魔王「最近四天王がたるんどるので、ドッキリを仕掛けることにした」 (78)

~魔王城~

魔王「最近、勇者どもとちっとも戦闘が行われておらんな」

側近「はっ、四天王率いる我が魔王軍と、勇者らを中心とする人間たちの軍……」

側近「戦力はほぼ五分五分で、膠着状態になっているようです」

魔王「ふぅ~む。しかし、いくらなんでも慎重すぎやせんか?」

側近「たしかに……」

魔王「どれ……あまりこういうことはしたくなかったのだが」

魔王「水晶玉で四天王の様子を覗いてみるとしよう」ボワァァ…

~炎四天王陣営~

炎四天王「うおおおおおおおおおッ!!!」

炎四天王「ヒィィィィィトッ!!!」ボッ…

ボワァァァッ!

炎四天王「焼けたぜ……イモがよォ!」

「ヒャッホ~!」 「さすが炎四天王様!」 「いただきまぁ~す!」



魔王「なんだこれは!? 戦ってると思いきやイモを焼いてるだけではないか!」

側近「美味しそうですね」

~水四天王陣営~

水四天王「どう? 今日もあたしは美しい?」チャプン…

「はいっ!」 「美しいであります!」 「さすが四天王の紅一点!」

水四天王「ウフフッ、ありがと……」チャプン…

水四天王「さぁ~て、雨を降らせて天然のシャワーを浴びましょうか」

ザァァァァ……



魔王「のんきに風呂なんぞに入りおって! 目の保養にはなったが、けしからん!」

側近「魔王様、鼻血が出ていますよ」

~風四天王陣営~

部下「風四天王様、魔王城から命令書が届いておりますが」

風四天王「フッ……下らぬ……」ヒュルル…

ビュアアッ! ビリビリッ!

風四天王「風は気が向くままに吹く……」

風四天王「風の行く先を決めることは、誰にもできはしないのだ……」



魔王「コイツ、ワシの命令書を読みもせず破り捨ておったぞ!」

側近「クールですねぇ~」

~地四天王陣営~

地四天王「ぐぅ……ぐぅ……」ゴロン…

地四天王「すや……すや……」ゴロン…

地四天王「むにゃ……」

地四天王「なんだまだ昼か……」

地四天王「もう少し寝てよ……」ゴロ…



側近「地の四天王だけあって、ずっと地面に密着していますね」

魔王「寝てるだけだろうが!」

魔王「どういうことだ、これは!?」

側近「どうやら……勇者たちとの戦いが一向に進まない理由は彼らにあったようですね」

魔王「おのれぇ~!」

魔王「こうなれば、四天王と直々に話をする必要がありそうだな」

魔王「側近よ、四天王をこの城に呼び寄せるのだ! 大至急だ!」

側近「かしこまりました」

数時間後──

魔王「久しぶりだな、四天王たちよ」

魔王「さて、キサマらを呼んだ理由だが──」



炎四天王「みんなァ、元気してたかァ!? ファイヤァァァァァッ!」

水四天王「あなたは相変わらず暑苦しいわね……汗かいちゃうわ」

風四天王「フッ……」

地四天王「眠い……」ウトウト…



魔王「同窓会をしておらんで、ワシの話を聞かんかァ!」

魔王「キサマら、最近たるんでおるのではないか!?」

魔王「勇者たちとの戦いは一向に進まず」

魔王「キサマらの陣営をのぞいてみれば、遊んでばかりおる!」



炎四天王「照れるぜ、ヒィィィィィトッ! オレの顔がレェェェェェッド!」

水四天王「のぞくなんてひどいわ、魔王様……サイテー」

風四天王「遊んでいるとは心外だ。風は気が向くままに吹くもの……」

地四天王「よいしょっと」ゴロン…



魔王「ちゃんと話を聞けェ!」

魔王「いいか、キサマらを四天王として取り立ててやったのは」

魔王「キサマらなら勇者や人間たちを打ち倒せると判断したからだ!」

魔王「ところがどうだ!」

魔王「キサマらときたら、ワシの期待を裏切り、好き放題やっておる!」

魔王「これでは人間界支配という魔族の悲願がいつになるか分からぬ!」

魔王「なぜ、ワシら魔族が人間界を欲するかおさらいしておこう」

魔王「魔界は資源に乏しく、なおかつ人間は自分勝手な生き物で……」



炎四天王「バァァァァァニィングッ! 魔王様の話ロォォォォォングッ!」

水四天王「いいお化粧タイムだわ」ヌリヌリ…

風四天王「下らぬ説教だ……。馬耳東風……」

地四天王「ぐぅ……ぐぅ……」

魔王「いい加減にしろ、キサマらァ!」

魔王「ワシを誰だと思っておる!」



炎四天王「魔王様、激怒ォ! プロミネェェェェェンス! ボルケェェェェェノッ!」

水四天王「怒るとシワが増えちゃうわよ」

風四天王「魔族の長とて、風の行く先を決めることはできない……」

地四天王「もう食べられないよう……」ムニャ…



魔王「ぐぬぬ……」イライラ…

魔王「もういい、キサマら出ていけッ!」

魔王「くそぉ~、あやつらめ……」

魔王「リーダーである炎四天王をはじめ」

魔王「昔は忠誠心にあふれた、頼りがいのある部下たちだったのに……」



炎四天王『オレの炎で必ずや人間どもを焼き尽くしてみせます!』

水四天王『私の水で人間たちを浄化してみせますわ!』

風四天王『我が風で愚かな人間を切り裂いてみせよう』

地四天王『ボクの地震で人間たちを大地に埋めてやります!』



魔王「時の流れとは、残酷なものだ……」

側近「まったくですねえ」

魔王「もはや、奴らに四天王を名乗る資格はない!」

魔王「側近よ。奴らを解任し、後任の四天王を選定せよ!」

側近「お待ち下さい、魔王様! それはなりません!」

魔王「なぜだ」

側近「理由は二つあります」

側近「一つは、現実問題として彼らに代わる強さや統率力を誇る魔族はいないのです」

側近「もしここで四天王を入れ替えてしまうと」

側近「勇者たちにつけいるスキを与えることになりかねません」

魔王「ぬう……」

側近「そして、もう一つ」

側近「彼らの部下には我々にというより、むしろ四天王に忠誠を誓っている者も多い」

側近「解任を不服とし、四天王が一斉に寝返りでもしたら──」

側近「魔王軍は内部分裂を起こし、それこそ崩壊です」

側近「長い戦いを経て、彼らは単なる幹部四人という以上の存在になっているのですから」

魔王「ぐぬう……」

魔王「では……では、どうすればいい!」

魔王「魔族の長として、このままナメられっぱなしでもいかんではないか!」

側近「う~ん、そうおっしゃられても……」

側近「とにかく、今は我慢していただくしかないかと……」

魔王「我慢だと!? そんなことできるものか!」

側近「彼らにもなにか考えがあるのかもしれませんし……」

魔王「あるわけなかろう!」

側近「ま、まぁ彼らがたるんでいるのも」

側近「背後に控えている魔王様が強大ゆえ油断している、とでも思えば……」

魔王「!」ハッ

魔王「そうか……」

魔王「そういうことだったのか……!」

側近「え?」

魔王「奴らがたるみ、なおかつワシを軽視するようになったのは」

魔王「ワシという絶対者の存在に頼り、安心しきっておったからだ……」

側近「ええ?」

魔王「だが、もしある日突然、ワシが死んでしまったらどうなるだろう?」

魔王「“ああ、あのお強い魔王様が死んでしまうなんて”」

魔王「“魔王様、申し訳ありませんでした”」

魔王「“これからは心を入れ替えますから、どうか生き返って下さい”」

魔王「──となるかもしれん! いや絶対なる! なるに決まってる!」

側近「えええ!?」

魔王「──というわけだ。ワシは決めたぞ」

側近「何をです?」

魔王「ワシはドッキリを仕掛けることにした!」

側近「ドッキリって……どういう?」

魔王「決まっておるだろう。ワシが死んだというドッキリだ!」

側近「えええええ!?」

側近(四天王が四天王なら、魔王様も魔王様だな……)

側近「そんなドッキリ……いったいどうやってやるんですか?」

魔王「意識だけはハッキリさせたまま、肉体を仮死状態にする魔法があったであろう?」

魔王「あれをお前がワシにかけるのだ」

側近「なるほど……」

魔王「で、その後、お前がワシの死を四天王たちに伝えるのだ」

魔王「きっと奴らはワシの死にうろたえ、悲しみ、絶望し、涙するにちがいない」

魔王「そこでワシが魔法を解いて、ドッキリでしたとネタばらし!」

魔王「ワシのドッキリでワシのありがたみに気づいた奴らは」

魔王「心を入れ替え、ワシに忠誠を誓うというわけだ!」

魔王「ガッハッハッハッハ……」

側近「はぁ……」

魔王「今日の今日でいきなり死んでもウソっぽいからな。決行日は一週間後とする!」

一週間後──

~魔王城~

魔王「さて……いよいよドッキリ決行日だ」

側近(本当にやるのか……)

魔王「側近よ、ワシが棺に入った後、仮死魔法をかけるのだ」

側近「かしこまりました」

側近「棺は内密に用意しました。どうぞお入り下さい」

魔王「よし」スッ…

側近「どうですか、棺に入った気分は」

魔王「ちょっと狭いな……サイズ合ってないぞ、これ」ギュウ…

側近「急きょ用意した棺ですので……どうかご辛抱下さい」

側近「では仮死魔法をかけます」

側近「これより先はテレパシー魔法にて、会話をいたしましょう」

魔王「うむ」

側近「はっ!」パァァ…

魔王「むう……」ガクッ…

側近『いかがですか、ご気分は』

魔王『意識はハッキリしてるから、横になってる時とさして変わらんな』

側近『では、飛行魔族たちに、魔王様の死を知らせる手紙を届けさせます』

側近『封に“重大な内容”と書いておいたので、破り捨てられることもないでしょう』

魔王『頼んだぞ』



──

───

側近『もう、手紙が各陣営に行き届いている頃ですな』

魔王『うむ』

魔王『ところでお前は、一番最初に誰が来ると思う?』

側近『やはり、スピードが速い風四天王ではないかと』

魔王『ワシは……炎四天王だと思う。仮にもリーダーだしな』

バタンッ!

側近&魔王(お、きたか!? だれだ!?)

地四天王「魔王様ッ!」

魔王(地の四天王!? 一番遅く来ると思ったのに……意外な展開だな)

地四天王「側近様、魔王様は本当にお亡くなりになられたのですか?」

側近「え……あ! ああ、そうだ! そこにある棺の中で眠っておられる……」

地四天王「ああっ、なんてことだ……!」グスッ…

地四天王「つい一週間前にお会いしたばかりなのに……」

魔王(ほぉ~、泣いているようだな)

魔王(いつも寝てばかりだが、殊勝なところもあるではないか)

側近(まさか、本当にこんな展開になるなんて……)

地四天王「ところで……」

側近「?」

地四天王「魔王様はどうして亡くなられたのですか?」

側近「!?」

側近『そ、そういえば……死因を考えてませんでした! どうします!?』

魔王『う、う~む』

魔王『この間まで元気だったのに病気とかでは唐突すぎる……』

魔王『そうだ! ……勇者に殺されたことにしよう!』

側近『ええ!? それも唐突、というか無理があると思いますが……』

魔王『だって他に思いつかんだろうが!』

地四天王「側近様? どうかされましたか?」

側近「あ、あ、いや……ゆ、勇者に……殺されたんだ」

地四天王「なんですって!?」

地四天王「いったいどうやって!?」

側近「奴ら……さっき突然魔法で現れて、魔王様を殺して……逃げてしまったのだ」

魔王『なんだそれは!? まるで押し入り強盗に殺されたみたいではないか!』

側近『仕方ないでしょうよ!』

地四天王「そ、そんなぁ……」

地四天王「ボクが勇者たちを倒していれば、こんなことにならなかったのに!」

地四天王「ボクが怠けてたせいだ……」

地四天王「うわぁぁぁ~~~~~ん!」

魔王(おお、これは期待以上の効果ではないか!)

側近(マジかよ……)

バタンッ!

水四天王「魔王様っ!」

魔王(二番手は水四天王か!)

水四天王「側近様、魔王様がお亡くなりになったというのは本当!?」

側近「う、うむ……本当だ」

側近「ついさっき、急にやってきた勇者に殺されてしまったのだ」

水四天王「なんてことなの……」

水四天王「魔王様……ごめんなさい……」

水四天王「あたしがちゃんと勇者を倒していれば……」グスッ…

水四天王「あたし……魔王様にキレイっていわれて嬉しくて……」

水四天王「だから……キレイになることに熱中しちゃって……」

水四天王「でも、こんなことになっちゃったら……意味がないじゃない……」

水四天王「うううっ……」シクシク…

側近「コラ、気持ちは分かるがご遺体にすがりつくのはやめなさい。傷がついては困る」

魔王『いや、ワシはかまわんぞ』

側近(このスケベ魔王が!)

地四天王「ううっ……」グスッ

水四天王「ああ……」シクシク…

側近『二人とも、すごい落ち込みようですよ。そろそろネタばらしをした方が──』

魔王『いや、ちゃんと全員をドッキリにはめるまで続ける!』

バタンッ!

風四天王「魔王様……」

側近「風四天王か。四天王で最も速いお前にしては、遅かったな」

風四天王「申し訳ない、側近様……。私としたことが少々狼狽していて……」

魔王(ほう、あの風四天王が狼狽だと!? 意外な一面もあったものだ!)

風四天王「ところで、魔王様の死因は?」

側近「つい先ほどのことだ……」

側近「突如転移魔法で魔王様の部屋を急襲した勇者によって」

側近「不意を突かれ、討ち取られてしまったのだ……!」

側近「私も回復魔法で救命しようとしたのだが……もう手遅れだった……」

風四天王「そうだったのか……」

魔王『側近よ、だいぶ演技がサマになってきたな』

側近『ありがとうございます』

風四天王「くそっ! 私が勇者を倒していれば……!」

側近「正直な話、お前が魔王様をそこまで慕っていたとは意外だった」

側近「お前はいつも風の向くまま、などといって魔王様に逆らっていたからな」

風四天王「私は……従順なイエスマンにはなりたくなかったのだ……」

風四天王「イエスマンばかりになった組織は必ず腐り、崩壊する」

風四天王「だから私は気ままな幹部を演じることで、それを食い止めたかった……」

側近「そ、そうだったのか……」

魔王(知らんかった……)

風四天王「しかし……結果として魔王様は亡くなられてしまった」

風四天王「私のせいだ……! 私が勇者を倒さなかったから……!」

側近「まぁ、そう気を落とすな」

側近「お前の気持ちを知って、きっと魔王様も喜んで下さっているよ」

風四天王「そうだろうか……」

魔王『いやいや、ワシも鼻が高いぞ!』

側近(アンタは喜びすぎだ)

側近「さて……あと来ていないのは、炎四天王か」

魔王『あやつのことだから、炎をまとって突っ込んでくるにちがいあるまい!』

魔王『仮死状態のワシが巻き添えくって燃えないようにしておくのだぞ!』

側近『そうですね、警戒しておきましょう』

側近『それにしても……少し気になりますね』

魔王『む?』

側近『みんな、魔王様への忠誠心はあるのに、なぜ人間との戦いをやめたのか……』

側近『ただ“たるんだ”というだけでは説明がつかない──』

ギィィ……

炎四天王「…………」

側近「おお、炎四天王か。他の三人はもう来ているぞ」

炎四天王「すみません、遅くなってしまいました」

炎四天王「魔王様のご遺体は?」

側近「この棺の中で……眠っておられる」

炎四天王「…………」

魔王『なんか……ずいぶん、しんみりしておるな』

側近『さすがに魔王様が亡くなって、いつもみたいに燃えられないのでしょう』

側近「もう他の三人には説明したが……」

側近「突如、魔王城にワープしてきた勇者たちに、魔王様は殺されてしまった……」

炎四天王「…………」

側近「?」

地四天王「どうしたんだい?」

水四天王「ずっと黙っちゃって……」グスッ…

風四天王「炎四天王よ、今こそ燃えなければならない時じゃないか?」

炎四天王「いや……燃えてるぜ」

炎四天王「かつてないほどに……」

炎四天王「オレの中を──」

炎四天王「オレでもどうにもならんようなものすごい温度の炎が踊り狂ってるんだ」

炎四天王「こんな感覚……今までになかった」

炎四天王「失礼」

ドォンッ!!!

側近「なっ……!(壁に大穴が……!?)」

炎四天王「すみません、放出しておかねば暴発しそうだったので……」

側近(暴発……!? コイツ、どれだけの魔力を体に宿していたんだ!?)

炎四天王「みんな……魔王様が死んだのはオレのせいだ」

地四天王「そんなことないよ! ボクはずっと怠けてたし!」

水四天王「あたしだって、体を洗ってばかりだったもの!」

風四天王「私もだ。風を気取って、命令を無視していた」

炎四天王「いや……それもみんなオレのせいじゃないか」

炎四天王「オレは勇者たちとの戦いの中で、人間も悪くない生き物だと思い始めていた」

炎四天王「魔王様のいうような、汚い生き物ではないと感じていた」

炎四天王「それに人間たちの実力はあなどれない」

炎四天王「本格的に戦いが始まれば、魔王様の身も危うくなりかねないと判断した」

炎四天王「だから……オレからみんなにも戦闘をやめるよう頼んでいたんだ」

炎四天王「そしていつか、機を見て魔王様に全てをお話しするつもりでいた」

水四天王&風四天王&地四天王「…………」

側近『そうか……やはり四人は、ただたるんでいたわけじゃなかったのか!』

側近『四人で示し合わせて、戦闘を中断していたんだ!』

魔王『っていうか、炎四天王のキャラが変わってないか!?』

側近『きっと……今の炎四天王が本性なのでしょう』

炎四天王「だが……奴らは魔王様を……!」メラメラ…

ゴォォォォ……!

側近(な、なんだこの魔力は!?)

魔王(こやつ、これほどの魔力を秘めておったのか!?)

炎四天王「決めた……オレはもう、人間と戦いたくないとは思わない。徹底的に憎む」

炎四天王「みんな、今こそ人間を滅ぼそう」

炎四天王「オレたちの手で人間を根絶やしにするんだ」

炎四天王「魔王様を殺した、憎き勇者もろともな」

炎四天王「これは弔い合戦なんかじゃない……魔王様に人間どもの命を捧げる聖戦だ」

側近『なんか聖戦とかいいだしてますけど!』

魔王『いくらなんでも大げさすぎる!』

地四天王「ボクらが全軍を率いて、勇者や人間たちの軍に挑むのかい!?」

炎四天王「いや、そんなことをすれば、こちらにも多大なダメージがある」

炎四天王「それにもはや……人間どもに、正々堂々戦ってやる価値などない」

水四天王「じゃあどうするのよ……?」

炎四天王「基本戦術としては、毒を使う」

風四天王「毒!?」

魔王&側近(毒!?)

炎四天王「大地や水から鉱毒や水毒を抽出し、風や水路を使って町や村に送り込む」

炎四天王「全滅した町や村はオレが毒ごと炎で焼き払う」

炎四天王「他にも、風で子供をさらって人質にしたり」

炎四天王「大地に穴を掘って地崩れを起こしたり」

炎四天王「川を氾濫させたり、油をブチ撒けてから放火したり……」

炎四天王「人間如きとわざわざまともにぶつかり合うことなどない」

炎四天王「戦わずして殺す方法など、いくらでもある」

水四天王&風四天王&地四天王「…………」ゴクッ…

炎四天王「皆殺しだ……」

炎四天王「オレたちの手でこの大地を人間の屍で埋め尽くして」

炎四天王「ご永眠なされた魔王様に捧げるんだ」

炎四天王「魔王様を死なせてしまったオレたちの存在価値は、もはやそれしかない」

地四天王「そうだ……やってやろう!」

水四天王「人間どもの命を、全て魔王様に捧げるのよ!」

風四天王「我が風、これからは魔王様のためだけに吹かせよう……」

炎四天王「全ての人間に死を! 魔王様に安らぎを!」

ウオオオオオ……! ウオオオオオ……!



側近『とんでもないことになってますよ、魔王様!』

側近『コイツら、人間を大地もろとも滅ぼす気ですよ、ヤバイですって!』

魔王『ど、どうしよう……』

側近『どうしようじゃありませんよ!』

側近『早く起きてこいつらを止めないと……!』

魔王『しかし……怖いんだが』

側近『魔王が怖いとかいうな!』

側近『とにかく、今から芝居をしますから、うまく合わせて下さい!』

側近『いいですね!? ──っていうかやらなきゃ、炎四天王に火葬させるぞマジで!』

魔王『わ、分かった! やりますよ、やればいいんだろ!』




側近「──んん?」ピク…

炎四天王「側近様、どうされました?」

側近「おお、なんてことだ……! 魔王様の心臓の鼓動が……復活している!」

水四天王「なんですって!?」

地四天王「ええっ!?」

風四天王「本当か!?」

側近『さあ、仮死状態を解除して下さい!』

魔王『わ、分かった!』パァァ…

魔王「……む」ムクッ

地四天王「魔王様……!」

水四天王「よかった……!」

魔王「む……なぜお前たちがここにいるのだ?」

風四天王「ついさっき、側近様から魔王様がお亡くなりになったと手紙が……」

炎四天王「城に攻め入ってきた勇者に殺されたと……」

魔王「やれやれ、側近め……早合点をしおって」

側近「早合点!? いったい、どういうことですか!?」

魔王「ワシは来たる勇者との決戦に備え、魔法で勇者の幻影を作り出し」

魔王「練習台にしていたのだ」

魔王「その途中、死の呪文を誤って己にかけてしまったのだ」

魔王「それを側近が“本物の勇者にワシが殺された”と勘違いしてしまったのだろう」

側近「なぁんだ、そうだったんですかぁ~! こりゃたまげた!」

側近(かなり無理があるシナリオだが……どうだ?)

地四天王「魔王様……よかった……」

水四天王「ええ、魔王様さえ無事ならそれでいいの……」グスッ…

風四天王「フッ、人騒がせな……」

炎四天王「……ご無事でなによりですッ!」

魔王「皆の者、心配をかけたな」

魔王「このワシが勇者如きにやられるわけがないし」

魔王「勇者とてワシに不意打ちを仕掛けてくるような人間ではあるまい!」

炎四天王「……そうですよね!」

炎四天王(魔王様は死んではおらず、勇者は卑劣じゃなかったんだ……よかった……)

魔王「もうワシはなんともないぞ。ガッハッハッハッハ……」

魔王&側近(ホッ……どうやら丸く収まったようだ)

側近「四天王たちよ、わざわざ呼び寄せてしまってすまなかった」

側近「突然のことで……私も動揺していたのでな」

炎四天王「いえ……仕方ないことです」

炎四天王「オレでも同じような状態になっていたでしょうから」

魔王「──というわけで、本日は解散だ」

魔王「各自、またいつも通りの職務に戻るがよい!」

四天王全員「はいっ!!!」

側近(いつも通り、か)フフッ…

一ヶ月後──

~魔王城~

魔王「……あれから一ヶ月、すっかり元に戻ったな」

魔王「四天王がワシのことを慕っていたのが分かったのは嬉しかったが」

魔王「あのまま聖戦だのとぬかして暴走していたらと思うとぞっとする」

側近「しかし、ドッキリがもたらした効能もありますよ」

魔王「なんだ?」

側近「ドッキリ中に、炎四天王が人間たちを戦わず殺す方法を説きましたよね?」

魔王「ああ、あったな。毒を抽出するとか、穴を掘るとか、放火するとか……」

側近「どうやら彼ら、あれで新しい道を思いついたらしいんですよ」

魔王「新しい道?」

側近「現在、四天王らは魔法を使った資源の採掘方法や農業方法などを」

側近「色々と模索しているらしいですよ」

側近「それがうまくいけば、もはや人間界に攻め入る必要はなくなるかもしれません」

魔王「おお、そうなのか!」

魔王「ではワシが行ったドッキリも」

魔王「いたずらに四天王を刺激しただけではなかったということだな?」

側近「そういうことですね」

側近「どうです、ここらでもう一度やってみますか? ドッキリを」

魔王「い、いや……もうやめておく……」







                                   ~おわり~

リトライスレでしたが完結できました!
ありがとうございました!
おやすみなさい!

なんか・・・まおゆうをすげぇ薄めた感じだな
もうちょっとなんとかならんかったんか


側近の性別だけ教えてくれ

>>70
ごめん見たことない

>>71
男のつもり

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