八幡「その後」 (50)
地の文と8巻ネタバレ注意
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どんでん返しなんてない。
覆水盆に返らず。
きっと一度決まった物を覆そうなんてまちがっている。
そんな事はできないし、何よりそれは自分の選択に対する冒涜である。
そんなものが許されるのは第三者がいきなり解決策を出さない限りあり得ないし、まず第三者が来るなんてことは起こりえない。
だから、罰なのだ。後悔はあるが、意地もある。
きっと求めすぎた。いっぱい、溢れかえるくらいに欲して。
だからこぼれた。
だ。いや朝と言っていいのか怪しいほど朝早く起きてしまった。
いやな夢を見たのだろうか、寝汗がすごい。
窓の外はまだ暗く、あまり周りは見えなかった。
電灯の光で見える電線がゆれているから少し風が強いのかもしれない。
まだ意識がはっきりしていないのか、上手く動かない身体を引きずって洗面所へと向かう。
冷たい水で顔を洗い、タオルで顔を拭いてリビングに出る。
ちらと時計を見るとまだ5時だった。
こりゃ小町も起きてないわけだわ。
とりあえず牛乳を電子レンジで温めて、その間に自室にもどって着替える事にした。
総武高の制服を着て再びリビングにもどると丁度良く牛乳があたたまったようだ。
コーヒーがなくなっていたがまあ、眠気は洗顔で飛ばしたから大丈夫だろう。
牛乳を持ってテーブルに行き、椅子に座る。
それから、牛乳を二、三口すする。
少し熱い、温めすぎたようだ。
ふーふーと覚ましながら飲んでいると、リビングの扉が開いた。
「あれ?お兄ちゃんおきてたんだ?」
小町が起きて間もないからか、眠そうに目をこする。可愛い。
「ああ、まあな」
小町が少し視線を下げて言った。
「お兄ちゃん、もうすっかりいつも通りだね」
「や、いつもいつも通りだろ、いつもじゃなきゃいつも通りという言葉の道理が通らないし」
どうでもいいことが次から次へと口に出る。
自分で考えた事であるのに他人の口から滑り出たように聞こえる。
「道理とか通りとか意味わかんないよ…」
小町は呆れた顔をしていた。
そして暫くしてから、小町が視線を元に戻して、俺を見た。
「あの…さ、やっぱり雪乃さんのこと…」
ポツリと小町が言った。
「雪ノ下ならいつも通りだ、小町が心配するようなことはなんもねぇよ」
そういってクシクシと小町の頭を撫でる。
そして席をたとうとしたが小町がまた口をひらいたため、まだ席にとどまることにした。
「さっきは…さ、いつも通りっていったけど…そんな事ないよ…、だってお兄ちゃん、なんか辛そうだもん…」
「んなこたねぇよ」
そのあとなんだか、酷く寂しくなって、やることをやったら家から逃げるように外に出た。
独りは慣れていたはずなのに。
泣きたいとか悲しみともまた違う、虚無感があった。
自転車をひたすらに漕ぐ。
ひたすら漕いでいたらいつの間にか学校についていた。やべえこれ競輪選手なれるかもしれない。なれない。
自転車を駐輪場に押して歩きながら携帯で時間を確認をするとまだ7時前だった。あと連絡もなかった。
自転車を止めて鍵をかけ、校舎へと向かう。
校舎に入ると当然と言えばいいのか、静かだった。
生徒たちの喧騒に包まれていない校舎は少し寂しいもので、いつも鬱陶しいさわがしい人混みもこの学校の一部であることを認識させられる。
下駄箱に向かってあるき、靴を脱いで上靴に履き替える。
そのまま靴をしまって教室へと歩き出す。
しかし歩いてる途中で教室の鍵がしまっているであろうことに気づき、鍵を取りに方向転換する。
鍵が掛かっている場所まで来て、教室の鍵を探す。
無い。
恐らく川なんとかさんが教室を勉強にでも使っているのだろう。朝からご苦労様です。
そして戻ろうとして視線をすこし横にやると、ある鍵が目にはいった。
奉仕部の鍵だ。
俺は鍵を手に取り部室へと向かっていた。
なんだか誰も居ないと昔の風景が観れるような気がしたのだ。
ノスタルジックな気分に浸りたかった。
そうすれば、何かが変わるという訳ではない。
だけど俺は部室へと向かっていた。
寒いわけではないが、身震いしながら歩く。
そして部室の前に立ち、ドアを引くと、
そこには、部屋があるだけだった。
いや、当然と言えば当然だ。
昔いた人がいなくて昔がわかるかけない。
俺たちがいた場所が大事なのではなく、俺たちの関係が大事なのだ。
なんだか見慣れた部屋なのに、別な所にいる気分になった。
今日はここまでで。ある程度かきだめてからコピペでいっきにやってきます。
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