青ピ「いらっしゃい——」 (78)
ニュー即VIPで立てたのですが、さるさんで途中で落ちたのでこちらに。内容も同じです
SS書いたのは初めてなのでご了承を。一応最後までは書ききってます
本編から約2年後のとあるパン屋——
青ピ「いらっしゃい——ああ、上やん——ませ。お一人様ですかー?」
上条「おう。…ってそれおかしくないか?パン屋だろこの店」
青ピ「ああ、そういえばそやね。ちょっとボケとったわ」
上条「この歳でかよ…ちゃんと勉強してんのか?」
上条「毎日脳に刺激与えねーとさ、俺は説教とか好きじゃないけどさ、受験生ならもっと———」
青ピ「いやな、ここ二ヶ月ほどウチを喫茶店やと勘違いしとるカップルが安いの一個だけ頼んで何時間も居座っとるせいで」
青ピ「それっぽいのが入ってきたらこっちまで喫茶店感覚になってしもうてなあ、やあ、参った参った」
上条「はい、チョココルネ一つ!」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367670376
青ピ「ありゃーす!ワンコインコーナーから一点で、もちろん100円になりまーす!」
青ピ「そのカップルなんやけどね、毎日毎日何しとるかって受験勉強なんやけどな」
上条「あれ、百円玉無いな…」
青ピ「彼氏の方がそれはそれは物分りのわっるぅ〜いオトコでなあ」
上条「まあいいか千円札で………うそ、もう三枚しかない…」
青ピ「彼女サンがさながらお子様向け教材ビデオの如く分っっっかりやすい説明をしとるのに、部分積分の形を何度も間違えたり」
上条「諭吉さんもいない…なんで?まだ下ろして五日…」
青ピ「been toの分でハワイになったことがある〜とかオカルトチックな訳したり」
上条「あ、昨日のアレか…不幸…じゃないけど…不幸だ」
青ピ「モーメントつり合ってるのに回転させてたり、と、まあ一々挙げるのもアホらしゅうなるんやけど」
上条「今月三千円生活か…キツイなあ…」
青ピ「そんでな、こないだ模試帰ってきたんやけどな、その彼氏クンは志望校判定ギリCでな」
上条「タイムセールは…今日はやってないな…」
青ピ「あ、ギリC言うてもBとのとちゃうよ?あと偏差値1低かったらD判定やったんやと」
上条「冷蔵庫は…またもやしで食いつなぐ日々が始まるのか…」
青ピ「ちなみに数�Cと英語なんかあと10点そこらでボクにダブルスコア——」
上条「すいませんでしたぁーーーッ!!!焼きそばパン追加で!!」
青ピ「ありゃりゃーっす!現在計220円になりまーす!新商品の『ダークマパン☆』はご一緒に如何でしょうか!」
上条「や、もうほんと勘弁して…マジだから、上条さんのお財布事情マジだから」
青ピ「シャレやシャレ…220円になりまーす。で、昨日アレとか言うとったっけ?何買ったん?」
上条「あ、ダークパンだけなんだ、洒落って…や、そんなんじゃなくてな?昨日補修終わった後の話なんだけどさ。ほい」
青ピ「はいはいっと…1000と20円になりまーす。あとダークマパンね」ピッピッピーガシャン
上条「そいで、さあタイムセールだ、って急いで向かってたんだけど、事故だか何だかでいつもの道が通行止めで」
上条「大通りからだとかなり遠回りだったんだよ。で、時間なかったから路地裏抜けて短縮することにしたんだけどさ」
青ピ「そりゃまた不幸の予感やなあ。レシートいる?いらんよね?」
上条「ん、いい。…あー、そしたらさ、二つ曲がった所で女の子がすんげ焦った顔でなんか探してたんだよ」
上条「三つ下くらいだったかな?話聞いたらこの辺で財布落としてたの今さっき気付いたらしくて、しかもすぐに六千円ほど入用らしくてさ」
上条「テンパってて嘘ついてるようにも見えなかったから、一緒に捜したんだけど見つかんなくて」
上条「あんまり良いことじゃないだろうけど、とりあえず1万貸してその場はなんとかすることにしたんだよ」
上条「でも二人共焦ってたんだろうな、連絡先聞くの忘れちゃってて……タイムセールも逃したし……不幸だ」
青ピ「お釣りいる?いらんよね?募金箱突っ込んどきますわ。よっ、太っ腹!」
上条「人の話聞いてた!?金無いつったんだよ俺!」
青ピ「ちゃーんと聞いとったよ?此度もお忙しい中のフラグ建築、ご苦労様です」
上条「ああ…、や、でもさ、普通そんな状況だったら貸すだろ?お前だってそうするよな?」
青ピ「知らんよ。どんな必然的な状況であれ上やんというだけでもうムカつくわ」
上条「お前ホントに友達?あと返せよ800円」
青ピ「はあ、で?王子様を必死に探し回っていた彼女と偶然再会して?お色気イベントの一つ二つ三つ四つ挟みつつ?」
青ピ「お返しついでにデート的なお誘いとか?むしろ私をプレゼント的な?ハッ、良いご身分ですなD判定」
上条「ギリCだから!つか言ってて悲しくなるわ!」
上条「…まあでも、今月もや死しかねないし…もっかい会えるなら会いたいな」
青ピ「『【朗報】上条当麻、浮気認める 被害者は一人あるいは複数、A〜Gカップの中学生または高校生、もしくはその範囲外もありうる。
女性といわれているが、男性である可能性も否定できない。計画的でなければ突発的な犯行』…っと」ピッピッピッ
青ピ「よし、送し」
上条「させねえよ!?つかどこ送る気だ!!」
青ピ「まずは友達フォルダ内全部?」
上条「お前地味に交友関係広いんだから止してくれ…」
青ピ「上やんに言われたないよ」
上条「あとなんで朗報?」
青ピ「聞きたいん?」
上条「いや、いい。…現場行ってみたら会えたりしないかなあ」
青ピ「可能性としてはあるやろなあ」ピピピピッ
上条「青髪、ジャッジメントの方に頼んで…無理か、犯罪でもないし」
青ピ「うーん、どうやろねえ。でもご飯なら彼女サンに作ってもらえばええんやないの」ピロリン
上条「いやそんな毎日世話になるのは…」
上条「……え、なに今のピロリンて」
青ピ「メールのさくじょ、さくじょ」
上条「削除でピロリンって鳴るか?」
青ピ「ボクのは鳴るよ、いやー、一々うるそうてめんどいわー」
上条「ふーん」
上条「………」
上条「青髪君、こっちを向いて話してごらん」
青髪「何言うてんの上条君、めちゃめちゃそっち向いてるやないの」
上条「顔だけな?右斜め45度見てても俺はいないぞ?」
上条「…送ったのか?送ったんだな?さっきのデマ記事拡散したんだな!?」
青ピ「その幻想を?」
上条「ぶち[ピーーー]ぞお前!?中学生ってとこしか合ってねえじゃねーか!いや違うけどね!?浮気してないし!」
青ピ「わーっとるわーっとる、そんな質の悪いいたずらせえへんよボク」
上条「ほ、ほんとか?」
青ピ「ホントホント、ジョークジョーク」
上条「ところでまだお釣りもらってないんだけど」
青ピ「いらっしゃいませー!本日発売の新商品、奇抜なデザインが目印の『ダークマパン☆』、好評販売中でーす!」
上条「おい!」
青ピ「…と」
垣根「あれ、上条じゃん。勉強は?諦めた?」ウィーン
上条「垣根か。…いや、ちょっと休憩してるだけだから」
垣根「お前サボってる暇ないだろ。なんだっけ、D?」
上条「C!」
青髪「ギリね。ていとくん10分遅いでー」
垣根「オウ、わり。直前でちょっと呼び出されてな」
青髪「大丈夫やったん?」
垣根「いや、全然」
青ピ「は?」
垣根「温泉旅行の計画がーとか言ってたけど、どう考えてもバイトに食い込むから後で店来いって言っといた」
青ピ「…もしかして相手彼女?」
垣根「そう」
上条「呼び出しって普通のかよ!」
垣根「ん、紛らわしかったか?」
青ピ「ゲホッゴホッ、なんか空気悪いなあ上やん?」
上条「換気しろ換気、カブトムシ臭くてたまらねえや!」
垣根「テメエ等羽でド突いて進学絶望的にしてやろうか?あと人のこと言えねーだろ」
青ピ「…ところでなんでカブトムシなん?みんな言うからなんとなーく乗っとるけど」
上条「いや実は俺もよく知らないんだけどさ、一方通行と麦野さんがゲラッゲラ笑ってたな。実際どうなの?」
垣根「…ハア」
青ピ「ため息」
上条「つくような話?」
垣根「どっちかってーと、な。つまんねー話だ」
青ピ「黒歴史?」
上条「いや垣根のことだし白歴史とか言うんじゃね」
垣根「いらっしゃいやせぇー!!本日発売の新商品、運試し要素もある『ダークマパン☆』、好評販売中でぇーす!」
上条「ああ、そのダークパンてさ」
垣根「ダークマパン」
上条「語呂悪いしダークパンでいいじゃん」
垣根「んな厨二全開なネーミングで、お子様が手に取ってくれるわけねーだろ?」
垣根「間に『マ』って入れるだけで、ホレ、クマさん的要素も取り入れて親しみやすさアップだ」
青ピ「親しみ…ふむ、なら女性客への親しみと敬意を込めて『おっぱん』とか」
垣根「黙れ変態」
上条「お釣り返せ変態」
上条「てゆか、え、熊なのコレ。なんか羽みたいなのついてるんだけど。尻尾3本あるし」
青ピ「口裂けとるしどこの妖怪やこれ」
垣根「まあ、普通に作ってたら氾濫する量産型のパチモン共に埋もれちまうからな。一目でわかるように個性つけねーと」
上条「個性的過ぎて親しみやすさが埋もれてるんだけど」
青ピ「装飾過多にもほどがあるやろ!熊との共通点が4本足ってとこしかないやんか!」
垣根「いや、それ前足じゃなくて触覚」
青ピ「触覚!?なんか短いと思ったら!」
上条「メルヘンとすら呼べねえわ…なにこのバケモノ」
垣根「るっせーな、クレームばっかつけてねーで食ってみろ!」
垣根「食いモンなんざ食っちまえば見た目グロかろうが関係ねーんだよ!」
青ピ「ぶっちゃけおったでこいつ」
上条「デザインしくじった自覚はあったんだな。…え、でも俺金無いからこれ以上はちょっと」
青ピ「あ、そうやていとくん!こいつ浮気しよったで!」
上条「言うなよ!違うからな!?」
垣根「節操ねーなお前…いいよ、試食だ試食。料金は俺が持つから」
青ピ「マジで!?おおきに!」
垣根「お前には言ってねーよ」
上条「じゃ遠慮なく」
上条「…ん。中身は意外と普通だな。クリームと…お、ブルーベリー混じってる」
垣根「お子様向けだからな。ボリュームあるからコスパも…お、いらっしゃいませー」
青ピ「ませー」
初春「どうもでーす」
垣根「お前か…」
初春「はい、私です。カブトムシコールしようかとも思いましたが、パンのために参上しました」
垣根「これってなんて返せばいいの?」
青ピ「お礼言えばええんとちゃう?」
初春「いえいえ、お礼参りだなんてそんな。ちょっとくらいしかありませんよ」
垣根「ありがた迷惑でございまーす」
上条「えっと、初春だっけ?よくこの店来る子だよな?…垣根目当てで」
垣根「黙ってろ」
初春「はい、初春飾利と申します。えーっと、そちらは…」
上条「上条な。上条当麻だ」
初春「あーそうですそうです上条さん。日ごろよくあちらの席で物分りの悪さを指摘されていたので印象に残っておりますはい」
上条「ここに来るやつは俺の頭イジらねーと気がすまないの?」
青ピ「そりゃあもう10月の半ばでなあ、E判定なんか取ったらなあ」
上条「つっこまねえぞ」
初春「はー、大学ってE判定までありましたっけ?」
垣根「おう、『諦めたほうがE(いい)』の略称だな」
初春「うわあテキトー」
青ピ「まあ模試の種類で違いはあるけど、大体DかEまでやな」
上条「一応Cってボーダーラインではあるんだけどなあ…ギリ」
青ピ「だって君、どうせこの後もしょっちゅう休むのやろ?入院とかで」
上条「不吉なこと言うのやめてくれる!?俺は怪我したくてしてるわけじゃないの!」
初春「そんなにお体弱いんですか?」
垣根「いや、むしろ逆。けどまあ4分の1くらいは自業自得だろな。ここまで来ると」
上条「…で、初春はパンどれにする?気をつけろよ、ここの店員一品だけだと客なじりだすから」
青ピ「上やんだけやて」
初春「あ、えっとそうですねー。先ほどからエキセントリックな物体が視界にちらついて気にはなってるんですけどー」
初春「気になる見た目なだけに手を出していいものかと、はい」
垣根「もういいっつの見た目の話は、もうワンセットやったから、飽きたから」
初春「あ、ていとくん考案なんですね、やっぱり」
上条「まあ、見た目はアレでも中身は甘くて普通だったぞ。」
垣根「ホレ、お前のも料金持ってやるから試——」
初春「いただきまーす」
青ピ「はやっ!」
上条「み、見えなかった…」
初春「………」
初春「ブハァッ!!」
上条「噴いた!?」
青ピ「ど、どないした初春ちゃん!?未元物質でも混入しとったか!?」 チャラララ〜
初春「ああああのっあのっ、超辛いんですけど、未元物質っていうか暗黒物質と見紛うようなカレーがギュウギュウに詰め込まれて中身真っ黒なんですけど」
垣根「ああ、同じ味じゃ面白くねーから、中身それぞれ変えてんだよ」
青ピ「結局中身もエキセントリックなんかい!」
垣根「いや、ハリ○タにならって鼻糞味とか入れようかと思ったけどな、誘波に止められた」
初春「あのー、ここに乙女いるんですけど、あまつさえ口に含んでる時にそういうお話やめてくれません?」
垣根「あー、わりわり。水汲んでくるわ、見ての通り空いてるから座ってろ」
初春「ロイヤルミルクティーでおねがいしまーす!おごりで!」
上条「余裕じゃん」
初春「まー甘いものって先入観があったのでビックリしましたけど、落ち着いてみれば普通のピリ辛カレーパンでしたね」
上条「というか、なんで青ピは中身知らないんだよ」
青ピ「ていとくんはネタ枠やからな。誘波さんのならいつも食べさしてもろとるけど」
垣根「…そんなひどいか?ん」
初春「あ、どうもです」
青ピ「んー女の子向けにハリネズミパンってのがあったんやけどな」
上条「かわいらしい感じか」
青ピ「コンセプトは多分なあ。でも胴体ペラッペラで針10センチくらいあった」
上条「それただの剣山じゃね?」
垣根「いやあれはイメージを強調してだな」
初春「あーおいしー、人の250円で飲むドリンクー」
上条「だから極端すぎるだろ…」
青ピ「一針一針カッチカチでな、噛まな飲み込めんし噛む度に口ん中で暴れまわるし」
上条「うわぁ…」
垣根「だってお前、アイツらの針は敵から身を守るためについてるわけであってな、そこは精巧に再現してやらないと失礼に」
青ピ「お客様敵に回してどないすんの…」
初春「そういえば正しい手順で食べていかないと爆発するーなんてのもありましたねー」
上条「なにその地雷パン」
垣根「違う、ブラッディブレッド(血まみれパン)だ。爆発したらトマトケチャップが顔面を襲う」
上条「なんなんだよその客を攻撃することに対する飽くなき執念は!?」
青ピ「まあ当然売れなんだのやけどね。唯一買うたお客さんもブチ切れてはったし」
初春「あーでも既に全身真っ赤っかーでしたから一周回ってお似合いでしたよ。笑えました、陰で」
上条「さっきのダーク…マパンって奇跡だったんだな…」
青ピ「や、たまーに凄いの作るんよ?城とか」
上条「城?」
初春「この前みんなで食べたんですけど、も、どこのグリム童話だっで感じで」
初春「チョコ・ストロベリークリームでコーティングしたビスケットやらスナックやらだけでは飽きたらず」
初春「フルーツ、アイス、シロップでこれでもか、これでもか、これでもかーと彩られ、それはもう製作者の性格が顕在化したような出来でした」
上条「それもうパンじゃなくね?」
初春「ま、そこ責められると弱いんですけどー」
青ピ「でもあの超ボリュームで4500円ならかなり人気出たやろなあ…あぁもったいない」
上条「?」
垣根「4個作ったら疲れた。というか飽きた」
上条「自由すぎるだろお前…」
垣根「最初のは楽しかったんだよ…でもいざやり直してみると自分のしでかしたことの恐ろしさにな…」
初春「機械とかじゃ無理だったんですか?」
垣根「ん、ウチにそんな資金ないし」
青ピ「ちっさいからなーうちの店」
初春「まあ…あの後カロリー計算した時の衝撃を思い返すに、本当に売れるかは…、未だに体重計乗れませんよええ…」
垣根「この頻度で店来てたら増える一方に決まってんだろうが」
初春「いえ、風紀委員って結構激しく体使いますから、体型の維持はできるんです。維持は」
上条「そういえば風紀委員だったっけ、初春」
青ピ「あ、せや、初春ちゃん、昨日か今日そっちの方に落とした財布の引き取りとか来てない?」
初春「はい?」
上条「財布って…ああ、さっきの話?」
青ピ「うん、その子が風紀委員支部の方に訪ねてたら、そこから接触出来んかなーと」
垣根「なんだお前ら堂々と、浮気の相談?」
上条「だからさ…」
初春「うーん、どうですかねー、私昨日は別の件で呼び出されてそれどころじゃありませんでしたし」
青ピ「ああ、そうなんや、今日は?」
初春「普通に常勤ですよ?でも他に人いなかったんで放り出してきました」
上条「おい」
初春「えー、だってー、私昨日はもともとオフだったんですよ?」
初春「友達とセブンスミストでショッピングの予定だったのに…もー、私いつ買い物すればいいのって話じゃないですか」
垣根「今だろ」
初春「えー、だって買い物なんていつでもできるじゃないですかー」
青ピ「ビックリするほど支離滅裂!」
初春「ていとくんを冷やかせる週二回しかない機会を逃すなんて、そんなもったいない」
上条「もういっそ清々しいなオイ」
青ピ「…えーっと、じゃあ、ちょっと連絡して確認とか」
初春「無理です。そんなことしたら私がここでサボってるのがバレます」
青ピ「ああ、そう…」ピッピッ
初春「まあ、2時過ぎには戻りますんで、何か御用がありましたらその時に」
上条「…2時過ぎか、それまでどーすっかなあ」
垣根「勉強しろよ。つかいつまでいんだお前」
青ピ「せやね、休憩とか言うとったけど…あー上やん、2時まで待たんでもええで」
上条「ん?」
青ピ「黒子ちゃんがここ来るって、メールが」
初春「………」
初春「え?」
上条「おお。そっか白井から支部だか本部だかに連絡してもらえば」
垣根「だぁから何の話だよ。おにーさんにもわかるように言え」
青ピ「来たら説明するから」
初春「白井さんが来るんですか!?」
青ピ「おぉ!?う、うん」
青ピ「時間は…1時ごろ…あ、もう来るわ」
垣根「ああ、サボってるのバレんだっけ?」
初春「に、逃げ…」
?「いた」ウィーン
初春「ひぃぃぃぃ!!」ダッ
青・垣「いらっさーい」
姫神「上条君。探した」
上条「ひ、姫神ぃ!?やば!」
姫神「顔見るなりなんて失礼な。…上条君、こんなとこまでトイレしにきたの?」
垣根「トイレ?」
青ピ「んー、今日は図書館で上やん、つっちー、姫神さん、吹寄さんで勉強会って話やったから」
青ピ「大方スパルタ講師2名に耐え切れず、おなか痛くなったーとか言って抜け出してきたんとちゃう?」
姫神「そう。ちなみに土御門君も一緒に消えたけどすぐ捕まえた」
垣根「囮か」
青ピ「多分お互いがお互いを囮にしたんやろなあ」
垣根「トイレとはまた安着な…ってオイ、客がカウンターまで入ってくるなよ」
初春「はぁ、はぁ、はぁ…」
初春「あの、しばらくここで隠れてても」
垣根「なんでだよ。あの白黒ピンク来ない内に帰りゃいいじゃねーか」
初春「や、いざ外出た瞬間に入口でバッタリ、と思うと…あわわわわ」
姫神「ほら上条君。戻るよ。サボった時間の三倍やる」
上条「ままままて姫神!ほら、今俺パン二つ持ってるから、図書館って飲食禁止だろ?」
姫神「じゃあ食べて。今すぐ」
上条「いいいやいやいやさ、さっき昼食ったばっかじゃん?俺食いすぎちゃってさあ、そんなすぐは食べられないかなぁ〜?」
姫神「なら食べなくていい。鞄にしまっておく」
上条「ちょ、あの、えっと、あーそうだ!実は昨日根詰め過ぎて死にそうなんだよ!お前も彼氏には元気でいてほしいよな!?」
姫神「大丈夫。私の好きになった上条君は頭の使いすぎくらいで死なない」
姫神「むしろ今まで甘やかしすぎてた。年末までにDから最低B真ん中まで上げる」
上条「シィィーーーー!!!」
姫神「似たようなもの。そもそも上条君はA判定でも不安」
垣根「小学生かよあいつは」
青ピ「やーでも最近の彼女は怖いで?吹寄さんが二人になったみたいで」
垣根「あの胸とデコと態度のデカい女?それよかお前はどうなの。同じ受験生には見えねんだけど」
青ピ「ボク?第一志望が今ギリC」
垣根「おい」
青ピ「上やんとは逆やけどね。来月以降はバイト休むやろなー」
垣根「志望校って…」
初春「ハッ!そうだ裏口!店員さん裏口貸してください!」
垣根「うわ、気付きやがった」
初春「は、はははやくはやく、助けてカブトムシさん!」
垣根「ば、鳴るだろ!」prrrrr
青ピ「カオスやなー。黒子ちゃんまだかなー」
上条「それだ!そういえば俺白井しゃんに用があるんだったったった!」
青ピ「落ち着きなさい」
姫神「…白井さん?」
垣根「ああ、浮気もみ消してとかそういう話だっけ」
姫神「え」
上条「だ!か!ら!適当なこと言うな!」
上条「昨日話したろ!?その子の落とした財布から風紀委員伝いに連絡つかないかなーと!」
姫神「…別に後でもいい。お金無いなら私が貸す。ご飯も作る」
上条「いや、悪いし、情けないと思わないか?男として」
姫神「それなら男らしく勉強して。受かって」
上条「……」
上条「…分かったよ。俺も男だ」
上条「情けないとこ見せて悪かったな。反省するよ」
垣根「お、なんか急にまともなこと言いだしたぞ」
初春「あの、そっちより早く裏口…」
上条「姫神の彼氏だもんな、俺」
上条「好きな奴と一緒に立ってて恥ずかしくない奴になるって決めたんだ」
上条「これからは心を入れ替えて———」
黒子「こんにちわですの」ウィーン
上条「うわぁい助けて白井さん!」
青ピ「入れ替わり激しいなー」
初春「あわはわわあばば」
垣根「らっしゃーせー」
青ピ「待っとったでー黒子ちゃん。探しとったものは買えたん?」
黒子「ええ。…で、突然なんですの上条先輩」
上条「あっはっは、呼び方変わっても敬意の無さは相変わらずだなあ白井!トーンで分かるぞ!」
上条「とりあえず俺を連れ出してくれ。ゆっっくり話でもしようじゃないか!」
黒子「独房にブチ込んでいいんですの?この類人猿」
青ピ「あー、恐怖心でちょっと錯乱しとるだけやから大目に見てあげてや」
垣根「錯乱してこれってどんだけ天然ジゴロだよ」
姫神「…はあ。白井さんごめんね。彼が迷惑かけて」
黒子「姫神先ぱ、…あああいえそんな!とても素敵な殿方だと思いますわよ?おほほほほ…」
姫神「…いい。気を遣わなくていい。私も半ば呆れてる」
上条「ま、まあ落ち着け姫神、とりあえず白井は来ちゃったことだし、諭吉を優先——」
黒子「ああそう、不本意ながら本当にあったのですわ。先輩にお話」
上条「へ?」
黒子「昨日の4時過ぎ、わたくしくらいの中学生に1万円お貸ししませんでした?」
青ピ「ほ?」
黒子「場所は…○△スーパー近隣ビル群の路地裏で、ああそう、近くで事故があった所なのですけど」
上条「あ、ああ、貸した…な」
黒子「やっぱりですの?はぁ…ツンツン頭と聞いてそんなことではないかと思いましたわ」
上条「あ、もしかしてあの子の方から俺のこと探してくれてたのか?」
青ピ「マジで?マジで逆シンデレラ?……もぉぉふざけろや上やん…」
黒子「というか佐天ですの」
青ピ「ええ!」
上条「誰?」
姫神「白井さんの友達。え。知らないの?」
黒子「あの子の方もそれなりにこちらにいらしてるのですが…本当にお会いしたことないんですの?」
上条「た、多分」
上条「……」
上条「…あ、でも前にもなんか貸し借りしたような気がする」
姫神「何その関係」
垣根「路地裏…中学生…一万円………口止め料?」
垣根「上条、初犯なら罪は軽」
青ピ「もうええわそのネタ。てかわざと言うとるやろ君」
黒子「あのですね上条先輩、いくら困っていたと言っても、お金の貸し借りは」
上条「す、すいません」
青ピ「ま、まあまあ黒子ちゃん、その辺で…な?上やんも反省しとるし…佐天ちゃんもやろ?」
黒子「佐天には罰として問題集一つ渡しておきました」
青ピ「キビシー!」
上条「あ、あの子財布は?見つかったのか?」
青ピ「そや、ボクも気になるわ、佐天ちゃん大ジョブなん?」
黒子「…ご安心を、紆余曲折あったが用も無事済ませて、財布も帰ってきた、とのことですの」
青ピ「おお、良かったやないか」
上条「ああ、昨日のあの子一目で一大事って分かるくらい狼狽えてたし、ホント良かったよ」
黒子「……はあ」
黒子「もういいですわ。どちらかと言えば佐天の方が非がありますし、あまり余裕もないのでしょう?」
上条「お、おう」
黒子「判定…いくつでしたっけ?」
上条「ギリシ」
青・垣「D」
上条「……Dです。もういいですそれで」
黒子「ま、まあ…ポジティブが過ぎるのも考え物ですの」
上条「ここまでボロクソに言うことなくね?」
青ピ「激励やて、激励、判定C同士がんばろうや」
垣根「そーそーちゃんと受かれば俺ら掌返すぞ」
青ピ「諭吉も帰ってきたやんか、もや死回避したしなんとかなるって」
上条「…まあ、なんとか人並みの生活は送れそうだな。これで」
姫神「うん。これで心置きなくしごける」
上条「………」
上条「白井!俺にも罰を」
黒子「諦めなさい」
上条「………」
上条「お金取りに行」
姫神「戻るよ」
上条「はい」
姫神「それじゃあ」
上条「またなー」
青・垣「ありがとうございましたー」
上条「…と、青ピ!」
青ピ「はい、800円のお返しになりまーす」
上条「ん。じゃあ今度こそ」
青ピ「またお越しくださいませー」
上条「ところで、なんで姫神は佐天さんのこと知ってたんだ?」
姫神「白井さん繋がりで。あとクラスも学年も違うけど夏期講習で偶に会ってた」
上条「へえ…」
姫神「……」
姫神「…パン。二つあるって」
上条「ん?ああ、チョココルネと焼きそば」
姫神「二人で。食べてく?」
上条「…急がなくていいの?」
姫神「仕方ない。明日から取り返す」
上条「はは…」
姫神「不幸?」
上条「全然」
姫神「…ふふっ」
姫神「逃げ出しといて良く言う」
上条「ごめんね」
垣根「やーっと減りやがったか、俺半分空気でどうしたもんかと思ったぞ」
青ピ「目立ちたがりでもないくせに」
青ピ(ところで、初春ちゃんどうしたん?)
垣根(突き出しても面白かったが、恨まれるのもアレだし隙見て逃がしといた。途中スッ転んでたけど)
青ピ(さっすが。……あれ、でもあの子結局、ていとくんの金でタダ食い飲みだけして帰ったってこと?)
垣根(女に奢んのは慣れてんの。……まあ奢られた回数はもっと多いけど)
青ピ(かっちょえー!第2位カッチェー!)
黒子「どうかしましたの?」
青ピ「うん、パンにゴミついとるかなー思ったけど、デザインやったわ」
垣根「ダークマパン見ながら言うんじゃねえよ」
黒子「ああ、それ…垣根先輩の…ですわよね」
垣根「見た目に関するコメントは受け付けません」
黒子「青髪さん、いつものメニューとエスプレッソいただけます?」
垣根「話終わり!?」
青ピ「はいはーい、アップルシナモンのパウンドケーキとクロワッサンのコーヒーセットで、420円になります。こちらでお召し上がりですねー」ピピピ
黒子「はい。…そのデザイン見て買う気にはなりませんわよ」
青ピ「1000円お預かりしまーす」
垣根「まてまて、ハードボイルドな見た目に反して中身は意外とお茶目さんだからなコイツ」
黒子「いえ、外見からしてハチャメチャですから。見たまんまですの」
青ピ「580円のお返しでーす。ありがとうございましたー」
黒子「どうも」
垣根「いや、だからハチャメチャってのは百○ビーンズくらいやってから言えよ」
垣根「少数の外れ、もとい引立て役がいるからこそ、当たりを引いた時が何倍も輝くってもんだろうが」
誘波「だからって耳糞はないでしょ…」
垣根「アン?」
(分りにくいですけど誘波は青ピらと同学年の女子高生という設定です)
青ピ「おはよー誘波さん。もう昼やで」
黒子「…今まで寝てらしたのですか?」
誘波「…んー、新メニュー考えてたらヒートアップしちまってよー。…ふぁぁ、おはようごぜーます黒子ちゃん」
黒子「?…おはようございます、でよろしいんですの?」
垣根「客の前で欠伸すんなよ、顔洗ってこい顔」
誘波「いやっす、まだ寝たいンで」
青ピ「…まあ、自由気ままなネタ枠と違って忙しいからなあ」
垣根「なんだ、俺がバイト感覚で遊んでるみたいに」
黒子「ツッコミ待ちですの?…ああ、ここのエスプレッソおいしいですわ」
誘波「かかか、オレっち責任じゅーだいだもんねぃーだ」
黒子「あの…誘波さん?喋り方がさっきから変じゃありませんこと?」
誘波「今年の流行りはパン食系女子だぜー。ウヘヘ………あり、一時?もう夜か」
青ピ「寝惚けてんのかな?」
垣根「口調定まってねーよ。ウゼエから寝るか顔洗うかして来い、よっ!」
誘波「いた、痛っ!なんじゃあ垣根ぇー、尻蹴るとかアナリストかワレぇ!!」
垣根「ああああマジでうっぜぇなこのテンション!!」
青ピ「ちょ、君ら声デカいから、特に誘波さん口閉じて!」
黒子「食事中なのですが…」
垣根「いいから奥に引っ込め!店内外の皆様と俺様に迷惑だ。主に俺に迷惑だ」
誘波「むー…、んっだよ、チキショー……」
垣根「キャラ固めて出直してきやがれっつの」
黒子「パン屋で迷惑防止条例に抵触しかねるとは…」
青ピ「酒飲んでたんとちゃうやろなあの子」
垣根「……あー、思い出した。やたらムカつくと思ったら一昔前の麦野と被んだ」
青ピ「また耳に入ったら面倒を呼びそうなことを…」
黒子「どちら様ですの?」
青ピ「ボクの友達の同僚さん。まあ、強烈な人やね」
垣根「ばっかお前、昔のアレなんか今の比じゃねーぞ?」
黒子「陰口ですか?…コーヒーのおかわりくださる?」
青ピ「はいはーい」
垣根「あー違う違う、今は昔と比べてそんだけまともになったって意味だよ。褒めてんの」
青ピ「へえ、人に歴史ありってやつかな?どうぞ、熱いのでご注意ください」
垣根「…まあな、詳細は省くが」
黒子「ありがとうございます」
青ピ「いつも飲んでるけど、お気に入り?」
黒子「ええ、あまり高級感はないまでも、落ち着いた味わいがとても」
垣根「口を開けばエログロ用語のオンパレードで、まさに人の皮を被ったNGワード大全—」
誘波「ねー」
青ピ「うわ戻ってきた!」
垣根「引っ込めっつったろうがぁ!」
誘波「ウチに花瓶なんてあったっけ?」
青ピ「はい?」
誘波「んー、寝る前にトイレ行こうと思ったんだけど、廊下になんか落ちてるのが見えて」
誘波「何かなーと思ったらこんな花びらが、同じとこにあと二枚ほど落ちてたよ?」
垣根「ああ?花びらがなんだっつーんだよ、そんなもんテメーの足の付け根見りゃいくらでも…花びら?」
青ピ「………」
垣根「………」
青・垣「あ」
黒子「…あら?それって…」
垣根「ンだよ掃除くらいしとけっつの。あんさ、お客様に見えない場所だからって油断してんじゃねーぞ?」
垣根「例え1立方cmだろうがな、不潔な所がちょっとでもあったらそれは必ず店の雰囲気の中に現れちまうもんなの」
垣根「従業員一人一人の心構えが大事なんだよ、オォ?分かったらそのきったねーゴミ俺に寄——」
黒子「ちょっとそれ貸してくださいます?」ヒュンッ
垣根「ちょ」
誘波「うん、いいよ」
黒子「どうも」
黒子「………」
垣根(いいか、あれは風で入ってきて、今日たまっっったま誘波のアホが見つけただけの花だ)
垣根(俺たちは白黒ピンクに疑念を一瞬でも抱かせた時点で負けだ、分かったな?)
青ピ(了解!!)
黒子「………」
黒子「…青髪さん」
青ピ「ど、どないしたん?」
垣根(どもるなァー!!)
黒子「……あぁ」
黒子「…ちょっと失礼します」
<ピ、ピ、ピ......モシモシ?シライデス...エエ、オツカレサマデスノ...アノ、オテスウデスガシブノジンインヲカクニンナサッテホシイデスガ...
<エエ、モウシワケアリマセン..ゼヒ、エエ....アリガトウゴザイマス
<...........ハイ....ソウデシタカ..スミマセン.....イエ、カノジョニハコチラカラキツクオシオキシテオキマスノデ...エエ
<アリガトウゴザイマス...デハ..ピピピピ...................
<ウゥゥゥイィィィハァァァルゥゥゥゥゥ!?
青ピ「…ていとくん」
誘波「あの…なんか私不味かった?」
垣根「…いや。義理は果たした。自業自得だ。俺らに罪はない」
青ピ「初春ちゃん、安らかに眠れ…今度はもっとまじめな子に生まれ変わろうな…」
誘波「意味分かんないんだけど…いっか。もう一眠りしてくるー」
青ピ「おやすみー」
黒子「ふぅ…、申し訳ありませんですの、急用ができましたわ」
青ピ「はは……彼女、どこにおるって?」
黒子「初春自身は支部で粉骨砕身、孤軍奮闘…とか言ってましたわね」
黒子「まあ、昨日ショッピングふいにしたこと散々愚痴ってましたから、大方…」
垣根「ん」prrrrrrr
青ピ「あ、呼び出し?」
垣根「ああ、カブトムシの方な。場所は…」
垣根「…セブンスミスト」
青ピ「………移動、早いね」
黒子「はぁ…」
垣根「大人しく帰れよあのアホ…」
黒子「…と、言うわけですので。迎えに行ってきます…から」
黒子「青髪さん、申し訳ありませんがこちらのクロワッサンを包んでくださる?」
青ピ「ああ、誘波さんのゴタゴタであんまり手ぇ付けられなかったもんね」
黒子「連行した後、支部の方でいただきますわ」
垣根「コーヒーは?」
黒子「今すぐ飲みます」
青ピ「すぐ動いたらお腹にわるない?」
黒子「残すのはお行儀が悪いですの。……熱っ!」
青ピ「ああもうそんな一気に飲むから…」
垣根「でも噴出さないあたりはさすが淑女だな」
黒子「いや、そんなこと実際にする人はさすがにいないでしょう」
青ピ「…」
垣根「…」
黒子「…ん、ご馳走様ですの」
青ピ「はいクロワッサン」
黒子「どうもですの。……ええと」
青ピ「うん。ほなまた」
黒子「……それでは」ヒュン
青ピ「気を付けてなー。聞こえてえんけど」
垣根「あいつらも受験生だろ。こんなことしてて大丈夫なの」
青ピ「二人共とーっても優秀やからなあ。ボクと佐天ちゃんはもっぱら教わっとる感じやねー」
垣根「ダッセ。上条といいそんなんばっかか」
青ピ「ていとくんそれはズルいわー。塾講師様に言われたら反論できるわけあらへんやん」
垣根「関係ねーよ。単に学力の問題だ」
垣根「大体な?彼氏彼女の勉強会なんて、体のいい口実でしかねーんだよ。イチャコラする理由がほしいだけ」
青ピ「今の彼女さんとも塾で?」
垣根「おい聞けよ。恋バナしても点数は上がんねえぞ」
青ピ「ええやんか〜オトコ同士で花咲かそうや〜」
垣根「キモい、伸ばすな語尾を……いや、知り合ったのは別ルート」
垣根「ああ…でもキッカケといえば……そうか?」
青ピ「おおー!二人っきりの教室で個人授業とか?ええわー、経験したいわーそんなシチュ」
垣根「ねーよ。そもそもアイツらに本来授業なんて必要ないし」
青ピ「いやいや、長い人生、本当に無駄なことなんて案外ないもんなんやて」
垣根「ハッ、なんだそりゃ」
青ピ「って小萌先生が言ってた」
垣根「……シュール…」
青ピ「というわけで廊下の掃除してきてくれへん?」
垣根「どういうわけ!?」
青ピ「誘波さんが言うてたやんか、花びら他にも落ちとったーって。ほっとくのも締まり悪いやん?」
垣根「テメエで行けよ。なんで俺が」
青ピ「ほら、だってあの翼。掃き掃除とかうってつけやん?」
垣根「無駄だわ。その使い方だけはいくらなんでも無駄だわ……ったく、覚えてろよ」テクテク
青ピ「お、やっさしーい!さすが第2位様、今輝いてるでえ!」
垣根「くたばれ」バタン!!
青ピ「はは…」
青ピ「………」
黒子「強引過ぎじゃありませんこと?」ヒュン
青ピ「あ、おかえりー。なんか忘れ物?」
黒子「白々しい…今日はお仕事の後どうしますの?」
青ピ「うーん、そう何度もお邪魔するのも悪いし…今日は遠慮しとくよ」
黒子「別にいいのに…」
青ピ「それに、人前で男性とイチャつくのは恥ずかしいのやろ?」
黒子「それは…まあ…ちょっと」
青ピ「ええよ、その代わり明日ちゃんとデートしよ」
黒子「といってもただの勉強会ですけどね」
青ピ「ぐ…でもていとくんはイチャコラする口実って言っとったで?」
黒子「あら、そんな失態をこの黒子が犯したことありましたっけ?」
青ピ「…」
黒子「…まあたまになら仕方ありませんわね」
青ピ「うん、仕方ない」
黒子「とにかく上条先輩のこと言っていられる立場ではないですの。上だろうが下だろうがCはCですから」
青ピ「高め設定し過ぎたかなあ…」
黒子「やめます?」
青ピ「いんや、やれるだけやったるよ」
<オーイ!マジデハネダシテヤッテヤッタゾー!
黒子「…戻ってきましたわね」
青ピ「そりゃ、拾ってくるだけやし」
黒子「まったく、2時半の仕事までゆっくりしていくつもりだったのに……初春に八つ当たりでの」
青ピ「お手柔らかになー」
黒子「……」
青ピ「……」
黒子「…では、今度こそ」
青ピ「うん、また明日な」
黒子「…物足りないですわね」
青ピ「ん?」
ヒュン!
黒子「………ん」チュ
青ピ「」
黒子「お仕事、頑張ってくださいね」ヒュン
垣根「…ったく、二年前だったら踏み潰してるぞテメエ」
青ピ「…」
垣根「…ん、どうした?」
青ピ「………ぼけー」
垣根「イタイぞ」
青ピ「あー、うん、お疲れ様」
垣根「おう、特別給与よこせコラ」
青ピ「金持ちの癖に…」
垣根「いくら持ってても損はねえだろ」
青ピ「へーへー」
垣根「………」
青ピ「………」
垣根「…テレポーターって、便利だよな」
青ピ「…せやね」
青ピ「でもていとくんならやろうと思えばできんのやろ?」
垣根「まあな。昔試したけど似たような現象なら起こせた」
青ピ「へえ〜」
垣根「こう、ワームホール作って……人を運ぶこともできるな」
青ピ「マジで!?え、やりたい」
垣根「なんで、白黒ピンクに頼み放題だろお前」
青ピ「いや黒子ちゃんワームホールは作らんし、違いとか普通に気になるわ」
垣根「大したことねえよ。つか仕事中だろ」
青ピ「あー…、お仕事頑張ってって励まされてもうたしなあ…しゃーないか」
垣根「今度暇な時にでも、な。…時間も増えたことだし」
青ピ「そういえば…そやったなあ。いやでも、今までが厳しすぎたのやろ」
垣根「確かに…俺といえどよく倒れなかったな…とは、思うな、うん」
青ピ「学校行って、塾週二、ウチ週三、呼び出しあって、しかも………きっつ」
垣根「まあ、長点上機はちょい特殊だし」
青ピ「というか、これデートする機会ほとんどないやろ!」
垣根「だからだろ」
青ピ「ああ、そうか…あ、いらっしゃいませー!」
御坂妹「こんにちわ」ウイーン
垣根「お、やっと来たか」
青ピ「噂をすればやな」
御坂妹「?どういった話をしていたのですか?」
垣根「気にすんな、早よパン寄越せ」
御坂妹「選ぶ以前にまだ見てすらいないのですが」
垣根「選ばなくていいから。大人しくこのダークマパン買っちまえよもう」
御坂妹「おや、これまた食欲をそぎ落とすデザインですね」
垣根「も勘弁しろよ。今のとこ二人しか買ってなくて泣きそうなんだよ」
青ピ「うん、実質一人やね」
御坂妹「そんな不人気商品押し付けられても…」
垣根「でもよ、お前結構こういうリスキーな遊び好きだろ?」
御坂妹「ええ、でもあなたは…」
垣根「ハイ購入けってー」
御坂妹「え、ちょ」
垣根「ダークマパンかける2で、300円になりまーす。お持ち帰りでよろしいすかー?」
御坂妹「帰ってよろしいすか」
青ピ「あの、ミサカちゃん?ドリンクサービスするから…ここは大目に」
御坂妹「ドリンク…では、あのエスプレッソも?」
青ピ「あれ、ミサカちゃんも?大人気やな」
御坂妹「はい、日頃から白井様が美味しそうに飲んでいたのが気になっていました」
垣根「いいから、世間話良いからとりあえず300円寄越せ」
御坂妹「そろそろ怒りますが」
垣根「ごめんなさい」
青ピ「ええー」
垣根「わり、調子乗った。…けどな、味には一応自信はあるんだよ。前の二人も味については文句言わなかったしな」
御坂妹「文句は?賞賛はされたのですか?」
垣根「……普通って」
御坂妹「…どうぞ、300円です」
垣根「あざーっす!青髪ぃ!お客様にコーヒーだ!」
青ピ「はいはーい…ん?」ピーッ!
青ピ「ああ、残量ランプね…補充せな…はいどうぞ」
御坂妹「ありがとうございます」
垣根「補充用の豆は?」
青ピ「奥の部屋」
垣根「…さっき鳴らせよ」
青ピ「まったくやなあ、それならあんな強引な論理展開…あ、ていとくん!」
垣根「あー、ワームホール?」
青ピ「せや、これなら仕事として正当な理由やろ?」
垣根「ハイハイ…けど別に大したモンじゃねえぞ?」
青ピ「いいから、いいから」
御坂妹「いったい何を始める気ですか?」
青ピ「んー、科学実験?」
御坂妹「ほう」
青ピ「いや一発芸かな」
垣根「ハードル上げんなよ」
御坂妹「え、上がったんですか、今」
垣根「マジで見せモンとかでもねえし、期待すんなよ?」
青ピ「ヒューヒュー!」
御坂妹「カッコイー!」
垣根「ったく…じゃーやんぞ……ハッ!」バサ!
青ピ「あ、やっぱ羽は出るんや」
垣根「まあな。昔試したけどこれだけはどうしても消せなかった」
青ピ「へえ…」
御坂妹「禍々しい…という言葉がピッタリですね」
垣根「ほっとけ。んー奥の部屋だから座標は…こんな感じか、なっと」ズン!
御坂妹「わ」
青ピ「うおお!ホンマにワームホールや!」
御坂妹「確かに…これは…素晴らしい」
垣根「はしゃぐなはしゃぐな。ま、久しぶりだったんでちと時間かかったが、出来は問題ねえはずだ」
御坂妹「…時間、かかってた、ですか?」
青ピ「いや、わけわからんうちにバサッてなってギュって混じってズンってなってた」
御坂妹「…今初めて、彼氏を誇らしいと思いました」
垣根「どういう意味だコラ」
御坂妹「そういう意味だコラ」
垣根「ごめんなさい」
青ピ「弱っ!でもホンマすごいわこれ…触って大丈夫なん?」
垣根「たりめーだろくぐるんだから」
御坂妹「お?おー…おお?ヤッベなにこれテンションあがります」
垣根「…そんなか?こんなもんよりダークマパン作る方が万倍苦労したんだけど」
青ピ「あれ?急に色褪せた気がするで、この輪っか」
垣根「オイ、いやそれはそれでオイ」
御坂妹「あ、パン食うの忘れてましたそういえば」
青ピ「ボクも仕事中やったわそういえば」
御坂妹「ハイ、かいさーん」
青ピ「へいへーい、行ってきまーす」ギュン
垣根「ちょ、いや待て、そんなあっさり!?」
御坂妹「なんですかうるさいですよ」
垣根「いやいやいや、ホラ、今あそこのおにーさん消えただろ?スゲーだろ?アレ俺が作ったんだぜ一瞬で」
御坂妹「そうですか。あ、このエスプレッソおいしいです」
垣根「バカ、もっとあるだろなんか感想が。スバラシーとかアガルーとか色々」
垣根「つか味ならダークマパンにも言えよ。上手いだろ?あの輪っかの万倍苦労して作ったんだぜ俺が」
御坂妹「はあ、普通です」
垣根「なんだそのテキトーな批評は。そういうなかなかだのそこそこだの、当たり障りのないコメントが上を困らせんの」
垣根「3点とかBとかまあ良かったとか、なんか誉めた空気は出しつつも満点ではねえ。そのくせ具体的な不満は出しやがらねえ」
垣根「良い職人は叩かれなきゃ育たないの。分かったか?文句があったらハッキリ言えや」
御坂妹「ウザい」
垣根「あ、すいません」
御坂妹「…」
垣根「…」
御坂妹「…ああ、ごめんなさい、言いすぎました。このパンあげるんで元気出してください」
垣根「…ダークマパンじゃねえか。二つもいらねえってか?」
御坂妹「めんどくさい人ですね。お金は大事に使えと言ったのはあなたでしょう?」
御坂妹「半ば無理やり買わされた感はありますが、自分のお金で買ったものをそんな悪辣に使いません」
垣根「…そうかい」
垣根「…ん、チョコかよ、俺あんま好きじゃねーんだがなあ」
御坂妹「え、なんですかそれ、ミサカそっちの方が食べたかったのですが」
垣根「ああ?お前は…ストロベリー?俺だってそっちのがいいよ。交換しようぜ交換」
御坂妹「いや…でもこちらも捨てがたい…」
垣根「んーだよ、はっきりしねーなあ。じゃあ一口ずつ二人で食べ合えばいいだろ」
御坂妹「ああ、そうですね。なら、まずはチョコを寄越してください」
垣根「ホントいい性格してんなお前…ホレ」
御坂妹「ん…んー、…おいひいです」
垣根「そう、ならよかった」
御坂妹「むー……おっと、食べさせ合うという趣旨でしたね。忘れるところでした」
垣根「別に急がなくていいから」
御坂妹「いえ……んぐっ、どうぞ」
垣根「ん……んー、まあ、うん」
御坂妹「どうですか」
垣根「まあ、なかなか」
御坂妹「なかなか?」
垣根「うん、そこそこ」
御坂妹「なんですかその当たり障りのないコメントは。そういうテキトーな批評が職人を困らせるのですよ」
垣根「いや、職人俺だし…」
御坂妹「文句があるならこっちを見てハッキリ言ってください」
垣根「チッ…」
垣根「…ああ、おいひいおいひい」
御坂妹「よろしいです。ではチョコをもう一度」
垣根「わーったからせっつくなよ。無表情で地味にこえーから」
御坂妹「ハリ、ハリー」
青ピ「ただいまー」ギュン
垣根「おう、おかえり」
御坂妹「おかえりなさい」
青ピ「……」
御坂妹「?どうかしたのですか?」
青ピ「…いや」
青ピ「なんか…心が寒くなってきたわ」
垣根「いや、お前が言うな」
垣根「つかお前、予備の豆は?もしかして俺なんかミスってたか?」
青ピ「いやあそっちは問題あらへんよ、単に在庫切れ」
御坂妹「用意の悪い店ですね、在庫の充実は必須条件でしょうに」
垣根「…全くだな、お客様は神様だろ?在庫の確認忘れたバカなんざ天罰食らっちまえばいいんだよ」
青ピ「厳しいなあ…ええと、当番表どこやったっけ?ていとくん覚えてる?」
垣根「はあ?倉庫だっつの忘れてんなよ。テメエじゃねえのか犯人は」
青ピ「いや、最近覚えることが多くてなあ…受験生やし」
御坂妹「倉庫というなら、ちょうど良いところにありますね」
青ピ「ホンマやね、さすがていとくん、ええ仕事するわ」
垣根「知ってるっつの。いいから、ロクに仕事してないバカをあぶりだすぞ」
青ピ「はいはい、じゃ、いってき———」ギュン
垣根「………」
御坂妹「………遅いですね」
青ピ「———ましたっと」ギュン
垣根「よっし、じゃさっさと雷が落ちるかわいそうなヤローの名前を言え」
御坂妹「既にオチが見えますね」
垣根「アホ言うなよ、これで俺が犯人だったらとんだピエロだぞ?第2位様がそんなヘマするわけねーだろ」
青ピ「えーっと、先週の確認当番は………ていとくん」
垣根「ま、新商品開発で忙しいからな、うっかりもするだろ。心の狭い神は3回も見逃してくれる仏様を見習えって話だ」
青ピ「あ、ごめん、間違えたわ、誘波さんやった」
垣根「見逃すとか根性のないこと言うからこんなうっかりが起こんだよ。削板のとこ連れて行った方がよくね?」
御坂妹「あなた最近芸人根性あり過ぎではないですか?」
青ピ「まあ、ネタ枠より忙しい人やから大目に見るってことで、異議なし?」
垣根「ん、異議なし………いや待て、寝惚け方ウゼーから注意はしとけ」
青ピ「せやね、負担減らさなな。じゃこれ戻してくるわ。えっさ———」ギュン
御坂妹「…」
垣根「…」
御坂妹「…あの」
垣根「なんだよ」
御坂妹「…このパン、おいしいです」
垣根「さっきも聞いたから」
青ピ「———ほいさっと。で、どうしよか、豆」
垣根「買ってきた方がいいんじゃね?一応」
青ピ「うーん、せやね、一応」
御坂妹「すぐに行ける場所なのですか?」
青ピ「まあ、行き帰りともろもろ合せて20分くらいやな」
垣根「じゃあ、行ってこい」
青ピ「え、ボク?てかさっきからパシリ多くない?」
垣根「そりゃそうだろ。コーヒー切らしたのはテメエの彼女が飲みまくったせいだ」
青ピ「んな無茶な…だってていとくん、もし呼び出し入ったら」
垣根「自分で20分って言ったろ?今日はあのサボり魔だけだし大丈夫だよ。あったらあったでアテはあるし」
青ピ「そう?なら、うーん…」
垣根「いいから。お前の代わりに掃除してやったろ?」
青ピ「ああ、そやったね…」
御坂妹「何の話ですか?」
青ピ「気にせんでええよ」
垣根「うし、じゃワームホール消すけど…もういいよな?」
青ピ「うん、よろしく頼むわ」
垣根「ハッ!…フンッ!……ホイっと」バサ!ギュ!シュン!
青ピ「おお、手際ええなあ」
垣根「な?スゲーだろ?バサッとしてギュッとしてシュンよ」
御坂妹「そのような近場で買えるのですか?こんなにおいしいのに」
青ピ「豆自体はなー。淹れ方に店長直伝のコツがあるんよ」
垣根「クソが」
青ピ「ほな行ってくるわ。なるべく急ぐで、雨降りそうやし」
垣根「傘やるし、安全運転でいいから。万が一なら誘波叩き起こすし」
青ピ「うっわ鬼畜。いってきまーす」ビュ!
垣・妹「いってらっしゃーい」
垣根「…」
御坂妹「…二人っきりになりましたね」
垣根「まあ、たまたまな」
御坂妹「運よく?」
垣根「たまたま」
御坂妹「ラッキー?」
垣根「たまたま」
御坂妹「…ふふっ、そうですね、たまたまです」
御坂妹「じゃあ、たまたま『休業中』のプレートが立つとか」
垣根「それはやり過ぎ」
上条「ごちそうさん、っと」
姫神「はい。お粗末様です」
上条「ん、そっちもな。どっちがうまかった?」
姫神「んー。チョココルネ」
上条「あー、俺もそう」
姫神「でも正直。途中で焼きそばと混ざって気持ち悪かった」
上条「あー、俺もそう」
上条「…」
姫神「…」
上条「…図書館、いつ行く?」
姫神「…10分後?」
上条「あー、そんくらいか」
姫神「うん」
上条「…」
姫神「…」
上条「…10分したら、出れるかな?」
姫神「…無理くさい」
上条「多分さ、今すぐ出なきゃ延々家にいることになるよな」
姫神「ないこともない」
上条「土御門と吹寄、置きっぱなしだもんなあ」
姫神「放置はまずい」
上条「家は誘惑多いしなあ」
姫神「…二人っきり」
上条「勉強道具も持ってないしなあ」
姫神「なぜか。持ってきてしまった」
上条「ほぼDだもんなあ」
姫神「ギリC」
上条「Aだとしても何が起こるかわかんねーしなあ」
姫神「一緒に。初詣でお守り買おう」
上条「…外、雨降りそうだしなあ」
姫神「降水確率30%」
上条「俺、窮地に強いしなあ」
姫神「やれば。できる男」
上条「明日の俺の方が強いかもなあ」
姫神「日々。進化する男」
上条「この状況さ、計算ずく?」
姫神「そんなことない。図書館出たときはやる気満々」
上条「パン屋では?」
姫神「やる気十分」
上条「帰りは?」
姫神「やる気半分」
上条「今は?」
姫神「………」
姫神「うん」
上条「…」
姫神「…」
上条「…あのさ」
姫神「うん」
上条「……もうさ」
姫神「うん」
上条「………よくね?」
姫神「うん」
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