垣根 「ほら、笑って笑って!」(1000)

・初SS+初スレです
・ギャグになったりシリアスになったりします
・基本的に台本形式で、必要な場面のみ地の文がつきます
・キャラ崩壊注意

少しでも暇潰しになれば幸いです。では2時頃から投下します。

      ハ,,ハ
     ( ゚ω゚ )  お断りします

    /    \
  ((⊂  )   ノ\つ))
     (_⌒ヽ

      ヽ ヘ }
 ε≡Ξ ノノ `J



    お断りします
        お断りします
            お断りします
      ハ,,ハ ハ,,ハ ハ,,ハ ハ,,ハ
     ( ゚ω゚ )゚ω゚ )゚ω゚ )゚ω゚ )  お断りします

    /    \  \  \  \    お断りします
  ((⊂  )   ノ\つノ\つノ\つノ\つ))   お断りします
     (_⌒ヽ ⌒ヽ ⌒ヽ ⌒ヽ       お断りします

      ヽ ヘ } ヘ }  ヘ } ヘ }
  ε≡Ξ ノノ `Jノ `J ノ `J ノ `J






あーあ



まさか、こんなとこで死ぬとはな



ま、こっちに来た瞬間から碌な死に方しねえとは思っていたが



俺の番が来たんだな……







おお、これが走馬灯か。マジで見えるんだな



…………



ハッ、嫌な思い出ばっかだぜ



一つくらい綺麗な思い出があったっていいだろ俺……



虚しい人生だったな――――



>>5


  /\___/\
/ /    ヽ ::: \
| (●), 、(●)、 |

|  ,,ノ(、_, )ヽ、,,   |
|   ,;‐=‐ヽ   .:::::|
\  `ニニ´  .:::/      NO THANK YOU  
/`ー‐--‐‐―´´\

       .n:n    nn
      nf|||    | | |^!n
      f|.| | ∩  ∩|..| |.|
      |: ::  ! }  {! ::: :|
      ヽ  ,イ   ヽ  :イ

―――――――――
―――――
―――

11月20日(土)


かつて第三次世界大戦の渦中にいた学園都市も、ようやく落ち着きを取り戻した

冬も迫りつつあって、道行く学生達の多くは厚着をしたりマフラーを巻いたりして寒さを凌いでいる

そんな中、ある1人の男は久しぶりの外の空気を堪能していた

高い身長、ホストのような服装、肩まで伸びた茶髪、端正な顔立ち

すれ違う女子学生が思わず振り返ってしまうのも無理はない

>>8

                                 ,.へ
  ___                             ム  i
 「 ヒ_i〉                            ゝ 〈
 ト ノ                           iニ(()

 i  {              ____           |  ヽ
 i  i           /__,  , ‐-\           i   }
 |   i         /(●)   ( ● )\       {、  λ
 ト-┤.      /    (__人__)    \    ,ノ  ̄ ,!
 i   ゝ、_     |     ´ ̄`       | ,. '´ハ   ,!
. ヽ、    `` 、,__\              /" \  ヽ/
   \ノ ノ   ハ ̄r/:::r―--―/::7   ノ    /
       ヽ.      ヽ::〈; . '::. :' |::/   /   ,. "
        `ー 、    \ヽ::. ;:::|/     r'"
     / ̄二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ

     | 答 |   お 断 り し ま す      │|
     \_二二二二二二二二二二二二二二二二ノ


その男の名は垣根帝督

学園都市に7人しか存在しない超能力者<レベル5>の内、第二位に位置する実力の持ち主

そして、学園都市の『闇』たる暗部組織の1つ、『スクール』のリーダーでもある

いや、リーダー“であった”の方が正しいか

何故なら、彼は過去に起こした暗部同士の抗争で命を落とし、組織が壊滅してしまったからだ

では、その命を落とした筈の彼が今こうして街を歩いているのはどういうことか?



    オ 断 オ

  コ         コ
 ト    ハ,,ハ     ト
 ワ   ( ゚ω゚ )    ワ
 リ            リ
  シ          シ
    マ  ス  マ  



―――――――――

1時間前~とある病院~




垣根は病室のベッドの上で目を覚ました

天井の照明の眩しさに眉を潜めながら、ゆっくりと上体を起こす

垣根 「………?」

垣根は朦朧とする意識の中、状況の理解に努めた

ここは、病院?

俺は死んだんじゃないのか?

様々な疑問が脳内を巡るも、結局解らず仕舞い

ふと、自分の身体を見てみる

腕、脚、胴体、隅々まで確認したが、どこにも傷跡らしきものが見当たらなかった

その後、しばらく手を開いたり閉じたり、肩を回したり等をして異常がないかも確認したが、これも問題なし

意識もはっきりしてきた頃、病室のドアが開き、誰かが入ってきた

>>12


      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

      |                    |
      |                    |
      /    ̄ ̄ ̄ ̄      /_____
      /   お断りします    /   //
    /      ハ,,ハ        /  / /
    /     ( ゚ω゚ )     /  /  /
   /   ____     /  /  /

  /             /  /  /
/             /    /  /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/   /  /


  _n
 ( l    ハ,,ハ

  \ \ ( ゚ω゚ )
   ヽ___ ̄ ̄  )   お断りします
     /    /

   ハ,,ハ
 ( ゚ω゚ )      n
 ̄     \    ( E) お断りします
フ     /ヽ ヽ_//

   n                n
 (ヨ )              ( E)
 / |    ハ,,ハ     ハ,,ハ    | ヽ
 \ \/( ゚ω゚ )/( ゚ω゚ )ヽ/ / お断りします

   \(uu     /     uu)/
    |      ∧     /

                  ∩
                  ( ⌒)      ∩_ _ お断りします
                 /,. ノ      i .,,E)
             / /"      / /"
  _nお断りします / / ハ,,ハ  ,/ ノ'

 ( l     ハ,,ハ  / / ゚ω゚ )/ /ハ,,ハ    お断りします
  \ \ ( ゚ω゚ )(       / ( ゚ω゚ )     n
   ヽ___ ̄ ̄ ノ ヽ      |  ̄     \    ( E)
     /    /   \    ヽ フ    / ヽ ヽ_//


「調子はどうだね?」

カエルのような顔をした男は『冥土帰し』と呼ばれる医者だ

彼の手にかかれば、どんな怪我や病気も無かったかのように治してしまうのだが、垣根はその事を知らない

垣根 「ああ」

大丈夫だ、と答えてすぐにハッとする

垣根 「…じゃなくて、何で俺は生きてんだ?」

冥土帰しは質問には答えず、ただ黙ってズボンのポケットから何かを取り出した

冥土帰し 「君の携帯電話だね?」

垣根 「俺の…?」

>>15

           ハ,,ハ  
          ( ゚ω゚ ) 
         /     `ヽ.
       __/  ┃)) __i | キュッキュッ
      / ヽ,,⌒)___(,,ノ\
 

           ハ,,ハ
          ( ゚ω゚ )  
       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  トン
     _(,,) お断りします (,,)
     / |_______|\


♪ ∧,_∧  ♪
   ( ´・ω・) ))
 (( ( つ ヽ、   ♪おっことわり♪
   〉 とノ )))
  (__ノ^(_)


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  (( (・ω・` )     おっことわり♪
♪  / ⊂ ) )) ♪
  ((( ヽつ 〈

   (_)^ヽ__)


゚ | ・  | .+o    o *   o。 |  *。 |
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。 | ・  o .ε≡Ξ ノノ `J.*o   *l゚・ +゚ ||
  _|\∧∧∧MMMM∧∧∧/|_
  >                  <

 ┼ヽ .ー  レ  -|r‐、. レ | ヽ|  |ヽ  ム ヒ | |
 d⌒) 、_ (__  /| _ノ  __ノ  | ̄| ̄ 月 ヒ | |
                  / | ノ \ ノ L_い o o
  >                  <

冥土帰し 「君が目を覚ましたら、ここへ掛けるように言われている」

渡された携帯の画面には番号が表示されていた

垣根 (誰だ…?)

暗部の関係者か、統括理事会の人間か…

どちらにせよ、裏の人間には違いあるまいと高を括り、発信ボタンを押した







『お目覚めかな?第二位』

それは、男にも女にも、若人にも老人にも聞こえる声だった

垣根 「……アレイスター」

垣根が呟いた人物は、学園都市の頂点に位置する統括理事長、アレイスター・クロウリー

垣根が死ぬきっかけとなった暗部同士の抗争の最大の目的は“学園都市への反逆”

その反逆の対象である人物が今、電話の向こうにいるのだ


        *'``・* 。

        |     `*。
       ,。∩      *    お断りします
      + (´・ω・`) *。+゚

      `*。 ヽ、  つ *゚*
       `・+。*・' ゚⊃ +゚

       ☆   ∪~ 。*゚
        `・+。*・ ゚

アレイスター『お前が今最も疑問に思っているであろうことに答えてやろう』

垣根 「何?」

アレイスター『あの時、お前はまだ生きていたのだよ』

生きていた?と答える間もなく、アレイスターは話を続ける

アレイスター『あの後すぐにお前を回収し、延命措置を施した』

アレイスター『お陰で死なずに済んだが、代わりに人としての原型は無くなってしまった』

アレイスターの話はさらに続いた

自分の脳が3つに分けられ、能力を吐き出すだけの塊にされたこと

その後、第三次世界大戦が勃発し、能力を用いた兵器が作られたこと

垣根 (おちおち死ぬことも出来ねえってか?)

呆れるように、改めて学園都市の『闇』を思い知らされた

    /\___/ヽ

   /''''''   '''''':::::::\
  . |(●),   、(●)、.:| つまんね
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
.   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
   \  `ニニ´  .:::::/
   /`ー‐--‐‐―´\

垣根 「……で、何で今になって俺を元の姿に戻した?」

暫しの沈黙の後、アレイスターは言う






アレイスター『お前はあと少ししか生きられない、と言われたらどうする?』

    _人人人人人人人人人人人人人人人_
   >        超つまんね        <
    ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^^Y^ ̄


               ヘ(^o^)ヘ 
                  |∧   
                 /

垣根 「……は?」

いきなり何を言い出すんだ?

アレイスター『あれからお前は能力の研究、生産といったあらゆる事に使われた』

アレイスター『その影響で、脳に異常が生じたのだよ』

垣根の能力は、この世に存在しない素粒子を生み出す『未元物質』<ダークマター>と呼ばれるもの

この世に存在しないとだけあって、既存の物理法則をねじ曲げたりする文字通り“常識の通用しない”能力だ

謎の多い稀少な能力であるため、科学者の研究魂に一層火がつくのは当然
垣根 「脳に異常?」










アレイスター『未元物質が、お前の脳を汚染し始めた』

        _,..-??-:..、    ⌒⌒
       /       \      ^^
      /          ヽ

     /  /\    /\ヽ                         ,  ゛ 三 ミ
     l      (__人__)    )                       (( ((^ω^;))) ))ノ)つまんねー
??????????????????????          . ヾヽミ 三彡, ソ))
    :::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::                        ./ )ミ24彡ノ
     :::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::                           / (ミ 彡゛
           /\/\                                / \ゞ
          / /\⊂(^ω^;) このスレつまんね
        ())ノ___    ⊂エノ
       / /||(二二)-く/_|ん>?几
    Y ⌒ /|Ⅲ||彡Vミニニ〈〈二二ノl0           ./⌒ヽ
   l| (◎).|l |((||((゜ )||  (⌒ )|三・) ||  ('⌒('    ./ ^ω^;)  < うわ、つまんね
__ ゝ__ノ    ?????ゝ__ノ≡≡≡('⌒;;;≡..|    ∠
       ???????????('⌒('⌒;;   / __ )

                       (´⌒;;     / /  //     (´⌒;;
     ∧∧             (´⌒(´⌒  ⊂二/   ∪   (´⌒(´⌒;;
やっぱ(;^ω^)つまんね

    _| ⊃/(___                     ∧_∧
  / └-(____/           つまんねー>(^ω^ ; )ピュー
 ???????                     〔??∪~〕 =

                                 ◎??◎ =
            ∧_∧                                  //
     ∧_∧  (^ω^ ;) うわ 何このスレつまんね                / .人
     (;^ω^) /   ⌒i                                 /  (__) パカ
    /   \     | |                               / ∩(____)   うわ、ここつまんね
    /    /????/ |                              / .|(;^ω^)_
  __(__ニつ/  FMV  / .| .|____                       // |   ヽ/
      \/____/ (u ⊃                          "???"∪

垣根はさらに困惑した

俺の未元物質が、俺自身を汚染する?

垣根 「そいつは、暴走したからってことか?」

アレイスター『私も初めはそう考えたが、実際は違った』

アレイスター『それは、お前の意思で起こしたものだ』



俺の意思―――


そうか、何となく分かった気がする


人間とは呼べない姿で生かされ死ぬことも出来ず、尊厳も何もない

ただ、機械のように扱われる自分に嫌気がさしたのだろう



脳の中の僅かに存在した『俺』が許さなかった



――ならば、自らの手で終わらせてしまおう



――それから垣根は只ぼんやりとアレイスターの話を聞いていた

一度始まった未元物質による汚染は垣根自身にも止められず、脳が勝手に演算をしている状態であること

それは目の前の医者、冥土帰しでさえも直す事が出来ない

ならば、せめて残された時間くらいは人間として過ごさせてやってもいいだろうと

そしてアレイスターは最後に

アレイスター『――悪いことをしてしまった』

と言って、電話を切った
端末からは一定のリズムを刻む電子音だけが鳴り響く

――何に対して言ったのだろう

俺があと少ししか生きられなくなった事に対して?

俺が『闇』に堕ちた事に対して?

俺が昔地獄のような日々を強いられた事に対して?

少し考え、垣根はすぐに否定した

垣根 (…って、あいつがそんな事本心で言う訳がねえ)

馬鹿馬鹿しい、と溜め息混じりに吐き捨て、携帯電話を降ろす

電話が終わったのを察知すると、ずっと窓の景色を見ている冥土帰しはそのまま話し始めた

冥土帰し 「僕も長年医者を続けてきたが…」

冥土帰し 「こんなに悔しい思いをしたのはこれで二度目だ」

過去に一度、彼程の医者でも完全に治すことが出来なかった少年が1人いた

その少年は1人の少女を救う為に命を懸け、見事に助け出す

たがその代償に、少女との思い出を失ってしまった

彼は必死に記憶を取り戻そうと尽力したが、遂にそれは叶わなかった

冥土帰しが初めて味わった『敗北』である

そんな堪えがたい『敗北』が今再び、目の前に立っている


冥土帰し 「君の脳には黒い斑点のようなものが沢山あってね」

冥土帰し 「それを幾ら取り除いても、すぐ新しいのが出てくるんだ」

冥土帰し 「まるで、治されるのを拒むかのように…」

『未元物質』という能力は今や、1つの病でもあった

常識通のじない力、常識の通じない病

それが作り出す領域は何人足りとも寄せ付けない

それが、生きている限りどんな患者でも治す『冥土帰し』であってもだ

冥土帰し 「あれが脳を完全に埋め尽くせば、脳のあらゆる機能を失い、君は死ぬ」

冥土帰し 「そしてその日が来るのは3ヶ月後の2月20日」

これが、僕が力を出し尽くした答えだ…と語る彼の背中からは、隠しきれない程の悔しさが滲み出る

垣根は自分の置かれている状況を整理していた

死んだと思えば実は生きてて、元に戻ったと思えば今度は3ヶ月後に死ぬ…

何も知らない人がこれを見れば、彼はさぞ悲しみに暮れていると思うだろう

それか、こんな目に遭わされた事に憤慨するかもしれない

だが、彼の心情はそれらとは懸け離れていた





3ヶ月後に死ぬ?

いや、違う


垣根 「あんたが気に病む必要はねえよ」

冥土帰しの眉がピクリと動く

垣根 「本来なら垣根帝督という人間はあの時死んで……俺の人生はあそこで終わってたんだよ」

垣根が死を悟った時感じたものは、何ともいえない虚無感だった

幼き頃から『闇』に飲まれ、明かりも何もない道をひたすら突き進んだ

出口も見えず、黒く染まっていく自分

そしていざ自分の人生を振り返ると、これ程虚しいものだったとは思ってもみなかった

今まで殺してきた人間も同じだったのか…

垣根 「それがどうだ?死んで当然の俺が今こうして存在している」

垣根 「俺にとって、これはまたとないチャンスなんだよ」


――あと3ヶ月も生きていられる

虚無感しかなかった人生を変えられるのは今しかない




垣根 「こうしちゃいられねえ」

そう言うと垣根はベッドから抜け、椅子の上に綺麗に折り畳まれた服を掴む

それに着替え、髪を手櫛で軽く整えると

垣根 「…俺にチャンスをくれてありがとな」

と冥土帰しの背中に向け、早々と病室から出ていった




患者が居なくなった病室に佇む医者が1人

冥土帰し「…患者に慰められたのは初めてだね?」

これまで経験したことのない出来事に、彼はただ窓からの空を眺めるのみだった

病院から出た垣根はふと立ち止まり、大きく息を吸い込む

そしてそれをゆっくりと吐きながら、彼は決意する

垣根 (俺がしてきたことは決して許される事じゃねえ)

垣根 (地獄でも何処へでも落とせばいい)

垣根 (だからこそ、この3ヶ月は悔いのないように生きる)

垣根 (1分1秒無駄にはしねえ)

よし、と心の中で決意表明をすると、歩みを進めた


どこへ行こうか?

何をしようか?


そこにいるのは『闇』に生きる人間ではなく、楽しい事を探す1人の少年だった




垣根 「まずは、あっちへ行ってみるか!」


今回は以上です。読んでくださった方ありがとうございます!

長い前ふりですみません、次回から本編開始です。見ての通り、地の文は苦手で……

次は火曜日を予定してます

シリアスいれる意味がわからん
お前の力量じゃ無理だ
どっちかにしとけよ

☆の二人称って君じゃなかったか。
スレタイ回収が楽しみだ

皆さんこんばんは
沢山のレスがついてて感激です!


>>45
簡単に言うとジャンルが中途半端なんですよね…
もっと上手く書けるよう努力します

>>51
マジですか!どおりで違和感を感じた訳だ


では、40分頃から投下します

―――――――――


垣根 「いやー、わざわざ金まで残してくれてたとは」

垣根 「アレイスターの奴、ホントに悪いことしたと思ってたりしてな」 ハハッ

垣根 「けど、1分1秒無駄にしねえとは言ったが、やることが思い付かん」

垣根 「………」 グー

垣根 「…まずは腹ごしらえといくか」


~ファミレス~


店員 「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

垣根 (1人でファミレスとは寂しいもんだな……ん?)

垣根 (あれ?あいつは……)






「はあ……」

とあるファミレスの角のボックス席に少女が1人、重い溜め息をついていた

ファミレスに1人で入るのはなかなか勇気が必要なことだが、少女にはそんなことを考える程の余裕がなかった

緩くウェーブのかかった長い髪や服装が、少女を大人びてみせる

名前は麦野沈利

学園都市に7人しかいない超能力者の1人で、順位は第四位

能力は原子崩し<メルトダウナー>といって、原子を曖昧な形のまま固定し、強制的に操るもの

そんな彼女もまた、学園都市の『闇』を生きる人間だ

以前彼女は暗部組織『アイテム』のリーダーを務めていた

仲間とは一緒にファミレスへ行ったりする程仲が良かったのだが、暗部間の抗争で一度は皆バラバラになってしまった

その後色々あって、『アイテム』は再び1つになろうとしている

なのに、何故麦野は浮かない顔なのか?

それは、こうなった一番の原因が自分にあると思っているから



麦野 (浜面はああ言ってたけど、やっぱ無理よ……)

麦野 (仲間をあんな目に遭わせといてもう一度やり直そうなんて、虫が良すぎる話だわ)

麦野 (…ドリンクバー行ってこよ) スクッ

麦野 (普段なら浜面にやらせてたけど、今は独りなんだよな……) スタスタ

麦野 (…寂しい) ポチッ

麦野 (皆が居たから、『裏』で生きるのも悪くないと思えた) ガー

麦野 (出来ることなら、また皆と一緒に居たい) スタスタ

麦野 (結局、自業自得って訳よ)

麦野 (あれ、フレンダの口調が移っちゃった?)

麦野 (フレンダ……) ジワッ







垣根 「ドリンクバー1つ」 アトコレトコレト…

麦野 「」

麦野 (……おいおい、寂しさの余り遂に幻覚まで見えるようになっちゃったかにゃーん?)

麦野 (私の席に居る筈のない奴が居るぞ?)

麦野 (よりによってアイツが出るとは、相当きてるな……) ゴシゴシ

麦野 (いつまでもうじうじしてられないな) チラッ

垣根 「麦野、何ボーッとしてんだ?」

麦野 「」

―――――――――


垣根 「あー美味い、マジ美味い」 モグモグ

麦野 「……」

垣根 「食べることがこれ程幸せなものだったとは」 ムシャムシャ

麦野 「……」

垣根 「生きてるって最高!」 ゴクゴク

麦野 「……」

垣根 「ふいー…さて、ドリンクおかわりすっか」 スクッ

麦野 「おい」

垣根 「なんだ、お前もおかわり欲しいか?」

麦野 「まず座れ」

―――――――――


麦野 「――どういう訳か、身体を手にいれたってのは分かった」

垣根 (3ヶ月だけってのは言わなくていいよな)


麦野 「で、何でここにいる?」

垣根 「ここに来て飯食う以外にする事ってあるか?」

麦野 「違う、何で私の席で食ってんだって言いたいんだよ」

垣根 「ファミレスで1人は寂しすぎるだろ?俺もお前も」

麦野 「ハッ、私が寂しく見えたって?勘違いもいいとこだ」

垣根 「嘘つけ、さっき涙目になってたじゃねえか」

麦野 「ああ?」 ギロッ

垣根 「そうムキになんなって、結構可愛かったぞ?」 ニヤニヤ

麦野 「よし、[ピーーー]」 キュイーン

垣根 「悪い悪い、ちょっとからかっただけだ」

麦野 「チッ…(見られてたのかよ)」

垣根 「お前らは今何してんだ?」

麦野 「あ?」

垣根 「だからよ、『アイテム』は今どうしてんだって、まだ『裏』の仕事とか来るのか?」

麦野 「……テメェに話す事なんてねえよ」

垣根 「あっそ、俺は戦争の後始末やら何やらで暗部は今活動停止中って聞いたけどな」

麦野 「え?」

垣根 「解散も検討してるって言ってたような…」

麦野 (私の知らない間にそんな話が…)

垣根 「麦野?」

麦野 「……!な、何でもないわよ」

垣根 「お前今日暇?」

麦野 「は?」

垣根 「これから俺とどっか行こうぜ」

麦野 「何でテメェとデートしなきゃいけないんだよ」 ケッ

垣根 「デートってお前……///」

麦野 「照れんな、気持ち悪い」

垣根 「1人は寂しいんだよー、な、いいだろ?」

麦野 「断r「よし、決まりだな!」

麦野 「……おい、人のはなs「早く行こうぜ、時間が勿体ねえ」 スクッ

麦野 「クソメルヘn「あ、お前の分も払っといてやるよ」 スタスタ

麦野 「」


カイケイ3830エンニナリマス


―――――――――


垣根 「さて、どこへ行こうか…」 テクテク

麦野 「……」 ムスッ

垣根 「何不機嫌な顔してんだよ?」

麦野 「テメェが原因だよ!」

垣根 「そう怒るな、笑顔笑顔」 ニコニコ

麦野 「これで満足かにゃーん?」 ニヤアアア

垣根 「その顔でにゃーんは無理があるぞ」

麦野 「おい何で急に真顔になった」

垣根 「むぎのん恐いにゃーん」

麦野 「死ね!!」 ビーム

垣根 「あぶねっ」 パキーン

麦野 「クソうぜぇ羽だ…」 イライラ

垣根 「カッケーだろ?」 ファサファサ

麦野 「いいからしまえ!」



垣根 「――しかし、お前とこうしたやり取りするのは初めてだな」 テクテク

麦野 「そうね…」 テクテク

垣根 「俺達って顔合わせりゃ殺し合いしかしてなかったもんな」

麦野 (私が一方的にやられてた記憶しかないけど)

垣根 「そう思うと、この状況ってすごくね?」

垣根 「敵対してた二人が今こうして一緒に歩いてるんだからよ」

麦野 「……ふん」

垣根 「今なら俺達、もっと仲良くなれるかもな」

麦野 「私がいつテメェと仲良くなったんだよ」

垣根 「違うのか?」

麦野 「勝手に決めんな」 プイ

垣根 「じゃあこれから仲良くなろうぜ」 ニカッ

麦野 「あーうぜ、マジでうぜぇ」

垣根 「安心しろ、自覚はある」

麦野 「あの時と性格変わりすぎて気持ち悪いんだけど、何なのそのポジティブ思考」




垣根 「……お前、本気で死にかけた事あるか?」 ピタッ

麦野 「え?」

垣根 「あの時俺は、初めて走馬灯ってのを見た」

麦野 「死ぬ間際に過去の記憶が映像になって見えるってやつか?」

垣根 「あれは酷かったぜ…ろくでもねえ思い出ばっか掘り起こされてよ」

垣根 「正直、死ぬより辛かったな……」

麦野 (思えば浜面に初めて負けた時、私よく生きてたわね)

麦野 (片目と片腕を失って、死んでもおかしくなかったってのに)

麦野 (――それ以上に、もっと大事なものを失ったけど)

垣根 「同時に、虚しくもなった」

垣根 「俺の人生って何だったんだろうなって…」

麦野 「……」

垣根 「その時思ったんだ、『たった1つでも楽しい思い出が欲しかった』ってよ」

垣根 「俺には『仲間』はいたが、『友達』はいなかったからな」

垣根 「何でもねえ話で笑ったり、バカやってはしゃいだり……」

垣根 「そんな思い出が…『友達』が欲しかった」

麦野 「『友達』か…」

麦野 (あいつらにとって、私は『仲間』だったのかな…)

垣根 「だから俺は、これから楽しい思い出をいっぱい作るんだ」

垣根 「それと『友達』もな」

垣根 「………」






垣根 「あーやめやめ!」 ブンブン

麦野 「!?」 ビクッ

垣根 「湿っぽいのは俺らしくねえな」 ウン

垣根 「…そうだ、アルバムを作ろう!」 ピコーン

麦野 「アルバム?」

垣根 「色んな思い出を写真にして、それを1冊の本にすんだ」

麦野 「はあ…」

垣根 「まずは電気屋へ行くか!」

麦野 「何で?」

垣根 「カメラ買うからに決まってんだろ?」

麦野 「そう、行ってらっしゃい」

垣根 「お前も来るんだよ」

麦野 「何で私がアンタの買い物に付いてかなきゃいけないのよ!」

垣根 「1人じゃ寂しいって言ってんだろ!」 プンスカ

麦野 (何で私が怒られてんの?)

垣根 「いいから行こうぜ麦野!」

麦野 「分かったわよ…」

麦野 (何なのコイツ……) ハァ




~電気屋~



麦野 「―――おい」

垣根 「ん~~?」 ウィーンウィーン

麦野 「電気屋に着くなりマッサージチェアに座るってどゆこと?」

垣根 「久々の身体だから歩き疲れてよ~~」 ウィーンウィーン

麦野 「カメラはどうした?」 イライラ

垣根 「あと5分待って~~」 ウィーンウィーン

麦野 「私は放置か」 イライラ

垣根 「あと5分~~」 ウィーンウィーン

麦野 「……」

垣根 「あ~~……」 ウィーンウィーン

麦野 「……」

垣根 「い~~……」 ウィーンウィーン

麦野 「……」

垣根 「……」 ウィーンウィーン

麦野 「……」

垣根 「ZZZ……」 ウィーンウィーン

麦野 「」 ブチッ

本日は以上です!

1ヶ所だけsagaが抜けて文字が隠れてしまった…
隠れた文字は「殺す」です、すみません。

次回は金曜日を予定してます

こんばんは!

病名『未元物質』について物議を醸してるようですが、そのうち説明したいと思います

では投下いきます






垣根 「イテテ……」 ジンジン

麦野 「目的忘れて寝てんじゃねーよ」

垣根 「普通ゲンコツで起こすか?」

麦野 「帰らなかっただけマシだと思え」

垣根 「それもそうだな」 ケロッ

麦野 「切り替え早っ」



垣根 「どうせ買うなら一眼レフだよなー」 ウーン

麦野 「そんなゴツいの買うの?デジカメでも写真に出来るのに」

垣根 「バカ、カメラといえば一眼、一眼といえば男のロマンなんだよ!」 クワッ

麦野 「はあ?」

垣根 「この黒光りするボディ、圧倒的なフォルム…」 マジマジ

垣根 「男なら一度は手に取ってみたいと思うに違いない」 ウットリ

麦野 「ふーん…」

垣根 「よし、これに決めた!」

麦野 「結構高い値段ね。といっても、私達が気にする程でもないか」

垣根 「あとフィルムも買っとかないとな、50個ぐらい」

麦野 「そんなに買うの?」

垣根 「常に持ち歩くからな、寧ろまだ足りない位だ」

麦野 「街中でゴツいカメラぶら下げて歩くアンタを想像するとシュールでならないわ」

垣根 「となると、買い物かごがいるな」

麦野 「私は取りに行かないわよ」

垣根 「分かってるって、ちょっとそこで待ってろ」 スタスタ






麦野 「――なんだかんだ言って、今日はアイツとずっと一緒だな」

麦野 「殺したいくらい憎い相手の筈なのに…」

麦野 「『表』の人間みたいに呑気にはしゃいでやがる」 フッ

麦野 「……ちょっと羨ましいな」

麦野 「……」

麦野 「独りは寂しいよ…」

麦野 (皆、今頃どうしてんだろ)

麦野 (解散したら、2度と会えなくなるのかな…)


麦野 「ん?あれって……」






絹旗 「ここは家電製品の品揃えが超いいらしいですよ」

滝壺 「結構広いね」 キョロキョロ

絹旗 「ここなら超お目当てのDVDレコーダーも見つかりそうです!」 ウキウキ

浜面 「なあ、俺がついてく意味あんのかよ?」

絹旗 「何言ってんですか?浜面には荷物持ちという超重要な役目があるじゃないですか」

浜面 「そんなの能力使えば…」

絹旗 「こんな可愛い女の子に能力使わせてまで荷物を持たせるなんて、超浜面はとことんダメな奴ですね」 プンプン

滝壺 「大丈夫、そんな紳士の風上にも置けないはまづらを私は応援してる」

浜面 「」

麦野 (絹旗に滝壺に浜面!?何でここに…!) アタフタ

麦野 (とにかく、見つからないようにしないと…!) ササッ





垣根 「あれ、麦野どこいった?」 キョロキョロ

垣根 「……」 ポツーン

垣根 「ヤバイ、急に心細くなってきた」




滝壺 「たくさんあるね」 ジー

絹旗 「まさか壊れるとは思いませんでしたよ」

浜面 「壊したのは自分だろ?」

絹旗 「元はといえば、浜面が叩けば超直るって言ったからじゃないですか!」 プンプン

浜面 「だからって力いっぱい叩くことはねえだろ!」

滝壺 「ぺしゃんこになってたね」

絹旗 「…確かに、ちょっとやり過ぎたかもしれません」 シュン

滝壺 「大丈夫、お金ははまづらが出すから」 チラッ

浜面 「え!?」 ギョッ

絹旗 「ホントですか!?」 キラキラ

浜面 「あ、いや…」

滝壺 「いいでしょ?」

浜面 「うーん…まあ、俺にも一因はあるし…分かったよ」 ポリポリ

絹旗 「やった!今日の浜面は超カッコいいです!」 ワーイ

滝壺 「カッコいいよ、はまづら」 ニコッ

浜面 「ハハ……」

浜面 (明日からピンチだ……)



垣根 「どこだよ麦野~」 トボトボ

垣根 「ここ広すぎて探すの大変なんだよ~」 トボトボ

垣根 「1人にしないでくれ~」 トボトボ

垣根 「お、アイツらは…」



絹旗 「超これにします!」

浜面 (うわ、高!こんなにすんのかよ!)

滝壺 「はまづら?」

浜面 「い、いや、何でもない…」

絹旗 「では、レジまで超行きましょう!」

滝壺 「……」

絹旗 「滝壺さん?」

滝壺 「ねえ、あれって…」

浜面 「……!!」



垣根 「よっ」

浜絹滝 「「「垣根帝督!?」」」

絹旗 「何であなたが…!」

浜面 「滝壺、下がってろ」 スッ

滝壺 「はまづら……」

浜面 (麦野が手も足も出ない奴に俺達がどうこう出来る訳が…)

浜面 (クソッ、どうする!?)

垣根 「おいおい何身構えてんの?」

絹旗 「どうして生き返ったかは知りませんが、また良からぬ事でも超企んでるんでしょ!」 キッ

垣根 「それより麦野見なかったか?さっきまで一緒だったのにいなくなっちまってよ」

浜絹滝「「「え?」」」

滝壺 「むぎのと一緒に来てるの?」

垣根 「まあ話を聞けって――」

―――――――――



浜面 「――なるほど、それでカメラを買いにここへ来たと」

垣根 「そゆこと」 ドサドサ

滝壺 「何入れてるの?」

垣根 「カメラのフィルム」 ドサドサ

浜面 「棚にある分全部買う気かよ」

絹旗 「あの麦野が……超信じられません」

垣根 「お前ら『アイテム』はどうするんだ?活動してないんだろ?」 ヨイショ

浜面 「分からん、何せ麦野がまだ帰って来てないからな」

垣根 「え?」

浜面 「実は――」


浜面はこれまで経験したことを垣根に話した

麦野が仲間だったフレンダを裏切りの罪で殺したこと

命の危機に瀕した滝壺を助ける為、麦野に反旗を翻したこと

そして麦野と三度にも及ぶ戦いの末、和解を果たしたこと……

垣根 「――そうか、それで1人足りなかったのか」

絹旗 「フレンダはきっと、何か超深い事情があってあんなことしたんだと思うんです…」

滝壺 「むぎの、フレンダの墓の前で泣きながら謝ってた…」

垣根 「アイツが…」

浜面 「和解はしたけど、それ以来麦野の奴俺達を避けるようになっちまって…」

浜面 「見掛けてもすぐ逃げるし、電話にも出ないから話が出来ないんだ」

滝壺 「きっと、私達に負い目を感じてるんだと思う…」

垣根 (それであんな顔してたのか…)

絹旗 「確かに麦野は皆に超酷いことをしたし、フレンダを殺した…」

絹旗 「その時は麦野に対して超怒りも感じましたし、許せませんでした」


絹旗 「……でも今は、前を向いて欲しいと思ってる」

絹旗 「垣根みたいに、自分のこれからの人生を超大事にして欲しいんです!」

絹旗 「こんなの、フレンダも望んでないと思う……」 グスッ

滝壺 「きぬはた……」 ナデナデ

垣根 「……とりあえず行こうぜ」

浜面 「そうだな……」



アリガトウゴザイマシター



垣根 「麦野の奴、どこうろついてんだ…?」

浜面 「俺達がいなくなれば戻ってくるさ」

絹旗 「麦野……」

滝壺 「大丈夫、きっとむぎのは帰ってくるよ」 ナデナデ

絹旗 「はい……」

浜面 「垣根はあの時と随分変わったな」

垣根 「はあ?」

浜面 「お前もいろいろあったと思うけど、なんか生き生きしてるし」 ハハッ

垣根 「俺はただ自分に素直なだけだ」

浜面 「そうか」

垣根 「…1つ聞いていいか?」

浜面 「なんだ?」


垣根 「お前らにとって、麦野は何だ?」

絹旗 「それは…」







麦野 「――しかし広いわね」 トコトコ

麦野 「これだけ広いと見つかる心配もなさそうだけど…」

麦野 「……こんなこと、いつまで続けるんだろ」 ハア

麦野 「でも私には……っ!?」







絹旗 「それは…」

垣根 「あ、麦野」

浜面 「え?」 クルッ

麦野 「あっ……!!」 ギクッ

滝壺 「むぎの…!」

絹旗 「麦野!!」

麦野 「……」

麦野 「……あ」

麦野 「あはははははは!」

麦野 「見つかっちゃったー」

麦野 「ゴメンね?話の途中だったかにゃん?」

浜面 「おい、麦……」

麦野 「いいのいいの、気にしないで?」

麦野 「ちょっとこの辺ぶらついてただけだから!」 スタスタ

滝壺 「ねえ…」

麦野 「あ、もうこんな時間だ、急がないと!」 スタスタ

絹旗 「待って!」

麦野 「…っ!!」 ダッ


タッタッタッタッ……


浜面 「アイツ、また…!!」

垣根 「……」

垣根 「ちょっとこれ持ってろ」 スッ

浜面 「垣根…?」 ガサッ

垣根 「アイツを追いかける」 ダッ

絹旗 「垣根!」


タッタッタッタッ……


絹旗 「……行ってしまいました」

滝壺 「でも、かきねならむぎのを救える気がする」

浜面 「どうしてですか?」

滝壺 「分からない、ただそんな気がしただけ…」

本日は以上です

ごめんよフレンダ、こうするしかなかったんだ…
フリーダムかと思いきや急に真面目になったりと忙しい人ですね

次回は月曜の23時頃の予定です

こんばんは、>>1です
今回はいつもより投下量が多いです

ではいきます

―――――――――


人が行き交う通りを麦野は走る

どこへ向かうでもない。ただ無我夢中に、逃げるように

その表情は焦燥や恐怖といったもので埋め尽くされていた


麦野 (クソッ、クソッ……!!)

麦野 (アイツに見られた……!)


アイツも気付いたかもしれない

私がずっとこんなことを繰り返してるのを――


どれくらい走ったのだろう、先程までいた電気屋の看板が随分遠くに見える

ここは町外れの広場のようだが、人は1人も見当たらない

麦野は一端止まって息を整える

『アイテム』として活動していた時はこれ程疲れることはなかった

肌寒い気候にも関わらず、その身体には汗が滲む

それは走ったことによるものか、はたまた別の何かか…

少し休んだ後、麦野は広場をフラフラと歩き始める


――また1人になった


太陽がやや西へ傾く空をぼーっと見ながら、そんなことを考えていた

麦野 「…ざまぁねえな」

そう自嘲しながら、あの頃を思い返してみる

彼女が持つ数少ない“綺麗な”思い出を――

麦野 (よくファミレスに5人揃って行ったな)

麦野 (浜面に全員分のドリンクバー行かせて、その浜面を滝壺が応援して…)

麦野 (絹旗は映画の話ばっかして、フレンダはサバ缶食べてて…)

麦野 (ま、私もシャケ弁食べてたことあったけどね)

自然と顔が綻ぶのが分かる

血生臭い世界で生きる麦野にとって、あの時間は本当に楽しかった

あの瞬間は『友達』でいられた気がした



だがそれも、今は昔の話


身から出た錆

自分のしてきた事を思えば当然の結果だ

後悔先に立たず

人間とはいつも終わってから間違いに気付くものだ

現実に引き戻されると、再び表情は暗くなる

麦野 「何やってんだか…」

かつて仲間を地の果てまで追い回したかと思えば、今度は自分が仲間から逃げ回っている

無様だ、滑稽だ、と思い付く限りの罵言を自分に浴びせた







「おい」

麦野は足を止めた

後ろから聞こえたその声には聞き覚えがある

さっきまで隣ではしゃいでた男の声だ

麦野 「テメェ……」

垣根 「お前さ、今日俺の事一回も名前で呼んでないよな?」

垣根帝督って名前があるんだぜ?と目の前の男はおどけてみせる

麦野 「…何でついて来んだよ?」

垣根 「1人じゃ寂しいだろ?」

それは自分に向けてなのか、彼女に向けてなのか

この男は出会ってからこればかり言ってる

1人になるのを極端に嫌がるその姿は、自分の本心を映し出されているようだった

だからか、この男がとても憎らしく見える

麦野 「いい加減にしろよ、こっちはもううんざりしてんだよ!」

垣根 「少し落ち着けって」

麦野 「うるせぇ!これ以上付きまとうんじゃねぇ!」

調子を崩さない垣根に麦野はますます苛立つ

垣根 「なあ、麦野…」


直後、一筋の閃光が垣根の顔を横切る


麦野 「……うるせぇっつってんのが聞こえねぇのかああああああ!!!!」

怒髪天を衝くとはこの事を言うのだろう

麦野の周りにポツポツ浮かぶ光が矢となって垣根に放たれる

今度はその身体を射抜く為に

垣根 「……」

垣根は黙ったままその場から動かない

その背中には天使を彷彿とさせる純白の羽が6枚



麦野の『原子崩し』は鋼鉄を紙同然に貫く程の威力を持っている

生身の人間が直撃すれば原型を保つのも難しい

しかし、目の前の男はたった6枚の羽で麦野の何十もの光の矢を防ぎきっていた

未元物質の前ではそんな常識も覆される

第二位と第四位では実力に差がありすぎるのだ

そんなことは麦野自身が一番理解していた

それでも、怒りを抑えられずにはいられない

攻撃は更に激しさを増す

麦野 「私もテメェも、所詮はクズなんだよ!!」

麦野 「どんなきたねえ事もしてきた!虫けらのように人を殺した!」

麦野 「なのに、今更まともな人生を歩む?出来る訳ねぇだろ!!」



同じ『闇』に生きる身でありながら、何故お前は光に満ち溢れている?

何故お前はそんなに笑っていられる?

私はこんなに苦しんでいるのに、何故……







――気付けば麦野は攻撃を止めていた

立ち込める煙が晴れると、そこにはさっきと変わらない様子で垣根が立っていた

彼が避けなかったお陰で周囲の物は1つも壊されずに済んだのだ

垣根 「……」

麦野から殺気を感じなくなると、背中の羽は消えた

肩で息をする彼女に、垣根はゆっくりと歩み寄る

垣根 「落ち着いたか?」

麦野 「……」

垣根 「……全部聞いた」

麦野 「……」

観念したかのように、麦野はぽつりぽつりと話し始めた

麦野 「笑っちまうよな、全部自分が撒いた種だってのに……」

麦野 「アイツらは許してくれるって言ってたけど、私は私を許せない」

麦野 「私には、許してもらう資格なんてないのよ」

麦野 「なのに…!」

突如、麦野は垣根の胸ぐらを両手で掴んだ

今にも噛みつきそうな目で睨みながら、思い思いをぶつける

麦野 「何でテメェはそんなに笑っていられんだ!!」

麦野 「ムカつくんだよ、『表』の人間みたいなこと考えやがって!」

麦野 「過去が帳消しになるとでも思ってんのかよ!?」

麦野 「今までやったことを忘れたのかよ!?」


麦野には垣根が輝いてみえた

今まで手に入れられなかった物を得るために前へ進むその姿が、羨ましかったのだ

……だから否定したかった

『闇』を忘れ、『光』を求めようとする垣根<じぶん>を――


麦野 「出来ねぇよ、出来る訳がねぇ!」

麦野 「私には、もう何も……」

彼女は俯くと、それから何も喋らなくなった

少しの間、沈黙が訪れる…







垣根 「……お前自身はどうなの?」

えっ?と声にならない声を漏らす麦野

垣根 「資格はないだの出来ないだの言ってっけど、それって決め付けてるだけじゃね?」

垣根には麦野の気持ちが痛いほど分かる

何故なら、以前の自分がそうだったから

自分のような人間が『光』を求めてはいけないと、言い聞かせてきたから――

垣根 「…忘れる訳ねえよ。俺もお前も、その罰は充分受けただろ?」

この罪はこれからも背負っていく

それが『闇』を生きた自分達のケジメだ

垣根 「……だから、そろそろ前見て歩かねえか?」

垣根 「後ろばっか見てると、目の前の幸せを掴み損ねるぜ?」

自分が人間である以上、生きてくしかない

引き返すことの出来ない旅路の中でどれだけ躓き転び、後悔するのだろう

もしかしたら、突然道が閉ざされるかもしれない

垣根 「お前にもチャンスはあるんだよ、これからの人生を変える……な」


だから歩こう、道が続く限り――

だから生きよう、悔いのないように――


垣根 「そろそろ、自分に素直になろうぜ?」

麦野 「……っ!」

肩が震え、襟を掴む手に力が入る

――自分に素直になろうぜ?

麦野 「似合わねえこと言いやがって……」


本当にいいのだろうか?

もう自分を殺さなくていいのだろうか?

こんな自分が、幸せを望んでもいいのだろうか?



麦野 「………たい」


ならば、今日からは――


麦野 「また……皆…と…」


ほんの少し――


麦野 「また皆と、一緒に戻りたい……!!」


素直に生きてみよう――



麦野 「勝手なのは分かってる……」

麦野 「でも私には、あそこしかないんだよ!」

麦野 「絹旗が、滝壺が、浜面が、フレンダが、皆がいる『アイテム』しかないんだよ!!」

麦野 「もう…独りは嫌だ……!」

垣根 「……それが、お前のホントの気持ちか?」

麦野 「……」 コクリ

垣根 「そうか……」







垣根 「…聞いたか?」 ニヤリ

麦野 「えっ…?」

麦野が顔を上げると、垣根の後ろにはかつての仲間が立っていた

麦野 「み、みんな……!?」

絹旗 「……麦野、もういいです」

絹旗 「これ以上、自分を超責めないで下さい…!」

浜面 「俺達だって、麦野がいないと寂しいんだぜ?」

浜面 「フレンダも、今のお前を見たら絶対悲しむ」

滝壺 「私達に居場所をくれたのはむぎのだよ?」

滝壺 「ねえ、帰ってきてよ……」

麦野 「……いいの?」

麦野 「だって…私、み…皆を………傷つけて……」

絹旗 「当たり前じゃないですか!だって、私達……」



絹旗 「――『友達』ですよ?」 ポロポロ

麦野 「……っ!!」 ジワ

麦野 「うわあああああん!!」 ダキッ

絹旗 「麦野…ヒック…帰って…グスッ……来てくれるんですね?」 ギュッ

麦野 「うん…うん……!!」 ボロボロ

麦野 「グスッ……むぎの…!」 ギュッ



ヒック、エグッ……


垣根 (……幸せ者が) フッ

浜面 「…垣根、本当にありがとう」 ペコッ

垣根 「何頭なんか下げてんだ?」

浜面 「お前のお陰で、また皆が揃う事が出来たんだ」

垣根 「素直になれば?って言っただけで、直接的な事は何もしてねえぞ?」

浜面 「あの麦野の心を動かしたのはお前だ、礼を言わずにはいられねえよ」

垣根 「あっそ…」


麦野 「ねえ…」

絹旗 「何ですか?」

麦野 「今からフレンダのところへ行かない?」

麦野 「皆がまた1つになれたのを見せたいの…」

滝壺 「……いいよ」

麦野 「他の皆は?」

絹旗 「超賛成です!」

浜面 「そうだな、行こうぜ」

垣根 「俺もついてっていいか?」

麦野 「アンタも来るの?」

垣根 「ダメか?」

麦野 「……そんなことないわ」 クスッ

―――――――――

~町外れの岬~


麦野 「フレンダ…」

麦野 「私、今日から前を見て生きることにしたわ」

麦野 「自分の人生を悔いのないように……」

麦野 「勿論、この罪も背負ってくつもりよ」

麦野 「……」

麦野 「今、すごく幸せなの」

麦野 「私の周りには『友達』がたくさんいる」

麦野 「フレンダだってその1人」

麦野 「『アイテム』がまたこうして1つになれて良かった…」

麦野 「これからもよろしくね、フレンダ――」

浜面 「…これでフレンダも安心しただろうな」

絹旗 「もしかしたら、ひょっこり出てくるかもしれませんよ?」

滝壺 「いつ来てもいいように、サバ缶買っておかないとね」


アハハハハ


垣根 「いい絵だなぁ……」 ジーン

垣根 「こういうのが欲しかったんだよ、俺は……」

垣根 「そうだ!おい浜面、カメラ貸せ!」 バッ

浜面 「どうした?」

垣根 「お前らを撮ってやる」 カチャカチャ

麦野 「え?」

垣根 「じゃあ皆そこに並べ~」

滝壺 「むぎの、撮って貰おう?」 グイ

麦野 「ちょ、ちょっと待って!」

浜面 「そりゃいいや、『アイテム』復活記念だな!」

絹旗 「超可愛く撮って下さいねー!」

麦野 「し、仕方ないわねー」




彼の思い出の記念すべき第1枚目は、“5人”の少女達の新たな出発を祝福するものだった

夕日に照らされた顔は、どれも満面の笑みで溢れている

麦野 (全く、今日はコイツに振り回されてばっかだわ……)

麦野 「――ありがとう、垣根」 ボソッ

こうして、垣根の思い出作りの日々は始まりを告げた

それと同時に、残された3ヶ月の1日目が終わりを迎える――



垣根 「ほら、笑って笑って!」

今日はこれで終了です
書き溜めがほとんどなくなってしまいました…

GWは多忙なんでどれくらい書けるやら
次回は金曜日の22時を予定してます

読んで下さってる皆さんに感謝の正拳突き!

お待たせしました

すごい少ないですが投下します

―――――――――
―――――
―――

11月21日(日)
~自宅~


垣根 「うーん……」 ムクッ

垣根 「もう9時か…」 ボー

垣根 「……?」

垣根 (何だこりゃ?勝手に演算なんかしてやがる)

垣根 (アレイスターが言ってたあれか……)

垣根 (俺が死ぬまでの期間とか演算してんのかもな) フッ

垣根 「…さて、準備でもするか」 ノビー


―――――――――

~ファミレス~


絹旗 「昨日はあのあと超遊びっぱなしでしたね」

浜面 「ファミレス行ってボーリング行ってカラオケ行って……なかなかハードたったな」

麦野 「……」 ジー

滝壺 「昨日の写真?」 ヒョコ

麦野 「そっ、垣根がすぐに現像してくれたのよ」

絹旗 「超見たいです!」

麦野 「みんないい顔で笑ってるわよ」 ピラッ

浜面 「ホントだ、みんな笑ってる」 フッ

滝壺 「みんな笑ってるね」 クスッ

絹旗 「はい、みんな笑ってます」 ニヤニヤ

麦野 (こんな顔して笑ったの初めてかもね…)

麦野 (今度、アイツになんかお礼をしないと)

浜面 「麦野、どうした?」

麦野 「何でもないよ、それよりドリンクバー」 カラカラ

絹旗 「あ、私も!」 ヒョイ

滝壺 「お願いはまづら」 ヒョイ

浜面 「はいはい……」 スタスタ



絹旗 「垣根、あの時とはまるで超別人みたいでした」

滝壺 「人ってあんなに変わるものなんだね」

麦野 「何よ突然?」

滝壺 「あのかきねだったら心を許しちゃうのも分かる」

麦野 「誰も許してなんか……」

絹旗 「でも、昨日は垣根とずっと一緒だったんですよね?」

麦野 「あれはアイツが1人は寂しいってうるさいから仕方なくついてっただけよ」

絹旗 「ホントにそれだけですか?」

麦野 「それだけ」

滝壺 「むぎのも寂しかったんだよね?」

麦野 「えっ?」 ドキッ

浜面 「何の話してんだ?」 オマタセ

絹旗 「超内緒です」

滝壺 「内緒」

浜面 「?」



~公園~


垣根 「……」 テクテク

垣根 「……」 パシャッ

垣根 「……」 テクテク

垣根 「……寂しい」 ボソッ

垣根 「1人じゃ楽しい思い出なんて作れねえな」

垣根 「やっぱ麦野誘うべきだったかなー」

垣根 「誰か~」






公園のベンチに腰かけ、缶コーヒーを飲む少年が1人

その髪や肌は雪のように白く、瞳は燃えるように紅い

一方通行<アクセラレータ>と呼ばれる彼こそが超能力者の第一位、学園都市最強の男だ

普段の彼は家でゴロゴロすることが多いが、今日は珍しく散歩に出ていた

一方 (この生活にも慣れちまったなァ…)

この前まで彼は『闇』の真っ只中を生きてきた

数え切れない程の命を己の目的の為に奪ったこともある

そんな自分がこんな生活を送っていいのだろうかと、何度も思った

こんな極悪人がと、何度も卑下した

しかし今は守るべき存在がいる。守ってくれる存在がいる

それらの為に、彼は彼なりに前を向いて生きようと決めたのだ

いつまでも後ろを見ていられない

おぼつかない足取りで一歩一歩、確かめるように歩き出す

自分の人生という道を――



一方 (暗部も今は活動停止中……)

一方 (アイツらはアイツらで何とかやってるンだろォが)

一方 (いよいよ逃げ場がなくなっちまったァ)

一方 「……」 ボー

一方 「眩しい」

一方 「こンな俺も照らしてくれンだなァ、太陽はよ」

一方 「……?」 ジー

一方 「アイツ……」




垣根 「よう、一方通行」 パシャッ

一方 「オマエ…第二位……!」

垣根 「俺には垣根帝督って名前があるんだぞー」 パシャッ

一方 「あの時俺が殺したはず…って、何俺を撮ってやがる」

垣根 「カッコいいだろ?一眼レフだぜ~」 パシャッ

一方 「おい話を聞け、いやその前にカメラ下ろせ」

垣根 「恐い顔すんなよ、ほら笑顔~」 パシャシャシャシャッ

一方 「連写すンなァ!!」



垣根 「……久しぶりだな」

一方 「何だァ?俺に復讐でもしに来たかァ?」

垣根 「……」

不適な笑みを浮かべると、垣根の背中から白い翼が生える

暗部間の抗争の時、垣根は目の前の男に敗れた

それによって彼の人生は一度断たれ、機械として使われることになった

一方 「……そのつもりのよォだな」

一方通行は首のチョーカーのスイッチをオンにする

これによって彼は能力を使えるようになるのだ

あらゆるベクトルを操作する彼の前では、核爆弾ですら傷1つつけることが出来ない

だが垣根は、その一方通行に傷を負わせた経験がある

垣根 「一方通行ァァァァァァ!!」

咆哮と共に垣根が一気に一方通行へ迫る

一方 「面白ェ、もう一度地獄へ叩き落としてやンよォ!!」

公園の真ん中で学園都市の頂点2人が再び衝突する――――










――――かと思いきや


垣根 「俺と街をぶらつこうぜ!」

一方 「」

―――――――――


一方 「――思い出作り、ねェ」

垣根 「お前は今の生活は楽しいか?」 ストン

一方 「さあな」

一方 (ま、悪くはねェかもなァ)

垣根 「じゃあよ、これからもっと楽しくしようぜ!」

一方 「……オマエ、本当に暗部の人間か?そンなポジティブな奴初めて見たぞ」

垣根 「最初で最後のチャンスだからよ……」 ボソッ

一方 「あァ?」

垣根 「いや、何でもない」

垣根 「…さて、そろそろ行こうぜ?」 スクッ

一方 「まだ誰も行くとは言ってねェぞ」

垣根 「日曜日に1人公園でコーヒー飲んでて寂しくねえか?」

一方 「別にィ、俺は平気だ」

垣根 「お前は平気でも俺が寂しいんだよ!」

一方 「オマエ、自分を殺した相手によく誘えンなァ」

垣根 「昨日の敵は今日の友!」 キリッ

一方 「うぜェ」

垣根 「そんなこと言わずにさ~」

一方 「…ったく、仕方ねェなァ」 ポリポリ

垣根 「よし、そう来なくっちゃ!」

一方 (何なンだァ、コイツ……)

垣根 「学園都市ぶらり旅ってな~」 ウキウキ




~ファミレス入口~


浜面 「じゃ、俺達は行くわ」

滝壺 「じゃあね」 ヒラヒラ

麦野 「ん、また今度ね」 ヒラヒラ



ドコヘイク?
ソウダナー…


絹旗 「では、私もお先に!」

麦野 「じゃあね」


タッタッタッタッ…


麦野 「浜面は滝壺とデートで、絹旗は家で映画鑑賞か」

麦野 「私は何しようかな…」

麦野 「……」 ウーン

麦野 「……」 パカッ

麦野 (昨日垣根とアドレスと番号交換したんだっけ) ジー

麦野 「……」

麦野 「……」 パタン

麦野 「……コンビニでシャケ弁でも買ってくか」 テクテク


今回はここまで
書き溜めがないと不安で仕方ない…

次回は火曜日の夜~を予定してます

皆さん、あまりむぎのんを怒らせないで下さい

それでは投下いきます




垣根 「うーん、撮りがいのあるものが全然ねえなー」 パシャッ

一方 「街中でカメラはやめろ、こっちが恥ずかしい」

垣根 「ぶらり旅っつっても地元だしなー」

垣根 「どっか行ってみたいとことかある?」

一方 「特にねェ」

垣根 「まあいいや、適当にうろうろするか」




~裏路地~


一方 「何でこンなとこ歩いてンだ?」

垣根 「普段通らない道とか歩くと何か出逢いが待ってるかもしれないだろ?」

一方 「何に出逢うンだよ…」


ゾロゾロ…


不良×5 「へっへ……」

垣根 「な?」

一方 「」

不良A 「よう兄ちゃん達、ちょっといいかな?」 ニヤニヤ

不良B 「カッコいいカメラ持ってんねー」 ニヤニヤ

不良C 「さぞかし金持ちなんだろなー」 ニヤニヤ

不良D 「俺達今金に困ってんだよねー」 ニヤニヤ

不良E 「何が言いたいか、分かるよな?」 ニヤニヤ

一方 (こンなのと出逢いたくはねェな) ハァ

一方 (面倒くせェ、とっととのして…)

垣根 「お前ら友達か?」

不良×5 「はあ?」

垣根 「だから、友達かって聞いてんの」

不良B 「まあ、小さい頃からの付き合いではあるな」

不良E 「小・中・高と見事に一緒のクラスだったしな」

不良D 「5人揃って飯食いに行ったりゲーセン行ったり…」


アンナコトモアッタヨナ!
アッタアッタ!
ギャハハ……


一方 「……何が起きてやがる?」 ポカーン

不良A 「……そうだ、あの頃は本当に楽しかった」

不良D 「夢に向かってひたすらつっ走ってたっけ」 ハハッ

不良C 「それが、今じゃこのザマだ」

不良C 「何でこうなっちまったんだろうな……」

垣根 「……」

垣根 「なあ、お前らが昔よく行った店とかあるか?」

不良B 「そういえば、学校の帰りにたい焼き屋なんかよく行ったな」

不良E 「それがどうした?」

垣根 「俺達を案内してくれよ!」

一方 「!?」

垣根 「たい焼きかー、食ってみてえなー」

不良E 「おい、どうする?」

不良A 「いいんじゃないか?俺も久々に食べたいし」

垣根 「マジか!ありがとよ!」 ガシッ

不良E 「あ、ああ……」 ガシッ

一方 (……何だこの展開)



~たい焼き屋~


垣根 「いい匂いがする~」

一方 「屋台なのかァ…」

不良C 「懐かしいな、おばちゃん元気かな…」

おばちゃん 「いらっしゃい…って、アンタら……」

不良A 「……久しぶり」

おばちゃん 「まぁまぁ、随分大きくなって~!」

おばちゃん 「高校行ってからはめっきり来なくなったから寂しかったわ~」

おばちゃん 「学校は楽しいかい?」

不良B 「まあ、楽しい…かな」

おばちゃん 「アンタらが小さい頃はちょっと不安だったけど…」

おばちゃん 「立派に成長してるみたいで安心したよ」

不良×5 「……」

垣根 「おばちゃん、たい焼き7個!」

おばちゃん 「はいよ!」 ガサガサ





不良A 「……悪いな、俺達の分まで」

垣根 「いいってことよ」 ホクホク

不良D 「なあ…」

不良A 「?」

不良D 「俺達、もう一度やり直せるかな…?」

不良D 「おばちゃんの顔見たら、今のままじゃダメだって思ったんだよ」

不良B 「確かに、会わせる顔がないな」

不良E 「もうあんなことするのやめようぜ」

不良C 「だな」

一方 (何か勝手に盛り上がってンだけど……)

不良A 「なあ、そのカメラで俺達を撮ってくれないか?」

一方 「え?」

不良A 「俺達の再出発を記念に残したくてな」

垣根 「よし、じゃあそこに並んで……」



――この日以来、5人のスキルアウトは暗がりから姿を消した

去り際、彼らは変わるきっかけをくれた少年に感謝の思いを告げる

当の本人は只たい焼きに浮かれるばかりだったそうな

―――――――――


垣根 「いいものに出逢ったな」 テクテク

一方 「何だったンだァ、アイツらは」 テクテク

一方 「絡ンで来たと思えば勝手に立ち直りやがって……」

垣根 「あーいうのは撮ってて気持ちいいなー」

一方 「撮ったその場で写真にするとは思わなかったなァ」

垣根 「俺の能力を忘れたか?」

一方 「何でもアリかよ」

垣根 「ほれ、たい焼き」

一方 「俺甘いもンは苦手なンだよ…」

垣根 「そう言わずに……お、美味い!」 モグモグ

一方 「……」 モグモグ

一方 「……悪くねェ」

一方 (今度クソガキ共に買ってやるか…)

垣根 「おっ、あそこにいるのは……」






麦野 「クソッ、シャケ弁売り切れてやがった」 テクテク

麦野 「他のコンビニへ行くのも面倒だし……」

麦野 (やっぱアイツに……) パカッ

麦野 (いや、やっぱやめとこう) パタン

麦野 (でもする事ないしなー) パカッ

麦野 (…って、アイツと何するってんだ) パタン

麦野 「……」 ウーン


ラフメイカージョウダンジャナイ


麦野 「!?」 ビクッ

麦野 (アイツから…?) パカッ

麦野 「もしもし」

垣根 『さっきから何携帯パカパカしてんの?』 ププッ

麦野 「」


垣根 「おーっす」 モグモグ

一方 「誰だァ?この女」 モグモグ

麦野 「」





一方 「――オマエが第四位『原子崩し』ねェ」 モグモグ

垣根 「それ気に入ったか?」

一方 「……まァ」

麦野 「何食べてんの?」

垣根 「たい焼き、食うか?」 ブチッ

麦野 「じ、じゃあ一口……」 ヒョイ

麦野 「あら、なかなか美味しいじゃない」 モグモグ

垣根 「丁度いい、お前も来いよ」

麦野 「えっ?」

垣根 「俺達と一緒に街をぶらつこうぜ」

垣根 「いいだろ、一方通行?」

一方 「俺は構わねェが……」

麦野 「いや、ちょっt「まあいいじゃねえか」

麦野 「コラ待t「旅は道連れって言うだろ?」


コレデ3ニンカー、タノシクナッテキタ!


麦野 「」

一方 「……俺も似たようなもンだァ」

今日はここまでです
何だこれ、短い上に不良達がメインになってしまった…

次は金曜日の予定です

日にちが遅れてすみません

きりのいいところまで進んだので投下します

―――――――――


垣根 「し~あわっせは~、あ~るいってこ~ない」 テクテク

一方 「やめろ、周りの視線が痛いだろォが」 テクテク

麦野 (……何このデジャヴ) テクテク

麦野 (まっ、暇だったからいいけどね)

麦野 「アンタ、以前アイツと戦ったことがあるんだって?」

一方 「あァ、途中から意識が飛ンで気付いた時には殺してた」

麦野 「さすが第一位ね、私じゃ手も足も出せないわ」

一方 「それが復活したと思えばこれだァ、正直別人かと思ったぜ」

麦野 「ホント、あの変わりようは異常ね」

垣根 「さ~んっぽすっすんで……」

一方 「……」

麦野 「……」

垣根 「さ~んっぽすっすんで……」

一方 「……」

麦野 「……」

垣根 「さ~んっぽすっすんd」

一麦 「「二歩さがるゥゥゥゥゥゥ!!」」



―――――――――


一方 「けっこう長い階段だなァ…」

垣根 「アレやろうぜ、アレ!」

一方 「アレ?」

垣根 「じゃんけんして勝ったら登ってくやつだよ」

麦野 「グリコ、チョコレート、パイナップルで文字数分登るんだっけ?」

垣根 「そう、それ!やったことあんの?」

麦野 「聞いたことがあるだけよ」

一方 「そンな遊びがあるなンて知らなかったなァ」

垣根 「先にてっぺんまで登った奴の勝ちな」

一方 「俺はやらねェぞ」

垣根 「負けるのが恐いか?第一位さんよ~」 ニヤニヤ

一方 「上等だァ!遊びにおいても俺に勝てねェってことを思い知らせてやらァ!」 カチッ

麦野 (あれ、意外と単純……?)

垣根 「麦野、お前も参加な」

麦野 「はいはい……」







一方 「ギャハハハ!!どォしたよ垣根クゥゥゥゥゥン!!」

垣根 「なかなかやるじゃねえか…!」

麦野 (何だかんだで楽しんでるじゃない)

一垣麦 「「「じゃんけんぽん!」」」

垣根 「よっしゃ!グ・リ・コ」 トントン

一方 「オマエ!さりげなく一段飛ばしてンじゃねェぞォ!!」

麦野 「グ・リ・コ、結構疲れるわねこの遊び…」 トントン

垣根 「何だ、もうそんな年か?」

麦野 「うっせぇぇぇぇぇ!!!」



―――――――――


垣根 「チクショウ、勝てると思ったのに……」 テクテク

一方 「下らねェことに能力使っちまうたァな…」 テクテク

麦野 「とか言って、一番ノリノリだったじゃない」 テクテク

一方 「負けず嫌いなだけですゥ」

垣根 「おい、今度はアレ行ってみようぜ!」

一方 「…バッティングセンター?」

麦野 「こんなの学園都市にあったんだ」

垣根 「次は負けねえぞ!」



~バッティングセンター~


垣根 「ボールを一番多く前へ運んだ奴の勝ちな」
一方 「全球ホームランにしてやるよ」 カチッ

垣根 「まずはお前からなー」

一方 「しっかり見とけよォ」 ガチャ

麦野 「何カメラ構えてんの?」

垣根 「アイツの勇姿を撮ってやろうと思って」



ゴウンゴウン…


一方 「ハッ、この俺を誰だと思ってやがる…」

一方 「来たものを跳ね返すなンざ訳ねェンだよ」


バシュッ


一方 「もらったァァァァァァ!!」 スカッ


コロコロ…


麦野 「……」

垣根 「……」 パシャシャシャシャッ

一方 「……」 クルッ

麦野 「……」 プルプル

垣根 「……」 プルプル

一方 「……」 ダラダラ

垣根 「ブハハハハハ!!盛大に空振りやがったぁぁぁ!!」 ゲラゲラ

麦野 「あ…あんなドヤ顔で、あんなこと言っておきながら空振りって……!」 プクク

一方 「チクショォォォォォォ!!!!」

垣根 「見ろ一方通行、いい写真が撮れたぞ!」 ピラッ

一方 「ヤメロォォォォォォ!!!!」







麦野 「記録は30球中7球、と…」

一方 「こンなはずじゃねェんだ……」 ズーン

垣根 「ま、そういうこともあるさ」 クスクス

一方 「この野郎…」 ギリギリ

垣根 「次は俺の番だ、カメラ持っててくれ」 ガチャ

麦野 「んっ」 ヒョイ


ゴウンゴウン…


垣根 (へへっ、俺が態々“ボールを前へ運ぶ”って言った意味が分かるか?)

垣根 (俺には秘策があんだよ) ニヤリ

一方 「外せ外せ外せ外せ外せ……」 ブツブツ

麦野 「ちょっとアンタ怖いわよ」



バシュッ


垣根 「ほい」 コキン


コロコロ…


一麦 「「……」」

一方 「ハアァァァァ!?バントかよォ!!」 ガタッ

麦野 「その手があったか…」

垣根 「この勝負は貰ったぜ!」

一方 「きたねェぞコラァ!」

垣根 「これも立派な作戦だよっと」 コキン

一方 「……」 イライラ

一方 「おい、そこに何か落ちてンぞ」

垣根 「え、どれ?」 キョロキョロ

一方 「バカ、もっとこっちだァ」

垣根 「どれだよー」 キョロキョロ


バシュッ


垣根 「ぐおォ!?」 ズドム

一方 「ギャハハハハ!!何よそ見してンですかァァァ!?」 ゲラゲラ

垣根 「テメ…ハメやがったな……」

麦野 「アハハハハ!今の顔最高だったわ!」 ゲラゲラ

垣根 「うぐぐ、負けるかあ…!」

一方 「あっ、携帯落としたぞォ」

垣根 「マジで?」


バシュッ


垣根 「ぐはァ!?」 ズドム

一方 「バァーカ!!二度も騙されてンじゃねェよ!!!」 ゲラゲラ

麦野 「やめて…笑い死ぬ……」 ヒーヒー






麦野 「あれからも頑張って結果は30球中8球…」

垣根 「脇腹痛ぇ…」 ズキズキ

一方 「チッ、俺の負けか…」

麦野 「次は私ね」 スクッ

一方 「オマエもやンのか」

麦野 「これでも運動は出来る方よ?」

垣根 「階段遊びで息上がってたじゃねえか」

麦野 「うるせぇ、黙って見てろ」 ガチャ


ゴウンゴウン


麦野 (久しぶりね、この緊張感…)

麦野 (暗部にいた頃を思い出すわ) ゾクゾク

一方 「何かアイツの様子おかしくねェか?」

垣根 「そうか?」


バシュッ


麦野 「っしゃあぁぁぁぁぁ!!!」 カキーン

一方 「」

垣根 「すげー、ホームランだ」 パシャシャシャシャッ

麦野 「どしたどしたぁ!止まって見えんぞ!!」 カキーン

一方 「顔が悪党みてェになってやがる……」

垣根 「アイツ、野球の才能あんのかもな」 パシャシャシャシャッ







一方 「30球中22球、内6球がホームランかァ…」

麦野 「どうよ」 フン

垣根 「いやースゲェなー、かっこよかったぞ」 パチパチ

麦野 「そ、そう?」 テレテレ

垣根 「この顔なんか特に男みたいだ」 ピラッ

麦野 「」



―――――――――


垣根 「何不機嫌そうな顔してんの?」 テクテク

麦野 「別にー」 テクテク

麦野 (夢中になってて気付かなかったけど、あんな顔してたなんて…)

垣根 「しかし、あの麦野は男の俺でもカッコいいって思えたなー」 ピラッ

麦野 「ヤメロォォォォォォ!!」



チョット、アレナニ?
コワッ!


垣根 「おいおい、周りがビックリしてんじゃねえか」

麦野 「くっ…!」

一方 「ったく、それぐらい撮られたっていいだろォ」 テクテク

垣根 「これよりはマシだよなー」 ピラッ

一方 「ヤメロォォォォォォ!!」


ナンヤナンヤ!?
アノヒト。コワイ


垣根 「お前もうるさいぞ」

一方 「クソッ…」



―――――――――

~公園~


垣根 「最初の場所に戻ってきたな」

一方 「歩き疲れたァ」 ストン

麦野 「ちょっと飲み物買ってきてよ」 ストン

一方 「俺ブラックコーヒー」

垣根 「仕方ねえなー、勝手にどっかいくなよー」 スタスタ




一方 「もう夕暮れか……」

麦野 「何か、変な感じね」

一方 「あァ?」

麦野 「こうやって遊んだり笑ったりするの」

一方 「俺達にとっては“アッチ”が普通の生活だったからなァ」

一方 「生きてるうちにこンなこと出来るとは思っても見なかった」

麦野 「……人って、ふとしたきっかけで良くも悪くも変わるものなのね」

麦野 「でも、敵だった相手にあれだけフレンドリーなのもどうかと思うわ」 フッ

一方 「……俺の周りは変な奴ばっかだァ」

麦野 「それって私も含まれてるわけ?」

一方 「さァな」 ニヤリ

垣根 「お待たせ」 ポイッ

一方 「おォ」 パシッ

垣根 「お前炭酸でもいいだろ?」 ポイッ

麦野 「バカ、投げんな!」 パシッ



―――――――――


麦野 「――じゃ、私はこっちだから」

垣根 「おう、また明日」 フリフリ





垣根 「今日は楽しかったなー」

一方 「こういうのはこれっきりにしろよ」

垣根 「何言ってんだ、これからもっと色々やるんだぞ?」

一方 「付き合いきれねェな」

垣根 「そう言わずに…」 スッ

一方 「なンだァ?」

垣根 「アドレス交換だよ」

一方 「何でオマエなンかと…」

垣根 「『友達』だからに決まってんだろ?」

一方 「はァ?」

垣根 「お前と友達になる日が来るなんて、前の俺じゃ考えもつかなかったろうな」

一方 「勝手に決めンな」

垣根 「俺はお前のことを友達だと思ってるぞ」 ニコッ

一方 「……」 ポリポリ

一方 「分かったよ――」

―――――――――

~麦野宅~


麦野 「また明日、か……」

麦野 「明日もアイツに振り回されるのかよ」 フッ


ラフメイカージョウダンジャナイ


麦野 「またアイツ?」 パカッ

麦野 「…どうしたの?」

垣根『今日は楽しかったか?』

麦野 「なによいきなり」

垣根『今日はノープランで行動したから気になってよ』

麦野 「まあ、ああいうのもたまにはいいんじゃないの?」

垣根『そうか、そりゃよかった』

垣根『何より麦野がまた笑ってくれたしな』

麦野 「はあ?」

垣根『くそー、あの顔も撮っておくべきだったな』

麦野 「余計なことしなくていい」

垣根『よし、次はお前らをもっと笑わせてやるからな!』

垣根『そして、その顔をカメラに収めてやる!』

麦野 「はいはい」

垣根『期待しとけよ?じゃあな!』ブツッ

麦野 「…笑わせてやるって何よ」 パタン

麦野 「……」

麦野 「ラフメイカー、『笑顔を届ける者』」

麦野 「……冗談じゃないわ」 クスッ









垣根と別れた後、一方通行は今日の事を思い返していた

かつて自分が殺したはずの男が目の前に現れた

その男に1日中振り回され、挙げ句には自分のことを『友達』と……

一方 (トモダチ……)

そんな言葉を言われたのは生まれてこの方初めてだ

あまりに似つかわしくないそれを言い放った男の笑顔が妙に憎たらしい

何故、自分とあんな風に接することが出来るのか理解に苦しむ

しかし何だろう、この胸の奥を擽られるようなこそばゆい感覚は――



一方 「帰ったぞォ」 ガチャ

打止 「おかえりー!ってミサカはミサカはあなたに飛びついてみたり!」 ガシッ

一方 「ウゼェから離れろ!」 グイグイ

番外 「ギャハ、帰ってきて早々お熱いこったね~」

一方 「うるせェ」

芳川 「あら、おかえりなさい」

黄泉川 「もうすぐ夕飯が出来るから先に手洗いしてくるじゃん」 パタパタ

一方 「おォ」 スタスタ

番外 「……」 ジー

一方 「何ジロジロ見てやがる」

番外 「べっつにー、何か今日は機嫌が良さそうだっからさ」

打止 「そういえば、今日は何してたの?ってミサカはミサカは質問してみる」


この感覚が何を意味しているのかは分からない


一方 「大したことじゃねェ……」


しかし







一方 「――友達<バカ>の相手してただけだ」


それほど嫌でもない感覚だ――



これで2日目終了です

メインメンバーはある程度決まってますがどのタイミングで出せばいいやら…
少し書き溜めたいので次回は土曜日の予定です

見て下さってありがとうございます!

みなさんこんばんわ

只今内容を微修正してるところです
30分後から投下します

―――――――――
―――――
―――



君の名前は?



……そうか、垣根帝督というのか



君はどんな能力を身につけたいのかな?



…………



常識に囚われない能力?



ははははっ!これはまた随分変わった子だ



……っと、失礼




君が能力を得る為に大切なことがある



自分を信じることだ



周りにどれ程笑われ、馬鹿にされても、自分を決して疑わないことだ



自分なら出来る、自分にしか出来ないと……



あとは私達に任せてくれればいい――――






―――――――――
―――――
―――

11月17日(水)
~とある病院~


(一体何の用なんだ…?)

黒い学ランを着た1人の高校生は手術室の前の長椅子に腰かけていた

ツンツン髪の彼の名前は上条当麻

筋金入りの不幸体質で、一歩外へ出ると大抵何かしらの災難に出くわす

時には財布を落とし、時には騒ぎに巻き込まれ、時には女子のスカートの中を覗いてしまったり……

上条 (学校が終わったらすぐここへ来いとは言われたけど…)

今朝、冥土帰しから電話があった

事情は何も聞かされず、学校が終わり次第病院に来るようにとだけ言われたのだ

そして病院に着くと入口の看護婦に手術室の前まで案内され、今に至る

上条 (もしかして、俺の身体に異常が見つかってすぐ手術しなきゃいけないとか…?)

一抹の不安がよぎる

実は彼、この病院の常連患者でもあった

騒ぎが起きる度に大怪我をし、その都度冥土帰しに治してもらっていた

切断された右腕も、冥土帰しなら手術痕1つ残さず治してみせる

彼の腕は確かだ。だからもしそうであったとしても、あまり心配はしない



…突然、手術室の扉が開いた

上条が扉の方に目をやると、手術着に帽子・マスク・手袋をした医者が1人

『冥土帰し』の異名を持つ医者だ

冥土帰し 「来てくれたね?」

上条 「あの、俺はどうして……」

冥土帰し 「説明は後でする、僕についてきてくれ」

そう言うと、冥土帰しは再び手術室の中へ入っていった

上条は一瞬躊躇うも、彼の後に続く

冥土帰し 「君もこれに着替えるんだね?」

上条が渡されたのは手術着だった

いろいろ聞きたいことはあるが、とりあえず着替えることに

準備が整ったところで上条はもう一度冥土帰しに問う

上条 「俺はどうしてここへ呼ばれたんですか?」

冥土帰し 「……君に見せたいものがある」

こっちだ、と彼を奥の部屋へ案内する

そこには数人の医者が何かを囲むようにして立っていた

彼らに軽く挨拶すると、冥土帰しが上条のことを簡単に紹介した

医者達もそれに応え、立ち位置から少し左右へずれると……

上条 「……っ!!」

彼は目の前の“何か”を見て言葉を失う







それは、円柱型の容器一杯の培養液に浸された人間の脳だった――

上条 「うっ……!」

思わず目を背ける

当然だ、医者でもない人間が本物の脳を直に目にすることなど殆どない

大丈夫かと聞かれた気がしたが、気持ちを落ち着かせるので精一杯だ

しばらく胃の中で虫が這い回るような感覚に襲われる

上条 「……すみません」

冥土帰し 「そうなるのも無理はない」

少し落ち着いた様子を見て、冥土帰しは本題に入る

冥土帰し 「ここへ呼んだのは他でもない、君の力を借りたいんだ」

冥土帰し 「その右手に宿る『幻想殺し』をね…」

上条 「俺の力を……?」

上条当麻は記録上、能力を持たない“無能力者”と呼ばれる分類に含まれている

しかし、彼の右手には不思議な力が宿っていた

『幻想殺し』と称されたそれは、あらゆる“異能”を打ち消すことが出来る

彼はそれで数々の死線をくぐり抜けてきた

学園都市最強と対峙し、数多の魔術師を退け、“天使”とも渡り合った

そのポテンシャルは統括理事長アレイスターも一目置いている

冥土帰し 「これは見ての通り、人間の脳だ」

冥土帰し 「この脳は今、異能の力に侵されているんだ」

冥土帰し 「僕も最大限の努力はしたが、今回ばかりはどうにもならない」

あの冥土帰しの口から“どうにもならない”という言葉が出たのには驚いた

しかし、今回は医療の範囲から大きく逸れているらしい

“異能”であれば、上条当麻なら何とか出来るかもしれない

冥土帰しは彼にある種の希望を抱いていた

冥土帰し 「よく見てごらん」

上条は再び培養液の中の脳を見る

よく見ると、脳のあちこちに黒い斑点のようなものがある

上条 (これは一体何だ……?)

冥土帰し 「その黒い斑点は徐々に増え、脳を少しずつ汚染している」

冥土帰し 「その斑点に覆われた部分の脳細胞は活動を止めてしまうようだ」

冥土帰し 「1つ取り除くのにおよそ1時間…、それではとても追いつかない」

冥土帰し 「それなら、1度に纏めて消してみようと思ってね」

冥土帰しは言わないが、この手術の成否は上条当麻の手に懸かっていた

医者でもない自分がこんな重荷を背負わされるなんてたまったものじゃない

……と、普通の人間であればそう思うだろうが、彼は違った

彼の“困っている人を放っておけない”精神がその考えに至らせなかったのだ

冥土帰し 「では、その右手で脳に触れてみてくれ」

上条は目を閉じ、小さく深呼吸する

そして培養液の入った容器に恐る恐る右手を入れた。それも素手で

周りの医者も固唾を呑んで見守る



中途半端ですが今日はここまで

言い回しがワンパターンな気がしてならない>地の文

次は水曜の深夜を予定してます

結局全然書き溜められてないっていうね…

2時過ぎから投下始めます







ヌチャッ、とした感触が右の掌に伝わる

培養液は粘りけが強く、少しひんやりとした温度だった

上条は若干の嫌悪感を抱くも、そのままゆっくりと右手を中へと進めていく



脳まであと数センチ……



3センチ……



1センチ……









ニチャッ

この日、上条当麻は生まれて初めて人間の脳に触った

同時に、脳に貼り付いた黒い斑点のようなものは1つ残らず消滅する



「やった…!」

1人の医者が、安堵の声を漏らす

上条 「これで……」

上条は右手を培養液から抜いた

1人の医者から貰ったタオルで手に付いた液体を拭う

掌にはまだ、あの生々しい感触が……

“右手で脳に触れる”、これだけの動作にも関わらず彼の身体からは汗が滲む

さながら、手術を終えた後のような気分だ

上条 「何とかなったみたいで良かったです」

安心した彼は冥土帰しを見て言う

冥土帰し 「……」

冥土帰しから返事はない

彼は只、培養液に浮かべられた脳をじっと見ていた

その表情はマスクの上からでも曇っていることが窺える

上条 「どうかしましたか?」

上条も彼と同じ方向に目を向ける






脳には、さっき消滅したはずの黒い斑点が――




上条 「そんな、どうして…!」

治ったんじゃないのか、何が起きたんだと他の医者もざわつき始めた

その後二度三度と脳に触れてみたが、結果は同じ

時を巻き戻すように、消した分だけ斑点がまた出現した

如何に幻想殺しといえど、打ち消しきれない異能が幾つかある

1つは、異能の持つ力があまりに大きいこと

1つは、打ち消した異能が瞬時に再生されること

1つは、異能が都市や国など超広範囲に及ぶこと

この場合だと2つ目が最も近い

消滅した斑点を補う為、新たに斑点を生み出した…といったところだろう

更に時間と共に少しずつ増殖するときたものだから非常に厄介だ

こういった力に対処するには、それらの根源となるものを叩かなければならない

殆どの場合、行使する魔術師や能力者が該当するのだが……

上条 「一体、誰がこんなことを……」

そうなると、その魔術師ないし能力者を探す必要がある

しかし、手掛かりが1つもない

これはどういった能力なのか?それとも魔術なのか?目的は?経緯は?

思考する上条を察してか、冥土帰しはようやく口を開く

冥土帰し 「……これを生み出したのは彼なんだ」

上条 「彼…?」

冥土帰しの視線は未だ脳に向いたまま

上条 「彼って、脳…ですか?」

冥土帰し 「そう、この脳の持ち主さ」



君は想像出来るかい?


人間である為のあらゆる権利を奪われ、人の形をすることも許されない人生を…


それが半永久的に続くとしたら?



冥土帰し 「彼は自分を守りたかったのだろう…『死』という選択をもってね」

正直のところ、上条の頭の中は疑問符しか浮かんでこない

突拍子もない事を言われ、想像以前に言葉の意味すらまともに理解しきれてないからだ

だが、これだけは分かる


彼を蝕む要因は彼自身であること


そして彼は『死』を選んだ。これは紛れもない真実


…なるほど、道理で幻想殺しが通じない訳だ

冥土帰し 「皮肉にも、彼は再び人間としての権利を取り戻した」

冥土帰し 「もしかしたら、僕のやってることは彼の意に反する事なのかもしれない」

冥土帰し 「それでも、彼には生きていて欲しいんだ」

斑模様の知恵は何も答えない

だが、容器の中のそれからは彼という人物を垣間見た気がする

冥土帰し 「君でも無理なら仕方ない、このまま移植しよう」

医者達も半ば諦めたように頷くと、作業の準備に取り掛かる

上条 「彼はもう助からないのですか…?」

不安げに問う彼に対して、冥土帰しは「分からない」としか答えなかった


大方の準備が整った所で

冥土帰し 「ご苦労だったね、あとは僕達の仕事だ」

そう言って上条を出口まで送る

元の制服に着替え、扉の外へ出ると「今日はありがとう」と一礼して冥土帰しは手術室へと消えた

扉が閉まると、辺りには静寂……

踵を返し、院内を歩く彼にはもやもやしたものが付きまとう

顔も名前も知らない彼がどうも気になる

彼はこれからどうなるのか、何を思うのか……

上条 「…名前、聞いとけばよかったな」

少しの後悔と共に、彼は病院を後にした――












手術室に一台の台車が運ばれてきた

上から大きな布が被せられてるが、膨らみからして人間であることは間違いない

これから行われるのは“帰還”

彼が自身のもとへと帰る時だ


――彼はもう助からないのですか?


あの時分からないと答えたのには理由があった

それは、ある意味で彼はもう助かっているようにも思えたからだ

結果として、自分の力であれを治すことは出来なかった

彼の『敗北』は覆らないだろう

しかし、例え僅かな時間でも人間らしさを取り戻した彼は本当に助かってないと言えるのか?

もっとも、彼がそれを喜ぶかは別だが…


「…準備が整いました」

1人の医者の声によって思考は止まる



そうだ、あれこれ考えてる場合ではない


今は目の前の患者のことだけを考えよう――



冥土帰し 「ではこれより、手術を始める――」







今日は以上です

また書き溜め全部使っちゃった…。間を空ければ書けると思ってちゃいかんね

次回は日曜日の夜以降に!

―――――――――
―――――
―――

11月24日(水)
~とある高校~


上条 「はあ……」 グデー

青髪 「最近カミやんため息ばっかついとるでー?」

姫神 「何か。あったの?」

上条 「いや、別に……」

土御門 (まあ、大体想像はつくけどにゃー)

彼はここのところずっとこの調子だ

何をするにも無気力で、授業中机に項垂れてる事が日常化している

只でさえ単位がギリギリの彼がこんなのでは進級も危うい

そんな事すらどうでもいいと思う程、彼は今気に病んでいるのだ



原因は1人の少女との別れ――


禁書目録<インデックス>という名の少女が、上条当麻の物語の起源だった

ある日、追われていた彼女を助けて以来彼の日常は一変する

魔術師という存在からは目をつけられ、何度も命を狙われた

果ては先の戦争の渦中に身を投げ、神に等しい力にも立ち向かった

不幸体質もここまで来れば最早笑うしかない

それでも今日を生きていられるのは彼女が側にいたから

いつも無邪気に、時には聖女のように接してくる彼女に、どこか心を癒されてたのかもしれない

修道服を着たそれは正しくシスターそのもの

まあ、彼女の暴飲暴食っぷりには泣かされた事もあったが…



そんな彼女は今側にいない――


戦争の影響は故郷イギリスにも及び、そちらの支援に向かったのだ

相当立て込んでいるらしく、暫くは戻って来そうにない

上条も納得し、彼女をイギリスまで見送った

向こうには信頼出来る仲間もいる

けれども……

上条 (もう1ヶ月か……)


心に穴が空くとはこんな気分なのか

もしこれが幻想だったらこの右手でぶち壊すのに……


青髪 「カミやーん」 ユサユサ

上条 「その幻想を…ぶち殺す……」 ブツブツ

青髪 「アカン、脱け殻みたいになっとるわ」

土御門 「カミやんがこの調子だとこっちまで滅入るにゃー」



キーンコーンカーンコーン


姫神 「もうすぐ。授業始まる」

青髪 「次は小萌センセーの授業やーん!」 クルクル

土御門 「カミやん、授業ぜよ」 ユサユサ

上条 「その幻想を…ぶち殺す……」 ブツブツ

土御門 (禁書目録と離れたのがそんなに辛いのか?)



小萌 「授業を始める前にお知らせがあるのですよー」

青髪 「なんやろか?」

土御門 「さあ…」

小萌 「今日はこのクラスに学校見学に来た人達がやってきます」

小萌 「みんなの授業風景を是非見たいという事でOKしちゃいましたー」


エーナンダヨソレ!
キイテナイヨー!


姫神 「よく。許可降りたね」

青髪 「こんな時期に見学?けったいやねー」

小萌 「では、入って下さーい!」


ガラララ


垣根 「スゲー、皆座ってる」 パシャッ

麦野 「撮影許可は貰ってんの?」

一方 「なンで俺まで……」

土御門 「」


イ、イケメンダ!
アノコハダシローイ!
キレイナオネエサン…


土御門 (どういうことだ?一方通行と垣根帝督が何故一緒に…)

土御門 (っていうか、垣根は統括理事会に『回収』されてたんじゃ…?)

土御門 (それにあの女は確か『アイテム』のリーダー、麦野沈利…)

土御門 (第一位、第二位、第四位が揃って行動してるだと?)

一方 (アイツ土御門じゃねェか。この学校だったのかよ…)

垣根 「先生歳幾つ?」

小萌 「失礼な!これでもちゃんと成人してます!」

垣根 「そっかー」 チラッ

麦野 「何でこっち見た」

垣根 「あれ、あそこの奴どうした?」

上条 「その幻想を…ぶち殺す……」 ブツブツ

小萌 「ちょっと上条ちゃん!寝てはいけませんよー!」

一方 (上条…?) ピクッ

土御門 「カミやん、いい加減にするにゃー」

上条 「その幻想を…ぶちkいでっ!!」 ビシッ

土御門 「!?」 ビクッ

垣根 「いやー、やってみたかったんだよチョーク投げ」 パッパッ

姫神 「チョークが粉々に…」

青髪 「ぜ、全然見えへんかった…」

上条 「なっ、チョークが飛んで……?」 ムクッ

一方 「三下……」

上条 「お前、何でここに?」

小萌 「で、では皆さんは後ろの方で見学していって下さい!」

垣根 「はーい」 スタスタ

麦野 「あまりはしゃぐなよ」 スタスタ

一方 (気まずい…) スタスタ


上条 (…何で皆さん俺の後ろに集まるんでしょうか)






デハココヲヒメガミチャンニ…


垣根 「しかしあの先生、ホント小学生にしか見えねえよな」 パシャッ

麦野 「肌も小学生みたいに柔らかそう、羨ましい…」

垣根 「お前の肌って硬いのか?」 ツン

麦野 「ひゃっ、テメッ、いきなり頬をつつくんじゃねえ!!」 ビュッ

垣根 「うぉっ!?それくらいの事で怒るなよ!」 サッ

上条 (ひいぃぃぃぃ!!) ガタガタ


ウルセークソメルヘン!
ギャーギャー


青髪 「ず、随分と賑やかやね」 ハハッ

土御門 「」

小萌 「お、お静かに願いますー!」

垣麦 「「あ、すみません…」」

一方 (帰りてェ…)



ココジュウヨウデスヨー


垣根 「……」 ジー

麦野 「……」 ジー

一方 「……」 ジー

上条 (背後から視線を感じる…) ゾクッ

垣根 「お前、アイツの知り合いなの?」 ヒソヒソ

一方 「そンなンじゃねェよ」 ヒソヒソ

麦野 「じゃあ友達?」 ヒソヒソ

一方 「そこまで親しくもねェ!」 ヒソヒソ

垣根 「いいや、アイツに直接聞いてみる」 スッ

一方 「おい!」

垣根 「お前名前は?」 ヒソヒソ

上条 「か、上条当麻です」 ヒソヒソ

垣根 「お前、一方通行のこと知ってんの?」 ヒソヒソ

上条 「知ってるといいますか、戦ったといいますか…」 ヒソヒソ

垣根 「マジで!?って事はアイツに勝ったってのか?」 ヒソヒソ

上条 「まあ、なんとか……」 ヒソヒソ

一方 「チッ…」

垣根 「おい聞けよ麦野!コイツ一方通行に勝ったんだとよ!」 ヒソヒソ

麦野 「なにそれ、アンタあの人に負けたの?」 ヒソヒソ

一方 「……あァ」

垣根 「上条、もっと話を聞かせてくれ!」 ヒソヒソ

上条 「え、えっと…」

小萌 「上条ちゃーん!授業に集中するですよー!」

上条 「俺のせい!?」



―――――――――

~体育館~


ワーワー


青髪 「カミやんの色男!そのフラグ体質ボクにも分けてーな!」 ブン

姫神 「私を。見て」 ビュッ

上条 「何でみんなして俺ばっか狙うんだよ!!」 サッ

吹寄 「最近腑抜けてばかりだから喝を入れてやろうと思ってね!」 ブン

上条 「顔は危ないですよ吹寄さん!?」 ガバッ


オラー
カミジョウモゲロ!


垣根 「ドッジボールか、楽しそうだなー」 パシャッ

麦野 「女の子達、あんな端に固まってたらすぐ狙われちゃうじゃない」

垣根 「その反面、あの吹寄って子は積極的に攻めるな」 パシャッ

麦野 「私に似たものを感じるわね」

垣根 「でもあっちの方が胸とか大きいし…」

麦野 「……」 バシッ

垣根 「いって!何しやがる、上手く撮れねえだろ!」

麦野 「このスケベ」 フン

垣根 「何だよ、お前だって○○○とか□□□とか叫んでたくせにこの変態」 フン

麦野 「ブ・チ・こ・ろ・し・か・く・て・い・ね」 ピキピキ

垣根 「あんまり怒ると小皺が増えるぞ」


カァァァァァァキネェェェェ!!
チョッ、コンナトコデビームウツナ!

上条 「あの二人またやってる…」

吹寄 「隙あり!!」 ブン

上条 「へぶしっ!!」 バチーン

青髪 「顔面モロいったで……」 ウワァ

姫神 「青髪君より強いかも」

上条 「不幸だ……」

今回は以上で

チビチビとしか投下出来なくてすみません
次は水曜日の深夜頃の予定です

>>1です

途中来れなくなるかもですが投下します!


垣根 「そういえば一方通行は?」

麦野 「さあ、トイレでも行ったんじゃないの?」


~廊下~


土御門 「久しぶりだな、一方通行」

一方 「何だよ、俺を呼び出して…」

土御門 「お前はここへ何しに来たんだ?」

一方 「特に意味はねェ、アイツに引っ張られて来たンだよ」

土御門 「それに、垣根は統括理事会に『回収』されたはずだが…」

一方 「アイツが言うには『用済みになったから解放された』ンだとよ」

土御門 「……」

一方 「仮にまたくだらねェ事考えてたとしても、俺が叩き潰すだけだ」

一方 「まァ、今のアイツを見る限りじゃ、そンな事もなさそうだけどな」

土御門 「…そうか」

一方 「話はそれだけか?」

土御門 「ああ、そうだな」

一方 「じゃあさっさと戻るぞ、アイツもうるせェし」 スタスタ

土御門 「そうするにゃー」 スタスタ

土御門 (垣根帝督を戻すよう指示したのは恐らくアレイスター…)

土御門 (一応の警戒はしておいた方が良さそうだ)

土御門 (……それにしても、一方通行が仕事意外で誰かとつるむのは珍しいな)

土御門 「……『友達』ってやつが出来たのかもにゃー」 フッ

一方 「あァ?」

土御門 「何でもないぜい」


~昼休み~


上条 「――とまあ、そんなこんなで彼とは縁がありまして…」

垣根 「……ヒーローだ、ヒーローがここにいる」

一方 「……」 モグモグ

麦野 「アンタも何か言ったら?」

一方 「三下ァ…」

上条 「何でせうか?」

一方 「あの時は…世話ンなった……」

上条 「いやいや、大したことしてないって」

一方 「そンなことはねェ。オマエとのアレがあったから、俺は色ンなもンを手に入れた」

一方 「だから……アレだ…」 ポリポリ

上条 「?」

一方 「………ありがとよォ」 テレ

上条 「」

麦野 「デレた、一方通行がデレた」

垣根 「そのデレ顔頂き」 パシャッ

一方 「」

―――――――――

~放課後~


上条 「今日は余計に疲れた……」 テクテク

上条 「あの人達、一方通行の友達かな?」

上条 「カメラぶら下げてた人とか特に楽しそうにしてたなー」

上条 「……」 ハァ

上条 「あ、もうすぐ特売の時間」

上条 「行くか…」



~スーパー~


ガヤガヤ


上条 「うわ、いつにも増して争奪戦が激しいな」

上条 「この中に飛び込むか…」

上条 「……いや、今日はもう諦めよ」

上条 (前はもっと必死になってたのになー)

上条 (インデックスの腹を満たす為にちょっとでも安いものを…ってさ)

麦野 「あら、アンタは今日の…上条だっけ?」

一方 「三下ァ」

上条 「あれ、一方通行と……」

麦野 「麦野沈利よ」

上条 「麦野さんね。買い物ですか?」

一方 「いや、あのバカがどうしても行きたいって言うからよォ」

上条 「あのカメラの人?」

麦野 「ほら、あそこ」



垣根 「オラどけ!そいつは俺んだ!」 ウガー

上条 「あんなところに…」 ボーゼン

麦野 「何でも、夕方のスーパーでは『トクバイ』っていう競技が開かれるんだって」

一方 「もの買うのに何であンな必死なのか意味分からねェ」

上条 「」



垣根 「なかなかハードな競技だったぜ」 ポイ

麦野 「…牛ミンチ?」 パシッ

垣根 「そ、戦利品だ」 フン

上条 「安っ!やっぱり俺も加わるべきだったなー」

垣根 「お、上条じゃねえか」

上条 「どうも」 ペコッ

垣根 「そういや自己紹介まだだっけ?俺は垣根帝督、学園都市の超能力者第二位だ」

上条 「だ、第二位!?」

垣根 「因みにそこにいる麦野は第四位だ」

上条 「そう考えた途端に威圧感が…」

麦野 「どういう意味よ」

上条 (ということは、皆金持ちってことか)

上条 (だから特売とか知らなかったのか……畜生)

垣根 「あと、俺らに敬語は使わなくていいぞ?よそよそしいのは嫌だし」

上条 「そうで……そうか、分かった」

垣根 「よし、今日からお前も友達だ!」

上条 「と、友達?」

垣根 「当然、コイツらとも仲良くな!」

麦野 「垣根に振り回される奴がまた1人増えたわね」

一方 「三下と…友達だァ?」

上条 「よ、よろしく…」 ハハッ

垣根 「この肉、手に入れたのはいいけど何に使うんだ?」

上条 「何にって、代表的に言えばハンバーグとか…」

垣根 「お前料理出来る?」

上条 「まあ、それなりに」

垣根 「なるほど、じゃあ今からハンバーグの食材でも買うか」

上条 「俺が作るの!?」

垣根 「俺料理出来ねえし、肉が勿体ねえじゃん?」

一方 「ファミレスのばっかじゃ飽きるしなァ」

麦野 「今日は上条の家で食べましょ」

垣根 「金は俺が出すから安心しろ」

上条 「俺の意思は!?」

垣根 「さて、買い物かご取ってくるか」 スタスタ

一方 「諦めろ、アイツと『友達』になったのが運の尽きだァ」

麦野 「私で良ければ手伝うわよ?」

上条 「不幸…なのか?」







垣根 「具体的に何がいるんだ?」

麦野 「玉葱、ニンニクとか……」


コレカ?
ソウ、ソレト…


上条 「皆仲がいいんだな」

一方 「何言ってやがる、麦野は知らねェが俺は嫌々付き合わされてンだよ」

一方 「ったく、朝っぱらから家に押し掛けて来やがって…」 ブツブツ

上条 「でも、本当に嫌だったらお前なら抵抗するだろ?」

一方 「呆れて抵抗する気も起きねェよ」

上条 「そっか」 クスッ

一方 「オマエは今どうしてンだ?」

上条 「特に何も、いたって普通の学生生活を送ってますよ」

上条 「普通の……」

一方 「?」

垣根 「…こんなもんか」

麦野 「そうね、じゃあ会計行くわよ」

垣根 「お前らは先に外で待っててくれ」

一方 「行くぞ三下」 スタスタ

上条 「あ、ああ」

―――――――――

~上条宅~

垣根 「これがお前の家かー」

一方 「狭い」

上条 「どうせ上条さんは貧乏学生ですよ」

麦野 「早速キッチン借りるわね」 パタパタ

上条 「あ、いいよ。俺1人で出来るから」

麦野 「いいから手伝わせなさい」

上条 「悪いな、じゃあ二人は適当に寛いでくれ」 パタパタ

一方 「おォ」

垣根 「期待してるぞ、上条シェフ」 グッ



―――――――――


上条 「こうして誰かに料理を作るのは久しぶりだな」 ニチャニチャ

麦野 「私も、一時前は家に友達呼んでパーティーみたいな事してたっけ」 ザクザク

上条 「自分の料理で『美味しい』って言って笑ってくれる瞬間はたまりませんよ」 ニチャニチャ

麦野 「分かる!心の中でガッツポーズとかしちゃってねー」 ザクザク

上条 「同居人が食いしん坊ってのもあって、やりくりが大変だったな」 コネコネ

上条 「特売やタイムセールにはいつも行って、色々と工夫してさ」 コネコネ

麦野 「アンタ学生のくせに同棲してたの?」 キャベツハコンナモンカ

上条 「成り行きで…」 アリガトウ

麦野 「アンタ、後先考えずに行動しちゃうタイプでしょ?」 ツギハソースヅクリネ

上条 「仰る通りです…」 オオキサハコレクライカナ?

麦野 「ダメよ?あんまりそういう事してるといつか痛い目みるわよ」 ケチャップトソースト…

上条 「十分過ぎる程味わったよ」 サテ、ヤクカ

上条 「でも、一度も後悔はしたことなかったな」

麦野 「どうして?」

上条 「どんなに辛い目に遭っても、最後には皆笑ってくれるからさ」 ジュー

上条 「やっぱ、人間笑顔が一番に決まってる!」

麦野 「アンタも垣根みたいな事言うのね」 ヨワビデ5フングライ…

上条 「垣根とはいつから友達に?」 ミズイレテフタヲシテ…

麦野 「ついこないだよ。正直、それまでアイツのこと嫌いだった」

上条 「今とは随分違うんだな」

麦野 「でも、アイツのお陰で大事なものを取り戻すことが出来た」

麦野 「アイツには感謝してるよ」

上条 「それで垣根が好きになったって訳か…」

麦野 「ま、まあ、みる目は変わったわね」


グツグツ…


麦野 「久しぶりってことは、同居人は今帰ってないの?」

上条 「アイツは1ヶ月前からイギリスに行ってて、いつ帰ってくるかも分からない」

上条 「生活は前より楽になったけど、楽しくなくなったな」

上条 「寂しいんだろうな、きっと……」

上条 「お、もう出来たみたいだ」 パカッ

麦野 「じゃあ皿とか用意するね」

上条 「頼むよ」




麦野 「お待たせ」 コトッ

垣根 「おお~、いい香りだ~」

一方 「……」 ゴクリ

上条 「これで揃ったな?それじゃ…」

「「「「いただきます」」」」



垣根 「うん、美味い!」 モグモグ

一方 「やるじゃねえか」 モグモグ

麦野 「アンタ、ホント料理上手ね」 モグモグ

上条 「そう言って貰えると嬉しいよ」

垣根 「誰かの手料理なんて何年ぶりだろうな」

垣根 「何かこう……温かい?幸せな気分になる」

上条 「幸せ?」

垣根 「料理と一緒に愛情も貰ってるように思えてよ」 モグモグ

垣根 「お前の愛情、しっかり受け取ったぜ」 キリッ

上条 「自分で言ってて恥ずかしくないか?」

一方 「キメェ」 モグモグ

垣根 「うるせぇ!俺は愛情に飢えてんだ!」

垣根 「お前みたいに愛情に囲まれてる奴には分からねえよ」 ヒョイパクッ

一方 「あ、何しやがる!」

垣根 「もっと愛情をくれー!」


ギャーギャー


麦野 「食事中ぐらい静かにしなさいよ」 ハァ

上条 「そういう麦野だって、授業中垣根とあんなことしてたぞ?」

麦野 「…思い出したら恥ずかしくなってきた」






垣根 「いやー美味かった」

一方 「これからはたまに三下の家で飯食うかァ」

麦野 「それいいね、次はもうちょい豪華なもの作ろうか」

上条 「アイツがいたら大喜びしただろうに…」 ハハッ

垣根 「アイツ?」

一方 「あのシスターのことか?」

麦野 「シスターって…女の子だったの?」

上条 「そ、そうなんだ」

垣根 「その歳で女と1つ屋根の下とは、やるな上条」 ホウ

麦野 「で、その子とはどこまでいったの?」

上条 「ちょっとちょっと!上条さんはそんなことしませんよ!?」

垣根 「年頃の男ともなれば何もないはずがない!」

麦野 「私が男だったら間違いなく押し倒すわね」

垣根 「神聖なるシスターを穢す……まさに幻想殺しだな」

上条 「だーかーらー!一方通行も何とか言ってくれ!」

一方 「何か…スマン」

上条 「不幸だー!!」







垣根 「――そりゃ、寂しくもなるわな」

上条 「でも、今日は皆が来てくれたから楽しかったよ」

垣根 「……」 ウーン

垣根 「あ、そうそう!」 ガサガサ

上条 「どうした?」

垣根 「お前らコレ知ってるか?」

一方 「…ハッピーターン?」

麦野 「お菓子みたいね」

垣根 「そう、これがまた美味いんだって」

上条 「変わった名前だな」

垣根 「よくぞ気付いてくれました!これはその名の通り、“幸福が帰ってくる”お菓子だ」

垣根 「“幸福よ帰ってこい!”って念じながら食べると、ホントに叶うかもしれないぜ?」

麦野 「なにそれ」 プッ

一方 「メルヘンが考えそうなことだァ」

上条 「ここは科学の街ですよ?」

垣根 「信じることに意味があるんだよ!いいからやってみようぜ……」

―――――――――


すっかり日も暮れ、部屋に居座るのは冷えた空気と暖房の熱

――今日は珍しく楽しい1日だった

これまでぼーっと過ごしていた自分が嘘のように生き生きしてたんじゃないか?

久々に増えた洗い物を済ませながら、こんなことを呟く

上条 「帰ってくるのかな…」

あの“おまじない”は効果があるのか?

半分ジョークでやってみたが、もっと真剣にやった方が良かったか?

今まで散々不幸な目に遭ってきたんだから、幸せの1つや2つ帰ってきても……



ピンポーン



暖房の乾いた風の音に覆い被さるように、チャイムの音が鳴り響く

上条 「こんな時間に?」

時計の短針は8の数字を、長針は4を指していた

洗い物を中断し、タオルで手を拭くと玄関へ急ぐ

隣に住んでる土御門かな?等と思いながらドアノブに手をかける

上条 「どちらさんで……」


扉を開けると、目の前にあったのは白――



雪が降るにはまだ早い時期なのに、そこは白かった

上条 「………え?」


――ビックリした?




その声は白から発せられた

同時に、上条の止まった思考の歯車が再び回りだす

聞き慣れた声、白をその身に纏う銀髪碧眼の少女

例えるならそう、シスターのような……






「お腹すいたんだよ、とーま」



幸福<インデックス>が帰ってきた――


イントラダクトさんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

今日はこれまで

なんとか間に合って良かった~
この一方さんはツン要素が少ないかも
次回は土曜日にでも

インダストリアルさんが帰って来るとは

>>332
>>334-338
そっちにイノケンさん行ったぞ

では投下いきます

―――――――――
―――――
―――



――素晴らしい!



この数値、まさしく本物だ!



レベル5と言っても過言ではないぞ



さて、能力名を決めなければな……



この世に存在しない物質



――『未元物質』<ダークマター>なんてどうだろう?



おめでとう垣根君。君は今日から『未元物質』を持つ超能力者だ



次からは君の能力を最大限に発揮できる場所へ招待しよう



光栄に思うがいい、『未元物質』――――

―――――――――
―――――
―――

11月29日(月)


――寝覚めは悪かった

昨日夜更かししすぎたせいか、あんな夢を見たせいか、己の頭に巣食う『未元物質』のせいか……

朝の気温はおよそ6℃、本格的に寒くなってきた

布団の温もりを手離すのが辛い、しかしずっとこうしてる訳にもいかない

彼は意を決して、その身体を冷えきった空間へ投げ出した

寒さに身を震わせながら、日光を得る為にカーテンを開ける

……空は灰一色だった

今の彼の気分を絵に描いたような天気に、益々げんなりする

良い事は長く続かないものだ。その通り

寧ろ、ここまで良い事ずくめだったのが不思議なくらいだ

暖房のスイッチを入れ、顔を洗いに洗面所へ向かう

……何とか気分を直せないか

歯を磨きながら、このもやもやを晴らす方法を模索する

今日は誰にも会えない日

ウニ頭のアイツは学校、華奢な身体のアイツは1日病院で検査、男勝りなアイツは他の友達とお出かけ…

なんともつまらない日だ

顔をぬるま湯で濡らし、すっかり目も覚めたところで、1つの手段を見つけ出す






―――――――――


やはり平日の昼間ともなると、人影は少ない

結局彼が導き出した方法は、とりあえず外へ出ようというものだった

こういう日は良くないことが起きると相場は決まっている

かといって家でゴロゴロしているのもつまらない

何より、貴重な1日を無駄にしたくなかった

こうして外を歩いていると何かに遭遇するやもしれん

それが良い事であれ悪い事であれ、何もないよりかはマシだ

垣根 「今日はどうすっかな…」

いつもより静かな通りをぶらぶらと歩く



そして彼は出会う――


自ら刻んだ歴史の足跡と――



―――――――――

~とある高校~


青髪 「いつものカミやんに戻ったねー」

上条 「そっかー?」 ニマニマ

土御門 「いや、逆に変になったぜよ」

上条 「そんなことないってー」 ニマニマ

土御門 「1日中机に突っ伏してたかと思えば、今度は1日中ニヤニヤしてるにゃー」

土御門 「これが変と言わずして何と言う?」

上条 「いやー土御門、幸せってのは案外すぐ近くにあるもんだなー」

土御門 「は?」

上条 「無くしてから初めて、あれは俺にとっての幸せなんだってのに気付いてよ」

上条 「俺、今が物凄く幸せ」

土御門 「」

青髪 「あ、あのカミやんが、“幸せ”って……」 ガタガタ

土御門 「何があったぜよ……?」

上条 「それがさ――!」








青髪 「――あのシスターちゃんがねー…」

上条 「イギリスの方も大分落ち着いてきたから帰れるようになったってさ」

土御門 「それで有頂天になってたと…」

上条 「ビックリしたのがよ、インデックスの奴向こうで料理の修行までしてたらしくて…」

上条 「最初は心配だから横で見てたんだけど、手際が良いのなんの!」

上条 「『とーまに少しでも恩返しがしたい』なんて言ってさ、上条さんは涙が出そうでしたよ」


ソレニ、アンナコトヤコンナコト…


土御門 「こいつは、今までの反動かにゃー?」

青髪 「どないしよ、ちょっとイラついてきたわ」 ピクピク

上条 「土御門、舞夏と過ごせる日々を大事にしろよ」 キリッ

土御門 「あ、ああ…」

上条 「幸福だーーー!!」 ガタッ

青土 「「!?」」 ビクッ


オイ、カミジョウガコウフクッテ…
セミガナクカモナ…


上条 「一度言ってみたかったんだよなーこの台詞」 スッキリ

土御門 (流石にちょっとウザイかもにゃー…)

青髪 (1発殴ってええかな?)






―――――――――

~映画館~


絹旗 「この映画超オススメですよ!」

絹旗 「撮影に使ったのはデジカメと写真だけで、登場人物も5人と超低予算で出来た作品です」

麦野 「随分凝った作りね」

絹旗 「にも関わらず、その完成度の高さにリピーター続出のいい映画なんです!」

絹旗 「私もこれで4回目ですよ」

浜面 「よく飽きないな」

絹旗 「分かってませんね浜面、映画を超楽しむには最低3回は見ないといけません」

絹旗 「1回目は映像を楽しみ、2回目に内容の考察、その上で3回目を見るのがいいんですよ」

浜面 「はあ…」

絹旗 「ま、超浜面には言っても無駄でしょうけど」 ヤレヤレ

滝壺 「きぬはたがいつになく熱いね」

麦野 「それだけ言うんだから、余程面白い作品なんじゃないの?」

浜面 「でもこれまで勧められたやつが面白かったためしがないぞ?」

絹旗 「今回は段違いに超いい作品なんです!」


ブー


滝壺 「あ、そろそろ始まるよ……」






―――――――――


絹旗 「……」 グスッ

滝壺 「すごい作品だったね」

麦野 「ええ、正直嘗めてたわ」

浜面 「反則だろあの演出…泣けるじゃねえか」 グスッ

麦野 「浜面キモい」

浜面 「ひっでぇ!」

絹旗 「余命半年を宣告された主人公が最期の思い出作りに励む…何度見てもいいです」

滝壺 「最初から最後までずっと笑ってたね」

浜面 「あの主人公は本気で楽しんだんだろうな…」

麦野 「……」

絹旗 「どうしました?」

麦野 「ん?ああ、何でもないわ。ちょっと内容を思い出してただけ」

麦野 (あの主人公の性格、何となくだけど…)






麦野 (……垣根みたいだったな)


―――――――――

~とある病院~


一方 「あークソッ、何度やっても慣れねェな……」 グデー

打止 「チョーカーの調整中は何も出来ないしね、ってミサカはミサカはあなたに馬乗りになりながら言ってみたり」

一方 「いい加減降りろクソガキ」

打止 「え~もうちょっといいでしょ?ってミサカはミサカは必死にしがみついてみたり!」 ギュー

一方 「あァもう暑苦しい!!降りろってンだよ!」 グイグイ

打止 「ちぇ、折角あなたと触れ合ういい機会だったのに、ってミサカはミサカは渋々降りることにしてみる…」 ブー

番外 「イチャイチャは終わったかな?」 ガチャ

一方 「テメェ、俺が動けないのをいいことに好き勝手しやがって…」 ピキピキ

番外 「何よ、顔にちょっと落書きしただけじゃない。油性ペンで☆」 ギャハ

一方 「後で覚えてろよ……」

番外 「や~ん、こんなことで怒らないでよ~」 ヘラヘラ

打止 「最近相手してくれないから寂しいんだ、ってミサカはミサカは番外個体の本音を代弁してみたり」

番外 「そんなんじゃないしー!この頃もやしが外出ばっかでつまんなかっただけだしー!」

打止 「それを寂しいって言うのよ、ってミサカはミサカは素直じゃない番外個体を生温い目で見てみたり」 ジー

番外 「あーもううるさい!!」

冥土帰し 「お疲れ様だね?」

打止 「あ、冥土帰しのおじさん!」

一方 「次から調整は俺1人で行く」

番外 「だったら尚更ついていかないとね☆」 キャピ

冥土帰し 「余程彼が気に入ったようだね」

番外 「そうなの、こんなに弄りがいのある人はそうそういないから!」

打止 「全くー、ってミサカはミサカは相変わらずの様子に呆れてみる」

一方 「……いちいち言い返すのも面倒だァ」

打止 「あなたもすっかり丸くなったね!ってミサカはミサカは母親目線で言ってみたり!」

番外 「俺も、ずっと一緒にいたかった…」 キリッ

一方 「コイツらを部屋から追い出せェ!!」




一方 「……ったく、これじゃおちおち調整にも行けねェな」

冥土帰し 「満更でもないように見えたけど?」

一方 「ンな訳あるか!こっちはされるがままなンだよ!」

一方 「まァそれはさておき、最近俺を巻き込むバカが出来てよ」

冥土帰し 「友達のことかい?」

一方 「……そいつの変わりようが異常でなァ」

一方 「過去に一度八つ裂きにしたってのに、何事もなかったかのようにヘラヘラしてやがる」

一方 「恨みこそすれ、俺のことを『友達』だと…?」

冥土帰し 「君がきっかけを与えたんじゃないかね?」

一方 「俺が…?」

冥土帰し 「君があの少年に得たように、その人もまた君に同じものを得たんじゃないかな」

一方 「そンなことした覚えねェけどな。寧ろ、全部奪ったってのが正しい」

冥土帰し 「今が、その証明にならないかね?」

一方 「どうだか……」

一方 (そういう俺も、アイツのせいで色々変わっちまったけどなァ…)

今日は以上です

垣根くんの声が森田成一で再生される夢を見ました(特に意味はない)
次回は水曜日辺りに

こんばんは、>>1です

ageたのに上がってなかったのは何故だろう?

では投下いきます

―――――――――


つまらん、実につまらん

1人でファミレス・1人でゲーセン・1人でカラオケ……粗方やってみたが、ちっとも楽しくないぞ

それどころか、余計孤独感に苛まれるではないか

時刻は午後4時、学生達が帰宅で賑わう時間帯だ

現に、それまで人も疎らだった通りは学生で溢れかえっている

今なら大丈夫かと思い上条に電話してみたが、補修で学校に残らなければならないとのこと

なんだよ、結局今日は1人きりか

空を見上げれば、相変わらず不機嫌そうな色をしている

喧騒の中、彼の脳裏には孤独の2文字が浮かび上がる……

だんだんいたたまれなくなってきた彼は、堪らず路地裏へ逃げ込むように向かった

明日絶対アイツらに付き合って貰うからな、等と子供染みた事を考えながら……







先程とは打って変わり、路地裏は薄暗く不気味なくらい静かだ

光の届きにくいここでは不良や無能力者達の武装集団『スキルアウト』という組織が活動している

故に、一般の学生が好んで路地裏を通ろうとはまず思わない

垣根は歩きながら、少し懐かしむように思い出す


――かつてはここが自分の『世界』だった

それも、不良やスキルアウトが可愛く思えるような、もっと深くどす黒い『世界』

最初に足を踏み入れたのは幾つの時だったか……

垣根帝督ではなく『未元物質』と呼ばれるようになったのもその時からだと思う

その日以降、実験を繰り返しながら“悪党退治”をする毎日だった

初めは自分の境遇が誇らしく思えた

他人より十歩も百歩も抜きん出て、正義のヒーローみたいな事もやってのけるのだから

只、自慢出来る友達が1人もいなかったのが残念だ

それでも正義の為なら仕方ないと割り切れる

悪い奴なら幾ら殺したって構わない。そう思うと血に塗れるのもすぐに慣れた

彼に敵う者などなく、やがて『世界』の住人からも恐れられるようになった

自分は選ばれた存在なんだ。そう信じて疑わなかった彼は学園都市の更なる深みを知ろうとする







彼は知ってしまった――



そしてあの日に繋がる――



ここで回想を中断し、垣根はピタリと足を止めた

……人の気配、それも殺気を帯びたものだ

この一本道を歩く者は彼1人……つまり、垣根に向けられたものだろう

静寂が耳鳴りでうるさく感じるこれも久しぶりだ

垣根は直感する……これは『世界』の住人だ

垣根 (どこのどいつだ……?)

過去の経験から、恨まれる相手など星の数程いるから判別出来ない

それでも大雑把に相手を割り出そうと思考を巡らしていると


ジャリ……


靴底とアスファルトが擦れる音がした

音の方向、手前右側の曲がり角からより濃い気配を感じる

やがてその気配はコツコツと足音をたて、垣根の目の前に現れた

「……アンタ、俺を覚えてるか?」

同い年に見える黒髪短髪の、赤いパーカーを着た少年が問いかける

垣根 「……いや」

はっきり言って何も、と付け加える

やはり……と言いたげに、少年はため息を漏らした

事実、垣根には目の前の少年が初対面にしか思えないのだ

だが相手は自分の事を覚えている。という事は、過去に面識があるのだろう


「教えてあげようか?」


少年とは違う、誰かの声がした

声の主は垣根の背後2M辺りに立っていた

どうやら挟まれたらしい

それでも彼に焦りの色は微塵もなかった

垣根は首だけ動かし姿を確認する

その姿は金髪を横に1つ括りにした15歳くらいの華奢な少女

やはりこれも、彼には覚えがなかった

少女は不適な笑みを浮かべながら話す

少女 「私達は昔あなたに潰された名もなき暗部組織の一員よ」

垣根が記憶している組織は『グループ』『アイテム』『メンバー』『ブロック』の4つ

これらは抗争の時、特に表立って行動していた組織だ

暗部組織はこれら以外にも存在するらしいが、流石に把握しきれていない

その把握しきれていない組織のいずれかに彼女らはいたという事か

しかし、1つだけ気になる事が……

垣根 「名もなき暗部組織…?」

暗部組織には必ず組織名が与えられるのだが、少女は“名もなき”と置いている

ちっぽけという意味での例えだろうか?

少女は笑みを浮かべたまま答える

少女 「ええ、文字通り名もなき暗部組織よ」






少女 「――だって、結成する前にあなた達『スクール』に潰されたんだから」

そう言った瞬間、少女の笑顔が消えた

少年 「……俺達『置き去り』は小さい頃から実験動物として扱われてきた」

少年 「身寄りのない存在だったから、それは酷いものだったよ」

置き去り<チャイルドエラー>……いわゆる孤児だ

学園都市はこの置き去りを使って様々な実験を行ってきた

その大半は実験の影響で死に、生き残ったとしても廃人のようになってしまうのが殆どだ

2人はその中でも数少ない“正常な”生き残りらしい

少年 「俺達は仲間と共に、いつか学園都市に復讐する事を決意した」

少年 「そこで利用しようと考えたのが暗部組織だ」

学園都市の側に忍び込み、奴らに協力しつつ情報を集めていく

そして全ての準備が整った時、行動を起こそう――

何とも単純な内容だった

無骨で不安定で、それでいて信念を感じ取れる……

正直、不可能なのかもしれない

それでもやってみよう




暗闇の中に見つけた微かな光――



仲間がいれば、きっとうまくいく



そう、思っていた……



少年 「……でも駄目だった」

少年の声が僅かに震える
少女 「私達の計画が誰かに知られたらしく、すぐ鎮圧部隊が現れたわ」

少女 「それがあなた、垣根帝督がリーダーを務めていた『スクール』よ」

ここまで言われてようやく、朧気ではあるが過去の記憶を思い出した

垣根 (確か、俺が全てを知る前……)

垣根 (学園都市を脅かす危険分子を排除するって仕事があったような……)

垣根 (ターゲットは4人で、相手をしたのは俺1人……)

曇りガラスが晴れるように、記憶が鮮明に映し出されていく

少女 「レベル4相当が4人掛かりだってのに、あなた1人に何も出来なかった」

少女 「そして仲間2人は私達を逃がす為に囮に……」

少年 「あの時のアンタの顔、一度たりとも忘れた事はない…!」



何の興味も持たない顔だった……



俺達の事なんて初めから見ちゃいない



そんな奴に、俺達の仲間は、俺達の光は――!



少年の両手に紅き火が灯る

その両手を広げると、激しい轟音・閃光と同時に少年の周囲は一瞬で火の海と化した

燃え盛るそれは、まるで彼の内なる怒りを具現化した様

垣根 (発火能力か、レベルは4ぐらいってとこか……)

垣根は火の海の中の少年を見据える

熱によるものか、表情は酷く歪んでいた

少年 「アンタが奪ったんだ!俺達の光を!同じ『世界』の住人であるアンタが!!」

怒りを露にした少年が垣根に向けて炎を一直線に放つ

…やはりこうなってしまったか

そう簡単に『闇』から抜け出せる筈もない

外出したことをほんの少し後悔し、垣根は臨戦態勢をとる



……だが



以上です

あくまでモブキャラのつもりで書いたけど大丈夫かな…?

次回は火曜日にでも

何か規制がかかって夕方に顔出せなかった…

これから用事があるんで投下は夜中になります

…と思いましたが、やっぱり間に合うかもしれませんので投下いきます

垣根 「チッ、やるしか……っ!?」

異変を感じた垣根は、咄嗟に攻撃を右へかわした

垣根 (どういう事だ…?)

異変を確かめる前に、今度は後ろから電撃が迫る

すかさず未元物質を展開、電気を通さない物質を生成し、これを防ぐ

垣根 (あっぶねー…)

心の中でほっと胸を撫で下ろした

少女 「流石『未元物質』ね……」

軽く舌打ちをする少女の身体からは、パチパチと静電気が走る

垣根 「こっちは発電能力か…」

先程の威力・精度からしてこちらも大能力者<レベル4>だろう

垣根 (しかし、ちょっとまずいかもな……)

普段の彼であればこれくらいの状況どうとでも出来る

だが、どうにも様子がおかしい



垣根 (能力がうまく使えねえときた……)



少年の炎を防ごうとした時、何故か能力が発動しなかった

あの瞬間、垣根の脳内では不思議な出来事が起きていた

能力を行使する為に行った演算が、突然別の演算に切り替わったのだ

垣根 (……ここに来てコイツが邪魔するかよ)

それは垣根が人の姿に戻った時からある謎の演算

恐らく、自分の脳のあれと関係しているのか…

少女 「でも、今度はあの時のようにはいかないわ!」

少年 「許さない!アンタは俺達が必ず殺す!」

前後から同時に攻撃が放たれる

またいつあんなことが起こるか分からない

こんな不安定な状態での戦いは短く済ませるに限る

垣根 「一瞬で終わらせてやるよ!」

翼で攻撃を防ぎ、そのまま前へ飛び出した

まずは発火能力者からだ

少年 「…っ!!」

凄まじい速さで迫られ、彼は完全に反応が遅れた



――勝算は著しく低いだろう

そんなことは分かってる

だが、やらねばならないのだ


何としても、垣根帝督と戦わねばならない


仲間の、俺達の無念を晴らす為に

……なのに、もう終わりか?



少年 (畜生……!!)

1枚の翼が振り下ろされ、それによって生じた烈風が周囲の炎を吹き消す

少年は死を覚悟し、グッと目を瞑った




……



少年 「……?」

攻撃が来ない?

恐る恐る目を開けてみると、眼前には憎き仇の顔

それも、呆気にとられたような間抜けな顔だ

少女 「――――!!」

少女の声で我に帰ると、瞬時に後方へ跳んで垣根と距離をとる

よくよく見れば、垣根の背中から翼は消えていた

少年 「……俺達をおちょくってるのか!」

なめられてると思った少年は奥歯を軋ませ、垣根に迫る

同じく少女も垣根を挟み撃ちにせんと走り出した

垣根 (またかよ…!こないだまで何ともなかったってのに!)

また演算が切り替わった

再度演算を組み直そうとするがどうもうまくいかない

その間にも、二人は垣根との距離を縮めていく

垣根 (クソッ!)

切羽詰まった彼は少年が通ってきた通路へ逃げ込んだ

少年 「逃がすか!」

後を追おうとする少年を、少女は引き止めた

何だよ、と血気に逸る彼を落ち着かせながら彼女は疑問を口にする

少女 「彼、何だか様子がおかしくない?」

言われてみれば、垣根の挙動に幾つか不審点がある

1つ目、最初に放った炎を彼は“避けた”事

彼の能力を持ってすれば、あれくらい防ぐのも容易いだろうに

現に2回目の攻撃は能力で防がれている

2つ目、彼が目前まで迫っておきながら寸でのところで攻撃しなかった事

最初はなめられていると思ったが、彼の表情を思い出せばそうとも言いにくい

攻撃しなかったのではなく、“出来なかった”……?

少年 「……言われてみれば確かに」

少女 「もしかしたら、うまく能力を発揮出来ないでいるんじゃないかしら」

少年 「どうして?」

少女 「それは分からない、でも……」






これはまたとないチャンス――









……状況は良くない。逆に悪化しつつあった

あれから何度も試みたが、その度に演算が切り替わり、能力の使用を阻止されてしまう

仮に演算に成功したとしても、持続出来るのはおよそ0.5秒。さっきよりさらに短くなった

垣根 「ハハッ、こりゃ参ったぜ」

余裕のない笑みだ。内心焦っているのだろう

(一方通行戦を除き)彼は初めて“窮地”というものに立たされたのだ

これまでどんな能力者がどんな人数来ようと、翼を1振りするだけで退けてきた

未元物質という比類なき力が彼の武器であり鎧である

それを持たない垣根帝督は只の人……

ましてや相手は大能力者2人、半ば無能力者となった彼じゃ分が悪い

なら答えは1つ……



垣根 「逃げるしかねえよな…」



あの学園都市が誇る超能力者第二位が逃げる事を決意した

理由は簡単、まだ死ねないから

彼を知る者達からすれば信じられないことだろう

今の垣根にはやるべきことが沢山ある

プライドもへったくれもない、何としてでも死ぬ訳にはいかないのだ

そうと決まれば早くこの薄暗い路地裏から出よう、と足を動かそうとした瞬間

垣根 「…っ!!」

強い殺気を感じ、垣根はすぐさま後ろへと下がる

その刹那、垣根の目の前を横一線に巨大な火柱が駆け抜けた

視界を埋め尽くす紅はコンクリートの壁を突き破り、数秒前まで居た空間を焼き払う

もう見つかったのかと思うのも束の間、壁に空いた穴からあの少年が飛び出してきた

少年 「チッ、避けられたか」

表情は相変わらず怒りに満ちていたが、いくらか冷静さを取り戻しているようだ

少年 「アンタ、実は今能力がうまく使えないんじゃないのか?」

垣根 (おいおい、もう気付かれたのかよ)

図星をつかれ僅かに動揺するも、それを決して表に出さずに余裕の表情を浮かべる

垣根 「そう見えるか?」

少年 「これからそれを確認する」

そう言うと少年は演算に集中する

そして通路を丸ごと呑み込むように、高さ3Mもの火の津波が轟音を響かせ垣根を襲う

垣根 (マジかよ!)

この一本道に逃げ場はない。これをやり過ごすには能力を使う他ないが……

垣根 (頼むぜ俺…!!)







火の津波が押し寄せた後の通路には焦げ臭い匂いが漂う

少年は焼け跡に死体が転がってないか歩きながら探していた

殺したいと思う反面、これくらいで死なれては困るとも思うから訳が分からない

一体どっちなんだと自分に問いかけるが、答えが出る前にあるものを見つける

少年 「これは……」

壁にポッカリと空いた直径2M程の穴

中の物置小屋は突風が来たかのように荒れ果て、その奥にも同様の穴が見られる

少年 「ここから逃げたか」

どうやら難を逃れたらしい

しかし、同時に確信する

少年 「アイツはまともに戦える状態じゃない……!」



垣根 「…こりゃマジでヤバイな」

危なかった……

間一髪能力が発動し、消えるまでの間に壁を突き破って逃れることが出来た

何故その一瞬の間に攻撃しなかったかと言うと、その行動にはリスクが大きかったからだ

2人の距離は然程なかったものの、0.5秒も保っていられる保証はどこにもない

突っ込む間に能力が途切れたら、その瞬間身体は消し炭にされてしまう

それよりも隣の壁を壊して避難する方が幾分生存率は高い

垣根 「もうすぐ夜か」

冬場は日が沈むのが早いこともあって、辺りは更に暗くなる

早いことここから抜け出さねばと自らを掻き立てる

表通りに出れば、向こうも迂闊に手は出せない筈……

彼の最優先事項は生き延びる事

その為には何とかあの2人から逃げ切らなければならない

垣根 「どうやら、認めざるを得ないようだな……」


垣根帝督は今、2人の人間に追い詰められている――


「――気分はどう?」

正面にあの少女が立っていた

少女 「あの時と逆の立場に立った気分は」

カツ…カツ…と靴音を響かせながらゆっくりと歩み寄る

垣根 「あぁ、今まで味わった事のないスリルを堪能してるよ」

少女 「…その余裕、いつまで続くかしらね」

あくまで余裕さを見せる垣根に少女は少し苛立つ

少女 「知ってるのよ、あなたは今まともに戦えないことは」

垣根 「確かに、女が相手だとまともに戦える訳ねえよな?」

直後、5つもの雷の槍が一斉に投げ出される

垣根はそれをどうにかかわすと、少女とは反対方向へ走り出した

少女 「逃がさないわ!」

少女は垣根を追いかけながら雷撃を飛ばし続ける

それをかわし、たまに能力で防ぎながら迷路のような路地裏をひたすら駆け抜ける

少女 「あなたが学園都市に反旗を翻したのには驚いたわ。同じ事を考えてた私達を叩き潰したってのにね!」

少女 「そして失敗し、あなたが死んだと聞いた時は絶望した…」

少女 「だって、私達の生きる意味を失ったんだもの」

2人は垣根への復讐のみを考えて生きてきた

その意味では、垣根帝督の存在は2人にとっての生きる希望なのかもしれない

「――そしてこの間、街を歩くアンタを見掛けた」

突如、目の前の道が炎で遮られる

そこには少年の姿があった

垣根 「チッ!」


すぐさまもう1つの道へ切り替える。今度は追手に少年が加わった

少女の雷と少年の炎が床を焦がし、壁を抉り、暗い路地裏をチカチカと照らす

少年 「まるで『表』の人間みたいに笑ってるアンタを見た時は気が狂いそうになった」

少年 「俺達の光を奪ったアンタが、同じ事を考えてたアンタが、ヘラヘラしてるのが許せなかった!」

少年 「あの時確信したよ、俺はアンタを殺さなきゃ前に進めないってな!」



だから絶対逃がさない、どこまでも追いかけてやる



これが、俺達が見つけた新たな光だ――



垣根 「……」

垣根は火と電撃の嵐を潜り抜けながら考える

垣根 (その気はなかったにしても、コイツらをこんなにしたのは俺だ)

垣根 (俺はコイツらに責任を取らなきゃならないんじゃねえのか?)

垣根 (俺が逃げるのは違うんじゃねえのか…?)

ここに来て垣根は自らの行動に疑問を抱きだした

今の彼が生き延びるには2人から逃げる必要がある


だが、本当にそれでいいのか?


次に会った時も逃げるのか?


だがここで足を止めたら自分が死ぬかもしれない


折角のチャンスを無駄にしてしまう


俺はどうすればいい?どうしたい?

俺は……






以上です
消えた瞬間は心が折れかけました

つぎは金曜日か土曜日で


なんかレイヴのレイナの過去を知ったムジカみたいになってるな・・・ていとくん・・・・

応援のレスありがとうございます!

>>417
私もレイヴ好きです、でも意識は全くしてません

では投下いきます







垣根を追っていた2人は異変を感じ、足を止めた

少年 「…どういうつもりだ?」

少女も怪訝な顔で垣根を凝視する



彼が走るのを止めたのだ



少女 「諦めたの?」

垣根 「……そうだな」

振り返った垣根からは、今までの余裕さはなかった

垣根 「逃げる訳にはいかねえよな」

少女 「……そう」

それだけ聞くと、少女は演算を始めた

不倶戴天の敵、垣根帝督を確実に殺す為に威力や範囲を綿密に計算する

態度を一変した垣根に拍子抜けした少年も続いて演算に集中

己の持てる力を、ありったけの憎しみと共にぶつけてやる

上空に灯る火が雷を纏いながらみるみる肥大化していく

歪に揺らめくそれはやがて形を整え、高密度の球体となった

その圧倒的な様は『太陽』と呼ぶに相応しい

高揚する気持ちを押し殺しながら、少年は垣根に懺悔を促す

少年 「最期に言い残すことはあるか?」

返事はない……

ここまで来て謝罪の1つもないとは、とんだ神経の持ち主だ

そう思うと、更に殺意が込み上げてくる

少年 「…ならいい」

少年は垣根の懺悔を諦め、裁きを下す事にする



これで終わるんだ――



今度こそ光を掴む事が出来る――



「「死ね!」」

小さな太陽が、裁きの鉄槌が、2人の憎悪が、垣根帝督に振り下ろされた



世界がスローモーションのようにゆっくりと流れる――

二度目となるこの妙な感覚、これが何を意味するかはもう分かっていた

垣根 (まるであの時の俺を見てるみたいだ…)

あの2人は己の歴史が作り上げた産物であり、己の過去そのもの……

それが今、自分のつけた足跡を辿って目の前に立っている

逃げ切れる訳がない、逃げてはいけない

彼が出来るのは、己の過去を受け入れるのみ



ならば――



垣根 (死んで逃げる訳にはいかねえよな…!)



そうだろ、垣根帝督――!!






―――――――――


――表通りは騒ぎになっていた

突然、路地裏の方で大きな爆発音が鳴り響いたのだ

通報を受けた警備員<アンチスキル>が周囲を封鎖し、野次馬達を寄せ付けないようにする

直に原因を調査しに現場へ乗り込むようだ

「何だあれ?」

ざわつく野次馬の多くがあるものに目を奪われていた

「あれは……柱?」






路地裏の狭苦しい景色はすっかり変わり果てていた

あの攻撃で周囲3Mは吹き飛び、その中心には天高く伸びる火柱

2人はしばらくその火をずっと見ていた

今2人にあるのは達成感と解放感、それと少しの後悔

少年 「これでよかったんだよな…」

あれだけ憎い相手だった筈なのに、いざ殺したとなると何とも言えない気分になる

一体どうして?

きっと、隣にいる少女も同じ事を考えていると思う

少女 「……ええ」

火柱に目を向けたまま、少女は答える

少女 「みんな、この火が見えてる?私達、遂にやったわ」

そう虚空へ言い放つ少女の顔は喜びとも悲しみとも取れる色だった

生きる目的を達成したと同時に、生きる目的を失った……

復讐こそ全てだった2人にとって、この事は良くも悪くも影響を及ぼしたことだろう



これからどうする?



今更『表』の世界に出ることが出来るのか?



少年 「……行こう」

もうじき騒ぎを聞きつけた人がやってくる

見つかると厄介だ、その前に姿を消そう

2人が火柱に背を向け、歩き始めようとした時……


ゴォッ!!


突如、強烈な風が2人の背中に叩きつけられる

慌てて振り返ると、そこにはありえない光景があった



少女 「天使…?」



ありのまま見たものを口に漏らす

風によるものか火柱は消え、そこには天使があった

大半の人が思い浮かべるような白い羽の生えた人、正にそれだ

少年 「な…何で……」

少年は恐怖する、目の前の天使に

いや、厳密に言えば天使ではない、天使のような人間にだ






垣根 「よう、帰ってきたぜ」

その実態は学園都市超能力者第二位『未元物質』、垣根帝督である――

少女 「元に戻ったって言うの…!?」

――殺せなかった

勝利を確信し、全身全霊の一撃を叩き込んだのに、まさか最後の最後で復活されてしまうとは

少年 「く、クソ……っ!?」

少年が再び演算を開始しようとした途端、頭に激痛が走る

脳を何本もの針で串刺しにされたような痛みに彼は方膝を突く

脳の負担はピークに達していた

少女も、痛みと懸命に戦いながら垣根を睨み付ける

……最悪だ

こうなってしまっては抵抗どころか逃げる事も出来ない

垣根 「…もうやめろ」

そう言うと右の拳を2人に突き出す

垣根 「お前らの憎しみ、確かに受け取った」

その皮膚は炭のように黒く焼け焦げ、少し骨も見える

あの時、垣根は1つの賭けに出たのだ

それは、痛みによって謎の演算を強引に止めるというもの

しかしそれは妨害に成功し、且つそこから演算を組み直せるという前提での話

そんな事をするのは彼が初めてだろう

一歩間違えれば死に直結する危険な賭け――

そして垣根は迫り来る火球に自ら右手を差し出し、これに勝利する

彼の右手は痛みをとうに過ぎており、何も感じなくなっていた

が、今の垣根にとって右手の事などどうでもいい事だ

憎悪のままに今を生きてきた2人、垣根の過去……

取り返せないなら、受け入れるしかない

垣根 「それでもまだ憎しみが晴れないなら、もっと俺にぶつけて来い」


一度と言わず、二度と言わず――


垣根 「全部俺が受け止めてやるよ、1つ残らずな…」


忘れなくていい、だが諦めないでくれ――


垣根 「だから俺はまだ死ねない、お前らが生きている限り」



何度でも殺しに来い――








ポタ…ポタ…

コンクリートに雫が落ちた

その元は空からではない、蹲る少年と少女の瞳からだ

その内の少年が何かを堪えながら必死に言葉を絞り出す

少年 「……ふざけるな」

憎しみを受け取った?違う

少年 「アンタは……」

もっと俺にぶつけて来い?まだ足りないのか

少年 「俺達の…生きる糧すら…奪うってのか……!」

全部受け止めてやる?止めろ…!!

少年 「この腐れ外道があぁぁぁぁぁ!!!!」

垣根 「っ!!おい、何を――――」






―――――――――

~とある病院~


右手の火傷も、冥土帰しにかかれば2時間で治してみせる

あの医者に常識は通用しねえなーなどと考えていると、彼はホールに備え付けられた薄型テレビに目が入る

『――11月29日、第7学区路地裏で爆発事故が発生』

『爆発が起きたのは2回、通行人1人が右手に大火傷を負う』

『現場は瓦礫の山で埋め尽くされ、復旧には4日程かかる模様』

『尚、他に人は見当たらず、これだけの事故で怪我人がたった1人だったのは不幸中の幸い――』

垣根 「腐れ外道…か」

あの後、少年はポケットから取り出した手榴弾で少女もろとも自ら命を絶った

垣根の思いを、2人は歪んだ形に受け取ってしまったのだ……

最後に見たのは泣き崩れる少女と発狂する少年

2人に笑顔が戻る事はなかった

垣根 「間違っちゃいねえよ…」



確かに外道なのかもしれない――



それでも――



垣根 (それでも俺は、歩みを止める訳にはいかねえんだ……)






やっと終わった

もっとあっさり終わる回のはずがグダグダに…

次は火曜日の予定です

こんばんは
今日は新たにていとくんに振り回される人が現れます

では投下

―――――――――
―――――
―――

12月4日(土)


上条 「あのー…」

麦野 「何?」

上条 「もう帰りませんか?」

麦野 「ここまで来て何言ってんのよ」

一方 「今度はオマエに呼び出されるとは、あのバカが移ったかァ?」

麦野 「どうせ暇人なんだしいいでしょ?」

一方 「しかし、こりゃあ中々面白そうじゃねェか」 ニヤニヤ

麦野 「あ、あっちへ行くつもりよ!」 コソコソ

一方 「行くぞ三下ァ」 コソコソ

上条 「はい…」 コソコソ






―――――――――

2時間前


――12月、学園都市にもようやく冬が訪れる

街は一足早いクリスマスムードで、サンタクロースの人形やらツリーやら、赤と緑で一杯だ

その景観に溶け込むように、赤いコートを羽織る金髪の少女が1人往来を歩いていた

13~15歳に見える外見とは裏腹に、そこらの学生とは比べ物にならない何かを感じさせる

それもその筈、彼女も学園都市の『闇』を知る人物の1人だからだ

『心理定規』<メジャーハート>――、それは人と人との“心の距離”を知り、操作するというもの

彼女の能力名であり、仲間からもそう呼ばれていた

しかし、所属していた組織は先の抗争で壊滅し、仲間は全員再起不能


唯一逃げ延びた彼女は学園都市の『闇』からも姿を眩ました

その後何処で何をしていたかは謎だが、今もこうして生きている

路地裏に咲く1輪の花のように、ひっそりと――



心理 (最近まで戦争があったとは思えない光景ね) テクテク

心理 (それに、科学の街でキリストの誕生日を祝うなんて矛盾してるわ)

心理 (大方、そこまで深く考えず皆でワイワイやりたいだけなんでしょうけど)



ホントダッテ!
エー、ウソダー


心理 (……)

心理 (時々、この能力が嫌になるわ…)

心理 (どれだけ愛想良く振る舞っていても、本質が見えてしまうもの)

心理 (人との関わりなんて持たないのが一番)

心理 (その方が余計な災いを招かなくて済むし)

「そこのお嬢さん」

心理 (……それが出来ないのが現実ね) ハァ

心理 「私に何か用……」 クルッ

垣根 「よう、元気にしてたか?」

声をかけてきた男は彼女が所属していた組織『スクール』の同僚にしてリーダー、垣根帝督だった

垣根 「何だその幽霊でも見たような顔は?感動の再会だぞ?」 パシャッ

心理 「あなた、どうして…て、カメラ?」

垣根 「カッコいいだろ?」

心理 「そっちじゃなくて、あなた学園都市に『回収』されてたんじゃ…」

垣根 「あー、なんかもう用済みらしいから解放してくれた」 シレッ

心理 (なんてアバウトな理由…)

垣根 「色々話したい事もあるだろうし、あの店でも行こうぜ」 スタスタ

心理 「あ、ちょっと!」



~コーヒーショップ~


心理 「――綺麗な思い出を、ね…」 ズズー

心理 (私の知ってる彼じゃないみたい)

心理 (いえ、そもそも私彼の事何にも知らないんじゃ…?)

心理 (仕事意外で関わった事ないし、関わろうとも思わなかったし……)

垣根 「――って、聞いてんの?」

心理 「はっ!え、ええ……」

垣根 「そういや、プライベートでお前と会うの初めてだよな」 ズズー

心理 「暗部組織なんて何処もそんなものよ」

心理 「たまたま一緒になって、互いを利用し合ってるだけ」

心理 「過度な馴れ合いは返って弱みになるわ」 ズズー

心理 (私の場合、それだけじゃないけど…)

垣根 「じゃあ今日から馴れ合おう」

心理 「え?」

垣根 「今や暗部なんてあってないようなもんだし、そうだそうしよう!」

垣根 「馴れ合うって言い方が嫌だな…よし、仲良くなろう!」

心理 「ちょっと…」

垣根 「俺お前の事何にも知らないし、知りたい」






垣根 「てな訳で、今から遊園地行こう」

心理 「」



アリガトウゴザイマシター


垣根 「寒いな~外は」 ブルブル

心理 「ちょっと待って」

垣根 「ん?」

心理 「何で遊園地に行く事が決まってるのよ」

垣根 「違うとこがいいか?」

心理 「じゃなくて、私は行くとは言ってn「実は俺も行ってみたかったんだよ」

心理 「私の話聞いt「確か駅はあっちだったか?」


ホラ、ハヤクイクゾー


心理 (……本当に、あの垣根帝督なの?)

心理 (行かないとうるさそうだし、仕方ないから付き合ってあげるわ)




―――――――――


麦野 「う~寒い」 ブルッ

麦野 「全く、冬は肌が乾燥するから嫌だわ」 テクテク

麦野 「それにしても、まだ12月になったばっかってのにクリスマスムード全開かよ」

麦野 「……今年はちゃんと過ごせるかな」


サムイナーソトハ


麦野 「…あ、垣根」

麦野 (今日は寒いし、アイツらも呼んで何かスポーツでもやるか)

麦野 「おい、垣根…」


チョットマッテ
ン?


麦野 「!?」 サッ


麦野 (って、何で隠れるんだよ…)

麦野 (あの女は……?) チラッ

ナンデユウエンチニ…
チガウトコガイイカ?


麦野 (ゆ、遊園地!?あの野郎、デートすんのか……!?)


ホラ、ハヤクイクゾー


麦野 「アイツ、いつの間にあんなのと……」

麦野 「……」

麦野 「……」 カチカチ

麦野 「あ、もしもし上条?今から遊園地行くんだけど――」






―――――――――

2時間後~遊園地~


ワイワイ


上条 「――そんな訳で来てみたら垣根の尾行に付き合わされる羽目になったんですよ」

一方 「誰に説明してンだ?」

麦野 「遊園地なんて1人で入れる訳ないでしょ」

上条 「あの赤いコートの女の子は誰なんだ?」

麦野 「それを確かめる為に、こうして後をつけてるんじゃない」

上条 「そんなの直接聞けばいいじゃないか」

一方 「バァカ、それじゃつまンねェだろうが」

一方 「もしかしたらアイツの弱みを握るチャンスかもしれねェ」

一方 「あのバカが狼狽える様を見たいとは思わねェか?」

上条 「別に俺は…」

麦野 「つべこべ言わない!入場料私が出してるんだから拒否権はないわよ」

上条 「う…それを言われると何も言い返せない……」

麦野 「絶対見逃さないからな~垣根ぇ~」 ケケケ

上条 「何か怖いんですけど…」

一方 「あれが本当のアイツだ」

以上です

1レスの行数短い気が…

次は金曜日に

かわいいよメジャーちゃんかわいいよメジャーちゃん
そして、砂皿の同業者で復讐をしようと失敗して学園都市に捕らわれたステファニーに謝って二位の権力で釈放させて ステファニーにフラグを建ててステファニーが上条の学校の教師として来る展開はマダー?

心理定規人気杉ワロタ
>>456
ステファニー好きというのはよく分かった

では投下

―――――――――

ワイワイ


垣根 「うぉーすげー!」 パシャッ

心理 「そんなに大はしゃぎする事?」

垣根 「だって遊園地行くの初めてだからよー」 ウキウキ

心理 (小学生みたい…)

垣根 「こんなことならアイツらも誘えばよかったかなー」

心理 「アイツらって?」

垣根 「俺の友達だよ」

心理 「友達……」

心理 (信じられない、あなたが『友達』なんか作るなんて)

心理 (『裏』の事は割り切れたっていうの?)

垣根 「でも一方通行は遊園地に興味なさそうだなー」

心理 「え、その友達ってまさか…」

垣根 「おう、それと麦野もだ」

心理 「」

垣根 「さて、まずはあれに乗ろうか!」

心理 「え、ええ…」

心理 (敵だった筈の第一位と第四位が友達…?)

心理 (彼に一体何があったの?)






上条 「コーヒーカップに乗るつもりらしいぞ」

一方 「あのグルグル回るやつか」

麦野 「初めは軽めのアトラクションを選ぶ、分かってるわね」

上条 「麦野デート経験とかあるの?」

麦野 「え?ま、まあね」

麦野 (実は恋人とか一度も作った事ないなんて、恥ずかしくて言えない……)

麦野 (いやでも、デートなら垣根と1回…って違う!あれは買い物に付き合わされただけだっつの!)

上条 「いいなー、俺もデートとかしてみたいけど女の子に縁がないから…」

一方 「……オマエが言うと嫌味にしか聞こえないのは気のせいか?」

麦野 「それ私も思った」

上条 「なんで!?」






垣根 「目が回る~」 グルグル

心理 「あなた回し過ぎよ…」 グルグル

垣根 「流石は学園都市、レベルが違うな」

心理 「それにしたって、あそこまで回るとは思わないわ」

垣根 「もしかして、お前も遊園地初めて?」

心理 「私が遊園地に行くように見える?」

垣根 「うーん…」 ジー

心理 「…何ジロジロ見てるのよ」

垣根 「よく見ると結構可愛いな」

心理 「かっ……い、今はそんな話してないでしょ」

垣根 「いや、お前がそう見えるかって聞いたから…」

心理 「意味が分からないわ」

心理 (何なのこの人、誰?)

垣根 「初めてなのか…んじゃ、今日はとことん遊び尽くすぞ!」 グイ

心理 「ちょっと、引っ張らないでよ!」

垣根 「目指せ、全アトラクション制覇!」






上条 「あ、手繋ぎだした!」

一方 「あの野郎、チャラいのは見た目だけじゃねェンだな」 ピロリーン

上条 「写メ撮ってんの?」

一方 「オマエも撮っとけェ」

上条 「こりゃ、もしかしたら本当に垣根の……って、麦野?」

麦野 「……」

一方 「おい、聞いてンのかァ?」

麦野 「…はっ!だ、大丈夫よ!」

上一 「「?」」

麦野 (アイツ、あの女と手繋いでた…)

麦野 (いや、だから何だよ。別にいいじゃん、アイツが誰と仲良くしてても)

麦野 (でも友達だからって手繋ぐか?しかも男と女で、まさか……)

麦野 「いーや、アイツに限ってそれはない!」

上条 「!?」 ビクッ

麦野 「よし、行くぞお前ら!」

上条 「は、はい!」

一方 「気合い入ってンなァ」

麦野 (クソが、こうなりゃ意地でも確かめてやる…)

麦野 (あの女がアイツの何なのかを!)

―――――――――


ワーワー


上条 「」

麦野 「」

一方 「」 ピロリーン

上条 「まさか、メリーゴーランドに乗るとは…」

麦野 「見てるこっちも恥ずかしい…」

一方 「女の顔が引きつってンぞ…誰か降ろしてやれよ」

上条 「本人は本気で楽しんでるってのがまた…」

イケメンガメリーゴーランドニ!
ナニアレメルヘン!


一方 「おい、周りがアイツ見て笑いだしたぞ」

上条 「あの女の子辛そうだなー」

麦野 「……ちょっとジュース買ってくる」 スタスタ








心理 「……」

垣根 「どうした?」

心理 「死ぬ程恥ずかしかった」

垣根 「お前でも恥ずかしいって気持ちは持ってるんだな」

心理 「当たり前よ、私を何だと思ってるの」

垣根 「なんていうか、不思議系?お前の感情的なところって見たことないからさ」

垣根 「何だ、普通の女の子じゃん」

心理 (普通の女の子…)

心理 (……駄目よ、こんな気持ち持っちゃ)

心理 「そういうあなたは大分変わってるわね」

垣根 「自覚はある」

心理 (取り乱すなんてらしくないわ)

心理 (いつも通りでいいのよ、いつもの『心理定規』でいれば……)

垣根 「じゃ、次はあれだ!」

心理 「はいはい…」







一方 「お次はジェットコースターか」

麦野 「これじゃよく見えないわね」 ウーン

上条 「俺達も乗る?」

麦野 「私は遠慮しとく」

一方 「なンだァ?第四位様はジェットコースターすら乗れねェってか~?」 ニヤニヤ

麦野 「ちげーし!見つかるかもしれねぇから乗らないだけだし!」

上条 「まぁまぁ折角来たんだし、楽しんでいこうぜ」

麦野 「お、おい待てコノヤロー!」







麦野 「うぷ……」 グッタリ

上条 「そんなにダメだったのか」

一方 「おい見ろよ、アイツまでダウンしてやがる」 ププ

上条 「本当だ、女の子なんか気遣って背中さすってるよ」

麦野 「なに…?」 ピクッ

一方 「オマエもさすってやろうかァ?」

麦野 「いらん、それと上条後で覚えてろ」

上条 「わ、悪かったって!今度なんか奢るからさ」

麦野 「言ったな~?」 ニタァ

上条 「お、奢るって言ってもそんな高級なものは困りますよ!?」

麦野 「男に二言はない」

上条 「そんな…」 ズーン

一方 「口は災いの元ってやつだ」

麦野 (クソッ、何だこのイラつく感じは…)

垣根 「悪いな、ちょっと楽になった」

心理 「こんなところで戻されても困るからね」

垣根 「優しいんだなお前」

心理 「…っ、これくらい普通でしょ」

垣根 「でもありがとよ」 ニコッ

心理 (この人のこんな顔、初めて見た)

心理 (どうしてそんなに笑えるの?)

心理 (……ちょっとだけ、あなたの事知りたくなったかも)

垣根 「おお、こんなのもあるのかー」

心理 「これは……」






一方 「なァ、アイツらが入ったのって……」

上条 「そうだよな…」

麦野 「……お化け屋敷?」

今日は以上です

心理ちゃん可愛いよ心理ちゃん

次は月曜日の予定です

>>1です

楽しみにしてくださった皆さんすみません、投下は今日の夕方以降になります

初めて立てたこのスレも気がつけば500…
応援して下さってる皆様に、改めて感謝の意を示します

       ./ ニYニヽ
 r、r.rヽ  / (0)(―)ヽ
r |_,|_,|_,|/  ⌒`´⌒ \   ふむふむ・・・なるほどなるほど・・・
|_,|_,|_,|_,| , -)    (-、.|
|_,|_,|_人 (^ i ヽ__ ノ l |
| )   ヽノ |  ` ⌒´   /
|  `".`´  ノ
   入_ノ
 \_/

   /
  /



        ./ニYニヽ
 r、r.rヽ.  / (0)(0)ヽ
r |_,|_,|_,|/  ⌒`´⌒ \   で?っていう
|_,|_,|_,|_,| , -)    (-、.|
|_,|_,|_人 (^ iヽ__ ノ l |
| )   ヽノ |  `ー'´   /
|  `".`´  ノ
   入_ノ
 \_/

   /
  /

お待たせしました

今から投下いきます!

―――――――――


心理 「学園都市って所々で矛盾してるのね」

垣根 「こういう街とのギャップを楽しむんじゃねーの?」

心理 「幽霊なんかより生きてる人間の方が余程怖いわ。あなたも分かってるでしょ?」

垣根 「いいからいいから、先に進もうぜ」






上条 「廃病院が舞台か、かなり雰囲気あるな」

一方 「どうせ人体模型が歩くとかそンなもンじゃねェの?」

上条 「それってどっちかって言うと学校じゃないか?」

一方 「学校とか行かねェから分かンねェよ」

麦野 「暗くてよく見えないわね…」

上条 (それよりこっちの方が怖いんですけど…) チラッ

麦野 「何見てんのよ」

上条 「いえ、何でもありません」 プイッ






垣根 「怖くねえの?」

心理 「逆に何が怖いのか聞きたいくらいよ」

垣根 「そりゃお前、この薄暗い空間に冷たい空気、それに病院はよく出るって言うし」

心理 「これより遥かに凄いのを何度経験してると思ってるのよ」

垣根 「まあそうだけど、人間怖いものの1つや2つあったっておかしくないだろ?」

心理 「あなたにも怖いものはあるの?」

垣根 「ずっと我慢してたけど、今スゲー怖い。早く出たい」

心理 「」

垣根 「ヤバいってこれ、カメラ撮ったらなんか映るんじゃねーか?」 ビクビク

心理 「いや、ここ遊園地…」

垣根 「お前歩くの速い!置いてかないで!」 グイッ

心理 「何なのよもう…」 ハァ

心理 (あなたがどんどん分からなくなって来た…)






上条 「…っ!……!」 プッ

一方 「……!」 プクク

麦野 「……」 プルプル

上条 「何だあれ、恥ずかし過ぎる…!」 クスクス

麦野 「置いてかないで!って必死になってさ…!」 クスクス

一方 「そうかそうか、お化けが怖いのかァ」 クカカ

麦野 「今度アイツをビビらせてやろうか」 ニヤリ

一方 「いいねェ」 ニヤリ

上条 (やっぱこっちのが怖い…)



クスクス……
クカカ…


垣根 「な、何だこの薄気味悪い笑い声は!?」 ビクッ

心理 「後ろの方からしたわね」

垣根 「早く行こうぜ…」






「……」

垣根 「うわー…」

心理 「人が寝てる…」

垣根 「これ絶対起きるよ~、通りたくねえ~」

心理 「でもここを通らないと出口まで行けないわよ」

垣根 「よし、引き返そう」

心理 「馬鹿言わないの、早く行きましょ」

垣根 「ううー…」 ソローリ

心理 (こんなのが学園都市第二位だなんて誰も思わないわ……)

心理 (いえ、こんなのだからこそなれたのかも)

垣根 「起きるなよー、絶対起きるなよー…」 ソローリ

「……」

垣根 「よし、そのまま……」 ソローリ

「……」

垣根 「ふぅ、これで一安心……」

「ガアァァァァ!!」 ガバッ

垣根 「うおぁぁぁぁ!!」 ギュッ

心理 「キャッ!?」 ドキッ

「アァ…アァァ…」 フラフラ

垣根 「は、早く行くぞ!!」 ダッ

心理 「ち、ちょっと!?」






上条 「おわかりいただけただろうか?」

一方 「何となく予想はしてたが、マジで抱きつくとは…」

麦野 「そんな馬鹿な……」

一方 「もうちょい明るけりゃ撮ってやったンだがよォ」

上条 「何か楽しくなってきた」

一方 「分かってきたな三下ァ」

麦野 「そうね、楽しくなってきたわね」

麦野 「さ、引き続き監視を続けるよ!」

一方 「おォ」

「……」

上条 「あれ、そういえば何で起きないんだろ?」

一方 「さァ、寝てンじゃねェの?」

「……」



お化け役の職員は決して寝ていた訳ではない

何故かは分からないが、彼という動物の本能が“起きてはいけない”と告げたのだ

後に彼は、『科学でも証明しきれない何かを感じた』と同僚に語ったという――



心理 「もうすぐ出口ね」

心理 (いきなり抱きつかれた時は流石にビックリしたわ…)

垣根 「お前スゲーな、ホントに怖くないのかよ」

心理 「あそこまで怖がるあなたに恐怖した」

垣根 「如何に科学が進歩してるったって、地球の歴史に比べたら知れたもんだ」

垣根 「科学で解明出来ない事なんざいっぱいあるっての」

心理 「学園都市の人間とは思えない発言ね」

垣根 「自分でも何言ってんのか分からん」

垣根 「ま、俺にはまだ知らない事が沢山あるって話だ。お前の事とか」

心理 「……出口よ」

垣根 「よかった~、やっと出られる」 ホッ

心理 (……このままじゃ私)

心理 (いえ、そうなる前に対処すればいい)

心理 (私は『心理定規』、人との距離なんて思いのまま……)






一方 「日が落ちてきたな」

上条 「あれ、垣根はどこ行った?」 キョロキョロ

麦野 「殆どのアトラクションは乗ったし、残るは……」

一方 「……アレか」

上条 「そういえば、有名なのが1つ残ってたな」

麦野 「急ぐよ!」 ダッ



ワーワー


上条 「いた!けどもう乗ってしまった…」

麦野 「観覧車を最後にするとは……やられた!」 チッ

一方 「マズイ事でもあンのか?」

麦野 「観覧車といえば密室、仮に恋人だとしたら……あとは分かるな?」

上条 「まさか、アイツに限ってそれは…」

麦野 「無いとは思うけど、無いこともない!」

上条 「でもあれじゃ監視しようがないなー」

麦野 「出番よ、一方通行」

一方 「任せときなァ!」 カチッ

上条 「へ?」

一方 「決定的瞬間って奴をしっかり押さえて来るからよォ!」 ビューン



ナンカヒトガトンデル!
セロリタン!?トミサカハ…


麦野 「これでよし」

上条 「すごい注目浴びてるんですけど……」

麦野 「いいのいいの、アイツに見つからなきゃいいだけだし」

麦野 (でも、本当に決定的瞬間を押さえしまったら……)

麦野 (…あーもう分かんない!何なのこれ?)






―――――――――


垣根達が乗る観覧車が頂上に差し掛かる

遊園地独特の賑やかなムードはなく、あるのは茜に染まる空と夕陽と学園都市を見下ろす風景のみ

向かい合って座る2人はこの景色とゆったりとした空間を暫し堪能する

垣根 「いい眺めだなー」 パシャ

心理 「そうね、夕陽が綺麗……」

垣根 「こういう場合、お前が一番綺麗だって言ってあげた方がいいのか?」

心理 「いらないし、聞くような事でもないでしょ」

垣根 「そうだけど…お、この角度いい!」 パシャッ

心理 「全くもう…」 ハァ

目の前ではしゃぐ垣根を余所に、彼女は窓から見える夕陽に見とれていた

心理 (それにしても、本当に綺麗……心が洗われるようだわ)

心理 (日陰での生活に慣れて、気が付かなかった)

ふいに、彼女に向けてシャッターが切られる

心理 「……何?」

垣根 「心理定規、お前今スゲー腑抜けた顔してたぞ」

と言うと、垣根は何処からともなく写真を生み出した

どうやって……と聞こうと思ったが、彼の能力を考えたら突っ込むのも馬鹿らしくなる

そこに写っていたのは陽の光を浴びて心底安らぐ自分だった

恥ずかしいくらい緩みきった表情の彼女に一切の嘘偽りは見られない

心理 「今すぐ処分して」

垣根 「何で?いい顔してんじゃん」

心理 「いいから」

彼女は己の失態を悔やんでいた。無意識のうちに『心理定規』ではない『自分』を出してしまったからだ

垣根 「そうやってムキになるのも初めて見たぜ」

心理 「茶化さないで」

彼女にとって『心理定規』とは能力であると同時に、彼女の『分身』でもある

この能力に目覚めて以来、彼女は人の根幹というものを嫌と言うほど見てきた

どれだけ仲間に慕われようが親友と謳おうが、結局は赤の他人……一番可愛いのは自分に決まってる

だから窮地に立たされた時、人は平気で裏切るし、簡単に切り捨てる

私欲や利益の為に付け入ろうとする、その結果が『仲間』や『友達』と呼ばれているだけだ

だから彼女は誰にも『自分』を見せることはない
名前を隠し、『心理定規』という『分身』を作り上げた事で、誰にも干渉されないようにした



その筈だったが……



心理 (どうして?どうしてあなたは『私』の心にこうも踏み込んで来るの…?)

需要と供給が一致しただけの対象に、『自分』が翻弄されているのが理解出来ない

垣根 「今日はお前の色んな一面を見れてよかったよ」

最早別人のような彼の振舞いに、今まで隠し通してきた『自分』が零れつつあった

いや、寧ろ自ら『自分』をさらけ出そうとしているような気もする

心理 (駄目…距離を調節しないと……!)

必死に演算を組み、垣根との心の距離を離そうとする

しかしどういうことか、離しても離してもすぐ距離が戻ってしまう

何故……?

心理 (そんな…)



彼女は気付いた



彼女自らが垣根との距離を縮めようとしていることに――



心理 (私が…どうして……)

本当は分かっていた

垣根の変貌ぶりに、彼の初めて見せる笑顔に、いつしか彼をもっと知りたいと思うようになったのだ

そして、彼なら『自分』を見せられるような気がして……

垣根 「あと1つ、どうしても知りたい事があるんだけどさ…」

彼は申し訳なさそうに言った






垣根 「お前の本当の名前って、何なんだ?」

心理 「えっ…?」

一瞬、息が詰まった

垣根 「あ、覚えてないとか言いたくないとかならいいぞ!?ちょっと気になっただけで…」

不味い事を聞いてしまったかと思い、笑ってごまかそうとすると…






心理 「名前なら……ある」

垣根 「へ?」

まさかの返事に垣根は目を丸くした



心理 「あるわよ、名前くらい……」



何をやっているんだ自分は――



そんな事をすれば今までやってきた事が――



心理 「私の……」



駄目、絶対に駄目――



でも――



心理 「私の……名前は………」



彼だけになら――












垣根 「あ、一方通行!何でこんなとこに!?」

一方 「ヤベ、見つかった!」 ギクッ

心理 「」

以上です

思いの外量が多かったので次回は少ないかも

次は木曜日か金曜日の予定です

荳€騾壹&繧努ww

荳€騾壹&繧努wwww

>>540
>>542
ヘッダが足りないのか

少ないですが投下します

―――――――――


~ファミレス~

垣根 「――ふーん、それで俺の後をつけてたの」

上条 「で、結局どういった関係なんでせうか?」

垣根 「友達だよ、友達」

麦野 「でも、友達だからってあんなデートみたいな事…」

垣根 「……言われてみれば、デートっぽかったな///」

一方 「照れンな気持ちわりィ」

心理 (全然意識してなかったけど、周りにはそんな風に見えてたのね……)

垣根 「紹介するよ、コイツは心理定規、元『スクール』の一員だ」

心理 「初めまして…」

麦野 (なんだ、そういう事だったのね)

麦野 「私は麦野沈利。超能力者第四位で……って、もう知ってるか」

一方 「一方通行だァ。オマエならこれだけで伝わるだろ?」

上条 「えー、上条当麻です。皆と違って私は只の高校生ですよ」

心理 (本当に友達だったんだ…)

垣根 「ああ言ってるけど、アイツ実は一方通行に2回も勝ってんだぜ」

心理 「その話本当?」

垣根 「アイツの右手はどんな能力も打ち消しちまうんだって」

心理 「なにそれ反則じゃない」

心理 (まさかこの集まりって、結構危険なんじゃ…?)

心理 「みんなはどうして垣根と友達に…?」

上条 「それが、自分でもよく分からないんだよ」

麦野 「うん、振り回されてたらこうなったみたいな?」

一方 「オマエと一緒だ」

垣根 「いやー、5人もいると賑やかでいいよな」 パシャッ

一方 「いちいち撮るな」

垣根 「いいじゃん、いい思い出になるんだし」

上条 「その撮ったのって最終的にどうするんだ?」

垣根 「全部貼り付けてアルバムにする。お前らも欲しいか?」

麦野 「ちょっと気になるかも」







垣根 「――で、その時の写真がこれなんだけど」 ピラッ

上条 「おお、盛大に空振ってる」

一方 「まだ持ってやがったのかァ!」

垣根 「こっちは麦野な」 ピラッ

心理 「勇ましい顔ね」

麦野 「ちょ、それはアルバムに入れんなよ!」

垣根 「撮った写真は例外なくアルバムにします」

垣根 「理由は1つ、素敵な思い出だからだ!」 ドヤッ

一麦 「「こっちは恥ずかしいわ!!」」



ギャーギャー


心理 (みんな楽しそう……)

心理 (距離、測ってみようかしら)

心理 (……)

心理 (殺し合った仲とは思えない距離ね)

心理 (一体何があってここまで親しくなったのか…)

心理 (……?)

心理 (これは……ふふ、面白い事になりそうね)

垣根 「どうかしたか?」

心理 「いえ、何も」






一方 「今日はもう解散だなァ」

垣根 「お前家どっち?ついてってやるからよ」

心理 「別にいいわ、1人で帰れるし」

垣根 「そうもいかねぇだろ、暗い道に女の子1人にするのは危ない」

麦野 「……」

垣根 「何だ麦野、お前もついて来て欲しいか?」

麦野 「いらねぇよバーカ、私を誰だと思ってやがる」






―――――――――


一方 「今日は面白いもンを見させてもらったな」 テクテク

上条 「垣根の行動力は凄いなー、あれは誤解を招くよ」 テクテク

麦野 「ホント、紛らわしい事するわね」 テクテク

上条 「お化けが苦手ってのには驚いた」

一方 「ま、アイツなら信じても不思議じゃねェか」 ハッ

麦野 「アイツだしね」


ハハハ…


麦野 (でも……何だろ、この気持ち)

麦野 (初めて感じたような、そうでないような……)

麦野 (何であんなムキになったの?)

麦野 「…何かスッキリしないなー」 ボソッ









垣根 「――ここか」

あれから、垣根は本当に心理定規の家まで付き添った

そこまでしなくてよかったのに…と言う傍ら、彼の紳士的(?)なところは評価に値する

心理 「今日は楽しかったわ」

そう聞くと、垣根はまた明るい笑みを浮かべる

垣根 「そりゃよかった、またいつでも行こうぜ」

心理 (またこの人はそんな事を…)

彼らがいたら何と言われていたことか…と心の中で安堵の息を漏らした

心理 (こんな感じで、みんな友達になったのかしら…)

自由奔放に見えて、その実誰よりも皆の事を考えている

『闇』に生きた身でありながら、それを欠片も感じさせない彼に皆呑まれていったのだろう

そして、自分もその1人なんだと認めるしかない

垣根 「じゃ、俺も帰るわ」

そう言って彼は踵を返すが、何かを思い出し、またこちらに向き直す

垣根 「そういや、お前の本当の名前聞きそびれてたな」

心理 「あ……そういえば」




観覧車で彼女が明かそうとした本当の『自分』



垣根 「で、何て言うんだ?」



もう名乗る事はないだろうと思っていた名前……



心理 「私の、本当の名前は……」



垣根 「名前は……?」


















心理 「秘密」

陽の光を浴びた花は意地悪そうに、楽しげに笑った――

以上です

これでやっとメインメンバー(垣根フレンズ)が揃いました

他のレベル5については実は何も考えてませんでした。
出してみたいとは思うのですが、メインに食い込むかと聞かれれば難しいところ。自分の腕じゃ収拾つけらんないと思う

何にせよ、あまり期待はしない方がよろしいかと

次回は日曜日の夜の予定です

すいません寝落ちしました

ちょこっと投下

―――――――――
―――――
―――



やめろ……やめろ!!



何だよこれ、何で俺死んでねぇんだ!?



これじゃあまるで……



……



ふざけるな



俺はテメェらの玩具じゃねえ、俺は俺のものだ



誰にも渡してたまるか



……殺してやるよ



俺が、必ず殺す


止めらるものなら止めてみやがれ――――






―――――――――
―――――
―――

12月7日(火)
~とある病院~


冥土帰し 「ふむ、突然能力が使えなくなったと……」

垣根 「やっぱ、コイツと関係してんのかな?」 トントン

冥土帰し 「恐らくね。君の頭の中のそれを生成、増殖させる為の演算……といったところか」

垣根 「それにしたって、演算が切り替わるなんてことあんのかよ」

冥土帰し 「演算力を鈍らせる物なら聞いたことはあるが、その時それらしき装置はあったかい?」

垣根 「……なかったと思う」

冥土帰し 「それに君の場合演算が鈍ったのではなく切り替わった。それ自体には何の支障もきたしていない」

冥土帰し 「そんな芸当が装置もなしに他人に起こせるとは考え難いね」

垣根 「俺自身がそうしたってか…?」

冥土帰し 「成り行きを思えば、否定は出来ない」

垣根 (俺の心の奥底は死を望んでる…?)

垣根 (いや、どっちかっていうと……殺したい?)

垣根 「……考えても仕方ねえか」

冥土帰し 「今後、進行と共に何らかの症状が出るかもしれん。気を付けるようにね?」

垣根 「そうするよ、じゃあな」 スクッ

冥土帰し 「最後に1つ」

垣根 「ん?」

冥土帰し 「君はこのまま死んでもいいと思っているのかい?」

垣根 「うーん……」






―――――――――


垣根 「さーて、今日は何しようかなー」 テクテク

垣根 「とりあえず、麦野に電話してみるか」 カチカチ


prrrr…


麦野『もしもし……』

垣根 「どうしたお前、様子が変だぞ?」

麦野『こっちは今熱出して寝込んでんのよ…』

垣根 「おいおい大丈夫か」

麦野『一晩寝てりゃ治るでしょ……それより何の用?』

垣根 「いや、やっぱ何でもない」

麦野『そう、じゃあ切るわね……』

垣根 「ああ、お大事に……」



ブツッ


垣根 「そうか、アイツ熱出したのか……」

垣根 「……よし」






―――――――――

~麦野宅~


麦野 「はぁ…私としたことが情けない」

麦野 「こういう時、誰もいないと余計に辛いわね…」

麦野 「あー頭痛い」 ズキズキ

麦野 「……寝よ」 モゾモゾ



ピンポーン


麦野 「……」


ピンポーン


麦野 「……無視無視」


ピンポーン


麦野 「……」 イライラ


ピンポーン


麦野 「あーもうぜえぇぇぇぇぇ!!」 ガバッ

麦野 (私に喧嘩売ろうなんていい度胸してるじゃない…!) ドスドス

麦野 「死にてぇのかテメェ!!こちとら熱出して苦しんでるってのによー!!」 ガチャッ

垣根 「うおっ!?」 ビクッ

麦野 「……あ?何でテメェが…」

垣根 「何でって、理由は1つしかねえだろ」






垣根 「看病しに来たぜ!」

麦野 「」







垣根 「風邪薬に冷えピタに……」 ガサガサ

麦野 「私アンタに家教えてないよね」

垣根 「調べた」 ガサガサ

麦野 「いや、調べたじゃねーし看病とかいらねーよ」

垣根 「いいから大人しく寝てる!」

麦野 (コイツはまた訳の分からない事を…)

麦野 (……あれ?これってマズイんじゃね?)

麦野 (友達とはいえ男と女、しかも部屋に2人きり……)

麦野 (コイツはこの状況を分かってんのか…!?)

垣根 「リンゴ買ってきてやったぞ、これ食って元気出せ!」 ポイッ

麦野 「…このまま食べろってか」 パシッ

垣根 「冗談冗談」 ヒョイ

麦野 (この様子じゃ何も考えてなさそうね……)

垣根 「まずは熱を計らないと……」 ズイ

麦野 「え?」

垣根 「でこ借りるぞ」 ピトッ

麦野 「ちょ、何すんだテメェ!」

垣根 「何って、熱計るのに手当ててんだけど?」

麦野 「体温計があんだろそこに!」

垣根 「あ、ホントだ」

麦野 (わざとやってんのか……!?)

麦野 「いたた……」 ズキズキ

垣根 「大丈夫か?あまり無理すんな」

麦野 「誰のせいだと……」







垣根 「38度か、結構あるな」

麦野 「うー……」

垣根 「吐き気はするか?」

麦野 「しない……」

垣根 「食欲はあるか?」

麦野 「ちょっと……」

垣根 「ファイトー?」

麦野 「いっぱーつ……」

垣根 「よし、大丈夫そうだな」

麦野 「最後のはいらないよね」

垣根 「とりあえず冷えピタ貼って…っと」 ペタリ

麦野 「あーひんやりする……」

垣根 「丁度昼だし、今からお粥作ってやるよ」

麦野 「いや、別にそこまでしなくても…」 ムクッ

垣根 「はいはい病人は黙って寝てる」 グイ

麦野 「すげー不安なんだけど」

垣根 「まあ待ってろって」 スタスタ



麦野 「ったく、私はガキじゃねえっつの」

麦野 (でも悪い気は…しないわね)

麦野 (アイツの手、大きかったな……って、何考えてんだろ。熱で頭やられたか?)

麦野 (どうせこれも只の思いつきでしょうし、深い意味はないでしょ)

麦野 (……いや、これに深い意味も何もないだろ)

麦野 (前はこんなこと考えたこともなかったのに、どうしちまったんだ私…)

麦野 「……頭いてー」

以上です

時間通りに来れないことが増えてる希ガス

次回は金曜日の予定で

イカ娘のEDを思い出してしまう良い話だね~

ごめんなさい、リアルが忙しかったもんで来れませんでした

では投下いきます







垣根 「うん、これなら麦野でも食えるだろ」 パクッ

麦野 「本当か…?」

垣根 「ほれ、あーん……」

麦野 「バカ!自分で食うから!」 グイ

垣根 「そうやって怒ると余計酷くなるぞ?」

麦野 「だから誰の……もういい」 ハァ

垣根 「素直でよろしい、ではもう一度……」 アーン

麦野 「……」 パクッ

垣根 「どうだ?」

麦野 「……薄い」

垣根 「まあ、食べやすいようにしたから無理もねえか」

麦野 「……もう一口」

垣根 「お、食欲はあるんだな。よかったよかった」

垣根 「ほれ、あーん……」







垣根 「薬も飲んだし、しばらくは寝てな」

麦野 「お前はどうすんだよ」

垣根 「俺も寝る」 ゴロン

麦野 「は?」

垣根 「ここ最近寝てもあまり疲れが取れなくてさー」

麦野 「いや知らねーし、自分の家で寝ろよ」

垣根 「まだ看病終わってねえから帰れませーん」 フワー

麦野 「1日ここに居座る気か」

垣根 「何かあったら起こせよー」

麦野 「はいはい…」 ハァ







垣根 「ZZZ……」

麦野 (マジで寝やがったし……)

麦野 (誰かがいると落ち着いて眠れないな)

垣根 「うーん……」 ゴロン

麦野 (あ、顔がこっちに……)

麦野 (へぇ、結構可愛い寝顔じゃねえか)

麦野 (そうやって静かにしてりゃモテんのに)

麦野 (……いや、やっぱ今のままでいっか)

垣根 「麦野~……」

麦野 (寝言か…?)

垣根 「俺は…お前が……」

麦野 (えっ…!?) ドキッ






垣根 「目玉焼きに…マヨネーズかけるとは思わなかった……」

麦野 「」

垣根 「いや…別に悪いとは言わないけど…俺ポン酢派だから……」 ウーン

麦野 (なんだ、目玉焼きの話かよ……しかもかなりコアな味付けだし)

麦野 (因みに私は何の味付けもしないから。素材の味を楽しむから)

麦野 (一瞬でもドキッとした自分が馬鹿みたい…)



垣根 「ZZZ……」

麦野 (やっと静かになったか)

麦野 (こうもうるさいと寝てるか起きてるか分からねえな)

麦野 (さて、私も早いとこ寝なきゃ……)






垣根 「……殺す」

麦野 (…っ!?) ゾワ

垣根 「俺が……必ず……」

麦野 (何これ、殺気…!?)

垣根 「ZZZ……」

麦野 (……消えた)

麦野 (今のは何だったの…?)






―――――――――


ホントニヨカッタノ?
イイノイイノ


麦野 (……ん、寝ちゃってた…)


カノジョダイジョウブカシラ
ソレホドヒドクナイミタイダゾ


麦野 (あれ、垣根以外にもう1人いる……?)

垣根 「お、起きたか麦野」

心理 「調子はどう?」

麦野 「え、何でアンタが……」

垣根 「流石に男女2人きりはマズイかなと思って///」

麦野 (今更かよ…そして照れんな)

心理 「後から上条君と一方君も来るそうよ」

麦野 「……一応言っとくけど、ここ私ん家」

垣根 「うん」

麦野 「で、今は病人な訳」

垣根 「知ってる」

麦野 「これっておかしくね?」

垣根 「心配するな、皆で看病するからよ」

麦野 「4人もいらねーだろ!」

心理 「あら、垣根と2人きりのが良かった?」

垣根 「よせよ、照れるじゃねーか///」

麦野 「そ、そういう問題じゃねー!」


ジャマスンゾォ
ウワ、ヒロッ!


垣根 「お、アイツらも来たみたいだな」

心理 「どうかした?」

麦野 「……頭痛い」






上条 「上条さん特製卵粥ですよー」

垣根 「うん、やっぱ料理スキルがあると全然違うなー」 パクッ

一方 「何でオマエが食ってンの」

垣根 「じゃあ麦野、あーん……」

麦野 「やらなくていい!自分で食べる!」

垣根 「何だよ、昼間はしてくれたのに…」

上一心 「「「えっ」」」

垣根 「いやホント、俺がずっと食べさせてたのよ。看病だし当然だろ?」

麦野 「ば、ちがっ…!」

一方 「ま、コイツが相手じゃ仕方ねェか」

上条 「うん、違和感は感じない」

心理 「病人なんだし、普通よね」

麦野 (あれ、思ってた反応と違う…)

垣根 「麦野、あーん……」

麦野 「だから自分で食べるって!!」







麦野 「……苦い」 ウエ

垣根 「良薬は口に苦し、我慢しろー」

一方 「つか、こンなことしなくても俺の能力で……」

垣根 「ダメダメ!それじゃ看病の意味ないだろ!」

麦野 「テメェ、ちょっと楽しんでねえか?」

垣根 「そんなことない、俺は本気で心配してんだからな。なんならここに泊まってもいいんだぞ?」

上条 「積極的だなー」

心理 「他意はないんでしょうけど」

麦野 「あー分かった分かった!熱意は伝わったから!」

一方 「俺達が来る意味あったのかァ?」

上条 「さあ……」

麦野 「大声出したら汗かいてきたじゃない…」

上条 「今日は風呂はやめといた方がいいんじゃないか?」

垣根 「汗を拭く程度に抑えるか」

心理 「それなら私がやるわ。理由は言わなくても分かるでしょ?」

麦野 「野郎共は向こう行ってろ」 シッシッ

一方 「誰も好んで見やしねェよ」 フー

麦野 「どういう意味だコラ」

上条 「はいはい、俺達はあっちで果物切ってようぜ?」 スタスタ

垣根 「そうだな」 スタスタ






心理 「じゃ、服脱がすわね」

麦野 「ん……」 ヌギヌギ

心理 「ふーん…いい体つきね、羨ましい」

麦野 「あんまりジロジロ見んな……」

心理 「ごめんなさい、つい見とれちゃって」

麦野 「やるなら早くしてくれ、この格好寒いんだよ」

心理 「じゃあ背中から始めるわよ……」

今日はここまで
卵焼き派の俺に死角はない

>>589
なにそれ気になる

次回は火曜日に来れるといいなー


ポン酢は普通の選択

マヨネーズありだろ・・・

>>608>>609
そうなんだ、今度試してみます
このスレにちょくちょく置かれる愉快なオブジェは何だろう

ってことで投下

心理 「こういうの初めてだわ、なんだか母親になった気分」 フキフキ

麦野 「私を子供扱いするとはいい度胸ね」

心理 「ええ、とっても可愛い女の子よ」 フキフキ

麦野 「……うるせえ」

心理 「あら?あなたの左腕……」 ペタペタ

麦野 「ああ、実はこれ義手なのよ。こないだの抗争の時にちょっとね……」

心理 「まさか……」

麦野 「アイツじゃねえよ。これは自分で招いた結果さ」

麦野 「更に言うと右目も偽物、片方しか見えてないの」

麦野 「でもまあ、どれも自分への戒めだと思えば気にもならないよ」

麦野 「お陰で、こうして過ごせてるんだしね」

心理 「そう……」



心理 「彼、あなたが呼んだの?」

麦野 「何よ突然……アイツが勝手に押し掛けて来たんだよ」

心理 「昼間、彼に何かされなかった?」

麦野 「何もなかったに決まってんだろ!」

心理 「ふーん……」 クスッ

麦野 「?」

心理 「麦野さん、鼓動が早いわね。体温も高いし」

麦野 「そりゃ熱出してるから当然だろ」

心理 「本当にそれだけ?」

麦野 「何が言いたいの」

心理 「あなた最近、自分の気持ちが分からなくなったりしない?それも彼に対して」

麦野 「…っ!」 ドキッ

心理 「ふふ、当たりみたいね。今もそうじゃない?」

麦野 「……確かに、たまに訳分かんなくなる事がある」

麦野 「今まではなんともなかったのに……」

心理 「そういえば、あれだけの事があってどうして彼と仲良くなったのか知りたかったの」

麦野 「まぁ、成り行きというか何というか――」








心理 「――その時からあんな感じだったのね」

麦野 「ありゃ変わったとかいう次元じゃないわ」

麦野 「それとも、隠してただけで本当はああいう奴だったのかもね…」

心理 「垣根の事が気になる?」

麦野 「いや、気ならないって言えば嘘になるけど……」

心理 「私は気になるわ」

麦野 「え?」

心理 「だって、同じ組織だけどあんな彼見たことないもの」

心理 「もしかしたら、まだまだ色んな一面を見れるかもしれないしね」

心理 「そう思うと、もっと彼を知りたくなるわ」

麦野 「そっか……」

麦野 (色んな一面、か……)

麦野 「そういえばさ……」






上条 「どわーー!!」 ビタン

麦心 「「!?」」

上条 「いてて、何もここまでしなくてもいいんじゃないでせうか!?」

一方 「うっせェ!俺の切り方にいちいち文句言いやがってよォ!」

垣根 「いや、お前の包丁の使い方は危な過ぎる」 ドードー

一方 「あァン!?オマエもぶっ飛ばされてェか!」

麦野 「……おい」 プルプル

垣上一 「「「あっ」」」

麦野 「テメェらいっぺん死んでこいやー!!」 ビーム


ヤベ、アイツマジダ!
カミジョウガード!
ヤメロー!








麦野 「……」

心理 (布団に潜り込んじゃって、可愛い) クスッ

上条 「わ、悪かったよ…」

一方 「……反省してまーす」

垣根 「リンゴ・メロン・マンゴー・バナナ、かなり贅沢だよな」 パクッ

上条 「お前も謝れって!」

垣根 「あー、なんか悪かったな。でも綺麗な体だったぜ!」

麦野 「……それはフォローのつもりか?」 ゴソッ

垣根 「フォローも何も、なあ?」

上条 「そ、そうそう!とても色気があって寧ろ感謝したいくらいさ!」

一方 「所謂眼福ってやつだァ」

麦野 「テメェらホントは悪いと思ってねーだろ!」
上条 「こ、これは男である以上仕方が…いえ、なんでもないですすみません」

心理 「あれは事故だったんだし、大目に見てあげたら?」

麦野 「……」

垣根 「ほら、お前の為に切ったんだから食べろよ」

麦野 「……ん」 パクッ



―――――――――


上条 「じゃ、俺達は先に帰るな」

垣根 「おう、今日は急に呼んで悪かったな。お前はもうちょい包丁を扱えるようにしろよ」

一方 「ケッ、包丁なンざ使えなくたって困りはしねェよ」

上条 「俺が教えようか?料理が作れるようになったら打ち止めも喜ぶだろうし」 スタスタ

一方 「……考えとく」 スタスタ


ガチャ……バタン


垣根 「…さて、俺もそろそろ帰るけどまだ何かあるか?」

麦野 「特にない……」

垣根 「ちゃんと布団被って寝るんだぞ?」

麦野 「分かってるっつの……」

垣根 「ファイトー?」

麦野 「いっぱーつ……」

垣根 「よし、じゃあ俺も帰るわ」

心理 「最後のは何?」

垣根 「行くぞ心理定規、今日も家までついてくからな」

心理 「そう、悪いわね」

麦野 (また、あの時と同じ……)

麦野 「……今日は、ありがと」

垣根 「礼なんかいらねーよ、俺が勝手にやった事だし」 ニカッ

麦野 「……」

垣根 「元気になったらまたどっか行こうぜ」 スクッ

麦野 「垣根」

垣根 「ん?」

麦野 「………やっぱ何でもない」

垣根 「そっか、じゃあな麦野」 スタスタ

心理 「麦野さん」

麦野 「?」

心理 「それの原因、分かるといいわね」

麦野 「え……」

心理 「おやすみなさい」 スタスタ


ガチャ……バタン


麦野 「……見透かされてたのね」



その後、麦野は寝るまでの間ずっと考えていた



――この気持ちは何なのか



突然鼓動が早くなったり、もやもやした気分になったり、何とも自分らしくない

初めてのようでどこか覚えのあるそれが彼女を悩ませる

実はこれが体調を崩した原因の1つでもあるのだ

俗に言う知恵熱というものだが、本人にその自覚はないらしい



――そしてもう1つ、あの時感じた殺気の正体



朝から付きっ切りで看病してくれた少年から、ほんの一瞬だけ感じたどす黒いもの

忘れかけていた『闇』が、彼女がよく知るあの垣根帝督がそこにあった




――殺す



彼が呟いたあの言葉



一体誰に向けて?



麦野 (やっぱあの時聞いておけばよかったかな……)

結局どれも解決に至らなかった彼女はやがて思考を止め、深い眠りへと誘われるのだった……



今日はここまで

上条さんと一方さんが地味な回になっちゃったな…サブキャラも使わないと

次回は土曜日の予定で

>>1乙なんだよ

私を出したらもっと乙なんだよ

>>629
もう少しお待ちください

遅ればせながら投下

―――――――――
―――――
―――



……クソが、ナメやがって



あのガキといいコイツといい、女の癖に余計な真似を……



コイツはあのクソ野郎の連れか?



ムカつくぜ、俺と同類でありながらそんな眩しい物を持ってやがるのが……



……



気に入らねえ――――






―――――――――
―――――
―――

12月11日(土)
~自宅~


垣根 「……」 ボー

垣根 (あの時の夢……か)

垣根 「……完全に忘れてたな」






―――――――――

~黄泉川家~


一方 「じゃあ行って来る」

黄泉川 「うん、3人共目一杯楽しんでくるじゃん!」

打止 「あなたと水族館なんてデートみたい!ってミサカはミサカは他の妹達より抜きん出ている事を誇示してみたり!」 フフン

番外 「あっれ~?まさかとは思ってたけど、マジでロリコンだったんだね!」

一方 「コイツ置いてっていいかァ?」

番外 「もう、冗談だってば☆早く行こ!」


ペンギンサンガミタイナ、ッテミサカハミサカハ…
ツイタライクラデモミセテヤルッテノ


芳川 「あの子、この生活にすっかり馴染んだわね」

黄泉川 「一方通行だって、本来ならまだ友達とかと遊んだりする年頃じゃん?」

黄泉川 「あれくらいのびのびしてるのが丁度いいじゃんよ」

芳川 「そういえば、あの子にも友達が出来たんだってね」

黄泉川 「本人は仕方なく付き合ってるだけだって言うけど、内心嬉しいんだろうね」

黄泉川 「代わりに、打ち止めが一方通行取られたーってふてくされてたけど」

芳川 「一体どんな友達が出来たのかしら」

黄泉川 「それが……」


ピンポーン


芳川 「あら、誰か来たみたいね」

黄泉川 「私が行ってくるじゃん」 パタパタ

黄泉川 「はいはいどちら様で…」 ガチャ

垣根 「……よっ」

黄泉川 「あー、一方通行なら今日は出掛けてていないじゃん」

垣根 「アイツはいいんだ」

黄泉川 「?」

垣根 「今日は、黄泉川に用があるんだ」

黄泉川 「私……?」






―――――――――


黄泉川 「コーヒー入れたじゃん」 コトッ

垣根 「あ、悪い……」

黄泉川 「アンタと会うのは学校見学の時以来だっけ」

垣根 「そうだな……」 ズズー

黄泉川 「まさか一方通行と友達になるとは思ってもみなかったじゃん!巡り合わせって奴かな」 ハハッ

黄泉川 「で、今日はどうしたじゃん?」

垣根 「……もう、怪我は大丈夫か?」

黄泉川 「……!」

垣根 「あの時、一方通行との戦いを止めに入ったアンタを俺は攻撃した……」

垣根 「無関係の人間、それも女に手を上げちまうなんて最低だよ」

黄泉川 (……そうだ、垣根と初めて会ったのはあの時……)

黄泉川 (気を失って、目が覚める頃には全部終わってたから思い出す事もなかったじゃん)

垣根 「今更かもしれねぇけど、どうしても謝っておきたくてさ……」












垣根 「……あの時は、悪かった」

黄泉川 「……」

垣根 「あれって俺を助けようとしてくれてたんだよな」

垣根 「そうとも知らずに俺は……」












黄泉川 「……もういいじゃん」

垣根 「え……」

黄泉川 「傷はもう治ったし、過ぎた事を言っても仕方ないじゃん」

黄泉川 「それよりも、垣根や一方通行が前向きに生きると決めた事の方が私は嬉しいよ」

黄泉川 「これからも、あの子と仲良くしてほしいじゃん」

垣根 「黄泉川……」

黄泉川 「はい、この話はこれでおしまい!垣根はこの後どうするじゃん?」

垣根 「うーん、特にこれといった予定は…」

黄泉川 「じゃあ、私とお出掛けでもしよっか」

垣根 「え?」

黄泉川 「このまま家に居てもアレだし、桔梗はどうする?」

芳川 「私は結構よ。2人で行って来ればいいわ」

黄泉川 「分かった、じゃあ行こうか!」

垣根 「あ、ああ……」






―――――――――

~大通り~


垣根 (なんか、思ってた以上にあっさりしててビックリしたなー)

垣根 (こういう人だから、アイツを受け入れられたのかも……)

黄泉川 「どうかしたじゃん?」

垣根 「いや、何でもねーよ」

黄泉川 「そんな顔しないの!いつも通りでいいじゃんよ!」 バシバシ

垣根 「いてっ!」

黄泉川 「それ、いつもカメラ持ち歩いてるの?」

垣根 「ああ、今アルバム作ってんだ。人とか風景とか何でも撮ってさ…」

垣根 「自分の楽しい思い出が形に残るっていいだろ?」

黄泉川 「それにしても大きいじゃん。服装からして明らかに浮いてるし」

垣根 「たとえ浮いていようとも、一眼レフは譲れないな!」

垣根 「ってか、服装に関しては黄泉川の方がどうよ?ジャージのままお出掛けって…」

黄泉川 「私はこれの方がしっくりくるからいいじゃん。着飾ったりするの苦手だし」

垣根 「折角スタイルいいのに勿体無い」

黄泉川 「そんなこと言ってくれるなんて嬉しいじゃん。でもいいの、私はこのままで」

垣根 「じゃあ今から服買いに行こう!」

黄泉川 「え?」

垣根 「この機会に色んな服着てみて、一番似合うやつを一方通行達に見せようぜ!いや、俺が見たい!」

黄泉川 「えっと…私の話聞いてたじゃん?」

垣根 「行き先はセブンスミストで決まりだな。行こうぜ黄泉川!」

黄泉川 「ちょ、垣根!?」






―――――――――

~水族館~


一方 「へっくし!」

打止 「大丈夫?ってミサカはミサカは鞄からポケットティッシュを取り出してみたり」 ハイ

一方 「わりィ…」 ズビー

番外 「誰かが噂してたんじゃないの?第一位は実は女の子ーだとか☆」

一方 「ハッ、なンなら確かめてみるかァ?」 クケケ

番外 「うわっ、なにその童貞臭い台詞、キモいんですけど」

一方 「処女に言われたって応えねェよ」

打止 「喧嘩は置いといて早く入場券買おう!って、ミサカはミサカは2人を急かしてみる!」

一方 「分かってるっつの……子供二枚と大人一枚で」

番外 「ちょっと、ミサカと幼女を一緒にしないでくれるー?」

一方 「生後数ヶ月が何言ってやがンだ」

打止 「ミサカの方が年上なんだからね!ってミサカはミサカは姉の威厳を示してみたり!」 フンス

番外 「ま、このナイスバディがあれば子供には見られないだろうし~、ゴメンねお姉ちゃん~」 ギャハ

一方 「オラ、買ったから持っとけェ」 ピラッ

番外 「……子供料金で買えたんだ」

一方 「そういうこった、行くぞォ」 テクテク

打止 「そういうこった、ってミサカはミサカはあの人の真似をしながら微笑んでみたり」 ニコッ

番外 「」

以上です

まだ1ヶ月も経ってないんだね…

次回は木曜日のつもりで

>垣根 「でもあっちの方が胸とか大きいし…」
これは、垣根が吹寄にフラグを建てると思っていた頃が俺にもありました・・・・・

そういえば、魔術サイドのキャラは出るの?
このカッキーなら天草と仲良くなれそうだけど。
五和にフラグを建てても俺が許す。

>>651
出せるもんなら出したいなー。でもネタが…

それでは投下します







打止 「うわー、お魚がいっぱいー!ってミサカはミサカは水槽に釘付けになってみたり!」

一方 「見たことねェ魚ばっかだなァ。どうやって集めたンだか」

番外 「でも、どれも美味しくなさそうねー」

一方 「……オマエはいつから食いしん坊キャラになったンだよ」

番外 「だってー、魚なんか見ててもつまんないしー」

打止 「その発言はここへ来た理由を否定しかねないよ!?ってミサカはミサカは驚愕してみたり!」


アノオサカナハ?
アレハオニカサゴッテイッテ…


一方 「あれは……」

番外 「どうかしたの?」







禁書 「――あれは『オニカサゴ』って言って、主に南日本に生息してるフサカサゴ科の魚なんだよ」

禁書 「その面構えが鬼のようだからこの名前がつけられたんだって。食べ方は鍋にしたり煮付けや塩焼きとか……」 ペラペラ

風斬 「へぇー、凄い詳しいんだね」

禁書 「この日の為に色んな図鑑を読んだんだよ!それに料理もしたことあるから食べ方にも詳しいかも!」 エッヘン

禁書 「今度、ひょうかに何かごちそうしてあげるね!」

風斬 「ふふ、ありがとう」 ニコッ

禁書 「それにしても、とうまはこういう日に限っていないんだから……」 ブツブツ

風斬 「ちょっと残念だったね……あれ?」

禁書 「ひょうか?」

風斬 「あの人……」






一方 「……よォ」

禁書 「あ、あくせられーた!」

風斬 「えっと、お久しぶりです……」 ペコリ

打止 「シスターさんだ!ってミサカはミサカは大きく手を振ってみたり!」 ブンブン

番外 「何、2人とも知り合いな訳?」

一方 「あァ、どっちも前に世話ンなってる」

番外 「世話って……」

一方 「オマエの思ってるような事じゃねェ」

番外 「え?ミサカ何も言ってないけど?何想像しちゃってんの?」 プクク

一方 「……で、オマエがいるって事は三下もいンのか?」

禁書 「それが、とうまったら前日になって『補習に呼ばれた』なんて言って来れなくなっちゃったんだよ!」 プンプン

風斬 「折角無料券が貰えたんだから2人だけでもって」

禁書 「とうまは戦争中人一倍頑張ってたから仕方ないとは思うけど、それでも残念だな…」

番外 「そのとうまって奴はシスターさんの男?」

禁書 「そ、そんなんじゃないんだよ!そういうあなたはあくせられーたの女なのかな!?」

番外 「ち、違うし!ミサカがこんなモヤシの女な訳ないしー!」 アタフタ

打止 「こ、この人はミサカの未来の……って、ミサカはミサカはやっぱ何でもないと誤魔化してみる!」 アワワ


ソ、ソレハドウカナー?
ナニサ、アナタダッテ…!


一方 「何テンパってンだァアイツら?」

風斬 「その…本当のところはどうなんですか?」

一方 「オマエもかよ……まァ、家族って言い方が近いか……」 ボソボソ

風斬 「家族……」

一方 「あまり大きい声出すな!聞かれたらどうすンだ!」

風斬 「聞かれちゃいけない事なんですか?」

一方 「……ガラじゃねェからよ」

風斬 「そ、そうですか……」

禁書 「ねぇねぇ、あくせられーたに付いてっていいかな?」

一方 「あァ?」

禁書 「レディをエスコートするのは紳士の務めなんだよ!ひょうか、いいでしょ?」

風斬 「えっ?わ、私は別にいいけど……」

番外 「モヤシが紳士だって!モヤ紳士ってか!?ウケるー!」 アヒャヒャ

打止 「紳士なあなた……って、ミサカはミサカはMNWに接続して皆の意見を仰いでみたり」

一方 「オマエら好き勝手言いやがって……」 ピクピク

禁書 「早く行こ、あくせられーた!」

一方 「……クソッタレ、今度三下にコーヒー奢らせてやる」






―――――――――

~セブンスミスト~


黄泉川 (何か、流れでこうなってしまったじゃん…)

黄泉川 (ま、いいか。誘ったのは自分だし)

垣根 「相変わらず広いとこだなー」

黄泉川 「ここに来れば欲しいものは大概あるって言うしね」

垣根 「えーっと、服屋はどっちだっけ」 キョロキョロ

黄泉川 「こっちじゃん」 テクテク






垣根 「スゲー数だな」

黄泉川 「これだけあると選ぶの大変そうじゃん」

垣根 「こういうのは女の子がいると楽なんだけどなー……」 ウーン

黄泉川 「女の子は大変だねー」







鉄装 「あれ、黄泉川さんじゃないですか」

黄泉川 「鉄装!」

垣根 「誰?」

黄泉川 「鉄装綴里、警備員の同僚じゃん。ちょっとドジなところが欠点だけどね」

鉄装 「わ、私だって一生懸命やってるんです!」

垣根 「垣根帝督だ、よろしく」

黄泉川 「鉄装も服買いに来たじゃん?」

鉄装 「はい、新しく冬物をと思って……」

垣根 「そうだ!黄泉川の服一緒に選んでくれないか?」

鉄装 「え?」

垣根 「ジャージ以外の格好させたいんだけど、俺男だから何が似合うかとか分からねえんだよ」

鉄装 「黄泉川さんが……?」

黄泉川 「私はいいって言ったんだけど垣根が勝手に……」

鉄装 「分かりました!」

黄泉川 「えっ」

鉄装 「黄泉川さんを立派な女性として変身させましょう!」

黄泉川 「鉄装…?」

鉄装 「私も気になってたんですよね、黄泉川さんの格好」

鉄装 「そんないい身体しておきながらジャージしか着ないなんて、宝の持ち腐れもいいとこです!」

鉄装 「黄泉川さん、あっちへ見に行きましょう!」

黄泉川 「鉄装がいつになくやる気じゃん……」

垣根 「いやー、女の人がいると心強いなー」







鉄装 「これなんてどうですか?」

黄泉川 「ちょっと派手じゃないか?」

鉄装 「何言ってるんですか、恋人が出来たんですしもっとオシャレに気を使わないと!」

垣黄 「「えっ」」

鉄装 「え?違うんですか?」

黄泉川 「ハハハ!違うって、ちょっとした知り合いじゃん」

垣根 「そ、そうそう!友達の学校の先生って事で面識がある程度で…///」

鉄装 「でも一緒に服を買いに来るって事は、それなりに親密度はあるって事ですよね?」 ニヤニヤ

垣根 「た、確かに只の知り合いってのはちょっと違うかもしれないけど……」 アワワ

黄泉川 「あんまり子供をからかうんじゃないよ」

鉄装 「すみません、つい楽しくって」

垣根 「あ、これはいいんじゃないか!?」

黄泉川 「幾ら何でもスカートは恥ずかしいじゃん!」

垣根 「意外と似合うかもしれないぞ?」

鉄装 「この際どんどん選んでいきましょう」 カチャカチャ

垣根 「そうだな……お、これも案外……」 カチャカチャ

黄泉川 「えっと、私は?」






鉄装 「では、まずこれを着てみて下さい」

黄泉川 「わ、分かったじゃん」 シャッ

垣根 「なあ、黄泉川ってどんな人なんだ?」

鉄装 「いつも飄々としてるけど、生徒の為ならどんな危険も省みない男勝りな人ですね」

鉄装 「生徒達と接してる様は先生というより、母親という感じが強いかもしれません」

鉄装 「母のように厳しく、母のように優しく、母のように強い。私は、そんな黄泉川さんを尊敬してます!」

垣根 「母親、か……あながち間違っちゃいねえかも」

垣根 (おれは母親がどんなだったかは覚えてねえ。でも、黄泉川みたいな人をきっと母親と呼ぶんだろうな)

垣根 (だから余計気に入らなかったんだ。一流の悪党を謳っておきながら、護ってくれる存在のいるアイツが……)

垣根 「……羨ましいぜチクショウ」 ボソッ







一方 「へっくし!」

打止 「また?ってミサカはミサカは再度ポケットティッシュを取り出してみたり」

一方 「風邪か…?」 ズビー

番外 「もしそうならミサカが看病してあ・げ・る☆」

一方 「はいはい反射反射ァ」

以上です

垣根は他人に指摘されると恥ずかしくなるそうです

そして一方さんマジハーレム

次回は火曜日の予定で

黄泉川 「……ど、どう?」

鉄装 「凄いです……服装1つでかなり見違えました」

垣根 「ああ、綺麗だ……」 パシャッ

黄泉川 「ちょっと、恥ずかしいからやめるじゃん!」

鉄装 「いいじゃないですか、モデルみたいで」

垣根 「ほら見てみろ黄泉川、ジャージ姿の時とは大違いだぞ」 ピラッ

黄泉川 「…自分でも新鮮さを感じるじゃん」

鉄装 「では、次はこれを着てみて下さい!」

垣根 「これはまた大胆な……///」

黄泉川 「流石にこれは無理があるじゃん!?」

鉄装 「大丈夫です!絶対似合いますから!」


ワーワー


―――――――――

30分後


垣根 「うーん、どれが一番いいか迷うなー…」 ピラッ

鉄装 「やっぱ、黄泉川さんの武器はその抜群のプロポーションですよね。となると……」

黄泉川 「私は着せ替え人形じゃないんだから…」

垣根 「黄泉川はどれがいいと思う?」

黄泉川 「え?うーん、私にはよく分からないじゃん」

鉄装 「黄泉川さんはこれからファッションについて勉強する必要がありますね」

垣根 「俺もそう思う」

黄泉川 「お、大きなお世話じゃん!」

黄泉川 (今度、芳川にでも相談してみようかな……)






―――――――――


一方 「そろそろ昼飯にすンぞォ。これで手拭いとけ」 ポイ

打止 「お弁当だー!ってミサカはミサカは中身が気になって仕方なかったり!」

禁書 「私達もお昼にしよっか」

風斬 「そうだね」

打止 「ではではオープン!ってミサカはミサカはお弁当の蓋を開けてみる!」 パカッ

禁書 「凄い!ご飯の上にらすとおーだーの顔が描いてあるんだよ!」 オー

風斬 「可愛い、食べるのが勿体無いくらい…」

打止 「嬉しいけど自分が食べられると思うと、ってミサカはミサカはちょっと複雑だったり…」

番外 「目ん玉もーらいっ!」 ヒョイパクッ

打止 「キャー!なんて事を、ってミサカはミサカは迷いなく卵を取った番外個体に恐怖を覚えたり!」

番外 「あ、これ美味しいわ。次頬っぺたいってみよ」 モグモグ

打止 「ミサカの顔がどんどん削られていく……」 アワワ

一方 「いいから食え」

禁書 「いっただっきまーす!」 パカッ

番外 「重箱で持ってくるとは……それ1人で食べるの?」

禁書 「当たり前なんだよ!おかわり用のご飯だってあるのよ」 ゴソゴソ

一方 「タッパー5個分とか、どンな胃袋してやがンだ…」

打止 「これ、ヒーローさんが作ったの?ってミサカはミサカは綺麗に並べられたおかずを眺めながら聞いてみたり」

禁書 「これはね、とうまと2人で作ったの。ひょうかの弁当のだし巻き玉子なんかは私がやったんだよ」

風斬 「そうなの?……美味しい、凄く美味しいよ!」

禁書 「えへへ、照れるなー///」 テレテレ

番外 「ホントだ。アンタいい嫁になれるかも」 モグモグ

打止 「ヒーローさんのお嫁さんになるの?ってミサカはミサカはあなたに許嫁の疑いをかけてみる!」 ビシッ

禁書 「わ、私は只今までの生活を改めようと、とうまに少しでも恩返ししようとして…!」

一方 「結果的に花嫁修業になったってかァ?三下も幸せもンだな」 クカカ

風斬 「シスターって結婚とかしてもいいの?」

番外 「それ以前に、もうやることヤっちゃってんじゃない~?」

禁書 「皆考えが飛躍し過ぎかも!それに今は食事中なんだよ!命に感謝する時間なんだよ!」






―――――――――

~大通り~


黄泉川 「……いつもジャージだから違和感を感じるじゃん」 テクテク

垣根 「そうか?似合ってると思うけどな」 テクテク


アレッテヨミカワセンセージャナイ?
ナンカイツモヨリイロッポイゾ!
トナリノオトコ、ソコカワレ


黄泉川 (視線が痛い……)

垣根 「さて、これから昼飯でも食べようかと思うけど、どっか行きたいとことかある?」

黄泉川 「うーん……そうだ!垣根、いい所があるじゃん」

垣根 「?」

黄泉川 「こっちこっち」



~お好み焼き屋~


垣根 「へぇー、こんなとこに店なんてあったんだな」

黄泉川 「あんまり知られてない隠れ家的名店じゃん。まだ誰にも教えてないから秘密にしといてね?」

垣根 「あぁ、分かった…」

黄泉川 「おやじー、また来たよー!」 ガララ

おやじ 「お、黄泉川さんやないの!昼間っからとは珍しいねー」

黄泉川 「ちょっと連れがね…」

垣根 「ども(これが関西弁ってやつか……)」

おやじ 「ほほーう、黄泉川さんにも遂に男が出来たっちゅー訳か」 フムフム

黄泉川 「違うって、こないだ話した子の友達じゃん」

おやじ 「それやったら何で今日はそんなおめかししてんの?いつもジャージしか着てへんのに…」

黄泉川 「そ、それはこの子が…って、その話はもういいじゃん!おやじ、いつもの頼む」

おやじ 「あいよ!」







おやじ 「今日はサービスで増量しといたで!」 ジュー

黄泉川 「いいのかいおやじ?」

おやじ 「かまへんかまへん、黄泉川さんへのお祝いや」

黄泉川 「だから違うって言ってるじゃん!」

おやじ 「ハッハッハ、冗談やて!ほんならごゆっくり~」 スタスタ

垣根 「いやー、関西弁って聞いてて楽しくなるなー」

黄泉川 「何でも、学園都市へ行った息子を見守る為に大阪から来たらしいじゃん」

垣根 「親が学園都市で過ごしてもいいのか?」

黄泉川 「そこは何とかごまかしたって言ってたけど、ここまでする親はそうそういないじゃん」

垣根 「愛されてんだな、そいつ……」

黄泉川 「……垣根は、親を思い出した事とかある?」

垣根 「ねぇな。実験とか仕事ばっかでそんな余裕なかったし、そもそもどんな親だったかも覚えてねぇ」

垣根 「愛されてたのかもしれないし、嫌われてたのかもしれない」

垣根 「唯一はっきり覚えてる事といえば、『帝督』って名前をくれたのは間違いなく親だという事だ」

黄泉川 「……」

垣根 「一方通行はどうなんだろうな。アイツも俺と似たようなもんだと思うけど……」

黄泉川 「一方通行も小さい頃から実験続きで、親というものを全く知らないでいたじゃん」

黄泉川 「その上、あの子は大きな罪まで犯した……」

垣根 「知ってるよ、『絶対能力者進化実験』……だろ?1万人ものクローンを殺して、途中で中止になったっていう……」

垣根 「スゲーよ、俺と同じ立派な悪党だ。救いようもねぇくらい」






垣根 「……でも、実際は違ったんだよな」

垣根 「アイツには守ってくれる存在が出来た。守りたい存在が出来た」

垣根 「自分がどんな奴か知ってる癖に、優しさだとか愛情だとかを振り撒いてくる」

垣根 「周りを見れば誰かがいる。アイツは独りじゃなかったんだ」

垣根 「……絶対的な壁、確かにあったよ」

黄泉川 「……」

垣根 「それにしたって、力意外でこうも差が出ると正直へこむよな」 ハハッ

黄泉川 「……垣根」

垣根 「ま、今となっちゃどうでもいい話だし、俺ももう独りじゃない」

垣根 「さて、焦げ付く前に食べないとな!」 ザクザク






垣根 「おやじさん、うまかったよ」

おやじ 「おおきに!またいつでも来てや!」

垣根 「息子さんと仲良くな!」 ガララ

おやじ 「なんや知られてもうたか。まぁぼちぼちな」

黄泉川 「……」

おやじ 「どないしたん?」

黄泉川 「あの子も、愛情を知らないまま育ったじゃん」

おやじ 「……そうか」

黄泉川 「本人は何も言わないけど、内心寂しいんだと思う」

おやじ 「学園都市にはそういう子が沢山おるって聞いたけど、あの兄ちゃんもそうなんか」

黄泉川 (一方通行と垣根に差なんて何もないじゃん。只きっかけが得られなかったってだけで……)

黄泉川 「……私に何か出来ないかな」

今日はここまで

ギリギリ間に合わなかった悔しい

次回は土曜日の予定で

>>1です
まさかの1週間経過。誠に申し訳ない
ただのおやじのつもりだったけど、予想外の反応にビックリ
こんな時間ですが投下します

―――――――――


垣根 「……しかし、学園都市ってのはこうも自然がないのな。撮ってて物足りないっていうか……」 パシャッ

黄泉川 「確かに、ビルとかばっかで味気はないじゃん」

垣根 「旅行とか行ってみたいなー。こっちに来てから一度も外へ出た事ないし」

黄泉川 「旅行…?」

垣根 「色んな奴を連れて観光とか温泉とか、それでそいつを全部写真に撮ってよ……」

垣根 「外の世界っていうの?見てみたいよなー」

黄泉川 (垣根にとって、学園都市は1つの隔離された空間なんだ)

黄泉川 (その上超能力者ともなると、簡単に出す訳にはいかないもんね……)


ネェネェオジョウチャンタチ…
ヤメテクダサイ…!


黄泉川 「あれは……」

垣根 「黄泉川?」







暴漢A 「俺達道に迷っちゃってさー、ちょっと教えてほしいんだけど」 ヒヒッ

暴漢B 「悪いんだけど、一緒に来てくれる?」 ククッ

「ど、どうしよう……」 ヒソヒソ

「私が気を引きますので、その隙に逃げて下さい」 ヒソヒソ

「でもそれじゃあ…!」 ヒソヒソ

「大丈夫です、すぐに助けを呼んでくれれば……」 ヒソヒソ

暴漢A 「なーに内緒話しちゃってんのかなー?」

暴漢B 「俺達にも聞かせてよ」

「では、私が合図をしたらすぐ走って下さい…!」 ヒソヒソ

「わ、分かった…」 ヒソヒソ





黄泉川 「そこで何してるじゃん?」

暴漢AB 「「!?」」 ビクッ

黄泉川 「お前ら、またそんなことやってたのか!」

暴漢B 「げっ、黄泉川!」

暴漢A 「に、逃げるぞ!」


タッタッタッタッ……


黄泉川 「全く、こないだ私がとっちめたばっかだってのに……」 フゥ

「あ、ありがとうございます……」

黄泉川 「お前達は確か……初春と佐天だったっけ?」

佐天 「はい、さっきはどうも…」 ペコリ

初春 「今日はパトロール……って訳でもなさそうですが?」

黄泉川 「ああ、今日はちょっと連れとお出掛けしてるだけじゃん」

佐天 「もしかして、恋人ですか!?」

黄泉川 (今日はやけに同じ事聞かれるじゃん……)

黄泉川 「違うよ、ちょっとした知り合いさ」 ハハッ

初春 「その人は今どこに?」

黄泉川 「しまった、置いてきちゃったじゃん…」

佐天 「あれ、誰かがこっちに来るよ?」







垣根 「どうしたんだよ、急に走りだして?」

初春 「…っ!!」 ゾクッ

黄泉川 「ゴメンゴメン、ちょっと怪しい奴を見つけたからつい…」

垣根 「ま、それなら仕方ねえか」

佐天 「うわ、見て初春!この人なんかカッコよくない!?」 ヒソヒソ

初春 「……!」 ブルブル

佐天 「初春……?」

垣根 「っ!お前……」

初春 「い、行きましょう佐天さん!」 ガシッ

佐天 「ちょっ、初春!?」


タッタッタッタッ……


黄泉川 「?どうしたじゃん突然……」

垣根 「……」






―――――――――


黄泉川 「垣根、どうかしたじゃん?」

垣根 「え、別に何も?」

黄泉川 「嘘、絶対何か隠してるじゃん。私を騙そうったってそうはいかないよ」

垣根 「だから何も…」

黄泉川 「一方通行もそう、何でも自分で解決しようとして誰にも頼ろうとしない……」

黄泉川 「ちょっとは誰かに甘えたっていいじゃんよ」

垣根 「そう言うけど、一方通行と違って俺には甘えられる人間がどこにも……」

黄泉川 「目の前にいるじゃん」

垣根 「えっ」

黄泉川 「これからは私にうんと甘えればいい!」 ドンッ

垣根 「そんな、子供じゃねえんだから……」

黄泉川 「私から見れば十分子供、子供は大人に守られるのが普通じゃん」

黄泉川 「そうだ、今日は私の家で晩御飯食べるじゃん!」

垣根 「えっ、えっ?」

黄泉川 「そろそろ一方通行達も帰る頃だろうし、帰って支度しなきゃ」

黄泉川 「ほら、行くよ垣根」

垣根 「あ、ああ……(黄泉川の方こそどうしたんだ?)」






―――――――――

~黄泉川家~


芳川 「おかえり愛穂……って、どうしたのその格好?」

黄泉川 「ジャージ以外の服もいいかなーと思って買ってみたじゃん」

芳川 「そう、よく似合ってるわ」

黄泉川 「今日はこの子も一緒にご飯食べることになったから」

垣根 「どうも」

芳川 「遠慮せずゆっくりしていきなさい」

黄泉川 「さて、早速支度するじゃん」 パタパタ







垣根 「――んで、これが今日の写真」 スッ

芳川 「やだ、愛穂ったら可愛いじゃない」

垣根 (結局上がる事になっちゃったけど…) チラッ

黄泉川 「今日はいつもよりがんばらないとね~♪」 トントン

垣根 (テレビでよく見るけど、こういうのを母の背中っていうのかな) ジー

垣根 (小さいようで大きいような、どこか頼りがいのある……)

芳川 「どうしたの?さっきから愛穂ばっか見て……」

垣根 「ん?ああ、なんか見とれちゃって……」

芳川 「惚れちゃった?」

垣根 「そ、そうじゃなくて、なんつーか……強いんだなーって」

芳川 「?」

垣根 「俺達の戦いに割り込んで来たり、怪我させた俺を簡単に許しちゃったり、俺を子供扱いしたり……」

垣根 「なんか、黄泉川には勝てる気がしねぇ」

芳川 「あの学園都市最強をも丸め込むのだから当然よ」 フッ

芳川 「……でも、そんな愛穂も初めは苦しんだわ」

垣根 「え?」

芳川 「私が愛穂に一方通行達の世話を持ち掛けた日、彼女一晩中悩んだの」

芳川 「大きな罪を犯したあの子を受け入れられるのか、自分にあの子を守れるのか、ずっとね……」

芳川 「そして、彼女は引き取る事を決意したわ。何があっても自分はあの子の味方でいようって、そう誓ったの」

垣根 「……」

黄泉川 「垣根ー、ちょっといいかなー?」

垣根 「悪い。なんだー?」 スタスタ












垣根 「……これでいいのか?」

黄泉川 「うん、ありがと」

黄泉川に呼ばれた垣根は、炊飯器の中へ切った具材と水を入れていく。どうやらシチューを作るらしい

垣根 (……にしても、炊飯器で作れるのか?)

今までにない画期的な調理法に疑心暗鬼ながらも、蓋を閉じてスイッチを押した

黄泉川 「……垣根は今まで、1人で何でも乗り切ってきたんだね」

お好み焼き屋での話の続きだろうか?

垣根 「お陰様で、力だけはあったからな」

形だけの笑みで答える

いつか、自分の出生について調べたことがあった

彼にとって両親の存在は戸籍表に書かれた名前とDNAの検査結果のみ

顔も性格も覚えてないそれを親だと言われたところで、彼は納得出来る筈もない

だが不思議なことに、この2人から『帝督』という名を授かったのだけは覚えていた。

何故それだけを……いや、何故それ以外忘れたのか

実質彼は学園都市で生まれ育ったようなもの。故に、親の愛情など知る由もない……

黄泉川 「じゃあ、人の温もりも知らないじゃん……」

そう言って、黄泉川は垣根の方へと歩み寄る

垣根 「黄泉川?」

直後、垣根の思考は完全に停止した






気付けば、黄泉川に抱きしめられていたのだ

垣根 「え!?ちょっ……!」

――事象の解析、完了。抱擁である事が判明。原因不明。用途不明。これによる身体への影響……

学園都市第二位の頭脳が混乱していた

恐らく、突然能力が使えなくなった時以上に冷静さを失っている筈

何だ、どういう事だ?

黄泉川 「……温かいでしょ?」

耳元でする柔らかい声でハッと我に帰る

黄泉川 「人って、こうやって抱きしめられると安心するの。母親のお腹にいた時を思い出すから……」

垣根 「あ……」

さっきまでの混乱が嘘のように、垣根の脳内はみるみる落ち着きを取り戻していった

同時に、身体から温もりが伝わってくる。何とも心地良い温度だ

黄泉川 「今は違うじゃん、垣根にも守ってくれる存在がちゃんといる」

黄泉川の腕に一層力が入る

黄泉川 「……言わなくても分かるじゃん?」




ああ、なんて優しい人なんだ



これが、忘れかけていた“愛情”……



母のような、偽り1つない無償の愛



そんな人を俺は――



垣根 「黄泉川、俺……」

黄泉川 「何も言わなくていいじゃん。今は黙って私に甘えてればいい……」

垣根の考えなど黄泉川にはお見通しだった

垣根 (……やっぱり、黄泉川には勝てる気がしねぇ)

彼は今愛情というものを全身で感じている。頭の頂辺から足の爪先、心の隅々まで余すことなく……

優しくて、胸が締め付けられて、しかし抗い難い

彼女にもっと早く出会っていれば、今とはまた違う世界が見えただろう。



――もう暫く、この温もりに包まれたい



それは、垣根が生まれて初めて誰かに甘えた瞬間だった







打止 「ただいまー!ってミサカはミサカは上機嫌でドアを開けてみたり!」 ガチャッ

番外 「はぁー、荷物持つの疲れた」

一方 「先に手ェ洗えよー」

芳川 「おかえり、楽しかった?」

垣根 「!!」 ビクッ

黄泉川 「あ、帰ってきたじゃん」

垣根 「よ、黄泉川!早く……!」 バタバタ






―――――――――


一方 「――今日は黄泉川と遊んでただァ?全く何考えてンだか……」

垣根 「お前こそ、水族館とはまた珍しいな」

一方 「俺はガキ共(+α)の面倒見ンので楽しむ暇なンざなかったっての」 フー

打止 「今日は紳士だったもんね、ってミサカはミサカは意外にも紳士なあなたもアリって意見が多かったと伝えてみたり」

番外 「なんか、今日の黄泉川おしゃれだね。ジャージ以外の格好なんて初めて見たかも」

垣根 「ああ、あれ俺が選んだんだ。他にもこんなものを……」 スッ

打止 「ファッションショーみたい!ってミサカはミサカは驚嘆しながら写真を眺めてみたり!」

番外 「やっぱ体型いいよねー、でもこれならミサカにだって……」

一方 「オマエにゃまだ早い」

番外 「何とでも言えば~?私にはこの身体があるんだもん。ねー?」

打止 「ずるーい、ミサカも行くー!ってミサカはミサカは対抗心を燃やしてみたり!」

番外 「ミサカと張り合おうなんて10年早いよ☆」 ギャハッ

芳川 (彼ったら、あの子達と自然に馴染んでるわね……)

黄泉川 「みんな出来たじゃん」 パタパタ

打止 「シチューだー!ってミサカはミサカはお腹が鳴るのを止められなかったり!」 グー

一方 「オマエも食うのか?」

垣根 「なんか黄泉川に呼ばれたからな」

黄泉川 「皆で食べるともっと美味しくなるじゃん!」

芳川 「この場合、どっちがお兄ちゃんになるのかしらね」

一方 「俺に決まってンだろ」

番外 「どうかな~?あっちの方が身長高いしイケメンだし?」

一方 「人は見た目じゃねェ、中身だ」

黄泉川 「はいはい、じゃあ手を合わせて…」






「「「「「「いただきます!」」」」」」



この日食べた夕飯は格別だった

食べているだけで安心感が得られる、魔法のような、不思議な力の込められた料理

これが、“母の味”なのだろうか……?

結局垣根は3回もおかわりをし、それを見て皆は笑みを溢す

黄泉川もまた、嬉しそうな顔で垣根を見つめていた――






―――――――――


垣根 「黄泉川、ありがとな」

黄泉川 「礼なんていいじゃん。またいつでもおいでよ」

黄泉川 「私が、私達が味方でいるから」

垣根 「……」

垣根 「そうだ、1枚写真撮らせてくれよ!」

黄泉川 「え、いいけど……」

垣根 「はい皆集合ー」

打止 「なになにーってミサカはミサカは呼ばれて来たよ」 トコトコ

一方 「俺眠いンだけど……」

垣根 「今から写真撮るからそこ並んでー」

芳川 「どうしたのいきなり?」

番外 「撮るなら可愛く撮りなさいよ~?」

垣根 「家族写真ってやつを撮ってみたかったんだ。黄泉川達がその第一号って訳」

一方 「家族……」

垣根 「そういうこと。あ、黄泉川もうちょい……」

一方 「……」 ニヤッ



今日は形に出来ない沢山のものを貰った……



それを形として残せるのがこのカメラ



この瞬間のこの気持ちを忘れないように、ここに残して置こう



――その日が来るまで



垣根 「それじゃ、撮るよー」

お馴染みのフレーズと共に、シャッターを切る音が静かに響いた



以上です
今回は逆に翻弄される垣根でした

母は偉大なり

次回は日曜日の予定で

またしても遅れてしまった……

という訳で投下します

―――――――――
―――――
―――

12月13日(月)


私、上条当麻は現在仲間と一緒に街を歩いている。学校を休んで

決してサボりではないぞ、決して。というか、単位ギリギリな癖にそれは自殺行為にも程がある

矛盾してるって?俺もそう思うよ

実のところ、何でこうなったのか自分でもまだ分かってないんだ



あれは遡ること1時間前――






―――――――――

1時間前~上条宅~


垣根 「おい、今からあるとこへ行くから準備しとけよ」 ガララ

上条 「ベランダから来るな!それに俺学校があるんだけど……」

垣根 「大丈夫、休むって言っといたから」

上条 「」

垣根 「公欠扱いにしてくれるって言ってたぞ、よかったな!でもその分補習の量は増えるらしい」

上条 「」

禁書 「あれ、ていとくがいるんだよ」

垣根 「おはようシスターちゃん。あれ、なんかいい匂いが…」 クンクン

禁書 「朝御飯に味噌汁炊いたんだけど、食べてく?」

垣根 「いいのか?じゃあ遠慮なく…」






―――――――――


上条 「ね?意味分かんないでしょ?いつの間にか補習が増えたんですよ!?」

一方 「だから誰に説明してンだって」

麦野 「これは一体どこに向かってんの?」

心理 「さぁ、彼からはこの日は空けとくようにとしか言われてないから……」

垣根 「お、あれだな」






上一麦心 「「「「……幼稚園?」」」」

垣根 「そう、今日はこの幼稚園にお邪魔するんだ」

麦野 「何でまた……」

垣根 「よくぞ聞いてくれた!」 ビシッ

垣根 「今回の目的は2つ、1つはちびっ子達に超能力というものを知って貰って好奇心を与えること」

垣根 「そしてもう1つの目的は麦野、一方通行、心理定規、お前達3人に関することだ」

心理 「私達?」

垣根 「ここで問題です、3人に共通する足りないものとはなーんだ?」

麦野 「足りないもの……?」

一方 「学園都市第一位たる俺に足りねェものなンざねェよ」

心理 「私達に共通することと言えば、暗部にいたことぐらいしか……」

垣根 「結構簡単だと思ったんだけどな。まぁいいや、答え言うぞ?お前達に足りないものとは……」






垣根 「他人との関わり、延いてはコミュニケーション能力だ」

垣根 「思い返してみろ、俺達が仕事関連以外の人間とやり取りしたことなんてあったか?」

麦野 「なっ、人をコミュ障呼ばわりしやがって!」

一方 「お、俺には打ち止めとか番外個体とか黄泉川とか芳川とかがいるからそンなンじゃねェし!」

心理 「失礼ね、私はそれなりのコミュニケーション能力を持ってるつもりだけど?」

垣根 「一方通行は全員身内だろ、心理定規は能力使ってるからカウントしない」

垣根 「これから先色んな人間と関わっていくだろう。そんな時コミュニケーション能力がないと苦労するぜ?」

上条 「そういうお前はどうなんだよ」

垣根 「その通り、俺も人のことを言えた立場じゃねぇ。たまに人と話すの緊張する時あるし……」

垣根 「そこで、今日は1日ちびっ子達と触れ合って、俺達のコミュニケーション能力を養おうってのが2つ目だ」

一方 「1日ガキと遊ぶってか?」

垣根 「一緒に歌を歌うとかご飯を食べるとか、ちょっとずつ人に慣れていくんだよ」

上条 「それで、俺の必要性は?」

垣根 「お前は海を越えて多くの人間と関わってきた、コミュニケーション能力はバッチリだろう」

垣根 「ようするに、俺達の手本になってくれって訳」

上条 「それで学校を……」

麦野 「あー、私子供苦手なんだけど…」

垣根 「もう園長先生には説明してあるから引き返せねえぞ?超能力者が3人も来るなんて大はしゃぎしてたし」

一方 「先に言えよ!何勝手なことしてくれてンだァ!」

垣根 「だって、言ったら絶対断るだろお前ら?因みに園長先生に話したのは昨日だ」

心理 「よく了承したわね園長先生……」

垣根 「さて、もうすぐ先生が……お、来た来た」

園長 「おはようございまーす!いやーよく来てくれました!」 ガシッ

垣根 「園長先生、こっちこそいきなりの話で悪かったよ」 ガシッ

園長 「ささ、まずは中へどうぞー!」 テクテク

上条 (女の人か、何だか陽気な先生だなー)






―――――――――

~園長室~


園長 「コーヒーでもどうぞ」 コトッ

垣根 「ありがとう」 ズズー

一方 (牛乳が入ってやがる、俺はブラック以外受け付けねェぞ……) ジー

園長 「どうかしましたか?コップを見つめて……」

一方 「え、あ、いや、何でも……(クソッ、何か上手く喋れねェ!)」 カチコチ

上条 (うわー、スゲー緊張してる)

垣根 「ああ、コイツコーヒーにはうるさくてな、今脳内でコーヒーの分析をしてるんだよ」

園長 「へぇー、これまた通な方ですねー。どうです?私のコーヒー」

一方 「えっとォ……その、ぎゅ…牛乳はない方がいいン、じゃねェかなー」 カチコチ

園長 「あちゃー、ブラック派でしたか。これは失礼」 ペシッ

一方 (み、認めてたまるかァ!俺はコミュ障なンかじゃ…!)

垣根 「しかも、一口飲んだだけでどのメーカーかも当てちゃうんだぜ」

園長 「なんと!これぞ正に“違いの分かる男”って奴ですねー!」

一方 「まァ…な……(おいィィィ!もう俺に話を振ンのはヤメロォォォォ!!)」 ハハッ

心理 (顔が笑ってないわよ、逆に怖い)

麦野 (垣根、頼むから私に話を振るんじゃないわよ…!)

垣根 「こっちは世界に数人しかいないと言われるシャケ弁評論家で、学園都市のシャケ弁はコイツの為だけに作られたとか……」

麦野 (来やがったぁぁぁ!!しかも色々捏造してやがるし!シャケ弁評論家って何!?)

園長 「シャケ弁評論家!?そんな凄い方がいるなんて知りませんでした!」

麦野 「いや、あの、シャケ弁が、好きで…評論家とまでは……(信じるの?信じちゃうのこの人!?)」 シドロモドロ

上条 (確かに、コミュニケーション能力はあるとは言い難いかも……)

心理 (垣根は何であんな普通に喋れるのよ……いえ、私だって出来るわよあれくらい)

垣根 「そんで、こっちは……」

心理 (わ、私も……!?) ドキッ






―――――――――


園長 「さて、本題に参りましょうか」

園長 「今日は皆さんに子供達と遊びながら、皆に超能力というものを身近に感じさせて頂きたいのです」

園長 「今はまだ能力を持っていませんが、いつかはあんな風になれるってことを知って欲しい……」

園長 「言うなれば、子供達に“夢”を持つきっかけを与えるのが目的です」

上条 「“夢”、ですか」

園長 「はい、子供達にはこれから先の未来を楽しみに生きて欲しいのです」

園長 「皆さんも、昔はそうだったでしょう?」

一方 (そういや、そンな時期もあったっけか?)

心理 (将来の夢……私、何になりたかったのかしらね)

上条 (記憶がないから分からないな……)

麦野 (少なくとも、こうなるとは思わなかったよ……)

園長 「突然の事なので子供達も皆ビックリしてましたよ。テレビで見たヒーローのような人に会える!ってね」

垣根 「ヒーロー……」


ガチャッ


職員 「園長先生、子供達を運動場に集めました」

園長 「分かりました。では皆さん、運動場へ参りましょう!」

以上です

いつも沢山の感想ありがとうございます

次回は木曜日の予定で

よし、日にち通りに来れた!噂すればなんとやら……

では投下

―――――――――

~運動場~


キャーキャー


上条 「おー、ちびっ子がいっぱいだー」

麦野 「子供とはいえ、こんなにいると緊張するな…」 ドキドキ

心理 「具体的に何をすればいいのかしら?」

園長 「難しい事は何もいりません、皆さんの能力を簡単に披露するだけでいいです」

園長 「パフォーマンス、期待してますよ!」 グッ

垣根 「よし、任せとけ!」 グッ

一方 「?あれは……」






結標 「はーい皆2列に並んでー!こら、そこ騒がないの!え、トイレ?もう早くしなさいよー」

一方 「なァ、アイツ……」

園長 「ああ、結標淡希さん?彼女、先生を目指してるって聞いてね、たまにここで実習みたいなのをさせてるの」

園長 「いやー、本当に子供が好きなんですねー。皆からは“あわきん”って呼び名で親しまれてるんですよ」

園長 「そして子供の心理をよく理解してる、これは将来が楽しみです!」

一方 「……」 ジー

結標 (ふふ、ここは楽園ね。可愛い子供達(特に男の子)とこうしていられるんだから……)

結標 (ああ、もっと私を頼って!私の胸に飛び込んでいらっしゃい!!) ハァハァ

子供 「あわきん、はなぢでてるよ?」

結標 「えっ……あ!(しまった、つい興奮しちゃって……!)」 ゴシゴシ

一方 「……子供好きか」

園長 「おっといけない、子供達にも覚えやすいようにこの名札をつけてください」 ゴソゴソ

上条 「これは……」






先生 「じゃあ皆で、今日特別に来てくれたお兄ちゃんお姉ちゃんを呼ぼう!せーの……」

子供達 「「「おにいちゃーん!!おねえちゃーん!!」」」






垣根 「はーい!!」

上条 「どうも」 ポリポリ

心理 「……」 オズオズ

麦野 「あ、あはは……」 ドキドキ

一方 「……おォ」 カチコチ

結標 「」


キャーキャー


上条 (こういう舞台の上に立つのって初めてだな…こりゃ誰でも緊張しますよ)

心理 (だ、大丈夫よこれくらい。えっと、“人”という字を書いて……)

麦野 (じ、じゃがいもよ!そう、皆じゃがいも!じゃが……じゃがいもが笑ってやがる)

一方 (落ち着け俺ェ!落ち着け俺の心臓!素数を数えるンだ!3.1415926……)

結標 (え、能力者って一方通行だったの!?それに他の人達は……)

先生 「では、自己紹介をお願いします!」 マイクパス

垣根 「俺は垣根帝督。“ていとくん”で覚えてくれ!」

上条 「か、上条当麻です。“とーま”って呼んでくれたらいいよ」 ドキドキ

上条 (こ、こんな感じでいいか?しかし“とーま”なんてでっかく書かれると……)

心理 「……心理定規。こ、“こころ”って呼んで……ください」 ボソボソ

心理 (何なの“こころ”って、こんな呼ばれ方初めてよ……)

麦野 「む、むむ、麦野沈利よ!えっと……“むぎのん”って言ってくれたら嬉しいにゃーん♪」 キャピッ

麦野 (うわ、やっちまった!にゃーんて何だよ恥ずかしっ!!)

一方 「お、お俺は一方[キーーーーーーン]ンだ![キーーーーーーーーーーン]!よろしくなァ!」

一方 (俺ン時だけマイク調子悪過ぎンだろ!!殆ど被っちまったじゃねェか!!)

先生 「ありがとうございます。皆もお兄ちゃんお姉ちゃんの名前を覚えようね!」

子供達 「「「はーーーい!!」」」

一方 (えっ、終わり!?)

結標 (皆緊張しすぎでしょ…)

垣根 「コホン、じゃあ超能力について簡単に説明しよう」

垣根 「超能力とはズバリ“信じる力”!自分なら出来る、自分は凄いと信じることで手にするのだ!」

一方 「何だこの大雑把な説明は…」 ヒソヒソ

麦野 「子供にはこれくらいのが伝わりやすいんじゃない?」 ヒソヒソ

垣根 「本当は勉強もしなくちゃいけないんだけど、今は気にせず目一杯遊べ!遊ぶことがお前達の勉強だ!」

垣根 「……とまぁ退屈話は置いといて、次は俺達の能力を見せよう」

垣根 「ここにいる面々は皆普通とは違う能力の持ち主だ、俺なんかは能力を使うと羽が生える」 バサッ


ウォースゲー!
カッコイー!


垣根 「当然空も飛べるから移動には困らないぜ!」 ビューン



トンダー!
キャーテンシミターイ!


心理 (楽しそう……垣根が)

上条 (俺能力持ってないけどどうしたらいいんだろ……)

垣根 「次は麦野……いや、むぎのん!お前の番だ!」 ビシッ

麦野 「ひゃい!?」 ビクッ

一方 (噛ンだ)

心理 (噛んだわね)

上条 (不覚にも可愛いと思ってしまった)

麦野 「えーっと……わ、私の能力は、簡単に言うと……ビームが撃てる能力?」 シドロモドロ

麦野 「アニメとかであるこう……波ーーー!!みたいな?」 シドロモドロ

結標 (波ーーーって……)


ドンナノ?
ハーーーッテヤッテミテ!


麦野 「えー、じゃあ一回だけ……」 スゥー

麦野 「波ーーーーーー!!!!」 ビーム



ホントニデター!
ムギノンカッケー!


麦野 「つ、次はアンタ!頼んだわよ!」 パス

心理 「わ、私?まだ心の準備が……」 アセアセ

麦野 「いいから!私もう無理!」

心理 「……私の能力は、皆と違って目には見えないの」 ボソボソ

結標 (声小さすぎ、何の為のマイクよ……)

心理 「強いて言うなら、誰とでも仲良くなれる能力……かしら」

心理 「他にもそうね……そこの君、実は隣の女の子のことが好きでしょ?」

男子 「えっ、な、なんでわかったの!?」

女子 「そうなの?」

男子 「ち、ちが……」

心理 「そして、君は男の子のことが好き……でしょ?」

女子 「うん……///」 コクリ

男子 「えっ///」



ヒューヒュー
アツイネー!


心理 「こんな風に、人と人との距離も知ることが出来るわ」

上条 (好意を隠しても無駄、か……ある意味恐ろしい能力だな)

結標 (もしかして、私の本性もバレてる!?) ギクッ

心理 「じゃあ次お願い」 パス

一方 「お、おォ…(大丈夫、頭で何回もシミュレートしたンだ、いける!)」 スーハー

一方 「[キーーーーーーーーーーーーン]ってまたかよ!俺に[キーーーーーーーーーーーーン]!」


ワハハハ!
キーーーンテナッタ!


先生 「すみません、こちらをお使い下さい」 ササッ

結標 (ツッコミすら被せられるなんて流石に気の毒だわ)

一方 (クソッタレ!さっきので全部忘れちまったじゃねェか!どうする、考えろ最強!)

一方 「あー、俺の能力は、オマエらじゃちょっと難しいかもしれにェえ」

上麦心結 ((((しれにェえ!?))))

一方 「う、運動には向きってにょがあって、その…例えば投げたボールときゃ走る車とか……」 カチコチ

麦野 (噛みまくってんじゃないの……ヤバ、笑けてきた) プッ

垣根 「要するに、何でも跳ね返す能力ってやつだ」

一方 「そ、そう、それ!(垣根ェ!助けてくれンのか!)」

垣根 「一方通行、そこ動くなよ?」

一方 「あ?てか、それ野球ボール……」

垣根 「ふんっ!」 ビュッ

一方 「ゴパァ!?」 ドスッ


アハハハハ!
イマノカオオモシロカッタ!


上条 (ぼ、ボールが腹に…!)

垣根 「あれ、お前スイッチ入れてなかったの?悪い悪い、大丈夫か?」

一方 「……」 カチッ

麦野 (あ、これヤバいかも)

一方 「オーケーオーケー、じゃあオマエには能力説明の為の実験台になって貰おうかァァァァ!!」 ビューン

垣根 「ちょ、タンマ!今のは事故だから!」 ビューン



アノヒトモトンデルー!
ハヤクテヨクミエナイヨー!


麦野 「何か始まったわよ、説明そっちのけで」

心理 「子供は喜んでるけど」

結標 (あの様子じゃ暫く続きそうね……) ハァ






垣根 「……とまあこんな感じで、何かと便利な能力なんだ」 ゼーゼー

一方 「後で殺す……」 ゼーゼー

上条 (最後は俺か……さっきの見てたら緊張が解けたよ)

垣根 「最後の奴についてだが、コイツのは更に変わっててな」






垣根 「そこで今からヒーローショーを始めようと思う」

上一麦心 「「「「えっ」」」」

垣根 「その方がコイツの凄さがよく分かると思うからな」


ミタイミタイ!
ワクワク…


垣根 「よし、集合!」

麦野 「はぁ!?いきなり何言い出すんだ!」 ヒソヒソ

上条 「無茶振りにも程があるって!」 ヒソヒソ

一方 「何でオマエはいつもそう勝手なことすンだよ!」 ヒソヒソ

心理 「私、激しい運動なんて無理よ」 ヒソヒソ

垣根 「まぁ聞けって、いいか?まず最初に……」






以上です

あわきんは子供が大好きなんです、そりゃもう食べちゃいたいくらい

次回は水曜日になるかも


ていとくんは能力使えるようになったのか?

>>807
あの日以外は特に問題ありません

では投下します



ワイワイ
キャーキャー


結標 (皆の反応を見るに突発でやるみたいね、大丈夫なの……?)


チャーラッチャー♪


結標 (あ、始まった)

『ワンパンK.O!そげぶマン!』

説明しよう!そげぶマンとは理不尽な悪に立ち向かう正義のヒーロー!

その右手にはいかなる能力も無効化する力が宿り、どんな敵もその拳1発で倒してしまうのだ!決め台詞は『その幻想をぶち殺す!』

心理 「きゃー助けてー!」

上条 「ベクトルマン!こころんを放せ!」

一方 「かーきくーけこー!今日こそオマエをぶち殺してやるぜ三下ァ!」

ベクトルマンは自称“超一流の悪党”にして彼の永遠のライバル!今回は彼の友達こころんをさらって何かを企んでるようだ!

麦野 「そげぶマン!私も手助けするにゃん!」

上条 「ありがとうむぎにゃん!」

むぎにゃんはそげぶマンの愛猫が進化した姿!口はすっごく汚いけど、好物のシャケをあげたら誰にでもなつくゾ!

麦野 「おら、死にさらせ×××野郎ーー!!」 ビーム

結標 (ちょっ、子供の前でそれ言っちゃダメでしょ!?)

子供 「あわきん、×××ってなぁに?」

結標 「大きくなったら分かるわよ(ああ、純粋無垢な子供の口から汚い言葉が……興奮した)」 ゾクゾク

一方 「効かねェなァ!そンなンで俺様に勝てるとでも思ってンのか!?」 チュイーン

麦野 「クソッタレがー!いい気になってんじゃねぇー!」

上条 「むぎにゃん、あとは俺に任せてくれ、シャケやるから」 ポイッ

麦野 「ふにゃー!」 パシッ

上条 「ベクトルマン!どうしてこころんをさらったりしたんだ!」

一方 「理由は簡単、コイツは俺様にしてはいけないことをしてしまったからだ」

上条 「それは一体……」

一方 「それは……」













一方 「俺様の唐揚げにレモン汁かけやがったンだ!」 ドーン

結標 「」

心理 「だって、知らなかったのよ!普通唐揚げにはレモン汁かけるでしょ!?いつも皿に乗ってるし…」

一方 「よく見てみろォ!タルタルソースもついてンだろが!俺様はタルタルソース以外認められねェンだ!」

一方 「それをこの女、さも当然の如くレモン汁ぶっかけやがった……皆で取り合う唐揚げにな!」

一方 「挙げ句、『タルタルソースはないわ(笑)』とまで抜かした。これは俺様への宣戦布告だ!」

一方 「だから俺様はコイツにタルタルソースの何たるかを叩き込ンでやるンだよ!タルタルソースこそが至高だァァァ!!」

上条 「……ふざけんな」

一方 「あ?」

上条 「そんなくだらねぇ理由でこころんに怖い思いをさせたのか……!」

一方 「くだらねェだァ?オマエにはそう見えても俺様は違う、これは然るべき争いだ!」

上条 「うるせぇ!テメェのそれは只の押し付けだ!自分の思いを解って貰えないからってそれを押し付けるのは最低だ!」

上条 「レモン汁?タルタルソース?んなもん何だっていい!」

上条 「どれだけ周りに馬鹿にされようが、自分が好きだと胸を張って言えたらそれで十分だ!」

一方 「それが出来りゃあ戦争なンざ起きなかったろうな!甘過ぎンだよオマエは!」

一方 「なのに俺様はいつもオマエに負ける……あァ気に入らねェ!オマエだけはぶっ殺さねぇと気がすまねェなァ!!」 ビューン

上条 「本当は分かってんだろ、こんなことしても意味がないってことぐらい。だったら……」 ザッ






上条 「まずはその幻想をぶち殺す!!」

一方 「そげぶ!!」 バキッ

心理 「ありがとう、そげぶマン!」 ダッ

麦野 「ごろにゃーん♪」 ゴロゴロ

上条 「……少しは目ぇ覚めたか?」

一方 「ケッ、どうせオマエもレモン汁派なンだろ?片方が滅びない限り争いは続く、俺様とオマエみたいにな……」

上条 「俺はレモン汁でもタルタルソースでもない」

一方 「じゃあ何だ……?」

上条 「俺は……」


















上条 「竜田揚げ派だ!!」 ドーン

こうして、そげぶマンは今日も平和を守った。戦えそげぶマン!負けるなそげぶマン!この世の悪が潰えぬ限り――!!






【キャスト】
そげぶマン…上条当麻
ベクトルマン…一方通行
こころん…心理定規
むぎにゃん…麦野沈利
ナレーター…垣根帝督

【演出・脚本】
垣根帝督

【製作・企画】
垣根帝督


チャーラッチャー♪


結標 (……終わった。もう何から突っ込んでいいやら)


カッコヨカッター!
ソゲブマンカッコイー!


結標 (でも、子供達には大ウケだったみたいね)

先生 「ありがとうございました!皆、もう一回大きな拍手をしよう!」


パチパチパチパチ


先生 「これで、今日の講演会を終了とさせて頂きます!」






―――――――――

~園長室~


園長 「いやー、皆さん今日は本当にありがとうございます!子供達も大喜びでしたよ!」

垣根 「ははっ、何とかうまくいったみたいで良かったよ」

上一麦心 「「「「……」」」」 ズーン

園長 「おや?元気ないみたいですね」

垣根 「ずっと緊張してたから疲れたんじゃないかな」

園長 「そうですか、ではそろそろお昼にしましょう。給食を用意しましたので子供達と一緒に食べて下さい」

垣根 「やった!腹減ったな~」

園長 「教室はここを出て右の……」






垣根 「講演会はどうだった?」 スタスタ

一方 「最悪だァ、マイクに何度も被せられるし……」

上条 「てか、あのヒーローショー!キャラといいストーリーといい、何もかもおかしいだろ!」

垣根 「流石に無理があったかなー……」 ウーン

心理 「話の内容がふざけすぎ。只の唐揚げ談義じゃない」

麦野 「私のあのキャラは何!?悪意を感じるわ!」

垣根 「いや、自己紹介でにゃーんて言ったからアリかなーと」 ハハッ

麦野 「ねーよ!!誰かに見られてたら一生ネタにされるところだったっての!」 バシッ

垣根 「まぁまぁ、子供にはウケたんだし結果オーライってことで」

上条 「で、あれで俺の能力の説明は出来たのか?」

一方 「あンなので分かる訳ねェだろ……」

垣根 「お、ここだな」 ガララ


ア、オニイチャンタチダー!
ソゲブマーン!


垣根 「おお、元気な奴らだなー!」 パシャッ

上条 「こうして見ると、小萌先生が益々不思議に思えてくるな……」

心理 (距離を調節して…って、これじゃ意味ないわ。能力を使わずに仲良く……)

一方 「……オマエもいたのか」

結標 「あ、一方通行!そりゃ、私は先生になる為に勉強しに来たのであって……!」

子供 「あわきんのともだち?」

結標 「と……え、ええ、そんなところね」 ニコッ

先生 「お待ちしてました。さぁ、お好きな席へどうぞ」

麦野 「じゃあここに……」 ガタッ

垣根 「これが給食か~」 ガタッ

上条 「懐かしいな、牛乳一気飲み大会とかやってたっけ」 ガタッ

一方 「……」 ガタッ

結標 「何で皆私の周りに座るの!?」

上条 「なんとなく、近い年の人がいた方が安心するから」

一方 「見張っとかないと駄目な気がしたから」

麦野 「私と同じ臭いがしたから」

心理 「同じく」

垣根 「うまそ~」

以上です

垣根の原作復帰はいつになるやら

次回は日曜の予定です

>>1です。長らくお待たせしました

話し合いが終わったみたいですね。関係者の方々はお疲れ様でした

それでは約束通り投下



イタダキマース!


結標 「私は結標淡希、一方通行の同僚よ」

心理 「あなたも暗部だったのね」

結標 「土御門から聞いてたけど、アンタにも遂に『友達』が出来たんだって?」 ニヤニヤ

一方 「ハッ、俺は只コイツらのおふざけに付き合ってあげてるだけだ」

垣根 「隙あり!」 ヒョイ

一方 「あっ、俺の春巻返せ!」

垣根 「落ち着け、俺のきんぴらごぼうやるから」 ヒョイ

一方 「はァ?そンなンで春巻と釣り合うと思ってンのか!副菜じゃ主菜には勝てねェよ!」 ギャーギャー

結標 (すごい仲良しじゃない……)







結標 「……コミュ障の克服に来たって?あはは、何それ!」

一方 「あ?そういうオマエはどうなんだよ。ガキ狙ってここに忍び込ンだンじゃねェのか?」

結標 「さっきも言ったように、先生になる為の勉強よ。これでも真剣にやってるんだからね」 フフン

上条 「目標があるっていいなー。俺なんかまだ何も……」

結標 「私もこないだまで目標なんてなかったわ。小萌に奨められてやってみようと思ったの」

結標 「元々子供は好きな方だったから、悪くないかもしれないわね」

子供 「あわきん、これキライだからたべてー」

結標 「だーめ、好き嫌いしてると大きくなれないよ、このお兄ちゃんみたいに」

一方 「でかけりゃいいってもンじゃねェよ」 フンッ

麦野 「そうそう、世の中にはちっちゃい方が好きな人だっているんだから」

結標 「余計な事言わない!とにかく一口でもいいから食べること、いい?」

子供 「はーい……」

―――――――――

放課後~運動場~


垣根 「さて、いよいよ本題だな。いいか、今日は友達100人作る勢いで行くんだぞ?」

一方 「小学生じゃあるまいし……」

垣根 「ほら、そうこう言ってるうちに来たぜ?」

男児 「うさぎくんあっちであそぼー!」 ガシッ

一方 「(うさぎくン?)コラ、ひ、引っ張るンじゃねェよ!」 グイグイ

結標 (うさぎ君……肌白くて目赤いしうさ耳つけたら……)

結標 「……アリかも」 ボソッ

心理 (ないでしょ)

女児 「こころちゃんむぎのん、わたしたちと“がーるずとーく”しよー!」 キャイキャイ

麦野 「(ガールズトーク?)え、ええ、いいわよ」 テクテク

心理 (ガールズトークって女の子同士の会話だから……) ウーン

男児達 「「「とうまー!そげぶマンごっこしようぜー!!」」」 ワラワラ


オレモオレモ!
ボクベクトルマンヤルー!


上条 「うわわ!分かった分かった!じゃああっち行こうか」 グイグイ

垣根 「おお、皆あっという間に連れていかれたな」

結標 「あなたはどうするの?」

垣根 「決まってんだろ?ちびっ子とかアイツらを撮って回るんだよ」

結標 「子供も撮るの?」

垣根 「そうだけど」

結標 「……ねぇ、撮った写真私にもくれない?」

垣根 「いいよ、欲しかったら幾らでも」

結標 (いやったー!!これで夢の『ショタショタ☆メモリアルブック』が作れる!!) ガッツポーズ

垣根 「そんなに嬉しいのか?」

結標 「そ、そりゃあね……とにかくありがとう」 ニコッ

男児 「あわきんいつものアレやろー!」

結標 「はいはーい!じゃあまた後でね」 テクテク

垣根 「…さて、まずはあっちを見てくるか」 テクテク







男児A 「きょうはもっとおおきいおやまをつくるぞー!」 ザクザク

男児B 「~♪」 ペタペタ

一方 「……」 ペタペタ

男児B 「おみずかけるねー」 チョロチョロ

男児A 「くずさないようにきをつけろよ」 ペタペタ

一方 「……」 ペタペタ

男児A 「やべ、はしっこけずれた!」

男児B 「しゅうりしゅうりー!」 ワタワタ

一方 (何話していいか分かンねェ…) ペタペタ

男児B 「ウサギくん、ずっとだまってるけどどうしたの?」

一方 「え、いや…」

男児A 「つまんなかった…?」 シュン

一方 「そそ、そンなことねェ!ハハッ、じゃあ俺がもっと大きい山作ってやるよ!」 カチッ



スナバノスナヲアツメテアッシュクゥ!!
ウワースゴーイ!


一方 「……まァ、俺にかかればこれくらいどうってこたァねェ」 フー

男児A 「すげー!これかまくらみたいにできるんじゃね!?」

垣根 「おお、でっけぇ山だなー」 パシャッ

男児B 「ウサギくんがつくってくれたんだよ!」

垣根 「おいおい一方通行、単なる山じゃ子供は満足しねえぞ?俺だったら更に……」 ピキーン

男児A 「おやまにはねがはえたー!」

一方 「センスの欠片もねェな垣根くンよォ。俺が今からアーティスト足るものが何なのか教えてやる」

垣根 「望むところだ!ちびっ子、俺と一緒に素敵なお山を作るぞ!」

男児B 「やるやるー!」

一方 「よしオマエ!男と男の真剣勝負だ、絶対勝つぞ!」

男児A 「まけないぞー!」


メルヘンウンガデドウダー!
コッチハベクトルトンネルダァ!








女児A 「――やっぱり、あたしは“ぱてぃしえ”になりたいなー」

女児B 「わたしはだんぜん“なーす”だね」

女児C 「むぎのんたちはなにになりたいの?」

麦野 「うーん、今はまだ分からないなー」

心理 「そうね、昔と今じゃ考え方なんて全然違うから…」

女児C 「おおきくなるとたいへんなんだね」 ヘー

心理 (ガールズトークって言っても案外普通だったわね。それもそうか、まだこんなに幼いし……)

女児A 「ねぇ、ふたりはすきなひととかいるの?」

麦心 「「えっ」」

女児B 「わたしもきになるー!」

女児C 「じつはもうこいびとがいたりして」

麦野 「あ、アハハ、何言ってんのよ~。そんなのいる訳……」

女児A 「ぜったいうそだ!いるにきまってる!」

麦野 (何なの突然?さっきまで将来の話してたじゃない!)

女児C 「こころちゃんはどうなの?」

心理 「……好きかどうかは別として、気になる人ならいるわ」

女児B 「え、どんなひと!?」 ワクワク

心理 「一言で言うなら…自由な人、かしら」

心理 「いつも何考えてるのか分からなくて、事ある毎に皆を巻き込んじゃうの。思い立ったら即実行、それに強制参加なんてしょっちゅうだわ」

心理 「でも、それが不思議と楽しく感じちゃうのよね。自分でも悪い気はしないみたい」

女児B 「じゆうなひとか~、いがいとありだな~」

麦野 (自由ね……いや、強引か?)

女児A 「それってほとんどすきっていってるようなものじゃない?」

心理 「そうかもね」 クスッ

麦野 「えっ」

女児C 「むぎのんもいるんでしょ?きになるひと」

麦野 「あ、いや私は別に……」

心理 「彼女も私と同じ人が気になってるみたいよ」

麦野 「おい何言って…!」

女児A 「それってもしかして“さんかくかんけい”!?」 キャー

女児B 「おんなのたたかいはすごいらしいね!」

女児C 「どっちもがんばれ」

麦野 「あーもう余計な事言いやがって!」

心理 「ごめんなさい、なんだか面白かったからつい」

垣根 「よっ、女の子同士でお喋りか?」 パシャッ

女児B 「ていとくんだー!かっこいー!」

女児A 「おんなのこだけのひみつだからおしえてあげなーい!」

垣根 「いいじゃん教えてくれたって…。どうだお前ら、楽しんでるか?」

心理 「ええ、とっても」

麦野 「ってか、服汚れてない?」

垣根 「男同士の真剣勝負をしたからな」 フフン

女児C 「どんなしょうぶしてたの?」

垣根 「それは男だけの秘密だ。さて次は……」 テクテク

女児B 「……やっぱり、ていとくんがいちばんかっこいいよね」

女児A 「えー、わたしはとうまくんがいちばんだとおもうなー」

女児C 「わたしはうさぎくんがいい」


ハネハエルンダヨ!?
ヒーローダシ!
マモッテアゲタクナル


心理 (やっぱりこの子達変わってるわ。将来が不安ね……)







男児a 「――そのげんそうをぶちころす!」 バチーン

男児b 「うわーやられたー!」

男児c 「つぎおれがそげぶマンやるー!」

男児d 「えーおれもやりたいー!」


オレモオレモー!
ボクハアエテムギニャンヲ…


上条 「そげぶマン大人気だなー」 ハハッ

垣根 「俺もビックリしたぜ、なによりお前らの演技力に」 パシャッ

上条 「あ、垣根。でもあれは半分ヤケクソだったし……」

垣根 「もしかしたらもっと本格的なやつが作れるかもしれねぇな」

上条 「いやいや、もう充分ですよ」

垣根 「次はもっと出演者を増やして、観客2000人くらい入るホールで……」

上条 「ホント勘弁して下さい」

垣根 「それにしても、こうしてちびっ子と遊ぶのは楽しいもんだ」

垣根 「寧ろ、俺達がちびっ子に遊んでもらってるような気さえするぜ」

上条 「そうなのかな……」

垣根 「いずれ大きくなって色んな壁にぶち当たるだろうけど、今は何事にも全力で取り組める筈だ」

垣根 「何も恐れることはない。一方通行達にもそれを分かってくれるといいなーなんて」

上条 「俺達も子供に見習う点はあるって事か」

垣根 「そういうこと、だから俺達も見習って全力で遊ぶぞ」

垣根 「よーしちびっ子達、俺と上条が相手になるから全員そげぶマンでいいぞ!」

上条 「へ?」

男児c 「いいの!?」

垣根 「ああ、そげぶマンは1人しかいないなんて誰も言ってないからな!」

上条 「何だそれ!」

垣根 「お前も準備しろ、子供は手加減なんて知らないからな」

男児達 「「「「そのげんそうをぶちころす!」」」」


カカッテコイヤー!
ヒエー!


―――――――――


――日が沈み行く帰り道、6人の少年少女は今日の出来事を語り合いながら歩いていた



垣根 「今日は楽しかったなー」

一方 「ガキの相手はホント疲れる…」 フー

上条 「若さとは凄いもんだ」

麦野 「何ジジイみたいな事言ってんの」

結標 「ウフフ…これが欲しかったのよ……」 ブツブツ

心理 「結標さんが怖いんだけど」

一方 「ほっとけ」

垣根 「アイツらには元気に育って欲しいよ」

麦野 「そうね、実験台にされる子が1人も出ない事を祈るわ」

上条 「将来かー、俺もそろそろ考えないと」

一方 「その前に今の心配をしたらどうだ?」

上条 「うっ…」

垣根 「そうそう、補習とか大丈夫か?」

上条 「お前のせいで量が増えちまったよ!」

結標 「焦らなくても、やりたい事なんてそのうち見つかるわよ。あの時と違って、今は時間があるんだし」



そう、今の彼らには自分だけの時間がある



ある者は未来の自分を目指し、ある者は暫しの安息を、ある者は残してきた課題に追われ……

心理 (私達にも、やっと考える時間が出来たのね……)

これからは自身を見つめ直し、どの道を進むのかじっくり検討していく事だろう












1人を除いて――

垣根 「ところで皆、唐揚げに何つけて食べる?」

麦野 「私は……」

以上です

ヒーローごっこは誰もが通る道

次回は金曜日あたりに

お待たせしました

今回はかなり少ないですが投下したいと思います

―――――――――
―――――
―――



――ったく、何でこうなっちまったんだか



テメェもテメェで好き勝手しやがって……



自分の置かれてる立場が分かってんのか、あぁ?



…………



チッ、ムカつく野郎だ



あの時もっと――――






―――――――――
―――――
―――

12月16日(木)


オッス、俺はスフィンクス。若干不幸な少年と食欲旺盛なシスターが住む家で飼われてる三毛猫だ

正確には御主人様がシスターで宿主様が少年…といったところか

あ、分かってると思うがこれは全部心の声だからな?人間の言葉が多少理解出来るだけで喋れる訳ないからな?

しかし驚いたね。何がって、御主人様の成長っぷりに

突然帰って来たかと思えば料理はするわ家事はするわ、そりゃ宿主様もポカーンてなるわ

してもらってばかりなあの頃と比べたら感激の余り涙が出そう。暴飲暴食は相変わらずだがな

さて、そんなこんなで今日もゆる~い1日が始まる訳だが、生憎御主人様の姿はなく……













垣根 「可愛いなー」 パシャッ

代わりに、チャラい兄ちゃんが部屋に居た

垣根 「ホント、見てて癒されるぜ」 ナデナデ

コイツは最近ちょくちょく家に遊びに来てた奴だったな

こっちはいつの間に忍び込んだのか懐疑心でいっぱいだよ。宿主様め、とんでもない奴と仲良くなったもんだ

垣根 「ほれほれ~」 フリフリ

猫じゃらしだと?ふっ、そんなちんけな玩具じゃ俺は靡かな……わぷっ!おい、顔にワサワサするな!痒い!

垣根 「ははは、可愛い奴め」

兄ちゃんと違って朝は弱いんだから止めてくれ!

垣根 「腹減ってないか?俺は減ったんだけど」

お前のことは知らんが、確かに腹は減ったな

垣根 「猫用の餌は……あれ、どこだ?」 ガサゴソ

ここだここ、この棚の中

垣根 「ここか?えーっと……空っぽみたいだが」

御主人ー!切れたならそう言っといてくれよー!

垣根 「うーん……」 ガサゴソ

畜生、外行ってトカゲでも食うしかねーか。最近不味いのしかいないんだよなー……

垣根 「お、これハッピーターンじゃねえか。しかも大量に…」

それって確か宿主様が最近ハマってるお菓子だっけ。幸福が返ってくるとか言ってはしゃいでたなー

“毎朝一本ハッピーターン”なんて変な習慣作るくらいだし、余程信じ込んでるんだろう

垣根 「仕方ない、これでも食べな。もしかしたら幸福が返ってくるかもしれないぜ?」

おいおい猫が食っても大丈夫なのか?まぁ、空腹には耐えられんから頂くが……

垣根 「どうだ、美味いか?」 ポリポリ

うーん、この甘さと辛さの絶妙なバランス、イケる!人間はこんな美味いものを食ってるのか

垣根 「この際だから牛乳も飲んどけ」 ドボドボ

おお!普段水しか飲ませてくれない俺にとって高級ワインに匹敵する牛乳だ!

くぅ~、カルシウムが五臓六腑に染み渡るね~!

垣根 「ふむ、猫と牛乳は相性がいいな」 パシャッ

何だかテンション上がってきた。今なら何だって出来る気がする!

垣根 「お、遊んで欲しいのか?じゃあ……」






―――――――――


垣根 「グデーっとしちゃって、流石に疲れたか?」 ツンツン

ひぃ、ひぃ……調子に乗りすぎた。うぇ、吐きそう……

垣根 「そんな姿も可愛く見えるなんて反則だぜ」 パシャッ

子猫といっても人間の年齢にしたらおっさん並だぞ、おっさんを撮って何が嬉しいんだ

垣根 「今日は皆用事があるって言うから動物の日常風景を観察しようと思ってな」

はぁ、飼い猫の日常なんて見てもつまらんぞ?ほぼ家でゴロゴロしてるだけだ

そんなのより野良猫の方が観察しがいあるんじゃないか?

垣根 「初めは野良猫にしようかと思ったんだけど、中々見つからない上すぐ逃げられる…」

うーんまぁ、アイツらはあまり人間が好きじゃないらしいし

垣根 「という訳でだ、今日は俺とずっと一緒だからなー」 ナデナデ

ええー、さっきのあれでもう疲れたんだけど

垣根 「まずは、猫の身体について詳しく知ることから始めよう」

えっ……

垣根 「安心しろ、痛くしねぇから」 ニコニコ

いやいや、何?身体について知るってまさか……!?やめろ、やめろーーーー!!!






以上です

禁書では貴重なマスコットキャラなのに可愛くなくてすみません

次回は来週の日曜日に来る予定で

夜中になってしまった……

お待たせしました、今から投下

―――――――――


垣根 「――ほう、猫の髭はセンサーのような役割を持ってるのか」 ツン

かれこれ30分、俺は動物図鑑を片手に持つ兄ちゃんに身体を好きなように弄くり回されていた

最初はそれなりに抵抗したんだけど、こんな年だしすぐに持久力は尽きる訳で……

優しさと乱暴さが入り交じった手つきであらゆる場所を愛撫されながら思う

ああ……これが諦めの境地というものか……

だから俺は喉を鳴らし、快楽の海に身を任せているのだろう

垣根 「気持ちいい?」

嬉しそうに笑いながら俺の頭を撫でる。ああそうだよ、年甲斐もなく猫撫で声(文字通り)出しちゃってんだよ

垣根 「ここは?」

うぉっ、肉球フニフニはやめれ!でも、いい……

最近すぐ筋肉痛になるから毎日こんな風に全身ほぐしてくれると尚いいかも~

垣根 「…っと、こんなことばっかしてちゃ日常観察にならねぇな」

え?やめちゃうの?いや、別にいいけど……

垣根 「とはいえ、飼い猫って普段何して過ごしてんだ?」

さっきも言った(当然相手には伝わらない)が、家でゴロゴロしてるかアニメの再放送を見るくらいだな

あ、あと御主人と散歩に出たりするな。その時は昼飯(狩り)にしたり仲のいい野良猫と駄弁ったりしてる

垣根 「家に籠っててもあれだし、外へ出掛けるか」

……時々、俺の考えてる事が分かってるんじゃないかって思う

垣根 「んじゃ行こうか、えーっと……スカンクス?」

スフィンクスな






―――――――――

~公園~


垣根 「なんとなく公園へ来てみたが、誰もいない……」

そりゃそうだろ、学生は皆学校へ行ってんだから。逆に、何でお前は学校へ行かないの?

垣根 「学校か…、学校はたまに覗きに行く程度でいいんだよ」

学生にあるまじき発言だな

垣根 「お、あれって野良猫か?」

ホントだ。しかも俺の連れじゃん、ちょっくら声掛けに行こっと

垣根 「あ、スカンクス!」

スフィンクスな






おーいお前ら!

[あ、スフィンクス!]

<久しぶり~>

この2人(匹)は最近狩りの最中に知り合った野良猫だ。[]が虎猫の寅さんで、<>がぶち猫の染み吉

寅さんは気さくな性格で、産まれた時からずっと野良猫として生きてきたからそっちの経験は豊富だ

染み吉は割と温厚な方だけど、人間に対しては敵意剥き出しにする二面性を持つ猫だ。過去に人間に捨てられたんだって

その話を聞いた時、飼い猫である俺はどうなのか聞いてみたが、人間と猫は別との事

両方俺と同じくらいおっさんだから会話の内容もおっさん臭い。最近の若者(猫)についてとかマタタビに合うつまみとか……

[さっきから誰に説明してんの?]

あ、いやいや何でもない
<……あそこにいるのは君の飼い主?>

いや、その友達みたいなもんだ。今日は俺の日常観察がしたいんだと

[へぇー、あの兄ちゃんイカすカメラ持ってんね]

<そうかい、でも、あまりこっちへ近付けないでくれよ?>

気を付ける。それより今日はどうした?

<それが、飼い主とはぐれた子猫を見つけてね>

{……}

黒猫か……年は俺達より結構若いみたいだな

[いやー困った困った、何を聞いても分からないしか答えなくてさー]

君、名前は?

{……分かんない}

どの辺に住んでる?

{……分かんない}

<とまぁこんな具合で、僕らもどうしていいのやら>

{……ぐすっ、ひっく}

[ちょちょちょちょ、泣かないで、泣かんといて!?ほら、さっき捕まえたヤモリあげるからさ!]

<寅さん、飼い猫にそんなもの与えちゃダメだよ>

[何ぃ!?俺がこれぐらいの年はミミズしか食ってなかったんだぞ!]
えーっと、じゃあ飼い主はどんな人?

{……女の人}

どんな服着てたか分かる?

{……制服}

[ここは学園都市だからなー、制服の女の子なんていっぱいいるぞ?]

<他に、何か特徴みたいなのはなかった?>

{頭に……変なの着けてた}

変なの……?

{あと、近付くと嫌な感じがする}

[おいおい、それって飼い猫としてどうなのよ]

<君はその飼い主といて不快なのか?>

{不快じゃない…ってのは嘘になるけど、主人は何も悪くないんだ。寧ろ、可愛がってくれるし……}

{主人もその度にボクに謝るんだ。「ごめんね」って}

じゃあ、君は御主人が嫌いという訳ではないと?

{うん……}

[よし、なんなら俺達と一緒に御主人様でも探すとするか!]

{えっ?}

寅さん、幾ら何でもこんなだだっ広い街を走り回れる程体力ないぞ?

<同感だ、下手に動いて入れ違いになるとそれこそ面倒だよ>

[バカ野郎!まだ若いもんに負けちゃいねぇ!それにおれが何年野良猫やってると思ってんだ?]

[俺には研ぎ澄まされた“野生の勘”ってのがあるんだよ]

イマイチ信憑性に欠けるが、ベテランが言うんだから期待はした方がいいかね?

<そうだね、期待しよう>

[安心しろ?俺達がいれば御主人様の1人や2人探すなんざ朝飯前だっての]

{あ、ありがとうおじさん!}

[よーし、では冒険の始まりだ!行くぜスフィンクス、染み吉!]







垣根 「これこれ、こういうのが撮りたかったんだよ」 パシャッ

垣根 「アイツら集まって何してんのかなー」 パシャッ

垣根 「やっぱ人間みたく世間話とかしてんのか?」 パシャッ

垣根 「『お前ん家の奥さん美人だよな』とか話してたりして」 プッ

垣根 「……あ、アイツらどっか行くみたいだ。俺も追わないと」 ダッ






御坂妹 「ああ、どこへ行ってしまったのでしょう、とミサカは途方に暮れながらも捜索を続けます」

御坂妹 「ちょっと目を離した隙にいなくなってしまうなんて……とミサカは己の失態を嘆きます」

御坂妹 「いえ、それよりもあの子を見つける事が先決です、とミサカは気持ち新たに足を早めます」 ダッ

以上です

やはり量が少ない…

次回は来週の水曜日に来れるよう頑張ります

>>1です、毎度毎度遅れて申し訳ない

猫たちについてですが、彼らの世界ではもう立派なおっさんだという事で各自補完願います

では投下

―――――――――


――そういえば名前が分からないって言ってたけど、どういう事?

{実は、まだ決められてないんだ。幾つか候補はあったみたいだけど……}

<その候補とは?>

{イヌ、徳川家康、シュレーディンガーの3つだったかな}

[単純にクロとでも名付けるかと思いきや、斜め上の発想だな]

3つ目は俺達にとっておぞましい何かを感じるぞ

<飼い主はこの中から本気で決めるのだろうか>

{さ、さあ……}

[そういや、スフィンクスって名前も珍しいよな]

<僕らは見た目から付けられたシンプルな名前なのにね>

俺も最初はビックリしたさ。でもいつか聞いた話じゃ「知識の番人にかけた」とか何とか言ってた気がする

<君の主人は記憶力がよかったんだっけ。なるほど、うまいね>

[こんなぐうたらに番人なんて務まるのかねー]

自覚はしてる

{ボクはなんて呼んでもらったらいいんだろう}

[『我輩は猫である。名前はまだない』って状態だもんな]

とりあえずイヌでいいんじゃね?

{猫なのにイヌ……}

<今の間だけさ、正式に決まればその名で呼ぶよ>

よろしくな、イヌ(仮)!

{う、うん……よろしく}

[さて、まずはあっちから……]

ちょい待ち!

[どうした?]

ちゃんとした飯食ってないから腹が減って……

<まったく……早く済ましてくれよ>

[おう、それならいい場所知ってんぞ]

マジで?

[俺についてこい]



―――――――――

~ファミレス裏口~


[お、あったあった!丁度さっき捨てに来たみたいだ]

<人間の残飯か、よくそんなものが食べられるね>

[昆虫とか爬虫類の味に飽きた時なんかたまに来るんだよ]

{食べても大丈夫なの?}

[一部魚介類とかに気をつけてれば大体いける]

<しかし、人間とは贅沢な生き物だね。食べれないからってすぐに残したり捨てたりする>

モグモグ……ホント、ウチん家じゃ今日をどうやって食い繋ごうか必死だってのにさ

{そんな過酷な生活なの?}

雨風凌げるだけ野良よりマシってとこだ

<食べられるなよ>

ブフォッ!不吉な事言うなって……

店員 「あー、またお前か!来る度ゴミ箱荒らしやがって!」

[やべっ!逃げるぞお前ら!!]

{ま、待ってよー!}

あとこんだけ……

<食い意地張るな!早く行くぞ!>

ちぇー……






垣根 「ゴミ箱荒らしとは如何にも野良猫って感じがするな」

店員 「ちょっとアンタ!何写真なんか撮ってんだよ!」

垣根 「見失わないようにしないと」 ダッ

店員 「」






御坂妹 「この辺りにはいませんか……とミサカは落胆します」 ハァ

店員 「姉ちゃん、ちょっとこれ片付けるの手伝ってくれないか?」

御坂妹 「どうかされましたか?とミサカは床に散乱するゴミを眺めながら質問します」

店員 「見ての通り、野良猫共がゴミ箱を荒らしていきやがったのさ」

御坂妹 「…!その中に黒い猫はいませんでしたか?とミサカは更に質問を重ねます」

店員 「あー、多分いたんじゃないか?皆あっちへ逃げてったけど」

御坂妹 「あ、ありがとうございます!」

店員 「いやいや、それよりも……」

御坂妹 「待ってて下さい、とミサカは手掛かりを元に捜索を再開します」 ダッ

店員 「」

―――――――――


あービックリしたー

[言い忘れてたが、これには人間に捕まるというリスクが伴う。食事中も油断出来ないぞ]

なんだよそれ、食べる時ぐらいゆっくりさせてくれよ

<飼われてる君には分からないさ>

[そうだな、イヌ(仮)がこんな生活しなくてもいいように、早いとこ飼い主を探さないとな]

{……!}

[どうした?]

{お、おじさん…あれ……}

[げっ、アイツらは…!]

<おうお前ら、誰の許可もろうてウチの縄張り踏み込んどんのや?>


イテマウゾワレー!


{ひぃ、凄い睨んでくるよ!?}

何あれ?

<この辺りを支配してる野良猫のグループさ。ここがそうだというのを忘れていたよ>

<で、シャム猫の彼<>がその幹部だ>

[いやー悪い悪い、そうとは知らずに入っちまって……]

<これで何度目だ?流石の今日という今日はとっちめてやらんと示しがつかんわなあ?>


カクゴセーヨ!
クロネコタンハァハァ


{ど、どうしよう…!}

うーん…ここは1つ、俺が囮になってやるか

<そんな事して大丈夫か?>

分からん、でも宿主様なら絶対こうするだろうなーと思って

{でも……}

《やめろ》

{<[!]>}

<ぼっ、ボス!>

《ったく、たかだか入ったぐらいで大騒ぎすんじゃねーよ。ウチの品格が落ちるだろうが》

<しかし、このままでは周りから舐められて…!>

《あぁ?》

<す、すみません……>

《おう、部下が迷惑かけちまったようですまなかったな》

[いやいや、こっちこそ何度も踏み込んじゃって…]

あれがボス?

<みたいだね、僕も初めて見たよ>

[実は、コイツが飼い主とはぐれたっつってよー、一緒に探してるんだ]

《そんな事情があったとは、益々迷惑をかけていたようだな》

あれ、意外と話が通じる?

《そういう事なら別だ、好きなだけ探してくれて構わんよ》

{ありがとうおじさん!}

<一時はどうなるかと思ったよ>

《何せ俺はペルシャ猫のチンチラだからな!多少の事なら笑って許せるさ》

え、ち○ちら?すげー卑猥な名前だな

<ば、馬鹿野郎!!言ってはいけない事を…!>

《ははは……いや、チンチラとは毛色の事であって、俺みたいな銀色だとそう呼ばれて…》

つまり、幾ら名前が立派でもち○ちらは覆らないって事?なにそれ可哀想

<お前わざとか!?わざとやってんだろ!?>


《……ぐすっ》

{あ、泣いてる}

[スフィンクス……]

え?俺何か酷い事言った?

<ぼ、ボス!しっかりしてください!大丈夫です、ボスのは凄いと評判ですし!>

《お前慰める気あんの!?馬鹿にしてない!?》

<め、滅相もありません!>

《……気が変わった。例えどんな奴であろうと、チンチラを馬鹿にする奴は許さん!》

<君が余計な事言うから怒ってしまったぞ!>

マジで!?自分でち○ちら言うから気にしてないかと……

《その表記を止めろ!!ええい、やっちまえお前らー!!》


オラーシニサラセー!!
イヤッホーーウ!


{うわー!みんな襲い掛かって来たよー!!}

[全力で逃げるぞ!!]












垣根 「猫同士の喧嘩かー、面白い事になってきた」 パシャッ

垣根 「あ、また逃げた。追跡追跡っと……」 ダッ






御坂妹 「む、何やらあちらから多数の猫の唸り声が……」

御坂妹 「もしや……とミサカは不安を胸に抱きつつ現場へと急ぎます」 ダッ












《こら待てーー!!》

<くそっ、しつこい奴らだ!>

ひぃ、ひぃ……

[おいスフィンクス!?息上がるの早いって!]

お、お前らと違って運動なんか全然してないんだし当然だろ!

おまけにさっき逃げた時に体力半分以上消費したから余計……

<燃費の悪い奴め…>

《くっそー!こんなに馬鹿にされたのはペットショップでの暮らし以来だ!》

[売られてたのか…?]

<元々ボスは温厚でとても優しい方だった>

<しかし、周りの連中はそれをいいことにいつもボスを罵倒してきた>

<特に酷かったのが“ち○ちら”という単語…。己の存在を誇りに思うボスにとっては凶器そのものだ>

《や、やめろ…古傷が痛む……!》

<す、すみません!>

《お前らに理解出来るか!?猫からも人間からも変態呼ばわりされ続けてきた俺の気持ちが!》

《「毛深過ぎちゃあち○ちら出来ないだろ?」とか「こんな可愛いのに名前が…」とか…グスッ、言われる…エグッ…俺の気持ちが!!》

<ボス!自分で自分を追い込まないで下さい!!>

《俺はコイツと店を抜け出して決めたんだ……野良猫になって、俺の強さを皆に見せつけてやると》

《そして、誰にもち○ちらと呼ばせないとな!!》

<……真面目に言ってるんだろうが、どうしても間抜けに聞こえる>

ごめ…もう、無理……

{おじさん!}

<チャンスだ!アイツからやってまえー!!>


ウォー!


[スフィンクス!!]

<あの馬鹿…!>






垣根 「流石に止めに入るべきかな」

垣根 「でももうちょっと見てたい……?」






《!?何だ……これ…》

<頭が……痛い!>

[本当だ、こりゃあ一体…?]

{……まさか}

《くっ、今日は引き上げるぞ…!》

<は、はい!>


ヒギィ!コワレチャウゥー!!
マタクルヨ、クロネコタン…


御坂妹 「……良かった、無事でしたか」

<……誰だ?>

{御主人様ーー!!}

御坂妹 「わっ!み、ミサカに飛びついて大丈夫ですか?とミサカは自身が発する電磁波を危惧しながら抱き留めます」

{会いたかった、会いたかったよー!}

[これがイヌ(仮)の飼い主か…確かに嫌な感じがする]

あれって確か御主人の知り合いだったような……

御坂妹 「君達がこの子を守ってくれてたの?とミサカは3匹の猫に問いかけます」

<勘違いしないでくれ、君の為じゃなくイヌ(仮)の為に行動したんだ>

[まぁまぁそう威嚇しなさんな]

御坂妹 「おや?君は確か上条当麻の……」

垣根 「大丈夫かスカンクスー?」

スフィンクスな。てか、まさか最初からずっと見てたんじゃ…?

垣根 「ずっと追っかけてて止めようか迷ったんだけど、撮るのに夢中で忘れてた」 ハハハ

やっぱりか!こっちは死ぬ気で逃げてたってのに呑気にしやがって!

御坂妹 「この猫を知ってるのですか?」

垣根 「ああ、ちょっと友達のを借りてるだけだけどな」

御坂妹 「上条当麻の……」

垣根 「え、アイツ知ってんの?」

御坂妹 「はい、あの方はミサカ達にとって命の恩人ですから…とミサカは遠い目であの頃を振り返ります」

垣根 「アイツ、あちこちで色々やってんだなー」

垣根 「ここで会うのも何かの縁だ、そこでちょっと話でもしようぜ」

御坂妹 「別に構いませんが……」






―――――――――

~公園~


垣根 「――ふーん、そりゃ困った体質だなー」

御坂妹 「はい、だから不思議なんです。この子達がミサカから逃げないのが、とミサカは子猫達を撫でながら言います」 ナデナデ

{こんなの、慣れたらへっちゃらさ!}

この感じは二日酔いに似てるな。マタタビ浴びすぎた翌日みたいな?

<……>

[もっと嬉しそうにしろよ。缶詰めご馳走になってんだし]

<人間の施しなど頼んだ覚えはない>

[その癖残さず食うのな]

<食い物を粗末にするのは野良猫として許せんだけだ>

垣根 「その抱いてる黒猫がペット?」

御坂妹 「そうです、でもまだ名前を決めてないんです…とミサカはあの3つの名前をふと思い出します」

……あの3つのどれかになったらどうすんの?

{どの名前になってもボクは快く受け入れるよ。だって、御主人様がボクにくれる最高のプレゼントだから!}

[かー、泣かせるじゃないの!こういうの見ると飼い猫っていいなーって思っちゃうんだよ]

垣根 「でも良かったじゃねえか、こうして猫に囲まれてるんだし。体質なんて愛で乗り越えられる!」 グッ

御坂妹 「愛、ですか……」

垣根 「その拾った命で、今度はそいつを守ってやれよ」

<中々恥ずかしい事を言う男だ>

[人間のそういうロマンチストな所、案外好きだけどなー]

いや、こんな事言うのはこの兄ちゃんだけだと思う

垣根 「こうして猫との距離が縮まった記念に、1枚どう?」 ウキウキ

御坂妹 「え、写真ですか?とミサカは唐突な提案に戸惑いを覚えます」

垣根 「写真ってのはその一瞬を一生形に残す事が出来る優れものなんだぜ?1枚1枚が記念写真なんだぜ?」

何か押し売りみたいだな

御坂妹 「……では、1枚だけお願いしてもよろしいでしょうか?とミサカはあなたの熱意(?)に敗北を宣言します」

垣根 「よし、じゃあスカンクスと野良猫達も一緒に集まってー」

<何?僕はお断りさせてもらうよ>

諦めな、あれに捕まったが最後、どう足掻いても無駄さ。御主人俺の名前アイツに教えといてくんないかなー

{染み吉さん、ボクからもお願い~}

[イヌ(仮)の為なら問題ないだろ?]

<……仕方ない>






―――――――――


――とまぁ、そんなこんなで撮影は行われた。飼い主の笑い方が印象的だったなー

口元だけ吊り上げた若干不気味な笑みだったが、本人は本気で笑ってたつもりらしい

イヌ(仮)は終始嬉しそうに、寅さんは恥ずかしそうに、染み吉はやや不機嫌そうな顔してた。人間には分からないけど

その後イヌ(仮)の名前をしばらく考えてたんだけど、結局決まらずに保留となった

この際イヌでいいんじゃね?なんて思ってるのは俺だけじゃないはず

……正直、今日はこんな忙しない日になるとは思ってなかったよ

こんなのが日常で起きてたら身体が幾つあっても足りんだろうなー

あの兄ちゃん、今日はついてたんじゃないの?

禁書 「スフィンクスー!」

お、どうやらご飯の時間のようだ

では、猫の一人語りもこれまでにして、いつもの子猫に戻るとするか――

以上です

前が少なかった分長々としちゃったなー
次スレのタイトルどうしよう

次回は火曜日の予定で

相変わらず予告通りに来れない……

今回は小ネタです

では投下

閑話~とある思い出の1ページ~







―――――――――

~ファミレス~


垣根 「今日は皆名前で呼び合う事な」

一麦上心 「「「「はい?」」」」

垣根 「だから、下の名前で呼ぼうっつってんの」

麦野 「また変なこと思いつきやがって……」 ハァ

垣根 「これはお前達のコミュニケーション能力の上昇にも繋がるんだぜ?」

一方 「誰がコミュ障だ」

上条 「まぁ落ち着いて」

垣根 「ある程度親交の深い人に、今度は名前で呼んでみよう」

垣根 「そしたら親近感も上がって自然と会話がスムーズになるはずだ」

心理 「根拠はあるの?」

垣根 「ない。強いて言えば気持ちの問題さ」

上条 「あれ、一方通行と心理定規はどうすんだ?」

垣根 「あだ名で呼べばいい。一方通行は“あーくん”で心理定規は“こころん”な」

一方 「あーくンだァ!?ふざけてンだろ!」

垣根 「嫌か?じゃあパッと浮かんだ“百合子”でどう?」

一方 「あーくンちょっとイライラしてンだけどォ、相手してくれねェかなァていとくーン?」 カチッ

上条 「暴れない暴れない」 ガシッ

垣根 「じゃあ今から全員名字で呼ぶの禁止なー。アンタとかお前もダメ。呼んだら当麻のデコピン一回」

上条 「え、俺!?」

垣根 「だって一方通行の能力効かねえし、男女平等を掲げてんだろ?」

上条 「そんなこと一度も……」

垣根 「あ、あと名前で呼ばれない限り返事するのも禁止にしよう。うっかり返事した奴もデコピン一回で」

麦野 「めんどくせえよ」

垣根 「じゃあゲームスタート!」






―――――――――

10分後


一方 「……」

麦野 「……」

心理 「……」

上条 「……」

垣根 「ちょっとちょっと、何皆黙りこんじゃってんのさー」

一方 「……」

麦野 「……」

心理 「……」

上条 「……」

垣根 「そうだ、名前呼ばないといけないんだった」

一方 「……おい」

垣根 「ん?」

一方 「誰も呼んでねェし。はい今返事したー、デコピン一回な」

垣根 「あっ」

上条 「許せ…!」 ビシッ

垣根 「ってぇ!またやっちまった…」

垣根 「つかさー、会話しようぜ皆。何のためにこれやってんのか分かってる?」

心理 (あなたが変なルール作るからでしょ)

上条 (俺がミスったら全員からビンタって酷すぎだろ!そりゃ喋りにくくもなるって)

垣根 「名前で呼ぶだけじゃねえかよ……分かった、一辺俺の名前順番に呼んでみろ。まず当麻から」

上条 「帝督」

垣根 「次あーくん」

一方 「チッ……帝督」 ヒクヒク

垣根 「意外と素直だな、次こころん」

心理 「……帝、督」

垣根 「何で一瞬詰まった?最後は沈利」

麦野 「……とく」 ボソッ

垣根 「え?」

麦野 「……帝督」 ボソッ

垣根 「もう一回」

麦野 「あーもう、ていとくん!!」 ガンッ

垣根 「ていとくん?」

麦野 「ていと…ど、どっちでもいいだろ!」

垣根 「沈利何怒ってんの?」

麦野 「下の名前で呼ぶな!ムズムズすんだよ!!」

垣根 「じゃあ“むぎのん”でいくか?」

麦野 「それも嫌だわ!」

一方 「バカ、俺と比べりゃ遥かにマシだろうがよォ。むぎのンも沈利も一緒だ」

麦野 「確かに、女の名前つけられるあーくんよりマシね。いや、百合子ちゃんかな~?」 ケラケラ

一方 「それは挑戦状と受け取っていいのかァ?名前1つでギャーギャー騒ぐ沈利ちゃ~ン」 カチッ

上条 「やめろ!店がぶっ飛ぶ!」

心理 (途端に賑やかになったわね……。確かに、距離はさっきより縮まってるみたいだけど)

垣根 「なぁこころん、何で名前教えてくれねえの?あの時言いかけてたじゃん」

心理 「気が変わっちゃったから……じゃ駄目?」

心理 「それに、秘密事の1つや2つくらい誰しも持ってるものよ。帝督はないの?秘密事」

垣根 「ない……こともない」

心理 「でしょ?言いたくなったらいつか言うんじゃないかしら。過度な詮索は印象悪くするだけよ」

垣根 「ふーん……」

心理 「どうしたの?」

垣根 「ん?あぁ何でもない」

上条 「て、帝督ー!助けてくれー!」

垣根 「こら!沈利、あーくん、ここは公共の場だぞ!」


キメェカラヤメロ!
クソメルヘンガァ!!
ウオ!?ニタイイチハヒキョウダゾ!


心理 「そう言いつつ、皆名前で呼び合う所が可愛いわね」






―――――――――

~黄泉川家~


芳川 「一方通行、コーヒー入れてくれない?」

一方 「……面倒くせェ」 スクッ

一方 (あの後、個別に課題を出すとか言って張り切ってたが……)

一方 (何が「家の誰かを名前かあだ名で呼んでみよう」だ。馬鹿馬鹿しィ)

一方 (……だが、これでコミュ障とか言われて笑われンのも癪だ) シュンシュン

一方 (上等じゃねェか…!やってやるよ。名前を呼ぶくらい造作もねェ、俺は学園都市最強の男だからなァァァ!!) コポポ

一方 「ほらよ…………桔梗」 コトッ

芳川 「」

一方 「……!!」 ドスドス

番外 「モヤシの奴どうしちゃったの?慌てて寝室に行っちゃったけど」

打止 「芳川が固まっちゃってるよ?ってミサカはミサカは目の前で手をヒラヒラさせてみたり」 ヒラヒラ

番外 「おーい芳川ー?」

芳川 「……あの子が、私の事桔梗って……」

番外 「えっ」

芳川 「声は小さかったけど、確かに言ったわ」

番外 「何で?」

打止 「あわわ、MNWがお祭り騒ぎに、ってミサカはミサカはまさかの展開にパニックになってみたり!」

黄泉川 「どうしたじゃん?」

打止 「それがね…」






一方 「言った、俺は言ったぞ!!俺はコミュ障なンかじゃねェ!」

一方 「ぎゃは、ざまァみやがれクソメルヘン!所詮は第二位、俺とオマエじゃ格が違うンだよォォォォ!」

―――――――――

~上条宅~


上条 「……」

禁書 「とうま、さっきからずっと黙ったままだけどどうしたの?」

上条 (あんの野郎ー!滅茶苦茶な事言いやがって!)

上条 (「どこでもいいからシスターちゃんに触れ」って、セクハラ強要してんじゃねえよ!)

上条 (ごまかそうにも「明日シスターちゃんに聞きに行く」とか言ってるし、やらなかったら後が怖い……)

上条 (そうだ、これは課題、学校の宿題のようなものだ!意識するから駄目なんだ!)

上条 (普段過ごしてるように、いつも通りでいいんだ。何てことない日常の一部……)

禁書 「とうま!」

上条 「はひ!?」 ビクッ

禁書 「まさか、また何かに巻き込まれてたりする?」 ジッ

上条 「い、いやいや、そんなことは何1つありませんのことよ?(ある意味そうだけど)」 ドキドキ

禁書 「ふーん……そうだ、洗濯物直さなきゃ」 スクッ

上条 (しめた、これは俺がやると言って肩や手をさりげなく触るチャンス!)

上条 「い、インデックス!今日は俺が……!?」 グラッ

禁書 「わっ!」 ガシッ


ドターン!


上条 「いてて、悪いインデック…ス……?」 モニュッ

禁書 「……」

上条 (こ、この感触…そして桃のような形……まさか……!!)

禁書 「……とうま」 プルプル

上条 「……ごめんなさい」


ギャーーー!!


土御門 「今日は隣が騒がしいにゃー」

舞夏 「そうだなー」

―――――――――

~麦野宅~


麦野 「ん、出来たよ」

滝壺 「おでんだ、おいしそう」

絹旗 「麦野の家に来るのは超久しぶりです」

麦野 「そうね、いつ振りかしら?」

浜面 「お前の家は暖かいなー。俺ん家は暖房器具全然ないから寒くて寒くて……」

滝壺 「それなら私が暖めてあげる」

浜面 「た、滝壺///」

麦野 「閉め出されてぇかはーまづらぁ」

絹旗 「十分暖まっただろうし、いいんじゃないですか?」

浜面 「いや待て!これは滝壺が……!」

滝壺 「いや?」ジッ

浜面 「そんなまさか!寧ろ嬉し過ぎて色々熱くなっちゃうというか……」 デレデレ

麦野 「浜面、あーん」

浜面 「あっつぅ!!がんもが顔に!!」

絹旗 「もう分かりましたからその辺にしといて下さい」

滝壺 「ごめんねみんな」



ハマヅラコンニャクトッテ
ココデモパシラレルノカ…
ダイジョウブ、ソンナハマヅラヲ…


麦野 「……あ、あのさ皆」

絹旗 「はい?」

麦野 「私の事……む、む……」

滝壺 「む?」

麦野 「むぎのんって、呼んでみてくれない?」

浜面 「」

麦野 「おら、浜面言ってみろ」

浜面 「えっ」

麦野 「いいから!お前らも早く!」

絹旗 「むぎのん!」

滝壺 「むぎのん♪」

浜面 「むむむ……むぎの、ん」

麦野 「あはは……やっぱり違和感ありありね」

滝壺 「照れるむぎのん可愛い」

絹旗 「ちょっとドキッとしましたよ。これが超ギャップ萌えというやつですか」

麦野 (ちくしょう、何だよ「アイテムの皆にむぎのんて呼んで貰おう」って!!)

麦野 (下の名前でいいだろが!でもあの時と違って変な感じはしないわね)

絹旗 「それにしてもどうしたんですか?急にむぎのんて呼んでみてだなんて」

麦野 「だって帝督の奴が……」

浜滝絹 「「「えっ」」」

麦野 (しまった!昼間のアレがつい……)

絹旗 「帝督って、垣根帝督の事ですよね?」

浜面 「今、下の名前で呼んだ?」

滝壺 「むぎのん……」

麦野 「ところで絹旗、こないだ借りた映画だけどさー」

絹旗 「ちょっと待って下さい!超何ですかさっきのは!」

浜面 「お、俺も気になるぞ麦野!」

滝壺 「これは問い質さないとね」

麦野 「うっせーお前ら!がんもぶつけるぞ!」

―――――――――

~心理宅~


心理 「……」

垣根 「……」

心理 「……」

垣根 「……」

心理 「……」

垣根 「……」

心理 「……」 フイ

垣根 「あ、また逸らした」

心理 「無理よ、「1分間目を合わせ続けろ」だなんて」

垣根 「出来る出来る、俺が保証するから」

心理 「だから何の根拠があって言ってんのよ……」

垣根 「お前、人とあまり目を合わせたがらないよな。俺と話しててもちょっとずらすし」

心理 「そうね、人と目を合わすの苦手かもしれないわ」

垣根 「“目は口ほどに物を言う”だっけか、人の目ってのは言葉以上に訴えかける力があるんだぞ?」

垣根 「お前が真剣に何かを伝えたい時、目を合わせられるようになっとかないと苦労するぜ?」

心理 「口うるさい先生みたいね」

垣根 「つっても、俺も目を合わせるのはちょっと恥ずかしい。だから一緒に練習しよう!」

心理 「……分かったわよ」 ハァ

心理 (改めてあなたの目を見ると、吸い込まれそうになるわ)

心理 (子供みたいにキラキラさせて……どんな世界が見えてるのかしら)

心理 (でも、それが一瞬だけ変わる時がある)

心理 (うまく説明出来ないけど、きっと私なんかが推し量れるようなものじゃない)

心理 (それが、あなたの持つ秘密事なの……?)

垣根 「……///」 フイ

心理 「あなたが逸らしてどうするの」

垣根 「あまりにも真剣に見つめられるから……」

以上でこのスレの投下は終了します

そのうち次スレ立てます
タイトルは一緒です
ここまでの応援ありがとうございました

次スレ建てました

垣根 「ほら、笑って笑って!」~2ヶ月目~

このスレは埋めておいて下さい

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