妹「……次」兄「ん、了解」 (277)

前作の続編、もとい番外編です。

中学生になった妹と兄のチマチマのんびりとした話です。

前作
妹「……」兄「なんすか?」
妹「……」兄「なんすか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382280397/l50)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1393848098

兄「……ふぅ」ガチャ

妹「………」トタトタ

兄「おう、ただいまっす」

妹「…………」プイ タタタ

兄「………」

兄(これが思春期か……いや、反抗期と言うべきなんすかね)スタスタ

兄(口数が限りなく減った。思わずお前口付いてんだろ?と言いたくなるレベルで)

兄(ただまぁ、出迎えにはキッチリ来てくれるのが可愛い所なんすけどね)

妹「………」チョコン

兄「あれ?今日も遅くなるから先に食ってろって言わなかったっけ?」

妹「………レンジ……よりも……出来立て……」

兄「別に俺はレンジで温めてもいいんだけどよー」トス

妹「………」ム

兄「あ、いや、出来立て食えて嬉しいっす、うす」

妹「………」

兄(やたら冷たく当たってくるんだよなぁ……言うこと聞かねーし)

兄「ん」パチ

妹「……」テチ

兄「いただきまーす」

妹「………いただき……ます」

兄(ああ、二年前の妹の素直さが嘘みてーだぜー……あの時は………)

兄「………」モグモグ

妹「………」パク

兄「……………」

兄(んんん?元から言うときは言う頑固者だったから今も変わんねーのか)

兄「…ん、すげー美味い」モッシャモッシャ

妹「…………そう…」モグ

兄(いや、やっぱりこんな冷たくはなかった)

妹「………」ニヘ

兄「あ………」

妹「……」ハッ

妹「……あ、あんまり……じろじろ……見ない、で……」

兄「うっす」

兄(いいや、相も変わらず天使だ)

兄「今日は学校どうだった?」

妹「……ふつう……」

兄「ん、そうか。特に何もなくてよかった」

妹「………あ……」

兄「お?どうした?」

妹「………なんでも……ない、から………いい………」

妹「………」カタ

兄「ごちそーさん、と」

妹「……」カチャ

兄「あ、俺の分ぐれー自分で持ってくからいいぞ?」ガタ

妹「………いい……お風呂、行って……」トタトタ

兄「………」

兄(どうしちまったんだ……コミュニケーションは悪化しない程度に取ってたつもりだったんだけどな)

兄(どれだけ険悪な雰囲気にならないように頑張ったとしても、結局はこうなるのが普通なのか?)

兄(機嫌をとろうにも、それこそぎこちなくなる原因だし、何が気に入らないのかも分かんねーのに解決なんて出来るかよ)スタスタ

兄(とりあえず、これ以上妹に構っても余計に面倒になりそうだし、とりあえずそっとしとこう)

兄(で、少し時間が経ったらいつも通り、たわいもない感じで過ごせばいいだけだ)ガチャ 



妹「…………」トタトタ

妹「………」チラ キョロキョロ

妹(……よし……)

妹(……鞄の、中……)ゴソゴソ

妹「…………」

妹「………今のうち……しか……できないもん…ね……」

妹(……チョコ……溶かして、固めるだけ………うーん……)ペラ

妹(……もっと……何か…こもった………私だけの………兄への、気持ち……)

妹(……こんな…簡単だと……ちょっと、なぁ………)

妹(……なにか……メッセージも……入れたい、し……)

兄「妹ー、タオルとってくんねー?」ガチャ

妹「……っ!……」ブン

兄「っはぁ!?おま、筆箱投げてんじゃあねーよっ」

妹「………あ……」

兄「………あのよー、ホントなんかあったのか?」ポリポリ

妹「…別に………何も…ない……タオルは、あっち……早く……出てって……!」カクシ

兄「……あーそう、言いたくないならそれでいいっすよー」

妹「……」

ガチャ パタン

妹「………うう……」

妹(…兄……ごめん、なさい……ごめんね……)

妹「……」

妹 (……………謝りたい……)

妹(…けど……ここで…全部言っちゃったら……台無し……)

妹(……兄の、驚いた顔……それと……嬉しそうな顔……見たいし……)

妹(…頑張らなきゃ………)フンス

妹「えと……チョコで……人型に…………む……大変そう……」

妹「……練習……多分、ここだと………バレる…………どうしよ…」カオシカメ

兄「はー……」サッパリ

妹「………兄…」

兄「はいよー」

妹「……明日……何時に……帰って、くる……?」

兄「うーん……多分7時には終わらせて帰ってくると思う」

妹「………そう…」

兄「どうしてよ?」

妹「……ただ……夕飯……どれぐらいに、作ろうかな……って思っただけ」

兄「そっか」

妹「……それと………」

兄「ん?」

妹「…………さっき、は………」

兄「あー、いいっていいって、気にすんな」ナデナデ

妹「……うん…」

兄「色々溜め込んじまうかもしれねーけど、たまには吐き出さねーと潰れるから気をつけろよ」

妹「……」コク

妹(……別に……面倒なことで……悩んでるわけじゃ、ないんだけどなぁ……)

兄「さーて」ピ

妹「……テレビ…」

兄「いつものよーに見流すだけだけどなー」

妹「………」ス

兄(……わからん……)

兄(ちょっと嫌われた?と思ったら普通にこうやって隣に座るんだもんなぁ……)

妹「…………」

兄「……」

妹「………」ポス

兄「………」

兄(いい匂いがする……シャンプーとか同じなんだが、どうしてこうも香るのか……不思議だよなー)

TV「今日の特集はバ」ブツ

兄「………」

妹「……………」

兄「え?なんで消した?」

妹「………寝る…」

兄「はい?」

妹「……兄も…早く寝ること………じゃ………」トタトタ ガチャ パタン

兄「…………ええ?」

兄「……」

兄(マズい、匂い嗅いでたのがバレたのか?なんか機嫌損ねた?)

兄(……本気で分からん、この時期の子供ってこんな扱いづらいのか?)

あーーーーーー!!妹、襲いたい
よし、公園行こ!!

>>20
モヒカン「………」
変態「………」ジュルリ

____________

兄「………ん…ぐぅ……」

兄「…………zzz…」

兄「……」パチ

兄「……クソねみー……」ボー

妹「……スー……スー…」

兄「…………」

兄(…なんでコイツ俺のベッドに入ってんの?)

兄(俺の腕枕にしながら、しがみついて寝てやがる……)

兄(あんまし起こしたくねーからそっとしときてーんだけど、どうしたもんかねぇ……)

妹「……スー…」

兄(せっかく買った可愛らしいベッドが泣いてんぞコラ)

兄「……」

兄(まぁいいや、少し時間あるしもう一眠りしよう)

兄「……………」

兄「……zzz…」



妹「…………」パチ

妹「……」ムク

妹(………今日も……暖かかった…)

妹「…………」ジー

妹「…うん……しっかり、寝てる……」

妹(自分の所に……戻らなきゃ……)ゴソ

妹(………新しいベッド…………邪魔、だから……いらない、って言ったのに……)ムス

妹(……でも最近……ベッド、狭くなったなぁ………前は、もうちょっと……スルっと、いけた…のに)

妹(……大きいベッド……買い直せば……よかったんだ………もう……)

妹「………」ポス

妹「………」

妹(…布団冷たい……)

妹(……ホントは……もっと……近くに、いたい……)

妹(けど……なんか………上手く、まとまらない……)

妹(私が……少しぐらい……冷たくしても……暖かく、傍にいてくれてるのを……)

妹(どこかで、期待………しちゃってるんだろうなぁ……)

妹「………」

妹(………もっと、私をみてよ……構ってよ……)

妹「……へたれ……」

兄「……zzz……んぐ……」

妹「…………」

妹(……もう一度……おやすみ、なさい………)モゾ

兄「んじゃ、俺先行くから。戸締まりしっかりしとくんだぞ」

妹「……」コク

兄「あんまし帰るの遅くなったりしたらダメだからな。気をつけとけよ」

妹「………」コク

兄(うーん……他になんか言っておくような事あったっけか?……)

妹「……早く……行かないと、遅刻するよ……」

兄「ん、まぁいいか。それじゃ行ってくる」ガチャ

妹「………」フリフリ

妹「……………」

妹(……だいぶ前の……アレ以来、兄がやたら過保護になった……気がする……)

妹(出かけたり……あに

妹(私は……もう、気にしてないし……いいんだけど……)

妹(……いつまでも、子供扱いして……私の事……なんだと思ってるんだろ……)

妹(…………あれだけ…………色々言ってたくせに………)ムカ

妹「…頑張ろう……」

妹(……兄には……私しか………いないんだ…………じゃなきゃ、嫌)


____________



兄「………」カタカタカタ

兄「………」

兄「……………ふぅ」

兄(とりあえずまとめて…上に通してる間にこっちの方も……)

兄「………」カタカタカタカタ

新人「…あの、兄さん」

兄「ん……なんですか?」

新人「こ、この書類…確認お願いしますっ」ペコ

兄「ああ、ありがとう」ペラ

新人「……………」

兄「……」ジー

新人「……」

兄「…………うん、問題ないな」

新人「!」パァア

兄「随分と慣れてきたみたいだし、これからも頑張ってな」

新人「はい!」

兄「さて………」カタカタカタカタ

新人「……………」ジー

兄「……っと…まだ何かある?」

新人「あっ、いえ……大丈夫です!すみませんっ」ピュ

兄「?」

兄「………」

兄(よし、あと少しで終わるな……)チラ

兄(七時前か……少し掛かり過ぎたな)

兄(早く帰らねーといつまでも妹のヤツ、飯食わねーで待ってるからな。早くしねーと……)ガサガサ

新人「あ、あ、あの!兄さん!」

兄「どうした?」

新人「よ、良かったらこれ、貰って下さい!」ス

兄「何これ?」

新人「えと、チョコレートです!今日、バレンタインデーですし、皆さんに配ってるんです!」

兄「へー、俺も貰っていいんすか」

新人「む、むしろ…兄さんのは、ちょっと特別ですので、あの、ぜひ受けとって欲しいです!!」

兄「じゃあ俺結構甘いもの好きだし、貰っとく。ありがとな」

新人「はひっ……」カァ

兄「にしても、お前結構こういうことできるタイプなんだな」

新人「?」

兄(身長高いし、身体付きもいいから体育会系でそういうのからっきし……だと思ってたが……)

兄「結構可愛いのな、新人って」

新人「」ボン

兄(すげーよなー、ギャップって言うんすかねー。一見出来なさそうなヤツが出来るとかなりレベルが高く見えるってヤツは)

兄(ラッピングとかも凝ってるし、器用なんだなー……)

新人「あ、の…兄さん!私、返事待ってますね!」タタタ

兄「ん、サンキューな」

兄「………」

兄(返事つっても、俺菓子作ったことなんてねーからなぁー……妹に聞いてクッキーでも返せばいいか。すまんな、新人)

兄「……世間ではバレンタインデーか……」

兄(日頃の感謝でも込めて、ちょっと良さげなチョコでも妹に買って帰るか……)




妹「………できた……」

友「うん、スゴく綺麗に出来てると思うよ」

妹「………ありがと……わざわざ、台所……貸してもらちゃって……」

友「いいんだよいいんだよー、おにーさんと妹ちゃんの愛の確認のためだもんねー」

妹「…………」カァ

妹「………そう言うのは……ちょっと、ズルい……」

友「やだもー、照れちゃって可愛いなぁコノー」

兄「ただいまーっす」ガチャ

妹「…………」トタトタ

兄「おう」

妹「……おかえり……」

兄「ほれ、お土産買ってきたぞー」カサ

妹「…………?…」カサ

兄「今日バレンタインデーらしいじゃん。だから妹に買ってきた。作るなんて出来ねーからなー、俺」クツヌギ

妹「…………」プチ

妹「……いらない……」

兄「あ?」

妹「……ご飯、用意してある……から………お風呂、入って……寝る……」トタトタ

兄「……………ええ?」




兄「………」モグモグ

兄(分からん、分からんぞ……男から贈るのがそんなに変か?)

兄(去年も女さんが男さんに渡してたの見て気づいたから、俺も妹に買ってやったらそこそこ喜んでくれてたんだが……)

兄「……なんでだ……」

兄(心無しか飯が味気ないような……いや、普通に美味しいけど…虚しい……)モグモグ

ガチャ

妹「……あがった……」

兄「あ、おう」

妹「…………寝る」

兄「妹飯食ってねーんだろ?食器あるし」

妹「……今日は…いい……」プイ

兄「ダメだ食っとけ」

妹「………」

兄「一緒に食いたくねーなら、俺も風呂行くし……悪い事したなら謝る、すまん」

妹「……………なら、早く…お風呂……行って……」

兄「……悪い」ガタ

兄(マジで妹キレさせてんじゃん……クソ、分からん………泣きたい……)スタスタ

ガチャ パタン

妹「………ばか…」

妹(……袋の中……お店で買ったような……箱と別で……綺麗にラッピングされた袋もあった……)

妹(………私だけの、兄なのに………なんで、兄は……私以外の人の………貰っちゃうかな……)

妹(……よそ見する……兄なんて嫌い……)カタ

妹(………好きだけど……うう………なんか…悔しい……)

妹「………」カサ

妹(…あんな態度……した後で…渡せないなぁ………これ………)

妹(………頑張ったのに……)グス

妹「………」ポイ

妹「!!!」

アンガールズ田中「ちょ、や~ま~ねぇ~、あの子チョコすててんじゃん」ニョキ

山根「ですね、田中さん」

田中「俺、もらえた事ないのにぃ~捨てるなんてぇ~、いけないよぉ~」スタン

妹「……だ…れ?」

山根「すいません少しチョコを捨ててるのが見えて…」

田中「もぉ~そんなこといけないんだぞぉ~。俺チョコなんて食ったことねぇ~んだぞぉ~」ニョキ

妹「……でも……兄……私の……食べて……」

田中「や~ま~ねぇ~、まだ、いってるよぉ~」

山根「ですね、田中さん」

田中「ちゃんとつくったんだったら~、渡さないといけなぃんだぞぉ~」

妹「……」キュン

妹「あの……これ……」

田中「ちょ、や~ま~ね~、見て、チョコだょお~」

山根「ですね、田中さん」

これ>>1じゃないよね?
ないよね?
NGぶち込んどくわ

>>44
田中「や~ま~ねぇ!俺らNGだってぇ~~なんでぇ~~」ニョキ

山根「かってに人のss書き込んだからでしょ、田中さん」

~みんな、人のssを荒らすのは、ダメ、絶対!!~

~完~

>>41のssを読んでくださり有り難う御座いましたorz
俺はここで一時退散

兄「………」ガチャ

兄「やっぱいねーか……あーもー、なんなんだ本当に……」

兄(このままこんな状態が続いたら、なんつーか、俺生きてく自身なくすぞコラ)

兄(……そういや、妹飯食ったのか?機嫌悪かったから食わずに捨てるわけはねーと思うけど)スタスタ

兄(………ん、台所見る限り、飯はきちんと食べたみたいだな)

兄(成長期なのに飯を抜いたら成長するもんもしねーぜー……俺はなんか普通に成長したけど、不思議だ)

兄(ただでさえ細いのに、これ以上細くしたら倒れるっつーの)

兄「………?何だこれ」

兄(ラッピングされた……これって俺が貰ったやつじゃあねーよな……)ゴソ

兄「………」カサ

兄(チョコ………妹も作ってくれてたのか……)

兄(こっちが妹で、もう片方が俺か……可愛いデフォルメでいい出来じゃん、すげー)

兄(…かなり大変だったんだろうが、なんで捨てた?……ん?……んん……)パラ

兄(紙……?チョコにもか……字、なんか書いてあるが……バラバラだな………緒?)

兄「………」カサカサ

兄「………」

兄(ココが、ここの破片で、コレはそこ………)ス

兄「……………はぁ……手のかかるヤツだなーおい…」




妹「……………………」

妹(……むかむか、して……寝れない……)

妹(……兄は……分かってないんだ………)ゴロゴロ

妹(……どんな……意味を……込めてるのか………とか……)

妹(…渡す人が…どう考えてる……とか……)

妹「………」ゴーロゴーロ

妹(……他の人から……受けとってんじゃねーっ………なーんて)

妹(………バシッと……言いたい……)

妹「………」

妹(……兄のこと……見てる人……他にも、いるんだなぁ……)

妹(ずっと、私だけで……兄も……私しか…見ないと思ってた………)

妹(………どんな人……なんだろ……)

妹(……ずっと、一緒………なんて……叶わないの…かなぁ……)

妹(…私だって……成長してるし……負ける気なんて、しない……けど……)

妹(……兄は、どうなんだろ………)

妹(……ばーかばーか……)

妹「…………」ゴロゴロ

ガチャ

兄「妹?起きてるよな」

妹「……あっち……いっちゃえ………ばか……」フトンモグリ

妹(………こんな…悪口……言いたいわけじゃ……ないんだけど、な………)

兄「馬鹿でスマン」

兄「………機嫌、直してくれねーか?」

妹「……機嫌……悪くない……」

兄「今の状態は機嫌悪いって言うんだぜー」

妹「………出てって……」

兄「妹の機嫌直せるまで出て行かねー」

妹「…………」

兄「気づかなかった俺が悪いんだけどよ、お前が……俺のことどれだけ想ってくれてたとかさ……」

『私の気持ちを、もっとたくさん伝えられるように作りました』

『ずっと、傍にいて…ずっと、いつものように過ごして…ずっとずっと、好きでいられるように。って気持ちを込めました』

『最近、冷たくしてごめんなさい。兄の驚いた顔も、見たかったから気づかれないように頑張ってたの』

『兄の顔を見る度、やっぱり変わらないままドキドキして、隠せてるか不安で…あんまり近くに居れなかった』

妹「………」

兄「ダメだなー、俺。甘かった。ちゃんと俺も、伝えてなきゃあダメだったんだ」

『でもやっぱり冷たくするのは寂しくて、少しでも近くに兄を感じたくて、つい近づいちゃって危ない時もあったけど……』

『どうだ、私の頑張り!なーんてね』

『なーんてね、って兄の真似だから、これ読んだ後でも馬鹿にしないでよ?』

『これからもいっぱいいっぱい、楽しく過ごそうね。大好きだよ』

兄「俺も妹の事が大好きだ。今も、これからも、この気持ちは大きくなるばっかりだ」

『ずっと一緒』

兄「だから、ずっと一緒、だ」

妹「………………」

妹「………ばか……遅い……嘘つき……」

兄「ごめんな」

妹「………こっち……」

兄「ん」スタスタ

妹「………………ちょっと、重くても……文句、言わないで……」

兄「言わねーよ」

妹「……不安…だった……兄……よそ見するから…」モゾ

兄「よそ見したつもりはなかったんだけどなー……」

妹「……兄は…優しいから……好きになる人も……多い……」

兄「褒めてんの?それ」

妹「褒めてる……自慢……だから……」ギュ

兄「照れる」

妹「………………」

兄「はいはい、俺も抱きしめればいいんでしょー」ギュ

妹「………」

妹(……大好き…)

兄「ちゃんと受け止めますよー。どんだけ重くて、束縛が激しい愛情でも…妹のなら」

妹「………うん…」

次どうしよう……
特にネタが思いつかないです……。

エロ、グロ、胸糞、キチガイ抜きで何か
>>55

ホワイトデーだろ

妹「……………」ポツーン

妹「…………」

妹「……遅い……なぁ……」

妹(……最近、兄……スゴく、大変そう………)

妹(……帰って…きても……すぐ寝ちゃう、し………)

妹(私が……起きた時も……もう準備しちゃってて…)

妹「…………つまんない……」

妹「…………」

妹「…………ふぁ……」

妹「……うう………」

妹(…眠たい……けど……兄が……帰ってきた時……おかえりって……言ってあげないと……)

妹(寂しい……よね……私が……支えて…あげないと……)

妹「…………」

妹「……」

ガチャ

妹「!」ピク

妹「…………」トタトタ

妹「…おかえり……兄…」

兄「おう、ただいま……まだ寝てなかったのか」

妹「……兄…頑張ってる、から……」

兄「妹に体調崩されちゃあたまんねーよ。眠たかったら寝といた方がいいぞ」クツヌギ

妹「…大丈夫……」

兄「ほれほれ、可愛い顔が隈でちょっと酷くなってんぞー」ワシワシ

妹「…別に……いい……兄に…だけ、そう思われとけば……」テレ

兄「ん、そうか………風呂入ってから飯食うわ。お前は寝とけ。明日も学校だろ?」

妹「……そう、だけど……兄は……」

兄「大丈夫だ問題ねー。ほら行った行った」

妹「……作り立て……食べて、欲しかったけど………」

兄「仕方がねーよ、遅くなっちまってるんだから。ゴメンな、最近寂しい思いさせて」

妹「……ううん……兄…無理……しないで、ね……」

兄「はいよー」

妹「…………」トタトタ

兄「………」

兄(さて、眠てー眠てーってグダってたら寝る時間なくなるぞー、俺)

兄(とりあえず明日の仕事は………うーん…アレやって、アッチのも潰しといて……)スタスタ

兄「………かー……面倒くせー」

兄(……しかもどれだけ明日やることって思い出して確認してみても、なーんか忘れてる気がしてならねーんだよなぁ……)ガチャ

兄(ま、だいたいやってるうちに思い出すから別にいいんだけどよー)フクヌギ

兄「……くぁ…クソ、眠い………」

兄「……………」チャプ

兄「…………」

兄「………zzz……」

兄「……zz……zz……」

兄「…………」ブクブクブク

兄「…!……ぶふっ……こほ……」ザバ

兄(うっげ、湯船で寝ちまってた………アッブねー…こんな浅い場所で溺死なんて笑えねーぞ)チャプ

兄(……後三日……妹が最高に喜ぶ……でも俺が渡せるっていっても既存のもんしかねーから……)

兄(ちょーっとクサいけど、夜景をバックに花でも贈ろうかと……あああ、考えるだけでも恥ずかしい)

兄(喜んでくれんのかねー……)

兄「…………」

兄(湯、冷めちまったな……どんだけ寝てたんだ俺。手も足もふやけて真っ白だ)ザ

兄「さて……」

ガチャ

兄(とりあえず、妹の作ってくれた飯食って、寝よう。じゃなきゃあもたん)フキフキ

兄「…………」

兄「……」

兄「………」フクキ

兄「………」カチャ

兄(妹さんはどんな様子かなーっと……)ス

妹「……スー…スー……」

兄(ん、オーケーオーケー。ちゃんと寝てるな)

兄(芯が通ってそうで、実は周囲の状態に結構敏感だからな)

兄(寝付けねーみてーなら何か、考え事してたりするからな。しっかり俺が家族としてケアしてやんねーと)

兄「……ぐ………」

兄(眠気が……さっさと飯食って寝ねーと……)フラ

_____________

妹「…………」ワタワタ

兄「そんなに慌てなくてもよー、どうってことねーって」

妹「……でも……熱……」

兄「これぐらいで休んでたらやってらんねーってもんだぜー」

妹「……39度……近かったら……休んでも……おかしく、ない………」

兄「マスクして周りに出来るだけ影響ねーように気をつけるよ」

妹「…ダメ……」

兄「いやいやいや、今日休んでる場合じゃあねーんだって」

妹「…………」ジト

兄「そんな睨みつけても意味ねーよ」

妹「倒れ……ちゃう、から……」

兄「あのなー、多少のアレだったら俺だって慣れてるんだし、気にすんなよ」

兄(今日休みとっちまったら、14日にとってあるはずの休みに影響が出る……万が一にでもそういう事態は避けねーと…)

妹「………心配…してるの………私の言うことも……ちゃんと…聞いて…」

兄「聞いてやりてーのは山々なんすけど……」

妹「……私は……いつまでも……妹…じゃ、ない……」ギュ

兄「おいコラくっつくんじゃあねーよ」

妹「諦めるまで……こう、してる……」

兄「だからよー……」フラ

妹「………お願い……今日は……休んで……」

兄「あーはいはい、分かりましたよ。休む、休むよ」

妹「………」ホッ

兄(とまぁ、妹が学校に行っちまえばその後で家出れるからそれでいいか)

妹「……携帯電話……」

兄「ん?」

妹「……今…ここで……連絡……」

兄「え?いや、まぁ……」

妹「……する、の……」ニコ

兄(笑顔が黒い)

妹「…それと……今日…私も……休む…」

兄「それはダメだろ」

妹「だって……私が…いない隙に……会社、行くつもり……でしょ」

兄「………」

妹「……図星…」

兄「参った、降参だ。おとなしくしてるよ」

妹「……それで…いい……」

兄(妹に俺がどういう動きをするかバッチリ把握され過ぎてる……お前は嫁かなんかかよ……)

妹(おかゆ、友に連絡、学校にも電話しなきゃ……後は氷嚢……えと…他には……)

兄(…………そういや嫁だった……結婚まだだけど……)

妹「……あーん……」ス

兄「なぁ、これマジでしなきゃダメか?」

妹「…………」

兄「流石に俺一人で食えるしよー、そこまで弱ってねーって」

妹「………」フー フー

妹「…あーん………」

兄「いやいやいや、熱いからとかじゃあねーから」

妹「…食べなきゃ……良く、ならない……」

兄「分かってる、それは分かってんだけどさ」

妹「……じゃあ、はい……」

兄「…………」

兄「………」パク

兄「………」モグモグ

妹「……どう……?」

兄「顔が熱い」

妹「………味…は……?」

兄「鼻詰まっててあんまし分かんねー」

妹「……そっか……」シュン

兄「まあでも、すげー暖まる。ありがとな」ナデナデ

妹「……うん……にへへ……」

兄「…………ふー……」

妹「…少し…汗……」フキフキ

兄「悪いな」

妹「ううん………いい…」

兄「…………」

妹「……食べる……?」

兄「うーん…後二三口」

妹「…………」カチャ フー フー

兄(わざわざ熱すぎない程度に冷ましてくれるのは嬉しいが、そこまでしなくてもいいだろ……嬉しいけど)

妹「………あーん……」

兄「…………」パク

兄「…複雑だ………」モグモグ

妹「………早く……良く……なって、ね……」

兄「分かってんよ」

妹「…………」チャプ ギュ

兄「…………」

妹「……」ピタ

兄「…………うつしたらゴメンな」コホ

妹「………いいよ………うつされても、兄の…だもん……」

兄「はは、そういう問題じゃあねーだろ」

兄「…………」

妹「…………」

兄「妹」

妹「……?……」

兄「俺さ、妹に何か返さなきゃいけねーと思ってさ、色々準備してたんだよ」

妹「………お返し……?」

兄「ほら、バレンタインデーだよ。もうすぐホワイトデーだろ?」

妹「あ……」

兄「だから色々何かしてやろうと思って、14日に向けて準備してたんだ」

妹「………」

兄「ゴメンな、ちょっと14日、まともな事してやれそうにねーや」

妹「………」ギュ

兄「………」

妹「いいの……兄が、そう思って……私を見てくれてるだけで……嬉しい……」

兄「…サンキュ…」ナデナデ

妹「お返しは……元気になって………また、ただいまって……言ってくれるだけで……いい」

兄「ああ、頑張るよ」

妹(出来れば……ちゅー……したいけど……今は…我慢)

兄「悪い……うつしちまうかもしれねーんだけど、もうちょっと、傍にいて欲しい」

妹「……うん……いいよ……」ダキツキ

兄「……落ち着く」

妹「……可愛い………」ナデナデ

兄「可愛くねーよタコ、オッサンだぞ」

妹「……ふふ………いいこ……いいこ…」

兄「調子狂うぜー……」

妹「………」

兄(女神か………コイツは……)

妹「……忙しい、だろうけど……私が……支える、よ……」

兄「なんか申し訳ねーなー……助けられてばっかだ」

妹「……兄は……私と……いてくれる……唯一の人……だから……」

兄「言い過ぎだろ」

妹「………本当のこと………」

兄「ま、俺の事をマトモに知ってるのも妹しかいねーんだけどな」

妹「……家族、だもんね……」

兄「ああ、変わる事なく、家族だ。たった二人っきりの」

カチ

妹「…………」

妹(十二時……回っちゃった、な………)

妹(………実際……日にちなんて…どうでもいい、けどね……)

妹(……その日が……何の日か……だなんて……)

妹(毎日……生活してれば…普通と、変わらない……)

妹(………特別な日なんて……ない……)

妹(特別な……日じゃなきゃ……笑顔になれない…なんてことも、ない)

妹(ただ……大切な……何かが……あるだけで…幸せ……)

妹(想いを…伝えるための……後押し……)

妹(…想いを確認……するための…後押し………)

妹(そんな、特別じゃ……なくても……伝えられるもん、ね……)

妹「………」

ガチャ

妹「………」

妹「……おかえり…」

兄「おうただいま、やーっと終わったぜこんちくしょー」

妹「……お風呂…?…夕ご飯…?……」

兄「どっちも後回しだな」

妹「…………」

妹「……けだもの……」

兄「どこがけだものだアホ、分かってて言ってんだろ」

妹「……ちょっと、意地悪……してみた……」

兄「ん、結構結構、素直でよろしい」

兄「っと……玄関、開けて見てみ」

妹「…………」ス

妹「……」ガチャ

妹「………わぁ…」

兄「…ど、どうよ……あー、なんつーか……お前ぐらいならもっと他の物…ってのも思ったんだが…」

兄「俺にはやっぱりこれしか思いつかなかった」

妹「………綺麗……」

兄「…………」

妹「……これ……部屋に……飾る……」

兄「えー?ここまで持ってくので結構しんどかったんすけど…」

妹「……一つ残らず……兄の…大事な…想いだから……」

兄「…まぁ、そうなんすけどねー……」

兄「家の中に入れるついでだ、もうひと頑張りしますかー」

妹「………」

兄「これが全部枯れちまって、目に見えなくなっても……そん時はお前が不安にならないように、想いを伝え続けるからな」

妹「…………うん……分かってる………」

妹「…………兄……」

兄「はいよー」ゴク

妹「……コーヒー……美味しい……?」

兄「まーな、なんでか知らねーがいつの間にか飲めるようになってたわ」

妹「……へー……」

兄「なんすか、興味でも湧いたか?」

妹「少し………飲める人は……大人……って……聞いたから……」

兄「ん、まーよく聞くな。そのフレーズ」

妹「…………」

兄「たかがコーヒーが飲めたぐらいで大人だのなんだのちゃんちゃらおかしい話なんすけどね」

妹「………私も……」

兄「ん?」

妹「…私も……飲んで……みたい………」

兄「もしかして大人とかそういうフレーズに憧れちゃってます?」

妹「…………」ムー

兄「あースマン、悪かった」

妹「………」

兄「じゃあ作ってやるから、ちょっと待っとけ」

妹「………別に……兄が……飲んでるので…いい……」

兄「あんまり美味いもんでもねーぞ?」

妹「…兄……美味しい、って……言った……」

兄「妹の味覚と俺の味覚を同じに考えねー方がいいぞー。世の中には辛いの大好きでドバドバ唐辛子とか料理に入れまくる人もいるんだし」

妹「……大丈夫……兄と……私は……全部一緒…って言ってもいい………」

兄「さりげなくちょっと照れるような事言うんじゃあねーよ、恥ずかしいだろーが」

妹「……?……」

兄「お前頭良いのになんでこういう時に不意打ちしてくんだよ」

妹「……とにかく……ちょうだい……」

兄「はいはい、後悔すんなよ」ス

妹「……………」ドキドキ

兄(目に見えてドキドキしてやがる……好奇心旺盛ですなー)

妹「………」チビ

兄「…………」

妹「…………」

兄「どうだ?」

妹「………?…」

兄「んん?」

妹「………」コクコク

兄「へ、あ、おい、そんなに………」

妹「………苦い…」シカメツラ

兄「ならなんでそんなグビグビいっちまったんすか………」

妹「……匂い……は、好き……兄……いつも飲んでるから……慣れた……」

兄「あ、そりゃあいいことですなー」

妹「………味……変……」

兄「でしょうね、だから注意はしたんすけどねー」

妹「………まだ苦い……」

兄「結構残るもんなのかねー、甘くてミルクたっぷりだったら妹にも問題なく飲めると思うんだけどな」

妹「………カフェオレ…?」

兄「そうそう、そんなとこだ」

妹「……返す……」ス

兄「はいよー……って全然残ってねー、すげーなオイ」

妹「………」

兄「まぁいいんすけど」ズズ

妹「………」

妹(…よくよく考えたら……間接キス……)

兄「…ふー………」

妹「……兄……」

兄「どしたー?」

妹「…今……私と…兄の口の中……おんなじ味………」

兄「……お前俺が今コーヒー口に含んでたら吹き出してたぞ」

妹「間接……でも……満足……できるね」

兄「……馬鹿な事言うんじゃあねー」

妹「………」

兄「そもそも口ん中が同じ味でもキスとは大違いだっつの。歯磨きしても朝飯でも夜飯でも同じって事になるじゃあねーか」

妹「………」

兄「そんなんでキスしたつもりになれるんだったら世の中の人間誰も苦労なんてしねーよ…まったく…」

妹「……それも…そう、だね……」

兄「そういうもんっすからね」

妹「……………」チュ

兄「…!?」

妹「……これで……問題……なし……」

兄(いやいやいや!問題しかない!おかしい!!)

妹「……コップ…洗ってくる、ね……」トタトタ

兄(え?いや、ちょっと……満足げな顔してなんなんすか……)

兄「………」

兄(………心無しか…口の中が甘い気がする……)

妹(……また…しちゃった……にへへ………)ザブザブ

妹(…おんなじ味で……いいかと思ってたけど……やっぱり……こっちの方が……満足……)

妹「………コーヒー……たまには…いいかも……」

男子A「なぁ、あの三人の中で、誰が一番いい?」

男子C「そりゃあなんと言ってもお淑やかで何でもそつなくこなす、そしてあのすらりとした出で立ちの妹ちゃんでしょ」

男子B「分かってねーなー、あの守りたくなるような小動物感いっぱいの友2だろうが」

男子A「ふっふっふー、見事に意見が分かれたな。俺は元気いっぱい男勝りの美少女友ちゃん一択だぜ」

男子B「………」

男子A「なんだよその目は」

男子B「このおっぱい星人が」

男子A「ああん?男っぽいのに女性としての魅力がバンッバンに詰まってるあのボディに惹かれないヤツなんていんのかああ?」

男子C「女性らしさで言ったら妹ちゃん。見ろあの大和撫子と呼ぶべき凛とした姿、聞けあの鈴を転がしたような綺麗な声で無駄のない言葉遣い。もはや勝負にもならんよ」

男子B「おどおどしてて、少々ドジが入ってるのも憎めない。そんなマスコットのような友2ちゃんこそ正義だ」

男子ABC「むむむむむむむ……!!」

不良「何話してんの?」

男子C「お、不良じゃん。今日はお早い出勤だな」

不良「ただの気まぐれー。で?何の話?」

男子A「あの三人の中で誰が一番可愛いのか、議論してたんだよ」

男子B「あ!お前手ー出そうとすんなよ!お前狙ったヤツ皆落としてるもん」

男子C「そーだそーだ!まぁでも今は大丈夫か。今女子Bちゃんと付き合ってるんだもんな」

不良「あー、別れた」

男子ABC「また!!?」

不良「うるせーな、どうだっていいだろ」

男子B「このヤリチン!!イケメン!!!!」

不良「あーやかましいやかましい。んんー妹とか、無茶苦茶可愛いし好みかなー」

男子C「やめてくれー!!俺の妹ちゃんを穢さないでくれー!!!」

不良「いいじゃんいいじゃん、まだお前のもんでもないんだし」

男子C「ぐぐぐぐぐ………」

男子AB(哀れ……男子C……)

男子C「清楚で可愛い女の子を食い物にする悪魔、鬼ぃ……お前が狙ったヤツら全部元の淑やかさなんてなくなっちまってる……」

不良「そうなんだよなー。落ち着いた女が好きなのになーんか急にキャッキャし出すから困るんだよ」

不良「その店……妹って良さそうだな、芯強そうだし、いつまでも落ち着いた感じでいてくれそうじゃん」

男子C(終わった……さよなら、俺の恋……)

不良「声掛けてくるわ。じゃーな」スタスタ


不良「妹、ちょっといい?」

妹「………」

友2「う……」

友「おーっと、ボクの可愛い妹ちゃんに何か用?」

不良「ちょっとお喋りしようと思っただけだよ」

妹「……何」

不良「いやー、妹って無茶苦茶可愛いじゃん?だから仲良くなりたいと思ってさ」ズイ

友「………っはー、なんだそんな事かー。無駄無駄、はい帰った帰ったー」グイグイ

不良「あ!ちょ!!まだなんも喋ってねえ!コラ!押すんじゃねえ!」

あ、誤字ってる……。
不良「その店~ ×
不良「その点~ ◯

ですね。

不良「……どうしたもんか……」

不良(妹はいつもあの男女の友の野郎に守られてるし、外堀を埋めようと友2に話しかけてもビビられて終わり……)

不良(こうなったら妹が一人になるタイミングを見計らってアタックをかけるしかない!)



妹「………」

友「今日も妹のお弁当美味しそうだねー、一口ちょうだいっ」

妹「………」ス

友「おお!あーん」パク

妹「……………」

友2「餌付けしてるみたいだね」

友「これが餌だったら喜んで妹のペットになります!美味しい~」

妹「………」フフン

友2「いいなぁ……妹ちゃん、私もいい?」

妹「…いい、よ……はい」ス

友2「ふふっ、あむ………」

妹「……………」

友2「おいひい……」ムグムグ

友「ほほー、たしかに餌付けしてるみたいだ」

不良(動物園の飼育員みてー………つか、昼休みはダメだな)



友「今日はどこか行くー?」

友2「私はちょっと買い物に行きたいかな」

妹「……ごめん、ね…今日…は……帰る……」

友「あー、そっかー。なるほどなるほどー」ニヒヒ

友2「今日は早いんだね」

妹「……うん………」

友「じゃあまた明日にでもどこか行ければいいやー」

友2「急ぎで必要なものでもないし、買う時に妹ちゃんの意見も聞きたいから明日にしようかな…」

友「また服とかー?」

友2「うん、いろいろ欲しくなっちゃって」

友「服なんて着飾っても虚しいだけなんだけどなー」

妹「……それは、マズい」

友「ファッションにこだわるのはおねーちゃんので見飽きたよ……」

友2「ああ、あの……」

友「そう、あの」

友「でー、妹はどう?明日」

妹「……私も……明日なら……いい」

友「じゃあ決まりだねー、今日は解散!明日は買い物!」

友2「そうだね」

不良(ふんふん、今日は帰るみたいだな。明日になったら余計にチャンスなくなるし、ここは帰り道で声かけるっきゃねーな)

妹「………」キコキコ

妹(明日……買い物かぁ……可愛いの…あるといいな……)

不良「妹ー!!」

妹「……」

不良「やーっと追いついた……一緒に帰ろうぜ」

妹(……友と……友2ちゃんと、帰って……今、別れたところ…なのに…)

不良「帰り道こっちなんだな、俺もこっちだわ」

妹「………そう…」

不良「つれねーなー。妹って好きなものある?色々小物とか可愛いの持ってるよな」

妹「…………」

妹(…面倒……)

不良「無視すんなよ、寂しいじゃんか」

妹「……私と…帰っても……つまらない、から……やめたら?……」

不良「いーや、帰る。お前と一緒に帰りたい」

妹「……そう…」

不良「妹って好きな人とかいるのか?」

妹「……いる……」

不良「え?……あ、悪い。いるんだなー。どんなヤツ?」

不良(好きなヤツいんのか……ふっ……絶対にそいつよりも俺の事好きにさせてやんぜ)

妹「……世界で…一番……カッコいい……」

不良「ふーん、頑張れよ」

不良(ここは応援して、協力していく中で親密度を深める作戦でいくか……いつでも相談出来る友人として、身近にいれば……)

妹「……別に……頑張る、必要……ない……」

不良「はい?」

妹「………」

不良「頑張ろうぜ?俺も協力するからさ」

妹「……いらない…」

不良「俺結構そういうの詳しい方だし、力になれるぜ?」

妹(………うっとうしい……別に……頑張らなくても……兄と…私……もう夫婦同然……だし……)

妹(……夫婦…)カァ

不良(お、顔赤くなった。これは攻めれる!)

不良「いいよいいよ、手伝わせてくれ。どこのクラスのヤツ?それとも違う学校か?違う学校でも俺顔広いから問題ないぞ」

妹「………手伝い……いらない……もう、家だから…さよなら……」

不良「……ここが妹の家かー」

妹「………」ガチャ カタン

不良「あーあー、もうちょっとお喋りしようぜ?な?」

妹「……必要……ない……」

不良「待てよ」ガシ

妹「…………」ビク

不良「…そんな冷たくすんなよ、いいじゃん」

妹「………離して……」ブル

不良「あ、悪い、痛かったか?」パ

妹「……痛くは、ない……けど……二度と、触らないで……」

不良「悪かったって、えーと、ここだったっけ?」ス

妹「……っ……いや…………」ガタガタ

不良「な、なんだよ……そんなに俺に触られるのが嫌なのかよ……」

不良(思ったより手強いな……押し過ぎも良くないし、そろそろ退くか……)

妹「……っう……はぁ……はっ……」ガク

不良「……え?」

妹「……は…はっ……は……ひ……」ペタリ

不良「オイオイオイ、どうしたんだよ!?大丈夫か!?」

妹「…っ…寄らないで……もう、帰って……」

不良「そんな状態なのに放っとけるかよ」

妹「……もう、いや………ひ…っく……はぁっ…」

不良「んだよこれ……どうしたらいいんだ……?」

キキ

不良(バイク……?)

兄「……どうした?」スタスタ

不良「いや、なんかわからねぇんだけど、突然……」

兄「………」ガチャ 

妹「…は…ひっ……ゼヒュ……」

兄「落ち着いてゆーっくり呼吸しろ。ほら、何も見なくていいから目も閉じとけ」カサ

妹「……ふー……はっ……は……はぁ……」

不良(……ただの袋なのになんだあれ?……口元に当てて……?ん?)

兄「……」

妹「はぁ……はぁ……」

兄「もう大丈夫か?」

妹「…………」コク

兄「じゃあもう家ん中入っときなー。そんで寝てろ」

妹「………うん……」フラ

兄「………」

不良「………」

兄「……さて、少年……話を聞こうじゃあないの」ヘルメットヌギ

不良「はぁ?つか誰だよお前」

兄「妹のお兄ちゃんっすよー」

不良「兄貴だぁ?」

兄「そっそー。お前は……同じ中学のヤツだな?」

不良「言っとくけど、俺はなんもしてねぇぞ。ただ妹が急にうずくまったと思ったらああなったんだよ」

兄「そーかそーか、なら仕方がねー。お前柄悪いからな」

不良「あ?俺のどこが悪いだと?」

兄「柄が悪いんだよ。睨んでるような目つき、着崩した制服……ピアスもつけてんのか」

不良「俺の見た目なんてどうだっていいじゃねぇかよ!!」

兄「その言葉遣いもな。あーやだやだ」

兄「まぁ、色々あってな。妹はお前みたいなタイプの人間が大嫌いだし、何回か触られたり、長い事話したりするとああなっちまう」

不良「………知るかよ、んなもん」

兄「一切関わるな、とは言わねー。あんましちょっかいかけないでやってくれ」

不良「はぁ?だったらどうやって妹と付き合えば良いんだよアホ」

兄「え?お前妹の事好きなの?」

不良「だったらこんな所こねぇよ」

兄「んー……困ったな」

不良「困ってんじゃねーよ」

兄「諦めといた方がいいと思うんすけどねー」

不良「お前、妹に好きなヤツがいるって知ってんのか?」

兄「好きなヤツ?……………あー」

兄(……俺か。って何恥ずかしい事を考えてるんだ俺は……)

不良「悪いけど、そいつよりも俺の事を好きにさせるつもりだからな。諦めるなんて俺の性に合わねぇ」

兄「へー」

不良「んだよその馬鹿にしたような態度はよぉ!!!」

兄「あ、すまん。つい」

不良「ムカつくな、テメー。いくら妹の兄貴だからって舐めてるとボコボコにしちまうぞ?」

兄「いやん、恐ーい」

不良「っ」プチ

不良「んなろぉが!!」ガン

兄「っぐ……」

兄「………すげー痛い」

不良「~~~~っ」プルプル

不良「…お、おお……手が………割れる……」

兄「…暴力的なヤツなんかに妹はやれねーよ。そもそも、誰にもやるつもりもねーし……さ、帰った帰った。お前の評価は地の底よりも深ーい所にある状態だ」

不良「いってぇえええ…………」

兄(しっかりプロテクターつけてるヤツに、どうして無謀にも拳をふるうのか………あ、見えてないからか)

不良「……お、おぼえてりゃがれーーー!!!!」ガシャ 

兄「……噛んでるし」

兄(どうしたもんか……変な虫がつかねーか心配だったが、まさかあそこまで質の悪そうな虫がついちまうとは……)

兄(休ませたい、転校させたい………あーでも、妹の友達いるしなぁ……簡単に出来る事でもないんだよなー……)

兄(………こういう時には妹を信じるのみ……なんだが……やっぱし不安だよなー……)


不良「クソ、あの野郎……」ガンッ

不良(完璧に逃げ帰ってきてんじゃねぇかよ、だっせぇ)

不良(明日こそ、明日こそは妹との距離を縮めてやる)

不良(何があったか知らねぇけど、俺にできねぇ事はない)

不良「にしても……」

不良(良い策が思いつかねぇ……まず、妹の好きなヤツが誰なのか分からねぇと奪いようもねぇ)

不良「…………」

不良(活発じゃねぇし、他の学校……となると、幼なじみだったヤツか………)

不良(でも待てよ……聞いた話では告白はされた事があるけど、全部断ってるらしいしな)

不良「…………」

不良(…………まさかな)

不良「ひひ……明日、カマかけてみて反応見るか。もし当たりだったら………」

不良(幻滅されて、気持ち悪がられて、孤立するだろうな……けけ)

不良(……そこで、俺が広めたって事もバレないようにして……妹に付け入れば……)

不良(周りの反応を見れば自分が異常だって気がついて、自然と心も離れてくだろうな)

不良(……妹は、実の兄が好きだ。ってなぁ)

不良(うっはぁ…ワクワクしてきた。上手い事進めば、問題なく妹は俺の物になる)






不良「よう、妹」

妹「………」

友「またかー」ハァ

不良「いやいや、これ以上近づかねぇからそんなに睨むなよ」

妹「………」

不良「いや、まさか妹が自分の兄貴に惚れてるって分かってたらもう手ぇださねぇよ。昨日は悪かったな」

妹「………そう……じゃあ、あっち……行って……」

不良「はいはい」

友「……不良、アンタ妹に何かしたの?」

不良「ちょっと話しようとしただけだよ。それだけそれだけ」

友「…………」

友(……何かするつもりだなー……アイツ)

妹「………」

不良「………」

不良(っけー!!!否定も反応も何もせずに自分の兄貴が好きだって肯定してんじゃねぇか、妹の野郎……)

不良(カマかけるもクソもねーな。当たりだ。間違いない)

不良「………すぐにあのすました態度できねぇようにしてやるからな」ニタリ

ザワザワ

妹「………」

友「ふーんー……どういう事やらー」

友2「妹ちゃんは、お兄ちゃんの事が好き。かぁ」

友「こーんな面倒なのに、分かり切った情報を広める意味が分からないよ、ボクは」

友2「黒板にデカデカと書かれてると、ちょっと恥ずかしいね」

妹「………何が……したいんだろ……」

友「それが分かればいいんだけどなー。こんな事するのは馬鹿ぐらいでしょ」

女子A「ねぇ、妹ちゃんってお兄ちゃんの事好きなの?」

妹「……」コク

女子A「へ、へー……そうなんだ……」

女子A「あ、ちょっとゴメンね」ススス

キイテキタ

ドウダッタ?

イヤ……マジダッテ

エー!ウッソ!!!

チョ、コエオオキイッテ

不良(けけけ、いい具合に拡散してるじゃん。黒板の字も黒板定規使って筆跡は分からねぇ)

不良(そのまま孤立しちまえ!!!)

友「間違いなく馬鹿なんだろうなー。頭が回らないドあほなんだろうなー」シミジミ

友2「と、友ちゃん……」

男子C「チックショオオオオオオオオオ!!!俺は……俺は何を希望に生きてけば良いんだよぉおおおお!!!!」ズダンズダン

男子A「マズい!Cが発狂して暴れ出した!!誰か止めろー!!」

男子B「失恋がなんだ!元々実らないって諦めてただろ!」

男子C「現実の重さが思ってたより酷いんだよぉおおおおおお!!!うわぁあああああああ!!!」ゴロゴロ

男子B「うわぁ……学生服がチョークの粉と埃まみれだよ……」

男子A「落ち着けC!世の中にはまだたくさんの女性との出会いがあるはずだ!」

男子C「この出会いはこれっきりなんだよぉおおお!!!!!たくさんの出会いとか今はどうにもならねぇんだよおおおお!!」ズシャー

友2「うわぁ……」

友「なんか、あれだけ騒いでるし……何かフォロー入れてあげてきなよ、妹」

妹「……うん」

友(トドメの一発になるけどね……)

男子C「ぬわーーー!!!」

妹「………あの……」

男子C「ッハ!!天使の声!!!」ガバ

妹「……気持ちは……嬉しい…けど……ゴメン、ね……」

男子C「」ズド

妹「……応援……ぐらいなら、するし……きっと……いい人…見つかるよ……」

男子C「」

男子A「まずい!あまりのショックに痙攣し始めたぞ!C!しっかりしろ!Cィイイイイイイイイイイイ!!!!」

妹「………」

友「まーまー、気に病む事ないって。いつかこうなる事は分かってたんだからさー」

妹「……うん…」

友2「いいなぁ、妹ちゃん、人気だもんね」

友「どこのどいつがそんな事言うんだコラー!」グイー

友2「ふいぃ…ほっへひっはうらー」ミョイン

妹「…………」

女子B「妹ちゃん!お兄ちゃんってどんな人なの?」

妹「……とっても……素敵……格好いい…」

女子D「背高いの?」

妹「……高い……追いつけ…ない……」

女子A「羨ましい……でもお兄ちゃんってちょっとアレじゃない?」

妹「……気にして……ない……周りが…どういう反応しようと………私が、好きなのは…兄さんだけ……だから…」

女子C「おー、一途だねぇ!」

妹「………」ブイ

不良「……」

不良(あれ?)

女子D「高校生?大学生?いくつ離れてるの?」

妹「……結構……離れてる……うーん……今…二十六…」

女子B「うわー!結構離れてる!」

女子D「変態?」

妹「……む……兄さんは……そんなんじゃ…ない…」

不良(あっれぇええええ?)

不良(なんでこのクラスのヤツはこんなに平和な脳味噌してやがんだ?普通気持ち悪いだろ!)

女子A「私の兄貴なんてロクでもないからさー、好きとかならないなー」

女子C「あー、私も。なーんか偉そうにしててさ、命令してくるし」

妹「……兄さんは……色々、面倒見、いいし……子供っぽいところも、あるけど……頼りになる…」

女子D「大人の余裕」

女子B「そうだねー、そういうやつだね!いいないいなぁ!」

不良「………っ」

不良「なぁ!お前らおかしくねぇ?」

妹「………」

友「んんー?」

不良「普通血のつながった兄貴が好きとか、ありえねぇだろ!気持ち悪い」

不良「しかもオッサンじゃん!普通じゃねぇよ!」

妹「………」

不良「気持ち悪すぎんだろ。普通だったら同い年とか、それなりに近い歳のヤツ好きになるだろ!」

女子C「それって別にアンタに関係なくない?」

不良「は?」

女子B「そうそう、個人の勝手じゃん。恋愛って」

不良「っく……」

友「…ははーん」

不良「!」

友「つまる所、不良君は妹の事気持ち悪いって思ったんだ。へーあーそう」

妹「………」

不良「いや、そういうわけじゃ……クソ!何見てんだテメェら!!」

妹「………嘘つき……嫌い……」

不良「…っ…」

友2「……ね、ねぇ……もしかして、黒板のアレ書いたの…不良君?」

不良「っは、はぁ?なんで俺がそんな事しなくちゃいけねぇんだよ!」

友2「…なんとなく、分かっちゃった。人を貶めようとする悪意みたいな、嫌な感じがする」

不良「俺が何をどうして貶めようとしてるとか分かんだよ!いい加減な事言ってんじゃねぇぞゴラ!」

友2「っ」ビク

妹「…やめて…」ス

不良「どけコラ!わけわかんねー事抜かしやがって!」

友2「妹ちゃん、いいの。今度は私、妹ちゃんを傷つけたりしないんだって、守るんだって、決めたから」

妹「……」

不良「俺が何したって?ああ?クソ野郎が!」

友2「私は流されたまま、妹ちゃんにケガさせた事もあったけど……今は違う」

友2「自分の勝手で、誰かを傷つけるなんて最低な人間だもの」

不良「誰が最低だと!!」

友2「ひっ!!」

不良「一発ぶん殴って…」パカン

不良「」

妹「………ふぅ……」

男子B「あ、顎にグーパン……」

友「拘束っ」ギリギリ

不良「っぐ…!…ッテェな!離せよ!!!」

友「誰かー、黒板消して先生呼んできてー」

女子A「あ、私呼んでくる!」

男子A「じゃあ俺はささーっと消しとくかな」

女子B「男子…見てただけで情けないなぁ」

女子D「腑抜け」

男子C「腑抜け……腑抜けか……」

友2「……」

妹「…………」

友2「妹、ちゃん……私っ…私」ブルブル

妹「……ありがと……」ギュ

友2「う、うあぁあああああん!!」

友(……不良一発ぶん殴って押さえ込もうとしたけど、妹に先を越されちゃって見せ場が……見せ場が…)

妹「…………」

兄「いやー、人に暴力振るうなんてしないんですがねー……大人しい子ですし、そういった事も大嫌いで…」

教師「しかし、現に暴力を振られて生徒がケガをしています」

兄「なーんにも無しには、そういう事しませんよね?何か他の生徒から聞いたりはしなかったんですか?」

教師「一応聞きました。不良君…今回被害にあった生徒ですね。その子が殴られた、と」

兄「その前に何かしらその生徒が何かしようとしてたりしたんじゃあないですか?」

教師「……聞いてませんね」

妹「……」ピク

兄「それはおかしな話っすねー……おっと失礼、言葉遣いがなってませんでした」

教師「…いえ……えー、ですので…今回の件で大きな問題にしないのであれば示談に応じるとお話がありまして……」

兄「………へー」

妹「……私は……」

教師「……」

妹「……友2ちゃんが……殴られそうで、危なかったから……止めなきゃ、ダメだった……」

兄「……結構正当な理由、だと思うんですがね」

教師「しかし、不良君は何もしていないのに殴られています」

兄「はぁ……わっかんねーかなー!目の前にナイフ持った人間がそれをちらつかせてたら身を守るだろ」

兄「それとも何か?女の子が殴られた後に何か行動を起こしとけば問題無かったんすか?」

教師「それは……」

兄「あなたの立場とかそういう面倒な事は知りませんが、そうやって贔屓すんのはおかしいっすよね?」

教師「………」

兄「力だかなんだか知らねーっすけど、今は人数が多い方が勝ちですよ。その場に居合わせた子にもちゃんと話聞いた方がいいですね」

兄「帰るぞ、妹。こんな馬鹿げた話するためにこんなトコ来たんじゃあねー」

妹「……」コク

教師「………」





兄「あー、やだやだ。金持ってる馬鹿は手をつけられねーから嫌いだ」

妹「………ごめん、なさい…」

兄「なーに謝ってんすか、正しい事を普通にした。以上だろ」

兄「良くやったよ、お前は」ナデナデ

妹「………お仕事……」

兄「…あ、そうだよ仕事!」

妹「……」

兄「あの教師もどうでもいい事で呼び出しやがって……」

妹「……私の……せいで……」

兄「何も悪い事はしちゃあいねーよ。馬鹿の面倒に巻き込まれるのはいっつもマトモな人間だ」

兄「もしそのまんま引きずるぐれーなら、俺もそのガキぶん殴ってやんよー」シュッシュッ

妹「……………」

兄「……まぁ見てろって。明日にはどうなってるか、間違った事はしてねーってよーく分かるさ」

不良「あーダッリぃ……」

男子A「そんで昨日の夕食よ。これがまたまぁーマズい!」

男子B「そんな言うほどか?」

男子A「いやいやいや!これはマジで!」

不良「よぉ、なんの話してんの?」

男子ABC「………」チラ

男子C「で?何が原因だったわけ?」

男子A「あ、ああ…塩こしょうで味付けすればいいのにイカの塩辛を味付けに使ったらしい」

不良「は?……おい、無視すんなよ」

男子B「……不良…悪いけど、お前とはあんまし付き合いたくない」

不良「なんでだよ」

男子C「人に迷惑かけ過ぎ。正直巻き込まれるのはゴメンだわ」

男子A「もう話しかけないでくれ」

不良「……あーそう!」ガン

男子C「そうやって物に当たって周り威圧する所も嫌いだったんだよ」

不良「チッ」

不良(俺が悪いのかよ…)

不良「………」

不良(見るからに女子が近くにこねぇ……前まで寄ってきた馬鹿女共もちっとも顔見せねぇ…)

妹「………」

友「気になる?」

妹「……ううん……ただ、可哀想な…人だなって……」

友2「自業自得、だよね…今まで好き勝手やってたから…」

妹「………」

妹(……こういう、ことか…)

不良「…………」ポツーン

妹「………」

友「……これはいじめとか、そういうのじゃないんだよねー」

妹「………」

友「嫌われるような事をしちゃったから、友達がいなくなった。それだけねー」

妹「……」

友「本人が変わらなきゃ、一回落ちた友達としての信用はなかなか回復しないしねー」

妹「……変わらない……だろうね……」

不良「……」ガターン!!!

友2「あれだけ、暴れてたらね……」

なんか上手くオチつけられなかった……。
そしてもうネタがない……。

兄「本当に勘弁して下さい。俺酒は無理っす」

男「んだとぉ?俺の酒が飲めねってんのかぁ?」

兄「あーもう、家で女さんに叱られても知らねーっすよ?」

男「…う……女…女酷いんだよぉ、俺が疲れてるの分かってるのに強く当たるんだぁ」グビグビ

兄「はいはい、そんなに辛いんすねー」

男「うえぇ……いっつも寝かせてくれないんだぁ……もう二人目出来てもおかしくないよぉ……」

兄(惚気かよ)

男「おら飲めぇ!兄!」

兄「……これどうにかなりません?」

眼鏡「まぁまぁ、飲んであげたらいいじゃないですか、クイッと」

兄「……はぁ」ゴク

男「ひゅー!!!!」

兄「………」グビグビ ゴト

兄「…ふぅ……はい、おしまいです。もう飲まないっすからね」

男「うぇええええん……飲んでくれよぉ」

兄「いい加減シバいてもいいですか男さん」

男「お前まで俺の事いじめるのかよぉ……縛って上からは勘弁してよもぉおお……」グダ

兄(普段どんなえげつない事してんだ……)

男「ぬぐぐぐぐ……飲まんかいコラ!!!」ガッ

兄「ぶふっ、ちょ……眼鏡さん!」

眼鏡「飲んどいたらいいんじゃないですか?」

兄「……後輩だからって、ちくしょう……飲みますよー、飲めば文句無いんでしょう?」グビグビグビ

男「よっ、日本一ぃいいい」ヘラヘラ

兄(絶対会社で仕返ししてやる……面倒な仕事の後処理ぶつけてやる……」ゴト グビグビグビ

男「へあ?なんか言ったぁ?」

兄「頭から熱燗ぶっかけてやろーと思ったんすよ。ついつい言葉に出てました」

男「んだとぉ~、天下の男さまに向かってそんな態度でいいのかにゃーん?」グビリ

兄「……けふ……今のうちに後輩には優しくしといた方がいいんじゃあないっすかねー?」

男「おうコラ、少ねぇんじゃないの?俺泣いちゃうよ?」

兄「男さんのが少ないっす。眼鏡さんも、飲め飲め言うなら自分も飲んだらどうなんすかねー」

眼鏡「はいはい、飲んでるときは無礼講ですからね。ちゃんと飲みますよ。ペースとか考えながら」

男「向こうの席は花があっていいなぁ……俺もあっち行こうかなぁ」

兄「女さんに言いつけてやります。飼い犬が粗相してるって」

男「あー!兄テメェ俺が犬だとぉ?」

_____________

兄「………クソ……これだから酒は嫌いなんだ……」

新人「えと、大丈夫ですか?」

兄「問題ねー、明日には……多分……」

新人「あ、こ、これどうぞ!」

兄「胃薬………気ー利くじゃあねーか。サンクス……」

新人「いえ……たまたま、持ってただけなので」

兄「最近歳をとるっつーのを実感してきた、飲むとしんどい」ゴク

新人「そんな…兄さんは全然そんなことないですよ」

兄「もうちょっと前だったら飲んでも気にならなかったんだけどなー……頭も痛くなるしたまったもんじゃあない」

新人「頭が痛くなるのは私でもそうですよ?今日なんてちょっとだけでもうフラフラで」

兄「お前そんなに弱いのな。大丈夫か?」

新人「はいっ、こちらでは全然強制とか、そんな感じじゃなかったので」

兄「いいもんだなー、こっちは酒飲みの上司がいるからしんどいしんどい」

新人「大変ですね」

兄「まーでも、楽しいし限界は把握してくれてるからいいんだけどな」

新人「いいですねー、そういう感じで飲めるのって……私、ちょっと憧れちゃいます」

兄「憧れてるうちはよく見えるけど、実際出来るようになったら、こんなもんか、ってぐらいにしか感じねーよ」

新人「わ、私も……兄さんと飲みに行きたいかなー、なんて……」

兄「?」

新人「あ、いやっ……ちょっと思っただけですよ?その、上司の方と飲みに行ったりって、いいなって思っただけですっ」

兄「変わってんなー、新人は」

新人「なんでですか?」

兄「面倒だとか、自分の時間を大事にしたいとか、そういうこともあるから会社の人間と一緒にいるのは会社内だけってヤツも増えてきてんのに」

新人「え、あ……わ、私は……帰っても趣味とか、そういうのあんまりなくて…誰かと喋ったりしてるのが好きだったりするので」

兄「ふーん」

新人「………」

兄「それじゃあそのうち連れてってやんよー」

新人「へっ、ほ、ホントですか!?」

兄「エラい食いつくなお前……」

新人「あっ……」カァ

兄「早く上がれた時にでも、適当にな。あんましいい店とか期待すんなよ?ただの居酒屋だ」

新人「いえっ大丈夫です!お供させていただきます!」

兄「はいはーい。ほれ、電車来るぞ?」

新人「あ、ホントですね……」

兄「……くぁ……あー、頭痛……しかも眠い……」ポリポリ

新人「はい、眠たいです」

兄(別に同意を求めたわけじゃあねーんだけどなー……変わったヤツ……)

新人「………っ…」フラ

兄「おい、ふらついてんぞー?帰れんのかお前?」

新人「あ、すみません、ちょっとふわふわしてます」ガク

兄「ちょ、おい」ガシ

新人「はっ…すみません!」ヨタ

兄「ちゃんと帰れよ?面倒だから」

新人「頑張ります……」

新人(兄さんに寄りかかっちゃって、申し訳ないな……でも、しっかりしてて…カッコいい……匂いも、好き……ふふ…今度一緒に、かぁ……)

兄「ただいまーっす」ガチャ

妹「……おかえり……なさい……」

兄「なんとか早めに切り上げれたぜー……あー頭痛ってーの」クツヌギ

妹「……お水……いる…?」

兄「ああ、持ってきてくれると助かる」

妹「……」コク

兄(疲れた……普段乗らねー電車で通勤だったし、いつも以上にキツいぜー……)スタスタ

兄「ふぅ……」

妹「……おまたせ…」コト

兄「悪いな、やっと一息つけるぜー」

妹「あ……兄……スーツ、脱がないと………皺に……」ス

兄「ん?ああ…別にいいのに」ヌギ

妹「…ちゃんと……しなきゃ、ダメ……」

兄「りょーかい」

妹「……これ……ハンガーに……掛けてくる……」トタトタ

兄「んー」ゴクゴク

妹「………」トタトタ

妹(兄の……スーツ……いつもと違って、嫌な匂い………お酒は……好きじゃない……)

妹「…………いつもの……が…好きなのに……」

妹「………」

妹「…………?」

妹(……糸くず……)ス

妹「………………」

妹「……………」ジー

妹(……髪の毛………長いやつ………)

妹(兄の……こんなに……長かったっけ……)

妹「………」

妹「……どこで……付いたんだろ……」ポイ

妹「…………」

妹「………」クンクン

妹(………なんか……違う……)

妹「…………」ムー

妹「…………」シュッシュッ シュッシュ

妹「………よし……」

妹「……」トタトタ

兄「おー、今日は飯何食った?」

妹「……今日は……サラダと……魚……鮭……」

兄「ん、ちゃんとした食事でよろしい」

妹「……兄は………お菓子ばっかり……だったから、ね……」

兄「………一応改善はされたんすけどねー、はは」

妹「……」

兄「…………」

妹「………」ダキ

兄「どーしたー?」

妹「……ううん……ただ……こうしてたい…」

兄「妹、随分背ー高くなったな」

妹「……うん……」

兄(背だけじゃあ無くて、背中に当たる柔らかな感触も……そうじゃあない!アホ!)

妹「……………」

妹(兄……ちゃんと、私と……一緒に…いてくれるんだよ、ね……?)ギュ

兄「おい、首元に顔突っ込むな、こそばゆい」

妹「……でも……嫌いじゃ…ない……」

兄「……ぐ、ま……まぁ…そうなんすけど……あー、なんだ…臭いが大丈夫か気になる」

妹「………大丈夫……ちょっと……お酒の匂い、するけど……私の好きな……兄の匂い…」

兄「ん、んん、それならいいんすけどねー」

兄(なんだ?酒のせいか?水飲んだのに顔が熱い!何だこれ!)

妹(………大丈夫……不安なんて……ちょっとだけで、すぐに…なんでこんな事で……って笑える……はず……)

兄(く……いつまでも妹のペースに飲まれてるわけにもいかねー!ここは一つ、頭撫でで……)ポンポン

妹「……………」

兄「……」

妹「………」パク

兄「ぬぁっ!?おい、俺まだ風呂入ってねーし!汚ねーから!」

妹(首……兄の味……)

兄「あーもう……ホント馬鹿……」

妹「…………」

兄「なんかあったか?」

妹「……ううん……ただ…兄が……近くにいて……嬉しい…」

兄「それだけで満足してくれたら良かったんだけどな……」

妹「お風呂……湧いてるから……入ってね……私、寝るとこ…準備してる……」

兄「了解、悪いな」

妹「…………今日は……一緒に寝たい……」

兄「…マジでなんかあったか?」

妹「……ちょっとだけ………寂しい…かな…」ス

兄「う……ん、了解。待っててくれ、さっさと入ってくる」スク

妹「……」コク

兄(ぐっクソ!反則!!反則過ぎんだろ!!耳元で、んなこと囁かれたらギリギリとダメージが……)

兄(そういやー、最近帰るの遅いかもな……ちょっと不安か)スタスタ

兄「………………」チラ

兄「……………!!!!」

兄(あ、あのヤロー……こんな所に、なんて事してくれやがったんだ………いや、別にいいけどさ…)

妹「…………」

妹(…気づいた……かな…?……気づいたよね……)

妹(今日は……会社の人たちと…飲み会で……)

妹(……うん……兄の事……気になってる人……いるんだろうな、って……思ってたけど……)

妹(……どう…しよう……)

妹(このままじゃ……兄……とられちゃう……?)

妹(……いや……でも……今日はたまたま……何かの……間違い……かも)

妹(…大丈夫……兄は……私の事だけ、が好きで……他の人なんて…見るわけない……)

妹(……それでも……兄を……誘惑されたら……)

妹「…………」

妹「……やだ、な……」

妹(……兄の…手を握っていいのは……私だけ…だし……)

妹(ギュッて……されるのも……撫でられるのも……兄の……全部、私の…なのに……)

妹(…他の人に…そういうの……しちゃうのかな……させられちゃうのかな……)

妹「…………」ボフ

妹「………むぅ……」

兄「はー…さっぱりしたー」スタスタ

妹「………」

兄「そんじゃあ、寝ますかー」

妹「……兄……」

兄「……ん?」

妹「………」

兄「んだよ、こっちに向かって両手伸ばしやがって……抱っこでもしてほしいのか?」ス

妹「………」

兄「……寝にくいからなー、これ」

妹「………」ダキ

兄(向かい合って抱きしめ合うだけ。ギューッと、お互い抱き枕みたいな)

兄(いや、寝にくいだのなんだのって文句は言ってるけど……本音、すっげー落ち着くし、心地良いから好きなんすけどね、これ)ギュ

兄(ああ、いい匂いすんなー……)

妹「……………兄……私…今、ちょっと不安……」

兄「何がよ」

妹「………分かんない………」

兄「そうか」

妹「…うん……分かんない……から……ぎゅって……してて欲しい……」

兄「了解。妹の不安なんてぶっ飛ばすつもりでこうしてるよ」

妹「……うん」

兄「…………あ、お前首にキスマークつけたろ」

妹「…………それも…不安……だから……」

兄「…………まぁ、嫌じゃあねーし別にいいんだけどさ……言ってからにしてくれよなー」

妹(……言えば…いいんだ………変なの………もう一個、つけちゃえ……)パク

兄「……オメーはまた……」

妹「………もう、一個…ね…」

兄「……スーツ着た時に見えねー所にしてくれよな」

妹「………見えちゃったら……どうなるの……?」

兄「んー……上司の攻撃が強くなる。一人だけだけどな」

妹「………兄が……嫌な思い…するなら、やめとく……」

兄(いや、別に嫌な思いっつーか、普通に嬉しいんすけどね)

兄「ま、その辺でやめといてくれるとありがたいかもな」

妹「………お返し……する…?」

兄「しない」

妹「………残念…」シュン

兄「色気付くのはまだ早いっつの」

妹「……早い……かな……」

兄「早い。いろいろと考えなきゃいけねー事とか、自分の気持ちとか、しっかりと頭ん中で整理できなきゃあな」

妹「……そっか……」

兄「俺は変わらんまま妹といてやるし、ゆっくり成長しやがれこのヤロー」ワシワシ

妹「ん……うん……頑張る……」

兄「あーあーあー、頑張んなくてもいい」

妹「……?」

兄「いいか?全力疾走しなくても歩いてれば目的地には着けるわけよ」

妹「……」

兄「リレーとか、マラソンみてーに時間が決まってる場合はちょっとワケがちげーけど、俺はいつまでも待つ。つまるところ、時間無制限だ」

妹「……うん…」

兄(もっとも、目的地が俺じゃあなくなったとしても……俺は妹だけを待ってるんすけどね)

兄「妹が見てる目的地は、はたして妹の進んでる道の先にあるのかどうか……ま、それをしっかり見極めてからって話っすよ」

妹「……………うん」

兄「オラ、寝ちまうぞ」

妹「……私は……絶対に……兄の……所に行く…から……」ギュ

兄「……あー、うん……サンキュ」

兄(なんつーか……ここまで想われてるとたまらなく嬉しい……ホント、俺には妹しか、頼れるヤツいねーんだから頼むぜ…)

兄(ちゃんと、俺のとこに来てくれよな……)

妹(……別に……目的地が分かってるなら……道とか、どうでもいいと……思うんだけどな……)

妹(ちゃんと……兄の…とこ…)パク

兄「っだぁっ!?……テメーまたっ」

妹「……兄がしてくれない…から……我慢……」

兄「…………ぐぐ……」

兄「く………コレ見えてねーか?」グイ

妹「…………」

兄「気にならねーよな……いや、誰も気にしねーよな。うん」

妹「………」テキパキ

兄(………2、4………っだー!めんどくせー!)ガシガシ

妹「…急がないと……遅刻……」

兄「俺はなんで妹がそんな気分良さそうなのか理解に苦しむぜ…」

妹「………兄は……鈍い……」

兄「っはー、本当に鈍かったらなー……こんな首の後ろに付けたヤツに気がつくはずがねー!分かってんぞ俺」

妹「…………く……」

兄「そのあからさまにバレたーって顔すんのやめてくれよ、分かってただろ」

妹「………うん……」ニコ

兄「……っしゃあ……行きますか」

妹「……兄……お弁当……」ス

兄「ふーむ……こううっかりしちまうのは妹がしっかりし過ぎてるから…だろうな」ポリポリ

妹「………今日は……遅い…?」ゴソゴソ

兄「いや、多分そこまで遅くはなんねーと思う」キュ

妹「………じゃあ……今日は……兄の好きな、食べ物……用意してるね……」

兄「了解。俺の好きな食べ物ちゃーんと記憶してるか?」

妹「…………バッチリ……」グッ

兄「サンクス。じゃあ期待してるよ」ナデナデ

妹「ん……美味しい……卵料理………だね」

兄(俺は妹に一つ嘘をついている)

妹「………♪」

兄(俺が好きなのは卵料理じゃあなく、妹の手料理と二人でいる雰囲気だ)

兄(前に聞かれた時に卵料理だって答えちまったけど正直妹の手料理だったらなんでも食います………言わねーけど)

妹「ちゃんと、帰って来なかったら………どーん」ダキ

兄「へーへー、怒りの鉄拳ですね」

妹「……今日は……キック」

兄「うわー……そりゃあ酷いな。ちゃんと帰るようにしとく」

妹「兄は……そうやって…何度、約束を破ったか……」ヤレヤレ

兄「約束破り放題は前からだろ」

妹「………まあ、ね」

兄「お互いな」

妹「お互い……様……」

兄「じゃあ、行くわ。気をつけろよな」

妹「………らじゃ……」シャキ

兄(………ヘルメット被って敬礼か……悪くない……)

兄「………」カタカタ

兄(今日も今日とて作業作業……いやー、いいもんっすねー)

兄(慣れてくるまでは仕事、慣れてきたら作業……そんな感じだ)カタカタ

新人「………あ…えと……」

兄(にしても……妹も随分無茶するようになってきたな……)カタカタカタカタ

新人「す……すいませーん」

兄(このままじゃあマズい事にもなりかねん……なんとか対応しなきゃあいけねーな)

新人「あの!」

兄「お?」

新人「兄さん……」

兄「悪い、ちょっと考え事してた。ほら、今日の献立何にしようかなー、とか」

新人「すみません…私も、大声出しちゃって」

兄「なんか用事か?」

新人「あ、はい。えと……今日…兄さんのお家にお邪魔してもいいでしょうか?」

兄「へーえ、俺んちにねー…………」

新人「男さんから兄さんは一人暮らしをしていると聞きました。もし、よろしければ……その……」

兄「ちょっと待て………俺んち?」

新人「はいっ」

兄「お、俺んちはちょーっとマズいと思うんすよね……ほらー色々……あ、散らかってるし」

新人「兄さんは几帳面だから片付けはしてる……って男さんが言ってました!」

兄(何言ってんだあの人!俺んち来た事ねーだろ!!!!)

兄「あのな?突然そんな事言っても、女性社員がわざわざ上司の家にあがるなんて、普通おかしいだろ」

新人「……う…はい………その…無理は承知です……ですが、そのぉ………」モジモジ

兄「そうだろ、無理だろ?」

新人「わ、私はっ……兄さんと、お付き合いしたいと考えておりますっ!」

兄「」

新人「あ、っや!男さんが!!兄さんは押しに弱いからガツガツ行かないとダメだって、その……!私もこんなのはしたないし引かれちゃうかな、と思ったんですがこうでもしないと何も変わらないまま誰かに兄さんが取られちゃうんじゃないかな、と思って……あれ?何言ってんだろ、私……えーと……その……」シドロモドロ

兄「分かった、分かったから落ち着け……」

新人「はひっ!!」

兄「…………」フー

新人「~~~~っ……」カオマッカ

兄「家に来るのはやめとけ。つーかダメだ……」

新人「………」シュン

兄「まぁでも、どっか飯ぐらいだったら連れてってやる。だからこんな馬鹿みたいな暴走はしないでくれ」

新人「!」パァ

兄(男さん……後で面倒な書類作業回してやる……)

兄(………大丈夫……だよな……?)

新人「………」ゴクゴク

兄「………」

兄(出来るだけ腹すかせて帰らねーと……妹に悪いな)

兄(一応、少し遅くなるとは伝えてあるし、問題はない)

新人「……ぷはぁ……」

兄「結構いったな。お前弱いんじゃあなかったっけ」

新人「は、はい。ちょっと……緊張しちゃって……」

兄「何も緊張する事なんてねーよ。先輩後輩、上司と部下。それだけだ」

新人「それだけ……ですか……」

兄「お前は、俺のどこがいいんだ?」

新人「……兄さんは……私が入ってすぐ、右も左も分からない状況の時、色々な事を教えてくれました」

兄「………」

新人「わ、私、はっきりしてなくて……学生の時もドジばっかで、みんなに迷惑かけてて……会社でも、何回もミスしてました」

新人「それでも兄さんは『ゆっくりでいいから出来る事をやれ…まずそれからでいい。手が回らねーなら俺がなんとかしてやる』って、色んな人に頭下げながら、私の事を手伝ってくれました」

新人「それに、ダメな私をいっぱい励ましたり、ちゃんとしなきゃいけない時はいっぱい叱ったりしてくれました……」

新人「……そんな、優しい………」

兄「はー…………」

新人「あ、や……すみませんっ。何か……気に障りましたか?」

兄「俺は会社の為にやってただけだし、ちゃんと独り立ちしてくれねーとマズいから色々やっただけだ」

兄「いいか?俺は優しい人間じゃあない。お前の中で作ってる程偉い人間じゃあない」

新人「でもっ…」

兄「あと……想いをぶつけた所で、俺は絶対に応えない」

新人「っ!」

兄「俺には、心に決めた相手がいる。そいつが答えを出すまで、俺は待たなきゃあならない」

新人「答えを出すまでって……兄さんが、待ってるんですか?」

兄「ああ、俺が待ってる」

新人「………もし、答えを出した時、兄さんじゃあなかったら……」

兄「そん時はそん時だ。その辺りはそいつの自由だ。誰を選ぶのかも」

新人「………………じゃ、じゃあ…」

兄「おっと、答えが俺じゃなかったら……なんてもんに乗っかるんじゃあねーぞ」

兄「俺が保険掛けてたら、心から信頼してねー事になる。それはソイツに対する裏切りだ」

新人「……………」ポロ

兄「悪いな。俺はお前の理想じゃあない」

新人「…」ポロポロ

兄「俺は卑怯だ………。今まで黙ってて悪かったな」ガタ

兄「飯代とタクシー代は置いてく……ちゃんと帰れよ」

新人「………」

兄「俺みたいな人間と、付き合って損する事はねー。じゃあな」スタスタ

新人「…………………………………………………」

兄(……甘い顔すんのも、ココまでだ。俺はちゃんと待たなきゃあならない)

兄(さっさと帰らなきゃあな……)スタスタ

兄(会社で多気まずくなっちなうのは仕方がねー。コレも我慢しなきゃあならねー事だ)

兄「…………」スタスタスタ

タタタ ドン

兄「っ……………何だ?」クル

新人「………」

兄「新人?」

新人「……」チュ

兄「!?…おまっ……!」バッ

新人「兄さんが、そこに留まっているのであれば……私は全力で兄さんが動くように行動します」ダキ

兄「ばっか!離せ!!」グイ

新人「待つ時間があるのなら、私はその時間の間に兄さんを手に入れてみせます!その相手から!!」

兄「……悪いが、俺とソイツの間に付け入る隙はない」

新人「付け入る隙がないとか、そんなのは関係ないんです」

兄「何も知らないうちはそうやって言ってられるだろうな」

新人「知らないからこそもっと兄さんの事が知りたいんです!知った上で兄さんを受け止めたいんです!」

兄「ああ、そう……」スタスタ

新人「……必ず……です」

兄「…………」スタスタ

兄(これ以上下手に関わると何されるか分かったもんじゃあねー……とりあえず退散)

兄(酔ってる馬鹿にマジメに対応しても意味がねー)

兄(…………面倒臭い……)ゴシゴシ





妹「…………」

妹「…………………」

ガチャ

妹「……!」トテトテ

妹「おかえり…………兄………」

兄「…スマン、遅くなった」

妹「……ううん………ご飯……?お風呂……?」

兄「あー……飯、かな。待たせちまったし」

妹「………うんっ」

兄「…………」

妹「……今日は……兄の好きな……料理……って、朝言ってたから……頑張ったの」

兄(………もしかして、コレは浮気に入るんじゃあないっすか、俺よ……)

妹「……色々、味わえるようにした……結構自信作……」フンス

兄(自己嫌悪だ……部下と飲みに行くぐらいいいだろー、ってのが気の浮つきなんだよ……ああ、頭ぶつけたい)

妹「……聞いてる……?」

兄「……………」モグモグ

妹「…………」

兄「……ふーぬ…これ美味いな」

妹「…………そう……」ニヘ

兄「顔緩んでるぞ」

妹「……む……ご飯に……集中してて……」

兄「妹の顔見ながら飯食うから意味あるんだろーが」

妹「……………へー…」

兄「…………」

妹「………何か……あった…?」

兄「いんやー、別に何にもねーよ」

妹「………」ジー

兄「あのな……俺の顔を見た所でなんにも出やしねーっつの」

妹「…元気は……出る……」

兄「なんかまた嬉しくなるような事言いやがってチクショウが」

妹「……?……お酒……飲んだ…?」

兄(何故それが分かる……コイツ勘良すぎんだろ……)

兄「いや、まっすぐ帰ってきた」

妹「…………兄……お酒飲むと……ココ、赤くなるの……」ピト

兄「は?」

妹「………服、着てても……ちょっとだけ、見えてる……ケガの所……」

兄「え?」グイ

兄「…………………」

兄(マジだ……)

妹「……嘘ついた………図星……」

兄「っく……スマン、ちょっと会社のヤツとな」

妹「………なんで?」

兄「え?……あー…」

妹「…別に……付き合いもあるから……行ってもいいって……言った……隠す必要は……ない……」

兄「そりゃあ……お前の飯食わずに、飲みに行ってたなんて分かったら、妹も嫌だろうし……」

妹「………誰と…?……」

兄「いや、言ってもわかんねーだろ…………」タジ

妹「……………」ゴゴゴゴ

兄「……あー、その……新人ってヤツだよ」

妹「…………女…?」

兄「……あー…まぁ……そうっすね。いやでも、やましい事とかなんもねーし…」

妹「………」バン

兄「うおっ」

妹「…………………だったら……なんで…隠したり………」ギリ

兄「あの、妹さん?」

妹「……待ってるって……嘘ばっかり……」

兄「嘘じゃあねー。ちゃんと俺は……」

妹「じゃあ!!!……昨日の今日で……コレは……何…?」

兄「……ただ、部下と上司…飲みに行っただけだ。それ以上はなにもない」

妹「昨日の……会社の飲み会も……その人と一緒だったよね……」

兄「なんでそれを……」

妹「……やっぱり…………もう……いいよ……」ポロ

兄「妹……」

妹「……もういい……私…ずっと兄の近くに行こうと……頑張ってるのに……」

妹「近づく前から……私の事……見て、笑ってたんだ……」

兄「違うっつーの!だいたい、俺が妹以外に目が行くわけなんてねーだろうが!!」

妹「………分から…ないよ……」

兄「………」

妹「私以上に……いい人なんて……いっぱい、いるんでしょ……?」

兄「いない。俺の全部を知ってるのは妹しかいねーんだぞ」

妹「……じゃあ……兄の事……分かってくれる人なら……誰でもいいの……?」

兄「そうじゃあねーよ。お前の全部が……」

妹「…………ごめん……今……信じられ、ない………兄の…こと……」

兄「だっ……だから」

妹「……分かってる……嘘じゃないって……でも………分かんないよ……」

妹「……ぽっかり……穴……空いたみたいに……悲しい……」

兄「………」

妹「……傍に……いていいのは……私だけ……?」

妹「………それとも……知り合いなら……誰でも……?」

兄「…………」

妹「…………黙らない…でよ……!!…」ポコ

妹「……安心……させてよ………怖い……怖いよ……!!」ガシ

妹「……信じさせてよ……嘘……もうつかないで……っ……隠し事しないで……」

兄「………」

妹「…………やだよ………どこにも………行かないで……」

妹「……信じたい…のに………分からない……」

妹「………兄………」

兄「………悪い……俺が、軽卒だった………」

妹「……………………」

妹「………」ポロポロ

妹(………まだ……あいた穴……塞がんない……)ガブ

兄「っ」

妹(どうして?……どうしてなの…?)ポロポロ

妹(兄なら……大丈夫なはず……なのに……どうしてこんなに……怖いの…?)

兄「……………」ギュ ナデナデ

友「浮気?」

妹「………」

友2「お兄さんが、かぁ……」

友「何やってるんだよー……ホントに……」

妹「………私……もう………どうしたらいいか、分かんない……」

友「あー泣かない泣かない、ほらポテチ食べる?」

妹「……いらない…」

友「………」

友2「お兄さんはそんな簡単に浮気するようには見えないんだけどな……」

友「だからこそダメージが大きいんだよー……ボクが男だったらぶん殴りに行く所かなー」

妹「………」

友(うーん……難しい……おにーさんをどうすればちゃんと妹の事を意識させ続けて、他所に目が行かないようにするか……)

「お困りのようですな……うふ、ふふひ」

妹「………」

友「ちょっとおねーちゃん!!」

友姉「えへ、ふふふ……ちょっとこういうすれ違い、憧れです」

友2「うわぁ」

友姉「おいそこのフンワリモテカワ愛されガール、その反応は傷つくぞ……そういった非難の目…快感です、大洪水です……」

友「何しに来たんだよー」

友姉「ふひ……ちょっとだけ、頭突っ込みたくなった……うひひ……突っ込む……」

友(会話が成り立ちにくくて面倒になってきたこの頃……)

妹「………」

友姉「………」コキ

友姉「…さて妹ちゃん、話は聞かせてもらった。お兄さんに浮気まがいの事をされてさぞかし疑心暗鬼に陥ってることでしょう」

妹「…………」

友姉「でもさぁ、それだけの事をされちゃったなら、仕返ししてやらないと気が済まないよねぇ……いや、してやらなきゃあいけないんだよ」

妹「……それは……だめ……」

友「何言ってんのおねーちゃん!!」

友姉「でもこのままじゃあお兄さんは妹ちゃんの優しい心につけ込んで……うまーい具合に影で何度も裏切るかもしれないよ?そんなのを見逃して、また傷ついたら辛いよねぇ……寂しいよねぇ……」

友2「いや、それはないんじゃ……」

友姉「んんんっ……ぬふ……流石にそれはダメか……いい案、かもしれないのになぁ……ふふふ」

妹「……………聞か、せて」

友2「妹ちゃん……!?」

妹「どうすれば、いいの?……兄を……もう……どこにも行かせたく……ない……」

友姉「うふふ、ふふ…いいわ、いいわぁお姉さんが教えてあげる」

友「おねーちゃん、余計な事はあまりしない方がいいと思うんだけどなー」ジト

友姉「うるさいやい!このおっぱい大魔神!!揉みしだいて私のようにぺちゃんこにしてやろうか!!」

友「………やっぱダメだこの人……」

友姉「……うひ…取り乱した……えへへへ………さぁ妹ちゃん、友ちゃん、友2ちゃん……作戦会議といこうじゃあないか」

友姉「………」

友「……で?」

妹「…………」

友姉「ふひ……さっきも言ったように仕返しだよぉ、仕返し……された方がどれだけ苦しむのか……味合わせるんだよ」

友姉「そうすれば優しいお兄さんなら自分の軽率さに気づき!妹ちゃんとのイチャラブチュッチュ生活を再開するのだ!!!」

友姉「……なんてね……ふひ……うひひひひひひ………」

妹「…………」

友姉「ど、どうだい?……仕返し、するだろ?……するって言っちゃいなよぉ…ね?」

妹「………でも……私……兄以外と……まともに、喋れない……」

友「ねーねー、無理にそういうことしなくてもいいんじゃないかな?」

友姉「これは妹ちゃんの問題なのだ!口を挟むでないっ」キリ

友「……………」

友姉「別に他の男と付き合えってワケじゃないよぉ?……うひ…ほんの少しでいいから他の男の存在をほのめかすだけでいいんだ…」

友姉「そりゃあウチも寝取られは趣味じゃあないからさ……ぬふ……ふふふ……うまーい具合にそこはするよ?」

友2「……」オロオロ

妹「………………」

妹(私が……どこかに、行っちゃうかもしれないって……感じたら……兄も……追いかけてきてくれる……?」

妹(……兄……ずっと私だけ……見てくれる……?)

妹(でも……仕返しなんて……されたから、するなんて……最低…だよね……)

妹(一度くらい……なら……許してあげるのも……………だって……ただ飲みに行っただけ……)

妹(まだ、私の方が……兄と一緒に過ごしてる時間は長い……し……)

友姉「あーあーあー」

友姉「妹ちゃん……その悩んでるようなお顔……もしかして一回ぐらい許しちゃおうとか思ってるのではなくて?」

妹「…っ」

友姉「なりません!なりませんわぁ!!!その一回を許してしまえばつけあがる事は避けられなくってよ!!」

友姉「……ふひひ………そういう生き物なんだよ?人ってさぁ……うふ…ぬひひひ……」

友「おにーさんなら一回注意すれば分かるよ!そんなに器用でズルい人じゃあないもん!!」

友姉「……あぁ……嫉妬に狂う妹、そしてその嫉妬を一身に受ける兄……うひひ……いいです……ウチとっても興奮します…」

友2(この人……もしかして自分が楽しみたいだけなんじゃ………)

友「妹、もうやめときなって。ボクだってそんなぎこちなくしてる二人、見たくないよ……」

妹(……つけあがる……のかな……私が、許しちゃったら……)

妹(兄が…………)

妹(……分かんない……でも、私……兄を引き止められるもの……何も持ってない…)

妹(…兄も、魅力的な人なら……きっと…)

妹(………だったら……)

妹「………」

妹「……………やって…みる……」

友姉「……ぬっふ…!……きた……きたきたきたぜぇっ!!!この時がっ!!!」バッ

友「妹……」

妹(……兄には……ちゃんと待ってくれなきゃ……大変な事になるぞ……って…分からせてやるんだ……)

友姉「……それじゃあ、まずー……写真でも撮ろうか。ほれほれー」ス

妹「…………」

友「なんかもう……見てられないねー、こりゃ」

友2「……だね。どうしよう?」

友「もし何か問題があったら、助けてあげよう。今の状態じゃあ妹も何言っても聞かないよ」

友2「そうだね…」

友姉「んふぅ……はぁ、はぁ……やっべマジ美少女撮れちゃいました……ごくり」フルフル

妹「……………」

友姉「ではでは、しばしお待ちを……ぬふ……」

友「もし変な事に使ったらいくらおねーちゃんでもボクキレるからね?」

友姉「ふっ……安心しろマイシスター。そんな拡散するとか不毛な事はしないよ……そもそも、人目に晒すのも晒されるのも嫌いです、ウチ」ノソノソ

友「………」

妹「……………」

友「…よかったの?」

妹「……うん……やるって………決めた……から……」

友「何か問題があったら、すぐにボクに言ってよね。その辺りだったら手伝うからさー」

友2「あ、わ…私も……」

妹「………ごめん、ね……ありがと………」

友(できれば、そんな事しちゃう妹…見たくなかったけどね)

友(なんとなく分かっちゃうかなー。不安で、怯えて、どうしようもない妹の心境……)

友(………本気でおにーさんぶん殴ってみようかな……)




兄「…………」カタカタ

新人「………あの……」

兄「……書類なら置いといてくれ」

新人「あっ、はい……」パサ

兄「…………」カタカタカタカタ

新人「………」

新人「…………兄さん」

兄「…………」カタカタ

新人「…き、昨日は……すみませんでした……私……どうかしちゃってました……」

兄「その話はやめてくれ」

新人「あ……すみません……」

兄「…………」カタカタカタ

新人「……でも、私………ほ、本気…ですから…!」

兄「………………」

新人「………それでは」

兄「…………」カチャカチャ

兄(……冗談じゃあねー……勘弁してくれ……)

兄(妹……少しでもちゃんと話して、早くまたあの平和な雰囲気で過ごしたい……あー、ちくしょー……)カタカタ

友姉「んふふ……ぬふ……満足な出来です」ス

友「何コレ?」

友姉「しゃ、写真だよ写真。これね、上手い事加工すれば、あらびっくり……ふひひひひ……知らない男とツーショットの妹ちゃんの出来上がり」

妹「………」

友2「だ、誰なんですか…この男の人……なんか不気味です……」

友姉「ぶっ、不気味とは失礼な!!ウチが数年培ってきたテクニーックを駆使すればこんな容貌にだって変えれるんだぜ?」

友「うえ!?コレおねーちゃんなの!?」

友姉「ぬっふふ……ふひひ……コレで可愛い女の子と二人で写真に写るのが夢でした……うふうっふ……叶っちゃった……」

妹「………スゴい……」

友姉「ぬへへへへ……もっと褒めてー……ふひ……責められて褒められて成長するタイプです……」

友「ま、まースゴいのは分かるけどさ、コレをどうすんの?」

友姉「んんん…ごふん……作戦内容はいたって簡単だ……他の男の存在をほのめかす……つまり架空の人間でいいからでっち上げちまえばいいのさ」

友姉「架空の人間とお兄さんの目の前でコンタクトを取ろうとしても、通信等でしか取れないだろうし効果は薄いと我輩は考えた……」

友姉「そこで、架空の存在ではあるが、実体を持っていればどうだろう?何も知らないお兄さんはその存在を認めざるを得ないのだよ」

友「あーはいはい、わざわざ声変えなくてもいいからパパッと説明して」

友姉「……ちぇ……ひひ……さりげなく、お兄さんの目に付くような場面を作り出して、その写真を見せる事ができればいいのよん」

妹「………」

_______________________




兄「………ただいまーっす」ガチャ

兄「…………」

兄(……ま、出迎えてくれるわけねーわな)ハァ

兄「……………」

兄(このままギスギスしたまま生活なんて俺耐えらんねーぞコラ……)カチャ

妹「………………」

兄「…おっす……ただいま」

妹「……………」

兄(こ……コイツ……チラって一回こっち見たけどすぐに携帯電話いじりし始めやがった……)

兄(あからさますぎてしんどい……)

妹「……………」スク

兄「あー……風呂でも行くのか?」

妹「………電話……」フイ

兄「……そ」

妹「…………もしもし………うん……」トタトタ

兄「…………………」

兄(ぐああああああ!!!!なんで俺!!!俺!俺は!!!……………)

兄(クソ……自己嫌悪が半端ない……黒くてドロドロした物が腹の中から全身を腐らせてるような最低な気分だ……)

兄(俺は……妹に嫌われちまったら………限りなく何もない人間だったのか、って……実感するぜ……)

兄(いや……もともと、そうだったけどさ……………ああ、夢でも見てたのか?俺……)

兄(………いや……俺は妹を裏切っちまったから、当然の報いか……)

兄「………はぁ……」

兄(これから、しっかりと誠実に生きてれば特に何も言われる事はねーだろう)

兄(たるんでたな。これからしっかり、妹の事を待っててやんねーと……)

妹「………」トタトタ

兄(とりあえず、怒ってる間はうかつにフォローするような真似は避けた方がいいな。言いわけにしか聞こえねーだろうし、反省しなきゃあならんのは俺だ)

兄「…………」

妹「………」

兄「………」

妹「……………」

兄(……気まずい………!!)

妹「………」ス

兄「あ……」

妹「………」トタトタ

兄「………どこ行くんだ?」

妹「………勉強……」

兄「そうか」

妹「…………」トタトタ

兄「………」

ガチャ バタン

兄「………」

兄(なんにも喋れなかった……!!)

兄(いや、つか……普段どんな事喋ってたっけ…?)

兄(………これからどうなってくんだ……マジで……)

兄「…………」

ガチャ

兄「!」

妹「………」

兄「どした?」

妹「………筆箱」

兄「…筆箱?」

妹「………忘れたから……」トタトタ ス

兄「………」

兄(戻ってきてくれたと思って一瞬嬉しかったんすけど……)

妹「………」トタトタ カシャッ

兄「あ、おい。落ちたぞ」スク

妹「っ…!触らないで……!!」バッ

兄「あー……悪い………っ!?」

妹「………」ダッ

ガチャ 

兄(………今の……プリクラ…っての…?………誰かと………妹……が……)

妹「………」ドキドキ

妹「………見た……よね……」

妹(……これで……少しでも、不審に思ってくれれば……いいんだよね……)

妹(それで、私の事……離したくなくて……ちゃんと、私の事……見てくれるんだ……)

妹(……………ごめんね………)

妹(でも……兄を……誰にも渡さないためにも………絶対……)

妹(もともと……兄が先に……)

妹「…………」

妹(………本当に……兄は…………私以外の人……気になったり……したの……?)

妹「……………………」

妹(……今までの事……思い出してみても…………そんな事……しないはず……なのに……)

妹(…………………でも、大丈夫……)

妹(………これで………なんとか……なる……)




兄「……………」ギシ

兄「…………」

兄「…あ、やべ……風呂はいらねーと……」フラ

兄「…………」

兄(放心状態、とでも言えばいいのか……?全然身体に力が入らねー……)

兄(もうどうしたらいいんだよ……)

兄(ちらっと見ただけだったが、妹よりもいくつか上の男……)

兄(見間違いじゃあない。あれは妹と………知らない男……)

兄(いかつい男とかじゃあなく、優しそうで細めの男)

兄(あれだったらたしかに妹の警戒心を掻い潜って、近くに来れる……)

兄「…………」

『兄さんが、そこに留まっているのであれば……私は全力で兄さんが動くように行動します』

『待つ時間があるのなら、私はその時間の間に兄さんを手に入れてみせます!その相手から!!』

兄「………」

兄「…俺は……妹の選択を…待ってやらなきゃあいけねー……」

兄(そん時は……そん時だろうが……俺……)

兄(……妹の事は、妹が決めるんだ……。いつまでも、大人の俺が固執してちゃあ、笑いもんだよな)

兄(ちゃんと、妹が幸せになれるように。いつまでも、傍で見守ってやるのが、俺の生きる意味だ……)

兄(……妹が幸せなら、それでも……いいか。いいよな。いいんだよな……?)

兄「………」

兄「……………」


____________________

兄「……」カタカタ

兄「……………」

兄(もうこんな時間か………)

兄(しっかし……今帰っても……妹と気まずい時間を過ごすだけか……)

兄(何より、妹の顔を見ると、昨日の写真の男の顔を思い出して……気が気じゃなくなりそうになる)

兄(……帰っても無視もいいとこで、電話で連絡取り合ってる妹を見るだけでも、吐き気がする)

兄(あー……どうしたもんかねー……)カチャ

兄「…………」

兄(もう少し、残って仕事してくかな……上に聞いて、仕事回してもらおう……)ギシ




上司「え?仕事?いやーあるにはあるんだけど……結構遅くなるよ?兄君早く上がらないとマズいんじゃなかったっけ?」

兄「……いえ、問題無いです」

上司「んー、まぁ、助かるからこっちは嬉しいんだけどね。じゃあ、ハイ、これ」ドサ

兄「ありがとうございます」

上司「じゃあ任せたよ」

兄「はい」

兄(……そうだ、早く帰らなくてもいい……妹の傍には、もう別の人間が立ってる)

兄(俺が、浅い考えで間違いを……いや……間違いなんて犯さなくても、いつか他の誰かが、妹の傍にいたんだろうな)

兄(俺は、必要のない人間だからな……うん。分かってたろ)ギシ

兄(妹と会う前から、ずっとそう過ごしてきたんだろーが)ペラ

兄(ただただ灰色で、まったく先もない、道とも言えないような場所をウロウロして、いつかそのまま静かに消えていく)

兄(ひたすらに無関心で、適当)カタカタカタ

兄(……まぁ、でも……妹と会っちまったんだ……保護者として、しっかりとお金は残してやらねーとマズいな)

兄(妹が何一つ不自由しないように、不満が無いように……俺はただの機械になる)カタカタ

兄(考えるな)

兄(考えると、何とも言えねー不安感や恐怖、俺にとっての絶望が顔を出すだけだ……)

『――――――――――』

兄(ほらみろ、余計な事は考えるな)

兄「………」カタカタカタ

『アンタなんか―――――――』

兄「……………」カタカタカタカタ

兄(もう何も考えるな……その事は、俺の中で終わった事だろ……)カタカタ

兄「………」

『アンタなんか、必要なかった』

兄「」カチャン




妹「…………」ポツン

妹(……兄……まだ…帰って、こない……)

兄(……結構遅くなったな……)

兄(まー、仕方がない事だし……いいか)

兄「………」ガチャ

兄「…………」

妹「……………」

兄「ただいま、妹」

妹「………どこ……行ってたの……?」

兄「どこも何も、会社だよ。仕事してた」

妹「……でも……いつも…もっと早く……」

兄「忙しかったんだよ。ほら、お前もこんな時間まで起きてると明日が辛いぞー」

妹「………………」

兄(………まともに、顔が見れねー)

兄(多分、今妹の顔見たらいろいろと耐えきれねー気がする)

妹「………」

妹(……しまった……心配して……いつもみたいに……話しちゃってた……)

妹(…………でも……なんでだろ……いつもみたいな、はずなのに………)

妹(兄が……遠く…感じる……)

兄「…………寝ろよ、もう」

妹「………………」ジワ

妹「っ……」トタトタ

ガチャ バタン

兄「………」

兄(行ったか…)

兄(これで変に気を遣わずに済むな……近くにいねーから、ちょっと楽かもしれねー)

兄(明日は、ちょっと早く出るか……妹が起きる前に、身支度して……コンビニで飯は済ませればいいしな)

兄(大丈夫だ。俺が、傍にいてやる必要はない。むしろ俺が、いつまでも縛ってちゃあいけねーんだ)

兄「…………」

兄(俺のだけの、妹だって……そう思ってたんすけどねー……)

兄(俺だけの………)

兄(ああ、またいろいろと考えちまう………)ブンブン

兄「……………」ズキンズキン

兄「………っ……はぁ……」

兄「…あ…やべ……」ヨロ




兄「…………」

兄(……帰りに食ったもん全部出ちまったじゃあねーか、ちくしょう)

兄(だいたい、乗り越えてメンタルは強くなってんだ。いつまでもタラタラやってる場合じゃあない)

兄(妹には、俺がいなくても大丈夫なんだ……だったら妹がいなくても、俺は大丈夫だろ?)

兄「………………」

兄(部屋……こんなに何もなかったっけ……)

妹「………ふあ……」

妹「…………」クシクシ

妹(……あんまり……寝れなかった………)

妹(…昨日……兄……仕事だけ、だったみたいだけど……)

妹「………」トタトタ

妹(……兄起こして……朝ご飯……食べなきゃ……)

カチャ

妹「……兄……朝、だよー……」

妹「………?」

妹「………兄…?…」トタトタ

妹「………いない……」

妹(……なんで……どう……して………?)

妹「………」タタタ

妹(………靴も……服も……ない……)

妹(…………早く……会社に…行く日、だったのかな……)

妹(……準備……してあげれば…よかった……)シュン

妹(……おかしい…な……もっと、もっと……遠い感じ……)

妹「………」

妹(…学校…準備……して行かなきゃ……)トタトタ

妹「………」

妹「………え……?……」

妹(……昨日の……お夕飯……兄のだ……)

妹(……食べなかった…………)

妹(……私の……ご飯……食べてくれなかった……


妹「…………」ジワ

妹「……あれ……?」

妹(…………なんで……ご飯………食べなかった……だけで…………)

妹(……別に……悲しくなるような……事でも……)グシグシ

妹「……ふぇ………」

妹「………」ブンブン

妹「………なん……でぇ………」

妹「……………」ポロポロ

妹「……………………」




友「妹ー!迎えにきたよー」ピンポーン

友「………」

友「………?」

友(あり?いっつも呼んだら出てくるのに……寝坊かにゃーん?)ガチャ

妹「………友ぉ……」グスグス

友「わ、っわ!!どうしたんだよー!!」ワタワタ

友「………」

妹「………」グス

友(まさかこんなに効果覿面だったとは……いや、悪い方向にね。まったく逆の方向だよ)

友「はー……とりあえず、分かったから。準備しなよー」

妹「………」コク

友(ボクは何もアドバイスとかしない方がいいねー、こりゃ……馬鹿な事しちゃったんだもん。ちょっと痛い目見なきゃ)

友(まー……原因は唆したボクのおねーちゃんにあるんだけどー……学校終わったらお仕置きだなー)

妹「………」

友「赤く腫れちゃってるね、目。もうちょっと時間あるから冷やしてきなよ、待ってるから」

妹「…………」コク

友(うーん、おにーさんはちょっと考え過ぎちゃう節があるからなー……大方、自分以外に好きな人が出来たから、手を引こうなんて考えてるんだろうな)

友(妹も妹だよ。あんだけイチャラブしてたのになんでおにーさんの事信じてあげられないかなー)

友(おにーさんも誤解を生むような事しない!!馬鹿なんだから!!)

友(あーもー!!この兄妹見てるとむしゃくしゃするー!!)

妹「…………準備……できた……」

友「はいはーい。行くよ行くよー!」グイグイ

妹「…………」トボトボ

友「まだ続けるのー?」

妹「…………」

友「そーんなに辛いなら、やめちゃえばいいのに」

妹「……だって………まだ、私の事…………見てない、もん……」

友(見てるが故の反応してるんだよ……)

妹「……それに……昨日も、遅く帰ってきて……全然………反省してない……」ジワ

友「あーあー、ほらまた泣いたー」

妹「…泣いて……ない……兄が………悪いもん…………」

友(さらに意固地になっちゃってるねー……ダメだ、妹頑固だしー)

妹「…………もっと……何か、見せたりしなきゃ……ダメかな……」

友(懲りてないしー)

友「はー……ボクはこの件に関しては干渉無しでお願いしまーす。アドバイスならおねーちゃんから聞きなさい」

妹「………友………冷たい……」

友「ボクは元々冷たいんだよ。そりゃあ困ってるみたいだから何かしてあげたいけどさー、ボクはこういうの、慣れてないし」

妹「……いじわる………」ムス

友「ま、これ以上やって後悔しないようにね。忠告はしたよー」

妹「………」

友2「あ、二人ともおはよー」

友「おーっす小動物」

友2「小動物じゃないし……」

妹「………おはよ」

友2「あ……ね、ね、友ちゃん……これ、失敗してるよね?」コソ

友「まーね。ボクは無干渉を貫き通すよー」コソコソ

兄「…………」

男「兄~元気してるかー!よっと」

兄「ええ、元気ですよ」カタカタ

男「ふんふん、感心感心。ちょっと聞いてくれよー」

兄「今聞かなきゃあいけないですか?」カタカタ

男「俺聞いてもらえなきゃ死んじゃう……」

兄「そうですか、大変ですね」カタカタカタ

男「んじゃあまずー……」

兄「…………」カタカタカタ

男「…………なー、聞いてくれねーの?」

兄「すみません、そのままお願いします」カタカタカタ

男「こっちって、そんな忙しい仕事回ってきたっけ?」

兄「回ってこないですよ。自分で拾ってきました」

男「兄よー、お前早く家に帰らなきゃあいけねーからこっち来たんじゃあなかったのか?」

兄「そう、ですね……」カタカタ

男「本末転倒じゃあねーか。そんなんだったら戻ってこいよ。眼鏡にも口聞いてやるからよ」

兄「戻る………それもいいかもしれないですね」

男「あー……悩み事か?今日飲みに行くか?」

兄「………いえ、これ…遅くなるので遠慮させていただきます」

男「そっか……なんか悪かったな。でも!いつまでもウジウジしてちゃあ困るかんな!元気出せよ!」スタスタ

兄「………元気…か」

兄「…………」カタカタ

新人「………あの……」

兄「……どうした?」カタカタ

新人「こちらの書類を……」

兄「ん」

新人「……兄さん、顔色、悪いですよ?」

兄「関係ねーだろ。社会人の体調は自己管理だ。特に問題はないからどうでもいい」カタカタ

新人「で、でも……」

兄「くっちゃべる暇があったら仕事しろ」

新人「……無理……しないでください。私心配です」

兄「はいはい、ありがとな」カタカタ

新人「………」トボトボ

兄「……………」

兄(これだけ干渉しないように仕事してれば、特に面倒な事もなくなるだろ)

兄(変わったンじゃあない。元に戻っただけだ。以前のような感じに)

兄(自分を守れるように、他人から傷付けられないように……考えずに過ごせるように……)

兄(……たかが人一人、いなくなったぐらいで俺も質悪いな……皆さんすみません)

兄(帰って、寝て、起きて、仕事して……妹……何してんだろ・……)

兄(……………何考えてんだ……妹の事は考えなくていいじゃあねーか。クソ)イライラ

友姉「ふんふん……ふへ……ふーん」

妹「…………」

友姉「あ、新しい作戦ねぇ……うんうん、あるよー、ありますよー」

友「ダメだこりゃ……」

友姉「えー……で?これの最終目標って-……んふ……何になるのかな?かなかな?」

妹「…最終……目標……?」

友姉「つ、つまるところ……お兄さんにどうしてもらったら勝ちなのかって事ですぅ」

友(そもそも勝負じゃないでしょー……)

妹「…………」

妹「……私は……兄から……私の存在を……求められれば……それで……」

友「………」

友姉「ほっほーん……ぬひひ……そしたらいい方法があるよぉー」

友「いい加減にしなよ」

友姉「………んふ?邪魔するのん?」

妹「………」

友「妹、アンタおにーさんから求められればって言うけどさ、そもそもそんな関係だったの?」

妹「………?…」

友「ずっと一緒にいるから、求める必要なんてなかったはずでしょ?」

妹「……そんなの……」

友「おにーさんが何を求めてるか分からない?他の女がちょっとちょっかいかけただけで?」

妹「……だって………」

友「いつまでも言いわけしてると、いくら妹でもボク怒るよ。………ってかー、怒ってる!!」

友姉「…あ、あの……水を差されると、ウチのアイデアが……」

友「おねーちゃんは黙ってて!」

友姉「うひ……叱られちった……いいもんいいもん……ウチの友達は布団とゲームだけだよ……」

友「……求めてるもの、分からない?」

妹「………分から…ないよ」

友「ダメだよー、そんなんじゃあ、ね」

妹「…………」

友「教えてあげないと、妹はどんどん踏み外しそうだけど、ボクからは言わない」

友「でも正直、これ以上変な事をした所でお互い苦しいだけだよ」

妹「…………じゃあ……じゃあ、私は……どうやって、兄を……」

友「ずっと傍に居過ぎたのかもねー。だから見えなくなっちゃうんだよ」

友姉「て、テレビとか……目、悪くなりますもんね……うひひ」

友「………おねーちゃんは後でお仕置き」

友姉「ひんっ」

妹「…………」

友「はー……ヒントだけあげるよ。今までどんな風に過ごしてきたのさ?」

妹「……………………」

友「全部理解したら、ちゃんと仲直りしなよー。大体ボクが付け入る隙はないのに手助けしないとダメってどういう事だよ……もー」

妹「…………」

妹(どんな風に……過ごしてきたか…か……)

妹(……ただ……ずっと……一緒にいた……)

妹(…部屋の、隅で……出かけた先で……寝る時も……あった……)

妹(でも……それだけ……一緒にいただけで……兄がどこ見てるとか……何を目指してるのか……)

妹(……全然……知らなかった……)

妹(……だって…私はただ……そのまま、兄が幸せだったら………それでいいって……)

妹「…………」

妹「………………幸せ……」

妹(………あ……)

妹(………………なんだ………)

妹(………最初から……そうだった)

ガチャ

兄「…………」

妹「………」トタトタ

兄「ただいま」

妹「………うん……おかえり……なさい……」

兄「…………時間、おせーから早く寝とけよ」ス

妹「……………待って……」キュ

兄「なんすか?」

妹「……話したい事……ある……」

兄「…………聞きたくない」

妹「ダメ……聞かなきゃ………お願い……」ダキ

兄「……離れろ」バッ

妹「……え……」

兄「いいか?聞きたくないって言ってんだ。お前も、俺に愛想つかしたならよー……そんな風に接するのは、やめろ」

兄「全部、全部全部俺が悪いんだ。俺みたいな人間が期待するだけ間違ってたんだ」

妹「……何…言ってるの…?……」

兄「原因は俺かもしれねーけど、お前の口から、他の男の話なんて聞きたくない」

妹「……あっ……や……違う…の…」

兄「気づかねーと思ったか?気づいちまうよな。ずっと妹の事、見てたんだからよ」

妹「あれは……嘘で……」

兄「………嘘だったら、どれだけよかったんだろうな」

妹「……友姉さん……から、作ってもらった……写真なんだよ……」

兄「妹の姿でそれ以上喋んじゃあねえ!!!」

妹「っ」ビク

兄「これ以上期待とか、こうだったらいいな、とかいう希望はちらつかせないでくれ」

妹「……私……妹………だよ……?」ジワ

兄「………そう、元々一人だったんだ……もう、何もいらない。聞きたくないし、見たくもない」

妹「………兄!」ダキ

兄「離せよ……」

妹「……や……」

兄「なんなんだよ、もう……やめてくれ」

妹「私は……兄に…謝らなきゃ……いけない」

兄「………」

妹「……ずっと…ずっと傍に居て……忘れてたの……」

妹「…兄と、過ごして……一緒に居て……それだけが、私の幸せだった……」

妹「……他に、何もいらなかったのに……もう、持ってたものなのに……」

妹「兄に……求めちゃったの……」

妹「浮気だとか……そんなんじゃ、なかったのに……責めちゃって……」

妹「………仕返しに……写真、作って……兄に見せれば……もっと、私を見てくれると……思って……」

妹「………こんな事して……ごめん、ね……」

妹「………ごめん、なさい……」

兄「………………」

妹「………兄…」ス

兄「――――――――――――――」バッ

妹「きゃっ……」ドサ

兄「やめろ、もう、聞きたくない。期待すんのは、嫌なんだ」

兄「もう、俺から離れていくのは嫌だ」

兄(また期待して、いつものような平和で、のんびりした生活を壊されるのは……もうゴメンだ)

兄(妹の隣を俺じゃあない誰かが歩いてるなんて、考えたくもない)

兄(目の前の希望を全部壊して攫っていく悪魔が……ずっと俺に向かって薄ら笑いをしてる)

兄(いつもだったら………信じられる妹の顔も……仕草も……あったかさも)

兄(これは、俺の見てる夢だ)

『アンタなんて、必要なかった』

兄(こうだったらいいな、とか……そうやって夢見るだけで……目が覚めたらそこは地獄)

兄(ああ、これが本当の事だったら………俺は救われるのに……何でいつもいつも夢なんだろうか)

妹「……もう、離れるつもり…なんて…ない……よ…」

兄「はぁ…はっ……うぐ………うぷ…………」

妹「……兄!?」

兄「…寄んな!!!」

妹「っ」

兄「………………………」ヨロ

妹「………」

兄「……………」ガチャ 

バタン

妹「…………」

妹「…………………」ペタ

妹「…………兄………壊れ……ちゃった………」

妹「………………」

妹(……どうすれば……いいんだろ……)

妹(……謝っても……きっと………)

妹「…………」

妹(………私も……兄が…謝ってくれた時……何も、聞かなかった………)

妹(……何も、信じられなくなって……自分が……嫌になって………)

妹(どうしよう……)

妹「………」トタトタ

妹(………靴……ない………ヘルメットも……玄関に置いてない………)

妹「……どこ………いっちゃったの………?」





妹「…………」

妹(………四時………)

妹(………まだ………帰って来ない……)

妹(そう……だよね………信じてた人に………)

妹(…ううん………全部…信じられる人に……裏切られたら……辛いもんね……)

妹(…………ちゃんと……待とう……)

妹(帰ってきた時に……ひとりぼっちは……寂しい……)

妹(……私も……兄も……寂しい……)

妹「……………」

妹「……」

妹「………………」ウト




ユサユサ

妹「………ん……」

「おーい」ユサユサ

妹「……んん……?」

友「妹?何玄関で寝てるんだよー。風邪引くぞー?」

妹「……朝…………」

妹「……あ……兄は……!?」

友「おにーさん?……いないの?」

妹「…………」タタタ

友「……………………」

妹「………帰ってきて……ない……」

友「……」スタスタ

妹「…………」

友「なにかあったんだね?」

妹「…………」

兄「…………」

兄(……とりあえず、会社の近くのネカフェで風呂は済ませた)

兄(会社は休むわけにはいかない……でも妹が心配だ)

兄(昨日、帰って……妹がいて……急に怖くなって……)

兄(逃げ出した。妹の目の前から)

兄(どうしても我慢出来ない感情が溢れ出して、遠ざけないと、俺の頭の中がグチャグチャにされそうで……)

兄(冷たく当たっちまった……一番、愛してるはずなのに)

兄(俺の頭の中にいる妹は、優しく微笑んでる感じなのに……昨日、俺の目の前に現れた妹は………)

兄(本物だったんだろうかって、疑いたくなる)

兄(怖かった。アイツと同じ目をして、簡単に俺をズタズタにしそうな、そんな目に見えた)

兄(そんなはずねーはずなのに……他の男に現を抜かしてる妹が、全部全部偽りに見えた)

兄「………………」

兄(俺の生きる意味だった妹がいなくなって……俺はどうしたいんだ)

兄(このまま一人きりで、以前のように何もない所に怯え続ける毎日を過ごすのか……)

兄(俺と、妹の繋がりが、金だけになるのに……こんなに恐怖しなきゃあいけないなんて)

兄(……………そろそろ、終わりかもしれない)

兄(かもしれない、じゃあないか。終わり、か)

兄「………ふふ」

兄(どこからが現実で、どこからが夢なんだろうか)

兄(もしかして俺は今もアイツにボコボコにされてて、現実逃避してるだけの、偽りの世界なのかもしれない)

兄(俺は、妹がいるだけで、強くなれたし、強くあれた)

兄(でももう……ダメだ)

兄(そうだよな。こんなに弱い人間に、いつまでも妹が寄り添ってくれるなんて、甘かったんだ)

兄(俺以外にも、妹の事を幸せに出来るヤツは……)ズキン

兄「……………」

兄(まだ早えーけど、会社行くか)

兄(もう、帰る場所も無い)

兄(……苦しいだけで、切り捨てようと考えてるのに…ホント、甘い)

兄(妹が、心配で心配でたまらない)

兄「………………」

兄(ああ、無性に叫びたい。誰よりも、誰よりも愛していた人間をこうまで簡単に奪われるこの心のモヤモヤを一気に晴らすように)

兄(ただひたすらに叫びたい)

兄「……頭、痛ぇな………」

兄(なんでこんなにフラフラしちまうんだ……クソ、考えてもどうしようもない)

兄(とりあえず、会社だ。ちょっとツーリングがてらにバイク飛ばして、少しでもスッキリして、仕事に集中しよう)

兄「…………」ゴソ

兄(適当に、宛てもなく走るのは久々だな)

兄(スピードも抑えてたし、遠出もたかが知れてたからな。退屈してんだろ、コイツも)

兄(走ってる時みたいに、景色が全部溶けて、後ろにすっ飛んでいって、全部消えちまえばいいのに)カシ クウィン

兄(……正直、傍に妹がいない人生なんて、どうしようもねーよ)ブルン 

妹「…………全部、話したけど……もう、伝わら…なかった……」

友「……………」

友(遅かったかー……あんまし変な事はするなって、止めておくべきだった)

友(二人とも、病気かと思うぐらいお互いに異常なぐらい依存してたしー……)

友(重たくなった信頼に、つなぎ目が耐えきれなくなってたんだろうな……それが今回の小さな傷で……)

友(とうとうプチン、と途切れちゃった、と……)

妹「………この、ままだったら……私……私……もう……」

友「うーん……今日学校休むのもいいかもだけど、多分一人だと考えすぎちゃうよ、妹」

妹「………」

友「別に誰かと話すなんてしなくていいからさ、少しでも不安が吐き出せるように、ね?」

妹「……………」

友「おにーさんも、今日はそのまま仕事行っちゃったんだよ。夜には帰ってくるって」

妹「…………うん……」

友「今回の事は、ボクも悪いと思ってるよ」

妹「……なん…で…?友は……悪く…ない……」

友「いーや、おにーさんが浮気したーとかで、ボクも何かしてやろうと考えちゃってたし、おねーちゃんが余計な事しなければ良かったんだよー」

妹「………」

友「……全部、ちょっと勘違いしてただけなんだよ。二人とも」

妹「…………」

友「おにーさんは社会人で、付き合いとかもある。妹は学校で、嫌でも他人とふれあう場面が出てくる」

友「ちょっと遠くにいすぎたんだよ、二人とも。心の距離はこれでもかーってぐらい、近いのに」

妹「…………ごめん…ね……」

友「なーに謝ってんだよー。じきに元通りになるよ」

妹「…………」

友「二人とも帰る場所は、お互いの所だし…家出しちゃっても、自分の家は変わらずそこにあるんだぜっ」ポン

妹「…………うん」

友「ほらほらー!マズいよー!遅刻しちゃうよー!」アセアセ

妹「…………」コク

友「………」フ-

友(…これは、おねーちゃんにも落とし前つかせないと、どうしようもないねー)

友(別におにーさんがいなくても、ボクが妹を守ればいい話だけどー……)

友(おにーさん以上に、妹の事想ってる人間なんていないだろうし、敵いません!)

友(しかも、おにーさん以上に妹の扱いが上手くなれる自信もありませーん。だから早く帰ってきてよー)

妹「………………」

妹「………今度は……信じて……待つ、から」

友「……そうだね」

妹「……………」グス

友(すぐ泣いちゃったらちょっと説得力に欠けるなぁ……)

兄「………」カタカタカタ

兄(色々と、引きずったまま来ちまったな)

兄(もう、考えられるだけ妹の事は考えた。でももうどうしようもできない)

男「おうコラ、兄」

兄「…………」カタカタカタカタ

男「まぁそのままでもいいや。お前よー……新人ちゃんの事、断ったんだって?」

兄(なんでいちいちそういう事を周りの人間に広めたがるんすかね……俺には理解できねー)

兄「ええ、まぁ」

男「男だろ!何チャンス逃してんだよ!!」

兄「いや、別に興味なかったんで」

兄(何がチャンスだ……あれこれ俺のある事ない事勝手に広めやがって……)

男「くー!!俺だったら喜んで飛び込んでく所を……」

兄「女さんに怒られますよ」

男「……まぁ、それは……それだ!!お前も一人の女に固執してねーで、色々勉強するべきなんだよ」

兄(何能天気な事言ってんだ……勉強?そんなもん妹さえいれば必要なかったんだよ)

男「ズルズルズルズルしやがって……待ってばかりじゃあどうしようもねーぞ」

兄(……確かに……待った結果がコレですよ)

兄「いや、俺のスタンスは…これなんで」

男「けっ」

兄「相手が幸せだと、思ってくれる道を選んでくれるのが……一番いいんです」

男「そこだ!」

兄「…………」

男「いいか、男っつーもんはな!幸せを願う立場じゃあない!!」

男「そう!男とは!!愛する人間のため自分のため全てのために、幸せをもぎ取ってくるもんなんだよ」

兄「……はぁ」

男「まだ分かってねー顔してんな。木の実は落ちてるもん拾うだけじゃあ足りねーんだよ」

男「全員が全員、まず落ちてる木の実を拾う。そしたら地面には何も残らねー。一つ残らずだ」

男「だがな、木の実がそこに落ちてるっつー事は、その木の実のなってる木がそこにあるんだよ」

兄「…………」

男「じゃあ落ちてくるまで待てばいいんだね、うーふーふーふー……なんて悠長に待ってたら熟しすぎて食えねーか鳥が取ってっちまう」

男「足りねー分はもぎ取らなきゃあどうしようもない」

兄「…………」

男「木の下で待ち続けてるお前は馬鹿だ!この俺様よりっ!!」

兄「………はぁ」

男「幸せを選ばせるんじゃあねーんだ、男は。男は女を幸せにさせるもんだ」

男「誰か他のじゃあない!!他の誰よりも自分だ!自分以上にそれが出来る男はいねーんだ!!」

男「だからよー、一人の女断ったんだ。いつまでもくすぶってちゃあ意味ねーぞ、その理由の女絶対に勝ち取らんかい……男なら一本気通せい!」

兄「……………」カタカタカタカタ

男「聞っいっとっけっよ!!!」ガー!!!

兄(聞いてましたよ………一応ね。ただ、誰かの方に行っちまった妹を引き止める力なんて、俺にはないんすよ)

兄(俺の見ている先と、妹の見ている先は違う)

兄(どんなに心が通っていても、こればっかりはどうしようもない)

兄「……」カタカタカタカタ

兄(さっき、男さんが言ったように……幸せにするのは俺だと思ってた)

兄(誰よりも、俺が妹の事を幸せに出来るもんだと、そう思ってた)

兄(誰かの方に、行ってしまった妹を取り戻せるのか?)

兄(俺に見せた事の無い、別の顔を他の誰かに見せてるのを考えるだけでも、やっぱりしんどい)

兄(………俺にも、ちゃんとみせてくれるんだろうか)

兄(取り戻せるのか、不安しかない)

兄(俺だけ……俺だけの、俺だけの…………)

兄(俺だけしか、知らない)

兄(妹の全部は、俺だけしか知らない)

兄(それなのに、俺以外の誰かに取られるなんて、そんな馬鹿な事があってたまるかっての……)

兄(だけど、俺はどうしようもないぐらいに、弱い)

兄(妹の事を引き寄せる力なんてない。何をどうしても、出来ない。出来るわけがない)

兄「……………」ギシ

兄(自信が無いのは、生きてきた中身が薄っぺらだからだ)

兄(何も考えないように、何もしないように、誰の気にも触れないように)

兄(そうやって、何年か生きてきた)

兄(そんな俺に中身をくれたのが、妹だ)

兄(妹がいれば俺は色々考えたし、何かしてやれる事はしたし、気を向けておこうと、どこか必死になってた)

兄「…………」フラ

兄「………こんなところで……」

兄(こんなところで、妹をなくすなんて、絶対に嫌だ)

兄(また、一緒に、ゆっくりとした時間を過ごす)

兄(他の誰かじゃあない。たとえ、他の男の方が幸せに出来る可能性があるとしても)

兄(俺の方が、妹の事を想ってる)

兄(今、妹をみたら、感情が爆発して、耐えきれないかもしれない)

兄(他の誰かの影に、どうしようもないくらい気分が悪くなるかもしれない)

兄(だが、それ以上に妹の傍にいたい。それでも妹の傍にいたい)

兄(アイツの影なんて、俺を捨てるアイツの影なんて、妹さえいれば、怖くない)

兄「…………」

兄(帰って、ちゃんと話そう)

兄(これ以上、下がる事はない)

兄(他の誰かに汚されたとかじゃあない。ちゃんと、妹は妹だ)

兄(変わる事はない。取り戻す)

兄「…………」

兄(何も、いらないからどうか、妹だけは……)

妹「………」

友「随分と遅くなっちゃったねー」

妹「………」コク

友「ま、それもこれも、おねーちゃんが悪いんだけどね」

友姉「な、なんでウチが……そそそそ外に出るなんて、もう、我慢出来ません、帰るぅ……」

友「させないよ。ちゃんと謝らせるんだから」

友姉「む、無実だ……ウチ何も悪い事してないもん……」

妹「………」

友「大丈夫だよ、今日はちゃんとおにーさんも帰ってくるよ。そこでちゃんと話せば、元通りになるよ」

妹「……戻れる、のかな……」

友「お互いそんな柔な関係じゃあないんでしょ?全部全部、乗り越えてきたんじゃないかー」

妹「…………」

友姉「んふ……乗り越える……ウチもこの包囲網を乗り越える力、あるかな…ふひ」

友「……逃げたら、分かってるよね」

友姉「………ここ、拘束プレイ……」ゾクゾク

友「するかバカー!!!」

妹「…………」

友姉「んふふ……んん?」

友「?…なんだろ」

友姉「あー、ウチ、あっち行きたくないです」

友「なんでよ?」

友姉「う、ウチの天敵……国家の犬がいる……酷いんだ…自転車に乗ってただけで捕まえにくるんだ……」

友「みてくれ怪しいからでしょ、絶対」

妹「…………」

友「まー、どうあれこっち通らなきゃ妹の家いけないしー……行くよー」ギュム

友姉「ふぎゃああああ……帰る、帰ります……ウチの五感がアッチに行くなと囁いてるのぉおおおお……」ズルズル

妹「………」

友「……うっへー……何あれ」

妹(………事故……かな……トラックの……前の部分がひしゃげてる……)

友姉「ああ、みてる……国家の犬がウチをみてる……捕まえられてあんなことやこんなこと……あふ…」

ザワザワ

妹「…………」

友「うわー、恐ろしい……野次馬も野次馬だねー……事故った現場写真撮影なんて、気が狂ってる」

妹「……………」ドクン

友「……妹?」

妹「…………」ドクン ドクン

友姉「み、道の端に寄せられた残骸……おうふ……酷いのん」

妹「……………」

友「ちょっと妹、大丈夫?」

友姉「……んひ、レアもの発見、血濡れの鞄……パシャパシャー……じゃねえよ野次馬。んなもん撮っても碌なことねーのによぉ、ああ!?……なんて、ふひ……」

妹「…………」

友姉「んふ……ふひひひ……うぷ…ちょっとウチあっち行ってる」

友「なっさけないなー。とりあえず帰ろ帰ろー」ガシ

友姉「…ふみ”ぁああああああ!!!!」ジタバタ

友「逃がすかアホンだらー」

妹「………」フラフラ

友「ちょ、あっ、妹?」

警察1「…ええ、トラックの運転手は……ええ、ハイ」

妹「………ねぇ」

警察2「おっと、キミ?ココは危ないから離れてねー」

警察1「言ってる事も支離滅裂で、事故当時の事もはっきり分からないので……」

妹「……誰……誰が………」

警察1「……ちょっと頼む」

警察2「はい。……ささ、キミ、こっちきなさい」

友「妹!!」

警察2「あ、お友達?困るなぁ、色々とこっちも仕事だから……」

妹「…………」ガッ

警察2「っぐ!?は?え?」

友「なな!何やってんだよー!?」

妹「誰だ!!答えろ!!!」

警察2「ぎょ、業務しっ……」

友「あーあーあー!すみませんっすみませんっ!!」

妹「離して!!……誰!!……誰が!」

警察2「さ、三十代のトラック運転手の男性と、二十代の会社員だよ、それ以上は教えられない!」

妹「…………………」クタ

友「あ、あははー……本当にすみません」ズルズル

警察2「っく、今回は目を瞑るけど、本当はこんな事しちゃあいけないよ?全く……」

警察1「ふふ……」

警察2「何笑ってるんですか……」

友「……ふー……」

妹「…………」

友「もー、どうしたんだよー……さっきから……」

友姉「い、いいぞー…もっと国家の犬の尻尾を踏んでやるのだ……ぬひひひっひひひ」

友「……」ギロ

友姉「………ウチなんにも言ってないおー」

妹「………私……にへへ……友……」

友「?」

妹「私……やっぱり……ダメな子…だ……いらない子……だ」

妹「……兄に……負担ばかりで……謝れないまま……何もできないまま………」

友「何言ってるんだよ……ほら、立って。帰ろ?」

妹「………帰る……よ……ちゃんと、兄の所に……」

友「ん、それでよーし。ほらほら、ただでさえ遅いだからおにーさんも心配してるよ」

妹「そう……だね……待たせちゃ……ダメ、だよね」

友「……」ゾクリ

友(うっひー、なんかゾワッときた。事故現場とか変なとこにいたからかなー……)

友姉「しゅっしゅ!国家の犬めっウチの拳をいつかかましてやるかんな!」シュッシュッ

妹「………」パ

友「?……どしたー?」

妹「……友……いままで……ありがと……」

友「はい?」

妹「…私………兄の所……行かなきゃ」

友「いやいや、だから帰るって……」

妹「うん……だから……さよなら…だね……」

友「……ん?え?」

妹「……」ダッ

友「っ!?妹!!そっちは――――――」

妹(あの……黒いバイクは……兄のだ……)

妹(私が……変な事しなければ……帰ってくるのも、遅く…ならなかったはず………)

妹(……私が……兄を、苦しめなければ………こんな事には、ならなかった…)

妹(だから、せめて……兄と同じように……)

妹(兄の、いない世界なんて……どうでも、いいよね)

妹(今……そっちに、行くから………)

妹(なんで……こうなっちゃったのかな………信じられなかった……私が、悪いの……?)

妹(せっかく……元に戻って……また、家で、ゆっくり寄り添えるだけで………私は……幸せだったのに…)

友「妹!!!!!」

妹(友……ごめんね……私、こんな子だ………)

妹(ずっと……守ってくれたね……でも、もういいよ……)

妹(……こんなに……醜い私……なんて……)

妹(ああ……車のヘッドライト……眩しいな………)

妹(……今度こそ……これから……ずっと、一緒だよ……兄…)

ズドォッ

妹(…………ごめんね……)





(今までの事を、私はゆっくり思い出していく)

(全部が溶けるように、私の中が過去に沈んでいく)

(二人して、泣いてた)

(ちっぽけで……強がってばかりの……弱い二人で……)

(二人なら何でもできて、二人なら生きていけた……寄り添って、弱い所を隠し合って……足りない所を……補って…)

(……次………)

妹「…………」

妹「……………ん……」

妹「………」

妹「…………ここ………」

妹(薬品の……匂い……病院………)

妹「………ああ……」

妹(…私………失敗したんだ………)

妹「………」ムク

妹(………あんまり……身体……痛くない……)

妹(……どうして……こんな時だけ………)

妹「………」ス カラカラカラ

妹(………………四階……ここからだったら………)

ガラガラ

友「妹ー!!」タタタ

妹「………」

友「もー、心配掛けさせやがってこのー」ダキ

友姉「……ふひ…派手に…飛んだ……あの輝かしいアーチ、ウチ忘れません」

友「あー…あー……うん。……それについては、どうしようもなかったからね……うん、不可抗力不可抗力……ゴメン!」

妹「………」

友「……それと…さよならなんて言うなよな……ホントに怖かったぞ、バカ」

妹「……………うん……心配かけて……ゴメン……」

友姉「はぁ、はぁ……いい空気……んっすぅうううううううううぅうぅ……」

妹「………ただ……ちょっと……一人にして欲しい……」

友「さっきもさっきだけど、急にどうしたの?」

妹「………ゴメンね………お願い……」

友「…………」

友姉「そ、それじゃウチ……ちょっとコーラ買ってくるー……ぬふ……ほなねー」ガラガラ

友「はー……僕もジュース買いに行ってくるよ。ちょっと打撲酷いかもしれないから、ちゃんと寝とくんだよー」テクテク

妹「…………」

妹「……………………」

妹(……兄……)

妹(なんで………いなくなってから……一人で、騒いで……あんな事…しちゃった、のかな……)

妹(……都合のいい……醜い……兄の大嫌いな……人間………)

妹(…こんな風に……なっちゃうなんて……私……最低だ……)

妹(ちょっと背伸びして……兄と、同じ所に……立ちたかった……)

妹(…兄に……私は………何を求めてたんだろ…………)

妹(余計な事……しなければ……兄は………)

ガラガラ

兄「おー、ドあほ。目ー覚ましたか」

妹「」

妹「………」パクパク

兄「なんすか」

妹「……なんで……ここに……」

兄「…まー…確かに、いちゃあいけねーのかもしれねーな」

兄(他の男と、もう進み始めてる妹の目の前に来ていいとは思わねーし……何より……俺はまだ妹の姿を視界に入れることが出来ない)

兄(多分……まだ、耐えきれない……それでも、やっぱり心配だったし……まだ妹と一緒にいたい、俺がいる)

妹「……だ、だって……事故で……」

兄「あ?事故だと?ゴールド免許だぞ舐めんなコラ」

妹「………でも……でも……」ウル

兄「……にしても……車が走りまくってる道路に飛び出すなんて驚かせるんじゃあねーよ」

妹「…………だって……!」

兄「でもーだとか、だってーだとか、説明になってねーぞ。正直、危ねーことしたから怒ってんだからな」

妹「…兄……事故で……いなくなっちゃったのかと、思って……それで……」

兄「………」

妹「私は……兄のこと、騙して……追いつめて……何てこと、したんだろうって………もう…グチャグチャで」ポロポロ

兄「………何もお前が思い詰めることはねーよ。妹は好きに生きればいいんだからよ」

兄(友の話によると、事故現場を見た妹の様子が急におかしくなったと思ったら道路に飛び出して行った……)

兄(つーか、バイクに乗ってたってだけでなんで俺だって思っちゃったんすか……)

妹「………う…ぅぐ……ご、ごえんなさい……」グズグズ

兄「…………っ」

妹「……な…んで……離れるの……?」

兄「…………悪い」

妹「…わ、私が………ひく……私が……」

兄(何も、妹は悪くねー……俺自身が傷つくのにビビってるからだろーな……)

兄(泣いてる妹を、すぐに助けてやらなきゃ、って思う俺もいるが……ここまできてやっぱり足がすくむ)

兄(捨てられて、ゴミクズの様に扱われるあの頃の記憶が、ノイズをかけてる)

ガラガラ

友「ん?」

友姉「…おふ?ふひひ!修羅場!修羅場来てるよ!!ぬふふふふ!!」

兄「あー……お前らか…友、なんつーか、悪かったな」

友「あーいえいえー……妹に怪我させなくてホッとしてますよー、自分でも」

友「………さて、おねーちゃん。正座、そして全部暴露して謝って」

友姉「……ぷぇ?…な、なんでウチが……」

友「どう考えてもおねーちゃんでしょ。妹唆して、馬鹿な作戦し出したのは」

友姉「…ちぇー……うーっす、さーせんしたー」ペコ

友「折るよ」

友姉「………」セイザー

友姉「あ、あの………その……ふひ……えと…ごめんちゃい」

友「…………………」

友姉「……ん、んーんー……えー……すみません、全部とりあえず話すっス」

兄「…………」

友姉「……ぬふ?」

兄「あー……そうか……なるほど」

友「と、いうことでー……許してあげてください」

兄「いや、謝るのは俺の方だ」

兄(ちょっとの揺さぶりで、自分の世界が全部崩れさって、何も分からないようになっちまった、俺が悪い……)

妹「……………」

兄「…なんつーかな……く……はっはっは……ちくしょー………」

友「……さ、おねーちゃん。空気読んでココは退散だよー」ガシ

友姉「え?…ウチ、もうちょっと観察…観察をっ……オーノー!引きずんじゃあねー!!男泣きが!!男泣きのシーンが!!」ズルズル

ガラガラ タン

妹「………」グス

兄「ちげーんだ、なんか……わけわかんねー……なんでだ?……」

妹「………ごめんなさい…」トタトタ

兄「……お前が、どこにも行かないで良かった……」

妹「………私……最低……だ……」ギュ

兄「いーんだよ、別に……間違えようと……別に最低であろうと……妹は……俺のだって……安心しちまって」ズズー

妹「……ひぐ………ダメ……私…今…何言っても…都合の良いようにしか…………」

妹「…こんなに、なるまで………傷つけて………」

妹「ぽっかり、穴……空いちゃったみたいに……もう……直すなんて……」

兄「……うっせー。元々俺と妹は、穴だらけでボコボコなんだよ」

妹「…………」

兄「埋めようと、埋めようと、躍起になってたらちょっと遠い所に行っちまってたってだけだ」

妹「……………」

兄「………何も、気にすんな。これからまた、元に戻ればいい」

妹「…………」ポロ

兄「言ったじゃあねーか。俺と妹は、ずっと一緒だって」

妹「……うん……」

兄「俺も……向き合う。もうどこにも行かねーように、待つようなことはしねー。お前の手は俺が一生握る」

『――――――――――――――』

『』

兄「誰にも渡さん。どこかに行っちまうことに怯えるのはもうたくさんだ」

妹「………」

兄「………俺の目を見ろ」

妹「…………」

兄(オーケー。問題無い。全部種さえ分かっちまえば、幽霊だろうがなんだろうが、怖いもんはねー)

兄「………………」ス

妹「…………」

兄「………文句ねーな?」

妹「………うん………これから……ちゃんと………ずっと……」

友「…………」

友姉「…んーっふぅ……し、湿布……買ってくかい?」

友「べっつにー。いらないと思うよー」

友姉「……お、思いっきり……足ひねってた……」

友「…………」

友姉「あ、あんな勢いで……方向転換しながら蹴ったから……じ、軸がブレて……」

友「あーもーうるさいうるさい!!だいたいおねーちゃんが余計な口出ししなかったらああはならなかったの!!」

友姉「……ふひひ……さーせん」

友「……ちょっと自己嫌悪の最中なんだ。ボクが守るって約束したのに……間に合いそうになかったからぶっ飛ばすって……」

友姉「……ぬふ……大惨事は…避けた……」

友「…………」

友姉「………あ、あアイス……買おうか…?」

友「…………」

友姉「…っひぃ……な、泣くなよ…我が妹……ね?ウチが悪かったから……」

友「泣いてないよ!」ガー

友姉「…あふ…はぁ……はぁ…」ジュル

友「……はー……ブレないね、おねーちゃん」

友姉「………………友…ゴメンね。何も考えずに、ちょっとやりすぎた」

友「……………」

友姉「……うひぃいぃぃ……歯が浮く…浮いてガタガタ!……ふひ」

友「……一番効きそうな湿布が良い」

友姉「っほほ……うへへ…奮発するよー……」

友「アイスは一番高いヤツがいい」

友姉「…ぬふ……す、素直じゃないなーこのこのー」

友「うっさい!迷惑かけたんだからボクに尽くせー!!」



妹「………」

兄「妹ー。ちゃんと友に礼言っとくんだぞ」

妹「…………?」

兄「お前が轢かれるかもしれねーって時に、ぶっ飛ばしてくれたんだとさ。友姉が言ってたぜー」

妹「………」

兄「おかげでズッコけて、ガードレールに思いっきりぶち当たったらしい。その上車に轢かれそうになったらしいしな」

妹「…………友……」

兄「……お前も、俺がいるとかいねーとかで無茶なことすんじゃあねー」

妹「………うん…」

兄「菓子食うか?」

妹「……ううん………」

兄「ん」

妹「………」

兄「………………」

妹「…………」

妹「……私と………」

兄「……」

妹「…私と……兄は……何かで……繋がってるの、かな……」

兄「さーな。繋がってるのかもしれねーし、何もないのかもしれねー」

妹「………」

兄「不安か?」

妹「…………」コク

兄「……世の中結構便利でよ、繋がりだのなんだのを証明できる物は色々とある」

妹「………」

兄「でもよー……あってもなくても、互いの気持ちには何の影響もねー」

兄「証明できるもんがあっても、不安なもんは不安なのかもしれねー」

妹「…………うん…」

兄「俺は仕事、お前は学校。一緒にいない時間は、不安ばっかたまってく」

兄「こればっかりはどうしようもねー。我慢だ」

妹「……」

兄「そんなあからさまにへこんだ顔すんじゃあねーよ。ほら」ギュ

妹「…………」

兄「俺が、お前の手ー握って……どこへでも連れてってやる」

妹「………」

兄「……………」ス

妹「………あ………んむ……」

兄「…………ま、これから理解してけばいいって事だ」

妹「………ズルい……」

兄「うっせー」

妹「…………今度こそ……私も……がんばる」

兄「…ん」ナデナデ

妹「………」

兄「…………」

兄「………」

妹「…………」

兄「お互い、成長しなきゃあな」

妹「…………兄は……もう、大人……」

兄「……確かに、もういい大人だけどよー……」

妹「………ダメ…?」

兄「ああ、ダメだ。どんだけ年食おうと、ちゃんとした大人になるってのは難しいらしい」

妹「…………」

兄「弱っちいっすからねー、俺」

妹「……じゃあ…私も…………強く、なる……」

兄「おー、その辺りも一緒に、な」

妹「…………」

妹「………兄が、私を……認めてくれるように…頑張る……」

兄(なんだかんだ認めてる節もあるんすけどね……絶対に言わねーけど)

妹「…………」ギュ

兄「………そうやって抱きつくのは、大人じゃあないと思います」

妹「………まだ、子供……」

兄「………そうっすねー、そうだった」

妹「……でも…大人に、なっても……こうしてたい……」

兄「…………」ギュウ

妹「…………兄も……子供………」クス

兄「うっせー、俺ぐらいの年になってもしてーもんはしてーんだよ」

妹「…………ね……」

兄「ん?」

妹「………ちゅー……だけは……許して………?」

兄「……………やだ」

妹「…………む」

兄「恥ずかしいんだよ、いちいちそんな風に確認されたら意識して頭ん中グチャグチャになるしよー……」

妹「…………」チュ

兄「」

妹「………確認……しなかった……」

兄(案外、頭ん中ガキのままでもいいかもしんない……ってアホか)

兄「……」

妹「………首……頭、突っ込まないで……くすぐったい……」

兄「うっせー、仕返しだ仕返し」

妹「……にへへ……うん」

兄(やっぱし可愛い…)

妹「………」

兄「………悪い、もっかいしていいっすか?」

妹「……確認……しないで、よ……」

妹「……次」 

兄「ん、了解」



おわり

これで終了とさせていただきます。
お付き合いいただきありがとうございました。

終わるまで毎度のごとく長くなってしまいました。
山も谷もない話で申し訳ないと思います。

やっぱり気に食わない点がポツポツと出てくるのでまだまだ勉強不足だなぁ、と思います。

またチマチマ何か書くだろうなぁ、と思います。
最後にもう一度、ありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月30日 (月) 03:20:14   ID: p4woVB3g

感動しました!もしまた作るのであれば勝手に楽しみにさせてもらいます!

2 :  SS好きの774さん   2014年07月17日 (木) 10:57:40   ID: QzMmWxbg

前作から見てたけどやっぱり面白い!!1はやっぱ才能がある!!

また、つづき楽しみにしてます
おつ

3 :  SS好きの774さん   2016年12月02日 (金) 20:38:27   ID: GzYhJvvP

またこのシリーズの続編出ないかなぁ

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom