キョン(最近、ハルヒの奴がよく家に来るようになった。それに伴い、妹の面倒もよく見てくれるようになった)
ハルヒ「やっほーい! 妹ちゃん!!」
妹「いらっしゃーい、ハルにゃん!」
ハルヒ「違うでしょ」
妹「あ、ごめんなさーい。いらっしゃいませ、おねえちゃん」
ハルヒ「そうそう。いい? 貴女もすぐに中学生になるんだからね。中学生になれば人付き合いの幅だって広くなるの」
ハルヒ「そのとき、きちんと年上を敬えるかどうかで人生は決まってくるんだから」
妹「うんっ」
ハルヒ「媚を売って長いものに巻かれていれば、それだけ人生は楽になるのよ。ほら、もう一回練習。いい? これは練習だから」
妹「おねえちゃんっ」
ハルヒ「うんうん。もう一回言ってみなさい」
キョン(うちの妹に人生の先達として教鞭を振るっているのは素直に感心だ。ハカセくんのこともあるし、ハルヒは子ども好きなんだろうな)
キョン(しかし、媚を売れだの、長いものに巻かれろだの、ハルヒには似合わない教育方針だな)
キョン「ハルヒ?」
ハルヒ「なによ?」
キョン「妹の面倒を見てくれるのはありがたいが、今のは……」
ハルヒ「あんたの妹が素直で、いい子で、可愛いからこそ、あたしが社会の厳しさを教えてあげてるの。文句あるわけ!?」
キョン「いや、ないが」
ハルヒ「なら、黙っててくれる?」
キョン「あ、あぁ……」
ハルヒ「さてと、妹ちゃん? 宿題あるでしょ?」
妹「え……う、うん……」
ハルヒ「まずは宿題からやっちゃおうか。それから遊びましょ」
妹「えー? ハルにゃん――」
ハルヒ「お義姉ちゃん」
妹「おねえちゃんも手伝ってくれるのぉ?」
ハルヒ「あたしは見てるだけよ。手伝っちゃ、貴女のためにならないでしょ」
キョン(それは正しい。俺はいつも手伝ってしまっているが。というか代筆しているぐらいだが)
妹「それだと、いつまでもあそべなーい」
ハルヒ「ヒントぐらいはあげるわよ。それに、今日は妹ちゃんの大好きなプリンだってあるんだから」
妹「わぁー!!」
ハルヒ「ほしい?」
妹「ほしい!」
ハルヒ「なら、宿題ね。終わったら食べましょう」
妹「えぇー?」
ハルヒ「ほらほら、宿題を持ってきなさい」
妹「はぁーい、おねえちゃーん」テテテッ
ハルヒ「……」
キョン(ここまでしてくれるとはな。同年代にもこれぐらい優しければこいつも変人扱いはされないだろうに)
ハルヒ「フフッ」
キョン「ハルヒ、どうした?」
ハルヒ「え? あ、ごめん。綻んじゃった」
キョン「そうか。思い出し笑いか」
妹「ハルにゃぁーん、わかんない」
ハルヒ「……」
妹「……おねえちゃん。ここ、わからないの」
ハルヒ「もー、どこどこー?」
妹「ここー」
ハルヒ「これはねー、ここをこうしてー」カキカキ
妹「うんうん」
ハルヒ「ほら、できた」
妹「おねえちゃん、すごーい!」
ハルヒ「まぁね」
キョン「……ハルヒ。教えたらダメじゃないのか?」
ハルヒ「ヒントをあげただけでしょ」
キョン「答えを書いてるじゃねーか」
ハルヒ「なによ、文句あるわけ? あたしが教えてるんだから口出ししないで」
キョン「おまえな。さっきと言ってることが違うじゃねえか、おい」
いい(*´Д`)
長門「おじゃまする」
キョン妹「いらっしゃいキョン君の奥さん!」
妹「……」
ハルヒ「なによ!! だったらキョンが教えればいいじゃない!!」
キョン「お前がやるって自分で言ったんだろうが!!」
ハルヒ「ふんっ。小学生の宿題も教えられないくせに」
キョン「できるわ!!」
ハルヒ「へー。あーそうなのー。じゃあ、問題出してあげる」
キョン「なに……?」
ハルヒ「ある文字を墓の後ろに置くと墓が壊れてしまいます。さらにその文字を追加すると、ゾンビのようにウロウロと動き始めるそうです。その文字とはいったい何なんでしょう?」
キョン「なぞなぞじゃねーか!! 馬鹿にしてるのか、お前!!!」
ハルヒ「なら答えてみなさいよ」
キョン「えーと……それは……あー……」
ハルヒ「はい。時間切れ。あんたの負けだから、口を挟むな」
キョン「このやろう……!!」
ハルヒ「ささ、続きをしましょう」
妹「はぁーい」
もっともっと(*´Д`)
ハルヒ「できた!!」
妹「わーい! ありがとう、おねえちゃん!」
ハルヒ「まあ、義姉としてはこれぐらい当然よね」
キョン(結局、ハルヒが半分ぐらいやってたな)
妹「プリンっプリンっ」
ハルヒ「はいはい。少し待ってて。キョン、冷蔵庫開けるわよ?」
キョン「え?」
ハルヒ「なによ?」
キョン「ああ、いや。なんでもない」
ハルヒ「ふんっ」
キョン(そういえば、最近のあいつ少し様子が変だな。少し前まで冷蔵庫の開閉許可なんて求めてこなかっただろうに……)
ハルヒ「えっとー」ガチャ
キョン(天上天下唯我独尊のハルヒも慎ましさと礼儀を覚えたのか。いいことだな)
妹「……」
キョン「どうした? 口をあけてぼーっとするのはやめなさい」
妹「ねーキョンくん、ハルにゃんやさしいね」
キョン「そうか? お前みたいな小学生に対してだけだと思うぞ」
妹「あたしにだけ?」
キョン「そうだ。俺や朝比奈さん、長門、あと古泉もあいつには振り回されっぱなしだからな。しかもこっちの事情はお構い無しだ」
妹「ふーん」
キョン「常に年下と戯れているハルヒなら好感度も天井知らずなのにな」
妹「みくるちゃんはやさしい?」
キョン「朝比奈さんはあれだ。優しいとかの次元じゃない。天使っていっても過言じゃない。見た目も中身も可愛いからな」
妹「じゃあ、有希ちゃんは?」
キョン「長門は……そうだな……。頼りになるし、心から信頼できる。優しいというよりは素直って感じだろうな」
妹「古泉くんは?」
キョン「あいつは……って、なんでそんなことを訊くんだ?」
妹「だってね」
ハルヒ「はぁーい、おまたせー。プリンよー。みんなで食べましょー」
妹「やったー!」
ん?
ハルヒ「はい、あーんっ」
妹「あーん」
ハルヒ「美味しい?」
妹「うんっ! おいしいっ!」
ハルヒ「そう。良かったわ。この店のは絶品なのよねぇ」
キョン(こいつの舌がそう評価したのなら、これは美味なプリンなのだろう)
妹「おねえちゃん、おねえちゃん。今度はアイスも食べたいっ」
ハルヒ「んー。アイスね。分かったわ。お義姉ちゃんに任せて」
妹「ありがとー」
ハルヒ「貴女は本当に可愛いわね」ナデナデ
妹「えへへ」
キョン「ハルヒ。あまり甘やかすなよ。調子に乗る」
ハルヒ「はっ。キョンじゃあるまいし」
キョン「なんだと!?」
妹「キョンくん、こわいぃ」
ハルヒ「ごめんねー」
妹「うん」
キョン「ったく……」
ハルヒ「それじゃあ、何して遊びましょうか。王様ゲーム?」
キョン「おい、小学生になにをさせようとしてる。トランプにしなさい」
ハルヒ「テレビゲームでもしましょうか?」
妹「するー!」
ハルヒ「よーし! まけないわよー!!」
妹「わぁーい!!」
キョン(なんだろうな、この光景は。本当の姉妹のようにも見えるし……)
ハルヒ「妹ちゃん! ゲームは一時間までっていうのは嘘っぱちだから!! 思う存分しましょう!!」
妹「いいのー?」
ハルヒ「お義姉ちゃんが許可する!」
妹「おねえちゃん、すごーい!」
キョン(歳の離れた友達にも見えるな)
いったい何が目的なんだ
ハルヒ「ちょっと! こんなところに……!! おっ、あっ、あーっ!!!」
妹「かったー!」
ハルヒ「やるわね。あたしをここまで追い詰めるなんて」
キョン「ハルヒ、弱いな」
ハルヒ「うっさいわね!!! 外野は黙ってれば良いの!!」
妹「もういっかいしよっ!」
ハルヒ「望むところだわ!」
キョン(そろそろ5時か。ゲームを始めて2時間がたつな……)
キョン「おい、ハルヒ。もう5時だぞ。まだ遊ぶのか?」
ハルヒ「あたしの門限は8時。いつも言ってるでしょ」
キョン「この家では7時ごろに夕食なんだが」
ハルヒ「いただくわよ」
キョン「またかよ。少しは遠慮ってものを覚えろ」
ハルヒ「いいじゃない。妹ちゃんと遊んでるんだから」
キョン「妹と遊ぶことで一食分の賄いが出るのか。いいアルバイトだな」
ハルヒ「はいはい。なら、お義母さんに買うもの訊いてくるわ」
キョン「なに?」
ハルヒ「いつもいつもご馳走になってたら悪いもんね」
キョン(ハルヒにしては真っ当なことを言っているな)
キョン「でも、買い物に行く必要なんてないかもしれないぞ?」
ハルヒ「それはないわ。さっき冷蔵庫見たけど、これといった食材はなかったもの」
キョン(こいつ、何チェックしてやがる!?)
ハルヒ「妹ちゃん。一緒に買い物行く?」
妹「うん、いくー」
ハルヒ「よーし、決まり! 何を買うのか訊いてくるわよ!!」
妹「おかーさーん!!」テテテッ
ハルヒ「……」
キョン「ハルヒ、本当にいいのか?」
ハルヒ「ん? ああ、別にあんたのためじゃないし。全てはあなたの妹ちゃんのためだもの。そこははっきりさせておくわ」
キョン(本当に子どもが好きなんだな)
キョン(とはいえ……)
ハルヒ「準備は?」
妹「できたよ」
ハルヒ「よぉーし! しゅっぱーつ!!」
妹「おー!」
キョン「待て、ハルヒ」
ハルヒ「なによ。気合入れたんだから、水差さないでくれる?」
キョン「俺も行く」
ハルヒ「なんで?」
キョン「たとえハルヒでも客だし、妹の面倒を丸投げするわけにはいかないからな」
ハルヒ「ふぅーん。別にいいけど。ついてきたいなら、きたらいいんじゃないかしら」
キョン「よっし、行くか」
妹「キョンくんとハルにゃんとおでかけー」
ハルヒ「違うでしょ」
妹「あ、ごめんなさーい。キョンくんとおねえちゃんとおでかけー」
スーパー
妹「キョンくん」
キョン「お菓子は一つまでだ」
妹「はぁーい」テテテッ
ハルヒ「本当に可愛いわね。キョンと血が繋がってるとは思えないわ。誰似?」
キョン「いいから、買うものかって帰ろうぜ」
ハルヒ「それもそうね」
キョン(今更だが、この光景はあまり見られたくないな……)
ハルヒ「キョン! みてみて。たまねぎが安いわ!」
キョン「そうなのか? 元の値段を知らんからよくわからん」
ハルヒ「だめねー。そういうところがホントにダメねー」
キョン「そこまでいうか」
ハルヒ「いい? 家事は女の仕事、なんてもう古いのよ。男女は二人三脚で進んでいかなきゃならないわけ」
キョン(こいつ、さっきから普通のこと言ってるな)
ハルヒ「えーと、買うものは……っと」
キョン「これで全部か?」
ハルヒ「漏れはないわね。おつかい終了。あとは妹ちゃんのお菓子だけど……」
妹「……」
キョン「おい、どうした?」
妹「キョンくん、あのね……これ……」
キョン「そのお菓子、どうしたんだ?」
ハルヒ「あら、どうしてビニール袋に入ってるの?」
妹「くれたの」
キョン「なっ……!?」
ハルヒ「ダメじゃない!! 知らない人にモノを貰ったら!! お礼は言ったんでしょうね!?」
キョン「なんかズレてないか、ハルヒ」
妹「ありがとうって言ったよ。それに知らない人じゃないから」
キョン「知らない人じゃないって、誰だ?」
妹「有希ちゃん」
ハルヒ「有希? 有希がいたの?」
妹「うん」
ハルヒ「そうなの。まぁ、有希なら仕方ないわね。貰っておきましょう」
キョン(長門がお菓子を妹に……。なんのためにだ……?)
妹「キョンくん。いつもは違うの。いつもはちゃんと断ってるんだよ」
キョン「なに?」
妹「今日の有希ちゃんはいきなり渡してきて、食べてって」
キョン(何がしたいんだ……。たまにハルヒ以上にわからんことをするな、長門は)
ハルヒ「有希もあれよ、妹ちゃんの可愛さに負けたとかそんなのよ」
キョン(長門が猫を気にかけているのは知っているが……)
妹「有希ちゃんねー、こんなのまでくれたのー」
ハルヒ「パーティーサイズのポテチじゃないの。これは太るわね」
妹「一緒にたべるー?」
ハルヒ「そうしましょうか」
キョン(確かに妹には小動物っぽいところもあるが……)
キョン(それにしても気になるのが、長門がいつもそういうことをしているって点だな……。何かあるのか……?)
キョン宅
妹「ただいまー、おかーさーん」
ハルヒ「ただいまー」
キョン(お前はお邪魔しますだろうと突っ込むのも飽きたな)
ハルヒ「あとは夕食ができるのを待つだけね。その間、また遊びましょうか」
妹「うん。あそぶー」
キョン(長門に確認をとっておいたほうがいいかもしれないな)
ハルヒ「キョン、なにしての? 早く来なさい」
キョン「あ、ああ」
妹「キョンくんもはやくー」
キョン「分かったから、引っ張るな」
ハルヒ「今度はあたしたちを見下していたキョンをコテンパンにやっつけちゃいましょうか?」
妹「うんっ!」
ハルヒ「覚悟しなさいよ!!」
キョン「やれやれ……」
ハルヒ「楽しかったわ! それじゃあね!!」
キョン「おう」
キョン(そりゃ楽しいだろう。アレだけ騒いで食えばな)
ハルヒ「何か言いたいことでもあるわけ?」
キョン「いや、別に」
妹「またあそぼーね! おねえちゃんっ!」
ハルヒ「もっちろんよ」ナデナデ
妹「えへへ」
ハルヒ「それじゃあ、お義姉ちゃんは帰ります! また日曜日に来るから!!」
妹「はぁーい!!」
キョン「たまには休んだらどうだ、お姉ちゃん」
ハルヒ「あんたの姉になった覚えはないわ」
キョン「そうかい」
ハルヒ「おやすみ」
妹「おやすみ、おねえちゃんっ!」
妹「たのしかったね、キョンくん」
キョン「なぁ、長門に貰ったお菓子はどうした?」
妹「あるよ。一緒に食べる?」
キョン「いや、いい。お前ももう遅いから食べるなよ。また明日だ」
妹「はぁーい」
キョン「ああ、そうだ。昼間に言いかけたことだけど」
妹「え?」
キョン「どうして長門や朝比奈さん、古泉のことを訊いたんだ?」
妹「うんとね。有希ちゃんは会ったらお菓子くれるし、みくるちゃんも会ったときに色々おはなしするし、古泉くんもね、ジュースくれたりするの」
キョン「なんだと?」
妹「勝手に貰っちゃいけないって言ってるよ」
キョン「それはいいことだが……」
キョン(ハルヒだけじゃなく3人が妹を気にかけているっていうのか……?)
妹「だからね、みんなもあたしだけに優しいのかなーって」
キョン「そういうことか。納得した。歯を磨いて寝ろよ」
キョンの部屋
キョン(納得したとは言ったが、3人の行動については納得できない)
キョン(俺の知らないところで何が起こっているんだ?)
キョン「……いやいや、うちの妹は小学校低学年に間違われるぐらいだからな。ハルヒの言うとおり単純に愛でるためとか、知り合いの妹だから気にかけただけかもしれん」
キョン「変な詮索はよすか」
妹「キョンくーん、ハサミかしてー」ガチャ
キョン「貸すのはいいが、そろそろノックを覚えろ」
妹「てへっ」
キョン(何故、わざとノックをしないのかね。この妹は)
妹「ありがとー」
キョン「まて。何に使うんだ?」
妹「お菓子の袋があかなくて」
キョン「おい」
妹「ほら、バーンってなっちゃうし」
キョン「食べるなって言っただろうが!」
翌日 部室
ハルヒ「うーん。次の文化祭でもっと派手なことしたいのよねぇ……」
朝比奈「派手って?」
ハルヒ「みくるちゃんが、脱ぐっ!!とか」
朝比奈「ひぇぇ……いやですぅ……」
ハルヒ「ま、それだけじゃ視聴者をわっと驚かすことも振り向かせることもできないけどね」
朝比奈「はぁ……よかったぁ……。って、あ、あのぉ……もも、ももしかして……脱ぐよりも派手なこと、とかぁ……?」
長門「……」
古泉「どうですか、一局?」
キョン「……そうだな。お前、将棋できるのか」
古泉「駒の動きは熟知しております」
キョン(それだけで戦えるわけじゃねえんだぜ、古泉)
古泉「では、先手は僕からということで」
キョン「好きにしろ」
キョン(今日も何事もなく時間が過ぎていくな……。無駄な時間とは思わなくなった自分が恐ろしい)
ハルヒ「それじゃあ、今日はここまで! 解散っ!!」
キョン「やれやれ……」
ハルヒ「キョン!」
キョン「なんだ?」
ハルヒ「妹ちゃん、なんか言ってた?」
朝比奈「……」
古泉「……」
長門「……」
キョン「なんかって何だ?」
ハルヒ「楽しかったとか、あるでしょ。ないわけ?」
キョン「ああ、楽しかったとは言ってたな」
ハルヒ「あらそう。そうなの。フフッ」
キョン「なんだ、気持ち悪いな」
ハルヒ「べっつにぃー。またね、キョン。バイバイっ」
キョン(上機嫌だな。ま、そのほうがいい。閉鎖空間の発生もないだろうしな)
キョン「さてと、俺も帰るか」
古泉「少し、よろしいですか?」
キョン「なんだ?」
古泉「最近、涼宮さんがよく貴方のご自宅を訪問されているようですね」
キョン「ああ。そうだ。なんだ、知らなかったのか?」
古泉「いえ。二週間ほど前から知っておりました」
キョン「だろうな。で、それが何かあるのか?」
古泉「涼宮さんの様子はどうですか?」
キョン「妹と楽しくやってる。近所迷惑にならないか心配なぐらいにな」
古泉「それはそれは。随分と楽しそうですね。妹さんもかなり涼宮さんに懐いておられるのでは」
キョン「元から人懐っこいからな。今じゃハルヒのことをお姉ちゃん呼ばわりにしている。俺のことはお兄ちゃんと呼ばないくせに」
古泉「なるほど。やはり、そうですか」
キョン「なんだ、古泉。言いたいことがはっきり言えよ」
古泉「端的に述べましょう。今の状況は良くありません。貴方と妹さんにとっても。無論、涼宮さんにとっても」
キョン「どういうことだ?」
古泉「涼宮さんによる事実歪曲が起こる可能性があります」
キョン「だから、それはなんだ?」
古泉「今回の場合、いつか涼宮さんが貴方の家庭に何の違和感もなく溶け込むことになるでしょう」
キョン「は?」
古泉「涼宮さんが妹さんに姉と呼ばれていることからも、既にそれは始まっている」
キョン「ハルヒのトンデモ能力か?」
古泉「はい。何を思い、こういった現象を引き起こそうとしているのかは想像するに容易いですが、あまり好ましいことではありません」
古泉「僕としましてはこのまま涼宮さんが貴方の家族になってしまうのなら僥倖と言えます。しかし、その方法がよくないのです」
キョン「方法?」
古泉「涼宮さんは局地的な世界改変を行っているわけです。それでは外側の世界、つまりは僕たちのような外野との摩擦が生じてしまう」
古泉「何分、涼宮さんの中では貴方と家族であることが事実になってしまうわけですからね。他の人は何事だと思うでしょう」
キョン(妹が懐き、お姉ちゃんと呼んでいるのがその前兆だっていうのか)
古泉「個人的には貴方と涼宮さんはきちんとした恋愛をして、言葉による相互理解を経て家族になってほしいと願っています」
キョン「やめろ」
古泉「ともかく、今回に限りましては涼宮さんを止めなければならない。僕はそう考えています」
キョン「本当に俺の妹にハルヒっていう姉ができるわけか?」
古泉「ええ。最も改変されたあとでは、それが生まれたときからの事実ということになりますが」
キョン(俺とハルヒの関係はどうなるんだよ。同じ年齢だぞ。いや、俺が四月生まれで、ハルヒが翌年の三月生まれなら……。ってそういうことじゃねえ!!)
古泉「僕の口から涼宮さんに苦言を呈すなどという天に唾を吐くような行為はできませんから、貴方からお願いします」
キョン「待てよ。本当にそうなる保障はないんだろ?」
古泉「気づいたときには貴方にもう一人妹が、或いは新妻が増えている。なんてことになれば、僕は困ります」
キョン(俺も困る。あんな妹いらんし、新妻もまだいらん)
古泉「では、よろしくお願いします」
キョン(古泉が妹に接触してたのは、今のことを探るためか……)
キョン(やっぱり、おかしなことが始まってやがったか)
キョン「俺だってハルヒにもう来るななんて言えるわけ……」
朝比奈「あのぅ……キョンくぅん……」モジモジ
キョン「朝比奈さん? 朝比奈さんもハルヒのことで?」
朝比奈「い、いえ……その……えっとぉ……」
キョン(今度はなんだろう。もうなんでもこい。もしかして未来の俺はハルヒと仲睦まじく妹のような娘をあやしているなんてカミングアウトするんですか?)
朝比奈「キョンくんの妹さんは……涼宮さんのこと、おねえちゃんって呼んでるの?」
キョン「ええ、まぁ。そうですが」
朝比奈「そっか……」
キョン「朝比奈さん?」
朝比奈「ご、ごめんなさい。こっちの話だから!」
キョン「朝比奈さん?」
朝比奈「そ、それじゃあ! さよなら!!」タタタッ
キョン(な、なんだ……?)
長門「……」
キョン「長門、ハルヒのことだが」
長門「わたし……食べて」
キョン「な、なにを言ってるんだ!?」
長門「食べれば涼宮ハルヒの力を緩和することができる。ただし、飽く迄も緩和。解決にはならない」
キョン「な、なんのことだ?」
長門「渡したもの、あるはず」
キョン「あのスナック菓子のことか?」
長門「……」コクッ
キョン「どれを食べればいいんだ?」
長門「どれでも」
キョン「全部か?」
長門「そう」
キョン「なら、古泉の言っていたことは本当なのか?」
長門「行き着いた解が異なるが目的は同じ」
キョン「何が異なるんだ?」
長門「涼宮ハルヒによる改変で忌避すべき事態が一つだけある」
キョン「一つ? ハルヒが家族になっちまうことじゃないのか?」
長門「涼宮ハルヒが貴方という普遍的な一人類と同期することは、涼宮ハルヒの力が消失することにも繋がるから」
キョン「な……」
キョン(あのハルヒが普通に……?)
長門「情報統合思念体はそれを懸念している。涼宮ハルヒの行為は我々にとって不利益であり、甚大な損失ともなる」
キョン「そうなのか……」
長門「でも」
キョン「え?」
長門「貴方がそれを望むのならば、構わない」
キョン「……仮にハルヒが普通になったらどうなるんだ? 長門はどうするんだ?」
長門「この星に留まる理由がなくなる」
キョン「それって、消えちまうってことか?」
長門「そうなる」
キョン「長門……」
長門「……また……図書館に……」
キョン「長門!!」
キョン(行っちまったか)
キョン(長門にあそこまで言われたら仕方ない。やるしかないな)
キョン(何ができるかはわからないが、やれるだけのことはやるか)
キョン(まだ卒業するには早すぎるからな、長門)
通学路
キョン(しかし、ハルヒにもう来るななんて行ったところでだ、あいつがそれを素直に受け入れるか?)
キョン「……いや、ねえな。言って聞いてくれるなら、こんなに苦労するわけないからな」
キョン「さて、どうする……」
妹「あ、キョンくーん!!」
キョン「今、帰りか?」
妹「ミヨキチと遊んでたのー」
キョン「そうか」
妹「キョンくんに会いたいって言ってたよ」
キョン「暫く会ってないもんな」
妹「今度、一緒にお風呂はいるー?」
キョン「やめなさい。それより、訊きたいことがあるんだが」
妹「んー?」
キョン「お前、ハルヒのことどう思ってるんだ?」
妹「おねえちゃんのこと? 好きだよ?」
キョン「そうか」
妹「キョンくんと仲よしなところとか、見てて楽しいし」
キョン「何を言ってるんだよ」
妹「キョンくんもそうじゃないの?」
キョン「俺は……」
キョン(意識したことなんてなかったな……。ハルヒと居て楽しくないわけがない。しかし、あいつと二人でいるということは……)
妹「キョンくんもおねえちゃんのこと好きでしょ?」
キョン「な、なにいってるんだ!! そんなことあるわけないだろうが!! 小学生がませたこというんじゃありません!!」
妹「でもぉ」
キョン「とにかく、帰るぞ」
妹「はぁい」
キョン(ハルヒは俺たちにとっての団長で、それ以上でも以下でもない)
キョン(そんなことは分かりきってることだ。今更確認することじゃないだろう)
キョン「あー、くそ!! なんで俺がこんなことで悩むんだ!!」
妹「どうしたの、キョンくん?」
キョンの部屋
キョン(ハルヒに来るなと言ったとして、あいつはどんな顔をするだろうか)
キョン(泣くか? それはありえない。なら、怒るか? それが一番ありそうだな。いやいや、呆気にとられるかもしれない)
キョン「って、ハルヒの反応を想像してても仕方ないだろ。何やってんだ」
キョン(古泉の言うとおり、知らない間にハルヒだけが家族になってたらおかしいんだ。早いところ解決しないと)
キョン「うーん……」
妹「キョンくん、でんわー」ガチャ
キョン「ノックしろって。誰からだ?」
妹「みくるちゃん」
キョン「朝比奈さん?」
妹「うんっ!」
キョン(携帯電話にかけてくればいいのに……)
キョン「分かった、サンキュ」
妹「えへ」
キョン(朝比奈さん、何か隠してる感じだったからな……)
キョン「もしもし?」
『あ、キョンくん。久しぶり』
キョン「え? もしかして、大人の朝比奈さんですか?」
『大正解。さすがね、キョンくん。もう全部分かってるみたいで安心した』
キョン(未来朝比奈さんまで出張ってくるって、これ相当ヤバい事態なのか?)
『と、あまり時間がないから手短に言うわね。キョンくん、辛いことだとは思うけれど、きちんと断って』
キョン「それは」
『お願いね。いっぱい泣くけど、決して甘い言葉をかけちゃダメだから』
キョン「そんな……!!」
『そうしないと、未来がおかしくなっちゃうの。お願い、キョンくん』
キョン(ハルヒが泣くだと……!? そんな馬鹿なこと……あるわけ……!!)
『もう時間みたい。最後に……』
キョン「は、はい」
『ううん。なんでもない。それじゃあ、またね』
キョン「え、ええ。また」
妹「キョンくん、おかしたべよ」
キョン「……ああ。そうだな。それを食っておかなきゃな」
妹「ふーん……ふーん……」
キョン「ハサミつかえ。ポテトチップスを撒き散らすこと――」
妹「えーい」バンッ
キョン「あ……」
妹「あー」
キョン「こら」
妹「ごめんなさーい」
キョン(ハルヒならしっかり怒るんだろうか。それとも……)
妹「キョンくん?」
キョン「……よし」
妹「キョンくん、おかしー」
キョン「それ、ハルヒと一緒に食べよう。今から呼ぶから」
妹「ハルにゃ……おねえちゃんを?」
キョン「ハルヒ。今、暇か?」
ハルヒ『暇じゃないならすぐに通話切ってるわよ。で、なんか用事?』
キョン「今から、俺の家にこれるか?」
ハルヒ『はぁ? なんでよ』
キョン「大事な話があるんだ」
ハルヒ『あんたがあたしの家に来たら良いじゃない』
キョン「妹も一緒がいいんだ。もう夜だし、妹は連れて歩けない」
ハルヒ『別にいいけど。何の話なの?』
キョン「これからのことをちょっとな」
ハルヒ『こ、これからのことって何よ!?』
キョン「晩飯食っていっていいから」
ハルヒ『だから、詳細か概要を説明しなさいよ!!』
キョン「帰る時は俺が家まで送ってやるかな」
ハルヒ『今から出るから、まってなさい』
キョン「おう、頼む」
キョン「……」
妹「キョンくん、あーん」
キョン「いらん」
妹「もー」
ピンポーン
妹「おねえちゃん!!」ダダダッ
キョン(来たか)
ハルヒ「――また来ちゃったじゃないの!! アホキョン!!」
キョン「悪いな」
ハルヒ「ふんっ。別に来たくて来たんじゃないんだから。呼ばれたから来てやったのよ」
妹「おねえちゃん、いらっしゃーい」
ハルヒ「はーい、お義姉ちゃんよー」ギュッ
妹「くすぐったーい」
キョン「なぁ、ハルヒ」
ハルヒ「何よ? ごはん?」
キョン「お前も良く聞け」
妹「キョンくん?」
キョン「ハルヒ。妹の面倒を良く見てくれているのには感謝してる。兄としても嬉しい限りだ」
ハルヒ「当然じゃない。義姉の務めだもん。ねー?」
妹「ねー?」
キョン「違うだろ」
ハルヒ「え?」
キョン「ハルヒ。お前は、こいつの姉じゃねえだろ。ただの歳が離れた友人じゃないのか」
ハルヒ「何言ってるのよ、キョン。年上なんだから、義姉でいいでしょ」
キョン「お前がどう呼ばれようとも構わないが、お前はこいつの姉じゃない。そうだな?」
ハルヒ「そ、それは……そうだけど……。それがなに?」
キョン「だったら、姉と呼ばせることを強制させなくてもいいだろ。妹だってもう少し年齢を重ねればそれなりの礼儀だって身につくだろう」
キョン「そのときにはお前のことをハルヒさんとか涼宮さんって呼ぶようになる」
ハルヒ「キョン。なにそれ。それって、つまり、あたしが妹ちゃんにお義姉ちゃんって呼ばれるのが癪に障るってわけ?」
キョン「そういうことじゃねえよ。うちの妹に無理な押し付けはやめてほしいって言ってるだけだ」
ハルヒ「それが気に食わないんでしょ!?」
キョン「違う!!」
妹「キョンくん……おねえちゃん……」
ハルヒ「別に妹ちゃんになんて呼ばせてもいいでしょ!!! あんたには関係ないじゃない!!!」
キョン「俺はコイツの兄だ!!」
ハルヒ「兄がなんぼのもんじゃい!!」
キョン「肉親だろうが!! その肉親がやめてくれって言ってるんだろ!!!」
ハルヒ「どうしてお義姉ちゃんって呼ばせるのをやめさせなきゃいけないのよ!!!」
キョン「それは……」
キョン(考えてなかった……)
ハルヒ「理由をいいなさい!! 300字以内でっ!! それができないならあたしの勝ち!! これからもここに来る!! 義姉としてね!!!」
キョン「やめろ!!! 妹がお前に懐いてるんだよ!!」
ハルヒ「それがなによ!!! いいことじゃないの!!!」
キョン「俺にとっては都合が悪い!!」
ハルヒ「はぁ? あんたシスコン?」
キョン「とにかくだ。もうハルヒ。今日を最後にしてくれ」
妹「え……キョンくん……?」
ハルヒ「なんですって?」
キョン「ここに来るなとは言わん。ただ、妹には近づいてくれるな」
ハルヒ「……」
キョン「それだけだ」
ハルヒ「そう……」
キョン(ここで泣くのか……それとも……)
ハルヒ「そうね。あたしも図々しかったかもね」
キョン「……え?」
ハルヒ「そうよね。あたしに妹ちゃんが懐きすぎて、あんたの言うことを聞かなくなったら困るわよね」
キョン「ハルヒ?」
ハルヒ「分かったわ。これで終わりにする。本当の妹みたいで楽しかったっていうのはあるけど、そうよね。踏み込んじゃいけないところってあるものね」
キョン(なんだ。どうしてこんなにあっさり……)
ハルヒ「少しの間だったけど、おねえちゃんって呼ばれて嬉しかったわ。ありがと」
キョン「おう……」
ハルヒ「ちゃんと妹ちゃんの宿題、手伝ってあげなさい。いいわね?」
キョン「わ、わかった」
ハルヒ「それじゃあね、妹ちゃん」
妹「あ……」
ハルヒ「お邪魔しました」
キョン(これでいいのか……古泉……長門……。これで……)
ハルヒ「また明日ね、キョン」
キョン「ああ……」
妹「……やだ」
ハルヒ「妹ちゃん?」
キョン「どうした?」
妹「キョンくん……どうしてハルにゃんがおねえちゃんやめなきゃいけないの?」
キョン(言ったところで信じてはもらえないだろうな)
妹「あたし……は……ハルにゃ……ん……が……うぐっ……おねえ、ちゃん……が、いい……のに……」
ハルヒ「あ、ちょっと」
キョン「お、おい」
妹「うぇぇぇん……!!」
ハルヒ「ちょっと、キョン!! 妹ちゃんが泣いちゃったじゃないの!!! どうするのよ!!」
キョン「どうするといわれてもな……」
妹「ハルにゃんが……いちばん……なの、にぃ……」
ハルヒ「ごめんごめん。泣き止んで」ナデナデ
妹「あぁぁーん……」
キョン(まさか、朝比奈さんが言っていたいっぱい泣くって……)
ハルヒ「大丈夫だから、今日はやめるってだけにするから、ね?」
妹「うっく……ほんとぉ……?」
ハルヒ「ホントホント。おねえちゃんは嘘をつかないわ」
キョン「待て、ハルヒ」
ハルヒ「あんたは妹ちゃんの涙を見てもなんとも思わないわけ? ふーん、そうなの。へぇ……」
キョン「なわけないだろうが!!!」
ハルヒ「なら、これからも現状維持でいいわね?」
キョン「待てって。何を勝手なこと言ってやがる」
キョン(そうなると長門が消えるかもしれないんだぞ)
ハルヒ「あんたの意見は尊重してあげるわよ」
キョン「なに?」
ハルヒ「妹ちゃんに呼び方を強制させない。好きなように呼ばせる。それでいいわね?」
キョン「うーん……」
キョン(少なくとも家族とかそういう関係を強く意識させることにはならないだろうが……)
ハルヒ「いいわね?」
キョン「……」
妹「キョンく……おにいちゃん……」
キョン「分かった。それでいい」
妹「キョンくん!! わーい!!」
ハルヒ「心配しなくてもいいわ。兄の威厳は守ってあげるから」
キョン「もう失われてるようなもんだろ……」
初春「糞スレが伸びてる理由もわかりませんし」
初春「百番煎じのSSは、書いてる奴も読んでる奴も何考えてるんですかねぇ」
初春「独自性出せないなら創作やるんじゃないっつーの」
初春「臭過ぎて鼻が曲がるわ」
佐天「初春?」
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