幼馴染「...抱きついた人間の能力が解る能力」 (83)

男「触れた人間の能力が使える能力」
幼馴染「...抱き着いた人間の能力が解る能力」

~~~

人は誰しもが超能力者である。
問題は、各々の才能に気付けるかどうかだ。

~~~

男「...西村春生著『超能力開花の心得』より」

幼馴染「またつまんない本読んでるわね」

男「俺も西村先生みたいな能力が良かった」

幼「その人どんな能力なの?」

男「百回噛んだ食べ物の成分が分かる能力」

幼「いらねぇよ」

幼「ところで、男」

男「なんね」

幼「私たちも明日から高二になる訳だけど」

男「そうだな」

幼「新入生の能力全部リストアップしようか」

男「意味分かんねぇし面倒くせぇ。つーか帰れよお前」

幼「妹が今日入学式でね、暇なのよ」

男「おう。俺も全く同じだ」

幼「そうよ。私たちの妹が入学するんだから能力リストアップしよう?」

男「だからの使い方おかしいから。そもそもどうやって全員分調べるんだ?お前が新入生全員に抱き着くのか?」

幼「嫌よ。高一の男子なんて猿よ」

男「お前、俺も1ヶ月前まで猿だったって言うのか?」

幼「そうよ。それで今はクロマニヨン人よ」

男「まだ進化途中!?明日までに人間になれるんだろうな!?」

幼「晩御飯前までには何とかなるわよ」

男「あ、ひらめいた」

幼「何よ」

男「俺が新入生に触りまくるから、その度にお前が俺に抱き着けば良いんじゃね?」

幼「嫌よ。これだから北京原人は困るわ」

男「おい退化してんぞ」

幼「あなたが私に触ってから、新入生に抱き着けば良いじゃない」

男「新入生って650人くらいいるよなぁ...お前に650回触れる事になる訳だが」

幼「却下ね」

男「俺は一向に構わないぜ?」

幼「しね」

男「新入生の人数マイナス2だな。妹と幼妹の能力は分かってるもんな」

幼「そうね。ウチの子は『自分及び自分の触れてる物の加速度を少し上昇させる能力』で」

男「ウチのは『任意の固体をあらかじめ設定しておいた座標まで直線移動させる能力』だ」

幼「...面倒ね」

男「まぁ言ってしまえば『早くなる能力』と『部屋の片付けが三秒で終わる能力』だ」

幼「妹さんの能力の使い道が明らかになってしまったのだけれど」

男「まぁそんなモンだろ。俺のなんか使い道ねぇし」

幼「そうかしら?『最後に触れた人間の能力を扱う能力』」

男「なんか他力本願でやだ」

幼「ちなみに今は誰の能力に設定されてるの?」

男「自分じゃ分かんねぇよ。多分お前じゃね」

幼「いつの間に私に触れたの?警察を呼ぶわ」

男「こたつの中で何回か蹴ってきただろ」

幼「...湯たんぽだと思ってたわ」

男「こたつの中にまで湯たんぽは入れねぇよ」

男「...ん、メールだ」bbb

幼「私も」prr♪

男「えーと、お前んトコの親子と一緒に晩飯食いに行くって」

幼「...男君の妹ちゃんとパパママと一緒に料亭行ってきます。晩御飯何とかしてね」

男「...は?懐石とか、俺らも連れてけよ」

幼「あんた外食嫌いじゃない。お金払ってまで食べる物じゃないって」

男「ファミレスとかの話な。寿司とか懐石は別」

幼「...晩御飯何食べよっか」

男「え、ウチで食ってくん?」

幼「メールにそう書いてある」

男「知らねぇし」

幼「何食べたい?」

男「アイツらだけ良いモン食ってんの腹立つから、何か見栄えと満足感が良いヤツで」

幼「...ピザでも焼こうか」

男「それ家の食材だけで作れるんだろうな」

幼「薄力粉と水でチョチョイのチョイよ」

男「任せたぜハニー」

幼「お前も手伝うんだよ糞ダーリン」

幼「なんか映画見ようよ」

男「勝手に探して再生してくれ...あ、メッチャ美味しい」

幼「笑えてホッとできるヤツ」

男「『ブルースオールマイティ』『ライヤーライアー』『イエスマン』...J?キャリーばっかだな」

幼「名前言われても分からないし」

男「あのー、よく金曜ロードショーとかで『マスク』って映画やってんだろ?それの俳優」

幼「あぁ、あの緑の...いや顔出てこないし」

男「マスクはコメディ推し過ぎだな。あ、ブルースオールマイティに出てるM?フリーマンの『インビクタス~負けざる者達~』ってのもオススメ」

幼「この棚にある?」

男「無い」

幼「じゃあ言うなよ」

男「そこの棚のは全部面白いから大丈夫」

幼「ふーん...『ニューイヤーズイブ』」

男「それメッチャ泣ける」

幼「あんたの前で泣きたく無いし」

男「映画見る時は自由に笑っえ自由に泣くべきだと思う」

幼「そんな自論聞いてない...何これ、表紙恰好いい...『バタフライエフェクト』?あ、でも1から3まであるわね」

男「あ、ソレ1だけで良いから。2と3は今すぐディスク割っても良いくらい」

幼「極端ね」

男「ソレ見よう。さぁDVD用意して隣に座るんだ」

幼「...うん。お邪魔します」

男「よし再生~。...最後まで見ろよ?良いか?最後までだ。」

幼「何それ」

~~~

TV『僕の犬を離せトミー、お前が少年院に入ったら誰が妹を守るんだ』

TV『...』グサッ

TV『キャーーーーッ!!!』

幼 「!」ビクッ

TV『違うよレニー...ロープを切るんだ...』

幼「...」ブルブル

男(この映画は、理解の追い付かない謎の恐怖→理解は追い付いたが気味の悪い恐怖→切ないハッピーエンドという三段構えの構造になっている)

幼「...」ジーッ

男(前半を怖がれば怖がる程、ラストシーンの感動が大きくなるのである)

幼「...」ギュッ

男「!......」

幼「...」ギューッ

TV『...もし僕が世界で一番君を愛していると言ったら...? 』

TV『...ゴメン。レニーが呼んでるから...じゃあね...』

TV『...』

男(1は素晴らしい。何故2と3はあんな事になってしまったんだろうか)

~~~

TV『良いのか?』

TV『自分が誰かなんて、思い出す必要無いだろ?』メラメラ

TV『stop crying your heart out~♪』

男(やはり素晴らしい...)

幼「グシュッ...エゥッ...ウゥッ...」ボロボロ

男(あ、やべ)

幼「泣くつもり...っ無かったのに...っ」ボロボロ

男「アレはしょうがねぇ。A?カッチャー最高」

幼「グスッ...寝る...」

男「待て、こたつで寝るな。自分の家に帰れ。ハウス」

幼「...スゥ...」zzz...

男「...寝やがった...」

翌日☆

男(二年生か...実感ねぇな...)

幼「...」ボスッ

男「いてぇっ!...あ、よう」

幼「よう」

男「...何そのメガネ」

幼「お前に昨日泣かされたせいで目が腫れているのだ」

男「何その人聞きの悪い言い方と口調...言っとくけど、余計に目立ってんぞ」

幼「マジか」

男「おう」

幼「なら外す...」

男「なぁ、妹知らね?」

幼「朝家に来た。そんでウチの妹と一緒に学校行った」

男「そうか」

幼「...あ、思い付いたんだけど」

男「なんね」

幼「あんたの妹ちゃんの能力で、私の身体の座標を学校に設定したら、毎朝三秒で学校に着けるんじゃないかしら」

男「テレポートじゃなくて直線移動だって事忘れてないか?間にある民家の壁ブチ抜く気かよ」

幼「そうか...」

男「それに設定した物しか絶対に運ばないからな。おニューの髪留めは勿論のこと、下着も靴下も替えられないぞ」

幼「だから何であんたは妹ちゃんの能力詳しいの?やってみた事あるの?」

男「ある。庭でバジル植えてるプランターにブチ当たって断念した」

幼「馬鹿かよ」

男「今同じ事思い付いたお前に言われたくない」

幼「...あと、『おニューの髪留め』っていう単語は、私が今日付けてるダッカールがおニューだって事に気付いた上での発言?」

男「は?.........あぁ、モチロンサ」
幼「ちっ、なんだ偶然かよ」

生徒会1「おはよーございまーす」

生徒会2「新2年生は第二校舎へー。各自プリントに目を通して自分のクラスに移動して下さーい」ペラッ

男「...」

生徒会長「よう、男」

男「あ?どうも」

生徒会長「今年は妹さんが入学されたな。おめでとう」

男「アイツも俺と同じ遺伝子の持ち主ですから。『取り敢えず近い所が良い 』って」

生徒会長「はは、今年も楽しくなりそうだ」

男「アンタ今年受験だろ」

生徒会長「まぁ何とかなるさ。さぁここも混むから行きたまえ」

幼「...何組だった?」

男「ん?あー...あ、1組」

幼「やっぱり」

男「あ、お前も?」

幼「うん。自分の能力に『気付いてる』人間は大体1組に入れられてる」

男「...まぁ先生方もそれが何かと便利なんじゃね?」

幼「...荒れそうね」

男「まぁな」

友「お、男」

男「よう」

幼「おはよう女」

女「...おはよウナギ...」

幼「それまだ言ってるの貴女だけよ」

女「...自分を貫く...」

幼「そう...なんか、頑張って」

女「...男。おはよウナギ」ギュッ

男「ん!?」

友「え、何その子、紹介して」

男「おい女、離れろ、な?」グイグイ

女「...心拍数が上がってる...今の私には男の声とドキドキと...私自身のドキドキしか聞こえない...あとこの学校内の話し声ぐらいだったら大体全部聞こえてる...」

男「いや最後のはレベルが違うだろ。あとお前あんま能力使うなって」グイグイ

女「...今の私にはぁ...男の匂いしか感じないぃ...何も聞こえないし見えないしぃ...男にちゃんと抱きつけてるのかどうかも定かじゃないぃ...」

男「ちょっとマジでやめろよ!お前のはシャレにならねぇって!」

友「...その子、なんて能力なん?」

幼「...『五感の一つを驚異的に飛躍させる代わりに、その他の四つの感覚が無くなる』能力」

友「うわぁ」

女「名付けて...『代償だらけの契約(シリトリィ?ダーティ?ラヴ)』」

幼?友?男「うわぁ」

女「男のは...『罪多き悪戯(イージー?アグレッション)』で...幼のは...『愛に溢れた閻魔帳(ブックマン)』」

幼「マンじゃないし」

女「そちらの方は...?」

男「コイツ?コイツは大量の汗をかく能力」

友「ちげぇよ!『体表面に触れた水分を状態変化させる能力』だ!!」

男「あれ汗じゃなかったの?」

女「...『水色の王(アンビューティフル・アクエリアス)』」

友「あ、どうも...」

幼「よ!水色の王(笑)」

友「うっせぇブックマン」

先生「うーし、明日から普通に午後まで授業あるからなー。気ぃ付けろよー」

友?男「(じゃんけんほいっ)」

友「(だぁ~っ...)」

男「(ほらいけ、それゆけ)」

幼「?」

友「...せ、せんせーっ!!」

先生「ん、どうしたー」

友「その立派なメロンは何カップでグフェアァっ!!!」ゴシャッ

先生「先生の能力はなー、『自分で自分を攻撃した場合にのみ、そのダメージをを任意の人物に移す能力』だー」

男「よーし帰るかー」

幼「妹ちゃんの晴れ姿見てみたい」

男「朝見たんじゃねぇの?」

幼「声しか聞いてない」

男「んじゃあ第一校舎行くか」

友「.........」

幼「...さっきの」

男「ん?」

幼「じゃんけんのヤツ」

男「あぁ、見てたん?」

幼「その、どっちが言い出したの?」

男「あぁ、俺」

幼「...サイテー。まだお猿から進化してないのね。このイエローモンキー」

男「イエローモンキーは日本人の蔑称だ。別に猿の意味は持ってねぇ...あと、アレは別にやましい気持ちがあった訳じゃねぇよ」

幼「じゃあ何よ。メロン男爵」

男「先生が攻撃に応用出来る能力かどうか試したかったんだよ。だからわざと怒らせた」

幼「...そんなの、私が調べるのに」

男「お前初対面の人にいきなり抱きつくとか無理だろ」

幼「ならアンタが触れば良かったのよ」

男「なら調べてみろ!!」ガシッ

幼「キャアアアアアアア!!!!!」ゲシッ

男「おぅふ」

幼「何をする!」

男「いや、君のブックマンをだね...」プルプル

幼「ブックマン言うなや!!」

男「で、どうなんだい。能力分かったかい?」

幼「今のはアンタが抱きついてきただけでしょ...私が腕回さないと効果無いし...」

男「はっ!ならやってみろ!さぁ!さぁさぁ!!」

幼「うるさい...うぅぅぅ...」キュッ

男(なんかノリでからかってみたけど)

男(ものごっつぅ恥ずかしいわコレ...)

男「で、どうなんスか」

幼「...」

男「?」

幼「...『抱きついた人間の能力が分かる能力』...」

男?幼「「...」」

男?幼「それお前「これ私」のやないかい!!」」

???「ダイナミック☆お邪魔しまーす!!!」ビューン

男「上から!?」

???「ふふふ...男女の交際は認めているが...節度を弁えたまえよ...?」フワッ

男「でたな生徒会長」

生徒会長「落下系美少女、生徒会長です」

男「美少女とか自分で言っちゃいますか」

生徒会長「ん?なら他人の口からなら甘んじて受け入れるとしよう。私は美少女か?ん?」

男「今どこから落ちてきたんですか貴女」

生徒会長「無視か!よかろう!私は落ちてきたのではなく『飛んでいる』のだ!!」フワフワ

幼(この人も能力者か...)

男「校内で無闇に能力使って良いんですか?」

生徒会長「良いんだよ!生徒会長だから!」

男「...」幼「...」

生徒会長「なぁ、ゲーセン行こうや」

幼(唐突!?)

男「いや、今から妹の制服姿からかいに行く所なんスよ」

生徒会長「しょうがない奴だな、また今度な」フワッ

幼「...あの人なんなの」

男「去年なー、大人数の生徒と大乱闘の喧嘩してたから仲裁入ったら、なんか気に入られた」

幼「...」

男「どうやらあの学年一の問題児らしい」

幼「そんな人が生徒会長やってるのね...」

男「馬鹿だけど良い人だよ」

?「お!」

男「ん?おぉ!幼妹!」

幼妹「よっす男兄ちゃん!」

幼「...実の姉に挨拶は無いのかしら?」

幼妹「今からしようと思ったの!ギューッ」ギューッ

幼「ふふ」

男「入学おめでと。昨日言えなかったじゃん」

幼妹「ありがと!昨日は姉ちゃんと添い寝してたもんね!しょうがないね!」

幼「ふふふ」ギューッ

幼妹「いたたい!背骨!が!折れますよ!お姉様!」

男「妹は?」

幼妹「うぅ...トイレ行くって...もうすぐ来る...」

男「お前ら仲良いな」

幼妹「兄ちゃん達程でも無いよ」

幼「幼妹?」

幼妹「今のは事実言っただけじゃん!やべっ、『加速』!!」バッ

「うおっ何だ今の!」
「今年の一年にはヤバいのがいるぞ!」
「陸上部に興味無いかい!?」

男「あちゃー目ぇ付けられてる」

妹「あらら?お兄ちゃ...あっ」

男「おう」

幼「妹ちゃん。入学おめでとう」

妹「ありがとう幼ちゃん...と...兄さん」

男「へっ、別にお前の二人称なんか誰も気にしてねぇよ」

妹「私が気にするよ!」

幼「お年頃なんだから放っとききなさいよ」

妹「うぅ、幼妹ちゃんは?」

男「向こうに走ってったぞ」

妹「えぇ~一緒に帰るのに~!」

幼「どっかで待ってるでしょ、多分」

妹「うん。あ、そうだ幼ちゃん」

幼「なに?」

妹「せっかく高校生になったんだから、ちょっと大人ぶって寄り道したいんだけど」

男(それを自分で言ってる時点で大人ぶれてねぇよ)

幼「ふふ、そうね...あ、プレゼントは?」

妹「プレゼント?え?何の?」

幼「違うの。お店の名前。ねぇどうかしら」

男「良いんじゃねぇの?...え、俺も行くの?」

幼「当たり前じゃない。だってあそこってアレじゃん」

妹「え...?なに、ですか...?」

男「まぁ良いか。昨日祝ってやれなかったし」

幼「妹ちゃん、楽しみにしててね?」

妹「すごく不安なんだけど...」

幼「ポチ、ウチの妹を探して来なさい」

男「しばくぞお前」

男「...お」

幼妹「いや、あのー...」

陸上部A「頼む、君ならエースになれる!」

陸上部B「見学だけでも良いから!ね!」

幼妹「ごめんなさい、今日はちょっと用事があるんですよー...」

男「よう幼妹、探したぜ」

幼妹「あ、兄ちゃん」

陸上部A「ん?」

男「おら退け」

陸上部B「お、おい!」

陸上部部長「随分と...古臭い演出だな。白馬の王子様気分か?」

男「あ?あぁお前か。いやそんなんじゃねぇし。ホントにこいつ探してたんだっての」

部長「なら引き止めはしないよ。でもな男、俺はその子の事を諦めた訳じゃない...あと、お前の事もまだ諦めてないぞ」

男「その言い方、お前すげぇタラシのバイセクシャルみたいだぞ」

部長「なっ!」

男「行こうぜ」

幼妹「兄ちゃん、バイセクシャルって何」

男「...キノコもタケノコも好きな人だよ」

幼妹「そっか。私はタケノコ派かな」

幼「幼妹、どこ行ってたの。妹ちゃんずっと待ってたのよ」

幼妹「ゴメンね、陸上部の人に囲まれてさ」

幼「陸上部?あぁ...」

男「だから無理矢理連れ出して来た」

幼「アンタも何か言われたんじゃないの?」

男「まぁな」

妹「?」

幼「コイツね、陸上部の部活見学行って顧問とか先パイにもすごい期待されてたのに急に部活入らないとか言い出したのよ」

妹「お兄ちゃん足速いの?」

男「あそこの部長よりは速いな、うん」

妹「...兄さん足速いの?」

男「わざわざ言い直さなくても...」

幼「幼妹、何もされなかった?」

幼妹「まぁね、しつこいから困ってたけど」

男「俺からどうにか言っとくわ」

幼「ありがと」

幼妹「『俺が今日奢ったるわ』?」

妹「ありがと!」

男「果てしなく言ってねぇよ」

男「着いたぞ」

幼妹「何ここ!ちょっとリッチな雰囲気」

男「お前が昨日俺達をほっぽらかして食べに行った料亭よりは随分リーズナブルだぜぇ~?」グググ

幼妹「むぁあ~。ほっぺがぁ~」

妹「やめい」ペシ

幼「今日は...どうかしら」カランカラン

男「どうだ?」

幼「(...アウトよ)」

妹「何が?別に混んでもないよ?」カランカラン

幼妹「喫茶店って入るの初めてだったりする...」

妹「私も...」

友「いらっしゃ...なんだお前らかよ」
男「客である事には変わりねぇよ」

幼「ご両親は?」

友「親父は今朝から釣り。お袋は買い出し。よって俺一人」

妹「(学校の人?)」

男「そうだ。変態だからな。挨拶するのもやめといた方が良いぞ」

友「聞こえてるぞ糞虫が」

男「うっせぇ。変態なのは事実だろうが」

友「今日のはお前が言い出したんだろうが。メチャメチャ痛かったんだぞ」

幼「先生が自分の手のひらにパンチした途端痛がってたけど、アレってどこにダメージがくるの?」

友「分かんねぇ。多分全身だな。少なくとも手のひらにそのままって訳じゃなかった」

妹「パフェあるよ。パフェ」

幼妹「私お腹すいた」

友「ハイ皆さんご注文は」

妹「メロンとプリンのパフェ」

幼妹「ほうれん草のクリームパスタ」

幼「コーヒー」

男「コーヒーとハヤシライス」

友「何その組み合わせ、キモい」

男「うるせぇさっさと行け」

友「三分待ってやろう」タタッ

幼「待つのは私達なんだが...」

男「多分何も考えずに口走ってるから、ツッコミの無駄だぞ」グビ...

友「...」タタッ

妹「?」

友「お前が今飲んだお冷やの氷、俺の手のひらから生まれました」

男「はぁ!?」

幼「うわ何かやだ!」

男「知りたくなかった...うわなんか気分ワリィ」

妹「...兄さん、このお冷やあげる」

幼妹「手から!?すごい!!」

男「ただいま」

妹「ただいま~」

幼妹「ただいま!」

男「おい待て」

幼「お邪魔します」

男「待てと言っている」

妹「お兄ちゃん部屋キレイ?」

幼「汚かったわね。春休み中引きこもってたから」

男「その半分くらいお前も引きこもってただろ」

妹「んじゃぁ三秒待ちたまえ」ガチャ

妹ルーム

妹「...ぜーんぶ『戻れ』!」

カタ

カタカタカタカタ

妹「はいおっけー。入って」

幼妹「便利な能力だよねぇ」ガチャ

男「俺の部屋のも『設定』してくれよ」

妹「お兄ちゃんの私物の所定位置とか知らないし」

男「全部教えるから」

妹「それ自分で片付けた方が早くない?」

男「...それもそうか」

幼妹「でもさぁ、何で三秒なん?」

妹「知らなーい。頑張ればもっと早くなるんじゃない?」

幼「調べてみましょうか」ギュッ

妹「わわっ」

幼「...『任意の固体をあらかじめ設定した座標へ直線移動させる能力。
発動条件は設定した固体とその設定座標を記憶している事。
座標を設定する場合、その固体を設定する座標に一度置かなければならない。
移動時間は3.3±0.5秒で時間の差は本人の意思とは関係無くランダムで左右する。現在設定している固体の数は92。本人の認識では書籍が26、衣類が41、』...」ギューッ

妹「ちょ!ストップだよ!」バッ

男「...そんな事まで分かるんだな...」

幼妹「私のも一回ちゃんと調べてよ」

幼「嫌よ。一気に喋ると疲れるんだから」

男「...今の言い方だとさぁ」

妹「ん?」

男「どんなに重い物でも、どんなに遠くにある物でも、言われた条件さえ満たしてれば三秒前後で運べるんだよな...」

妹「そうなるね。今まで運べなかった物無いし」

幼妹「なんでいきなりそんな事を?」

男「...いや、別に、なんとなく」

幼「コイツを学校に運ぶのは失敗したんじゃなかったの?」

妹「え?」

男「あ」

妹「なにそれ!お兄ちゃん私の能力でそんな事してたの!?」

男「お前のじゃねぇよ。お前から拝借した俺の能力だ」

妹「一緒だよそんなもん」

母「幼ちゃん、幼妹ちゃん。すき焼き食べてく?」ガチャ

幼妹「おぉ~!ホント!?」

男「やめろよ母さん。コイツいたら肉減るじゃねぇか」

母「良いじゃないの~どうせ今日パパ帰ってこないんだしぃ」

幼「ありがたく頂きます」

幼妹「すき焼き♪」

男「家に言っとけよ」

幼「...誰が言いに行くか、じゃんけんで決めましょう」

男「は?俺も?」

妹「私とお兄ちゃん関係無いじゃん。幼ちゃんと幼妹ちゃんだけで決めてよ」

男「そうだそうだ」

幼妹「ハイ出さんと負けよ!」

男「は!?」

幼「じゃんけんぽん!」

男「...前から思ってたんだけどさ」グー

幼妹「うわ、兄ちゃん一人勝ちだ」

幼「何よ、一抜け男」

男「お前ら姉妹って『昔チョキ』だよな」

幼「知らんがな」

幼妹「おら二回戦だぜ行くぜ」

妹「私を巻き込むなよぉ~。この昔チョキ族め~」

翌日☆
妹「お兄ちゃん!学校ですぜ!」

男「おー...行ってらっしゃい...」

妹「お兄ちゃんも行くんだよ!もう八時になっちゃうよ!」

男「二年は...今日休校日...」

妹「えっ?そうなの?」

幼「くだらない嘘付いてんじゃないわよ」ガチャ

男「うおっ!?お前何でいるんだよ!」

幼「おはよう...ふぁあ」

妹「おはよう幼ちゃん!」

男「...先行ってろよ。頑張らねぇと間に合わんわコレ」

幼「なら頑張りなさいよ。外で待ってるから」

妹「えー私先行くもん」

幼「行ってらっしゃい。幼妹もさっき出たばっかりだから。すぐ追い付けるわよ」フリフリ

妹「いってきまーす」

男「下行ってパン貰ってきてくれよ。チョコロールのヤツ」ゴソゴソ

幼「もう受け取ってある。ていうか私いるのに容赦無く着替えるわね。はいチョコロールあーん」

男「モガモフ」

幼「あっコレ美味しい」モフッ

男「俺の貴重な朝飯奪わないで...おら行くぞ」

幼「自転車出しなさいよ」モフモフ

男「そうするか...あ、おいチョコロール全部食ってんじゃねぇよ!」

幼「モフモフ」

男「...分かった。お前寝惚けてるだろ」

幼「ん~?」

男「外見と言動には特に差異は見られない。しかし行動が明らかにアホっぽくなってる」ガシャン

幼「良いからさっさと出発しなさい」

男「乗った?」

幼「乗った」ギュ

男「...まぁ良いや。後で自分の行動思い返すんじゃねぇぞ。言っとくけど俺悪くねぇから」シャーッ

幼「ふわぁ...」ギュー

~~~

友「お、珍獣発見」チャリチャリ

男「誰が珍獣やねん」シャーッ

幼「おはよ...」

友「なんで今日チャリ?幼たんったら寝坊?」ギャギャギャ

男「いや寝坊は俺の方なんだがな...何故かコイツがやたら眠そう」シャーッ

幼「んー」ギュー

友「うわ。写メっちゃおっかな」ガチャチャチャ

男「やめとけ。普通に殴られんぞ。っていうかお前のチャリうるせぇ」

男「うーす」ガラガラ

「うぃーっす」
「おはよー」

女「...グーテンモルゲン」

男「おっす」

女「...」ギュッ

男「いやね、俺も男なんでいきなりそんな事されると...っておい!聞こえてねぇだろお前!能力使ってんじゃねぇよ!」

女「...幼のにおいがする。あとチョコのにおい」

男「はいはい大正解。分かったから離れr!!??」ドゴッ

女「!?」

幼「...忘れろ。忘れるんだ」

男「...やっと目覚めたか。安心しろ、別にそこまでエライ事はしてねぇ」

幼「良いから忘れるんだ」

男「オーケーオーケー忘れましたよっと」

幼「記憶操作の能力者とかいないかな...」フラフラ

先生「おいどこいくお前。HR始まんぞ」

教師「~~~...」

男「...」ボーッ

男(あ...女の能力になってる)

男(幼にも殴られたけど、ブレザー越しだから効果無かったな)

男「...」

キィィィィィン

男(聴力...)

『このキッソスの戦いが起こったのが...』
『この物語は三つの章に分けられ...』
『いっちにー。いっちにー』

男(...まぁどこも授業中か...)

『おい妹ー。起きてるかー』
妹『え!ふぁい!寝てました!!』

男(アイツ......)

『じゃあ妹に答えて貰おうかな。脊椎動物の進化の頂点はサル化のヒト?つまりホモサピエンスですが、無脊椎動物の進化の頂点と言われているのは?ハイ妹』

妹『アリです』

『よーし正解だー』

男(なんで分かるんだよ!)

『おい、聞いてんのかー』

男(どこのクラスにも居眠りする奴っているんだなぁ...)

先生「お前だ。お前に言ってんだよ!」パンッ

男「ってぇ!」パンッ

先生「この王朝を支えたイザベル一世だが...彼女の旦那、つまり王が戦争に出掛ける時に
彼女は『旦那が帰ってくるまでこの純白のパンツを履き続けるわ』という謎の願掛けをしました。
王が帰ってきた時の彼女のパンツから、現在でも使われてるある色の名前がある。その色とは?はい男」

男「イザベルブラウン。灰色がかった茶色です」

先生「正解だー」

幼(なんで分かるのよ!)

~~~
キーンコーンカーンコーン

男「...あれ」ゴソゴソ

友「飯だぜ!昼飯を食うぜ!」

男「弁当忘れたわ...」

友「え、マジ?」

男「学食行ってくる」

友「ん」

男「...」ツカツカ

幼「......」トテトテ

男「...お前もか」

幼「シェイクスピア?」

男「違ぇよ」

幼「私も朝寝惚けてたし」

男「知ってる」

幼「いや、お昼ご飯は持って来てるのよ?」

男「は?ならそれ食べろよ」

幼「だから寝惚けてたから、お昼ご飯にコレ持って来てたのよ」スッ

男「...なんでカントリーマアム一個で足りると思ったんだよ」

幼「だから寝惚けてたんだってば」

男「面白いな」

幼「...それでだな」

男「まだ何かあるのか」

幼「...お昼ご飯持って行くから、お財布はいらないかなーって」

男「朝のお前の賢明な判断だな?」

幼「お金貸して」

男「カントリーマアム一個で手を打とう」

幼「家にまだあるかな...幼妹が全部食べて無ければ良いけど...」

男「いやソレ寄越せよ」

男「何食べんの?」

幼「ネギトロ丼」

男「あー...」

幼「何よ」

男「俺麻婆豆腐」

幼「あ、あんたもネギトロ食べたかったの?」

男「なぜバレた」

幼「別に同じの頼んでも良いじゃん」

男「いや、なんか楽しくないやん」

幼「アホみたい。一口あげるわね」

男「了解だ」

~~~

妹「あ!!」

男「ん?」

妹「お兄ちゃん!」

幼妹「妹、学校では何て呼ぶの?」

妹「あぁっ!に、兄さん!」

幼「とうとうアンタが指摘するレベルなのね」

幼妹「教室で兄ちゃんの話してる時もお兄ちゃんお兄ちゃんって言ってるよ」

幼「教室でもコイツの話してるの?」

幼妹「中々の頻度だよ」

男「よう居眠りアリ少女」

妹「え、何でそれ知ってるの?」

幼妹「あ、そうそう聞いてよ姉ちゃん、妹ったらさっきの時間さー」

幼「うんうん」

男「何の用だ」

妹「兄さんお弁当忘れてったでしょ」

男「おう」

妹「だから学食に来るか、幼さんとかお友達のお弁当盗むでしょ」

男「やりかねないな」

妹「駄目だよ。人のお弁当食べちゃ」

男「食べてねぇよ。俺は学食を選んだよ」

妹「だから兄さんがお友達に迷惑掛けない様に、私のお弁当を分けに来たのです」

男「そこまで気が回るなら俺の弁当を届けて欲しかったかな」

妹「でも結局まーぼー豆腐食べてるやん」

男「お前麻婆豆腐ってちゃんと言えねぇんだな」

妹「言えてるよ。まーぼー豆腐」

幼「おい」グイ

男「なんだ、お?」

幼「約束のネギトロ丼だ。あーん」

男「ワサビいっぱい付けて」

幼「この丼一杯分に添えられてたワサビを全部付けてある」

男「よかろう」パク

幼「あんたの好みくらい大体知ってる...今の無し」

幼妹「言ってから恥ずかしがるなよ姉ちゃん」ニヤニヤ

幼「うるさいわね。ワサビ鼻に突っ込むわよ」

幼妹「もう無いでしょ?全部兄ちゃんにアーンってしてあげたんだから。アーンって」

幼「ぐぅ...っ」スパンッ

幼妹「アウチ!」

妹「良い音出たね~」

幼妹「叩かなくて良いじゃん!非暴力不服従!」

幼「馬鹿な事言ってないでお弁当食べなさいよ。周りに迷惑よ」

幼妹「ハイハイ食べますよ。私はちゃんと持って来たもんねー。お弁当包みの中にカントリーマアム入れてた姉ちゃんと違って」

幼「ちょ、あんた見てたんならとめなさいよ!」

幼妹「やだよ。寝ぼけてる姉ちゃん面白いもん」

「あっ!」

幼妹「ん?」

陸上部員「幼妹ちゃ~ん!昨日ぶり!」

幼妹「あ、こんにちは...」

陸上部員「どう?入部考えてくれた?今日は体験来られるかな?あ、もうすぐ部長もここに来ると思うんだけどさー」

幼妹「えーとぉ...」

男「おい。コイツが今メシ食ってんの見えねぇのか?」

陸上部員「...お前には話してねぇよ」

男「しつけぇ。目障りだっつってんだよ」

陸上部員「だから、話に入ってくんなって」

陸上部部長「おい、やめろ」

陸上部員「あ、ちわっス」

男「よう。物食ってる相手にペチャクチャ話し掛けるとか、大層ご感心な勧誘だな」

部長「悪いな。新入生勧誘はどこも戦争みたいな雰囲気なんだよ。特に運動部はね」

男「まぁ分かるけどさ」

部長「...ちょっと良いだろうか?」

男「あん?」

部長「食べながらで構わない」

妹「あ、あの...」
幼「ちょっと...」

部長「む?」

男「良いぞ別に。言えよ」

部長「あ、あぁ」

妹(お兄ちゃん、かなーり怒ってるパティーンの奴や...)
幼(結構キてるわね...カントリーマアムあげたら落ち着くかしら)

部長「昨日の夜、お前の事を考えてたんだ」

男「だから何でお前はいっつもギリギリな発言すんの?」

部長「...?何の事だ...?」

男「天然かよ。まぁ良いや、続けろ」

部長「お前もいい加減陸上部とはケリを付けたいだろう。ダラダラと勧誘されるのもうざったいだろうからな」

男「自覚あるんなら最初からやるなっての」

部長「...勝負をしよう」

男「は?」

部長「決着を付けようじゃないか」

男「短距離走?」

部長「いいや、違う...それだと僕に勝ち目が無いからね」

幼(陸上部の部長が言うセリフとは思えないわね...)

妹(お兄ちゃんが本気で走ってるのなんか、私のチーズ蒸しパン強奪した時くらいしか見た事無いんだけど...そんなに速いのかなぁ?)

男「じゃあ何だよ」

部長「相撲だよ。能力相撲」

男「何それ」

部長「普通の相撲と一緒さ。能力を使って良い、ってだけでね」

男「ふぅん...」

部長「で、どうだい?もしお前が勝てば、もう僕はお前と、そこの幼妹さんの勧誘を諦めよう。僕が勝てば、二人には陸上部に入ってもらう」

男「あぁそう...」

部長「あ、そうか...君の能力は知ってるよ。他の能力者がいないと話にならないんだってね。特別に土俵の外の人間に触れる事を許可しよう」

男「...」

妹(やべぇ)
幼(やべぇ)

部長「どうだい?やるか?」

男「...考えとく」

部長「そうか。分かった。時間とって済まなかったね。君達も」

妹「い、いえいえ」ブルブル

部長「それじゃ」スッ

男「...」

妹「...お兄ちゃん?」

幼妹「...兄ちゃん、私の事は気にしなくて良いよ...?別に部活入っても良いし...」

幼「えっと...」

男「...帰るわ」ガタ

妹「えっ?」

幼「...」

~~~
キーンコーンカーンコーン

教師「えー男が体調不良で早退、と...はい授業始めまーす」

友「(なんかあったん?)」

幼「...」

友「(無視っすか...?)」

幼(男……)

♪ジャンジャカジャンジャカジャンジャカ♪♪

男「......」スッ

ドゴンッ!!!!!

♪ジャカジャカジャカジャカジャカ......

『99』デケデン!

「なんだアイツ...」
「すごい音したぞ今...」

『記録更新!!』パッパラパー♪

男「...」

「へぇ、この一位から五位、全部君か。すごいな」

男「あ...?」

生徒会長「やぁ」

男「あ...ちわ」

生徒会長「学校サボってゲーセンでパンチ王決定戦かい?楽しそうだね。良いと思うよ」

男「...貴女こそ、生徒会長がこんなトコ来てて良いんですか」

生徒会長「私だって学生だ。放課後にゲーセンぐらい来てもバチは当たらんさ」

男「放課後...?」

生徒会長「もう五時を過ぎたよ」

男「え...ホントだ」

生徒会長「...だいぶ荒れてるね。君は何か思い悩む事があったら、身体を無茶苦茶に動かすよね。この後はバッティングセンターかな?」

男「え、なんで...」

生徒会長「何で分かるのか、って?私も『そう』だからさ」

男「...」

生徒会長「あ、そうそう、こないだ『今度一緒にゲーセン行く』って約束したよな。あれ今日にしよう」

男「え?」

生徒会長「遊ぶぞ。少年」

~~~

生徒会長「さて...最終決戦と行こうじゃないか...」

男「ええ...」

生徒会長「私の手にはじゃがりこの景品用ビックサイズ...そして君は手ぶらだ...」

男(これで...決める!)

ティロティロティロティロ♪

生徒会長「サメを取ろうとしてるだろ」

男「はい」

生徒会長「その手前のペンギンにしたまえ、そっちの方が可愛い」

男「は?」

ティロティロティロティロ♪

生徒会長「おぉっ」

ティロティロティロティロ♪
ウィーン...

男「おっ」

ティロティロリン♪

ポスッ

男?生徒会長「おぉ~~!!!」

男「コレで引き分けですね...」ガコン

生徒会長「...」ジーッ

男「?」

生徒会長「こ、このじゃがりこをあげる」スッ

男「は?いや、でも」

生徒会長「だから、その、ペンギンさんを譲ってくれないか...?」

男「あぁ、これ?別に良いですけど」

生徒会長「やった!」

男「そんなに気に入りました?ペンギンのぬいぐるみ」

生徒会長「あぁ、実に可愛らしい。おっ?コイツ『氷山にいさん』という名前らしいぞ」

男「氷山にいさん...?」

生徒会長「可愛いなぁ氷山にいさん」モフモフ

男「何を思ってその名前にしたんだろう...」

生徒会長「さて、次は何をするかね」モフモフ

男「まだ勝負続いてるんですか」

生徒会長「当然だろう。あ、そうだ」

男「?」

生徒会長「...君に今までに無い経験をさせてやろう」スッ

チュッ

男「...!?!?!?」

生徒会長「ははは、まっかっか」

男「何すんですか!!!」

生徒会長「ホッペぐらい気にするなよ」

男「気にするわ!童貞舐めんな!!」

生徒会長「はっはっは。だって君に触れないといけないんだろう?」

男「だからってキスする必要...って、え?」

生徒会長「空飛んでみようぜ」

~~~~

生徒会長「あっははははは!!!」

男「うわぁああああああああああああああ!!!!!!!!!」

生徒会長「ほら!電波塔見えて来たよ!!」

男「うわああああ高ぇええええ!!!!怖ぇええぇうわあああああ!!!うわあああああああああ!!!!!!!」

生徒会長「あはははは!!!ごーる!!」フワッ

男「おわぁっ」ドサッゴロゴロゴロゴロ

生徒会長「はっはっは。アホウドリにも負けない着地だな」

男「はぁ...はぁ...良く...平気で...いられますね...」

生徒会長「慣れたからな!走る程のスピードしか出ないが、高度200mだとまた違って見えるだろう?」

男「トラウマになりましたよ...」

生徒会長「まぁ座りたまえ。休憩しよう」

男「はい...」

生徒会長「...なんか、能力での勝負をふっかけられたらしいじゃないか」

男「...知ってたんですね」

生徒会長「少し気になる事があってね。調べていたら、君の名前が耳に入った」

男「...」

生徒会長「勝負したくないのかい?」

男「いや、なんつーか...俺、自分の能力嫌いなんですよ」

生徒会長「...まぁ、薄々気付いてたけど。そんなにか」

男「はい、もう大っ嫌い。他力本願で優柔不断。一人じゃ何にも出来ないヘタレな能力...こんなんだったら、気付かなければ良かった」

生徒会長「...そうかなぁ」

男「そうですよ」

生徒会長「私はそんな風に思って無いけどなぁ」

男「...?」

生徒会長「私の能力はね、飛行というよりは浮遊に近いのかな。スピードも出ないし、浮かべられるのは私が持てるくらいの重さが精一杯」

男「...それでも、空を飛ぶっていうのは人間の大きな夢じゃないですか?」

生徒会長「そうかも知れないね。でもそれは、誰もが飛べる技術を作ってこその物だろう?私一人が飛べたって何も凄く無い」

男「そうですかね」

生徒会長「だからね、私は嬉しいんだよ」

男「ん?」

生徒会長「こうやって、能力を分かちあって、一緒に飛んでくれる人がいてくれるっていう事が」

男「...」

生徒会長「だから私はね、君の能力は、どこまでも相手の立場に近付ける、優しい能力だと思うんだよ、うん」

男「...」

生徒会長「な、何か言ってくれないか。さすがに一人で語るのは恥ずかしいんだが...」

男「あの、先輩」

生徒会長「ん」

男「ちょっと、頼みがあるんです」

生徒会長「言ってみろ。可愛い後輩の頼み事だ。大抵の事は力を貸すよ」

~~~
男「...」

『あと、優しい先輩から忠告だ。君の可愛い幼馴染みちゃん、物凄く心配してたぞ。帰ったらお礼と謝罪しとけ』

男「...ただいまぁ」ガチャ

母「遅いわよアンタ。幼ちゃん和室で待ってるわよ」

男「おう、悪ぃ」

母「あら、やけに殊勝ね、珍しい」

男「ただいま」ガラッ

幼「!」

妹「お兄ちゃん!」

幼妹「何そのでっかいじゃがりこ!」

男「ほらよ」

幼妹「あざーす!」

幼「あの、大丈夫、なの?」

男「...おう、心配かけた」

幼「いや、良いんだけど...」

男「ありがとな」ポン

幼「なっ!触るな!」

男「ははは」ナデナデ

幼「ううう!」バシッ

男「いてっ!」

幼妹「さて、兄ちゃん帰ってきたし、私も帰るわ」ジャガリコジャガリコ

男「あ、すまん、ちょっと良いか?」

幼妹「お?」ジャガリコ?

男「...ちょっと、協力して欲しいんだ」

~翌日、学校にて~

男「...とゆー訳なんだが」

友「おう。良く分かんねぇけど」

女「...了解。男を手伝う」

男「助かる」

幼「...ホントに出来るの?昨日言ってた事...」

男「さぁな。でも俺なりに俺の能力と向き合って考えた作戦だから、別に上手くいかなくても良いし」

幼「よ、良くないよ」

男「そうか?」

幼「せっかく認めてあげたんだから、アンタの能力もちゃんと発揮しなきゃ」

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