ほむら「その馬鹿を極める」【スクライド×まどか☆マギカ】 (466)

【スクライド】と【魔法少女まどか☆マギカ】のクロスssです。

基本台本形式ですが、それだけだとキツイ時には地の文入ります

・まどマギは世界改変後、スクライドは美形が裏切られた後からのスタートです

・設定改変多少あり

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367903073





その少女、愚か者

その男、大馬鹿者―――





ロストグラウンド ホーリー本部、頂上


ギャラン=ドゥ「ムカツク野郎どもだァ。タイムマシンで全員過去に送ってやるッ。
そして俺は未来を支配するッ!!!照準セ―――ットォ!!!」ウイイィィン

君島「クッ!!!」

ギャラン=ドゥ「皆逝っちまいなァ!ははははははは...」

カズマ「逆転のォ...」ドドドド

ギャラン=ドゥ「は...?」

カズマ「ハイブリットォォォ!!」ドガン

ギャラン=ドゥ「しまった!!タイムビームの射線が...」

カズマ「ツレションしようぜアルターさんよォ!!」

ギャラン=ドゥ「貴様ァァァッッッ!!!」




カズマ「じゃあな、かなみ......」ニッ

かなみ「カ.........カズく―――――ん!!!」

*************************

タイム空間

ギャラン=ドゥ「クソッ...なんてことをしやがるっ!」

カズマ「ケッ!人を見下してやがるからこうなるんだよ!」

ギャラン=ドゥ「いいかげん離せ、このバカ男がァ!」ギュルルル

カズマ「させっかよ、撃滅のハイブリットォォォ!!」ガキィン!

ギャラン=ドゥ「クッ、弾かれた...!?」

カズマ「貰ったぁ!くらいやがれええぇぇぇ!!」

*************************





まどかの契約により、私の長いループは終わりを告げた

この世から『魔女』という存在は消え、魔法少女たちの願いは絶望で終わることは無くなった

―――その代償として、『鹿目まどか』が存在していた証は消えてしまった

私を残して、彼女は行ってしまった

彼女が存在しないこの世界で、私はもう、戦う意味を見失い始めていた

ほむら「ハァ...ハァ...」

魔獣「キシャア!」ブゥン

ほむら「ぐっ...!」

ほむら(...どうやらここまでのようね)

結局、私はなにも掴めなかった。自分の願いも、大切な人も、なにも...

ここで死んで、彼女に会えるなら...それもいいかもしれない

魔獣「グググ...」

今ある魔力を全てあの魔獣にぶつければ、もう楽になれるのだろう

ほむら「もういいよね、まどか...私、頑張らなくても...」

私が諦めかけたその時だった







「反逆のハイブリットォォォ!!!」



あの男は現れ...否、降ってきた

そして、この男の登場から、運命の歯車は再び動き始めたのだった―――

――――――――――――――――――



カズマ「...あぁ?どこだよ、ここ」

俺は確かにあのアルター野郎をぶん殴ろうとしてた筈だ

けど、実際に殴ってたのはなんか変なアルターで、あの野郎じゃなかった

カズマ「逃げやがったなあの野郎!どこ行きやがった!?」

辺りを見まわしてみるが、アルター野郎はどこにもいやがらねえ

だが、その代わりに目についたのが、倒れている一つの人影

そいつは女だった。長い黒髪で、制服をきた女だ。

女は気絶していた。見れば、全身傷だらけでボロボロだった

だが、俺にはそんなこと関係ねえ

カズマ「オイ、起きろあんた!あのアルター野郎を見なかったか!?」

軽くゆすったり、頬を軽く叩いてみたが、そいつは一向に目を覚まさなかった

カズマ「...ちっ、起きねーか。仕方ねえ、他をあたるか...!?」ザワッ

女を地面に寝かせた瞬間、全身の毛が逆立つ感覚がした

この感覚は...いつも味わっているあの感覚だ!

つい、顔がにやけちまう

そうだ...これは...

「ほむらに何しやがった...!」

俺に向けられた殺気だ!

今度現れたのは、槍を持った赤毛の女だった。心地いい殺気をとばしてきやがる

カズマ「なんだ、てめえは。こいつの仲間か?」

「だったら、なんだってんだよ!」

俺の返答も待たずに女は槍を突き出してきた

カズマ「おっと!へへっ、いきなりやってくれるじゃねーか。嫌いじゃないぜそういうの!」

「うるせえ、ほむらをあんな目に遭わせやがって...!ぶっ殺してやる!」



ガキィィィン!

小気味いい金属音が鳴り響いた

俺のアルターと女の槍がぶつかり合った音だが...

カズマ「なっ...!?」

「腕が...変わった...!?」

カズマ(ハイブリットじゃねえ...!?どうなってんだ!?)

一旦距離をおいて、体制を立て直す俺と女

カズマ(なんでハイブリットが使えねえんだ?ワケがわからねえ...)

―――だが、そんなこと関係ねえな

「あんたのそれ...なんなんだよ...?」

カズマ「さあな。今はどうでもいいだろ、そんなこと」

そうだ、今はケンカをするだけだ。

アイツが売った、俺が買った。だからアイツをボコる。ただそれだけだ

カズマ「いいから、続きをやろうぜ。アレの続きをよぉ...!」ギリリ

「......」ジャキッ

***********************

タイム空間

ギャラン=ドゥ「なんとか成功してよかったぜ『人間ワープ』...しかし危なかった...さすがの俺様も、あれは焦ったぜえ...」

ギャラン=ドゥ「しっかし、いつになっても過去に着かねえなぁ...未完成だったのかァ、あのタイムマシン?」

ギャラン=ドゥ「まあ、どっかの時代には着くだろうからよォ、のんび~りと待つとするかァ...ん?」

ギャラン=ドゥ「なんだ...ありゃあ?」

***********************

杏子「おりゃあああっ!」

カズマ「オラアァァッ!」

ガキイイィィン

杏子(くそっ...押し負ける...!こいつ、なんてパワーだ!)

杏子の槍の穂先に、ピシリとヒビがはいる

カズマ「まだ終わっちゃいねえぞ、双撃のシェルブリットォォォ!」ガシュン

杏子(もう一発!?やべえ、槍が―――)

ヒビのはいった槍の穂先は、カズマの拳に耐え切れず

―――バキイイィィン

砕かれてしまった

杏子「ぐあっ...!」

その衝撃に耐え切れず、吹き飛ばされる杏子

カズマ「もういっちょう!追撃のシェルブリッ...!?」

追撃を試みたカズマだったが、ふと、足元に違和感をおぼえる

なんだこりゃ?そう思う間もなく、それはカズマの身体を縛り上げた

「そこまでにしてもらえるかしら」

杏子「邪魔するなマミ!こいつはほむらを...」

マミ「落ち着きなさい、佐倉さん。あなたらしくないわ」

見れば、杏子もカズマと同じように、黄色のリボンで縛られていた

カズマ「あんたもそいつのお仲間か?」

マミ「ええ、そうよ。でも、勘違いしないで。私はあなたと争うつもりはないわ」

カズマ「なら、コイツを解きな」

マミ「...もう、佐倉さんと戦わない?」

カズマ「あぁ?...まあ、いいさ。あんたのせいで萎えちまった。それに、俺の本当に殴りてえ奴はあいつじゃねえ」

マミ「......」


シュルリ

杏子「おい、マミ!なんであいつのを解いたんだよ!」

カズマ「...随分とアッサリ信用するんだな」

マミ「別に、信用したワケじゃないわ。ただ、無駄に争う必要がないだけよ」

杏子「なに言ってんだよ、そいつは――」

マミ「彼女を傷付けたのは彼じゃないわ」

杏子「はぁ!?あたしは見たんだぞ、あいつがほむらを...」

マミ「傷つけていたのを見た?私には、彼女を起こそうとしてただけのようにも見えたけど」

杏子「そ、それは...」

マミ「美樹さんの件から、あなた、自分で思ってるより冷静じゃなくなってるわよ」

杏子「......」

マミ「まあ、私も最初は彼が暁美さんを倒したと思ったけれど...治療してみてわかったわ。
あの怪我は魔獣につけられたものよ。そうよね、キュゥべぇ」

QB「そうだね。ほむらの怪我からは、微量だが魔力が残っていた。
確かに、その男は不思議な力を持っているようだけど、魔力は感じられない。
わかったかい、杏子?」

カズマ「ネコが喋った?...あぁ、そいつとさっきのがアンタの能力か」

マミ「えっ、キュゥべぇが見えるの?」

QB「...へえ。まさか、第二次成長期の少女以外で僕を知覚できるとはね。
君は一体何者なんだい?」

カズマ「何者もクソもねえ。俺はただのネイティブアルターよ」

マミ「ネイティブ...アルター...?」

QB「なんなんだい、それは?」

カズマ「何言ってんだ?てめえらもアルター使いだろ」



マミ「アルター使い?」

QB「興味深いね。詳しく聞かせてくれるかな、君のこと」

マミ「暁美さんもつれて帰りたいから...私の家でどうかしら」

カズマ「...そういや、なんか腹減ってきたな。なんか食わせてくれねえか?」

マミ「いいわよ。暁美さんを助けてくれたみたいだし」


杏子「あたしを無視して話を進めてんじゃねえ!てか、解け!」ジタバタ

――――――――――――――――――
マミホーム


マミ「ロストグラウンドに、アルター使い、それにタイムマシン、ねえ...」

カズマ「んだよ、その信用できませんってツラは。おっ、コレもうめえな」モグモグ

杏子「食いすぎだ、てめーは」

マミ「現実味がないというか、なんというか...」

QB「けれど、有り得ない話じゃないよ。事実、カズマの能力はこの世界にはないものだ。
カズマの話も、一つの仮説として成り立つよ」

マミ「そう言われても...」

ほむら「うっ...」

杏子「おっ、マミ!ほむらが起きたぞ!」

マミ「...!暁美さん!」ダキッ

ほむら「と、巴マミ...?それに杏子...?」

マミ「よかった、無事で...本当によかった...」ギュウウ

ほむら「ちょ、くるし...っ!」

ほむら(私、魔獣と戦ってて...そうだ!)

ほむら「確か、変な男が魔獣を殴り飛ばして、それに巻き込まれて...」

カズマ「誰が変な男だ」

ほむら「!?」ビクゥ

杏子「まあ、起きたらこんなガラ悪いのがいたらビビるよなぁ」

マミ「安心して、彼は敵じゃないわ」

ほむら「えっと、この人は一体...」

マミ「そのことなんだけど...混乱せずに聞いてね?」

ほむら「?」

マミ「アルター能力って...知ってる?」

ほむら「あ、アルター能力?」

―――――――――――――
ロストグラウンド  ホーリー本部、頂上


かなみ「カズくん...」グスッ

君島「カズマの野郎...無茶しやがって...」

箕条「大丈夫ですよ。彼は死んでなどいない」

かなみ「本当に...?」

箕条「カズマの信念は、あの程度では砕けたりしない。それはずっと傍にいたあなた達の方がわかっている筈です。そうでしょう?」

君島「そうだ...そうだよな。なんせあいつは反逆者で...俺の相棒だもんな。信じようぜ、かなみちゃん。あいつの反逆をさ!」

かなみ「うん...私、信じる。カズくんが生きてるって。絶対に帰ってくるって!」

劉鳳「......」

水守「劉鳳?どうしたの、そんな難しい顔をして?」

劉鳳「い、いや、なんでもない」

シェリス「...実はね、カズマがタイムマシンを殴った時、劉鳳は咄嗟にアルターを送りこんだの。
でも、それからなんの音沙汰もないらしくて...」

劉鳳(どういうことだ...?絶影が破壊されたわけでもなく、過去へ飛ばされたというわけでもない...。
だが、絶影からはなにも感じとれない...存在すら...まるで、俺と絶影のリンクを絶ち切られたかのように...)

劉鳳「...シェリス、水守。悪いが、少し静かにしていてくれ」

水守「え、ええ」

劉鳳「......」

目蓋を閉じ、劉鳳は感覚を研ぎ澄ます

―――余計なことを考えるな。

アルターとは己自身

―――今はただ、集中だけをしろ

何者であろうが、他者がアルター使いとアルターを完全に分離させるなど不可能なことだ

―――もっとだ、もっともっと...もっと!

滝の様に流れる汗を拭うこともせず、劉鳳はひたすら集中だけをする



―――捉えた!



絶影の存在を認識し、感覚を移すことができた劉鳳。

絶影【劉鳳】(なんだ...ここは...現実のものとは思えない程、心地いいような、息苦しいような...ッ!)




彼が感じとったものは―――




絶影【劉鳳】(あれは...桃色の光...?違う...あれは...)



劉鳳「少...女...?」

―――――――――――――

マミホーム

マミ「...以上が彼の話よ」

ほむら「」ポカーン

杏子「その様子だと、あんたも知らなかったみてえだな」

ほむら「ええ...初めて聞くことばかりよ。正直...信じられないわ」

カズマ「信じる信じねーはあんたらの好きにすりゃあいい。どっちだろうが俺には関係ねーことだ」

QB「カズマが不思議な力を持っている以上、それを信用するしかないんじゃないかな」

カズマ「......」

マミ「う~ん、いまいち釈然としないけど...」


ほむら「それで、あなたはこれからどうするの?」

カズマ「とりあえず、あのアルター野郎をぶっ飛ばす。その先のことなんざ知らねえ」

マミ「ご飯とか家は...」

カズマ「テキトーにやるさ」

マミ「そう...あの、どうせだったら、ここに泊まっていかない?」

杏子「はぁ!?正気かよ、マミ!」

マミ「なにかおかしなことを言ったかしら?」

杏子「当たり前だろ。こんな奴置いといたら、おまえが(色んな意味で)食われちまうぞ。なによりあたしが嫌だ」

カズマ「てめえと一緒なんざこっちから願い下げだ!」

杏子「そりゃこっちの台詞だっつってんだろ!」


ギャー ギャー ドカッ バキッ

マミ「うふふ。二人とも、もうあんなに仲良くなっちゃって」

ほむら「どうしたらあれが仲良く見えるのよ」

杏子「とっとと出て行きやがれ!」ボロッ

カズマ「ケッ、てめえに言われるまでもねえ!こんなとこ、さっさとおさらばしてやるよ!」ボロッ

バタン

マミ「あ、ちょ、ちょっと!...行っちゃった」

杏子「ほっとけ、あんなやつ。それに、ほむらのことはあたし達だけの方が話しやすい」

マミ「...そう...ね」

QB「......」

マミ「さて...暁美さん、ちょっといいかしら」

ほむら「...なにかしら?」

杏子「なにかしら、じゃねえよ。お前、最近どうしたんだよ」

ほむら「最近...?」

マミ「自覚していないみたいね。あなた、最近いろいろとおかしいわよ。
今回もそう...一人で無茶したり、戦ってる最中になにか考え込んだり...」

ほむら「......」

杏子「やっぱり...前にアンタが言ってた『まどか』のことなのか?」

ほむら「ッ!」

杏子「...あたしはその『まどか』ってのを知らねえけどさ、それのせいで戦えないってんなら、忘れちまった方が」

ほむら「うるさい!」

マミ「暁美さん...?」

ほむら「あなた達は、何も知らないから...だから、私にあの子を忘れろなんて言えるのよ!」

ほむら「あなたたちにわかる!?守りたいものを何一つ、一時も守れなかった私の気持ちが!
誰にも知られることなく独りで戦い続けているあの子の気持ちが!」

ほむら「わかるわけないわよね、だってあなた達は忘れてるんだもの。あの子の想いも、存在も、なにもかも...」

杏子「...おい、ほむら。あんたなに言って...」

ほむら「...ごめんなさい。あなた達が悪くないことくらいわかってるわ。これはあの子が望んだことだもの...」

マミ「ねえ、暁美さん。悩んでるんだったら、私たちに話してくれないかしら。一人で抱えこむよりは、大分楽になると思うから」

ほむら「結構よ。相談したところでどうにかできるわけじゃないし、それに...どうせ、信じるわけがない」

杏子「なんだと、てめえ。なんでそんなことが言えるんだよ」

ほむら「今までの統計よ...もう、放っておいてくれないかしら。ちょっと疲れたわ」

杏子「てめえ...!いい加減にしろy「待って、佐倉さん」

マミ「...そうね、暁美さん。今日はここで解散にしましょうか。今日は色々あったし、私も疲れたわ」

ほむら「......」ペコリ

バタン

杏子「いいのかよ、あいつを放っておいて」

マミ「下手に刺激をするより、落ち着いてから話し合った方がいいと判断したまでよ」

杏子「けど、もし魔獣に襲われたら...!」

マミ「...ほんとうにあなたらしくないわよ、佐倉さん。暁美さんよりも、まずは自分を落ち着かせなさい」

杏子「~~ああもうっ!わかってるよ!」

マミ(...せめて、彼女の言っていた『まどか』について何かわかれば...)

マミ「ねえ、キュゥべぇ。あなた、『まどか』についてなにか...あら、キュゥべぇ?」

――――――――――――――――――――――

ムカツクな、ああムカツクぜ。

ここにきてムカツクことばっかりだ。

なんか知らねえが、ハイブリットは使えねえ。アルター野郎は居やがらねえ。

あの杏子とかいうのもなんかわかんねえけどムカツクし、あいつと八つ当たりみてえなケンカをした俺自身にもムカツク。

だが、それ以上にムカツクのは―――

QB「やあ、カズマ。ちょっといいかい?」

カズマ「...誰かがつけてくる気配はしてたが、よりによっててめえかよ」

コイツの、見下したような目だ

QB「君に頼みたいことがあって来たのだけれど」

カズマ「知ったこっちゃねえな。てめえの用件叶えたところで俺に何の得がある?」

QB「ヒドい言い様だね。僕は君の能力をもう一度見たかっただけなんだけど。
さっきも言った通り、君の能力はこの世界に存在しないものだからね」

カズマ「俺からしたら、魔法少女だの、魔獣だの...てめえらの方が胡散くせえんだけどな。
特にてめえだ、耳毛野郎」

QB「僕のことかい?」

カズマ「ああ。てめえはあのアルター野郎と同じ匂いがするんだよ」

QB「君の話していた『ムカツク敵』のことかい?僕は人類に敵意はないし、支配しようとも思っていない。
それに、本体がソウルジェムになることも事前に話した上での合意によって契約してるんだ。
むしろ、君たち人間にかなり譲歩しているつもりなんだけれど」

カズマ「ケッ、どうだかな...」

やっぱ、コイツと話しているとイラつくだけだ。

何かねえか、俺を楽しませてくれるモンは。満足させてくれるモンは―――

魔獣「ゴアアァァ...!」

カズマ「...あぁ?」

―――――――――――――――――――


今夜の件でハッキリとした。やはり、私はマミと杏子を仲間と思うことができない。

確かに、彼女達は私と仲間だったのだろう。けれど、それは私ではなく、『まどか』を知らない私だ。

彼女達からすれば、今の私は、『まどか』というわけのわからないものを信奉する異常者に映っているに違いない。

それでも、私がこの世界に甘んじればマミ達ともきっと仲間になれる。

まどかもそれを望んだ筈だ。




なのに、何故?

彼女の望みを叶える気になれないのは...なんで?

ほむら「わけがわからないわ...」

どこぞの白い契約者のような台詞を口にだしてみても、答えなんてわからなかった


―――――――――――――

魔獣「ガアアアァァ!」

カズマ「クッ、ハハハハハッ!」

これよ、こういうのを待ってたんだよ!

憎しみだとか悲しみだとか、余計なモンが何もねえ。

あいつらは理由もなく俺を殺そうとする、俺はあいつらに抗う。

悪党はこいつら、そんでもって俺はただのチンピラだっ!

魔獣「ブルアアアァァァ!!」

カズマ「精々楽しませてくれよ。衝撃の...シェルブリットォォォ!!」

魔獣「グ...ググッ...」シュウウウ

カズマ「足りねえなぁ...」

退屈はしねえ。数もそれなりにいたし、つまらなくはなかった。

だが、足りない。こんなものでは満足できない

カズマ「...どこだ。どこにいやがる、あのアルター野郎...!」




QB(なるほどね...これで、アルター能力がどのようなものなのか知ることができた。
おそらく、この能力を応用すれば...)

今回はここまでで。

とりあえず、軽い状況整理と簡単なキャラ紹介
いらない人はスルーしといてください

『カズマ』

甲斐性無しのロクデナシのアルター使い。
タイムマシンにより、ほむら達のいる時間軸へ。ハイブリットが使えないのは、この世界にアルター粒子(仮称)が少ないから。
杏子には喧嘩腰で、QBが嫌い。右腕のシェルブリットは、感情によって能力が変わる

『暁美ほむら』

鹿目まどかを救うために頑張ってきた魔法少女。
まどかと会うことができないので、傷心&精神的疲労がヤバイことに。
使える武器は爆弾と、いくつかの拳銃のみ

『巴マミ』

お姉さん的立ち位置の魔法少女。
現在は、病みぎみのほむらと冷静じゃない杏子の二人に気を配るため、お疲れ気味。
主な必殺技は『ティロ・フィナーレ』

『佐倉杏子』

利己的な魔法少女だったが、美樹さやかに影響されて、若干正義に目覚める。
現在は巴マミと一緒に暮らしており、盗みなどもやっていない。
なぜかカズマに突っかかってしまう。

『キュゥべぇ』

通称QB。少女と契約して、魔法少女を作りだすのが仕事。
あの手この手で契約を迫ることはなく、事前に軽い説明はしておく。
感情がなく、契約した少女がどうなろうと、基本的に干渉はしない



『劉鳳』

己の正義を信じるアルター使い。カズマとの仲は、アニメ版よりはだいぶいい。
現在、アルター絶影が、謎の空間にて漂流中...?

『ギャラン=ドゥ』

マーティン・ジグマール(美形)のアルターが最終進化し、自立したもの。
自我を持ち、全アルターの中でも最強の実力者。現在はタイム空間にて...?

『鹿目まどか』

QBとの契約により、『円環の理』になった。
彼女を知覚することは誰にもできないし、彼女が誰かに干渉することもできない、魔法少女だけの救世主。

『美樹さやか』

逝ってしまったわ、円環の理に導かれて。

スクライド側の基本設定は漫画版ですが、時々アニメ版の設定も反逆してくる...かも。農家のおばちゃんとか。
まどマギ側は外伝組が出る予定はありません。出るにしても名前だけとかちょい役くらいだと思います。
続き投下します

――――――――――――――――――

翌日 教室

教室に入り、席に着き、いつも『まどか』が座っていた席をみつめる

でも、やっぱり彼女はそこにはいなくて、そこには知らない人が座って、皆とお喋りしている。

『鹿目まどか』はどこにも存在しない。だから、こんな世界に私が居る必要もないのに...

どうして私は生きているのだろう。

まだ私には家族やマミ達がいるから?それとも、まどかが守ろうとしたこの世界を守るため?

わからない...どうして私は...

仁美「ほむらさん、お昼ご一緒しましょう」

ほむら「...ええ」

まどかもさやかもいないこの教室では、友達といえる人間は志筑仁美と上条恭介だけとなっていた

仁美とさやか、そして前の『私』。この三人で仲良くしていたそうだ

別にこのことは大した問題じゃない。仁美やさやかと仲良くできた時間軸もあったし、まどかの代わりに私が入ったと思えば、今までとなんら変わりない

ただ一つ、大きく違うことといえば...

仁美「最近、マミさんたちの調子はどうですか?」

ほむら「大丈夫よ。グリーフシードもまだあるし、美樹さやかの件からも大分立ち直ったようだし」

仁美「それはよかったですわ。もう、私の知らないところで大切な人がいなくなるのは嫌ですから」

そう、仁美も上条恭介も、私達が魔法少女であることを知っているのだ

今までこの二人は魔法少女と関わったことは少なかったし、関わったとしても決して良い方向には進まなかった

もちろん、いざこざはあったらしいが、それでもこの世界では『魔法少女』と『人間』の境界線を越えて二人は友達になっていた

...あの娘が求め続けてきた絆、それが今ここにある

それはとても素晴らしいことの筈なのに、心から喜べない。

―――まどかの望んだものが全てあるこの世界を、どうして喜べないのだろう

ほむら「ほんとうに...わけがわからないことばかりだわ」ボソッ

仁美「?なにがですか?」

ほむら「...いいえ、なんでもない」

ねえ、教えて、まどか

――――――――――――――
公園

カズマ「...チクショウ」

俺は、疲れた身体を休めるために、ドカッとベンチに腰を下ろす

一晩中探し回ったが、どこにもあのアルター野郎の手がかりは無かった

なんで出てきやがらねえ。ビビッて腰が引けちまったか?

なんだっていい。早く出てきやがれ。


早く早く早く早く早く―――――――――!




杏子「なにやってんのさあんた?」

カズマ「...何しにきやがった。ケンカの続きか?」

杏子「ちげーよ、バカ。んな魔力の無駄使い、やってられるかっての」

カズマ「じゃあ何しにきたんだよ。なんの用も無しにわざわざ来たってのか?」

杏子「そんなわけねーだろ...ちょっと聞きたいことがあってさ。得体のしれないあんたなら知ってるかも、って思ったんだよ」

カズマ「俺に聞きたいことだぁ?」

杏子「その前に...」ガサゴソ ヒュッ

パシッ

カズマ「...リンゴ?」

杏子「食うかい?」

――――――――――――
ロストグラウンド 某所

君島「やっほー、桐生さん」

水守「いらっしゃい、君島さん。それにかなみちゃん」

かなみ「あの...劉鳳さんの調子は...?」

水守「イマイチ進展がないみたい...本人はあと一歩と言ってるけど...」

かなみ「そう...ですか...」シュン

君島「そんな落ち込むなって。あの馬鹿は殺したって死なない奴なんだからさ」

かなみ「でも...カズくんの手がかりが掴めるのなら、私だって何か...!」

君島「それは俺だって同じだ。だからここに来たんだろ?」

劉鳳「クッ...何故だ...何故絶影とのリンクを繋ぎ直せない!?」ハァ ハァッ

シェリス「ねえ劉鳳、少し休んだ方が...」

劉鳳「いや...もう少しで掴めそうなんだ...もう少しで...」

劉鳳(一度は繋ぎ直せたのだから、できる筈...。何が足りない...!?俺には、何が―――)



コンコン

水守「お邪魔していいかしら?」

シェリス「いいわよ――」

かなみ「お、お邪魔します...」

君島「よっ、差し入れ持ってきたぜ」

劉鳳「ああ。すまないな」

君島「いいってことよ。...それより、何か収穫はあったか?」

劉鳳「いや...あれ以降何も掴めん」

君島「...なあ、俺達に協力できることって何かねえかな」

劉鳳「...現状、俺のアルターしかあの空間にアクセスできん。タイムマシンのコントローラーは、
ギャラン=ドゥごと過去へ送られてしまったからな...」

君島「そうか...チクショウ...!」

君島(...なあ、カズマ。お前、無事なんだろうな?無事だったらよ...早く帰ってきやがれ。
俺もかなみちゃんも、信じて待ってるからよ...)

―――――――――――――
公園

カズマ「『まどか』か...聞いたことねえな」シャリシャリ

杏子「少しもか?なんだっていい。人間じゃなくてもいいから、何か心当たりはねえか?」

カズマ「ねえな。そもそもロスト・グラウンドじゃ、他人の名前なんざいちいち覚えてられねえよ」

杏子「そうかい...邪魔したね。何か手がかり見つけたら教えてくれよ。あたしもアルター野郎っての見かけたら教えてやるからさ」

カズマ「おい、リンゴ忘れてっぞ」

杏子「そいつはくれてやるよ。あんた、金なんざ持ってないんだろ?」

カズマ「...他人の施しは受けねえ。と、言いてえが、残すのも勿体ないしな。貰っといてやるよ」

杏子「...フンッ」

――――キィン

杏子「...!おい、カズマ。今すぐここを離れろ。急いでだ」

カズマ「はぁ?なんでだよ」

杏子「昨日話した魔獣だ。それも、いつもの倍は迫って来てる」

カズマ「魔獣...ああ、あの変な坊主頭達か。へっ、おもしれえ」バァン バァン バァン

杏子「戦うつもりかよ、あんた」

カズマ「あいつらとのケンカは退屈しないですむ」

杏子「...どうせ、引っ込んでろって言っても聞かねえんだろ?」

カズマ「当然のパーペキだ!」

杏子「ハッ、精々足引っ張んじゃねえぞ!」

カズマ「そいつは俺の台詞だ!」

カズマ「来やがったな...!」

魔獣「ゴアアアッ!」

カズマ「まずは一撃!先制のシェルブリットォ!」ガァン

魔獣「ギイイィィ...!」シュウウ

カズマ「へっ、まず一匹...」

魔獣2「」ブンッ

カズマ「おっと!数が多いだけあって、簡単にはいかね...」

杏子「余所見してんじゃねえ!」シュィン

杏子が結界をはり、カズマの背後まで迫ってきていた光線を遮った


魔獣3「ギッ!」キュイイイン

カズマ「そういや、てめーらには飛び道具があったっけなあ」

杏子「いいか、バカみてえに突っ込むんじゃねえ。相手の動きをよく見極めたうえでだな...」

カズマ「嫌だね!てめえにはてめえの戦い方があるように、俺には俺の戦い方がある。
目の前に壁があるんなら俺は...」

魔獣3「ギィエッ!」ピシュン

魔獣の光線がカズマ目掛けて発射されるが、カズマはお構いなしに突き進む。

それがカズマの戦い方であり信念であり誇りであるから

カズマ「この拳で突き崩してやるだけよぉっ!信念のシェルブリットォォォ!!」

―――それ故に、弾丸は曲がらない!

杏子「ったく、少しは人の言う事きけっての...」

文字通り、バカの一つ覚えみたいに突っ込むあの男の姿を見てポツリと愚痴を零す

―――そういえば、あいつもあたしの言う事なんざちっとも聞きやしなかったな

あの馬鹿でお節介でお人よしなあいつも...

杏子(って、なんでカズマを見てさやかのこと思い出してんのさ)

重ね合わせてんのかね、あいつとさやかを

魔獣4「」ピシュン

カズマ「ぐあっ!...へへっ、どうした、そんなもんじゃ俺は倒せねえぞ。もっと楽しませろよ、なあおい!」

光線を避けようともせず、ただただ突っ込んでいく。まるで戦い自体を楽しむように。

その姿を見てあたしは確信したよ、あいつはさやか以上の馬鹿だって

杏子「...ま、そういうのも嫌いじゃないけどね」

魔獣5「グオオオォォォ!」

杏子「さてと...そろそろあたしも動くとするかな」



カズマと杏子に群がる魔獣達だが、相手は歴戦のアルター使いに大ベテランの魔法少女。

そんな二人の相手になど、なる筈がなかった

魔獣「」シュウウゥ

杏子「これで終わり、っと」

カズマ「...やっぱ物足りねえな」

杏子「はぁ?あたしの獲物も何体かくれてやったじゃねえか」

カズマ「ありゃ、てめーが手こずってただけだろーが」

杏子「て、手こずってなんかないっての。それを言うならあんただって、あたしが何度あの光線を防いでやったと思ってんのさ」

カズマ「ケッ、あんなもん、喰らったろところで痛くも痒くもねーよ」

杏子「だからってわざわざ受ける必要もねーだろ、バカ」

カズマ「誰がバカだ、てめえ」

杏子「あんた以外に誰がいるよ」

カズマ「喧嘩売ってんのか!?」

杏子「はぁ?あんたが最初に売ってきたんだろうが!」

カズマ「てめえだ!」

杏子「あんただ!」

「「......」」グヌヌヌ


カズ杏「「上等だコノヤロー!!」」ダッ

今回はここまでで。
最低でも、週に一回は投下していくくらいのペースでやっていきたいと思います。
調子いい時はガンガンいきます
なんとか叛逆の方が始まる前に反逆し終えたい...

公式の設定的には、魔獣の瘴気が魔女の結界の代わりになってるってことでいいんでしょうか?
違ったら、このスレ内ではそういう設定ということでお願いします
投下します

―――――――――――――――

放課後


仁美と別れ、私は一人帰路についた

思えば、この時間軸では欲しかったものが次々と手に入っている

例えば、さやかと仁美

確かにこの二人とは敵対か無関係の両極端がほとんどだったが、私が魔法少女になる前、まどかと一緒に助けてくれたのは事実だし、
なにより、まどかを含む四人で行動できた時は純粋に嬉しくて楽しかった

それに、カズマという謎のイレギュラー。

アルター能力だかなんだか知らないが、少なくとも相当の能力であることは間違いない

もし、まどかが契約する前に彼が現れていたら、もしかしたら―――



ほむら「...随分と歩いたものね」

今更無駄な考察をしながら歩いていたせいか、家とは程遠い河原まできてしまった

気付かないうちにここまできてしまうのだから、マミ達に心配されるのも無理はない

自嘲気味にため息をつき、家に向かおうとするが、視界の端に見覚えのある背中を捉えたため、足を止めた

ほむら「あれは...カズマに、タッくん...?」



―――――――――――――――
数刻前


俺は苛立っていた

杏子とのケンカは、マミの乱入により再びうやむやになり、さらにそこからマミの家で小一時間はするお説教。

温厚な俺でも、そこまでされては腹が立つのは仕方ないこと

しかし、反論しようにも、圧迫感にも似た謎の感覚に襲われて、言葉を詰まらせてしまった。

その感覚は、強いていうなら、かなみが世話になっている農家のおばちゃんが放つオーラにも似たような...

カズマ「だぁぁ~、クソッ!」

どこともしれぬ河原に腰を下ろし、気持ちを落ち着けるために寝そべった

―――最も、それだけで気が晴れるなんざ思っていないが


「ウエエェェン!」

カズマ「......?」

「パパぁ~、パパぁ~!」

カズマ(ガキ...迷子か)

「ふえええぇぇ~ん!」

カズマ「......」スクッ

カズマ「よう、坊主。どうした、そんなに泣いて」

「ふぇ...?」

カズマ「父ちゃんはどうしたんだ?」

「パパ...僕、置いて、ろこか行っちゃった...」グスッ

カズマ「そうか。...なあ、父ちゃんは好きか?」

「?」

カズマ「父ちゃん、嫌いか?」

「...ううん、らい好き。らい好き!」

カズマ「そりゃ良かった。だったら、父ちゃんを信じてやりな。お前を置いてくような奴じゃないってな」

「うん!パパ、信じる!」

カズマ「へっ。ま、こいつでも食って待ってな。そうすりゃ、父ちゃんが迎えに来るだろうからよ」

「わぁい、リンゴ、リンゴ!」

現在

カズマ「......ふわぁ~」アクビ

タツヤ「~♪」カキカキ

ほむら「...意外ね、あなたが子ども好きだなんて」

カズマ「あぁ!?誰だ...って、えっと...ほむら、だったか?なんか用か?」

ほむら「......」

ほむら「ねえ、カz「まろか!」

ほむら「えっ...?」

タツヤ「まろか!まろか!」

カズマ「まろか?」

タッくんが地面に描いていたのは、紛れもなく、あの娘だった。

魔法少女の恰好をした、私のヒーローで恩人で、そして、私が生きている限り、もう会うことのできない...大切な友達。

ほむら「うん...そうだね。そっくりだよ」ジワァ

カズマ「......?」

タツヤ「あう?」キョトン

タッくんは涙ぐむ私をまじまじと見つめ、私のリボンにそっと手を伸ばした

だが、それは彼の父に妨げられ、タッくんがまどかのリボンに触れることはなかった

智久「こら、タツヤ。女の人の髪を引っ張っちゃだめだぞ」ヒョイ

タツヤ「パパぁ、まろか、まろかまろかぁ!」キャッ キャッ

詢子「すみません、うちの子が迷惑かけたみたいで...」

ほむら「い、いえ、そんなことありません」ゴシゴシ

詢子「タツヤ、お兄さんとお姉さんにお礼は?」

タツヤ「にーちゃ、ねーちゃ、ありがと!」

カズマ「もう迷子になるんじゃねーぞ、坊主」ガシガシ

タツヤ「あい!」

智久「本当にありがとうございました。お礼といってはなんですが...これを」

カズマ「おっ、ドーナツ!いいのか、おっさん?」

智久「ええ。お礼ですから」

カズマ「へへっ、サンキュー!うん、めちゃうめえ!」モグモグ

手を振り去っていく親子に、手を振り返しながらその姿を見届ける

ああやって、三人で仲良くこの時期まで生きていることさえ、まどかが契約しなければ有り得ないことだった

―――だからこそ、あそこにまどかがいないことがもどかしい

本来はいる筈の...いなければならない彼女がいない

でも、まどかも消え去ったわけではなく、私達が感じ取れないだけで、私達のことを見守ってくれている。傍にいてくれている。

だから、私はまどかの守りたかったこの世界を守るために生きる。希望に満ち溢れたこの世界を。




―――だって、私達には見えなくてもしっかりと繋がっている絆があるから!




違う。そんなものは戯言だ。私はまどかの生きる未来を掴めなかっただけ。
結局、私は何も変えることができなかったの...?


カズマ「そういやあんた、さっき俺に何か聞こうとしてたよな?」モグモグ


ほむら「......」

カズマ「何か用事があったんじゃねえのか?無いなら無いでいいけどよ」モグモグ

カズマ...私達とは全く違う時間軸から来た男...この男なら、私の求めている答えを知っているの...?

藁にもすがるような気持ちで、私は口を開く

ほむら「...ねえ、カズマ。私は...この世界で、どうすればいいの?」

カズマ「...はぁ?」

――――――――――――――
マミホーム

杏子「なあ、マミ...そろそろ降ろしてくれてもいいんじゃねーか?」

マミのリボンにより、逆さづりにされた杏子が呻く

マミ「あと30分くらいしたらね」ズズッ

杏子「そんなこれ見よがしに紅茶すするなよ...」グウウゥゥ

マミ「私はね、喧嘩すること自体は悪くないと思うわ。喧嘩するほど仲がいいっていうし」

杏子「仲良くねーよ!」

マミ「はいはい。でもね、喧嘩する場所くらいは考えてほしいのよ。そもそも...」クドクド

杏子(また始まっちまった...さっきも小一時間カズマとあたしに説教したのに...)

―――キィン

マミ「!ソウルジェムが...」

杏子「魔獣の反応だな!?よし、急いで向かおう!」

杏子(やっと降ろして貰えるぜ...今回ばかりはナイスタイミングだな、魔獣さんよ)

マミ「どうやら、凄い数のようね...行くわよ、佐倉さん!」ダッ

杏子「おうッ!...っておい、マミ!?まだあたし縛られたままなんだけど!?」

――――――――――――

私はカズマに語った。まどかに救われたこと、まどかを救うために幾つもの時間軸を旅してきたこと。

そしてその結果、まどかは契約し『円環の理』になってしまったこと。

自分でも愚かだと思う。何故、身近なマミや杏子には話せず、イレギュラーとはいえ、赤の他人のこの男には話しているのだろうか

カズマ「下らねーな」

今まで黙っていたカズマが、そう言って溜め息を吐いた


下らない?何がだ?

あの娘の祈りが?それとも私の今までの闘いが?

一体何が下らないと...



カズマ「要は、あんたはそのまどかって奴に頼りきってるから進めねえってだけだろ?」

ほむら「え...?」

カズマ「さっきから聞いてりゃ、何かと理由をつけてまどかまどかまどか...結局、あんたはまどかによっかかってるだけなんだよ」

ほむら「......」

カズマ「約束のためだけに動いて、そいつが果たせなかったら、自分では何も決めようとしねえ。
まどかに嫌われたくないからまどかの意志に付き従って、何もかも我慢し続け愚痴ばっか零して、与えられたもんを受け取るだけ...
確かにあんたは責任をまどかに押し付けられるから楽かもしれねえな。でも」



カズマ「一生与えられるだけの人生はきっと―――辛いぜ?」

ほむら「...ッ!」


カズマ「あんたがやりてえことがあるんなら、好きにすればいい。んなこと俺に相談してんじゃねーよ」

ほむら「...ゎよ」ボソッ

カズマ「あぁ?」

ほむら「私だって諦めたくないわよ!でも...駄目なの。
私の願いは、闘いは彼女自身に否定された。だから―――」

カズマ「他人がどうこうじゃねえ。あんたがやるかやらねえか、ただそれだけだ!」

ほむら「......!」


ほむら「なら...あなたが私と同じ状況なら、どうするの...?」

カズマ「考えるまでもねえ。俺には俺の道があるように、まどかにゃまどかの道がある。
もしその二つの道がぶつかったんなら...」

カズマは、その力強く握りしめた拳を私に向けて突き出し、強く言い放った

カズマ「ダチだろうが肉親だろうが関係ねえ―――戦うだけだ!」



なんて身勝手な考え方だろう。

別に相手を否定しているわけじゃない。約束を放棄しろと言っているわけでもない。

ただ、己の信念を貫き通すために突き進む。それを邪魔するなら例え誰が相手だろうと容赦しない。

前しか見ていない、愚かな考えだ。


ほむら「バカね...あなた」

カズマ「なんだと!?」

ほむら「でも...」

でも、何故だろう。この男の信念に、心のどこかで突き動かされている自分がいるのは

ほむら「ちょっと、羨ましいわ」

―――どこか、感銘すらしているのは

―――キィン

ほむら(!魔獣の反応...!)

カズマ「また、あの坊主頭達か?」

ほむら「わかるの?」

カズマ「あの赤毛と同じような表情浮かべやがったからな。なんとなくわかった」

ほむら「赤毛...杏子ね」

カズマ「俺はあいつらとケンカしに行くが...あんたはどうする?」

ほむら「......」

――――――――――――
美滝原 病院付近

魔獣「ギギギ!」

杏子「だぁ~~っ!うっとうしいなもうっ!」

マミ「数が多すぎる...佐倉さん、お昼の魔獣も数がこれくらいだった?」

杏子「もう少しマシだったと思う、ぜっ!」ドシュッ

マミ(何か元凶があるのかしら...でも、何故いきなり...)

魔獣「ガァウ!」ブンッ

QB「マミ!危ない!」

マミ「えっ?きゃあっ!」

杏子「マミ!大丈夫か!?」

マミ「え、ええ。たいしたことはないわ...でも...」


ゾロゾロ

杏子「チッ、囲まれたか...!」

マミ「こ、これはちょっとマズいんじゃないかしら...」

魔獣達「」キュイイィィン

杏子「お、おいおい...まさか、このまま一斉掃射ってわけじゃねえよな...」

マミ「...ッ!佐倉さん、とにかくソウルジェムだけでも守るのよ!」

杏子「あ、ああ!」

マミ(せめて、修復可能な程度には身体がもってくれれば―――)






「不様ね、巴マミ。それに杏子」

どこからか投げられた爆弾により、数体の魔獣が轟音と共に爆発し、それに周りの魔獣が巻き込まれ、倒れ伏す

そして、一つの人影がマミと杏子のもとへと降り立った

マミ「あ...!」

杏子「へっ...ようやく来やがったか」





ほむら「昨日、あれだけ私に言ったくせしてこの有り様なんてね」

マミ「暁美さん!」

ほむら「随分と素敵な恰好じゃない、杏子。何か考えごとでもしてたの?」

杏子「うるせえ。こちとら逆さ吊りとお説教喰らって疲れてんだ。少しはいたわれっての」

ほむら「それはご愁傷様。けれど、そんな程度で疲労するようでは、貴女もまだまだね」

杏子「だったら、体験してみるか?マミの特別お説教コース」

ほむら「遠慮しておくわ。私は叱られるようなことはしていないし」

マミ「なんにせよ、助かったわ暁美さん。ありがとう」

ほむら「...礼なんていらないわ」プイッ

マミ「なんだか久しぶりね、照れた時にちょっとだけそっぽ向くの」

杏子「...ははっ。何かすっかり調子戻したみてえだな、h「ほむらあああああぁぁぁ!!」

カズマは、凄まじい速さでほむら達の頭上を飛び越え、今まさに光線を放とうとしていた魔獣に向かっていき――

「オラアアアァァ――ッ!」

全力で殴りつけ、そしてその反動により、ほむら達のもとへ降り立った

ほむら「遅かったわね、カズマ」

カズマ「てめえ...誰のせいだと思ってやがる。俺を足蹴にして行きやがって!」

ほむら「あら、運んでくれたお礼はちゃんと言った筈よ」

カズマ「あれはてめーが勝手に背中に乗ってきただけだろうが!」

ほむら「そっちの方が早いって、あなたも認めたじゃない。でも...そうね。
いくらマミ達が危なかったとはいえ、足蹴にしたのは謝るわ。次からは気を付けるから」

カズマ「次はねえからな。つーか乗せねえ」

杏子「...またあんたかよ」

カズマ「あぁ?...またてめーか。俺の行く先々にツラ見せやがって」

杏子「バカかてめえは。どう見てもあたしの方が先に居ただろ」

カズマ「...会う度にバカバカ言いやがって。やっぱてめえとは白黒つけとかねえとなぁ...」ギリリ

杏子「ハッ、上等じゃねーか。こちとら、あんたには色々とムカついてんだ。その喧嘩、買ってやるよ」ジャキッ

魔獣達「ゴアアアァァァ!!」

カズ杏「「こいつらブッ飛ばしたあとでなあぁッ!!」」

マミ「もう...二人共先走っちゃって。まあ、なんだかんだいって連携して戦ってくれてるからそこまで困らないんだけどね」

ほむら「お互い、何があんなに気に入らないのかしら」

マミ「そう?むしろ私には、お互いに気に入ってる部分があるからこそ反発しちゃうんだと思うけど」

ほむら「同族嫌悪ってこと?」

マミ「そんなところかしら。まあ、本人達は自覚してないでしょうけれど。
それより私は暁美さんの方が気になるわ」

ほむら「私?」

マミ「ええ。昨日まではあんなに疲れた顔をしてたのに、今は随分とイキイキしているわ。なにか良いことあった?」

ほむら「別に...大したことじゃないわ。ただ...」

マミ「?」

ほむら「ちょっと、目標を思い出しただけ」

マミ「?...何にせよ、暁美さんが戻って来たみたいで嬉しいわ。そうね...これが終わったら、四人でお茶会でもしましょうか」

QB「僕は入っていないのかい?」

マミ「ご、ごめんねキュゥべぇ。五人の間違いだったわね」

ほむら「別にいいわよ、私にそんな気を遣わなくて」

マミ「いいの!私がやりたいだけだから」

QB「君は本当にお茶会が好きだね」




ほむら(別に、カズマの言葉で全てを吹っ切れたわけじゃない。それだけで吹っ切れるなら、始めから悩んでなんていない。

まだ私がやるべきことも、生きる意味もはっきりとは分かっていない。

でも、これだけは言える

―――私は、まどかに与えられるだけの世界に満足なんかしない。絶対に)

マミ「さて、そうと決まったら、早く済ませましょう」

マミ『佐倉さん!カズマさんを連れて離れて!』

杏子『なんで...まさかマミ、あれをやるつもりか!?』

マミ『ええ。幸い、グリーフシードは有り余ってるから。一気に蹴散らすわよ!』

杏子「カズマ、一旦退くぞ!」

カズマ「はぁ?なんで、逃げる必要がある。このまま叩き潰しゃあ...」

杏子「ごちゃごちゃ言ってねえで早く行くぞ!」ジャララ

カズマ「うおっ!?てめえ、引っ張るんじゃねえ!そして解け!」ズザザッ

リボンで足場を作り、マミは魔獣達の手が届かない程の高さまで走っていった。

ほむら(マミ...何をするつもり?)

そして、マスケット銃を次々に生成していく。

十、二十、三十...

ほむら「ちょ、ちょっと...どれだけ創るつもりよ...!?」

たちまち、空は数えきれない程のマスケット銃で埋め尽くされた

杏子『マミ、カズマは押さえつけた!思いっきりやってやれ!』

マミ「OK、わかったわ!速攻で決めるわよ!」

無数の銃口が、全て魔獣に向けられる。そして―――

マミ「パロットラ・マギカ・エドゥインフィニータ!!」

ほむら「なんて無茶苦茶な...」

杏子「マミの奴、さやかが逝ってからずっと銃を増やす練習してたからな。今じゃ五百はいけるって言ってたぜ」

ほむら「なら、早くあれ使えばよかったじゃない」

杏子「あれは銃とリボンの準備で結構時間かかるんだよ。だから、あたし一人しか魔獣の囮役がいない時には使えないんだ」

カズマ「...納得いかねえ。元々俺は、あいつらとケンカしにきたってのによ」

杏子「まぁ、いいじゃねえか。おかげで、魔獣と戦ったせいで疲れました、なんて言い訳できねえんだからさ」ニヤッ

カズマ「ハッ、それもそうだな。残念だったな、杏子さんよぉ」ギラッ

マミ「ふうっ、これで終わりっと...あら、あの二人、結局戦うわけ?」

ほむら「止めなくていいの?」

マミ「ここでやるなら止めるけどね。でも、美樹さんのときみたいに、一度ぶつかり合った方がいいんじゃないかと思って」

杏子「さて、ここじゃあ場所が悪い。どこか人気のないとこで...あれっ?」

カズマ「んだぁ?今更ビビッたのか?」

杏子「ちげーよ。なぁ、マミ。あんた何体か取りこぼしてねーか?」

マミ「いえ、全部倒した筈...あら、私のソウルジェムも反応しているわ」

ほむら「私のもよ。でも、瘴気は消え去ったから、取りこぼした筈はないのだけれど」

マミ「妙ね...」

杏子「ああ。ソウルジェムは反応してるのに、魔獣の姿が見当たらねえ。どうなってんだ...?」

マミ「キュゥべぇ、あなたはどう思う?」

QB「分からない...今までこんなことは無かったからね」

マミ「魔獣の新しい能力かしら...?」

QB「それは考えにくいね。何千年経っても、魔獣の能力はあまり変化しなかった。今更彼らが進化するのは不自然だ」

杏子「...!おい、マミ、ほむら!こいつを見てみろ!」

ほむら(嘘...なんでこれが...!?)

杏子が見つけたそれは、壁に突き刺さっていた

マミ「なにかしら、これ...グリーフシード?」

杏子「いや...あれは四角いやつしかねえんだろ、キュゥべぇ?」

QB「うん。大きさの違いはあれど、形状は変わらない筈だよ」

それは、どす黒い輝きを発していた

マミ(この形、どこかでみたような...いや、違う。見慣れているような...)

QB(これは...まさか)

ほむら(どうして、ありえない!だってあれはまどかが――)

マミ「?暁美さん...顔色が悪いわよ、大丈夫?」



杏子「なあ、ほむら、マミ、キュゥべぇ。なんかさ、これ...」

それを中心に、壁が黒に染められていく。そして―――





杏子「―――ソウルジェムに似てねーか?」

闇は、四人と一匹を飲み込んだ












「...来やがったなァ、『反逆者』...それに『魔法少女』...」

ヤマネエエエエェェェンンン!!







――――――――――――
ロストグラウンド 某所

劉鳳「クソッ...」ダンッ

シェリス「お、落ち着いて劉鳳!」

君島「気持ちはわかるけどよ、カリカリしてもどうにもならないぜ」

劉鳳「...すまない、二人とも」

かなみ「少し休憩しましょう、劉鳳さん。無茶して倒れたりしたら、嫌ですから」

劉鳳「...ああ」

シェリス「かなみちゃん、大分無理してるわね」コソコソ

君島「ああ。ホントは、カズマの手がかりを早く掴みたいと一番思ってるのはあの子だからな...
劉鳳もそれを分かってるから、あんなに無茶しちまうんだろうな...」

水守(あれから何一つ進展しない...何か、いい方法はないのかしら)

ガチャリ

箕条「どうやらお困りのようですね」フフフ

ハーニッシュ「......」

君島「箕条!ハーニッシュ!」

水守「ロウレスの復興はまだ終わっていない筈では!?」

箕条「はい...ですが、カズマの手がかりを見つけたいのは私達も同じ」

劉鳳「その自身に溢れた表情...何か策があるのか?」

箕条「ええ、あります。先程思いつきました」

かなみ「えっ!?」

箕条「フフフ...」ニヤリ

今回はここまでで。
どうでもいいけれど、最近magiaとmagmaを見間違えることが多いです

乙。
ほむらはブラックボウ(仮)じゃなくて相変わらず爆弾なのか

>>102
ほむらについては、矢を使っていたほむらの魂にループほむの魂が上書きされたので矢は使えず、まどかがいないので時間操作系も使えないって設定です
ちょこっとだけですが、投下します

カズマ「ちっ、どうなってやがる...」

ほむら「......」

QB「どうやら、マミと杏子とは逸れてしまったようだね」

ほんの一瞬だけ意識を奪われ、目を覚ました時には全てが変わっていた

眼前に広がる大量のお菓子に薬のビン詰め、お菓子に彩られた幾つもの別れ道や階段、お菓子の影から様子を窺っている一つ目の生き物...

どれもが現実のものとは思えない光景だった

カズマ「おい、耳毛。こいつはどういうことなんだ!?」

QB「僕にもわからない。今までにないケースだからね」

カズマ「ほむら!てめえはなんか...」

ほむら「...よ」

カズマ「あぁ?」

ほむら「これは、魔女の結界よ...でも、なんで...?」

杏子『おい、キュゥべぇ!どうなってんだよ、コレは!?』

QB『僕にもわからない。こっちにはカズマとほむらがいるけれど、そっちはどうなっているんだい?』

杏子『こっちはマミと一緒だが、クソッ!変なヒゲ達が鬱陶しくて仕方ねえ!』

マミ『暁美さん、あれを見た時顔色が変わったけれど、何か知っているの?』

ほむら『...今は話している暇がないわ。一先ずここから脱出しましょう』

マミ『脱出って...どうやって?』

ほむら『ソウルジェムの反応を追って、そこにいるものを倒して。遠慮も容赦もいらないわ...絶対に油断しては駄目よ』

マミ『わか――ザザッ―わ。あk――ガガッも――つけて――』

ほむら『巴マミ?どうかしたの?』

マミ『――――――』

ほむら(...?何か言っているのに、聞き取れない...)

QB「どうやら、テレパシーが繋がらない状況に陥ったみたいだ。これでは連絡もとれそうにないね」

ほむら「どういうこと?」

QB「わからない。でも、自然現象ではなく、人為的な妨害だと考えていいと思うよ」


ほむら(どうして、魔女が...?それに、魔獣の大量発生に、テレパシーの妨害...何かがおかしい。まさか...まどかの力が弱まっているの?
...いえ、今は考えている暇はないわね)

ほむら「カズマ、キュゥべぇ。詳しい説明は後でするから、早くここから...」

カズマ「......」

ほむら「カズマ?」

カズマ「...いや、なんでもねえ。とにかく、突き進めばいいんだな?」

ほむら「ええ。私から決して離れてはダメよ」

カズマ(何かの気配がしたが...俺の気のせいか...?)












「......」

スウッ

アンソニー「」ワラワラ

杏子「本ッ当にうっとうしい奴らだな!なんなんだよこいつら!?」

マミ「魔獣の一種かしら、ね!」バンッ

杏子「それにしてはグリーフシードも落とさねえけどな。あと、ソウルジェムの反応を追えって...多すぎねえかコレ!?」

マミ「ヒゲの子達は弱い魔力しか感じとれないから...暁美さんはこのいくつかある、強い反応を追えって言いたかったんじゃないかしら」

杏子「やっぱ、最初に合流した方がいいんじゃないのか?」

マミ「そうしたいんだけど...」


――――――――――――――――

QB「マミ達の魔力の波動を感じとりづらい?」

ほむら「ええ。テレパシーもだけれど、何故だか途切れ途切れになってしまうのよ。あなたは?」

QB「僕もそうだね。マミ達がどこにいるのか把握することができない。
さっき、君が言っていた『魔女の結界』ではいつもそうなのかい?」

ほむら「いいえ、そんなことはなかったけど...」

カズマ「んなことはどうでもいい。それより、まだ着かねえのか?」

ほむら「もうすぐよ。そして、この先に居るのはおそらく...!」



最深部

杏子「なんだ...ありゃあ?あれがほむらが倒せって言ってた奴か?」

ゲルトルート「......」

マミ「ちょっとグロイわね...」

杏子「早いとこ終わらせちまおうぜ、マミ」ジャキ

マミ「ええ!」

――――――――――

カズマ「あれは...ヌイグルミ?」

シャルロッテ「......」

ほむら(やっぱり...巴マミがあれと鉢合わせなくて良かったけど...時間停止が使えない今、どう倒そうかしら...)

カズマ「あいつをブッ倒せばいいんだな」

ほむら「ええ。...でも、一秒たりとも気を抜いては駄目。中から黒い恵方巻きのようなのが出てくるから、消え去るまで決して目を離さないで」

シャルロッテ「」ブルブル

カズマ「恵方巻き...なんだそりゃ」

ほむら「とにかく、グワッと出てくるから気を付け...」







シャルロッテ(恵方巻き)「」ニュルン

ほむら「なっ!?」

ほむら(今までは攻撃を受けてからだった筈...マズい、早く回避を――)







カズマ「しゃらくせえっ!!!」

ガッバァン!

ほむら「早ッ!!!」

カズマ「もう終わり...ッ!?」

ほむら「まだよ。こいつには何度か再生する能力がある」

シャルロッテ「」ニュイン

カズマ「ワンパターンなん...!?」ガンッ

拳を地面にうちつけ、噛みつきを空へ回避したカズマ。しかしシャルロッテは、その浮いたカズマの隙を突き、強力な頭突きをおみまいした。

カズマ「ぐっ...」

ほむら「油断するなと言ったでしょう」

カズマ「こんなの、大したことねえ」

ほむら「そう。なら、動けるわね。行くわよ、カズマ」

カズマ「おう!...って、てめえが仕切るんじゃねえ!」

――――――――――

タタタタッ

杏子「なんなんだよ、あいつは...!」ハアッ ハアッ

杏子「早く、ほむら達に知らねーと...ッ!?」





ドシュッ

杏子「カハッ...!」

杏子(こんなところで終わりかよ...すまねえ、マミ...あんたが命張ってくれたってのに...
逃げろ...ほむら...カズマ...こい...つに...は...かなわ...ね...)

シャルロッテ「」シュウウ

カズマ「これで終わりか?」

ほむら「ええ...」

ほむら(気のせいかしら...カズマのアルター、魔獣と戦っていた時よりも威力が上がっていたような...)

カズマ「...おい、あいつ倒せば脱出できるんじゃなかったのかよ。何も変わんねえぞ」

ほむら「少し待っていなさい。直に結界が崩れて...」









ゴッバァァァン

カズほむ「「!?」」

突如、カズマ達の後方で、轟音が鳴り響いた

もうもうと立ち昇る土煙。壁にできたクレーターには、人影も見てとれる

カズマ「なんだ!?」ケホッ

ほむら「一体何が...!?」

土煙が次第に晴れていき、視界を遮るものも消えていく

QB「あれは...」

そして、その人影は―――







紛れもなく、傷つき倒れた佐倉杏子のものであった

ほむら「きょ、杏子!」

すぐに杏子に駆け寄る三人

杏子の身体は、結界にのまれる前のそれとはかけ離れていた

全身は血で赤く染められ、腕はあらぬ方向に曲がっており、腹部には巨大な穴が空いている。

そして、彼女の胸元にある筈のソウルジェムは、どこにもなかった

ほむら「目を覚まして、杏子!」

魔法少女は、この程度では死なない

もしかしたら、杏子はソウルジェムをどこかに隠しているのかもしれない

そんな淡い期待をかけて、意識を取り戻すよう呼びかけるが、杏子が目を覚ますことはなかった

―――どういうこった?なんでこいつがこんな様になってやがる

確かにこいつは、どこかスカしたツラして、何かと突っかかってくるムカツク奴だった。

だが、こいつは強かった。ムナクソ悪いが、それだけは認めていた。

それがこの有り様だ。

...誰だ、俺とコイツのケンカを奪ったのは。

誰だ、一体誰が...

カズマ「聞くまでもねえよなぁ」

こいつをここまでやれるのは、あの野郎しかいねえ。

カズマ「こそこそ隠れてねえで出てこいよ!てめえなんだろ!?アルター野郎ォォォォォ!!」








「そうで――――――――――――すゥ!!」


シャキィィィィィ

ほむら「な、なに!?まぶしっ...!」

「改めて自己紹介させて貰うが...俺は元・マーティン=ジグマールのアルター...」






「ギャラン=ドゥ!!」

ヤマネエエエエェェェン!!

今回はここまでで。来週までに次を投下する予定です

再開します

ほむら(あれが、カズマの言っていた、『アルター野郎』...)

ギャラン=ドゥ「いよ~うゥ。久しぶりじゃあねーか、反逆者」

カズマ「昨日ぶりだけどな。だがよ、随分長いこと会ってねえ気分だぜ。てめえの所為でロクに寝てねえからな...!」

ギャラン=ドゥ「昨日...?ああ、こっちじゃそういうことになってんのかァ。まあ、どうでもいいかァ、そんなことは」

ほむら「あなたが杏子を!?」

ギャラン=ドゥ「そうですがァ」

ほむら「なら、巴マミは...!」

ギャラン=ドゥ「ちょちょいとやりましたが...なにかァ?」

ほむら「ふざけないで!」

ギャラン=ドゥ「真剣ですけどォ」

カズマ「なおさら悪い!」

ギャラン=ドゥ「オイオイ、そんなに睨まないでくれよォウ!!」

シュン



ギュン

ギャラン=ドゥ「悔しいけれどォ~~~♪俺に夢中かァ?」

カズほむ「「!」」

ほむら(い、一瞬で背後に...!?)

ギャラン=ドゥ「ギャラン=ドゥ~~~♪」

ド ガ ガ ガ ガ ガ

ギャラン=ドゥの猛攻により、吹きとばされるほむらとカズマ。

ほむら「がはぁっ!」

カズマ「グッ...同じ手段はくわねーよ!」

しかし、一瞬早く攻撃を察知したカズマは受け身をとり、すぐさま体勢を立て直し、反撃の弾丸をその腕に込める

ギャラン=ドゥ「ほおぉ~~う、ヤルじゃあねぇか」

カズマ「喰らいやがれ!反撃の...シェルブリットォォォォォ!!!」


ギャラン=ドゥ「だが甘えェ!!」バシイッ

カズマ「なっ...!」

ギャラン=ドゥは、あっさりとカズマの拳を左手で止めた

そして、右腕をドリル状に変化させ―――





カズマの右肩を貫き、アルターごと右腕を切り落とした

カズマ「ぐあああああああぁぁぁぁ!!!」

あまりの激痛に、カズマは叫び声をあげ、両膝を地につけてしまう

ほむら(つ...強い...)

ほむらは今まで、ワルプルギスの夜を倒すために、何度も命を賭けてきた

そして、賭ける度にワルプルギスへの恐怖に耐えれるようになった

だが、そんな彼女さえ動けなくなる程の、ギャラン=ドゥのその圧倒的なパワーに、ほむらは戦慄した

ギャラン=ドゥ「い~い様だなァ、反逆者ァ...」ニヤニヤ

カズマ「ぐぐっ...」

ほむら(勝てっこない...巴マミと杏子は死に、カズマはアルターを破壊された。なら、私達に出来ることなんて...)

ギャラン=ドゥ「ま、俺も無慈悲じゃあねえ。てめえらが負けを認めて俺の配下に加われば、許してやらんことも...」

カズマ「...調子こいてんじゃ...ねえぞ...」

ギャラン=ドゥ「あァ?」

フラつく足どりで、しかし、それでも折れることなく、カズマは立ち上がった

ギャラン=ドゥ「ほ、お~う。まだ抗うってか」

ほむら「逃げなさい、カズマ!勝てるわけがない!」

カズマ「やってみなきゃわからねえだろうが!」

ほむら「無理よ!だってあなた、右腕が...」

カズマ「アホ言ってんな!俺は...」バァン

カズマの叫びと共に、切り落とされた腕が粒子状に消失。

ギャラン=ドゥ「なっ!?こいつ...」

カズマ「『道理』を『無理』で押し通す!!『反逆者』だ!!」ドシュウッ

そして、粒子は再びカズマの右腕となり、たちまちシェルブリットを形作った

ギャラン=ドゥ「俺が切り落とした腕をアルター化...再々構成しやがった!」

カズマ「怒涛のシェルブリットォォォ!!」

――――――――――――

「......」

そいつは、横たわる少女を見つめていた。

横たわる彼女は、巴マミ。彼女の身体は、五体満足とはとても言えない悲惨な状態だった。

よほど怖かったのか、目を見開き、顔には涙の跡も見てとれた

そいつは、何を思ったのか、マミの顔に手をかけ

「......」

そっと、彼女の目蓋を閉じさせた

――ドズン

そう遠くない場所で、盛大な音が響き渡る

「...あっちか」

――――――――――――――――

ほむらは、その現状に、声を発することすら出来なかった。

ギャラン=ドゥに踏みつけられるも、全く抵抗できないカズマ。

果敢に立ち向かうカズマだったが、結果は―――惨敗。ただの一度も自慢の拳を当てることもなく、地に伏せてしまったのだ。

ギャラン=ドゥ「まぁだ息があるのかァ。しぶとい野郎だなァ、オイ」

足をカズマの身体からどけ、右腕をドリル状に変えるギャラン=ドゥ

ギャラン=ドゥ「じゃあな、反逆者!」

今度こそ止めだと、ドリルをカズマの頭にむけて放つその瞬間

カッ

閃光が、ギャラン=ドゥを包み込んだ

タタタッ

ほむら「はぁっ...はぁっ...」

ほむらは走る。ただひたすらに、わき目もふらずに走る

その背に、気を失っているカズマを背負いながら、ほむらは走る

切り札の閃光弾を使い、元来少ない魔力を出し惜しみすることなくほむらは逃走した

その速さは、並みの人間では追いすがることすらできないものだ

「おいお~い、俺を置いていくなんてつれねえじゃねえかよぉうゥ」

だが、いくら速かろうが隙をつこうが、『ワープ』の能力を持つ彼の前では全くの無意味である

ほむら「くっ...!」

ほむら(閃光弾は使ってしまった。カズマは戦闘不能。手持ちは手榴弾数発と拳銃を数丁だけ。どうする?どうする!?どうす―――)

ギャラン=ドゥ「チェック・メイトだ」







『そこまでだっ!!!』





ほむらとギャラン=ドゥの間に割り込み、ギャラン=ドゥのドリルを防ぐ影が一つ。

ほむら「あなたは!?」

上半身は人間を模し、下半身は蛇のようであるその構造。

ギャラン=ドゥ「なぜ貴様がここに!!?」

正義を連想させる青と白を基調としたその姿。その名は...





ギャラン=ドゥ「アルター、真・絶影―――!!」



――――――――――――――

ギャラン=ドゥ「まんまとやられちまったなァ...」

真・絶影の、空間をも切り裂く能力『断罪断』により、絶影及び、カズマとほむらは結界から脱出した。

したがって、この結界内に、生身の人間は誰一人としていない

ギャラン=ドゥ「あ~?殺すな、だって?分かってるって。けどよ、魔法少女は腹貫かれたくらいじゃあ死なねえんだろ」

しかし、ギャラン=ドゥは、まるで誰かと会話をしているかのように言葉を紡ぐ。

ギャラン=ドゥ「仕方ねえだろ、あっちが抵抗してくるんだからよ。それに...あんたの言いつけは守ったんだ。
これくらいは大目に見てくれていいだろォ」

そうブツクサ文句を垂れながら、ギャラン=ドゥは結界の奥深くへと姿を消した

その手に、赤と黄の二つのソウルジェムを持ちながら




QB「......」

スウッ

今回はここまでで。今更ですが、知久の漢字間違ってました。すみません。
とりあえず前の残りのキャラ紹介。いらない人はスルーしといてください

『志筑仁美』
一般人で魔法少女のことを知っている数少ない人間。魔法少女達とは友達

『上条恭介』
上に同じ。仁美とは付き合っていない

『鹿目詢子』『鹿目知久』『鹿目タツヤ』
まどかの家族。まどかのことは覚えていない。


『由詑かなみ』
カズマにゾッコンの同居人。八歳

『君島邦彦』
カズマの相棒。アルター能力は無い

『シェリス・アジャーニ』
劉鳳ガールズその一。アルター能力は、相手のアルターの力を吸収・増幅できる『エターナル・デボーテ』

『桐生水守』
龍鳳ガールズその二。

『箕条晶』
音を操るアルター使い。能力名は『サウンド・スタッフ』

『ハーニッシュ・ライトニング』
箕条の愛人。無口。アルター能力は『殲滅艦隊』


にゃんちゅうはでるのかしら



カイゼルフューラー=ジェネラルJr3世は出ますか?

グレートピンチクラッシャーの出番かなこれは

>>138
多分出ます。回想シーンくらいだろうけど
>>139>>140
そいつらは出ません。...多分

☆のマークは回想シーンってことでお願いします
投下します

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

過去に、誰かが言っていた。希望と絶望は差し引きゼロだと。

円環の理となって、まどかは全てを知った。

ほむらのことも、過去も未来も何もかも...全てを知った。

しかし、視える未来はいつも変わらなかった。

ほむらは、マミは、杏子は、魔法少女達は、どの時間軸においても蹂躙されていた

魔女でも魔獣でもインキュベーターでもなく―――他ならぬ、護ってきた人間たちの手によって。

時には争いの道具として、時には実験体として、時には畏怖すべき対象として。

形は違えど、魔法少女達が蹂躙される未来は変わらなかった

だが、まどかには何もできない。希望を信じたところで、祈ったところで何も変えれない。

そんな未来を視ているうちに、まどかの心は徐々に、しかし確実に壊れていった

そして、まどかに追い打ちをかけるように現れたのが...侵略者、ギャラン=ドゥ!

彼は全てを支配するために、まどかは魔法少女達を守るために、闘いの火蓋は切って落とされた。

概念空間

まどかは、ギャラン=ドゥに防戦一方だった。

確かに、まどかの魔力は無限に近い。しかし、その力はあくまでも魔法少女のためのもの。

魔女ではないギャラン=ドゥに対しては、効果が薄かった。

まどか(このままじゃ...こうなったら...!)

ギャラン=ドゥ「いい加減に...くたばりやがれッ!」

右手をドリル状に変化させ、まどかの腹部に向けて突き出す。

それに対してまどかは―――

―――ドズッ

避けることなく、正面から受け止めた。

ギャラン=ドゥ「勝った!まどか☆マギカ、完...!?」

まどかの腹部に刺さったドリルは引き抜けず、それどころか、次第に奥へと押し込まれていく。

いや、まどかの身体の中に取り込まれているのだ

まどか「これで...終わりだよっ!」

これは、概念の世界だからこそできる荒業。まどかの全身全霊を持ってして、全てを浄化するのだ

ギャラン=ドゥは、抗うことを許されず、その全身を吸収されてしまった


まどかに取り込まれてもなお、ギャラン=ドゥの意識は消え去っていなかった

ギャラン=ドゥ(クソッタレ、このままじゃあ完全に消えちまう!なんとかしてここから逃げねーと...
だが、どうやって...!)

ギャラン=ドゥの身体が消えていくと共に、様々な記憶が流れ込んでくる

願いを間違え、家族を失った少女、自らの祈りに裏切られた少女、自らの祈りのために絶望した少女、たった一人を救うために何もかもを捨てた少女。

そして、全ての魔法少女の絶望を引き受け、希望になろうとした少女...

ギャラン=ドゥに記憶を読み取る能力などない。しかし、取り込むということは、ギャラン=ドゥがまどかの一部になることを示す。

それ故に、ギャラン=ドゥはまどかの記憶を共有することができたのだ

ギャラン=ドゥ(こいつは...使えるかもしれねえなァ)

まどか「あと少し...」

もう少しでギャラン=ドゥを消し去れることに、まどかは胸を撫で下ろした。

常日頃から神経をすり減らしているまどかにとって、これほど強大で異質なパワーを相手にするのは苦でしかない。

しかし、ようやくそんな強敵からも解放される。そう、まどかは思っていた。

ギャラン=ドゥ『―――皆を幸せにしたくねえのかァ!?俺にてめえの力を譲れば、皆を幸せにすることができる!』

ギャラン=ドゥのその声を聞くまでは

まどか「な、何を...」

ギャラン=ドゥ『魔法少女の記憶...読ませてもらったぜェ。随分とえげつねえ目にあってきたみてえだなァ』

まどか「!」

迂闊だった。勝負を急ぐあまり、記憶を共有してしまうことを失念してしまっていた。

しかし、もうじき決着は着く。

ギャラン=ドゥの戯言だと、聞き流そうとしたが―――

ギャラン=ドゥ『役立たずのままで終わっていいのかァ?』

役立たず。

どの時間軸においても、まどかを悩ませ続けたその単語を無視することなどできなかった。

ギャラン=ドゥ『確かに、魔法少女は魔女にならなくなった。だが、それだけじゃねえか』

まどか「ち、違う!私は、魔法少女の祈りを絶望で終わらせたくなくて、頑張ってきたことを無意味にしたくなくて」

ギャラン=ドゥ『巴マミと佐倉杏子は、家族と共に生きたかったんじゃねえのか?暁美ほむらはてめえを救いたかったんじゃねえのか?
希望なんざもう終わっちまってる。そうじゃねーのかァ?』

ギャラン=ドゥ『てめえで結末を変えることが出来ないからって、目を背けてんじゃねえよ』

まどか「違う...私は...」

ギャラン=ドゥ『それに...てめえもわかってんだろ?お前の存在を必要としていない奴らなんざ、腐る程いるって』

ギャラン=ドゥ『必要とされてない存在は、役立たずと何が違うんだァ?』

まどか「......」

ギャラン=ドゥ『なんなら、お前の最高の友達に聞いてみろよ』

まどか「......」

まどか(ねえ、ほむらちゃん。私、間違ってないよね?ほむらちゃんの闘いを無駄にしてないよね?)

―――『鹿目まどか』はどこにも存在しない。だから、こんな世界に居る必要なんてない

まどか(私はいつでも皆を見守っているから。眼にみえなくても、絆はしっかりと―――)

―――違う。そんなものは戯言だ。結局、私はまどかの未来を変えることができなかっただけ

まどか(...私は、ほむらちゃんの役に立ってるの?)

―――私は、まどかに与えられるだけの幸せに満足なんかしない。絶対に

まどか「ほむら...ちゃん...」

本来のまどかなら、この程度で折れたりしないだろう。

しかし、今の彼女の精神はもはや限界寸前。何かにすがらずにはいられなかった。

だが、必要とされていないという思い込みは絶望に変わり、彼女のソウルジェムは、一気に黒に染まっていく

ギャラン=ドゥ(堕ちた――――!!!)ビバッ

マーティン・ジグマールという男は、劉鳳やストレイト・クーガー、蒼乃大気といった曲者揃いのHOLY部隊を何故纏めることができていたのだろうか。

本来は美形ある素顔を変えてまで得ていた威厳、奥底に眠るカリスマ性も要因の一つだろう。

しかし、それ以上に、彼は人の心理を突くのが得意だった。

相手の悩み・苦悩を即座に見抜き、そこを甘い誘惑によって誘いこむ。

そういった手法によって、彼はHOLY部隊の隊長という地位にまで昇りつめた。

そんな彼のアルターであるギャラン=ドゥに、一瞬でも心の隙間を見せれば、堕とすことはたやすい。

しかし、ここで二つの誤算が生じた。

一つは、彼女の魔力があまりにも強力だったため、ギャラン=ドゥには支配しきれなかったこと。

もう一つは、記憶を共有するということは、まどかもまた、ギャラン=ドゥの記憶を読み取れるということ

まどか(やっぱり...私、誰の役にも立てないんだ...)

いくらまどかが強力な魔力を持ち、概念と成り果てても、干渉できるのは魔法少女を導くことだけ。

さやかの結末、マミの家族の温もり、杏子の家庭崩壊、ほむらの闘い、この先に起きる悲劇...何一つ変えることができなかった。

まどか(やっぱり...私には無理だったのかなぁ...)

あんなにも愛してくれた両親と弟、友人達を捨ててまで選んだ道。

しかし、それは苦痛ばかりの道だった。

何度も泣きたくなった。心の中では後悔ばかりだった。

それでも、まどかは諦めなかった。自分は魔法少女達の希望だから。未来を切り開く希望はある筈だと信じていた。

だが、現状を変えることすらできない者に何ができようか。

結局、彼女の願いは、誰からも必要とされない、唯の自己満足で終わってしまうのだろうか

まどか(悔しいなぁ...)

故に、まどかは無意識に欲した。嘘も矛盾も飲み干す程の力を欲した。

その力で全てを変えるために。

まどかのその想いに応えてか、それとも唯の偶然か...それは、誰にもわからない。

だが、まどかは確かにそれを掴みとった。

掴みとったものは、たった六文字のアルファベット。

ソウルジェムが濁り、自分が消えていく中で、彼女は掴んだ六文字を呟いた。





「―――s.CRY.ed」

―――――――――――――――
概念空間

さやか「まどか、しっかりして!」

ギャラン=ドゥを取り込んでから、まどかは身体――概念に対して言うのもおかしなことではあるが――を震わせるだけで、
いくらさやかや魔法少女達が呼びかけても、ピクリとも反応しなかった

だが、状況は突然に、そして急速に変化する

まどか「――――――」

聞き取れない程のか細い声で、まどかが何かを呟いた。

しかし、さやか達がそれが何なのか理解する暇もなく

―――ゴウッ

さやかを含む魔法少女達は、皆吹き飛ばされた

さやか(...ちくしょう...)

さやかは己の無力さを呪った。

さやかが苦しんでいる時、まどかはいつも傍にいてくれた。助けてくれた。見捨てないでいてくれた。

だが、自分はどうだ。

まどかが苦しんでいる時、傍にいることすらしてやれなかった。

今もそうだ。

まどかに全て背負わせたくせして、傍にいるのに何もしてやれない。

こんな自分が、まどかの親友などと...胸を張って言える筈がない。

さやか「ちくしょおおおォォォォォ――――!!」



吹き飛ばされるさやかの視界の端に入るのは、青色と白色の装甲。

それが何なのかはわからない。

だが、考えるよりも先に、さやかはそれに向かって手を伸ばしていた。

かつて、自分が憧れた『正義』の象徴のようなそれに向かって

かくして、円環の理は消滅した。

いや、進化したといった方が適切だろう。

魔法少女だけでなく、生命体全ての救世主にも、かつてジグマールが夢みた、時系列を超えて全宇宙を支配する者にも、全てを壊すことが出来る者にも成り得るものに。

彼女は、神か悪魔か魔法少女か魔女かアルターか、それとも...










『―――ウェヒヒ!』


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

今回はここまでで。
スレ立ててからもうすぐ一か月か...

再開します

**********************************

『―――ガ、―――ノキボウニナル』

誰だ...?

『ワタシガミンナヲスクウンダ』

どこのどいつだ...?

『マミサントモ、ホムラチャントモヤクソクシタカラ』

俺に何かを回想させる...お前は誰だ?

何も分からねえ。けど、なんでだろうな...



『ワタシガ、ミンナヲシアワセニスルンダ』

こいつの考えは...気に入らねえ



とある廃屋

絶影『これで良し、と...』

重傷のカズマの手当を終え、絶影は一息ついた。

絶影『ごめんね、ほむら。もうちょっと早く着けてれば、カズマもこんな目には遭わなかったかもしれなかったのに』

ほむら「構わないわ。どうせ、この男は何を言っても止まらなかっただろうし」

絶影『でも、せめて杏子達と合流できていれば...』

絶影は、傍らに眠るマミと杏子の遺体を見て、申し訳なさそうに俯く

ほむら「死体が一つ増えただけよ。あなたごときにどうにかできる相手じゃない」

絶影『うっ、確かにそうかもしれないけどさ...もうちょっと言い方ってものが...』

ほむら「でも...あなたのおかげで助かったわ。ありがとう」

絶影『な、何か改まってお礼を言われると恥ずいな...』




ほむら「それより...あなた、本当に美樹さやかなの?」




絶影【さやか】(以後さやか)『だからそうだって言ってるじゃん。回復の魔法も使ったし、ソウルジェムも青色でしょ?』

ほむら「魔女化した...ワケではないのよね。なら、その姿は?」

さやか『話すと長くなるんだけどね。それに、詳しいことはあたしにもわかってないし」

――――――――――――――――――――――

結界内

QB「ふむ...やっぱりね」

マミと杏子が倒した魔女のグリーフシードに触れながら、キュゥべぇは考える

QB(これは、間違いなく魔法少女のソウルジェムだったものだ。それも、負の感情の溜まったね)

QB(でも、何故だろう?濁りきったソウルジェムは、その器ごと消えてなくなる筈...それに、魔女といったかな。
魔法少女を魔女にする理由も...)

ギャラン=ドゥ「やっぱてめえは残りやがったか、インキュベーター。俺は残ると思ってたぜェ」

QB「...君は、一体何が目的なんだい?」

ギャラン=ドゥ「別にテメーらには迷惑かけてねえだろ」

QB「いいや、困るんだ。君がもしこのまま魔法少女を狩り続けていれば、宇宙のエネルギー源が減ってしまう」

ギャラン=ドゥ「エネルギー源か...カハハッ!安心しな、俺の計画が進めば、エネルギーなんざ腐る程提供してやらァ」

QB「...それは本当かい?にわかには信じがたいけれど」

ギャラン=ドゥ「おうよ。お前さんにとっても悪い話じゃあねえ」

QB「それは興味深い。聞かせてくれるかな、君の計画というのを」

―――――――――――――――――――

さやか『あたしは、まどかに導かれてから全てを知った。
魔法少女の真実、あんたが何度も世界を繰り返してきたこと、まどかのこと...』

ほむら「......」

さやか『正直ね、やりきれなかったよ。確かにあたしは本当の願いを思い出せたし、自分の結果にも後悔はしなかった。
でも、その代償に、まどかには重すぎるもの背負わせて、頑張ってきたあんたは報われない...そんなのおかしいじゃん』

さやか『けど、あたしにはどうすることもできなかった。まどかが誰かを導く度に、傷ついていく様を見ていることしかできなかった』

ほむら「傷つく...?」

さやか『...魔女にならないことが、必ずしも希望になるわけじゃないってこと』

さやか『例えば、快楽殺人鬼や通り魔に、まどかがこの世で一番苦しむ上、残酷な殺され方をしたら、あんたはその犯人をどうする?』

ほむら「殺すわね。最も苦しむ残酷な殺し方で」

さやか『...そしたらさ、その犯人を殺すためにQBと契約したいんだけど...願いはどうする?』

ほむら「...どこにいても居場所を突き止めることができるようにするかしら。復讐は、自分の手でないと意味がない」

さやか『うん、大体の人は自分の手でって思うよね。じゃあさ、ソウルジェムは真っ黒、犯人も五体満足な状態の大ピンチだったら、どうしたい?』

ほむら「魔女になってでも殺し...!」ハッ

さやか『そういうこと。あたし達はたまたま、他人のためや生きるために願った人ばかりだったけど、世の中には復讐が希望になる魔法少女もいる。
そうなるとさ、その子を魔女になる前に導くことはその子にとってマイナスにしかならない時もある。身体ごと消えちゃうから証拠を残すことも出来ないし、次の魔法少女に繋げることもできない』

さやか『そういった子を導く時...あいつはいつも泣きながら謝ってたよ。どうして、魔女にならないことが希望にならない人もいることに気付けなかったんだって、後悔ばかりしていた。
でも、まどかの願いは、あいつ自身にもどうすることも出来なかった』

さやか『そうしている内に、まどかの目的は【皆を幸せにする】ことに変わっていった』

ほむら「まどか...」

さやか『そして、そんなまどかに追い打ちをかけるように、あいつが現れた...』

ほむら「...ギャラン=ドゥね」

――――――――――
結界内

QB「...なるほど。確かに、君の考えは素晴らしいね。効率もいいし、僕らにとって利益にしかならない」

ギャラン=ドゥ「そうだろゥ?イカしてんだろ、俺様」

QB「でも、そんなことは僕らにも不可能だ。君にそんな力があるとは思えないのだけれど」

ギャラン=ドゥ「俺じゃあねえさ。やってくれんのは...」

ズズズ

ギャラン=ドゥの背後の空間に歪みが生じる

ギャラン=ドゥ「噂をすればなんとやら、ってかァ?」

『おまたせ、ギャラン=ドゥ』

ギャラン=ドゥ「その様子だと...あいつらにはフラれたみてえだなァ」ケケッ

『...うん。でも、いいの。これでふっ切れたから』

ギャラン=ドゥ「?」

『...私は、まだどこか迷ってたみたい。でも、もう迷わない』

『私が死ぬ時は、私の信念が曲がる時だよ、ギャラン=ドゥ!』

ギャラン=ドゥ「...上出来だ」

――――――――――――――――――


さやか『あたしが話せるのはこれくらいかな。正直、あたしもよく分かってないんだ。わかってるのは、ギャラン=ドゥがまどかに何かしたってことだけ』

ほむら「あなたがその姿になった原因は?」

「そのことについては僕が説明してあげるよ、暁美ほむら、美樹さやか」

ほむら「キュゥべぇ...?」

さやか『おっ、久しぶりだね、キュゥべぇ。ていうか、あんた何か知ってるの?』

QB「君たちの魂はソウルジェムにあるだろう?だから、自分の肉体が無くても、魂のない肉体に魔法少女の波長が合えばそれを操ることができるんだ」

さやか『え~っと、つまりどういうこと?』

ほむら「...要は、ソウルジェムがあれば、死体を操れるってこと」

さやか『あー、そういうことね。え、じゃあ、これって誰かの死体なの?』

QB「僕の見る限りでは、それはアルターだろう。誰のものかは知らないけれどね」

QB「それより、こんなところにいていいのかい?彼女にかかれば、こんな廃屋なんてひとたまりもないだろう」

ほむら「それはどういう―――」



ピシャアアアァァン

さやか『あ、雷...』

落雷。そして、窓をガタガタと揺らす強風。空を覆いつくすドス黒い暗雲。

どれもが、自然ではありえない程唐突だった。

さやか『おっかしいなぁ、さっきまで晴れてたの...に...』

ほむら「どうしたの?美樹さやか」

窓に映る光景を見たほむらは固まった

それは、繰り返してきた時間の中で、一度もほむらが勝てなかったもの。

繰り返してきた時間の中で、見慣れてしまったその姿。


「ウフフ...アーハッハッハッハッハ!!!」

ワルプルギスの笑い声は、暗雲に立ち込められた街に響き渡った

ほむら「......!」

さやか『なんで...なんであいつが出てくるのさ!?』

QB「今まで君が闘ってきた魔女が出てきて、彼女は出てこないと本気で思っていたのかい?」

ほむら「ッ...!」

ほむら(第一に考慮すべきだった...いや、無意識の内に考えることを拒否していたんだ...ある筈がないって思い込みたかっただけだった!)

ほむら(時間停止も使えないうえ、まともな準備すらない...こんなの、勝てるわけ...)

QB「どうするんだい?彼女と戦うのはオススメしない。それに、君達もわかっているだろうが、魔女の復活には、ギャラン=ドゥが関わっている。
戦ったところで、いぬじn」グシャッ

「...ゴチャゴチャうるせえよ」

さやか『あんた、もう意識が!?』

カズマ「あんなウルセー笑い声聞かされて寝てられるか。出かけるぜ」

さやか『どこへ?』

カズマ「ヘッ、決まってんだろ!!アルター野郎がいるんなら、尚更だ!」

ほむら「...戦うつもり?」

カズマ「当然のパーペキだ!やられっぱなしじゃ気がすまねェ...借りは返す!」

ほむら「どうやって!?...あなただけでなく、マミと杏子でさえ勝てなかったのよ!?」

カズマ「ああ、確かに負けた。それも、完膚なきまでにな。だから俺は...」

右腕に覚悟と信念を込め、カズマは叫ぶ。

カズマ「あの野郎に勝てないという現実に反逆する!ただそれだけだ!」


ほむら(この男の一途な想い―――)

恐らく、カズマにとってはワルプルギスの夜などどうでもいいのだろう。

彼は、ケリをつけたいだけなのだ。それを邪魔するものはなんであろうと、蹴散らすだけ。

それがカズマの生き方であり覚悟であり、誰にも譲れない信念。それを止めることなど、誰にもできやしない!

ほむら(たぎる程に熱く―――!!)

さやか『...なら、あたしも行こうかね』

ほむら「な、何を言って...」

さやか『勝ち目が薄いなんてのは分かってるさ。でも、ゼロじゃあない』

さやか『それに、もしまどかがいるなら...きっとワルプルギスの所に現れる。少なくとも、手がかりくらいは掴めるかもしれない。
そうでしょ?』

ほむら「!」

さやか『あんたはどうする?あいつの怖さはあんたが一番知ってるから...無理強いはしないよ』

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

カズマ「あんたらも行く気かよ?」

さやか『逃げたところで何かあるわけでもないしね』

ほむら「何か問題でもあるのかしら?」

カズマ「ハッ、勝手にしな...」

さやか『ん!』スッ

カズマ「...なんだよ」

さやか『握手だよ、握手。一応、一緒に戦うことになるんだから、さ』

カズマ「...なんかキャラ違わねえか、劉鳳」

さやか『劉鳳?もしかしてこれの持ち主のことかな...ま、いいや。あたしは美樹さやか!よろしくね、カズマ!』

カズマ「...お、おう...?」

とある廃屋


誰もいなくなった廃屋。あるのは、佐倉杏子と巴マミの遺体。

そして、カズマに潰されたインキュベーターだけ。

QB「まさか、いきなり潰されるなんてね。彼はとことん僕が嫌いらしい」

新たに現れたインキュベーターは、カズマに潰された個体を処理していた

QB「暁美ほむら、君には本当に感謝しているよ。君の祈りが、ほんのちっぽけな少女を最強の魔法少女に成長させた」

QB「そして、概念として魔法少女達の希望になろうとしていた彼女を引きずりおろしたのも君だ。
もし、君がまどかのいないこの世界を受け入れ、まどかを肯定していれば、彼女がギャラン=ドゥに唆されることもなかった」

ワルプルギスの夜に動揺していた所為か、ほむら達は気づいていなかった。キュゥべぇの口ぶりが、未だほむらが話していない彼女の過去を、知っているかのようなものだったことに

QB「気付いているのかい?もうこの町は...いや、世界中が彼女にのまれつつあることに。君たちが立ち向かおうとしているのは、まさに運命そのものだということに」

QB「...暁美ほむら。真実を知った時、君がどのような選択をするのか見届けさせてもらうよ。それもまた僕の役目だからね」

今回はここまでで。
ほむらの武器は、君島のように袖に隠してたり、腰辺りに巻きつけてあったりします。



『マドカ』

円環の理となった鹿目まどかが進化し、現実世界へ干渉可能となったもの。その正体は不明。
彼女の性質は救済。彼女を倒したければ     という弱点をうまく使うしかない。
設定年齢14歳。天秤座のA型。

『絶影』【さやか】

劉鳳のアルター「絶影」をさやかがソウルジェムで操っている。
魔法と絶影の能力を両方使えるが、制御しきれていないため、第二形態の姿から戻れなくなっている。

>ギャラン=ドゥ『確かに、魔法少女は魔女にならなくなった。だが、それだけじゃねえか』
なら、命を懸けてでも叶えたかった多くの願いを無為にしてよいのか?
多くの魔法少女の影ながらの戦いで助けられた多くの人々を無視して良いのか?
って話になるだけだと思うけどねぇ。
ぶっちゃけ、魔女になってでも復讐を遂げたいと願った子がいても『あなたのその怒りは正しい』と認めるのがまどかだろうし。
実際、他作品からの引用だけど『真っ向から憎めば それは正しき怒りとなる』なんて言葉もある。
そうなると、ギャランドゥはまどかのその考えを一蹴するだろうから、駆け引きにもならないでどちらかが消滅するまでの戦いになるだけだわな。
ま、ソレを言っちゃうとお話が進まないし回らないだろうから上手く処理した、と言う事なんだろうけど。

Goodだ!
今追いついたけど、キャラと設定がしっかりかみ合ってて素敵過ぎる。
そして遅ればせながら言わせてもらおう>>150ビバはイタリア語でノウレッジは英語だ―――!

>>175
その質問は>>102で質問済みで>>106で回答済みだな

>>176
まどかは、肯定しているからこそ、邪魔しかできない自分を責めており、尚且つ色々なプレッシャーなどが積み重なって、視野が悪い方向へ狭まり、まどからしい考えができなくなったって感じでお願いします。細かいところは、「まどかと無常矜持って解りあえないよね」くらいの感じで流してください

>>177
色々とありがとうございます。そういえば、ティロ・フィナーレもイタリア語なんだよね。

ワルプルギス「キャハハハハハ!!」

カズマ「バカみてえに笑いやがって...」

カズマは、ワルプルギスなどに興味はない。

だが、カズマは確信していた。この先にアルター野郎がいると。

相も変わらず、自分を見下して薄ら笑いを浮かべているであろうことを。

カズマ(許せねえなぁ。ああ、許せねえ)

奴が俺をナメてるってんなら、刻んでやる。この拳を、俺の強さを!

アルターを纏った右腕で地面を殴りつけ、その反動で空高く跳躍。

高さが最高点まで達したところで、背にある三枚の真紅の羽を展開。

その羽を原動力に放つのは―――

カズマ「三枚羽発動!!攻速の...シェルブリットォォォ―――!!!」





ギャラン=ドゥ「行かせねえ!!ギャラン=ドゥ~♪」

カズマ「ぐはぁっ!」

どこからともなく現れたギャラン=ドゥに拳を防がれ、強烈な一撃を受けたカズマは落下していく。



ギャラン=ドゥ「性懲りもなくと言いてえが...」

ギャラン=ドゥの右手のドリルに、ピシリと亀裂が入った

ギャラン=ドゥ(以前より力が増している...?)

カズマ【アルター野郎の相手は俺がする。あんたらはあのデカブツをブッ飛ばせ】

さやか『って言ってたけど、大丈夫かな、カズマ...』

ほむら「言い出したら聞きやしない...あなたといい勝負だわ」

さやか『...返す言葉もございません』

ほむら「カズマがギャラン=ドゥを抑えている内に行くわよ」

さやか『OK!しっかり掴まってなよ!』

ほむら(まどか...あなたは、どこにいるの?もし、いるのなら、姿を見せて...!)

さやかは、ほむらを背にのせ、ワルプルギスのもとへ飛びたった

ワルプルギスは、炎を吐き、迫りくる絶影を撃ち落とそうとした

本来の絶影の機動力ならば、避けるのは容易いことなのだが...

ほむら「避けなさい!」

さやか『わかって...のわっ!?』

今現在、絶影を操っているのは創造主の劉鳳ではなく、アルターとは縁も所縁もなかった美樹さやか。

ほんの少しだけ高度を下げて躱すつもりが、一気に急降下してしまった。


さやか『ご、ごめんほむら!まだ上手くこの身体が使えなくて...ッ!』

さやかが詫びている間にも、ワルプルギスは、さやか達目掛けて幾度も炎を放ってきた

それを大雑把ながら、さやかは右へ左へ躱し続けた

だが、動きは大きい程隙を作り、制御できていない分、まわりへの注意力も散漫になってしまう

だから、さやかは気付けなかった。

己を狙う凶弾が、目前にまで迫っていたことに

さやか『なっ!?』

さやかは、とっさに両腕でそれを受け止めた。

だが、受け止めたそれは、その威力を殺すことなく、さやかに向かって突き進んでいく

さやか(こ、これは...!)

そして、それはさやかの腕を押しのけ―――

ほむら諸共、さやかの身体を吹き飛ばした

ほむら「さやか!」

衝撃によって、さやかの背中から離れたほむらは、落下していくさやかに手をのばすが、しかしそれはワルプルギスの使い魔に遮られてしまった。

使い魔「キャハハハハハ!」

ほむら「くっ...!」

先程、さやかが急降下してしまったことが幸いし、ほむらはなんとか着地に成功した。

だが、使い魔達の攻撃が終わるわけではない。

使い魔たちは、一人になったほむらに、容赦なく襲いかかった

某諸国

ザワザワ

「お、おい、何だよあの光!?」

「空に浮いてる...」

「あれは...女の子...か?」

「おほほぉ~めちゃくちゃ可愛い娘じゃねえか。俺のマグナムがカッとびそうだぜ!」

「確かに可愛らしいが...ま、僕の理想の女の子達と比べたら、まだまだだね」

「あ、あれはまさか神様...!?こここここれは、スーパーピンチな予感でででです!助けて僕のピンチクラッシャー!!」

「彼女を題材とした脚本が、湯水のように湧き上がってくるのであ~る!」

「アハハハハハ!素晴らしい!なんというパワー!彼女なら、私の渇きを癒してくれそうです!」


『...ゴメンね、ギャラン=ドゥ。私の我儘に突き合わせちゃって』

手袋で覆われた彼女の左腕が、白の装甲で覆われる

『すぐに終わらせるから...それまでの辛抱だよ』

同じく手袋で覆われた彼女の右腕が、黒の装甲で覆われる

これで準備は整った。後は進むだけだ。

―――後悔しかできずとも、迷わずに進むだけ。


『始めるよ、ワールド・オルタレイションを!』

全ては、皆を幸せにするために

群がる使い魔。笑い声をあげ続けるワルプルギスの夜。

これらを相手にしながら、ほむらは思う。

―――弱すぎる。

一番弱かった筈の一週目でさえ、使い魔ですら、まどかやマミに近い強さを持っていた。

だが、今はどうだ。身体能力が最弱のほむらですら、肉弾戦で使い魔と十分に渡り合え、ワルプルギスもビルを投げつけたり、町を破壊することもしない。近づく者に炎を吐く程度だ。

今のあれは、魔法少女の集合体というより、ただの巨大な魔女としか、ほむらには思えなかった

ほむら「とはいえ...数が多いっていうのは、厄介ね」

絶え間なく襲いかかってくるため、拳銃は勿論、爆弾を使う暇さえ与えられない

襲いかかってくる使い魔を、最小限の魔力を込め、殴り、蹴り飛ばし、次々に倒していく。

だが、元来肉弾戦を得意とせず、魔力も体力も少ない彼女では、そうそう長続きしないことは明白であった。

使い魔「キャハハハッ!」

ほむら「ぐっ...!」

使い魔の蹴りがほむらの顎を捉え、ほむらの上体が崩れた。

そして、それを皮切りに、使い魔たちが、四方八方からほむらへと攻撃を浴びせる。

いくら一撃が弱くとも、積み重なればそれは多大なダメージとなる。

ほむら「がはっ!」

壁に叩き付けられる頃には、ほむらは息も絶え絶えになっていた。

そして、トドメだといわんばかりに、使い魔は一斉にほむらに向かい―――




―――――シュンッ

一筋の閃光が、使い魔たちを消し去った。

ほむら「...!?」

ほむらは己の目を疑った。

始めは、カズマかさやかだと思った。

だが、カズマは飛び道具など使わないし、さやかにしても、結界から脱出した時の技とは似ても似つかなかった。

なにより、ほむらがあの閃光を忘れることなど、ある筈が無かった。

あの閃光は、桃色の閃光は、間違いなく―――






「おまたせ、ほむらちゃん」

瞬間、ほむらの脳裏では、ある光景が重なった。

それは、まだほむらが魔法少女を知らなかったあの日の記憶。

自分に自信がなくて、自棄になりかけていたほむらを救ってくれたあの光。

ほむら「......か」

ほむらは震える声を絞り出す。その光の名前を呼ぶために

ほむら「...ど...か」

今にも溢れそうな涙を堪えながら、それでも堪えきれずに涙を流し、その名前を叫ぶ

ほむら「まどかぁぁぁ―――!!!」

さやか『うぅ...』

さやか(あたし...気絶してたのかな...)

目を覚ましたさやかは、状況を把握するため、あたりを見回す

さやか(ワルプルギスは見えるけど...カズマとほむら...ほむらは!?)

背負っていた筈のほむらがいないことに気付き、慌てて探し始める。

さやか【ほむら!返事してほむら!】

テレパシーをとばすが、返事はない。

さやか『くそっ...!』

さやかは上空に飛び立った。


―――ズドン

大きな衝撃音と共に、爆風がさやかの後方から生じた。

振り返ると、少し離れた所で、カズマがギャラン=ドゥと闘っているのが見える。

さやか『カズマッ!』

さやかは感情的に、すぐさまカズマのもとへ向かおうとする。

カズマ【アルター野郎の相手は俺がする。あんたらはあのデカブツをブッ飛ばせ】

だが、カズマの言葉がよぎり、さやかは動きを止めた。

―――ここで、カズマの手助けに行くことが正しいのだろうか?



迷いは迷いを生み、それが他者に伝染し、誰一人動けなくなる。

しかし、迷うことによって見つかる道というのもある。

そのわずかな迷い。そのおかげで、さやかは一瞬だけ走った閃光を見逃さなかった。

閃光が走った方向を見れば、そこにいるのは、暁美ほむら。そして―――

さやか「まど...か...?」

ほむら「まどかぁ...まどかぁ...!」

その端整な顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら、ほむらはまどかに縋り付く

まどか「ごめんね、ほむらちゃん。寂しい思い、させちゃって」

まどかは、そんなほむらを抱きしめ、優しく包み込む

ほむらは上手く言葉を発することもできずに、嗚咽まじりにただただ泣き続けた。





彼女の周りで、何が起きているのかにも気付かずに。

二人の周りに、大小様々なシャボン玉が湧き上がっていた。

まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん」

一つには、新米魔法少女のほむらと共に戦うまどかとマミの姿が。

一つには、まどかとほむらと共にワルプルギスの夜と戦う美樹さやかの姿が。

一つには、ゲームセンターのダンスゲームに興じ、お菓子をほむらに差し出す杏子の姿が。

シャボン玉には、それぞれに、かつてほむらが見た光景が映っていた。

まどか「もう、私はどこにも行かないから」

泣きじゃくるほむらは、それに気付かない。

やがて、シャボン玉は集まっていき、一つの巨大なシャボン玉となった。

まどか「もう、ほむらちゃんを置いていったりはしないから。だから―――」

まどかは、ほむらの頭を優しく撫でながら、優しく囁く。

そして―――



まどか「ずっと一緒だよ、ほむらちゃん!」

シャボン玉は、二人を呑み込んだ

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「―――らちゃん」

「ほむらちゃん!」

メガほむ「ふぇっ!?」ビクッ

まどか「やっと起きたね。もう、お昼の時間だよ」

さやか「まったく、自習とはいえ、一時間丸ごとお昼ねタイムなんざ、このさやかちゃんは許さんぞ―!」

仁美「さやかさんはほとんどの授業で寝てますけどね」

さやか「あ、あれ~、そうだったっけ?」

まどか「さやかちゃんが起きてるのって、体育と音楽くらいだよね」

さやか「ぬぐっ...まどかにまで...!」

まどか「事実だもん」

仁美「事実ですわ」

さやか「...すんません」

メガほむ「え、えっと...」

まどか「?どうかしたの、ほむらちゃん?」

メガほむ「すみません...私、寝てたんですか?」

さやか「そうだよ。あんた、さっきの体育で頑張ってたから、疲れたんじゃない?それに、あんなに気持ちよさそうに寝てたら、起こし辛くてさ」

メガほむ「そう...ですか...」

メガほむ(なにか...大切なことを忘れているような...)

まどか「早くお昼食べに行こっ、マミさんと杏子ちゃんも待ってるよ!」ニコッ

メガほむ「は、はいっ!」ニコッ

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さやか『なっ...!?』

さやかには、状況が理解できなかった。

泣きじゃくるほむらを、まどかが抱きしめたと思えば、いきなり大量のシャボン玉が地面から浮かび上がり、それが一つになった途端、そのまま二人を呑み込んだ。

まるでわけがわからない。わかることといえば、ただ一つ。

さやか『あのシャボン玉は...何かヤバイ!』

ほむら達を包むシャボン玉を破壊しようと、さやかは、結界から脱出する際に使った技―――さやか本人は名前を知らないが―――
『断罪断』を放つ。

しかし、シャボン玉に到達する前に、横合いからの思わぬ邪魔により、断罪断は破壊された。

それは、先程さやかが受けた弾丸そのものだった。

さやか『ッ、また...!』

だが、邪魔が入っただけではさやかは諦めなかった。

今度は自らシャボン玉を割りに行くが、しかし、さやかの身体は何かで縛り上げられ、彼女の動きは止められた。

さやか『ぐぐっ...!』

それでも、さやかは止まろうとはしなかった。

本来の自分の武器である剣を精製し、それを投げつけようとする。

しかし、シャボンの中のほむらの顔を見た時、さやかの動きは止まった。止まってしまった。

―――ほむらは、あまりにも幸せそうな顔をしていたから。

そして、さやかが何かを言う前に、ほむらを呑み込んだまま、シャボン玉は消えてしまった。

その場に残されたのは、絶影と、もう一人だけ。

カズマ「おおおりゃあああぁぁ!!」

ギャラン=ドゥ「しゃらくせえッ!!」

殴りかかるカズマを、両腕のドリルであしらうギャラン=ドゥ

だが、カズマの意志は、信念は、その程度では挫けない。

体制をすぐに立て直し、反撃の弾丸をその右腕に込める

カズマ「反撃の―――」

ギャラン=ドゥ「そいつは前にやっただろうが!」

カズマ「シェルブリットォォォォォ―――!!」

ギャラン=ドゥのドリルとカズマのシェルブリットがぶつかり合う。

二人の衝突により、道路が隆起し、爆風が巻き起こる。

ギャラン=ドゥ「こ...こいつ!?」

カズマ「ぐっ...押しきれねえ...!」

その衝撃により、二人の身体は弾かれ、再び距離が空く

カズマは体勢こそ崩されはしたが、シェルブリットを砕かれるまでには至らなかった。

ギャラン=ドゥ(こいつ、次第に力が上がっていやがる...!?)

吹き飛ばされたカズマは、背後に迫る壁を殴り、体勢を整えると、間髪いれずにギャラン=ドゥに拳を放った。

カズマ「余所見してんじゃねえ!抹殺のシェルブリットォォォ―――!!」

もう何度目になるかの衝突。だが、徐々に、しかし確実に、カズマとギャラン=ドゥの力の差は縮まっていた。

ギャラン=ドゥのドリルにヒビが生じる。

ギャラン=ドゥ「こ、この野郎...!」

それと同時に、カズマのシェルブリットには、今にも砕け散ってしまいそうな亀裂が走る。

優勢なのは、ギャラン=ドゥ。

だが、カズマは決して退かなかった





カズマ「―――輝け」

足りない。奴にこの拳を当てるには、まだ足りない。

カズマ「もっとだ...もっと...もっと!」

奴をブン殴れれば、それでいい。後のことなんざ知ったことか。

限界なんてもんがあるのなら、その限界に反逆してやる!

カズマ「もっと輝けぇぇぇぇぇ!!!」

それは一瞬の反逆だった。

カズマのシェルブリットが、光を帯び、その形が変貌し、巨大化していく。

金色の装甲を帯び、肩には、三枚の羽が一つに収束した、渦巻き状のプロペラが再構成される。

そして、プロペラが回転し、更なる推進力をつけられた拳が、ギャラン=ドゥのドリルを押し返す!

その結果、ギャラン=ドゥの右腕のドリルは

―――バキイィィィン

粉々に砕け散った。

そして、その拳は、勢いを殺すことなく、ギャラン=ドゥの胴体に叩き込まれた!

ギャラン=ドゥ「なにいいいぃぃぃ!?」

やっとの思いで叩き込んだ拳を受け、ギャラン=ドゥは吹き飛ばされる。だが、カズマは不満げに舌打ちをした。

カズマ「浅かったか...!」

カズマのシェルブリットは、既に元の形に戻っていた。

何故あの力が引き出せたのか、何故戻ってしまったのか。カズマはそんなことを考えはしなかった。

浅いなら、もう一発叩き込むだけだ!

カズマ「追撃の...シェルブリットォォォ!!」


タイミングは完璧。杏子との喧嘩とは違い、邪魔者は無し。

今度こそ、カズマの拳は、ギャラン=ドゥを捉えた


―――筈だった。

カズマ「!?」

カズマの拳は、確かにギャラン=ドゥを捉えていた。それこそ、当たる直前まで。

だが、拳がギャラン=ドゥに触れた瞬間、彼の身体が掻き消えたのだ。

―――まるで、幻覚でも見せられていたかのように。

結果、カズマの拳は、ギャラン=ドゥの胴体を僅かに外れていた。

ギャラン=ドゥ「助かったぜ...!」

ギャラン=ドゥは、体制を立て直すと、すぐさまカズマとは逆方向へ跳んでいってしまった。

カズマ「待ちやが...!?」

追おうとするカズマだが、しかしそれは、突如地面から生えた大量の槍に遮られた。


今回はここまでで。
今の持ち物
カズマ:無し
ほむら:爆弾数個。拳銃数丁。杏子とマミが倒した魔獣のグリーフシードを大量に。
さやか:魔獣のグリーフシードを大量に。

乙です
何気に漫画版ではろくに活躍できなかった無常以下その他のホーリー隊員さんだけど
この後もストーリーに絡むの?それともちょっとだけの顔出し出演?

>>206
顔出し9割、絡むかもしれない範囲1割って感じで。あまり気にしなくても問題ありません。

―――――――――――――

さやか『なんで...』

違和感はすでにあった。あの時受けた一撃は、何度も間近で見たあの人の技にソックリだったから。

でも、考えないようにしていた。そんなわけある筈がないって。

あの人が、敵になる筈はないって。

さやか『なんで...あなたが...』

でも、現実はそうじゃない。

さっきの弾丸も、私の身体を縛っているこのリボンも、紛れもなくあの人のものだった。

かつて憧れた、あの人は


さやか『答えてよ...マミさん!』

魔女に姿を変え、私に銃口を突き付けていた。

――――――――――――――――――

カズマ「...なんで邪魔しやがった」

俺は、一応聞いておいてやったが、あいつは何も答えない。

カズマ「なんとか言ってみろよ。ごめんなさいとか、もうしませんとか!」

あいつは、冷めた目でこっちを見てるだけだ。

カズマ「...気に入らねえ」

俺のことなんざ眼中に無いってか?

上等だ。ぶん殴りたい奴が、一人増えただけだ。

こいつとぶつかり合うのは、これで四回目。

今までは、それとなく邪魔が入っていたが、今度は違う。

姿が変わってようが関係ねえ、トコトンやってやらあ。

カズマ「てめえに刻んでやるよ!二度とそんな目で俺を見れなくなるくらいになぁ!」

――――――――――――――
某諸国

『...ごめんなさい、マミさん。杏子ちゃん。今は、それで我慢してください』

『すぐに終わらせるから...そうしたら、皆幸せになれるから...』

彼女は、眩い光に包まれて、街の上空から姿を消した。

街には、誰もいなくなっていた。

建物も草木も、何一つ壊すことなく、人々はいなくなっていた。

あるのは、幾つも浮かんでいる巨大なシャボン玉だけ。

―――――――――――――
避難所


知久「...凄い嵐だね」

詢子「...そうだな」

タツヤ「キャンプするの?」

知久「そうだよ。今日は皆でキャンプだー」

詢子「...ねえ、あなた」

知久「なんだい?」

詢子「私たちってさ...今まで、ここに避難してきたことってあったっけ...?」

知久「いや、なかった筈だよ」

詢子「だよねえ...でも、何度も経験したことがあるような、ないような...」

知久「...詢子さん?」

詢子「―――ああ、ごめんごめん。多分、初めての避難だから、混乱してるんだろうね。ちょっとトイレ行ってくるわ」

知久「わかった。道に迷わないようにね」



知久「...詢子さんの言いたいことはわかるさ。僕もなにか引っかかってる気がするんだ」ヒョイ

タツヤ「?」

知久「ねえ、タツヤ。君は...どうなんだい?」


詢子(...なんだろう、この違和感。なにかが...違う...いや...)

ドンッ

「きゃっ」

詢子「ご、ごめんなさい、ぼーっとしてて...大丈夫ですか?」

「いえ、私も考えごとをしながら歩いていましたから。では...」ペコリ

詢子(あの緑色の髪の子...どこかで見たような...?)

仁美(先程のご婦人...どこかで会った気が...)

恭介「暁美さんたちは、居たかい?」

仁美「いいえ...どこにもいませんでしたわ」

恭介「そっか...こんな嵐の中でも魔女退治をしてるのかな...皆、無事だといいけど...」

仁美「嵐...」

仁美(なんだろう...以前...いえ、何度も、嵐の日に、なにか大切なものを失くしたような...?)

―――――――――――――――――

カズマ「先制のシェルブリットォォォ!!」

カズマの拳が、魔女...杏子に向かって放たれる。

しかし、その拳が当たる寸前、ギャラン=ドゥの時と同じように、杏子の身体が掻き消えた

カズマ「またかよ...!」

放った拳の勢いを殺している隙に、後頭部に衝撃がはしる。

小さく声を漏らすが、すぐに、カズマは背後に向かって拳を力任せに振り抜く。

が、これもまたハズレ。カズマの拳は、空を切る結果に終わった。

カズマは、すぐさま体勢を立て直し、次なる弾丸を込めるが...

カズマ「どういうことだ、おい...」

周りを見れば、杏子の姿は7つに増え、カズマの周りを取り囲んでいた。

だが、ここで考えこむのはカズマの戦闘スタイルではない。

数が増えたなら、全部ぶん殴ればいい。カズマの思考は、それだけだった。

カズマ「衝撃の...シェルブリットォォォ―――!」

さやか『マミさん、目を覚ましてください!』

どうにか拘束を解いたさやかは、必死にマミに呼びかけていた。

だが、その返答は、マスケット銃から放たれる黒い球体だけ。

さやか『ぐっ...!』

何発か被弾し、絶影の身体の一部が欠ける。

体力と魔力を節約するため、飛行を止め、さやかは地に尾を下ろす。

しかし、それこそが罠。尾の下に光の紋章が浮かび上がり、あっという間にさやかの身体をリボンが縛り上げた。

さやかは、リボンを引き千切ろうとするが、しかし、先程のものとは違い、千切れる気配が全くない

さやか(くそっ...やっぱりマミさんは強いし...なにより、上手い!)

マミの本来の魔法は、マスケット銃ではなく、それを構成するリボン。

かつてほむらを一瞬で縛り上げた時のように、相手に気付かせる間もなくリボンを精製・設置できる、魔力のコントロールこそが、彼女の真骨頂といえるだろう。



「チッ、ウザってえったらありゃしねえ!」

そう言いながら、さやかの右方に落下してきたのは、カズマ。

どちらが移動してきたのかは分からないが、いつの間にか近くにまで来ていたらしい。


さやか『カズマ!?』

カズマ「劉ほ...じゃねえ。さやか...だったか?てめえ、あのデカブツはどうした」

さやか『今はそれどころじゃないのよ...あんたこそ、ギャラン=ドゥは!?』

カズマ「逃げられた。そんでもってこっちもそれどころじゃねえ」

カズマの視線の先を見た瞬間、さやかは理解した。してしまった。

さやか『そんな...杏子...あんたまで...』

カズマ「あのやろう、さっきから消えたり増えたりしやがる。お前、何か知らね...」

『無駄だよ、カズマ。それに美樹さやか』

さやか『きゅ、キュゥべぇ...』

カズマ「ああ!?耳毛野郎、てめえどこにいやがる!?」

QB『これはテレパシーさ。僕は、そこにはいない。君に個体を減らされるのは勘弁したいからね』

カズマ「チッ...まあ、今はてめえなんざどうだっていい。それより無駄ってどういうことだ」

QB『今の杏子とマミに、君たちの声は届かない。それは、今まで幾度も魔女になり、絶望を振りまいてきた...さやか、君ならわかるだろう?』

さやか『......』


QB『それに、さやかは知っているだろうが、事実上、ほむらは脱落した』

さやか『くっ...!』

カズマ「なんだと!?」

QB『現状、君たちの味方は誰もいないというわけさ。君たち二人だけで、マミと杏子、それに、ワルプルギスとギャラン=ドゥを倒すことが出来ると思うかい?』

さやか『......』

QB『まあ、早く選ぶことだね。少しでも生きながらえるために、この場でマミと杏子を葬るか。それとも...』


キュゥべぇが言葉を切ると同時に、マミの弾丸がさやかに放たれ、杏子の槍が上空からカズマに襲いかかる。

QB『早く倒されて楽になるか』

マミの弾丸の衝撃と、杏子の槍が地面を抉った衝突により、轟音と共に、凄まじい土煙があがった

静けさに包まれる空間。その静寂を破るかのように、響く声が二つ。

『どっちを選ぶかって?』

土煙が晴れると共に、人影が浮かび上がる。

「そんなもん、決まってんだろ」

弾丸を、断罪する弾で防ぐ影が一つ。

槍の穂先を、己の自慢の拳で握り潰す影が一つ。

「「どっちもノウだ!!」」

彼らの目には、まだ諦めは見えない。



QB『...君たちは正気かい?あの時の杏子には、魔法少女ならば何を起こしても不思議じゃないとは言ったけれど...今回だけは言わせて貰うよ。
絶対に無理だ。魔女から戻せる可能性は0%だ。なんせ...』

カズマ「んなことはどうでもいいんだよ」

QB『どうでもいいって...』

カズマ「魔女だかなんだか、小難しいことはわからねえ。けどな、俺との決着もつけずに、あのやろうがなんもかんも忘れてやがるのだけはわかった。
だから、俺はそれが気に入らねえ!」

QB『...合理的じゃない。まったくもって理解できないよ』

カズマ「馬鹿げてるかい?ああ、そうかもなあ。けどな、気に入らねえことに目を背けていられる程、利口じゃないんでね。
俺にとっちゃ、反逆する理由はそいつで十分なんだよ!」

QB『やれやれ、君たち人間は理解しかねると言ったことがあるかもしれないけれど...彼ほど理解に苦しむ人間は初めてだよ』

さやか『ま...あんたたちからしてみればそうだろうね』

QB『...君が闘う理由もそれなのかい?』

さやか『...似たようなもん...なのかな』

さやかは、残ったもう一発の『断罪断』で、身体を縛るリボンを切り裂いた。

さやか『あたしは諦めないよ。例え今までに前例が無くても関係ない。あたしは、マミさんも杏子もほむらもまどかも...全部取り戻してみせる。それが、今のあたしが生きる理由だ!』


カズマ「さあて、仕切り直しといこうか」

「......」

カズマは、握り潰した槍の穂先をアルター能力で分解し、傷ついたシェルブリットの装甲を補った。

カズマ「俺がてめえに思い出させるのが先か、俺がくたばるのが先か...根比べといこうじゃねえか!」

カズマの拳をゴングに、闘いは再開した。





だが、カズマはまだ気づいていなかった。杏子の槍で補ったシェルブリットの一部が変色しかけていることに。

今回はここまでです。以下は思いついた小ネタ


次回予告

【あたしたちって、ほんとバカ】

真実と向き合うことが悲しみであれば、騙されていることが幸せな時もある。

それでもなお、真実と向き合おうとする者は、愚者足りえるのか。

それとも、尊ぶべき存在なのか。

若者たちが、今選択する。全てを決めるのは、己のみ。



CV.若本規夫

BGM.まどマギの次回予告のテーマ


書き忘れてた設定。性質が違うのは仕様です


【オフィーリア】

佐倉杏子の成れの果て。その性質は夢想。かつて夢みた世界を壊そうとするものに容赦なく襲いかかる。
半分は魔女だが、半分はアルターで構成されているため、結界がなくとも活動できる。



【キャンデロロ】

巴マミの成れの果て。その性質は拒絶。彼女の理想に、穢れたものなど必要ない。
半分は魔女だが、半分はアルターで構成されているため、結界がなくとも活動できる。

少しだけですが、再開します

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

夢を...私は夢を見ています。

夢の中の私は、どうにもならないことを、どうにかしようと抗い続けている人達になっています。

その人達の痛みはとても強く、その人達の想いも、とても強く...

私は叫びました。

頑張れ...頑張れ...!頑張れ...!!

そう、強く願い続けているのです...

さやか『カハッ...!』

何度も地面を転がり、吹き飛ばされた衝撃を殺しきれないうちに、さやかは壁に衝突した。

度重なる被弾により、絶影の身体は、左腕は無く、所々に痛々しいほどに亀裂が走り、尾も半分以上が欠けている。立っているのがやっとといった状態であった。

回復の魔法を使おうにも、この身体では燃費が悪く、すぐさま手持ちのグリーフシードを使い果たしてしまうことだろう。

もっとも、マミは、使う暇すら与えてくれないようだが。

QB「やれやれ。君たちは、どうしてそんな無駄なことに拘るのかなぁ?カズマと違って、君はわかっているだろう?
円環の理...いや、鹿目まどかと共に、幾多もの時間軸を見てきた君なら」

いつのまにか現れたキュゥべぇが、さやかの近くにちょこんと座っていた。

さやか『...何が言いたいのよ』

QB「例え奇跡が起こったとしても、魔女になった魂を戻すことなどできはしない。できるなら、まどかも、濁りきる寸前のソウルジェムに干渉するだけの存在になどならなかっただろう」

さやか『......』

QB「まどか程の素質の持ち主でさえ無理だったんだ。それに遠く及ぶことのない君に、どうこう出来るわけがないじゃないか。今の内に考えを改めた方がいいんじゃないのかな?」

さやか『...うるさい』ボソッ

さやか『わかってるのよ、そんなことは。あたしは、才能も無ければ、誰よりも強いわけでもない。おまけに、いつもどっちつかずの半端者だった』

QB「わかっているのなら、何故...」

さやか『でもね...そんなちんけなあたしにも、どうしようもないあたしにも、燻ってるものがあるのさ』

さやかの脳裏に、かつての彼女たちの姿がよぎった。

さやかが魔女となった時も、決して諦めずに、さやかに呼びかけ続けた杏子。

ワルプルギスの夜との闘いで、その戦力差にも挫けず、戦い抜き、まどかを庇って倒れたマミ。

何度、絶望の底に叩き込まれようとも、ただ一つの目的のために戦い続けたほむら。

そして、魔法少女の運命に反逆するために契約を交わしたまどか。

そんな奴らの背中を見せられて、はいそうですかと諦めれられるわけがない。




―――だが、無情にも、さやかに向けて、今までで最大級のティロ・フィナーレが放たれた。


躱すことができない、マミの弾丸。

だが、さやかが目を逸らすことは無かった。

その傷ついた身体で、剣を残った右腕に創りだし、全身全霊を込めて叫んだ。










さやか『意地があんのよ!女の子には!!』

**********************************

―――――で

声が聞こえる。

――――いで

この声は...なんなんだ?

―――ないで

俺を知っている、俺が知っている、お前はいったい...

――けないで





カズマ「―――なんだ、お前か」

―――――――――――――――――――――――――

瓦礫の山。

その中心で、前のめりに倒れているカズマ。

杏子は、ジッとカズマを見つめている。

カズマは、痛々しいほどに傷にまみれ、血だまりに沈んでいた。

対する杏子は無傷。どんなに強大な力であっても、当てることが出来なければ、意味はなさない。

カズマの拳と杏子の幻術...彼にとって相性は最悪であった。



カズマ「...ッへへへへ」

だが、カズマは笑った。諦めなどではない。むしろ、これはその逆。

カズマ「ヌルいな...甘くてヌルい」

ゆらりと立ち上がるカズマ。

カズマ「そんなんじゃ倒せねえ...」

いくら疲労が溜まっていようが、傷ついていようが、関係ない。

カズマ「この俺は倒せねえなぁ」

あいつの前で、情けない姿はできねえ。

その意地が、カズマを突き動かす。

そして、彼の意地に応えるように、シェルブリットが激しく輝き始めた。







―――負けないで!

カズマ「そうだよなあ、かなみいいいぃぃぃ!!」

――――――――――――――――――

さやかは弾丸を剣で防ごうと、剣を構えた。

無論、片手で、しかもろくに魔力も込められていない剣で、太刀打ちできるはずもない。

弾丸の勢いを殺すこともできず、剣はあっさりと折れてしまった。

やられる―――!

弾丸が目と鼻の先ほどの距離まで迫った、その時。





どこからともなく現れた青色の無機質な触手が、さやかに当たる寸前で、弾丸を受け流した。


さやか『え...?』

触手は、自分の身体のものだった。

だが、さやかはそのような能力を使った覚えはないし、あることも知らなかった。

気が付けば、自分の姿も先程までとはだいぶ変化していた。

今までの、蛇と人間を合わせたような姿ではなく、両腕を拘束されたような人型に近い姿に。





「よくぞ咆えた。お前の意地...確かに届いたぞ」

声が聞こえる。男の声だ。

「お前の意志に、信念に、敬意を表そう」

カズマではない。なら、恭介?もっとありえない。

なら、いったい誰が...






「この俺...絶影を持つ男、劉鳳が!」

今回はここまでで。
このままでいくと、べぇさんが暇人過ぎるかな...

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ロストグラウンド 某所

劉鳳「アクセス型のアルター能力だと?」

箕条「ええ。あなたとアルターとのリンクを、アクセス型の能力を通じて繋ぎ直すのです」

君島「そんなことできんのかよ」

箕条「もちろん、普通の方法では難しいでしょう。ですが、シェリスさんの能力があれば可能になるかもしれません」

シェリス「あ、あたし?」

箕条「あなたの能力『エターナル・デボーテ』で能力を強化するんです」

君島「なるほど、その手があったか!なら、早くそのアクセス型の能力者ってのを連れてきて...」

箕条「残念ながら、いませんでした」

君島「いねえのかよ!」

劉鳳「ならば、結局は八方塞というわけか...」

箕条「いいえ。いないのならば、それを解決する策はある...」

劉鳳「解決策だと?」



箕条「その能力者を作ればいいんですよ」

「作る?」

箕条「はい。ホーリー部隊が秘密裏に行っていた、改造実験を憶えていますか?」

劉鳳「忘れられるものか...知らなかったとはいえ、あのような悪事に間接的に手を貸していた身だ。彼らにはいくら謝っても足りん...」

水守「劉鳳...」

箕条「...思うところはあるでしょうが、まずは聞いてほしい。その実験内容は、アルター能力者の強化。
そして...非アルター能力者たちをアルター使いに進化させること」

「!?」


箕条「もちろん、あのような外法は使いません。しかし、実験記録にはこう書かれていました。
『全ての生物のDNAには、【アルター】の記憶が眠っている』と」

君島「えーっと、つまりどういうこと?」

箕条「生物ならば、誰にでもアルター使いになれるチャンスはあったということですよ」

劉鳳「だが...そう簡単にいくものなのか?もし、それが本当ならば、今頃世界はアルター使いで埋もれている筈だ」

箕条「ええ。アルター使いになれるチャンスは生まれる前だけ。そこを逃せば、二度とアルター使いにはなれない...」

劉鳳「ならば、どうやって作る?」

箕条「音楽で」カッ

劉鳳「なっ...!?」

箕条「私の進化したアルター能力『サウンド=スタッフ=エボリューション』で、非アルター能力者のDNAに音楽で訴えかけ、
アルターの素質を呼び覚まし、一時的にアルター使いにします」

君島「そんなことができんのか...なら、早くやr「ですが」

箕条「もちろん、リスク無しとはいきません。眠っている素質を無理やり覚醒させるわけですから、身体にかかる負担も大きい。
...最悪、死に至るかもしれない。それに、アルター能力は千差万別。成功したところで、それがアクセス型の能力になるかは...」

かなみ「やります」

君島「俺もだ」

水守「かなみちゃん、君島さん...」

箕条「言っておきますが、成功する確率はかなり低いですよ」

かなみ「構いません。もし、ここで動かなかったら後悔する...そんな気がするんです」

君島「そういうこと。相棒が命張ったんだ。なら、今度は俺達の番だろ?」

箕条「その言葉...偽りはありませんね?」

かなみ「はい!」

君島「おう!」

箕条「分かりました。では、劉鳳を合わせた三人で、手を繋いで円になってください」

劉鳳「こうか」ギュッ

箕条「桐生さんは、皆が怪我をした時のために治療の準備を!シェリスさんは、すぐにアルターを使える準備を!」

二人「は、はいっ!」

箕条「ではいきますよ...『サウンド=スタッフ=エボリューション』!!」

キュピイイィィン

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かなみ「こ、ここは...!?」

一面に広がるのは、哺乳類、両生類、爬虫類、植物...

数えきれないほどの動植物が、かなみの視界に飛び込んでくる。

かなみ「これはなに!?」



その中に、一筋の光が走った。

かなみ「......!?」

かなみは、その光に吸い込まれるかのように、手を伸ばした。

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


箕条「!成功者は...かなみちゃん!シェリスさん、急いで能力を!」

シェリス「え、ええ!」

シェリス『エターナル・デボーテ』

シェリスは、かなみの身体に触れ、その身を一体化させた。

水守「誰も動かない...いったい、どうなったんですか?」

箕条「かなみちゃんは能力を開花させ、君島さんは能力こそ開花しなかったものの、かなみちゃんを通じて意識をアクセスすることに成功したようです」

水守「なら、劉鳳も...!」

箕条「絶影とのリンクを繋ぎ直せた筈です。あとは...彼らに...」フラッ

ハーニッシュ「晶!」

水守「箕条さん!」

箕条(劉鳳...君島さん...かなみちゃん...そしてカズマ...どうか、無事で...)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

さやか「くぅ~、今日の授業も疲れたなぁ」

仁美「結局さやかさんは寝てましたけどね」

さやか「失礼なことをいうな!ちゃんと起きてたよ...最初の10分くらいは」

まどか「さやかちゃん、そういうのは起きてるうちに入らないよ」

メガほむ「というか、10分も経たないうちに寝ていた気が...」

さやか「ま、まあ細かいことは気にしないの!それじゃ、今日もいつものとこでダベるとしましょうか」

仁美「そうですね。今日はお稽古もありませんから、大丈夫ですわ」

まどか「ほむらちゃんはどうする?」

メガほむ「私も...」


―――「        」

メガほむ「?」

まどか「どうしたの、ほむらちゃん?」

メガほむ「今、なにか声が聞こえたような...」

さやか「あら、ほむらちゃあん、ひょっとして電波なキャラに目覚めちゃったんじゃないの?」

メガほむ「ち、違いますよ!」アタフタ

メガほむ(気のせい...なのかな?)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


さやか『だ、誰よあんた!?』

劉鳳『俺の名は劉鳳。このアルターの持ち主だ』

さやか『劉鳳?劉鳳って...あ、カズマがそんなこと言ってたような...』

劉鳳『詳しい説明は後だ。今は、この場を切り抜けるぞ!』

さやか『は、はいっ!』

マスケット銃から、さやかに向けて大小様々な黒の球体が放たれる。

だが、さやか...いや、劉鳳は、絶影の触手で、それらを難なく叩き落とした。

劉鳳『その程度の攻撃など通用せん!』

劉鳳は、マミのもとまで跳躍し、触手で殴りつけた。

さやか(速い...!)

速度自体は、さやかが操っていた真・絶影の方が上だろう。

だが、劉鳳の無駄のない動きが、体感速度を何倍にも感じさせた。

劉鳳『もう一撃!』

身体の崩れたマミを、もう一本の触手で殴りつけ、壁に叩き付けた。

劉鳳『チィ...さすがにこれでは無理か』

すぐに起き上がるマミを見やると、劉鳳は、絶影の真の姿を解放。

完全修復された真・絶影が再び姿を表した。


劉鳳『...お前の名は?』

さやか『み、美樹さやか』

劉鳳『美樹さやか、今一度問おう。お前には覚悟があるか?』

さやか『覚悟...?』

劉鳳『何を犠牲にしてでも己の信念を貫き通すという覚悟だ』

さやか『!』

劉鳳『中途半端に明日を夢見て、いざという時にも力を制御する...それでは、何も掴むことなどできん』

さやか『......』

劉鳳『かなみ...俺の仲間の能力を通じて、お前たちがどのような境遇かは大方分かっている。だが...もし、お前がその覚悟を持たないのならば、彼女とは俺が闘おう』

さやか『...あたしは、本当なら死んでる身だ。だから、あたしの命を賭けることでマミさん達を戻せるのならいくらでも賭けてやる』

劉鳳『......』

さやか『でも、あたしは、何一つ犠牲にするつもりはないよ。全部背負ったまま、運命を覆してやる』

劉鳳『...そうか』

劉鳳『ならば、あの言葉を唱えてみせろ。俺の絶影に刻まれたあの言葉を!』

さやか『あの言葉...?』

劉鳳『進化の言葉だ。お前の信念が本物ならば、掴める筈だ』

さやか『言葉...』






――――■.■■■.■■

 




さやか『―――!...わかった、劉鳳。確かに掴んだよ、あの言葉を...!』

劉鳳『覚悟はいいな!?唱えるぞ!』




絶影に刻まれた

まどかが言った

―――あたしが掴んだ




あの言葉を!!!




『『s.CRY.ed!!!』』

**************************

キュゥべぇ...あんたは言ったよね、魔女から元に戻る方法なんて無いって。

でも、それは違うんだよ。

...もしかしたら、それはあたしが死の間際に自分に見せた、都合のいい幻だったのかもしれない。

でも、あいつの...杏子の声が届いたとき、確かに思い出せたんだ。

一度だけでも、あたしがあたしであることを確かに取り戻せたんだ。

その希望があるから、曲がらずにいられる。戦うことができる。

運命に、反逆することができるんだ。

...そうだよね、ほむら、まどか。


***************************

QB「こ...これは!」

光の柱に包まれると共に、真・絶影が、その身体を粒子状に分解される。

やがて、光の中で、絶影だった粒子が人型に集まり、その姿を曝け出す。

全身を覆う蒼の装甲。

首の周りを包む蒼のヘッドギア。

下腹部に、ベルトのように装着された、青色のソウルジェム。

そして、正義を思わせる、一対の純白の剣。

さやか「これが、あたしの...劉鳳から受け取ったあたしの力...」




その名も―――美樹さやか、正義武装!!!

――――――――――――――――

カズマのシェルブリットが眩いほどの輝きを発し始めた。

カズマ「おおおぉぉおおぉ!!」

ギャラン=ドゥを退けた時と同様に、右腕が変化し始める。



カズマは、『アルター粒子』とでもいうアルターを構成する素材がなかったため、今まで最終形態である『ハイブリット』を使えなかった。

ならば、何故第一形態である『シェルブリット』は構成できたのだろうか。

理由は至って単純。

素材がないのならば、他のものを代用すればいい。

カズマは、魔法少女や魔女から発生した『魔力』という超常的なものをアルター粒子の代わりとしていた。

魔法少女が多い美滝原、それ自体が魔力に近い魔女の結界、魔力を垂れ流し続けているワルプルギスの夜とアルター粒子を発しているギャラン=ドゥとの闘い...

そういった段階を踏む度に、カズマのシェルブリットは強化され、進化していった。

―――もっとも、カズマ自身はそんな面倒でどうでもいい理屈を考えたりはせずに、無意識に行っていたのだが。





だが、なにもかもが都合の良いように転ぶわけではない。

カズマ「なっ...なんだよ、おい!」

変貌を遂げたシェルブリットが、ガタガタと震えだす。

―――オーバーヒート

魔力という異質なものを吸収しすぎたシェルブリットが、暴走を始めたのだ。

カズマ「ぐっ...くっ...!」

その暴走は、使い手のカズマ自身でさえ抑えることができない。

それどころか、更に光を増して輝きだしてしまう。

そして、その輝きは光の柱となり、カズマを呑み込んだ。

カズマ「あと...もうちょいだってのによ...!」

耐え切れなくなったカズマのシェルブリットの至る所にヒビが入りはじめた。

そして、彼の信念は、とうとう粉々に砕け散







『大丈夫だよ、カズくん』

『シャキっとしろよ、カズマ』

カズマの右腕に、そっと小さな両手と男の両手が添えられた。




幻想だろうか。それとも、本当に彼らなのだろうか。

―――いや、どっちでもいいな、そんなことは。

カズマは、振り向かなかった。あいつらがそこに居るという感覚があれば、それで十分だった。

カズマ「何やってんだろうな、俺は...さっき言ったばっかじゃねえか...あいつには、あいつらには、情けない姿を見せられねえってよ...」

信じるのは自分自身。そうあいつらに示してきたのは、他ならぬ俺だ。

カズマ「"シェルブリット"...てめえも俺ならよ、こんなところでくたばってんじゃねえぞ...!」

だから、自分自身に負けることなどあってはならない。

光は、より一層輝きを増した。



カズマ「突き崩すぜ、限界をよおっ!!」

杏子は、カズマを呑み込んだ光の柱を、じっと見据えていた。

やがて、その光の柱が、輝きを失っていく。

カズマ「よお、待たせたな」

その光の柱から、カズマが姿を現した。

右腕だけでなく、眼と口を除く顔から、つま先まで全てを覆う金色の装甲。

背中に生えていた三枚の羽は、左右三枚ずつの計六枚の巨大化した羽に変化。

そして右腕は、さらに巨大化し、竜の頭部のような装甲から拳が突き出している。

カズマ「こいつが俺のアルター...」

これが、カズマのアルター。

魔力を取り込み、新たな進化を遂げたアルター。




カズマ「『凄いハイブリット』だッ!!!」

今回はここまでです。
正直、べぇさんの扱いが一番困ってる

俺の拳
俺の自慢の拳
俺の自慢の凄い拳になるよりはましだよな

>>266
正直、その考えもありました。
再開します

――――――――――――――――

さやか「これが、新しい力...」

劉鳳『そうだ。それがお前の信念の結晶だ』

さやか「これなら...しない」

劉鳳『ああ、しない』

「『負ける気がしない!!』」



足元に魔法陣を作り出し、それを足場にして、マミのもとへと跳びかかる。

マスケット銃から放たれる黒球。足元から絡め取ろうとしてくるリボン。

それらを、剣を盾にして弾き、切り裂きながらも、その勢いのまま突き進んでいく。

さやか「はあああああぁぁぁ!!」

剣を持った両手を合わせると、一対の剣は、たちまち一振りの巨大な剣に変化した。

だが、さやかに向けられるのは巨大な銃口。

このままでは、あちらの方が発射が早い。

さやか「読まれてる!」

劉鳳『憶するな!そのまま、全力を注げ!』

ティロ・フィナーレが放たれ、それにわずかに遅れてさやかが剣を振り下ろした。

大剣と砲丸が衝突する。

劉鳳『切り開け!お前の、お前たちの未来への道を!』




大剣は、砲弾を両断し、魔女をも切り裂いた

――――――――――――――――


三体の杏子の分身が、槍を構え突撃し、残りの四体が槍を地面に突き刺し、カズマの足元から大量の槍を召還した

カズマ「そんなんはなあ...俺たちには効かねえんだよぉ!初撃の新・ハイブリットォォ!!」

対して、カズマは躱すことも、受けることもしない。

殴った。その右拳で、迫りくる槍を殴った。

その拳圧は、地を抉り、大気を振るわし、迫っていた三体の分身を槍もろとも消し去ってしまった。

カズマ「へっ...へへへっ...」




『『いけっ...カズマ(カズくん)!!』』

カズマ「あいよ!」


背にある六枚の羽を展開し、拳を握る。

杏子は消された分身を補おうとするが、カズマはそんな暇など与えない。

カズマ「六枚羽発動!!」

六枚の羽を発動するとほぼ同時に、残った四体の分身がカズマに襲いかかる。



一体目―――カズマに何をする間もなく消え去った。

二体目―――カズマの拳の拳圧で消え去った。

三体目―――カズマの拳が当たった瞬間消え去った。

四体目―――カズマの拳に槍を突き出したが、しかしそれは拮抗することもなく、槍は砕け散り―――



カズマの拳は、ついに彼女を捉えた。





カズマ「覚醒の―――ハイブリットォォォォォ!!!」

――――――――――――――――



QB「やはり、無駄だったようだね」

地に膝をつくさやかに、キュゥべぇが淡々と告げる。

QB「君は、君たちは、幾つもの超常現象を起こしてみせた。それこそ、マドカくらいしかできないようなね。
魔力とアルターの融合装着、異世界間の干渉、そして、更なる進化...生身の人間でここまで出来るなんて、まさに予想外だった。
でも、そこまでだ」

消えていく、マミだった魔女をキュゥべぇは見つめていた。

QB「結局、マミも杏子も魔女から戻ることは無かった。君たちも進化したとはいえ、所詮は倒すだけの力でしかなかった。
ただの一個体が運命を変えることなんて、できはしなかったのさ」

さやかは、俯いたまま何も答えない。

QB「劉鳳...だったかな?残念だったね。君が託した進化は、無駄に終わったようだ」

劉鳳『...フッ』

QB「何がおかしいんだい?」

劉鳳『奴の...奴らの信念を甘くみるなよ、インキュベーター』

QB「それはどういう...!」

感情が無い筈のインキュベーターが、目を見開いた

QB「こ、これは...!?」





流していた。

流れる筈のない涙を、魔女―――マミは、流していたのだ。



QB「女泣き―――!!」


★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★

消えていく。

私のためのあの世界が消えていく。

やめて。

現実ではのぞめないあのせかいをけさないで。

もう失うのは嫌だかラ

もうくるしムのは嫌だカラ

おネがイ。もうわたしを



ヒトリニしナイデ





「マミさん!」

光が差し込み、手が差し伸べられた。

聞いたことのある声だった。雰囲気にも覚えがある。

―――ああ、そうだ。これは彼女の...

私は、差し伸べられた手をぎゅっと握った

―――――――――――――――

サラサラと砂粒が落ちていくかのように、魔女の身体は涙と共に消えていく

『...夢を、見ていたの』

マミだった魔女が、言葉を発した。

QB「そんな...魔女が意思を持つなんて、ありえない筈だ...!」

劉鳳『黙っていろ、インキュベーター』

マミ『その夢の中では、両親も生きてて、皆が傍にいてくれた。魔法少女だとか、魔女なんてものもなくて...とても素晴らしい世界だった』

劉鳳『......』

マミ『でも、それは全部夢だった。そんな世界はありえなかった。臆病だった私が、そんな世界の可能性を潰してしまった。だから...』

さやか「ありえるよ、ぜんぜん」

さやか「その夢を現実にしちゃおうよ。誰に頼るでもなく、あたしたちの手で。そりゃ、完璧に同じにすることは無理だけどさ、まだできることはあるでしょ?」

マミ『美樹さん...?』

さやか「なんやかんやであたしもここに居るし、ほむらも杏子もきっと戻ってくる。それで、まどかを連れ戻して、全部が終わったら...今度こそ皆で、ね」

マミ『...美樹さんは、こんな私でも、必要としてくれるの?嘘つきで、臆病な、こんなに弱い私でも』

さやか「もちろん!あたしたち、マミさんが大好きですから!」

マミ『...ありがとう。約束...するわ。必ず戻ってくるって...そして、皆が揃ったら...』

さやか「お茶会、だよね」

マミがニコリと笑うと、その身体は消え去った。


その跡に残ったのは、一つのグリーフシード。

彼女のソウルジェムの淡い光に包まれた、ヒビ割れたグリーフシードだった。



さやか「待ってるからね、マミさん」

★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★

家族が皆生きていて、マミさんたちもいる世界。

魔法少女は、魔女をやっつけて、皆を守れる本当の正義の味方。

正義の味方だから、だれにも拒絶されない。誰も絶望することなんてない。

ああ、なんて素晴らしい世界なんだ。

今まで味わってきたあの苦しいばかりの世界が夢だったんだ。

あれは、夢なんだ。






「腑抜けてんじゃねえぞ」

だれだ...!?

「てめえはその程度のやつなのか?」

浮かび上がってくるのは、一人の男。

右腕を変形させ、髪を逆立ててあたしを睨んでいる。

「その程度のやつなのかってきいてんだよ、俺が!!」

そいつは、拳を固く握りしめ―――あたしをブン殴った。




―――お前は...いや、てめえは!

脳裏に、男の姿がよぎる。雄々しく、荒々しい男の姿が。

てめえにだけはみっともねえ姿を晒してたまるか。てめえにだけは!


――――――――――――――――

ガラガラと音をたて崩れていくコンクリートの壁。

全てが落ち切ると、多量の砂埃が舞い上がった。

やがて、砂埃は晴れていき、彼女の姿が現れた。




杏子『...よお。手間...かけさせたな』

カズマ「...まあな。めちゃくちゃ疲れたぜ」

杏子『そうかい。なら、疲れてるところ悪いけどさ...もう一発だけ、頼むわ』

カズマ「...死ぬつもりか?」

杏子『ハッ、あたしのしぶとさをなめんなよ。ちょっとケリをつけに行くだけさ』

カズマ「......」

カズマはジッと杏子の目を見つめた。

こいつの目は、さっきまでのように冷めてねえ。反逆してやるって気持ちがビンビン伝わってきやがる。

カズマ「いいねえ。なんでか知らねえが、俺はてめえが心底気にくわねえ」

杏子『奇遇だな、あたしもだ』

カズマ「だが、そういう目の奴は嫌いじゃねえ」

カズマがニヤリと笑うと、杏子もニヤリと笑みを返した

カズマ「OK。お前の反逆、俺が引き受けた!」





右腕に装填されるのは、反逆の弾丸。

彼らの間に、遠慮や容赦など一切ない。

身動き一つしようとしない杏子に向けて、カズマの拳が放たれた。





カズマ「反逆の―――ハイブリットォォォォォ!!!」


★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★

―――もう、やめようよ

マミ「......」

―――私たちが戻ったところで、何もできないよ。今までもそうだったでしょ?

―――私は、もう失うなんていやなの。だから、この何も消えない理想の世界で...

マミ「だめよ、それじゃあ」

―――どうして?あなたもそれを望んだ筈...

マミ「そうかもしれない。でもね、自分に都合のいいだけの世界にすがってるだけでは...なにも始まらない」



マミ「だから...今度こそ、掴みとりましょう。私たちの幸せを、私たち自身で!」

★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★

杏子「...ごめん、モモ。それに父さんも母さんも...」

モモ「お姉ちゃん?」

杏子父「どうしたんだい、杏子」

杏子「ちょっと、用事ができたんだ。それで...しばらくは帰れそうにない」

杏子母「あら、またお友達のところ?」

杏子「や、友達とかじゃないんだよ。ただ...」




杏子「ほっとけない馬鹿どもがいるんだ」

――――――――――

杏子だった魔女の姿が消え、赤色の淡い光に包まれた、ヒビ割れたグリーフシードが地面に落ちた。

カズマは、それを拾い、ポケットにしまった。


『―――必ず帰ってきてね、カズくん』


ふと、聞こえた彼女の声。

気がつけば、先程まで感じていた二人の気配は、もうどこにもなかった。

カズマ「ああ、わかってるよ。かなみ、君島...」

カズマは、右の手のひらを空に向けてかかげ、拳を握りしめた。

カズマ「俺は必ず帰る。あのクソムカツクアルター野郎をぶっとばしてな!」

――――――――――


劉鳳『ここまで...か』

さやか「帰っちゃうの?」

劉鳳『ああ。かなみの能力がもうじき消えるようだ。絶影はお前に預けよう』

さやか「...ありがとうね、劉鳳。あんたのおかげで助かったよ」

劉鳳『いや、俺はきっかけを与えたにすぎん。この進化はお前自身のものだ。
...カズマに伝えておいてくれ。必ず帰れ、と』

さやか「うん...わかった」


目蓋を閉じてみれば見える。

かつて憧れた正義の味方のような、劉鳳の姿が。



劉鳳『美樹さやか...武運を祈る』




そうして、劉鳳は消えてしまった。

後味を残すこともなく、さっぱりと消えてしまった。

さやか「...さようなら、劉鳳」

今回はここまでです。
ほむらが空気になってますが、存在を忘れてたとか、そういうのじゃないです。
一応、このスレでの主役はほむらですので。

紛らわしいですが、このスレに出てくるまどかとマドカはほぼ別人です。
再開します。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


志筑さんと美樹さんと別れ、私と鹿目さんは帰路についた。

メガほむ「楽しかったです。こうやって、皆と過ごせて」

まどか「もう、大げさだよ。こんなこと、いつものことでしょ?」

メガほむ「いつも通りでも、楽しかったんです」

そう、楽しい。鹿目さんや皆との何気ない会話が、微笑みかけてくれるのがとても楽しい。

でも、なんでだろう。

なんで、どこか満たされていないのだろう。

なんで...







『一生与えられるだけの人生はきっと―――辛いぜ?』

―――!?

『ただ一つだけ、守りたいものを守り通せばいい。ははっ...なんだかなぁ。あたしだって今までずっとそうしてきた筈だったのに』

声が聞こえる。



『なにをしょぼくれてんのさ、ほむら!一番先輩のあんたが弱腰でどうすんのよ』

いつか聞いた、彼女たちの声が。



『よかった、無事で...本当によかった...』

どこで聞いたんだろう。



『わたしね、ほむらちゃんと友達になれて嬉しかった。あなたが■■に襲われた時、間に合って...今でもそれが自慢なの』


思い出せない。思い出せ...






『私は、まどかに与えられるだけの幸せに満足なんかしない。絶対に』

ん...?

『わからなくてもいい...なにも伝わらなくてもいい。それでもどうか、お願いだから、私にあなたを守らせて...!』




あれ...なんだろう、これ...?




『キュゥべぇに騙される前の...馬鹿なわたしを、たすけてあげてくれないかな...』

『約束するわ...絶対にあなたを救ってみせる!何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる!』



なんだっけ、これ...



『鹿目さん、私も■■少女になったんだよ!これから一緒に頑張ろうね!』

『え、えっと...うぅ...///』


誰だったっけ...




『教えてごらん。君は、どのような祈りでソウルジェムを輝かせるのかい?』

『私...私は...』

『私は、鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守る私になりたい!』

あれ...えっと...そうだ...これ...





私だ

まどか「ほ、ほむらちゃん、大丈夫!?」

ほむら「...ええ。問題ないわ、まどか」

そう、何も問題ない。

まどか「そっか、よかった。ほむらちゃん、急に頭を抱えて倒れそうに...あれ、ほむらちゃん、今わたしを名前で」

ほむら「ええ。あなたは、鹿目まどか。私の最高の友達」

私は覚えている。あの時刻んだ痛みも、苦しみも、罪も、罰も。

まどか「ほ、ほむらちゃん!?いきなりなにを...///あれ?」

ほむら「そして」

まどか「ほむらちゃん、眼鏡は?」

必要ない。




だって、これは夢だから。



ほむら「突き崩すべき、最後の壁」


袖から取り出したのは、一丁の拳銃。

あの時、まどかを殺した拳銃を空に掲げ




―――ドンッ

その引き金を引いた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

――――――――――――――――
避難所

恭介「だ、大丈夫かい志筑さん!?」

仁美「あの...私は...」

恭介「急に倒れたから、びっくりしたよ。具合でも悪いのかい?」

仁美「......」

恭介「志筑さん?」

仁美「...行か...なきゃ...」

恭介「えっ?」

タタタ

恭介「志筑さん!?」


避難所 階段前

詢子「...間違いない」ハアッ ハアッ

詢子(なんで今まで忘れてたんだ...私は、ここで■■■を見送った。...送りだしちまったんだ)

詢子(ああくそっ!大切な奴だってのは分かってるのに、名前が出てこない!教えてくれ...あんたは誰なんだ!?)

知久「...詢子さんも思い出したのかい?」

詢子「あなた...」

知久「僕も、急に思い出してね。僕たちには、後一人足りなかったんだ。大事な子がね」

詢子「だったら...」

知久「うん、行こう。僕たちの本当の家族を確かめに!」

タツヤ「ねえちゃ!」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

空、町、まどか...眼に映る全てのものが消えていく。

漆黒の空間に取り残されたのは、変身が解けた私と、魔法少女姿のまどか。

まどかは膝をつき、手で顔を覆い、涙を流していた。

かつて、私を殺そうとした巴さんを撃ち殺した時の彼女のように。

まどか『どうして...どうしてなの...?』

ほむら「......」

私は、彼女をそっと抱きしめた。

ほむら「ありがとうね、まどか。とてもいい夢を見させて貰ったわ」

かつては憧れていた夢。

絶望の無い、素晴らしい夢だった。

ほむら「でもね、私は忘れたくないの。私が今まで犠牲にしてきたものも、あなたを殺した痛みも、私の願いも...何もかも」

私の願いは、度重なる戦いの中で意味を変えて、真実だったものを嘘に変えてしまった。


まどかを契約させないこと。


―――違う。


まどかを守り続けること。


―――それも違う。




私はただ、あなたの隣に立っていたかった。

胸を張って、私があなたの友達だと言えるようになりたかっただけだった。


ほむら「私は、あなたと対等でありたかった。...それが、私の最初の願い」

いくら彼女を私から遠ざけようが、この手を汚そうが、彼女が私の手の届かないところへ行こうが、諦めきれていなかった願い。

だから、私は彼女に守られるだけのあの世界を受け入れたくなかった。

ほむら「皮肉な話よね。私自身の願いを叶えるために、あなたと戦う羽目になるなんて」

自分の道とぶつかったのなら、誰であろうと戦うだけ...

あの時、カズマが言った通りになったわね。

...もちろん、『円環の理』が無くなれば、世界にも影響が及ぶ。

それでも、世界の命運より、自分の願いを優先する。

それも、普通なら我慢できるようなほんのささやかな願いを。

ハタから見れば、愚か者でしかないだろう。欲深いクズだと思われるかもしれない。

それでも構わない。いくら罵られようとも関係ない。

ほむら「私は勝つわ。勝って、今度こそ私自身の願いを掴みとる!」


空間が崩れていく。あの世界へ戻れるのだろう。

私は、まどかから身体を離し、踵を反した。

だが、まどかは私を肩越しに抱き止めた。

ほむら「まどか...?」

まどか『バカだよ...ほむらちゃん、ほんとバカ...』

ほむら「ええ、そうね。バカじゃなかったら、こんなことになっていないわ」

まどか『...どうしても、行くんだね?』

ほむら「行くわ。例え、あなたが邪魔しようとね」

まどか『...わかった』

まどかが、互いの額同士をピタリとくっつける。

流れ込んでくる、彼女の力、記憶、想い...

ほむら「...力を貸してくれるの?」

まどか『......』ニコリ

彼女の笑顔に私が頷くと、今度は手のひら同士を合わせた。

手のひらの隙間から桃色の光が溢れ、私たちを包み込んだ。

光の中で、手を繋いだまま、渦を巻くようにぐるぐると回りだす。

もつれ合いながら、私たちは笑顔を交わし合う。



ポンッと何かが弾ける感覚と共に、腕、足、体の順に、私は魔法少女の衣装になっていった。

そして、最後に彼女は私の額に軽くキスをして



笑顔と共に、彼女は光の泡となって私のソウルジェムに溶けていった。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

―――――――――――――――

ワルプルギス「アーハッハッハッ!」

ほむら「...帰ってきてそうそう、あなたが出迎えてくれるなんてね」

ほむらが左手をかざすと、現れたのは紫と桃色が混じった弓。

ほむら「わるいけど、私はあなたに興味なんてないの。だから、一瞬で終わらせてあげる」

紫色は、ほむらが使い方を知らなかった、この時間軸に存在していたほむらのもの。

桃色は、まどかの魔力が込められたもの。


ほむら「マドカ...私は、あなたに与えられるだけの幸せなんかいらない。あなたが立ちはだかるのなら、私は...」

ほむらは弓を引き絞り、そして...





ほむら「あなたという壁に反逆する!」

ワルプルギスの夜へと放った。







―――これは、反逆の狼煙。

あの時、カズマに言われたからではない。まどかに頼まれたからでもない。

他でもない、私自身が未来を描くための反逆だ。

――――――――――――――――


さやか「おーい、カズマ。そっちはどうなった?」

カズマ「...誰だ、てめえ。劉鳳みてえな恰好しやがって」

さやか「あ、そっか。絶影の姿でしか会ってなかったね。さやかだよ、さやか」

カズマ「ああ、お前か。杏子の奴ならぶん殴っといたぜ。目が覚めるくらいに思いっきりな」

さやか「...あんた、まさか殺してないでしょうね」

カズマ「知るかよ。けど、戻ってくるっつったから、戻ってくるんじゃねえか?」

QB「心配はいらないよ、さやか、カズマ」

カズマ「どういうことだ、耳毛野郎」

QB「二人のグリーフシードからは、ちゃんと魔法少女の魔力を感じとることができる。彼女たちが己の魔女に勝てば、少なくとも意識は戻せるんじゃないかな」

さやか「よかった...」フゥ

カズマ「そういや、ほむらの奴はどこ行ったんだ?さっき耳毛がリタイアしたとか言ってたけどよ」

さやか「いや、あたしもよく分かってないんだけどさ。キュゥべぇ、あれどういうことなの?」

QB「さやか、君は見ていただろう?ほむらと鹿目まどかがシャボン玉に包まれたところを」

さやか「うん。まどかがほむらを抱きしめたと思ったら、急に...あれ?」

カズマ「なんだよ」

さやか「キュゥべえ...なんであんたがまどかや魔女のことを知ってたの?あたしたち、あんたにはまだ教えてなかったよね?」

QB「教えてもらったからだよ、マドカとギャラン=ドゥにね」

さやか「...は?」

QB「ギャラン=ドゥから彼女のことを教えてもらい、彼女は全てのことを教えてくれたんだ」

さやか「それって...じゃあ...まどかとギャラン=ドゥは...」

QB「手を組んでいるといっても過言ではないね。他でもない、彼女自身の意思で」

さやか「うそ...」

カズマ「オイ。どうやら、くっちゃべってる暇はねえみてえだぞ」



ワルプルギス「ウフフ...アーハハハハハ!!」

カズマ「あの野郎、さっきから大人しいと思ってたら、急に動き始めやがった。さっさと叩き潰して...」

さやか「うそ...まどかが...敵...?」

カズマ「はぁ?」

さやか(あたしは、まどかを助けたかったんだ。なのに...そのまどかが、ギャラン=ドゥの味方で、この騒ぎを起こした張本人...?
それじゃあ、劉鳳から預かったこの力も、あたしが闘う意味も...)

カズマ「...チッ」

ガンッ

さやか「いたっ!なにすんのさ!?」

カズマ「うだうだ言ってんなら、どっか行きな。目障りだ」

さやか「...そんなこと言っても、まどかが...」

カズマ「まどかがアルター野郎の味方ってのが気にいらねえなら、ぶん殴ってでも連れ戻すなり、徹底的に叩き潰すなりすればいいだろうが」

さやか「あんたねえ...まどかがどれほどのもの背負ってきたか知らないくせに、好き勝手言わないでよ!」

カズマ「知らねえなあ。俺はアルター野郎をボコる。そんでもってまどかが邪魔するなら容赦はしねえ。ただそれだけだ!」

さやか「だーかーら、あんたとあたしじゃ戦う理由が違うんだって!元々、あたしはまどかを助けたくて蘇ったの!」

カズマ「だったら、俺と戦うか!?あぁ!?」

さやか「そういう問題じゃないでしょ!あたしが言いたいのは...」


カッ

さやか「な、なに!?」

QB(あの光は...なるほどね。それが君が選んだ答えというわけか)

ワルプルギス「アハハ...ハ...」シュウウウ

さやか「ワルプルギスが消えていく...」

カズマ「なんだったんだ、さっきのは...」

QB「暁美ほむらさ。まどかが作った空間から抜け出したんだ」

さやか「えっ...それじゃあ」

QB「もちろん、彼女はまどかがギャラン=ドゥと組んでいることは知っている筈さ。ワルプルギスを消し去ったということは、それでもなお戦うことを選んだのだろう」

さやか「ほむら...あいつが...」

カズマ「どうすんだ?俺はアルター野郎をぶん殴りに行くが...邪魔すんなら、受けてたつぜ」

さやか「あたしは...」

さやか「...いや、あたしもあいつと戦うよ。マミさんとの約束もあるし、あのほむらが戦うって決めたんだ。だったら、あたしだけが理由どうこう言ってる場合じゃないでしょ」

カズマ「ハッ、そうかい」

カズマは空を睨みつける。

その視線の先は、ギャラン=ドゥが逃げていった方角。

カズマ「ケリつけようぜ。この長い喧嘩によぉ」

―――――――――――
美滝原 某所

ギャラン=ドゥ「をいをいをい...こいつはちっとマズイんじゃねえのかァ?」

ギャラン=ドゥ(あの二人は戻されそうだし、ワルプルギスも倒されちまったし...俺はカズマのあの拳のせいで、完調とは言えねえ)

ギャラン=ドゥ(それに、カズマは進化したハイブリットを解放し、美樹さやかも絶影の力を手に入れ、暁美ほむらもなんかパワーアップしてやがる...最低でもこの三人、最悪五人まとめて相手しなくちゃならねえってか...)

『心配いらないよ、ギャラン=ドゥ。ちょっと予想外だったけど、何も問題はないよ。ワルプルギスは偽物の代用品だし、ほむらちゃんが取り込んだあの子は、私のほんの一部でしかない。...そんなちっぽけな力に私たちは負けないよ』

ギャラン=ドゥ「!...待ちくたびれたぜ、マドカ」

マドカ『ウェヒヒ。ごめんね、我儘言っちゃって』

ギャラン=ドゥ「いや、構わねえさ。俺は野望のためなら助力は惜しまないからなァ」

マドカ『なにはともあれ、お疲れ様。ちょっと休んでて』

ギャラン=ドゥ「おう、そうさせてもらうぜェ...」

マドカが手をかざすと、ギャラン=ドゥの身体が粒子状に分解され、彼女の手のひらに吸い込まれていった。



マドカ「...決着を着けるよ、全ての因縁に」

今回はここまでです。
ここまで来たら、なんとかエタらずに頑張りたい

ほんの少しだけ投下します。


――――――――――――
避難所

自衛隊


「空が...晴れた...」

「なにがあったんだ?前触れもなく、いきなり消えたが...」

銀髪の男「魔法少女の仕業ですよ」

「だ、だれだ!?」

銀髪の男「なに、あなた方に名乗る程の者ではありません」

「怪しい奴め...動くな!」

隊長「待て!」

「隊長...!?」

隊長「...何を知っている?」

銀髪の男「いえ、私の主は彼女たちの持つ摩訶不思議な力に興味がありましてね。大体のことは知っていると思いますよ。例えば、あなた達政府が裏で...」

隊長「!...撃て」

「え、しかし...」

隊長「撃て!」

銀髪の男「...口封じでもするつもりですか?無駄だと思いますよ。なぜなら...」


ポコリポコリとシャボン玉が地面から湧き出てくる。

シャボン玉は次々にくっついていき、たちまち巨大なシャボン玉となり、そして―――

銀髪の男「あなた達はここで眠るのですから」



避難所にいる人間は、全てシャボン玉にのみ込まれた。

『...ブレード・ダンス』

シュピン

パシャン


銀髪の男「...どうやら、あのシャボンは、人の心の隙間に付けこむ能力のようですが...隙間のない者には効果が薄いようですね。だから、あなたは彼らに仲間同士で戦わせ、偽の舞台装置まで作って隙間を作ろうとした。まあ、それでも及ばなかったようですがね。
そしてこの私も、信じるのはあなたではなく、あの御方だけ」

銀髪の男「この町を最後まで残したのは、単に『逃げ』か、それとも徹底的に叩くという『決意』か...どちらなのでしょうか」

銀髪の男「拝見させて貰いますよ。あなたのその祈りで、どこまで変えることができるのか」

―――――――――――――

鹿目宅

詢子「......」

詢子(間違いない。この部屋はあの子のものだ。誰も使ってない空き部屋なのに、物置としても使わなかった...今考えりゃおかしな話じゃないか)

詢子「なんで、今まで気付かなかったんだろうな...」

知久「...もしかしたら、あの子がそれを望んだのかもしれないね。自分がいないことで苦しめたくなくて...」

詢子「あの馬鹿...忘れた方がいいわけないだろうが...!」

知久「でも、こうして思い出せたということは、あの子が近くにいるのかもしれない。...探しに行くかい?」

詢子「当たり前だ。探し出して、嫌ってほど抱きしめてやるさ」



タツヤ「パパ、ママ!シャボン玉!」

知久「シャボン玉?」

詢子「なんだ...こっちに向かってくる...!?」

シュン

パシャン

知久「シャボン玉が消えた...?」

詢子「今、光みたいなのが通っていった気が...」

ほむら「大丈夫ですか?」

詢子「え、ええ。あれ...あなた、この前河原で会った...」

タツヤ「まろか!ねーちゃ!まろか!」

詢子「タツヤ?またまどかって...ッ!」

詢子(あの子のリボン...まどか...)



『リボン...どっちかなぁ?』

『...ん』

『ええ~?派手すぎない?』

『それくらいでいいのさ。女は外見で舐められたら終わりだよ』


詢子(―――まどか!)

詢子「ちょ、ちょっとそのリボン見せてくれる!?」

ほむら「...ええ。どうぞ」

詢子(...そうだ、このリボンは...)

詢子「あなた、あたしの娘の...まどかを知らない!?」

ほむら「!...思い...出したんですか?」

詢子「...情けないことに、さっき急にね。それより、どこにまどかがいるか知らない!?」

ほむら「...はい。まどかは、たぶんこの辺りと...」

ほむらは、トンと左手のソウルジェムを指した。

ほむら「ここにも、一人」

詢子「どういうことだい...?」

ほむら「詳しい事情は話せませんが...今は、私たちを信じて待っていてください。お願いします」

詢子「信じろって言われても...」

タツヤ「ねーちゃ、ゆびきり!」

ほむら「うん。必ず、まどかを連れて帰るね」ニコッ

タツヤ「ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます!」

ほむら「『...指切った』」

詢子「...!」

髪の色は違う。声も、身長も全く違う。

リボン意外の共通点がない筈だが、それでも詢子にはまどかと目の前の少女がどこか重なって見えた。

詢子「...あなたは、いったい...」

ほむらは、薄く微笑んだ

ほむら「まどかの友達、ですよ」


今回はここまでで。
銀髪の人は特に本筋には関わりません

修正
>>304
×QB「もちろん、彼女はまどかがギャラン=ドゥと組んでいることは知っている筈さ。ワルプルギスを消し去ったということは、それでもなお戦うことを選んだのだろう」

○「もちろん、彼女はマドカがギャラン=ドゥと組んでいることは知っている筈さ。ワルプルギスを消し去ったということは、それでもなお戦うことを選んだのだろう」

別人って言った矢先にミスってた




――――――――――――

QB「いいのかい?マミ達の復活を待たなくて」

カズマ「いつ戻ってくるかわからねえ奴らを待ってられるか」

さやかはほむらとテレパシーを交わした後、杏子とマミの遺体がある廃屋へ戻っていった。

カズマはカズマで待つことは苦手なタイプであるので、単身ギャラン=ドゥが跳んでいった方面へ歩みを進めていた。

勿論、カズマの性格によるためだけの行動ではない。

彼は彼なりの、ロストグラウンドで培ってきた本能と予感のもとに動いていた。

もし、ここで動かなければおそらく...

ほむら「...カズマ」

カズマ「よう。随分とスッキリしたツラしやがって。昼寝でもしてきたか?」

ほむら「そういうあなたこそ、大分お疲れ気味のようね。手を貸しましょうか?」

カズマ「ぬかせ、コノ」

そう言って、二人は歩き出す。

片方は、しっかりとした足取りで。もう片方は、明らかにフラついた足取りで。

ほむら「...カズマ。退くなら、今の内よ」

カズマ「あぁ?」

ほむら「元々、あなたはこの世界に関係のない人間...あなたの守るべきものはここには無いでしょう?」

カズマ「おいおい、俺のケンカを横取りするつもりか?」

ほむら「彼女との決着は私がつける。これだけは譲れないわ」

カズマ「ワリーが、俺も譲れねえわけよ。だから退かねえ。文句あるか?」

ほむら「...好きにすればいい。死んでも、後悔しないことね」


―――――――――――――――


タタタ

仁美「ハァ...ハァ...」

仁美(なんで彼女を忘れていたのだろう。友達...だった筈なのに...)

恭介「志筑さん、どこまで行くんだい!?」ゼェゼェ

仁美「学校...学校に行けば...」

仁美(行って...どうなるの?今まで、彼女のことを思い出せなかった私に何ができるの?)

仁美(―――ああ、そうだ。さやかさんも彼女も、一度だって私を頼ってはくれなかった。何も言わず、どこかへ消えてしまった)

仁美(さやかさんも■■■さんも...友達だと思ってたのは...私だけ...?)

恭介「危ない、志筑さん!」

仁美「え...?」

ドン

仁美「きゃっ!」

仁美を突き飛ばした恭介は、迫りくるシャボン玉の身代わりとなってのみこまれてしまった。

仁美「上条くん!」

恭介「がぼっ!」

恭介(く、苦し...くない...?むしろ、気持ちいい...)




脳裏に流れる、彼のバイオリンの音色。

傍には、笑顔で拍手を送ってくれる、大切な幼馴染。

もう会えない筈だった幼馴染。

恭介「さやか...!」

名前を呼んで、手を伸ばす。

彼女は、手を伸ばし返すが、しかし握らない。

駄目だよ、というかのように首を横にふる。

恭介「さやか...なんで...!」

彼女は、無言のまま、恭介の背後を指差す。

恭介が振り返るとそこには―――



シュピン


仁美「さやか...さん?」

さやか「久しぶり、仁美。恭介」

恭介は、ただ茫然としていた。

当然だ。あの居心地のいい空間から連れ出してくれたのは、紛れもない、本物のさやかだったからだ。

さやか「とりあえず、さっきほむらからテレパシーがあったから、詢子さんたちと合流して...」

こんな時に、気の利いた言葉なんてでてこない。

恭介「さやかあああぁぁぁ!」

仁美「さやかさああぁぁん!」

さやか「のわっ!?」

二人は、感情のままに、さやかに抱き着いた。




仁美「さやかさんの馬鹿...なんであの時、私に何も言ってくれなかったのですか!?」エグッ

さやか「仁美...」

恭介「なんで...なんで、勝手にいっちゃったんだよ!」グスッ

恭介「皆が...僕がどれだけ...」

さやか「恭介...」

************************

回想

ほむら『さやか、あなたには詢子さんたちを頼んでいいかしら』

さやか『え、なんでさ』

ほむら『あの人たちを守れる人が、あなたしかいないからよ。マドカとは私がケリを着ける』

さやか『そんな!あたしもあいつと...』

ほむら『杏子とマミの身体も維持しなくてはいけないでしょう。カズマはそんな能力は無いし...あなたが一番の適任なのよ』

さやか『......』

ほむら『待つことも立派な戦いよ。...お願い、さやか』

***********************

さやか(はは...なんだかなぁ...)

泣きながらすがりついてくる二人を、さやかは優しく抱きしめる

さやか「ごめんね、二人とも。もう大丈夫だから」

今すぐにも、あいつのところへ駆けつけたいのに







こんなこと言われたら、ますます行けなくなっちゃうじゃん



さやか「もう、あたしはどこにも行かないから」






でも...本当に、これでいいの...?

―――――――――――――――


カズマ「ここは...」

彼らの目の前にあるのは、ヒビ割れたような空間の裂け目。

カズマはこの場所を覚えている。

ここで、結界の中へ引きずり込まれ、ギャラン=ドゥに敗北したのだ。

ほむら「...誘ってるわね」

カズマ「みてえだな」

この先に、互いの目的がいることを確信した二人は、躊躇うことなく足を踏み入れた。

次回予告

『設定年齢14歳』

マドカ...かつては希望を信じ、家族や友を愛した心優しき少女。

絶対的運命への反逆者たちが集う時、彼女の真の姿が白日に晒される。

行くは救済。来るは救済。全て、救済!

CV.若本
BGM.Salve, terrae magicae(まどマギの次回予告のBGM)

今回はここまでです。明日か明後日までには続き投下予定。

あの時と同じ、お菓子や薬のビン詰めだらけの空間。

だが、歩みを進めるまでもなく、まるで彼らが吸い込まれていくかのように、その空間は移り変わっていく。

薔薇まみれの空間、次は幾多のモニターにカズマの今までが映し出され、はたまた眼前には白と黒だけの世界が広がる。

そういった空間へ、順番に一つずつ変わっては通り過ぎていき、それは扉が開くと共に速度を増していった。

しばらくして、ピタリと止まったかと思うと、目の前にそびえ立つのは巨大な扉。

カズマ「ここまで連れてきといて、最後は自分で開けろってか?舐め腐った奴らだぜ」

カズマは、拳を握りしめ、シェルブリットを発動した。

突き破った先に広がるのは、視界一面のお花畑。

木々や湖にも溢れ、どこか心地よさを感じさせる。

天国なんてものがあるとしたら、それに一番近い光景であろう。

「...今、あなたたちが見てきたものは、かつての魔法少女たちの成れの果て。私は、彼女たちを絶望で終わらせたくなかった」

二人の背後に現れたのは、桃色のふりふりとした魔法少女の衣装に身を包んだ、ツインテールの小柄な少女。

カズマ「!」

ほむら「マドカ!」

マドカ「でもね、知れば知るほど、救いようのないことがあるってことを思い知らされた。...それは、あなたや亡くなったお兄さんはよくわかっていることでしょう?」

カズマ「......」



蒼乃大気【お前もアルター能力者だということでいわれもない迫害を受けてきた筈だ。その悪夢を、二度と繰り返してはならない】


アルター使いとして生まれたことを後悔したことはない。

だが、アルター使いであるが故に忌避され、利用されてきた者たちは散々見てきた。

カズマ自身、同居人のかなみに、ここ最近まで正体を隠していた。

もちろん、君島や水守のようなアルター使いに偏見を持たない人間もいないことはない。

だが、数が違い過ぎるのだ。数が多ければ、それだけで正しいものはそちらになってしまう。それくらいは、カズマでもわかっている。

つまりは、マドカが言いたいことは、こちらでいうそういうことなのだろうとカズマは解釈した。

マドカ「だから、私は絶望を断ち切るために全てを救済するの。そのためにも、早く身を委ねてくれないかな...?」

だが、だからこそカズマは反逆する。彼女には、気に入らない何かが秘められているから。

カズマ「...おい、ガキ。わかってんのか?俺は反逆者だぜ?」

カズマの全身をアルター粒子が包み込み、ハイブリットを発動させる。

カズマ「ノーとしか言わない男さ!!」

マドカ「...ほむらちゃんは?」

ほむら「私も、カズマと同意見よ」




マドカ「そう... 残  念 だよ」

瞬間、彼らに底冷えするような暴風が襲いかかる

カズマ「!」

ほむら(今のは...!?)

殺気ではない。マドカにとっては、ほんの少しイラついただけのこと。

たったそれだけのことで、彼らは、マドカの底知れぬ力を感じ取ることが出来た。

マドカ「質問を変えるよ...」



マドカ「私の能力が、空間だけでなく時空間までも操れるとしたらどうする?どんな攻撃も効かないとしたらどうする?
どこに逃げても追いかけてくるとしたらどうする?そんな私を倒さなければギャラン=ドゥと戦うことすらできないとしたらどうする?
どうする?どうする?どうする?あなたたちはどうする!?」

カズマ「決まってんだろ...」

ほむら「戦うだけよ!」

カズマが拳を握りしめ、ほむらは弓を引き絞る。

カズマ「壊滅のハイブリット!!」

ほむら「スプレットアロー!!」











マドカ「ゆるゆるだっ!!!」







衝撃波のようなものをぶつけられ、二人は吹き飛んだ。

カズマ「ぐああっ!」

ほむら「がはぁ!」

マドカ「...幾多の因果率が収束した私に、その程度の攻撃は通用しないよ」

カズマ「ハイブリットが効かねえ!?」

ほむら「これがマドカの実力...」

カズマ「めんどくせえ奴だぜ」

ほむら「ええ。全く手強いわね」



「「だが!!」」

カズマ「手強くても」

ほむら「勝つ!」









マドカ「だから無理だって!!」






―――――――――――――――

詢子たちとも合流し、杏子たちの身体が置いてある廃屋へ避難したさやか達。

さやかは、時折現れるシャボン玉の処理と、杏子たちの身体の維持をしていた。

さやか「......」

ソウルジェムが激しく反応している。

ほむらとカズマが闘っているのだ。

今すぐにでも、駆けつけたい。

でも、行けない。

ここで自分が離れてしまえば、誰が彼女たちを守るのか...

仁美「...行きたいのですか?」

さやか「仁美...」

仁美「そうやって、我慢し続けるのは、あなたの悪い癖ですわ」

さやか「......」

仁美「さやかさん。今度こそ、あなたの本当の気持ちに向き合ってください」

さやか「...勝手言わないでよ」

さやか「あんたたち置いて、行けるわけないでしょ!もし、あたしが行ったら、誰があんたたちを...!」

仁美「あまり、私たちを舐めないでくれますか?自分の身くらい、自分で守れます」

詢子「そうそう、こっちには大人もいるんだからさ、子供は好きにやればいいんだって!」バンッ

さやか「あだっ!じゅ、詢子さん...仁美...」

恭介「さやか...正直、僕はさやかにはもうどこにも行って欲しくない」

さやか「......」

恭介「でも、それでさやかが一生後悔するくらいなら、そんなのはごめんだ。だから、さやかがしたいようにすればいい」

さやか「恭介...」

仁美「あの時、あなたは何も言わずに立ち去ってしまった...だから、今度は約束してください」

仁美「誰も欠けずに、絶対帰ってくると」

さやか「......」

―――――――――――――――――

仁美(結局、さやかさんやほむらさんたちに頼ることしか出来ない...)

仁美(いつも、そうでした。あの人たちは、私の手の届かないところの人間。だから、私が頼られることなんてない)

仁美(こうやって、いつものように、何も知らないままに終わって、失って、後悔ばかりして...)

知久「...行ったのかい?」

詢子「うん...ははっ、情けない親だよな。娘が大変なことになってるってのに、あいつの友達に頼ることしかできないなんてさ」

仁美「...そんなことありませんわ。彼女は、とても素敵なお母様だといつも仰っていましたわ」

詢子「...あんたも、強い子だよ。だからさ」

詢子「あんたも、我慢しなくていいんだよ」

仁美「......」

ギュッ

詢子「大丈夫。あんたはれっきとした、まどかやさやかちゃんたちの友達だよ」

仁美「...うぅ...えぐっ...!」ポロポロ

さやか(ごめんね、仁美、皆。必ず、約束は守るから。だから...どうかあたしたちを信じていて)

「なにしてんだボンクラ。早く行かねえと、パーティに送れちまうだろ」

さやか「......!」

「準備はできたかしら、美樹さん」

さやか「...うん!」

――――――――――――――

マドカ「これで...理解できたかな?」

マドカは、余裕の笑みを浮かべている。

ほむら(つ...強すぎる...!)

ワルプルギスの夜やギャラン=ドゥがかわいく思えるほどの圧倒的なパワー。

カズマ(ヤベェ...)

かつて、カズマに『反逆』を教えた男の姿がよぎる。

カズマ(ヤベェよ兄貴...)

『弱い自分に反逆する』

その教えが霞むほどに、彼は弱さに支配されつつあった。

カズマ(弱い考えしか思い浮かばねえ―――!!)





―――『反逆者』様方は、こんなところで終わるのか?












「「「んなわけねーよな!!」」」

ほむら「...!」

カズマ「お前ら...!」

さやか「お待たせ、二人とも」

杏子「情けないツラしてんじゃねーぞ、バカ共が」

カズマ「ハッ...誰が情けないツラしてるって!?」

マミ「はいはい。二人とも、ケンカは後でね」

カズ杏「「わかってるって!」」

マドカ「...それで?たった三人増えただけで私を止めれると思うの?」

杏子「おい、マドカ。あんたがどれだけ強い魔力を持ってようがな、こっちには経験値ってやつがあるんだ。ベテラン魔法少女を舐めんじゃねえぞ!」

マドカ「ふ~ん...なら、見せてもらおうかなッ」

シュンッ

さやか「消えた!」

マミ「慌てては駄目よ」

杏子「カズマ!マドカの出現するポイントに拳を叩き込め!!」

ほむら「予測なんてできるわけ...」

杏子「できる!」

カズマ「ああ、できるな」

ほむら「どうやって...!?」

杏子「あたしの魔法と」

カズマ「俺の拳で!!」

ピクン

マミ「佐倉さん、右方向30m!」

杏子「任せろ!」



シュン

マドカ「っ!そ...それは!?」



マドカの出現場所ピンポイントに放たれた、視界を覆い尽くす程の巨大な拳。

その数、サイズ...まさに逃げ場なし!




カズ杏「「幻惑のハイブリットォォォォ!!!」」

拳を受けたマドカが、後方に吹き飛ぶ。

それを追撃する影が一つ。

マドカがそれに気付いた時にはもう遅い。なにもかもがスロウリィ。

その影がマドカの横を通り過ぎた時には既に、マドカの右腕にリボンが巻きついていた。

さやか「速さが足りないよ、マドカ!」

マドカ「......!」

マミ「『どうして私の出現ポイントがわかったの!?』...って顔してるわね。さっき佐倉さんも言ってたでしょ?あなたとは、圧倒的な経験の差があるのよ」

マミは、目を凝らしても見えるかどうか程度の細さのリボンを張り巡らしていた。

そして、『ワープ』を使う際に生じる空気の歪みを振動として察知したのだ。

さやか「ほむら、これで準備は出来たよ!」

マミのリボンが巻き付いているため、ワープを使うことができない。

そして、そんなチャンスを見逃すほど、彼女はお人好しではない。

ほむらが創りだしたのは、桃色と紫色の混じった巨大な弓。

ありったけの魔力を込め、ほむらは弓を引き絞る。

ほむら「これで...決着を着けてやる!」



ほむらは、照準をマドカに合わせ、弓矢を放った。





杏子「マジかよ...!」

乾いた声が響き渡る。

カズマの拳と、ほむらの弓矢の衝撃により立ち上る砂煙。

「...やっぱりね」

その中から、姿を現したのは、埃一つ付いていない、マドカそのものだった。


マドカ「やっぱり、この町を最後にしてよかった。ここが、一番手強いところだって思ってたから...」

カズマのハイブリットは効かない。

ほむらの弓矢も届かない。

杏子の幻惑も、さやかの正義武装も、マミのリボンも、もう通用しないだろう。



それでも、彼らの目から、反逆の炎は消えていない。

マドカ「だからこそ、全力を注げる。後を気にしないでいける」

マドカの身体から、神々しい光が滲み出る。

マドカ「だからこそ、真の姿であなたたちを導くことができる!」

マミ「真の姿...!?」

光は、よりいっそう輝きを増して、彼女を包み込んだ。

マドカ「そう...これが本当の私!!マドカ★まぎか、設定年齢14歳、天秤座のA型!!」




光の中から、5人の前に姿を現した彼女。

ほむらよりも長い長髪に、白のリボンと、胸元が少し開いた純白のシルクドレスに身を包んでいる。

その神々しいオーラを纏った彼女を見た瞬間、5人は叫んだ。叫ばなければいけない気がした。






「びっ....美形だっ!!!」



今日はここまでです。
アニメ本編のまどか→まど神の流れを見た時、漫画ジグマールが脳内によぎったのは俺だけでしょうか

ほむら「これが、マドカの真の姿...!」

杏子「今までのは、三味線弾いてやがったのか!?」

カズマ「チッ、コケにしすぎなんだよ!」

さやか「全くだね!」

マミ「ま、待ちなさい!」

さやかがマドカの右方から、カズマは真正面から殴りかかる。

―――が、それが彼女に届くことはない。

二人の攻撃は、いともあっさりと止められていたからだ。



さやか「あたしたちの攻撃を...小指で...!?」

マドカ「さあ、それでは救済と攻撃を開始するよ。自覚と覚悟はいいかな!?」

――――――――――――――――――――
ロストグラウンド 某所


君島「イタタタ...結構、副作用きついな...」

箕条「言ったでしょう?命がけの選択だって。むしろ、これだけで済んだのが幸いですよ」

かなみ「シェリスさん、ありがとうございました」

シェリス「いいのいいの。正直、劉鳳以外の人と合体するのは気が引けたけど、あなたみたいな可愛い子だったからよかったわ」

君島「え、じゃあもし俺が開花してたら...」

シェリス「吐いてたわね。三日間くらいずっと」

君島「そんなに嫌なの!?」

水守「それにしても、魔法少女って...メルヘンチックというか、なんというか...」

劉鳳「実際は、そんなものではなかったがな...むしろ、俺たちアルター使いに似た何かを感じた」

水守「それって、どういう...」




―――キィン

水守「!私のペンダントが...!」

劉鳳「これは...!?」

――――――――――――――――――――

QB「鹿目まどか、暁美ほむら、美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子、そしてカズマ...」

QB「彼らは、それぞれのエゴを持ってして、契約とはまた別の奇跡を起こしてきた。でも、これは本当に偶然の産物なのか、それとも...」

ザッ

「あなたがインキュベーターですね?」

QB「...僕が見えるのかい?」

「ええ。私の名は異納泰介。アルター使いです」

QB「アルター使い...君も、カズマのようにタイムマシンでここまで来たのかい?」

異納「タイムマシン?...どうやら、彼と私たちでは事情が違うようですね」

QB「...?それで、そのアルター使いが僕に何の用だい?」

異納「私の主が、ここで待つようにと仰っしゃられたので。そのついで、ですよ」

QB「主...」





ズズズ

「お待たせしました、異納くん」

異納「お帰りなさいませ、無常様」

無常「すみませんねえ、わざわざここまで迎えに来させて」

異納「いえ、私はあなたに仕える身...当然のことです」

QB「君が、異納泰介の主かい?」

無常「はい。私の名は無常矜持。精製を受けた、アルター使いです」

QB「精製...?」

無常「平たく言えば、改造手術のようなものです。ですが、それは些細なこと。私は、あなたに用事がありまして」

QB「僕にかい?」

無常「なに、ほんの下らないことです。私が一度彼女の能力に取り込まれ、見てきたものを参考にした私の推測を、あなたに吟味していただきたくて」

QB「取り込まれた...つまり、君はわざと彼女に身を委ね、今ここに出てきたというわけかい?」

無常「そう考えてもらって構いません」

QB「それは興味深いね。ぜひ話してくれないかな」

無常「あの腕を変形させるアルター使い...名はなんと言いましたっけ」

QB「カズマだね」

無常「そう、そのカズマは、アルター能力を発動させるために必要な力を、魔法少女や魔女の魔力で代用した。そして、美樹さやかや鹿目まどかという少女もまた、進化の言葉により、アルターを取り込んだ新たな進化を遂げた」

QB「その点は僕も想定外だったよ。まさか、あんなことができるなんてね」

無常「...しかし、妙だと思いませんか?本来なら、関わり合う筈のなかった能力同士。それが、こうも都合良く影響しあうことに」

QB「...君は、何が言いたいんだい?」

無常「共通点が多すぎるのですよ。アルター使いと魔法少女にはね」

QB「共通点...?」

無常「アルター能力とは、生来からその形が決まっているわけではありません。環境、生き方、なにかのキッカケ等が影響することで形作られるのです」

無常「例えば、私の能力は、『アブソープション』。他者のアルターを吸収し、変質させることができます。私は育ち柄、飢えや反骨心が強くてね。常々、全てを手に入れたいと思っていたのです。そして、開花したのがこの能力なのですよ」

QB「なるほど。願望が、能力に影響するわけだね。その能力で、君はマドカの能力から逃れたていたわけか」

無常「はい。ですから、仮に私が速さを求め続けていれば、この能力にはならず、それに見合った能力になるのです。...これは、あなたが契約により生みだす魔法少女の特性に酷似していませんか?」

QB「...確かに、魔法少女の能力はその願望に見合ったもので、創りだす武器は、性格に左右されやすい」

無常「まあ、それだけなら他にもありそうなものですが...アルター使いは物質と己の生命力を、魔法少女は魔女のグリーフシードでの浄化...つまり、魔女の魔力を対価とすることにより己の能力を発動させる。他を犠牲にしなければ能力を使えないのですよ」

無常「己のエゴが原動力であり、己のエゴを否定すればするほど能力が弱体化するなど、他にも挙げればキリがないのですが...しかし、極め付けはその終着点にある」

QB「......」

無常「ギャラン=ドゥというアルターは、元来から意思を持っていたのではなく、マーティン・ジグマールという男がアルター能力を極めた結果だと聞いています。
つまり、私たちアルター使いは、アルターに作られた卵といえるでしょう。そして、魔法少女もまた、魔女になるためにあなたがたが創りだした卵...」

QB「それは、つまり...」

無常「ええ。私はこう思うのです。アルターと魔法少女...その源流は同じものではないのだろうかとね」


――――――――――――――――――――

マドカ「...まず、私のシャボンの能力で、世界中全ての人の魂と肉体を一時的に分離する」

彼女の足元には、幾多のへし折れ、砕けた剣の残骸が転がっている。

マドカ「次に、その肉体を半アルター化、及び魂を半魔女化させ、表面的な自我を失くす。普通の魔女化と違うのは、私たちが、それぞれに欲しいものを与えるし、魔法少女でない人もできるってところだね。
しかも、そこから発生する感情エネルギーは宇宙のエネルギーに変えられる」

彼女の傍には、粉々に砕かれた槍と引きちぎられたリボンの欠片が散らばっている。

マドカ「そして、全てが完了した後に、ギャラン=ドゥに意識の統一をさせる。そうすれば、誰もが悲しむことも争うこともない、幸福な世界が完成する。
それが、私たちの計画『ワールド・オルタレイション』だよ」

彼女の後ろには、血塗られたアルターの破片が、今にも消えそうなほど、空気に溶け始めている。

もはや、動きを見せる者は、彼女以外誰一人としていない。

マドカ「...そんな、私とギャラン=ドゥを、それでも邪魔するのかな?」

息も絶え絶えに、脚も震え、両腕は力なくダラリと垂れ下がっている。

もう、杏子とマミが魔獣から手に入れたグリーフシードも残っていない。

それでも、5人の中で最弱の彼女、暁美ほむらだけは、倒れることなくその両目をギラつかせていた。

ほむらが震える手で、弓を引く。

ほむらのなけなしの魔力が、限界まで込められた矢だ。

マドカは避けようとも、受け止めようともせず、ただその場に立っている。

ほむらが弓を放つ。

マドカは微動だにしない。

マドカの右肩に弓が刺さる。

しかし、血もアルター粒子も、何も出はしない。

ただ、魔力で出来た矢がマドカに刺さり、何も変えることなく消え去ったという結果だけが残った。

マドカ「...もう、いいでしょう?」

マドカが、ゆっくりとほむらに歩みよる。

マドカ「もう、残ってるのはほむらちゃんだけなんだよ」

幾つものシャボン玉が、倒れている4人を取り囲む。

マドカ「大丈夫。さやかちゃん達は勿論、あなた達をたぶらかしたカズマさんも見捨てはしないから。皆、幸せになれるから」

歩みよるマドカに、ほむらは何もしようとしない。

目と鼻の先ほどまで接近して、マドカは歩みを止めた。



マドカ「皆で一緒にいこう、ほむらちゃん」

マドカは、ほむらを優しく抱きしめ




ほむらは、わらった

マドカが歩み寄ってくる。


―――鹿目まどか

魔力が尽きかけ、今にも倒れそうになるほむらの頭の中に、言葉がよぎる。



―――巴マミ 佐倉杏子 美樹さやか 暁美ほむら

それは、今までに聞き、触れてきた言葉の数々。



―――志筑仁美 鹿目タツヤ 劉鳳 上条恭介 鹿目詢子 絶影 ソウルジェム 鹿目知久 ティロ・フィナーレ

何の意味もなく、順番も何もかもが滅茶苦茶な言葉の羅列。



―――カズマ シェルブリット ギャラン=ドゥ マドカ 魂 時空間ワープ

その中から、必要なものだけを選び、掴みとる。



―――魔法少女 アルター 魔女化 ギャラン=ドゥ 進化 マドカ

掴みとった言葉を、彼女なりに紡いでいく。





マドカの足音が止む。




―――『魔法少女はさ、夢と希望を叶えるんだから』





一つの答えを見つけだした時



ほむらは、わらった。

マドカ「...?」

ほむらを抱きしめることにより、マドカは直接シャボン玉に取り込もうとした。

しかし、笑みを浮かべるほむらに違和感を覚える。

マドカ(心が...)

ほむらに、マドカに対する抵抗はない。

マドカ(折れていない...!?)

だが、わからない。

こんなに近くにいるのに、ほむらの何もかもがわからない。

「おりゃああ!!」

掛け声と共に、マドカの首筋に、こめかみに、微かな衝撃が走る。

もちろん、マドカには、何のダメージもない。

しかし、マドカの注意がそれた隙を突き、一つの影が、ほむらを抱きかかえ、マドカから距離を取った。

マミ「そう何度も夢みがちじゃいられないのよね」

マドカのこめかみを撃ったのはマミ。

杏子「言ったよな、ベテラン魔法少女舐めんなって」

首筋にケリを入れたのは杏子。

さやか「またまた速さが足りなかったね、マドカ!」

ほむらを連れ去った影は、さやか。

魔力も体力も尽きかけた、4人の瀕死の魔法少女。

彼女の、彼女たちの叛逆の炎はまだ潰えてはいなかった。

ほむら「...カズマ、あなた、あと何発シェルブリットを...カズマ?」



ただ、一人の反逆者を除いては。

マドカ「どうやら、カズマさんは限界みたいだね」

呼吸はしている。流れている血も、致死量ではない。

だが、カズマは目を覚まさない。

地に這いつくばったまま、立ち上がらない。

杏子「...おい、なにしてんだ、カズマ」

ロストグラウンドでは、マーティン・ジグマールや蒼乃大気といった強者と戦い、こちらに来てからは、杏子、魔獣、ギャラン=ドゥ、特殊魔女化した杏子、そしてマドカと戦い...

休む間もない度重なる連戦や、魔力を取り込む荒業により、カズマの身体は、精神は、もう限界を超越しすぎていた。

シャボン玉が、カズマの身体を包み込む。

杏子「ふざけんじゃねえぞ...!」

カズマは抵抗をしない。することができない。

杏子「あたしにあんだけ言った奴が、こんなところで終わるつもりか!?」

マミが、さやかが、ほむらが呼びかけるが、しかし、カズマはピクリとも反応しない。

杏子「この...馬鹿ヤロウがぁぁぁ!!」




杏子の叫び声も、伸ばす手も空しく、カズマはシャボン玉と共に消え去った。

次回予告

『叛逆』

ほむらが、背負ってきたものを解き放つ。 マドカが、己の理想のために牙を向く。

その衝突の果てに、何があるというのだろうか。

何もありはしない。

無いからこそ求める。人は、求め続ける!

CV.若本規夫
BGM.Salve, terrae magicae(まどマギの次回予告のBGM)

今回はここまでです。
頑張れば今月中には終わる...かな?

**************************


―――カズマ...

誰だ..?

かなみ...じゃねえな。君島か...?

いや、違うな...けど、どっかで聞いたな...



―――カズマ...

意識がボヤけちまう。

全身に力が入らねえし、吐き気もする。

めちゃくちゃダルくて、めちゃくちゃ眠てえ。

...駄目だ。

もう、疲れちまった。




―――カズマ!




一喝されて、意識がハッキリとしてきた。

俺の目の前にいるのは、その長い脚を振り上げて、特徴的なサングラスを掛け、笑みを浮かべる伊達男...

カズマ「ストレイト・クーガー!!」

クーガー『どうした、カズマ。女の子たちに負けていて、それで満足か?』

...あぁ?

クーガー『俺はよく頑張った。限界も何度も超えた。だから、立てないのはしょうがねえ...お前はそれでいいのか?』

ふざけんな、誰がもう立てないって...!?

俺の反逆は、こんなもんじゃねえんだよ!

クーガー『だったら、今のお前の弱い考え方はなんだ?答えろ!』

クーガー『答えろカズマ!!』

へっ...それは...



奴をボコれず、見下されたままくたばってることだ!!

**************************

―――パァン

小気味いい破裂音と共に、人影が空間から落ちてくる。

その人影は、言うまでもなくカズマ。

カズマ「―――ッ!?」

吐血。

ただでさえ疲弊しきった身体と精神で、全力で抜け出したのだ。

その負担はただではない。

その血は、止まる気配は一向にない。

それを見た彼女は、青ざめた。


マドカ「―――!」

敵である筈の、マドカが青ざめていた。

ほむら(...!?)

マドカの反応にいち早く気付いたのは、ほむら。

敵である筈のカズマの様子を見て、明らかに動揺している。

演技だろうか?いや、それにしては唐突すぎるし、何より理由がない。

彼女と対峙してから、訳の分からないことを言ったり、別のキャラのような言動は度々あったが、それでもこの反応だけは理解できない。

いくら、私たちが5人いるとはいえ、どれも死にぞこないと言っても差支えない。

一切、力が衰える様子のない彼女の方が圧倒的に優勢な筈...

ほむら(...何にせよ、これはチャンスかもしれないわね)

理由はどうあれ、今のマドカは隙だらけ。

今なら、彼女に聞かれることなくカズマに伝えられるかもしれない。

ほむらが、全ての時間軸から掴みとった答えを。

さやか「大丈夫、カズマ!?」

さやかとマミが、カズマに治療の魔法を施す。

だが、カズマは答えない。

ただ、鋭い眼光のまま、突っ立っているだけだ。

マミ(これ以上は、私たちの魔力が...!それに、肉体は回復できても、精神までは...)

突如、カズマが右腕を前に突き出す。

人差し指、中指、薬指、小指の順に、指を折り曲げていく。

そして、最後に親指を折り曲げ、力強く握りしめる。

杏子「へっ...そうだよな。あんたは、この程度のやつじゃねえよな」

杏子の言葉に、カズマが凶悪な笑みを浮かべ、全身を虹色のアルター光が包んだ。

カズマの脳裏に、先程のクーガーの姿が浮かび、その声が問いかける。

―――カズマ。何故、その拳を握る?

決まっている、反逆するためにだ。

―――ひょっとしたら、あのお嬢ちゃんは頼めばアルター野郎を出してくれるんじゃないのか?

アルター野郎との決着は着ける。だが、何を背負っているかは知らねえが、あのガキの、人を不幸だなんだと決めつけるような考えも気に入らねえ。

―――おいおい...まるで、チンピラだな

チンピラで結構。反逆する理由なんざ、『気に入らねえ』。ただそれだけで十分だろうが!

―――だったら...やれ!

言われるまでもねえ!



拳を握りしめ、アルターを発動させるための虹色の光が、カズマを包む。

しかし、ほむらが手を添えることによって、アルターの発動は遮られた。

ほむら「駄目よ。それはまだ、とっておきのために残しておいて」

――――――――――――――――

マドカの中で、誰にも聞こえない彼らだけの会話が交わされる

ギャラン=ドゥ『...代われ、マドカ』

マドカ『ギャラン=ドゥ...』

ギャラン=ドゥ『お前、あいつの様見て動揺しちまったんだろォ?それに、あまり力を使い過ぎると...』

マドカ『悪いけど、これだけは譲れないの。私の手で、全ての因縁を断ち切らなくちゃいけないの』

ギャラン=ドゥ『けどよ、俺たちの野望は、ミスを許されない...俺に任せた方が、ミスる確率は減るぜェ』

マドカ『...それでも、だよ』

ギャラン=ドゥ『......』

ギャラン=ドゥは、かつての自分の創造主を思い出す。

自分の野望は、この世界...つまり地球の支配者を人間からアルターに変え、究極のアルターワールドを築くことだった。

だが、あの男はさらにスケールのデカイ夢、全宇宙を支配するなどというバカげた野望を本心から掲げていた。

例え、創造主を遙かに超えていようと、ギャラン=ドゥは終ぞジグマールの野望を抱くことはなかった。いや、できなかった。

頼りなく、最後まで使えない奴ではあったが、ギャラン=ドゥには無いなにかをあの男は持っていた。

マドカに関しても、そう。結果はこうなったものの、あの時は、とにかく助かろうとしていただけで、その後のことは考えもしていなかった。

まどかが掴みとったものがあるからこそのマドカであり、ギャラン=ドゥは何もしていない。

そして、今、目の前に敵対している彼女たちもそう。

純粋にパワーだけなら、ギャラン=ドゥに遙かに劣る連中ばかりだ。

だが、それでも、彼に出来ないことをやってのけてしまった。

魔女が、己の限界を決めつけてしまったが故に、心の底から欲しいものを手に入れることが出来ないのと同じように、ギャラン=ドゥもまた、己の限界を決めつけてしまっているのではないだろうか。

ギャラン=ドゥには無いなにかを秘めているからこそ、彼らは、人間は、進化を続けることができるのではないだろうか。

ギャラン=ドゥ『...てめえといい、ジグマールといい、あいつらといい...魔法少女やアルター使い...いや、人間ってのは、頑固者が多いみてえだなァ』

マドカ『...私は、違うよ。"まどか"はもう捨てたでしょ?』

ギャラン=ドゥ『それでも、だ。いいさ、俺はもうお前の邪魔はしねえ。俺の主はお前だ』

マドカ『ありがとう、ギャラン=ドゥ』

ギャラン=ドゥ『ただ、お願いと言っちゃなんだがよォ...』

マドカ『?』

ギャラン=ドゥ『俺も、お前の隣に立たせちゃくれねえか?』

―――もしかしたら、お前の隣に立つことで、俺にも何かが見えるかもしれねえからな

―――――――――――――――――

カズマ「正気かよ...?」

カズマが、ほむらの言葉を聞いてからの第一声がこれだった。

他の三人も同様だ。

カズマですら正気を疑うような、彼女の言葉に、何も言葉が浮かばなかった。

ほむら「不可能ではないでしょう?」

さやか「いや、そうは言ってもさ...」

理論上は、確かに可能ではある。

だが、もしそれを実行すれば...

カズマ「てめえ...死ぬぜ」

馬鹿のカズマでも分かる答え。

死ぬどころか、何が起こるか分からないし、何も起こらないかもしれない。




ほむら「あら、知らないのかしら?」

幾度も絶望を見せ続けられ、希望をへし折られ続けた少女は、こともなさげに言い放つ。





ほむら「魔法少女は、夢と希望を叶えるのよ」



カズマは、思った。

―――馬鹿だ、こいつ。

やってみなきゃ結果はわからねえってのが、俺の信条だ。

だが、それでもこんなことをやろうとは思わねえし、思いつきもしねえ。

かなみや君島にも言われて来たし、自分でも相当なものだと思っていたが、こいつはそれ以上。

俺以上に無謀で、俺以上にイカレてて、俺以上に命知らずの馬鹿ヤロウだ。




―――けどまあ

カズマ「いいね、そういうのは嫌いじゃねえ!」

杏子「...仕方ねえ。どうせこのままやってても、終わっちまうだけだからな」

マミ「そうね。やれるだけやりましょうか」

さやか「ま、あんたなら出来るかもね。何度もまどかのために繰り返してきたあんたなら」

ほむら「ええ。必ず成し遂げるわ」




『何企んでるかは知らねえが...果たして、そううまくいくかねェ?』

ヤマネエエェェン!


さやか「この音、ギャラン=ドゥ!」

マミ「でも、どこに...!?」

マドカ『...こっちだよ』

マドカの声と、ギャラン=ドゥの声が重なって聞こえる。

しかし、姿が見えるのはマドカだけ。ギャラン=ドゥの姿は見えない。

ギャラン=ドゥ『そろそろ、てめえらがウザったくなっちまったからよォ。つい、表にも出てきちまったぜェ』

マドカ『今の私たちは、二人で一つ。今の私の身体は、私とギャラン=ドゥのものなの』

ギャラン=ドゥ『俺が出てきた以上、さっきまでみてえに甘くはねえぞ』

カズマ「...なるほど、よくわからねえが、てめえをボコれば、アルター野郎もまとめてボコれるってわけか」

ギャラン=ドゥ『ま、やれるもんならやってみなァ』

ほむら「マドカ...いえ、まどか」

マドカ『違うよ、ほむらちゃん。私はマドカ★...』

ほむら「そんなことない。あなたは、鹿目まどか。優しくて、つい自分をないがしろにしてしまいがちで、でも自分の決めたことは曲げようとしない...そんな女の子」

マドカ『......』

ほむら「思えば、私たちから、全てが始まったのよね」

マドカ『そうだね、まどかがあなたを魔女から救け、あなたはそんなまどかを救けるために契約した』

ほむら「まあ、あなたからしてみれば何気ない好意だったのでしょうけど、それでも私はあなたに惹かれたの」

マドカ『きっとあの子は、昔の自分みたいに自信のないあなたに、似たなにかを感じ取ったんだろうね』

ほむら「それから、何度も時間を巻き戻してきた。そして、その過程で色んなものを犠牲にしてしまった」

マドカ『そして、巻き戻した分、あの子は魔女となり、世界を滅ぼしてしまった』

ほむら「それでも、望んだものを得るために戦ってきた。その度に、私は何かを壊していった」

マドカ『そんなあなたの願いを、あの子は置き去りにしてしまった』

ほむら「私は、あなたの隣にいたかったから」

マドカ『あの子は、魔法少女たちの希望になるために、私は、全てを私の思い描く救済へと導くために、なにもかもを置いてきた』

ほむら「クズね、私たち」

マドカ『そうかもね。あなたもあの子も...私も』




―――それでも、譲れないものがあるから



ほむら「私は、私のためにあなたに叛逆する!」

マドカ『あなたも皆も、全てを救済へ導く!』



私たちから始まった、全ての因縁に決着を着けるために!

今回はここまでです。
読んでくださった方は、ありがとうございました。

シンとした静寂に包まれる。

マドカが、掌をほむら達に向け、弓矢を創りだす。

それは、マドカが今まで行わなかった、殺意が込められた攻撃である。

ギャラン=ドゥ『先に聞いておくが...これが、最後の質問だ』

マドカ『あなた達は、私達と共に来る気は...?』

杏子は槍を構え

マミはリボンを創り

さやかは『正義武装』の姿のまま剣を握り

カズマは拳を握りしめ

ほむらはその眼光鋭く

同時に答えた。





「絶対にノゥ!!」

その言葉と共に、矢が放たれ、たちまち膨大な数に分散した。

杏子「お前ら、そこから動くな!」

杏子が、両の掌を合わせ、前方に防御壁を創る。

が、それはマドカの矢の前ではほぼ無意味。

一つ被弾しただけで、防御壁は消滅し、それは杏子の腹部を貫いた。

杏子が、こと切れたかのように膝から崩れ落ちる。

だが、倒れたのは彼女だけ。

他の4人は、杏子が創りだした巨大な槍によって、上空へと持ち上げられていたからだ。

杏子「           」

倒れている杏子の身体を、シャボン玉が取り囲み、彼女を包み込んだ。

槍が消失し、4人が落ちてくる。

――――――――――――――――


いつも、さやかの傍にあんたはいた。

マミともさやかとも険悪な仲になっていた時、あんたはあたしのもとへと訪れた

それからも、時々会っては他愛のない話で盛り上がって、『頑張って素直になろう』なんて馬鹿みたいな約束を交わして...

あの時は呆れたよ。

でも、ホントは、スゲー嬉しかったんだぜ。

短い間だったけど、あたしにとっての初めての『友達』だったんだから。

結局、約束は果たせなかったんだけどな。

...そういえば、さやかを助けに行く時も「一緒に遊ぼう」って約束してたっけ。

だからってわけじゃないけど、これが終わったらさ


杏子「一緒に遊ぼうぜ、まどか」

――――――――――――――――――

マドカ『躱したところで無駄だよ!』

無数の矢が、方向転換して、カズマ達に襲いかかる。

マミ「美樹さん!」

マミがリボンを伸ばし、さやかに握らせる。

さやかが受け取ったことを確認すると、マミはそのリボンを千切り、矢に向き合った。

さやかは、カズマとほむらの手を握り、己の魔法陣を足場にし、一気にマドカのもとへ跳んでいった。

マミは、盾にするかのように、リボンを展開。

しかし、それも迫りくる矢を止めることも出来ず、矢はマミの心臓部を抉っていった。

シャボン玉が、マミを取り囲み、杏子と同様に包み込む。

シャボンに取り込まれながらも、マミは確かに微笑んでいた。

――――――――――――――――――――

いつだって、あなたは私を孤独から救ってくれた。

あなたが魔法少女であろうとなかろうと、傍にいてくれた。

そして、私がいなくなった時は、心の底から悲しんでくれた。

あなたは、後輩でもあったけれど、友達でもあってくれた。

それなのに、いつもみっともない姿を見せちゃってごめんなさい。

あなたをこの道に引きずり込んだ癖して、あなたに助けられてばかりで、こんなことを押し付けてしまって...

やっぱり、駄目な子ね、私。

でも、もうあなた一人に背負わせたりなんかしないから。

あなたばかりに辛い思いはさせないから。




今度こそ、皆揃ってお茶会をしましょう、鹿目さん

――――――――――――――――――

さやかが、マドカに肉薄する。

後、10メートル、7メートル、5メートル

それに対してマドカは、両腕をドリル状に変化させ、地を蹴った。

逃げの方向ではなく、今まさに迫りくるさやか達に。

さやか「なっ!?」

真・絶影の姿ならばどうにかできたかもしれない。

しかし、今のさやかは人間体。

絶影の能力を借りているとはいえ、飛行能力は無いに等しい。

さやか(せめて、ほむらとカズマだけでも...!)

さやかは、カズマとほむらを上空へと、思い切りぶん投げた。

もちろん、隙だらけとなったさやか自身に、マドカを躱す術はない。

右手のドリルに、さやかは腹部を貫かれた。

マドカは、さやかをうち捨て、上空のほむら達へ向き合った。

時空間ワープを使おうとするが、しかし右腕に違和感をおぼえる。

右腕には、青の触鞭が巻き付いていた。

さやか「...烈...迅...」

ふらふらと立ち上がっていたさやかは、今度こそその場に崩れ落ちた。

―――――――――――――――――

初めてあった時は、なんだか臆病な子だなって思ってた。

あたしが話しかけたら、ものすごく嬉しそうにしちゃってさ。

これはあたしが守ってやらなきゃって勝手に思い込んでた。

それに、あんたに八つ当たりしたり、何度もあんたを泣かせたりもした。

今思えば、あたしがあんたを追いこんでたんだね。

それでも、あんたはあたしを見捨てないでいてくれたね。

本当に、ごめんねまどか。

でも、まどかの決意は否定できないけどさ、あんたが皆と笑って生きていけないような世界は嫌かな。

劉鳳からこの力を貸してもらっておいてなんだけど、あんたが泣きを見るような世界を受け入れるのが正義なら、あたしは正義じゃなくていいよ。



だって、あんたはあたしにとって、大切な親友なんだから。

――――――――――――――――――――

右方向には、マドカが放った矢が、真下には絶対的力を持つマドカがいる。

どうするか?決まっている。

カズマは、ここにきてやっとアルターを発動させた。

分解したのは、魔力が込められた槍とリボンと剣、そしてあと一つ。

カズマ「杏子、マミ、さやか、ほむら...お前たちの名前、確かに刻んだ。そんでもって...」

カズマの全身が、かなみと君島と共に掴みとった黄金の装甲に包まれる。

カズマの背に、3対の羽、計6枚の羽が生える。

一番上の対から、赤色、黄色、青色の羽だ。

そして最後に、右腕が、紫色の盾のついた装甲に包まれた。

カズマ「お前たちの"叛逆"、俺が引き受けた!」

――――――――――――――――――

さやかがマドカの右腕を絡め取ったのは、ほんの一瞬。

さやかが倒れると共に、触鞭は消え去り、彼女の身体もシャボンに包まれた。

改めて、時空間ワープでほむら達のもとへ向かおうとする。

しかし、ワープが発動しない。

そして、気付く。周りの一切の物が、音が、止まっていることに。

マドカ(これは...ほむらちゃんの時間停止!?)

一口にワープといっても、空気の流れに乗る、といった方が正しいだろう。

その流れを止められれば、ワープは発動できなくなる。

しかし、ほむらはもう時間停止を使うことができない筈...

その答えは、遙か上空にあった。



マドカ『ほむらちゃんの姿が...ない!?』

***************************

カズマ『とっておきってなんだよ』

ほむら『これよ』

杏子『お前、それ、ソウルジェムじゃねえか!』

ほむら『ええ。杏子の槍の一部でもあれだけの力が引き出せたのなら、ソウルジェムなら更に力を引き出せる筈』

マミ『でも、ソウルジェムは、私たちの魂...』

ほむら『だからこそよ。私の全てをカズマのシェルブリットに弾丸として込め、マドカに直接叩き込む』

カズマ『正気かよ...?』

ほむら『不可能ではないでしょう?』

さやか『いや、そうは言ってもさ...』

カズマ『てめえ...死ぬぜ』

ほむら『あら、知らないのかしら?』



ほむら『魔法少女は、夢と希望を叶えるのよ』

***************************

アルター能力は、物質を分解・再構成する能力。

したがって、生きている者の身体を分解することはできない。

しかし、魔法少女の魂は、ソウルジェムという物質。

加えて、魔法少女の身体にも魔力は通っており、ソウルジェムが無ければ、ただの抜け殻となる。

つまり、カズマは、ほむらの全てを弾丸に変え、ほむらの想いは、彼女の本来の能力『時間跳躍』さえも再構成したのだ。


カズマ「これが俺の自慢の拳...そして」

これが、カズマが仲間達と掴みとった最終進化。

これが、さやか、マミ、杏子の魔力を取り込んだ、最速の弾丸。

これが、ほむらの全てを詰め込んだ、最強の弾丸。

そして、これが

カズマ「俺と、お前達の輝きだあああぁぁぁ!!」




―――これが、彼らの『叛逆』の形。


カズマ「叛逆の―――ハイブリットォォォォォ!!!」


背中の六枚の羽が展開し、目にも映らない速さで、カズマがマドカに迫る。

躱すことが出来ないのなら―――迎え撃つ。

両腕のドリルと、カズマの右拳が衝突する。

火花を散らし、両者は拮抗する。

マドカ「......!」

だが、それも束の間。

突き出された両腕のドリルの間を、カズマの拳は押しのけていき―――

カズマの拳は、マドカの胸元を捉えた。

今回はここまでで。
やっぱ今月中に終わるのは無理でした。
読んでくれた方はありがとうございます。

カズマの方のあたりで再構成されて上半身が肩甲骨あたりからでているほむほむを幻視した

>>408
その発想は無かった
投下します

ギャラン=ドゥ『うおっ...!』

マドカ『ぐううッ...!!』

カズマの拳を受けたマドカの身体が、溢れだす光と共に崩壊していく。

光は輝きを増し、拳を打ち込んだカズマもそれに巻き込まれる。

カズマの装甲は全て消え去り、彼の左腕と右足を奪い、その身も呑み込まれた。

光は柱となり、結界も、時空すらも貫き、天高くそびえ立った。





弾丸は、確かにマドカに撃ちこまれた。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★

真っ暗闇の中。

彼女は、何をするでもなく、ただ漂っていた。

「ギャラン=ドゥ...どこ...?」

彼女の唯一の同士の名を呼ぶ。

過程はどうであれ、彼女に協力してくれた彼は返事をしない。

あの、饒舌な彼が一切返事をしないということは、答えは既に出ている。

(...そっか。消えちゃったんだ)

「結局...私はなにがしたかったのかなぁ...」

本来の目的も失って。

友や家族も置き去りにして。

本当の『自分』さえも切り捨てて。

手に入れた力さえも、今まさに消えようとしている。

今の彼女に、残されているものはなにもない。






―――ごめんね、ギャラン=ドゥ。最後まで我儘に付き合せちゃって。

―――ごめんね、ママ、パパ、タツヤ。私が大人になるまで一緒にいられなくて。

―――ごめんね、みんな。こんなことに巻き込んじゃって。





―――ごめんね、ほむらちゃん。あなたの想いに応えてあげられなくて。







『起きて、わたし』

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

宇宙にも似た、星空煌めく空間。

かつて、まどかとほむらが別れたところにそっくりな空間。

彼女は、一糸纏わぬ姿でそこにいた。

ほむら「...目が覚めた?」

まどか「ほむら...ちゃん...?」

そこにいるのは、魔法少女でも、円環の理でも、アルター使いでもない、二人のただの少女。

マドカ★まぎかはもう、ただの鹿目まどかになっていた




ほむら「迎えに来たわ」

ほむらが微笑みながら、手を差し伸べる。

ほむら「一緒に帰りましょう、まどか」

ずっと寂しかった。

ほむらちゃん以外のわたしの大好きな人達が、誰もわたしを知らなくて。

誰にも触れることすらできなくて。

色んな希望を見てきた分、それ以上の絶望を味あわせられて。

それでも、わたし一人で全ての希望にならなくちゃいけなくて。

それでも、どうすることもできなくて。


...帰りたい。

パパやママと何気ない挨拶を交わして。

お姉ちゃんらしく、タツヤの面倒をみてあげて。

学校の勉強に必死についていって。

仁美ちゃんやさやかちゃんとくだらないことで笑いあって。

マミさんや杏子ちゃんたちとも一緒に遊んで。

ほむらちゃんの隣に立って。

皆と、なんでもない日々を過ごしたい!

でも...

まどか「駄目なの...わたしは、皆の希望にならなくちゃいけないから...」

ほむら「......」

まどか「今なら、まだちょっとだけ力も残ってるから...ごめんね、ほむらちゃん...皆にも、謝っておいて...」

ほむら「まどか...」

ギュッ

まどか「え...?」

ほむら「そうやって、全部を抱え込もうとしないで」

まどか「は、離して...」

ほむら「希望になんて、ならなくていい。まどかは、まどかのままでいて」

まどか「離してよぉ...」ポロポロ

ほむら「嫌よ」

涙が止まらない。

わたしは、何もできない自分が嫌いだった。

守られてばかりの自分が大嫌いだった。

だから、せめて大好きな人たちや、希望を望んだ子たちの役にたちたかった。

まどか「なんで...そんなこと言うの...?」

ほむら「あなたが大好きだからよ」

でも、それを壊してでも愛してくれる人たちがいる。

こんなわたしでも、大事に想ってくれる人がいる。

それを認めてしまえば...帰りたくないなんて口が裂けても言えない。

全部投げ出してでも、帰りたい。

そんなの、許されるわけがない。

「いいんじゃねーか。帰っても」

「鹿目さん、あなた一人で頑張りすぎよ」

「そうだぞ、まどか。もうちょい分けてくれてもいいでしょ?あんたはあたしの嫁なんだから!」

皆の姿が浮かび上がる。

杏子ちゃんにマミさんにさやかちゃん...それだけじゃない。

わたしが導いてきた、全ての魔法少女たちの姿が。

「鹿目まどかさん...あなたは充分私たちの希望になってくれました。だから、今度は...」

前に進み出てきた少女は、チラリとほむらちゃんを見て、わたしに微笑みかけた。

「あなたが、あなた自身の希望を見つけて下さい」

「そーそー。それに、あなたが泣きをみているのに、その上で胡坐かいてんのも文化的じゃないしね!」

「私らはもう大丈夫だよ。だから...」

「今までありがとう!」

さっきの少女に、他の少女も続いていく。

もう、自分の希望は見つけたのだと。

だから、今度はわたしが希望を見つける番だと。

まどか「みんな...」

...もう、我慢できそうにない。

まどか「...ありがとう」

涙は拭わず、それでも満面の笑みで、わたしは彼女たちに応えた。


まどか「―――行ってきます!」

ほむら「まどか」

差し伸べられた手を、もう拒絶したりはしない。

まどか「...うん」

その手を、わたしは握り返した。

そして、二人で弓を創りだし、構えをとる。

わたしの背中を、ほむらちゃんが支える形だ。

この闇から帰るために、わたしは弓を引き絞った。

ほむら「それじゃあ、いこっか」

まどか「うん!」



空に、一筋の光が走った。

光は、これからのわたしたちの未来を照らすかのように、闇をかき消した。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

――――――――――――――――――

ロストグラウンド 某所

水守「ペンダントの疼きが、治まった...」

劉鳳「――――――!」ビクン

シェリス「ど、どうしたの?」

劉鳳「...今、絶影の所有権が美樹さやかから俺に戻った」

君島「と、いうことは...」

かなみ「決着が...!?」

劉鳳「ああ。勝ったのは―――」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

光の柱が天高くそびえ立っている。

主を失った結界が崩壊を始めるが、それでも光は輝きを失わない。

光の中から、シャボン玉が溢れだしていく。

そのうちの一つが割れ、一人の人間が地面に横たわる。

その人間は、かつて鹿目まどかと呼ばれた桃色の髪の少女。

眠っている少女の近くに、虹色の粒子が集まりだす。

粒子は、左腕から順に人の形を模っていく。

やがて、それの左腕が動き、ゆっくりと天へと突き出された。

そして、掴みとったものを誇示するかのように。



そのヒビだらけの腕を、固く、固く握りしめた。



QB「見事だったよ、ほむら」

QB「大した素質もなく、強大な力を持っているわけでもない。そんな一個体から、全てが始まり、全てが終わるんだ」

QB「僕は、そんな君を称賛し、尊敬するよ。マドカに変わって、決着の言葉を贈ろう」





QB「暁美ほむら...君の勝ちだ」



――――――――――――――――

無常「ごらんなさい、異納くん。あの光を!なんと素晴らしい...!」

異納「これが、全ての始まり...」

無常「しかし、それだけに残念です。彼女の力が、全ての救済などという夢物語に費やされてしまったことが」

異納「...彼女は、全てを救済するための『進化』をした。だから、誰一人として切り捨てることができなかった。もし、あの時カズマが死んでいれば、彼女の祈りは効果を失い、全ては無に帰していた...」

無常「せっかくの力なのに、殺さないように全力で手加減し、あまつさえ強大すぎる進化のため、己の身も長く持たないなどと...私の求めているものには、単に邪魔にしかなりませんねぇ」

異納「それで、これからどうするのですか?」

無常「あのアルター使い...カズマと言いましたか。彼にはとても興味が湧きました」

異納「では、元の世界に帰還した後、彼を捜索しますか?」

無常「お願いします。それと、念のため、鹿目まどかと暁美ほむらという少女も」

異納「承知しました」



無常「ところで、異納くん。私たちの計画はまだ名前がありませんでしたよねぇ?」

異納「はい」

無常「彼女の信念こそは受け入れられませんが...彼女の執念を讃え、せめて、名前だけでも継いであげましょう」

無常「これからの私たちの計画名は...『ワールド・オルタレイション』です」

*************************

時代は古代。

恐竜が生態系を牛耳り、まだ人類が産まれる前の時代。

そこに、突如光の柱がそびえ立った。

やがて、その光から地面に弾きだされた影が一つ。

その影は、まるで死んでしまったかのように、ピクリとも動かない。

左肩から先は無く、右足も膝から下は失われ、それでも彼は微笑んでいた。

まるで全てを出しきったかのように、一片の曇りも無く、確かに彼は微笑んでいた。

それが、この光を見つけたのは、ほんの偶然。

宇宙のための新たなエネルギーを求め、この地球に調査しに来て、たまたまこの光を見つけただけだ。

それは、恐れることなく、その光の中へ足を踏み入れた。

「――――!!」

未だ体験したことのないエネルギー。

これほどのエネルギーならば、宇宙のエネルギー問題を解決するのに、ふさわしいかもしれない。

このエネルギーの根源となるものは、いったい...

「これが、感情...か」

この時、後にインキュベーターと呼ばれる彼らは、初めて『感情』という精神疾患を知った。

彼らが、これを応用し、魔法少女システムというものを産み出すのは、まだまだ先のこと。

―――嗚呼、人よ。神は知っているのです。

サルが人間から進化したのは、彼らの手によるものなのです。

この時放たれたアルターと魔法の光によって、人が人を進化たらしめたのです。

それを創りだしたのは5人の魔法少女。

そして、この光を放出したのは一人の男。

男の名は、カズマ...




『反逆者』カズマ―――!!




今回はここまでです。
流れ上、説明できなかった設定。


偽ワルプルギスの存在→マドカが創りだした存在。本物は、幾多の魔法少女の集合体のため、本物を呼び出すことはできず、あまりに強いとほむら達を死なせてしまうため、かなり弱体化した形で送り込まれた。
無常たち→『向こう側の世界』を覗いてたら、たまたまここに辿りつき、魔法少女に興味を持ったため、しばらく滞在していた。ぶっちゃけ、こいつらに関してはあんま気にしないでください。

アニメとマンガのs.CRY.edは並行世界でここに出てくる無常さんは
漫画カズマをこの世界で知って
これだけの事が起こせるなら
アニメのs.CRY.edの世界でもカズマは相当なパワーを秘めてるはずと予測して
いろいろちょっかいを吹っかけるわけか


以上自己解釈ッ!!

>>431
正にその通りです。一応、かなみ覚醒のところも伏線っちゃあ伏線になります。
再開します

エピローグ





叛逆、そして反逆





あの戦いから、一年が過ぎた。

カズマはあの光の影響で別の時代にとんでいき、あれ以来、魔獣も綺麗さっぱり消え去ってしまった。

シャボンに取り込まれていた人たちも誰一人として死なずに戻り、魔法少女システムも復活しているようだ。

多少損壊(主にカズマとさやか達の戦闘で)していた美滝原の町も復興し、全てはまどかの契約前と同じになった。


それでも、世界は、人は変わり続ける。

その胸に変わらぬものを抱いて、人は変わり続ける。

さやホーム

さやか「はあっ...はあっ...これで、どうだぁ!」

仁美「......」

さやか「......」ドキドキ

仁美「60点です」

さやか「よっしゃ、20点アップ!これで、もうこの科目は...」

仁美「はい。後30点ですわね」

さやか「ちょっ」

仁美「口答え無用!あなた達には長いブランクがあるのですから、高校までに追いつくにはこれくらいでは足りませんわ!」

さやか「くそ~...こんな時に限ってまだリハビリ中のまどかが羨ましいよ...」

仁美「もちろん、まどかさんにも詰め込んでさしあげますわ。さやかさん以上のスペシャルコースで...」ウフフ

さやか「...恭介ぇ、仁美ちゃんが怖いです」

恭介「志筑さんは、それだけさやかたちを心配しているんだよ」

さやか「そうは言っても、さすがにこの量は...劉鳳、もう一度あたしに力を貸してくれええぇぇ!」

仁美「さあ、もう一度復習しますわよ!」

さやか「ぬわ―――!!」

美滝原 某所


ズルズル

少女「」

使い魔「......」

杏子「ちょっとちょっと、なにやってんのさ」

使い魔「......!」

杏子「そのガキ、まだ生きてんでしょ?だったら、あんたの餌にするわけにはいかないねえ」

使い魔「」シュルッ

杏子「へえ、あたしとやりあおうっての?」

使い魔「」ジャッ

杏子「さあ、どっからでもかかってきやがれ!」ジャキッ

使い魔「」シュウウ

マミ「あら、随分早かったわね、佐倉さん」

杏子「たまたま近くにいたからな。...おい、ガキ。起きてるか?」

少女「ん...」ムニャムニャ

杏子「寝てるか。マミ、このガキを警察にでも送っといてくれ」

マミ「わかったわ。に、しても...ここのところ、随分張り切ってるわね」

杏子「今、魔女とまともに戦えるのはマミとあたしだけだろ?それに...」

マミ「それに?」

杏子「あいつには、いつかリベンジしなくちゃならねえからな」

マミ「...よっぽど、カズマさんにお熱なのね」

杏子「その言い方はやめろ。怖気が走る」

マミ「その割には、組んで戦う時はノリノリだったじゃない」

杏子「あれは仕方なくやっただけだっつーの!」

マミ「さて、どうだか」クスッ

病院 屋上

ほむら「......」

QB「やあ、ほむら。何か考え事かい?」

ほむら「キュウべぇ...久しぶり」

QB「一か月ぶりだね。ちょうど、君が繰り返してきた時間と同じ日数だ」

ほむら「...教えてもらえるかしら。『円環の理』が無くなったこの世界のことを」

QB「いいよ。と、言っても、ソウルジェムのことくらいしか判明していないんだ」

ほむら「ソウルジェム...」

QB「まあ、君にはあまり関係の無い話だけれどね」

QB「ソウルジェムの濁りが、以前に比べて遅いんだ。日常生活や些細な感情の揺れ動き程度では、濁らないくらいにね」

ほむら「原因は?」

QB「おそらく、マドカのシャボンが影響しているのだと思う。あれには、生物の『進化』を促す効果があったからね」

ほむら「『進化』...」

QB「それに、あれのおかげで、魔法少女の素質を持つ少女の記憶に、魔法少女の本質が刻まれているみたいなんだ。
もし、契約する時が来たならば、それこそ魔女になってでもどうにかしたい時でしか契約しないだろうね」

ほむら「そう...あなた達からしたら、厄介なことになったものね」

QB「まあ、あの光のおかげでほぼ無限大に近いエネルギーを手に入れることができたからね。そんなに固執することもないさ」

ほむら「なら、何故ここにいるのかしら?」

QB「ノルマは達成されているけれど、することがなければ、ここに残っても構わないだろう?」

ほむら「...変わったわね、あなた」

QB「そうかな?まあ、君ほどじゃないさ。魔法少女でも、アルター使いでもない君ほどではね」

私は、もう魔法少女ではなくなっていた。

あの時、カズマにソウルジェムと共に再構成されたたためか、それとも私の本来の願いを叶えたためか...

理由はなんにせよ、私のソウルジェムはもう無くなり、変身することもできなくなった。

同じくアルターと深く関わりを持った美樹さやかは、身体も戻り、魔法少女のまま。

彼女の場合は、『進化の言葉』とやらの影響が強いためらしい。

ただし、私は元の人間に戻ったわけではない。

身体の至る所に亀裂が走っており、そこからは金属片が覗いている。

カズマのアルター能力により、体内が金属で再構成されたからだ。

おそらく、普通の人間として暮らすことは出来ないし、もう永くもないだろう。

それでも...

ガチャリ

まどか「ほむらちゃん」

まどか「隣、いいかな?」

ほむら「ええ」

ほむら「まどか。身体の調子はもういいの?」

まどか「うん。ママたちが手伝ってくれてるんだ」

ほむら「そう...でも、あまり無理はしないでね」

まどか「わかってるよ。みんなに心配かけたくないからね」

まどか「...ここまで、色々あったね」

ほむら「...そうね。魔女と戦って、何度も時間を巻き戻して、あなたは概念にまでなって、挙句の果てにはアルターなんてものまで割り込んできて...波乱万丈なんて言葉じゃ足りないわね」

ほむら「辛いことも、悲しいことも数えきれない程あった。この手をいくらでも汚してきた。おまけに、こんな身体にまでなって...」

まどか「......」

ほむら「それでも、私は、あなたと出会えてよかった。あなたと出会えたことを誇りに思うわ」

まどか「...わたしもだよ、ほむらちゃん!」

コソコソ

マミ「二人とも、あんなに嬉しそうな顔しちゃって。見てるこっちまで嬉しくなってくるわ」

さやか「...どう思います?仁美先生」

仁美「幾度もすれ違い、傷つけ合い、最後に寄り添い合う...これは、禁断の恋の予兆ですわ!」ゴクリ

杏子「なにワケわかんねえこと言ってんだ、お前ら」



ほむら「それで?扉の後ろに居る馬鹿4人はなにをしてるのかしら?」

さやか「ヤベッ!バレた!?」

バタン タタタ

ほむら「......」

まどか「......」

ほむら「まったく、あの人たちは...」

まどか「そういえば、今日は5時からマミさん家に集合だったよね」

ほむら「...行ったら、とっちめてやりましょう」

まどか「目が本気で怖いよ、ほむらちゃん...っとと」フラッ

ほむら「大丈夫?まどか」

まどか「う、うん。まだ、完調ってわけじゃなくって...」

ほむら「掴まって」スッ

まどか「ありがと」ギュッ

ほむら「...行こっか」

まどか「うん!」

―――――――――――――――――
一年後 ロストグラウンド

世界は、人は変わっていく。

己の正義のための旅に出た劉鳳さんとシェリスさん。

カズくんがいないため、なんでも屋を休業し、真面目に働くこととなった君島さん。

チーム・ロウレスを復興させている水守さんや箕条さんたち。

変わらないものを胸に秘め、今を生きていくために必死に変わっている。

皆も、そして私も...

ロストグラウンド 極寒地帯

元・ホーリー部隊隊員で、現在観測隊員の橘あすかは、氷の中のモノを見て、驚愕した。

橘「こ、氷漬けの恐竜!!?」

氷の彫像の足元には、巨大な亀裂が走っている。

まるで、氷の中から破壊されたような巨大な亀裂。

その氷の亀裂の中を見た橘は、再び驚愕した。



『s.CRY.ed☆magica』



橘「な、なんだこの文字は...!?」

橘「大発見だ!!タマんないぜ!!」

カズマの家


かなみ「カズくん...遅いなぁ...」

...私は、待ち続ける。―――信じる。

カズくんは約束してくれたから。

カズくんが生きていることを信じて待ち続ける。

カズくんのように...あの人たちのように。

諦めることに反逆する―――!!

一仕事を終え、帰路につく途中だった。

―――カツン

音がした。

霧がかかって見えないが、前方から誰かこちらに向かってきているようだった。

何故だか、私は向かってくる人を知っているような不思議な感覚がした。

やがて、霧の向こうに人影が映った。

片腕は確認できず、残った片腕で杖をつく姿から、どう見ても五体満足には見えなかった。

「よぅ!」

霧が晴れて、光が差しこむ。

笑顔を湛えたその人を見た瞬間、言葉を失った。



カズマ「待たせたな、かなみ!」

私の前に立つその人―――カズくんは、いつも私に向けてくれるあの笑顔で私のもとへ帰ってきた。

かなみ「......」

何も言葉が出てこない。

おかえりなさいも、お疲れ様も口にできない。

かなみ「...ズ...くん」

ただ一つ、ただ一つの名前だけが今の私の全てだった。

かなみ「カズくん!」

私が、ありったけの想いを込めて彼の名前を呼ぶ。

ただいまも久しぶりも全部詰め込んで、彼は応えてくれた。

カズマ「あいよ」

―――――――――――――――



悲しみと憎しみばかり繰り返す、救いようのない世界だけれど、それでもここは私たちが掴みとった道なんだ。

それを、覚えている。

だから、私たちはこの道を守るために戦い続ける。

魔法少女には絶望しかないという運命に、叛逆し続ける。



運命...これほど叛逆しがいのある相手もいないわね






兄貴...そして兄貴!

俺は生き抜く。泥を啜っても生き抜く!!

そのために闘う―――!!

運命にすら反逆してやる!!



運命...これほど反逆しがいのある相手もいねーな。






―――そう思うでしょう?






―――あんたも!










ほむら「その馬鹿を極める」【スクライド×まどか☆マギカ】



投下終了です。
まどマギの映画が前後編に分かれており、新劇の「叛逆の物語」という、なんともスクライドな感じを見て思いつきで始めたこのss。
やりたい放題で色々粗い上、遅筆というなんともアレな感じですが、やりたかったこともやりきり、無事完走しました。
反省点だらけのこのssですが、この反省を活かしていきたいです。
読んでくださった方は、本当にありがとうございました。

乙です

スッキリ終わりましたけどひとつ質問が…
つまり今の見滝原には魔法少女はマミさんと杏子だけって事?
さやかも普通の人間に戻ったんですか?

>>455
さやかは普通の魔法少女にもどりましたが、導かれた分と、マドカとの戦闘での負傷の治療により、遅れた分の勉強を取り戻すために猛勉強させられています。まどかはほとんど普通の人間で、ほむらはアニメ版スクライド最終回のカズマと劉鳳みたいな感じになってます。

おまけ 

杏子「改めて見返すと、このssのメインじゃないのに、よくもまあ4回も戦ったもんだな」

カズマ「結果は、俺の4戦1勝3分け。俺の勝ちだな」

杏子「はあ?あたしがいつ負けたって!?」

カズマ「てめえが魔女だかなんだかになってる時だ」

杏子「あれはあたしがあんたの能力を利用したんだよ。その方が手っ取り早かったからな」

カズマ「言い訳してんじゃねえぞ!」

杏子「あんたこそ、勝手に決めつけるんじゃねえ!」

カズマ「だったら、ここで白黒ハッキリさせておこうじゃねえか!」

杏子「望むところだ!」

カズマ「決着のシェルブリットォォ!!」

杏子「ロッソ・ファンタズマ!!」


ゼー ゼー

杏子「チッ...決着は着かずか。やるな、カズマ」

カズマ「お前もなかなかのもんだったぜ、杏子」

杏子「こうやって、ぶつかりあって絆を深めあう...ははっ、悪くないねこういうのも」

カズマ「それは、こっちも同じよ」

杏子「......」

カズマ「......」





カズマ&杏子「キモッ!」

ガバァ


チュン チュン

廃教会

杏子「......」



カズマ宅

カズマ「......」



カズマ&杏子「夢かよ...」


元ネタ スクライドアニメブック カズマVS劉鳳 戦いの記録より

次回作?予告

希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、わたし、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます。

きっと、いつまでも言い張れます。


『わたしたちの、最悪の脚本』

パッと思いついた小ネタもこれで終わりです。
書きためって大事だなと思いました。

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