千早「眠り姫」(76)
アイドル(能力者)それは女の子の憧れ、しかしその頂点に立てるのは一握り
思春期の少女たちが織り成す儚くも繊細な物語。
―ねぇ、知ってる?桜の木の下には女の子が眠ってるんだって。
―けど、その眠・・・・・・を・・・・・・し・・・ら・・・・・・
千早「んっ、うぅ・・・」フワァ
千早「眠ってしまっていたのね」
千早「・・・何か、夢の中で語りかけられていたような・・・」
千早「夢に介入する能力?・・・まさかね・・・」
千早「気にしても始まらないわよね」ノビー
千早「あっ、もうすぐ昼休みが終わってしまうわ」
千早「早く教室に戻らないと・・・」フワァ
千早「多分、飛んだ方が早いわよね・・・」
聖765学園
アイドルを目指す少女たちが学ぶ、能力者のための学校。
明るい陽射しが差し込む並木道、すぅっと開けた聖堂、清潔に保たれた教室・・・
時にさわやかに、時に優雅に少女たちが学ぶためだけに、整えられた聖地。
・・・・・・ただ1つ、旧校舎を除いて・・・・・・
ある朝、特別クラス専用寮
千早「おはよう」
やよい「おはようございまーす」
千早「今日は高槻さんが食事当番なのね」
やよい「うっうー、そうですよー」
伊織「おはよう、私もいるわよ」
千早「ええ。水瀬さんもおはよう」
真「おはよう」
雪歩「おはようございます」
真「みんな今日は早いね」
やよい「私は食事当番なだけですよ」
雪歩「寮母さんとかいてくれればいいのにね」
伊織「まぁ、これもアイドルになるためってことらしいし」
千早「料理のひとつでもできなければ、立派な淑女とは言えないらしいわね」
雪歩「淑女とアイドルって関係あるのかなぁ」
真「わかんないけど、フリフリの服とか着こなせたらかわいいよね」
全員(それはなにか違うと思う)
あずさ「みんな、おはよう。今日もいい天気ね」
雪歩「おはようございます。そうですね。日差しがとっても気持ちいいです」
あずさ「あさごはんまだかしら?私おなか空いちゃって・・・」
やよい「後は盛り付けるだけですから、もう少し待ってくださいね」
伊織「珍しいわね、あんたがこの時間にお腹空かせてるなんて」
あずさ「ダイエットのために昨夜は間食を控えたのよ?」
真「・・・それ、1日置きくらいで言ってませんか?」
あずさ「そ、そんなことないわよ」
千早「まぁ、なんでもいいですけれど」
伊織「・・・・・・」
やよい「みなさん、ごはんできましたよー」
全員「「いただきまーす!」」
伊織「この卵焼き美味しいわね」
やよい「えへへ、伊織ちゃん、ありがとう」
千早「高槻さんは本当に料理が上手ね」
あずさ「いいお嫁さんになれるんじゃないかしら?」
やよい「そんなことありませんよー」
ドタドタドタ
響「うぎゃああああ、また寝坊しちゃったぞ!!」
伊織「まったく、朝から騒々しいわね」
真「これで響の連続寝坊記録も更新されたね」
やよい「はい、響さんの分ですよー」
響「ありがとうだぞ。いただきまーす」ガツガツ
伊織「もう少し味わって食べなさいよね」
雪歩「淑女には程遠いね」
あずさ「でも元気がよくていいんじゃないかしら」
真「そういうものですかね」
響「おかわり!」
やよい「わかりましたー」
伊織「早っ!?朝からよく食べるわね・・・」
千早「・・・わかめと豆腐ね・・・」ミソシルズズズ
通学路
伊織「やよい、よくあの短時間で洗濯まで終わらせられるわね」
やよい「えへへ、コツがあるんだよ。今度教えてあげるね」
伊織「べ、別に頼んでなんか・・・ありがと・・・」
あずさ「あらあら、青春ねぇ」シミジミ
雪歩「桜、咲き始めてきたね。いい景色」
真「本当だ。もう、春だね」
伊織「あれが視界に入らなければいい景色なのにね」フン
響「あれ・・・って旧校舎か。確かにそうだな」
あずさ「あそこにいるのは、訳ありの問題児ばかり。程度の低い連中ばかりだもの」
真「そこの話するだけでも反吐が出る。やめろよ」
やよい「旧校舎の桜の下・・・」
雪歩「やよいちゃん?」
やよい「女の子が眠っているっていう噂本当なのかな?」
あずさ「・・・・・・」
真「力の源じゃないの?」
響「自分が金銀財宝だって聞いたぞ」
雪歩「わ、私は化け物って・・・」ガクブル
千早「まぁ、この学園に伝わるおとぎ話だから、尾ひれ背びれがついてるんじゃないかしら」
真「でも旧校舎に関することだよ?なんか気分が悪いな」
伊織「あら、気弱になってるの?」
真「なにぃ」
伊織「確かに旧校舎の桜堂は不気味だものね。怖いなら関わらなくていいわよ?私は調べるけど」
真「ふん、ボクだって調べるからね。先にボクが見つけたって知らないよ?」
雪歩「二人とも、喧嘩は・・・」
伊織・真「「雪歩は黙ってて!」」
雪歩「ひぃん」ヤッパリー
響「でもみんなで協力した方がいいと思うぞ
やよい「伊織ちゃん、響さんの言うとおりだよ。万が一危ない物だったら危ないよ。」」
伊織「それも、そうね。やよいがそういうなら、みんなで協力しましょう」
千早「そうね。私も協力するわ」
真「珍しいね、千早がこういう話に乗ってくるなんて」
千早「そんなことはないと思うけど・・・」
伊織「にひひっ、これで調査団結成ね。みんな、頑張るわよ」
全員「「おー!」」
聖堂
律子「いいですか、清らかな魔力は清らかな体に宿ります。心を清らかに保つために、讃美歌を歌うことが有効であることは前回の授業で教えたとおりです。歌の厳かさだけでなく、呼吸の仕方も身に付きます。今日は引き続き歌を歌ってもらいます」
全員「「はい!ティーチャー律子」」
~♪
律子「いいですか、音を取ったり大きな声を出したりしようとする必要はありません。明るく爽やかに歌うんですよ」
~♪
律子「高槻さん、音は外れていても大丈夫ですよ。まずはリラックスして歌うようにしてみて?」
やよい「は、はいっ、ティーチャー律子」
千早「~♪」
律子「如月さんはいい声ですね。澄んでいて、それでいて強い声・・・」
千早「ありがとうございます。ティーチャー律子」
伊織「・・・くっ!」
律子「いいですか、みなさん。焦る必要はありませんよ。ゆっくり、少しずつできるようになってくださいね」
全員「「はいっ、ティーチャー律子」」
律子(ふふ、さすが特別クラスだけあって、みんな優秀ね)
校庭
響「ふぅ、やっと午前の授業が終わったぞ。みんなー!『サモンメイト』」
あずさ「いつ見ても、かわいいわよね。響ちゃんの『サモンメイト』」
雪歩「ほんと。ハムスターにモモンガにウサギに・・・」
真「オオカミやヘビは戦えるしね」
響「へへん、なんてったって完璧な自分の友達だからな」
やよい「~♪」フワフワ
千早(こうしてみんなでいる時間も悪くない、のかしら)フワァ
伊織「ちょっと千早、何かおかしいことでもあるの?」
千早「別にないわよ?」
伊織「やよいの浮かび方がおかしいとでもいうの?」
千早「だから特に何もないって言ってるでしょう」
雪歩「ちょっと、千早、伊織ちゃん、二人とも・・・」
千早・伊織「「雪歩は黙ってて!」」
雪歩「ひぃん」ナンデー
真「最早、鉄板過ぎるよねこのやり取り。
教室
律子「~~そういうわけで、魔力の枯渇は生命に重大な影響を及ぼし・・・」
響「なぁ、知ってるか?この中からアイドルが選ばれかもしれないんだって」ヒ
ヒソ
伊織「えっ?本当?」ヒソヒソ
律子「こらっ、講義中に私語はダメよ。高槻さんや如月さんを見習いなさい
」
響・伊織「「す、すみません。ティーチャー律子」」
キーンコーンカーンコーン
律子「まったく・・・今日はここまでです。でも我那覇さん、耳が早いのね」
響「えっ?」
律子「アイドルがこのクラスから選ばれるという話よ。この機会なので皆さんに伝えておきます。この数日でこのクラスからアイドルを選びます。まだ誰にするかは確定していないから、今まで教えたことを忘れずに、引き続き頑張ってくださいね。以上」
伊織「起立、礼」
全員「「ありがとうございました!」」
真「このクラスからアイドル、か。ボクは選ばれるかな?」
雪歩「真ちゃんならきっと大丈夫だよ」
やよい「うっうー、私はきっと無理だから伊織ちゃん、頑張ってね」
伊織「えっ?」
やよい「伊織ちゃんならきっとなれるよ!」
千早(アイドル・・・私もなれるのかしら)
帰路
響「ねぇ、みんな」
真「どうしたの?」
響「実はハム蔵に調べてもらってたんだけど、封印を解くカギが旧校舎の納屋にあるらしいよ」
伊織「よし、早速行ってみましょ。もうすぐ誰がアイドルになるか決まっちゃうんだもの。うかうかしてられないわ。」
やよい「でも、旧校舎って立ち入り禁止じゃ・・・」
あずさ「そうね、どんな人に会うのかもわからないし、行かない方がいいわよ」
雪歩「わ、私もちょっと怖いかなって」
伊織「なら来たい人だけ来ればいいじゃない」
バサバサ
響「オウ助…どうだった?え、人がいて今日は無理??」
伊織「それは仕方ないわね。明日行きましょう。行きたい人だけでね」
やよい「伊織ちゃん、私は行きたいけど…そういういい方は…」
真「みんなアイドルになりたい気持ちは同じだよ。行かないわけにいかないじゃないか」
雪歩「わ、私も頑張る」
千早「私も行くわ」
伊織「わかったわよ。みんなで行きましょう」
あずさ「ごめんなさい。私は遠慮しておくわ」
伊織「まぁ、無理にとはいわないわ」
響「そういえば、みんなはこれからどうするんだ?」
真「ボクは雪歩とあずささんとボートに乗ってこようかなって」
雪歩「久しぶりに水上の風を感じたいかなって」
あずさ「私も無理して一緒させてもらったの」
真「まぁ、夕飯までには帰るよ」
やよい「私は夕食の準備があるからまっすぐ帰りますね」
伊織「やよいが帰るなら私も帰るわ」
響「じゃあ自分もそうするぞ。千早は?」
千早「私は少し本を読んでから帰るわ」
伊織「そういえば、最近外で本を読んでいることが多いわよね」
千早「ええ。風を感じている方が気持ちよく本を読めるのよ」
やよい「夕食までには帰ってきてくださいね」
千早「わかったわ。ちなみに今日のメニューは何?」
やよい「特製のハンバーグとリンゴジュースですよー」
真「やーりぃ!やよいのハンバーグ、美味しいもんね」
響「でも、リンゴ握りつぶしてジュースにするのはもうやめてほしいぞ」
やよい「うっうー、さすがにもうしませんよ」
水辺
あずさ「春先だけあって、水が気持ちいいわね」
雪歩「風も気持ちいですぅ」ソヨソヨ
真「いつまでもこんな時間が続けばいいのに」
あずさ「アイドルが選ばれればそうもいかなくなるでしょうね」
雪歩「私、真ちゃんがアイドルになってもこの気持ちは変わらないよ」
真「ボクもだよ。ボクがアイドルニなっても、雪歩がアイドルになってもこの気持ちは…」
あずさ「気持ちは変わらなくても、状況は変わっていくわよ。たとえ誰がアイルになったとしても」
千早「あずささん、何か知ってるんですか?」
あずさ「別に。でもそう思わない?世界の息吹たる季節でさえ移ろいゆくのにちっぽけな人間の日常が移ろわない訳がない」
雪歩「いずれ、この日常も変わっていくってことですか?」
真「わかっていますよ…ただ、気持ちはそうやすやす移ろわないと思いますよ」
あずさ「そうね。そうだといいわね…」
千早「岸に寄せてもらえる?木陰で読書をしたいのだけど」
真「うん、いいよ」ギィコギィコ
千早「ありがとう」
千早「・・・ふぅ」ヒトイキ
千早(こうして見ると、なんの変哲もないのどかな日常だけれど…あと数日で変わってしまうとでもいうのかしら・・・)
旧校舎
貴音(やはりあの如月千早という少女は決まりですね。もう一人は…)
春香「何か見てるんですか?」
貴音「いえ、別に」
春香「最近授業でも見かけませんけど?」
貴音「どうしようが私の勝手ではありませんか」
春香「確かにこの旧校舎に規律なんてあってないようなものです。けれど、昔のようなことをされては困ります」
貴音「知っているでしょう?あの日のことは、私も被害者なのですよ?」
春香「けれど、原因の一つでもあるでしょう?」
貴音「・・・・・・」
春香「だから私はここに身を潜めているんですよ」
貴音「あの女を放っておくのですか?」
春香「いいわけがありません。監視しています」
貴音「わざわざ旧校舎で?」
春香「顔を合わせた瞬間に私の生存がばれてしまいます。そうすればまた多くの命が散ってしまう。そうするわけにはいきませんから」
貴音「ふふ、そうですか」
春香「・・・あなたのことも信じているわけではありませんからね。何かしようとしたら後からでも…」
貴音「構いませんよ。好きにしてください。じゃあ…」
春香「・・・」
伊織の部屋
響「今日もやよいの料理はおいしかったぞ」
やよい「うっうー、ありがとうございます」
伊織「ほんと、何をどうすればあんなにおいしくなるのかしら」
響「ほんと、自分は全然かなわないぞ」
伊織「響の料理もおいしいじゃない」
響「そうかな?自分の料理の味はみんなの口に合うかわからないぞ」
伊織「確かに風味は独特だけどね。十分においしいわよ」
やよい「私も響さんの料理好きですよ」
響「へへっ、二人ともありがとな」
伊織「そうだ、やよい。髪型いじってもいい?」
やよい「えっ?別にいいけど…なんで?」
伊織「きっと色んな髪型が似合うかなって」
響「確かにやよいはかわいいからな。ツインテール以外にも似合う髪型がありそうだな」
やよい「えへへ、ありがと//」
翌日授業後、教室
やよい「ねぇねぇ、見てみて伊織ちゃん」
フワァ
伊織「やっと物を浮かせられるようになったのね」
響「今までは軽く浮かぶことと、筋力強化しかできなかったからな」
真「『ストロング』だっけ。やよいの能力。ボクでも力比べじゃ勝てないよ」
雪歩「でも、これでやっと基礎ができたね」
やよい「えへへー」
あずさ「ねぇ、今日は鍵を取りに行くんでしょ?」
伊織「そのつもりよ。来たくないなら来なくていいわよ?」
あすざ「私はやっぱり遠慮するけど…本当に気を付けてね?」
千早「・・・何かあるんですか?」
伊織「何かあったって構わないわよ。なんとでもしてやるわ」
響「さすが伊織、ビッグマウスだな」
伊織「ちょっと、どういう意味よ」バチバチ
真「ちょっと伊織、ここで『サンダー』はだめだよ!」
やよい「伊織ちゃん、落ち着いて」アタフタ
伊織「わかったわよ…まぁ、行きましょ。鍵が見つかれば、それでいいんだし」
あずさ「・・・」
旧校舎の納屋
響「うー、なんか埃っぽいぞ」ケホケホ
真「ほんと、所詮は旧校舎だね」
千早「早く探してしまいましょう」
雪歩「そうだね」
ガサゴソガサゴソ
伊織「この箱…」
やよい「何か封印されてるのかな」
伊織「開けるわよ…」ゴクリ
ガタッ
全員「「鍵?」」
響「紋章みたいな紙もあるぞ」
やよい「なんなんでしょう?」
ガラッ
律子「あなたたち、こんなところで何をしているの?」
全員「ティーチャー律子…」
伊織(鍵だけでも回収しないと…)コッソリ
律子「旧校舎は立ち入り禁止でしょ!全員反省文を出しなさい!」
全員「は、はい…ティーチャー律子…」シュン
後日、中庭
千早「ふぅ、やっぱり外での読書は気持ちいいわね」パタン
春香「ねえ」
千早「?」
春香「あなた、アイドルになりたいの?」
千早「その制服・・・旧校舎の人間が一体何の用?」
春香「やっぱそういう言い方になるんだ・・・私は春香、天海春香だよ。如月千早ちゃん。」
千早「どうして私の名前を?」
春香「旧校舎の人間から見たら、特別クラスの人間は憧れだからね」
千早「・・・・・・」
春香「ごめんね。旧校舎の人間にはあまり関わらないように言われているよね」
千早「ええ。できれば早く消えてほしいのだけれど」
春香「わかった。でも、一つだけ言わせてもらってもいいかな」
千早「何?」
春香「アイドルになんか、ならないほうがいいよ」
千早「えっ?」
ビュウゥウゥウゥ
千早「消えた・・・?」
千早「何だっていうの、一体・・・」
伊織の部屋
伊織「昔々、気の遠くなるほど昔のお話」
伊織「一人のキレイな女の子がいました」
伊織「その女の子はもっともっとキレイになりたい、そう願っていました」
伊織「ある日、女の子の前に魔女が現れて言いました」
伊織「他の人間から美しさを奪う魔法を教えよう」
伊織「女の子は喜んでその力を教えてもらいました」
伊織「そして、町中の女達にその力を使ったのです」
伊織「しかし、それは決して使ってはいけない魔法でした」
伊織「美しさを奪う代わりに、生命力を削る魔法だったのです」
伊織「哀れ、その魔法を使い続けた女の子は、命を失い、そこにはキレイなキレイな魔力の結晶だけが残りました。」
伊織「魔女はニヤニヤと笑いながらその結晶を桜色の宝箱にしまって、そっと鍵をかけました」
伊織「それからその宝箱は開けられることはなく、何年も何年も、誰かに空けてもらう日を待っているのです」パタン
伊織「これが、この学園に伝わるおとぎ話の1つ・・・」
伊織「この宝箱が旧校舎の桜堂を指しているとしたら・・・」
伊織「魔力の結晶が、封印されていることになる」
伊織「アイドルさえも凌駕するかもしれない」
伊織「純粋な魔力が・・・」ゴクリ
旧校舎、貴音の部屋
貴音「亜美、真美、今日はお話を聞かせてあげましょう」
真美「お話?」
亜美「どうして急に?」
貴音「ふふ、少し昔の事を思い出したからですよ。」
貴音「それに・・・」
亜美「それに?」
貴音「お話を聞いたほうが、気持ちよく眠れるでしょう?」
真美「うん、そうだね」
貴音「・・・桜の木の下には女の子が眠っていて、何年も何年も、その扉が開くのをお待っているのです」
貴音「そう」
貴音「何年も」
貴音「・・・何年も」
亜美「かわいそう・・・」
貴音「仕方のないことなのです。彼女は、生贄だったのですから」
真美「生贄?」
貴音「ええ。生贄、です」
後日、教室
律子「では、アイドルを発表するわ。アイドルは・・・」
全員「「ゴクリ・・・」」
律子「高槻さんと如月さんよ」
伊織「なっ・・・」
あずさ「待ってください。ティーチャー律子。どの成績を見てもこの二人が適切とは・・・」
律子「異議は認めませんよ。成績だけで決めているわけではありません。」
あずさ「・・・っ!」
律子「二人はこの後職員室まで来るように。そこで詳しい話をします。以上。」スタスタスタ
伊織「・・・・・・っ!」パリン
伊織「私は認めない!あなたがアイドルなんて!!」
千早「僻みは美しくないわよ、伊織。理由はともかく、私と高槻さんがアイドルに選ばれた。その結果だけが全てよ。」ギロッ
伊織「・・・くっ!絶対認めない!そんな結果覆してやる!!」ダッ
やよい「あっ、伊織ちゃん・・・」
真「伊織・・・」
やよい「どうして私なんかがアイドルに・・・」
響「大丈夫だぞ、やよい。やよいがアイドルに選ばれたのは事実だ。悔しいけど、素直に祝福するよ」
雪歩「うん、そうだね。おめでとう、やよいちゃん。」
やよい「ありがとうございます。・・・伊織ちゃん・・・」
真「心配なのはわかるけど、伊織のことはボク達に任せて、職員室に行ってきなよ」
やよい「そうですね。ありがとうございます」テクテク
響「それで、伊織はどうするんだ?」
真「放っておくつもりだよ。頭に血が上った伊織は手をつけられない」
雪歩「確かにそうだね。時間が立ってからお話したほうがいいかも。」
あずさ「そうね」
真「そうだ、雪歩、この後ちょっといいかな?」
雪歩「うん、いいよ」
響「行ってしまった・・・」
あずさ「千早ちゃん、職員室に行く前にちょっといいかしら?」
千早「えっ、あ、はい・・・」
響「みんな行ってしまった」
響「なんかおかしな感じだぞ・・・」
響「何事もなければいいんだけど・・・」
空き教室
千早「あずささ・・・」
あずさ「しーっ、人が来ちゃうでしょ?」ファサッ
千早「・・・っ///」ドキッ
あずさ「アイドルに選ばれてしまったわね」
千早「どういうことですか?」
あずさ「アイドルになるのなら、私からおとぎ話の真相を話した方がいいかな、って思ったのよ」
千早「真相、ですか?」
あずさ「そう、眠り姫、魔力の結晶とも呼ばれるそ数多の物語、知っているわよね?」
千早「はい」
あずさ「それは決しておとぎ話なんかじゃない。現実にあった出来事を歪曲して伝えているのよ」
千早「それって・・・」
あずさ「封印されているのは、魔力の結晶なんていう素晴らしい者じゃない。かつて、学園を崩壊させた悪しきアイドルが封印されているのよ」
千早「えっ?」
あずさ「だから、決してその封印を解いては・・・」
ピンポンパンポーン
『特別クラス、如月千早、至急職員室まで来てください。』
千早「すみません、私、行かなきゃ」タッタッタッ
あずさ「その封印が解かれては・・・厄介な事になる・・・」
真の部屋
真「雪歩、急にごめんね」
雪歩「大丈夫だよ。それで、どうしたの?」
真「ボクの髪を切って欲しいんだ」
雪歩「えっ?」
真「ボクは今回アイドルになれなかった。だから、次に向けて気持ちを切り替えていきたいんだ」
雪歩「真ちゃん・・・」
真「お願い、できるかな?」
雪歩「うん、いいよ」
チョキチョキ
雪歩「ねえ」
真「ん?」
チョキン
雪歩「私、真ちゃんのことが好き」
真「・・・ボクも、雪歩のことが」
雪歩「アイドルにならなくても、私と一緒にいるだけじゃダメなの?」
真「・・・ごめん、雪歩。ボクはアイドルを目指したんだ」
雪歩「そっか・・・わかったよ。私も負けないようにがんばるね」
チョキン
真(・・・雪歩、ごめんね)
地下室への入り口
千早(あずささんと話をした後、職員室に行った私は、ティーチャー律子と高槻さんが地下室に行ったことを聞いた)
千早(けれど、地下室の僅かに開いた扉から見えた光景に、私は目を疑わざるを得なかった。)
千早(ティーチャー律子は、空ろな目の高槻さんに、怪しい注射をしていた)
キィ
律子「如月さん、遅かったわね。さ、アイドルになる準備をするわよ」ガシッ
千早「つぅっ、高槻さんまで・・・?どうして・・・」
律子「大丈夫、すぐにラクになれるわよ」プスッ
千早(・・・くっ!『シールド』を血管に!)
律子「さて、気分はどうかしら?」ハナシッ
千早(今だ!)バッ
律子「逃げた!?追うわよ!」ダッ
やよい「うー」ダッ
千早「やはり追ってくる・・・『シールド』でバリケードを!」
律子「魔力障壁のバリケード!?」
やよい「うっ!うっ!」ドカハッドカッ
律子(・・・そうやすやすと壊れそうにない、か)
千早「はぁ、はぁ、なんとか外に出られた・・・早く皆に知らせないと・・・」
ドガーン
千早「きゃあっ・・・旧校舎の方から?何が起こったの!?」
桜堂
伊織(コツ、コツと会談を降りていくと、目的の扉はすぐに見つかった)
伊織(扉に触れる。傍目に見ると木製のそれが、魔力で覆われていることが肌で感じられる。)
伊織(この先に眠っているもの。眠り姫、危険なもの、魔力の結晶・・・)
伊織(色々と形容されているそれ。それは、とてつもなく危ないものなのかもしれない)
伊織(もしかしたら、命に危険があるものなのかも・・・)
伊織(・・・ううん、だからなんだっていうのよ!私は絶対アイドルになるんだから!)
それは
開けてはいけない秘密の扉
ガチャリ
起こすとこわぁい
ギイイィィ
眠り姫
ドゴオオォォン
屋外
千早「桜堂の方だ!」
千早「あの時、納屋の鍵は伊織が持っていた・・・まさか伊織が封印を解いた!?」
千早「・・・くっ!『シールド』で入り口を!」
真「桜堂が燃えてる!?」
雪歩「これは一体・・・」
響「何があったんだ?」
あずさ「あのアイドルの封印が解かれた!?皆、戦闘体制を!」
千早「・・・くっ!もたないっ」
響「だめだ、外に出てくるよ!」
ドゴオオォォン
雪歩「『バレット』!お願い、当たって!」
ヒュンヒュンヒュン
ドン ドン ドン
雪歩「速いっ!?」
あずさ「『テレポート』!雪歩ちゃん!」ヒュン
雪歩「あ、危なかった・・・」
あずさ「気をつけて、アイドルの強さは生半可じゃないわ」
真「あああぁぁああっ!『ブレイド』!」
真「はっ」ガキン
美希「『サイズ』」フンッ
真「でやあっ」ギギギギ
響「イヌ美!」バウッ
サッ
響「ヘビ香!」シュルシュル
ブン ブン ザシュッ
響「なんて奴なんだ・・・圧倒的過ぎるぞ」
美希「ちょこまかと鬱陶しいの!『オーラ』!」
真「っ!なんだ、この光・・・」
千早「弾き飛ばされるっ!」
響「うわあああぁぁ」
雪歩「きゃああぁぁぁ」
あずさ(これは危険ね・・・『テレポート』で離脱を)ヒュッ
新校舎前
伊織「私、大変な事をしてしまった・・・早く先生に伝えなきゃ!」タッタッタッ
やよい「うっうー」
伊織「やよい、早く逃げて!旧校舎から化け物が・・・」
やよい「うっ」メキメキッ
伊織「柱を引きちぎって武器にした!?」
やよい「うっ、うっ」ブンッブンッ
伊織「あの目・・・まともじゃない・・・目を覚まして!『サンダー』!」バチバチッ
バチィ ドドーン
伊織「なんとか柱を・・・」
やよい「うっ」ダッシュ
伊織「こっちに向かって・・・速いっ!」
ガシィ
亜美「押さえつける!『トリック』!」
やよい「うっ!うっ!」ジタバタ
真美「間に合った・・・大丈夫?」
伊織「あなた達は一体・・・」
真美「真美達は敵じゃないよ。それよりも、あの娘を止めなきゃならないんでしょ?」
伊織「・・・そうね」
やよい「うっうー!『ストロング』!」ギリギリ
亜美「追加で強化を・・・?ぐっ・・・」ジリジリ
真美「さすがに亜美じゃ長くは持たせられない・・・『コピー』!」
伊織「私になった!?」
真美「いくよ、二人の電流を合わせて、脳神経への電気信号を押さえ込む!」
伊織「な、それって一歩間違えたら・・・」
やよい「うっうー!」ギリギリ
亜美「あっ・・・ぐっ・・・」
真美「傷つけずに動きを止めるにはこれしかない!迷ってる暇はない!いくよ」バチバチ
伊織「・・・わかったわ」バチバチ
やよい「うっ!?」ビリビリ ガクッ
伊織「やよい!」
やよい「あ、伊織、ちゃん・・・わた・・・し・・・」ドサッ
伊織「えっ・・・?やよい・・・?」
亜美「もう、魔力を使い果たしていたんだね」
真美「吸うチャンスはあったのに吸わなかった。根が優しい娘なんだね」
伊織「どういう、ことなの?なんでやよいは倒れたの?アイドルってなんなのよ!?」
亜美「ごめんね、亜美達にはその娘を助けてあげる事はできない」ヒュッ
真美「ごめんね。真美達はまだ守らなきゃならない人がいる。もう、行くね」ヒュッ
伊織「う、あ・・・うあああぁあああぁぁ!!」
桜堂周辺空中
律子「三浦さん、どうしました?」
あずさ「ティーチャー律子・・・桜堂の封印が解かれて・・・あぐっ」
律子「そのようなこと、とっくに知っていますよ」ギリ
あずさ「ぐっ、ティーチャー律子・・・どうして・・・」
律子「お久しぶりですわ」
貴音「お姉さま」フッ
あずさ「貴音ちゃん!?あなた、死んだはずじゃ・・・」
貴音「油断が過ぎましたね。私はお姉さまに復習するためにいまこうして生きているのですよ」
あずさ「まさか、桜堂の封印を解いたのも・・・」
貴音「残念ながら私ではありませんよ。ですが、このタイミングで封印が解かれたのは僥倖でした」クビシメ
あずさ「ぐ・・・ぅ・・・」
貴音「ふふ、接触していれば『テレポート』は使えないでしょう」ギリッ
あずさ「あぐっ・・・」ガクッ
貴音「では、行きましょうか、お姉さま。『テレポート』」ヒュッ
桜堂周辺、地上
「「うわああぁあぁああぁ」」
ドシャアアア
美希「みんな消えちゃえばいい、って思うな!『オーラ』!」フルパワー
響「と、とんでもない魔力だぞ・・・」
千早「・・・くっ!『シールド』!」フルパワー
ドゴオオォォン
「「千早!」」
千早「はあっ、はあっ、これがアイドルの力だというの・・・?」
美希「ちょっと消耗しすぎたみたい・・・」パッ
真「速いっ!」
ガッ
雪歩「ひっ」
チュッ
雪歩「はあああぁぁん」ガクッ
美希「ふふっ、魔力回復なの」
真「雪歩に何をしたぁっ!『ブレイド』!」ザンッ
美希「甘いの」サッ フン
真「うわっ」ドシャア
美希「ただ魔力を吸い取っただけだよ?・・・あ、君達にはできないんだっけ?」アハッ
響「魔力吸収!?そんなことをしたら雪歩は・・・」
千早「魔力枯渇で・・・死んでしまうっ・・・!」
美希「ふふ、次は・・・敵っ?」ガキィ
春香「・・・さすがに通らないか」
美希「春香!?」
春香「美希、おいで。決着をつけよう」ヒュッ
美希「望むところなの」ヒュッ
響「助かった、のか?」
千早「あの旧校舎の・・・一体?」
真「ねえ、起きてよ雪歩!ねえ!」
千早「・・・我那覇さん、真、雪歩をお願いしていいかしら」
真「えっ?」
響「どうするつもりなんだ?」
千早「私、アイドルだもの。あいつと戦えるはずだわ。」
千早「私、戦ってくる!」ヒュッ
旧校舎屋上
美希「待ってたよ、春香」
春香「美希、帰ろう。ここは私立ち退いていいところじゃない」
美希「何を言うの、春香。美希は美希であるためにいるんだよ」
春香「もう、覚えていないんだね・・・」
美希「春香に負けた事は、今でも鮮明に覚えているの!」ブワアァ
春香「この魔力は・・・!?」
美希「ふふ、あの娘の魔力心地よいの。」
美希「春香みたいに人から魔力を吸うことを止めたアイドルになんか、負けるはずないの!『サイズ』!」ザシュ
春香「くっ、『ブレイド』」ザンッ
ギギギギギギ パァン
春香「きゃあっ」
美希「あははははは、春香?こんな程度??」
美希「もらったの!」フリオロシ
千早「『シールド』!」
ガキィン
美希「お前は・・・さっきの・・・」
春香「千早ちゃん?」
千早「旧校舎だ何だって言っている場合じゃないことくらいわかってる。私も戦うわ、春香!」
美希「『シールド』しか能のない分際でぇ!!!!」
シュゴオオォオオォ
春香「魔力の暴走!?受け止めるしか!」
シュゴオオォオオォ
春香「くっ・・・ううぅ・・・」ジリジリ
千早「『シールド』!少しでもあいつの勢いを止められればっ!」
シュゴオオォオオォ
美希「この力・・・お前もアイドルの器を持っているというの!?」
千早「アイドルの器?」
春香「そう。アイドルが用いる尋常じゃない魔力の消費に耐えうるだけの器・・・その潜在能力を持つものだけが真のアイドルになれるの。持たない者は他の者から魔力を吸収しようとするわ」
千早「じゃあ、あいつも・・・?」
春香「ううん、美希は無理やり覚醒させられたの。アイドルの器は持っているんだけど・・・吸魔衝動と破壊衝動に苛まれる注射を打たれてしまった。美希自身が強い意志で代わろうとできない限りは、どうしようもない」
千早「私も、真のアイドルになれる、ということ?」
春香「そうだよ」
千早「でも、私、注射されてしまったの・・・これじゃあ・・・」
春香「千早ちゃんなら、大丈夫!」
千早「春香、私。アイドルになるわ!」
キャピーン キャピーン キャピピピピーン
美希「この一瞬での覚醒・・・!?まさか、そんなことが・・・」グググ
春香「・・・聖堂に漆黒の光柱・・・?」
聖堂
貴音「ふふふ、お姉さま、無様ですね」
貴音「とはいえ、意識を失って磔にされていれば、私の声も届きませんね」ククク
貴音「さあ、三浦あずさ、共に永遠の若さを求めた我が姉妹よ」
貴音「私自らアイドルとなり、あなたの若さを吸収いたしましょう!『スティミュラント』!」
貴音「ふふ、入ってくる!若さが、エネルギーが!ゆっくりと私の中に!!」
パリーン
貴音「何奴!?」
響「これ以上好きにはさせないぞ!イヌ美!」バウッ
貴音「ふん、その程度の攻撃・・・」ドクン
貴音「しまっ・・・術式が・・・」ドクン
ギュワアアァァアアァァァア
響「なんだ・・・あずさからあふれたどす黒い魔力があいつの中に入っていく・・・」
貴音「グギャアアアァアァァァ」
響「化け・・・物・・・」
貴音「グオオォ」ザンッ
響「がっ・・・」バタッ
貴音「ワタクシノワカサヲカエセェェェェ」ヒビキモグモグ
貴音「ウツクシサヲヨコセェェェェェ」ヒュッ
桜堂周辺
亜美「間に合わなかったか」
真美「一人やられちゃってる・・・」
響「君達は?」
亜美「亜美達はアイドルの暴走から皆を守るために来たんだ」
真美「貴音を怪しいと思って近くで張っていたんだけど・・・初動が遅くなっちゃった」
響「アイドルの暴走?」
亜美「そう。破壊衝動や吸魔衝動を植えつける方法があってね」
真美「その状態になると、他人の魔力を吸うようになる」
真「それで雪歩は魔力を吸われたって言うのか・・・」
亜美「仮にその衝動を抑えたとしても、今度は地震の魔力が枯渇してしまう。キャパを超える魔力を使ってしまうんだ」
真美「そう、あのツインテールの娘のように」
響「まさか、やよいも・・・」
亜美「うん」
真「二人は、助からないの?」
真美「わからない。彼女達の意志の強さ次第だよ」
響「そうか・・・とにかくその貴音ってやつが全部悪いんだろ?そいつはどこにいるんだ?」
亜美「多分、聖堂だと思うけど・・・」
響「わかったぞ」ヒュッ
真美「アイドル並に強いよ・・・真美達も二人がかりでも勝てなかった」
真「なんだって?」
亜美「そもそも貴音の目的は、能力者の死肉や魔力を喰らって永遠の若さと美貌を得る事。」
真美「何百年生きているか、想像もつかない」
キャピーン キャピーン キャピピピピーン
真「これは・・・」
亜美・真美「「だめ、新たな眠り姫が生まれてしまう!」」
真「眠り姫・・・?それはおとぎ話・・・いや、あの金髪のアイドルのことじゃないのか?」
亜美「そう、確かに美希は封印されていた。でも、眠りについた理由は違う」
真「どういうこと?」
真美「美希は他のアイドルと戦い、持てる魔力の全てを使い尽くして敗れた。すなわち、今のツインテールの娘と同じ状態になった」
亜美「かろうじて生きていたけれど、そのままでは貴音に喰われてしまう。友人であるそのアイドルが貴音から美希を守るために封印したんだ」
真美「もっとも、貴音によって強制的に能力を解放されていた美希は、昔の記憶を失い、破壊衝動と吸魔衝動の権化となってしまったけれど」
真「そんな過去が・・・」
亜美「うん。そしてこの光、これはアイドルが覚醒したときの光だよ」
真「まさか・・・千早!?」
真「くそっ、ボクはいったいどうすれば・・・」
雪歩「・・・・・・」
真「そうか、まだ雪歩は助かるかもしれないんだ。まずは雪歩を安全な場所に移動させないと・・・」ヒュッ
真美「・・・この戦い、どうなるんだろう・・・」
新校舎前
真「伊織・・・?」
伊織「真・・・やよいが、やよいが・・・」グスッ
真「うん、双子から聞いた。そして、こっちは雪歩が・・・」クッ
伊織「えっ、雪歩はアイドルじゃないのに、どうして・・・」
真「聞いていないのか?凄まじい力を持ったアイドルが復活したこと、そのアイドルが雪歩の魔力を吸収したこと、そいつと同じように無理やり力を解放されたやよいは、恐らくは吸魔衝動を抑え、そのまま魔力を使い果たした事・・・何も分からないのか?」
伊織「聞いてないわよ、そんなこと。詳しく教えて!」
真「ああ・・・・・・・・・・・・というわけなんだ」
伊織「そんな・・・じゃあ私はとんでもないことをしてしまったってことじゃない・・・」
真「伊織、今は自分を責めるときじゃない。ボク達にはすべき事がある。」
伊織「すべきこと?」
真「そうだ。まずは雪歩とやよいを安全なところに運ぶんだ。まだ死んだって決まったわけじゃない」
伊織「そっか・・・そうよね」
真「そして戦うんだ」
伊織「化け物みたいなアイドル相手に!?」
真「確かにボク達は力不足かもしれないけど、そいつと戦ってる千早を助けることならできるかもしれない」
ギュワアアァァアアァァァア
伊織「漆黒の光・・・?」
真「聖堂の方だ・・・一体なにがあったっていうんだ!?」
新校舎屋上
貴音「オマエラノワカサヲヨコセェェッェ」
千早「なんなのよ、あの化け物・・・」
春香「わずかだけど、貴音の魔力を感じる・・・後はドス黒い感情の集まり・・・」
美希「いきなり現れて・・・なんだかわかんないけど、消えればいいって思うな!『オーラ!』」フルパワー
貴音「『しーるど』」パキン
美希「うそ、全然効いてない!?」
貴音「『おーら』」フルパワー
千早「・・・っ『シールド』!」フルパワー
ドゴオオォオォオォン
千早「うそ・・・『シールド』を貫くなんて・・・」ハァハァ
春香「なんて威力、なの・・・」ハァハァ
貴音「クギャアァァ」
亜美「貴音・・・あんな姿に・・・」
真美「あずさの黒いところまで吸ってしまったんだね」
亜美「この戦い、貴音が倒れれば全ては終わる」
真美「でも、真美達じゃ勝てない・・・」
亜美・真美「「勝てるとしたら、アイドルしかいない!」」
真「でも、見守る事しかできないわけじゃない」
伊織「きっとあるはずよ。私達にできること」
美希「さすがに、あの強さは反則だって思うな」
春香「でも、私達が力を合わせれば勝てるはず」
千早「この美希と協力するしかないっていうの・・・?」
美希「だからって、このミキが負ける分けないの!このミキがぁ!」
春香「あの時と同じ・・・激情に押しつぶされて魔力が枯渇しかかってる」チュゥ
美希「!!??」
春香「私の魔力を分け与えたから、少しはラクになるはずだよ」
美希「どうして・・・」
春香「お願い美希、力を貸して
美希「どういうことなの?」
春香「貴音を倒すには美希の力が必要なの!もう一度覚醒できる美希の力が!」
美希「何を言ってるの?アイドルが覚醒できるのは1度だけ。しかもそれですらできる人は限られているんだよ?」
春香「うん。普通はそう。でも、美希に魔力を分けたときに感じたの。美希の中には、まだ眠っている魔力がある。それを解放できれば、まだ勝ちの目はある!」
美希「・・・わかった。やってみるの。ミキもあいつには負けたくないの。でも、決着はちゃんとつけるからね?」
春香「うん。この戦いが終わったら、ちゃんと決着をつけよう!」
美希(イメージ・・・あの時は無理やりだったけど、今が見えているように・・・今の、少し先の、美希を!!)
美希「見えたの!」
キャピーン キャピーン キャピピピピーン
春香「美希・・・やった!」
千早「髪が茶色く、短くなっていく・・・」
千早「美希は確かに覚醒したけど・・・このままじゃ『シールド』に防がれるだけよ」
美希「確かにその通りだね」
春香「私に考えがあるの。体、預けてもらってもいい?」
千早「ここまできたら、今更断ったりなんかしないわよ」
美希「その通りなの。負けないんでしょ?」
春香「うん。まず、私が囮になって相手の攻撃を誘う。そして、千早ちゃんに少しの間でも受け止めてもらうの。その隙に美希が『オーラ』を放って相手の『シールド』をひきつけたところで、私が本体に切り込むわ」
千早「相手の『シールド』をかわすためにはここまでしないといけないのね」
春香「攻撃に魔力を咲いてもらわないと・・・多分簡単に広域『シールド』展開してくるでしょ」
美希「そうだね・・・春香、危ない役だけど任せたの」
春香「まかせて!」ヒュッ
貴音「ワカサ!ワカサァァアァ!!『オーラ』」
千早「春香に当てさせはしない!『シールド』」ウケトメッ
美希「千早も長くはもたないはず・・・一気に決めるの、春香!『オーラ』!!」
貴音「グゥゥゥゥウ『シールド』」
春香「この隙、もらったよ!!!『ブレイド』!!」
貴音「『ブレイド』」ガキィン
春香「なっ・・・」
美希「異種魔法三方向同時展開!?そんなこと可能なの!?」
春香「くぅ、もう少し、もう少し火力があればっ・・・」
真「伊織、あの子に魔力を送るんだ!ボク達にできる最高のことだ」パアァ
伊織「わかったわ」パアァ
亜美「亜美も!」パアァ
真美「真美も!」パアァ
春香「力が、みなぎってくる・・・?」
春香「負けない、負けられない」
春香「届け、私の『ブレイド』!」ドスッ
貴音「グギャアアァァァァアアァァl」シュウゥ
千早「やった!」
美希「貴音が消滅していく」
真美「これで平和になる」
亜美「よかったよ」
千早「私達、勝ったのね」
美希「やったね、春香っ」
春香「うんっ」
エピローグ
今回の事件でメチャクチャに壊された学校の修復が終わった後、春香と美希は過去の出来事を話してくれた。
数百年の歴史を誇るt65学園、二人とあいつ・・・貴音、そしてあずささんは、なんと一期生だというのだ。
あるときに、貴音とあずささんは、永遠の若さと美しさを手に入れるべく、他の生徒の魔力を肥大化させて、本人や他人の魔力を枯渇させ、高槻さんや雪歩のようになってしまった生徒の血肉を喰らっていたという。
魔力によって精練された肉体にはそれほどのエネルギーが宿っているらしい。
この話を聴いた瞬間、さすがの私でも嫌悪感を頂かずに入られなかった。
そしてあるとき、春香と美希を覚醒させたのだが、この二人はあまりに強大な潜在能力を持っていたために、貴音達の手には余ってしまった。
あずささんが貴音を裏切った事もあり、美希は魔力を枯渇させ、貴音は瀕死の重傷を負ってしまう。
すでに新のアイドルとして覚醒していた春香は、友人が喰われるのを恐れ桜堂の地下に封印、旧校舎を立ち入り禁止区域とし、だれも近づけないよう先生に進言すると、貴音と共に旧校舎に残った。
この時すでに美希は自我を失っていたが、今回の事件で再覚醒することで、自我を取り戻したらしい。
そして、どうやらアイドルとして覚醒すると、魔力を無理やり行使しない限りは、不老の体を得るという(自然死はないが、外傷などで命を落とす場合はある)
ちなみに、全てが終わった後、高槻さんと雪歩は目を覚ました。
真と伊織は泣いて喜んでいたけど、実は悪人だったあずささんや貴音が化けていたティーチャー律子、そして貴音に喰われてしまった我那覇さんはもう戻ってこない。それは、とても悲しい事だった。
学校は修復し、私達は再び日常の中に身をやつす。
新しい仲間、春香と美希と共に。
了
あとがき
どうして眠り姫のSS用設定書き上げた当日に、次の劇場来場者特典が眠り姫の設定集だって知らなきゃならないんだ(血涙)
久しぶりにそんな理由でものすごく落ち込んでます。
なので、配布され始める今日の9時までに書き上げねばと急ピッチで仕上げた結果がこれです。効果音と叫び声難しい
今までにない短い・駄文・超展開と三拍子そろっている上に、目標の時間に間に合っていないという・・・
展開がおかしすぎてもはや設定考えた本人が読み返してもわけの分からない状況になっています。
もっとちゃんと作りこみたかった・・・設定含めもろもろ中途半端すぎる
なお、ところどころキャラ間の呼称がおかしいことになってますが、劇中劇ってことでわざとやってます。
次回はキサラギのオリジナル設定版を予定してます。こっちはしっかり作りこんでいるのでまだ読める文章になるはず。
とりあえず、せめてキャラ設定の断片だけでも遺しておきます。
公式設定が出た今、どれだけ意味があるのかはわからないけれど。
千早
特別クラスの一人。本来は春香ともう少し濃密な関係を持ってから美希と戦う予定だった。
能力は『シールド』。アイドルとして覚醒する前でなお美希の『オーラ』を防ぎきる防御力を持つ。また、虚飾所的な展開も可能。
伊織
特別クラスの一人。プライドが高く、自分がアイドルになるためなら手段を問うまいとしている。やよいおり。
能力は『サンダー』。両手から電気を発生させ、投射したりそのまま格闘戦を行う
やよい
特別クラスの一人。もっとも成績が悪く、基本魔術の、対象浮遊ですら満足に扱えなかった。
能力は『ストロング』。自身の筋力を増大させる。つまりは戸愚呂弟であり腕っ節のやよい。
真
特別クラスの一人。熱血漢で雪歩とは相思相愛。だが、アイドルになるべく、恋愛関係への発展は拒んでいる。
能力は『ブレイド』。魔力の剣で白兵戦を行う。
雪歩
特別クラスの一人。真を恋愛対象としてみているが、中々気持ちを言い出せずにいる。
能力は『バレット』。光弾を無数に作り出し、発射する。
響
特別クラスの一人。基本的にぼっちだが伊織達とつるむ。とりあえず死にキャアの方向で。
能力は『サモンメイト』。魔力を意思をもった動物の形に精製する。
あずさ
特別クラスの一人。数百年前から生き続ける女性。能力者の血肉を喰らい、若さと命を保ってきた。貴音とは共通の目的を持って協力関係にあったが、美希び暴走を機に貴音を裏切った。
能力は『テレポート』。自身と自身の触れている人間を任意の場所に瞬間移動させる。
律子
貴音が『コピー』によって化けたティーチャー。本人は遥か昔に貴音に殺されている。
貴音が生徒を油断させるために使う姿であり、都合のよいようにアイドルを選んでいる。
貴音
旧校舎生徒の一人。あずさ同様数や九年前から行き続ける少女。あずさに裏切られて死に掛けてしまい、以来旧校舎に身を隠している。それからはあずさに復習するべく生きてきた。
最終的にはあずさの魔力を取り込み、更なる美貌を手に入れようとするが、響によって邪魔をされて術式を乱してしまい、異形の姿となる。
能力は『スティミュラント』。対象の能力を覚醒させる薬剤や、対象の能力を身につけることができる薬剤を生み出す。
また、亜美の『トリック』、真美の『コピー』を身に着けているため、実質ほとんど全ての能力を使用可能
亜美
貴音と共に暮らす少女。正体は貴音やあずさから学生を守るための特派員である。年齢不詳。貴音に一度破れている。
能力は『トリック』。体は本人のままで、対象の能力を使用可能である。
真美
貴音と共に暮らす少女。正体は貴音やあずさから学生を守るための特派員である。年齢不詳。貴音に一度破れている。
能力は『コピー』。対象の姿と能力を自分のものとする。悪癖もコピーされるため、トリックの上位互換ではない。
春香
旧校舎生徒の一人。数百年前から生きながらえるアイドル。貴音とあずさを監視するために旧校舎に身を潜めている。
自身が覚醒する事でアイドルが陥る魔力枯渇すること克服した。美希とは親友。貴音やあずさから美希を守るために、桜堂に封印した。
能力は『ブレイド』。真の能力と同名だが、その力は春香の方が数段上である。
美希
桜堂に封印されていたアイドル。眠り姫。歴代最強。
貴音に能力を覚醒させられ、破壊衝動と吸魔衝動に支配されてしまう。
しかし、さらに覚醒する事ができる歴代最強のアイドルであったため、春香の協力もあり、それによって自我を取り戻す。そのため、デフォルトで二つの能力を持っている。
能力は『サイズ』魔力の鎌で白兵戦を行う。『オーラ』自身の魔力を放射状や直線状に発射する。威力は相当高い。
最後になりましたが、読んでくださった方、支援くださった方、ありがとうございました。
まいどお約束の注意点です。
まとめサイト・まとめwikiへの転載の折には誤字修正含む改変はご遠慮ください。
また、「殺す」を「●す」等とするような書き換えや「セクハラ」を「セ クハラ」とするようにスペースを入れることもご遠慮ください。まあ、こんなSSを乗せるまとめサイトがあるかどうかは疑問ですが。
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