【咲SS】照「咲を姉離れさせたい」 (31)

照「咲が白糸台高校に入って二週間が経った」

菫「なんだ、唐突に」

照「いや、何で妹と同じ学校通ってるんだとかそういう状況説明が必要かな、と」

菫「私も同じ学校通ってるから知ってるんだが」

照「ならいい」


照「ただ、咲が高校生にもなって私にベッタリなのが困ってる」

菫「嬉しくないのか」

照「嬉しいことは嬉しいけど、もうお互いに高校生だし」

照「どうせ私はあと一年もしないうちに卒業して、また咲と離れ離れになるから」

照「それに、私とベッタリしている所為か咲は交友関係が狭い」

菫「お前も大概だろう」

照「菫に言われたくない」

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照「私の場合、仮にぼっちだったとしてもあと一年我慢すればいいだけだから」

照「一応、咲には淡がいてくれているけど、もっと交友関係を広げて華の高校生活を送ってほしいから」

照「咲を姉離れさせたい」

菫「それで、私のアドバイスがほしいのか」

照「うん、まあ、参考にするから」


菫「まあ……曲がりなりにも私は白糸台のシャープシューターと呼ばれる人材だから」

菫「麻雀だけではなく、助言も的確なものを披露することができるだろう」

照「いや……菫の発言ってそこまで的確じゃないような」ボソッ

菫「何か言ったか?」

照「なんでもない」

菫「まず咲ちゃんとお前がベッタリしていることについてだが、部ではそれほどでも無い」

照「でも、部でもさりげなく私の隣に座ってきたりする」

照「あと、私が席を立ったらヒヨコみたいに後をついてきてとてもかわいい」

菫「照もかわいいぞ」キリッ

照「どうすればいいのかな……」ムシ



菫「ぷ、プライベートと比較したらまだマシだろう?」

菫「この間、三人で出かけた時に咲ちゃんがお前に抱きつきながら歩いてただろ」

照「咲は私がいないと迷子になるから」

菫「そうか……」

菫「まあ、いつもベタベタじゃないあたり、咲ちゃんもTPOは心得ているんだろう」

菫「だから、直接話して説得してみたらどうだ?」

菫「お互いにもう高校生なんだから、って」

照「それなら、咲が高校入学した時に話してみた」

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照「咲」

咲「? なぁに、お姉ちゃん」

照「ちょっとお話があるから、こっちおいで」

咲「うん!」



照「……えっとね。咲も高校生になったわけだけど」

咲「うん! 同じ高校だから、これから毎日一緒に登校できるよねっ」ニコニコ

照「そうだね」

照「でも、咲も私も高校生になったんだから」

照「いままでみたいに、あまりベタベタしてたらいけないと思う」

咲「えっ……」
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咲「な、なんで……? 私、お姉ちゃんといっぱい遊びたいよ……」ションボリ

照(かわいい)キュン

照(でも、ここは心を鬼にしないと)


照「私は白糸台高校麻雀部のエース、部内でのランクも1位」

照「インハイチャンプって呼ばれたり、内外からどうしても注目を集めてしまう」

照「他の部員への体面もあるし、あんまり妹を贔屓したりはできない」

照「……わかってくれるよね?」

咲「…………」ウルウル

照「わ、わかってほしい」
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照「——といった感じで、断腸の思いで咲を突き放した」

菫「言うほど突き放してないぞ」

照「私は胸が張り裂けそうだった」

照「ビンに入ったとろとろプリンを10個ほど買おうと思ったらお金が足りなくて泣く泣く諦めるぐらい」

菫「……一人で食べるわけじゃないよな?」



照「ただ、私が勇気を振り絞って言ったのに結局——」

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咲「カン! もいっこカン!」

咲「もれなくカン! とどめのカン! ……ツモっ」

部員A「ゲェーーーッ! 咲さんがまた四槓子出したぞ!」

部員B「しかもごく当たり前のように嶺上ツモだ!」

部員C「これで宮永さんの部内ランクが2位に……」カタカタ

咲「やった! これでお姉ちゃんの隣にいてもいいんだよね!?」

照「」
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菫「あぁ……何か咲ちゃんが最近、えらくやる気だったのはそういう事情だったのか」

照「ランクがどうとかいう意味じゃなかったんだけど……」

照「結局、2位になって嬉しそうにしている咲に、ちゃんとそのことを言えなかった」

照「おかげで姉離れ失敗」

菫「部にとっては良かったのかもしれない」

照「同級生にまで咲さんって呼ばれるようになったのはよくない」


照「……何かいいアイディアないかな」

菫「いっそのこと冷たく突き放してしまうとかどうだ」

菫「例えば、私に妹はいませんと言ってみるとか」

菫「いや、それはさすがにやりすぎだな」

照「……ふむ」



——数日後


菫「……おい、照」

照「?」

菫「咲ちゃんがオロオロしてたが、喧嘩でもしたのか?」

菫「お前はお前で咲ちゃんと一言も話さないし」


照「菫のアドバイスを実行してみた」キリッ

菫「」

照「といってもさすがに『妹はいない』とかは言ってない」

菫「そうか」

照「咲に『姉離れしてくれるまで必要以上に話さないから』と言って、実行してる」

照「私もつらいけど、咲に姉離れしてもらうために一大決心した」

菫「いや……うん、一大決心したのは偉いけどな」

菫「さっき涙目で『すみません、今日は部活休ませてください』って私に言いに来たぞ」

照「えっ」


菫「あ、ほら、いまもトボトボと校門に向かってる」

照「さ、咲のためだから」

菫「あ、コケた」

照「!!」

菫「起き上がったが……目元とか拭ってるぞ」

照「あ、あわ、あわわわわわわ……!」




照「ちょ、ちょっと追いかけてくる……!」

菫「そうした方がいい」



——さらに数日後


照「咲との関係も大分修復できた気がする」

菫「修復どころか、前より咲ちゃんの依存度が高まった気がするんだが」

照「そんなことはない」

菫「昨日なんて、お前の服の裾掴んで離れようとしなかったぞ」

照「……気のせい」


菫「……ともあれ、現在の状況になった責任の一端は私にもある」

菫「ということで咲ちゃんを姉離れさせる策を考えてきたんだが」

照「ふむ」

菫「彼女を作るのはどうだろう」

照「彼氏じゃなくて?」

菫「彼女だ」

照「でも、普通は彼氏じゃない?」

菫「いや、最近はごくごく普通のことだ」

菫「ほら、あそこのカップルを見てみろ」


   「ぶちょー……今日は寮に帰りたくなかとです」

  「なら、今日はその辺に宿取るか」

  「……私もムラムラしとるから、今日は縛りばきつめに行こうと思うが」

   「部長に全てお任せします!」

菫「ほら、最近のカップルなんてあんなもんだ」

照「そ、そうだったんだ」

照「……でも、別に彼女とかほしいわけでも無いから」

照「近くに彼女的な意味で良い人もいないし」

菫「そんなことはないぞ」


菫「例えば、白糸台のシャープシューターと呼ばれる逸材とかな」キリッ

照「彼女かぁ……」キイテナイ

照「まあ、これといっていい方法が思いつかないし、姉離れはしばらく諦める」

菫「おい」

照「咲を悲しい目にあわせてしまった以上、私が側にいてあげないとね」

菫「妹離れしたくなくなって、それを口実にしてないか」

照「気のせい」

菫「その遊園地のチケットはなんだ、一緒にいるどころかデートのまね事までするつもりか」

照「気のせい」



——インターハイ後


照「……最近、咲があんまり絡んできてくれない」

菫「インハイも終わって、私達三年生は部を引退したからだろう」

菫「というか、やっぱりお前が妹離れできてないじゃないか」

照「そんなことはない」

照「私がやろうと思えば、いつでも無慈悲な妹離れを決行することができる」

菫「しろよ」



照「まあ、最近絡んでくれていないって言っても、この後は咲とデートに行く予定がある」

菫「デート?」

照「うん。後で喫茶店に来てほしいって言われてる」

照「やっぱり咲は私がいないとダメだね」

菫「ニヤつきながら言うのをやめろ」



——翌日


照「…………」

菫「どうした、照」

菫「彼女が欲しくなったなら私がなってやるぞ」

照「咲に彼女紹介された……」グスッ

菫「は?」


照「昨日、菫と別れたあとで咲に言われた喫茶店に行ったんだけど」

照「そこで咲に自分の彼女紹介された」

菫「彼女?」

照「彼女」

菫「誰だ、相手は」

照「永水の石戸さんだった……」

菫「永水の石戸……ああ、あの胸の大きい」

照「そう、胸部に無駄に贅肉のある石戸さん」

照「インハイで知り合って以降、仲良くなって付き合うことになったんだって」

菫「良かったじゃないか。これで咲ちゃんも姉離れしてくれるだろう」

照「やだーーーーーー! 私以外とイチャイチャしてる咲なんて見たくない!」



照「そうだ……インハイで永水とあたった時、咲は控え室に帰ってくるのが遅かった」

菫「迷子になってたんだろう?」

照「違う。きっと大将戦の帰り道で石戸霞に——」

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咲「きゃっ……」

霞「……ここなら邪魔も入らないかしら」

咲「な、なんですか……こんなところに連れ込んで」

咲「さ、さっき負けたことの腹いせですか……!?」

霞「ふふ……そんなことしないわ」

霞「宮永咲ちゃん……貴方がかわいいから、ちょっとむらっと来てね」


咲「なに言って、んっ……!?」

霞「ん……ちゅ……」

咲「っ……ぷはっ……な、なにするんですか!?」

霞「キスは初めて?」

咲「っ……!」

霞「初めてなのね」

霞「……やっぱり、唇も身体も初物が一番よね」スッ...

咲「い、いや……! お姉ちゃん! やだよ、お姉ちゃん助けて! いやあああ!」
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照「——なんてふうに襲われたんだ……!」

菫「無いわ」

照「最初は気丈に抵抗していた咲も、大人のテクニックで『やっぱりおっぱいには勝てなかったよ……』って!」

菫「照、お前鼻血出てるぞ」

照「きっと咲は恥ずかしい写真か何かで脅されてるんだ」

菫「官能小説の読み過ぎだろう」

菫「そんなに永水の石戸を紹介する時の咲ちゃんはぎこちなかったのか?」

照「……私と同じぐらいイチャイチャしてた」

菫「ほら見ろ」


菫「結局、咲ちゃんの方が先に姉離れしそうじゃないか」

菫「そもそも、咲ちゃんのために妹離れしてもらおうと努力してたんだろう?」

菫「その咲ちゃんが自立しようとしているなら、見守ってやるべきじゃないか?」

照「…………」

菫「別に姉妹の縁が切れるわけじゃないんだから」

照「……うん」

照「見守ってあげるべきだよね」

照「私は、お姉ちゃんなんだから」



照「……でも、いまより咲と遊ぶ時間が少なくなるのは寂しいなぁ」

菫「その分の時間を別のことに当てればいいじゃないか」

菫「そう、例えば——白糸台麻雀部の元部長を彼女にして一緒に過ごすとかな」

照「? 彼女ならもういるよ?」

菫「……なんだと?」

  「あ! 宮永さーん!」

照「あれ? 憩ちゃん、どうして東京に」

憩「えへへ……宮永さんに会いたくって来ちゃいました」

菫「どういうことだ照……!」

照「あ、紹介するね? こちら、大阪の三箇牧高校に通ってる荒川憩ちゃん」

照「この間のインハイから付き合うことになった、私の彼女」

菫「」

憩「荒川憩です。よろしくお願いしますーぅ」

照「で、憩ちゃん。こっちが私の友達の弘世菫ね」


照「……あと、憩ちゃん。私のことは名前で呼んでって」

憩「え〜、まだちょっと恥ずかしいですよーぅ」テレテレ

菫「」

照「まあ、呼び方に関しては今後に期待かな」

照「せっかく東京来てくれたんだから、どこか案内するよ」

憩「デートですか!? やったー!」

照「というわけで菫、私たちはデートに行ってくるから」

憩「失礼しますーぅ」







淡「あ、菫先輩みっけ!」

淡「? なんで鳶に油揚げさらわれたような顔してるんですかー?」

菫「ありえない……こんなこと、許されない……」カタカタ

短いですが以上です。
お目汚し失礼しました。

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