美琴「あいつ、戻らない」インデックス「なんで……」(53)

内容としては、オティヌス戦後のパロで、頭のいっちゃってる上条さんとか出てくる
書き溜めなし


汚れた空に向かって私は走っている。
冷たい雨が頬を打つ。

泥水や雨水を吸った服が重い。
その分抵抗が生まれ、遅くなってしまっている。
だから、とにかく走っている。

黒子がいれば、なんて都合の良い考えが頭を過る。
一刻も早く病院へ。後輩を頼りたい気持ちを抑えるのおは私欲であるからだけではない。
上条当麻がこの街に帰ってきた。

なら、自分の足で会いに行きたい。

少しでも気を緩めて止まってしまったら、彼にもう会えないような気さえする。
不安で胸が張り裂けそうになるかと思えば、安堵で吐き気が引っ込んだような気持ちになる。

これも全て彼のせいだ。
私の中に溜まっている、この心配を全て彼の中に打ち込んでやりたいくらいだ。
そんなことを考えたところで、結局、彼に会ったら電撃を飛ばすのだろう。

少しでも素直でありますように。

彼はどこから帰って来たのか。それはわからない。
彼は何と戦ってきたのか。それもわからない。
分かっているのは、彼が彼のまま戻ってきている、五体満足でこの街のカエル顔の医者の所にいるということ。

それだけだ。妹達が、昨晩遅くにわざわざ寮まで来て伝えに来てくれたのだ。
それだけのことを。その瞬間、私は長い間待ち続けていた、そんな徒労を覚えた。
本当になぜなのかわからないが。

彼が戻ってきたという妹達の事務的な機械質な声音で、涙がこぼれたのだ。
私は何を知っているというわけではないのに。
脳だけは何かを感じ取って、私より先に心を揺さぶった。

だから、真っ直ぐに彼の元へ走っている。

前方、病院の入り口に見覚えのあるツンツン頭。

「お、おいビリビリ!?」

「ビリビリ言ってんじゃないわよ!」

「ば、ばか、お前無茶苦茶濡れてるじゃねえか……!」

彼は持っていた傘を開いて、私の方へ走り寄ってくる。
水たまりを避けて、転げそうになる彼の足取りはどこか覚束ない。

「あ、あんた怪我とかは」

「んなことより、早く傘入れ! たぶん、病室にタオルならたくさんあったから……おわ、ずぶ濡れ……インデックスに服買ってきてもらうしかねえなあ」

「私の方こそどうでもいいわよ! 何もなかったのかって聞いてんの!?」

「怒るなよ……」

「怒ってるんじゃないわよ……心配してるんじゃない……」

彼は、頬を人差し指で軽くひっかいた。
一度、こちらを見降ろしたが、瞬間、バツの悪そうに視線をずらす。

「なに?」

「……す、透けてますことよ……」

「……ッ?!」

傘の内側で電気が放射状に延びる。

「のわ!?」

私はとっさに、両腕で胸を覆い隠した。

「見た!?」

「み、見てません!」

と、水を弾くような大きな音。

「と…う…まぁ?」

白い修道服に身を包んだ女の子――インデックスが修道女らしからぬ顔で立っていた。

「とうまのえっち!」

「まてまてまて! 不可抗力だ!」

「ははッ……っくしゅん!」

私が知っている彼らだ。

今日はここまでせう

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年12月29日 (火) 17:01:00   ID: WOPdSeQ2

いい話やったー

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