ノ /)i杏i|、   
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ


       ∨: : : :_:_: : ; :-: :´: :`ヽ.:.:.: : . .\  `ヽ
        / :_: : ; : : Y: : : : : : : : : :\:.:.: : . .\   `ヽ、_    _ --―=ニ ̄ニ=‐- _
 .      |/: : : {: : : {`ヽ: : : }.:.}: : : :..:\:.:.:.: : .\      ̄ ̄    ―=ニ二 ̄ ̄     ̄
.     /: : : :圦.:.从 从.:/:从: : : }`ヽ':.:.: : . .                   ̄`ヽ__
.       {: : : .:{:{‐\{ ` リ;ル'坏,}ル.:ル`ヽ-、:.:.: : . .                        `ヽ
.      Ⅵ: : 从'T:抃   ヾ-′!/ 〉   `  ̄ ̄ `ヽ:.:.: : . .        _      `ヽ ̄`ヽ
      从\:廴ゞ┘  、   ノ ./   __,     /:.:.: : . .         \ ̄`ヽ  ノ
.     厂    \_    - ,.ィ´  ./  ン´/   ./:.:.: : . .             ∧  厶イ
.   / ____、. \ ̄「 ̄  l  ./ ./:::::人__ /:.:.: : . .            \ .ハ   ノ
.  /    /―\ \∨三/_/  /⌒( 廴/\:.:.: : . .            \ }
 /       ノ ノ`ー==ハ==ニ´Y  〉´::.:.: : . \ _              ∧
 ` ー--―一 ⌒/\___/ ∧__/.| l j\:.:.: : . . . \ ̄` ー   _          ハ
.           ∧___/_介_、__|ノ´ . \:.:.: : . .  `  、    `ヽ   ノ)   .}
         i     l  |     l     \:.:.: : . .    ` ー--一 /___  ノ
         |     .l  .|     .l         ` ー-- _     _ -一´./
.           l     l  |     l                   ̄ ̄ ∠  /
            l    l  .|    .!                        )/
.            l    l   |     l
.           /   ノ   l    /
.        /    /     l   ヽ
.          /__/    .\   入
       「/////|     .人/:/∧

          |/////|       ∨:////∧

このSSは杏子ちゃんが極悪非道でザンギャックです。ご注意ください。


~病院・駐輪場~

さやか「ねえ……起きてよマミさん」

さやか「魔女はもう倒したんだよ?」

さやか「凄い苦戦しちゃったけどさ……あたし、勝ったんだよ?」

さやか「ほら、マミさんの怪我も全部治したんだよ?」

さやか「なのになんで……」

さやか「なんで起きてくれないの、マミさん……?」

マミ「…………」


ジワッ...

さやか「あっ……?」

さやか「マミさん、ソウルジェムが真っ黒だ……」

さやか「これがいけないのかな……」

さやか「早くキレイにしなきゃ……キレイにしないと……」

さやか「……キレイにしないと、どうなるんだっけか……」

さやか「死んじゃうんだっけかな……」

さやか「…………」

さやか「……じゃあ……」

さやか「……あたしも、もうすぐ死んじゃうんだね……」

ジワッ...

さやか「……うっ……くぅぅ……!?」


さやか(胸が……苦しいッ……)

さやか(ソウルジェムが濁ると……こんなに苦しいものだったの……?)

さやか(これが……これが死ぬってことなの……?)

マミ「う……あ……」

さやか「マミ、さん……」

さやか「……ごめんね……あたし……もう……」

さやか「マミさん……助けてあげられそうにないや……」

さやか「……せめて……」

さやか「最期まで、一緒にいよっか……」

ギュッ...


さやか「ああ……」

さやか「苦しいなぁ……」

さやか「あいつも……」

さやか「杏子も……こんなふうに、苦しかったのかな……」

さやか「……はは、そう考えれば……この苦しみも悪くない、かな」

さやか「マミさんも……そう思うよね……?」

さやか「……杏子」

さやか「あたし達もそっちに……」





《ばーか。なに格好つけてるんだよ、さやか》


さやか「え……?」

《どーせ苦しんでる自分が格好良いとでも思ってるんだろうけどさ》

《意味ないぞ、そーいうの。ただの自己満足じゃんか》

《さやかやマミが苦しんだって、何にもならないんだよ》

さやか「そう、かな……」

《そーだよ》

《……アタシも、アンタらのそんな姿見せられたって嬉しくない》

《だからさ……》





《――――アタシがその苦しみから救ってやるよ》


《ほら行こうぜ、さやか》

さやか「……どこへ?」

《決まってるだろ、皆のとこさ》

《あ、マミのヤツも叩き起こさなきゃな!》

《全員一緒のほうが楽しいに決まってるし……》

《無理矢理引きずってでも連れていこうぜ!》

さやか「うん……うん、そうだね」

さやか「一緒に……行こっか……」


~崩壊した鉄橋~

キリカ「げほげほ……大丈夫かい、織莉子!?」

織莉子「ええ、ちょっとビックリしたけれど……怪我はないわ」

キリカ「それは良かった! 君に何かあったら私は生きていけないところだったよ!」

織莉子「ふふ、大袈裟ね……キリカは」

織莉子「それにしても、暁美ほむらがここまでするなんて思わなかったわ……」

キリカ「うん。傷付いた足でここまで逃げてきただけでも凄いのに……」

キリカ「まさか橋を爆破して、河に逃げ込むなんて!」

織莉子「そうね……まああれだけの傷を負っているわけだし、遠くへは行けないでしょう」

織莉子「すぐに私の予知で場所を特定して……」

織莉子「――――この舞台にも幕を引くとしましょうか」


~河原~

ほむら「ゲホッ……ゴホッ、ゴホッ!」

ほむら「……逃げ、きれた?」

ほむら(……いいえダメだわ……相手はあの美国織莉子……)

ほむら(もっと遠くへ……逃げないと……)

ほむら(……ううん、みんなと合流しなきゃ……)

ほむら(合流…………どうやって?)

ほむら(……なんでだろう、頭がぼーっとする……考えがまとまらない……)

ほむら(…………)

ほむら(この河……なんでこんなに真っ赤なのかしら……)

ほむら(……ああ、そうか……)





ほむら(これ、私の血だ……)


ほむら(身体に力が入らない……)

ほむら(なんだか寒いわ……それに眠い……)

ほむら(どうしてこんなに眠いのかしら……)

ほむら(……このまま……このまま目を閉じてしまいたい……)

ほむら(…………ダメ、逃げなきゃ……)

ほむら(まどかを……守らなきゃ……)

ほむら(……まど、か……)





《なーに寝てんだよ、ほむら》


ほむら「あ…………」

《あーあ、全身びしょびしょじゃねーか、まったく》

ほむら「……お日様だ……」

《んなトコで寝てたら風邪引いちまうぞ》

ほむら「もう、夜明けなのね……」

《ほら、さっさと起きろって。さやかもマミも待ってるぞ》

ほむら「キラキラして……綺麗……」

《そんな寂しいとこで寝っ転がってないでさ》

ほむら「……温かい……」

《……こっちに来いよ、ほむら》

ほむら「私も……そっちに――――」

~住宅地~

まどか「はあっ、はあっ……」

まどか(マミさん、さやかちゃん、どこにいるの……!?)

まどか(早く合流しないと……早くしないとほむらちゃんが……!!)

まどか(テレパシーも全然反応がないし……)

まどか(もしかして、さやかちゃん達も、もう……?)

まどか(っ……! そんなはずないっ、そんなことあるわけない!)

まどか(もっと魔力を込めてテレパシーを使えば通じるよ、きっと!)

まどか(さやかちゃん、マミさん!! お願い、返事をして……!!)


まどか(…………)

まどか(……)

まどか「っ……ううっ……」グスッ

まどか「マミさん……さやかちゃん……どうしてなの……?」

まどか「お願いだから……返事をしてよぉ……」



――――ドォン!!



まどか「あっ!?」

まどか「今の音……ほむらちゃんの爆弾の音……!?」

まどか「橋のほうだ……まさか……!?」

まどか「――――っ!!」ダッ!


まどか《ほむらちゃんっ……ほむらちゃん!!》

まどか《ねえ聞こえる!? 何があったの!?》

まどか《怪我なんかしてないよね、大丈夫だよね!?》

まどか《ほむらちゃん……!》

まどか(………ほむらちゃんの声が……聞こえない……!)

まどか「う……」

まどか「うああああっ!!」

まどか(そんなはずない! ほむらちゃんがやられるわけない!)

まどか(絶対に無事でいてくれる、って約束したもん!)

まどか(絶対に助けに行くって言ったもん!!)

まどか(待っててほむらちゃんっ……今行くから……!!)


~崩壊した鉄橋~

キリカ「……おや? さっき見た顔が来たよ、織莉子」

まどか「……っ! 貴女たちは!」

織莉子「わざわざ戻ってきたのね、貴女」

まどか「ほむらちゃんは……ほむらちゃんは何処なの!?」

織莉子「彼女なら……」

キリカ「ははっ、一足遅かったね」

まどか「どういう、意味……?」

キリカ「ここに私達がいて、彼女がいない」

キリカ「それが意味することなんて言わなくてもわかるだろう?」

まどか「っ!!」


織莉子「キリカったら、またそんな回りくどい言い方して……」

キリカ「ふふっ、これが私の性分だからね」

織莉子「はっきりと言ってあげないと可哀相でしょう?」

織莉子「暁美ほむらは、もう逃――――」

まどか「…………い」

織莉子「え?」

まどか「許さない!! 貴女たちのこと、絶対に許さないんだからッ!!」

織莉子「――――っ!?」ゾクッ


織莉子(何、このプレッシャーは……!?)

織莉子(彼女がただそこにいるだけで息が苦しくなる……!)

まどか「やあああああああっ!!」

キリカ「くっ……!?」

キリカ(圧倒的な魔力……あんな力をぶつけられたら一溜まりもないじゃないか!!)

キリカ「……まあ、でも」

織莉子「ええ、そうね」



織莉子「――――撃たせなければ何も問題ないわ」



まどか「っ!?」


引き絞った弓を放つ直前――――

呉キリカの魔法に支配された『時間』は、

澄んだ水が泥水に変わるようにその流れを澱ませた。

キリカ「遅い遅いッ!」

まどか「――――っ!?」

澱んだ時間が、まどかの全身に重たく纏わり付く。

まどか「こ、このっ……」

それに抗うよりも早く――――

織莉子「させないわ」

魔法で作り出された球体がまどかへと襲い掛かった。


まどか「あうっ……!」

腕、腹部、足。

動きの鈍ったまどかは、ただ弓を放つだけの動きも出来ず、

成す術もなく美国織莉子の攻撃を受けた。

まどか「つっ……あっ……!」

からん、と乾いた音が虚しく響く。

それはまどかが弓を取り落としてしまった音。

絶望に立ち向かう希望を手放してしまった音――――


その隙を、呉キリカが見逃すはずがなかった。

まどか(――――どうして?)

一瞬にして間合いを詰め、背後に回り込む。

まどか(どうして私たちが、こんな目に?)

そして黒の魔法少女は、その鋭い爪を、全てを切り裂く魔法の刃を構え――――

まどか(………ごめんね、みんな……)





――――まどかの細い首筋へ振り下ろした。












「――――うん」

「そうさ、君を魔法少女にしてあげる」

「でも残念ながら君に魔法少女の素質はほとんどない」

「まともに僕の姿を見ることも出来ないし、かろうじて声が聴こえる程度だ」

「魔法少女としては最低ランクの能力」

「『どんな願いも叶えてあげる』、とはいかないんだ」

「願いで起こせる奇跡も、本当にちっぽけなものになってしまうだろう」

「……そうだね、例えば」





「死の淵に立つ『彼女』の魂を救うことなら……出来るかもしれないね」


「君がその指輪を手にした時、頭が割れるような痛みを感じなかったかい?」

「それはね、その指輪に宿った『彼女』の魂に、魔力にあてられてしまったからなんだよ」

「実は君の内に秘めた素質がわずかとはいえ開花したのも、そのおかげなのさ」

「……『彼女』の肉体は使い物にならないほど損傷してしまったけれど、魂は違う」

「その指輪に宿った『彼女』の魂は、朽ちることなく輝き続けているんだよ」

「君が願えば、君が呼べば、『彼女』は応えてくれるだろう」

「君は自身の魂を、『彼女』のために使う気はあるかい?」


「まあでも、きっと彼女は怒るだろうね」

「そういった願いが嫌いだったから」

「……それでも君は願いを変えないのかい?」

「……うん。やっぱりね」

「君達人間はそういったことが大好きだものね」

「例え周りの人間が止めても、自身に待つ苦難を知っていても」

「愛する人を救うためなら我が身も惜しまない」

「……わけがわからないよ」


「別に、僕はどちらでも構わないけどね」

「君がそう願うのであれば、止めたりなんかしないさ」

「さあ、願いを言ってごらん」

「それで契約は交わされる」

「…………」

「それが君の願いだね?」

「うん、わかったよ」

「……君の願いはエントロピーを凌駕した」

「喜ぶといい。君の願いが彼女の魂を救うんだ」





「そう――――佐倉杏子の魂を!」


布が擦れ合う、乾いた音が微かに響く。

キリカ「なっ……!?」

まどかの首筋へ振り下ろされるはずだった黒の魔爪は、その寸前で――――



――――黄色のリボンに阻まれ、動きを止められていた。



キリカ「なんだこれっ!? リボンっ……!?」

まどか「えっ……!!」


織莉子「きゃっ……! な、何、巻き付いて………!?」

キリカ「織莉子! くっ……!」

まどか「この魔法は……!!」



「――――ふう、危ないところだったわね」



まどか「あ…………!」

マミ「ごめんなさい鹿目さん。お待たせしちゃったみたいね?」

まどか「やっぱり、マミさんっ……!!」

まどか「良かった……無事だったんですね!」

マミ「ええ、実は……」


織莉子(新手……!?)

織莉子(面倒なことになったわ……)

織莉子(でも、この程度の拘束なら問題ない……)

織莉子(私の武器を飛ばして、彼女たちの隙を突く!!)

ギュンッ!

まどか「あっ! マミさん危ない! 後ろ……!」

「心配いらないよ、まどか!」



ガキィーン!



さやか「バッターさやかちゃん、打ちましたぁ!」

さやか「……なんてねっ!」

まどか「さやかちゃん!?」


まどか「さやかちゃんも無事だったんだ!」

さやか「あったり前でしょ、まどか!」

さやか「正義の味方はそー簡単にやられたりしないんだよ!」

まどか「……もうっ、さやかちゃんたら……」

織莉子「また新手……!? なんてことなの……!?」

キリカ「大丈夫さ織莉子! 私がついてるよ!」

キリカ「まずはこんなリボン、八つ裂きにして……!」

「……動いたら、美国織莉子のソウルジェムを撃ち抜くわ」

キリカ「っ!?」

まどか「あっ……ああ……!」

ほむら「無駄な抵抗はやめなさい、呉キリカ」

キリカ「お前は……いつの間に!?」

織莉子「私が背後を取られるなんて……!?」


まどか「ほ……ほむらちゃん……!!」

ほむら「ごめんなさい……心配かけたわね、まどか」

まどか「う……うぅうう……」グスッ

まどか「良かった……ほむらちゃんが生きててくれて良かったよぉ……」

まどか「私……ほむらちゃんが死んじゃったのかと思って……」

ほむら「まどか……」

キリカ「暁美ほむらまで現れるなんて……!?」

織莉子「どうして!? 私の予知なら、この程度の不意打ちなんて予測出来たはずなのに……!!」





「――――きっと幻でも見てたんだろ」





織莉子「ッ!?」

「周囲に敵はいない。全て上手くいく」

「……そんな幻をさ」


まどか「あっ……!?」

「よぉ、まどか。危ないところだったな?」

キリカ「っ!? 誰だ!!」

「まったく、無茶しすぎなんだよオマエは。もっと自分を大事にしろ、って言ったろ?」

織莉子「貴女は……!?」

まどか「嘘……そんな、なんで……!?」

「ま、オマエはもう安心して見てればいいよ」





杏子「――――アタシが美味しいトコ全部、貰ってやるからさ!」

次回・トゥルーエンド編(完結編)に続く。


        人

        (  )
       ┌:‐┐                            ∧彡
        `|...|´                            彡 ・ \
       /i´Y´`ヽ △                       彡  人.ヽ.)
    ⊂ ハ7'´ ̄`ヽ. |                 , -----y"'''--/'''" ̄
    ⊂ l ,イl//`ヘヘ!.|             =≡=( |  |   ヽ
    ⊂ リノ(!; ゚ ヮ゚ノリ|         三      / └─‐┘    )
      ノ ⊂)i杏i| つ                 / ノ ノ ̄丶  ソ \
   三 ((  く__ハjノ_」 |               /// /    \ ヽ\ .\
         とつ   |              《_/ 《_/      ヽ/ラ丶/ラ


    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! 今日中に投下する宣言
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ
   ノ. ,ノ ゙̄i
   `(´ )JJ   /杏\


    /: : /|: : : : : : : : /:_;,,:...:.,;_ :/  /: :/    / : : /: : : : : : /: : : : l: : : : : : : : : |/;イ : :l
.   / :/  |: : : : : : : /´: : : : :/`ヽ、//     /: : ;イ: : : : : : / |: : : : |: : : : : : : : : |; イ : : l
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      .′' : : : : /: l :.|\    ヽ    ーv~ )       人ー‐ ´: :/ : : : : /: : : : ' : : |
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     /: :/: : : : /: : : l :.:|: l/ ̄ヽ、          _ . :<: :/: :/: : : /: : : : : /: : : : /: l : : |
   / : /: : : : /: : : ;」-'"´  _|    ー     l ´ `ヽ: :}//: : : :/: : : : : : /: : : : /: : | : : |
  /: : : /: : : :, '。-=――-γ ´  |            ト、ヽ  ∨' : : : /l.: : : : : : :/: : : : /.: .: :| : : |
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: : :. :./: :/ /――――-/`              //: : : /ヽ : : !: : : : : /: : : : /: : : : : :| : : |

みなさんお忘れではないだろうか。
このSSの杏子ちゃんが神をも呪い殺す邪悪であることを。


まどか「杏子ちゃんっ……本当に杏子ちゃんなの!?」

杏子「なんだよまどか? アタシが他の誰かに見えるのか?」

まどか「だ、だって……杏子ちゃんはあの日……!」

織莉子「……あ……あああああ……!!」

杏子「……ん?」

キリカ「ど、どうしたんだい織莉子?」

織莉子「なぜ……!? なぜ佐倉杏子が此処に現れるの!?」

織莉子「私は予知に抗ったのに……! 未来を変えるために行動したのに……!!」

織莉子「なぜなの? なぜ貴女が……!!」

キリカ「織莉子……?」


仁美「はあっ、はあっ……や、やっと追い付きましたわ~」

織莉子「っ!?」

杏子「遅かったじゃんか、仁美」

仁美「もうへとへとですわぁ~」

さやか「仕方ないよ、まだ力の使い方に慣れてないんだからさ」

まどか「仁美ちゃん、その格好は……もしかして!」

仁美「はい、私も魔法少女になりましたの!」

ほむら「…………」

まどか「そんな……どうして?」

杏子「……馬鹿な奴だよ、魔法少女がどんなものか知ってる癖にさ」

杏子「アタシなんかのために願いを使っちまうんだからね」

まどか「……まさか、杏子ちゃんを生き返らせるために……!?」

仁美「……ええ、そうですわ」

仁美「ただ、『生き返らせる』というと少し違うのですけれど」

まどか「え?」


仁美「私はゆまさんを探している時に、杏子さんの……その、お身体を見つけましたの」

まどか「杏子ちゃんの、身体?」

仁美「はい。とても酷い状態でしたので……はじめは杏子さんだと分からないくらいでしたわ」

仁美「でもその指には、ゆまさんと同じ紅い指輪がはめられていましたの」

仁美「その指輪を手にして、杏子さんの声を聞いて……」

仁美「それでようやく杏子さんと分かりましたわ」

まどか「声を聞いたってことは、じゃあ……」

ほむら「私たちは佐倉杏子が死んだものと思っていたけれど……」

ほむら「実は彼女のソウルジェムは無事だった、ということみたいよ」

杏子「殆ど死んでるのと変わらない状態だったから、意識もなかったんだけどな」

仁美「キュゥべえさんもそのようにおっしゃっていましたわ」


仁美「杏子さんのソウルジェムは、いつ限界を迎えてもおかしくない状況でした」

仁美「でも、私が魔法少女になれば……杏子さんを救えるのだと、そう言われて……」

さやか「契約しちゃったんだってさ、仁美ってば」

さやか「前にあれだけ説明したんだけどねー……魔法少女の辛さは」

仁美「……ごめんなさい、さやかさん」

仁美「でも私は、どうしても杏子さんを助けたかったんです」

仁美「その願いが叶うなら……どうなろうと、後悔なんてありませんわ」

まどか「仁美ちゃん……」

織莉子「くっ……そういうことなのね……!!」

織莉子「新たな魔法少女っ……まさかこんなことで私の計画が覆されるなんて!!」


織莉子「……貴女たちは、自分が何をしたのかわかっていない!!」

織莉子「佐倉杏子を復活させたことで引き起こされる絶望が、破滅が、どんなに恐ろしいか……!!」

キリカ「織莉子! 何をそんなにうろたえているんだい?」

キリカ「あの子がいったいなんだって言うのさ!?」

織莉子「彼女は……佐倉杏子は……」

織莉子「――――私たちの世界を滅ぼす悪夢の遣いよ!」

織莉子「私が予知した、最悪の絶望をもたらす者……!」

キリカ「な、なんだって……!?」

まどか「えっ……!?」

ほむら「――――っ!?」


仁美「な、何の話なんですの?」

マミ「良く分からないけれど……」

杏子「……アタシが居ちゃ都合が悪いみたいだね」

織莉子「そうよ、貴女は私の世界にいてはならない存在……!」

キリカ「それなら織莉子! 私に任せておくれよ!」

キリカ「こんな奴、すぐに私が蹴散らして……!」

さやか「そんなことさせるもんか!」

マミ「貴女達が杏子を害すると言うのなら……」

マミ「このリボンを緩めてあげるわけにはいかないわね」

ギシッ!

織莉子「つっ……!」

キリカ「く、クソッ……!」


ほむら「……私から質問があるのだけれど、いいかしら」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「美国織莉子。貴女は今、佐倉杏子が絶望をもたらすと言ったけれど……」

ほむら「それは何故? 貴女は何を予知したと言うの?」

織莉子「…………」

キリカ「……ふんっ!」

杏子「おいおい……立場分かってねーな?」

杏子「この状況でお前らに拒否権なんてねーんだよ」

杏子「さっさと吐きな。さもないと……」

キリカ「脅しかい? 私達は何をされたって……」

織莉子「……いいわ、教えてあげる」

キリカ「え……織莉子?」

織莉子「佐倉杏子を蘇らせたことがどれだけ罪深いことか……」

織莉子「――――最悪の絶望がどんなものか!」


まどか「あ、でもその前に……」



ザワザワ...

「おい見ろよ、橋が……」

「なにコレ、もしかしてテロ?」

「だれか警察呼べ!」



仁美「……場所を移した方が良さそうですわね」

マミ「人が集まり始めてるものね」

ほむら「瓦礫のおかげで私たちの姿は見られていないみたいだけれど」

さやか「どーする? どこいこっか?」

織莉子「……ここからなら私の家が近いわ」

まどか「え?」

織莉子「案内するわ。話の続きはそこでしましょう」


~織莉子の屋敷・客間~

まどか「わー……すっごいお部屋」

さやか「仁美んちよりもデッカイかも」

ほむら「……敵を家にあげるなんて、どういうつもりなの?」

織莉子「あのまま騒ぎに巻き込まれるよりはマシでしょう?」

ほむら「……何か企んでいるわね?」

織莉子「……さぁ?」

マミ「心配いらないわよ暁美さん、こうして私のリボンで拘束しているわけだし」

キリカ「ああそうだね、悔しいけれど私達には手も足もでないよ」

ほむら「…………」

杏子「まあどーだっていいさ、それよりも聞かせてもらおうか」

杏子「アンタらは何でこいつらを狙ったんだ? アタシが絶望をもたらすってのはどーいうこった?」

織莉子「ええ、聞かせてあげるわ」

織莉子「貴女たちの犯した罪の重さを、ね」


~別の時間軸・廃教会~

ほむら(…………状況は最悪ね)

ほむら(佐倉杏子の死が、皆の心を深く傷付けてしまった……)

ほむら(特に千歳ゆま……彼女の病的な行動は見ているだけで辛い……)

ほむら(巴マミも美樹さやかも……まどかも)

ほむら(千歳ゆまのあの振る舞いを見せられて、精神的に追い詰められているみたいだし……)

ほむら(こんな状態じゃあ、魔法少女の真実なんて告げられないわ……)

ほむら(皆の心が絶望に染まってしまう前に、早く手を打たないと……)

ゆま「――――あ、ホムラ!」

ほむら「!」


ほむら「……また、会ったわね」

ゆま「うん! きぐうだね!」

ゆま「聞いてよホムラ、キョーコってばまだ見付からないんだよ?」

ほむら「貴女はまだ……佐倉杏子を捜しているのね」

ゆま「うん!」

ゆま「まったくもう、どこをほっつき歩いてるのかなぁ、キョーコ?」

ほむら「…………」

ゆま「ホムラは今日もさがしもの?」

ほむら「……そうよ、そんなところ」


ゆま「何をさがしてるの? ゆまでよかったら手伝ってあげるよ?」

ゆま「キョーコを探すついでだけど!」

ほむら「別に手伝ってもらう必要は……」

ほむら「……いえ、そうね。貴女も探してくれるかしら」

ゆま「うん、いいよ!」

ほむら「ありがとう」

ほむら「私が探しているのは……指輪よ」

ゆま「指輪?」

ほむら「そう、指輪」

ほむら「佐倉杏子が身に着けていた紅い指輪よ」

ゆま「ああ、アレかあ! どーしてあの指輪を探してるの?」

ほむら「ある目的のために必要なのよ」

ほむら「……もし、あの指輪が残っていたのなら……佐倉杏子を……」

ゆま「?」

ほむら「……なんでもないわ」


ゆま「よくわかんないけど、キョーコの指輪がいるんだよね?」

ほむら「ええ」

ゆま「それってこの指輪じゃダメなの?」

ほむら「……えっ?」

ゆま「ほら、ゆまが着けてるコレ! ホムラたちがくれたやつ!」

ゆま「キョーコとお揃いで、おんなじ指輪だけど……これじゃ代わりにならない?」

ほむら「いえ、それでは……」

ほむら「…………」

ほむら「私たちが作った模造品……」

ほむら「魔法で、作り上げた……」

ほむら「…………!」

ほむら「ありがとう、おかげ良いことを思いついたわ」

ゆま「?」

ほむら「それ、借りてもいいかしら」

ゆま「いいよ! でも後でちゃんと返してね!」

ほむら「わかったわ」

ほむら「上手くいったら……指輪よりも素敵なお返しをしてあげる」

ゆま「ホント!? やったあ!」


~マミの家~

ほむら「……部屋の明かりくらいつけなさいよ、巴マミ」

マミ「…………必要ないもの」

ほむら「こんなに暗くちゃ何も見えないじゃない」

マミ「杏子がいないこの世界なんて、見たくもないわ」

ほむら「っ! この臭いは……貴女、まさかお酒を飲んで!?」

マミ「……気が晴れるかと思ったんだけど……ダメね」

マミ「杏子のことが、あの子の最期が、頭から離れないのよ……」

マミ「それにゆまちゃんがね? 私を責めるのよ」

マミ「『キョーコはどこ? どこに隠したのマミお姉ちゃん?』って……」

マミ「ごめんなさい……ごめんなさいっ……」

マミ「私のせいで杏子は……私の力が足りなかったばかりに……!」グスッ

ほむら「……私が来たのはその件よ」

マミ「…………?」

ほむら「私は、僅かでも可能性があるなら……絶対にムリだって分かるまで諦めたくない」

ほむら「……佐倉杏子の受け売りだけれどね」

マミ「…………」

ほむら「――――力を貸してもらうわよ、巴マミ」


~さやかの家~

さやか「……何しに来たんだよ、ほむら」

ほむら「佐倉杏子のことで話があるわ」

さやか「っ……お前がっ! 杏子の名前を口にするな!!」

ほむら「…………」

さやか「見殺しにしたお前がっ……時間を巻き戻せるのに、杏子を助けなかったお前が!」

ほむら「そう、ね……」

ほむら「私がもっと早くに彼女の異常に気がついていたら……」

ほむら「時間遡航の能力を失う前に、佐倉杏子の死に気がついていたら……」

ほむら「彼女を助けられたのにね……」

さやか「…………」

ほむら「でも……だからこそ私は、罪滅ぼしのために出来ることならなんでもするわ」

ほむら「たとえそれが魂を冒涜する行為だとしても……ね」

さやか「……あんた、何かする気なの?」

ほむら「……ついてくれば分かるわよ」


~ほむらの家~

ほむら「まどか……貴女は私を軽蔑する?」

まどか「ううん、軽蔑なんてするはずないよ」

まどか「……私もほむらちゃんと同じ気持ちだもん」

ほむら「ありがとう、まどか……」

まどか「……大丈夫、きっと上手くいくよ」

まどか「私達が力を合わせれば、どんな奇跡だって起きる」

まどか「それで……またみんな一緒に……」

ほむら「……うん」


マミ「……お邪魔するわね、暁美さん」

さやか「約束通り……来てやったわよ」

ほむら「……来たわね」

マミ「それで、いったい何を始めようと言うの?」

さやか「みんな集めて……何がしたいのさ、ほむら」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「…………みんなに、力を貸してほしいの」





ほむら「――――私達で、佐倉杏子のソウルジェムを作りあげるために」


~現在・織莉子の屋敷~

織莉子「千歳ゆまからソウルジェムを譲り受けた暁美ほむらは……」

織莉子「……そうしてあの絶望を生み出す未来を選択してしまった」

織莉子「まあ正確には千歳ゆまが手渡したのはソウルジェムではなかったようだけど……ね」

マミ「…………」

さやか「……それで、どーなったわけ?」

ほむら「察するに……その時間軸の私達は、魔法に失敗したわけね?」

織莉子「そうよ」

織莉子「出来そこないのソウルジェムに宿った魂は、不完全な肉体を生み出した」

織莉子「……そして、最悪の絶望が世に解き放たれたのよ」


~別の時間軸・ほむらの家~

マミ「あ……ああ……!」

まどか「嘘……ウソだよこんなの……」

さやか「これが、杏子だっていうの……?」

ほむら「なんて……こと……」





きょーこ「どーいうことだよおい……アタシ、ちぢんでるじゃねーか!」





マミ「杏子が……」

さやか「よ、幼女になっちゃった!!」


~現在・織莉子の屋敷~

織莉子「……こうして最悪の絶望は始まったのよ……!」

ほむら「…………はあ?」

さやか「そ、それが最悪の絶望?」

まどか「杏子ちゃんが、幼女に……?」チラッ

杏子「な、なんだよ……変な目で見るなよ」

仁美「……ありですわね」ジュルリ

織莉子「……そして解き放たれた絶望は、私達の世界を滅ぼすために活動を開始するわ……」

マミ「い……いったい杏子が何をするっていうの?」

織莉子「それは……」


~別の時間軸・ほむらの家~

マミ「きょ、杏子が……幼児になっちゃったわ!」

ほむら「外見的には幼稚園児くらいかしら……」

きょーこ「なんでだよー! なんでめがさめたらこんなカッコになってんだよー!」プンプン!

さやか「か、かわええ~! なにこれ、ヤバすぎでしょ!」ナデナデ

きょーこ「うあー! なでんなさやか!」

QB「……どうやら魔法での蘇生が不完全だったみたいだね」

きょーこ「きゅーべー!」

さやか「いつの間に!?」

ほむら「不完全だったって……つまりどういうことなの?」

QB「まあ簡単なことだよ」

QB「君達の起こした奇跡は、確かに佐倉杏子の魂を呼び出すことに成功した」

QB「でも少しばかり魔力が足りなかったみたいだね」

QB「肉体を完全な状態で復活させることは出来なかったんだ」

まどか「な、なるほど……?」


きょーこ「りくつはいいから元にもどせよー!」ウガー

ほむら「どうすれば佐倉杏子を本来の姿に戻せるの?」

QB「うーん、君達の魔力をわけてあげれば……出来ないこともない、かな?」

まどか「そっか、じゃあ早速魔力を分けて……!」

マミ「…………」

さやか「…………」

まどか「……マミさん? さやかちゃん?」

マミ「……あー」

マミ「なんだか魔力を使いすぎちゃった気がするわー」

きょーこ「!?」

さやか「そーだねー、誰かに魔力を分けてあげる余裕ないかもー」

きょーこ「!?!?」


きょーこ「おまえらふざけんな! ウソだろそれ!」

さやか「ねー、まどかも無理しないほうがいいんじゃない?」

まどか「え……?」

ほむら「……そうね、無理はいけないわ」

まどか「ほ、ほむらちゃん?」

ほむら「佐倉杏子には悪いけれど……」

ほむら「少し焦らし……じゃなくて嫌がらせ……でもなくて待って貰ってもいいと思うわ」

まどか「う、う~ん」

きょーこ「なやむなよ! はやく元にもどせってば!」

まどか「……ティヒヒ!」

きょーこ「?」

まどか「ごめんねきょーこちゃん! 私も魔力が足りないみたい!」

まどか「でも仕方ないよね、魔力が足りないんだもん!」

きょーこ「……どーいうことだよおい……みかたがいねーじゃねーか!」


マミ「ふふっ、それじゃあ私達の魔力が回復するまで……」

さやか「可愛い可愛いきょーこちゃんを堪能するとしましょーか!」

ほむら「精神を充実させれば魔力の回復も早くなるわ、きっと」

まどか「ねぇ、きょーこちゃん! まずはオヤツにする? お風呂にする? それとも……」

きょーこ「ふ、ふざけんな! オマエらのオモチャになんかされてたまるか!」

ダッ!

さやか「あ、逃げた!」

まどか「ダメだよきょーこちゃん! お外は危険でいっぱいだよ!」

マミ「追うわよ!」

ほむら「ええ、逃がさないわ」


~おそと~

きょーこ「はあはあ……な、なんとかにげたぞ!」

きょーこ「くそー、なんだってこんなめに……」

きょーこ(……あいつらに好き勝手に弄られるのは嫌だ)

きょーこ(どっかでほとぼりが冷めるまで潜伏しないと)

きょーこ(とはいえ……仁美にもゆまにも会えねーな、こりゃ)

きょーこ(どーするか……)

ドンッ!

きょーこ「わわっ!?」

キリカ「おっと、ごめんよオチビちゃん」


きょーこ「あ……」

キリカ「うん? キミは……どうやら魔法少女みたいだね」

きょーこ「!」

キリカ「はじめまして、私は呉キリカ。キミと同じ魔法少女だよ」

きょーこ(魔法少女っ……!!)

きょーこ(どうする、逃げるか……!?)

キリカ「そんなに怯えないでおくれよ。別に襲い掛かったりなんかしないからさ」

キリカ「むしろ今の私は非常に機嫌が良い! この幸せを分けてあげたいくらいさ!」

キリカ「なぜなら織莉子が食べたがってた限定シュークリームがたくさん買えたからね!」

きょーこ「は、はあ……?」

キリカ「なんだったらキミもウチに来るかい? お茶くらいなら出すよ!」


きょーこ(……変な奴。関わらないほうがいいか……)

きょーこ(……いや、待てよ? コイツも魔法少女だっていうなら……)

きょーこ(コイツから元に戻るための魔力を分けてもらえばいいんじゃんか!)

きょーこ(よっしゃ、そーと決まれば……!)

きょーこ「……なぁ、えーと、キリカだっけか?」

キリカ「うん?」

きょーこ「せっかくだから、おじゃましてもいいかな?」

キリカ「ははっ、いいともいいとも」

キリカ「それじゃあおいでよ、お茶をご馳走してあげよう!」

きょーこ「ん、さんきゅー!」ニコッ


~現在・織莉子の屋敷~

織莉子「幼女になった佐倉杏子は、魔力を求めてキリカに接触した」

織莉子「それから地獄のような日々が始まるの……」

織莉子「佐倉杏子はなんだかんだで私の家に居候することになるわ」

織莉子「……そのせいで、私とキリカが二人っきりでいる時間が減っていくのよ!」

仁美「まあ……!」

織莉子「しかもキリカは佐倉杏子を気に入ってしまって、彼女の世話を焼くようになって……」

織莉子「どんどん私のことを構ってくれなくなるの……!」

さやか「……なんか割とどーでも良くなってきた気がするんだけど」

マミ「と、とりあえずは最後まで聞きましょう?」


~別の時間軸・織莉子の屋敷~

織莉子「ねえ、キリカ! 今日は一緒に買い物に行かない?」

キリカ「うん、いいね。きょーこの服を買ってあげたいと思ってたんだ」

きょーこ「ほんとか? さんきゅーキリカ!」

キリカ「いやいや、いいってことさ」

織莉子「……その子も連れていくのね……」





織莉子「ねえキリカ! 今日のオヤツのことだけど、私が手作りしてみようと思うの!」

キリカ「うん? オヤツならもう、きょーこが作ってくれたよ」

きょーこ「おー。なかなかの出来だぞ」

織莉子「あ、そ、そうなんだ……」


織莉子「ね、ねえキリカ! 今日は一緒のベッドで、その……」

キリカ「むにゃむにゃ」

きょーこ「すーすー」

織莉子「なっ……!」

織莉子(なんでこの子と一緒に寝てるの……!?)

織莉子(……ずるい!)

織莉子「……お願いキリカ、目を醒まして!」

キリカ「むにゃ……? ごめんよ織莉子……私は、もう……眠いんだ……」

織莉子「嫌ッ……待って、行かないで、キリカぁああぁ!」

きょーこ「うー……うるさいなー」

キリカ「織莉子……ちょっとしずかにして……」

織莉子「ううう……!」

キリカ「あと部屋の中でくらいバケツ被るのやめたほうがいいと思うよ……」

織莉子「う……うわーん!!」ダッ!


~現在・織莉子の屋敷~

織莉子「……これが、私の予知した絶望の全容よ」

織莉子「何より恐ろしいのが、これが半年も続くということなの……!」

織莉子「私には耐えられなかったっ! 愛するキリカが私から離れていってしまうことが……!」

キリカ「そうだったのか……嗚呼っ、ゴメンよ織莉子!!」

キリカ「別の未来の私が君に寂しい思いをさせてしまったんだね!」

キリカ「でも大丈夫さ織莉子! この私は君から離れたりなんかしないよ、絶対に!」

織莉子「キリカ……!」

キリカ「織莉子……!」

さやか「……なんなのコイツら……」

仁美「ま、まさしく禁断の愛ですわー!」


ほむら「…………ふ」

まどか「?」

ほむら「ふざけないでッ!! 貴女達はそんな理由で私達を襲ったの!?」

ほむら「そんなくだらないことで千歳ゆまの命を奪ったというの!?」

さやか「えっ……?」

マミ「ゆ、ゆまちゃんを……!?」

杏子「おい! なんだよそれ、聞いてねーぞ!!」

まどか「っ……!! やっぱり、貴女達が……!」

織莉子「…………はい?」

キリカ「なんのことだい?」

ほむら「とぼける気!?」

キリカ「とぼけるも何も……」

織莉子「――――私たちは、千歳ゆまを殺してなんかいないわよ?」


………………

…………

……




~織莉子の屋敷・寝室~

ゆま「うにゃ……キョーコのフランクフルトおっきすぎぃ……」

杏子「……ハッ、呑気な顔して寝てやがる」

まどか「よかった……ゆまちゃんも無事だったんだ……」

さやか「びっくりさせないでよほむら! 殺された、とか言っちゃってさ!」

ほむら「……呉キリカが『天国へ送った』とか、『同じ場所へ送ってやる』とか言っていたのよ」

ほむら「だからてっきりそうなのかと思っていたんだけれど……」

マミ「ハッタリだった、ってことね」


キリカ「いやいや、私は嘘はついていないよ」

ほむら「?」

キリカ「私にとってこの家、織莉子の家は天国と同義だからね!」

キリカ「何たって織莉子と一緒に過ごせるんだから!」

キリカ「だから『天国へ送った』という言葉に偽りなんてないのさ!」

ほむら「……そう」

織莉子「キリカの言い回しのせいで誤解していたみたいだけれど……」

織莉子「私達は未来を変えるために、千歳ゆまから指輪を奪って拘束した」

織莉子「ただそれだけよ。怪我一つさせていないわ」

キリカ「うんうん、いくら私でも人殺しはしないよ」

キリカ「そんなことしたら織莉子に嫌われてしまうからね!」

ほむら「………………そう」


マミ「でも何でこんな拘束具を着せているの?」

キリカ「下手に暴れられて怪我されても困るからね」

キリカ「私はオチビちゃんが魔法少女だと勘違いしてたし……」

まどか「可哀相だよこんなの、早く脱がしてあげようよ!」

さやか「そーだね。……けどコレどーやって脱がすんだろ」

杏子「おいマミ、織莉子とやらのリボンをほどいてやりな」

杏子「脱がせるのはそいつにやらせよう」

マミ「分かったわ」

シュルルッ

織莉子「…………」

杏子「言うまでもないと思うけど、変な真似はするなよ?」

織莉子「……ええ」


…………。

織莉子「……脱がしたわよ」

ゆま「むにゃ……」

仁美「脱がす時に起きるかと思いましたけど」

まどか「……ゆまちゃん、起きないね」

さやか「こんな時間だし仕方ないよ」

マミ「でも、これはある意味好都合なんじゃないかしら?」

ほむら「……そうね」

杏子「ゆまが起きる前に……こいつらをどーするか、決めちまおうかね」

織莉子「…………」

キリカ「織莉子…………」

ゆま「……むにゃ……こくまろミルク……ノドにからみつくよぉ……」


織莉子「私は……貴女たちには屈しないわ!」

ほむら「!」

織莉子「予知とは少し形が変わったみたいだけれど……」

織莉子「佐倉杏子が存在する以上、キリカが奪われる未来は否定できない」

織莉子「なら私は、どんな手段を使ってでも貴女を排除する!」

マミ「っ! なんですって!」

さやか「こいつっ……!」

杏子「ふん……拘束を解いてやったら強気になっちまったか?」

ほむら「美国織莉子! 動くなら撃つわよ!」

仁美「無駄な抵抗はよした方がいいと思いますわよ?」

キリカ「……あっははは! さっすが織莉子! そうこなくっちゃ!」

ジャキンッ!

まどか「あっ……! マミさんのリボンが!」

キリカ「大人しくしているのももう飽き飽きだ! さあ織莉子! 反撃といこうじゃないか!」

織莉子「ええ!」


ほむら「勝手な真似はさせな……!」

キリカ「ふふん! 残念だけれどね――――」

ヒュンッ!

ほむら(っ!? 速いっ!!)

キリカ「こっちの『準備』はもう万全なのさ!」

ゲシッ!

ほむら「きゃっ!」

まどか「ほむらちゃん!」

さやか「このっ! 暴れんじゃないわよ!」

ブンッ!

キリカ「遅い遅い!」

さやか「なっ、加速した……!?」


キリカ「ふっふっふ、君達にはもう反撃の余地もないよ」

さやか「な、なんなのよあいつの素早さは!?」

仁美「いくら魔法少女といえ人間離れしすぎですわ!」

ほむら「これは、呉キリカの速度低下魔法……! いつの間に!?」

織莉子「……こんなこともあろうかと、この屋敷の敷地内にはキリカの魔法が仕込んであったのよ」

キリカ「それを織莉子が時間を稼いでくれているうちに発動させたってわけさ」

杏子「なるほど、わざわざこの家に招いてくれたのも、ご丁寧に説明してくれたのも……」

まどか「全部罠だったの……!?」

キリカ「そういうことさ! この私の魔法と――――」

織莉子「私の予知魔法があれば、貴女たち全員を相手にしても十分に戦えるわ!」

織莉子「覚悟しなさい、佐倉杏子!」


杏子「――――ぷっ……くく、あーはっはっは!!」

まどか「きょ、杏子ちゃん?」

さやか「ど、どしたのあんた?」

キリカ「……!?」

織莉子「な、何故笑って……なにがおかしいの!?」

杏子「……アンタらさぁ、アタシ達のこと舐めすぎでしょ」

杏子「アタシら全員を相手にしても十分に戦える? 笑わせんなって」

仁美「きょ、杏子さん、下手な挑発は止した方が……」

キリカ「こいつっ……馬鹿にしてっ!」

織莉子「私たちの力を甘く見てるのは貴女よ、佐倉杏子!」

織莉子「今からそのことを証明してみせて……!」

杏子「アンタらごときに全員で戦うまでもねー」

杏子「……来いよ、アタシ一人で相手してやる」

織莉子「なんですって……?」


さやか「ちょっとあんた! ふざけたこと言ってんじゃ……」

まどか「だ、ダメだよ杏子ちゃん! そんなの無謀だよ!」

ほむら「貴女、また全てを一人で背負う気なの……!?」

杏子「はんっ、そんなんじゃねーよ」

杏子「アタシはただ、予知なんて下らねーモンに踊らされてるボンクラに……」

杏子「現実ってヤツを思い知らせてやりたいだけさ」

マミ「馬鹿な真似は止して! 杏子ひとりで戦わせるなんてできないわ!」

仁美「そ、そうですわ! 危険すぎます!」

杏子「へーきへーき。地獄から帰ってきたアタシは無敵だよ」

まどか「でも……」

杏子「……いいからやらせてくれよ、な?」


ほむら「……なにか考えが、策があるのね?」

杏子「ま、そーいうこった」

ほむら「なら私は止めないわ。好きにしなさい」

まどか「ほむらちゃんっ!?」

ほむら「もちろん危なくなったら手を出させてもらうからね」

杏子「それで良いよ。さんきゅ、ほむら」

さやか「ちょ、ちょっと待ってよ! なに勝手に話を進めて……!」

杏子「さやかはアタシを信じてくれないのか?」

さやか「え……それは、その」

杏子「大丈夫だって、アタシを信じて任せてくれよ!」

さやか「う、う~……」

マミ「……そうね、貴女なりに考えがあるなら」

仁美「……私、信じますわ。杏子さんのこと」

さやか「わ、わかったわよ! ……あんたに任せるっ!」

杏子「……へへっ、決まりだな!」


杏子「おっしゃ、そーいうわけで……」

杏子「アンタらの相手はアタシ一人だ、喜べよ?」

織莉子「……私たちも随分と舐められたものね」

織莉子「それとも挑発のつもりなのかしら、それは?」

杏子「挑発なんかじゃないさ。単純に余裕なだけだよ」

杏子「アンタらはアタシの前に屈するのさ」

キリカ「ふ、ふざけるな! 私たちを侮辱するのもいい加減にしろッ!」

杏子「……なあ美国織莉子、今どんな未来が見えてる?」

織莉子「……さっきまでは未来が不安定な状態で良く見えなかったわ」

織莉子「でも……ふふ、貴女が一人で戦うと決まってからはとてもよく見える様になった」

織莉子「……貴女が私たちの前に跪いている光景がね」

キリカ「あははっ! すぐにその光景が現実になるだろうね!」

杏子「……宣言しておくぞ」

キリカ「うん?」

織莉子「…………何かしら?」

杏子「そんな未来、アタシがこの手で変えてやる」

杏子「――――予知なんてもんに操られてるオマエらなんかに、アタシは負けやしない」

次回・最終回「トゥルーエンド編(完結編・後編)」へ続く。



    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! 
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  このスレじゃ収まらないので次回投下は次スレにするよ
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ



    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! 
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  以下このスレは>>1000までおにちくに対抗した紳士たちの社交場になります
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ


    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.

   l ,イl//`ヘヘ!  次スレ立てたよ
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>

      し'ノ


    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!  あとはクライマックス書いて完結させるだけだから
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  次スレのほとんどが余っちゃいそうだなぁ……
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ



    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ!  ところでまったく関係ないけど
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  アタシにしてほしい残虐行為はあるかい?
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ


    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! 
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  ダレモイナイ...
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ





    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! 
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  カコスレ サラスナライマノウチ...
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ





    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.

   l ,イl//`ヘヘ! 
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>

      し'ノ


    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! 
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  なかなか>>1000までいかないもんだね
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ


    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! 
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  そうだ、ボツネタでも投下しよう
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ


杏子「なあまどか、猫を預かってくれないか?」

まどか「猫を? どしたの急に?」

杏子「迷子の子猫を見つけちまってさ、放っておけなかったんだよ」

杏子「飼い主を見つけるまででいいから預かってくれないかな?」

まどか「そういうことなら……うん、いいよ!」

杏子「サンキュー! 助かるよ!」

まどか「それで、その猫ちゃんはどこに?」

杏子「ああ、紹介するよ。おーい、ゆまー!」

ゆま「にゃー!」

まどか「わあ、かわいい猫ちゃん!」


ゆま(とまあそんなわけでしばらくの間、まどかの家で住むことになったよ!)

ゆま(まどかは私が猫だって思いこんでるみたいだね!)

ゆま(よーし、このまままどかの家の子になって……)

まどか「わーい、今日のオヤツはショートケーキだぁ♪」

ゆま「にゃ!」

ゆま(ショートケーキ! ゆま甘いの大好き!)

まどか「あれ、ゆまちゃんも食べたいの?」

ゆま「にゃー♪」

まどか「うふふ、でもダメだよ。猫ちゃんにはあげられないの」

ゆま「にゃ!?」

まどか「ゆまちゃんには……はいコレ、にぼし!」

ゆま「にゃ、にゃー……」


ゆま「にゃ~にゃ~……」

ゆま(なんだかトイレに行きたくなってきちゃった……)

まどか「あれ? もしかしてトイレかな?」

ゆま「にゃ」

まどか「じゃあ、あそこでオシッコしてね!」

ゆま「にゃ!?」

ゆま(あ、あれって……猫用トイレ!?)

ゆま(こんな部屋の中でするなんてヤダよぉ!)


ゆま「にゃー!」

まどか「あ、コラだめだよ逃げちゃ!」ガシッ

まどか「こういうのは子猫のウチに躾なきゃいけないからね、厳しくいくよ!」

ゆま「にゃああ……!」

ゆま(ま、まどかが見てるのにオシッコなんてできないよぉ……!)

ゆま(あうぅ……で、でも、もう我慢が……)

ゆま「にゃ、にゃああ~……」

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