渋川剛気「学園都市ですか…」 (249)


夕焼けの時刻、繁華街には帰宅を急ぐ人や放課後のエンジョイライフを
楽しむ人で溢れている学園都市、外の世界と比べると20年は科学技術が
進んでいるこの近未来都市に住む人々も多種多様、その中には善人から
悪党、中には一風変わった変人も多くいた。

「おるぁぁ!待てやお嬢ちゃ~ん!グヒャハハハハ」

繁華街から少し外れた路地裏に下品な声が響き渡る。


   【何故こんな時に限って携帯を忘れたのだろうか・・・。】

少女は路地裏を全力で走りながら焦る頭で後悔の念と格闘していた。
近道をと監視カメラの死角である路地裏をを通っていたら4~5人の
強面のお兄さん方に絡まれたのだ、記憶している地域の抜け道を頭で整理し、
人の多い大通りまで逃げようと脱兎の如く駆け抜けた。

       【あの角を曲がればっっ!】

「うそ・・・なんで・・・・。」

目の前には割と新しい巨大な壁がそびえ立っていた。
バタバタと風に翻る『テナント新築』の文字が恨めしいと心から
思うが、ここで思考を止めてる訳にはいかない、身を翻し次の
ルートを辿ろうとした瞬間、少女の細い腕は何かに掴まれた。

「え?・・・・」

佐天涙子は恐怖という感情を顔に出していた。

「いきなり逃げるってありえなくねwwwwwwwwwwwwwwwwww」

「ってか俺らチョー優しいべ?なぁwwwwwwwwwwww」

「悪いねお嬢ちゃんココ俺らの庭、まぁ楽しませてやるから
 __________そう落胆すんなよwwwwww」





と言うのを書こうと思うんだけどいいですかな?
リピドーのままに書いていくので色々崩壊しますが
最後まで書き上げようと努力いたします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367668378

最悪だ、下卑た笑い声とともに乱暴に服を引き裂かれる。
振り払おうにも少女の力では伸し掛かった男を跳ね除けるのは
不可能、しかも相手は複数、状況を把握すると涙が溢れてきた。
能力が有ればとも思う、こんな時の無能力者は哀れだ。

「いやぁぁぁ!やめてぇぇぇぇ!助けてぇぇぇ!!!!」

懇願するしか無い、許してもらえるかなんて解らない
あらんばかりの声で叫んだ瞬間、顔に衝撃が走った。

         【痛い】

思考が止まる、感じるのは左頬の痛みのみだった。

「あ・・・・・」

恐る恐る男たちの顔を見ると目に飛び込んできたのは鋭いナイフ、
男たちの弱者を見ていたはずの目に憎悪に近い感情が込められている。

      【殺される…犯される】

切られたであろう左頬に熱い何かが流れる感触が佐天の思考を急速に
停止させていった。

「おい、顔は止めとけよ・・・めんどくせぇな・・・・」

「あのさぁ、状況わかってる?次叫んだら目玉を抉るぞ?・・・」

馬乗りになっている一人はそう佐天涙子に告げると取り出した
ナイフで服を剥ぎ取ろうとした。

「…ほいっと」

グシャア!?

何かが落ちた音が聞こえた気がする。
停止しかけた思考を駆使し音がした方向に目線を向ける
一人の小柄な老人が最初からそこに居たように立っていた。

      【お…爺さ…ん?】

「おいたは行けませんなぁ、その娘さんを放してさっさと立ち去りなさい」

笑顔を崩さず老人は告げると、側に居たもう一人が倒れた。
 老人の足元には既に二人の男が倒れていた。

「能力・・・・者・・・・?・・・・」

佐天の意識は急速にブラックアウトしていった…。

目が覚めると見慣れない天井があった。
体を起こし辺りを見回す、どうやら病院らしい、ベットから
降り鏡を見ると左頬にでっかいガーゼが当ててあった。
目を瞑りガーゼを取る、ゆっくり目を開けると痛々しい縫合糸が
広範囲にわたり頬に縫い込まれていた。

「初春の忠告を聞いとくんだった…あんな路地裏を抜けるってさ…馬鹿だよね~
 お陰で顔は傷物にされるし別の意味でも傷物になっちゃったしさぁ…あーあ
 能力があればなぁ…」

後悔先に立たず、起こってしまったものは仕方がない、気丈を装うことで落胆
した自分自身を少しでも保とうとしているのか、1人しか居ない病室でトーン
高めの声で呟く、わかり易い強がりだった。
その行動で自己嫌悪に陥る。それでも涙が出ないように必死で堪える。
悔しさと自己嫌悪、後悔の念、強がり、色々な感情が混ざり情緒不安定に
なっていた。

それでも自分自身でその状況を理解している分、マシなんだろう。

ガラっ

病室の扉が開く音に反応し顔を上げると、カエル顔の医者が入ってきた。

「やぁ、気がついているね、気分はどうだい?」

気分とな?…なんてことを聞くのだろうか、レイプされ顔を傷付けられ落胆
している女の子に気分はどうだとかデリカシーにかけている声掛けではないか?
そう思いつつも「悪くはないです・・・」とだけ答えた。

「君のその頬なんだけどね、女の子がそんな傷を顔に残すのは良くない、僕の方
 できっちり処置したから、そうだね、抜糸後2週間で痕すら残らないよ」

「へっ?」

「それと、状況が状況だったから悪いと思ったけど、妊娠検査も含めて体を
 検査させてもらったよ、その辺も大丈夫だったから安心したまえ。」

どうゆうことだろう?確かに路地裏で乱暴された記憶はある。
『その辺も』とはどの辺だろうか?質問をしようとした瞬間、勢い良く扉を
開けて飛び込んでくる集団が居た。

「ざでんざぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

     ガバッドカッ…

「ぐえっ…痛いよういはる…。」

初春と呼ばれた少女は慌てて離れる。
その顔は実にひどいものだ、まぶたが腫れて鼻水だらけ、福笑いでもこんな
ひどい顔はそう無いだろうと思うと、軽く笑がこぼれた。

「ごめんね初春、心配かけちゃったね」

「まったくです!こうして無事だったから良かったものの、もしものことが
 あったらうぉわぁ!?なんで脈略もなくいきなりスカート捲るんですか!?」

心配してくれるのはありがたい、だが捲し立てられるのはご勘弁願いたいと
思った佐天は、初春のスカートを勢い良く捲り上げ流れを断つ。
 いちごのワンポイントが眩しい。

「いちごのワンポイントとは萌え演出?」

「そんな訳ありません!それよりも反省して下さい!」

「まったくですの、監視カメラの届かない裏路地とか危ないにも程が…
 ってか私とお姉さまが空気じゃありませんこと?」

「そうよ佐天さん、初春さん心配しすぎて泣いちゃってたんだから」
 
       【みんな心配してくれたんだ…】

そう思うと、荒みかけた心が少し救われたような気がした。
「ごめんね御坂さん、白井さん…」「ごめんね…初春…」

掻い摘んで話を聞くと、どうやら私を襲った男たちは全員がその場で半殺し
状態だったらしい。
アンチスキルが余罪を追及しようにも、事情聴取できる状態ではない
とのこと、とりあえずは暴行・傷害容疑に強姦未遂とのことで拘束中と…。

「ごうかんみすい?」

「えぇ、そうですの、強姦未遂ですの」

「え?なんで?」

「なんでと言われましても、未遂だからですの」

ツインテールの少女、常盤台中学のテレポーター、白井黒子は困った顔で
その問いに答えた。
風紀委員の仕事の一つとはいえ、性犯罪に関しての被害者への状況説明は
気が引けるのだろう、そこへ話を割って入る花飾りを頭に載せた少女、初春飾利
が無事を喜ぶ満面の笑みで----------------------

「佐天さんは処女のままです!」

「うーいーはーるぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」「ひあぁぁぁぁぁ!?」

------と、大きい声で伝えてくれたので、お礼とばかりにスカートを
捲り上げた…。

【ワンポイントいちご柄…いい趣味してるわね初春さん】

【ワンポイントいちご柄…まったく初春はお子様ですのねぇ】


苦笑いを浮かべてこの惨状を見ていた御坂美琴は佐天の前に立ちその手を
握った、その表情には心から安堵の表情を浮かべている。

「本当に無事でよかったわ佐天さん…本当に…佐天さんに何かあったら
 多分、私がアイツ等を消し炭に…ううん…今からでも消し炭にしてやろう
 かしら?・・・・」

「お姉さま…ここは病院ですので放電は…あの……お姉さま?…」

御坂美琴は常盤台が誇るエースだ、学園都市で7人しか居ないレベル5の
超能力者、『超電磁砲』と畏怖される彼女に「消し炭にしてやる」と告げ
られるのは、大半の人間にとって死刑宣告に等しい、自業自得とはいえ、
容疑者共に同情を禁じ得ない気持ちになる…。

「あの、ところで初春…。」

「ん?何ですか佐天さん?」

「私が無事だったのは何があったのかな~って…」

コンコン 突然、ノック音が病室に響いた。





80改行以上は投稿できないのかふむふむ・・・・。
ここから少し書き溜めに入ります。

SS初めてなので、鼻くそほじりながらで宜しいので、
目を通して頂けましたら嬉しいかもです。
色々指摘していただけたら幸いです。(_ _)

支援
他の刃牙キャラは出るの?

>>6
一応、独歩ちゃんが出演決定しております。
話が進むにつれて刃牙キャラも禁書キャラもどんどん登場して
行くと思いますのでよろしくお願い致します。

鎬紅葉とかはヘブンキャンセラーとセットに成るかも…。

期待
花山さんの出演を熱望

とあると刃牙のそれぞれの時系列は?

激しく期待

>>9
ありがとうございます!
花山さんは何もしなくても絡みそうな気がしますwwwwwwww

とりあえず、シスターズ→アクセラレータがそげぶされる所
までを予定しております。
バキのほうは最強トーナメント終了から死刑囚前半くらいですね。

>>10
ありがとうございます。
ご期待に添えるよう頑張ります。!



まず改行する位置がおかしいから見難い。
会話文は「」内で改行しないこと、地の文でも意味不明な位置で改行せずに「。」部分で改行しないと分かり難い。
「どうゆう」じゃなくて「どういう」。
「…」は2個セットで「……」にして「・・・」は使わないこと。

>>15
おぉ、ありがとうございます。
若輩者で文体の作り方もままならないですが、
何か他にもアレば指摘して下さい。

では少しですが続きを…。

>>4から

返事をすると病室の扉が開き、小柄な老人が入ってくる。
70は超えているであろうか、その顔は年輪の如き刻まれたシワが浮き出ているも、穏やかな表情だ。
和服を上品に着こなし、自然体を維持したまま病室の敷居をまたぐと佐天の目の前に来て頭を下げる。

「すまなかったね娘さん。
 もう少し早く見つけていれば顔の傷も負うこともなかったろうに…」

「はい?・・・・・・・」

「へ?・・・・・・・」

佐天と御坂はポカ~ンと口を開けてその老人を見た。
どう見ても上品なただのお爺ちゃんだ、どうにも屈強な男性を半殺しにする腕力も雰囲気も持っているように思えない。
美琴と佐天の様子を見て、初春と黒子は、互いに目を合わせて「あぁ…」と相槌を打つ。

「お姉さま、佐天さん、この方は『渋川剛気』先生ですの渋川流合気柔術の創始者で『達人』と
 呼び名の高いお方ですの」

「そしてなんと!アンチスキルとジャッジメントの武道師範として外部から学園都に来て頂いていたんですよ!」

       【白井さんはともかく、初春が興奮気味かつ自慢気に言うのはどうだろう?
        風紀委員の癖にわりと運痴じゃん…】

との辛辣な言葉は佐天の心のメモリーにそっと封印されるのであった。
 
「あの…危ない所を助けて頂きありがとうございます…本当、なんとお礼を言ってよいか…」

改めてお礼の言葉を言うと、何故か涙が溢れそうになった。
御坂さん達がいるのに~と思いつつも、強がりと言う防波堤は一度亀裂が入ると脆いものだった。

        【やばい・・・我慢できない・・・・】

ひたすら涙を我慢しようとしている佐天の頭を渋川の手は優しく撫でた。

「娘さん、武道家のわしが言うのも何ですが、護身というのは危険を避けると言うのが最大の護身といいましてな、
 要は危ない所に近寄らないのが一番ちゅうことですわ。」

「え?…」

突然語られた言葉に面を喰らう、この老人は武道家、しかも達人と呼ばれているにも関わらず今その場であっさりと
自分の有り様を否定したのだった。
パーソナルリアリティを重視する能力開発に於いて、まっさきに自分を否定するのは愚の骨頂だろうと思いつつも
老人の言葉に耳を傾けた。

「ねぇちょっと黒子…あのお爺ちゃん護身とは危険な所に近寄らないとか変なことを言っているわよ…大丈夫なの?
 佐天さん何か考えこんじゃっているんじゃない…」

「渋川せ・ん・せ・い!ですの!…技術は凄いですのよ、じゃんじゃんと五月蝿いアンチスキルや他数名で一斉に
 襲いかかっても軽~くあしらうのですから…ねぇ初春」

「私に振らないでくださいよ!でもでも!渋川先生が凄いのは目の前で見てますし…でもパーソナルリアリティの否定は
 この学園都市の教育とは真逆ですよねぇ…。」

「それも気になるわ、自分を否定したら…人は前になんて進めないじゃない…」

現在進行形で渋川の話を聞きつつ考え込んでいる佐天をよそに、病室では渋川剛気の言葉に対して議論が
小声で繰り広げられていた…。

ひと通りの話を済ますと、渋川は病室に残る四人に挨拶をして扉に手をかけた病室から出ようとした。
佐天からの「ありがとうございます!渋川先生」の声に笑顔で答えると、病室を後にする。
病室の外ではカエル顔の医者が待っていた。

ぎゃぁ・・・・直したつもりが変なふうに・・・。
>>17直しますので無かった事に…。

ごめんなさい、少し書き直します。

すいません。>>17の修正です。
少々言葉を付け加えたりしてます。


返事をすると病室の扉が開き、小柄な老人が入ってくる。
70歳は超えているであろうか?その顔は年輪の如き刻まれたシワが浮きでている。
穏やかな表情だ、和服を上品に着こなし自然体を維持したまま病室の敷居を跨ぐと
老人は佐天の目の前に来てその頭を深々と下げるのであった。

「すまなかったね娘さん…。
 もう少し早く見つけていれば顔の傷も負うこともなかったろうに」

「はい?…」

「へ?…」

佐天と御坂はポカ~ンと口を開けてその老人を見た。
どう見ても上品なただのお爺ちゃんだ、お世辞にも屈強な男性を半殺しにする
腕力も雰囲気も持っているように思えない風体だった。
その様子を見て初春と黒子は、互いに目を合わせて「あぁ…」と相槌を打つ。

「お姉さま、佐天さん、この方は『渋川剛気』先生ですの
 『渋川流合気柔術』創始者で、"達人"と呼び名の高いお方ですの」

「そしてなんと!アンチスキルとジャッジメントの武道師範として、
 外部からこの学園都市に来て頂いたのです!」

【白井さんはともかく初春が興奮気味かつ自慢気に言うのはどうだろう?
 風紀委員の癖にわりと運痴じゃん…】

その辛辣な言葉は佐天の心のメモリーにそっと封印されるのであった。
 
「あの…危ない所を助けて頂きありがとうございます…
 本当、なんとお礼を言ってよいか…」

改めてお礼の言葉を言うと、何故か涙が溢れそうになった。
御坂さん達がいるのに~と思いつつも、強がりと言う防波堤は一度亀裂が入ると
脆いものだった。

        【やばい・・・我慢できない・・・・】


ひたすら涙を我慢しようとしている佐天の頭を渋川の手は優しく撫でた。


「娘さん、武道家のわしが言うのも何ですが護身というのは『危険を避ける』のが
 最大の護身でしてなぁ、要は危ない所に近寄らないのが一番ちゅうことですわ。
 どうしても飛び込まなきゃならん、そんな重大な選択を迫られるような状況でも
 無いのであれば、遠回りも一つの手と覚えておきなさい。」

「え?…」

突然語られた言葉に面を喰らう、この老人は武道家、しかも"達人"と呼ばれている。
にも関わらず、今その場であっさりと自分の有り様を否定したのだった。
パーソナルリアリティを重視する能力開発において、真っ先に自分を否定するのは
愚の骨頂だろうと思いつつも、佐天は反論することも無く老人の言葉に耳を傾けた。


「ねぇちょっと黒子…あのお爺ちゃん護身とは危険な所に近寄らないとか変なことを
 言っているわよ…大丈夫なの?佐天さん何か考えこんじゃっているんじゃない…」

「渋川せ・ん・せ・い!ですの!…ああ見えて、本当に凄い人なんですのよ。
 アンチスキルやジャッジメント数名で一斉に襲いかかっても、ちょいな~
 と皆抑えこまれましたの…ねぇ初春」

「はい、私も御相手して頂きましたが、いつの間にか畳に横になってました。
 それに、『危険な場所に近寄らないは』ジャッジメントとして同意出来ます。
 でも…渋川先生の話している内容…この学園都市じゃマズイと思います…」
 

「それも気になるわ、自分を否定したら…人は前になんて進めないじゃない…」


【まぁ初春は…ぐるぐるパンチで向かった上に、すっ転んで目を回していた
 のが真相ですが…黙っていてあげるのが優しさですわね…】


現在進行形で渋川の話を聞きつつ考え込んでいる佐天をよそに、病室では渋川の
言葉に対しての議論が小声で繰り広げられていた。

>>26からの続きです。

ひと通りの話を済ますと渋川は、病室に残る四人に挨拶をして扉に手をかけた。
病室から出ようとした時に佐天からの「ありがとうございます!」の声に笑顔
で答えると、静かに病室を後にする。
病室の外ではカエル顔の医者が待っていた。

「渋川さん、ご足労して頂き感謝するよ。
 あの子もこれで少しは気が晴れるといいけど…」

「かっかっかっ、他ならぬ冥土帰しさんのお願いと有ってはこの渋川剛気、
 動かざるを得ませんな、それに、若い娘さんがこれで少しでも嫌な気持ちを
 払拭できるのであれば…それは良いことですわ…」

「にしても、学園都市でパーソナルリアリティの否定から話すのはちょっと…
 統括理事会の目もあるんで勘弁して欲しい…」

「はい?ばあちゃんがりある?…」


退院して数週間…。
顔のガーゼが取れ見えなくなった傷跡を鏡で確認してみる。
佐天は念入りに傷のあった場所を確認しながら『護身が何たるものか?』と自分なりに考えていた。
あの男たちを叩き伏せたのが本当に渋川先生の行いとして、能力とは違う何かが護身なら…
それは一体…そもそも『危険な目に遭ったら』どうするのだろうか?素地裏で襲われたのは自分の
自業自得とは言え、それとは別に避けられない危険というのは生きてい以上は絶対に在るんだ。

      【危ない場所には近寄らない…それって常識じゃない…】

渋川先生はこう述べた『危険な場所に近寄らないこと』と、その答えが正解なのか…
"達人"でしかも人生の経験値が圧倒的に上な渋川先生の言葉なら正解なのだろう。
でも納得できない、そもそも危険が向こうから来た場合はどうなるの?そんなの『運』の
何物でもない、そう思うと佐天は深い溜息のごとくつぶやくのだった。

「護身かぁ・・・・」

放課後、初春はジャッジメントのお仕事があるとチャイムがなると同時に飛び出して行った。
他の学友も各々が部活やらなんやらで捕まらない、寂しいと思いつつ佐天は帰路を
トボトボと歩いている…近道に使っている公園を通っていると争っている声が耳に
入ってきたのだ。


「なんだろう?・・・」


恐る恐る視線を向けると、あの老人、渋川剛気先生が十数名のスキルアウトと
思われる集団に取り囲まれているのが目に入る、佐天は当人たちの視界に
入らないように物陰に隠れながら慎重に様子を伺っていた。
もしかしたら『護身』ってのが見れるのかなと…。

「てめぇ、オイコラジジイ!てめぇがうちの仲間をやったってのは割れてんだよぉ!!」

「墓場に入るのを手伝ってやろうかジジイ!!!!!!」

「念仏唱えろや!殺してやんよぉ!!!っらぁ!!!」


【1人のお爺ちゃんに息巻く集団って滑稽にも見えるなぁ】

次の瞬間、そんな事態は急変してしまうことが起こる、渋川の胸ぐらを掴み
殴りかかるスキルアウトを見て佐天の出歯亀根性は跡形もなく吹き飛んだ。
殺されかねない、尋常じゃない状況に佐天は携帯を取り出した。

【アンチスキルに連絡しなきゃ!】

その瞬間、信じられない出来事が目の前で繰り広げられた。

「ほィ…」

《グルン・・・・グシャァ!!!!!》

渋川剛気の3倍はありそうな巨体が重力を失ったようにグルンと回転した。
白井黒子がテレポートを使って相手を真っ逆さまに落すのとは全てが違う何かだった。
重力操作?おかしい、渋川先生は"達人"と呼ばれている以外は外部から招かれた"普通の老人"
能力とは無縁の老人なはずなのだ。

      【な…なんなのよこれ…】

佐天は目の前で起こった光景を理解するのに時間がかかった。


「ほっほぉ~~、よ~~~く回ったのォ、馬力だけは大したものじゃわ♪」

現実は奇なり、渋川先生より明らかに体格の良い若者が華奢な老人に次々と崩された。
地面に叩きつけられ、極められ、打たれていく、ただ純粋で絶対的な技術の差だった。
佐天は目の前で繰り広げられている信じられない光景に完全に目を奪われていた。

「ぷぎっィ!?・・・・・じ・・・じじィッ!!!!!ヒッ!?」

《ブォン…ゴッキャア!》

「ちょいな!・・・・・・ダメ押しィ!!!」

《ベギィィィ!!!!》


渋川は再度胸ぐらに掴みかかってきた相手の体を崩すと、地面へ頭から叩きつける。
頭部を痛打し、悶絶しているその喉元を体重を乗せ踏み抜いた。
その衝撃に男の体は一瞬ビクンと痙攣すると、そのまま動かなくなる。

「弱ェ弱ェ…本来なら悪ガキのケツを叩いてやる程度だがなァ…
 あのお嬢ちゃんに非道ェことした畜生の仲間ってェんなら…
 兄ちゃんたち…五体満足で帰れると思うなよォ…」


渋川は近くにいた男の手首を極め捕ると、そのまま密集している集団に向かって投げ飛ばした。
勢い良く飛ばされた65kgはあるであろう物体に跳ね飛ばされるように数名が巻き込まれる。
その瞬間の光景に目を奪われた哀れな男の顎を掌でカチ上げると、そのまま頭から地面に
叩きつけ意識を飛ばし、残りの悪漢共に鬼神のような眼光を向ける。


「かかってこいやァァァァァ!!!小僧どもォォォォォォォォォォ!!!!!」


    齢75歳、身長155cm、体重47kg (Wikipediaより)

小柄な老人が吼えたとは思えない『威圧感』というものをその場に居た全員が感じた。
誰の目にもその場にいるの老人が一匹の獰猛な獅子に見えているのだ。
目の前の老人にスキルアウトは後退りするしかない、目の前にいるのは普通の老人
じゃないのに気づいた時には既に何名かの仲間が泡を吹いて倒れていたのだ。


「ひ…ち…畜生がぁ!!ぶっ殺してやる!!!てめぇら!囲め!!!!」

各々に武器を取り出したスキルアウトは、渋川の周りを取り囲み包囲を狭める。
数名倒したとはいえ、まだ10名近くの人間が残っているのだ。
流石の渋川も一斉に取り囲まれたら一溜まりもない、そう考えた佐天は、思わず
飛び出していた。


「や…やめなさいよ!!!!!!あ…アンチスキルに!連絡し・・・したんだから!」

足が小刻みに震える…。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

場が一瞬にて静まった。
佐天は携帯を周囲に見えるように前に突き出していた。
『連絡したんだぞ!』とアピールをしている『警備員が来る』その現実を
突きつければスキルアウト逃げるはず、そういった期待は…。

「うるせェぞ糞ガキぃぃぃ!!!!!!!!!!」
「アンチスキルだろうが関係ねーぞ!ブッコロスぞごるぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「てめぇそこ動くな!!!ジジイを殺ったらてめぇも犯ってやるぁ!!!」

怒号でかき消されるどころか、自分もスキルアウトの粛清の対象になって
しまうという事態に陥ってしまった。

         【・・・何も出来ない・・・】

そう感じた瞬間、スキルアウトの集団が互いに密着し、そして…

《グシャァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!》

渋川を取り囲んだ全員が崩れるように勢い良く地面に突っ伏した。

「女の子相手にな~に凄んでいるかのォ、ばかたれが…
 それに、学園都市と言うからにはここは学舎ぞ、暗器を持ち込んじゃ…
 …イカんじゃろが…」

さも当然の結果とばかりに渋川はそこに立っていた。
倒れているスキルアウトの面々を「ヨッ!ホッ!」と避けながら近づいてくる。
泣きそうな顔をしている佐天の眼の前に来ると突然


         「わっ!!!!!」

と大声で叫んだ。
佐天は思わずキョトンと目をパチクリさせた。

「お嬢ちゃんは勇気がある強い子よのう」

「え?…強い…」

「おう、普通はあそこで止めに入るのは至難の業、思っていても実行に移すのは難しい、
 それは強者とて同じ事、それを行うのは強い証拠よ」

「でも…私は結局…」

            【痛っ!】

その瞬間、佐天の頭にコツンと衝撃が走った。
下を向いていた目線を前に向けると軽いゲンコツをされたのだと理解した。
頭を抑えながら渋川先生の顔を見ると、コミカルな呆れ顔をして。 

「こぉの"達人 渋川剛気"がそう言っとるんじゃ!
 お嬢ちゃんは堂々としとりゃえぇ♪」

そう言うと渋川はニカッと笑って佐天の頭をクシャクシャと撫でた。
その手はさっきまでの死闘を繰り広げていた手とは違い、優しい手だった。


   【髪が…でも悪い気はしない、少なくともこんな凄い人が私を認めてくれた…】

佐天は嬉しい気持ちを隠さなかった。
隠せなかった。
笑みが溢れる、涙も溢れる。
スゥっと憑き物が落ちたような感じだった。

「ち…ちと強く小突きすぎたかな…。」

オロオロしている渋川先生がちょっと面白いと感じる佐天だった。

では、また少し書き溜めます。

打ち止め「ミサカをミサカを抱き上げろ」

一方通行「!?」

打ち止め「失敗は許されない」

>>30からのつづきを少し…。


シュン!…


「ジャッジメントですの!動かないでくださいまし…。
 あら?佐天さん?…まぁ!?渋川先生じゃありませんですの!」

ジャッジメントの腕章を『これでもか!』と主張するような格好でツインテールの少女
白井黒子が突如目の前に現れた。

「ほっ!?」

外の世界でテレポートは珍しいのか思わず渋川は驚きの声を出す。
能力という言葉は聞いていたが、実際目にするのは初めてだ。

「通報を受けたのですが……ところで、この惨状は…」

死屍累々…そのような言葉が黒子の頭に浮かぶ。
十数名にも及ぶ負傷者を目の前に黒子は現場を見回した。
重軽傷者多数、1人ではどうにもならないと思うと、初春に連絡を入れる。

【初春!アンチスキルに医療班を多めに連れてくるように連絡してくださいまし!】

【は…はい!了解です!】

現場で行える確認作業をひと通り終えると、黒子は二人に話しかけた。

「で、一体ここで何があったのでしょう?
 渋川先生と佐天さん、詳しく事情をお聞かせ下さいな」

「いやぁ、白井さん面目ありませんなぁ…申し訳ない。」

悪びれる様子もなく渋川先生は自分が叩きのめしたと自白した。
あっけらかんと言ってきたので、むしろ質問している黒子自信が
難癖つけているのではないかと妙な気分になる。

「へ!?は…はぁ…では渋川先生がこれを?」

「いや…つい…」

「つ…ついですか…」

ゴホンと咳払いをすると、黒子は渋川に対し一応はジャッジメントとしての
職務を果たす様に述べた。

「と…とりあえず、アンチスキルが来ますのでその間は拘束という形を
 取らせてもらいますの…佐天さん、あなたにも事情をお聞きしますので
 ご協力をお願いしま――――――――」

「拘束!?それはおかしいですよ白井さん!
 悪いのは襲いかかったあの人達で、渋川先生は悪くありません!!!」

佐天は『拘束』という言葉に過剰に反応し声を張り上げた。
突然の出来事とあまりの剣幕に黒子はたじろいでしまう。
思わず後退りしたほどだった。

「あの…さ…佐天さん?…そんなに怒らないで下さいまし…。
 拘束といっても、アンチスキルに詳しく状況を説明して頂くので
 その場にいて頂くということで、別に逮捕と言う訳じゃ…。
 ちょ…顔が近いですの……あっ…♡」

「ガルルルルルル………」

渋川はその様子を何事もないようにニコニコと見ているだけだった。


なんとか佐天をなだめると、黒子は渋川に対し再度、拘束する旨を伝えた。
渋川は快く応じて黒子の隣を歩いているのを見て、佐天は少しモヤモヤした
感覚を感じている。
拘束という言葉に納得はしても、悪者にたいして言うような黒子の口調は
気に入らない、でもジャッジメントのお仕事なのも解っているので口も
挟めないので黙って二人の少し離れた後ろを付いて行った。

      【む~…なんだろう…なんか面白く無い…】

二人から視線を放し空を見上げた。
再び歩み始めようとした時、佐天は強い力で引き寄せられた。

「んぐぅ!?」

前を歩いていた二人が佐天の異変に気が付き振り向く…。
1人の男が佐天の口を右手で抑えつつ立っていた。
その左手には轟々と燃え盛る炎が纏われている。

「ひ…っひひひひ…最初っからこうしてりゃ良かったゼェェェ!」

「発火能力者!?」

黒子は素早く鉄の矢を取り出すと、発火能力者の手足に座標を固定し
能力を発動させようとしたその瞬間、発火能力者は警告する。

「見えてるぞテレポーター!変な動きをしてみろ…こいつの顔、二度と
 復元できねぇように焼くぞ…」

「くっ…仕方ありませんの…」

イカレた目だ、本気でやりかねない、黒子は取り出した鉄の矢を地面に捨てた。
そして、両手を上げて何もしないとアピールを行うことにより、佐天への身の安全を図る
黒子は発火能力者の左手に宿る炎を見る、結構な火力で燃え盛るのが遠目ににも解った。
少なくともレベル3、強能力者だろうか?それくらいの火力が出せる発火能力者が相手とは…
焦りの色を隠せない、レベル3なら制圧の前に佐天の顔に致命的な火傷を負わせるのは簡単だ…。
打開策を練る、偶然にもお姉さまが…そんな都合の良いことはそうそう起こる訳もない。
横目で渋川先生を見ると、黒子は小声でつぶやいた。


「渋川先生…すみませんですの…こんなことになるとは…」

「油断はこちらとて同じ事、こんなのピンチの内にも入りませんわ…」

人質を取られ、同じく両手を上げている渋川を見て、なぜ余裕なのか黒子は理解が出来ない。
自分の経験上ではこの状況はかなりマズイ部類に位置付けられている、それなのにこの老人は
無能力者でありながら能力者を前にして、しかも人質を取られているにも関わらず涼しい顔をしていた。
渋川先生の顔を見るに汗一つかいていない、本当に焦っていないのだ、人質を見捨てた顔でもない…。
黒子は妙な安心感を感じ始めていた。

【渋川先生は…何か行おうとしてますのね…黒子は全力でサポートに徹しますですの…】

ジリッ…

渋川剛気は足の親指一本分間合いを詰める。
誰にも悟られなく、誰にも気取られること無く、ゆっくり…確実に…。
相手との間合いを潰していった。

佐天は自分の身に降り掛かった状況を整理していた。
相手は能力者、しかも発火能力者で、その右手は自分の口を押さえている
逃げようとしたり、白井さんが動いた瞬間にでも私の顔を焼くのだろう。

「ん~!!!んぅ~!【怖い、…助けて…離して!】」
「暴れんじゃねぇ!ぶっ[ピーーー]ぞ!!!」

発火能力者の怒号の中、乞うような目で渋川や黒子に助けを求める。
二人は為す術もなく両手を上げているだけだ、もうダメかもしれない。
絶望に身を任せようとした。

【渋川先生が何か言っている…】

目に入った渋川の口元が声に出さずに何かを伝えようとしている。
佐天はその口の動きを心でなぞった。読唇術の真似事は映画とか
ドラマで見た時に遊び程度で行ったことはある。
渋川が何を伝えようと下のか理解できたその瞬間。


ガリッ!!!!!!

発火能力者の手にあらんばかりの力で噛み付いた。

「いっでぇ!!!!!このがきぃ!!!!!!!」

渋川先生の言うとおりにした。
後は全てを任せるだけだ、発火能力者の掌の温度が上がっていくのが解る。
通常感じる感覚の何十、何百、何千分の一の遅さで熱量の上昇が感じ取れた。
目を瞑り、襲ってくるであろう激痛を覚悟した瞬間。

「ようやったぁ!嬢ちゃん!!!」

目を開けると発火能力者の能力は発動していない、それどころか渋川先生が
自分の眼前に立っていたのだ、だがその両手は自分を掴んでいるわけでもない
相手を掴んでいるわけでもない、だが発火能力者は能力を出せずに居た。

「ッ~~~~~~~~~~~~~!?」

発火能力者が苦悶の声を上げる。
力が入らないのか佐天を拘束していた力が弱まるのを感じると、
佐天は腕を振りほどき脱出した。

「がんばったのお…後は任せなさい♪」

「はい・・・・・・。」

小さな巨人とはこのことか、渋川は佐天に微笑むと目の前の悪漢に視線を移した。


あまりの出来事に黒子は驚愕を隠せなかった。
5m程度の距離とはいえ、テレポーターも吃驚の速度で相手との距離を詰めた。
それは解るが渋川先生は手を出していない、それでも相手は苦痛を受けている、
精神操作?馬鹿な、渋川剛気はレベル0、外の人間で"原石"でも無いのだ。

【な…何が起こってますの…】

【凄い…】

近くにいた佐天は何が起こっているのか理解した。
そんな簡単なことで能力者を御することができるのか、これが渋川流なのか、
これが"達人"渋川剛気なのか、相手の足の甲にあるであろうツボを足の親指で
靴ごと押さえている、その激痛で演算が止まったのだろうか、目の前で起こっている
のは能力でも何でもない、1人の人間が突き詰めた武道の技術、武道の真髄なのだ。

「兄ちゃんや…痛ェぞ…」

そう言うと渋川は相手の手首を極め捕り一気に地面に叩きつける

《ゴシャァ…》

辺りに重く鈍い音が響き渡った。
佐天も黒子もこれで終わったと思ったが渋川は手を離さずそのまま相手を
合気上げで立たせると、四方投げで更に地面に叩きつけた。
手首を外すというオマケ込みである。

「さて・・・・・とどめぇ!!!!」

一連の出来事は恐ろしく早くそして容赦がないなかった。
その上、完全に止めを刺そうとする渋川に対し、黒子と佐天は飛びついて慌てて止めに入るのだった。

「ちょー!!!渋川先生ストップ!すとっぷですのぉ!!!」

「し、渋川先生!!!やめて!!とめてぇ!!死んじゃう!!!!」

二人の女子中学生に飛びつかれて渋川は止めを刺すのを止めた。
佐天と黒子はホッと胸をなで下ろすと、意識が完全に絶たれた発火能力者の見下ろす。

「あの…白井さん?…これ死んでませんよね?」

「さぁ…八分殺しには違い無いですの…」

顔が原型を留めていない、右手首も完全に外されている。
虫の息どころか息してるのか不明だ…。

無残…その一言に尽きる…。


渋川剛気による大立ち回りが終わって数分後にアンチスキルが到着した。
公園内に踏み込んだアンチスキルの隊員は現場を見て無労力の老人が行った事実に驚く。
中には「みてみたかったなぁ…達人の喧嘩…」と漏らす隊員も居たが、巨乳ロングポニテの
隊員に「不謹慎じゃん!」と頭を叩かれていた。

「かくかくしかじかですの・・・・。」

「まるまるうまうまです!!!!!」

佐天と黒子は警備員に状況を説明すると、渋川の拘束はその場で解かれることになった。
黄泉川と名乗るアンチスキルは渋川の前に立ち敬礼を行う。

「渋川先生、いくらなんでもやりすぎじゃん…」

「いやはや、年甲斐もなくお恥ずかしい、ハッスルしすぎましたわ」

黄泉川は深い溜息を付くと、渋川に対し後日の出頭をお願いして収容作業に戻っていくのだった。

渋川は黄泉川を見送り背伸びをすると、佐天と黒子に対し

「とりあえず・・・お嬢さん方、お茶でもどうかな♪」

と親指を立てて言うのであった・・・。


「は?…」

「へ?…」




                                                                       続く。


ここで区切ります。
書きためたらまた投稿させて頂きますのでよろしくお願い致します。
出来たら2~3日以内に続きを載せたいなぁ…。

>>38
「無労力」ですが、「無能力」の誤変換です。
すみませんですが、脳内変換をお願いします・・・。

ささっと書いてみた短い奴を投稿します。

>>38の続きではないです。





              いくぞッッ!!!!

          「「「「「「「応ッ!!!」」」」」」」

        せぇぇぇぇぇぇのぉォォォォォォオオオ!!!!

      「「「「「「巌 駄 無~~~~~~!!!」」」」」

学園都市の河川敷に突如現れた謎の集団がいた。
その集団は70年台を思わせるいかつい特攻服、腹にはサラシを巻いている。
リーゼント率やパンチパーマも異常に多く、学園都市の中ではスキルアウト
よりも異色で凶悪で近寄りがたい集団だった。

「野郎どもぉぉぉぉぉ!!!!ここがお高く止まっていた学園都市だぁぁぁ!
 東京にありながら俺たち"機動爆弾巌駄無"が走ってねぇゴミクズみてぇな
 街だ!!!!掃除してやるゼェ!!!」

そう言うとこの金髪リーゼントの男は紫の特攻服を飜えした。
愛車にまたがりエンジンを大きく吹した。

「おめえらの根性!この柴千春が見てやる!まずは学園都市のワルの溜まり場を
 片っ端からぶっ潰す!!」

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

鬨の声とも取れる雄叫びが河川敷周辺にこだまする。
爆音とともに50台余りの旧車が一路、第10学区に向けて爆走を始めた。
第10学区にある『ストレンジ』を目指して…。

「と・・・ところで隊長!第10学区ってどこッスかね!?」

スキンヘッドの男が千春に向かって疑問をぶつける。
その質問を受けて一笑すると、千春はスキンヘッドの頭にゲンコツを落とした。

「んなもん!!そこらのセーガクでもひっ捕まえて聞きゃいいだろうが!!!!」

実に理不尽極まりない指示を出すと、あてのない街へバイクを走らせるのであった。


上条当麻は酷く困惑していた…。
自分のいる状況を整理してみる。

「えっと、上条さんは特売品を買いにスーパーに出かける所でしたよ…
 その記憶はのこってます。近道を使ってあと少しで目的地へ到着!!!
 って所でなんでこんな厳つい連中に捕まってるんでしょうか…。」

当麻は辺りを見回すと、其処にはリーゼントやらスキンヘッドやらが色取り取りの
特攻服と呼ばれる外の世界でも絶滅危惧種に指定されているような格好のお兄さん
方にやさし~く取り囲まれていた。

「特売はもう間に合わない…貴重なタンパク質が………不幸だ…」

落胆しつつ自分の不幸体質を呪ってみる。

ため息をつくと、周りから『ため息ついてんじゃねーよ!』とか脅される…
が、脅すような発言をした奴はどこからともなく飛んできた蹴りに顔面を
蹴られて悶絶していた。

「てめぇら!脅してんじゃねーよ!!!…すまねえな兄ちゃん…。」

ひときわ目立つ金髪リーゼントの男が当麻の目の前に立った。
この集団を束ねるリーダーだろうか、周りの連中とは格が違うような印象を
当麻は感じ取っていた…。

「俺ぁちと場所を聞きてぇだけでなぁ、教えてくれちゃ良いんだよ…な?
 別にとって食う訳じゃないんだ」

「威嚇してないつもりでしょうけど、ちょっと怖いです…。」

「あぁ!?・・・」

「いえ……上条さんはいったい何を答えれば良いのでしょうか…。」

千春は律儀にも自分の自己紹介を行った。
チーム名と名前、なんの目的で当麻を囲んでいるかを…。

「で、お前ェには第10学区までの道案内をしてもらいてぇ」

「…は?いや、上条さんはこれから特売がですね…。」

「気にすんな!旅は道連れって言うじゃねーか!」

「いや!この場合道連れにされるのは上条さんですよね!?俺だよね!?
 勝手に話を決めてんじゃねーよ!いい加減にしないと本気で泣くぞ!!!」

あまりの身勝手さに思わず叫ぶ、ひと通り文句を言った後でふと我に返ると、
…周りの目線が痛い…千春だけが笑っているがこの"巌駄無"と言うチームの
メンバーは目が笑っていない、今にも襲いかからんとしている。

「おっしゃぁ!気にいった!」

千春の一声で場の静寂が砕かれた。
上条はメンバーに抱えあげられると、千春のバイクのケツに乗せられた。
突然の出来事に面食らっているとそのまま千春もバイクに跨る。

「おるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!オメェら!上条当麻は俺らのチームに
 入ったからヨォ!そこんとこ夜露死苦ゥ!!!!!」

      オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!

              いくぞッッ!!!!

          「「「「「「「応ッ!!!」」」」」」」

        せぇぇぇぇぇぇのぉォォォォォォオオオ!!!!

      「「「「「「巌 駄 無~~~~~~!!!」」」」」


   「降ろしてくれぇぇぇぇ!?不幸だァァァァァァァァァァァァ!!!!」

夜の街に1人の少年の悲痛な叫びが響くのだった・・・。


                                                              多分続く。

千春って滅茶苦茶に強い訳じゃないけど、驚異的な粘り強さとあの性格が良いよね

根性なら削板さんだろ…

たしかに上条さんも精神力タイプだけど…

>>44
千春さんの性格は僕も嫌いじゃないです。
暴走族が好きというわけじゃないですが。

>>45
削板軍覇さんだしちゃったら・・・。
花山薫でしか対抗できないじゃないですか・・・・。
もそっと後で考えますww

>>38の続きです。
ゴールデンウイークが終わっちゃうので、更新頻度が
落ちると思いますが勘弁して下さいorz



「お嬢ちゃんたちは、好きなものを注文しておきなさい」

渋川に誘われるがまま佐天と黒子は『Joseph's』の席に着いていた。
佐天はともかくジャッジメントの勤務中である黒子は断ったにも関わらず
無理やり連れて来られた。老人の誘いは中々断りにくいのである。

「…初春も巻き込んで差し上げましょうか…蚊帳の外も可哀想ですの」

「あ、じゃぁ初春には私から連絡を入れますね、白井さんは御坂さんを
 呼べばいいんじゃないですか?」

渋川がお手洗いに行っている間に、佐天と黒子は美琴と初春に連絡をする。
初春に関しては仕事も区切りをつけたとのことで合流することになった。

「お姉さまが電話に出ませんの…。」

残念そうな顔をしている黒子を慰めつつ、佐天はメニューを見る。
渋川がお手洗いから戻ってきたのはちょうどその頃だった。

「あ、友だちが1人来ることになったのですが、構いませんか?」

初春に連絡を入れた後だが、渋川の了承を得てなかった事に気がついた。
佐天は、慌てて確認をとると、渋川は「構わんよ」と心よくOKしてくれた。

【呼び出した後で「初春~やっぱり帰って~」は可哀想だもんね】

初春の『非道い!?』という表情を妄想して苦笑する。
それも面白いかもと考えたが、そこまでしたらイジメにほかならない…

【親友にそんな仕打ちは出来ないもんね】

佐天は再びメニューに目を移すのであった。 


「遅れました~すみませ~ん!ゼェハァ…」

「初春…何もそんなに急がなくても良かったんですのよ?」

注文をひと通り終えた頃、息を切らして初春が到着した。
渋川に一礼をして席につくと間髪入れずにジャンボフルーツパフェを注文するのであった。

「さてと、お嬢ちゃんたちには迷惑をかけた、勘弁してくれんかのお。」

「と・・・とんでもないです!!!(の!)」

いきなり深々と頭を下げる渋川に対し、佐天と黒子は慌てて同じくに頭を下げる。
その場に居なかった初春は渋川のいきなりの謝罪に何がなんやら解らない表情だ

「達人と呼ばれるようになると、やれ教育やら体裁やらと色々とありましてな
 本来ならあのような場面は人様に見せるもんじゃぁ無いんですわ…。
 実際、道徳とかを道を説く上でえっらそうな事を言ってますからなぁ。」

ポリポリ…

【な…なんか頭を掻きながらとてつもなくフランクに話し始めたですの…】

ボソボソ…

【イメージが変わっちゃいますね…戦っているときは口調も違いますし】

ヒソヒソ…

【連絡は入っているので詳細は知ってるんですが、そんなに凄かったんですか?】

渋川の怒涛の喋りに圧倒されつつも、佐天が恐る恐る口を挟む…。

「あの…渋川先生って…素の口調は結構『べらんめぇ調』なんですね~」

場の一瞬で静になる。
刹那の静寂とはこのような感じなのか、時間にして1秒もない静寂を打ち破ったのは、
黒子と初春の絶叫にも似た声だった。


「何を言ってますノォォォォォォォ!?」

「失礼なこと言わないでくださいよ!佐天さァァん!?」

色々と経験した人生の中で、口調の事を言われたのはそう経験のないことだ。
これが若い女の子なのか、遠慮なしにズバっと別角度から切り込んでくる言葉に
年甲斐もなく愉快な気持ちになり思わず笑い声を上げた。。

「こりゃ一本取られた!達人と呼ばれてからはそんな言葉を投げかけられたのは
 久しい!お嬢ちゃん…いや佐天ちゃんは見込んだ通りの胆力を持っておるわ!
 かっかっか♪」

「あれ…は…はっはっは!まっかせてくださいよ!こう見えても私のツッコミは
 切れ味抜群と言われているんですよ~!」

「いや、佐天さん…褒められたと言っても調子に乗っちゃだめですよ?」

「佐天さんは結構…単純ですの…」

達人と3人のJCの歓談も終わりに近づいた頃、佐天は意を決する。
この場じゃないと次の機会は得られないかもしれない、急に頭を下げると佐天は

「渋川先生!!!お願いします。
 私を…佐天涙子を弟子にして下さい!!私は渋川流合気柔術を習いたい!!」

渋川に対して弟子入りを志願したのだ。

【精一杯の言葉だ、心の底から吐き出した断られたらどうしよう…
 いや断られも食い下がるんだ!!!!】

突然の申し出に黒子と初春は「へ?」思考が止まる。
渋川にいたってはさっきまでの笑みが消えて真面目な顔をしていた。

「あ~…決意は硬そうだなぁ…こりゃ断っても食い下がる気満々かのお…
 佐天ちゃんや…」

「はい…」

「一手教授してやろう…席から立ちなさい」

「え?・・・あ・・・はい!」

佐天は立ち上がろうとすると、いつの間にか眼前に突き出された渋川の指に
ビックリして尻餅をつくように席に座らされた。


ドサッ

「きゃっ!?」

「どうでぇ?立てんじゃろ?後は煮るなり焼くなり思うがまま…
 だいぶ端折ったがこれが虚を付くってやつだ、意識の外から
 の行動には対処は難しいからのお」

単純な行動にも理がある。
渋川はこの他にもコップを使っての重心の説明と崩し方を教えてくれた。
武道のヒントはこのような身近なものにも転がっている、それだけでも
佐天にとって、初春にとって、黒子にとっては目からウロコが落ちるような
思いだった。

「まぁ、実際に体験してぇんなら、黒子ちゃんか初春ちゃんにお願いして
 わしの稽古の時にでも来なさい、あぁ、アンチスキルの稽古の時は、
 渋川剛気の知り合いと言ってええからの♪」

3人は先に席を立った渋川を見送った後に再び元の席に戻る。
完全下校時刻まではまだ少し余裕があると分かると、今日起こったことを
話題に話し始めた。

「で、佐天さん…本当に渋川先生の稽古を受けるんですか?」

心配そうに初春は佐天に聞いた。
渋川先生はだいぶフランクな人というのは驚きだったが、人格者でも有る
余程のことが無い限りは怪我とかしないだろうと思うが心配なものは心配だ。
もちろん黒子も同じ気分である。

「あんまり無茶なことはオススメ出来ませんですの…。
 生傷が絶えなくなりますわよ?」

初春と黒子の心配を他所に、佐天は渋川流を学べる嬉しさに身を震わせてた。
何も出来ない自分から何かを成そうとする自分へ変わるんだと決意する。
その様子を見て初春も黒子もため息をつくと、だけだった。

「仕方ありませんわね…。」

「はい、こうなった佐天さんは頑固ですから…。」

「よーし!やぁぁぁるぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

(お客様…あの…周りの迷惑になりますので…)

ファミレスの店員に注意され恥ずかしそうに席に着く佐天であった。

【空回りにならなきゃ良いのですが…】

【佐天さん次第ですの…】

二人は佐天の空回りそうな決意にため息をつきつつも、あんなことに巻き込まれた
佐天の精神的、肉体的な回復に心から嬉しさがこみ上げるのを感じていた。

「まぁ、精一杯、頑張ってみてくださいですの、佐天さん」

「私も応援してます!!!佐天さんならトリャー!っとできますよ!!」

「うん!ありがとう!初春!白井さん!」

どことなく影のあった佐天の笑顔から、いつもの見知った笑顔に戻っているのを感じると
初春は誰にも悟られないように目尻に浮かんだ涙を拭き取るのであった。


                                                                       続く

ここまで呼んで下さりありがとうございます。

次の予定は佐天さん稽古編の予定ですが、その前に多分

       『巌駄無Vsスキルアウト』

とか妙なものが入るかもしれませんがご了承下さい。
あと、ゴールデンウイークも終わり…私生活云々で更新頻度が
下がります……ご迷惑大かけして申し訳ないです。

雨の日のダンボールに入った猫を助けるような気分で
支援なんぞ歌だけたらうれしいです。

・・・・sageで書き込んじゃ下がるだけよ?
と後ろから指摘がありました…。

そうなのかなぁ?と思いつつも一回age!


投下の始めか終わりにageてくれたら嬉しいかな

ともかく乙

なんだよ『支援なんぞ歌だけたら』って・・・・。

>>57
乙ありです!

アレイスター「……」ガシッ ボカッ

エイワス「……」ガシッ ボカッ


佐天「貴様らの選択は正しい」

勇次郎なら結構遊びに来てる

>>43の柴千春編の続きです。

書き上げた後で重大なミスに気が付きますが、
其処は脳内でスルーして頂ければ嬉しいです。
そんな生暖かい目で読んで頂ければ嬉しいです!


ブォォォォォォォン!!!!!

ブァァァァァァァァァバババ!!!!

ぱーらーりらーぱーらーらー♪(ゴッドファーザーのテーマ)

日も暮れ既に夜遅い時間の学園都市に、どこからともなく下品な排気音の音が
響き渡る。遅いと言っても場所によってはまだまだ人は多い、メインストリート
に面しているおしゃれな喫茶店、デパート等には完全下校時刻を過ぎても多くの
お客さんがいた。

そのほぼ全員が一斉に道路に目を奪われる。

ヴォンヴォン!!!!ババババババ!!!!!
バリバリバリ!!!!!!フォーンフォーン…。キュンキュンキュン
ヒャッハー!!!!!!バリブリだっぜぇぇぇぇ!!!!

50台余りのガソリンエンジンで走る族車が公害とも言える騒音、排気ガス、
奇声を上げて我が物顔で駆け抜けていった。そのあまりの光景に方方から

【うっわー…アレ何ですか?頭がアレなんですか?ってか超うるせぇです!】
【なになに~!?お祭り!?にしてはセンス無いパレードって思うわけよ!】
【うっせーぞ!クソ雑魚がぁ!ブンブン蠅クセェ騒音出してんじゃねぇ!!】
【今のむぎのの方がこの店にとってはうるさ…なんでもない…。】

と言う声が寄せられたという。

「あのー!あのですね芝さん!?第10学区もすぐそこですし、上条さんはそろそろ
 帰宅しないと色々と身の危険を感じるわけなんですがー!!!!!」

「あー!?聞こえねぇよ上条!着くまで大人しく乗ってけよ!!!なぁ!ダチ公!」

「だめだ…こいつも話を聞かない系の人間だった…。」

上条当麻は落胆の表情を隠せないでいた。
特売品は手に入れられず危険極まりない第10学区への案内人を無理やりやらされる。
到着したらそう時間はかからずにスキルアウトと衝突するだろう、そりゃそうだ、
結構な数のバイクと人数が乗り込むのであれば、縄張り争いも発生するだろう…。
家に帰っても大食いシスターが何時まで経っても戻ってこない専属コックに空腹と
立腹が合わさって怒り頂点なはずだ…。

「なぁ上条!楽しいよなぁ~!」

「はは………不幸だ……」

程なく第10学区に到着すると、千春は全員に降車の号令をかける。
統率のとれた集団は素早く降車、軍隊並みの制度で整列を行う。

「おう上条、案内ありがとよ、こっから先は血みどろの喧嘩だぁ…
 ここまで巻き込んでおきながら身勝手なのは解るけどよ、悪ぃが
 帰ェってくれや。」

突然の帰れ宣言に、ただでさえ振り回され気味で機嫌が悪い当麻の堪忍袋は
耐えることは出来なかった。激昂とも取れる感情が意思とは関係なく当麻を
突き動かした。

「な…なんつー身勝手だおい!ここまで連れてきて帰れは無いだろ!!!!
 千春がここまで俺を連れてきたなら最後まで見届けさせろよ!それがてめぇの
 責任だ!それを放り出して硬派だの何だの抜かすなら――――――――
          そ の 幻 想 を ブ チ 殺 す !
 ってかここ結構遠いんだよ!!歩きはマジ勘弁!!送って下さいお願いします!」

最敬礼である。
随分と上から目線で下手に出る上条を見て、千春は呆れを通り越して苦笑いだ。
少なくとも同年代や近い年代の人物からタメ口で話しかけるのは居ない、ダチ連中も
なんだかんだで丁重語やら敬語やらを使ってくる。


「おっしゃぁ!いい根生だ、しっかり家に送ってやるからよぉ…見てろやぁ!
 いくぞ!!!オメエらァァァァ!!!!!!!!」

再びバイクを始動させると千春は真っ先に第10学区へ飛び込んでいった。
普段聞きなれない騒音に、何事か?とガラの悪そうな連中が出てくる。
流石のスキルアウトの連中も度肝を抜かれた。
派手な族車に派手な特攻服、自分を主張するような横断幕を掲げ我が物顔で
第10学区を蹂躙するその姿を遠巻きに眺めるしか出来ない。

「ギャラリーはこんなもんかぁ…」

千春がバイクを降りると同時に全車が各々の場所に停車する。
副隊長だろうか、恰幅の良いスキンヘッドの男が号令をかけると"機動爆弾巌駄無"の
面々は一斉に咆哮を上げた。

ォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
ウォォォォォォォオォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
              いくぞッッ!!!!

          「「「「「「「応ッ!!!」」」」」」」

        せぇぇぇぇぇぇのぉォォォォォォオオオ!!!!

      「「「「「「巌 駄 無~~~~~~!!!」」」」」


己の縄張りに多勢で踏み込んできた挙句にチームを堂々と名乗り上げらる。
そんな暴挙を見過ごせるようなスキルアウトは居なかった。
何時の世にもこのような組織にはひとつの共通する考えがある。
単純明快な考え、それは『ナメられたら終わり』だった。

「てめぇ!どこの者かしらねぇが、生きて帰れると思うなよ!!!」

「クソダセェ格好しやがって!何時時代の原始人だてめぇら!!!」

「能力者か!?なぁお前!能力者だろう!?首おいてけやぁ!!!!!」

暴挙とも取れる巌駄無の構成員50名を取り囲むようにスキルアウトは集まってくる。
その数は2倍か3倍か、明らかに多勢に無勢という状況にも千春は不敵な笑みを
浮かべる。

「おーう…黙りやがれよドサンピン共…オメェらの小山の大将はどいつよ?」

臆すること無く千春は一歩を踏み出した。
あまりにも堂々とした千春の態度に思わずスキルアウトの1人が殴りかかって来た。
その手には警棒が握られている。

<<ベギャァ!…>>

手応えは十分にあった。
並の人間ならこの一撃でで十分に沈むはず…。
沈みゆくであろう千春に対し勝利の笑みを浮かべたスキルアウトはその瞬間
千春が放ったケリが顔面にめり込み、5mほどふっ飛ばされた。

「お前らじゃ何人束になっても埒が明かねぇよ、さっさとお前らの頭ァだせや!
 クラァァァァァァァ!!!!!」

「能力者ではないようだな…何故、こんなことをする…」

他の連中より明らかに雰囲気の違う大男が人垣を分けて場に入ってきた。
その姿は黒のレザージャケットとズボンに身を包んだゴリラのようだ。

【予想以上じゃねーか…ちとヤベーかぁ…】

寡黙な雰囲気と規格外の巨体に千春は憧れの人物を思い浮かべる。
だが同系の圧力なら、目の前のゴリラよりは圧倒的に憧れの人が上だ。
"花山薫"の喧嘩を柴千春は知っている。

「よう、遅いじゃねーかゴリラ野郎…オメェがこいつらの頭ァってことで
 間違いねーよな…」

「駒場利徳だ…もう一度聞く、何故こんなことをする…。」

「何故?何故だぁ!?全国制覇よぉ!人様にとっちゃぁ下らねぇ事かもしれねぇが
 俺らぁこれに命賭けているからよぉ!ナメてっと怪我じゃ済まねーぞ?」

「あぁ、本当に下らんな」

<<ボゴン!?>>

【~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!?】

炸裂音、その瞬間、千春の体が宙を舞いスクラップに突っ込んだ。
あまりにも一瞬の出来事で殴られたのを理解するのに時間がかかったほどだ。
千春が突っ伏すのを確認すると、駒場は背を向けた。

「た!?…隊長~~~~~~~~~~~ッ!?」

「うしゃぁ!!!流石だぜ駒場さん!!!!!」

双方の集団が悲鳴と歓声を上げる。
誰しもが柴千春の負け、否、死を想像する。
駒場の一撃は交通事故を思わせるような衝撃を柴千春に与えたのだ。
慌てて巌駄無の面々が駆け寄ろうとする。

「よるんじゃねぇ!!!!!!」

<<グチャ!?>>
仕留めたと思った駒場は振り返った瞬間、その鼻っ柱に千春の頭がめり込んだ。
突然の出来事に視界が暗転、膝が落ちそうになった所を千春は見逃さない。

「い~い高さになったじゃねーかぁ!!オルァ!!!」

「グッっ!!」

千春の右拳が駒場の顎先を真っ直ぐ打ちぬく。
頭突きからの右ストレート、突然のコンビネーションに駒場は面を喰らった。
面を喰らったのは巌駄無もスキルアウトも同じだった。誰しもが一撃で柴千春
は沈んだと確信したにも関わらず、ピンピンしている。

「あぁ、オメェはやっぱりあの人とは別だわ、あの人ならこれしきで倒れねぇ…」

<<ドゴォォン!!!!!>>
更に追い打ちをしようと拳を振りかざした瞬間、先ほどとは比べ物にならない
衝撃が千春を襲う、その一撃は普通なら軽く人の命を終わらせる一撃だった。
            【なん…だ…と…】

「本来なら、このような喧嘩で使うものではないがな…仕方ない…
 一発だけの全力なら問題ないだろう。」

駒場は自身にかかる負担を覚悟して発条包帯(ハードテーピング) を使用した。
今度こそ確実に仕留めた。そう駒場は確信した。
生身の人間ならまず耐えられない、耐えても動けるような状況じゃないを思っていた。

ざわっ…
「待てよ大将…まだ終わっちゃいねぇ…」

【何故…立つ…】

駒場は動揺を隠せなかった。自らが受けても確実に倒れるであろう一撃を
柴千春に打ち込んだ、確実に殺した。それほどまでに完璧な一撃だった。
特攻服は破れ、所々から流血が見られる、おそらく骨折も多数だろう。
ヘタすれば内臓器官も損傷の可能性がある。
だが目の前の男は立ち上がってきた。

「隊長!!!!もうやめてくれ隊長!!!!!死んじまう!!!!」

千春の仲間が各々に悲痛な叫びを上げる。
これ以上はやれない、これ以上はやってはいけない。
そう思うと止めざるを得なかった。
その声に対して千春は…

「ばぁか…俺ぁ世界チャンピヨンに勝った事があるんだぜ…あんなへなちょこ野郎に
 負けると思ってるのかよ…。」

そう言って千春は破れかけた特攻服を脱ぎ捨てた。
その背中に雄々しい黄金の龍、"キングギドラ"の刺青が彫られている。
その見事なキングギドラの刺青にスキルアウトからも「おぉ…」を声が上がった。

「待たせたな大将…さぁ、やろうや…」

なんの構えも見せず千春は無造作に駒場へ歩み寄る。
ヤンキー特有のメンチを飛ばし、迷うこと無き歩みを止めず間合いに入った瞬間
ケンカキックが駒場の顔面に炸裂する。

【何故こいつは立てる…】

駒場は千春のケンカキックを受け仰け反るも、直ぐに反撃に出る。
互いに防御無視の殴り合いが繰り広げられた。

「「ちっはっる!!!そるぁ!!!!ちっはっる!!!そるぁ!!!ちっはっる!!
ちっはっる!!!そるぁ!!!!ちっはっる!!!そるぁ!!!ちっはっる!!
ちっはっる!!!そるぁ!!!!ちっはっる!!!そるぁ!!!ちっはっる!!
ちっはっる!!!そるぁ!!!!ちっはっる!!!そるぁ!!!ちっはっる!…」」

巌駄無の面々が喉がはち切れんばかりの応援を千春にぶつける。
数では優っているスキルアウトの面々も各々が二人を応援するという不思議な
関係がそこで生まれていた…。

「おめぇ!!なんで相手を応援してんだよ!!!!!」

「馬鹿野郎!こんなすげぇ喧嘩!二度と見れねぇぞ!!!!!」

「兎に角だぁぁぁ!!!ふたりとも!!!!がんばれやぁぁぁぁぁ!!!!!」

辺りには互いの肉を叩き合う嫌な音が響き渡る。
互いが限界を超えたかと思った瞬間、柴千春は崩れ落ちた。

「うおぉぉぉぉ!隊長!!!!!!隊長!!!!!!!」

巌駄無の面々が崩れ落ちた柴千春の体を支えた。
その姿は目を背けるほどにボロボロの状態にも関わらず、どころ無く神々しい
そんな感覚をその場に居た全員が受けるのだった。

【俺は勝ったのか…】

駒場は複雑な気分に陥った。
咄嗟に出した発条包帯(ハードテーピング) を以っての一撃が無かったらこの男に
勝てただろうか、いや良くて相打ちだろうか…そんな思いが駒場の心の中にあった。

「勝てなかったか…。」

駒場はボソリと呟くと、千春を病院へ連れて行くように指示する。
スキルアウトの面々は突如現れた新しいグループに柴千春に敬意を払う。
このぽっと出の男は、スキルアウト屈指の強者、駒場利徳に凶器の類は一切使わず
ステゴロのみで挑み追い詰めた。一夜にして"巌駄無"と"柴千春"の名前は各学区の
スキルアウトに一目置かれる存在と成った。

3日後・・・

柴千春は病院の屋上でタバコをふかしていた。

「負けちまったか…」

千春はそう呟くと、すってたタバコを後ろへ投げ捨てた。

「あっちぃ!?」

突然後ろから叫び声がした。
後ろを振り向くと当麻が居た。

「あぁ、わりぃ…あ~…偉そうなこと言って負けちまったなぁ…」

「なかなか凄惨だったけど、いい喧嘩だったと上条さんは思いますよ?
 ってか俺、おもいっきり空気だったんですけど…。」

引きずり回された挙句、放置プレイを喰らい、その上置き忘れられて
帰宅後にインなんとかさんに噛まれるというコンボを受けた当麻の目は
どうしたことかハイライトが入っていなかった。
よほどひどい目に遭ったんだろう。

「あぁ、上条にゃ迷惑かけたな、埋め合わせはするからヨ…まぁ勘弁してくれや…」

「それはもういいって、それより体は大丈夫なのか?」

「問題ねぇべ、こうして立っているからヨ」

カエル医者曰く、『生きているのがチョットしたホラー』といわれる怪我だったと
当麻は聞いていたが、割りと普通にしている千春を見て改めて冥土返しの技術の
高さを思い知る。

「上条よぉ…俺ァ一度帰って、ケジメつけてくるわ…そしてもう一回、あのゴリラ
 をぶちのめしに来るわ…。」

「そっか…確か千春は外から来たんだよな…お前どうやって入ってきた!?」

「川から筏で、まぁ仲間も全員おん出されたっぽいからよ、怪我が治りゃ直ぐにでも
 追い出されるべ、お前とダチになれたのは良かったわ…。」

「川から筏って警備体制が意外とザルだな学園都市…。
 まぁ、上条さんは最後まで空気だったんだけどね!でもまぁ、バイクのニケツ
 は楽しかったさ」

「おう、また乗せてやらァ」

二人は再会を誓ったが、その後、学園都市内で二人の運命が
交わることはなかった。

                             柴千春編 完


ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
とりあえず閑話扱いの柴千春編はここで区切ろうと思います。

えっと、すみません…上条さん超空気です。
もそっと出番と思ったのですが、ここで上条さんがどうこうするのは無いわ!
と勝手に判断した手前、案内役→空気となっちましました。

あと重大ミスですが…

駒場さん・・・第10学区ではなく記憶が確かなら第7学区に陣取ってますよね…。
そこら辺はもうなんか適当な理由を各々で考えて頂ければと思います。
本当すんませんでしたorz

じゃぁメインである渋川剛気の活躍をうまく書くように、ない頭を捻りつつ書いていこうと
思います。

生暖かい目で読んで頂ければ幸いです。・゚・(ノД`)・゚・。

不定期な休みが妬ましい…。
書き溜め不足ですが、投稿させて頂きます。

色々と四苦八苦しつつ書いてますので、長く生暖かい目で
見て頂けると嬉しいです。

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学園都市某所 風紀委員訓練施設

渋川剛気が学園都市に招かれて数週間、ジャッジメント訓練施設にその姿はあった。
主にアンチスキルの武道師範として学園都市に招かれた渋川は、同じ保安組織である
ジャッジメントに対しても同様にその技を指導していた。

【えィッッ!!! たァッ!!!】

ひときわ気合の篭った声が道場に響きわたる。
声の主は佐天涙子だった。彼女はジャッジメントではないが、特別に渋川の指導を
受けることを許されていた。

「こうして…こう!!!!!」

どったんばったん!

「ちょぉぉ!?佐天さん痛い痛いです!その落とし方は痛いでグフゥ…」

「あ…ごめん初春…」

佐天の小手返しが頭に花飾りを着けた少女を畳に叩きつけた。
ゆっくり技を掛けたつもりだったが、思った以上に綺麗に技が決まったのか、
初春は不自然な程の勢いで畳に倒され、涙目で悶絶するのであった。

「はひぅぅぅ…ふぅぅぅぅぅ…ひぐぅぅぅ…」

「あぁぁぁ!?ゴメン!初春!ごめん!ほら!泣かないで~べろべろば~」

「いや…泣いて…ヒック…ない…ですよ?ヒック…ただ…ズビッ…少し…かなり…
 ものすごく…痛かっただけで…シクシク…」

ゴツン!

「痛ッッ!?」

突然、目の前に火花が散ったような感覚が襲った。
さほど強い衝撃ではないが、脳髄に残るような痛みが頭頂部に広がる。
思わず膝を抱えたくなりそうになるが、そこは我慢して後ろを振り向くと、渋川が
立っていたのを見て、ゲンコツされたと理解した。

「こりゃ、佐天さん!練習で頭から落す奴があるか!早く技を掛ける前に、正確に
 技を掛けることを意識せんといかん!相手も自分もけがするじゃろか!」

正論だ、数週間指導を受けただけでも人間が地面に叩きつけられたらどうなるかを
佐天は理解していた。これが畳じゃなくコンクリートだったら下手をしなくても
相手を殺してしまうかもしれない、現に畳に勢いよく叩きつけられた初春は、大事を
とって医務室での処置を行うこととなった。

【後で謝りにいかなきゃ…。】



練習での事故とは言え、親友に怪我させたかもしれないのは心が痛む…。

「が…まぁ、今のはなかなか筋が良い技の掛け方かの…この調子で精進しなさい。
 あ、でも怪我をしない、させないは意識するようにせんいかんぞ、怪我なんぞ
 してしまったら、鍛錬できんからのお」

そう言うと渋川は、次の人の指導へと行ってしまった。
色々と質問したいのも多々有るのだが仕方がない、この訓練所に他学区からの
ジャッジメントも集まって渋川の指導を受けているのを見ると、かなり忙しいのだろう。
渋川は、演舞や乱取りで渋川流の技を見せてくれても直接的な指導は最低限だった。

「…これは見て覚えろって感じかなぁ、うーん…渋川先生は忙しいみたいだしね…」

佐天は技を掛ける一連の動作を一人稽古で何度も繰り返していた。
それこそ暇があれば、技の動作をひたすらに繰り返し行う。学校でも家でも道場でも
渋川剛気が見せた『一挙手一投足』を体に叩きこむのを意識して。

「結構、バトル漫画で有るよね『見取り稽古』ってやつ…。
 渋川先生が忙しい身なら、先生が見せてくれた動きを納得するまで真似する!」



学園都市某所 風紀委員訓練施設 医務室


医務室に運ばれて約2時間、初春はベッドに横になっていた。
畳とはいえ思いっきり頭部を痛打してしまった以上、大事をとるは必要だった。
医務室待機の職員は大事を取って病院への検査入院の手続きを取ってくると言うと
そのまま医務室から去って戻ってこない、はっきり言って暇を持て余していた。

「暇です…まだ少し頭がガンガンします…暇です…。」

「…ほんとにごめんね~…」

「うひゃぁぁぁぁああああああああああああああああぁぁぁぁぁああああ!?」

いつの間に医務室に侵入していたのだろうか?
音もなくベッドの側に腰掛けている佐天に頭痛どころか、心臓が止まるかと思った。
何度も忍び寄られてスカートをめくり上げられているが、今回のはかなり極めつけ
だろう、初春は高鳴る鼓動を沈めるために必死に肩で息をしていた。

ゼェェェハァァァァゼェェハァァ…スゥゥゥゥ…ピタッ!…フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

「佐天さん!脅かさないでくださいよぉ!心臓が口から飛び出るかと
 思ったじゃないですか!」

「昭和かあんた…いやいや、コホン…で、大丈夫だったの?」

佐天は恐る恐る初春の状態を聞く、その顔には心配の色が浮かび上がっていた。

「あ~…まだちょっと頭がガンガンしますが、気分は悪く無いです。
 一応、大事を取って検査入院の手続きをしてもらっていますけど、ハッキリと意識
 もありますし、大丈夫ですよ」

「検査入院!?…ごめんね!本当に私の責任だよ…。
 初春はちゃんと危険を伝えてたのに、止めなかったし…。」

しょぼんと肩を落としている佐天を見て初春はクスリと笑うと

「じゃぁ病院までの付き添いと、ジャンボフルーツパフェで許しちゃいます。
 あ…でも、受け身取れなかったのは私の未熟さが原因なので、病院までの付き添いで
 手を打ちましょう!…あ…やっぱりパフェの方がいいかなぁ?」

【初春の笑顔は眩しいなぁ】

そう思いつつも怒っていないのは拍子抜けである。
佐天は、初春が退院後にパフェをご馳走しようと付き添いながら伝えるのであった。

数日後

セブンスミスト周辺


賑やかな繁華街を佐天はウインドショッピングをしていた。
色取り取りな商品を手に取り、試着し、楽しんでいる姿は歳相応の女の子そのものと
言えるだろうが、初春も黒子も御坂も捕まらず1人で繁華街をブラブラしているのは
流石に寂しい物がある。

「…暇を持て余して出てきたは良いけど…やっぱり暇だ…。」

ウインドショッピング自体は楽しいが、物欲を掻き立てられるのは難点である。
佐天は残念ながらレベル0の無能力者が故、学園都市の奨学金は能力者に比べると
少なめだった…。

「うぅ…くそぅ…でもまぁ…前ほどは悔しいと感じなくなっているなぁ…。
 うん、今は物欲よりも技術欲って奴を満たすのが面白いもんね」

ナァオィ……ヤルカラヨォ……
イイカラ…ヨォ……タノシ……ベェ?

ふと柄の悪い声が聞こえてきたので、思わず佐天の危険信号が働いた。
声のする方を見ると3~4人のスキルアウトが1人の女の子を取り囲んでいる。
が、取り囲まれている少女は佐天がよく知っている人物だった。

「え!?御坂さん!?…」

【あのスキルアウトの人達は黒焦げ状態になるんだろうなぁ~】

佐天は次の瞬間にでも起こるであろう惨状を想像しつつ、遠巻きに眺めていた。
しかし、その期待は裏切られるように御坂はスキルアウト達に囲まれ連れ去られ
ようとしていた。

【えぇ!?…ちょちょ!?…え!?あれ!?】

混乱気味になるが1つだけ感じ取れる。

【このまま放っておくのはマズイ!】

「み…御坂さぁ~ん!もう!探しましたよ~、あ、ごめんなさい~彼女の友達
 なんです~…あはは~…」

わざとらしいにも程がある!と思いつつも佐天は勢いのまま御坂をその場から
連れ出そうとしたが、思わぬ所からの妨害が入った。

「?…どちら様でしょうか?少なくとも貴女とは初対面のはずですが?
 とミサカは自身の記憶の相違を確認しつつ問いかけます。」

「はい?…え?…やだなぁ…(もう!こんな時に冗談言わないでくださいよ!)
 ほら、行きましょ~…う…」

勢いのままに囲いを突破する作戦は、残念ながら大失敗に終わった。

「へぇ~、この子も可愛いじゃん?」

「お嬢ちゃんも、俺らと飯にいかね~?」

「まぁ俺らがオマエらを美味しく頂くんだけどな~」


ウンザリしてくる。
何度目の経験だろうか?運が良い事にここは衆人観衆の目が多い場所だ、
速攻でどうにかされる事は無いだろうと思うと、とりあえずはジャッジメントか
アンチスキルが来る時間を稼ぐことにした。

「いや、私達は用事があるんで~ですよね!御坂さん!」

「?…いえ、これと言って用事は無いですとミサカは訳が分からないという素振りを
 隠しつつ会話のキャッチボールを行います。」

「だぁぁぁぁぁ!?どうしちゃったんですか!?何があったんですかぁぁぁ!?」

「何があった…はっ、そうゆう意味ですか、ミサカは貴女との約束を果たすために
 ここで待ち合わせをしています。と事態に気がついたミサカは慌てて話を
 合わせます。」

「それを今ここで言ってどうするんですかァァァァァァァァァ!?」


延々と続くようなボケに思わず頭を抱える。
が、それで事態が好転するわけでもない、今はとりあえずこの状況をなんとか―

ボグシャァ!

「ミサカパーンチ、と、ミサカは手近に居るモヒカン野郎に白魚のような鉄拳を
 惜しげもなく披露します。ミサカキーック、と、ミサカはその隣にいるリーゼントの
 鼻っ柱に蝶野正洋のようなケンカキックをお見舞い…いやん…。」

フワッと翻ったスカートから顔を覗かせる紺パンが眩しい…。

「え~~~~~~~!?」

あまりの出来事に吃驚仰天するも、動き始めたなら止まるわけには行かない、
佐天は呆気に取られている1人のスキルアウトの親指を取ると、勢いよく逆関節を
捕りそのまま小手返しの要領で地面に叩きつけた。

「えい!!!!!」

ゴキャ……イデェェェ!?

親指が折れたのだろうか、嫌な感触が伝わってくる。
しかしそれを気にしている暇は無い、相手が体制を立て直す前にこの場から
逃げるのが先決だと、佐天はミサカの手を取ると、人混みに紛れるようにその場から
離れた。



ファミレス『Joseph's』


なんとかスキルアウトから逃げ切った佐天は、いつものファミレスで一息入れる
事にした。少なくとも監視カメラが堂々と設置されているこの場所なら、見つかった
としても、アンチスキルまで直ぐに連絡が行くので、闇雲に走り回るよりは安全
だと考えた。

「で…一体どうしちゃったんですか?」

「?…質問の意味が理解出来ませんとミサカは首を傾げます。」

「ほら、その喋り方もおかしい!何だか今日の御坂さん変ですよ?
 その妙な厳ついゴーグルとか、もう違和感ありすぎです!」

「変でしょうか?…少なくともお姉さまと外見は変わらないはずですが…
 とミサカは自分の胸の部分を確認しつつ深いため息を付きます。
 それと、このゴーグルが無いとミサカはお姉さまの様に電磁線を視認できません
 それを補うための物です。とミサカは懇切丁寧に説明します。」

「え?…『お姉さま』?ひょっとして…御坂さんの妹さん!?」

驚きの連続だ、御坂に妹が居るのは初耳である。
しかも一卵性双生児とは驚きをやはり隠せない、やはりレベル5なのだろうか?
佐天が質問を投げかけようとした瞬間―

「質問があるみたいですが、一応確認を取らせて下さい。
 『ZXC741ASD852QWE063'』とミサカはパスの確認を取ります。」

「は…はい?…」

「…了解いたしました…機密事項に触れない質問のみお答えします。
 とミサカはどんな質問でもバッチコイ!と身構えます。」

【変な子だなぁ…】

その後、何度か「禁則事項です」とか「お答え出来ません」とか言われた。
まぁ、一応はこの通称『御坂妹』の情報が手に入ったのでそのことはよしとしよう。
佐天は再び目の前に居るこの御坂美琴にそっくりな御坂妹を観察する。

【名前を聞いても『ミサカはミサカです。強いて言うなら御坂妹です』と
 言われるとは思わなかったけど】

「本当…妹さんって御坂さんにそっくりですねぇ…。」

「…ミサカはそんなにお姉さまに似ているのでしょうか?とミサカは質問します。」

「ん?…だって御坂さんはお姉さんなんですよね?
 なら鏡を見ている気分とかになりません?」

「いえ…ミサカは…」

無表情なミサカの顔に暗い影が落ちたような気がした。
佐天は話題を変えようとした瞬間

「あんた!こんな所で何やっているのよ!!!」

御坂美琴が複雑な表情で席の前に立っていた。
その顔は怒りにも驚きにも取れるような気がする。

「あ、御坂さん、妹さん居たんですね~。」

「あ…うん、あの佐天さん、私に妹が居るってのはその…黒子や初春さん達には内緒にしといて欲しいの…」

バツの悪そうな感じだ、そんなに妹の存在がバレたくないのだろうか?
佐天にも姉弟はいる、自分が姉弟を大事にしている立場であるのを考えると、
御坂の妹に対する態度は、違和感を覚えるものだった。
だが、これはあくまでも人様の家の事情、無闇矢鱈と口をだすべき問題じゃない
のは理解できた。

「…わかりました。御坂さんがそう言われるのであれば…でも、妹さんイイ子ですよ?
 少し癖があるかも知れませんが、姉妹なら仲良くすべきと思いますよ?」

「失礼な!とミサカは『少し癖がある』という言葉に対して謝罪と賠償を…
 「あんたは黙ってて」…」

「…そうね…仲良くするように…するわ…うん…」

このような雰囲気の御坂は確実に隠し事がある…。
そう考えても、相手はレベル5、常盤台の超電磁砲だ。
常人が束になろうが頭脳面、能力面で圧倒する電撃姫に関しては無力を
感じざるを得なっいた。

【力にはなれないんだろうなぁ】

少し話し込んだ後、御坂は妹と一緒に帰ってしまった。
ふと妹の方も常盤台の制服を着用していたのを思いだして不思議に感じる。
一人きりになったファミレスで佐天は御坂妹の事を考えていた。

【白井さんはこの事は知っているのかなぁ?】


だが考えても仕方がない、口外するなと念を押された以上はおいそれと共通の
友人に相談するわけにも行かない、この件は心の底のモヤモヤとした嫌な感覚
で残るのだろうと…。

コンコン…。

外から窓がノックされる音がした。
佐天はそこに視線を移すと、良い笑顔の老人がそこに立っている。
老人は店の中に入ってくると、そのまま佐天の真正面に腰掛けた。

「お疲れ様です、渋川先生。」

佐天は立ち上がって頭を下げようとするが、渋川はそれを制した。
プライベートな時間に堅苦しい事はしなくて良いとのことらしい、本当に
フランクな人だと思いつつ、佐天はふと相談するならこの人が適任かもしれない
と考えるのであった。

「ところで、佐天ちゃんや…な~んか考え事でも有るんかの?
 神妙な顔で座っとると、せっかくの別嬪さんが台無しじゃわ」

「え?…いやそんな、別嬪さんだなんて…」

『別嬪さん』という単語なんて久しく聞いていない、死語もいいところだ。
昭和か!と言いたくなったが、よくよく考えたら渋川は老人である…。

【別嬪さんかぁ…】

嬉し恥ずかしな感覚を抑えこむと佐天は気を取り直すように努める。
一呼吸おいて、渋川に相談することに決めた。

「実は、友人に口外するなと念を押されていたのですが、ちょっと気になることが…」

渋川は待ったをかけた。

「佐天ちゃんや、その子は佐天ちゃんを信用して口止めしとるんじゃろ?
 それを口外するのは、云わば裏切りに近い行為、そうしてまで相談する価値が
 この渋川剛気にあるかの?」

「~ッ…」

そうだ、口止めとはそういうものだ、渋川先生といえどそう簡単に秘密という
ものは明かすべきじゃない、佐天は再び無言で考えこみそうになると、突然
渋川が口を開いた。

「じゃが~…まぁ、独り言ならノーカンかもしれんのお…」

「え?…それって…」

思った以上に渋川剛気という人物は不良老人かもしれないと感じた。
渋川は面と向かって相談するのは駄目だが、独り言が耳に入るのは仕方がないよね~
と、わかり易く遠回しに伝えているのだ。佐天はその一言に心を許したのか、ひとり語りを始めた。

「えっと…今日は色々なことがあったなぁ…」

繁華街であったこと、御坂妹のこと、御坂美琴の気になる態度…。
佐天は今日一日で起こった出来事をまるで日記に記すかの如く呟いた。
その後、成り行きとはいえスキルアウトと喧嘩を行ったことに対して
の罰だろうか、結構な強さの渋川デコピンをそのオデコに食らうのであった。

「ばかたれ…」

ビシィッッ!?

「あいたァッッ!?」

ただのデコピンなのに涙目になる威力は反則だと
佐天は心の中で呟くのであった。


学園都市 常盤台中学女子寮 208号室

「おねえさま…。」

白井黒子は御坂のベッドに座っていた。
今日も相方の御坂美琴は遅いのだろうか?寮監の目もいつまで誤魔化しが通じるか不明である。
むしろ、既に気が付いているかもしれない、黒子自身はジャッジメントの仕事があるので、比較的
遅くても大目に見てもらえるが、御坂の場合は別だ、研究協力で遅くなる場合は、寮監にも学校や
研究所から連絡が入る。
その連絡が寮監に来てないとなると、十中八九が良くないことに決まっていた。

「黒子にも相談して下さらないなんて、お姉さまは一体、何に巻き込まれているのでしょうか?
 はっ!?…まさか…まさか!!あの殿方と密かな合い挽き!?
 夜の街であんなことやこ~んなことを!!あぁぁぁあっぁぁぁ!!お姉さまァ!
 黒子は!!黒子はもう!あの類人猿に対して溢れる殺意と、お姉さまに対する
 燃え上がるリビドーを抑えこむのが限界ですのよぉぉぉぉぉぉ!!!
 あぁん!!あぁん!おねえさまぁぁぁぁぁ…」

居ても立ってもいられない、そんな気分にさせられる。
部屋の中、主に御坂のベッドの上でひと通り悶えるとふと我に返った。

「クスン…虚しいですの…寂しいですの…。」

グシャグシャにしてしまった御坂のベッドを綺麗に直すと、黒子はジャッジメントの
腕章を取り出し寮監の元へ向かう、巡回を兼ねて御坂を探すつもりだった。

「支部にいきませんと、この時間なら多分初春が居るかもしれませんし。」

街中の監視カメラを初春に操作させて、御坂の捜索を手伝ってもらおう、もしかしたら
見つかるかもしれない、逆に言えば、監視カメラで捉えられなければ何か良くない、
少なくともまともじゃない事に関わっている事が想像に難くない、そう思いつくと
黒子は寮監に外出の許可を貰うため寮監の部屋の前に立つ。

ゴクリ…

「な…何もやましい事じゃないですのに、この重圧は何なんですの…。」
 
この扉をノックするのは、自らの絞首刑のボタンを自分で押すかの如く不安になる。
完全下校時刻は過ぎている、急なジャッジメントの仕事も珍しいことじゃない、だが、
ここは常盤台女子寮、学園都市で最も格式の高い女子寮である以上、規律は厳格
である。意を決し扉をノックしようとした瞬間

「何だ白井、私に何か用でも有るのか?」

「うひゃおぉやはぁぁぁぁぁ!?」

「うわぁぁぁぁぁ!?」



突然後ろから声が掛けらた事に対して思わず変な叫び声を上げてしまった。
びっくりしたのは寮監も同じである。
声を掛けた寮生が突然奇声を上げられたら鉄の胆力を誇る常盤台女子寮の
寮監とて驚くにきまっている、なんだかんだ言っても29歳の『か弱い女子(笑)』だ。

ドキンドキン

「び…びっくりさせるんじゃない!!」

ドクンドクン

「りょ…寮監様…それはこっちの台詞ですの…」

気を取り直して外出の許可を申請する。
ジャッジメントの活動の為とあらば、無碍に却下とも言われないだろう。
黒子は許可の降りるであろう申請の後の行動を考えていたが、予想外の
寮監の一言に背筋が凍る思いがした。

「許可を出すのは構わんが、その前に白井…御坂はどうした?
 先ほどお前達の部屋に行ったが、御坂の姿が見当たらないのだが?
 門限破りは連帯責任とゆうのは、もちろん覚えているだろう?」

ゴキン…。

寮監の手から、おおよそ女性のものとは思えない骨の音が聞こえると黒子の
恐怖は頂点に達する。蛙が蛇に睨まれる気持ちとはこのような物か、死の覚悟を
決める直前とはこの時だろう…黒子はそっと目を閉じ覚悟を決め…るわけはない。

「いやあの、寮監様?お姉さまが今ここで寮則破りをしているのは認めますが、
 その前に私はジャッジメントとしてのっ!あぁ首に!首に寮監様の引き締まった腕が
 巻き付い…ゴブゥ…。」

ゴキリ!

嫌な音が女子寮に響き渡った。
寮監が黒子を離すと、癖っ毛混じりのツインテールをなびかせ黒子はその場に
崩れる様に倒れるのであった。


尚、外出許可は降りたらしい…。

「ふ…不幸…です…の…」




                                                             次回へ続く。


結構な時間を開けていますが、ここまでしか書けてませんorz
本当に長い目で見て頂ければ嬉しいです。

・・・渋川先生目立たねぇ!!!

明け方にコッソリと少しだけ続きを投稿します。



学園都市 某所 夜


人に胸を張って言えることではないか、渋川は夜の街を散歩するのが趣味の1つだ。
ただ散歩しているわけではなく、敢えて喧騒激しい場所や比較的に荒くれ者の多い
場所を好んで回る傾向がある。

「ふむ…治安に関しては問題有りな所かと思うたが、悪そうな輩も一応の分別は
 持っているか…ジジイを相手に手を出してくる輩は少ないかのお…。
 まぁ、平和で何よりっちゅうか…些か物足りん…」

悪党退治と言えば聞こえは良いが、その実、わざと喧嘩を売らせ格安で買い取る。
正当防衛の体裁を保ちつつ完膚なきまでに叩き伏せるとゆう悪趣味極まりない
やんちゃっぷりが渋川剛気のもう1つの顔だった。
学園都市に来てからは体裁よく過ごしていたため、比較的大人しく過ごしていたが、
それでも、公園の件を含めて数回ほどスキルアウトを叩き伏せていた。

「まぁえぇ…このまま散歩ってぇのも悪ねえやな…」

行く宛もなく只々夜の学園都市を気の向くままに歩いていると、ふと大きい鋼橋に
差し掛かる。渋川は鉄橋を渡っていると、見覚えのある容姿の少女が1人今にでも
身投げしそうな表情で佇んでいるのが目に入った。
傍らに居る見覚えのない少年と言い争いをしているのか、怒号が聞こえる。

「おや…あの嬢ちゃんはたしか…」

佐天の話(独り言)もあってか、渋川はその少女の元へゆっくりと歩み近づく、
橋に差し掛かる瞬間、巨大な雷が近くに落ちたような感覚に渋川は襲われた。

同時刻
学園都市 第七学区

日課となっている自主練を佐天は学生寮近くの広場で行なっていた。
稽古で見せてもらった渋川剛気の動きを鮮明に覚えているうちにトレースする、
もっとも、渋川は稽古の時間は袴を着ているため膝下の動きは解りにくかったが、
渋川の動きを模倣することにより、同じ動きをするための最も適した身体運用を
理にかなう理を佐天はその体の中に組み上げていった。

「あぁ~~~~!駄目だ!!どうしても渋川先生みたいには動けないや。
 渋川先生は私が生まれる遥か前から"達人"と言われている人だし、一長一短で
 同じ動きができましたー!って訳には行かないよね…うん、がんばろう!!」

休憩を挟み再び稽古を始める。
能力開発と違い、武道というものは確実に自分の中で実を結んでいる。
たどり着ける、曖昧じゃない目標がある喜びを佐天は感じていた。

「今日はこれくらいかな…ふぅ…。」

持参していたタオルで汗を拭い帰路につく準備を始めると、ふと視界の済に
顔見知りの姿が写り込んだ気がした。

【御坂さん?…】

顔を上げ辺りを見回すと、御坂美琴と瓜二つの後ろ姿の人物が視界を横切った。
額には厳つい軍用のゴーグルが掛けられているのが見える。

「あれ?…妹さんの方だ…」

好奇心が佐天を突き動かした。
気づかれない距離と夜という視界が限定される状況を利用して、尾行を始める。

コソコソ…

【どこに行くんだろう…結構遠いなぁ…。】

そして、佐天は第一七学区へ足を踏み入れた。
これから起こるであろう惨劇を知らぬままに…。


額に冷や汗が浮かぶほどの重圧を渋川は感じていた。
佐天や初春、黒子の話を聞いていて御坂美琴が学園都市第三位の能力者
というのは知っていた。学園都市のスキルアウトと呼ばれるならず者を
叩き伏せた時にも、極稀に能力とゆう力を駆使する者は居た。
学園都市に来て対峙した能力者、それらが可愛く思えるほどの圧倒的な
『超能力者』という存在を渋川は初めて認識した。

「これが、あの嬢ちゃんの力ってわけか…へっ…長生きはしてみるもんだ…」

しかし、渋川は御坂が放った電撃よりも、それを真正面から受けきった少年が
未だに息がある事に驚きを隠せない、手心を加えたか少年がゆっくり立ち上がる。

【なんで…お前…死な…ゃいけ…んだよ!……ん…納得……ねぇだろ!】

落雷の影響か耳が馬鹿になっているのだろう、少年の言葉は途切れ途切れに
聞こえてきた。歯抜け状態にしか認識出来ないが、『死ぬ』『殺され』とかの
物騒な言葉に渋川は、御坂と電撃を受けた少年が良くない事に巻き込まれている
とゆうのだけは理解した。

【あの子…助け……は…死ぬ…私一人……それ……素…ら……でしょ!!!】

    【だ か ら そ こ を ど い て よ ! ! ! 】

誰かを救うために、中学生の少女が身を挺し死地へ向かおうとしている。
少年はそれを必死で止めている。原因がどうあれ、年端もいかない少女が死を覚悟する
学園都市の中でも暗部なら日常のことかもしれないが、外部から来た渋川にとって
それは異質な事だった。

「放ってはおけんか…。」

やがて少年は気を失ったのか、その場で倒れた。
渋川は二人の元へゆっくり近づくと、その足音に気が付いたのか御坂が身構える。


「誰よ!!」

「…御坂さんと言ったかの…」

御坂の眼前には和服を着こなした1人の老人が居た。
佐天が入院した時に病室に入ってきたあの老人だ、武道の"達人"でジャッジメントや
アンチスキルの指導を行なっている、御坂にとってはあくまでもそれだけの存在、
でしかない。

「…なんの用よ…言っとくけど今の私は機嫌が悪いの…偉そうなご高説や説教とか
 聞いている暇なんて無いの!達人だか何だか知らないけどどっか行きなさい…よ!?」

ペタン…

「あっ…」

渋川は御坂の眼前に指を突き出しただけだった。
それだけなのに、御坂は体の力が抜けた様にその場に座り込んでしまった。
精神操作の一種なのか、理解が追いつかない。

「のお、御坂ちゃん…事情を聞いてもいないわしが首を突っ込むのはお過度が違う
 ってのは解るが、お前ェ…死ぬつもりで居るじゃろ?」

「聞いていたのね…なら解るでしょ?あの子たちを救うために最も確実な方法は、
 私が抵抗せずに…一方通行に殺されることなの!ツリーダイヤグラムが導き出した
 答えを覆せば、実験はきっと中止になるわ…」

『実験、一方通行という人物、あの子たち』途切れた情報じゃ何が悪で何が正義か
その様な単純な方程式は当てはまらない、事態を理解しないまま首を突っ込んだ以上、
渋川が採る行動は、大人としての責任を全うするという一点のみだった。

「じゃが、そこのボウズはお前ェを死なせたくねェようじゃな…。
 ふむ、ここはわしが行くとするかのお、御坂ちゃんはそこで寝ているボウズが
 起きるまで側についていなさい。」

「でも!アンタじゃ一方通行を倒せない!!!外の人間じゃない!コイツみたいに
 レベル0のくせに能力を消す事のなんて出来ないでしょ!!無駄死にするだけよ!」

『能力を消す』それが気を失っている少年の切り札なのだろう、一方通行と名乗る
人物を前に万が一でも敗北した場合は、この少年が御坂を救う鍵となるのは明白だ。
全てを理解した上で少年は御坂の前に立ちはだかったのは、少年が実験を中止に
追い込む何かを持っているという事だろうと渋川は納得した。


「ふむ…それじゃぁ、せいぜい時間でも稼ぐとしますかな」

渋川は実験が行われるであろう場所へ歩み始めた。

「…死ぬわよ…それでも行くの?ヒック…外から来たお爺ちゃんなんでしょ…ウゥ…
 グスッ…こんな事に…ヒッゥ…首なんて…突っ込む必要…無いじゃない…」

大粒の涙を零しながら御坂は渋川に問いかけた。
死地へ向かう渋川の背中は小柄な老人そのものにしか見えないはずだった。
にも関わらず、この小柄な老人が倒れる姿を御坂は想像できないどころか、
この最悪な状況を打開してくれると期待すらしていた。

「はて、子供が理不尽によって泣いているのに、大人が知らんぷりはまずいじゃろが、
 まぁ、心配せずにこの"達人"に任せりゃえェ♪」

渋川の眼前には他人には見えない強固な城門が見えていた。
前にも経験した事のあるそれは、渋川が向かう所が紛れもない死地であることを
暗示している。

「ほう…これが見えよるか…。」

危機感覚が作り上げるこの門を渋川は躊躇せずに開け放つのであった。





                                                続く。

読んでくださった方、ありがとうごゼェます!!!


前回の投稿までは80行一杯かそれに近いラインでの投稿でしたが、
今回は30~40行で投稿してます。
どっちが見やすいかなぁ…。


なにかございましたら、優しく伝えて頂けると嬉しいかもです!










一方通行さんまであと少し…。

続きを投稿させていただきやす!

一方さんの口調が違う!!と怒られそうですが、それは
僕の未熟さが原因!脳内変換でお願いしますorz


本当、二次とはいえ、物語を作るのは難しい…。
SSに限らず、何かを作る人達って偉大なんだなぁ
としみじみ感じております。




第一七学区 操車場

ズドン!!!!!

辺り一面に轟音と振動が響き渡っていた。
目の前で行われているのは確かな『殺し合い』だ、そしてその当事者の一方は御坂妹、
そしてもう一方は『白髪で華奢な少年』だった。

「な…何なの…何なのよあれは……」

佐天は確かに聞いた、聞こえた、『レベル5』と『最強』と、無能力者の佐天でも
その存在を聞いたことがあった。

         "学園都市第一位 一方通行(アクセラレータ)"

その人物が今目の前で御坂妹と闘っている、闘いと言うよりは一方的に近い
展開で御坂妹を追い詰めていった。

「死んじゃう…死んじゃう…死んじゃう…あんなの相手に飛び出せるわけ無い、
 私じゃきっと殺される…殺されるよ…うん…見なかったことに…」

『見なかったことにする』その言葉は飲み込んだ。
佐天は携帯を取り出すと急ぎでアンチスキルへ連絡を入れようとする。
だが、携帯は『圏外』の文字を出して繋がる気配はない。

「うそ!?…地下でもないのにこんな場所で圏外なんてありえない!!」

<<ドガァァァ!!!!>>

「あうっぅ!?」

大量の土砂が巻き上がり、御坂妹が巻き込まれ弾き飛ばされるのが目に入った。

【だめっ!!!!!】

<<ズシャァァァァ…>>

佐天は思わず飛びだすと、地面に叩きつけられそうになる御坂妹をその体で
庇うように受け止めた。勢いを殺しきれずに御坂妹と共に地面に倒れ込む。

「痛っ!!!!!!」

地面に擦られ顔も腕も足も擦り傷だらけになった。
激痛で涙が溢れそうになるが、我慢して御坂妹に肩を貸すと、一方通行から
距離を取ろうとする。



「おィ…オマエ誰だァ…」

「ひっ…」

一方通行の問いかけに佐天は、御坂妹を抱えたままその場で固まりそうになった。
目の前に居る人物は紛れもない最悪の人物と言える、何故飛び出したのか佐天にも
理解の範疇を超えていた。後悔する気持ちが無いわけじゃないが、それでも佐天は
御坂妹を助けるために飛び出したのだ。

「ったく…めンどクセェ…実験場に一般人が潜り込ンでいるとかなァ
 目撃されたらコッチもやりにくいっての…もう一度だけ聞くゾ…
 オマエは誰だァ?」

「……こ……この子の……友だちよ!」

一方通行は一瞬、自分の耳がおかしくなったかと錯覚する。
目の前に居るガキはこの模造品に対し震える声で『友達』と言い放った。
意外な答えだが、それが妙に癪に障った。

「…何処でコイツと知り合ったかァ正直どォでもイィけどよォ…。
 実験場の管理くらいちゃァンとやってもらいてェ、お陰で余計な
 仕事が増えた…よォ、オマエ…運がなかったなァ…」

【どうする…どうする…電話は通じない、人気もない…殺される…
 このままじゃ殺されちゃう…】

恐怖に支配されぬよう佐天は考えるという行為を止めなかった。
すこでも呆けたらその瞬間、精神が恐怖に持っていかれるだろう、
それは明確な死を意味していた。

「うっ…あっ……ミ…ミサカは…」

弾き飛ばされて意識を失っていたのか、それとも夢を見ているのだろうか、
御坂妹は誰かに支えられているという感覚を理解するのに時間がかかった。
弛緩しきっていた筋肉を無理やり動かし、顔を上げると、そこに居る筈のない、
居てはならない人物の顔が、佐天の顔が視界に飛び込む。擦り傷だらけの顔に
強張り、小刻みに震えている歯がカチカチと音を出している。

「っ…ア…アクセラレータ、この人は実験に関係のない一般人です。
 危害を加えずに実験場から去って頂くべきとミサカは伝えます。」

佐天に支えられている体を起こし、状況を理解した御坂妹は一方通行に
実験の一時中断を申し入れた。

「あァ!?…なに言ってんだァ?実験を見られちまった以上は口を封じるしか
 ねェだろうがよ、こんな糞つまンねェ事で躓いている暇ァねェンだ…。
 なら、殺しちまったほうが後腐れもねェ…」



申し入れは却下された、面倒臭そうに一方通行は死刑宣告を告げると、
一歩一歩、確実に二人を[ピーーー]ために近づいてくる、その表情は悪魔や極悪人
というより、淡々とした少し悲し気な表情にも見える気がした。

「なぜ…逢ったばかりのミサカに貴女はこんな目に遭ってまで手を差し伸べるのですか
 …とミサカは貴女の不可思議な行動を問い詰めます。」

無表情だった御坂妹が僅かに悲しげな表情をしているのに佐天は気付く

「だって…御坂さんの妹なら私にとっては友人と変わらないよ…。」

絶望的な状況にも関わらず、佐天は精一杯の強がりで笑顔を作ろうとしたが、
顔の強張りはどうしても隠し切れない、気を抜くと泣きっ面を晒すことになるだろう。
佐天は恐怖を隠すように御坂妹を抱きしめた。

「死ぬのはやはり怖いのですね、心音、生体電気から貴女の感情がミサカは
 理解出来ます…ですが、ミサカはやはり貴女の行動が理解出来ません。
 ミサカはお姉さまの体細胞から生み出されたクローン、ボタン一つで作られる
 消耗品、単価にして18万円の実験動物…モルモットなのですよ…」

クローン?実験?スケールの大きい出来事に脳の回路が理解を遅らせた。
だが、現にここで実験は行われており御坂妹はアイツに殺されかけている。
目撃者である私も消されるかもしれない、そんな理不尽が学園都市で行われている。
佐天の中で恐怖と怒りの感情が逆転した瞬間だった。

【許せない…見過ごせない!】

佐天は足に力を込めると、御坂妹を庇う形で一方通行に立ち塞がる。
普通の女子中学生が、学園都市の無能力者が学園最強の超能力者に
対し、真正面から睨みつけた。

「クローンでもなんでも私は妹さんを『友達』と言ったの!御坂妹さんは妹さんで!
 私にとっては一人の人間なの!モルモットじゃない、友達なんだよ!だから!
 そんな悲しいこと言わないでよぉ!ばかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

佐天が精一杯の声で吼えた。
ただ純粋に真正面から御坂妹に一方通行にその感情をぶつけた。

ズキン…

【ちっ…やりずれェ…】

【これが…感情というものでしょうか…ミサカは…………ミサ…カは…】

初めて出来た友人、姉やあの少年の他に御坂妹を『人間』として接してくれた
少女に対し、御坂妹は初めて記憶や記録とは別の何かを感じ取る。
その頬には今まで認識してなかった何かが流れ落ちた。

「…なんでしょう…ミサカは今、初めて『死にたくない』という感情が…
 芽生えて…ミサカは自身の…困惑を隠せません…ですが…ですが…ミサカは
 絶対に貴女を殺させたりはしない…と…ミサカは初めての友人を守り切る覚悟を
 決めます!」



<<ゴゥ!!!>>

一方通行が軽く蹴りあげた砂利が散弾銃のような勢いで二人を襲う。
幸い、致死レベルの威力は無いのか、二人は無数に飛礫を受ける程度で済んだ。

「お涙ちょうだい的な三文芝居は終わったかァ?いーかげン飽きてきたン
 ですけどォ?…まァいいかァ、今生の別れってやつだァ…気の済むまで
 傷を舐めあったら、大人しく死にやがれ…。」

『[ピーーー]』と人間を虫けらの如く[ピーーー]と言い放つ一方通行の言動に、佐天は怒りを
爆発させる。無謀にも感情の赴くまま、一方通行へ向かい走りだしていた。
突然の行動に御坂妹の静止は間に合わなかった。

「ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああッッ!!」

佐天は開手した手刀を一方通行の左鎖骨めがけて袈裟斬りに振り抜いた。
日は浅いが、何百、何千と繰り返した当身技を自身の全てを賭けて打ち込んだ。

「…馬鹿が…」

!?

<<バギィィィィィン!!!!!>>

あたりに響く炸裂音、信じられないほどの勢いで一方通行と御坂妹が遠ざかっていく、
吹き飛ばされたという事をなんとなく佐天は理解した。異様に時間がゆっくり感じる、
御坂妹が手を伸ばしてこっちに走ってこようとしているのが見えた。

【あ……くそぉ…悔しい…悔しいなぁ…このまま死んじゃうのかなぁ…
 嫌だなぁ……死にたくないよ……】

パシン!グルンっ!!!!
どさっ!

「~~~ッッ!?」

ジェットコースターに乗っているように急に視界が回転した。
地面やコンテナにぶつかったにしては、衝撃を全く感じていない、
意識はある、あの勢いで叩きつけられて意識が残っていたら、地獄のような
激痛が体を駆け巡るはずだった。
にも関わらず、砂利道に尻餅をついた程度の痛みしか感じていなかった。




ゴツン!

「痛ッ!?」

佐天が呆気にとられそうになった瞬間、頭頂部に激痛が走った。

「まったく…お転婆もいい加減にせんと、命を落とすことになるじゃろが…
 これは一度、キツ~くお灸を据える必要があるかのお」

聞き慣れた声がした。
その声を聞いた瞬間、安堵感が佐天を包み込むと、押さえ込んでいた物が
涙となって溢れ出てくる。

「し…渋川先生…し…じぶがわ゛…せ゛ん゛せ゛え゛ぇぇぇぇぇぇ…
 うわぁぁぁぁぁぁぁぁん…あぁぁぁぁぁぁぁぁん…」

「佐天ちゃんや、ここに居た理由は後で聞くとして、後はわしに任せろや…。」

泣きじゃくる佐天の頭をポンポンと軽く叩くと渋川は一方通行に向かい歩き出す。




   "学園都市第一位" と "達人" が相まみえた瞬間だった。



                                               続く。



以上です。

次回は『渋川剛気Vs一方通行』です。
色々設定とかおかしいツッコミは有ると思いますが、生暖かい目で読んで下さいorz


こういったシーンはsaga入れておこうぜ


乙ありです。


>>120

ぬぉぁ…sage入れていたつもりでした。
申し訳ない。

いや、だからsageじゃあなくてsaga…

>>122

あ…スミマセヌ…。
ドジっ子属性なんぞ持っているつもりはありませんでしたが…orz

そして、『saga』という機能の存在を忘れていた僕は本当にアレですね。
ダメダメちゃんですね…ご指摘ありがとう。


そして今度はageてしまうという…。
流石にこっりゃダメだwwwwwww

すみません、一週間ほどROMって反省しますorz


皆の優しさが嬉しすぎる。・゚・(ノД`)・゚・。


皆の優しさに後押しされて、投稿させて頂きます。

一方さんとのバトル回ですが、迫力ねーよ!とか、なんかちげーよ!
という所は脳内変換で保管よろしくです!m(__)m




「ちっ…んだァ…」

一方通行は目の前で起こった出来事に舌打ちをした。
佐天と言った少女の振り下ろした手刀をベクトル操作し、その体ごと吹き飛ばした。
コンテナか地面、あるいはその両方に叩きつけられて即死するはずだった。

「おィ…てめェ今…何をしやがった…」

佐天を助けたであろう人物は、どう見ても無能力者、しかも老人だ。
身なりからすると研究者の類でもないだろう、その異様な老人は臆する
事も無く、ただ真っ直ぐ最短距離を進んできた。

「ハッ!止まれェ、質問には答えンのが礼儀ってもンだろうが…なァっ!!」

<<ズドン!!!!>>

轟音とともに砂利混じりの土が老人を貫いた。
が、しかし、無残にも貫かれたのは老人の羽織だけだった。
一瞬にして一方通行の視界から目の前に居たはずの老人は姿を晦ます。

「っちィ!?」

僅かな空気の流れに一方通行の反射が反応する。
想定以上の速さで老人が低い姿勢のまま足元へ踏み込んできた。
足元のベクトルを操作し、確実に捲き込める範囲の地面を爆発させると、
再び一方通行は自身の巻き起こした土煙に視界が遮られた…。

「殺れてねェな……どこだァ!!」

ゾワッ…

背筋に悪寒が走っ走る。ベクトル操作や反射での知覚とは別物の感覚が、
絶対防御を誇る一方通行をその場から飛び退かせる。
慌てて自分が居た場所に目線を移すと、そこに老人は立っていた。

【精神系かァ?光学系かァ?…得体のしれねェ能力で俺を惑わすたァ
 中々やるじゃねェか】




「惜しぃ惜しぃ、なかなか良い勘をしとるわ…教え子が受けた仕打ちの礼を
 今ので返してやろうと思ったんじゃがのお、チョロチョロ動きよるか」

いつでも仕留めることが出来た、貴様は今『生かされている』
老人の言い放った言葉は少なくとも一方通行にとって、そのような意味に
捉えられた。

「…フ…フィヒャ…ヒャハハハハ!!!おォもしれェ!!!
 退屈だったこのクソッタレな実験によォこォンなイレギュラーが
 舞い込ンできやがったァ!なァおいジジィ、名前ぐれェ聞いてやる
 冥土の土産でも置いて逝けェ!」

「ほっ♪カッカッカ!吠えよるかひよっ子が、この渋川剛気を相手に
 その余裕は命取りじゃぞ?これでも貴様が生まれる前から"達人"と
 伊達に呼ばれてはおらんぞ」

渋川は人を小馬鹿にするような笑顔で一方通行の挑発に返答した。
挑発のつもりではなかった。渋川は一方通行に対し本気で言っているのだ
『なめてかかると一瞬で潰す』と、その態度が一方通行の逆鱗に触れる。

「あ゛ァ!?なァおィ…調子こいてンじゃねェぞジジィ!!!
 テメェが相手にしているのはァこの学園都市で最強のォ一方通行だァ!」

ベクトル操作で得た推進力で一方通行は渋川への間合いを一気に潰した。
相手に触れるだけで血流を操作し、絶命させることのできる腕を闇雲に
繰り出す。

「なァにちょこまかと逃げてンだァおィ!!!諦めてくたばりやがれェ!」

渋川はその攻撃に触れること無く体捌きだけで全てを往なしていた。
50年を超える実戦経験の賜物か、本能が一方通行の攻撃を極め捕るのを拒否する。

「よっ…ほっ!…ほれ、そんな打ち込みじゃ当たってやることもできんかのお」

【毒手の類に近い物か…それよりも危険と勘が訴えよるわ…】




御坂妹は佐天の元へ駆け寄った。
一方通行の反射を受けてダメージを受けないはずはない、あれだけの勢いで
弾き飛ばされた以上は何らかの怪我を負っているはずだった。
近寄ると佐天は未だ涙を流している。

「怪我はしてませんか?…とミサカは貴女の体を心配します。」

「うん…うん…大丈夫…大丈夫だよ妹さん…。」

「そうですか…とミサカは友人の無事に胸を撫で下ろします。
 それにしても、あのご老人はいったい…あの一方通行と渡り合うなんて
 信じられません…とミサカは驚愕を禁じえません。」

「渋川剛気先生…私を救ってくれた恩人で私の武道の師だよ…
 先生ならきっと一方通行を倒してくれる…はず…だよね…。」

渋川に絶対の信頼を寄せる佐天ですら、一方通行と真正面で闘えるとは考えていなかった。
その証拠に、初撃すら極め捕るはずの渋川が捌きに徹し続けている。
決してその体に触れようと触れさせようとしないのが気にかかる。
渋川の額に脂汗が滲み出ているが遠目にも見て取れた。

【渋川先生……】

一方通行に完膚なきまでに叩き潰された佐天は、祈るしか出来なかった。

【負けないで…御坂妹さんを妹さん達を救って…】

自分が目指している"達人"に自分の身勝手さを押し付けるのが心苦しい。

「大丈夫ですよ、とミサカは貴女の手を捕りつつ語りかけます。」

「え?…」

「あの御仁は、一方通行の攻撃を全て感知してます。
 体術の心得がない一方通行が、あの達人に触れるのは不可能です。
 と、ミサカは確信をもって伝えます…。」



軍用目的も視野に入れて製造された妹達は現実主義者に近い考え方をしている。
目的を達成するために不必要な『ロマンチズム』は不必要と教育を受けていた。
その通りに判断すれば、渋川が一方通行に勝てる可能性は0なはずだった。
しかし、今は別の感情が御坂妹の中に芽生えていた。

「それに、ミサカも貴女が信頼するあの御仁が負けるとは思えません…。
 確かに戦力的には絶対的な不利があるでしょうが、あの御仁がそれすらも
 視野に入れて勝つつもりでいます…その様な強い人間が負けるはずありません。
 と、ミサカは理由にならない自信を持って勝つと断言します。」

佐天は御坂妹の自信を持った表情を見て目を瞑ると、自分の頬を思いっきり引っ叩いた。
その行為に御坂妹は驚いたが、佐天の目に自信が籠もるのが感じ取れた。
御坂妹は佐天の手を捕り直すと強く握った。

「妹さん…うん、そうだよ、そうだよね…渋川先生が負けるはずないよ」

負けるはずがない、"達人"渋川剛気は、私を救ってくれた武人は
決して倒れることはない、佐天は御坂妹の手を握り直すと、強く信じ込んだ。
相手が学園都市最強を誇る『最強の超能力者』というのであれば、立ち向かう
渋川剛気は、武道、武術の世界で『最強の達人』であると。



攻撃を捌き続けること数秒か数十秒か
さすがの渋川も致死の一撃を捌き続けるのはキツくなってきた。
攻撃を繰り出し続けている一方通行も、その表情は憎悪に染まっているが
些か攻撃の手数は落ちてきている。

【ジリ貧になる前に、そろそろ埒を明けるかの…】

「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

一方通行の一撃を捌き背中に回ると、渋川は拳を繰り出した。
絶妙のタイミングで拳は一方通行の背骨に喰らい掛かる。

「まずは一本!!!脊椎いただきィ!!!!!!」

「へっ…師弟揃ってオツムが足りませンってかァ…」

<<バキィィィン!!!!>>

【ッッ!?…こりゃマズイかッッ!!!】

渋川の体が得体のしれない力で弾き飛ばされた。
『咄嗟に拳を引き戻した』のが功を奏したのか、コンテナに激突する前に
受身の姿勢を採る余裕ができたのは大きかった。

ズキン…

【…くそがァ…ジジィ…何をしやがったァ…】

反射は完璧だった。
だが、一方通行の背には明らかに想定外の激痛が駆け抜けた。
思わず膝をつく、痛みに表情を歪めるが演算に大きな支障はない、一方通行は
立ち上がり、沈黙しているであろう渋川を探す。


「…死んだかァ…だろうなァ…アレで生きているわけねェよなァ」

「勝手に人を殺すな若造…あれしきでこの渋川剛気が死ぬと思うたか、
 バカタレが…。」




満身創痍とはギリギリ言わないか、その顔には余裕の表情は無かった。
渋川の状態を見て一方通行は、圧倒的優位を味わいテンションが上がるのを
抑えきれなかった。

「なんだなんだァなんですかァ!その状態はァ!ヒャハハハハハ!
 今にも死にそゥな表情でェ、なァに頑張ちゃってンですかァ?
 てめェが何者なのかもうどうでもいィや、そろそろ飽きてきたしよォ」
 

「なめるのも大概にせい…この渋川剛気、伊達に"達人"と呼ばれとりゃせんわ…
 年季の違いってもんを見せてやろう…来い若造ッッ!!」

「いいねェいいねェ!ジジィのくせに頑張ってンじゃねェかぁ!
 だがよォ、若者の時間ってェのは貴重なんでなァ…。
 …いい加減に逝っちまいなァ!」

<<轟ッッ!>>

一方通行は渋川に止めを差すため、ベクトル操作を駆使して一気に飛びかかった。
誰の目にも渋川の死が映るはずだった。

「あァ!?」

確かに一方通行は渋川に対し飛びかかった。
だが触れる事は叶わなかった。
避けたのか、そう思ったが渋川はその場から一歩も動いている素振りはない。

「演算ミスって線は薄そうだなァ…何か隠し持っていやがるかァ…
 …フヒヒヒャハッハハァ、まァ何をやろうが、てめェが死ぬ結末は
 変わらねェけどなァ!大人しく死んどけェ!ジジィ!」

再び渋川に一方通行が襲いかかった。

「なるほど…こうすりゃえぇか…」

渋川の声が一方通行の耳に入った瞬間、その視界が一瞬にして
逆転した。



御坂妹は信じられないものを見ていた。
絶対防御を誇る一方通行の反射を抜けて渋川の一撃が入った事…
刹那のタイミングによる偶然の産物で起こった現象にも驚きだが、
それよりも、反射とベクトル操作を以って、あらゆる攻撃を解析し無敵を誇る、
11次元からの攻撃すら跳ね返す一方通行に対し、渋川は意識して『投げ落とした』

「佐天さん…ミサカは…ミサカは『根拠無く』勝てると言ったのを訂正します。」

「うん、解っている…渋川先生は『確実』に勝てるよ」

「えぇ…あの方はとんでも無い人物です…とミサカは渋川剛気氏に対し
 最大の称賛を送ります。」

佐天は一方通行の反射を受けた。
だからこそ、あの能力がイージスの盾を思わせるほどに堅牢なのを理解している。
何をやっても破れない絶対的な盾を渋川は培った経験と技術を以って亀裂を
入れたのだ。

「泣いているのですか?どこか痛むのですか?…とミサカは貴女が流している
 涙を拭いながら心配そうに覗き込みます。」

「…大丈夫…大丈夫だよ御坂妹さん」

無能力者が故に負い目を感じていた。

武道を始めて負い目が薄れていった。

渋川剛気を見て高位能力者とも対等な位置に立てると確信した。

佐天は己が選んだ道が『間違いではない』という自信を手に入れたのだった。




<<グシャァ!!!!!>>

一方通行は今まで感じたことのない感覚に襲われてた。
確かに渋川に対して飛びかかったのは覚えている。
なのに自分が見ているのは星ひとつ見えない真っ暗な空だった。

【な…なにが起こったンだァ…】

視界が歪む、落下の瞬間、ベクトル操作により衝撃は全て逃したはずだった。
しかし、急激なGの変化が脳の揺れが演算を狂わせたのか、ダメージが完全に消せていない。

「ドロっドロかの?」

声のする方へ視線を移すと、渋川が不敵な表情で佇んでいた。

「て…めェ…何をしや…がったァ!!!!!!」

理解の範疇を超えた攻撃に一方通行は怒りを露わにする。
今まで受けた攻撃とは全く異質の攻撃か、レベル5の能力を抜いて
本人に僅かなれどダメージを与えた。
渋川の未知の攻撃に対し、一方通行は警戒をせざるを得ない。

「若造…貴様のその能力ってェのは、所謂、相手の力を相手に返している
 って事だろう、向かってくる力を利用して、相手を組み伏せたり、自分の
 力を上乗せして相手に返す…そんな所か…」

渋川の答え結論は当たらずといえども遠からず、正解ではないが決して間違い
ではない、がだ現に、一方通行に対し実戦にて体現している以上、反論の余地は
なかった。

「そンな単純なもんじゃねェ!!!
 そんな簡単なもんじゃねェぞ三下ァ!!!!!」

一方通行は再び渋川に飛びかかった。




「小難しいことは今は関係の無い事よ、力を利用して相手を制する技なら、
 ワシの専売特許なだけじゃ…ほれ、これはわしの教え子の分!」

渋川は開手した手刀で一方通行の首筋に向かって振り下ろす。
一方通行に触れた瞬間、反射が発動したのを一方通行は確認した。
だが、地面に落とされたのは一方通行自身のほうだった。

<<ドタァン!>>

「くっかッッ!…そうかてめェ、反射ベクトルが発動した瞬間に戻ってきた
 力の向きを更に変えてやがるのかァ!!糞がァ!どンだけシビアな
 タイミングだと思ってンだぁ!!」

「全てにおいて必要なのは感覚よ、刹那どころか虚空のタイミングでさえ
 も必要とあらばこの手で掴んでやろうぞ…」

渋川は更に当身を繰り出す。
一方通行の反射膜に触れた虚空の瞬間、その力の向きと方向を変える。
自身の反射も含めた急激な力の奔流にベクトルの演算が間に合わない、
一方通行の体が宙を舞った。

<<ズシャァァァ!!>>

【やべェ…演算の修正が間に合わねェ…】


渋川の技術に一方通行が圧倒され始めた。
このまま勝負ありかと思った瞬間、突如渋川は一方通行から距離を置く。
その瞬間…・



<<ズドォォォォォォォォォォォォ!!!!!!>>



一方通行を中心点として、その周りの地面が爆ぜた。



一方通行は何かを悟ったか、その表情は不敵な笑いを浮かべていた。

「そォだよなァ…別に相手の土俵で戦う必要はァ…ねェよなァ…
 何をやってでも、潰しゃいィだけじゃねェかよォ…なァ…おィ…
 ふ…ふひ…ヒャハハハハヒャハハハハッハァァァァ!
 クカキケコカカッキクケキキコクケキコキカカカカァ~!!!
 肉体馬鹿に付き合っての近接戦闘で仕留めるのはもゥ止めだァ!!!!」

<<バキベキゴギャァァァギギィ!!!!>>

レールや砂利やコンテナ等が嫌な音を立てつつ渋川に襲いかかる。
致死性の高い障害物だけを避けるために、渋川は砂利等は
まともに受けざるを得なかった。
それだけでも大ダメージと成る威力が込められていた。

「ッッ!?…いかん…なめていたのは…わしの方じゃったか…」

「クカカカカカ!!!!手応えあったぜェ、あれェ?どうしましたかァ?
 お爺ちゃァン、目ン玉が潰れちゃったンですかァ?介護が必要ならァ
 手伝ってあげますよォ!!っらァっ!」

<<ズバァ!!!>>


再び砂利が渋川を襲った。
渋川には、もはや砂利を避ける術がなかった。
砂利の嵐が過ぎた後、渋川は正座をするようにその場に崩れ落ちた。

【ぐはぁ……今のは…効いたァ~】

「ヒャハ~ハハハ!最後の姿が土下座とかなァ!こいつァ傑作だァ!
 なかなか楽しめたぜェ三下ァ…最後にその面ァ拝ンでやるよォ」

渋川が崩れ落ちたのを確認すると一方通行は無造作に間合いを詰め寄る。



「渋川先生っ!!」

渋川が崩れ落ちた瞬間、佐天が走り出そうとするのを御坂妹は制した。
『何故離してくれない』そのような表情を御坂妹に向けたが、御坂妹は
佐天を見ていなかった。その視線の先は渋川を見ている。

「まだです…まだ終わってません…とミサカは激情した貴女を諫めます。」

「もう闘える限界を超えてるよ!止めなきゃ殺されちゃう!」

「大丈夫、あの御仁は負けません…とミサカは小声で御仁の意識が明瞭と
 貴女に小声で耳打ちします。」

一方通行は、正座の姿で突っ伏している渋川の眼前に来ると、目を瞑る…
対個人戦闘、しかもレベル0にここまで追い詰められたのは有っただろうか?
感慨深い何かを感じつつ、とどめを刺そうとする。

「じゃァなァ……なかなか…楽しめたぜェジジィ」

一方通行は渋川にとどめの一撃を加えるために足をあげる
瞬間、先ほど感じた嫌な悪寒を再び感じとれた瞬間…。

「油断大敵じゃぞ…若造…」

渋川の声が一方通行に届いたのとほぼ同時に一方通行の視界が
今まで以上の勢いで回転した。

<<スパァァァァン!!!>>


!?

「てめェ!?死んだふりだとォ!?ぐがァ!?…ぐゥ…!」

<<グチャ!?>>



渋川の投げに対する演算の修正が出来ていなかったのか、単なる油断か、
一方通行の頭が地面に叩きつけられた。

「がァ……てめェ…その体勢でなン…で人…を投げれンだァ…」

今の投げは相当なダメージを与えたのだろうか、一方通行は立ち上がるも
演算が乱れる、反射も安定しない状態だった。

「『居捕り』じゃよ…本来なら座した状態で組み伏せる技じゃが…お前ェさんを
 相手に組み伏せるのは正直、生命が幾つあっても足らんからのお…そのまま投げに
 応用させてもらったわ…さて、真打が来おったか、前座は引っ込むとしようかの」

おぼつかない足取りの一方通行をよそに渋川は疲れた足取りで立ち上り一方通行に
背を向け歩き出した。

「まちやがれェ!まだ決着が付いてねェだろうがァ…ッッ!?」

「よっと…ジジイの出番はこれで終いじゃよ、貴様の本当の相手が来よったわ…。」

一方通行は演算力が戻りかけているのを確認すると、再び渋川に襲い掛かろうとする。
その瞬間、一筋の光線が一方通行の反射膜に触れてあさっての方向へ弾き飛ばされた。

【思いの外に早かったのお…もう少し…時間が…かかるかと……思うたが…】

「爺さん!大丈夫か!」 

「お爺さん!!!!ねぇ!ちょっとしっかりしてよ!」

「渋川先生!渋川先生っ!!!」

「生体電気より状態を確認、これは…
 ミサカはMNWで他の個体に緊急招集をかけます。」

橋で見た少年と御坂、そして、佐天と御坂妹が渋川の元へ駆け寄った。

「ほう…よく見ると意外とに良い面構えしておるわ…なぁボウズ、
 お前ェアレに勝てるんじゃろ?」

「当たり前だ、その為にここに来た」

少年は頷くとボロボロの体で一方通行へ立ち向かっていった。

「よっしゃ…行ってこいッ!」

渋川はそう言い放つと糸の切れた操り人形の様に崩れ落ちる。
意識の途切れる瞬間、佐天の泣きっ面が視界に入ってきた。

【まぁ…お灸は後にするかの…今は…少し疲れたか…】




翌日

学園都市 病院

御坂、黒子、初春の3名は怪我を負っている佐天と渋川の検査が終わるまで、
待合室で時間を潰していた。

「そう…そんなことが有りましたの…」

「にしても白井さん?私達って結局は蚊帳の外ですよ?」

「まぁまぁ、こうして無事に佐天さんもお姉さまも居ますし、ここは
 ひろーい心で許して差し上げましょう。」

「そんなものですかねぇ…。」

「えぇ、ジャッジメントである私に相談もせずに、スキルアウト同士の抗争に二人して
 巻き込まれた挙句、渋川先生に助けて頂いてその上に大怪我まで負わせてしまった…
 と…し~て~も~っ!広い心で許してさしあげましょう。
 それが優しさですのよ?お分かり?初春?」

「そこまでは言ってないですよ…あとそこは『私達』でお願いします」

御坂は佐天と話し合った結果、妹達や一方通行のことは伏せておくことにした。
これら情報を迂闊に伝えてしまうと、黒子や初春も危険に巻き込むかもしれない、
そう考えると、下手に真実を伝えられないと判断した結果だった。

「ま…まぁ、私も今回ばかりはすごく反省しているわ…。
 相談しなかった結果、佐天さんと渋川先生を巻き込んじゃったわけだし…。」

御坂は俯くと心の底から自分の迂闊さを後悔した。
間接的とはいえ佐天さんや渋川先生を巻き込んだこと、誰にも相談しなかったこと、
切羽詰まったとは言え、死という最も無責任な解決方法を選んでいたこと。


【なんでも自分でできると思っていたけど…私もまだまだ子供…かぁ、
 結局、私がやったのは泣いてるだけだったし…佐天さんに渋川先生、 
 そしてアイツが助けてくれなかったら、どうにもならなかったのよね】

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…」

御坂は一際大きいため息をつく。



【ちょ…ちょっと白井さん!責めすぎですよ!御坂さんのSAN値がガリガリ
 減っちゃってますよ!!!】

【初春!さり気なく私だけの責任にするんじゃないですの!貴女も同罪ですの!】

【私はあまり言ってませんよ!ちょっと上を読み直せば圧倒的に白井さんが
 攻め立ててるじゃないですか!!!】

【おいこら黙れ!メタ発言はジャッジメントですのぉぉぉぉぉぉぉ!】

ふと初春は御坂が持っている袋に気がついた。
デパ地下で買えるクッキーの中ではかなり高級品な奴だ。

「あ…あれ?御坂さん?その袋は、かなり高級なクッキーじゃないですかぁ!」

場の空気を変えようと、初春はわざとらしく御坂の持っているクッキーに焦点を
当てて話題の展開を計った。

「あらあらまぁまぁ、お見舞いの品にしては随分と良い物をお選びになりましたの
 流石はお姉さま、下着や洋服のセンス以外はピカイチのチョイスですの!」

乗るしか無い、この大波に!黒子も初春が振った話題に乗ることで、場の雰囲気の
改善を図る、突然話題を振られたためか、それ以外の目的が原因かは不明だが
御坂は一瞬だけ反応が遅れた。

「あ?え?あぁ!うん、適当に選んで買ってきたんだけどね、食べたことの無い
 メーカーの奴だから味は知らないんだけど、まぁ高いやつだし悪くはないでしょ?
 あ、それと黒子は後でお仕置きね。」

「なんでですのぉ!?」

御坂は袋を持って立ち上がると、その場で背伸びをする。
少し席を外すと二人に伝えると先程までの沈みかけた表情から
一転、笑顔を見せていた。

「黒子、初春さん、ありがとね少し元気が出たわ。」

「それはよかっですの」

「はいっ!」

二人は微笑むと小走りで走っていく御坂を見送った。



病室

「やぁ渋川さん、調子はどうだい?」

冥土返しは渋川の診察のために病室へ訪れた。
顔も体も包帯だらけの割りには元気イッパイなのか血色は健康そのものである。
渋川は冥土返しの姿を確認すると、ベッドから降り椅子を用意した。

「これはこれはこれは!冥土返しさん、いやはや、ご迷惑をお掛けしました。
 貴方の世話になるとは、流石に想像して無かったですわ」

「まぁ、それは僕も同じなんだけどね、しかし、"妹達"が渋川さんとあの少女…
 佐天さんだっけ?彼女を運び込んできただけでも吃驚なのに、まさか一方通行
 と戦ったとか、最初はなんの冗談かと身構えちゃったよ」

『妹達』という単語を聞いて渋川の顔は険しくなった。
実験はどうなったのだろうか、あの少女は救われたのだろうか?佐天の怪我の具合は、
年甲斐もなくその答えが早く知りたいと焦る気持ちがあった。

「で、冥土返しさん、知ってればで構わんが、その『妹達』と『実験』は今後は
 どうなるのか、知っている範囲で良ければ教えてもらえんじゃろうか?関わった
 以上は、中途半端に済ますのは気分が悪くて仕方がないからのお」

冥土返しは渋川の目を見る。
何をしてでも結果を知ろうとするだろう武人の目がそこにはあった。
冥土返しは軽く息を吐き、渋川の欲しい情報を伝え始めた。

「ふむ…そう怖い顔をしないでほしいな、あの実験に関しては一方通行の敗北により
 凍結されたよ、まぁ、とある事情で計画の再演算は出来ないからね、事実上の
 破棄ということになるだろう。」

「そうですか…じゃぁ、その『妹達』の今後はどうなりますかな」

「あの子たちは今のままじゃ長いこと生きられないからね、数人は僕の所で
 再調整をすることになるよ、その後、通院は必要になるが人並みの寿命を
 得ることができるだろうね。」

「うん…うん、まぁ上手いこと纏めて下されば文句は無いですな」

冥土返しに任せれば、ひとまず安心ということを確認する。
悪い方向には動いていない事を知ると渋川はようやく一息ついた気分になった。



コンコン

病室の入り口からノック音が聞こえる。返事をすると御坂妹が入ってきた。
お礼をいうタイミングを伺っていたのか、若干ソワソワしながら近づいてくる。

「よかったのぉ、無事じゃったか」

「おかげさまで、ミサカはこうして渋川先生にお礼を言う事ができます。
 とミサカは深々と頭を下げます。」

「なに、ジジイが勝手に首を突っ込んだだけのこと、お礼を言われる事はしとらんよ。」

渋川は微笑むとお辞儀をしている御坂妹の頭に手を置いてポンポンと軽く撫でる。
突然頭を撫でられたことに御坂妹はその無表情に近い顔を赤らめる。

「あの…渋川先生…その…とミサカは恥ずかしい気持ちを…隠しきれません」

「おっと、スマンスマン、年頃の娘さんの頭を撫でるのはマナー違反じゃの」

渋川は慌てて手を放すを御坂妹は残念そうに【あっ…】と漏らした。

「渋川先生…ぶしつけながら…その…お願いがあります…。
 とミサカは恐る恐る尋ねます…。」

「わしにお願い?…ほう、よし!どーんと言うてみなさい。」

お願いされるとは一体何だろうか?御坂妹の表情を見る限り、悪い事を
お願いされる事は無いだろう、基本的には『良い子』なのだ。
ならば、内容を聞く前に断るのは些か可哀想だろうと思った。

スーハー…スーハー…

「ミサカは落ち着くために深呼吸を行います。
 ああぁぁぁあの…あの…その…あの…その…あの…そのののの…」

「…妹ちゃんや…落ち着こう…」

「はい…とミサカは気持ちを鎮めます。…では改めて…」

「おう、言うてみなさい。」



「『お祖父さま』と呼ばせて下さい!…とミサカは指をモジモジさせながら
 大きめの声でお願いします!」

「…………………あぁ、「爺」と書いて『お爺さま』ね」

「いえ、「祖父」と書いて『お祖父さま』です、とミサカは言い放ちます。」

ドドドドドドド!!!!ばたーん!!!

「ちょぉぉぉぉぉぉぉぉっとまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

突然勢いよく病室の扉が開け放たれたと思うと、黒髪ロングの少女が乱入してきた。
少女の顔は若干の焦りが見えるような感じにも取れる。

「あぁ、『ちょっと待ったコール』が入ったねぇ、うん、懐かしい。」

冥土返しは病室の片隅でボソリと呟く。

「妹さんズルい!!抜け駆け禁止!!!私もこんなお祖父ちゃん欲しい!!」

【あぁ、佐天ちゃんも無事だったかの…】

「現実は常に競争なのです。と、ミサカは競争社会の厳しさを例に上げ
 『早い者勝ち』をシレッと主張します。』

「キィィィィィィ!!!それを言ったら私の方が渋川先生とは付き合いが長いんですぅ
 深いんですぅ~、妹さんにはこの時の差は埋められないでしょぉ!」

「ぐぬぬ…流石にそこは負けるかもしれません、とミサカは劣勢に立った所で
 ティンと閃きます。」

ボソボソ…ヒソヒソ…
ボソボソ……イイネェ~サイヨウ!

佐天と御坂妹が二人して渋川に視線を移す。
渋川はどうにも嫌な予感しかしない、むしろ今時の女学生のグイグイっと来る
感じはどうにも苦手かもしれないと苦笑いを浮かべる。

「「お祖父ちゃん(お祖父さま)」」

【わしの答え…まだ言うてないがのお……マイッタナ…】

付き合ってられないという表情で冥土返しは病室から出て行いった。
賑やかなのは妹達にとっても悪いことじゃないだろう、そう思うとこの状況は
好ましいことだと考えることにしておこうと判断したのだ。

「それにしても…渋川さんも隅に置けないね…」

そう呟くと冥土返しは自分の待機室へ戻っていくのであった。



【ねぇ初春…】

【はい、白井さん…】

【私達、いつまで待っていればよいのでしょうか…】

【知りませんよ…】

待合室では二人の少女が途方に暮れたまま待ち惚けているのであった。



                 渋川剛気「学園都市ですか…」 一部 完

読んでくださった皆様方…。
ありがとうございます。

以上が第一部でございます。
一方通行とのバトルの表現…ボキャブラリの少ない僕には
これが精一杯!!!!もっと派手にしたかった。・゚・(ノД`)・゚・。

独歩ちゃんも鎬紅葉も最初は出していたのですが、どうにもしっくり来なかったもので、
二人は完璧に削った状態になっちゃいました…一応、二部では独歩ちゃん出てます。

まだまだ続きますので、よろしくお付き合いして頂ければと思いますorz


もっと読みやすい文章が書きたい…・。



ではでは!!!第二部がはじまります。

長い目&生暖かくお付き合い下さい。・゚・(ノД`)・゚・。

誤字脱字…気をつけても必ずあるのはなんでですかねぇぇぇぇぇぇ。・゚・(ノД`)・゚・。



学園都市 第七学区

長く感じた夏休みも残す所あと数日、上条当麻は己に課せられた『宿題』の存在を
すっかり忘れて残り少ない貴重な1日を終えようとしていた。
それもそのはず、この夏に上条に降りかかった出来事は、大の大人でも泣いて
逃げ出したくなる程に濃ゆい内容だったのだ。

「おーいインデックス~、買い物行くけどお前も来るか~?」

【ん~ん~…。】

間延びした声で同居人、もとい居候に声をかける、しかし当の本人はテレビに夢中なのか
気の抜けた返事しか帰ってこない、上条は仕方がないと玄関に向かうと気配に反応したのか
お土産を要求してきた。

「…まぁ、『たけのこの里』なら可愛いものか…おっと、特売が終わっちまう!
 コレを逃したら上条さんは、貴重なタンパク源を逃すことになるですのよ!」

【いってらっしゃ~い…】

大急ぎで学生寮を飛び出し、スーパーへの道を全速力で駆け抜ける。
これと言ったトラブルにも巻き込まれず順調に目的地に到着するかと思いきや…

ドカッ!?

「きゃぁ!?」

何か物凄く柔らかい物にぶつかってしまった。
むしろ、弾き飛ばした。
慌ててぶつかった先を見ると、見覚えのある少女が腰の付近を押さえている。

「いったたたたぁ…ちょっと!何処に目をつけてん…の…よ…」

「あぁぁ!?わりぃ!急いでたもんで…あれ?ビリビリ?」

「ビリビリゆーなぁ!!!まったくもう!怪我しちゃったらどーすん…」

ズッキィィィィィィィィィィィン!

「の゛お゛ぉぉぉぉぉッッ!?」

「…ちょ…み…御坂美琴さん?……」

紅葉くるか!?



御坂は立ち上がろうとした瞬間、激痛が腰を襲った。
弾き飛ばされたり、殴られたり蹴られたり、そんな痛みとはまた質の違う激痛が腰に走る、
あまりの痛みのためか、立ち上がるどころか這うのも困難だった。
むしろ動くと泣きそうになる。

「た…立てない…グスッ…。」

「あの…御坂さん?…」

「立てない…グスグスッ…。」

「ど…どうなさいました?…これから上条さんはスーパーへ特売を買いに行こうと
 思ってたわけなんですが……あの…」

物凄く嫌な予感がする。
普段なら電撃なり罵倒なりして来るはずだが、その場に座り込んでいるだけだ、
それどころか涙声になっている、流石に尋常じゃないと上条は思った。

「お前、怪我したのか!?」

「べ…べつに!怪我なんてしてないわよ!!ほら!用事があるんで…」

「そんな訳あるか!お前すごく苦しそうじゃねぇか!」

学園都市第三位の超能力者、常盤台中学の『超電磁砲』と呼ばれる御坂も蓋を開ければ
中身は中学2年生の女の子だ、その女の子が道端で涙目になっている以上は、特売どころ
ではない、しかもその原因の一端は上条が勢いよく激突した事に有るのであれば、
放っておく選択は無かった。

「ちょっと見せてみろ!!!」

尋常じゃない、その怪我の状況を一刻も早く確認しなければいけない、
その思いが上条を突き動かす、御坂の手を取り、ちょっとした力で
引っ張りあげた。

「ちょ!?やめて止めて待ってぇ!!今動いたら――ッッ!」

グイッ!

「あきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…ガクリ…。」

哀れ、学園都市第三位は悲鳴とともに撃沈する。
その体は小刻みに痙攣していた。

ビク…ビクン…

「えー!?ど…どうすれば…あぁぁぁぁもう不幸だァァァァ!!!!」

【こっちの…セリ…フ…よ…】



ザッ…

悶絶と焦りの絶妙なコラボを奏でている二人の前に、一人の中年が近づいてきた。
肉厚の胸板にスキンヘッド、メガネの奥の右目には眼帯が見えた。
普通の中年が似合いそうなカジュアルフォーマルな格好も、その人物が着用しているだけで
厳つい雰囲気となる。

「あ~…ダメだあんちゃん、そんな動かし方したら…俺に診せてみろや」

どこからともなく声がしたと思ったら、いつの間にか御坂の前に人相的には良くない系の
オッサンが触れようとしていた。

「ちょ!?何やってんだオッサン!!!!」

上条が慌てて二人の間に入ってきた。
傍から見たらヤクザが動けない女子中学生にいかがわしい事を行おうとしている
そのような構図に見えている、流石に誤解されかねない状況に対し、上条も例に
漏れず誤解していた。

「いや、この嬢ちゃんが倒れてるからよぉ、おそらく腰を痛めたんじゃねぇかなぁ、
 その上、あんちゃんが無理やり引っ張ったからよ、このままじゃ悪化しちまわぁ」

「そんなこと言っても騙されねえぞタコ入道!!昨今の女子中学生を狙う性犯罪はなぁ
 てめぇのような腐った大人が財力をチラつかせて惑わすのが原因の1つだっ!
 そんな腐った大人の欲望とゆう幻想は!この俺がぶち殺すッッ!!!!」

目の前の人物は、見た目からスキルアウト等の危険人物にしか思えなかった。
普段なら瞬殺の御坂も気を失っているのか動く気配もない、それならばせめて
アンチスキルが来るまで持ちこたえよう、上条は力強く握った拳を繰り出した。

「…話の聞かねェあんちゃんだ…まぁそんな奴ぁ嫌いじゃないけどよぉ…」

カカッッ!

「なっ!?」

学園都市の荒くれ共、それどころか魔術師と名乗る異能の集団でさえ
打ち倒してきた右拳から放たれた渾身のストレートが、いとも簡単に弾かれた。
体勢が崩れる、慌てて修正しようとした瞬間


ドッ…

首筋に軽く衝撃が走った。

「くはッ…」

上条の意識がスゥっと遠のく、倒れる間際に男と目線があった。

「多少オツムは弱ェみてぇだが…筋は悪くねぇなぁ…あんちゃん…
 おめぇ空手の才能があるぜ…」

その言葉が耳に入るのと、上条の意識が完全に途切れるのは、ほぼ同時だった。



学園都市 病院

上条は夢を見ている気分だった。
特売品を買いに行く夢、ビリビリと激突した夢、厳ついスキンヘッドの
スキルアウトっぽいオッサンと揉めた…。

!?

「御坂ァァァァ!?」

急激に意識を取り戻した上条は、慌ててベッドから飛び起きた。
辺りを見回すと、そこは見慣れた病室、見慣れたカエル顔の医者が立っている。
その隣には車椅子に座っている御坂が顔を赤くしていた。

「なぁ…なぁぁぁぁ!なにいきなり人の名前を叫んでいるのよ!!!
 あんたもしかしてエ…エ…エッチなゆ…夢を見ていたんじゃないでしょうね!」

「御坂!無事か!…無事なんだな…はぁ~…」

取り乱している御坂をよそに、無事であることを確認すると上条は安堵した。
ひと通りの夫婦漫才が終わるのを確認して冥土返し口を挟んだ。

「ふむ、君は本当にこの病室が好きだね…しかも、今度の相手もまた凄い人物とか、
 いったい君の周りは何が起こっているのか、僕には想像がつかないよ。」

「へ?…とんでも無い人物?…」

「少なくとも一部の界隈じゃ彼は一種の神様扱いだね、その人が君達を
 病院まで連れてきてくれたんだよ」

「そ…それは…スキンヘッドでメガネを掛けて…。」

冷や汗が上条の額を濡らす。
もしかしてとんでも無い失礼なことをしたのではないだろうか?
そんな嫌な予感がした。

「そう、君が痴漢呼ばわりしたらしいじゃないか、殴りかってもいたらしいね」

「…自分が原因とはいえ…不幸だ…」

そう言って上条はがっくりうなだれるのであった。


【まったく、まさか渋川さんもここに入院しているたぁ、おどろきだぜぇ】

【えぇ、お祖父さまの傷は癒えてますので、後は検査だけすとミサカは…】

【お?ここか?案内ありがとよ、嬢ちゃん】

【どういたしましてとミサカは礼儀正しく頭を下げて立ち去ります。】


誰か来たのだろうか?
病室の外の声が中にまで聞こえてくる。

「その噂の人物が来たようだね」

冥土返しがそう言ったのと同時に病室のドアが開けられ男が入ってくる。



「よぉ!あんちゃん、嬢ちゃん、気分はどうでぇ?おっと、冥土返しさんも
 おられましたか、お久しぶりです」

「やぁ独歩さん、久しぶり、左手の調子はどうかな?
 見事な縫合だったけど、穴があったからね、僕が修正しといたけど」

「お陰様で、今じゃ鉄板どころかコンクリ支柱を殴っても問題ないですなぁ」

男は冥土返しと旧知の仲だろうか、なんとも物騒な会話が聞こえてくる。

「二人共、この人は"愚地独歩"さんといってね、君達をここまで運んできてくれた人だ、
 お礼くらい言いたいだろうと思ってね、呼んでおいたよ」

上条が口を開く前に御坂が頭を下げつつお礼の言葉を言った。
こういうのは早い者勝ちである。

「あの、助けて頂きありがとうございます。私、御坂美琴といいます。
 なんか、私の連れが勘違いして殴りかかられたとか聞いたんですけど…
 お怪我はありませんでしたか?」

【猫かぶり…うめぇ…】

上条は自分の謝罪のタイミングを潰されたような気がして、バツが悪い気分になる。
だが、御坂が間に入ることで、少なくとも険悪にはならないはずだ。

「いや、本当にすみません。勘違いで殴りかかっちゃって…
 あ、自分は上条当麻といいます。」

上条も合わせるように謝る事にした。
二人の様子を見て独歩は何も気にする素振りもなくニコニコしている。

「いいってことよ、それよりも嬢ちゃん、腰の具合はどうかな?
 ギックリ腰ってやつぁ結構、軽傷に聞こえるが辛ぇからなぁ」

「あ、はい大丈夫です。この馬鹿に引っ張られたときはヤバかったけど…。」

「あぁ、ありゃ痛ぇよなぁ、俺でも泣いちゃうかもしれねぇなぁ」

二人の妙に息のあった攻めに上条は謝ることしか出来なかった。
言い訳しても誰が悪いと言われたら、皆が『上条当麻』と指差すだろう。

「…スミマセンデシタ…」

上条は謝ることでしか槍玉から逃れることしかできないと感じていた。



「ところで、上条くんと御坂さんはあれか?恋人同士ってやつかぁ?
 そうだったら彼女は大事にしないとなぁ、腰を痛めたらよぉ、子供を
 生むときが大変とか?これ、家の母ちゃんからの受け売りなんだけどな」

ブボォァ!?

御坂が盛大に吹き出した。
なんてことを言うのだろうか、突然の独歩の言葉に御坂は
顔を極限まで真っ赤にしている、傍から見ても動揺しているのが
見て取れるはずだった。
一人を除いて。

「な…なななな!?何を言ってるんですかかぁぁぁ!?コイツとは!そのっ!
 彼女…とか…ジャナイケド…その子供とか…別に今は!欲しく…ナイワケジャナイケド…
 べ…べべべ別に彼氏とか彼女とか…ダッタラウレシイケド…。」

「いやぁ、そんなんじゃないですよぉ…って何やってんだ?オマエ…。」

上条の何気ない一言に場が一瞬で凍った。
御坂の周りに放電が起こる。
その様子を見て上条の顔が青くなった。

「あの…み…御坂さん?…」

「いやぁ、上条くん…流石の俺もなぁ、今のは無いと思うぜぇ…。」

「そうだね、とりあえず独歩さん、僕たちはちょっと下がっていようか…
 まったく…この部屋を耐電コーティングしていてよかったよ」

サササッと冥土返しと独歩が入口付近に退避するとほぼ同時に部屋の中に
轟音と稲妻が走った。

「このぉぉぉぉ朴念仁の鈍感男がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「なんでぇぇぇぇぇぇぇ!?不幸だァァァァァァァァァァァァァ」

【ほう…コレが能力ってやつか…】

ちょうどその頃、上条の部屋ではインデックスが夕食を準備していない朴念仁に
対し、静かな怒りを貯めていた。

「当麻が帰ってこない…お腹すいた…」

みゃ~…


                                             続く。

以上が第二部の入りです。

第一部を呼んで頂き、乙までくれた方々には最大級の感謝を!!!
更新頻度は高めで行けるようにがんばりますので、またお付き合い下さい。
でも遅くなっちゃったらごめんなさい。・゚・(ノД`)・゚・。



そして、>>174

ゴメン…鎬紅葉は…(´・ω・`)





上条「超能力だの魔術だの…そんなモノはお前達で共有してればいい」

一方「お前達…とは?」

上条「俺を除く総て」

皆様…コメント超ありがとうございます。・゚・(ノД`)・゚・。
マジ励みになります。

あと刃牙クロスオーバーとは関係ないのですが、
むしろ、いつか別スレか、それ系の関連スレで晒そうと思っていた
作品を閑話の扱いで晒したいと思います。

コイツらも刃牙キャラと絡ませたいなぁ(´・ω・`)

sage忘れ…まぁいいや…。




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※浜面仕上はまだアイテムには入っていない。

              閑 話
学園都市には思いの外に闇の部分が多い、スキルアウトも汚れ仕事を行う場合があるが、
そんなのは本当の闇にかかればまだ明るいほうだった。
一般人が心の底から顔を顰める仕事は主に『暗部』が行なっていた。
コレはその暗部の1つ『アイテム』と呼ばれる組織の話…。

                    (ガールズトーク)
     と あ る ア イ テ ム の 四 人 娘 
         『わりとヒマなアイテムの1日』


「暇ね…」

「暇ですね…」

「…北北西から信号が…Zzzzzzzzzz」

「サバ缶でも食べればいいと思う訳よ」

「嫌よ…臭いし…」

「嫌ですよ…臭いし…」

「大丈夫、そんな臭いふれんだも私は応援してる…」

「しくしく…」

麦野沈利、絹旗最愛、滝壺理后、フレンダ…なんだっけ?…の4人は暇を持て余していた。
学園都市の暗部に属する彼女らも仕事が無い日はそこら辺にいる年頃の女の子と
あまり変わらない、各々が何をする訳でもなくボケーッと貴重な若い時間を浪費していた。

「ってかさぁ、本当に暇なんだけど…アンタら何か面白いこと無ぇわけ?
 あーあ、もう…そこら辺に"原子崩し"っちゃおうかなぁ~」

「おーヤバイです。あまりの暇さに麦野が超機嫌悪くなってきてます。
 ほらフレンダ、なんかやって麦野の機嫌をとって下さい。」

間延びした感じで言っているが、絹旗は割と本気で危機を感じている。
普段は温厚(笑)っぽい麦野が本気でキレると手がつけられない、
しかも最悪なことに、彼女は癇癪持ちだった。

「かなり無茶ぶりってな訳よ!?えっと…サバ缶とかけまして!
 麦野沈利ととく!!!!」

嫌な予感しかしない…。
絹旗はとりあえず何があっても自分は逃げきれるように身構えた。
本来ならスルー推奨の所を好奇心に負けてしまう、そして…。

「…そのこころは…」

言おうと思った相槌を滝壺に取られて地団駄を踏む思いをした。

ピッ!!!!!!ボシュ!!!!

「サバの゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

突然の熱線がフレンダを襲った。
間一髪避ける事が出来たのは奇跡以外の何物でもない。

「ちょ…ちょっとむぎのん!?私まだ何も言ってないって訳よ!?」

「いやぁ、どーせ ブ チ コ ロ シ か く て い ね って
 なるに決まっているんだから、別に射ってもいいよなぁってね…
 あ、座布団の代わりに剣山の方が良かったか?」

「結局は非道いことに!?これには三遊亭圓楽師匠も苦笑いって訳よ…」

「大丈夫、そんな座布団0のふれんだも応援している」

【ってか麦野…いま超ガチに当てに行きやがりましたね…】




再び沈黙が4人を襲った。
既に惰眠を貪っている滝壺と天上天下唯我独尊な麦野以外の2人は
この空気に耐え切れない、むしろ目の前に座る麦野が怖い。
このままだとフレンダと心中しかねないと感じた絹旗は、とある提案を
することで活路を見出す。

「あ…そうだ、どうせ暇なら映画とか観ませんか?
 超オススメの奴があるんですよ」

絹旗最愛は映画愛好者だ、年齢の割りには色々な映画を見てその見識も深い。
その絹旗がオススメする映画に、暇すぎて機嫌が悪かった麦野は食いついた。

【あれ?…確か絹旗の見る映画って…結局…嫌な予感しかしないって訳よ…】

意気揚々と絹旗は映画鑑賞の準備を始めた。
とにかく暇をつぶせる事に上機嫌な麦野は今からウキウキわくわくしている。

「絹旗ちゃーん、どーんな映画を見せてくれるのかにゃーん♪」

「ふっふー、このチョイスは個人的には会心と自負しています。
 超自信アリの作品ですよ、まぁ見て下さい」

 
    タイトル:『アベレーション2』(1997年 米)

    ※興味があるならレンタルしてみよう☆(ゝω・)vキャピ

                     _
                 ___, -‐7///\
               /ハ/////////////\
            __/-‐…∨/////////////\

           /: : : :./: : : : \//////////////\
         /: : : :/:/ |: : : : : : \/////////////∧
       __ノ: : : : :/l:メ、 !: : : : : :_:_:_:∨///////////∧
      ´ ̄/: : l:_/_,l'_  ', :l: ト、: : : : : :V////////////  超オモシロイですよ?!

.          /l: : :.|/ 心ヽ ト、:.|_,ヽ_l ヽ: : |V//////////リ
         //!ハ: :|! {r'リ   ヾ,ィラ'心、'; :|:∨/////////!
       {///!:ヽ!..0¨      〈r':::jリ ハ:|: :∨////////
.        V//!: :.|// '     につ。./:!: :/∨//////
.        ヽ/'; : :,   r 、    /// /: : :/: /∨////
         `ト、: :\ ヽ '     /: :/l:/:イ:ノ}///´
.          レ、\: :>. .___,. -/: :/:厶イ//>'
           〉`ー≧!/ 7  フ:_厶イ!//≧´_
          /  {///! /  ´ ̄  j//7     ヽ
         /    j///!ヽ_____,.イ///     |
        ヽ    ////}|  --‐ /////{/     |
         _}-=、!///={-r--r-</////_____!
       _r‐! !  ! Y/ / ,イ / ̄ ̄ ̄
     ̄ ̄ゝ_1_入__!_人_>-'-'



映画を見終わった時には辺りに何とも言えない空気が立ち込めた。
麦野、フレンダ、滝壺の3人はなんとも言えない表情になっている。
ただ1人、絹旗最愛だけがテンション爆跳だった。

「いや…最初はゴキブリ系の正統派パニックホラーの類かと思いきやねぇ…」

「残り30分でバトルコメディアクション系になるとは思わなかった訳よ」

「なかなかの超展開でおもしろかったね…」

「ってか何だよ…劇中で意味なく「Halo!Iam General George!I'm Bug Master」って
 CMがやたらと流れるなーと思ったら、そのジョージ将軍がいきなり赤いハマーH3Tで
 現れて…しかも街の人間は「大丈夫!ジョージ将軍に連絡した!」とか言ってんの…
 有名人なのかよ!とツッコミたくなったわ」

「で、登場したジョージ将軍が殺虫剤で虫を駆逐するやいなや、前振り無く虫の親玉の
 巣を発見したって訳よ…」

「そしたら親玉の巨大ゴキブリが現れて、ピンチ!ジョージ将軍の殺虫剤が
 切れてしまうという展開は超燃えると思いませんでした?」

【【えー…】】

「うん、その後のジョージ将軍が「俺は格闘技世界チャンピヨンだ!」と言って
 ボクシングの構えをとったところは面白かった。」

「まぁなんにせよ…前半60分は無視していい映画ね…」

【え!?麦野の中では後半30分の方が本筋扱いって訳!?】

絹旗チョイスの映画の割りには中々好評のC級映画に、フレンダは安堵した。
少なくとも麦野の機嫌は治っている、いや、むしろあの映画に呆れて怒る気が
失せたのが正しいかもしれない。

「ねー、映画見終わったらなんかお腹すいたって訳よ、どっか行かない?」

「そうねぇ…じゃぁいつもの溜まり場へ行きましょうか、絹旗はどうする?」

「もちろん、付いていきますよ、なんだかんだ言って超お腹空いてますし」

「じゃぁ、むぎののシャケ弁は私が買っていくよ…」

「あら、ありがと、気が利くわね」

4人はそのままアジトを出る。

「さて、今日のドリンクバー係は…フレンダ、貴女ね」

「いや…結局もう3週間は私しがドリンクバー係のままって訳よ…」

「大丈夫、そんなドリンクバー係なふれんだも私は応援している…。」

「それじゃぁ、超行きますか」

4人のガールズトークはまだ続くのだった。


『わりとヒマなアイテムの1日』
       完

閑話終了です。


さて、頑張って二部を書きますので、
閑話は暇つぶしみたいな感じで読み流して下さい。
お目汚しでしたm(__)m


コッソリと続きを投稿します。




学園都市 窓の無いビル内部


金髪サングラス、アロハシャツを着流している少年がいた。
少年は異様な雰囲気の漂う部屋の中を真っ直ぐ歩くと、やがて1つの開けた場所へ出る。
そこには巨大な水槽、ビーカー、培養器とも言える容器の中に満たされた溶液を漂う長髪の
男が居た。

「アレイスター!」

少年は容器の中にいる男、アレイスターと呼ばれる男に険のある声で呼ぶ
アレイスターはゆっくりとその瞳を開けると、薄く微笑むのであった。

「やぁ、土御門元春…こんな所まで何か用かな?」

「ふん…俺が聞きたいことは既に把握しているだろう」

「なんのことかな?…」

土御門はアレイスターの人を食ったような態度が妙に癪に障る。
この男の事をある程度理解していないと、殴り飛ばしたい気分になるだろう。
だが今はそんな些細な感情に身を任せる事はできない、土御門は質問を続ける
事のみに徹することにした。

「とぼけるな、貴様、学園都市にイレギュラーを招き入れているだろう。
 その中の1人に、あの一方通行が敗北したと言われているぞ。」

「あぁ、渋川剛気のことか…あの"達人"は別に一方通行に勝ってはいないさ、
 結局のところ彼を倒したのは"幻想殺し"だ、あの老人はその手助けをしたに
 すぎない、そもそも外の世界の無能力者が一方通行に敵うはずもないだろう。」

アレイスターの言葉の裏を返せば、学園都市の超能力者に対し、魔術すら使わず
『生身で追い込む連中』という風にも聞こえる。そのような人間が1人だけではない、
今後も含めれば数人がこの学園都市に足を踏み入れる事になる。

「1つだけ答えろアレイスター…奴らは何者だ…。」

「彼らは"科学サイド"や"魔術サイド"とは全く別の存在さ、名称はこれと言って無いが
 あえて言うのであれば…"武術サイド"の存在、とでも言おうか。」

武術サイドという言葉を心に刻む、土御門はアレイスターに背を向けると最初に来た
道のりをそのまま戻っていった。

「アレイスター、俺は貴様の考え読めない、だが、貴様が俺達に対し危害を加える
 存在になるのであれば、俺はお前を殺す…それだけは覚えておくんだな」

「あぁ…覚えておこう…」

アレイスターは再び微笑むと目を閉じる。
その穏やかな顔はどことなく狂気が彩られていようにも感じられた。




学園都市 学生寮

朝早く土御門が自室に戻ろうと廊下を歩いていると、隣の部屋から賑やかな音が
騒音となって廊下にまで響いていた。流石にご近所迷惑もいい加減にしないと苦情が
入るだろう、ここで大騒ぎになって、上条当麻とインデックスが引き離される、そんな自体に
なるのは、監視も含めて好ましくない。

【やれやれ…まったく、朝っぱらかご近所迷惑ぜよ?上やん】

土御門は上条の部屋のインターホンを鳴らした。
部屋の騒音が一瞬でピタリと止む。
流石に苦情とでも思われただろうか?

【迷惑という自覚はあったみたいだにゃー…】

苦笑いを浮かべると同時に、土御門の後ろに1人の影が立った。

ピーンポーン

ビックゥ!?

部屋に響いたインターホンの音に上条は一瞬固まる。
恐る恐る時計を見ると、時刻は午前7時を回った所だ、夏休みと考えれば、未だ惰眠を
貪っている学生も多いだろう、そもそも夏休みじゃなくてもこの時間帯に乱痴気騒ぎは
自分がやられても腹が立つ。

「インデックス、多分、管理人かどっかの部屋からの苦情だ!
 大人しくしてくれぇ!」

「まったくもう!とーまが騒がしくするからいけないんだよ!
 早く謝らないと怒られちゃうんだよ!!」

【このやろう…】

軽い殺意を覚えつつも上条はドアを開けると、そこには見知った顔があった。
1人は旧知の仲だが、1人は意外な人物が立っている。

「よぉ上やん、朝っぱらからギャースカと元気だにゃー!
 でも、少ーし自重しないと苦情が来ちゃうぜぃ?って何見てる?」

「よう上条くん、ちょっと上がらしてもらうぜ」

買い物袋を持った独歩がそこに立っていた。




部屋の空気が重い、朝っぱらからこの部屋に4名とか人口密度がおかしい、
上条は4名分の鍋を用意しつつこの状況を頭の中で整理していた。
その反面、インデックスの機嫌はすこぶる良かったりする。
それもそのはず、独歩が持ってきた買い物袋の中身は割と高級な食材の数々、
お陰でインデックスはすっかり懐いてしまった。

「いやぁ、朝から悪ぃかとも思ったんだけどよぉ、まぁ腹ぁ割って話すのは早めの方がいいと
 思ってなぁ、こうして土産も持ってきたんだ、まぁ許してくれや」

「大丈夫なんだよ、タコダンディはこんなに良い物を持ってきてくれたんだし
 とーまもきっと大歓迎なんだよ」

「満面の笑顔でシレっと失礼なこと言ってんじゃねぇ!!」

「ほえ?」

インデックスは何が失礼か解っていないらしい、上条は大きくため息をつくと
下拵えの出来た土鍋をテーブルに置かれた簡易コンロの上に載せた。

「ところで…上やんこの親分さんはお知り合いなのかにゃー?
 いやぁ、まさかこのような親分さんが上やんの知り合いに居ようとは~」

砕けた感じに土御門は言うが、サングラスの奥で目は決して笑って無かった。
初対面のこの人物は明らかに只者じゃない、鈍器を思わせる手、ゴムタイヤのような
分厚く丈夫そうな肉体、体や顔に残る闘いの傷跡、何よりもこの人物が纏う雰囲気は
『聖人』のそれに似ている気がする。

「この方は"愚地独歩"さんだ、まぁ俺とビリビリ…御坂の恩人みたいなものさ」

「へー、あっ土御門といいますにゃー、以後お見知り置きをお願いしますぜよ」

「で、独歩さん、ここにいる銀髪のシスターが、俺の同居人ので名前はインデックス、
 まぁ単なる大食らいの居候です…。」

「むー、とーま…その紹介はレディに対してちょっと失礼なんだよ!」

上条からインデックスと土御門の紹介を受けた2人に「おう、よろしく頼むぜ」と
答えると、独歩は本題を切り出すことにした。

「上条くんよぉ、おめぇ空手やらねぇか?」

「はい?空手ってアレですか?あのトリャーって…。」

「おう、俺ぁよ、神心会って道場の館長をやってるんだがよぉ、今度この学園都市にも道場を
 開く予定でな、色々見て回ってたんだわ、まぁそこでおめぇらを見かけたってわけだ、まぁ…
 最初は誘うつもりは無かったんだけどなぁ」

「はぁ…じゃぁなんで上条さんを突然誘う気になったんでせうか…。」

【ねーねージャパニーズカラテって強いのかな~?】

【極めると素手で虎や熊を倒す奴もいるらしいぜぃ】

土御門はインデックスと会話しつつも、その視線は常に独歩を捉えていた。
悟られないように細心の注意を払いつつ監視を行う、本人がどう思っているかは知らないが、
"愚地独歩"の名を聴いて、この男が"武術サイド"側の人間であるのは間違いないと悟らざるを得なかった。

【まいったな…まさかと思ったら"武神 愚地独歩"か…人の身にして武『神』と
 崇められている人物が学園都市に来ているとは…ねーちん羨ましがるな…】




上条は考え込んでいた。
独歩の話からすると、どうやら自分には空手の才能があるということらしい、しかも、
独歩がその資質を見出したのは、上条が殴りかかったあの瞬間だという。
困惑していたが、よくよく考えると金が無い、月謝を収められない以上は、道場通いは
不可能と断ることにしたが…

「まぁ、上条くんは学園都市支部の初めての門下生ってことだからなぁ、月謝は心配しなくていいぜぇ、
 暫くは俺が付きっきりで教えてやる、飯の方も俺によぉ任せとけぇ」

「ほんと!?ご飯食べさせてくれるの!?」

いち早くインデックスが反応した。
この瞬間、上条当麻の入門はほぼ確実なものとなる。なにせ本人に断る権限は
インデックスがあっちに付いた時点で消し飛んだからだ…。

「こ……コレは……不幸……でも無いか…。」

「まぁ体験入門という所だぁ、夜にでも近くの公園に来なさい。
 あぁ動きやすい格好で来ねぇと怪我するぜぇ」
 
昼前に独歩は上条が住む学生寮から出て行った。
同時に土御門も上条の部屋から出て行く、独歩を尾行するためだった

【武神が何のために学園都市に来たのか…調べておく必要が有るか…】





学園都市 第十学区 墓地付近

独歩はブラブラと歩いていた。
ここいら辺は学園都市の中でも忌み嫌われている場所のため、
昼間でも人通りは皆無と言っていい、となれば、必然的に素行の
悪い連中の溜まり場になる。

【さて…そろそろか…】

独歩が歩みを止め振り返る。
その眼前には、スキルアウト4~5人ほどが下品な笑みを浮かべていた。
人数に優るスキルアウトの面々にとって、1人で居る独歩は恰好の獲物にしか見えていない、
狭い思慮しか持たない彼らは、相手の雰囲気と力量を測ることは出来なかった。

「おぅ!兄ちゃんたち、俺になんか用でもあるのかい?」

心躍る気持ちを抑えて独歩が声をかける。
浮かれた声を出さないよう、わざとらしく低くドスの効いた声だった。
人から見れば虚勢を張って居るとしか受け取らない、勿論、スキルアウト達も
そのように受け取る。

「おじさぁん、良い身なりしてるじゃねぇか、僕達にも恵んでよぉ」

スキルアウトの中でも、より一層、莫迦っぽい男が無造作に近寄りながら
ヘラヘラと口を開いた。男は独歩に近づくと、ナイフを取り出し独歩の首筋に
ナイフを当てる。

「断られたらぁ…僕ちゃん悲しくて思わず殺しちゃうかもしんないなぁ~フヘヘ~」

何処が面白かったのだろうか、その言葉にスキルアウトの面々も笑い声を上げた。
それが合図だったのか、独歩の首筋に当てたナイフを男は一気に引き抜く!
はずだった。

「どうしたよ兄ちゃん、調子でもわりぃのかい?」

独歩の声が響く、男はまるでコンクリートに深く打ち据えられたように動かない
ナイフを見ると、その刃が独歩の親指と人差指に挟まれていることに気付いた。

「いかんなぁ兄ちゃん、喧嘩ってぇのは相手見て売るもんだぜ?」

<<ズドムッッ!!>>

肉を叩く音が響いた瞬間、スキルアウトの男がその場に崩れ落ちた。
何が起こったのか男の仲間は状況を理解するまでに時間がかかる、その瞬間、
二人目の男の腹部に独歩の放つ前蹴りが突き刺さった。

「まぁ、手加減くらいはしているからよ、死にはしねぇよ」

スキルアウトは僅か数秒で全員が駆逐されるのであった。




【強ェ…】

愚地独歩を尾行していた土御門は、その一部始終を見ていた。
スキルアウト程度とは言え、多人数に囲まれて傷ひとつどころか触れさせもしない
むしろ遊んでいるのだろうか、それとも親の獅子が子猫と戯れているようなものか、
圧倒的な力の差を見せられていた。

【武神の名は伊達じゃないってやつか…】

「そんな所で見てないでコッチに来たらどうだい?土御門くん」

土御門の顔色は一瞬にして青くなった。
魔術を駆使する相手すら尾行する土御門の尾行術は、ちょっとやそっとじゃ見破られるものじゃないと
自負していたはずだが、独歩はその自信を打ち砕くかの如く声をかけてきたのだった。

「…ば…バレてたんですかにゃー…」

「なぁに言ってんでぇ、丸見えじゃねぇか」

「ま…丸見えですか…」

ショックを隠し切れない。
土御門に対し、独歩は何故尾行していたのか問いただす。

「い…いやぁ、実は知り合いの女性が、あ、『神裂火織』って娘なんですがね、
 そいつが"武神 愚地独歩"氏の大ファンでして、そのーサインでも頂けないかと…」

我ながら苦しい…そう思ったが、言ってしまったものは仕方がなかった。
今から別の言い訳は怪しさ大爆発である。
土御門はこのまま押し切るつもりでいた。

【たのむ!!!!たのむ!!!!!!通れ!!!押し切ってくれ!!!】

強く願う土御門の顔色は、もはや土気色である。
これバレたらヤバイだろーなーと思いつつも愛想笑いを崩さない。
しかし、独歩は気にする素振りもなく、

「ふーん…まぁ深くは聞かねぇよ?サインはあんましたことねぇけどなぁ、
 欲しけりゃやるよ、今日の夜にでも上条くんと一緒に学生寮近くの公園に
 きなさい。」

と言って去っていった。

【と…通るかぁ~?いまの…】

あまりにも懐の深い武神の器にその場に立ち尽くすことしかできなかった。






イギリス清教 女子寮


「へっくち…ズズッ…風邪でも…ひきましたか?…」


神裂は寒気を感じたのでそのまま寝ることにした。





                                          続く
  


今回はここまでです。
ではまた来週にでもorz

>>221
人間の、というよりは個人の感覚すら再現出来るし、関節や筋肉の構造も同様にいけるレベルだぞ、学園都市の科学力は
お値段は高くなるだろうが、何とか出来んことは無い

因みに、超電磁砲の方に出てきた木原那由多って娘は身体の七割以上が義体だけど、能力者と格闘戦で互角以上に戦えるよ

バキにおけるイメージは禁書における自分だけの現実の概念と一致する
つまり真マッハやリアルシャドーは超能力

>>223

御坂美琴を撃沈し削板軍覇を気合で退かせた。
あの小説での最強は寮監様になっちゃう…ですよ。・゚・(ノД`)・゚・。


>>226

現実でも武術や格闘技には「強くなる」という思い込みも大事と言うか必要ですし…。
範馬刃牙のイメージ力や克己の真マッハ突きは、それの最たるものですね。

それが禁書の世界で言う「パーソナルリアリティ」に類似しているなぁとは前々から思ってたりしました。

本部「あなたは……その卑劣にしこんだ右手に頼っている……聖なる右…!!!」

本部「最早救い難い……」

ズンッ

フィアンマ「~~~~ッッ!」プシャー

とか妄想した

すみません。
ちょっと仕事で出張してきますんで、うp出来ませぬ…。
申し訳ない…。

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