照「窯出しプレミアムプリン?」(67)

白糸台の部室

ガチャッ

照「……」

照(あれ、まだ誰も来ていない……)

照「……」

照「暇だし読書でもしてよう」ペラッ

~♪

照「?」

照(……あれ、なんでテレビ点けっぱなしなんだろ)

照(犯人は淡かな?暇あればテレビいつも見てたし)

照「……後で注意しておこう」

照「ん?」

みさき『では今週注目の新商品です』

みさき『まずはこれ、サークルKから発売される窯出しプレミアムプリンです!』

野依『おいしそう!』

みさき『なんとこのプリン、7月25日だけの限定販売らしいですよ』

野依『……!!』ジュルリ

みさき『野依プロ、涎が垂れてますよ……』

野依『はっ!……もう、大丈夫!』フキフキ

みさき『気を取り直して……今日は特別に窯出しプレミアムプリンを用意してもらいました!』

みさき『野依プロ、一口食べてみてください』

野依『うん』パクッ

野依『うまい!』

みさき『いや、そういうありきたりなコメントじゃなくてですね。ポイントが知りたいんです』

野依『!?』アセアセ

照「……美味しそう」

ガチャッ

菫「遅れてすまない……って何だお前だけか」

淡「テルー、何してるの?」

照「あ、菫に淡……」

淡「あれ?珍しいね、いつもなら無愛想な顔して読書してるのに」

照「むっ、私だってずっと読書してるわけじゃない。たまにはこうやってテレビも見る」

淡「ふーん」

淡「で、何見てるの?」ヒョコッ

照「淡、邪魔……」

淡「あ、コレ知ってる!今日のお昼私も食べたよ!」

照「」ガタッ

淡「あれすっごく美味しかったなぁ♪濃厚過ぎて舌がとろけそうだったよ!」

菫「へぇ……最近のコンビニスーツも進化してるんだな」

淡「菫も今日の帰りに買ってみれば?」

菫「いや、私は洋菓子より和菓子を好むんでな、遠慮しとくよ」

淡「えー、今日しか食べれないんだよ~?」

照「……」

照「ねぇ、菫」

菫「どうした?」

照「私今からコンビニいってそのプリン買ってくる」

菫「……は?」

照「じゃ」ヒューン

菫「……」

菫「待て待て待て待て待て!淡、あいつを連れ戻してこい!」

淡「もう行っちゃったよ……」

菫「くそっ!あいつ一人じゃ絶対迷子になって帰ってこれなくなるぞ!」

菫「とにかくあいつを追いかけるぞ!」ダッ

淡「はぁ」

オイ、マテコラー! テルー、ブカツドウスルノー?

照(ヤバイ、菫達が追ってきてる……)

照「あ」

ドンッ

誠子「うわわっ」

尭深「……大丈夫ですか?」

照「……すまない、急いでた――って亦野と渋谷か」

誠子「いたたた……宮永先輩、気をつけて下さいよ!」

尭深「どうしたんですか?急いでるみたいですけど」

照「うん、ちょっとプリン買いに」

誠子「プリン?」

マタノー!テルヲツカマエテクレー!

尭深「……弘世先輩?」

照「じゃ、そういうことで――」ダッ

誠子「……」

ガシッ

照「!?」

誠子「これから部活なのにどこ行く気ですか、逃がしませんよ!」

照「放しなさい」

誠子「放しません」

照「一生のお願いだから」

誠子「ダメです」

淡「はぁはぁ……やっと追いついた……」

照「……万事休す」

菫「よくやった、亦野!あとでこいつにルアーでもロッドでも何でも欲しいものをおごってもらえ!」

照「えっ」

亦野「本当ですか!」キラキラ

菫「もちろんだ。な、照?」

照「いやいやいやいや、勝手に決めないでほしい(泣)」

菫「……」

誠子「……」

照「今月はお菓子代でお財布の中が寂しいので勘弁して下さい……」

菫「……亦野、どうする?」

照「お願いします」

誠子「……冗談ですよ、ほらはやく部室に戻って練習しましょう!」

照「ありがとう亦野……」

菫「やれやれ」

照(さて、もう一度逃げるか)ダッ

菫「おい」

照「!?」

照「な、何……?」

菫「次同じこと繰り返したら……わかってるよな?」ギロッ

照「ま、まさか……ほ、ほら今日も麻雀楽しみだなー、あはは……」

照(……大人しくしてよう)

白糸台の部室

照「はぁ……」

淡「テルー落ち込みすぎでしょ。プリンなんて部活終わってから買いにいけばいいじゃん」

菫「確かに。お前そんなにプリン好きだったのか?」

照「だって限定だよ!今日しか買えないんだよ!」ダイバンバンッ!

尭深「あ、卓が……」

照「これで窯出しプレミアムプリン買えなかったら菫のせいだから!!」

淡「たぶん、大丈夫だよ」

照「えっ」

淡「だって私がそのプリン買いに行った時まだまだたくさんあったよ」

誠子「それにコンビニなんて何店舗もあるから品切れなんてそうそうないんじゃ……」

照「それなら安心」

菫「まったく、そそっかしいやつだな」タンッ

照「あ、それロン」

菫「……」

淡「菫もまだまだだね~」タンッ

照「ロン」

淡「……」

照「あー、やっと部活終わった!はやくプリン買いに行こっと」

照「じゃ、皆またね」ダッ

バタンッ

尭深「……今日の宮永先輩、いつも以上に右腕回してましたね」

誠子「フラストレーションがたまってたからかな、あそこまで調子のいい宮永先輩久しぶりに見たよ」

ガチャッ

照「忘れ物……」

誠子「あ、また来た」

淡「お帰りテルー」

照「たぶん私迷子になるから、菫と淡は一緒についてきて」

菫(……迷子になるのは絶対なのか)

淡「私ももう一回プリン食べたくなってきちゃった、テルーおごってよ!」

照「無理」

訂正:菫(迷子って自覚してるのか……)

淡「テルのケチー!プリンくらい可愛い後輩におごってよ!」

照「いや、本当に今お金持ってないから……」

菫「そうだ、渋谷も亦野も一緒にどうだ?どうせなら虎姫皆で行こうじゃないか」

尭深「……私もコンビニの和菓子買おうかな」

誠子「皆が行くなら御供しますよ」

照「じゃ、早速向かおう」

菫(これだけいれば、あいつも迷子にならないだろう)

サークルK

照「ついた。で、プリンはどこ!?」キョロキョロ

淡「確かこっちだよー」

照「……」ムッフー!

誠子「宮永先輩、お菓子にほんと目がないんですね」

尭深「いつも仏頂面だから新鮮……」

誠子「あはは」

菫「あいつももっと笑えば可愛いのにな」

誠子「……」ジーッ

尭深「……」ジーッ

菫「ん?どうしたお前達。私の顔に何かついてるか?」

誠子「い、いえ……」

尭深「何でもないです……」

淡「はい、ここがスイーツコーナーだよ……ってあれ?」

照「……」

淡「売り切れちゃってる……」

照「えっ」

淡「あっれー、おかしいなー。昼前にはあんなにたくさん置いてあったのに」

菫「どうした?」

淡「あ、菫。ほら、売り場見てよ」

菫「……売り切れてしまったのか?」

淡「みたいだね」

照「菫!責任取ってよバカ!!」

菫「ま、まぁ落ち着けよ。ほら店員さんに聞いてみようじゃないか」

照「シャーッ!」

淡「……テルー、なにそれ」

照「菫を威嚇してるの」

淡「あぁ、そう」

菫「はぁ……」

照「で、プリンは!?はやく答えて!!」

菫「……在庫なし。もう入荷予定はないだろうって言われたよ」

照「そ、そんな……」ヘナヘナ

淡「だ、大丈夫だよテルー、違う店舗にならまだあるって!」

照「ほんと!?」

淡「たぶん……」

照「信じるから!私あわあわを信じるから!」

淡「あ、あわあわ……?」

尭深(宮永先輩、ちょっとずつ壊れてきてる……)

照「ほら、はやく次のコンビニに行こう!」ダッ

菫「おい待て!お前一人で向かったら迷子になるだろ!」

菫「くそっ、あいつを追うぞ!急げお前ら!」ダッ

淡「またこのパターンですか……」

照(窯出し窯出し窯出し窯出し窯出し……)

菫「おい待て!」

照(プレミアムプレミアムプレミアム……)

淡「はぁはぁ……追いつけない……」

照(プリンプリンプリンプリンプリン!!!!!!!!!!!!)

菫「あいつを止められるのは亦野、お前だけだ!何としてでもあのバカを捕まえろ!」

誠子「ラジャ」

誠子「宮永先輩ー!」

ガシッ!

照「!?」

誠子「やっと捕まえた……」

照「あ、あれ……ここはどこ……私は誰……?」

誠子「何を言ってるんですか」



菫「はぁ……やっと追いついた」

淡「もう手錠でもつけときましょうか……」

菫「まったくだ……」

尭深「あ」

菫「どうした、渋谷?」

尭深「宮永先輩追いかけてたら、サークルKに到着しまいましたよ……」

照「淡!」

淡「な、何ですか……」

照「スイーツコーナーまで案内よろしく」

淡「は、はぁ……」

淡(それくらい一人で辿り着けるでしょうに……)

照「はやく!!」

淡「はいはい」

照「わくわく」

淡「えっと……こっちです」

照「今度こそありますように……!」






淡「あれ?」

照「どうしたの、あわあわ?」

淡「いや、その……」

照「?」ヒョコッ

照「……えっ」

淡「あはは、また売り切れっぽいです!珍しいですね――」

照「」ガクッ

淡「ちょ、テルー!しっかりしてよ!菫、ヘールプ!」

菫「おい、店内で騒ぐな。他の人に迷惑だろ」

淡「でもでも、テルーが――」

菫「ったく……今ロープ買ってるからもう少し待ってろ」

淡「何でロープ……じゃなくって、テルーが気を失ったんだよ!?」

菫「そうか。大人しくなって丁度よかったじゃないか」

淡「……一理ある」

菫「ほら、待たせたな。亦野、こいつの手首にロープを巻いてくれ」

誠子「何ですかこれ」

菫「照が暴れてどこかに行かれると困るからな、とりあえず手錠代わりにこれでも巻いておくことにした」

誠子「なるほど、いいアイディアですね」

尭深「まるで犬ですね……」

シュッシュッギュッ

誠子「OKです」

菫「よし、これでしばらくは安心だな」


照「う、うーん……プリンどこ……」

淡「あ、テルが目覚めた」

訂正:手首→首

照「ねぇ、あわあわ……」

淡「は、はい……」

照「プリン……また売り切れだったよ……」

淡「……ごめんなさい」

照「うっ…うぅ……こんなのってないよ……」

淡(テルー……)

照「……あれ?何か首に違和感が……ロープ?」

菫「あぁ、それはお前がまた暴走しないための応急処置だ。我慢してくれ」

照「ひどい!何で私がこんな目に会わなければならないの!?」

照「あの時、菫が私を引きとめなければ今頃窯出しプレミアムプリンを食べれてたのに!!」

菫(私が悪いのか……?)

菫「ま、まぁ落ち着けって……ほら、店員さんに窯出しプレミアムプリンの入荷予定あるか聞いてくるから」

照「10秒で聞いてきて」フン!

菫「ぐっ……(抑えろ私……)」

尭深「あの、私がもう聞いておきました……」

照「で、返答は!?」

尭深「その……入荷予定はもうないらしいです……」

照「」

尭深「あと……ここ周辺のサークルKは龍門淵グループの人達が窯出しプレミアムプリンをまとめ買いしていったそうです」

照「何で!?」

尭深「そ、そこまではちょっと……」

照「うっ……うっ……」

誠子(うわぁ……こんな宮永先輩初めてみたよ……)

尭深(さすがにかわいそう)

照「……わかった、全部あいつだ」

誠子「え?」

照「龍門淵の天江衣……あいつがプリン風呂のために全国の窯出しプレミアムプリンを買い占めてるんだ……!」

淡「誰ですか?」

菫「あー、淡は去年いなかったもんな。去年全国大会で活躍した選手だ」

淡「へー」

照「くそくそくそっ!富豪だからってやって良いことと悪いことがあるだろ!」

照「全国の窯出しプレミアムプリンファンの夢をぶち壊しやがって……!」

菫「おい照、口調おかしいぞ」

照「ということで今から龍門淵のところに行ってきます、じゃ!」ダッ

菫「……」

淡「……」

尭深「……」

誠子「……」

ピーンッ

照「ぐえっ」

菫「……首にロープ巻いてるから、もうお前に好き勝手な行動はさせんぞ」

照「ぐ、苦しいっ……」

照「じゃあどうすればいいの!?私にここで死ねっていうの?」

菫「いや、そこまでは……」

照「私、菫に窯出しプレミアミムプリン食べれなかったら責任取ってって言ったよね!?はやく責任とってよ!!」

菫「うっ」

菫(確かにそんなこと言ったような……)

照「ほらほらほらほら!!」ズン

菫(くそっ……調子に乗りやがって……そうだ!)

菫「おい、淡!」

淡「は、はい」

菫「お前、昼に窯出しプレミアムプリン食べたって言ってたよな」

淡「うん」

菫「よし、じゃあ私達がそれとそっくりなの作るから味見をして手伝ってくれ!」

淡「え」

淡「いや、無理ですよ。もう味は覚えてませんし……」

照「そうだ!それに菫が美味しいプリン作れるなんて全く思えない!」

菫「何だと!?」ガシッ

照「い、いふぁい……ほっぺた掴まないで……」グニグニ

菫「ふん!」

照「うぅ」ヒリヒリ

照「……で、どうするの!まだ責任とってもらってない!!」

菫「……あぁ、もう知らん!龍門淵のところに行くぞ!これでいいだろ!」

照「よろしい」

尭深「え」

淡「いやいやいやいや」

誠子「……マジですか?」

淡「今何時だと思ってるんですか!?それに夏休みだからって明日ふつうに部活ありますよ!」

照「菫、明日の部活は何時から!」

菫「確か午後からだ」

照「よし!じゃあ夜行バスで向かって、明日の始発で戻れば間に合う!」

淡「いや、親の許可とかどうするんですか!」

照「私の家で皆宿泊してるってことにすればいい!」

誠子「でも、未成年だけで夜中にうろつくのはどうかと……」

照「大丈夫、私服に着替えれば大学生くらいに見えるでしょ?何とかなる!」

尭深「でも、宮永先輩お金ないんじゃ……」

照「菫から借りる!」

菫「は?」

照「後で返す!……他には?」

全員「……」

照「異議はないね、じゃ長野に向かうよ!」

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