卒業(19)

書き溜めあり
投稿は2回目です
よろしくお願いします

男「屋上にいたのか」

女「風がね、気持ちいいよ それにポカポカして暖かいし」

男「そうだな」

女「こっちきて座ったら?」

男「そうさせてもらおうかな」

女「そうやって座るんだ なら…」

男「なんで背中合わせなんだ?」

女「なんとなくかな」

男「そうかい」

女「そうだよ」

男「なんか背中があったかくて眠くなりそうだな」

女「だね 起きたら卒業式終わってたりして」

男「それはさすがにまずいな」

女「忘れられない思い出になるよ」

男「忘れたい思い出の間違いだろ」

女「たしかに」

男「んで、卒業式まであと少しなんだがなにしてたんだ?」

女「あと少しってどのくらい?」

男「1時間ってとこだな」

女「じゃあ少し話せるね」

男「そうだな んで何してたんだ?」

女「何もしてないよ ただ空をずっと見てたんだ」

男「…」

女「もう卒業しちゃうんだね」

男「短かったか?」

女「そうだね 短いよ もっとたくさんしたいことあったもん」

男「例えば?」

女「簡単な話 もっとみんなでいつもを過ごしたかった」

男「いつも?」

女「そういつも 休み時間に騒いだり、テストの点数で騒いだり、帰りにファミレスで騒いだり」

男「騒いでばっかりじゃねえか」

女「うん でも一番楽しかった 
楽しくなかった?」

男「すげえ楽しかったよ」

女「でしょ 
そういうのをもっとしたかったな」

男「これからだってできるだろ 
この先も長いんだから」

女「違うよそれは違う 
今のみんなと騒げるのは今だけ
だったんだから」

男「そうだな 
じゃあ今は騒がなくていいのか?
みんな教室にいるぞ」

女「今は違うの
 今はやることがあるから」

男「やること? 
俺と話してるだけだろ」

女「そうだよ 
そのうちわかるから大丈夫」

男「そうかい」

女「うん」

男「そろそろ教室もどろうぜ」

女「ねえ 好きな人っていた?」

男「唐突だな さあどうだろうな」

女「いいじゃん最後に教えてよ 
教えてくれたら教室戻るからさ」

男「なんだそれ… まあ教えないよ」

女「いいじゃんケチ」

男「そういうお前はいたのか?」

女「私?私はいたよ」

男「それは驚いた 全然知らなかった」

女「そりゃ教えてないもん」

男「で、誰?」

女「それは教えない」

男「お互い秘密じゃ話にならないな」

女「じゃあ一つずつ話していこうよ」

男「一つずつ?」

女「そう
例えば私がその人の好きなところを一つ言ったらそっちも一つ言うの」

男「なるほどね」

女「じゃあ始めるね 
私がその人を好きになったのは入学式からだよ」

男「入学式? 一目ぼれか?」

女「うん 一目ぼれ 
なんかビビッときたんだ」

男「ビビッと」

女「そう ビビッと 
そっちはどうなの?」

男「俺は気が付いたらだな」

女「気が付いたら目で追ってたってやつ?」

男「そうだよ 最初はそんな気なかったんだけど気が付いたら、な」

女「そっか じゃあどこが好きだった?」

男「そうだな… いつも楽しそうにしてたところかな…」

女「楽しそう?」

男「ああ いつもみんなの中心にいて、自分もみんなも笑顔にしてるような奴だった」

女「…そうなんだ」


男「お前はどうだったんだ?」

女「さっきも言ったけど一目ぼれだからねー」

男「一目ぼれでも今まで好きだったんだから好きなとこの一つぐらいあるだろ?」

女「ありすぎてわかんないや」

男「なんだそれ まあいいか」

女「告白とかはかんがえなかったの?」

男「告白か… 考えてやめた」

女「なんで?」

男「俺はそいつがいるみんなが楽しかったんだ それが付き合ったりしたら変わりそうで嫌だったんだ」

女「怖かったんだ」

男「そうかもしれない でもいいんだ楽しかったから」

女「じゃあ今日告白してみれば?」

男「それもいいかもな」

女「…ふぅん」

男「お前は告白したりしなかったのか?」

女「しなかったよ」

男「理由はあるのか?」

女「相手が私を友達として見てるのがわかってたからさ、それを私から壊すのが怖かったんだ」

男「お互い似たような理由ってわけだ」

女「そうだね」

男「そろそろ時間だ 教室もどろうぜ」

女「まだだよ まだ好きな人聞いてないし」

男「まだそこなのか…」

女「今日ね私賭けをしたんだ 教室に私がいないことに気が付いて探してもらうの

  それでもし私を見つけてくれたら告白しようって」

男「…」

女「だから頑張って告白してみた

  私なりの告白
 
  聞かせてほしいの あなたの気持 ちを」

男「そいつは卒業式の日に屋上で感傷に浸ってるような奴で
  
  入学式の一目ぼれを引きずってるような奴で

  いつもみんなと楽しそうにしてる奴だった」

女「…」

男「みんなの中で笑顔でいるそいつが好きで

  それが変わってしまうのが嫌で告白するつもりなんてなかった

  でもそいつと話してみて思ったんだ 

  俺の横で笑顔でいてほしい 

  俺が笑顔にしてあげたいってな
  
  だから聞いてくれ」

女「うん…」

男「好きだ 俺と付き合ってくれ」

女「私も3年間ずっと好きで…言えないで終わっちゃうのかと思ってた…
 
  でもやっと言える だから聞いて」

男「ああ」

女「好きです 私と付き合ってください」

男「俺も好きだ」

女「こっち向いて?」

男「こうか?」

女「もう一回言ってほしい」

男「好きだ」

女「私も好きだよ」

男「泣くなよ…」

女「…だって…嬉しくて…」

……

男「ほら行くぞ 泣き止むのを待ってたから時間がやばい」

女「ごめんごめん 手、つなごうよ?」

男「分かったから」

女「卒業しちゃうんだね」

男「ああ でも終わりじゃない 俺たちはここから始まるんだから」

女「かっこいいセリフだね」

男「ちゃかすなよ 行くぞ」

女「うん」

おしまいです
思ったより短い
またそのうち挑戦します
30は書きたかった

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