美希「プロデューサーさんと電車の中」 (28)


美希「プロデューサーさ~ん」

P「こっちだ、こっち」ヒラヒラ

美希「やっと見つけたのー。……あ、おはようございます」

P「おはよう、美希。きてくれてありがとな」


P「それじゃ、早速だけど行くぞ」

美希「はーい!」

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『黄色い線の内側まで 下がってお待ちください―――』


P「集合時間、きっちり間に合ったな」

美希「トーゼンって思うな。ミキ、アイドルだもん」

P「その割にはまだ寝てたじゃないか。俺が電話したとき」

美希「あれはプロデューサーさんが早すぎるだけなの」

P「流石に寝起きとは思ってなくてな」

美希「集合時間には間に合ってるでしょ?」

P「終わり良ければすべて良し、ってな」

美希「あふぅ」

P「寝るなよ、これからなんだから」


プシュー ガタン
ガタン ゴトン ガタンゴトン

美希「なんで今日は電車なの?」

P「一番、車が故障したから。二番、今日は社会科見学の日だから。三番、このあと飲みに行くから」

美希「4番」

P「選択肢にないだろうが」

美希「どれもウソでしょ?正解は無いのが、正解!」

P「ぐ、ぐえーっさては貴様エスパーだな!?」

美希「で、ホントの理由は?」

P「突っ込めよ……。社用車は他のプロデューサーが使ってたのさ」

美希「……ミキたちって、結構後回し?」

P「残念ながら」


美希「ミキが考えてたアイドルとは全然違うってカンジ……」

P「どんなのを想像してたんだ?」

美希「えっとね。専用の車と運転手の人がいて」

美希「乗るときにも降りるときにも、きちんとエスコートしてくれるの」

美希「降りるときにはカーペットが引かれて、ドアを開けた瞬間にフラッシュの光に包まれて」

美希「それで、ファンの人がぱーって集まってきてくれるの!」

P「アイドルっていうか映画スターって感じだな、それだと」

美希「だってミキ、トップアイドルの車乗るところなんて見たことないもん」

P「実際にそんな風になって見たいか?」

美希「……あんまり。メンドーそうなの」


美希「それで、今日はどれくらいかかるの?」

P「大体1時間半くらい……かなあ」

美希「えー。長すぎじゃない?」

P「車でもそれくらいの時あるだろ」

美希「車と電車は別!むりー、たいくつー」

P「ちょっとの辛抱だって」

美希「あ!プロデューサーさん見て見て、なんか変な看板!」

P「楽しそうで何よりです」



ガタン ガタンガタン

美希「わ、とと」

P「大丈夫か?」

美希「ヒールはいてきちゃったから。ちょっとふらふらするかも」

P「仕事前に怪我は洒落もならないぞ」

美希「そこまでドジじゃないもん」

P「ほら、こっち。そろそろ人増えてくるから」

美希「はーい」


ギュー

美希(……くるしい)

ゴソゴソ

美希「ひゃっ」

P「うお、ごめん」

美希「もぞもぞしないでっ。狭いのにぃ」

P「悪かったって」

美希(……あれ?さっきよりちょっとラクかも)

P「いたた」ギュー

美希(―――)


プシュー
ガタン ガタン ゴトン ガタンゴトン


P「大分空いてきたかな」

美希「狭かったぁ」

P「俺は何度か踏まれたよ」

美希「ね、プロデューサーさん」

P「うん?」

美希「ありがと。ミキと他の人の間、立っててくれてたでしょ?」

P「どういたしまして」

美希「プロデューサーさんも、たまにはカッコいいことするんだね」

P「たまには、は余計だっての」


P「ほら、隣」ポンポン

美希「やっと座れたのー」

P「これでようやく落ち着けるな」

美希「あとどれくらい?」

P「40分くらい、かな」

美希「まだ長いの……」

P「寝過ごさなければあとは待ってるだけだよ。はいコレ」

美希「何これ。飴?」

P「これくらいなら車内でも大丈夫だろ」

美希「わ。ありがと!プロデューサーさ―――」

P「はい、あーげた」スイー

美希「」バシバシ

P「叩くなよ!狭いのに」


ガタンゴトン ガタンゴトン


美希「ね、プロデューサーさん」コロコロ

P「どした?」サラサラ

美希「貸して。スマホ」

P「なんでだよ」

美希「だって暇なんだもん」

P「自分のがあるだろ」

美希「だって勿体ないもん」

P「なおさらダメ!」

美希「ぶー。プロデューサーさんは何してるの?」

P「仕事のチェック」サラサラ

美希「へー。見せて?」

P「ダメ」

美希「ケチ」


ガタンゴトン ガタンゴトン

美希「ね、プロデューサーさん」

P「……………ん?」

美希「何かおもしろい話、して」

P「急すぎるだろ」

美希「だって暇なんだもん」

P「そんな急に言われても……あ、美希のことだったらあるぞ」

美希「え」

P「アイドルの星井美希さんはジュース飲もうとふりふりしていると電話が鳴って」

美希「えっなんで知って」

P「長電話した後ジュースを飲もうとした美希さんでしたが蓋開けてたのをすっかり忘れ」

美希「~~~っっっ!!」


美希「……くしゅっ」

P「寒いか?」

美希「うん、ちょっと……」

P「さっきまで人が多かった弊害かな。はいこれ」ゴソゴソ

美希「……上着?用意してくれてたの?」

P「冷房の時期は一応、な」

美希「ありがと! これもプロデューサーのお仕事?」

P「おう」サラサラ

ガタンゴトン ガタンゴトン

P「―――」

美希「………」

P「―――」

美希「……ね、プロデューサーさん」

P「―――」

美希「……プロデューサーさん?」

P「―――すぅ」

美希(寝てる?)


美希「もー、ミキには『寝るな!』って言ったくせに」

P「zzz」

美希「プロデューサーさん、おきてー。寝過ごしちゃうのー」ユサユサ

P「―――ん、ぅ」パサ

美希「あ」

美希(これ、プロデューサーさんのノートだ)ヒョイ

P「zzz」

美希「……」

P「zzz」

美希「……………みちゃえ☆」パラ


美希「わー……カレンダー、ぎっしり」パラパラ

美希「これが今日のお仕事で、こっちは……明日のお仕事?かな」

美希「……え、こんな先までお仕事決まってるの!?」

P「zzz」

美希「うー…………ミキ、そんな頑張るつもりないのに」

美希(プロデューサーさんも、もっとテキトーでいいのにな)パラ


『6/5 定例会議』

美希(……何書いてあるかわかんない)パラ

『各アイドルとプロデューサーの現状と今後の活動方針』

美希(ミキ以外にもアイドルの子いるみたいだけど、いつか会えるかな?)

『美希の活動方針について』

美希(あ!これならミキにもわかりそ)

『ダンスレッスンの先生から寝坊と遅刻についてきつく怒られる。先方には6日に社長と謝罪に―――』

美希「…………」パラパラ


美希「もー、読んで損したの!ちっとも面白くないし」パタン

ピラ

美希「メモも落ちるしっ!プロデューサーさんもちゃんとしてってカンジ―――」

『5/27 美希のオーディション』

美希(あれこれ……この前のオーディションのことかな)

美希「字、汚過ぎ……えっと」

『美希がオーディションに合格した!!!
 ランクもDが近づいてきてる。ここまで大変だったろうけど、
 ようやく美希の頑張りが目に見える形になろうとしている』

『美希も少しずつアイドルにやりがいを見出していると感じる。
 まだまだ超えなきゃいけない壁はあるけれど、でも―――』


美希「―――」


P「………」

美希「プロデューサーさん、プロデューサーさんっ」

P「……ぁ」

美希「おきてー。まだ電車の中なのー」

P「…………はっ!? 俺、寝てた?」

美希「うん、ぐっすり」

P「今どこの駅だ!?時間は?もしかして寝過ごして―――」

美希「えっと、今はここみたい」

P「………………あぶねえ、次の次だ」

美希「おはよ、プロデューサーさん」

P「おはよう……ああ、焦ったあ」ホッ


美希「ハイこれノート。落としてたよ」

P「ああ……ありがとう、美希。それとごめんな、寝るなって言ったのこっちだったのに」

美希「プロデューサーさんいっぱいお仕事してるみたいだから、仕方ないって思うな」

P「はは……。な、ノートの中身、見たか?」

美希「みたよ。難しいことばっかりでちんぷんかんぷんなの」

P「……落としておいてなんだけど、次から読むのは控えてくれると助かる」

美希「はーい。あ、でも字はキレイに書いたほうがいいって思うな」

P「善処する」


ガタンゴトン ガタン ゴトン  ガタン

『次は○○――― 次は○○―――』

P「よし、降りるか」

美希「ね、プロデューサーさん」

P「どした?」


『まだまだ超えなきゃいけない壁はあるけれど、でも』


美希「今日はどんなお仕事するの?」

P「そうだなあ、詳しいことは現場についてから改めて話すけれど―――」


『もし美希が、もっとアイドルを好きになれたなら』


P「多分美希が、アイドルをもっと好きになれる仕事だと思うぞ」

美希「じゃあミキ、プロデューサーさんと一緒に頑張るね」

P「おう!」


『―――星井美希は必ず、トップアイドルになれる!!』


おしまい

以上でおしまいです。ここまで読んでくれてありがとうございました。
アイマスは基本車で移動のイメージがありますが、比較的初期の方のランクだと
電車移動もあるんじゃないかなあと。

「プロデューサーさん」呼びの美希は可愛い、どうか伝われ。

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