トレーナー『モバPさんへのチョコレート』 (24)

※アイドルマスターシンデレラガールズのSSです

※名称は一部略称を用いていますのでご注意ください

マスタートレーナー → マス
ベテラントレーナー → ベテ
トレーナー → トレ
ルーキートレーナー → ルキ

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――――――――――――2月13日19:00、トレーナー姉妹宅


トレーナー(以下、トレ)「明日は2月14日バレンタインデー……チョコレート作らなきゃ」

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トレーナー(23)

トレ「Pさん……喜んでくれるかしら?」

トレ「でも、告白みたいになっちゃうのかしら……」

トレ「や、やだ! 私ったら! そんなんじゃないのに」



トレ「ふふっ……楽しみ」

――――――――――――キッチン

トレ「あら?」

ルーキートレーナー(以下、ルキ)「お姉ちゃん、お帰りー」

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ルーキートレーナー(19)

トレ「ただいま……ルキ、何してるの?」

ルキ「明日、バレンタインでしょ? その準備だよ」

トレ「手作りチョコ?」

ルキ「そうそう。あんま得意じゃないんだけどねー」

トレ「ふうん……その……誰かにあげるの?」

ルキ「えっとね、友達と……あとニナちゃんや千佳ちゃんたちかな?」

トレ「女の子たちに?」

ルキ「そうだよー。今は女の子同士で交換するの流行ってるからね。友チョコってやつ?」

トレ「そ、そう……」

ルキ「お姉ちゃんも作るの?」

トレ「え? い、いや……私はその……」

ルキ「??」

トレ「わ、わ、私は……あ、明日のお弁当の準備で……」

ルキ「そうなの? じゃあ、少し待ってて。もうすぐ作り終わるから」

トレ「いいのよ、ゆっくり作ってて。私は後でいいから」

ルキ「わかったー」




トレ(しばらくは無理そうね……)

――――――――――――21:00


トレ(そろそろ終わったかしら……あら?)

ベテラントレーナー(以下、ベテ)「ん? どうした? トレ?」

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ベテラントレーナー(26)

トレ「姉さんこそ……どうしたの? キッチンに立つなんて珍しい」

ベテ「ああ、明日はバレンタインだろ? それでな」

トレ「手作りチョコ? 誰に渡すの?……まさか、お付き合いしてる男の人が?」

ベテ「そんなわけないだろ。世話になってる証券マンたちだけだ」

トレ「証券会社の人とお付き合いを?」

ベテ「だから違うと言ってるだろ! 根回しのためだ」

トレ「根回し?」

ベテ「そうだ。情報を制すものが株を制す。彼らの持つ情報をこれで聞ければ安いものだ」

トレ「へえ……って、それはインサイダー取引ってやつじゃ……?」

ベテ「別に会社の内部資料や未公開株の情報を聞く訳じゃない。兜町のウワサ程度の話だ。法には抵触しない」

トレ「あ、危ないことはしないでね……」

ベテ「それより、お前も作るのか?」

トレ「え? わ、私は……その……」

ベテ「??」

トレ「な、何でもないの! 片付けは私がやっておくので、終わったら呼んでください」

ベテ「ああ、わかった」



トレ(また、作りそびれちゃった……でも、ベテ姉さんが作るなんて意外だったわ)

――――――――――――23:00


コソコソ

トレ(ベテ姉さんは終わったみたいね……今のうちに)


マスタートレーナー(以下、マス)「何をしているんだ?」

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マスタートレーナー(28)

トレ「ひいいいいいっ!!!」

マス「何をコソコソしている?」

トレ「い、い、い、いえっ! べべべ別に!……姉さんこそ、一体何を?」

マス「私はこれからチョコレートの製作に入る」

トレ「姉さんが?」

マス「うむ。全国トレーナー協会の老人どもにな」

トレ「そ、そうなんだ……」

マス「くだらん風習だが、私が役員で一番最年少で女性なのでな。機嫌を取っておくに越したことはないだろう」

トレ「……そう」

マス「ところで、トレ?」

トレ「なに?」

マス「ウイスキーボンボンというものを知ってるか?」

トレ「ええ。確かウイスキーを砂糖の殻で固めてチョコでコーティングしたものでしょう?」

マス「それだ。別にウイスキーでなくとも問題はないよな?」

トレ「多分……地域によってはブランデーやウオッカみたいなのもあるらしいけど」

マス「ふむ……老人にブランデーは少々きついと思ってな。養命酒にスタドリを混ぜてみたのだがどうだろう?」

トレ「えと……普通でいいと思いますよ」

マス「むう……別に考える必要がありそうだな」



トレ(何を作るのかしら?……でも、今日は無理そうね)

トレ(明日、早起きしてつくろう……)

――――――――――――翌朝5:00


トレ「や、やっとできた……」

トレ「ラッピングも済ませたし……派手じゃないけど……」

トレ「恥ずかしいから、朝のうちに渡してしまおう」



トレ「Pさん……喜んでくれるかなぁ……」

――――――――――――9:00、事務所


トレ「おはようございます」

ちひろ「おはようございます。トレさん」

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千川ちひろ(??)

トレ「おはようございます、ちひろさん……えっと」

ちひろ「どうしました?」

トレ「え? あ、いえ……Pさんは今日は?」

ちひろ「Pさんなら朝はレコード会社に打合せに行ってくるそうですよ」

トレ「そ、そうですか……」

ちひろ「多分お昼には戻ってくるかと思いますが……なにか伝言でも?」

トレ「い、いえ! べ、べつに! お邪魔しました」

ちひろ「???」


トレ(朝は無理ね……仕方ない……)

――――――――――――12:00、事務所

トレ(今ならPさんは……いた!)

トレ(よし……さり気なく渡すのよ、トレ)

トレ(深呼吸して……)



ばああああん


ルキ「あっ! プロデューサーはっけーん!」

千佳「ほんとだ! プロデューサー!!」

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横山千佳(9)

仁奈「探したでごぜーますよ!」

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市原仁奈(9)

P「おお、みんな揃ってどうしたんだ?」

千佳「今日ってバレンタインでしょ? はい、私たちからチョコレートのプレゼント!」

P「おお、こいつはうれしいな! ありがとうな」

千佳「チカのチョコはこれ!」

P「随分、カラフルだな。どれどれ……うん、美味い!」

千佳「えへへへ♪ チカのマジカルパワー入りのチョコレートだよ! 魔法が込められてるの!」

P「ははは、こりゃいいや。俺も変身できるかな?」

千佳「ん~、まだまだだね。もっとパワーつけないと」

P「そうかー。もう少し頑張るか」

仁奈「仁奈はこれでごぜーますよ」

P「おっ? ニナはクマの形のチョコか。凝ってるな」

仁奈「……」

P「ん?」

ルキ「Pさん! それはコアラ型のチョコレートでしょ! な、何言ってるの、もうっ!」

P「へ? あっ……あーっ! 本当だ! コアラじゃないか! 疲れてんのかな俺?」

仁奈「ほんとうに……コアラに見えやがりますか?」

P「みえるみえる! どこからどう見てもコアラだろ、これ!」

仁奈「えへへへ……よかったですよ。仁奈のも食べてくだせー」

P「どれどれ……うん、美味いぞ、ニナ」

ルキ「私はこれですよ」

http://i.imgur.com/6PEitmF.jpg

P「ルキちゃんもくれるのか」

ルキ「私は別にあげる予定なかったんですけどねー」

P「そ、そうなの?」

ルキ「まあ、千佳ちゃんや仁奈ちゃんがPさんにもあげるっていうので……仕方なくですよ」

P「うん、うまい」

ルキ「い、言っときますけど義理ですからねっ!! ちゃんとアイドルの皆のぶんも食べてくださいよ?!」

P「もちろんだよ。色々とありがとうね」

ルキ「まったく……」




トレ(ううう、出て行くタイミングがない……)

トレ(ルキもPさんのぶんを作ってたのね……)

――――――――――――15:00、事務所


トレ(まだ、Pさんはいるみたい)

トレ(今なら自然に渡せる……気がする)

トレ(時間も時間だし、おやつ代わりだと言って渡せば)

トレ(よしっ! それじゃそろそr)



ばああああん



ベテ「Pはいるか!?」

P「そんな大声出さなくてもいますよ……どうしたんです?」

ベテ「喜べ、P。お前のためにチョコレートを持ってきてやったぞ」

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P「あっ、ありがとうございます」

ベテ「私のチョコは特別製でな。他のものとはワケが違うぞ」

P「そうなんですか? では、いただきます」


がきん


P「固てえええええええ!!!! 歯が!! 歯が!!」

ベテ「運動で大切なのは、噛み合わせと顎の力だ。チョコを食べてトレーニングだ。健康的だろう?」

P「並の硬さじゃないですよ!! 鉄板みたいじゃないですか!?」

ベテ「これを鍛えることで更なるパフォーマンスが期待できると、論文で発表されている」

P「僕を鍛えられても……えと、ありがとうございます。お気持ちだけで……」

ベテ「遠慮せず食え。私の気持ちだぞ」

P「ひいいいいいっ、押し込まないで!!」




トレ(姉さん……しっかりPさんの分も作ってるじゃない)

トレ(とてもチョコを渡せる雰囲気じゃなさそうね……)

ちひろ「あら? トレさん?」

トレ「ぎくっ!!」

ちひろ「何をしてるんですか? そんなところで中を覗いたりして?」

トレ「なななな、なんでもないんです!! それではっ!!」


たたたたっ


ちひろ「???」

――――――――――――18:00、事務所



トレ(だんだん、時間がなくなっていくわ……)

トレ(このままじゃ、今日中に渡せなくなっちゃう……)

トレ(覚悟を決めるのよ、トレ!!)

トレ(……よしっ!)


P「ひいいいい! ご勘弁を!!」


トレ(え? Pさんの悲鳴? 何が起きてるの?)

マス「待ちたまえ、P殿。何故逃げる?」

P「その手に持ってるものは……なんなんですか?」

マス「これかね? 別に凶器の類ではない。心配するな」

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P「……じゃあ、なんですか?」

マス「私が特別配合したチョコ入りのスペシャルドリンクだ」

P「やっぱり凶器じゃないか!!」

マス「なにおう!?」

P「助けてください。嫌な予感しかしません!」

マス「四の五の言わずに飲むんだ。P殿の私への想いはその程度なのか?」

P「うううぅ……わかりましたよ。チョコの他に何が入ってるんです?」


ゴクッ


マス「紹興酒にエナドリと芋焼酎。あと香りづけにバニラエッセンス数滴を加えた」


ぶーーーーっ


マス「何故、吐き出すのか!?」

P「何が香りづけですか!? 申し訳程度にもなってませんよ!!」

マス「ええい、男のくせにグチグチと面倒だ。口を開き給え。全て流し込んでやる!!」

P「ひえええええ!!」




トレ(マス姉さん……だから注意したのに……)

トレ(この状態じゃPさんは食べてくれそうにないわ……)

トレ(何とかしないと……)

ちひろ「トレさん」

トレ「ひっ!!!」

ちひろ「さっきから何をしてるんです? 覗きなんて感心しませんよ」

トレ「ごごご、ごめんなさいっ!!!」


たたたたた


ちひろ「……」

――――――――――――23:00、事務所


トレ(うううぅ……レッスンが長引いちゃった)

トレ(Pさん、まだいらっしゃるかしら?)



ばたん


トレ「あ、あのぉ……」

ちひろ「トレさん、今日も一日お疲れ様でした」

トレ「は、はい……お疲れ様でした」

ちひろ「どうしました?」

トレ「い、いえ」

ちひろ「Pさんならいませんよ」

トレ「えっ?」

ちひろ「夕方からテレビ局で打ち合わせの後、ここに戻らず直帰です」

トレ「そ、そうですか……」


トレ(結局、渡しそびれちゃった……駄目ね。わたし)

ちひろ「チャンスはいくらでもあったのに、遠慮してるからですよ」

トレ「そうですね…………えっ?」

ちひろ「まあ、アイドルやお姉さんたちを押し退けて行くのは、気がひけるかもしれませんが」

トレ「気づいてたんですか?」

ちひろ「バレバレですよ。気づいてない鈍感はPさんくらいです」

トレ「……うぅ」

ちひろ「知ってますか、トレさん? 一番記憶に残るのは最後に起きたことだって」

トレ「?? どういう意味ですか?」

ちひろ「残り物には福があるってことです」

トレ「???」

ちひろ「ちょっと電話失礼しますね……あ、もしもし? Pさんですか?」

トレ(ちひろさん? 何を?)

ちひろ「今、どちらです? 駅前? ああ、はいはい」

ちひろ「いえいえ……ちょっとですね、伝えたいことがありまして」

ちひろ「ええ、ドリンクの販売じゃないですよ……あら? もしかして、買ってくれるとか?」

ちひろ「冗談ですよ。それよりですね、以前、購入したドリンクのおまけをお渡しするのを忘れてまして」

ちひろ「少しそこで待っててください。はいはーい、それじゃあ」ピッ

トレ「ちひろさん?」

ちひろ「Pさんはこれから電車で帰るみたいで、駅前にいるそうです」

トレ「でも……」

ちひろ「『思い』は持っているだけじゃ駄目なんです。伝えて『思い出』にしないと、きっと後悔しますよ?」

トレ「……」

ちひろ「さあ、早く行ってください。Pさん凍えちゃいます」

トレ「ちひろさん……ありがとうございます!」


ばたん


ちひろ「やれやれ……世話の焼ける」

ちひろ「まあ、私は明日でもいいかな?」

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ちひろ「頑張ってね……トレさん」

――――――――――――23:30、駅前


P「うううぅ……さぶい。ちひろさん、何やってんだろ?」

トレ「Pさん!」

P「あれ、トレさん? どうしたんです? こんなところで?」

トレ「え、えっと……その……あの……」

P「これからお帰りですか? 今日は寒いですからね。気をつけて帰ってください」

トレ「い、いえ……私は……」



トレ(どうして……何故か言えない……ただ、渡すだけなのに)



P「?? どうしました?」

トレ「その……」

P「……あっ。見てください、トレさん」

トレ「え?……あっ……雪……」

P「予報では降らないって言ってたのに……」

トレ「きれい……」

P「あ、トレさん。このマフラー使ってください」

トレ「でも、それではPさんが……」

P「僕は大丈夫ですよ。トレさんはいつも頑張ってくれてますので、その感謝の印です」

トレ「感謝……」


トレ(そうか……それでいいんだ……)

――――――――――――23:59

トレ「Pさん」

P「はい」

トレ「これを……受け取ってください」

P「え? これって……チョコレート?」

トレ「Pさんへ、私からの感謝です」

P「あ、ありがとうございます! 嬉しいな!!」

トレ「Pさん……」

P「はい?」





トレ「ハッピーバレンタイン」

トレ「これからも……よろしくお願いします」


http://i.imgur.com/Z88RbTv.jpg





おわり

※これで終わりです。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
バレンタインから2日も過ぎて申し訳ないですが、雰囲気を楽しんでいただけたらうれしいです。

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