P「私はPです」 美希「!?」 (48)
美希(ま…まさか…何を言ってるのこの人!?)
美希(PがPだと言うはずがない ヘンなヒトだと思ってたけどマジでおかしいの?)
美希(ま…まずい 動揺しちゃだめなの もし本当にPだったら…)
美希(とにかくここは場末の売れないアイドル 星井美希として自然な行動を取らないとなの…)
美希「もしお兄さんがそうなら、ミキをいっぱいキラキラさせてくれる憧れの人なの」
P「どうも… 名乗ったのは私が美希さんの担当プロデューサーになるかもしれないと思ったからです」
P(星井美希 トップアイドルになる可能性5%未満…)
P(しかし765プロのアイドルの中では一番何かを感じさせた… おまえはやる気が無さすぎる)
P(そしてもしおまえがトップアイドルを目指す気があるなら、これ以上のプレッシャーはないだろう…)
美希(もしこのヒトがPだとしたら……いや、Pじゃなかったとしても……)
美希(ミキは……ミキは、このヒトに何もできない!)
美希(このヒトの話が本当なら、社長にもPとして顔を明かしているはずなの)
美希(ミキに対し「自分がPだ」と言ったこのヒトの業績が下がったら真っ先にミキのせいにされるの)
美希(このヒトはPなの? そしてミキをトップアイドルにでもする気なの?)
美希(……どの程度か分からないけど、ミキをトップアイドルにしようとしているのは確かなの……)
美希(他に場末の売れないアイドルのミキに「Pだ」と名乗る理由は無いの)
美希(765プロのアイドルからトップアイドルになる素質のある子を探しているということなの? しかし何故ミキのところへ……)
美希(……今は駄目なの 何も考えない方がいい すました顔をしていないとなの)
美希(このヒトは絶対、今ミキが動揺していないか観察しているの)
P「美希さん」
美希「! な、何なの」
P「今日はどうも…」
美希「こ、こちらこそなの」
P「じゃあ今度は事務所で」
美希「あ、そうだね……よろしくなの」
美希「…………」
~765プロ事務所~
美希「くそっ やられたの!」ガバッ
響「? なんだー美希。帰るなり頭抱えて」
貴音「美希がここまで取り乱すとは珍しき事ですね」
美希「Pめ……こんなクツジョクは生まれて初めてなの」
響「心が壊れそうなの?」
美希「……響。ふざけたこと言ってるとそのお腹のお肉つまむの」
響「つ、つままれるほどお肉ついてないよ自分!」サッ
美希「じゃあ何で逃げるの」
響「そ、それは……」
貴音「……それより何があったのです? 美希」
美希「……うん。実は……」
美希「……ということがあったの」
響「ふーん。つまり美希にプロデューサーがつくってことか」
貴音「真、羨ましき事ですね」
美希「でも、あのヒトが本当のPじゃなかったらミキはヌカ喜びさせられるだけなの!」
響「わざわざそんなウソつくかなあ?」
美希「響。素質のあるアイドルをプロデュースするのと素質の無いアイドルをプロデュースするのを同じ次元で考えちゃダメなの」
貴音「美希は十分、素質のあるアイドルだと思いますが……」
美希「そう言ってくれるのは貴音だけなの」
響「……美希、なんか貴音には甘くないか?」
美希(なんとしてもトップアイドルにはなりたいけどなったら足がつくの)
美希(最初はあのヒトがPであると分かればトップアイドルになってもいいと考えたの)
美希(でもそれはあのヒトが100%Pだと分からなければダメなの)
美希(それにPじゃなかったとしても、ミキに「Pだ」と名乗った以上手遅れかもしれないの)
美希(どんな売れ方でもミキが売れればあのヒトの手柄にされてしまう)
美希(……Pをなめていたの)
美希(Pはこの事務所のアイドルが売れ始める前に、ミキのトップアイドルの素質に気付き かつミキが本当にトップアイドルになるかもしれないと感付いた)
美希(ミキはその間レッスンをサボったりお昼寝することばかり考えていたけど……)
美希(Pがミキに「私はPだ」と名乗り出てくるなんて事は考えもしなかったの)
美希(トップアイドルになる可能性のあるアイドルにはPの分身でも構わない 「Pだ」と名乗っておく……)
美希(これはPにとってアイドルに対するかなり有効な激励であるとともに青田刈りでもあるの)
美希(やられたの……良い手なの)
美希(あのとぼけた振りしたPが これから事務所でどんどんミキに接近し、トップアイドルにしようとしてくるに違いないの……)
響「? どうしたんだー美希。さっきからずっと考え込んじゃって」
美希「ふ、ふふ、ふふふふふ……」
貴音「? 美希?」
美希「あっははははははははは!」
響・貴音「!?」
美希「これはいいの……何も悲観することはないの」
美希「これは向こうも何もつかんでいない証拠なの」
美希「あのヒトもミキも直に接しての騙し合い 知恵比べなの」
美希「表面上は仲良しのプロデューサーとアイドル」
美希「裏では『Pなのか?』『売れるのか?』の探り合い」
美希「面白いのP。あなたがミキにトップアイドルになるよう求めてくるなら、快く受け入れてあげるの」
美希「ミキはあなたを信じ込ませ そして全ての能力を引き出し トップアイドルになるの」
響「……なんかよくわかんないけど、美希がやる気になったみたいだな」
貴音「私達も負けてはいられませんね、響」
~一週間後~
美希「プロデューサー。親睦を深める為におにぎりってミキの実力知ってて言い出したの?」
P「大丈夫ですミキさん。私はおにぎりのJrチャンピオンだったことがあります」
美希「…………」
美希(ここで「好物はおにぎり?」とでも聞けば、ミキがおにぎり好きだから探りを入れてると思うのかな?)
美希「(まあいいの 試してみるの……)プロデューサーはおにぎりが好きなの?」
P「おにぎりは5年ほど食べていますが 安心してください そこからPの素性が割れる様なことは絶対ありません」
美希(ああ そう……)
P「では6おにぎり1セットを美味しく作れた方が勝ちでいいですね?」
美希「わかったの。響、貴音。審査員よろしくなの」
響「はいさーい」
貴音「美希……! 早く、早く私におにぎりを……!」
響「貴音はちょっと落ち着くさ」
美希(……まさか親睦目的といった遊びのおにぎりで、ミキの素質がトップアイドル級かどうか分析する気でもないはずなの)
P(これはあくまでも親睦のおにぎり トップアイドルになれるかどうかの判断材料にはなりえない)
P(しかしトップアイドルになれる素質を持つアイドルは得てして負けず嫌い……)
P「ではまず私の一品目……焼きサーモンハラスおにぎりです」コトッ
美希「!?」
響「! い、いきなり大物が出たぞ!」
貴音「響! わ、私はもう待てませんよ!」ガタッ
響「お、落ち着くさ貴音! 席について!」
貴音「……す、すみません」
美希「……プロデューサー。いきなり本気なの?」
P「先手必勝です」
美希「…………。(ああ そう……)」
小鳥「しゃ、社長!」
社長「ん? 何だね音無君」
小鳥「プロデューサーさんと美希ちゃんが、事務所の応接室でおにぎり対決をしています!」
社長「ほう。それはなかなか面白そうだね。ちょっと我々もご相伴に預かるとしようか」
小鳥「はい!」
ガチャ
社長「どれどれ……?」
小鳥「! こ、これは……!」
響「社長! ぴよ子!」モグモグ
貴音「これはこれは。お二方とも、ようこそおいでくださいました」モグモグ
社長「なるほどなるほど。なかなか、盛り上がっているようだねぇ」
小鳥「ああ、なんだか私もお腹が空いてきました……」グゥー
P(安心しろ星井美希 トップアイドルになれる素質を持つアイドルは負けず嫌いであることが多いが)
P(そうでなくても 対決には勝ちたいと思うのが大多数だ)
美希(ムキになって勝ちにいくとトップアイドルっぽい……?)
美希(だからといってわざと負ければ、ムキになって勝ちにいくとトップアイドルっぽいと思われるからわざと負ける所がまたトップアイドルっぽい―――でしょ?)
美希(結局 同じ事)
美希(あのPもこのおにぎりでプロファイルなんてする訳がないの)
美希(このおにぎりの目的は他にある)
美希(だからおにぎりでもミキは勝つの)コトッ
社長「! この星井君の品は……!」
小鳥「定番中の定番! ツナマヨおにぎりですよ! ツナマヨおにぎり!」
響「ぴよ子……さりげなく人の台詞パクるのはどうかと思うぞ……」
小鳥「てへぺろ」
P(ほら…… 勝ちにきた……)
貴音「では4皿目の対決は……美希の勝利と致します」モグモグ
響「これで美希はリーチだな」モグモグ
社長「次の皿で星井君が勝てば勝利というわけか」モグモグ
小鳥「私的には、もう少し長く続けてほしい気もありますけど」モグモグ
P(……今までお互い トップアイドルを目指すことについては触れずにきた)
P(いきなり腹を割ってそんな話をするのもおかしい)
美希(こんなおにぎりで親睦が深まるはずがないの)
美希(これはお互いが「深まった」と了承しあう為の儀式なの)
P(このおにぎりをした事で おまえは私がまた一歩、トップアイドルに近付けさせるための準備をしたと考える)
美希(このおにぎりが終わると同時に、このヒトはトップアイドルについて触れてくる)
美希(ミキにトップアイドルになる気がある事を言わせようと)
P(私は「担当プロデューサーになるかもしれない」と言っておまえに「私がPです」と名乗った)
P(おまえはそこを利用するに違いない)
美希(しかしトップアイドルの話をするのなら 少なくとも今 ミキのプロデューサーとなるのがこのヒトであることの証明をミキが求めるのは必然なの)
P(おまえは トップアイドルの話をするのなら 先にこっちのアイドル業界の情報を見せ 自分をまず信用させろと言ってくるだろう)
美希(そして―――)
美希(業界の情報を知る事で ミキは有利に立てると共に ミキがうっかり業界のタブーを口走っちゃう事は激減するの)
P(おまえがこれから私に要求してくる事は 私をPだと証明する有力な第三者との接見……)
美希(ミキが先にこのヒトに言うべき事は―――)
P(おまえが私に提案してくる事は―――)
美希・P(社長を含め 事務所一丸となってトップアイドルという高みを目指す事)
美希・P(やはり勝つには 先手を打つ事(なの))
美希(どんな事でも 守っているだけでは勝てないの)
美希(勝つには攻める事)コトッ
小鳥「!? 美希ちゃんの五皿目……これは……!?」
美希「こしあんおにぎりなの! もう五皿目だからデザートみたいなのがいいかなって」
社長「ほほう、これはまた……」
響「攻めて来たなあ、美希」
貴音「私はまだまだ、でざあとの腹積もりではありませんでしたが……これはこれでまた……はぅあ」
P「…………」
貴音「……公正な判定の結果、五皿目の対決は美希の勝利と致します」モグモグ
響「ゲームセット ウォンバイ 美希4-1!」モグモグ
小鳥「流石美希ちゃん。圧勝でしたね」モグモグ
社長「うむ。流石はおにぎりの申し子といったところかな」モグモグ
P「……さすが美希さん 負けました……」
美希「ミキも久しぶりに本気を出したの プロデューサー」
美希「喉も渇いたし プロデューサーに頼みたい事もあるから この後お茶でもどう?」
P「ゲームに負けた事ですし 聞ける事なら聞きましょう」
P「しかしその話を聞く前に私もひとつ言っておくべき事があります」
美希「何なの?」
P「私は 本当は 美希さんを―――トップアイドルにしようと思ってるんです」
美希「!」
P「それでも聞ける事なら何でもお聞きします」
美希「……あはっ☆ ミキがトップアイドル?」
P「はい 私が見た限り美希さんにはトップアイドルになれる素質があります というかもう100%なれます」
美希「…………。(『100%』か……うまい言い方なの)」
美希(「100%」と言われてしまえばこっちの自由は奪われるの)
美希(100%なのだからもうミキはトップアイドルを目指すしかなくなる)
美希(レッスンをサボろうにもお昼寝しようにも、先に釘を刺されたって事なの……)
美希(やられたの……)
P「とにかく トップアイドルを目指すには二人だけじゃ手が足りません 事務所の皆にも協力を仰ぎましょう」
美希「……そうだね。もうこうなったらやるしかないってカンジなの」
P「やる気になってくれたようで何よりです」
美希「……これで勝ったなんて、思わないでほしいな?」
P「さて 何のことでしょうか」
美希「……まあいいの。とにかく今、ミキ達が目指す夢は―――」
P「―――トップアイドル、ですね」
美希「なの!」
了
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