蛍「センパイ、私のことを食べて下さい 」 (22)

タッタッタッタッタ…

ガラッ

夏海「へっへへ、夏海様がいっちば~~ん!!」

れんげ「なっつんズルいん! 運動会するなら最初からそう言って欲しいん!」トテトテ

夏海「はは、油断したなーれんちょん! ウチが意味もなく走り出した時点で気付かなきゃ」ストン

れんげ「むぅ…それは一理あるのん。ウチとしたことが、なっつんにしてやられましたなぁ……」

蛍「はぁ…やっと着いた……」ヘロヘロ

夏海「遅いぞーほたるん! そんなんじゃイノシシに追われたとき逃げきれないってー」

蛍「え、出るんですかイノシシ? ていうか私達じゃどうやっても逃げきれないような……」チラッ

蛍「あ、おはようございます。センパイ♡」

夏海「あー、ねーちゃんに挨拶すんの忘れてたわ…」

夏海「はよー、ねーちゃん。今日も宜しく頼むよ!」ポン

れんげ「こまちゃん、にゃんぱすー。こまちゃんが学校居る限りなっつんの一番は有り得ないんな」

夏海「クッ、やはり最後の敵は血を分けた姉妹だと言うことか……かかってこい、ねーちゃん!!」

蛍「あははは……あっ、教室に着いたしこっちも出してあげなきゃ!」ガサゴソ

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ガララ

一穂「うい~っす、全員揃っとるか~?」

夏海「はよー、かず姉。そんなん聞かなくても見りゃ分かんじゃん」

一穂「いや~そりゃそうなんだけどー、入ったとき君らよかそっちに目が行っちゃうじゃない?」チラッ


一穂「皆さん、そろそろそのドデカいぬいぐるみと小鞠の席片付けません?」

れんげ「……」

夏海「……」

蛍「……」

一穂「ありゃりゃ、こりゃ重傷だあねぇ。まだしばらくは触れないようにすっかー……って」

一穂「なんか、ぬいぐるみ増えてない?」

蛍「…あっ」

蛍「これは“こまもり”と言いまして、センパイが私達を守ってくれるよう作ったんです♪」エヘヘ

れんげ「さっきほたるんから貰った~ん。こっちのこまちゃんはちっちゃくて可愛いのん!」ムフー

夏海「ウチら3人に1つずつあるんだよ。つっても、困ってる人なら誰でも助けてくれんだってさ」

一穂「そ、そなの? ウチはてっきりクイズ番組で間違えた時ボッシュートされるアレかと思ったよ」

一穂「まぁ、授業中それで遊ばないならいいけどね~……うっ」ガクッ

蛍「どうしたんですか先生ーーっ!?」ガタッ

一穂「腹……思いっきし蹴られた……」

れんげ「なっつん、姉ねえになんてことを……!!」バッ

夏海「いやいや、この位置からどうやって蹴んのさ」

蛍「えっと、動いてるんですか? ……赤ちゃん」ソッ

一穂「あはは、もうじき産まれんのかね~? 誰か詳しい人居な~い?」ハァハァ

夏海「ちょっと待て、アンタが知らなくてどーすんだ!?」

れんげ「姉ねえ、そんなんで大丈夫なん!? フィフティーフィフティーなやつ産まれないん!?」

蛍「れ、れんちゃん…それはちょっと想像しちゃうからやめて欲しいなぁ……」ウプッ

一穂「ふぅ……あんがと、ほたるん。もう立てるよ」ムクッ

一穂「まぁ、マジでヤバくなったら旦那に迎え来てもらうし心配いらんて~」アハハ

夏海「産休取れよー!! なんでこんな時だけ頑張り屋さんなの、この人!?」

蛍「私も大変なことになってからじゃ遅いと思うんですけど……」

れんげ「姉ねえ…」

一穂「さぁさぁ2人共、ウチのことはいいから席に着いてちゃちゃっと自習始めなよー」

一穂「あー、あと夏海は今日も前の席のぬいぐるみ盾にして寝たら減点だぞ~」

夏海「あ、バレてた?」

夏海「くっそー、せっかく席入れ替えたんだからちゃんと隠せよ、ねーちゃん!」グイングイン

蛍「ああ、夏海先輩やめて下さい! こま先輩は首のとこすっごく弱いんですから~!!」


一穂「──ほいじゃ、今日の授業はここまでー。れんちょん、2人に宿題配っちゃって」

れんげ「あい!!」

トテトテ

れんげ「なっつん」ドサッ

夏海「なっ!? ちょっとちょっとかずっちゃん!! ウチの宿題多すぎやしませんかー!?」

一穂「君の場合は今までサボった分のツケがあるからねぇ…」

一穂「夏海だって小鞠みたいにちゃんとしたいい高校行きたいっしょ?」

夏海「こんな勉強しなくとも、夏海様のアドリブ能力さえありゃ合格間違いなしだよ~」ハーン

一穂「その自信どっから沸くん? 最年長になった途端に偉そうになるとこ姉妹そっくりやねー」

蛍(去年のセンパイ、何をするにも仕切りたがってて可愛かったなぁ~///)ホフゥ

チョンチョン

蛍「あ…」

れんげ「これ、ほたるんの分なん」パサッ

蛍「ありがと、れんちゃん。それじゃあ今日の飼育当番行こっか?」スクッ

れんげ「……」

蛍「れんちゃん?」

れんげ「ほたるん。ウチは今朝の姉ねえを見て、飼育しなければならないのは姉ねえだと悟ったん」

れんげ「だからウチ、今日から姉ねえの飼育を担当するん! 姉ねえを1人にさせないのんなー!」ムフー

蛍「そっかー、れんちゃんは先生のことが心配なんだー。ふふ、偉いね、れんちゃん」ナデナデ

れんげ「でもウチ、学校の飼育当番も心配なん。ほたるん1人で大丈夫なのん?」

蛍「うん、平気だよ。時間はかかっちゃうかもしれないけど、もう1人でも出来るから!」

れんげ「ほたるん…」パァァ

れんげ「じゃあウチ姉ねえのとこ行ってくる~~ん!!」トテトテ

蛍「行ってらっしゃい、れんちゃん。元気な赤ちゃん産まれたらまた一緒に飼育当番しようね♪」ニコッ

夏海「…ほたるんてば、しっかり中学生やってんじゃん」フッ

ザッザッ

夏海「ふぅ~…こんなもんでいいっしょ?」

蛍「はい! ありがとうございました、夏海先輩」ペコリ

夏海「いいっていいって~。大先輩として当然のことしたまでですから!」フフン

夏海「…しっかし2人で飼育当番したのなんて何年ぶりだろ」ボソ

蛍「あ、夏海先輩にも2人で飼育当番してた時期があったんですね」

夏海「え? ああ、そりゃ学校一の古株とていきなり1人ではやれんよー」

夏海「懐かしいなー…ウチが新入りだった頃はいつもねーちゃんと2人でやってたっけ~……」

蛍(センパイと2人きりで飼育当番…!)ピクン

夏海「慣れない内は兄ちゃんまでついて来てくれてさー、今思うと随分手間かけさせちゃったね」アハハ

蛍(いいなー、センパイと飼育当番いいなー///)ポワポワ

夏海「手間かけさせたと言やー、何だかんだで駄菓子屋やこのみちゃんもいい先輩してたなぁ…」

夏海「でもひか姉に限っちゃ威厳も無いし、ただ威張り散らしてるだけでてんで駄目だったね~」ホフゥ

夏海「クラスのリーダーとしちゃ兄ちゃんも頼りなかったし、ねーちゃんなんか特に頼りな──」チクッ

夏海「…かった。…よな?」

蛍「はい? 夏海先輩、今何か聞きました?」

夏海「えっ、いや!」ギクッ

夏海「そうそう、れんちょんはかず姉が出産するまでの間はかず姉と一緒に帰んだっけ!?」アセ

蛍「多分、れんちゃんはそういう意味で『1人にさせない』って言ったんだと思いますけど…」

蛍「あ、もしかしたら明日から登校も先生と一緒にするんじゃないですか?」

夏海「かず姉は行きも帰りもトラック1人で運転して来てるし、何かあったら洒落にならんもんな」

夏海「つーかどーしてそこまでして来るかね? 来ても殆ど寝てんだし大人しく休んどきゃいいのに」

蛍「でもそこまでして私達の為に来てくれるのは素直に嬉しいですよね♪」ニコッ

夏海「おうおう、ほたるんはいい子ちゃんだな~。ウチも頭撫で撫でしたくなっちゃうよー」スッ

蛍「へっ!?///」ビクッ

夏海「はは、冗談だってー。んじゃ登下校はしばらくウチとほたるんの2人っきりになんのか」

蛍「えっと…もしそうなら私はさっきの話の続きをじっくり聞きたいなぁ~って……」モジモジ

蛍「あの…私、この機会に“センパイ”のこともっといっぱい知りたいんです!!」グイ

夏海「お、おおう!? そんなに言うなら夏海様の15年に渡る武勇伝語っちゃいますかね~」エヘヘ

蛍(15年……てことは、私の知らないセンパイが13年も居るんだぁ! わ~い、楽しみぃ♡)ニッコリ

夏海「ほたるん、こまもりは持って帰った方がいい?」

蛍「あ、どちらでも構いませんよ。れんちゃんは持って帰ったみたいですけど」

夏海「あ~、じゃあウチは学校置いてくか。せっかくほたるんがくれたのに無くしちゃ悪いしなー」

蛍「それならこま先輩の上へ! こまもりはこま先輩からパワーを充電して効力を上げるんです!」

夏海「マジで? よっしゃー、こまもりセ~ット・オン!」ガチョーン

夏海「…お? おおおおお!? すっげー、こまもりのパワーが2倍……いや、10倍に!!」

蛍「そそそそんなに上がっちゃうんですか!? じゃあ、私もこまもり置いてっちゃいます!!」ポフッ

蛍「どうですか、夏海先輩!? 私のこまもりもパワー10倍になってますかー!?///」キャーキャー

夏海「えっ? …あー、うん。なってるねー、なってるなってる」

蛍(わぁ、夏海先輩にはこまもりのパワーが見えるんだー。やっぱりセンパイと姉妹だからかな?)

蛍(いいなー。センパイと姉妹いいなー///)ポワポワ

夏海「なんか適当に話合わせてたらほたるんに変なスイッチ入っちゃったよ……」

夏海「お~い、ほたるん戻ってこ~い! 早くせんと帰りのバス乗り遅れんぞ~!!」

蛍「ハッ、そうでした!」シャキ

蛍「…では、さようならセンパイ。また明日、教室で会いましょうね♡」ニコッ

悪いんだがもう少しあけてくれないと

読みずらい

ブロロロロ…

夏海「んでウチがパスした小吉さんをねーちゃん弾いちゃって、駄菓子屋の顔面に直撃してさー」アハハ

蛍「あ~…それは駄菓子屋さんが怒っちゃったりして大変だったでしょうねぇ……」

蛍「…ふふ、どの話も先輩方が今と変わりなくて楽しいな~♪」ウキウキ

夏海「ちょいちょい、ほたるん何言っとんの? 他はともかくウチは成長しまくりっしょ!」

蛍「え~っと……どの辺が、ですか?」

夏海「……」

夏海「学校遅刻し慣れて1時間寝坊した程度じゃ全然動じなくなったところ、とか?」

蛍「なんで急に遅刻の話に? ていうかそれは慌てた方がいいんじゃないかと思いますけど……」

夏海「いやいや、冗談だよ冗談! 実際ウチ大して遅刻してないじゃ~ん!」

夏海「そりゃねーちゃん起こしてくんなくて遅れることもあるけどさ、それでも大体セーフだし!」

蛍「えっ?」

蛍(センパイが起こしに…? センパイは村を離れて、遠くの学校で寮生活してるハズだけど……)

蛍「…あ、じゃあ『今』はちゃんと自分で起きてるんですね?」

夏海「へ?」キョトン

夏海「……あっ」

夏海「うん、そうそう! クラスのリーダーが寝坊とあっちゃ示しがつきませんもの!」フフン

夏海「今じゃ起こされるどころか朝飯30分前に起きて、これ以上ない快適な朝を堪能しとるよ!」

蛍「わぁ~、分かります! 私も早めに起きてシャワー浴びてるんですけど、気持ちいいんですよ♪」

夏海「おっ、ほたるん朝シャン派?」

蛍「朝シャン派というか、夜は夜でゆっくり湯船に浸かってますけど」

夏海「うへ~ほたるん1日2回も風呂入ってんのかー。どうりで天使の輪がついてる訳だ」

蛍「そんな! 夏海先輩の髪にだって天使の輪ついてるじゃないですか~」

夏海「マジで? ウチあんま自分の髪とか気にせんから気付かんかったわー」ポリポリ

蛍「そういえば夏海先輩、3年生なってから一度も髪結んでませんよね。もう結ばないんですか?」

夏海「あん? ああ、結ばないっつーか結べないんだよねー。お気にの髪留め無くしちゃってさ~」

蛍「あ、お気に入りを無くしちゃったんですか。そういうのってなかなか代わりがありませんよね」

夏海「まぁ探しゃあんだろうけど別にいいかなって……ほらウチ髪下ろした方が断然エロいし!」クネッ

蛍「……た、確かに夏海先輩は髪を下ろしてた方が大人っぽくなりますよね~」アハハ

夏海「おうおう、いま随分と間があったんじゃないですかーほたるさ~ん?」ジトッ

蛍(それにしても夏海先輩凄いなぁ。姉妹なのにもうセンパイが居ないのに慣れちゃったんだもん)

蛍(れんちゃんだって一言も寂しいなんて言わないし……うん、私も2人を見習わなくちゃ!)キキィー

蛍「あっ」

ガッコン

蛍「えへへ、なんだか今日はあっと言う間に着いちゃいましたね。降りましょう、夏海先輩」スクッ

夏海「……」

蛍「夏海先輩?」

夏海「え? ああ、ごめんごめん、ウチ今一瞬寝ちゃってたよ! さ、降りよ降りよー」タタッ

蛍(夏海先輩、思いっきり目開けてた気がするけど……)

蛍「…あれ? あれあれあれ?」


夏海『そりゃねーちゃん起こしてくんなくて遅れることもあるけどさ、それでも大体セーフだし!』

夏海「ウチ、どうして今更居もしないねーちゃんのことを──」タッタッタ

蛍「夏海先輩、速い! 速いですって! “置いてかないで”下さいよ~」アセアセ

夏海「!」チクリ

夏海「そっ…か、ウチ今でもねーちゃんのことが……」

蛍「そんなに急いでどうしたんですか? バスで何か用事を思い出したとか……」

夏海「…ほたるんはさ、もし今すぐねーちゃんに会えるとしたら会いに行く?」

蛍「へっ!?///」ドキッ

蛍「は、はい、今すぐ会えるのでしたら是非! …あっ、いえ、もしも今すぐ会えるのならですけど」

蛍「ホントに会うには遠すぎますし、新しい友達が出来始めて楽しい時期を邪魔しちゃ悪いですよ」

夏海「新しい友達ねぇ…。んじゃ、ねーちゃんにとってほたるんは古い友達になっちゃうのかー」

夏海「それってなんか悲しくない? ほたるんは自分を思い出にされちゃって平気なの?」

蛍「そ、それは……」

夏海「ウチさ、駄菓子屋やこのみちゃんやひか姉や兄ちゃんの卒業ってちっとも悲くなかったんよ」

夏海「寧ろいい思い出だと思ってる。いや、そう思い込んでたんだ。ウチ気付いちゃったんだよね」

夏海「ウチが平気で居られたんはどんな時でもねーちゃんが側に居てくれてたからなんだって!」

夏海「なのにウチ呑気に村から送り出しちゃって、こんな想いするんなら引き留めとくんだったわ」

蛍(あれ? もしかして、夏海先輩は……)

夏海「駄目元でもウチ一言帰って来いって言いたい! だから一緒に会いに行こうぜ、ほたるん!」

蛍(私がセンパイの話を聞きたがるから気を効かせて、本人に会わせてくれようとしてるのかな?)

蛍「あのぉ…夏海先輩のご厚意は嬉しいんですけど、今は会わなくてもいいかなぁ~って」

夏海「え、ほたるんはねーちゃんに会いたくないの!? ほたるんなら絶対来てくれると思ったのに」

蛍「いえ、違うんです! 会いたくないとかそういうことではなくて、私は…私は──」ハッ

蛍(私はこの村でセンパイの帰りを待ってたいんだ。だから今はセンパイの昔話さえ聞ければ……)

蛍「夏海先輩さえ側に居てくれればそれでいいんです!!」

夏海「──っ!?」ドキッ


夏海「ぅ…あ……えっ? あの…。蛍……さん?」サーッ

蛍「すみません、自分でも勝手なこと言ってるなって分かってるんですけど…」

夏海「その…ウチが側に居ればそれでいいって……つまり、“そゆこと”なん?」オソルオソル

蛍「はい、“センパイ”と会ったら帰りたくなくなっちゃうし、話を聞いてるだけで幸せなんです」

夏海「そ、そんなに好きだったのかー!? そうとも知らず、ウチはなんと無神経なことを……」ズーン

蛍「いえ、私は夏海先輩に誘ってもらえて嬉しかったですよ? 気持ちの整理もつきましたし♪」スッキリ

夏海「気持ちの整理? …なっ!? 違っ! ねーちゃんのことは家族としてで、そんなんじゃ──///」ハッ

夏海「ウ、ウチちょっくら頭冷やして来ま~~~すっ!!///」ダッ

蛍「えぇ、またぁ~!!?」ガーン

蛍「はぁ…はぁ……あ、夏海先輩! やっと追いついた」タッタッタ

蛍「? …夏海先輩、橋の手すりのとこなんかに立っちゃ危ないですよ?」ソッ

夏海「うおおおぉぉぉおお~~春一番じゃ~~~い!!!」ピョーン

蛍「あ…」

ドッパーン

夏海「……ぷはぁ!! あっはは、川超ー冷てぇ~~♪」ニパァ

夏海「は~ぁあ、こうして泳いでると誰が居ないだの悩んでたのがアホらしくなるよな~」バシャバシャ

夏海「──お、そうだ!」

夏海「ほたる~ん、さっきの話だけどー、ウチほたるんのこと友達だと思ってるからー!!」

蛍「!」ピクッ

蛍(…えへへ、なんだかよく分からないけど改めて友達だって言われると照れちゃうな~///)ポワポワ

蛍(あ、友達だったら同じことを一緒にやった方がきっと楽しいよね! …よ~っし)ヨジヨジ

夏海「さーて、がっつり頭冷えたとこでそろそろ上がりますか~……って」チラッ

夏海「うわぁ!? ほたるん、そんなとこに立って一体何を──」ピョン

蛍「は…はぁるいちば…………ぁ」ドッパーン

夏海「」ポカーン

ブクブクブク…

夏海「…あっ」

夏海「大丈夫か、ほたるん!? ──」バシャア

蛍「わぁ、春の川ってこんなに冷たいんですね! 夏海先輩は春でもよく川へ入るんですか?」ハスハス

夏海「へ? …いや、普段は入らんよ。だって寒いもん」

蛍「あ、そうですよね。寒いですもんね。私もどうせ入るんだったら夏がいいな~」

夏海「じゃあなんで飛び込んだん?」

蛍「え? あの……夏海先輩が凄く楽しそうに泳いでたので、私も一緒に泳げたらなぁ~って♪」ニコッ

夏海「……」

蛍「もしかして迷惑でした?」

夏海「いや、迷惑とかじゃないんだけどさ…」

夏海「あ~あ、せっかくの新品の制服がびしょ濡れじゃんかー」

蛍「あっ、制服だったの忘れてました! どうしよう、日も出てるしすぐ乾くかな~?」オロオロ

夏海「こんなとこで騒いでてもしゃーないし、とりあえず岸に上がってからにしない?」

夏海「はぁ~、泳いだ泳いだ! …あ、ほたるん手貸そっか?」スッ

蛍「はい、ありがとうございます。夏海先輩…」ギュッ

夏海「ほらよっと」ザバー

蛍「……」グッショリ

蛍(後先考えず飛び込んじゃったけど、服着たまま川へ入るの危ないよね。無事戻れて良かった)ホッ

夏海「何ボサっとしてんの? 早いとこ鞄取り行くよ」ピチャピチャ


ガサゴソ

夏海「んふふー、こんなこともあろうかとバスタオル用意してあんだよね~♪ ほたるんは──」チラッ

蛍「な、なつみせんぱぁ~~い」チンマリ

夏海「あらら。そりゃ普通は汗拭きタオルくらいしか用意しとらんよなぁ……」フゥ

夏海「ほれ、交換」ヒョイ

蛍「あぅ」ボフッ

夏海「可愛い後輩を濡れたままにしたとあっちゃ先輩失格だもの。ウチは髪だけで十分よ!」ワシャワシャ

蛍「そんなの悪いです! …って、あ~もう拭いちゃってるぅ」

蛍「うぅぅ…このお礼は必ずしますから!」フキフキ

蛍(うわぁ、下着までビッショリだなぁ…。内側もしっかり拭いとかないと…)ピラッ

夏海「……」

蛍「あっ、夏海先輩も体拭いときます?」

夏海「は? いや、ウチは自然乾燥でいいよー。バスタオルは全部ほたるんが使っちゃいなってー」

蛍「そんな! 元々夏海先輩のバスタオルですし、風邪引いちゃったら大変ですから……」

蛍「…そうだ! お礼と言っては難ですけど、私に身体を拭かせて貰えませんか?」

夏海「か、身体を拭かせて欲しいって……まさか、ほたるんマジでそっちの人だったの!?」ビクゥ

夏海「やだ…ウチ女だよ? 若い男居なくて寂しいんは分かるけど、ちょっと考え直そうよ……」フルフル

蛍「夏海先輩こんなに震えて……やっぱり寒いの我慢してたんですね! 今すぐ拭きますから!」ペロン

夏海「うひゃあ!?///」ドキッ

蛍「…夏海先輩の身体、直接触ったの初めてですけど、引き締まってていいですね…」ゴシゴシ

夏海「ひぃぃ!? いいって!? いいって何!? わぁ~もういいよ、サンキューほたるん!!」クルリ

蛍「あ…」

夏海「ほたるんてば油断ならんなぁ……もっと自分が狙われてることを自覚せねば……」ゼェゼェ

蛍(女の子でも運動すればあんなにたくましくなるんだぁ……いいな~、羨ましいな~///)ポワポワ

どうせ鬱展開だろ

夏海「──んじゃ、服も大体乾いたみたいだしそろそろ帰りますかー」

蛍「そうですね、辺りも暗くなってきましたし」

夏海「ふわぁ…な~んか今日はすっげー疲れたんだけど……」ジロリ

蛍「えっ」ドキッ

夏海「…けど、その代わしウチ久々に楽しかったわ♪」ニカッ

蛍「夏海先輩…」

蛍「あの…実は私も今日凄く楽しくって……」

蛍「大袈裟かもしれませんけど、消えかけてた世界の色が戻ったような、そんな気分です」

夏海「おおう、なんかRPGに出てきそうな言い回し……」

夏海「ほたるん、最近ゲームばっかやってんじゃない? 駄目だよ、たまには外で遊ばなきゃー」

夏海「…あ、じゃあさ! 放課後しばらくウチと2人きりなんだし、村の穴場回ってかない?」

蛍「村の穴場…ですか?」ピクン

夏海「まだほたるんを連れてってない場所はたくさんあんだよね~。だから行こうぜ、ほたるん!」

蛍(わぁ、ここへ来て随分経つけどまだ私の知らない場所がそんなにあるんだぁ…)パァァ

蛍「はい、私行きたいです! これから毎日色んな所へ連れてって下さいね、夏海先輩♪」ニコッ

今回はここまで

嫌な予感しかしないんだけど

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