美希「……お姉ちゃんと」
P「」
美希「その……ハ……ハダカで」
P「ちっ、違うんだ美希! こっ、これは……!」 アセアセ
美希「どういうことなの……? ハニーとお姉ちゃんって……その……そういうことだったの?」
P「い、いやその……まずは落ち着いて話をだな……」 アタフタ
美希「いや! 聞きたくないの!」
菜緒「……あーあ、バレちゃったか」
美希「お姉……ちゃん?」
菜緒「Pさんはちょっと外に出ててくれますか? Pさんがいると、話こじれそうだし」
美希(ハニーの……下の名前なの……なんでお姉ちゃんが知ってるの?)
P「あ、ああ……分かったよ」
ガチャ バタン
菜緒「……さぁて、どこから話そうかな」
美希「どういうことなの! なんでお姉ちゃんがハニーと一緒にいるの!?」
菜緒「Pさんからはね……前々から相談されてたの」
美希「どういうこと? 話が全然見えてこないの」
菜緒「相談されてたのはね……美希、あなたのことよ」
美希「ミキの……?」
菜緒「担当アイドルに積極的に言い寄られているのをどうしたらいいのか、ってね」
美希「そんな……ハニーはミキのこと……迷惑だった、ってこと……?」
菜緒「迷惑? そんなんじゃなかったみたいね」
美希「……え?」
菜緒「むしろその逆。Pさんだって美希のことは決して悪くは思ってない……むしろ好意を持っていたみたいよ」
美希「じゃ、じゃあなんで……」
菜緒「だからこそ、よ。仮に思いが通じ合っていたとしても、美希とPさんはアイドルとプロデューサーの関係よ」
菜緒「それが発覚すれば美希のアイドル生命は終わりになる……そのことくらい分かるわよね?」
美希「分かるよ……分かる……けど!」
美希「それでもミキはハニーとならいいと思ってたの! ハニーとじゃないとミキ、キラキラできないの!」
菜緒「……美希は何も分かってないのね」
美希「何が!?」
菜緒「それがバレたらマズいことになるのは美希だけじゃないってこと」
菜緒「Pさんだってそうよ。担当アイドルに手を出したプロデューサーなんて……二度と業界で仕事できなくなるんじゃないかな?」
菜緒「Pさんだけじゃない、美希と一緒の事務所のみんなにも影響が出るかもね」
菜緒「美希の事務所って、そこまで大きな事務所じゃないんでしょ?」
菜緒「そんなところに所属アイドルの不祥事なんか舞いこんだら……事務所ごと業界から干されたって不思議じゃない」
美希「……」
菜緒「美希と一緒に頑張ってる響ちゃんと貴音ちゃん……だっけ? それに美希が尊敬してる千早ちゃん……だったかな?」
菜緒「その他のみんなも巻き込んじゃうことになるんだよ?」
美希「……でも!」
菜緒「Pさんが一番悩んでいたのはそのことよ。自分の思いに正直になれば、他のみんなの夢を奪ってしまうかもしれないってこと」
美希「そんな……そんなのってないの……!」
菜緒「あぁ、それとPさんは責めないであげてね。相談にかこつけて誘惑したのは私の方からなんだから」
菜緒「Pさんと一緒にいることがアイドルとしての原動力である美希には申し訳ないけど……」
菜緒「アイドルやってキラキラしながらPさんと愛し合えることが許されるほど世の中、甘くないのよ?」
美希「いや! そんなの、いやぁっ!!」
---
美希「……いやぁっ!!」 ガバッ
美希「……え?」
チュン チュン
美希「ゆ、夢……だったの?」
美希「よかった……よかったよぉ……」 エグッ
【事務所】
ガチャ
美希「……おはようございますなの」
小鳥「あら、美希ちゃんおはよう……あら、どうしたの? 今日はいつも以上に眠たそうね」
美希「うん……ちょっと嫌な夢……見ちゃったの」
小鳥「ちょ、ちょっと……目が真っ赤になってるじゃない……大丈夫? 辛いことがあったらあたしに話してみてちょうだい」
美希「かくかくしかじかなの」
小鳥「NTR! NTR! これは妄想が捗るわ!(そう……大変だったわね……でも、夢なんて気にしちゃダメよ)」
美希「……小鳥、本音と建前が逆になってるの」
小鳥「……ハッ! ご、ゴメンね……つい癖で」
ガチャ
やよい「うっうー! おはようございます!」
小鳥「あら、やよいちゃんじゃない。おはよう、今日も元気ね」
美希「やよい……おはようなの」
やよい「あっ、美希さんおはようございま……どうしたんですか? お目目が真っ赤ですよ……?」
美希「やっぱり分かっちゃうんだ……実はね……」 カクカクシカジカ
小鳥「やよいちゃん、NTRよ、NTR!」
美希「やよいに変な事教えないでほしいの」
やよい「うー……私、そういうのはよく分からないんですけど……」
やよい「落ち込んでいる美希さんは、なんだか美希さんらしくないかなーって」
やよい「だから、私とハイタッチして、元気出してください! はい!」
やよい&美希「たーっち!」 パチン
美希「ありがとうなの、やよいのおかげで少し元気になったの」
やよい「うっうー! こちらこそありがとうございますっ!」
小鳥「やよいちゃんは優しいわねぇ」
ガチャ
P「おはよーございまっす、と」
小鳥「あ」
やよい「あ」
美希「」
P「ん? どうしたんだ? 俺の顔に……何かついてるか?」
美希「……ニーの」
P「え? 美希、何か言ったか?」
美希「ハニーのバカァッッ!!」
P「」 ガーン
美希「うわあぁんっ!!」
ガチャッ タタタタッ
やよい「あっ、美希さん! 待ってくださいっ!」
小鳥「うーん……まだ立ち直れていなかったみたいね」
P「え……何……? どういうこと……? 俺、何かした?」
小鳥「いや、何かしたってわけじゃないんですけどね……」
やよい「うー……プロデューサー……実はっ……!?」 モゴモゴ
小鳥(だ、ダメよやよいちゃん!)
やよい(こ、小鳥さん……? なんで言っちゃいけないんですか?)
小鳥(夢の中でプロデューサーさんがお姉さんに取られちゃったから怒ってる、なんて言ってもしょうがないわよ)
小鳥(こういうのは時間が解決してくれるのを待った方がいいの)
やよい(そ、そういうもんなんですか……?)
P「実は……? あっ、分かったぞ、今日は『あの日』だったのか?」
やよい「……」
小鳥「……」
P「えっ、違った?」
小鳥「プロデューサーさん、最低ですよ?」
やよい「さすがにそれは引くかなーって」
P「」 ガーン
小鳥「そういえば、やよいちゃんはどうして事務所に?」
やよい「あっ、そうでした! 今日はこの後TV局での収録があったんでした!」
小鳥「あぁ、それでプロデューサーさんに送ってもらうことになってた、ってことね」
やよい「はい!」
小鳥「それじゃ、プロデューサーさん、やよいちゃんを……」
P「最低……俺は最低……」 ブツブツ
小鳥「……いつまで落ち込んでるんですか」
P「え、えーと……今日はTV局でバラエティの収録だな、ちょっと俺は途中で抜けなくちゃいけないんだけど」
やよい「えっ? それじゃ帰りはどうすればいいんですか?」
P「すまん、千早のレコーディングに立ち会うのと、真と雪歩のラジオの打ち合わせがあるのとでどうしても付き添えないんだ」
P「収録が終わったらそのまま直帰してもらうことになるが……大丈夫か?」
やよい「はい、私は大丈夫ですけど……プロデューサーさんは大丈夫ですか? そんなに忙しいみたいで」
P「まぁ、いつものことだしな。よし、それじゃあ行こうか」
やよい「はいっ! それじゃあ小鳥さん、行ってきまーす!」
小鳥「いってらっしゃい、気をつけてね」
ガチャ バタン
小鳥「……それにしてもNTR、か……これは妄想が広がるわねぇ……今日、仕事が手につくかしら……?」
---
やよい「うっうー! 収録が少し押しちゃいました!」
やよい「早く帰ってごはん作らないと……かすみや長介たち、お腹すかせてるよね……」
ガラガラ
やよい「ただいまー!」
長介「あ、姉ちゃんおかえり」
やよい「ゴメンね、遅くなっちゃって。かすみは宿題してるのかな?」
長介「あー……かすみは今……」
やよい「「すぐごはん作……あれ?」」
やよい(このおっきな革靴って……確か……)
長介「Pの兄ちゃんと一緒にいて……」
やよい「」
キャッキャ
アハハ…
長介「だからさ、二人の邪魔しちゃいけないから……外でごはんにしようよ」
長介「ほら、Pの兄ちゃんがこれで好きなもの食ってこいって持たせてくれたんだ」 ユキチ ヒラヒラ
やよい「え? どうして? どういうこと?」
長介「どういうこともなにもそういうことなんだよ」
やよい「ぷ、プロチューサー!? どういうことで……」
長介「だから行っちゃダメだって!」 ガシッ
やよい「離して! 長介離してよ!」 ジタバタ
長介「姉ちゃんはいつもPの兄ちゃんと一緒だろ!? かすみがずっと羨ましがってたみたいなんだ」
長介「だから、たまにはいいじゃないか、って!」
やよい「いや! プロデューサーが取られちゃうよぉ!」 ジタバタ
長介「あーもう、大人しくしろって! 浩太郎、お前も姉ちゃん抑えるの手伝って! 浩司は浩三抱っこして連れてこい!」
やよい「いや! いやぁ!!」 ジタバタ
---
やよい「……いやぁ!!」 ガバッ
やよい「……え?」
長介「グガー グゴー」
かすみ「スゥ… スゥ…」
やよい「ゆ、夢……?」
やよい「よ、よかったぁ……」 グスッ
【事務所】
やよい「……」 ズーン
小鳥「美希ちゃんの次はやよいちゃん、か……」
小鳥「それにしても、姉に妹と、NTRにも色々あるのねぇ……奥が深いわ」
千早「朝から何を言ってるんですか」
あずさ「おはようございます~、あらやよいちゃん、どうしたのかしら?」
やよい「千早さぁん……あずささぁん……」 エグッ エグッ
千早「!? た、高槻さんどうしたの? 目が真っ赤よ?」
小鳥「実は……かくかくしかじかで」
あずさ「あらあら~困ったわねぇ」
やよい「夢だって分かってはいるんですけど……それでもプロデューサーを取られちゃったのがショックで……」 グスッ
千早「昨日見かけた美希がなんだか元気が無かったのもそういうことだったのね……」 ナデナデ
あずさ「う~ん……いつも元気な美希ちゃんとやよいちゃんが落ち込んでいるのを見ると……困っちゃうわね~」
千早「いつもの元気を出して、って言うのは簡単ですが……」
あずさ「こればかりは私たちじゃどうにもならないわね~」
小鳥「そうですね……」
ガチャ
P「ただいまー、いやぁ、疲れた疲れた……ってあれ? どうしたんだやよい、千早の胸に顔うずめちゃって」
小鳥「あ」
やよい「うっ……ぷ、ぷろでゅーさぁ……」
ダダダダッ
P「えっ!? おっ、おいやよい! どこ行くんだ!?」
小鳥「いくらなんでも小学生に手を出すなんて……」
P「へ?」
千早「そういう趣味があったんですね……」
P「」 ガーン
あずさ「……」 ニコニコ
P「あずささん……その笑顔が何だか怖いです」
P「なんでだ……昨日の美希といい……俺が何か悪いことしたか……?」
小鳥「んー何と言いますか……」
千早「何が悪いと言われても……」
あずさ「間が悪い、としか言いようが……」
P「そんなこと言われてもどうしようもないじゃないですか……」
P「……」 ズーン
千早「プロデューサーまで落ち込んじゃいましたね」
あずさ「やよいちゃんと同じで、時間が解決するしかないのかしらね」
小鳥「あ、そういえば二人はどうして事務所に? 今日は二人ともオフだったはずじゃ」
あずさ「実はこの後、人と会う用がありまして~」
千早「待ち合わせ場所も近いので事務所で時間を潰そうかと。で、その道すがらあずささんを見つけたので……」
小鳥「また迷ってたんですね……」
千早「折角なのであずささんを途中まで連れて行きますね」
あずさ「あら、いいの千早ちゃん?」
千早「ええ、ちょうど道の途中にあずささんの待ち合わせ場所があるみたいですし」
千早「待ち合わせているお友達を待たせてしまってもいけないでしょうし」
あずさ「あらあら、それじゃそのご厚意に甘えちゃおうかしら」
千早「それじゃ、私たちは行きますので」
あずさ「プロデューサーさん、音無さん、お疲れさまでした~」
ガチャ バタン
P「……」
小鳥「へんじがない ただのしかばねのようだ」
小鳥「ほら、プロデューサーさん! 元気出してください! みんなが心配しますから!」
---
千早「えーと……」 キョロキョロ
千早「あ、いた……」
千種「……久しぶりね」
千早「……うん」
千種「ちゃんと食べてるの? 家出ていく時よりさらに細くなっちゃったんじゃないの?」
千早「……大丈夫よ。レッスンがハードで余分な脂肪が落ちちゃったのかもね」
千早「その……」
千種「ん? 何?」
千早「優のスケッチブック……春香に渡してって頼んだんでしょ?」
千種「……あぁ、いいのよ、気にしなくて」
千種「あの記事で怒ってるのはお母さんだって同じだったんだから」
千早「でも……ありがとう」
千種「ふふ、千早からありがとうなんて言ってもらえるのもいつぶりかしらね」
千早「それで……? こんな改まって呼び出しちゃって何の用?」
千種「あらいけない、うっかり忘れるところだったわ」
千種「実は千早に伝えなきゃいけないことがあってね」
千早「伝えなきゃいけないこと……?」
千種「そう、お母さん、再婚することになってね」
千早「……へぇ」
千早「お父さんには……?」
千種「話すわけないじゃない、もうお母さんとあの人は他人なの」
千早「……そう」
千種「一応、千早と優には報告しなきゃ、って思ってね」
千早「……どんな人?」
千種「優しい人、かしら。あの人と違って私を責めたりしないし」
千種「そうそう、写真もあるのよ」 ゴソゴソ
千種「これこれ、この人よ」
千早「」
千種「Pさん、っていってね……ちょっとお母さんには若すぎるかしら?」
千早「……え? え?」
千種「って、千早は知ってるわよね。そう、千早のプロデューサーさんよ」
千早「な、なんでプロデューサーと……!?」
千種「千早の声が出なくなっちゃった時に春香ちゃんと一緒に奔走してくれてね」
千種「千早がまた歌えるようになったのを報告しにも来てくれたのよ」
千種「そこからは……色々あってね」
千早「色々、って……そんな認められるわけがっ……!」
千種「あら、これからはPさんが新しいお父さんなのよ? 千早も知らない人じゃないしいいでしょう?」
千早「そ、そういう問題じゃないでしょう!?」
千種「あら……喜んでくれると思ったのにな……Pさんも千早が娘になるのを歓迎してるのよ?」
千早「やめて! やめてよ! そうやってプロデューサーを下の名前で呼ばないで!」
千種「もう……機嫌を直してちょうだい、もう式の日取りだって話を進めてて……」
千早「聞きたくないっ! いやっ! いやぁっ!!」
---
千早「……いやぁっ!!」 ガバッ
千早「……え?」
チュンチュン
千早「夢……か」
---
あずさ「お待たせ~」
友美「えっ!? 珍しい! あのあずさが時間に間に合うなんて!?」
あずさ「も~、失礼ねぇ」
友美「いつも道に迷って私を平均一時間待たせてたのはどこの誰かしら?」
あずさ「あらあら~」
友美「道に迷うからって、学校の授業を全部午後に固めていたとか……」
あずさ「そんなこともあったわねぇ」
友美「あずさが中学、高校と卒業できたのが今は学校の七不思議の一つになってるらしいわよ」
あずさ「も、もうその話はいいじゃない」
友美「おっと、そうだったわね。そんな話をするのに呼び出したんじゃなかった」
あずさ「ゴメンね、なかなか私も予定を合わせられなくて」
友美「いーのいーの。今を時めく竜宮小町のメンバーと知り合いだってもう鼻高々なんだから」
あずさ「もう、おだてたって何も出ないわよ?」
友美「あはは、トップアイドルになっても変わらないわねぇ、あずさは」
友美「それで、式の二次会での話なんだけど……」
あずさ「えぇ、抜け駆けされちゃったのは悔しいけど、他でもない友美の結婚式だもの。歌のサービスくらいお安い御用よ」
友美「いやぁ、持つべきものはやっぱり友達だねぇ。みんなビックリするだろうな」
あずさ「うふふ。楽しみね~……ところで、歌の事なんだけど」
友美「ん? どうかした?」
あずさ「ほら、折角だから歌詞の中に友美と旦那さまのお名前を入れてみようかなって思って」
友美「あ、それいーね! さっすがあずさ!」
あずさ「でも、そういえばまだ友美から旦那さまの名前を聞いてなかったから」
友美「あれ? そうだっけ? えーと、彼の名前はねぇ……」
あずさ「うんうん」
友美「P、っていってね」
あずさ「」
友美「知り合ったのは合コンでなんだけどさ、芸能関係のお仕事をしてるんだって!」
友美「だからさ、もしかしたらあずさの知ってる人かも、な~んて!」
あずさ「」
友美「ん? おーい? あずさぁ? どした?」
あずさ(い、いやいやきっと同じ名前の別人よね、きっとそうよ)
あずさ「も、もしよかったら……写真とかあったら見せてくれないかな?」
友美「ん? いいよ、ちょっと待って」 ポパピプペー
友美「はいこれ、ベタだけどさ、彼との2ショットを待ち受けにしててねー」
あずさ「」
友美「どう? やっぱりあずさの知ってる人だった?」
あずさ「し、知ってるも何も……」
友美「ん?」
あずさ「えっと……うちの事務所のプロデューサーさんよ」
友美「え? そうだったの? いや、詳しいことは教えてくれないからさ」
友美「あれ? あずさのプロデューサーって、女の人じゃなかっけ? あのメガネが可愛い子」
あずさ「そ、それはそうだけど……」
友美「じゃー、別に問題はないよねっ! いやぁ、それにしてもあずさと同じ事務所の人だったとは!」
あずさ「あ、あはは……」
友美「これはアレだね、もう『運命』、ってやつなのかもね!」
あずさ(う、運命……そんな……プロデューサーさん……)
友美「それじゃあ、あずさもさらに気合入れてPも祝福しないとねっ!」
あずさ「……」
友美「ん? どしたの?」
あずさ「う、うふふふ……」
友美「あ゛……ヤバい、あずさがこんな笑顔になった時はヤバいっ!?」
あずさ「あはははははははははははは」
あずさ「いやぁーっ!!??」
---
あずさ「……いやぁーっ!!??」 ガバッ
あずさ「……あら?」
チュンチュン ピヨピヨ
あずさ「……夢……よねぇ」
【事務所】
千早「……」 ズーン
あずさ「……」 ドヨーン
小鳥「感染が拡大してる……!」
小鳥「姉、妹の次は母親に親友……どこまで広がるの、このNTRワールドは!?」
律子「小鳥さん……この惨状は何があったんですか?」
伊織「ちょっと! 美希とやよいが落ち込んでいると思ったら今度は千早とあずさも!?」
小鳥「実はかくかくしかじか」
律子「えっ、そんなことで……?」
伊織「なっ、何よ! たかだか夢でこんなことになっちゃってるわけ!?」
小鳥「そんなこと? たかだか夢?」
小鳥「二人とも分かってない! 大事な人が取られちゃうのは夢でも辛いことなのよ!?」
伊織「何を力説してるのよ」
律子「そうは言ってもこれじゃ仕事にならないじゃないですか」
ガチャ
P「おはよ……」
小鳥「あ」
千早「……」 ショボーン
あずさ「……」 ドタプーン
P「……」
バタン
律子「あっ、ちょっとプロデューサー!?」
伊織「逃げたわね」
小鳥「なんだか危機を察知したみたいね」
律子「感心してる場合じゃないでしょ! プロデューサーには今日も千早のレコーディングに立ち会ってもらわないと!」 タタッ
伊織「ほら、あずさも立ちなさい! そんな顔してちゃ亜美もファンのみんなも心配しちゃうわよ!!」
小鳥「うーん、このパターンということはもしかしたら今夜は……」
---
律子「さて、今日は876プロとの打ち合わせもあるのか……」
律子「涼のやつ、元気してるのかしらね……ちょっと早めに行ってみよっかな」
律子「会議室会議室……っと、ここね」 ガチャ
P「」
涼「」
律子「」
律子「あっ、あっ、あなたたち!? こんなとこで何してるの!?」
律子「その……下がパンツ一丁で……!?」
P「ちっ、違うんだ律子! まだ何も……」
律子「言い訳の前にズボン履きなさいっ!!」 バキッ
P「ウボァー」
涼「あ、アゴに綺麗に入っちゃった……」
P「」
律子「気を失ってるプロデューサーは置いといて……」
律子「涼? これはどういうことかしら?」
涼「どういうこと、って……見たままの通りだよ?」
律子「見たまま、って……やっぱりそういうことなのね?」 ガタガタ
涼「落ち着いてよ律子姉ちゃん」
律子「これが落ち着いていられる!?」
律子「そ、そりゃあ、音無さんから常日頃愛の形は人それぞれ、って聞いてはいたわよ!?」
律子「それこそ……その……男同士で愛し合う人たちがいるってのも……」
律子「でも、涼! あんたそれでいいの!? 王子様に憧れていたんでしょ?」
涼「うん、そうだよ?」
律子「じゃあなんで……」
涼「でも、Pさんの前だと僕は王子様になれるんだよ?」
律子「へ?」
P「う、うーん……」
涼「あ、気がついたみたい。大丈夫、Pさん?」
P「ん、あぁ、なんとか……大丈夫……です」
律子「大丈夫……『です』?」
涼「よしよし、怖かったね~、もう大丈夫だから」 ナデナデ
P「あぁ、ありがとう……ございます」 ナスガママ
律子「ど、どういうことなの……?」
涼「ご覧の通りだよ、僕とPさんで主導権を握ってるのは僕の方、ってこと」
律子「」
涼「仕事で会う時はいつも凛々しくて、キリッとしているけれども……」
涼「僕と二人きりになるとお姫様みたいに大人しくなっちゃんだよね」
P「ちょっ、は、恥ずかしいだr……じゃないですか///」
涼「これで分かったでしょ? 今の僕はPさんの王子様ってこと」
律子「」 ポカーン
涼「うちと765との業務提携の会議までまだ時間があるから、と思ったのにさ、とんだ邪魔が入っちゃったね」
律子「う、うるさいわよ!! わ、私はそんなの認めないからねっ!?」
涼「認めるも認めないもないでしょ? 律子姉ちゃんはPさんの何なの? 同僚以上の何かなの?」
律子「そ、それは……その……あ、あんたには関係ないでしょ!?」
涼「関係なくないよ……ねぇ、Pさん、律子姉ちゃんのことどう思ってるの?」
P「ど、どうって……仕事が出来て可愛いけど……」
P「いつも俺の事怒るから……ちょっと怖いです」
涼「だってさ」
律子「も、もうイヤ!! 何これ!? 夢なら早く覚めてよっ!?」
---
律子「……」
チュンチュン ピヨピヨ
律子「……夢で……よかった」 グスッ
---
伊織「あー、今日も一日疲れたわねー」
伊織「ただいまー……ってあれ? みんなもう寝ちゃったのかしら」
伊織「お風呂上がりのオレンジジュースを準備してもらおうと思ったのに……」
伊織「ちょっとー? 誰かー? 誰かいないのー?」
伊織「新堂ー? 新堂ー? ……部屋はここね」
伊織「新堂ー? 入るわよー?」 コンコン
ガチャ
P「」
新堂「」
伊織「」
P「い、伊織……!? 何でここに……?」
伊織「なんで、じゃないわよっ!! ここは私の家よ!?」
新堂「お、落ち着いてください伊織お嬢様」
伊織「新堂は黙ってて!」
P「お、おい、新堂さんにそんな口の聞き方は……」
伊織「うるっさい!! いいから出ていきなさいよこの変態!!」
P「ありがとうございます!」
伊織「……」
新堂「……」
伊織「……何か言いなさいよ」
新堂「……いえ、どこから説明すればいいものか……」
伊織「どこからも何もないわよっ! 全部よ、全部っ!」
伊織「いつからアイツと……その……こんなことしてたってわけ!?」
新堂「およそ……三ヶ月前から、でしょうか……」
伊織「……呆れた」
新堂「どうかお気を確かにされてください」
伊織「それはこっちのセリフよ!!」
伊織「信頼していた執事と事務所の人間がこんなことになってて落ち着けっていう方が無理よ!」
新堂「そうは言われましても……」
伊織「はぁ……もう信っじられない!」
新堂「ですが事実でございます」
伊織「うるさいわよ!!」
伊織「……とにかく、今後アイツはウチへの立ち入りを全面禁止!」
伊織「新堂! アンタもしばらく謹慎させるように伝えておくから!」
新堂「そ、それは困ります! 伊織お嬢様! どうかそれだけは!」
伊織「クビにならないだけありがたいと思いなさいよっ!」
新堂「し、しかし……」
伊織「だ、だいたい……あ、アイツのどこがいいってのよ!」
新堂「伊織お嬢様……それは聞き捨てなりませぬ」
伊織「な、何よ……そんな真剣な顔になっちゃって……」
新堂「このまま老いて枯れ果てるだけの身だったこの私に……」
新堂「水瀬家に仕え、誠心誠意働くことが唯一の生きがいだった私に……」
新堂「新たな生きがいと……悦びを教えてくださったのがあのP殿なのですよ!」
伊織「何言ってるの!? それから『よろこび』をその字で書かないでよっ!?」
新堂「……分かりました。かくなる上は……」
伊織「な、何よ……」
新堂「……」 ガサゴソ
伊織「ちょ、ちょっと……急に荷物なんかまとめ出して何する気よ!」
新堂「伊織お嬢様……これまで長らくお世話になりました」
伊織「し、新堂……アンタまさか……」
新堂「水瀬家にいる以上、P殿との逢瀬を禁じられるのならば……今日この日をもって新堂は水瀬家を去ります」
伊織「はぁ!? 新堂! 気は確かなの!?」
新堂「水瀬家の為に生き続けた幾年月……これよりは愛の為に生きようと思っております、それではどうかご自愛なさってください」 スタスタ
ガチャ バタン
伊織「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!?」
---
伊織「……待ちなさいよっ!?」 ガバッ
伊織「あ……」
チュンチュン ピヨピヨ
伊織「夢……かぁ」 グスッ
コンコン
新堂「失礼いたします、伊織お嬢様……ずいぶんうなされておられたようですが」
伊織「は、入って来るんじゃないわよ! この変態!!」
新堂「」 ガーン
【事務所】
律子「……前言撤回します」 ズーン
伊織「……夢じゃなかったら、と思うともう」 ドヨーン
小鳥「……」 ハナヂドバー
律子「……まぁ、小鳥さんに話したら」
伊織「こうなるのは目に見えてたわよね……」
小鳥(プロデューサーの受け……そして枯れ専……あぁ、ユートピアピヨォ……)
伊織「とりあえずその鼻血、さっさと拭きなさいよ……」
律子「大事な書類を台無しにしたら怒りますからね?」
小鳥「わ、分かってますよぉ……」 ポタポタ
ガチャ
響「ただいまだぞー!」
P「ただいま戻りましたー」
小鳥「あ」
律子「……」
伊織「……」
P「あ゛……この空気は」
伊織「この変態! ド変態!! 変態大人っ!!!」
律子「見損ないましたっ!!」
P「デスヨネー」
響「あっ、律子? 伊織!? ど、どこ行くさー? ……あぁ、行っちゃった」
小鳥「なんで昨日みたいに逃げなかったんですか?」
P「仕方ないじゃないですか……響を収録から迎えに行ったら……」
響「サーターアンダギーいっぱい作ったんだぞ! 事務所のみんなで食べよう!」
P「こう言われちゃ帰ってこないわけにはいかないでしょう?」
小鳥「仕方ないですね」
響「うーん……二人もそうだけど、最近みんな元気ないよね」
響「美希もやよいも、千早に……あずささんまで」
響「プロデューサー……何か知らないかー?」
P「それは俺も聞きたいよ……」
小鳥「それだけ愛されてるのも罪ってことじゃないですかねぇ」 ボソッ
P「何か言いました?」
小鳥「いえ、何も」
小鳥「ところで今日は何の収録だったんですか?」
P「あぁ、動物番組のゲストですよ。何でも愛犬家の芸能人を集めたとかで」
響「いぬ美も一緒だったぞ! 今はプロデューサーの車で待ってもらってるけど」
小鳥「あぁ……ということは今夜は……」
---
響「ただいまー!」
いぬ美「バウワウッ!」
P「よいしょ、っと……荷物、ここでいいか?」
響「うん、ゴメンねー、いぬ美のリード持つので精いっぱいで、今日は荷物全部持ってもらっちゃってさ」
P「はは、まぁしょうがないさ。いぬ美のおかげで現場でのウケもよかったしな」
いぬ美「ワフッ!!」 ベロベロ
P「わわっ、ちょ、ちょっといぬ美!?」
響「ははっ、よかったなプロデューサー! いぬ美も懐いたみたいだぞ!」
P「そ、そうなのか……? 俺、実は犬はそんなに……」
響「いぬ美がそんなに舐めるなんて珍しいさー」
いぬ美「バウッ!!」
ドサッ
P「うわっ、お、重た……」
響「いぬ美は大きく育ったからな! 大人のセントバーナードだと、50キロは軽く超えるんだぞ!」
P「そ、そんなこと言ってないで……た、助け……」
いぬ美「ワンワンォッ!」 ベロベロ
響「いやー、こんなにいぬ美が喜ぶのも久しぶりに見……」
P「ちょ、やめっ……! いぬ美! ベロ! ベロが口に……っ!!」
響「」
響「い、いぬ美……? そ、そろそろいいんじゃないか? ぷ、プロデューサーが困って……」
いぬ美「ガウッ!!」
響「ひっ!?」 ビクッ
いぬ美「グルルル……」
響「い、いぬ美……ど、どうしちゃったんだ?」
P「お、重い……し、死ぬ……」
いぬ美「ワォンッ!」 ベロベロベロベロ
P「むぐっ……!? ちょっ……息が……っ!」
響「だ、大丈夫かプロデューサー!?」
P「あ……やめ……ち、乳首はらめぇっ!?」 ニヘラ
響「ちょっ! な、なんて顔してるんさあっ!?」
いぬ美「バォッ!!」 カクカク
P「あふっ!? た、頼む!! や、やめ……」
響「こ、こらっ!! いぬ美!! もうやめろぉっ!!」
いぬ美「ワフゥ~ン」 カクカクカクカク
P「おほっ!? こ、これはこれで……」
響「」
響「こ、このままじゃプロデューサーが変態になっちゃうぞー!?」
響「そ、それに……プロデューサーといぬ美の間に……あ、あ……赤ちゃんが……」
響「……」 プシュー
響「だっ、ダメだぞそんなの! プロデューサーは自分と……ってそんなこと考えてる場合じゃないさ!」
響「おいっ! いぬ美っ!! もういい加減離れ……」 ガシッ
いぬ美「ワンッ!!」 ガブリ
響「痛ーーーーーっ!?」
---
響「……」 ジンジン
チュンチュン ピヨピヨ
いぬ美「グオー バフー…」
響「ね、寝ぼけて噛まれただけ……か」 ジンジン
響「痛い……手だけじゃなくて、心まで痛いさー……」 グスッ
【事務所】
響「うがー……」 ズーン
小鳥「響ちゃんは犠牲になったのだ……NTRの犠牲にな……」
春香「そんな事言ってる場合じゃないですよ」
真「みんながどんどん元気がなくなっていくかと思えばそういうことですか」
真美「なんだか事務所が寂し→よ→」
貴音「夢にて思い悩むとは……面妖な」
亜美「このままじゃ竜宮の活動にも差支えちゃうよ→」
雪歩「あうぅ……どうすればいいんでしょうか……」
小鳥「あっ……み、みんな聞いちゃったの!?」
真「そりゃ聞きますよ」
真美「ミキミキややよいっち、ひびきんまで元気ないなんておかし→もん」
雪歩「わ、私にも何か出来ることはないかと思って……」
貴音「同じ事務所の仲間が苦しんでいるのを黙って見ているわけには参りません」
亜美「いおりんにあずさ姉ちゃん、律っちゃんが元気ないんだよ? 亜美が頑張るにしても限界があるよ→」
春香「ということです」
小鳥「だ、大丈夫かしら今夜……」
【翌朝】
春香「……」 ドヨーン
貴音「……」 ズシーン
真「……」 ズーン
亜美「……」 ショボーン
真美「……」 ガーン
小鳥「……やっぱり」
小鳥「……そして雪歩ちゃんは……」
雪歩「……」 ザックザック
小鳥「無言で穴を掘り続けてるわ……」
小鳥「さっき止めに行ったらハイライトが消えて潤んだ目でジッと見つめられた」
小鳥「……止めるのは諦めたわ」
小鳥「とっ、とりあえず一人ずつ聞いていかないと!」
小鳥「事務員だってアイドルの心のケアぐらい出来るようにしないと!」
小鳥「まずは聞きやすいところから……」
小鳥「ま、真ちゃん? ど、どうしたのかな~?」
小鳥(もしかしたらレーサーやってるっていうお父さんのことかな……? それはそれでそそるピヨ)
真「……」 グスッ
小鳥「だ、黙ってちゃ分からないわよ……お姉さんに説明してごらんなさい?」
真「……ほに」
小鳥「ほに?」
真「雪歩に……っ! 雪歩にプロデューサーを取られたんですっ!!」
小鳥(あずささんパターンだったーっ!!)
雪歩@穴の中「ち、違いますぅっ!!」
小鳥「あぁっ! 雪歩ちゃん! 穴の中からだから声がか細くしか聞こえないっ!」
雪歩@穴の中「プロデューサーは……プロデューサーは……」
小鳥「ど、どうしたの……?」
雪歩@穴の中「プロデューサーは真ちゃんに取られちゃったんですぅっ!!」
小鳥(修羅場になっちゃったーっ!?)
---
真「いやー、参った参った。電車が事故で遅れるなんてね」
真「ラジオが生じゃなくてよかったよ……でも、雪歩とプロデューサー待たせちゃったなぁ」
真「楽屋は……ここだな」
ガチャ
真「すいませんっ、遅くなりま……」
P「」 チュー
雪歩「///」 チュー
真「」
---
---
雪歩「久しぶりのオフですぅ」
雪歩「みんなで飲む新茶を買って……それからお洋服でも買おうかな」
雪歩「そうだ、折角だから真ちゃんに似合うお洋服も見に行ってみようっと」 テクテク
雪歩「ふぅ、着きまし……あ、あれは……」
真(アハハ ソンナコトナイデスヨー)
雪歩「真ちゃんもオフだもんね、偶然ってすごいなー……誰かといるみたいだけど……」
P「真にはこっちの方が似合うと思うけどなー」
真「えー、もっとフリフリしたのにしてくださいよー」
雪歩「」
---
雪歩「真ちゃんが……!!」
真「雪歩の方こそ……!!」
小鳥「あ、あわわ……麗しい二人の友情にヒビが……」
真&雪歩「ケンケンガクガク」
小鳥「くっ……私にこの二人を止めるには力不足ね……」
小鳥「先に双海姉妹から話をつけましょ」
亜美「真美に兄ちゃん取られちゃったよ→」
真美「兄ちゃん、亜美に取られちゃったよぉ……」
小鳥(こっちも修羅場だったーっ!?)
小鳥(えっと……これは亜美ちゃんが美希ちゃんパターンで……)
小鳥(真美ちゃんはやよいちゃんパターン、ってことでいいのかしら……?)
亜美「なんだよ→、兄ちゃん取ったのは真美の方じゃんか→!!」
真美「違うよ!! 亜美が兄ちゃん取ったんじゃんか→!!」
亜美&真美「ギャー ギャー」
小鳥「えと……断片的に聞こえてくる二人のセリフから想像すると……」
---
亜美「うあうあ→! なんで兄ちゃんは真美の方ばっか構うのさ→!!」
P「しょうがないだろ、亜美のプロデューサーは律子で、真美のプロデューサーは俺なんだからな」
亜美「で、でもアイドルとプロデューサーがその……そんな恋愛なんかしちゃいけないって……」
P「そんなの俺と真美の愛の前には関係ない、な?」
真美「ねー」
亜美「うぅ……亜美の前で堂々と兄ちゃんと真美がイチャついてるよ→……」
P&真美「キャッキャ ウフフ」
亜美「こんなことだったら竜宮に入るんじゃなかったかなぁ……」 グスッ
---
---
真美「ね→兄ちゃん……どうして亜美ばっかり構ってるの?」
P「しょうがないだろ、亜美は律子がプロデュースしてるからなかなか俺と会う時間が無いんだし」 チュッチュ
真美「け、けどさ→……アイドルとプロデューサーがそんな……関係になっちゃったらまずいんじゃないの……?」
P「真美ならな。でも、俺と亜美は担当が違うからそんなことない、な?」
亜美「ねー」
P「俺、亜美となかなか会えなくて寂しいよ」 キャッキャ
亜美「亜美も寂し→よ→」 ウフフ
真美「うあぁ……こんなことだったら亜美より先に竜宮に立候補しとくんだった……」 ウルッ
---
真美「亜美のくせに→!!」
亜美「真美のくせに→!!」
真美「だいたい亜美は妹なのに昔っから……」
亜美「双子なのに姉も妹もほとんど関係ないっしょ→!?」
小鳥「あぁ……こっちでも抗争が勃発しちゃったわ……」
小鳥「みんな夢の中での出来事だなんて忘れてるみたいに」
小鳥「残りは春香ちゃんと貴音ちゃんね……」
小鳥「春香ちゃんは……」
春香「……」 ブツブツ
小鳥「うつむいて何かを呟いてるわ……正直今はまだ触りたくない……!」
小鳥「では貴音ちゃんは……」
貴音「小鳥嬢ぉ……」 ウルウル
小鳥「よし、こっちからにしよ」
貴音「小鳥嬢ぉ……聞いてくださいましぃ……」 グスッ
小鳥「え、ええ! 聞く聞く! 聞くわよ貴音ちゃん!」
貴音「じ、実は……実はプロデューサー……」
小鳥「うんうん、プロデューサーがどうしたのかしら?」
貴音「ぷろでゅーさーに……らぁめんを取られましたぁ……」
小鳥「あらあら、それはかわいそ……」
小鳥「えっ?」
貴音「私は……私はこんな身を切るような思いに最早耐えられ……」
小鳥「ちょちょちょ、ちょっと待って貴音ちゃん!」
小鳥「えーと、もう一度確認したいんだけど……」
小鳥「プロデューサーが取られた、っていうことじゃないのね……?」
貴音「ええ! 左様でございます! プロデューサーが……プロデューサーが取ったのです!」
貴音「私の!」 ドン!
貴音「らぁめんをっ!!」 ドドンッ!
小鳥「よし、次行くわよ」
貴音「お待ちください小鳥嬢!!」 ガシッ
貴音「これには! これには語るも涙、聞くも涙の事情があるのです!」
小鳥「それってどれくらい長くなるのかしら……」
貴音「およそ800れすほどには」
小鳥「長いわよ……それ聞いてたら春香ちゃんも帰っちゃうだろうし、スレも終わっちゃうわよ」
貴音「小鳥嬢はいけずです……」
小鳥「……でも、聞かないわけにはいかないわね……よし、出来るだけ短くまとめてちょうだい」
---
貴音「今日の昼餉は新作のかっぷらぁめんです」
貴音「最近はかっぷらぁめんと言えど侮れぬ一杯も多いですからね……心して味わうことにいたしましょう」
貴音「……お湯を入れて五分……待ち遠しいですね」
Trrrr...
貴音「おや、電話ですか……小鳥嬢も……いないようですし私が代わりに言伝を承るとしましょう」
ハイ ナムコプロデゴザイマス ハイ ハイ…
ガチャ バタン オッ コノニオイハ…
貴音「ふぅ、なんとか終わりました」
貴音「なんでもない言伝なのかもしれませんが、どうにも片仮名言葉が多いと戸惑いますね……」
貴音「少しらぁめんも伸びてしまったかもしれません、急がねば」
P「おっ、貴音いたのか」 ズルズル
貴音「」
貴音「あ、あなた様……何をなさっているのですか……!?」 フルフル
P「だいぶ伸びてデロデロになっちゃってたからな……仕方ないから俺が、と」
貴音「お黙りなさい! あなた様は……私の逆鱗に触れられました!!」
P「……まぁ、怒る気持ちも分からなくもないが……いつも言ってるよな?」
P「健康の為にもラーメンはもう少し控えろ、って」
貴音「うっ……し、しかしこれは新作で……」
P「そう言って昨日も一昨日も食べてたよな? ダメだぞ、もっと野菜摂らないと」
P「ほら、そんな事だろうと思って、弁当屋で酢豚弁当買ってきたから……これで少しは野菜を……」
貴音「そんなもの要りませんっ!?」
---
貴音「それからもプロデューサーは私の行くところ行くところに現れるのです……」
貴音「二十郎をはじめとした馴染みの店にも話をつけたらしく私が行くと……」
貴音「クドクドペラペラ」
小鳥「……やっぱり長くなったわね」
小鳥「貴音ちゃんは一通り話しちゃえば元通りになりそうね……よし、次」
小鳥「最後は春香ちゃんか……」
春香「……」 ズズーン
小鳥「は、春香ちゃーん? ど、どうしたのかなー?」
春香「……」 プイッ
小鳥「え? 今露骨に目を逸らさなかった?」
小鳥「そ、そりゃ春香ちゃんがプロデューサーさんにメロメロなのは知ってるわよ……?」
小鳥「だから、それだけ落ち込みも大きいんじゃないかな、って思ったんだけど……」
小鳥「ね、ね~え、春香ちゃん……黙ってちゃ分からないわよ……?」
春香「……!」 キッ
小鳥「!?」
小鳥(睨まれた!? 今、すっごく睨まれたわよね!?)
貴音「ここは私にお任せを」
小鳥「あっ、た、貴音ちゃん!」
貴音「聴衆の無い独白ほど空しいものもありません故」 シュン
小鳥「あ、アハハ……ご、ゴメンね……? ちょっと春香ちゃんが気になって」
貴音「見るに、春香は小鳥嬢には話したくない事情がある様子……であれば私が参りましょう」
小鳥「ど、どうだったのかしら?」
貴音「ええ、しかと聞いて参りました。春香は……」
貴音「プロデューサーを小鳥嬢に取られたと申しております」
小鳥「」
---
春香「今日のクッキーは自信作ですよ! 自信作!」
春香「これを食べたらプロデューサーさんも『おっ、春香……また腕を上げたな』って褒めてくれるよね」
春香「そして頭を撫でられて……ニヘヘ」 クネクネ
春香「よし、シミュレーションは完璧、あとは実践するだけ!」
春香「おはようございます! プロデューサーさ……」 ガチャ
小鳥「だ、ダメですよプロデューサーさん! あ、アイドルのみんながもうすぐ……!」
P「いいえ! もう……もう我慢できないんです!!」
春香「」
---
貴音「本来ならば小鳥嬢と顔を合わせるのも気まずいと申しておりました」
貴音「ですが、今日は事務所集合となっていたのでやむなく……と」
小鳥「私とばっちりじゃない……プロデューサーさんの気持ちが少し分かった気がするわ」
ガチャ
P「おーし、みんな揃って……」
真&雪歩「キーキーギャーギャー」
亜美&真美「ワーワーギャンギャン」
貴音「……」 キッ
春香「……」 ドヨーン
P「よし、見なかったことにしよう」
小鳥「あ、ちょ、ちょっと待ってください!!」
春香「へぇ……やっぱりプロデューサーさんと小鳥さんってそういう……」 ブツブツ
P「えぇ!? な、何の話だよ!?」
小鳥「あぁもう! プロデューサーさんが今いると余計に話がこじれるんです! ちょっとこっち来てください!」
---
【社長室】
小鳥「……ということなんです」
P「……みんなが俺によそよそしかったのはそのせいですか」
小鳥「まぁ……今のところ同じ夢をまた見たって子はいないみたいなんですが」
P「そうそう何度も見たらメンタルがボロボロになっちゃいますよ……ところで」
P「みんなは悪夢を見たのに、音無さんはそういうのは見てないんですか?」
小鳥「見てますよ……このところ毎晩」
P「えっ」
小鳥「最初は記者の善澤さん!」
小鳥「その次がビジュアルマスターの山崎さん!」
小鳥「たるき亭のご主人に、『オールドホイッスル』の武田さん!」
小鳥「そして石油王と来て……昨日なんかうちの社長ですよ!?」
P「なんで男ばっかりなんですか!? 俺にそんな趣味は無いですよ!?」
小鳥「プロデューサーさんを取られちゃって悔しかった……悔しかったんです……」
小鳥「……でも、これで妄想が捗る!……って喜んでいる自分もいて……」
P「ダメだこの事務員……早く何とかしないと」
P「まったく……やっぱり、この間あんなことしといて正解だったですかね……」
小鳥「あんなこと……?」
P「あれ、気付かれてなかったんですか?」
小鳥「何の事でしょう……?」
P「あれは一週間前でしたかね……俺、一人で残業してたじゃないですか」
小鳥「ずいぶん遅くまで残業してたみたいですね」
P「で、その時なんですが……」
---
P「いやー、事務所のみんなが売れるようになったのはいいが……こうも書類が溜まるとなぁ」
P「俺と律子と小鳥さんの三人じゃとても定時で片付かないよ……はぁ、社長が新しい人を雇ってくれないかなぁ」
P「まぁ、これも嬉しい悲鳴なんだけどな……よし! いっちょやるとしますか!」
P「とは言うものの……」
ゴチャゴチャ
グチャグチャ
P「みんな仕事が忙しくて掃除にまで手が回ってないみたいだ」
P「やよいが一週間事務所に来ないとこうなっちゃうんだよなぁ……仕方ない」
P「まずはザッと片づけるとするか! そうすればスッキリと仕事が始められるぞ!」
P「えーと、この書類はこっち……あのファイルはそっちのロッカーに……ん?」
P「あーあー……音無さんの机、カギかけ忘れてるじゃないか」
P「大事な書類が盗まれたらどうするんだろうね……悪いとは思うけど中を確かめとかないと」
ガラッ
P「……なんだこれは」
P「薄い本が積み重なって分厚くなっている……だと……」
P「まったく……ちょくちょく昼休みに外に行っていると思えばこういうのを買い込んでたんですね……」
P「……」 キョロキョロ
P「い、一応中も検めてみよう! あ、アイドルのみんなに悪影響を及ぼすものだったらしっかり処分しないと……!」
P「えーと……」 ペラペラ
P「!」
P「なんだこれは……たまげたなぁ」
P「男が恋人を別の友人に取られる様を描いてるじゃないか……悪趣味だなぁ」
P「うわ、これも……こっちもだ」
P「何かの間違いでこれがみんなの目に触れちゃったらきっと性癖歪んじゃうぞ……?」
P「よし、これは責任を持って俺が処分しておくとするか!」
---
小鳥「祟りじゃあ!!」
P「ひっ!?」 ビクッ
小鳥「これはNTR本の祟りじゃあ!! あぁ、恐ろしや恐ろしや……」
P「いや、何なんですかそのキャラは……」
P「だいたい、今のこの世に祟りだなんてあるわけないじゃないですか、バカバカしい」
P「それで音無さんに恨まれる、っていうなら分かりますけど」
小鳥(実は同じのが家にもう2冊ずつあるのよね……)
P「みんなが似たような夢を見たのだって何かの偶然ですよ、きっと」
小鳥「そうであったらいいですけど……」
P「それに、祟られるんなら俺に直接来るんじゃないですか? なんでアイドルたちがあんな目に……」
小鳥「でも、それでみんなによそよそしくされて困っているのはプロデューサーさんじゃないですか」
P「そ、それは……そうですけど」
P「と、とにかく! 祟りなんてあるわけないんです!」
P「まぁ、これで社長までそんな夢見たって言うなら少しは考えなくもないですが……」
小鳥「あっ……そんなまたフラグにしか思えないセリフを……」
ガチャッ
社長「キッ、キミィ!! ぶっ、無事だったかい!?」
P「」
小鳥「ほーら」
社長「いやぁ……よかったよ……キミはどこにも行かないでくれるな!?」
P「えっ? えっ? なっ、何の話ですか!?」
社長「実はねぇ……キミが黒井に取られる夢を見てしまってだね……」
P「」
小鳥「しゃっ、社長!? そ、その話をもう少し詳しく!!」 フンスフンス
社長「ヘッドハンティングだよ、ヘッドハンティング」
小鳥「へ?」
社長「多くのアイドルをトップアイドルへと導こうとする有能なプロデューサーを黒井が引き抜こうとする夢だよ」
小鳥「あー……そういうことですか」 チッ
社長「今、舌打ちしなかったかね?」
小鳥「いえ? 気のせいじゃないですか?」
社長「まぁとにかく! これは何かの凶兆かもしれないからな!」
社長「早速神主さんでも呼んでお祓いでもしてもらうことにしよう!」
P「あの、音無さん……社長って……」
小鳥「すっっっっごく、ゲンを担いだり、ジンクスを気にするタイプです」
P「あぁ……なるほど」
小鳥「毎日絞めてくるネクタイは、今日の占いのラッキーカラーに基づいているとか」
P「乙女ですか」
【翌日】
小鳥「早速お祓いもしてもらったし、もうみんながあんな夢を見ることは無いかしら」
小鳥「私も今朝はそんな夢見なかったしね……ちょっと残念だけど」
小鳥「でもプロデューサーさん……お祓い出ずに帰っちゃったのよね」
---
P「お祓いなんてバカバカしい……俺は仕事が溜まってるんでパスしますね」
---
小鳥「何もないといいんですけど……」
ガチャッ
P「お、音無さぁん……」 ヒック グスッ
小鳥「……やっぱり」
小鳥「だから言ったじゃないですか……プロデューサーさんだけ祓えてないんですよ?」
P「で、でも……」 ウエッ ヒック
P「うちのみんながジュピターに取られる夢なんて見るとは思わなかったんですよぉ……!」
おわれ
見切り発車のほぼ即興で約6時間
GW前最後の休みに何してんだろね
お目汚し失礼いたしました
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