聖來「チョコレートを作りたい?」 (31)
○2/5 CGプロ休憩室 10:00
聖來「あー、バニーイベントで忙しくて忘れてたけど、そういえばそろそろバレンタインの季節だね」
沙紀「はいッス! まぁアタシも聖ちゃんも、本命チョコを送るような相手はいないんですけど」
聖「……いつも……Pさんにお世話になってるから……感謝の気持ちを伝えたいな……って……」
聖來「なるほどねー。で、ウチのキッチンを使いたい、と」
沙紀「そういうことっす」
聖「……女子寮のキッチン……混み合ってて……使えなくて」
沙紀「アタシ達、チョコ作りなんて初めてだから時間もかかりますしね。どこかがっつり使える場所を探してて」
聖來「それで、アパートに暮らしてる私の部屋に目をつけたわけだ」
沙紀「そういうことっす。聖來さんなら、チョコ作りの経験もありそうだから、色々教えて貰えるかなと」
聖來「うーん、私も大学の時に何度か作った程度なんだけどなぁ……」
聖「駄目……ですか……?」
聖來「ううん、いいよー。あんまり教えてあげられないと思うから、一緒にチャレンジしてみようよ!」
沙紀「やったっすね聖ちゃん! 聖來さんがついてくれたら百人力っすよ!」
聖「うん……聖來さん……ありがとう……」
※初投下
※独自設定ありマス
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○同日 モバP宅前 22:30
モバP「はぁ、ひっさしぶりの帰宅だ……」
P(バニーイベントの下準備もあらかた片付いたし、あとはアイドル達の頑張りに期待して、細かなトラブル対応に徹するか)ガチャ
P「あれ?」
P(鍵開いてる?)キィー
P(明かりも付いてるし……ってことは)
P「ただいまー?」
聖來「あ、おかえりPさん!」
わんこ「」ワンワン
P「おー、久しぶりだなーわんこ」ワシャワシャ
わんこ「」
聖來「ちょっとPさん、アタシは?」
P「聖來は3時間前ぐらいに会っただろ?」
聖來「そうだけどさー」プクー
聖來「Pさん、ご飯食べた?」
P「いやまだだけど。何か作ってくれたのか?」
聖來「うん、温めてくるね」
P「助かるよ……けど、自分の部屋に戻ってなかったんだな」
聖來「うん、久しぶりに帰ってくるって言うから、お迎えしてあげようと思って」
P「気持ちは嬉しいけどな。お互い立場があるんだから、スキャンダルのネタになるようなことはないように警戒しとかないと」
聖來「同じアパートに住んでるのに、今更じゃないかな?」クスクス
P「それでも、だ」
○同日 モバP宅 23:10
P「ごちそうさま。おいしかったよ」
聖來「おそまつさま。あ、洗い物は流しに置いといてくれたらやっとくよ!」
P「それは自分でやるよ。聖來はもういい加減帰りなさい」
聖來「えー?」
P「えー、じゃない」
聖來「非道いよPさん、やることやったら帰れだなんてっ」
P「誤解を招く言い方はやめなさいっての」
聖來「ちぇっ、けちー」
P「けちじゃない。ほら、送っていくから」
聖來「それは大丈夫だよ。どうせこの階上だし」
P「いいや、何かあってからじゃ遅いからな。ちゃんと送っていくよ」
聖來「……送り狼?」
P「……にはならないから安心しな」
○同日 アパート廊下 23:20
聖來「そういえばPさん、来週のオフに沙紀ちゃんと聖ちゃんが遊びに来ることになったんだけど、良いかな?」
P「ん? ああ、沙紀と聖なら良いんじゃないか。男友達を連れ込むようなら全力で反対するけど、2人ともアイドルだしな」
聖來「良かった。反対されたらどうしようかと」
P「俺だってアイドル同士の交流に水を差すほど野暮じゃないさ。3人で何するんだ?」
聖來「ふふっ、秘密!」
P「……ま、何するのか知らないけど、あまりハメを外しすぎるなよ」
聖來「はーい。じゃ、Pさん、おやすみなさい」ガチャ
P「おう、わんこもおやすみ」
わんこ「」ワウ
聖來「あ、そうだPさん」
P「ん?」
聖來「男友達を連れ込むのは反対するって言ってたけど、それはプロデューサーとして? それとも……」
P「ノーコメント」
聖來「……けち」
P「はいはい、また明日な」
聖來「うん、おやすみなさい」バタン
○2/11 都内某所 09:00
聖「沙紀さん……荷物重そう……少し……持たせて……」
沙紀「だーいじょうぶっすよ聖ちゃん。えーっと、たしか聖來さんのアパートは……あ、見えてきたっすよ! えーっと、聖來さんの部屋って何階でしたっけ?」
聖「確か……4階の……角部屋って……」
P「401号室な」
沙紀「そうそう、たしかそんな……って」
聖「!?」
沙紀「Pさん!? なんでここに……って考えたら当たり前っすよね」
P「ここ俺のアパートでもあるしな。104号室」
聖「おはよう……ございます……」ペコリ
P「うんおはよう聖、沙紀」
沙紀「おはようっすよ。Pさんはこれから出勤すか?」
P「そうそう。バニーイベントの総括しなきゃならなくてな。現場に直接向かうよ」
P「聖來の家に遊びに来たんだろ? 何するのか知らないけど、スキャンダルになるようなのは勘弁してくれよ」
沙紀「大丈夫っすよ、そんな派手な遊びするわけないじゃないすか」
P「ま、みんなしっかりしてるからそのあたりあんまり心配はしてないけど、念のためな。風邪ひかないように出掛けるときはちゃんと温かくして出掛けるようにな。あと、女子寮の門限は守れよー」イッテキマース
沙紀「いってらっしゃーい」ヒラヒラ
聖「いってらっしゃい……」ヒラヒラ
聖「Pさん……心配し過ぎ……」クスクス
沙紀「なんだかんだで過保護すからねー、あの人。さ、聖來さんの部屋に行くっすよ聖ちゃん!」
○同日 聖來宅 09:10
聖來「いらっしゃい二人とも! 待ってたよ!」
聖「おじゃまします……」
沙紀「おじゃましまっす」ズシ
聖來「うわ、沙紀ちゃん大荷物じゃない! どうしたのこれ?」
沙紀「伊吹に話したら貸してくれたっスよ。去年のバレンタインイベントで使ったヤツみたいッス」
聖來「へー、本格的だね!」
○同日 聖來宅 09:30
聖來「よし、じゃあ始めようか!」
聖「よろしくお願いします……」
沙紀「よろしくお願いしまっす!」
聖來「と、その前に。二人はどういうチョコを作りたいの?」
聖「私は……」
沙紀「アートっス!」
聖來「ん?」
聖「……え?」
沙紀「味だけじゃなく見た目にもこだわった独創的なチョコレートで自分の気持ちを表現したいっす!」フンスフンス
聖「……独創的って……自分で言っちゃうんですね……」
聖來(言葉のニュアンス的にはメシマズなフレーズが含まれてるのが気になるけど……まぁ沙紀ちゃんだし大丈夫かな。いざとなったらアタシが調整すれば良いし)
沙紀「聖ちゃんはどうするんすか?」
聖「私は……こういうの経験ないから……一番簡単なの……」
沙紀「ダメっすよ聖ちゃん!」
聖「」ビクッ
沙紀「そんな弱気なチョコじゃ他の人のチョコに埋もれちゃうっすよ! あの人、なんだかんだで沢山チョコ貰いそうっすし! もっと自分をぶつけモガグ」
聖來「はいはーい、ちょっと黙ってようねー」
聖「……やっぱり……もっと凝ったのの方が……」
聖來「そんなことないと思うよ。聖ちゃんが一生懸命作ったチョコレートなら、Pさん凄く喜ぶよ、絶対!」
聖「そ、そう……かな……?」カァァ
聖來(かわいい)
沙紀(かわいい)
聖來「ま、どっちにせよ、まずは教本読んで方針決めようか」ドサドサ
沙紀「うわっ、結構沢山持ってるんすね」
聖來「大学時代にちょっと勉強したからね」
聖「……聖來さん……この……付箋が付いたページは……?」ペラ
聖來「え? あっ、そのページは!」
沙紀「ん? うわ、蛍光マーカー引いてるし、垂れたチョコの染みもありますし、このページだけ滅茶苦茶読み込んだ形跡があるっすね」
本『このチョコで意中の彼のハートをキャッチ! 本命チョコの作り方』
聖來「」
沙紀「へぇ……」ニヤニヤ
聖「うわぁ……」キラキラ
聖來「」
沙紀「これは詳しい話を聞く必要がありそうっすね聖ちゃん!」
聖「うん……! 聞きたい……かも……!」
聖來「うぅ……お手柔らかにね……」
○同日 聖來宅 17:00
聖來「で、ここをこう結べばラッピング完了!」
沙紀「出来たーっ! っす! これぞまさに芸術! アタシの全てをぶつけた最高傑作の一つっす!」
聖來「聖ちゃんはできた?」
聖「……はい……ありがとう……ございます……」
聖來「良かったー。ってもうこんな時間かー」
沙紀「ほんとっすね。夢中になってたから気付かなかったけど、夕食時なんすね」
聖來「二人とも、良かったら出前でも取ってウチで食べていかない?」
沙紀「後片付けもしなきゃいけないし、食べに行くよりそっちの方が良さそうっすね! 聖ちゃんはそれで良いっすか?」
聖「……うん……けど……寮の門限が……」
沙紀「大丈夫っすよ、保護者同伴なら9時まで可っすから!」
聖「……うん……なら、皆で食べたい……」
聖來「決まりだね! 先に注文してから後片付けしようか」
沙紀「あ、じゃあアタシ寮母さんに電話してくるっすよ!」
○同日 聖來宅 18:30
沙紀「そういえば」
聖來「ん?」
聖「……?」
沙紀「結局聖來さんのコイバナ聞けてないっすね!」
聖「! おぉー……そういえば……」
聖來「うっ……忘れてると思ったのに……」
沙紀「いやぁ、危ないところだったっす! 今日一番の美味しい話題を危うく逃すところだったっすよ!」
聖來「うぅ、逃してくれて良かったのに……」
聖「聖來さん……」キラキラ
聖來「聖ちゃんそんな期待に満ちた目で見ないで……」ヨヨヨ
沙紀「さぁさぁさぁ!」
聖來「……と言っても、そんなに面白い話じゃないよ?」
聖來「大学2年生のバレンタインに、当時憧れてたサークルの先輩にチョコ渡して告白したんだけど」
聖「おお……」キラキラ
聖來「その先輩には他に好きな人がいて、チョコを受け取って貰えなかったっていうだけの話だし」
沙紀「せ、聖來さんほどの美人のチョコでも、受け取ってすら貰えなかったんすか!?」
聖來「先輩、真面目だから」
聖「……その後は……?」
聖來「その後? ……まぁ、色々あったけど、今でも仲良くしてもらってるよ」
沙紀「そ、その色々についてくわしく!」
聖來「えー、それはバレンタイン関係ないし、それに二人にはまだ早いかなぁ」ニヤリ
聖「? 早い……?」
沙紀「そ、それは一体どういう意味っすか!?」
聖來「はい、そういうわけでこの話題おしまいでーす!」
沙紀「そんなっ、そこをなんとかお願いするっすよ!」
聖「沙紀さん……どうしてそんなに……必死なの……?」
沙紀「……この業界、恋愛は御法度だし、実体験ってあまり聞けないんすよね……」
○同日 CGプロ女子寮前 21:00
聖來「はい、到着!」
聖「ありがとう……ございました……」ペコリ
沙紀「送ってもらっちゃってすみませんでしたっす」ペコリ
聖來「保護者だからね! それじゃあ二人とも、また明日ね!」ブンブン
サヨナラー オツカレサマデシタ
聖來「うー、寒いなぁ」
聖來「………バレンタイン、かぁ………」
聖來(振られてからもう3年目になるんだなぁ)
聖來(他に好きな人いるの知ってたし、駄目もとではあったんだけどね)ハァ
聖來(それでも告白せずにはいられないぐらい、大好きだったんだよね……)
聖來(……だった?)
沙紀『自分の気持ちを表現したいっす!』
聖『……感謝の気持ちを伝えたいな……って……』
聖來(……私は……)
聖來「……よし!」
○2/14 都内某スタジオ 19:00
オツカレサマデシター オツカレー
P「沙紀、聖、お疲れ様」
沙紀「あ、Pさん、お疲れ様っす!」
聖「お疲れ様……です……」
P「二人とも送っていくぞ。どこか寄り道したい場所あるか?」
沙紀「いや、アタシは今日はもう帰るっす。聖ちゃんは?」
聖「私も……特には……」
P「じゃあ帰ろうか」
沙紀「はいっす!」
聖「はい……」
○同日 駐車場 19:15
P「じゃあ出発するぞー」
沙紀「っと、その前に!」
P「ん?」
聖「Pさん……これ……」スッ
P「これは……」
聖「チョコ……です……いつもお世話になってるから……お礼……したくて……」
P「うお、マジか! ありがとう聖! 今開けても良いか?」
聖「うん……」
ガサガサ
P(市販のものではない可愛らしい箱の中に、小さなチョコが12個キレイに整列してる……これはまさか……)
P「ひょっとして、手作りか?」パク
聖「うん……初めて作ったから……美味しくないかも……」
P「そんなことない。凄く美味しいよ。ありがとな、聖」ワシャワシャ
聖「あぅ……」カァァ
P(かわいい)
沙紀(かわいい)
沙紀「さ、聖ちゃんの次はアタシっすよ!」ババーン
P「おう、ありが……って箱デカっ!?」
沙紀「Pさんへの感謝の気持ちをアーティスティックに込めたらこのぐらいのサイズになったっす!」フンスフンス
P「そのアーティスティックにっていう言葉に一抹の不安が残るけど……」ガサガサ
P(……箱もでかいが中身も凄いなこれ。ソフトボール大の……なんだ、棘付きボールか何か?)
沙紀「Pさんはアタシを見つけて照らしてくれる太陽みたいな人っすからね!」
P(違った、太陽だった)
沙紀「ささ、遠慮なく、かぶりついてくださいっす! 男らしく、ぐわっと」
P「無茶言うな、トゲトゲが刺さるっちゅーねん」ポキッサクサク
P「お、これは……クランキーっていうんだっけ?」サクサク
沙紀「ど、どうっすか?」ドキドキ
P「うん、サクサクしてて旨いよ。ありがとな、沙紀」
沙紀「そ、そうっすか、良かったっす」ホッ
P「二人ともありがとうな。大切に食べさせてもらうよ」
沙紀「ところで、他には誰かからチョコ貰ったっすか?」
P「ん? 二人を迎えに来る前にちひろさんと女性Pさんから、あとはニュージェネレーションとトライアドプリムスから連名でそれぞれ一つずつかな」
沙紀「思ったより少ないっすね」
P「まぁこんなもんだろ。多すぎると返すの大変だし、丁度良いさ」
聖「……トライアド……」
沙紀「……怖かったっすね……」
P「はあ?」
沙紀「いや、昼の収録でトライアドとそのプロデューサーさんとご一緒したんすけど」
聖「その……空気が……重くて……」
P「あぁ……なるほど」
沙紀「牽制しあう凛ちゃんと加蓮ちゃんに挟まれて、奈緒ちゃんが可哀想だったっす……」
P「それは……ご愁傷様だな……」
P(神谷ちゃんもトライアドP狙いだろうに……)
聖「Pさん……聖來さんは……?」
P「聖來か? 今日は別の場所で収録して、そのまま直帰したと思うけど」
聖「そうじゃなくて……その……チョコは……」
P「ああ、まだ貰ってないよ」
沙紀「『まだ』ってところに勝者の余裕を感じるっすねぇ」ニヤニヤ
P「別にそういうわけじゃないけどな。まぁご近所さんだし、付き合い長いし、くれるんじゃないかなぁっていう希望的観測だよ」
沙紀「……」ニヤニヤ
聖「……」ニコニコ
P「……さ、出発するぞ。シートベルトしっかりしめろよー」
沙紀「はーいっす」
聖「はい……」
○同日 モバP宅 20:45
キキィ、バタン
P「……さむさむ。とっとと暖房つけて温かいものでも飲んで……」ピロリロリン
P「ん?メールか?」
『差出人:水木聖來
プロデューサーさん。
あの並木道で待ってます。』
P「並木道って……わんこの散歩道か? わざわざ呼び出して何の用だ……って、考えるまでもないよな」
○同日 並木道 21:00
聖來「Pさん、はやく! 待ちくたびれちゃった♪」
P「ああ、いたいた。寒いのに元気だなぁ、聖來は」
聖來「昔から言うでしょ? わんこは雪でも元気に庭を駆け回るんだよ! ……クチュン」
P「聖來はわんこっぽいだけで犬じゃないだろうに……ほれ」ポイ
聖來「……ホットココア?」
P「どうせ長いこと寒空の下で待ってたんだろうと思ってさ。少しぐらいは気を利かせたんだよ」
聖來「……ふふっ、Pさんはアタシのことはなんでもお見通しなんだね」
P「伊達に付き合い長くないさ」
聖來「じゃ、なんで呼び出したかもバレバレなんだ」
P「見当は付いてるよ」
聖來「じゃあもったいぶらずに……はい、どうぞ。ハッピーバレンタイン!」
P「ほい、ありがと。開けてみて良いか?」
聖來「それは……帰ってから、一人で開けて欲しいな」
聖來「アイドルの楽しさを教えてくれたPさんに送るチョコレートは……アタシの気持ちをたっぷり詰め込んだ特別なチョコレートだから♪」
聖來「アタシの気持ちが伝わったら嬉しいな」
聖來「でもいつか、Pさんの気持ちもアタシに教えてくれたらもっと嬉しいな」
P「……ああ、いつか、な」
聖來「うん、待ってるからね、先輩♪」
P「じゃ、帰るか」
聖來「そうだね。あ、ご飯まだでしょ? どこかで食べてく?」
P「おう、ファミレスでも行くか」
聖來「えー? せっかくのバレンタインなんだから、もっと大人っぽいムードのお店とか」ブーブー
P「変装もしてないアイドルをシャレオツなレストランに連れて行けるかっての。予約もしてないし」
聖來「あ、変装してたら良いんだ」
P「怪しい雑誌記者に見つからないような変装ならな」
聖來「ふふっ、覚えとこ。それにしても寒いねぇ。手とか繋いじゃう?」
P「だからダメだって……なぁ、話聞いてた?」
……………
○同日 モバP宅 22:30
夕食を終えて、小さなテーブルと向き合う。テーブルの上に置かれたのは、つい先刻聖來から手渡されたチョコレート。ピンク色の愛らしいラッピングに黄色いリボンの装飾がなされたそれは、露骨と言うべきか直球と言うべきか、ハートの形をしていた。
彼は以前、全く同じものを受け取ったことがある。3年前の話である。
P「開けるか」
テープをほどき、ラッピングを破かないように丁寧に外していく。
白地の箱を開けるとそこには予想通りハート型のチョコと、予想以上にストレートなデコレーション。
ハートの表面に大きく『LOVE』の文字が書かれていた。
P「……変わらないなぁ」
思い出すのは3年前の今日。当時サークルの後輩だった聖來から、全く同じものを受け取り、そして告白された。
あの時は、他に意中の相手がいたから、受け取れなかった。
だけど今は。
P「ちゃんと、伝えるから」
それがいつになるかはわからないけれど、きっと、必ず。
そう胸に誓って、チョコレートを口に運んだ。
3年前に食べられなかったチョコレートは、ちょっぴりほろ苦いビターチョコレートだった。
糸冬
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制作・著作 NHK
水木聖來(23)
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吉岡沙紀(17)
http://i.imgur.com/7EveVhN.jpg
http://i.imgur.com/InsSES6.jpg
望月聖(13)
http://i.imgur.com/ZN0op9A.jpg
http://i.imgur.com/lq0UG71.jpg
『でもいつか、Pさんの気持ちもアタシに教えてくれたらもっと嬉しいな』
↑の聖來さんのバレンタインFLASHのセリフが告白の返事待ちにしか見えなくて衝動的に書いた。
勢いだけで書いた。反省はしていない。
>>26
画像支援感謝です。
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